バトルオブフラワーズ⑤〜霧の彼方の城
●霧の彼方
立ち込める霧の向こう、近くて遠く届かない城がある。大橋の中央に獣がいるわけでもなく、尖塔に石の悪魔が佇む訳でもない。熱風を吐く竜の姿もなくーーだが、霧の彼方の城にはたどり着けぬ。
橋が、無いのだ。
橋の先、中央より向こうが欠けている。
落ちたのではない、壊されたのでもない。ただ、欠けているのだ。まるで『描きかけ』であるかのように。
「足りないよ足りないヨ」
「描くには足りないんダ」
「お嬢様の絵の具がネ」
「画材を集めなキャ」
「でもでもできるカナ?」
「落ちちゃったラ」
「あなたも骸の仲間イリ!」
きゃらきゃらと笑う子供達の声が霧の向こうから響く。橋の側、小屋にひとり住むお嬢様の絵は、ずっとずっと完成しないまま。
●宝石絵の具
「おにーさん、おねーさん、来てくれてありがとう。なんて言うか、この前から更に大変なことになったみたいなんだよね」
そう言って、ユラ・フリードゥルフ(灰の柩・f04657)は猟兵たちを見た。
「テレビウムのおにーさんやおねーさん達が追いかけられていた件は、聞いているよね?」
あれは、キマイラフューチャーの中枢「システム・フラワーズ」からの救援要請だったのだ。要請に答え、システムへと続くメンテナンスルートを開放した結果ーー……。
「キマイラフューチャーが真っ二つに割れたんだよね……。うん、とりあえずメンテナンスルートっぽいし、システム・フラワーズを占領しているのはオブリビオンだから倒さなきゃってことで」
道があるんだ、とユラは告げた。
「おにーさん、おねーさん達に向かってもらうのは、このゲームステージだよ」
霧の向こうに城が見える、古びた村だ。風景画のような景色であるのは此処が『描かれた』という設定の世界だから。長い橋に辿り着くには、村の中を抜ける必要がある。
「家々の間を、教会の横を。で、そこにいるのが、ゾンビなんだよね。ついでに、倒しても蘇るやつ」
ま、死なないタイプなんだよね、とユラは言った。
「全体が風景画のように見えるのは、此処が描かれた世界って設定だから。橋の側にある小屋にいる絵描きに橋の絵を描き上げてもらって、辿り着けたらゴールだよ」
その為に、画材である宝石を捕まえる必要がある。
「画材である宝石を隠し持っているのは、宝石トカゲだよ」
ゾンビの間をするすると逃げていくのだ。
「あ、トカゲって言ってもおっきいやつかな。捕まえられば、倒せると思う。強敵って程じゃないよ」
倒せば、宝石トカゲは宝石に変える。
だが問題はゾンビの方だ。
簡単に倒せるが、すぐに蘇る。足は然程早くはないが、追いかけてくるのだ。
「毒を吐きながら。っていうとセオリーな感じかな? 数も多いし、毒をもらうと動きが遅くなるから気をつけてね」
宝石トカゲは家々の軒下や影によく潜むという。屋根の上から道中を探しても、建物の中を探しても良いだろう。
「宝石トカゲ探し用のランタンは、最初にもらえるんだ。で、もれなく片手が埋まるっていうやつ」
便利だが不便だがだよねぇ、とユラは言う。ランタンを置いていくのも使うのも自由だ。
宝石の色は様々に。手に入れば、絵師の少女が橋の絵を仕上げてくれる。
「キラキラと輝く橋を抜ければ、霧の城へとたどり着く。門のとこに出てくるオブリビオンを倒せば無事に城に入れて、ゴールだよ」
絵画は完成。
死者の蠢く町は完結。そしてーーこのステージも無事にクリアとなる。
「ゾンビに攻撃を受けても、現実世界のおにーさんや、おねーさんにダメージはないから、そこは安心して」
でもまぁ、痛いのは痛いって感じるだろうからそこは気をつけてね、とユラは言って猟兵たちを見た。
「霧の城に向かって無事にクリアしてね。よろしくね、おにーさん、おねーさん」
ひとつの世界を危機から救う為。
グリモアの淡い明かりが、少年の掌から溢れた。
秋月諒
秋月諒です。
キマイラフューチャーが大変だー、ということで。
どうぞよろしくお願いいたします。
このシナリオは戦争シナリオです。1フラグメントで完結いたします。
●ゲームについて
ゾンビがいっぱいいる村の中、逃げ回る宝石トカゲを捕まえてください。
倒せば宝石の姿に変わります。
手に入れた宝石は自動で絵描きの少女の元へ送られます。
●リプレイについて
宝石トカゲと追いかけっこ→橋ができたのでれっつごー→集団戦
集団戦については「倒す」とあればさくっと倒した感じで行きます。さくっと倒せます。
●フィールドについて
橋の向こうに霧がかった城を眺める古びた村。
教会や、怪しい儀式の後のある村や墓場がある。ついでにゾンビもいっぱいいる。道にいっぱいみっちりと。
ゾンビは簡単に倒せますが、すぐに蘇ります。猟兵がダメージを受けると、足が遅くなります。ゾンビからのダメージだけではゲームオーバーはしません。
ゲームオーバー時も、現実の猟兵たちにダメージはありません。
それでは皆様、ご武運を。
第1章 集団戦
『ナンバーワンズ』
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POW : ナンバーワン怪人・ウェポン
【ナンバーワン兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : トロフィー怪人・ジェノサイド
【トロフィー攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 金メダル怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【金メダル】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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●霧の彼方の城
「色が、足りないのです」
お嬢様、と呼ばれた絵師の少女は告げた。この世界を描き切るのに、色が足らないのだと。
「霧の彼方。約束の先へと至る橋を描く色が」
だから、と少女は緩く首を傾ぐ。
「探してはいただけませんか?」
橋を描くための画材を。
白く、ほっそりとした指先にひどく色がしみ込んでいた。
●宝石絵の具
「ぁあ……」
「ぁ、ぁあああ……」
無数のうめき声が響く。絵師からの手紙なるものを受け取り、不思議な幻の中、彼女との会話を終えた猟兵たちを待っていたのは、無数のーーゾンビたちだった。
古く、くすんだ色で描かれた村の中。揺れるゾンビたちの手には剣と槍、そして弓を持ち。ゆら、ゆらとうめき声をあげながら進んでくる。その動きは緩やかだがーー数が多い。目の前、迫る姿はまるで壁のようだ。
「ぁあ……」
「う、ぁ、ぁあああああ」
ゆらり、ゆらり、進むゾンビたちの足元をするり、と抜ける姿がある。キラキラと背に、光る宝石を生やすあれが宝石トカゲだ。オオトカゲほどの大きさがある。簡単に見失うことはないかもしれないがーーだが、問題は目の前のゾンビだ。
早く追いかけるか、どこかを探すか。
何にしろ、この死者の群れをどうにかしなくては。
メルト・プティング
ベアータ(f05212)さんとズバッと参戦なのです!
