甲竜、炎獄にて猛る
●災い
悲鳴が飛び交い、混乱に沸き立つ都市を思うまま蹂躙する。
その巨体と、重量と、速度を以って。
石造りの建築を、逃げ惑う人々を、圧し潰し轢き潰していく。
何度目かの疾走を終えて、“それ”は高らかに笑い声をあげた。
愉し気に笑いながらも、この世のすべてに敵意を叩きつけるような、重く威圧感に満ちた声だった。
「ザァーハッハッハッハァッ!! 愉快よなァ!! 薄ら笑いを浮かべ我輩の首を刎ねたヒトどもが!! 猿どもが!! 為す術なく喚き散らしながらゴミのように潰されるしかないとはなァァァ!!」
嘴にくわえた曲刀を振るう。
“それ”の足元で逃げ遅れ、腰を抜かしていた男が、腰から両断されてひび割れた路地へと転がった。
「……まだよ……この程度では終わらんぞ……ッ!!」
「この大陸すべてのヒトの里を潰し終えればッ!! 次は竜どもだッ!!」
「我輩を嘲り、侮りッ!! 決して同胞と認めようとしなかった彼奴等ッ!!」
「新たに得た我輩の力を思い知らせてくれる……ッ!! 嫌というほどになッ!!」
「ザァーハッハッハッハァッ!!」
“それ”は笑う。
すでに半ば滅びた都市で、どこまでも愉快そうな笑い声に、果てしない怒りを滲ませて。
●火の国
赤い光で照らされている広大な地下空間。
至る所で煙や水蒸気が上がり、槌で鉄を打つ音が聞こえる。工場において動く姿の多くは、赤銅色に灼けた肌を持つ逞しいドワーフたちのものだった。膨れ上がった肩や腕の肉に無数の汗を垂らしながら、懸命に何かを作っている。
「そこのドワーフ、手を止めるんじゃあないッ! もうすぐ甲竜様がお戻りになる、それまでに予備の製造を済ませるのだ! 万全になッ!」
竜の頭を持つ蜥蜴の亜人、リザードマンが曲刀を振りかざしながら叱咤を飛ばす。
作業を行っているドワーフたちを監視しているようだった。
「……なあ。あの“亀野郎”は今頃……」
「征伐とか何とかとか言っておったな。“あれ”もきっちり持って行った。おそらく……」
若いドワーフ二人が声を潜めて話している。答えた男は、最後まで言うことなく目を伏せた。
「……儂らの武器を、虐殺に使うなど……ッ!!」
槌を握った拳を血が滲むほどに震わせる。
怒気を発散することなく堪えると、わずかの間瞑目して、男は槌を再び振るい始めた。
●グリモアベース
バリスカン、という竜がいた。
「竜とは言うが、見た目は巨大な亀のような形をしている。そのせいかは分からないが、同族の竜からはひどく疎まれていたようだね」
グリモア猟兵、ベリンダ・レッドマンが電脳魔術を行使して言及した竜の姿を空中に投影してみせる。
二足歩行する凶悪な顔付きのカミツキガメ、といった印象だろうか。戦いによって付けられたものか、甲羅を含む全身には無数の傷があり、片目は眼帯のようなもので覆われて隻眼となっていた。
「姿は違えど竜は竜。凄まじい膂力、鋼鉄よりも遥かに頑強な甲羅、それに地形を自在に操る能力まで有していて、竜という種族に恥じない強力な個体だったのだけれど……泣き所も少なからず抱えていてね」
一つ、亀の姿をしているがゆえの鈍重さ。
一つ、亀の姿をしているがゆえの手足の短さ。
翼も無ければブレスも吐けない、近くの敵を鉤爪で切り裂くような俊敏さも無い……。
「結果としては、そのあたりの弱みを突かれて骸の海に送られた。人間たちの手によってね。……そしてオブリビオンとして蘇った訳だが、まずバリスカンは何をしたと思う?」
答えは、弱点の補強。
“火の国”と呼ばれるドワーフたちの里がある。国とは呼ばれているが住民は数百人規模で、マグマの熱で充満している地下の大洞窟の中に住居を作って暮らしている。
“火の国”のドワーフたちは皆鍛冶を生業としているが、特に武具の製造を得意としていた。戦場で勇壮に戦う戦士たちのために、鍛冶師としての誇りに見合うだけの優良な剣や鎧を、いくつも作り続けている。
――バリスカンは、そこに目を付けたのだ。
「従僕のリザードマンと共に里を襲撃。支配下に置いて、自分専用の巨大な兵器をドワーフたちに作らせているのさ。同じ轍は踏まないように学習した訳だね。その心掛けは見習いたいところだが……」
新たな力を身に着けたバリスカンの目的は、自身を殺した人間たちと、迫害してきた同族たちへの復讐。
手始めに“火の国”の近くで最も栄えている人間の都市へと進撃し、怒りのままに蹂躙する心積もりであるらしい。
「武装した甲竜の殲滅能力は脅威だ。あっという間に都市部を廃墟に変えられてしまうだろう。そうなる前にヤツを倒す必要がある……のだけれども」
対策を考えずバリスカンに真っ向から挑むのは得策ではない。
新たな力を身に着けた甲竜の、“新たな弱点”から探る必要がある。
「作戦の流れを順を追って説明しよう」
まず、地下大洞窟の奥にある“火の国”へと侵入する。
“火の国”へ入る正規の経路はリザードマンが警備を固めているため、“裏道”を通る必要がある。こちらは警備は手薄だが、マグマがあちこちで流れている天然の要害となっているために、容易に踏破はできない。
「マグマも危険だし、長丁場となってくればマグマが発する熱自体も脅威だ。水分補給なども欠かさずに行ってくれ」
“火の国”に到達すれば、次にドワーフたちを支配しているリザードマンたちの殲滅を行う。
「“火の国”に着いたタイミングではバリスカンは不在のはずさ。征伐に出向く前に、洞窟外で武装の最終確認を行っているらしい。その隙に従僕のリザードマンたちを倒し、ドワーフたちを解放する」
リザードマンそれぞれの戦闘能力はさして高くない。経験を積んだ猟兵であれば苦労はしないだろうが、ここでは敵を倒す以外にも重要なことがある。
「リザードマンを倒し、ドワーフたちを避難させつつ……バリスカンの武装についての情報、弱点を聞き出して欲しい」
完璧な武器など存在しない。
実際に製造を行ったドワーフたちであれば、短所についても十分に把握しているはずだ。
それらを聞き出し、バリスカン打倒のための足掛かりを得た後は、首魁である甲竜との戦闘となる。
「“火の国”へと戻ってきたところを迎え撃つ形になるだろう。市街戦となる」
おそらく激戦になるだろう、とベリンダは常にない神妙な様子で述べると、表情をぱっと明るいものへと変える。
「あんまり心配はしていないけれどね! 油断なく任務に臨んでほしい、という念押しさ。……さて、準備はいいかな? 汗を拭うためのハンカチは持ったかい?」
――それでは行くよ!
