バトルオブフラワーズ⑨〜最強無敵のイマジネーション
●絶望の未来を彼女は見た
キマイラフューチャーの命綱たる「システム・フラワーズ」。その内部は、咲き乱れる花々が八方を埋め尽くす不可思議な空間であった。
いかなる原理によるものか、花々がひとりでに集まって円形の広場を形成する。中心に向かうほど盛り上がり傾斜を成すそれは、山のようにも見えた。
そして、その山の頂上に彼はいた。
「ウッキッキ!」
オブリビオン・フォーミュラ「ドン・フリーダム」の配下が一人、エイプモンキー。彼は両腕を組み、倒れ伏した猟兵達を見下ろしていた。
「ミーのユーベルコード『想像した全てを創造する能力』! この力とミーのマニアック知識が合わされば最強無敵! お前らのユーベルコードなんて猿知恵にも劣る子供だましに過ぎないッキー!」
耳障りな笑声が響くが、反応する者は誰もいない。自慢のパワーは封殺され、速度で挑んだ者は誰も追いつけず、知略を巡らせてもわずかな綻びを突いて崩される。
「キッキッキ、これで邪魔者はいなくなったッキ! この世界がミー達のものになるのも決まりだキー!」
高らかに勝利を宣言すると、エイプモンキーは身を翻し、システム・フラワーズの中枢へと向かっていった。
●イマジネーションVSイマジネーション
「……というわけで、早急な対策が必要とされているの!」
オブリビオンに占領されたシステム・フラワーズを攻略するためグリモアベースに集まった猟兵達に向けて、神楽火・遥瑠(テンペストナイト・f02078)は盛大に気炎を吐いた。
システム・フラワーズの中枢部へと向かうメンテナンスルートに立ち塞がる強大な怪人は、四人。その先鋒たるエイプモンキーとの戦いを予知し、猟兵達が敗北してしまうビジョンを見た遥瑠は眉を吊り上げている。
「っていうか『想像した全てを創造する能力』とかチートなのチート! いますぐ緊急メンテで仕様変更で下方修正が必要なの!」
一人でぷんすかやっていた遥瑠は、猟兵達の生暖かい視線に気づいてこほんと一つ咳ばらい。
「普通にエイプモンキーと戦っても負けバトルにしかならないのは決まっているの。遺憾ながら。というわけで、対策を打たなきゃいけないんだけど……」
そこで遥瑠は言葉を濁した。敵が猟兵達のユーベルコードに応じて必中必殺のカウンターを仕掛けてくる以上、一律的に「これをやれば勝てる」という戦法はない。
「だから、具体的な対策はみんなが自分のユーベルコードに合わせて考えなきゃいけないの」
遥瑠が予知した敗北の結末によれば、エイプモンキーは猟兵達が使おうとするユーベルコードの特徴をマニアック知識で推測し、対抗手段を想像して創造してくる。たとえ「弱点はない」と本人が思っていたとしても、その重箱の隅を突くような指摘からは逃れられない。
「そんなわけで、対策は二つ。敵が想像した対抗手段にさらに対抗する方法を準備しておくか、敵が想像していない方法でユーベルコードを活用するしかないの」
前者は「相手は●●で対策をしてくるだろう」という読みが要となる。万一読みが外れれば敵にダメージを与えることなできない。
後者の要は「エイプモンキーの想像力にも限界はある」ということだ。さらに、彼がカウンターのために利用する情報は猟兵のユーベルコードの特徴だけなので、ユーベルコードを発展的に応用した戦法を編み出すことができれば痛打を加えることも不可能ではない。
「難しい戦いになると思うけど、エイプモンキーの他にも大幹部が三人、それからオブリビオン・フォーミュラが控えてる。ここで手間取るわけにはいかないの」
そう言って、遥瑠は真剣な眼差しで猟兵達を見つめた。
「他に言えることがないのが悔しいんだけど……がんばって。みんなの勝利を信じてるの」
中村一梟
猟兵の皆様ごきげんよう。中村一梟です。
キマイラフューチャーの命運を賭けた「バトルオブフラワーズ」、敵幹部その1との決戦シナリオをお届けいたします。
本シナリオは特殊なルールがある戦闘シナリオです。下記の「特殊ルールについて」を熟読していただいた上でプレイングを作成してください。
●特殊ルールについて
エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
それでは、今回も皆様と良い物語を作れることを楽しみにしています。
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カイ・オー
厄介な相手だな。どうしたもんか……。
俺のUCは殆どが既存の超能力をベースにしたもの。マニアでなくても概要の推測は容易だ。……逆手に取れるか?