作戦はいたってシンプル、ベアータさんがゾンビをひきつけ、ボクが宝石トカゲを探します!
地面に手を当て《念動走査》を発動、トカゲを失せ物と定義して【失せ物探し】【情報収集】【第六感】を組み合わせ、地面から残留思念を読み取る超能力探査です!
これ結構集中力要るんですが、ベアータさんの援護で安心して探査に集中できるのですよ
トカゲを発見したら追跡して、『プラズマバイザー』から放つ【マヒ攻撃】でビシッと動きを止めてゲットなのです!
オブリビオン戦ではボクがベアータさんを支援しますよ!
おなじみの【マヒ攻撃】でベアータさんの周囲の敵をバシバシ足止めしちゃいます!
ベアータ・ベルトット
友達のメルト(f00394)と参戦
村では囮としてゾンビ達の相手を買って出るわ
メルト、トカゲは任せたわよ!
機脚のブーストダッシュ機能を活かした立ち回りで、常に敵の注意を自分へ向けさせる
付かず離れず、時に残像を纏って攪乱しゾンビ達を翻弄
スナイパーや一斉発射を活かした両機腕銃攻撃で精密かつ大量に迎撃するわ
接近を許した時はHAを発動
有機体である以上、この牙からは逃げられない―
グラップルファイトに持ち込み、触れた傍から喰らい尽くしてやる
背後から襲ってきた敵には咄嗟に翼状のレーザーを展開して対処するわ
オブリビオンの根城では
メルトが足止めしてくれた敵を銃とHAで屠る!
…や、首から下は喰えそうじゃない?たぶん
●宝石絵画の世界
燻んだ空に、だが、雲は微かに煌いていた。古い家々は重く淀んだ空気を孕んではいたが、そう言う色彩と思えば不思議もない。
退廃的な空気さえ描きあげる宝石の絵の具は、古びた礼拝堂から、家々、墓場までを描きあげーーだが霧の城へと向かう道筋を失っていた。
橋を渡るのに必要なのは、それを「描きあげる」こと。あの煌めきの向こうに至ることこそが、此の宝石絵画の世界を救いーーひいてはキマイラフューチャーを救うのだ。
●最初の探索者たち
「アァアアア」
「ァアアアアアアアア……!」
ゾンビの群れが、階段を上がってきていた。村へと向かう道すがら、教会を背にベアータ・ベルトットとメルト・プティングは立っていた。
「すごい数だけど……」
すぅ、とベアータは息を吸う。何も、無策で此処にいるわけじゃないのだ。最初のポイントから、宝石トカゲがこの辺りにいると言うことまでは掴んでいた。だが、詳細を探るにはーー正直、このゾンビがあまりに邪魔すぎる。
「メルト、トカゲは任せたわよ!」
「はい。ボクが宝石トカゲを探します!」
二人の作戦はこうだ。
ベアータが劣りなり、メルトが捜索する。目で探すのであれば、ベアータだけにゾンビの意識を引き寄せることはできないだろうがーーメルトには方法がある。
「教えてください、アナタに何があったのか」
念動走査。
ひたり、と地面に手を当て、メルトは瞳を伏せる。トカゲを失せ物と定義して、残留思念を読み取るのだ。たとえ、此処がゲームの中であったとしても。そのプレイヤーとして入り込んでいる今であればーーそして、メルトであれば『辿れる』
(「これ結構集中力要るんですが、ベアータさんの援護で安心して探査に集中できるのですよ」)
ほう、と息をつく。瞼の裏、チカ、チカと光って見えたのは宝石トカゲか。
「薄暗い部屋……木の匂い……、あれは、村長の屋敷」
積み上がった荷箱の奥に、宝石トカゲの姿が視えた。
「ベアータさん、見つけました」
かけた声は、向かうと注げるのと同時だ。駆け出したメルトに合わせ、ぐん、とベアータはゾンビの群れに身を飛ばす。中央、派手に振り回した腕が銃弾をばら撒けば、枝を蹴り、一気に飛び越えていくメルトに伸ばせる腕はない。
「ァアアアア……」
「ァアアアアア……!」
「追いかけさせるわけないでしょ」
私が、囮をやっているんだから。
薄く笑い、ベアータは拳を握る。
「カケラも残さず喰らってあげる!」
「ァアアア」
「ァアアアアア……!」
伸びるゾンビが、ベアータに触れた其処から欠ける。砕け散るのではない。欠けていくのだ。それこそ、分解でもするように。
「有機体である以上、この牙からは逃げられないーー」
穿つ、拳がゾンビを喰らう。蘇れば、頭を砕き、追いすがる腕を蹴り上げ落とす。慣れた手つきで乱戦をこなして行けば、ベアータさん、と声が響いた。
「ゲットなのです!」
ていや、とメルトがかがけて見せたのは、青と赤。二色の美しい宝石だった。普通の宝石よりはだいぶ大ぶりなそれは、二人の目に入ったことでふわり、と消える。カランカラン、と鐘の音が二人を誘うように響いた。
「これで、橋は渡れそうね」
よっと、とゾンビの頭を蹴り飛ばし、階段の飾りを足場にベアータが、とん、とメルトの横に降りる。
「はい。追いかけて来る前に行きましょう!」
そして、絵師の少女によって二人の宝石で描かれた橋が霧の向こうの城までかかる。道筋は細くとも、しっかりとした橋を渡りきった二人は、門前に待つオブリビオンたちを無事に倒しきったのだった。
城へと続く門が開く。ゲームクリア! と華やかな音楽が二人を出迎えた。
大成功
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仇死原・アンナ
この世界を救う為に…ゲーム?
まぁ、この世界らしいといえばらしいね…よしやろう
[忍び足、目立たない]ようランタンを翳して宝石トカゲを探索
逃げ出したら[視力、暗視、ダッシュ]で見逃さないように追跡
鞭を振るい[ロープワーク、マヒ攻撃]で攻撃し捕獲
群がるゾンビは鉄塊剣を振るい[怪力、なぎ払い]で蹴散らす
ゾンビの攻撃は[武器受け、毒耐性、見切り]で防御回避
「邪魔をするんじゃない、消え失せろ!」
門前に立ち塞がる敵群は[属性攻撃、力溜め]を用いた
【火車八つ裂きの刑】を喰らわせて殲滅させる
(とりあえずクリア…でもまだ戦争は始まったばかりだ…まだ……)
戦いが無事終わったらぼんやりとそう思いつつ
アドリブ絡みOK
待宵・アルメ
ゾンビか……ゾンビかー……
いや、怖いんじゃなくてね?
倒しても倒せないのが面倒くさいとか、そういう感情であって決して怖いわけではゴメンナサイ嘘ですやっぱり怖いのムリっ!
オバケ系は死ぬのより怖い!
