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バトルオブフラワーズ⑨〜マニアック・イクエイジョン

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #エイプモンキー

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「ついにシステム・フラワーズ内部への道が開きましたわ」
 ざっくりと露出のある、白いドレスに身を包んだろうたけたエルフが、微笑んで告げた。
「お集まりいただきありがとうございます。わたくし、グリモア猟兵のマーラー・ジュウナナサイと申しますわ。皆さんには、怪人幹部・マニアック怪人エイプモンキーの打破をお願いしたいんですの」
 エイプモンキーはオブリビオンであるがゆえに、倒しても復活する。だが、短期間に許容値を超える回数分倒されれば、復活できなくなるという。今回の依頼は、復活したエイプモンキーを再び倒すというものだ。
「エイプモンキーは『想像した全てを創造する』能力を持っているようで、創造物をマニアックな知識で操る難敵ですわ。エイプモンキーは、必ず先制攻撃をおこなってきます。こちらがユーベルコードをいくつも使用すれば、使用した回数分の先制攻撃を行ってくるでしょう。その先制攻撃によって、エイプモンキーは皆さんの攻撃の無効化を狙ってきますわ。こちらを無効化したのち、エイプモンキーは強力な攻撃をおこなってくるようです」
 さすが幹部の立場にあるだけあって、非常に厄介なオブリビオンだと言えるだろう。
 だが、マーラーは笑みを深めて続けた。
「ただし。相手の狙いがこちらの無効化だと分かっていれば、対処のしようがありますわ。皆さんご自身の攻撃の弱点を分析し、エイプモンキーが創造するであろう武器や戦術を先読みすることによって、エイプモンキーの先制攻撃に対抗する手段を考えることができるでしょう。この戦いの本質は頭脳戦、というわけですわ」
 研究者であり、人間観察が趣味のマーラーは、どこかうきうきとして予知の内容を続ける。
「また、エイプモンキーは非常に強力なオブリビオンですけれど、この戦場は特殊で、行動の根拠となる理論やアイデアがマニアックであればあるほど、行動の効果が高くなるのですわ。この戦場においては皆さんが完全に有利です。エイプモンキーは確かにマニアックな知識を豊富に持っていますけれど、すべてを知っているわけではありません。事前に準備ができる皆さんでしたら、いくらでもマニアックな知識を仕入れることができますでしょう。エイプモンキーもうなるような理論武装こそ、この戦場での力になるのですわ」
 いくらエイプモンキーが強かろうと、事前に行動を読み、そして事前に理論武装をすることによって、力の差をくつがえすことができるだろう。勝ち目は十分にある。
「システム・フラワーズの内部は、花々が咲き乱れる空間です。花々が集まって、足場になるそうですわ。ですけれど、エイプモンキーがいる限り、足場はすべてエイプモンキーに繋がるようです。敵を見つけるのは簡単だと思いますけれどね」
 エイプモンキーを見つけるのは簡単でも、エイプモンキーがいる限り、その先へと続く足場は現れない。エイプモンキーを復活不能にするために、着実に勝ちを積み重ねていきたいところだ。
「まとめます。今回の依頼では、皆さんの攻撃を無効化しようとする敵のカウンターを予測し、カウンターの回避や無効化をできるだけマニアックな理由つきでおこなってくださいまし。皆さんの攻撃自体も、マニアックな理論やアイデアが詰まっているほど効果が高くなります。先読みと理論武装が勝利の鍵ですわ」
 マーラーは少し真剣な顔になる。
「ユーベルコードの多用はエイプモンキーの先制攻撃回数を増やします。また先制攻撃のほかに、エイプモンキーは通常の攻撃を用いてきますわ。どうかお気をつけくださいまし」
 今一度微笑み、姿勢を正したマーラーは、猟兵達に深く頭を下げた。
「強敵を打ち倒した皆さんの、ご無事の帰還をお待ちしておりますわ」


あんじゅ
 マスターのあんじゅです! マーラーさんジュウナナサイと行く、五つ目の事件のご案内です。
 今回は、バトルオブフラワーズ⑨の戦争シナリオです。以下に諸注意を述べますので、よくお読みになってプレイングを作成してください。

 エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
 この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
 この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
 対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。

 幹部戦ですので判定は厳しめにまいりますが、それに負けないくらいのアイデアが詰まったプレイングをお待ちしております!
 それでは、皆様どうぞご一緒に、この事件を解決に導きましょう!
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第1章 ボス戦 『マニアック怪人『エイプモンキー』』

POW   :    マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD   :    マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

星群・ヒカル
さあ行くぞエテ公!
ちなみにパンク対策に銀翼号のタイヤにシリコン詰めてあるからな!

『ゴッドスピードライド』に対し、敵はスリップ誘発による自滅狙いで来るだろう
姿勢を崩して仕舞えばライドテクのみではリカバー不能だ

だが忘れるな
銀翼号は「宇宙バイク」だ
地上と違い、宇宙では普通にハンドル曲げただけでは方向転換できない
宇宙バイクにはメインエンジンの他、方向転換、そして姿勢制御用スラスターが装備されている
所謂ロケットや人工衛星でも使われてる技術だぞ

地上ではオフにしてる姿勢制御回路をオンに
勿論制御は難しいが、おれは超宇宙番長だ
銀翼号の性能に長年培った『騎乗』のテクが合わさり
滅茶苦茶な体勢からでも復旧して突撃だ!



