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バトルオブフラワーズ⑧〜グラサージュ・シティ

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●街を染めるチョコレート
 そのステージには、キマイラフューチャーの街並みをそのままコピー&ペーストしたような光景が広がっていた。
 巨大なビル、様々な色で光る電光掲示板。目が痛くなるほどの色鮮やかな世界はしかし、今暗色の黒に覆われていた。間違えて絵の具をぶちまけた様な悲惨な街の中心に残るその白い姿は、丸まってすやすやと寝息を立てている。
 泥遊びに疲れた、子犬の様に。

●犬は喜びキマフュ駆け回る
「半分に割れたことに、もうそんなに驚かなくなってきたよね」
 虎ヶ雨・茜(黒雨に濡れる・f14637)は、グリモアベースに集まった猟兵達に画像を見ながらそう話し始めた。
 オブリビオン・フォーミュラによって侵略を受けたキマイラフューチャーの核、『システム・フラワーズ』。そこへ向かう為に星が真っ二つに割れるというトンデモな展開が待っていたが、一週間も過ぎればそれも見慣れてしまう。
「早速だけど、今回攻略して欲しい『ザ・ステージ』の話をするよ」
 彼女がスマートフォンをフリックすると同時に画面が切り替わる。そこは『システム・フラワーズ』を守護する要の一つである『ザ・ステージ』の様子を映し出したもの。黒に染められた街並みはキマイラフューチャーそのものだが、天井の青空は映像によって生み出された紛い物、活気のない箱物の街だ。
 そして、その街の中心で「黒」を撒き散らすのは、背景の色と大きく浮いた白い毛皮にリボンのついた帽子をかぶる巨大な犬。オブリビオン『チョコットキング』だ。
「このもふもふなわんちゃんを倒さないといけないのは……ちょっと心苦しいけど」
 とはいえ仕方がない。星の未来を繋ぐ為、オブリビオンは絶対に倒さなくてはならない。ふうと息を吐いて、虎ヶ雨は続ける。
「今回のステージでは、この足元に広がるインクの量が強さにそのまま結びつくの。わんちゃ……オブリビオンの足元の黒いインクの上では、みんなは弱体化して敵は強くなる。でも逆に、みんなが自分の色にインクで塗れば有利不利は逆転させられる」
 ゆえに、ただ突撃してただ殴るだけでは意味がない。インクを用いて自分や味方に有利な場を整えたうえで敵を排除する必要がある。オブリビオンへの攻撃を行わず場を塗り広げる事だけに集中した場合には、それだけ広く優位な場所を確保できる。ステージに用意されている街、その三分の二以上を猟兵達のインクで塗り潰すことが叶えば、本来のユーベルコードの攻撃を無制限に行えるようになる。
 敵に辿り着くまで一直線に塗り潰し短期決戦を狙うのか、徐々に塗り広げ土壌を固めて最後に叩くか。どちらにせよ、二つの行動は切り離すことはできない。

「みんな、油断しないでね」
 敵が明白で、その上でステージのギミックも明瞭だ。しかし、今回の敵は自分の陣地を移動するだけでも広げる事が出来る。その理由は……。
「塗られてるインクみたいなやつ、アレ全部チョコ」
 食べても食べてもなくならない、とんでもなく美味だがとんでもなく危険な、オブリビオンの生み出すチョコレート。持ち帰ることは禁止、そしてそれを敵は常に撒き散らしている。攻撃にもチョコレートを用いる以上、発見され追跡されるだけでも敵の領地が増える可能性がある。
「絶対、みんななら無事に帰ってきてくれるって、信じてるから」
 虎ヶ雨がスマートフォンのアプリアイコンをタップすると、開かれるゲート。信頼の言葉を背に、猟兵達は戦場へと向かう。


佐渡
 チョコレートおいしいですよね、佐渡です。
 今回のシナリオは、キマイラフューチャーの街に酷似したステージをインクで塗りあい、自分に有利なフィールドを生み出して戦う特殊な任務です。
 オープニングに記されたルールに沿わない場合、失敗・大失敗となる恐れがあります。