(恐怖で普段以上に子供っぽくなっちゃう)
でも頑張ってトカゲさん探さないと……
こういうときガオナは面白がって代わってくれないし……
増やして浮かせたグローブの一つにランタンを持たせてトカゲがいそうな物陰を探すよ
ゾンビは極力会わないように、最悪残りのグローブで押しのけて逃げ道だけでも作って逃げる
オブリビオンは怖い思いした分の八つ当たりにグローブでボッコボコに殴って倒す!
アドリブ&共闘歓迎、というか誰か助けて!
●ゲームの世界
「この世界を救う為に……ゲーム? まぁ、この世界らしいといえばらしいね……よしやろう」
そんな心意気で、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は村の中を移動していた。足音を殺し、目立たぬように移動する。如何にゾンビが山のようにいるとはいえ、身動き一つ取れぬほどみっちりと存在している訳でもない。ランタンを翳し、右に、左にとアンナは視線を向ける。
「……ん? あれは……」
ふいに、何かが光った。きらり、と一瞬。家々もある。光るものが宝石だけとは限らないがーーだが、その光が遠ざかったのだとすれば正解だ。
「向こうに……」
古びた家の中から出る。正面の人影に、窓からの道を選べば、屋根上にいたゾンビが叫ぶ。
「アァアアアアア……!」
「索敵……? いや、上がっていただけか」
叫び声をあげながら、飛び降りてきた一体にアンナは鉄塊剣を振るう。その怪力から打ち出された一撃がゾンビを両断すれば、泥のような血が地面にばら撒かれる。その赤黒い世界の中を、アンナは駆けた。ゾンビとは逆。宝石トカゲが逃げた方へ、だ。いちいち、ゾンビたちの相手をしているのも時間の無駄だ。
「ァアアア」
「ァアアアアアアア、アアア!」
あれは、蘇るのだから。
追いすがる腕を落とし、家々の間にあった壁を飛び越える。花壇を蹴るよりは、と壁を蹴って前に行けばーー声が、した。
「ムリっ!」
「?」
悲痛というか、どうにも精一杯な声が。
●探索者と救援者
「ゾンビか……ゾンビかー……いや、怖いんじゃなくてね?」
生きていてそう道に一杯のゾンビさんだー! という光景に出会うことは無いだろう、と待宵・アルメ(路地裏のミュルクリエイター・f04388)は思った。そう、だからこそ言いたいのだ。怖いんじゃないのだと。怖いから別に建物に向かった訳でも無いし、向かった先で更にいっぱいのゾンビに出会って、庭に追い詰められてというか、庭で向かい合う羽目になって頬が引きつっている訳でもないのだと。
「倒しても倒せないのが面倒くさいとか、そういう感情であって決して怖いわけではゴメンナサイ嘘ですやっぱり怖いのムリっ!」
オバケ系は死ぬのより怖い!
そう、叫んだ瞬間、空から声がした。
「動かないで」
「……!」
は、と振り返った瞬間、炎を帯びた剣がアルメの瞳に映った。小さく、息を飲んだ少年の前、壁を飛び越えてきたひとの髪が揺れる。零す炎を己のものとして。
「地獄の炎は焼くだけでなく、お前の身体を切り刻む……!」
斬撃がアルメの前にあったゾンビの群れを焼き尽くした。
「ありがとう」
「……いえ、声がしたから」
聞こえた分? と緩く首を傾げるひとに、アルメだと名乗った少年は宝石トカゲを探すなら、と複製した手袋にランプを持たせる。
「こっちの方に来てたんだ?」
「えぇ、多分。見ている限り、あまり明るい場所にはいなさそうだけど……」
「あー……うん、そんな感じはあると、思う」
さっき、一瞬見かけた時も宝石トカゲは薄暗い場所にいた。オオトカゲの部類な気がするが、基本的には暗い場所を好むのだろう。ついでに、そう言う場所ではゾンビとの遭遇率も上がる訳で。
(「でも頑張ってトカゲさん探さないと……。こういうときガオナは面白がって代わってくれないし……」)
よし、と息を吸う。掲げていたランプに、何かが反射する。この先は、と顔をあげてみれば古びた文字で「庭園」と書かれていた。
「中庭……みたいなやつかな。……あ、あそこ!」
「えぇ。宝石トカゲね。二匹」
次は、とアンナは声を落とす。踏み込む足音を殺す。手の中、縄を落として執行人たる彼女は告げた。
「逃さない」
ひゅん、と放つロープが宝石トカゲを捕らえる。きゅ、と結びあげ、二人が触れれば、艶やかな紫の宝石と、白銀に似た色彩を持つ宝石へと変わる。
「これで、無事に橋がかかるんだね」
「えぇ」
カランカラン、と二人を誘う鐘の音が響く。さぁ、と告げる絵師の少女と別れ、アンナとアルメは霧の城へと向かう橋を渡る。門番宜しく待ち受けるオブリビオンの目的は、このゲームを「クリアさせない」ことか。
ゾンビで怖い思いをした分の八つ当たりで、グローブでボッコボコにするアルメの横、アンナの斬撃が再びの炎を描く。
「邪魔をするんじゃない、消え失せろ!」
ゴォオオオ、と斬撃と炎、打撃の向こうでオブリビオンたちが消滅する。
やがて城へと続く門が開く。ゲームクリア! と穏やかな音楽が二人を出迎えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アマネク・アラニェ
*心情*
約束……、ね。何かと事情がありそうだけど詮索はやめておこうかしら。
しっかり絵の具を調達してくるから、完成させてちょうだいねその絵。
(ゲームクリアのためだけでなく、少女のためにも絵が完成するといいなあと思ってるけど言いません)
*行動*
ランタンを持っても幸い手は三本空いてるし、宝石トカゲを探索するわ。
『野生の勘』で潜んでそうな建物の陰の薄暗がりに見当をつけて、
ランタンで照らしながら覗き込む。四つの目で見逃さないように。
「さて、この辺りにいそうな気がするんだけど」
ゾンビたちはUC『エレクトロレギオン』を使って対処。数には数よ。
※アドリブ・絡みなどお任せします。
●寄り添いの探索者
「霧の彼方。約束の先へと至る橋を描く色が」
「……」
約束……、ね。何かと事情がありそうだけど詮索はやめておこうかしら。
描きかけの絵を前に、絵描きの少女は困惑を残していた。アマネク・アラニェ(ユビキタス・アラニェ・f17023)の見目に対してでは無い。彼女は、描きあげられないことに困り果てているのだ。
「しっかり絵の具を調達してくるから、完成させてちょうだいねその絵」
「……はい」
こくり、と頷いた少女に、ふ、と息をついてアマネクは橋の前にある少女の部屋から外へと向かう。此処は不可侵地域なのか、ゾンビたちの侵入も無い。最も、此処にたどり着くまでの間、随分と相手をさせられる羽目になったのだがーー数には数。敵がさほど強く無い以上、召喚した機械兵器は随分と役立った。
それでも、少女に会いに行ったのはーーゲームクリアの為ではない。少女のためにも、絵が完成するといいなあ、と思っていたからだ。
「さて、宝石トカゲは……」
ランタンを持っていても、幸い手は三本空いている。少女の瞳を思い出しながら、アマネクは建物の暗がりをたどっていく。ランタンで照らしながら向かう道筋は、只人であればまず見つけられないような場所だ。
