バトルオブフラワーズ⑤〜僕らのこどもの国
●introduction
中邨・ゐより(あまそそぎ・f13350)は云う。
「キマイラフューチャーがやべーことになりました」、と。
世界がそこにあったとして。
それが『2つに割れた』ならば――?
それをゐよりは端的に「やべーです」と称した。
「ぱっくりですね」
両手を合わせた幼い少女は首をかしげて「ごりんじゅーです?」と瞬いた。
「いやはや、世界を殺すわけにも参りません。
何とかするためには世界の中枢『システム・フラワーズ』に到達しなくてはならないのです」
ポップでパンクで、それでいて。そんな楽しい世界に突如として訪れた異変。
テレビウム達に伝えられた『メンテナンス』のお知らせ。キマイラフューチャーを救うためにはシステム・フラワーズに到達して『オブリビオン・フォーミュラ「ドン・フリーダム」』を倒すしかない!
あらすじをさもあらすじらしく語るゐよりは「お分かりですね」と続ける。
「我々は強いられているのです」
ふふん、と鼻を鳴らして彼女は言った。
「ここで勝利すべきだと!」
●The stage
システム・フラワーズを護る6つの『ザ・ステージ』。目的地に到達するためにはその6つからオブリビオンを排除しなくてはならない。
ならば、と戦いに乗り出し救いを与えるのが猟兵だが――簡単にいかないのがザ・ステージ。キマイラフューチャーだ。
ザ・ステージにはそれぞれの『特殊な戦闘ルール』が設置されている。
もしも、敵を倒したとしても『敗北条件』を満たせば強制敗北になってしまうのだ。
「なので、僕らはそのルールにのっとるしかないのです」
どん、とゐおりはホワイトボードを指さした。
赤文字でぐるぐると書かれているのはゲーム機で対戦、だ。
コンピュータールームを思わせる部屋は至ってシンプル。まるで学校で教材用にとずらりとならんだコンピューターたちを思わせる。
「このザ・ステージの特殊ルールは『ゲーム対戦』。
実際にゲーム機でオブリビオンとゲーム対戦し、決着しなければ互いに攻撃が通用しねーのです」
ある猟兵が「は?」と小さく声を上げた。
「つまりは、ゲームで1ステージを戦って攻略完了後からが戦闘の本番。
ゲームで勝利していれば戦闘ボーナスがついてより攻略しやすくなるわけですね」
ゲームを皆対戦で使用し、攻略したうえで『オブリビオンを倒さなければ』ならないのだ。
その使用されるゲーム機が――「FPSゲームです」
どどん、とホワイトボードをひっくり返して張られた画面を見せる。
「相手をkillして、戦功を稼いで勝利を収めてくだせー。
5分の戦闘時間でkill数を競い合うって言う至ってシンプルなルールですよ。
順位それぞれにボーナスが着くって感じで」
きょろりと周囲を見回す。ならば、猟兵の数が多ければ総叩き出来るのではないかという声が上がったがゐよりがきょとりとして首を傾げた。
「何言ってるんです。全員で戦ってもらうんで、ゲーム中は皆、敵ですよ」
……一先ずは、友達でも殺してkillを稼いで戦功ボーナスをもらうのが必要なようだ。
「オブリビオンも本気で戦ってくるんですが、戦闘じゃなくっても苦戦しそうでして」
ゲームに強いの?
そう、誰かが聞いたがゐよりは困った様に瞬く。
「いや、うるさいんです」
それは。
「楽しくなると歌って。イライラすると駄々こねて。いるでしょう、ゲームで凄い騒ぐ人。
そーゆータイプなんですね。一先ず、ゴーゴーkill! 殺して点数稼いで、有利に攻略しましょう!」
日下部あやめ
日下部と申します。よろしくお願いします。
●FPSゲーム「ばとる・しゅーたー」
ちょっぴり流行りのPCゲーム。ゲームパッドもゲーミングマウスも色々設置済。
練習時間はなしですセッティングするならどうぞどうぞ!