 皆様の行動を格好良く、イカした描写で表現させて頂きたいと思いますので、宜しければ是非ご参加のほどを宜しくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『チョコットキング』

POW   :    チョコレートテイルズ
【甘味への欲求 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【巨大な溶けかけのチョコレートの尻尾】から、高命中力の【滑らかトリフチョコ】を飛ばす。
SPD   :    蕩けるチョコボディー
【チョコットキング 】に覚醒して【熱々のチョコボディー】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    超硬化チョコボディー
【 超硬化したチョコボディー】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。

イラスト:笹にゃ うらら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠柊・弥生です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

スノウ・パタタ
ぬりぬり、おまかーせです!

【香水瓶の魔法】で選んだ幾つかの瓶の中身は、花弁を煮出して色を抽出した色水。作り出されたステージ内でも、素材を媒体に精霊へと干渉を。

ぺたぺたぴょんぴょん移り飛びビルの屋上を陣取ると、ストームグラスペンで空に絵を描く様にペン先を振り、風と水の精霊魔法を発動。ビルからビルを飛び移り、空からの通り雨(風で更に拡散)陣取り作戦。

色水を乗せたもくもくの雨雲で、せーれーさん達とたくさんまいちゃうのよー!
もしりょーへーさんたちが被っても身体に害はないから、安心してください、なのー

わんこさんかわいいねえ、でもかこは今に居ちゃ、めーなのよ。
キマイラさん助けるために陣取りがんばる、です!


七那原・エクル
塗ってボクたちの陣地を拡げればそれだけ有利になる。うん、わかりやすくていいね。オブリビオン由来のチョコレートだから食べたらお腹こわしちゃいそう。


自分のまわりをオレンジ色でヌリヌリーしてからユーベルコードを発動。ヒメの力を貸りて二人で陣地を塗り拡げることに専念するよ。猟兵ひとりで百人力のパワーならボクとヒメふたりで合わせて100×100でなんと千人力のパワーだ!・・・えっと、ヒメなんか呆れてないかな?気のせい?

二人で並走しながら陣地を塗りつぶしていくよ。互いに死角をカバーしてオブリビオンの攻撃に対応。ほかのみんなが戦いやすいようにペインティングローラー作戦開始だー(即興で思いついた作戦名)



 キマイラフューチャーを模す街並みを染め上げる黒を眼下に見下ろし、その少女の持つ小瓶に入った空色が揺れる。
「ぬりぬり、おまかーせです!」
 スノウ・パタタ(Marin Snow・f07096)は、お気に入りの筆をひらりと宙に舞わせた。すると浮かび上がった色水はみるみるうちに雲となり、やがて空からそのまま零れ落ちたような淡い水色の雨を降らす。
 ビルの上、タワーの頂上といった高所をまるでスキップでもするように飛び回りながら、彼女はこの場に宿る精霊へと呼び掛ける。この空が室内に生み出された紛い物だとしても、精霊はどこにだって住まい、世界を巡っている。絵筆と花から取り出した色彩を水へ移したインクは、それら精霊に語り掛ける触媒でもある。
 空色の雨は黒々とした大地に落ち、じんわりと染み入るようにその暗色を溶かして洗い流すようにしながら、透き通るような青で塗り潰していく。
 画用紙にお気に入りのクレヨンで好きなだけ絵を描く子供の様に、スノウは空一杯に雲を作る。彼女もわかっているのだ、過去は今に戻ってきてはいけないと。星を救う為にはブリーフィングで見たあの「わんこ」はあるべき場所に戻らなければならないと。
 長雨の後には虹がかかる。この場所にも、そしてこの星の空にも虹がかかるよう、スノウは跳ねまわりながら雨を降らせ続ける。

