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性癖を晒された黒歴史を晒される依頼

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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●心の傷、お届けします
「やあ、いらっしゃい猟兵さんたち! 今日はね、ヒーローズアースにある町、アキバシティを襲う、沢山のなんかアレなヴィランを撃退して欲しいんだ!」
 アキバシティ。なんかアレ。
 早速嫌な予感しかしない単語の羅列に顔を見合わせる猟兵たちに構わず、新米グリモア猟兵たる望月・舞夜(魔導英雄ソウルウィッチ・f16466)は元気よく説明を続けた。
「沢山のヴィランに襲われる、とは言ったけどね。事前に住人の避難誘導とかは出来ないんだ、予知の状況がずれちゃうからね。だから一旦落ち着いて、皆で自然公演に集まって――」
 ぐるり、グリモア猟兵は皆を見渡して。

「まずはバーベキューでもしながら、向かいの席の相手と、お互いの性癖を語り合って欲しい!」
「なんて!?」
 思わず聞き返した一人の猟兵を、まぁまぁ待ってよ、と舞夜は手で制し。
「ボクも心苦しいんだけどねー、これは後の戦いのためなんだ。まあ、別に平和に肉食べに来てくれたって良いんだけど、『語っておけば後の戦いが有利になる』ってことだけ、覚えておいて」

「で、食べたら解散して街のパトロールね。適当に散らばってたら、敵の方から襲ってくるよ。敵の名は――『性癖神コンプレークス』」
「性癖神」
「うん、性癖神」
 なんでもこの性癖神、一族の総称であり、様々な性癖を司る、無数のコンプレークスが存在する。
 ロリータ属性のロリータ・コンプレークス、ボインなお姉さんのボイン・コンプレークスといった具合である。
 事件によっては、特定のコンプレークスが現れる……わけだが。
「今回の予知ではねー。『何らかの性癖を抱いた者』、中でも『直前に、他者とそれについて語り合った者』のところに、その性癖を司るコンプレークスが高確率で現れるんだ。引き寄せられる、と言ってもいい」
「ああ、だから性癖……。語っておけば、市民より先に襲われやすいってことか」
「ま、そーゆーこと。最悪、語り合いながら探したっていい。現地のヒーローに捕まらない程度ならね」
 性癖神は、その性癖にちなんだ攻撃を行ってくる。なにそれ。分かんない。まぁでもそういう意味でも、居合わせた仲間の性癖を事前に知っておくことは、敵の対策にもつながると思う。多分、きっと、メイビー。舞夜は笑いをこらえた表情で、そう説明した。
「ちなみに性癖って、あれだよな。本来はエロい意味じゃなくて、本人の性向っつーか……」
「ここでは性的嗜好のことだよ。主に異性、いや同性でも動物でも掛け算でもなんでもいいけど、そういう意味で誰かや何かに向けるいやらしい意味での好みのことだよ」
 無慈悲。

「んーで、一通り性癖神を撃退したらね、次のヴィランは『黒歴史』」
「黒歴史」
「うん、黒歴史」
 ヴィラン『ミミック・オブ・ブラックヒストリー』。相手の黒歴史を読み取り具現化するという恐ろしい力を持つ。
 時に自身の黒歴史すら武器にするその力は諸刃の刃であったため、引退は早く、その力は代々受け継がれていったというのだが……。
 骸の海から現れるのは、その歴代継承者だ。つまり、これもいっぱい出る。
「これだけでも大概、恐ろしいんだけどね。厄介なことに、ボクの予知が正しければ……このヴィランが現れる直前、この町では、幾つもの新鮮な黒歴史が量産されているはずなんだ。『ミミック』は、その黒歴史をも自分の力にしている可能性が高い」

 ――そう。『敵に性癖を見抜かれ、町中で晒される』というド級の黒歴史を、だ。

「マッチポンプじゃねえか……!」
「まぁまぁまぁ。まぁまぁまぁ。ここからだよ、大事なのは」
 再び猟兵たちを手で制し、説明を続ける。
「今も言ったけど、今回の『ミミック』は、相対する相手のみならず、近くで生まれた黒歴史も力にする。正確には、その心の痛みを具現化する、みたいな力だね。で、これがどういうことかというと――性癖神に性癖を見抜かれた自分の黒歴史が、別の猟兵にぶつけられる可能性がある。最悪、顔や実名のヴィジョン付きで」
「地獄か?」
「それが嫌だったら、自分で自分の黒歴史を先に見つけて倒すしかない」
「……探す方法は」
「そりゃ地道に、足を使って」
「地獄か!?」

「まあ、つまり、そういう事件さ。ふざけちゃいるけど、ボクらが行かないと住人が危ないのは事実だから。きっちり退治してきちゃってよ。頑張って、ヒーロー!」
 そう、にっこりと笑い。グリモア猟兵は、キミたちを……
「なあ。お前さ、自分が行かないから、そんな楽しそうな――」
「頑張って、ヒーロー!!!」
 キミたちをヒーローズアースに送り出すのだった!!!


黒原
 シリアスとの落差で風邪引きそう。黒原です。
 というわけで、たまにはネタ依頼。
 「性癖」という言葉の範囲はお任せします。OPをお読みいただいた上で、こういうのでもOK?って迷う内容は大体OK。大丈夫、自分の性癖に自信を持って!

 大体のところはOPで説明した通りですが、章更新ごとに冒頭で簡単な補足を行う予定です。

 また、3章について、参加していないシーンで知らないPCに性癖を晒される、という事態は起きませんので、そこだけはご安心下さい。プレイングを採用したシーン以外でキャラクターの名前が出ることはありません。
 「暴露を阻止するために必死に頑張るドタバタ」を想定したシチュエーションであり、「PC相手に」晒されるとすれば、合わせプレイングの相手か、感情や旅団等で接点があると判断した相手と合わせてプレイングを拾った場合、になります。
 その方がキツい? そっすね。

 それと雑記にも書きましたが、「絡み、アレンジ歓迎」等の記載は今後不要です。NGの場合のみ一言下さい。

 最後に大事なことを一つ。
 第六猟兵は全年齢向けの健全なゲームですので、シナリオの内容が内容とはいえ、過激な表現にはある程度ご注意ください。フリではありません。あまりに度が過ぎる場合は採用率に影響します。
 それでは、最低限の良識の下で――地獄へようこそ。
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第1章 日常 『モーレツ!BBQ天国』

POW   :    とにかく大量の肉を焼いてガッツリ食って食って食いまくる!

SPD   :    食事の合間に、みんなと談笑したりフォークダンス踊ったりして交流を深めよう。

WIZ   :    食事はバランスも大事!サイドメニューのサラダやデザートも楽しみたいね!

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●マスターよりの補足(多くてスミマセン)
 【1】向かいの席の相手に向けて、性癖を語る(基本的にはこちらが中心のリプレイになります)
 【2】聞き役、相槌役に回る(【1】の方との合わせプレイングを強く推奨します)
 【3】我関せず、平和にバーベキューする(合わせプレイングでの参加をやや推奨します)

 上記から一つを選び、プレイング冒頭に番号を記載して下さい。
 区分はあくまでメタ的なものです。つまり、キャラ本人はバーベキューだと思って来たのに気付けば巻き込まれてた【1】とか、キャラ視点では別に誘い合わせたわけではないがたまたま同席してしまった【1】と【2】、もしくは【1】同士の合わせプレイングとか、そういうのは全然歓迎です。

 【1】の方は、(アレンジ時の解釈違いを防ぐためにも)極力、性癖に多くの字数を割くと良いと思います。番号を除いて299文字、全部キャラ口調で性癖語ってくれてもOK。なお性癖は偽りの内容でも構いませんが、コンプレークスを呼ぶ効果はありません。
 同一シーン中で描写された場合を除き、他の方の性癖トークを耳にする機会はないものと考えて下さい(主に3章の緊張感がなくなるので)――ただし、誰かとセットで拾う可能性は高いです。独り言になっちゃうからネ。異性相手は無理とか、そういうNG事項は遠慮なくどうぞ。採用率はやっぱり下がってしまうと思うので、こだわるなら合わせがオススメです。

 合わせでの参加の場合、グループ名ないし相手のIDを明記した上で、なるべく時間を合わせてご送付ください。
 【3】目当てのイベシナ感覚で1章だけ参加して頂いても全く問題ありません。ありませんが、近くのテーブルでは性癖トークが行われていますし、あなたのステシには依頼タイトルがずっと残ります。

 なお、日常フラグメントですが、1章のためグリモア猟兵の舞夜はお声かけ頂いても登場できません。ご注意ください。
 最後に、執筆スケジュールですが、頂いたプレイングが多い場合、少々ゆっくり進めていくことになってしまうかもしれません。不採用時、お気持ちが変わらなければ投げ返して頂けると嬉しいです。(その場合、優先して拾えるように頑張ります)
 よろしくお願いいたします。
ショコ・ライラ
1
(異性相手は勘弁して下さい)

‪──‬いい天気だね
(サラサラの髪を掻き上げる)

(ホットココアをゆっくり飲む)

(いつも通りのゆったりした微笑を浮かべながら)

カンチョーっていいよね。


いや、違う。便秘の治療として液体を注入する医療行為の話ではなくて…
子供がイタズラでやる、あれだよ。いわゆる指カンチョー
別に棒とかでもいいけど

何か、こう…さ。無慈悲じゃん?
やられた側は、羞恥とか、痛みとか…その理不尽さに真面目に怒りと辛さを味わってるのにさ、
それでしんどそうにしてればしてるほど、やった側は大喜びでさ…
すごく、サディスティックな行為だよね……

(風が、そよぐ)

‪あ、勿論‪──‬

‪──‬私は、やられる側だよ。


ファラーシャ・ラズワード
【1】性癖……
いえ、これも仕事ね。わたくしには似合わないものだとしても、切り替えていくわ。

わたくしの性癖は「相手を足蹴にしたい」よ。

……何その目は。わたくしだって、女の子だもの。人を足蹴にしたい時の1つや2つはあるのよ。

大きい相手がいいわね。つまりフェアリーよりも他種族の人。
とりわけ、大きくて踏みがいのありそうな男性。

想像してみて?わたくしのようなか弱い、羽虫のような存在に。
動けない状態でゆらゆらと近づくわたくし。頬のあたりを素足でとんっと。

うふっ、うふふっ、ふふふっ(恍惚の表情)
普段見上げる相手を見下す時の高揚。
安全かつ上位の位置から足で抓ったりする時の圧倒的支配欲!

たまらないわね!!!!!



●StоM
「いい天気だね」
 琥珀色の髪をさらりとかき上げて。ショコ・ライラ(そこにちょこんとショコライラ・f17060)は、柔らかく微笑んだ。その手にあるのは、ホットココアを注いだマグカップ。周囲を漂う肉の焼ける匂いにも――これから繰り広げられる話題にも似合わぬそれが、不思議と絵になっていた。
「ええ、そうね。こんな話題でなければ、もう少し爽やかな気分だったのだけれど」
 はあ、と溜め息を漏らす姿は向かいのテーブルの上、身長30センチにも満たない姿。ファラーシャ・ラズワード(幸せを与える青い蝶・f18019)は、呆れ切ったような声を漏らした。ただそこにあるだけで幻想的な印象すら与える青い蝶の妖精の姿は、やはり、事情を知らぬ者が見れば、これから白昼、性癖を語るのだとは想像もすまい。

「とはいえ、これも仕事ね」
 ふわりと顔を上げ。話題の口火を切ったのは、ファラーシャだった。
「わたくしの性癖は、『相手を足蹴にしたい』よ」
「……へえ」
「何、その目は。わたくしだって、女の子だもの。人を足蹴にしたい時の1つや2つはあるのよ」
「そういうもの?」
 妖精の姿に似合わぬといえば似合わぬ直截な言葉に、ショコは微かに目を見開く。その言葉にも静かな表情を崩すことなく、ファラーシャは顔を上げ。
「大きい相手がいいわね。つまり、フェアリーよりも他種族の人。とりわけ、大きくて踏みがいのありそうな男性。想像してみて? わたくしのようなか弱い、羽虫のような存在に」
 ファラーシャは、その光景を、まるで実際に見てきたかのようにとつとつと語る。
 動けない状態の大柄な男にゆらゆらと近づく妖精。頬のあたりを――素足で、とん、と踏みつける。
 悔しげに見上げる男の心を削るように、徐々に、徐々に、人の6分の1ほどしかない体重をかけ、――ぐり、ぐりと。
 仕舞いには、足の指で頬の肉を抓り、弄ぶ。
「うふっ。うふふっ、ふふふっ」
 妖精の口端がいつしか吊り上がり、恍惚とした笑みが漏れる。彼女にとって、他の種族の男は、見上げる対象だ。無論、飛べば視点は上回る――だが、それとはまるで違う。普段見上げる相手を、這いつくばらせ、見下す高揚。
「――たまらないわね!!!」

「…………ドSだねぇ」
 ショコは。その姿に、ははあ、と感心すらしたような声を漏らした。かけられた言葉に、ファラーシャはハッと我に返り、浮き上がりかけた身体をテーブルの上に戻し、つん、と澄ました表情を取り繕って。
「そうよ。わたくし、サディストなの」
「見かけによらず過激な趣味だね。……とはいえ、そうだね。私の趣味も、人のことは言えないかな」
「あら。……では、あなたも?」
「さて。共通点は、あるかもしれないね」
 自然、手番の移った空気。ショコは、未だ湯気を立てるマグカップに口を付けて喉を湿らせると、ゆったりと微笑んで。

「――カンチョーって、いいよね」
「かんちょう」
 ぶっこんだ。

「それは……書類とかを出す」
「官庁ではなくて」
「船を操縦する――」
「艦長でもないよ」
「……では、その。便秘の治療で……」
「まあ、行為は近いけどね。子供がイタズラでやる、あれだよ。いわゆる指カンチョー。別に棒とかでもいいけど」
 小さく苦笑したショコは。
「何かこう……さ。無慈悲じゃん?」
 そう言うと――ファラーシャに倣ったか、「想像してみて」、と囁いた。
 羞恥、痛み。何よりもやられた側が味わうのは、その理不尽さだ。少なくとも一般的には、愛情表現とはかけ離れた、欲望を満たす行為ですらない、ただ屈辱を与えるためだけのそれ。
 真面目に怒りと辛さを味わっているというのに――しんどそうな姿をすればするほど、やった側は大喜びだ。
「すごく、サディスティックな行為だよね……そう思わない?」
「いえ……わたくし、フェアリーだから」
「ああ、確かに」
 ショコはしみじみと、ファラーシャの全身を見る。
 なんというか、そう。指では刺激が足りるまい。何がとは言わないが、長さとか。腕……何なら訓練すれば胴が入ってしまうこともあるだろう。何処にとは言わないが。
「仮にも食事中に、何を考えているか分かる目で見ないで頂戴。……とはいえ」
 ファラーシャは……ほんの少しだけ、想像する。してしまう。棒切れを持った羽虫のような妖精に、尊厳を犯されるその姿を。
 ――ぞくりと走る、寒気に近い何かに、そっと自分の身体を抱いて。
「……まあ。分からなくは、ないわ。……それに、ええ、確かに、近いかもしれないわね。相手を屈服させたいという趣味は」
「ああ、すまない。誤解させたかな」
「誤解?」
 うん、と、ショコは微笑んで。
「私は、やられる側だよ。勿論」
「…………」
「…………」
「……そう」
「うん」

 ひゅるりと、風がそよいだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アロンソ・ピノ
(1)
性癖……性癖?????!????
いや、オレそこまでおなごのえり好みもないんだが…肉食えると思ったらタダで肉も食えるわけねえべな…都会は怖えべ……

オレは……とりあえず、子供が健康に育つのが一番だし、元気があって安産型で家庭を任せられるおなごの方が良いと思う……思うんだが。
この間UDCアースで受けた依頼でな、艶本を探せってのがあって、その艶本で見た、なんというか…………生活感の薄い、腕も脚も細っこい……なんて言えば良いんだべか、触ったら折れそうな感じの……かといって子供だとかフェアリーのように物理的に小さいわけでもないような、そういうのが……グッときた、かも、知れない…(小声)


天壌・つばさ
【1】
せ、性癖……!?
なんかそういうのって陽の下に晒されるべきじゃないものだよな……
でも語らないと来てくれるかわかんないのか、おぉ……(苦悩)

俺はあの……
その、痛いのが……好きなんだよ
いや、マゾではないんだけど
痛覚って強い刺激だからさ、他の感情を全部消し飛ばしてくれるんだよね
作品を完成させた後に不安になったりとかすると猛烈に痛みが欲しくて……
断じてマゾではないんだけど
想像するだけでもいいんだ
例えばこのバーベキューの炭をさ、握ったら絶対熱いよね
熱いしか考えられなくなりたいっていうか
マゾではないんだよ
ただ次の作品を出すためには不安を消さなきゃいけないんだ
俺には必要なことなんだよね



●都会は怖い
「性癖……性癖?????!????」
 桃色の髪の青年、アロンソ・ピノ(一花咲かせに・f07826)は、思わず頭を抱えた。
 彼は、肉を食えると思ってきただけだった。だが、所詮タダで肉が食えるわけはないのだろう。猪が獲れれば喜んで近所に振る舞った田舎とは違うのだ。都会は怖えべ、胸中でそう呟いて。
「……なんかそういうのって、陽の下に晒されるべきじゃないものだよな……でも語らないと来てくれるかわかんないのか、おぉ……」
 向かいに座り、同じように頭を抱えるのは、天壌・つばさ(クレバスを満たして・f17165)。少年の中性的な姿を包む派手なファッションに反して、その表情は羞恥と躊躇いに染まっていた。

 二人は、ゆっくりと顔を見合わせて。間合いを計るような、数秒の沈黙の後。
「……年功序列」
「オレからだべか!? ……いや、そこまでおなごのえり好みもないんだが……」
 先行は、アロンソだった。そういうことになった。

「オレは……とりあえず、子供が健康に育つのが一番だし、元気があって安産型で家庭を任せられるおなごの方が良いと思う」
「ええ、現実的。……それ、性癖?」
「……思うん、だが」
 アロンソは、がしがしと長い髪をかいて。
「この間UDCアースで受けた依頼でな、艶本を探せってのがあって」
「艶本……ああ、エロ本ね。うん」
「ちょ、そ、そういうのを昼間から――いや今更だべな」
 溜め息一つ。き、と開き直ったように顔を上げ。
「……その艶本で見た、なんというか……生活感の薄い、腕も脚も細っこい……なんて言えば良いんだべか、触ったら折れそうな感じの……かといって子供だとかフェアリーのように物理的に小さいわけでもないような、そういうのが……グッときた、かも、知れない……」
「…………」
 小声の割に凄い早口だった。ああ、本当にツボに入ったんだなぁというのは、つばさの目ならずとも明らかだった。
「な、なんか言ってくれよ!?」
「や、うん……分かるよ。分かる。ドキっとするよね、不意に女の子の線の細さ意識すると……」
 曖昧な同意。他に何を言えば良いというのだろう。何とも言えないつばさの表情に、アロンソは赤い頬を悔しげに歪め、
「そ、そんじゃあ、お前はどうなんだ……!」
「俺!? 俺はあの……ええと」
 少年は、少しだけ、言葉に迷ってから。

「その、痛いのが……好きなんだよ」
「!!?」
「いや、マゾではないんだけど」
「お、おう」
 戸惑ったように頷くアロンソ。だが彼の頭の中は「都会は怖えべ」でいっぱいである。13歳ほどに見える少年が「痛いのが好き」と言う世の中、何がどうなっているのだろうか。
 そんなアロンソの表情に、信じてないなこの人、と気付いたつばさは、どこか必死に言い募る。
「痛覚って強い刺激だからさ、他の感情を全部消し飛ばしてくれるんだよね」
「感情を……?」
「うん。俺、絵を描くんだけど、作品を完成させた後に不安になったりとかすると猛烈に痛みが欲しくて……」
「……あー。そういう話なら」
「断じてマゾではないんだけど!」
「それは分かったって!」
 どうどう、と両手で制しながら、アロンソは少しだけ、理解できた気がした。
 家伝の剣、春夏秋冬流。武術の修行というのは、楽な物ではない。けれど、退屈な田舎暮らしの中でも、ただ剣に打ち込む時間は、嫌いではなかった。
 時に自らの身体を痛めつけるような厳しい鍛錬の中、意識を身体の内側に沈め、他の感覚を絶つ心持ちには――まるで覚えがないわけでもなかったのだ。
「想像するだけでもいいんだ。例えばこのバーベキューの炭をさ、握ったら絶対熱いよね? 熱いしか考えられなくなりたいっていうか」
「お、おう」
 やっぱ分かんないかもしれない。しれない、けれど。
「次の作品を出すためには不安を消さなきゃいけないんだ。俺には、必要なことなんだよね」
「……そっか」
 少年が、心からそう言っているのだろうということは――なんとなく、分かった。だからアロンソは、ゆっくりと頷いて。
「断じてマゾではないんだけど!」
「だからそれは分かったって言ってんだべ!!?」
 だが、少年が「性癖」の話題でこれを出したことは間違いないわけで。
 都会って怖えべ……三度、そう胸中で呟くのだった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【1】

説明しよう!
この少年、性癖を晒すのは別にいいが、異性に聞かれるととても恥ずかしいので一人で来たのである!!
じゃあBBQしてりゃいいって話なんだが!勝率を上げる度に自らも死地に飛び込むのが少年なのであった!!

「──俺は、年上攻めが好きだ」ゲン〇ウポーズ
「そう、圧倒的余裕を見せつけて!掌で転がすかのようなリードの仕方が」
「危険な香りのする甘やかされ方から、"ご褒美"だと称されて蕩かされてしまうのも素晴らしい」
「互いに歪な依存に嵌ってるのも良いな。そうは思わないかブラザー」
「20↑はババアだとか抜かしてる奴は控えめに言って殺す」
「重要なのは包容力だ!!そこにどっぷり浸かる背徳さがいいんだろ!」


リンタロウ・ホネハミ

大きいおっぱいって……いいっすよね
いや形の良さだの体型に合った大きさだの、そんな不純物意見はお呼びじゃないんす
おっぱいは正義、大きいは正義、つまり大きいおっぱいは大正義なんすよ
わかります?
全ての男に安心感を与える、張りと柔らかさが絶妙なバランスで成り立っている、母性の象徴ともいえる、奇跡の脂肪が、なんと女性の胸についてるんすよ!?
しかもっすよ!?それが2つも!!2つもついてるんすよ!!
女性についているだけでも奇跡中の奇跡なのに、女性一人につき2つも!!!
これはもう奇跡ではなく……そう、神の恵みっす
オレっちらはただただ神の祝福に感謝し、その恵みを享受する
それが……人生、ってやつじゃないっすか?



●似て非なるもの、それ即ち
「大きいおっぱいって、いいっすよね」
 リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)は糸のような目を細め、そう笑った。
「――――ほう」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)はその向かい、テーブルの上で肘をつき、手を組み合わせ、その上に顎を載せた、海に碇を下ろす指令のようなどっしりとした姿勢で低く唸った。
「……いやヴィクティム、なんっすかそのポーズ」
「問題ない。続けろ」
「はぁ……」
 まぁいいっすけど、とリンタロウは戸惑いつつ、気を取り直し。

「形の良さだの体型に合った大きさだの、そんな不純物意見はお呼びじゃないんす。おっぱいは正義、大きいは正義、つまり大きいおっぱいは大正義なんすよ。わかります?」
「いや、俺は」
「全ての男に安心感を与える、張りと柔らかさが絶妙なバランスで成り立っている、母性の象徴ともいえる、奇跡の脂肪が、なんと女性の胸についてるんすよ!?」
「おい、」
「しかもっすよ!? それが2つも!! 2つもついてるんすよ!! 女性についているだけでも奇跡中の奇跡なのに、女性一人につき2つも!!! これはもう奇跡ではなく……そう、神の恵みっす。オレっちらはただただ神の祝福に感謝し、その恵みを享受する。それが」
「聞」
「それが――人生、ってやつじゃないっすか?」
「聞けよ!?」
 いつのまにか立ち上がり、キメ顔で演説を締めくくるリンタロウを前に。これ以上の暴虐は許せぬと叛旗を翻す抵抗者のように、がたりと椅子を蹴ると、端役は立ち上がった。
「む……文句でもあるっすか?」
「いいや。俺もおっぱいは好きだ。けどな……足りないんだ」
「足りない……!?」
 に、と不敵に笑ったヴィクティムは――再び席につくと、テーブルの上で肘をつき、手を組み、その上に顎を載せる。
「あ、そのポーズはやるんっすね……」
「いいか、リンタロウ」
 はぁ、と気の抜けた返事を返すリンタロウの前で、ヴィクティムはおもむろにトレードマークのゴーグルを下げ、ぎらりと光らせて。
「――俺は、年上攻めが好きだ」
「年上攻め……っすか」
「そうだ! 圧倒的余裕を見せつけて! 掌で転がすかのようなリードの仕方が!」
 ばっ、とゴーグルを上げ、ポーズを解いて立ち上がり、
「危険な香りのする甘やかされ方から、“ご褒美"だと称されて蕩かされてしまうのも素晴らしい!」
 舞台上で愛を語る役者のように、大仰に腕を振り、
「互いに歪な依存に嵌ってるのも良い。時に責め、時に甘やかし、常に主導権を握りながらも、実のところは相手カッコ俺カッコ閉じに依存し、離れられないでいる、それを決して口には出さない綺麗なお姉さん――素晴らしい」
 ほう、と、陶然と息を吐き、語り終えたヴィクティムは正面を向き直り。
「――そう思わないか、ブラザー」
 キメ顔で演説を締めくくった。

「……や、まあ、美人なら良いとは思うっすけど……オレっちに足りないってのは、シチュエーションっすか」
 やや呆れ顔を浮かべつつも、なるほど、と頷いて。リンタロウは、網の上で焼いた骨付き肉の、残った骨をガリ、と噛む。必要なのは互いの性癖。ならばこれで問題はないはずだが――。
「――年上巨乳大家」
「ッ!?」
 それでも。リンタロウは、ぽつりと、呟いた。
「未亡人……毎晩のようにお裾分けに来てくれる夕飯……野暮ったい服とエプロンを押し上げる豊かな双丘……その上に乗る栗色の片おさげ……」
「リンタロウ……お前……ッ」
「――『あなた、どこか夫に似ているの』」
 訥々と語るリンタロウに、ヴィクティムは――ふ、と笑みを漏らし。
「それは、盛りすぎだろ?」
 静かに、機械の掌を差し出した。リンタロウは、その手をがしりと握る。表裏に通じた工作員にとって、剣を頼りに世を生きる自由騎士にとって、掌を預けるその行為は無上の信頼の証。
「盛るに越したことはないんっすよ。設定も、胸もね」
「――へッ。大した奴だよ、お前は」
 
 巨乳好きと年上趣味――隣接するとまで言い切るには、その領域はいささか遠い。
 だが、同じならずとも、相性の良い性癖というものが存在する。だからこそ、人は分かり合うことが出来るのだ。
 男たちの心が、一歩、近付いた日だった――。

 なんだこれ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミコトメモリ・メイクメモリア
《姫様焼き肉会》
【1】
「まぁまぁ、ここはボクが奢るよ。何でも頼んで。あ、特上ハラミ五人前」
特上ハラミを延々と焼きながら――

と言っても、性癖なんてね。
ボクはあまりそういうこだわりってないんだよね。
まあ敷いて言うなら――手、かな。
そう、ボクと合わせたら少し大きいくらいの手
少し指が長くて、色白で、爪の形が整っていて、外から見ると傷一つ無いほど綺麗なのに、手の平側は何かに打ち込んだ跡が明確に残っている、美しいけれど、ちょっと無骨な手――勿論、ギュッと握った時、熱いと思えるほどの体温が望ましいんだけども、色白とは少し離れちゃうんだよね難しいところだ。あぁでもできれば関節のところは目立たなくて――――


氷室・癒
姫様焼き肉会


実はいやらしいことにも興味があります!
もう17歳ですからねっ! 後1つで18歳!

それはそれとして
「せーへき? というのは良くわからないんですが、男の人のどういうところが好きかっていうことなんですよね?」
難しいです。難しい質問です
にこにこ笑ってくれれば、きっと素敵
優しく抱きしめてもらえたら、きっときゅんきゅん
じっと見つめ合えたら、きっとどきどき
耳元で囁いて貰ったり、ぐっと迫られちゃったりして

でもでもですが、これって全部他の人や漫画とかで見たものなんですよね

うーん! ぼくだけのどきどきポイントはまだ未経験ですっ!
他の人の話を参考に、お肉をいただいてしまいましょう!

お肉、おーいしー!


ミーユイ・ロッソカステル
【1】《姫様焼き肉会》
「姫様が焼き肉を奢ってくれると聞いて来たのだけれど」
(「性癖を語る」の部分は都合よく説明されなかった――されてたら絶対来ないからネ)

手際よく肉を焼き【礼儀作法20】
タレや肉汁を服に飛ばすような無粋はせず【礼儀作法20】
会話を聞きながら淡々と食べ続けるのだった【礼儀作法20】

話を振られたら「は? 私?」みたいな顔。喋らないと話が進まないと言われて渋々語り出す
……最も、好みなんて本人も正確には理解していないけれど


(性癖:強引に迫られると弱い
白馬の王子様より俺様系が好み。
また世話を焼きたがりなので
ちょっと母性本能を擽られるポイントなどあるとストライク。本人は好みについて無自覚)


富波・壱子

姫様焼き肉会
バーベキュー!大勢でワイワイ食べるのって楽しいねぇ
自分が食べるだけじゃなくて焼きそばでもチャーハンでも、リクエストがあったらなんでも作っちゃうよ!

