バトルオブフラワーズ⑧〜ブラック・フォレスト
「ご足労頂きありがとうございます」
エルフのグリモア猟兵、アイリス・イルダルヴが君の前で気品のある一礼を見せる。
「キマイラフューチャーで大きな世界の危機とも言うべき事態、バトルオブフラワーズが始まっていることは皆様ご存知かとは思います」
不慣れな手付きで機器を操作し、映し出されるのは真っ二つになったキマイラフューチャーの姿と、その間にあるシステム・フラワーズ、そして6つのステージである。
「あなたがたにはこのシステム・フラワーズを守るステージのうちの1つ『ザ・ペイントステージ』にて、オブリビオン『森主』を討伐して頂きたいのです」
次に映し出されたのは、『ザ・ペイントステージ』上。キマイラフューチャーの街並み、森林リゾート――を、模したものだろうか。本来あるはずの美しく整備された森林の景観はそこになく、ただ暗夜の如き黒色ばかりが不気味に広がっている。
「この黒色のステージ上は『森主』が本来以上に強化されております。そのため、我々猟兵のあらゆるユーベルコードはこの黒色の上では効果を発揮できず、一方的に攻撃されかねません。ですが、報告によればこの黒色の景観は黒以外の色で塗り潰すことによって、敵を強化する能力を打ち消すことができるようなのです」
そういうわけですから、とアイリスがどんと出して来たのはペンキ缶。そして巨大な刷毛や絵筆、ローラー、水鉄砲やらバケツ、ブラシ、果てはペイントブキなどの塗るための道具とペイント弾やペイント矢、ペイントボム、ペイント仕様改造用パーツである。
「これらを用いて我々の色で場を制圧しながら敵と戦って下さい。敵が我々の色の上にいれば攻撃は通ります。当然、敵は自分の有利な黒色の場へと逃げるでしょうが、エリアの2/3以上を塗り潰せば敵を強化する効果が完全に消失するとも予測されています」
敵は塗り返して来ることがないため、塗っている内に敵の優位性は喪われていく。ペンキで塗って制圧し、逃げる敵を追撃し、追い込んだ後に攻撃する。中・長期戦的な戦い方が求められるだろう。
腕に覚えがあれば最初から敵と対峙して、敵の足元を塗り潰しながら敵に打撃を与えていくのもいいだろう。
あるいは直接対決する者たちをサポートするためにエリアの2/3以上を塗り潰すことを優先してから戦うのも良いだろう。
「それから、こちらを」
と言って彼女が出したのは、丸い爆弾のような代物だった。
「ウルトラペイントボム――と呼ばれる物です。猟兵の力でこれを爆発させて広範囲を一気に塗り潰すスーパー塗り潰し攻撃なる手段を取ることができるのですが、いかんせん使用にあたって猟兵一人への負担が大きく……。恐らく、こちらを使ってしまうとオブリビオンを攻撃する余力はもう残らないでしょう」
エリア自体の制圧を急ぐ場合、あるいは、敵を追い込むいざという時に用いると良いだろう。
また、敵は野生化を促す香りを放って、猟兵たちを妨害しようとしてくる。エリア中に落ちている樹の実は使ったペイントを補充できる物もあるが、敵が妨害のために落とした樹の実の場合もある。その樹の実に触れると、美しい森の結界の中に飛ばされてしまい、その中にいると戦いのことを忘れてしまうようだが、自身の故郷を思い出すことによって帰還することもできるようだ。
「あなたがたならば、きっと敵を倒せるでしょう。皆様のお力添えを、どうかお願いします」
三味なずな
お世話になっております、三味なずなです。
こちらはバトルオブフラワーズ⑧『ザ・ペイントステージ』でのボス戦依頼となります。
・場所はキマイラフューチャー『ザ・ペイントステージ』。森林浴やハイキングで有名だった森林リゾート地が再現されたエリアで、黒色に染まってしまっている。
・この黒色の上では敵が強化されてしまい、猟兵のユーベルコードが通用しない。
・エリアを染めている黒色を猟兵たちが任意の色で塗り潰すことで、その上に立つ敵へユーベルコードが通じるようになる。
・足元が塗り潰されると敵は逃げようとするので追撃する。
・エリアの2/3を塗り潰すことができれば、敵が強化される力の全ては失われる。
・敵は野生化を促す香りを放ってこちらを妨害してくる。
・エリア中に樹の実が落ちている。ペイントを補充できる樹の実と、敵がばら撒いた罠が混在していて、罠の場合は結界に取り込まれる。自分の故郷に思いを馳せることで、元のエリアに戻ることが叶う。
以上がOPの要約となります。
また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『森主』
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POW : 自然の猛威
単純で重い【雷槌】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 獣返り
【野生を促す香り】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【凶暴にして同士討ちを誘う事】で攻撃する。
WIZ : 楽園への帰還
小さな【実から食べたくなる誘惑の香りを放ち、実】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【忘却の香りの満ちた森。故郷を思い出す事】で、いつでも外に出られる。
イラスト:クロジ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ロク・ザイオン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
都築・藍火
一つの世界の危機、ここぞ一番の大一番! であれば出陣しなければ武士の名折れでござる!!
拙者はペイント矢を撃ち、あたりを塗って塗って塗りまくるでござる!
