バトルオブフラワーズ③〜海より来たりて
●創意とか工夫とか愛とか勇気とか
「よう、聞いたかい。キマフュー世界の地球? が物理的に真っ二つだとさ」
言ったって、水も空気もあるようだし、現状難儀してるのは北と南の行き来位だが、と、刻乃・白帆(多重人格者のマジックナイト・f01783)は宙を揺蕩うグリモアを弾く。
連動してベースの風景が揺らぎ映し出されるのは、離れ離れの北半球と南半球の狭間に出現した6つの戦場(ステージ)だ。
「今の所は思ったより何て事無い……事も無いが、キマイラフューチャーの中枢が悲鳴を上げてるのは確かだ。この状況を引き起こした奴らの首魁――オブリビオン・フォーミュラを早いとことっちめないと、イカした未来がひっちゃかめっちゃかになっちまう訳さ。だから先陣切って、奴らの用意した戦場に突っ込むぞ」
クロノは戦場の一つ、ザ・ビルドステージを指し示す。各ステージにはそれぞれ特殊な戦闘ルールがあり、それに沿って勝利しないと謎の力でステージを追い出され敗北判定を受けてしまう。ステージ内のルールは絶対だ。例え敵を倒したとしても、その手段が定められたルールから逸脱していた場合、敵陣営の『戦力』を削ぐ事は出来ない。
今回の特殊戦闘ルールはその名も『キョダイロボバトル』。自らが駆るマシンを『建造』し、自軍『基地(ベース)』を守り切り、迫り来る敵巨大ロボをマシンで『撃破』して初めて勝利を手にすることが出来る仕組みだ。
「逆に敵の勝利条件……つまりこっちの敗北条件は基地を破壊されること。まぁ攻撃一発で粉々ってことは無いだろうが、敵も巨大ロボだからな。数発保ちゃ良い方だろ」
ロケーションは四方を海で囲まれたリゾートアイランド風。基地は島のちょうど中心に位置する。あくまで今回のバトルの為に用意・再現されたステージなので一般人はいないが、マシンを建造する資材は基地内に目一杯用意されているようだ。途中でパーツが不足することは無いだろう。
勝利条件を満たせるなら陸海空何処で戦っても良いし、ステージが実現可能な限りの特性(ギミック)をマシンに搭載しても良い。無論、形状も人型・非人型を問わない。他の猟兵が造ったマシンとの合体機構をオミット出来ない以外はやりたい放題だ。
「戦争は遊び(ゲーム)じゃないなんて真っ当な理屈はキマイラフューチャーには通用しないぜ。何せゲームの勝敗がまんま世界の滅亡か否かに直結するシビアなトコだからな。ま! 世界を救うつもりならばこそまずは楽しむこった。ゲームってのは、何より楽しんだ奴の勝ち、だろう?」
長谷部兼光
スーパーとかリアルとか、そんな感じです。
●目的
キョダイロボバトル!
マシンを建造し、
基地を守り、
敵ロボットを撃破する。
●備考
シナリオクリア条件を満たした場合、各マシンが(どんな形状のマシンでも)合体して一つになります。
第1章 ボス戦
『海神ポセ男』
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POW : ヒッポカムポスわっしょい
自身の身長の2倍の【金色のたてがみをもつ海馬の引く馬車 】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD : クロノス激おこ
【触手の先】を向けた対象に、【麻痺状態にする電撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : アムピトリテさまさま
【毒を持つ蟹足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「レド・ダークライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●奴の名はポセ男
基地内に転移した猟兵達を、頭にバカと3回程繰り返しつけたくなる程度に大きなスクリーンが出迎える。猟兵達の到着を感知したそれは通電し、震える海面を映し出した。
直後海面は轟音鳴らし爆ぜ狂い、そして瀑布の如き飛沫と共に現われるのは、うねる触手、脈動する蟹脚、ヒトの形より大きく逸脱した姿の海神ポセ男――を模る巨大ロボ。
「ククク……この機体と、これを操る小生こそは即ち巨神……否、不沈艦……否、アビスマシン……否、メカニカル……メカ……メ……メー……そう! メカ男!」
ポセ男のネーミングセンスは壊滅的だった。それから拡声器のボリュームが大きすぎる。
本人的にそう言う部分は気にならないのだろう。ロボポセ男の無機質なカメラアイはお構いなしに島(こちら)を睨む。
「おっと、ミドルセンスな敵の基地を発見。ンン~、一瞥しても二瞥しても、動画映えも写真映えもまるでしそうにない凡庸さ。いっそ怒りを覚えますねぇ。ムカつきます。ちょうど今し方堪忍袋の緒がプチンと切れました。なので、更地に変えてしまいましょう」
ゆっくりとゆっくりと、あえて焦らすようにポセ男が基地に迫る。
――これ以上手をこまねいて見ている訳にはいかない。……彼に対抗できるマシンを作らなければ。
月夜・玲
マシン建造!
良いよね…ロマンだよね…
何作ろうかなー、やっぱり空飛びたいよね空!
合体も楽しみだなー
でもやっぱり武骨な機体良いよね…
●工作
今回作るのは戦闘用ヘリ!
ロボットとかも良いかもって考えたんだけどさー、やっぱりヘリ空飛びたいよね
でもただのヘリじゃないよ
普通より装甲マシマシの攻撃型ヘリだよ
ミサイルやガトリング砲を搭載して攻撃力も特化しよう
私も攻撃したいから自動操縦機能も付けちゃう!
完成したら乗込んで戦闘開始
少し距離をおいてからミサイルとガトリング砲で連続攻撃!
自動操縦でホバリングさせておいて私も【高速演算】で衝撃波攻撃!
ついでにバズーカを担いで攻撃!これやってみたかったんだ!
●アドリブ等歓迎
千桜・エリシャ
巨大ロボ……?
