バトルオブフラワーズ⑨〜打ち破れ、猿知恵〜
花の、咲き乱れる空間であった。
粉雪の如く深々と降り積もる色とりどりの花弁。
見渡す限りの一面の花々はしかし、地にあって咲き乱れている訳ではない。
それらは空中で寄り集まり、塊の様な足場となって花の絨毯を形成しているのだ。
―――システムフラワーズ内部。
その花の絨毯の上で今、一匹の猿が跳ねていた。
「ウーーーーーッキッキッキッキッキ!」
●その名はエイプモンキー
「なるほど……中ボスって感じね」
グリモア猟兵ミア・ウィスタリアの視線の先にあるのは、画面に映し出された一面を花に覆われた空間。そして、その中を縦横無尽に飛び回るロボットの身体に猿の頭を持つ怪人の姿だ。
「さて、皆のお蔭で遂にシステムフラワーズ内部に進軍出来るようになったわけだけど、ここで第一関門ね。中では怪人軍団の幹部の一人、マニアック怪人『エイプモンキー』が待ち構えてるみたいだから、アイツを倒さないと先に進む事は出来ないわ。システムフラワーズ内部を転々としてるみたいだから、探し出して戦いを挑む事になるわね」
最もエイプモンキーが存在する限りは、全ての「花の足場」がエイプモンキーに繋がる様になっているので道に迷うという事は無い。
しかし、それは同時に迂回して先に進む事も出来ないという事を意味していた。
「まぁコイツは見ての通り猿だけど、こんなとこにいる以上勿論只の猿じゃないわけ。『自らの想像力が及ぶ限りのあらゆるものを創造できる能力』って言う超面倒くさい能力を持ってる上に超が付くマニアで理屈屋!」
―――つまり?
「こっちが何をしようとそれを先読みして無効化する何らかを作り出しちゃうって事よ」
でも、と彼女は続ける。
「そこに勝機があるわ!【自らの想像力が及ぶ限り】って所がミソね。要は想像も出来ない物は作り出せない。なら皆が奴の想像力の範囲外の何らかを作り出せれば倒せるって事よ!」
背後のホログラムウインドウに大きな×印と共に「論破!」の文字が表示された。
「言う程簡単な事じゃないのは解ってる。でもこの方法で倒し続ければ、アイツは永遠に骸の海から出てこられない……良い?此処からが本当の戦争よ!」
龍眼智
猿知恵。
英語にすると「shallow cleverness」と言うのだそうです。
カッコいいですね。
龍眼智です。
さぁ幹部戦第一幕で御座いますよ。
今回は下記注意事項が御座いますのでいつもより判定がガチンコです。
想像力の限りを尽くして、見事エイプモンキーを打倒して下さい。
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エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
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第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニレ・スコラスチカ
※
厄介な相手ですね。
ここはあえて、弱点が明確なユーベルコードを使って挑みましょうか。
【審問】の弱点は「真実を言えば解除され、容易に回避されてしまう」こと。敵はここを突いてくると予想します。おそらく…「どんな質問にも真実を答える機械」とかで。
しかし【審問】を使ってから解除かダメージを与えるまでには時間差があります。ここを狙い、【グラップル】で接近。【激痛耐性】に任せ【捨て身の一撃】を。
【審問】と共に放つ質問は「わたしは嘘をついている。○か×か?」
…自己言及のパラドックス。ご存知でしょうか?あなたはどうやっても「真実」を答えることはできない。
「それ以外はダメージ」なので黙秘権もありません。
「ウッキ!おでましウッキね、猟兵共!」
花の道でエイプモンキーと対峙するのは黒衣の少女、ニレ・スコラスチカ(旧教会の異端審問官・f02691)。
(厄介な相手ですね……でも、これなら逃げられない筈……!)
「……これから貴方にある謎掛けをします。それに答えられなければ痛い目を見ますのでお覚悟を……」
「キッキッキ!まだ何もしてない内からネタバラシとは舐められたもんッキ!良いウキ、特別に付き合ってやるウキ!」
(かかった……!)
余裕綽々で鼻をほじりながら応じるエイプモンキーにニレは必殺の問いを投げ掛けた。
「そうですか……では、死せば無罪。死せねば有罪。答えてもらいましょう……」
―――わたしは嘘をついている。○か×か?
