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黄昏に響く狂歌

#UDCアース

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#UDCアース


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●狂乱の唄
 ファンサービスの為のライブと聞いて、迷わず参加を決めた。
 最近噂になってきた程度のマイナーバンドではあったが、最近大手のスポンサーがついたことで少し大きなハコを借りることができたらしい。また、そのスポンサーの意向でこれまでついてきてくれたファンの為、無料でライブを行うとのこと。
 活動を始めたころから応援していた、大好きなバンドだった。スポンサーがついてくれたことで、ようやく日の目を見る機会を得たのだろう。
 これからも応援していく。その決意と共に、今日というライブを楽しもうと心に決めていた。

 書きならすギターの音。ボーカルのシャウトが響く。変わらない。ずっと追いかけていた、これからも追い続ける彼らの曲は、歌は、やはり変わらない。
 幾度も幾度も手を振り上げ、応援する。最高にノッてきたのが分かる。ほら、隣の人だって腕をありったけ振り上げている。あんなにたくさんの腕があるなんて、応援し放題で羨ましい。
 あまりにテンションが上がりすぎたのだろうか、後ろから腕を絡ませてきた人がいるが今だけは許してあげてもいいだろう。それぐらい自分も愉しいのだから、お裾分けというものだ。
 あぁ、楽しい。ほら、ギターをかき鳴らす彼はその背から伸びる腕まで使っているし、ボーカルが歌い上げている声が、言葉がさらに高い位置へと意識を振り上げていく。
 前にいる誰かの頭が爆ぜるように大きくなった。彼らが見えないじゃないか、どうしてくれるのか。
 後ろからの腕が高く上げてくれる。あぁ、彼らが見えるようになった。肥大化した頭も、肩や胴から伸びる腕も、みんなみんな格好良い。会場が一つにまとまるような感覚。いいや、実際に一つになっているのだ。ほら、隣の彼の考えが分かる。前の人の狂喜が分かる。それだけじゃない、ボーカルが上げる声の感覚が、ギターの弦を弾く感覚が、ドラムを叩きならす感覚が手に取るようにわかる。あぁ、そうだ、私は、アタシは、僕は、俺は、こうして一つになることこそが悦びなのだ。
 混濁する意識。脳裏に響き続ける歌声。口からこぼれ出るのは歓声か嬌声か、どうだっていい。だって今、ものすごく気持ちよくて楽しいのだから。あぁ、溶ける、溶けていく。皆と一緒になっていく。変わっていく。変わっていく。変わっていく。
 あぁ、楽しい。愉しい。タノシイ。タノシイ。タノシイ。タノシイ。タノシイ。タノシイ……。

 ――タスケテ。

●その願いに手を伸ばす者達へ
「紳士淑女の諸姉諸兄、どうか我が声に耳を傾けては頂けないだろうか」
 夕刻のグリモアベースに響くよく通る声に、ちょうど手が空いていた猟兵達が顔を見合わせ声が聞こえたほうへと向かう。
 その先にいたルクス・ミレニアム(空言騙り・f09317)は、ある程度彼らが集まってくるのを待ってから、再度口を開く。
「我が言葉を聞き届けてくれたことに感謝を。しかし、私は貴君等に悲劇を伝えねばならぬ。これもグリモアの導き故に」
 芝居がかった口調に、口元に微笑を履いていれば一体何のおふざけかと疑いかねないところだが、しかし彼の瞳は猟兵達を真摯に見つめている。先を急かす様に視線を向けてくる猟兵達に一礼し、ルクスは言葉を続けた。
「世界はUDCアース。かの世界におけるオブリビオン……邪神を崇拝する教団が、儀式により邪神の降臨を行おうとしている。今回ははっきりと儀式の場所まで見ることができた。だが……その儀式を執り行うのは教団員ではない。彼らは無辜の一般人だ」
 眉を寄せるもの、首を傾げるもの、疑問の声を上げるものがいる。邪神の召喚や降臨の儀式となればその手順等もあり、一般人に容易くできるようなものではないはずだ。無知でも簡単に起こせるようなものであれば、邪神やUDC怪物の秘匿難易度はもっと高くなっていることだろう。
 その意見に同意するようにルクスは頷いて、しかし、と口にした。
「環境と状況を整えたのは教団員だ。だが、実際に儀式を実行するのは教団とは無関係な者達だ。教団員は彼らを生贄として邪神を降臨させるつもりでいて……そして、邪神の降臨は成った。一つのライブハウスで演奏していたバンドメンバー、演奏を聴きに来ていた客の全てを呑み、喰らい、取り込んで」
 そこで一度言葉を区切ったルクスは瞳を閉じ、一息を挟む。見た予知の衝撃を受け流すような間に猟兵達は口を挟むことはない。そのことに短く感謝を告げ、紅の瞳を開く。

「既にライブは始まっている。儀式の進行を確認するために教団員も潜んでいるとは思うが、これは一旦置いておいて欲しい。まずは儀式の要……メタルバンドが行うライブをどうにかして止めてほしい。ただ、客もバンドメンバーも熱狂の渦中にいる……ただ声をかけてやめろ、というだけでは止まらない。彼らは一般人故、暴力に出る訳にもいかない」
 手段として挙げられるのは、ライブ会場に乗り込みその場で対バンを申し込んで止めること。あるいは、会場の防災サイレン等をならし観客、バンドメンバーの目を覚まさせて避難させること。熱狂を招いている音楽内の呪詛そのものに干渉し、解呪するというのも有効だ。
「手段は問わない。ライブを止める事さえできれば儀式は中断され、そうなれば教団員たちも黙ってはいられない。必ず顔を出してくるはずだ」
 ライブの中断に成功すれば、その時点で会場に残っているバンドメンバーと客の避難誘導はUDC組織員が協力してくれる。彼らに任せても問題はないし、記憶処置等の後始末も彼らがやってくれる事だろう。
 だが、その間に襲い掛かってくる教団員やその下僕、あるいは中途半端な儀式の結果生じた者がいればその相手をするのは猟兵の役割となる。
「テレポート先はライブ会場近辺、すぐに会場に向かえる位置となる。儀式への生贄は多いほうが良いからか、ライブ会場への入場に特に制限はない。ただ、会場設備に何か仕掛けたいのであれば人目を避ける必要はあるだろう」
 そこまでを告げた彼は、猟兵達の顔を見回す。彼ら、あるいは彼女らの表情がすでに挑むものとなっていることを確認し、一つ頷いた。
「簡単な事ではないかもしれない。だが、私は貴君等に掛かれば容易い仕事であろうと信じている。……それでは、かの地へと向かう準備を。どうか、この予知を空言へと落とし、笑ってくれ」


天瀬
 実はライブとか未経験に等しい天瀬です、今回はUDCアースでの事件です。
 初めはライブの妨害からとなります。
 妨害成功後、教団員率いる下僕の群れと戦闘、そしてボス戦へという流れとなります。

 今回から1章冒頭に幕間リプレイをしなくて済むよう、OPで転移先と初期状況について言及するようにしております。
 2章から幕間リプレイが挟まることがある、と認識してくだされば幸いです。

 なお、2章では触手くんが敵となりますが、くっころ系のような展開は期待なされぬよう願います。
 普通に殺意でかかってきますのでご注意ください。
 また、3章でボスのセリフが文字化けになっていた場合、仕様とお思いください。
 理解できない言語の表現と思っていただければ幸いです。

 それでは、皆様の参加・プレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『アングラ・デスメタ・コンサート』

POW   :    ライブ会場に乗り込み、対バンを申し込む。目には目を、音楽には音楽を……!!

