バトルオブフラワーズ⑨〜絶戦・エイプモンキー
●最強能力
システム・フラワーズ内部で怪人幹部が独り言を言っている。
「こっから先は通さないウッキー!
ミーのユーベルコードは『想像した全てを創造する能力』!
ミーのマニアック知識と極めて相性のいいこの最強能力で、あらゆるユーベルコードの弱点を見つけ、カウンターするような装置を創造してみせるウッキー!
……ミーのカウンターをさらにカウンターするような方法をあらかじめ考えてたら、さすがの最強能力も破られてしまうッキーが……。
まあそんな事たぶんないから、ここから先は通れないウッキー! ウッキッキ!」
●グリモアベースに猟兵は集いて
大戦争・バトルオブフラワーズ。猟兵たちは戦況図を見ながら戦意を高めていた。
ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が説明をする。
「システム・フラワーズ第一の関門は、怪人幹部のひとり、マニアック怪人『エイプモンキー』、強敵でございます。エイプモンキーはキマイラフューチャーを脅かす怪人軍団の大幹部の一体。マニアックな知識を持っているのだそうです」
「システム・フラワーズの内部は咲き乱れる花々の空間となっております。花々が集まって足場になっている……幻想的な場所でございますナ。
エイプモンキーが存在する限りは、全ての花の足場がエイプモンキーに繋がる上、その先に進む道は出現いたしません」
先に進むためには、エイプモンキーを倒さなければならないのだ。
「エイプモンキーは何度でも骸の海から蘇りますが、短期間に許容値を超える回数倒されれば、復活は不可能になります。今回の作戦では、蘇ったエイプモンキーの元に順に向かい、戦って頂くことになります」
「エイプモンキーは先制攻撃をしてきます。
彼は、『自らの想像力が及ぶ限りのあらゆるものを創造できる能力』を持つ強敵です。能力を利用し、猟兵の皆様のユーベルコードを無効化して、一方的に攻撃するような戦闘を行ってきますので対策をしっかり練って出撃する必要があるでしょう」
ルベルは怪人幹部の真似をしてみせた。
「……ミーのカウンターをさらにカウンターするような方法をあらかじめ考えてたら、さすがの最強能力も破られてしまうッキー……」
ルベルはニッコリと微笑む。
「カウンターで倒せと言ってくれているのでございます、親切な敵さんでございますナ」
そして、マニアックだという敵について首をかしげてみせた。
「皆様のユーベルコードに対して、敵さんはどんなカウンターを考えてくるのでしょうね? 皆様は、どう思われますか」
猟兵たちは戦闘の熟練者揃いだ。ルベルよりも戦闘に慣れている者が多い。ゆえに、ルベルの瞳には信頼の色が色濃く浮かぶ。
「マニアック自慢の敵さんは、皆様の出方を予想してカウンターを仕掛けてくるのでしょう。それを逆手に取り、「そんなのは効かない」と言ってあげたらきっと吃驚することでしょうナ」
「対策なしに挑めば苦戦は免れません。けれど僕は皆様が見事な対策を用意し、敵の最強能力を破ってくださると信じております」
どうぞお気をつけて、と締めくくり、グリモア猟兵は頭を下げた。
世界の命運をかけた戦いが今、始まろうとしていた。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回はキマイラフューチャー、リアイベ『バトルオブフラワーズ』のシナリオ。シナリオ難易度は『難しい』となっております。
エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月凪・ハルマ
うわぁ……滅茶苦茶めんどくさい能力だな
◆SPD
【魔導機兵連隊】を発動して、ゴーレム達を
敵に向かわせる
とはいえ、コレは普通に防がれるだろうなぁ
一工夫、となると……
全てのゴーレムの魔導蒸気機関から蒸気を放出させて
戦場一帯を包み込む(【操縦】+【ハッキング】)
敵の視界を塞いだ後、わざと破壊錨・天墜のブーストエンジン起動
それを適当なゴーレムに持たせて、敵に投げつけさせる
当らなくても、敵の気が自分から逸れればOK
その間、自分は【忍び足】で敵に接近。背後が取れれば尚良し
上手く近づけたら、後は隙を見て魔導蒸気式旋棍の連打を叩き込む
(【早業】+【2回攻撃】)というプランでいってみよ
上手くいくかは敵次第、かな
●ファーストアタック
「うわぁ……滅茶苦茶めんどくさい能力だな」
最初に出撃したのは月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)だ。疾きこと風の如し。アヤドリガミの化身忍者は忍びの名に恥じぬ速度で戦場へと駆ける。
視界一杯に広がる花。
花の中、驚くほどの存在感を放ち、強敵幹部が待ち構えていた。
その名は、エイプモンキー。
「頼んだぞ」
ハルマが魔導機兵連隊を召喚し始める。1体、2体、3体……、
「ウッキッキ! 待っていたぞ猟兵。ミーの最強能力をみせてやるウッキー」
陽気な笑い声と共にエイプモンキーの周囲にご機嫌な蛍光カラーでペイントされた特殊床装置が設置される。不思議な臭いを放つそれは、トリモチのように粘り気のある素材を湛えるプールのようでもあった。これが、敵の対抗措置。エイプモンキーのマニアックジェットだ。
――速いな、なるほど。
ハルマは黒い瞳を幽かに眇め、帽子のつばをクイ、と直した。
「何体いても全部捕まえるゴーレム専用ホイホイ! 気に入ったウッキッキ?」
自分の創作物に誇らしげに胸を張るエイプモンキー。
34体。
丁度此の時、魔導機兵が出揃った。
「ああ、楽しそうなプールだな」
ハルマが帽子の下の瞳を細めた。同時に全ての魔導機兵が一斉に魔導蒸気機関から蒸気を噴出させる。
「……ウキッ!?」
「俺のゴーレムは突撃するだけが能じゃないんだ」
笑み声。
ハルマは化身忍者であると同時に腕の良いメカニックでもある。創意工夫はお手の物。単なる猪突猛進なゴーレムなど、この忍者が創るわけがないのだ。
「こ、これは……視えない、ウッキー」
蒸気は止まらない。戦場一帯を包み込み、あっという間に敵の視界を奪ってしまった。見通しの利かない戦場。その中を、空気を切り裂き迫る気配がある。
「……来るウッキー!!」
エイプモンキーは気配を察知し、避けた。モンキーの身体を掠めてとんでいったのは、何だっただろう。それを認識する間もなく、避けた直後の身体に打撃が浴びせられた。
「なっ……!?」
一撃。
背後からだ。音もなく魔導機兵を踏み台に跳躍して蒸気に紛れて忍び寄った『忍者』が渾身の痛打を見事に当てていた。否、一撃では留まらぬ。
二撃。
三撃。
敵が対応する余裕も与えられずに悲鳴をあげる。
「ガッ、い、いつのまに……ウッキー!?」
その眼がようやく捉えたのは、恐ろしく冷静な少年の黒い瞳。
――計算通りなのだと、その瞳が語っている。
この少年は優秀なメカニックであり、そしてなにより――忍びなのだ。その身ひとつ、人々を守るために戦いに投じ続けた熟練の技がここにある。
連撃は止まらない。
一撃が入ったのなら、次を。強敵だというのなら出し惜しみをする必要もない。足元で花が散る。激しい踏み込み、舞うが如く繰り出される激しい連撃。
鮮やかな魔導蒸気式旋棍の連撃を繰り出したハルマの瞳は、けれど冷静に敵を見つめていた。
――そう、この少年は恐ろしく冷静なのだ。
エイプモンキーは、連撃に為すすべなく打たれながらそれを識る。
成功
🔵🔵🔴
セシリア・サヴェージ
私のユーベルコード【闇炎の抱擁】は剣に炎を付与して斬りつける技。
これに対して予想されるカウンターは斬りつける前に剣の炎を消火されてしまうことでしょうか。斬撃だけではエイプモンキーには効果は薄いでしょう。
暗黒の炎といえど火には変わりありませんから、水などを勢いよく噴射すれば割と簡単に消せますので…。
ですがそれを防ぎきって肉薄できれば勝機も見えるはず。
私のやることはひとつ。乾坤一擲…【覚悟】を決めて敵への突撃を敢行します!
