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バトルオブフラワーズ⑩〜エモーショナルを、君に。

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー

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●最強の盾
「『システム・フラワーズ』へ一歩前進致しました。皆様のお力には只々敬服するばかり」
 エイプモンキーを討伐し、また一つキマイラフューチャーを救うための戦いが進んだ。しかし、まだ強敵は残っている。そして今回猟兵達に挑んでもらうのは、そのうちの一人だ。
 オクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)は猟兵達に手早く資料を配布していく。その表紙に描かれた兎頭の女性、それこそ今回打倒するべき敵――カワイイ怪人『ラビットバニー』だ。
「今回の敵は一筋縄ではいきません。何しろ、必ず先制攻撃として『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード』なるものを使ってくるのです」
 集まった猟兵達に衝撃が走る。
 これまで戦争などで相対した強大な敵の存在は数多くいた。しかし、初手で無敵のバリアを張るものなど居ただろうか。どうあがいても先手を取られる以上それでは攻略のしようがないではないか、と。
「当然の事ながら先制攻撃にはなんらかの対処をしなくてはなりませんが……バリアに関しては、一つ解除をさせる方法が御座います」
 愕然とする猟兵達に慇懃に一礼し、資料の次のページを読むよう促すゴート。そして言われたとおりに見た次ページには、以下の様に記されていた。
 ――『絶対無敵バリア』は一切の攻撃が無効となり、バリアそのものへの干渉はどのようなモノでも無効化されてしまう。しかし、それを展開する『ラビットバニー』が【エモい】と感じると、油断が生じバリアが途切れるという事がわかっている。
 この【エモい】の基準は緩く、必死さ、かわいさ、かっこよさ、面白さ、その他諸々何でもよい。ただし、バリアが無くとも『ラビットバニー』は強力であり、バリアを剥がしたとしても油断は禁物である。
 以上のようなことが資料に記されていた。
「要約致しますと、皆様の『魅せる』戦いによって、勝利への道が切り開かれるという事で御座います」

 娯楽によって成り立つ世界を救う為、敵さえも釘付けにする【エモさ】を以て立ち向かう。なんともこの世界らしいといえるものだが、かといって油断はできない。この場所を攻略しなくては、絶対に中心部へは辿り着くことは叶わないのだから。
 山羊の慇懃な一礼に見送られながら猟兵達はゲートを潜る。花の道の先に待つ、未来への脅威を打倒するために。


佐渡
●今回のシナリオに関する注意事項
 ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

 佐渡と申します。
 今回のシナリオはキマイラフューチャーを脅かす怪人軍団の大幹部、カワイイ怪人『ラビットバニー』を打倒する任務です。高難易度の任務となっていますので、プレイングの内容如何によっては少々判定が厳しいものとなる恐れがあります。
 とはいえ「エモさ」が戦いのキモとなる以上、それに見合った最上のリプレイになるよう全身全霊挑ませて頂くので、何卒宜しくお願い致します。

●※おねがい※●
 迷子を避けるため、ご同行の猟兵の方がいらっしゃる場合には同行者名、あるいはチーム名等目印をお忘れないようにして頂けると幸いです。
 またマスタープロフィールに御座います【シナリオ傾向】については是非一度目を通して頂くよう強くお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:和狸56

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

錬金天使・サバティエル
地形制御とは厄介な真似をしてくれる。
ならばこちらはサメゾンビを足場にしてしまえばいい。
お誂え向けにサメゾンビはパッチワークが施されていてカラフルだ。これは映える。宝石や金でデコれば完璧だね。
ちょうど私もサメの着ぐるみ着てるしちょうどいいな。
接近したら手近なサメゾンビでぶん殴ろう。沢山居るし。あとべしゃってしそうだねサメゾンビ。腐ってるし。たぶん効く。


ヘクター・ラファーガ
全身が焼けてケロイド状態、その上に凍結痕もあってゾンビみてぇな姿になっちまった。けど、そんな姿になるくらい……あのクソ猿は強敵だったぜ。
こんだけ傷ついても倒れず、死にそうになっても戦闘を続行する。この泥臭さ、まさに『エモい』って感じしねぇか?なぁ、ラビッドバニー……!!

ま、真の姿なんだけどな。

コイツでエモいと思ってくれたなら結構。
で、お前のシールドは無敵なんだろ。俺の剣も実質無敵なんだわ。『自壊する不死の剣』はどんな武器も不死化させる。
大剣ぶん回して突っ込むぜ。赤べこなんぞ大剣振り回してぶっ壊してやる。折れても復活するしな。

お前に当てるまで全部ブッ壊してやるよ。そのシールド諸共なァッ!!



