バトルオブフラワーズ⑨〜知っているのかエイプモンキー!
「皆さんの活躍でシステム・フラワーズの中に突入できるようになったようっス! この攻略速度にはあちらさんも動揺を隠せないようっスねぇ」
ホワイトボードを背に、文坂・いち子(人間のサイキッカー・f13991)は猟兵たちを迎える。
「ザ・ステージを全て制圧している状態であればシステム・フラワーズ内部に入ることができるので今がチャンスというワケっスね」
いち子は惑星……らしき卵のようなモノが二つに割れている絵を描き、さらに上半分と下半分の真ん中、つまりシステム・フラワーズに向かって矢印を描き込む。
ただし、そう易々と深部まで進めるわけではない。
「まずは幹部怪人のひとり、マニアック怪人『エイプモンキー』が待ち構えているっス!」
システム・フラワーズ内部はその名の通り美しい花々が咲き乱れた空間になっており、そしてその花々こそが足場となっている。
「足場が花といっても別に歩きにくかったり崩れたりしないから安心していいっスよ」
赤いペンで花を描き描き、説明を続けるいち子。
花の足場は脳のニューロンのように幾つもの枝を伸ばしたような形に広がっているが、それらの全ての行き着く先はエイプモンキーになっている。
これを完全撃破しない限りは先に進めないということだ。
「エイプモンキーを倒してもすぐ復活してしまうんスけど、完全に不死身ってわけではないっス。ヤツの限界を超えるだけ倒し続ければ復活できなくなるっス!」
矢印の先に『さる』と記入し、その上にばってんを付ける。
復活したそばからこれを探し、撃滅を狙う……モグラたたきのようなものだと思えばいいかもしれない。
「エイプモンキーはその名前だとか、なんだか妙にカッコイイロボに乗っているとか、一人称がミーで語尾に『ウッキー』とかつけるあざとさとかに惑わされがちっスけど、めっちゃくちゃ強敵っス! 何の対策もせずに挑めばまず確実に負けてしまうレベルっスよ」
エイプモンキーは『自らの想像力が及ぶ限りのあらゆるものを創造できる能力』を有している。
字面だけでも強力だが、これがどう強いのか。
「つまり皆さんのユーベルコードによる攻撃、その弱点や隙を予想したり見切ったりしてそのユーベルコードを無効化する『装置』を創り出してしまう……ということっス!」
チートかな。
これだけでは対抗手段などないように思える。
「ところがっス! 皆さんのユーベルコードはいくらでも応用の余地が、よくわからない逆転理論とか、隠された機能が……そんなのがいくらでもあるっス。あるんスよ!」
ユーベルコードを通常使用してもそれを予想され無力化されてしまう。
であれば、相手の予想を上回る戦略やアイディアを組み込めばどうか。敵の装置を粉砕、見事エイプモンキーをブン殴ることができるという寸法だ。
「皆さんの『こんなこともあろうかと』っての、存分に見せつけてくるっスよー!」
いち子はホワイトボードを無駄に叩きながら猟兵を送り出した。
黒柴好人
マニアック、いいよね。
黒柴です。
強敵であるため、難易度は高めのシナリオとなっております。
黒柴史上わりときびしめな判定を行って参ります。
(私が)ぎゃふんと言うようなクレバーなプレイングをお待ちしております!
以下に特殊ルールを記載しますのでご一読ください。
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エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
====================
それではよいマニア合戦を!
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グレース・マクローリン
アタシの黒の軍兵はゴキ…虫達を大量に出すユーベルコードだし、1匹1匹潰すよりも虫の弱点であるジェット的な殺虫剤でまとめて殺しに掛かってくると思うんだよね。今回は相手が相手だし猟兵に効くくらいの強力な殺虫剤とか使いそうだから【毒耐性】は欠かせないね。
可哀想だけどアタシは呼び出した虫達に【属性攻撃】で火を放つよ!
虫の四肢や触覚は燃えやすいけど体は中々燃えないんだよね。でも火が付いて縦横無尽に逃げ回る虫が散布された殺虫剤の中にたっぷり含まれる可燃性ガスなんかに引火したら…
爆発とそれでもなお燃えながら突っ込んでくる虫達にどこまで耐えられるかな?
アタシの【激痛耐性】と【火炎耐性】で我慢比べといこうか!
「キキッ! どこからでもかかってくるウッキー!」
逃げも隠れもせず堂々と姿を晒すエイプモンキーは、猟兵の攻撃をいとも容易く無力化してしまえる自信のあらわれか。
「アタシのユーベルコードを受けてもその笑み、保っていられるかな!?」
グレース・マクローリン(副業海賊・f12443)もまた怖じけることなく両手に腰を当て、対抗するように口角を上げる。
「ミーは余程の攻撃でなければ驚くことはないッキーよ!」
「なら、黒の軍兵! あのサルをもっとテカテカさせてあげるといい!」
「軍兵とはこれまた大層な表現……ん? お、え、うぎゃああああああウッキー!?」
即前言撤回させられるエイプモンキー。
グレースが喚び出した黒の軍兵、その正体は「黒い絨毯かな?」と思うほどみっちりと一帯を覆うゴキ……平べったくて黒くて、そしてテカテカした虫であった。
「随分と怯えているみたいだけど、虫は嫌い?」
「いやこれは度を超えてるッキー! これが集合体恐怖症というものウッキー!?」
ざわざわとエイプモンキーに迫る黒いヤツの群れ。
なんと恐ろしい攻撃を思いつくのだ、グレース……!
「ま、まあ? ミーにはそれもお見通しだったわけなんですけどウッキー?」
「えー、その割にはすごい汗かいてるんだけど」
「そういう演出だッキー!」
グレースの冷ややかな視線を受け流しつつ、エイプモンキーは背中から何らかの装置を担ぎ出した。
「こんなもの、ミーの絶対殺虫マシン『パーフェクト虫デストロイヤーS』で駆逐してやるウッキー!」
巨大なタンクと動力機構、そしてそこからホースのようなものが伸びてその先端が虫たちに向けられている。
それを見たグレースはやっぱり、と心の中で勝ち誇る。
(「この数の虫を見たら、一匹一匹潰すよりもジェット的な殺虫剤でまとめて殺しに掛かるしかないよね」)
「さあ、喰らうウッキー!!」
黒の軍兵はエイプモンキーに肉薄し、そして殺虫剤のようなものを噴射しようとしている。
それこそがグレースが待っていた好機だった。
(「可哀想だけど、ごめん!」)
グレースは抜群のタイミングで虫たちに向けて火を放った。
一斉に燃え上がる無数の黒いアイツ! なんという地獄絵図か!