暗黒の【オーラ防御】を展開し【ダッシュ】で接近。この防御が破られたら一巻の終わりですから【気合い】を入れて維持に注力しなければ。
我が全霊の一撃、受けていただきます。
●誓いの剣
春爛漫の幻想風景を暗黒の女騎士が駆ける。
(弱点をついてくる。ユーベルコードが封じられる。同時に攻撃をしてくる。攻撃を防ぐ。防いで、倒す)
吐く息が熱い。
敵はもう、目の前だ。
花景色に静謐な闇が混じる。
白皙に銀の瞳は冴え冴えと。冷たき刃にも似たセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)がユーベルコードを今まさに発動させようとしていた。
「『闇炎の抱擁』」
其れは、暗黒の炎を剣に宿す。
其れは、過去を燃やす。
断罪の焔が鐵と共に走れば昏迷の闇を明明と切り裂き夜明けを導く狼煙となるのだ。
敵がセシリアに向けて歯を向いた。
「炎には水ウッキー! 暗黒の炎には聖水ウッキー!」
言いながら敵は一瞬で距離を詰め、セシリアに肉薄していた。先制は敵が取ったのだ。其の動きはまるで野生動物のようだ。手には玩具のような小さな水鉄砲がある――否、本物の玩具だ。
「ミーはウェポン以外にも玩具を一杯持っているウッキー! 役に立たないものを役立たせるのがミーの趣味ウッキー」
――回避は、間に合わない。
セシリアは炎を帯びた剣に暗黒のオーラを纏わせる。炎が水で消されると実証されるのは防がなくては。
「――あっ……」
敵が至近で廻転する。予想の付かない動きはやはり野生のもの。ロボットめいた装甲の脚が剣ではなくセシリアを狙う。
「く……!」
一瞬の攻防。
咄嗟にガードして衝撃に耐え、身を護るために意識を取られれば其の一瞬で敵は聖水を剣へと引っ掛けた。聖水は眩く耀き、清らかな光が暗黒を呑み込むように炎を消し去ってしまう。
炎が、消えてしまった。決して油断があったわけではなかった。紙一重で敵の動きが勝ったのだ。戦いには時としてこのような局面もある。一瞬の運、咄嗟の判断。その紙一重を機に戦闘の流れが決まってしまうことも、どんなに多いことだろう。昏迷の世界で戦い続けてきたセシリアはその重さを知っている。
「キッキッキー!」
敵が高く後ろへと跳躍し、距離を取った。
「ほーら、聖水に弱かったウッキー!」
其れは、勝利宣言にも似て。
周囲に無数の水鉄砲が浮かび上がる。次々と噴出される其れは、聖水だ。
(防御を!)
セシリアは暗黒のオーラを全身に巡らせる。炎が消えた剣の切っ先を敵に向け、地を蹴る。駆ける騎士目掛けて四方八方から水が浴びせられる。聖水が暗黒を弱め、水の勢いが進行を邪魔する。圧縮された水は凶器となり鎧を傷つけ、肌を裂く。
「アアッ」
数歩駆けたところでセシリアは水に圧されて地に転がった。からりと音を立てて剣が手を離れてしまう。倒れた体目掛けて聖水が容赦なく浴びせられ。
――まるで、自身が断罪されているようだ。
猛烈な水流の中、セシリアはもがいた。
敷き詰められた地の花を掻き抱くように腕を震わせれば、己が握りしめた手が視界に映る。聖水に切り裂かれ血に塗れた手に光るのは、指輪だ。母の形見の指輪が。泣いているようではないか。
指輪が。泣いている。
――守ってくれたのはわかるが、あの騎士を見てごらんよ、
――恐ろしい、幽鬼のようだ
人々の声が聞こえる。
彼女が救った人々の声が。彼女を怖れる人々の声が。
「キキキッ、キキキー♪」
嗚呼、猿が嗤っている。
「私は……」
声は、静かだ。
「キ?」
暗黒の闘気が膨れ上がる。妄執じみた闘気が恐ろしい勢いで膨れ上がり、血に塗れた騎士の全身から迸る。
「……キ、キキ……?」
猿の、戸惑いの声。
「どうして、どうしてウッキー? どうして」
聖水を跳ね返すように、押し返すようにしながら騎士が立ち上がる。
瞳は刃にも似て冷たく、鋭い。鋭く放たれる――殺意。
――お前を、殺す。
声なき声が猿に伝わる。
「――!!」
覚悟だ。
誓いだ。
其れが、満身創痍の騎士を動かしていた。
「我が全霊の一撃、受けていただきます」
水を物ともせず、暗黒騎士が剣風となって駆ける。彼女が生きる理由、戦う理由が心を燃え立たせ、奮い立たせ、指輪が清廉な光を湛えて。
「闇に抱かれ骸の海に還るがいい!!」
振りかざすと同時に炎が噴出する。
猿がユーベルコードを封じた180秒、セシリアはその180秒を耐えきったのだ。暗黒の炎が燃え上がる。舌を伸ばし、猿を呑み込み。離さない。
「アアアアアアアアアッ!!」
悲鳴があがる。
血に塗れた騎士が、誰も知らぬ戦場でまたひとつ。
「未来のために!」
――誓いを果たす。
苦戦
🔵🔴🔴
仁科・恭介
※アドリブ歓迎
他の個体に使ったUCは見ているかもしれない…
「仕方ない。これを使おう」
【学習力】をフル活動
SPD
【軍隊蟻】を召喚
進軍させる方向は指定できるが…空に逃げられたら意味はない
それにこの子たちは虫だ
火等にも弱いだろうし、捕食対策もするだろう
だが…ある人が教えてくれた
私は常に【携帯食料】を持っている
捕食できるものをね
蟻達をエイプモンキーに進軍させる
もちろんこれは囮
蟻達に対する対抗策を確認後、【目立たない】ように絶望の演技をしつつ【携帯食料】をこっそり食み飛翔能力を得る
そして、勝ち誇るエイプモンキーに高速飛翔の勢いをのせて刺突
その流れで直接蟻達をエイプモンキーに展開する
「やっと掴んだ!」
●飛翔する叡智
「猟兵め。ミーは何度やられてもめげないウッキー……」
エイプモンキーはふと顔をあげる。
花を踏みしめ、静かに視線を向けてくる気配に気づいた。
仁科・恭介(観察する人・f14065)が軽く爪を噛むようにしながら敵を観察していた。
「他の戦場の記憶を持っているなら、同じ技は通用しないかもしれないな」
「またお前かウッキー」
別の戦場にて既に相まみえていたふたりは、互いの動きをよく知っていた。恭介はマニアックジェットに対抗するべく策を練った。だが、エイプモンキーは恭介のユーベルコードに対してマニアックウェポンを準備した。
恭介の周囲には軍隊蟻が召喚されていた。
「ここはミーの庭のようなもの、地の利はこちらにあるウッキー。お前の弱点はよくわかっているウッキー。何かを食べる必要があるウッキー」
敵はサッと取り出したのは、巨大な火炎放射器。待ち伏せしていたからこそ準備ができた道具であろう。
「蟻は無限に湧き、無差別にものを食べるウッキー。ミーが単純に逃れても、他のものを食べられてしまえばOUT、ウッキー」
恭介の周囲には、花があるのだ。
「戦場にあるものをすべて燃やし、食べるものをなくしてしまえばいいウッキー」
「ファイヤー! ウッキー!」
火炎が戦場全てを灼き尽くすほどに荒れ狂う。花が残らず燃やされ、喚び出した蟻が次々と炎に焦がされていく。火がぐるりと戦場を取り囲めば酸素が減り。
眩暈と頭痛が恭介を襲う。炎がその身まで伸び、服を燃え上がらせる。肌を灼く。恭介がガクリと膝をつき。
「実証完了!」
敵が手を叩いて歓び、装置を呼び出そうとする。それが呼び出されてしまえば、蟻は封じられてしまう。
「いや、実証できていない」
「キッ?」
炎の中から声が聞こえる。
「キッ? キッ?」
戸惑いに目を瞬かせる敵の眼前でゆらりと炎を纏った人影が立ち上がる。2人の間には炎の壁がある。だが、壁を物ともしない気配が空気を介して伝わってくる。ひしひしと伝わる――、
「実証はできていない、よ」
声は、笑いを含む。
その、ただならぬ気配。
エイプモンキーは息を呑む。
炎から一歩、一歩進み出る人影。体の至るところを焼かれ、火傷を全身に追っている。息は乱れて肩で息をしている。炭と化した蟻が動くたびに体から剥がれて落ちていく。だが、
「何故、動けるウッキー……いや」
敵は理解した。
「強化、されているウッキー!!」
ユーベルコードが成った。
恭介は炭のようなものを地に捨てた。それは、炎の中で蟻に喰わせた携帯食料の成れの果て。
ふわり、と男の身体が飛翔する。炎の壁を乗り越えて牙咬が奔る。炎を照り返して煌めく刃に魔力が宿っている。
――『パラダイス・ロスト』。
それが男の刃に物理を超えた強度と破壊力を持たせているのだ。全身が刃のようにして男は飛翔の勢いごと敵に刺突を繰り出した。
「アアアアアアッ!!」
鋼鉄のボディが砕かれ、血の花が咲く。
「やっと――掴んだ!」
至近距離でダンピールの瞳が爛々と輝いている。全身を焦がした男が幽鬼の如き形相でエイプモンキーを貫いている。己を喰らわんとする其の瞳のなんと冷徹で殺意に満ちていることか。エイプモンキーはぞくり、と背筋を凍らせた。
「蟻たちよ、」
ユーベルコードは、封じられていない。
蟻がうぞうぞと湧いてくる。
おぞおぞ、うぞうぞと。
湧いてくる。
「あ、あ、あ……」
小さな蟻が。
夥しい群れが。
敵を呑み込み。
もう、逃さない。
「喰らえ」
命令は、簡潔に。
敵の悲鳴が反響する中、恭介は思いを馳せる。彼がこの戦術を思い付くきっかけとなる一言をくれた人物へと、そっとひとこと。
「感謝を」
その瞬間、瞳は敵に対していた時とはガラリと変わるあたたかな色を宿すのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
レイ・アイオライト
隙のないユーベルコード……あたしのユーベルコードに対応する装置を創り出すのね。
【紫電奔る雷霆の孤狼】でガルンを召喚、エイプモンキーに強烈な雷撃を放射する。
……どうせ、雷を吸収する避雷針を創造するんでしょう?分かってたわよ。
強烈な電撃、それも強電圧の放電によって、周囲にどんなことが起こるか。
周囲に存在する酸素分子は高電圧の電撃によって解離、他の酸素分子と結合して『オゾン』が発生するのよ。
あたしの目的はね、アンタを雷撃で攻撃することじゃない、『オゾン』っていう毒でアンタを蝕むことなのよ!
