バトルオブフラワーズ⑥〜夢色オン・ステージ!
●キラキラ・ドリームステージ
ダンスステージには光が満ちている。
燃え立つようなレッドカラー、深く海の叡智を讃えるブルー、明るいお日様のイエロー、生命溢れる森のグリーン。
ドキドキと高鳴る鼓動。吐く息熱く、体温があがっていく。人々が中継画面を通してその光景を見守っている。
ステージの上部からは、花が降り注ぐ。
5月の花は爽やかに、ステージで戦う者たちを祝福し、鼓舞するようにやわらかに降り注ぐ。
七色の光が照らしだす全身。想いは体を火照らせ、感情の渦を誘うように音が鳴り、きらきら、汗が光に舞う。花がひらりくるりと踊っている。花の香りに包まれて、踊り手の体温は上がっていく。
そこは、感動を生むためにつくられた夢のステージだ。
●作戦
グリモアベースの片隅で、猟兵たちがキマイラフューチャーの未来のために集まっていた。大戦争『バトルオブフラワーズ』。彼らはその只中にある。
「僕たちの目的地、『システム・フラワーズ』の周囲は6つの『ザ・ステージ』で守られています。今回僕たちが攻略するのは、『ザ・ダンスステージ』でございます」
ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が説明をする。
彼らの行き先は、『ザ・ダンスステージ』であった。
「この戦場の戦闘は、テレビウム・ロックで救出したテレビウムの画面を通してキマイラフューチャー中に中継されています――キマイラフューチャーの人々が見守っています」
「皆様は敵と戦闘をして頂くのですが、このステージはダンスステージ。ただ戦闘するだけではございません。ダンスパフォーマンスを織り交ぜて頂きながら戦って頂くことになります」
ルベルは丁寧に説明する。
華麗な動き、繊細なステップ。アッと驚かせるようなアクロバティックなパフォーマンスや、身体能力の高さや技巧を見せつける激しく流麗な戦舞。そして、観ている者に心を伝える表現力。
「目指すのは、感動でございます。
視聴者の人々を感動させることができれば『フィーバー』が発生いたします。人々の感動が、皆様の戦う力となり、攻撃効果が何倍にもパワーアップするのでございます」
ルベルは手に持っている杖をくるりと廻転させ――カランと音が鳴り、杖は床に転がった。
「……フィーバーが発生しなかった場合は、攻撃効果は半減以下になってしまいます」
表情は冷静に保たれているが、尻尾が情けなく丸まっていた。
だが、ルベルは気を取り直したように笑顔になる。
「こほん。単なる技巧だけの勝負というわけではございません。感動させることが大事でございます。例えば、今みたいにちょっと失敗しても、一生懸命だったり、頑張ってるのが伝わったら人々は感動するかもしれません」
気持ちが大事だ、とルベルは言う。
「皆様は、どんな時に感動なさいますか。僕は、一生懸命な人を見ると感動いたします」
だから、上手下手ではなく挑戦してみてほしい、というのだ。
「皆様、華麗なダンスと戦闘を融合させ、どうぞ敵を撃破してください。そして――人々の心に、希望を」
そう締めくくり、ルベルはグリモアを光らせる。
グリモアが導くは、華やかなダンス・ステージ。
remo
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回はキマイラフューチャー、リアイベ『バトルオブフラワーズ』のシナリオ。ダンスステージです。
戦闘しながらダンスパフォーマンスを披露する、という作戦になります。
踊りが得意な者もそうでない者も一緒になって頑張って、楽しみ、見ている人々を感動させる。人々の感動が敵を倒す力となる。と、そういうシナリオです。
キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
第1章 ボス戦
『安西九郎・来伝・ペディア』
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POW : これぞ明代の武将、天仁須(てにす)の爆炎投法よ!
【テニスラケット】から【球状の爆弾】を放ち、【着弾時の爆発】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : これぞ宋の侠客、春空琉(はる・くうる)の斬撃走法
自身に【謎の魔力】をまとい、高速移動と【移動の際の衝撃派】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : あれは○○闘法!知っている(つもりな)のか来伝!