●ゾンビーズ・エモーショナル
 『システム・フラワーズ』へと繋がるその花の道は、絢爛に咲き誇る。その花をぱしゃぱしゃ手持ちの端末で写真を撮っているのは、カワイイ怪人『ラビットバニー』。飽くなき「エモさ」を求める彼女の前に、今二人の猟兵が現れる。

「やば、もうあーしのとこまで来たの? 猟兵さっすが、ちょっとエモいね! けどあーしも中々強いんだなこれが!」
 その姿に自信ありげな台詞を吐き、ふふんと胸を張ると、半透明のバリアがラビットバニーを包んでゆく。それこそ彼女の強みの一つである『絶対無敵バリア』。これを攻略しなくては彼女には指一本触れられない。
 そしてすぐさま先制攻撃のユーベルコードが発動される。ばっと突き出したばっちりネイルでおしゃれにキメた指先から放たれるビーム。猟兵を素通りして地面の花へと命中したそれは、猟兵の足場を崩す地形操作攻撃――その名も『おはなハッキング』。これで決着してしまえばそれまで……だが、その猟兵は落下しない。
「そう、なぜなら私にはサメゾンビがいるからさ」
 サメの着ぐるみを纏い、腕組しながらどこからともなく現れ地面からせり上がるゾンビ化したサメの背に仁王立ちするその猟兵の名は、錬金天使・サバティエル(賢者の石・f00805)。「サバ」ティエルなのにサメを使役とはこれ如何にという感じではあるが、とはいえ彼女のサメゾンビというのはただの足場ではない。
 数々のクソ映画からエモーショナルを感じた彼女が生み出すナチスの生み出した魔改造サメゾンビ。しかしそれはただのサメゾンビではない。賢者の石のヤドリガミたる彼女の力を存分に受け、パッチワークと宝石によってデコレーションされた特別製サメゾンビだったのだ!
 ――そして、もう一人。ゾンビは存在した。
「ハ、おう。猿はぶっ潰してきた、次はてめぇだぜウサギ女ァ!」
 全身は爛れ、それでいながら凍傷も負い、無残な姿で現れたのはヘクター・ラファーガ(風切りの剣・f10966)。真の姿を晒しながら、彼女の前に番を務めていたエイプモンキーを砕いてきたような台詞を嘯く。傷を負い、それでもなお立ち上がる不屈の闘志をアピールするために。とはいえそんな口八丁が無くとも、彼の真の姿は苛烈な彼の半生を雄弁に物語る。決して美しいとは言い難いその姿を世界の救済の為に衆目へと晒すその覚悟もまた、心を打つエモーショナルの一因となる筈だ。
「やっば、パニックホラー顔負けじゃん! それエモい、超エモいよ!」
 眼前の猟兵達の、R15を優に超えるグロテスクなそれぞれに高評価を示すラビットバニー。その感情のブレは、確かに『絶対無敵バリア』を揺らがせる。
 その隙を狙い小振りなサメゾンビを引っ掴んで攻撃を仕掛けるサバティエルと、決して砕かれぬ不死の剣を手に特攻するヘクター。まさに千載一遇の好機――しかし。顔を上げたラビットバニーは、言葉をつづけた。
「でもさー……ゾンビって、『やられ役』じゃね?」
 直後接近した猟兵達に炸裂する赤べこキャノン。巨大なサメゾンビは弾丸を飲み込んだはいいものの、直後B級ホラーによくあるチープな爆発エフェクトと共に内部から四散する。ヘクターは咄嗟に剣でガードするが、如何に不死の剣を用いようとも使い手にダメージが入れば戦闘の続行は難しい。剣を粉々に砕き同時に自身にまで届く巨大な爆風に巻き込まれ、大ダメージを受けてしまった。

「やっぱエモいゾンビはやられた姿もちょーエモいね! 二人ともオブリビオンになったら、そのデコり方とメイクの方法おしえてよ!」
 余裕綽々に手を振り、ラビットバニーは姿を消す。確かに感情を揺れ動かし、バリアを破る事には成功した二人。しかし……かの敵は幹部の名に恥じぬ油断のない強敵。次なる手は、如何様なものとなるのか。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ポク・ョゥョゥ
うさぎたんかわいー
ぽくだよー。ぱんだなのー
あがめよー

先に回避かなー?
おっきなぱくに乗って飛んでー、お花から逃げてー
キャノンをぱくブレスで迎え撃ったりー
カンフーはゆる〜んと形変えて避けるのー

それじゃーえもい?するよー
たいとるはー『みにぱんだがリコーダーに挑戦してみたー』
いつもと違う笛で演奏するのー
はじめまーしゅ。ぺこり

ぷー。ぴー。ぴこー。ぴー…
(頑張ってるお顔)
ぴっぴこー、ぴこー。ぴー…
((`>ω<´)な顔になりながら一生懸命。段々曲になってきた)
ぴーぴこーぴっこぴー♪ぴー♪
(曲になりました!)
どうだー。ぽくがんばったのー
(お顔きっらきら!)

