バトルオブフラワーズ⑧〜街は黒。男はメイド。女は執事。
「キマイラフューチャーで、邪悪のリーダーたる『オブリビオンフォーミュラ』が現れたことは知ってるわね? みんなには、敵陣へ乗り込むためのルートを切り開いてもらうわ」
田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)はお気に入りの伊達メガネを取り出すと、さっそくプロジェクターを起動した。
投影されたのは、近未来的なビル街だった。キマイラフューチャー世界ではごく普通に見かけられる街並みだが、人の気配がまったくない。
「目的地は六つの『ザ・ステージ』に守られていて、その全てを制圧しないことには先に進むことができない。その一環として、みんなにはこの街を支配してるオブリビオンを排除してもらいたいってわけよ」
次いで、リモコンを操作すると執事とメイドらしい黒装束の一団が映し出される。
「『フロガステリ家の召使い』たちよ。彼らは現在、街中を『闇のような黒色』に塗りつぶしているわ。仕組みは不明だけど、塗りつぶしが完了してしまうと街が完全に敵の勢力下におかれてしまうみたい。この『黒色』は上から塗り替えることができないから、当作戦は完全敗北ってことになるわ」
単純にオブリビオンを排除していっただけでは勝てない、ということだ。
街中が闇色に染め上げられる前に、どれだけ早く敵を見つけ出し、撃破することができるか。スピードが勝敗を左右することになるだろう。
「敵の方も、猟兵が攻めてくることは察知してるわ。妨害が入ることは承知の上で大規模な塗装を進めていたり、身を隠してコソコソ作業してたり、相手が何かしらの戦略を立てていることを前提に、こちらも策を考えて挑んだほうがいいと思う」
伝えられることは以上、と手早く説明を終えて、ユウナは転送のためにグリモアの準備へと移った。
***
とある高層ビルの屋上。
漆黒の執事服、あるいはメイド服に身を包んだ男女の一団がある。
『猟兵による妨害が予想されます』『淑女には執事服を着せましょう』『各自で適宜対応してください』『殿方こそメイド服を着るべきです』『それでは作業を開始します』
『すべては、フロガステリ嬢の御心のままに!』
彼らは黒い液体の入ったバケツやらモップやらを手に手に、街中へと繰り出していく。
黒姫小旅
どうも黒姫小旅でございます。
此度は戦争シナリオ。一章で完結となります。
街は染めます。敵はコスプレさせます。そんなオブリビオンです。
●特殊な戦闘ルール:クロヌリスレイヤー
街並みを全て黒く塗りつぶされてしまうと【強制敗北】となります。
第1章 集団戦
『フロガステリ家の召使い』
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POW : 「おかえりなさいませ!ご主人さ、あっ···」
【メイドがすっ転ぶと、怒った執事の頭部が羊】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 「おかえり、坊ちゃん。」「おかえりなさいませ!」
【可愛く声援を送ってくれる銀髪の少年】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 「フロガステリ嬢の御心のままに。」
【お盆の上】から【男はメイド服、女は執事服になるミートパイ】を放ち、【どうしてこうなったのかという疑問】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:灰ノ瀬のん
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
六道・紫音
相棒にして恋人のルビィ(f01944)と共闘
なるほど、つまり速さが勝敗を左右するという訳だ。
ならばルビィ、連携して一気にいくぞ!
…ってメイド服!?
ル、ルビィが見たいなら着てやるさ!我が剣に支障はない!
・戦術
『第六感』と『見切り』を駆使した気配探知により敵の居場所を探り、『ダッシュ』で一足飛びに駆ける《縮地》にて素早く距離を詰める。
「斬る!」
そして射程に捉えたら『鎧無視効果』で弱点を狙い『怪力』を発揮して膂力を高め『早業』で極限まで剣速を早めた【裏奥義《虚》】を『残像』を伴いながら次々に繰り出し敵を素早く斬り捨ててゆき、撫で斬りとする。
「俺達を前に、逃げられるとは思わぬ事だ」
※アドリブ歓迎
ルビィ・リオネッタ
相棒にして恋人の六道紫音(f01807)と一緒に戦うわ
シオンのメイド服!?