UC【電流操作能力】使用。高圧電流の放電で攻撃する。
電撃はメジャー中のメジャーな攻撃。対抗策は絶縁、電磁誘導、逆の電撃での相殺……選び放題だ。おそらくその手のマシンを造ってくる。
だが、この能力の本質は「電流を操作、妨害する力場」。マシンがカウンターで電撃を放つならそれを操作、妨害。防御するならマシンのシステム自体をダウンさせる。
マシンを抑えたら【ダッシュ】で間合いを詰め、アイテム【レインフォースメント】で強化した【怪力】で刀と炎で【2回攻撃】だ。
「厄介な相手だな。どうしたもんか……」
システム・フラワーズの内部を足早に歩きつつ、カイ・オー(ハードレッド・f13806)は思案する。
彼の操るユーベルコードは自身の身に秘めた超能力を応用したものがほとんどである。そのため、例え超能力に関するマニアック知識を持っていなかったとしてもその性質を推察し、対抗することは容易だろう。
「……逆手に取れるか?」
カイの脳裏に一つのアイデアが閃いた。彼は一度頷いて、自動的に形作られる花々の通路を駆け出した。
やがて、予知された通りの広間が姿を現した。頂点の削られた円錐状の高台の上で、エイプモンキーが仁王立ちしている。
「来たな、猟兵! ここから先は通さないッキー!」
「COMMAND:ELECTRO-KINESIS:ENTER」
エイプモンキーの口上を待たず、カイはユーベルコードを発動した。彼の体から放たれる地獄の炎が紫電へと姿を変える。
「電撃を操る超能力……。ではこれの出番ッキー! いでよ、マニアックマシン『モンキー・マグネット・サーチング・ミサイル』!」
エイプモンキーもユーベルコードを発動。オブリビオンの背中から全長一メートルほどの飛翔体が発射され、複雑な軌道を描いてカイに襲いかかった。
「ミーの創造したこの『モンキー・マグネット・サーチング・ミサイル』は電磁気を感知して目標を追跡するミサイルだッキー! ユーが電気をまとっている限り、このミサイルから逃れることは不可能だッキー!」
(予想とは少し違うが……これなら対処は可能だ!)
カイのユーベルコードがその本質をあらわにする。それは電撃ではなく、電流を操る超能力の力場だ。
カイの電流操作により、彼の傍らに雷電の塊が現れた。それは稲妻でできた彼自身の似姿――囮だ。
そのデコイにまんまと引っかり、ミサイルはカイを直撃することなく炸裂する。爆風がカイの体を傷つけるが、致命傷ではない。
「レインフォースメント!」
電流操作とは異なる超能力が発動。カイの身体能力を強化する。常に倍する膂力でもって、彼はエイプモンキーへと肉薄。地獄の炎をまとった刀を叩きつけた。
刃金が装甲を削る甲高い音が響く。
「なかなかやるな……ッキー。しかし、その程度でミーを倒すことはできぬウッキー!!」
エイプモンキーの言葉通り、カイが刻んだ傷は深くはない。どうにかしてユーベルコードの直撃を狙わなければ、大きなダメージは望めないようだ。
苦戦
🔵🔴🔴
白鳥・深菜
【災厄と希望の開放器】――それは「制御が難しく暴走しやすい」諸刃の力。
故にいつもの私は、希う「属性」と「現象」そして望んで「生み出す現象」を唱え放つ。
その宣言が強く災厄を制し御する力となり、暴走を抑え込んでいるの。
だから、詠唱をせずに放っては、暴走のリスクが格段に跳ね上がる。
「私に詠唱の言葉を紡がせない」
これこそが、暴走しやすい災厄魔術の最大の弱点ではないかしら?
