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バトルオブフラワーズ⑤〜宇宙（そら）を駆けろ、鋼の翼！

作者：緑城雄山

●宇宙帝国を打倒せよ！
「先日のテレビウム・ロックの件はこれの前触れだったのですね……」
　緑の板金鎧とマントに身を包んだクリスタリアン、ウィルヘルム・スマラクトヴァルト（緑の騎士・f15865）は、嘆息しながらグリモアベースに集まった猟兵達に向き直る。
「さて、お集まり下さり、どうも有難うございます。既にお聞き及びの方も多いと思いますが、システム・フラワーズへのメンテナンスルートが解放された結果、キマイラフューチャーが真っ二つに割れました」
　システム・フラワーズに至るには、まず周辺の６つのザ・ステージを全て攻略せねばならない。そのステージは、様々な特殊ルールに支配されていると言う。
「その中で私が予知したのは、ザ・ゲームステージ。ここを支配するのは、『ゲームキャラクター』と言う特殊ルールです。普通、ゲームと言えばゲーム機を操作してプレイとなりますが、このステージではゲームの中の世界に入ってクリアを目指すことになります」
　そして今回の世界は、宇宙を舞台にしたＳＦロボットアニメのゲーム版。宇宙帝国に故郷を滅ぼされ、唯一生き残った主人公が、愛機と共に襲い来る敵と戦い、レジスタンスとの出会いを経て最終的に宇宙帝国を打倒するというもの、だが。
「はっきり言ってこのゲームではレジスタンスは役に立ちませんので、事実上皆さんの力だけで戦って頂くことになります。その代わりというわけでもないのですが、ユーベルコードは使用できますので、搭乗する機体や武装と上手く組み合わせて下さい」
　搭乗できる機体や武装には様々なバリエーションがあり、プレイヤーはどんな機体にどんな武装を載せるかを、かなり自由にカスタマイズできるらしい。
「そしてこのゲームには、難所が大きく二つあります。最終決戦に登場する宇宙艦隊の、無数の戦艦とそこから発艦するロボット。そしてそれらを突破した後に出てくる、難攻不落の人工天体要塞インヴィンシブル・スターです。これらについては、何らかのユーベルコードを使わないと攻略は無理でしょう」
　インヴィンシブル・スターを沈黙させて、内部に突入して宇宙大帝を討てばゲームはクリアとなる。だがその前にオブリビオン「紫御殿」が現れて妨害を図るので、その対処をしなければならない。
「もっとも、紫御殿についてはサイズも違いすぎますし、下手をして機体に集団で取りつかれたりしなければ、問題なく撃破できるはずです。そうそう、それから、このゲームは多人数の協力プレイもできるようですから、一人で攻略する自信がない方は誰かと組んでもいいかもしれません」
　そこまで告げると、ウィルヘルムは自身の掌の上に巨大なエメラルド――グリモア――を浮かべ、念を込める。緑色の輝きが、周囲を照らし出す。
「このステージを突破できるかどうかで、世界の未来が大きく変わります。どうか、よろしくお願いします」
　ウィルヘルムは深々と頭を下げると、猟兵達をザ・ステージに送り出していった。

第1章 集団戦 『紫御殿』

POW   :    仮面合身の術でござる！ 無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【男子がカッコいいと思うもの】と合体した時に最大の効果を発揮する。 SPD   :    仮面手裏剣の術でござる！ 【懐】から【自動追尾する真っ白な仮面】を放ち、【相手の視界を塞ぐこと】により対象の動きを一時的に封じる。 WIZ   :    仮面狼群の術でござる！ 【仮面を被った狼の群れを召喚、爪や牙】が命中した対象を切断する。 イラスト：りょうま 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●集いし三機
「それじゃ、張り切って出撃しましょうか。行くわよ、シルバー・レイ！」
　気合十分と言った風で、機体と装備を整えて最初に出撃したのは、金髪金眼の美少女、緋神・美麗（白翼極光砲・f01866）。その愛機シルバー・レイは、この世界の標準的な機体よりはやや小型の、高い機動性を特徴とする銀色の機体である。左右の腕にはそれぞれビームマシンガンを携え、広範囲に弾幕を張れるようにしている。
「ふっ、面白いじゃないですか……ロード・スカーレット、出ます！」
　次いで出撃したのは、長い金髪に中性的な顔立ちで女性を思わせる、キツネ耳のシン・ドレッドノート（真紅の奇術師・f05130）。スペースバイクを乗り回していたと言う経歴からか、自信はあるといった様子。愛機ロード・スカーレットは高機動形態に変形が可能な真紅の機体で、純白の銃二丁とビームシールドを携えている。
「アームキャノン接続――さぁ、飛ぶよ！　スカイブラスター！」
　ユーベルコード、飛行ガジェット「スカイブラスター」を用いて自らを戦闘機型ガジェットで包んだのは、乳白色の髪に緑色の瞳をした魔導蒸気機械人形、マックス・アーキボルト（"ブラス・ハート"マクスウェル・f10252）。真鍮色と銅色のツートンカラーのシュッとしたフォルムのシャープな機体に、大型キャノン一門とシンプルな武装ながら、その最高速度はユーベルコードにより時速二千九百ｋｍに及ぶ。
　かくして、ザ・ゲームステージに挑む三機がここに集った。