そういえば旅館のお客様がプラモ?で作っていたかしら?
でもあれはなんというか
格好いいとは思いますが可愛くないですわ!
私はもっと可愛い巨大ロボを作ってみせましょう
猫の形の骨組みに、ふわふわの真っ白の毛を全身につけて
巨大おもちちゃんの完成ですわ!
抱きつくと最高級のもふもふを堪能できますのよ
おもちちゃん(本物)と一緒に乗り込んで
さあ、巨大おもちちゃん発進ですわ!
猫らしい俊敏さで駆け回って敵を撹乱
隙を狙って猫ひっかきですわ
あら、その触手邪魔ですわね?
飛びついてもぐもぐ捕食
生命力吸収ですわ
そしてこれは巨大おもちちゃんの必殺技
ふわふわ~と桜の花弁が舞い散る中で
愛らしいポーズで魅了攻撃ですの!
リステル・クローズエデン
海ですか…でしたら
作成
形状:藍色の潜水艇
武装:魚雷。対空対地ミサイル。機雷。
特殊武装:ソナー・レーダー系統強化。ステルス装備。
メカニック+武器改造+防具改造+世界知識+ハッキングで作成。
世界知識とハッキングは作成の為の機械知識と制御系作成に
戦闘
目立たない+迷彩+物を隠すで隠れつつ
暗視+視力+情報収集。レーダーなどから相手の情報を収集
他の面々が戦闘を開始したら。
収集した情報を使い。
【我流闘法】命中重視
魚雷やミサイルで 誘導弾+援護射撃+武器落とし+目潰しで攻撃
場合によっては
【我流闘法】攻撃力重視で一斉発射
【我流闘法】攻撃回数重視で
罠使い+範囲攻撃で機雷を放つ
相手の攻撃は
見切りと逃げ足で回避する。
神崎・伽耶
へえ……ポセ男。
なかなかパンチの効いた命名じゃないの!
そうだなあ……あたしのロボなら、スーパー系かな?
ゴールデンゴーレムってかんじの、ビヤ樽にアーム取り付けたかんじ!
拠点防御向けで……でも動けないと……じゃあホバー付けて……
(カタカタカタ)(シャーン)←タイプライター音
ポセ男がこっち見たら、無敵城塞でダメージ無効。
目を離したら、ささっと移動。
ゴールキーパーのモーション入力しといた。
腕が自由自在に伸びれば、足元の機動力落ちても、問題なしね!
一度捕まえたら二度と離さないわよ。
名付けて、『だるまさんが転んだ作戦』!
こっちは後出し製作。
避雷針。突進妨害用のバンパー。蟹脚用の料理鋏。
このあたり付けとこ♪
ヴィクトル・サリヴァン
よし、海か。
あのよく分かんないうねうねわさわさを始末すればいいんだよね
蛸に蟹に海馬…は試したことないけどまあ大体はごはん。
食べられる側が高圧的に来るとこう、いじめたくならない?
やったらめったら頑丈な水陸両用鯱型兵器を作る。
火器はなし、装甲と速度特化で体当たりの浪漫仕様。
んーその周りについてるのミドルどころかローセンス、
海神さんあそぼ、どーん!
いやー、言い伝えによると鮫とかをこうやるとひっくり返って動かなくなるんだとか。
ついでに海に引きずり込んで肝臓とかだけ頂いてて…巨大ロボなら動力部?残りはぺいっと尻尾で叩いたり。
馬車に乗って逃げようが追いかけてどーん、がぶり。
※アドリブ絡み等お任せ。ネタ歓迎
六島・椋
エスタ(f01818)あれだ、あれを作ってくれ
銀河……なんとかのやつが使っていたジャイアントカルシウムみたいなやつだ
骨身を惜しまず頑張ってくれ
何って、完成形の観察をしようと
細部の粗こそあれ、こんなに大きいと流石に圧巻……あいよ了解だ
ロボだなんだというが、要はでかい人形だろう
からくり糸で繋がる相手と自分のいる場所が違うだけで、いつも通りだ
【第六感】や【医術】による身体の知識からポセ男ロボの構造を推測、
急所と思われる部分を【早業・二回攻撃】で攻撃したり、
【盗み・盗み攻撃】でパーツを盗んだりしてみようか
攻撃は福音で回避をはかる
更地にされる前に奴の骨を埋めてやろう
いやしかし、ダサいなポセ男のネーミング
エスタシュ・ロックドア
なんなんだこれは、どうすれば良いんだ
いや、わーってる
ただちょっと理解が追い付くまで待ってくれや
【メカニック】使って建造するぜ
これシンディーちゃんのメンテ用に培った技能なんだが
椋(f01816)がめっちゃキラキラしてっから、
銀河帝国で出てきたジャイアントカルシウム的な、
巨大人骨型ロボットを目指すわ
二人乗りな
動力源は俺の『群青業火』
駆動系は人工筋肉的な何かを椋の絡繰り糸で制御する
自分でも何言ってるか分からなくなってきたぜ
戦闘だが、そりゃもう敵に突っ込むしかねぇだろうがよ
……おい椋、何してんだ
駆動系お前が握ってんだから頼むぜ、マジで
そういやロボの名前決めてなかったわ
スーザンちゃんでどうだ
ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
巨大ロボによるバトルか。
成る程、面白い。
少々今回のロボット建造としては変わり種となるが、本機はこうしよう。
弩級機械装甲『Leopard』に他猟兵との合体機構、及び追加パーツを足す形で建造。
防衛に重きを置くなら防御に特化した形がいいか。
準備が出来次第発進する。
(ザザッ)
SPDを選択。
【Leopard:ON】!
