止めろ、ハゲルマドン計画
#UDCアース
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●兆し
UDCアースのある地域では、最近、とある奇妙な夢を視る人が続出していた。
どちらかと言えば悪夢の類である。
とは言え、凄惨や陰惨と言ったようなスプラッタ系の夢ではない。
ただ、見て気持ちの良いものではないのは、確かだろう。
そんな夢を良く視るんだ、と他人に相談し難い類の夢でもあった。
故に、その夢を視てしまった人々の中には、その夢が現実にならないようにとあらゆる手段を模索するようになる。
中には、冷静に考えれば怪しいものに手を出してしまう人だっている。
人々をそこまで駆り立てる夢とは、なんであるか。
それは――自分がハゲる夢である。
●邪神復活のサイクル
「『ハゲルマドン計画』と言う名の邪神復活計画が、UDCアースのとある地域で進行しつつある事が予知出来たんだ」
グリモアベースに集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は、薄蒼い髪を弄りながら話を切り出した。
切欠は、毛髪絡みの怪しいグッズを現地のUDC組織によって発見された事だった。
「そんなグッズが密かに出回っている事が判ったのさ」
効果抜群の育毛剤とか。
被って寝れば抜け毛防止になるナイトキャップとか。
枕元に置いておくと毛が抜けなくなる石とか。
どれもこれも、毛髪絡み――端的に言えばハゲの類であるが、どれも実は効果なんかない。育毛剤なんか、むしろマイナス。
そして、実はとある邪神の力を高めてしまう呪具の類であった。
「そんな怪しいものを買ってしまう人がいるのも、どうやらその地域ではここ最近、自分の頭髪がなくなる――『ハゲる』悪夢を視る人が増えているみたいでね」
夢の中で鏡を見ると、光り輝く自分の頭。
夢の中で風に吹かれても、靡く髪がない。
そんな夢こそが、邪神復活の兆し。
「風と煽る者――毛根全部枯れロイガー。狂気を操る邪神だよ。人々の夢に干渉して毛髪がなくなる恐怖を煽る事で正気を削り、信徒を増やす力を持っているらしい」
薄毛に悩む人が疑わしいグッズと言うなの呪具に手を出す。
呪具が増えれば邪神の力が強まって、悪夢を視る人が増える。
その結果、更に呪具に手を出す人が増え、悪夢を視る人も更に――。
「そんなサイクルを作り上げる事で、毛根全部枯れロイガーの完全復活を目指す。それが『ハゲルマドン計画』の全容だよ」
このままでは、ロイガーの信徒が増えて完全復活してしまう。
「今なら不完全な復活で留められる。ただ、儀式の正確な場所が、どうにも予知できなくてね。先ずは、この呪具の取引現場を押さえて貰いたい」
セールスマン連中を探し出して締め上げれば、儀式の場所も判明するだろう。
「自分がハゲを心配している、と他人に知られたくない人が多いみたいだね。取引は人目に付かないように行われている場合が多いみたいだよ」
だが、そんな中にも1つの手掛かりがある。
「セールスマンにある共通点があると予知で判明したんだよ」
その共通点とは――カツラ。
つまり、本来はハゲである。
「あと拠点を突き止めても筋肉ハゲに妨害される予知も見えた。何だかハゲって言葉が付きまといそうだけど、人々の毛根の為に1つ頑張ってきてほしい」
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
UDCアースで、人々にハゲる悪夢を見せる邪神が復活しつつある事が判明しました。
1章では、怪しいグッズを売り捌いているセールスマンを探し出して頂きます。選択肢の例はあまり気にせず、やりたい様にやって頂いても、大体何とかなると思います。
2章は、判明した敵拠点で、とある敵、の集団戦。
3章で不完全に復活した邪神、風と煽る者との戦いとなります。
なお3章開始時の導入でも説明する予定ですが。
このシナリオの3章のボス戦に参加して頂いた方は、3章限定で、『一時的なハゲ』のようになる可能性があります。
特に覚悟完了したプレイングが届きましたら、遠慮しません。
なお、どんだけハゲても、このシナリオに限った話です。
他のシナリオや日々の旅団には影響しませんので、ご安心下さい。
(※また、あくまでそう言うプレイングをかけてこられた場合のみです。強制的にハゲさせる事はありませんので、ハゲたくない方もご安心下さい)
もうおわかりだと思いますが、このシナリオはネタシナリオと言うか、ハゲシナリオになる予定です。
あくまで予定です。
ハゲのカツラを被ったシリアスモノになるかもしれません。
プレイング次第です。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 冒険
『怪しいセールスマンに御用心』
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POW : 街中を隈なく移動して取引現場を捜索する
SPD : 怪しい人物を尾行して取引現場を嗅ぎ付ける
WIZ : 囮捜査を敢行し、セールスマンと接触を図る
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニコ・ベルクシュタイン
ああ、まあ、そうだな、俺も元々は懐中時計の身ではあるが
外装の傷や加工の剥げは非常に気になるものだ
人間にとってみれば毛髪は己を飾る重大な要素、
其れを重んじる心を悪用するとは汚いな流石邪神汚い
幸か不幸か人間の肉体の俺の髪はフワフワのくせっ毛だが毛量は多く
自分が困っていると言っても説得力が無い
よって、知人が薄毛で困っているのを何とかしてやりたい、という
設定でセールスマンと接触を図り、手掛かりを得たい
予めカツラや育毛剤といった商品のパンフレットを入手して
此れ見よがしに持ち街を闊歩し「おびき寄せ」てみよう
セールスマンが釣れたら設定通りに相談するフリをして
呪具の取引現場に連れて行って貰おうか
黒木・摩那
【WIZ】
ハゲは男性だけではないのです。
女性だって、ストレスや薬の影響ではげることだってあるんです。
むしろ、ハゲない前提だけにハゲた時のショックはより大きいわけで。
そんな悪夢見せられたら、藁をもつかむ気持ちになるでしょうね。
信者兼セールスマンとしては物を売りたいので、
口コミでも何でも獲物を狙ってるはずです。
ここはSNSでハゲる夢見た、絶対ヤダ、治す!という決意を流布して、網を張ります【ハッキング】【情報収集】。
あとは集まった売込みの数々からUDC絡みのものを選んで購入を申し出ます。
受渡しは秘密厳守で現金かつ手渡しを希望、と。
あとはUC【サイキックブラスト】で捕まえて、拠点を吐かせます。
モルツクルス・ゼーレヴェックス
【ロダ・アイアゲート】殿とご一緒
「ハゲを蔓延させる邪教徒……許せんっすねえ!」
まずはロダ殿と街を巡って【情報収集】っす
基本は足っすねえ
【コミュ力】と【礼儀作法】を活かして、道行く人の中から話を聞けそうな人を察して声をかける
数打ちゃ当たれ、これを繰り返して、件のセールスマンを探す奴の痕跡を発見したならロダ殿という極上の獲物を囮に誘き寄せる
近くに潜んでおき、頃合いを見計らって【高速詠唱】と【範囲攻撃】で【睡眠雲】
眠ってるうちに縛って抵抗の余地を無くしてから叩き起こす
「さあ!吐くっす!なんでテメーもハゲのクセに世の中にハゲを撒き散らそうとするんすか!?」
本格的な拷も……尋問はロダ殿にお任せするっす!
ロダ・アイアゲート
【モルツクルス・ゼーレヴェックス】さんと一緒
ハゲ…元から備わってない人を捕まえてハゲと言うつもりなんですかね…撃ちましょうか
セールスマンを見つけないといけませんからね…人目に付かない場所での取引が多いなら、路地裏を見て回った方が良さそうですね
【追跡】で足取りを追いつつ、【情報収集】でセールスマンを探す
近場なら歩いて探し、距離があるようならバイクを走らせた方が良いかもしれませんね
取引現場を押さえたら【目立たない】ように頭部をフードか帽子とかで隠して近づく
グッズを売ってもらえないかと交渉
必要なら演技でもしますか…涙出ませんけど
尋問は銃を突き付けて【殺気】を出しながら「撃たれたくなければ答えなさい」
木元・杏
あやしいひと、みつける
……(ふと首をかしげ思い出し)
知らない人についていっちゃダメ。
ん、取引現場、捜す(こくん)
「はげ 夢」で検索してSNSの情報を調べてみて
育毛剤とかを買った人たち、おすすめしてる人たちのお話から
街のめぼしい所を第六感働かせて選んでく
捜索、見つかっちゃダメね?
うさみみメイドさん(人形)を狭いところから忍ばせて現場確認
(ちら、と街中見渡して)
…………クレープ売ってる
……歩いてるとおなかがすくね?
クレープとアイスとお饅頭とドーナツとゆでたまごをもって捜索続ける
丸いお菓子達を食……眺めて
丸くてかわいい。
つるつるで、きらきらきれいね?
でも、おとうさんも怖がってた
(ゆでたまご、ぱくり)
滝舘・穂刈
なんと悪辣な邪神!
このスイハンジャー、米が絡まなくともリーマンの味方。
必ずや皆の毛根を守って見せよう。
囮となるべく、かつらをかぶって育毛剤とかを薬局で見つめたりしておくぞ。
むむ、しかし俺の頭に合うかつらがなかなかないな。
ふんむぅ!(無理やりかぶる)
…少し不自然だが、まあいいか。
育毛剤の幟の前で、せつなく幟を見つめてかつらに手を当て
「しょせん炊飯器に髪など夢のまた夢…似合うのはワカメくらいのものか…」
と、寂しげに呟く
声をかけられたら、必死に訴えるぞ。
髪の毛に縁のない俺でも、ほんとうに髪が生えるのか!?