SPD   :    会場の防災サイレンを鳴らすなりしてオーディエンスの目を覚まさせて避難誘導する

WIZ   :    音楽には洗脳する呪詛が組み込まれているようだ。魔術等で解呪(ディスペリング)を試みる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鏡磨・シロミ
……シロミ、歌は、得意… だけど、対バン? は、多分、無理。
タイプが、まず、違うし…(メタルには不向きな声質&音量や声量に恐らく負ける)

だから、シロミは… 呪詛の、解呪を、試みる… よ。
幸いにも… シロミ、呪術に関する、秘術書、持ってる。
その中にある、解呪の項を、探して… 片っ端から、試してみる。

もし… 声に出して、読み上げる、必要が、あるなら… ライブ会場の、放送室を、少し、借りることに、なる… かも。
その時は… 一般人を、巻き込まない様に 、『変装』で、係員に、なりすまして、『目立たない』を使って、背後から【シロミの世界】を、発動して… 一時的に、鏡写しの世界に、移って、貰うよ。


ガーネット・グレイローズ
【wiz】で行動。要はライブを妨害すればいいんだろう? なら話は簡単だ。客としてライブに潜入。刀は〈迷彩〉で隠して中に持ち込む。音楽に同調しないように、意識を強く保ち、妨害の機会を伺う。機材への直接攻撃は、大惨事を招くかもしれん。ならば…。このアカツキに、会場に満ちた呪詛を食わせてみるか。少しやかましいが、堪えてくれよ我が愛刀よ。アカツキを鞘から少し抜き、ユーベルコード〈妖刀の導き〉を使用。解呪とまではいかなくとも、多少邪気を薄めるぐらいはできるだろうか? ついでに、メンバーから〈催眠術〉で情報を引き出してみる。「このライブを企画したのはどこの誰だ? 業界の関係者か?」



ライブ会場は既に熱気で満ちていた。客として普通に会場に足を運んだガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、周囲を確認して小さく吐息を零す。
 耳に届いてくる音楽、そこに含まれるであろう呪詛は猟兵に作用を及ぼすほど強力なものではなかったが、それでもこの熱気と音楽にのまれてしまえばどうなるかわからない。
 同調しないに越したことはない、と改めて意識を強く持つ。隠して持ち込んだ愛刀の感触を確認しながら周囲を確認すれば、誰もがステージに夢中になっている様子。これならば、多少刃を引き抜いてもばれることはないだろうか。
 とはいえやはりこちらも警戒しておくに越したことはない。端の方、人目につかないであろう場所まで移動したところで、同じように隅に移動してきていた鏡磨・シロミ(神出鬼没のガラテイア・f00224)と合流する。
 出発時に顔を合わせていれば互いに猟兵だということにはすぐに気づく。その上で行動指針も同じなのだろうとガーネットは判断し、そこでふと首をかしげた。
「お前は、歌うのが得意だったのではないか?」
 歌声でもって世界に干渉する神秘の歌い手たちがいる。今目の前にいる彼女は確かそうだったような、と過った為のガーネットの問いにシロミは少し困ったように眉を寄せた。
「……歌は、得意…だけど、対バンは、多分、無理」
「成程」
 ぽつぽつと話す様子と声から考えて、シロミが得意とする歌は少なくとも今ここで会場を支配しているような騒がしいものではないのだろう。ならば、歌をぶつけ合うという選択肢では声量と音量に負け、逆にバンドメンバーと客をより盛り上がらせる結果になるかもしれない。それでは意味がない。
「ならば呪詛対策か。私はこのアカツキに呪詛を食わせてみようと思うが……」
「……呪術に関する、秘術書に…呪詛を、集めるの、あった」
 解呪についてのページを探していた際に見つけたもの。解呪というよりは封呪の為の秘術であり、今回有効そうな物品が手元にないため使えないかとシロミは判断していたのだが、有効に用いれる物があるとなれば話は異なる。
 視線を向けあって頷きは互いに一つ。シロミが秘術書を開いてそのページの内容を確認し、読み上げ始める。静かな声は騒音にかき消され遠くまでは届かぬものの、秘術として発動されたそれは会場内に満ちる呪詛を彼女たちのもとへ引き寄せていく。
「よし。……少しやかましいが、耐えてくれよ我が愛刀よ」
 周囲から見えぬよう、陰に隠れた位置で少しだけ刀身を晒された妖刀は、周囲に満ちる呪詛を吸い上げ、喰らいゆく。喰らった呪詛はそのまま妖気を強める糧となっているのか、その刀身はうっすらと赤い光を纏い始めていた。
「呪詛は薄らいでは……いるか」
 熱狂の渦はまだ止まらない。だが、二人の目にはどことなくその勢いに陰が射しているように映った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルファ・ユニ
曲のセンスから何まで、ユニの趣味じゃないなぁ…呪詛を音楽の構成ごと作り替えてしまおう!音響さんを後ろから一発殴って代わってもらおう。
あとはユニが好きなようにアレンジしちゃうね。ギターのディストーションを切って静かな音にしたり、サンプラーやPCを繋いでカットアップとかでEDMみたいにしちゃったり。
途中で邪魔されたら困るから、解呪が終わるまではあくまで本人達も楽しく気持ちよく歌えるような音を作るよ。
ユニの作った音、気に入ってくれるかな?ううん、絶対みんなユニの作った音の方が好きだよね。


ムルヘルベル・アーキロギア
【使用能力値:WIZ】
ライブ会場を使った儀式であるか。個人的興味は尽きぬがまずは事を収めねば
とはいえワガハイに歌の素養はない。ここは呪詛の解除を……いや待てよ
「この中で、彼奴らに音楽で対抗しようという者はどの程度居る?」
猟兵たちにそう問いかけ、肯定した者にもう言おう
「オヌシらの音楽に、ワガハイの呪詛を組み込むのはどうだろうか?」
呪詛といってもワクチンのようなもの、彼奴らの呪詛を打ち消すためのもの
許可が得られれば、実際に対バンとやらが始まったところで猟兵を支援する
もしも誰も対バンとやらに挑む者がいないか許可が出なければ
おとなしく正攻法で解呪に挑むとも
その場合、UCを使用し魔神に音の魔力を食わせる