 スペースノイドの『超宇宙番長』、星群・ヒカルは、愛用のバイク「銀翼号」にまたがりエンジンを吹かす。レッドとシルバーのメタリックカラーの愛機は、星の欠片を散らしたように輝いた。
「さあ行くぞエテ公!ちなみにパンク対策に銀翼号のタイヤにシリコン詰めてあるからな!」
「誰がエテ公だウッキー!!ミーに厳しいようで優しい解説つきとは恐れ入ったウッキー!でも許さないウキキーー!!」
 煽りに乗って怒るエイプモンキーを尻目に、ヒカルは銀翼号のアクセルを踏み込む。足場の花弁が後ろへと舞い上がり、超特急で周囲の花が銀翼号の前に道を作っていく。
「パンクしないのなら、スリップして自滅するがいいウッキー!ミーのマニアック知識によれば、表面に水の膜が張った溶けかけの氷床こそが、よく滑る床ウッキー!水膜によって摩擦がガンガン減っていくウッキー!」
 エイプモンキーを中心として、真っ平な氷床が見る間に広がっていく。薄っすらと水の膜が張った、エイプモンキーの想像通りの床が創造されたのだ。エイプモンキーの足場だけは花弁のままだが。
「ちなみに同じ床でも、止まってる時より動いてる時のほうが摩擦が小さくなるウッキー。ユーは突っ込んで来るからツルツルだウッキッキー!」
 大喜びでマニアック知識を披露するエイプモンキー。すると、なんと氷床が光りだした。マニアック知識によって、スリップしやすい床から、スリップさせる床へとランクアップしたのだ。まさにここは、マニアック怪人のためにあるような戦場といえよう。だが。
「そう来ると思ったぜ」
 ヒカルがにかりと笑った。広がる氷床と、進む銀翼号が接した瞬間、一瞬、ハンドルが有り得ないくらい軽くなった。そしてすぐに制御不能になり、姿勢が大きく崩れる。こうなってしまえば、ライドテクのみではリカバー不能だ。
 ――普通のバイクであれば。
「おれの銀翼号は、『宇宙バイク』だ!」
「あ、あれはウッキー!?」
 銀翼号が変形し、宇宙仕様のパーツがあらわになる。
「教えてやるぜ。地上とは違って、宇宙では普通にハンドル曲げただけじゃ方向転換できないんだ。だから宇宙バイクには、メインエンジンの他に、方向転換、そして姿勢制御用スラスターが装備されてるんだ!所謂ロケットや人工衛星でも使われてる技術だぞ」
「ロケットや人工衛星の知識ウッキー!?で、でも!いくら宇宙バイクだろうと、そんな体勢からじゃユーは倒れるしか――」
「――ない、と思っただろう!?」
「ウギッ!?」
 ヒカルは、地上ではオフにしてる姿勢制御回路をオンに切り替える。
「エテ公、おれを誰だと思ってるんだ?」
 重心を低く、スラスターの噴射を高く。倒れかけた姿勢を、上体を大きく回転させることでリカバリーする。もちろん、スラスターの噴射が少しでも強すぎれば、逆に少しでも弱すぎれば、転倒はまぬがれない。だが、銀翼号はなめらかに体勢を立て直し、エイプモンキーへと加速していく。
「そんな、無茶苦茶だウッキー!?な、なんで走れるんだウッキー!?」
「お前には絶対負けないものがある。銀翼号の癖、性能、何もかも知り尽くした、おれと銀翼号との絆だ!」
 その時だ。スリップさせる床が光を失い、一体となったヒカルと銀翼号が共に輝き始めた。
 確かに摩擦の知識は、マニアックな知識なのかもしれない。だが知っている者なら知っているものだ。対して銀翼号の知識は、ヒカルにしか知り得ないオンリーワンのマニアック知識。どちらがマニアックかは、現状を見れば明らかだ。
「おれと銀翼号の絆が認められたってことだな。行くぜ相棒!【ゴッドスピードライド】!」
 これまでヒカルは、ギリギリ滑らないバランスと速度を保っていた。だが戦場はヒカルに味方した。アクセルを一気に踏み込めば、輝くヒカルと銀翼号が、まるで流星のように尾を引いて加速する。
 音速の壁を超え、衝撃波を置き去りに、さらなる加速の先、神速(ゴッドスピード)の域へ――消えた。
 消えたように、エイプモンキーには見えたのだ。反撃を想像する時間などない。もはやすべては遅い。気づけば、全身の痛みと共にエイプモンキーは宙に舞っていた。
 シュゴォオオオ!!ドリフトを応用した逆噴射に、花弁が吹き上がる。ヒカルは、すでに氷の消えた花弁の足場に、銀翼号を止めた。まるで勝者を祝福しているかのように、ヒカルに花々が降りそそぐ。
「そういえば、おれが誰だか言ってなかったな。教えてやるぜ。おれは星群・ヒカル、超宇宙番長だ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

推葉・リア
想像した全てを創造する…なんて素敵!けど私だって負けないわ!