「うーん、すごいなあ。ボクたちも負けていられないや!」
 降り注ぐ空色の雨は猟兵に牙を剥くことはなく、遠巻きに降り注ぐ雨と晴れの境と暫し見つめた後に、七那原・エクル(ダブルキャスト・f07720)は自分の周りをオレンジで塗り広げると、目を閉じる。心の中で眠る、内なる存在へと呼び掛けるようにして。
 ――やがてインクの中から現れる、彼に瓜二つの人物。彼の中で眠る女性人格にして姉替わり、そしてもう一人の自分。
「よし! 百人力のパワーを持つボクとヒメ、百掛ける百で千人力だ!」
 ガジェット発明の才を持つにも関わらずそんな台詞を吐くエクルになんともいえない視線を向ける一幕がありながらも、ヒメとエクルは共に息の揃ったフォームで走り出す。
 エクルが作り出した特別製のローラー型ガジェットによって、地面を駆ける二人。互いが互いの視界を埋めるように注意をし、しかしきちんとインクで自陣をきっちりと広げていく。振り回せば高所にも届き、インク切れも専用のカートリッジを外して嵌めれば即解決。脚を止めずに風を切る彼らは、楽しげでさえあった。
 だが当然、自身のテリトリーを侵された獣が、ただぼけっとしているはずもない。後方から猛烈な勢いで追いかけてくる白い影――二人はチョコットキングに嗅ぎ付けられる。
 犬と人間であっても犬が勝つ、足の速さでは圧倒的にオブリビオンに理があった……単純な、肉体のスペックだけで言えば。
 直後ヒメとエクルは今までにない加速を見せる。それは思わずちょこっとキングでさえ驚いてしまうようなスピードで。
 オブリビオンに場所が割れる事など最初から織り込み済み。彼の作ったローラーには敵対者に対する対策も複数備えてある。インクを後方へ放出することで塗り範囲までもを増やす加速装置に、ボタン一つで発射されるインク爆弾、それに機能盛りだくさんのローラーでぶん殴ればそれだけでも岩が砕けるパワーがある。最初から、それはしっかりとした「武器」だったのだ。
 連携しながら着々と距離を離す二人。爆弾で足止めをしつつ、分かれ道では別々に動き、ローラーに付いたGPSの反応を頼りに合流。進行方向から迫るのならば、加速装置をチャージして壁を走って突破。曲芸か、あるいはキマイラフューチャーでバズりそうなスポーツのように、華麗に走り抜ける。
 ……とはいえそれもインクが持つ間は、だ。またも進行方向から迫るオブリビオンを前にして、ヒメ側のローラーのインクが切れる。すかさずカートリッジを交換しようとするが、それでもオブリビオンの方が僅かに速い。
 危ない。そう声を出すより前に放たれる、溶けたチョコレートの塊。もし全身がチョコレートに包まれれば、ユーベルコードによって肉体を得ているヒメの身体はたちどころに消える。そして、そのチョコレートが彼女へと迫り……。

 その間に、空色の滝が割り込んだ。
 チョコットキングと二人を分かつその色は、他でもないスノウ・パタタの生み出した雨雲と、その雲が降らす雨のものに相違ない。
「ここはおまかせ、です!」
 どこからともなく聞こえるあどけない声。しかしそれには確かな覚悟が伺えた……どんなにもふもふなわんこでも、仲間を傷付けるならば許さない。そんな、猟兵他としての確かな強さが。
 片割れを救ってくれた姿の見えない彼女へ大声で礼を伝えると、エクルとヒメは顔を見合わせ頷くと、再び走り出す。追跡されることで再び黒くなってしまった道に、オレンジの希望を、もう一度輝かせるために。自分を救ってくれた猟兵と同じように、自分たちの塗り固めた陣地が、次に現れる猟兵達の助けとなるように。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

榛・琴莉
こた先輩(f01104)と組みます。

「陣取りゲームみたいなものでしょうか?」
黒いこれ、全部チョコとは…見ているだけで胸焼けしそうですね。
インク弾装填完了、予備も充分。
「行きますよ先輩、おやつは後です」

