3

⏰バトルオブフラワーズ③～君色染まるは

作者：幾夜緋琉

●バトルオブフラワーズ③～君色染まるは
「みんな、このゲーム、知ってるかな？」
　と、双葉・翔は、猟兵達が集まるなりプレイ動画を見せ始めたのは、領土を塗り潰し合う対戦ゲーム。
　誰でも、そのゲームの名前位は聞いた事があるだろうが……何故、そんな動画を見せたのか、というと。
「皆も知っての通り、キマイラフューチャーの世界に現れた６つの『ザ・ステージ』。その一つにこのゲームと同じようなステージがある様なんだ」
「そのステージを支配するルールは『ヌリツブシバトル』。キマイラフューチャーの市街地を模して作られた街並みなんだけど、その壁や床は『闇の様な黒色』に今塗り固められてしまっているんだ」
「そしてこの『闇のような黒色』の効果は、みんなのユーベルコードをオブリビオンに対して効果を無効化させるようで、ダメージを与える事は出来ず、一方で相手からの攻撃は全て通ってしまうという不味い状況を作り出しているんだ」
「でも、ユーベルコード、もしくは皆の持って居る武器とかで直接床や壁を攻撃すると、皆の指定した色に塗り替えられる、という効果がある様なんだ」
「そして、この塗り替えた範囲が一定以上になれば、一度だけだけど皆の本来のユーベルコードでオブリビオンを攻撃する事が出来る様になるんだ！」
「それに、マップの２／３以上が皆によって塗り潰されれば、本来のユーベルコードの攻撃を無制限に行えるようになる。そうすれば、一気に決着を付けることも可能かな？」
「つまり、一定範囲を塗り潰してオブリビオンに攻撃を繰り返すか、或いは敵と戦わずに２／３以上を塗り潰すことを目指して塗り潰しを進め、その後一気に攻撃すれば、この『ヌリツブシバトル』のオブリビオンを倒す事が出来ると思う」
「ちなみに、この『ヌリツブシバトル』のステージに現れたオブリビオンは『バスト・フォーサイス』の様だね。何度も何度も負けてる彼だけど、塗りつぶしステージなら俺様は無敵だ、って意気揚々と仕掛けてくるみたいだから、しっかりと相手して欲しいんだ」
　そして、翔は最後に。
「何にしても、ヌリツブシバトルに勝たない限りは一方的に攻撃を受ける事になるから、取りあえず皆の力で世界を君色に染めてやって欲しい。宜しく頼むね！」
　と、グリモアを手に、送り出して行くのであった。

