Greetings from London
●明るい街
"Hi, what a good day. "
(やあ、いい天気だね)
"Yeah, winter has gone, and spring has come! "
(これで冬ともおさらばさ)
"Could be. ...Well, where are we going? "
(かもね。で、どこ行く?)
"I'm feeling a bit hungry. Shall we have a cup of tea?"
(お腹空いたし、お茶にしない?)
"Lovely."
(いいね)
待ち合わせしていたらしい若者たちが、歩き出す。ここは暖かな日差しが注ぐ、春めいた様相の白い都市。古典的なジョージアン・スタイルの石でできた街並みが延々と伸びる様は、近代で時が停止しているように感じさせる。その足元には、様々な看板と賑やかな話声。まるで古典的な屋台が並び、色とりどりの肌の色と服装をした人びとが、様々なものを買い付けている。猟兵たちがUDCアースで最も見慣れているであろう、日本という国の街並みとは全く異なる雰囲気は、真新しく映るかもしれない。
街角には色とりどりのケーキを並べた喫茶店。ジェラートや、アイスクリームの店も見える。紅茶で名高いこの国の人たちは、老若男女通じて甘党が多く、甘いものを並べる店も多いのだとか。少なくない観光客が舌鼓を打っている様子が、ガラス越しに見える。
立派な博物館に入ろうとする、大勢の人が見える。観光客も、地元の市民も軽装でカメラを持って、楽し気に飾られた品々を眺めている。あれはなに?と親に尋ねる子供。歴史ある絵画を見て、あーだこーだと語り合う老人たち。ミイラとガラス越しに記念撮影を試みる若者。気軽に触れられる文化を楽しむ様子が見える。
赤い二階建てのバスが走っている。黒い丸っこいタクシーが走っている。縦長の信号機に従って、背の高い人たちが歩いている。環状道路の真ん中には、人びとが息う天使を象った銅像がある。
街の名は、ロンドン。
連合王国と大層な名を持つ小さな国の首都であり、世界で最も有名な都市のひとつ。
―――――――――
――――
そんな楽し気な街並が、白く、白く、濃い霧に包まれた。
●グリモアベースにて
「UDCアースの、いつもとは違う国にまつわる予知がでた」
黒ぶちの眼鏡が光った。ベモリゼ・テモワン(アイアン・アーミー・f00062)は、無骨な指で、少なからぬ猟兵にとって見慣れない街の写真を指し示す。UDCアース世界ではあるが、どこかダークセイヴァー世界やヒーローズアースに通じる雰囲気を感じる猟兵もいるかもしれない。
「ユナイテッド・キングダム? イギリス? ……正しい名称は俺もよく知らんが、とにかく、そんな国の首都が怪異に巻き込まれるらしい。君たちには、その調査を頼みたい」
霧の都とも呼ばれる街、ロンドン。本来は産業革命のスモッグによる過去の名だったともいわれるが、今回生じる霧はUDCによる明らかな異変である。白昼晴れていた中、突如街を覆う濃い霧が現れるなんて、自然現象ではありえない。
「今回一番の問題は、どこに霧が現れるかわからないということだ」
悩みどころでねとベモリゼは続ける。曰く、【怪異はその場で日常を満喫している者達のもとに現れる】とのことなのだ。
「だから、君たちにはロンドンという街を満喫してもらいたい。……もちろん、任務ということを忘れない範囲でだ」
最後は一応とばかりに付け加え、茶目っ気たっぷりにウィンクする。
どこまで本気で言っているのかなど、明らかだった。
「ロンドンの日常をどのように満喫するかは、君たちの判断に任せる」
名物の紅茶に舌鼓を打ってもいいし、無料で入れるという美術館を楽しんでもいい。古典的な街並みや歴史ある広大な公園を、散歩するだけでも楽しめるだろう。楽しみ方は、猟兵の数だけ存在する。
「……ちなみに、料理がまずいというジョークがあるが、最近のロンドンは国際化が進んで料理のレベルが上がっているんだとか。不味い店を探す方が大変かもしれないな」
イギリスの伝統料理といえば、フィッシュ&チップスに、イングリッシュ・ブレックファスト、フィッシュパイにミートパイ、ジャケットポテトなどがある。料理を楽しんでみるのもまた、一興かもしれないなとベモリゼは笑う。
「難しく考えることはない。楽しんで、異変が現れたら調査して、原因を発見したら解決するまでの依頼だ。君たちにとって、容易いことさ」
俺は信じているよと屈託なくほほ笑む。猟兵たちの転送が始まった。
隰桑
フィッシュ&チップスを食べたら胃もたれした隰桑です。
あれ、意外と大きいんですよね。
最近離脱するしないで何かと話題な国が舞台となります。
●依頼について
一章:イギリス観光 (天気は晴れ、観光のみ、霧は出現いたしません)
二章:異変(霧)の出現→探索
三章:原因解決(戦闘)
の流れになっています。
イギリス描写については、隰桑の持てる限りの技術で再現を頑張ります。やってみたい内容を遠慮なく送ってくださいませ。一章の天候は「晴れ」ですので、お気を付けください。一章終了後、二章のプレイング受け付け時に「霧発生」の描写を行います。また、観光中、グリモア猟兵は登場しません。呼ばれても描写できません。
戦闘難易度はそれほど高くない想定です。どうぞお気軽に参加くださいね。
なお、世界の加護を受けた猟兵は英語が理解でき、話せます。羨ましいですね。
●隰桑について
アドリブは呼吸のようなものです。やめられない止まらない。
アドリブでの連携描写は好物です。連携不可の場合は【連不可】と三文字記載をお願いします。
第1章 日常
『たまには寄り道を』
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POW : 体力が続く限り目いっぱい楽しむ
SPD : とにかく沢山の観光名所を訪れる
WIZ : あらかじめ計画立ててから観光を楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
【追記】
「プレイングの〆切予定は、5/11(土)8:30」となります。
集まり次第ですが、執筆は土曜日から来週頭にかけて行う予定です。それ以前にプレイングを送信していただけますと幸いです。また、プレイングを再送信していただく手間をおかけしますが、早く送信していただけるとその分リプレイの内容を考える時間が増えますので隰桑が喜びます。
どなたさまも、奮ってご参加くださいませ。お待ちしております。
【追記その2(5/10 3時更新)】
隰桑の本業の都合により、予定していた土日の執筆更新が難しくなりました。
お客様には大変ご迷惑をおかけしますが、
《5/12(日)朝8:30失効までのプレイングは一度流してしまう》
ことになります。5/8(水)までに送信してくださったプレイング9名様が対象で、お気持ちに変わりがなければ、再送信をお願いいたします。それに伴い、執筆時間と月曜朝失効の6名様を失効前に採用する関係で
《再送信は5/12(日) 夜22:00まで》
にお願いします。いただいたプレイングには既に目を通し、執筆上問題ないことを確認していますが、再送信にあたって書き直しがあっても構いません。書き直したこと自体を理由に却下することはありませんので、ご安心ください。
また、繰り返しになりますが
《再送信を除く、新規プレイングの締め切りは、5/12(土)8:30》
です。変更はありません。すでにたくさんのプレイングをいただいていますが、プレイングはまだまだ募集中です。皆で楽しみましょう。送信は、どうぞご遠慮なく。
あらためて、皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
隰桑 拝
ヌル・プラニスフィア
霧の都 ロンドン ね。
しばらくホームを出ていなかったし ぶらり歩くとしようか。その傍ら地形の確認も出来るしな。
散策しつつ、茶葉や茶菓子を探して 土産物にするとしよう。
茶葉には詳しくないのだが、土産にするなら 見た目も華やかなほうがいいと思う。
ポットに入れれば 青と 小さな赤の花びらが広がり。香りは控えめ 柑橘系の。薄いハチミツ色の液体に 茶葉の花びらが栄えるような。
そんな、うってつけのハーブティーはあるだろうか。
一度だけ飲んだことがあるんだ。
あれば買い、なければ次の店へ。見つかるまで探せばいい。
ぶらり ぶらりと。風に誘われて。街に誘われて。一粒の宝石を求めて。
なんてのも たまにはいいだろう。
●His name is NULL
「(霧の都ロンドン……ね)」
喫茶店のテラス席に、春めいた陽射しに不釣り合いなほど服を着込んだ不愛想な男が座っていた。イタリアン・エスプレッソの濃厚な雫を舌の上で転がしながら、乳白色の瞳が流れていく車を眺める。珈琲の苦みをひとしきり楽しんだあとでシガー・ケースから取り出した煙草に口づければ、甘い煙が口いっぱいに広がる。
「(しばらくホームを出ていなかったし ぶらり歩くとしようか。……その傍ら地形の確認も出来るしな)」
視点はあくまで、そのあとの戦闘を見据えながら。ヌル・プラニスフィア(das Ich・f08020)は煙草の先を灰皿に押し付け火を消して、くしゃくしゃの紙幣を灰皿の下に噛ませて立ち上がると、散策に向かった。
●Walking In The Calm Wind
「May I help you? (なにかお探しですか?)」
人懐っこそうな茶髪の若い店員が、笑顔で尋ねる。白いコートに白のマフラー、全身を防御しているヌルを見ても、彼女は違和感を感じていない。ヌルが猟兵たる証だった。
「……ああ、茶葉を探しているんだ」
自分の様子を全く気にしていない風に、ヌルは不愛想な顔で肯首する。
「What kind of tea do you want? (どんな紅茶をご所望ですか?)」
「……そうだな、華やかな見た目をしている」
乳白色の視線は、棚に並べられた幾つもの茶葉に向けられている。違う、これも違う。これも駄目だ。次々にダメ出しをしながら、物色を続ける。
「茶葉には詳しくないのだが、ポットに入れれば、青と小さな赤の花びらが広がり、香りは控えめで―― ……柑橘系。……薄いハチミツ色の液体に 茶葉の花びらが栄えるような――」
ぽつり、ぽつりと噛みしめるようにイメージを伝えていく。
「――そんな、うってつけのハーブティーはあるだろうか」
一度だけ飲んだことがあるんだ、と彼は懐かしむように伝える。健気な店員がその願いをかなえようと、幾つかの茶葉を持ってきて、それらを試飲する。甘い味、渋い味、柑橘の柔らかな味、花びらが広がりそうで、閉じていく。ヌルはゆっくり首を振った。
「……邪魔したな」
からんからんと扉の鈴が鳴る。
この店にはなかった。だが、次の店にはあるかもしれない。
時間はたっぷりある。
まるで未だ一人冬を過ごしているかのような白いコートが、春風でゆるりと揺れる。
ぶらり、ぶらりと。風に誘われて。街に誘われて。一粒の宝石を求めて。
たまにはこんな日常も、悪くない。
大成功
🔵🔵🔵
皐月・灯
ユア(f00261)と
荒事ご予約済みのデートプランかよ……
まあ、お前の誘いって時点で分かってたけどな。
観光っつっても、何から手ぇ付けりゃいーんだ?
……あのな、オレは別に甘いもんなんて…………まあ。悪く、ねー。
なあユア。
あの店の窓に並んでるヤツ、全部そうじゃねーか。
やっぱりな、この辺は菓子屋の一角だぜ。バターの匂いでいっぱいだ!
こんなにテーブルが狭く感じるとはな……相手にとって不足はねーぜ。
紅茶もいいけど、オレはこっちだ。
どれ、マカロンから……あん?
しょーがねーなー……ほら、やる。ケーキと交換だからな。
っ、あ、あーんはやめろ、やらねーぞ!
……ったく、魔力消費のたけーデートだ。先に補給するからな。
ユア・アラマート
灯(f00069)と
たまには荒事のないデートもいいものだろう?
まあ、後々荒事にはなるんだが、今は平和に過ごせるんだ。満喫しよう
私もロンドンは初めてだから少し調べてみたよ
甘い物ならカップケーキや、チョコにマカロン…色々あるみたいだな
こうやって見て歩いてるだけでも店がたくさんある
そうだ、甘いものが良いなら休憩がてらカフェでアフタヌーンティーでもしないか?
うわあ…この光景はちょっと。いやだいぶテンション上がるな
この紅茶もすごくおいしいよ
あ、灯そのマカロンは私がほしい。変わりにこのケーキは譲るから
……あーんする? ふふ、冗談だよ
事件を解決するまでがデートなんだから、ここまでで満足して帰るんじゃないぞ?
●wandering for sweets
「たまには荒事のないデートもいいものだろう?」
銀の髪をした狐がほほ笑む。緑色の瞳は、移り替わるように真新しい周囲の情景を前にしてもどこか余裕のある優雅さを保っていた。硝子張りの店頭に並んだ雑貨を眺めていたユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)が、傍らの少年へと視線を移す。
「……まあ、後々荒事にはなるんだが、今は平和に過ごせるんだ。満喫しよう」
冗談めかして言う様は、まるで春に花が花弁を開くように魅力で満ちていた。
「荒事ご予約済みのデートプランかよ……」
そんな彼女の様子に、橙と薄青、二色の瞳をした魔術師が苦笑する。「(まあ、お前の誘いって時点で分かってたけどな)」と内心呟く。彼の苦笑は、決して不快からくるものではなかった。
「観光っつっても、何から手ぇ付けりゃいーんだ?」
俺はわかんねーぞとばかりにぶっきらぼうに、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)は尋ねる。
「私もロンドンは初めてだから少し調べてみたよ」
その店は入るまでもなく満足したらしく、ユアが歩き出せば灯も自然とついて行く。
「甘い物ならカップケーキや、チョコにマカロン……色々あるみたいだな」
こうやって見て歩いてるだけでも店がたくさんある、と指さす先にはジェラート店。
「……あのな、オレは別に甘いもんなんて……――」
抗議するように口を開いた灯が自分をじっと見つめる緑の瞳に気づいて言葉を切る。
「――…………まあ。悪く、ねー」
なかなか離れない視線に根負けしたのか、灯がしぶしぶ認めると、ユアはくすくすと笑った。
「そうだ、休憩がてらカフェでアフタヌーンティーでもしないか?」
「……良さそうな店があって、気が向いたらな。ほら、行くぞ」
素っ気ない灯に、ユアが肩をすくめる。二人の若き猟兵は、若者が集う繁華街へと続く煉瓦造りの歩道を歩き、探索を続けていく。
●Finding a cafe
赤色に塗られた背の高いクラシックな公衆電話ボックスを通り過ぎ、丸っこい黒タクシーが通り過ぎるのを待って、二人は道を渡る。道の角の、フェドラ・ハットが積み重ねられた帽子専門店の前を通り過ぎて、道を曲がる。
「……なあユア」
曲がったところで、ふいに立ち止まった灯が、指で店を指し示す。
「あの店の窓に並んでるヤツ、全部そうじゃねーか?」
歩み寄った先の店のショーガラスには、カップケーキに、チョコに、マカロン。色とりどりのスイーツが並べられている様が見える。ダークブラウン、ピンクに黄色、青に、白。それは、誰しも心を躍らせてしまうような光景。
「本当だ。これは、なんとも見事だな」
応じるユエの声も、どことなく楽し気である。
「やっぱりな、この辺は菓子屋の一角だぜ。バターの匂いでいっぱいだ!」
すんすんと鼻翼を動かして、灯が目を輝かせる。
からんからんと、入店を知らせるベルが鳴る。
気づいた時には、二人は注文を終えていた。
●Our happiest day
二人のついたテーブルを埋め尽くすように、ケーキが、マカロンが、紅茶が、並べられていた。可愛らしい天使が掘られたアンティークテーブルの上は、まるでおとぎ話のように花やかで、楽し気な光景。ケーキの上のふわふわクリームが、見た目鮮やかなマカロンの丸い形が、かぐわしい紅茶の香りが、食欲をそそる。
「うわあ……この光景はちょっと。いやだいぶテンション上がるな」
それまで以上に、興奮を隠しきれない風にユエが笑いかける。
「こんなにテーブルが狭く感じるとはな……相手にとって不足はねーぜ」
食いきれるものか!と居並ぶスイーツたちへ挑戦状をたたきつけるかのごとく、灯は不敵に笑う。
「灯、この紅茶もすごくおいしいよ」
温かな紅茶に口をつけて、ユエがカップを小さく揺らす。レディ・グレイの爽やかな風味が、歩き回って乾いた喉を潤すのを感じた。
「……紅茶もいいけど、オレはこっちだ」
銀色のフォークで、橙色と青色の、ふたつのマカロンを次々に刺す。
「あ、灯。そのマカロンは私がほしい。代わりにこのケーキは譲るから」
「どれ、マカロンから……――あん?」
口に運ぼうとして、止める。一瞬、ユエと灯の目線が交差する。
灯が思考すること、数秒。
「しょーがねーなー……ほら、やる。ケーキと交換だからな」
諦めて、マカロンを差し出す。
「……あーんする? 」
マカロンを受け取りながら、ケーキを切って、フォークを突き立て差し出す。
「――っ」
サァ――と、灯の頬が朱く染まる。
「……あ、あーんはやめろ、やらねーぞ!」
ユエの顔を見ていられなくなって、顔を逸らす。
「……ふふ、冗談だよ」
口許を綻ばせたユエが、ころころと一層楽し気に笑う。
「事件を解決するまでがデートなんだから、ここまでで満足して帰るんじゃないぞ?」
窘めるように、言葉を続ける。
「……ったく、魔力消費のたけーデートだ。先に補給するからな。」
ぶつくさと文句を言いながら、ケーキを奪うように受け取って、頬張る。口に入れた瞬間、灯の顔が一気に和らぐ。口でなんと言おうと、彼は甘党なのだった。その様子を見て、ユエは嬉しそうに目を細める。
甘く幸せなロンドンの日常が、繰り広げられていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
五百雀・斗真
日常を満喫してると怪異にあうって不思議な話だよね
気になる現象だしきちんと調査できるように満喫しよう
えっと、確か無料で入れる美術館があるんだっけ
それじゃまずはそこに行って鑑賞したいな
躍動感のある作品や吸い込まれそうな絵画があったら
暫くじっと見つめて動けなくなりそう…
多分息をするのも忘れて見入ってしまうかも
…って、案の定…息が止まってた
息はちゃんと吸おう…
危ない、危ない
夢中になり過ぎるとどうも何かが抜けちゃうな…
あ、美術館でポストカードとか売ってるかな?
売ってたらお土産に買っておこう
鑑賞後はお昼ごはんを食べに行って
食後におすすめのジェラートやデザートも頼んで
お腹も心も満たせたらいいな
※アドリブ歓迎
●Seeking for the best art
「さて、どこに行こうかな」
吹き抜けの巨大な立方体形のエントランスの真ん中で、乳白色の髪をした青年がぽつりとつぶやいた。古い火力発電所を改装して作られたという現代美術館の内装は、古めかしさを感じさせない。五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)はシューズの音を極力殺し、エスカレーターで登っていく。手には館内地図。時間は十分にあった。
「(へぇ、これは有名な絵じゃないか)」
ふと立ち止まる。泣いているような女の絵があった、しかし明らかに奇妙であった。女の顔は上と下で別けられ、正面を向いているようでありながら、横向きにハンケチを噛んでいるようにも見える。明らかに人間の顔をしていないのに、醜い女の顔だとわかる象徴性。パブロ・ピカソという画家の絵だった。UDCエージェントであり、猟兵である彼の表の顔はスプレーアーティスト。それだけに、絵の持つ力を感じてとれた。
「(こんな絵が無料で見れるなんて、なかなか良いんじゃないか)」
上機嫌で歩いて行く。次はどんな面白いものがあるのだろうかと胸を高鳴らせながら。
●Markus Rotkovich
「……これは」
そこは、しんとした薄暗い部屋だった。四方の壁には、大きな"棒" が描かれたシンプルな絵。たしなみのない人間には、その意味は理解できないだろう絵。
絵の奥へ、世界が広がっていくように感じられる。
絵の奥の世界と現実を隔てる、大きな扉のようにも感じられる。
一直線のように見える"棒" だが、その境界は曖昧で、見れば見るほど不確かになる。
まるで夢を見ているかのような、不思議な絵。
まるで哲学するかのような蠱惑的な絵に、斗真の目は釘付けになっていた。
息をすることも忘れて、ただただ見入る。壁を見つめられるように設えられた、部屋の中央のベンチに一人座って、時が流れていくのにも気づかない。
「……あ。息が止まってた」
苦しくなって、ようやく気付いた。深く息を吸う。(息はちゃんと吸おう……)なんて、心の中で苦笑する。不快や後悔はなかった。
「(危ない、危ない。夢中になり過ぎるとどうも何かが抜けちゃうな……)」
腹の虫が鳴っているのに気づき、慌てて立ち上がる。もうお昼だった。帰ろうとして、美術館の売店が目に入る。お土産、何か買って帰ろうかな。棚の中で、不意に見つけたので、あの《部屋》の絵が描かれた赤いポストカードを手に取る。
「(仕方ないことだけど、現物を見た後じゃ――小さな絵で満足はできないな)」
心の中で苦笑しながら、それでも記念にはなるかとレジへ向かった。お金を払いながら、店員のお姉さんに昼食におすすめのお店を尋ねる。近くのイタリアンがオススメで、ジェラートが絶品なのとウィンクまじりで教えてくれた。ありがとうとお礼を言って、美術館を出て、教わった方向へと歩き出す。テムズ川から吹いてくる海風ならぬ、川風が心地良い。
昼食後、ストリート・アートで満ちた裏路地を進んでいく。
口の中には、まださっきのジェラートの味が残っている。
その足取りは、満ち足りて軽やかなものだった。
大成功
🔵🔵🔵
ウイシア・ジンジャーエール
UDCアースの依頼は何回か熟しているけれど、海を渡った事は無かったわ。
建造物は、何となくダークセイヴァーと似ているのかしら。
けれど、活気が合って、人々の表情も明るい。素敵ね。
同行者(f00924)(f14041)
●WIZ行動
観光ガイドブックを持参(大量の付箋)。
旅行は初めて。この機会に色々と見て回りたい。
「知る」という事に人生の重きを置いています。
建造物を中心に、歴知的価値のある物を見る。
同行者2名は同旅団。特にナオとは古い付き合い。
今回、私が依頼を紹介し、2名と同行する事になった。
ただ、建造物に興味はないらしい。
私は好きな事するから、あなた達も好きに動きなさいな。
尾崎・ナオ
同行1:ウイシア・ジンジャーエール(f09322)
同行2:セリオン・アーヴニル(f00924)
行動:WIZ(観光)
ウイシアが、気になる依頼があるから行こうって誘ってきてー。
ナオちゃん特に興味ないから、一人で行けばぁ?って言ったら、
セリオンさんが、興味あるから自分が行こう、とか言い出すしさぁ。
えー、やだちょっとナオちゃん置いてくの?それはやだーって着いてきた。
観光とか興味は無いにゃー。ナオちゃん戦闘の方が好きぃ。
でも、まあ? 折角だし? そこまで言うなら?
セリオンさんの腕にガバッと引っ付いて「キャー!次こっちいこー!!」
セリオンさんにウザがられ、頭を鷲掴みにされても離さない意気込み。
セリオン・アーヴニル
《行動方針:WIZ》
ウイシア(f09322)及び尾崎(f14041)と同行。
基本的には同行者二人に付いて行きつつ…
まぁ、一種の荷物持ち位はやっておくつもりだ。
道中では尾崎の相手をしながら――おい、ベタベタし過ぎだろ…まぁ良い。
ともかく、邪魔しない程度にウイシアへ行きついた名所の解説を頼もう。
時折、手持ちのデジカメ辺りで風景や二人の写真を撮って回る。
普段写真を撮る事自体無いんだが…折角の旅行先だ。
たまには普段やらない事をやるのもアリか。
ウイシアも尾崎も言ってから撮ろうとすると何かと身構えるだろうから、
二人には悪いが半ば隠し撮りのような形で撮る予定。
その方が自然な表情も撮れるだろうしな。
●my favorite picture
「これが有名な聖ポール大聖堂……確かにちょっと、ダークセイヴァーに似ているかも」
ウイシア・ジンジャーエール(探索者・f09322)は、色白の指で顔にかかった前髪をはらって、天高くそびえるかのように巨大で丸いドームを見上げる。バロック建築様式の白い石造りの聖堂の中は、きらきらと金色に輝き、精緻に描かれたステンドグラスが陽の光を受けて色づいた影を落としている。きょろきょろと歩くウィシアのヒールが床と触れ合うたびに、コツコツと音が反響して響いた。
UDCアースで数多くの事件を解決してきた彼女であるが、海を渡るのは初めてのこと。日本という国では見られぬ文化物は、どれも目新しいものばかりで、好奇心は掻き立てられてばかりである。
「ねー、ウイシアー。次行こうよ、次ー」
「もう。だから、好きに動きなさないなと言ったのに。もう少しだけ、待ってください」
軽薄に、気だるげに、急かす声が隣で響く。黒く長い髪が、くるくると動くその動きにあわせて舞った。尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)は、建物に目を奪われ続けるウィシアの様子を前に、堂々ため息をついて聖堂を出ていった。まるで飛ぶように軽快に石段を下っていった先で、パシャリとシャッター音が耳に入る。
「なんだなんだぁー、隠し撮りかぁ? セリオンさん~」
デジカメを構える黒髪の男を見て、ナオはにやりと笑う。セリオンと呼ばれた男がデジカメを下ろすと不機嫌そうな仏頂面が現れた。
「折角の旅行だからな。写真ぐらい撮るさ」
不意打ちは当然だろう?とばかりに平気な顔。漆黒の瞳、漆黒の髪、どこか不気味な雰囲気は、見る人が見れば魔術師然としていると表するだろうか。残念ながら、UDCアースのロンドンには魔法使いはおらず、世界の加護の甲斐もあって、一般人たちはその整った外見にのみ少し興味を惹かれて、じきに興味をなくして歩き去っていく。
「ちゃんと言ってくれれば、最高のポーズで写真を撮らせてあげるのにー」
腰を曲げてセリオンを見上げるように、にへらにへらとナオが笑う。
遠慮しておくと、にべもないセリオン。
「あらあら、仲良しですね」
聖堂を見終えたらしいウイシアが、そんな二人の様子を茶化す。
もういいのか?と尋ねるセリオンに、こくりとウイシアは頷いた。
「見事な聖堂だったが、これはどういう歴史があるんだ?」
なんて尋ねれば、ウイシアからは淀みない解説が入る。曰く、初めて建てられたのは7世紀で……、その後今の聖堂はクリストファー・レンによって再建されて……、美しいギボンズの彫刻が……、ウィンストン・チャーチルが……、などと止まらない。
「……そうか、わかった。あっちに見える、黒い銅像はなんだ?」
仏頂面のまま、キリを見計らって話を変えるように尋ねる。聖ポール大聖堂の南、道を挟んで向かい側に三人の男の像があった。
「あれは、消防士記念碑ですね。その奥に見えるのが、ミレニアムブリッジですよ」
歩きながら、ウイシアがその歴史を解説する。
「ほう。横揺れが原因で開通直後に閉鎖されたとは、なんとも不憫な橋だな」
それじゃあ――とセリオンが次を尋ねかけて、不意に腕を掴まれた。
「キャー! セリオンさん! 次こっちいこー!!」
解説に飽きたのか、ナオが割り込んでセリオンを橋の方へと引っ張っていく。
「おい、引っ張るな!」
セリオンがナオを引きはがそうと、ぐいと頭をわしづかみにして力を籠める。だが離れない。猟兵対猟兵。ナオとセリオンのPOWは大体同じくらい。勝負はすぐにつきそうにない。二人の様子を後目に、カモメが飛び交うテムズ河上の橋をウイシアが涼し気に歩いて行く。
「ああー! 待ってよ、ウイシアー!」
がばっと離れて、橋の向こう側の美術館へと歩いていくウイシアをナオが追いかけだす。あの四角い塔は何?と発電所を改装して作られた現代美術館の特徴的な姿を指さすナオに、大量の付箋が頁の端々から伸ばされた観光ガイドブックを開いて、アイシアが説明する。
「――やれやれ」
ようやく解放されたセリオンは苦笑交じりに二人の様子をじっと捉えて、シャッター音を響かせた。そこには、ロンドンを満喫する友たちの姿が収められていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シュデラ・テノーフォン
アノジョーク面白いよね
俺はバタード・フィッシュ嫌いじゃないけどなァ
てな訳で、ロンドンを食べ歩こうか
その前にスーツ見に行こう
英国紳士の服装、スタイリッシュで良いよね
勿論着るからにはレディファースト心掛けなきゃ…なんて
先ずはパイ料理
甘いのも好きだけど煮込んだ肉入りの食べたい
滑らかなポテトマッシュを絡めてね、アレホント美味しいよ
肉と言えばローストビーフも定番だよね
日曜なら色んなサンデー・ローストあるけど…やっぱ牛が良いかなァ
是非ミディアムで
アフタヌーンティーの国だし紅茶と菓子も外せないよね
スコーンにクロテッドクリーム沢山付けて食べるんだ
後は紅茶飲みながら霧を待とうか
仕事終わりはトライフル食べたいなー
●A Gentle Chimaira
「お先にどうぞ、お嬢さん」
扉を引いて、見知らぬレディーに先に入るように促す。伸びた背。ぴたりと体にあったスーツ。洗練された動作。白い長髪と、狼の耳。腰から伸びる白い翼。伏せられた金の瞳は、穏やかそのもの。シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)は英国紳士然としてロンドンの街に溶け込んでいた。下ろしたての背広は、ロンドンで仕立てさせたものだった。
レストランに入り、音もなく席につき注文する。
日常を楽しむなら、やはり食べ歩き。美味しいものを食べに来た。
ご注文は何にしますか?と尋ねるウェイターに微笑んで、口を開く。
「――そうだな。先ずはパイ料理。甘いのも好きだけど、煮込んだ肉入りのが食べたいな。……それから、滑らかなポテトマッシュを絡めてね、ホント美味しくて、好きなんだ」
手慣れた様子で注文をすれば、心得たように店員はそれを書きつける。
「ああ、"定番(にちじょう)"ならローストビーフもかな」
思案の途中、思いつきを口にする。肉は何にしますか?と店員が尋ねる。
「………やっぱ、牛が良いかなァ」
焼き加減は?と尋ねられれば。
「――是非ミディアムで」
穏やかに笑う。気取るまでもない、彼にとってはただの日常(ていばん)。
注文を終えて、ふっと外を見る。
食べ終えたら、何をしようかと考える。
「(アフタヌーンティーの国だし紅茶と菓子も外せないよね)」
紅茶とお菓子、想像するだけで楽しくなる。
「(……スコーンにクロテッドクリーム、沢山付けて食べるんだ)」
脳裏に浮かぶのは、きつね色に焼けた菓子と少し固くてとろけるクリーム。甘さが口に広がるように感じられる。霧を待つだけだったら、きっとそれで十分。だけどそれは、ご飯を食べてからのお楽しみ。
近くのテーブルで、家族連れが団欒している。子供が口をべたべたと汚しながら、ケーキのようなものを食べている。それを窘める母親が見える。楽しそうに笑っている父親が見える。シュデラは呟く。
「……仕事終わりには、トライフル食べたいなー」
遠くから、からからとパイの載った皿を運ぶウェイターの足音が聞こえた。
白き猟兵の日常は、まだ始まったばかりである。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
【ミルフィ・クロックラヴィット(f02229)】
と参加
アドリブや他の方との絡み等も歓迎です
ここが
UDCアースの『ロンドン』…
とても平和な街ですけど…
何か
とても懐かしい様な
気持ちになりつつも…
ミルフィとご一緒に
まず街を満喫です♪
『いろんなお店がいっぱいありますね…ミルフィ♪』
お気に入りの
空色エプロンドレスに身を包み
いろんなお店を周ります…♪
『あ…♪これ…私も大好きな、あの童話モチーフの小物…?』
『不思議の国の童話』モチーフの
小物を扱ったお店を見つけて
お買い物をしたり
すてきなカフェで
ミルフィと紅茶の時間を
楽しんだりします♪
『紅茶に、この「ヴィクトリア・スポンジケーキ」も…とってもおいしいです…♪』
ミルフィ・クロックラヴィット
【アリス・フェアリィハート(f01939)】
姫様と参加
アドリブや他の方との絡み等も歓迎
此処『ロンドン』は
UDCアースでは
とても有名な街の様ですわね
怪異が起こるとは
到底思えぬ雰囲気ですが…
アリス姫様と御一緒に
先ずは街の探索と参りましょう
『流石に有名な街ですわね…アリス姫様、迷子にならぬ様お気を付けて…』
時折
懐中時計で時間を見つつ
アリス姫様と街を探索♪
『不思議の国の童話』モチーフの
小物を扱った店で
アリス姫様と買い物や
『あの童話は、この街が在る国――イギリスで生まれたそうですわ…♪』
素敵なカフェで
アリス姫様と紅茶の時間を
満喫♪
『この「バノフィー・パイ」も、ストレートティーとの相性が宜しいですわ…♪』
●Alice's Adventures in Wander London
「いろんなお店がいっぱいありますね……ミルフィ♪」
青い瞳をわくわくで輝かせて、くるりと振り返る。金の髪、古典的なエプロン・ドレスに身を包んだ彼女の背には、まっすぐ伸びる道と、可愛らしい外観の店の並び。アリス・フェアリィハート(猟兵の国のアリス・f01939)は、生まれて初めてやってきた大理石の街に興奮を隠せない様だった。
「流石に有名な街ですわね……アリス姫様、迷子にならぬ様お気を付けて……」
つけ耳をぴょこぴょこ、胸をゆさゆさと揺らし、ピンク色の髪をしたメイドが追いかけてくる。フレンチメイド・スタイルながら露出の大きいメイド服に包まれた体は、8歳の少女のものとは思えないほどだった。道行く大勢の市民や観光客の中で、姫様を見失わないように必死についてきているのが、ミルフィ・クロックラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・f02229)である。
「ごめんなさい、ミルフィ。なんだかこの街、懐かしい空気がして、歩くのがとっても楽しいんです♪」
オラトリオのお姫様は、ふわりと笑う。
「仕方ないですねぇ。時間はきちんと守らないとダメですよ、姫様♪」
金の懐中時計でちらりと時間を確認しながら、ダンピールの従者が窘める。
わかっていますとアリスが走りだし、ああもう!とミルフィが追いかけて行った。
●Antique about the story
「あ……♪ これ……私も大好きな、あの童話モチーフの小物……?」
灰色の煉瓦の道を行き、不意にアリスが立ち止まる。視線の先には、ひとつの店。そのショー・ウィンドウには、小さな兎と追いかける少女。眺める奇怪な男と、気色の悪い笑顔の猫。青い瞳が、嬉しそうに輝く。
「そうですよ、姫様♪ あの童話は、この街が在る国――イギリスで生まれたそうですわ……♪」
姫様の楽し気な様子を見て、赤い瞳が幸せそうに細まる。ミルフィがふわりと説明すれば、アリスはますます喜んで店の中へと入っていく。二人の時間はまだまだ終わらない。
●cafe
「紅茶に、このヴィクトリア・スポンジケーキも…とってもおいしいです……♪」
クラシックな調度品で整えられた店内に座る少女たちの様は、まるでおとぎ話のお茶会のようだった。スポンジケーキを上品に小さく切ると、中からとろりとジャムが溶け出す。フォークで器用に掬いながら、アリスは幸せそうに咀嚼する。
「このバノフィー・パイも、ストレートティーとの相性が宜しいですわ……♪」
アリスの向かいで、ミルフィが頷く。キャラメルのほろ苦い味がクリームと共に口に広がって、続けて紅茶を飲めば、紅茶の香りが鼻腔一杯に広がった。
「ふふふ♪ ミルフィ、口にクリームがついているわよ♪」
とってあげる♪と、アリスが手を伸ばしてナプキンでミルフィの口許を拭う。顔を真っ赤にしたメイドを見て、姫様は楽しそうに笑った。
「もう、恥ずかしいです……でも、ありがとうございます、姫様♪」
金の懐中時計の針が進んでいく。まさしく、幸せな日常を満喫していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リンタロウ・ホネハミ
ここがロンドンって都市っすかぁ
オレっちの故郷の自由都市と似てるようで違う街並みっすね
そんじゃ霧が現れるまでこの街を楽しむとするっすか!
まーオレっち、この国の言葉はわかんないんすけどね!
だけど大丈夫、異郷の地で知らねー人と仲良くなるのは大得意っすから!
『コミュ力』を駆使して道行く暇そう人をナンパ…じゃなかった、捕まえて観光案内を頼むっす!
いやぁ歴史ある街ってのは歩いてるだけで面白いっすねぇ
ほほう、この観光名所はここが見どころと!
ってな感じのことを身振り手振りで伝えるっすよ!
そんな感じで観光を楽しんで、ところでお姉さんこの後ヒマっすか?
良かったら……じょ、冗談っす、仕事なのは忘れてないっすよ!?
パーム・アンテルシオ
遠くの国に旅行かぁ。ふふふ。ちょっと楽しみ。
それにしても…この街の、この景色。
ダークセイヴァーが、綺麗に未来に向かったなら。
こんな景色になるのかな。なんて。
さて、お仕事だね。日常を満喫する、かぁ…
そうなると…観光名所みたいな場所には行かない方がいいのかな。
時計台の上とか、登ってみたかったなぁ。ふふふ。
それじゃあ…アフタヌーンティー、っていうのを楽しんでみようかな。
お菓子を食べながら、紅茶を飲むんだよね。ケーキとか、パンとか。
…ほんの少し、こないだ行った依頼の森を思い出すけど…
楽しむ時は、楽しむ。今は、楽しむ時。だよね。
…パンフレットを読んで楽しむぐらいなら、許して貰えるかな…?
【アドリブ歓迎】
●Thinking About A Plan
「日常を満喫する、かぁ……」
困ったように、呟いた。どうしようか悩む。目の前には、湯気立つ紅茶と、ピンク色のストロベリー・クリーム・ケーキ。なんとなく桜を思わせて、それから上に乗るベリーが可愛らしかったから選んだもの。パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)はその細い小さな指で、カップを持ち上げて紅茶の香りを楽しんでいた。
「……やっぱり、観光名所みたいな場所には行かない方がいいのかな」
地図を広げて、オススメ!と書かれたいくつもの観光名所の写真を見比べる。
「時計台の上とか、登ってみたかったなぁ。ふふふ」
口ぶりとは裏腹に、どこか楽しそうに笑う。なにせ、高名な時計台――ビッグ・ベンと親しまれる建造物は2021年まで修理中。望んだって観光客は登れない。だから折角の機会にこうしてお茶をしているだけなのは悔しいんだけど、その悔しさも晴れようというものだった。
小さくケーキを切り分けて、口を汚さないように食べる。素朴な甘い味が、広がる。
薫風が吹いて、桜色の髪が揺れる。これがロンドナーだと普通ですよと言う店員のおすすめで、通りに面した店外のテラス席に座るのは、なんだか落ち着かないのだけど。道行く人たちは、市民も観光客も、パームを気に留めない。それが普通の、ロンドンの日常だった。
すぐ近くを、赤いロンドンバスが走っていく。二階建ての二階席で、黒い肌をした子供がパームに手を振ってきた。微笑と共に、小さく振り返すと、くしゃくしゃと子供らしい笑顔が返ってきた。信号が変わり、子供を乗せたままバスが走り去っていくと、パームは再びケーキに戻る。遠くから、路上演奏のバグパイプの音が聞こえてきた。
「……この街の、この景色」
ぽつりと呟く。
――ダークセイヴァーが、綺麗に未来に向かったなら。
――こんな景色になるのかな。
思い出す。霧を産む茸がいた。不死鳥に身を焼かれし騎士がいた。冷気に抗った吸血鬼がいた。聖女の成れの果てに歌った。彼らのいる場所に、虐げられた人たちがいた。あの人たちにもいつか、こんな日常を過ごす日がくるのかもしれない。
もしそうなら、きっと――
「……なんてね」
考えすぎかなと笑う。
「すみません、そこの可愛いお姉さん。もしかして、ヒマっすか?」
不意に、声をかけられた。
時は少し巻き戻る。
●the Best Communication Beyond Cultures
「ここがロンドンって都市っすかぁ。……オレっちの故郷の自由都市と似てるようで違う街並みっすね」
エロス像なんて呼ばれる天使の像を背に、広々とした環状道路を眺めて青年は暢気にはにかんだ。確かに石造りの街並みは、似ている風にも見えるが、巨大な電光掲示板が恥じらいもなく鎮座していたり、どこかで見たことあるような赤色の看板の、現代的な衣料量販店が並んでいるのを見れば、同じであるとはいいがたい。民族衣装然とした茶色の服装、短く刈り揃えた黒髪、明るい笑顔。独特の造りのアミュレットは、なにやら面妖な雰囲気である。
「……そんじゃ霧が現れるまでこの街を楽しむとするっすか!」
ぱんと両手で頬を叩いても、くわえた骨は離さない。リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)は歩き出す。
(「まーオレっち、この国の言葉はわかんないんすけどね!」)
言葉とは、すなわち文化である。世界の加護を受けた猟兵は、確かに現地人と違和感なく会話することができる。しかし、それだけだ。それ以上を世界は担保しない。仲良くなれるかどうかは、結局のところ本人次第。だが、彼に限ってはその心配はいらないだろう。
だってほら。見てごらんなさい。
そこには一人の金髪美女を捕まえて、話しかけるリンタロウの姿が!