本当だな!?
肩をつかんでゆさぶったりしつつ、必死さを演出しよう。
●セールスマンこちら
「ふむ。改めて見ると、色々あるものだな」
UDCアースのとある町の大通りを、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)がカツラのパンフレット片手に歩いていた。
脇に抱えた透明なクリアファイルの中には、育毛剤のパンフレットが数枚入っているのが見えている。
ニコはそれらを隠そうともせず、むしろ周りから見え難くならない様にしていた。
(「まあ、そうだな。人間にとってみれば毛髪は己を飾る重大な要素だろう」)
胸中でひとりごちるニコは、懐中時計のヤドリガミ。
(「俺も外装の傷や加工の剥げといった要素は、非常に気になるものだからな」)
人間の身体は仮初の身ではあるが、本体の懐中時計のことと考えれば、頷ける――などと考えていると、前方からスーツ姿の男性がずんずんと向かって来ていた。
(「これは――釣れたか?」)
ニコはわざと男性に気づいたのを顔に出してから、足を止めてみる。
『そこのお兄さん。もしや、髪の事でお悩みなのでは?』
すると、スーツ姿の男性は胡散臭い営業スマイルを浮かべてニコに声をかけてきた。
「あ、いや。俺ではなく、薄毛で困っている知人がいてな――」
『成程、成程……ちょっとここでは出来ない良いお話があるのですが、横の路地でお話しませんか』
ニコが反応すると、男は何故か横の路地へと誘ってくる。
もう『ただのセールスマン』と言う可能性は低い。と言うか胡散臭さ120%だが、ニコは敢えて警戒していないように振舞って、男の後に着いて行った。
『さて、ご友人の話と言う事ですが』
「ああ。薄毛で困っている知人を何とかしてやりたいのだが」
『ああ、判ります。判りますよ。“お知り合い”の話ですね!』
「む?」
男の言い様に引っかかるものを感じて、ニコが内心首を傾げる。
ニコの人間の身体の頭髪は、毛量の多いフワフワのくせっ毛だ。
これでは自分が髪の事で困っている、と言っても説得力がないのでは――そう考えて知人の話、と言う事にしたのだが。
(「これは……知人は俺自身と勘違いされているのか」)
一方的にまくし立てられる営業トークを聞き流しながら、ニコは胸中で呟く。
『実は私も、弊社製品を使っておりまして』
二コの沈黙をどう捉えたのか、男は自らのカツラを取ってみせる。これならば、敢えて誤解を解く必要もあるまい。
『と言う事で、きっと“ご友人”も気にいる商品がございますよ?』
「ふむ。そうだな。他の実物も見せて貰いたいのだが……すぐに頼めるか?」
『それは勿論! では、ご一緒にいらして下さい』
口車に乗って案内を始めたセールスマンの後に続きながら、ニコはちらりと路地の奥を振り向い、視線を向ける。
ニコはすぐに向き直って、セールスマンの後に着いて行く。
誰もいなくなったと思われた路地裏に――ひょこりと、うさみみが動いた。
●うさみみメイドさんが見ていた
――時間は少し巻き戻る。
「今日のおしごと。あやしいひと、みつける」
そう呟いた木元・杏(微睡み兎・f16565)は、ふと何かが引っかかった。
それを思い出そうと杏がこてんと首を傾げると、紅色の簪に付いた杏と紫色の花のガラス細工がしゃらんと揺れる。
「あ……知らない人についていっちゃダメ」
思い出したのは、そんな一言。
あやしいひとは、イコール知らない人。
「ん、取引現場、捜す」
こくんと頷いて、杏はスマートフォンを取り出すと『はげ 夢』と打ち込んで、SNSを中心に検索し始めた。
育毛剤やカツラのレビュー情報が次々出てくる中から、何か怪しげな話がないかを探す杏の鼻腔を、どこからか漂って来た甘い匂いがくすぐる。
「…………ドーナツ売ってる」
移動販売の車が、すぐそこにいた。
「……歩いてるとおなかがすくね?」
腹が減ってはなんとやら、とも言うし。
とことこ。杏の足は、ドーナツ屋の方に向かっていた。
ややあって。
「むふー」
いつの間にやら、杏は片手にクレープ、片手にソフトクリームを持っていた。
ドーナツ?
お饅頭とゆで卵と一緒に、腕に下げてるビニール袋の中だ。
「たしか、こっち」
両手は塞がっているけれど、大丈夫。手が塞がる前に、検索は終えてある。
「あ。でも手が塞がってると、うさみみメイドさんうまく動かせないね」
目的の路地に向かう道すがら、杏はそこに気づく。先にソフトクリームを溶けない内に。続けてクレープもぱくもぐと平らげて。
「捜索、見つかっちゃダメね?」
杏は頬にクリームつけたまま、うさ耳付きメイドさん人形先行させて安全を確かめながら、路地裏へと入っていく。
そして路地裏に潜むと、うさみみメイドさんの陰に隠れて、取引が行われるその時を待つことにした。
「丸くてかわいい」
少ししょっぱい味が欲しくなって、取り出したのはゆでたまご。
「つるつるで、きらきらきれいね?」
でも、おとうさんも怖がってたっけ。なんでだろう。
そんな事を思いながら、ゆでたまごをはむはむと食べ終えた杏の耳に、2人分の足音が聞こえてくる。
目立たない様、うさみみメイドさんも奥に引っ込めて――そこで始まった2人の男のやり取りの一部始終を、杏はうさみみメイドさんの陰から黙って見守っていた。
気づいていたらしい銀髪の青年が、ちらりと視線を向けてくるのも。
「あのひとも、猟兵……気づかれてた」
あやしいひとには、ばれてないから、大丈夫。
杏は見失わないギリギリの距離を保って、2人の後を尾けて行った。
●電子の海から
「……こんなとこかしら」
あちこちのSNSに足跡を残す作業を終えて、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は手元のカップに口をつけた。
ハゲる、と言う現象は、別段男性のだけに起こる事ではない。
女性にだって起こり得るのだ。
歳を重ねれば薄くもなるし、若い内だって、ストレスや薬の影響で脱毛症が起きてしまう事だってある。
むしろ、いざそうなると、ハゲないという前提がどこかにあっただけに、ショックは計り知れないものなのだ。
(「ハゲる悪夢なんか見せられたら、藁をもつかむ気持ちになるでしょうね」)
だからこそ、摩那はそこを利用した。
摩那がSNSに残したのは『この数日、毎晩ハゲる夢を見てしまう』『現実になるのは絶対ヤダ』『治すなら、今の内だよね』と言った内容である。
どれも女性である事を隠さずに、ハゲる夢を見たことをアピール。
(「信者兼セールスマンとしては物を売りたいのだから、SNSの書き込みでも口コミでも何でも使って、獲物を狙ってる筈」)
――そんな摩那の予想は、的中していた。
あまり時間はかからずに、幾つもの売り込みの連絡が届いたからだ。
「これは……違うわね。これも違う」
摩那はハッキングの技術も駆使して発信元を探りながら、UDCとは関係なさそうなものは除外する。
「――これね」
『ハゲる夢にお悩みの貴方。我が社のグッズならハゲ防止率100%! 万が一、もしも将来にハゲてしまっても、髪を取り戻す事もできます』
以下、云々かんぬんと怪しさ120%の売り込み文章が続いている。
摩那がそれと特定したのは、文面の怪しさに加えて、発信元を偽装していることを見破れたからだ。
――現在**駅の近くにいます。受渡しは秘密厳守で。現金かつ手渡しを希望。
そんな返信を摩那が送ると、すぐに返事が返ってきた。
指定されたのは、近くの公園。その前に停めている、バンの中。
(「怪しすぎるでしょうに……もしかしなくても、バカなの?」)
或いは単に女性目当てのハズレの可能性もあるのだろうか――などと摩那の脳裏に懸念すら浮かぶ。
が、それも数分後には杞憂に変わった。
指定の場所に停まっていたバンの中。摩那の掌から放たれた高圧電流をまともに浴びて倒れた男の頭から、カツラがずり落ちるのを見て。
「――少し、やり過ぎたかしら」
しばらくは痺れて満足に喋れそうにない男に、摩那が溜息を漏らす。
だが、やりようはある。
摩那は男が逃げ出さないように縛ると、運転席に座ってナビの走行履歴のハッキングに取り掛かった。
●聞き込みからの拷m――尋問
「すいません、ちょっといいっすか? 実はこの辺で、特別な育毛剤やカツラを買えるって聞いたんっすけど……」
成せば成る。
そう書かれた鉢巻を巻いたモルツクルス・ゼーレヴェックス(自由を飛ぶ天使・f10673)は、コミュ力を活かして道行く人に笑顔で話しかけて回っていた。
捜査の基本は、足と聞き込み。地道でナンボ。
数打ちゃ当たるの精神で。
だけど礼儀は忘れずに。
話しかけた数が両手の指を超えたところで、モルツクルスはついに当たりを引いた。
『へえ。もしかして我が社の商品かな? どこで聞いたんでしょう?』
(「――ビンゴ! いきなり本人っすか!」)
件のセールスマンを知る誰かでも、と思っていたが、まさか本人が釣れるとは。
だが、これなら話が早い。
「ま、こっちも結構必死で情報集めたんっすよ――自分はこの通りっすけど、こんな状況の知り合いが探してましてね」
モルツクルスが男に見せたのは、毛がない滑らかな後頭部の写真であった。
「……なんでしょう。鼻がむずむずするような変な感じがしますね」
