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触手を用いた教義

#UDCアース

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#UDCアース


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●教義
 女の艶めかしい声が、粘液の音が支配する一室に響き渡った。
 感謝の祝詞をあげながら、しかし上擦った鼻声が不快なまでの嬌声を生む。パープルテンタクルズが詰まったその部屋に落とされたのは、声を上げる女性教団員一人ではない。野太い声が聞こえて来たと思えば、紫色の生みから顔を出す一人の男。
 紫色の海に飲まれ、潜ってはその声を消し、浮き上がっては不快な色でその部屋を染め上げる。顔を浮かべるのは合計五人。男女関係なく服を剥かれ、全身を這い回る触手の動きにただ耐え、祝詞を上げ続けている。
 甘い声がステレオで流れ続けるそこは、快楽における地獄を体現した場所であろう。部屋の上部に空いた穴から落とされて一昼夜。本来ならば精も根も尽き果て、心持ちをおかしくしていても不思議ではない。
 それを見つめる一人の男がいた。十畳に渡る大部屋は、分厚い強化アクリルガラスによって遮られ、その様子を眺めることが出来る。
 フードを被ったその男は、その地獄を眺めて笑っている。
 それが、予知の形であった。

●インターミッション
 うんざりとした表情を隠そうともしないグリモア猟兵が、腕を組み苛立たしげに床を足で叩いていた。
 140センチに満たないその体を震わせて、イライラとした空気を醸し出すその姿は、まるで機嫌が悪い時の会社の上司を思わせる。大きな瞳が辺りを見渡し、自分自身に注目が集まっているのを理解すると、その身を正し……しかし、大きなため息をついた。
「さて諸君、今日も楽しいお仕事の始まりだ。常日頃から死を隣に仕事をする君達にとっては大したことではないだろうが、今回は未成年にはふさわしくない場所への潜入任務となっている。……なに? 未成年の概念がない? ……ならば構わん、詳細に移る」
 アオイ・ニューフィールド(象打ちサイボーグ・f00274)は手ぶらのまま、腰に手を当て子供らしい高い声を張り上げ説明を開始した。
 今回潜入するのは、日本国内の山奥にある一つの学校校舎。すでに廃校となり打ち捨てられていたその校舎が、邪神教団の手によって買い取られ運用されている。そこは戦前に作られ、校舎内から侵入できる壕があり、そこで邪教の教えを説いているということまで分かっていた。そして、今回アオイが見た予知。それを合わせれば、邪な教えを説く邪教団であるというのは確実であった。
「手段は分からんが、奴等はパープルテンタクルズを飼いならしている。快楽をもたらすあの触手のことだ、それで教団員を中毒にでもして縛り付けているのだろう。何が目的かは分からんが、放って置くことの出来る団体ではない」
 我々は触手共を殲滅し、教祖を捕まえUDC組織へと引き渡す。そう続けると、アオイは二度手をたたき注目を集めた。
「さあ、後は君達の時間だ。手早く処理をし、定時退社といこう。よろしく頼むぞ」
 アオイの肩口からふわりと浮かぶ朧気な光。グリモアベースを包むほど大きく広がると、猟兵たちは山奥の学校、その前に移動していた。


三杉日和
 おはようございます、三杉日和です。
 今回は少し楽な感じで、ざっくりと遊べるシナリオをご用意させて頂きました。
 触手教団の人々を付け回したり、説得したり脅したりして、教祖の居所を見つけて下さい。
 その後は分かりやすい触手との戦いです。
 プレイング次第である程度書けるとは思いますが、マスタールールに乗っ取り書かせていただきます。

●成功条件
 教祖の居場所を調べる。

●場所
 送られたのは、オープニングにある通り廃校舎前、グラウンドでも校舎目前でもお好きな所です。
 潜入した先は、まるで別世界のような白い廊下と部屋が並ぶ、病院めいた地下の世界です。
 そこで教団員たちは生活しています。

●状況
 教団員は普通の生活をしています。潜入してあなた達を見かければ警戒はしますが、無理に追い出すような事はしないでしょう。勿論、簡単に教祖様の居場所を教えるようなこともしません。

 以上となります、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『触手邪神教団に潜入せよ』

POW   :    怪しいやつを脅し、強引に情報を引き出させる

SPD   :    見つからないよう隠れながら潜入し、情報を集める

WIZ   :    教団員を誘惑し、情報を引き出させる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

彩波・いちご
むむむ……私もこの身に触手を飼っているわけですが……それを使って他人を支配して酷いことをするなんて、許せませんね

え?
私ですか?
暴れる触手が悪さしないように、私の中で封印してるんです
こんなの温泉街に解き放ったら洒落になりませんからね
土地神と呼ばれる身しての役目です

それはさておき、アイドル的には教団員を探して誘惑…仲良くなってお話聞ければって思います
それっぽい人に声かけて
「すみませーん、ちょっといいですか?」
にっこりアイドルスマイルで
あ、もちろん性別は内緒ですよ?
「このあたりで、ちょつと変わった教えがあるって聞いたんですけど、何か知りませんか?」
上目使いで媚媚
少し体寄せたりなんかしたりして?(くす




「むむむ……私もこの身に触手を飼っているわけですが……それを使って他人を支配して酷いことをするなんて、許せませんね」
 それはおそらく同種の力、神の眷属たる紫の触手であろう。自らに宿して居るからこそ分かる、その無慈悲なまでに強力な力。例えそれが猟兵にとっての驚異ではないとして、平穏を糧とする人には生活の全てを狂わされる災害となろう。
 彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)にとって、触手の力は武器にして尋常ならざる驚異。自身に課せられた使命感も相まって、教団に対する感情は一入であった。


 旧校舎の玄関口、既に半ば崩れた大きな下駄箱が並んだそこから、一人の男性が顔を出した。ゴロゴロと大きな台車を転がしながら、山と積まれたゴミ袋を運んでいる。にこにこと穏やかな顔を崩さないまま、上下真っ白な衣装に身を包んだ男は目的の場所へと進みだした。
 それは周囲に猟兵が隠れているなど露とも知らない穏やかな表情。いちごの視線の先にあるのは茶色に錆びきった使い古しの焼却炉、男の向かう先はそこなのだろう。
 揺れる山を抑えながら慎重な足取りの男の前に、飛び出す影。
「すみませーん、ちょっといいですか?」
 その声に慌てて足を止めながら、慣性のまま転げ落ちそうなるゴミ袋を抑える教団員の男。いちごはそれの手伝いでもするように山を抑えると、男の手に自らの白い手を重ねて見せた。
 不思議そうにいちごを見つめる男であったが、穏やかな表情は揺るがない。ありがとうございます、とお礼を言いつつも、触れ合った手に何の感慨を持つこともなく山の形を直していく。警戒心があるせいだろうか、といちごは考えた。立ち止まっている今しかない、にっこりとローカルアイドル的な経験を活かした笑顔を向け、一回り以上大きなその手をぎゅっと握ってみせた。
「ええと……」
 不審者でも見るような視線。固まった笑顔を向けるいちごに困惑する男。もしかして性別がバレているのだろうか、と一筋の汗と共に頭の中をそんな考えが流れる。
「いけませんよ、女の子がはしたない……」
 しかし男は、そんな前提を知るわけもなく、いちごを女の子だと勘違いした上で、紳士的にその手を解いて見せたのだ。


「……えっと、そうじゃ、そうじゃなくてですね? このあたりで、ちょつと変わった教えがあるって聞いたんですけど、何か知りませんか……?」
 呆気にとられたのは一瞬のこと。自身の魅力がまるで通じないことに焦りを覚えつつ、表情を媚びたメスのものに変える。
 ゆっくりと払われた手から、次は腕へ。片腕を抱きかかえ、身体を擦り寄せじっと瞳を見つめる。先程よりは照れた様に見えるが、どうにも思考が見えてこない。まるで女性に興味がないような……そこまで考えて、少しだけ悪寒を感じるいちごではあったが、一般人と猟兵の差は小さくない。ただの教団員の男の手にかかるようなヘマなどしようもないのだ。
 色仕掛けが通じるのであればそれで良い、柔らかな身体に無骨な腕を抱きかかえ、もしかして、お兄さんが教祖様だったりして、なんて言葉も付け加えた。
 勿論そんな事あるわけない、理解した上で男がなにかボロをださないか。情報の欠片を得られないのか、そんな想定である。しかし、帰ってきたのは想定外の言動だった。
「いえいえ、私などはそんな……。もしかして、我が教団に興味をお持ちで? えぇ、ええ! それは素晴らしい、素晴らしいことです!」
 いちごに対しまるで興味を示さなかった男は、大仰なまでの身振り手振りで感情を伝える。満面の笑みとも言えるその顔は、先程まで垣間見えた紳士的な空気などかき消し、ただ異様な空気と威圧感を向けていた。
 突然の豹変ぶりに驚く様子を見せるいちごだが、男はそんな事気にしない。台車をがらがらと押し、焼却炉へと運ぶその片手は、きつく、強くいちごの手を握り込み離さないと言わんばかりに掴んでいた。
 そうして、連れられるままに地下へと歓迎されたのだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

緋薙・冬香
なんかいちごが触手の海に連れ込まれたと聞いて!(あるいは直感のレベル)
マズイ、これはマズイですわ。
いちごの身にあんなことやこんなことがあったら…。
……あれ?もしかしてそんなに困らないのでは?

…コホン。
とにかく助けに行かないといけませんわね!

【WIZ】
本来ならいちごのみが誘惑対象なのですが、
いちごを助けるためなら致し方ありませんわね。
教団員を誘惑して情報を聞き出すとしましょう。
狙いは男、一人歩いている輩に、誘惑の技能も使って。

失敗すると私も連れ込まれそうですが、いちごと一緒なら、それはそれで。


フロウヴェル・ゼフィツェン
いちご(f00301)がピンチ…な予感なの。
助けに行って、あと教団やっつけるの。

●行動
教団員っぽい人、誘惑して、情報引き出すの。
手近な怪しい人…出来るだけ偉そうな男の人に、咎力封じをぶつけて拘束するの。
それから物陰へ引っ張り込んで、猿轡を外して尋問開始なの。

尋ねるのは教祖様の居場所。
教えてくれたら、気持ちいいコトしてあげるの…と囁きつつ、耳を舐めたりお股撫でてあげたり、快感をちらつかせて誘惑するの。
口を割らないなら、服を脱がせて直接撫でて…と段々快感を強くするけど、最後までするのは、全部話してくれた時だけ…なの。
話せる情報全部聞いたら、イカせてあげるの。お股跨いで、ベルの中で…♪




 教団員の男に連れられ、旧校舎へと入っていく猟兵を見つめる二つの影があった。
 山奥にたてられ打ち捨てられた学校は、文字通り緑に囲まれた自然の施設となっている。グラウンドを侵食する草木がその中心へ迫らんと生い茂り、送られた猟兵たちが身を隠すのに適当な場所はそこら中にあった。そんな一角、友人を見送った二人の猟兵は、十数分経過してもやってこない連絡に焦りを感じ始めていた。
「マズイ、これはマズイですわ……」
 緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は眉間にシワを寄せ、想い人たるその猟兵の危機を案じている。頭に浮かぶのは、グリモア猟兵が語った触手の部屋、そこに落とされ全身を舐め回されるその姿。快楽に溺れ聞いたこともないような声を上げるその想像図は、彼女の熱暴走を予感させる程に顔を赤く染めていった。
 そんな姿を冷めた視線で眺めるのは、フロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)。妄想がエスカレートしてきたのだろう、「あんなことやこんなこと……あれ、もしかして別に困らないのでは? ……いやいや、でもまさか……」と心配をしているのか楽しんでいるのかわからないその横顔に、小さく顔を振り長く銀に光る髪をぶつけて見せた。
 ぺし、と軽い衝撃とも言えないような感覚。すぐ隣の真っ白な少女を見つめると、緩み始めていた表情を引き締める。小さな咳払いを一つすれば、赤みがさしていた頬は平時の色を取り戻していた。
「助けに行かないといけませんわね!」
 誤魔化すような勢い任せの宣言ではあったが、気にすること無くフロウヴェルは頷いた。
 しばらくの見張りで気づいた事がある、ここに歩哨などは置いていない。人手不足か平和ボケの結果か、しかしそれは猟兵達にとって幸運とも言えるものだった。
 二人は素早く校舎内へと侵入し、友人の救出へと向かい始めた。


 ぼろぼろの校舎は埃がたまっていた。二人が歩く度にそれが舞い上がり、差し込む光が煌めいて反射させる。長年使われていないと主張する廃墟具合ではあったが、足元を見ればそうでないことが見て取れた。地下へと続く通り道、そこだけは明確に埃が無く、周囲の廃れ具合とは別種の汚れが目にとまるのだ。
 例えば土、例えば轍。とある教室へと続くそれを追いかければ、隠す気も無く開かれたドアの先に、地下へと続く階段が見つかった。これだけ無防備に過ごしているのだ、いくらなんでも罠であるとは思えない。
 他の猟兵も既に中へ入って行ったのは確認している。何か問題があれば連絡の一つもあるだろうが、それもないという事は二つに一つ。潜入した猟兵に問題が無く、未だ何も発見できていない。もう一つは、トラブルに巻き込まれ連絡が取れない。二人の友人は後者であろう、ともかくここは淫靡の道となるのだ、悠長にかまっていられる余裕はない。
 決意を改める必要など無かった、その足で踏み込んだ先にあったのは……真っ白な廊下に白いドア。それが複数並ぶトンネルめいた道だった。
 そこには猟兵の姿も教団員の姿も見えない。埃の道もないため友人を追うことも出来ずにいたところへ、突然大きな声が掛けられた。
「ああ! 貴方達も私達の教団に? 素晴らしい、素晴らしいことです! 今日は沢山の入団希望者が現れて、我々も嬉しい限りです!」
 喜色に富んだ声色も、見知らぬ誰かのものであれば恐怖を感じさせるものだ。それがあまりにも大きく、自分自身に投げかけられているとすればなおのこと。
「さあさあ、何も怖がることはありません。私どもは皆さんの不安を取り除き、更に一歩先へと進むそのお手伝いをしているだけなのです! ここでの共同生活と教義を守る行動、それこそが貴方達の栄光へとつながる道となり……」
「あ、ちが、違ってですね!」
 割り込む隙のない早口に、困り顔を浮かべながら楔を打ち込んだのは冬香であった。大仰な手振りで左右に広げ、まるで天から降り注ぐ何かを浴びるようなその体勢、男はそれでぴたりと動きを止める。
「えーっと……そう、そうですわ。私達、先程案内された男の……女の子の知り合いでして」
「うん、その子のところに案内して欲しい」
 同意するように言葉を足すのはフロウヴェル。しかしその言葉に不快感を表したのは饒舌だった男だった。
「……つまり、彼女を助けに来た、とかそういうことなのかな?」
 一般人が放つ脅迫のオーラ。さっきの異様なテンションの高さの方が幾分か不気味さと威圧的に思えるが、それをおくびにも出さない。そうではありませんわ、と更に言葉を付け加える。
「違いますの。私達、こういった所は初めてで……出来れば、三人一緒にお話を聞きたいな、と。そう思っておりまして」
 隣で頷くフロウヴェル。じっと二人を眺め、交互に見渡す。数秒を置くことで、剣呑な雰囲気を醸していたその男は、突如破顔した。
「いえいえ、こちらこそ申し訳ありません! 私共こういった生活をしておるものですから、訳知らずの輩が怒鳴り込んでくることもあるのです。大変怖がらせてしまいましたね、お嬢さん方、大丈夫すぐに会うことが出来るでしょう。大丈夫、さあ、ついてきてください」


 通されたのは、数多くある部屋の一室。ワンルームのホテルめいたその場所は、部屋の半分をベッドが占めている、そんなところだった。
「こちらでお待ち下さい。わが教団の幹部が、貴方達に説法をなさるでしょう。大丈夫、身を任せてお話を聞いているだけでいいのです。いいですね?」
 有無を言わさぬその言葉、二人して首肯で応えると、男はすぐに姿を消した。部屋には二人きり、薄暗い証明はどことなく淫靡な部屋を思わせる不思議な空間であった。
「素直に会わせてくれるわけはありませんわね。しかしこうして潜入出来ただけ良かったと……」
「これからどうするの?」
 フロウベヴェルの言葉に、ニンマリと微笑みだけの返事を返すのは冬香。わかった、とばかりに頷くフロウヴェルと意思の疎通を行ってすぐ。部屋に入ってきた大柄の男が一人。
 それは、後ろ手に部屋の鍵を掛けた所で、全身を拘束された。