「さて、この辺りにいそうな気がするんだけど」
四つの目で見逃さぬように、カツカツと進んでいけば、チカ、と光るものが見えた。
「あれは……」
見つけた、とアマネクは柱の奥へと身を滑らせる。暗がり、細い廊下に身を隠すようにいた宝石トカゲを捕まえれば、手の中で、石は金色に変わる。
「これで……あの子も絵が描ける」
先に、石を届けた猟兵たちもいるのだろう。細くだが、描かれた橋は、まだ「本人たちだけ」しか渡れない。絵描きの少女がいた場所に、ゾンビが近づけないことを思えば、霧の城に不死者が流れ込むこともないのだろう。
「ーーこれで、輝く太陽を受ける橋を描くことができます」
橋を渡る前、絵描きの少女はそう言って小さく微笑んだ。しっかりと、全てを描きあげますと注げる少女に頷いてアマネクは光り輝く橋を渡っていく。門前に待ち受けるオブリビオンたちを倒しきれば、城へと続く門が開いた。
ゲームクリア! と静かな音楽がアマネクを出迎えた。
大成功
🔵🔵🔵
茅原・紫九
色が足りねえ、と言われちゃやるしかねえよな。
絵描きが描けねえのは事によっちゃ命より重いしよ
左手にランタン、右腕に筆を抱えて探索開始だ。
ゾンビは邪魔な奴の足を撃ち抜いて動きを止めるだけにする。
一々相手にしてたんじゃキリもねえしな。
ゾンビがゆったりとだが追ってくる以上、1か所に留まり続けるのは愚策。
トカゲの捜索は何か所か隠れそうな場所を確認し、そこを見回る形で動く。
時間制限については言われてねえし焦る程の事でもねえ。トカゲの深追いはせず、ゾンビに囲まれないことを優先するか。
オブリビオンの集団戦はなんか頑張る。
てかなんでゾンビと一緒に襲ってこなかったんだ?
そういうゲームと言われちゃそれまでだが……
●色彩の探索者
「色が足りねえ、と言われちゃやるしかねえよな。絵描きが描けねえのは事によっちゃ命より重いしよ」
ほう、と息をつき茅原・紫九(風に流され来たる紫煙・f04064)は辺りを見渡した。左手にランタン、右腕に筆。両手が埋まったが、今のところ、特別、不便もない。ゾンビはゾンビで邪魔ではあったが、倒す、と言うことを紫九は選ばなかったのだ。足を打ち抜き、動きを止めるだけにすれば、蘇る代わりに『更に動きの遅いゾンビ』が生まれるだけだ。
「一々相手にしてたんじゃキリもねえしな」
ほう、と息を吐き、通りを曲がる。ゆったりとはいえ、ゾンビが追いかけてくる以上一箇所に留まり続けるのは愚策だ。
「さて、此処はもう見たか。次は……教会か」
本格的な捜索を始める前に、紫九は隠れそうな場所を確認しておいたのだ。そこを見回る形で、トカゲの姿を探していた。
「アァアアアアア」
「ッッァアアアアア……!」
ゾンビたちのうめき声が耳に届く。真正面から入るよりは、と裏口から滑り込んで紫九は息をついた。このゲームに、時間制限はない。焦ることなく、宝石トカゲも下手に深追いせずに紫九は進んでいく。ゾンビに囲まれないことを優先としているのだから。
「……っと、いたか」
そうして、教会の奥。パイプオルガンの下に、逃げるように滑り込んでいた宝石トカゲを紫九は捕まえる。他の猟兵たちよりも時間はかかったがーーだが、その分、ゾンビに囲われるような状況にはなっていない。
戦い方は人それぞれ。手の中に落ちた宝石が、乳白色を見せたのを見送って紫九は橋へと向かった。霧の向こうの城が、少しずつ見えてくる。門前に見えるのは、オブリビオンたちだ。
「てかなんでゾンビと一緒に襲ってこなかったんだ? そういうゲームと言われちゃそれまでだが……」
いや、もしかして。と紫九は思う。コイツらは紫九達が『クリアしようとした』から邪魔をしに来たのでは無いだろうか、と。ゾンビはこのゲームに元から居る存在。部外者は自分立ち猟兵とーーこのオブリビオンだ。そこに、何かがあるのか。感じ取った違和感を、決して忘れることはないよう刻み込んで紫九は筆を振るう。踊る塗料と共に、オブリビオンたちを塗り尽くせば、ぱふん、と敵の群れが光となって消えた。
ゲームクリア! と明るい声が響く。
霧のがかった城の門が開き、穏やかな音楽が紫九を出迎えた。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・ディセンバー
絵画の世界というのも悪くないものね
…賑やかなギャラリーもいるし
ランタン借りて屋根の上から教会までのルートを確認
教会まで屋根の上を走るわ
足は止めない
足場が途切れたら亡者の頭を足場代わりに
邪魔をするのなら、跳ぶ間くらいは保って頂戴
地上を行く必要が出たら黒剣を鎌に
片手があいてればそれで十分、使えるわ
亡者の手足斬り落として
荷車や板で亡者の足を止められるならそれも使って、教会へ
ここなら隠れる場所は多いでしょう
着いたら椅子や楽器の影を確認
亡者がいたら亡者ごと壊して宝石蜥蜴探し
緊急事態だもの
神も許すわ、多分
出てきた蜥蜴が逃げるなら灼熱の口吻で確保ついでに倒す
悪いわね
お嬢様と世界の為に、貴方を頂戴
>集団戦
倒す
●辿らずの灰の探索者
「絵画の世界というのも悪くないものね。……賑やかなギャラリーもいるし」
アァアアア、と怨嗟の声が響いていた。攻略にかかる猟兵たちのお陰で、村のあっちこっちにゾンビが向かい、倒されては蘇る。村の入り口にいたものが奥へと追いかけていけば、少しは空間としての密度もマシになるかと思ったのだがーー……。
「結局、状況はさほど変わらず、ね」
ランタンを片手に、外壁を登る。かけた足で一気に跳躍すると、ノエル・ディセンバー(狩人・f08154)は、身を低めながら屋根の上を進んだ。
「教会までは……、右の経路の方が良さそうね」
このまま行って、とランタンを手に、ルートを確認する。動きながら、道をつけていくのはゾンビたちの意識が上にも向くからだ。よじ登ってくる者がいるかどうかは分からないがーー手にした武器は厄介だ。一撃で倒せるとはいえ、地上をいくにはあの数をいちいち相手にする必要が出てくるのだから。
「早く、上を移動するとしましょうか」
たん、と屋根上を蹴る。多少、滑る場所もあるがーー慣れて仕舞えば、走ることも容易い。別段、こういう場所を行くのが苦手だと言う訳でも無いのだ。
(「右に向かって……次は、正面、煙突の横を超えて……」)
たん、と屋根瓦を蹴れば、着地のその場所が沈んだ。腐っていたか。ぐ、と沈みかけた体を引き上げるように、ノエルは上に飛ぶ。派手に崩れた屋根を見送り、途切れた足場の先で見たのはーー。
「アァアアア」
「ァア、ァアアアア……!」
ゾンビたちだ。
音でこちらに気がついたのだろう。波のように向かってくる姿に、ふ、と息を吐きーーそのまま、飛んだ。
「邪魔をするのなら、跳ぶ間くらいは保って頂戴」
「ァア、ァアア!?」
だん、とゾンビの頭を踏む。崩れかけた体を蹴り出すようにして、奥の一体の肩を踏む。飛ぶように、前へと出れば再び、屋根に届く。ァアア、と追いかけてくる呻き声に振り返ることなく、ノエルは教会まで辿りついた。