そう、これこそ別名「嘘つきのパラドックス」と呼ばれる哲学上の命題!
「この文は偽である」という構造の文を指し、自己を含めて言及しようとすると発生するパラドックスの事である。この文に古典的な二値の真理値を当て嵌めようとすると、「この文は偽である」が真なら、それは偽だということになり、偽ならばその内容は真ということになり……というように無限に連鎖するのだ。
そして問いと共に彼女の手に握られた肉の鋸「祝福処刑鋸」の目がギョロリと動き、エイプモンキーに向かって槍の如く伸びる!
しかし、如何なる原理か。完全に直撃コースであった祝福処刑鋸がエイプモンキーに到達する直前、まるで空間を捻じ曲げたかの様にエイプモンキーを迂回して素通りした!
サングラスがギラリと光り、猿が嫌らしい笑顔を浮かべる。
「なっ!!?」
「ウーーッキッキッキ!対生物兵器バリア!自己言及のパラドックスとは確かに中々考えたウキ!……しかぁぁし、お前は一つ重大な見落としをしているッキ!その謎掛けは、鋸の攻撃を喰らった奴を捕縛する為の布石ウキ……つまり、そもそも鋸に当たらなければ……質問の意味が無いウッキー!!」
「ッッ!!……カハッ…!」
背中のブースターを噴かせ、一瞬で肉迫したエイプモンキーのボディーブローがニレの小さな身体に突き刺さった!
「そう……でしたね……失念していました……ですが、本命はこっちです!」
「ウキッ!?」
―――だが、それでは終わらない。
ボディーブローの衝撃に歯を食いしばって耐えながら、ニレは懐から聖縛骨釘を取り出すとエイプモンキーの肩口に叩き込んだ!
装甲の隙間に深々と食い込んだ釘から火花が散った。
苦戦
🔵🔴🔴
荒谷・つかさ
※
【妖術・九十九髪】を発動
これは私の髪を伸ばし、自由自在に操る技
まあ、髪の毛の触手のようなものよ
弱点は……当然だけど刃物で切れるし、炎で燃える点ね
ちなみにワックスとかで固めるのにも弱いけど、その時は固められた部分(場合によっては毛根ごと)引きちぎって再度発動するから無意味よ
ということで細切れ或いは灰にされる、と読むわよ
女の命に酷い事するわね、万死に値するわ
という訳で……「細切れの髪」或いは「灰化した髪」を操り
装甲の隙間から内部に侵入して機械部分を機能不全にしたり、奴の鼻や喉や耳や目の中に殺到させるわよ
「元が私の髪」であればどうなろうと操れるの
もし固めてたら?
固まった髪が矢や石礫みたいになるわね
「舞い、散り、広がれ。我が手たる九十九の髪々よ」
花の道に濡羽色の髪が揺蕩う。
続いて転移ゲートから現れたのは白衣緋袴に千早を纏った巫女装束の少女、荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)
宛ら呪いの日本人形の如く無尽蔵に伸びていく彼女の髪が、花弁の舞い散る空間を覆い尽くす様に侵食していく。
―――これぞ妖術・九十九髪。
「こりゃまた鬱陶しそうなのが来たっキー。だがその分解り易いッキ!そんなものミーの能力を使うまでもなくどんな能力かなんてバレバレだウッキ」
「そうね。見ての通りこれは私の髪を伸ばし、自由自在に操る技。まあ、髪の毛の触手のようなものよ」
今やメートルどころかキロの域に達していそうなつかさの髪が、幾筋にも分かれると鎌首をもたげ、一斉にエイプモンキーに襲い掛かった!
「ウッキー!毛根滅殺スプレー『ハゲニナール』!」
次の瞬間エイプモンキーが柱の様に地面に打ち立てたのは、身の丈程もある巨大なスプレー缶!