『バトルキャラクターズ』ゲームのキャラはわかりやすい、属性武器スキル…それぞれキャラごとに決まっている、これはどのゲームにも言える事

向こうは私の推しキャラ達の苦手な属性や攻撃手段で対抗してくると思うわ
けど同じキャラでもバージョン等によっては服装が変わる、属性武器スキル攻撃方法がガラリと変わるキャラも多くいる

だから私はあえて“外見をあえて別バージョンの姿”で推しキャラ達を予め呼んだ状態で行くわ、少しでも騙させる為に【催眠術】【言いくるめ】も使ってね
水だと思ったら風、槍だと思ったら剣…この【だまし討ち】混乱するでしょう?

【アドリブ歓迎】



(想像した全てを創造する……なんて素敵!けど私だって負けないわ!)
 妖狐の推葉・リアは、推しキャラを召喚して推しキャラと共に戦うバトルゲーマーだ。想像を創造するのは、リアもまた同じといえよう。想像ではなく、妄想かもしれないが。今も決意は口から出ておらず、心に思っただけである。
 そんなリアの周囲には、リアの推しキャラがずらりと並んでいた。その数なんと30人。リアのユーベルコード【バトルキャラクターズ(オシキャラクターショウカン)】に応じた推しキャラたちは、いつもとは異なる服装をしていた。
「ああースーツ姿~!いい匂いするー!こっちは露出が増えてるなんて最of高ー!うぁあああ!推しと推しのペアが色交換してお揃いの衣装なの何度見てもズルい、ズルすぎてズルい!尊い!ありがとう、ありがとうバトルキャラクターズ……!」
 決意は出ずとも、本音はボロボロ出てくるリアの口であった。オタク特有の早口状態のリアを、鴉の『夜色』とコンゴウインコの『星色』が落ち着けとつつく。
「はっ、そうね。今はエイプモンキーを倒さなきゃね!ありがとう、夜色、星色!」
「誰が倒されるウッキー?ウッキッキ、全部知ってるキャラだウッキー!マニアック怪人を舐めると痛い目見るウッキー!」
 はね飛ばされたダメージから起き上がったエイプモンキーは、まだまだ元気そうだ。ゲームキャラたちは知らない衣装を着てはいるものの、30キャラすべての攻撃方法はすぐに思い浮かぶ。
 そもそも、ゲームのキャラは分かりやすいのだ。属性・武器・スキル等がそれぞれキャラごとに決まっている。これはどのゲームにも言えること。であれば、無効化する対策もすぐに立つというものだ。
「さすがだわ、エイプモンキー。でも、例えばこの方。『水属性』の超強力な魔法を繰り出す方を、どうやって止めるつもりなの?」
 眼鏡の奥の、リアの瞳が光る。その推しキャラは通常水属性だ。それは間違いない。リアは水属性の弱点を考えさせるよう、水属性であることは決定事項であるかのように言葉を選び、駄目押しで催眠術を匂わせた。リアの言葉が本物だと、エイプモンキーに思い込ませるために。
「ゲームのルールももちろん知ってるウッキー!そのキャラは水属性ウッキーね?水属性は土属性に弱い、いわゆる五行の相剋だウッキー!土剋水といって、土は水を吸い取り、水を濁す天敵だウッキッキー!」
 上機嫌のエイプモンキーがそこそこマニアックな知識を披露すると、土属性の猿が創造された。そして次々と30匹の猿が創造されていく。すべてのゲームキャラに対応した――とエイプモンキーが思っている、弱点を突く攻撃を持った猿たちだ。
 リアは内心ガッツポーズ。
「30対30ってことね。じゃあ皆……よろしくね!」
「行けウッキー!返り討ちにしてやるウッキー!」
 30人の推しキャラと、30匹の猿が同時に飛び出した。
 先ほど水属性だと言われた推しキャラは、いつもとは違う緑色のローブをまとっていた。対応して生み出された猿が、土を大量に召喚して潰さんとする。この物量を前にしては、水では押し流されてしまうだろう。
 めりめりっ!土が、止まった。土の先には、巨大な木が生えそろい、壁をなしていたのだ。推しキャラが杖を一振りすれば、木が土の養分を吸い取り、急激に伸ばしたツタで猿を締め上げるように潰す。
「き、木属性ウッキー……!?」
「そう!山をテーマにした期間限定イベントで、隠し条件をクリアした場合にだけ手に入る超限定衣装のこの方は、木属性の魔法を操るの!衣装は緑で、ところどころに竜鱗モチーフがあるのは、まさに五行で青龍が木だからよ♪杖に付いてる宝石は、碧が三つ緑が四つだけど、これは九星の三碧と四緑が木に対応してるからなの!」
「そ、そんな細かいところまで知り抜いてるウッキー!?知るわけないウッキー!!」
「じゃあこの言葉も知らないのかな?神は、細部に宿るんだよ」
 その瞬間、最後の猿が剣によって斬り裂かれ、消えた。本来なら槍で戦うキャラの剣によって。
「ぜ、全滅ウッキー……ウキッ!?」
 エイプモンキーは身をびくりと震わせた。リアが語った推しキャラのマニアックすぎる知識によって、推しキャラたちが光を帯びたのだ。それもそのはず。推しキャラの衣装も、攻撃方法も、同じキャラクターコンセプトを元にしている。推し語りは、マニアックに攻撃の根拠を述べることに他ならないのだ。
「光ってるー!尊い……!皆っ、お願い、エイプモンキーをやっつけちゃって!」
「「「応!!!」」」
 推しキャラたちはリアに応え、一斉に飛び出した。
 対するエイプモンキーは、30人もの攻撃を一気に把握しきれない。なにせ、攻撃方法が違うなどと、ついさっき知ったばかりなのだ!
「うっ、ウキキキーーー!!」
 頭がパンクしたエイプモンキーは想像することができず、本当にただの、とにかく硬い壁を創造した。だが、壁に幾筋もの線が入ったかと思うと、壁は美しい断面を見せて崩れ落ちていく。無属性に対して強い推しキャラがいたのだ。
 そして光り輝く推しキャラたちは、今や無防備となったエイプモンキーに、かわるがわる渾身の一撃を見舞っていく。
「ウギ!?ウッギャアアアアアアア!!」
 最後の一撃まで叩き込まれたエイプモンキーは、どぉぉんと音を立てて倒れ込んだ。
 リアはそれを見て、静かに言う。
「あなた、さっき言ったよね。「知るわけない」って。それじゃあ私に勝てるわけないわ。私には……推しへの愛があるんだもの!」
 まさしく愛で勝利をもぎ取ったリアは、推しの真ん中でピースサインを決めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

