バトルオブフラワーズ⑥~剣舞の果たし合い
●
銀の色が煌めいた。
鋭く、薄く、速い一閃は刀だ。
「――――」
刀の持ち主は両手でそれを扱い、弧を描く軌跡が宙を舞う。
風切りの音が遅れてついてきた。
「――――」
左から右へ。振り抜く動きに動作を止まるかと思えば、そこでステップ。刀についていくように身をスピンさせる。回る。三回転したところで草履が床を擦り、軽快な音が鳴る。
草履を擦らせながら移動している最中にも刀を回し、下段から上段へ振り上げる。
「――――」
桜色の光が、切っ先に反射した。
●
猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、戦争ですわっ」
ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界は、キマイラフューチャー。六つある『ザ・ステージ』の全てを攻略しないと敵幹部への道が閉ざされたままですわ……」
苦々しく言葉を吐き出した自分に気付いたのか、はっとし、表情を硬くする。
「猟兵の皆さんには、ステージの一つ『ザ・ダンスステージ』に向かってもらいたいんですの」
身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「現場の現状を説明しますわ。『ザ・ダンスステージ』にいるのは、“餅巾着侍”。このステージでは、特殊なルールが設定されていますの」
それはなにか。
「『ダンシングフィーバー』……。これが特殊ルールの名ですわ。たとえ敵を倒しても、敗北条件を満たすと謎の力で追い出され、強制敗北になってしまいますの」
フリップを用意しながら、フォルティナは説明を続ける。
「この戦場の戦闘は、以前のテレビウム・ロック事件で救出したテレビウムたちの画面を通して、キマイラフューチャー中に中継されていますの」
「戦闘中の立ち回りに、ダンスパフォーマンスを披露して視聴者を感動させる事ができれば『フィーバー』が発生して、その攻撃の効果が2~5倍にパワーアップしますわ!」
しかし。
「逆に、フィーバーが発生しなかった攻撃は、その効果が半減以下になってしまいますの……」
つまりどういうことか。
「華麗なダンスによって『フィーバー』を発生させ、強化された一撃で敵を攻撃しなければなりませんわ」
指を全て開き、光を生み出す。
オレンジ色の光はグリモアだ。
「事件の現場近くまではグリモア猟兵である私の能力で、皆さんをテレポートしますわ」
猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「そこから先にいるのは剣舞の達人……。油断なさらぬように」
全員の顔を見渡すと、フォルティナは眉を立て、口角を上げた。
「まぁ皆さんならできますの! 私はそう信じていますわー!」
シミレ
シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
今OPで10作目です。キマイラフューチャーは二回目です。
不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いいたします。
●目的
オブリビオン、『餅巾着侍』とダンスバトルに勝利していただき、それによって高まった攻撃力で攻撃、撃破。といった流れです。
餅巾着侍は剣舞によってフィーバーを狙ってきます。
●説明
ダンス勝負に勝てないと、餅巾着侍への攻撃は威力や命中など諸々が弱体化して難しいです。
●他
皆さんの活発な相談やプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください)
第1章 ボス戦
『餅巾着侍』
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POW : 御澱流・田楽刺し
【長巻を用いた鋭い刺突攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【煮え滾る味噌だれ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 御澱流・チカラモチ
自身の肉体を【つきたての餅めいた形質】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : ちくわと鉄アレイ
【伝説的なニンジャマスター】の霊を召喚する。これは【食べると体力を回復出来るちくわ】や【当たるとダメージを受ける鉄アレイ】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:marou
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ハヤト・ヘミング」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