されどただ闇雲に塗っても意味は無いでござろう。
この戦、必ず前衛を張るものが居るでござろう。拙者はその前線の後方を塗ることで、相手の逃げ道を塞ぐ、あるいは誘導することで戦の全体を有利に進める【援護射撃】を行うでござる。
先の情報からすれば、敵は足元を予め塗っておけば後衛を攻めてくることは考えづらいでござるからな。常より連射に集中するでござる
もし矢の補充のために実を拾い、罠にかかることがアレばサムライエンパイアの下呂の湯や草津の湯に思いを馳せるでござる
「一つの世界の危機ならば! ここぞ一番の大一番、天王山の戦いにござる!」
黒くなってしまった森林リゾート地に立つのは、弓を携えた武士の少女、都筑・藍火だ。背負われた矢筒がいつもの物と違うのは、きっとその中に入っているのが、鏃の代わりにペイント剤が付いたペイント矢だからだろう。
「であらば出陣せねば武士の名折れでござろうて! 拙者、都筑・藍火と申す者!」
彼女が臨む先には黒の中にぽっかりとある緑。強敵、森主が立っている。わさり、わさりと樹冠を揺らしながら、黒い森の中を巡回しているようだった。
狙うは敵、その後方。敵の逃げ道を予め塗ることで追撃を容易にし、あるいは敵の逃げ道を限定することで誘導するという戦術的な意図だ。
「いざいざ、拙者の弓術の冴えを見るがいいでござる!」
す、と息を吸い込んで、精神の統一を図る。距離は遠く、的は広いものの実際に敵の逃げ道とさせぬほどに遠間から塗りたくるのはいかにも困難なことである。
きゅ、と弦を引き絞る。つがえられた矢は4本。普段の矢とは違って先端が更に重い。射角を常より高く構える。
――風が止んだ。
「――今ッ」
四連、一斉射。山なりに放たれた矢が樹冠の間を縫うようにして落ちていった。
着弾結果を見るよりも早く、藍火は次の矢をつがえて放つ。敵の退路を断つならば、必要なのは面積、すなわち連射量と「攻撃される」という重圧だ。「ここを通ったら攻撃される」。そう思わせる。
狙い過たず、森主の後方にペイント矢が着弾し、カーキ色の弧状の帯が形成された。
にわかに退路を絶たれたことで、森主が浮足立つ。反射的に逃げ道を探すように辺りを見回すが、後方は塗られてしまっている。
「戦場に迷いは禁物にござるよ」
その隙を見落とす藍火ではない。樹の実を拾って強く握ると、それらは細長い形状へと変化して、ペイント矢になった。それをまたつがえて放つ。
敵の混乱している時間は明確な隙だが、その時間は短い。その間にいかに敵の退路を、取れる選択肢を減らすか。つまりそれは時間と連射力の勝負だ。
「次――」
矢を補充しようとまた樹の実へ手を伸ばす――。
――気付けば、そこは緑色の森の中だった。
「……ここは?」
困惑したように、弓を下げて藍火は周囲を見渡す。
緑色の普通の森だ。虫や鳥の鳴き声が響き、木の葉擦れの音が聞こえて来るような、そんな穏やかな森。先の黒色の森とは違った――。
「――黒色の森とは?」
一瞬だけ頭の中に浮かんできた情景に首を傾げる。普通、森は黒くない。そんな森に“最近行った覚えはなかった”。
「否、否。――これは敵の罠」
呆然としていた表情が険しい物へと変わる。黒い森は霞がかって思い出せない。しかし「森に取り込まれたら故郷を思い出せ」という言葉だけが思い出された。
思い起こす。サムライエンパイア。下呂温泉と草津の湯。昼夜問わずに湯気が立ち上り、硫黄の香りが鼻腔をくすぐる。熱い湯は修練で疲れ切った身からスッと疲労を溶かし出す。
「拙者は――拙者には、まだ戦うべき戦さ場がある」
湯に浸かり、星空を見上げながら念じたことだ。強くなる。あらゆる武器を使いこなせるような、そんな武者になりたい。
そのために、彼女は何より戦さ場を必要としていた。
――瞬きの後に、藍火は戦場たる黒き森に戻っていた。
「初心、思い出してござるよ」
拾い上げた樹の実をまた矢にしてつがえる。
敵はすでに混乱から立ち直り、見つけ出した逃げ道へと向かっている。その先、敵の逃走先を見極めて、藍火は更に矢を放つ。先より更に鋭い射撃だ。
「故郷で修練を重ねた弓の腕前、この戦場にて十全に発揮するでござる!」
成功
🔵🔵🔴
西園寺・メア
◎物量の出番ね!(御嬢様特有の高笑い
ユベコで召喚したスケルトン騎士団の武装をブラシやローラーの近接武器に持ち替え
目指すは中央突破、最奥の敵陣まで塗り替えましょう
真っ黒で陰気な森を見違える様を呪詛でユベコを強化しながら物量正攻法でゴリ押し
サポート優先でぬりぬり
色はたぶんハイカラ時々バラ色
「オーッホッホッホッホ!」
逃げる敵を見下ろしながら、高笑いを上げるのは西園寺・メアだ。
「広いエリアを塗り潰す――つまりこれはそう、物量の出番ね!」
古人に曰く「戦争は数だよ兄貴!」と言われている通りだし、手数、リソースの差が勝利への最短の道であるとサムおじさんも言っていた。この事件もまた戦争の一つであれば、物量こそが物を言う。
「蹂躙とはかくあるべき、血も、命も、悲鳴すらも飲み込みただ進むべし!」
であらばこと物量が重視される戦場において、死霊術士たるメアは適任に違いないだろう。
メアの体から昏い何かが吹き上がる。近くにおらずともよくわかるその禍々しさは、間違いなく彼女の死霊たちの発する呪詛に違いない。
死霊の呪詛は地に拡散し、わだかまり、次第に形を得ていく。恨み辛みを口にする呪詛は骨となり。殺せ叩きのめせと殺意を露わにする者は武器の形を。痛い、苦しいと助けを求める者たちは防具となる。
瞬く間に形成されたのはその数、百騎にもなるスケルトン騎兵団だ。呪詛によって強化された彼らが持つのは鮮血の色、薔薇の色をした巨大なブラシ、そしてローラーである。
幻夢騎士団。それが彼らの呼び名である。
『踏破せよ、果ての果てまで!』
そして、最後に呪詛によって作り出されたのは幻夢騎士団団長シェイプである。メアの命令を受け取ると、彼は巨大なローラーを手に、号令と共に疾走を始める。雄叫びと共に横陣を形成したスケルトン騎兵たちもそれに続く。
地を、森を、幻夢騎士団の通り道を尽く赤に染め上げる。それはまるで、高貴なる者を迎える赤絨毯の如く!