ばとる・しゅーたーではキャラクターはHN(適当につけてくださってOKです)で表示され、kill数を競い合う事となります。
さり気なくゲームにオブリビオンが混じってます。
全員で1ゲーム。killを競い合い、戦功に応じた順位で戦功ボーナスをリアル戦闘に付けることができます。
(誰かを1位にするぞ!やゲーム苦手だけどがんばるぞ!や寧ろゲーム得意!という情報をプレイングにはご記載ください。)
●ゲーム内連携
個人戦ゲームですがそれ故に連携するのもOKです。オブリビオン一点狙いや、仲間を撃つ!などでもゲーム内なのでなんでもござれです。
【グループタグ】or【名前(ID)】をプレイング冒頭にご記入ください。
例:【なかむら(f13350)】
例:【がおー】
●オブリビオン『アンマリス』
自称亡国のお姫様。壊滅的に歌が下手。耳が痛いのです。
ゲームの腕前はトップシークレット。killが増えると喜んで歌い出し、殺されると駄々をこねて騒ぎ出します。ゲーム中もとてもうるさいのです。
ゲーム後は割と真面目に戦います。戦闘に関してはそれなりに強いので注意は必要です。
戦争ですね!楽しく元気にキマイラフューチャーを護りましょう。
どうぞ、よろしくおねがいします。
第1章 ボス戦
『アンマリス・リアルハート』
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POW : 歌は自信があるぞ、聞いていけ!
【わりと壊滅的な歌声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : ダンスは教養、出来て当然だ!
【躍りながら振り回す剣】が命中した対象を切断する。
WIZ : 私はちゃんとできてる!間違ってるのはそっちだ!
【現実をみないだだっ子モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:さとみ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アンノット・リアルハート」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ブゥンと低い音たててファンが回っている。
コンピュータールームの中でどっかりと腰を据えてコンピューターに向かうのは豪奢なドレスを揺らした淑女であった。
「ルールに則りここはゲームで1度勝負しましょう」
自称は亡国の姫君。そうは見えないほどのこどもじみた活発さ。
ゲームは『こどもの王国』だ。
「あら? 『ゲームを始める』前に敗北宣言かしら。
それも構わないけれど――さあ、どうしましょうか」
画面に映し出されたFPSゲーム。巷ではすこしばかり流行した代物だ。
勝者となる気が満々で高らかに歌い出された音程のずれた流行りのポップス。
遮る様に、あげられたコンピューターのピープ音。
表示された文字列は――
『 プレイヤー 募集中 』
成程、このザ・ステージではこのゲームで決着をつけなければならないのだ。
そうしなくては全ての攻撃が無効化されてしまう。
「手加減はしなくてよ」
それは、此方のセリフ――だろうか?
マユラ・エリアル
ふむFPS
ゲーム検定を受けておけば良かったな
まあ、やれるだけやろう
あ、鉤爪でマウス持ち辛い!
●行動
HNは当然『氷刃』だ!
全員で1ゲーム…ならばまずは勝利を目指させて貰う!
他の猟兵をこっそり後ろから狙って攻撃
こういう時はヘッドショットが良いんだったかな、確か
オブリビオンはおとりに使おう
声が聞こえたらこっそり隠れて、それを狙う猟兵を狙おう
Kill数を稼がないとな
●戦闘
『全力魔法』『属性攻撃』で魔法をブースト
【氷刃展開】を発動し氷の刃を展開
半数をアンマリスの周囲で素早く動かして攻撃を逸らす
残り半数で隙が出来たアンマリスを包囲して一斉攻撃するぞ
さあ、スタイリッシュにキメようじゃないか!
●アドリブ等歓迎
伊織・あやめ
あたし、シューティングゲームってやったことないけど
要するにあたしが味方に殺されれば
その人が後でパワーアップするんだよね
ならば!(がしっとゲームパッドを握る)
あたしは適当に撃ちながらひたすらアンマリスから逃げる!
【見切り】とか【フェイント】とか駆使して逃げる!
逃げる途中で味方に撃ってもらう!
復活したらまたアンマリスの気を引いて逃げる!
騒がしいのならあたしも負けない
やだああああ、もう死にたくなあああいい!!
へろへろになったところで戦闘に入っても
あたし、足手まとい間違いなしだから
隅のほうで七星七縛符が当たらないかやってみてるね
一度でも封じられたらいいんだけど
あー、でも大声出せて楽しかった!