ベリンダは不死鳥のグリモアを炎の輪へと変えて猟兵たちを包み込み、アックス&ウィザーズへと送り出した。
大熔解
大熔解(だいようかい)と申します。
今回はアックス&ウィザーズからお届けいたします。
おおむねオープニングにて述べた通りとなります。
3章のボスは強敵ですので、ご注意ください。
●プレイングの受付時間について
雑記ページおよびTwitterにて告知いたします。
お手数ですが提出の際はご確認ください。
●フラグメントについて
POW,SPD,WIZの項目はあくまで「例示」となります。
フラグメントに記載のない行動をしたほうがよいと判断された場合は、
プレイングもそのように記載いただければと思います。
🐢宜しくお願いいたします。
第1章 冒険
『灼熱のマグマを超えて』
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POW : 気合いで高熱に耐えつつ進む
SPD : 倒れる前に最速で突っ切る
WIZ : なるべく温度の低いルートを探す
イラスト:礎たちつ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●至るまで
“火の国”があるとされる地下大洞窟には広大な空間が広がっており、それはグリモア猟兵が“裏道”と呼んでいたルートについても例外ではなかった。
天井は一番高いところで50メートルほど。横幅もあり、溶岩が発する赤熱の光もあってある程度は視界も開けている。では通行するのに容易かといえば、そうではない。天井は高いところは高いが、低いところは低い。狭いトンネルを形作っているとこもあるため、そういった場所では溶岩の光は届いておらず、真っ暗闇を通る他なかった。
それに大洞窟には大きな川が流れている。
熱を発しながら沸き立ち、波立ち、どろどろと流れる地獄の川が。
道を隔てる障害となっているために進むにも困るが、熱い。とにかく熱い。
全方位から発せられる大地の熱が、無謀にも踏破しようとする者たちの身体を過酷に蝕んでいく。
テリブル・カトラリー
竜でありながら竜として扱われなかった者と
機械でありながら後々、人として扱われるようになった私とでは、
その怒りを理解するにはあまりに多くが違うか…
情報収集、溶岩等を見切り、ダッシュ
怪力を使ったジャンプやブースターで自身を吹き飛ばし障害物を避け
一気に洞窟内を駆け抜ける(残像、早業)
高熱は火炎耐性で耐え、限界近くになったら
【戦争腕・三腕】の冷凍ガスで自身に属性攻撃、
体を冷やして再度前進する。
なんにせよ、人でもある私は
これから起こる虐殺を見過ごす訳にはいかない。
トリテレイア・ゼロナイン
騎士として、ドワーフ達の強制労働もバリスカンによる虐殺も看過できませんね。まずは一刻も早くドワーフ達を開放しなくては……。
ウォーマシンですからある程度の劣悪な環境でも動けますが、●防具改造で自身の冷却機能を普段より向上しておくべきでしょうね
脚部スラスターを吹かして●スライディングするかのように地面を滑走し、移動時間の短縮を図ります
経年劣化によって道が岩などで塞がれていたら崩落に気を付けつつ●破壊工作による発破処理や●怪力で退かして進入路を確保
侵入ルート上にマグマに遮られて渡れない箇所があれば、対岸に●スナイパー技能でUCの発振器を撃ち込み、電磁障壁による「橋」を構築してショートカットを図ります
●違い
頭上からふいに襲来する溶岩の飛沫。天井近くにある岩壁の穴から噴き出してきたものだ。
ウォーマシンであるテリブル・カトラリーのセンサーは、視線を向けずとも自身に内臓されたセンサーでその危機を感じ取る。視界の隅でシステムからのアラートが上がった。
「溶岩。上からだ」
「こちらも確認」
短く伝えるとブースターの出力を上げて前方へ転がるように跳躍する。同道していたトリテレイア・ゼロナインも脚部スラスターを吹かしてテリブルに続いた。
直後、二人が居た場所へと光の雨が降り注ぎ、岩肌にぼたぼたと落ちると小さな穴を無数に作り出していく。二人の猟兵はともにウォーマシン、生身の肉体より遥かに頑強な肉体と装甲を備えているとはいえ、まともに喰らえばただでは済まないだろう。
「損害はあるか?」
「いいえ、問題なく。先を急ぎましょう、一刻も早くドワーフ達を開放しなくては」
「そうだな」
確認を終えると、進行を再開する。二人ともウォーマシンかつ重装甲のため多少の無理が効き、速力を向上させる推進器を備えることもあって機動性も高い。熱による機体への影響は受けつつも、順調かつ迅速にここまでの道程を踏破することができていた。
*
目前に見えるは落盤によって落ちて来たと思われる岩石。
狭まり細まって行く道の上を無造作に転がって二人の進路を阻んでいる。
「持ち上げて退けるには場所が狭い……砕かねばならんな。いけるか」
「お任せを」
テリブルの問いに応じてトリテレイアが前に出ると、自身の身の丈ほどもある大型シールドを構えた。そしてスラスターを最大出力で吹かすと、全体重を掛けて進路を阻害している岩へと突っ込んでいく。
トリテレイアの持つシールドは盾でもあるが、ただ殴るだけでも凶悪な威力を示す質量兵器である。推進器の助力を得て、鉄の身体と分厚い装甲を持つウォーマシンがその“武器”を以って突撃すれば、威力はさらに増倍される。
どん、と空間が震えて土煙があがる。
果たしてトリテレイアの突撃は、道を阻む岩石を計算された最低限の破壊を以って打ち砕き、二人の猟兵の進路を開くことに成功した。
「凄まじい威力だな」
「岩の強度が低いのもあったかと。……熱を溜めてしまいましたので集中冷却を行います、暫しお待ちを」
「ああ、手伝おう」
全身の排熱機構から空気を吐き出すトリテレイアのもとへと近寄ると、テリブルは『戦争腕』から放出した冷凍ガスにて鎧騎士の装甲を包み始めた。害は与えないよう出力は可能な限り抑えてある。トリテレイアが現在の機体ステータスを視界に表示させると、危険域に入りかけていた各部位の発熱数値が徐々に回復しつつあることが確認できた。
オールグリーン、問題なし。
ありがとうございます、とトリテレイアは胸に手を当て、騎士らしく丁寧に頭を下げた。
「洞窟の構造が変化しつつありますね」
「熱気も徐々に弱まりつつあるな。ドワーフたちの居住地が近いのか……」
「騎士として、ドワーフ達の強制労働もバリスカンによる虐殺も看過できません。必ず、救ってみせます」
甲冑を模された装甲の下から聞こえる声に、テリブルは頷き応えてみせる。
「私も人として、これから起きる虐殺を見過ごす訳にはいかない」
――そう、人として。
*
同胞から認められず、疎まれ迫害された竜――バリスカン。
(機械でありながら人として扱われるようになった私とでは――)
(その怒りを理解するには、あまりに多くが違うか……)
*
「……どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
倒すべき敵と己との差異に思考を巡らせながらも、マスクで隠されたテリブルの表情が変わることはなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
白斑・物九郎
●SPD
ドワーフの人らはこんなトコで鍛冶してるんスか
マグマをそのまま炉にくべでもして、年中無休でカンカンやってそうですわな
どんな得物やらを鍛えてる業師連中なのやら、興味が湧かないでもありませんわ
そんじゃ蜥蜴と亀の順で狩りに行くとしましょっかや
狩場へ急行しますでよ
・「行き止まり等で足止めを食わされぬ/最高速付近を維持しつつの踏破能力(ダッシュ+ジャンプ+クライミング)で抜けられる」の二点を満たすルートの察知に【野生の勘】を傾注
・コードを使用し上肢をニュッと伸ばしちゃ掴める所を掴んでの機動も移動手段に適宜採用、なんなら掴んだ所を基点に己の身をスリングショットよろしく吹っ飛ばしもする(地形の利用)
●働く野生
耳が動く。鼻が動く。尻尾を振る。
疾風のように洞窟内を走り抜けつつも知覚と第六感、己の持つ感覚をすべて最大限に活用して、白斑・物九郎は進行方向における分かれ道の取捨選択を行っていた。
道は三つ。崖下、崖上、川中の飛び石。
もっとも安全に“見えた”のは崖下。屹立する巨岩が障害物となっていて溶岩が入って来る余地が無いように感じられた。――が、その先へ通り抜けるビジョンがどうにも見えない。あるのは暗闇。行き止まりの可能性が高いか?
その次に安全牌と取れたのは崖上。溶岩の近くを往くことになるため程々に危険。気を付けていれば大丈夫だろうか。――いや待て、道の先の先、あるのは反り立った高い岩壁。登れないことはないだろうが、面倒。ロスだ。あえてこの道を選ぶ必要もない。
となればやはり、
(あっちっスかね)
飛び石かと、答えを得て止まることなく物九郎は溶岩の川へと跳躍した。
飛び石といってもたまたま川から顔を出しているだけの小さな岩たちだ。片足がようやく乗るほどの足場に降り立つと、勢いを殺さず前傾した姿勢のまま次の飛び石へとリズミカルに跳躍していく。
一見するとハイリスクなルートを辿っているように見えるが、物九郎からすると大人が子供用のアスレチックで遊んでいるようなものだった。油断は沸き立つ溶岩の中へ沈むことに直結するが、逆に言えば細心の注意を払っていれば無暗に恐れる必要もない。
それにこの道はシンプルだ。上手く飛び石を使えば直進するだけ――それだけで最短距離で前へ進める。何度目かの跳躍を終えて、開けた岩場へと降り立った。かなりのショートカットになっただろう。
またしばらく走れば、再び分かれ道。今度は二つ。地続きの道と、トンネルのような岩のアーチが形作る道無き道。後者は溶岩の川がだだっ広く流れるだけで、今度は飛び石と呼べるようなものも無かったが、物九郎は迷わずそちらの“道”を選択した。
手を伸ばすは高くに見えるトンネルの天井。ごつごつと凹凸の大きい岩肌へ腕を差し向ければ、物九郎の手と肩の中間がモザイクを帯びてふいにぐんと伸びた。30メートルは伸ばした状態でがっしりと天井の尖った部分を掴むと、一気に伸ばした腕を収縮させてトンネルの天井へと飛ぶように迫っていく。天井の間近くでユーベルコードを解除して手を離すと、腕を縮めることで得た運動エネルギーでそのまま川の向こう岸へと弾かれたように飛んでいった。一度くるっと猫のように回って難なく着地する。
そこでようやく一息。
ただ本当に一息ついただけで、休むことなく物九郎は再び疾走を再開する。
*
(しかしマジで暑いっスね……ドワーフの人らはこんなトコで鍛冶してるんスか)
周囲の熱気と、運動量から来る発熱。
溶岩の川近くでの長居を避けるために走り抜けているものの、やはり環境の過酷さが身に染みて伝わってくる。
こめかみに伝っていた汗を、甚平の袖の端で拭った。
成功
🔵🔵🔴
シェルツァ・アースハーバード
「同胞のドワーフ達を助け出さなければ」
ですが、そこに辿り着くまでは出来る限り体力を温存しなければなりませんね。
ここは温度の低いルートを探して進みましょう。
足元にも気を付けて。足を滑らせてマグマに落ちたくはないですから。
とはいえ、遠回りばかりしても余計に時間も掛かりますから
時には思い切って抜ける必要も出てくるでしょう。
穴が狭い場合は私の持っているドワーフツールでトンネルを作りますよ。
ドワーフが住んでいて、辺りに溶岩があると言う事は良質な金属も多いのですが……流石に今は後回しですね。
【トリニティ・エンハンス】を使い、水の魔力を使えば感じる温度も下がる筈です。
小さい身体を活かして道を切り開きますよ!