「良くってよ、良くってよ! 真っ黒で陰気な森が薔薇色に! さあそのまま陰気なオブリビオンの陣地を奥の奥まで塗り変えて差し上げて!」
口に手を当て、高笑い。視界いっぱいの敵陣が自分の色へと塗り潰されて敵が追い込まれて行く様のなんと愉快なことだろうか!
「逃げても逃げても悪夢(ナイトメア)からは逃げられない。夜のように暗い黒を選んだのは、あなたでしょう?」
成功
🔵🔵🔴
浅葱・シアラ
◎
綺麗な森林を黒く染めちゃうなんて……森主なんて名前だけなのかな……?
黒色なんてシアの趣味じゃないもん、綺麗に塗り替えちゃお!
使用するユーベルコードは「エレメンタル・ファンタジア」
『氷属性』と『雨』を融合して作り出すのは鋭利な氷柱の雨!
ただの氷柱じゃないよ、青いペイントを凍らせたとっておきのペイントアイス!
【高速詠唱】で速く、何度でも発動!
暴走しないように制御も気を付けようね
森主の足元を狙ってはなってどんどん地面を青色に染めていくよ!
青色の地面に敵が立ったら氷柱の雨で一緒に敵も攻撃だ!
ペイントが尽きたら樹の実で補充するよ
もし美しい森林の中に入ったらしばらく見とれるけど故郷を思い出して脱出するよ
黒の森に、青があった。
青髪の妖精だ。黒き森の中で彼女は祈るかのように詠唱する。
「そは――其は、凍りつくもの。北の北より運ばれし風。北風によって祝がれた青」
妖精を中心に青白い魔法陣が展開される。取り囲まれるように一つの魔法陣が広がり、そこから更に二つ、三つ。魔法陣は妖精の詠唱に従って、次から次へと分裂するように広がっていく。
「其は降り注ぐもの。いと高き天、空の彼方より雲より運ばれし青」
地に広がっていた魔法陣が宙に浮く。魔法陣は茂みよりも高く、樹冠を抜けて上空に至る。
それはまさしく――青の雨雲だった。
「空の青は地を青に。――綺麗に青へ、塗り変えて!」
高速詠唱によって多重展開した魔法陣の雨雲が、青の妖精――浅葱・シアラの言葉によって起動する。
天高く、雲から降り注ぐのは尋常の雨にあらず。水より青い氷柱の雨だ。
天より降り注ぐ氷柱は樹冠を突き抜け茂みを掻き分け、地へと至って砕け散る。砕けた氷はその場に青を撒き散らし、黒き地を青で染め上げる。その様はまるで全てが凍てついた冬の如き景色だった。
シアラは更に詠唱を重ねていく。同じ詠唱を教わった通りに素早く、丁寧に。何度も何度も繰り返す。氷柱の雲は詠唱の重なりに応じてその勢力を拡大する。黒へと逃れようとする森主へと迫っていくその様はさながら矢の雨、槍の雨。
「――黒いだけの森なんて、シアはぜったい、イヤだもん!」
頭に浮かぶのは、かつて母親が見せてくれたスケッチブックの一ページ。湖が綺麗な穏やかな森。
たとえこれが模して黒く作り上げられた仮初めの森だとしても。森はこんなに夜のように黒いだけじゃない。
――遂に、氷柱の雨が森主に追い付いた。氷柱の青は地を塗り、次いで森主を頭上から襲撃する。
しかし、同時に魔力も限界に近付いていた。森主へ傷を負わせながらも、氷柱の雨は次第に勢力を弱めて止んでいく。沈まぬ太陽が無いように。止まぬ雨が無いように。
ふわりと羽根を羽ばたかせ、上空へと身を躍らせて。敵の逃げて行った方向を見遣る。
眼下の景色は、まるで湖の青のようであった。
成功
🔵🔵🔴
三咲・織愛
◎
黒色のエリアを塗り潰していけば良いのですね
樹の実にはあまり触れぬよう気を付けて参りましょうか
きゅっと髪を縛って袖捲り
さあ、参ります!じゃんじゃん塗っていきましょう!
ふふふ、こういうの好きなんです
燃えて参りますね!
大きなローラーでとにかくコロコロ塗っていきますね!
敵が襲ってくればそのままローラで叩き潰します
手に馴染みますね、このローラー
槍に代わって新しい武器としても良いかもしれません
叩き潰せば血の色も広がってお得です
背を見せて逃げる敵には「ノクティス」を投擲しましょう
普段は近距離戦が得手ですけど、こんな使い方も出来るんですよ?
投げた後は小竜の姿へ、戻ってきなさいノクティス
ローラー作戦再開です!