その後『だまし討ち』『暗殺』できれば上々ね。上手くいくと良いけど。
(アドリブ等歓迎です)
●scientia est potentia.
落雷と共に臭気が生じていた。
それに気づいた者は声をあげたのだった。
「世界の真実がひとつ、私の目の前にチラついた。実験をしよう。手を伸ばせば、きっと届く。その予感が今湧きあがったのだ」
真昼の天に月が在るが如く、世界はいつもあるがままに。
――scientia est potentia.
麗しい花の戦場。
音もなく地に降り立ったのは、レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)。緋の瞳は思案の色濃く。
「隙のないユーベルコード……あたしのユーベルコードに対応する装置を創り出すのね」
さらり、と銀糸の髪が揺れ、敵を見据える瞳には密やかなる殺気が篭る。
「来なさい、鳴雷の大狼」
静かな声が喚べば、パリパリと雷光纏いし狼が現れる。主へと恭しく首を垂れ、敵を討つべく電撃を放射する狼は、ガルンという。
「キキッ!!」
敵はその瞬間、雷を吸収する避雷針を創造していた。ロケットにも似た形の避雷針は遠隔操作で縦横無尽に戦場を飛び廻ることもできる。
「電撃は避雷針一本あれば怖くないウッキー!!」
言いながらエイプモンキーは避雷針ロケットをレイに向けて発射しようとし。鼻腔と喉に異常を感じる。猛烈な刺激。
「ゴ、ゴブァッ……!?」
突然、血を吐いた。
自身の異変に戸惑うようにエイプモンキーが眼を剥いた。その瞳も、爛れるが如く。
「は、……」
息が整わない。眩暈が酷かった。世界が霞み、身体の感覚がゴムのように――覚束ない。指先が冷たいのがわかる。脈打つ一秒ごとに失われていくものがある。生命だ。
避雷針ロケットがゴトリと地に倒れた。
「……どうせ、雷を吸収する避雷針を創造するんでしょうって、分かってたわよ」
ひどく静かな声が戦場に響く。
「強烈な電撃、それも強電圧の放電によって、周囲にどんなことが起こるか。
周囲に存在する酸素分子は高電圧の電撃によって解離、他の酸素分子と結合して『オゾン』が発生するのよ」
自身は用意していたガスマスクで身を守りながら、月の化身のような暗殺者が敵を見下ろしていた。自然の雷ならぬ鳴雷のガルンが齎した雷であったことも影響しているだろう。思惑通りに発生した毒は今、敵のみを蝕んでいた。
徐々に酸素に変化する青霞。
「あたしの目的はね、アンタを雷撃で攻撃することじゃない、『オゾン』っていう毒でアンタを蝕むことなのよ!」
其れは、勝利宣言。
くるり、と敵にレイは背を向けた。もう立ち上がる力もないのでしょう。背中がそう告げていた。
(ミーは、幹部でウッキー。これくらいで……負けないウッキー)
敵にも幹部としての矜持があった。
(こいつはミーがもう立てないと油断しきってる、ウキ)
エイプモンキーは最後の力を振り絞り、血を吐きながら立ち上がる。そして、思い通りに動かぬ体を叱咤して地を蹴った。
(どうせ、何もしなくても死ぬウッキー! なら刺し違えてやるウキ!)
一撃を背に届けようとしたその時、一瞬でレイの姿が掻き消えた。
「!!?」
「それも、計算済よ」
背後に廻ったレイがエイプモンキーへと雷鳴剣を突き立てた。心臓を迷わず貫いて。断末魔すら、もはや許さぬ。
無骨なマスクを外せば驚くほど可憐な貌が顕わになる。だが。
「暗殺、完了」
花満ちる戦場で呟く彼女は、手練れの暗殺者なのだ。
物事の本質を示し、真実を見定める。
閑かな夜闇を照らす密やかなる月光にも似たその石を、アイオライトという。
――潜影の暗殺者。彼女は、その名を持つ者だ。
成功
🔵🔵🔴
ヴロス・ヴァルカー
相手は強大。
それなのに、ニレさん(f02691)と共に戦えると聞いて少し嬉しいのです。
不謹慎ですね、私は。
聞いていた通りUCに対するカウンターですか。
それなら私は、触手を全方位に向け、焼夷弾の【一斉発射】と同時に【常世の花】を。
危険ですのでニレさんは側を離れないで。
このUCの弱点は単純、音が聞こえなければいい。
そこが狙いです、遮音機械で音を、焼夷弾の炎と煙による【目潰し】で光を、奪います。
音と光、両方なくては我々を捉えることすら難しいでしょう、これで確実に接近できるはずです。
後は、反響音や音の歪みを頼りに敵の位置を特定、触手をずらし音圧の薄い道を作ります。
ニレさん、後はお願いしますね。
ニレ・スコラスチカ
わたしも、共に戦えて光栄に思います。行きましょう。ヴロスさん(f03932)。
爆音に対し、敵は何らかの防音装置で回避を試みるはず。彼の導きに従い、極めて簡単な質問と共に【審問】を仕掛けます。
【審問】の弱点は真実を言えば解除されること。質問に答える機械でも作ってきそうなものです。しかし、遮音を解かなければわたしの質問は聞こえず、遮音を解けば【常世の花】の爆音が敵を襲う。二つに一つ。 念のため口元も隠しておきましょう。
また、【審問】から解除かダメージまでには時間差があります。その間に【グラップル】で接近、【激痛耐性】に任せ爆音の嵐を歩み【捨て身の一撃】を。
「問います。あなたの名前は?」
●漆黒の雨に聖紋は春を灌ぎて
戦場をふたりの猟兵が駆けていく。
黒き異形のヴロス・ヴァルカー(優しい機械・f03932)。身に纏いし布の隙間から輝くは赤き光。傍らの少女の温度を感じながら胸に想うは過去の同胞。共に死ねればと思った日もあった。けれど今。共に駆ける温度があたたかい。
その、少女。
ニレ・スコラスチカ(旧教会の異端審問官・f02691)は黒き修道服を翻し真白の髪舞わせ。
(わたしが異端を狩らなければ)
異端を狩る少女は使命のために駆けている。傍らに寄り添うが如き優しき気配を不思議に心地よく思いながら。
「相手は強大。それなのに、」
声は、花に染み込むように。
「ニレさんと共に戦えると聞いて少し嬉しいのです。不謹慎ですね、私は」
やわらかい。あたたかい。
――少女に残ったのは祈りの言葉と異端狩りの使命、そしてある"誘い"だけ。
ニレは言葉を返した。昏き夜、大地濡らす雨垂れのように。
「わたしも、共に戦えて光栄に思います。行きましょう。ヴロスさん」
敵がもう、目の前だ。
「危険ですのでニレさんは側を離れないで」
囁くように、一言。
「キッキッ」
言葉を交わす間もなくヴロスが触手を全方位に向け、焼夷弾を一斉に発射する。ニレは咲く花の如く静謐にヴロスのそばに居る。薄い色の瞳が見つめる世界で、友がユーベルコードを放っている。
――『常世の花』。
爆音を齎すユーベルコードだ。
「ミーはこんなこともあろうかと装備に防音機能も予め搭載しているウッキー!」
敵が言えば、しゅるりと肩口からコードが伸びる――伸びたコードの先には、なんと耳栓が! 耳栓が敵の耳にすっぽりと嵌る。意外とアナログであった。
耳栓で音を遮断した敵の視界は焼夷弾の炎と煙で遮られていた。だが、敵はマニアックマシンを放つ。
(視界が奪われているウキけど、猟兵はミーに真っ直ぐ対峙しているウキ。背後から襲ってやるウッキー!!)