●潜る
赤熱の光で照らされる大洞窟の中にあって、ぽっかりと開いた真っ暗闇の小さな空洞。
シェルツァ・アースハーバードはドワーフツールから取り出したピッケルに炎の魔力を宿し、松明替わりに使って空洞の中を覗き込む。
緩やかに下へと傾いてはいるが、進行方向へと続いているように見えた。それに溶岩の熱が間近に感じられる外に比べると幾分か涼しい。人間の大人が通るにはやや狭いが、ドワーフ族の中でも特に小柄なシェルツアであれば立ったままでも進めるだろう。
ピッケルを手に空洞の中へと足を踏み入れる。
*
(行き止まり……いえ)
暗闇の道を進んでいると、横から張り出した大きな岩がシェルツアの進路を阻んでいた。しかし僅かではあるが隙間があり、そこから奥へと目をやれば空洞が続いていることが確認できる。
少し削れば問題なく進めるだろう。炎の魔力を宿し赤く発光しているピッケルで岩を慎重に掘削し始める。
この大洞窟はドワーフの住居となっており、川のように流れる溶岩からは濃密な炎の魔力が発せられていた。どちらも良質な鉱脈が存在する証左に他ならないために、非常時でなければ採掘に励みたいところだが……。
(流石に今は後回しですね)
最低限通れる程度に隙間を拡張すると、身体を滑り込ませて何とか向こう側へ通り抜けることができた。
暗闇の先にピッケルをかざして、再び前へと進んでいく。下へと傾いていた道は、途中から徐々になだらかな坂道へと変わっていた。
*
しばらく歩いていると空洞が終わり、赤く照らされた開けた大洞窟へと戻ってくる。
「ああ、やっぱり中は涼しかったんですね……」
ピッケルに宿していた炎の魔力を解除すると、今度は身に纏うフリルワンピースを水の魔力で覆った。涼やかな水の力が、襲い来る溶岩の熱気を僅かではあるが確実に和らげてくれるのを感じる。
空洞からそのまま続いていた坂道を登り切り、後方の大洞窟を振り返れば、だだっ広い溶岩の川がそこには流れていた。足場と見える場所は少ない。正攻法で歩いていこうとすればそれなりに時間を要してしまったことだろう。涼しい道を通ったことで体力の温存にもなった。
ふう、と一息。
(……早く同胞たちを助け出さなければ)
視線を進行方向へと戻して、シェルツァは再び歩み始める。
成功
🔵🔵🔴
黒江・イサカ
ア、……あっづう、い
普通に暑いのはさ、まあまだいいんだけどさ
“熱い”になると…勝手が違うよな…
こんなとこ住む奴の気が知れないよ
……まさか、火の国もこんな状態じゃないよね?
それにしてもベリンダはいいアドバイスをくれたね
ハンカチも経口補水液もちゃんと持ってきてよかったよ、素直な僕えらい
それに、念のためしょっぱい飴も持ってきたから
……熱中症対策だっけ、これ まあいいや
欲しいひといたらわけてあげるね
予備で持ってきた水分は抜けてから飲む用だからあげないけど
とっとと抜けるに限るな、こんなところは
マグマってこんな間近で見たことないから新鮮ではあるんだけどね
此処に落ちちゃったらどんな風に死ぬんだろ
可哀想だなあ
ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD】
復讐、報復、大いに結構
けれど自分を鍛えてではなく、誰かを虐げて得た力で行うのは…格好悪いんじゃないかい?
しかしまあ暑い、むしろ熱いねこれ…!
可能な限り薄着で、ベリンダに言って貰ったように水やタオルを携帯した上でちゃちゃっと駆け抜けよう
【調律・機神の偏祝】を起動
強化された【ハッキング】でオレの周辺環境くらいなら熱量操作出来ないかな…無理かな…あっつい…
ダメ元で高度演算体を起動しつつ実施
なるべく起伏の少ないルートを選びつつ、断崖絶壁に行き当たったら魔爪を突き立てて登っていくよ
荒ぶるエネルギーの塊、溶岩をいつかゆっくり鑑賞したいと思っていたけど…うん、今ではないかな!命の危険が迫りすぎ!
●程度
赤く沸き立ち泥のように流れる川と川の間を、二人の青年が歩いている。
先ほどまでは駆けていたが、今は休憩がてらペースを落としているようだった。
「ア、……あっづう、い」
「本当にね……」
黒江・イサカが荷物の中から経口補水液の入った容器を取り出して口をつける。塩気もあるはずの水がただひたすら甘く感じられた。喉を潤すと、ともに歩くヴォルフガング・ディーツェへと別の容器を差し出してみせる。
「まだあるけど、飲む?」
「いや、オレも自分のを持って来てるから。ありがとね」
「そっか。しょっぱい飴もあるけど」
「あ、それはもらおうかな」
ヴォルフガングもタオルで首周りの汗を拭い終わると、持参した水を一口だけ含んだ。ひりついた口の中がそれだけでいくらか楽になる。イサカから受け取った塩飴も口の中へと放った。
「普通に“暑い”のはさ、まあまだいいんだけどさ。……“熱い”になると……勝手が違うよな……」
「だよね……“暑い”っていうか……むしろ“熱い”……!」
口で言う分には同じ音だったが、あえて言わずともお互いにニュアンスを察したようだった。どちらからともなく笑いが漏れる。
「そういえばさっき、魔法かなんかで温度下げてみるとかなんとか言ってなかった?」
「ああうん、熱量操作だね……ちょっと試してはみたんだけど」
ヴォルフガングが空中で手を横にスライドさせると、『トートの叡帯』による電子操作盤が現れた。
「熱いのはもちろん、自然現象として溶岩が流れてるからってのもあるんだけどね。どうもこの洞窟、火の精霊がものすごく多いうえに、ものすごく元気みたいでさ」
ヴォルフガングはここに来るまで、ユーベルコードを使用した物理法則の改竄により、自分の周囲の熱気だけでも和らげることができないかと試行していた。しかしヴォルフガングの発した“命令”はこの洞窟を我が物顔で支配する精霊たちによって“割り込み拒否”されてしまったのだ。
彼らの言葉を意訳するなら――「とっても過ごしやすい環境にしているのに、なんてことをしようとしているんだ!」だろうか。エアコンの温度を弄ろうとしたら部屋の主に怒られた時の気持ちに近いかもしれない。ヴォルフガングが変えようとしたのは自身の周辺環境のみだったのだが、それでも彼らには許し難かったようだ。
「そんな感じで聞く耳持たずっていうか、言うこと聞いてくれないんだよねー。粘ってはみてるんだけど」
「ああ、現在進行形で交渉中だったんだ」
「うん。でもちょっと無理そうかなー……」
出した時とは逆方向へ手をスライドさせて電子操作盤を仕舞う。ふう、とため息が漏れた。ダメ元ではあったが、この地獄のような熱さを軽減できる可能性の一つではあったために落胆も少なくない。
「地道に体力の消耗を押さえつつ進むしかないかなぁ。……あ」
「うん? ……お」
会話しつつ歩いていると、高い岩壁へと行き当たった。行き止まりのようにも見えたが、辺りを見渡せば迂回して進めそうなルートも何本かある。が、遠回りだということは目に見えて明らかだった。
「んー、オレひとりだったら爪で何とか登れそうだけど……」
「そうなの? じゃ、僕はあっちの方行くよ。足引っ張っちゃっても悪いしー」
「了解! 奥でまた会おう!」
迂回路へ向かうイサカを見送ると、さて、と指を鳴らした。その動作で腕輪に擬態している魔具、『スニークヘル』が腕輪から魔爪へと変化してヴォルフガングの両手に装着される。
聳え立つ岩壁を見上げた。高い。ショートカットとは言えども、なかなかに体力は使いそうだ。
「でもまぁ、踏ん張り時かな……! 命の危機も迫ってるし!」
覚悟を決めると、岩肌に右の魔爪を切り込む。手応えを得ると片足を僅かな段差に掛けて、クライミングを開始した。
*
一方、迂回路を進むイサカ。ヴォルフガングが挑戦している切り立った岩壁とは異なり、こちらはいくつかの溶岩の波が何層かに分かれて冷え固まった道のようで、歩きやすいなだらかな岩肌が形成されており、丘のような形になっている。
道中で、シャツの下の汗をハンカチで拭って、溶岩の川を見下ろした。
これまでの道中と変わらずにぼこぼこと煮立ちながら緩やかに流れ、岩壁にぶつかれば赤い飛沫を立たせている。
「とっとと抜けるに限るな、こんなところは」
――間近で見たことないから、新鮮ではあるんだけど。
此処に落ちちゃったらどんな風に死ぬんだろ。
あの近付くだけで死んじゃいそうな赤い泥に沈んで。塗れて。焼かれる?