遠呂智・景明
アドリブ、連携歓迎
剣舞、ね。
刀のヤドリガミとしちゃあ、負けてられねぇな。
腰から二本の刀を抜きつつ舞い始める。
敵の舞いが鋭く、速さが売りなのであれば
こちらの舞は力強く、重厚な二刀流の舞
【2回攻撃】の恩恵で、澱むことなく上から下へ、右から左へ、またその逆へと剣戟を放つ。
一振一振が、仮に敵が近くにいれば致命の一撃。
されど、今の己はただ殺めるための刀ではない。
【殺気】を操りつつ、その舞に軽さを感じさせないようにする。
舐めるなよ、戦場での魅せ方は俺の方が心得てる。
最後は刀を腰に納めふぃにっしゅだ。
住民達からの歓声が届けばそのまま使用UCを発動する。
俺が、勝つ。
●
景明が辿りついたステージにいたのは、やはり事前の情報通り餅巾着侍だった。
ステージ上。バトルの開始位置へ向かうこちらに対し、声が来る。
「やあやあ、我こそは餅巾着侍」
敵は刀の柄頭に手を添えながら、
「――貴殿、名は」
問うてきた。なので、こちらも言葉を返す。
「遠呂智・景明、と」
「景明殿。承った……」
双方が開始位置に辿りついたことで、ステージ全体がその様子を変える。
カメラがせり出し、キマイラフューチャー中に中継するのだ。
「――いざ、尋常に」
勝負の開始と抜刀は同時だ。
●
景明は一気に行った。
敵の舞が鋭く速いならば、こちらは敵よりも力強く、重厚な舞だ。
そうあるためには、どうするか。
「二刀であるか……!」
餅巾着侍が、こちらの選択を言葉として叫ぶ。
今、自分の両手に握られているのは二振りの刀だ。一刀のときよりも動きに機敏さや小回りさに欠けるが、
「――――!」
豪快に行ける。
只振り回すのでなく、二対を一組として一閃を連続させ、繋げていく。
連撃の初手は、左右の鞘から抜刀された際の勢いで上に向かっていった。弧を描く双閃は身体の前で交差し、頂点に達すれば、
「あぁ……!」
重力の加速を乗せた一撃として振り下ろされる。
虎が獲物に飛びかかるが如く豪快な一撃は、ステージの床に激突する際で手首を返し、軌道を一転。右手側へと流れていく動きに合わせて自身の位置も変更する。片足を前に踏み込み、半身の構えとしたのだ。
二振りの刀は下段を横薙ぎに疾走し、しかしやがて再度の上昇を開始する。半身となった腹側を上り、肩の高さでお互いが揃うと、切っ先の向きを前方へと変え、
「ッ――!」
空気の割れる音が響いた。
その音の源は、前方へ突き込んだ刀の切っ先だ。
「……!」
すると、切っ先の前方。離れた位置にいる餅巾着侍が、挙動を不確かにした。
「――舐めるなよ」
届かぬ距離とは解っているこちらの刺突だが、致命の一撃と、そう錯覚するような気迫に気圧され、本能的に回避を選択したのだ。
「――戦場での魅せ方は俺の方が心得てる」
「くっ……! 不覚!」
敵の委縮と、前へと突き込んだ勢い。対演の場においてこの二つが揃えば、取るべき手は攻めの一手だ。
「おぉ……!」
だからそうした。
突き込んだ刃を翻しながら、足は浮かせずに擦り足で踏みこみ、
「――!」
左に払う。そうして左に流れていく力に逆らわず、自身を回す。身体が正面を向く頃には刀が二対の組みを解き、周囲に左右対称の軌跡を描いていった。
澱みなく途切れない動きを、舞と言う。
舞った。
不断の動きがステージ上を駆け巡っていく。上から下へ。右から左へ。それが果たされれば、逆回しの一巡を正確に叩き込む。
ステージの上ではお互いは接触していないが、こちらが踏み込めば、相手が後退る。
身体や刀、舞の全てでこちらの実力を現し、的に送っているのだ。
「お、おのれ……!」
やがて、ステージの淵に追い詰められた餅巾着侍が膝をつく。
「――――」
それを確かめ、刀を両の鞘に収めた。
見れば、周囲に演武を見ていた視聴者たちの興奮した顔がテレビ中継で送られて来ており、自身の身体には力が漲っていることが実感できる。
勝者がどちらかは言葉にせずとも分かった。
「――俺の、勝ちだ」
「天晴れ……!」
不可視の斬撃が、餅巾着侍を襲った。
大成功
🔵🔵🔵
高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってなあ!
スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!
相手は剣舞だって? いいじゃねえか、イカしてる!
俺の一番得意なフラメンコを披露してみっかあ
靴も履き替えて、服も動きやすいように調節して
さぁ! 演じるはかの情熱の国。ここに常夏の日差しを降らせようぜえ!
おれのこの身体で、おれの情熱を表現するんだ!
オーレ!
長い四肢を使って腕の振りや体のひねりも加え演出しつつ
危ないところは「野生の勘」で咄嗟に踏みつつ
とにかく楽しく! 見栄えも考えて! しっかり最後まで踊りきるぜえ
もちろんゲームが終わるまでダンスは絶やさないように
ここぞというときに攻撃できそうなら
『金狼舞踏』で攻撃していくぜえ!