豹形態から人型形態に変形。
操縦、早業、ダッシュを駆使し高速機動、
援護射撃とスナイパーにより正確な火線援護を果たす。
必要なら基地の盾になることも検討。
合体体系では銃型になるとしよう。
本機の行動規範は以上、実行に移る。
オーヴァ。
(ザザッ)
リュセフィーヌ・オールセン
心情
「海からの侵略者と言うやつですか…いいでしょう! 倒してみせます!!」
鉄と銅を集めて、人型のロボットを作ります。(懐かしの【ロケットパンチ】性能付き)
狙われやすい胴体や頭部分は鉄にして、手足は銅にします。
ロボットを作ったら基地を守るため、基地の外に待機します。
『海神ポセ男』が視認出来たら、ロボットを動かして戦います。
『海神ポセ男』にロケットパンチをくらわせて、先制攻撃。
ダメージを受けたようなら、ロボットのキックをくらわせて追撃。
無事倒せたら、こう言います。
「良かった…これで基地は守られましたね…」
サン・ダイヤモンド
ブラッド(f01805)と
ロボットバトルー!?初めて!僕初めてだよ!
(キラキラと目を輝かせ興奮に全身の毛を膨らませ、キャッキャッと全力で燃えて楽しみます)
ブラッド、見て見て!
作ったのは動きの重い、黒い積み木を組み合わせたような拙い人型ロボ
(外見は大好きなブラッドに似ている)
名前は……えーっとえーっと、スーパーBBロボRX!(全て勢い
僕のブラッドは、強くて大きい!
敵の攻撃は大きな腕の武器受けで弾き拠点防御
それで間に合わなければバリアー!(オーラ防御
攻撃を受けたらあくまで機体・ブラッドの心配
ああ!?BBー!!
必殺技は伸びる腕のロケットパンチ!
敵の体勢を崩し張り倒して!
いっけ―――!!
※アドリブ歓迎
ブラッド・ブラック
サン(f01974)と同行
「世界は広いな」
見た事もない巨大な敵(ロボ)、経験した事のない戦闘に淡々と呟く
サンのロボは「俺か……?」
微妙に苦笑しつつも微笑み零し、楽しむサンを温かく見守る姿勢(※表情は変わらない)
「……精々頑張るとしよう」
建造するのは動物を模した変形ロボ
コンドル型でサンや仲間のロボを足で掴み運搬したり(必要があれば)、空中からアタックを仕掛ける
あの敵の触手が厄介だな 重点的に狙い数を減らすか
地上では狼型に変形
状況をつぶさに観察し、縦横無尽に走り回り敵の攻撃から基地を庇い、喰らい噛み砕く
ロボットバトルの経験など無かったが
……たまにはこういうのも、楽しいものだな
(絡みアドリブ歓迎)
ミスト・ペルメオス
【POW】
巨大ロボットバトル、ですか。
…ともかく、やれるだけやってみましょう。
自前の機械鎧…を参考としつつもアレンジを加えた機動兵器を建造する。
鋭角的なシルエット、翼や腰羽のような印象のスラスターユニット。カメラアイはバイザー型。
人型をベースとしつつもやや異形の部類、猛禽のような印象を与えるだろうか。
コンセプトは高機動・高火力・射撃戦主体。
実弾・エネルギー問わず複数の射撃兵装を備え、出力に物言わせてブン回す。癖のある操作感が難点。
最大の特徴は合体に対応させた変形機構。
機体そのものを巨大な荷電粒子砲に変化させ、単独で、或いは合体巨大兵器での砲撃に対応する。
※他の方との共闘等、歓迎です
●れっつ いまじねいしょん 設計編
基地内部。何やら秘密兵器の開発室めいた若干怪しげな機材がずらりと並ぶ区画にて。
「――マシン建造!」
そう言うのもあるのか! と月夜・玲(頂の探究者・f01605)は好奇心を抑えらない表情で、早速各々割り当てられたマシン設計用の操作盤(コンソール)に触れてみる。
「良いよね……ロマンだよね……何作ろうかなー、やっぱり空飛びたいよね空! 合体も楽しみだなー」
コンソールを右に左に忙しなく。初見でも直感的でわかりやすい使用性、その上デザインが苦手な人向けにモチーフ、形状を問わず豊富な『お手本機体データ』が用意されており正に至れり尽くせりだ。既存のデータを多少いじくるだけでも満足感はかなりのものだろう。
が、折角なら自分だけのオリジナルマシンを造ってみたいとは、玲も含めここに集った猟兵全員が思うところ。
形状はどうしよう? 空を飛ばすならやはり速度重視だろうか? メカマニアとしての性分が玲の中で騒ぐ。
「でもやっぱり武骨な機体良いよね……」
「良いね。そうだなあ……あたしのロボなら、スーパー系かな?」
玲が悩みに悩むその横で、神崎・伽耶(トラブルシーカー・f12535)は『スーパー系』をキーワードとして、カタカタとタイプライターを打つように指を走らせる。
「黄金ゴーレムってかんじの、……に、……を取り付けたかんじ!」
思いつく要素の一つ一つは行き当たりばったり――アドリブに近いが、作業に没頭してる内、それらが連想ゲーム的にくっつきあって、やがて一つの形となっていく。
「拠点防御向けで……でも動けないと……じゃあホバー付けて……出来た!」
人差し指が、ひときわ大きくコンソールを叩いた。外観はこれで完成だ。
画面にずらりと語る性能も中々のもの。これで完成としても良いが、
「後はこれとこれとこれも……」
機転を利かせてもう一仕事。
「巨大ロボによるバトルか。成る程、面白い」
沈着冷静な言動(こえ)に混じるのは、何時ものノイズと微かな喜色。
望む所とジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)は操作盤を操って、スクリーンの中に対海神専用兵装を構築する。
「少々今回のロボット建造としては変わり種となるが、本機はこうしよう」
ジャガーノートと共に、これまで数々の戦場を潜り抜けてきた弩級機械装甲『Leopard』。マシンと合体機能が切っても切り離せぬのなら、これに合体機能を搭載することで、システム上『マシンのコア』として認識させ、更に各種火器、ブースター類を増設する。機動力を殺さない限界まで装甲を積み込んで、一息。