●裏方、音楽干渉
 他方、音響設備の前で倒れるスタッフ達。後方から見事な一撃で意識を刈り落とされた彼らを見て、ムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)は軽く肩を竦めた。下手人はアルファ・ユニ(ミレナリィドールの電脳精霊術士・f07535)、今現在ごそごそと音響設備をいじっている猟兵である。
 念のためとばかりにムルヘルベルは倒れ伏すスタッフの一人の首元に手を当ててから、そっと合掌を送った。
「何をやっているのかな、ムルヘルベルさん?」
「いや、災難であったなと」
 さすがに見咎められたらしくかけられた声に平然と返すムルヘルベル。無論、被害者の彼らはちゃんと生きている。
「それで、オヌシが好きな音楽とやらは作れるか?」
「うん、大丈夫そう!」
 なればとムルヘルベルは片眼鏡を持ち上げて場所を整える。彼がやろうと目論んでいるのは今ライブで行われてるのと同じように、音楽に呪詛を組み込むということ。
 ただし、組み込む呪詛は今現在ライブで用いられているものへのカウンターとなるもの。目には目を、歯には歯をというのであれば呪詛には呪詛を。打ち消し合わせることで解呪を行うことを狙いとしていた。
 ……残念ながら対バンに挑むという猟兵は彼が声をかけた中にはいなかったが、しかし、ライブでかかる音楽を構成ごと作り変えてしまおうと画策するアルファがいた。
 折角だから音楽に呪詛を乗せることを試してみたいムルヘルベルはアルファの策に乗ることを決め、こうしてここまでやってきたとなる。
「では始めるとしようか!」
「うん、アレンジなら任せて!」
 かくして、ユニ主導による音楽構成の改変が始まる。掻き鳴らされていたエレキギターは音の歪みを取り除かれ、静かな音となり。また、メタルバンドが鳴らしている筈のリズムは器用にサンプリングされた別の音楽と混ぜ合わされ、どこか電子音じみたダンスミュージックにも聞こえるように。
 音楽が変わっているはずなのに熱狂する観客やバンドメンバーが今一つそのことに違和感を覚えた様子を見せないのは、場の空気や呪詛の効果だけではなく、ノリやすい音を作り上げてのけた彼女の腕によるものだろうか。
 たった一人を輝かせるために身に着け、磨き上げた技術は今この環境においても間違いなく有効に働いている。
 だが、ただでさえ会場全体の呪詛の濃度が下がってきていたところに音楽そのものに干渉され、さらにはカウンターとなる呪詛まで仕込まれていれば状況に違和感を覚え始めた者の姿も散見されるようになってきていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ビードット・ワイワイ
多少の混乱は起ころうが邪神めの下僕になるよりましであろう。
【目立たない】ようにスタッフに【変装】。【破壊工作】にて一部機器を破壊し発煙筒を【目立たない】ように設置。
その後警報を作動。気づかぬならば【怪力】にて音を立て【存在感】にて引き付け呼び掛け【恐怖を与える】。
スタッフが確認に来るならば【誘惑】を使いて一時的に動きを止め【催眠術】にて避難誘導させよう。
その後我も【コミュ力】にて落ち着かせ【救助活動】のため避難させつつ会場にて残りし者を対処せし。

見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。信じし神は何をせり?神は人を救いわせぬ。人を救うは人なりて。信じし神の幻想抱きここにて汝を葬らん。


河南・聖
【spd】
呪詛の解呪って即興でやるには難易度が高いのです……
解析とかは苦手分野ですし
この世界の楽器や音楽にまだ詳しくないので、音楽も難しいし
となれば私ができるのは会場の防災サイレン使った後避難誘導ですか
壁なんかにある赤いのを探してボタンを押せばいいのですよね
煙を起こしてもいいらしいですけど、下手に炎使って避難誘導前に大火事になっても困りますから、今回は火気厳禁で。

避難は任せてもいいのですよね?
じゃあサイレンを鳴らした後は会場内で逃げ遅れてる人が居ないかの見回りも、念の為しておきましょう。
あ、邪魔してくる相手は容赦なく斬ります。



●誘導への道筋
 ガーネットとシロミが合流し、アルファとムルヘルベルが音響を弄っていた時。スタッフに変装したビードット・ワイワイ(スクラップアンドビルド・f02622)は目立たないように気を付けながらも、発煙筒を設置していた。機器の破壊も考えはしたのだが、何が起こるかわからない、という意見やそもそも機材を用いての対策を練っていた者達が居たため、今回は見送っていた。
 火事そのものを起こさずとも、発煙筒で煙を焚けば火災報知器が反応する。火の気が全くないという訳ではないが、発炎筒でなければ火事になる恐れはかなり低いだろう。
 なるほど、とうなずいたのは河南・聖(始まりの白き翼・f00831)。下手に火を使って大火事になっては困ると、煙を出すための炎は使わないようにと考えていたのだが……真っ先に直接炎の使用に思考が向かったのは生まれた世界の環境によるものか。
 手分けして発煙筒を仕掛け、ふと会場の方を見れば呪詛は大分薄れており熱狂から解放されている客も見受けられる状況。視線を合わせた二人はうなずいて、設置していた発煙筒を動作させていく。
 上がる煙が火災報知機を鳴らし、その音に大分正気を取り戻していた客達がざわつき始めた。
「避難を急いでください! 早く!」
 聖が上げた声に、我先にと出口の方へと走っていく客がいる。駆けつけてきたスタッフに対しては、変装していたビードットが割って入った。
 スタッフたちの目を覗き込みながら、ビードットが彼らへと告げる。
「見ての通り煙が発生している。汝等も避難誘導を行え」
 声をかけられたスタッフ達は、何処かうつろな様子で頷きを見せてから聖やビードットを手伝うように、正気に返り逃げ始めた客の誘導を始めていた。
「……今、何をしました?」
「ちょっとした催眠術だ、害はない」
 少々様子がおかしく見えたスタッフ達の様子に聖は少しばかり疑問の視線を投げたが、ビードットは何でもないとばかりに応じる。ユーベルコードを用いたわけではなく、ちょっとした技能で誘い惑わせ、催眠術を仕掛けただけ。ここから出ればすぐに解ける程度、と。
 ならいいか、と聖も避難誘導を優先し、なぜか逃げようとする周囲の客を引き留めようとしていた者を鞘ごと引き抜いた剣でとりあえず殴りつけて黙らせておく。斬り捨てるつもりで柄に手をかけたものの、少なくとも見た目は人間、いきなり斬り捨てた場合の周囲の反応を考えての行動だった。
 客は減っていく。だが、最も深く影響を受けているだろうバンドメンバーと、最前列にいたファンたちはまだ熱狂の中にある。脅すか、叩き伏せてでも。そう思って彼女達は踏み出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

皆川・宙
「クケケケケーッ!電脳神シャイターン様のカミワザを拝ませてやるぜぇーッ!!」
ライブ会場すぐ近くから自作ハンドヘルドターミナルと電脳ゴーグルを使って無線での会場の電気系統のハッキングによる掌握を試みる。ハッキングに成功した場合、意図的に停電させ灯りを消し、電気楽器やマイク、スピーカーなどを使用不能にし、ライブ自体が続行できないようにする。
ハッキングに失敗した場合は素に戻って「あれ・・・?な、なんでできないの?」ってなる。



●最後の駄目押し
 あと僅か。熱狂の中に入れ度、正気も兆し始めている状況。客に紛れていたサクラは聖に殴り倒されており、異変に気付いた教団員達が会場へと到達しようとしたちょうどその時に。
「クケケケケーッ!電脳神シャイターン様のカミワザを拝ませてやるぜぇーッ!!」
 バツン、と音を立てて照明が落ち、停電の影響を受けて音楽を奏でていた音響設備が異音を発して止まる。ここに至るまでに呪詛を薄め、廃されていればその異変は残った者達の正気を取り戻すに十分な効果を発揮した。
 仕掛けたのは皆川・宙(自称ウィザード級ハッカー・f10169)。『電脳神シャイターン』を名乗る彼は会場近くから無線で会場の電気系統へのハッキングを試みて、状況を見て取り一息に停電を発生させたのだ。
 急激な環境の変化に正気を取り戻したものの、呆けたように固まるファンやバンドメンバー。そんな彼らに猟兵達は駆け寄り、声をかけて避難させていく。
 宙も出口付近の電気系統を復帰させその避難をしやすいように導いていく。
「オレにかかればこんなもんよぉ!!」
 会場にいた一般人全てを対比し終えたところで、停電していた電気系統を復旧させる。会場に残っていたのは、猟兵と教団員のみとなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:某君

