バトルオブフラワーズ⑥〜天空の決闘
猟兵たちは敵軍の総大将オブリビオンフォーミュラを討ち取るため、まずは目的地を守る『ザ・ステージ』を攻略しにかかっていた。
「今回の作戦では、6つあるうちの1つ『ザ・ダンスステージ』に向かってもらうわ」
集まった猟兵たちの前に立ち、担当グリモア猟兵である田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)はプロジェクターを起動した。
映し出されるのは青空に浮かぶ飛行船だ。巨大な楕円形の気嚢が二つ並び、その間には透明な直方体のゴンドラがつるされている。
「このガラス製の列車みたいな形をした箱が戦場になるわ。箱を構成してるガラスはとても頑丈だから、どんな激しい攻撃でも壊れない。だから気兼ねなく戦ってくれたらいいんだけど、注意すべき点が1つ2つ」
と、ユウナは立てた指を軽く振って見せた。
「その1。内部では足場が限られているの。よく見たら、ガラス板に碁盤みたいなマス目が刻まれてるのが分かるでしょ? それぞれのマスがランダムに明滅する仕組みになってるんだけど、光ってないマスを踏んじゃうと外部に強制退出。地面に真っ逆さまってわけ」
……飛行状態になれば、落とされる心配はなくなるのでは?
ある猟兵から質問が上がるが、ユウナは首を振って二本目の指を立てる。
「『踊らぬ者に価値はない』、ザ・ダンスステージにおける世界律よ。ダンスを踊れば普段以上の力を発揮できる一方で、ちゃんと踊らない人は失格。やっぱり追い出されちゃうわ」
光るマスだけを踏むこと。踊り続けること。この二点を忘れれば、生身で空中に放り出される羽目になる。
「いざとなったらグリモアで緊急転送するから命の心配はないけれど、なるべく手間はかけさせないで頂戴ね」
すまし顔で言った後、ユウナは安心させるように微笑んで付け加えた。
「まあ、脅かすような言い方をしたけれど、猟兵の身体能力なら余裕でこなせるでしょう。手抜きさえしなければ問題ないはずだから、あまり気負わずダンスゲームにでも挑むつもりでいってらっしゃいな」
***
グリモアにより現場に転送された猟兵たちの目に飛び込んできたのは、ガラス越しの空と雲、はるか眼下の地上。そして……
『ちょわー!』『ほわたー!』
どデカイ珍妙な被り物をした、チャイナっぽい装束の老若男女だった。
オブリビオン『大頭頭ズ』。不思議な拳法を操る怪人集団である。
彼らを殲滅し、このガラスの飛行船を制圧すれば、オブリビオンフォーミュラ討伐へと至る足掛かりとなる。
――いざ、勝負。
猟兵たちは戦いと、ダンスの構えを取った。
黒姫小旅
どうも黒姫小旅でございます。
ちなみに『ダンス』の定義は問いません。言ったモン勝ちです。
●特殊な戦闘ルール:アカイクツレヴォリューション
ダンスが上手ければ上手い程、戦闘能力が向上します。
足場を間違える、あるいはダンスに失敗すると【失敗🔴🔴🔴】となります。
此度は戦争シナリオ、一章で完結します。
第1章 集団戦
『大頭頭ズ』
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POW : x形拳
【様々な生物や機械、自然現象等を模した拳法】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : i極拳
【健康体操のようにも見える連続した攻撃動作】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : n卦掌
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【大地の中を走る気の流れの噴出点(龍穴)】から排出する。失敗すると被害は2倍。
イラスト:ケーダ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
京奈院・伏籠
さぁさぁ、お立会い。
魔術師は音とリズムには煩いもの。アマチュアとはいえ、甘くないよ。
シルクハットを被り、ステッキ片手にステージへ。
タタタン、とガラスで足を鳴らしてタップダンスだ。
出来るだけ近い足場を探して自然体で歩くようにタップスのリズムを刻む。
どうしても遠くに飛ばないといけないときは、ここぞとばかりにステッキを回してパフォーマンスしつつジャンプしよう。
さて、ちょっとお静かに、ね?
