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バトルオブフラワーズ⑥〜今は名も無きダンスを君と

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ

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●とあるネットログ
 ここは楽しいキマイラフューチャー!
 歌って踊って楽しくはしゃごう、お腹が空いたら床をコンコン!
 貴方にいいね、私にいいね!
 みんな笑顔のイカした未来!

 ああ、なんてくだらない。

●ダンスってなんだよ
「皆様、お集りいただきありがとうございます。世界コードネーム:キマイラフューチャーにて、オブリビオンの出現が確認されました」
 シスター服に身を包んだグリモア猟兵が、自分の呼びかけに応じてグリモアベースに集った猟兵達へ語りだす。

「ええ、まあ、はい……割れましたね、キマイラフューチャー」
 先のテレビウム騒動は、キマイラフューチャーの中枢「システム・フラワーズ」からの救援要請であった。
 それに応えた猟兵たちがシステムへと続くメンテナンスルートを開放した結果、なんか割れた。
 比喩でなく、キマイラフューチャーは今、物理的に真っ二つである!!

「というわけで、皆様にはシステム・フラワーズへと急行していただきたいのですが……はい、当然のように怪人どもが邪魔していますねぇ」
 グリモアから映し出されるのは、兎の耳を付けた、暗い表情のバーチャルキャラクター。
 かつてのキマイラフューチャーで放映されていたとある番組、その脇役であったキャラクターだ。

「はい、がっつりオブリビオン化しております。そんな彼女が道を塞いでいるので、皆様に倒していただきたいのですが……」
 ここでグリモア猟兵さん、なんだか困惑したお顔に。

「なんだか、可笑しな事態になっておりまして」
 この戦いは、以前猟兵に救出されたテレビウムの皆様の全面協力の下、各所に生中継である!
 と、ここまではキマイラフューチャーがどんな世界か知っている猟兵なら驚くことでも無い。
 だが。

「何故かダンスで視聴者を感動させると、パワーアップ致します!」
 なんで?

「ついでに、パワーアップできなかった場合は弱体化のペナルティ!!」
 だからなんで?
 その言葉を、優しい猟兵たちはぐっと飲み込む。
 半ばやけくそな勢いで説明する彼女もまた、納得できないご様子なのだ。

「……うん、キマイラフューチャーってこういう世界ですよね。はい、それでご納得ください」
 幸いなことに、立ちはだかるオブリビオンも、かつては主役の引き立て役として設計された身。決してダンスが得意なわけではない。

「まあ、技術を競うわけでもありませんので。ええ、楽しんできてくださいな」
 できることなら、あのうずくまった兎さんも振り回してしまうほどに。

 そんな言葉が小さく発せられて。
 次の瞬間、猟兵たちは、煌びやかなステージと、そこに佇む一人の少女の前へと転送されていた。


北辰
 OP閲覧ありがとうございます。
 テレビウムロックからの戦争勃発、予想していた方も多いのではないでしょうか、北辰です。

●特殊戦闘ルール『ダンシングフィーバー』
 この戦場の戦闘は、テレビウム・ロックで救出したテレビウムの画面を通して、キマイラフューチャー中に中継されています。
 戦闘中の立ち回りに、ダンスパフォーマンスを披露して視聴者を感動させる事ができれば『フィーバー』が発生して、その攻撃の効果が2~5倍にパワーアップします。
 逆に、フィーバーが発生しなかった攻撃は、その効果が半減以下になってしまいます。
 華麗なダンスと戦闘を融合させ、敵を撃破しなければなりません。

 はい、今回はあくまで戦闘ですので、ある程度は攻撃も織り交ぜられると素敵ですね。
 とはいえ、そうするとシステム的な評価が高くなりやすいというだけで、ひたすら踊ってみるのも一興ではないでしょうか。

 ダンスなんて分からない? 奇遇ですね、私もです。
 戦争が起こってもここは愉快なキマイラフューチャー、どうかご自由に身体を動かし、楽しんでいただければと思います。

 それでは、戦争の混乱も兎さんの憂鬱も、まとめて吹き飛ばす貴方の踊りをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『鬱詐偽『ウサギ』さん』