出水宮・カガリ
【ヤド箱】ステラと、かたりと、オルガンの(ノトス)と

まあ、まにあっくも、基礎があってこそだからな
うーん、どうにも城門は頭が硬くてなぁ

空間に入った瞬間からオーラ防御・盾受けで対応できるようにしておく
ほわいとあうと状態でも死角を狙えるとしたら…
感覚に頼らず、温度の位置を自動で計測する灼熱攻撃か
あるいは、ここは自分の領域だと再定義するか

ならば、カガリは拒絶しよう
【不落の傷跡】【拒絶の隔壁】で強化した盾で、念動力も使って守れるようにしておく
【錬成カミヤドリ】で盾を複製して囲い、全方位へ対応する
温度の察知や視認が脅威になるなら、今はそれも拒絶し、遮断しよう
UCの発動を阻止しに攻撃するなら、盾で受け流す


ステラ・アルゲン
【ヤド箱】で参加

カウンターのカウンターを狙う…考え込むほどわけがわからなくなってきましたよ

流星剣より【全力魔法】【高速詠唱】にて
氷【属性攻撃】の【オーラ防御】をこの全ての場所に展開

吹雪に閉ざされた空間とすることでホワイトアウト現象を引き起こす
視界は白に塗りつぶされ、方向の識別が不能となり、平衡感覚を失い空間識失調を相手に引き起こそうか
マニアックな理論とはこうだろうか?

我々の場所が分からないから
死角から攻撃できなしマシンは氷漬けになる
機械は極端な寒さに弱いだろ?

相手が見えないならこちらも同じ?
ここの空間は私が魔法で作った
つまり私が空間の支配者だとも
仲間には影響がない
あとは【流星雨】を落とすのみだ


ノトス・オルガノン
【ヤド箱】で参加
アドリブ歓迎

◆WIZ
手の内が握られているというのは厄介だな
ある程度の傷は覚悟の上
確実にダメージを与えよう

技能【オーラ防御】を自分の全方位に常時展開
ステラの視界撹乱後、武器【Lily】からUC【White Lily】を使用
技能【属性攻撃】で風を呼び吹雪を増長
UCを技能【範囲攻撃】で増幅しつつ、カウンターをある程度相殺しながら【オーラ防御】で持ちこたえる

相殺、といったかな
この無数の花弁、全て捌ききれるかな?
ランチェスターの法則とでもいうのだろうか
これは人ではなく花だが、これだけの量は十分脅威だろう


落浜・語
【ヤド箱】で参加。

カウンターにカウンターで返すとカウンターで返ってきて?
…うん、なるほどわからん。

アルゲンさんが視界を白に塗りつぶしてから『誰が為の活劇譚』を使用
「語りますは、キマイラフューチャーの中枢部。何事にも先手を打って、マニアックな理論でマウントを取る。
そんな猿をぶちのめす。猟兵方の話にございます!」

見えないことは俺にとって関係ない所か、都合が良いことばかりなんでね。
一人前の噺家なら、所作がなくとも語りだけで共感させる。
それに何事も士気が大切なんだよ。それが低けりゃ数に意味はない。逆にそれが高けりゃ、数が少なくても問題ない。
なら、士気が高く数が多ければどうなるか。
今から身をもって知れ。



