バトルオブフラワーズ⑩~レッツ・エモーション!
「時代はエモだよっ」
猟兵たちを出迎えたウェンディ・ロックビルは、開口一番そういった。何故かバニーガール衣装で。
「え?この衣装が何かってー?今回みんなが挑む相手、ラビットバニーって言うんだって!僕も対抗してみました!」
まあ、そんなグリモア猟兵はさておいて。猟兵たちの奮闘の甲斐あってエイプモンキーは打破され、システム・フラワーズへ続く道を進めるようになった。
「でも、お猿さんの次はウサギさんが立ちはだかってるみたい!お猿さんの時と一緒で、あの子を倒さないと先に進めないんだってぇ」
そして、ラビットバニーもエイプモンキー同様の強敵。素の実力ももちろんだが、それ以上に厄介なのは――。
「“絶対無敵バリア”!有形無形、どんな攻撃も防いじゃう最強のバリアだよ!」
彼女はこのバリアを瞬時に展開できるので、先制攻撃で倒す、というようなことも難しい。だが、強い力というのには、相応の大小がつきものだ。
「でも、このバリアにも弱点があってねえ?それが……『ラビットバニーがエモいものを見ると、集中力が乱れて解除されちゃうこと』です!」
エモい。近年SNSなどで流行りを見せる概念だ。とはいえ、エモいというのも随分定義が曖昧だが、と猟兵が首を傾げると、ウェンディはにっこり笑って補足する。
「だいじょーぶ、その曖昧なのでおっけーなの!ウサギさん、色んなモノにエモさ感じちゃうみたいだから!かわいい動物、カッコいいシチュ、イケメン俳優、ラッキースケベ……」
指折り数えて列挙していくグリモア猟兵。正直、一般的に言われるエモいよりも更に幅広いようにすら感じるが――。
「感動屋さんなんだね、ウサギさん!キマイラフューチャー民としては、ここは腕の見せ所、って感じ!」
そういうものなのだろうか。ともあれ、そういう風に、何かしらの「エモさ」でラビットバニーの無敵バリアを解除すれば、いよいよ戦闘に持ち込むことができる。
「っていっても、ウサギさん、実力も高いみたいだから。バリアを解除しても油断せずに、頑張って戦ってね!」
言われるまでもない、と猟兵たちが頷くと、ウェンディは信頼の笑みを浮かべる。
「ん、オッケー!それじゃあみんな、いってらっしゃい!気を付けてね!」
月光盗夜
ちょっと待ってラビットバニーちゃん可愛すぎない?みなさんこんにちは、月光盗夜です。というわけで、幹部戦二戦目、感動屋さんのラビットバニーとの戦いを送らせていただきます。
今回の戦場のルールは以下の通り。展開されたバリアを無力化してから、ラビットバニーとの戦いに臨むことになります。
●戦場ルール
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
さて、今回の戦場のプレイングですが、「どうやってエモいものを見せるか」と、「バリア解除後の戦闘方法」の両方を記載していただく必要があります。バリアを解除しても、戦闘方法が書かれていないと戦えませんからね!
とはいえ、どちらかというとエモさの方に力を入れるくらいのつもりでいていただくといいかもしれません。勿論、戦闘方法そのものでエモさを見せてあげるのもアリですよ!
エモいプレイングには、それだけプレイングボーナスをかけていこうと思っていますので、よろしくお願いします。
みなさんの最高にエモいプレイング、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
かくして、猟兵たちはシステム・フラワーズ内部を進んでいた。どこか現実味のないふわふわとした空間の中で、咲き乱れる花々の足場。多少の分かれ道がありつつも、花々の道を歩む猟兵たちが最終的にその行き着く先はひとつ――。
そう、その先に待ち受ける彼女こそ、カワイイ怪人『ラビットバニー』である!