●
「ダンスなら任せてくれよ……!」
諒一朗はステージの上に上がりながら、相手を見る。和装に身を包み、その腰に下げたものは、
「刀か……」
相手を見据え、言う。
「剣舞だって? いいじゃねえか……!」
「忝い」
一礼が返ってきた。
「イカしてるぜアンタ……!」
指を指しながら告げ、思う。
相手は剣技を舞としてこちらに相対するのだ。ならばこちらはどうするべきか。
「おれも、一番得意なものを披露してみっかあ」
靴を履き替え、服も動きやすいように調整する。
そうしていると、言葉が来た。
「お主、名は?」
「おれは諒一朗だ!」
「うむ、諒一朗殿。御相手仕る……」
「ああ、スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!」
今からの勝負を中継するためにカメラがせり出してきた。そのカメラに向かって自分はポーズを決めながら、
「――さぁ!」
言う。
「演じるはかの情熱の国。ここに常夏の日差しを降らせようぜえ!」
想いよ届け、と。
「おれのこの身体で、おれの情熱を表現するんだ!」
ポーズを構え終われば、準備は万端。
叫ぶ言葉は一つ。
「――オーレ!」
情熱の掛け声だ。
それを合図に、勝負は始まった。
●
ステージの上を硬質な音が響いた。固い物で床を打ち鳴らす音だ。
「――――」
音源は諒一朗の足裏だ。靴で床を打ち響かせている。
ステージに響き、散り、しかし一定の間隔で続く音は最初、小刻みで、次第に大きくなり、しかしやがてまた小刻みに戻る。
音の緩急。それを精度高く足裏一つで表現しながら、やがてそれを収めた。
無音。諒一朗の周囲をそれが包み込む。
沈黙を身に纏いながら、ゆっくりと敵に歩みを進め、
「――!」
また打ち鳴らした。先ほどとは違う、激しく、速い。情熱のビートだ。
刻み、その刻んだ音が散るよりも早く次の音を響かせる。それを繰り返していけば、もはや音は途切れず、只々連打の音が場を圧倒していく。
そうして一定のペースを造り上げれば、合わせるように腕を振り上げ、身体の重心を整える。それによって身体の安定感が増せば、さらに激しいステップを刻めるようになる。
だからそうした。
大鳥の翼のように腕を振り広げて、打ち鳴らす。
右に身体を運べば左腕を伸ばして、打ち鳴らす。
左に身体を運べば右腕を腰に当て、打ち鳴らす。
とにかく楽しく……! その気持ちだぜ……!
パフォーマンスなのだ。見ているものの感情を揺さぶるような舞を。その一念で踊る。
いつの間にか、敵は目前だ。
しかし構わず、
「行くぜ……!」
行った。
身体を捻り、その捻りに合わせるように手を打ち鳴らし、踊る。
捻った身体を戻し、その反動によって手を打ち鳴らせば、踊る。
前に足を運べば、手は背面に。後ろに足を運べば、手は前面に。
「皆! 見てるか……!」
こちらは相手の銀閃を直前のところでかわし、相手はこちらのビートを切り裂くように刃を振ってくる。
「おれの踊りを……!」
打って、鳴らして、踊る。
「星は割れても、常夏の日差しはここに振り注ぐぜ……!」
足を打ち、手を鳴らし、身体の全てで踊る。
何もかもが、尽くが情熱の一体だ。
前後左右上下、全ての方向に身体を振り、散る汗すらも自分の手足の延長線上として踊った。
そして、
「――オ――レ!!」
目が覚めるような、快音がステージの上を走った。
片足で締めの一発を踏み込んだのだ。
踏み込んだ先は、餅巾着侍の腹部。そこだ。
しかし、相手も刀でこちらの蹴りを受け止めていた。
「――――」
直後、刀が砕け、餅巾着侍が吹き飛ぶ。
勝負が決したのだ。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
舞踊の求められる戦場とはこの世界らしいといえばらしいでしょうか。
しかし武舞同源なる言葉もあるように、兵法と舞踊は存外共通点も多いもの。
そちらの流儀を以てお相手致そう。
◆戦闘
即興で巾着侍との剣戟を繰り広げるような型演武を披露しましょう。