その写真のモデルであるロダ・アイアゲート(ヒトになれなかったモノ・f00643)の姿は、路地裏にあった。
その頭部には、いつもは被っていない帽子がある。
「人目に付かない場所での取引なら、路地裏かと思いましたが。誰もいませんね」
情報収集なら、もっと大通りの方がいいだろうか。
ロダがそう思った時だった。携帯に着信が入り、モルツクルスの声が聞こえてくる。向こうがセールスマンを見つけたという連絡だ。
「ええ、判りました。では、ここで待っています」
現在地を告げて通話を終えた数分後。
モルツクルスが、胡散臭い営業スマイルを浮かべた男を連れて現れた。
『貴方ですか! 無毛に悩んでいると言う方は!』
「ええ、お恥ずかしながら……売って貰えますか」
男のド直球な言葉に覚えた殺意を押さえ込んで、ロダが帽子を外す。
先の写真の通り、髪がない滑らかな頭部が顕わになった。
『これはまた……ですが、大丈夫です! 弊社の商品ならば!』
男も一瞬絶句しかけたが、すぐに気を取り直してぺらぺらと営業トークを始める。
(「構造上なんですけどね? と言うか、この頭が役に立つなんて、何がどう役に立つか世の中わからないものですね?」)
男の営業トークを複雑な思いで聞き流しながら、ロダはモルツクルスに視線を向けて男に気づかれないよう小さく頷いた。
(「ま、相手が1人だったらわざわざ【睡眠雲】で眠らせる必要もないっすね」)
頷き返したモルツクルスは、話を見守る振りをしてスッと立ち位置を変える。
男の正面にロダ。
その背後にはモルツクルス。挟んでしまえば、逃げられる心配もない。
『と言う事で、毛生え薬とカツラ、どちらに致しましょう?』
「そうですね。本拠地で」
『――はい?』
豹変したロダの声のトーンに目を丸くした男を、モルツクルスが後ろから手を掴んで関節を軽く極めながら、壁に押さえつける。
「テメーんとこのグッズが、逆にハゲを増やしてるのは判ってるんっすよ!」
『ぐっ……罠だと!?』
「さあ! 本拠地の場所を吐くっす! なんでテメーもハゲのクセに世の中にハゲを撒き散らそうとするんすか!?」
押さえつけられ呻く男の頭から、モルツクルスがカツラを取って投げ捨てる。
『ふ……ふふふ。それで本拠地を吐くと? 貴様こそ、ハゲる悪夢を見続けて発狂してしまうがいい!』
だがハゲを暴露されても、男は虚勢を張っていた。
意外に頑張る抵抗に、しかしモルツクルスは、盛大な溜息を返す。
「あーあ、もう手遅れっすよ」
抑えていた男の手を生きている縄で素早く縛ると、男から離れて。
「拷も……尋問はロダ殿にお任せするっす!」
モルツクルスの一言は――怪しい男にとっての、地獄の始まりを意味していた。
「……1つ聞きます」
入れ替わりで男に近寄るロダが、問いかけを発する。
「元から備わってない人を捕まえて、ハゲと言うつもりなんですかね」
『ハゲはハゲだろ』
ガガガガガッ!
男が答えた瞬間、重たい銃声が響いて――先ほど投げ捨てられてそのままになっていたカツラが消滅していた。
ロダがどこからともなく取り出した、ガトリングガン『Aiming at a shot』がちょっと火を吹いただけである。
「撃ちましょうか」
『……』
撃ってから、ロダはしれっと告げる。表情1つ変えずに。
構造上変わらないとも言うが、表情を変えられる構造でも、この時は変わらなかったかもしれない。
「使い易いように作ったので、引鉄が軽いんですよこれ。すぐ撃てます。撃たれたくなければ、本拠地の場所を答えなさ――おや?」
ロダが気づいた時には、男は恐怖で失神していた。
話を聞きだせるまで、少しかかりそうだ。
●スイハンジャーはリーマンの味方
何処か町の裏側で、銃声が響いていた頃。
「ふんむぅ!」
歩道の上で、頭から飛んで行きそうになったカツラを抑えて被り直す滝舘・穂刈(炊きたてご飯ヒーロー・スイハンジャー・f06740)の姿があった。
「ふぅ……危ないところだった」
穂刈の頭は、いつもの炊飯器――スイハンジャーである。
つまりは、炊飯器マスクの上から、サイズの合わないカツラを無理矢理被っている状態なのだ。
「……少し不自然だが、まあいいか」
ガラスに映ったカツラの角度を何度か直して、結局、水平にはならず穂刈は溜息を溢してカツラの位置を諦める。
ガラスの向こうに並んでいるのは、育毛剤やらカツラやら。
「はぁ……」
すぐ隣に翻る育毛がどうとか謳った育毛剤の幟を見やり、穂刈がまた溜息。
「所詮、炊飯器に髪など夢のまた夢……か」
寂しげに呟いて、またカツラに手をやり位置を直す。決まらない。
「似合うのはワカメくらいのものか……」
また溜息を溢して、穂刈が踵を返すと。
そこに、胡散臭い笑みを浮かべたサラリーマンが立っていた。
『聞きました、聞こえてしまいました! 貴方、カツラをお求めですか!』
「あ、ああ! 実はそうなのだ」
ぐいぐいと来る男に引くこともなく、穂刈はむしろ力強く頷き返す。
「どこに相談しても、育毛剤は効果がなかった。カツラすら、俺の頭にはサイズが合うものがどこにも見つからないんだ!!!」
そりゃまあ、炊飯器マスクに合うサイズのカツラなんぞ、普通はない。
だが、必死に訴える穂刈の言葉に、男は何度も頷いていた。
『ご安心下さい! 時代はビッグサイズ! 当社のカツラは、どんなサイズでもオーダーメイドで対応致します!』
笑みの胡散臭さを深めて、大仰な身振りで男が穂刈に告げる。
『育毛の方も、諦めるのはまだ早いですよ。当社の特性育毛剤に、育毛ラッキーグッズを合わせて使って頂ければ、毛根が不死鳥の様に蘇るのです!』
うわあ、胡散臭い。
「毛根が不死鳥の様に、だと……? 髪の毛に縁のない俺でも、ほんとうに髪が生えるのか!? 本当なんだな!?」
なんてツッコミを穂刈が入れることはなく、むしろがっつり食いついて、男の肩をガシッと掴んでゆっさゆっさと揺さぶる。
『おおおおお落ち着いてくださささい』
おっと、男の頭でカツラもゆっさゆっさしていた。
「す、すまない。取り乱した」
ぱっと手を放し謝罪する穂刈だが、すべては作戦通り。これで、この男の頭髪がカツラだと確かめられた。十中八九、間違いないだろう。
「ではとりあえず、カツラのオーダーメイドからお願いしたいのだが……」
『では、着いてきて下さい』
男は穂刈を疑う素振りをみせず、何処かへと案内するのだった。
●線が集う場所
『こちらです!』
『着きました! こちらでカツラを――おや?』
とある雑居ビルの前で、ニコを連れてきたセールスマンと、穂刈を連れた別のセールスマンがバッタリと鉢合わせた。
――カモが2人。
不審に思うどころか、セールスマン達がニヤリと笑みを浮かべたそこに。
キィッと音を立てて一台のバンが停まる。
「あら。当たりみたいね?」
運転席から顔を出したのは摩那だった。
その姿が車内に消えると後部座席の扉が開いて、失神した男達が放り出された。
『なっ!?』
『これは一体――うぐっ!?』
「すまんな。案内はもう充分だ」
驚く男2人を、ニコが首筋に落とした手刀で黙らせる。
摩那が運んできた連中と纏めて、ビルの中に放り込んでおくと、そこにロダがバイクに乗って現れた。モルツクルスも一緒だ。
「儀式は最上階だそうです」
「1フロア丸ごと作り変えてて、最上階は階段で行くしかないっすよ!」
ロダの拷も――尋問の末に聞きだした情報である。
「本拠地突入、だね」
お饅頭咥えた杏が、ひょこりと顔を出す。
「うむ。待っているがいい、悪辣な邪神! 皆の毛根は、我々が守る!」
しゃもじを力強く握り締め、穂刈が雑居ビルを見上げる。
なお、ビルの名前は『鶴光ビル』と書かれていた。
大成功
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第2章 集団戦
『筋肉教の狂信者』
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POW : 神降ろしの儀:地上を照す太陽のポーズ
全身を【使って祈る姿を見た者を、盲目状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 神降ろしの儀:夕暮れに飛ぶ鴉のポーズ
全身を【使った祈りを見た者を、帰宅したい精神状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ : 神降ろしの儀:神に捧げる祈りのポーズ
全身を【使いポージング。周囲の無機物を邪神の眷属】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
イラスト:因果
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●儀式
邪神の儀式が行われている拠点、『鶴光ビル』を突き止めた猟兵達。
出払っているのか誰に遭遇することもなく、階段を駆け上がる。
辿り着いた最上階。その階段の踊り場の扉を開けたすぐ先に、もう一枚の扉があるだけの小さな部屋しかなかった。
最後の扉の先からは、何かただならぬ気配が漂っている。
この先が、儀式の場で間違いないだろう。
猟兵達は頷き合い、扉を蹴破って中に飛び込む!