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂気の触手
「――なんということだ」
 教団員の一人が悲鳴のように零す。確かに上手く回っていたはずなのだ。愚かなバンドメンバーを口先で操り、ファンという生贄を集めさせ、神の降臨にささげる。
「貴様らか。貴様らが我らが神の降臨を邪魔したのか……だが。だが、まだだ」
 まだ、神の残滓はある。まだ神の降臨は叶う。教団員は狂ったように笑い、告げる。
「貴様らを贄に、我らが神へ許しを請い、降臨頂くとしよう……やれ」
 手を振り下ろす教団員。その動きに反応したように、周囲のローブを纏った教団員の……そして殴られ床に倒れ伏していた教団員の身体が爆ぜる。
 そこにいたのは、紫色の冒涜的な触手の塊。人の理性を、正気を啜り狂わせるもの。オブリビオンでもある、触手の怪物。
 それらはうごめきながら、猟兵達に触手を伸ばしてくる――こいつらを片付けなければ、その向こうにいる教団員に手は届かない。
ムルヘルベル・アーキロギア
くだらん! まったくくだらんな!
ライブを儀式の場に選ぶなどと、酔狂なことをしておるのだからどんな連中かと思えば、あっさり狂気に身を売り渡すか!
所詮邪神の輩などこんなもの、ならば存分に相手をしてやるとも
「オヌシらの崇める神と、その狂気がいかに卑小なるものか。ワガハイが教えてやろう!」
装備している【コズミック・フォージ】を用いて五芒星を描き、失われし音韻の呪文を唱える、すなわち【封印文法】よ
「これなるは狂気をも封じる秩序の理、異界の怪物ごときが抗えるはずもあるまい」
「禁断の知識を蒐め封じるは我が使命。オヌシらの天敵ということだ!」
可能であれば、仲間たちの攻撃に合わせて効果的に拘束を与える


ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。人より生まれし醜悪なる体躯。意思なくして命受け動く存在なり。そこに汝の未来無し。ここが汝の破滅なり。

【ガジェットショータイム】にて【目立たない】よう暗く【迷彩】を施された小型浮遊砲台を複数作成せし。これなるは【空中戦】なり。醜悪なる物は【属性攻撃】を付与せし浮遊砲台による雷撃にて滅却せし。避けようとも複数ありて【2回攻撃】可能なり。

触手に対してこれなるガジェットは盾ともなろう。触手塊など【なぎはらい】【踏みつけ】【怪力】にて投げ返そう。これが汝の末路なり。


ガーネット・グレイローズ
触手に絡め取られないように、速さでいくか。基本は爆発的加速で
接近し攻撃。反撃の方向とタイミングを読んでの迎撃、離脱の
ヒットアンドアウェーで戦おう。
【妖剣解放】を使用し、<2回攻撃>に<フェイント>を交えて
触手を片っ端から斬り捨てる。斬撃ヒットと同時に<呪詛>と<衝撃波>を
叩き込み、追加ダメージを与える。
敵の攻撃は<第六感>で予知し、<武器落とし>あるいは<なぎ払い>で
迎撃を試みる。
こちらは日ごろから、この妖刀アカツキの妖気を制御する修練を
積んでいるのだ。貴様らごときの邪神の呪詛に、この私を侵食できる
などと思うなよ! 一般市民に牙を剥いた罪、地獄で償え!



●断絶、迅速に
「くだらん! まったくくだらんな!」
 ムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)が吐き捨てる。ライブを儀式に使うなどという酔狂な真似に興味を示したというのに、ふたを開けてみればただの邪神の信者。狂気に身を売り渡す『程度』であるならば。
「ならば、存分に相手をしてやるとも!」
 ムルヘルベルが羽ペンを手に取る。空へと描くは五芒星、しかし、それをさせじとパープルテンタクルズが触手を伸ばし。
 斬一閃。ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の放った衝撃波で切り払われる。その手に握るは妖刀アカツキ。解放された怨念は先ほど喰いむさぼった呪詛をすら含んでガーネットに纏わりつくが、彼女はそれをも自身の力へと変換していた。
 常日頃から妖刀の妖気に触れ、それを制御する修練を積んでいるガーネットである。妖刀から解放された怨念に呪詛が混じっていようと、その程度で影響を受ける程やわではない。
「貴様らごときの邪神の呪詛に、この私を侵食できるなどと思うなよ!」
 強い宣言と共に踏み込む足は力強く、地を蹴ればその加速は人のそれに非ず。紫の触手塊も己が伸ばす先を見失い、触手をさまよわせたところで既に至近にある彼女の姿。
 駆け抜ける剣閃は二つ。連続した斬撃と、後を追うように書ける衝撃波が触手塊を刻み、吹き飛ばし、散らす。迎撃に伸ばされる触手は勘に従って身をそらし、刃で受け流して対処する。
 己に近づくもの、己より遠ざかるもの、あるいは、仲間へと触手を伸ばすもの。斬撃と衝撃波で対処し――予感は一瞬。踏み込んだが故か、周囲の触手塊は彼女を優先と狙っており。とっさに避けた先、さらに伸びてくる触手を切り払うには、振り切った刃を戻すに間に合わぬ。
 一撃は覚悟をするか。追撃を避けるように身をひねった先、空中から降り注いだ雷撃が彼女に触手を伸ばしていた触手塊を打ち払い焼き焦がし、退避する隙を生む。
 駆け抜け振り返れば迷彩により目立たないように浮かんでいた浮遊砲台が、次の獲物へとその方針を向けるところだった。

「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。人より生まれし醜悪なる体躯。意思なくして命受け動く存在なり」
 謡うように零すビードット・ワイワイ(根源的破滅招来者・f02622)。見目は鋼の機械、なれどその言葉は滑らかに。【ガジェットショータイム】により召喚された浮遊砲台は、迷彩を纏って空に浮かび行く。同じ機械であるが故か、空に浮かんだガジェットたちはまるで意志を連結するかのように、ビードットの思うがままに動き、触手塊一体ずつに攻撃を集中させて焼き払っていく。
 そのビードットへと触手塊から触手が伸びるが、されど。
「――そこに汝の未来無し。ここが汝の破滅なり」
 浮遊砲台がビードットを護るように雷撃を放ち、雷撃を避けた宿主が巻き付いた先もやはり浮遊砲台。盾となったそれに絡みついた触手を逆にビードットはそのアームで掴んで引き寄せる。人外の怪力に見舞われた触手塊はそれでもと己の唯一の武器ともいえる触手を伸ばそうとするが、それらを踏みつけて引きちぎられ、アームが構えた先には同じ触手塊。
「これが汝の末路なり」
 投げつけられた触手塊は、ぶつかった相手を巻き込み、巻き付き、絡まりあう。
 ガーネットが切り込みかく乱し、ビードットと浮遊砲台が彼女が動く余裕と隙間を生み出しながらまとめていく。その光景に、ムルヘルベルはかすかに笑う。描いた五芒星は輝きを灯し、あとは彼の言葉を待つばかり。
「これなるは狂気をも封じる秩序の理、異界の怪物ごときが抗えるはずもあるまい。……ワガハイのコトバを阻むことは、誰にも出来ぬ。ワガハイが、オヌシを阻むゆえに!」
 失われし音韻の呪文により成立した【封印文法】が触手塊を捕らえる。封印により触手同士が絡み合い、反撃のすべを失えばそれはガーネットの斬閃が、浮遊砲台が、ビードットがそれらを切り払い、焼き払い捉えて叩き潰す。
 触手塊は確実に、その数を減らしていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鏡磨・シロミ
──周囲の光量、よし。これなら、私のユーベルコードも機能する。
戦闘に入った私は、力を発揮する関係上いつも以上に滑らかな会話と意思疎通が可能になる。
けど… 敵も、どうやらやる気で来てるし、態々周辺状況を調べる必要はないかもしれない。
でも油断は、絶対にしない。

『見切り』を使用しつつ『目立たない』と『ダッシュ』を用いて敵の側面へ。
そこで『WIZ+51』『なぎ払い』を使用し【集光術・光の鏃】を解き放つ。
周囲の見方を巻き込まないように配慮しつつも、熱線で敵をなぎ払うよ。
もしも私の動きに反応して攻撃を仕掛けてくるような個体が居れば、攻撃に移るのを一時中断して『オーラ防御』を使用しつつ退避を試みるよ。


河南・聖
うえぇ、うねうねが一杯……
前に他の猟兵さんに聞いたような
何かやたらとえっちな事してくるようなのではないみたいですけど
そういうの関係なしに生理的に駄目ですね、うん
近寄りたくないです

さて
植物の蔦みたいによく燃えそう、という感じでもないですし
粘液どろどろぐちゃぐちゃでよく凍りそう
あるいは雷がよく通りそう、という感じでもないですね
柔らかそうですし、斬るのが一番有効そうですけど、近寄りたくないです

となれば……風の刃
それも数を多くして細切れにするようなのがいいでしょうか
……よし、こんな感じでどうでしょう!