「Where are you from? (どこから来たの?)」
「ええとダークセ……いかんいかん、日本! 日本っスよ!」
「Oh! Japan! I love Japan. (まあ、日本! 私日本好きよ~)」
正直に答えようとして、すぐに気づく。UDCに与えられた偽りの身分を思い出して、自己紹介。正直に答えることは、猟兵としてできなかった。
「今日は観光で来てまして、オススメの観光名所とか教えてもらえないすか?」
「Well... If you are interested in fashion, how about Soho? (そうねぇ……ファッションに興味あるなら、ソーホーとかどう?)」
リンタロウの独特の服装を見て、ファッション好きと判断されたのか、若者の街として知られるソーホーの商店街を挙げる一般金髪美女。助言を聞いて嬉しそうに、身振り手振りも交えてリンタロウが笑う。
「ソーホー! 行ってみるっす! そーだ、お姉さんに案内とか頼めないっすか?」
「Oh, sorry. I have a plan. ... ah, He is my darling.(あー、ごめんなさい。用事があって。あ、丁度よかった。……この人が彼氏なの)」
「ええっ!? そ、そうすか……」
切り込むように誘ったけれど、間が悪くも(あるいも良くも)やってきた一般ハンサム彼氏を逆に紹介されてしまう。撃沈。だがめげない。二人と笑顔で別れて、気を取り直す。
異郷の地で知らねー人と仲良くなるのは大得意っすから! とばかりに自信満々な顔で進んでいく。これだけ広い都市、きっとまだまだ見知らぬ美女がいるはずだ。
最中、通りの喫茶店で綺麗な桃色の髪が見えた。
もしかして:チャンスだ。
「すみません、そこの可愛いお姉さん。もしかして、ヒマっすか?」
迷わず声をかけた。
●be with a new friend
「良かったら……」
小柄な少女の赤い瞳が、向けられたのを見て、リンタロウが声を途切れさせた。
たしか、直接話したことはなかったけれど、アルダワ魔法学園で見たことがある。
もしかして:猟兵だ。
「……じょ、冗談っす、仕事なのは忘れてないっすよ!?」
慌てて手を振り、取り消そうとする。記憶が確かなら、目の前の猟兵の名前はパームといって、年は犯罪といっていいほど幼いはずで……。
「……ふ、ふふ」
その狼狽っぷりを楽しむように、狐の少女は玉を転がすように笑う。
「……え、ええと?」
どうして笑うのか、その真意を測りかねて、リンタロウが首をかしげる。
「――楽しむ時は、楽しむ。今は、楽しむ時。だよね」
不意に口の中で焼き菓子とタルトの味が蘇った。
だから、そう呟いて。
「ねえ、リンタロウさん――だったよね。よかったら、オススメの――」
猟兵が過ごす、ロンドンの日常がここにまたひとつ生まれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レッグ・ワート
ただの霧でも色々危ない気するし、その上オブリビオン絡み。見えない物騒さの割りに条件ハードル低くて厄介だな。霧前後の記録撮りたいから、迷彩ドローン飛ばしと聞き耳は通しで。
とりま街並みと住んでる面々見ながらのんびり博物館に向かうわ。道中でも先でも生体がよろしくやってるの見たり、よろしくやってんだろうなって思える場所回るの俺は好き。物理的に大変そうな奴見かけたら手伝う演算始めるのは仕様。まあやらない方が後々笑える思い出になりそうなら流すんだけどな。……本格的に一般が楽しみだす前に俺らの方で霧方の注意持っていければいいんだが。それにしても普段見かけるトコとは別船というか別船団レベルで雰囲気違うなこれ。
●leg's day
「Thank you, Mr. (お兄さん、ありがとう)」
「Your welcome. It's a piece of cake.(どういたしまして、大したことないさ)」
あどけない顔をした子供が、満面の笑みを向ける先にいたのは、誰がどう見ても機械だった。機械は流暢にも(機械音声だが)英語で子供に話しかけている。彼が声を発するたびに、まるで表情が動くかのように緑色のカメラアイが明滅する。もちろん、UDCアースでこんな高機能のアンドロイドは存在しえない。だが、何の不思議もない。レッグ・ワート(脚・f02517)は猟兵なのだから。
子供に別れを告げて、射出していたカーボン・ストリングを仕舞い歩き出す。排水溝の下におもちゃを落として泣いている子供がいたのだから、取り返すのを助けてやらないわけにはいかなかった。3LGはそういう風に演算するよう、プログラムされていた。
カジノの前で、ストリート・パフォーマーが踊っているのが見える。レスター・スクエアからのんびりとトッテナム・コート・ロードへと向かう。香ばしい匂いをさせる賑やかな中華街を通り過ぎる。有名な魔法使いの物語の続編を舞台とした芝居の看板が見える。あれは劇場だろうか。あんなに並んで、楽しそうじゃないか。
「(――今のところ、動きはないか)」
空に飛ばしたドローンの動きを確認する。空から眺めるロンドンの街は、今までにない経験だった。キマイラフューチャーや、スペースシップ・ワールドのようなハイテクさはない。あの世界よりハイテクさを幾分か下げたのが、同じUDCアースの日本という国だったな。もちろん、全然違う。その過去に近いというサムライエンパイアのような、清潔ながら可燃物だらけの街並みとも異なる。そもそもあの世界よりずいぶんと賑やかだ。アルダワの雰囲気が一番近いかもしれない。あそこほど、蒸気が噴き出していないし、魔法も見られないけれど。埃をかぶった石造りと鉄柵の醸し出す雰囲気は、レッグにとってはそう感じられた。
「それにしても普段見かけるトコとは別というか、別船団レベルで雰囲気違うなこれ」
スペースシップ・スラングとでもいうべきか。全く異なる雰囲気を、機械の兵士はそう形容する。歩きながら、観察を続ける。すれ違う人たちは、なんだか楽しそうだった。
「日常を……満喫する、か」
辿り着いた高名な博物館に並ぶ人だかりを見て、チチとカメラ・アイが音を立てる。自分にとって日常とはなんだろうか。WR-T2783だった日々だろうか、銀河皇帝との生死をかけた戦争か、様々な世界で誰かを救う日々だろうか。
今、目の前にいる人びとは、彼らの日常を過ごしている。
もしかしたら、他の猟兵の日常だってその中にあるかもしれない。
幸か不幸か、ドローンから見て動きはない。いや、動きがあればいつだって動ける。
ならば。少しだけ。
彼らの日常を覗いて行くのも悪くない。
金属の足が、しなやかに動き、人だかりへと向かう。
静かに、ただ、戦いを待つ。
それがウォーマシンの日常だった。
大成功
🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
あら――地元ですね。
地元というか、今の住居が、UDCアースのイギリスでして
UDCアースのイギリスは私の生まれたところとよく似ているけれど
穏やかだし、紅茶は美味しいし、お菓子も美味しいから大好きなんです!
だからこそここで何かが起こるというのなら――より、解決しないと
さて、観光――といっても、普段いかないところは
……UDCアースのシャーロック・ホームズゆかりの地かしら
そう、行かない。なんだか、ほら、複雑でして……
「私」とは違うモリアーティがいるじゃないですか、ね?世界線が違うっていうか
まぁ、敵を知るにはちょうどいいかもしれないし……。うん、行きましょう
「ワトソン」も行きたいでしょうしね
●Her name is Moriarty.
グリモアベースに集められたとき、地元ですかと彼女は心の中で呟いていた。UDCアースのイギリスに住まう猟兵は決して多数派ではあるまいが、彼女は少数派に属していた。ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)の黒い手袋に包まれた人差し指が、自らの過去を辿るように艶やかな唇を撫でる。
「(――ここは、生まれた場所とは違うけれど)」
彼女はそう前置く。UDCアースのイギリスはそことよく似ているのだという。
穏やかで、紅茶は美味しくて、お菓子も美味しくて――
――大好きな場所だった。
だからこそ、ここで何かが起こるというのなら
「(――より、解決しないと)」
いけませんねと彼女は心の内で続ける。蠱惑的に崩れたその顔は、定立を前にした学者が浮かべる愉悦の笑みで満ちていた。
●A journey for 221B
「(さて、観光――といっても、普段いかないところは)」
ハイド・パークの北端、白く美しいマーブル・アーチの前に降り立って、道行く人びとを眺めながら思案する。高級ホテルが見える上品な一角に立っていても、黒き淑女は違和感を感じさせない。きっと今日の彼女は世界の加護を必要としないに違いなかった。
「……シャーロック・ホームズゆかりの地かしら」
ぽつりと呟いて、北へ向けて歩き出す。
「(そう、行かない。なんだか、ほら、複雑でして……)」
通り道のレストラン。テラス席で、ヒヨコマメの揚げ物を食べている銀髪の老人の脇を通り過ぎて進んでいく。彼がヘンリエッタを気にする様子はない。ヘンリエッタが、明らかに中東人の彼を気にする様子もない。
「《私》とは違うモリアーティがいるじゃないですか、ね?」
ブティックのショー・ウィンドウの中、漆黒に染められた黒絹のカーディガンを着せられたトルソーを眺めながら、心の内で呟く。取り残されたカーディガンの繊細な刺繍は、獲物を待つ蜘蛛の巣のように見えた。上客を得ようとする店員に呼び止められるも、”No, thank you” と微笑んで立ち去る。
「(世界線が違うっていうか――)」
カジノの前に立って暇そうにしている屈強な警備員と目があって、微笑みかける。中性的な美女の気まぐれは、さながら砂漠のオアシスのようなもの。相好を崩した男の様子をくすくすと笑い、そのまま歩いて過ぎ去っていく。
「(まぁ、敵を知るにはちょうどいいかもしれないし……)」
特別車通りの多い、白い建物の前を通る。入口には、獅子とユニコーンの紋章が掲げられる。特に興味もないようで、ヘンリエッタ・モリアーティは素通りする。裁判所は、敵のいる場所ではない。敵の数にも入らない。
「(――うん、行きましょう)」
メリルボーン・ロードの途中、一瞬だけ立ち止まって、十字路を曲がる。まっすぐ伸びる道の奥、リージェンツ・パークの緑の向こうから、風が吹きつける。
「《ワトソン》も行きたいでしょうしね」
小さな吼声が、応じた気がした。
曲がった先の通りにある、地下鉄駅の丸看板にはこう書かれていた。
[Baker Street]
大成功
🔵🔵🔵
三寸釘・スズロク
【NJM】
4人で大英博物館→マーケットへ
お仕事とはいえロンドン観光できるとはねぇ
しかし仕事柄か
展示品どれもこれもUDC絡みの怪遺物に見えてくるのが何とも
…鴉語は今時点で結構な世紀の大発見だと思うぜ、章
その石版正直読みたい
時計のフロア好きだわー
このガリオン船時計、人形全部動いて大砲が火噴くって?
どんな仕掛けだよ分解したい
マジで猫のミイラってあるんだなァ
猫様と一緒に居たい気持ちはよくわかるケド
スカラベってこんな可愛い感じだっけ…?
俺はバステト神がいいな
マーケットでは定番のフィッシュ&チップス買う
俺も甘いモノ好きだけど欧米ボリュームゥ…
よく食うねキミ達!
お、良かったなアリンちゃん
…チップスも食べる?
アリン・フェアフィールド
【NJM】
綺麗な街だね!街そのものも美術品みたい…!
博物館、此処にあるの全部ホンモノ?
何千年も現存してるなんて凄いなあ
ひええ、このミイラも本物…!?
こっちにサムライエンパイアっぽい絵もあるよ!
お腹空いた~!ご飯!
ハンバーガーが気になるけど
この街はパイが有名なのかな?ミートパイ食べたーい!
半分こしようしよう!
デザートはたっぷりクリームが乗ったカップケーキ
あっドーナツも美味しそう…
茜さん章さん!こっちもシェアしよーよ!
うんうん、すいーつは正義!
雑貨も可愛いものばっかり
テディベアお土産にしようかな…えっ、プレゼント!?いいの?
わああ、嬉しい…!
二人ともありがとう!大事にするね!
チップス…も貰っとく!
鵜飼・章
【NJM】
ロンドンは初めて
大英博物館一度来たかったんだ
皆と一緒に回ろう
やだな三寸釘さん
こんな所に来てまで仕事の話?
…そうだ、仕事だったね
ロゼッタストーンの現物を見るという任務
凄い…これが本物か
僕も今のうちに日本語と鴉語を記した石版でも作ったら未来でお宝にならないかな…
ミイラのフロアにも興味津々
これが噂の猫のミイラか
古代のヒトも動物が好きだったんだね
そう思うと何だか身近に感じる
お土産にスカラベのぬいぐるみも購入
可愛いでしょ?
はしゃいだらお腹がすくので
マーケットではとにかく食べる
ハンバーガーもおいしそうだよアリンさん
僕が買うからミートパイと半分こする?
御堂さんにしては名案だ
僕からも誕生日おめでとう
御堂・茜
【NJM】の皆様と!
ろんどん!
ニッポンとは異なる趣に胸踊ります
いざ探検と参りましょう!
まずは博物館へ
むむ…男性お二人が何やら難しいお話を…
この絵はわかります、浮世絵ですね!
立派に飾っていただいて…感激ですッ!
展示を堪能したら賑わう街へ!
お紅茶が有名なお国柄ゆえでしょうか、菓子が美味です…!
御堂はこのイチゴチョコドーナツにします!
アリン様は何にされますか?
ええ、皆で分けましょう!
…スズロク様は甘味はお嫌いですか?
はッ…食べすぎ!?
すいーつは正義ですから!
アリン様は先日お誕生日でしたね
この熊さん、御堂達からのプレゼントにしませんか?
お店の方に紅色のアンティークリボンを結んでいただいて
はい、どうぞ!
●"Crow"setta stone
「……お仕事とはいえロンドン観光できるとはねぇ」
実に役得だと気楽に笑いながら、特に誰宛てと決めたわけでもない呟きを漏らす。にやけた紫の瞳の見据える先には、ガラス張りのショーケース。がらんとした大理石の通路の真ん中に鎮座したそれの中には、巨大な石板が鎮座していた。
「……しかし仕事柄かな」
きょとんとした顔をする優し気な青年の反応を待たずに、三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)は縮れた髪をくしゃくしゃと書いて苦笑と共に言葉を続ける。
「――展示品どれもこれも、UDC絡みの怪遺物に見えてくるのが何とも」
おどけたように両手を挙げて、降参のポーズ。たしかに、目の前の古代象形文字が描かれた石板には、現代に慣れ親しんだ猟兵たちにとって底知れぬ神秘を感じさせる力があった。調子の良い口調であっても、案外本気で言っているのかもしれなかった。
「やだな、三寸釘さん。こんな所に来てまで仕事の話?」
スズロクの言葉を面白い冗談ととらえて、ふふふと笑う。穏やかで、知的で、でもどこか底知れぬ不気味さを孕む――まるで、鴉のような笑い方。鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は、心の中でこれが仕事であったと思いなおす。同じ黒髪、同じ紫の瞳を持った男の猟兵であっても、スズロクとは全く異なる印象を与える。
「凄い……これが本物か」
大陸軍を率いた欧州の覇者を打ち倒し、王国軍が奪い取った伝説の石板。台座も含めれば小柄な人間の背丈ほどもあるその石は、所々欠けていてもなお立派なものだった。
「僕も今のうちに日本語と鴉語を記した石版でも作ったら未来でお宝にならないかな……」
なんて猟兵らしい冗談を口にすれば。
「……鴉語は今時点で結構な世紀の大発見だと思うぜ、章」
その石版正直読みたい、なんて笑ってみせる。
少し変わった猟兵同士ウマががあうようだった。
「次は高いところ行ってみようぜ」
エントランスへと戻る道を指さして、合図する。広大な博物館を回りきるには、時間がいくらあっても足りなかった。
●Walk like an Egyptian
「ねぇ、スズロクくん。此処にあるの全部ホンモノ?」
青い瞳をまん丸に広げて、観光客が多数集う部屋を指さす。部屋の中は、いくつもの硝子の箱があり、その中には褐色の物体がいくつも鎮座していた。展示されたまるで簾のように薄い筒状の草をつなぎあわせたパピルスの棚を通り過ぎて、包帯でぐるぐる巻きにされたミイラの前に辿り着く。アリン・フェアフィールド(Glow Girl・f06291)は、結んだ髪を小さく揺らし、自分より背の高いミイラ――おそらくは体格的に男――をしげしげと眺める。
「そうだよ。この国が、世界各地からぶんどってきた本物の貴重品だらけさ」
「ひええ、このミイラも本物……!?」
脅かすような意地悪そうな笑い顔を作って、夢中になっている様子を楽し気にスズロクは楽し気に眺める。とはいえ、彼の冗談はミイラに夢中のアリンの耳には入っていないようだった。
「まあ、こっちには猫のミイラがありますよ」
他の面々を呼ぶように、お転婆な日本語が響く。《Mummification of Animals(ミイラになった動物)》と書かれた説明文の横には、人間の棺桶と同じように立たされた、猫の顔を象った木箱があり、その横にはぐるぐる巻きの――筒が見えた。桜のように花やかな色をした瞳が、ぱちくりと動く。御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は機嫌良さそうにぱたぱたと、新たな展示品を次々と求めて動いて行く。まるで立ち止まるということを知らないようだった。
「へぇ、これが噂の猫のミイラか。古代のヒトも動物が好きだったんだね」
そんな彼女を後目に、章はしみじみと呟く。なんとなく、この部屋にいるミイラたちに親近感を覚えていた。
●Princess from Japan
「そういや知ってるかい、章。昔のエジプト人が猫を盾にされて負けたって話」
上の階へと昇る階段を進みながら、スズロクが得意げに章の顔を覗き込む。最上階近くまで登れば、窓の外から見える景色も相応に見晴らしの良いもので、なにやら機嫌が良さそうである。
「カンビュセス2世だろう、知っているよ。有名だからね」
しかし、スズロクの得意は、あっさりと受け流された。
「なんだ、知ってたのか。エジプトのバステト信仰ってのは、面白いよな」
「エジプトの信仰といえば、アメン=ラーからアトン神へ移行した逸話が――」
「いやいや、そこはアメンホテプ四世の宗教というより政治的判断がだな――」
白いエントランスと異なる古めかしい階段で気分が高まったのか、男二人、何やら小難しい歴史的談義で盛り上がり始める。こうなってはそう簡単に止まらない。男というのはそういう生き物だった。
「むむ……男性お二人が何やら難しいお話を……」
奥の展示室に進みながら、後ろで茜が口を尖らせる。
「あはは、オトコノコって感じだよね」
27歳と26歳、アラサーに片足突っ込もうと、いくつになっても男の子。18歳のアリンが、母性たっぷりに笑っている。不意に何かに気づいたのか、アリンが駆けだす。
「ねえねえ茜さん、こっちにサムライエンパイアっぽい絵があるよ!」
三つの菱でできたマークで有名な商社がスポンサーを務める展示室には、どこか見慣れた展示物がずらり。半年前に改装を終えたばかりの綺麗な展示室の中を、ピンクの髪を追うようにしてお姫様が駆けて行く。
「――ああ、この絵はわかります、浮世絵ですね!」
相撲取りが並んで躍動感たっぷりに見栄を切っている浮世絵が、部屋の真ん中のガラスケースの中に設置されているのを見ては、テンション上がらずにいられない。近くの学芸員を捕まえて、顔を輝かせて、曰く。
「立派に飾っていただいて……感激ですッ!」
流暢な日本語も、世界の加護であら不思議。意味をしっかり理解した学芸員は、それでも手を握られぶんぶんと振られて困惑しているようだった。
●Shall we have a lunch?
「お腹空いた~! ご飯!」
べたーっと、アリンが座ったまま、テーブルに体を預ける。午前中いっぱい歩き回って、広大な館内のほんの少しを見終えた一行は、博物館一階のカフェテリアの席で昼食をとろうとしていた。
「御堂はこのイチゴチョコドーナツにします! アリン様は何にされますか?」
メニューとにらめっこしていた茜が、決意と共に頷いたあとで、首をかしげて尋ねる。
「ハンバーガーが気になるけど……この街はパイが有名なのかな?」
うーんうーんとひとしきり悩んだあとで、弾かれたように、ミートパイ食べたーい!とアリンが拳を突き上げる。
「でも、ハンバーガーもおいしそうだよ、アリンさん」
メニューに書かれたグルメ・バーガーを指さして、半分こする?と章がふわりと笑えば、半分こしようしよう!とアリンが笑う。
「――よく食うねキミ達!」
アリンと茜が、デザートを交換して食べさせ合っていた頃、スズロクはげんなりした顔を浮かべていた。タラを丸ごと半身使ってそのまま揚げた豪快なフィッシュと、山盛りになったフレンチフライド・ポテトは、27歳の胃には辛い。ずんと来る。衣にしっかり塩と油とビールの隠し味がついているので、余計にきつい。豆のペーストやビネガーがつけられているが、襲い来る油の物量には勝ち目がない。口に含むのはまだイケる。飲み込むのが辛い。
「はッ……食べすぎ!?」
その声に、茜はびくりとお腹を見る。てかてかと油分で光るクリームケーキ。和服に隠された、二の腕を意識する。チョコチップが散らされた、輝くようなピンクのドーナツ。
「すいーつは正義ですから!」
胸を張る。後悔なんて、何もない。
「うんうん、すいーつは正義!」
満面の笑みで、アリンが追随する。
スズロクは信じられないものを見るような目を浮かべていた。
「ところで……アリン様は先日お誕生日でしたね」
卓上のスイーツがすっかり女子の胃に収められたところで、茜が切り出した。
「そうだけど……どうしたの?」
不意を突かれたためか、アリンはきょとんとした顔を浮かべる。
「先ほど欲しそうな目をしてらしたので……はい、私たちからの誕生日プレゼントです」
”はい。どうぞ!” と、にっこりと笑って、どこか野暮ったく毛むくじゃらのテディベアを差し出した。贈答品とわかるよう、紅色のアンティークリボンが結ばれていて、ちょっとだけお洒落な様子。アリンの顔が、みるみる喜色で満ちる。
「誕生日おめでとう、アリンさん」
その様子を見て、嬉しそうに章も笑う。彼もぬいぐるみに半額出していた立派なスポンサーだった。
「二人ともありがとう! 大事にするね!」
茜と章を交互に見返して、熊のつぶらな黒い瞳を見つめて、えへへと笑う。
「お、良かったなアリンちゃん」
幸せそうな彼女の様子を見守っていたスズロクが口を開くと同時に、それを隠すかのようにちょっぴり軽薄な冗談めかした表情になる。
「……チップスも食べる?」
「チップス……も貰っとく!」
アリンは微妙な顔を一瞬浮かべ、でも満面の笑顔で受け取って、ぱくり。美味しい。
「まだまだ別腹なんですね」
なんて茜が笑えば、笑いの輪が広がっていく。トーテム・ポールが見下ろすなんとも変わった空間で、賑やかに料理を食べている四人。まだまだ話足りない。先ほど見た時計のフロアの見事な金の船時計の話をスズロクがしたかと思えば、ギリシャの神殿が丸ごと持ち込まれているらしいんですよ是非見てみたいですッと茜が主張する。
尽きぬ話題は楽し気で、まさしく彼らの日常だった。
大成功
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穂結・神楽耶
ウェンディ様/f02706 と
初ロンドン!でございます。
たしかこのあたりにおいしいチョコレートを頂けるお店があったと聞いたのですが。
……はて、もしや迷いましたか?
確かに、おいしいお店はそこだけではありませんものね。
『世界知識』を駆使して『情報収集』しましょうか。
ウェンディ様はどんな食事がお好みですか?
…ほほう、屋台飯も乙ですね。ではそれでいきましょう。
調べたところに行くだけが旅の醍醐味ではありませんもの。
こうして友人と美味しいものを食べるのも、それは得難い経験ですよね。
うん、おいしい。
ウェンディ・ロックビル
かぐやちゃん(f15297)とっ!
はーつ、ろーん、どーんっ!
んへへ、霧の街って有名な所だよねー。今はかいせー観光日和だけど!
アレは……かぐやちゃん!
どしたのー?もしかして迷子ー?
ふんふん、なるほどっ!
……それじゃそれじゃ、僕と一緒に観光しない?
ちょっとくらい行き当たりばったりに探すのも楽しいぜっ!
ほへー、かぐやちゃん、まじめだねー。僕、殆ど下調べとかしてなかったや!
僕?僕はねー、屋台とか周ろうと思ってたんだぁ。
特にあの、フィッシュ&チップス!食べてみたかったんだよねっ!
んふふ、かぐやちゃんと手を繋いで色んなお店を周るよー!
一緒にごはんを食べれば仲良しさんです!
●the first stay, the first mate
「初ロンドン! ……で、ございます」
すらりと伸びた長く美しい黒髪、燃え盛る炎を映すような赤い瞳。蓮の花があしらわれた羽織を纏い、芍薬のようにすらりと立つその姿は、大和撫子然としている。物珍しそうにあたりを眺めながら、ゆっくりと歩いていた穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)が立ち止まる。
「(たしかこのあたりにおいしいチョコレートを頂けるお店があったと聞いたのですが)」
右を見ます。どうやらカレーのお店らしいですね。褐色の肌をした若い客引きの男性が手を振ってきているのが見えます。せっかくですから、振り返してあげましょう。小さく手を振り返すと、彼が笑顔になったのが見えました。ですが、チョコレート店ではありません。
左を見ます。あれはなんのお店でしょう。大小様々な茶色い……わかりました、あれは革ですね。革のバッグ、革の小物、革のブックカバー。どこか形が歪で、きっと手作りに違いありません。可愛いですね。ですが。チョコレート店ではありません。
「…………はて、もしや迷いましたか?」
ぽつねんと呟く。そう、神楽耶は迷子だった。
周りは、背の高い金髪の、茶髪の、見たこともないような人びとが群れをなして歩いている。忙し気に歩いている。写真を撮りつつ歩いている。手をつないでデートしている。尋ねるには、いささか以上に勇気が必要だった。そんな神楽耶の後ろから、快活な声がした。
「どしたのー? もしかして、迷子ー?」
後ろから声がして、次の瞬間には正面に回り込んでいた。きゅっきゅと靴が石畳と擦れる音がした。まんまるの金色の瞳が、神楽耶の顔を覗き込む。にかっと笑う口から覗く犬歯はあどけない。なにより特徴的なのは、桃色のリボンが飾られた馴鹿の角。そして、スカートから小さく覗く、まだらの尻尾。
「ええ、そうなんです。実は――」
ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)は問いかけに対する神楽耶の答えに、忙しなくもいちいち相槌を打つ。
「ふんふん、なるほどっ!」
両腕を組んで、納得したのポーズ。したり顔で肯首する。
「……それじゃそれじゃ、僕と一緒に観光しない?」
両の拳を当て、女性然とくびれた腰を曲げてしなを作る。
「――ちょっとくらい行き当たりばったりに探すのも楽しいぜっ!」
びしっと人差し指を突き立て、決めポーズ。コロコロと移り変わる表情と、繰り出される言葉は、神楽耶にとって不快なものではなかった。断る理由なんて欠片もなかった。
「確かに、おいしいお店はそこだけではありませんものね」
嫋やかにほほ笑む。調べてみましょう、と調達しておいたガイドブックを開く。いくつかの頁には印がつけられていた。
「ほへー、かぐやちゃん、まじめだねー」
僕、殆ど下調べとかしてなかったや!と感心したようにウェンディが呟く。
「ウェンディ様はどんな食事がお好みですか?」
そんなことないですよと謙遜を交えながら、ガイドの頁をめくりながら、神楽耶が尋ねる。
「……僕? 僕はねー、屋台とか周ろうと思ってたんだぁ。特にあの、フィッシュ&チップス! 食べてみたかったんだよねっ!」
人差し指を口唇にあて、まあ屋台がどこにあるか調べてないんだけどね!と冗談っぽく笑う。
「……ほほう、屋台飯も乙ですね。ではそれでいきましょう」
丁度屋台が並ぶ通りが近くにあるようです、と付け加える。
「いいの? かぐやちゃん、もっとちゃんとした店の方が口にあうんじゃない?」
少し心配そうに首をかしげると、ウェインディの銀の前髪がゆっくりと揺れる。
「調べたところに行くだけが旅の醍醐味ではありませんもの」
だから問題ありませんよとほほ笑んだ。
「ははーっ、よく言った! それじゃあ、出発だっ!」
「まぁ、ウェンディさん。そんなに急がなくても、ご飯は逃げませんよ?」
ウェンディが強引に神楽耶の手を掴んで駆けだす。癖のある銀の髪がぱたぱた揺れる。続くように、漆黒のストレート・ヘアがしゃなりしゃなりと揺れる。
手を取り合って、二人の少女が駆けだした。
「……買いすぎちゃったね」
「……買いすぎてしまいましたね」
見慣れたポリエチレンの白いパッケージにおさめられた、タラのフライとポテトフライ。包装紙に包まれた中には、ピタでサンドされた山盛りのケバブ。ヒヨコマメの揚げ物に、貝がたっぷり入った真っ白のチャウダー。砂糖が甘い香りを放つ極薄のフレンチ・クレープも見逃せない。
ごちそうを両手で抱え、燦燦と輝く太陽を避けて適当な木陰に座り込む。
テムズ河の潮気を含んだ風が心地よい。
「どれから食べよっか? 迷っちゃうね!」
「ええ、本当に。迷ってしまいますね」
困っていると口にしている二人の顔は、どう見てもご機嫌そのものだった。
初めに口をつける食べ物を選んで、手をあわせる。
「それじゃ?」
「……はい!」
「「――いただきます」」
美味しいものを、一緒に食べる。二人は間違いなく、友人だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霧生・真白
弟の柊冬(f04111)と
異変が気になるのが一番だけれどね
ロンドンといえば僕らが敬愛するホームズの聖地じゃないか
少しくらい楽しんでも罰は当たらないだろう
なんて、表向きはいつも通りだが内心はしゃぎながら街を巡っていこう
カメラを向けられれば
視聴者サービスを考えてしまうのは動画配信者のサガというやつだろう
別に今日くらい浮かれてもいいんじゃないかい?
僕も隙を見て柊冬を写メってやろう
ここがベーカー街
ホームズの聖地
ははぁ、なるほどね
ここは小説で見たとか映像作品で見たことがあるとか
221Bは博物館になっているのだっけ
高鳴り逸る胸を必死で抑えるが難しく
事件以外でこんなに楽しいと感じたのは久しぶりかもしれないね
霧生・柊冬
姉である真白(f04119)と一緒に
霧の都で怪異現象、ですか。
任務が絡んでいるとはいえ、ロンドン観光ができるのはちょっと楽しみですね。
せっかくの機会ですし姉さんも連れて一緒に観光していきましょう。
ロンドンに到着したら持ってきたカメラで動画を撮りつつ、色んな観光名所に向かってみましょう。
こうして姉さんと一緒に観光に向かうのも初めてですね…う、浮かれてるわけではないですけどっ
ベーカー街を歩きつつ、221Bを中心に足を運んでみます。
ホームズ博物館に寄ってみたりして、探偵ゆかりの地で観光を楽しみます。
なんだか今後の探偵業にも力が入りそうな気がしますね。
●Our duty is to unravel it.
「さあ、柊冬。ベイカー街に行くぞ」
「姉さん、わかっているとは思いますが、任務ですからね」
グリモアの力で転送されて、霧の街に降り立つや否や、姉さんと呼ばれた少女が迷うことなく言い放った。それを聞いて、柊冬と呼ばれた少年が窘める。ただし窘めるといっても、その口ぶりは険しくない。あくまでも、一応といった風に。
「ロンドンといえば僕らが敬愛するホームズの聖地じゃないか」
少しくらい楽しんでも罰は当たらないだろうと余裕のある風に、霧生・真白(fragile・f04119)がはにかんで歩き出す。薄紅を垂らし混ぜた銀髪が、陽光を浴びてきらきらと輝く。大人びた風の物言いであっても、その足取りは軽く楽し気。冷静に見れば、真白がはしゃいでいるのだとわかろうというものだった。
「たしかにそうですね。せっかくの機会ですし……」
霧生・柊冬(frail・f04111)は臆病そうにおずおずと姉の後ろをついて行く。サファイヤのような青い瞳が、きょろきょろと動く。見えるものすべてを見逃すまいと言った風に。なんてことはない、柊冬という少年も姉同様また楽しんでいるのだった。
「……そうだ、姉さん!」
「……ん?」
そっとカメラを取り出して、姉に声をかける。それは動画配信者の"さが" とでも言うべきか。互いに、視聴者が求める《HN: Shellingford》を撮るために。振り返り、カメラに気づいてキメ顔を作る。いつだって、かっこよくて可愛くて、傲岸不遜で自己中で、天才的なネット探偵。霧生・真白はサービス精神の塊なのだ。それを確かめて、柊冬は笑顔になる。
「どうした、柊冬。やけに機嫌がよさそうじゃないか」
「い、いえ、そんなことはないですよ。ただ、こうして姉さんと一緒に観光に向かうのも初めてで……」
「柊冬、君こそ浮かれているんじゃないか。任務なんだよ、これは」
「……う、浮かれてるわけではないですけどっ」
くつくつと笑う。魅力的なルビーの瞳が愉悦で歪む。
それを見て、柊冬の中性的な顔が、諦めにも似た困窮をにじませた。
●The distinction is clear.
「ここがベーカー街。ホームズの聖地。ははぁ、なるほどね」
まるで巨大な蛇の腸の中かのような、長大な地下鉄駅を抜け出して、新鮮な空気を吸った後での第一声がそれだった。丸みを帯びた駅のホームの壁に描かれたホームズを見たときから、二人のテンションは嫌が応にも高まっていた。冷静さを保とうとする真白の声は、どこかうっとりするような響きが潜んでいた。
「……思ったより、普通ですね」
「………………」
仕込み杖の、ひときわ固い先端で柊冬のつま先を抉る。
「痛っ! なんで踏むんですかぁ!」
「助手失格だからだ」
「景色の感想を言っただけで!?」
「……あの建物を見ろ、18世紀ジョージ王時代の意匠を残している。景観保護条例(ユニタリー・ディヴェロップメント・プラン)だ。これを普通と感じられること自体、歴史と文化をこの国が大事にしているということなんだよ」
「ユニ……はぁ、そういうものですか」
「君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのとでは大違いなんだ」
「う、確かに……――あっ、あの建物なんか、たしか映画で出てきませんでしたか!?」
話題を変えるように、柊冬が指を指す。
「どれどれ――ああ、確かに! 映画でホームズたちがその前を歩いていたな」
わかりやすく真白の顔が輝いたのが見えて、ほっと胸をなでおろした。
「それで……221Bは博物館になっているのだっけ」
地下鉄駅を出て、北へと歩く。真白の方を振り向いて、確かめるように問いかける。
「はい、そのはずです。どうしたんです、姉さん?」
「いやね。任務であることを忘れてはいないかと自分が心配になってね」
「平気ですよ、怪異は日常を満喫する者のもとに現れる。ロンドンを満喫すれば、きっと遭遇できる。一番はじめにそう言ったのは、姉さんじゃないですか」
「うん、うん。そうなんだがね……?」
高鳴り逸る胸の鼓動は、さながら恋する乙女のそれに似ていて。理性的であらんとする少女は自制を図るも難しく、それだけに当惑を隠せない。
「さあ、ここが博物館ですよ。ほら、後ろに人が並んでるんです。行きましょう?」
背を押すように、臆病な弟が気丈な姉を、緑の扉へと押し込んだ。
●I am a brain, Watson.
「……実に良い博物館だった!」
扉を出て、真白が大きく伸びをする。部屋の天井の染みから、骨董椅子の意匠のひとつひとつまでまじまじと眺めたものだから、肩が凝って仕方ない。それでも、真白は満足げだった。
「ふふ、そうですね。蝋人形もたくさんあって、なんだか怖かったです」
「赤毛連盟のアーチ―氏の神経質そうな顔が、特に傑作だったな!」
「僕はまだらの紐のロイロット博士の像が印象的でしたね」
「確かに、あの目を見開いて恐怖に慄く姿も忘れがたい……」
「部屋に入ってあれを見たとき、びっくりしちゃいました」
「知っているよ。写真、撮ったからな」
「いつの間に!?」
「ふふん、隙を作る方が悪いのだよ」
「そ、そんなぁ……」
変な顔を浮かべる柊冬のスマホ写真を見せつける真白。口を尖らせる柊冬。
だが姉には逆らえない。
「事件以外でこんなに楽しいと感じたのは久しぶりかもしれないね」
ひとしきり博物館の感想を言い合って、真白がふと呟く。
「なんだか今後の探偵業にも力が入りそうな気がしますね」
そうですねと穏やかに、柊冬が頷く。
「……お腹が空いているからかな」
恥ずかしくなってきたのか、赤い瞳を逸らせて、誤魔化すように真白が嘯く。
「ふふ、じゃあご飯にしましょうか」
それもまた、ホームズの台詞。頭脳のほかは、ただのつけたし。
柊冬はただ穏やかに笑う。
次はどこに行くのだろうか、二人の旅はまだ終わらない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヤパ・トラジマ
【とらとら】の子らと
その場のノリと勢いを大事に、全力で目一杯楽しみたい気持ち!
まずは腹ごしらえ!フィッシュ&チップスでも食おか
ジャケットポテトも美味そやね。そっちもひとつ!
俺さん保護者枠やからな、奢ったる!
おー肉も頼め頼め!たんとお食べ!!
折角来たんやし、イギリスならではなもんとか仕入れたいのよな
ふひひ。紅茶も傘も良さそ
ディコは頼もしいが、流石に家具は厳し…お。ペナント飾るか!
青風船に負けじとうろちょろ
行きたいとこの希望ある子は遠慮せんと挙手するように!
でも、俺さん黙って静かに鑑賞とか出来んし、美術館は避けて…
えっ。博物館?そうか…景もユエも行きたいんなら、俺さん頑張る…
テ、テープはいらん…!
星舞夜・ユエ
【とらとら】の皆さんと
いつもの服とは違う白いワンピーズ姿
憧れのロンドンと聞いて、着替えてみました。
浮かれすぎていたらすみません。
店長さん(f00199)、頼りにしていますね。
フィッシュ&チップスは定番ですが、
油物を食べ過ぎて、胃もたれしない様に、皆さん気を付けて下さいね。
(水のペットボトルを渡しつつ)
紅茶、私も頂きたいです。それと、スコーンも。
ジャムと合わせて、お土産分を、仕入れついでに買えると嬉しいのですが。
店長さん、私、本屋さんに行きたいです。
英語を勉強中なのですが、絵本や童話なら飽きずに学べるかと思いまして。
あと、大英博物館は私も興味があったりします。(八羽多さんに合わせてそろりと挙手)
壱季・深青
【とらとら】のみんなと…一緒【POW】
イギリス…外国は初めてで…新鮮
言葉は…理解できるから…大丈夫だね
フィッシュ&チップス…ずっと食べて…みたかった
ヤパ…奢ってくれるの?
ありがとう…さすが店長…いただきます
皆でいろいろ…つまんでみよう、ね
食べたら…どうしようか?
ヤパは…いろいろ見たいんだね
あぁ…商品の仕入れ…いいと思う
怪しいものじゃなければ…持って帰れると思う
王室御用達の…紅茶とか…いいかも
でも値段…高いかな?
ユエは、本屋…景は、大英博物館…行きたい?
ちょっと…興味あるけど…博物館…ヤパ、静かに…できるかな?
口に…テープ貼っとく?
(「…」「、」は適当で大丈夫です)
古峨・小鉄
【とらとら】初のお出掛け♪
ヤパが連れて来てくれたんは…『イギリス』?!
きゃっは!(眼きらー
フィッシュ&チップス俺も食う
やったじゃ、ヤパのおごり!あんがとじゃ
オシャレな肉とスコーンも頼んでええ?(育ち盛りもりもり
雑貨巡り楽しーじゃ。紅茶ええ匂い。俺も欲しい
荷物は俺も手伝う♪いっぱい買ってくれじゃ
高い街並み広い路、見るモン全部珍しぅて、俺うろちょろ
チビじゃけん人混み埋もれて迷子~にならん為に
自慢の虎尻尾に青い風船付けトコ(ぴこっ
俺ここー!(っていう主張
びっく・べーん!はくぶつかん!(虎耳ぴこ
美術館ダメなん?しょぼん…我慢するじゃ(自分も同類だけど無自覚
博物館行こ行こ
石や像、すごいの見れちゃうじゃ?
間仲・ディコ
【とらとら】の皆と一緒っす!
綺麗な街並みっすね~! 歩くだけでもうきうきっすよ!!
トラジマちゃん(f00199)の奢りなんすね! やったーゴチっす!!
フィッシュ&チップス、私も一口頂き!
ジャケットポテトもおいしそう!
皆でシェアして食べるとおいしいっすね!
仕入れ! 面白そう!
荷物が増えたら私持つっすよ! このリュックいっぱい入るんで! 詰めれば…いける!
おしゃれなファッション小物やアンティーク雑貨を揃えるとかわいいかなー? お店のディスプレイを想像しつつ色々見て回りたいっす!
あっ、これお店に飾りましょうよ!(ご当地ペナントを指差し)
大英博物館! 行きたーい!
アフタヌーンティーもしたいっすね!
矢羽多・景
【とらとら】のみんなと
僕はPOW
言葉の壁を越えてもザ・日本人な僕、外国にはドキドキ!
パ、パスポートはいらないんだよね?
ここはみんなの勢いに便乗して英国を満喫したいなぁ。
ご飯はヤパさんの奢りなの?やった、ご馳走になります!
ジャケットポテト?馴染みがない名前…どんな料理かな。あっ、フィッシュ&チップスもいい匂い!僕にも一口っ
英国料理って聞いてたよりもずっと美味しいね。
仕入れだって大事な仕事だ。
英国ならではのもの…アンティーク家具はちょっと大き過ぎるかな?
梅雨に備えて傘を見てみたいね!
歴史ある街並みは眺めてるだけでも映画の中みたいで感動モノ。
そろっと挙手、えっと…大英博物館は美術館の類に入りますか?