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
そこには、中々マッチョなボディのハゲたオッサン達が、毛1つもないハゲ上がった頭を床につけて逆立ちしていた。
もう一度言おう。
ハゲたおっさん達が、ハゲ頭を床につけて逆立ちしていた。
何だろうこのポーズ。意味あるのかな。
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
両掌を合わせたポーズで、低い声で呪文かお経の様に呟いてもいるから、多分あるんだろうけど。
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
彼らは筋肉を崇める『筋肉教の狂信者』達だ。
ハゲの合間に筋肉、と混ざっているのも、そのためだろう。
なんでも、あまりに筋肉を鍛えすぎて、脳まで筋肉になっているものだから、こうして筋肉神と関係ない邪神の復活に利用される事もあるんだとか。
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
でも本人達は気にしてないようだ。
どうも状況からして、儀式の護り手と進行役を兼ねてるっぽいので、とりあえず倒せば、いいんじゃないかな!
ロダ・アイアゲート
モルツクルスさんと一緒
彼らは何と言いますか…脳筋になったが故に毛根が死滅したのではないかと考えてしまいますね…逆立ちすると頭皮に負担かかるらしいですし
「モルツクルスさん、自分はもやしだって言うなら彼らに交じればムキムキになれるかもしれませんよ?ハゲになりそうですが」
銃で【先制攻撃】を仕掛けて相手が反撃してきたらモルツクルスさんの援護を受けつつ、距離を縮める
もし眷属の攻撃があれば【早業】で【武器受け】、UCで正反対の属性の攻撃(ハゲには毛…このビルにある在庫のカツラとかもふもふしたものを召喚)
銃をビームキャノンに持ち替え、【零距離射撃】をお見舞い
「その自慢の頭と筋肉で耐えてごらんなさい!」
モルツクルス・ゼーレヴェックス
ロダ殿と御一緒
ハゲとも筋肉とも縁遠いボサボサモヤシっす!
「……って筋肉教徒じゃないっすか異教徒っすね!目覚るっす!筋肉への愛よ!」
……望み薄っすね
ロダ殿の活路を拓くことに専念
【高速詠唱】で【自在太陽】を発動【範囲】自在の【属性攻撃】で道を塞ぐ眷属を焼き払う
「邪な存在は!太陽の光に退くのがお決まりっす!」
ビル内って【地形を利用】して敵の動きを制限した上で【情報収集】と【学習力】で敵の動きに対して攻撃を最適化していく
さらに【コミュ力】でロダ殿に絶妙な指示、及び支援
「……一流魔術師の魔法を御覧じろ!おーぷん・ざ・せさみ!」
味方を活かしてこそ後衛職
「今っす!ロダ殿!でかいのお願いするっすねぇ!!」
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー
敵はあまり動かないみたいだね
いつもは自爆するのだけど
良い機会だから初めて使うユーベルコードを試してみるかな
コムラガエリモードを使用
こむら返りになりつつビクンビクンしながら
凄く時間をかけながら時々悶絶し何とかして敵に近づき
技能:捨て身の一撃で股間に1発張り手をぶちかましておくね
多分それが精一杯
これで敵が移動しようものなら絶望して自爆しちゃうですよ
コムラガエリモード使用中は喋る余裕はないと思うので
んほぉーと呻いていると思います
木元・杏
筋肉は……筋ばかりでおいしくない(こくり)
「脳筋」は知ってる
わたしの家族、のうきん一家って言われてたから
きっとほめ言葉(笑ってうれしそう)
……頭で立ってる
痛くない?(心配そうに)
(…………ポーズ変わった)
それ知ってる
たまこ(飼ってるにわとり)もよくする姿
……早く帰ってごはん作らなきゃ
まつりん(双子の兄)がお腹すかせて待ってるね?
だから、さっさと倒す(こくり)
うさみみメイドさん、ぽーじんぐ
メイドさんにおじさんの目の前で同じポーズさせて
じっと待つ
どっちが先にポーズやめるか真剣勝負(こく)
おじさんが緩んだ隙に【鎌鼬】でさくっとする
ついでにメイドさん、目潰し
おじさん沢山ね?
皆と連携して倒す
黒木・摩那
筋肉鍛えすぎて、行き着いた先が邪神召喚の片棒とか哀れ過ぎますね……
ともかく、邪神を呼ばれては困るので、何とかします。
と言っても、この筋肉固いっ!
文字通り刃が立ちませんね。
ここはひとつ、彼らのポージングを邪魔します。
彼らの興味は筋肉だけでしょうから、
スマートグラスで筋肉の知識を検索しながら、
この上腕二頭筋よく切れてます、
僧帽筋が歌ってますね。
などなどと筋肉をほめ称えます【言いくるめ】。
指で筋肉をつつつー、わさわさ。
髪でさわさわ。
と適度にボディタッチ。
彼らの集中が切れたところを「隙あり」と
【サイキックブラスト】で仕留めます。
ポージングはスマートグラスでモザイク処理します。
滝舘・穂刈
ふむ。彼らは髪の毛がないことを気にしていないのか。よいことだな!
とはいえ、儀式の守り手なら倒さねばなるまい。
筋肉だからな。
鶏の胸肉を使い、さらにプロテインもたっぷり仕込んだ親子丼を作ろう。
もちろん頭のジャーからほかほかご飯をよそった上に盛り付ける。
筋肉たちの意識がそちらにいったところで、気合と共に杓文字再盛勧進帳を使い、杓文字を叩きつけて倒していくぞ。
倒し終わったら、筋肉の頭にそっと、ワカメをはりつけておこう。
武士の情けというやつだな!
●深まる混沌
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
『ハーゲ、ハーゲ、きーんにーく』
「筋肉鍛えすぎて、行き着いた先が邪神召喚の片棒とか哀れ過ぎますね……」
黒木・摩那が溜息混じりで向ける哀れみの視線を浴びても、筋肉教の狂信者――と言うかハゲ筋肉――は呪文だかお経だかを呟き続けていた。
「モルツクルスさん。自分はもやしだって言うなら、彼らに交じればムキムキになれるかもしれませんよ?」
ロダ・アイアゲートが彼らを指差し口を開く。
「ハゲになりそうですが。逆立ちすると頭皮に負担かかるらしいですし」
「あんな風になるなら、ハゲとも筋肉とも縁遠いボサボサモヤシでいいっす!」
続くロダの一言に、モルツクルス・ゼーレヴェックスがものすごーくいやそうな表情になって返していた。
「大体、筋肉教徒って本来異教徒じゃないっすか! 目覚るっす! 筋肉への愛よ!」
ハゲ筋肉に向き直ったモルツクルスが呼びかけてみるが。
『きーんにーく、きーんにーく、ハーゲ、ハーゲ』
『きーんにーく、きーんにーく、ハーゲ、ハーゲ』
しかし連中の呪文は止まらなかった。
「筋肉が増えただけじゃないっすか……望み薄っすね」
「何と言いますか……脳筋になったが故に、毛根が死滅したのではないかと考えてしまいますね」
『筋肉があれば毛根など不用!』
呆れと哀れみとか、色々混ざった視線を向けるモルツクルスとロダに、力強く言い切るハゲ筋肉。
「のうきんは、きっと褒め言葉」
呆れる猟兵が多い中、木元・杏は何故か笑顔を浮かべていた。
「え? 脳筋よ?」
「脳筋、知ってる」
目を瞠る摩那に、杏はこくんと頷いて。
「わたしの家族、のうきん一家って言われてたから」
(「どういう家族なんでしょう……」)
「……頭で立ってる。痛くない?」
杏の家庭環境に若干の不安を感じる摩那を他所に、杏はしゃがみ込んでハゲ筋肉達を心配そうに見つめる。
『案ずるな、脳筋を継ぐものよ』
『我らは頭筋も鍛えているのでな』
頭筋とは、その名の通り頭部の筋肉である。
こう言う使い方の為の筋肉じゃないけど。
そんな彼らのハゲを気にしないスタイルに呆れなかった猟兵が、もう1人。
「髪の毛がないことを気にしていないのは、よいことだな!」
滝舘・穂刈である。
「とはいえ、儀式の守り手なら倒さねばなるまい」
「そうですね。邪神を呼ばれては困るので、何とかしましょう」
何故か穂刈が持っているスーパーの袋とガスコンロを横目に気にしながら、摩那はそれをスルーして、ハゲ筋肉たちを見やる。
その時だった。
「1つお手伝いしよう」
猟兵達の背後から、新たな声が聞こえて来たのは。
振り返るとそこには、黒い何かがいた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
空気を震わせ、黒い何かが震える。
――う。
――つ。
――ろ。
――ぎ。
そんな黒い4文字のひらがなと無数の手足がにょろにょろと浮かび上がって来た。
虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)である。まるで邪神のような登場だったけど、種族的にはブラックタールの筈である。まだ。
「敵はあまり動かないみたいだね。この状況なら――この業が使える」
うにょろにょろと動いていた、うつろぎの全身に力が篭り、びくんっと跳ねる。。
「うつろぎ……こむら返り……っ!」
『その体にこむらは……筋肉はどこにあるのだ』
自らこむら返りに陥るうつろぎ見たハゲ筋肉の一体が、ポツリと呟いていた。