「可哀想だなあ、それ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アベル・スカイウインド
暑い…いや熱いか?フッ、そのどちらもか。
などとカッコつけている場合ではないほどのあつさだな。
皆でいち早くここを抜けるためにも偵察のために先に行かせてもらう。
【ダッシュ】に【ジャンプ】そしてUC【竜翔】を駆使しながら素早く進むぞ。
警備は手薄ということだったが皆無ではないのだろう。【視力】を活かして敵をいち早く発見したら味方と相談しつつ、やるとなったら【先制攻撃】を仕掛ける。
他にも危険な場所などを発見したら味方のところへ戻り情報を共有しよう。俺だけが踏破できても意味がないからな。
イリーツァ・ウーツェ
熱いな。だがここを通るしかないと。
ならば冷やそう。
【叫哮波】で氷属性の拡散ブレスを吐き、道を冷やす。
これで、通る間くらいならば保つだろう。
(属性攻撃+火炎耐性)
溶岩に対しては集束型を放ち、しばらく岩になって貰おう。
(全力魔法+属性攻撃+なぎ払い)
私自身は翼がある。いざとなれば飛べばいいだけのこと。
だが、他に飛べない猟兵、疲れた猟兵などがいたのならば
私が背に乗せていこう。力には自信がある。
(怪力+かばう)
へばった者には水(E:携帯食料)を。私は後でいい。
酒への引火にだけは、気をつけなくてはいけないな。
●門
流れる溶岩の上で宙を蹴り、軽やかに鮮やかに跳び越えていく小さな人影。
愛槍を携えたケットシーの竜騎士、アベル・スカイウインドは持ち前の機動力を活かして何物にも阻まれることなく大洞窟の中を進んでいた。とはいえ、溶岩から発せられる熱気の過酷さはどの猟兵においても共通だ。
「暑い……いや熱いか? フッ、そのどちらもか」
アベルの全身を覆う猫の獣毛の中にもかなりの熱が籠っている。長居は危険だと十分に理解できた。ユーベルコードの回数制限に達する前に足場へと降り立つと、再び宙を駆けて大洞窟を疾う疾うと進んでいく。
*
アベルが己に課した役目は偵察だ。
大洞窟は進むにも難く、ただ動かずに居るだけでも崩れ落ちそうなほどに熱い。常人であればここを道に使うという発想には至らないだろう。敵であるリザードマンたちの姿を見かけないのも当然のように思えた。
しかしそれでもおそらく、皆無ということはない。
洞窟の構造のみで堅牢な要害が成立しているとはいえ、警備という観点でいえば人の目も確実に必要なはずだ。
移動の手間や環境の過酷さを考慮して道中に人員を配置していないのであれば、“火の国”に近い場所で要点を絞って固めているのでは――?
「!」
大洞窟の幅が狭まり、岩質が変わってきたところで、まだ遠く離れた“それら”をアベルの優れた視力が一方的に捕捉する。
人影。二体。
大洞窟の左右を塞ぐ丸く大きな二つの岩石の間で、門番のように直槍を携えて立っている。
こちらには気付いてない。会話をしている?
強まる溶岩の熱気を感じながらも高度を低め、岩陰に隠れてあらためて観察する。竜の頭をした亜人の人影がふたつ、というのは分かった。顔を突き合わせておそらく話をしているというのも。だがさすがに会話の内容を聞き取ることはできない。
しばらく見ていると、片方のリザードマンが奥の方へと引っ込んでいった。残った一人が岩の間の道を阻むように立ち、真正面を見据えて動かなくなる。
「見張りの交代か……?」
一人であればアベルのみでも問題なく屠れるだろうが、さて。
仕掛けるかどうか。
*
先行しているアベルのやや後方。
進行方向を隔てる溶岩の溜まりへと向けて、イリーツァ・ウーツェが口を小さく開く。口の前に氷属性の魔力が球状に収束して密度を高めていくと、充分量が溜まった段階でそのエネルギーを氷のブレスへと変えて溶岩に向けて放射した。赤く沸き立つ溶岩の水たまりが泥のような色に変わると、徐々に黒く固まり、急ごしらえの足場が形成される。
軽く乗って強度を確認。おそらく問題なし。しかしいつ崩れるか分からないため、足早に向こう岸へと渡る。
そこでイリーツァの耳が沸き立つ溶岩以外の気配を捉えた。敵が居たのかと戦杖を構えかけたが、そうではない。先行していたアベルが、宙を蹴って風を切りながら引き返して来たのであった。軽やかに宙返りしてイリーツァの目前に着地する。
「何かあったのか?」
「ここから先、そう遠くない所でリザードマンを確認した」
帽子の位置を整えつつイリーツァに応える。
「一人しか居ないようには見えたがな。とりあえずは情報共有を優先して戻ってきた訳だ」
「そうか。伝達感謝する」
「いいさ。では他の仲間のところにも行ってくる」
アベルが再び跳び立とうとしたところで、ああ、とイリーツァが声を漏らした。
「水があるが、要るか? 今のような技を繰り返し使っていれば消耗するだろう」
「……そうだな、もらおうか。助かるよ」
「気にしなくていい」
イリーツァが投げて寄越した容器を受け取ると、アベルは脱帽してみせた。
「疲れているなら、背に乗せて飛ぶことも可能だが」
「それは遠慮しておこう。この後に大仕事も控えていることだしな。お前も体力には気を付けてくれ」
「了解した」
生真面目そうに首肯するイリーツァにウインクを返すと、アベルは岩を蹴り跳躍してその場を去っていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宇冠・由
「へぇ……こんなところにドワーフの里があったんですのね」
(私の地獄の炎とどちらが……って比べるまでもなくマグマの方が熱いに決まってますわ)
私は空飛ぶヒーローマスク、本体がマスクの私は、どのような通路や悪路でも潜入は容易でしてよ
そして同時に全身炎のブレイズキャリバーでもあり、炎や熱には慣れておりますの
裏道を最速最短ひとっとび。下手に刺激して噴火でもしたらことですもの
【熾天使の群れ】を私を囲うように飛ばして、炎の壁を作ります
一時でもマグマの流れを阻害できればよしですわ
●群れ
ひゅんひゅんと風に乗った燕のように溶岩の川を軽やかに飛んでいく影がある。
無論鳥ではなく、鳥のような翼も無い。飛んでいるのはぬいぐるみのようなヒーローマスクの顔だ。
「へぇ……こんなところにドワーフの里があったんですのね」
変わらないマスクの表情から宇冠・由の声が零れる。由の眼下にはぐつぐつ煮え立つ溶岩の川が流れていて、発せられる熱気は飛行する彼女のところにまで届いている。湿気を奪われたマスクの表面はかさかさに乾いていた。
(私の地獄の炎とどちらが……って比べるまでもなくマグマの方が熱いに決まってますわ)
比べてみればどう転ぶだろうか。案外この洞窟を支配する炎の精霊たちの方が根負けするかもしれない。
特に障害もなく由はすいすいと洞窟の中を進んでいく。空中を飛行できることに加えて、本体がマスクのみの彼女は岩壁に進路を阻まれても難なく通り抜ける隙間を見つけることができる。
そして由はブレイズキャリバーだ。日頃より地獄の炎を身体代わりに使いこなす異能の持ち主は、過酷な炎熱への耐性を当然のように兼ね備えていた。
*
ふと目に留まったのは洞窟の岩壁より流れ落ちる大きな溶岩の滝。
高さがあるせいか溶岩の川に落ちてきたときの衝撃が強く、その影響を受けてか一帯の川は溶岩が波打ち飛沫を無造作に飛び散らす危険な場所となっている。避けようにも、進路上そこは通らざるを得ない場所だ。
ならば、と由はマスクの下から地獄の炎を噴き出した。噴き出された炎は由を囲うように動くと、徐々に千切れて無数の鳥――不死鳥の形となり、羽搏き飛びながら由を守るような陣形を作り上げた。密度が高いために、遠目では炎の球体がそのま浮いているようにも見える。
川の上に進入する。飛び散る飛沫が由を襲うが、マスク本体へ届く前に不死鳥に阻まれるためダメージは無い。
(この程度であれば問題ないようですわね)
先ほど過ぎった疑念を思い返す。真下で煮え滾り波立つ川の水面へと視線を向けた。
――さすがにこちらと張り合う気はありませんけれど。
成功
🔵🔵🔴
ガルディエ・ワールレイド
こういう場所で国を作ってるドワーフは凄ぇな
そして、お呼びじゃねぇ奴らには、お引取り願わねぇとな
【POW】基本は気合だ
行動の補助に【竜神領域】使用
飛翔で、足場の悪い(無い)場所も移動ルートの選択肢に入れるぜ
予備の水は多く用意しておくし、鎧は移動中は荷物として纏めて担ぐ
荷物から水を取り出したり何らかの作業が必要な時は《念動力》
手薄とは言え警備はいるらしいな
やり過ごせるならスルーを最優先
スルーが無理でも一気に殲滅出来そうなら《暗殺》
待ち伏せや、上空からの死角攻撃で有利を取る
竜神領域の遠距離攻撃(念動力)で音もなく引き裂くのが主力
長剣で《怪力》《なぎ払い》《2回攻撃》の近接戦も場合によっては使う
●一撃
「――分かっちゃいたが、他に道は無ぇか」
大きな岩からわずかに出していた顔を引っ込める。岩陰で荷物から水の入った容器を取り出して、一口だけ含んだ。渇いた喉が潤っていく。
ガルディエ・ワールレイドが観察していたのは、進行方向にある巨大な二つの岩。その隙間に門番のように構えているリザードマンだ。他の猟兵からの情報共有で存在はあらかじめ知っており、最初は迂回路を取ろうとしていた。