噴射口から放たれた白いガスがうねる髪ごとつかさの全身を覆い尽くす。
バサリと、糸の束が地に落ちるような音がした。
「なッ!?髪が!?」
ガスが晴れた後、つかさは変わり果てた姿でそこにいた。
外傷は無い……しかし、無いのだ。
髪が。
根刮ぎ。
羅刹の証たる赤い先端の角を残し、剃り上げた様なスキンヘッドになってしまった少女がそこにいた。
「ウーーー―キッキッキッキッキ!散髪なんて中途半端な事をするとでも思ったウキ?今このスプレーでお前の毛根を全て破壊してやったウキ!これで髪を操るどころか二度と髪が生えてくることは無いッキ。ご愁傷様ウキ?キー――ッキッキッキッキ!」
つるりとしたつかさの頭皮を指差し嘲る様に爆笑するエイプモンキー。
一方のつかさは徐々に落ち着きを取り戻し、自らの頭を撫で摩りながら地面にぶち撒けられた自分の髪を見つめていた。
「女の命に酷い事するわね……万死に値するわ」
「ウッキッキッキ、出来るもんならやってみればいいウキ。じゃあ……今度はこっちの番ウキ!」
エイプモンキーの背部スラスターが眩い光を放ちつかさへと猛突進を……かけようとした。
「そうね……じゃあそうさせてもらうわ」
「ウキッ!?」
正に自らを発射しようとしていたその時、猿怪人の足に絡み付いた物がある。
―――花の道を覆い尽くさんばかりに広がる、濡羽色の束。
―――つかさの髪である。
大蛇めいた動きでエイプモンキーに絡み付いた髪は、瞬く間に猿怪人を簀巻きにし、装甲の隙間からメカ内部に侵入を開始する。程なく内部へと到達した髪達はエイプモンキーの顔に群がると、目を塞ぎ、耳や口に侵入た。
「ヴッ!ヴォオオオオボボボ!!?」
「羅刹の女の髪は鋼より強く絹よりしなやか……簡単には抜け出せないわよ」
「ッッ!?」
今度はエイプモンキーが度肝を抜かれる番であった。
拘束を逃れようと必死に身体を揺するが、巻き付いた髪はびくともしない。
「………不思議そうね。誰が「抜け毛は操れない」って言ったの?「元が私の髪」であればどうなろうと操れるのよ」
そう言い、つかさは猿怪人を縛る束のもう片方を握った。
「ヴッ!ヴッギギギイイイイ!!!?」
「もう一度言うわね……」
鎖分銅の分銅の様に大上段で振り回されるエイプモンキー。
つかさはその勢いを殺すことなく、トドメとばかりにエイプモンキーを地面に叩き付けた!
花の道に頭から埋まった猿怪人を尻目につかさが頭皮を一撫でする。
瞬く間に頭皮が産毛で覆われ、数秒後には濡羽色の長髪をなびかせた少女がそこにいた。
「万死に値するわ」
成功
🔵🔵🔴
メグレス・ラットマリッジ
※
私のUCは光と音と電気の攻撃……どうせ読まれているのであれば、自分はこれから雷を落としますと言い切ってしまってもいいでしょう。
完全にカウンターに特化した姿勢は見事、いざ尋常に知恵比べと行きましょう。
雷は発生地点から最も高く近い所に落ちる、対策として避雷針を創造すると予想します。
しかし雷は落ちた物体から再び放電する……側撃って言うんでしたっけ?