ならば。詠唱は口ではしない。
口に出すとしても、それは詠唱のフリをしたでたらめな言葉。
本命の詠唱はアサメイで、ルーン文字として空中に刻む。
刻むは「イス」と「ハガル」
……すなわちシンプルな「氷」の「雹」として、災厄魔術を成立させる!
続いてエイプモンキーを射程に収めたのは白鳥・深菜(知る人ぞ知るエレファン芸人・f04881)であった。
深菜は愛用の短剣を抜き、ユーベルコード『災厄と希望の開放器(パンドーラー・エルピス)』を放つ構えを取る。それに反応して、エイプモンキーもユーベルコードを発動させた。
「読めたッキ! ユーのユーベルコードはズバリ魔術系! 魔術と言えば呪文、呪文と言えば詠唱ッキー! つまり、呪文を唱えられなければユーのユーベルコードは発動しない! ウッキッキ!」
勝ち誇るエイプモンキー。だが、魔術を制御するための呪文詠唱を妨害してくることは深菜の予想した通りの展開だった。
彼女の行使しようとする魔術は暴走の危険性を孕んでいる。それを制御するための言葉を詠唱することでリスクを押さえているのだ。発動するなら危険度の低い方法で使うはず、と敵が推測することを読んだ手筋だった。
当然、深菜の考えた戦法は魔術をあえて暴走させるようなものではない。彼女は詠唱以外の方法で魔術を制御しようとしていた。
(イス……ハガル……!)
深菜の手にした短剣の切っ先が、宙に文字を書く。氷と雹のルーン。力ある秘文字によって、属性と災いを融合させようというのだ。
「マニアックマシン『モンキー・サテライト・レーザー』発射! ウッキー!!」
詠唱を妨害してくるだろう、という深菜の予測は当たっていた。だが、彼女は対処を間違えた。
考えるべきだったのは、詠唱を妨害するために行われる攻撃にどう対応するかだ。エイプモンキーのユーベルコードによる死角からの攻撃に対処しなければならないことを考慮していなかった深菜は、無防備なまま頭上から降り注ぐ光線に晒され、ルーン文字による魔術発動を成しえないまま倒れ伏した。
失敗
🔴🔴🔴
キケ・トレグローサ
エド(想像する前に攻撃を加えれば…あるいは上手くいくか?)
エドに人格でエイプモンキーの前に立ち妖精たちを召喚する所を見せつける。妖精を散開させてエイプモンキーを包囲して突撃してエドはできる限り接近
エド「ぞれじゃ後は頼んだぞルナ!」
ルナ「はーい!おさるさん、本命は私よ!」
手が届くほど接近したところで人格を交代、UCの本来の持ち主ルナに変わったことで、一気に大量の妖精が出現する。
ルナ「速攻よ!みんな一気にやっちゃって!」
至近距離で出現した妖精は一撃離脱で攻撃。一度しか通用しない手なので、深追いはせずに一撃加えたら離脱。
ルナ「人格によって威力が変化するなんて、初見じゃ気づけないでしょ!」
キケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)の別人格の一人であるエドは、あえてエイプモンキーの正面に向かって足を進めた。
(想像する前に攻撃を加えれば……あるいは上手くいくか?)