アルファ・ユニ
うわ、きもちわる…最前線で戦うのは嫌だな、このままPAブース付近でみんなをサポートしよう。
あの触手だと1点からじっと見てもどこから攻撃が来るかわかったもんじゃない。精霊達を敵周囲に配置して、<クローネ>を使って精霊達の視界を監視カメラのように集約しよう。音響機材に隠れながら、その映像データから敵の攻撃を予測してみんなに指示を出すね。もしかしたら隙も見えるかもしれないし、攻撃の方向やタイミングも合図できるかも。



●風光もって灼斬す
「うわ、きもちわる……」
 触手塊の群れを目にしたアルファ・ユニ(愛染のミキシングエンジニア・f07535)は、率直に思ったままを口にした。確かにあれは気持ち悪い。触手が絡まりあうような感じで塊になっているのは、実に気持ち悪い。
「……最前線はいやだな。このままサポートに徹しよう」
 うん、とうなずいた彼女は精霊を呼び寄せ、敵の周囲へと向かわせる。手元に開いた万能型PC、クローネを介して精霊達の視界を確認していたら、実に同意する声が聞こえてきた。
「うえぇ、うねうねが一杯……前に聞いたようなのとは違うみたいですけど……」
 うごめく触手塊を前に河南・聖(始まりの白き翼・f00831)は嫌そうに零す。ああいうのは生理的にダメだ。近寄りたくない。容赦なく近接攻撃に向かっているガーネットを視界の隅にとらえてその剛毅さに感嘆しつつ、しかしかといって自分は近づきたくはない。
 さてどうしたものか、と己の手札を確認する。
 炎。うねうねしてはいるが、あれは植物の蔦のようによく燃える、というものでもないだろう。では凍らせるか? いや、なんか粘液纏ってて凍りにくそう。雷撃もおそらく粘液に阻まれそうで難しい。
 奇麗にさっぱりと斬り飛ばされた触手たちが眼に入る。やはりここは斬り捨てるのが一番無難だろうと判断し、選択した属性は風。自身の周囲に90本もの風の刃を浮かばせて。
「……よし、全部まとめて細切れです!」
 放たれた風の刃は飛翔し、触手塊をずたずたに切り裂く。細切れにされた触手塊はそのまま消滅したが、応戦するように触手塊が小型の同族の召喚を始めた。一体一体が召喚する数は聖のそれよりも少ないが、しかし、触手塊の数はこちらを上回っている。
「……ぇー」
 再度風の刃を放ち纏めて一掃しようと図るものの、やはり一息に殲滅するには至らない。それでも接近を嫌っての三陣目を放たんとしたところで、横合いからの光線が小型ごと触手塊を薙ぎ払った。

 戦闘開始の直後、気配を消して側面へと走った鏡磨・シロミ(神出鬼没のガラテイア・f00224)。戦闘直前の停電状態であれば困ったかもしれないが、照明が復帰したことにより彼女にとって十分な光量が存在していた。
 自身の本体である鏡を前に構える。鏡は光を集め、集められた光が熱を持ち。
「――焼き払え」
 【集光術・光の鏃】として放たれた熱光線は鏡の角度を変えられることによりまるで刃のように彼女の前で側面を見せている触手塊を薙ぎ払った。
「大丈夫?」
「えぇ、大丈夫です、ありがとうございます」
 シロミの問いかけに、聖が短く頷く。と、ふと聖は首を傾げて問うた。
「……普通に話せるんですか?」
「戦闘中は力を使えるから」
 自身の力を完全に発揮するためか、会話と意思疎通がいつも以上に滑らかになる。とのシロミの説明になるほどと頷いて、ざわりと寄ってくる触手塊へと向き直る聖。
『ぁー、聞こえる―?』
 会場のスピーカー越しに聞こえた声に、またシロミと聖は顔を見合わせた。それを隙とみて触手を伸ばした、あるいは小型の触手塊を飛ばしてきた者達は熱光線と風の刃により無残に焼き払われ、斬り払われるのだが。
『聞こえてるね? よし。それじゃ敵の残数とか状況を連絡するからよろしく!』
「成程、PAブースに引っ込んで音を使うという手がありましたか……!」
 聖が思わず零し、シロミが緩く首を傾げたりしたものの。アルファが全体の俯瞰と状況の提示を行い、シロミが熱光線による薙ぎ払い。そして光線を潜り抜けた触手塊には聖が風の刃を放って一掃していくという連携が組み立てられ、彼女達は淡々と触手塊の処理を続けていく。

 猟兵達により、数いた触手塊達はその数を瞬く間に減らしていく。
 最後の一体が地に堕ちその身を消し飛ばされるまでそう時間はかかることはなく。彼ら、そして彼女らは最後に残った教団員と対峙する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:猫背

👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そして狂気に堕ちる
「――よく、もたせた」
 邪神を奉ずる教団、その教団員。今回の事を仕組んだであろうその人物は片手に呪具と思しきものを握っていた。
 薄められたといえど、確かに会場中に呪詛は満ちていた。足りない生贄には、今しがた猟兵達が叩き潰し、斬り払った触手塊があてられる。
「人を捧げるよりも効果は劣る。だが、それでも――」
 儀式は、確かに失敗した。猟兵達により妨害され、それはもはや正しい儀式として成立していない。
 だが、それでも。それでも成そうとした教団員の執念が彼自身に影響を及ぼす。その脳髄は破壊され、頭であった部位は肥大化する。来ていた服は体と一体化し、そこから触手が何本か生じており。
 それは異形のもの。狂気にとらわれ、オブリビオンへと堕ちた人間の成れの果て。
「豁サ縺ュ」
 もはや意味を聴き取れぬ言葉と共に。その異形は猟兵達へと牙をむく。
鏡磨・シロミ
そう… そこまでして、贄を、邪神降臨を望むんだね。
なら、その贄に貴方達がなりなさい。
そしてその贄ごと、私たちが消し飛ばそう。
──本当の神の降臨を、見せてあげるよ。

容赦は一切しない。
ヤドリガミの… いや、御神体としての『銀鏡(シロミ)』に降ろした力を、フルで発揮させてもらう。
『WIZ+51』を使用後【転身覚醒・白見之比売】を発動。
その後、攻撃に移る際に『なぎ払い』と『全力魔法』を使用し、敵を滅しにかかるよ。

ただ、とても大掛かりな攻撃故に長く維持し続けると私も苦しくなる。
撃破が望めないなら、ある程度のダメージを与えた後に変身を解き、『ダッシュ』と『2回攻撃』を駆使して立ち回るよ。


ガーネット・グレイローズ
なんという悍ましい姿だ。これが禁忌に触れた者の末路か……。
これ以上、狂気を伝染させるわけにはいかない。貴様をここで斬る!