マーリス・シェルスカナ
キマイラフューチャーの世界を救う為にもGameが必要ですのネ。実にキマイラフフューチャーらしくて、神秘的ですネ。
n、あの子…アンマリス、ですカ?
Meは知ってマス、『割と壊滅的な音痴』なオブリビオンでしたネ、何故こんな所二?
(と彼女の方を見る、HN:宇宙の魔女)
(方針)
n~、Meは機敏な動きは苦手ネ、此処は頭脳戦で勝負デス。
地雷とかトラバサミとか、トラップ系の武装と拳銃2丁を装備デス
トラップ仕掛けらラ、アンマリスみたいな子を挑発して誘い込んでBang!、といきたいネ
リアルでは、久しぶりに歌が上達したカ聞いて上げマス、ただし…『アナライズアンドリプロダクション』でガード&カウンターしますケド。
栗花落・澪
【HN:つゆりん】
FPS…友達のプレイ見せてもらった事しかないや…
僕なりに頑張りつつ
いざとなったら味方のキル数に貢献
一度手近な武器を拾いオートAIMかどうかを確認
オート効くならドットサイト系のアサルトライフル銃を使用
適度に隠れたり退く時は背を向けず後退
AIMがオートじゃなければ
こまめに移動しつつ狙撃銃で建物上や物陰から遠距離狙撃
ふえぇ狙うの難しいよぅ
手榴弾落ちてないかなぁ
(最初はふえふえ言いながらとりあえず撃って弾切れとか起こすけど器用なのでコツ掴むのが早いタイプ)
戦闘になったら氷の【全力魔法】で敵の足場を凍結させたり
【催眠歌唱】で集中力を奪う
UCで敵の攻撃の矛先を分身に向ける等の味方支援重視
鳴宮・匡
◆フルイド(f02382)と
◆アドリブOK
お前こういうの得意なんだっけ
俺は……こういうのはしたことなくてさ
普通に銃を撃つのとは勝手が違うだろ?
とりあえず目についたのから撃って適当に数を稼ぐよ
相手がうるさかろうがさして気にはならないし
5分間だろ?
とりあえずその間は集中するさ
◆ゲーム
ゲームに慣れればそれなり以上に巧い部類になります
※学習能力は高く、しばらくやれば馴染みます
◆ゲーム後
剣の射程に入らないよう距離を取って交戦
フルイドは後ろにいてくれ
前には出ないようにな
動作の節目や切り返しの瞬間など
動きを止めざるを得ないタイミングを狙い
【千篇万禍】で狙撃
……やっぱりこっち(実銃)の方が何倍も扱いやすいな
零井戸・寂
◆匡(f1612)と
ん、FPSかい?……まぁ、そりゃね。
ゲームとしては一番親しみあるかな。
……うん、そうだね。リアルとはそりゃ違うよな。(バーチャルで銃握っても兵士にはなれないよな。)
じゃー最初は僕の見てるかい?それで学べばいいんじゃないかな。
……うん、やっぱ筋はいいな、君。
(……ああ、なんか懐かしいな。こうしてタッグでFPS遊ぶの。)
◆ゲーム
熟練ゲーマーかつ最得意分野がFPSなのでかなり強いです
基本的には匡を援護しつつ敵を片っ端から撃ちます
◆ゲーム後
【WIZ】
Firewall:NAVIgation.
敵の攻撃を阻害しつつ匡をサポートしよう。
敵の事ならゲーム内で見てる、癖もある程度わかるよ。
ブク・リョウ
FPSはそこそこ経験があるけど、
このタイトルは初めて遊ぶなぁ。
HNは【ブク】でいっか。
さあ、やるぞー!
まずは武器をゲットしないとね。
ある程度物資を集めたら、
あまり人のいなさそうな場所に籠城させてもらうのさ。
…いやいや卑怯じゃないのさ作戦なのさ。
おれソロだもの。チームで来られたら負けるもの。
もちろん他の猟兵さんから連携を頼まれたなら
喜んでお受けするけどね!
籠城先で見つけた(見つけられた)相手が
猟兵さんなら連携の申し出を。
受けて貰えないなら真剣勝負!
相手がオブリビオンだったなら
他の猟兵さんに場所を伝えつつ
喧しさに耐えながら戦うのさ!