対象のユーベルコードを防御すると、それを【亜行参紗行伍のページに写し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
イラスト:笹本ユーリ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠水貝・雁之助」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
⚫️信じる気持ち
光と音が踊っている。そこは、感動を生むためにつくられた夢のステージだ。それなのに。
「わたしたちの都市はどうなってしまうのかしら」
ぽつり、と。ひとりが呟いた。不安な気持ちが呼び起こされて、皆がどんどん沈んだ顔になっていく。
「いくら猟兵でも今回はキツいんじゃ」
中継を観ている人々がどんどんネガティブになっていく。
「猟兵は、負けないもん」
声をあげるものがいた。人々の視線の中で堂々と胸を張り前を見ているのは、ちいさな子供だ。子供は、猟兵が大好きなのだ。大好きな猟兵を応援したくて中継を観ているのだ。
「猟兵は、ぜったい、負けないもん」
そこは、感動を生むためにつくられた夢のステージ。不安に瞳を揺らす人々が見守る中。子供が目をキラキラさせて応援する中、猟兵たちは今、踊り出す。
レパル・リオン
オッケー、今回はダンス対決って事ね!あたしも新技を披露するわ!
今回出すのはダンス属性のカンガルー風衣装!『パッションカンガルー』フォームに変身よ!
飛んで、跳ねて、宙返り!とにかく派手にいくわ!
もちろん踊るだけじゃないわよ、カンガルーの強烈なパンチと尻尾攻撃を受けてみなさいっ!
…ルクちゃん(f14346)もこの依頼に出るの?え、この服着たいの!?
…わかったわ、ルクちゃん!みんなと一緒に、踊りましょ!
ルク・フッシー
…とりあえず話を聞いてみましたが…ダンス…ですか…ボクの出番はなさそう…ですね……
…あ、レパルさん(f15574)、この依頼に出るんですか…
…へぇ、新技ですか…召喚した衣装を…
…あれ?衣装を出す技って事は…?
…あ、あ、あの!ぼ、ボクにも、その服を着せて貰ってもいいですか…?
…そして着てみたはいいですが、…こや、やっぱりはずかしいぃぃぃ……で、でも、ここまで来たら、やるしかない…!
は、はい!ダンスは不慣れですが、お、踊りましょう!レパルさん!
恥ずかしさ耐性はないけど…覚悟でカバーします!
戦闘では小さい方の筆でグラフィティスプラッシュを試みます…ま、魔法少女の格好で…お、踊りながら…どきどき…
セシリア・サヴェージ
私の姿ではかえって視聴者の不安を煽ってしまうのでは…などと臆している時ではありません。暗黒を宿す身ですが、この世界を必ず護ると誓いましょう。
人々に希望を与えるために、この世界の未来のために!不肖セシリア、真勇剣と共に舞います!
技術は拙いかもしれませんが気持ちなら負けません。【勇気】が出るような、人々を【鼓舞】するような力強い【ダンス】を披露したいと思います。
さらにUC【死翔の黒剣】で召喚した多数の剣を【念動力】で自在に操る、攻撃を兼ね備えた【パフォーマンス】でフィーバーしてみせます!
フィーバーになったならば、人々の想いをのせた真勇剣の一撃でオブリビオンを見事撃破してみせましょう。
御狐・稲見之守
遠い世界からこんにちは。
わたくし御狐稲見之守、御年幾百歳のしがない狐でございます。この度はわたくしの故郷の素晴しさを伝えんがため参りまして
御覧の皆々様どうかお手を拝借いたしたく候。
『侍帝音頭』
四里四方の 御江戸家並に
今日も轟く ユーベルコード
赤丸3つでも 泣くんじゃないよ 猟兵さん
おいでよ良いとこ 侍の国
星降る空見上げ 上様が笑ってる
――嗚呼、サムライ、ニンジャ、ゲイシャレディ
フジヤマ、ハラキリ、スシテンプラ
侍の国には夢があるさ、サムライエンパイア
(みんなも踊ろう!)
ふふふッ、感じるか、感じるだろうサムライパワーを、
喰らえサムライエンパイア奥義、カラテ=チョップ!!
これがワビ=サビだ…ッ!!
●Aight! ダンシング!
「遠い世界からこんにちは。わたくし御狐稲見之守、御年幾百歳のしがない狐でございます。この度はわたくしの故郷の素晴しさを伝えんがため参りまして
御覧の皆々様どうかお手を拝借いたしたく候」
ステージに朗々と響く口上。
光に照らし出され、優雅に一礼するのは御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)。艶やかに笑みを浮かべ、妖狐がステージを支配する。
四里四方の 御江戸家並に
今日も轟く ユーベルコード
赤丸3つでも 泣くんじゃないよ 猟兵さん
おいでよ良いとこ 侍の国
星降る空見上げ 上様が笑ってる
「こ、この音楽は!」
中継を見ていた人々がざわざわしている。
それは、『侍帝音頭』。稲見之守が着物を鮮やかに翻し、一瞬でエンパイアステージを作り上げてしまった。
――嗚呼、サムライ、ニンジャ、ゲイシャレディ
フジヤマ、ハラキリ、スシテンプラ
侍の国には夢があるさ、サムライエンパイア
「なんだろう。いいなあ」
人々の身体が自然と躍り出す。子供たちがキャッキャとはしゃぎながら歌を歌い出し、おじいちゃんと一緒になって体を揺らしている。
そんなステージの様子を気にしながら、他の猟兵たちが準備を進めていた。
「オッケー、今回はダンス対決って事ね!あたしも新技を披露するわ!」
レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)がいそいそとステージの準備を進めている。
「……とりあえず話を聞いてみましたが……ダンス……ですか」
レパルのピンク色の耳がぴくり、と動く。聞き覚えのある声だったのだ。
(ルクちゃん?)