 『咎力封じ』が発動すると、男は両手両足、目隠しに猿轡、膝や肘を曲げることすら許さない拘束具によって身を包まれた。一瞬の出来事である、しかしそれを見越していた冬香は、棒立ちとなった男を抱え、ベッドの上へと放り投げた。
「大丈夫、耳だけはそのままよ……暴れないで聞いて」
 うなりながらもがく男は、しかし関節を極められた身体を思うように動かすことが出来ない。芋虫の様に暴れるその体を押さえつけ、冬香はもう一度囁いた。
「暴れないで……」
 生殺与奪の権利は奪われている。本能的な危機を感じた男は、息切れした音を口から発し、漸くその身体を横たえた。
 男の右側には黒髪の冬香。左側には銀髪のフロウヴェル。唯一と言っていい自由をもった耳元だったが、それは二つの唇によって占拠されてしまった。ウィスパーボイスが鼓膜をくすぐり、触れる唇が耳たぶを、内耳を撫でては揺らす。
「ねえ、教えてほしいの……お友達? うん、それも大事、大事だけど……」
 教祖様、どこなの? 下へ伸ばした腕、撫で付ける指先が小さな丘を超え、その頂点をくすぐるように撫で付ける。
「別に、何をして欲しいわけじゃないわ? ただ、少しだけ情報がほしいだけ……」
 少ししたら私達だって教団員……お仲間でしょ? 胸板に伸ばした指先が、くるくると円を描き、左右へと小さな突起を探して動く。
 しかし男は反応がない。不感症とでも言うように、くすぐったさを感じることすら無いようにその息を潜めた。
 冬香は膝枕、フロウヴェルは腰の上。耳を撫で頬を揺らし、内耳をくすぐる指先。拘束の上から腰を下ろし、布越しに腰を前後へ揺らす二人のダンピールの瞳は、濡れて光る淫靡さを醸している。
 男は答えない、正常な男であればとうに理性を投げ捨てているだろうその状況に、むしろ順応しそれが普通だと言わんばかりの息を整えていた。
 まるで手応えがない、しかし抵抗もない。冬香は猿轡だけを解き、尋ねる。教えてくれないかしら?
「貴方達はよほど素養があるようだ。教祖様もさぞお喜びになるでしょう。拘束をお解き下さい、すぐにお友達の場所へと連れてまいります」
 まるで別人のような言葉遣い。これが男の本来の声なのだろう、おちついた中に見える下卑た音は、どうにも気分が悪くなるものだ。


 そうして連れてこられた一つの部屋。波打つような、しかし不規則な粘質的な音。
「ここで服を脱いでお待ち下さい……」
 一つだけ置かれた籠は壁に取り付けられている。音は階下、床の下から聞こえていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリア・ティアラリード
「少しお話し、聞かせていただけないでしょうか? 私、『教祖様の事』とても気になっているんです」

怪しい人を見かけたら気付かれないよう背後から追跡、隙を見て一気に取り押さえ尋問です。
…バレバレで逆に待ち伏せされていたら?怪しい奴!?お姉ちゃん怪しくなんてありませんっ
そういう時は仕方ないです、《怪力》で押さえつけてレッツ尋問開始です♪
朗らかな笑顔は崩さず【フォース・ブレイド(サイコキネシス)】で首を掴んで宙に持ち上げます。
あら?さっきから何か顔色悪いようですが…大丈夫でしょうか?
《礼儀正しく》丁寧に、話せばきっと分かってくださるはずですから、ここは時間を掛けて、じっくりお話ししないと、ですね♪




「少しお話し、聞かせていただけないでしょうか? 私、『教祖様の事』とても気になっているんです」
 今日は豊作だと喜ぶ教団員の袖をつまみ、朗らかな笑顔で尋ねるのはアリア・ティアラリード(エトワールシュバリエ・f04271)だった。
 大きな胸を揺らすのは何か意図があってのものではない。柔らかく震えるバストは、本来であれば男性を魅了して離さない、そんなものだったろう。
 しかし、目の前にいる教団員は見向きもしない。興味が無いのかと思うほどアリアに対し丁寧な対応を施す。見方によれば、人によれば。それは大層失礼な態度ではあるものの、アリアは毛ほども気にしてはいなかった。アリアにとってみれば、紳士的な悪の教団員、そんな認識だったろうか。
「あぁ、入団希望者の方ですか? 今日は本当に凄い、どうしたのでしょう。外国の方も多々見えられて……私どもの活動が漸く日の目を見ることになるのでしょうか。いやあ、嬉しい限りです。しかし、ですね……そうですね、教祖様に関しては、我々からお話することが出来ないのです」
 あら、と頬に手を当て、困った顔のアリア。
「ですが、そうです。皆さんにもお話しているのですが、我々と共に生活し、教義を守ることが出来れば……きっと、きっと! そう! 教祖様とお会い出来ることでしょう! 大丈夫、何も怖いことはありません。ここは心穏やかに、ただ快楽に身を委ねるだけで全てを解決することが出来る。素晴らしい、素晴らしい……」


 ヒートアップした教団員襟首が掴まれる。浮き上がる身体はまるでクレーン車にでも持ち上げられるような浮遊感をもたらし、それが目の前の柔和な女性が行っているなど、男にとってはあまりにも現実離れしたものだった。
 ニコニコと笑顔を携えながら、手近な部屋へと潜り込む。男の襟首をぐるりと締め上げ、握り込んだ拳は部屋の中に転がすことで漸く開かれた。
 廊下の様子はといえば、団体客の世話をする旅館よろしく各々教団員が事に当たり、今行われた暴力の現場を見咎める物はいなかった。
「何を……!」
 と、口に出せるのはここまで。ユーベルコード『飛櫻剣』が、先程まで掴んでいたように男の襟首を締め上げ持ち上げる。ぎりぎりつま先がつくその絶妙なコントロール下において、男は苦しげに首を掴んでいた。
 怪しい人を締め上げる。シンプルな作戦ではあったが、アリアの見立ではどうにもここの教団員全部が怪しいのが誤算の一つだった。突然興奮したように喋りだし、勧誘をしたいのかどうなのか、とにかく捲し立て首を縦にふらせる剣幕を振りまく、といった様子。まともではないのは承知の上ではあったが、目の前でその姿を見ると中々に強烈だった。
 まあいいか、と考える。教団員であれば、きっと内部の情報を持っている。それを調べて猟兵に流せば、それだけ前に進むだろう。安易ではあるが、膂力に任せたその考えは間違っていはいない。
 アリアはもう少しだけ優しく微笑むと、男の顔を見つめてみせた。


「聞いていますか? 大丈夫、教えてくれればいいんですよ?」
 軽く持ち上げられる首が締まり、男の顔が青く染まる。つま先が着く距離まで戻されると、ぜひぜひと荒い息を吐き何事か唱えだす。それは数回繰り返す度に同じ結果が得られ、やり方を変えないとだめかな。そんな悠長な事を考えているアリアの眼の前で、男が一つ痙攣してみせた。
「あら? さっきから何か顔色悪いようですが…大丈夫でしょうか?」
 跳ねて首が締まることなどお構いなし。二度三度と震えた男は途端にその体を弛緩させ、ついていた足を投げ出しぐったりとしはじめたのだ。
 何が起こったか理解できないアリアは、とりあえず『飛櫻剣』で首を捕まえたまま床に寝かせてみせた。男の痙攣は止まらない、だがその顔は恍惚に包まれ先程までの苦悶の表情からは想像出来ないものとなっている。
 上下の白い服の裾、そこから顔をだしたのは紫色の触手の先端だ。もこもこと服の内側を這い回る触手が見えたかと思えば、動きに合わせて男も跳ね回る。
 苦しみに耐えかね、身体の中にいたパープルテンタクルズを活性化させた、というのが見た限りの理解だが……ともかく、『飛櫻剣』で触手を切り裂き、握りつぶす。
 快楽に塗れたその顔からはこれ以上の情報は引き出せないだろう。ただ、一つだけわかった事がある。教団員は、その身の何処かに触手を潜ませている。攻撃に使うことがあるかは不明だが、それは自らに快楽を与える事で苦難を乗り切ろうとしている。殆ど憶測に近い予想だが、少なくともこの事実を伝えなければならない。
 アリアは使い慣れない通信機をポチポチと操作し、それから数分後に漸く全猟兵にその情報を伝達することが出来た。
 男は気持ち悪いので、ベッドのシーツに包んでおいた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

藤原・紫苑
「きっとろくな教団ではないですね」

普通の学生の格好で移動
先に人気のない場所などを廃棄前の地図などで確認しておく
教団に興味があるふりをして教団員が一人の時に近づく
話の途中で教団員に自分も触手で相手を気持ちよくできると誘惑。
「あなたも好きなんですか?気持ちよいこと…私も興味あるんですけど、一緒に試してみませんか?」
「触手ってご存知ですか?私もあるんです。ではいきますよ」

人気のない場所に誘導して尋問開始。
制服の裾などから這い出した触手をUDC尋問教官仕込みの操作で動かし相手を骨抜きにして情報を引き出す。
「教祖はどこですか?言わないと止めちゃいますよ?」




 本来ならばこれほど騒がしい事は無いのだろう。対応に追われる教団員達はその教義を果たす時間もなく、少し焦った様子を見せながら猟兵の相手をしていた。身を隠し、様子を浮かがる猟兵も居るということに気づくこと無く、純粋に喜びを見せている彼らは滑稽であった。
「きっとろくな教団ではないですね」
 小さく呟き白い廊下を歩くのは、学生服に身を包んだ藤原・紫苑(鋼の符術師・f10097)。心の奥底に『下らない』という思いがふつふつと湧き上がってくるのを、必死で表情に出さないようにして。
 聞こえてくるのは、快楽という言葉。聞き耳をたてずとも聞こえてくる彼らの教義とは、快楽によって苦痛や苦悩を押しつぶし、その思いをもって神に近づくというものだった。
 緑色の髪を揺らし、視線は左右に人を探す。手の空いている教団員……出来れば女性がいいな。そんな事を考えながら、出合い頭にぶつかったのは一人の女性教団員。白の上下の教団服と、長い髪にメガネが特徴的な。しかし、平凡な顔の作りの女性であった。
 紫苑の顔を見ると、その顔がぱっと喜色に染また。もしかして、と嬉しそうな声に合わせるように、そうなんです、と簡単に言ってのける。
「えっと、ですね。まずは我が教団についてお話をしたいと……」
 わたわたと身振り手振りを繰り返し、早口で説明を始める。慣れていないのだろう、しかし彼女にとって素晴らしい教団の説明が出来るというまたとないチャンスに、心踊っているのかもしれない。
「あの」
 それを遮るように紫苑が声をかける。
「何処か座って、出来ませんか?」
 ピタリと動きを止めていた女性は、何度もうなずき紫苑の手を取った。入り口にほど近い部屋を開くと、ベッドに座らせもう一度早口の説明を最初からしだした。


 ヒートアップする説明は支離滅裂で、まともに聞いていては言葉を整理するだけでも脳の処理が追いつかない。元々口下手だったのだろう、必死で喋る姿はいっそ可愛らしいが、それを超えるイライラが募っていく。
 それでも、もとより大まかな情報を理解している紫苑にはまた違う捉え方が出来た。パープルテンタクルズを利用した何かを行っている。そして、それを彼女も知っている。だが、彼女は一切その様な話はしない。はじめからそんな存在を信じて貰えると思っていないのか、それとも教義として隠すべきとしているのか。
 それはおそらく後者だろう。教祖はこれが邪神の眷属であり、人間の世界から見て駆除すべき存在だというのは知っているはずだ。おいそれと人に語り、何者かに嗅ぎつけられても困るのは自分だ。
 熱を帯び続ける彼女の説明は堂々巡りが始まっていた。さっきも聞いたような説明をまた別の言葉で、まるで初めて話すことのように必死で語りかけてくる。嫌な顔などおくびも出さず、しかしまたもその声を遮る。
「聞いていて、分かりました」
 もう一度固まる女性教団員。話すことに夢中で今の言葉を脳に正しく送り届けられていない顔。そんな女性を見つめ、にっこりと微笑む紫苑・
「聞いてて分かりました。多分、私も似たような事ができて……すごく、興味があるんです」
「あ、えと、それは教団の教義が教団に……」
「ああ、いえ。そういうことではなくて……触手って、ご存知ですよね? 私もあるんです」
 紫苑の制服の袖から伸びる、紫色のそれ。ぬめり動くをそれをみた女性の瞳は甘く輝き、同胞を見る目で紫苑を見つめた。
 植え付けられた一瞬の疑問。それを喰らおうを吐き出された触手塊は、女性にぶつかり身体を大きく広げ……飲み込んだ。


「教祖様、どこですか?」
 白い服はぬらつく紫色の粘液に濡れ、押し上げる触手の濃い色を透けて見せていた。それほど大きくない触手は、そのせいで服の内側から体全体を覆うように蠢いている。それが余計に服を伸ばし縮め、中の様子を容易に想像させた。
 胸元から、吸引に失敗した空気が少しずつ盛れる濁音が聞こえる。
 手足の指一本一本に触手が絡み覆い尽くし、根本から先端へと何度も蠕動を繰り返し感覚を教え込む。
 耳に伸びた細い触手が、耳の内部と鼓膜を撫でて遊ぶ。
 ガクガクと腰を跳ね上げては、しかし塞がれた口から漏れるのはうめき声だけ。色に染まったおぞましい声、紫苑はそれを冷めた視線で眺めている。
「ほら、言わないとやめちゃいますよ?」
 口を自由にしてやると、必死でこらえる嬌声混じりに、知らない、知らないとただひたすら。
 足先からくるぶしまで、足の裏に媚毒を撫で擦り彼女の感覚を増やしてあげなら上昇させていく。
 膝から太もも、その内側。薄い皮膚に塗り込み、触手の感覚を覚えさせるように。紫苑はその手管を持って女の身体を骨抜きする。
「どこ、ですか?」
「……ちか、ちかぁ……!!」
「足りませんか?」
「ばしょ、ばしょおしえ……だめ、これ、だめ……」
 嬌声混じり、濁音混じりの声にほとほと呆れ果てながら、書き留めた地図はここから程遠い場所の部屋にあった。この部屋ですら地下数階と言った位置にあるというのに、どれだけの力でこの施設を作ったのだろう。
 紫苑は触手に弄ばれる女性を背に、教えられたその場所へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エーカ・ライスフェルト
SPD
潜入のつもりで偵察系新技を活用

アオイさんには、校舎の屋根に跳ばしてくれるようお願いします
人が定期的に入り込んでいる痕跡があるなら、貯水タンクの影などの目立ち難い場所へ移動します

それから、最長3時間ほど校舎の周辺を観察します
美形の信者女性には特に注意を向け、その中で最も髪が手入れされている女性に対して【影の追跡者】を使用します
「隔離された場所で権力を持つと色で楽しみたくなるものよ。お気に入りには湯や化粧品も使わせるでしょうから……あの子ね」

濡れ場は無くても側に控えさせると予想します
「あれが教祖? 幹部の可能性もあるかしら」
メモ帳に似顔絵を描き、私以降に跳んでくる猟兵へ渡しておきます




 多数の猟兵が森やグラウンドに送られる中、一人校舎の上空へと送られた者がいた。
 浮かんだ光の中から陰りが見えると、その姿がふわりと浮き上がる。微かな音だけをたてて着地したのは、闇色のドレスをまとった猟兵。
 エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は、斜めに滑る屋根に手足を置き、音もなく駆け上がる。前情報からの見立通り、視線の先にあるのは小さな貯水タンク。既に錆色のそれは空となっているが、ひと目を避けるという名目であれば十全に力を発揮するだおる
 タンクに背を預け、ひと気のない地上を見下ろすのは十数分。見かけた人間といえば、ゴミを焼却炉へと運ぶ男くらいだろうか。それに話しかける猟兵を見ることもあったが、今纒めるべき情報は猟兵の側ではなかった。
 人通りが少ない。そもそも、地上に上がってくる必要が無いのかもしれない。ある程度地下で完結している世界なのであれば、態々外界に身を晒す危険を犯す必要はないのだ。
 エーカはその思考を切り替える。それならば潜入をすればいい。思いを込めて、瞳を閉じる。力を流し、能力を想像する。
 ユーベルコード『影の追跡者の召喚』が、電動ではない小型のドローンが音もなく現れ、その場でホバリングを始める。感覚共有の具合を確かめるのは一瞬、意識をドローンへと向けると、それはスムーズな動きで校舎内へと進んでいく。あっさりと見つかる地下への階段。進む先にあったのは、真っ白な空間であった。