運良く残り1分位まで生き残ってたら、
籠城やめて勝ちにいくよ!
ニコ・トレンタ
こっちこそ負けないわよ。
見てなさいよー…。
ゲームはあまりやらないけど機械を操るのは得意分野。
絶対に負けないわ。
HNは25
狙うのはオブリビオン一点のみ。
ここでは皆が敵だけど他の敵なんか目にも入らない。
あいつ?それともあいつ?
あー、もう!敵か味方か分からない奴が多すぎる!
攻撃なんて食らわな――ちょっと?!?!
今の反則でしょ?!クソッ!
やってやるわよ……敵も味方も関係ないわ。
全員倒してやる…!
方向転換、自分が一番になるつもりで攻撃をして行く
妨害、隠れる、卑怯な手段も多少はね?
十朱・幸也
アドリブなど大歓迎
キャラクターHN:NagiBomb
milkyway77(f01888)と共闘
FPSゲームか、ゲームなんだな?
ハッ、俺の得意分野じゃねぇか任せろ
ゲームがねぇと俺は死ぬ、そのくらいゲームに命賭けてんだよ!
防音ヘッドフォンとか持参して、意気揚々と参戦
……milkyway77って、アイツも来てんのか
良くランキング争いで見掛けてるし、見間違える筈もねぇ
オブリビオンを勝たせる理由はねぇし、共闘すっか
実力はお墨付き、昨日の敵は今日の友ってな
milkyway77を巻き添えにしない距離で爆弾設置
隙あらばミサイルブッ込む、派手に動いてやろうじゃねぇか
混乱した所を近距離で確実に、逃した奴は頼むぜ
彼岸・陽葵
ナギ(f13277)と
ゲームだって?
受けてやろーじゃん
一日20時間はやってるランカーの実力見せてやろーじゃねーの!
HN:milkyway77
FPSネトゲで普段使ってるID
意気揚々とゲーミンググッズ一式持参
ログインしたらすげーIDに見覚えがある奴が居た
通称ナギ、あたしがやってるゲームの有名PL
あたしと負けず劣らずの廃人でよくランキング争ってる
フレじゃないんだけど何度も敵対や共闘したことあるから味方って解った
こいつも猟兵だったんだと思いつつ共闘しよう
ナギがボムを投げ入れ攪乱後に突撃するのを狙撃銃で支援
負けないよ
こちとらゲームに命賭けて人生捨ててんだ!
てゆーかあの姫さんうざー
ここ動物園じゃねーし
ピコン――
コンピュータのゲームチャットに僅かな光が燈る。
NagiBomb>milkyway77?
milkyway77>!
十朱・幸也(鏡映し・f13277)――NagiBomb――は画面上に表示されているその名前をまじまじと見つめた。
ゲームをやって居なくては日々が暗澹に包まれるレベルでダルさましましのゲーマーはFPSゲームをやれると聞いて心を躍らせて来たのだ。
ゲームと言えば得意分野。呼吸をするには1にゲーム、2にゲーム。
そんな彼は防音ヘッドフォンやゲーム用アイテムを全て用意し――愕然とmilkyway77のユーザー名を見詰めていた。
(良くランキング争いで見掛けてるし、見間違える筈もねぇ……。
オブリビオンを勝たせる理由はねぇし、共闘すっか。実力はお墨付き、昨日の敵は今日の友ってな)
そうして心を躍らせる幸也と同様に彼岸・陽葵(仄日ジラソーレ・f01888)もまじまじとその名前を見詰めていた。
ゲームと聞いていても盾も居られない。1日20時間はやっているランカーである陽葵。自称も他称もゲーム中毒、そんな彼女の『憶えがある』名前が通称ナギことNagiBombだった。
陽葵――milkyway77――は自身と負けず劣らずでランキングを争う『廃人PL』の登場に心を躍らせる。
(フレじゃないんだけど何度も敵対や共闘したことある。……こいつも猟兵だったんだ)
まじまじと見つめる陽葵。ナギが何も言わずとも『共闘』の準備は万端だ。
アンマリス>何話してるの? お手元がお留守じゃなくって?
氷刃>ゲーム開始まではまだ時間があるだろう?