パッと振り向けば、気弱そうに瞳を揺らすルク・フッシー(ただの少年猟兵・f14346)が眼に入る。
「……ボクの出番はなさそう……ですね……」
呟いていたルクは明るい水色の瞳をレパルへと向けた。ぱちり、と水色が瞬けば、星の瞬きにも似て。背では若葉色の尾がぴょこりと揺れた。
「……あ、レパルさん、この依頼に出るんですか……」
「……ルクちゃんもこの依頼に出るの?」
レパルはツヤツヤピンクの尾を嬉しそうに振り、衣装を見せた。
「今回出すのはダンス属性のカンガルー風衣装!『パッションカンガルー』フォームに変身よ!」
「……へぇ、新技ですか……召喚した衣装を」
(魔法少女っぽいかなぁ)
魔法少女系ヒーローを目指しているレパルの出した『パッションカンガルー』はあまりヒラヒラしたデザインではなかった。ふわふわもこもこのカンガルーの毛を表現したファー・デザイン。元気なレパルにぴったりの手足が露出した設計、けれどワンポイントで手首を飾るのは女の子ならではの愛らしさと甘酸っぱさを演出するストロベリー・ピンクの魔法のブレスレット。要所要所に散りばめられたリボンはラズベリーカラーにさりげないピュアなホワイトハートが印象的。
レパルの戦闘スタイルを考えればぴったりな気もして、ルクは頷いた。レパルは格闘戦が得意なのだ。
そして、ふと思いついた。
「……あれ? 衣装を出す技って事は……? ……あ、あ、あの! ぼ、ボクにも、その服を着せて貰ってもいいですか……?」
「え、この服着たいの!?」
レパルは眼を丸くした。
「……わかったわ、ルクちゃん! みんなと一緒に、踊りましょ!」
「ルクちゃん、すっごく似合ってるわ♪」
衣装を用意してもらいルクが身に纏ったのは、魔法少女のコスチュームだ。普段のルクとは異なり、甘いフリルとレースのふわふわスカートと袖が動くたびに可憐に揺れればまるで女の子のよう。足元がスースーとして頼りない。
筆をもつ緑肌にやわらかに袖布が触れればペイントの際に衣装を汚してしまわないかと心配してしまい、ルクはそわそわとした。
「かっわいいー!」
レパルがカンガルーのように跳びはねてはしゃいでいる。
(……着てみたはいいですが、……こや、やっぱりはずかしいぃぃぃ……で、でも、ここまで来たら、やるしかない……!)
「は、はい! ダンスは不慣れですが、お、踊りましょう! レパルさん!」
羞恥に揺れる涙目に覚悟を決めるルクは、どこからどう見ても庇護欲を誘う愛らしい女の子であった。
「手を繋いでいく?」
レパルが手を差し伸べる。コクリと頷いて手を握れば、まるで姉妹のような微笑ましさ。ステージに並んでいるだけで人々のこころがほっこりとあたたかくなるのであった。
先にステージを支配していた稲見之守が微笑まし気に笑みを浮かべる。
レパルとルクは稲見之守の動きにあわせて侍帝音頭を躍ってみた。
「いいぞ、がんばれー!」
「楽しい!」
人々が笑顔を浮かべて一緒に体を揺らす。
フィーバー!!