 天井スレスレを飛ぶドローンは、カメレオンのようにその色を変えた。背景色に溶け込んだそれは、エーカが目的とする相手を探して飛び回る。主にトンネルめいた廊下をいくつも順繰りに監視し、数十回の往復を行った果に漸く該当の相手を見つけることが出来た。
 当たり前ではあるが、エーカは教祖の顔を知っているわけではない。それはグリモア猟兵にしても同じことで、つまり探しているたのは教祖本人ではなかった。
「……あの子ね」
 ドローンが自動追尾の状態になる。五感の情報は常に流れ込み、適切な温度と湿度、後ろ姿ではあるが対象の健康状態も良好に見え、地下世界は住みよい場となっているのかもしれない。その技術力や資金源など気になる部分はあるが、それは猟兵が立ち入る領分ではない。現地の住人によって執り行われる法の下、ここに居る彼らの処遇を決めれば良いことだ。
 追いかけるのは、地下を歩く教団員の中でもとりわけ美しい女性。化粧をし身体を清め、髪の手入れが行き届いて女性を追いかけていた。
 周りの教団員が新たな入団希望者……それは猟兵でしかないのだが、その対応に終われる中、一人別の方向へ進んでいく。周りと比べての身支度差もあるが、通常とは違う対応をしている事が決め手となっていた。


 迷わず進むその足は、何のことはない一つの部屋を開き入っていく。遅れぬようにドローンがそれについて回ると、そこはガランとした小さな部屋。壁にたてつけられた籠が置いてあり……床の下から聞こえてくるぬめるような音があるだけ。
「隔離された場所で権力を持つと色で楽しみたくなるものよ。お気に入りには湯や化粧品も使わせるでしょうから……でも、なに、これは」
 視界の中で服を脱ぐ女性教団員。手入れの行き届いた身体は白く磨かれ、大きめの胸を自ら優しく慰める。恍惚の表情は廊下に居る際は見ることの無かった甘い甘い、気持ちの悪い表情。
 嫌な予感を五感で感じながら、エーカは記憶の中に部屋の位置を情報端末に打ち込むと、その場に居る猟兵全てに情報を伝達するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御狐・稲見之守
ん、ワシ成人済みだから大丈夫ダイジョブ

【WIZ】んぁー今はこんなナリだし
教団員に連れられてきた子どもとかそんなノリで近付いてみるかの
よしんばロリコンがいれば【誘惑】になるが、そういうのウケする演技、演技と

ふぁ、ふえぇ…ここどこぉ…?
あの、あのね? おかあさんがね、きょうそさまにごあいさつしようねって
ひっぐ、ぐすっ、でも、おかっおかあさんと、はぐれちゃったの…
はぅう…おかあさんどこぉ……ふぇええひっぐ、ぐすん
ひとりこわいのぉ…(しがみついて上目遣いにうるうる)

ワシはまいごのまいごの仔猫ちゃん、名前を聞いてもわからないっと
教祖の居場所がわかればよし、連れてってくれるようなら途中で狐に変身してどろん




 教団員が慌ただしく動き始めた廊下、その一角に溢れる涙を手で拭いながら、しゃくりを上げつつ泣く小さな姿があった。
 それは和装、朱と白が基調となる艶やかな見た目は、無機質なこの場にそぐわず殊更目をひいたのだ。駆け寄ったのは一人の男。上下白の教団服は背景に添うように無機質で、少女と対をなすように彩りの差を見せつけていた。
「どうしたのかな?」
 膝を折り、視線の高さを合わせる男の表情は穏やかなものだ。泣いているからこそ、落ち着いた声でもって語りかける。涙を拭うもう片方の手は、所在なさげに中空をぷらぷらと揺れている。
 安心させるようにその手を握る男の目は慈愛に満ちている。ともすればイケメンとも言われるであろうその端正な顔立ちだったが、この教団に居るという事実は評価を大きくマイナスにまで下げていた。
「あの、あのね? おかあさんがね、きょうそさまにごあいさつしようねって……」
 小さな手が、男の一回り以上大きな指を握る。泣きはらしたような目で見つめながら、今にも崩れそうな表情を向けている。
「でも、おかっおかあさんと、はぐれちゃったの……はぅう……おかあさんどこぉ……」
 一人が怖いと男の腕に抱きつく少女は、掴んで離さないとばかりに力を込める。困ったように頭を掻く男だっが、一緒に探してあげよう。そう言って優しく腕を解くと、柔らかな手付きでその手を握り、歩き始めた。


(あちゃー、もしかして当てが外れてしまったかのー……)
 意訳としての子供好きを狙う算段だった御狐・稲見之守(お稲見さん・f00307)は、内心で頭を掻いていた。こうして子供然として姿を表せば、この様に淫猥な教団の人間であれば飛びつくものと思っていたのだ。
 しかし現実は違っていた。比較的端正な顔立ちの男は、泣きじゃくるふりをした稲見之守何度も振り返り、落ち着かせるように何度も握ってみせた。性欲の欠片も見せないその対応は、完全に子供好きの類ではないと知らせるようなものであった。
「お母さんはどんな格好なのか?」
 聞かれても、答えない。ぐずり泣くことで答えをはぐらかす。
「お母さんは、ここの人なのかな?」
 それにも、まともには答えない。教祖様、と小さく呟き誘導を促すものの、手応えがあるかどうかわからない。
 確かに男の所作や言葉は優しい。しかし心ここにあらずといった瞳は何処か昏く、稲見之守にはその心を推し量ることが出来なかった。
(どうしたもんかのー……)
 ぽくぽくとなる頭の中。それならこうして見てはどうだろう。軽い鐘の音が頭の中に響くと、稲見之守は口を開いた。


「きょうそさま……」
 その呟きが耳に入った男は、思案するように目を伏せる。次に同情の視線を稲見之守へと向け、廊下の先をじっと見つめた。
「そうはいっても……困ったなぁ」
 男としても、この様な格好をしている子供なのだから、親だって似たような格好をしていると考えていた。ここまでの和装は日本でもそう見ることはない。少し歩き、他の教団員に聞けばすぐに見つかるものとたかをくくっていたのだ。
 問題は、そんな親は存在しないということ。似たような格好の猟兵がいないことも幸運だったろう。そうして漏らしたその言葉に、「教祖様は……」と男は視線を奥のドアへと向けたのだ。
 きらんと光る稲見之守の瞳。強く掴んでいた手を離すと、音もなく姿を変化させる。
 そこにいたのは黒い毛並みの狐だった。ぬるりと身体をくねらせ、足元をすり抜けるように進むと動物の脚力を持って走り去る。大まかな部屋の位置を確認すると、素早く角を曲がり下の小さな身体へと戻して見せた。
 確認は出来ていないが、地下へ続く道は見つかった。廊下の先から聞こえる「お嬢ちゃん? 何処行ったの?」という、心から心配するような声に心を疼かせながら、現在無事な猟兵全体へ情報を共有させる。
 部屋の位置さえ分かってしまえば、鍵がどうとか関係ない。後は蹴破り突き進むだけだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:某君

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●修練の間
 降り口のない階下から聞こえる水音は、時間が立つごとに大きく強くなっていく。不安を誘うような音だったが、そこに何が居るか知らないわけではない。
 階下へのドア、階段、もしくは穴。どうやって降りるのかも分からない状況ではあったが、この階下に話に聞いた触手の海があることは間違いなかった。漏れ聞こえてくる音は止まること無く、漂ってくる甘い匂いが現実を物語っている。
 猟兵が取る道は二つに一つ。このまま時を待ち階下の海へ飛び込むか、部屋を強引にでも出て、正規ルートの階下を目指すか、だ。

●白い廊下
 慌ただしく応対していた教団員だったが、それ以上の騒々しさが教団内の白い廊下を包み始めた。
 凡そ教祖へと至る道、その情報が一斉に伝達され、これ以上の調査が必要無くなり猟兵がその姿を表したためだ。何処に隠れていたのか、呆然とする教団員達を押しのけ、階下への階段が作られた扉へ向かう。
 その扉が破られた時。教団員の身体に潜り込んでいた触手たちが顔を表した。まるで行く手を塞ぐように、猟兵達へと殺到しその自由を奪おうと迫りくる。
 このまま階下へ向かい、教祖を捉えることに成功しても、触手の動きを止められる可能性は想像もつかない。まずは、目の前の敵を焼き尽くせ。そうして漸く、先の道が開かれるはずだ。

●マスターから(以下、後に削除予定)
 おはようございます、三杉日和です。
 
 第二章はパープルテンタクルズとの集団戦です。
 今回は二箇所に分かれて戦う形になりますが、🔵の数は共有です。全員が廊下の触手を倒しても、知らない猟兵が階下の触手を倒していますし、逆もまたありえます。お好きなプレイングを出してくださって構いません。
 廊下の触手は普通のサイズ、階下の触手は大振りだったり小ぶりだったり混合のものを想定しております。
 あと、特に指定が無い限り妙な描写は致しませんので、ご安心下さい。

 以上となります、よろしくお願いしまします。
アリア・ティアラリード
着実に大きくなって行く足元から響く水音。
もはや猶予はないと判断したアリアは果断迅速、部屋から飛び出すと
階下へ続く扉を探すべく《ダッシュ》で白い廊下の奥へ向かいます。

教団員の身体に潜んでいた触手の群れが立ちはだかれば、先へ進むためにで殲滅を開始。
【鏡像分離】残像ではない、完全な分身から《2回攻撃》による強烈な斬撃を叩き込んで!
…しかし戦闘中に、《誘惑》的な悩ましい四肢を触手に絡め取られてしまえば
たわわな乳房を包むブラウスの、短いスカートの内側に這い込まれサービスシーン不可避なのです。
だってお姉ちゃんは女騎士!女騎士なのですから

「こんな、この程度で、私負けませんっ!絶対に……負けないんです…ぅ!」




 送られてきた情報は二つ、彼女自身が流したものを含めれば合計三つ。先ほどとは別種の騒がしさを持つ廊下を駆け抜ける足は、当然地下へと続く階段のある部屋へ向けられていた。
 大まかな場所の説明が書かれたその内容を頼りに足を進めるものの、この白い廊下は似たような風景が続き酩酊するような感覚すら覚えてしまう。それでも、迷うことはない。たどり着いた部屋、そのドアの前に立つと拳を握り殴打によって開けてみせた。中はがらんどうの部屋。階段など見当たらないそこは、送られてきた場所に間違いはないはずだった。
 床の底から聞こえてくる水音に眉を潜ませるものの、何処をどう調べたとしてこの小部屋に階段を仕込む余裕など無い様に見える。壁をたたき、耳を済ませ、隠されたスイッチでもないかと辺い中を触って回った。
 床を叩くと、地面が揺れる感覚。甘い匂いに気がついた所で、漸く間違いに気づいたのだ。
 アリア・ティアラリード(エトワールシュバリエ・f04271)は頬に手を当て、決して困ってないような表情を浮かべながらあらあらと呟いた。いつの間に見間違えていたのだろう、ここは階段の部屋ではない。音と匂いが指し示す悪い予感の通り、階下に潜む触手への餌場のような部屋なのだろう。
 大変大変、と口に出した言葉はどこか間延びしたもので、アリア本人が感じている緊張感を表すにはいささか緩い口調ではあった。しかし、そうと分かれは行動も早いもので、カギと蝶番が弾け開きっぱなしとなった入り口へ、ぱたぱたと足を運んでいく。
 室内の探索をしていたのは数分と言ったところだろうか。急がなきゃ、と胸を揺らして走るアリアが見たのは、廊下埋めるように蠢くパープルテンタクルズの群れであった。


「せい……やっ!」
 掛け声はどことなく調子はずれで、戦いという場には相応しくない穏やかな声色。だが振るい去る剣先は触手の壁を打ち砕き、一撃の下に切り伏せる。地に落ち跳ねる触手を踏みつけとどめを刺すと、それに意識を取られることもない続け様の連撃。地に落ちる前の触手を縦に裂き、見据えるのは正面を塞ぐ紫の壁だ。
 その背後から伸びる紫の触腕は、アリアへと届くこと無く同じ様に宙を舞う。それはアリアと同じ顔をしながら、少しだけ口元が引き締まったもう一人のアリア。地面に積み重なっていく紫色の絨毯は、二人のアリアが作り上げたものだった。
 ユーベルコード『鏡像分離展開』、自身の分身を作り出すその力は、前後から迫る驚異を尽く振り払い、打ち壊す。牛歩ながら進む足も、奥から聞こえる戦闘の音を聞けば終わりが見えてくるような気がしていた。殴打を繰り出す触手を斬り上げ、続いて大振りの一撃を加え、トドメとばかりに切っ先を壁の中へと突き入れる。
 確かな手応えはあった。それが大群である人や動物、それこそモンスターと言われる敵であるなら、何の問題も無かったのだ。
 しかし、敵は群体たる不定形の触手。刻まれた同胞のことなど露知らず、突き入れるために伸ばしたアリアの手に細く小さな触手が群がった。
 どろり、というぬめる感触に不快感を示し、引き抜こうとする腕をしかし触手は離さない。分身のアリアが前方へと飛びかかり、腕へと巻き付く触手だけを切って捨てる。自由になった腕を引き抜き、さあ次だと構えた視線の先に、背後から飲み込まれる分身の姿があった。


「こんな、この程度で、私負けませんっ! 絶対に……負けないんです……ぅ!」
 迫る触手の壁は、分身の力をもって漸く進行を食い止めることが出来ていたのだろう。本体を救おうと隙を見せた瞬間に押し迫られたその身体は、蠢く壁の中に消えていった。
 直後に聞こえる、自らのものとは思えない嬌声。飲み込まれていくのを確認している間に小さくなっていく声は、まさしく未来の自分を予感させるものだった。慌ててユーベルコードを解除するものの、次の一手にはもう遅い。視線を揺らし切っ先を下ろし、間隙を突く触手はその瞬間を見逃さず、本体のアリアも同様に飲み込んでいった。
 そうして、全身を這い回る触手が衣服を濡らし、擦り付けられる甘い甘い媚毒の痺れる感覚を味わっているのが、まさに今であった。
 もとより大きく開かれた胸元のブラウスはボタンを飛ばされ、短いスカートは粘液にまみれてぐずぐずに丸まっている。柔らかな肢体を楽しむような先端の動きは、嫌悪感の中に薄く喜びの感情を発露させる。それが余計にアリアを困惑させ、苛つかせ……思考を惑わしていくのだ。
 たわわに実った胸に巻き付き、絞るようにその形を変えて弄ぶ。太ももへと伸びた触手はぐるりと巻き付き、その感触を忘れさせないようにと撫で付けててみせる。本来であればアリアの膂力によって、この程度の窮地を脱することなど容易であったろう。しかし手を伸ばし掴んだ触手はたったの一本、それらは群れで身体を覆い尽くし、一、二本の動きを止めた所でまるで障害とならない。
(助けて)
 そんな叫び声も口の中へと迫る触手が塞ぎ、全身を圧迫し髪も服も、靴の中すらも粘液で満たす状況を改善させる要因にはならない。
 猟兵にとってみれば、パープルテンタクルズは格下の相手である。知識と知恵を駆使し、適切な行動を行えば何のことはない、相手は始めに切って捨てたような肉の塊でしかないのだから。
 しかしどうだ、嬌声こそあげることはないが、気を抜けば流されてしまいそうに鳴る。これは雑魚と言って然るべき相手だったはずだ。ぞわ、と強い悪寒が背を走り、そこを押しやる触手の感覚に浮かぶ甘い感覚。アリアはそんな自分に嫌悪感を抱きながら、誰か、と強く願っていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

藤原・紫苑
「化けの皮が剥がれましたね」
白い廊下側
自分のサイバーアイで行ったマッピング内容、尋問での情報、自分の位置情報を他の猟兵に送りつつ合流できそうな者に呼びかけた後伝達された階下の扉へ
教団員を押しのけ銃撃で脅しつつ移動
敵対目標を確認し各部のセーフティを解除し戦闘モード

サイバーアイの暗視で不意打ちを警戒しつつ地形を利用し戦う
初手で七星七縛符を本体触手に放ち相手のユーベルコード封じを試みる
解除されたら再度符を放ち銃撃で削っていく
小型触手は先に数を減らし本体迎撃

「う!気持ち悪いッ!離せッ!」
触手が絡まったら湧き上がる感覚に嫌悪感を覚え心底気色悪そうに吐き捨てて銃で触手を撃ち抜いたり引き千切る


シェラフィール・ディー
やれやれ、です。どうせあのお調子者はいつも通り真正面から突っ込んでしまっている気がしますが…
主人兼、姉であるアリア(f04271)の救援の為に参戦を…別にやられてたっていいんですけど、でもこんなところでやられてしまっては張り合いがないといいますか…色々困りますので…
もう状況は始まっている事でしょう。戦闘音を頼りに階下へ
もし、仮に。よしんば苦戦しているようなら援護致しましょう
【刻印呪眼:狂瀾庭園】魔眼の呪詛を解放し自分の影より顕れる触手群で露払いです
…稀に、制御を外れて他の触手と共に自身に襲い掛かりそうですが長刀と体捌きでの《残像》回避にて対応致します
「身体が小さいと、こういう時には便利ですね」