「……ともかく、やれるだけやってみましょう」
これがキマイラフューチャーを元に戻す最短最善の道筋であるのなら、と、ミスト・ペルメオス(新米猟兵・f05377)は決意を籠めて頷き、開発室内のカメラに自前の機械鎧をスキャンさせた。
スクリーンに取り込まれた機械鎧を参考に、より鋭角的に、翼や腰羽によく似たスラスターユニットを取り付け、マシンのカメラアイは視界を広く保つバイザー型。
そうして組み上がったフォルムは人型をベースとしつつも猛禽のような印象を与える異形。『鳥人』と形容するのが相応しいかもしれない。
「高機動・高火力・射撃戦主体型。と口にするのは簡単ですが……さて」
画面上に示された超がつく程高い出力値が、どう出るか。
「海ですか…でしたら」
リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)は操作盤から基地内の詳細な地図を呼び出す。基地は島の中心にあるが、地下から長大な通路――搬入口か射出口だろうか――が海まで繋がっている。これからリステルが造ろうとする『もの』にとっては好都合だ。
巨大スクリーンに映し出されたメカポセ男を一瞥する。海を泳いでいるのか、揺れているのか、区別がつかない程度に余裕綽々の緩慢さ。制限時間はある、が、こだわって作るだけの時間もあると見た。
故に。
「出し惜しみはしませんよ」
メカニック、武器改造、武具改造。自身の知る世界知識からさらに機械関連の知識を引き出し、更にハッキング技術まで総動員。制御系から外観に至るまで、およそ機体を構成する全ての部分に手を入れて、リステルは自身の機体を作り上げる。
「よし。あのよく分かんないうねうねわさわさを始末すればいいんだよね」
縦と横に広い体を些か窮屈そうに屈め、シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は大きな掌でコンソールを打つ。
ヴィクトルの戦闘スタンスはいわゆるぱわーいずじゃすてぃす。
設計思想にもそこのあたりは余すとこなく反映され、作成するのはやったらめったら頑丈な水陸両用鯱型兵器。火器の一切を搭載せず、装甲と速度特化で体当たりの浪漫仕様。その身一つこそが最大の火力と言う潔さ。
人が人型メカに乗り込むのなら、シャチがシャチ型メカに乗ったところで何の理不尽があろう。いや、ない。
「蛸に蟹に海馬……海馬? は試したことないけどまあ大体はごはん」
ばぁんと確定ボタンを強く押した衝撃で、操作盤に大きな手形が咲いたのは、はてさてご愛嬌。
「なるほど海馬はごはん……世の中知らない事ばかりで驚きです」
本機か冗談か、リュセフィーヌ・オールセン(オラトリオのビーストマスター・f10236)はヴィクトルの言に応じつつ、自身の機体設計作業を継続する。
「基本構造は人型。主な組成は鉄鋼とカッパー。比率は……」
狙われやすい頭と胴は頑丈に、挙動に関わる四肢は柔軟に、そして腕部には昔懐かしい『あの』ギミックを搭載しておこう。漫画の中の絵空事を実現できるまたとないチャンスだ。
「巨大ロボ……?」
千桜・エリシャ(春宵・f02565)は首を傾げ目を瞑り、朧気な記憶をたどる。
そういえば旅館を訪れた客人がプラモ……? なるロボットの小さなレプリカを造っていたようなそうじゃないような。
うっすらと思い出してきた。少し眺めてみても、あの造形は確かに格好いいと言えるものだったが、しかし。
――可愛くは無かった。
「えっ? そこのところ重要なんですか?」
「はい。そこのところ重要なんですの!」
リュセフィーヌの疑問に、強く断言するエリシャ。実際そこのところ重要である。可愛いは正義なので、正義を御旗に世界を救おうというのなら、それはつまり、可愛くなければならない。恐らく。きっと。
「なので、私達はもっと可愛い巨大ロボを作ってみせましょう。ね、おもちちゃん?」
そんなエリシャの意気を知ってか知らずか、花の涯の看板猫・おもちちゃんは操作盤に乗っかって、ゆるゆる寛いでいた。
「ロボットバトルー!? ねぇブラッド! 初めて! 僕初めてだよ!」
『ロボットバトル』。耳にしただけで愉快そうなその言葉。興奮に、喜楽をまとめて包んだが如く全身の毛を膨らませ、サン・ダイヤモンド(甘い夢・f01974)の瞳は、その名の通り、金剛石さながら輝いていた。
「ああ。俺もだ。つくづく、世界は広いな」
そんな燃えに燃えて髄まで楽しむ姿勢を隠さないサンに、ブラッド・ブラック(VULTURE・f01805)は淡々と、しかし、鋭い眼光を幾許か緩めて言葉を返す。
「さて、肝心のロボだが……一から作るとなると中々に悩ましい。サン、参考までに何を造るのか……教えてくれないか?」
「ふっふっふ……まだ秘密!」
サンは意地の悪そうな笑みを浮かべ、自身の唇にそっと人差し指を置いた。
「……そうきたか。しかし、何も知らずいきなり実践では連携に乱れが生じる可能性もあるが……」
「大丈夫、大丈夫! 僕とブラッドなら何時だって呼吸はぴったりだもの。心配しないで、ね?」
「……確かにな。要らぬ心配だったか。俺は俺の機体に集中するとしよう」
「そうそう。サプライズは後々まで取っておかないと」
そしてブラッドは黙々と、サンはばれないように密やかに、己の機体をデザインする。
「なんなんだこれは、どうすれば良いんだ。ってかみんな順応早くねぇ?」
エスタシュ・ロックドア(ブレイジングオービット・f01818)は額に手を当て俯いた。何度額を探っても、至って平熱・健康なのが今回ばかりは恨めしい。