長い亜麻色髪をきゅっと結い上げ、ボタンを外して袖まくり。
気合充分。どこかその桃色の瞳も楽しげに輝かせながら、三咲・織愛は身の丈ほどもあるローラーを手にする。
「さあ、参ります! じゃんじゃん塗っていきましょう!」
おー、と手を上げると、織愛に付き従う藍色の竜ノクティスも合わせるように小さく鳴き声を上げる。
ローラーに塗布されたペイントは、ノクティスに合わせた藍色だ。上機嫌に、鼻唄さえ歌ってころころとローラーで藍色を塗っていくと、ドラゴンもその鼻唄に合わせて手拍子をするかのように鳴き声を上げる。
エリアは広大ながらも、だからこそ自分の塗っていった場所が一目でわかるのはなんとも達成感がくすぐられるものだ。
それに、塗り歩いて他の猟兵たちが塗って行ったらしき色を塗るのもまた、いつだったかに読んだ童話の一風景のようでこれもまた愉快な気分になるものだ。絨毯のような赤色や、泉のような青。秋の紅葉のようなカーキ色。
「それなら私たちの藍色は何でしょうね。ねえ、ノクティス?」
小さな竜は応じるように一声鳴いて、織愛の頭上をくるりと一周回ってみせる。はて、と首を傾げたが、すぐに見当がついた。星空だ。この暗闇のような黒とはまた違った、星空の藍色だろうと小竜は言いたかったのだろう。
――ふと、不穏な気配を感じた。
視線を向ければ、緑があった。ペイントの色ではない。オブリビオンだ。
「……ノクティス」
少しばかり緊張を孕んだ声で織愛が呼びかけると、小竜も鳴き声で返事をする。
「黒色の上では攻撃が効かない……でしたよね。それなら!」
グリップに力を込めて、織愛は走り始めた。藍色のペイントが跳ねんばかりの勢いで、森主の近くまで向かっていく。当然、それを見逃す森主ではない。幹のように節くれ立った脚を振り回して攻撃してくる。そこへ立ち向かうのがノクティスだ。その小ささとすばしっこさを活かして、森主の注意を逸らすために勇敢にも囮を買って出た。
「そぉれっ!」
その隙を突くように、織愛がローラーをスイングする。藍色のペイントがバシャリと森主の足元を濡らした。森主もようやくそれに気付いてノクティスから注意を織愛へ向けるが、もう遅い。織愛は返す刀でローラーを強く握り込み、森主をしたたかに殴打した。わさり、と森主の葉が揺れる。
「あらあら……。叩き潰せば血の色が広がると思いましたけど、血の代わりに葉っぱが散るだけでしたか……」
しれっと外見に似合わぬやたら物騒なことを口にしながら、残念です、と織愛は吐息しつつも油断せず。追撃の姿勢に入る。
殴打されて転げながらも、森主はこの一帯はすでに制圧されることを悟り、織愛へと背を向け逃げて行く。
「――ノクティス!」
はたして、ノクティスは織愛の伸ばした手へと向かって行った。またたく間にその身を藍色の槍へと変じて手中に収まる。
「普段は近距離戦が得手ですけれど――こんな使い方もできるんですよっ!」
ぐっと藍色槍を大きく振りかぶり、全身を使って投擲する。狙い過たず、ノクティスの槍は森主の背を刺した。
「やりましたね、ノクティス! さあ、ローラー作戦再開です!」
小竜になって戻ってきたノクティスと小さなハイタッチを交わして、織愛はまたローラーを握り締めるのだった。
成功
🔵🔵🔴
ロア・メギドレクス
赤だ。
その赤いペンキをよこせ。
うむ。よい。赤は血肉を想起させる。竜たる余に相応しいな?
此度の余はサポートを引き受けよう。このウルトラペイントボムとかいうやつも預かるぞ。
まずは地道に足元からだ。スタート地点からエリアを塗りつぶして広げていくことを優先するぞ。なるべく迅速に。味方の支援を行わねばな?
補充は妨害の可能性があるゆえ最低限でよい。取り込まれたならば……そうさな。もう誰もおらぬ廃墟を。余の故郷を思い起こすか。
……なれば、余を支配するのは怒りだ。野生化を促す香り?いいだろう。余は獄竜化により半身を竜と為し敵の中枢へと向かってくれよう。必ず殺してやる。咆哮とともにウルトラペイントボムをくらえ!
赤は良い。
赤は闘争本能を掻き立て、血肉を想起させる。
ロア・メギドレクスは竜だ。最古にして最強の恐竜だと――そのように皆に思い描かれていた。化石のヤドリガミたる己に、真なる肉体は既に存在しない。恐竜の血肉の代わりにあるものは、硬質な石と人間としての仮初めの肉体である。
だからこそ、彼は赤を好んだのかもしれない。
気付けば、ロアは森の中にいた。緑の深い森林。
「原生林か」
“懐かしい”とは、思えなかった。
“きっと生前の余はこんな場所を闊歩していたのだろう”と、想像することしかできなかった。
「しかし……はて。なぜこんな場所に来たのだったか」
虫が鳴き、木々のざわめく森の中。確かに心地良くはあるが、どうしてこんな場所まで足を運んだのか見当がつかなかった。思い出そうにも霞がかったように何も思い出すことができない。
するりと、握っていた物が落ちた。
巨大なローラーだ。赤いペイントで染まったそれは、地に落ちて生えていた草花へと赤の飛沫をかける。
「……そうか」
赤。それは闘争の色。血と肉の色。
いかに忘却の香りに満たされたこの森林の中にあっても、彼の闘争本能とその対象を完全に忘れさせるには至らない。
赤いローラーを拾い上げる。
「余は、戦いに来たのだ」
思い起こすのは原生林ではない。荒野や洞窟でもない。
廃墟だ。ところどころが崩れ、歴史的価値を持った品物が並ぶ場所。
そこが彼の故郷に違いなかった。
瞬きの内に、彼は再び森の中へと戻っていた。緑の森ではなく、何もかもが不明なほどの黒の森へ。
「足止めのつもりか? 小賢しいことを」
忘却の森から脱すれば、もう彼を止めるものは何もない。
持って来たウルトラペイントボムへと力を注ぎ込む。遅い。もっと早く、もっと強大な力を注ぎ込まねばならない。
「――余はメギドラウディウス・レックス! 最古最強たる余の足を止めさせようなどというその傲慢不遜な振る舞いは、余への侮辱と知るが良い!」
ロアの本体たる化石が光を放つ。化石に蓄積されていた群衆が思い描いたメギドラディウス・レックスへの想念が人間体へと宿り、その姿を半人半竜のそれへと変える。
恐竜のそれへと変化した足で、地面を踏み締め走り出す。
それは草原をひた走り、獲物へ向かうものではない。生きるための狩りではない。
敵地中枢へと向かうそれは――敵への純然たる殺意によって走らされているものだ。
「オォオォォォォォオオオ――――ッ!!」
雄叫びと共に、恐竜の力が、恐竜への数多の想念が篭められた爆弾が森主へと放り投げられる。
爆裂音と共に嵐の如き爆風が巻き起こり、森主を中心としたその場は赤へと染まった。
赤は良い。血肉を想起させられるから。闘争本能を掻き立てられるから。
そうすればきっと、彼は己が恐竜であるという確信をきっと揺るがぬものへとできる。
「――必ず殺してやる」
大成功
🔵🔵🔵
パーム・アンテルシオ
森主。こんなに早く、また戦う事になるなんて。
…忘却の森の対策は、今度も同じ。手のひらに、自分のことを書いていくよ。
あの過程は、また踏まずに済むのなら、そうしたいけど…ね。
さて、どう戦うかと言えば…
ウルトラペイントボム。戦況を有利にして、みんなを助けるためのもの。もちろん、使わせて貰うよ。
これに、力を込めて爆発させればいいのかな。気の力でも、大丈夫?