大頭頭ズの掛け声でタップの音が掻き消されそうなら、勿忘雪のアンプルを投げて音を吸収。生まれた魔力で水鏡を使い鳥型の幻影を召喚しよう。
幻影をステッキの動きに合わせて舞わせ、タイミングを見て敵に嗾けるよ。
●
「さぁさぁ、お立会い!」
シルクハットを頭にのせて、くるりと回したステッキを機械の左腕に引っかけて、京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)はステージに舞い降りた。
靴底が、発光するガラス板を打って硬い音を立てる。
TaTap!
二連打。
爪先ですばやく床を叩き、さらに指の付け根や踵も使って軽快なリズムを刻みだす。
TaTap! TaTap! TaTaTaTap!!
足音だけで奏でるメロディー。まるで全身が『靴』という一対の楽器となったかのようなパフォーマンス。
タップダンス、と呼ばれるものだ。
「あまり舐めてもらっては困るよ?」
穏やかな微笑に、不敵なものが浮かんだ。
伏籠は、ダンサートしてはアマチュアである。だがしかし、彼のセンスは抜群だ。
当然だろう。伏籠はベテランの魔術師である。音律や拍子を誤れば大惨事を引き起こしかねない、そんな世界を知っている。
Tap Tap と足音高く、リズムカルかつナチュラルな足取りで、的確に光る足場を見切って歩みを進める伏籠だったが、その行く手を遮る影が現れた。
『あちょー!』『ちょあー!』
大頭頭ズ。奇天烈な被り物をした男女が奇声を上げて飛びかかってくるのを、伏籠はやはり穏やかに微笑んだまま、懐からアンプルを一粒取り出した。
指先で弾いて飛ばすと、割れたカプセルから錬金薬が霧散。そして……――
――――無音。
大気は震えども『音』にはならず、勿忘雪の効能によって魔力へと変換され【水鏡】を形作る。
「暴威翻して幻となす。来たれ、因果の鏡影!」
完璧な音とリズムで紡がれる呪文詠唱によって、召喚されるは怪鳥の幻影。
伏籠がステッキを振るって合図を送れば、幻影の鳥は力強く羽ばたいて怪人たちへと襲いかかり、鋭い嘴や鉤爪でもって彼らの被り物をズタズタに引き裂いた。
「これは……凄まじい」
傾いたシルクハットを直しながら、伏籠は自身の攻撃に少なからず驚嘆した。
触媒とした音の魔力を遥かに凌駕する威力だ。優れた踊り手には加護が与えられるというが、まさかこれほどのものとは。
膨れ上がる力に酔いそうになる自身を律して、伏籠は前を見据えてタップを踏んだ。
大成功
🔵🔵🔵
高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってな!
スカイダンサーの真髄を見せてやらぁ!
アカイクツレヴォリューションはこれまで何度かやってきたからなぁ
要領はばっちり、ってやつだ!
曲目が選べるなら、若者受けするようなジャズやポップ調の音楽を流してほしい
長い四肢を使って腕の振りや体のひねりも加え演出しつつ
危ないところは「野生の勘」で咄嗟に踏み
とにかく楽しく! しっかり最後まで踊りきるぜえ
徴収、視聴者のみんなも一緒になって踊りたくなるような
笑顔も忘れずに、楽しむことを忘れずに踊るんだ!
ここぞというときに攻撃できそうなら
『金狼ステップ』で攻撃していくぜえ!