 続いて戦場に現れたのは、四人のヤドリガミだ。
「カウンターのカウンターを狙う……考え込むほどわけがわからなくなってきましたよ」
 鉄隕石から作られた流星剣のヤドリガミ、ステラ・アルゲンがぼやく。凛々しい眉を、今ばかりは困ったようにひそめている。
「カウンターにカウンターで返すとカウンターで返ってきて?……うん、なるほどわからん」
 名人噺家が使っていた高座扇子のヤドリガミ、落浜・語も、腕を組んでうなる。いつもの着物ではなく洋服なのは、語の信条だ。
「手の内が握られているというのは厄介だな。ある程度の傷は覚悟の上。確実にダメージを与えよう」
 古びた教会に鎮座するパイプオルガンのヤドリガミ、ノトス・オルガノンは、皆に聞かせるように語る。静かで落ち着いた、よく通る声で。
「まあ、まにあっくも、基礎があってこそだからな。うーん、どうにも城門は頭が硬くてなぁ」
 城門に残っていた鉄門扉のヤドリガミ、出水宮・カガリもやや困り顔だ。カガリはすでにオーラ防御を展開し、いつでも盾受けができるように構えている。カガリは城門、人を守るのが役目だ。
「ウッキ……キ。酷い目に遭ったウッキー……」
 倒すべき敵、エイプモンキーが花弁の上でよたよたと立ち上がる。エイプモンキーは猟兵たちを見つけると、これまでの鬱憤をぶつけるように叫んだ。
「今度は四人ウッキ―!?何人で来ようと同じことウッキー!返り討ちにしてやるウッキー!」
 全身を強打し、さらに無数の攻撃を受けたエイプモンキーの装甲はボロッとしていた。それでもまだ元気な様子は、さすが怪人幹部といったところか。
「ユーたちの攻撃を無効化するには、これだウッキー!」
 エイプモンキーは【流星雨(リュウセイウ)】【White Lily(ホワイトリリィ)】【誰が為の活劇譚(ソレハナカマノタメノモノガタリ)】に対抗せんと、まずは一つの先制攻撃を使ってマシンを創造する。――吹雪発生装置を。
「なんですって……!」
 もとから吹雪を出そうとしていたステラは、大いに面食らった。
「くっ、こちらも負けてはいられません!」
 ステラはすぐに流星剣を構え、高速詠唱によって吹雪を展開する。術者のステラによって、仲間に影響を及ぼさないよう調整された吹雪を。
「そっちも吹雪でくるウッキー?ウッキッキ、知ってるかウッキー?吹雪はホワイトアウト現象を引き起こすウッキー!」
「その程度のことなら知っていますよ。視界は白に塗りつぶされ、方向の識別が不能となり、平衡感覚を失い空間識失調を引き起こすのです」
 エイプモンキーとステラのマニアック知識は互角。どちらも負けることなく、広い戦場をすっぽり覆うように、二重の吹雪が吹き荒れた。
 ユーベルコードの吹雪と、ユーベルコードではない吹雪。どう違うかといえば、実際の世界法則に縛られないのがユーベルコードの吹雪だ。魔力量や疲労が限界でも、もっと言えばどんなに熱い場所であっても吹雪を起こすことができる。ステラの吹雪は、魔法によるものだけに魔力量に左右される。今は拮抗していても、長期戦になれば不利になっていくだろう。
 猟兵たちが動くより先、エイプモンキーが残り二つの先制攻撃を使って、電磁波レーダーゴーグルと断熱アーマーを創造した。
「電磁波は電界と磁界が関係するものウッキーから、電気っぽいものがないここでは邪魔されないウッキー!でも赤外線センサーはダメウッキー、赤外線は雪の水分に吸収されてしまウッキー!電磁波の中でも、波長が長いマイクロ波は吹雪の影響を受けにくいウッキー、ユーたちの姿もバッチリウッキー!」
 ゴーグルはエイプモンキーのヘッドガードの内側に出現した。電磁波の発振体に、雪が付くのを防ぐためだ。
「そして!断熱アーマーには真空断熱を利用したウッキー!真空は熱伝導をシャットアウトするウッキー!アーマーの金属は丈夫なステンレス製ウッキーが、中は真空だから、金属が詰まってるよりずっと軽くて動きやすいんだウッキー!」
 エイプモンキーのマニアック知識によって、ゴーグルとアーマーが光を帯びる。
 エイプモンキーのカウンターを予測できなかったことにより、猟兵たちの視界は閉ざされ、エイプモンキーからは見えるという逆境からのスタートとなってしまった。
「あ、盾は無視するウッキー。攻撃してこないんじゃ意味ないウッキー」
「無視された、だと」
 カガリはあまり顔色を変えない様子でショックを受けた。
「うっ……」
「オルガノさん!」
 語は、今にも視界から白く消えそうだったノトスを支えた。近づいてみれば、ノトスの顔は真っ青だ。ノトスはオーラ防御で、ダメージを抑えているはずだというのに。
「オルガノさん、大丈夫か!」
「……おんち、音痴になる……」
「は?」
 パイプオルガンは温度変化ですぐに調律が狂うのだ。パイプオルガンがある部屋の温度を変えたければ、一時間に一度ほど、ゆっくりゆっくり変化させるのが常識。今回のように、急激に寒くなるなどもってのほかだ。
 だが、ほかの三人はといえば。
「さ、寒さですか……。私は鉄隕石です、宇宙は寒かったので私は大丈夫なんですけれど」
「扇子は涼むためにも使われるもんだからな」
「城門は寒暖に関わらず人々を守らなければならない」
「温度変化に弱いのは私だけか!いや、今回は歌わないから調律は気にしなくていいのだが……音痴なままでいるのは気持ちが悪い……」
「気分が悪いのはいけないな。俺の出番だね!それじゃあ語ってみせましょう、【誰が為の活劇譚(ソレハナカマノタメノモノガタリ)】!」