インクの塗り替えに専念します。
【武器改造】でサイレンサーを取り付けたMikhailを使い、【範囲攻撃】で青く塗り替え。
黒い領地の拡大は出来る限り避けたいので、敵に発見及び攻撃されないよう隠密行動しながら。
【聞き耳】で敵の位置を探りつつ、接近されたら 【地形の利用】【迷彩】で物陰に潜むなどしてやり過ごします。
【物を隠す】要領で先輩も隠します。ぎゅうぎゅう。
「すみません、ちょっと縮んでもらえません?」


奏舞・虎太朗
ことりちゃん(f01205)の支援を

うわっ、あまったるい!
おれこういうゲーム得意だし好きだけど、
あのわんちゃんと戦うのは気が引けるなぁ…
いやっ、ちゃんとお仕事はするよ!?
ことりちゃんの視線を感じて、慌てて取り繕う

インクの塗り替え重視で
ことりちゃんの後に続き、彼女の援護を
敵に発見されないように、物陰に隠れながら立ち回る
【迷彩】を活用して隠密行動
見つかりそうになったら【忍び足】
スニーキングミッションって興奮する!
エレクトロレギオンを召喚して敵の陣地を奪取

縮…、無茶言うなぁ!?
これくらいまでしか収納できないからね、おれ
ことりちゃん、さくっと終わらせちゃお
このあと好きなアニメのリアタイしたいから!



 チョコレートの黒色に染められた大地を塗り替えんとする猟兵は他にもいた。壁に張り付いた欠片を剥がして一つ興味本位でなめてみるその猟兵は、想像の何倍もの甘さに驚く。
「うわっ、あまったるい!」
 奏舞・虎太朗(バトルクライ・f01104)は指先をぱっぱっと払いながら大きなため息をつく。彼は戦いに消極的だった、ゲームを嗜む彼にとってこういった陣取りをテーマにしたゲームをプレイしたことがある。なんならウデマエは相当なモノだ。しかし、だからといって現実での陣取り合戦に燃えるなんてこともなく、そもそも犬をぼこぼこにするのは中々気が進まない。
 ――だが、背後から突き刺さる視線に猫背気味の背筋をせざるを得なくなった。
「おやつは後です、行きますよ先輩」
「いやっ、ちゃんとお仕事はするよ!? わかってるからね!」
 慌てて真面目な風を取り繕う「先輩」の様子に呆れながらも、榛・琴莉(ブライニクル・f01205)はてきぱきと準備を始めている。常ならば精霊の力を込めた弾丸を装填する愛銃のライフルに鮮やかなマリンブルーのインクを込めた弾を装填する。
 ガスマスクの中で羽搏く電子の小鳥たちは、模造された街に備えられている監視カメラをハッキングして情報を集め、周囲の安全を囀った。準備は万端。
「行きますよ、先輩」