斬る為の石火の早業ではなく、剣先で円月を描くような優美な線を揺曳させながら、相手の呼吸から拍子、足遣いまで【見切り】、その太刀遣いを少しずつ乱すように緩急を変化させて頂く。
此方は崩す事なく舞い修めの構えを示し、首尾よくフィーバーを得られたならば、そのまま【怪力】を込めた一撃で切り落とすとしましょう。
ふむ、師匠が能楽にも熱心だった気持ちが少し分かったやも知れませぬ。
●
景正はステージの上、そこでせり出してくるカメラを眺めながら思う。
舞踊の求められる戦場、とはこの世界らしいといえばらしいでしょうか……。
「――しかし」
前方。こちらと離れた位置で相対をしている影に、声を投げかける。
「武舞同源なる言葉もあるように、兵法と舞踊は存外共通点も多いもの」
刀を構え、相手を見据える。
「――そちらの流儀を以てお相手致そう」
「――餅巾着侍」
既に抜刀したこちらの意図を読んだ相手も、同じく刀を抜きながら名乗りを上げる。
「鞍馬・景正」
「承った。景正殿」
言葉は、それだけだ。
●
中継カメラが映す映像の中は、常に二人の姿を捕えていた。
片方の演武を集中して映すのではなく、全てのカメラがワンフレームに二人を映しているのだ。
それは何故か。
遠く離れた場所で中継を見ていたキマイラの少年が声を上げた。
「お互いに、斬り合っているの……!?」
画面の中、二人の距離が至近なのだ。
●
景正は舞っていた。刀を携えてだ。
「――――」
眼前。もはやそう言える距離に敵がいる。向こうの手に握られているのも、やはり刀だ。
それらを互いに振うが、
当てず、当てさせず。ですね……。
殺し合いの場ではないのだ。
武を演ずる。その気持ちで行く。また、刀の軌道自体も斬って払い捨てるような、速いものではない。
円月を描くように優美な線を描くそれは、宙を舞うように、踊るように翻っていく。
心を乱さず、その動きを繰り返していけば、澱み無いこちらの動きを鏡として、相手の呼吸や拍子、足遣いなどが解って来る。
踏み込みと共にこちらが突き込み、上へ流れるように刀を運ぶ。そうして、そのまま頂点まで達すれば手首を返し、
「……!?」
ほんの少し足を捌くことで相手の一閃を乱れさせた。
歩法だ。動作に緩急を付けることで、相手の拍子をずらす。
それらが済むころには、自分の刀の鍔が顔横に来ているので、
「――!」
振り下ろす。斜め打ち下ろし、その軌道は袈裟斬りだ。
腕を伸ばして振った延長線上、そこにある剣先に身体が引き寄せられ、しかしその力に逆らわず、足の位置を組みかえていく。
一回転する自身の視界の中、敵がこちらの袈裟斬りを回避するために横へ跳び退ったことが解る。
「……!」
銀弧が追い縋った。先ほどの歩法が緩急の“緩”であるならば、今は“急”だ。
踏み込み、技を繰り出し、相手に思う通りの動きをさせない。
そうして連閃の武を叩き込めば、
「――――」
最早相手は壁際に追い込まれ、指先一つすらも動かせないほど、こちらに“縛られて”いる。
「……見事」
舞い修めの構えを示したこちらへ、敵がその一語を送る。
「……」
自分は頷き、渾身の力を込めた一刀を相手の胴へ見舞った。
納刀。
ふむ……。
踵を返して戻っていく最中、思う。
「師匠が能楽にも熱心だった気持ちが少し分かったやも知れませぬ……」
大成功
🔵🔵🔵
高柳・源三郎
「相手が刀ならわしも刀を使うかのう」【名刀・護狸】を取り出してユーベルコード【源三郎の表の顔】で旅芸人状態になり華麗に踊り出す。普段は人形を使うため刀の扱いはちょっと苦手意識があるが【武器受け・見切り・2回攻撃】で防御優先で踊り隙を見て一撃をお見舞いする作戦で戦う。
●
「ほぉ……刀か。ならわしも刀を使うかのう」
源三郎はステージの上、そこで短刀を取りだした。
「旅芸人の高柳・源三郎じゃ。よろしく頼むぞ」
「餅巾着侍、と。……その短刀、名刀であるとお見受けする」
「おお、解るか。村の名工が送ってくれたものでな。――此度はこれでお相手しよう」
鞘から抜き取り、構える。