猟兵が立っていた場所にアタリをつけて放つのは巨大な刃持つマシンだ。
(今、敵は耳が聞こえないはず)
ニレがユーベルコードを発動させる。
死せば無罪。死せねば有罪。
異端審問官が放つ其れは審問、『インクイゼション』。
「問います。あなたの名前は?」
ニレは念のためにと口元を隠して言葉を放った。その身を護るようにとヴロスが身を盾にして敵の刃を防いでいる。
(く……)
苦痛の声を漏らすことは、なかった。
少女の集中を乱したくない。そんな想いが彼を支えている。刃を身に受け、抱き留めるように止めたヴロスは大きく負傷していたが、しっかりと地を踏みしめて立っていた。
背に守られる少女から敵へと捕縛の鎖が飛んでいた。
鎖に縛られた敵はユーベルコードの気配を察知していた。何かが仕掛けられた。彼は見た目と喋り方で敵に侮られることも多いが、最強の名に恥じぬ能力を有していた。ゆえに、少女が使用したユーベルコードがどういった種類のものなのかを直感的に理解した。質問だ。質問をして、答える。答えられなければ、ダメージを受ける。そういった種類だと彼は思った。そして、マニアックジェットにて回避するための装置を創造する。それは、質問に応答するタイプのマシンであった――だが、質問を敵は聞き取ることができていない。
「……これはやられたウッキー」
其れは、見事な連携だった。
「あなたに黙秘権はありません」
異端審問官は厳かに告げる。
「グアアアアアアッ!!」
悲鳴が轟く。審問に答えなかった敵に裁きの光が下る。峻烈なる断罪の光が猿の身を灼く。
視界は未だに炎と煙に覆われていた。
「ニレさん、敵の位置は、」
囁く声が教えてくれる。
――音と光、両方なくては我々を捉えることすら難しいでしょう、これで確実に接近できるはずです。
事前に打ち合わせをした時の声が脳裏に蘇る。少女は地を蹴った。
背後には、少女の背中を押すような気配がある。其れがわかるから、少女は振り向かない。
敵への道は、爆音の嵐の中だ。機械義足が道なき道を往く。其れは、彼女のために彼が作ってくれたのだ。
奥歯を噛み、少女は前へと駆ける。足を止めることは、ない。
音圧の薄い道がある。わかる。
其れは、彼がつくってくれた道。鼓動が跳ねる。身の内からせり上がる其れは――熱だ。使命のため、仲間のために。敵を討つ。
――ニレさん、後はお願いしますね。
「例え身体が焼かれようと」
敵が視える。
射程に、
「わたしは使命を果たす」
今。
聖者、咎人殺しの一撃が敵の生命を刈り取り――、
断末魔が戦場に反響する。
徐々に視界がひらけ、爆音がおさまり。
静寂。
ニレはそっと仲間を振り向き、息を呑む。満身創痍のヴロスが彼女を見守り、立っている。
眼を見開き、駆け寄れば、気が抜けたのか、グラリと揺らいだ巨体が。
「ヴロスさん!」
動揺が声に溢れた。感情滲む声に気付けされたように巨体の脚が踏みとどまり、姿勢を持ち直す。
異形の手がそっとニレに差し出される。赤い光が瞬いて。
「ニレさん、お怪我をなさってますね。急いで手当てしましょう」
この異形は満身創痍で少女の心配をしているのだ。
少女は一瞬息を呑み、呟いた。
「ヴロスさんも、ボロボロです」
そう言って見上げる少女の瞳は、薄い緑色を帯びてしっとりと輝いている。まるで雨上がりの若葉のようなその色がどんな宝石よりも美しい色に思えて、ヴロスは赤い光をあたたかに瞬かせるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ユウキ・スズキ
SPDで確実な回避。か。
当たるまで撃ちまくれば良いってもんでもないだろう。
まずはUC「各種手榴弾作成技能」で、可燃性の粉末の入った袋を作る。
別に作りが粗かろうが問題ないからな。
そいつを猿に投げつけたり盾にしつつ接近されないようにばら蒔いて、視界を奪う。
まぁ、実際に視界を奪えるかどうかは問題ない。
充分に粉がばらまかれたら、UC「対象分析、再装填。」で弾薬を生成する。
もはやこの状況で出来上がる弾丸は一つしかないだろう。
曳光弾で、ばらまかれた粉塵に着火し、粉塵爆発を狙う。
爆発の衝撃で吹き飛んだらあとはアンカーショットを猿に発射。
空中では避けようもあるまい。
そのまま引き付けて右手でぶん殴る
アドリブ歓迎
ジェラルド・マドック
連携希望
エイプモンキーはこちらの発動したUCの内容について特別に察知してるんだろうか
もし発動時の見た目で対応策を考えてるならフェイントをかけるのも有りかな
サウンドウェポンをギターに展開して弾き歌い
共闘する猟兵と俺にUCを使用
君はUCを回避する力があるみたいだけどこれは味方にバフをかけるものだから君にはどうしようもないだろう?
この曲には味方のUC効果を高める力がある
これならもしかしたら君の対応策だって超えられるかもしれないね
とはったりをかけて、言及してない他の効果が彼を倒す手助けになればと思うよ
上手く誰かを騙すには、真実を言いつつ、嘘を交えたり一部の真実を隠すのが効果的なのさ
●選択の一手
ロングコートを靡かせ、ユウキ・スズキ(元米国陸軍少尉 (自称)沼に潜みし者・f07020)が戦場に現れる。
義眼が捉えた敵幹部はユーベルコードにカウンターをしてくるのだという。
「上等だ」
「キキッ?」
ユウキがユーベルコードを披露する。『各種手榴弾作成技能』で作成するのは、袋だ。中には可燃性の粉末が入っている。敵は早速カウンターを放つ。マニアックジェットだ。
「そのユーベルコードは、手榴弾を作って攻撃するウッキー。でも、作りが粗いウキね? 弾になってないウッキー。失敗したウキ?」
眼にも止まらぬ速さで作り上げたのは、袋を切り裂くように回転する刃。刃は袋を切り裂いただけではなく、ユウキの身にも迫る。
「想定済だ」
ユウキは作成した袋を次々と投擲しながら自身は冷静に距離を取る。袋が悉く切り裂かれ、粉末が戦場に飛び散っていく。
「……ウキ?」
いつしか、戦場は夥しく舞う粉塵で視界不良となっていた。
(さて、ここからだが)
ユウキはふたつめのユーベルコードを発動させた。勿論、カウンターも覚悟の上。『対象分析、再装填』で作成するものは、弾薬だ。曳光弾によりばらまかれた粉塵に着火し、粉塵爆発を狙っているのだ。
「今度は弾薬ウキ? ……それは、まさか」
ユーベルコードの気配を察知してハッとするエイプモンキー。瞬時に作成するのは粉塵舞う戦場の天井付近に広がるレインシャワー装置。先制は猿が取る。シャワーが戦場に降り注けば空気中の粉塵が流され、同時に弾薬も湿ってしまう。
「カウンターウッキ!」
猿が勝利を確信して跳躍する。
「ッチ!」
ユウキは咄嗟に左腕部義手内蔵型のアンカーショットを発射する。空中では避けようもない。この咄嗟の対応は、理論でも発想でもなく歴戦の身ゆえの技能が光る。
「キイッ!」
命中。そのまま引き付け、猿の一撃と同時に右の拳を叩きこもうとすれば猿もまた拳を繰り出していた。双方の拳が交差し、共にダメージを負いながら地に倒れ。エイプモンキーが先に立ち上がる。
「往生際が悪いウキ。この勝負は、ミーの勝ちウキ……」
シャワーに濡れながら立ち上がるエイプモンキーの防護スーツにヒビが入っていた。
――往生際が悪いウキ。この勝負は、ミーの勝ちウキ……
敵の声が遠く聞こえる。ほんの一瞬ブラックアウトしていた意識が浮上する。
地に伏したユウキは臓腑からせり上がる血を吐き、状況を認識する。
自分が倒れているのは花の絨毯の上だった。自身の血に濡れた花が頭上から降り注ぐ敵のシャワーで濯がれていく。濡れた花弁が艶やかに目に映る。
「く……」
息を吐けば敵がトドメを刺すべく歩み寄る。
刹那。脳裏に思い浮かぶのは、嘗てオブリビオンに殺された小隊の仲間達。ユーベルコードではない。ただの、記憶。
(俺は……お前達を救えなかった)
左腕は動く。肉の腕ではない。機械の腕だ。
右腕も動く。肉の腕は、娘を撫でるために。娘が生きる明日を切り開くために。
(負けるわけには、いかない)
拳を握り闘志を奮い立たせようとした、その時。
――♪
戦場にギターの音が響く。
「……新手ウキ!?」
いつの間にか戦場に現れ、サウンドウェポンを展開していたのはジェラルド・マドック(しがない演奏家・f01674)。乳白色の髪がシャワーに濡れれば柳眉が困ったように一瞬顰められる。ギターが濡れていた。だが、『音楽の祝福』は止まらない。祝福の調べが鳴り響く。効果はまだ、発動していないが。
(音楽を奏で、様々な効果を発動するタイプのユーベルコードウキ。弦を切ってしまえば音は出ないウッキー?)