「ふっふっふ、よく来たな、猟兵諸君……」
彼女は仁王立ちで、ドヤ顔――ウサギの被り物で顔は見えないが、そんな声音である――で、そんな言葉を放ち、猟兵たちを出迎えた。
「ちょちょちょ、無視とか酷くない?そーゆーのカワイくなくない?こーゆー時はエモくノるのがお約束なんですけど!お猿ちゃんもそー言ってっし!」
猟兵たちがどう答えたものか、と困惑していると、ラビットバニーは拗ねた様子でぶんぶんと腕を振り回した。その度にゆさゆさと揺れる。何がとは言わないが。
「ノリ悪い猟兵とか知らねーし!めちゃんこつえーあーしが絶対無敵バリア纏ってじゅーりんしてやっし!」
えいっ、とラビットバニーが気合を入れると、彼女の周囲に、輝くバリアが展開されていく。確かに、あのバリアを解除しないことには、猟兵たちの攻撃は全く歯が立たないことだろう。
「あーしがエモいもん見たらバリア解除されちゃうけど、それって弱点じゃなくない?エモいもん見たらあーしテンションアゲアゲでパワーアップしちゃうし、バリア解除されても関係なくない?みたいな!」
バリアの解除法は、グリモア猟兵から聞き、そして眼前の本人が言う通り。だがしかし、バリアを解除したとしても、ラビットバニーは強敵!心してかかれ、猟兵たちよ!
ベリル・モルガナイト
貴女たちの。好きに。させる。わけには。いかないの
だから。止めるわ。ね
私は。盾
あらゆる。災厄。この身を。以て。退ける
エモさ? というのは。よく。分からないの。だけれど
私は。私の。できることを。しましょう
まずは。バリアが。解除。される。まで。耐えないと
【煌宝の盾】で。【盾受け】するために。構えて。【オーラ防御】も。展開
守りを。固め。どれだけ。傷を。負っても。倒れず。耐える
他の人への。攻撃を。【かばう】のも。忘れずに
バリアが。解けたら。【シールドバッシュ】と。同時に。反射した。ダメージを。叩き。込む。わ
私。自身が。盾
私が。【かばう】のは。この世界。に生きる。皆。よ
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
九条・救助
ラビットバニー。オレはあんたに決闘を申し込む!
いくぞ、凍神覚醒……ッ!
使うだけで血を流すユーベルコードだけど……この痛みこそが、オレをオレたらしめる。
この血はオレの覚悟の現れだ。他の誰にも背負わせないために、オレはこの痛みを引き受ける!
オレは……“悪神”ウェンカムイ!
あの功夫の高まり、只者じゃない……!
まずレタルアイを投射。功夫使いならまず間合を詰めにくる。そこを牽制し気勢を削ぐ。
近接間合に持ち込まれたら神水の剣で対抗だ。
受けるダメージは度外視!何発殴られても構うもんか!痛いのも苦しいのも全部飲み込んで無理にでもカウンターをねじ込む!
武器はいくらでもある。血だって凍結させりゃ立派な刃物だ!
「ラビットバニー。オレはあんたに決闘を申し込む!」
びし、とラビットバニーに指を突き付けて宣言するのは、少年ヒーロー、九条・救助(ビートブレイザー・f17275)である。
「決闘!?いーじゃんいーじゃん、あーしそーゆーの好きだし!」
受けて立つし!と仁王立ちするラビットバニー。その動作ひとつひとつでゆさゆさと揺れる。何がとは言わないが。
「……ンンッ!いくぞ、凍神覚醒……ッ!」
ごほん、と小さな咳払いとともに、ユーベルコードの名を叫ぶと、彼の血に宿る『ご先祖様』の力が呼び覚まされる。氷獄の支配者たるその力は、人の身には過ぎた力。氷を武器として操る力を与えるが、それと同時に、血を巡る力に欠陥が耐え切れず、張り裂けていく。
「わお、ちょーイケてるじゃん!ちょっとキュンと来たし!危ねー!」
「さあいくぜ、ラビットバニー!」
全身から血を流しながらも、空気中の水分から精製した氷の矢、レタルアイと、霊験あらたかな神水から生み出した氷剣のコンビネーションで、ラビットバニーを攻め立てる救助。だが、いま一歩及ばない。氷矢による牽制は回避され、氷剣の一撃は紙一重でいなされる。