そうして、互いの舞が始まった。
普段は人形を使うからのう……。
普段持ち歩いているたぬき人形は、今はステージから離れた場所にある。
刀の扱いには少し苦手意識があるが、旅芸人でもある自分だ。
「――――」
跳躍やステップ、そういった軽業を混ぜて一個の“芸”とした。
それは徐々にという様子だが、次第に餅巾着侍の側へ近づいていき、
「ほれほれ。どうじゃ? んン?」
相手の周囲で舞い、飛び、跳ねる。
「――!」
すると、それがきた。
剣舞だ。こちらの動きを阻害するために、舞に斬撃を乗せて妨害を図って来たのだ。
「ほっほっ、危ないのう」
しかしこちらは慌てることなく短刀でそれを受け止め、刀の上を走らせる。火花が二人の間を散った。
「……!」
敵が、再度の剣筋を披露するが、それも同じだ。刀で受け止め、その勢いすらを利用し舞い、飛び、跳ねる。
相手の動きすらも引き込み、“芸”としていくのだ。
「――!」
剣舞は勢いを増し、こちらを捕えようとする動きの連続だ。しかし自分はそれらの尽くを見切って回避する。
そしてその回避も、
「おおっと……!」
直前と、そう言えるタイミングで行えば、それを見ている観衆は沸き立つ。
剣舞を受け止め、火花で彩り、軽業を用いた回避。
相手の息遣いや拍子、刀を振る一挙手一投足の全てをこちらの“芸”に取り込み、演じていく。
「言ったじゃろう。芸人じゃとなあ」
「おのれ……!」
それを繰り返していけば、相手は焦れ、動きが単調となる。
剣を振り上げ、大振りの一発を見舞おうとしたその瞬間、
「何……!?」
「――こっちじゃよ」
相手の背後に回り、その背へ目がけ短刀を突き込んだ。
『フィーバー』によって強化された一撃は、餅巾着侍の身体に深々と刺し込まれ、その威力を十全に発揮していった。
「不覚……!」
餅巾着侍が、膝をついた。
勝負が決したのだ。
成功
🔵🔵🔴
愛久山・清綱
故郷は割れ、覚えて間もないダンスをやらなければならない。
全く、大変なことになってしまったものだ……
だが、不思議と愉しい。
■闘
先ずは音楽プレーヤーでEDMを爆音で流し、戦場を支配してやる。
音楽が流れたら、シャッフルダンスを披露しよう。
基本はランニングマンとTステップをベースに、ポップコーンや
チャールストンを織り交ぜつつ踊るぞ。
他にも刀の演武や、【ジャンプ】や【ダッシュ】を用いた
アクロバットを披露し、視聴者にアピール。
敵の攻撃は【残像】を交えた回転ランニングマンでかわし、
【カウンター】を決めてやろう。
フィーバーが発生したら【ジャンプ】からの【剣刃一閃】。
音楽が終わるタイミングで、決めたいものだな。
●
清綱は思う。大変なことになってしまったと。
故郷であるキマイラフューチャーが文字通り割れ、そして、
「覚えて間もないダンスをやらなければならない……」
世界の危機だ。ステージに向かうその身にも重圧や、緊張というものを感じる。
だが、不思議と愉しい……
口角を上げ、ステージに上がった。
「……餅巾着侍」
「愛久山・清綱だ」
表情とは裏腹に、名乗りを上げた相手へ淡々とした口調で告げる。
相手は頷き
「…………」
刀の柄頭に手を添えた。
あの刀が鞘から抜かれて、鯉口が鳴れば、それが勝負開始の合図だ。
「――!」
抜いた。しかし、
「……!?」
相手が思う通りの動きが出来たのは、その動作だけだった。
何故か。
「――――!!」
ステージ全体を揺らすような爆音が鳴り響き、餅巾着侍の拍子を崩しているからだ。
空間全てを打撃するような圧を持ったEDMの中、自分はステップを刻んだ。
その場で足踏みするように足を大きく振り上げ、腕の動きも合わせる。ランニングマンだ。
その動きで、ある程度のリズムを取ったら、
「――!」
一気に動いた。足踏みのような動きから、足を外へ大きく投げ出すように。
ポップコーン。その名の通り、その場で弾けるような動きを身体全体で表現していく。
足を折り曲げ、外側へ蹴る。すると蹴った反動で身体を跳ね、やはり逆足も同じだ。
そして刀も……!