●Time to Choose
「よーし、腹ごしらえの時間! 俺さん保護者枠やからな、奢ったる!」
一面緑の広場を太陽が燦燦と照らしている。芝生の間の舗装道を歩く集団がいた。中でもひときわ目立つ大声で、背の高い青年が、歯をみせにかっと豪快に笑う背。その声を受けて、まわりからきゃっはー!などと黄色い声が上がる。赤鉄鉱の肌をした彼は、自慢げにきらきらと笑う。ヤパ・トラジマ(焔虎・f00199)のテンションは、最初から最高潮である。
「とーりーあーえーずー、フィッシュ&チップスでも食おか!」
落ち着くそぶりなど一切見せない。それらしい看板をびしっと指さし、ぐいぐいと進んでいく。反対の声はあがらない。わいわいと楽し気に他の面々も彼に続く。橄欖石の瞳が、期待できらきらと輝く。
「このジャケットポテトも美味そやね。そっちもひとつ!」
それから皆の様子をうかがうように、どうやー?と首をかしげる。
「ジャケットポテト? 馴染みがない名前……どんな料理かな」
大昔の学生を思わせるような、古典的な詰襟の青年が好奇心いっぱいに呟く。少し長く伸びた琥珀色の繊細な髪が、日光で透けて見えた。
「ジャケットポテトは、皮ごと焼いたジャガイモのことですよ。なんでも、皮をジャケットに見立てているんだとか」
丸縁の眼鏡をくいと持ち上げ、直すお決まりのポーズ。深い夜空を思わせる藍色の髪をゆるく結んだ小柄な少女が、得意ぶるというよりは、その事実を面白がるようにして解説する。女の子らしい緩やかな白いワンピースが、動きにあわせてふわりと揺れる。
「へぇ、それは面白いね。ユーモア……ってやつだ。さすが、星舞夜さん」
イギリス人は、ユーモアというものを尊ぶのだという。矢羽多・景(獣降しの神子・f05729)が屈託なく笑うと、星舞夜・ユエ(よだかのひかり・f06590)は嬉しそうにはにかんだ。
「なあなあ、ヤパ! このオシャレな肉とスコーンも頼んでええ?」
一行の中で一番小柄な少年が、誰よりも興奮している風に、赤鉄鉱の青年を見上げて尋ねる。ぶんぶんと大きな虎の尻尾の毛が逆立って、ひときわ太く見えた。
「おー、肉も頼め頼め! たんとお食べ!!」
がははと笑う。豪快に笑う。ヤパの笑い声を聞いて、古峨・小鉄(ことら・f12818)は一層嬉しそうだった。
●Time to Eat
「やったー、ゴチっす!! ん~~~~! 美味しいっす! 美味しいっす!」
商品を受け取って、満面の笑みを浮かべる少女の手には、温かなスコーンと紙コップの紅茶。快活な声でお礼を言って、迷うことなくぱくりと噛り付く。ぶるぶると体を震わせて、間仲・ディコ(振り返らず振り出しに戻らず・f01702)は全身で悦びを表現する。
「フィッシュ&チップス……ずっと食べて……みたかった」
対照的に、ぼつぼつと途切れ途切れに言葉を口にするのは壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)である。一見、やる気なく、とりあえず返事しているように感じられる口ぶり。だが、半分閉じられたような瞳を見れば、その疑念は晴れるだろう。くしゃりと音を立ててフライを齧ったときに浮かんだ、その嬉しそうな瞳の光を見れば。
「うんうん、俺さんも君たちが喜んでくれて嬉しーよ。……うん」
思っていた以上に軽くなった財布に僅かに引き攣った笑いを浮かべながら、ヤパが頷く。先進国の中でも、特に物価が高いことで知られる街ロンドン。食べ物について一般に日本の物価の二倍するといえば、今回どれだけかかったか想像がつこうというもの。それでも、嬉しそうなバイトの面々の様子を見れば、大人として、男として、弱音は吐けなかった。
「イギリスと言えばフィッシュ&チップスは定番ですが、油物を食べ過ぎて胃もたれしない様に、皆さん気を付けて下さいね」
「さすがユエ! ありがとうな!」
そう言って、気配り上手なユエが水を配る。ヤパが、嫌味のない笑顔でペットボトルを受け取る。ちなみに30cmは悠に超えるだろう大ぶりのタラの半身は、すでに半分以上がヤパの胃の中に納まっていた。
「でも、フィッシュ&チップスもいい匂い! 僕にも一口っ」
「俺のぶんをちょっと分けてあげるんじゃ!」
口の周りをべたべたに油で汚した小鉄が、ポリエチレンのトレーごと景に差し出す。
「ありがとう! ……わ。英国料理って聞いてたよりもずっと美味しいね」
迷うことなくぱくりと食べて、顔を綻ばせる。白身魚の優しい味わいと衣の油のパンチ、数口咀嚼してやってくるビネガーの酸い味が口の中で広がっていた。
「……ね。もっと素朴な味を、想像してた……から、嬉しい意外」
深青がこくりと頷く。ドレッシングの黄色いパッケージを指で千切って、フライドフィッシュにかける。次はマスタードをつけて齧るらしい。
「あ、私はスコーンをちょっと食べてみたいです」
ユエが小さく手をあげると、ディコが勢いよくどーぞする。
「ふふー! 皆でシェアして食べるとおいしいっすね!」
美味しそうに齧るユエを見て、ディコが笑う。
「ほうじゃほ――げほっ!」
口いっぱいに肉を含んだまま小鉄が同意しようとして咳込む。
「あーもう、古峨ちゃんは食べながらしゃべっちゃダメっすよ~!」
ほらこれとディコがカップを差し出す。
「ああ、ありがとじゃ……ん!?」
カップを傾け口に含もうとした小鉄の動きが不意に止まる。
「……あ、それミルクティーっす。ほれ、飲むといいっすよ!」
にやりと笑う。
「ミル……? ……い、いやじゃ! 牛乳は、嫌じゃーー!」
紙コップを無理やり突き返し、ぱたぱたと逃げ出す小鉄。追いかけるディコ。
笑いの輪が広がった。
●Time to Buy
「……このあと、どうしようか?」
一通り食べ終えたのを見て、深青がぽつりと呟く。
「折角来たんやし、イギリスならではなもんとか仕入れたいのよな」
頭の後ろで手を組んで、ヤパがぼんやりと答えた。忘れることなかれ、ヤパ・トラジマは雑貨屋『Trackless Travel』(※旅行会社ではない)の店長であり、面々はアルバイトである。
「ヤパは……いろいろ見たいんだね。……商品の仕入れ……いいと思う」
怪しいものじゃなければ持って帰れると思うと続けて、深青が頷く。見知らぬ土地での雑貨収集、面白いこと間違いなし。
「王室御用達の……紅茶とか、……いいかも?」
「ミルクの入ってない紅茶は、ええ匂いするじゃ。俺も欲しい!」
深青がおずおずと言えば、ぶんぶん動いて小鉄が賛成してみせる。尻尾につけた、青い風船がふわふわと揺れる。
「そうですね、紅茶は良い案だと思います。それから、先ほどのスコーンも美味しかったです。ジャムと合わせて、お土産分を、仕入れついでに買えると嬉しいのですが」
ユエが小さく手を挙げて賛同する。自己主張も忘れない。
「おしゃれなファッション小物やアンティーク雑貨を揃えるとかわいいかなー?」
うーんと思案気に、目をくりくりと動かしてディコが提案。
「ファッションなら、傘とかもいいかもね」
霧の街、天気の悪い街ロンドンなら、きっとお洒落な傘があるに違いない。期待を込めて景が呟く。
「ふひひ。紅茶も傘も良さそ!」
歯を見せて、ヤパが笑う。期待十分である。
「英国ならではのもの……アンティーク家具はちょっと大き過ぎるかな?」
それ以外にもと、積極的に思いつきを口にする景。
「荷物が増えたら私持つっすよ! このリュックいっぱい入るんで! 詰めれば……いける!」
うんうんと頷いて、ディコがガッツポーズを取る。
「ディコの言葉は頼もしいけん、流石に家具は厳し……お。それええな、ディコ!」
「へへー! 見つけちゃいましたっ! これお店に飾りましょうよ!」
ディコがびしっと広げるのは、英国国旗――ユニオン・ジャックを象った三角旗。
「……ペナントって、日本以外にも、あるんだね」
深青が驚いたように呟く。
「あんまし馴染みがないっていうけどなー。……日本人観光客向けかもしれんね」
商売人らしく、ヤパが答える。買う気まんまんの様子だった。
●Time to Plan
「ほかに行きたいとこの希望ある子は遠慮せんと挙手するように!
あ、でも、俺さん黙って静かに鑑賞とか出来んし、美術館は避けて……」
高くそびえる白い街並み、高名な商店街をひとしきり見回り終えて、引率のヤパ先生が腰に手をあて振り返り尋ねる。
「びっく・べーん! びじゅつかん! 美術館ダメなん? しょぼん……我慢するじゃ」
虎耳をぴこぴこ動かして、小鉄が案出し。元気な子。
「えっと……大英博物館は美術館の類に入りますか?」
あたりを眺めていた景が、唐突に気づいたように手を挙げる。
「大英博物館! 行きたーい!」
「博物館行こ行こ! 石や像、すごいの見れちゃうじゃ?」
ディコがぴょんぴょん飛び跳ねる。赤いマフラーがぴょこぴょこ揺れる。
小鉄もぴょんぴょん飛び跳ねる。尻尾がぴょこぴょこ揺れる。
「店長さん、私、本屋さんに行きたいです。英語を勉強中なのですが、絵本や童話なら飽きずに学べるかと思いまして。……あと、大英博物館は私も興味があったりします」
ユエがそろりと挙手。景に同意し援護射撃。
「ユエは、本屋……景は、大英博物館……行きたい? ちょっと……興味あるけど……博物館……ヤパ、静かに……できるかな?」
深青が当然の懸念を口にする。
「そうか……みんな行きたいんなら、俺さん頑張る……」
ううとたじたじなヤパ。それでも、みんなが行きたいなら。
できるだろうか。大人しく、できるだろうか。
「口に……テープ、貼っとく?」
そっと、深青が気遣うような口ぶりで尋ねた。
「テ、テープはいらん……!」
ヤパが飛び退いて拒否すると、自然な笑いが沸き起こる。
ロンドンに来ても変わらない、雑貨屋の愉快な日常が今日も繰り広げられていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
ニコ◆f00324
アドリブ◎
依頼の事は頭の片隅に置いといて
折角だ、楽しもうや
まずはやっぱ服だろ!
この地ならではのコーデが気になるぜ
ニコのは俺が見立ててヤっから任せろ(目爛々で振り回す
初のロンドンに興味津々
見慣れない外観や文化の違いに目細め服屋へ
英国紳士風の服や帽子、小物選ぶ(詳細お任せ
バスで移動
洒落た喫茶店で紅茶と甘くない菓子を堪能
メニューの名見て直感で紅茶選ぶ(無知故
へェ…味だけでなく香りや色もこんなに違うとはなァ(関心感心
そういやニコも同じヤドリガミなンだよな
前に偽村雨や八刀の武将相手に共に戦った時に妙に親近感を抱いてた
お前の本体ってどういうヤツなんだ?
ニコの本体や成り立ち、背景の話を聞く
ニコ・ベルクシュタイン
【クロウ(f04599)】と
アドリブ歓迎
猟兵仕事の名目で、存分に楽しめるとは有難い事だ
しかも良き友と、初めての倫敦観光とは心が弾む
にしても、クロウがお洒落さんだったとは驚いたが素敵だな
先ずは形から入るというのも良い、
是非とも着る物に疎い俺にも見立てを頼みたく……何かすごい目だな!?
其の後はバスで移動し、良い感じの喫茶店で紅茶を頂こう
ミルクティーに合うのは…ディンブラだったかな?
はは、直感での注文も素敵な出会いというものだ
して、俺の本体か?(懐から懐中時計を取り出し)
何の事は無い、普通の懐中時計だよと笑みつつ
持ち主の中でも最も魔力と愛情を注いでくれた
とある魔法使いの男の話をしよう
此の蓋の裏のな…
●Fashionable guy
「というわけで、俺はロンドンのファッションが気になる」
「どこが、"というわけで" なのか理解しかねるが……そうだな、観光がてら服を選ぶのは悪くない」
太陽が燦燦と照らす、繁華街にほど近い十字路に彼らは立っていた。射干玉を思わせる黒髪の青年が徐にサングラスを外して、気取らずシャツの開けた胸元に差す。杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)はあたりを行きかう人々の服装を値踏みするように眺めていた。
対照的に、まるで機械のようにまっすぐと立って、傍らから発された言葉に白い髪の青年が肯首する。神経質そうにひそめられた眉、きっちりと定位置から動かない眼鏡、そして口ぶりから、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)という猟兵の人物像は容易に推察されようというものだった。
「……おう、ニコ。その意気だぜ。この地ならではのコーデってのを試さなきゃな」
ニコの言葉を気に入ったように、豪快に笑う。
「先ずは形から入るというのも良い」
実に合理的だとニコが頷く。
「是非とも着る物に疎い俺にも見立てを頼みたく――「――任せろ」」
ニコが言葉を終える前に、やる気と期待に満ち溢れた声がしていた。
「ク、クロウ!?」
「――いいから、任せろ」
ぐいと手を掴んで引っ張る。まずは靴か、あるいはシャツか、杖から選ぶ手もあるな。
「引っ張るな、自分で歩ける!」
口で抵抗するニコ。なれど、クロウの目を見ては抵抗の力を緩めずにいられなかった。
夕赤と青浅葱の瞳の、あどけない子供のような興奮に満ちた目を見ては。
●Fashionable guys
「――うし! いい買い物したな!」
「服を選ぶのがこんなに大変とは。一大事業だった……」
ご満悦で大笑いのクロウ。一方、僅かに疲労の浮かんだ顔のニコだが、目元は穏やかだった。糊の効いた新品の服を纏って、気分が悪くなりようはずがない。
「本当は、これをオーダーメイドで作れたら良かったんだけどな」
「――あくまで今日、日常を満喫するのが仕事だよ」
クロウが口を尖らせると、ニコがやんわりと釘を刺す。古式ゆかしく薄暗い紳士服店の外に出れば、まだ中天にさしかかったばかりの日光が眩しい。
「……しかし、色のついたシャツとは落ち着かないな」
ニコが苦笑する。文化の違いに当惑を未だぬぐい切れない。ジャケットの下に着た、青のストライプのシャツと真っ赤なネクタイが落ち着かないようだった。
「そーか? 俺は、お前にそういうの似合うと思うぜ」
しゃれっ気ってのは大事だぜとクロウが笑う。そんな彼は、チェック柄が薄く入った薄いグレーのジャケットとパンツに、お揃いの色のフェドラ・ハットをかぶり、元からもっていたサングラスをあわせれば、如何にもな伊達男風。
「……クロウのようなお洒落さんに言われては、反論のしようもないな」
ニコは諦めたように笑う。なにより、クロウが自身の服を着こなしていたのだからケチのつけようがない。彼が言うなら、きっとそうなのだろう。そう思うと、新たな紳士服に、なんとなく愛着も湧き上がるのだった。
「……で、どこ行くよ?」
「そうだな。丁度昼時だ。バスに乗って、もう少し洒落たカフェのある場所に行こうか」
「おー、いいね。店は任せるぜ」
クロウの快諾に頷いて、重厚な作りの懐中時計の蓋をパチンと閉めて懐に納める。バス停はすぐ近くだからと石造りの道を歩き出す。歩くたびに真新しい服の糊の匂いがして、ニコは少し頬を緩めた。
●Your Sixth Sense
「へぇ、なかなか雰囲気がいいな。外で食べるのは、ちーっと落ち着かねぇが」
テラス席に腰掛けて、クロウが呟く。
「……落ち着かない風には、とても見えないが?」
赤い瞳を細めて、ニコが揶揄うように反論する。ニコには、あるいは客観的には、椅子にゆるりと座って楽し気に笑ってあたりを見回しているクロウの男性的な様子は、余裕があるようにしか見えなかった。
「こまけーことはいいんだよ。それより、何を頼む?」
くしゃくしゃと頭を掻いて、メニューを開く。
「やはり、せっかく英国に来たからには、紅茶をいただこう。ミルクティーが飲みたいな。ミルクティーに合うのは……ディンブラだったかな?」
顎を撫でるように左手をあてて、真剣な顔でニコが思案する。
「紅茶は紅茶だろ、適当に選んだって美味しく飲めるさ」
どれにしようかなとばかりに、クロウの指がぴょこぴょこと動く。
ぴたりと止まる。どうやら決めたらしい。
「……君らしい。決まったようなら、注文しようか」
心の底から、面白そうに笑う。クロウの直感の結果を見てみたくなっていた。
●I wanna know who you are!
「……へェ。味だけでなく香りや色もこんなに違うとはなァ」
感心感心、と言葉を転がすようにクロウが笑う。菓子を齧って、ミルクが混ざって白んだ紅茶を飲む。動作にあわせて、楽し気に首が左右する。都会的な洗練さこそないが、心から茶会を楽しんでいるようだった。
「だからこそ、紅茶は面白いよな。……ちなみに、何を選んだんだ?」
「イングリッシュなんちゃらってやつだよ。国名がついてんだから、きっと美味いんだろってんで、選んで正解だったな」
「……はは、直感での注文も素敵な出会いというものだ」
「(……だが、理屈と知識での注文もまた、素敵なものさ)」
後の言葉は野暮だから言わない。微笑んで、紅茶のカップを傾ける。ディンブラ茶の繊細な渋みが口に広がる。ミルクが混ざっていることで幾分かマイルドにはなっていても、舌を痙攣させる刺激は心地の良いものだった。
「そういや、ニコも同じヤドリガミなンだよな」
「確かにそうだが、唐突にどうした?」
「いやさ、お前の本体ってどういうヤツなんだ? って思ってサ」
裏表のなさを感じさせる屈託ない笑顔と好奇心で、クロウが尋ねる。
「俺の本体か? ……いいだろう」
「……へェ、それが」
ニコが、懐からゆっくりと重厚な作りの重々しい懐中時計を取り出してみせる。アヤメの花を思わせる彫細工は時代を感じさせる。花托の赤い宝石が、日光を受けてきらきらと輝いた。杜鬼・クロウという猟兵の色違いの瞳には、その骨董の価値がありありと伝わった。
「そうだな。……持ち主の中でも最も魔力と愛情を注いでくれた、とある魔法使いの男の話をしよう。此の蓋の、裏のな……」
ぽつぽつと彼が語り始める。紅茶と共に辿る過去の足跡は、ヤドリガミたる彼らの歩いてきた日常そのものである。その秘密を共有する場所として、歴史と伝統あるこの古都以上に相応しい場所はなかった。
価値に見合った重みのある、静かな時間が過ぎて行った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リヴェンティア・モーヴェマーレ
【華麗なる西風】
▼アドリブ大歓迎!
もり盛りのモリでも大ジョブです
▼本日のメインの子
由希(情報特化なハリネズミ🦔)
他の子が居ても全然大ジョブです
▼【WIZ】
セントジェームズパークとロンドン自然史博物館に紅茶…
この辺は訪れておきたい気持ちですネ
(ゆんちゃんと情報収集をしながら行きたい場所をピックアップ)
時間は大事に使わないとですよネ!
ところで、あそこに見えるのは誰だ?
鳥だ?
ロンドンだ?
モチロン、ツカサセンパイです!
ツカーサセーンパーイ!
(必死に手を振り)
でも…あれはマリアさん見つかったらどうなってしまうのでショ?
焔さんはどちらへ行かれてたのですカ?
良ければ紅茶を飲みながら教えて欲しい気持ち!
神薙・焔
チーム【華麗なる西風】
歌で有名なロンドン橋。金と銀の橋ではないけれど、これがBroken downしたら大変、だから調査を…え、この可動橋はタワー・ブリッジで数百メートル先の少し地味なのがロンドン橋?
…し、知ってたわよもちろん。
せっかくだから、ここからテムズ川にかかる橋を見ながら歩こうかしら。
サザーク、ミレニアム、ブラックフライヤー、ウォータールー、ハンガーフォード…ホームズは川を渡るボートを探してたけど、その頃は結構違ったのかしら。
そしてウェストミンスター橋、ここから観覧車やビッグ・ベンも…ってアレはツカサくん? よく入れたわね。
迎えに行って、ちょうど午後なら皆で集まって紅茶にしましょうか。
甲斐・ツカサ
アレンジ歓迎
【POW】
チーム【華麗なる西風】
ロンドンって言えば、有名な時計塔があるんだよね!
入れる時期って決まってるらしいけど、UDC組織の人に頼んでみよう!
これも調査だよ、高い所からの調査!
折角入れたんなら、ちゃんと時計塔の一番上まで行かないとね!
そう、一番上、尖塔のてっぺんまで!
だって、そこから見る景色って凄くキョーミ深いでしょ!?
きっと、街の色んな見どころを見渡せると思うんだ
そうやって楽しそうな場所を見つけたら、怒られる前に下に降りよう!…手遅れかもしれないけど。
あとは見つけたスポットを駆け巡るよ!
最後は体力が尽きちゃって、一緒に来たみんなのところでお休みなさい
きっと寝顔は大満足だね!
マリア・アリス
アレンジ大丈夫です
【POW】
【華麗なる西風】
タワーブリッジ!こんなに大きい機械仕掛けの橋って初めて見たわ!できれば橋が開いてるところを見たいから、フィッシュ&チップスを食べながら粘ってみましょう!(見れても見れなくても可)
あの塔の上にいるのは…ツカサ!?ダメよー!?怒られるわよー!?(慌てて塔のところまでツカサを迎えに行きます)
最後はみんなで本場のティータイムを楽しむわ!ってツカサ、寝ちゃってる…!もう…!(といいつつ寝顔を楽しむのであった)
●Enjoy London's Bridge
「ロンドン橋、ふんふんふ~ん♪ ふんふんふ~ん♪ ふんふんふ~ん♪」
ご機嫌な風に、彼女は歌う。英国で最も名高い童歌の一つ。今まさに、テムズ川の上にかかる橋の上を歩いているのだから、自分が童話の登場人物になったような心持ちでも無理なからぬと言える。セーラー服姿で、歩道の中をくるくると歩き回ると、赤い髪が動きにあわせてぱたぱたと揺れた。神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・f01122)は間違いなく、ロンドンを満喫しているといえる。
「ふふっ……ご機嫌ですネ、焔さん」
そんな彼女の様子を見て、見守るように、楽しそうに。リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)は両目を閉じて、にこにこと笑う。どこか愛玩動物を見守るような母性的な笑みは、目の前の焔を可愛らしいものと認識しているためだろうか。
「そりゃそうよ。歌で有名なロンドン橋。金と銀の橋ではないけれど、これがBroken downしたら大変、だから調査を……――」
ご満悦の焔が、自信満々に主張すると、リヴェンティアが首を傾げた。
「……え、この可動橋はタワー・ブリッジで数百メートル先の少し地味なのがロンドン橋?」
続く説明に愕然として、碧色の目をまんまるに見開く。
「………………………」
沈黙が流れる。
「……し、知ってたわよもちろん!」
知っていたらしい。
「そうですカ。それは失礼しマした」
ぺこりと頭をさげるリヴェンティア。その様は折り目正しく、一寸の狂いもなく、仕組まれた絡繰りのようだった。太く長いおさげ髪が、頭の上下で大きく揺れた。
「なるほど、タワー・ブリッジ! こんなに大きい機械仕掛けの橋って初めて見たわ!」
興奮したように、黒髪の少女が言う。びしっと両手を広げて、タワー・ブリッジの橋の大きさを全身で表現してみせる。宇宙船に機械仕掛けは数あれど、橋は確かに存在しなかったのだろう。無理からぬことだった。
「……開くのかしら? できれば見てみたいわ!」
ね、一緒に見てみない?とマリア・アリス(歩き出したアリス・f04782)が二人を誘う。
「……えっ、これ動くの?」
と、驚くのは焔。
「はい、ゆんちゃんに依ルと、次は30分後に開くそうデス。タイムリーですネ」
ハリネズミの由希が、飼い主の方の上でえへんと胸を張る。
「一日二回くらいしか開かないって聞いてたのに! ラッキーね」
マリアが破顔する。
「おおー、ゆんちゃ~ん。偉いぞ! ……あ痛っ!」
焔が由希を撫でようとして、針が刺さったようで飛び退く。
「それじゃあ、名物でも買ってきて、待つとしましょう!」
もうすぐとわかっては落ち着いていられないらしいマリアが、ぱたぱたと駆けだした。
「あっ、待ってくだサイ、マリアさん!」
「あーもう、一緒に行きましょうよ!」
マリアを追いかけるように、二人も駆けて行った。
●Walking Along The Thames
「すごかったわね!」
目を輝かせて、マリアが握り拳を見せる。
「……たしかに。でもあっという間だったー!」
橋から離れるかたちで、ロンドン塔のそばを歩きながら、焔が大きく伸びをする。
「時間にして、五分程度でしたネ。ふふっ、でも楽しカタです」
間近で動いた跳ね橋を見て、誰もがご機嫌そうだった。
「ね。せっかくだから、ここからテムズ川にかかる橋を見ながら歩きましょう?」
焔が二人に問いかける。
その名案に、二人は否応なく賛同して、一行はのんびりと歩き出した。
サザークのコンクリート橋の上を、二階建てのロンドンバスが走っている横を歩いて南へ進んだ。細くミレニアム・ブリッジの先に見える聖ポール大聖堂を横目に、現代美術館の前を歩いた。途中工事で道が細くなっていて、リヴェンティアが転げそうになった。そっと焔が助け起こして、リヴェンティアが嬉しそうにはにかんだ。ブラックフライヤーの鉄道橋の中を見て回るのは大変そうで、そのまま橋の下をくぐって進んでいく。ハンガーフォード・ブリッジの先には、緑豊かな公園が見える。昔はここが港のような役割を果たしていたそうよなんて、看板を読んだマリアが講釈を垂れる。そのまま川沿いに歩いて行くと、かつてケルトを率いた復讐の女王の銅像が見える。その先には――
「……それからこの橋と、この工事中の建物、なに?」
マリアが首をかしげる。観光ガイドに、こんな工事布で覆われた建物あったかしら。
「これは、ウェストミンスター寺院ですネ。」
「で、そっちがウェストミンスター橋。ここから観覧車やビッグ・ベンも……って、あら? あそこから見えるのは誰かしら?」
工事の足場のてっぺんに、小さな人影。強風で、赤いマントが激しくはためいている。もしあれが一般人なら、いかにも危なげである。
「鳥だ?」
「ロンドンダ?」
「ロンドンって何よ!?」
「モチロン、ツカサセンパイです! ツカーサセーンパーイ!」
「だからロンドンって!?」
「ツカサくん……よく入れたわね」
大きく手を振るリヴェンティア。呆れと感心が入り混じった声を漏らす焔。
「ロン……って、ツカサ!? ダメよー!? 怒られるわよー!?」
そして誰より焦って駆けだすマリア。一瞬たりとも迷いはなかった。
かれこれ協力したり交渉したり、UDC職員に連絡を取ってもらったり、すったもんだで合流した四人。喫茶店の席の一角を確保して、潮風を受けながら反省会。しかし、怒るマリアもどこふく風よ、ツカサはまったく天衣無縫であった。
「いやぁ、ロンドンといえば、有名な時計塔があるって聞いたからさ。UDC組織の人に頼んでみたんだよ。今工事中で、基本的に誰も入れられない~って渋られたんだけどさ。調査って言い張ったら通してくれたんだ!」
だそうだった。甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)は冒険心を隠すことなく、快活に笑う。悪びれている様子は一切ない。
「折角入れたんなら、ちゃんと時計塔の一番上まで行かないとね! そう、一番上、尖塔のてっぺんまで! だって、そこから見る景色って凄くキョーミ深いでしょ!? きっと、街の色んな見どころを見渡せると思ったんだよ。それで、怒られる前に下に降りようと思ってたんだけど……」
「手遅れだったわけね」
「……手遅れだったんですネ」
「ツカサ、あなたね……」
苦笑する三名。最後までツカサに反省は見られなかった。
「このあとどうしまショウ?」
「まずはこの紅茶をゆっくり味わいたいわね」
「本場のティータイム、ばっちり味わうわ!」
「……いいですネ。この紅茶、とっても美味しいデス」
幸せそうな三人。ハリネズミの由希がクッキーをかりかりと齧る音だけが聞こえる。
ゆっくりと時間が流れていく。
「ツカサは……って、あれ? もう寝ちゃってる!」
「あはは……疲れちゃったのかしらね」
机につっぷして寝ているツカサを、どこか愛おし気に眺めるマリア。そんな二人の様子を、やれやれと苦笑して見守る焔と期待の視線を隠さぬリヴェンティア。
ゆっくりと時間が進む。まだまだ彼らの日常は終わらない。
一休みしたら、再開されるに違いない。めぐりたい場所は、まだまだあるのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクシア・アークライト
イギリスに来るのは2回目ね。
この前はシャッガイからの昆虫とかが出てきたけど、今回はどうかしら。
「日常を満喫しろ」ってことだけど、繁華街で霧が出たりしたらまずいわよね。
マイナーな公園とか路地裏を回って、ロンドンの空気を楽しもうかな。
って、こんなことを考えてたら「日常を満喫している」って言えないわよね。
うーん、職業病かも。
よし、逆転ホームラン!
私が日常を満喫するじゃなくて、日常を満喫している人達がいるところを見て回りましょ。
それが私の日常だし。
・ということで、そこいら辺の出店でお菓子などを買い込んで路地を歩き、大道芸など日常的にある風景を楽しむ。
・ただし、UCで警戒することは怠らない。
●She is under obligation as who she is.
「(……日常を満喫するって言ってもどうしたらいいのかしら)」
UDCエージェント、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は悩んでいた。明るく、精力に満ちた赤い瞳が、困ったように顰められる。
日常を満喫する場所とか考えた方がいいのかしら。繁華街で満喫していたら、繁華街に怪異が現れるかもしれない。マイナーな公園や路地裏を回るべき? でも、繁華街にはたくさんの人がいて、その人たちは日常を満喫しているといえるかもしれない。私の行動によらず、怪異が現れちゃうかも? そばにいないと守れない? いやでもそれこそが逆効果で―――――――――
「(って、こんなことを考えてたら《日常を満喫している》って言えないわよね)」
職業病かも、と彼女は笑う。いくら悩んでも結論が出ないこともわかっていた。
「――よし、逆転ホームラン!」
気合を入れるように、口に出す。私が日常を満喫するんじゃなくて、日常を満喫している人達がいるところを見て回りましょう。それが彼女の逆転の発想。そしてそれが、アレクシア・アークライトの日常だった。
●Street Performance
「……んー! 美味しい!」
甘いクレープをぱくりと食べつつ、広場を歩く。天高く聳えているかと思わせる、高く細い塔が広場の真ん中に見える。その上には、見下ろすように男の銅像が小さく見えた。そのふもとには、獅子を象った巨大なブロンズ像。その背にまたがって遊ぶ子供たちの姿が見える。なるほど、誰もが楽しそうにしている。ここならきっと。
「……あら、あれは大道芸ね。何しているのかしら?」
ぴょんぴょんと飛び跳ねる三人組の男が見えた。そのうちの一人が、立ち見見物をする群衆の中からアレクシアを認めて、近寄って来る。
「Hi, girl. Would you mind if I ask you a help for our performance? (お姉さん、よかったら俺たちの芸を手伝ってくれない?)」
「……へ、私?」
ただの一般人に見える。彼らの身体能力もそうだし、雰囲気も一般人そのものだった。道すがら情報を集めていた。こういった大道芸では、しばしば観客を巻き込んでパフォーマンスを見せることがあるという。連れ込まれた観客は楽しめるし、パフォーマーは新鮮な芸を演出できる。
「日常を満喫する、か。…………いいわよ!」
きゅきゅと靴音を立てる。パフォーマーの動きに合わせて、くるりと回る。
「(そのまま対峙――してあげない)」
ちょっぴりの悪戯心で、大きく跳躍する。数メートル離れたパフォーマーの頭を飛び越えて着地してみせる。もちろん、猟兵の、特別に念動力の力場操作に長けた猟兵の力のなせる技。……ただし、超能力ではなく運動神経が良いせいだと納得させられる範囲内。
「Faaaaaantaaaaasticccccc!!!!!!!(すっげーーー!)」
盛り上がる観客。唖然とするパフォーマー。だが彼らもプロ。ただちに気を取り直して、アレクシアとともに即興で演舞らしきものを演出すれば、観客もいっそう大盛り上がり。終了後おひねりもたくさん投げ入れられたせいで上機嫌のパフォーマーを振り切って、アレクシアは歩き去る。
「(ただ見守るつもりが、ちょっとやりすぎちゃったかな)」
なんて、少しだけ反省する。
でも。
「(……ま、いっか)」
と、楽観的に思い直す。
こうして参加したことで、日常を満喫する人たちをまたひとつ知れた気がしたから。アレクシア・アークライトという、猟兵を、UDCエージェントを職業とする快活な少女が、日々守っている誰かの暮らしを、またひとつ知れた気がしたから。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
アレス◆f14882と
アドリブ◎
アレス!あれに乗るぞ!
ロンドンアイを指差し目を輝かせ
知らない場所なんだから何となく把握しといた方がいいだろ
あそこからならよーくみえそうだし、な?
アレスの手を引く
空が近くてすっげーいい眺め!
マーケットで適当に飯を買って食べ歩き
…これ作れるのか?
期待を込めてアレスを見つめ
!作れるなら色々買わねえとな!
アレスが考えて使うものを買う横で
興味のあるものを適当にかごに放り込む
いいじゃねえか、使うだろ?(アレスが)
落とさなきゃいいだろ
華やかな市は全然似てねえけど
住宅地の裏路地にはいればどこか故郷を思いだす
…なあアレス、ちゃぁんと守ってやんねぇとな
今度は、とは告げぬまま
手を繋ぐ
アレクシス・ミラ
セリオス◆f09573と
アドリブ◎
何処に行くかと地図を眺めているとロンドンアイに気づいたセリオスに手を引かれ
観覧車…かい?
確かにあれなら街を一望できるな
…うん、調査の一環として乗ろう
はしゃぐセリオスの隣で食い入るように景色を眺める
…初めて乗るから実は僕も楽しみだった
マーケットで買った料理の美味しさに思わず
これ…家でも作れないかな…!と呟き
期待の眼差しが…これには応えたくなってしまうな
研究するか、と本や香辛料を物色
調査もあるから購入は慎重に…こら、勝手に入れるな
…溜息を吐いた
ロンドンという街は明るいんだな
だが、この路地裏は…何となく故郷を思い出す
…ああ、そうだな
この街を守ろう
繋がれた手を握り返す
●London Eye
「(……さて、何処に行こうか)」
日光の下、テムズ河畔の潮風に金の髪が揺れている。ベンチに座ったアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)は青い目を伏せて、視線を小さな紙の地図に落としては、行き先を思案していた。ロンドンという巨大な都市には数多くの名所があり、その中で彼を一番楽しませられるのはどれか、当然悩まずにいられない。だが、アレスの誠実なる悩みは次の瞬間いともたやすく打ち破られた。
「アレス! あれに乗るぞ!」
セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)が駆けてきて、バシリと背中を叩く。驚いたアレスが顔をあげると、セリオスはきらきらと目を輝かせ、待ちきれない風に指さす。その先には、巨大な観覧車があった。
「あれは、観覧車……かい?」
世界知識の乏しいアレスには、その原理は未知のもの。それだけに、セリオスの真意を探るような、少し不思議そうな顔をする。
「知らない場所なんだから、何となく把握しといた方がいいだろ」
にかっと笑う。考えているようには見えないが、言っていることは全く正しい。
「あそこからならよーくみえそうだし、な?」
おそらく、ただ乗りたいだけなんだろうことは容易に想像がつくが、それでも言っていることは全く正しい。――それに。
「確かにあれなら街を一望できるな。……うん、調査の一環として乗ろう」
「うし、行くぞ。アレス!」
セリオスの柔らかな手が、アレスの無骨な騎士の手をとる。待ちきれないとセリオスの顔に書かれていたから、二人は息をあわせて走り出した。
「おおー! 空が近くてすっげーいい眺め!」
観覧車の中、はしゃぐセリオス。だが、アレスはその顔を見ていない。
「これは……見事な眺めだね。この大きく眺めているのがテムズ川。工事中の背の高い建物がウェストミンスター寺院で、右手の大きな丸ドームが聖ポール寺院、その周辺の、卵だったりチーズ下ろしのような構想建造物があるのがシティ……綺麗な街だ」
アレスは、食い入るように景色を眺めていた。ただしいちいち、見える景色を分析していく。
「なんだなんだ、アレス。ずいぶんと楽しそうじゃんか!」
そんな彼の様子を見て、セリオスが嬉しそうに笑う。
「悪いかい? ………実を言うとね、初めて乗るから実は僕も楽しみだったんだ」
アレスが少しだけ照れた風に笑うと、セリオスは満足げにはにかんだ。
●Eat in London
「おっ、こへ美味ひほ。ハヘフ (おっ、これ美味いぞ。アレス)」
セリオスが、羊肉の挟まった柔らかなピタ・サンドを頬張っている。
「ああ、これ……家でも作れないかな……!」
ごくりと飲み込んで、アレスが応じる。
「はひ!?(なに!?) ……ごくん。……これ、作れるのか?」
はち切れんばかりの笑顔がセリオスの整った顔に浮かぶのを見て、アレスはもう退けなかった。
「ああ、研究しないといけないけどね」
「おし、作れるなら色々買わねえとな!」
ご機嫌のセリオス。しかし、アレスは落ち着いている。冷静に要るものだけを物色し、あるいはレシピ本を購入し、後に調査が控えていることも踏まえると物は増やせないから慎重に購入して――おかしい。どんどん荷物が増えている。
「……こら、勝手に入れるな」
「いいじゃねえか、使うだろ? (※おまえが)」
「……これから調査もあるっていうのに」
「へーきへーき! 落とさなきゃいいだろ!」
アレスが、大きくため息をついた。
●In a back alley
ロンドンの南方。市街地から離れて歩けば、人はまばらになっていく。特に薄汚れた裏通りに入り込む、ロンドンという街を知ろうと思い立った二人は立っていた。散り散りになった紙が煉瓦でできた道の上に散らばっている。吐瀉物の残滓が壁にこびりついていて、その真下にはくだけたエールの瓶の破片。
「……ロンドンという街は、明るいんだな」
「そうか?……この路地裏は、どちらかといえば」
「……ああ。この路地裏は……何となく故郷を思い出す」
セリオスは、その言葉に応えない。その必要がなかった。
「……なあアレス、ちゃぁんと守ってやんねぇとな」
今度は、と告げない。その必要がなかった。
「……ああ、そうだな。この街を守ろう」
繋いだ手が握られる。その力を感じて、握り返す。
守りたかった日常が、守れなかった日常が、ここにあるのだと信じて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
祇条・結月
レイラ(f00284)と
憧れの街だけに猟兵として来るのは複雑
来てくれてありがと、レイラ。頼りにしてる
拙いけれどエスコート役をさせてね……なんて、とくすりと笑って。
時間が許すなら博物館とかロンドン塔とかいろいろ見たい建物もあるんだけど。
やっぱりマーケット巡り、が楽しいかな。
古着や小物、アンティークのお店が並んで、掘り出し物なんかも見つかりそう。
お土産……確かにアンティーク雑貨とか、いいかも。
こっちのほうは食べ物系、かな。イギリス料理ばかりじゃなくて、中華とかインド風なんかも
甘いものは僕も好き。
スコーンとか、チョコやミンスパイ。
あはは、いいね。ちょっと交換とかしてみる?
アドリブ歓迎。好きに動かして
レイラ・エインズワース
祇条サン(f02067)と
異世界、はあっても異国ってあんまり来るコトなくテ
見て回るのが楽しみダヨ
エスコートはお願いしようカナ、せっかくだカラ、おすすめのトコとか
いっぱい教えてくれたら嬉しいナ
博物館に時計塔、見てみたいモノはいっぱいあるヨ
ホラ、私ヤドリガミだしネ
あ、マーケット巡りは楽しそう
色んなモノ、歴史のあるモノが並んでいて
気になったモノ、あるカナ? お土産に買っていくのもいいと思うノ
どんなのが好きナノ?