「まだバリアも解除されてないのに、油断もなしか……!」
「当たり前じゃん?決闘で余裕ぶるとかイケてないし!今度はあーしからいくよー!」
被り物のウサギの表情が、どこかにんまりと笑みを浮かべた気がした。救助の連撃の隙を突いて繰り出される、鋭い突き。絶体絶命かと思われたその時、彼を庇うように仁王立ちになる、桜色の影があった。
「貴女たちの。好きに。させる。わけには。いかないの。だから。止めるわ。ね」
彼女の名はベリル・モルガナイト(宝石の守護騎士・f09325)。披露のたまった救助を一歩引かせて、その前に立ちふさがった。
「助っ人?まーいーし!どうせあーしには敵わないかんね!」
「私は。盾。あらゆる。災厄。この身を。以て。退ける」
燃えてきたと言わんばかりに苛烈さを増すラビットバニーの連撃を、煌石の騎士は、己の分身ともいえる煌宝の盾をまっすぐに構えて受け止める。
魔力を纏って守りを固めるものの、テンションに応じるかのように勢いを増していく連撃を全て受け止めることはできず、盾も、そしてそれを支える彼女の腕も、次第に傷を負っていく。
「粘るじゃん!あーし、そーゆーの嫌いじゃないかも?かもかも!」
「倒れは。しない。わ。私。自身が。盾。私が。護るのは。仲間。そして。この世界。に生きる。皆。よ」
戦い方は違えども、同じく人を護ることを信条とするもの同士。そんなベリルの言葉に奮い立たされたかのように、救助も再び武器を構える。
「ありがとう、お陰で『ご先祖様』の力を更に引き出す時間がつくれた――!」
そういって、煌石の騎士の横に歩み出た少年ヒーロー。彼の全身の裂傷は深まり、もはやそのコスチュームは赤く染まっていると言っていいほどである。
「この血はオレの覚悟の現れ。他の誰にも背負わせないために、オレはこの痛みを引き受ける!」
彼の流す血が、神水の氷剣を覆うように纏いつき、凍っていく。出来上がるのは、凍血の大剣。
「オレの名は……“悪神”ウェンカムイ!」
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
赤き剣を振り上げた救助の名乗りを聞いた直後、ラビットバニーが大きくその身を捩らせる。傷つきながらも立ち向かってくる二人の姿に、エモみを感じすぎたのだ。
「ずりーし!そーゆーのきゅんきゅん来ちゃうんですけど!もー、バリア解除されちゃったじゃん!」
恨みがましい言葉とは裏腹に、楽し気に再びカンフーの構えを取るラビットバニー。彼女に対峙する二人も、静かな笑みを浮かべた。
「覚悟してもらうぜ、ラビットバニー!」
「ただ。耐えていた。だけでは。ないの。よ」
巨大化した氷の刃による一閃と、これまで受け止めてきた衝撃を纏った盾の一撃が、遂にラビットバニーに痛打を与えるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
サフィリアリス・エレクトラガント
あらあら、まあまあ
心を動かさないとバリアは解除できないと
うふふ、やってみましょうか
勇者と、とあるヒロインのお話
魔王に支配された世界を救うため、勇者は物語のヒロインを救い、仲間と共に魔王を討ち倒し、世界を平和にしました
そしてヒロインは両親の仇である魔王をその手で裁き、勇者とヒロインは平和になった世界で幸せに愛を育みました
そのヒロインこそが、私なのです
うふふ……エモ、感じてくださいましたか?だったら……
「光の女神様はあなたの味方」発動です
ええ……だって、あなたがいかに強くとも、恐怖という感情は絶対
世界を平和にするはずのヒロインが、魔王として世界を滅ぼし、今ここに貴女の前に立っているのですから……
「いいバトルだったじゃん!君はどーゆー風にくるワケ?言っとくけど、もうバリアは張りなおしてますから!」
2人を退け、興奮したように笑うラビットバニーは、続いて己の前に現れた、女性に、楽し気に問いかける。