流れる動きの中で、刀を抜き放った。刃がステージの照明に煌めく。
そこでステップを変更した。外に弾く様な足をそのまま着地させ、足先の向きを内側へ。既に振り上がっている逆足は力を蓄えるように膝を縮め、
「――!」
地面へ連打していった。速い間隔は反動も軽い。蓄え、次のステップを射出する力とする。
Tステップで揺れる下半身に反して、刀を構えた腕は動かず、剣先がブレることは無い。
徐々に前進していくと、敵に近づくにつれてパフォーマンスも激しく変化させていく。
Tステップからそのままの流れでチャールストンへ。横の動きは前後とその姿を変え、
「――!」
跳躍。手足を大きく広げ、空中で静止したかのように“魅せる”。
意表を突くタイミングで行われたそれは、やはり餅巾着侍のタイミングやリズムを崩し、こちらのペースに持ち込んでいった。
「おのれ……!」
掌握されたペースを奪取しようと、敵が刀を翻し、大上段の構えで踏み込んでくる
特殊ルールでダメージは無いとしても、そのまま振り下ろされればこちらにとって阻害の一撃になることは間違いない。
一刀が、振り下ろされた。
しかし、
「――残像だ」
こちらもそれは予見している。ランニングマンのステップで跳び、身を高速スピンさせれば、敵が捉えるのはその残像だ。
「しっ……!」
敵の背後に回り、下段からの蹴り上げを決める。
「……!」
そうして、上へ吹き飛んで行く敵に向かって、跳躍。
「はぁッ……!」
空中で刀を横薙ぎに一閃した。
「ぐぁあぁあ……!」
敵がその身の一部を断たれ、呻く声を背後にしながら自分はステージに着地し、
「――――」
音楽が終わるのと同時に、納刀をした。
成功
🔵🔵🔴
セシリア・サヴェージ
戦いの動きにダンスを取り入れなければならないとは、少々特殊な戦闘ですね。
騎士の嗜みとして多少【ダンス】の心得はあります。あちらが剣舞を披露するというのであれば、こちらも対抗して暗黒剣を用いたダイナミックな剣舞を披露します。
さらにUC【闇炎の抱擁】で剣に炎を付与して、剣舞と炎舞の融合といたしましょう。【パフォーマンス】の面だけでなく攻撃面の強化にもなりますからね。
●
ステージの上、漆黒の影がある。影は大剣、否、特大剣を携えており、女だった。
セシリアだ。ステージの床に突き刺した剣の柄頭に両手を添えて置いている。
「戦いの動きにダンスを取り入れなければならないとは、少々特殊な戦闘ですね……」
騎士である自分だ。教養や作法、嗜みとして、多少だがダンスの心得はある。
「――剣舞ですか」
声の先、刀を持った和装姿が答える。
「左様。餅巾着侍と」
「セシリア・サヴェージです」
直後、互いに剣を抜き放ち、舞った。
ダンスバトルが始まったのだ。
敵は刀を使った鋭く、速い動きを連続させている。そんな中、こちらの動きは対象的だ。
「はぁっ……!」
自分の身の丈ほどの暗黒剣を振い、力強く舞う。
剣を振れば、空気を切るというより、空間を全面的に押しのける音が響いた。大気の乱流、剣の切っ先でそれが生じた。
あまりにも大きなそれを、舞とするためにある程度の速度で振えばどうなるか。
「――!」
答えは自分の身にかかる力だ。脇を締め、コンパクトな構えで振ったとしても、重心が一瞬の内に大きく変わり、剣先とは逆位置に自身が吹き飛びそうになるのだ。
だから飛んだ。
「おぉっ……!」
床を蹴って跳躍し、弾き飛ばされるように剣の柄に自身を寄せていく。
宙を掻き毟る剣に合わせて、自分もステージ上の位置を四方八方に変えていった。
空中で暗黒剣と自身の釣り合いがとれれば、剣先を起こして自身が着地。靴が床を噛み、しかし勢いがあるので床の上をスキッド。そのままの流れで剣と共に身を回し、やはり跳躍。
重心が、剣側にある場合は空を仰ぐように身を仰け反らせることで釣り合いを確保し、自分の側にあるのならば、母が子の手を引くように剣を抱き寄せ、一体となっていく。
「――――!」
豪快、その一語がステージの上を駆け巡っていた。
そしてそのような流れの中、変化が生まれた。宙を走る剣の切っ先に棚引くものが見え始めたのだ。
風を薙ぐ音だけだった剣に、焦熱の音を加えたそれは火炎だ。しかし、その色は紅ではない。
暗く、闇の色。暗黒の炎が刀身を覆い尽くしていた。
「――!!」