●筋肉の弱点
ロダが構えたガトリングガン『Aiming at a shot』の連装銃口が回転し、その全てがガガガガガッと重低音を鳴らして火を吹き、弾丸を撃ち放つ。
直前。
『『『倒立版、夕暮れに飛ぶ鴉のポーズ!』』』
ロダが引鉄を引くのと、ハゲ達が揃って両足をピンッと伸ばすのは、ほぼ同時。
そこに降り注いだ弾丸の嵐が、埃を巻き上げ周囲の床を撃ち砕いてその残骸を巻き上げていった。
「……効いていませんね」
もうもうと立ち込めた粉煙が収まった、そこに。ハゲ達は、いた。先ほどピンと伸ばした両足を、腰を曲げることで前へと傾けた状態で固定したポーズを決めて。
爪先を嘴に、広げた両腕を翼に見立てた鴉のポーズ、と言う事なのだろう。ロダの先制の射撃を耐え切る防御力を持つポーズの1つ。
「あ。それ知ってる。たまこもよくする姿」
それを見た杏が、何かに気づいたように声を上げる。
『ほう? 夕暮れに飛ぶ鴉が他にも――』
「たまこはにわとり。飼ってるの」
仲間を見つけたと思ったのか、僅かに喜色の混ざったハゲ筋肉の声に、しかし杏がさらりと返したのはそんな一言。
「……早く帰って、まつりんのごはん作らなきゃ。お腹すかせて待ってるね?」
杏が自分の一言でふたごの兄の顔を思い出したのは、じっと見ていたハゲ筋肉のポージングのせいもあっただろう。
夕暮れに飛ぶ鴉のポーズ。
それは筋肉の強度を高めると共に、見た者を帰宅したい精神状態へと変えてしまう、攻防一体の業なのだ。
「だから、さっさと倒す」
「そうね。さっさと倒して、帰らせて貰うわ!」
杏の手に白銀の光が刃を形作り、摩那が『緋月絢爛』を握り鞘から抜き放つ。
猟兵であれば、ちょっと帰宅したい精神状態にされたくらいで、逃げるほど心が揺さぶられる筈もない。
だが、暖かな陽の色の光刃も、内に勝利のルーンを輝かせた刃も、ハゲ筋肉の太く硬い丸太のような足に僅かな傷をつけるに留まっていた。
「この筋肉固いっ! 文字通り刃が立ちませんね」
筋肉を切ったとは思えない手応えに、摩那が眉をしかめて跳び退る。
「これだから筋肉は……筋ばかりでおいしくない」
杏も不満そうに掌から光を消しつつ、うさみみメイドさんの元へと戻った。
「ポーズしてる限り、動くことはなさそうっすね。しかし……生半可な火力じゃ、あの固さは破れそうにないっすね」
最適な攻撃を導く為に、敵の様子を伺っていたモルツクルスもその固さにはやや眉をしかめていた。
そんな事はお構いなしなのが、約2名。
「よし。これで皮から低温でじっくりと――」
穂刈はぶつ切りにした鶏肉を、弱火にかけたフライパンの上に並べていた。どう見ても料理をしているようにしか見えないのだが、果たして。
うつろぎは、びくんびくんと小刻みに跳ねつつゆっくりと動いていた。たまーに「んほぉっ」とか奇声も発している。こっちは――なんだろうこれ。
閑話休題。
『むう……この夕暮れに飛ぶ鴉のポーズで、帰る気分にならないか』
『これは、頭で逆立ちしている場合ではなさそうだな』
猟兵達の攻撃を浴びたハゲ筋肉達もまた、その力の一端を目の当たりにして相手が違うと悟っていた。
『我らがハゲ頭を床につけることで、筋肉力が増すのだがな』
『だが、このままでは他のポーズを取れないからな』
絶対騙されてるという猟兵達の視線を平然と浴びながら、ハゲ筋肉達が一斉に、その場にスクッと立ち上がる。
(「あ…………ポーズ変わった」)
「え、動くのぉ!?」
ハゲ筋肉の見せた動きに杏が胸中で驚き、うつろぎは何故かショックを受けたような声を発する。だが、ハゲ筋肉達がその後見せた動きは僅かだった。
徐に腕を組んで、足を肩幅に開いて。
顔を床に向けて、頭を窓の方に向ける。
『『『地上を照す太陽のポーズ!』』』
ハゲ頭が、キラーン。
鍛え(磨き)抜かれたハゲ頭が光を浴びて、太陽の様にキラキラと輝いていた。
『我らが筋肉で反射したこの光』
『筋肉を鍛えた頭でなければこうはいかぬ』
『まともに浴びれば、柔な筋肉を持つ者では二度と光を拝めぬと知れ!』
「反射なら、こうするっすよ」
自分達のハゲと筋肉を誇るハゲ筋肉達を軽くスルーして、モルツクルスは窓に近寄っていった。此処がビルであることを利用して、備え付けのブラインドを、下ろした。
窓から差し込む光が薄くなった。ハゲ頭の光も薄くなった。
『……』
『……』
『……』
『……』
「いや、そんな全身で悲しげなオーラ発しないで頂きたいっす」
ハゲ筋肉達の無言の抗議をモルツクルスが苦笑を浮かべて流した、その時だった。
ジュウッと油の跳ねる音が響いたのは。
「これで蓋をして――3、2、1……ここだ!」
穂刈がフライパンの蓋を外すと、中から半熟卵で閉じた鶏肉の熱気が、ほかぁ。
スイハンジャー頭のジャーをぱかっと開くと、ほかほかご飯をよそった丼の上に、鶏肉の卵とじを乗せていく。刻みノリを散らして、三つ葉を添えて――。
「プロテインもたっぷりの親子丼、完成だ! 食って良いぞ、筋肉たちよ」
これを穂刈は作っていたのだ。鶏肉は胸肉を使って、低温調理でじっくり熱を通して卵の方にプロテインを混ぜてある。
『プロテイン親子丼……だと』
『ごくり』
穂刈の思った通り、筋肉達が反応を見せていた。下を向いていた顔を上げて、組んでいた腕が徐々にほどけていく。
「良い鶏肉……」
尚、猟兵側でも、杏が反応していた。
『こ、これは……!』
『美味い!』
『プロテイン入りの味!』
一度食べ始めれば、もう止まらない。穂刈の親子丼を、ガツガツと平らげていくハゲ筋肉達。その構えは、もうすっかり解けていた。
今ならば、ほぼ無敵の効果もあるまい。それこそが穂刈の狙い。
「おかわりいかがですかー!」
せめて食べ終わるまで待ってから、穂刈は空になった丼を受け取り様に、固く握った杓文字による超高速の一撃を気合いと共に叩き付ける。
『プロテイーン!?』
驚愕の声を上げて吹っ飛ばされたハゲ筋肉の一体は、倒れて動かなくなった。
『し、しまったー!?』
『もう一度、地上を照す太陽のポーズだ!』
その意図に気づいたハゲ筋肉達は、慌てて腕を組んでポーズを取り直す。
そこに、うつろぎがびくんとしながら、にゅるんと近づいてきた。
(「長い……長い、道のりだった」)
コムラガエリモードを発動し自らこむら返りとなっていた為に、いつも以上に動き難かったうつろぎに取っては、屋内の一室でも決して短くない距離だ。
「んはーっ!」
声にならない呻き声を発しつつ、うつろぎは文字の下に広がる黒から腕を伸ばす。一瞬遅れて振り上げられたその腕は、ハゲ筋肉の股間に張り手となって直撃していた。
「ぅぁっ!」
『んのぉぉぉぉっ』
まだこむら返りなのに無理矢理動いたうつろぎと、股間に張り手を食らったハゲ筋肉の呻き声が同時に響く。
だが、ただの張り手に見えたうつろぎの今の一撃は、捨て身の一撃。
『っ!? ……ギブ』
股間から脳天まで突き抜けた衝撃に、ハゲ筋肉は倒れて動かなくなった。
「成程、ポーズを崩すか、ポーズをとられてもあの筋肉の防御力を上回る火力を出せば、何とかなるみたいっすね」
モルツクルスの言う通り、穂刈とうつろぎの攻撃が、それを証明している。
此処から猟兵達の反撃が始まる。
●ポージング対決
『『夕暮れに飛ぶ鴉のポーズ!』』
足で立ったまま、ハゲ筋肉の数体が片足上げて両腕を翼の様に広げる。
「うさみみメイドさん、ぽーじんぐ」
彼らの目の前で、杏が操るうさみみメイドさんが全く同じポーズを取った。
「どっちが先にポーズやめるか真剣勝負」
『『望むところだ!』』
ポージング対決と言われて、ハゲ筋肉が引き下がる筈もない。
(「彼らが最も興味を持つのが筋肉なのは間違いないでしょう。ならば……」)
そんなポージング対決の中、ハゲ筋肉達に歩み寄る摩那の眼鏡には、そのレンズをディスプレイとしたHMD『ガリレオ』の出した情報が映っていた。
何の情報か。
筋肉の情報である。
「この僧帽筋と後背筋、よく切れてます」
「ハムストリングス、が歌ってますね」
摩那は口々に、ハゲ筋肉達の筋肉を褒めて回る。
『ほう。筋肉の良さがわかるか! 筋肉教に入るか』
「ええ、判りますとも」
反応してきたハゲ筋肉の背で脈打つ筋肉に、摩那は指先で触れてつうっと滑らせる。なお、ガリレオのモザイク機能フル活用で、摩那は筋肉直視を全力で回避していたり。
その分、長い髪の一部を指で束ねて、わさわさこちょこちょと技術で勝負。
『ぶはっ!!』
溜まらず噴出すハゲ筋肉。そして崩れる鴉のポーズ。
「うさみみメイドさんの、かちー」
『し、しまった!?』
『『何をやっている!?』』
しれっと杏が告げた勝利宣言によって、ハゲ筋肉達の間に広がる動揺。
「隙ありです」
手首に金と銀の腕輪が輝く摩那の両掌から放たれた高圧の電流が、ハゲ筋肉達の間を駆け巡っていく。
ぷすぷすと全身から煙を上げて、倒れるハゲ筋肉達。
「メイドさんに目潰し、してもらうまでもないね?」
それを耐えたハゲ筋肉目掛けて、杏がうさ印の護身刀を抜き放った。
――鎌鼬。
風をも断ち切る刃の素早い一撃を、体が麻痺したハゲ筋肉達が避けられる筈もない。
斬り倒されたハゲ筋肉達は、無言で倒れていった。
●筋肉丸焼き