 尋問の結果を送信し終わるのとほぼ同時。吐かせた結果の裏付けともなる位置情報と、教団が行っている『修練』の実施場所を知らせるデータを受け取った。出たばかりの戸を後ろ手に締め、一歩進んだその瞬間。部屋の中から何かが爆発するような音が聞こえてきた。
 慌てて振り向くものの火薬の匂いなどはしない。しかし、音はそこかしの部屋から聞こえてくる。自らのサイバーアイでマッピングした情報によれば、ここには百に少し足りないくらいの部屋があるはずだ。そして、音はその各部屋から聞こえてきていると思われた。
 情報を確認したのだろう、姿を表し教団員の手を逃れた猟兵たちが廊下へ立ち止まり、その異変たる音に聞き耳を立てる。続いて聞こえてくるのはぬめるような水の音。知っているものは、その音だけでなにか分かる。それほどに特徴的な水音は、おそらく各部屋から聞こえてきて……。
「走って!」
 目的地など言う必要はない。その場に居る猟兵が向かう場所は二つに一つ。こうなれば殲滅戦だ。
 藤原・紫苑(鋼の符術師・f10097)は最短距離で階段の部屋へと向かうものの、嫌な気配にその足を一旦止めた。軋むドアと金属の音。ミシミシという耐える音はすぐに終わり、白く塗られた木のドアは豪快な破砕音と共に吹き飛び、辺りに散らばった。
 同じ様な音はそこかしから聞こえだす。途端に始まる戦闘音、紫苑の呼びかけに答えた猟兵たちは既に武器を手に部屋から出てくるそれを押し戻しにかかっていた。
 どうする、そんな逡巡は何処かの猟兵の声によって遮られる。
「行け!」
 返事はしない。紫苑は止まっていた足をもう一度回転させ、白い床を軽やかに駆け出した。


 飛び出してきたのは、勿論パープルテンタクルズである。部屋に満ちた触手はその出口を求め、脆いドアを蹴破ったのだ。触手の部屋の奥から聞こえるのは、ぬめる水音と男女関係のない野太い嬌声。何をされているかなど考えるまでもない、しかしそんなものは身から出た錆だ。
「化けの皮が剥がれましたね」
 UDCを操れるなど、思い上がった結果だろう。裏に潜んでいた教団の真実に独りごちる紫苑の足は、再度止められる。
 背後から溢れる触手は、他の猟兵に任せることができる。だが、目の前に現れたのは紫の壁。既に背後を任せている状態で、ここを突破するには己の力を行使するしか無い。早く下へ向かわねば、そんな焦りに近い思いを心の奥に落とし込み、紫苑は声もなく力を発動する。
 足が止まるとほぼ同時、振られた手に握られていたのは一枚の護符。それはまっすぐ触手の壁へと進む出て、絡まりあった身体のその一枚に張り付いてみせた。ユーベルコード『七星七縛符』、命中した対象のユーベルコード、それと僅かな捕縛を可能とする、オブリビオンと力の根源を封じる御業。
 うぞうぞと動き回っていた触手は身振りをおとなしくし、紫苑へと伸ばそうとしていた触腕をだらりと下げていた。懐から取り出す拳銃に過剰な力は持たせていないが、動きを止めた触手、その息の根を止める事くらいは出来るだろう。狙いを定め、引き金を引く。
「お任せ下さいませ」


 紫苑の背後から迫る黒い影。しかし紫苑を狙うこともない。真っ直ぐに向かうのは、力なくうなだれる紫の触手群。二種類の触手は紫苑の前で絡み合い、紫の肉と体液を弾き、抵抗することのない壁を削るように食い破っていく。
 辺りに飛び散る体液と肉を避け、小さな歩幅で歩いてきたのはメガネを掛けた白いメイドであった。
 紫苑が視線を下へ向けると、壁を削っていたのはそのメイドの持つ能力だと分かる。影から伸びる【淫虐卿の十二本の指】と【恍惚侯の八本の舌】。それは一見ただの触手の類であるが、力を封じたとはいえ一方的な虐殺を見るに強力なものであるのは間違いない。
 シェラフィール・ディー(オニキスロード・f03454)は眼鏡のズレを指先で直し、大きな刀を手にひらけて来る視界に少しだけ笑みをこぼす。足を進め紫苑の前へ立つと、その足はどんどん先へと進んでいった。
「ありがとう、どうしようかと思ってたんです」
 すまし顔のメイドは、じっと群れの奥を見やる。更に足を進め、端正な表情が少しだけ歪んだ。
「いえ、何のことはありません。シェフィにも少し……やることが……」
 抵抗のない壁に飽きてきたのだろうか。触手にだけ向かっていたシェラフィールの影たちは、気まぐれにその進路を逆へと向ける。そう、呼び出した本人たるシェラフィールへと牙を剥いたのだ。
「身体が小さいと、こういう時には便利ですね」
 はぁ、と小さなため息を一つ。歩行速度はそのままに、舞い戻り触腕を振るう己が力を、小さなステップと大太刀でいなし、弾く。その表情はいつもの面倒事、というつまらなそうなものではあったが、視線は一箇所へと注がれていた。
 背後で二枚目の護符を投げる紫苑を尻目に、ゆったりとしたペースを保っていた足はそそくさと小走り程度に駆け出していた。


 大きく削れた触手の壁。既に通路の奥が薄く見え、あとは地に積もった紫の絨毯が移動の邪魔をしているほどだ。壁が山に変わったあたり、シェラフィールは躊躇せずにその肉の山に手を差し入れ、汚れることも厭わず何かを引き抜いた。
 それは先に奥へと侵入していた、主人兼姉の姿だった。全身を媚毒のぬめりに侵され、局部も何も放り出した状態でぐったりと倒れている。虫の息……いや、息も絶え絶えという言い方が正しいだろうか。乱れる息と悩ましげな声を上げながら、抱きついてくる。汚れることも気にせず、一度抱きしめると……ベチっと頬を叩いてみせた。
「ああ、申し訳ありません。大丈夫、すぐに向かいますわ。貴方様はお先へどうぞ……」
 振り向いた眼鏡のメイドは、紫苑に微笑みかける。最後の露払いとばかりにうなだれた触手を食い破ると、手にした大太刀をもって山を崩した。
「生憎とお足元が悪くなっております。気をつけて行ってらっしゃいませ」
 ぺこり、と頭を下げるシェルフィールは、もう一度利かん坊の触手を中に走らせる。それは紫苑の背に向けて、伸びかかった触腕を食い破ったのだ。
「あ、あぁ……進路は確保しておきます、任せて下さい!」
 そう言って走る紫苑を背中で見送り、押し込められなくなった触手の壁を駆け込んできた猟兵と共に打ち崩し始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御狐・稲見之守
[WIZ:白い廊下]
(触手に群がられて埋もれてる中からフォックスファイアの【範囲攻撃】で
 纏わりついてるのを一気に蹴散らす。そして着崩れた姿でペッと吐き出し)
あ゛ー……なんじゃこいつらの精は、マズくてかなわん! やはり人間の精がよいな!

さて、御劔・姫子(f06748)殿も白い廊下の方にいたはずじゃが…っと
触手に絡まれて乙女のピンチなようなら
そのご機嫌な光景をしばしほっといてから触手を【なぎ払い】助けることにしよう。

まあなんだ、いいとこでちゃんと助けとかんと
姫子殿が嫁に行けぬようになっては大変であるし。

細部はMS殿にお任せ、お好きにいじくっていただければ


御劔・姫子
[POW:白い廊下] 御狐はん(f00307)から言伝を貰うたさかい、来てみたんはええんやけど…うぅ、この物の怪…前に戦ったことはあるけど、やっぱしきしょいわぁ… とにかくっ! 【なぎ払い】【二回攻撃】を活用し、太刀で触手を斬り捨て…っ!? な、なんやのこの触手っ!? けったいなとこ掴んだり入ってきたり…っ! 【第六感】で気づかへんかったら大変なことになっとったかも…っ! 密着されとったら太刀は使えへんさかい、胸元の短刀を抜いて【カウンター】で行くしかあらへんかな…っ!? あっ、御狐はん!? 見とらんで助けてや~!! ※御狐さんとの協力?プレイを希望します。細部のアドリブについてはお任せします




 それは不運な出来事だった。情報を全体へ流し、猟兵が集まるタイミングを見計らっていたのが悪いと言うなら、それは本当にただの不運でしか無い。
 中に誰もいないことを確認した部屋に身を隠し、音で外の状況を確認していたのはついさっきのこと。ざわめきが聞こえ今だと思い外へ飛び出し、目的の部屋へと向かういくつかの部屋の前を通ったその時である。
 ドアが爆発した。いや、正確には中身が押し出されたのだ。爆音はそこかしから聞こえ、爆発したように弾けた木の扉に身体を吹き飛ばされた。
 自らの身体が小さくあったのも一つの不運だったのだろう。軽い身体はその衝撃に耐えられず、そのまま反対の壁へと弾き飛ばされた。人間のそれよりも頑丈ではあったが、直後に降りかかる大量の内容物は、流石に予想もしていなかったのだ。
 そうして出来たのはパープルテンタクルズの山である。こんもりと盛られた触手はその支配下にある身体を弄ぼうと、ぬめる腕をくねらせる。嬌声の一つも聞こえるはずだった。嫌がる声でもよかった。漏れ出たのは青い炎。山の隙間から一吹き姿を見せると、その勢いは山全体へ渡る。一気に吹き上がる炎はあっさりと紫の肉を黒く焦がし、動きを完全に封じてしまった。
「あ゛ー……なんじゃこいつらの精は、マズくてかなわん! やはり人間の精がよいな!」
 山の中から顔を出したのは、上背の足りない小さな影。和装に身を包んだ黒髪の妖狐、御狐・稲見之守(お稲見さん・f00307)であった。その口はモゴモゴと動いていたものの、ウェルダンに焼けた触手を吐き出し、渋い顔をみせ、汚れた口を拭っていた。


「御狐はん! 御狐はーん!」
 触手で溢れかえる廊下を一本の太刀で進む猟兵が居た。
 飛んでくる触手を切り落とし、攻めっ気を見せる腕を牽制し、焦り打ち込む触手を跳ね飛ばす。決して一所に留まることをせず、そう広くはない廊下であっても触手の脇を抜け足を進める。抜き払い、回り、切り落とす。愛刀『巌太刀』を払い、刃に残るぬめりと体液を弾き飛ばし、ぐるりと視線を一周させた。
 舞うように進むのは、御劔・姫子(はんなり剣客乙女・f06748)。先んじて侵入し、情報を集めていた稲見之守との合流を目指していた姫子だったが、予定していた場所にその姿がなく途方に暮れていたのだ。
 更に言えば、内部がこんな状況になっているなど思いもしなかった。破られた部屋と溢れ出る触手。多くの猟兵が内部でその押さえ込みを行っているが、どうにも手が足りない状況だ。こうして確実に一つ一つ潰していくのが肝要だと、姫子は理解しているのだがどうにも気が進まない。なにより……。
「あー、もうきしょいわぁ……前も、どっか居はったなぁ……あー、もう」
 切り結ぶことにはならない。刃こぼれの心配があるとすれば、その刀身が壁を打ち付けたときだけだろう。しかし姫子の剣閃は揺るがない。身体を引き、小さな重心移動と引き抜く刀。軟体であることを忘れるしなやかな切り口は、一気に体液をしぶかせ辺りを汚していく。
 一太刀、もう一太刀。滑る刀が更に触手を両断したそのタイミング、姫子の視界に入ったのは見慣れた稲見之守の赤袴。カーブの先に居る彼女もまた戦っていたようで、しかし合流してしまえばこれ以上の長居は無用だった。未だ完了していない階下への突入。それをまずは完遂しないと。そんな思いでもう一度呼びかける。そこに隙があったのだろう。


 ぼとり、と落ちてきたのは若い小さな触手塊。肩口を狙って落ちてきたそれに気づいたのは、第六感によるものだった。反射的に身を屈め、上方へ振り抜いた刀が塊の触手を斬り割った。
 球体となっていた塊が割れ、辺りに散る小さな触手。魚肉ソーセージ程の大きさのそれは確かに3割程を斬り捨てたが、その小ささ故だろう。無事であるものの方が多くあり、壁に張り付き地に落ち……姫子の身体へとへばりついていた。
「ちょ……ちょ! きっしょ……も、やめ、や!」
 人の身体に張り付いてからの動きは俊敏そのもの。肌を探し、ぞわぞわと身悶えするような感触を与えながら巻き付き這い回る。小さいながらも薄紫の粘液は健在で、じっとりと濡れた衣服が身体に張り付く感覚はその顔をしかめるほどだった。
 手にした刀を捨てるほど愚かではない。愚かではないが、視線は完全に自らの身体へと向いている。本来の敵である大きな触手から視線を離し、空いた片手で小さな触手を握って捨てる。武芸を嗜んだ動きは的確で、うなぎすらも簡単に掴みかねない勢いは張り付いた触手を全て投げ捨ててみせた。
 それはほんの数秒。しかし、数秒の油断が命取りとなるなど、姫子は理解していたはずなのだ。背後に迫る身長台の触手に気づくのが遅れたのは、自らの油断がもたらしたものだ。
 手足を一瞬で絡め取られ、何の覚悟もなく触手塊の中へ取り込まれたのも。生臭く、肌に触れる度にピリピリとむず痒い粘液を浴びるのも油断のせい……なのだが。
「御狐はん! ちょ、見てはるんやろ! なあ、なあて!」
 すでに顔を触手に掴まれ、衣服の裾から先端を差し入れられている危機的状況。嫌悪感の奥にあるちょっとした快感に顔を振りながら、先程見かけた稲見之守が居ると信じて大声を上げてみせたのだ。


 それは仲間が触手に飲み込まれていくところだった。手足を拘束され、ゆっくりと取り込まれていく様は中々にシュール。自身の名前を呼ぶ声がすぐに甘く蕩けていくのも、不思議な面白さを感じさせた。
 姫子の身長台の触手はそれほど大きな塊ではない。全身を覆い尽くすほどの体積は無く、身体を絡め取ろうと動くほどその隙間が大きく広がっていく。そのせいで姫子が何をされているのかよく分かってしまう。まずは抱きしめるように背に回した触手。つるんとした触手の先端が、優しく背を撫で安心を誘っている。
 顔を撫で、少しだけ大きな水音。おそらく接吻のつもりなのだろう、叫ぶ声が途切れ途切れの声は、姫子の口を抑えている証拠となっている。
 漂ってくる甘い香り、それは他の触手にしても同じだったがこうなったそれは更に濃い。甘いからいい匂い、というわけでもないのが辛い。いや、一番辛いのは姫子だろう。
「おき……おき、つねー! わかってる……ん、ぶっ……ふ、ん、ぁ……はよ、たすけ、助けてくださいぃ……」
 自力で抜け出せるかと思っていた稲見之守であったが、実際はそうでは無かったのだと漸く思い至った。すまんすまん、と笑いながら取り出すのは、身の丈を超える長さの一振りの薙刀。
 手にしたそれを軽く振る。姫子に集中している触手は完全な無防備であった。二度、三度と振り乱せばその肉を簡単に削ぎ落とし、身体を支えていた触手の筋肉は切れ、その場に崩れ落ちる。触手のベッドに身体を横たえ、姫子はぜひぜひと細かな呼吸を繰り返していた。
「姫子殿。お嫁にはまだ……いけるじゃろ?」
「……ええ思い出、できましたぇ……」
 覚えてろよ、と言外に言い含める姫子であったが、まるで意に介さない稲見之守。その身を起こす手伝いをすると、さあさあ次だと目標地点へと足を伸ばすのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夕凪・悠那
うっわぁ……(ドン引き)
実際に見ると想像以上にぬめぬめぐちゃぐちゃ……てかキモっ。

ボクは廊下の触手を殲滅する。
FPSゲーの特殊部隊型【バトルキャラクターズ】を召喚。
主装備はアサルトライフルや軽機関銃といった制圧仕様。時折グレネードも使って塊を吹き散らす。
火力が不足しているようなら2体ずつ合体させて使用火器の火力を強化する。
ボクは後方から指揮。さっさと一掃して、ボスまで突っ切る。
殲滅だ、一匹も逃さない。
てなわけで、撃て撃て撃ちまくれ!