そうそう、自分の性癖を言わなくちゃいけないんだっけ
うーんと、そうだねー。筋肉ムキムキのマッチョな人が特別好きってわけじゃないんだけど、なにかの拍子に身体に触っちゃった時とか、鍛えた筋肉や大っきな骨でゴツゴツしてたりすると男の人なんだなぁってドキドキしちゃうかも
もっとちっちゃかった頃は男の子も女の子もそんなに違わないのに不思議だよね

他の人の性癖を聴いたら、ふーんこういうのが好きなんだって自分や男の子のその部分をこっそり確認してみたりするよ



●ミコトメモリ・テフェチメモリアと愉快な仲間たち
「やぁやぁ、よく集まってくれたね! ここはボクが奢るよ。何でも頼んで。あ、特上ハラミ五人前」
 ミコトメモリ・メイクメモリア(メメントメモリ・f00040)は、追加の注文を係員に申し付け、機嫌良く焼き網の上に肉を並べながら、器用に胸を張ってみせた。
 ミコトメモリは、MM Kingdomという猟兵たちの国の姫である。厳密にはその国の王族というわけではないし、一猟兵として対等な立場でもあるのだが、それでも、まとめ役ということになっている。
 故に――否、別にそれだけが理由でもないが、猟兵たちに肉を奢るのは大事なことだ。求心力は肉が育てる。だがアルコールには注意が必要だ、最近は嫌がる者も多いので。何処からか読み取った知識にもそうあったので間違いない。
「きゃーきゃーっ! ミコ姫様素敵ですっ! お肉、おーいしー!」
「太っ腹~。大勢でワイワイ食べるのって楽しいねぇ」
「――――(もぐもぐ)」
 歓声を上げたのは、氷室・癒(超ド級ハッピーエンド・f00121)と富波・壱子(夢見る未如孵・f01342)。
 そして無言で肉を咀嚼しているのが、ミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)であった。
「とはいえ――遊びに来たわけじゃないんだよね、一応。皆性癖を語る、かあ」
 はた、と目下の問題を思い出し、ミコトメモリは腕を組んだ。
 集まったのは見目麗しい、それもどちらかといえば清純派と言って良い……良いはずだ、多分きっと、そのはずの、4人の女子。男女混合よりはマシかもしれないけれど、このメンバーで性癖を語るのは――色々、大丈夫なのだろうか。知人の男性が目撃でもすれば、思わず聞き耳を立ててしまっても、誰も責めることはできないだろう。
「……私は、姫様が焼き肉を奢ってくれると聞いて来たのだけれど」
 じとりと睨んでくるミーユイを、まぁまぁ、ボクから行くからさ、なんて手で制して。
 トップバッター、ミコトメモリ・メイクメモリアである。

「と言っても……ボクはあまりそういうこだわりってないんだよね。まあ敷いて言うなら――手、かな」
「おてて! ミコ姫様は手が好きなんですかっ!」
 ぴょんっ、と跳ねるように両手を差し出してくる癒を、これまたどうどう、と抑えて、
「そう、ええとね、いやしちゃんの手も綺麗だけどさ、性癖っていうなら――ボクと合わせたら少し大きいくらいの手。少し指が長くて、色白で、爪の形が整っていて、外から見ると傷一つ無いほど綺麗なのに、手の平側は何かに打ち込んだ跡が明確に残っている、美しいけれど、ちょっと無骨な手――勿論、ギュッと握った時、熱いと思えるほどの体温が望ましいんだけども、色白とは少し離れちゃうんだよね難しいところだ。あぁでもできれば関節のところは目立たなくて――――」
「「「………………」」」
「…………なんだい、その目は」
 顔を赤らめ、頬に手を当てる姫君の姿に、少女たちは思わず顔を見合わせる。
「いえ……その、なんというか」
「ど、ドキドキしちゃいますね、えへへっ」
 見知った顔のそういう話というのは、なんだかむずがゆいものだ。普段そうしたイメージがない相手なら、尚更のこと。
 ただ……ほんの少し顔を赤らめるミーユイや癒とは少し違う反応をしたのが、壱子だった。
「ああ、でも……私、ちょっと分かるかも」
 そんなわけで2番打者、富波・壱子である。

「うーんとねー。なにかの拍子に身体に触っちゃった時とか、鍛えた筋肉や大っきな骨でゴツゴツしてたりすると男の人なんだなぁってドキドキしない?」
「それだよそれ、ボクが言いたかったのは。やっぱり身体の違いっていうのが、手とかそういう先端に一番出るんだよね。華奢に見えても、やっぱり触れると男と女の」
「ま、待って姫様、今わたしの番だから!」
 我が意を得たり、それ見ろと頷く姫君をそっと押し留める壱子に……はいっ、と元気良く挙手するのは、癒。
「はいはいはーいっ! 壱子さんは、がっちりした人が好きなんですかっ? むきむき!」
「うーんと、そうだねー。筋肉ムキムキのマッチョな人が特別好きってわけじゃあないかな。けど、姫様じゃないけど、やっぱり、違うんだなーって思うとドキっとするよね。……ふふ、もっとちっちゃかった頃は男の子も女の子もそんなに違わないのに、不思議だよね」
 何かを思い出すように、くすりと笑う壱子。実際のところ、彼女の知る「ちっちゃな男の子」の手の感触は、きっと、別段いやらしい意味ではなかったのだろうが――
 おおおおおー、大人です……なんて呟く癒がどう捉えたかは、神のみぞ知る、だった。

「ふふふ、なかなか場があったまってきたじゃないか。それじゃあ……」
 と、場を仕切るミコトメモリ。その視線が癒に向いて――そのままその前を通り過ぎ、ミーユイに届き。
「じゃ、次ミーユイね」
「なんで私が……と言いたいところだけれど……」
 ミーユイもまた、ちらりと癒を見て、はあ、と深い溜め息一つ。
「…………仕方がないわね。それじゃあ」
 3番打者、ミーユイ――
「って、ちょーっとまったー! いやしちゃん、ぷんぷんですっ! ぼくだってせーへき? の話、できますよっ!」
「え、ええ……? 本当……?」
 思わず聞き返すミーユイに、
「もちろんですっ! いやしちゃん、もう17歳ですからねっ。あとひとつで18歳! 実はいやらしいことにも、興味がありますっ!」
 爆弾発言、走る衝撃。
 というわけで。3番・代打、いやらしちゃんと相成った。

「それはそれとして、せーへき? のことはよくわからないんですが。男の人のどういうところが好きかっていうことなんですよね?」
 ぴょこんと跳ねるように立ち上がり。ぴこぴこと黒い羽根を揺らし、集まる3対の視線ににっこり笑い。
「難しい、難しい質問です。けど、にこにこ笑ってくれれば、きっと素敵。優しく抱きしめてもらえたら、きっときゅんきゅん。じっと見つめ合えたら、きっとどきどき……」
 歌うように紡がれるほんわかとした妄想に、周囲に少しだけ、ほっとしたような空気が漏れるけれど。
「……耳元で囁いて貰ったり、ぐっと迫られちゃったりして」
 赤い頬に手を当てて、えへ、と漏らす笑みは――過激な言葉ではないとしても、決して幼子のものでもない、本人の言葉通り年相応の少女のもので。
「――でもでもですが、これって全部他の人や漫画とかで見たものなんですよね! うーん! ぼくだけのどきどきポイントはまだ未経験ですっ! いじょー、おーしまいっ!」
 ぴょんっ。跳ねるように席に戻るいつも通りの「いやしちゃん」は――もしかしたら少しだけ、照れ隠し……なのかも、しれなかった。

「……ふふ」
 その様子に、最初に笑みを漏らしたのは……4番打者、ミーユイ・ロッソカステル。
 話の間に皿を替え替え肉を食べ続け、4枚ほど積み上げた紙皿の上にそっとお箸をおくと、さらりと桃色の髪をかきあげて、澄ました笑みをたたえ。
「ええ。少しだけ、分かった気がするわ。好みなんてはっきり考えていなかったけれど……愛の言葉なら、抱き寄せて、情熱的に囁いてもらわないと。気取った白馬の王子様なんて、つまらないものね」
「えへへーっ。いやしちゃんは白馬の王子様も素敵だと思いますけどっ! けどけど、分かりますっ! 愛の言葉は、大事ですから! らーぶ!」
 ねーっ、と笑う癒と、穏やかに笑みを交わし。
 実際のところこの四番打者、性癖といってもこの程度のもので。和気藹々と、これでおしまい――





「――――いやいやいや。待って。ちょっと待って、きみたち」
 そんな穏やかな終わりを。ミコトメモリ・メイクメモリアは、許さない。(1週間ぶり2度目)
 
「いや……壱子はまぁ、まだいいよ。うん。割と趣味も合いそうだし。ちゃんと語れてえらい」
「わぁい、姫様に褒められた」
 冗談めかして万歳する壱子に笑みを向け――じろりと見るのは、残り2人。
「いやしちゃん、ミーユイ……いやしちゃんは一回止めておいてなんだけど、ねえ? ……キミたち、ひよってない? もうちょっと、あるんじゃないの? ほら、ミーユイとかさ、俺様系の男のちょっとダメな所にとか弱そうじゃない? 母性本能くすぐられて面倒見たり、パチンコ代渡しちゃったり……」
「誰がよ……!? ……もう。大体、そう言われても」
 思わず、わずかに声を荒げてから――ミーユイは癒と、困ったように顔を見合わせ。それから、2人揃ってミコトメモリに視線を向けて。

「「(ミコ)姫様ほど、はっきり強烈な性癖とかは……あんまり……」」
「だからそういうオチになるからやめろって言ってるんだよボクはさぁ――!!!」

 ――ミコトメモリ・メイクメモリア、自ら誘った焼肉会で一人抜きんでて情熱的にフェティシズムを語ってしまい、黒歴史ポイント+1。
 スコアボードに記すとすれば、そんなところだっただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月輪・美月
【1】性癖っていうと口に出すのはちょっと……って気持ちになりますけど、まあ要するに好みのタイプでいいんでしょう?

 いやまあ僕は素敵な女性なら大体好きですよ。頑張ってる小さな子とかも支えてあげたいって気持ちになりますし。スタイルのいい女性には目を奪われますし!ああ、この前街で見かけた人とか凄かったですよ、声をかけたら無視されましたけど、そこがまたいい!

……まあ強いていうなら、僕より強くて、胸が大きくて、口では厳しい事を言うんですけど優しい所もあったりして……頼りになる部分はあるんだけど、どこか抜けてる所があって、僕が支えなきゃ……って思わせる……誇り高い黒い狼……これ、母と姉だ……死にたい


山梨・心志
【1】いややぁぁぁ俺はこんな依頼行きたくないぃぃ(グリモアベースで駄々をこねる16歳児)

…転送されてしまったからには仕方ありません
依頼の恥は掻き捨てです

あ、あらかじめ言っておくと
俺はノーマルですから!
女性のタイプは清楚で上品で優しくてそれでいて包容力があって可愛らしい(それでいて胸の大きな)年上女性ですから!(眼鏡クイクイ)

えー
そのー
創作物として!
あくまで創作として嗜んでるのが
その
ええと
同性同士の強い繋がりの物語と言いますか
BLと呼ばれるジャンルでして…

同性だからこその葛藤や困難
それを乗り越える真実の愛
ロマンじゃないですか
最近はショタ攻めが熱いのですが最萌はやはり幼馴染物でやはりそれ(文字数)



●心×美、月×黒
『いややぁぁぁ俺はこんな依頼行きたくないぃぃぃ』

 山梨・心志(双子の兄の方・f03491)がグリモアベースで子供のようにゴネたのは、わずか数分前のこと。
 はいはいここまで来たら頑張ってねー、と雑に転移させてきたグリモア猟兵には言いたいこともあるが……まあ、依頼の恥はかき捨てだ、と心志は気を取り直す。まさか知り合いが来ることもないだろう、そう思い、向かいの席に座る相手の顔を見た心志は――。
「……え、みづ」
「『月輪』美月です、はじめまして」
「いやいや、そのいかにも右側なイケメンフェイスは、ひの」
「ありがとうございます、よく言われます、はじめまして。……あれ、ところで右側ってどういう」
「……何でもないです、はじめまして、よろしゅう……」
 そういうことになった。
 お互いの都合の悪い部分に目を瞑り、月輪・美月(月を覆う黒影・f01229)との「初対面の邂逅」と相成ったのである。

「じゃあお先にどうぞ、心志さん」
「俺まだ名乗っとらんけどな……」
 ぼそりと漏れたツッコミに全力で目を逸らす美月をじとりと見ながら、一つ溜め息。……そう、お互い初対面であるのだから、遠慮はいらない。ないはずだ。嘘をつけばオブリビオンは引き寄せられない、ということだし。
「えーと……あらかじめ言っておくと、俺はノーマルですからね!」
「え、はい」
「女性のタイプは清楚で上品で優しくて包容力があって可愛らしい年上女性ですから!」
 眼鏡クイッ。
 美月も一つ、頷いて。
「ああ、いいですね。年上で包容力というと――後はやっぱり、胸が大きい」
「そう、胸が大きい!」
 眼鏡クイクイッ。
 男たちの心は一つになった。
「けど心志さん、『あらかじめ』ってことは、性癖は別に……?」
「……えー、あー。そのー。……創作物として! あくまで創作として嗜んでるのが!」
「はぁ」
「その……ええと」
「…………」
「同性同士の強い繋がりのジャンルの物語、と言いますか……BLと呼ばれるジャンルでして……」
「えっ」
「同性だからこその葛藤や困難、それを乗り越える真実の愛――ロマンじゃないですか。最近はショタ攻めが熱いのですが最萌はやはり幼馴染物でやはりそれの醍醐味と言えば関係の変化、脱却にあるわけですよね。最近読んだ中だと、受けが顔が良いイケメンで女性相手に浮き名を流していて、それをずっと隣で見続けて鬱屈した愛情を抱え続けてきた隠れオタクの眼鏡っ子が攻め、という少々攻めたシチュエーションがなかなか良くて。ええ、当て馬とはいえ受けが積極的に女性と関係を持っている設定には諸説あるものと思いますが、最初に言った幼馴染物の醍醐味を考えれば――」
 眼鏡クイクイクイッ、……?

 心志はふと、顔を上げる。美月がなぜか、椅子ごと1m近く後ろに下がっていた。
 彼は、顔が良く、浮き名を流しているかはともかくナンパな、幼馴染と言って良い相手だった。相変わらず、いかにも右側だった。初対面だが。

「……あぁっ!? ちょっ……違! ちゃうで!? ほんま、そういうんやなくて! ノーマル言うたやろ!?」
「で、で、ですよね! あはは、すみません、ちょっと驚いてしまって!」
「ははは、嫌やなぁ」
「あはは」
「ははは」
 乾いた笑みを交わす。

「こほん。気を取り直して……そういう美月さんは、どうなんですか」
「僕ですか……いやまあ、心志さんには悪いですけど、要するに好みのタイプでいいんでしょう? 僕は素敵な女性なら大体好きですよ」
「大体!?」
 思わぬ幅の広さに驚きを漏らす心志に向け、ええ、と美月は笑顔を向けて。
「頑張ってる小さな子とかも支えてあげたいって気持ちになりますし、スタイルのいい女性には目を奪われますし! ああ、この前町で見かけた人とか凄かったですよ。思わず声をかけて」
「リア充爆発しろ」
「古……! 何十年前のネタですかそれ! 大体、すっぱり無視されましたから」
「あ、そうなんですか?」
「そこがまたいいんですけどね!」
「ええー……」
 こいつヤバいんとちゃうか。そんな色を目に浮かべる心志であったが。実際、この話で、大丈夫なのだろうか、とも思う。
「……もう少し具体的な方がいいんじゃないですか? ほら、なんか、属性付きで来るんでしょう、性癖神」
「ああ……まあ、確かに」
 むむ、と美月は首をひねり。
「そうですね……まあ、強いて言うなら」
「強いて言うなら?」
「僕より強い人がいいですね。で、胸が大きくて、口では厳しいことを言うんですけど、優しい所もあったり」
「おお、優しく導かれたいタイプ?」
 少し意外そうな心志に、美月は軽く首を振り。
「そういうのも良いんですけど……頼りになる部分はあるんだけど、どこか抜けてる所があって。僕が支えなきゃ、って思わせてくれるような……」
「ああ、それは分かります……グッとくる、ほっとけない感じ。あれ、けど、それって、あの人みたいですね」
「あの人?」
「ほら――美黒さん。いいですよね。俺はもうちょっとおしとやかな清楚系ならなぁって思わなくもないですけど、黒髪ロングで綺麗で、意外と可愛らしくて、胸も――、……?」

 心志はふと、胸の前で深いお椀の形を作りかけていた手を止めて顔を上げる。美月がなぜか、灰色の顔色をしていた。
 弟の前で姉にいやらしい目を向けたのは失敗だっただろうか、殴られる……? 一瞬ビクリと震えるが、どうも違うらしい。ぶつぶつと何事か呟く美月に、顔を近付けてみれば。

「……ほんとだ、これ姉さんと母さんだ……知らないうちに、母と姉を……死にたい……」
「うぉぉぉい!? だ、大丈夫やって、誰にも言わんから元気出し! ほら、肉、肉焼けよったから、な」
「あ、ありがとう、ございま……」
「……ところで今町に出たら、やっぱシスター・コンプレークスが出てきよるんかな。それともマザー……あっ、ごめん、つい」
「…………死にたい。もう帰りたい」

 ――性癖神との邂逅を前に。一足早く、「幼馴染(初対面)を前に、無意識にシスコン&マザコンを晒す」という黒歴史を得た美月であった。やったね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

綾峰・美羽
【1】
てわけですね新堂さん
やっぱ女子のボクとしては結構手に憧れるんですよ
ほら、指も太いですし、ごつごつで力強さありますし、何より個性が出ますよね
指の動かし方やら、暇な時の手遊び、ほら、そうとこですよ
それで人となりが分かったり、ギャップが見えたり嬉しくなりません?
ちなみに、鈴ちゃんがお料理頑張って練習して手を怪我してるの見るとほんと応援したくなりますし
可愛いなって思いますやいっつも可愛いんですけど
あ、分かります?
ネイル結構個性でますし、可愛いですよね
今度澪美ちゃんと情報交換したいとこです
ほらボクのとかどです?
ふふ、上手なんですからもう
じゃボクが特別に肉を焼いたげましょう
あ、そのカルビはもらいます


新堂・十真
【1】
めっちゃ早口だな美羽……
でも正直分かるぞ、男子としては女子の指先ってのは繊細で良い
ほっそりしてて長いってのはもちろんだけど個人的には爪だな
爪の面積がちょい大き目で、縦に長い楕円でよ
そういう感じの爪ってのは磨きやすいし、化粧映えもするんだな
例えばウチの澪美なんかネイルやるから爪の手入れには気ぃ使ってんだけど
あれは俺的には百点満点だよな、全人類の女子が見習ってほしいと思ってるよ
そういう手入れされた指先が動くさまってのは実にセクシーだと考えるね、俺ぁ
へえ……美羽もなかなか腕がいいじゃねぇか
ボクっ子がファッションとかでガーリーさ出して来るのもそれは別件でポイント高いぞ
食べごろの上カルビをやろう



●この光景を妹たちと隣のテーブルの狼に見せてやりたい
「――てわけでですね新堂さん。やっぱり女子のボクとしては結構手に憧れるんですよ」
「手か」
「手です」
 聞き返す新堂・十真(チグハグジグソー・f01832)に、綾峰・美羽(放蕩テンプルナイツ・f00853)はにっこり笑って頷いた。
 そう、この2人、連れである。年頃の男女が。互いの性癖を。語りに来たのであった。
 そう言えば何だか艶めいた関係のように思えるが、実際のところ、そういうわけでもない。近い環境で育った、幼馴染のような間柄――少なくとも現時点の関係を言えば、そんなところだった。

「ほら、男の人の手って、指も太いですし、ごつごつで力強さありますし、何より個性が出ますよね。指の動かし方やら、暇な時の手遊び……あっ、ほらそれ。そゆとこですよ。それで人となりが分かったり、ギャップが見えたり、うれしくなりません? ちなみに鈴ちゃんがお料理頑張って練習して手を怪我してるの見るとほんと応援したくなりますし、可愛いなって思いますいやいつも可愛いんですけど」
「めっちゃ早口だな美羽……」
 話しの最中、美羽がそれ、と指さしたのは、肉を焼きながら、なんとなし、くるりと割り箸を回した十真の手元だった。そのまま見せつけるのも少々くすぐったく、思わず箸を置きながら、さすがに少々勢いに押され気味に……けれど十真も、一つ頷いて。
「でも正直分かるぞ。逆に男子としては、女子の指先ってのは繊細で良い」
「指ですか」
「指だ」
 す、とすかさず机の上に広げられた美羽の手のひら、色白な細い指を見下ろし――とん、と、指と指の間の空間を、自分の中指で突き。手を引く様子もなく、面白がるように見返してくる美羽に、十真は一つ、愛想なく頷いて。
「ほっそりしてて長いってのはもちろんだけど、個人的には爪だな。爪の面積がちょい大き目で、縦に長い楕円でよ。そういう感じの爪ってのは磨きやすいし、化粧映えもするんだな」
「わあ。ふふ、なんていうか視点が女性的ですね、新堂さん」
「……まぁな。うちの澪美なんかネイルやるから爪の手入れには気ぃ遣ってんだけど。あれは俺的には百点満点だよな。全人類の女子が見習ってほしいと思ってるよ。そういう手入れされた指先が動くさまってのは実にセクシーだと考えるね、俺ぁ」
「ははあ……」
 わざとらしく感心したような声を漏らしながら、ゆっくりと手を引き、音のない拍手の仕草をする美羽。やめんか、とでも言いたげな十真の仏頂面に、くすりと笑い。
「けど、はい。ネイルは結構個性出ますし、可愛いですよね。今度澪美ちゃんと情報交換したいとこです。ねぇ新堂さん」
「ん?」

「――ボクのとか、どです?」
 言いながら。よく手入れされた爪を見せ付けるように、わざとらしく差し出された右手を。

 十真は。どれ、と、軽く握り、眼前に引き寄せた。

 触れた指先から伝わる、微かに身を固くした美羽の様子には気付かない振りをして。帯びた熱が伝わりそうなほど間近で覗き込んだ、透き通りそうな肌、控え目に色づいた爪先に、一つ頷き。
「へえ、美羽もなかなか腕がいいじゃねぇか。ボクっ子がファッションとかでガーリーさ出して来るのもそれは別件でポイント高いぞ。食べごろの上カルビをやろう」
「もう、お上手なんですから」
 ぱっ、と離された手を膝の上に下ろし、テーブルの影、左手で包みながら、美羽はくすくすと笑って。
「じゃボクが特別に肉を焼いたげましょう」
「話がちょいと繋がってねぇぞ」
「……お礼です。カルビは貰いますってば」
 にこにこ、笑顔は崩さぬまま、何か文句ありますかとばかりに見返してくる美羽に、十真は小さく肩を竦めて。

 ――油滴る肉を口に運びつつ。なんとも美味い思いをする機会を貰ったもんだな、などと思うのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蒼焔・赫煌
【1】
【POW】

せーへきだね、せーへきだともっ!
ところでせーへきってなんだい?
ほうほう、ほうほう!
つまり、好きなもののことだねっ! わかるとも!

うーん、好き、好き……血が美味しい、とか?
ダメかい、ダメかなっ?
うんうんーーー、それならねー、王子様みたいな人が好きだよっ!
いいよね、綺麗でー、きらきらしてて!
白馬に乗って、迎えにきてくれるのさ! 一緒に乗せてもらうんだよ!
抱きしめてもらえたら嬉しいだろうね、優しく抱きしめてもらえるんだよっ!
一度くらいそんな風にしてもらえたら幸せだろうねっ、きっとさ!
夢を見るのは自由だって聞いたことあるものさ!


シスカ・ブラックウィドー
[1]
性癖の暴露大会かあ......じゃあボクは女装の醍醐味について話そうかな★
 元々は暗殺(しごと)の利便性の為に始めた女装だったんだけど、なんか癖になっちゃったんだ。ホラ、ボク可愛いからさ★
 でもやっぱり一番面白いのはボクの本当の性別を知った時の反応かな。好感度を上げに上げて、告白された時とか特に。
 現実を受け入れられずに暴れ出す人、愕然とする人、むしろ燃え上がる人、色んな人がいるけど、いつ見ても面白いね。
 ちなみにボクは性別に関して「嘘」をついたことはないよ。みんなが勝手に勘違いしてくれるだ・け★
 え、ボクの恋愛対象は「どっち」なのかって?そこは今回はヒ・ミ・ツ★

※アドリブ歓迎


浅葱・シアラ
【1】
性癖って何だっけ……あ、多分好みのタイプのことかな……?
多分そうだよね……!
語るの……?
シア、頑張る……!

【WIZ】で判定
お肉も美味しいけど、お野菜も美味しい……!
デザートは和菓子がいいな……!

あ、性癖、語るんだよね……?
シア、頑張る!
シアはね……人魚姫みたいなお話が好き……!
王子様に憧れて、でも種族違いで苦しんで……困難を越えた先に、王子様と出会って、一緒に踊るの……!
小さなフェアリーだったら叶わない、手と手を取り合って、目と目は見つめ合って。
いつまでも、いつまでも踊りたい……!
種族違いの恋って……なんだか憧れるの……!
フェアリーには持ってない世界を持ってるから……!
性癖、違う……?



●この中にひとり、――がいる
「せーへきだね、せーへきだともっ! ……ところでせーへきってなんだい、シアラさん?」
「ひぅっ? ……な、何だっけ……」
 蒼焔・赫煌(ブレイズオブヒロイック・f00749)の無邪気な問いに、フェアリーである浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)は文字通り、テーブルの上にふわりと飛び上がりながら、こてんと首を傾げた。
「ちょっとちょっとー、グリモア猟兵さんの話、ちゃんと聞いてなかったの? 性癖は性癖だよ、えっちな好み★」
 そんな2人を覗き込んで口を出したのは、翡翠色のドレスを纏った美しいダンピール、シスカ・ブラックウィドー(魔貌の人形遣い・f13611)。そんな遠慮のない言葉に、2人は顔を見合わせて。
「ほうほう、ほうほう! つまり、好きなもののことだねっ! わかるとも!」
「好みのタイプ、だよね……うん、分かった……! シア、頑張るね……!」
 素直に頷いた。
「ええー……張り合いないな、この子たち……」
 呆れ気味ながら、成り行きとばかりそのまま椅子に座り、元からの知り合いらしい2人に自己紹介を済ませたシスカ。このテーブルを囲むのは、そんな「少女たち」だった。

「うーん、好き、好き……血が美味しい、とか?」
「ひぅっ、血……!?」
「……まぁ、血はボクも好きだけど。意外と飛ばすね、キミ」
「シスカも好きなの……!?」
 赫煌の、そしてあっさり同意したシスカの言葉に震え上がるシアラ。彼女は、様々な種族やジョブの者が集う賑やかな町に生まれ育ったが、残念ながら、その中にダンピ―ルのような「血を吸う種族」はいなかったのだった。
 そんなシアラの様子に、間違えちゃったかな、間違えちゃったみたいだね、と赫煌はちょっぴり困った顔でうんうん唸り。
「うんうんーーー、それならねー、王子様みたいな人が好きだよっ!」
「王子様っ! それなら、シアも好き!」
 赫煌は、ふわっと飛び上がって近付いてくるシアラに、ほっとした笑みを浮かべ。
「いいよね、綺麗でー、きらきらしてて! 白馬に乗って、迎えにきてくれるのさ! 一緒に乗せてもらうんだよ!」
「うん、うん……! シアはね、人魚姫みたいなお話が好き……! 王子様に憧れて、でも種族違いで苦しんで……困難を越えた先に、王子様と出会って、一緒に踊るの……! 手と手を取り合って、目と目は見つめ合って。いつまでも、いつまでも踊りたい……!」
「わあ……いいね、いいね。ダンスって、こう、腰を支えてもらうんでしょう? 優しく抱き寄せてもらえるんだよっ! そうしてもらえたら嬉しいだろうね、幸せだろうね。きっとさ!」
 きゃーっ、と手を合わせ、2人の少女は盛り上がる。
「シアはフェアリーだから、こんな夢、叶わないかもしれないけど……種族違いの恋って……なんだか憧れるの……! フェアリーには持ってない世界を持ってるから……!」
「うんうん、分かるさ、分かるともっ! 一度くらい、って思ってもいいんじゃないかな、いいと思うよ。だって、夢を見るのは自由だって聞いたことあるものさ!」

 そんな2人に、やっぱり呆れ気味にシスカは笑って。
「お姫様に王子様もいいけどさー。それって性癖かはちょっと怪しいよね?」
 そんな言葉に、無邪気な2人は視線を集め。
「それじゃあ、それじゃあ――」
「何を話したらいい、の?」
 声を合わせて、問いかける。するとシスカは待ってましたとばかり、
「じゃあボクは――女装の醍醐味について話そうかな★」
 えへん、と胸を張る。
「シスカさんは女の子なの!?」
 びっくり、目を見開く赫煌。そうそう、この反応だ。シスカが欲しかったのは……
「わぁぁ、すごーい、可愛い! お父さんみたい!」
「えっ?」
 ぱちくり。今なんて言った、このフェアリー?
「うちのお父さんもね、とっても可愛いんだよ。10歳の女の子にしか見えないくらい!」
「どんなお父さん!?」
「……どんな……えっと、時々お母さんにお姫様抱っこされてる!」
「ええー……」
 ちょっと追及しちゃいけないような気がする……。シスカは気を取り直したように首を振り。
「話の続きをするね。ええと、元は『しごと』のために始めた女装だったんだけど、なんか癖になっちゃったんだ。ホラ、ボク可愛いからさ★」
「あっ、それ、お父さんも言ってた! 『俺可愛いから』って」
「ちょっとお父さんの話やめてくれるかな?」
 とりあえず、脱線は手で制して――くすりと、どこか妖艶に笑い。
「やっぱり一番面白いのはボクの本当の性別を知った時の反応かな。ふふ、さっきの赫煌も楽しかったけど……」
 ちらりと、彼女に視線を向けてから。
「好感度を上げに上げて、告白された時とか特に、さ。現実を受け入れられずに暴れ出す人、愕然とする人、むしろ燃え上がる人、色んな人がいるけど、いつ見ても面白いね」
「……ちょ、ちょっと可哀想……」
「シスカさんは、悪女……悪男? ってやつだねっ! 意地悪、意地悪だ!」
 明らかに過去に実在したのだろう、シスカが語る誰かの話。同情した様子のシアラの様子、そして「悪い人なの?」と問いかけるような赫煌の視線に、ちっちっちっ、と指を振り。
「人聞き悪いなぁ。ボクは性別に関して『嘘』をついたことはないよ。みんなが勝手に勘違いしてくれるだ・け★」
 そう、彼は自分が女だなんて、一言も言っていない。ただ、女物のドレスを着ているだけなのだ。
 そう言われれば、何も言い返せず。
「……そういえば、そういえばっ! シスカさんは、男の人が好きなのかなっ?」
 せ-へきっていうなら、どっちがそうなのかは大事かもしれないし! そんな赫煌の思い付きの問いに――シスカは、そっと唇に指を当て。
「恋愛対象? それはね――今回は、ヒ・ミ・ツ★」
 にっこり、小悪魔の笑みを浮かべてみせるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

零井戸・寂
【1】◆ロク(f01377)と

キマフュも大概だけどこの世界の神とかオブリビオンとかってもしかしてすっげえ馬鹿なの???

……まぁいいや。
仕事なんだろやってやるさくそったれ。

僕の性癖は……
いや存分ご承知なのは知ってるけど!!
先に言わなくていい!
アセンションでもない!!

ぁー……まぁほら
あれだよ
こう……ふにっと柔らかい感じの腿がやっぱりイイよね
あと横から見たときの腰のくびれとヒップの丸みとそこからすらっと続くラインが……
うん、何を言ってるんだろうな
あ、うん
肉美味しいね……うん

君の性癖……うん、知ってた
いやあまり大きな声で言わなくてもいいよ
ってか言うな
僕の匂いの感想も要らないよ!?