えもかったー?それじゃーいっくよー
のびーるぽくぱんちー



●ぱんだ・エモーショナル
 再び現れたラビットバニー。気配を感じふと見れば、眼前から何者かが近づいてきた。ぷぴぷぴと足音を立てながら現れる――ぱんだだった。
「あがめよー」
 ポク・ョゥョゥ(よろしくなの〜・f12425)は両手をんばっと上げて言う。独創性あふれる挨拶と喋るパンダというダブルアタックはラビットバニーにぶっささったらしく、黄色い悲鳴と共に写真を撮りまくっている。
「――っと危ない危ない、テンションアゲすぎて忘れてた。猟兵だったら、ここを通すわけにはいかないっしょ!」
 はたと冷静さを取り戻すと、即座に『絶対無敵バリア』を展開し、そのままゆらりと脱力したかと思いきや、ゆっくりと構えへ移行する。兎面の目に光が灯り、静でありながら動をも併せ持つこれこそ、彼女の極めし『うさちゃんカンフー』。
 瞬きの合間に距離を詰め、放たれる掌底。しかし、ぱんだにその攻撃が命中することはなかった。形状を変化させると花の道から自ら飛び降り攻撃を躱したポク、突然の飛び降りに唖然とするラビットバニーだが、直後強風と共に白い影が舞い上がった。
 高貴なる白鱗に黄金の瞳を持つポクの相棒、「ぱく」。追撃の為にラビットバニーが放った追尾する赤べこバズーカから舞うように逃れながら、最後は煌めくブレスによるフレアで追尾を退けポクの着地と同時に背後でミサイルが自壊、爆発する。
 そしてその派手なオープニングの演出の後……ポクは自身の考えた「エモい」ものを披露する。ポシェットから取り出す今まで演奏した事のない笛をぱくっと加えると、それを演奏し始める。
 ぷー。ぴー。ぴこー。ぴー…。最初は、慣れないために四苦八苦し。
 ぴっぴこー、ぴこー。ぴー…。ぎゅっと目を瞑って必死に吹くとリズムが生まれ。
 ぴーぴこーぴっこぴー♪ぴー♪最後には、つたないながらも曲となる。
「どうだー、がんばったよー」
 んばっとゆるい決めポーズをとる後ろで、着地したぱくもまたそれに合わせたポーズを決めた。

「――エモい、やばい。これやばい、エモすぎてしんどい」
 完全に語彙力が死に絶えたラビットバニーは手持ちの端末を二刀流で片方で動画、片方で写真を回していた。バリアも揺らぎ、相手は手が空いていない。
 チャンス到来、ぐるぐると腕を回すと、伸びる手でラビットバニーのおでこにパンチを炸裂させるポク。バリアを突き抜け見事攻撃は命中、ラビットバニーの頭の周りに無数の星が散る。
 やったーと喜びをかみしめるのも束の間、直後ぱくが始末し損ねた赤べこキャノンから放たれた赤べこ型の砲弾が、ポクの近くの花の道を爆発させた。落下するポクを焦ったぱくが何とかきゃっちするも、ぱくの背中に頭をぶつけたポクの頭の周りにも星が回ってしまった。
 勝負の結果は痛み分け。胡乱なまま転送するラビットバニーと、グリモアによって帰還するポク。ダメージこそ小さなものであったが、確かに敵へと攻撃を与えた。一つの前例が生まれ、道は繋がれた。次なる手は――如何様なものとなるのか。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラプラス・デーモン
グロリア・グルッグ(f00603)とコンビだ。

【心情】
エモさは分からないが人を感動させるものは知っている。
そう、拳闘だ。
古来より人は拳と拳の語り合いに夢を馳せたものだからな。

【メイン行動】
「お前の拳を自分に教えてくれ」
バニーが先手を取るのを両手を広げたノーガードで受け止める。
お返しにユーベルコード・逆襲の帝王を発動してカウンターを叩き込むぞ。

【戦闘】
グロリアが展開したリングの上でバニーと殴り合おう。
バリアに阻まれようと構わない、己のボクサー魂を込めた拳を打ち返すのみ。
ステゴロ上等、死力を尽くして闘う姿が観客を魅了するのだ。
「来い、バニー! バリアなんて捨ててかかってこい!」


グロリア・グルッグ
ラプラス・デーモン(f16755)とコンビを組みますよ。

【心情】
エモい感じのバトル演出ですか?
オーケー、謎の美少女電脳ハッカーことグロリアさんにお任せですよ!

【メイン行動】
ユーベルコード・金色魔女を展開してもう一人の自分を召喚。
二人で仲良くお淑やかに花の上に座りながら、広範囲に電脳空間を展開しましょう。

【戦闘】
攻撃はラプラスさんにお任せして電脳魔術に集中します。
電脳空間に表示するのは豪華なボクシングのリング。
リング上で戦うラプラスさんとバニーを応援する電脳ギャラリーも多数配置しましょう。
沸き上がる歓声、ゴングの音、会場を包む熱気なども完璧に再現します。
加勢は野暮ってものなので裏方に徹しますよ。