POW   :    どうせ、私は嫌われ者
【自身への好意的 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【陰湿な雰囲気】から、高命中力の【自身への悪印象】を飛ばす。
SPD   :    私に近寄ると不幸になる
【自身でも制御できない近寄らないでオーラ 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    世界に私の居場所は無い
小さな【自身が引き籠った鬱詐偽小屋 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【自身の心象風景が広がる空間】で、いつでも外に出られる。

イラスト:慧那

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アルフォンス・イングロット
アドリブ大歓迎

ハハハ!【ダンス】しながら戦うことになるとはね!
さすがはキマイラフューチャーってところかな

最初はリズムに合わせてステップを踏んで身体を温めようか
おっと、中継もされてるんだったね
つまり視聴者へのパフォーマンスも必要か!

『CooL男's』を使用して数多の僕の幻影を召喚して一緒に【ダンス】だ!
数は力!これだけのイケメン=僕が一糸乱れずにキレっキレ踊る姿で、
視聴者のハートをゲットだ!
もし、攻撃で解除されたら何度も再度使用して踊り続けるさ!

フィーバー?そんなのは二の次だ!僕は僕が楽しむために踊るぞー!
みんなも一緒にLet's go dancing!

最後は天を指差すカッコイイポーズで締めだ!



●トップバッターインダハウス
「ああ、また誰か来たのね……いいわ、すぐに追い返してあげる」
 オブリビオン、鬱詐偽『ウサギ』さん。
 彼女の役目は、メンテナンスルートへとつながるこのステージを死守すること。
 別に、ドン・フリーダムたちに従う義理も無いのだが、いつもヘラヘラしているこの世界の住民たちをねじ伏せ、たたき出すこの立場に、暗い喜びを覚えていたのも事実だ。
 嗚呼、楽しいな。
 そんな風に、陰鬱な雰囲気で笑みを浮かべる彼女が、グリモアによる転移の光の先に見出したのは。

「ハハハ! ダンスしながら戦うことになるとはね!」
 なにかをぶち壊しそうな謎の構えを取りながら現れた男。
 しっかりと整えられた金髪、真っすぐな緑の瞳。
 白を基調とした衣服は、物語の王子がそのまま抜け出してきたかのよう。
 そう、男は。
 アルフォンス・イングロット(残念を身に纏ったイケメン・f06885)はイケメンであった!!!!

 ステージに流れるリズムに身を任せ、ステップを踏みながら髪をかき上げ、鬱詐偽へとほほ笑むアルフォンス。
 どうやら自分が一番乗り、視聴者のハートに火をつけられる大役を任されたわけだ。
 勿論、イケメンたる彼に、そのことに対する緊張などありはしない。
 相対する彼女はオブリビオン、ましてやこの世界の危機ともあれば、キマイラフューチャーの住民であっても、視聴者たちの心には不安が渦巻いていることだろう。

 ならば自分の、イケメンの出番である!
 この身は美の女神に祝福されたイケメン、なれば、その美しき在り方をもって人々の心を明るく照らすのは、もはや義務である。
 フィーバー? 知らない、そんな事。自分はイケメンとして、イケメンなことをしに来たのだ。
 すなわち。

「僕は、僕が楽しむために踊るぞー!」
「戦わないの!?」
 鬱詐偽さんの凄くまっとうなツッコミが響く中、アルフォートが華麗に指を鳴らす。
 瞬時に、アルフォートの周りに降り立つ無数の影。
 白き衣に身を包んだイケメン。
 半裸のイケメン。
 ヒップホップ風の服装で現れる場の空気を読んだイケメン。
 イケメン、イケメン、イケメン。

「えっ……えっ!?」
 そう、現れたのは無数のアルフォート!
 イケメンがイケメンを呼ぶ禁断のユーベルコード【CooL男's!(クールダンス)】により現れた圧倒的イケメン空間の前に、鬱詐偽さんは完全に圧倒されているッ!