「虫の四肢や触覚は燃えやすいけど体はなかなか燃えないんだよね。さあ、火がついて縦横無尽に逃げ回る虫に殺虫剤の可燃性ガスに引火なんてしたら……!」
……しかし。
装置から発射されたのは引火しない液体。
それが高密度のシャワー状に黒いものに降り注がれ、それらは程なくして動かなくなった。
「ユーのユーベルコードの対策として思いつくのが殺虫することウッキー。つまり、そこまでは想定内に違いないッキーね」
殺虫させることが目的であれば、次はその手段。一般的な殺虫剤は可燃性のガスが含まれていることが多く、であればグレースの思惑通りであったのだが。
「殺虫成分が効かないかもしれない。煙いのはイヤ。となればこの手の虫をコロリとやっつける方法は、窒息ウッキー!」
「窒息? あっ!」
「この『パーフェクト虫デストロイヤーS』は界面活性剤が含まれた液体を噴射する装置だッキー! 数が少なかったり密室であればスプレーや煙を使った方法も考えたウッキー。でもユーの繰り出したGの数はとてつもなく多かったッキー!」
虫には体に呼吸をするための穴がある。黒いあいつは体表のテカテカした油によってその穴に水が入り込むことはない。
しかし洗剤にも含まれる界面活性剤が含まれた水であれば油と混ざり合い、いわゆる乳化と呼ばれる状態となる。
「そうすれば体の中に水が入って呼吸できなくなりオダブツ、って仕組みだウッキー!」
「ぐ、ぐぬぬ」
それから、とエイプモンキーは指を振ってみせる。
「ガスに引火させて爆発させようなんて手ははなっからお見通しなんだウッキー! よい子のみんなも殺虫スプレーの引火事故には気をつけるッキよ?」
エイプモンキーはあらぬ方向に手を振り、界面活性剤入りの水をまき散らしながらグレースに向けて突進し、強烈な拳を放ってきた。
「海賊に水で攻撃とはいい度胸……おおおお!?」
「これでお掃除完了ッキー。ミーの背筋をぞわぞわさせたことは褒めてやるウッキー……ん? あ! まだ残ってた! ちょ、噛むなウッキー! こいつらどうにかしてから吹っ飛ぶッキー!」
吹き飛ばされたグレースは撤退を余儀なくされたが、多少なりとも精神的ダメージを与えることはできただろう。
苦戦
🔵🔴🔴
月凪・ハルマ
さて……エイプモンキーは俺の事、覚えてるかな
今回の作戦はそれが前提だから
◆SPD
まずUC【魔導機兵連隊】でゴーレムを召喚
前回戦った時の事を覚えているなら、恐らく今度は
ゴーレムそのものを無力化しようとしてくると思う
なので今回はエイプモンキーが作成した装置を
逆にこっちが利用してやろうという試み
エイプモンキーがゴーレム対策の装置を用意してきたら、
それをゴーレム達に使っている間に自分は【忍び足】で装置に近づき
【早業】で【ハッキング】
上手く操れたなら、後はそれをエイプモンキーに使うだけ
機械に作用するものなら、あのスーツにも効果はある筈だ
単に動きを止めるものであれば、破壊錨・天墜で
【捨て身の一撃】も付ける
月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)はトンファー様の得物を構え、真っ直ぐにエイプモンキーを見据えた。
「ウキ? そんなに見つめられると照れるウッキー」
(「この反応……俺の事、覚えていないのか? それとも覚えていてもそのことを表に出さないだけか」)
ハルマは別の戦場でエイプモンキーと対峙している。
ゆえに、こうしてリスクを冒してでもしばらく顔を見せる必要が彼にはあった。
「どうしたウッキー? 何もしてこないッキー? ミーが強すぎて降参したいのならそう言えば悪いようにしないウッキーよ」
「誰がお前なんかに白旗を振るものか!」
「ふむ、虚勢を張っているわけではないようッキねぇ」
じっとこちらを見つめるエイプモンキーに、ハルマも目を逸らさない。
(「前回戦った時の事を覚えているなら……」)
ハルマはある作戦を頭の中に巡らせ、幾体もの魔導機械式ゴーレムを召喚していく。
そう、顔だ。
この顔、そしてゴーレムを召喚するという手の内には既視感を覚えるに違いない。
(「恐らく今度はゴーレムそのものを無力化しようとしてくるだろうな。それなら……」)
次々と現れるゴーレムに、エイプモンキーはニヤリと笑った。
やはりそうか、と内心確信を持ちながらハルマは叫んだ。
「皆、エイプモンキーを狙うんだ!」
ゴーレムたちは一斉にエイプモンキーを攻撃せんと動き出す。
「魔導機械とは純粋な科学から造られた機械とはまた違ったロマンがあるウッキーね。でもロマンだけでミーには勝てないッキー! そこでこれ、対魔導機械妨害用装置『ゴーレムウゴケナクナール』ウッキー!」
そのまんまだなと思いながらも口にはせず、ハルマは次なる行動に移る。
「この銃型の装置から出る妨害電波を浴びた魔導機械は動けなくなるウッキー! その間にミーはすいすいっと回避してやるッキー」
やはりそのまんまな説明台詞と共にエイプモンキーは装置をオン。
するとゴーレムの一団はまるで電源が切れたかのように歩くポーズのまま固まってしまった。
(「今だ。そのご自慢の装置をいただく……!」)
エイプモンキーが語っている間に忍び足で死角に回り込んでいたハルマは妨害装置にハッキングを仕掛け、逆にエイプモンキー自体を動けなくしてやろうと――。
「それで終わりウッキー?」
「!?」
エイプモンキーの両の目は、しっかりとハルマを捉えていた。
「ユーのユーベルコード、これじゃあ調味料を入れていない料理みたいウッキーよ」
ハルマは構わずハッキングを試みるが。
「ミーのハイパーウルトラすんごいユーベルコードで生み出された装置をそう簡単に乗っ取れると思っているウキ? 見たところそんなにハッキング技術も高そうに見えないウッキーけど」
「くっ!」
ならばと捨て身を覚悟でブーストエンジンの付いた錨で殴り掛かる。
しかしこう見えてエイプモンキーはシステム・フラワーズの守りを任されるだけの実力を持つオブリビオン。
「何か確信を持って動いていたようッキけど、ミーはユーのことしらないウッキーし」
全力の攻撃は交差させた両腕に受け止められ、痛烈な回転蹴りをまともに受けたハルマは咲き乱れる花々の中を長距離ヘッドスライディングさせられる結末に至った。
もう一手、奥の手があればまた違った結果になったかもしれない。
苦戦
🔵🔴🔴
ジェラルド・マドック
連携希望
こちらの発動したUCの内容について発動時の見た目で敵が対応策を考えてるならフェイントできるかな
サウンドウェポンをギターに展開して弾き歌い
共闘する猟兵と俺にUCを使用
君はUCを回避する力があるみたいだけど味方へのバフに関して止める手立てはあるのかな?
この曲には味方のUC効果を高める力がある
これなら君の能力だって超えられるかもしれないね
とはったりをかけて、伝えてない他の効果が彼を倒す手助けになればいいな
上手く騙すには真実の一部を隠すのが効果的なのさ
共闘相手が危ない時は、情報収集・戦闘知識・視力で敵の動きを見切り回避する動きを見越した上で味方の手助けになるようオートでクイックドロウ・援護射撃
ロア・メギドレクス
汝も余と同じく生存競争に敗れた者なのだ。骸の海へと還るがいい!
ゆくぞ。狩りの時間だ。余の牙は群れを成し汝を殺す。
しかして汝はこの技を予測しているのであろ。如何に牙を走らせようとも汝は躱すのであろうな?
だが、余はそれで終わらぬ。
わからぬか?これはナイフや手裏剣ではない。余の牙であるぞ?