その性質を利用し、避雷針より高い場所に鉄製の矢を射掛け、側撃から側撃とモンキーへ誘導するように矢を連射します。
最後の一矢は本体へ、絶縁体を纏っているのならそれを貫いてみせましょう。
システムフラワーズ内部は、大地の無い空間である。
天候調整のシステムでもあるのだろうか、花の足場の上空に徐々にどす黒い雲が広がって来ていた。
その真下。
しばしの間、頭から花の足場に突き刺さっていたエイプモンキーがガバっと頭を引っこ抜いた。
「ブハァーーッ!!オノレ猟兵共め……舐めた真似をしてくれるウッキ……」
「あらあら大丈夫ですか?」
「ウッキー!?新手ウッキ!」
ヘルメットに未だにこびり付いた髪の毛と花弁の混合物を鬱陶しげに手で払っていたエイプモンキーは、声のする方を振り返りつつも思わずザッと後退して距離をとった。
そこにいたのは……ボロボロのフェルト帽を被った妙齢の女性。
ここがシステムフラワーズではなく只の花畑だったとしたら嘸かし絵になった事だろう。
「どうも、メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)と申します」
「次の相手はお前ウッキか……もうミーは油断しないッキ。生半可な攻撃ならしない方がマシウッキ!」
体毛を逆立て、そう威嚇するエイプモンキーにメグレスは涼しい顔で言い放った。
「そうですねぇ……では雷でも落としてみますか?」
「へぇ……雷ウッキ……?」
にこやかな顔で笑みを交わす一人と一匹
―――動きが生まれたのは同時だった。
何処から取り出したのか、バッと長大なロングボウを引き絞るメグレス。
その弦には既に何本もの鋼鉄の矢が番えられている。
対するエイプモンキーも同じく長大なロッドの様な、先細りの鉄の棒を召喚し地面に打ち立てた。
これは―――避雷針だ。
「ウッキー!お前の戦術は見えたッキ!お前の能力は好きな場所に雷を落とす事ができる能力!だがそれは囮でミーが避けた瞬間矢で狙い撃つつもりウッキー!ならば雷に当たらないようにすれば矢を捌くのなんざ朝飯前ッキー!今度こそ完璧ウッキー!………ウキ?」
上空に寄り集まった雷雲を稲妻が走り抜け辺りを激しい閃光が灼いた。
その時、番えた矢の狙いを一瞬たりともエイプモンキーから離さなかったメグレスが、突如狙いを真上に変えた。
風を切る音と共に放たれた三本の矢が放物線を描いて飛んでいく。
勿論大暴投だ。エイプモンキーに当たるどころか二人の間の花の足場に転々と矢が突き刺さった。
「ウ……ウーキッキッキッキッキ!!暴発した!暴発したウッキー!?何処を狙ってるッキ!攻撃はおわりで良いッキね!」
勝ち誇った様子で拳を振り上げたエイプモンキーがメグレスに肉迫する。
「いいえ、これで良いのです」
空が割れんばかりの轟音を響かせ落雷が発生する。
秒速200kmで天地を貫いた雷光は吸い込まれるように避雷針にぶち当たった。
「ギッッッ!!!???」
―――側撃雷と言う現象がある。
天候状況によって多少の変動はあるものの、通常落雷時の電圧は200万~10億ボルト、電流は1千~20万、時に50万アンペアにも達する。
それ程の莫大な電流が直撃すれば、それが導電体だろうと絶縁体だろうと関係ない。一瞬と言う言葉すら生温い刹那の期間で許容電荷のキャパシティは突破し、周囲の空気抵抗をぶち破り、周囲の導電体に向かって再放電されてしまうのだ。
そう、先程メグレスが放った鋼鉄の矢である。
エイプモンキーが一歩踏み出したその先に、正にその内の一本が突き刺さっていた。
結果、電流は避雷針から矢を伝い、回り込む様にエイプモンキーを背後から強襲したのである。
「な……何が起こっ……た……ウッ……キ……」
全身から蒸気のように煙を噴き上げ、黒焦げになった猿怪人が地に倒れ伏した。
成功
🔵🔵🔴
クロエ・ウィンタース
やる事は変わらんさ。俺に出来るのは寄って斬る事だけだ。
いざ。
>行動選択
【SPD】アレンジ歓迎
UC【黒】を使う
妖気を脚に溜めるだけ溜め、
一息に踏み込み音速を超える速度で相手へ飛び込む
俺の切り札は速度のみ
相手は俺の速度を見切った上で更に上の速度で回避するだろう。
ならば。ならばこそもう一手
最初の一撃を回避される事を織り込み済で【フェイント】とし
後方へ【ジャンプ】しながら妖気を再度溜める
遅れてやってくる音の壁を破った衝撃波を足場にし
もう一度踏み込み相手へ再度加速し跳躍する
衝撃やら反動やらで自傷を負うが気にしない
肉薄出来たら黒を叩き込む。足りなければありったけだ
黒を手放し左右から白仙、藍凪を出し叩き込む
これは、もしや、やばいのでは?
今だ全身から黒煙を上げながら新たな花の足場へと逃げ延びたエイプモンキーの脳裏に一瞬そんな考えが過る。
否!否否否否否否否否!!