いいネいいネ、素敵なものあったラかってコ
食べ物もちょっと気になるネ
せっかくだカラ甘いモノ
食べてくのも、食べながら歩くのも素敵カモ
せっかくだカラ、交換しよッカ
色々食べれるもんネ
アドリブ歓迎ダヨ
●My Best Fascinating City
「――ここが、ロンドン……か」
我を忘れて見入っていたことに気づいて、赤い瞳が瞬きをする。
「(まさかこんな形で来るなんて、考えもしなかったな)」
来れたことを喜ぶべきなのか、所詮は依頼という枠組みでしかないことを悲しむべきなのか、あるいは――。視線の先には、全く見慣れない人の群れがあった。彼は小さく、そして世界一忙しない環状道路の真ん中に立っていた。
燦燦というには、いささか曇り始めた空が建物の間に覗く。ばさばさと音を立てて、土鳩の群れがわが物顔で白い石造りの街並を歩いている。赤い色をした二階建てのバスが狭い道を器用に曲がって環状交差点に進入してきて、待ち合わせや暇つぶしの人だかりの絶えない、巨大なエロス像のまわりをぐるぐると走る。人びとを見守る古典的な白い街並みの端に見えるのは、現代的な電光掲示板。街行く人々はそれに目もくれず、忙しなく歩いて行く。道の向こうでグリーン・タータンの柄をしたキルトを履いてバグパイプを吹くストリート・パフォーマーの老人がいる。その横にはロンドン市内の演劇場のチケットを売る屋台。それから、――――
「――祇条サン。大丈ブ?」
気遣うような紫色の声が、思考渦巻く暗闇の中で明かりを灯した。
「……はは、ちょっと圧倒されちゃってた」
大丈夫だよ、ありがとうレイラとほほ笑む。胸から下げた銀の鍵を彼が撫でると、かちゃりと小さな音が鳴る。それから、祇条・結月(キーメイカー・f02067)は笑顔をみせて、曰く。
「来てくれてありがと、レイラ。頼りにしてる」
「異世界、はあっても異国ってあんまり来るコトなくテ、見て回るのが楽しみダヨ」
レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)はふわりと笑う。赤い瞳が、角灯の火のように好奇心で揺れる。剣と魔法の世界で何度会おうと、大樹の国を幾ら旅しようと、彼らにとってUDCアースとはすなわち日本という国でしかなかった。
「拙いけれど、エスコート役をさせてね」
なんてね――と結月は微笑を沿える。レイラの様子を見て少しほっとしたのか、冗談めかす余裕もできた。
「なら、エスコートはお願いしようカナ――」
そんな男の子の様子にあわせ、ちょこんと小さくお辞儀する。
「――せっかくだカラ、おすすめのトコとか、いっぱい教えてくれたら嬉しいナ」
環状道路は四方八方に道を伸ばしていた。西に行けば、高級商店街。南に行けば官庁街や宮殿。北に行けば、若者向けの街がある。東は中華街。どこに行ってもいいけれど、時間は有限で、それを満喫しなくてはならない。
「時間が許すなら博物館とかロンドン塔とかいろいろ見たい建物もあるんだけど――」
と結月は前置いて。ちらりとレイラの杖を見る。今までに見てきたレイラという少女を思い返す。
「――やっぱりマーケット巡り、が楽しいかな」
エスコートをするなら、満喫してもらうなら。まずはそれだろうと思った。このあたりに、古着や小物、アンティークのお店が並んで、掘り出し物なんかも見つかりそうなんだと地図を指し示す。
「あ、マーケット巡りは楽しそうだネ。素敵なものあったラかってコ」
スマホの小さな画面をのぞき込むように顔を近づけて、こくりと同意の頷きを見せる。藤の花のような、甘く柔らかな匂いの中に、結月はカンテラ油の微かなにおいを嗅ぎ取った。
●We Do Window Shopping.
通りこそガラス張りでも、じっとりと薄暗い木造りの店内で、ガラスケースに納められた金属飾りを二人はまじまじと眺めていた。店主は赤いタータン柄のシャツを着た人の好さそうな老年男性で、気取らない風の店構えが若い二人を呼び寄せていた。
「祇条サン、見テ。この細工、凄くなイ?」
「……ほんとだ。これ、銀細工だ。細か……どうやって彫ったんだろう」
「とっても綺麗だネ」
レイラが銀の飾り細工を指さすと、結月が店主に許可を取って触れる。ひんやりとした細工を傷つけないように優しく叩くと、高い反響音が聞こえた。
「――それで、わかるノ?」
「訓練が必要だけどね。――ほら、これでもロック・スミスの端くれだから」
感心したように目を丸くするレイラに、少し自慢げな結月がはにかむ。普通の人がわからない金属細工でも、その扱いは彼の生業でもあった。
「値段は――」
「――ちょっと、手が出ないネ」
顔を見合わせて、苦笑する。£マークの後に四桁の数字が描かれていては、若者が気軽に買えたものではない。店主に返し、しばらく見て回った後で店を出る。
何もかも、慌てることはない。時間はまだまだあるのだから。
●Eating Is Our Daily Life.
「色んなモノ、歴史のあるモノが並んでいて、綺麗だったネ。すごかったネ」
一通り回り終えて、土産の入った小さな袋を手に提げたレイラが笑いかける。
「本当に。銅でできた天球儀とか、蒲公英が刻まれたブックカバーとか、それから――」
「――あの、星が描かれたティーセットも素敵だったネ」
見て回ったもの、中にはお土産に買ったもの、思い出すように次々と挙げていく。レイラをスリから守るように結月が立って、雑踏を掻き分け歩く。二人の会話は止まらない。
「……っと、道路の向こう側は、飲食店街かな」
「出店がたくさんでているネ。食べ物もちょっと気になるヨ」
食べてくのも、食べながら歩くのも素敵カモとレイラがはにかむ。
答えるように、結月の腹が小さく鳴った。
「……それじゃあ、行ってみようか」
誤魔化すようにそっぽを向きながら歩き出す。満喫するにはまだ足りない。
「……楽しくなって、つい買いすぎちゃったかな」
「いいネ、たくさんだネ。せっかくだカラ、交換しよッカ」
結月の手には、たくさんの"しょっぱい" もの。ロンドンでグルメを楽しむのなら、世界各地の料理を楽しむ以上の楽しみ方はないだろう。パクチーがたっぷり載った東南アジア風の中華麺。かつての植民地から持ち込まれた、タンドリー・チキンは日本で食べるものよりもピリ辛だ。菜食主義者の需要に応える、中東風の肉料理も欠かせない。トルコ風串焼きは、唐辛子のソースとヨーグルトのソースがかけられて、いかにもな風。紙の器に入れられた、ジャマイカ風の山羊カレーが芳しい香りを放っている。
「……その豆の揚げ物、美味しそうだネ」
その中で、西アジア各国の名物であるヒヨコマメのコロッケを指さす。
「揚げもの、好きなんだ?」
「UDCアースで食べたことある食べ物だと、揚げた芋が美味しかったヨ」
はいどうぞと結月が差し出して、レイラが小さく噛り付く。
「美味しいヨ、ありがとう、祇条サン」
「どうたしまして。――レイラは、甘いものを買ったんだ?」
そうだヨ、美味しそうだヨとはにかむレイラの手には、各地の甘いものがいっぱい。素朴ながら王道を行くブリティッシュ・スコーンや、ウェールズ風の"斑点パン"にドライフルーツペーストが詰められたミンスパイ風の菓子は、縦に割ればどろりと甘い香りを放つ。見ているだけで、涎が垂れそうになる。
「――はは、どれも美味しそう」
「祇条サン、甘いもの好きなんだネ」
「……バレた?」
「視線でバレバレだヨ」
何から食べル?とレイラが微笑と共に尋ねる。テムズ川のほとり、かつて水運盛んだった頃に港としても使われた堤防に腰掛けて、目新しい食事に舌鼓を打つ。汽水河の、潮気をたっぷり含んだ風が優しく吹いて、レイラの前髪が揺れるのが見えた。カモメと土鳩が群れをなして旋回し、ふたりのおこぼれを狙っている。食べきれなかった小さな欠片を、カモメに呉れてやるとお礼代わりにきぃきぃと鳴いた。
「霧はまだ出ない――みたいだね」
「なら、もう少シ《満喫》する時間があるってことだネ」
人心地ついて、結月が腰ほどの高さのある塀から飛び降りて、レイラが降りるのを手助けせんと手を差し伸べる。柔らかな白い手の感触がした。
「なら、次は――」
コンクリートの上に着地する、ヒールの甲高い音がした。
歩き出す、微かな足音が聞こえた。
――――――
――――――――――
怪異が待つ、日常が進んでいく。
怪異を待つ、日常が進んでいく。
そこには、世界を旅する猟兵の日常があった。
今日、ロンドンという街を、幾人もの猟兵が旅していた。
彼らが見て、知った、楽しんだのは日常。
彼らが守るもの。彼ら自身のもの。
それらを覆い隠すように――ゆっくりと、ゆっくりと、白い霧が現れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『霧を晴らさないと観光が出来ない』
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POW : とりあえず突っ走る。
SPD : 技能を使って堅実に進む。
WIZ : 魔力の痕跡を探す。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●Now Is A Time To Seek.
きゅらきゅら。
どこかから、金属音がする。回る音がする。
「Hey, what a bloody fog! (おい、なんだこの霧は!)」
白い霧に包まれたどこかから、叫び声がする。
「Nothing can be seen... Let's go back to home! (なんも見えねぇ、帰ろうぜ!)」
若い男の声がする。
「But... How come?? (でも、どうやって?)」
反駁するような若い女の声がする。
目の前すら見えなくなる深い霧を前にして、一般人は何をもすることができない。
彼らを追け狙うような怪異の影が、きっとどこかに潜んでいる。
猟兵は、その責務を果たさなくてはならない。
●マスターコメント(第二章補足)
ロンドン観光、お疲れさまでした。楽しんでいただけたでしょうか。
これほど大勢の方のリプレイを執筆したのは銀河皇帝戦でもなかったことでなんとも楽しい経験でした。よければ引き続きのお付き合いをよろしくお願いします。
目的:不可思議な霧の発生源の探索
場所:ロンドン市内各所。
天候:霧。
時刻:夕刻頃。
・第一章参加された方向け
一章リプレイ内で猟兵のみなさんが霧発生時にいた場所は基本的に明言しないようにしていますが、一章の流れを汲んだ戦闘演出になります。一章の行動で二章が不利になるようなことはありません。
・第二章から参加される方向け
途中からでも、どうぞお気軽に。
ここからは真面目な依頼です。とはいえ難易度は高くありません。三章構造の最後は必ず敵が現れること、断章の演出描写がヒントです。難しく考えず、皆さまのお子さんらしい探索法を試していただければ、きっと上手くいくのではないでしょうか。
《リプレイ執筆は5/18(土)正午過ぎ~ 19(日)深夜》を予定しています。それに伴い、《リプレイ募集は5/16(木)8:30~ 18(土)11:59まで》とします。
※ 5/15(水)8:30~ 5/16(木)8:30以前に送られたものは失効が5/19(日)8:30となるため、執筆が間に合わない場合がありますので、ご注意ください。
熱いプレイングをお待ちしております。
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皐月・灯
ユア(f00261)と
どうやらお出ましらしいぜ。
店にいる一般人が下手に動くと危ねー。
店員に、霧が晴れるまで客を外に出さねーよう伝えとくぞ。
……まあ、オレ達は出るけどよ。
オレは地面に魔力を走らせて、異質なものが近くにねーか確認する。
装備してるサラウンド・コレクターが、少しは役に立つかもな。
ユア、気づいたか?
霧が現れる直前、妙な音がしてた。カフェには似合わねー音がな。
……多分、何かの駆動音だ。
一般人共に音について確認し、その行方を追うぜ。
魔力探知と組み合わせて、出処を追いかけられねーかな。
その心配はねーよ。
……お前がオレに見える範囲から離れなきゃいいだけだ。
ぼーっとしてんな。行くぞ、ユア。
ユア・アラマート
灯(f00069)と
始まったみたいだな、ここからは仕事の時間だ
外は危険だろうし、店の中にいる人達には動かないように言っておこう
ああ…そういえば妙な音が聞こえた。霧の発生と何か関係があるかもしれないし、探ってみるか
店外に出たら灯の探知に合わせて【第六感】で周囲に妙な気配がないか確認
通りがかりの人達に金属音が聞こえなかったか、聞こえたならその方向を聞いて情報収集
その際、もし近くに建物があれば屋内に一般人を避難させたいな
もし一般人が何かに襲われそうだったら【見切り】【追跡】で気配を捕らえ花鳴で一閃
しかし、こうも霧が深いと私達まではぐれそうかな
背中は預けるよ灯。その代わり、お前の背中は私がカバーしよう
●Now Is A Time To Seek.
「――どうやらお出ましらしいぜ」
手にしていたフォークとナイフを静かに皿に置いて、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)は口を拭く。皿の上の菓子は最早かけらも残っていなかった。
「――始まったみたいだな、ここからは仕事の時間だ」
ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)に驚く様子はない。甘さを残さぬ男の言葉と態度を当然と受け止めて、静かに頷いて立ち上がる。
硝子越しに見える店の外は、真っ白な霧にすっかり包まれていた。
「Hey, don't make your customers out. (おい、霧が晴れるまで客を外に出さない方がいいぜ)」
給仕服を纏った店員に、灯が不愛想に声をかける。
「Yes..., but you two are going. (ああ、でも、君たちは……)」
ただならぬ様子を見て店員が頷くも、出ていこうとする二人に気づいた。
「Don't worry. We're getting used to it.(心配ないよ。慣れてるんだ)」
緑色の瞳が軽く開閉する。ユアのウィンクだけを残して、二人は店から出て行った。
●A White Foggy City
「――やはり、音が聞こえるな。しかも動いている」
「この霧の中で、まともな人間が自由に動けるはずがない」
「魔力を這わせて探ってるが、動きが速い。一朝一夕にゃ捉えられねー」
「この霧のせいだろう、気配と魔力が拡散しているな」
石畳を踏む音。叫び声が、そこかしこから聞こえていた。
橙と薄青、双碧の瞳が、わずかな異変をも見逃すまいと動く。喫茶店のときの雰囲気とは打って変わっての真剣な表情。二人はまさしく、猟兵という生き物だった。灯がサラウンド・コレクターによる魔力増幅で音を探知し、ユアが第六感をもって霧の正体を探る。敵がいることに、疑いようはなかった。
白い霧の中、からからからからと、加速した車輪の音が近づくのが聞こえた。
「――そこ!」
翡翠色の剣閃が、白い闇を貫く。数メートル離れた先、うずくまる一般人の眼前で火花が飛び散った。一瞬、丸い――車輪のような形をした怪異が見える。車輪の中心に描かれた顔は、どこか二人を嘲笑うようですらあった。しかし、接近をやめて離れていく。案外、臆病なようであった。あるいは別の目的があるのか。
「――残念、弾かれたか」
さながら突風のような一投。しかしそれが金属の体に弾かれて、ユアが少し悔しそうに口を尖らせる。まったく、女性的な仕草だった。一般人を非難させるため、走り寄る。
「一般人どもを守りつつ、戦うしかねーな」
灯は、無意味な慰めを口にしない。まさしく、男性的な口ぶり。ユアの一投は敵を倒せこそしなかったが、確かに命を守っていた。それで十分だし、それが仕事だった。
「しかし、こうも霧が深いと私達まではぐれそうかな」
顔を綻ばせ、からかうようにユアが口にする。
「その心配はねーよ」
彼女の言葉を、毅然と否定する。
「……お前がオレに見える範囲から離れなきゃいいだけだ」
それは喫茶店で頬を染めていたのと同一人物とは思えない口ぶり。驚いたユアを待たず、灯が続ける。
「ぼーっとしてんな。行くぞ、ユア」
「……ああ、背中は預けるよ、灯」
音が逃げ去った方向へ、灯が走り出す。
ユアがその背を守る。
車道で立往生している車を避けて、彼らは進む。
負ける心配など、必要なかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シュデラ・テノーフォン
丁度紅茶も飲み終えた所だ、行こうか
チップはテーブルに置いとくね
やァ流石霧の都…ま実際はスモッグだったけど
先ずは一般の紳士淑女達救出しよう
ソノ前にハーキマー、アノ金属が回る音。聞こえるよね
少し追跡してくれるかい
発見あれば視界共有
霧は多分大元狩らないと完全に消えないんだろうけど
風を作ったら一時的にも晴れないかな
例えば翼をその場で動かしてみたり
ダメでもとりあえず、声のする方へ
大丈夫?皆で行こうかと近くの人達呼んで集める
後はきゅらきゅら音がしない方へ
持参コンパスで方角確認し電波あればスマホの地図アプリで道案内
建物見えたらソコで解散
一時的だろうし晴れる迄店とかに入ってるといいよ
さて、霧の奥に何が居るかな
●End of the meal
「丁度紅茶も飲み終えた所だ、行こうか」
赤い紙幣をソーサーの下に挿して、彼は立ち上がる。
慌てることはない。革靴の音を立てて、レストランを後にする。
「おいで、ハーキマー」
一面の白い霧を至極つまらなそうに眺めて、シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)は足元に控える有翼の狼の頭を撫でる。
「……ハーキマー、アノ金属が回る音。聞こえるよね」
少し追跡してくれるかいと優しく言えば、狼が吼声をあげて走り出す。
「さて、先ずは一般の紳士淑女達救出しよう」
追跡はひとまず相棒に任せて、白き人狼は歩き出した。
●Time to Hunt
「……捕まえられないか」
慌てこそしていないが、思案するように呟く。何度か姿こそ捉えていても、捕まえることはできない。敵の姿は未だはっきり視認できない。オブリビオンであることは間違いない。
「――なら。」
一般人たちを非難させ、青年は進む。
刹那、きゅらきゅらと車輪が回る音がした。
「ハーキマー!」
透明な狼が飛び掛かる。受け止めるのは、高速で移動してきた構造体。
「……さて、霧に隠れたその姿、見せてもらおう」
翼を広げ、大きく羽ばたく。風が吹き、その姿を露わにする。顔が見える。車輪が見える。明らかに異様な姿のオブリビオン。車輪が勢いよく回転し、逃げるように走り去っていく。だが、未だ遠くはない。ならば、追いつける。
「……狩りの時間だ」
金の瞳が貪婪に歪む。その目は、決して獲物を逃さない。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
【ミルフィ・クロックラヴィット(f02229)】
と参加
アドリブや他の方との絡み等も歓迎です
なんだか霧が
出てきましたみたいです…
やっぱり何かが
起こるんでしょうか…
ミルフィのご提案で
イーストエンド・ホワイトチャペル地区に
向かいます
『ミルフィ…そこには何があるんですか…?』
そこでミルフィの
『ラビィエクステンダー』の
座席後部に乗せて貰い
慎重に進みつつ
【第六感】や【情報収集】等で
魔力の痕跡などの
手がかりを探します
『この街で…一体何が…?』
もし
正体不明の敵に襲われて負傷した
一般の方がいらっしゃったら
【救助活動】と
UCのシンフォニック・キュアで
応急手当をします
『大丈夫ですか…!?一体何があったんですか…?』
ミルフィ・クロックラヴィット
【アリス・フェアリィハート(f01939)】
姫様と参加
アドリブや他の方との絡み等も歓迎
不自然な霧が…
やはりこの街では
何かが…?
探索場所として
イーストエンド・ホワイトチャペル地区に
アリス姫様と向かいますわ
『此処は…かの殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー」が、連続殺人を
行った場所とされてますわ…』
自身のビークル
『ラビィエクステンダー』を
出現させ搭乗
アリス姫様を座席後部に乗せ
機体のライトやナビ等で
視界等確保
慎重に進み
【情報収集】等で
痕跡等探索
もし敵が出現
アリス姫様に危険が及んだら
【誘導弾】や【一斉射撃】等
機体搭載の武装で応戦や
場を走行離脱
(一般人等巻き込まない様に)
『姫様、しっかり掴まって下さいまし!』
●In The East End
「此処は……かの殺人鬼《ジャック・ザ・リッパー》が、連続殺人を行った場所とされてますわ……」
ホワイト・チャペルの広い通りに、二人の少女が立っていた。足元に散らばる塵を踏まないように気を付けて、ミルフィ・クロックラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・f02229)が真剣に語る。日常を満喫することで現れる怪異。それを探すための観光の場所として、ロンドン市内でも特に治安の悪い東方を選んでいた。移民と思われる、無数の回教徒が歩いている。
「なんだか霧が出てきましたみたいです……。やっぱり何かが起こるんでしょうか……」
小さな手を、胸の前でぎゅっと握りしめてアリス・フェアリィハート(猟兵の国のアリス・f01939)が不安げに呟く。
「大丈夫ですよ、姫様。わたくしがついています」
にっこりと笑い、傍に控えるウサミミメイド。
「……ミルフィ、ありがとうございます」
そんな従者を見れば、お姫様も少しは勇気を振り絞り。ふわりと健気に笑ってみせる。
そんな二人を白い霧が包む。じわり、じわりと。
「……姫様、どうぞ御乗りください」
「ええ、お願いします」
用意していた、流線形のバイクを示す。まるで兎のように可愛らし気な曲線美。《ラビィエクステンダー》と名付けられたビークルに、二人は跨る。
「飛ばしますから、しっかり捕まっていてくださいましね」
後部座席の姫様を気遣うように声をかけて、ミルフィがアクセルを踏む。まるで悲鳴のような音を立てて、タイヤがコンクリートの車道を滑っていった。
●Chase!
「……ミルフィ、何か聞こえませんか?」
「確かに、何か高速で走っているような音が……」
「――あっちです! 東の方へ寄せてください!」
「――わかりました、姫様の仰せの通りに!」
アリスが小さな指で東を指させば、ミルフィが車体を寄せていく。
次第に、謎の回転音が大きくなるのを二人は感じた。
古びた石の街並みを、《ラビィエクステンダー》が駆けて行く。
「ライトでは、正体を掴めませんわね……――っ!」
回転音が、突如変調した。向きを変え、速度を変えたということ。
その音は、二人へまっすぐ向かってくる。
「――姫様、しっかり捕まってくださいまし!」
ミルフィが叫び、ハンドルを大きく動かすと同時に、ビークルの機銃で牽制射撃する。軽い金属音がする。迫る回転音は止まらない。
「――ミルフィ、あれが!」
「――はい、姫様。私たちが倒すべき、敵です!」
未だ霧に包まれたその正体ははっきりと掴めない。
しかし、姫様と従者は確かに、倒すべき敵と相対していた。
二人は毅然と顔をあげる。少女であっても、猟兵なのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
――金属音、霧
……時は満ちたってことかしら
不可思議な霧だというのなら
魔術的な根拠で調べる必要があるわ
……そういうのは、あなたのほうが得意でしょうね
(人格交代:ヘンリエッタ→マダム)
ファンタジーは共感しかねるが、魔術は好きだ。方程式とそう変わらない
さて、私の計画にない無駄な犠牲を出さないためにも尽力しようか
【悪徳教授の名誉助手】
ロンドン観光は楽しかったかな?「ワトソン」……君は、私には辛辣だよなぁ
民間人以外の動きに反応してくれ。できるだろう
私は魔術の解析を。
動くのは面倒だ
私が目星をつけるから君がその手合いを拘束してくれ
――機嫌が悪い?そうかもね
「私の庭(ロンドン)」が荒らされたからかな
●Their names are Moriarty.
「――金属音、霧。……時は満ちたってことかしら」
無数に聞こえる金属音を耳で捉えて、彼女は呟いた。
突如現れる不可思議な霧。まず、通常の手段で生み出されるものではない。魔術的な根拠があるはずと考えた彼女の思考は論理的なものだろう。そして彼女の論理性は、より最適な方法で目的達成を求めた。
「(……そういうのは、あなたのほうが得意でしょうね)」
躊躇いを乗り越えて、怒りと共に出番を譲る。
誰に?
もうひとりの、《ヘンリエッタ》に。
「ファンタジーは共感しかねるが、魔術は好きだ。方程式とそう変わらない」
真っ白な霧の中、コツコツと靴音を立てる。あたかも大学の講義であるかのような気軽さで、《生徒たち》に語ってみせるように《マダム》は呟く。
「さて、私の計画にない、無駄な犠牲を出さないためにも尽力しようか」
マダム・ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は、自らの方程式に与さぬ因子を許さない。なにより、数学とは効率の学問である。数学的真理は、得てして単純な組み合わせによって導かれる。複雑に見えるものをいかに単純に、誰にでもわかるものへと解きほぐしていくかが、数学者の腕の見せ所なのである。彼女の心が言葉通りのものであるかは、彼女しか知りえない。しかし、間違いないことは無駄を気にしない数学者など存在せず、マダム・ヘンリエッタ・モリアーティはかつてその教授であった。
「――ロンドン観光は楽しかったかな?」
面白そうに笑う。そう呟く彼女の傍らには、無数の黒色の触手がうねる。
「《ワトスン》……君は私には辛辣だよなぁ」
反抗的な唸り声をあげる触手の様を見ても、尊大な様子は変わりない。恐れる様子は微塵もない。なぜならば。彼女こそが《モリアーティ》の管理人なのだから。
計算は済んでいる。大規模な霧を生じさせた原因。霧でしかない、異変。動く金属音。
敵が一体であるはずがない。物理的に不可能だ。術式は確かに現実と常識を打ち破るものだが、無理はできない。無条件に世界を書き換えられるなら、こんな回りくどい手を取る必要がない。つまり、敵の能力には限界が必ずあるはずで、同一個体かはともかく、複数体が協力しているという仮説が一番確からしい。
複数体が協力して動き回れば、いかにロンドン市広しと言えど、覆うことは容易だ。
ならば次に数学者はがやるべきは、検証。
「民間人以外の動きに反応してくれ。できるだろう」
不承不承といった風に、触手の群れが蠢く。
そして当然かのように、通り沿いに設えられていたカフェのテラス席の椅子を引く。理由は彼女に問えば、答えはすぐに返ってくるだろう。動くのは面倒だ、と。
「私が目星をつけるから、君がその手合いを拘束してくれ。――どうした?」
コツコツと指でテーブルを叩く。《マダム》の命を受けた《ワトスン》が、その様子を前に、まるで首をかしげるかのように唸った。
「――機嫌が悪い? そうかもね」
そう問われたことが少し意外そうに、目を丸める。
ロンドン
「……《私の庭》が荒らされたからかな」
《ワトスン》は確かに見た、獲物を待ち構える飢えた蜘蛛の微笑を。
黒い糸が、怪異を捉えんと張り巡らされていった。
大成功
🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
【付喪】
アドリブ歓迎
友に見立てて貰った洒落た衣装を身に纏い
此れまた洒落た喫茶店で一服していたら…事件だと?
無粋な輩め、しかし捨て置く訳にもいくまい
手早く紅茶のお代を払って街へ探索に出ねば
濃い霧の中、足止めを食っている街の人を見かけたら
なけなしの「コミュ力」で身を案じつつ声を掛け「情報収集」を試みる
きゅらきゅらという…金属音? 此の霧の出処と関係が有るのか?
此の街について持てる限りの「世界知識」で心当たりを考える
歯車…時計か? 其れともまさか…かの古の封印されし兵器…?
其れも踏まえて人々から話を聞いてみたく
だが少し待って欲しい
此の非常事態に…此れは、世に言う、逆ナンパ…!?
クロウ、助けてくれ…!
杜鬼・クロウ
【付喪】
アドリブ◎
喫茶店でニコの本体の話を肴に紅茶堪能してると深い霧発生
喧騒の声で気付く
どうやらアソビはココまでのようだなァ(一服して火消す
名残惜しいが仕事だ(肩ぽん
気ィ引き締めてくぞ、ニコ(帽子とグラサンかけ上着羽織り
ニコと一緒に怪異に結び付く手掛り探索(情報収集・聞き耳
怪異の影を見た目撃者からその時の状況、何か気付いた事があれば聞く
音から連想するに歯車…機械仕掛けのなンかが鍵か?
時計塔とかあった気ィするが
ココにンな物騒な兵器あンのかよ(知識豊富なニコに感心
目星つけ交通手段フルに使い移動
途中、逆ナン光景を目の当たりに
離れてニコ達の様子見守る
モテる男は違うなァ(爽笑
どう切り抜けるのか見物だぜ
●A Beginning of A Survey
「……どうやらアソビはココまでのようだなァ」
名残を惜しむように、紫煙を大きく高く吹き捨てる。霧の中に、煙が入り混じって、その正体が次第に見えなくなる。軽い苦笑を浮かべた杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が、陶器の灰皿に火を押し付けた。
「――無粋な輩め、しかし捨て置く訳にもいくまい」
まさに今、日常を満喫していたというのに。ため息をつく。だが、それだけ。ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)という生真面目な猟兵が囚われすぎることはない。時計の針が進むように、彼の思考は事変へと移る。
「おウ、名残惜しいが仕事だ。――気ィ引き締めてくぞ、ニコ」
慰めるように、クロウがニコの肩を叩く。切り替えたことと、執着がないことは別なことぐらい、彼にはわかっていた。帽子を被り、サングラスをかけ、上着を羽織る。いちいち動作が洒落て堂の入ったものであるのが、クロウという男の在り方なのだろうか。準備万端整えて、にかっと
「――紅茶代、チップにしては多少多いがこの際仕方あるまい」
財布から紙幣を取り出して、ニコはそれを紅茶のソーサーの下に挿す。一般に、チップ代の相場は要求された値段の1割ほどだという。紙幣で支払っては大きく超えるが、それでも支払わないで去ることをよしとできなかった。ジャケットを羽織り、折り目正しく襟をひっぱり、ボタンを留める。
白い霧の中、二人の伊達男が事態解決に動き出した。
●A Break Time In Fog
「(くっ――どうしたらいい!?)」
ニコ・ベルクシュタインは窮地に立たされていた。打開策が見当たらない。彼ほど怜悧な頭脳を持つ猟兵がそうなるとは、よほどのことである。さらなる問題は、その相手はオブリビオンではなかった。一般人だった。
話は3分前に巻き戻る。
「Are you alright, lady(お嬢さん、大丈夫ですか)」
「Ye...yes, Mr. ...no, my knight...(あ、ありがとう、お兄さ……いいえ、騎士様)」
「...what ? (え?)」
「Oh, my lord. I really appreciate you for saving me. I do realize you are my destiny. You must remember when we are married in our previous life, we promise that ... (ああ、助けてくれてありがとうございます、騎士様……。今こそ確信んしました。ええあなたこそ運命のお方だと確信しています私たちが前世で結ばれていたときのあの約束が……)」
いずこの国にも、電波なお嬢様というのはいるもので。まして、夢見がちなお嬢様というものが、甘いマスクの男に言い寄られてはうっとりもしてしまおうというものだ。ライトブラウンの髪を三つ編みに結んで、雀斑の目立つ丸い顔。ぐいぐいと来る名もなき一般人女子。今は任務中で――いや、任務中でなくとも困るのだが、とニコは反論するだろうが――時間が惜しく、とはいえ、霧の中で彼女を捨て置くことはできない。言うまでもなく、彼女を討伐することはできない。それだけに、困った。
「(あれは……逆ナン!)」
それを面白おかしく眺める男がいた。言うまでもなく、クロウである。
モテる男は辛いねぇと顎を撫でて高みの見物。
それから15分後。ほうほうのていで逃げ出したニコを、クロウは爽やかに笑って労うのだった。
●Time To Reason
「なるほど、車輪のような音が聞こえたんだな」
「きゅらきゅらという……移動する金属音?」
猟兵の視力、事前に得た土地勘で、白く閉ざされた街を歩く。
取り残された人たちを捕まえて、霧の発生したときの状況を尋ねる。
「音から連想するに歯車……機械仕掛けのなンかが鍵か?」
得られた情報を共有して、クロウが思いつきを口にする。
「歯車……時計か? だが、それでは移動する音の説明が付かない」
「足の生えた時計……よりは、もうちょっとしっくり来る正体がありそうだよなァ」
「……となると、機械仕掛けの兵器とか」
「ここ、UDCアースだぜ? そんな高度な兵器があるもンかね」
「このイギリスという国は、UDCアースの陸上兵器で最も有名な戦車という兵器の生みの親だ。銃も幾つも生み出しているし、戦闘機や艦船だって――」
「……ココにンな物騒な兵器あンのかよ」
感心したように、クロウが唸る。
「それ以外に有名なものといえば……まさか」
「なんか、思いついたのか?」
「仮説の段階だが、……自爆に気を付けた方がいいかもしれないな」
なんだそりゃ?と目を丸めるクロウを前に、君に仮説で固定観念を植え付けたくないとニコは、それ以上を語るのを避けて調査を再開していく。
その推測があたっていることを彼らが知るのは、もう少しあと。
着実な推理が積み重なっていく。彼らが霧を晴らすまで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウェンディ・ロックビル
かぐやちゃん(f15297)と!
ん。いよいよ出てきたね。のりかかったふね、だもん。一緒に探そっか。
そうだね、じゃあ、探索方法は……っていっても、僕の自慢は、やっぱりこの脚だから。
地道に街中を駆けまわって探そうかなー、って思うんだけど……。
んふふっ、さんきゅっ!
じゃあ、この蝶々さん連れて僕、直感任せで走り回って来るから!
オペレートお願いね、かぐやちゃん!
かぐやちゃんと適宜通信しながら、勘に任せて街中を走り回って手当たり次第に発生源を探すよぉ。
んー、やっぱりこういうのだと、工場とか怪しい気はするんだけど、どーだろっ。
――あっ、かぐやちゃん、アレじゃないかな、アレ!こっち来れるー!?
穂結・神楽耶
ウェンディ様/f02706 と
まあ。満喫していたら本当に霧が。
ウェンディ様、どう動かれますか?
……。
分かりました。あなたの直感に任せます。
「蝶」を着けておくので、どうぞ思うままに駆けてください。
事前に所属支部で得た情報と知識。
感覚共有した「蝶」の視界でそれらしきものを探します。
ああほらやっぱり早かった。
舞わせた蝶で案内しながら自分も急いでそちらに向かいましょう。
…さて。
位置は分かっているのですがずいぶん遠くに。
あんなに早いウェンディ様に追いつけますかね?
●Runner and Operator
「……まあ、満喫していたら本当に霧が。ウェンディ様、どう動かれますか?」
白い霧。深々と広がる霧。たくさんあった食べ物を、すっかりぺろりと食べ終えて、腹ごなしに歩いていた二人を迎える怪異の霧。目をまんまるに見広げて、見慣れぬ景色をその赤い瞳に映す。穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)の黒い髪は、白い霧の中でもよく目立つ。
「ん。いよいよ出てきたね。のりかかったふね、だもん。一緒に探そっか!」
白い髪を揺らし、こくりと頷いて、ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)はにっかりと笑顔をみせる。
「探索方法は……っていっても、僕の自慢は、やっぱりこの脚だから――」
躊躇うことなくスカートを捲る。すらりと長く伸びた健康的な脚が覗く。肌理細やかな褐色の肌が薄く広がる白い霧の中でもよく見えた。
神楽耶はそんな彼女の様子をにこにこと見守る。
「――地道に街中を駆けまわって探そうかなー、って思うんだけど……」
ひとしきりうーんうーんと悩んでも結論は変わらなかったようで、どうかな?とウェンディが首をかしげる。
「分かりました。あなたの直感に任せます。……《蝶》を着けておくので、どうぞ思うままに駆けてください」
まるで芍薬の花のようにすらりと立って、静かに頷く。見守るように、気遣うように。
「んふふっ、さんきゅっ!」
そんな母性的な笑みを向けられて、ウェンディのテンションは急上昇。
誰だって、自分の流儀を認められるのは嬉しいのだ。
「じゃあ、この蝶々さん連れて僕、直感任せで走り回って来るから!」
火の粉を散らす、炎の蝶が白い霧の中で朧気に光る。ふよふよと飛来して、ウェンディの周りを飛び回る。
「オペレートお願いね、かぐやちゃん!」
「はい、お任せくだ――――もう行ってしまいましたね」
言うや否や返事も待たずに駆けだすウェンディ。そんな最速の少女を遠目に、神楽耶は小さく笑う。そして、自分にしかできないことをするために両目を閉じた。
●Run! Run! Run!
「……そちらの方からは気配がしません。西の方へ向かってもらえますか?」
「了解! じゃあ東は中止して西へ! ゴーゴー!」
炎の蝶を介して、二人は探索を続ける。どうも捗っていなかった。
「んー……工場とかー、時計塔とかー、怪しいところはだいたい見て回ったと思うんだけど」
かっしと道端の電柱を掴んで、くるりと回る。きゅきゅっと足音を立てて、ウェンディが立ち止まる。そのまわりを、ちらちらと火の粉を散らして蝶が舞う。
「特定の場所に拠点があるのかと思いましたが、どうも違うのかもしれませんね」
「とすると、敵は動いてる――」
「――――可能性がありますね」
神楽耶の言葉と同時にウェンディが石造りの建物の屋上へと駆けのぼる。景観保護条例で昔ながらの造りそのままに、埃の積もった屋根の上で屈伸する。
「北の方、少し霧が濃いような気がしませんか」
「――確かに。よぅし、行ってみよっか!」
ぴょんと跳躍し、駆けだす。一番霧の濃いところへ。
駆ける、駆ける、駆ける。石畳を踏んで、立往生する車を避けて、しゃがみこむ一般人を飛び越えて、ウェンディ・ロックビルがその速さを主張する。
小さな公園を抜けて、煙突のある小さな家の屋根を登って、運河のへりを走って。
見つけた。車輪の音が聞こえた。
満面の笑みを浮かべる。確信があった。あれが敵に違いない。
「――あっ、かぐやちゃん、アレじゃないかな、アレ! こっち来れるー!?」
火の蝶に元気いっぱい声をかけつつ、追いかけ走る。
かけっこで、ロックビルの名を持つ少女が負けるわけにはいかなかった。
かけっこで、ロックビルの名を持つ少女が負ける道理がなかった。
「……ええ、アレに違いありませんね。今行きますよ」
舞わせた蝶を通じて、微笑を湛えた言葉を送る。
「(……さて)」
そして、蝶から伝えられた位置と、地図を見比べて苦笑する。
「(位置は分かっているのですがずいぶん遠くに)」
りんりんと、ロンドンに似合わぬ玲瓏な鈴の音が響く。
黒い髪が揺れて、白い霧をまっすぐに割いて行く。
「(……あんなに早いウェンディ様に追いつけますかね?)」
厳かな図書館の門を抜けて、近代的な駅の脇を通り、友達目指して一直線。
怪異は、もうすぐ二人の目の前に姿を現す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
五百雀・斗真
ベモリゼさんが話してくれてた通り、霧が出てきた
…ん。きゅらきゅらと金属音が聞こえるけれど…何の音だろう
音的に何かを巻いてるような、動いてるような…
もしかして、ロンドンの有名な時計台?
そこが霧の発生源なのかな…
ちょっと仔竜のソルとルアにも手伝ってもらおうかな
二匹とも感覚が鋭いから僕より音がする方向がわかりそうだし
ソル、ルア、よろしくね
音がする方向を確認できたら
二匹に先導してもらいながら進んでいく
そして可能なら…発生源を止めたいな
深い霧のままだと戦闘も避難もしにくいし
見つけたら慎重に調べてみる
二匹が野生の勘で危険を察知したら
霧の中での戦闘は避けて
【影の追跡者】で見失わないようにしたい
※アドリブ歓迎
●My two dear dragons
「――感覚が鋭い君たちを頼りにしているよ。ソル、ルア、よろしくね」
二匹の仔竜に、優しく声をかける。赤橙色の輝石と、乳白色の輝石が薄れゆく日光を受けて、きらりと輝く。五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)と二匹の竜は、霧の中、石でできた道をゆっくりと歩いていた。
「(確かに、どこからか聞こえてくるんだけど……)」
音は聞こえては消え、聞こえては消え、その正体も所在もつかめない。動かない特定の場所が発生源ではないようだった。時折竜が視線を向けるも、すぐに興味を失ったかのように顔を戻す。霧の発生源を二匹の仔竜で見つけるには、何かもう少し、その強みを活かす作戦が必要だったろう。
しかし、チャンスはやってきた。
「――ソル!」
仔竜がいち早く気づき、唸り声をあげる。咄嗟に臨戦態勢を取り、構える。手首に括られた青灰色の輝石が揺れる。
――カララララララララ!
軽快な金属の回転音が、霧の中から迫る。
「――避けるんだ!」
二匹の仔竜に回避を指示しつつ、近場の街頭の柱目掛けて袖から薄墨色の触手を伸ばす。くるりと電柱に巻き付いて、斗真の身体をひっぱりあげれば、斗真と二匹の仔竜がいた場所を、猛スピードで何かが通り過ぎて行った。
「(――あれか。 逃がしはしないよ)」
一瞬、斗真の体が二重に分裂するかのように歪む。刹那の後に、彼の分身は影となって走り出す。ユーベルコードで呼び出された、【影の追跡者】が怪異を追いかける。狭い裏路地を器用に駆け抜ける、ふたつの車輪をつなぎあわせたかのような奇怪な形状の怪異。ゴミ箱を踏み越え、塀に飛び乗り、隘路を行く怪異を追跡者が追いかける。
「(――このまま、追い詰めて見せる)」
未だ正体の知れぬ怪異は哀れであったといえよう。五百雀・斗真という、対UDCのエキスパートと出会ってしまったということが、生まれて間もない彼の命運を尽きさせようとしているのだから。
大成功
🔵🔵🔵
セリオン・アーヴニル
《行動方針:SPD》
チッ…この不快感は単に視界が悪いからというだけの理由では無さそうだ。
…確実に『何か』が居るな。
《同行者:ウイシア(f09322)、尾崎(f14041)》
【境界崩壊】を発動し、自分自身の複製をLv分生成。
ウイシアと尾崎の周辺警護用に5名程残し、残りの複製体を視覚、聴覚を常時共有した状態で街中に散開させ、文字通りの人海戦術で探索を行う。
自身は同行者二人の護衛を主体に、指示があれば指定のポイントに複製を向かわせる等の補佐を行いながら複製から入ってくる情報を分析。
気になる物や異変を発見次第二人にも伝達。
もし複製が敵勢を発見したら、付かず離れず追跡させつつ三人でその場所へ向かおう。
ウイシア・ジンジャーエール
急な霧…、おかしなものね。
ロンドンといえば霧のイメージと聞いたけれど、それは昔の事でしょう?