「さあ、テレビウムの前の皆も、一緒にLet's go dancing!」
 イケメンが集ったのであれば当然次はダンスの時間だ。
 足を広げた派手な回転、ウィンドミルから始まる一糸乱れぬダンスは、関節を波に見立てたウェーブ等基本の技を交えながら、ダイナミックに繰り広げられる。
 その舞が、なにより、笑顔が視聴者の眼差しを掴んで離さない。

「…………」
 当然、本来であればコレは悪手と言える。
 オブリビオンの目からすれば、ひたすらダンスに集中するアルフォートは隙だらけの敵に過ぎない。
 だけど、その笑顔が、本当に楽しそうに跳ね回り、身体全てを使って感情を表現するその様が、どうにも目を奪われて仕方がない。
 鬱詐偽が、まだオブリビオンでは無かった頃、引き立て役として見つめていた主役たちを思い出す。
 彼らに自分が抱いていた感情は、果たして妬みだけだったろうか――?

「――ッ! さて、キミは見てるだけなのかい?」
 短く息を吐き、天を指差す締めのポーズ。
 激しいダンスで汗を流しながら、それでもイケメンとしてのスマイルを崩さぬアルフォートが、鬱詐偽へと問いかける。
 中継の向こうでは、華麗なダンスに熱狂する視聴者の応援の声が響き渡る。
 間違いなく、ステージの流れは猟兵の側に傾いてきている。

 けれど、それでは駄目なのだ。
 ダンスバトルにしても、イケメンにしても、彼一人だけでは成り立たない。
 競う相手が、ライバルが必要なのだ。
 イケメンはイケメンであるがゆえに、それをよく分かっている。
 ならば彼女とも向き合おう。
 それがイケメンとして生まれた者の義務であれば!

「……いいわ、やってやろうじゃない」
 そのイケメンの矜持が、世界に忘れられたオブリビオンの心にまで火を灯す。
 華麗なダンスと共に宣戦布告をする猟兵と、それを受けて立つオブリビオンの対峙。
 それは、キマイラフューチャーの住民たちに、これから始まるダンスバトルへの期待を抱かせるには、十分すぎる光景だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
キマイラフューチャーがまっぷたつだー!
とっととコンコンを直して、ラーメンが出てくるおうちを取り戻さなきゃ!

【ダンス】勝負だ!
【気合い】の入ったステップでダイナミックに!
カンフーの動きも取り入れて、視聴者に力強さをアピール(パフォーマンス・存在感・誘惑)!
いぇー! みんな見てるー? 私のダンスが世界を救うよ!

敵だから好印象なんて持ってないし、ていこーするから吸い込まれない、近寄らないでオーラなんて空気読まないから知ーらない!
踊る動きのまま敵に近づいて【怪力】で【灰燼拳】だ!
だ、だ、だーん! ってリズムに乗ってパンチだラッシュだ!
遠慮なく踏み込んでぶん殴る!



●カンフー×ダンス
「……って! なんで敵に乗せられてるのよ私は!」
 鬱詐偽さん正気に戻りました。
 いけない、なんか猟兵の爽やかなノリに流されてしまっていた、なんという恐ろしい相手なんだ!
 改めてダンシングの体勢に移るオブリビオンの前に現れる、新たな刺客。

「私は、とっととコンコンを直さなきゃいけない。――そう、ラーメンが出てくるおうちを取り戻さなきゃ!」
 びしぃっと音が聞こえてきそうな勢いで鬱詐偽を指さす少女。
 劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)は、とある雄大な自然の中にたたずむキャンプ場……という設定のリゾート施設に住み着いたキマイラだ。
 その管理センターの、とある個所をコンコンすると出てくるラーメンは彼女のお気に入り。
 あの味を決して、決して失うわけにはいかないのだ――!

「さぁ、行っくぞー!!」
 小さな体が跳ねるように、涼鈴のダンスが今始まる!
 気合十分のダイナミックなステップから、カンフーチックな足技が縦に弧を描くように放たれる。
 低い位置から顎を撃ち抜かんとする蹴りがオブリビオンに躱されれば、そのまま逆立ちの体勢からの回し蹴り、そう、これは格闘ダンス!
 力強いダンスと共に、ステージ一杯に駆け踊る涼鈴はまさに大暴れ!
 年齢に似つかぬ身体の一部も大暴れ!
 あ、今、鬱詐偽さんからのヘイトがぐーんと上昇いたしました事をご報告します。