 言うが早いか、琴莉は素早く銃を撃ち場を塗り替え始めた。サイレンサーを着けた銃はその声を押し殺し、しかしなお強烈な威力を伴って地面にぶつかり、中の色を撒き散らしていく。
 猟兵の優位をまず確立させるために陣地を広げる事を目的とした彼女は、周囲の警戒を怠らずに慎重な動きを心掛ける。広範囲をカバーできるよう計算された射撃は、隅々まで余さず黒を青へと染め上げた。無論その間もハッキングしたカメラの映像や周囲の音を頼りに敵の気配に神経を張り詰める。一人何役もの作業を同時に熟す手並みは、正に「猟兵」の名に相応しいだろう。
 一方の虎太朗はというと、琴莉に続くようにしながらエメラルドグリーンのインクで黒い大地を塗っていた。最初はモチベーションを欠いたような言動をしていた彼だが、いざ始めてみれば気配を消しながらひっそりと事を運ぶという特殊なシチュエーションに男心が擽られたらしく、ノリノリであった。
 召喚した機械兵器をシュミレーションゲーム宜しく配置し、適切なタイミングで爆発させインクを撒く。召喚できる兵器の数を見ながら、状況を判断して場を支配する。彼の中のゲームフリークの本能が今燃えに燃えていた。
 ――しかし、絶好のタイミングで機械兵器を爆発させようとした虎太朗を、高所からの範囲攻撃でインクを塗っていたはずの琴莉がひっ掴み路地裏へと引きずり込んだ。
「うわぶ!?」
 突然の事に奇妙な悲鳴を上げ、路地の奥へと押し込まれ奇妙な体勢を強いられる虎太朗。勿論不平の一つでも言おうとしたが――自分の召喚した機械兵器が爆発の寸前で踏み潰された事で事態を察する。
 オブリビオン、チョコットキングが二人の存在を嗅ぎ付けたのだ。否が応でも感じる巨大な犬の吐息が心臓を跳ねさせる。しかも厄介なことに二人の隠れた路地裏はまだ二人のインクが塗られていない。ここで見つかってしまえば袋の鼠、ユーベルコードが発動できずに即座に倒されてしまう。
「すみません先輩、ちょっと縮んでもらえません?」
「縮……、無茶言うなぁ……!?」
 普段ならば琴莉のやや棘のある無茶ぶりに軽妙な突っ込みを返すところだが、今は互いの距離の近さを含め気にしていられない程に危機的状況だ。声色が焦っている琴莉の様子を察し、虎太朗の声も抑え気味になる。
 ……いつまで、その状況が続いただろうか。やがてチョコットキングは来た道を引き返して去っていく。二人は、窮地を脱した。

 一時はどうなることかと思ったが、どちらがともなくほっと息をつく。
「危なかったですよ、先輩どうしてあんなぼけっとしてたんですか」
 気のゆるみにそう問う琴莉。自分が居なければどうするつもりだったのか、やはり世話が焼けると思いながら一応問う。すると、唇を尖らせすねるようにしながら口を開く。
「いや、だって琴莉ちゃんいるし大丈夫かなって」
 先輩後輩とは言うがしかし彼等は猟兵、命を預ける同胞でもある。そんな中で他の猟兵とは少し違う関係を築く相手の事を、虎太朗は強く信頼していた。
 とはいえやや依存が過ぎるような気もするが、そもそも敵の存在に気付いていた虎太朗は最後に残っていた機械兵器を爆発するタイミングを曲がり角からオブリビオンが飛び出してくるタイミングに合わせるつもりだった。残念ながらその計略が成功する前に琴莉に引っ張られてしまったのだが。
 とはいえ、そんなことは言わない。やや虐げられがちとはいえ、彼女に信頼を寄せるのは事実。
「さーてことりちゃん、残りもさくっと終わらせちゃおう!」
「……その心は?」
「このあと好きなアニメのリアタイしたいから!」
「――はぁ、ぶれないですよね先輩は」
 呑気な先輩と冷静な後輩、凹凸コンビは素早く陣を塗り広げてゆく。いつも通りのやり取りを交わしながら、時になじりなじられ、けれど息の合ったコンビネーションで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

各務・瞳子
オレンジに青色……三分の二の塗り替えまで、もう少し?
陣取り完了で一気に攻撃出来るように、うちも頑張ろか

こんな事もあろうかと! 今回登場のガジェットは万能モップ「クリア君」
チョコットキングの居場所から1番遠いポイントを見定めて、境界のチョコインクをクレンジングオイルたっぷりのモップで【掃除】。チョコの汚れは油脂汚れ。油汚れは、油で溶かしてまうのが効果的や
綺麗にした上にワックス塗る要領で……そうやね、初夏らしい若草色を

ここまで来たらスピード勝負。敵の攻撃は、からくり人形のリュカの【オーラ防御】で【かばわれ】ながらガジェットモードチェンジ【高速騎乗】で作業速度UP。規定面積塗り替えたら皆で総攻撃やね