「……さて、随分と立派な教会のようだけど」
ひどく、天井が高い。古びた村の状況を思えば、どうにも豪奢な教会に思えた。何か理由がーー否、ゲームの世界と思えば『設定』があるのだろうか。
「考えたところで、今は見つかりそうも無いわね。探すのは……」
宝石トカゲの方、だ。
「ここなら隠れる場所は多いでしょう」
長椅子の下を覗き込む。それらしい影は見当たらない。トカゲと言うだけあって、暗所を好む可能性があるというのは、道中、追いかけていた猟兵たちを見れば間違いは無いだろう。
「あとは……」
向こうの、と目を向けた時、置きっ放しの巨大なパイプオルガンの側で何かが、動いた。
「アァアア……」
「ァアアアア……!」
「ゾンビね」
教会らしく、礼服に身を纏った亡者がゆらり、ゆらりと立ち上がったのだ。座り込んでいた彼らが動き出せば、キラ、とその後ろで何かが光った。
「宝石トカゲのように見えたけれど……、まずは、こっちの相手ね」
すい、と手を伸ばす。宿るは蜥蜴の炎。しゅるり、動く火を揺らす炎熱の従者。
「緊急事態だもの。神も許すわ、多分」
さあ行って、とノエルは囁く。
「骨まで溶けるような熱を、刻んで頂戴」
走る炎の蜥蜴たちがゾンビたちを焼いていく。ぐらり身を崩し、伸びた手さえ届かずに、崩れ落ちるその向こうに見えたのはーー間違いない。キラ、と輝く宝石トカゲだ。
「悪いわね。お嬢様と世界の為に、貴方を頂戴」
指先を前へと向ける。蘇ったゾンビを鎌で払い、飛び越したノエルの一撃が宝石トカゲに落ちた。
からん、と手の中に生まれたのは虹に似た色彩の石。新緑の緑とも、青とも見える石が、ふわり、と一度浮かび上がってーー消える。気がつけば後ろにいたはずのゾンビたちも消えていた。
「これで……後は、橋の向こうね」
カラン、カランと誘いの鐘が鳴る。宝石で描かれた橋を渡り、門前に構えたオブリビオンを打ち破れば「ゲームクリア!」と明るい声が響く。
霧がかった城の門は開きーー華やかな音楽がノエルを出迎えるように響いていた。
大成功
🔵🔵🔵
アルバ・アルフライラ
ええい、ただでさえ醜悪というに
我が往く道を阻もうなぞ万死に値するぞ
便利な物はあるに越した事ないとランタンを片手にトカゲの捜索
何、片手が空けば魔術は行使出来る
家々の軒下、物陰を注意深く観察
逃げられても厄介故、見つけ次第魔術で麻痺させ倒すとしよう
然し宝石の彩で出来た世界か
それはさぞ美しかろうな
…ゾンビのせいで台無しだが
執拗に追ってくるゾンビが何度も蘇ると云うならば
動きを制限出来るよう【女王の臣僕】を召喚
広範に展開、出来る限り多くのゾンビを氷漬けにしてくれる
然すれば逃走を図るトカゲも捕獲し易い上
他の猟兵も動き易かろう
橋が描かれた後、狼藉者の排除へ
ふふん、覚悟は出来ておろうな?
(従者、敵以外には敬語)
緩やかに弧を描く階段を降りてゆけば、キラキラと輝く石畳が見えた。あの煌めきは、どの宝石が描きだしたのか。瑠璃を削って描かれたのだろう、空の隙間から降り注ぐ色彩はーートパーズだろうか。
「然し宝石の彩で出来た世界か。それはさぞ美しかろうな」
「アァアアアアア……!」
「ァアアアアア!」
ほう、と息をついた先、石畳に見えた無数のゾンビたちに眉を寄せ、瞳を細めーーそうして、アルバ・アルフライラ(f00123)は息をついた。
「……ゾンビのせいで台無しだが」
何一つ、間違いない。
ぐらり、ふらり、と体を揺らしながら、あぁあ、と声を零しながらゾンビたちはアルバの方へと向かってくる。動きこそ早くは無いがーー横を抜けていくのは、まず、難しいだろう。なにせ、数が多い。
「ァアアア……」
「ァアアアアアア……」
通りを覆い尽くす程いれば、それは圧となり得る。簡単に倒せるという状況を思えばーー果てしたく、邪魔の方が強いのだが。
「ええい、ただでさえ醜悪というに。我が往く道を阻もうなぞ万死に値するぞ」
ランタンを片手に、アルバは息を吐き捨てる。最初の家、軒下のは宝石トカゲの姿はなかった。争った跡があったのを思えば、先に猟兵たちが見て回っていたのだろう。生者を追うのか、将又、動くものを追いかけるつもりか。
(「先に見てきた家々に姿が無ければ……、広場の方はあるまい」)
彼処は明るい。家々の軒下、物陰を見て回っていたアルバの目に、いくつか似たような痕跡が見えていたのだ。足跡。体を動かしたような穴。
「ゾンビが穴掘りを始めたと言い出さなければ、あれば痕跡だろうな」
ほう、とアルバは息をつく。その痕跡の行き先がーーこの石畳の先であったのだ。迂回の手はある。少し戻り、家々の外壁から屋根伝いに行くという手であれば恐らく辿り着けるだろう。ーーだが。
「控えよ」
手にしたランタンを掲げ、アルバは告げる。薄く開いた唇が、宝石絵画の世界に魔術を解き放つ。
片手が空けば、魔術は行使出来るのだ。
空間に光が灯る。ふわり、と纏う空気が変わる。
「女王の御前であるぞ」
無数に舞う青き蝶の霊が、アルバに周りに姿を見せていた。
「ァアアアア……」
「ァアアアア
……!?」
青き蝶が舞う。ひらり、ふわりと宝石で描かれた世界に舞う。広範囲に展開された青き蝶が一瞬、空の色彩を隠しーー次の瞬間、冷気が通りに落ちた。
「ァアア
……!?」
何かが起きたと、は、と首だけをこちらに向けたゾンビが、その姿のまま凍りつく。立ちすくむ亡者の群れの中を、氷柱の世界をアルバは悠然と歩いてゆく。
「あれは……宝石トカゲか」
チカ、と目の端、光って見えたのは屋敷の庭に潜む宝石の姿だ。さっきのゾンビの群れに阻まれて姿が見えなかったのか。逃げるように、ベンチの下へと飛び込んだ宝石トカゲにアルバは手を伸ばす。ひらり、と蝶が舞えば、カキン、と硬い音と共に、オオトカゲの姿が宝石に変わる。
「ーー瑠璃か」
手の中、一度収まった宝石がふわり、と消える。カラン、カラン、と誘いの鐘が鳴った。橋が無事にかかるという絵師の娘からの伝言だろう。
「ふふん、覚悟は出来ておろうな?」
瑠璃で描かれた橋を行き、門前に現れたオブリビオンたちを氷柱へと変えれば、ゲームクリア! とやけに明るい声が響く。
霧の向こう、城へと続く門が開けば、鳥の声と共に賑やかな音楽がアルバを出迎えていた。
大成功
🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
成程、色を探すというのは面白いね。
ゲームとはいえそんな頼まれ事ならよし来た、望みを叶えに行こうじゃないか。
私もその色を見てみたいしね。
まずはこのくすんだ色の村、一際輝く宝石をどう探すか…ゾンビは中々うっとおしいねえ。
何に反応してるのか、熱か音かそれともその瞳か。
松明投げて反応するか確認したり、くすんだ色合いの布とかで隠れて見つからないかとか探りつつ、少しでもゾンビの数の少ない所を抜けて走っていく。
…そいえば宝石トカゲはゾンビに狙われないのかな?