そんなの嫌……あら?嫌でもないかも?
むしろ見てみたいわ、顔綺麗だもの
(なんかドキドキしてきちゃった…)
「か、かわいいっ!」と首に抱きつくわ
アタシは執事服OKよ♪サイズあるかしら?
・戦闘
ええ、シオン。索敵は任せて♪
【空中戦】で空から【視力・聞き耳】で探すわ
黒い場所やビルの影でも【暗視】
【目立たない・暗殺】が売りのシーフの力で相手の行動を読むわね
「シオン!そっちにいるわ!」
逃げるようなら【空中戦・ダッシュ】で先回り
『辻風斬り』でどんどん加速して【先制攻撃・早業・暗殺】でシオンと挟み撃ちして仕留めるわ
「ふふっ、そういう事ね!」
●
一台の車も通らない殺風景な四車線道路を、一組の男女が走っていた。
黒装束の執事とメイド。『黒』の滴るモップを手に持っているが、それを周囲に塗りたくる余裕もない。彼らはなんとか追跡者を撒こうと、狭い裏路地に飛び込んで……
「シオン! そっちにいったわ!」
「ああ」
『っ!?』
彼らの足が止まった。
立ち並ぶビルとビルの狭間の暗い路地に、行く手を塞ぐ影がある。
背の高い男だ。役者といっても通用しそうな二枚目だが、それにしては雰囲気が鋭すぎる。
「俺達を前に、逃げられるとは思わぬ事だ」
長身の美丈夫、六道・紫音(剣聖・f01807)は音もなく腰の刀を抜くと、黒装束の二人組へ切っ先を向けた。
「ふふっ、そういう事ね!」
その背後に、追跡者が追い付く。
アゲハ蝶を思わせる薄羽に風のエレメントを纏うフェアリーの少女、名はルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)。
前門の剣客、後門の妖精。
いよいよ追い込まれた執事とメイドは、しかし諦めることなく各々の武器を構えた。
取り出したるは銀の盆。上に乗ってるのは、湯気の立つほかほかミートパイだ。
『食らいなさい!』
投擲されるミートパイ。その正体に気付いたルビィは即応した。
「シオンはアタシが守る!」
ダガーとレイピアに真空の刃を付与して、パイを叩き落しにかかる。
あれが命中したらどうなるか、知ってしまったからには絶対に止めねばならない。
もしも紫音が、無二の恋人が犠牲になってしまったら。想像するだけで……
「……あら? 悪くないかも?」
よくよく想像してみる。ふむ、なるほど。
ミートパイが敵の手を離れてからコンマ一秒、ルビィは即断する。
「むしろ歓迎!」
パイが素通りした。紫音に直撃した。――閃光。
光が収まった後、柴遠の変わり果てた姿を目の当たりにして、ルビィは絶叫した。
「かっわいいぃぃぃぃぃ!?」『ィヤッホォォォォ!!』
なんかメイドも叫んだ。
「……って、何だこの服は!?」
遅ればせながら自身の変貌に気付いた紫音は仰天した。
光に包まれた一瞬で、彼の着物はメイド服へと変わっていたのである。
黒のロングワンピースに白いエプロンとヘッドドレス。フリルなどの装飾は極力抑えた、シンプルで清楚なクラシックメイドだ。
「さすがシオン! 元から顔が綺麗だから、どんな格好でも似あうわね!」
『ふふふ、退かぬ・媚びぬ・省みぬと三拍子そろってる当たりとか、古式ゆかしいワビサビなメイド服がよくお似合いです』
「悔しいけど、認めざるを得ないわ。やるわね、アンタ」
『光栄でございます。よろしければ、お揃いの執事服をどうぞ。人形用に仕立てていたものですが、お嬢さまにはちょうど良いサイズかと』
「あら、気が利くじゃない」
盛り上がるルビィとメイドに、すっごい複雑そうな紫音。
断わっておくが、紫音に女装の趣味とか習慣とかはない。今だって、メイド服なんかさっさと脱ぎ棄ててしまいたいが、あそこまで喜ばれると、こう、無下にはできないというか……。
「…………む?」
ふと気づいた。この場には、もう一人いなかったか?