 溢れ出てきた触手の群れは、次々に切って落とされ死んでいく。
 対応に追われる猟兵たちであったが、そもそもの地力の差が現れるのにそう時間はかからなかった。部屋に押し込んだまま切り潰し、飛び出た側から撃ち落とす。同じ触手の力に不思議な魔法と、廊下いっぱいに見えていた紫はその数を減らし始めていた。
 夕凪・悠那(電脳魔・f08384)も、そうした殲滅要員の一人である。始まりは、歩いていた近くのドアが炸裂したことであった。すぐに溢れるパープルテンタクルズ。
 知識としてそういう敵が居るというのは知っていた。知ってはいたのだが。
「うっわぁ……」
 パープルテンタクルズを見た初めの印象は、それである。想像していた以上になめらかな動きと、質感。そして体表をぬめる粘液の泡立ち具合。何よりその気色の悪い甘い匂いと、人を品定めするようにもたらされる数多の触腕。
 呆気に取られるのは一瞬のこと、素早く距離をとった悠那は一瞬でその力を完成させる。
 ユーベルコード『バトルキャラクターズ』、それは特殊部隊然とした一三体の人型戦力。FPSのキャラクターをモデルにしたそれは少しばかり大味なポリゴンを持ち、そのかわりと言っては何だが丁寧なテクスチャで欠点を覆い隠していた。
 手にした武器も、アサルトライフルと軽機関銃、回復を促す注射にグレネード。基本装備と言っても過言ではないその見た目も、少しばかり大味で丁寧な物。構える姿もゲーム的で、少しばかり不格好に見える。
 しかし、発射される弾丸の音は力強く、まるでゲームのように真っ直ぐ狙い済ました場所へ飛び、過剰なまでのダメージを与えて見せた。
「さあ、戦争だ!」
 その声を合図に、一三体のキャラクターは部屋の中の触手に鉛玉を打ち込み始めた。


 数分の戦闘はあっけなく終わりを迎えた。
 キャラクターたちは銃身よ焼けよと弾を撃ち、数十、下手をすれば百を超えたであろう触手の尽くを殺してみせた。弾を撃ち尽くしたキャラクターたちは走りながらリロードを行い、目的地へとひた走る悠那の後を忠実に追いかけている。
 部屋を抑え、廊下で戦い、肉の道をつくる猟兵達。そんな中を走る悠那は、先程の戦いについて考えていた。
 触手との初戦は大勝ではあったが、いくつかの問題点も見つかった。まず、分かっていたことだが、奴等は一個体ではないということ。複数の絡み合った触手が、群体として個体を形成している。
 撃てば当たる的のような敵ではあったが、しぶとさと数の減らなさは悠那の想定を大きく超えていた。最終的にグレネードを数発投げた事で大勢を決める事ができたが、そんなものこの廊下に投げる訳にはいかない。そもそも、数発投げなければいけない程度には、奴等の肉体は盾として機能してしまっている、ということだ。
「だったら、こうすれば!」
 手数が足りない。火力も足りない。であれば、こうすればいいのだ。と、悠那は一つ手を叩く。
 それに呼応するように、後をついて走るキャラクター達が一瞬にしてその数を減らしてみせた。
 数は六体、額に2と3の数字を掲げたそれらは、一番最初に目的地へと到達した一団となる。


 階段のある部屋、そのドアを蹴破り、悠那は階下へ一体のキャラクターを送り込んだ。逐一入る上方に耳を傾けつつ、キャラクターたちを入り口付近にならべ、死守を始めたのだ。
 まずは必要戦力の確保、そのための情報収集と考えた。既に知らされている目的地である、触手の殲滅を優先させる猟兵は各地で転戦し、教祖の確保へ乗り出すものはここへやってくるだろう。
 触手などという戦力を、これほどの数隠し持っていたのだ。教祖自体が武装化していないなど想定出来るはずもない。次々と集まる猟兵を階下へと送ると、悠那はキャラクターだけをここに置き、彼らに続き階下へと足を進めていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

彩波・いちご
「色仕掛け通じないのはアイドル的に自信無くしますが…この人達えっち目的ではないんですかね?」
【異界の抱擁】で私を連れ込んだ人を縛り上げ部屋を脱出

そこで同じ寮で暮らすルネさん(f00601)と合流
「助かりましたっ」

他にも寮の仲間来てると聞き
現れた触手と戦いつつ、合流目指し移動
人の気配のする部屋を見つけ、扉を壊して中に
「誰かいます…か?」
中には裸の冬香さん(f05538)とベルさん(f01233)
「何でそんな格好?!」
驚いてフリーズして物投げられ…気が付いたら余波で床が抜け4人で階下に落ちて
「うにゃー?!」
触手の海に…
異界の抱擁で応戦しますけどー!
3人を巻き込んだり触ったりとらぶるでてんやわんやに


ルネ・アッシュフォード
いちごちゃん(f00301)がピンチって聞いたから
いてもたってもいられずきちゃった。
先に行ったって聞いた冬香ちゃん(f05538)とベルちゃん(f01233)は大丈夫かな?

触手には【フォックスファイア】で応戦しながら合流へと移動

進む先でいちごちゃんと合流

「よかった無事だったのね。ベルちゃんと冬香ちゃんは?」

他の寮の仲間が来てることを伝えて合流を目指し移動

人の気配のする部屋?え?なんで二人共裸なの?

固まったってたら、もの投げられて床抜けて…困ったことに
触手には【フォックスファイア】で応戦って
いちごちゃん、触手でどこ触ってるの?!私じゃないよー!!
とてんやわんやしながら戦闘


緋薙・冬香
さて、いちごの行方が気になりますけども
まずは従う振りを
ベルさんと一緒に服を脱ぎ始めましょう

全裸となればなにかと理由つけて男は追い出しますわよ
いちご以外には見せるつもりはありませんし!(心の声)

外の喧騒に気づいた後は
「さて、どうします…」
とか言ってたらいちごとルネさんが飛び込んできたわけですけども
「何でっていちごを助けるためでしょーが!」
着ていたマント全力で投げつけ

触手の海に放り込まれた後はスカイステッパーで脱出しようと試みますが時すでに遅し?
「は、ぁっ…んっ」
恍惚した表情でいちごの触手を掴んで自分の方へ
本当は手とか口とかの方が
でもいちごを感じられるものなら構わない
「いちご、私を、弄んでぇぇ!」


フロウヴェル・ゼフィツェン
ん、思ったのと違うけど。
冬華と一緒に、潜入成功…?
とりあえず、指示に従って、服、脱ぐの。
見られるのは…気にはしない、けど。

それにしても、いちご、何処かな…?
って言ってたら、いちごとルネ、助けに来てくれたの。
立場、逆になっちゃったけど…合流できて、よかったの。
いちご、大丈夫…?

とりあえず行こう、と思ったら、いきなり触手が出てきて、絡まれて…おっぱい搾られたりお股擦られたりして…
嫌なのに、気持ちよくなっちゃって、えっちな声出ちゃうの…
「いちごのなら、いくらでも良いけど、これは嫌、なの…!」
血統覚醒発動、皆に絡まった触手を引き千切りにかかるの。
皆が態勢立て直したら、解除。




「色仕掛け通じないのはアイドル的に自信無くしますが…この人達えっち目的ではないんですかね?」
 そう小声で呟く彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は地下に数ある部屋の内、何の変哲もない一室に連れ込まれていた。
 ベッドが大きいのだろう、部屋の半分を埋めるそれは柔らかく、ただ座っているだけのいちごの身体が深く沈み込んでいる。教団員の男と部屋に入るという事実に困惑することもあったが、毒を喰らえば皿までと覚悟を決めた矢先。ベッドに座るよう促されたいちごの前に出てきたのは、壁に掛けられたホワイトボードであった。
 痛いほどに手を握り、引き摺られ、目の色を変えた教団員の有様はまるで狂人のそれ。想定していたのは、触手を用いたセックス教団のようなものであった。しかし、蓋を開けてみればまるでそんな様子はない。いや、勿論その事実があるのは間違いないはずなのだが、いちごの見立てでは彼らから"性欲"を感じる事ができないのだ。
「よろしいですか? ですから我々教団と致しましては……」
 白熱するプレゼンは、生返事を返すいちごの様子など無視して盛り上がっていく。似たようなことを何度も説明しながら、自分たちがどれだけ高尚で、これからの世界に適応した存在になっていくのか。理解の出来ない感覚を延々と説明してくる。
「あの……」
 説法のような喋りは数十分と続き、それでも終わりが見えないことに嫌気が差してきた。小さな呟きを男に向けると、待ってましたとばかり顔を近づけ「なんでしょう!」と声を張り上げる。面倒だなあ、という思いはできるだけ顔に出さないよう努力しながら、いちごは突っつくような質問を投げかけた。
「……触手、ご存知です、よね?」
 笑顔が固まり、半眼の瞳がいちごを刺す。なぜそれを、という思いが瞳に現れた瞬間、いちごは自らの影から力を生み出した。
 一瞬で全身を拘束し、手足も口も、自由を奪い取る。ベッドの上に転がしたこの男は、少なくとも教祖ではないはずだ。上層部というものがあるとして、それが台車にゴミを乗せて捨てにいくだろうか。いや、そんなことはない。
 つまり、下っ端、一般の教団員であるはずだ。そんな男ですらUDCたるその存在を知っている。教祖だけが扱っているという事ではないという事実。嫌な予感が心をちりちりと焼くようであった。
「合流、合流しないと!」


 そわそわと落ち着かない影が揺れ動く。校舎の周りを欝蒼を茂る草葉の隙間から、桃色の影はぴょこぴょこと忙しない動きを見せていた。
 それは十数分ほど前から辺りをを見渡し、桃色の耳を何度も動かし、気が気でない様子であった。一分が過ぎ、五分が過ぎ、十分を超えた辺りが我慢の限界だったのだろう。誰かに見つかることも厭わず、目でもってじっくりと様子を伺い出していた。
 ルネ・アッシュフォード(妖狐の剣豪・f00601)はいつものおっとりとした表情を崩し、心配そうに通信機と校舎をと何度も見比べている。定時連絡の予定時間はとうに過ぎ、三人の友人の身に何かがあったという結論に行き着くのにそう時間はかからない。
 しかし、三人が同時に身動きが取れなくなる状況などあるのだろうか。もしもそんな状況に立ち会っているなら、自身が駆けつけた所でどれほどの意味があるのだろう。頭に渦巻くのはそんな理性的な考えと、救いたいという思い。ないまぜになりかけた思考が熱を持ち始めた時、周囲を伺っていた猟兵達が一斉に動き出す音を聞いた。
 それは送られた情報によるものだった。目的地の特定、駆除すべき対象の位置。ルネの手元の通信機にも送られた場所へ、外に待機していた猟兵たちと突入するのであれば力不足などあろうはずもない。
 迷わず地下へと進み、触手が溢れはじめた廊下をひた走る。
 呼ぶ三人の名前は銃撃音に消え、走る足は突如顔を出す触手によって阻まれた。 
 邪魔だ、とばかりに浮き上がる十の狐火を撃ち出すルネは、すぐにその名を呼び始める。
「いちごちゃん! 冬……いちごちゃん!」
 漸く見つけた一人目の友人。彩波いちごは今まさに部屋から飛び出し、大急ぎでそのドアを締める所だった。


「ルネさん! よかった……いえ、良くないん、ですけどぉ……おっ!」
 後ろ手に抑えたドアは、まるでその支えなど効かないとばかりに炸裂し、紫色の中身を吐き出して見せた。吹き飛ばされたいちごを受け止めたルネの視界には、うぞうぞと身悶えする触手が一杯に広がっている。
 ルネにしてみれば、ここに来るまでに何度も見てきた光景ではあったが、いちごにとっては衝撃的な状況なのだろう。背後から左右、騒がしく聞こえる戦闘音に迸る体液の音。戦闘区域のど真ん中に居るということを理解したいちごの顔は焦りを浮かべていた。
「行きますよ、二人と連絡が取れてないんです!」
 伸びる触手の魔の手から逃れるように、いちごの身体を引き起こし手を握る。ばたばたと走る二人の目には、同じ様に破られた部屋のドアから溢れる触手と、それを押し止める猟兵の姿があった。息絶えた紫の触手が床に横たわり、まさしくそこは戦場となっている。
「いくら連絡入れても返事がなくて、私……」
「大丈夫、あの二人ならきっと平気です!」
 励ますいちごの声に後押しされ、先頭を走っていたはずのルネはいつの間にか逆に手を引かれる形となっている。
 そして、走る二人はとある違和感に気づいた。ユーベルコード『フォックスファイア』で道を切り開きながら、破られていないドアが並ぶ廊下に差し掛かったのだ。その通りにも触手は溢れ出しているものの、それらは別の場所から出てきたのだろう。他の部屋の様に、部屋の内部から出てきたものではない。
「あの、もしかしてここって……」
 視線の先には、閉じられたままの白い扉。提供された情報と、そのマッピングの位置を比べてわかった。ここは階下への道とは違う、もう一つの場所。グリモア猟兵の話が頭に浮かぶ。大小様々な触手によって埋め尽くされた、紫の海。
 二人は顔を見合わせた。頭に浮かぶのは殆ど同じ、ぞっとする感覚に身を震わせながら、ルネはその扉を蹴破った。
 そこで見たのは、裸で外へと聞き耳をたてている緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)とフロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)の姿だった。


「ここで服を脱いでお待ち下さい……」
 むっつりと口を閉じ、そう言い放つのは教団員の男。魅惑的と言っても問題のない、ボディバランスの整った二人の女性。身を呈した誘惑に乗ることもなく、こうして常識はずれなことを言いながらその表情は変わらない。
「えと、あの……」
 口を開いたのは冬香である。先程男に迫ったときのような余裕の表情は何処かへ消え、赤らんだ頬を見せていた。
「見られていては、その」
「脱げない、でしょうか? 困りましたね、先程の様子から素質があるとお見受けしたのですが」
「そう、別に脱ぐくらい問題ない。別にこの人とシても」
 どす、と冬香の手刀がフロウヴェルの腹を打つ。ダメージなどありはしない軽いツッコミだったが、むっとした表情をみせたあと冬香を見つめ、頷いてみせる。
「うん、ベルも困る。別にあなたに見せるために脱ぐわけじゃないから」
 赤らんだ顔と無表情。しかし刺さる視線は強いもので、数秒の沈黙を経過すると、男は頭を下げた。
「ええ、分かりました。何にせよ、脱いでおいたほうが色々よろしいかと思います。脱いだ後は、ここでお待ち頂ければそれで構いません」
 男はもう一度頭を下げ、ゆったりとした足取りで廊下へと向かっていった。そうして残された二人である。
「いちご、どこかな」
 男が出ていったことを確認すると、即座に服を脱ぎ始めたのはベルだった。何の躊躇もない、大きな胸を震わせ、真っ白な衣装を折りたたみ籠へと置いていく。
「え、脱ぐんですの?」
 それに戸惑うのは冬香である。別に男を追い出したかっただけなのだ、言うとおりにする必要など無い。しかし、目の前でインナーも何もかも脱ぎさり、白い肌をみせるベルを見ていると脱がない自分がおかしいのかと錯覚してしまう。
「早く合流しないと……」
 そうして脱ぎきった状態で、当たり前の様にこれからの事を話し始める。
(脱ぐべきなんですの? あれ? あれ?)
 クエスチョンマークを頭に浮かべながら、絶対に違うと確信しながら。冬香は恐る恐る、一枚一枚身につけていたものを籠へと投げ始めた。二人分の通信機も籠の中。連絡がつかなかった理由は恐ろしいまで簡単ものであった


「え? なんで二人共裸なの?」
「何でそんな格好?!」
 突然開け放たれた部屋に、裸の友人が二人並んでいた。
 漸く出会えたという感動を抑え、なんでそんな姿に、という困惑が頭の中を駆け巡りぽかんとした表情を作り出す。
「何でっていちごを助けるためでしょーが!」
 流石に最後の羞恥心が邪魔をしていたのだろう。身を隠すマントだけを羽織った冬香は、二人の当然の疑問にそれを投げつけることで返答する。それに対しベルは恥ずかしそうな素振りも見せず、フリーズしたいちごの視線が自らに向くことを期待して、身体を見せつけているようにも見えた。
「いや、いやそうじゃなくて! 脱いでる場合じゃなくて!」
 漸く本筋を思いだしたルネは、投げられたマントを投げ返す。良いから服を着ろとばかりに視線を向けるものの、今この地下施設がどうなっているのか分かっていない二人はいささか緊張感が足りない。
 早く服を着て……その言葉は一気に大きくなる水音によってかき消された。
 一瞬の浮遊感。何が起こったかわからないまま、全身に冷や汗が溢れ出してくる。直後に襲い来る落下の感覚は、本能的な恐怖を呼び起こす。
 息を飲み、声を上げる。湧き上がってくる暴力的な甘い匂いに顔をしかめ、しかし冬香は一瞬だけ自らを取り戻してみせた。
 ユーベルコード『スカイステッパー』、一瞬で発動するその技は空を蹴る超常の技。空を蹴りその身を高く飛び上がらせる移動技であった。が、二度目のジャンプで足をぬめる腕に掴まれた冬香は、残りの回数を使うこと無く階下へと引き落とされていった。