●
続いて馳せ参ずるはホッキョクオオカミ型の人狼、高鷲・諒一朗(ミルザム・f17861)だ。
「ダンスなら任せてくれよお、ってな!」
フード付きパーカーを着た金狼の青年は、ポップでブレイキンなリズムを刻みながら踊り出る。
満月を思わせる金の瞳に浮かぶのは、戦争に挑む決意でも、オブリビオンに対する敵意でもない、純粋な喜びだ。ダンサーとしての力を最大以上に発揮できる場を与えられた喜びを胸に、諒一朗はとびきりの笑顔で透明なガラスの上を駆ける。
『ほぉわ~!』
諒一朗の前に、被り物の老人が立ち塞がった。
いかにも達人めいた雰囲気の怪老人は、健康体操のような動きで構えを取り、
『わぁたたたたたぁ――――――っっ!!』
怒涛の連続攻撃を放つ。
目にも留まらぬ拳打脚蹴の嵐に対し、諒一朗も負けてはいない。
腹を貫く前蹴りを体のひねりでかわし、生まれた回転エネルギーを左手に伝えて裏拳をはたき落す。
「は、ははは!」
随時変化する足場を失うこともなく敵の連撃を捌き続けるのは、どれほど神経をすり減らすことだろう。
にもかかわらず、諒一朗は笑っていた。
この一瞬が楽しくて仕方がないというように、死と隣り合わせの舞台で踊り続ける。
いっそ狂気にも等しいダンサー魂で、そして『ザ・ダンスステージ』においては彼のような者こそが最強なのだ。
不可思議な世界律が、諒一朗に力を与える。
湧き上がるパワー、加速するスピード、研ぎ澄まされる野生の勘。それらはついに、オブリビオンが誇るユーベルコードさえ凌駕した。
「――もらったぁ!」
もはや見ることもなしに光る床を踏みしめて、放つは神速の廻し蹴り。
鞭の如くしなる右脚が一閃。防御する間も与えずに、怪人の胴体を斬断してのけた。
成功
🔵🔵🔴
テラ・ウィンディア
武と舞は同一ではないかもしれない
だが…相反するものでもない
真に完成された武は…舞の如く…きっと美しい物だからだ
生真面目にきちんとステップは踏む
その上で【戦闘知識】【見切り】【第六感】を駆使してそのパターンと曲調そして敵の立ち位置と行動パターンの把握に努める
その間も両手に太刀と剣を携え舞う
敵が居ようがいまいがその刃を巡らせ但ししっかりと記憶に刻み
ステップで縦横無尽に両の太刀と剣で剣舞を披露し
可能な限り【見切り・第六感・残像】で敵の攻撃は避け乍
中々に難しいな
だが…どれだけ苦境や制限があろうと
その中で力を発揮してこそ本当の戦士なんだろうよ!
だから…おれは負けない!(舞った後敵を捕捉すれば
斬斬斬斬斬!
●
光って消えてまた光ったと思ったらすぐ消えて、ランダムに明滅を繰り返すガラスの床を慎重に踏み分けながら、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は二刀を振るう。
滑るように踏み出した右足を光るマス目に乗せて重心移動、片足立ちのまま両手の刀を大振りした遠心力でバランスを取り、斬撃が敵に命中した反動で姿勢が崩れたので適当なマス目に左足を置く。
テラを動かしているのは、ダンスの概念とはある意味で対局の位置にある、剣術の理合だった。
怪人たちの立ち回り、床の明滅パターン、そして自身の射程と可動域を見切り、状況把握と戦術構築を逐一アップデート。ただひたすらに、効率的に敵を殲滅することに全力を注ぐ。
実用を突き詰めた機能美、研ぎ澄まされた身体技巧、非情に徹した血の匂いがする技だが、ダンスとはまったく別の筋道を辿ったはずなのに、同質の魅力がそこにはあった。
武闘は舞踏に通じる。
それが決して机上の言葉遊びでないということを、テラは実証していた。
洗練された足捌きで床を蹴り、太刀を右手に宝剣を左に戦場を駆ける。
『ちょわぁ』『しゃあー!』
大頭の怪人たちがテラを取り囲んだ。
隙のない二刀剣舞は容易に近寄れないと、遠巻きから攻めようというのか。片手から小さな鉄球の付いた紐をぶら下げて、クレーン車を模した独特の動きでもって攻撃しようと……
――斬斬斬斬斬!