という考えに基づいた行動だったが、その決定的な間違いに彼は未だ気づいていない。
「さあ来い、妖精達!」
エドの呼びかけに応じて、五十体ほどの妖精が召喚された。妖精達は石の短刀を手に、奏でられる二拍子のリズムに合わせて散開。多重円を描いてオブリビオンを包囲していく。
が、エイプモンキーは何らの脅威を感じた素振りも見せず、嘲笑さえしてみせる。
「その程度でミーのユーベルコードとマニアック知識を破れるとでも思ったッキ? 甘い甘い! 完熟バナナ並に甘いウッキ!」
普通のオブリビオンならば、数と速度に任せて先手を取れただろう。だが、相手はドン・フリーダム軍の幹部たる強者。無策に等しい小細工でどうにかできる敵ではなかった。
「さほどマニアックな知識でないのは残念ウキが……妖精の嫌いな物と言えば鉄! というわけでマニアックマシン! 『モンキー・アンチフェアリー・アイアン・ブラスト』だッキー!」
エイプモンキーの左右の手が大砲へと姿を変えるや、土砂降りの雨のような音と共に無数の細かな鉄の礫がその砲口から吐き出された。妖精達が悲鳴を上げて逃げ惑う。
「くっ……! すまない、後は頼んだぞルナ!」
人格を交代し、『イタズラ妖精たちのポルカ(ポルカ・デ・アダ・トラビエサ)』を完全な形に展開しようとするが時既に遅し。妖精を一掃したエイプモンキーの追撃が叩きこまれ、キケは敗れ去った。
「ウッキッキッキッキ!! やはり! ミーは完全無敵だッキー!!」
失敗
🔴🔴🔴
フィロメーラ・アステール
【はじまりを刻む地の新星】を発動!
酸素は無機物!
【全力魔法】で、大気を魔力生命体に変換だ!
おそらく敵は想像力にモノを言わせて「魔力生命体を元に戻す装置」みたいなのを作る!
その効果範囲は戦場を覆うほど広い!
そこで……えっ?
(敵は『星霊体』の身体を解除し「元に戻して」しまう。
真の姿が部分的に発現。
手足の先から混沌の魔力が溢れ、あたりに闇が広がる。
古代の詩人や学者は名付けた。
はじまりの混沌をカオス、秩序ある宇宙をコスモス。
秩序ある星としての存在を解かれた彼女は、即ちカオスなのだ!)
よくわからないけど!
敵が「え、なに、どういうこと?」っていう顔をしてるスキに!
【残像】で突っ込んで【踏みつけ】キーック!
「目覚めろー! 愉快な仲間たち!」
フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)のユーベルコード『はじまりを刻む地の新星(コズミックイニシャライザー)』が発動。彼女の周囲の大気を魔力生命体へと変容させていく。
「酸素は無機物! つまりあたしのユーベルコードの対象になる!」
どことなく自身と同じ面影を持った魔力生命体を侍らせ、フィロメーラはエイプモンキーと対峙した。
「なるほど、無機物を変換するユーベルコードッキね。ならば……ミーはこれッキー! マニアックマシン『モンキー・メタモルフォーゼ・ビーム』!!」
フィロメーラと魔力生命体に対抗すべくエイプモンキーが作り出したのは、巨大なビーム砲だった。
「この『モンキー・メタモルフォーゼ・ビーム』は、生き物を変化させる特殊ビームを発射するッキー! これにより、ユーが変化させたその魔力生命体を元の空気に戻して無力化してやるウッキー!
ニヤリと笑い、ビーム砲を構えるエイプモンキー。それに対して、フィロメーラもまた唇の端を吊り上げた。
「おっと、本当にそんなことしちゃっていいのかなー?」
「ウキ?」
フィロメーラの言葉に、エイプモンキーが引き金を引こうとしていた指を止める。
「古代の詩人や学者は名付けた。はじまりの混沌をカオス、秩序ある宇宙をコスモス。秩序ある星としての存在を解かれた彼女は、即ちカオスなのだ! ……本当に彼らを原初の混沌に戻してしまっていいのか?」
「ウキッ!? げ、原初の混沌だと……それって何だッキ?」
「あたしにもよくわからないけど! とにかく隙アリ、キーック!!」
羽ばたいたフィロメーラが距離を詰め、エイプモンキーを蹴り飛ばす。オブリビオンはたたらを踏んでのけ反るが、大きなダメージは与えられない。
「くっ! ミーのマニアック知識の隙を突いてブラフを仕掛けるとは! だが、その程度でミーを倒そうとするなんて甘いッキ! そして同じ手は二度と食わないウッキー! メタモルフォーゼ・ビーム発射!」
体勢を立て直したエイプモンキーが変身ビームを撃ち放つ。蛍光色の光条が魔力生命体を飲みこみ、元の空気へと再変換して無力化。同時に放たれた拳がフィロメーラ自身を弾き飛ばした。
「……ふう、危ない所だったッキ。だが、ミーを倒すには力不足ウッキー!」
猟兵達の攻撃のほとんどを退け、勝ち誇るエイプモンキー。その足元で、花々が作る足場が形を変えつつあった。
苦戦
🔵🔴🔴
リダン・ムグルエギ
このコードは服を媒介に視覚を通し敵を攻撃する技
死角から服ごとアタシを攻撃しそうね
でも「服を見れば発動する」以上「事前にそれを見」れないハズよ
トリックアートをご存知?