 語はパッと高座扇子を開く。誰に見えていなくとも、場の空気が変わるのを、支えられたノトスはハッキリと感じ取っていた。
「語りますは、キマイラフューチャーの中枢部。何事にも先手を打って、マニアックな理論でマウントを取る。そんな猿をぶちのめす。猟兵方の話にございます!」
 語が即興の活劇譚を流暢に語る。
 だが、重なった二つの吹雪によって、ところどころ言葉がかき消されてしまった。語は、所作が見えなくとも語りだけで勝負しようとしていた。その語りが邪魔されれば、聞き手は士気を上げるどころではない。
「ウッキッキ、吹雪は一石三鳥の手段ウッキー!視界を閉ざして剣を向けられないようにし、風の音で語りを聞かせられなくして、さらに雪の粒で花びらを邪魔してやるウッキー!」
「本当に城門のことは考えていないな」
 真顔で言うカガリ。
 一番近くで語の言葉を聞いていたノトスは、今も支えてくれている語に微笑んだ。
「いや、多少聞き取りにくかったが、何より語の気持ちで元気が出たよ。今ならユーベルコードも出せるだろう。……ランチェスターの法則とでもいうのだろうか、多くの花弁は大きな脅威となるはずだ」
 ノトスは語に軽く会釈をして離れると、愛用の杖「Lily」を掲げる。
「咲き誇れ、【White Lily(ホワイトリリィ)】!」
「ダウトウッキー!」
 白百合をかたどったLilyが本物の白百合の花弁となり、エイプモンキーの吹雪に広範囲にぶつかっていく。だが、マニアック知識を語ったはずの白百合の花弁は、光を帯びることもなく、中央部の吹雪をぽっかり相殺するだけに終わった。
 【White Lily(ホワイトリリィ)】が勝てなかったのには、訳がある。
「ウッキッキー。そもそも雪のほうが粒の数が多いウッキー?というか、単純に数では戦闘力は決まらないウッキー!ランチェスターの法則によれば、戦闘力は武器の強さ×兵力数ウッキー。雪のほうが花びらより弱いウッキーが、雪のほうが断然多いから、ユーは全部の雪を相殺できなかったんだウッキー!」
「なんと……」
 ノトスの頭の中に、BWV565トッカータとフーガ ニ短調がショッキングに流れた。オルガンだけに。
「ですが、吹雪が消えたおかげでエイプモンキーの姿が見えました」
 流星剣が煌めく。ステラが流星剣の切先をエイプモンキーへと向けた。
「姿が見えればこちらのものです。降り注げ、流星たち!【流星雨(リュウセイウ)】!」
「反撃ウッキー!【マニアックマシン】!」
 ステラとエイプモンキーが、互いにユーベルコードを叫んだ。
 だがマニアックマシンとおぼしきものは発動せず、ステラの召喚した流星の雨に、エイプモンキーは次々と打たれて呑まれていく。花弁が細切れに舞い、流星の欠片と共に視界を隠す。
「やりましたか……!」
 今や吹雪はなりをひそめている。ステラは吹雪を維持するだけの魔力が切れ、エイプモンキーの吹雪発生装置は、ノトスに相殺された分をじわじわと埋めている。一時の晴れ間だ。
 【流星雨(リュウセイウ)】で舞った花弁が落ち着くと――たくさんのへこみを負ったアーマーが見え、エイプモンキーが堂々と立っていた。
「やってないウッキー。ミーのアーマーはマニアック知識によって、耐久性もアップしてるんだウッキー!マニアック知識のない攻撃では、ミーにダメージを与えることはできないウッキッキー!」
 ぼこぼこになったアーマーをパージして、上機嫌に笑うエイプモンキー。
 だが、ふとエイプモンキーは首を傾げる。
「そういえば、なんでミーの【マニアックマシン】が出なかったウッキー??」
「お前が無視した城門の力だ」
「ウキッ!?」
 見れば、視界が確保できた間に、猟兵たちの周囲に【錬成カミヤドリ】で複製された盾が配置されていた。「不落の傷跡」「拒絶の隔壁」で強化された盾が。
「この盾は何物をも拒絶する。盾の守る領域でユーベルコードを使おうとしたな?カガリの盾によって、ユーベルコードは拒絶されたのだよ。お前が無視した盾が、今お前に牙を剥いたのだ」
「ウッキーー!盾のくせに生意気ウッキー!っていうか断熱アーマーを脱いだから寒いウッキー。吹雪発生装置をユーたちだけに向けるウッキー!」
 エイプモンキーは、戦場全てに向いていた吹雪発生装置を、猟兵たちに集中させた。今まで以上の吹雪が、猟兵たちを襲う。ステラの吹雪はもうその場には無く、一方的に猟兵たちが不利な状況となった。
 吹き荒れる吹雪が視界を白に埋め尽くす。盾が拒絶しているため、猟兵たちに直接のダメージはないが、さすがの盾も凍り始め、軋んだような音を立てる。
「いかん。盾が耐えきれん」
「それってヤバくないか!?」
 語は目の前の盾を支えながら、皆に届くようにありったけの声を上げる。
「さあ、今度はミーから攻撃するウッキー!」
 語の声を受け、ステラは無念を滲ませて目を閉じた。
「悔しいですが、この状況を覆すのは厳しい……撤退しましょう!」
「致し方ない……」
 ノトスもため息交じりに呟く。吹雪で退路を見失うのも時間の問題だ。
「ウーーッキッキ、逃げるウッキーか!やっぱりミーは最強だウッキー!今まではちょーっと調子が悪かっただけウッキー!」
 猟兵たちは、エイプモンキーの高笑いを聞きながら、盾で吹雪を防ぐようにして撤退するのだった。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