余……即ち原初の星を支配せし王竜メギドラウディウス・レックスは時速60kmで疾走し“単独で”獲物を狩り殺したと言われている。図鑑で見たことはないか?
余の真体たるこの牙は余の手の中にある。そうだ、“群れ”は目眩しに過ぎぬ!
回避に気を取られた汝に全力疾走で肉迫し、長さ20cmを超えるこの牙を、この手で突き立てるッ!!
「君はユーベルコードを回避する力があるみたいだけど、味方へのバフに関して止める手立てはあるのかな?」
敵であるジェラルド・マドック(しがない演奏家・f01674)からの問いかけにもエイプモンキーは余裕綽々とした態度で応える。
「強化を妨害できるかって話ウキ? そりゃあもういくらでもジャマしてやるウッキー!」
「なるほどね。そちらにだけ質問をしてはフェアではないね」
ジェラルドはサウンドウェポンに組み込んだデータからギターを展開し、旋律を奏ではじめる。
「この曲には味方のユーベルコード効果を高める力がある。そう、俺のユーベルコードさ」
「そうだろうッキね。知ってるウッキー」
「これで味方の力を増幅させれば、君の能力だって超えられるかもしれないね」
その言葉に、エイプモンキーは息が出来なくなっているのではないかというくらいの大笑いを返した。
「ウキャーキャッキャッキャッキャー! いくらそんな音楽でプラスしたところで、ミーの超ツヨイユーベルコードで0を掛けてやれば威力はゼロ! まったくの無駄骨ウッキーキャキャキャ!」
「わからないよ。物事に絶対はないんだ」
「キャキャ! いい度胸ッキねぇ。そのガッツに免じて音を完全に遮断する装置は使わないでおいてやるウッキー! せいぜいBGMで戦いを盛り上げるがいいッキよー!」
ガキョンガキョンと手を叩くエイプモンキーは、サングラス越しにもわかるような鋭い視線でジェラルドを射抜く。
「でも味方のユーベルコードの強化、以外の効果があるのは知っているッキよ?」
ジェラルドは意に介さず、ただ微笑みを返すのみ。
「話は終わったな? ならばジェラルドよ、余の活躍を……『王竜』を讃える唄を吟じるとよいぞ」
「喜んで、『王』よ」
小さいながらも尊大なロア・メギドレクス(獄竜暴君・f00398)の仰せに、ジェラルドは宮廷音楽家のように恭しく頭を下げた。
「ゆくぞ。狩りの時間だ」
即興の『王竜のテーマ』を弾き歌うジェラルドを背に、ロアは複製した31の『牙』を空に走らせる。
「自分の武器をコピーして操るユーベルコードなのはお見通しだウッキー! そんな時にはこの装置、飛翔体絶対回避装置『よけるくん』だウッキー!」
一見マントのようなそれは、飛んでくる全ての物体を何が何でも回避するすごい装置だ。
その文言に違わず、あらゆる方向から高速で迫るロアの牙は掠めることも許されない。
「いくらでも攻撃してきていいッキよー。絶対に当たらないウッキー! ……ウェ、くるくると避けすぎてちょっと気持ち悪くなってきたウキ……」
「わからぬようだな」
全ての攻撃が避けられようと、ロアの瞳に灯る熱いものは消えない。
「余はそれで終わらぬ。これはナイフや手裏剣ではない。余の牙であるぞ?」
「それがどうしたッキー?」
「余……即ち原初の星を支配せし王竜メギドラウディウス・レックスは時速60kmで疾走し『単独で』獲物を狩り殺したと言われている」
図鑑で見たことはないかと問うロアに対し、エイプモンキーは首を傾げる。
「さあ? そんな恐竜知らないウッキー」
「ならばここで識るといい。その身でな!」
ロアの攻撃は更に激しくなるが、しかし結果は変わらない。
「ウッキッキ! さっきからさもその恐竜が自分だと言っているような……ん? ははーん、そういうことッキか」
「知識はなくとも勘は鋭いようだな」
「だから何だと言うッキー? 竜に変身でもできるッキか?」
ロアをヤドリガミであることは悟ったようだが、しかしエイプモンキーは嘲笑う。
「余は余である」
「ふうん? まあそろそろ頃合いッキかねー。王を名乗るのなら玉座から引きずり下ろしてやるウッキー!」
飛び交う牙の間をすり抜け、エイプモンキーの拳がロアに迫る。
その刹那。
拳は見えない壁のようなものに弾かれ、ロアの顔の横をすり抜けた。
「あっちゃー、はずれちゃったウッキー! なーんて、これもそっちの『ギター弾き』のユーベルコードの効果だってのは知ってたんだッキー!」
同時に、ジェラルドは花が舞う地面に片脚をついた。
「そしてこのユーベルコードにはリスクがあるッキよね? 使い続けると自分は何らかのダメージを被るウッキー。時間を稼げば勝手に自滅してくれるなんて、いやはやなんともイージーなコトだウッキー」
ロアの攻撃は当たらず、ジェラルドは自分で自分の命を削り、そしてエイプモンキーは殴り放題。勝ったも同然の状況に笑いを抑えるのが難しいものだ。
「余が待っていたのはこの時よ」
「ウキ?」
ロアの眼光が鋭く線を描く。
「だから飛翔体なら当たらな……キ?」
強さの、恐怖の象徴。
誇り高き王の手には、その真体たる牙がしかと握られていた。
「汝も余と同じく生存競争に敗れた者なのだ。骸の海へと還るがいい!」
牙だけでゆうに20cmは超えるであろうその暴威をロアは愚昧な猿に突き立てた。
確かな手応え。顔を歪ませるエイプモンキー。
「グギキ……!」
嘲笑っていた対象にしてやられ、エイプモンキーは怒りと悔しさに歯を軋ませる。
「大義であった、ジェラルド」
「お役に立てたのなら何よりだね」
ユーベルコードの代償により顔が青ざめているジェラルドに肩を貸し、これ以上の追撃は困難であると判断したロアは己の牙を握りしめ、戦場を離れるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルミィ・キングフィッシャー
さて私は隠者の指輪で透明になって不意打ちしたいが…
こいつ絶対視覚以外で感知してくるよな
熱感知はマントで防ぐとして、次に精度が高そうなのは音探知か
…確かUDCアースでこんなのを売っていたな。その名も消音スピーカー。
なんでも音の波とやらの逆のやつをぶつけることで、音自体を消しちまうって代物らしい。
アタシにはよくわからないが、まあ音に反応して動くやつはいるから有用だと思う、もちろんアタシ自身もなるべく音を出さないように動くつもりだが。
上手く近づけたらダガーで装甲の間に一突き。
いやあ冗談みたいな相手だけどスリルがあっていいねえ。
こっちの仕事も久しぶりだわ。
ここにアルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)がいる。
いるのだ。ほら、そこに。え、見えない?