●ファイターズ・エモーショナル
 再び現れたラビットバニーの前に立ちはだかるのは、美女と野獣とでも言うべきコンビ。
 一人は巨漢で半裸の男。土気色の肌には凡そ人ならざる筋線維が浮き上がり、目深に被った白いフードは金色の眼の衣装をあしらう。もう一方は近未来的な衣装のタイトスーツに桃色の長髪をなびかせる美女。その手元には半透明で板状のディスプレイがいくつも浮かび上がる。
「ふぅん、ぜーんぜんバイブス違うマッチョと美人の取り合わせ、なかなかエモいね」
 そう言いながらも、ラビットバニーはゆったり構えに移行する。一度攻撃を受けて敵の攻撃には注意を払いながら、彼女は先制攻撃を仕掛ける。どんという衝撃音が響けば同時に眼前に現れる兎マスク。同時に放たれる掌打は並みの相手ならば身体がひしゃげる程の一撃だ。
 ……しかし。こと近接戦闘、こと格闘戦において、「彼」は――ラプラス・デーモン(デモニッシュ・パンチャー・f16755)はプロフェッショナルといっても過言ではなかった。
「ぐ、ゥッ!?」
 女性らしい華奢な腕から放たれたとは思えない重い掌打を彼は一切守ることなく受け止める。胸筋に炸裂した一撃は内臓を震わせ、心臓にさえ悲鳴を走らせる。しかし、彼はただ無防備に受け止める事に優れているわけではない。
「うォオッ!」
 逆襲の帝王。ルールの無いリングで戦った彼の練り上げた技は、後手必殺の一撃。
 だが、当たらない。まだ、エモさを与えられていない彼の一撃は容易くバリアに弾かれてしまう。しかし、自分の攻撃に一切逃げず、怯えず、引かなかった男にラビットバニーは驚嘆と称賛の口笛を吹く。
「『エモさ』なるものは分からないが、人を感動させるものは知っている。古来より人は拳と拳の語り合いに夢を馳せたものだ――」
 口の中に溜まった血の塊を吐き出し、ラプラスは語る。そして、その言葉に沿うように徐々に地面がせり上がり、『システム・フラワーズ』内部の花の道は……四角いロープの張られたリングへと、姿を変えていた。
「そう――自分が魅せるのは、拳闘だ」
 強く拳を打ち鳴らすと、どこからともなく聞こえる歓声。中継の映像を引っ張ってリアルタイムで声援などが聞こえるようにセッティングされたこの場は、正に世界全土を巻き込む観客席に見守られた戦場だ。
「謎の美少女電脳ハッカーことグロリアさんにかかれば、エモい感じのバトル演出なんてお茶の子さいさい……」
 グロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)は、そう思っていた。しかし今彼女はお花の上でお淑やかに座る事などできず、超高速演算に特化したもう一人の自分を以てしてなお滝のような汗が止まらない程に必死だった。
 キマイラフューチャーの中核『システム・フラワーズ』へのハッキングは彼女の人生の中でトップクラスの難度を誇り、何より難儀するのはフィールドの構築だ。
 ハッキングなどで別ルートを生み出せるのなら幹部連中など無視して最初から内部に向かえばいい、それがされていないということは――それが不可能に近い芸当であるから。しかし、彼女の天才性に合わせ、ラビットバニーの意識が彼女に向いていないという好条件が合わさって、なんとか小規模なリングの生成と維持、そしてリアルタイムの放送を行う事が叶った。だがそれも持って三分強……一ラウンドが限界だ。
 とはいえ――拳闘者に、演出など不要。
 ドラマも熱も、生み出すのは拳一つ。
「来い、バニー! バリアなんて捨ててかかってこい!」
 拳を打ち合わせるラプラス・デーモンの吠えるような煽りに、ふっとラビットバニーは浅葱色のまとめた髪を払う。
「いーじゃん。エモいかっていうと違うけど、こういうのもアリだよね!」
 バリアが解かれた音が――そのままゴングとなった。
 神速にして剛柔一体のうさちゃんカンフー。しかしそれらを全て真正面から受け止め、ラプラスはすさまじい破壊力のカウンターで応じる。拳圧で突風が起きる程の猛撃をひらりひらりと躱すラビットバニー、一撃が必殺の破壊力であろうことがわかる一つ一つを受けてなお一切引くことも揺れる事もないラプラスのタフネス。息を呑む攻防が続く三分間は最早永遠のようにも、刹那の様にも感じられる。
 そして……二人の拳が交差し、両方の顎を捉えたクロスカウンターと同時に、無情なタイムアップが訪れた。
 ラプラスとラビットバニーは同時に膝を付き、両者は健闘を称える。
「いやー……まさか、あーしのうさちゃんカンフーにあそこまでついてこれるとはね……」
「フ、オレのフェイタルブローをあそこまで躱したのもお前が初めてだ……」
「マジでサイコーだったよ……あー、エモいなあ」