【妖刀の導き】で武器に呪詛を吸わせ、強化。
クランケヴァッフェ躯丸と妖刀アカツキの二刀で戦う。
他の猟兵とも連携して、コンビネーションをかけよう。
炎による攻撃は<第六感>を頼りにタイミングを予測し、回避するか
<武器落とし><なぎ払い>で迎撃しながら、間合いを詰める。
両手に装備した刀で<二回攻撃>し、ヒット後は<呪詛>を流し込むと
同時に<吸血>で生命力を吸い上げてやろう。
中枢は肥大化した頭部か? その首、叩き落としてくれる!


ムルヘルベル・アーキロギア
ふん、なんと醜悪なものよ いや姿形の話だけではない
往生際、そしてあがきぶりもまた悪きことこの上なし
禁書を封ぜし智慧者として、引導をくれてやろう

「……とはいえ、貴様のような半端者に、術者として相手をしてやる必要もない」
呪具に頼る素人なぞ、【ガジェットショータイム】で物理的に破壊するのが似合いの末路よな!
そして生み出されたのは……ふうむ? これはギターか?
ああ、そういえばワガハイ、此度の依頼にあたって「ろっく」とやらを学んだのだ
たしか映像ではこうして使っていたなあ!!

UCで作成した巨大なギター型ガジェットを両手で持ち上げ、頭に叩きつけてやる
これぞロック! 〈情報収集〉と〈世界知識〉の賜物であるぞ?


ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。
築きし計画破綻して、なりし姿は望みし姿?
叶いし願いで何を得り?それなるは己の愚行の代償なり
ここにて願いを終わらせよう。汝の破滅はここにあり

敵が変わろうともやること変わらず。
されど己が愚行の代償を知らせよう。【ガジェットショータイム】にて
重火器を創造せり。それにて一切を【なぎ払い】
【属性攻撃】にて氷を付与させ足を凍結。動きを束縛せり
汝がいくら召喚しようともそれごと凍結させよう
教典にて攻撃するならばそれごと凍結させようぞ
氷像となりて己の結果を見つめるがよい。それにていくばかの贖罪となりけり。救いの術知らずども、破滅の術は我は知る


河南・聖
うわグロ……。
私の世界ではあそこまで人を変異させるようなもの見たことないですよ。
流石異世界。

なんて感心してる場合じゃないんですけどね。
何がどうなったら人間があんな風になるのか、気になるじゃないですか。
特にあの頭、何を詰め込んだらあんな風になるんですかね。

……あぁ、溜まっているのなら、抜いて差し上げればいいんですよね。
ならば具現化するのは、槍。
雷を纏いし、漆黒の、邪槍の群れ。
……って、あれ?邪神を奉ずる教団の教団員なら聖なる槍とかの方がいいのに……。
まぁ、槍は槍ですしこれでもいいですか。
よし、ぷすっといきましょう、ぷすっと。



●狂気に抗う
 その姿を見て、猟兵達の対応は個々に異なっていた。
 狂気に堕ちたさまを嘲るもの。その在り方に憐れみと憤りを感じるもの。嫌悪と興味を示すもの。何も変わらず討つべき敵と見做すもの。
 だが、それぞれの反応が異なっていようと成すべきことを見誤る猟兵達ではない。
 狂気の炎を纏い、その身から邪神の落とし子……宙に浮く禍々しい肉塊を召喚して差し向けてくる、膨らむ頭の人間……異形へと初手を放ったのは河南・聖(始まりの白き翼・f00831)。
 その見た目のグロさと同時に、変異っぷりに興味を示していた彼女ではあるが、その興味の対象は異形の頭部の異様な膨らみっぷりにも向けられていた。
 そして彼女は思ったのだ。何かを詰め込んだなら――頭部に何かがたまっているというのなら、穴をあけて抜いてやればいいと。
「刺し穿て! レギオススピア!!」
 詠唱と共に放たれる95本の雷を宿した邪槍が、猟兵達へと向かってきた落とし子を叩き落す。そのまま異形に迫ろうとした槍は、しかし叩きとした落とし子から伸びた触手が槍を抱え込んでむきをそらす。
 なればと放たれるのは無数の弾丸。【ガジェットショータイム】によりビードット・ワイワイ(根源的破滅招来者・f02622)が生み出した重火器が吐き出すそれらは冷気を纏って異形に襲い掛かる。
 身にまとう炎、新たに召喚される落とし子、そして放たれる邪炎すらも凍れとばかりに打ち出されるそれは、異形の異様な速度の移動で回避される。
 己の身から伸びた触手を用いての高速移動。適当な場所に触手を巻き付け、自身の身体を引き寄せている。
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。築きし計画破綻して、なりし姿は望みし姿?」
「縺薙l縺樊悍繧薙□蟋ソ縲∫・槭h繧願ウ懊k蟋ソ」
「叶いし願いで何を得り?それなるは己の愚行の代償なり」
 対話にならない対話。問いかけへの答えとして返ってきたのは理解のできない言葉であり、ビードットにもその言葉の意味が理解できたわけではない。
 ただ、そのもはや表情も解らぬその異形が歓喜でもって受け入れていることを認め、重火器の砲口を改めて向けなおす。
 再び回避のために異形が触手を伸ばし。

「これ以上、狂気を伝染させるわけにはいかない。貴様をここで斬る!」
 だが、伸びた触手は切り落とされる。駆けこんでいたガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は【妖刀の導き】によって地に満ちていた残りの呪詛を喰らったアカツキを振るったのだ。追撃とばかりに逆手に持った躯丸を振るうが刃は邪炎に包まれた経典で持って受け止められた。
 本来であれば鋼の刃を受け止める程の強度など持たぬはずの経典はその周囲に宿す炎の力か、確かに邪炎を受け止めるだけの硬度を持ち、さらに受け止めた経典の炎が力を増す。経典から吹き上げる邪炎は、しかしガーネットではなく動きを止めルを好機とばかりに打ち込まれた槍と弾丸を打ち払うのに用いられた。
「鬯ア髯カ縺励>窶ヲ窶ヲ?」
「私は一人ではないのでな!」
 言葉が分かったわけではない。だが、こういう時に吐く言葉など決まっているものだ。にやりと笑ったガーネットが、落とし子を呼ぼうとした異形を蹴り飛ばす。着地し態勢を整えた異形に対し、そこに待っていたムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)が何かを振りかぶって構えていた。
「貴様のような半端者に、術者として相手をしてやる必要もない。これで十分である!」
 降りぬかれたのはギター型をしたガジェット。異形の頭部を強かに殴打したそれは【ガジェットショータイム】により作成されたもの。物理破壊をと狙って作り出されたギター……本来の用い方は当然、楽器である……を見たムルヘルベルは、依頼に当たって学んでいた「ろっく」の知識でもってそれを殴打武器として使うことを選択したのだ。
「なんとも醜悪なものよ いや姿形の話だけではない。往生際、そしてあがきぶりもまた悪きことこの上なし」
 殴打は確かに命中した。その一撃を受けながらムルヘルベルへと足掻くように落とし子を差し向ける様を彼は酷評しながら落とし子にもギターを振り下ろし、叩き潰す。僅かな隙ではあれど、それでも雑魚を叩き潰すにはそれで事足りた。
 だがまだ終わらぬと。斬りかかってくるガーネットから地を蹴って距離を取った異形は、ほんのわずかの間に邪炎を、落とし子を今一度放って猟兵達の動きを止める。態勢を整え反撃にとその異形の頭をもたげた時。
 不意に、彼の側方に光が生まれた。