「いぇー! みんな見てるー? 私のダンスが世界を救うよ!」
 もちろん、テレビウムの前で応援してくれている視聴者への感謝も忘れません。
 戦いの最中であっても、とっても可愛らしい笑顔で手を振ってくれるのがこの少女。
 だけど視聴者は見ていてハラハラ。
 涼鈴の身体を包み込むのは鮮やかな深紅のチャイナドレス。
 結構大胆なスリットが入って、とっても動きやすそうですね。
 で、さっきも言った通り中々ダイナミックに踊るんですよこの子。
 手元の資料を確認するところ、涼鈴ちゃんはちょっと前に13歳になったとか。可愛いですね。

 そんな女の子のスリットの向こうがうっかり画面に映ってみろ、放送事故により中継は中止!
 視聴者の応援が届かなくなった猟兵はオブリビオンに敗北! メンテナンスルームへはたどり着けず、コンコンは失われ、キマイラフューチャーは滅亡するッ!!
 そう、キマイラフューチャーの未来はスリット次第である。
 そのことに気付いてしまった中継担当のテレビウムさん、どうにか映しちゃいけないものから逃れるために、激しく踊る2人に合わせて行ったり来たり。
 彼はもはや、この場の3人目のダンサーであった――!

 そんな戦いなぞ知らぬ両者のダンスはさらに激しく加速していく。
 涼鈴が身体ごと回転しながら掌底を繰り出せば、それを受け止めた鬱詐偽が勢いのまま、社交ダンスのように涼鈴を引き寄せ、投げ飛ばす。
 器用に着地した猟兵のリズミカルなパンチを捌きながら、鬱詐偽はふと疑問を覚える。
 自分へ好意的な感情を持った相手に、強制的に悪感情を植え付け、感情をぐちゃぐちゃにかき混ぜてしまうことで動きを止めるのが自分のユーベルコードだ。
 これが存外に力を発揮する。
 好意的とは、同情、憐みの感情すらも含めるのだ。
 自分の陰鬱な表情を見た連中は、どいつもこいつも上から目線で憐れんできて、自身の力の餌食となった。
 けれど、この少女には、それが通じている気配がない。

 鬱詐偽は知らない。
 今の涼鈴に、そんな感情はありはしない。
 彼女の胸にある唯一の熱い思い、大切なものを守るという、曇りなき意思。
 そう、それは。

「ラーメンは! ぜーったいに、渡さないぞー!!」
「えぇ……!?」
 ――食欲ッ!!
 あまりにも呑気な、けれど子供らしい純粋な叫びに、一瞬オブリビオンの毒気が抜かれる。
 その僅かな隙を、涼鈴は見逃しはしない!
 拳を握り締め、保身なき踏み込みから放たれる華麗な一撃、【灰燼拳】!

「がっ!? なん、て馬鹿力……!」
「む、守られちゃったか……でも! 何度だってやってやるんだから!」
 咄嗟に身体を庇った腕すら突き抜ける衝撃。
 フィーバーの力も得たユーベルコードが、オブリビオンの身体に、確かなダメージを刻み込んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

高鷲・諒一朗
ダンスなら任せてくれよお、ってなあ!
うなれ俺のこの長い脚!
スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!

俺の一番得意なフラメンコを披露してみっかあ
靴も履き替えて、服も動きやすいように調節して
さぁ! 演じるはかの情熱の国。ここに常夏の日差しを降らせようぜえ!

長い四肢を使って腕の振りや体のひねりも加え演出しつつ
危ないところは「スライディング」で咄嗟に踏みつつ
とにかく楽しく! 見栄えも考えて! しっかり最後まで踊りきるぜえ
ここぞというときに攻撃できそうなら
『スカイステッパー』で蹴り上げるぜえ!



●情熱の国から
「ダンスなら任せてくれよお、ってなあ! うなれ俺のこの長い脚! スカイダンサーの真髄を見せてやらあ!」
 今度はなんか暑苦しいのが来たぞ。
 高鷲・諒一朗(ミルザム・f17861)の名乗りを聞いたオブリビオンの率直な感想はこれである。
 しかもアレはまずい、自分の天敵ではないか。
 そう、奴は――。

「くそ、私を食べに来たの!? 返り討ちにしてやるわよ、この狐野郎!!」
「人狼だよ、このやろう!?」
 あ、狐だと思ったら人狼だった。
 いやほら、金髪だしコイツ……ぱっと見狼か狐かって言えば狐じゃない?
 どっちにしろ、狼も兎の敵である! 兎の誇りに賭けて、負けるわけにはいかないのだ!