●対帝国艦隊
　シルバー・レイの性能把握に努める美麗を、シンのロード・スカーレットとマックスのスカイブラスターが援護すると言う形で、猟兵達の三機は様々な敵を特に苦も無く突破していく。おそらく原作のライバルキャラであろうエース機もいるにはいたが、三対一では分が悪すぎたか、あっさりと散っていった。
　そしてインヴィンシブル・スターを巡る最終決戦に至り、猟兵達の前には無数の戦艦とロボットが立ちはだかる。
「……なるほど、確かにこれは難所と言うだけはありますね」
「そうですね。ですが、敵は横陣ですし、全部を相手する必要はなさそうです」
　シンのつぶやきに、マックスが応じる。
「それじゃ、邪魔なのだけ殲滅していけばいいのね？」
「まぁ、そうなりますね……では、私が先行しますから、援護してもらえますか？」
　美麗の言葉に頷きつつ、ふむと考え込むシン。邪魔なのを殲滅していけばいいとは言え、相当の敵を突破するのだからフォーメーションは考えておかねばならない。その結果、正面火力が高く接近戦にも対応できるロード・スカーレットを先頭に立て、シルバー・レイとスカイブラスターに援護してもらうことにした。
「それでいいわよ」
「わかりました」
　美麗からもマックスからも了承を得たシンは、早速とばかりにユーベルコード、紺青の剣劇（ダンス・オブ・ブルーサファイア）を発動する。
「ビット展開！　死にたくなければ、退きなさい！」
　およそ四十本の蒼いソードビットとライフルビットを周囲に展開すると、ロード・スカーレットは艦隊に突入し、二丁の銃とライフルビットを乱れ撃つ。
「これで……墜とすわよ！」
　さらに美麗のユーベルコード、出力可変式極光砲（ヴァリアブル・ハイメガキャノン）が両腕のビームマシンガンとともに連射される。
　まずロード・スカーレットの正面の敵が次々と光の華となり、遅れてその周囲の敵が光の華となる。戦列に空いた大穴を埋めるべく帝国のロボットが殺到し、それを戦艦が主砲や機銃で援護する。だが、機動性に長けた猟兵達の三機を捉えることはできず、逆にビームマシンガンの銃撃や大型キャノンの砲撃、ライフルビットによる反撃を受け、次々と断末魔の光を放ち、消えていく。
　互いに無数の光芒を迸らせながら、それでも猟兵達の機体が一方的に、帝国艦隊の戦列を侵食するかのように突き進んでいく。ビームマシンガンの弾幕、大型キャノンの砲撃、そしてライフルビットによる射撃は敵の接近を全く許さない。
　結果、三機は無傷で帝国艦隊の突破に成功する。そしてそのまま、インヴィンシブル・スターの攻略に向かうのだった。