色模様で距離感は容易に狂うの
服の柄に仕込み攻撃の直撃を避けようと試みるわ
クリノリンはどう?
元はスカート、広義では服にフレームを使う技法よ
アタシは体より一回り大きいフレームの上に対マシン用錯視衣装を着ておき、その下に「本命のコード用の別の衣装」を着ておくわ
マシンの攻撃で外の服が破れる事で本命が動き出すの
防具改造にアート、催眠術
目を見開いて見なさいな…アタシのブランドの全力を
見ざる!されたら針で目をつつくわ
まぁ、見たら五感全部封じるけど
緩く傾斜した小山の頂から、花々でできた道が伸びていく。緩やかに湾曲し螺旋を描くそれは、猟兵達とオブリビオンが対峙する山を取り囲むように下へ下へと向かっていた。
「そろそろ潮時のようだッキ。それでは猟兵諸君、新世界でまた会おう! ウッキ!」
下り道に向けて一歩踏み出したエイプモンキーの前に、紫煙をくゆらせるリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が立ちはだかった。
面倒臭い、なんて言ってられなさそうねぇ。けど、見た時点で、戦う前に勝負は決まってるのよ」
「ウキッ! ユーベルコードか!」
けだるげなリダンの瞳に一瞬閃いた鋭い光。それを見逃さず、エイプモンキーもまた自らのユーベルコードを発動させる。
見切ったウッキ! ユーのユーベルコードは衣装が鍵! つまりユーが着ている物を壊してしまえば発動しないッキ! マニアックマシン『モンキー・クロスブレイク・アシッド』噴射!」
エイプモンキーが創造した小型機械から、衣服だけを溶かす奇妙な溶解液が発射される。だが、リダンを直撃するはずだった黄緑色の本流は一メートル手前に着弾点をずらし、飛沫を浴びせかけるのみ。
「バナ……じゃなくてバカな!?」
「トリックアートをご存知? 色模様で距離感は容易に狂うの」
オブリビオンの狙いを狂わせたのは、リダンの衣装に巧妙に仕込まれた錯視罠だった。そして、彼女が用意した罠はこれだけではない。
「クリノリンはどう? 元はスカート、広義では服にフレームを使う技法よ」
溶解していく衣装を自ら破り捨てるリダン。その下から、本命の衣装が現れる。
「目を見開いて見なさいな……アタシのブランドの全力を」
システム・フラワーズの内部に満ちる花々よりも華麗なドレスが、エイプモンキーの目を射った。脳が反射的に生み出す信号が彼の感覚を揺さぶる。
「……くッキ……!」
エイプモンキーが膝を着いた。機会を得たリダンが追撃をかけるも、オブリビオンはよろめきつつ回避する。
「よくもやってくれたッキね……。だが、ミー達の計画は順調に進んでいるッキ! ユー達がいくら邪魔をしても無駄無駄無駄ウッキ! ウキキキキ!」
捨て台詞を吐いて、エイプモンキーは身を躍らせた。下り道を転がり、瞬く間に遠ざかっていく。
追跡しようとも考えたリダンだったが、エイプモンキーに倒された仲間達への気遣いが戦意を上回った。彼女は他の猟兵達を助け起こし、メンテナンスルートの出口へと向かう。
予知された完全な敗北は免れた。だが、それは勝利を意味しない。彼女達は苦い思いを抱きつつ、傷ついた体を休められる場所を目指して助け合い歩いていった。
成功
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