猟兵たちの身体に力が集まってくる。顔を見合わせれば、仲間たちは皆高揚していた。
「ふうん、やるじゃない」
ステージには、敵がいた。名は、『安西九郎・来伝・ペディア』。
金色の髪をポニーテールにしてご機嫌に揺らし、狐耳を楽しそうに揺らし。臙脂色のリボンとタイが薄い質感を風に舞わせるようにまた揺れる。足元のブーツは心地よいリズムを刻み、タップする。ハートビートが高鳴れば控えめな狐尾が清楚に揺れて、腿があがれば眩しい絶対領域が観ている者に躍動を伝える――空色カバーのブックをポーンッと天に放って軽やかにキャッチすれば、虹色プリズムが花のように彼女を飾り立てて――光の衝撃派が猟兵たちへと襲い掛かる。
「きゃあっ」
一撃に悲鳴があがる。
「猟兵たち! よく来たわね。ステージの攻略はさせないわよ」
赤い瞳は柘榴のように輝いている。
「これぞアイドル育成スマホゲーム流、必殺! 『Q.このゲーム面白い? A.可愛い』よ!」
「可愛いなら、ルクちゃんも負けないわよ」
レパルがバーンっとエフェクト音が出そうなほど元気いっぱいにルクをステージの前に押し出した。
「あ、え、ええ~~」
ルクがあたふたと頬を染め、涙目でスカートを隠すようにもじもじした。魔法少女コスチュームはやっぱりちょっと恥ずかしい。
「が、が、がんばりますぅ……っ?」
うるうると涙を湛えてそう言い、懸命にステップを踏むルク。応援するようにレパルが隣に並んで元気いっぱいにカウントをする。
「そーれ、いち、にい! さん!」
声に合わせてステージ全体を揺らすような大音量が鳴り響く。
「わあっ……!!」
中継を見ていた人々が惹きこまれる。
なんとエンパイア風のミュージックが盛り上がりを見せ、アレンジされてハイテンポになった。アップテンポに魔法少女が夢を描く。光が細かく色を変え、熱を煽る。柔らかな関節をリズムにあわせて弾むように躍るレパルは筋肉をしなやかに弛緩させ凝固させ、リズムを取る。
カンガルーのストラドルジャンプの背後に魔法少女のカラフルなマジカルペイントが踊っている。
「サムライ!」
「ニンジャ!」
「ゲイシャレディ!」
「Enjoy!」
キマフュソウルを知り尽くしたレパルがぱちりとウインクしてみせれば、ワッと観客が盛り上がる。躍るふたり、視線を交差させれば互いの熱がわかる。伝わる。
フィーバー! キラキラの光が世界に満ちて、夢のよう。
「もちろん踊るだけじゃないわよ、カンガルーの強烈なパンチと尻尾攻撃を受けてみなさいっ!」
レパルがくるりと回転し、アラビアンを披露しながらテイルアタックを叩きこむ。
「なっ」
痛烈なテイルアタックに押される敵はステップを踏み忘れてよろりとバランスを崩す。隙を逃さずにレパルはパンチを繰り出した。
「ええい! 厄介な猟兵ね」
敵が情熱的なストンピングでパンチから逃れる。
――星降る空見上げ 上様が笑ってる♪
ステージを囲むドローンからは、人々が笑う顔が映っている。双方向中継だ。
「ふふふッ、感じるか、感じるだろうサムライパワーを、喰らえサムライエンパイア奥義、カラテ=チョップ!! これがワビ=サビだ……ッ!!」
こっそり魅了の術を使いつつ熱狂エンパイア・ステージを作り上げた稲見之守が狐火を鮮烈に放てば、敵の自慢の耳と尻尾がコンガリと焼けてしまう。
「きゃああ! 自慢の毛並みが!」
悲鳴すらもステージを盛り上げる要因として、稲見之守は嫣然と笑う。
「今日も轟く ユーベルコード♪」
「♪ 赤丸3つでも 泣くんじゃないよ 猟兵さん」
ステージを中継ドローンが囲んでいる。ドローンには、人々の映像も映し出されていた。若干のタイムラグを感じさせながらも、人々は動いている。離れた場所、キマイラフューチャーの至る処で、人々がこのステージを見守っているのだ。人々は眼を輝かせ、中継に見入っている。心地よい音楽、愛らしく元気な猟兵のダンスバトル。それは人々に感動を齎していた。 移り変わるエンパイア・イーディーエムは波にように挑戦的にステージに満ち……、
――♪ ♪ ……キ、キ……、
「!?」
突然音が乱れてストップした。静寂。
「と、トラブル?」
なんとトラブルにより音が途絶えてしまったのだ。それだけではない。ステージを眩く照らしていたライトまでもが、徐々にテンションを下げていくかのように静まり返っていく。
中継を見守っていた人々がざわざわしている。感動が覚めていき、不安が再び胸に去来する。
(私の姿ではかえって視聴者の不安を煽ってしまうのでは……)