それもそのはず。今彼女はユーベルコード『隠者の指輪』の効果を発動し、透明になっているのだ。
指輪に触れた対象の姿を隠匿するのだが、あくまでもこれは姿を隠すのみ。
(「この猿、絶対視覚以外で感知してくるよな……」)
エイプモンキーはああ見えて存外賢く、侮れない相手。
熱や音を探知するような装置を使われてしまえば立ち所に看破されてしまうだろう。
(「体温はこの外套で外に漏れないようにして)」
ユーベルコード発動前に羽織っていた外套には、それだけでもどんな環境にも適応する迷彩のような効果があるばかりか遮熱効果も備わっているのだ。
(「問題なのは動くときに出る音だねえ」)
しかしそこはベテランシーフであるアルミィ。
自らも限りなく音を消して歩くことはできるが念には念を入れるのがプロというものだろう。
さて、今回用意したのはこちら。
UDCアースから仕入れてきた『消音スピーカー』!
アルミィ自身はその原理がよくわからないようだが、これは周囲の音を内臓マイクで拾い、その音とは逆位相の音をぶつけて『音の波を打ち消す』……結果、騒音などを消滅させることのできる画期的な機械である。
水を使っても同じようなことができるので、興味があれば実験してみよう。
この技術はUDCアースにおいて高速道路における車両の走行音の低減、あるいはもっと身近なところでイヤホンなどに搭載されたノイズキャンセリング技術などに利用されているのだ。
(「これでアタシは完全に気配を絶った状態なわけさ。このまま近付いて一撃お見舞いしてやろうじゃないか」)
透明人間からの攻撃は避けられまい。
ターゲットに一歩一歩近付く度に心臓の音がうるさくなる。
ダガーを握り締める手はしっとりと湿り気を感じる。
それらは決して嫌な感覚ではない。
決して見付かってはならず失敗の許されない仕事とは、幾つになっても心が躍る。
(「そろそろ間合いに入る…………うん!?」)
その時、エイプモンキーと目が合った。
いや目が合う筈はない。こちらの気配は限りなくゼロに近付けたのだ。
「うーん。ここだッキ! みーつけたウッキー!」
エイプモンキーが叫ぶとアルミィの背後からドローンのようなものが飛来し、やけに正確な精度で捕獲ネットのようなものを発射してきた。
ネットに絡め取られたアルミィのユーベルコードは強制的に解除され、消音スピーカーも故障してしまったようだ。
「やれやれ、まさか見破られるとはねえ」
「ウッキッキ! まさかここの地面がどうなっているか忘れたッキか?」
地面は……咲き誇る花。
「……なるほど、透明にはなれても幽霊にはなれないわけか」
どれだけ気を付けても花に触れれば揺れるし、花弁が飛ぶこともあるだろう。
つまり不自然な花の動きを検知され、そこに何者かがいるとばれてしまったのだ。
「ミーの不意打ち絶対許さない装置『ちょっとした動きから位置割り出してネットでゲットマシーン』の超高精細センサーはどんな動きも見逃さないッキー!」
「この程度のネットでアタシを捕まえたと思っているのかい!?」
するりと網を抜け出したアルミィは、しなやかな身のこなしでエイプモンキーに肉薄すると最小限の動きでダガーで刺突する。
「あぶなーいッキ! 装甲の間を狙ってくるとは油断ならないッキねぇ」
が、防御を固めたエイプモンキーに刃は通らず、逆にアルミィの両腕をがっしりと掴む。
そのままぐるぐる回され、アルミィは力一杯遠くに向けて放り投げられてしまった。
苦戦
🔵🔴🔴
戒道・蔵乃祐
鋼鉄の鎧を纏う猿のキマイラ
ドン・フリーダムの思想に賛同する同志の重臣とお見受けします
欲望を際限無く高め続けた果ての姿が貴方だというのならば
貴方の想像力を越える事で、歪んだ思想による滅びを否定する!
◆
三角飛びで空中戦を展開しますが
ジェットパックと可変翼で飛行。バーニアを利用した急加速と急制動
想像力で具現化された3次元機動で攻撃は届かない
僕には35回の連続跳躍が限界
効果消失による自由落下で無防備になった瞬間。敵は攻撃してくる筈
狙いを定めて空中で静止するか、空中接近攻撃に合わせて咄嗟の一撃でカウンター
仕込み籠手から早業とクイックドロウで鎖分銅を投擲。翼を封じ、怪力でエイプモンキーを地面に叩き付けます
「鋼鉄の鎧を纏う猿のキマイラ……ドン・フリーダムの思想に賛同する同志の重臣とお見受けします」
筋骨隆々の肉体と厳めしい顔つきの戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、徒手のままエイプモンキーの前にその姿を現した。
「ウッキー、重臣と言われると悪い気はしないッキねぇ。ユーはあれかッキー? 武人的な感じなのかウッキー?」
「いえ、ただの生臭坊主だと覚えていただきたく」
「ふーん、坊さんッキかー。って、そんなムキムキマッチョで一発のパンチで車を破壊できそうな坊さんがいるかウッキー! ……いや、いなくもないッキね」
僧と一口にいっても色々ということだ。
「改心し、今後悪事に加担しないというのであればこの拳は収めましょう」
「それは面白くないッキねぇ。だからノーと答えるウッキー! そうすれば楽しませてくれるッキぃ?」
「……やはり、そうなりますか」
蔵乃祐は前進に力を漲らせ、気合の咆哮と共に宙にその身を躍らせた。
それはただの跳躍ではない。
蔵乃祐のユーベルコード、三角飛びによる空中ジャンプに加え、背中のジェットパックから強力な推進力を獲得し、速度によって翼の形や面積を変形させることにより揚力や姿勢制御、掛かる負荷などを適切な状態に維持する可変翼をも用いた跳躍だ。
それらが合わさり生まれるのは超変則的三次元起動。
「ぐう……!」
いかに鍛えた肉体であれど、超高速下の急加速や急転回を繰り返すような常人は既に意識を吹き飛ばしているレベルのGがかかれば些か堪える。
「お空の旅は気持ちいいッキか? いやあ、今日は花見日和ッキね!」
エイプモンキーもまた空中を飛翔した。
跳躍ではない、飛翔だ。
「これは超高速飛行装置『サルトビ』ウッキー! ユーの回数制限のある『ジャンプ』とは違っていくらでも飛べるッキよー?」
「よく喋るようですが、舌を噛みます……よ!」
空中での機動中に拳を繰り出すが、やはり蔵乃祐の攻撃はひらりと避けられてしまう。
「くっ……!」
「おやぁ苦しそうッキね、辛そうッキねぇ! そりゃそうッキ、生身でそんなに連続した高速機動なんて身体に負荷が掛かりすぎるウッキー! でもミーはこのスーツがあるからとっても快適なんだッキよー」
(「相対する者に敬意のひとつなく、確実に勝てると踏んでいる相手を小馬鹿にする態度……なんという……」)
間髪入れずに回り込み打撃、頭上からの急襲、斜め下からのアッパー、敢えて正面からの実直な一撃。
それらは全てあと少しといったところで躱される。
(「そろそろ、か」)
蔵乃祐は残りの跳躍回数を頭の中で数える。
残り5、4、3……。
――脚が空に掛からない。不意に階段を踏み外したような格好で蔵乃祐は地面へと落ちていく。
ユーベルコードの効果限界。最早蔵乃祐を支えるものは、何もない。
「あ、ココ結構高いッキよ? 可哀想だからここでトドメを刺してあげるウッキー!」
ニタニタと下卑た笑みを浮かべながら大の字で自然落下する蔵乃祐の真上に陣取るエイプモンキー。
腕を思い切り後ろに引き絞り……蔵乃祐の身体を打ち砕かんと必殺のパンチが今。
(「……今!」)
蔵乃祐が目を見開いた。
翼と推進機を切り離し、拳を保護するだけと思われた籠手から鎖が付いた分銅を投げ、
「ンキ!?」
それは瞬く間にエイプモンキーの身体に巻き付く。