周囲を見渡すと……いた。
メイドと一緒にいたはずの執事が、気配を殺してコッソリと表通りへ出ていこうとしている。あ、目が合った。走り出した。
「逃がすかっ!」
紫音の体がブレる。
一歩踏み出す。ビルを一つ追い抜く。二歩進む。電柱三本を通り越す。
足の動きと移動距離が合致しない、というか足をどうやって動かしているのかもよく分からない。歩法の極致【裏奥義《虚》】は慣れないはずのスカートでも健在で、あっという間に追いついた。
――追い斬り。
逃げる執事を背中から斬り捨て、紫音は血振るいをくれて刃を鞘に納めた。
そこへ、執事服に着替えたルビィが飛んでくる。
「仕留めたのね」
「ああ。そっちはどうだ?」
「終わったところ」
一度は意気投合したとはいえ、決して相容れることのない敵対者。ルビィの方でも、きっちり決着はつけていた。もし違う出会いをしていたら……なんて、話しだしたらキリがない。
「……それにしても、ねぇ」
と、ルビィは改めて、メイド姿になった紫音を見つめた。
「素敵だわ、シオン。とってもかわいい!」
…………可愛いと言われて喜ぶ性格でもないが。
紫音はため息を飲み込んで、鎖骨のくぼみに顔をうずめてくる小さな恋人を見下ろした。
こんな笑顔が見られるのなら、女装くらい甘んじて受けてもいいかもしれない。
大成功
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テラ・ウィンディア
事前
マップ全体の把握
敵の突入ポイント
効率的に染めるのに足るルート
敵が黒く染めるのにやり辛いポイント(細い路地等)
それらの情報を戦闘知識も踏まえて分析
その結果を他の参加した猟兵にも伝え情報共有
隅とか狭い所とか細かいところは染めるのに難しいよな
それなら…少数精鋭による電撃作戦もやってくるよな
という訳で隅っことか特に黒く染めにくい場所等の予測を立ててそこに布陣
更に…可能な限りそいつらが突入する前にその空間を全霊で「切る」
敵が突入した瞬間
信じていたぞ…お前らが来るのを(ユベコ発動
ああ、そうだ…戦術を組んでくる相手は本当に手強いからな
だから全霊を以て排除させて貰う!
後は二刀にて炎を宿し襲い掛かる!
ディアリス・メランウォロス
フロガステリ家がどのような家柄なのか気になるところではあるが聞いたことがないので気にする必要もないか。
塗りつぶしがどの程度有効なのか試してみたいところだね。
戦いながら砕けた地形は観察しよう。
それで塗られていない部分ができて怒るようなら幸いさ。
寄ってきたら斬り潰そう。
執事の頭が羊になったなら転んだメイドを投げつけてやるのも悪くないかもしれないね。
あまり醜態をさらすと主人の品格が疑われるよ?
呼び出された銀髪の少年はとりあえず斬っておこう。
ミートパイで執事服になったら確かに驚くね、私も着たことはあるので似合うとは思うけどミートパイで台無しだ。
動きはあまり変わらないだろうからなるべく冷静に対処しよう。
●
……自分が敵の立場なら、どう動くか。
テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は思考する。
効率的に街を塗り潰すなら、どんなルートをたどるだろう。作業を行いづらい場所はどこだろう。
情報を集め、知識を動員し、分析……ここだ。
テラが着目したのは、街の東端。ビルの密集地帯がある。高かったり低かったり、四角だったり星型だったり、好き勝手な形状のビルが合わせて14ほど。
この場所が狙い目だと踏んで、結果として予測は正しかったと知ったのは、待ち伏せてから数分後だった。
『なっ……なぜ猟兵が!?』
14あるうちで最も高いビルの屋上に現れたオブリビオンたちは驚愕した。可能な限り気配を消して慎重に移動してきたというのに、まさか会敵するとは思いもよらなかったのだろう。
『どうやって我らの隠密を見抜いた!?』
「別に、見抜いたわけじゃないさ。信じてただけだよ、お前らが来るって」
漆黒の瞳が妖しく光った。次の瞬間。
斬!