 どぷん、と柔らかな衝撃が四人を包む。登ってきていた甘い香りは、その根源に近づくことで鼻を壊しかねないほどに濃く、強力なまでに侵食を始めていた。
 当然だが、呼吸をしない訳にはいかない。それぞれ閉じていた口を一瞬だけ開き、薄くなった酸素を取り込もうと息を吸い込む。そうして、揮発した粘液が肺へと侵入し、内側を甘く甘く犯していく。
 いちごの胴体をゆうに超える太さの触手が、落ちてきたいちごを受け止めていた。粘液とその柔らさかは十分に衝撃を吸収し、伸びた触手が手足を拘束してみせる。
 奥歯を噛み締め、視界いっぱいの触手を睨みつける。その精神を集中させ、自らの力を完成させてみせた。『異界の抱擁』、己が影から生みでた、紫とは違う色の細い触手。自らの力を超える膂力を期待し、手足の拘束を解こうと放った、はずだった。
「いちご……いちご! わた、私を弄んで……!」
 睨みつけていたはずの前方に現れたのは、触手ではなく全裸の冬香であった。縛り付け、引き離そうと動き回る触手へ飛び込み、豊満な身体をこすりつける。全身を濡らす粘液はピリピリと心地良く、いちごの触手に腰を押し付けるのはまるで彼と繋がっているようにすら感じられた。
 何度も名を呼び身体を押し付ける。いちごに比べて自由の効く冬香は、救出という理性よりも本能にしたがっている。彼のものと想像すらできる触手を掴み、身体にこすりつけ、撫で付ける。そんな行動はいちごが生み出した触手の行動を左右し、本能に従うように冬香の身体へと巻き付いて縛り上げてしまう。
 紫の触手を近づけないように、しかしその大きな触腕をベッドとしながら、瞳にハートマークを浮かべた冬香の身体を丁寧に撫でて弄び始めた。
「遊んでる、場合じゃ……二人とも!」
 海へ落ちたと同時に全身を粘液にまみれさせ、着てきた衣装を台無しにしてしまったのはルネである。それはいちごも同様であろうが、如何ともし難い男女の差というものがあり……身体に張り付き浮かび上がるボディラインは余りにも女性らしく、跳ね回る胸が一層のアピールを繰り返すと、紫の触手にまぎれていちごの触手も誘われるように伸びてきていた。
「いちご、ちゃん!? ちがう、まってそこじゃな……ん、ちょっと……」
 ルネの回りに浮かび上がる狐火。その火力は触手など優に焦がし、少なくとも場を膠着させるだけの力があっただろう。
 しかし、対象の群れの中に味方が居るとなれば話が変わってくる。距離感の掴めないこの場所で、加減が効くかもわからない範囲攻撃はリスクが高すぎる。何より、自らの胸に触手が這い回ってきているということは、それなりに近い場所に居るということでもあった。
 根本から絞り上げ、肉を揺らし溢れさせる。先端の根にぐるりと巻き付いた触手が、粘液を利用し上下に動いてみせた。それがこの海の中のものなのか、いちごのものなのかの判断はつかない。ただ、今のまま反撃を行う手段は、ルネには無かったのだ。
 そんな三人とは違い、触手の海の底の底。上下左右もわからない程に飲み込まれ、全身をくまなく嬲られていたのはフロウヴェルである。大小様々な触手が全身に張り付き、張り付くような粘液をこすりつけ弄ぶ。先端が平べったく、肉粒がブラシの様についた触手が、フロウヴェルの太ももからその奥へと張り付いた。両手を飲み込む口の様な触手は、その内側に指先ほどの突起を見せて、飲み込んだ先で細かな振動を与えている。
 あらゆる突起に巻き付き、先端を膨らませながら撫で付ける。吸い上げる小さな口のような先端が、全身にキスの痕を残してく。
 それら一つ一つは、確かに気持ちの良いものであった。フロウヴェルも、ある感情を知らなければ一時的にでも飲み込まれて居ただろう。
「いちごのなら、いくらでも良いけど」
 引き落とされ、最奥へ。数メートルはあろうかという触手の海の底へ連れ込まれ、本来ならばこのまま一昼夜を過ごすはずの修練の間。フロウヴェルは、たった一つの感情で、抗いがたい感覚に打ち勝ったのだ。
「これは嫌、なの…!」
 『血統覚醒』。小さな衝撃が海を揺らし、上部で弄ばれていた三人の拘束が解かれる。
 地震の様な揺れは続く。ぬめる触手をその指に掴み、肉をつまんで引きちぎる。自身の体積を優に超える大きさのそれも難なく掴み、引き抜き握りつぶす。
 全身を包んでいた触手の群れは、すぐさまその身を引き始める。しかし追撃の手はやまない。逃げる肉を掴み、振り下ろし、叩き潰す。爪で切り裂き、打ち据え、投げた先に見えたのは、割れた海のそこへと落ちてくる三人。一人一人受け止め、触手のベッドへ寝かせると、一言。
「潜入成功、なの」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エーカ・ライスフェルト
私も色も嫌いではないわ
他人の趣味に口を挟むつもりもないけれど
「これを許容するのは無理ね」
修練の間に急行した後、ウィザードロッドを構えます
たちの悪い麻薬と害獣を兼ねたような存在を放置はできませんから

私の目的は敵の数を減らすこと
敵を視認次第【ウィザード・ミサイル】の準備を始め、敵に気付かれ次第、85本出現する前でも炎の矢を撃ち込んでいきます

確実に倒せそうな相手を優先し、矢が刺さって反応しなくなった相手にも最低もう1本撃ち込んで止めを刺します
「嫌いな相手の能力を低く見積もるのは私の悪い癖ね」
止めの矢を撃ち込む
「だから普段より念入りにするの」

その後は後退しながら【属性攻撃】による単発炎矢で【時間稼ぎ】




 複数の情報が入り乱れ、慌ただしく作戦が進行していく。続々と地下へと走る猟兵の一団に紛れ、先へと向うのはエーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)その人であった。
 パーティーにでも行くようなドレスを身に纏い、裾を翻し走る姿は迷い込んだ一般人を思わせるものであった。だがその軽い足取りとパープルテンタクルズの腕を難なく躱す身のこなしは、戦いになれた者の動きそのもの。エーカ自身は手を出すこと無く、目的を同じとする猟兵たちの援護を背に受け、彼女はただまっすぐにその足を進めていく。
 触手の数が増え始めるその場所、かかる声と銃撃音が鳴り響く、激化した曲がり角に猟兵は殺到する。壁を思わせる量の触手の群れを前に各々が武器を持ち出すその先に、階下へ向う部屋があるはずなのだ。
 エーカの足は止まらない。目の前で銃撃に倒れる触手を踏みつけ、白い壁を蹴り上げ、壁の隙間に身を通す。地面を踏みしめる足は立ち止まること無く、背に迫る触手を避け、もう一度。蹴った壁の勢いで彼らの足元を通り抜けると、そこには二つに道が分かれていた。
 迷わない。一歩を踏み出すその先に見える一枚のドア。数メートル先のそこへ向けて進む足は、触手の手を逃れんと加速して……載せられる限りの衝撃を足に乗せ、蹴破って見せた。


 開いたドアの奥から漂ってくるのは、鼻をつまみたくなるような甘い香り。自然と険しくなる顔がエーカの美貌を崩すものの、その原因は匂いではない。視界一杯に広がる、触手の海が問題だったのだ。
 話には聞いていた、触手の海。紫色に粘る階下の惨状は、想像していた以上だった。マッピング結果によれば凡そ部屋十面分。そこに数メートルに渡るであろう高さの触手が、なにかに集中し弄んでいる。
 そこにはエーカが監視していた女もいた。すでに美しいと思った表情は影を潜め、まるで情婦の様に媚びた笑顔を、人ですらないそれに振りまき腰を振っている。
 精一杯の嬌声は、欠片だけ聞こえてくる。耳に入ってくるのはぬめるような水音ばかり。そこで何が行われているか知らない者が見れば、軟体動物が居る場所にしか見えないほどだろう。その規模は置いておくとして。
「これを許容するのは無理ね」
 存在が余りにも害を及ぼしすぎる。こうして誰かの手の中で飼われているとしても、この海に人間を落とすような輩を野放しにしておくわけには行かなかった。
 エーカが手にしたのは一本のウィザードロッド。念を込め、力を込める。視線は階下の触手の海、その大きさは想定を遥かに超えていたが、力が及ばないなどということはありえまい。
 だから、その力を発し、撃ち出す。


 八五本の炎の矢は、真っ直ぐ触手の海へと吸い込まれていった。もこもことうねり、波のように盛り上がる腕の打ち込まれ、その場で勢いよく燃え上がる。刺し穿ち数匹の触手をまとめ、動きを止めながら焼き殺していくものもあった。
 そんな触手の海の中でも戦闘が始まったようで、エーカが撃ち出す矢とは別の炎が現れては消え、焦げ臭い匂いを漂わせた。跳ね回る触手が投げ捨てられ、切り捨てられては食い破られる。直接その姿を見ることは叶わないが、エーカはその存在に口の端を吊り上げた。
 ここに飛び込む馬鹿がいるなんて。愚かしい行動ではあるが、それが己が力を発揮できるというのならば止めることはしない。それならば、エーカは彼らの援護をするだけだ。
 殆ど連続で撃ち出されていく矢は、触手の動きを縛り付ける。延焼する炎が小さな触手を焼き、未だ動きのあるものに打ち込まれ更に延焼させていく。強い、というよりもいやらしい。面倒な戦い方をするエーカに対し、階下の触手は特に大きな腕を持ち上げてみせた。
 入り口に陣取る猟兵を驚異とみなし、質量と腕力によって排除しようと動き始めたのだ。だがそれは、エーカにとって好都合な状況でもある。
 開いたドアからエーカを打ち据えようと迫る触手。それに刺さる……八五本の炎の矢。新たに呼び出した燃えるそれを全て叩き込むと、嫌がり暴れまわる触手が小さな触手を弾き、潰していく。
「嫌いな相手の能力を低く見積もるのは私の悪い癖ね」
 だが、まだ足りない。暴れる触手はその正面を黒く焦がしながらも、エーカを見据え突っ込んでくる。
「だから普段より念入りにするの」
 更に呼び出された炎の矢。同じ数だけ生み出したそれが、炭化したそこを突き破り体内へと殺到する。そうして、弾けるように燃え上がった特大の触手は、その身体を散らせ、崩れ落ちた。
「後は小さいやつだけ、ほら、がんばって!」
 声を掛けたのは、階下で戦う何者か。手助けはするものの、流石に下りて戦うだけの蛮勇をエーカは持ち合わせてはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:猫背

👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵の活躍は、教団が持つ触手戦力の七割を殲滅して見せた。未だ隠し持ち、どこかから湧いて出るものもあるが、既にそれは敵戦力として数えて良いものではない。
 いくらかの猟兵を後詰めに残し、多数の猟兵は階下へと進んだ。
 あるものは階段を使い。あるものは、修練の間と呼ばれる大部屋の、強化アクリルを叩き割り。
 地下の奥、修練の間と同等の広さをもつ大広間へと足を進めていく。

 そうして、そこに待っていたのは一つの影。
 薄明かりに照らされたその場所に、フード姿のそれがあった。
「なぜだ。なぜ、邪魔をする」
 フードをあげ、膨らみゆがみきった顔を晒し、虚ろに視線を泳がせている。
 人語を話すその邪神の眷属は、ただ悲しそうに猟兵たちを見つめ、近づいた。
 静かに、ただ静かに。上階の喧騒が嘘のように、戦いは始まった。


●マスターから(以下、後に削除予定)
 おはようございます、三杉日和です。いつになったら修正出来るようになるのでしょう。
 
 第三章は『膨らむ頭の人間』との戦闘です。
 今シナリオの大ボスとなります、広さを確保してある戦いやすい場所となっておりますので、各々全力で挑むことが出来るかと思います。

 大広間に特別な仕掛け等ありません。こういう事したら有利になるのでは、などの提案は受け付けておりますが、余り有利にならないと判断、もしくはリプレイにし辛いなどの場合は、プレイングを採用しても部分却下する場合があります。
 ですので、余りそこの部分ばかり書くとプレイングが薄くなるかもしれません。
 そもそも普通に戦ってかっこよく倒す事は十分に可能なので、皆さん思い思いの戦いを見せてください。
 あと、流石にここであれな描写をする展開は無いかと思います。理由付けがしっかりしていれば別ですが、難しいのではないでしょうか。

 以上となります、よろしくお願いしまします。
ルネ・アッシュフォード
服べとべとするなぁ、寮に帰ったらお風呂に入りたいなぁ。みんなと一緒に
それにはボスを片付けないとね?

「(あ、ベルちゃん。いちごちゃんに上着かけてもらってる羨まし…いやいや、状況が状況だもんね?)」
と思いつつ羨まし気な視線を送りながら、皆について先に進む

ボスと対面したら、刀での斬撃と【フォックスファイア】を織り交ぜつつ
周りと連携を取って戦っていくね、隙があれば経典を斬り落とす
「貴方は猟兵として見過ごせない。切り捨てさせてもらうわね」

普段とは違う剣鬼としての一面を見せつつ、ベルちゃんへの攻撃を切り落としたりもしていく。いちごちゃんの合図があれば
【フォックスファイア】を同時に放ち合わせた巨大な炎で攻撃


フロウヴェル・ゼフィツェン
皆で、ボスやっつけるの。

いちごが上着貸してくれるから、ひとまずそれ着るの。
濡れてるし、変な臭いする、けど…それでも、いちごの服。なんか、嬉しいの。
「…♪」(袖にすりすり頬擦り)
「…?ルネ、どしたの?」
でも、やっぱり、終わったらお風呂ですっきりしたいの。
…その時は、いちごも一緒に入るの。

ボスと対面したら、リザレクト・オブリビオン発動。
騎士は敵に切り込んで皆が攻撃する隙を作らせたり、皆と連携する形で戦わせるの。
蛇竜には、敵の攻撃に割り込む形で攻撃させたりして、ベルを守ってもらうの。出来たら皆も守らせるの。
ベル自身はとにかく敵の攻撃受けないよう回避専念。もし召喚が解除されたらもう一回呼び出すの。


彩波・いちご
「なんで私のせいなんですかっ?!」
冬香さん(f05538)に苦情言いつつ、姿は見ないように視線そらし
ベルさん(f01233)の方を向いて
「とりあえずこれを…」
濡れてますけど上着渡します
さすがに全裸のままはまずいですし
…ルネさん(f00601)はなんで羨ましそうなんです?
「終わったらお風呂入らないとですね…」

ともあれ触手で壁壊して先に進みます

ボスを見つけたら
「なぜこんな教団を?」
「目的はなんですか?」
と尋ねつつ、【異界の抱擁】で攻撃
束縛できたら
「ルネさん、一緒に!」
【フォックスファイア】を同時に
二人分の狐火を合わせた巨大な炎で攻撃です!
…裸マントで飛び回ってる冬香さんの中身は見えなかった振りで…


緋薙・冬香
「ったく、なんてこと!」
「これはひとえにいちごのせいね!」(訳:魅力的な意味ととらぶる力と

仕方ない、一緒にお風呂で許してあげるわ!