「さあ、何で来るの? ストリート? カンフー? もう何が来ても驚かないわよ!」
「いい度胸だ……なら俺の一番の得意ジャンル、フラメンコを味わってもらおうか!」
 ふらめんこ。
 なんか聞いたことある、赤いドレスのお姉さんが情熱的に踊る、アレだ。
 足で床を踏み鳴らして良い感じにリズムをとる、アレだ。
 おい、まだ引き出しあるのか猟兵ども、鬱詐偽さんは恐怖した――!

「さぁ! 演じるはかの情熱の国。俺のサパテアード(足さばき)についてこれるかな!?」
 中継の向こうからオーレ! なんて掛け声が聞こえてきた気がする。
 いつの間にかステージの曲調も陽気な太陽の国のものへと変わる。
 あれ、ステージさんそっちの味方なの? 鬱詐偽さんはもう一度恐怖した――!

 長い手足をしなやかに動かす諒一朗のフラメンコが今始まる!
 フラメンコ特有の手の動き、ブラッソはまさに踊りの命、楽しみながら、しかし丁寧に腕を動かしていく。
 その表情は勿論笑顔。ちょっとくらいステップを踏み間違えそうになったとしても、何食わぬ顔で修正すれば問題など無い。
 さあ、この動きを活かしてあのオブリビオンにも攻撃を!

「こ、く、来るなぁーっ!!?」
「なにぃっ!?」
 しかし、放たれるのは圧倒的な近寄らないでオーラ!
 この女、この情熱のフラメンコを拒むというのか!?
 諒一朗は、とある隠れ里の出身だ。
 ダンスも、村の外からやってきた猟兵に教わったものに過ぎない。
 しょせん、生まれながらのバイラオールでない自分には、フラメンコの真のパッションは体現できないとでもいうのだろうか……?

 ――否!
 耳を澄ませ、己の魂に問いかけろ。
 自分の中から湧き出る、このカンテの響きがある限り、自分はこの情熱に突き動かされるままに踊り続けるのみである!!
 その意思を貫くべく、彼の持つ奇跡、ユーベルコードもまたうなりを上げる!

「あ、諦めなさいよ……このオーラがある限り、あなたが私に触れるなんて……!」
「そいつぁ、どうかな?」
 ステップ、ステップ、そしてジャンプ!!
 【スカイステッパー】の力で天高く舞い上がるダンサーが、魂のままに咆哮する。
 その言葉は勿論。

「オーレ!!!」
「きゃ、きゃああああ!?」
 オーラで近寄れずとも、それを超える力が世界には存在する。
 その中の一つ、重力。
 そう、諒一朗は今、星の力と観客からの応援、フィーバーの力と共にオブリビオンへと急降下!!
 一瞬の均衡の後に、砕け散るのはオブリビオンのオーラ!

 ――これは、太陽の国の情熱が、また一つの奇跡を起こした瞬間であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メガ・ホーン
※敵のUCは一度受ける。

ダンスバトル、か。俺は本格的なダンスなんてできないけど、ビートに乗ってステップを踏むことくらいはできるぜ。
型どおりの踊りよりも、その場のノリだけの、二度と再現ができないイカしたダンスが俺にはお似合いさ。

ま、俺の本業は音楽だ。ダンスにはバックミュージックがつきものだろう?
他の猟兵のダンスに合う俺なりのチョイスで「楽器演奏」で「パフォーマンス」だ。そこに【サウンド・オブ・パワー】を乗せれば効果覿面さ。

さあ、そこの戸惑うウサギちゃん。お前さんの寂しい心はとっくりと見させてもらったぜ。どうだい? 一緒に歌って踊ってみないかい? それが無理ならまずは見て聞くだけでもいいからよ。


熱海・靖久
ダンサーとしての僕の力を試す時が来たね…!
(眼鏡がキラリと光るスーツ姿のおっさん)
僕のパッションとステップでオブリビオンを退治してみせるよ

■ダンス&攻撃
おじさんでありながらも軽快なステップを
曲に合わせストリートダンスを基にした独創的なステップと
しなやかな動きで活き活きと【ダンス】を
無表情ながらもどこか楽し気
(やっぱり、観て貰えるって嬉しいよね)
中継カメラに激しいダンスでアッピール
視聴者にさえ手拍子を促すように