「あらあら、まあまあ。心を動かさないとバリアは解除できないと。うふふ、やってみましょうか」
サフィリアリス・エレクトラガント(魔王様の仰せのままに・f13217)はたおやかな笑みとともに、よく通る声で、朗読するように語り始める。
「昔、昔のお話です――」
それは、勇者と、とあるヒロインのお話。魔王に支配された世界を救うため、勇者は物語のヒロインを救い、仲間と共に魔王を討ち倒し、世界を平和にしました。そしてヒロインは両親の仇である魔王をその手で裁き、勇者とヒロインは平和になった世界で幸せに愛を育みました。
「――そのヒロインこそが、私なのです」
語りきると、優雅に一礼するサフィリアリス。ラビットバニーに目をやってみれば、彼女はと言えば。
「よかったあああ。よかったねええええええ」
えぐえぐ。被り物の下で涙ぐんでいるらしい。ある種陳腐とすら言えるストーリーでこれだけ感動できるのは才能と言えるかもしれない。無論、バリアも解除されていた。
「ふふ、感動してくださってよかったです。でも、この物語には、少しだけ、続きがあるんです」
「え、何それ!気になるんですけど!」
ラビットバニーの期待の視線に応じるようにして、サフィリアリスの背後に現れるのは、彼女を守護する、女神の姿をした聖霊。
「世界を平和にするはずのヒロインは――魔王として世界を滅ぼし、今ここで、貴女の前に立っているんです」
その言葉と同時に、清らかな笑みの聖霊から、禍々しいオーラが放たれ、恐怖を司る光刃が振るわれる――はずであった。
「……あら?怖がってはいただけませんでした?」
「ちょい拍子抜けじゃん?お猿ちゃんのやってたゲームの中でも結構見た展開だし……ってゆーか……」
恐怖を覚えた相手を切り刻む光の刃は、しかし、ラビットバニーに軽々と受け止められる。あるいは、彼女は恐怖など感じていないかのように。
「今、ここにいること……怖がってるの、君の方じゃね?」
「――!!」
小さく息を呑む、堕ちた聖女。
「それは一体――」
「魔王になったはずの自分が、なんで今更、世界を救うために戦ってるのか、とか?……あいたっ」
刃を受け止めていた手を、慌てたように離すラビットバニー。
「――あーしは怖いよ。また忘れ去られるのがね。君の怖いのは、なんだろーね?……って」
彼女はそう言って、跳びはねるようにその場を去るのであった。
「こーゆー真面目なのあーし向いてないし!ばいばーい!」
苦戦
🔵🔴🔴
パーム・アンテルシオ
エモい…感情が動かされた状態、感情が高まって強く訴えかける心の動き。
…なんとなく、考えたら負け、って気がしてきたよ。
それじゃあここは、自分の魅力で勝負してみる、かな。
こないだ買った服…和ロリ風ワンピースを着ていって。
小道具は、和傘。周りには、金竜火を浮かべて…
花畑の中で、くるっと回って…笑顔。
ふふふ。いつかの依頼を思い出す動きだね。
キマイラの皆にウケた事もあるんだし。きっと、和風テイストでも大丈夫。だよね?
上手くバリアを解除できたら、足元に一匹残して、金竜火で攻撃。
足元の子には、花から私を守って貰う、炎になってもらうよ。
花を燃やすなんてエモくないって?
ふふふ。可愛いものには、トゲがあるんだよ。
キッテン・ニコラウス
敵がラビットバニーなんでしょ?妹もバニーなんでしょ?
――なら、私がバニーにならない理由があるかしら?
バニースーツ姿で颯爽と戦場に赴くわ!
どう?最高でしょ、私のバニースーツ姿
バニーっていうと奉仕する側のイメージが強いけれど、そんなの私らしくないわ
だからイメージを全部ひっくり返す為に王様みたいなデザインにしたの!
そう、これが私が魅せるエモ
どんなときでも、どんな場所でも、どんな状況でも、私はいつだって私!
私が私で有り続けることが最高のエモなのよ!
そうしてバリアを解除したらUCでラビットバニーを釣瓶打ち!
動きを封じる?
やってみなさい、空間のあらゆる場所から撃たれる槍にそれができるならね!