想いながら、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が前に出る。彼女は人々のために戦う暗黒騎士であった。献身的に民のために力を尽くしながらも、時に人々は彼女に怯えの視線を見せてしまう。人々を怖れさせてしまう。ゆえに、セシリアは暗闇の中を迷いながら歩を進める。己が出ることで、逆効果になってしまいかねないのでは、と不安な気持ちが胸にある。
『♪ 四里四方の 御江戸家並に』
仲間が歌う声が静寂を破った。稲見之守だ。
『♪ 赤丸3つでも 泣くんじゃないよ 猟兵さん』
レパルとルクが歌を重ねた。
手拍子がきこえる。歌が、きこえる。
小さく不揃いな手拍子、まばらな手拍子が少しずつ揃っていく。ドローンからも手拍子が聞こえてくる。少しずつ、手拍子が大きくなる。人々が一緒にリズムを作り、歌を歌ってくれる。
――♪ 嗚呼、サムライ、ニンジャ、ゲイシャレディ
フジヤマ、ハラキリ、スシテンプラ♪
ドローンの映像の中、ちいさな子どもキマイラが顔を真っ赤にして一生懸命に手拍子している。口が大きく動き、大きな声で歌を歌っている。
隣では、おじいちゃんキマイラも同じぐらい真っ赤な顔で、歌ってくれているのだ。
暗闇の中、セシリアが舞う。
力強く靴が床を鳴らしてステップを踏む。リズムを強調し、ビートをくぎるように。手拍子に合わせて靴音が軽やかに鳴り響く。
これは、演出なのだと人々に知らしめるように。
そして、光が戻る。暗闇が一瞬で眩い光に照らし出され、美しい女騎士が人々の前で強い意思を全身から迸らせるように舞う。
「わあああああっ!!」
歓声がきこえる。
セシリアは高揚する空気に酔うように指先までしなやかに伸ばす。空気を愛で、慈しむように腕を舞わせればスポットライトが情熱の赤からカラーサークルを右回りにまわって幻想を描く。
ライトを浴びて清廉に耀く銀の髪。しなやかな肢体が照らし出され、全ての者が眼を奪われる。
フィーバーが全身を押すようだ。
人々の熱が、わかる。その熱の中心にいるのが自分なのだ。
「暗黒を宿す身ですが、この世界を必ず護ると誓いましょう」
真勇剣ブレイブブレイドを勇ましく掲げて剣舞を舞えば、光溢れる世界が熱狂する。
「馬鹿な!」
敵がいつの間にか手にしたテニスラケットから爆弾を放つ。
セシリアは軽やかに爆弾を斬り伏せた。
「すごい!」
「これが猟兵だよ」
観客が中継に大興奮に手拍子を続けている。手は、もう真っ赤だ。手だけではない。頬も目も、紅潮し充血して、もう真っ赤だった。
「いいぞ猟兵!」
「がんばれ猟兵!」
人々が力いっぱいの手拍子と一緒に声援を送る。その熱気がドローンを介してセシリアへと伝わる。
コンビネーションはナチュラル・ハイテンションにステップを踏んで。死翔の黒剣が何本も周囲を躍っている。
笑みひとつ。
外、内、外と3回ずつ大胆に足踏みして腰でリズムを刻んでみせれば平素は生真面目さの際立つ麗人騎士が驚くほど陽気に『黒い』ではないか。成熟した大人の女性が見せる色香も漂わせ、セシリアが観客の高揚を力に変えて躍っている。生真面目そうな美人騎士の魅せるギャップに、ヒュウ、と観客が口笛を鳴らす。
「Wavy!」
ダンシングフィーバーが終わらない。
「人々に希望を与えるために、この世界の未来のために! 不肖セシリア、真勇剣と共に舞います!」
「Wooooooooo!」
「わあぁぁぁぁぁぁ!!」
割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。
ワン、ツー、スリー、
エンカウントに鼓動が踊る。
足元のパネルから赤い光が弾けて煌めく。頭上からディープブルーのスポットライトが一身に注がれる。青と赤に照らし出されてセシリアが蠱惑的な視線をカメラに向けた。ぞくりとする妖艶さ。
フィーバーが止まらない。
光が全身を包み込む。それは、人々の感動だ。
――この光は、
自分が、自分たちが、人々を感動させたのだ。
セシリアは湧きあがる高揚を乗せて真勇剣を敵へと叩き込んだ。共に戦う仲間たちが攻撃を重ねてくれる。稲見之守がなぎなたを振るい、ルクはペイントを振るい、レパルは元気一杯のパンチを繰り出した。
「みんなの想いが、お前を倒す!」
確かな技量により繰り出された鮮やかな攻撃の軌跡がフィーバーに乗って敵に押し寄せる。4人は人々の感動を力に敵を討ち倒したのであった。
大成功
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