「何ってエスタ、あれだ、あれを作ってくれ。銀河……なんとかの脳味噌のやつが使っていたジャイアントカルシウムみたいなやつだ」
夢見る子供のそれより明々と、エスタシュにせがむ六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)の瞳は雲一つない星空の様にキラキラ輝いていた。
椋よ、お前もか。
「いや、わーってる。ただちょっと理解が追い付くまで待ってくれや」
「了解。大丈夫だ。骨は拾う。だから骨身を惜しまず頑張ってくれ」
「骨に沁みるエールをどうも」
息を吸い、息を吐き、大きく深呼吸。種火の如く燻ぶり続けていても仕様がない。
エスタシュのメカニックとしての腕前は確かなもの。本来はシンディーちゃん――宇宙バイクのメンテナンス用に培った技能だが、まさかロボを造ることになるとは。
人生何処で何があるか解らないものだ。
目指すところは巨大人骨型ロボット。施設の駆動音に紛れ、椋の人体骨格人形・オボロがかたかたと小さく笑ったのは、果たして大きな後輩の誕生を予期したからだろうか。
●れっつ いまじねいしょん 実践編
「んふーふー、メカ男上機嫌で島に接近。さて、前足後ろ足右足左足おまけに中足、どの足で最初の一歩を刻みましょうか……っと!?」
海の狭間から陸に上がろうとする正にその水際で、メカのポセ男は大きな波飛沫を立てながら盛大に姿勢を崩し、そのボディはずるりずるりと海面へと沈んでいく。
ヴィクトルの鯱型兵器、その顎が、脚部の一つを食んでそのまま浅瀬から深海へと引きずり込んだのだ。
「おおう、何たる海のギャング。今ならまだ海よりも深い慈悲の心を以って許します。お放しなさい。小生はあなたに付き合っている暇は無いのです」
「まぁまぁそう言わずに。海神さんあそぼ、そーれ、どーん!」
ポセ男は蝕脚を器用に動かしヴィクトルのマシンを払い、そのまま酸素を求めるように陸への浮上を試みるが、そうはシャチが卸さない。
鯱型兵器は水の抵抗など一切意に介さず、大海を二周、三周悠然と泳いで加速し、最高速度を維持したまま、メカ男目掛けてぶち当たる!
言い伝えによると鮫とかをこうやるとひっくり返って動かなくなるんだとか。ポセ男が鮫なのか蛸なのか蟹なのか良く解らないが、ぶち当たった後仰向けに程良くトリップしている様子を見ると効果はてきめんだったらしい。
「んーその周りについてるのミドルどころかローセンス。流行が何周しても流行ることはなさそうだし、何より食べられる側が高圧的に来るとこう、いじめたくならない?」
メカ男(の中の人)が前後不覚なその内に、グルメなシャチは動力部だけをガブっと頂き、残りの本体は尾撃で更に深海へと沈めてやった。
しかし、ポセ男とて黙ってやられるばかりではない。動力部の一つを欠損しようとも、やはり海神。鯱型兵器に勝るとも劣らぬ速度で海中を掻き見出し、逆襲せんとヴィクトルに迫る、が、触手の一部をシャチに伸ばした刹那、閃光と供に爆裂が生じた。
メカ男のレーダーには映らぬ位置に隠れる藍色の潜水艇……それまで戦闘をつぶさに観察していたリステル機が密かに敷設した機雷に接触したのだ。
「ダメージはありませんか? こちらの仕込みは完了しました。これより援護を開始します」
「おおっと、大歓迎だよ。それじゃあこっちも遠慮なく思いっきり泳ぐね」
リステルはヴィクトルに敷設した機雷の座標を送り、メカ男のアウトレンジから、一方的に狙いを定める。ソナー、レーダー、いずれも絶好調。。敵側にこれらをジャミングする装備は無いのだろう。
「潜水艇の操作も『我流』ですが……!」
自らで細部に至るまで組み上げた機体だ。手足の様に扱う自信はある。我流闘法の神髄を見せてやろう。
荒ぶる鯱が創り出す戦禍の底に身を潜め、藍の潜水艇はありったけの魚雷(ほのお)をくべる。
渦中にて、メカ男が一時リステル機の姿を捉えても、次の瞬間には鯱の大質量がメカ男を揺さぶり、強引に接近しようと試みれば機雷が爆ぜて進めない。そうこうしているうちに藍の潜水艇はステルスを駆使して海の色に紛れ込み、その正体の代わりにありったけの火力をメカ男目掛けて送り込む。
文字通り、深追いできぬと判断したか、メカヒッポカムポスを喚んだメカ男は海中戦に見切りをつけて反転し、陽光(うえ)を目指す。
それまでわさわさ騒がしかったメカ男の軌道が上に向かって一直線。この機を逃す道理は無いだろう。
リステルの対空ミサイルと、鯱そのものが跡を追って海から空に飛び出しメカ男に喰らいついた。
「ククク……残念ですがこちらの傷は浅いです。精々致命傷四歩手前と言ったところ!」
十分に深い様子だった。二個目の動力炉と引き換えに、海戦から如何にか逃れたメカポセ男。そこへ高速接近する黒い影が一つ。
ミストの駆る漆黒の鳥人(いぎょう)はその銃口にポセ男の貌を納めながら、しかし、一瞬視線を交わしたのみで離脱する。
「……っ! これは中々……!」
高出力、高機動を実現したが故に発生した、全身に叩きつけられるG(デメリット)とピーキーな操作感。
一瞬の交差は、零距離射撃の仕損じだ。この機体を上手く扱う為には少々、慣らし運転が必要か。
黒鳥のスラスターが天の海に所狭しと音より速く、思う存分不規則軌道を描き込んだ後、再びポセ男と交差する。超高速の世界で、一射目に放ったビームキャノンを大きく外し、二射目にばら撒いたアサルトライフルは敵機体の縁を掠める程度だったが、
「……捕まえましたよ!」
三射目、黒鳥用に拡大複製したアナイアレイターの重熱線がポセ男を貫く。ミストの感覚が、この機体に馴染んできた。
触手から放たれる電撃を速度に任せて振り切って、大胆不敵の急接近。先程の零距離戦闘のリベンジに、マシンキャノンを叩き込む。