何という弱気!!
そんな筈がない!!
自分には無敵の想像力がある!創造力がある!!
「……じゃあ何故、ミーが追い詰められているッキ……?」
ギリッ……と剥き出しの歯が軋む音がする。
「へぇ、そうなのか?」
「ウキッ!?」
いつの間にいたのだろう。
背後にいたのは、影の様な黒衣の女であった。
色とりどりの花々の中にあって、そこだけ空間が切り取られた様に人型の闇が蠢き、見開かれた真紅の眼光がエイプモンキーを映し出している。
「おま…」
「御託はいらんさ、俺に出来るのは寄って斬る事だけだ」
―――いざ尋常に勝負。
何かを言おうとしたエイプモンキーの言葉を遮り、黒衣の女、クロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)は腰溜めに鞘に収めた妖刀【黒】を構え、居合の構えで猿怪人へと斬り掛かった!
音速を超える爆発的な短距離移動は花の足場を大きく抉り、瞬時に10mもの距離を詰めエイプモンキーへと肉迫する。
同時に抜刀からの一撃。
しかし、ここで奇妙な事が起きる。
突如視界がスローモーション映像の如くゆっくりと流れ出したのだ。
自らの放った妖刀の斬撃をエイプモンキーが仰け反って交わす。
風圧で吹き上げられた花弁の嵐が妖刀に触れ、真っ二つになる様子をコマ送りめいて視ることが出来る。
それは五感を加速した事によって超感覚で世界を知覚出来ている訳ではない。
エイプモンキーの作り出した事象減速装置により、クロエだけ減速した時間の中に閉じ込められてしまったのだ。
敵が反撃の体勢に入ったのが見える。
しかし、それは予測していた事。何故なら此方も一撃目はフェイントなのだから。
カウンター狙いで放たれるストレートナックルをしかし、クロエは後ろに跳ぶ事で辛くも射程外に逃れる。
「チッ!うろちょろするなッキー!」
減速装置の効果時間が――切れた。
体感覚が通常の時間軸に戻ると共にエイプモンキーの声も再び聞き取れる様になる。
背中に感じる風圧は自分が初手で飛び出した衝撃の名残か。
(ここだ!)
脚部の妖気充填が再び臨界点を迎える。
その身は今だ空中。故に相手から見れば自分は今格好の的に見えている筈。
―――そこを突く。
「いくぞ。「黒」」
構えた妖刀「黒」が仄蒼い光を放ち、どす黒い妖気で覆われた両足が空気の壁を踏みしめる。
行った。
「グゥゥゥッ!」
強引なマニューバーによってクロエの全身を強烈なGが襲う。
眼の前には驚愕の色を顔に貼り付けたエイプモンキーの姿。
再び発動する減速空間によって身体が重くなる。
ここでクロエは第二の策を発動した。
「黒」を―――手放したのだ。
感覚が……戻った!
そう、エイプモンキーの作り出した事象減速装置は「指定した対象の固有振動数を変化させ時間のスピードを操作する装置」である。
先程はクロエ自身……そして今度は「黒」。
「ッ!?」
両者が交錯する瞬間、放たれた剣閃は―――3つ。
減速空間内で大上段からゆっくり落下する「黒」。
そして残り二つはクロエが懐から抜き放った二つの短刀に依るものである。
その全てがすれ違い様にエイプモンキーの装甲を深々と切り裂いた。
―――ここまで僅か数秒の世界の出来事。
妖刀を鞘に収める鍔鳴りの音と、猿怪人の身体が花の道に崩れ落ちる音は……奇しくも同時に響いた。
大成功
🔵🔵🔵
フィロメーラ・アステール
「先に言っておくぜ!」
今から(宇宙では)よくある自然現象を起こす!
前の戦争じゃほぼ使えなかった!
(宇宙船相手だと)楽に防がれる可能性があったから!
ただ威力は高いから! コレに賭ける!
マニアを名乗るなら正面から破ってみなよ!
という【パフォーマンス】でプライドを煽る!
そして【星の遊び場】!
【全力魔法】で光属性の太陽風を起こす!
秒速約450kmのプラズマ粒子!
航宙技術の未発達なこの世界では、対応できまい!