剣と炎の舞の中、それは突然に来た。
力の加圧だ。自身の全てに力が漲っている。
『フィーバー』と、そう言いましたか……。
この場を支配する特殊ルールについて思い出す。
「――招かれざる者よ」
剣舞の最中、一気に距離を詰めた。
速度も、剣も、暗黒の炎も、何もかもが全開。その気持ちで行く。
「――闇に抱かれ骸の海に還るがいい」
轟音が、ステージに鳴り響いた。
成功
🔵🔵🔴
主・役
アバターショータイムでXMA(エクストリームマーシャルアーツ)使いのキャラを憑依。XMAを大雑把に説明すると、古今東西の蹴り技のコンビネーションで構成されたブレイクダンス、映画の殺陣にも使われる便利な格闘ダンスだね。
スタントパーソンも併用したキレッキレッの蹴り技コンボで魅せてしんぜよう。
蹴舞と剣舞、お互いに攻撃がそのままダンスパフォーマンスになるだろう。ならば、相手の動きも盗み攻撃で利用してこちらのXMAの蹴舞をより魅せるまでだよ☆
フィニッシュはクワドラブルツイストキックで派手に決めようか。
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役はこちらの様子を中継してるカメラに向かって手を振りながら、ステージに上がっていく。
「やっほー☆ えにっちゃんだよー! 見てるー?」
全方位のカメラに手を振り終えれば、次に向ける視線の先は一つだ。
「さぁ……。バトル、しようか!」
「餅巾着侍。いざ尋常に……!」
直後、ポーズを決め、叫ぶ。
「――ウィンドガールtheエアトリック☆イッツアショーーータイム♪」
そうして生じるのは一つの人影だ。足の長いシルエットのそれは一度ポーズを決めると、こちらの身体へ染み込んでいくように、その姿を合一させていく。
「――――」
憑依だ。それを果たすころには周囲に音楽が鳴り響いており、勝負の開始を音で知る。
「行くよ……!」
言葉と共に繰り出すのは蹴りだ。風切り音を奏でるほどの速度で繰り出されたそれは連続し、途切れない。
上段狙いの蹴り上げから始まり、身を捻ることで軸足と蹴り脚を入れ替え、中段を連打。弾けるようなその動きから一転、身を低く沈め、足払いを思わせる動きは身を回すことによって二回、三回と続いていく。
連撃だ。そこまで行ったところで、床から跳ね上がる動きでバク宙を決める。両手を地面に着くことで身体を支え、
「――!」
回った。外へ振り出した爪先が周囲を薙ぎ払う様に走り、軌跡が円を描く。
そのままハンドスプリングで身を起こし、体勢を整えると、続く動きもやはり回転だ。しかし方向が違う。
肩から落ちるように身を捻り、重心のバランスを取るために伸脚させる。そうして出来あがるのは、肩を始点とし、身体全てを使ったバレルロールだ。
片足で着地し、続く足と共に膝を屈め、再度、回る。
それらを繰り返して行く先は、
「さぁ、一緒に踊ろうよ……!」
餅巾着侍だ。
接近し、さらに接近していく。
「むんっ……!!」
もはや衝突が必至となった距離で、餅巾着侍がこちらを遠ざけようと一閃を送って来るが、
「――よっと」
宙返り一つでそれを回避し、舞を再開していく。
蹴舞と剣舞。それらは合わさり、一個の演武として昇華されていった。
「笑止……!」
敵はその流れを断とうと斬撃を寄こしてくるが、自分はその剣先に足裏を合わせ、添わせ、力を流していく。
「あなや……!?」
「スタントパーソンってやつさ☆」
「ならばその軽業ごと押し通るのみ……!」
気迫を膨らませた相手が、全力という勢いで攻撃を送って来た。
なので自分も全力だ。
風切りの音を伴った斬撃は、体捌きで躱す。躱した。
最速の一発を狙った刺突は、振った足先で逸らす。逸らした。
フェイントを交えた打撃は、突き込んだ足裏で打つ。打ち払った。
斬撃も、刺突も、打撃も、尽くを蹴り出す一撃で弾く。弾き飛ばした
「――これでフィニッシュだよ……!」
相手の剣の勢いに乗り、宙に浮く。勢いは殺さずそのまま、身を捻る。スピンだ。一回転。
否、
「クワドラブルツイストキック……!!」
四重の回転が乗った抉り込むような一撃が、餅巾着侍を打撃した。
大成功
🔵🔵🔵
劉・碧
なァ、知ってるかい
「舞」と「武」は元々は同じものなのさ
長い歴史の中で「文」と「舞」が融合し