その機動力を封じようと、メカ男は目鼻の先に飛び込んできた黒鳥を絡め取ろうとするものの、最早十手は動きが遅い。
触手が掴んだのは、玲のマシンが撃ち出したガトリング弾だ。
「ロボットとかも良いかもって考えたんだけどさー、やっぱりヘリで空飛びたいよね。それでもって、唯のヘリじゃないよ」
メカ男のメ蟹脚が玲のヘリへを上下から挟み込む。ミスト機ほどの機動性は持っていないため、俊敏に敵の攻撃を掻い潜ることは出来ないが、装甲特化の戦闘ヘリだ。
肉を切らせて骨を断つ。一枚二枚、蟹脚が装甲を腐食させたところで、そのままガトリングとミサイルを徹底的に吐き出して、自力で無理矢理拘束を解いてみせる。
そうして玲は自由になったヘリの操縦をオートに切り替え、機内から敢えて生身を晒す。I.S.Tを起動して、青の鳥の一振りで衝撃波を巻き起こし、玲本人が直接、メカ男を攻撃してのけたのだ。
「ぐぅお何たる不作法! 生身での攻撃はルール違反では!?」
メカ男がカメラアイをヘリに向けるが、そこに玲の姿は無い。
「ブー。外れ。あくまで反則なのは生身での撃破。攻撃する分には全然平気だよ?」
衝撃波に紛れて移動し、ヒッポカムポスの頭頂部に玲はいた。
いつの間にか担いだバズーカをメカ男の顔面中心に向ける。
「これ……やってみたかったんだ!」
ずどん、とバズーカを撃ち込むと同時、玲は海馬の頭より宙へ飛び退く。
瞬刻、ブラッドの繰るコンドル型のマシンが自由落下する玲を器用に爪先で拾うと、
「大分、無茶をするな。ならば無茶のついでだ自機に帰る前に、少々同道してもらう」
そのまま海馬の横腹への突撃を経由した後、彼女を無事、ヘリに戻した。
ブラッドに攻撃された海馬は姿勢を立て直す間もなくメカ男ごと陸地へ落下する。
そこに待ち受けているのは無慈悲な機械の獣たち。
「これは――馬鹿な! 何という事だ!」
ポセ男は驚愕する。
その先鋒こそが誰あろう穢れ無き純白の――巨大おもちちゃん。
その毛並みは一切の乱れなく、ふわっふわだった。
「どうです? 抱きつくと最高級のもふもふを堪能できますのよ」
「……くっ! 卑劣な!」
巨大おもちちゃん、の中の人であるエリシャの言葉に、ポセ男は何故だか動揺を隠せない様子。
ビッグおもちちゃんは猫らしい俊敏さでポセ男を撹乱し、ヒット&アウェイの猫ひっかきでメカ男を削り節に変えてゆく。
更に隙を見て触手へ飛びつくと、おもむろにもぐもぐ捕食し始める。生命をいただきます。
「……しかし、脚の一本を犠牲にしてでも……! 猟兵とオブリビオンと言う天敵同士でも……今は……!」
ポセ男は何やら葛藤の末に意を決して手を伸ばし、最高級のもふもふである巨大おもちちゃんを抱っこしようとする、が。
「にゃ!」
「あっ! 駄目ですわおもちちゃんそのボタンは……」
偶然か必然か、突如巨大おもちちゃん……の中のリアルおもちちゃんの……肉球がとあるボタンに触れたことにより繰り出された猫パンチ&猫ひっかきのコンボで抱っこは中断。
やはり分かり合えぬとポセ男は一人勝手に納得し距離を取る。
「仕方ありませんわ。それならこちらも必殺技ですの!」
エリシャがそう叫ぶと、何処からともなくふわりふわりと桜が舞い始め、巨大おもちちゃんはその花吹雪の中でくたーっと寝っ転がって庇護欲を刺激する様な、愛らしいポーズを決めた。
「フン! 何をバカな! そんなポーズなどどうという事はぐはぁ!!」
ビッグおもちちゃんの魅了攻撃に成すすべなく大ダメージを受けるポセ男。すごいスピード感。
どうやら動画や写真撮影を趣味とするこの男にとって、可愛いは思い切りクリティカルだったらしい。
しかし、可愛いだけでは終わらぬのが獣と言うもの。
身悶えるメカ男の左右を切り刻むのは機獣が起こした鎌鼬。
コンドルから狼に変じたブラッドのマシンと、ジャガーノートのLeopard。
豹は人型となって火線援護に、狼は縦横無尽に、二重となって海神を翻弄する。
海神の触手は惑い、どれかを指し示す暇を与えない。豹の砲口が触手を打ち抜き、狼の牙が触手を断つ。
鎌鼬からそこまで、時間にしてほんの数秒。二頭の獣はそれぞれ別方向に散開する。
豹に釣られるか、狼に釣られるか。否。海神の目的はあくまでこちらの基地。
海神は連戦で基地の正確な位置を見失いはしたものの、『適当に』『大雑把な当たりをつけて』雷撃を無差別に放つ。
その雷撃を受け止めたのは、人の形のLeopard。装甲と機動力を両立させたこの『兵装』、拠点の盾となることも無論視野に入れている。この程度の雷雨では、装甲(からだ)も機動性(あし)もやられはしない。
「おや、必死になって小生の雷撃を受け止めるという事は、基地がその方角に?」
「答えが知りたいか。ならば本機の答えは――こうだ」
雷撃を凌ぎながら、ぶれる視界をものともせず、ジャガーノートは熱線で、海神の右眼を焼き切った。
直後、死角となった右方から狼が忍び寄り、残りの左眼を食い千切る。メインカメラの喪失。これで海神の視界は大きく制限されるはずだ。
そうなれば必然、敵パイロットの意識はすばしっこい豹や狼より、動きの解りやすいものに意識が行く。
「へえ……ポセ男。なかなかパンチの効いた命名じゃないの!」
「ああ……小生のネーミングセンスが初めて他人に認められたような気がします」
尚且つ何かしら褒められたらまず絶対そっちに意識が行く。
ポセ男が霞んだ眼で目星をつけたのは、伽耶作・取っ手(アーム)のついた巨大なビヤ樽。もとい、黄金ゴーレム。
「しかし小生は残酷です。私に理解を示すあなたすら冷血に血祭りなのですからね!」
豹と狼に散々痛い目を合わされたポセ男は意気揚々とゴーレム目掛けて雷撃を放つが、びくともしない。続けて毒蟹脚で叩いてみるも当然のように無傷。無敵城塞と化したビヤ樽に生半可な攻撃は通用しない!