*好きにしてください*


ロク・ザイオン
※零井戸と
【1】
(乏しい表情で黙々肉を焼いている)

(なんやかや、キミの性癖を既に知っている森番である)
…脚フェチ。
(ドヤ)
…そんなに怒ると。肉がおいしくない。
アセンションをするといい。
なんか…(ろくろ)器が。広くなる。

それで。
脚フェチとはなんだ。
脚はよい。長くて、よく動くのがよい。
大切で…
(肉が焼けている)
うまい。

そうじゃないのか。

…匂いがよい。
こどもの。
首はよい匂いがする。ふわふわして甘い。近くで沢山吸いたくなる。
舐めるのもよい。やわらかい。

…あまり大きな声で言うな?
そう。

零井戸もよい匂…
言うな?
そう。



●互いの性癖をよく知っている男女って前提でこんなに含みがないの凄いと思う
「この世界の神とかオブリビオンとかってもしかしてすっげえ馬鹿なの???」
 キマフュとかも大概だけどさぁ……なんて。頭を抱えんばかりの様子で、零井戸・寂(PLAYER・f02382)は呻いた。
 対面に座るのは、ロク・ザイオン(明滅する・f01377)。彼女は寂の呻きに返事をするでもなく、乏しい表情で黙々と肉を焼いていた。
 彼女。そう、彼女だ。寂もまた、わざわざ異性と共に性癖を語りに来た勇者であった。
 ただ……今回、男女2人の組で示し合わせてこのBBQ会場に来たのは3組。その中でも、この2人が、最も色気の気配を感じさせない組であったことは、言うまでもない。

「……まぁいいや。仕事なんだろ、やってやるさくそったれ……!」
 寂は、開き直ったように、キッとロクに向き直り。
「僕の性癖は――」
「……脚フェチ」
「いや存分ご承知なのは知ってるけど! 先に言わなくていい!」
「(どやぁ)」
「なにその顔!」
 寂は、脚フェチである。そしてそれを、とうにロクに知られていた。何ならロクの性癖も知っていた。だからと言って、説明されたいかは別の話である。思わず声を荒げてツッコむ寂に、ロクは
「……そんなに怒ると。肉がおいしくない」
「うわああ正論が腹立つ……!」
「アセンションするといい」
「アセンションはしない!」
「するといい。なんか……器が広くなる」
「器が狭くて悪かったね!!!」
 嵐のようなツッコミ。ぜぇはぁと息をつく寂に、気付けば、ロクは何やらろくろを回すポーズをしていた手を止め、じっと視線を寂に送り。
「それで」
「うん?」
「脚フェチとはなんだ」
「ええー……」
「……脚はよい。長くて、よく動くのがよい」
「!?」
 呆れて溜め息を吐きかけたところ。おもむろに口を開いたロクの言葉に、寂はギョっとする。
「脚は、大切で……」
 じゅうう。網の上では、腿肉がよく焼けていた。ロクはそっと肉を取り、頬張る。
「うまい」
「そんなこったろうとは思ったよ!!」
 今度こそ頭を抱える寂。その様子に、ロクもさすがに「そうじゃないのか」と問えば。

「ぁー……まぁほら、あれだよ。こう……ふにっと柔らかい感じの腿がやっぱりイイよね。あと横から見たときの腰のくびれとヒップの丸みとそこからすらっと続くラインが……エモ……。……うん、何を言ってるんだろうな。僕も肉食べていい?」
「うん」
「……あ、美味しい……」
 もぐもぐ、ごくん。寂は、肉を飲み込んで。

「ええと、それで。君の性癖は……」
「……匂いがよい」
「うん、知ってた」
「こどもの」
「こどもの。」
「子どもの首はよい匂いがする。ふわふわして甘い。近くで沢山吸いたくなる。舐めるのもよい。やわらか――」
「分かった! 分かったからあまり大きな声で言わないでいいよ! っていうか、言うな!」
「……そう」
 寂の制止に、ロクは表情の読めない顔で頷き、口を噤む。

 じゅうじゅう、じゅうじゅう。
 結果、テーブルには無言で肉を焼く音だけが響き。
「……零井戸も」
「ん、僕?」
「零井戸もよい匂……」
「僕の匂いの感想も要らないよ!?」
「……そう」

 じゅうじゅう、じゅうじゅう。
 散発的なボケとツッコミが響く中、肉を焼く音だけが、途切れず響き続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オルカ・ディウス
【3】
ふむ……性的嗜好か……過去に守護神として崇められていた頃はむしろそういったものを向けられる側ではあったが……いや、よそう。
さすがの我もドンビキするのとかあったし。
一部の我が民のノリは神殺し(羞恥心で)だったし。
…………うん!
それはともかくとして、バーベキューを楽しもう。野菜多目でデザートも楽しもう。
甘いお菓子は好物だ。



●神は性癖に触れない
「いやはや……大惨事のようだな」
 トーガじみたドレスを纏った女神、オルカ・ディウス(神海戦姫・f16905)は。しみじみと頷きながら、玉ねぎを焼いていた。
 隣のテーブルから聞こえてきたのは、叫ぶようなツッコミの嵐。残念ながら細かい内容までは聞き取れないものの、あちこちのテーブルで、激しい応酬やらねっとりした応酬やらが繰り広げられているのが見て取れた。
「ふむ……性的嗜好か……」
 もぐ。焼けた玉ねぎを口にし、ピーマンの焼け具合を確かめながら、オルカは少しだけ、思いを巡らせる。
 神であるオルカが、過去に守護神として崇められていた頃――時に、彼女はそうした欲を向けられる側であった。その内容は……
(「……いや、よそう。さすがの我もドンビキするのとかあったし」)
 せっかくの食事がまずくなる……とは、また違う気もした。一部の「彼女の民」のノリは、羞恥心で神を殺そうと言わんばかりであった。まあ、愛されていたのだろう、たぶん。ちょっと怖いので深くは考えないこととする。
 ピーマンを頬張り、そろそろ肉も焼こうか、と網に並べる。肉は上カルビ。バーベキューだというのに焼肉屋のようなメニューだが、何やら他のテーブルで注文があり急遽揃えたらしい。
 大変サービスの良いことで、素晴らしい。デザートはあるのだろうか。オルカはそう思う。

「……いやはや、まったく。それにしても」
 食に、性に。
 いくら時を経ようとも――人の子の欲というのは、相も変わらず度し難い。
 改めてそう思う、『オルカディウス』であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

コーディリア・アレキサンダ
>【2】
>シンヤ(f04640)と

ん……。そういうものなのかな
そういうものなのかもしれない(肉を焼く)
まあでも、特に気になるものはあって然りなんじゃないかな
例えば……瞳が好きとかね


(随分前置きするんだなぁ)(野菜はさておき肉ばかり焼きながら小首を傾げて)

…………ああ、髪
うん、髪だね。髪は女性の命というもんね(肉を食べながら頷き)


白、銀……(自分の髪を見る)
…………。え、ええと
ああいや、ちょっと驚いちゃっただけ。別に変なことではないよ、大丈夫(母親のような優しい微笑)

あー、ええと。どうしよう
こういうときは……えー……触るかい? 髪
ボクは別に構わないけど(それそれとしてお肉が美味しい)


雨宮・新弥
>【1】
>コーディリア(f00037)となんだかんだで同席
>肉が喉を通らない

性癖…ってこう…好きな…部位的な…だよな
…必要な…こと……なんだよな…

……あの
これだけは先に言っておきたいんだけど
別に、なんか、そういうアレとか、違くて、全然あの、違うから
マジでそこだけはホント安心して欲しいんだけど
……か
髪………とか…

…こう…女子って感じ…するし…
せっ…けんの…香り…とか
あと……色…
………白、…っぽい…………みたいな…髪色…
…元素記号で言うと……Ag的な…
……………ぎん……

……いや…
ほんと………違…
…ごめん……
…宿…出て行けって言われたら…すぐ…
ほんと…すいません……

触……え?いや…は?
……
いや構えよ



●怪しいプレイしにくるんじゃない Ⅰ
(「……なんでこうなった?」)
 雨宮・新弥(宵待人・f04640)は、胸中で呻いた。
 視線の先、向かいの席に座るのは、とんがり帽子を被り、こくこくと頷きながら肉を口に運ぶ魔女姿――コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)。そう、男女2人のペアでこの場を訪れた勇者、3組目であった。
 どうしてこうなったのか、といえば、それはもう「成り行き」としか言いようがない。同じ依頼を受けてグリモアベースを訪れ、見知った顔がいると声をかけて合流してみれば、こんな内容。後の祭りとしか言いようがないのであった。

「……性癖……ってこう……好きな……部位的な……だよな」
 黙っているわけにもいかないと、ぽつりと口を開けば。その声に顔を上げたコーディリアは、きょとんと顔を上げ、「ん……。そういうものなのかな」と、肉を焼く手を止めぬまま、澄ました顔で当然のように頷く。
(「……俺、これからこの人に語るのか、性癖。……いや、語られる方が、ヤバいか……?」)
 愛想がないだの目つきが悪いだの、散々に言われがちな新弥の仏頂面であったが、その実、内心は大分テンパっていた。
 コーディリアは、新弥が滞在する宿の主だ。同時に、年上の綺麗なお姉さんでもある。なんとも、こう、刺激的であり――それ以上に、立場上、下手なことを言ったらさすがにマズいのではないか、という緊張感があった。

「まあ、でも」
 新弥が固まっているうち、コーディリアが開いた口に、びくりと顔を上げれば。
「特に気になるものはあって然りなんじゃないかな。例えば……瞳が好きとかね」
 その言葉に、コーディリアと視線を合わせ続けることが出来ず、思わずそっぽを向く。……まるで光を見続けた後のように、まぶたの裏に、コーディリアの赤い瞳の残像が残った気がした。
 ダメだこれ。聞く方がダメだ。そう悟った新弥は、内心、覚悟を決める。これは必要なことなんだ、そう自分に言い聞かせ、口を開く。

「……あの。これだけは先に言っておきたいんだけど」
「? うん」
「別に、なんか、そういうアレとか、違くて、全然あの、違うから」
「…………?」
「マジでそこだけはホント安心して欲しいんだけど」
 じっと注がれるコーディリアの視線から逃れるように、視線を逸らしたまま、どんどんと早口になる新弥。……まあ、肝心のコーディリアは(随分前置きするんだなぁ)ときょとんとしながら肉の焼け具合に気を配っているだけなのだが、今の彼にそこまで悟る余裕はない。ちょっとは野菜も食えよ、なんて、いつもの彼ならするだろう注意をする余裕もない。ゆっくりと、口を開き、
「…………か」
「か?」
「髪……とか……」
 言った。
「…………ああ、髪。うん、髪だね。髪は女性の命というもんね」
 コーディリアが頷く。返事がワンテンポ遅れた気がしたが、その表情は新弥にはいつも通りに見える。引かれてないだろうか。どこまで詳しく話せばいいのだろうか。そんなことを考えながら、
「うん……こう……女子って感じ……するし……。せっ、けんの……香り……とか」
「香り」
「あと……色……白、……っぽい……みたいな……髪色……元素記号で言うと……Ag的な」
「えーじー?」
「…………ぎん…………」
「……白っぽい、銀」
 その声に、初めて、小さな驚きが含まれていた気がして。新弥は、逸らしっぱなしだった視線を前に戻す。
 ……コーディリアは。二つにまとめた白銀のおさげの一本を指先で引き寄せ、じっと視線を落としていた。少しだけ、頬が赤かった。

(「――――――――あ゛」)
 やらかした。さあ、と血の気が引くのを感じる。
 直前の自分の言動を、振り返る。目の前の女性の髪色を指して、性癖である。あまつさえ、石鹸の香りである。何が「安心してほしい」だというのか。一発退場モノだった。
「…………。え、ええと」
「……いや……ほんと……違……!」
「ああいや、ちょっと驚いちゃっただけ。別に変なことではないよ、大丈夫」
 コーディリアは、ふわりと、変わらぬ笑顔を向けてくれる。――気遣いだと、そう感じた。だから、その笑顔は何の救いにもならなくて。がたりと、椅子を揺らし。
「……ごめん……宿……出て行けって言われたら……すぐ……ほんと……すいません……」
 大柄な身体を小さく竦めるように、頭を下げて、謝った。それ以外、何を言えば良いのか分からなかった。

 弱ったのは、コーディリアである。何せ彼女は、本当に言葉通り、別段気にしてはいないのだ。ええと、どうしよう……口の中で呟いて。――ああ、そうだ。好きだというなら、これで元気が出るかもしれない。
「……えー……触るかい? 髪」
「触」
 新弥は、その言葉に、思わず顔を上げ、
「……え? いや……は?」
 かくんと、外れそうなほどに口を開けて、コーディリアを見つめた。
「ボクは別に、構わないけど」
 コーディリアは。透明感のある笑みを浮かべながら、本心からそう言って。
 ほら、こことか、と、引き寄せたままだったおさげを、くるりと白い指先に絡めてみせた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 たっぷり数秒。新弥は、コーディリアと見つめ合ってから。

「いや構えよ……!」
 ツッコんだ。
 渾身の、腹の底からの、ツッコミだった。

 ツッコむ前に。触るかどうかの葛藤が、どれほどあったかは――本人のみぞ知る。
 結論だけを言えば、新弥は「巡るかもめ亭」を出て行かずに済んだようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キッテン・ニコラウス
『ロックビルサンドイッチ』
【2】
それじゃアラジの性癖教えてくれる?
あ、私は私自身が性癖とか特に面白くもない感じだから、うん、アラジがどーぞ?
へー、大きいおっぱい……大きいおっぱい??
(妹のおっぱいをチラ見する)(大きい)

なんで大きいおっぱいなの?
おっぱいなんて色々あるじゃない
なんで大きいおっぱいじゃなきゃだめなの?
大きいから?ウェンディが大きいからかしら!?

は??ウェンディのおっぱいじゃダメってどういうことよ!!
ウェンディのおっぱい大きくて最高でしょうが!!
ウェンディのおっぱいをいやらしい目で見ちゃダメだけど
ウェンディのおっぱいが最高じゃなきゃダメでしょ!!
ウェンディのおっぱいが性癖になれ!!


ウェンディ・ロックビル
『ロックビルサンドイッチ』
【2】
はあい!それじゃ、アラジくん、せーへきお願いね!
その間僕、お肉焼いとくから!ちゃんとみんなにも配ってあげるから安心してね!
……僕の性癖ー?んへへ、おねーちゃんみたいにカッコいい人、なんてねっ。

んぇ?大きいおっぱいー?確かに男の子っておっぱい好きだもんねぇ。
……ねね、大きいおっぱいって、どのくらいー?このくらいー?
(胸を張ってみせる)(ぽよぽよ)

僕よりもっと!欲張りさんだねえ。
ってゆーか、おっきいおっぱいってことはおねーちゃんとかダメなの?
こんなに美人なのに?足も長くてモデルさんみたいなのに?
はぇー……。わかってないなぁー。


十河・アラジ
『ロックビルサンドイッチ』
初対面の人で良かった……

【1】
いきなりですか!?確かに主旨はそうですけど……!!
ええと、その
性癖……と言うのかどうかは分からないんですけど
大きい胸の女性や年上の方が、はい、好みでして

あ、ボクは野菜だけで十分ですよ(清貧)

(キッテンにまくしたてられ)
ちち、違いますってば!昔好きだった人が大きくて……
彼女はウェンディさんより大きかったけど……いえウェンディさんがダメと言うわけではなく!!
(ウェンディを見て)
ウェンディさんのも十分良いと思……って、何してるんですか!?(聖痕が淡く光る)
え、ええ、キッテンさんもお綺麗ですし素敵な女性だと思います……(足も見る)

※アドリブ歓迎



●怪しいプレイしにくるんじゃない Ⅱ
「それじゃアラジの性癖教えてくれる?」
「いきなりですか!?」
 十河・アラジ(マーチ・オブ・ライト・f04255)は、右隣に座るキッテン・ニコラウス(キマイラのブレイズキャリバー・f02704)の声に、思わず声を上げた。
「あ、私は私自身が性癖とか特に面白くもない感じだから、うん、アラジがどーぞ?」
「それじゃあその間、僕、お肉焼いとくから! ちゃんとみんなにも配ってあげるから安心してね!」
「あ、ボクは野菜だけで……清貧の誓いがあるので」
「そうなの? じゃあその分は私たちが貰いましょ、ウェンディ」
「はあい、お姉ちゃん!」
 そして、アラジの左隣でてきぱきと肉を焼くのは、キッテンの妹、ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)。
 男女の3人連れ――というわけではない。語るなら初対面の相手が良いと考えたアラジが、気が付けばこの姉妹に捕まり、自己紹介もそこそこに性癖語りを促されているという状況である。

 ――ただ、今一度、整理しよう。
 グリモア猟兵が「向かいの席の相手に語れ」と言った通り、当然、テーブルの向かいにも椅子は用意されている。
 ただ、姉妹がなぜか当然のように、アラジを左右から挟むように座っただけである。4人がけのテーブルであったため、そこそこ窮屈。これぞロックビルサンドイッチの構えであった。

「ええと、その。性癖……と言うのかどうかは分からないんですけど」
 近いなぁ、と左右を気にしながら、顔を赤らめたアラジはおずおずと口を開く。
「大きい胸の女性や年上の方が、はい、好みでして」
「んぇ? 大きいおっぱいー? 確かに男の子っておっぱい好きだもんねぇ」
「へー、大きいおっぱい……大きいおっぱい??」
 納得したようなウェンディと裏腹に、何か気がかりな様子なのがキッテン。ちら、と見るのは妹の胸元である。
 ――ちら、と言っても、なにせ少年を挟んで反対側だ。彼女とて露骨に覗き込むようなことはしないが、傾けられた頭から長いブロンドが目の前に垂れて、アラジは思わず、軽く仰け反った。……ふわりと、良い匂いがした。ちか、と聖痕が光った。
「なんで大きいおっぱいなの?」
「え」
 そんなアラジを、キッテンはじろ、と間近から横目で睨む。
「おっぱいなんて色々あるじゃない。なんで大きいおっぱいじゃなきゃだめなの? 大きいから? ウェンディが大きいからかしら!?」
「えええ!? ち、違いますってば! 昔好きだった人が大きくて……」
 唐突で理不尽な詰問に反論しながら――思わず、アラジが左隣を見れば。
「……ねね、大きいおっぱいって、どのくらいー? このくらいー?」
「ぶっ……!」
 少年の視線を迎え撃つように、ウェンディが胸を張っていた。
 ぽよぽよ。背丈の割に豊かな部類に入る胸元が、ぐ、と服を押し上げるように強調され、アラジの視線を奪う。
 ぴかぴか。ごくりと唾を呑んだ、少年聖者の聖痕が光る。……念のために補足しておくと、何らかの隠喩というわけではなく、実際に聖痕が光っているだけだ。念のため。
「……い、いえ。彼女はもっと大きかったですけど……」
「僕よりもっと! 欲張りさんだねえ」
 ぼそ、と漏らし、けらけらとウェンディに笑われて縮こまったアラジの肩を――
「は?????」
 右隣から、ドスの効いた声を上げたキッテンがガシリと掴み。
「ウェンディのおっぱいじゃダメってどういうことよ!! ウェンディのおっぱい大きくて最高でしょうが!! ウェンディのおっぱいをいやらしい目で見ちゃダメだけどウェンディのおっぱいが最高じゃなきゃダメでしょ!! ウェンディのおっぱいが性癖になれ!!!」
「ひえっ……!? ゆ、揺らさないで……いえウェンディさんがダメと言うわけではなく! ウェンディさんのも十分良いと思……」
「ウェンディのおっぱいをいやらしい目で見るんじゃないって言ってるでしょ!!!」
「なんて言えば良いんですかぁ!?」
 妹に向ける姉の愛情は恐ろしい。褒めても褒めなくても詰んでいるのである。助けを求めるように、アラジはウェンディに視線を向けた。ウェンディは、その視線に「んー?」と首を傾げてから、ふと、何か思いついた様子で。

「ってゆーか、おっきいおっぱいってことはおねーちゃんとかダメなの?」
「え」
「こんなに美人なのに? 足も長くてモデルさんみたいなのに?」
 促され、思わず、今度は右隣を見る。思わず、上から下まで、視線を動かす。キッテンは――なるほど確かに、スタイルが良い。手足はすらりと長く、しなやかな肉食獣のような肢体。胸だって、そりゃあ際立った巨乳というわけではないかもしれないが、女性らしい優美な曲線を描いていた。
「え、ええ、キッテンさんもお綺麗ですし、素敵な女性だと……」
「ええー。でも、さっきみたく光ってなーい」
「光っ……!?」
 自覚はなかったのか、目を白黒させるアラジを、ウェンディはじとっと見て。それから、アラジの目の前で、姉妹は視線を合わせ。
「はぇー……。わかってないなぁー」
「ほんと、分かってないわね」
 ハァー。それぞれの理由は違えど息の合った、おっきな溜め息。
「え、ええー……す、すみません……」
 アラジは顔を真っ赤にしたまま、小さくなって謝りながら。 

 ――左右から気の強い女性に挟まれ、責められるという新たな性癖が、無垢な少年の胸に……植え付けられたかどうかは、別の話。

 ちか、と、アラジの聖痕が光った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アスト・スタフティ
【思春期】
【1】
みんなを守るためだ、仕方ない……でも、さすがに女の子にはちょっとなぁ

というわけで、見知らぬお兄さん二人とご一緒させてもらおう
すいませーん

最初は控え目だが、所詮は中二男子
次第にノリノリに

ええと、頑張ってる子がすきっていうか……
僕まだ中学なんで
あるんですよ、体育

……夏とか、ちらっと横目で見えたりするじゃないですか?(あくまで偶然と言い張る思春期心)
まぁ夏なんで、汗だくなんですよ

こう、体操着がぴたっと貼りついたり
動きにあわせて、二の腕滑り落ちたり
ちょっと辛そうな顔で、顎から滴り落ちたり
……かわいい子の、普段はふわっとしてる、綺麗な髪が
……汗で、ぺたっとしてたら。なんかよくないですか?


九十九曲・継宗
【1】
【思春期】の皆と共に参加

…………い、一般市民のためですかね
ええ、仕方ないでしょう

性癖というかですね、やはり胸やお尻の大きい方には惹かれるといいますか
今働いている職場でも、胸の大きな方が多いので、ついつい視線が行ってしまのですよね

特にですね、掃除のために屈んだり、息抜きをする時に身体を伸ばしたり、そういう何気ない仕草で、体の一部が強調されてしまうと、見ざるを得なくて……

いえ、ほら! ああいうのって、母性の象徴的なところあるじゃないですか!
だから、こう、男なら仕方ないですよね!?(必死)


嘴鳴・幽
【1】
畜生気まぐれで依頼なんか行くんじゃなかった!
後で暴露されるのに話せるかよこんなの!
あーもーいいよ俺は、サポートに回るからお前らで話せよ……
……そんな風に思っていたときが俺にも有りました

……血管って、よくねぇ?
こうさ、グループワークとかでいつもより近くに座った女子をよ
ふと手元を見ると、綺麗な白い肌に綺麗に青い筋が通ってんのとかさ……
後ぶっちゃけるとさぁ、グラビラ写真集の水着とかで見る女子の太もも
その内太ももに走る血管とか特にたまんなくねぇか?
あの動脈と毛細血管のほのかな赤と静脈のくっきりとした青!!
むしゃぶりつきたくなる魅力ってのがあるんだよ!!!!!



●男たちの友情
「改めて考えてみたら、後で暴露されるのに話せるかよこんなの! 畜生、気まぐれで依頼なんか来るんじゃなかった……!」
「ま、まぁ、幽くん……一般市民のためですから。仕方ないでしょう」
「そうそう、みんなを守るためですよ」
 嘴鳴・幽(ノン・ボードネス・ハート・f12666)は頭を抱えた。それを苦笑気味に宥めるのは、同じテーブルについた2人の少年たちであった。九十九曲・継宗(機巧童子・f07883)、そしてアスト・スタフティ(記憶を 希望の 灯に焼べろ・f16872)。元は2人連れでこの場に来た幽と継宗であったが、同性の道連れを探していたアストがそこに混ざった――という流れ。

「まあ……こうしていても仕方ないですし、話し始めましょうか」
 意地でも喋らねえ、俺はサポートに回るからお前らで話せ……と口を噤んでしまった幽は、一旦置いておいて。口火を切ったのは、継宗。
「性癖というかですね……やはり胸やお尻の大きい方には惹かれるといいますか」
「ああ、まあ……男だしね」
 年の近い継宗に対しては多少砕けた口調で同意するアストに、頷いて。
「今働いている職場でも、胸の大きな方が多いので、ついつい視線が行ってしまのですよね。ねえ、幽くん」
「ああ、おふたり、同じ職場なんでしたっけ……」
 ピクリと反応しかける幽だが、やはり口は開かない。その様子に苦笑して、継宗は続ける。
「特にですね、掃除のために屈んだり、息抜きをする時に身体を伸ばしたり、そういう何気ない仕草で、体の一部が強調されてしまうと、見ざるを得なくて……ああいうのって、母性の象徴的なところあるじゃないですか」
「なんか普通に羨ましいんだけど。どういう職場なの」
「……い、いや、ほら! 結構、見ないようにして、気苦労も多いんですよ! やたら胸の大きいメイドさんたちとか、やたら胸の大きい覆面女医とか、やたら背中を見せて言動がエロくて胸の大きい画家とか、……だから、こう、男なら仕方ないですよね!? 見ちゃいますよね!?」
「いやほんとどういう職場なの。妄想かそういうゲームの話じゃないよね?」
 必死に正当性を訴える継宗だが、どうにもアストにはその熱意が伝わらない。いや、見てしまうのは分かるのだが。

「……ああ、でも、仕事中にってのは分かるかも……」
「おや。行きますか、アストくん」
 アストは不意に、そう呟いた。これ幸いと話題を変えようとする継宗の思惑に気付きながらも、素直に乗って。
「ええと、頑張ってる子がすきっていうか……僕まだ中学なんで。――あるんですよ、体育」
「体育。学校の授業、でしたか」
 ふむ、と頷く継宗。
 ――がたりと幽のパイプ椅子が鳴るが、やはり、まだ「見」。
「……夏とか、ちらっと横目で見えたりするじゃないですか? 偶然、あくまで偶然なんですけど。……まぁ夏なんで、汗だくなんですよ」
「ははぁ……薄着ですしね」
「はい……こう、汗で、体操着がぴたっと貼りついたり。動きにあわせて、二の腕滑り落ちたり。ちょっと辛そうな顔で、顎から滴り落ちたり……」
「…………」
 ごくりと、想像するしかない継宗は、唾を呑んだ。幽も呑んだ。
「……かわいい子の、普段はふわっとしてる、綺麗な髪が……汗で、ぺたっとしてたら。なんかよくないですか?」
「……ええ。良い……」
「………………良いな」
 ――ついに、2人分の、同意。おもむろに。幽が、立ち上がった。
 継宗も、アストも。その変節を責めようとはせず、ただ、暖かい目を向けた。

「……血管って、よくねぇ?」
「「血管」」
 思わぬニッチな単語に、2人は声をはもらせる。いや、そんな猟奇的な話じゃなくてよ、と幽は首を振り。
「肌が白いと浮いてたり、すんだろ。こうさ、グループワークとかでいつもより近くに座った女子をよ。ふと手元を見ると、綺麗な白い肌に綺麗に青い筋が通ってんのとかさ……」
「あぁぁーー。分かります。すごく分かります」
 深く頷く、アスト。体育の授業で普段見えない姿に視線を奪われるアスト。当然、体操着で露出した二の腕や太ももに走る血管だって、チェック済みだった。
「後ぶっちゃけるとさぁ、グラビア写真集の水着とかで見る女子の太もも……その内太ももに走る血管とか特にたまんなくねぇか?」
「そりゃあそうでしょう。嫌いな人、いるんですか?」
 こちらは継宗が、先に頷いた。
「あの、動脈と毛細血管のよ。ほのかな赤と……」
「静脈の、くっきりとした青」
「そう! むしゃぶりつきたくなる魅力ってのがあるんだよ!!!!!」
 同僚同士、息を合わせて語り合い、掲げた拳をがつりと合わせる!

 ――ハ、と、幽は皮肉げに笑う。
 最初はゴネちまったが――こんな風に語り合える仲間たちができるなら。
 これはこれで……悪く、なかったな。

 そんなことを考えた、幽であったが――不意に言葉を切って、ぴたりと固まる。その視線の先には――立ち上がっていたからこそ、目に入ったのだろう。別のテーブルがあった。
「……?」
「幽さん?」
 不思議そうに、2人は、急に黙り込んだ幽の視線の先を追った。
 【他のテーブルの話は聞こえない】し、距離があって【顔までははっきり見えない】のだが。
 ――ここから見える限り。そのテーブルでは何やら、「ぴかぴか光る少年が、2人の褐色美女に左右を挟まれながら、もじもじと何かの話をしていた」。

「……え? あれ性癖語ってるんですか、まさか?」
「嘘だろ???」
「いやどう見ても語ってんだろあれは……クッソ、どういう育て方したらそんなエロい女になるんだよ、親の顔が見てみてぇ……!」
 愕然とする2人を前に、幽はギリ、と割れんばかりに奥歯を食いしばる。
 いやいやそんな……と、継宗とアストは救いを求めるように辺りを見渡すが。
「待って下さい――あのテーブル、男女で手を握り合っていませんか? 何しに来たんですか? 男の方、斬っちゃダメですか?」
「……うわあっちも見てあれ、なんか魔女っ娘がデカい男の前で髪触ってるんだけど……え、髪フェチ? 髪フェチの話してそうなったの? あの男は何、伝説のジゴロの血でも引いてるの」

 次々に恐ろしい光景を目にして――真顔で、3人、顔を見合わせる。
 自分たちは、間違っていない。いないはずだ。正しく、依頼の主旨通り、むさくるしい男3人で顔を合わせ、楽しく性癖を語っていた。
 すぐ近くのテーブルで、女の子とキャッキャウフフと性癖を語り合っている男たちがいるというのにだ。

「……なあ。九十九曲、スタフティ」
「皆まで言わないで下さい、幽くん。分かっています」
「僕もです……いや。僕もだよ、幽君」

 ――この怒りは、オブリビオンに向けよう。
 でなければ――自分たちは、憎しみで人を傷つけてしまうかもしれないから。

 そして、互いの性癖と、そして悲しみを知った思春期の男たちは立ち上がり。敵を求め、街に向けて歩いていくのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『性癖神コンプレークス』

POW   :    性癖語り
予め【自身の司る性癖について暑苦しく語る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    スキルマスター「イディオシンクラシー」
技能名「【(司る性癖の)属性攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    イディオシンクラシー
【性癖全開モードの海月姿】に変形し、自身の【常識】【自重】【シリアス】を代償に、自身の【性癖にこじつけた行動】を強化する。

イラスト:やぎさん

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●マスターよりの補足
 2章には特殊ルールが存在します。ご確認の上、ご参加下さい。
 なお、宿敵イラストは代表の「穿いてない=コンプレークス」だそうなので、本依頼ではそれぞれ姿が異なるものとします。

>特殊ルールA【性癖は己との戦い】
 2章のプレイング採用は、「リプレイ中で己の性癖を語った方」が中心となります。
 3章で知り合いに露見してしまうという緊張感を保つため、MS裁量での同時採用はあまり行いません。(一切行わないわけではありません)
 性質上、2章では【合わせプレイングは推奨しません】。但し、1章で同時に参加していた場合、2章で同時採用する可能性はある程度高くなります。

 また、1章に参加していない、もしくは参加しても性癖を語らなかった方であっても、2章で「性癖を語りながら性癖神を探す」ことが可能です。
 行わずに参加することも普通にできますが、やや、採用率が低下します。

 なお、1、2章に参加できなかった場合でも、3章だけ参加しても楽しめるよう、B以降の特殊ルールを予定しております。
 これだと2章参加し辛いな……と感じて見送った場合でも、章更新時にはぜひ、ご確認いただけると幸いです。

●執筆スケジュールについて
 プレイング受付は5月19日(日)の朝8時半以降。
 ただし、1章と同じく、人数が多くなった場合は、1度再送をお願いする程度の時間がかかる可能性が高いです。
 不採用時、お気持ちが変わらなければ、再送頂けると嬉しいです(なるべく優先します)
綾峰・美羽
さってと、美味しいご飯の後には運動ですね
ただ性癖を語ったわけではないんですよ
ただの妹自慢? いえ、いえ、そんなことはありません

これでも聖騎士、両親から受け継いだぼくの剣技、特別に見せちゃいます
性癖神が熱く語っている間に
光の守護剣を放って近くの他の性癖神ごとまとめて攻撃しますね
ごめんなさいね?
いえ、共感するところは多くあるんですけれど
ぼく、さっき十分話しましたし、顔も知らない誰かより知ってる誰かの手の方がイイんです

駄目ですよぅ?
ながぁい話を聞いてるだけじゃぁどうしても退屈しちゃいますし
その後乱暴に扱うなんてもってのほかです
もっと優しくスマートにしなくちゃ
ぼくは騎士ですから、手は引く側ですけどね


月輪・美月
……万が一姉や母の姿で出てこられたら勝てる気がしない、勝った所で悲しさしか残らない。
これはもう違う性癖で上書きしつつ、敵を探すのがベストですね

つまり、僕の事を大好きな胸の大きな女性(純粋素直系で意図せず胸を押し付けてくるタイプ、更に親族外でか弱い守ってあげたくなる女性)が現れないかなあ、と声に出して街を捜索する……これだ。

いい思いをしつつ、敵を倒す……僕はこの可能性に賭ける
出てきたら普通に影を纏った拳で殴ります……うわ、絵面酷そう……

もし同じテーブルで話した事で、掛け算コンプレークスが出てきてしまったら、隣のテーブルでいちゃいちゃしてた人に押し付けたい



●System Message
 一定条件を満たすプレイングの採用により、特殊ルールBが公開されました!

>特殊ルールB【性癖使いは惹かれ合う】
 「同一の性癖」を司るコンプレークスが敵対者となった場合、優先的に同時採用されることがあります。


●彼が出会うのは
「僕の事を大好きな胸の大きな女性……! 純粋素直系で意図せず胸を押し付けてくるタイプ……! か弱い守ってあげたくなる女性……! もちろん親族外で!」
 月輪・美月は、ぶつぶつと呟きながら、ヒーローズアースの現代的な街並みの中を歩き回っていた。すれ違う一般市民、特に女性の目が大変冷たいが、彼にそれに気付く余裕はない。

 なにせ、死活問題である。
 母似とか姉似のオブリビオンが現れてしまえば、色んな意味で勝てる気がしない。戦いたくもない。
 故に、「別の性癖で上書きする」。してみせる。それこそが、彼の導き出した答えであった。
 そして――そんな彼の必死に思いに応えたかのように。路地裏の物陰から、一人の少女が、転がりだすように飛び出してきた。

「黒髪ツインテール来たぁ! 勝った! 見ましたか天国の(注:死んでない)心志さん……! 僕はやりましたよ……自分の性癖に……勝った……!」
「っ!!?」
 思わず上げた美月の喝采に、ぎょっとした様子で少女はこちらを向き直る。
「おお……可愛い! 胸も大きい……! 自信に満ちた様子ながらも柔らかい表情、素敵です、僕の事を大好きな感じがしますし胸も大きい……! さぁ、どこからでもかかってきて下さい。僕はいい思いをしつつ、あなたを倒す――!」
 美月は、少女をガン見しながら、戦闘準備として腕に影を纏い――そして、両腕をばっと開いた。
 いやほら、抱き着いてきたりするかもしれませんし。無意識に。性癖攻撃で。いや、戦いますけど。真面目に戦いますけどね?