古典舞踊の技法は変型が増えた
即ち動作や身のこなしに加え
趣と精神を表現する所作に重きを置いたという訳だ
蘊蓄を垂れつつ二振りの青龍刀を抜き剣舞を披露
流れる様に繋がれる一連の動きは
水の流れの様にしなやかで
かつ炎の様に力強い
軽快な演奏に合わせて踏まれるパネルの明滅も徐々に速くなれば
剣舞もより技法を凝らしていく
挑発する様に笑みを貼り付けたまま剣を振るえば
それが腕の一部かの様に体に馴染んでいく気がした
さて、大詰めだ
フィーバーを加速させ、強化した一撃を餅巾着野郎の土手っ腹に叩き込む
──古典舞踊なぞと侮ったアンタの負けだ
●
「――なァ、知ってるかい」
『ザ・ダンスステージ』。そこに華やかな声が響いた。
足音を鳴らしながらステージへ向かう姿は、黒の長髪を流した姿だ。
碧だ。
「“舞”と“武”は元々は同じものなのさ」
否、言葉遊びじゃなくてな。と、言葉は続く。
「長い歴史の中で“文”と“舞”が融合し、古典舞踏の技法は変型が増えた」
それは、即ちどういうことか。
「動作や身のこなしに加え、趣と精神を表現する所作に重きを置いたと、そういう訳だ」
流れるように紡がれる言葉と等しく、弛まぬ動きが両手にある。腰に下げた二振りの青龍刀を抜き放つ動きだ。
「――!」
そうして舞の戦いは唐突に、しかし互いに同時というタイミングで始まった。
「古典舞踏? 否、其れが何するものぞ! 我が剣舞の前に並び立つ物無し……!」
向こうは刀、こちらは青龍刀だ。それらを振い、舞っていく。
刀に比べて刃幅が厚く、全体的に大振りな青龍刀は振うのに力が必要だ。今回に至っては二振り。その重量は確かに両手に感じるが、しかしただ力任せに振い、危なっかしく立ち回る無作法はどこにもない。
「――――」
二振りの青龍刀は流れるように宙を走り、刀身がステージの照明を煌々と反射させているのだ。
それはまるで水の流れのようにしなやかで、一連の動きだった。
二対の距離は付かず離れず、常に一定で対象と並行。その様相を保っている。片腕一本の力で天を突き、地を舐めるように滑り、羽ばたく様に両腕を振り被れば、
「はぁっ……!」
翼が大気を打って、前進する。攻勢に出たのだ。
左右から迫る鋏打ちの一撃は、掻き寄せた大気を中央で圧縮させ、周囲に吹き上がらせる。
続く動きは、やはり前進だ。鋏打ちによって自身を掻き抱くようにした両腕をそのまま、スピン。独楽のように回転と前進をしていく最中、腕を解き、上下左右前後、全ての位置を薙ぎ払い、突き込み、切り上げる。
足下、そこでは、こちらの動きに呼応するようにステージの床が赤く明滅を開始している。
「――行くぜ……!」
挑発するような笑みを顔に張り付けたまま剣を振るえば、それが腕の一部かの様に体に馴染んでいく気がした。
そうして、光る床を踏む。踏んだ。
光はこちらの踏み込みに反応し、赤の色が弾けて、周囲にその輝きを強く残した。
踏み込み、弾けて、散る。一連の流れはこれだ。
そうして、明滅は徐々に速くなっていき、床の各所で同様の事が起こる。床のあらゆるところがその存在を赤光で主張し、入力を待っているのだ。
最早、その範囲と明滅の速度は並大抵の踏み込みでは間に合わない。
「おぉぉ……!!」
だから高速で行った。
赤光への足捌きは高速で、ステップは連打だ。
「――――」
踏み込み、弾けて、散った。
しかし、それだけでは終わらない。
踏み込み、弾けて、散るより速く踏み込んで、弾けて散って、散って弾けて、散って散って、やはり続く踏み込みが、赤の残光を纏めて吹き上げた。
「――――」
破片と散る赤光の中、掌中で青龍刀の柄を回し、逆手で握る。
「――我が拳は是正に一撃必倒の凶拳、八極の真髄也」
猛炎という言葉は、燃え盛る炎のことを表す。
火柱と言う言葉は、柱のように高く燃え上がった炎のことを表す。
「――“凶拳八極”」
今、正しくそれがステージの上で生じた。
数多の薄片をまるで波のように引き連れさせ、一息で敵の懐へ踏み込んで掌打したのだ。光の破片は突き込む拳に合わせ敵に流れ込み、
「おのれ……!」
光が、空へと吹き上がった。
「――古典舞踊なぞと侮ったアンタの負けだ」
そう言って、青龍刀を腰に収めた。
決着だ。
ここに、『ザ・ダンスステージ』の完全勝利が実現したのだ。
大成功
🔵🔵🔵