「――――このエモさを、こんな風に終わらすのがちょー残念だけど」
「え?」
 ばしゅん、と。不意を打つように放たれた、赤べこ型の砲弾。その照準が捉えた先に居たのは……疲労困憊の、グロリア。
 激しい爆発音とともに、グロリアを包む黒い煙。最も、彼女には一切の傷がない。代わりにその砲弾を受けたのは、他でもないラプラスだったのだから。飛び起きた彼はグロリアを庇い仁王立ちし、そして前のめりに倒れこむ。
「ら、ラプラスさん、しっかりしてくださいよ!」
 倒れた男の肩を必死にゆすり、きっととぼけた兎のマスクを睨みつけるグロリア。しかし、ラビットバニーはふらつきながら言う。
「あーし、オブリビオンだし。つーことはヴィランなわけよ。悪役は卑怯上等っしょ? ……ぶっちゃけもう限界だから帰るけどね」
 それ以上の追撃を行う余裕はなかったのか、早々に撤退するラビットバニー、そしてそれに合わせて二人もグリモアによって緊急帰還し、早々にメディカルチェックを受ける事だろう。
 猟兵達は深い傷を負ったが、それと同等かそれ以上に敵にも深手を与える事に成功する。猟兵はまた一歩、攻略への楔を打ち込む。次なる手は、如何様なものとなるのか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱雀・慧華
エモいってむずかしー言葉だね
ウサギのお姉さん、頭いいんだ!すごーい!(純粋な眼差し)

攻撃は翼での飛行と
★ローラーシューズによる【ダッシュ】で
虹を作りながらふわりと回避

お姉さん、動物好き?
ミッキュがね、お姉さんと遊びたいんだって!

お友達の★ミッキュをじゃれつかせながら
【UC+アートパフォーマンス】

今日の空はー…日没の色!
マジックアワーって言うんだっけ?

本物の空を映す不思議な★絵具で空中を彩り
星空色の★七色空絵筆で
色んな空飛ぶ動物や
風にそよぐ美しい草花を空間に描き
お姉さんの体もふわふわ
空を泳ぐの気持ちいいよね!

バリアが解けたら
光の【破魔+属性攻撃+全力魔法】
ごめんね
でも、夢はちゃんと覚めないとね



●マジカル・エモーショナル
 幾度となく交戦を繰り返し、徐々に疲労の色が見え始めるラビットバニー。次に彼女の前に現れたのは、金髪碧眼の少女。悪意によって地に落ちた神の娘、朱雀・慧華(純真天使・f17361)は爛漫な笑顔でオブリビオンに純真な目を向ける。
「ウサギのお姉さん、頭いいんだ! すごーい!」
 エモい、という言葉の意味知らぬ彼女は、よくわからない言葉を使う相手に立場の差の関係ない尊敬を見せた。
「うんうん、可愛い女の子はそれだけでエモさがあるよね。イケメンと同じ感じにエモいよ」
 彼女は深く頷く。心なしか頭のいい喋り方を意識しているのかテンションが落ち着き目だ。褒められて嬉しいのかもしれない――とはいえやはり敵は敵、猟兵は排除せねばならない。指先を突き出し放たれる七色のビームに合わせて展開される絶対無敵バリア。これを除去しない限りラビットバニーには攻撃は通らない。
 花が崩れ去り道が途絶える中、彼女はひょいと宙へ身を投げ出す。その顔に恐怖はなく、懐から取り出した絵筆で空をすっとなぞった。さすれば生まれる七色の虹。花の色どりに負けない鮮やかな虹の上を、リンクの如くローラースケートで駆け抜ける慧華。その姿は宛ら妖精のそれだ。
 同時に彼女は絵の具を変えると、すらすらと天に描き出す魔法の名を冠した薄明りの空。青とオレンジのグラデーションに彩られる世界の情景と、それを背に飛び立つ鳥、日没に尻尾を揺らす白猫、眠る子犬、様々な生き物と神秘的な光景が胸を打つような絶景を生み出した。
「うっわ、これはエモいわ……」
 言葉を失う程、見とれてしまう程鮮やかな光景。映像や写真、VR等よりも胸に染み渡っていくのは一体なぜなのだろう。呆けるように景色に見入るラビットバニーの傍で、慧華の友人である翼を持つフェネックがバリアの解除を確認する。
 何時もともにある友人の鳴き声を聞くやしかと頷く慧華。すぐさま絵筆をくるりと回し全身全霊の魔法を展開する。三重、五重にまで重なる光輝の魔法陣を描き出し、放つは極大の「光」。
「ごめんね……でも、夢はちゃんと覚めないとね」

 宵闇を切り裂く朝日の如く、炸裂した魔法はラビットバニーを飲み込んだ。しかし、全力を出した彼女もまた虹の足場を構成する余力さえ残せず落ちていく。
 完全に消え去る前に撤退するラビットバニーと、グリモアによって帰還し助かる慧華。猟兵達の様々な計略とエモーションが、強敵を確かに追い詰めていく。決着の時まであと一歩。次なる手は、如何様なものとなるのか。

成功 🔵​🔵​🔴​

八月一日・久遠
【海の宝石】
何故皆様意味も分からず的確な行動を取れるのか、ホズミは不思議です
女子の鶴澤さんに助けを求め…られ…ない?
…本気、なのですね
わかりました、ホズミもこの身を賭して口説かれましょう