ふんわりとしたドレスの裾を丁寧に折り曲げて、腰掛けたマユラ・エリアル(氷刃の行方・f01439)はその青い瞳でコンピュータに表示された内容を追い掛ける。
「ふむFPS……ゲーム検定を受けておけば良かったな。まあ、やれるだけやろう」
ルール説明が流れるコンピュータをじ、と見つめ、続きを確認しようとスクロールしようとし――はっとした様にマユラは自身の手を見遣った。
「あ、鉤爪でマウス持ち辛い!」
「ふふ」
くすくすと笑った栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。丸い橙色の瞳がぱちりと瞬かれ、少女の様な愛らしいかんばせに笑みを乗せる。
「FPS……友達のプレイ見せてもらった事しかないや……でも、一緒に頑張ろうね?」
僕なりに頑張るから、とやる気を見せた澪にマユラは小さく頷く。
実の所マユラの狙いは他の所にあり、ゲーム慣れしていない澪は格好の的なのだが――いざとなれば犠牲になる気の澪とはある意味で相性はいいのかもしれない。
つゆりん>ふえ、武器の操作がわからないよぉ。
手近な武器を拾いオートかどうかを確かめる澪。つゆりんという可愛らしいHNで表示されているのに手にするのはアサルトライフルだ。
武器、という言葉に「ふうん?」と瞬いた鳴宮・匡(凪の海・f01612)。隣のコンピュータに向かう零井戸・寂(PLAYER・f02382)は「FPSか」と画面をじっくりと見遣った。
「お前こういうの得意なんだっけ。俺は……こういうのはしたことなくてさ。普通に銃を撃つのとは勝手が違うだろ?」
「……まぁ、そりゃね。ゲームとしては一番親しみあるかな。……うん、そうだね。リアルとはそりゃ違うよな」
当たり前の様に言う匡。リアル世界で銃を握るその重さは彼にとっては感覚として存在しない。
当たり前を当たり前の様に口にした彼に寂は「ゲームとリアルは次元が違うよ」と淡々と返してはいるが内心、バーチャルで慣れた銃器がリアルのもののように思えて重く感じられた。
「じゃー最初は僕の見てるかい? それで学べばいいんじゃないかな」
「OK」
簡単な操作をレクチャーするという寂に匡は小さく頷いて見せた。前進することや、弾丸を撃ち出す、その簡単な動作をじっくり見つめていた匡が真似て説明画面で動ける範囲をして見せる。
「……うん、やっぱ筋はいいな、君」
「とりあえず目についたのから撃って適当に数を稼ぐよ。
相手がうるさかろうがさして気にはならないし……5分間だろ? とりあえずその間は集中するさ」
やれるだろうという朗らかな声にアンマリスの実に『災魔』らしからぬ声が響く。
「自信いっぱいなの!? そんなのひん曲げてあげるわ!」
きぃ、と拗ねるような少女の声音。騒がしいその声を完全に聞かなかったことにした匡に寂は頬を掻いた。
「負けないよ。こちとらゲームに命賭けて人生捨ててんだ!」
き、と睨み付ける陽葵の声がコンピュータルームに響く。
ゲーム慣れしない者がいれば、ゲームに命を賭ける者もいる。
宇宙の魔女>アンマリス、お静かに。
「ッ――――!!!!」
壊滅的に音痴で、その歌声を響かせて攻撃をする。マーリス・シェルスカナ(宇宙(そら)飛ぶマーリンレディ・f15757)は見知ったオブリビオンの姿に首をきょとりと傾げた。
興味があれば追及する学徒。マーリスはどうして彼女が此処にいるのかと大きな瞳を幾度も瞬かせた。
「キマイラフューチャーの世界を救う為にもGameが必要ですのネ。実にキマイラフフューチャーらしくて、神秘的ですネ。
n、あの子……アンマリス、ですカ? Meは知ってマス、『割と壊滅的な音痴』なオブリビオンでしたネ、何故こんな所二?」
「私のすばらしさをゲームの世界でも広めようと思いましたの!」
大仰な仕草で立ち上がったアンマリス。マーリスは「インターネット上でも歌うのですカ?」とぱちりと瞬いた。
「ゲームで勝利を示し、キマイラフューチャーで私のリサイタルを行えばよろしいんじゃなくって?」
「n……それは~……」
マーリスにニコ・トレンタ(ニゴサンレイ・f05888)は「待って」とゆっくりと立ち上がった。
「私たちは負けないもの。リサイタルなんてないわ!」
25>ゲームはあまりやらないけど機械を操るのは得意分野。絶対に負けないわ。