原因を探るわ。2人とも、手伝って頂戴。
同行者(f00924)(f14041)
3人固まって警戒。
周囲に取り残された一般人に犬を連れてる人がいれば、情報収集を兼ねて聞き込み。
対人はナオとセリオンに任せ、私はビーストマスターとして〔動物会話〕。
口を動かさず、犬の目を見て聞き込み。
「何か変なものを見なかった?」等、霧の発生源を探します。
対人や犬から情報収集が出来なかった場合や、時間がある場合。
上空の鳥を〔おびき寄せ〕で呼ぶ。
同じく〔動物会話〕で対話を試みるわ。
「上空から見て、霧の発生はどんな様子だった?」
尾崎・ナオ
同行1:ウイシア・ジンジャーエール(f09322)
同行2:セリオン・アーヴニル(f00924)
行動:WIZ(痕跡を探す)
まずね、3人バラバラになるのは止そうってなった。知らない土地だし霧で見えないし。一度逸れたら合流出来ない可能性あるねって。
で、何が出来るかって相談したんだけど、ウイシアは動物系、セリオンさんは分身、ナオちゃんは記憶消去銃持ってる、みたいな。
犬を連れてる一般人を探して「霧すごいですねー!この国っていつもこんな感じなんですかぁ?」と会話。ウイシアが犬に聞く時間稼ぎが出来たら「どこから霧出たか見た?」とか「金属音って聞いた?どっち?」とかズカズカ聞こう。最後は記憶消去銃でバーン!
●Hearing from a dog.
「チッ……この不快感は単に視界が悪いからというだけの理由では無さそうだ。……確実に『何か』が居るな」
舌打ちをして、霧の向こうを見透かそうと目を細める。セリオン・アーヴニル(並行世界のエトランジェ・f00924)はいつにもまして、一層不機嫌そうな顔をしていた。
「セリオンさん、顔こわーい。でも、間違いなく『何か』がいるよね」
そんな彼をからかうようにけらけら笑う。尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)は手の中で黒いナイフを弄って、くるくると回す。へらへらと笑いながらも、霧の中、何が襲ってきてもいいように油断だけはしていなかった。
「……急な霧、明らかにおかしいわ。人間では知覚できないものがあるかもしれない」
2人とも、手伝って頂戴と伝える。ウイシア・ジンジャーエール(探索者・f09322)が茶色の髪を揺らして歩き出すと、遅れまじとナオが、続けて二人を守るようにセリオンが歩み始めた。
「霧、すごいですねー!」
「You ...(君たち……)」
「この国っていつもこんな感じなんですかぁ?」
戸惑う一般人を、ナオが捕まえていた。二の句を継がせない。怒涛の質問攻め。ある種、彼女の本領発揮なのだろうか。
「(……私が時間を稼いでおくから、ちゃーんとウイシア、話を聞いておいてねー)」
ちらりと足元に視線をやると、そこにはしゃがみ込み、犬と目線をあわせるウイシアの姿があった。遊んでいるわけではない。ビーストマスターの好奇心。犬と語り合う特殊技能。
「(何か変なものを見なかった?)」
「(ああ、火薬……だな。人間たちがいつも乗ってる……なんだっけ、車みたいな金属の臭いに紛れて、火薬の臭いが動いていた)」
「(火薬の臭いをさせる車が霧の中で動いていたのね)」
「(車かどうかは、俺みたいな犬にはわかんねーけどな)」
「(どっちに行ったかわかる?)」
「(幾体か通り過ぎたけどよ、今一番近い奴は、あっち……だな)」
「(複数いるのね。わかった。ありがとう)」
幾分かフランクな犬と話し終えて、ウイシアが立ち上がる。視力の低いロンドン犬にとって、物を見るということは臭いで辿ることを意味するらしい。しかし、それゆえに霧に包まれた中であっても敵の姿が浮かび上がる。
「……ウイシア、どうだったぁ?」
一般人から聞きこみ終えて、ナオが尋ねる。
「少なくとも、敵は車輪を持った金属。火薬の臭いがしたらしいから、爆発能力があるかもしれない」
「あー、確かになんか車輪の音がしたってのは、人間からも聞き取れたねぇ」
ウイシアの琥珀色の瞳は淡々と語る。それを見て、ウイシアの分までと言わんばかりに、いささか以上にオーバーにナオが頷く。
「それで、方向はあっちだったか」
二人を守るように、音もなく立っていたセリオンが口を開く。
ウイシアが、応えるようにうなずいた。
「複製に先行させている。……確かに、何か動いている音が聞こえる」
ユーベルコード【境界崩壊】によって生み出されたセリオンの分身が、ロンドンの街を進んでいた。裏路地を縫うように、黒い影が走っている。一体が何か影を認め、セリオンが追跡を命じる。
「――ダメだな。思っていた以上に、動きが速い。だが、追い込めるかもしれない」
だが追跡し続ける困難を見て取り、作戦を変更する。漆黒の瞳に慌てた様子はない。
「オッケー、ナイスだよぅ。セリオンさん!」
にかりとナオが笑う。黒い銃が揺れる。がしゃりと動く。
ウイシアが、犬の目を見る。シベリアン・ハスキーの青い瞳が小さく揺れる。
「(わかっているよ、健闘を祈るぜ)」
お や す み な さ い
「――それじゃ、情報提供ありがとね」
銃の音が二発、霧の中で軽快に響いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリン・フェアフィールド
【NJM】
うわー!?真っ白!なーんにも見えない!
あっゴメン、何か踏んづけちゃった…
上の方なら霧が薄かったりするかも。
【Xクラスバースト・フレア】で跳んで
ちょっと高い所から発生源を探してみる!
この炎で空気が熱されて霧が晴れたりしないかな?
やばっ、周り探すのに夢中で燃料切れのこと忘れてた!
お、落ちるーー!
…わ、章さん!と、すごく大きな鳥さん!?
えへへ、助かった~ナイスタイミング!
二人も乗っても大丈夫なんだね。強い!
ありがとねーって隼くんの背中をちょっと撫でる
鳥に乗って空の旅ができるなんて素敵だなあ…!
霧がなかったらロンドンの街を上から優雅に観光できたのにねえ。
え、バイクの音?こんな霧の中なのに…?
三寸釘・スズロク
【NJM】
いつの間にか外はエライコトになってんなあ
コレ吸い込んでも大丈夫か…?臭いはなさそう?
イテッ!?誰よ俺の足踏んだの!
空飛べるユベコ、イイナー
まあ俺らは文字通り地道に頑張りますか
お言葉に甘えて茜ちゃんのバイク…馬…バイク??の後ろに乗っけて貰おうかな
正義量とは…??
他にアテもないし頼らせて欲しいケド
GPSは生きてるんかな?
地図情報も取り込みつつ【次元Ωから覗く瞳】で
人とか障害物にぶつからずに進めるように
ホログラムにナビを表示して、茜ちゃんにも見えるトコに置いとくぜ
ナビがあるとは言えあんまりかっ飛ばすのはどうかと思いまスよ俺は?
何卒安全運転で…えっそこ通るの?
あの、茜ちゃん!?茜姫ー!??
鵜飼・章
【NJM】
霧に包まれた街は幻想的で魅力的だけど
のんびり見物してる場合じゃないか
あっ、アリンさん一人で大丈夫かな
僕も上に行ってくるね
UC【相対性理論】で隼に乗って追いかける
御堂さんが暴走しないか少し心配だけど…
霧が何処から流れてくるのか上空から観察
隼の羽ばたきで霧を散らしたら
少しは視界もよくなるかな
アリンさんどこ行ったんだろう
そう思ってたら叫び声が…
急いで隼くん
間一髪下に滑り込んで救出
大丈夫?
ふふ、隼くん『礼はいらないぜ』って言ってる
普段女の子なんて乗せないからかっこつけてない?
喜んでもらえたなら幸い
霧の中にビッグ・ベンぐらい見えないかな…って
何か下からバイクの音しない?
嫌な予感
追いかけようか…
御堂・茜
【NJM】
出ましたね悪の霧!
しかし皆の力を合わせれば
この苦難も乗り越えられましょう!
ささっスズロク様、御堂のバイクにお乗りください!
うふふ!
この名馬サンセットジャスティスですが
UC【暴れん坊プリンセス】を使えばこの通り!バイクに!
更にジャスティスミドウ・アイを起動し
正義量が低い場所を辿って突撃ですッ!
正義量が低い、即ち悪!
細かい事は【第六感】と【野生の勘】
そしてスズロク様に任せました!!
ナビを頼りに【操縦】テクを駆使して
障害物や人を避けつつ飛ばします!
時には人の少ない裏道なども使い
ショートカットしましょうか
さあスズロク様、しっかり捕まっていて下さいませ!
【気合い】で目的地までかっ飛ばしますッ!
●Enjoying in the Fog
「いつの間にか外はエライコトになってんなあ」
「霧に包まれた街って文字だけ見れば、幻想的で魅力的だけどね」
のんきな声が、霧の中で響く。博物館のエントランスから外に出て、金属の門をくぐることすら、一般人には難しそうなくらいには濃い霧を見ても、三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)は斜に構えたマイペースそのものである。その様子を見て面白そうにくすくすと笑い、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は相槌を打つ。
「うわー!? 真っ白! なーんにも見えない!」
それより一層のんきな声が、霧の中で響く。アリン・フェアフィールド(Glow Girl・f06291)はぴょんぴょん飛び跳ねて、異常現象のはずの霧を、楽しんでいるようですらあった。
「コレ吸い込んでも大丈夫か……? 臭いはなさそう?」
と傍らの章に尋ねようとしたスズロクが、悲鳴をあげる。
「――イテッ!? 誰よ、俺の足踏んだの!」
「あっゴメン、何か踏んづけちゃった……」
「何かじゃないよ!? 俺の足!」
「ゴメン、ゴメンって!」
両手をあわせて謝罪のポーズ。スズロクが仕方ねえなぁと頭を掻く。
「スズロク様の足を犠牲にしてしまうなんて、悪の霧ですねッ!」
「いや、別に犠牲にはなってないよ!?」
スズロクの抗議は耳に入っていないのか、許せませんね!と盛り上がる正義の使者は、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)。ぐっと両拳をにぎりしめ、めらめらと闘志に燃えている。
「うんうん、あれもこれもぜーんぶ、霧が悪いんだよ!」
「「ねー」」
「アリンちゃんはもうちょっと反省しようね!?」
アリンが大きく頷くと、茜がうんうん頷き返す。両手でハイタッチ。仲良しさんである。
スズロクの抗議は相変わらず無視された。
「――上の方なら霧が薄かったりするかなぁ」
ここからじゃ何も見えないし……とアリンが呟く。
「確かにその可能性はありますよね。発生源が見えるかもしれません」
茜が小さくうーんと唸ったあと、肯首する。
「よーし、そうと決まれば即実行! ちょっと高い所から発生源を探してみる!」
ジェットエンジン、起動。
「――『プロミネンス』ジェットエンジン、出力最大!」
跳躍、一挙に霧の空へ。
「……アリンさん一人で大丈夫かな。僕も上に行ってくるね」
黒い隼が、足元に現れる。ユーベルコード【相対性理論】が産んだ相棒が、甲高く嘶く。迷いなく、ひらりと跨って羽ばたかせる。翼の起こした風に動かされ、霧が僅かに晴れる。
「はい、アリン様をよろしくお願いしますね。行ってらっしゃいませ!」
ひらひらと手を振って、茜が章を見送る。
「(御堂さんが暴走しないか少し心配だけど……)」
飛び立つ寸前、二人を見て、心配がよぎる。
「(――スズロクさんなら、上手くやるよね)」
そう思う。もっとも事実と違ったとしても、そうであることを祈るしかないのだが。
「空飛べるユベコ、イイナー。まあ、俺らは文字通り地道に頑張りますか」
スズロクが肩をすくめて、小柄な茜へと視線を下ろす。
「はいッ! 皆の力を合わせれば、この苦難も乗り越えられましょうというものです!」
章を見送った視線を向きなおし、スズロクに満面の笑顔を向ける。
「(おー、茜ちゃん燃えてるなー。まつ毛長いなー)」
他人事風のスズロク。
「で、俺たちは――――」
ぱから、ぱから。蹄の音が聞こえる。
隆々と盛り上がった筋肉で充実しつつも、すらりと伸びた脚。
流れるような流麗なたてがみ。
澄んだ瞳。
毛並みはまるで高級絨毯のように柔らかだ。
「よく来ましたねッ、サンセットジャスティス!」
馬が吼えるように嘶き応える。
「行きますよッッ! そこに民の嘆く声があるならば!!」
馬の体が、割れる。腹の間が開き、立派なタイヤが現れる。
「えっ」
首が伸び、側頸部からハンドルが突き出る。ガシャン、ガシャン。
前脚が前方、後脚が後方へと折りたたまれる。タイヤをがしりと挟みこむ。
男の子のロマン。変形である。
「―――正義の使者御堂、ただいま見参ですッ!!!」
馬の鞍はそのままサドル。
ひらりと飛び乗り、どこからか取り出したヘルメットを被る。
「ささっスズロク様、御堂のバイクにお乗りください!」
びしっと親指で後部座席を指し示す。
「えっ何これ」
茜姫様がそう言うんだから、バイクです。
「バイクですが?」
茜姫様がそう言うんだから、バイクです。
「う、……バイク……馬……バイク??」
茜姫様がそう言うんだから、バイクです。
「うふふ! この名馬サンセットジャスティスですが――」
茜が、愛おしそうにバイクのハンドルを撫でる。
「ユーベルコードでこの通り! ――バイクに!」
バイクになっちゃったのである。
爆裂音を響かせて、誰がどう見てもバイクにしか見えないバイクが走り始める。
こうして、霧の中の探索が始まった。
●Flying in the Fog
「(うーん……低いところの方が霧が濃い、かな)」
エンジンを吹かし、空中から街を見下ろす。ロンドンの街全域が霧に覆われていては、原因を見つけるのはなかなか難しい。正直どこも同じに見えた。
「(流れの規則性とか……スズロクくんの瞳があれば、もっとわかったかな?)」
ないものねだりをしても仕方ない。アリン・フェアフィールドができることをするだけである。
「(うーん……うーーん……)」
唇に手をあて、じーっと眼下を眺める。
霧が動いていて、あそことか、あそことか、あっちも濃くて、その間はなんかただ霧が漂っているように見えて――
そして建物がなんか私に近づいてきていて――――近づいて?
慌てて、ジェットエンジンを見る。その火が、ぷすぷすと音を立て、消えかけている。
つまり? ――燃料切れ。
「――やばっ、周り探すのに夢中で燃料切れのこと忘れてた!」
自由落下。両手を高く上げて、もがく。だが、物理法則には逆らえない。
「お、落ちるーー!」
猟兵は異能者なれど、猟兵であること自体が身体能力を向上させるわけではない。傷つけば血を流すし、当たり所が悪ければ死ぬ。あくまで、ユーベルコードによって現実を書き換えられるだけの異能者。定命なのである。無慈悲なのである。もちろん、上空何十メートルから落ちて、無事であるはずがない。
しかし、そんなアリンを黒い影が覆った。
「――大丈夫?」
「…わ、章さん!と、すごく大きな鳥さん!?」
それは、鵜飼・章と相棒の隼。アリンを探して空を飛んでいたのだった。
穏やかな微笑と共に、隼の背にアリンを引き上げる。
「えへへ、助かった~。ナイスタイミング!」
人心地ついて、アリンがはにかむ。章が口を開くのと同時に、甲高く隼が鳴いた。
「ふふ、隼くん『礼はいらないぜ』って言ってる」
「おおー、二人も乗っても大丈夫なんだね。強い!」
隼くんに答えるように、アリンがその背を撫でる。
機嫌良さそうに、隼くんが大きく羽ばたく。上空の霧が僅かに晴れた。
「――普段女の子なんて乗せないからかっこつけてない?」
じとーっとした視線を章が向けると、隼が反抗するように身じろぎした。
「あっこら、わかったから!」
振り落とされないようにしがみついて、章が宥める。
その様子を見て、アリンがくすくすと笑った。
「鳥に乗って空の旅ができるなんて素敵だなあ……!」
霧がなかったらロンドンの街を上から優雅に観光できたのにねと冗談めかして笑う。
「はは、霧の中でも、ビック・ベンくらいは見えないかな」
喜んでもらえたら幸いと章がはにかむ。その顔が、真面目なものに変わる。
「――何か下からバイクの音しない?」
「え、バイクの音? こんな霧の中なのに……?」
「嫌な予感がする」
とんとん、と隼の背を叩く。章の合図で、隼が降下していく。音の方へ。
異常な音ではあるが、不思議と、敵へと向かっている感覚はなかった。
●Going in the Fog
「それで、俺たちはどこへ行くの?」
運転手の茜の胴に腕を回し、役得状態なスズロクが尋ねる。
「はいッ! 正義量が低い場所を辿って突撃ですッ!」
「正義量とは…??」
「正義量が低い、即ち悪! 行きますよッ、スズロク様!」
茜がアクセルを踏む。
ジャスティスミドウ・アイの導くままに、ハンドルを操作し捜査を進めていった。
「GPSは……生きてるな。あ、そこの通りを右に行って」
茜の背で、スズロクは冷静に携帯を弄る。地図を見て、霧の濃さを見て、人びとの様子を見て、【次元Ωから覗く瞳】が最適な道を解析する。ホログラムをハンドル付近に投影しつつ、口頭で行先を指示する。
「確かに、こちらの方は正義量が低い気がします」
「……わかるの?」
「なんとなくッ!」
大きく頷く。障害物を避け、名馬サンセットジャスティスが往く。
うなりをあげて、霧を掻き分け、いざ進む。
「――ッ! 茜ちゃん。その先、危ない!」
霧の中、取り残されたのは何も人だけではない。車も多数走っていた。ロンドンといえば、渋滞が挙げられるだろう。下手に車で移動するより、市街各所に配置されている自転車を借りた方が移動は容易。観光におすすめ。そんな豆知識はさておき。霧で先行きが見えず、立往生する車が多数。道を塞いでいた。
「――スズロク様、しっかり捕まっていて下さいませ!」
ピンクの瞳が、ちらりと横を向く。声を張り上げ、合図する。
「ここは安全運転で……えっそこ通るの」
スズロクの紫の瞳が、恐怖で見開かれる。名馬の頭が向けられた先は、人ひとり通り抜けるのがようやくな程の細道。はりめぐらされた配管と、積み重なったゴミ袋が見える。
「――あの、茜ちゃん!?茜姫ー!??」
スズロクの抗議の声は届かない。
エンジン、フルスロットル。
爆音が響く。その先にはきっと、怪異がいるに違いないと信じて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
パーム・アンテルシオ
金属の、音…機械の音?
明らかに、怪しいけど。
この霧の中…どうやって移動しよう…
人がいるかもしれないし、地理にも詳しくないし。
…そうだ。
ユーベルコード…一人静火。
一人静火。この、「金属の音」を追跡して。
何かを追うのなら。道がない、行けない場所には向かわないはず。
それなら…この子についていけば、前が見えなくても。
本当なら、霧を晴らしたいけど…あまり、派手にはできないし、ね。
どこに一般人がいるかもわからないし。街の事もあるし。
…髪や尻尾は湿っちゃうけど。そっちはもう、仕方ないよね。
万が一、襲撃を受けたりしたら困るし。複数人で一緒に行動したいけど…
誰か、一緒に動いてくれる人。いるかな?
【アドリブ歓迎】
レッグ・ワート
まあ生体に楽しむな、は無理な話だ。逃がしに行こう。先ず詰み感からな。
センサ類使ったり周りに声かけながら救助活動。聞き耳も引き続きだ。物騒には鉄骨で殴ったり武器受けで対応するぜ。手が足りなければ、操作して殴るなり並べて壁にも出来るし、鉄骨複製して一般近くに待機させとく。とまれ霧の出方がドローンで撮れてるか確認して、飛び地で起きたなら何か所か、一斉均一に湧いたなら今の区画を回る。いや人多かったらそこにいるしかないけど。
緊張過剰の奴には関係あること無い事適当に緩く話して落ち着いて貰えたら有難いね。怪我人には応急手当。異常異音には注意喚起。姿形や攻撃手段が知れたら追え無さそうなトコに一般を誘導しよう。
●Meeting in the Fog
「(金属の、音……機械の音?)」
明らかに怪しいけど、と心の中で呟く。パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)の赤い瞳が、油断なく霧の中を探るように左右する。問題は幾つかある。まずは移動手段。次に、地理に明るくないこと。一般人の問題もある。救助の観点もあれば、怪異と一般人の鑑別も必要だ。それらを解決する方法が要求される。
「(……私に、できること)」
柔らかな桜色の髪が揺れる。
「(……そうだ)」
作戦を、決めた。
「おいで。ユーベルコード……【一人静火】」
小さな鳴き声がした。黒い炎が、霧を煌々と照らす。炎は長く伸びて、狐の形をとった。それはすなわち、ユーベルコード【一人静火】のとる形。パーム・アンテルシオの魂のかたちの表れ。
「……『金属の音』を、探して、追跡して」
黒い狐が嘶き、駆けだす。
「……もう見つけたの?」
狐は答えない。駆けて行く。黒い炎の放つ光を負って、パームは駆けだした。
「……金属違い?」
「初対面でそう言われるのは、なんとも反応に困るな」
パームの目の前には、濃緑色の機械がいた。
「あなた、猟兵ね。たしか……レグ、だったかな」
「俺を見て動じないあたり、推察はついていたが、同胞か」
どこかで一緒に戦ったかなとレッグ・ワート(脚・f02517)は問いかける。
「たしか、白騎士と戦ったとき……見かけた気がするよ」
よろしくね、とパームが自己紹介。ふわりと笑う。
「奪還支援型3LG。――さっきの通り、レグと呼んでくれ」
美少女を前にしても、機械は全く動じない。
「それで、あなたは何をしていたの?」
「一般人の避難活動と、聞き込み調査だ。この忌々しい金属音、おそらくは移動音だが、録音して、注意喚起がてら、どっちの方向で聞いたかを聞いてたのさ」
「……ああ、だからこの子が反応したんだね」
赤い瞳が、ちらりと【一人静火】を見る。それにつられて、緑の瞳が動く。
「音の調査が得意なのか」
「ん。……まあ、そんなトコ」
「霧発生当時、上空から撮影していた。市街各所から霧が出ている。敵はおそらく複数体。猟兵はまんべんなく散るように招集・配置したとグリモア猟兵が言っていた。このあたりの敵を俺たちが倒せば、仕事になる」
「一緒に来てくれるってこと?」
「……このあたりの避難誘導は済んでいる」
「そっか。じゃあ、道中の護衛はよろしくね」
大人びた口ぶりで、パームが笑う。3LGのセンサー・アイが明滅する。
「――見つけたみたい」
黒い狐が、迷うことなく駆けだす。先ほどとは違う。緊張した走りぶり。パームは、それですべてを察していた。
「オーケー。行こう」
粗雑な口ぶりで歩き出す。怪異は、もはや目前にある。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
星舞夜・ユエ
【とらとら】の皆さんと
店長さん(f00199)の掛け声で一度集合します
【ティコの使者】を使用
霧の発生源などを調べる為に、高い所から街を確認して来ます
やはり、より霧の濃い所などが発生源でしょうか?
他にも、解りやすく怪しい物などを見つける事が出来たら覚えておきます
ざっと調査をしたら、店長さんの発する、赤い炎の光を目印に皆さんと合流
見てきた情報を元に、進路の提案をします
道中、一般の方の避難誘導の際に、
霧以外で何か変わった事がなかったかを伺います
また召喚したヨタカさんに、羽ばたいて風をおこして頂き、
進行方向周辺だけでも霧を抑えられないか試して貰います
障害物に衝突して、皆さんが怪我をするといけませんから
壱季・深青
【とらとら】のみんなと【SPD】
霧…嫌な霧、だね
せっかくの…観光…水差さないで…ほしい
でも…敵はみつけないと…俺たちの使命…だから、ね
迷子防止…目印の光は…ヤパの炎と…俺もランプ…片手に持っておく
ランプ…チカチカ点滅させて…ここにいるよって…教える
手…繋ぐの?
なら俺は…ヤパの後ろで…服の端っこ…掴んでおく
(掴んだのは景の服だった)
一般の人…危険のないように…しなくちゃ
ここだよ…落ち着いて…光、みつけて
【野生の勘】【第六感】【聞き耳】使う
金属音…回る音…どこから?
音の方向を探って…もしわかったら…みんなに教える
一般の人…敵のいない建物に…避難
ゆっくり…慌てないで
(「…」「、」は適当で大丈夫です)
ヤパ・トラジマ
【とらとら】の子らと
おっと…霧出てきたか
此処からが本番、てな
ひとまず集合!!
はいはーい、ヤパさんは此処やでー!
考えるの苦手やし、とりあえず突っ走りたいが
今の状況下じゃ、はぐれたら最後感あるよな
皆で手ぇ繋いで、ゾロゾロ移動するか?
…うん。俺さん掴まれとらんけど、ミオミオ(f01300)は
はぐれんよう、そのまま掴まっとき
目印代わりに地獄の炎メラメラさせとくんで
最終的に、この赤色に集合な!
原因は、霧の濃い、空気の流れとらん方向か…
あぁでも、そう思われると見越して敢えて逆の方向に…?
あー!やっぱ考えるのは苦手や…!!
周囲探りつつうろちょろしとく!
もし途中で一般人さん見付けたら
安全そうな建物の中へ案内を
矢羽多・景
『とらとら』のみんなと
わ、前が見えない!この霧の濃さ危ないなぁ…
僕は【水鏡演舞】で人手を増やして薙刀の石突で地面を探りつつ進むよ。
目印の灯は緑のランタン
みんなの位置をマメに把握しながら二人掛かりで音の出所を捜索だ!
猟兵ではない観光客や住民らしき人を見つけたら、壁沿いに歩いて音と反対方向へ行くように誘導するよ。
ここはお客さんに接するように優しく丁寧に、だね?今こそコミュ力発揮!
もし音の方から逃げて来た人がいたら話を聞いてみよう。
一通り情報を掴めたり、何がヤバそうな気配を感じたら、ヤパさんの赤い炎を目指して戻るよ。
ん、手繋ぐの?遠足みたいで楽しくていい…?ね(裾を掴む深青くんになごなご)
古峨・小鉄
【とらとら】
豪華ごはん付きホテル宿泊~で終わりたかったじゃ(虎尻尾しょぼん
仕事?わ、忘れてひんけどっ(楽しいから忘れていたなどと
ヤパ達と俺も手…って(身長差でスカスカ
地味に、がーん
有効なら俺もランプ、鞄にぶら下げ
霧で視界塞がれると音頼り
ふーにょ…きゅらきゅら…何処から聞こえるん?(うろちょろ
上空はユエにお任せして情報待ち
俺、移動圏内の周辺路地、下水道…音が伝播して聞こえひんか虎耳澄まし注意
一般人遭遇時、その音と反対方角へ誘導(壁沿いに屋内へ
あ。ヤパんトコへ戻るじゃ(赤い光の下へしゅたた
もしも迷子→な、泣かないじゃ
闇雲に動かず、じーと待つじゃ
運悪く怪しい影と遭遇した時はユキちゃん(らいおん)召喚
●ToraTora
「(おっと……霧出てきたか。此処からが本番、てな)」
薄暗い霧の中でも、橄欖石の緑は鮮やかさを失わない。
「ひとまず集合!! はいはーい、ヤパさんは此処やでー!」
大きく手をあげてポーズをとる。ヤパ・トラジマ(焔虎・f00199)のアピールは、霧の中でもよく目立つ。店長さんの合図にあわせて、一行が集まった。
「霧……嫌な霧、だね。せっかくの……観光……水差さないで……ほしい」
壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)が静かに頷き呟く。手にはお土産。楽しむべきところを、彼はきちんと楽しんでいた。
「豪華ごはん付きホテル宿泊~で終わりたかったじゃ」
ぷくーっと頬を膨らませ、ご自慢の虎尻尾をしょんぼりと垂らして、古峨・小鉄(ことら・f12818)は不満げだ。両手両腕をじたばたと動かす。
「でも……敵はみつけないと……俺たちの仕事……だから、ね」
深青が自分にも言い聞かせるように宥める。
「仕事? ……わ、忘れてひんけどっ」
目を逸らす。実にわかりやすい小鉄である。
「この霧は危ないなぁ……。逃げられてない人も、多そうだ」
小鉄の反応を皆がひとしきり楽しんだあとで、矢羽多・景(獣降しの神子・f05729)が話を戻す。緑色の炎を灯したランタンが、ゆっくりと揺れる。
「……市内全域が、霧に覆われているようです。わかりやすい場所を探そうとしましたが、どうやらダメですね。どこにも霧がある。逆に言うと、全域に原因となるものがあるのかもしれません」
翼が大きく風を起こして、青く光る炎鳥が着陸した。そのヨタカの背から飛び降りて、星舞夜・ユエ(よだかのひかり・f06590)が報告する。
「とすると、この付近の原因を探るのが解決の近道かもしれないね」
琥珀色の髪を揺らし、景が頷く。
「考えるの苦手やし、とりあえず突っ走りたいが……今の状況下じゃ、はぐれたら最後感あるよな。……皆で手ぇ繋いで、ゾロゾロ移動するか?」
冗談めかして、ヤパがからりと笑う。
「手……繋ぐの? なら俺は……ヤパの後ろで……服の端っこ……掴んでおく」
意外にも乗り気な深青。ぎゅっと手近な裾を掴む。
「足みたいで楽しくていい……?ね」
深青に裾を掴まれた景がはにかむ。
「ミオミオははぐれんよう、そのまま掴まっとき」
俺さん掴まれとらんけどなーとからかうような口調のヤパ。
「ヤパ達と俺も手……あっ、届かない。がーん」
一人ショックを受ける小鉄。
「ふふ、それじゃあ行きましょうか」
ヨタカが大きく羽ばたいて、互いの姿ぐらいは視認できるようになる。皆の様子を微笑まし気にユエが見守る。
●Saving for men
「ここは危ないですから、壁沿いに進んで広いスーパーの中に避難するといいですよ」
「I see... thanks, brother(ああ、わかったよ。ありがとな、あんちゃん)」
黒人の若者が、景にお礼を述べる。
「……霧と、金属音以外に大した情報は得られませんでしたね」
一般男性が立ち去ったのを見送って、ユエが残念そうに呟く。
「金属音……回る音……どこから、かわからないって言ってたね」
「聞き込みをする限り、魔術的な妨害よりは、動いている……風だね」
深青が音の方向について触れれば、景が情報を整理する。
「歩きながら、音の方向を……探って、みる」
青い目がぱちりと瞬き。集中するように、
●Lost Child
「原因は、霧の濃い、空気の流れとらん方向か……」
大きな声で、ぶつぶつと呟く。うーんうーんと大きく唸る。
「あぁでも、そう思われると見越して敢えて逆の方向に……?」
ヤパは黒い指で、白い髪を掻きむしる。
「あー!やっぱ考えるのは苦手や……!!」
諦めたらしい。周囲探りつつ、うろちょろするヤパ。落ち着きがない。
「……あの、店長さん」
「どうした、ユエ」
「小鉄さんがいません」
「……任せとき。探してくるわ」
ヨタカを羽ばたかせ視界を確保し、油断なく一行を見ていたユエが、それを報告する。
「私たちは、ここで一度待機します。よろしくお願いしますね」
景の緑色のランタンが揺れる。ヤパの地獄の炎が別れた。
「うう……音聞いてたらはぐれたじゃ」
道路にうずくまって、小鉄はじっと待つ。周辺路地や下水道をとてとてと見て回っていたら、いつの間にやら見えなくなった赤い炎。虎耳澄ませても、音が聞こえない。
「こういう時は、闇雲に動かず、じーと待つじゃ。ヤパに言われたじゃ」
猛烈な回転音を立てて、一瞬何かが側を通過した。咄嗟に身構える。
だが、それだけで、遠く過ぎ去っていく。
「敵は動いているじゃ。素早いじゃ。追い詰めないといけないじゃ」
次にやってきたら、戦うしかないかも。少しだけ不安な顔になる。
そうしていたら、とんとんと足音が聞こえて、小さな虎の曇り顔が晴れる。
「ヤパ!」
「おーおー、いたな。ちゃんと動かんと待てて偉かったな」
ヤパは小鉄を抱き上げて歩き出し、再び合流を図る。
「うし、再度全員集合やな。待っとれよ、怪異!」
真剣な捜索であるが、どこか軽やかに楽し気に、彼らは進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
甲斐・ツカサ
アド歓!
【華麗なる西風】の皆と、電脳ゴーグルやスマホで連絡を取りつつ手分けして調査!
さっきの高い場所からの光景を頭に描きつつ動くよ!
この為に登ったんだしね!(言い訳)
冒険記で読んだんだけど、霧って、普通なら水蒸気が冷えて出来るものだっけ
それなら沢山の水がある場所の近くで、寒くなってる場所が怪しいのかな?
そうじゃなくても、この霧で周りが見えなくて河に落ちたら大変だし、河沿いを中心に霧の原因を探しつつ、一般人を河から遠ざけないとね!
あとはゴーグルの赤外線視野を使ったり、『未知標』の先端を振り子代わりにダウジング!
こんなに不思議な霧の中だもん、テクノロジーだけじゃなくて第六感をフル稼働させなきゃね!
リヴェンティア・モーヴェマーレ
【華麗なる西風】
▼アドリブ大歓迎
▼【W】
焔さん、素晴らしい推理デス!
凄いでス!
手分けして探索ですネ!
マリアさんの推理も確かにありそな気持ち…これだけ多方面から探しタラ見つかりますよネ!
連絡を取りやすいようにグループ通話トカ繋げておきましょウ
位置もわかりやすい様に位置情報の共有化…(全員の位置が把握出来るプログラムを電脳ゴーグルに仕込んでおく
迷わないように魔力で痕跡を残しつつ、焔さんが言っていた音を頼りにしながら散策
道中ツカサセンパイの言葉を思い出し霧が出ている範囲や濃度を調べて回りまス
霧が他よりも濃い場所が発生源カモしれないですシ!
発生場所を見つけ次第、素早く皆さんに報告
位置を正確に伝えマス!
神薙・焔
【華麗なる西風】
過去のロンドン・スモッグでは大きな被害が出たけれど、とりあえず即座に健康に害があるものではなさそうね。
回転する機械音…さっきまで時計塔(工事中)や観覧車や可動橋を見てきたけれど…。
各所から霧が見える、ロンドン中が覆われるということは、発生源は一つではない、あるいは、一つであっても移動可能ということかも…。
さて、まずウィングド・ビートを起動して上から観察したいけれど、それでも分からなければ…発生源は地下かもしれない。
とすると、音なんかを頼りに手分けして探すのがいいわね…ゴーグルで赤外線探知を視界に重ねる、みんなとの通信や位置情報共有にも使えるわ。
マリア・アリス
【華麗なる西風】として参加
これだけ広い範囲が霧に包まれるなんで初めて見るわ。原因はしっかり調べないとね。
電脳ゴーグルで仲間と情報を共有しながら、捜査するわ。周りのみんなは霧の濃いところやら音を頼りに探すみたいだから、私は他の人がいるところを探りながら回ってみるわ。もしかしたら人自体が発生源かもしれないしね!
わかった情報はすぐにみんなに伝えて、自分の予測がハズレだったら他の仲間と合流するわ!
●Homura's hypothesis
「これだけ広い範囲が霧に包まれるなんで初めて見るわ。原因はしっかり調べないとね」
電脳ゴーグルをつけた一団の一人がそう口にする。彼女は黒い髪をポニーテールに結んでいた。マリア・アリス(歩き出したアリス・f04782)は快活な声で、友だちに頷いてみせる。
「……冒険記で読んだんだけど、霧って、普通なら水蒸気が冷えて出来るものだっけ」
「過去のロンドン・スモッグでは大きな被害が出たけれど、とりあえず即座に健康に害があるものではなさそうね」
作戦会議の口火を切るのは、甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)。異変が霧だというなら、まずは霧について考える。当たり前と言うのは容易なれど、言い出すという行為は意外にも難しい。プライド、せめぎ合い、様々な大人の都合、年をとればとるほど、何もかもが複雑になる。ツカサという冒険家の少年に、そんな柵は存在しなかった。
ツカサの言葉に続けて、神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・f01122)が霧を分析する。彼女の観察は、全く的を射たものであった。
「普通の霧ってことなのかな。とすると、沢山の水がある場所の近くで、寒くなってる場所が怪しいのかな?」
「霧が出てきたとき、回転するような音も聞こえたわ。……さっきまで川沿いの時計塔や観覧車や可動橋を見てきたけれど……」
ツカサが思いつきを口にすると、ちょっと違う気がするわねと焔が頭を悩ませる。意見が食い違っても、喧嘩にはならない。ここは優劣を競う場ではないし、彼らはチームなのだった。
「予知によると、各所から霧が見える、ロンドン中が覆われるということだったわ。発生源は一つではない、あるいは、一つであっても移動可能ということかも……」
「確かに……そうなると、ある程度の範囲を、私たちでカバーしないといけないわね」
焔の髪がゆっくりと揺れる。白い霧の中にあっても、燃えるような赤髪はよく目立った。その推理は全く理屈に基づくもので、聞いたマリアも大きく頷く。
「この霧で周りが見えなくて河に落ちたら大変だし、河沿いを中心に霧の原因を探しつつ、一般人を河から遠ざけるのはどうかな!」
と、ツカサが提案すれば、皆次々に頷く。
「頼りにすべきは音! 互いに位置を把握しながら探しましょ」
「焔さん、素晴らしい推理デス! 凄いでス! 手分けして探索ですネ!」
リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)がぱちりと手をあわせて大絶賛すれば、話はもう決まったようなものだった。
●A Critical Situation
「むム……霧の濃淡の特徴は、はっきりとわかりませんネ。やはり、霧の発生源は移動可能なのでしょうカ」
おさげ髪を揺らし、リヴェンティアが歩く。霧は、どうも特徴がないように見えた。濃い場所と薄い場所が入り混じり、まるで薄まった場所を上書きするように――。電脳ゴーグルで皆の位置を確かめる。
「(ツカサさんハ……川沿いで、一般人の救助中ですネ)」
地図上の川沿いを明滅する、ツカサを示す光点はゆっくりと歩いている。
「(マリアさんハ……建物の屋上でしょうカ。人を中心に捜索しているようですネ)」
マリアを示す光点は、道の間を忙しなさげに左右している。
接敵しているようには見えない。
「(焔さんハ……地下でしょうカ。先ほどは空中にいらしたと思ったのですガ)」
ロンドン地下に張り巡らされた地下鉄網の中を焔が探索していると、地図が告げている。上空がダメなら地下を探してみると彼女が言っていたのを思い出す。
「……なかなか見つかりませんネ」
ガツン、とぶつかる。
「ア、すみまセン。考え事をしていましテ……」
咄嗟に謝る。目の前の何かも、こちらこそとばかりに会釈を返したように見えた。
車輪がぐるりと回転し、一歩引くような動作とでもいえばいいか。
「……え?」
「――――」
車軸に描かれた牙の生えた表情が申し訳なさそうな顔から、きょとんとした顔に移り変わる。それから、敵対的な表情に戻る。ぎゅるぎゅると音を立てて、車輪が回り、逃げ出す。きょとんとしたリヴェンティアはそれを見送った。
「……あ」
リヴェンティアの顔が驚愕の色を映す。
「み、見つけましタ! 見つけましたよー!」
慌てて皆に報告。それから怪異を逃がさないように、走り出すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
アレス◆f14882と
アドリブ◎
これが霧か
アレス!ちょっと確かめてくる
見たままを覚えてるうちに駆け出し
第六感を頼りに進む
はッ…ホントになんも見えねぇ
の
歌を歌い風を起こし僅かでも霧を晴らそうと
アレスの鷲がいるなら
ソイツがいく先を狙って風を起こす
任せたぞ
音は動いてるか止まってるか
止まってんなら観覧車の景色を思いだし
進むべき方向がわかったらアレスを呼ばねぇと
歌でアレスに場所を知らせる
こんな視界じゃ敵かもって疑うべきなんだろうが
お前の光はよくわかる
…って、それじゃどこ行っても逃げられねぇなぁ
顔も見えないだろう事をいい事にそんな風に誤魔化して
こっからははぐれないように行くか
…カッコつけ
強く手を繋いで行く
アレクシス・ミラ
セリオス◆f09573と
アドリブ◎
これが件の霧か
尚更慎重に…あっ!?待て、セリオス!