それはさておき、さっきの汚名はここで返上するわ!(血統覚醒を使用して赤い目になって)

いちごが触手で敵を拘束するから、
私はスカイステッパーで敵の背後側上空に
「さぁ、いい悲鳴(こえ)を聞かせなさい!」
急降下飛び蹴りで攻撃よ


★なお、前章からの流れで言うと裸マント状態だが
大事なところはいちごと恋華荘の仲間以外には見えない謎仕様
「いちごー?目をそらす必要は無くってよ?」
敵には見えるかもしれないけどその場合は塵も残さず葬り去ります、無問題




 階下の最奥、大広間へと続く道。一番乗りで進む集団は、衣服と素肌を大量の粘液で濡らす四人の猟兵だった。姦しく話す声は黄色く広がり、惨状の原因と対峙する直前とは思えないゆるさを纏っている。
「ったく、なんてこと!」
 そんな中、憤慨を顕にするのは緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)であった。濡れたマントを身体に貼り付け、ボディラインを浮き出しながらぷりぷりと怒った顔を見せている。
「これはひとえにいちごのせいね!」
 そうして膨らんだ頬を向けるのは、彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)に対して。じっと見つめるその瞳に怒りの色はないが、まるで責任の一つも取らせようという算段を思わせる色も匂わせていた。なんで私のせいなんですか、と苦情を申し立てるいちごに対してもその姿勢は崩さない。傍から見れば微笑ましいやり取りではあったが、根が真面目ないちごにしてみれば言葉を額面通り受け取るしか無かった。
 言いがかりのような言葉ではあるが、どうしても強く出ることが出来ないでいる。並走する彼女から視線を反らし、顔を赤くするその姿は冬香にとって魅力的で仕方なかったのだろう。怒りを表していたはずの表情が途端ににやつき、初心な反応を楽しむものに変わってしまうが、それを見咎めるものは誰も居ない。
 逃げるように視線を移した先にいたのは、上着を一枚だけ羽織り、大きな胸をぎちぎちと締め付けるフロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)であった。サイズが違うのは当然で、それは裸のまま駆け出そうとしていたフロウヴェルにいちごが貸した服だったから。
 とりあえずこれを……と渡してからしばらく経つが、フロウヴェンは通した袖に頬ずりするのを一向にやめる気配がない。別段やめろと言う気もないのは確かだが、なぜそこまで嬉しそうにしているのかは分からずにいた。そんな視線に気づいたフロウヴェンは優しく微笑み、どうしたの、と声を掛けてくるのだ。
 冬香とは別の意味合いで、視線に困ってしまう。ボディラインを見せつけるようなそれではなく、押さえつけ身体の柔らかさを表すように膨らんだ、馴染みの服。そのまま視線はまたあらぬ方向へ。視界に入るのは、二人とは違い自らの衣服を着て……代わりにどろどろに濡らしたルネ・アッシュフォード(妖狐の剣豪・f00601)だ。
 彼女もまた、先程のいちごのようにフロウヴェルへとその視線を向けていた。しかし、いちごにはその視線の意味はわからない。やはり女性同士でも、見とれてしまうような身体はあるのか、と少しずれた考えに浸っている。
 ルネが見ていたのは、渡された服である。スタイルの良さ、という点でいえばここにいる三人の女性に差異はあれど違いはない。羨む物があるとしたら、そんなものではなく……。
「…?ルネ、どしたの?」
「な、なんでもない!」
 視線の意図が伝わらなかったのは、果たしてルネにとってよかったことなのかどうなのか。それほど長くはない道中は、冬香がいちごに身体を擦り寄せるなどのハプニングもありながら、緊張の色を見せない和やかなものとなっていた。


 四人の足は、道の様子が変わったそこでピタリと止まった。
 いちごを先頭に、三人が背後を固め円形の大広間の中心を見やる。そこには一つの佇む影、フードを被った上下白の教団服。グリモア猟兵にきいた情報に間違いがなければ、あれが。
「なぜ、こんな教団を?」
 それは、潜入を開始してからいちごが疑問に思っていた事であった。始めこそ淫蕩にふけるセックス教団、邪神の意のままに動く邪教であると考えていた。邪教であることには違いない、神の眷属を用い、私利私欲のために人を使い、動かしているのだから。
「なぜだ。なぜ、邪魔をする」
 帰ってきた言葉は明確ではない。まるで通じない会話であったが、聞かずには居られなかった。
「目的……目的はなんですか!」
 フードの奥に見える小さな輝き。ひくすぎる位置にあるそれが目だと気づくのに、いくらか時間がかかってしまう。対峙する二人はそのままに、背後に控えて居た三人はそれぞれ散開し攻撃の隙を伺っていた。
「……救済」
 短い言葉、それは飽くほど聞く邪教の戯言。会話は無意味だと思わせるに十分な返答であった。
「行きます!」
 本来であれば無用な掛け声だったが、この場に置いては重要な一声だった。薄い緊張感を纏っていた四人は、その一瞬で戦闘状態へと移行し、意思を硬く芯へと掲げる。掛け声の残響は、瞬間始まる戦闘音にかき消されていった。


 真っ先に駆け出したのは彩波いちご。その距離を詰めながら発動したのは、ユーベルコード『異界の抱擁』。彼の影から浮き上がる大量の触手は、一本残らずフードの男に詰め寄りその身を拘束せんと手を伸ばす。
 ジュッ、という焦げくささがいちごの鼻に香る。殺到する触手の群れを焼いたのは、フードを外した教祖が放つ、炎であった。教祖……それは性別すらわからない。盛り上がり、変形したか頭部は上下に二つの目を置き、歪んだ口は閉じること無く唾液を零している。硬化した肉は怪物を思わせる形になり、毛羽立った皮膚は既に動物のものとも思えない。
 むき出しの歯がガチガチと震え、しかし爛々と輝く視線に籠った思いは、あまりにも強い。
 それは衣服をもやし、全身を炎で包んだ。頭部ほどではないが、身体中の肉も既に人のソレとは違って見える。火に焦げる肌も、まるで彼自身へのダメージになっているようには思えない。
 そして、手にした経典。そこから伸びる濃い炎が、いちごの触手を焼いてみせていた。
「この……!」
 いくつかの触手を盾に、伸びる腕はその身体を縛り付けた。焦げる匂いに眉を寄せても、それは一瞬で済むはずだったから。
 異形の背後から迫るのは、二体の死霊。フロウヴェルが召喚した、死霊騎士と死霊蛇竜。剣と盾を構えた亡霊は、刺し違えんと剣を穿ち、獰猛な雄叫びを上げる蛇龍が膨らんだ頭に噛み付いた。
 それは半分ほど成功したと言える。人程のサイズの異形は、抵抗も出来ないまま齧られ、貫かれた。しかし、直後に聞こえてくるのは恍惚の声。触れたモノに炎を宿し、触手と死霊を焼くように燃え広げさせていく。
 火の手の回りは、異形の一心できまるのだろうか。騎士の纏う鎧を溶かし、刺さった剣をその身に固定させる。噛み付いた蛇龍を炎で包み、身体を縛り付ける触手を焼き滅ぼさんと燃え上がる。
 そして、聞こえるのは余りにも強い嬌声。男とも女ともつかない声は、広い広い大広間に響き渡り、耳をつんざく凶器となった。


「聞きたいのはそんな声じゃ……ない!
 拘束が解かれるだけならいい。しかし、眼の前で自らの戦力を削られるなどあってはならない。
 それは上方、燃え上がる炎を向かう先。マント一枚で空を掛けていたのは冬香である。十数回の空中ジャンプは十二分の落下距離を稼いでみせた。前後からの陽動攻撃、そうして空中からの重力を用いた強力な一撃。後詰めの一撃も用意していたとはいえ、この状況はまるで想定外であった。
 声と共に落下するその体をぐるりと回転させ、燃え盛る異形の首を膝が思い切り打ち付ける。
 たたらを踏んでよろめく身体が炎を一瞬消し去ると、触手が手を離し、燃える二つの死霊は強引に身体を離してみせた。
 手応えはあった。およそ人の姿からは離れた異形ではあるが、当てた感触は人に近いものを感じていた。
「ルネ!」
「いき、ます!」
 本来であればこの連携で終わっていたはずだった。後詰めはしぶとい敵を処理するため、下手に肉弾戦を長引かせるような事を、邪神相手にするものではないから。
 だが、呼びかけに答えた声の主に一旦預けるしか無い。殆ど奇襲に近いそれを、真っ向から受け止め返されたのだ。体勢を整える一瞬の間、今の一合でわかる異形の底知れ無さを、彼女一人に任せるしかない。
 異形はまるで周囲を見渡すことはしない。ただ、来たものを受け入れ対応する。灰色の太刀をその細く硬く、尖った手で受け止める。肉に食い込む手応えと、骨のようななにかに阻まれ振り抜くことが出来ない感触。
 引き抜こうと刀を引けば、その手はあっさり離され切断にはいたらない。一歩離れるその瞬間に放つ『フォックスファイア』、それに合わせて経典から膨らむ炎が合わさり、周囲を火で溢れかえさせる。視界が戻るその前に、ルネは刀を振り下ろし……もう一度、触手が異形を包み、ボロボロになった二つの死霊が襲いかかった。
 振り抜かれる刀。一瞬の身じろぎだけが出来る異形のその手から経典を斬り捨てる。
 やった、そんな感傷は彼の回りに浮き上がる触手の群れが奪い去った。パープルテンタクルズに比べれば小さく弱々しい姿、しかしそれらは異形の傷口へと群がり、触手を差し込んでいったのだ。
 ぬらぬらと触腕を蠢かし、四人を牽制する後ろ。異形の嬌声は更に大きく広がっていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エーカ・ライスフェルト
WIZ

敵が使うのは防御的な術のようね
こういう時は小細工抜きの正面突破が有効だと思うの
【属性攻撃】をユーベルコードに付与できるかどうか自信はないけれど、多少時間がかかっても【ウィザード・ミサイル】を威力重視にして撃ち込みたいわ
使うタイミングは、前衛猟兵が敵と接触する前か、前衛猟兵が敵から離れた直後
「何故邪魔をすると言ったわね。教えてあげる。邪魔だからよ」

ドレス姿の【存在感】がある女が術の準備をしていたら、積極的に襲いかかってくるかもしれない
そのときは【見切り】で捕縛と致命傷だけは避けるよう努力するわ
術が打てなくなっても大きな問題はない。私に意識を向けた分他の猟兵に対し無防備になるということだから


夕凪・悠那
こいつが元凶か。
UDCに追加報酬請求しないとなぁ。

ゲームデバイスで具現化した双剣士キャラで戦うけど、苦戦していたら流れを変えるために覚悟を決める。
正直嫌なんだけど……仕方ない。
ボクが使って効果があるか判らないけど気休めにはなるかな。
バトルキャラクターズから拝借してきた回復促進薬を注射して攻撃に飛び込み【異法複製】
狙いは侵食する狂気の炎。
一発だけなら大丈夫、耐える!
耐えきったら即時変身(無意識で少し真の姿と混じって、邪なる炎纏った異形+ノイズ)
変身を打ち消したボスに炎を撃ち込む。

慈善事業のつもりか知らないけど、えロエろな救いトかお断りダ!
教典から放つ炎で汚物は消毒!
燃えロ燃えろ、灰にナレ!




「下がって!」
 耳を塞ぎたくなる嬌声が響いて止まない大広間。それを一喝するような怒声に、異形へと攻撃を加えていた猟兵達は各々大きく身を引いた。
 直後に降り注ぐ、濃い赤を宿した魔法の矢。ユーベルコード『ウィザード・ミサイル』は猟兵が稼いだ時間を使い、属性強化の力をもって強い貫通力と打撃力を備えた必殺の技と化していた。
 炎熱の尾を引きながら降り注ぐ九十本のそれは、まるで小型のミサイルを思わせる速度と質量を幻視させる。そしてそれは間違いなく、異形の回りに浮かぶ触手を打ち据え一瞬で焦がして見せた。弾ける触手の肉は辺りに散らばり、熱で焼け焦げていく。そんな様を見せつけながら、異形はなおもその場に立ち尽くし、床に穴をあけるほどの火力を受け続けていた。
 身体に張り付いた触手の数が増えていく。着膨れしたように太り始める身体を削る魔法の矢が半分程になっところで、漸く一撃がその肩を貫いた。喘ぐ声はまさしく快楽によるもの。耳障りとしか言いようがないその声を塞ごうと頭へ飛ぶ矢も、異形は身じろぐ様子すら無い。
 刺さり、穿つ。歪に膨らみ固まったその頭に、矢が刺さり燃え上がる。広がる炎が気流と炎熱の音を上げながらも、その傷を塞ぐように生み出された触手が覆いかぶさり……声を上げる。
「なぜだ……」
 最後の一本が胴体を貫くと、漸くその悲鳴を止めた。数々空いた穴に、うじゅるうじゅると触手が群がる姿は、死体に這い寄る蛆のようでもある。血の一滴も垂らさないそれは、虚ろに空いた眼窩を夜色のドレスを纏った女、エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)に向けた。


「なぜ、と聞いたわね?」
 ヒールの音と響かせ、一歩一歩近づいてみせる。その顔は余裕を見せながら、しかし隙を見せる様子はない。「教えてあげる。あなたが、邪魔だからよ」
 に、と笑顔を見せたエーカの背後から飛び上がる影。両手に構えた二本の剣を振りかぶり、触手に塗れたそれへと振り下ろす。
 飛沫を上げるのは触手の体液ばかりだが、その奥に佇む皮膚を切り裂いた手応えがあった。荒いポリゴンを丁寧なテクスチャで覆っているのは、一体の双剣士。ゲームから飛び出てきたその佇まいは、ファンタジー世界のまんまだった。
 淀み無く動き右手と左手。左右から伸びる刃が触手の壁を切り裂き、舞うように回転すれば刻まれた肉が煙のように散り上がる。しかし、足りない。
 次の一撃を叩き込もうと踏み込んだ足を、異形に纏わりつく触手が掴んで払う。傷口に添うように触手を張り付けながら、細く硬い指を双剣士の首に食い込ませた。
 締め上げることもしない。異形はその手を思い切り握り込み、双剣士を砕こうとしていた。
 双剣士など眼中にない。まるでそう言わんとするように異形の眼窩はエーカを睨みつけ、全身から溢れ出す炎が色濃く燃え上がっていく。
 小さな舌打ち、それはエーカの背後から。飛び上がり切りかかったそれとは違う、地を這うような短距離ダッシュ。苦渋の表情に満ちた猟兵が飛び出すのを確認すると、異形は空いた片手を向けてみせた。
 生み出されるのは炎。眼の前に現れたそれは猟兵に群がり、生身の身体を焼き、焦がす。
 双剣士を握っていた腕からも炎が上がる。砕くではなく、燃やす。異形の身を焼く炎は、触れた者も焦がしていく。


 夕凪・悠那(電脳魔・f08384)は焦げる肌の感触に、ただひたすら耐えていた。握りしめた注射器は、少し前の戦いで自らの能力が作り上げた一本の回復役……正確には、麻酔薬。それに身体を癒す力なんてものはない。ただ、感覚を麻痺させ痛みを誤魔化す、そういう物。
 ぐらつく頭は焼ける感覚のせいなのか、それとも薬のせいなのか。わからないまま炎を受けきり、黒焦げの顔で異形を睨みつけ、燃えるその腕を掴み取る。
 そうして、ようやく発動するユーベルコード。『異法複製』、それは自らが受けたユーベルコードを解析し、打ち消す執念の技。喉を焼かれた悠那は空気すら取り込めないまま、掴んだその腕に力を込める。
 一瞬で掻き消える炎は二人へと迫る熱を消し去り、触手に塗れた異形がただ立ち尽くすだけとなった。しかし、まだ終わらない。終わるわけがない。
 こひゅ、と声にならない声を上げた悠那は、その身を一瞬ブレさせた。そして現れた姿は、まるで眼の前の異形の様に身体に纏わりつく邪な炎。輪郭も朧気になったその瞬間、異形の身体の内部から紅に染まった炎が吹き出し、舞い上がったのだ。
 一歩二歩と後ろに下がり、傷口を含む身体の穴から吹き出る炎を押さえつける。内部から焼き尽くさんとする、異形から奪ったその力。真の姿を表した悠那は、炎に焼かれたその記憶をぶつけるように声を上げる。
「燃えロ燃えろ、灰にナレ!」
 異形の身を包む炎は一瞬だけ。強い火力に異形を焦がし、あとに残るのは焼かれる前の悠那の姿だった。エーカはその場に倒れ込む悠那を支えると、強い意思の宿った視線を焦げた異形へとぶつける。それに相対し視線を返す異形ではあったが、すぐには攻撃の手を振るうことすら出来ない。
 始めの猟兵との一合から、凡そ数十秒。全身を触手にまみれさせながら、しかし既に声を上げることすら出来ない異形は、その体を震わせた。
 ずる、とぬめるような音。眼の前に現れたのは、傷を負っていないもう一体の異形。片膝を着き触手に塗れた本体は、焼けただれた眼窩を猟兵たちへ向け、大きな息を繰り返している。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御狐・稲見之守
姫子殿(f06748)怖いのう、あんまり怒らせんとこ。
まあ、いかなる教えがあろうとも怒れる乙女の前には形無し、か。
おお怖い怖い。

[WIZ]ワシの【破魔】と【火炎耐性】の力で邪炎なぞ憶するところではない。
炎を耐えのけた後、【七星七縛符】【破魔】の力で彼奴の動きを封じにかかる。
七星七縛符、星主坐す北斗七曜の御光以て禍神此処に伏せしめたり。
動きを封じたら後は姫子殿の禁じ手とやらの出番じゃナ。
禁じ手っていいのかソレ。

(すんと鼻を鳴らしニヤニヤと)
……姫子殿、後でその身に残る媚毒をワシが吸い出すのもやぶさかではないがー?