エイプモンキーは考えを巡らせ、マニアックジェットを発動させようとする。
「君はユーベルコードを回避する力があるみたいだけどこれは味方にバフをかけるものだから君にはどうしようもないだろう?」
場違いなほど明るい声が語りかける。
(……?)
エイプモンキーは一瞬耳を貸してしまった。
堂々と、自信に満ちた声が言葉を続ける。どこかのんびりと――不思議な余裕が彼にある。
「この曲には味方のユーベルコードの効果を高める力がある。仲間が君と戦っていたから俺には時間があった。実は、すでに効果は発動済なんだ。だから、この後に音を封じても手遅れだよ」
「!!」
はったりである。
実際は、効果はまだ発動していない。だが、ユウキと戦闘をしていてジェラルドに気付くのが遅れたエイプモンキーには僅かな迷いが生じた。
「これならもしかしたら君の対応策だって超えられるかもしれないね」
その言葉を証明するかのように、ユウキが立ち上がっていた。赤い義眼の光が煌々と煌いて静かな戦意を昂らせている。
「ああ、『作戦通り』だ。貴殿の支援のおかげでどうやらうまくいきそうだ……」
ユウキは血に塗れた右手を握りしめ、敵へと一歩踏み出した。その一歩に、凄むような迫力がある。研ぎ澄まされ、濃密に圧縮された静かな殺気がある。彼の歩みが敵に『恐怖を与える』。
「私の各種作成技能が強化されている。水の影響を受けずに発動できるようにとな」
これもまた、はったりだ。
この連携は行き当たりばったり。作戦なんてなかった。
ユーベルコードの効果を高める力は、発動されていない。
だが、
「ならば、こっちもより強力な消火器を出すウッキー!」
敵は、騙された。
敵がカウンターとして出したのは、ジェラルドのユーベルコードの音を消すためのマシンではなく、ユウキのユーベルコードを警戒するマシン。
――♪
音が鳴っている。
ユウキは負傷に軋む体に鞭打って敵へと走る。熟練の指揮官が戦場を駆ける光景は此の戦いの重要さを物語る。本来、指揮官とは後方にて指揮を執るものだ――、だが、部下を失った彼は、時折こんな風に戦場にて拳を揮う。泥に塗れ、血を浴び、時に倒れ。立ち上がり。戦う。
背後ではジェラルドが演奏を続けている。灰の瞳は勝利を確信していた。
我が身を顧みぬ捨て身の突撃。
敵は迎え撃とうと鋭い蹴りを放ち――蹴りが、弾かれた。
――♪
なだらかに音が高く低く波打っている。穏やかな陽光にも似た曲。
水に濡れながら、奏者が驚くほど楽しそうに慈しむように音を紡いでいる。
爛漫たる色彩の中、優美な青年が甘く目元を和ませて音と戯れる。
英姿が奏でるメロディは高潔なる指揮官を讃えるように。
降り注ぐシャワーを音を引き立てる味方にしてしまったかのように清冽に。
鳴り響き、反響する音楽のなんと美しいことだろう。紡がれる流麗な音のなんと温かいことだろう。
その音楽は奇跡を呼ぶ――守護の奇跡を。
「そん、な」
エイプモンキーはユウキの拳に吹き飛ばされながら己が欺かれた事を知る。
――『音楽の祝福』はたった今、発動したのだ。
「上手く誰かを騙すには、真実を言いつつ、嘘を交えたり一部の真実を隠すのが効果的なのさ」
彼が選んだのは、ただ一度攻撃を弾く壁の効果。
即興の連携は、成った。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
人々を護る騎士としてキマイラFの安寧の為、押し通らせて頂きます、エイプモンキー
使用するUC・合体操作型召喚ロボ、ブローディアの弱点は「乗り込まないと動かせない」
敵は転送直後のロボのコクピットを破壊してくるでしょう、なんと卑劣な!(自分もやるかもしれない)
動かなくなったロボの装備している大盾の裏に隠れて、エイプモンキーの攻撃を●盾受けでガード
ですが、それが攻撃の為の準備。●怪力で自分の盾を大盾の上部に投げて当て、その衝撃で敵が盾の下敷きとなるように倒します
当然逃げるでしょうが逃がしません。ワイヤーアンカーでの●だまし討ち●ロープワークで拘束です
巨大ロボットは動かなくても十分以上に危険なのです
●盾とは武器である
「人々を護る騎士としてキマイラFの安寧の為、押し通らせて頂きます、エイプモンキー」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が緑のセンサーを光らせ、宣言する。こうして幹部と対峙するのには、慣れていた。気負うこともなく鋼鉄の騎士は冷静にユーベルコードを発動させる。『コーリング・ブローディア』で転送されたのは、彼の6倍の身長をもつ合体操作型ロボット『ブローディア』。17mのブローディアが合体を待つかのように手に装備する16mほどの大盾を地につけて膝を降り待機する。
「キキッ、ロボットウッキー!」
エイプモンキーが対抗意識を燃やしていた。
「ミーもロボットっぽい防護スーツを装備しているウッキー! 負けないウッキー。そのロボットは合体して初めて機能するロボゆえに合体できなければただの鉄の塊、役立たずウッキー」
敵は勝利を確信していた。ユーベルコードには、相性というものがある。出現した騎士は見るからに精鋭然としていたが、慎重に対応すれば問題なく撃退できるだろう。敵はそう考えた。その手にはいつの間にか巨大な銃があった。
「銃のひとつやふたつ、幹部の嗜みウッキー」
銃から鮮やかなサイキックビームが放たれる。銃撃は鮮やかに転送直後のブローディアのコックピットを破壊する。コックピットだけでは収まらず、連続で引き金を引けば雨の如く凶光が降り注ぐ。
トリテレイアはブローディアの大盾の裏に身を隠した。コックピットを破壊するのは想定通りだ。自分でもそうしただろう。
だが、遠距離攻撃は頂けない。敵には接近してもらわなければ。
「なんと卑劣な」
大盾の裏からブーイングを飛ばせば敵は歯を向いて威嚇するようだった。間断なく浴びせられる銃撃を大盾はよく凌いでいた。接近してくれない。
「ですが、ほら。ブローディアは機能していますね」
「ッキ?」
ブローディアは今、盾として機能していた。
「ですから実証はできていませんね?」
「むむ、確かに役に立ってしまっているウッキー」
大盾は縦に長い。身の丈ほどもある長さは、16mほど。横は8mほどはあるだろうか。厚みも贅沢に。重量を見積もり敵は顔を顰める。
銃はそこそこ強い威力であったが、しょせんはただの通常武器。コックピットを破壊したり生身の猟兵を攻撃する程度ならば足りるが、堅牢な大盾を割るには力不足であった。
(あとは、近寄ってきてほしいのですが)
トリテレイアは策を修正する。戦いとは必ずしも全てが想定通りに進むわけではない。だがそんな時、豊富な戦闘経験は冷静な判断力を失わせないだけの余裕を支える。その場で修正すればよいのだ。
「臆病な敵ですね。がっかりですよ」
大盾の裏で煽るように声を張り上げる。
「そんな銃撃、全く脅威でもなんでもありません。昼寝でもしてしまいましょうかね」
「ム、ムッキー!」
挑発に乗り、敵は足元の花を散らしながらブローディアに向かってきた。十分に引き付け、トリテレイアは自慢の怪力で自身の持つ大盾をブローディアの大盾上部へと投げ当てた。同時に身ごと体当たりするように身を隠していた盾裏を押せば、16mの大盾が敵めがけて倒れていく。凄まじい重量でパッタリと。
「キッ!!?」
「おっと、逃しませんよ」
逃れようとする敵目掛けてワイヤーアンカーを放ち、熟達の技能を活かしてぐいと引けば、逃げること叶わず敵が大盾の下敷きとなる。ズシン、と地を揺らす衝撃。
もちろん、敵も特製防護スーツに身を包んだオブリビオンの幹部だ。いかに重量が凄まじくとも、パッタリと倒れた物体の下敷きになった程度で倒されたりなど――。
「もちろん、私も熟練の猟兵騎士。大盾の下敷きにしただけでは一歩届かぬ可能性も考慮しておりました。敵を侮ったりはしませんよ」
ボロボロになり盾の下から這い出した敵を見下ろすようにして騎士が自身の大盾を振りかざしていた。
「あっ、ちょっ……ウ、ウッキーー!!?」
「駆除です」
床を這う害虫を叩くように。あるいは壁に留まったハエを叩くように。淡々と大盾が振り下ろされようとしていた。それに尋常ならざる怪力が上乗せされれば、単なるブローディアの大盾よりも余程殺傷能力は上となろう。
「若干手間取りましたが」
緑のセンサーは冷徹に敵を見下ろしている。
「巨大ロボットは動かなくても十分以上に危険なのです、これでわかりましたね」
「わ、わかった! わかったウキ!!」
敵目掛けて凶盾が振り下ろされ。戦場に断末魔が響き……やがて静かになる。
「……さて、次の戦場に行かねば」
騎士は何事もなかったかのように次の戦場へと向かうのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
レパル・リオン
ルクちゃん!ついに幹部怪人との戦いよ!あたしに作戦があるの!