かわいい表情…ですか?ホズミには困難ですが…高鷲さんのような笑顔をそう呼ぶのでしょう
王子様のようです、ライオットさん 今、護られていますよ
護りが得意なのですね、王子
アナンシさんの礼に瞬き
様になりますね。…もしや、これが手慣れた大人という魅力でしょうか
ああ、鶴澤さんまで…仲良くはなりたいです 何故でしょう、皆様を前に顔が上げ辛く、気分がざわつきます

…クオンは、困ってしまいます

ぽつりと零しこの気持ちで電撃を放ちます


ライオット・シヴァルレガリア
【海の宝石】
エモいというのは、ワクワクに似た感覚なのかな?
もしそうなら、とても素敵な感情だね
平和を取り戻すために頑張るよ

久遠さんは偉いね
こんなに小さな手で、武器を取って戦っているんだから
…だからかな、僕も君を応援したくなってしまうんだ
言えば、久遠さんの手をそっと取って跪こう
誰よりも頑張り屋な君を、僕に護らせてくれませんか

前に読んだ本を真似てみたけれど、どうかな?

先制は『武器受け』で受け流す

バリアが破れれば皆をサポートするよ
氷の『属性攻撃』で遠距離から氷塊を放って、敵の足元を凍りつかせよう

皆、回復は僕に任せて欲しい
傷を負ったら『生まれながらの光』ですぐに癒すよ
だから遠慮なく戦っておいで


アナンシ・メイスフィールド
【海の宝石】
emotionalかね?
ならばときめくシュチュエーションにて心を動かせたらと思うのだよ
先制は『聞き耳』で見極め『残像』にて避け様と試みよう
エモさは八月一日君を男性陣と鶴澤君で口説きときめくシュチュにてエモさを演出してみよう
八月一日君の前にて恭しい一礼をしつつ手を差し出し
おや、可愛い駒鳥がこんな処に居るではないね
この様な場所に居ては危ないからねえ。良ければ君のナイトとして傍に置いて貰いたいのだけれども…如何かね?と、誘ってみよう
ふふ、その青の瞳を見ていると記憶が無いというに何故か懐かしい気持ちにるのが不思議だが
バリアが破れたら【贄への誘い】にて攻撃を
では全力で行かせて貰おうかね


高鷲・諒一朗
【海の宝石】
エモい?
えもい……絵萌い……
(ティーン)
要するに見て楽しくなればいいんだなっ?
おーけー!

バニーの先制攻撃に対しての防御は『ダンス』の足さばきで回避をねらえたらいいな

なっ久遠、おれは久遠の笑顔をもっと見てぇな
笑顔だけじゃなく安らいだ顔、嬉しそうな顔、頑張ってる顔……
いつものその表情もクールでいいけどさ、
やっぱ女の子はかわいい表情が一番魅力的だぜ!

おれたちと一緒に遊ぼうぜ、
楽しくなればおれたちの知らない久遠に会えるって信じてるからな!

バニーに攻撃できそうなら『金狼ステップ』で
おれ自慢のダンスの動きを見せつけてやるぜっ
いろんな表情を見たいのは正直バニーに対してもだけどな!


鶴澤・白雪
【海の宝石】
エモいの意味が分からないけど…とりあえず心揺れればいいのね?
でも誰よ、久遠を口説くなんて作戦考えた奴…一先ずは野郎どものお手並み拝見ね

悪いんだけど付き合ってあげてくれない?これでも真剣だから
その間に攻撃するなら全力魔法とUCで邪魔するし不意打ちも辞さないわよ
見ての通り、あたしも正義の味方じゃないのよ

は?あたしもやるの?そうね…あたしは久遠の事をもっとよく知りたいわ
原石のような久遠が磨けばどんな宝石になるのか気になるし単純にあたしが仲良くなりたいの
あのバニーが何思おうが関係なく、これがあたしの本音