第1章 ボス戦 『パスト・フォーサイス』

POW   :    来い！俺様の手下どもっ！！質より量で押し潰せ！！ 【相手している猟兵の10倍の数の雑魚キャラ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。 SPD   :    おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ！！！ 【武器を使った怒涛の連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    俺様は逃げるから、後は任せたぞ！俺様ちゃん人形！ 自身が戦闘で瀕死になると【逃げる時間稼ぎ用の巨大パスト君ぬいぐるみ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。 イラスト：ハレのちハレタ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「うーん……なんか大変なことになってるね」
　一面、黒に塗り潰された、目前の市街地を眺め、五條・須久那が溜息一つ。
「そうだな。辺りが黒い内は、あいつの攻撃が必ず通ってしまう、と……」
　出水宮・カガリが顎に手を当てると……対戦相手であるオブリビオン『パスト・フォーサイス』が。
『お前達が亜居て？　なーんだか弱そうな相手だけど、ま、しゃーない、闘ってやるぜ！』
　と双鎌の様な者をぶんぶんと振り回して威嚇。
　そんな、ちょっと自意識過剰なオブリビオンに対し、星川・杏梨が。
「真っ黒く塗り潰された世界、ね。そおんなネガティブな色じゃなくて、もっと明るい色で彩って皆を励ましてあげるわよ」
　クスリ、と微笑んだ彼女、そしてフェル・ドラグニエルが。
「それじゃ、地面に広く攻撃……つまり、こういう攻撃をすればいいんだよね！」
　と、パストにではなく、地面に対して攻撃。
　そして攻撃を受けた箇所が、黒から青色に塗り変わる。
『あっ、何しやがるんだよっ！！』
　と不満そうにパストが叫ぶが。
「確かに……ちゃんと色が切り替わりましたね。つまり相手の手数より多く攻撃すれば良いんだよね？」
「そうだな。速さと数で勝負、といこう。おいで、【しろ】。お前がどれほど美しく速く駆けるか、あれに見せつけてやろう」
　と、須久那に頷きつつ、カガリは【錬成カミヤドリ】で複製した【鉄門扉の盾】を回転させ、周囲の黒い領域にぶつけて塗りつぶし始める。
　ただ、二人の攻撃はパストを無視し、壁、床のみ。
『ああ、この、無視すんなよ！！』
　と怒りちらすが、猟兵達は無視……というよりは。
「この地を光と闇の花で埋め尽くして見せましょう。私が咲かす白と黒の花よ。祝福と災禍を乗せて舞踊れ」
　煌天宮・サリエスも、黒いエリアを真っ直ぐに見据え、花びらを周囲に舞い散らせる。
　白く、瞬く花びら染め上がっていく世界、そしてアマニア・イェーガーも。
「紺碧の海に沈め、リザレクト・パイレーツ！！」
　とユーベルコードによる投影された30m級の古めかしい海賊船を召喚し、それに搭乗。
「さあ沈め、溺れろ、ざっぱーん！！」
　と、更に周囲に海を展開し、海に浸蝕された所を蒼く染め上げていく。
　対して杏梨はバケツやスプレー等を周囲に吹き付けて緑色に塗り潰し、フェルも。
「ほらほら、パスト、私はこっちだよっ！　捕まえたければ捕まえてみなさいっ！！」
　とパストの視界に入るようにダッシュ・スライディング・ジャンプを用い、黒く塗り潰されて居る所に降り立つ。
『ちっ、本当邪魔なんだよ！！　来い！俺様の手下どもっ！！質より量で押し潰せ！！』
　と、70人の雑魚キャラ共を呼び出し、攻撃を嗾ける。
「むっ！　敵の分身！？　でも、分身ごと地面を攻撃すればいい！　さあ、まとめて吹き飛ばすよ！！」
　とニヤリ笑みを浮かべ、そして。
「龍気形成。そして「拡散」！一気にまとめて吹き飛ばす！じゃなかった。青く！青く塗りつぶせ！ドラゴニック…レインッ！」
　と『竜技・龍征雨』を使用。
　ただ、まだ塗りつぶしエリアは少ないようで、敵に効果は及ばない。
　しかしながら、そのユーベルコードの攻撃で、周囲の地面は一気に青く色付かせる。
　そして追いかけてくる雑魚敵達を、アグレッシブな動きで惹きつけていく。
　と……そこまでの仲間達の動きをしっかりと観察していたのは桜雨・カイ。
「これが『ヌリツブシバトル』……聞いた事ありますが、操作は初めてです。取りあえず……周りを塗り潰していけば良いのですね」
　と、作戦を再確認した上で、錬成ヤドリガミを36体錬成。
　12体は、既に周囲を塗り潰したところを守護する様に分散し、一方24体の錬成ヤドリガミ達が、二回攻撃や範囲攻撃を活用し、多くの箇所を塗り潰していく。
　流石に猟兵7人が瞬く間に戦場を塗り潰す行動を取ると、パスト一人だけでは防ぎきれない。
『この……や、やめろーーっ！！』
　と喚き散らしながら、塗り替えられた所を塗り替えそうとするが……手数が足りない。
　一刻で一割ほどの領域が塗り潰され、二刻で三割……そして三刻で半分近く。
　防衛するカイのヤドリガミは、パストの雑魚敵達の集団攻撃で少しずつ数を減らして行くが、数が減ればすぐにカイは仲間を追加。
　そして……塗り潰された領域が7割を越えると、微かに塗り潰した領域が輝き始める。
「ん、そろそろユーベルコードが強化され始めた？」
　と、杏梨の言葉。
「その様だね。ならば、一気にユーベルコードで畳みかけるとしようか」
「了解っ☆」
　須久那に頷くアマニア。
　今迄は周囲を塗り潰す為に展開していた青い海を、一気に周囲の雑魚敵達に向けて襲来させる。
　襲い来る波に呑まれていく雑魚敵達。
『っ！！　マジかよっ！！　おい！！』
　流石に一気に周囲の仲間を失い、狼狽するパスト……だが。
「ダメダメ、逃がす訳ないじゃ～ん☆」
　と、更にカルバリン砲を敵陣に一斉掃射。
　その一撃、パストに命中し、其の場から吹き飛んでいく。
　更にその吹き飛んだ先に、すぐさまフェルが素早く接近。
「龍気形成。そして「拡散」！　一気にまとめて吹き飛ばす！　ドラゴニック…レインッ」
　と、更なる『竜技・龍征雨』でパストを攻撃。
『っ……！！』
　どうにか其の場に踏みとどまるが、その腕に多くの傷。
「痛そうですね……ですが、貴方を此処に放置して置く訳にはいかないのです」
　カイはそう言い、念動力で念糸を操り、パストの手足に絡みつかせる。
　大きな動きを封じられた彼がジタバタするが。
「せっかくのゲームなのですから、楽しんでやりたいですよね。今度は普通にゲームをしましょう、ね」
　と静かに宣告。
　そして、カガリの盾【シロ】が、動けないパストにそのまま衝突。
　更に杏梨は、その身を黄金のオーラで多い、意思の力と共に戦闘力を大幅に増強。
　一気に接近した上での、懇志の【スーパー・ジャスティス】の一閃。
　……数多の猟兵の連携攻撃に、もはや虫の息となったパスト。
『く、くそっ……き、きょうはこの位で……っ！！』
　最後の馬鹿力で、絡みついた念糸を引きちぎり、飛び跳ねて逃げようとする。
　が……。
『させませんよ」
　と、須久那が酒杯を念動力で操作し、パストの進路を塞ぐ。
　鎌を振り、どうにか回避するものの……カイの36体の錬成ヤドリガミと、カガミの39体の錬成ヤドリガミ達が、次々とパストに向かって飛来、妨害。
　その数の多さに、対処しきれず……再度地へと降り立つと。
「……さぁ、光と闇の花が咲き乱れる花園へご招待致しましょう」
　と、サリエスが今迄地面に咲かせてきた白い花を、一気にちらせる。
　その花びらは、生命力を奪い、闇の花びら。
　散りし花びらは、上に居るパストの生命力を瞬く間に吸い尽くし、その場に蹲る。
　そして。
「……さあ、そろそろ終わりにしよう……」
　静かなカガリの一言と共に、蹲る彼の頭上から、盾が落下。
『っ……！！』
　眦には一筋の涙を浮かべたパストは、その盾に穿たれ……この『ヌリツブシステージ』から姿を消失するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年05月06日