(作戦を話した後)…うん、あんな奴と戦う事がそもそも危ないわね。でも、やるしかないわ!
…ルクちゃん、お願い。あたしの手を握って…
…よし、行くわよ!
あたしはルクちゃんを背中合わせになるように背負って、敵に向かって走るわ!
ルクちゃんが、みんながあたしを信じてくれるなら、それは信仰の力に変わるわ!【神聖】属性の【衝撃波】を身にまとって、かの聖人モーセが奇跡を起こしたように、怪人の起こした津波を真っ二つに割るわ!
そして背中に背負ったルクちゃんを…怪人にぶつける!今度はあたしが信じる番よ!ルクちゃん!行っけぇ!
ルク・フッシー
が、頑張りましょう、レパルさん!
(作戦を聞き)…ええ!?そ、そんな作戦…危険ですよ、レパルさん!レパルさんが、死んでしまうかも…
…わかりました。(ぎゅっとレパルの手を握る)…必ず、生きて帰りましょう!
…レパルさんの予想では、敵はボクの使う塗料を洗い流すため、津波を起こすはず…レパルさん、人が神を信じるように、あなたを信じます。あなたなら、救世主にだってなれる…!
レパルさんの突貫が成功したなら、今度はボクが絵筆を叩きつけます!…純白の【神聖】属性!【連射塗装】を、ゼロ距離で全弾浴びせます!
●ただ一枚の
「ルクちゃん! ついに幹部怪人との戦いよ!」
「が、頑張りましょう、レパルさん!」
レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)が傍らの少年に作戦を打ち明ける。
「あたしに作戦があるの!」
その作戦を聞き、ルク・フッシー(ただの少年猟兵・f14346)は動揺に瞳を揺らす。
「……ええ!? そ、そんな作戦……危険ですよ、レパルさん! レパルさんが、死んでしまうかも……」
目の前の少女は、いつも元気で明るい。その少女が、今この時もまた赤い瞳を戦意高く煌めかせている。
「……うん、あんな奴と戦う事がそもそも危ないわね。でも、やるしかないわ!」
ルクは若葉色の尾を揺らす。
(やっぱり、レパルさんは凄いな。勇気があって、つよい敵を怖れない気持ちがあって。ボクはこんなに怖い……のに)
そして、ふと少女が手を差し出した。尻込みしている自分を鼓舞しようというのだろうか? ルクがそう思っていると、レパルは小さな声で呟いた。
「……ルクちゃん、お願い。あたしの手を握って……」
声が気弱に揺れた気がしてルクは手を握る。冷たい指先が震えていた。
(あ……)
ルクはハッとした。
怖くないはずがない。緊張しないはずがない。
レパルは、こんなに小さな女の子じゃないか。
「……わかりました」
ぎゅっと手を握れば、互いの体温が共有できる。
「……必ず、生きて帰りましょう!」
言えばレパルはいつものように強気な笑みを返してくれる。けれど、恐れがないわけじゃないのだと、ルクはもう知っている。
だから、少年の心には勇気が立ち上るのだ。
「キッズたち、ここはゲームセンターじゃないウキよ?」
敵がもう。目の前だ。
「……よし、行くわよ!」
背中合わせになるようにルクを背負ったレパルが敵に向かって果敢に走る。ホントはちょっと怪人怖いケド、でもみんなのために戦うのだ。
(パパ、ママ)
魔法少女は勇気があるのだ。魔法少女はいつも元気なのだ。魔法少女は、
「みんなのためにっ!!」
少女は、ユーベルコードを『使わない』。
使うのは、背負われている少年だ。
ぴたりと体をあわせ、共に駆けるふたり。ふたりでひとりであるかのように。
「『バレット・ペイント』」
少年が操るのは、色彩。180本。絵の具の弾丸。優しき少年は気弱な瞳に覚悟を漲らせ、ペイント弾を召喚する。絵の具の匂いは花に交じる。癖のある匂いが満ちればまるで自分のアトリエのように――自信が湧いてくる。
ローズマダー、バーミリオン、ブラウンマダー、チェリーレッド、シェルピンク、オーレオリン、テールベルト、サップグリーン……、
「ここはもう、ボクのアトリエです」
戦場に響く声は――キャンバスを目の前に挑むアーティストの声だ。
(ゴッドペインター! 侮ってはいけない相手ウキ)
「そんな塗料! 物質繊維に色素の粒子が入り込んで定着してしまえば対応は困難ウキ。けれど、先制で洗い流してやれば何もできないウッキー!!」
敵は津波マシンを構築し、ルクの背から津波を放つ。ルクの背、すなわちレパルの正面から。
水の壁が圧を放ち、押し寄せる。
力一杯に地を蹴れば、足元の花が舞う。
ピンク色の魔法少女は、壁に向かって駆ける。
そのスピードが緩まることは、ない。
背合わせの体温がじわりとあたたかい。
少年が祈るように声をあげる。
「レパルさん、人が神を信じるように、あなたを信じます。あなたなら、救世主にだってなれる……!」
救世主。
この小さな少女が背負うにはいかにも重い称号だ。
だが、ちっとも大げさでは、ない。世界の運命がかかっているのだ。
お気楽でご機嫌なシティ。優しいパパとママ。
友達。大好きなひとたち。
レパル・リオンはキマイラフューチャーに住む少女だ。
ヒーローを目指し、いつも元気で頑張り屋で、よく笑い、よく泣き、よく怒る、そんな普通の少女だ。
だけど、『特別』だ。
その全身を神聖に光り輝くオーラが包む。それは、人々の想い。都市の人々が。パパとママが。ルクが寄せてくれるレパルを信じる力だ。それが、この普通の少女を救世主にする。
神聖な光が熱き想いと共に漲り、溢れ――衝撃波が漲る。
レパルは壁に向かって跳躍する。
進行を遮る津波は真っ二つに割れた。それは、聖人モーセが奇跡を起こすに似て。静かな絵画にも似て――けれど、動的だ。
「今度はあたしが信じる番よ!」
レパルが背に背負ったルクを怪人へと送り出す。
「ルクちゃん! 行っけぇ!」
「なっ!!」
敵が眼を見開いている。
薄緑のドラゴニアンが怪人へと飛び出している。服は、絵の具の染みでいっぱいだ。絵を描くのが好きな少年は心の中に敵への恐怖を抱いていた。だが、そんな恐怖が圧倒されるほどに今彼の心は覚悟で満ちていた。
守るべき人のために。
優しい心に応えるように彼の愛する絵の具たちが舞い踊る。ここにも、もうひとつの奇跡――世界に祝福されしペインターの力が今、発揮される。
「そうか、これは――、」
敵が慄く。
レパルの影から突如として現れたルクが、純白の絵具纏う絵筆を華麗に躍らせる。神聖なペイント弾が連射され、ゼロ距離から敵を真白に染め上げた。
「ああああああああっ!!」
戦場に悲鳴が響く。
ただひとつのユーベルコード。
友を背負い、ふたりがひとりであるように見せ。
ただ一枚を持ち札と決め、その札が最大限『一枚の札』として発揮されるようにと工夫し、熱い想いを乗せてふたりでカウンターを乗り越えるべく臨んだ戦いだ。
勝利しないはずが、なかった。
「やった……」
少年と少女が声をあげる。
どちらからともなく顔を見合わせ――、友の笑顔が、そこにある。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミア・ウィスタリア
※予め自分の手に肌色の塗料を塗っておく。
どーでもいいけどさ、まずエイプモンキーって何よアンタ。
エイプも猿だしモンキーも猿じゃん。
頭痛が痛いみたいになってんじゃん。
アタシの【極彩色の領域管理者】は塗料が当たった相手をルールで縛る能力。
考えられるとすれば「当たらない」か「塗料を分解して塗料でない物に変えてしまう」よね。