 鏡磨・シロミ(神出鬼没のガラテイア・f00224)は小さく吐息を零す。邪神降臨を、そこまで望むというのなら。生贄を望むというのなら。
 この異形を贄として、そしてその贄ごと私たちが消し飛ばそう。
「――本当の神の降臨を、見せてあげるよ」
 彼女の姿が変わる。鏡のヤドリガミである彼女の名を漢字とするならば『銀鏡』、石長姫の銀の鏡。すなわち、それは社に祀られる御神体。
 であるならば、その身は神を宿すと称して過言ではないだろう。光り輝く神霊体へと変身したシロミの周囲に光球が生み出される。先ほど、触手塊を相手するときには本体である鏡から放った熱光線、それと同等の――いや、それ以上の熱量と光量がそこに集っていた。
「雋エ讒倥?√◎繧後r窶ヲ窶ヲ縺昴?蜈峨r繧?a繧阪♂?」
 明らかに怯えの反応を見せながら、シロミへと向けられる異形の邪炎、落とし子の襲撃。だが、それらは励起の弾丸で凍結し、槍によって貫かれて斬り払われる。ガーネットが先ほど言ったとおり彼らは一人ではない。故に。
 冷気を纏う弾丸が異形の足元を凍結させ、雷を纏った槍が異形を張り付ける。今だ、とこぼしたのは誰か。
「我が威光を受けてみよ──」
 光が爆ぜた。生じた熱量はいかほどか、少なくとも異形を取り巻く邪炎如きでどうにか耐えられるようなものではないだろう。そこに生じた小さな太陽はその内を焼き尽くすように強く輝き、周囲に残っていた落とし子すらも蒸発させる。
 光が消えた先に、しかし。
「――――」
 憎々し気に吐息を吐く異形の姿はまだそこにある。負担が大きい神霊体を解いたシロミが睨み返す。

 猟兵優位ではあれど、しかし異形はまだ戦意を損なっていない。大きく傷を与えてはいるものの、まだ終わりは見えない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アルファ・ユニ
そのまま妖精を使って<クローネ>で状況を確認しつつ指示を出して裏で動く。上手くみんなの戦いを無理のない範囲で続けユニの行動範囲外に展開して、避難させたバンドメンバーを探しに行くよ。…彼らはメタルバンドだった。<クラハライツ>にその音を喰わせれば良い攻撃力の糧になると思う。「さっきは勝手に曲を作りかえてごめんね。君達の音を取り戻す為に、もう一度、演奏してくれないかな?」快諾してくれたなら爆音の演奏を使い【轟音圧殺砲】の音砲で槍のように敵を 串刺し にしよう。撃つのは一発 全力魔法 。トドメに届かずとも当たれば致命傷にはなるはず。「貴方が利用した音楽に、貴方は裁かれる」


雨乃宮・いづな
グロいなあ……まあ、ココまで来ちゃったらもう人とは呼べないよね。
思いっきりぶん殴って終わらせてあげるのが、今のあたしに出来る一番の事かな!

使用能力はPOWを選択するよ。
瀕死の敵は影を召喚してくるみたいなんだよね。
2対1じゃあ不利だけれど……多数を相手取る方法は知っているんだよ。
「ダッシュ」で距離を詰めてからユーベルコード『極星・禍津雷槌』で周囲ごと叩き潰してあげる!
相手からの攻撃は可能な限り「見切り」と「武器受け」で回避努力。
相手にスキが出来たら「カウンター」からの「2回攻撃」で一気に畳み掛けるよ。
情けも容赦も今は必要無いんだよ。見せてあげる、これがあたしの必殺技ーー!!


河南・聖
む、結構ダメージは入ってるみたいですけど、まだ元気そうですね。
……やっぱり、接近戦でないと駄目ですか。

まずは【高速詠唱】でバキュームスフィア使用。
異形化によって空気が無くても大丈夫になってたりするかもですけど、
ついさっきまで人間だったんですし、動揺くらいは誘えるでしょう。
他の人の攻撃で足止めされてたりしてくれてると尚良いですね!
その後は二刀を抜き放ってインフェルノ・インターセクション!

これで決めきれればよし、決めきれなくても後一手くらいまでは追いつめられるはず!


ディスターブ・オフィディアン
第一人格で行動、エレメンタル・ミサイルで90個分の風の矢による衝撃波で敵を攻撃します
余興だ、貴様が音で呼ばれたならば、音と共に葬ってやろう
一つ一つの風の矢を放つ際に楽器の音を再現させ、レクイエムでも奏でてやるか


ああ、風の矢を放つ際にはフェイント、誘導弾、騙し討ちで全方位からの攻撃を心掛け、動きが鈍ったところですべての矢を合成して全力魔法を当ててやる。
逆に敵の炎の攻撃には、見切りと第六感で回避しかわしきれないものは風の矢で散らすか

「音楽による邪神降臨儀式と聞いてきたが、出来損ないか、詰まらん。
 まあ良い、新しい術式の的がほしかったところだ。――死ぬがよい」



●戦場に轟く反撃の歌
 精霊を介し、クローネに集約される戦場の情報をそのまま猟兵達へと展開し、時に音声での指示を与えながら、しかしアルファ・ユニ(愛染のミキシングエンジニア・f07535)の姿はそこにない。
 彼女は戦場となっているライブ会場を離れ、一時避難先となる場所へと向かっていた。
「彼らの音なら、きっと……」
 彼女の手にある武器はクローネだけではない。周囲や、録音された音を火力へと転換できる、クラハライツという銃がある。
 だからこそ、彼女は避難させた人員の中からその者達を探していた。この事態において、おそらく誰よりも悔しく、誰よりも怒りを覚えているであろう彼らを。

「グロいなぁ……」
 一部炭化までしている、焼け焦げた身を晒す異形を前に雨乃宮・いづな(水縛鎖・f00339)が零す。かろうじてその形状は人の形をしているが、首から上も、首から下もシルエット自体は既に人の体をなしていない。
「まあ、ココまで来ちゃったらもう人とは呼べないよね」
 ならばいっそ楽というものだと、いづなは大太刀と小太刀を引き抜いて構える。こうともなってしまえば、思いっきりぶん殴って終わらせてやることこそが彼女にできる一番の事であろうと知っているから。
「もっとも、グロいのにはこちらの攻撃のダメージ分の影響もありそうですが」
「だったらなおのこと、苦しまずに済むように終わらせてあげないと」
「それは確かに」
 相応の傷は与えてはいるものの、しかし邪槍を射出するだけではやはり足りぬかと聖は両掌を異形へと向けた。
「一時的に動きを封じます」
「あたしは、斬り込むね」
 打ち合わせは短く。その隙にと異形が己の身にまとう炎をさらに激しく燃やし、教典から炎弾として二人へと解き放つ。踏み出したいづなが小太刀を振るって斬り払い、追撃とばかりに炎を追ってきた落とし語を大太刀で一閃。生じた隙に詠唱を高速で行った聖が声を上げる。
「空気の有難み、教えてあげます!」
 【バキュームスフィア】。両掌から放たれた真空の球体が攻撃行動直後の異形に迫り、回避にと伸ばした触手は飛来した風の矢が穿ち割いて散らす。球体内にとらわれた異形は窒息故か、あるいは驚愕故か、身動きをできない状態へと陥り。
「貰ったぁ!」
「雋エ讒倡ュ峨=!」
 二刀による斬撃を回避する余裕なぞはなく、十字に斬り裂かれたところに風の矢が追撃と襲い掛かり貫き吹き飛ばす。
「――音楽による邪神降臨儀式と聞いてきたが、出来損ないとは詰まらん」
 周囲にまだ風の矢を停滞させたディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)が冷たく告げた。彼が放つ風の矢は、時にフェイントを交えながらも誘導性を持って異形に襲い掛かり、外れたかと思えば軌道を変える騙し討ちまで行ってのける。それらはひとえに、彼の操作技術によるものである。
 さすがにそろそろ致命傷にも至ったか。そう猟兵達が思ったその瞬間に。