ブク>このタイトルははじめてだなあ。
「さあ、やるぞー!」と元気よくブク・リョウ(廃品回収者・f08681)が声かける。
ブクの声に大きく頷いた伊織・あやめ(うつせみの・f15726)は「シューティング?」と首を傾いだ。
「そうさ。シューティングと言えばそう言えるかもしれないね」
「ふんふん、武器を手に入れて相手を倒せばいいんだね?」
ブクの説明を受けるあやめ。アンマリスはゲームがそろそろスタートすると勢いよく画面に被り付き、ゲームパッドをぎゅっと握りしめている。
「えっと……」
あやめは説明を見詰め、ブクとニコに説明された通りにヘッドフォンを手にする。
「要するにあたしが味方に殺されれば、その人が後でパワーアップするんだよね」
「そうね。全員敵みたいなものだけれど」
ニコにあやめはこくこくと何度も頷いた。
「ならば!」
そう、確りと宣言して握りしめるはゲームパッド。画面が切り替わり一斉に『stage』が表示される。
まずは武器を。そしてある程度の物資を手にしたならば、ステージ内でも人気がなさそうな廃屋に籠城する作戦を立てたブクは遠巻きに上機嫌で歌いながら近づくアンマリスの気配を感じる。
(ここで静かに潜むのさ。……いやいや卑怯じゃないのさ作戦なのさ。
おれソロだもの。チームで来られたら負けるもの。オブリビオン相手でも隙を探すまでは静かに、そおっと過ごすのさ)
ふと、画面の端が光る。ブクを視点とすればそれはアンマリス側からだ。
ご機嫌な歌声が一気に悲鳴に変わる。グリモア猟兵が言っていた通りそれは『集中を邪魔するほどにうるさい』。
幸也の設置した爆弾。その爆破に合わせて陽葵が動き出す。
銃を手にして陰から進み、先ずはアンマリスの『お留守』の頭を一気に撃ち抜いた。
「てゆーかあの姫さんうざー。ここ動物園じゃねーし」
戦線が一気に混乱し始める。慣れた手つきの幸也がミサイルを発射し続けるそれに合わせて陽葵が前線を押し上げた。
アンマリスを狙う二人の好きを探す様にマユラは『Kill数』の為に猟兵に狙いを定めた。
無論、格好の的であるアンマリスを狙う猟兵たちは多いはずだ。マユラの目的はアンマリスではなく、それを狙う猟兵。
(――Kill数を稼がないとな)
同士討ち? いや、この作戦に同士はいない。
「ふえぇ狙うの難しいよぅ。手榴弾落ちてないかなぁ」
何度かマユラの攻撃を受けながら進む澪。周囲に警戒する澪とは対照的にアンマリスを一点として狙うニコは獲物状態だ。
「あいつ? それともあいつ?」
皆がみんな、敵にしか思えない。ニコはゲームパッドを握る掌に力が込められていく感覚を感じていた。
「あー、もう! 敵か味方か分からない奴が多すぎる! 攻撃なんて食らわな――ちょっと?!?!」
勿論、ランキングが出るのだから周囲は敵だらけだ。ブクが籠城して周辺を警戒するのと対照的なニコはゲームに慣れ、動作が格段にうまくなった匡の的にもなって居る。
「今の反則でしょ?! クソッ!」
叫ぶニコ。その様子を眺めるブクは連携できるかどうかを見定めるようにぎゅっと武器を握り……。
「やってやるわよ……敵も味方も関係ないわ。全員倒してやる……!」
無理だと悟った。
妨害も隠れることも卑怯な手段も何でもござれだと動き出すニコ。
「やだあああ」と大きく叫ぶあやめの声に合わさって「キィッ、どうして死ぬの!」とアンマリスの声が響く。
淡々とKillを増やすゲーマー、幸也と陽葵は共闘しながらもKillを競い合っていた。
「ここにアンマリスがいるよ!」
ブクの声に幸也と陽葵が駆けつける。共闘を申し込めどNGのニコとは真剣勝負で渡り歩くブクは残り時間をちらりと確認する。
「n~、Meは機敏な動きは苦手ネ、此処は頭脳戦で勝負デス」
地雷やトラバサミ、トラップを仕掛けるマーリスのその動きを見失わない匡。寂は「完璧になってる」と小さく呟いた。
「Oh~……」
むむ、と唇を尖らせたマーリス。しかし、トラップに向けて上機嫌で近寄ってくるアンマリスがトラップへと飛び込んだ瞬間を狙うのはお手の物だ。
「あああああああッ! もうッ!」
叫ぶアンマリス。その声に被さる様に「ああっ!」とあやめの悲痛な声が響く。
「やだああああ、もう死にたくなあああいい!!」
騒がしさならばあやめとアンマリスは同じくらいだろうか。
――Game clear!