ほら、うちの王子たちと可愛いワンコがこう言ってるんだからバリア解きなさい

お遊びは終わりよ



●マリンジュエリー・エモーショナル
「はー、いやいや。マジ舐めてたわ。猟兵エモすぎだし強すぎ。そりゃモンキーもやられちゃうよね」
 再び姿を顕したラビットバニーは、何度でも挑みかかる猟兵達の根気強さ、そして意志の固さに半ば呆れ、そして残りは称賛の意をこめ息を吐く。そう、守るべき世界の為に、猟兵達は決して諦めない――そして、今も。
 海の宝石の名を冠するコテージ、そこでは猟兵が透いた硝子のように輝く縁を求め集う。その中で生まれた絆は、世界へ染み出す悪意を討つための戦場でも揺らぐことはなかった。
 兎のマスクが揺られ、一人の猟兵を見つめる。流れる銀の長髪をリボンで結わえた少女、八月一日・久遠(メメントモリ・f18196)は手にした太刀を正眼に構える。気合は十分に伝わる。だが彼女は敵に対しての攻撃に一切の対策を打っていない。絶対無敵バリアが展開され、その直後放たれるであろう容赦のない先制の一撃によって、即座に退場した事だろう。
 ――彼女が、一人きりだったなら。
「ふっ!」
 彼女の足場に放たれるレーザー光線を盾で弾き返し、落下を阻止せんとするはライオット・シヴァルレガリア(ファランクス・f16281)。幾多の戦場を駆けた経験を頼りに、背にした少女を守るように。
 だがそれでもまだ不足だ。指先から放たれるレーザーは一本や二本ではなく、彼らの足元の花は徐々に崩れ、足を踏みしめる事すら難しくなる。せめて、彼女だけは……そう思い手を伸ばしたライオットの手を――掴んだのは、少女の柔い手ではなく青年の逞しい手だった。
「あっぶね! 間一髪!」
 久遠を小脇に抱え、ライオットを引っ張り上げたのは高鷲・諒一朗(ミルザム・f17861)。空の踊り手、スカイダンサーの技能を活かして天を舞い、完全に足場を失う寸前で二人を救い出したのだ。容易い事ではなかったが、それでも間一髪をどうにか成し遂げたのは、この戦争によって成長した結果でもあるだろう。
 だがラビットバニーの先制攻撃はまだまだ終わらない。猟兵の数だけ打てる手は増え、そして苛烈さを増す。
 着地したその無防備な隙を見計らい放たれるうさちゃんカンフー。猛烈なる蹴撃は無慈悲に猟兵達を刈り取らんと迫る。
「邪魔をするなら容赦はしないわ」
「皆には触れさせんよ」
 横合いから鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)が放つは焔の魔法、そしてアナンシ・メイスフィールド(記憶喪失のーーー・f17900)は仕込み杖を以て繰り出される連撃を受け止める。
 互いの隙や足りない部分を補い、そして支え合う。連携は留まることなく繋がってゆく。だがそうして力を合わせてなお、ラビットバニーの力は強い。援護を行った白雪へ牽制の赤べこキャノンを撃ち、仲間の危機に焦るアナンシは徐々に防戦、劣勢へと傾いていく。
「く、っ」
 守られてばかりいるわけにはいかない、久遠は立ち上がりラビットバニーへと攻撃を仕掛けるが、これまで猟兵との戦いで洗練さを増したカンフーによって攻撃はひらりと躱され空を切る。しかし、それでもなお彼女の目には闘志は赤く瞬き続けていた。
 仲間のために。命令や指令とは一切関係なく、ただ自分の意志で、戦い守りたい。そう思いながら、刀を強く握り直して。