が、どうやら大洞窟の奥へと進むには必ずあそこを通る必要があるらしい。岩の周辺を敵に気取られない範囲で探索していたが、人間ほどの生物が通れそうな隙間はリザードマンのいる場所を除いて他にはなかった。おそらく敵側もそれが分かっているために、あの隙間へ見張りを置いているのだろう。……30センチほどの小さな空洞はいくつか見つかったため、ヒーローマスクの猟兵であればそこから通り抜けられるかもしれないが。
ともかく、ガルディエ自身が“火の国”へ至るためには必ずあの場所を通らねばならない。
そのためにはまず門番を撃破せねば。
――可能な限り静かに、かつ速やかに済む方法で。
*
元いた岩陰に鎧を含んだ荷物を置いておく。得物は複合魔剣『レギア』のみを持った身軽な状態となり、リザードマンの死角に姿を隠しながら徐々に距離を詰める。元居た場所でも十分攻撃圏内だったが、確実に、一撃で葬るためだ。
何個目かの岩に隠れる。彼我の距離20メートル弱というところまで迫った。これ以上は近付くと気取られる危険性が高くなるだろう。頃合いか。
岩から顔を出し、青い瞳だけを標的へと向ける。リザードマンは槍を手に真正面を見据えるだけ、視線がガルディエの方へと向くことはない。
重畳。
ガルディエが右の人差し指を立てると、空中でぴっと横に払ってみせる。
瞬間、見張りに立っていたリザードマンの腹から鮮血が噴き出した。
「――!?!? ……!!!!」
どうとそのまま倒れる。しばらく観察して完全に動かなくなったことを確認すると、岩陰から身を出して倒れたリザードマンへと近寄った。
完全に事切れている。
リザードマンの腹には、巨大な生物――たとえば竜の爪にでも裂かれたような大きな傷跡が、生々しく残っていた。
成功
🔵🔵🔴
リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と
……あついところは、ちょっとだけ苦手です。
ちょっとだけですよ。
手足を守るよう着込んで、
水にひたした布を首に巻いてゆきましょう。
水筒も、しっかりと。
わたくしはかしこいのです。
なるべくあつくない道をえらびましょう。
誰かが通ったことのある場所、通れる場所は、道になるのです。
道をさがすのは、とくいなのですよ。
ユーゴさまにくっついて、急いで参ります。
……ユーゴさま、ユーゴさま。
だいじょうぶです、か?
あつさだけではなく。
炎のよい思い出がないことは、なんとなくわかっているのです。
ご無理はなさらないでくださいましね。
はい、わたくしも無理はいたしません。
まだまだ先はながいのです。
ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と
そうか、俺は暑いところは比較的平気なんだが
これは……少し暑すぎるな。
きちんと熱気対策ができているようだな。
どこで学んだのかは分からないが、賢い子だ。
どれ、水筒ぐらいは俺が持とう。
なるほど、では道選びに関してはリリヤに任せよう。
俺はそうだな……アレを使うか。
【トリニティ・エンハンス】で水の魔力を纏おう。
リリヤ、もう少し寄ってこい、少しは暑さが和らぐはずだ。
ああ、そうか。
リリヤ、気を使ってくれてありがとう。
だが、こういう自然の火は大丈夫だ。
リリヤも疲れたら言うんだぞ。
お前は、すぐに無茶をするからな。
●パンくずと炎
ミルクティ色の髪が揺れている。
同道する少女がしゃがみ込んで地面をじっと見つめているのを、傍らの男は何を言うこともなく静かに眺めていた。
「……大きなあしあと。どなたがつけられたのでしょう」
「ドワーフたちか、あるいはリザードマンか……いずれにせよ、ここを通って行ったんだろうな」
リリヤ・ベルの疑念にユーゴ・アッシュフィールドが答える。リリヤが見つめているブーツ形の足跡はほとんど消えかけで、うっすらと残っている爪先が岩陰の小路の方へと向いている。地面に注意深く気を払わねば誰も気付かないような存在感の薄い痕跡だった。
「あちらに向かいましょう。誰かの通った場所、通れる場所は、道になるのです」
「なるほど。では道選びに関してはリリヤに任せよう」
目を合わせてユーゴが頷いてみせると、ほんの小さく胸を張る。
足跡が示す小路の方へと二人が歩き出す。ユーゴから離れないようにリリヤもすぐ後へと続いた。
右には土砂の壁、左には無数に転がった岩石が立ち並ぶ狭い隙間道を二人が前後に並んで歩いている。通行するにはやや狭く不自由があったが、近くで流れる溶岩の熱を岩石の並びが防いでくれているために、先ほど歩いていた時よりは幾分か涼しく感じられていた。
「まだ温くなっていないか?」
「ばっちりです、だいじょうぶです」
「そうか。水はあるからな、布を変えたい時はいつでも言うといい」
リリヤの今日の装いは、洞窟が発する熱の影響を受けないようにがっつりと厚着だ。何枚も着重ねているためにいつもより少しだけシルエットが大きい。首回りには涼を得るために水を浸した布が巻かれていた。
一方でユーゴは、熱気対策に水の魔力を身体に纏っている。見えざる加護の衣は過酷な熱気を和らげてくれる上に、乾燥を軽減し皮膚の潤いを維持する効能を併せ持っていた。
「リリヤ、もう少し寄ってこい。少しは暑さが和らぐはずだ」
「もう少し。こう、でしょうか」
狭い道であるためにユーゴの邪魔にならないよう配慮して少しだけ距離を取っていたリリヤだが、言われておずおずとユーゴのもとへと近寄ると「わ」と声が漏れる。不思議と空気が軽かった。
「楽だろう? 足にぶつからないようにな」
「わかりました。はなれすぎず、くっつきすぎずでまいります」
むん、と力強く応える。ユーゴの口元が柔く綻んだ。
「リリヤ」
ちょうど小路を抜けたところでユーゴが立ち止まる。自分の前を行かないように片手の所作で制すると、視線を上げた先にある岩壁の横穴を見つめた。ごろごろと音が鳴っている。うなりを上げる雷雲のような不穏な音が。
横穴から溶岩が噴出する。堰を切ったように流れる赤熱の洪水は、洞窟内の溶岩の川に落ちると重い音を立てながら真っ赤な飛沫を飛び散らせた。近くの足場へもその飛沫は降り注ぎ、高熱で岩の表面を熔かして無数の痕を残していく。
あれは怖いな――とユーゴが高所への注意を新たにしたところで、服の裾が引かれていることに気付いた。
「……ユーゴさま、ユーゴさま。だいじょうぶです、か?」
「うん? ああ、大丈夫だ。突然降って来るみたいだから注意しないとな」
「それも、あるのですが」
目を伏せるリリヤ。不安を感じているように見えたユーゴは屈んで膝をつくと、リリヤと視線を合わせようとする。
「……あつさだけではなく。炎のよい思い出がないことは、なんとなくわかっているのです」
「……ああ」
納得の声がユーゴの口から漏れた。
「リリヤ、気を使ってくれてありがとう。だが、こういう自然の火は大丈夫だ」
「でしたら、よいのですが。……ご無理はなさらないでくださいましね」
「約束しよう。リリヤも疲れたら言うんだぞ。お前は、すぐに無茶をするからな」
「はい、わたくしも無理はいたしません。まだまだ先はながいのです」
相手を慮る約束を互いに交わすと、ユーゴが立ち上がる。
騎士と少女の二人はその後も同伴者への配慮を欠かさずに、洞窟の奥へと進んでいった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィルジール・エグマリヌ
人に怨みがあるとはいえ、大量虐殺は頂けないな
ドワーフたちを解放して、しっかり悲劇を防がないと
でも困ったな……暑いのは苦手だ
こうなったら最速で走り抜けよう
水や心ばかりの氷嚢材、ハンカチも忘れずに──いざ
先ずはバトルインテリジェンスを発動
ドローンに自身を操らせて、身体能力を強化したい
脚も速くなると良いのだけれど
道中は電脳モノクルで周囲の環境を解析して
少しでもマグマが少ないルートを探せたらと
進路に迷う時は第六感にも頼ってみよう
あとは適度に休息を取りながら進んで行くよ
水分や塩分補給も定期的に行わないとね
1人で攻略が無理そうな時は
誰かと協力することも視野に入れよう
助けが必要そうな人が居たら勿論手を貸すよ
●ルート&ルート
周辺地形構造解析開始……………………………………完了。
【!警告!】例外情報を確認。魔法的要素が地形に影響を与えている可能性があります。不明部分については『A&W』モジュールによって補正を行います。
解析結果を立体表示します。(精度:約71%)
電脳モノクル越しのヴィルジール・エグマリヌの視界に、ほとんど暗い青色のみで描画されたシンプルな地形情報が展開される。現在ヴィルジールがいる灼熱の大洞窟が続いた先にドーム状に開けた広い空間があった。おそらくここが目指すべき“火の国”だろう。その先に正規の出入り口と思われる細いトンネルがあった。裏道よりもはるかに小さく短い。
地形情報の描画が終わると今度は単色の赤で溶岩の流れが描画される。あっという間に青色で描かれた裏道の縮図を8割ほど赤色で塗り潰してしまった。これでは通り抜けられる余地はないようにも見えるが、拡大してみると溶岩の流れていない細い線、つまり通行可能な足場がいくつか存在していることが分かる。もっとも、30%ほどは補正されて表示されている図であるために、実際に行ってみると“外れ”に当たるかもしれないが。