闘争の虚しさを悟ったポセ男はゴーレムからそっぽ向いて次の標的を探すが、弱った視界で発見できるのはビヤ樽オンリー。ポセ男がそっぽを向いたその瞬間、ホバー移動のゴーレムが、先回りをしてポセ男の進路に立ちふさがるのだ。
何度も何度もゴーレムに遭遇し、ストレスの溜まったポセ男はがっしがっしとビア樽に殴る蹴るの暴行を加えるが、無敵城塞なので無敵と言う理不尽さ。
「ふっふっふ! 名付けてだるまさんが転んだ作戦!」
「なん……という!」
そうこうポセ男がまごついているうちに、他の猟兵が集まってくるのは宿命だった。
「ブラッドー! 見て見て!」
快活なサンの声音と共に、ずしん、どすんと大地を揺らし、コンクリートジャングルの間から現れたのは、黒い積み木を組み合わせたような人型ロボ。
動きは重く、見てくれこそ拙いものの、込められた真心は十二分に過積載。そんな形のロボットをしげしげと観察していたブラッドは、はたと気付く。
「これは……俺か……?」
「そう! 名前は……えーと、ええーっと……スーパーBBロボRX! 今考えた!」
成程、これは隠す訳だとブラッドは心の裡で苦笑と微笑みを同時に零す。サンが楽しんでいるのなら、何よりそれに勝るものはない。
「僕のブラッドは、強くて大きい!」
「そうか。それなら本家本元の俺(ブラッド)も、うかうかしてはいられないな……精々頑張るとしよう」
「見ててよー! スーパーBBロボDXの大活躍を!」
「……RXじゃなかったか?」
勢いのままつけたので、そこの部分は臨機応変に可変するのだ。
満を持してメカ男と相対するBBロボ。BB式貪婪の腕が唸りを上げてポセ男を殴り抜き、尚且つ巨腕が防御に回れば敵の雷撃・毒撃を弾いてものともしない。
挙動の重さから、巨腕が防御に間に合わない場合もあるが、その時はオーラバリアで緊急ガード。
けれどもバリアの宿命か、割れる時はぱりんとあっさりあっけなく。
「ああ!? BBー!!」
それでも真心のなせる技か、数撃いいのをもらっても、BBロボはびくともしない!
「痛いですよ! 何ですかそのゲンコツ! もうちょっと優しくしても良いんじゃないかとポセ男は思います!」
巨腕の打撃もきっちりメカ男に通っている様子。これならいけると踏んだサンは、このまま一気に攻めようと、
「よーし! BB! このままジャンプだー! ジャンプ……あれ?」
待てど暮らせどジャンプはしない。そもそもそんな機能はついてなかった。
「だったら他所継ぎ足せばいい。行くぞ、サン。驚いて、舌を噛むなよ」
再びコンドルに変じたブラッドの機体がBBロボを掴み、跳躍どころか大空へと飛翔する。
「おー! 凄いやブラッド! BBロボが空を飛んでる!」
「……そうだな。ロボットバトルの経験など無かったが……たまにはこういうのも、楽しいものだな」
「まだまだ、ここからだよブラッド! 見てて、この位置からなら――!」
興奮冷めやらぬサンは、BBロボに拳を握らせ――。
「海からの侵略者と言うやつですか……いいでしょう! 倒してみせます!!」
宣誓の言葉から刹那、リュセフィーヌ機が放ったロケットパンチは超速で直進(ストレート)のままメカ男の顔面にぶつかって、確かな拳跡(ダメージ)をその躯体に刻み込む。
打ち出した拳が戻ってくる時間ももどかしく、リュセフィーヌ機は大地を疾りメカ男を蹴りつけると、自力で腕部を回収する。万一腕が溶かされでもしない限り、弾数は実質的に無限だ。尚且つ、遠距離武器にあるまじき発想だが、敵との距離が近くなれば近くなる程、腕の回収速度も上がるだろうか。
「……試して見ましょうか?」
パンチを放つごとにポセ男との距離を一歩詰め、戻ってきたパンチを即座に打ち出す。その繰り返し。遠距離から中距離に縮まり、中距離から近距離に詰め、近距離から零距離に。最終的にリーチの広い乱打乱撃に変貌し、その応酬に耐えられなくなったメカ男が距離を取れば、『一番最初』のロケットパンチがメカ男を抉る。
リュセフィーヌは拳の照準をメカ男に定める。一番馴染むのは、やはり、懐かしの『この一撃だ』
「よっし。やっと完成したぜ、巨大人骨型ロボ。マジで骨が折れたわ」
息を吐き、エスタシュが肩に掛けたタオルで汗を拭う。
「随分と、時間がかかってしまったな」
椋はその場から数歩後退ると、完成した機体の全身を隈なくその瞳に納める。
「まぁ実質二機分だからな。動力源は俺の『群青業火』。駆動系は人工筋肉的な何か……? を椋の絡繰り糸で制御する。駄目だ、自分でも何言ってるか分からなくなってきたぜ」
「筋肉あるのか? 骨なのに」
「外骨格って奴だ。多分」
造ったエスタシュ本人がこう思うのもアレな話だが、同じものを造れと言われても二度と作れる気がしない。