目の前で爆発させるより、もっと広範囲を巻き込む場所で、爆発させたいよね。
ユーベルコード…山茶火。
爆発寸前の爆弾を、これで遠くに運んで。ドーン…かな?
事前に範囲を聞いておく事と、手のひらと尻尾にペンキが付かないように。
気をつけないとね。
【アドリブ歓迎】
誰しも思い出したくないことがある。
誰しも覚え続けていなければならないことがある。
思い出したくないことが少ないことは幸福だろう。覚え続けていなければならないことは重責だろう。
思い出したくないことを、覚え続けていなければならないのだとしたら。それは苦しみだ。
「……一度、対策はしたから。戻って来られる自信はあったけどさ」
緑の森から黒の森へと帰還したパーム・アンテルシオは、手の平に書かれた文字へと目を落とす。
『人を助ける』
それは彼女にとって、呪いであり、報いを受ける方法であり、今は亡き血族への手向けであり――そして、罪から逃れることのできる唯一許された手段だった。
「ああ、もう。故郷のことでも書いておけばよかったのに……」
後悔するように口にするものの、それはできないことだとパーム自身よくわかっていることだった。
森主によって吸い込まれた森は、故郷を思い起こすことによって脱出できる。『人を助ける』などという文言から迂遠な連想によって思い出させるのは紛うことなき手間だろう。それでもその手間を経たのは、パームにとってそれが大事なことだから。それこそ、一時の忘却すらも許さないほどに――。
「……やること、やっちゃわないとね」
わさりと九尾から“気”を放出すると、取り出したウルトラペイントボムへとありったけを注いでいく。
そうして全てを出し尽くす前に、パームは更に“気”を分割した。
「陽の下、火の下、炎の運命を動かそう」
言葉と共に、熱が来た。めらめらと燃えるような感覚はあれど、姿は見えず。ぽーんと宙へとウルトラペイントボムを放ってみせると、不可視の炎の腕がそれを受け止める。
「大きく振り被って――」
片目をつむって、よく狙い。ちろりと自分の唇を舐めてから、えいやと声を上げながら、パームは投げる動作をする。それに倣って、炎の腕もウルトラペイントボムを投げた。
遠間で、桃色の嵐が巻き起こった。それはまるで桜吹雪のようで。少しだけ、彼女の胸がスッと軽くなるのだった。
「たーまやー……なんて。ふふっ」
成功
🔵🔵🔴
マリアンネ・アーベントロート
◎
色塗りだなんて楽しそうだっ。
みんなが攻撃に集中できるよう、私はウルトラペイントボムを使ってみようかっ。
スーパー塗り潰し攻撃ってなんだかすごそうだもんね。
塗る場所の狙いは……相手の足元を塗りつぶしても移動されるだけだから、先に相手の周囲をつぶしておこうか。
相手の退路を断つように相手が背にしている側を塗りつぶすよ。
それにしてもこれ、広範囲を一気に塗りつぶすなら爆発させたときに私まで塗られちゃわないかなぁ……?
ま、まあ、これも勝つためだもんね!
落ちてる罠の木の実は誘惑効果があるみたいだから、逆に言えばそれがない物が補充できる木の実なんだろうけど。
誘惑されちゃう前に早めに設置したほうがよさそうだね。
戦争、と言うからにはスペースシップワールドのように
敵がずらずら~!
戦艦がズバーン!
銃がズビャーン!
――というイメージがあったが。
「わぁ~、色塗りだなんて楽しそうっ!」
マリアンネ・アーベントロートはウルトラペイントボムを手に、すっかり色とりどりに彩色された黒い森を見て明るい声を上げる。
実際、直接森主と戦うのでなければ、ただ塗り潰していくだけの比較的平和な作業のように見える。
「相手の足元を塗り潰しても……移動されちゃったらあんまり意味無いよね」
危険だし、あんまり割りに合ってない気がする。それだったら、敵が逃げてきそうな場所を先に塗って退路を断つのが良いだろう。
黒い森は少し近寄りがたい気もするが、身体にペンで『怖くない』と書き込んでやればなんということはない。意気揚々とマリアンネは黒い森の深部へと向かう。
「えーっと、この辺り……かな?」
やはり似たようなことを考える猟兵はいるようで、他の猟兵たちが惹き付けている間に深部で色を塗り潰している者たちもいた。それぞれ思い思いのペイントを使って、けれどせかせかと少し急ぐ様子で色を塗っていた。いつ敵が来るかわからないのだから、当然と言えば当然だろう。
とはいえマリアンネは筆やローラーなどを持って来たわけではない。水鉄砲やバケツも無い。
「それじゃあこれの出番だね!」
持って来たのはただ一つの爆弾――ウルトラペイントボムのみだ。戦闘には参加できなくなるが、広範囲を一気に塗るという意味ではおよそ最も有効な手段だろう。それに、何より「スーパー塗り潰し攻撃」というのがなんだかすごそうだ。一目見てみたいと好奇心がくすぐられるのも仕方ないことだろう。
ウルトラペイントボムへと、光線銃の催眠ビームを宝珠を介して照射する。マリアンネの催眠力は宝珠によって増幅されてウルトラペイントボムへと蓄積され、紺色に染まっていく。
「それじゃあこれで! ええーいっ!」
まだ塗られていない広く黒い場所へと爆弾を投げ付ける。
ところで、ウルトラペイントボムは広範囲を一気に塗り潰すペイントボムである。その範囲は数十メートルに及ぶもので、爆発と同時にペイントを爆風域に飛散させていく。
つまり――
「うわわわわわわあああああああ!?」
中途半端な投擲では、自分も巻き込まれるということだ。
投げて爆発した頃に気付いてももう遅い。飛散するペイントから逃れるように背中を向けるも、爆風に背中を押されるのと同時に紺色のペイントも飛んで来る。
結果、マリアンネは紺色のペイントで全身を染めてしまうのだった。
「ま、まあ、これも勝つためだもんね!」
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎
オーケーオーケー
つまりは塗り替えて、撃滅しろってことだな?