アドリブ大歓迎
「あいたたた……。猟兵ちゃんたち、なかなかやるじゃん……!」
手傷を負い、花びらの足場を操り逃げていたラビットバニーであったが、彼女の下にたどり着いた二人の猟兵がいた。
「やっと追いついたわ……!クソ親父でもあるまいし、逃げ足の速い……!」
「でも、追いついた以上……この辺りで覚悟、してもらうね?」
キッテン・ニコラウス(キマイラのブレイズキャリバー・f02704)と、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)である。
「やっべ!で、でも、もっかいバリアは張ってっし!ダメージが通らなきゃトドメもなにもないんですけど!」
わたわた、と手を振るラビットバニーに、パームは思案気に首をひねる。
「そう、だね。実はまだ、エモって何かよくわかってなくて」
「――フン、難しく考えることないわ!見なさい!私の衣装を!」
自信満々、といった様子でびしっと指を突き付けるキッテン。その衣装は、ラビットバニーに、あるいは彼女を送り出したグリモア猟兵に対抗するかのようなバニースーツであった。といっても、一般的にイメージされるバニーガール姿からは大きく印象が異なる。特に目を引くのは、頭上に輝くクラウン。そして、大きく翻る豪奢なマントであった。
「バニーっていうと奉仕する側のイメージが強いけれど、そんなの私らしくないわ!だからイメージを全部ひっくり返す為に王様みたいなデザインにしたの!」
確かに、それは見事に、彼女の魅力をよく引き出す衣装であった。すらりとしたモデル体型にぴったりとフィットするレオタードに、脚線美を艶やかに魅せる網タイツ。セクシーさをよく引き出しつつも、自信家で、ともすればサディスティックともいえる彼女の性格によく似合っている。
「そう、これが私が魅せるエモよ!」
「カ、カ……カワイイじゃん……!」
ぐぬぬ、とでも言うかのような声を浮かべる。バリアが解除されるのはまずいと感じつつも、“魅せるエモ”から目が離せないようだ。
「ふふ、効いてるみたいね。さあ、あなたも!」
「なるほど、ね。それじゃあ、私も。……花畑のファッションショー、なんてね?」
キッテンに促されると、パームもにこり、と笑って己の衣装を披露する。それは、和風ロリータとでも言うべきワンピース衣装である。パーム自身のイメージカラーとでも言うべき、桃色を基調としたワンピースに、フリルのたくさんあしらわれた、飾り袖や帯が融合されている。
「くるっと回ってにっこり笑顔……なんてね?」
立ち姿だけでは存分に味わったことにはならないだろう、とでも言いたげに。子狐の形をした妖火を生み出すと、己の周囲に纏い、和傘を差すと、くるりと一周。回転に合わせて、九本の尾が揺れる様は、ある種艶めかしくもある。ゆっくりと一回転し終えると、ラビットバニーに向かって、可憐な笑みを向ける。
「カ、カワイイ!ヤバ、このままじゃ、バリアが……!」
焦ったように唸るラビットバニーとは裏腹に、キッテンは己の腰に両腕を当て、薄い胸を張って笑顔で言い放つ。
「どーお?最高でしょ、私のバニー姿!どんなときでも、どんな場所でも、どんな状況でも、私はいつだって私!私が私で有り続けることが最高のエモなのよ!」
ある種自信過剰とすら言えるその言葉は、確かに、彼女の魅力を十二分に引き出していた。
「そうだね。私は私らしく……私の魅力も、武器の一つ……なんてね?」
自信ありげな笑顔に影響されたように、悪戯っぽくくすくすと笑顔で頷くパーム。そして、そんな二人に微笑みかけられたラビットバニーはといえば。
「ずるい!!カワイイのにそーゆーエモイこというのズルいんですけど!!」
ぷんぷん。エモさ極まっておこである。ともあれ、バリアは解除されてしまった。かくなる上は致し方ない。
「おはなちゃん・ハッキング!あの子たちのこと束縛しちゃえっ!」
システム・フラワーズを乗っ取る彼女の号令一下、花びらが二人に向かって殺到する。それは、ある意味幻想的な光景でもあったが、しかし、為されるがままになっては、身動きを完全に封じられてしまい、
「対処、任せていいかしら?」
「うん、任せて。……この子たちは、別にお洒落のためだけに呼んだわけじゃないんだよ」
信頼を込めたキッテンの眼差しにパームが頷くと、彼女の周りに浮いていた狐火が、襲い来る花びらを燃やしていく。
「ちょちょ、可愛い花を焼いちゃうとかよくなくない?」
「……ふふふ。可愛いものには、トゲがあるんだよ?」
なんて、気取りすぎたかな、と苦笑するパーム。そして、花びらが焼き尽くされたころ、キッテンが動いた。
「ありがとっ。おかげで呪文に専念できたわ!――さあ、これがあなたに避けられる?」
そうして繰り出されるのは、100本を優に超えようかよいう氷柱の群れ。
「ヤッバ。逃げ場、なくなくない――?」
観念したようにラビットバニーが肩を落とすのと、そのいた場所に氷柱が殺到するのは同時であった。
「あー、エモかったぁ――!」
そんな楽しげな声を断末魔に、ラビットバニーは消滅した。
「ハァイ、お疲れ様!」
「うん、お疲れ様――?」
屈んで両手を差し出すキッテンに対して、きょとん、と首を傾げるパーム。そんな彼女の腕を、こうするのよ、とキッテンが引っ張って。お疲れ様、と二人はタッチを交わすのであった。
ラビットバニーは、未だ復活するだろう。だが、猟兵たちはここに、確かに彼女を撃退したのだ。
大成功
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