●インヴィンシブル・スター攻略
　難攻不落の人工天体要塞インヴィンシブル・スター。表面を黒色の流体金属で覆い、要塞砲と無数の砲台を擁する宇宙帝国の主星。
　猟兵達の接近を察して先制の要塞砲を放つが、戦艦ならいざしらず、機動性重視の機体に当てられるはずもなく、空しく光の柱を迸らせるに留まる。
（お約束として排気口等があるはずなのですが……外から攻撃するしかないのでしょうか）
　排気口から内部に侵入するつもりだったシンは、インヴィンシブル・スターの表面が流体金属に覆われていることに戸惑いを覚える。その様子に、マックスが声をかける。
「……どうか、しましたか？」
「こういう要塞には排気口等があるはずと思っていましたが、流体金属で覆われて見つからないのですよね」
「……なるほど。では、僕も探してみましょう」
「ありがとうございます。美麗さんにはその間、陽動をお願いできますか？」
「任せて！　派手に暴れるわよ！」
　こうして、美麗の銀色の機体はひらりひらりと砲台からの砲撃を引き付けながら回避しつつ、逆にビームマシンガンと出力可変式極光砲で大暴れして次々と砲台を潰していく。そんな中、シンとマックスは侵入に使える排気口を探す。
「見つけました！　あれです！」
　艦隊のいた方向から見て裏側、呼吸をするかのように流体金属を引かせて、排気口を露出するのをマックスが発見し、シンも確認する。
　流体金属が元に戻る前にと、シンはロード・スカーレットを戦闘機のような高機動形態に変形させ、機首部分にビームシールドを置く。そしてライフルビットによる射撃とソードビットによる斬撃を十分に浴びせると、脆くなった排気口にビームシールドを叩きつけるようにして、内部に突入する。
「じゃあ、僕も攻撃に回ろう！」
　シンを見送ると、マックスは美麗に倣って、砲台を次々と攻撃し始める。砲撃を見切った上で急加速で回避するので、砲台はスカイブラスターを捉えられず、ただ一方的に撃破され、沈黙させられていく。
　一方、内部に侵入したシンは紫御殿達と遭遇したがビットによる猛攻で瞬殺した。そして。
「これが……最後ね！」
「……これで、終わりだね」
「宇宙大帝！　切り裂く！！」
　シルバー・レイとスカイブラスターが最後の砲台を撃破するのと、ロード・スカーレットが宇宙大帝に多数のビットの攻撃を浴びせて倒したのは、ほぼ同時の出来事だった。
　ここに、宇宙帝国は倒れた。猟兵達は、見事にゲーム世界の中でゲームをクリアしたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ロング・レンジ・スナイプ
「ロボットとはオタク的に滾るでありますね……」
　そんな事をつぶやきながら、自身の服装に似せた黒ベースにワンポイントで赤をあしらった長射程支援機の操縦シートに座るのは、紅葉・智華（紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893）。
「それにしても……他のプレイヤーはいないのでありますか。まぁ、何とかなるでしょう」
　この機体を選んだ智華の目論見としては、他に参加している猟兵の近接格闘機などを掩護することにあった。だが、生憎と他の猟兵の機体は見当たらない。もっとも、智華は目論見が外れたからと言って動揺したりはしない。近接戦闘の必要があればやるだけの話に過ぎない。
　かくして出撃した智華は、敵の射程外からの狙撃戦術を駆使し、敵に攻撃をさせることなく最終決戦まで突き進んでいく。
　インヴィンシブル・スターの前に陣取る艦隊の艦載機に対しては、ユーベルコード、支配者の弾丸（ドミナント・バレット）を用いて、未来演算による必中射撃をやはり敵の射程外から行い、次々と敵機の頭部を破壊してメインカメラを潰していく。
「そろそろ、行くでありますか」
　敵の戦列が混乱したと判断すると、智華は機体を艦隊の中に突入させていく。まだ無事な敵ロボットや戦艦が砲火を智華機に集中させるのだが――。
「――見える」
　ユーベルコード、虚構の神脳（イミテーション・ラプラス）によって、未来が見えているかのように智華は無数の光線やミサイルを難なく回避していく。
　無駄のない攻撃と回避によって艦隊を突破した智華は、いよいよインヴィンシブル・スターと対峙する。
「流体金属装甲に無数の砲台……試してみるでありますか」
　無造作に、ただインヴィンシブル・スターに接近するように見える黒い機体。当然、インヴィンシブル・スターの数多の砲台からは攻撃が集中する。だが、それらは全て智華機の前で壁にぶつかったかのように止まる。
　矛反転する見えぬ壁（ヴェンジェンス・ウォール）。電脳魔術により不可視の壁を出現させ、それを攻撃した者を追尾する高圧電流を放つユーベルコード。
　さすがに集中砲火によって壁自体は破壊されたものの、その前に攻撃者への高圧電流は発生しており、智華機を攻撃した無数の砲台に因果応報とばかりに浴びせられていく！　のみならず、電撃は流体金属装甲を通じてインヴィンシブル・スター全体に伝わる。たちまちのうちに機能不全に追い込まれる、インヴィンシブル・スター。
「賭けではありましたが……勝ったようでありますね」
　ふーっ、と息を吐いてシートに体重を預ける智華。こうなれば、形勢は定まった。沈黙したインヴィンシブル・スター内部に突入し、紫御殿を蹴散らし、宇宙大帝を討つ。
「なかなか楽しかったでありますね。今度、原作を観てみるでありますか」
　ゲームの中の世界から戻って来る直前、この世界を満喫したかのように、智華は微かに笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月11日