 ……ただ、なんで騎士風の部分鎧を着て、大きな西洋剣を持っているのだろう、この子。いや似合ってますけど。しかも鎧をよく見たらちょっと傷ついてませんか。そんな性癖こじらせたかな、僕。
「あのあの、もしかして勘違いされてるんじゃないかと思うんですけど」
 腕を開いたまま、ふと首を傾げた美月の前、少女は反対の向きに首を傾げて。
「ぼくは性癖神じゃないですよ? 猟兵です」
「え゛」

 凍り付く美月の前で。――綾峰・美羽は、唇に手を当て、その瞳に、にま、と悪戯っぽい色を浮かべるのだった。


●彼女が出会ったのは
 時は、少し遡る。

 美羽は周囲に無数の光剣を浮かべ、一足早く、「性癖神」の一柱、黒髪の小柄な少女と対峙していた。
 集団戦の一端とはいえ、強烈なプレッシャー。冷静な猟兵であれば、オブリビオンと一目で見分けが付くだろう。

 何事か、熱い性癖を語ろうとした様子を遮るように――先手必勝、剣群を叩き込む。
 か細い悲鳴を上げて飛び退いた先、砕けたコンクリート壁が崩れ、砂煙に飲み込まれる敵を前に。

「ごめんなさいね? ぼく、さっき十分話しましたし……顔も知らない誰かより知ってる誰かの手の方がイイんです」

 ふふ、と笑う。
 油断はしない。これだけで終わりはしないだろう。そう、油断なく騎士剣を握り直した美羽の耳に飛び込んだのは――。

「――どうして? どうしてそんなこと言うの、『お姉ちゃん』?」
「…………っ!?」

 「妹」の、声だった。
 いや、違う。声色も、口調も違う。けれど確かに、その声は、愛おしい妹の物のように聞こえた。

「……なるほどなるほど。新堂さんとしたのは手の話だけじゃなかったですね。性癖のつもりじゃなかったですけど、『妹』の話も」
「ふふっ。そうだよ、『お姉ちゃん』。私はね、性癖神『シスター・コンプレークス』。分かるよ。お姉ちゃんは、『妹』が、『私』が、大好きなんだよね?」

 砂塵が晴れた中から姿を現したのは――傷一つない、黒髪の『妹』。
 にこりと笑みを浮かべて近付いてくる性癖神に、美羽もまた、にこりと笑みを返し。

「ふふふふ、ふふ。ええ、ぼくは妹……鈴ちゃんが大好きですよ。愛してます。けど――」
 光の剣が舞う中で、じゃきりと、エクスキューショナーズソードじみた片手剣を構え直し。軽やかに地を蹴って。
「大事な妹は、一人です。あなたじゃ、ない!」
 両親譲りの剣技。一撃の下にその首を叩き落とさんと、剣を振り抜いて――

「『そんな意地悪言わないで、お姉ちゃん』」
「なっ……!!?」
 びたりと。その剣先が、性癖神の首筋に触れる直前に止まる。
 躊躇った……わけではない、はずだ。戸惑う美羽の目の前で、『妹』が、えへ、と、口元に手を当て、はにかんだような笑みを浮かべて。

「『良かった、やめてくれた。……えへ、やっぱり優しいね、お姉ちゃん』」
「っ……!?」

 不可視の物理的な衝撃に、美羽の細い体が跳ね飛ばされる。
 そう、それは――【妹属性】による攻撃。全ての姉、兄に対する特攻攻撃だった。

●彼と彼女が戦ったのは
 そして、美月との出会いである。

「ふふっ、その腕に飛び込んでさしあげたいのは山々なんですけど」
 広げた腕の中に入り込むように、美月に、一歩近付き、からかうように覗き込む。うっ、と怯んだ顔を浮かべる青年を……どん、と思い切り横に突き飛ばす。
 次の瞬間、光剣を展開してその身を庇った美羽を襲うのは、
「『えへへ、待ってよぅ、お姉ちゃん!』」
「ああもう、鈴ちゃんぶるのやめてもらえませんか――!」
 不可視の衝撃波。びりびりと身を叩くそれを、何とか防ぎ切る。

「……あれあれ? 猟兵さんが増えてる。けど、分かるよ――私は『シスター』を司る性癖神だもん。あなたも、シスコンだよね?」
「し、シシシシスコンじゃないですし!!!」
 立ち上がり、自分の隣に立ちながら、慌てた様子で反論する美月を――美羽はちらりと横目で見る。
 カッコいいけど、シスコンかぁ……。いや、人のこと言えませんけど。ともあれ、そうなると……2人がかりとはいえ、苦戦は免れまい。
 シスター・コンプレークスの妹属性攻撃は、存外に強力だ。こちらの攻撃は意志に関係なく止められ、敵が妹ぶる度に自分は衝撃波で跳ね飛ばされる。鈴ちゃんじゃないと、分かっているのに――だからこその歯がゆさに、美羽は眉を顰め。

 性癖神は、にっこりと、美月を向いて。
「『うふ、うふふ。そんなつれないこと言わないで下さい、美月お兄ちゃん』」
「―――――」

 美月は。耳に響いた声色に、一瞬だけ、呆けたような顔をして。

 ――何も堪えた様子なく。ごす、と、性癖神を殴り飛ばした。

「痛ぁっ……!?」
「えっ!? あなた、平気なんですか……!?」
 性癖神に続いて、驚いた声を漏らす美羽に――視線を返すことなく、美月はどこか不機嫌にため息をついて。
「生憎、僕が思い浮かべてたのは姉ですよ。当てが外れましたね、性癖神さん」
「嘘! 嘘、嘘! だって私が引き寄せられたんだもん! 『お兄ちゃん』は、確かに――」
「……まあ、確かに……ちらっとだけ考えましたけどね。たまに黒髪で、胸が大きい、妹みたいな。勝ったらお兄ちゃんって呼ばせようかとか。……けど。それなら尚更、続けて負けられませんから」
 そんな……美羽にも性癖神にも意味の分からない呟きを、一つ漏らし。

 ――黒く、黒く、黒く。影よ、月を喰らって力と変えろ。

 そんな詠唱と共に、腕に纏っていた黒が爆発するように膨れ上がり、美月の半身が黒い影に覆われて。

「さようなら。……ええ、期待したのとは違いましたけど、ほんの少しだけ、良い目が見られましたよ」
 影が、『妹』を飲み込んだ。

 ――シスター・コンプレークス、撃破。

●それはそれとして
「ご助力、ありがとうございました」
「あ、いえ。僕こそさっきは庇ってもらって……あ、大丈夫ですか、ケガ。今手当てを……」
「いえ、騎士の務めですから。手当ても自分で出来ますからだいじょぶですよ。それより――」
「それより?」
「――性癖が多いと、大変ですね?」
「それは忘れてもらえませんかさっきは失礼しました!!!!!」

 ――女性猟兵を敵と間違えて盛大にセクハラかましたことは。割と大きな黒歴史のような気もするのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

山梨・心志
隠していた密かな趣味を初対面の幼馴染に暴露するという地獄を乗り越え
いざ、パトロールです

……性的嗜好を司るのオブリビオンなら、趣味のアレ(BL)じゃなくて好み(ボインの年上お姉さん)が出てくるんじゃね???
(小さくガッツポーズ)

いやー世界の平和のためですからしかたないですねー悪は倒さなきゃですよねー!!!

●BLが出た場合
くそ!!ですよねー!
しかし俺はフィクション萌で
あってリアルBLは
あっくそ萌えるなちくしょう!
このネタはしっかり記憶して後で母さんに匿名でネタ提供メールしとこう……

●お姉さんが来た場合
(童貞なので世話焼きおっぱいの破壊力に耐えきれず死ぬ)


ネタ行動・苦戦判定大歓迎
お好きにしてください



●戦えよ
(「……待てよ?」)
 山梨・心志は、オブリビオンを探すパトロールの中、ふと、足を止めた。
 思うのは、先ほどの会話。初対面の(嘘)幼馴染に、隠していた趣味のアレを勢いで暴露してしまった地獄はさておいて――。

 現れるのは、性的嗜好を司る神だという。
 ならば。

(「趣味のアレの方じゃなくて、好みの方が出てくるんじゃね……???」)

 小さく、ガッツポーズ。悪いな、と天国の(注:死んでない)美月に詫びる。
 今頃シスター=コンプレークスあるいはマザー=コンプレークスと邂逅しているであろう彼と違い、今から自分が会うのは間違いなく、そう――年上巨乳=コンプレークス。
 人生の敗者と勝者が決まった瞬間だと言えた。リア充ざまぁ。すみません言葉が過ぎました。

「いやー世界の平和のためですからしかたないですねー悪は倒さなきゃですよねー!!!」

 にへら、と頬を緩ませ、――期待に胸を震わせる心志の前に、ざ、と影が差す。
 合わってて顔を上げれば、そこにいたのは――ジャージ姿の少女だった。

「ふっふーん、ウチはBL=コンプレークス! こっちから同志の香りが――」
「ですよねーーーーーー!!!!!」

 くずおれた。本当は分かっていた。分かっていたつもりだったが、ちょっと涙が出た。

「ちょ、ちょぉ、人の顔見て泣かんといてや、お兄さん」
「……あの、せめてそのカッコで関西弁やめてくれませんか? 母さんを思い出して……」
「あ、そう? 分かったよ、薄い本の話してる時に親の顔思い出すのはキツいもんね……」
 すぐ直してくれた。案外、物分かりが良かった。
「……え、薄い本の話するんですか? 俺はフィクション萌であってリアルBLは」
「フィクションだね! オッケー! いいよいいよ、ジャンルは人それぞれだもん。BL好きイコール同性愛者みたいな偏見困るよねー」
 めちゃくちゃ物分かりが良かった。
「っていうか、ほら、そうじゃなくて。戦いとか……」
「なーに言ってるの。私たちが戦うなら、方法は一つしかないでしょう?」
「……え」
 何を言い出すのか、と目を白黒させる心志に、性癖神はにやりと笑い。

「『懐いてくる職場の後輩、ベッドの上では立場逆転でネクタイグイ』……!」
「!?」
 突然、口に出された言葉。だが、心志には分かった。BL=コンプレークスの求める戦いが。
「――『ショタ攻め。義理のお兄ちゃんと仲良くなる方法を必死に探して、ベッドの下の本を見つけた』」
「……!」
 だから、口にする。最近の好きシチュを。
 性癖神は、少しだけ驚いた顔をしてから――晴れやかな笑みをこぼし。次々と、シチュエーションを叩き付けてくる。心志もまた、全力でそれに応えた。

「――『ナンパな幼馴染にずっと鬱屈した思いを向け続けていた眼鏡の少年のヘタレ攻め』……!」
「…………ッ!」
 どれだけの応酬があっただろう。数十分の後、最後に繰り出した心志の一撃に、性癖神は目を見開いて。
「――私の負けだよ。最後に、君の名前を聞いても良い?」
「…………山梨・心志」
「いい名前。……これからも、その心に立てた志を、信じ続けてね。君には、神にも負けない熱い愛があるんだから」
「BL=コンプレークスさん……!」
 手を伸ばしかけた心志を、柔らかく微笑んで制して。少女の身体はさらさらと、指の先から、砂のように崩れ始めた。
 或いは。過去の情報、骸の海に沈んだBL=コンプレークスは――「今」の同好の士の心を震わせるネタが、知りたかっただけなのかもしれない。
 心志は、少しだけしんみりと……空に溶けていく彼女を見送った。そして、性癖神から聞いた中で見てみたいシチュは、母に匿名で提供しようと心に決めたのだった。

 ――BL=コンプレークス、撃破。

●それはそれとして
 心志はふと、周囲を見渡した。
 ――オブリビオンを退け、街の平和を守ったはずの心志に向けられる目は、あまりにも冷たくて。

「君、ちょっといいかな……?」
「えっあっはい、……えっ、もしかしてヒーローの人ですか……!?」

 ――山梨・心志、職務質問。

成功 🔵​🔵​🔴​

ショコ・ライラ
ふふ、狙いと挙動が分かってるなら迎え撃つのは簡単‪──‬その為にこの性癖を話したのさ。ほんとだよ

そう、【カウンター】技能に特化した私ならば指一本すら触れさせることなきゅっあぁあ☆♡♪
(二本指が根元まで深々)

くっ、オブリビオンめ、可愛い姿で私の隙をつくとはー
(※姿形は穿いてない~に準拠でお願いします)
ぜったいにゆるさんぞー
(棒読み)(地面に突っ伏す)(お尻を高々と突き上げたポーズ)

(*しばらくおまちください*)

ふ、ふぅ、ふぅっ…
乙女のソコをそんな適当かつ乱暴に扱うとは…くそー♡♡

一通り愉し…敵の分析(ほんとだよ)をしたら反撃

突っ伏したこの姿勢からでも私は…《Jazzy Draw》
反撃できるんだぞ



●刺されていいのは刺す覚悟のあるやつだけだ、みたいな話……ではないです
「やあ、現れたね。オブリビオン、性癖神コンプレークス。いや……カンチョー=コンプレークスと呼ぶべきかな」
 豊かな胸の下で腕を組んだ怜悧な美女、ショコ・ライラは、自信満々。目の前に現れた少女に向け、言い放った。
 とはいえ、いかになんでもそこまでピンポイントな性癖神は――
「へえ……よく分かったね、ボクの名前が」
 いたらしい。
「ふふ、狙いと挙動が分かってるなら迎え撃つのは簡単‪──‬その為にわざわざ性癖を話したのだからね。ほんとだよ」
 言いながら、観察する。オブリビオンの容姿は、愛らしかった。桃色がかったツーサイドアップ、悪戯っぽい顔を彩る赤いアンダーリム。グリモア猟兵から例として聞いていた「穿いてない=コンプレークス」と大差ないだろう。
 ……はっ、と。突然、我に返った風な様子で、ショコは棒読みの悲鳴を上げた。
「くっ、オブリビオンめ、可愛い姿で私の隙をつくとはー………………あれ?」
 期待……もとい覚悟していた衝撃がない。どこにって、尻にだ。たまたま腕を組み、隙を突かれれば無様を晒すだろう偉そうなポーズで隙を見せつけていたので、特に手で庇ったりはしていないのだが。
 間違いなく隙だらけだったはずだが、特に何か攻撃を受けた様子は……
 ……いや。おかしい。組んでいたショコの腕が自然とほどけ、一人でに動き出す。……操られている!?

「ふふっ……キミ、何か誤解していない?」
「……誤解?」
 聞き返す。――妙なデジャ・ヴ。嫌な予感に一筋の汗をたらすショコに、性癖神はにこりと笑い。
「ボクは、される側だよ」
 ケツを向けた。

「いやっ……ちょ、待って……! そこは、様式美ってものがあるだろう? 一通り愉し……もとい分析してからカウンターに出るっていう……というか、敵として猟兵を倒そうとすべきなんじゃあ――」
「様式美は知らないけど、大丈夫。バナナくらいならねじ切れるから」
「私の指をどうする気かな……!?」
 きっと今この街で行われている中で一番品のない問答が繰り広げられる最中も、ショコの腕は必至の抵抗も虚しく、人差し指が、じりじりと性癖神の臀部に近付いていき。
(「――やむを……えないか……!」)
 ショコは、端正な顔を、ぐっと歪め。その決断を、下した。
「……すまないね。出逢い方が違えば友人になれたのかもしれないけれど――私は、この姿勢からでも、反撃ができるんだ」
「え」

 ジュッ。
 ショコの手先、手品のように抜き放たれていたリボルバー型キャノンから、光り輝くビームが放たれた。

 ユーベルコード、『Jazzy Draw(ジャズィードロウ)』。
 アームドヒーローであるショコの正確無比な射撃。だがその真価は、「どんな姿勢からでも早撃ちができる」という曲芸じみた特性にある。
 本来は、カンチョーされながら用いる、そのつもりでいた技――だが。あえて自分に尻を向けていた敵に使えば、どこに命中するかは言うまでもない。

「~~~~~っ!!?」
 割と悲惨な感じでのたうちまわる性癖神を、悲しげな目で見下ろしながら。
 なんて悲しい勝利だ……と感慨に耽るべきか。
 正直ちょっと気持ち良さそうだね、と羨ましがるべきか。
 ショコはわずかに、思い悩むのであった。

 ZAP、ZAP、ZAP。

 ――カンチョー=コンプレークス、撃破。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

祇条・結月
またこういう奴……
取りあえず知り合いに気づかれないうちに無事に帰れたらいいなって(遠い目)

……チョーカーとか好きかな
あんまりごてごてしてない、お洒落なのとか可愛いのとか。似合う子が点けてるとすごいいよね
あると思わずそっち見るし、見たら首の細さとかやっぱり僕らとは違うな、って思っちゃうのはしょうがない、うん、しょうがない
あ、鍵付きだとなおいいかも
言っとくけど断じて束縛したいとかじゃないから
……黙して語らず。口にするとどんどん変になりそうだし

◆戦闘
そういうのは解釈違いだから、って性癖神が鍵付き首輪とか持ち出して来たら解錠して攻め手を封じて、【スナイパー】【投擲】で苦無を投げつけて近寄らずに倒す



●貴女の首に鍵をかけよう
「――またこういう奴……」
 はあ、と。ヒーローズアースの街並みを歩きながら、祇条・結月(キーメイカー・f02067)は疲れたような溜め息をついた。
 とはいえ、一度首を突っ込み、予知を聞いてしまった以上、せめて知り合いに気付かれないうちに無事に帰れることを願いながら、自分にできることをやるしかない。そう考えてしまうのは、紛れもなく少年の善性であり美点であった。……あった、が。

「……チョーカーとか好きかな。あんまりごてごてしてない、お洒落なのとか可愛いのとか。似合う子が点けてるとすごいよね」
 雑踏を歩きながら、気恥ずかしげにぼそぼそと呟く。
「あると思わずそっち見るし、見たら首の細さとかやっぱり僕らとは違うな、って思っちゃうのはしょうがない、うん、しょうがない」
 呟く。
「あ、鍵付きだとなおいいかも」
 呟く。

 ……その光景は、誠に遺憾ながら、控え目に言って不審者だった。呟きを漏れ聞いたのか、すれ違った女性がぎょっとした目でこちらを振り向き、足を早めていったのが見えた――いや見えてない。そんなことはなかった。結月はそう自分に言い聞かせ。

「……ふふ。同胞の、同胞の香りがするわ。私はタイドアップ=コンプレークス……坊や。貴方、拘束を愛する者ね……?」
「違っ……束縛したいとかじゃないから。断じてないから」
 ――とはいえ。その涙ぐましい努力は、幸い報われたようだった。
 羞恥に伏せていた顔を上げ、現れた敵を鋭く見据え――。

「――え」
 ぎょ、と。結月は、その容姿に目を見開いた。

 閑話休題。全く関係のない、たとえ話をしよう。
 ある猟兵が、敵に、ユーベルコードで鍵を取り付けたとする。
 それは能力を封じるために必要なものであり、鍵の種類はその内容によって決まり、誓って、何も趣味で選んだわけではないとする。
 加えて言うなら、至極真剣な心持ちであり、決して邪な念など抱いていなかったものとする。

 だが。
 状況はどうあれ、見目麗しい貴族然とした女の喉に手を伸ばし、無骨な南京錠を取り付け、声を出せぬよう枷としたのも、確かだとする。
 そして最後に、その女がどこか、やはり美しい友人女性の面影を感じさせる容姿であったものとして――。

 その光景が、「振り返ればどこか淫靡なもの」として、心の片隅に焼き付いていたとして。
 16歳の少年にとって、それは罪と呼べるだろうか。

 ――と、いうわけで。性癖神、タイドアップ=コンプレークスの第一印象は。

(「似てっ……!? ……あれ? ない、よね?」)

 赤髪の、気の強そうな女だった。首筋には首輪じみたゴツい革のチョーカーを着けている……良いな、と素直に思う。ただ鍵がないのが残念、いやそうじゃなくて。
 思い浮かべた誰かとの共通点といえば、髪の色くらい。なぜそうまで、似て感じたのかと結月が首を傾げれば――

「……うふふ、誤魔化さなくていいわ。今、私を誰かに重ねたでしょう? 私たちは性癖を司る性癖神――具体的な誰かにその性癖を抱いていれば。それともつい最近、向けたことがあれば――自然、印象が重なるのは当然のことよ」
「よくぼ……ああ……い、いやっ、向けてないから。誤解だから。……違うからね!?」
 最後の言葉は、思わず言い訳するように辺りを見渡して。……知り合いはいない。良かった。心底安心する。知らない人はすごい遠巻きに見てる気がするけど、必死に気にしないことにする。

「あらあら。誤魔化さなくて良いと言っているのに。ふふ、そう、分かった、鍵が好きなのね。いいわ、合わせてあげる。――さぁ、お互い、楽しみましょう?」
 妖艶な笑みと共に、いつのまにか鍵付きの首輪を取り出して。赤髪の女は、ふわりと間合いを詰め。結月の白い首筋に首輪を這わせ――がちりと、無骨なカギを鍵をかける。
「このまま、縛って飼ってあげる。可愛い坊や」
「悪いけど」
 微かな気まずさを残しながらも吐息を漏らし、結月は、ひらりと手を閃めかせ。
「――解釈違いなんだ、そういうの」
 かちゃん、と音を立て、鍵が落ちる。指の間に握られていたのは、使い慣れた鍵開け用のツール。あら、と驚きの声を漏らす性癖神の横をすり抜けながら、すれ違い様、二本、三本。関節を狙って、逆手で抜いた苦無を叩き込む。

「っ……釣れないのね、坊や」
「縛られる趣味とか、ないから。悪いけど、普通に戦わせてもらうね」
「…………私は、縛られる方もイケるわよ?」
「……しないってば!」

 少しだけ顔を赤らめながら。結月は向き直り、性癖神タイドアップ=コンプレークスと対峙する――。

 結論を言えば。
 彼は無数の苦無を自在に操り、(主にしきりに拘束したりされたりを狙ってくる敵の態度に)大いに苦戦しながらも、なんとか敵に勝利することができた。
 恐らく、誘いに乗って拘束に関する技能を『術式封鎖』し、性癖神の腕にでも鍵をかけてやれば、もっと簡単に勝てたのだろうが――。

 なんとなく。それをしたら、帰ってこれない気がしたのだった。

 ――タイドアップ=コンプレークス、撃破。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シスカ・ブラックウィドー
さーて、女装癖の性癖神とやらを探そうかな。女装のクオリティは厳正に審査させてもらうよ。
......なんだあのゴリラ。不合格だよ(汚いものを見る目)。
 汚物は消毒すべきだね。ボクが責任を持って誰の目も届かない所で処分しておいてやるよ。
(辺りを1m先も見えなくなるほどの濃い霧が覆う)
【戦闘後】
 やれやれ。つい本気になっちゃった。あの姿はボクの可憐なイメージを損ねるからなりたくないんだけどなー。
 ま、いいか。冥土の土産ってことで。これに懲りたら二度とボクの前にその薄汚いツラを見せるなよ?
※アドリブ歓迎。真の姿での戦い。正体は霧で不明な感じで。同行者がいたら口止めします



●口は災いの元
「やっほー☆ ぼくは女装=コンプレークス! きみも――」
「なんだこのゴリラ」
「………………あ゛?」
 シスカ・ブラックウィドーが出会い頭に放った一言に。ぴきりと、周囲に張り詰めた空気が満ちた。
 女装=コンプレークスを名乗った桃色の髪の性癖神は、決して、醜い容姿ではなかった。むしろ10人がいれば9人が可愛いと答えるだろうし、そのうち8人は女装を見抜けもしないだろう。仮にも性癖の神を名乗る以上、そのクオリティもまた、決して中途半端なものではない。
 ――ただ、それがシスカの審美眼に適うかどうかは、また別の話だった。

「言ってくれんじゃん、ちんちくりん。ガキには華奢と貧相の違いも分かんない?」
「……は?」
「はん、ひっくい声。喉仏隠せてないんじゃない」
 言い返され、思わず低く返した声を、さらに煽られて。す、とシスカの瞳から温度が消える。

 ――静かに漂い始めるのは、濃い、濃い霧だ。すぐに1m先も見えなくなり、周囲にいたはずの観衆の視線までもが断ち切られる。
 なにこれ、と周囲を見渡す神を、シスカは、感情のない瞳で見つめ。

「……汚物は消毒すべきだね。ボクが責任を持って、誰の目も届かない所で処分してやるよ」
 低い声とともに差した影を、性癖神は振り仰ぎ、頬をひきつらせた。
「ちょ、ちょっときみ、その姿――」
「ああ、これ? お前がつまんない冗談言うからさ、つい本気になっちゃった。『この姿』はボクの可憐なイメージを損ねるから、なりたくないんだけどなー」
 シスカの言う『この姿』もまた、霧に閉ざされ――それを見た者は、性癖神を除いて誰もいない。
 待って、とかタイム、とか慌てて制止しかけた性癖神が――げほ、と咳き込む。
「ま、いいか。冥土の土産ってことで。これに懲りたら二度とボクの前にその薄汚いツラを見せるなよ? ……ああ、いや」
 口元を抑えた性癖神の手には、べっとりと、どす黒い血がついていた。――身体を内側から腐らせる、毒霧の力だ。さすがに周りを巻き込まぬよう、毒性を発したのは中心部だけだが。
「どっちみち、もう、無理か」
 つまらなそうな囁きの後――何かが潰れるような音がして。

 霧が晴れた時、そこに立っていた女装少年は、一人だけだった。

 ――女装=コンプレークス、行方不明。

成功 🔵​🔵​🔴​

新堂・十真
ようやっと本番、って感じだな。
まあ性癖を語ったか、っつーと微妙なとこでもあるが……
美味しい目は見れたし良いか。うん、焼肉の話だとも。
こうして目当てのやつが出てきたんだ、結果オーライだろ。

ここはオフクロ譲りの蹴りの冴え……旋嵐脚に頼るとするか。
使い慣れたこいつなら見方を巻き込むってこともねぇし、居合わせた他の性癖神もまとめて攻撃できんだろ。
人の性癖語りを邪魔するやつは馬に蹴られてなんとやらっていうし。言わない? 言わないね。

性癖神って単語真面目に口に出すとちょっと落ち込むな……。
まあ、性癖語りってのはあくまで気心知れた間柄だから楽しいもんでよ。
オブリビオンと熱く語り合うつもりはねーってこった。


ミコトメモリ・メイクメモリア
いや単純に手そのものが好きというわけじゃないんだよ勘違いしないでほしいな、そもそも大事なのは手にふれるそのシチュエーションなんだよね。例えばボクは手袋をしているけれどこれは肌に触れさせる相手を選ぶという意図もあるわけでそれは相手にも同じことがいえて願わくば時と場所タイミングつまりTPTをしっかり考慮した上で『キミをボクものにしたい』という意思表示の上でそっと包み込むように握ってほしいわけだよわかるかい性癖神とやらキミのなんちゃって浅性癖に付き合うつもりは毛頭無いんだよなぜなら性癖とは“こだわり”だからだはいここでこの身を切り裂く刃の記憶ーーーーーーーー!(ずばぁー)



●隣人の手を取ろうと偉い誰かが言った
「いや単純に手そのものが好きというわけじゃないんだよ勘違いしないでほしいな、そもそも大事なのは手にふれるそのシチュエーションなんだよね」
「は、はあ。シチュエーションですか」
 開幕からの、ミコトメモリ・早口メモリアだった。
 その勢いに気圧された様子で頷くのは長身の女性――性癖神、ハンド=コンプレークス。パトロール中に出逢って早々、このまくし立てである。
「そう。例えばボクは手袋をしているけれどこれは肌に触れさせる相手を選ぶという意図もあるわけでそれは相手にも同じことがいえて願わくば時と場所タイミングつまりTPT(タイム・プレイス・タイミング)をしっかり考慮した上で『キミをボクものにしたい』という意思表示の上でそっと包み込むように握ってほしいわけだよ。わかるかい性癖神とやら」
 怒涛のようにまくし立てながら。

 ――後ろ手に。記憶の欠片を準備する。
 欠片の中身は、かつてこの身を斬り裂いた、刃の記憶。解き放てば命中した相手を直接斬断する、強力な攻撃手段だ。
 狙いは、勢いに呑まれた瞬間の不意打ち。元よりミコトメモリには、オブリビオンと仲良く性癖を語り合ってやる気などなかった。
「キミのなんちゃって浅性癖に付き合うつもりは毛頭無いんだよ。なぜなら――」
 話しながら――攻撃の直前、ミコトメモリはふと人の気配を感じ、隣を見て。

「……あ、ども。悪い、続けていいぞ」
「…………えっ」
 そこには。とても気まずげな顔で、新堂・十真が立っていた。
 さすがに驚いた様子で、ミコトメモリの言葉が引っ込んだ。

 ――性癖神は、その性癖を語った者のところに、高確率で現れる。
 だが、グリモア猟兵があえて語らなかったトラブルの芽が一つだけあった。
 そう、性癖被りである。此度の事件において、同じ性癖神は一人しか現れない――ならば、同じ性癖を持つ者が同じ場に居合わせやすくなるのは自明の理。この町の数カ所で、こうした悲劇が起きていたのだった。

「……え、ええと、うん。何処まで話したかな」
「単純に手そのものが好きではない、辺りまでじゃないでしょうか」
「最初じゃないか適当言わないでよ性癖神!」
「まぁまぁ遠慮なく。――性癖神の勘で保証しますが、この場にいるのは全員手フェチなわけですし。無礼講ということで……」
 どうどう、と、自慢するだけはあるらしい綺麗な手を広げ、なだめる仕草をするハンド=コンプレークス。
 性癖神は、性癖を語ることで力を増す。これから2対1を強いられる彼女としては、当然の時間稼ぎといったところだが――。
「「……全員、手フェチ」」
 ミコトメモリと十真が、ちらりと視線を合わせた。
「…………」
「さりげなく手ぇ後ろに隠すのやめてくんねぇかな姫様……」
「ご、ごめんよ、ちょっと、うん、思わず」
「そうですよ! オープンにいきましょう、オープンに。せっかくお二人とも、同志というだけでなく綺麗な手をしているわけです、……し?」
 にこにこと、両手を広げてみせる性癖神に。――じろりと、二対の剣呑な視線が集まって。

「いいかい、性癖神とやら」
 気を取り直して、改めて口火を切ったのはミコトメモリ。
「性癖とは“こだわり”だ、キミのそれは浅すぎるとかそういう話はともかくここでこの身を斬り裂く刃の記憶ーーー!」
「うわぁぁぁ!?」
 ぽい、と放たれた記憶の欠片の輝きを、性癖神が思わず飛び退いてかわせば、地面に深々と切り傷が刻まれて。

 その逃げ先に回り込み、風のように間合いを詰めたのは、十真。
 思い切り体勢の崩れたその腹に、竜巻のような勢いの回し蹴りを叩き込む。ともすればミコトメモリごと巻き込みそうな距離だったが――その蹴りは正確に敵の身体だけを穿ち、吹き飛ばす。鈍い音と共に、ぐえ、と潰れた蛙のような悲鳴を漏らし……ハンド=コンプレークスは、成す術なく瓦礫の中に突っ込んで、至極あっさりと動かなくなった。
「ま……性癖語りってのはあくまで気心知れた間柄だから楽しいもんでよ。オブリビオンと熱く語り合うつもりはねーってこった、性癖神さんよ」
 ……この単語、真面目に口に出すとちょっと落ち込むな……なんて付け足しながら。どうやら動きがないとみて、十真は構えを解いた。

「…………」
 ミコトメモリは、こほんと咳払い。そう、敵が動かなくなれば、無駄に性癖を晒されあった男女が2人、取り残されるわけで。
「……ボクも、語りたくて語ってたわけじゃないんだよ? 分かるよね?」
「言ってねぇし分かってるから、睨むのもやめてくれ……」
「…………ええと、じゃあ。オブリビオンより、気心は知れてると思うけど。語るかい? キミも」
「…………いやあ」
 十真は天を仰ぎ、この半日を振り返る。
 思えば、随分美味い思いもした――焼肉のことだ、もちろん――ものだが。何やら、こう、それと同じくらい、微妙な空気を味わってしまった気がして。
「もう、性癖語りは大分お腹いっぱいだな……」
「……そっか。そうだね……」

 ひゅるりと。気まずい風が、吹き抜けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
ロク・ザイオンと

(ザザッ)
――会敵。対象の討伐を――

――そうだな。脚だな。
二度言わなくていい。
――良いったら!!(素)

(ザザッ(咳払い的ノイズ))
君は他の個体を討伐してくれ。
こちらは本機が担う。

――鎮まり給え。
さぞ名のある性癖神と見受けるが何故そのように荒ぶり給うのか。
そうか、性癖の為。
――ならば見せて貰おう。


並みのものでは本機を揺るがす事は叶わないぞ――!!
(コミュ力の無駄遣いで敵を煽てる)
(始終黙って不動、全部終わった後)

――成る程、見事だった。(素直な賛辞)

それはそれとして倒すが。(ZAP ZAP ZAP)
(なお録画済)

――ロク、大声はやめなさい。やめろって。

*性癖:脚
*好きにして下さい


ロク・ザイオン
※ジャガーノート・ジャックと

…ジャック。
ほら

脚がいる
(ドヤ)(森番は見逃さない)

…黙って他のを警戒しろ?
そう。
(追い払われた)

…匂いがする。
こどもか。…こども…か…?
(語りを聞く)
(そんなに)
(それはちょっと)
…無理矢理は…こどもが嫌がるのでは…

…おれはそんなにしないもん!!!