ゲームなんだから大丈夫なんだろうけど。
見つけたら復活とか気にせずゾンビを切り払って蜥蜴へ接近、一撃喰らわせてゲットを狙うよ。
※アドリブ絡み等お任せ
「へぇ、こんな色になるのか」
古びた建物の中を抜け、箪笥を足場に二階へと上がる。階段が朽ち落ちているのはいっそ「ゲーム」らしいのだろうか、とクーナ・セラフィン(f10280)は息をついた。すん、と鼻先に残る匂いが少しばかりーー遠い。雨夜の匂いに似ているのは城にかかる霧の所為だろううか。
この中で、宝石トカゲを探す、というのがこのゲームの目指す所だという。
「成程、色を探すというのは面白いね」
色が足りない、というのがお嬢様、と呼ばれていた絵師の少女の話だ。描きかけに似た色彩は、確かにあちこちで見て取れる。
「ゲームとはいえそんな頼まれ事ならよし来た、望みを叶えに行こうじゃないか」
私もその色を見てみたいしね。
ふ、と笑って、クーナは絵師の少女が待つという部屋の方を一度見てーーたん、と外に飛び出した。足音を殺し、帽子を抑えて進んでいく。どうやらくすんだ色合いの布に隠れれば見つかりにくいようだ。
(「だが、あまり早くは移動できない、か……。どちらを取るかだね」)
素早い移動か、それともゾンビに見つからないことか。3体を躱して、息をつく。ゾンビの数が多少疎らなのは先に進んで猟兵たちが、仕掛けた跡地か。
「このくすんだ色の村、一際輝く宝石をどう探すか……ゾンビは中々うっとおしいねえ」
倒したところで蘇る上に、何処かに迎えがその数が減る、というわけでもないようだ。
「湧き上がってくる、か。……そいえば宝石トカゲはゾンビに狙われないのかな?」
ゲームなんだから大丈夫なんだろうけど。と呟いたそこで、アァアア、とゾンビのうめき声がした。前と、後ろか。切り払って進むか、と銀槍を構えた時ーー音が、した。
「ーー!?」
ガウン、と爆発と共に、教会の窓が吹き飛ぶ。見えたのはーー炎か。
「アァアア」
「ァアアアアア……!」
音に惹かれるようにゾンビたちが教会を向く。歩き出すには遅いがーーだが、突破するのなら「今」だ。
「さっき、見えた光が宝石に間違いなければ……余計、逃すわけにもいかないねえ」
ヴァン・フルール、とクーナは告げる。銀槍と共に、たん、とクーナは飛び出した。
「こんな趣向はどうだい?」
「ァアア、アアア!?」
音に誘われ、教会の方を向いていたゾンビの首筋を槍が射抜く。ぐらり、と崩れた先、亡者の群れを前に、雪混じりの花吹雪が舞う。淡い光に、伸ばす亡者の指先が凍りつく。窪んだ瞳が、眼前のクーナを見失う。
幻惑、だ。
戸惑うように伸びた腕の下を、身を低めて一気に抜ける。キラ、と軒下に飛び込むように滑る宝石トカゲの姿が見えた。
「逃がさないよ」
たん、と踏み出す足から一気に加速して、宝石トカゲへと一撃を放つ。軒下にたどり着く前、パキン、と凍りついたオオトカゲが淡い光と共に宝石に姿を変えた。
「これは……タンザナイトかな」
手の中に収めた石は、ふわり、と姿を消す。カラン、カラン、と鐘の音が響く。絵描きの少女が時を告げているのだろう。宝石で描かれた橋を渡り、門前で待ち構えたオブリビオンたちを倒し切ればーーぎぃ、と霧の向こうで門が開く。
ゲームクリア! と賑やかな声と共に、楽しげな音楽がクーナを出迎えた。
大成功
🔵🔵🔵
ジャハル・アルムリフ
文字通りに、道は己の手で拓けということか
翼にて屋根の上へ身を潜めながら
翳したランタンを反射する宝石の煌めきを
暗視と視力の両方を頼りに、暗がりを探す
一度視界に収めたなら、けして見逃さぬ様逸らさずに
不可視の【星の仔】を呼び操る
…お前ならトカゲ同士、仲間と思って貰えれば良いのだがな
頭上から静かに近付かせて、突撃させてみる
宝石トカゲに気取られるようであれば二手に分かれ挟撃を
または星の仔が飛びついて驚かせ、逃げた所を捕らえるなどする
そら、そろそろ観念しろ
ゾンビ共も星の仔と共に、近付きすぎぬ様蹴散らす
しつこい連中だな
死んでも死にきれぬとは
橋が架けられたなら、毒でろくに走れぬ場合は飛んで霧の城へと一直線に
「ァアアア……」
「ァア、ァアアアアア……」
ゆらり、ゆらり、と亡者の行列が続く。水の匂いを残すこの世界は、くすんだ色彩を残しながらも何処か、キラキラと光っている。それが宝石絵の具と呼ばれるもので描かれた効果か。だが、例え綺麗に描かれていたとしてもーーあの、ゾンビの山だ。
「文字通りに、道は己の手で拓けということか」
ばさり、と広げた翼で屋根の上に上がり、ジャハル・アルムリフ(f00995)は息をついた。ぎしり、と軋む屋根に、ほんの少しばかり翼で空を叩く。ふわりと浮いて、とん、と軽い跳躍から次の足場を選べば、村の端でドォンと盛大な音がした。
「左、か」
他にこの世界に入った猟兵だろう。音に惹かれるように、視線を向けたゾンビたちを見下ろしながら、ジャハルは屋根上を移動していく。ここから見える範囲に宝石の輝きは見えなかった。
「このまま行けば、東の屋敷か」
教会から続く墓地にほど近い。上を取り続けられれば多少は平穏かもしれないがーーふいに、上を向く者もいる。一体を躱し、残る群れを飛び越えて此処まで来たのだ。
「この辺りで見つけたいものだが……、あれは」
腰を低め、見据えた先ーー家々の間、影となっている場所に、何かが見える。薄闇へと目を凝らし、軽くランタンを掲げれば、チカチカと何かが光った。
「宝石トカゲか」
しゅるり、と逃げるようにオオトカゲが軒下を行く。だが、家の形は確認済みだ。けして見逃さぬ様、目を逸らさずに指先だけを伸ばす。ふわり、と添うように姿を見せたのは不可視の蜥蜴であった。透明な翅を揺らし、顎をあげたナジュムがじゃれ付くのに息をつき、とんとん、と行先を示す。
「……お前ならトカゲ同士、仲間と思って貰えれば良いのだがな」
ぱたぱたと、頭上から静かに近づかせていく。軒下に逃げ込んだ宝石トカゲが、うめき声をあげながら移動するゾンビにつられて姿を見せる。
「遊んでこい」