…はあ、全く…
来てくれ、アルタイル
彼が走って行った方角に【暁穹の鷲】を飛ばし、追跡
走った後の空気の流れと
彼なら晴らそうと何かしらの痕跡が…
…よし、見つけた
追跡対象をセリオスに固定し、霧の外に出るまで上昇
霧の範囲が何処までか、霧の発生源は場所なのか単体物なのかを上空から調べてみよう
場所なら…音から予想して病院やロンドン塔が怪しい、かな
…僕を呼ぶ歌が聞こえる
鷲を戻し、剣に光属性を纏わせ掲げ場所を知らせる
はい、2回目
君を見つけるのは得意なんだよと笑ってみせ
…何度だって、見つけてみせるから
ああ、お手をどうぞ?…なんてね
●Without Thinking
「これが霧か!」
ちょっと確かめてくる! と彼は駆けだす。黒い髪が、まるで馬の鬣のようだった。
「……ここは猶更慎重に……あっ!? 待て、セリオス!」
セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)の思考のプロセスは、アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)が彼のことを考えて、呼び止める時間よりも短い。零より小さい数字が存在しないとも言う。
とにかく、セリオスは直観を元に駆けだした。一人で。迷わず。
「(はッ……ホントになんも見えねぇ)」
しばらく走る。青い瞳が、あきれたように歪む。
石畳を踏んで、心の中で言葉を吐き捨てる。
白い霧は、濃く、深く、黒鳥の行く手を阻んでいた。
何も見えず、聞こえるのはただ困惑する一般人の声。
このままでは、何も見つけられない。ならば。
『目も耳も意識も全部、――全部寄越せ!』
その歌声は、ユーベルコード【囀ずる籠の鳥】のもの。強化されたシンフォニアの歌声が風となって、僅かに霧を晴らす。
「(これで少しは、マシになんだろ)」
迷うことなく、強引に、美貌の猟兵は走っていく。
走っていれば、きっと何かが見つかると信じて。
●Anytime I could find
「……はあ、全く……――来てくれ、アルタイル」
一方アレスは、蟀谷を抑える。頭が痛い。
さりとて、彼を一人にするわけにはいかない。白い霧を割くように、暁光を纏った鷲が現れ、アレスの腕に留まる。ユーベルコード【暁穹の鷲】が呼びだした奇跡。その瞳は、どこか主人を慰めるような優しさに満ちていた。
「(走った後の空気の流れと、彼のことだ――晴らそうと何かしらの痕跡が……)」
アルタイルが羽ばたき、上空へ。霧の上から見下ろしても、何も見えない。上空からの捜索はおそらく困難だろうとわかった。霧は全域に広がっていて、どこか特定の場所というよりは、複数の発生源があることが予想された。猟兵は散り散りになっているはずで、手近な発生源を見つけ、除去することが事件解決につながるはず。ならばと、セリオスが走っていった方向を探る。霧が動いている様が見える。探すのは、まずは彼。一番霧の薄い方へ。
「(――……よし、見つけた)」
鷲に、まずなによりセリオスを見失わないよう指示を出す。
それから――
「(歌が、聞こえる。……僕を呼ぶ歌が)」
アルタイルの聴覚器官から、それは聞こえた。だから、合図を出す。
「(アルタイル、十分だ。ありがとう)」
しもべを戻し、剣を輝かせる。光の柱が霧を割く。合図はそれで十分だった。
「はい、2回目」
セリオスの邪気のない笑顔を前にして、得意げにアレスがはにかんだ。
「お前の光はよくわかる」
こんな視界じゃ敵かもって疑うべきなんだろうけどさ、と付け加える。
「君を見つけるのは得意なんだよ」
はっきりとした語気で、アレスが笑う。
「……って、それじゃどこ行っても逃げられねぇなぁ」
顔をそむけて、セリオスが呟く。その声音は、言葉と真逆の色を孕んでいた。
「ああ。……何度だって、見つけてみせるから」
追い打ちをかけるように、アレスは真剣な目で伝えた。
「……カッコつけ。おら、こっからは逸れない様に行くぞ」
誤魔化すように、セリオスが手を無造作に突き出す。
「ああ、お手をどうぞ? ……なんてね」
おとぎ話の騎士然と、アレスがその手を優しく取る。
二人の猟兵は手をつないで、怪異のいるべき場所へと進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイラ・エインズワース
祇条サン(f02067)と
霧が、出てきたネ
昔は霧の、なんて聞いたコトあるケド今この霧は不思議
後ろからランタンの灯で照らしてサポート
祇条サン、頼りにしてるカラ
たしかにいつかの洞窟探検みたいダネ
はぐれちゃったらやだヨ、なんて笑って
そしたら手を、差し出されて
じゃ、エスコートの続きお願いしようカナ
視界の効かない霧の中、音を探して歩いていくネ
私自身はあんまり得意じゃないケド【情報収集】と【世界知識】で
町の地形や床の材質から、音の発生源と大きさ、材質なんかを推定
追跡していくヨ
呼び出すのは怪盗の夢
かつての所有者の記憶の一端
探し物は得意デショ? 音の発生源を追跡シテネと、怪盗を斥候に出すヨ
アドリブ歓迎ダヨ
祇条・結月
レイラ(f00284)と
……今のロンドンでこんな霧、不自然だよね
気づいたらお互いばらばら、なんかも嫌だし気をつけないと
こうして照らしてもらって、って。いつかの洞窟探検みたいだね
心配なら手、繋いどこうか?って軽口……に、乗ってもらっちゃった
……任せといて。ナイトって感じじゃないけど
何かあればすぐ反応できるように警戒して。
影の梟を僕らについて来させて周囲を警戒・見落としをカバー
視界が悪い分は【聞き耳】と【第六感】を働かす
何の音なんだろう。歯車?
もし建造物や機械でもあるなら注意しよう。【鍵開け】や【罠使い】で慎重に調べるね
万が一、敵対的な何かに遭遇したら追い払って、深追いしない
アドリブ歓迎だよ
●A Gently Escort
「霧が、出てきたネ」
この霧はなんだか不思議だヨと彼女が笑う。白い霧の中、進む道を照らすのは柔らかな光を放つ藤色の焔。レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)が歩くたびに、杖の音がカツカツと鳴る。
「……今のロンドンでこんな霧、不自然だよね」
数歩先が見えなくなるぐらいの濃い霧を前に、せめて精一杯余裕のある風に、彼が笑い返す。祇条・結月(キーメイカー・f02067)が前を行く。
「こうして照らしてもらって、って。いつかの洞窟探検みたいだね」
あのときは、他愛ない話で盛り上がったねと笑う。
「たしかにいつかの洞窟探検みたいダネ。あの時の祇条サン、頼もしかったヨ」
「鳴宮さんに、だいぶ助けられたけどね」
「そうだけど、それだけじゃないんだヨ」
それは謙遜か照れ隠しか、結月が手を振ると、レイラがニコニコと反論する。
「あ、ええと―――そう、あの時と違って、今回は市街地。……気づいたらお互いばらばら、なんかも嫌だし気をつけないと」
勝ち目がないと早々に悟り、結月が懸念を口にし、話を逃がす。
「はぐれちゃったらやだヨ。気を付けないとネ」
そんな結月の心の内を悟ってか、それとも天然か、そうだネと頷く。
「心配なら手、繋いどこうか?」
「じゃ、エスコートの続きお願いしようカナ」
軽口に、軽々と乗る。
「……任せといて。ナイトって感じじゃないけど」
こんなあっさり手をつなげていいのかなと、少年は迷う。間違いないのは、結月の手の中には、確かにレイラの柔らかさがあるということ。
だからせめて、それに見合うように精一杯。
●Engage An Enemy
「この霧が現れてからずっと聞こえる……これ、何の音だろう」
「金属の音なのは確かだネ。この時代に作れるもの……かナ」
オブリビオンと相対すとき、その技術水準を計算に入れる必要がある。スペースシップワールドや、キマイラフューチャーの敵と、サムライエンパイアやアックス&ウィザーズの敵の装備は異なるし、それは推理材料として有効なことが多い。無から有は作れないし、世界を渡って戦うのは猟兵の特権である。
「最初は歯車かなって思ったけど……どうも、車輪に近い気がする」
「戦車にしてハ、回転音が少ないヨ。一体、何だろうネ?」
頬に手をあて、真剣に悩む結月。首をかしげるレイラ。
「町の地形には変化がないヨ。特定の場所から出ているというよりは、街をめぐって霧で覆ってる感じだネ」
「……罠を仕掛けている様子もない。敵は、霧を出すことが目的なのかな」
霧の街を手を取り合って二人が歩く。ひんやりとした霧が肌を冷やす。
「――危ない!」
影の梟が、啼きたてる。回転音が急に現れ、次第に大きくなった。咄嗟に銀の鍵を手に取る。柔らかな白い手を離してしまうことを一瞬だけ惜しみながら、鍵を剣に変えて構える。二人を襲うように飛び掛かる、回転する"何か" を受け止める。火花が散る。だが、後ずさりはできない。後ろには、彼女がいる。
「―――――――」
怪異が見える。回転するふたつの車輪。車軸に描かれた不気味な顔。まるでドラムのような胴体。受け止められたことを悟った怪異が、急速に離れだす。身体から白い霧を吐きながら。急襲を咄嗟に防いだ結月に追いかける余裕は、この瞬間――ない
「――任せてネ」
だが、彼は独りではない。そして、彼女は守られるだけの存在ではない。レイラの傍らに初老の紳士が現れる。それはユーベルコード【義理堅き怪盗の夢】が呼びだした幻想。怪盗は静かにお辞儀をひとつ、歩いているかのような優雅さで走り出す。
「ここからは、逃がさないヨ」
「行こう。せっかくのロンドン、これも良い思い出にしなくちゃね」
二人は駆けだす。怪異を追って。事件の元凶は、手の届く位置にいる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霧生・真白
弟で助手の柊冬(f04111)と
おや、さすが霧の街と言っていられないほどの景色じゃないか
僕なら大丈夫さ
心配なら手でも繋ぐかい?
ふふ、聖地でこうして推理できるなんてね
ふむ、この音――
金属音というと色々と候補は出てくるね
何か歯車が回る音だろうか
あるいは戦車か……
何にせよ、今はこの音しか手掛かりがない
これを追ってみるしか手はなさそうだね
では僕はSNS等でこの霧や金属音ついての情報がないかスマホで調べてみようか
そこから場所を割り出して柊冬の情報と照らし合わせれば場所を特定できるだろう
移動はスマホで常に現在地を確認
柊冬の動物に周囲を警戒してもらいつつ進もうか
さて、たどり着いた先に何があるのか
楽しみだね
霧生・柊冬
姉である真白(f04119)と一緒に
急に霧が濃くなってきたような…目の前がほとんど何も見えない…
姉さんは大丈夫かな?近くにいないか声を出して呼びかけてみましょう。
合流したら早速協力して霧の謎を解いていきましょうか。
今はぐれるのは危ないですし…そっと手を繋いで動いていきましょうか。
【探偵助手の尾行術】でフクロウとウサギを召喚して、陸と空の両方で探索していきましょう。何か見つけたら僕に伝えて
…そういえば、どこかから音が聞こえるような。こう、機械的な金属音のような…。
これも原因に関係してくるのかな?
見つけた情報は他の人にもスマホや呼び出したペットで伝えていきます
この先に一体何があるのか、確かめなきゃ
●Young Obedient Brother
「(おや、さすが霧の街――とは言っていられないほどの景色じゃないか)」
一面の白を見ても、一人心の中で悠々呟く。霧生・真白(fragile・f04119)はじっくりと霧を見る。遠く離れていない場所から、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「姉さん、姉さん。無事ですか!?」
息を切らして、霧生・柊冬(frail・f04111)が駆けてきた。心の底から、姉を心配しているのだと一目でわかるその有様――。
「――探偵要らずだな」
「へ、何がです?」
「こちらの話だよ。それより、僕なら大丈夫さ。心配なら手でも繋ぐかい?」
からかうように、真白がくつくつと喉を鳴らす。
「え、あ、はい。今はぐれるのは危ないですし……繋ぎましょう」
素直に手を握る柊冬。12歳。反抗期は、まだ遠いらしい。
手を取り合って、二人は歩いて行く。
●Eliminate the impossible
「それで、姉さん。何かわかりそうですか?」
「探偵は、推理途中の内容を明かさないものだよ」
霧の中。尋ねる柊冬に、真白はにべもない。ただし、その表情はどこか得意げだ。探偵の街で、探偵らしく振舞えることは、やはり心躍る経験らしい。
「ユーベルコードで探すんですから、少しでも手掛かりがないと」
しかし、柊冬とてそうですかと引き下がるわけにはいかない。それに彼は知っている。探偵は、推理を誰かに語ることを何より喜ぶ生き物なのだと。
「仕方ないな。――まず、霧を観察する限り、何も得られなかった。いや、より正確に言うなら。『霧からは何も得られないということ』がわかった――というのが正しい」
「何も――ええと、つまり、どういうことなんです?」
きょとんとした顔を柊冬が浮かべると、真白は呆れたような顔を浮かべる。彼女を良く知っていれば、それは喜んでいるのと同義であると知れたかもしれない。
「霧は所詮霧でしかない。まず、霧に対処する必要がないということがわかる。次に、霧に魔術的な痕跡がない――通常の物理法則が働いていることがわかる。流れを分析することは残念ながら僕にはできないが、少なくとも、物理的な手段で街を覆う手段なら予想がつく」
コツコツと靴音を鳴らす。それはまるで、順序立てて物事を進める歩みを示すように。
「――同時に街を一斉に覆うには複数の発生源がないといけない」
「これが魔術なり常識外れの力を用いていたら、特定は困難だ。だが、今回は違う」
弟の思考が自分に追いついていることを理解し頷いて、言葉を続ける。
「霧自体に意味がないなら、霧以外の要素――《発生源》さえ見つければ対処は可能なんだ。そしてそのヒントを、もう僕たちは持っている」
「金属音ですね」
赤い瞳が大きく瞬きして、柊冬が正解を口にしたことを示す。
「それで、その正体は……」
「推理途中と言っただろう。まだわからないよ」
明らかにしょんぼりとした顔を、柊冬が浮かべる。
「そうしょんぼりした顔をするな。探偵が心の内を晒してはならない。君が僕の相棒でいるなら、沈黙という天分を持たなくては。調査してくれるんだろう?」
「――金属音を追う、ですね。大丈夫、きっと上手くやれます」
その言葉に、気を取り直す。柊冬が念じると、頭上に梟、足元に兎の群れが現れる。主の一念で、彼らが散開していく。音の探知に長けた動物たちなら、きっと見つけ出すに違いない。
「――さて、たどり着いた先に何があるのか。楽しみだね」
真白が不敵に笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『廻るパンドラ』
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POW : 終末理論
【激しい爆発】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 臨界点突破
【高速で接近し、爆発】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : 革命前夜
【爆発音】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:カス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●THE ENEMY
猟兵たちが進んだ先、出会ったものは紛れもなく怪異であった。
その異様な風貌は、まぎれもなくこの世ならざる存在であることを示す。
彼らが相対すのは、一体の『廻るパンドラ』かもしれない。あるいは、複数体の『廻るパンドラ』かもしれない。間違いないことは、猟兵の数は十分にいて、目の前の『廻るパンドラ』を討伐することこそが、依頼解決につながるということだ。
石畳を、車輪が擦る。きりきりと甲高い音がする。広い道を車輪が走る。
体から霧を吐いて、怪異が疾走する。
今、君たちに襲いかかろうとしている。
●マスターコメント(三章)
探索お疲れさまでした。第三章です。第二章と第三章のフラグメントで、ロンドン戦が決まりました。あまりにも敵がイギリスなんですもの。
ロンドン市内の、皆さま思い思い行きついた先で、怪異と戦闘をしてもらいます。戦い方に指定はありません。皆様の得意を見せてもらえたらと思います。被害はきっとUDC(組織)がなんとかしてくれます。
パンドラは集団戦です。複数体現れうるものです。数は記載がなければ、マスターの方でふわっと決めます。なお、数に見合った対策がないことが不利になることはありません。また、取りこぼしを心配する必要はありません。もちろん、敵のユーベルコードへの対策はきちんとお願いします。
目的:怪異との戦闘・討伐
敵:『廻るパンドラ』
場所:ロンドン市内各所。
天候:霧。
時刻:夕刻頃。
・第一章/第二章参加された方向け
一章/二章の流れを汲んだ戦闘演出になります。一章の行動で二章が不利になるようなことはありません。
・第三章から参加される方向け
途中からでも、どうぞお気軽に。
【締め切りについて】
《リプレイ執筆は5/25(土)正午過ぎ~ 26(日)深夜》を予定しています。それに伴い、《プレイング募集は5/23(木)8:30~ 25(土)11:59まで》とします。ただし、30人を超える執筆はなかなかの作業で、間に合わなかった場合はお手数ですが、投げ返しをお願いするかもしれません。その場合は、別途記載をいたします。お気持ちに変わりがなければ投げ返しをお願いします。
《5/21(火)8:30~ 5/23(木)8:29以前に送られた》場合は、失効が5/25(日)8:30以前となります。《確実に投げ返しをお願いします》が、採用率はそのぶん高くなります。
熱いプレイングをお待ちしております。
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ヘンリエッタ・モリアーティ
――何か、かかった。ああ、なんだあれ。わかりやすく壊したほうがいい存在だな
霧の街と言えば、「あの時」も君のものだろう、ヘイゼル。取り返しておいで
(人格交代:マダム→ヘイゼル)
がァっははは!なんだなんだァこのデカブツはよぉ!
俺様のだぜここはァッ
この、ヘイゼル・モリアーティ様の土地だっつンだァ!!
ア゛!?一個二個ならずに何度もいやがって上等だブッ潰す!!
俺様の得物は「嘴喰」だァ。いくぜ相棒、俺様達の庭だろ!?ああそうだろう!
――ア?マダムの糸があンじゃん。使お
車輪に糸くずでも詰まらせちまえ
【劇場型犯罪】で残らず蹴散らしてやンよ、動いたやつから死ぬぜェ!!?
何様俺様ヘイゼル様だッッ!よォく覚えとけ!
●like a spider web
「――何か、かかった」
淡々と、ただ数字を読み上げるかのように事実を口にする。獲物が一度かかった以上、慌てることはない。ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)が、――いや、マダムと呼ぶべきか――、黒い女性が霧の中を悠々と歩く。
「ああ、なんだあれ――」
彼女の罠にかかったのは、車輪に奇怪な顔の浮かんだ異物。常識の埒外に存在する、まさしく怪異と呼ぶにふさわしいもの。計算するまでもない。
「――わかりやすく壊したほうがいい存在だな」
つまらなそうな顔で、マダムは呟く。難題と呼ぶには、あっけのなさすぎる結末。これを解決するのに頭脳は不要。適任は他にいる。ロンドン――というより、霧の街で暗躍する内なる影は、彼女の内にいる。
「――霧の街と言えば、『あの時』も君のものだろう、ヘイゼル。取り返しておいで」
諭すように、唆すように優しく伝える。彼女は――彼は、それに逆らわない。
そして、それはとりもなおさず戦闘開始の合図であった。
●to prove who I am
「がァっははは! なんだなんだァこのデカブツはよぉ!」
霧の中、高笑いが響く。その力を振るう戦場を得られた歓喜の声が響く。
狭い裏路地、建物と建物の壁を這うように進む《廻るパンドラ》の車輪の動きを追うように、ヘイゼル・モリアーティが跳躍する。パイプを足場に、煉瓦の欠片を踏み台に、思うが儘に飛び跳ねる。
「俺様"の" だぜ、ここはァッ」
黒い打刀を手に怪異を飛び越え、撃ち落とさんとそれを振るう。
「――この、ヘイゼル・モリアーティ様の土地だっつンだァ!!」
言葉と共に、刀身が車軸を打ち据える。怪異が体勢を崩し、地面に叩きつけられる。
「――ア゛!?」
急速な回転音。霧の中から現れた別の個体が、黒き多重人格者の背に突き当たり、その車輪を嵌入させる。肺から無理やり空気が押し出されるのを感じる。
「一個二個ならずに何度もいやがって上等だ、ブッ潰す!!」
だが、ヘイゼル・モリアーティは止まらない。怒りで瞳を爛々と燃やし、闘争心も露わに剣を執る。
「俺様の得物は《嘴喰》だァ。いくぜ相棒、俺様達の庭だろ!? ああそうだろう!」
白い霧の中、《嘴喰》と呼ばれた黒刀が鈍く光る。自分の背中に車輪を食い込ませたままの《廻るパンドラ》目掛けて、大きく振るわれて、斬撃が怪異を撃ち落とす。しかし敵はそれで終わらない。二台、三台まだ増える。
「チッ――……ア? マダムの糸があンじゃん。使お」
糸と呼ばれたのは、ワトソンと呼ばれた触手の怪異。定義されざる獣のひとつ。迷いも躊躇いも一切なく、ブチリと引きちぎる。触手の言葉がわかるなら、抗議の悲鳴が聞こえたことだろう。狙いすませて触手を放り、回転を阻む。回らなくなった車輪が、ガリ、ガリと金属性の不快音を立てる。凄絶な愉悦の笑みを浮かべて、ヘイゼルが跳ねる。ふわりと黒髪が揺れる。
「残らず蹴散らしてやンよ、動いたやつから死ぬぜェ!!?」
手近な怪異の車輪と車軸の間に、黒刀を突き立てる。金属の折れる音、外れる音が響く。車輪の中央、車軸の先端に描かれた顔が苦悶で歪み、崩れ去る。まずは一体。
「――何様俺様ヘイゼル様だッッ! よォく覚えとけ!」
黒い女性体が跳ねる。似つかわしくない高笑いが響く。《廻るパンドラ》という怪異がオブリビオンであることは、ある意味幸せなのかもしれない。もしこれを記憶できたとしたら、永遠に悪夢に苛まれるに等しいのだから。
大成功
🔵🔵🔵
シュデラ・テノーフォン
あァうん、廻ってるね
そろそろソノ音耳障りだから止めようか
どうあがいても爆発するんだ?
霧も煙もイギリスらしいけど、君らはアウトだ
Cenerentolaに風の精霊弾をセット
視界が悪くなるモノは纏めて吹き飛ばそうか
常に臨海爆発を防ぐ一定距離を保ち立ち回り、
爆発の衝撃は指輪の盾で防御
仲間が近くにいるなら安全地帯に後ろへどうぞ
まァ俺も嫌いじゃないよ?爆発音
戦ってるって気がするし
けどロンドンは今戦場じゃないんだからさ
此処はもう、のんびりティータイムしてる街で良いんだよ
トライフル食べる店閉まる前に終わらせようね
Aschenputtelを複製
全弾一斉発射で獲物共を狙い撃つ
いやァ楽しいね君達、良い的だったよ!
●Wolf in the fog
「あァうん、廻ってるね。そろそろソノ音耳障りだから止めようか」
彼は狼のように、獰猛に笑う。シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)は霧の中の探索行にうんざりしているようですらあった。
接近されぬよう、幾たびか銃で牽制する。だが、怪異とてひるまない。何度か接近を試みる。シュデラは危険を察知し、白い翼を大きく広げ跳躍する。瞬間の後、彼がいた場所は爆炎に包まれた。
「……ふぅん、どうあがいても爆発するんだ?」
霧も煙もイギリスらしいけど、君らはアウトだと彼は嗤う。硝子細工の装飾が施された、白い拳銃を両手で弄る。小さな透明弾を悠々と籠める。風の加護が籠められた銃弾を放つ。
「――まァ。俺も嫌いじゃないよ、爆発音」
撃たれたパンドラが爆ぜる。左中指の指輪が光り、《Schild von Cendrillon》と名付けられた盾が展開される。爆風は、猟兵まで届かない。爆炎が晴れると同時に、白き狼の笑顔が浮かぶ。――戦ってるって気がするしねと敵を嘲笑う。
「――それじゃ、トライフル食べる店閉まる前に終わらせようね」
《Aschenputtel》――という名の、純白の単装銃を取り出す。長い銃身がまるで杖のようにすらりと伸びている。それをくるりと手の中で回す。彼の周りに、マスケットがまるで鏡面像であるかのように浮かぶ。ユーベルコード【Glasregen】の起こした奇跡。
「綺麗な雨を、観せようか」
それが、持ち主の号令で一斉に発射される。轟音が響く。獲物共――と呼ばれた、怪異たちを狙い撃つ。
「ハハッハハハッハ! いやァ楽しいね君達、良い的だったよ!」
高笑いが響く。どちらが悪者か、わかったものではなかった。
大成功
🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
ウェンディ様/f02706 と
わあ。
これは…確かにイギリスらしい…ような…?
とはいえ美しい街並みを更地にさせる訳にはいきませんね。
しかしこうも爆発したり転がられたりでは…刀で挑むは無謀と見ました。
此度はウェンディ様の武踏を彩る援護と参りましょう。
なぎ払い、穿ち、射ち抜いては隙を埋め。
時に盾とし、壁とし、足場として。
ウェンディ様の邪魔はさせませんよ。
どうぞそのまま、過去へとお還りくださいませ。
…それにしても。
戦闘中にこういうこと言うの、本当はあまり好きじゃないのですけれど。
格好いいですね、ウェンディ様。
ウェンディ・ロックビル
わはー!知ってる!こーゆーの、英国面って言うんだよね!
……すっごいねえ、なんてゆーか……すごい。
ん、そうだね!こういうの、嫌いじゃないけど、今は戦いに集中しないと!
敵の中心に“躍りこむ”ぜっ!街並みを駆使した立体的なダンスとともに敵を蹴散らすよぉ。
んふふ、細かいことや難しいことは全部かぐやちゃんにお任せして、僕はダンスに集中するぜっ!
近づいてきた敵からキックして吹き飛ばして次の敵、を繰り返して、なるべく至近距離に敵を近づけないようにするよっ!爆発は流石の僕でも怖いもんねぇ。
……んへへ、どしたの、かぐやちゃん。僕に見惚れちゃったぁ?
●He Trusts He Is What A British Is.
「これは……確かにイギリスらしい……ような……?」
爆炎を前にして、少し困惑したように穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)は口をぽかんと開ける。困惑したその様子は、間抜けさというよりはどこか愛嬌に満ちている。小さな音を立てて、太刀を一度鞘に収める。傷ひとつ負ってはいないようだった。焦げ臭い風を受けて艶やかな黒髪がさらさらと揺れた。
「……すっごいねえ、なんてゆーか……すごい」
傍らに立つ、ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)は、こーゆーの、英国面って言うんだよねと感心した様子。彼女はどうやら、怪異の元となったものを知っているらしい。自慢の足で誘導して、神楽耶に切り捨てさせる作戦。だが、切り捨てた瞬間爆発しては、さすがにびっくりしようというもの。確かにイギリスの兵器なのだが、とても王道とはいいがたかった。
「とはいえ、美しい街並みを更地にさせる訳にはいきませんね。――こうも爆発したり、転がられたりでは……刀で挑むは無謀と見ました。前衛は、ウェンディ様にお任せした方が良いかもしれませんね」
言葉に少しだけ悔しさを滲ませながら、神楽耶がウェンディの金の瞳を見る。意地っ張りな彼女でも、目の前の戦いが最優先。あれを放っておいては、多くの『人』が悲しむのだから。
「ん、そうだね! ……こういうの、嫌いじゃないけど、今は戦いに集中しないと!」
彼女の気持ちを知ってか知らずか、天衣無縫に屈託なく。ウェンディ・ロックビルは笑う。ぐっぐっと足を伸ばす。屈伸するたびに、健康的に日に焼けた自慢の脚がちらちら覗く。
「――はい、援護いたします」
「――んふふ、細かいことや難しいことは全部かぐやちゃんにお任せしちゃうからね!」
ふわりと笑う神楽耶に、後から後悔しても遅いぜ!と得意げなウェンディ。返答を待たずして飛び立つ褐色の閃光を、思惟の刃は見守った。
●Dance with Swords
「それじゃあいっちょ――“躍りこむ” ぜっ!」
バックダンサーは三人。いずれもテレビに出るにはいささか以上に醜男で、おまけに体が車輪でできている。その中央で、褐色の踊り子が跳ねる。まるで三日月のように緩い曲線を描く住宅街の街路で、彼女は踊る。塀を飛び越え、白い髪が舞う。キリキリと音を立てて、車輪が回る。靴底のゴムが、幅広い石の歩道に擦れて音を立てる。ウェンディ・ロックビルが跳躍し、接近を図った《廻るパンドラ》へ一挙に距離を詰めんとする。
「――や、こんにちは? ……ええと、ぐっど・いーぶにんぐ?」
空中で、怪異と猟兵の目線があう。一般人はともかく、怪異にまで世界の加護が通じるかわからなかったから、付け焼刃の英語でご挨拶。
《廻るパンドラ》の歪んだ笑顔が、驚愕で見開かれる。
「……反応、おっそいなー。そんなんじゃ、モテないよー?」
つまらなそうに口を尖らせ、車軸にキックをくらわす。急な衝撃に車輪が石畳の上で火花を散らす。猟兵の少女はそれに構うことなく、蹴りの反動で空を翻る。
「――ウェンディ様、迷わず、そのまま!」
「――助かるよ、かぐやちゃん!」
コン、と軽い音がする。ウェンディに向けて、神楽耶が刀を向けていた。もちろん、攻撃ではない。その切っ先の見据える先は、ウェンディの足元。複製された刀を、空中を浮かぶ足場と為す。援護をすると約束した、友のために。
「――って、もう次が来てるの!」
だが、ダンサーに息つく暇は与えられない。別の《廻るパンドラ》が唸りをあげて、飛び跳ねる。足蹴にしてごめんねと心の中で刀に謝って、ウェンディは自慢の脚の筋肉を膨張させる。弾かれたように飛びかかり、キマイラの少女が怪異へ蹴りを食らわせる。ぐしゃりと車軸がへし曲がり、怪異は地に落ちていく。
「危ないなぁ、蹴ってばかりでごめんねっ!」
飛び跳ねながら、爆発は流石の僕でも怖いもんねぇと笑う。
だが、怪異はまだまだ終わらない。
「――ウェンディ様、後ろです!」
「まだいるの!?」
空中を跳ねるウェンディに、さらに襲い掛かる怪異。ここから方向転換は間に合わない。――ならば。
「させませんよ。其れは、――『偽りなれど――』――」
銀色の光が、白い霧を割くように進む。それは、真の色を湛えた刀。結ばれた縁を守るために、太刀が振るわれる。不意を突いたつもりの怪異の顔が、歪む。歪む。刀に撃ち落とされた怪異が、ガシャリと悲鳴のような金属音を立てる。刹那、こと切れたことを示すように爆発する。
「――ナイス、かぐやちゃん!」
軽快な足音が地面で鳴る。石畳を蹴って、猛獣の少女が残った最初の怪異に飛び掛かり、トドメのキックを食らわせれば、蹴られた衝撃を逃がさんと車輪が回り、先ほどウェンディに蹴られて動けずにいた別の怪異とぶつかって、爆炎を生じた。爆発を背に、くるりと回転。びしりとかわいい決めポーズ。スカイダンサーは、最後までその在り方を忘れない。そのあとで、じっと自分を見つめる視線に気づいた。
「……んへへ、どしたの、かぐやちゃん。僕に見惚れちゃったぁ?」
「――ええ。格好いいですね、ウェンディ様」
戦闘中にこういうことを言うの、本当はあまり好きではないんですけれど。
なぜか。不思議なことに。つい、口にしてしまう。
それを聞いて、照れるように髪をくしゃくしゃとかくウェンディ。
友を見つめる神楽耶の瞳は、暖かな燈火のようだった。
今日灯った友情は消えることなく、白い霧を晴らしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
アレス◆f14882と
アドリブ◎
うわっなんだアレ
気持ち悪い顔だし…
あの爆発、普通に叩いても厄介だな
どうするアレス
っしゃ、案内任せたぜ!
【望みを叶える呪い歌】で速度をあげて
空気の流れと音に集中して『見切り』攻撃を回避
時折仕掛けて『挑発』するように
こちらへ誘う
テムズ川の縁ギリギリで引き付けたら
『見切り・ジャンプ』
半ば無理矢理体を捻って
確実に仕留めてやる…!
炎の『属性』を込めた斬撃の『衝撃波』を『2回』川に落ちる寸前の敵にぶちこむ!
…攻撃を優先したせいで
こっから着地は難しそうだがまあ、アイツがいるし
問題ねぇだろ
アレス、着地任せた!
声をあげて重力に従う
抱えられて嬉しそうに笑い
さっすがアレス信じてたぜ!
アレクシス・ミラ
セリオス◆f09573と
アドリブ◎
っこいつ…爆弾か!
流石に正面から止める訳には行かないな
…先程、君を探す為にロンドンの上空に鷲を飛ばした時に知ったんだが
僕達はテムズ川周辺まで戻って来ていたようだ
だから、川まで誘おう
ああ、任せてくれ!
先導するように走る
音や空気の振動、流れを「見切り」予測し【絶望の福音】で回避していく
テムズ川縁まで来たらギリギリまで誘い【絶望の福音】で跳ぶように回避
…!セリオスのあの体勢では…!
名前を呼ばれる数秒前に走り出す
落ちてくるセリオスを受け止め、勢いを殺すように踏み止まる
彼の笑顔に呆れのような安堵のような息を吐き、笑いかける
お任せを。いつでも受け止めて差し上げましょう
●HIS KNIGHT OF DAWN
「うわっ、なんだアレ」
敵と遭遇して、放った第一声がそれだった。眉をひそめて、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は純白の剣を構える。白い霧の中でも、剣はきらきらと輝く。
「気持ち悪い顔だし……」
美しく流れるような黒い髪、美貌の猟兵を見ても、怪異はその美を理解しないらしい。けたけたと笑うその顔が歪む様を見て、一層セリオスは不快げだった。そんな彼を見て、群れる《廻るパンドラ》の一体が、廻りだす。石畳を金属音が擦る。
「――危ない、セリオス!」
セリオスの背で、金の装飾が煌めく。白銀の盾の先には、別の《パンドラ》。セリオスの背後から迫る、人の背ほどもある怪異を力強く受け止めきって、騎士は余裕の笑みを漏らす。――だが。怪異がにやりと笑う。
爆ぜる。
盾が、爆炎を受け止める。赤黒とした炎が霧をわずかに晴らすも、怪異から止めどなく生まれる霧がその空間を埋めていく。《早天の盾》と名付けられた盾は、全く健在だった。だが、後何度耐えられるか、保証はない。
「っこいつ……爆弾か!」
自爆攻撃などという、意外な攻撃に僅かに目を見開く。騎士道の具現たるアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)にとって、厄介な相手であることは間違いない。流石にこれ以上、正面から止める訳にはいかない。周囲への被害も無視できるものではなく、それを無視するわけにもいかない。
「――余計なことすんな、アレス!」
そんな思考をよそ目に、敵の接近ぐらい気づいていたと嘯くセリオス。本当に気づいていたかはともかく、アレスを包んだ爆炎が晴れて、その無事を確認したあとでその言葉を放ったことだけは間違いない。
「君が無事でよかったよ、セリオス」
いなすように、アレスの青い瞳が細まる。
「ったく。……にしても。あの爆発、普通に叩いても厄介だな」
ため息をついて、どうするアレスと方針を尋ねる。
「今、僕たちはテムズ川周辺にいるんだ。あの河に、敵を誘おう」
先ほど、鷲で位置を確認したんだと前置いて、猟兵アレクシス・ミラは自らの作戦を簡潔に伝える。この場面で複雑な作戦はいらない。要は爆発を無効化すればいいのだ。
「……っしゃ、案内任せたぜ!」
がしりと拳を打ち合わせる。見ほれるような笑顔がそこにあった。
「――ああ、任せてくれ!」
その二つ返事に心の中で苦笑して、先導するように走り出す。
未来は今、確かに見えている。
●My Cursed Song For My Wish
「――おら、こっちだ!」
河岸へと至る道は、建物が幾重にも重なり、複雑な小道となっていた。夜明けの騎士の指揮の下黒い鳥が歌い導いたその先で、セリオス・アリスが数体の《廻るパンドラ》を見て、貪欲に笑う。
「良いぞお前ら、このまま――――」
パンドラが追う中、黒鳥が跳ねる。廻る車輪の怪異の表情は変わらない。確かに仕留めてやると、高らかに笑う。そういう怪異であるらしかった。自ら爆ぜることで、敵を確実に撃破する。それこそが、彼らの設計思想だった。それだけに、迷うことはない。まっすぐに猟兵セリオス・アリスへ目掛けて石畳を蹴り、跳ねる。
「――――仕留めてやる」
白い霧の中、星の剣が光る。炎を纏った斬撃が《廻るパンドラ》へと振り下ろされる。一度では終わらない、二度の斬撃。大きく体を捻り、斬撃を勢いづける。夜の帳を思わせる黒い外套が、動きにあわせてひらりと舞う。
「―――――――――!」
パンドラの声にならない声が響く。それは、恐怖だったかもしれない。あるいは――。
だが、それを確かめる術はなく、時間もなかった。数秒の空白、川面に叩きつけられた怪異の群れが爆炎をあげる。褐色に濁った水面がそれを飲み込む。
「――アレス、着地任せた!」
高らかに飛んで、体を捻り繰り出す斬撃。それは姿勢制御の放棄に等しい。立て直すのは困難。だが、彼に憂いはない。重力に身を任せる。
「――言われるまでもないさ」
理由は簡単。彼を受け止めんと、騎士は既に跳んでいる。受け止める籠手を裏返し、金属のない柔らかな革部分を空に向ける。ずしりとセリオスの背と両足を通じた重みが、アレスの腕にのしかかる。猟兵二人ぶんの体重をのせた、重々しい金属音が石の上で鳴る。
「さっすがアレス。……信じてたぜ!」
彼が屈託なく笑うのを見て、安堵の息を小さく漏らし、笑いかける。
「お任せを。いつでも受け止めて差し上げましょう」
少しぐらい格好つけても、今この場では許されようというものだ。
騎士とは、そういうものなのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
パーム・アンテルシオ
機械だって、思い込んでいたんだけど。
あれは…何?機械なの?生き物、なの?
…私にわかるのは、あれが異質だっていう事だけだけど。
十分だよね。倒すべき敵がわかれば。
九ツ不思議…雪女。
私のできる事。する事は…動きを止める事。
地面が凍れば、車輪は滑って、空回る。
動けない車輪は、金属は、冷気に侵され…やがて氷に閉ざされる。
敵が動かなければ…猟兵の皆なら。容易い相手だよね?
私は、この綺麗な町並みが好きなんだ。
サムライエンパイアとは、全然違っても。
無駄に壊されたくないし、壊したくない。
あなた達の、古めかしい金属色も。それはそれで、綺麗だと思うけど。
でも…私は、こっちを取るね。
ふふふ。ごめんね?
【アドリブ歓迎】
奇鳥・カイト
なんだか湿っぽい街だな──ま、嫌いじゃないぜ
陽の下よりかは暗がりの方が好きだからよ
回るんなら止めるしかねーよな
俺のイトで雁字搦めにしてやるよ
そう簡単に止まらねぇのはわかってる、だから思いっきり引っ張るしかねーよな
悪くねーことに、こんな街中じゃ糸の引っ掛け先が多い──縛り付けてやるか
爆発は…糸で守りきれるかこれ
無理そうなら物影に隠れるしかねーな
隙が出来りゃ
影を走らせ、血の刃をくれてやる
味方のことは面倒そうにするが結構気にかけます、素直じゃありません
遠ざけようとするのは怪我するのを心配している為だとか
連携・アドリブ歓迎
レッグ・ワート
そんじゃ、猟兵の方の仕事といこうか。お疲れさんまで後ちょっとだ。
修理期間が無いに越したこと無いだろ。俺自身や他の猟兵だけじゃなしに街の被害も気にかけて防ぐなり庇うつもりだぜ。敵が多ければ散開もアリ。ただ道中で何得意何チャレンジとか情報交換できたら有難いね。
俺は前中衛。基本は前出て鉄骨でのぶん殴りや武器受け。鉄骨を隙間に差し込んでねじ折ったり、糸絡めて引く時は怪力使う。敵の動きに決まりや制限が無いか、聞き耳やら他の索敵使って攻撃を見切り避けたり庇ったりしつつ演算かけてこう。何かの切換や異音注意は引続きだ。勢いづいて来たらとりあえず構えて無敵城塞しとこうか。何詰まってるかわかったもんじゃないしな。
●In A Narrow Path
「なんだか湿っぽい街だな──ま、嫌いじゃないぜ」
道に打ち捨てられたファスト・フード店の茶色い包みを革靴が踏みつけた。袋の中には銀紙が入っていたらしく、くしゃりと軽快な音を立てる。学生服の少年の赤い瞳はそれに興味もないようで、ただ鈍く光り怪異を見つめる。奇鳥・カイト(燻る血潮・f03912)という猟兵にとって、薄暗い霧の中は、まだ幾分か陽の下にいるより快適であるらしかった。彼の視線の先には、迫りくる回転する怪異がいる。
「――回るんなら止めるしかねーよな」
怪異を止めるなら、その得意を打ち破らなくてはならない。自分の選んだ道とはいえど。よくわからない街に来て、あんなよくわからない化け物の相手をしなくてはならないとは。ため息をつく。だが、奇鳥・カイトにはその力があった。白い霧の中、同じ色をした糸がふわりと舞った。
「―――――――オォ」
「俺のイトで雁字搦めにしてやるよ――――」
石造りの建物でできた隘路。配管を介して、板で封じられた窓の白い縁から、ごみ箱の影から、まるで蜘蛛の巣のように張り巡らされた糸が、怪異を縛る。きりきりと糸が車輪に絡みつき、その回転を阻む。《廻るパンドラ》と呼ばれた怪異が、声にならない声をあげる。少年は糸を手繰る。封じられれば、こちらのものだ。
「――何!」
刹那、閃光が走る。続くのは爆音。咄嗟に糸から手を離し、腕を交差して身を守る。
音が去ったあとで、焼け焦げた裏路地と、服に飛んだ煤を掃う少年だけが残る。
「ちっ……爆発か」
舌打ちをする。今は近くないから助かった。しかし、次に襲来したときに。自分の糸でそれから身を守り切れるか。答えは、わかっていた。そして、それを現実とする"次" がやってくるのにも気づいていた。仲間の音が聞こえて、やってこないはずがない。物陰を探して、赤い目が走る。爆発からなんとか逃げおおせたらしい、大柄なごみ箱が転がっているのが見える。走って身を隠す。だが、車輪の音は近づく一方。見える。車輪が。歪んだ表情が。怪異が一直線に自分に迫る様が。
「(――糸の展開まで、もう10秒はかかる。もう少しだけ時間が稼げれば)」
カイトの心の声に応えるように、頭上から響く柔らかな声が霧を晴らす。
『――古より、汝は誘う者』
それは、祝詞。それは、呪詞。それは、凍てつく波動となって路地を包む。青く輝く冷気が、《廻るパンドラ》の車輪を包む様が見えた。ぴし、ぴしと霜つく金属が見えた。それはすなわち、逆転のチャンス。
『昏き夜に眠る血よ、深淵に潜む闇よ、我が影に宿る刃と成れ──』
煉瓦の地を、影が這い進む。《廻るパンドラ》の車軸部、一番脆い箇所を影が打つ。はらりと包帯が落ちる。刹那、その指先を噛みちぎる。血が滴るのを構わず、手刀を空で振るう。血が刃となって、空間を割き進む。怪異の脆弱を血潮の刃が穿った。
「――お見事」
先ほどの声が、ひょいと地面に降りてくる。スカート状の服がまずふわりと落ち着いて、続けて桃色の髪が柔らかく香った。それから、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)は傍らに立つ雪女にも礼を言う。ユーベルコード【九ツ不思議・雪女】は、しずしずと頷いた。
「手柄をもらって誇れないな……君のおかげだよ」
カイトは、君も来てたんだねと続ける。
「こういうときは、素直に喜んでくれていいんだよ」
そっちの方が可愛いのにとからかうようにパームが笑う。桃狐の少女が目の前の半吸血鬼の少年の反応を確かめるより先に、無骨な――ともすれば、無粋な機械音が響いた。
「――パーム。あっちの方にまだ敵がうじゃうじゃいる」
濃緑色のフォルム。レッグ・ワート(脚・f02517)が指して伝える。
「わかったよ、ありがとう。レグ。……それから、よかったら」
よかったら手伝ってくれない?とパームが首をかしげてカイトに尋ねる。
「……俺の技は、連携向きじゃない。さっきのは、たまたまだ」
別にそんなこともないくせにという心の中の反論を封じ込めて、カイトが踵を返す。
「――ああ! ……もう。残念」
パームが呼び止めるより早く、立ち去るカイト。赤い瞳が、残念そうに歪む。
「邪魔して悪いが、敵が近い」
彼女の感傷を図るそぶりもなく、3LGが口を出す。確かに、事実として、車輪の音が近くで聞こえた。パーム・アンテルシオという猟兵は、頭を切り替える。狐火が、白い霧の中でゆらゆらと揺れた。
●Jaegers may trust each other.