画面が暗転し、ランキングが表示される。1位、2位にはゲーマーペアの名前が並んでいる。
最下位にあるアンマリスは立ち上がるたびにKillを取られ、ここぞと隙をつこうと近づけばその猟兵は他の猟兵に……と言った有様だ。
「ッ~~~~!!!!」
ダンダンダン、と何度も地団駄を踏むような音がする。
ドレスが乱れるのもお構いなしに立ち上がったアンマリスが「歌って差し上げてよ」と胸を張ったそれにマーリスが首を傾げた。
「久しぶりに歌が上達したカ聞いて上げマス」
勿論、無料で拝聴するなんてことはマーリスはしない。Analyze And Reproduction――その歌声を全て受け止め反射すること位、学びの使徒ならば当たり前だ。
「フルイドは後ろにいてくれ。前には出ないようにな」
「敵の事ならゲーム内で見てる、癖もある程度わかるよ」
Firewall NAVIgation――情報解析にはゲームも立派な手段だ。寂の言葉に匡は小さく頷いた。
『リアル』世界でのランキングボーナス。アンマリスにはそれはひとつも得ることができなかった。
猟兵達の共通認識で『アンマリス』に勝利は与えない――というものだ。一つの的の為に犠牲になる事は在れど、彼女そのものが勝利するには程遠い。マユラはゆっくりと鉤爪を掲げる。氷雪のドレスはふわりと揺れ、氷の属性をその身に宿す。
「さあ、スタイリッシュにキメようじゃないか!」
はためく青。ぱきり、と足元が凍る感覚にアンマリスが顔を上げた。
「ふふ……閉じ込めるよ!」
催眠詠唱でくらりくらりと意識がもうろうとするアンマリスのドレスが重く水分を含み始める。
澪の支援に合わせてあやめは七星七縛符をアンマリスへと届けんと懸命に戦い続ける。
(へろへろになったところで戦闘に入っても、あたし、足手まとい間違いなし……!)
ランキングバフステータスは流石の威力か。アンマリスから感じられる不快感は何処までも低い。
ゲーマー二人がゲーム感覚で重ねた攻撃、そして生まれた隙に寂が「見つけた」と囁くその声音。
「捕らえた」
匡は淡々と銃を構える。
千篇万禍――その目は、戦には慣れていた。
撃ち抜かれたドレスが朱色を混ぜ込んだ。ぐにゃり、と世界が歪んだかと思えば気づけばオブリビオンの姿は掻き消える。
「勝ったのですカ……?」
そうつぶやいたマーリスにニコはゆるりと頷いた。
「あー、でも大声出せて楽しかった!」
ふう、と息をついたあやめ。その言葉に澪も「楽しかったね」と笑みを溢した。
「……やっぱりこっちの方が何倍も扱いやすいな」
その手にやけになじんだ銃を見下ろして匡は小さく呟いた。
この世界――キマイラフューチャー――に起こるいる異変。世界が二つになりました、と言われて『はい、そーですか』と返せるものも少ないだろう。
匡の横顔を見遣ってから寂は小さく息を飲む。
「ゲームみたいに死んだらおしまいだからな、リアルは」
その言葉はバトルオブフラワーズのコンピュータの稼働音にかき消された。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年05月05日
宿敵
『アンマリス・リアルハート』
を撃破!
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