告げて、そのまま突撃させようとした瞬間ーーしゅるり、と宝石トカゲが速度を上げた。
「気がつかれたか」
言って、屋根を蹴る。隣の家へと飛び移り、しゅるしゅると逃げ回る宝石トカゲを追いかける。途切れた屋根に、た、と強く蹴って前に出れば瞬間、馴染みのある冷気がジャハルの肌を撫でた。
「ーー」
これは、と薄く開いた唇。空中から見えたのは、氷柱と化したゾンビたちだった。石畳の道いは誰がか通ったのだろう跡が見える。
「悠然と歩かれたか」
吐息ひとつ、零すように小さな笑みを落とし、ぐん、と翼を広げる。ナジュム、と告げれば、ぱふり、と星の仔が宝石トカゲに飛びついた。
「!?」
キュイ、と上がったのは宝石トカゲの鳴き声か。驚いて逃げ出したそこに、とん、とジャハルは降り立った。
「そら、そろそろ観念しろ」
息をつけば、擦るような足音。波のように近づくそれが、何であるかなど見なくても分かる。
「ァアア、ァアア」
「ァアア……!」
「しつこい連中だな。死んでも死にきれぬとは」
吐く息を最後に、星の仔と共にジャハルは踏み込んだ。詰めすぎはしまい。最低限の間合いで、転がるように来たゾンビの首を落とす。右から迫る腕を、星の仔の突撃が切り崩せばこの手は宝石トカゲへとーー届く。
ガシャン、と破砕の音と共に、淡く輝く光が手の中に落ちる。色はーーサファイアだろうか。
「ゾンビたちがいない?」
さっきまで迫ってきた亡者の群れが消えている。宝石を手に入れれば消える、というものなのか。ふわり、と宝石がジャハルの手の中から消え、カラン、カランと誘いの鐘の音が響く。
宝石で描かれた橋を渡れば、門前に敵の影。難なくその群れを切り伏せれば「ゲームクリア!」と明るい声が響き渡った。
霧の城へと続く門は開く。穏やかな音楽と共に、鳥の音がジャハルを出迎えていた。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
オーラ防御は霧に似た柔らかな気
隠れ蓑の如く展開しつつ駆け抜ける
第六感を働かせ
屍達の攻撃を見切り回避
また
蜥蜴の隠れ場所や逃げる先を読み捕獲
影を好む蜥蜴達
洋灯の光届かぬ暗がりや
光が作る影に惹かれて集っては来ないだろうか
斃せば即甦り――ならば、斃さなければ良いのですよね?
やわりと笑って放つ馨遙
群がる屍達を深い深い眠りへ誘う
序でに擦り抜けようとした蜥蜴も眠れば
ころりとつついて宝石に変えましょう
どんな色が生まれるのか楽しみです
煌く橋を渡った先
先制攻撃、高速詠唱、二回攻撃で敵を討つ
帰り際
少女にも会えるでしょうか
白い指が彩に染まる様は
宛ら彼女の手が絵筆そのもののようで
世界を生み出す魔法みたいです
素敵ですねぇ
燻んだ色彩で描かれた村は、だが、キラキラと輝いている。薄くかかった雲に残る光、軒下の闇はどこまでも深く落ちるようだというのに、夜空を見上げたかのような感覚が残る。
「これが、描かれた世界ですか」
ふ、と都槻・綾(f01786)は吐息交じりの笑みを零す。ゆるり、細めた瞳は曲がり角にゾンビの姿を見つけて、小さく瞬く。
(「右に行けば、少し相手にする必要がありそうですね」)
纏った柔らかな気を隠れ蓑のように使い、村の中を駆け抜けてきた。完璧に躱すことは流石に出来なかったがーー相手の動きが早く無い以上、足を止めずにいれば捕まりもしない。
「あとは宝石トカゲの居場所ですが……」
薄く、ランタンを掲げる。軒下や、光の届かない暗がりはすでに探した。見当たらないというよりは、既に移動していると見て良いだろう。波のようなゾンビの間を、するすると宝石トカゲは移動していくのだろうから。
「なら……」
暗がりを好む、ということ自体は間違ってはいないはずだ。足跡や、身を沈めようとした穴を幾つか見つけている。
「……」
右のゾンビたちの動きを見ながら、壁に背をあてたままランタンをかざす。光を作るためでは無いーー光で、影を作るためだ。波打つ不気味な枝にランタンを掲げれば、長く伸びる影ができた。
「ーーあぁ」
伺うように音がする。さかさかと誘われるように宝石トカゲが影を目指す。ーーだが。
「アァアア」
「ァア、ァアアアア……!」
動いたトカゲに気がついてか、それとも影に誘われたのか、曲がり角にいたゾンビたちも一緒になって動き出したのだ。
「躱せはしない、ですか。では……」
掲げていたランタンを置いて。綾は、やわりと笑みを刻む。
「斃せば即甦り――ならば、斃さなければ良いのですよね?」
「ァアアア……!」
呻く声はさざ波のように。重なり震え、伸びる亡者の指先がーーだが、その馨に止まる。
「ァ……」
落ちた声は掠れるように、だが、ぐらり、と亡者たちが地面に崩れ落ちていく。倒したのでは無いーー眠りへと、誘ったのだ。
深い、深い眠りへと。
「さてと」
影に誘われやってきた宝石トカゲも、こてりと眠りにつく。ころりとつつけば、コロン、と大きな宝石に姿を変えた。
「青……、海の色ですか」
空の青より深く、けれど煌めきを残す宝石が綾の手の中に落ちる。不思議と然程、重さを感じさせぬまま。一度キラリと光った宝石は姿を消した。
カラン、カラン、と鐘の音が響く。誘いの鐘だろう。この橋を渡れば、戻ることはできない。そう思って、綾は絵描きの少女を訪ねた。
「絵を、仕上げていくんです」
綾の姿に気がついた絵描きの少女が、とつとつと語る。大きな画板には、駆け回った村が描かれていた。遠く、配置されているのはあの霧の城だろう。途切れた橋に少女が触れる。白い指が彩に染まる様は宛ら彼女の手が絵筆そのもののようで、世界を生み出す魔法のようだ。
「素敵ですねぇ」
吐息を零すようにひとつ、笑い少女にいとまを告げる。煌めく橋を渡り、門番宜しく立つオブリビオンを倒せば、ぎぃいい、と霧の城へと続く門が開いた。
ゲームクリア! と明るい声と共に、賑やかな旋律が綾を出迎えた。
大成功
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フローリアン・ロイス
【茶屋】
へえ、僕らの世界みたいな陰鬱さじゃないかい?