『『『神に捧げる祈りのポーズ! ふんぬっ!』』』
パンッと掌を力強く合わせたまま、固まるハゲ筋肉達。
それが祈りのポーズとやらなのだろう。まあ確かに、合掌だけど。あの掌と掌に挟まれたら大抵のものが潰されそうだけど。
だが、問題はその力強さではない。
この祈りは、周囲の無機物を邪神の眷属へと変える力がある。
そして――ビル、建物とは基本的に眷属だ。
ゴトンッ、ゴトンッ。
壁や天井から、球体にくりぬかれた一部が転がり落ちて来て、いつの間にか磨き抜かれたようにキラリと輝きを放ち始めている。
「Your attack does not reach me」
それを見たロダが発動した『Ubelcode03:Reflection』は反対属性を呼ぶ業。
はげと筋肉の反対属性――ロダが選んだのは、すぐ下の階にあった。
この最上階に辿り着くまでの下の各階の調査で、何度も見たもの――猛スピードで飛んで来たカツラが、ビルの残骸だったもの、の上にスポッと被せられた。
つまり、もうハゲじゃない。
キラリと輝く無機物ハゲだったもの、はガラガラと崩れ落ちて残骸と変わっていた。
後は――元を断つのみ。
「ロダ殿、自分が隙を作るっす」
モルツクルスの周りで、空気が揺らぎ出す。
「一流魔術師の魔法を御覧じろ! 全ての始原、全ての終焉。其は炎、其は光。汝が力を此処に乞う!」
口早にモルツクルスが唱え終わった直後、その周囲に30を越える炎の塊が出現した。
一見すると、比較的良くある炎の魔術の類に見えるかもしれない。
だが、その熱量だけで蜃気楼の様に空気を揺らがせる程の炎を生み出すとなると、それほどの炎の業はそうもないだろう。奇跡の力でもない限り。
自在太陽――アート・オブ・ザ・サン。
「地上を照す太陽のポーズ? 邪な存在は! 太陽の光に退くのがお決まりっす!」
モルツクルスが作った炎は、その1つ1つが太陽にも等しい熱量を秘めている。そんなものを浴びて、ハゲ筋肉達が無事でいられる筈もない。
ハゲ筋肉達も、眷属へと変わりつつあったくりぬかれた建物の一部も。自在太陽の炎の熱量に包まれて、焼け落ちていく。
「今っす、ロダ殿! でかいのお願いするっすねぇ!!」
「了解です」
モルツクルスの言葉に頷いて、飛び出すロダの手にあるのは望遠鏡のような銃身を持つ大型の銃器。ビームキャノン――Avrioscope。明日を見るもの。
「その自慢の頭と筋肉で耐えてごらんなさい!」
その銃口から放たれた光が、こんがり焼かれて柔軟性を失った筋肉の鎧に大きな風穴を開けていく。
光と炎が収まった時、もう動いているハゲ筋肉は残っていなかった。
『本当に、自爆せずに戦い終えられるとは……』
得意の自爆をせずにおわって、うつろぎが驚いたような声を上げる。
その横を、何か緑のものが入った袋を抱えた穂刈が通り過ぎて行った。
「そのまま倒れっぱなしも、な。せめてもの、武士の情けだ」
穂刈がかけた情け――それは倒れたハゲ達の頭に置かれた、生ワカメだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『風と煽る者『毛根全部枯れロイガー』』
|
POW : 毛根を枯らす風
予め【あまり効果のない育毛剤を使用しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ハゲロニアン・ブラスト
【自身の頭部】から【ハゲロニアンビーム】を放ち、【髪を失う幻】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : ハゲロニアン・チェイン
【ハゲロニアンビーム】が命中した対象を爆破し、更に互いを【将来薄くなる者たちの絆】で繋ぐ。
イラスト:井渡
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠クリーク・クリークフリークス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ロイガー現る
倒れ、力尽きたハゲ筋肉達が消えていく。
だが――これで終わらないのは、猟兵達も肌で感じていた。
その予感は直後に、現実のものとなる。
フロアの床が、ぱぁっと輝きを放ち出したのだ。召喚円が突如現れる。
『ハゲロ……ハゲロ……』
光の中から、怨嗟のような声が聞こえてくる。
ずるり、ずるり。
一本、また一本。蒼い鱗のようなものに覆われた触手が、這い出してきて――すぐに巨大な目玉がずぼっと現れた。
巨大な一つ目が、ギョロリと見下ろしてくる。
これこそが、風と煽る者――毛根全部枯れロイガー!
『ハゲーロ……ハーゲハーゲ』
不完全ながらも現界せし、邪神。
ハゲルマドン計画、最後の戦いが始まろうとしていた。
===============MSより==================
冒頭のコメントでも記載しましたが、この戦いでは『この3章の戦いの間だけ』『一時的なハゲ』のようになる可能性があります。
具体的には、敵のユーベルコードを食らったらです。
ハゲる覚悟は済ませた。
と言う方は、プレイング冒頭に1文字、☆をお書き下さい。
☆で覚悟完了と判断し、一時的にハゲる可能性が跳ね上がります。種族年齢性別関係なく、容赦なくハゲさせます。
元々ハゲ? 何か考えます。
なお、☆書かないからハゲない、とは限りません。
可能性はいつだって、ゼロではありません。
また、一時的にハゲても成否に支障はありません。
キャライメージ等と相談して、ご利用下さい。
======================================
モルツクルス・ゼーレヴェックス
☆ロダ殿御一緒
「なんて恐ろしい邪神なんすか!?……こっち見んな!」
自分のふっさふさが羨ましいんすか!
「……っすけど!こっちを狙ってるってのは好都合!見惚れてもらうっすよ!」
【光翼】を展開して【空中戦】
不規則な起動で翻弄しながらガッツリ【存在感】を放って視線を集め
美しく光の尾を引く【パフォーマンス】を見せつける
「さあ!光よ縛るっす!」
回避と束縛にいる支援に徹して近づかない
避けきれないなら【オーラ防御】
近づくの怖いっすからね……髪くらい安い
「にょわーーー!?髪が!髪が !」
やっぱり嘘ハゲたら悲しい!
しかし!ツルツルにハゲ上がれば光を反射しより一層注目を集められるというもの
「見晒せえ!この輝きを!」
ロダ・アイアゲート
モルツクルスさんと一緒
元々髪がない私には特に何もないと思いたいですが…相手は邪神ですからね、油断できません
正直言えば、私はあの触手の方が厄介ですね…うねうねしていて気持ち悪いです
UCでガジェットを召喚
大きな目には【目薬型のガジェット】を
【目立たない】ように気配を消して近づく
点眼液に見立てた水の銃弾を目玉に向かって【零距離射撃】で放ちましょう
モルツクルスさんがもしツルツルになったら、こっそりと眼球に内蔵されたカメラで撮影、データを保存
周りの人たちがハゲてしまったら眩しそうですね…なによりカオスな空間になりそうな気が
HMDゴーグルで視界を確保しておきましょう
滝舘・穂刈
☆
凄まじい怨念だな…(ごくり
ハゲの呪いか…
邪神の力ならば電気炊飯器をもハゲさせることができるかもしれん…
だがこのスイハンジャー、ハゲただけで米が炊けなくなるような軟弱な炊飯器ではない!!
杓文字を構えて、邪神に飛びかかり、しばし杓文字で戦うぞ
邪神よ!
米を食べて幸せになれば、髪のあるなしなど気にならなくなるぞ!
そうだ、いっそ俺のように炊飯器になってはどうだ?
ワカメがあれば髪の毛気分も味わえてお得だぞ
…ダメか
仕方あるまい
せめて貴様の未練が浄化されるよう全力を尽くそう!
天祥米散礼賛光で米を降らせ、米の祝福力で攻撃だ!
今夜はワカメごはんに決まりだな!
木元・杏
☆
さよなら、筋ハゲおじさんズ
こんにちは、はげろー
……はげろーは鴉のポーズしないの?
………………(つまらなさそうな顔)
メイドさんは前に出てはげろー殴って?
第六感働かせ触手を見切って回避させて前に詰めさせる
わたしは【鎌鼬】で援護射撃
ビームは剣のオーラで防御するけど、
ビーム、おっきな目から出ないのね?
少しざんねん
ゆで卵はつるつるでおいしい
ドーナツも丸くておいしい
はげ頭も丸くてつるつるできらきらで素敵(食べられないけど)
だからはげてもへいき……(簪がぽとり落ちた)
……簪つけれないね?
新しいアクセサリー買うのは
お金かかる
……メイドさん、殺って
あ、めいどさんも一緒にはげようね?
いちれんたくしょう(こくり)
黒木・摩那
ついに邪神がお出ましです。
これを倒せば、毛根は守られるはず……。
邪神の攻撃手段は目と触手。中でも目は明らかに危険。
先に何とかしなくては。
まず魔法剣を用意【破魔】【先制攻撃】。
次にUC【胡蝶天翔】でビルの素材を蝶に変換します。
その蝶達を邪神に向かわせることで、こちらの姿を隠します。
そして、ある程度近づいたところで
唐辛子コレクションのポーチから
とっておきの液体唐辛子の瓶を取り出して、邪神の目に投げつけます。
邪神に辛い刺激物は効くのかな?