「欲望を際限無く高め続けた果ての姿が貴方だというのならば……貴方の想像力を越える事で、歪んだ思想による滅びを否定する!」
「い、いやいやここから何ができるウッキー……?」
「破!!」
蔵乃祐が思い切り腕を引き込むとみるみるうちに両者の距離は近付き、ついにはその位置が逆転した。
「これだから筋肉はああああああッキイイイイイ!!」
脳天から地面に突き刺さったエイプモンキーを視認した蔵乃祐はその衝撃を緩衝に利用しつつ花々、そして自らの肉体を信じて着地を試みる。
着地の瞬間に膝から順番に転がるようにして落下の勢いをそぎ落としていく。
「……案外何とかなるものですね」
筋肉は全ての問題を解決する。きっと。
成功
🔵🔵🔴
カルキノス・マークスリー
【芋煮亭】
猿とは、遥かな昔より蟹の怨敵である。
猿を見据えた蟹の目が赤く輝く。全身のギヤが上がる。
蟹の異能、【ベルセルクトリガー】
その目は「素早く動く物」を捉え、叩き潰しに動く。
しからば猿は考える。素早く動く囮を出せば、蟹はそちらへ向かうだろうと。
ずる賢い猿に騙されんとするその間際、眼の前を掠める剛速球。炎の閃き。
猛り狂う蟹は一目散に猿の元へと向かうだろう。
猿の攻撃が蟹を捉えたとき、腹部のハッチが開く。鉄の腹腔から無数の【アイテム:子ガニ】が零れ落ちる。
親蟹が柿に潰されたそのとき、はずみで子蟹が産まれ落ちた話をなぞらえるように。
小さくも砲塔を、戦闘力を備えた彼らは、親の仇を討ちに行くだろう。
ラザロ・マリーノ
【芋煮艇】で参加。
「竜の血」の弱点は、まず俺自身が血を流さなけりゃいけない事だな。
実証するには、何らか方法で俺の出血を封じるか、過剰に出血させるかになるはずだ。
だから戦闘開始前に、自分の血液を採取した血液パックを真多子に持たせておくぜ。
こうすりゃ、わざわざ戦闘中に自分で血を流す必要ねえからな。
戦闘が始まったら、無敵状態になった真多子を、[怪力][投擲]で猿に向かって全力でぶん投げてから、UC「竜の血」を発動させるぜ。
「竜の血」を発動させた後はその場から動かず、延焼範囲を制御してカルキノスにダメージがいかないようにしておくぜ。
猿は蟹と助っ人に討たれるモンだ。
昔話の猿と同じ末路を辿らせてやるぜ!
明石・真多子
【芋煮艇】
蟹の助っ人、臼役のマダコ登場!
アタシの【軟体忍法球体防御の術】の弱点は自分じゃ攻撃出来ないことなんだよねー。
うわー挑発するように尻向けて素早く動いてる…
ボールになる前に高い所から落ちた反動で体当たりを狙おうとしても、あんなに素早く動かられたら避けられちゃうからアタシじゃ手も足もでないよ…。
でもアタシ一人なら、だけどね!
事前に持ってたラザロ君の血液パックを頭から被ったらボールになってラザロ君に投げてもらおう!
どうだ、剛速球攻撃できたから証明失敗だぞ!
あとはボール表面の吸盤でサルにくっ付いてパンチングボールになろう。
ずっとぶるぶる動き続けてカルキノスちゃんの目印になってあげるんだ!
「……」
「ウッキィ……」
カニの形状をしたウォーマシン、カルキノス・マークスリー(蟹は横へと征く・f14553)とエイプモンキーは互いの姿を認め、真正面から睨み合っていた。
カニとサル。
どこかで見たような組み合わせだが。
「…………」
カルキノスの全身から漏れ聞こえる駆動音が一段高くなり、その目は甲殻よりも赤く赤く眩しいくらいの光を宿す。
「誰がずる賢いサルだッキィ? アァン?」
その目から何を言いたいのか悟ったのか、エイプモンキーは歯を剥きメンチを切りまくっている。
一触即発。やるか、やられるか。近未来版さるかに合戦。両者の生存を賭けた熾烈な戦争が始まろうとしていた。
先に動いたのは早くもトップギアの様相を見せるカルキノス。
カルキノスが有するユーベルコードは『ベルセルクトリガー』。
最大火力を誇る最終武装モードへと移行するが、しかしこれを発動するとある問題が生じる。
「いいんだッキ? それを発動したらユーはただただ『速く動くものだけを攻撃する』だけのポンコツに成り下がるんだウッキー?」
超性能と引き換えに思考能力を失う……日々相手を出し抜いて馬鹿にすることだけを考えているエイプモンキーに対してその行為はあまりにも無謀。
目は更なる赤みを帯び、全身の武装が展開する。
もうカルキノスを止めることはできない……!
「ウッキッキ! ならミーは高速移動デコイ装置『ニセエイプくん』を発進ッキ!」
エイプモンキーをぬいぐるみにしたような姿の、ただ素早く走ることに特化した装置が駆け出すと、それを捉えたカルキノスはニセエイプくんを横歩きで猛追する。
このままではカルキノスが……。
「ウキャキャキャキャ! これは愉快なおもちゃッキねー! 飽きた頃にしっかりとボコボコに壊してやるウッキーよ!」
「そうはさせないよ!!」
「むう!? 誰だウッキー!!」
派手に登場! するとカルキノスが反応してしまうかもしれないのでゆっくりのっそり歩みを進める明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)とラザロ・マリーノ(竜派ドラゴニアンのバーバリアン・f10809)。
「蟹の助っ人、臼役のマダコ登場!」
「俺は……あー、さるかに合戦ってあと何がいたっけか」
「えーっと、ハチと栗と……牛のフン?」
「ハチか栗役のラザロ参上!」
牛のフンはさすがに嫌だった。
「ウキャ? ようはこのカニの仲間だッキね。何人来ようと同じだウッキー! お前たちのユーベルコードも潰してやるから覚悟しておくッキー!」
欠伸でも出そうな程の余裕を見せるエイプモンキーは、ラザロを指さす。
「そっちの緑色の方はそもそも大ケガでもしない限りユーベルコードの発動は難しいッキ? なんだったら殴ってやろうかウッキッキ!」
「『竜の血』を防ぐには俺の出血を封じるか、過剰に出血させるか……だろうな」
ラザロの血液が媒体となり、付着した対象を炎上させるユーベルコードである以上、発動させないことを前提とするのであれば選択肢はその二つに限られるだろう。
「ところがそれだけじゃないんだよね!」
真多子は何を思ったのか、突然透明なパックに入った液体を頭から被った。
全身がびっちゃびちゃになったことを確認すると……。
「軟体忍法、球体防御の術!」
瞬間、真多子のカラダはくるくると縮まりながら丸まり、まるで大きなゴムボールのようになった。
「そっちの赤い方のそのユーベルコード……攻撃が通じなくなる代わりに自分じゃ動けなくなるッキ? そんなもの対処するまでもなく倒せてしまうッキねぇ」
「だからこうするんだ――ぜ!」
ラザロは自慢のとてつもない膂力によってボール化した真多子を……エイプモンキーに向けて投げつけた。
「ちょ、味方の扱いぞんざいすぎないかッキ!?」
超剛速球と化し、空間を飛ぶ真多子はその道程で炎上する。
先に被った液体は予め採取しておいたラザロの血液だったのだ。
火の玉の超速魔球へと進化した真多子ボールは、エイプモンキー目掛けて一直線。
「慌てず騒がす絶対消火グローブ型装置『ファイヤーサル』を機動ウッキー!」
両手を厚手の手袋のようなもので覆ったエイプモンキーは、飛んできた真多子を危なげなくキャッチ。返球……はせず、火の消えた真多子を手の中でぐにぐにともてあそぶ。
「おんやあ? 今ので終わりッキ? 自分を犠牲にした割には大したことのない攻撃だったウッキー?」
「そうだね、今のアタシじゃ手も足もでないよ……」
文字通り、このユーベルコードを解き手や足を出した瞬間にやられてしまうだろう。
「アタシ一人なら、だけどね!」
「ウキ?」
「どうして俺が真多子を投げたと思う?」
しかもあんなに剛速球を。
……速球? 素速く、動く……?