(解釈違いである。
「惨喝」で異議を唱えながら攻撃力を底上げる。
じっと聞いたので向こうもそれなりに強くなっていよう。
しかしその分手口を理解している。してしまった。
【学習力】で動きを見切り焼き潰す)

…おれはちゃんと我慢できるもん…

あ。ジャック。
大声上げるな?
…ごめん。

※ロリコン+匂いフェチ(本心は咬んだり舐めたりしたい)



●戦いの前に
「……ジャック。ほら」
 ロク・ザイオンは、前方を指す。振り仰ぐのは隣を歩く、甲冑じみた姿の機械の兵士――零井戸・寂、改めジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)である。
 ザザッと、電子の雑音と共にジャックは応じる。
「ああ。会敵を確認。これより――」
「脚」
「……そうだな。脚だn」
「脚がいる」
「二度言わなくていい」
「……脚が」
「いいったら!!」
 一瞬、声色が素に戻った。ザザッと咳払い的ノイズ(?)を漏らし、ジャックは気を取り直し。
「君は他の個体を討伐してくれ。こちらは本機が担う」
「他の」
「ああ。……センサーに反応があった。君の相手は、あちらのはずだ」
「…………」
 ジャックの言葉に――ロクは、くん、と鼻を鳴らし。
 静かに、2人は視線を交わし――互いに背中を向けて。
 それぞれの敵に、立ち向かう。


●REC
「うふふ。話は終わったぁ?」
「……ああ。待たせたようだ」
 ジャガーノート・ジャックが対峙するのは、チャイナドレスに身を包み、ガードレールに腰かけた、妖艶な女だった。
 惜しげもなく開かれた深いスリットから、美しい脚線美が、根本近くまで晒け出されていた。

 ――ジャックは。まず、録画機能がオンになっていることを確認してから。

「――鎮まり給え。さぞ名のある性癖神と見受けるが、なぜそのように荒ぶり給うのか――」
「鎮まるのはアナタよぉ」
 諭された。
「……ま、けど、名のある性癖神っていうのは、間違いじゃないわねぇ。私はフット=コンプレークス。数ある性癖神の中でも、メジャーな一柱だもの。性癖に貴賤はないけれど、ね?」
 言いながら。性癖神は、艶やかに足を組み直す。その光景をレンズに焼き付けながら、
「――ならば。見せてもらおう」
「へぇ? 何をかしら?」
「決まっている。性癖の神を名乗る、その脚を。――並みのものでは、本機を揺るがす事は叶わないぞ」
「……坊や、いい度胸ねぇ」
 くすりと、笑い。
 性癖神フット=コンプレークスは、ゆっくりと、語り始めた。白い腿を。引き締まったふくらはぎを。美しく手入れされた爪先を。一つひとつ、白い指先でなぞりながら、その良さを語り、美を支える手入れを語った。
 ジャガーノート・ジャックは、無言で、その全てを見届け、聞き届けた。ギガ単位の高解像度録画データがストレージを圧迫し始めた頃――

 ジャックは、深く、頷いた。
「――――成る程、見事だった」
「ふふ。降参する気になったぁ?」
「いいや。それはそれとして、倒させてもらう」
 ZAP、ZAP、ZAP。無機質な発射音が響き、背部にマウントされた砲が続けざまに赤光を放ち。

「――そんなもの、今更当たると思って?」
「ぐッ――!?」
 性癖神はその全てをかわし、瞬く間にジャガーノート・ジャックの背後に回ると、その身体を引き倒し、頸を長い足で締め上げた。三角絞め。
 性癖神は、その性癖を語れば語るほど、力を増す。存分に性癖語りを終えたフット・コンプレークスの力は、もはや並のオブリビオンの域を超えていた。レベル3に至ったジャガーノートの装甲が、ぎちぎちと軋んだ悲鳴を上げる。
 ――この美しい足に絞め殺されるのは、或いは、幸せなことかもしれない。そんな考えすら、ちらついた。
 だが。

「…………ない」
「あらぁ? まだ喋れるの?」
「――それでも、本機は。負けるわけには、いかない……ッ」

 白い足を掴む腕に、全出力を籠める。限界を超えた出力に、身体が悲鳴を上げる。
 知ったことか。そう、負けるわけには、いかないのだ。
 そう。

「この録画データを持ち帰り、バックアップするまでは――!」
「っ……大した子ね。いいわ、とことん遊んであげる……!」

 ――その後繰り広げられた激闘の結末について、確かなことは二つ。
 まず、ジャックは、データを持ち帰ることが出来たということ。
 そして――この戦いが、性癖語りが、全て人目のある町中で行われていたことを後から思い出し、頭を抱えるハメになったということだった――。


●におい
 ジャックのセンサーにはかかったというが……ロクに、まだ敵の気配は掴めていなかった。
 けれど、まっすぐに道を進み、角を曲がり、路地裏へ。その足取りに迷いはない。なぜならば。
(「……匂いがする」)
 ――目印のように。どこか放っておけないような、不思議な香りが漂っていたからだ。

 かくして辿り着いた敵の姿に。
「こどもか。……こども、か……?」
 ロクは、戸惑ったような声を上げた。
 桃色の髪、小柄な身体。子供のような体躯だが――辿ってきた匂いの主ではない。そう思えた。
「ようこそ、同志。ワタシはスメル=コンプレークス――ああ、匂いが不思議かい? これだよ、これ」
 オブリビオンはそういって、懐から取り出した香水瓶の蓋を開く。ロクが辿ってきた、知っているような、知らないような匂いが、ぷんと漂った。
「なんとなくね。好きかと思ったんだ。――これはね、子供の涙の香水さ」
「……なみだの?」
「そう。もちろん、魔法的な処理を行ったものだけどね。素敵な匂いだろう? 良ければ一瓶、プレゼントするよ」
 明らかに異常な内容を朗らかに語りかける性癖神の姿に、ロクは、戸惑いを浮かべた。
「……泣かせるのは」
「ん?」
「こどもが嫌がるのでは」
 その問いに、性癖神は、きょとんと目を見開いて。
「あはは! そんなの今更じゃないか! きみだって、中身よりも匂いが好きなだけのクセに!」
 大笑した。
「……違う」
「へえ。何が違うんだい?」
「……おれはそんなにしないもん!!!」
 惨喝。身を竦ませるほどの咆哮に、うわぁ、と情けない悲鳴を上げて飛び上がりながら、別の香水瓶を取り出そうとしたオブリビオンに――赤熱した剣鉈を、力任せに叩き込む。
 あっさり、深々と身を裂かれ、血の匂いを迸らせる性癖神は、それでもくつくつと笑ってみせた。
「……ふふ。違わないよ。涙はともかく――きみは、子供の匂いが好きなんでしょう?」
「…………」
「自分よりも弱い相手を押さえつけて、その匂いを思い切り吸い込んで確かめたいんだ。まあ、受け入れなくてもいいけど、己の性だけは認めなよ、同志。無理に目を逸らしたって、何も良いことは――」
「うるさい。……うるさい!」
 焼き切り、断ち割る。――それでおしまい。弱いくせに変なことばかり言うオブリビオンは、それで静かになった。最後の一言だけは、少しだけ意地悪の響きとは違った気がするけれど、よく分からない。
「おれは」
 ロクは、少しだけうつむいて。
「……おれはちゃんと我慢できるもん」
 小さく、呟いた。

●戦いの後に
「遅くなった。無事か?」
「……ジャック」
「なんだ」
「嬉しそう。なんで」
「……そ、んなことはない。君こそ、何か気分を害することがあったか?」
「……」
「……?」
「…………何も、ないもん」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【年上巨乳大家】

ぐぁぁぁぁぁぁっ!!
なんて!なんて理想的な年上なんだ!?
今にも甘やかして来そうな包容力!
優し気な瞳!魅惑的な肢体!
それでいて食らいついたら捕食者のように離さないテクニック!!

だが俺たちは負けねえ!負けられねえんだ!
いつも心に年上巨乳大家!!これがある限り心は挫けねえ!!
行くぜリンタロウ!オペレーション年上巨乳大家発動!
UC【Raid Tactics『Fumigation』】を発動して涙を呑んで性癖神を退ける作戦を練り上げる!
リンタロウと俺を使って渾身の年上巨乳大家ァ!!

悪いな…一人の性癖だけじゃあないんだ
年上だけじゃなく、体つきがエロい方がいいのさ


リンタロウ・ホネハミ
【年上巨乳大家】
くっ!!!なんて、なんてデカいおっぱいっすか……!!
しかも形の良さも体型に合ったサイズ感も完璧!!
どうでもいいとか言ったっすけどすんません
やっぱそれもあった方がオレっちの性癖にドストライクっした……!!

目の前にお出しされた巨乳属性攻撃に挫けそうになるも
バキリと豹の骨を食って【〇八三番之韋駄天】を発動!!
うおおお!!!年上巨乳大家!!年上巨乳大家ァ!!!
新しく手に入れた性癖を心に、血涙を流しながら性癖神を倒すっす
一人だったら無理だったかもしれねぇ、けど今は共に戦う同志がいる!!

あんたらの敗因はただひとつ……
オレっちに毎晩のように夕飯をお裾分けに来なかったことっすよ……



●硬く脆い漢の友情
「ぐぁぁぁぁぁっ! なんて! なんて理想的な年上なんだ! まさか、本当にいるとは……!」
「ぐっ、なんてデカいおっぱいっすか……性癖神、恐るべきっすね……!」
 ヴィクティム・ウィンターミュートとリンタロウ・ホネハミは、誰より強大な敵に立ち向かっていた。
 強大なというか、巨大なというか。
「うふふ……はじめまして。年上巨乳大家=コンプレークスと申します」
 あまりにピンポイントな名乗りと共に、頬に手を当て、たおやかに微笑むオブリビオン。柔らかな物腰を包むのは、一見すれば野暮ったくも見える地味な部屋着に、使い込まれた刺繍入りのエプロン。内側の圧倒的な存在感により押し上げられたエプロンの上を、編みこまれた栗色の髪の描くゆるやかな曲線がなぞっていた。
「今にも甘やかして来そうな包容力! 優し気な瞳! 魅惑的な肢体! それでいて食らいついたら捕食者のように離さないテクニック(妄想)……!」
「しかも、形の良さも体型にあった存在感も完璧……! くっ、デカけりゃ良いと思ってた、俺っちが甘かったようっすね……!」
「……うふふ。そんなに褒められたら照れてしまいます。――甘えてくれても、いいんですよ?」
 そう、性癖神が小首を傾げてみせるだけで。圧倒的な色気に、男たちは後ずさり、汗を拭う。――不用意に近付けば、その包容力の前に抜け出せなくなる。口に出さずとも、それは明らかだった。

「――だが、俺たちは負けねえ! 負けられねえんだ! そうだろ、リンタロウ!」
「応! っすよ!」
 今にも折れそうになる膝に力を込め、ヴィクティムは、強く年上巨乳大家を睨みつける。具体的にはおさげのあたりだ。
 力強くその声に応えたリンタロウもまた、まっすぐ、前だけを見据えている。具体的には胸のあたりだ。
「作戦は頭に叩き込んだな? 装備の用意もいいな? OK、行くぜ――『いつも心に』!」
「「『年上巨乳大家』ァ!」」
 作戦コードの唱和と共に――男たちは、駆け出した。


「うおおおお! 年上巨乳大家!! 年上巨乳大家ァ!!!」
 地を蹴り、壁を蹴り、屋根を蹴り。音を置き去りにしかねないほどの速さで、リンタロウは広場を駆け回る。
 オペレーション・年上巨乳大家――大袈裟なようだが、ヴィクティムからの指示は単純だった。
 すなわち、『数分間、大声をあげながら最高速で駆け回り、攪乱を続けてからの一点突破』。
(「――ま、それで勝てるってならお安い御用っすけど、ね……!」)
 『〇八三番之韋駄天』。“骨喰”リンタロウは、その名の通り、喰らった動物の骨の力を操る呪われた黒騎士だ。
 〇八三番、即ち豹の骨(パンサーボーン)を口にした今、速さでは負ける気がしない。

「年上巨乳大家ァ――……ん? ありゃあ……」
 リンタロウは不意に、高速で動き回る視界の中、視線を留めた。意識を向けたのは無論オブリビオン、年上巨乳大家=コンプレークス。
 彼女は、いつのまにか敷かれたシートの上、卓袱台に暖かい家庭料理を並べ。
「ふふ、そんなに走り回って、疲れたでしょう? おゆはん、ご一緒しませんか――リンタロウさん」
「――――がはッ!!!」
 柔らかな微笑みが、影を踏むことすら難しいはずのリンタロウを確かに捉え。リンタロウはバランスを崩して地面に激突し、ごろごろと転がり、性癖神の前で止まる。
 その痛みにも構わず、リンタロウは胸を抑えた。
「な、なんっすか……この、トキメキは……!」
「あらあら……大変。今、救急箱を持ってきますから。座っていて下さい。――ね、リンタロウさん」
 立ち上がろうとしたリンタロウを、年上巨乳大家=コンプレークスは、そっと肘を抑えて制する。――肘に。当たる。すごい当たる。これ絶対押し当ててんだろという勢いで当たる。
「ぐっ……ありがとう、ございますっす……大家さん」
 まずい、何を言ってる、これは魅了の力だ――そんな意識が一瞬弾けて、消える。
 魅了だとして――何の問題があるというのだろう。彼女は誰より、年上巨乳大家なのに。
「お、おい、何やってんだ、リンタロウ!?」
 避難誘導に当たっていたヴィクティムがその様子に気付き、近付かぬまま声をかけてくるが。
「ま、まぁ、いいじゃないっすか、少しくらい。ちゃんと戦うっすよ……おゆはん、終わったら。ほら、ヴィクティムは避難誘導の続きをするんじゃないっすか?」
 そう告げるリンタロウの顔は、でれ、と崩れて。術中に落ちてしまったこと、そしてヴィクティムを追い払って自分だけでこの状況を楽しもうとしていることが、誰の目にも明らかだった。

「男の友情は……俺たちの男の友情はどこへ行っちまったんだよぉ!」
 がくりと。ヴィクティムは、絶望の表情でくずおれて――

 ――ところで。ここで、疑問がある。

 なぜ、年上巨乳大家=コンプレークスは、ヴィクティムではなくリンタロウだけを狙ったのだろうか。誘惑するならば、2人まとめて狙えば良いものを。
 その答えは、リンタロウの名前しか分からなかったからだ。
 年上巨乳大家というシチュエーションに忠実に誘うなら、「坊や」といった二人称は使えない。面倒見の良い優しくて綺麗な大家さんは当然、住人のことをよく知っているからである。

 では、なぜリンタロウの名前だけが分かったのか。
 こちらの答えは、簡単だ。この世界がもし推理小説か何かなら、賢明な読者の目にも一目瞭然だろう。

 ・・・・・・・ ・・・・・・・・
 ヴィクティムが、最初に呼んだからだ。

 戦況の全ては端役の掌の上。
 性癖神がリンタロウを狙うことも。リンタロウがあっさりその誘惑に負けることも。想定していた数百に渡るプランの一つに過ぎない。

「今日は死ぬにはいい日だな――お前らが死ぬには、な」
「……なっ……」
「えっ、ちょっ、ヴィクティ――」

 ――光が、弾けた。



 光が収まった戦場を。伏せた身体を起こしたヴィクティムは、一人歩く。
 リンタロウに持たせた装備の中に忍ばせた指向性のプラズマグレネードにより、年上巨乳大家=コンプレークスは最早跡形もない。
 地面に這いつくばってぷすぷすと煙を上げるリンタロウも、実際はケガらしいケガはしていないだろう。これくらいなら、魅了攻撃の気付けみたいなものである。怒っているわけじゃない。自分だけ良い目見やがってとか思って乱暴な作戦を使ったわけではない。決して。……無論、彼が誘惑に耐えてさえいれば、まとめて吹き飛ばしたりはしなかったが。
 リンタロウを派手に騒ぎながら走り回らせたお陰もあって周辺住人もスムーズに避難済み、巻き込まれた者もいない。プランに狂いなしだ。

「年上巨乳大家。アンタの敗因は、俺だけじゃない、二人分の性癖を同時に相手にしたこと……それと」
 そして、ちらりとリンタロウに視線を向けて。
「俺にも、夕飯をおすそ分けしてくれなかったことだよ」
 リンタロウに意識があれば口にしただろうセリフを、口にする。

 ……怒ってねぇし。羨ましくねぇし。

 ――年上巨乳大家=コンプレークス、リンタロウ・ホネハミ、撃破。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アロンソ・ピノ
で、だ。オレがさっき語った性癖で言ったら……触ったら折れそうなタイプのおなご?になるのかね。そのコンプレークスは。
んじゃ、おそらく触れたら倒せるような奴らになりそうだから攻撃力よりも命中率や搦め手対策した方が良いな。
ユーベルコードは秋弦。刀身の代わりに鋼糸を出す型だ。加えて【先制攻撃】、【釣り】で先手を取って捕縛し撃破する。ただオレの刀の都合抜刀時にしか変形出来ないので普通の刀を使うか仕舞う時には糸を引き千切るか全部回収せねばならんが。
……あれ、これもしかして自分の性癖に合った敵を緊縛する変態扱いになるだべ!??!?いや、そんな趣味はねえ!

―春夏秋冬流、参らなきゃ駄目か?


(アドリブ、絡み歓迎)



●拘束担当は残念ながら既に撃破されました
「……ああ、見つけた。お前が、オレの相手か?」
 刀の柄にそっと手を添えて。アロンソ・ピノは、誰何した。
 視線の先にいるのは――華奢な、若い女だ。それこそ、抱き締めれば折れてしまいそうな。けれどそのプレッシャーは、紛れもなく、彼女がオブリビオンだと告げていた。
「ふっふーん、よく分かったね。そう、私こそが、スレンダー=コンプレークス! 分かるよ分かるよー。キミ、私みたいなほっそい子が好みなんでしょー?」
 からかうような笑みに、アロンソは、ぬぐ、と怯む。どうやら事実のようなのが、始末に負えない。
「……ほっとけ。どうせ、こうして出会ったからには戦うだけなんだから、関係ないだろう」
「ええー、もう戦うの?」
「……文句でもあるべか?」
「んー、ううん。そりゃあ猟兵はほっとけないけどさ」

 ――キミ、勝てないよ?

「……うおっ、と!」
 囁きと共に伸びあがるように、スレンダー=コンプレークスの姿が、瞬間移動でもしたかのように消えた。一瞬で詰められた間合い、放たれた性癖神の蹴りを、咄嗟に引き抜いた柄の上部で受け止める。なかなかに、重い衝撃。
「……速ぇな!」
「ふふん、これが私のスレンダー属性、身軽な身体の使い方! 怖くなっちゃった? 逃げ帰るなら今のうちだよー?」
「いいや、まさか」
 アロンソは、柄に手をかけ身を沈め、微かに口端を上げる。
 参らなきゃダメか、なんて思っていたけれど。これなら、本気の出し甲斐もあるというものだ。

「――春夏秋冬流、参る」
 銀閃が閃いた。間合いの外からの、抜き打ち。
 ただ、おかしな点があるとすれば――その刀に、刀身がないことだろう。
「……? なぁにそれ、オモチャの刀……きゃうっ!?」
 煽るような言葉を口にしかけたスレンダー=コンプレークスが――唐突に、「気を付け」の姿勢になって、地面に叩き付けられた。
「な、なにこれ、動けない……あっ、糸……!?」
「おう。秋の型、弐の太刀『秋弦』――刀身の代わりに鋼糸を出す型だ。お前、すばしっこそうだからな。まずは捕まえようと思ったが――うまくいったもんだべ。勝負ありだ、諦めろ」
 ぐい、と柄を捻れば、性癖神の細身の身体が地面を引きずり、引き寄せられて。
「あいたたた……! このー! 離せー!」
「離せと言われて離す奴が――」
「離しなさいよ! この……緊縛ごーかん魔!」
「……!!? お、おい……」
 あまりに人聞きの悪い罵倒に、思わず周囲を見渡せば――
(「……!? 通行人が……オレの方を白い目で見てる……!?」)
 なんだこれ。都会の洗礼?
 身に覚えのないことに焦りを浮かべるアロンソだが、仕方ないといえば仕方のないことだろう。なにせ、地面に這いつくばる華奢な女性の前で仁王立ちする、刀の柄を持った男だ。――怪しい。
 よく見れば糸で女性が縛られているのも分かるだろうし、もっと言えばそもそも、自分の視点からすれば――
(「……あれ、これもしかして自分の性癖に合った敵を緊縛する変態だべ……!?? い、いや、そんな趣味は……!!!」)
 じとりと。額に嫌な汗が滲む。
「なあ、キミ、少し話を……」
「ち、違……こいつはオブリビオン……ああ、だから、確か、ヴィランってヤツだべ!? オレは変態じゃなくて――!」
「……どうでもいいけど、縛ったまま放置しないでくれるカナー……?」

 ――結局。集まってきた現地のヒーローの誤解を解き、無事にスレンダー=コンプレークスと決着をつけるまで。
 結構な時間が、かかったとか。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミーユイ・ロッソカステル
現れたのは、情熱的に迫ってくる俺様系イケメンのオブリビオン。
基本的には面食いである性質、まだ一度も「本気で」求められ、迫られたことがない……気高く振る舞っていても、本質的には初心な所が抜けきらないが故の、弱点

趣味じゃない、さっさと消えて、と冷たい言葉をかけるも飄々と躱されて。
いつのまにやら壁際に追い詰められ、後退することもできずに。
顔を寄せられ、耳元で甘く囁かれたのは――

「わり、ちょっと金貸してくんね?」

ちょっとダメな男が好きなんだろ?とばかりに舌を出してウィンクされ。
あぁ、どこぞの姫様の妄言までしっかり拾ったのか……とわなわな怒りに震えれば。
歌で増強した強烈なビンタを、オブリビオンの頬に――


氷室・癒
せーへき? の敵が出るんでしたね!
もしやいやしちゃんの王子様がどーん! と出てきてしまうんでしょうか……
そ、そうなったらドキドキして戦闘どころじゃありません!

あ、でも現れるのはオブリビオンさん……悪いやつらでした!
悪いことはぺけーっ! だめだめですっ! 全然ハッピーじゃありません!
いやしちゃんは悪いことをする人にきゅんってしたりしませんからっ!

笑顔でごめんなさい! あなたではときめけませんでした! って言いますね!
そのままハッピーパワーできらっとウインク! どかーんとやっつけちゃいます!
わーいっ! 大勝利ー! えへへへっ!



●すてきなすてきな王子様(偽)
「なぁ。こっち向けよ、ミーユイ」
「ッッ……そこを、どきなさい」
 どん、と。顔の横に腕を突かれ。
 ミーユイ・ロッソカステルは、路地裏のコンクリート壁を背に、追い詰められていた。
 目の前に立っているのは、髪を金色に染めた、王子様然とした、それでいて我の強そうな美男子だ。

 ――思えば。最初に「趣味じゃない、さっさと消えて」と突き放して立ち去ろうとした時点で、負けていたのだ。
 だって、そもそも相手はオブリビオンなのだ。それは一目で理解していた。依頼されたのは討伐であり、追い払うことではない。にも関わらず、その言葉を選んだということは……つまり。
(「――私は、逃げようとしたの?」)
 その事実を認識すれば、かあ、と顔が熱くなる。
「本気で嫌なら、逃げられたろ」
「……なっ……」
 心を読まれたかのような言葉に思わず顔を上げるけれど、にやけた笑みを浮かべる「王子様」が言いたかったのは別のことのようで。
「付き纏う俺と戦いもせず、それでいて本気で逃げ出すでもなく、こンなトコまで追い詰められて、名前まで教えて」
「そ、それは、お前がっ」
「今だって、突き離そうと思えば出来るンじゃねえの? ――期待してンだって、お前」
「~~~~~……っ」

(「――おかしい。私、冷静じゃ、ない」)
 頭では、分かっていた。そりゃあ恋愛経験豊富とは言わないが、幾らなんでも、ミーユイ・ロッソカステルはそこまで安い女ではない。
 魅了、催眠、そうした部類の属性の攻撃を受けている。彼女自身、そうした力に心得があるからこそ、それを理解し――理解しているのに、逆らえない。ほんの一瞬警戒を叫んだ思考はすぐにもつれ、常ならば流麗に歌声を紡ぐ舌先は回らず、覗き込んでくる「王子様」の黒い瞳から目を離せない。
「な、いいだろ」
「や、やめっ……やめてって、言ってるのに……!」
 ぐ、と、「王子様」が、顔を近づけてくる。逃げようとしても、いつのまにか手首を掴まれて壁に押し付けられ、逃げ場がない。唇を奪われるのだけはと必死に顔を逸らせば、構わないとばかり、耳元に顔を寄せられる。
 耳に、吐息を感じる。気持ち悪い。突き放したい。……怖い。
 拒絶したいのに、喉がからからで、声が出ない。

 まずい。まずい。まずい。
 こんな距離で情熱的に愛の言葉を囁かれたら、私は、

「ちょっと金貸してくれればいンだって、明日倍にして返すからさ。お前に美味いもン食わせてやりてぇンだよ」
「…………。…………はァ?」
 空気が、凍り付いた。

 じわじわと。姫君の話を、思い出す。
 俺様系。ダメなところ。パチンコ代。
 つまり、この性癖神が司るのは、奇しくも彼女自身が言った通り、「つまらない白馬の王子様」ではなくて。

 クズ男。

(「――そんなものに、私、魅了されて……?」)
 徐々に理解が進むにつれ、怒りと羞恥に顔を真っ赤に染め、口元をわななかせ。
 魅了の力を打ち破り、思い切り力を込めた渾身の平手打ちを――。

 ――と、その時。

「いーーー、けーーー、まーーー、せーーーんっ!」
 どぉん、と。
 真横から弾丸のような勢いで飛んできた、白と黒の天使が。
 偽物の王子様を、思い切り突き飛ばした。



 ――時は少し遡り。
 氷室・癒は、その様子を、物陰からずっと見ていた。
 元は、一度別れたミーユイが怪しい男に付きまとわれているのを見かけ、距離を取って追いかけてきたのだ。
 恐らくオブリビオンである相手になぜ反撃しないのか分からず、何か策があるのかと、ひとまず様子を見ていた……のだが。

(「わ、わ、わっ……顔! 顔近いですよ! いいんですかミーユイさんっ」)
 傍から見て。顔を赤らめ、壁際に追い詰められたミーユイはどう見ても、満更でもない様子だった。一応、形ばかりの抵抗を見せているようだが、どう見てもろくに力が入っていない。まるで、押さえつけられるのを望んでいるようにすら見えた。
 あれが壁ドン、あれが女の顔。思わぬところで少女漫画で見た光景を目の当たりにしてしまい、癒はごくりと唾を飲む。
 あそこにいるのが自分だとして。抵抗、できただろうか。
 分からない、と思う。傍から見ても、あの人はカッコいい。あんな風に情熱的に迫られたら、ぼくも戦うどころじゃなくなっちゃうかもしれない……そう、素直に思う。
 ……戦う。そうだ。あれは、オブリビオン。悪いやつらだ。

「だ、だめだめですっ。いやしちゃんは、悪いことする人にきゅんとしたりなんてしませんっ」
 きっ、と上げた視界の先、真っ赤な顔を逸らしたミーユイに、「王子様」が顔を近付けていくのが見えた。
 いけない、これ以上様子を見ているわけにはいかない。早く助けないと。
 癒は、ばさりと自慢の黒い翼を広げ。
 弾丸のような速度で、飛び出した――。



「悪いことはぺけーっ! ですよっ! おしおきですっ! きらきらーんっ!」
 王子様改めクズ男を突き飛ばした――というよりも撥ね飛ばした癒は、そのままミーユイを庇うようにふわりと着地。掛け声と共に、ばちーんとウィンクを飛ばした。
「うぐっ……な、なんだ、この可愛さ……ダメだ、俺には汚せねえ……さっきみたいな気位が高くて良い体してる割に押されたらチョロそうな女ならともかく……こんな天使は……ぐわぁぁーー!」

 ――爆発。
 いやしちゃんの言葉にできないほどの可愛さに耐えられなかったクズ男は、哀れ、爆炎の中に消えていった。喩えではない。物理的な爆発だ。
 ヒモ=コンプレークス(名前初出)、撃破である。

「わーいっ! 大勝利ー! えへへへへっ、大丈夫でしたか、ミーユイさんっ」
 ちょこん、と振り向く癒に――ぽかんとその様子を眺めていたミーユイは、ふ、と気が抜けたように笑い、中途半端に上げたままだった手を下して。
「ええ、ありがとう。貴女のおかげで助かったわ。……いえ、本当に」
「えへへーっ、ならなら、良かったですっ! 助けるのが遅くなっちゃってごめんなさいっ、何か考えがあるのかと思って……」
「……まさかずっと見てたの? それは、忘れて欲しいのだけど……」
 ミーユイは、ぐ、と苦虫をかみつぶしたような顔をしながらも。
「――いいのよ。それこそ、御伽噺の王子様のようなタイミングだったわね」
 そう、微笑んでみせて。
 いやしは、その言葉にぱちくりと、真っ赤な瞳を大きく見開いて。それから、一歩、ミーユイに近付いた。

「……? どうし」
 どんっ。
 いやしは、ミーユイの顔の横、背にしたままだったコンクリート壁に勢いよく手をついて。
「あまり、ぼくを心配させるな……姫」
 少女漫画の王子様の真似をしてみた。
 再び壁際に追い詰められたミーユイは――ひゃ、と、微かに、しゃっくりのような声をもらし、目を白黒させて。
(「……こ、この子、私より背、高いのね……。……って、そうではなくて!」)

「……下らないことをやっていないで。行くわよ、もう」
「わわっ……えへへ、はーいっ! やっぱりぼくには似合ってなかったですか?」
 そっと癒を脇に押しのけ、歩き出す。
 先を歩くミーユイは、知らないわよ、なんて溜め息交じりに答えながら、先ほどから鼓動の乱れっぱなしの胸をそっと押さえ。
(「今の……助けた瞬間にされてたら、まずかったかも」)
 まだ、魅了の魔力が残っていたのだろうか。そんなことを、ちらりと考えるのだった。



 ところで。
 グリモア猟兵の話を、覚えているだろうか。
 此度の性癖神は、本心から性癖を語った者の物に引き寄せられる。偽りを語ることもできるが、その場合、引き寄せる効果は得られない。
 ――つまり。先の会話で姫君が触れたのが「話題に出ただけの、誰にとっても的外れな性癖」であったのなら、この遭遇には、何ら影響を与えていないはずなのだ。

 ミーユイは本当にダメ男が性癖なのか、それともずっと傍にいた癒が実はそうなのか。或いは、完全に偶然の出会いだったのか。
 それは、想像にお任せすることにしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九十九曲・継宗
性癖を司る敵ですか
それぞれの見た目は異なるようですが、私の相手はどんな見た目なんでしょう?

語った内容からすると、胸とかが大きい見た目ですかね
(何となく胸とかが大きい職場の同僚の姿を思い浮かべる)
……はっ!? い、いえ、何も考えていませんあの人とか大きかったよなぁとか思い出していません!
お、落ち着きましょう。侍はクール。誘惑なんかに負けたりしない。…………よし!

敵が現れたら、速やかに排除しましょう
ええ、私は冷静です
何故か少し斬り辛いような気もしますが、敵は敵
やってやりますとも

揺れる何かとかまったく気になりませんから
ちょっと剣が鈍っているような気がしなくも無いですが、きっと気のせいでしょう


アスト・スタフティ
だめだだめだ、熱くなっちゃってた
ヒーローは、理不尽な怒りや憎しみで戦っちゃいけないんだから

うん、でも市民を襲う悪を放っておくことはできない
だからこれは正当な戦い、よしオッケー問題なし!

この一撃は、ギャルゲーみたいなバイト先をもつ友の分!
この一撃は、熱き血潮というか血管への愛をもつ友の分!
そしてこの一撃は、正直ちょっとドキドキしちゃったけど実際の体育の時のがいいなって感じたことに動揺している僕の分だ!!