「これから戦闘だが、そりゃもう敵に突っ込むしかねぇだろうがよ……おい椋、じいっと見つめて何してんだ」
「何って、完成形の観察をしようと」
「……駆動系、お前が握ってんだから頼むぜ、マジで」
「細部の粗こそあれ、こんなに大きいと流石に圧巻……あいよ了解だ」
「粗っていうなよ。こっちは地味に気にしてるんだぜ?」
―――そして、人骨は『炎』を得、本格的に起動する。
遅れた分を取り戻すために、先ずは駆けつけ一発横合いからポセ男を思い切り殴打する。
左掌を開いて右掌を閉じ、右脚を前に左脚を後ろに。コクピット内、繭糸の如き無数の白糸を手繰り、椋は骸骨ロボを軽快に動かして見せた。
「――ロボだなんだというが、要はでかい人形だろう。からくり糸で繋がる相手と自分のいる場所が違うだけで、いつも通りだ」
「そいつは結構!」
鎧を着こむように、白骨はエスタシュの、群青色の焔を纏う。炎の中にあってしかし骸は決して燃え尽きず、その姿は焦熱地獄の具現化か。
「まさにその名――燃焼系カルシウムほね子と呼ぶにふさわしい!」
「スーザンちゃんだ!」
エスタシュが思わず叫んだ。
「いやしかし、本当にダサいなポセ男のネーミング……」
椋は一人嘆息する。ともあれ、このメカに、医術による身体の知識がどの程度通用するのかわからないが、第六感の赴くままにスーザンを繰り、『まるで10秒先の未来を見てきたかのように』相手の攻撃をいなし、目にも止まらぬ早業で、急所と思しき場所に群青の連撃を叩き込む。
触診の要領でメカ男三つ目の動力炉を盗み出せば、その躰はがくんと主電源が失せたが如く鈍くなる。
「更地にされる前に奴の骨を埋めてやろう」
群青業火をスーザンの右拳に、収束させた椋とエスタシュに呼応して、伽耶、サン、リュセフィーヌが頷いた。
「ゴールキーパーのモーションが役立つ時が来たね。一度捕まえたら二度と離さないわよ」
伽耶が地から、
「やはりモノを拳(コレ)ですか」
リュセフィーヌが骸骨と共に真正面から、
「ロケットパンチ! いっけ―――!!」
そしてサンが天から。
四者四様の拳が炸裂する。
黄金ゴーレムとBBロボの自在に伸びる腕部が天地からポセ男を絡め取り、不可避となったリュセフィーヌのダブルロケットパンチが追撃し、スーザンはその軌跡を辿って終点に全力を叩き込む。
それら全てを受け止めたメカ男はしかし不敵に笑い、
「ふふ、くくククク、良いでしょう、ならば小生の、真の姿を魅せましょう!」
――ヒッポカムポスと合体しやがった。
「ククク、そう!今の小生は神ポセ男!」
『海』が落ちて弱くなってやしないだろうか。
●機械仕掛けの神
だったらこちらも合体するしかない。11機のマシンは発光し、その光が収束し一つになると、物語に問答無用で終焉を齎すもの――デウスエクスマキナが顕現する。
「えっ、待ってください。光とかで合体シーケンス誤魔化さないで、最初から最後まできちんと見せてくださいよ。何がどうなってそうなったんですか。動画映えとかそう言うの考えましょうよ。後問答無用でかっこいいんですが、詳細な形状とか……解説したりなさらないんですか?」
断固断る。
鯱の突撃力と黄金ゴーレム隠し兵装のバンパーでメカ男を弾き飛ばす。反撃に放たれた電撃は第二の隠し兵装・避雷針で地に流し、最後の後付けもとい隠し兵装・料理鋏で蟹脚を断ち切る。
それでも反撃に吹き付けられた毒液は、盾に見立てたヘリのローターを高速回転させることで霧散させ、おもちちゃんの桜吹雪と潜水艇のステルスを組み合わせた幻惑魅了で、これ以上メカ男の攻撃を寄せ付けない。
突き出し万物を砕く拳の貫通力は、リュセフィーヌ機のロケットパンチ。そのままスーパーBBロボRXのロケットパンチの如く腕部が勢いよく伸長し、それでも合体したメカ男をつかんで離さない膂力はコンドルの輸送能力が転化されたモノ。
Leopardと異形の鳥人、奇しくも『砲』の形をとっていた二つの機体は更に合身し、究極とも言えるなまでの破壊力を得たそれは、『群青業火』を燃料に、あらゆる機体の全ての武装の一斉射と共に破局的な火力を噴き出し、メカ男ごとポセ男を塵一つ残らず焼却せしめた。
その余波で地が抉れ、海が蒸発し、島周辺の地形が激変したが……それでも基地が無事ならば、
即ち。
兎も角。
「良かった……これで基地は守られましたね……」
リュセフィーヌの、その一言に尽きる結果に――相違なかった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年05月06日
宿敵
『海神ポセ男』
を撃破!
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