最後に魔法剣で目にひと突きします。
防御は【第六感】と、【念動力】による空間曲げで対応します。
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー
その触手…髪の毛だね?
髪の毛だね?
髪の毛だね?
髪の毛だね?
髪の毛だよね?
では…その髪の毛を消し飛ばーす!(自爆)
と言うわけで自爆しに来ました
技能:捨て身の一撃もりもりでジバクモードで自爆するよ
UCの効果範囲に入ると同時に自爆っす
即自爆即退場の構えっす
基本的に1発の自爆に全力を注ぎます
作戦も何もないシンプルにただ自爆です
自爆の後はボロボロのぼろ雑巾のようになってその辺に転がっていると思います
●巻き起こる風は毛根を枯らす
『ハゲーロ! ハーゲ!』
蒼い鱗のようなものに覆われた触手が跳ね回るたびに、床や天井の一部が砕けて欠片が跳ね回る。
猟兵達の前に姿を現した邪神、毛根全部枯れロイガーは全身が出尽くすといきなり暴れ始めていた。
「むぅ。はげろー、意外とアクティブ。筋ハゲおじさんズは、ポーズ取ってるだけだったのに……!」
べしん、ばしん、と力強く床に叩き付けるロイガーの触手。第六感が離れろと告げるそれから距離を取りがら、木元・杏はつまらなさそうな視線を向けていた。
「はげろーは……鴉のポーズしないのね?」
『ハゲーロ!』
アクティブさが、杏には不満らしい。
「邪神の攻撃手段は、あの触手と本体の目と見て間違いない筈。中でも、本体の大きな目は明らかに危険」
黒木・摩那も触手の間合いの外に出ながら、注目するのは邪神の胴体――と呼んで良いのか疑問は残るが――の中央にある巨大な目だ。
「先に目を何とかしたいところだけど……」
「あの触手が厄介ですよね」
摩那の言葉に続ける形で、ロダ・アイアゲートがロイガーに視線を向ける。
「うねうねしている気持ち悪い上に、妙に力強いですからね――もしかして、脳筋が移ったりしてるんですかね?」
「ハゲさせる上に脳筋? なんて恐ろしい邪神なんすか!?」
ロダがふと思いついて口にした言葉を聞いて、後ろでモルツクルス・ゼーレヴェックスが顔色を変える。
「もやしでふっさふさな自分とは、相性最悪な気がするっす……こっち見んな!」
ロイガーの目が自分に向いているような気がして、モルツクルスはしっしっと手を振りながらじりじり退がる。
触手を振り回すロイガーから距離を取る猟兵が多い中、あえて向かう者もいた。
「くっ、なんと重たい触手だ! 凄まじい怨念だな……!」
その1人が、滝舘・穂刈こと、スイハンジャーその人(炊飯器)である。
「邪神よ! 米を食べろ! 米を食べて幸せになれば、髪の有る無しなど、気にならなくなるぞ!」
触手と杓文字で打ち合いながら、穂刈は声を張り上げる。
「そうだ、いっそ俺のように炊飯器になってはどうだ? ワカメがあれば髪の毛気分も味わえてお得だぞ」
『ハゲーロー!!!!』
「ぐおっ!」
穂刈の言葉に返って来たのは、勢いを増した触手だった。
ロイガーが振り回す触手が巻き起こす颶風が『毛根を枯らす風』となって、穂刈の体を吹き飛ばす。
「これが、毛根を枯らす風か? 意外と力業だな。ハゲの呪いの篭った力ならば、電気炊飯器をもハゲさせることもできるかと思ったが……ん? んん?」
壁に叩きつけられる前に着地した穂刈が、何かに気づいて首を傾げる。そして、ペタペタと自分の炊飯器頭を触り始めた。
「こ、これは――!」
何かに驚き明滅する炊飯器。
穂刈の手から、杓文字が零れ落ちる。
「や、やられた……」
「どうしたの、スイハンジャー?」
ガクリと膝を付いた穂刈の肩を、杏が叩く。
炊飯器頭に変化があったように見えないが――?
「内蓋が……内蓋が、ない!!」
穂刈の言う内蓋とは、炊飯器の蓋の裏側についているアレである。
最近のは大体着脱可能なアレである。
「え……。それって毛根扱いなの?」
「そこは俺も驚いている。だが、大事なものだ。別に無くてもご飯は炊けるが、内部の圧力が変わってしまうんだ……!」
眼鏡の奥で何かもの言いたげな視線をロイガーに向ける摩那の言葉に頷きながら、穂刈がゆっくりと立ち上がる。
まあ、うん。炊飯器としては、大事なものであろう。
「髪が無いなら内側をハゲさせて来るとなると、ロダ殿も油断できないっすね?」
「そうですね。元々髪がない私には、特に何もないと思いたかったですが……」
モルツクルスの言葉に頷くロダの中には、表情こそ変わらぬものの、戦慄にも似た言い知れぬ何かが走っていた。
それは、他の猟兵も同様だ。
あの触手を先ずは何とかしたいが、迂闊に近寄ると、ハゲる。
だが、そんな状況にむしろ心躍らせる猟兵もいた。
「あの触手は僕が何とかしよう」
自信に満ちた声を発するは、つるりと黒い、う、つ、ろ、ぎの4文字。
虚偽・うつろぎである。
「このひらがなをハゲさせる事が出来るなら、やってみせろ」
『ハゲーロ!』
地を這うようにと言うか実際這って進むうつろぎに、ロイガーの触手と『毛根を枯らす風』が襲い掛かる。
「まずさ。その触手……髪の毛だね?」
『ハゲーロ!』
触手をにゅるにゅると掻い潜り、或いは無数の腕で受け流し。うつろぎはゆっくりと、だが着実に距離を詰めながら、ロイガーに強く問いかけ始めた。
「髪の毛だね?」
『ハゲーロ!』
「髪の毛だね?」
『ハゲー』
「髪の毛だね?」
『ハゲ……?』
「髪の毛だよね? 育毛剤使ってるんだから、髪の毛だよね?」
『!?』
うつろぎは、見逃していなかった。ロイガーが、残っていた偽グッズの効きそうもない育毛剤を触手に振りかけていた事を。育毛剤を使うなら、そこは髪だ。
だが、その概念をごり押しする、その為に費やした時間は、うつろぎにも変化を及ぼしていた。
他の猟兵達の視線のさきで、うつろぎの名を表す形状が変わっていく。
その『一番上』にある線が消えていく。
「おや? これは――『う』じゃなくなっている?」
そう。これでは『うつろぎ』ではない。『つつろぎ』だ。
「うの線が僕の髪の毛か。まあ、良い」
それでもうつろぎは怯まない。捨て身の一撃に、代償は付き物だ。
うつろぎの文字の下から、しゅるしゅると伸びた12本の腕が、ロイガーの触手に絡みついていく。
「ゴッドうつろぎアタック……神風となり……僕の髪の毛を代償に、その髪の毛を消し飛ばーす!」
そして、次の瞬間。
うつろぎの全身が、ビル全体を揺らすほどの大爆発を起こした。
●その視線は毛根を枯らす
もうもうと立ち込める噴煙が、流れる風で晴れていく。
窓と言う窓は砕け散り、天井にも幾つか風穴が空いている。ロイガーのいるフロアは随分と風通しが良くなっていた。
『……』
その中に、ロイガーはまだ在った。
触手の大半を失って。
「……」
その爆発を起こしたうつろぎはと言うと、自爆で完全に力尽きて、窓枠に引っかかってぱたぱたとはためいていた。
一応巻き付いているので、あのまま飛んでいく事は無いだろう。
それに、彼の心配をしている余裕は無かった。
『ハゲロ……ハゲロニアン!』
ロイガーの大きな瞳が輝きを放つ。
「天に漂いし精霊よ。物に宿りて我に従え。姿さずけよ」
一瞬早く、摩那が掲げた魔法剣『緋月絢爛』からも、光が放たれていた。
摩那が光を浴びせたのは、ロイガーではない。ロイガーが触手で壊した、或いは先の爆発で崩れた、瓦礫の類。
ビルだったものが光を浴びると、黒い蝶へと変わっていく。
胡蝶天翔――パピヨン・ノワール。
無機物を黒蝶の群れと変えて操る業。
「行きなさい」
摩那が『緋月絢爛』を振り下ろすと同時に、黒い蝶が飛び立つ。
一瞬遅れてロイガーの瞳から放たれる怪しい光を遮るように、数え切れない程の黒い蝶が群れを成してその射線上に集まっていく。
破魔の力も込めた黒蝶が邪神の光を一瞬押さえ込むが、すぐに蹴散らされた。
だが――蝶を散ったその先には、それを操っていた摩那も他の猟兵もいはしない。
「ビーム、おっきな目から出るんだ……!」
心なし弾んだ杏の声は、ロイガーの横手から。
目を輝かせながらも、その小さな手には既にうさ印の護身刀が握られている。
「めいどさん、はげろー殴って?」
片手でうさみみメイド人形を操りグーパンさせながら、杏はもう片方の手で護身刀でヒュンッと風を斬る音を鳴らし、ロイガーに斬り付ける。
『ハゲロ……ニアン』
「あ、意外と早い」
次の瞬間、ロイガーがギョロっと動かした瞳の中に杏が写りこんでいた。
「拙いな! おい、このスイハンジャーを忘れるな! 内蓋がハゲただけで米が炊けなくなるような、軟弱な炊飯器ではない!!」
横から穂刈が杓文字で殴りつけるが、ロイガーは視線を外さない。