そういうことなら任せておけ
"両方できる"手段があるのさ
久しぶりの自爆ドローン登場だ
爆薬にペイントを混ぜたり、あるいは外付け、あるいはくぐらせて
ペイントを携えたら発進だ!
ドローンの内半分を自爆塗りつぶり専門に
もう半分は直接体当たりしつつ、逃げた先とオブリビオンを塗りつぶすペイント自爆特攻を実行する
逃げる先は【追跡】で捉え続け、回り込むようにドローンを操作する
【地形の利用】ができないかどうか考えなら常に最適なルートを選択する
樹の実は随時拾ってペイントを補充していくが、もし罠を踏んだら
ストリートってクソクソのクソでは?
と思うことで戻る
イージー・プロブレムだ。
ヴィクティム・ウィンターミュートは作戦の概要を聞いてそう判断した。
色を塗り替える。撃滅する。その両方をバランスよくこなすことが勝利への鍵になる。――その戦略は間違いではない。王道だ。
だが、もっとクレバーになれる。もっとスマートにできる。
「超一流はバランスよくなんてやらねえよ。両方一気にやっちまうもんだ」
彼が展開したのは大量のドローンだ。その数、実に二百に迫るほどの大群である。その約半数ほどはペイントボムを提げていた。
「さあて、楽しい楽しいハイキングの時間だ」
いつだって敵地(インジャン・カントリー)をめちゃくちゃに掻き回してやることは楽しいものだ。中途半端なICEで満足して自分は安全圏にいると思い上がっているヤツへのハッキング然り、全ては完璧な計画の元に進んでいて付け入る隙など無いと思いこんでいるヤツへの破壊工作然り。であれば、陣取りゲームだって彼が楽しくないわけがない。
編隊を組んだドローンたちが飛んで行く。向かう先は敵地、森主のいる場所だ。
まず最初に、ペイントボムを搭載したドローンたちが雨あられと急降下して行った。降下地点は森主、そしてその逃走ルートである。
「3、2、1……Ignition!」
逃走するオブリビオンさえ巻き込んで、ドローンたちが自爆していく。自爆と同時に搭載されていたペイントボムも爆ぜて、地形をクールな青色へと染めて行く。爆風のダメージを受けながらも、自分の周囲を塗り替えられたことを悟るや森主は逃げようとする。が、あまりに遅い。
「おっと、待てよ。まだ半分も残ってるんだ、せっかくなんだ食らってけ」
ヴィクティムの操作と共に、残る半数のドローンたちも急降下を始める。いかに森の中とはいえ、ヴィクティムの追跡を逃れることはできない。それどころか、その地形を味方に付けて敵の逃走ルートの予測に使っていたほどだ。
結果として、森主は前後からドローンに挟み撃ちにされ、自爆特攻を食らってしまう。
「よしよし、上出来だな。それじゃあ第二陣の用意でもするか」
樹の実を拾ってペイントボムを作り、新しく用意したドローンへと搭載していく。敵地の塗り替えと敵への攻撃。両方こなせる作戦ではあるが、いかせんドローンが使い捨てであるため用意に手間がかかる上に一度作戦を終えるともう一度用意するのに時間が必要だ。補充を急がなくてはならない。
「そういや、罠の樹の実もあるんだったか」
ペイントをボムへと変えながら思い出したようにヴィクティムは呟く。罠の樹の実を掴んでしまうと、忘却の森へ向かわせてしまうだとか。だが、忘却の森からは故郷を想起すれば戻れるとも聞く。
「なら、問題ねえな。クソみたいなストリートのことなら忘れようたって忘れられねえんだから」
大成功
🔵🔵🔵
月宮・ユイ
◎塗りつぶし……戦闘とはいえ少し楽しそうですね
塗りつぶして存分に戦える場を作ることを優先します。
後で好きにペイント出来る様、色は白寄りのアイボリー
<機能強化>”情報収集・学習力”基に常時行動最適化
”範囲攻撃”<召喚兵装>
飛行ドローン召喚。ペイントボムを持たせ広範囲に飛ばす
破壊されても破壊時爆発し色まき散らせる様にしておく
数使い”早業”の様に塗りつぶしていく。
[マーレ+倉庫]初撃に必要な数ペイントボム持ち込む。不足、追加分は実を拾わせる。
取り込まれても召喚物なら問題なし。中で自爆させるのも有?
