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バトルオブフラワーズ⑦〜妹への想いを凌駕せよ

作者：緑城雄山

●妄想の妹を愛でる漢（おとこ）
「みんな、集まってくれて有難う。キマイラフューチャーが真っ二つに割れたのは、もう知ってるわよね？」
　グリモアベースに集まった猟兵達の前に立つのは、17歳ほどの少女に見える星の神、アステール・ユニヴェール（星の守護者・f17095）。
「星が真っ二つに割れるとか、星の神として正直どうかと思うんだけど、それは置いといて。その結果、システム・フラワーズへのルートが解放されたけど、そこに行くには、周辺の６つのザ・ステージと言うエリアを全て攻略しないといけないの」
　しかし、そのステージは様々な特殊ルールに支配されていると言う。その中でアステールが予知したステージのルールは、『パッショネイトソング』。戦闘中は常に『自分自身を奮い立たせる歌』を歌い続けなければならず、歌を歌わずに行った攻撃は効果を発揮しない。
「秘密をオープンにしたりとか、恋人に歌で告白したりとかで、強い想いを歌に乗せる事ができれば、より強力な攻撃ができるみたい。それで、今回あなた達に戦ってもらう相手なんだけど……」
　げんなりしたような様子で、アステールが顔を曇らせる。
「妹が大好きな怪人・マイホゥよ。妹と言っても、妄想上の、だけどね。彼は、妹が大好きだと言う想いをストレートに歌に乗せてくるわ。正直キモ…けふん、気持ち悪いんだけど、素の戦闘力は高い上に、妹が好きだと言う想い自体は強いから、このステージではやたらと強くなっちゃうの」
　しかも、輪をかけて厄介なのは彼のユーベルコードらしい。
「妄想の妹による自己強化と、五十機以上のモニター付ドローンに表示される妹の応援による強化。この二つがそのまま通っちゃうと、妹への想いが強化されて、結果歌の効果も強化されちゃうから、何とか対策して。ユーベルコードの効果を潰してもいいし、それに負けないぐらいに自分を強化してもいいわ」
　ここまで厄介な要素が多いマイホゥだが、重大な弱点がある。現実には妹がいないので、現実の女の子に兄として接されると、感動で動きが止まってしまうと言うのだ。
「そうなれば歌も止まるからチャンスね。でも、私自身がそれをするのは嫌だから、無理にそうしてとは言わないわ。一応、そう言う弱点があるとは教えておくわね」
　そこまで告げると、アステールは手のひらの上に念を浮かべ、意識を集中する。
「ここをクリアできるかどうかで、キマイラフューチャーの、そして世界の未来が変わるの。マイホゥは厄介だけど、あなた達なら何とかしてくれるって信じてる。よろしくお願いするわね」
　ぺこり、と軽く頭を下げながら、アステールは猟兵達をキマイラフューチャーに送り出していった。

第1章 ボス戦 『妹が大好きな怪人・マイホゥ』

POW   :    妹の願いを叶えぬ兄などいない！お兄ちゃん頑張るぞ 【妄想の元気系妹の激励 】【妄想の清楚系妹の声援】【妄想のツンデレ系妹の罵倒(？)】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。 SPD   :    妹の何が良いかだと？これを見れば良さがわかるぞ レベル×5本の【妹 】属性の【動画を再生するモニター付ドローン】を放つ。 WIZ   :    どんな妹が好みだい？言わなくてもわかっているさ 【頭部のタブレットPC 】から【対象が考える理想の妹の幻影】を放ち、【実体化した幻の妹とのふれあい】により対象の動きを一時的に封じる。 イラスト：因果 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●妹萌えVSグルメ愛
「妹萌えの怪人はんでっか。せやけど、ナニワくいだおれ文化の伝道師として、わいのグルメ愛も負けてへんでー！」
　意気揚々とザ・ステージについて現れたのは、赤と白のストライプの服にたこ焼きを思わせる頭部のテレビウム、馬飼家・ヤング（テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992）。
「むっ。来たな、猟兵。では、勝負だ。私の妹への想い、とくと思い知れ！」

♪妹が好きだ妹が好きだ妹妹妹妹オーオーマーイーシースーター！

　ヤングの姿を認めたマイホゥは、早速朗々と歌い始めながら、ヤングにパンチやキックを浴びせにかかる。

「ちょ。いきなりかいな、かなんなあ。せやったら、男・馬飼家、心を込めて歌います。『はむはむ☆スイーツ天国』！」

♪ティラミス！　ドーナツ！　ミルフィーユ！　ショートケーキにパンケーキ！
♪タピオカ！　クレープ！　イチゴパフェ！　パンナコッタにアフォガード！

　負けじとヤングも、器用に顔のモニタースイーツの写真を次々と投影しながらふんわかした感じのコミックソングを歌いながら、両手のコテでパンチやキックを受け流しつつ、隙を見て突いたり叩いたりなどの反撃に出る。

♪白いーうなーじー（ハァ、ハァ）鎖骨ー（ハァ、ハァ）
♪かーわいい笑ーみー（ハァ、ハァ）すーてーきーぃ

♪あ～、甘い誘惑たまらんわ～　別腹やからカロリーオフ！

　歌に込めた想いが互角と見たか、マイホゥは頭の画面に妄想の元気系妹を表示して自身を応援させようとする。だが、そんなこともあろうかとと言わんばかりのノリでヤングは予め作っておいたザッハトルテを、画面の元気系妹に見せつける。たちまち、兄への応援よりも先にザッハトルテに興味を惹かれる元気系妹。