御形・菘
ロボが超カッコ良いのう!
足場も上々、最高のロケであるな!

では右腕を上げ指を鳴らし、さあ高らかに鳴り響けファンファーレ!

耳をふさげば発火しないと思ったか?
この攻撃の対象は、聴覚を持つ生物に限らん
地形も無生物も何もかも、音が命中するだけで燃やせるのよ!
本来の用途ではないから、そうせんだけでな


その上で更に言うとだ、ファンファーレも燃焼も、実は演出に過ぎん!
音の伝播を物理的に無効化させても無意味、「音が届く程度の範囲に居る、すべての生物の意識を妾に向けさせる」というのが根幹よ
攻撃力など不要!
……とまあ、妾の解説に長々と耳を傾けている時点で既に術中であり、さて生まれた隙を仲間はどう使うであろうかのう?


朧・紅
裏人格の殺人鬼《朧》のみで行動

血糸の弱点…ねェ?そりゃ血の量、だろーな。
このちいせェ体じャたかが知れてる。無駄打ちさせりャすぐ動けなくなンだろな。

血液がキレたら俺の負け
さァ喰らいやがれ
大盤振る舞いだぜェ?
その場から動かず、相手もその場に釘付けにするよう血液使えるだけ敵周囲から一斉に硬質化した血液を放ち貧血に膝をつく


まァ、囮だがなナ?
嗤う
血液もまァ液体なわけだ、地面に染み込み…そのまま移動できるとは思わねェか?
で、ここにあるのが隠し持った輸血パック
自分の身体を死角に使い足元から輸血パックの血で見えない血糸を伸ばし地面の下から奴を貫くぜ。

目の前にあるもんがスベテじゃねェんだぜ?