最後十分に”力溜め”した『ウルトラペイントボム』を”投擲。念動力・誘導弾”で敵付近で炸裂させる。
戦闘であるのに、少し楽しそうだと月宮・ユイは判断した。それこそ、オブリビオンさえいなければリゾート地を利用した一大イベントと銘打たれていればそれなりの集客を見込めただろう。
だが、いかに娯楽性が高かろうとも戦闘は戦闘であり、戦争に内包される戦いの一つであることに違いはあるまい。だからこそ、月宮・ユイも手加減はしない。
《共鳴・保管庫接続正常》《能力強化指定》
「高度人工知能をオーバークロック。五感処理システムを鋭敏化。テンポラリストレージ指定、共有学習領域に設定」
《設定完了》《対象選択・サイズ設定・共有同調》《指定対象生成・具現》
「武装展開……飛行ドローン。色指定、F8F4E6。量産開始」
召喚したのは小型飛行ドローン群だ。それぞれアームにペイントボムを保持させて、上空へと飛ばしていく。自律行動で地上の状況を判断し、ドローンたちは自分がペイントを撒き散らすために最も有効なポジションへ各々散っていく。
「降下開始」
ユイの号令一下、ドローンたちは一斉に急降下を始める。ペイントボムを切り離し、黒い地面にアイボリーカラーが広がった。
「これはこれで、結構面白いかもしれませんね……」
上空からの観測用ドローンを介して、自分の色を広げていく下界を見ながらユイは少し口元を緩めてしまう。
「おっと、いけない。……最後の仕事をしないと。マキナ、エネルギープールの余裕は?」
『イエス、マスター。ウルトラペイントボムへの充填には充分な量が残っています。しかし、ドローンの維持は不可能でしょう。ウルトラペイントボムを使用すれば第二波以降は難しいです』
「一撃の大きな爆弾を取るか、時間はかかるけど安定するドローンを取るか、ね……」
『レポート。ペイントボム補充用の樹の実を採取させていた帰還中のドローンたちの反応が数機分ロスト。敵の落とした罠の樹の実によって、結界内に取り込まれたものと推測します』
「あー……罠があったねそういえば。マキナ、プールしてたエネルギーをウルトラペイントボムへ充填して。観測機一機分ぐらいは回せるよね?」
『イエス、マスター』
言葉と共に、棺桶型のマキナからウルトラペイントボムへとエネルギーが充填されていく。充填が完了すればユイが手に取り、大きく振り被る。
「マーレ起動。座標把握。……よし、あそこだね。よいしょ、っと!」
投擲。念動力でブーストされたウルトラペイントボムは狙い過たず、観測機で確認されていた敵影へと命中する。
「今度、こういうのは戦いじゃなくて、遊びでやりたいね」
大成功
🔵🔵🔵
白神・杏華
◎
水鉄砲を選んで持っていく
直接攻撃とか戦闘は苦手だけど、こういう陣取りなら頑張れるよ!
影の追跡者の召喚で、安全で敵を視認できる位置に追跡者を配置
私はその視覚情報を元に、森主に出会わないように移動しつつ撃つよ! 少しずつ範囲を広げていこう
「このペイントステージ、大事なのは索敵と見たよ。これならよく見える!」
ある程度塗れたら、フック付きワイヤーで高所に登ってウルトラペイントボムを投げよう。
遠くまで届くこれなら森主の足元に叩きつけても安全! いっけー!
こういった水鉄砲を使った覚えは、さて、いつのことだったか。
ローラーであるだとかブラシであるだとか、色々と馴染み深い物は多かったが。白神・杏華は利便性の高さから水鉄砲を選んだ。
「ちょっとサバイバルゲームみたいだね」
直接森主と対峙する気がないからか、水鉄砲を手にちょっとポーズを決めたりしてみる。本人はカッコイイと思ってやっているようだが、余人からしてみれば微笑ましい光景であろう。
おっと、と我に返る。直接戦闘をするわけではないとはいえ、戦いは戦いだ。自分は陣取りを頑張らなくてはならない。
「それじゃあ、お願いね」
影の追跡者を召還して、森主を追跡させ始める。地形的に黒いこともあって、視認性が悪くいつにも増して目立たない。というか「お願いね」と言ったは良いが本当にその方向にいたかどうかすら怪しいぐらいだった。
しばらく周囲を塗り潰していると、影の追跡者が森主を見つけた。
「あっ、いたいた。場所は……うん、大丈夫そう」
いくらこちらから一方的に陣地を拡大している状態とはいえ、敵地に違いない。加えて言うならここは森。視界が悪く、敵と偶発的に遭遇してもおかしくはない。ゆえに杏華は今回、索敵が重要だろうと考えた。
敵の位置が把握できたなら、もう恐れる物はないだろう。水鉄砲のトリガーを引いて、どんどん黒い地を自分の色に染めて行く。地道な作業に違いはないが、これはこれで楽しいものだった。
「あ、この樹良いかも……」
途中、森の中でも一際背丈の高い大樹を見つけた。杏華はフック付きロープを取り出すと、勢いを付けて枝に引っ掛ける。何度か強く引いてみて、問題ないと判断したらラペリング開始だ。幹に足を掛けて、するりするりと登っていく。気分はもう特殊部隊員だったことだろう。
「うん、よく見える!」
樹上から一望すると、森の様子がよく見えた。これで黒くさえなければ、なるほどリゾート地に相応しい景観だったであろうことは想像に難くない。
「それじゃあ最後に一発大きいの、頑張るぞ!」
水鉄砲の代わりに杏華が手にしたのはウルトラペイントボムだ。ロープを使ってウルトラペイントボムを括り付け、簡易ブラックジャックに変える。
「いっけぇー!」
ひゅんひゅんと遠心力を溜めて――投擲!
ロープから離れたウルトラペイントボムは、影の追跡者から来る視界情報の通りに森主の近くへと着弾。爆裂して周囲一帯を染め上げた。戦果は上々である。
……その後、ウルトラペイントボムの余波でペイントに塗れた影の追跡者へと、杏華が謝ったとか。それはまた、別のお話。
大成功
🔵🔵🔵
マリアドール・シュシュ
◎
髪飾りは茉莉花の花冠
新緑豊かな森林が…闇色に塗り潰すなんて酷いのだわ(緩く首振り
後で元の色に戻るのなら、マリアも張り切って塗ってしまうのよ!
黄昏から夜の帳を下ろし森のキャンパスに星を降らせるの
マリアも舞うのだわ!