しょせん中二男子だからまぁドキドキもワクワクもする
でも僕はヒーローだから、戦い自体は色々抑えてちゃんとやる

戦闘は念動力と発火能力、攻防を能力で行うスタイル
必要であれば記憶を捧げて力を高める



●メイドさんと片刃の剣
「性癖神というのがこんな武闘派だとは……聞いてませんでしたけれど、ね!」
「数ある性癖の中でも、私の司る属性は抜きんでて万能なもの。剣でも銃でも、魔法でも。従僕の身にて不遜なれど、御身の流儀に合わせさせて頂いているだけにございます――ご主人様」

 ――続けざまに銀閃が走り、火花が弾ける。
 九十九曲・継宗は、遭遇した敵と激しく切り結んでいた。
 対峙する敵は――クラシカルな白と黒の衣装に身を包む、メイド服の女。その名も、メイド=コンプレークスと名乗った。
 まさかこの名前でどこからともなく刀を取り出して斬り合いに応じてくるとは、思わなかったが。

「……侍女に求める技能としては間違ってるんじゃないですかね……いえ、分かりますけど……なんかメイドさんって武闘派のイメージですけど……そう思っちゃうの、職場のせいですかね」
 ぼやきながらも。ぎん、と。打ち合わせた刀に力を込めて、一度大きく突き放す。
 帯剣したメイド。UDCアースのフィクションであれば、定番なのだろうか。身内にも覚えがある。――ある、が、どちらかといえば。
 間合いを詰める様子もなく、ふわりと柔らかい笑みを浮かべてこちらを見るメイドの姿――自分よりも高い背丈といい、長さこそないが銀色の髪といい、実に豊かな一部分といい。
(「何となく、別の姿が思い浮かんで――はっ!?」)
「い、いえ、何も考えていませんあの人はもっと大きかったよなぁとか思い出していません!」
「私は何も言っておりませんよ、ご主人様」
「お、落ち着きましょう。侍はクール。誘惑なんかに負けたりしない。大丈夫、大きいメイドなら見慣れている…………よし!」
「……誘惑もしておりませんけれども」
 メイドさんは、苦笑を深めながらも――晴眼に、刀を構え直し。
「ご主人様は、こちらでの決着をお望みなのでしょう?」
「それならば、望むところ。……参ります」
 何故か少し斬り辛いような気もするけれど――さすがに。こうも正面から応じられては、剣士として引けようはずもなし。
 継宗は、『風魚』と銘された愛刀を、静かに鞘に納め、低く身を沈め。数秒の睨み合いの後――

 一閃。

 瞬きの間に、すれ違うように、交錯。
 いつのまにか継宗の脚部から展開された車輪状の絡繰りから、薄い煙が立ち上る。微かな鍔鳴りと共に、風魚を鞘に納めれば。
 その背の後ろで――中ほどで断ち割られた侍女の刀の刀身が、くるくると宙を舞い、地に突き刺さった。

「…………お見事です、ご主人様」
「勝負あり、ですね。降参して頂ければ、苦しめはしませんが」
「勿体ないお言葉です。――けれど」
 
 残心を終え、振り向いた継宗に――メイドもまた、再び向き直り。そっとスカートを摘まみ、カーテシ―。

「――そういうわけには、参りません。剣士として及ばずとも、この身はメイドのコンプレークス。奉仕のご相手も、務めさせて頂きます。ご主人様も、誘惑にご期待のようでしたし」
「…………奉仕。誘惑」

 え、何されるんですか私。
 思わず、そんな動揺を浮かべた継宗とメイドの間を。

「そこは最後までキメるところじゃないかなぁ!」
 ごう、と。聞き覚えのある声と共に放たれた、炎が遮った。



 ――アスト・スタフティは、バーベキュー会場を離れてすぐ、平静を取り戻していた。
 一時は危うく怒りに呑まれかけてしまうところだったけれど。

(「――だめだだめだ、熱くなっちゃってた。ヒーローは、理不尽な怒りや憎しみで戦っちゃいけないんだから」)

 そう。彼は、ヒーローだ。正義のために身体を張り、何を犠牲にしても誰かを守る。それが彼の在り方だ。
 このふざけた戦場においても、それは変わらない。
 ……うん、まぁ、だから、市民を襲う悪に苛烈な攻撃を加えること自体は、何も問題ない。ないのだ。別に八つ当たりではないのだ。よしオッケー。

「……ご主人様がもう一人……。ご安心下さい、私はメイドの性癖神。ご奉仕ならば、何人が相手でも」
「正直……気にはなるけど。悪いけど、戦いは、ちゃんとしないとね」
 遮る声は、メイドのすぐ傍から。クロックアップ。自身の身体にかけた念動力に後押しされた高速の移動で間合いを詰め。

「くっ……!?」
「この一撃は、ギャルゲーみたいなバイト先をもつ友の分!」
 驚いた様子で視線を向けてくる侍女を――再び掌から放った爆炎が包み。

「この一撃は、熱き血潮というか血管への愛をもつ友の分!」
 咄嗟に飛び退いたメイドを追いかけるように、炎は生き物のように姿を変えて。

「そしてこの一撃は――!」
 宙に浮いたところを狙われ、両腕で身体を、そしてメイド服を庇うしかないメイド=コンプレークスを――念動によって背後から飛来した、先程折れた彼女自身の剣先が、深々と貫いて。

「ギャルゲーみたいなバイト先をもつ、友の分だ」
「――ご主人様。被っております」
「……いや、いいと思うよ、うん。思うけど……いや、ちょっと期待したわけじゃなくてさ……体育の時みたいなの……うん」

 ――ご期待に沿えず、申し訳ございません。
 そんな儚げな笑みと共に――メイド=コンプレークスは、炎の中に消えていった。


●戦いは終われど
「アストくん、無事で――」
「……今の人もさ、結構だったけど。『もっと大きい』んだね……」
「……そ、それは忘れてもらえませんかね!?」

 ――少しばかりは。せっかく築いた友情に傷が残ったりも、したりしなかったりだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

嘴鳴・幽
くそ……くそ……!
性癖神を見つけたら、出会い頭に【暴虐暴食】で速攻食ってやる!
そう思っていた、はずなのに……!!

ちくしょう、こいつ分かってやがる!!
下手したら俺より分かってやがるよ!!
そうだよ、皮膚のすぐ下を大事な器官が走っているっていう、その危うさ!!儚さ!!
そこがグッと来るんだよ!!
ちくしょう、なんで今まで言語化出来なかった!!
なんで倒すべき敵に教えられちまったんだ……!!

心は迷い、躊躇う
けれど……けれど!!俺はあいつらを裏切れねぇ!
共に性癖をネタにイチャつくいてたやつら(個人の意見です)への怒りを!!
性癖神に、ぶつけるんだってよぉ!!

あぁ……虚しい勝利だった……

アドリブ・絡み大歓迎


十河・アラジ
この前性癖邪神とかいうのと戦ったと思ったら今度は性癖神……色んな神がいるんだなあ(遠い目)

ボクの前に現れるとしたら事前に聞いてたボイン・コンプレークスあたりなのかな
いや、ボクの場合胸が大きいだけじゃなく年上ってとこまで含まれるとしたら、
もし昔好きだった人に似ていたとしたら……
少し嬉しいけど、あんまり戦いは長引かせたくないな

「邪なる者への枷」で動きを封じて一気に決着をつけに行こう
どうせ出て来たとしても本物じゃないんだ、遠慮なくやれるはず……たぶん


……けどもし別のが出てきたらどうしよう
もしあのテーブルでボクが新たに別の性癖も抱いてたら……

そ、その時はその時としてとにかくがんばろう

※アドリブ歓迎



●大は血管を兼ねる
「おぉら、見つけたぁ! どうなっても知らねぇ、――ぞ……」
 がちん、と獣のように顎を噛み合わせ。見つけたオブリビオンの気配に向けて一直線、文字通りに『食らいつこう』とした嘴鳴・幽の足が――ぴたりと、止まった。
「……っ、くそ……!」
 歯噛みする幽を驚いたように見返すのは――アメスク姿に豊かな双丘を押し込めた、いかにもギャル然とした容姿の女。
 それだけならば、まだ、良かった。
(「……ちくしょう、こいつ、分かってやがる……!」)
 だが、その胸元以上に視線を奪うのは――曝け出された白い肌の下を通る、艶めかしい赤と青。大きく開かれたブラウスの内側から、膝上何センチだろうというスカートの下から。透けて見える色彩が、幽の視線を奪ってやまない。――食らい付くというのか。この口で。この肌に。
 ――それを想像すれば、思わず、身体が止まり。気付けば幽は飛び退き、ずざ、と数メートルの間合いを取っていた。
「……分かってんじゃねえか! そうだよ、皮膚のすぐ下を大事な器官が走っているっていう、その危うさ!! 儚さ!! 血管なんて性癖にも対応してくるとはな。性癖神、なんつーオブリビオンだ……!」
「え?」
 その言葉に、オブリビオンは訝しげな顔をして。
「アタシ、確かに性癖神だけど……ボイン=コンプレークスって言ってぇ……そこまでピンポイントな性癖を司ってるわけじゃあ……」
「…………はっ?」

 ――――気まずい、沈黙。
 いや。確かに。ただ胸が大きい女の話とかも、したけれども。けれども。
「あっ……大丈夫大丈夫、分かるよ! そういうフェティシズムも、うん、体型系の性癖なら鉄板だよね! まぁスレンダーのが血管見えやすいかもしんないけど!」
「気ぃ遣うんじゃねぇよクソが!!! 大きいのが良いかはまた別の話だろぉが!!!」
 ぐっと親指など立ててくるギャルに、やけっぱちに叫び返す。
 そう、オブリビオンに気を遣われる筋合いなどないのだ。知らない。人違いならぬ性癖違いで血管がどうとか叫んじゃった事実など知らない。ここが往来で、周囲の人々の遠巻きな視線がオブリビオンよりも自分に向けられている事実など、なおさら知らない。
 その叫びに、あははー、と性癖神は気まずげに笑いつつ。気を取り直したように、ふ、と笑みを浮かべてみせて。
「ああ、けど、安心したよ」
「あぁ!? 何が――」

「――おっきいのも、好きなんでしょ? アタシの属性攻撃――『挟む』んだけど。それならちゃんと効いてくれるカナ、って」
「――――――――」
 一歩近づきながら。ぐい、と指先でずり下げられたブラの胸元に、視線を奪われる。
 白く柔らかそうな肌には、しっかりと、血管も浮いていて。
(「――――――挟む???」)
 いや……いやいや。待て待て、ここで負けて、別行動を選んだあいつらを裏切るわけには……性癖をネタにイチャつくいてたやつらへの怒りを……敵に……いやでもちょっとくらいなら……俺も良い目見たって良いのでは……?

 そんな、葛藤を。

「――――危ない!」

 どこか暖かい光が、断ち切った。



 ――十河・アラジは。出くわした光景に、正直言って、ほっとしていた。

 自分が出くわすのは、やはり、スタイルの良い性癖神ではないかとは思っていたけれど。
 もしも……もっとピンポイントに、初恋の人に似た姿で出てこられては。さすがに、平静でいる自信はなかったから。

 放つは『邪なる者への枷』。両手と額の聖痕から放たれた聖なる光輪が、ギャルっぽい、というのだろうか、煽情的なファッションのオブリビオンを挟むように締め上げる。
 間に合った、今にも攻撃されそうだった男性を守ることができたと、内心、少しだけホッとしながら。
「今です! トドメを!」
 その男性に、声をかける。

「……………………」
 が。男はなぜか敵でなく、自分を見て、大きく目を見開いていた。
「……あ、あの? 猟兵の方ですよね? さっきバーベキュー会場で見かけた気が……」
「バーベキュー」
 オウムのように、復唱して。
「……その光。やっぱお前、なんか小麦色の肌の美人2人に挟まれて光ってた奴……」
「えええ!? み、見てたんですか!?」
 泡を食って顔を赤らめるアラジ。とはいえ、その視線は男と性癖神を行ったり来たり。なにせ、拘束は一時的な物でしかないわけで。
「あ、あの、それよりオブリビオンを……」
「うるせぇ良いところで邪魔しやがって! さっきの子たち紹介しろよオラ!」
「ボクもさっきのが初対面ですよぉ!」
「初対面であんな状況になることあるかァ!!!」
「なんで涙目なんですかぁ!? だからそれより敵を――!」
「……アタシのこと、縛ったまま放置しないで欲しいんだけど……」

 結局。
 怒りをうっかり本来の対象に向けそうになった幽をなんとか宥めて、敵を撃破するまで――結構な時間が、かかったのだが。
 ボイン=コンプレークスは最終的にはきっちりと、幽の胃袋ならぬ、何処とも知れぬ亜空間に「食い散らされ」ることになったのだった。

 ――実に、虚しい勝利であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ファラーシャ・ラズワード
フェアリーのわたくしも、自分より小さい相手、というのは中々ないけれども。
足蹴にされたいとは欠片も思いませんのあしからず。

こういった相手は範囲攻撃が基本……

ってあらら?なんですのその海月というか触手でって待ちなさい!ウェイト!!触手で動けなくしてってそれわたくしの咎人モードの時の常套手段じゃないの!?
いたっやめっ!?シリアスと自重と常識を捨てるなんて何かのトラップダンジョンではないのよここ!!?

くっ、この、足蹴にっ。(睨む。相手が悦びそうだけど)

こうなれば、暴走覚悟で……
海月イズ水分
凍らせれば簡単に砕ける。
集中して、集中して(触手が邪魔!!)
自爆覚悟の!氷雪の旋風!(エレメンタル・ファンタジア)



●妖精は責めるのがお好き
「待ちなさい! ウェイト! ちょっと!」
 ファラーシャ・ラズワードは――思わず、落ち着いた物腰を崩し。悲鳴じみた声をあげながら、ひらひらと逃げ回っていた。
 妖精の姿を追いかけるのは――透き通る、無数の触手だった。

 少しばかり、舐めていたのだろう。彼女自身が語った性癖は、自分よりも大きな相手を足蹴にすること。
 フェアリーである自分よりも小柄な相手など、そうはいないだろうと。
 ……まあ、うっかり話した相手の性癖の方が出て来たら怖いが、それはそれで、想像し辛いし。

 ところが。
 
「ふーふーふー。どうも、私以外の性癖神は、あらかたやられちゃったみたいだからねぇー。ちょーっと本気。性癖全開モードでお相手するよぉ」
 笑い声をあげるのは、想像と全く違う、SDじみた可愛らしいクラゲの姿。そしてその額には――『サディズム』という文字だった。
「……確かに! わたくしサディストなのと、話したけれども! それにしたって、何なのその姿は……!」
「んー、これぇ? ほら、キミすばしっこそうだし。まず捕まえた方が簡単でしょー? ――締め上げるにも、毟るにも」
「わたくしの咎人モードの常套手段じゃないの!? 捕まれば碌なことにならないことだけは確かそうね――!」

 叫び返しながら、高度を上げるファラーシャだが――逃げの一手では、手数に及ばないのもまた道理。
 正面の触手に気を取られた隙に、背後から、足首を捕えられてしまい。
「くっ……は、離しなさい! 何処ぞのトラップダンジョンではあるまいし――っ、痛ぅ……!!?」
 ぬるりと這い上がってくる触手に何を想像したのか、顔を赤らめ抗議しかけたファラーシャの言葉を遮ったのは――彼女自身の悲鳴。小さな四肢に絡んだ触手にぎちぎちと引っ張られ、今にももがれそうな痛みに襲われて。
「あはは。サディズム=コンプレークス相手に何を期待してるのさぁ。えっちな触手でぬるぬるのぐちゃぐちゃにされたかったの?」
 にまりと笑みを――海月なので表情は分からないのだが、そうした声色の、笑みを漏らして。
「――――キミはもーっと、オモチャみたいに、無様で酷い目に遭うんだよ。ヘンタイ妖精さん」
 煽るように、口にする。言葉責めもまた、サディストの本領か。

 ぶち、と。
 頭の中で、何かがキレる音がした。

(「……煽られている? 責められている? ああ、弄ぶつもりなのね――このわたくしを。こんなふざけたオブリビオンが、海月如きが……ッ!」)
 そのような屈辱、甘んじて受けられるはずもない。
 魔力を高める。全力で、ただ全力で。本来ならば、高度な集中を要する魔術だ。このように痛みに苛まれながら編み上げられるような術ではないが――沸騰するほどの怒りが、逆に、どこまでも思考を冷え切らせる。

「…………? ちょっと、まだ抵抗する気? 何を……」
「――海月の身体なんて。ほぼほぼ水分でしょう?」

 エレメンタル・ファンタジア。
 氷雪の旋風が、吹き荒れた。



 戦いの結末として、語ることは二つほど。

 一つ。
 自爆覚悟のその一撃により――愉しみに没頭して油断していたサディズム=コンプレークスは、確かに撃破され。

 二つ。
 身体に絡みついた触手が、そのまま凍り付き。「触手責めされるフェアリーの氷像」のような状態で魔力を使い果たして動けなくなったファラーシャは――
「やめ……っ! ちょっと! そこ、スマホを向けるんじゃないわよ――!」
 体力が戻るまでたっぷり30分ばかり、その状態で衆目に晒され続けたという。

成功 🔵​🔵​🔴​

蒼焔・赫煌
おー、うんうん!
舞夜さんの話なら、王子様とか女装の性癖が現れるのかな、現れるんだろうね!
それってどんな攻撃なんだろうね、気になるよ!

性癖神が性癖を語り出したら、一緒にまた盛り上がろうかな!
王子様!
いいよね!
うんうん、いいともいいとも!
きらきらで、眩しいくらいにさ!
困難を乗り越えた先で結ばれたりするのさ、普通の女の子ならきっと誰でも夢見るさ!
ダンスをするならリードしてもらいながら、倒れそうなとこを支えてもらって、顔が近づいたり!
きっとドキドキさ、ドキドキ胸が高鳴るだろうね!

語り終わった後に攻撃を仕掛けてきたら、【見切り】ながら【カウンター】でどーん!





夢を見るのは自由でも、叶うとは限らないんだよ?



●すてきなすてきな王子様(真)
『一曲、踊って頂けますか? お嬢さん』
『うんうん、いいともいいとも!』
 ●●・●●が、快く誘いを受けたのは、わずか数分前のことだった。

 金髪碧眼の、絵に描いたような王子様。男は、「プリンス」とだけ名乗った。
 つまるところ、彼は『性癖神プリンス=コンプレークス』なのだろうと、●●は思う。
 ●●はあまり、考えを深く巡らせる方ではないけれど。それでも、男の放つ気配は、オブリビオンだと判断するのに十分なものだった。

 どこからともなく、弦楽器の音色が響く。――少なくとも、踊る●●の耳には、そう聞こえた。
 周囲の一般人は異常を感じ取ったのか距離を取って遠巻きになり、大通りにまぁるく切り取られたような空間は、まるで舞踏会のホールのようだった。もちろん、●●はそんな場所で踊ったことなどないけれど。

 ●●の服は、いつのまにかお姫様のようなドレスに変わっていた。――少なくとも、踊る●●の目には、そう見えた。
 魔法みたいだね、と思う。救われない境遇の不幸な娘が、魔法でドレスと硝子の靴を纏い、王子様の目に留まる。そんな御伽噺をどこかで聞いたことを、頭の隅で思い出す。

 くるくる、くるくる、踊りは続く。
 プリンスは●●の腰に手を回し、踊り方など知らない彼女を優しくリードしてくれた。
 つまずきかけた身体を、自然に抱き寄せられ。
 どきどき、胸が高鳴って。
 きらきらきらきら、眩しいくらい。
 楽しいね、と笑いかければ、僕もだよ、と笑い返してくれた。

 ――魅了し、惑わし、心を捕えてしまう力なのだと。●●には、分からない。
 そんな難しいことは考えられない。ただ、夢に浸っていた。
 哀れな少女が完全に術中に落ちたと確信したプリンスは、薄く、笑みを浮かべ。曲が止んだその時、腰の剣に、手をかけて。
 
 ――その瞬間。血のように赤い無数の刃が、プリンスを滅多刺しにした。
 なぜ。気付かれていなかったはずなのに。
 呆然と、そんな目でこちらを見ながら頽れる王子様を、いつのまにか消え失せたドレスの代わりに骨鎧を纏った●●は、そっと抱き止めて。

「夢を見るのは自由だけど。叶うとは限らないんだよ?」

 憧れもする。夢に浸りもする。
 けれど、そんな幸福が自分に訪れるなんて、はなっから、ひとかけらも信じていないのだと。
 困ったように、そう言った。

「――――いつか。本物の王子様が、現れるよ。君にも」
 何を思ったか、最期にそんなことを口にしたプリンスも――もう一度、滅多刺しにすれば、静かになって、空に溶けるように消えていき。
「そうだね、そうだね。もしも、もしもそんなことが起きたら、素敵だろうね!」
 いつも通りに、そう笑って、歩き出す●●は。
 怒りも、悲しさも、覚えはしなかったけれど。

(「……なんでかな。少しだけ、胸が冷たい気がする」)

 きっと、攻撃に血を使ったせいだ。そう、考えることにした。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『ミミック・オブ・ブラックヒストリー』

POW   :    Black history embodied
【黒歴史を読み取る魔方陣 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【魂の痛み伴う読み取った黒歴史の具現化魔法】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    Painful black history
【疑問】or【羞恥】or【驚愕 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【具現化した在りし日の対象】から、高命中力の【魂の痛みを与える黒歴史】を飛ばす。
WIZ   :    disguise black history
【黒歴史モード 】に変形し、自身の【羞恥心と魂の痛み】を代償に、自身の【中二力とblack history】を強化する。

イラスト:黒江モノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●MSからの補足
 3章では、特殊ルールが二つ存在します。【必ず】ご確認の上、ご参加下さい。

>特殊ルールC【己の闇を恐れよ】
 1章、2章で「黒歴史」即ち「多かれ少なかれ、人に知られたくないであろう描写」を得ていない場合、プレイング採用率が大幅に低下します。
 これは「3章で初めて参加する場合」及び「性癖の暴露が全くダメージにならなそうなキャラクター」を含みます!
 ただし、この補正は、プレイング中に「過去の黒歴史」、即ち「人に知られたくない秘密」を記載することで打ち消すことができます。程度は問わず、性癖関係である必要もありません。

 逆に、黒歴史を書けば3章からの参加も歓迎いたします。リスクなくして力は得られないのです。
 プレイング中のどこかに、「【C】邪眼という設定で眼帯を付けて中学に通ってた」とか「【C】後ろ姿だけ見てナンパしたら実姉だった」といった形で記載して頂ければ。


>特殊ルールD【されど恐れるな、その力】
 特定のキャラクター1人を名指しして、同シーンでの採用を希望することができます。相手の同意は必要ありません!
 「執筆時にお互いが公開感情以上に存在すること」を条件に、前向きに検討致します。

 このルールは、「性癖暴露の黒歴史を人に知られないよう必死になる」というシチュエーションに緊張感を与えるためのものだ、という主旨を踏まえてご利用下さい。
 採用を確約するものではありませんし、採用されたとしても、狙った相手の黒歴史や性癖を知ることが出来ない場合もあります――本人が阻止に成功するかもしれません!

 プレイング冒頭に「【D】キャラクターの呼称(ID)」と記載して下さい。(例:【D】○○ちゃん(e00000))
 当然ながら、対象者が参加していなかった場合は同時に採用率が低下します。そこは諦めて下さい。
 ルールの利用はメタ的なものであり、キャラクター視点では原則「偶然の遭遇」と処理されます。

 なお、ルールD利用者にもルールCは適用されますので、ご注意下さい。
 ルールを満たしてさえいれば、いわゆる同背後キャラクターの同時参加も遠慮なくどうぞ。

 もちろん、互いの了解の上での合わせプレイングも問題ありません。
 「ルールDの利用」「合わせプレイング」「1、2章で同シーンに登場」のいずれかを満たしている場合を除き、この章でMS裁量での同時採用はほぼ行いません。


●執筆スケジュール
リプレイ執筆開始は【6/1(土) 8:30~】です。
それ以前にお送り頂くのは歓迎ですが、再送前提になります。
それ以降の方も、プレイングの数次第ですが、1度だけ再送をお願いする程度の時間がかかるかもしれません。
不採用時、お気持ちが変わらなければご検討頂けると幸いです。
アロンソ・ピノ
スレンダーな性癖神を緊縛していた黒歴史なんぞ他人に見せられるかぁぁぁぁぁ!!
さっさと黒歴史のやつを探して倒すぞ!!
第六感で自分の黒歴史を出すミミックを探し、探し終わったら遭遇戦だ!
夏鯨で薙ぎ払う!
ついでに真の姿でな!真の姿の見た目は筋骨隆々、上半身は服は破けて髪は真っ黒になる。
辱めを受けるだけならまだしも、それが他人に迷惑をかけるのはさすがに見過ごせんべ!!!
………なあ、あの、黒歴史というと、オレたまに発作的に訛りが抜けないんだが………これも?これもか?これも退治しなきゃダメか?黒歴史、人より多いのかな、オレ……

――春夏秋冬流、参る。
(アドリブ、合わせ歓迎)



●黒歴史は季節を問わぬ
「ふふ、なんて素敵な町なのかしら。こんなにも黒歴史が満ちているなんて――あぁ、見つけた。良い黒歴史だわ」
 ある路地裏で。オブリビオン、ミミック・オブ・ブラックヒストリー。その名を継承してきたかつてのヴィランの一人である女は、ほくそえんだ。
 これだけ黒歴史が満ちた環境ならば、「彼女ら」の力は何倍にも増す。そう、波長さえ合えば、その場にいない者の黒歴史ですら引き出せるほどに。
「――ふふ、これでいきましょう。この黒歴史なら、道行く者を痛みを共感させるに十分過ぎる。『真面目に戦っていたはずが、好みのオンナを人前で緊縛調教! 危うくヒーロー騒ぎに――』』
「させるかぁぁぁぁぁぁ!!!」
「っきゃあああ!?」
 その瞬間。ビルの上から飛び降りてきた黒髪の巨漢が、身の丈以上の巨大な刀を振り回し、路地裏のコンクリート壁を叩き割る。
「な、なに……!? 猟兵!?」
「ああ。そんな黒歴史、広められるわけにはいかねぇべ」
 からくも身をかわしたオブリビオンの視線の先。ぱらぱらと瓦礫の舞う中、不機嫌そうに立ち上がるのは――アロンソ・ピノ。その、真の姿だ。
 獣じみた第六感を駆使し、いち早く自らの黒歴史を握るオブリビオンの前に辿り着いた手腕は、まずは見事と言えた。
 ――だが。

「ふふ、ふふふ……」
「……何がおかしい?」
「おかしいに決まっているじゃない。私は他ならぬヴィラン、ミミック・オブ・ブラックヒストリー。相対すれば、分かる」
 オブリビオンは、びしりと若き剣士を指差して。
「貴方が人一倍、多くの黒歴史を抱えていることが!」
「……はぁぁ!? だ、誰が……!」
 驚愕。疑問。だが、どこか――ぎくりとした響きが、アロンソを襲った。
 そして、その感情こそが、オブリビオンの狙ったトリガー。
 ふわりふわりと靄のように、幻が、浮かび上がる。

「食らいなさい! 『全然自覚なかったけど話すと親しみやすいって言われて訛りに気付いたあの日の思い出』!」
「うぐっ……」
「『その晩よく考えてみたら、内心ちょっと今のは決まったべとか思ってたあの日も訛ってた気がして一人記憶を辿った記憶』!」
「ぐおっ……!」
「さらに! 『道端でBL同人誌を読み耽った挙句、あれこれ言い訳して好みの同人誌を持ち帰ったけど周りに性癖バレバレだったやつ』――!」
「ぐああああ!!?」

 幻が映し出される度、そこから受ける黒歴史の痛みが物理的な衝撃となって胸を貫き、アロンソはついに膝を突く。

「ふふっ。もう降参? なら、そろそろトドメを――」
「……るか」
「……えっ?」
「こんなモン! 尚更野放しに出来るかぁ――! 春夏秋冬流、参る……夏鯨ァ!!!」

 夏の海原を切り裂き、高々と跳び上がる鯨が如く。さらに長さを増した刀身が、暴風と化して荒れ狂う。
 黒歴史の数々を、片端から薙ぎ払い――

 ――そして。
 青年の心には、「やっぱオレ、人より黒歴史多いのかな……」という、ささくれだけが残されたという。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

富波・壱子
知られたくない過去。まさか、実験体時代のことがみんなに知られて……
そんなのダメ!と、止めなきゃ!

【C】エイプモンキー相手にバナナ人質作戦をとったが失敗
……待って。お願い、言い訳させて
だってだって、エイプで、モンキーだよ?……ね?
これはもう、イケる!って思うでしょ。うん、仕方ない

必死で言い繕おうとするけどオブリビオンが再現した姿の説得力の前には全てが無駄だよ
ああああごめんなさい作戦を立てた『わたし』が馬鹿でした『私』も付き合ってくれたのにごめんなさーい!
逃げるように人格を戦闘用と交代

なるほど。確かにダメですねこれは
人質に一切構うことなくオブリビオンを攻撃します
…………良い作戦だと思ったのですが



●彼女たちの黒歴史
(「知られたくない過去――まさか、実験体時代の過去がみんなに!? そんなのダメ! と、止めなきゃ……!」)
 そう、思ったのはしばらく前のこと。
 30分近くも町を駆け回った富波・壱子の前に現れたのは――

「……あら。分かるわ。貴女、この黒歴史の持ち主ね?」
 手の中にボールのように黒いオーラを纏わせた、オブリビオン、ミミック・オブ・ブラックヒストリーの姿であった。
「その闇……まさか!」
「ふふ、そのまさかよ。せっかくだから、一番に味わいなさい、貴女自身の黒歴史を!」
「だ、ダメぇ――!」

 必死に静止の声を上げた壱子の目の前。遠巻きになっているとはいえ、一般市民もたくさん周りにいるというのに。
 戦闘用人格に切り替わる間もなく、無情にも、その凄惨な過去が幻として上映される……!