「(――それにしても)」
機械だって思い込んでいたんだけど、と彼女は心の中で一人苦笑する。
広い道を、建物の壁を、這うように走る怪異の姿は、一体なんと形容したらいいのだろうか。廻る車輪、無骨な車軸、不快な表情。機械のようであり、それでいて生命のように動いている。確かなことは、あれが異質な存在であるということだった。
「(――でも、それで十分だよね。倒すべき敵がわかれば)」
ひとしきり思考を弄んだあとで、パームは自分の思考を笑った。彼女にとって、猟兵にとって、それで十分なのだから。
「――だから、引き続きお願いね」
雪女に語り掛ける。こくりと彼女は頷いた。
「おー……――ったく、キリがないな!」
爆炎をその装甲で防いで、レッグは仁王立つ。両腕で抱えた鉄骨は、何本目だろうか。既に壊れた《廻るパンドラ》と、折れた鉄骨が幾本も地面に転がっている。敵の動きを分析し、その回転に合わせて鉄骨を振るう単純作業。兵器を相手にすることは、彼の仕事であった。
「(……しかし、相性悪いぜ、こいつら)」
悪態を心の中でつく。いくら装甲で爆炎を防いでも、彼はパンドラの群れに優位をとれずにいた。ドローンを幾ら増やそうと、鉄骨をいくら増やそうと、彼の攻撃はパンドラの無差別な爆発を防ぎえない。激しい爆発から無事でいられるのは、自分だけだ。幾重もの敵の絡め手対策を演算しても、敵が最も恃む必殺技に決定的な対策を打ちえていなかった。敵の攻撃に対する自分の優位を示す、より単純な何かがあれば、戦況は大きく変わりえただろう。だが、今のレッグにその手段はない。それでも、与えられた中で、奪還支援型3LGは最善を希求していた。それこそが、戦闘用機械の本領であると言えようか。
「……次はどいつだ? お前か?」
ここにありと鉄骨を構える。
派手に立ち回るのは性分ではないが――まあ、これで時間は稼げただろう。俺の周りにいる怪異は、一体何体いるのかね。一つ二つじゃ収まらない。俺の指でもまだ足りない。人間の指でもまだもう少し。15体ってところかね。へぇ、結構な数がいるじゃないか。
だがまあ、お疲れさんまで後ちょっと。
レッグ・ワートには、確信があった。確信は、現実へと変わる。
「私は、この綺麗な町並みが好きなんだ。サムライエンパイアとは、全然違っても」
凛とした声が響く。その一瞬は、不意の声に、車輪の群れが動きを止めたようにすら感じられた。
「――無駄に壊されたくないし、壊したくない」
――だから。――だからと呟いて。パームが念じる。冷気が広がる。
一斉に、街路が凍てつく。春めいていたロンドンの街が、たちまち冬に包まれる。
「あなた達の、古めかしい金属色も。それはそれで、綺麗だと思うけど」
建物の屋根からふわりと飛び降り、一体の怪異を見つめる。
見つめられた《廻るパンドラ》の車軸が、ピシリと音を立てる。
気にすることなく、パームが車輪の群れの間をコツコツと別け歩く。
「でも……私は、こっちを取るね」
不意に、回転音が響く。車輪が回る。唸る。金属が石の上で擦れて火花が散る。桃色の可憐な少女に逆襲せんと、凍てついて止まったはずの車輪のお化けが、動き出す。車軸に描かれた歪な顔が、得意げに歪む。
だが、猟兵パーム・アンテルシオは慌てない。
今まさに眼前に迫ろうとした怪異の動きが止まる。
《廻るパンドラ》の醜い顔が、意外で固まる。
その車輪には、黒い糸が幾重にもまとわりついていた。
「ふふふ。……ごめんね?」
赤い瞳が、心の底からの同情の色で揺らぐ。
ぐしゃりと悲し気に音を立てて、怪異の命の緒が断たれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヤパ・トラジマ
【とらとら】の子らと
よしよし、迷子怖かったなー?
もう大丈夫やで
気持ち悪いのも仰山出てきたが、さくっと倒してまお!
保護者として、怪我させて帰す訳にゃいかん
前衛で頑張る…て。血気盛んな子が多いこと
俺さんも負けてられんね…!
地獄の炎で、こんがりウェルダンにしたる!!
爆発に注意して、ヒットアンドアウェイ戦法で距離を取る
可能なら終末理論の範囲外を拠点にしたいが
無理そうなら、30cm以内に留まらんようにだけ留意
ふひひ!
ぴかぴかの巨大ロボやら、巨大魔導書やら、ライオンやら…
派手派手で楽しいな!!
攻撃食らいそうな子が居ったら、気ぃ引くよう攻撃を
鬼さん此方、や!
ディコはもうちぃと怪我に気ぃ付けー!ほら、もー!!
壱季・深青
【とらとら】のみんなと【POW】
霧の中から…あれは…車輪だ
これが…正体だったんだ
うん…敵もはっきりしたし…心置きなく…ぶちのめせる、ね
敵の攻撃パターンを…しっかり読むために…動きを観察
反撃がきたら…仲間に声をかけて…注意を促す
そして…仲間の動きを…見極めて…連携をとる
「黒曜の導」の…「猩々緋」で…攻撃力を上げる
漆黒の刀で…狙いやすい場所を…探して…穿つ
得意なのが…接近戦…前衛だから…仕方ない
力押しで…やっちゃえ…っていう感じかな
もし…仲間に危険が…迫っていたら…庇ったり…敵の意識を…
自分に向けさせるために…攻撃する
ディコ(f01702)…巻き込まれ過ぎてないか…心配だよ
(「…」「、」は適当で)
古峨・小鉄
【とらとら】敵が移動しとったなんてずるいじゃ
探した俺、迷子。怖かっ……ヤパ、あんがとじゃ(ぐしぐし
皆…深青まで互いに、前衛って云うてるじゃ
残念なお知らせ→俺も前衛肉弾技しか使えひん(どんだけ前衛率高
ユキちゃん(らいおん)と俺、ガンガン戦うじゃ!(がおー
ユエとディコ達の足止めに追撃参戦
単独時
車輪の高速接近は直線かのう…
皆の立ち位置注意し、ユキちゃんと高速で躱す
但し軌道上に誰か居った場合は俺んトコで止め
ユキちゃんの爪斬撃or突牙で応戦
このこのこの!
ぶっほっ!(爆発
■事後
おにょれ
ぼこぼこ爆発しよってからに(煤顔ふきふき
皆も怪我や汚れないん?タオル使う?(鞄から
帰る前にもっかいティータイムしたいじゃ!
間仲・ディコ
【とらとら】の皆と!
ややっ、これが霧の根源っすか!
楽しい観光の時間も終わりかあ~、そっかあ~…。
出会ってしまったなら仕方がない…いっちょ【気合い】入れていきましょう~!!
爆発爆発! ひゃー厄介だな~!
ここは【耀装】でおっきく変形、程よく【範囲攻撃】で【カウンター】しつつ壁役アタッカーになりたいところ!
変形のとき、ランプなどなど光り物を拝借して【存在感】増し増し、なるべく多くの敵を【おびき寄せ】たいっすね!
いっぱい集まったとこでがっつりキメちゃいましょう!!
皆が一緒だととっても頼もしいっすね~!!
爆発に巻き込まれてもなんのその! えっ巻き込まれ過ぎ!?
だーいじょうぶ、ほら…あっ、ロボ壊れたー!
●Find
「ややっ、これが霧の根源っすか!」
幾分か間の抜けた声が、霧の中で響く。間仲・ディコ(振り返らず振り出しに戻らず・f01702)が感心したように、眼前を走る車輪の怪異に黒い目を丸める。
「これが……正体だったんだ、ね」
その言葉を耳にして、壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)がこくりと頷く。
「そっかあ~……楽しい観光の時間も終わりかあ~、そっかあ~……」
深青の肯定が、まるで判決を下されたように聞こえたらしく、ディコが一層しょんぼりした声を出す。
「まーまー、気持ち悪いのも仰山出てきたが、さくっと倒してまお!」
終わったら観光再開や!と励ますような声。緑の瞳は自信に満ちているように見えた。ヤパ・トラジマ(焔虎・f00199)は最後まで、明るく頼もしいままである。
「うん……敵もはっきりしたし……心置きなく……ぶちのめせる、ね」
それを聞いて、ゆっくりこっくり頷く深青。だが、言っていることはなかなか過激。黒曜石の角が、街灯に照らされて鈍く光る。どんなにおっとりとして、眠たげな表情を浮かべていようと、彼は間違いなく羅刹なのだった。
「仕方がない……いっちょ、気合い入れていきましょう~!!」
どこか自分に言い聞かせるように、ディコが大きく腕を振り上げた。
●Golden Lion runs,
「ユキちゃんと俺、ガンガン戦うじゃ!」
黄金の虎に跨って、両腕をぶんぶん振り回す。目はうっすらと赤く、ぐしぐし擦った後まである。古峨・小鉄(ことら・f12818)はそれでも、今や元気いっぱいだった。ユキちゃんの腹を蹴って合図をすれば、猛獣は音もなく駆けだす。
「――今じゃ! このこのこの!」
群れるパンドラに巨大な獅子が爪を振るう。金属でできた《廻るパンドラ》の体に大きな爪痕を残すのは、ユーベルコードの面目躍如というべきだろう。だが、敵はそれで終わらない。音がする。赤い光が広がる。続けて、爆炎が広がる。主の命令を待たず、ユキちゃんが大きく後ろへ跳躍する。
「――ぶっほっ!」
黄金の獅子が降り立つと同時に、小鉄がせき込む。彼がほとんど傷を負わずに済んだのは、ひとえにユキちゃんの性能ゆえだろう。彼を目掛けて、別のパンドラが走る。今度は小鉄の対応範囲内。高速で走って来る《パンドラ》がぶつかる寸前に飛び、躱す。元居た場所で、怪異が爆ぜる。
「――よぅし、次いくじゃ! 次! ――あっちで戦ってるじゃ! 助けにいくじゃ!」
視線の先には、みんながいる。小鉄が走り出す。
獲物は、まだまだたくさんいるのだ。
●Eruption of Haematite
「保護者として、怪我させて帰す訳にゃいかんからなー」
黒い肌に描かれた虎縞模様から、まるで火山の噴火を思わせるようにして、地獄炎が噴き出した。炎は黒い肌を覆うように広がっていく。視線の先には、虎に乗って跳ねまわる小鉄。漆黒の刀を振るう深青。手足をきらきらと輝かせて、ロボット状態で戦うディコ。
「ふひひ! ぴかぴかの巨大ロボやら、巨大魔導書やら、ライオンやら……派手派手で楽しいな!!」
どいつもこいつも危険な場所で、最前線で戦っている。血気盛んな子が多いことだと保護者は苦笑せずにいられない! もちろん、その苦笑の意味はただひとつ。
「俺さんも負けてられんね……!」
大人として、保護者として、なにより燃える猟兵として、負けてはいられない。
噴き出た炎が、側を走る《廻るパンドラ》へと襲い掛かる。
「……地獄の炎で、こんがりウェルダンにしたる!!」
ヤパ・トラジマは獰猛に笑った。
●He laughs, they laugh.
「爆発爆発! ひゃー、厄介だな~!」
巨大な手足をぶんぶん振るって、ディコが能天気に笑う。十体以上の《廻るパンドラ》に囲まれたこの状況は、決して良くないはずだった。だが、彼女は屈託なく笑う。もし彼女に今の気持ちを尋ねたら、どう答えるだろうか。答えはきっと、"わからない" ではないだろうか。少なくとも、考えて気落ちするよりは動いて事態を解決しようとしていた。
「なあに、……ここが力の見せ所ですよ!」
【耀装】で囲った腕を大きく振るい、走りこんできたパンドラを受け止める。ぐいとそのまま持ち上げて、大きく放り投げる。ランプやライトを纏わりつけて、派手に光る【耀装】は、霧の中でもよく目立つ。それだけに、大勢の敵に囲まれていた。
千切っては投げ、千切っては投げ。大立ち回りを繰り広げる。
「ディコ……巻き込まれ過ぎてないか……心配だよ。」
そんなディコの様子を見て、深青が愁いの視線を向ける。【猩々緋】の加護を受け、刀を振るう。疾走する《廻るパンドラ》を、すれ違いざまに斬り付ける。ガシャリと音を立てて、怪異が崩れ落ちる。それをつまらなそうに眺めて、再び光り輝く友がいるはずの方向へと視線を戻す。
「ディコはもうちぃと怪我に気ぃ付けー!」
同じ心配を抱いていたらしく、別の場所から騒がしい声で忠告が飛ぶ。深青が、その声を聞き間違えるはずがなかった。戦闘中に皆の心配をして、声をかける――ヤパらしいなと深青は心の中でほほ笑んだ。
――だが。その瞬間、ガシャリと音を立てて【耀装】が崩れる。
「……あーっ、ロボ壊れたー!」
遠くから、ディコの悲鳴が聞こえた。
「ほら、もー!!」
ヤパの悲鳴が、続けざまに聞こえた。
「ヤパ―ッ! ディコ―ッ! 今行くじゃー!?」
それだけでない。小鉄の叫び声も聞こえた。
「……ふふ」
深青は一層微笑を深める。
戦闘中でも賑やかで、楽し気で、不思議と負ける心配はなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リヴェンティア・モーヴェマーレ
【華麗なる西風】
▼アドリブ大歓迎!
もり盛りのモリでも大ジョブです
▼本日のメインの子
今回は他の森の動物精鋭部隊総出動
▼【WIZ】
焔さん作成の陣地内
ツカサセンパイの冒険譚に合わせる様に行動する「ハムスター隊」
強化後マリアさんのU Cに乗り出動していくハムスター隊
(動物達はいつも以上にやる気満々で出動
…
か わ い い ♥
なんて可愛いのでショ!
皆さん、見て下さーい!
戦闘でなければ動画撮ってましタ悔しいでス…
極力攻撃範囲に入らないよう気を付けながら立ち回り
攻撃時は見切りで回避を試み、当たってしまう場合はオーラでダメ軽減
→床ドン
ツカサセンパイ、ありがとうな気持ち!咄嗟の判断素晴らしいデス!(尊敬の眼差し)
甲斐・ツカサ
【華麗なる西風】
アド歓
in焔ちゃん陣地
『ナントカ暦20XX年。ロンドンは「パンデミック的にジャンジャン現れるドラムのようなもの」通称パンドラに襲われていた。だがそこにひまわり農家の子供達による「農家の星(ファームスター)」中隊、通称「ハムスター隊」が現れ、平和の為に戦う!』
という話で皆を強化!
太陽は霧で隠れてるけど、代わりにマントで皆(ハムちゃんズ含)を鼓舞!
後はパンドラから皆を守ろう!
特にマリアはこういう時、まだまだドンくさいし、リッティちゃんは攻撃されたらハムちゃんズ消えちゃうから気をつけないとね!
でもこうやってちゃんと地面に伏せてれば大丈夫!(床ドン)
…なんだか、柔らかさが違うんだなあ…
マリア・アリス
【華麗なる西風】
なんだか変な形の怪異が出たわね…!これ思いついた人は疲れてたのかしら…?
陣地内からエレクトロレギオンにリッティちゃんの動物さんを乗せてサポートに回るわ!動物さんが攻撃に集中できるように出来るだけ側面からぶつかっていきましょう。いざとなったら動物さんの盾になれば上出来ね。それに可愛いし!あとでリッティちゃんにゴーグルの録画記録あげないとね。
(ツカサに守ってもらった場合)
ツカサ…ありがと…って近い、近いわ!(近づく距離にどきどき)…でも何かしら…ツカサからなんかすごい期待外れみたいな空気を感じるわ…?
(他の人が守ってもらった時)
は、反応が違うわ!?胸なの!?胸の差なの!?うう…。
神薙・焔
【華麗なる西風】
うーん、まぎれもなくこの世ならざる異様な風貌…でもなんとなく、これが生まれた目的が分かる気がする。さっきキメ…飲んだハーブティーのせいかしら?
そう、あの顔は防御陣地を攻撃したがっている顔! ならば建てましょう『Diana ist kundig, die Nacht zu erhellen(ディアーネは夜を照らす術を知る)』、野焔築城!
パンドラたちは本能的に防御陣地に殺到する、でも簡単に抜かれはしない、あたしが陣を維持するために動けなくても仲間たちが…「ハムスター🐹隊」? か、可愛いわね…。
おや、ツカサくんのようすが…色を知る歳か、マリアちゃんがんばって!(?)
●The Hamster Platoon
「なんだか変な形の怪異が出たわね……! これ思いついた人は疲れてたのかしら……?」
より最先端の技術世界から来た少女にとって、理解しかねる怪異であった。その設計者の脳の疲労に思いをはせながら、マリア・アリス(歩き出したアリス・f04782)の青い瞳は真剣に怪異を見つめる。どうしても、理解しかねると言わんばかりの不満げな表情。
「うーん、まぎれもなくこの世ならざる異様な風貌……でもなんとなく、これが生まれた目的が分かる気がする。さっきキメ……飲んだハーブティーのせいかしら?」
こらそこの人、紅茶をキメるとかいうんじゃありません。ジョージアン・スタイルの埃を被った屋根に腰掛けて、神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・f01122)は見下ろすように眼下を走る《廻るパンドラ》を観察する。動く音。時折聞こえる爆発音。ミサイルを発射できるようには見えない。つまり。敵のやりたいことは。
わかった。――ぱちりと両手を合わせる。
「――そう、あの顔は防御陣地を攻撃したがっている顔!」
屋根の上で、立ち上がる。器用にバランスを保って、くるりと一回転。
「ならば建てましょう――」
それからひらりと飛び降りる。"焔"の全身が"地獄の焔"で包まれる。
『――Diana ist kundig, die Nacht zu erhellen(ディアーネは夜を照らす術を知る)』
いうなれば、Die Feuer Burg――【野焔築城】という名のユーベルコード。
防衛陣地の中心で、焔はどっかりと構える。
「パンドラたちは本能的に防御陣地に殺到する。でも簡単に抜かれはしないわ」
うんうんと大きく頷く。
「あたしが陣を維持するために動けなくても仲間たちが……仲間たちが……」
ユーベルコードの代償は動けないこと。だが、心配はいらない。焔には頼りになる仲間がいて――いて――彼女の脇を、どたばたと走っていく小さな影が何匹も。何体かは、小型の機械兵器に乗っている。小さな機械化小隊である。それから、その後ろを追いかける大きな影が一人。
「なんて可愛いのでショ! 皆さん、見て下さーい!」
キャー!と黄色い悲鳴をあげてリヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)が走っていく。戦闘中とはとても思えない光景だが、ハムスターたちは真剣である。目を見ればわかる。はっきりとわかる。一方、リヴェンティアはハムスターに夢中だった。
しかし彼らの作戦は、ここで終わらない。声が響く。冒険心と、夢に満ちた声が。
『――ナントカ暦20XX年。……ロンドンは「パンデミック的にジャンジャン現れるドラムのようなもの」――通称、パンドラに襲われていた」
まごう事なき、ナレーション。熱の籠った迫真の声。甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)は握りこぶしを作って、朗々と語る。
「――だがそこにっ! ひまわり農家の子供達による、『農家の星(ファームスター)』中隊、通称『ハムスター隊』が現れ、平和の為に戦う!』
そういう設定らしい。ちなみに、動物の森精鋭部隊は五名。ハムスターは二匹。多めに見積もっても小隊であるが、それはそれ。物語に脚色はつきものである。とにかく、平和のために戦う戦士たちがユーベルコード【暁運ぶ風の道程】の加護を受け、廻る怪異を打ち倒すべき進軍を開始した。
「か、可愛いわね……」
陣地に取り残された焔が、ぽつりとつぶやいた。
●Their youth
「こうして、ひびちゃん率いるハムスター隊の活躍で敵は撃滅されていく!」
一体のパンドラが、ハムスターに飛び掛かられて、パーツの一片に至るまでばらばらにされたところで、ツカサがそれを物語に編み上げる。リヴェンティアに『響』と名付けられた一匹のハムスターがツカサにぐっと親指を立てる。まるで人間臭い動きである。
だが、怪異とてただの的ではない。ハムスター隊の力の源のひとつを、リヴェンティアと気づいて飛び掛かる。爆炎があわや青い髪を包まんとする。
「――リッティちゃん、危ない!」
だが、届かない。
一陣の赤い風がひらりとその間に舞う。青い少女ごと、地面に伏せる。
「リッティちゃん、攻撃には気をつけないとね!」
柔らかな何かが自分の胸に当たるのを感じながら、少年は窘める。
「ツカサセンパイ、ありがとうな気持ち! 咄嗟の判断素晴らしいデス!」
尊敬のまなざしを、少女は向ける。そこに、邪な気持ちは介在しない。
――だが。
「………なんだか、柔らかさが違うんだなあ」
むにむに。ツカサは身体を押し付ける。まるで理科の実験をするように。
もう少し大きくなったら、それはもうセクハラで訴えられるような動きで。
柔らかさを、楽しんでいた。
「――は、反応が違うわ!? 胸なの!? 胸の差なの!? うう……」
それを見て、ギリギリと歯噛みする少女がいた。銃で怪異を足止めしながらも、視線は離せない。男の反応というのは、少女にとって残酷なものであった。先ほど自分が守ってもらったときも、ツカサは全く気にしていない風で、それはそれとして傷ついたのだがそれ以上に――これは―――。少女は悶々と唸る。
「(ツカサくん……色を知る歳か。……マリアちゃんがんばって!)」
そんな三人の様子を見て、陣地の奥でにやにやと笑う焔。
傍から見ている彼女こそが、ある意味一番美味しい立場なのかもしれない。
怪異のことなどそっちのけで、青春が繰り広げられていた。
抗議するように、爆発音が轟いて、轟いて、やがて消えていった。
大成功
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五百雀・斗真
きゅらきゅらって音は、あの車輪から出ていた音だったのか
…うーん、あんな怖そうな車輪が街中を徘徊してるのは危険だね
仔竜のソルとルアをそっと避難させてから、戦闘態勢に入ろう
姿が車輪なのもあって、すばやいね
うわわわ、すごい音がした…っ
こういう爆発音は誰かが怪我してないか心配になるし
パニックも起こりやすくなるから、早くあの敵を倒さないと
敵の攻撃はUDCの大田さんの触手に盾受けで防いでもらいながら
僕はひたすら【グラフィティスプラッシュ】でマヒ+範囲攻撃
かりそめスプレーの色は独特な赤
あの《部屋》の絵の色を思い描きながら石畳にもスプレーを吹き付けていき
車輪の動きを抑えられるかやってみる
※アドリブ歓迎
●Beginning of the combat
「きゅらきゅらって音は、あの車輪から出ていた音だったのか」
なるほどねと呟いて、建物のベランダ越し、眼下を走る怪異を見つめる。単純で無骨な作りの兵器、彼の顔は歪で醜い。街路を疾走し、不意に思い立ったように止まり、方向転換してまた進む。無軌道な動き、秩序も理性も感じない動き、危険な動き。見る限り、一般人に犠牲者が出ていないのが奇跡と言うべきだった。
「……うーん、あんな怖そうな車輪が街中を徘徊してるのは危険だね」
小さな仔竜たちの頭を撫でる。彼らは、この戦いに向いていないと判断する。ちょっと隠れていてねと伝えると、仔竜は小さく鳴いた。
「(……大丈夫、平気さ)」
優しくはにかんで、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は心配そうな目をする二匹の仔竜から手を離し、ベランダに設えられた欄干を飛び越えた。
●His decision
「……危なっ!」
火花を起こして走る車輪を、すんでのところで躱してみせる。そのまま足で街頭に着地する。地面と並行に、水平に立つ斗真を支えるのは、街灯に絡みついた《大田さん》である。瞬間、斗真が元いた場所で大きな爆発音がする。
「うわわわ、すごい音がした……っ」
からからと金属の残骸が石造りの街路に転がる音がする中、斗真は目を丸くする。素早い動きに加えて、軽視できる爆発ではない。
「つまるところ、早くあの敵を倒さないと――ってことか」
眼前の街路にはまだ何体か、走っているのが見える。周辺にいた怪異が、爆発を聞きつけて集まってきたのだろうか。爆発は周辺を巻き込みうるもの。組織の方のUDCが対応にあたっているだろうとはいえ、霧の中にはまだ取り残された一般人もいるはず。パニックを起こされたらたまらない。大田さんが宿主の意見に同意するかのように、小さく蠢くのを感じた。手の中に、スプレー缶の冷ややかな感触がある。
描くべきものは、もう決まっていた。
「――大田さん!」
三日月状に曲がった街路は、まるで四方を住宅に囲まれているようだった。
その街路――跳躍した先に、走りくる怪異――《廻るパンドラ》。正面からこそ覗けなくとも、側面の歪んだ笑顔が脳裏に浮かぶ。ここからやられるわけにはいかない、ここでやられるわけにはいかない。主人の命を受けて、薄墨色の触手が平たく広がる。疾走する怪異の車輪が触手の上に乗り上げ、その勢いのままに飛び上がる。
「――!」
空中で体勢を崩した怪異の顔が、僅かな驚きで歪むのが見えた。
「―――――!」
敵は一体で留まらない。連携するかのように、続けざまに別個体が突撃してくる。
「直進するというのなら!」
スプレー缶を構える。赤い塗料が噴き出して、白い霧を赤く染める。
だが、怪異は斗真を嘲笑うかのようにけたけたと振動する。それが、取り付けの悪い石畳の街路で揺れたせいなのか、あるいは怪異の意思かは不明だが――赤い奔流を目前にして、《廻るパンドラ》は大きく軌道を変えて躱し走り去る。
「――ちっ!」
舌打ちする。当たらなければ、動きを止められない。しかし幸か不幸か、走り去った怪異はまだ自分をあきらめていないらしい。大きな弧を描いて旋回し、再び走ってくるのが遠目に見える。スプレー缶を構え直して、斗真は再び戦闘に入る。
●Tohma's Room
「――薄気味の悪い顔してるなって、つくづく思うよ」
あたりは一面、赤い塗料が飛び散っていた。
幾分か当たって動きが鈍くなっていても、快速を武器とする兵器は未だ止まらない。何体かは既に自爆していた。金属片がいくつも散らばっている。音を聞いたせいかは知らないが、少なくとも周辺に一般人はおらず、被害を気にする必要がないのは救いだった。
激しい戦闘に大田さんはよく耐えてくれていると思う。残り、三体。
だが。怪異は自らの敗北を考えない。彼らにとって、死は敗北ではない。そう設計されているがゆえに。そう描かれているがゆえに。
彼らの生とは、目標の破壊以外にないのだと。
「可哀そうだと思うよ――」
かたかたと音を立てて走りくる怪異に、心から同情する。
ぐるりと見回す。街路の両側から、走りくる《廻るパンドラ》。戦闘で転がったらしいゴミ箱を踏みつぶし、中身が道にぶちまけられる。怪異はそれを気にする様子もない。気にする知性もない。勝負を決めに来ているようだった。
「――大田さん!――」
叫ぶ。
薄墨色の触手が広がる。器用にも、二体を同時に受け止める。
だが、まだ終わらない。
――――オオォ!
頭上から、風を切る音がする。怪異が跳ねて、死角を突かんと飛び掛かる。
車軸に描かれた顔は、勝利を確信しているように見えた。
「――君たちには、あの絵の良さがわからない――」
斗真の眼前で、怪異の動きがぴたりと止まる。まるで、時を切り取ったように。
車輪の回る不快な音で満ちていた霧の空間が、静寂で満ちる。
それは、まるで。
「――少しでも感じられたら、きっと――」
街路一面に広がった独特な赤。無秩序に見えて秩序だったそれ。
音を全て飲み込むような圧倒。その中心に、斗真が立っている。
力を失って、怪異が崩れ行く。
三日月状の街路は、《部屋》のようだった。
大成功
🔵🔵🔵
尾崎・ナオ
同行:ウイシア(f09322)セリオン(f00924)
ウイシアさーん、敵の位置教えてねー。敵WIZの爆発音に共感して能力値上げてくれるの、ナオちゃん達にも効くん?
セリオンさんが場所把握+足止めに動くらしい。ナオちゃんはウイシアの傍にいて、敵が目視出来たら攻撃にいこうか。
UC【拳銃早打ち】と【クイックドロウ118】【援護射撃30】【早業8】で車輪を狙うぜ。銃もたーくさんあるよ!もちろん、弾丸もね!近接されないよう回避は全力の【第六感30】で!
戦闘後は、セリオンさん当て(複製体に紛れた本人を当てる)をしよう。
「パフェを食べに行く人ー!」
挙手はしなくても反応はするはず。甘党だって知ってんだぜ!
ウイシア・ジンジャーエール
複数体の敵が、敵の中に紛れて…か。
爆発をしながらという事は暗視ゴーグルが使えそうね。
同行者(f00924)(f14041)
場所は特に希望なし。
敵数は同数以下(3体以下)を希望。
戦闘を確認しオラトリオの羽と花を顕現。
〔オーラ防御〕〔激痛耐性〕〔呪詛耐性〕
〔空中戦〕で後衛ナオの傍に浮遊する。
敵の位置を把握する
1)「花通り」を装着し敵の位置把握に努める。
2)セリオンの複製体の情報を確認する。
〔第六感〕〔暗視〕〔視力〕〔聞き耳〕〔追跡〕
敵は各個撃破。
〔先制攻撃〕〔全力魔法〕
【天罰】で攻撃。
武器を向け、高命中で確実に。
〔逃げ足〕で空中に回避し近接攻撃(敵SPD攻撃)を防ぐ。
ナオとセリオンは、兄弟みたいね
セリオン・アーヴニル
この嫌な音と、何より霧の原因はアレか…
おい、二人共、さっさとあの『近所迷惑』を排除するぞ?
《共闘:ウイシア(f09322)、尾崎(f14041)》
前衛として行動。
2章で街中に散らした【境界崩壊】の複製を次々と場に集結させ、ウイシアと尾崎の攻撃補佐を担う。
味方の周囲を囲う様に、その場(2章から継続同行中)と集結させた複製の計15名を配置し不意打ちの警戒と壁に使用。
敵は本体と複製数名とで連携し、左右から車輪を狙い槍剣を思い切り突き立て動きを止める。
弾かれる等の失敗時に備え、同時進行で待機させた残りの複製に正面から銃器での『一斉射撃』を実施。
尚、二人からの補助要求があれば複製数名を貸し出して応じる。
●Detectives
「(この嫌な音と、何より霧の原因はアレか……)」
仏頂面についた、より一層無感動な黒い目の視線の先には、疾走する怪異の姿があった。石畳の上をかたかたと走るその姿は、なんとも不格好で現代で不釣り合いで、見るに耐えかねるものだった。
「遠くから爆発音が響いている。十中八九、この怪異の攻撃手段だろう」
セリオン・アーヴニル(並行世界のエトランジェ・f00924)の長外套が翻り、音を立てる。振り返った先の二人に向けられる目は相変わらず不愛想なものであるが、先ほど怪異を睥睨していたときに比べれば、幾分か和らいでいるのかとも思わせた。
「――敵が爆発をしながら戦うなら、暗視ゴーグルが使えそうね」
ウイシア・ジンジャーエール(探索者・f09322)の亜麻色の髪が揺れる。琥珀色の瞳は、サングラス型のゴーグルに遮られて外からは覗けない。彼女の言葉に、セリオンは静かに頷いた。
「……見える敵は、二体。準備はよくて?」
戦いを前にしたウイシアがふわりとほほ笑む。
「決まっている。――さっさとあの『近所迷惑』を排除するぞ?」
冗談を口にしていても、彼の表情に変化はない。
淡々と、猟兵たちが駆けだした。
●Boundary Collapsion
「――さあ、あなたたち。私、実は天使様なのよ」
白い霧の中でも、その白は目立った。輝くように綺羅やかな翼。芳しい花の香り。
天使が空を浮いていた。
「――――!」
怪異の視線が集まる。からからからからと車輪が唸る。あの、ひと際綺麗なものを壊さんと。綺麗なものを壊せば、いくらか留飲が下がるのだと。世のすべてを恨むような音を立てて、怪異が駆け出す。轟音をあげて、車輪が回る。火花を散らして、車輪が回る。
――だが。
「――悪いな、その程度では通してやれない」
霧の中。疾走する車輪の眼前に、黒い影が一つ。槍剣『オルファ』を手に取る男が飛び掛かる。刃が煌めき、《廻るパンドラ》の車軸を突く。急襲により右に大きく傾いて、たまらず怪異の体勢が崩れる。まだ終わらない。黒い影が増える。怪異の両脇に。それは、同じ『オルファ』を持っていた。
「その程度では、猟兵の相手にならない」
左右から、銃剣を突き立てる。車輪を支える金属がへし曲がる。
それを確認して、黒騎士"たち"は後ろへ大きく跳躍する。
「――オオオォ!」
閃光が広がる。セリオンがいた場所を包み込む。遅れて、轟音が響く。
《廻るパンドラ》の自爆は、石畳を焼くのみだった。
ブーツが着地の音を立てると同時に、からからと爆発で飛び散った金属片が地に落ちた。黒い瞳は無感動にそれを眺めた。
「――射撃は、使うまでもなかったか」
街路の間、裏路地に視線を向ける。ユーベルコード【境界崩壊】で生み出されたセリオン"たち"が、銃器を構えていた。それから、残る《廻るパンドラ》へと視線を戻す。
心配は――いらないだろう。わかっていた。
●fell like an angel
「――気分はまるで、神様ね」
光の柱が霧を照らす。霧の粒子がきらきらと光を反射している。
《廻るパンドラ》――怪異が急旋回の要領で回避する。きりきりと廻る車輪が、石畳との間で火花を散らす。牽制されながらも、怪異は着実に天使へと近づいていた。
「思っていたよりは、ずっと小回りが利くのね」
見直したわと他人事風に呟く。敵に眼前に迫られてもなお、ウイシアは優雅で余裕に満ちていた。当然である。なぜならば。
「――お疲れ様。それじゃあ、――消えなさい」
車輪に加速が加わって、頭上の天使へと飛び掛かった瞬間。特大の光の柱が彼を包んだ。それは、掌の上で踊るちっぽけな存在を嘲笑うような――無慈悲に満ちていた。それは、まるで。
「――オォォォォ!」
怪異が苦悶の唸りをあげる。だが、さしもの怪異も空中では思うように動けない。ユーベルコード【天罰】から、逃れられようはずがない。ゴーグルの奥で、琥珀色の瞳が僅かに細まる。天女は、怪異の顔が絶望していないことに気づいた。
正しく言うなら、気づいていた。
「――!」
それはもう一体の怪異。建物の屋根を伝って大きく跳躍。車輪に設えられた加速筒に火が灯る。爆発音を背に、ウイシアを堕とさんと飛び掛かる。この瞬間なら、彼女がいかに無慈悲な天使といえど、対応はできるまい。そんな確信に満ちて。
「――これ、見える~ぅ?」
その確信を打ち砕く声が、霧の中に響いた。一双の黒い拳銃が彼女の両手の中でくるくる回る。ぴたりと止まる。その銃口は、怪異にぴったりと向けられていた。
「ナオちゃんがさぁ。ウイシアを――」
乾いた音が、ふたつ。空になった薬莢が、弾倉から排出される音がする。
また、音がする。続けざまに。迷いはない。幾たびか連続して放たれる。
ガシャリと拳銃が無造作に地面に落ちる音がした。
ホルスターから引き抜いて、両手で"次の" 拳銃をくるりと回す。
「――ウイシアを、一人にするわけないでしょぉ?」
尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)の艶やかな長髪が揺れる。幾重もの銃撃を受けて落ちていく怪異を眺める顔は、自信と愉悦に満ちていた。
●I wanna have a dessert, you wanna have a dessert.
「もしかして、この三体だけぇ? ……ナオちゃん、最後しか出番なかったしぃ」
銃口から立ち上る硝煙を吹き消して、つまんなーいとナオは肩をすくめる。
「少なくとも、この近辺にはいないようだ。足りないなら、探索するか?」
つかつかと足音を立てて、セリオン"たち" が歩み寄る。本気とも冗談ともつかぬ口調である。総勢16名のセリオンが一堂に会する姿は、ある意味圧巻だった。
「えっわったくさん。どれが本物のセリオンさん? ――こっち? それとも、そっち? ウイシアー、わかるー?」
「……知らないわ」
目を丸くして、わたわた動く。ぱたぱた動く。顔を覗き込む。靴を見る。ナオは全く落ち着かない。それから頭上のウイシアに尋ねてみれば、彼女は素っ気ない。
「うーん……じゃあこのセリオンさんがセリオンさん!」
それでもめげない尾崎・ナオ。むーと口を尖らせて、びしっと一体を指さす。
「残念ながら、はずれだ」
その"セリオン"が口を開いて、首を振る。
「がーん」
がーんとか言っちゃう。
「答えは――」
はずれセリオンが答えを言おうとして、それを遮る凛とした声。
「答えは、そのセリオンから、時計回りに四体目」
「「「「「正解だ」」」」」
「ウイシア答え知ってんじゃん!?」
一斉に告げられる正解宣言。がーんとショックを受けるナオ。
「それで、戦闘を続けないならこの後どうするの?」
謎を解いたことを誇る様子はなく、ショックで沈むナオを慰めるわけでもなく、話題を進める。
「――はいはーい! ナオちゃん甘いものが食べたいでーす!」
パフェを食べに行く人ー!とびしっと挙手する。応じる手はない。
――だが。
「よぅし、満場一致で可決御礼! 出発進行ぉ~!」
――だが。
尾崎・ナオは見逃さなかった。
その場にいた、"自分以外の17人" の眉が少しだけ動いていたことを。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリン・フェアフィールド
【NJM】
空の旅楽しかったー!
爆走してたの茜さん達だったんだね、やっほー!
もースズロクくんは体力ないなあ
車輪の形のウォーマシン…?変なオブリビオン!
茜さん変身するの!?よーしわたしも!
【ビルドロボット】でその辺に停まってる…あれだ!赤いバス!
後でちゃんと返すから!
てことで合体!グロウガール・ロンドンレッド参・上~!
この街の霧は、わたし達が晴らしてみせる!(決めポ
爆発から男性陣を庇いつつ
『プロミネンス』のジェット噴射でホバーしてからのドロップキック!
わー狼だ!ライオンだー!?ホンモノだ…強そう!
こんなに仲間がいたら負ける気がしない…!
最後は強く踏み込んで渾身のボディブロー!
うん、行こう!茜さん!
三寸釘・スズロク
【NJM】
やあ…二人共久しぶり…もう逢えないかと思った…
うん…見事にジャスティスでスリリングな走りっぷりだったぜ…
ちょっと休んでていい??
合体はロマン。ロマンなんだよ。
パンドラもある種のロマンから生まれたんだ。多分
…もうコレお嬢さん達だけで良いんじゃないかな?
言いつつ俺も変身バンク中の[時間稼ぎ]を【氷海に棲む蛇の牙】で
待って待って何だこのメロディ。
ロマンって…何だっけ…
つーか気づいたらロボと猛獣大戦争になってるじゃねーか!ナニコレェ!
やっぱ俺いなくて大丈夫だよネ??
色々巻き込まれないようにもう物陰に隠れて見てるわ…
あっ猫ちゃん。カワイイ。梟もいる。カワイイ。
うん皆怪我しないようにな…頑張れ…
御堂・茜
【NJM】
到着です!
我ながら見事な安全運転でした!
さあ、共に悪を討ちましょうスズロク様!
…スズロク様?顔色が優れませんわ!
悪のせいですね!
か弱い殿方を爆発からお守りすべく
御堂はUCでジャスティスミドウカイザーに変身します!