・アドリブ歓迎



 多重人格者の朧・紅は、ゆらりと現れた。殺し合いの予感が肌を這う。10歳の女の子には不似合いな、不敵な笑みを浮かべているのは裏人格の《朧》だ。ラフな態度だが、黄色の瞳だけは、しかと敵を捉えてギラついていた。
 対するエイプモンキーは、装甲にかなりのガタがきている。だが士気は未だに高く、朧を見て小馬鹿にするように笑った。
「ウッキャッキャ!お嬢ちゃんがミーの相手ウッキー?すぐにパパとママに泣きつくはめになるウッキー!」
「あァん?親なンざいねェよ」
「あ、ごめんウッキー。じゃあ話題変えるウッキー。ユーのユーベルコードの弱点はずばり!血の量ウッキー!人間の血液は体重の約1/13、そのうち1/3以上失うと命の危険、ユーなら1kgもないウッキー!つまり」
「ごちゃごちゃうるセェよこの猿公」
 朧が短気にユーベルコードを出さんとしたのを見て、エイプモンキーは急いで超硬度ろ過フィルターを、自分を覆うドーム状に展開する。
「マニアック知識キャンセルウッキー!?語らせてほしいウッキー!」
「知るか!」
 朧は謎のドームに怖気づくことなく、【血糸(ブラッディ・カーニバル)】を発動した。殺し合いの始まりだ。朧は喉の奥で、愉しそうに嗤う。
「さァ喰らいやがれ、大盤振る舞いだぜェ?」
 朧はその場から動かず、硬質化させた血でエイプモンキーを取り囲むと、一斉に放った。
「っク……」
 だが失血の反動に、朧は膝をつく。
 一方のエイプモンキーも、その場から動こうとはしなかった。
 装置そのものが攻撃に耐えることを最優先したため、フィルターの性能は低く、血液は薄い色を残してろ過された。だが、これはもう血液ではない。フィルターを抜けた液体は、ユーベルコードの力を失い落下する。
「ウーッキッキ!完・封・ウッキー!」
 上機嫌に跳ねるエイプモンキー。
 そこへ、キマイラの御形・菘がにょろりと現れた。背の翼と、蛇の下半身で、朧を自然に隠しながら。
「ロボが超カッコ良いのう!」
「ウキ?照れるウッキ~♪」
「足場も上々、最高のロケであるな!」
「撮影ウッキー?いえーいピースピースウッキー!」
「配信開始だ。ぽちっとな。……妾こそ真の蛇神にして邪神」
「ユーはキマイラウキ?」
「妾は世界に悪が蔓延る現状を憂い、今ここに悪を倒さんと再び現れた!はーっはっはっは!宴を始めるぞ、『妾がいろんな世界で怪人どもをボコってみた』!」
 カメラ映えするアングルで、カメラ映えするポーズを決める菘。ファンが続々配信に集まり、視聴数もコメント数もうなぎ上りだ。
「さあ、高らかに鳴り響けファンファーレ!」
 菘が右腕を上げ、指を鳴らす。菘のユーベルコード【見よ、この人だ(エッケ・ホモ)】が発動し、どこからともなくファンファーレが響き渡った。
 するといつの間にか、というか菘がポーズを決めている間にヘッドフォンを付けていたエイプモンキーが、突然激しく炎上した。物理的に。
「ウッギーーーーー!?ファンファーレの音は、この完全ノイズキャンセリングヘッドフォンで消したはずウッキー!?」
「耳をふさげば発火しないと思ったか?この攻撃の対象は、聴覚を持つ生物に限らん。地形も無生物も何もかも、音が命中するだけで燃やせるのよ!」
「な、なんて言ったウッキー!?聞こえないのは不便だから取るウッキー」
 燃えながらヘッドフォンを取るエイプモンキー。
「同じことを繰り返すのはグダるからもう言わん。その上で更に言うとだ、ファンファーレも燃焼も、実は演出に過ぎん!」
 びしぃっとエイプモンキーを指す菘。配信には「???」というコメントが一斉に流れ、応援の広告争いが苛烈になる。
 菘の【見よ、この人だ(エッケ・ホモ)】は、ファンファーレが命中した相手を、菘から目を離したくないという情動を与える炎で燃やすユーベルコードだ。
「音の伝播を物理的に無効化させても無意味、『音が届く程度の範囲に居る、すべての生物の意識を妾に向けさせる』というのが、妾のユーベルコードの根幹よ。攻撃力など不要!」
「不要な割にめっちゃ熱いウッキー!というか、ユーに意識を向けさせて……ハッ」
「……とまあ、妾の解説に長々と耳を傾けている時点で既に術中よ」
「知ってっカ、猿公。体の真ン中には、急所が集中してンだぜ?」
 朧が嗤えば、殺人鬼のマニアック知識を受けた「血液」が――エイプモンキーの真下が光る。ドームのない、花弁の足場が。
「この光、しまっ……」
「貫けェ!【血糸(ブラッディ・カーニバル)】!!」
 輝く血液が、エイプモンキーの真下から装甲を破り、正中線を垂直に駆け上がる。金的・丹田・水月・タン中・喉・顎・人中・眉間・そして天倒!体の急所を貫かれたエイプモンキーは、立ったまま沈黙した。
「……猿公よォ。目の前にあるもんがスベテじゃねェんだぜ?」
 エイプモンキーはぐらりと傾き、重い音を立てて倒れ伏した。そうしてゆっくり、受肉を解かれていく。
 実をいえば、朧が事前に考えていた作戦には穴があった。朧が膝をついて油断させた隙に、隠し持っていた輸血パックの血液を地面に染み込ませ、地中を進ませて真下から貫くつもりだったのだ。だが、ここに「地面」はない。花弁の足場には隙間があるため、濃い赤色の血液はすぐに見つかってしまっただろう。
 そこへ助け舟を出したのが、菘だったのだ。菘は【見よ、この人だ(エッケ・ホモ)】によって、エイプモンキーの注意を完全に自分へと向けさせた。菘の機転が、朧の作戦を成功に導いたのだ。
「お主、名は何という」
「あン?朧だ」
「ゲストの朧と共に、怪人幹部をボコった妾の活躍!度肝を抜かれたことであろう?次回の配信も、飢えた獣のように待つがよいわ!はーっはっはっは!」
「俺はゲストじゃねェ!?」
 菘の美しいポーズからの、キメ顔のアップ。配信に「88888888」の弾幕が流れた。
 菘は蛇の下半身で朧をガッチリとホールドしていた。抜け出そうとする朧だったが、失血気味で振り払うことができない。配信は二人の顔を映したまま、大盛り上がりのうちに終わったのだった。
 こうして、猟兵の活躍により難敵・エイプモンキーは見事倒された。菘の配信を見た人々に、感動と希望を与えながら――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月11日


挿絵イラスト