「本当だったら君と社交ダンスを踊りたいくらいだけど…ごめんね」
敵をレガリアスシューズで【二回攻撃】【吹き飛ばし】
大連珠でのパンチも合わせコンボ攻撃を繰り広げ

※アドリブ&絡み&ネタ大歓迎♡



●さらばライバル
 猟兵たちとオブリビオンの激しいダンスの応酬。
 それを支えるのはキマイラフューチャー中の視聴者の応援だ。
 刻まれるリズム、激しいステップの迫力が、テレビウムを通じて彼らに届けられる。
 そんな彼らの耳に聞こえる、ワイルドでノリのいいサウンド。

 彼らは知っている。
 この重く響く音楽を、それを奏でる、黒い体の彼を知っている!

「キマイラフューチャー中への中継か……俺は本格的なダンスなんてできないけど、ビートに乗ってステップを踏むことくらいはできるぜ」
 そう、現れたのはキマイラフューチャーのサウンドプロレスラー、メガ・ホーン(サウンドマシーン・f13834)その人だ!
 これまでの猟兵とは違い、そのステップは不規則な型に嵌らぬ動き。
 その場のノリだけの、二度と再現ができないイカしたダンスの方が俺にはお似合い、とは本人の談。
 猟兵でプロレスラーな彼が魅せる新たな境地、ダンシングッ!
 既に視聴者は期待と興奮で大盛り上がりであるっ!!

「ちょ、ちょっと! なんで登場しただけでフィーバーしてるのよ、ズルいじゃない!?」
「まあ、確かにそうだなぁ。ご期待いただけるのはいいが、フェアじゃあねぇよなぁ」
 鬱詐偽の抗議を、メガは存外素直に受け入れる。
 とりあえず踊りながら登場してみたはいいが、どうにもしっくりこない。
 やはり、自分の本業は別の場所にあるのだろう。
 そう、今日のメガは一人ではありはしない、タッグを伴いやってきた――!

「というわけで、カモン、タッグパートナー!」
「ああ、ダンサーとしての僕の力を試す時が来たね……!」
「フェアじゃないって言っておいて仲間呼ぶのっ!?」
 鬱詐偽の叫びを置き去りに、真顔のままポップなリズムに乗って現れる眼鏡のおじさま。
 メガの声に応じて現れたネクストダンサー、熱海・靖久(多重人格者のおじさまダンサー・f06809)は既に軽快なステップを踏みながら随分楽し気にノリノリである!
 その様子を見て、戦慄するオブリビオン。

「こ、こいつ……なんてつまらなさそうに踊るのっ!」
「…………」
 そう、靖久は真顔!
 足は軽やかにステップを刻んでいるのに、顔は無表情の超真顔!!
 けれど、つまらなさそうと言われたその背中は少し悲し気。
 おじさんだってダンスは楽しい、それが顔に出ないだけなのだ。
 こんな世界中に放送される舞台で、スカイダンサーとしてのやりがい、興奮がないわけないじゃない。

 それが! 顔に! 出ないだけなの!!

 それでも彼は諦めない。
 顔で感情が伝わらないのなら、行動で、言葉で示せばいいのである!
 スーツのおっさんにあるまじき動きで、ストリートダンスのアクロバットを決める。
 バク転、バク宙なぞ当たり前、男靖久、空中で身体を真横に倒し、一気にきりもみ回転するコークスクリューまでを成功させていく!!
 妻と娘も、きっと中継の向こうで見守ってくれている。気がする。
 なればこそ、踊りも踊れちゃうお父さんとして、このステージをより盛り上げなくてはいけないだろう!