「推奨経路を算出」
演算開始………………………………………………完了。
予想されるリスクを合わせて表示します。
異なる色の道筋が3本、ヴィルジールが居る現在地からドームの入り口へと伸びて示される。
少し悩んで、ヴィルジールは所要時間・リスク遭遇率ともに中間のルートを往くことにした。
*
バトル・インテリジェンスにて身体能力を強化。脚部の運動効率向上を優先。
熱気の中マントをなびかせて、アスリートもかくやという速度で大洞窟の中を走り抜ける。
『50メートル先、溶岩流に接近します。ご注意ください』
荒々しい流れによって波立ち飛沫を立たせる溶岩の川の映像が拡大表示された。川へと近寄る手前で一時停止。様子を見てから一気に通り抜ける。小高く盛り上がった地面の天辺に立つと、ふうと息を吐いた。汗をかいているせいで、ヴィルジールの長い藍色の髪が首へと張り付いている。
『体内の水分が不足しています。小休止および水分の摂取を推奨します』
「……そうだね、そうしようか」
首に張り付いた髪の毛を払うとハンカチで汗を拭き、氷嚢で首の後ろを冷やす。取り出したボトルに口を付け、塩分摂取用のタブレットも口の中へと放った。脱水のせいか、いつの間にか小さく苛んでいた頭痛がそれで和らいだ気がする。
電脳モノクルの立体表示をズームアウト。現在地を俯瞰して確認する。
目的地までの到達度は三分の一といったところだった。
「あと二回繰り返しか。……やっぱり暑いのは苦手だな」
気が滅入る部分もあったが、ここで挫けていては大量虐殺の悲劇は防げない。
覚悟を決めて再びの駆け足を始めた。
成功
🔵🔵🔴
壥・灰色
壊鍵、起動
灼熱のマグマが満ちる洞窟とはいえ、道がない訳じゃないだろう
マグマの上にある飛び石、浮島、足場になるならその程度で構わない
けたたましい破裂音を立てながら、空中、足下で何度も『壊鍵』の衝撃を炸裂させ、宙を飛び渡る
さすがにマグマの直撃は貰いたくない
装填した衝撃の残量に気を遣いつつ、足りなくなりそうなら息継ぎに手近な島や飛び石に着地して再装填、再度跳躍
マグマの上だろうが、流れ落ちる横合いだろうが、お構いなしに跳び越えて、最短距離で突っ切っていく
武器鍛冶が巻き込まれる事件は、直近で自分も一つ持ってたから
今度は、直接救う側にひとつ手を貸してあげたいものだね
●ランナー
灼熱の溶岩の上を苦もなく走破する影は、常人には何者に映るのだろうか。
サムライエンパイアやUDCアースの出身者であれば忍者、などと答えたかもしれない。
超常の術を行使しているという点では正解だ。――もっとも、彼の者が行使するのは忍術ではなかったが。
よく見れば壥・灰色が踏んでいるのは沸き立つ溶岩の川ではない。
宙にある空気。そこに両足に装填した“衝撃”を炸裂させて、溶岩に触れることなく川を跳び渡っているように見えるのだ。足を踏み下ろすたびに巨大な風船が勢いよく弾け割れたような音が洞窟内にこだまする。それが連続して何度も。両足から蒼い火花を散らし、溶岩を波立たせながら、凄まじい速度で大洞窟内を駆け抜けていく。
この大洞窟最大の障害である溶岩の川を行動可能範囲と変えた灰色を止めるものは何もなく、ただひたすらに目的地へと向けて最短距離を突っ切っていた。
岩すら熔かす溶岩の飛沫も問題にはならない。
絶え間なく放たれる“衝撃”は何もかもを踏み弾く。灰色の身体に届く前に、それらは防がれ川へと消えていた。
無敵の攻略方法にも思えるが、難点がひとつ。
「……熱いな」
真下に溶岩がある分、下肢から伝わる熱気は凄まじいものがあった。
魔術回路は容器。魔力の入れ物である以上、限界は存在する。
残量を少ないと見れば道中で適当な足場を見つけ、数歩手前から制動をかける。
目当ての岩の上で余剰な力を入れることなく完全停止。
「――壊鍵、再装填」
ガソリンが充分量で満たされると、岩を削り跳躍して、再びの疾走が始まる。
すでに“火の国”へ至る道程は半分を越えた。
救うべきドワーフたち――望まぬ労働を課せられている鍛冶師たちのいる目的地は程近い。
蘇るのは以前、グリモア猟兵として自身が担当した任務。
こことは異なる世界、サムライエンパイアにて今回と同様に、武器鍛冶が巻き込まれる事件だった。
あの時は皆の力を頼った。
今度は、自分の番だ。
蒼い火花が溶岩の川に軌跡を残しながら、大洞窟の奥へと消えていく。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『リザードマン』
|
POW : シールドバッシュ
【手にした盾で攻撃を受け流して】から【生まれた隙に、盾による殴り付け攻撃】を放ち、【衝撃でふらつかせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 曲剣一閃
【変幻自在に振るわれる曲刀】が命中した対象を切断する。
WIZ : テイルスイング
【太く逞しい尻尾による薙ぎ払い攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:イガラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●鉄火の国
長い長い煉獄の道を抜ければ、やがてそこに辿り着く。
一面に広がる溶岩の湖。
開けた視界から、一瞬外に出てしまったのかと思った。
しかし遥か上にある土くれの天井を見れば、ここが紛れもなく地下だということが分かる。
円蓋状の広大な空間。幅も高さもあった裏道よりもさらに大きく、明るい。
大洞窟内の岩壁を下から照らし上げる赤熱の光は、道中のものより数段光量を増している気がした。
目指すべき“火の国”は溶岩湖の中心にあった。
地下にありながらまるで空中都市。山のように大きな一枚岩の上、人の手によるものか削られてほとんど平面となった高台に石造りの街が築かれている。立ち並ぶ住居は建物と洞穴の中間のような形をしており、大きな岩の中身をそのままくり抜いて作ったような家もあった。
崖下に溶岩湖を望む一枚岩の端には住居よりも大きな工場がいくつかある。煙突から煙が立ち上っていて、今もドワーフたちが作業をしていることが外から見てもすぐに分かるだろう。
見回りに歩くリザードマンたちはそこかしこで見かけることができたが、特に工場周辺は厳重に警戒されているようだった。
さて、裏道の出口、溶岩湖のほとりから見ると“火の国”はずいぶんと高い所にある。
裏道から“火の国”へと唯一繋がっている一本道の階段を上る。
一枚岩の斜面を登る。
飛行能力でひとっ飛び。
いずれかの手段で“火の国”に至れば、まずは甲竜討伐のための前哨戦だ。
正面から突入して敵の注意を引くも良し、ひっそりと潜入して一体ずつ静かに葬るも良し。
そしてリザードマンたちを倒し、ドワーフたちを避難させることも重要だが、バリスカンの情報を聞き出すことも忘れてはならない。
首魁は強敵だ。決戦に備えて、やるべきことは確実にやっておこう。
テリブル・カトラリー
逃がせば首魁が此方へ来るのが早まる
1人も逃す訳にはいかない
【支援狙撃】発動、ドローンで地形と敵、味方の位置の情報収集
敵が少なくクライミングに適した場所から
斜面を踏みつけ、ブーストで自身を吹き飛ばしてジャンプ
気付かれない程度に距離を稼いでから目立たないように侵入
後はステルスコートで姿を隠し
敵は怪力で首を絞め静かに暗殺
戦闘知識から射撃に適した位置を確保
ドローンで収集した情報から敵の動きを見切り
スナイパーライフルの狙撃で遠距離から敵を鎧無視攻撃
また可能な範囲で味方の援護等も早業で行う
戦闘後
ドワーフに首魁の兵器の突破口を尋ねる
首魁の持つ兵器。虐殺に使われてそのままにはしたくない。
どうにかできないか、と
●静音
収集した地形情報を解析中――完了。
かつて試そうとした人間が何人いたのかは分からないが、クライミングという観点では“火の国”が載る一枚岩の難度は高くはない。岩壁の凹凸が大きいゆえに掴める場所も多く、途中で休めそうな足場もいくつかある。――もっとも、下手を打てば後方に広がる溶岩の湖へ真っ逆さまではあるのだが。
登り切ってしまえば懸念も杞憂となる。
ステルスドローンで登攀ルートを調査。最適と思われる経路を見つけると、ブースターの推進力を得ながら斜面を蹴り、大きく跳躍しては上へ上へとぐんぐん登る。あっという間にテリブルは一枚岩の天辺へと至った。
そこはドワーフたちの工場がある区画からは離れている。建物らしき岩の塊はいくつかあるが、ドワーフたちの姿もあまり見えない。ドローンで“視て”得た情報によれば、この辺りの洞穴は食糧庫として使われているようだった。
人影は少ない。だがゼロではない。少なくとも一体は歩哨に立つリザードマンをすでに確認している。
コートのステルス機能を起動して、身体の模様を背後の岩と同じくすると、足音を殺してテリブルは行動を開始する。
大きな尻尾をゆらりと揺らす。
両手にそれぞれ剣と盾。鋭い眼光で周囲を警戒しながら、のしのしと岩の地面を踏みしめてゆっくりと歩く。
こん。
「……?」
物音のした方向を見れば、岩の平屋に挟まれた小路に小石が転がっていた。人影はどこにもない。
ならば何故音がした?