一瞬だった。
刃もないのに『斬撃』だけが虚空に出現。周辺の大頭頭ズを一人残らず斬り捨てた。
ユーベルコード【悔恨「消えざる過去の痛み」】
舞い暴れながら刃を振るいに振るった軌跡が再び切断能力を得て、立ち入れば微塵に斬り刻まれる殺人空間を構築する。
テラの通った後に無傷のオブリビオンは存在せず、これからも現れることはない。
大成功
🔵🔵🔵
ルビィ・リオネッタ
「戦いはダンス、生きてるってリズムを刻む事ね♪」
戦争の為でも楽しみたいの♪
ダガーを右手にレイピアを左手に【楽器演奏・ダンス】で踊りましょう
【学習力】でリズムを掴み【視力】で光る足場を探すわ
『操りの盾』で盾を花のように広げてスタート!
【空中戦】で高所は慣れてるの
【早業・ダッシュ】で小さくてもスピードでカバー
急な方向転換は盾を足場代わりにしてターン♪
「ふふ、楽しい♪だからあなた達も一緒に踊りましょ?」
敵の攻撃は【見切り・逃げ足・残像】で避ける
厄介なら【毒使い・マヒ攻撃】で動きを鈍らせるわ
「何かから逃げ続けるMVなんてのも面白いじゃない♪」
戦闘力を十分高めたら【盾受け】からの【暗殺】でフィニッシュ♪
●
「こういう戦いも嫌いじゃないわ」
声が弾んで、サッカーボール程度の礫が飛来した。
それは小さな盾の集まりで、蕾がほころぶように開花すると、中から蝶の羽を持つ乙女が現れる。
「さあ、踊りましょう!」
ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)がほほ笑むと、彼女を包んでいた盾の一枚一枚が鳥のように飛び散った。
浮遊する盾を周囲に展開して駆け出すと、すぐさま大頭の怪人たちに取り囲まれる。
『あちゃー!』『ほゎとー!』
前後と左手に、計三体。大頭頭ズは健康体操のようにゆったりとした、しかし不思議と素早い動きでルビィを取り囲むと、一斉に殴りかかる。
岩をも砕く拳、空気すら斬り裂く手刀、妖精サイズの小盾では到底防ぎきれそうにない強烈な攻撃が乙女を襲うが……
「ふふ、楽しい♪」
ルビィは笑っていた。
フェアリー族ゆえの小さな体躯を存分に生かし、つむじ風のようなスピードで敵の猛攻をかいくぐる。
明滅する床のマス目を正確に見切り、リズムにあわせてLa・ta・ta 。
ツバメのように速く、蝶のように自由に、生命の喜びを体いっぱいに表現するルビィの舞踏が、『ザ・ダンスステージ』の加護を引き寄せる。
「逃げ続けるMVなんてのも面白かったけど、そろそろフニッシュといきましょう!」
旋風脚をジャンプでかわし、ルビィは高らかに宣言した。
怪人の蹴り脚を踏み台にして二段跳躍。さらに浮遊する盾の一枚を蹴って空中で鋭角ターンを決めると、三体の怪人すべての視界から消えることのできるデッドスポットに滑り込む。
右手のダガーと左のレイピアが、ギラリと閃いた。
斬!
頸椎、心臓、大動脈。それぞれ即死の急所を斬り裂かれ、大頭頭ズは悲鳴を上げることもできずに絶命した。
「一緒に踊ってくれて、ありがとう」
倒れた怪人にウインクひとつ。
次なる敵はどこかと視線を巡らした、その時だった。
――Congratulation!!
どこからともなくファンファーレが鳴り響いたかと思うと、残っていた怪人のすべてがガラス板の向こう側へと放逐され、遥か地表へと落下していった。
「えっと……よく分からないけど、”合格”ってことかしら?」
困惑を浮かべながら、ルビィは足を止める。すでに床は明滅しておらず、踊りをやめても何も起こらない。
いかなる意思によるものか、ただ直感的に理解できるのは『目的を達成した』ということだ。
ガラス細工の飛行船は完全にオブリビオンを拒絶し、猟兵たちを乗せて大空を飛翔する。行く手に待つのは果たして、世界平和につながる大勝利か、それとも終末へと続くカタストロフか。
【END】
大成功
🔵🔵🔵