明夜(f03393)と行動。
ランタンは僕だけが持つ。
トカゲ達の習性通り、まずは家々の軒下やら影やらを確認しながら歩く。
ゾンビ達から身を隠す為に、建物の影から影を渡ることになりそうだし、
都合が良いのかも。
家の中なら、寝室。
ベッドの上は居心地良さそうだし、下は隠れ場所にピッタリだし。
ゾンビとの戦いは、立ち止まらぬように。
『血統覚醒』して(あまり使いたくないんだけども。仕方ない!)、
バタバタ倒しながら進みたい。
明夜、大丈夫。
このトカゲは、夢みたいなものさ。
橋の向こうでの戦い。
エピローグってとこかな。
明夜の攻撃を避けた敵をスパっとヤっちゃう感じだよ。
英・明夜
【茶屋】
フローリアン(f17729)と一緒。
宝石で描いた橋って、どんなに綺麗なんだろう。
神様がお渡りするみたいな橋かなあ…
戦いを避けて、隠れてるトカゲさんを探すね。
フローが軒天や軒下を照らしたら、明夜はトカゲさんが居ないか良く見て、捕まえるのが役目。
尻尾切りするかもだし、体に抱き付くみたいにギュっと。
…何もしてないのに、倒すの、可哀想かも…。
ごめんね。
うん。大丈夫。
これが本当のことでも、大丈夫にならなきゃいけないよね。
ゾンビと戦う時は、近付かれないうちに、神桜爛漫で倒したり、動きを止めたり。
フローと逸れないように気を付けるね。
最後の戦いも、神桜爛漫を。
橋に彩を添えるように、花が舞うと良いな。
古びた家々の纏う空気が重く、淀んでいた。灰色の村は、亡者の群れに似合いの重さを持ちながらーーだが、僅かに光る。
「へえ、僕らの世界みたいな陰鬱さじゃないかい?」
口元にひとつ、笑みを浮かべフローリアン・ロイス(導き給え・f17729)は家々の軒下を眺めた。ゾンビたちから身を隠すように、影から影へと渡っていたのだがーーどうやら、宝石トカゲたちは建物の中へと滑り込んでいるらしい。
「もしくは、ゾンビたちの居るほう……かな?」
避けるように進んできたが、探す場所、探す場所には『痕跡』だけがあった。そこから移動しているのだろう。向きを見る限りは、ゾンビたちのいる方向だ。互いに気にする様子もないゾンビと宝石トカゲは、間違って攻撃し合うこともないらしい。道中、避けきれずにぶつかってした戦いの間も、逃げる宝石トカゲが間違って踏み潰されるようなこともなかった。
(「こっちはその間に、トカゲを見失ったんだけどね」)
だが、探していた場所が間違いでないのも事実だ。バタバタと倒している間にいなくなった宝石トカゲも軒下を目指していた。
「あとは、この家の中だろう」
「そうだね。……っと、中には誰もいないみたい」
ひょい、と覗き込んだ英・明夜(f03393)が息をついた。家々の間に階段、教会へと続く道の殆どにゾンビたちの姿があったのだ。
「宝石で描いた橋って、どんなに綺麗なんだろう。神様がお渡りするみたいな橋かなあ……」
「どうだろうね」
ゆるく、首を傾けて笑みを浮かべたフローリアンが、家の中、柱を照らす。天井こそ高いが、二階はない作りになっているらしい。むき出しの柱にランタンを掲げ、さて、とフローリアンは寝室を目指した。
「ベッドの上は居心地良さそうだし、下は隠れ場所にピッタリだし」
さて、いるかな、とフローリアンが光を掲げれば、ぼう、と人気のない寝室に光が灯る。
「それじゃぁ探してみるね」
フローリアンが照らしている間、宝石トカゲを探すのは明夜の仕事だ。枕を動かして、布団を少し持ち上げる。
「見つからないなぁ……。ん? あれって……」
一瞬、何かが光った気がしたのだ。そうっと、明夜は膝を折る。しゅるり、とベッドの下に滑るように入っていったのはーー……。
「宝石トカゲ、見つけたよ……!」
足音に、ひゅん、と飛び出して行こうとした宝石トカゲに、明夜はギュっと抱きつく。ぺしょん、と飛び出しに失敗した宝石トカゲがころん、と二つの宝石に姿を変える。
「……何もしてないのに、倒すの、可哀想かも……。ごめんね」
金と夕焼けの空を思わせる色彩を見せた宝石を手に、明夜は呟く。
「明夜、大丈夫。このトカゲは、夢みたいなものさ」
そっと、宝石を拾い上げ、明夜は小さく頷く。
「うん。大丈夫。これが本当のことでも、大丈夫にならなきゃいけないよね」
ふわり、と手の中にあった宝石が姿を消す。カラン、カランと響く鐘の音が二人を誘う。橋が描けたという絵描きの少女からの連絡なのだろう。
「行こう」
そう、告げたのはどちらが先であったか。気がつけば村の中のゾンビたちも皆、姿を消していた。この世界を描く少女だけがひとり、最後に手にした宝石絵の具で世界を描く。キラキラと光る橋は、一つの陰りもなく。カツコツ、と進むフローリアンと明夜が霧の城へと向かおうとすれば、待っていましたとばかりにオブリビオンたちが姿を見せる。無事に妨害者たちを倒せば、ゲームクリア! とやけに明るい声が響き渡った。
「これで終わりみたいだね」
「うん。……あ、橋の向こうが」
賑やかな音楽とともに、城へと向かう扉が開く。振り返れば、宝石絵の具で描かれた村がゆっくりと、光の中に消えていった。亡者の群れを2度と起こさぬように、包み込むように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