曲刀の柄を握る力を強め、小石のそばへ歩いていこうとした時だった。
突如襲い来る閉塞感。一瞬後に、息ができないことに気付く。
「……!?」
げ、という音とともに蜥蜴の形をした口が開いた。細長い舌が突き出たまま震える。
息ができない、息が――!!
背後から首を絞められているのだということは分かった。だがだからといって抵抗する術は無い。
竜人の太い首を剛力で締め付けている“何か”を剥がそうとしても、力の入らない指では少しの隙間を作ることも適わない。
やがて思考も正常に働かなくなっていく。視界が白くぼやけて、暗くなり――。
竜人の意識はそこで途絶えた。
リザードマンの生命活動が停止したことを内蔵のセンサーで確認する。両手を離すとどさりと地面に転がった。
通常の人間より遥かに体格に恵まれた生物であるが、首を絞めれば窒息死するのはヒト型の哺乳類と共通であるようだ。上手くコツを得られれば頸椎を砕いて瞬殺も狙えるかもしれない。
とは言え、接近しての絞殺は使える状況が限られる。人気のないここでは有効な手段だが、手勢の多い工場側では別の手段を講じる必要があるだろう。
ドローンで得た情報から狙撃に適したポイントをいくつか見繕っている。次はそちらに向かうか。
地図情報を展開して目的地までの距離を算出――しようとして気付いた。
人の気配。それも近い。
*
「……首魁の持つ兵器。虐殺に使われてそのままにはしたくない。どうにかできないか」
テリブリが捉えたのは食糧庫に麦を取りに来た若いドワーフだった。
警戒させないようステルスを解いてコンタクトを取り、真摯に事情を話す。
未知の闖入者に最初は面食らい怯えの色もあったドワーフだったが、冷静になると大きく背丈の異なるテリブルと視線を合わせながら話し始める。
「……おらぁ下っ端だからよ。あんまり鍛冶場の仕事も任されてねぇんだ。だから、あいつが持ってる武器のことはあんまり分からねぇ……けど」
工場で今も働いている熟練の職人たちならば、あるいは。とそのドワーフは語った。
成功
🔵🔵🔴
シャルロッテ・エンデ
ドワーフ仲間のシェルツァ(f04592)しゃんと一緒
第1章は、つい迷子になっちゃいまちた
ここからシャルロッテちゃんも合流でち!
同胞が助けに来たでちゅよ!
正面から一本道を登り
ドワーフたちにアピール
ここなら敵も少人数でしか戦えない
地形の利用でちゅよ
さらに、小柄なドワーフの攻撃を
体格差のあるリザードマンが盾で受け流すのは難しい
シャルロッテちゃんの
蒸気ドリルシールドマシンみたいな
トンネル掘りの要領で硬い防具を削り取り
大穴を開けるような攻防一体の「盾攻撃」なら
なおさらでちゅね!
大地は我らの友なり
地脈操作を使い、地面から大地の力を取り出せば
まるで宝石のような、まんまるなアメちゃんが
みなしゃんもどぞ♪
シェルツァ・アースハーバード
ドワーフ仲間のシャルロッテ(f12366)さんと共に。
我らドワーフの力を見せ付ける時です。私に続いて下さい!こいつらを蹴散らします!
私は正面から攻めようと思いますが、シャルロッテさんに作戦があるならそれに乗るも良し。
多数を相手にするのは難しいですし、出来れば比較的狭い通路に引き付けて戦いたいですね。
相手は硬い鱗に加えて武具を器用に操る種族。前哨戦とはいえ油断は出来ない相手。
ですが、それがなんだというのです。
大剣『クレアーレ』を使用し、『魔力宿りし光輝な剣』を使って盾ごと叩き潰してやります!
圧倒的な強さを見せ付け、バリスカンの情報を聞き出します。
弱点の一つでも聞き出せば良し、情報共有も忘れずに。
●真向
侵入者など居るはずもない、と思っているのかもしれない。
リザードマンたちは明らかに、外部への警戒に力を割いていない。彼等が注視して探っているのは外から来る侵入者の気配ではなく、内部にいるドワーフたちの動向なのだろう。
それもそのはずで、このような溶岩に囲われた地下奥深くの街まで好んでやって来る人間は、実際あまり存在しない。たまにドワーフが作った武器防具を仕入れに来る商人たちがわずかに居る程度だ。もちろん、彼らは正規の経路を辿ってやって来る。
通るだけで艱難極まる、あの灼熱の裏道を通って来る人間など――。
口に出さずともその認識は共通。
裏道に繋がる階段の出入り口が手薄となっているのも必然だった。
下の溶岩湖から天辺まで一枚岩の内部を貫く空洞。裏道から“火の国”に唯一繋がるとされる階段はそこに在った。
斜め一直線の石の階段がただ伸びるのみ。一定の間隔を置いて天井から吊り下げられた、赤く発光する鉱石が空洞の内部を照らしている。それだけだ。
注意を傾けて監視すべきものなどない。
シェルツァと同行するシャルロッテ・エンデがリザードマンに遭遇したのは、ほとんど石の階段を登り切ってしまった後だった。
「貴様等――猟兵ッ!!」
抜刀して戦闘態勢を取るリザードマンの後ろに明かりが見えた。鉱石の光とは異なる赤色だ。
おそらく外、あそこが出口なのだろう。
「どうします、シャルロッテさん」
「突破して開けた場所に出るのも手でちゅが――ここはこの狭い場所を利用して戦いまちょう」
「了解です。他の敵も誘い込んでみましょう」
シャルロッテがトゲ付き鉄球を備えた槌と盾、シェルツァが魔法剣『レギーナ』を構える。ともにドワーフ、身の丈には余るように見える大きな得物だった。
見張りに立っていた一体の声を皮切りに近くにいたリザードマンたちも階段へと殺到する。
しかし階段のある空洞は決して広いとは言えない。尋常の人間より体躯で遥かに勝っているリザードマンたちなら尚更で、巨躯を脇にある岩壁にぶつけながら戦うことを強いられていた。また、数で勝っているにも関わらず、狭い通路ゆえに限られた人数しか前衛に立つことができない。
あらゆる点で防御側にとって不利。
一方で相手する猟兵二人はと言えば、まったくの逆だった。
リザードマンの半分ほどの体躯しかない彼女たちは、この狭い通路でも十二分に戦える。
シャルロッテの丸盾――否、盾形の掘削機が回転し唸りを上げる。足腰にぐっと力を込めて階段を蹴ると、上にいるリザードマンへと向けて思い切り突っ込んでいった。
シャルロッテの体躯もあり、低過ぎる位置からの攻撃。満足に動けないリザードマンは盾での防御が間に合わず、腰に纏った装束ごと左脚を高速回転する掘削機に抉られていく。
「ガァ……ッ!!」
「そこでち!」
体勢を崩すリザードマンを『暁の星』が襲う。皮鎧ごと胸の真ん中を槌のくちばしで穿つと、そのリザードマンは声無き断末魔を発するように口を開き、痙攣して動かなくなった。
「ぐっ、こいつら……! ちょろちょろと鬱陶しい……!」
下にいるシェルツァに向け曲刀を振り下ろすリザードマン。だが己の腰より下にいる相手に振り下ろされる剣撃には十分な力が込められていない。大剣の刀身で軽く弾いていなすと、反撃に『レギーナ』を振り被る。剣の全体が瞬時に魔力で満たされ、淡く発光した。
「……!」
盾を正面に構えるリザードマンだが、シェルツァの放つ強烈な覇気にすでに半ば己の最期を悟っていた。
「はぁぁぁぁぁぁッ!!」
裂帛の気合を込めて光輝の剣が打ち下ろされる。
鉄の丸盾を苦も無く叩き割ると、リザードマンの身体を皮鎧ごと袈裟に断ち、血飛沫とともにその命を散らせていった。
残った最後の一体を倒し、加勢が来ないことが分かると、二人は階段を上り切って空洞の外へと出た。
居住区だろうか。リザードマンたちが特に警戒している工場の近くではなく、四角い岩の建物がいくつも立ち並んでいる通りだった。階段のある穴から出てきた二人をドワーフたちがやや遠巻きに輪を成して取り囲んでいる。リザードマンたちの叫びを聞き、何事かと穴の外から様子を伺っていたようだった。
「ドワーフの皆ちゃん! 同胞が助けに来たでちゅよ!」
「穴に降りて来たリザードマンたちは倒しました! もう安心です!」
安心させるようにそれぞれの得物を勇壮に掲げてみせると、ドワーフたちから「おお」と声が上がった。お互いに顔を見合わせ、疲弊しきった表情に希望の色が湧き出つつある。