「うーん、皆頑張ってくれてたようやね」
 各務・瞳子(七彩の聴き手・f02599)は高台からステージの状況を見渡した。空のような水色、鮮やかなオレンジ、それに海のような深い青にビリジアンのような濃いグリーン。ブリーフィングで見た時は漆黒に覆われていたステージは、多数の猟兵の活躍によって既に制圧されつつある。
「ほな、うちも頑張ろか!」
 そう言ってどこからともなく取り出しましたる謎のモップ。それこそ彼女が丹精込めて作った品の一つ。万能モップ型ガジェットその名も「クリア君」。ひょいと高台から飛び降りた瞳子は、付近の塗り残しや他の猟兵が去った後にオブリビオンが再び通過したのだろう黒くまだらな部分をささっとクリア君で拭いていく。
 特殊な洗剤は油脂汚れであるチョコレートのみを根こそぎ綺麗にふき取りながら、他の猟兵の塗ったインクはキレイに残す。広範囲への効率的な掃除はガジェットのお陰だが、仲間の努力を活かしつつ敵の有利をしっかり潰せているのは、今回の為彼女が特別配合したクレンジングオイルのお陰だ。
 粗方の掃除が終わた瞳子は、モップの持ち手にある赤いボタンをぽちっとする。するとモップの毛先に染みていたクレンジングオイルは若草色のインクへとあっという間に切り替わる。お掃除と色塗りをワンタッチで切り替えられるこの商品はゴッドペインター垂涎の一品であろう。
 それはさておき、黒いインクを掃除し終わった場所にさっと「クリア君」を振るえば、忽ちそこには艶のある若草色が塗られる。しかし、艶を増すのは彼女の塗った色だけではなく、他の猟兵の塗った色も同様だ。
 彼女は「クリア君」にある機能を搭載していた。インスピレーションを受けたのはワックスがけ。――インクを塗った上に薄いクレンジングオイルの膜を作る事で、敵のチョコレートインクを溶かし塗り潰すことを防ぐ狙いだ。
 ……すると、彼女は感じる。場に満ちていたオブリビオンの気配が薄れていくのを。ついに、フィールドの三分の二以上が、猟兵のインクで染められた。もうユーベルコードに、制限はない。
「しゃ、そいじゃあとっとと敵さんを皆で総攻撃せな」
 この好機を逃す手はない。ぱちんと指を鳴らせば現る愛用の騎乗ガジェット。ぽっかりと空いた穴の部分に形を変えた「クリア君」をぶすっと刺せば操縦桿に早変わり。余剰などなく、全てが一つに束ねられる。絡繰りとガジェットを好む彼女らしい仕掛けだった。
 思い切りエンジンをふかせ、今回出番が少なくどこかむくれたようにも見えるからくり人形のリュカの頭をなでるとすぐさま走り出す。他の猟兵達と合流し、この戦いに終止符を打つために。

●あそびのおわり
 猟兵達の多種多様な戦略によってステージは黒から鮮やかな五色へと変わり、そしてオブリビオンの領域は猟兵達の独壇場へと変わった。追い詰められたチョコットキングに抵抗の術はなく、猟兵達は連携の末に完勝を収める事だろう。
 しかし最後に去るそのチョコットキングの表情は、しかしどこか穏やかなモノであった。飼い主に存分に遊んでもらった犬が、草原で眠るように。
 ――猟兵は意図せずこのオブリビオンにとっては良い「遊び相手」だったのだろう。陣取りで、かけっこで、かくれんぼで、猟兵達と遊んでいるつもりだったのかもしれない。

 半日と経たずこの広い範囲にインクを塗っていた猟兵達にずっしりと疲労がのしかかる。早々にグリモアベースに帰還しようとした猟兵達が最期に見たのは――塗ったインクが偶然にも、大きな笑顔にも似た形になっていること。
 偶然か、それとも運命の計らいか。この世界には、こういった不可思議な事がまま起こる。人の心を熱くする、粋な不思議が。
 まだ戦争は終わっていない。猟兵達は、次なる戦いへと身を投じる事だろう。心に、笑顔を宿して。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月14日


挿絵イラスト