「ま、まさかッキ……!」
「カルキノスちゃん、こっちこっちー!」
気付いた時にはもう。
「……」
憤怒の赤色は目の前。
激しい衝突音と共にカルキノスとエイプモンキーは接触する。
と同時にカルキノスの腹部ハッチが開放、中から無数とも思える本体を縮小複製したような子ガニがわらわらと出てきた。
「さるかに合戦には猿が親カニに熟してない柿をぶつけて殺しちゃうシーンがあるんだけど、その時に子ガニが産まれるんだよね」
「その子ガニは助っ人と力を合わせて猿を討つわけだ」
よもやエイプモンキーも昔話になぞらえられようとは思わなかっただろう。
「……」
「昔話の猿と同じ末路を辿らせてやるぜ!」
「いっけー! ラザロ君、カルキノスちゃん!」
「こんな、こんなことが……! ウッキャー!!」
カルキノスの、子ガニの、そして周囲に延焼させておいたラザロの炎が。
わるいさるをこてんぱんにやっつけましたとさ。
「めでたしめでたし、だね!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
セシル・バーナード
ぼくの攻撃UCは、基本空間制御系だけど、空間歪曲装置でも作ってきそう。
だけど、空間歪曲で空間断裂をそらすにしても、それは防御を固めただけ。どこかに外部を把握する『眼』が必要になる。
空間歪曲に穴があるか、周囲にカメラを置いてるか。どちらかだろうね。
じゃあ、対抗して、空間断裂の範囲版、空間裁断で戦場全体を切り刻むよ。
カメラがあれば砕けるだろうし、空間歪曲に穴があればそこから空間断裂が中に入り込んで暴れ回る。
空間歪曲で防御を続けるなら、フォックスファイアでバリアを包んで。
ぼくの炎が消えるのが先か、空間歪曲が切れるのが先か、腰を据えて持久戦といこう。
空間歪曲が解けたら、炎と空間断裂が襲うからよろしく。
「ぼくのユーベルコードはそう簡単に防ぐことはできないんじゃないかな?」
微笑を浮かべるセシル・バーナードに対し、エイプモンキーもそれはどうかなと笑い返す。
「ウッキッキ! ユーのユーベルコードはこれといった動作をする必要もなく、念じればたちまち見えない音もない空間ごと切り裂くなんかすんごい感じだウッキー?」
「その通り、よくできました」
セシルは子供を褒めるようにぱちぱちと手を叩く。
「その態度、よっぽど自信があるッキね? その自信を打ち砕くのがミーの楽しみのひとつだウッキー!」
「それはいい趣味をしているね」
「空間を四角いゼリーに喩えるッキ。ただ置いてあるだけのゼリーはいくらでもナイフで斬り込めるッキね。それは連続して同じ硬さのゼリーが続いているからウッキー。しかしここにナイスなミーのイラストが入った下敷きをドーン! と突き刺すッキー!」
架空のゼリーに架空の下敷きを真っ直ぐ突き立てるエイプモンキー。
「そうすると下敷きでナイフが止まるッキね。これはゼリーよりも堅くナイフでは切れないものに突き当たったから、つまり連続性が失われたからだッキー!」
つまりこうすればいいのだ、とエイプモンキーは装置を起動する。
半透明のような不透明のなんとも形容し難い四角いフィールドがエイプモンキーを包み込んだ。
「これこそ別位相の空間で遮断した無敵壁生成装置『カッコイイバリアー』だウッキー! 全面に下敷きを配置したようなものだウッキー!」
「どれどれ」
試しに数回、『空間断裂』を行使する。
が、どうにも手応えがない。
「無駄なことだッキー!」
「なるほどね、これはさすがのぼくもお手上げだよ」
「そうそう、諦めるキャキャキャ!」
「……って、言うと思った?」
「キャ?」
挙げていた両の手を徐に正面に向けるセシル。
「空間を歪めて別の空間をねじ込む、つまり空間が不連続なのにどうしてぼくの声が、そっちの声が聞こえるのかな」
「…………ウッキー?」
「それだけじゃない。ぼくからは見えないけど、そっちからはぼくの姿が見えているんだよね。つまり、空間歪曲に穴があるか、周囲にカメラを置いてるか。どちらかだろうね」
では外部にマイクやカメラが仕掛けてあるのか。
いいや、空間が遮断されているのであればそれらの送受信すらできないだろう。
となれば答えは。
「戦場を……斬り刻む」
空間断裂を重ねに重ねた範囲攻撃、その名も空間裁断。
隙間なく空間を裂くその攻撃は、バリヤー全体をも包み込む。
「ふ、ふんふーん。このバリヤーに穴なんてな……ウッキャ! あぶないッキー!」
穴、あった。
その穴から切断攻撃が入り込み、逃げ場がないため思わずバリヤーを解除……したところにセシルは容赦なくエイプモンキーをぶった斬る。
「ウガギャッ! 装甲がなければやられていたッキー……!」
「これ以上はさらに対策を考えられるだけか。それじゃぼくはこれで」
痛手を与えることができたセシルは、速やかに撤退するのだった。
成功
🔵🔵🔴
ブイバル・ブランドー
ありとあらゆる創造を可能とする怪人だと?成る程成る程、ならば来い。ビルドスクラッパーの端くれとして興味が尽きない
スクラップ製の短刀、ドライゼを選択したユーベルコードの加速と共に投擲する。スクラップが無くならない限り、何回でも投擲できる。
…だが、おまえはこれを容易く返すのだろう。恐らくはリフレクターのようなもので。数を増幅させて倍返ししてくる可能性もある。
だが、あまり見縊らないでいただきたい。こちらにも策はあるのだよ、こんなこともあろうかとというやつだ。
浮遊兵器マグネッティックビット・ツヴァイ…電磁加速は知っているな?これでおまえの反撃を受け止め、全てお返ししてあげよう。プレゼントだ…
「ほーう、なかなか通好みなボディに面構えしてるッキねぇ」
「それは褒め言葉として受け取っておこう」
戦闘に特化した赤きウォーマシン、ブイバル・ブランドー(斬滅光・f05082)は隙を見せないように堂々と構えながらエイプモンキーの言葉に応える。
「そういうエイプモンキー、貴様はありとあらゆる創造を可能とする怪人だと?」
「ミーも有名になったものッキね。その通り、ミーに不可能はないウッキー!」
「成る程成る程。ならばその力、見せて貰おう」
ビルドスクラッパーとしては『創造する力』というのはとても興味を惹かれる能力でもあるのだ。