「久遠さんは――偉いね。こんなに小さな手で、武器を取って戦っているんだから」
 すく、と傍らに立ち、刀を握る久遠の手に自分の手を重ね――ライオットはそう語りかけた。戦いというのは、常に死が隣り合わせにあるモノ。だからこそ自分のような盾がある。けれど……時に、その盾は人が務める事がある。限られた命を以て何かを守る……それはどれだけの覚悟が必要なものだろうか。ましてそれを、彼女のような年若い少女が行おうとは。
「……だからかな、僕も君を応援したくなってしまうんだ」
 跪き、彼は久遠の目を見て口にするその言葉。どこかで読んだ本の台詞に、感情を乗せて。
「王子様のようです、ライオットさん。私は今、護られていますよ」
 言われた瞬間は首を傾げ、けれど彼の目を見て久遠は頷く。芝居であることは重々承知の上で、彼の「護る」という言葉は嘘ではないのだろうと。
 一方それを目撃したラビットバニーは動揺を隠せない。その隙を突いて、アナンシは反撃を繰り出し距離を取る。同時に彼は確かな「手ごたえ」を覚えた。
 ――効いている。バリアが、揺らいでいると。
 ぶつぶつと「エモい」「このタイミングでそれはエモい」と小声でつぶやき続けるラビットバニー、その横っ面に、お返しとばかりに飛んでくる回し蹴り。カポエイラは当てれば不浄とされるが、今回に限れば当てねばなるまい。
 諒一朗はその一撃を皮切りに怒涛の連続技でラビットバニーを追い詰める。そして、その最中に大声で呼び掛けるのは久遠に向けてのセリフだ。
「なっ久遠、おれは久遠の笑顔をもっと見てぇんだ!」
 笑顔だけに限らない。安らいだ顔、嬉しそうな顔、頑張ってる顔……喜怒哀楽、その全てを。感情を見せない彼女の表情も又魅力的ではある。けれど、やっぱり。
「やっぱ女の子はかわいい表情が一番魅力的だぜ!」
 にっかりと爽やかな笑みを見せ、ぐっと親指を上げる。己の迸る感情を舞いに託す彼は、誰より笑顔のすばらしさ、輝きを知っている。だからこそ己も笑顔を振り撒き、人にも又笑顔になってほしいと願うのだ。
「かわいい表情…ですか? ホズミには困難ですが…高鷲さんのような笑顔をそう呼ぶのでしょう」
 久遠は、諒一朗に対してそう返す。自分にはし難いモノを、彼は持っている。それこそを、自分は素晴らしいと思うのだと。
 面と向かって言い返されて照れ臭そうに笑うと、諒一朗は久遠へ手を差し伸べた。
「おれたちと一緒に遊ぼうぜ、楽しくなればおれたちの知らない久遠に会えるって信じてるからな!」
 そして踊ろう、この無限に広がる世界というダンスホールで。
「エっっっっっっ」
 最後の「モ」を言い切る事すらできなくなったラビットバニー。感情の揺れは最早制御できないところまできているらしく、普通に攻撃する事すら難しい状況だ。
 状況を鑑み、追撃するべきは肉体ではなく精神であると感じたアナンシは戦いの中で乱れた衣服を整えると、久遠に対し深く礼をする。
「この様な場所に、こんな可愛い駒鳥がいると何が起きるかわからない。良ければ君のナイトとして傍に置いて貰いたいのだけれども……如何かね?」
 長台詞に洒落た言葉、それがすらすらと口をついて出るのも果たして才か、それとも経験か。兎も角として、彼の所作と合わせて一挙手一投足の全てが品を持ちながら魅力的だ。
 それでもただ美辞麗句を並べ立てただけではない。どこかへ記憶を忘れた彼に、懐かしさを感じさせるその瑠璃のような青い瞳を守りたい――それは、紛れもない事実なのだから。
「様になりますね。……もしや、これが手慣れた大人という魅力でしょうか」
 一連の動作にただぱちくりと瞬きをして見入った久遠は深く考え込む。普段の彼の様子を知るがゆえに、イメージを崩さずに非日常を演出するその手腕には称賛を禁じ得ないのだ。
「エモ……エモエモ……エモ……」
 エモさの連続攻撃についに言葉を忘れたラビットバニー。もう胸を押さえたまま動けない。
 そして……男性陣の視線が、一人の猟兵に集中する。
「――は? あたしもやるの?」
 海の宝石の名を冠したコテージの所有者、彼等との縁を繋いだ糸のつなぎ手である白雪。同性ではあるのだが、想いを伝える言葉に貴賤はない。口説く、というとジャンルが固定されがちに聞こえるが、意味としては言い迫る事――そこに内容の指定はない。
「そうね…あたしは久遠の事をもっとよく知りたいわ」
 はあ、とため息をつきながらも。胸に手を当て彼女は久遠にそう伝える。
「原石のような久遠が磨けばどんな宝石になるのか気になるし――単純にあたしが、仲良くなりたいの」
 シーグラス。硝子が波に浚われ、地面を転がったり小石とぶつかってできる、波と偶然が生み出す奇跡の宝石。些細な違いがその形も、色も、輝きでさえも一変させる、正に「運命」によって生まれるといって間違いないそれこそ、彼女のコテージの名の由来。最も新しい客人である彼女が果たしてどのような形を、色を……輝きを、見せてくれるのか。
 いや、言うまでもあるまい――それは素晴らしく美しいに違いない。それを、友として、仲間として、近しい場所で見ていたい。それは、偽らざる本心から。
「ああ、鶴澤さんまで……ええ、仲良くはなりたいです」
 真正面から向けられる言葉の数々に、久遠は俯いてしまう。悲しいわけではない。ただ何故か、仲間であったはずの皆を前にして顔が上げ辛く、気分がざわつき胸がきりきりと締め付けられる。今まで感じた事のない、揺らぎとでもいうのか。ただ、ぽつりと。
「……クオンは、困ってしまいます」

 なぜか攻撃を受ける前だというのに半透明になって消滅しかけているラビットバニーへ、一瞬ためらうが全員が思いのままに攻撃を叩き込む。
 身を削り放つ赫々の焔を纏うスピネルの礫、温まった体が魅せるダンスの動きを取り入れた蹴り、花の道の隙間から生まれる巨大な蜘蛛の足、認識できぬ「感情」の揺らぎのままに、掌から放つ赤い稲妻。力を出し切った仲間たちを迎え、傷を癒す穏やかな光。
「あー……いやー、エモかったわあ。あーしの乙女心にはマジクリティカルヒットって感じ」
 決着がついた、そう思った猟兵達は、背後で聞こえたその言葉に驚き振り返る。しかし、そこに立っていたラビットバニーの姿は霞の様に揺らいでいる。幾度となく戦い、その果てに彼女は現世に留まる事ができなくなるほどの損傷を受けたのだ。
「欲望があったりなかったり、けどまあバチバチにエモかったし、猟兵もそう悪くないのかも? ともかくあーしはここまでだね」
 楽しかった、エモかった。心なしか、満足気に。ラビットバニーは姿を消す。
 この日、怪人軍団幹部ラビットバニーは討ち果たされ、戦況は更なる進展を迎えることとなり――世界を救う戦いはついに佳境を迎える。それでも、猟兵達の絆は途切れる事はなく、そして立ち向かう勇気が薄れる事はない。
 続く世界の未来の中で生まれるだろう未知なる輝きを、決して絶やさない為に、戦いは、続くのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月17日


挿絵イラスト