光に包まれた舞台へ
金色と夜空色のペンキ缶を持ち巨大な絵筆で自由に楽しげに描く
リズミカルな歌を口遊む(歌唱
くるんと一回転し花弁のドレスが広がる(パフォーマンス
UC使えたら高速詠唱で【華水晶の宴】使用
30体の一角獣召喚
ペンキ缶を少しぶちまけ、一角獣の足につける
塗り潰しつつ27体で挟撃
3体は護衛に
敵の攻撃は茉莉花の香りと祈りの言ノ葉(こえ)でカウンター
マリアの一角獣さんはみんな仲良しだもの
マリアドール・シュシュの出身もまた、性質こそ違えど森である。
だからこそ、元あったリゾート地をペイントステージ上に模されて作られた土地とはいえ、黒に染まったその森は到底看過できるものではなかった。
「黒いばかりが森じゃないわ。この夜のように黒い森をキャンバスに、マリアが星を降らせてあげる」
手にしたペンキは星を表す黄金色と夜空を表すミッドナイトブルー。夜空だってこんなに真っ暗なわけじゃない。月明かりがある、星明かりがある。これはオブリビオンが降ろした夜の帳へ、本来あるべき星空を描く意趣返しだ。
身の丈ほどもあるような巨大な絵筆を手にとって、まずはミッドナイトブルーのペイントで塗りたくる。
「♪暗きこの夜 静まりて 木の葉ざわめく 森の中
子らは怯える 夜の闇 獣も虫も 土の中」
イヤリング型の拡声器を通して、舞い歌うのは森の民謡。森で暮らす人々の歌。本来はバラード調であるはずのそれを、マリアドールはリズミカルなポップ調へとアレンジして歌う。節に合わせて筆が舞い、ペイントが暗夜の地を夜空の色へと変えて行く。
「さあ、参りましょう一角獣さん。地上に、森へ、星空を落とすマリアをどうか助けて」
歌うように呼びかけて、花水晶の灯籠を振れば光が舞って。そこから現れるのは三十体ほどのユニコーンたちだ。クリスタルでできた身体はいずれも神々しいまでの光沢を放っている。
彼らは蹄に黄金色のペンキをつけて、夜空の上を駆け回る。その姿はまるでペガススのようで、彼らの軌跡には星を表す金色が落ちていた。
そうして塗っていると、折良く――あるいは折り悪く。森主がこちらへ駆けて来るのが見えてきた。どうやらミッドナイトブルーと元の黒との見分けが付かず、こちらはまだ塗られていないと誤解したのだろう。
やにわにユニコーンたちが興奮した様子を見せる。マリアドールはすぐに見当がついた。森主の発する匂いが彼らの野生化を促しているのだ。
「♪ざわめく森に 惑わされないで 怯えないで
昼の緑を思い出して 芳しき花の香りは今も共に」
茉莉花の花冠を外して揺らす。広がるのは魅惑の香り。香りの王とまで謳われたジャスミンの匂いが、歌と、祈りと共に広がって、ユニコーンたちを正気に戻す。
「マリアの一角獣さんはみんな仲良しだもの。あなたの香りなんかでは惑わされないわ!」
マリアの言葉と共に、ユニコーンたちは一斉に駆け出した。鋭利な角を突き付けて、森主へと襲いかかる。
上空から見た者に曰く、ユニコーン達が駆け抜けた後に見えた黄金色の跡は、まるで流星群か天の川のようであったそうだ。
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
◎
塗り潰せと
ペンキは白色で
界離で因果の原理の端末召喚。淡青色の光の、羅針盤の針金細工
手に持ったローラーで床をひと塗り
その後、塗る行為と塗り潰した結果を繋ぎ、目に見える床面全てを白で塗り終わった後に
その方式で床を塗り替えつつ森主を探し追い込む
自身への攻撃は因果を捻じ曲げ森主へ返却
「塗り潰せと」
白いペイントが塗られたローラーを手に、アルトリウス・セレスタイトは無表情で黒い森を見遣る。
アルトリウスは今までに数多くの戦いを経験してきたが、それでもこのような陣取り合戦のような戦いは不慣れなようだった。
とはいえ原理の支配者たる彼であればやりようなどいくらでもある。ローラーを手に、床をひと塗り。この「塗る」という行為と「塗り潰された」という結果を召喚した端末へと記録する。
端末は「因果」を複写する機能を持つものだ。早い話がコピー&ペースト。行為と結果が記録さえできれば、後は機械的にそれを複写できる。
何度か試しに複写する。針金細工の羅針盤のような端末が、針をくるくると回しながら淡青色の光を発し、周囲の黒を白で塗り潰していく。範囲はそこまで広くはないものの、常に塗り続けることができるため効率的だった。
「探すか」
これならば相手の足元を自分で塗らずとも、羅針盤が自動的に塗ってくれる。手間取らずに敵へ攻撃が加えやすいというのは一つのアドバンテージに違いなかった。
しばらく黒い森の中を歩いて、気配が濃い方へ向かってみると案の定と言うべきか、森主がいた。すでにその身体はいくつもの傷を負っている。恐らく、猟兵たちから逃げきたところなのだろう。
アルトリウスに気付くと、森主は頭の木々をざわめかせ、大きく跳躍した。その樹の幹のように太い足で突如として降って来た雷を受けると、それをアルトリウス目掛けて叩き付ける。
「隙が大きいな」
直撃を避けること自体はそう難しくはないことだ。さっとアルトリウスが身を引くと、雷霆の一撃が黒い地面へ叩き込まれ、黒い破片が周囲に飛び散る。
――きりり、と。羅針盤の針が動いた。
「覚えたぞ」
羅針盤の針が動く。右へ、左へ。森主の着地した足元に白のペイントによって塗りたくられる。そしてその頭上には――雷があった。
避けようとするが、大きな一撃を放った後で機敏に動くことは叶わない。
「返すぞ」
雷を落とすという因果は羅針盤によって記録され、森主目掛けて複写される。
雷鳴。直撃した雷がトドメになったのだろう。森主は倒れると、黒い灰へと変わって行った。
「……緑が」
黒い灰が散ると同時に、森の色が急速に変容していく。
白や青、赤や黄色。思い思いの色で彩られていた森が、緑へと戻って行った。
「そうか。終わったのか」
ペイントステージ上のこの森は、元々はキマイラフューチャーのリゾート地を模したもの。黒のテクスチャを被せられていた状態だったのだろう。
そして今、黒の大半は駆逐され、守護者であった森主が消滅したことによって、テクスチャが剥がれて模倣先と同じ緑のリゾート地へとなったのだ。
黒に支配されていたリゾート地は、猟兵たちによって思い思いに彩られ。
オブリビオンが排除されたことで、ようやく自分の色を思い出したかのようだった。
一陣の風と共に緑が揺れて、木漏れ日が愉快そうに踊っていた。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年05月08日
宿敵
『森主』
を撃破!
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