決めポーズも忘れずに!
変・身!
まあ、アリン様も変身を!?
女子にとっても合体変形は浪漫ですわ!
ネーミングも重要でございます
大人しくお縄につきなさいませ!
爆風は体を張って受けましょう
パワーを活かし敵を空中に投げたり
敵同士をぶつけたり…
あら?殿方お二人は?
まあ良いでしょう!
最後は刀を抜き合体技で止めです!
行きますよアリン様!
【気合い】一発、唐竹割りで一刀両断!
これにて一件落着です!
鵜飼・章
【NJM】
アリンさんと一緒に地上組へ合流
あのバイクやっぱり御堂さんか…
三寸釘さん大丈夫?
僕、か弱いから爆発に巻き込まれたら大変だ
お言葉に甘えて御堂さんを盾にする
合体ってロマン…?
僕カブトムシの方が好き…
あまりピンと来ないけど変身が邪魔されないよう
UC【無神論】でBGMをつけてあげよう
三寸釘さんも僕の笛の腕前に驚いているね
これだけ退屈な演奏ができるのもある意味凄いんだよ?
魔導書から飛び出すのは
アリンさんの好きな狼とライオン
三寸釘さんの好きな猫と梟
鴉達も一緒に行っておいで
皆で連携して攻撃だ
ロンドン旅行で怪獣大戦争が見られるなんて…
ロマンが少し解った気がしたよ
それはそうと僕も隠れて応援する
皆頑張れー
●We meet at the end of the JUSTICE journey.
「――到着です!」
キキィ――と甲高い音を立てて、バイクが横薙ぎになりかけながら止まる。
我ながら見事な安全運転でした!とばかりに頷きながら、威勢よくヘルメットを外すと、ふわふわの茶髪と、少しだけ汗ばんだ "におい" が広がる。もっとも、それを最も近くで感じられるはずの"彼"は、だいぶだいぶグロッキーだった。
「さあ、共に悪を討ちましょうスズロク様! ……スズロク様?」
御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)姫様が振り向いた先には停止したバイクにしがみついたまま微動だにしない男――三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)の姿があった。
「まあ、大変ですわ。顔色が優れませんわ! スズロク様! スズロク様!」
しっかりなさって!と、白い手が肩を掴んでぶんぶん振る。
▼ スズロクの三半規管に対する効果はばつぐんだ!
真面目な話をしよう。平衡機能を司る機能を持つ三半規管は、体にかかる回転加速度を感知する器官である。より速度の大きい新幹線より、ジェットコースターを怖いと人間が感じるのは、ジェットコースターが回転加速度の変調を上手に利用して三半規管を刺激するからである。そして、心の底から心配してスズロクを悪から救おうと――正気に戻そうとする茜姫様の行動は、まったくジェットコースターのようなものだった。
スズロクの忍耐は称賛に値する。せめて、女の子の前で戻すわけにはいかないからと。ただひたすらに耐える。耐えれば、何かが変わるかもしれないと信じて。あっやばいでもだいぶもう限界がもう無理吐―――
「やっほー! やっほやっほー!」
能天気な救いの声が、霧の空から降ってきた。
「爆走してたの茜さん達だったんだね、やっほー!」
隼が羽ばたくたびに、霧が僅かに晴れた。黒髪の少年と、その背でぶんぶん手を振ってアピールするピンク髪。もちろん、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)とアリン・フェアフィールド(Glow Girl・f06291)である。
「……まあ、アリン様! やっほやっほー、です!!」
スズロクの肩から白い指が離れ、大きく手を振り返す。助かった――と、未だ三章で一言も言葉を発していないスズロクの顔が輝いたことは言うまでもない。
「爆走だなんてそんな……安全運転でしたよ?」
「あはは、嘘だー。結構飛ばしてたって!」
「ふふふ、バレちゃいました? 運転、ついつい楽しくって!」
「わかるー! スピード出ると、ついつい楽しくなっちゃうんだよねー」
「「ねー」」
きゃっきゃと話に花が咲く。仲良しさんである。
「(あのバイク、やっぱり御堂さんだったか……)」
章が、同情の視線をスズロクに向ける。悪い予感は、確かに当たっていた。思いを口にはしない。できないが正しいかもしれない。いつだって、強いのは女子である。
せめてできることを。章はスズロクの広い背を優しく撫でだした。
「もースズロクくんは体力ないなあ」
そんなスズロクに気づいて、アリンが歩み寄る。
勇気と体力を振り絞り、スズロクが起き上がって、震えながらも口を開く。
「やあ……二人共久しぶり……もう逢えないかと思った……」
「あははー、大げさだなー。所詮は探索と、怪異だよー? ほら、グリモア猟兵のベモリゼさんも、大した敵じゃないって言ってたんだしさー」
スズロクなりの冗談ととらえたのか、アリンはからからと笑う。
「そうですよ。スズロク様のおかげで、正義の探索行も《無事》完了したのです」
同調するように、茜も頷く。
「うん……見事にジャスティスでスリリングな走りっぷりだったぜ……」
スズロクは反論を諦めた。
「まあ、スズロク様ったら。これは……悪のせいですね!」
握りこぶしを作って、闘志に燃える茜姫。残念ながら、あなたのせいです。
「許せないね、悪! 倒すっきゃないね、悪!」
うんうんと頷くアリン。桃色のおさげがゆさゆさ揺れる。
「……休んでていい?」
スズロクが呟くと、章が無言で頷いた。
●CHANGE ROBOTS!!!!!!!
「道中、あの悪の兵器は爆発していましたッ!」
それはそうと。彼女たちはやはり猟兵である。
「爆発か……。僕、か弱いから爆発に巻き込まれたら大変だ」
長身の章が、なんともおどけたように言葉を口にする。
「まあ、それはいけませんね。か弱い殿方を爆発からお守りしなくてはなりませんッ!」
茜姫様が立ち上がる。すでに正義ゲージはMAX振り切れているようだった。
‐―びしびしっ!
掌を前に突き出し、翻す。ぐぐぐと弧を描くように腕を動かして、掌を握りしめる。グググと正義の音がする。悪を潰せと主張する。そのまま胸の前に握りこぶしが到達して――。
「御用でございます! 起動せよ、ジャスティスミドウカイザー!!」
ててーててーててー
どこかから音が聞こえる。どこから生まれるその気合。どこから出てきたその質量。茜の手にする大太刀――《ジャスティス・ミドウセイバー》が、持ち主の掛け声に合わせて、展開する。春色の着物――《ジャスティスミドウアーマー》が少しはだけて、ちら見えする魅力的な肢体、艶めかしい脚――ほんの一瞬だけ見えたそれを、《ジャスティス・ミドウセイバー》が覆う。がしん、がしん。
ててーてれれー
びぃじぃえむは終わらない。ジャスティスミドウ・アイを補強するように、大太刀の柄が兜のように茜姫さまの頭を覆う。拳を高らかに突き上げる。脇を締める。大きく踏ん張る。名馬サンセット・ジャスティスがいつの間にか馬に戻って、茜の傍に駆けよれば。
「変・身! ジャスティスミドウカイザー、ここに見参ですッ!」
変身バンク、以上になります。
「茜さん変身するの!? よーしわたしも! ええと……――」
それを見て、負けじと笑うのがもう一人。誰かなんて、言うまでもない。もちろん、アリンである。きょろきょろあたりを見回して、何かを探している。
「――……あれだ! 赤いバス!」
乗客も運転手も逃げてしまったらしい無人の――不幸な――、ロンドン・バスに目を留める。走り寄る。とんとんと叩くと、金属の軽い音がした。
「――後でちゃんと返すから! てことで合体!」
ごめんねと謝って、ユーベルコードを発動する。
てれってててー
ロンドンバスの二階部分と一階部分が分離する。車体の前部が折れるように曲がって、まるで胴当てのように前面へ突き出る。前輪タイヤがついた側部が、腕のように広がる。後側部が脚のように細く展開する。後輪タイヤが一番先端の、出っ張った脚を補強して、まるでローラースケートのようにくるくる回る。
中央には穴。そこへ飛び移るのは、もちろんアリン。スクラップで覆った腕が、器用にはまる。当然である、これはアリンの専用機。乗れないはずがないのだ。
てんてっててー
最後に大見栄切るように、ぐるりと手を回せば。
「――グロウガール・ロンドンレッド参・上~!」
赤いロボット・ガールが大地に立って。
「この街の霧は、わたし達が晴らしてみせる!」
「大人しくお縄につきなさいませ!」
茜とアリンは横並び、びしりと決めポーズ。お約束は、外さない。
「………もうコレお嬢さん達だけで良いんじゃないかな?」
それを見て、呆然と呟くスズロク。傍らに向けられた目が、丸くなる。
「……章さん、なにやってンの?」
「いや、合体変身が邪魔されないように――BGM」
「BGM」
「合体シーンは合体がメイン。それを邪魔しないよう、これだけ退屈な演奏ができるのもある意味凄いんだよ?」
「あ、邪魔ってそっちの話なんだ……」
ロマンとはなんだろう。スズロクは、その意味を深く考えるようになっていた。
だが少なくとも、当人たちは真剣だった。
●THE GREAT WAR
「行きますよッ、アリン様!」
「うん、茜さん!」
二体のロボットが回転する怪異にとびかかる。
茜の剛腕が、一体の《廻るパンドラ》を持ち上げて、地面に叩きつける。続けざまに別の怪異を掴んで、先ほど地面に打ち据えた怪異へと打ち据える。直後に跳躍。爆発する怪異たちを背景に、ジャスティスミドウカイザーは仁王立ち。
だが、戦いはまだ終わらないッ!
一体を打ち倒した茜の背へ、《廻るパンドラ》が迫る。今すぐ振り向いたとしても、対応は間に合わない。このまま正義の少女は爆発でピンチに陥るのか!?
いや、そんなことはない。ジャスティスミドウカイザーは独りではないのだ!
救いは空にいる!
赤い脚に備え付けたジェット噴射で高らかに飛び上がって、ホバー滞空からの急降下ロンドンバス・ドロップキック! 茜の背に迫っていた《廻るパンドラ》の車軸が、ぐしゃりと潰れてへし曲がる。
強い! 強いぞ女の子たち!
しかし怪異も負けていない!
「あ、あれは……!?」
「まさか、悪のお決まり、合体と巨大化ですか!?」
驚愕するジャスティスミドウカイザーとグロウガール・ロンドンレッド。
視線の先には、二人の背丈の二倍はあるだろう巨大な《廻るパンドラ》。世界観とか、他の猟兵たちの反応とか、ユーベルコードどうなってんのとか、このあと復興どうすんのとか、そういう細かいところは考えてはいけません。いいね?
《巨大パンドラ》が、ゆっくりと進みだす。
どこかから聞こえる《Scotland Brave》。
誰が進軍を阻めるというのだ?
「くっ……正義は悪に屈してはなりません。ですがッ!!」
「でも、あんなのどうやって……!」
窮地に立たされる正義の使者たち。あれを放置すれば、大勢の死傷者が出る。
だが、正義は孤ならず――必ず隣にいるのだ。
誰が?
――もちろん、仲間が。
「あ、あれは――!?」
ジャスティスミドウカイザーが、その影を認めて、驚愕の声をあげる。二人の後ろから、幾体もの動物たちが駆けて行く。アリンの好きな狼とライオンが。スズロクの好きな猫と梟が。章の象徴ともいえる鴉が。正義のロボットたちは孤独ではないのだと行動で示す。章の《自然数の集合》から呼び出された動物たちが進んでいく。
「こんなに仲間がいたら負ける気がしない……!」
希望に満ちた声で、青い瞳がきらきらと輝かせて、グロウガール・ロンドンレッドが傍らのジャスティスミドウカイザーを見つめる。寸分たがわず、視線は交差する。
「行きますよ、アリン様!」
「うん、行こう! 茜さん!」
グロウガール・ロンドンレッドが強く踏み込んで渾身のボディブロー! 巨大パンドラの動きが止まる。グロウガール・ロンドンレッドが後ろに飛び退くと同時に、天空高くにはジャスティス・ミドウセイバー(大)を振るうジャスティスミドウカイザーの姿が!
「これにて一件落着です!」
巨大パンドラの太い車軸に、斜め真っ二つに罅が入っていた。
振り下ろしていた刀を、ジャスティスミドウカイザーが収める。
車軸が大きくずれていく。ずしり。地面に崩れる。
爆音が響く。爆炎を背に、正義の使者はしっかと立っていた。
「「正義は、必ず――勝つのですッ!」」
いつの間にか傍に駆け寄っていたグロウガール・ロンドンレッド。ジャスティスミドウカイザーとそろって、二人でばっちり決めポーズ。傍には、狼にライオンに猫に梟に鴉に――正義の仲間の動物たちが勢ぞろい。
「もうあの子たちだけでいいんじゃないかな」
スズロクの引き攣った笑いだけが、霧の中に響いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
【ミルフィ・クロックラヴィット(f02229)】
と参加
アドリブや他の方との絡みや連携も歓迎です
これが
『怪異』の正体…
昔の古い車輪にもみえます…
これ以上
街に被害は出させません!
引き続き
ミルフィの
ラビィエクステンダーの
後部座席に乗せて貰い
廻るパンドラさん達と戦闘
敵が複数いた場合も想定して
囲まれない様に
自身の剣
『ヴォーパルソード』に
【破魔】を込め
剣での【衝撃波】や
剣の光焔の【誘導弾】等の
遠距離攻撃をメインに
組み合わせて
【2回攻撃】で時間差攻撃や
衝撃波で【なぎ払い】等で
攻撃
敵の攻撃は
【第六感】【見切り】
【オーラ防御】等で
回避・防御
もしミルフィや味方が
負傷時は
UCで回復
『ミルフィ!?今、回復します…!』
ミルフィ・クロックラヴィット
【アリス・フェアリィハート(f01939)】
姫様と参加
アドリブや他の方との絡みや連携等も歓迎
車輪の様な音がする敵と
思えば
車輪そのものとは…
ともあれ
街にこれ以上の
被害は出させませんわ!
引き続き
ラビィエクステンダーの
後部座席に
アリス姫様を乗せ
機動性を活かして戦闘
敵が複数居た時も想定し
囲まれない様に
『アリス姫様、振り落とされない様に…!』
自身のアームドフォート
『アームドクロックワークス』
をビークルに合体させ砲撃戦仕様に
バルカンやミサイルでの
【一斉発射】や【誘導弾】
砲撃での【吹き飛ばし】等で
攻撃
纏めて攻撃出来そうなら
UC使用
(一般人等巻き込まない様に)
敵の攻撃は
【見切り】【操縦】【運転】等で回避
●Alice in the battle field
「これが、『怪異』の正体……」
ごくりと唾を飲み込む。震えた手をぎゅっと握りしめる。
「昔の古い車輪にもみえます……」
アリス・フェアリィハート(猟兵の国のアリス・f01939)は、それでもその恐れを飲み込んで、並走するように走る怪異をじっと観察する。けたけたと笑うように音を立てる《廻るパンドラ》の歪んだ笑顔と視線が交差する。
「車輪の様な音がする敵と思えば車輪そのものとは……」
彼女なりに、姫様を励ます。 ミルフィ・クロックラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・f02229)は運転しながらも、赤い瞳を主人へと向ける。
「ともあれ、これ以上、街に被害は出させませんわ!」
「はい、出させません!」
決意を胸に、二人は《ラビィエクステンダー》のホバーを吹かせた。
「いきますわ! アームドクロックワークス!」
ミルフィが声をかけ、《ラビィエクステンダー》の武装を展開する。アームドフォートを合体させた、砲撃戦仕様の形態をとる。弾をばらまき、ミサイルを撃ち、高速で移動する《廻るパンドラ》を追う。
「ミルフィ、接近してください! ――私が仕留めます!」
凛とした声が背中から聞こえて、ミルフィはアクセルを踏む。
その背では、アリスが白銀に輝く剣――『ヴォーパルソード』を構えていた。
「かしこまりました。アリス姫様、振り落とされない様に……!」
牽制射撃を加えながら、《ラビィエクステンダー》が走る。ピンクのおさげ髪が、風を受けて揺れる。ミサイルが《廻るパンドラ》を狙うも、外れる。着弾した箇所の石畳が焼け焦げ、禿げる。だが、着実に二人の猟兵が迫っていく。
「今です。お覚悟――!」
アリスが剣を振るうと、怪異は真っ二つ。
爆炎が広がる。二人はそのまま駆けて行く。
「やりましたね、アリス姫様♪」
急停車して、ミルフィがアリスに微笑む。少しだけ、その顔が焦げていた。
「……ミルフィ!? 怪我しているじゃありませんか。今、回復します……!」
それを見て、慌てるアリス。小さな優しい歌声が響く。
「もう、無理しないでくださいね」
「えへへ、姫様。ありがとうございます♪」
霧の中でも、柔らかい空間が広がっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイラ・エインズワース
祇条サン(f02067)と
エ、アノ、エ……アノ、エ、何
パン……し、知らない兵器ダヨ
たしかに、トンチキな見た目ダネ
大丈夫、まだエスコートしてくれるんデショ?
ナンテ思ったケド今回はこの子で行くヨ
上空カラ、軌跡や動きを読んで竜の魔術を【高速詠唱】で代理詠唱
【全力魔法】の魔力を籠めた武具を召喚して、射出して攻撃
祇条サンが攻撃した側の車輪を集中砲火シテ、【呪詛】をかけてバランスを崩させるヨ
敵の爆発音に合わせて竜に咆哮を上げさせて妨害ヲ
路地を覆うように、上から雷撃ブレスを当てようカナ
祇条サンが飛んだ時は足場代わりに滑り込むヨ
迷惑なんかじゃないヨ
頼りにしてるカラ、サ!
うん、共犯者だもんネ
アドリブ歓迎ダヨ
祇条・結月
レイラ(f00284)と
これってパンジャンドラム……
あー……UDCアースのトンチキな兵器
けどこの数が走り回ってるのは普通に怖いな
自走爆弾みたいなものだから気をつけて、レイラ
レイラと連携できる距離を保って戦う
銀の鍵の力で加速して攪乱する風に立ち回り
【敵を盾にする】ように動いて敵の行動を制限していって、
抜けてきた相手は光の刃で車輪を削って迎撃
状況に応じて苦無も混ぜて。機構に噛ませれば少しくらいは動きを抑えれるだろうし、細かいところを狙うのは苦手じゃないし(【スナイパー】【投擲】)
大丈夫、無茶はしない
君に迷惑をかけたくないからさ
……あは、そうだね
うん、僕も頼りにしてる。
よろしく、ね。共犯者さん
●Puzzled girl
「エ、アノ、エ……アノ、エ、何」
呆然とした声が、霧の中で響いた。魔術障壁の先では、まだきな臭い爆炎が残っている。レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は明らかに困惑していた。藤色のカンテラの炎までもが、困惑したようにゆらゆらと揺れている。
「これってパンジャンドラ……」
それ以上いけない。げんなりした顔が、その傍らにはある。そりゃあそうである。回転して突撃して、自爆しつつ敵の散兵壕を破壊する兵器。膠着した状況を打開するために設計された自爆兵器。そんなものが、白昼のロンドンを走っている様子は、シュール以外の何物でもない。祇条・結月(キーメイカー・f02067)は、衝撃で手が緩んでいたことに気づいて、銀の鍵剣を握り直す。
「パン……し、知らない兵器ダヨ」
普通の人は知りません。むしろ結月が知っていることに驚くべきだろう。
「あー……UDCアースのトンチキな兵器」
結月がその概略を説明する。やれ開発者のネビなんとかさんがどうとか。時速100km目標だとか。ジャイロスコープがなくて姿勢制御が不全だとか。Operation Fortitudeとthe longest dayに話が至りそうになって、結月は慌てて説明を締めた。最近は歴女などとは話題になるが、男子の歴史蘊蓄を好む女の子は圧倒的少数派だし、何より敵の前だった。
「……たしかに、トンチキな見た目ダネ」
それを察してか、あるいはそうでないか、レイラはゆっくりと頷いてみせる。
「色々説明したけど、つまりは自走爆弾みたいなものだから気をつけて、レイラ」
赤い瞳がまばたきをして、結月は小さくはにかむ。
「――大丈夫、まだエスコートしてくれるんデショ?」
その様子を見て目を細めて、心配ないヨとはにかみ返す。
藤色の少女のその笑顔を前に、少年は小さく頷いた。
●I count corrupted dreams...
「(複数体の相手、幸か不幸か知らないけど、利用するしかないな)」
少年は銀の鍵剣を振るう。赤い宝石飾りがきらりと輝く。金属製の車輪と刃がぶつかって火花を散らすなか、結月は大きく跳躍する。身を翻し、近くの壁に着地する。女神の細工がほどこされた彫刻を壊さないように避けて、再び跳ねる。その動きは、さながら風のように機敏だった。
「この剣が斬る先は――どこへ行くかわからない」
白い空間で、鍵剣が光る。時空をも切り裂く刃が、《廻るパンドラ》の車輪を切り裂く。幾分か《消失》しても、回転は止まらない。廻り続ける。からからからと音が鳴る。石畳を斬り付ける、甲高い音が霧の中で響く。
「(――別方向からも!――)」
刹那、背後からも音が響いて咄嗟に跳躍する。
ガキン、ガリガリと激しい金属音がする。結月が跳躍した先は、先ほど切りつけた《パンドラ》の軌道の向こう側。別の怪異を盾にして、怪異を防ぐ器用さは、猟兵かくあるべしの精華と言える。とはいえこのまま戦い続ければ、いつか《パンドラ》に追いつかれるのは必定。快速の車輪を近づかずに仕留める手段を持っていない猟兵たちにとっては。だが、結月は独りではない。とびっきりの頼もしくて、しかも美人の仲間がいる。だから、彼は時間を稼ぐだけでよかった。
「潰えた夢を数えヨウ――」
赤い煉瓦造りの屋根の上で、少女は謳う。赤い目は閉じられて見えない。霧で包まれた空のどこかに訴えかけるように、朗々と歌う。握りしめるのは、藤の葉が描かれた紋章入りのエンブレム。エインズワースの魔術師が、その在り方を示さんと声を響かせる。
「強さ故の慢心、喪失への恐怖――」
眼下には広場。普段は騒がしいはずの空間に、立っている人間は一人。大勢の怪異を相手取って、自分のために時間を稼いでくれている。
慢心はできない。彼がいなければ、自分に謡う時間は与えられなかった。
恐怖はない。彼がいるのだから、恐怖する必要はなかった。
「過去の幻だとしても――――――」
詠うのは、死してなお宝物に執着し続けた魔竜の見た夢。
レイラのカンテラに灯った炎が、ひときわ強く燃え盛る。
「――――――今再び夢は舞い戻る」
吼声が轟く。車輪の回転音は飲み込まれて、聞こえない。魔術師の呼び掛けに応えた黒き魔竜が広場の上空で大きく羽ばたく。
「――――祇条サンを助けテ来て」
命令は単純。それで全てを飲み込んで、魔竜は大きく息を吸う。
上空の様子を感じ取った結月が、とっさに大きく跳ねる。まるでネコ科の動物のように、《廻るパンドラ》から距離を取る必要性を感じ取った。
「オォオォオォォオォォオオオオオオオオオ!」
路地を、広場を、全てを覆うような雷霆の息。パンドラの全身を雷撃が伝う。
焼け焦げるような臭い。金属が熱で爛れるような臭い。
黒い煙があがるなか、結月の足元に黒い竜が滑り込む。
「……っと、ありがと」
魔竜は背に少年を乗せたまま、主人のいる場所へと飛来する。
「無茶しちゃダメだヨ」
それを見て、赤い瞳が窘めるように歪んだ。心の内は、見た目からはわからない。
「大丈夫、無茶はしない。君に迷惑をかけたくないからさ」
小さく首を振る。嘘は言っていないつもりだった。
「迷惑なんかじゃないヨ。頼りにしてるカラ、サ!」
明るく笑い、男の子の柔弱を許さない。紫髪のおさげがゆるりと揺れる。
「……あは、そうだね。うん、僕も頼りにしてる」
少年はその意味を理解する。だからこそ、噛みしめるように、言葉を続ける。
「これからもよろしく、ね。共犯者さん」
「うん、……共犯者だもんネ」
赤い瞳が見つめ合う。白い霧が、少しずつ晴れて行った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【付喪】
アドリブ、連携◎
ニコの推理当たってンじゃねェか!でも嬉しくねェな
何?爆雷?(言い淀んでた理由はコレか
ン、気ィ引き締めるわ
いざって時は…お前が何とかしてくれっだろ?(なァ、我が友
逆もまた然りだぜ(グラサン外し玄夜叉構え不敵に笑う
【トリニティ・エンハンス】使用
防御力重視
ニコの攻撃で複数の敵を一網打尽出来る様、挑発・存在感で一カ所に固めて誘導
霧で視界が悪いので聞き耳で敵の金属音も確認
敵の攻撃は剣で武器受けか外套でかばう
爆発を誘発させ属性攻撃・2回攻撃で剣に水宿し、爆風の中を一直線に掛けて激流の如き一撃
ニコが危うい時は咄嗟の一撃で回し蹴りし一旦距離取る
全くだぜ
つーワケでまた服屋行くぞ(目が爛々
ニコ・ベルクシュタイン
【付喪】
アドリブ歓迎
此処はイギリス、まさかとは思ったが
本当にかの封印されし古代兵器が元凶だったとは…!
クロウ、ゆめゆめ油断無きよう
連中の正体は…自走式の爆雷にて
複数の個体が襲い掛かってくる事を想定し
「範囲攻撃」が可能な【花冠の幻】で応戦
なるべく多くの敵を巻き込めるような位置取りを狙い
可能な限り一気に殲滅、其処まで行かずともダメージを与えたい
俺の読みが間違っていなければ、敵の挙動は安定していない筈
挟撃されるフリをしてギリギリで躱し「敵を盾にする」、
クロウが不意を突かれそうならば「かばう」で援護に行くなど
視界が悪い状況でも常に最善を尽くし立ち回ろう
…しかし、折角見立てて貰った衣装が台無しだな…
●laugh and sigh
「此処はイギリス、まさかとは思ったが。本当にかの封印されし古代兵器が元凶だったとは……!」
神経質そうな仕草で、眼鏡の位置を直す。ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)は声を震わせて、眼前の怪異の姿を見る。からからと車輪を走らせる姿は、歪そのものだった。
「クロウ、ゆめゆめ油断無きよう。連中の正体は……自走式の爆雷だ」
そして告げる。彼らの元となった兵器の詳細を。
「何? 爆雷? ……ン、気ィ引き締めるわ」
言い淀んでた理由はコレかと内心納得しながら、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は前髪をがさつに掻き上げる。いかに猟兵といえど、生身で爆発を受けて無傷ではいられない。対策は必須だった。まアでもよと前置いて、クロウは言葉を続ける。
「いざって時は……お前が何とかしてくれっだろ?」
なァ我が友よと肩を叩く。ばしばしと盛大に叩くから、折角直したばかりの眼鏡がズレて、ニコが恨みがましい目を向ける。それを見て、風雲児たる青年が一層愉快そうに笑うものだから、懐中時計のヤドリガミは深々とため息をつく。
「――逆もまた然りだぜ」
返答がなくとも答えは知っているのだと言わんばかりに、豪快に不敵に笑って見せる。サングラスを外したクロウの両目は、きらきらと子供のように輝いていた。
●Our Promise
『――夢は虹色、――現は鈍色』
周囲は金属音で満ちている。きゅらきゅらと鳴る無数の回転音。十分に引き付けた状態といえば聞こえがいいが、一歩間違えれば絶体絶命の状況で、ニコという猟兵は泰然としていた。
その傍らには、玄夜叉を構えたクロウ。こちらも平然としたものである。勝利を微塵にも疑わない男性的な笑みを浮かべて、《パンドラ》の回転音はまるで子守歌とでも言わんばかりの表情だ。
『――奇跡の花を此処に紡がん』
褐色の猟兵が詠唱を終えると、あたりは色とりどりの花びらで包まれる。白い霧で覆われた空間に、赤、青、橙……七色の花弁が二人を守るように広がって、彼らを囲んでいた怪異をも包んでいく。
「……へぇ、綺麗なもんじゃねェか」
まるで幻想的な様子を、クロウは汗ひとつかかずに眺めていた。堅物然としたニコから、このような煌びやかな技が繰り出されたという事実を、どこか面白がっているようだった。
「――ただの技だ。それより、残存の敵が来るぞ」
「……へっ、問題ねェ」
せめてもの反論とばかりにニコが口を尖らせる。
それを構わず、クロウは不敵に笑うと、花びらを受けて広がる爆風を恐れることもなく、一直線に駆けだした。
「その程度の数で、この杜鬼・クロウ様を倒せると思うなよ!」
玄夜叉が振るわれる。竜巻のような横薙ぎに《パンドラ》が大きく体勢を崩す。
「クロウ、案の定だ。奴ら、挙動が安定していない!」
ひらりと身を躱す。寸前で躱されて、行先を失った二体の怪異が激突する。ニコはその音と同時に跳躍しながら、クロウに声をかけていた。
「――つまり!?」
横蹴りで、別の怪異を吹き飛ばす。ガシャリと大きな音を立てて、壁に激突したパンドラの構造が崩れる。
「倒せる相手ということだ!」
ニコの繰り出す双剣の炎が、怪異の車軸を焼き貫く。
「おウ、それなら、――最初から知ってらァよ! 俺たち二人ならな!」
黒魔剣に水の魔力を宿し、その圧を持って金属を一刀のもとに切り伏せる。爆風が広がる中、黒い外套が翻った。
「――そう言うと思ったよ」
杜鬼・クロウは全く健在であることを、ニコ・ベルクシュタインは当然のものとして受け取っていた。めらめらと燃えるパンドラを背にして、猟兵たちには余裕があった。
「……しかし、折角見立てて貰った衣装が台無しだな」
焼け焦げた服のススを払って、少しだけつまらなそうにニコが呟く。彼なりの冗談だったのかもしれない。
「全くだぜ。……つーワケでまた服屋行くぞ」
それを聞いて、爛々と目を輝かせるクロウ。
「まだ戦闘は終わっていない」
「もうすぐ終わる」
「だが……」
「行くぞ」
「…………」
「行くからな」
「……わかった」
しぶしぶと、頷くニコ。クロウの顔が輝く。
「うし、そしたら、いっちょ! とっとと本気で片づけるとするか!」
「それなら最初から本気を出せ!」
言葉の綾だよと笑うクロウを、前にニコは再びため息をつく。
視界の端には、爆発音を聞きつけて走り寄って来る怪異の群れが見える。
だが、不思議なことに。負ける予感は一切しなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユア・アラマート
灯(f00069)と
ようやく捕らえたな
どうせならもう少しデートを楽しみたいんだ。さっさと片付けて異常を正そう
当たれば痛そうだが…当たりさえしなければ、だな
【全力魔法】【属性攻撃】で風の魔力を纏い速度を強化
【ダッシュ】で高速移動を続け、敵の接近を許さず。また攻撃の的を絞らせないように撹乱しよう
灯の攻撃で動きが封じられた隙を狙って接近。【暗殺】【先制攻撃】で死角を狙って素早く斬りつける
鉄でできているからって油断しないほうが良い。私の刃の前では紙同然だ
まったく、所構わず爆破しようとするのはよくない。景観が損なわれる
終わったらどうする灯、さっきの店に戻ってもいいし。別の店でも構わないよ
もう少し遊ぼうか
皐月・灯
ユア(f00261)と
霧まみれのデートってのも締まらねーしな。
その垂れ流し、塞いでやるぜ。
爆発音を聞いて戦闘力増強……強化のトリガーは「爆発音」だ。
その発生を防げばいい。
爆発音を発生させ得るものは……ユアを狙って繰り出される、連中の至近攻撃!
……そこまで読めりゃ後は単純だ。
オレがユアを守ればいい。
【ダッシュ】【スライディング】で撹乱し、
連中がユアの30㎝以内に近づく直前、その隙を【見切って】《轟ク雷眼》でブチ砕くんだ。
砕けなくても、効果で動きを止められる……十分だろ、お前なら?
あのキュラキュラ言う音もうるせーったらねーな、ったく。
ん……そうだな。その……折角来たんだし、もう何軒か回ろうぜ。
●
「ようやく捕らえたな」
白い霧の奥で、彼女は妖艶にほほ笑む。その様子を見れば、狐もまた肉食獣――地上の狩人なのだと誰もが認識するに違いない。ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)の銀の髪が、小さな風を受けてゆっくりと揺れた。
「どうせならもう少しデートを楽しみたいんだ。さっさと片付けて異常を正そう」
それから少しだけ甘えるように、傍らの少年を見る。
「霧まみれのデートってのも締まらねーしな。……その垂れ流し、塞いでやるぜ」
その言葉を真正面から受け止めたかはともかく、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)は冷静なままに頷いた。手の甲が疼く。魔術回路に懇々と魔力が通うのを感じている。すなわち、臨戦態勢だ。
●
「さっきから見てる限り、ある個体が爆発すると他の個体が強化されている」
戦闘開始から、既に十数分ほど経過していた。風を纏い、まるで空中を舞うかのようにして、ユアは《廻るパンドラ》を翻弄している。いかに素早さ自慢の猟兵とはいえ、敵の爆発自体を防げるわけではない。上手く回避したところで、怪異が爆発したいと思えば爆発してしまうのだから、それは当然だった。とはいえ怪我はない。傷はない。お気に入りのデート服に焦げた臭いが着いたことだけが、だいぶだいぶ不満だった。
「……強化のトリガーは『爆発音』だ。その発生を防げばいい」
観察するように見開かれていた赤と青の瞳が、ぱちくりと瞬きをする。
「言うのは簡単だぞ」
「――任せろ」
ユアの抗議に、ただ一言口にする。詳細を説明するのは、なんとなく気が引けて。
「そうか。わかった」
「いいのか?」
「任せろと言うんだろう? 信じるさ」
呆気なく頷いたユアに、少しだけ意外な目を向ける。自分だったら、こんな風に人を信じられるのだろうか――と灯は自問する。その考えを振り払うように首を振り、静かに頷いて見せた。
銀の妖狐が跳躍し、魔術師が影に潜む。それは、戦闘再開の合図。
「(爆発音を発生させ得るものは……ユアを狙って繰り出される、連中の至近攻撃!)」
眼前のユアが、敵の《パンドラ》の突撃を躱すのが見える。まるで尾のようにたなびく挑発が、霧の中、光る街灯に照らされてきらきらと輝くのが見える。細く長い腕が、まるで空中を泳ぐようにしなやかに伸びるのが見える。だが、灯にそれに見惚れるだけの贅沢は与えられない。彼には、やるべきことがあった。
「(……そこまで読めりゃ後は単純だ)」
ユアが着地する瞬間を狙って、《廻るパンドラ》が再加速する。怪異とて、ただやられるわけにはいかない。確実に猟兵と相打ちにできる瞬間を狙う。加速する車輪。石畳の上を回転して、火花が散る。
着地の瞬間、ユアは動かない。緑色の瞳が眼前に迫る車輪を見る。今から跳躍しても、回避は間に合わない。車軸に描かれた歪んだ笑顔が、一層醜いものに変わる。
彼ら怪異の不幸があるとすれば、決まっている。
彼女には、とびっきりのボディーガードがいた。
「――オレがユアを守ればいい」
駆ける。アミュレットが揺れる。魔術強化による、怪異の軌道を完全に読み切った疾走。全身の魔術回路が焼けるように熱く、熱く、燃え盛るように痛む。
『アザレア・プロトコル3番――《轟ク雷眼》!!』
ガントレット越しに、《廻るパンドラ》――怪異を殴る。轟雷が弾かれたように広がり、勝利を確信していた怪異を包む。傷はつけど、砕けはしない。しかし、大きな力に包まれたように、パンドラの回転が、一瞬止まる。しかし、それで。
「……十分だろ、お前なら?」
「――もちろん、十分さ」
銀の獣は、その隙を逃さない。優美な微笑。翡翠色が、一閃煌めく。
「鉄でできているからって油断しないほうが良い。私の刃の前では紙同然だ」
ダガーが振り下ろされると同時に、《廻るパンドラ》の脆弱な車輪が崩れ落ちる。まるで切り刻まれた紙きれのように、ぱらぱらと。何もかも、納得していない間抜けな顔のまま、《廻るパンドラ》が崩れ伏した。
「終わったらどうする灯?」
ズボンをはたいて、土を落とす灯にユアが一息つくように尋ねる。
「ん……そうだな。その――」
灯が、少しだけ迷うように言葉を紡ぐ。女狐は、ただ黙ってその続きを待つ。
「その……折角来たんだし、もう何軒か回ろうぜ」
灯の表情は、フードに隠れて見えない。
ユアの表情は、言うまでもないだろう。
霧が晴れようとしていた。
大成功
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霧生・真白
弟で助手の柊冬(f04111)と
おや、やっと黒幕のお出ましだ
ははっ、なるほどね
パンジャンドラムとはイギリスらしい
さて、この霧の中、夜になったら厄介だ
任務を完遂するとしようか
とは言え僕は肉体労働は不向きでね…
まあ、それでも柊冬が一緒ならばなんとかなるだろう
敵と十分な距離を取りつつも、不意の攻撃はオーラ防御でなんとか耐え凌ごう
それでも逃げ回っていてはジリ貧だ
敵の挙動を観察し、十分な情報収集が完了すれば攻勢に出ようか
そうだね
隙ならば、僕が作ってあげよう
氷雪の魔弾を精製したならば、車輪の弱点に向けてスナイプ
まあ少しくらい外れても大丈夫だ
この魔弾は“空間ごと凍結できる”からね
さあ、仕上げは任せたよ柊冬
霧生・柊冬
姉である真白(f04119)と一緒に
あれが霧の元凶…さっきの機械音はあれが回る音だったのですか
ここで逃がすわけにはいきません、なんとしても止めてみせます
むやみにあれに近づくとひとたまりもない気もしますが、離れすぎてもすぐに距離を詰められてしまいそう…
他の人を巻き込まないように適度に距離を取りつつ、爆発を避ける事を意識しましょう
あの爆発を止めれたらいいのですが…姉さん、どうにかなりませんか?
敵に少しでも隙ができれば、こっちはとっておきを出せます
【一梟一兎の攻勢陣】で梟が敵の周囲を旋回して密集させ、姉さんが魔弾で動きを止めたなら、兎のタックルでまとめて吹き飛ばしましょう…!
一気に決めるよ、姉さん!
●End of the mission in London
「一気に決めるよ、姉さん!」
青い瞳が闘志と決意に燃えている。高らかに叫ぶと同時に、主人の命令のもと、兎が地を駆ける。梟が空を飛ぶ。霧生・柊冬(frail・f04111)が走るのに合わせて、肩からさげた革のバッグがぱたぱたと揺れる。
「――さあ、仕上げは任せたよ。柊冬」
赤い瞳を歪ませて、彼女は不敵にほほ笑んだ。霧生・真白(fragile・f04119)が怪異に向けるのは仕込み杖。狙う先は車輪の脆弱部。氷結の魔弾はすでに装填し終えている。乾いた音がする。車輪の回転が、止まる。
「――これで!」
柊冬が叫ぶ。いかに怪異といえど、動かなければ、ただの的。兎のタックルにあわせて、自分の革靴でも蹴りあげる。
「――――!」
怪異が声にならない悲鳴をあげる。凍結された空間の中で、逃げ場のない衝撃を逃がす術はない。がしゃりと音をたてて構造が崩れ落ちる。それは、怪異の終焉を意味していた。
「……ふう、やりましたね。姉さん」
「……まったく、僕は肉体労働は不向きなんだよ」
へなへなと座り込む柊冬の近くに、真白が靴音を立てて歩み寄る。口でこそ不満は言っていても、どこか安心した口ぶりであるように、柊冬には感じられた。
「あれが霧の元凶……だったんですよね。ずっとしていた機械音は、あれが廻る音」
「ああ、そうさ。なんともイギリスらしい兵器だと思わないかね」
柊冬が呟くと、くつくつと真白が喉を鳴らす。
「確かにそうなんですが……どうしてこんな怪異が生まれたんでしょうね」
不意に、柊冬が疑問を口にする。
「簡単なことさ。グリモア猟兵の……名前はなんだったか。筋肉むさい奴が言っていただろう。【怪異はその場で日常を満喫している者達のもとに現れる】……ってね」
「日常の満喫……確かに言っていましたが、それがどう関係するんです?」
「霧の街、パンドラなる兵器、それらはすべてイギリスという国への偏見だ。特にどこぞの界隈では、まるでイギリスという国がそれしか言うことがないくらいの勢いで扱われている。その意味がわかるかい?」
「わかりません」
「……ちょっとは考える努力をしたまえよ」
「だって……」
「……まあいい。つまりだね。いうなれば、ロンドンの現実を知ろうとする者、知る者たちの目を覆い隠そうとしていたのさ。現実に旅したロンドンは、楽しかっただろう。少なくとも、他の世界にいては見ることも、知ることもできないものさ。そして、それを呪うものがいた。定義されざる獣たち――UDCのうち、今回のようなタイプの事件を引き起こすのは、呪詛型UDCと呼ばれている。今回は霧が呪詛ということになるかな」
「……偏見を押し付けようとした――ってことですか?」
「あながち間違いではない。ま、そんなところだね。結果として霧という形をとっただけで、結局のところ、怪異は常識から現実を乖離させるものだということさ」
「――そういうものですか」
「――そういうものなんだよ」
柊冬が、一応納得したようにうなずく。
「それじゃあ、宣言させてもらおうかな」
真白が笑う。〆の言葉は、決まっていた。
「――Case closed. 」
大成功
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