細部・セリフ等はMS殿にお任せす。


御劔・姫子
【POW判定】『姫子は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の教団を滅せねばならぬと決意した』
…うち、ほんまに怒ってるんやで?「何故邪魔をする」っていってはるけど、あんなんされて怒らへん人いーひんよな?
ふつふつと沸き上がる憤怒と、僅かに残された媚毒による興奮を剣に込めて、異形と対峙する…うち、あんたを斬らん限り、止まる気はあらへんで。
御狐はん(f00307)の【七星七縛符】で動きを止めた相手に、うちも【破魔】の力を込めて…【禁じ手・鏑劔】を放つ!
御劔やなく…うち本人としての怒りを示したる。この技はその証やっ!
※御狐さんとの協力プレイを希望します、細部のアドリブについてはお任せ致します。




「面倒しかあらしまへんなぁ……全く!」
 新たに現れた異形の前に、立ち塞がる一人の猟兵。桜と蒼の和装に身を包んだその女は、緩やかな言葉と共に鯉口を切った。
 教典を片手に、本体とは違いふらふらと揺れる頭が膨れたその姿。よだれを零しながらニヤつくそれは、明らかに本体とは違う様子であったが、それが目の前の驚異となれば様子の差など意識する必要はない。
 とりあえず、とばかりに振り抜いた刀が、今まさに吐き出されようとしていた炎の根本を切って振り払う。青袴に隠れた足が床を滑り、秘伝とも言える歩法が改めて吐き出された炎を避けて見せた。
 動く身体の慣性にひねりを加え、その手にある教典を断ち切ろうと刃を伸ばす……しかし、それは床材よりも硬い異形の身体に阻まれた。金属音めいた音に眉を潜め、異形を中心にぐるりと円を描いて進む。
「何やお辛そうにしてはるなぁ? ほんでも、うちもちっと辛い……いいます、かっ! 怒っててなぁ!」
 和装は粘液に濡れ、動き回る度に全身にそよぐ空気が薄ら寒い。だがそれ以上に身体を犯す粘液の成分がぴりぴりと熱を上げさせ、発汗と発熱を促している。赤い頬もそのせいか、しかし怒りに震える瞳が違うと物語っている。
「あんなんされて、喜んでるんやと思てはるんやったら……うち、あんたを斬らん限り、止まらへんで……!」
 そう言って身を低く構え、大きく広がる袴がその足を隠す。抜き身の刀を下段右に構え、そこから前へと動く身体は噴き出す炎に毛先を焦がしながらも、避ける。翻る刀が炎の赤を纏い、その教典を付け狙っていた。風切り音は、つまり狙いを外した証。
 御劔・姫子(はんなり剣客乙女・f06748)は振り抜いた刀を手に、しかし笑っていた。琥珀色の瞳に映る小さな姿を見止めるだけで、一旦の勝利を確信したのだ。


 異形の身体が猛烈な炎に包まれる。熱に焦げうなされる怨嗟に塗れた声を、苦しげに吐き出しながらの豪炎。
 それは異形が持つ予感の結果である。眼の前の面倒な刀剣使いが、囮であるという予感。一振りが空を切り、なおも自身に満ちた顔を見せている。それが尋常であるというなら、猟兵とはなんという気ぶりであろうか。
 だが、その予感は正しく未来を予測した。背後から飛びかかる気配に気づくやいなや、その瞬間に燃え上がる炎は自らの身を焼きながら、周囲と自身を隔絶する壁となる。
 もう一度、目の前の刀剣使いに教典が生む業火を吹付け、それで終りとなるはずだった。
「ほい、っと」
 背後の気配はまるで炎を気にしない。盛る業火を身に受けて尚、余裕の面持ちで異形の背を叩いたのだ。
 途端に消え去る炎の渦。業火を吐き出そうと教典を向けるものの、力を失ったようにひらひらとページがめくれるだけ。
 動揺は身体の動きを奪う。何が起こったのか理解をする前に、翻る剣閃が視界に映った。一つ目で教典が断ち切られる。それに驚いてる余裕などもない。
 間も無く、目の前に飛来する短刀。喉を刺し、半ばまで埋まる刃がその場に留まる。何をされたのかと意識を奪われるその間。一瞬の間を置くこと無く……降り注ぐ一閃。
 表皮を裂き、肉を裂く。骨を砕くその袈裟斬りは、異形の姿を分断する。
 血も、肉も飛ぶことはない。ブレる輪郭が痙攣のように震え上がり、もう一つの異形は音もなく姿を消した。
 払う血も脂もない。振り抜いた刀をゆっくりと鞘に納めると、鬱憤を払い除けたかのように、意地悪そうに笑みを浮かべた。


 御狐・稲見之守(お稲見さん・f00307)は少しだけ焦げた髪先を弄り、姫子の尻を叩いてねぎらう。
「うむ、お疲れさんじゃな。いやはや、素晴らしい動きじゃった……しかし」
 小さな身体から出てくる年寄りめいたその言葉。濡れた掌がぴりぴりと痺れる感覚を改めて感じ、それを全身に浴びたまま戦い続ける眼の前の少女を怪訝な目でみていた。その頭には、よろしくない想像が浮かんでいる。
「姫子殿は、こういう気分の時のほうが強くなったりするんじゃろうか……?」
 背後から聞こえる銃の掃射と、切り結び、切り落とす剣閃の音。
「アホなこと言いないな。こんなん本調子やあらへんもん」
 ふーん、とぬらつく手をネバネバと開閉し、にまにまとと姫子を見上げる小さな身体。なんやの、と唇を尖らせる後ろから、突進するような破砕音と駆動音。
「……姫子殿、後でその身に残る媚毒をワシが吸い出すのもやぶさかではないがー?」
 腰元に鼻を寄せ、わざとらしく匂いを嗅いで見せる稲見之守に、姫子は赤い顔でその頭をぽんぽんと叩いてみせる。
 何のことはない他愛ない会話。二人はゆったりと歩き、大広間から距離を取る。和やかな雰囲気の二人であったが、それはもう勝敗が決したと理解したからであった。
 瀕死の教祖から生まれた分体。それが落ちた今、猟兵の敵となるものは居なくなったのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェラフィール・ディー
■アリア・ティアラリード(f04271)と同行

さて、先行をお任せした分は働きましょう

「調子に乗るからこうなるのです。でも評価は覆らないので安心して下さいませ」
もちろんいつでもそういう評価です
とはいえここで挽回せずに帰られても困ります
…まぁ、今回はサポート…するということに致しましょう

【刻印呪眼:狂瀾庭園】
再び荒ぶる触手群を召喚
油断ならぬ相手ですが、囮程度にはなるでしょう
…召喚者である私自身を含めて
《呪詛》を纏う魔眼はあるいは良い生贄と見えるかもしれぬという《誘惑》
主人への攻撃を触腕で払い支援致します

「全力はいいのですが、途中で力尽きぬようにお願い致します」
…ま、その時は受け止めておきましょうか


アリア・ティアラリード
■シェラフィール・ディー(f03454)と同行


「うう…あんな姿を見られちゃうなんて…」

でもお姉ちゃんやる時はやります!全力です!
目を閉じ一つ深呼吸
「そろそろ起きてくれると嬉しいかな…『亞璃亜』ちゃん?」
次の瞬間、眩いフォース光が私を包み

【再起動:第一人格『御苑・亞璃亜』】

覚醒する、冷徹で戦闘に特化した本当の人格
そこに立っているのは、半人半機の姫騎士
アリアの【真の姿】…──光の騎士

輝く四肢から飛び散る光の破片、恐らくこの状態で戦えるのは数分…
だがここには仲間の猟兵も、何よりすぐそこにシェフィがいる。
だから数分で十分
《勇気》を持って踏み出します!

「……───御苑・亞璃亜。オブリビオンを撃滅します」


藤原・紫苑
「触手を人に埋め込む様な輩を放置できんさ」

目的は不明瞭だが邪神の眷属の企てをそのままには出来ん
邪神は目覚めさせてはならない…父と母のような悲しい出来事を増やさない為にこの輩に鉄槌を

「UDC眷属の掃討を開始する。Exterminator対邪神戦闘モードに移行」
周りの猟兵に協力して数で力量差をカバーしつつ距離を保ち応戦
【七星七縛符】でユーベルコードを封じつつ記憶消去銃を対邪神戦闘モードに可変しレーザー攻撃
サイバーアイで「二回攻撃」を主軸に護符を本命のように投げ
チャクラムを遠隔射出して視界外から[フェイント]交えつつ[だまし討ち][暗殺]を駆使

戦闘後は教団員の記憶を記憶消去銃で消去して去る




「うう…あんな姿を見られちゃうなんて…」
 ぬらつく衣服を引きずりながら、一足遅れて大広間へと向う二人の猟兵がいた。
「調子に乗るからこうなるのです。でも評価は覆らないので安心して下さいませ」
 ぱたぱたと走る二人の耳には、既に激化し始めた戦いの音が聞こえ始めている。轟音と嬌声、何が行われているのか想像もできないが、少なくともまともな戦場でないことだけは確かのようだ。
 アリア・ティアラリード(エトワールシュバリエ・f04271)は濡れ鼠のような衣服を無理矢理に正しながら。シェラフィール・ディー(オニキスロード・f03454)はそんな彼女を整えながら、粘液の足跡を残して駆け抜ける。彼女らに続き、続々と猟兵が大広間へと足を進め、その足音は大きくなっていった。
 二人が漸く大広間へたどり着いたのは戦闘が始まって数分もかからない内。まさに今、異形の身体から炎が吹き上がり、分体を生み出したその瞬間であった。状況を確認する間もなく、続々と集まりだした猟兵たちもどう動くべきかとその足を止めている。状況の説明もないままだが、先行して戦っていた猟兵達は致命傷こそ無いものの疲弊しているのは見て取れた。
 元気なほう、任せてもらえますやろか。そんな独特なイントネーションを耳にすると、少女が一人駆け出した。元気な方、それは見ればわかるほどに疲弊具合が違っている。片膝をついたものと、ゆらゆらと揺れ炎を上げるもの。
「……なるほど、足止めをしていただけるようです」
 そう判断したのはシェラフィール。このタイプの敵を相手取った事はなかったが、情報だけはその頭の中にあった。それは瀕死になった本体が最後の力を使い生み出す分体。ユーベルコードの産物だ、つまり。
「本体を倒せば終わり、だよね?」
 アリアの疑問に首肯で応える。そうと決まれば、アリアは濡れた袖を捲り上げ、ふんすと力を込めたのだ。


 すぐ横で激戦を繰り返す二人の猟兵。そこから離れた場所へと移動する異形、それは哀れに見えた。しかし、感じる力の大きさは分体のそれと変わらない。傷つき、瀕死であるはずのその姿が、余りにもおぞましく感じてしまう。
 体中を這いずり回る触手がまるで傷口を癒やすように舐め、こする。既に声を出すことすら叶わない異形は、分体を置いて逃げ去ろうとしていた。
「そろそろ起きてくれると嬉しいかな…『亞璃亜』ちゃん?」
 そんな敵をみすみす見逃す猟兵ではない。それはアリアにしても同じだった。ここで討ち滅ぼさねば、これから同じ事件を起こす可能性がある。哀れに見えるその姿も、未だ猟兵数人分の力をもっていてもおかしくはない。だから、アリアは内なる自身に声をかけた。
「……───御苑・亞璃亜。オブリビオンを撃滅します」
 胸の奥から溢れ出るフォースは、光となって顕現する。フォースはアリアを包み込み、一瞬の内に姿を変形させ、その精神を取り替えた。ユーベルコード『再起動:第一人格『御苑・亞璃亜』』、静かに佇むその美貌は先程と変わらない。しかし、その目が、口が、雰囲気が。別人であると物語っている。
「全力はいいのですが、途中で力尽きぬようにお願い致します」
 背後に構えるメイド然としたシェラフィールの声に、『亞璃亜』はうなずきの一つも返さない。渦巻く駆動音を低く鳴らしながら、『亞璃亜』はその足を前に進め、逃げる異形へと突っ込んだ。


「……とりあえず、あの子のお手伝いですかね?」
 送り出すように頭を下げるシェラフィールに声を掛けるものがいた。先程通路でアリアの救出の手伝いをしてくれた猟兵であった。そういえば、と名前を尋ねると、猟兵は藤原・紫苑(鋼の符術師・f10097)と名乗った。
「いえ、一人でどうにかなるか分かりません……」
 言いながら駆け出すシェラフィールは、さっき見た技をもう一度紫苑の前で繰り出した。影から生まれる二十本の触手、それはまっすぐに『亞璃亜』の方へと伸び、纏わりつく小さな触手を食い破り始める。
 圧倒的な力の差、下手に近づけないとすら思える暴れっぷりに攻撃を躊躇う紫苑であったが、シェラフィールは援護の手を休めるつもりは無い様に見える。
「紫苑様も、お願い致します」
 見れば、確かに異形を押している。圧倒するような力で光の剣を打ち込み、硬質化した身体に傷を入れ、焼け焦げた肌を削り取る。異形の方も、まるでその対応に手一杯。生んだ触手を束にして防御に使い、炎の目くらましでどうにか乗り切っているだけにも見えた。
 だが、分かってしまった。何が問題で、なぜ支援を欲しているのか。
「時間、ですね?」
 掛けた声に返事は無いものの、焦るメイドの姿を見ればそれが答えだと理解するのに時間はかからなかった


 激しい駆動音が『亞璃亜』の身体から鳴り響く。それは埋もれるほど大量の触手がのし掛かり、その関節へ侵入せんと触腕を伸ばすせいである。
 光の剣を思うままに曲げ、全てを焼きはった先に全身を包む炎。それぞれ一つ一つは強力なものではないが、延々と繰り返されると面倒が先に立ってしまう。脇から伸びる触手の群れ、『亞璃亜』をサポートするように動き、血路を作るそれはシェラフィールによるものか。しかし、まだ足りない。
 触手の壁の隙間から見える影、躊躇なく振り抜く光剣は確かな手応えを『亞璃亜』に与えた。切り裂いたのは異形の腕。肘から先、その関節を刈り取り切って落として見せたのだ。しかし、まだ足りない。
 異形の身体に集う触手は、その傷口から体内へと潜りこむ。内部を焼かれたそれを快楽で癒やすために、小さな触手の群れは異形の体内へと巣食っていく。
 それどころか、異形は刈り取られた腕を手に持ち、まるで武器のように使い始めた。長い爪が『亞璃亜』の眼前をかすめ、視界を閉じるように触手で埋められる。これで一分……二分は経っているかもしれない。
 時間がない、そう思い光剣を握りしめた『亞璃亜』に、開いた視界が光明をさした。


 シェラフィールのすぐ後ろ。手にした銃を握りしめ、心に強く思いを込める猟兵がいた。
 瞳を閉じ、願いは一つ。それはただ、人々のために。平穏のために。
(邪神を暴れさせてはいけない……父と母のような悲しい出来事を増やさない為に……この輩に鉄槌を)
 手にした銃、【Exterminator】がその機構を変化させた。対邪神戦闘モードとして、ひとときの光線銃としての力を発揮する。
 今先頭で戦っている『亞璃亜』には申し訳ないが、彼女の力がこうして猟兵の自由を生んでいると言っても過言ではない。ならば、その時間を無為に使うなどあり考えられるはずもない。
「もしも彼女が戦えなくなったときは、皆様よろしくお願いいたします」
 炎に焼き切られ、既に半分となった触手を使い、『亞璃亜』に纏わりつくそれを噛み砕く。ぺこりと頭を下げるメイドに頷いて見せると、そのまま前に駆け出した。
 こんもりとした山のようなそこに降り注ぐ銃弾の雨。猟兵たる彼らの力と精度は凄まじく、紫苑の掛け声に合わせて生まれた直後の触手を撃ち払ってみせた。飛びかかる触手は『亞璃亜』の下へ辿り着く前に切って落とされ、飽和攻撃に近いそれは異形の対応を完全に遅らせることに成功していた。
 紫苑の光線銃から撃ち出されるレーザーが触手を打ち払い、思いのままに動くチャクラムを射出しては取りつく触手を切り払う。
 自身への打撃は炎でそのダメージを軽減しているようにも見えるが、余りにも。余りにも一斉に行われる斉射に反応が追いつかない。
 そして、放たれる七星七縛符。ユーベルコードを封じる最終手段。ソレが何かを知っているのだろう。身に纏う炎が護符を焼き落とし、異形は難を逃れた。……かに見えた。
 殆ど連続、流れるように投げられた二枚の護符。二つ目のそれが異形へと触れ、ピタリとはりつく。
 その時点で、雌雄は決着した。
 ぼとりぼとりと力なく落ちていく触手。生み出せない炎に焦りの様子を浮かべ、動かなくなった体内の触手がその身に激痛を与え始める。手にした武器は切り離した己の腕だけ。ぶんぶんと振り回し、泣く声も無いその姿は悲痛とも取れるものだった。
 

 最後は、あっけないものだった。
 全戦闘時間は数分間といったところだろうか。始めの猟兵と向かい合い、逃げ出し、その身を両断されるその瞬間まで。
 全身を汗にまみれさせ息を吐くアリア。その背を撫でながら、何事か声を掛けるシェラフィール。
 そう、終わってみればあっけないものだった。上階の触手たちも、とっくに猟兵達に片付けられているだろう。作戦開始から一時間前後、この一件は片がついたのだ。
 手の開いたUDCエージェントが、組織への連絡をしている。あるものはグリモア猟兵へ連絡し帰路へ着き、あるものはやることがあるとUDCアースの街へと繰り出した。
 紫苑は、といえば、そこはエージェントとしての仕事がある。奇跡的にというべきか。ただ一人として教団員の死体が見つかること無く、無事であったのだ。そうして、この痛ましい事件の記憶を消すことが、エージェントとして関わった彼の最後の仕事であった。
 人ならざる異形の死体を置いて、猟兵は各々の日常へと戻っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月29日


挿絵イラスト