早速ブイバルは金属の屑から創り出した短刀・ドライゼをセットし、ユーベルコード『アトミックスラスター・ブースト』により自らの機体を加速。
しかる後にドライゼを投擲する、自らをカタパルトとして運用する考えだ。
アトミックスラスターとはブイバルの背部に二基搭載されている推進機である。
詳細なスペックなどは不明だが、様々な実験的な試みにより一般的な科学を凌駕した驚異的なエネルギーを生み出すことが可能なのだ。
「要はものすんごいパワーで自分を加速しながら刃物を射出しているに過ぎないわけッキ。厄介なのはどこからともなく出てくるスクラップがある限り攻撃を続けられるってところだッキね」
「その言い草、既に弱点を看破したとでも?」
「ユーベルコードを封じればただのナイフ投げだウッキー。原子力を使ったスラスターで加速する……つまり中性子の運動を止めてしまう特殊な力場を作る装置『じゃまーくん』を作動させればいいウッキー! 電磁気力の制動よりも省エネじゃないかッキ?」
原子力を簡単に説明すると……不安定な原子核に中性子を吸収させると原子核は分裂し、その際に中性子を放出する。そしてその中性子が他の原子核にぶつかって――といった反応を繰り返すことにより膨大なエネルギーを抽出できる技術である。
ここで重要になるのが飛び交う中性子。
中性子の動きが止まれば核分裂は基本的に起こり得ない。エイプモンキーのなんでもアリな力により、スラスター内の中性子はその運動を抑制されてしまい、ブイバルのスラスターは出力を大幅に削ぎ落とされ……ついには停止してしまった。
「成る程、ドライゼではなくこちらを止めにきたわけか」
「それではロクに動けないッキね! 覚悟するウッキー!」
「あまり見縊らないでいただきたい。こちらにも策はあるのだよ」
こんなこともあろうかと、とブイバルは『浮遊兵器マグネッティックビット・ツヴァイ』を展開する。
「ウッキ?」
「電磁加速は知っているな? さあ、プレゼントだ。遠慮なく持って行け」
レールガン、と呼んだ方がわかりやすいだろうか。
電気伝導体バレル(レール)に電流を流し、生じるローレンツ力によって弾丸を射出する兵器だと認識していいだろう。
ブイバルが保有する兵装の場合、弾がプラズマ化する程の膨大な電力は術式で補い、更に電気回路を構成するための物理的なレールすら必要とせず、磁性体であれば接していなくてもバレットとして射出できる優れもの。
これならばいくら中性子が云々といわれても関係なく運用でき、加速は一瞬。
撃たれたと悟られたのは弾が命中した後だろう。
――そんなあれやこれな技術によりありったけのスクラップを次々と射出し、エイプモンキーを叩き潰す。
「返品は受け付けないのでそのつもりで」
「うぎぎ、ウッキィィィ!!」
してやられたエイプモンキーの悔しい叫びがこだました。
成功
🔵🔵🔴
草野・千秋
絡み連携アドリブ等歓迎
僕の戦法を予測する?
でも即興歌なら予測の仕様がないでしょう?
ダムナーティオー……いやここはraduとしての
歌い手としての矜恃の見せ所ですね
行くぞ!『ヒーローズ・リサイタル』!
サウンドウェポンをエレキギターにして演奏
UCで歌うと共に攻撃
♪
心に穴が空いてるように
穴に涙がざぶざぶ落ちるように
悲しみに暮れる夜もあった
だけど今は光が差して
今は仲間がいる
共に戦う戦友(とも)が
挫けない、負けられないんだ
Sing for the future!
ウインクしてみせるファンサも忘れない
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
やめろやアタシこういうボス戦単騎とか向いてねーっての!
どうせ大技なんて無理だから!
とっととカブに乗って『騎乗』『操縦』駆使して逃げ回るよ!
苦し紛れに【時縛る糸】を放つけど、
まあ搭乗者への思念波シールドくらいは張ってるよな!
……話は変わるけど、【時縛る糸】は「相手の主観時間を止める」。
それは無生物であっても、だったりするんだよな。
そしてロボって事は、内部のコンピュータが
「クロック」を持って計算してるだろ。
ついでにこっちのUCはある程度連射可能さ。
『メカニック』と『操縦』で基盤の位置に当たりを付けて、
個別の回路のクロックをずらしてロボ全体の挙動を狂わせる!
反撃は適当!
緋奈森・鈴音
炎と水と風の魔力で自分を強化!
魔力をフル活用でエイプモンキーの周囲に風を集め気圧を上げて霧を作る!(露点温度も上がり霧が発生し易くなる)
それに紛れて攻撃すると思わせるわねー。
「周りを風の壁で覆ってるからー、簡単には吹き飛ばせないわよー」
霧の弱点は風で吹き飛ばすか熱で蒸発させるかよねー。
風と言ったから熱で対処すると予想するわー。
そう来るとー、
気圧が高いと沸点も上がるので必要な熱量も増えるし、圧縮された分、霧の水分量も多くなってるわよねー。
そこで気圧を下げたら……沸点も下がるから
霧中の相手は予想外に大量発生した高温の水蒸気に一斉に全身を焼かれる!
「化かされちゃったー?」
マニアックってこんな感じー?
「僕の即興歌について来られますか!?」
鳴り響くギターサウンド。どこからともなく降り注ぐスポットライト。もくもく焚かれるスモーク。
戦場は草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)のリサイタルと化した。
「ほう、ミーにミュージックで挑むとはいい度胸ッキね。別に即興だろうとなんだろうとユーの攻撃を見切ることなんてラクショウッキー!」
対するエイプモンキーは巨大なスピーカーと頭上に光り輝くミラーボールを、そして手元にはDJの必須装備ターンテーブルを抱えてきゅいきゅいスクラッチしている。
「これこそミーのダンシング装置『ノリノリでよけまくるマシーン』だウッキー!」
「音楽と踊りで勝負を付けようということですか。オブリビオンにしては粋な計らいと言わせて貰いましょうか」
「いやあ、相手の得意分野で勝利するのが楽しいだけウッキィ?」
「……いいでしょう、ダムナーティオー……いやここはraduとしての――歌い手としての矜恃の見せ所ですね」
千秋とエイプモンキーのサウンドバトルが今、始まろうとしていた!