 ――映し出されたのは。壱子の予想に反して、オブリビオン、エイプモンキーだった。
 キマイラフューチャーを巡る大規模な戦い、大戦争バトルオブフラワーズにおいて暴れ回った強大なオブリビオン。
 「そうぞう」を武器とするそれに立ち向かうべく、壱子(幻覚)が採った手は――。

「えッ……わ、わーわーわー!? 待って! お願いやめて!」
 わたわたと両手を振って壱子(現実)は制止の声を上げるが、無論、それで幻が止まるわけもなく。

 ――壱子(幻覚)が選んだ手は、バナナであった。
 ただのバナナではない。都心の一流店舗で購入した一本千円以上する高級品である。そのバナナに拳銃を突きつけ、バナナが惜しければ直ちに武装を解除しろと迫る壱子(幻覚・戦闘用人格)。

「……待って。お願い、言い訳させて。だってだって、エイプで、モンキーだよ?」

 ――無情にもバナナに発砲する壱子(幻覚・戦闘用人格)。

「これはもう、イケる! って思うでしょ?」

 ――スペアのバナナを取り出し、跪いてバナナ乞いをするよう迫る壱子(幻覚・戦闘用人格)。

「うん、仕方な……」

 ――エイプモンキーに顔面を殴り飛ばされる壱子(幻覚・戦闘用人格)。
 ドン引きするエイプモンキー。
 映像おしまい。

「…………」
「…………」
「「「…………」」」
 気まずい沈黙。黒歴史を引き出した『ミミック』ですら、そのあまりの無様に居た堪れない顔をしていた。遠巻きに見守る人々もまた、同じくである。

「あああああごめんなさい作戦を立てた『わたし』が馬鹿でした『私』も付き合ってくれたのにごめんなさーい!」
 そして、壱子(現実)は半泣きで人格を交代した。

「……なるほど。確かに、」
「あっ、もしかしてバナ質脅迫犯の人」
「確かにダメですねこれは!」
 いつになく強い口調で、『壱子』はオブリビオンの言葉を遮りながら。
「言っておきますが、『私』にこのような心理攻撃は通用しません――私が、あなたを殺します」
 かつて罪なきバナナの命を奪った銃を、引き抜いて――。



「………………いい作戦だと思ったのですが」
 ――無事に宣言が果たされた後の、心なしか不満げな呟きには、誰もツッコめなかったとか。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
◆ロク・ザイオンと
(如何なものであれ衆目に己の黒歴史が晒されるなどあってはならない。故に)

(ザザッ)
速やかに行こうロク。オーヴァ。
(利害の一致。敵は誰かの目に入る前に倒さねばならぬ。)

"Craft:Bomb."
投擲弾を数種精製。スモークグレネード、閃光弾、その他視覚奪取用の爆弾を交えつつ、出現する黒歴史がどのような形であれ爆煙と閃光とで姿も見えないうちに敵を薙ぎ払う。

――そっちは終わったかロク。
此方のは何か見えたか?
…いやいい、何も見えなかったなら。
此方も何も見てない、安心してくれ。

※ジャックとしての懸念
性癖に関するもの以外にも
"自分の正体"に関わる黒歴史の出現を何より隠そうとする

アドリブ歓迎


ロク・ザイオン
※ジャガーノート・ジャックと

(森番は子供を好む。好まれたいとも思っている。
ぐるぐるさっきの言葉を考えて
うっとりする匂いを考えて)
(ほっぺが熱くなった)

…これは恥ずかしいやつを守るための戦いだ。
ジャック。
あれはすぐに焼き潰す。
おーば。

(珍しいくらいの早口だった)

(あれを子供に見られるのはとても困る。
鬼の形相で探し出し)
ああァアアア!!
(何か言おうもんなら「惨喝」で尽く邪魔
ついでに強化した攻撃力で【早業】でブン殴る)

(魔法を食らったら
幼く美しい少女を組み敷く獣みたいな自分が見えてしまうかも知れない)
(咆えながらガチ涙目)
(あねごに狼藉を働くなど)

(自分の黒歴史隠滅に夢中が故に)
…脚?
見てない。



●セキュリティクリアランスレベル:極秘
 森番は子供を好む。好まれたいとも思っている。
 ぐるぐる、ぐるぐる。
 さっきの言葉を考えて。うっとりする匂いを考えて。
 ほっぺが、熱くなった。
 ……これは、恥ずかしいやつを守るための戦いだ。

 ジャガーノート・ジャックは、己の秘密の暴露を許容しない。
 恥をかく、性癖を晒す。ただそれだけならば、良いだろう。良くないが。
 だが。黒歴史――即ち、葬られた過去の歴史を、陽の下に曝け出すというのであれば。
 UDC-146γ-2。己の抱えるそれは、守りたい誰かを危険に晒すことすら有り得るものだ。
 ……これは、知る必要のない情報を、知る必要がないままにするための戦いだ。

 ザザッ――

「ジャック」
「ああ」
「あれはすぐに焼き潰す。おーば」
「異論ない。速やかに行こうロク。オーヴァ」

 ――ザザッ



「あら、あら。凄い勢いね。そんなにも自分の黒歴史が恐ろしい? ならば――」
「――ああァアアア!!!!」
 腹の底からの咆哮で、その戯言を押し流す。足元に輝きかけた魔法陣を白熱した剣鉈で斬断しながら、同時に漲る力を全て拳に込め、オブリビオンの腹に叩き込む。
 声にならない悲鳴を上げ、くの字に身体を折りたたんで吹き飛んだ女の姿を見下ろして、ロクは不機嫌を隠すこともなく獲物を握り直した。
 けれど――地に伏したままのミミック・オブ・ブラックヒストリーは、薄く、いやらしい笑みすら浮かべて。
「っぐ……ふふ。そう、やっぱり怯えてる。知らなかった自分の一面が怖いのね。それだけじゃない。驚いて――知られるのが、恥ずかしいんだ」
「……うるさい。だまれ」
「黙らないわ、だって――それなら。その痛みは、私の手の内よ」
「……っ!?」

 剣鉈を振り上げたロクの目の前で。誰かが魔法のマッチでも擦ったかのように、おぼろげな、幻が浮かび上がっていく。
 幼く、美しい少女。それを組み敷く背の高い女。赤い髪の、青い瞳の、まるで獣のような形相をした――

「……あ、あ……アァァァァァッッ!!!」
 ロクは、瞳の端に涙すら浮かべ。目の前のそれを否定しようとするように、必死の咆哮を上げ――

 ――ザザッ

 響く、電子音。
 続けざまに降り注ぐ無数のスモークグレネードが、像を結びかけた幻を押し流す。
「……ジャック」
『やれ。秘密の暴露は本機が防ぐ。次は閃光弾を使う、直視するな』
 耳元に響くノイズ交じりの通信音声、ぶっきらぼうな指示。あまりにもいつも通りのそれに、ロクは、ほんの微かに口元を緩め、目尻を拭い。
「大丈夫だ」

 次は、いらない。

 短く、そう告げて。
 未だ広がる煙幕の中、匂いだけを頼りに――
 背を向けて逃げ出そうとしていた『ミミック』を、あっさりと両断した。



「……ロク」
「なに」
「此方のは何か見えたか?」
「……脚? 見てない」
「……そうか。いや、いい、何も見えなかったなら」
「…………」
「? ……ああ、安心してくれ、此方もあの距離では何も――」
「いい。……何でもない」
「……?」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

祇条・結月
初手:伊達メガネをかける

変装というか顔の印象が変わればワンチャンあるんじゃないかなって
大丈夫、いけるいける……

首輪趣味みたいな誤解を招くのも嫌だけど、首輪を付けられたのも割と知られたくないよな……
いや、ほんとにそういう趣味はないから。
ない、断じてないから、どっちもない!

【第六感】と【聞き耳】でミミックを探して見つけたら≪鍵ノ悪魔≫で壁とかを突っ切って接近して、最短距離で死角から【暗殺】を試みる。
違うけど??? 沢山でてきてるんでしょ? 手早く確実に1人ずつってだけで断じて私情じゃないってことだけはわかってほしいなって(早口)

いや、誰に言い訳してるんだから……
早く終わらせて帰ろう



●僕を見るな(切実)
 すぱん、と。

 壁をすり抜けて現れた少年の手の苦無が、あまりにもあっさりと、ミミック・オブ・ブラックヒストリーの首を掻き切った。

 ふぅ、と安堵の息を吐き――その瞬間、喉奥から溢れ出した流血を飲み下す。
 少年の顔は、いつもと違うパーツ……伊達メガネが装備されていた。
 なぜか。答えは一つしかない。
 ――そう、変装である。
 万が一。そう万が一知り合いに見つかってしまったとして、顔の印象が違えば――ワンチャン、バレないのではないか。
 そう期待して駄目元の変装をし、さらには己の身に境界を司る「鍵ノ悪魔」を身に宿して万物を透過するユーベルコード……本来もっとシリアスな場面で用いるべきではないかと思える力を、その反動すら厭わず全力使用し、先制攻撃により敵を『暗殺』する。

 祇条・結月。間違いなく、今この町でもっとも形振り構わず、必死な猟兵であった。

 ――とはいえ、それも無理はないだろう。
 彼の黒歴史は、首輪趣味。
「……いや、趣味とかそういうのじゃ、ないんだけど……」
 誰に言い訳しているのかは知らないが。
 ともあれ、まるでそれが性癖であるかのように人前で扱われ――あまつさえ、一時はオブリビオンに首輪をかけられた。かける側もかけられる側も、人には知られたくない姿である。お年頃の少年にとって、それは必死になるに十分な条件であった。
「いや、ほんと、ないけど。手早く確実に1人ずつってだけで……断じて私情じゃないんだけど。……って、ほんと、誰に言い訳してるんだか。……帰ろ」
 ふ、と苦笑し。念のために眼鏡は付けたまま、結月は踵を返し――。

「――食らいなさい、新鮮な黒歴史。『人前で知人の母親に似て見えた敵に首輪を付けたり付けられたりしてちょっと興奮した挙句、それを人に知られたくなくて必死に町を駆け回った思い出』――!」
「うぐぁっ……!!!??」
 その目の前に、つい数分前の自分の姿が幻として映し出され。結月は衝撃に胸を押さえ、思わずよろめいた。

「なっ……えっ、嘘、確かに倒して……いや、新手……!?」
「ふふ。私の後輩に随分ひどいことをしてくれたようね。――敵が一人だと、誰が決めたのかしら」
 そう、ミミック・オブ・ブラックヒストリーは集団の敵。本来、1人を倒したとして、次の1人が現れないという道理はないのである。
 薄笑いを浮かべるオブリビオンに、結月は、頬を引きつらせ。
「……違うって……違うって言ってるだろぉぉぉ!」

 ――故に。結月の戦いは、まだまだ続くのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ファラーシャ・ラズワード
はい、そこどいて!邪魔!
どこよ!どう考えてもさっきの動画とかその前のクラゲの時のじゃない具現化されるの!

っていた!はいそこ動かない!(咎力封じで具現化した3点セットを投げつける。受理されますように!)

ってひゃあああああ!!?!?(具現化した黒歴史で真っ赤になって慌てる防御が緩む、警戒力が下がる)
あ、あなたはさっき倒したクソクラゲ!!って待っておもちゃにするの再現やめて!変態じゃないのよわたくし!!痛い痛い魂もだけど社会的に痛いの!!皆見ないで!

わたくし、そんな変な想像してませんしー!ってそれ具現化はギャーーー!

ええい、こうなったら当たるまで咎力封じ3点セット投げるマラソンよ!



●触手氷像3点セット予告かと思いました
「はい、そこどいて! 邪魔! どきなさいというのに……!」
 ひらひらと、人込みの間を縫うように。ファラーシャ・ラズワードは、血眼になって飛び回っていた。
 探す相手は、無論――
「うふふ。見つけた、見つけた――素敵な黒歴史。妖精さんの――」
「――っていた! はいそこ動かない!」
「っ!?」
 オブリビオン、ミミック・オブ・ブラックヒストリー。
 間髪入れずに放たれた咎力封じの『3点セット』――手枷、猿轡、拘束ロープ。うち二つは咄嗟にかわされ、片手に手枷をかけるだけに終わった。
 『ミミック』はすぐに驚きから立ち直ると、拘束を気にすることもなくうっすらとした笑みを浮かべ。
「ふふ……分かる、分かるわ。貴女が、この黒歴史の持ち主ね? ――『緊縛妖精』さん」
「っ、誰が緊縛妖精よ! 忘れなさい! でないと今すぐ――」
「だぁめ。だって――今、『恥ずかしい』と思ったでしょう?」
 その感情こそ、オブリビオンの狙っていたもの。
 浮き上がる幻として具現化するのは――
「ってひゃあああああ!!?!?」
 ――クラゲのオブリビオンの触手に絡みつかれ、そのまま凍り付いたファラーシャ自身の姿である。ついでに、遠巻きにその姿を見守り、スマホのカメラを向ける群衆の姿までセットだった。
 羞恥のあまり咎力封じの集中が乱れ、『ミミック』の手枷がかしゃりと落ちて。
「あらあら……とっても良い姿ね。知っているわよ、先に来ていたのは『性癖神』……これが貴女の性癖ってこと? ドギツイわねぇ」
「違うわよっ! わたくしは踏む側の――」
「でもほら、――顔が赤いわよ、この幻。やっぱり興奮して……」
「寒かったからよっ!!?」
 顔を真っ赤にして叫ぶファラーシャだが――視線を、感じる。遠巻きにこちらを見る、一般人たちの視線。
「待っ……変態じゃないのよわたくし! 痛い痛い魂もだけど社会的に痛いの! 皆見ないで!」
 必死に、叫ぶも。返ってくる言葉は――

「あんな綺麗な妖精さんなのに……」(ひそひそ)
「縛られて見世物にされるのが……」(ひそひそ)
「………………………………ド変態」(ぼそっ)

 ――――ぶちん。

「ふ、ふふ、ふふふふ……!」
 ファラーシャは。わずか数時間ぶりに、再び何かが切れる音を聞いた。
「いいわ! わたくしが教えてあげる――どちらが縛る側なのか、その身体にね!」
「えっ、ちょっと、私は――や、やめなさい、きゃあああっ、も、もごご……っ!?」
 連射する。手枷を。猿轡を。拘束ロープを。
 当たらないなら、当たるまで。完全に行動不能になって余計なことを言えなくなるまで、縛り上げてしまえばいい。

 ――その、あまりにも不健全な絵面に、周囲の人垣は一回り、後ずさったけれど。
 彼らの目は、もう完全に不審者を見るそれだったけれど。

 ファラーシャは、ちょっと泣きたい気分を堪えながら、フェアリーの身には太すぎる荒縄を抱え、『ミミック』を徹底的に縛り上げるべく襲い掛かるのだった――。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

リンタロウ・ホネハミ
まあ性癖の恨みは恐ろしいって言うっすしね
オレっちも逆の立場なら同じことをしてたかもしれないっす
だからこのことは水に流して……
オレっちは精一杯!!黒歴史と戦うヴィクティムを応援するっすよ!!
フレーッ!!フレーッ!!ヴィークーティムッ!!!
そこっすよ年上好きのヴィクティム!!今のは惜しかったっすよ年上巨乳好きのヴィクティム!!
お前なら必ず年上巨乳大家好きという性癖を晒された黒歴史に打ち勝てるっす、ヴィクティム・ウィンターミュートォ!!
ほら皆さん(おびき寄せ+パフォーマンスで集めた一般人)も一緒に!!
年上巨乳大家が性癖のヴィクティム・ウィンターミュートを応援するっすよ!!!


ヴィクティム・ウィンターミュート
【年上巨乳大家】

すまなかった
ここから俺たちは男の友情を再確認して敵を…
は?
リンタロウさん?

やめろおおっ!!
違いますよ皆さん!!
俺はそんな性癖持ってません!!
本当です!!

畜生!敵も倒さなくちゃならねえし
リンタロウの凶行も止めなきゃならねえ!!
何か…何か良い手は…

あるやん

【冬寂】発動!
直接当てないようにばら撒き、オブリビオンには当てる!
え?味方以外の音を消し去るだけ?
俺の性癖を暴露する奴は敵では?(キレ気味)

強化された俺の力で死ねい黒歴史!

なぁリンタロウ

俺さ、ハッカーなんだよね
でさ、お前が年上巨乳大家にデレデレなの、録画してんだわ
ここに編集して俺だけいないムービーがある

電波ジャックって知ってるか?


徒梅木・とわ
【D】ヴィクティム(f01172)リンタロウのお兄さん(f00854)

精神的な苦痛ってやつは時に身体の苦痛よりも辛いものだ
戦闘は不得手だけれどね、事後に苦痛を和らげること位はとわにも出来るだろうさ

……と思って来たのだけれど、ああも知った名前が叫ばれていちゃあね
いやなに、詮索はしないさ
見聞きしてしまったら、どうしようもないけれどね?
今後の付き合い方は……くふふ、今後考えようか

【C】十歳前後の時、男装をしていた
それを思い出させるのは勘弁願いたいね……
体型的に無理があり過ぎるし、冷静さを欠いていたよ

万事恙なく終わ……らないなら、お説教かな?
子供の喧嘩をじゃあないのだからいい加減にしないとだめだろう?



●今日この町で一番醜い争い、あるいはD案件その1
「リンタロウ……お前、死んだはずじゃ……!?」
「おい」
 ヴィクティム・ウィンターミュートは、目の前に現れたありえないはずの姿――リンタロウ・ホネハミに、わざとらしくよろめいた。リンタロウはさすがに半眼になりつつも、
「……まあ、もういいっすよ。性癖の恨みは恐ろしいって言うっすしね。オレっちも逆の立場なら同じことをしてたかもしれないっす」
「……! ……すまなかった。ここからは男の友情を再確認して敵を……」
「だからこのことは水に流して……オレっちは精一杯!! 黒歴史と戦うヴィクティムを応援するっすよ!!」
「は?」
 ぽかんと口を開けたヴィクティムの前――リンタロウがぱちんと指を鳴らせば、ずら、と後ろに並ぶのは、あらかじめ扇動された一般人応援団の皆さんである。なにせヒーロー社会の群衆であるからして、戦うのに応援が必要だといえば、なかなかノリよく付き合ってくれた。
「り、リンタロウさん……?」
「フレーッ!! フレーッ!! ヴィークーティムッ!!! 負けるな年上好きのヴィクティム!! お前ならできるはずだ、年上巨乳好きのヴィクティム!!」
「「「フレッフレッヴィクティムッ フレッフレッヴィクティムッ」」」
「やめろおおっ!! 違いますよ皆さん!! 俺はそんな性癖持ってません!! 本当です!!」
「…………ねえ。私、もう行ってもいいかしら? もう私が引き出すまでもないわよね、黒歴史?」
 ぽかんと口を出したのは――オブリビオン、ミミック・オブ・ブラックヒストリー。
 実は最初からいたのだが、もはや置いてかれ気味だった。


「「「フレッフレッヴィクティムッ フレッフレッヴィクティムッ」」」
「お前なら必ず年上巨乳大家好きという性癖を晒された黒歴史に打ち勝てるっす、ヴィクティム・ウィンターミュートォ!!」
「やめろって言ってんだろォ! クソッ、畜生! 敵も倒さなくちゃならねえしリンタロウの凶行も止めなきゃならねえ!! 何か……何か良い手は……!」

 ――地獄のような大騒ぎに。呆れ顔で、近付いてきた女が一人。
(「精神的な苦痛ってやつは時に身体の苦痛よりも辛いものだ。戦いの後に苦痛を和らげるくらい……と思って来たのだけれど」)
「こうも知った名前が叫ばれていちゃあね。いやなに、詮索はしないけれど」
「と、トワ……!?」
「げっ……嘘だろおい」
 狩衣に身を包んだ、桃色の妖狐――現れた徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)の姿に、男たちは凍り付いた。ヴィクティムはもちろん、リンタロウにとっても――さすがに、彼女の前で続けたい醜態だとは言い難い。
 ――が、ここで問題なのは、リンタロウがご丁寧に呼び集めた応援団の皆さんである。彼らにとっては、とわも一人の通行人に過ぎないわけで。
「さあ、お嬢さんもご一緒に!」「フレッフレッヴィクティムッ」「フレッフレッ年上巨乳大家好きッ」
 何も変わらずノリノリであった。
「…………くふふ。今後の付き合い方は考えようか。リンタロウお兄さん、ヴィクティム」
「い、いやぁ、これには深い事情がっすね……」
「俺は被害者なんだが!? ――――はっ」
 まずい、このままでは、まずい。そう考えたヴィクティムの脳裏に電流走る……!
 そう。あるじゃないか、この状況に相応しいプログラムが。
「冬の静寂は全てを黙らせる……っつーか黙れ! 黙ってくれ本当に!」
 展開したユーベルコードの名は、冬寂。被命中者が立てる一切の音を消すプログラム。
 目に見えぬ電子の手を伸ばし、ハックする対象はオブリビオンと――そして、一帯全ての、空間そのもの。

 しん、と。
 音そのものを遮断された空間を、静寂が包み。
 この場の全員がそれに戸惑う中、ただ一人この空間に動作を最適化したヴィクティムが、風のように動き――
「強化された俺の力で死ねい黒歴史!」
「……!!! ……ッ!!!」
 私まだ何もしてないじゃない……! 非常に文句を言いたげな顔をする無音の『ミミック』の胸を、その短剣が貫いたのだった。


「…………リンタロウ」
「お、おう……っす。いや、ヴィクティム、おつかれさまっすよ……敵は倒したし、これで一件落着ってことに……」
 頬を引きつらせ、とわと自分を見比べるリンタロウの姿に――ヴィクティムは、分かってるよ、とばかり、にっと笑い。
「俺さ、ハッカーなんだよね。でさ、お前が年上巨乳大家にデレデレなの、録画してんだわ。――ここに編集して俺だけいないムービーがある」
「は?」
「――電波ジャックって、知ってるか?」
「ちょっ……は、早まるんじゃないっすよヴィクティム! 元はと言えばお前が――」

「――こほん」
 とわは、一つ咳払い。ぎくりと集まる二対の視線に、薄く笑みを浮かべて。
「万事恙なく終わらないなら、お説教が必要かな? 子供の喧嘩じゃあないのだから、いい加減にしないとだめだろう?」
「「…………ゴメンナサイ」」
「くふふ。分かってくれればいいんだよ。……お説教をするのが、年上の、きょ……大家でなくてすまないね?」
「「頼むからそれは忘れて下さい(っす)!!!」」
 直立不動の男たち。
 これはこれでご褒美――というには、ちょっと、こう。黒歴史が、過ぎるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
【D】美月(f01229)

わっ、ばったり美月と出会っちゃった?
大丈夫……!美月が例えば、胸の大きな女の子が好きとか……!
ナンパしようと思ったら実のお姉さんだったとか……!!
シア、そういうの気にしないから……!
男の子だもんね……!

ひあっ……!?
敵の攻撃でシアの黒歴史も知られちゃうかも!?
ひぅぅ……あれは事故だったの……!シアのファーストキス……!
(【C】寝ている時に寝返りを打ったら隣で寝ていたお父さんの唇にキスをしてしまった)

もう許さないから、ブラックヒストリー……!
「黄金の地獄」、発動だよ!
シアの身体の中に眠る黄金の炎が、あなたを許さないって言った!
黒歴史なんて!黄金の炎で焼いちゃうから!


月輪・美月
性癖がシスコンやマザコンであると暴露される。
それか見ず知らずの可愛い女性に対し、かなりの無様な姿を晒した事のほうかもしれません。まあ故郷での事を含めたらもっと色々……

せっかく、この世界に来てからクールで格好いい系男子で通っていたのに!(個人の感想)
知り合いに見つかる前に、なんとしてでも抹殺しないと……まずは影の狼で街を探索。他の人に暴露される前に見つけ出し、不意打ちで襲いかかる……これだ! 相手の黒歴史モードとかはまあ、そういうのも可愛くていいんじゃないですかね、僕は中二少女とかも好きです

あとは天国の(注:死んでない)心志さんに口止めして……後ろから殴ったりしたら記憶消えませんかね



●黒歴史という名の実家ネタ、あるいはD案件その2
「ぐああ……っ!!?」
 黒いエネルギー弾をその身に受けた瞬間、月輪・美月の脳裏には、様々な光景が走馬灯のように駆け巡った。
 故郷で黒髪美人を後ろからナンパしたら姉だった狼がいた。
 久々に再会した幼馴染の前で、性癖がシスコンやマザコンだと暴露された狼がいた。
 出会った美人猟兵をオブリビオンだと思い込み、巨乳だツインテだと騒いだ狼がいた。
 依頼でドレスの女性の胸にちらちら視線を向ける狼がいた。あっあっ気付かれてないと思ってたのに完全に気付かれてる……自覚してない黒歴史とかそういうのもアリなんですかこれ……。

「がはっ……! なんて、恐ろしいオブリビオンなんですか……」
 がくりと、膝を突く。影の狼の探索能力を活かして先に見つけ出し、不意打ちで一気に仕留めようとしたにも関わらず――ただの一撃で、この有り様だ。
 とはいえ、オブリビオン、ミミック・オブ・ブラックヒストリーも若干呆れ顔。
「……こんなにも効きが良い相手も珍しいわね。貴方、どれだけの黒歴史を積み重ねて……」
「そ、そそ、そんなことありませんし! くっ、このままじゃ、家を出てからクールで格好いい系男子で通っていた僕のイメージが……!」
「だ、大丈夫! 美月はちゃんと格好いいよ……!」
「……え゛っ」
 ――後ろから突然かけられた、浅葱・シアラの声に。美月は、改めて頬を引きつらせた。


(「美月、そんなに辛い過去が、いっぱい……!?」)
 いつも格好よくて頼りになる、白狼の騎士様。その見たことがないくらい弱った姿に、シアラは内心、驚いていた。
 彼が何を見せられたのは分からない――けれど。
 彼が弱っているのなら、そんな時くらい、守ってあげないといけない。
 自分だって。蝶の騎士たちの血を引く、世界を救う猟兵なのだから。
「美月は下がってて! 行くよ、ブラックヒストリー! シアがやっつけて――」
「あら。貴女も黒歴史を味わいたいの? ……それとも、そっちの男の子にぶつけてあげた方が良いかしら」
「……ひあっ!?」
 自分の恥ずかしい過去が彼に晒される……!? 予想していなかったオブリビオンの言葉に、シアラは動揺を漏らし。――そして、その驚きと羞恥こそ、敵の狙い。
 もやもやと浮かび上がる幻が描くのは――幼女のような姿の父と並んで……というよりはその身体の上でお昼寝する、自分の姿。
「お、お父さん……!」
「……え、シアさんのお父さん? どこに? ……もしかしてあの可愛い子のことですか?」
 これには美月もびっくり。故郷にも大変麗しい女装が似合う親戚はいたものの、幼女に見えるというのはさすがに未体験であった。
 そうこうする間に――シアラは寝返りを打ち、まるでキスでもするかのように、父の顔の上に覆いかぶさって――
「わ、わぁぁー……!? ち、違うの、美月! ほんとに当たったわけじゃなくて! ただたまたま見ちゃったお母さんが勘違いして大騒ぎになったのが恥ずかしくて――!」
「は、はい……あ、出てきましたよお母さん、美人ですね……」
「わ、わぁぁぁぁ!?」
 なんというか、こう……恥ずかしい黒歴史、以上に。こんな形で家族の顔を見られるのは、なんとなく、気恥ずかしい。どうせなら、もっと素敵な姿を見て貰えたらいいのに。
 むむむ、とシアラは頬を膨らませ。
「も、もう許さないよ、ブラックヒストリー! シアの身体の中に眠る黄金の炎が、あなたを許さないって言った!」
 叫んだシアラの右目が、赤く輝く。その身の内から現れた無数の黄金の炎蝶が舞い上がり。
「黒歴史なんて! 黄金の炎で焼いちゃうから――!」
「きゃあああ!? く、黒歴史は……幾ら焼き払おうと、また貴方たちの胸にぃ――!」

 ――オブリビオンを、焼き尽くすのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

九十九曲・継宗
一難去ってまた一難といったところでしょうか
早く誰かに見られる前に斬り捨てなければ……!

他の方と性癖を語ったのはともかく、
思わず他の猟兵に方に嫉妬してしまったことや、
メイド・コンプレークスの事、
特にちょっと知り合いに似てたことや、
その相手の誘惑に思わず手を止めてしまったことは、
知られないようにしないと

特に職場の同僚……同じ館で働いている人たちには死んでも知れれたくない……!
館でのこれからの立場とか、私のキャラのためにも、
一刻も早く仕留めましょう

敵の黒歴史攻撃に軋む心を無視しながら一刀両断に
武士道とは死ぬことと見たり

だ、誰にも見られてないですよね?


化野・風音
【D】九十九曲様(f07883)

お屋敷の殿方らが、頑張っておられるようで?
と、なるとメイドが楽をしているのもいけませんか

【C】甘言で人間を惑わせてきた

あら。あら、あら。わかっておりますとも
私はヒトの欲を愛します
欲のままに振る舞い、それに呑まれ憐れな最期を迎える様を傍らで唆し、眺めているのです
ええ、邪悪な愉しみです
さぁ。ここにおりますは、妖しく人を惑わす惡き化生
好きに扱っても誰も文句は言わないでしょう、と挑発して

《外法・悪喰》でカウンター

ええ、ええ
伝え忘れておりました
私は欲に打ち克ち大団円、というものも大好物でして
ですから
私の過去は、知られたくないのです
……今は、まだ



●ツェレンスカヤの従者たち あるいはD案件その3
「一難去ってまた一難、といったところでしょうか」
 愛刀『風魚』の柄に手をかけて。九十九曲・継宗は、苦々しく呟く。
 相対するのは、ゴシックな衣装に身を包んだ女。細かな容姿の違いはあれど、猟兵に聞いた通りの装い――ミミック・オブ・ブラックヒストリー、その一人に相違ない。
「ふふ、私の力を知っているのね。恐れているの、自分の過去を?」
 薄く笑う敵の姿に、継宗は答えず、ただ目を細め、重心を落とす。
 男同士、性癖を語った――それだけならばまだ良い。けれど思わず他の猟兵に嫉妬を向けてしまったこと。何より、見知った相手に似た『メイド・コンプレークス』の誘惑に、思わず手を止めてしまったこと――。いずれも、黒歴史と呼ぶに相応しい。
「一刻も早く仕留めさせて頂きますよ。あんなもの、特に同じ館で働く同僚に知られるわけにはいきませんから」

「あら。あら、あら。何か、よほどのことがあったご様子で」
「――――えっ」
 口を挟んだのは――オブリビオンでは、なかった。ぎょっとした様子で継宗が振り向けば、そこにいたのは――「あれ」より長い銀の髪、「あれ」になかった狐の耳、そしてやはり「あれ」より豊かな双丘。そんな、一人のメイド――今この瞬間に限れば、もっとも出会いたくない相手。化野・風音(あだしのの怪・f11615)であった。
「なっ……なんでここに……!?」
「お屋敷の殿方が、頑張っておられるようですから? メイドが楽をしているわけにもいかないでしょう?」
 くす、くす。おかしげに、愉しげに、風音はからかうような笑みを漏らし。
「……よく分からないけれど、身内ならば好都合ね。引き出した黒歴史は、知られたくない相手に晒されれば深まり、より濃い闇となる。――受けなさい、その男の業を」
「ちょっ」
 『ミミック』は――継宗の足元に魔法陣を展開すると、両手の間に生み出した黒いエネルギー塊を、銀のメイドに向けて打ち出して――
「っと、待ったぁ!」
 それを、継宗が座視できるわけもない。ぎゃり、と咄嗟に展開した『廻転脚』が地面を噛み、咄嗟に割り込み、その攻撃を切り飛ばす!
「……ぐっ……!!?」
 その瞬間、継宗の脳裏に上映されたのは――銀髪のメイドの「奉仕」という言葉に固まる自分の、それも恐らく実際より誇張された――誇張されているはずだ、自分はこんな鼻の下を伸ばしたりしてない、してませんって――姿。心が軋み、一瞬膝が折れかけるが、なんとか踏みとどまる。
(「……こんな光景を! 見られてたまるものですか……!!」)

 その、彼の背中を。風音は、目を細め、じっと見つめていた。
 彼が何を知られたくないのかは、分からない。……まぁ、なんだか深刻な過去とかではない気がしたが。それはそれとして、分からない。分からない、けれど。
 風音は、一歩、その背中に近付いて。
「ふん、頑張るわね。――じゃあ、その女はどうかしら。感じるわよ、濃い黒歴史の力を……!」
 今度は自分の足元に魔法陣が輝き、撃ち出されたオブリビオンの黒弾。放っておけば、体勢の崩れた継宗に命中していただろうそれを……風音は、彼の肩をそっと押し出し、その身で受け止めた。
「風音さん!?」
「っ……なるほど、これは……」
 端正な顔を歪める妖狐の脳裏に、何が浮かんだのか――彼女はそれを、語りはしない。

 けれど。強いて言うならば。
「ふふっ、もろに受けたわね! このまま2人そろって黒歴史の闇に沈みな、さ……きゃあああっ!?」
 ――勝ち誇った笑みを、浮かべた瞬間。足元から炎に包まれたミミック・オブ・ブラックヒストリーの姿と、近しい何かだっただろう。
「勝ったと、そうお思いに? ……残念でした」
 かつて。獣が如き欲に身を任せた男がいた。財貨に目を眩ませた女がいた。
 その全ての欲を愛し、唆し、惑わし、破滅の様を見届けた妖がいた。
 それなるは化野の怪、無常の野を舞う狐の火。民草を惑わす惡しき化生。
 そんな彼女にとって――弱みを抉るだけで得意になっている幼稚な亡霊を手玉に取るなど、造作もないこと。
「わかっておりますとも。欲に任せた己の鏡像に苦しみ、斃れる様を見るのは、さぞかし気分が良いのでしょうね。けれど――」
 くすりと、微笑み。
「欲に打ち克ち大団円。私、それも、大好物なのです」
 狐火が勢いを増し、オブリビオンの姿を包み込み――継宗の刃が、炎ごと、その身体を断ち切った。

「――ふぅ。風音さん、大丈夫ですか?」
「えぇ、えぇ。おつかれさまでした。九十九曲様」
「……ところで、さっき、何を見て……」
「ふふ。女の秘密を探るのは、良くないことですよ。あなたの過去ではございませんでしたから、ご安心下さいませ」
 お互い詮索はなしにしましょうと、くつくつ、笑う。
 過去の醜態を彼に知られたくないのは、風音も同じことだった。

 少なくとも……今は、まだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コーディリア・アレキサンダ
>シンヤ(f04640)と

…………お祭り騒ぎみたいだったね。少し圧倒されちゃった
兎も角、兎も角だよ。これでようやく敵を倒しにかかれるわけだけど
……大丈夫かい? シンヤ。目がこう、怖い――ああいや、大丈夫。任せて

それじゃあ役割分担だ、シンヤ。キミが足で、ボクが目
どういう形で出てきているのか知らないけれど――ボクと同じような容姿の何かを探せばいいわけだろう?
毎日見ているのだから、見落としはしないよ。安心してね


【C】血を吸われるのが好き――いや、少し気持ちがよかったなんてそんな
そういう黒歴史が万が一出て来たら……徹底的に破壊しておかないとね
……口に出してはいないから大丈夫だろうけれど


雨宮・新弥
>コーディリア(f00037)と
>必死

…ヤバい
予想以上にヤバい
どっかに知り合い居たら目も当てられねえ…
知り合いじゃなくても知られるのはヤバい
…………
…もう、背に腹は変えられね…
コーディリア頼…お願いします
探すの手伝ってく…ださい