でも、なんかすごい想像して対応するか? してもいい!
発動したら勝ちだが!
太陽風は即座に大気に衝突し、一帯を覆うオーロラとなる!
自然現象の変換!
真の狙いはオーロラの電流攻撃だ!
(【オーラ防御】しつつ)
花の雨が降っていた。
深々と雪の様に舞い散る花弁が、花で出来た大地に倒れ伏す猿怪人を覆い隠すように降り積もっていく。
その上を今、金の流星が駆け巡っていた。
それは出鱈目な軌道を描いてシステムフラワーズ内部を飛び回り、やがて足場の上に仰向けに倒れるエイプモンキーを見つけると急角度のターンを決め、一直線に近付いて行く。
「お、いたいた!お前が……なんだっけ。エイトモンキーって奴だな!?」
「ミーはエイプモンキーだウッキーーー!!」
淡い光りに包まれた金色の妖精フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)の盛大な出オチボケに思わず跳ね起きツッコミを入れてしまうエイプモンキー。
だがフィロメーラはそれには取り合わずに頭上に手を掲げる。
その手の先に輝く光球が生まれると、それは周囲の花弁を引き寄せながら徐々に肥大化し、不気味に脈打ちながら光度を上げていく。
「そんな事より先に言っておくぜ!あたしは今からよくある自然現象を起こす!よくあるが超やべー奴だ!ぶっちゃけ発動したらお前は死ぬ!」
だが、とフィロメーラが嗤う。
「お前マニアなんだろう?あたしはこれに賭ける。お前もマニアを名乗るなら真正面からこれを打ち破ってみせなよ」
―――そうだ、自分はマニアック怪人エイプモンキー。
―――どんなにボロボロにされようとマニアックさと屁理屈だけは負けるわけにはいかない!
「言われるまでもないウキ……お前が何をしようとひっくり返してやるウッキ!」
「上等だ!じゃあ行くぜ!?」
トリッキー・スター・ファンダム
―――星の遊び場!!
―――スーパーオキシジェンジェネレーター!!
叫ぶユーベルコードの名は同時。
次の瞬間フィロメーラの頭上ではち切れんばかりに膨張した光球が遂に爆発した!
そして全方位に撒き散らされるのは秒速約450kmのプラズマ粒子!
そう、太陽風である。
システムフラワーズ内部を光の波が押し流し、舞い散る花弁が空中で火に炙られたかの様に炎上しては消えていく。
しかし、エイプモンキーの周囲だけは様子が違った。
瀑布の如く水蒸気が濛々と立ち昇り、超局地的な雨となって花の大地を濡らす。
「ウ……ウーーー―キッキッキッキッキ!!太陽フレアでミーごとこの空間を焼き尽くすつもりだったウキ?その発想は悪くなかったウッキが、お前の誤算は太陽風の構成原子が水素イオンな事を見落としてた事ッキ!水素イオンならば酸素分子をぶつければH20、即ち水になる道理!これでミーの勝cちちちちちちっっっっっ!!!!??」
次の瞬間。
勝ち誇った表情で薀蓄を披露していたエイプモンキーの全身が突如痙攣を始め、全身のメカ部分から火花と白煙を噴出した。
「残念、それはここが宇宙空間だったならばの話だ!」
ビシッとエイプモンキーに指を突き付けるフィロメーラ。
そして今、彼女の放った光の波は消え去る事なく二人の周囲でゆらゆらと屏風の様に揺蕩っている。
―――オーロラ。
極光とも呼ばれるこの現象は、太陽風のプラズマが大気中の酸素原子や窒素原子を励起することによって発光し、強烈な磁場を形成する事から膨大な起電力があるとされている。
「あたしの狙いは太陽風でお前を攻撃する事じゃない。太陽風でオーロラを引き起こしお前を感電させる事だったのさ!」
エイプモンキーの周囲をぐるぐると旋回するフィロメーラ。
ふとヘルメットごしに猿怪人の顔を覗き込み、ヘルメットを小さな拳で軽く叩く。
「……ま、もう聞こえてないか」
そこには驚愕の表情で固まっているエイプモンキー。
………………彼は、立ったまま絶命していた。
大成功
🔵🔵🔵