「ボス戦単騎かと思ってすげぇビビってたのになんだこのカオス!」
宇宙カブに乗って現場にやって来た数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は目の前の状況に混乱していた。
「あれこれ、ボスと命懸けのマジバトルだったんじゃねーの?」
カラフルな光がうるさいくらいにめまぐるしく回転し、エレキギターの旋律とUDCアースではちょっと昔に流行ったダンスサウンドがぶつかり、踊るイケメンが刃を振るい、サルがメカで格闘している。
「ここに入っていくのは単騎で挑むよりもハードルが高いだろ……」
ちょっと下がって様子を見ていようか。
多喜は宇宙カブから降りて、手で押しながらこっそりと後方へ……。
「援軍ですか、助かります! 僕と一緒に戦ってください!」
「何人増えても同じことウッキー! かかってくるがいいッキー!」
「……おう」
しかしにげられなかった!
「ちなみにスモークは私がつくったのよー」
「えっ!? あ、そうなのか……」
いつの間にか隣に立っていた緋奈森・鈴音(妖狐の化身忍者・f03767)がくすくすと笑いながら炎と水の魔力をこねこねして霧を生み出すところを見せた。
「こうしちょいちょいっとすれば、ほらこの通りー」
「おお」
ライブやコンサートにはこの手のスモークが欠かせない。これはなぜかというと、ただ雰囲気がそれっぽくなる……だけではなく、スポットライトやレーザーなどの照明の光が『光線』として視認しやすくなり、より効果的な光の演出がし易くなるのだ。
「だからちょっと協力しているのよー」
「いい心がけだウッキー! ミーに対してのユーベルコードの有効活用とはなかなか見上げたモノだウッキー!」
自分が派手に演出されるのはよしとしているエイプモンキーだった。
「ちなみにー、周りを風の壁で覆ってるからー、霧を吹き飛ばそうと思っても簡単には吹き飛ばせないわよー」
「悪用しない限りはそんなことしないッキよー! ウキッキッキ!」
「悪用なんてしないわよー」
こうなっては状況に適応していくしかない。
多喜は宇宙カブのエンジンをかけ直し、ひらりと飛び乗り……それから覚悟を決めてエイプモンキーへと突っ込んだ!
「大技なんかないからあんま期待するなよ!」
そんな多喜に、千秋は微笑みながらウィンクをひとつ。
『♪心に穴が空いてるように 穴に涙がざぶざぶ落ちるように 悲しみに暮れる夜もあった』
歌いながらトリッキーなダンスステップに剣を交えてアクロバティックな剣筋でエイプモンキーを攻撃し続ける。
エイプモンキーはターンテーブルを回しながら避ける避ける。
やはりユーベルコードを回避するスキルの前には即興曲やアドリブのダンスであろうとも一太刀を浴びせるのは困難なようだ。
『♪だけど今は光が差して 今は仲間がいる 共に戦う戦友(とも)が 挫けない、負けられないんだ』
しかし千秋は諦めない。
歌で、音楽で負けるわけにはいかないのだ。
そうだ。今の彼には歌に出てきたように戦友がいる……!
「くらえ!」
宇宙カブを巧みに操り、エイプモンキーの周囲をぐるぐると走りながら『時縛る糸』を放つ多喜。
それは命中した対象の主観時間をある程度の時間止めることのできる思念波を発射するというユーベルコード。
気付いた時には実時間にして40秒近くが経過しており、まるで時間が吹き飛んだような感覚を与えることができる、のだが。
「思念波は見えないから厄介ッキけど、そんなものはこの対思念波装置『なんかよくわからないものを防ぐアンテナ』でミーには効かないんだウッキー!」
「だよな! そういう思念波シールドくらいは張ってるよな!」
諦観にも似た叫びをあげる多喜。
「さあ、自分の技が効かないことを嘆きながらお空の星にしてやるッキー!」
「……アタシの『時縛る糸』って、『相手の主観時間を止める』ユーベルコードなんだけどさ」
「んん? そんなことは知ってるッキよ?」
何を今更、と不思議そうなエイプモンキーを無視しながら話を続ける多喜。
「それは無生物であっても、だったりするんだよな」
エイプモンキーが搭乗しているロボにも当然内部にコンピューターがあるだろう。
コンピューター……CPUとは0と1の繰り返しの信号により情報を処理している。
これをクロック周波数といい、0と1の切り替えが速ければ速いほどそのCPUは高性能であるといえる。
パソコンの性能を調べるときに出てくるGHzなどという単位はこのスピードを表しているわけだ。
「何をごちゃごちゃと……むう!? ミーの華麗なダンスに乱れがッキー!?」
「自分自身は守っていても、そのロボまではどうだ?」
「まさかそこまで考えていたウッキー!?」
クロック周波数を乱すことができれば、機械は正常に動作しなくなる。
ということは。
「今動きが止まればどうなるか、なあ?」
「ウッキー! しまっ……!」
『♪Sing for the future!』
千秋の、そして多喜の一撃がエイプモンキーに深々と突き刺さった。
ひっくり返って転がっていったエイプモンキーに、二人は拳を付き合わせた。
「ま、まだ終わりじゃないウッキー!」
よろよろと立ち上がったエイプモンキーは、はたと気付く。
「……ん? スモーク、濃くなってないかッキ?」
霧とは、ある程度の水蒸気を含む空気が冷えたときに気体から液体へと転化し凝結する温度、つまり露点温度に達したときに発生する。
スモーク、もとい霧を生成していた鈴音は気付かれないように徐々に風をエイプモンキーのもとに集結させ、気圧を操作し霧の発生を操作していたのだ。
これは単に目眩ましか。いや、攻撃に転用してくる可能性もある。
「簡単に吹き飛ばないと言っていたッキが、ならば気温を一気に上げれば霧は消え去るッキー!」
冷静なエイプモンキーはそのように考えなかったかもしれない。
だが多喜たちにやられた直後で頭に血が上っていたのだろう。
「ユーのユーベルコードは炎と水、そして風の操作を行うものだッキ! それを上回るパワーの炎や風でユーたちもろとも吹き飛ばしてやるッキー!!」
巨大な熱源らしき装置を稼働させ、周囲の気温は瞬く間に急上昇。
その瞬間、エイプモンキーを中心に白い煙が大量に噴き出した。
「ぐわあああああッキー!!」
「くすくす、化かされちゃったー?」
鈴音は風の操作で気圧を高めていたが、タイミングを計り急激に気圧を下げたのだ。
気圧が高いと沸点は高くなる。
大気圧が1013ヘクトパスカル、イコール地上であれば水の沸点は100度。
何らかの要因によりこの大気圧が弱くなると沸点は徐々に95度、90度と下がっていく。
高気圧化で多量に圧縮されて霧の水分は、下がった気圧により開放。
同時に沸点が下がったことによって水蒸気爆発を誘因しやすくなり、この結果に至った……そんなところではあるが、まるで狐につままれたような感じでもある。
「これこそ大技ってやつだよなぁ」
「動きを止めたのも大技に違いないわー。もちろん、歌や踊りもねー?」
「ありがとうございます。皆の力を結集させた勝利、ですね」
煙の中に沈むエイプモンキーを確認すると、猟兵たちは次なる戦いに備えるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