「えっ、ちょっ。お兄ちゃんの応援を……」
「えー。だって、お兄ちゃんはあんなの作れないでしょ？」

♪あ～、甘い誘惑たまらんわ～　別腹やからカロリーオフ！

「ぐげえっ！？　げほっ、げふっ！」

　マイホゥの歌が止まったところで、隙ありとばかりに歌いながらその喉を両手のコテで突くヤング。妹モニターの群れもきっちりと封殺し、マイホゥを倒すまではいかなくとも、歌が終わるまでの間に強かに大ダメージを与えたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●マイホゥ、妹達の歌声に消ゆ
「え、ええと……妹さんになればいいのかな？　な、なんか、やだなぁ……」
「……大丈夫か、シル。やっぱり妹になるのは止めておくか？」
「ううん、頑張るっ」
　マイホゥを見て引いているのは、青い髪に青い瞳のエルフの少女、シル・ウィンディア（光刃の精霊術士・f03964）。そして、双子の姉であるシルを気遣っているのは、黒髪に黒い瞳のエルフの少女、テラ・ウィンディア（炎玉の竜騎士・f04499）。
「では、私から先に行きましょうか？」
　双子の姉妹を気遣ってか、彼女達に微笑みかけてからマイホゥの方へと向かうのは、ボンテージを思わせる露出の高い服でスレンダーな肢体を包んでいる半翼のオラトリオ、レナータ・バルダーヌ（復讐の輪廻・f13031）。
（……歌はあまり得意ではないですけど、この渇望は易々と尽きませんよ）

♪過ぎし日に　囚われたまま　あてどない　苦痛の旅路

　暴走した力によってではなく、自身で復讐を成し遂げる。その渇望を重い調子の歌に込めて、レナータはよろよろと立ち上がるマイホゥの傍へと歩み寄る。
「ねぇ、お兄様？」
（お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、……）
　マイホゥの脳内で、レナータの言葉が延々とリフレインする。そして動きを封じられる。
「何だい、妹よ？」
　本能はこの時点で危険を訴えているのだが、体が動かなくなりながらも、兄として精一杯の反応を返すマイホゥ。
「お兄様も、わたしの復讐を手伝って下さいますよね？」
「あ、ああ。それで、何をすればいいんだい？」
「それはもちろん……」
　ここで、レナータは病んだ笑みを浮かべる。
「わ　た　し　の　復　讐　相　手　に　な　る　こ　と　で　す　よ」

♪いつの日か　果てを望むは　終わらない　復讐の輪廻

「ごはあっ！！」
　歌いながらマイホゥの胸板に触れ、ユーベルコード、A.A.ラディエーション（アンチアーマー・ラディエーション）を撃ち込むレナータ。胸郭の内部に無軌道に暴れまわる念動力を送り込まれたマイホゥは、胸を押さえて転げ回り、ジタバタとのたうち回る。
「まだ生きていましたか……今回はいい感じだったのですが、ね」
　病んだ笑みを浮かべたまま、レナータは双子の方を向く。
「次は貴女達の番ですね。お願いできますか？」
「え、ええ」
「あ、ああ」
　レナータがマイホゥから歩み去るのと入れ替わりに、シルとテラがマイホゥへと駆け寄っていく。
「ねぇ、お兄ちゃん、わたしの歌、聞いてほしいの。あ、あんまり上手じゃないけど、でも、想いを込めて歌うから、お兄ちゃんが歌うのを止めてほしいの」
「そ、その…兄様っ。お、おれはあんまりお歌得意じゃないけど…聞いてくれると…う、嬉しいぞっ」
　かなり膝をがくがくさせながらも如何にか立ち上がったところで、潤んだ上目遣いのシルと恥ずかしそうに目を逸らすテラに兄として扱われ、再び動きを封じられるマイホゥ。
（お兄ちゃん、兄様っ、お兄ちゃん、兄様っ、お兄ちゃん、兄様っ、……）
　マイホゥの脳内で、シルとテラの言葉が再び延々とリフレインする。

♪愛しの兄様～　おれは兄様と一緒にいたいー
♪この世界でずっと大好きな兄様と居たいー
♪だからこの世界で一緒にいようー
♪世界を滅ぼす兄様なんて見たくないー

「ぐべえっ！？」
　先に歌いだしたのはテラだ。世界を滅ぼさないでと言う願いを快活な歌声に込めて真っすぐに響かせながら、同時にユーベルコード、グラビティ・ブラストの重力波をマイホゥに浴びせていく。それに耐えきれず、べしゃりとその場に崩れ落ちるマイホゥ。

♪ねぇ、お兄ちゃん　わたしのこと、好き？
♪わたしはね…だーいすきだよ
♪だからね、世界を滅ぼすなんて　そんなこと考えないで

　姉のシルは、妹のテラと同じ願いを、しっとりとした歌声に込める。オブリビオンにとってはそれは相容れない願いだが、故にマイホゥへの葬送歌のようにも響いて。

♪そんなことを考えているならね…
♪わたし、お兄ちゃんの事　大っ嫌いになるからね？
♪だから、そんなこと考えないでほしいなぁ

　歌いながらユーベルコード、エレメンタル・ファランクスを発動するシル。地水火風の四属性の、魔力からなる百五十発もの砲撃が崩れ落ちたままのマイホゥに浴びせかけられる。
「嗚呼…これが、妹達の願い……なら、お兄ちゃんは――――」
　最期に何処か穏やかな言葉を残して、マイホゥの身体は砲撃の中に跡形もなく消えていった。マイホゥの最期の言葉を聞いた三人は、それぞれの想いを胸中に抱きながら、彼がいた場所を無言のまま見つめ続けるのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月10日