「これは、避けられないね。でも」
怪しく輝くロイガーの視線から逃れる時間はないと、杏の第六感が告げている。
「ゆで卵はつるつるでおいしい。ドーナツも丸くておいしい。はげ頭も丸くてつるつるできらきらで素敵――食べられないけど」
防ぎ切れそうにないけれど、杏は刀にオーラを纏わせた。
「だからはげてもへいき……あ、めいどさんも一緒にはげようね?」
いちれんたくしょう、と杏が笑顔でうさみみメイドさんを後ろに控えさせる。隠れるのではなく、何故か後ろに。
『――!!』
そして、ハゲロニアンビームが放たれた。
大きな光に上半身を飲み込まれた杏の頭から、艶やかな漆黒の髪が消えていき――ふと小さな重みが消える。
振り向くと、杏の実と紫色の桜の花の飾りの簪が、うさみみメイドさんの掌の上にぽとりと落ちていた。後ろに控えさせたのは、この為だ。
「ありがと、めいどさ――」
振り向いた杏の金の瞳が、驚きに見開かれる。
何故なら、メイドさんの頭から――ウサミミがなくなっていた。
「うさみみ……毛根だった?」
髪よりは上にあるね。
「このままだと……わたしも簪つけれないね? 新しいアクセサリー買うのは、お金かかるし」
それに――何となくだが、杏は簪を失くしちゃだめな気がしていた。
「……メイドさん、殺っちゃおう」
小さな身体でギラリと殺意を滲ませて。杏がうさみみじゃなくなったメイドさん人形とともにロイガーに斬りかかる。
「少女すら容赦ないとは。悪い目には、目薬が必要ですね」
ロダの『Dear pal』が形を変えていく。
ガジェットショータイム――ロダが作り上げたのは、一見、水鉄砲みたいな何か。その正体は、目薬ガジェット。
「『eye droper』とでも呼びましょうか」
光を放ち終わった邪神の瞳に狙いを定め、ロダが放つは点眼液に見立てた水弾。
『……』
ロイガー、大きな目玉をぱちくり。
『ハゲロニアン!』
そして再び放たれた怪しい光が、水の膜を吹き飛ばした。
「……その目薬ガジェット、中身を弄れます?」
「出来ますよ?」
その様子を見て、摩那がロダに声をかけていた。
「中身をこれにしてみるのはどうでしょう?」
「ふむふむ、成程。……モルツクルスさん。改造するので、時間を稼いで下さい」
摩那のアイディアを聞いたロダは、ひとつ頷くと改造に取り掛かった。
「了解っす! 何か気を引くでもなく、自分ガン見されてるっすよ!」
杏と穂刈が攻撃しても、ロイガーはモルツクルスに視線を向けていた。
「自分のふっさふさが羨ましいんすかね? よくわからねっすけど! こっちを狙ってるってのは好都合! 見惚れてもらうっすよ!」
――天使という幻想にこそ帰依し、光という力でこそ天駆ける。
モルツクルスの背中から溢れた魔術の光が、翼を成した。
「自分はこっちっすよ!」
モルツクルスは天使の様に飛び上がった。展開した光翼を見せ付けるように光の尾を引きながら、翻弄するようにロイガーの周りを高速で飛び回る。
「さあ! 光よ縛るっす!」
光の尾は、ただ目立つためだけではない。その光は、束縛術式の光でもある。
モルツクルスが飛び回る度に、光の線が縄の様にロイガーに巻きついていった。
『ハゲロ……』
しかし、ロイガーの瞳の動きを完全に止める事は出来なかった。むしろ自身を縛る光を頼りに、その出所である翼からモルツクルスをギョロリと睨み続けている。
その瞳が、怪しい輝きを放っていた。
「うっ……ここで避けたら束縛も緩んじゃうっすね。か、髪くらい安いものっす」
『ハゲロニアーン!』
「っ!」
ロイガーの瞳から放たれた光は、念のためにとオーラを纏ったモルツクルスに当たった瞬間に、小さな爆発を起こした。
「にょわーーー!? 髪が! 髪が!!!!」
爆光の中から響く、モルツクルスの悲鳴。『成せば成る』のハチマキが、光の中から出てきてふわりと宙を舞う。
数秒後、光が収まったそこには、見事に頭がツルッツルになったモルツクルスの姿があった。あれだけふっさふさだったのに。と言うか、頭が光っている。
天使の輪? いや、恐らくアレが、将来薄くなる者たちの絆、なる光だろう。
「やっぱりハゲたら悲しいっす!」
その光がどこにも伸びないことも、モルツクルスに悲しさを感じさせていた。
(「しかし! ここまでツルツルにハゲ上がれば、光ってもいるし、より一層注目を集められるというもの!」)
「見晒せえ! この輝きを!」
『……』
だが、ロイガーはもうモルツクルスを見ていなかった。
「どう言う事っすかあ!?」
「多分、ハゲさせてない人優先」
「さっきから俺達には、ろくな反撃も来てないからな」
光る頭を抱えるモルツクルスに、杏と穂刈が告げる。
恐らく、触手を失ったことで、ロイガーは1人1人ハゲさせていく事に、方針を変えたのだろう。
そうなれば、狙われるのは後2人と言う事になる。
「させないわよ」
視線を向けるロイガーに、摩那が再び瓦礫を変えた黒蝶の群れを放った。
稼ぐ時間は、僅かでいい。
「お待たせしました。完成です」
その声に摩那は黒蝶の群れを操作する。
さぁっと動いて割れた黒蝶の群れの向こうにいたのは、改良した目薬ガジェットを構えるロダの姿。
「今度は強めの目薬です」
ロイガーが瞳から光を放つより僅かに早く、ロダが真赤な水弾を放っていた。光がロダを掠め、ロイガーの瞳に当たった赤い水弾が、ぱしゃっと小さな音を立てて弾ける。
『!?!?!?!?!?!?』
次の瞬間、ロイガーから声にならない驚きが発せられた。
「モルツクルスさん、瞬きさせないで下さい」
「よしきたっす!」
ロダの声で、モルツクルスが光の縄を絞り、ロイガーの瞼を束縛する。
「邪神にも、辛い刺激物は効くみたいですね?」
じんわりとロイガーの中に浸透していく赤い液体の正体は、摩那がポーチの中に持っていた、唐辛子コレクションの1つ。
その中でも特に激辛な液体唐辛子――それがガジェットによって濃縮されたものが、今ロイガーを襲っている水の正体だ。
「もう1発です」
「その前に追い唐辛子しておきますね」
摩那が液体唐辛子を足した目薬ガジェットから、ロダが2発目の水弾を放てば、瞬きを封じられたロイガーの目は赤い液体の幕に覆われていた。
「今こそ米の祝福力で全力を尽くす時だな!」
畳み掛けるべく、穂刈が掲げた杓文字が光を放つ。
「はじめに米ありき――」
穂刈が杓文字を振り下ろすと、どこからともなく飛んで来た『聖なる米』がシャワーとなってロイガーに降り注いだ。
より正確に言えば、唐辛子濃縮目薬にさらされ続けているところに、米。
大量の米は赤い液体を吸いとって赤く染まり、ロイガーの瞳にピタリと張り付いたり、瞼の裏にも滑り込んでいく。
『くぁwせdrftgyふじこlp!?』
最早ロイガーは、判る言葉を発する余裕すらなくなっている。刺激に耐えてじったんばったんと飛び跳ねるばかり。
ただの唐辛子と米では、ここまでの効果は出なかっただろう。ユーベルコードを介して濃縮した唐辛子と、ユーベルコードで出した聖なる米だったからこそだ。
『――……』
やがてロイガーの動きが止まった時、その瞳は真赤になっていた。
「毛根を守る為です」
「うさみみを取り戻す」
「せめて貴様の未練が浄化されるよう願うぞ!」
力なく佇むロイガーに、摩那が緋月絢爛の刃を突き刺し、杏が振り下ろした白銀の光剣が暖かな陽光となって散り、穂刈が杓文字を叩き込む。
『……』
力尽きたロイガーの姿が、薄くなって消えて行った。
それと同時に、杏の頭は何事もなかったかのように漆黒の髪が戻っていた。杏のメイドさんもウサミミが戻っている。
「おお、内蓋があるのが判る!」
穂刈の頭も無事に戻ったらしい。まだ窓枠にひっかかってる黒いのも、つつろぎからうつろぎに戻っているだろう。
「……」
いつもの黒髪に戻った頭に鉢巻を巻き直しながら、モルツクルスはロダの頭に視線を向けていた。
(「赤い目薬を撃った直後、掠めた光がロダ殿の頭部の一部を透明に変えてたような気がしたのは、気のせいすかね……?」)
ほんの一部だったし、その後すぐにロイガーを倒したから確かめる術はもうないが。
(「ま、きっと自分の見間違いっすね」)
そうひとりごちて結論付けたモルツクルスは、知らない。
彼がツルツルにハゲていた間の姿を、ロダが眼球に内蔵されたカメラでバッチリ録画してちゃっかり保存していることなど――。
「カオスな戦いでしたね」
そんな事はおくびにも出さず、ロダは淡々と呟いていた。
何はともあれ、UDCアースの人々の毛根とか生え際は、守られたのである。
大成功
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