「さあ、テレビウムの前のキマイラたちも、手拍子で一緒に踊ろう!」
「せめて笑顔で言うセリフじゃないソレ?」
 ――そう、ここまでしてもなお、靖久は真顔であった。
 厳密には口角が2mmほど上がっているのだが、そんなの誰も気づかない。
 オブリビオンからの恐るべき口撃を受け、再び彼の背中が悲しげなものになる。
 だけど、彼は一人ではない。

「まあまあ、そういう所を補ってのタッグさ。ダンスには、コレがつきものだろう?」
「そんな、メガさん、これは……バックミュージックッ!」
「だから色々ズルいでしょう!? ステージの曲使いなさいよ、ステージのー!!」
 メガの両胸から響き渡る音楽、【サウンド・オブ・パワー】!
 靖久のストリートダンスに合わせたアップテンポの曲調が、彼の、いや、中継を通してそれを聞くキマイラフューチャー中の人々の心を鼓舞していく!!
 これなら勝てる、おじさんまだまだ踊れる!
 そう己を奮い立たせる靖久の目の前で、しかし予想外のアクシデントはまだ続く。

「うわーん、もうやだコイツラー!!」
 鬱詐偽さん、鬱詐偽小屋に引きこもっちゃった。
 思わず顔を見合わせるのは猟兵二人。
 なんか相手が逃げ出したのだけど、これ、このステージクリアってことでいいのだろうか。
 放っておいて先に進んでも問題ない気がする。

「そんな勝ち方じゃあ、会場も冷めちまうぜ!」
「そうだ、僕もまだ踊り足りないんだ!!」
「追ってきたー!?」
 時間にして5秒ほど、熟考の末、彼らのダンスバトルは続行決定!
 これには中継先の視聴者も大盛り上がりだ!!

 けれど、小屋の中はオブリビオンの心象風景。
 暗い暗い舞台袖、明るい世界、煌びやかな主役への嫉妬と怨嗟が渦巻き澱む。
 その場に立って、息を吸うだけで気分が滅入りそうな、そんな場所で。

「ふ、ふふふ。どうよ、これが私の世界、あんた達とは、抱えてるものが違うのよ!」
「そうか、ところでダンスバトル続けて良いか?」
「え」
 メガは変わらずバックミュージックを鳴らし始める!
 靖久だって、放っておけば無音ででも踊りだしそうな勢いだ。
 訂正する、既に踊り始めてるねこのおじさん!

「お前さんの寂しい心はとっくりと見させてもらったぜ、ウサギさん。それでも今は、どうだい? 一緒に歌って踊ってみないかい?」
「ああ、本当だったら君と社交ダンスを踊りたいくらいだけど……バトルだもんね、コレ」
 周りの陰気さを吹き飛ばすような音楽が響き、スカイダンサーが空を舞いながらリズムを刻む。

 それを見る鬱詐偽の思考は困惑の感情でいっぱいだ。
 いつもいつも、嫌われ者だった。いや違う、自分は、嫌われ者ですらなかった。
 みんな自分ではない誰かの方を向いていて、自分に与えられた役割は、場面を彩る草や花と同程度、居ても居なくても変わらないような些細な存在。
 だけど今は。
 今、この猟兵たちは、自分を敵だと、踊りを競うライバルだと認めてくれているのだろうか。
 それなら。
 それなら自分も、このライバルたちの言葉に応えて……。

「今だ、おじさんキーック!!」
「うわあああああ!?」
 そこまで考えていた鬱詐偽さんを、靖久の容赦のない蹴りが襲う!
 寸でのところで転がって回避した彼女に対し、続けざまにパンチのコンビネーション攻撃まで放たれるっ!

「いま良い雰囲気だったじゃない! オブリビオンと奇跡の和解とかしそうだったじゃない!!」
「さっきから言っているだろう、ダンスバトルだぞ? 油断する方が悪い」
「ああもう、嫌いよ! やっぱりあなた達みんな大っ嫌い!!」
 逃げ惑う鬱詐偽に対し、しれっと返事を返すメガを見て、やはり猟兵とは相いれないと確信する――!
 おっさんの方も断じて許さぬ、いまのキックの礼は、このうさぎさんフックで返してやるほかないだろう!!

 この十数分後、彼女は敗北し、このステージは猟兵たちに突破される。
 猟兵が駆け抜けた後に残されるのは、オブリビオンがそこに居たことを示す小汚いぬいぐるみ。
 それを見た視聴者のひとりが、後日こんな疑問をこぼしたという。

 ――あのぬいぐるみ、最初からあんな楽しそうな笑顔だったっけ……?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月05日
宿敵 『鬱詐偽『ウサギ』さん』 を撃破!


挿絵イラスト