 上がるのは咆哮。その声すらも正気を阻むかのような、おぞましい叫び。
 応ずるように異形が待とう邪炎が吹き上がり、振り回した教典から伸びた炎が周囲を、そして離れた位置にいた者達すらも薙ぎ払わんと襲い掛かる。

「……しつこい、ですね……!」
 焼かれた程度で猟兵が倒れることはない。だが確実に体力も削られてはいる。ならば、と聖が剣と刀を引き抜き、自身も前線に出ようと前を向いた時に。
 戦場へと駆けこんできたアルファが、手に持った銃を異形へと向けていて。
「貴方は――」

 アルファが探していたのは、この騒動に巻き込まれてしまったメタルバンドのバンドメンバーたちだった。音を力に変えることができる武器を、ユーベルコードを持つ彼女はその糧として彼らの音を求めたのだ。
 だが、彼らはこの世界における一般人に過ぎない。オブリビオンも、猟兵も、そもそもこんな異常事態すらも本来であれば縁はなく、知らぬままに生きてきて知らぬままに生きていく立場なのだ。
 避難を担当していたUDC組織員も決していい顔はしなかった。こういった神秘・異端は秘匿するのが彼らの役割であり、この騒動も巻き込まれた被害者達の記憶からは消去されるものだからだ。
 だが、その組織員達の静止に止まらなかったアルファの訴えを。彼らの曲を作り変えたことを謝罪し、その上で音楽を利用しようとした者への報復を告げた彼女の言葉を聞いたバンドメンバーは、顔を見合わせてから彼女に告げた。
 ――俺らの魂を預ける。ふざけた真似してくれた奴にぶちかましてくれ。

「――貴方が利用した音楽に、裁かれる」
 即席、されど宣言通りに魂を込めた演奏が込められたクラハライツ。構えたそれから放たれる【轟音圧殺砲】。
 指向性をもって放たれた轟音。それは只の音、空気の振動に過ぎないはずのもの。だが、それがアルファの手にかかりユーベルコードとして放たれたなれば――そして、そこに込められた思いがあれば――それは刃となり、槍の穂先となり、異形を貫く。
 叫び声が上がる。それは正気を蝕むような、しかし、明確に苦悶の色を宿した声音。響いた反撃の歌に、猟兵達が動いた。

●我ら猟兵、邪神の徒を焼く光とならん
「逾槭h、謌代i縺檎・槭h。莉贋ク?蠎ヲ諷域ご繧!」
 理解できない言語、されどその声音は何かを訴えるかのように。応ずるように、異形の傍に異形とは異なる輪郭の……それは、それこそが教団員が望んだ神の姿だったかもしれない……おぞましい輪郭の影が立ち上がる。
 それが己の方に迫りくる猟兵達を睥睨し、威嚇の声を上げるが、しかし。それが動き出すよりも早く。
「遅いな。あぁ、ちょうど新しい術式の的が欲しかったところだ。――死ぬがよい」
 宣言と共にかける風の矢が駆ける。余興とばかりに風の矢一つ一つが放たれる際に楽器の音を再現し、まるでレクイエムでも奏でるかのように駆けてゆく。召喚され本調子を取り戻す前にとばかりに影の動きを阻害するように突き立てば、残りの矢が一つに集まり捩じり合って影の腹を打ち射抜く。
「あぁ、遅いな、今更だ」
 薙一閃。腹を射抜かれた影を切り裂くのは妖刀アカツキ、振るうのはガーネット。影の反撃は後方に飛び退りながら刃で受け止め、その口元に笑みを履く。
 シロミの放った熱光線が影の輪郭を歪ませる。ここで押し切れば異形に……教団員に次弾はないと、すべての猟兵が知っていた。
「大丈夫だよ、やっちゃえ!」
 アルファの声に応じる様にビードットが構えるガジェットの重火器が弾を吐き出し、中った影の四肢を凍り付かせていく。影の動きを奪ってしまえば後は。
「貰います……冷たいのも熱いのも、纏めてサービスしてあげます!」
 片手に剣を。片手に刀を。両手に獲物を抜き放った聖がとどめとばかりに詰めている。炎が踊り、氷片が散る。双手の刃が繰り出す斬撃は、瞬きの間に十を超え、さらに斬閃を重ねて影を斬り刻み、吹き散らす。

 召喚直後に攻めきれたことが功を奏したのだろう、嘆くように、悔むように唸りをあげながら影はその身を消滅させていく。その後ろには、死に瀕しながらも今だ折れぬとばかりに教典に火を灯し、落とし子の召喚を行っていた異形があって。
 教典の炎が放たれる直前に、投げつけられた巨大ギター型ガジェットが教典を叩き落す。そのついでにギターがへし折れたがこれもロックであるとムルヘルベルは胸を張っていた。
「情けも容赦も今は必要ない。だから、見せてあげる――」
 走り込み、振り上げられたいずなの大太刀に雷が宿る。神話における、巨人の神が振り下ろす雷の槌にも似たそれは【極星・禍津雷槌】。ただ単純に重いだけの、ただ単純に破壊力が過ぎるだけの、その一撃。
「――これがあたしの必殺技!!」
 叩き付けられるその一撃を、けれど落とし子が受け止めた。瞬く間にそれは雷撃に焼かれて消滅し余波で異形をも焼き焦がすが一歩、足りない。
 もはや纏っているのかもわからぬほど弱々しく揺らめく邪炎を纏う、襤褸となった異形はそれでも攻撃の機会が回ってきたのだと顔を上げ。

 今振り下ろさんとばかりにいづなが頭上に構えるのは、先の一撃と同じ雷を纏った小太刀。二刀流であるがゆえの、二段目。

「もひとつ!!」
 戦場そのものを衝撃で揺らし、床ごと破壊するその一撃に。
 異形となった教団員が耐えるすべなどなく、その身は雷光の中に消滅した。

●後始末
 オブリビオンさえ倒してしまえば、後はUDC組織員達が対応を行う。彼らは戦力こそ猟兵に及ばないものの、この手の騒動や事件の対処については専門ともいえる経験を積んでいるのだ。
 故に、今回の騒動も何事もなかったかのように日常の中に溶け消えていくだろう。
 ……ライブハウスで異臭、ガス管の破裂等という見出しが数日紙面を賑わせるかもしれないが、それもまた日々の中に消えていく程度のことでしかなく。
 アルファが礼を伝えに行こうと思ったメタルバンドのメンバーは、戦闘終了後には迅速に記憶処置と理由付けの為の病院搬送が行われたためにその機会は無くなった。次に会ったときには相手はアルファの……猟兵達の顔を覚えていることはないだろう。

 そこに寂しさを感じるか、あるいはそういうものだと割り切るか。猟兵達がどう思ったのかはそれぞれの胸の内に。
 ただ。後日、今回の騒動に関わった猟兵達に、UDC組織員からグリモアベース経由でライブへの紹介状が届けられたそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月09日


挿絵イラスト