>バイクで探し回る
>必死

あーーッ!あーーーーッッ!!
マジ趣味悪ィってレベルじゃねーかんな!
見つけ次第轢き倒す

>もしコーディリアの姿をしていたら、極力見ないようにして倒す
>必死



●大家さんの秘密
(「……ヤバい。予想以上にヤバい」)
 雨宮・新弥は、バーベキューの後、そう思ったわけである。
 何がか、といえば、無論、黒歴史である。そして、性癖である。
 具体的に思い出したくないので詳細に語りはしないわけだが――もし、あの光景が他の知り合いに、否、知り合いでなかったとしても、広がろうものなら……。
 死。社会的な、死であった。

 ところが、ここで問題が一つ。
 新弥はどうも、器用な方ではないのだ。敵探しといっても、人より早く見つける自信はあまりなかった。
 さてどうするかといえば、今頼れる相手は一人しか思いつかないわけで――。
「……もう、背に腹は変えられね……コーディリア頼……お願いします……」
 大柄な身体を深々と折って。すがりつかんばかりの勢いで、当の黒歴史の相手に頭を下げているわけだった。
「大丈夫かい? シンヤ。目がこう、怖い――ああいや……」
「探すの手伝ってく……ださい……」
「……うん、大丈夫。任せて。頭上げて」
 しょうがないな、とばかりに柔らかな笑みを浮かべ、コーディリア・アレキサンダは、青年をなだめ。
「それじゃあ役割分担だ、シンヤ。キミが足で、ボクが目。いいね?」
「……コーディリア……」
 ――全てを受け入れるその笑顔は、もう。聖女か何かのようだった、とか。


「――――見つけた」
 箒に横座り、ヒーローズアースの空を飛びながら。コーディリアは、静かに目を細めた。真下には、小さく、バイクにまたがり街を駆ける新弥の姿。上から見るのが「目」の担当、というわけだ。
 性癖神とやらの方だったら、自分の姿で出てきてくれて分かりやすかったのかもしれないが――見つけたのは、ゴシックなドレスに身を包んだ怪しい女の姿。なにせ悲鳴を上げる人々に襲い掛かろうとしているのだから、見紛うはずもない。
 新弥に向けて大きく手を振ってみせ、自らも箒を急カーブ。一足早くオブリビオンへの距離を詰め――
「権能選択、限定状態での顕現――承諾確認。我身に宿る悪魔、破壊の黒鳥――撃ち落としなさい」
「きゃっ……!?」
 命じるはその身の内の破壊の黒鳥、起こす結果は無数の黒き魔弾。『壊し、破るもの』が、一般市民と黒いの女の間を遮るように降り注いだ。
「猟兵ね……! もう、良いところだというのに……いいわ。貴女から、自分の黒歴史に沈めてあげる」
「……生憎だけど。そういうものに、心当たりはないかな」
 今日も恥をかく側には回ってないし――なんて漏らしながら、ふわりと地面に降り立ったコーディリアに、けれどオブリビオン、ミミック・オブ・ブラックヒストリーは不敵に笑う。
「ダメよ、私に嘘は通じない。貴女から感じるわ。黒歴史の――それも、とびっきり退廃的な秘密の匂い」
「……うん?」
 普段ならば、コーディリアはそう簡単に敵の言葉に惑わされはしなかっただろう。けれど――その言葉に、どこか、無視できないものを感じ。何が言いたいのだと、疑問を抱く――抱いてしまう。

 ――その直後。幾つかのことが、同時に起きた。

 朧げな幻が、像を結んでいく。寝台に組み伏せられる銀の魔女。その上に覆い被さるように、押さえつけるように、抱き締めるように――左右から挟む、2人の姉妹。
 はだけ晒した魔女の白い首筋に、1人の女が唇を寄せ。ぁ、と声を漏らす魔女の表情は。こうして「第三者」の視点から見れば、疑いようもなく、喜悦に濡れていた。
 求められた物を捧げることに後悔はなくとも。そのことを「気持ち良い」と感じていたなんてことは――

「ちょっ、と……!」
 顔を赤らめ、コーディリアは再び魔弾を放とうと手を伸ばし、

「あーーッ! あーーーーッッ!! マジ趣味悪ィってレベルじゃねーかんな!」
 その幻影を、ミミックを。バイクごと突っ込んできた新弥が、纏めて轢き潰した。

「し、シンヤ……!? ……え、えぇと……今、見た?」
「っ……み、見てない。見てないから」
 悲鳴を上げる暇もなくさらさらと光になって消えていくオブリビオンの確認もそこそこに、問いかけるコーディリア。慌てて言い訳する新弥だが……実際のところ、本当にろくに見ていなかった。コーディリアに似た幻影が現れたのは分かっていたが、てっきりこれが自分の性癖かと思い、なるべく見ないようにしていたわけで――。
「……あれ。けど、今……1人じゃ、なかった、気が。銀髪だけど……スバ」
「シンヤ」
「は、はい」
「キミは、何も、見なかった。いいね?」
「……ッス……」
 澄ましたような表情に見えて、頬を赤らめたまま念を押すコーディリアの表情は……聖女というにも、魔女というにも、いささか少女らしく見えた、とか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミーユイ・ロッソカステル
あぁもう、不覚だわ……!

まさか、あのような軽薄な男を模したオブリビオンに手玉に取られてしまうなんて。
こればかりは、そうそう人に知られたいものでもないけれど……。
これから現れる敵は、まさにそんな相手だったはずね。なんとしても葬り去らなくては……!

紡ぐUCは「不愉快で耳障りな狂想曲 第1番」
容赦などしていられないわ、全力で消滅させてやる……!

オブリビオン相手から、「ああいうのが好きなんだ?」といった風にからかわれれば、余計に逆上し。

……少なくとも、賭けに興じるならば。
自らの敗北くらい、人に頼らず清算しなさい!!

ふと、殲滅した後に思うのは。
……癒、口が堅い方には見えないのだけれど。大丈夫かしら……?


氷室・癒
くろれきし!
ですが、ぼくが生きてきた素敵な人生に秘密にしたいことなんてありませんっ! ぜんぶぜんぶ、とーっても大事な時間です!
どきどき王子様といちゃいちゃしてるのを人に見られても、胸を張ってふふーんってできますっ!


……あっ、でも待ってください! いやらしいことに興味があるって男の人に言っちゃだめってお姉が言ってました!

……あっ、それにそれに! コーディリアさんのおやつを勝手に食べたような……で、でもでもその時は代わりに別のお菓子を置いておきましたし!

や、やっぱりなしなしですっ! 黒歴史、ありました! バレちゃだめーっ!
秘密を言われちゃう前に、きらっ、ぴかーん! どかーん!
やっつけちゃいます!



●ロッソカステルの受難
「ああもう、不覚だわ……! まさか、あのような軽薄な男を模したオブリビオンに手玉に取られてしまうなんて……」
「ミーユイさん、すっごくドキドキしてましたもんねっ」
「していないわよ、適当なことを言わないで……!」
 地団太せんばかりに悔しがり、日傘を差して歩くミーユイ・ロッソカステルに、朗らかな笑顔で相槌を打つのはいやしちゃんこと氷室・癒。先の戦いからの流れで、なんとなしに一緒に歩いているわけであった。
「けど、お顔が恋するお姫様! って感じに……」
「お姫様なら相手は王子様を用意してくれても良かったんじゃないかしら!?」
 これがつい数時間前、王子様なんてつまらないと言った女の言葉であった。
 はあ、と怒りを吐き出すように息をつき、ミーユイはじろりと癒に視線を向ける。
「……大体。貴女はないの、広められたくない……『黒歴史』? とか」
「くろれきしっ!」
 ぴょん、と飛び跳ねいやしちゃん、迷うことなく首を振り。
「ぼくが生きてきた素敵な人生に秘密にしたいことなんてありませんっ! ぜんぶぜんぶ、とーっても大事な時間です! どきどき王子様といちゃいちゃしてるのを人に見られても、胸を張ってふふーんってできますっ!」
「くっ……眩しい……けれど一言多いわよ、いちゃいちゃはしてない!」
 きらきらした笑顔で言い切る癒。そのあまりの屈託のなさに思わず日傘に顔を隠しそうになるも、慌てて言い返すミーユイだった。……と、癒がふと、表情を硬くして。
「あ、でも!」
「……でも?」
「いやらしいことに興味があるって男の人に言っちゃだめってお姉が言ってました!」
「…………そう」
「あっ、それにそれに! コーディリアさんのおやつを勝手に食べたような……で、でもでもその時は代わりに別のお菓子を置いておきましたし!」
「えらいわねぇ」
「……や、やっぱりなしなしですっ! 黒歴史、ありました! バレちゃだめーっ! ミーユイさん、見つけたら急いでやっつけちゃいましょう!」
「そうねぇ」
 もはや言い返す気力もない、と疲れ切った溜め息をついたミーユイが……ふと、通りの向かいに視線を投げれば。

「うふふ……そこの貴女、とっても濃い黒歴史の匂いがするわ。悪い男に引っかかりでもしたかしら? その光景、私がもう一度見せてあげる。愚かな自分の姿を眺めてたっぷり傷つくといいわ……!」
 ゴシックドレスに身を包んだオブリビオンが、高笑いを漏らし。

 ぷちん。

「ああもう、どいつもこいつも……! 大体! 少なくとも、賭けに興じるならば。自らの敗北くらい、人に頼らず清算しなさいって言うのよッッ!!」
 そこかよ、そういうとこが引っかかりそうなんだぞ、と突っ込む者もなく。
 歌声とも呼べぬただの怒声が、びりびりと大気を震わせ、理性をかき乱してオブリビオンの動きを縛り。
「せんてひっしょーっ、きらっ、ぴかーん! どかーん!」
 どこまでもマイペースな癒のウィンクが、可愛さの大爆発を起こしたのだった――。



「……ところで、癒。分かっているでしょうけど、今日のことは2人の秘密よ」
「え? ミーユイさんが王子様といちゃいちゃしてたことですかっ?」
「だからそういうのをやめなさいと言っているのだけど――!?」
 どう見ても口が堅そうには見えない癒を、なんとか口止めせねばならない。
 ミーユイ・ロッソカステルの苦労はまだまだ続くのだった。厄日である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

新堂・澪美
【D】おにい(f01832)にバッタリ

すばるんに勧められてたまにはお仕事ガンバるぞー! って出てきたはいいけど……
……おにい何してんの、こんなとこで


いや、あたしは別におにいが何好きでもぜんぜんいいんだけどさ、ホントぜんぜんいいんだけどさ
…………あの、妹のネイル百点満点!とか採点しちゃうのは……その、ガチめに気持ち悪いな……って
いや照れ隠しとかじゃなくて、ホントに。マジキモい。そういうとこ治した方がいいよ、キモいから。

(黒歴史:過去に面と向かっておにい好き好きオーラを放っていた時期が今となっては完全に黒歴史です)

…………このタイミングでそーゆーのが広まるのマジで最悪なんだけどぉ!!?


新堂・十真
【D】美羽(f00853)
なんか予想外に心に傷を負った気がするけど性癖が被ることもあらぁな…
ん、どうした美羽、なんとなく浮かない感じだが
……ああ、うん、そうか
次は黒歴史が暴露されることになるんだっけか
(まさか――)

【C】(雨に濡れた猫に自分を重ねて「お前も野良か、俺と同じだな」って話しかけつつ傘をさしたら、普通に飼い主が迎えに来た挙句、変な目で見られた)

(なんてこと、暴露されやしないよな……?)

……なんかだんだん不安になってきた
そうだな、賛成だ
絶対に速やかに迅速になるべく一撃でぶっ倒そう
暴かれちゃならない過去ってやつも、きっと世の中にはあるんだからな


綾峰・美羽
【D】新堂さん(f01832)
妹属性は予想外でした
いえ、ぼくが大概シスコンなせいですが……
……ところで勘違いされた挙句やたら胸を強調されたような

いいです、いいんです
後はこの敵を倒すのみ――
あれ、新堂さんさっきぶりです
そっちにもシスコン――
来てない?
なるほど、なるほど
いえ、なんでもありませんぼくは大丈夫でしたとも
先ほどの光景を見られるのはまず――
(いえ、どの範囲?)
【C】(もしや、もっと遡ってパパと結婚するとか、素敵な王子さまが迎えに来る設定で自分に手紙を――)
いけません、速やかに倒しましょうね
きっとまずいでしょう?お互いに

聖騎士がずるしちゃ駄目って誰が決めました?
ぼくの剣からは逃れられませんよ


綾峰・鈴
【D】綾峰・美羽(f00853)

知られたくない過去かぁ……あ、あれかな、それともあれかな
たくさんあるけど……お、おねえちゃんにだけはどれも知られないようにしないと――。

【C】姉のお洒落着をこっそり着てみたことがある。胸が足りなかった
ほら、わたしおねえちゃんとそっくりだもん、似合うかなって、思うじゃない?
……思う、じゃない?

【C】姉の仕草と口調を真似ていたら友人に本気で心配された
……おねえちゃんとそっくりだもん。

【C】親にも心配された
大人っぽくなりたかったんだもん!

オブリビオンに向けてヤケクソ気味に剣を振り回します
わーん黒歴史なんて叩き斬っておねえちゃんと手繋いで帰る!

※アドリブ歓迎



●姉の威厳、兄の威厳 あるいはD案件その4と5
 綾峰・美羽は、今更ながら釈然としない様子で街を歩いていた。
 妹属性は予想外だった。だったが、それは自分が大概シスコンなせいでもあるので、しょうがない。
 ……ただ、勘違いされた挙句、やたら胸を強調されたような……。

 新堂・十真は、思考を停止した顔で街を歩いていた。
 なんか予想外に心に傷を負った気がする。性癖としてはソフトな方だと思うのだが、さすがに相手が予想外に過ぎる。
 ……まあ、とはいえ、性癖が被ることもあらぁな……。

「……お、美羽? どうした、浮かない顔だな」
「あれ、新堂さんさっきぶりです」
 そうして、2人はばったりと顔を合わせたのであった。
 どうした、と問われた美羽は、小首を傾げてみせ。
「……えと、ちなみにそっちにもシスコン――」
「あ? シスコン?」
「……なるほど、なるほど」
「……お前、まさか……」
「いえ、なんでもありませんぼくは大丈夫でしたとも。……それより、次は黒歴史でしたよね?」
 早口で話を打ち切って、強引に話を変える美羽。
 その様子をうろんげに見つめながらも……十真はあえて追及はせず、確かに、と一つ頷く。
「……ああ、うん、そうか。次は黒歴史が暴露されることになるんだっけか……」
 黒歴史。一体、どこまでのことを指すのだろう。十真の胸に、一抹の不満が過ぎる。
 今日のことはともかく――例えば……雨に濡れた猫に自分を重ねて「お前も野良か、俺と同じだな」って話しかけつつ傘をさしたら、普通に飼い主が迎えに来た挙句、変な目で見られたこととか……それを見ていた別の幼馴染の女にしばらく弄られ続けたこととか……そういうことも、暴露されやしないだろうか。
「…………美羽」
「はい。いけません、速やかに倒しましょう、新堂さん。……きっとまずいでしょう? お互いに」
「そうだな、賛成だ。絶対に速やかに迅速になるべく一撃で……」

「――あら。一撃で、だなんて」「では、これならどうするのかしら?」
「……向こうから来やがったか!」
「2人ですか……!?」
 挑発的に声をかけてきたのは、姉妹然としたゴシック姿の2人の女――オブリビオン、ミミック・オブ・ブラックヒストリー、その2人。
「はん……2対2なら丁度いい。行けるよな、美羽」
「ええ、もちろん。ぼくの剣からは逃れられませんよ――『聖騎士の戦い方』見せてあげます」
 不敵に笑い、アイコンタクトを交わした2人が構えを取った、その瞬間――。

「ちょーーーっと待った! 2対2じゃなくて、2対4だよっ! おにい、みうみう!」
「だ、だよっ! おねえちゃん、十真くん……!」

「「――――――えッッ!!!??」」

 ――2人にとって、今だけは最も聞きたくない声が響いた。



 時は、少し遡り。
「やー、すばるんに勧められてたまにはお仕事ガンバるぞー! って出てきたはいいけど……まさかバッタリりんりんに会うなんてねー!」
 新堂・澪美(追い風パーカッション・f01930)は、綾峰・鈴(荒涼ブラッドナイツ・f02936)と並んでヒーローズアースの街並みを歩いていた。姉と兄が幼馴染――ということは、自然、妹同士も交流があるわけで。
 すばるん? とよく聞き覚えのある名前に首を傾げつつ――幼馴染の幼馴染が幼馴染とは限らない、つまりそんな感じで交友関係にはやっぱり違いもあるわけだが――鈴はくすりと笑って、
「えへへ。わたしも騎士だもん。たまには頑張らないと、って思って……お姉ちゃんも今日、お仕事だから。もしかしたら、お手伝い出来るかもしれないし……」
「りんりんはほんと、お姉ちゃん大好きだねー」
 からかうように、にひひ、と笑う澪美に、鈴は顔を赤らめて――と、その顔に、不意に緊張が走る。
「……澪美ちゃん、あれ!」
「へ、あれ? ……あっ、あれ、オブリビオン!? それに、戦ってるのって……!」

 ――そうして、先の瞬間に続くわけである。


「へえ。妹、というわけ。面白いじゃない……貴女。お姉さんの黒歴史、興味はない?」
「え……お、おねえちゃん、の……?」
 出会い頭の問いかけに。思わず小さく、こくんと唾を呑んでしまう鈴。そんな鈴に向け、オブリビオンの片割れは、美羽の足下に展開した魔法陣から力を引き出し、黒いエネルギー弾を放ち――
「って、させるものですかっ!!!」
 必死の形相で割り込んだ美羽が、掲げたタワーシールドで無理やりその攻撃を受け止めた。――瞬間、脳裏に流れる光景……妹に似て見える『シスター・コンプレークス』を相手に攻撃を躊躇う、自分の姿。
「うぐっ……」
「おねえちゃん!?」
 見せられない。こんな姿を鈴ちゃんに見せるわけには、いかない。だから姉は、構えを解かず、妹を背中に庇い。
「だ、大丈夫です。鈴ちゃんは一旦下がって……くぅぅっ!?」
 ――次の攻撃を受け止める。脳裏に流れるのは、からかおうとした十真に手を取られた瞬間の自分の姿。あっ、横から見ると完全に顔赤くないですかぼく……見せられない、ある意味こっちの方が見せられない……!
 割と深刻な心理ダメージを受けつつも、その一念で折れかけた足に力を籠める。
「そ、そういうわけにはいかないよぅ! わたしだって戦えるもん! おねえちゃんこそ、無理しないで……!」
「……ふふ、立派になりましたね、鈴ちゃん。それでもぼくは、お姉ちゃんだから――ぐふっ」
 さらに受け止める。描かれたのは、パパと結婚することを本気で夢見て、早く迎えに来てね王子様、なんて手紙を出した自分の姿。
「……そ、それでも……ぼくはぁ……!」
「――えっ。待っておねえちゃん、魔法陣がおねえちゃんじゃなく、わたしの足下に……!?」
 まだまだ受け止める。次に描かれたのは……
 ――美羽の留守中。こっそり姉のお洒落着を着てみるものの胸がぶかぶかで、スンッ……という顔になった鈴の姿。
「くぅぅぅぅっ……!?」
「お、おねえちゃん!? おねえちゃん! 何が見えたの!? なんでわたしを見ながら心臓を押さえて崩れ落ちたの!!?」
「だ、だいじょうぶ……ぼくは、だいじょうぶですから……大好きですよ、鈴ちゃん……あああああ!!?」
 立ち上がる。受け止める。――さらに、見えたのは。友達の前で姉の仕草と口調を真似で本気で心配された鈴。美羽の知らないところで親にも心配されていた鈴。お姉ちゃんにそっくりだもん、大人っぽくなりたかったんだもんと可愛らしくむくれる、鈴の姿――。

「……お、おねえちゃん? おねえちゃん……? ……えっ!? 立ったまま、気絶してる……!?」
 鈴は、愛しい姉の、何かをやり遂げたような安らかな横顔に――全ての秘密を見られてしまったことを悟り。
「う、うわぁぁーーん! 黒歴史なんて叩き斬っておねえちゃんと手繋いで帰るぅぅー!」
 身の丈に似合わぬ黒剣をヤケクソ気味に振り回しながら、敵に向けて飛び掛かり――既に全力の攻撃を美羽に防ぎ切られ、体力を使い果たしていた『ミミック』を見事斬り伏せ、初陣に白星を飾ったのだった。

● 
 綾峰姉妹が地獄のような戦いに身を投じる中。新堂兄妹もまた、敵と向かい合って――
「いや、あたしは別におにいが何好きでもぜんぜんいいんだけどさ、ホントぜんぜんいいんだけどさ。……あの、妹のネイル百点満点! とか採点しちゃうのは……その、ガチめに気持ち悪いな……って」
「……ぅぐっ……いや、それは言葉の綾でだな……」
 もとい、互いに向かい合っていた。
 綾峰姉妹の側と違ったのは、オブリビオンが兄妹の驚愕に乗じて幻を展開してきたこと。そう、十真が美羽と、熱く手フェチについて語り合ったシーンが赤裸々に映し出されたのであった。
「いや照れ隠しとかじゃなくて、ホントに。マジキモい。そういうとこ治した方がいいよ、キモいから」
「…………はい…………」
 言いたいことはある。あるが、この状況で言い返しても無駄なのだ。女兄弟を持つ者として、十真はそれをよく知っていた。割とガチめに傷つきつつ項垂れ、おとなしく謝ることに徹する――が。
「ふふ、私のことを忘れていないかしら?」
「ッ、澪美!」
 ここは、戦場だ。オブリビオンが澪美に向けて放った黒い魔弾を、十真は妹を突き飛ばし、その身で代わって受け止めて――。
「…………んぐっ!?」
 すごい顔になった。
 尻餅をついた澪美は、慌てて立ち上がり――十真の顔と。つい数秒前、魔法陣が浮かんでいた自分の足下を、真顔で見比べて。
「………………何見たの、おにい」
「……いや、その」
「言って」
「……お兄ちゃん大好きー、ってどこ行くにもついてきて、俺が一人で遊びに行こうとしたらすーぐ泣いて騒いだお前の……」
「っ、ちょ、っとぉ……!? このタイミングでそーゆーの見られるのマジで最悪なんだけどぉ!!?」
 顔を真っ赤に、眩暈すら覚える様子の澪美。これじゃあシスコンとブラコンみたいだ。そんなことないのに。そんなことないのに!
「ふふ、うふふ! 気に入って貰えたなら、何度だって見せて――」
 ぎろり。
 薄笑いを漏らすオブリビオンに、2対の剣呑な視線が突き刺さり。
「……おにい」
「分かってる。……とっととぶちのめして忘れるぞ」
 アイコンタクトすら必要なく。暴風と纏う拳と蹴り、息の合った兄妹のコンビネーションが――

「……なあ。それにしたって黒歴史扱いするこたねぇんじゃ」
「うっさい集中しろバカおにい!」
 息の合った兄妹のコンビネーションが!!! 無事にオブリビオンを打ち破ったのだった!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アスト・スタフティ
僕はそこまでヤバい暴露もなさそうか……

いや、感覚鈍ってない僕?
男三人であの空間で語り合ったの、傍からみたら……

よく考えたら、人の黒歴史と戦う可能性もあるのか
……それって気まずくない?
いやいや、かわいい子とかだったら、それを切っ掛けに……なるわけないよなぁ!

誰のにせよ
広まる前にさっさと倒そう!

戦闘には燃焼と念道
力が足りないならば、記憶を<The torch>へ焼べよう
状況に関連する記憶ほど、よく燃えるぞ!


※まさかのシリアス時
あはは、ごめんね
そこらへんも、もうけっこう焼べちゃってたみたい
……後悔がないとは言わないよ

でもね
黒でも白でも、思い出は掛け替えのない物で
それを守れるなら、
僕はヒーローだからさ



●記憶を希望の灯に焼べろ
『ごめ■なさ■。■■■くんのことは■い人だと■うけど……私、もっと■■しい人が■■なの。■のこと、■■■■■■■■■そうなくらい』
「…………?」
 脳裏に過ぎった、途切れ途切れの知らない光景。まったく覚えのないビジョンに、アスト・スタフティは、黒いエネルギー弾を食らったはずの自分の胸をさすり、不思議そうに首を傾げた。
「――何、その反応。おかしいでしょう」
 ゴシック姿の女、ミミック・オブ・ブラックヒストリーは……その顔を、不気味なものを見るような目で凝視した。
 『ミミック』は、黒歴史を相手の心から引き出すことができる。
 仮に、彼が何事にも動じない無感情な人間だというなら、分かる。辛すぎる過去を忘れることで癒やしたというなら、分かる。だが、いずれも違う。「心に残った傷を、傷が残ったまま、覚えていない」などということが。どのような精神性を持ってして、実現できるというのか。
「あ、そういうことか。……あはは、ごめんね。そこらへんも、もうけっこう焼べちゃってたみたい」
 合点がいった様子で苦笑し――ぱちんと、指を鳴らす。
「――貴方。まさか、記憶を燃やして……っぐ!?」
 目を見開いて動揺したオブリビオンに――念動で自らの身体を操り、高速で接近。喉を掴み、持ち上げる。
「まあ、そういうこと。相性が悪かったかな、ごめんね」
 心にもない謝罪と共に、炎を呼び起こし――
「――――黒、歴史は」
「?」
 ミミック・オブ・ヒストリーは。抵抗するでもなく、じ、とアストを見下ろして。
「黒歴史は――人を苛むもの。けれど、その記憶の反芻は、時に、前に進むために必要なもの、よ」
「……もしかして心配してくれてる? やりにくいなあ……後悔がないとは言わないよ。けど」
 ぼう、と。
 掌から広がった炎が、オブリビオンの全身を包み込み――。
「黒でも白でも、思い出は掛け替えのない物なんだろうね。だからこそ……それを守れるなら、僕はヒーローだからさ」
 ――結局。悲鳴一つ上げず、黒衣の女は空に溶けていった。
 アストは、しばらく、掌を見下ろして。……静かに踵を返し、歩き出し……

『――――ごめんなさい。アストくんのことは良い人だと思うけど……もっと男らしい人が好みなの。皆のこと、命がけで守ってくれそうなくらい』

「……っ!?」
 オブリビオンの力の、最後の残滓だろうか。唐突に。そんな光景が脳裏を過ぎった。
 その言葉には――やっぱり、ちっとも実感が持てなかったけれど。
「……あはは。案外、今なら結構いい線行くんじゃないかなぁ、僕」
 小さく、苦笑する。……不思議と。戦いの前にはそれなりに覚悟していた、黒歴史を抉られた痛みというやつよりも……何だか、ありもしない傷が和らいだかのような。不思議な感覚だけが、胸に残っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒼焔・赫煌
別に性癖とか黒歴史とかそういうものを知られても嫌だとかそういうのにはならないって思ってたんだ、思ってたんだよ

だけど、さっきの光景を誰かに見せるのはなんだか少しイヤだ
アレは見せたくないものだ、見せちゃいけないものだ
知られたくない
知られたら……覗かれてしまうかもしれない、見つけられてしまうかもしれない
だから、その前に叩いて潰そう

さっきの戦いで使った血を【ブラッドアンプル】で補充して、敵を見つけたらユーベルコード発動
出てきた魔法は全部、叩き潰す
欠片も残さない、なかったことにしてあげる



●一鬼なれど千の軍に値す
 性癖とか黒歴史とか、そういうものを知られても。
 別に、嫌だとか、そういうのにはならない……蒼焔・赫煌は、今日この町に来るまで、ずっと、そう思っていた。
 だって、自分の異性の好みになんて、誰も興味がないだろうし。知られちゃいけない過去なんて、ナニヒトツ、ナイノダカラ。

 ――だけど。だけど、だけど。
 さっきのを誰かに見せるのはなんだか少し、イヤだった。

「っ、この……!」

 声と共に飛んできた黒い弾を、大槌、壊力乱心ギュウキで叩き潰す。
 頭の中を、王子様と踊る自分の姿が過ぎる。何度目かのそれは、そんなに悪い気分ではなかったけれど、だからといって、――いや、だからこそ、知られたくはなかった。

 細い首を掴んで、持ち上げる。
 離しなさい、と叫ばれるけれど、構わず、衝動のままに力を込めた。

 ごきん、と、鈍い音が響く。
 手に残る、少しだけ不快な感触。

 それで、おしまい。

(「……アレは見せたくないものだ、見せちゃいけないものだ」)
 知られたくない。
 だって、誰かに知られたら。

 見つけられてしまうかもしれないから。


 ――ところで。赫煌は、その由来を知らなかったけれど。
 七妖鎧装。壊力乱心ギュウキを振るった、その姿……頭に乗った般若面が表すのは、嫉妬に狂った女の顔。
 それは憤怒の形相であるのと同時に、まるで、泣き顔のようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

山梨・心志
【C】腐男子の他に隠れ中二病です


倒します
速やかに
的確に
何かなんでも
話す暇も与えずに
瞬殺です

(保釈されるまでに色々心に傷を負う尋問やら何やらあったらしい)

これはもう真の姿を解放するしかないようですね
(腕の(意味なく巻いている)包帯をほどく)(その下からは(マジックで描かれた)強大な力を封じた紋章が!)

(敵の前で封印を解くとか憧れのシチュにちょっと調子に乗る)

(とはいえこの趣味も人に見られたら恥ずか死ぬのでとっとと殴って解決しようとします)

あっ、やめて!
そんな冷めた目で見ないで!
客観視させないで!!!


(ネタ、苦戦、知り合いへの黒歴史暴露、かわいそうな目、何でもバッチリOKです!)



●百合ヶ丘神拳は先生どうかと思います
「あなたが、ミミック・オブ・ブラックヒストリー……ですね?」
「あら。貴方も黒歴史に沈みにきたの?」
 どこか硬い表情の、山梨・心志の問いかけに。オブリビオンは、嫣然とした笑みを浮かべてみせた。
 見た目は、年上の女性……割に美人と呼べる方。普段なら、少しくらいはその笑みに緊張でもしていたかもしれない、けれど。
「事情聴取」
「えっ」
「人前で……隠していたBL趣味を晒して……ちゃんとヴィランを倒したはずなのに、ヒーローに連行されて……」
「え、ええと……」
「事務所で30分くらい事情聞かれて……その後、あまり人に迷惑をかけるなよって……うう……」
「ご、ご愁傷様……」
「ついでにヒーローさんと俺を見る事務員さんの目がちょっと腐ってて」
「…………」
「全部……全部、あなたたちのせいで……ッ!」
「私のせいではないわよね!?」
 何やら抗議の声を上げるオブリビオンだが、構わない。
 心志はもう、速やかに彼女を倒すと決めたのだ。――真の姿を晒すことになってでも。
 するりと、左腕に(意味もなく)巻いた包帯を解く。その下から現れたのは、(マジックで書いた)強大な力を封じた(という設定の)紋章。
「覚悟して下さい、こうなったら俺にも抑え方が分からない(包帯を綺麗に巻くのが意外と難しかったため)。俺がこの力を解き放った以上、あなたの死は絶対で――」
「うッわ、リアル厨二病」
「グエッ」
 潰れたカエルみたいな声が出た。
「ちょっと、勘弁してよー……私そういうのが辛くて引退したのに、なんで蘇ってまでこんなイタいの見せつけられてるワケ……? 大体、自分から黒歴史全開にされたら引き出しようがないし……」
「あの、やめ」
「あなた、もう高校生でしょう? 経験者として言うけど、そういうの、そろそろ引退した方が傷が浅いわよ……」
「やめて……! そんな冷めた目で見ないで! 真摯にアドバイスしないで!! 客観視させないで!!!」
 ちょっと涙が出るのを堪えて、構えを取る。
 強大な力を解き放った(という設定)の左腕を、腰溜めに構え――。
「落ち着け……落ち着いて、目を逸らさない……最後まで顔を見る……そうですよね、先生……」
「え、ちょっと、貴方まさか、こんな前振りからただ殴――」
「食らえ!!! 百合ヶ丘神拳!!!」
 殴った。女の顔を、思い切り。ばきっと。
 決して鬱憤晴らしではなかったことを、心志の名誉のために付け足しておく。


●性癖依頼のおわり
 そして。その悲しき鉄拳が、この町で繰り広げられた数多の地獄、その最後の一つの幕引きとなったのだった。
 多くの猟兵の心に深い傷を残しながら。関係者から「性癖依頼」と呼ばれ続けたいかがわしい事件は終わりを告げた。
 願わくば、彼らに生まれた黒歴史が、1日も早く真の意味で忘れられた歴史とならんことを……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月16日


挿絵イラスト