まぁどっちでもいいわ。
天然塗料って知ってる?花びらを磨り潰すだけで塗料って作れるのよ?原始的だけど。
周りにいぃーーっぱいあるそれ、全部アタシの能力のげ・ん・りょ・う❤️
幾らでもやればいいわ。
こっちは一滴でもアンタに擦りつければ勝ち。
(最悪手に付いた奴で直にやる)
命令は「自爆しろ」
●極彩色の領域管理者
天目掛けて咲き誇る花々が戦場に絢爛の耀きを齎している。
「どーでもいいけどさ、」
可憐な春花めいた小さな娘がふわり、戦場に降り立った。
ミア・ウィスタリア(天上天下唯画独尊・f05179)。
「どーでもいいけどさ、まずエイプモンキーって何よアンタ。エイプも猿だしモンキーも猿じゃん。頭痛が痛いみたいになってんじゃん」
嘲るように笑み、発動させるは『極彩色の領域管理者』。塗料が当たった相手をルールで縛る能力だ。少女の周囲に塗料が踊る。
「見てぇ? 自慢の塗料なのぉ! キレイでしょぉ~」
塗料を示しニコリと笑む。色を愛でるように。誇るように。
「頭痛が痛くて何が問題ウッキー!? とにかく頭が痛いのだと伝えたいミーにはぴったりウッキー! それはそれとしてユーの技は塗料で戦う技。そのご自慢の塗料を分解してしまえばなーんにもできないウッキーね」
エイプモンキーは実証するために微生物製剤の入った巨大スプレー缶を取り出した。
「こんなこともあろうかとさっき用意したスプレーウッキー。ミーがマニアックと言われるのは、ちょっとした事前準備の積み重ねゆえにウキ。日々雑学を仕入れ、いつでも引っ張り出して使えるようにありとあらゆる道具を準備しているウッキーよ」
水鳥は水面下で激しく足を動かしているという。猿もまた、しかり――だが、ミアは鼻で笑い飛ばした。そのカウンターは、想定通りなのだ。
「さ・る・知・恵」
スプレーはミアが召喚した塗料を次々と分解していく。だが、
「アハァ、それで実証にはならないのよぉ?」
蜂蜜のように甘く、少女が笑みを零す。細く小柄な肢体が屈む。繊細な指が足元から一輪の花をたおやかに摘み取り――ぐしゃりと握り潰した。
「!?」
白雪のような穢れない白い手を花露が滴る。その、色が。白を染めて紅い。
「まさか……」
背筋を走る嫌な予感にスプレーをミアに向ける敵。スプレーの噴射は手を染めた塗料も分解する。だが。
「天然塗料って知ってる?」
吐息めいて零れた声が、甘やかだ。
瞳が月のように笑んでいる。余裕。この少女には、ある種の超越的な雰囲気がある。勝利は決まっているのだと、嘲笑い、世界を捻じ伏せるように。嗤っている。
「花びらを磨り潰すだけで塗料って作れるのよ? 原始的だけど」
教えてあげる。
少女がそう微笑んだ。
「周りにいぃーーっぱいあるそれ、全部アタシの能力のげ・ん・りょ・う❤️」
それは、圧倒的な地の利であった。
彼女は無限に塗料を作り出すことが、できる。
それを先に察知できていれば、あるいはエイプモンキーは少女が先に生成した塗料ごと花を燃やす手を取ったかもしれない。あるいは、自身に決して塗料がつかないような防護スーツを身に纏ったかもしれない。
だが、察知しえなかった敵は、すでに別の手を取ってしまった。
敵が判断を誤ったのは、最初に放たれた少女の煽るような台詞にも原因があった。気を取られ、思考を誘導されてしまったのだ。
「作った塗料も全て分解してしまえば実証は、成るウッキー!」
敵がスプレーを噴射する。全身を包み込むように霧に覆われ。けれど、足元には――戦場には、無限に花があるではないか? ミアは次々と花を摘み、両手一杯の花を持ったまま敵へと跳ぶ。
「く、来るなウキ!」
予感がある。
接近させては、ならない。
敵は慌てて後ろへと退く。
「――追いかけっこぉ?」
嫣然たる微笑みが追いかけてくる。踊るように軽やかに、塗料の原料に囲まれて。ミアが狩猟者となり、敵を追い詰める。
「つ・か・ま・え・た」
指が敵に触れる。ぬるり、敵の身体を湿らせるのは、彼女の武器。
「ぁ……」
その瞬間、敵の眼には花溢れる麗らかな戦場で凄絶に笑む少女が映った。
それは、罠使いであり、地形の利用に長けた彼女だからこそできた『狩り』。可憐な春花めいて――けれど、甘く刺激的な致死の毒花。生命を摘み取る瞬間浮かべる、その少女の凄絶な美しさに状況を忘れて敵は目を奪われ、
「自爆しろ」
ただ、一言。神の如く下した命令。
敵はそれに従うことなく、ただ少女に釘付けになっていた。
「……ふふ」
蜜のように甘く、少女が笑む。
ユーベルコードは発動する。極彩色の領域管理者は、従ぬ者を決して許さぬ。
断末魔、ひとつ。
花に魅せられし敵が散華する。
成功
🔵🔵🔴
アリス・セカンドカラー
強固に精神を防御する装置、なるほど催眠も洗脳も受け付けぬ程に脳を保護してしまえばマインドジャックも恐るるに足らず、と。
では一つ教えてさしあげましょうか、催眠も洗脳も自己強化に使えるということを。マインドジャックを自らに向けることで意識と変性意識をダイレクトに繋ぎ、意識の幻想性を廃し深い集中状態へと潜ることで身体能力と技の向上を図るわ。いわゆるトランス或いは神懸かりと呼ばれる状態ね。
お猿さんの先制攻撃を盗み攻撃で利用して念動力由来の怪力で投げ飛ばすわよ。ふふ、最近の魔法使いは近接戦も出来るのよ、知らなかったかしら?こう見えて私パワーファイターでもあるのよね☆
●綿菓子の花宴に無垢なアリスが微笑めば
ふわり、戦場に花影降り立ち、花園にワンダードレスが幻想的に翻る。笛吹き少女は、ラズベリーの瞳を瞬いた。
ただ、それだけ。それだけで、空気が変わった。
少女は、綿菓子に似ていた。
少女は、子供のように無邪気だ。
少女は――笑み。その口が蕩ける血の薔薇を連想させる、紅。
小悪魔の如き妖艶さを滲ませるピュア・ローズ。アリス・セカンドカラー(不可思議な腐海の笛吹きの魔少女・f05202)が『マインドジャック』を発動させる。神経をじわり侵し、脳をひたひたと浸す甘美な誘惑。
妖精めいた繊麗な容姿をもつ少女へと敵が一瞬見惚れ、けれど首を振る。
「ミーを誘惑しようとはイケナイレディウッキー。毒電波は遮断させて頂くウッキー!」
マニアックマシンが美しくも退廃的な花の隙間から刃を奔らせ、アリスの背に迫る。淡紅の光の波紋が広がるように花が揺れ、
「キッ?」
気付けば、少女は姿を消していた。虚空を刃が通り過ぎる。群れ咲く花々を遥か下に見据え、少女アリスは高く跳躍していた。敵の放ったマシンを足掛かりとして。その念動力と身体能力が異様に冴え、増している。
――敵の対策を、読んでいたのだ。
「一つ教えてさしあげましょうか、」
「催眠も洗脳も自己強化に使えるのよ」
鈴振る様な声が頭上から降る。ワンダーラビットの長耳が揺れ、花園のさざめきに降る綿雪のように揺籃の少女が降りて来る。
宙でくるりと舞転し、戦場の風を嚮導するように愛らしい少女が――勢いの儘、体当たりした。
「ウキイイイィッ!?」
ワンダードレスが翻れば夢物語より夢のよう。だが、少女は恐ろしい速度でバランスを崩した敵の腰を鷲掴みにし、尋常ならざる怪力で投げ飛ばした。花の絨毯を蹴散らして、敵が地を滑る。
「グ、ァッ」
衝撃に詰まる息が口を突く。その一瞬で既に少女は――肉薄している。容赦する気はないのだと、その瞳が物語る。煌々と赤い瞳は血薔薇に似て。
にこり、微笑む貌は余りにも――無垢。