空間が『斬れた』。
待ち伏せていたのはほんの数分だったが、テラはその時間を無為に過ごしていたわけではない。
待っている間、虚空に向けて放った幾多の斬撃。それが今、時を超えて顕現し軌道上にある者たちを斬り刻む。
『ぐぁ……』『キャアッッ!?』
初手は完璧。敵方の執事が2割、メイドは3割が急所を断たれて絶命した。
『くそっ! メイド隊、少しでも塗り潰せ!』
『はい、ただいま!』
動揺しながらも、リーダー格らしい執事が指示を飛ばすと、生き残ったメイドたちがバケツを構え、墨汁のような黒い液体を撒き散らそうとする。
「させるか!」
テラは即座にメイドたちの動きを見切り、彼女らを捉える範囲の『斬撃』を呼び出そうとするが……
『あうっ!?』
すっ転んだ。メイドが。全員まったく同時に、だ。
狙ったのなら拍手喝采、集団ドジっ子ハプニングによって斬撃を回避したメイドたちの手からバケツが飛び、『黒色』が辺りに飛び散って……
「後は頼んだ!」
「ああ、任せてくれ」
進み出るはディアリス・メランウォロス(羅刹の黒騎士・f00545)。白髪の女騎士は剣を片手に、力強く一歩踏み込んだ。
ドゥンッ!
迫撃砲が撃ち込まれたかのような轟音と共に、屋上一面のコンクリートが砕けて粉塵が巻き起こった。
舞い上がった瓦礫は散布された液体を遮って、暗黒へと染まりながら落下する。一部は屋上の柵を超えて地表へと落ちていったが、街は完全な無人なので被害を気にする必要はあるまい。
「……ふむ」
ディアリスは足元に転がった瓦礫を拾い上げ、しげしげと眺めた。
感触は普通のコンクリートと同じで、変化したのは色だけのようだ。光沢も何もない純粋な黒。見ていると、深淵なる闇を覗き込んでいるような気分になる。
試しに砕いてみると、芯まで真っ黒に染まっていた。触れても色移りしないし、絵の具か何かで表面だけ塗り潰したのとは、根本的に違うのだと分かる。
物理とか化学とかの範疇ではない、もっと概念的というか……世界の理を外れた力によるものなのかもしれない。
「あるいは、何らかのユーベルコードのような……いや、考えるのは後回しだね」
顔を上げたディアリスの前には、邪魔をされて怒り心頭の執事たちの姿があった。
……実は、怒ってるのかどうかよく分からない。何故なら、頭部が羊になってるからだ。
『メェェェェェェ!!』『Baaaaaa!!』『咩! 咩!』
鳴き喚きながら突進してくる羊頭の執事たちに、奇しくも同じ羊みたいな巻き角を持つ羅刹は愛剣モノケロスを構える。
「私もさるお方に使える身でね。同業者として言わせてもらうが……」
転んだメイドの一人を蹴り飛ばし、執事たちの足並みが乱れたところへ、大上段で踏み込むと、
「無作法なマネをして、主人の顔を汚すな!」
斬り潰す!
豪快な剣風が屋上に巻き起こり、散らばった瓦礫を吹き飛ばした。
「それとも、フロガステリ家とは従者の教育もできないような、程度の低い家柄なのかな?」
振り返った時には、オブリビオンは一人として原形をとどめておらず、静かに消滅していった。
***
「上手くいったな」
テラが満足そうな顔で、両手に持っていた燃える二刀を軽く払って残り火を振り落とすと、ディアリスもうなずいて柵の方へと足を向ける。
「どうやら、今ので最後みたいだね」
厭世的な半眼で街並みを見下ろすが、戦闘の気配は感じられなかった。例の『黒色』に染められた部分はほとんど見受けられず、完全勝利といっても過言ではないだろう。
しかし、気を抜くわけにはいかない。戦争はまだまだ始まったばかりで、これは前哨戦にすぎないのだから。
【END】
大成功
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