だが、その繊手が敵をわしりと掴み、今度は天井へと叩きつける。同時に地を蹴り、超人的速度で空中の敵の上を取ると一廻転。勢いをつけてしならせるはドレスからちらりと覗く細い脚。その細い脚が、異常なまでの膂力を魅せる。ゴウ、と風唸らせるほどの蹴撃。叩き落され、敵が再び地に落ちる。
「ガアッ!」
上から落ちてきた少女は拳を叩きこむ。頭へ振り下ろされた拳が嫌な音をたてた。敵の防護を破り、頭蓋を割り。脳漿を撒き散らし。
けれど、優婉に少女は笑う。
とおんと着地する足音は、あまりにも軽やかだ。
舞踊を締めくくるが如く、少女は敵を殴る。どすり、どすりと重い音をたて。体の動きにあわせ、繊細な髪が靡く。波打つ。
やがて立ち上がる少女のやわらかな頬には、血がついていた。敵の返り血を手で拭い、愛らしい舌でぺろり、と舐め。ダンピールの姫君は、優雅に花を摘む。
一輪の花。それを愛でるように口づけしながら、アリスは説明してあげるのだ。
「マインドジャックを自らに向けることで意識と変性意識をダイレクトに繋ぎ、意識の幻想性を廃し深い集中状態へと潜ることで身体能力と技の向上を図ることができるの。いわゆるトランス、或いは神懸かりと呼ばれる状態ね」
声は、ふわふわした綿菓子のように。
甘い。稚い。子供のように。
無邪気。
「ふふ、最近の魔法使いは近接戦も出来るのよ、知らなかったかしら? こう見えて私パワーファイターでもあるのよね☆」
花がふわ、と手を離れ。
敵の死骸へと柔らかに落ちる。
「……もう、きこえていないわね」
揺籃の少女は、微睡むように。
笑む。
成功
🔵🔵🔴
リダン・ムグルエギ
このコードは衣装を提示するコード
なら、死角から服を切り裂く一撃が来るでしょうね
えぇ、狙い通り
アタシが提示する衣装
それはジーンズ
そう、GOATia Feat エイプモンキーによる
時代を超えたコラボレーション「ダメージジーンズ」よ
相手の攻撃、それさえもデザインに組み込むの
時代が変わっても残るものはあるわ
アナタのブランドみたいに
でも、残ったものも常に変化し進化してるわ
この世界に進化はある、のよ
これがその証左
ダメージジーンズはジーンズの形を活かしつつ
進化して生まれた全く新しい流行なの
いかがかしら?
昔の有名人が復活した時にする事?
衣装を着てもらって二人で自撮りよ
満足したら昇天してくれるかしら?
●そのトレンドメーカーの名は
「美しい戦場ね」
宇宙山羊族のデザイナーがぽつりと呟いた。星空が煌く幻想角から垂れる金の装飾が軽やかに揺れる。碧色が神秘的に耀く。天秤にかけるかのように敵を視るのはファッションブランド『GOATia』のデザイナー。
リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)。
「それは、何のつもりウッキー?」
敵が眼を瞬かせる。
デザイナーの手にあるモノ、それはジーンズだった。
――『作業をしているとすぐにズボンがダメになってしまうんだよ』
それは、とある世界。
労働者たちは丈夫なズボンを求めていた。
とある仕立屋がニーズに応えた。
ズボンはニーズに応える耐久性を有していた。どんどんと受注が入るようになり、仕立屋は生地商人と折半し、特許を出願するに至り。
トレンドメーカーの彼女が提示する。
「ジーンズよ」
気怠けにすら感じられる緩い声が煙るように敵に応える。マニアックマシンが死角から迫っている。彼女は、身を護る防護策は練っていなかった。
「……ッ」
リダン・ムグルエギはデザイナーだ。
彼女はその身を使い戦うよりもその才能を活かして彼女にしかできない方法で後方から支援するのが得意であった。だが、彼女は危険を承知で戦場に立つことが多々ある。それは、彼女がプロのアーティストだからだ。
悲鳴は、かみ殺すように。
マシンに身を刻まれ血に塗れ、デザイナーは手にもつジーンズを示した。ジーンズは、敵のマシンによりダメージジーンズと化していた。
血を滴らせながらも、リダンが倒れることはない。
伝えたいことがある。身体の痛みなど、限界など、軽く凌駕できる。リダン・ムグルエギは決して声を荒げたりはしないが、静かな意思が。その魂を一本通り心と体を支えるしっかりとした芯がある。彼女は、プロフェッショナルだ。
「……!?」
敵は、不思議そうにしている。
なぜこのひ弱そうに言えるデザイナーが負傷しながら戦場に立っていられるのかが、わからない。
彼には、わからないのだ。
「時代が変わっても残るものはあるわ、アナタのブランドみたいに」
声は、ひどく穏やかで、理性的で、静かだった。
それは、カスタマーに語るように。
「でも、残ったものも常に変化し進化してるわ。この世界に進化はある、のよ。これが、その証左」
時代は移り変わる。
過去の先に今がある。
今の先に未来がある。
未来から視る今は、過去と呼ばれることだろう。
映画の中で、初めてジーンズを着用した者が出た。
暴力的に演じられたその姿に大人たちは眉を顰め、けれど若者たちはジーンズに魅了され、こぞってジーンズを買い、履いた。ファッションとして。
そしてパンクバンドがジーンズを引き裂いたスタイルで更に若者たちを魅了し、その流れが継承されていったのだった。
丈夫な、耐久性に優れるニーズから生まれたものが、わざとダメージを与えた状態をCoolと言われるようになり。
「ダメージジーンズはジーンズの形を活かしつつ進化して生まれた全く新しい流行なの。いかがかしら?」
涼やかな声が戦場に響けば、爽涼な微風が走り抜けるが如く心が濯がれる。星芒の煌めきを湛えた瞳のなんと美しいことだろう。好きなものを語る時、このアーティストは一番輝く。
「GOATia Feat エイプモンキーによる時代を超えたコラボレーション「ダメージジーンズ」よ」
微笑む。
「過去のミーと、今のGOATiaのコラボレーション……」
エイプモンキーが眼を瞬かせる。
驚くことに、この敵は段々とジーンズに魅力されつつあった。
プロの語りが心を少しずつ捉え、惹きつけているのだ。
リダンは家に帰ってきた家族に向けるようにあたたかに微笑んだ。
「衣装を着てくれるかしら? ふたりで写真を撮りたいわ」
「ミーと写真をウキ?」
ダメージジーンズを差し出せば、敵は早着替えを披露してくれる。
「とっても似合うわ! 素敵ね」
「そ、そうウキか?」
リダンがスマートフォンを構え、ふたりは並んで写真を撮る。
なんというプロモーション。
敵は、すっかりこのジーンズに愛着を持ってしまった。ここまでされて愛着を持たないはずが、なかった。このデザイナーは恐ろしくセンスが良いが、それだけではなく自らの作品の良さをナチュラルに伝えられる腕があり、我が身を顧みず実行するだけの度胸と情熱がある。
「あ……」
敵がビクリと体を跳ねさせた。鮮烈なダメージが全身を襲い、悲鳴があがる。
「満足してもらえたみたいね」
トレンドメーカー・GOATiaは、好みのツボに作品が刺さればダメージを与える。
「昇天してくれるかしら」
囁くような声は、やはり穏やかだ。
デザイナー・リダンはアーティストであり、猟兵であった。
彼女もまた、敵を倒すために戦場に来たのだ。
「アアアッ」
断末魔をあげ、敵が絶命する。
血を滴らせながら、リダンはおっとりと写真を見る。
そして、ぽつりと呟いた。
「さようなら」
――こうして、絶戦は幕を下ろしたのであった。
苦戦
🔵🔴🔴