シャルロッテは自らのユーベルコードを行使し、一枚岩に籠る大地の力から宝石のように輝く飴を作り出すと、それをドワーフたちに配り始めた。口に含めば、過酷な労働により消耗したドワーフたちの身体に活力が蘇る。ありがとうございます、ありがとうございます、とシャルロッテの手を握りながら老いたドワーフが何度も頭を下げていた。
「私たちは敵の首魁――バリスカンを倒すつもりでいます。何か、情報をご存知ではないでしょうか」
質問するシェルツァにドワーフたちが考える様子を見せる。よく見てみると、ここに居るドワーフたちは老人や子供が多いようだった。
「……あの竜に作った武器のことならば、職人衆たちが詳しいだろう」
白い髭をたっぷりに蓄えたドワーフが通りの先、その少し上を枯れ木のような指で示してみせる。
そこには赤熱の溶岩に照らされる大洞窟の中を一直線に立ち昇る、大きな煙があった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
工場で強制労働させられているドワーフ達も心配ですが、彼らへの人質となり得る彼らの家族、女性や子供達の安全を確保しておきたいですね
幸い本格的な警備は工場に割かれているようで、住居エリアの戦力は少なそうです、侵入を悟られずに倒して解放しなければ…
●防具改造で暗色の外套を纏い、●怪力やワイヤーアンカーを使った●ロープワークで斜面を登り、居住エリアに密かに侵入
センサーで拾った音や振動を頼りに見張りの配置を●見切り、UCで持ちこんだウォーマシン用の剛弓での●スナイパー技能を用いた静音狙撃による●だまし討ちで静かに仕留めていき、女子供の安全を確保
人々を護るためとはいえ騎士というより工作員の所業ですね…
●精密
“火の国”の縁へとひそやかに潜入した大きな影は、一枚岩の表面と同じ鉄黒の色を纏っていた。登攀に使用していたワイヤーアンカーを巻き取って外套の下、白い装甲の中へと格納する。
トリテレイアが居るのは、同じ形の四角い岩の平屋がいくつもある区画だ。居住区と思われるが、表を出歩いている人の気配は殆ど無い。しかしセンサーの感度を絞って岩の内部へと向ければ、それぞれの平屋の中にいくつかの生体反応があることが分かる。身体の大きさや体温からしてドワーフ、それも女性や子供ばかりだろう。
バリスカン討伐にあたっては、強制労働されている職人たちのいる工場の攻略も肝要だが、それ以外の区画も確実に解放しておく必要がある。リザードマンが一体でも残っている以上は、人質に取られる可能性などのリスクを払拭できないのだ。
(まずは彼らの安全を確保せねば)
敵の少ないエリアから確実に。
家に閉じこもっているのはリザードマンに怯えているのか、そう命じられているのか。
いずれにせよ、労働を課せられているドワーフたち以外は殆ど外に出ていない。ということは、この近辺で外にある気配はまず間違いなくリザードマンだということだ。
高感度マルチセンサーが反応を捉える。足音。筋肉のある成人の若いドワーフよりも重く、地を踏みしめる力が強い。そして尻尾で身体のバランスを取る独特の歩行ペース。
出力を押さえてブースターを吹かし、平屋の上へと登る。外套の下から取り出したのは、ユーベルコードによって変形・縮小させていたウォーマシン用の剛弓だ。巨大かつ弦の力が強過ぎて、ウォーマシン以外はまともに引くことができない。しかしその代わり、威力は抜群だ。
槍のように大きな鏃を持った矢をつがえて、構える。――標的を視認。視界に映るリザードマンを拡大表示すると、画質が自動補正され姿がより鮮明になる。そして照準はリザードマンの背中、心臓の位置へと定まった。
弦を引いて蓄えられた力を解き放つ。びゅっと風を切って飛来する矢が、正確にリザードマンに心臓を穿ち貫いた。その射撃の凄まじい威力に、2メートル近い体躯を持つリザードマンが突き飛ばされたように地面へと倒れる。
間もなくして、トリテレイアのセンサーが生命活動の停止を確認した。
発見・反撃されない遠距離から静かに敵を葬っていくトリテレイアの戦法は、その後も着実に成果を上げ続ける。
だが、しかし。
「……人々を護るためとはいえ、騎士というより工作員の所業ですね……」
迷彩効果を持つ外套を纏う姿は、さながら暗殺者。
理念と行動にギャップを認識しつつも、白い騎士の姿を持つウォーマシンの放つ矢は、どこまでも正確だった。
成功
🔵🔵🔴
リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と
気付かれないうちに、階段をゆきましょう。
駆け足ですよ。えいえい、おー。
はい。いつものとおりに、まいりましょう。
ユーゴさまよりすこし後ろ。
尻尾のうごきに注意をして、巻き込まれないよう気を付けて。
よく観察して予備動作がわかるなら、
攻撃が来る前にお声掛けをいたします。
隙を見て、わたくしもひかりをまねくのです。
周囲に危険はないでしょうか。
大丈夫なら、ドワーフの皆様をたすけにゆきましょう。
怪我をされている方、疲弊されている方の手当てをしがてら、
バリスカンの武装について伺えたら。
どんなことでも、きっと討ち倒すためのちからになります。
皆様の想いも、お借りしてまいります、ね。
ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と
まったく、空を飛べる奴は羨ましいな。
仕方がない、俺達は階段を使うか。
リザードマンか。
武装は兎も角、尻尾が面倒な相手だな。
まあ、慎重にいけば何とかなるだろう。
リリヤ、いつも通りの戦い方で頼む。
ああそうだ、リザードマンの剣の腕前でも褒めてみるか。
さぞボスも強いのだろうなどと言ってみれば、何か情報を漏らさんだろうか。
さて、俺達が担当すべき相手は片付いたか。
それじゃあ、囚われの髭のおっさんの救助と手当てでもするか。
こういうのは麗しい女性が困っているのが相場だというのに。
……聞き込みはリリヤに任せよう。
●願い
先行した猟兵たちにより階段の進路はクリアとなった。
倒された見張りの亡骸を越えてあと少しだけ登れば、そこはもう“火の国”だ。
「ようやくか。敵が居なかったのは良いが……まったく、空を飛べる奴は羨ましいな」
「でも、無事にたどりつけましたので」
ユーゴの後にリリヤが続く。すでに一掃されたのか、周辺にリザードマンの気配はない。ドワーフの姿も。
見たところこの辺りは居住区。通りの向こうには岩で作られた平屋が続いている。探せばまだ敵が居るかもしれない。
「……工場の方に向かうのも手だが……懸念は潰しておくか」
「はい、あちらに。まいりましょう、ユーゴさま」
「……! 貴様等……!」
案の定というべきか、居住区の通りを歩いているとリザードマンと遭遇した。全員で三体。
ユーゴたちの姿を認めれば、曲刀を抜剣し敵愾心も露わに睨みつけてくる。尻尾が左右に揺れるとぶおんと重く空を切る音が鳴っていた。筋肉の塊。得物は勿論、あの尻尾も脅威だろう。
「まあ、慎重にいけば何とかなるだろう。リリヤ、いつも通りで頼む」
「うけたまわりました。いつものとおりに」
緊張も無く、自然体でルーンソードを抜刀してユーゴが前に出る。
リザードマンの一体が咆哮をあげながら曲刀を振りかぶって駆け出すと、残る二体もそれに続いた。
三体すべてを相手取ることになったユーゴは、尻尾の動きを警戒しつつもルーンソードで曲刀の斬撃をいなし続ける。リリヤに敵の注意が向かないよう、自分から牽制の攻撃を入れていくのも忘れない。
「ひだり、したから! きます!」
リリヤの注意に視線が向く。鞭のようにしなってユーゴの横っ腹を叩こうとしていた尻尾を、半歩後ろに下がる最低限の動作のみで躱してみせた。
「小娘が……!」
邪魔された一体が残る二体に任せてリリヤの方へ向かおうとしたところで、鋭さを増したユーゴの剣閃がそのリザードマンの首を斬り裂いていく。
「相手を間違えるなよ」
「貴様ッ!」
激昂した一体が感情のままに曲刀を叩き付けんとしてくる。そこに、後方にいるリリヤの指先がぴっと向いた。
どこからともなく雷光が落ちる。天の裁きがリザードマンを直撃し、一瞬だけ動きが止まったところへ、間髪入れずユーゴがルーンソードを叩きつける。リザードマンは皮鎧ごと鱗と肉を断たれ、血を噴き出しながら力なく地面へと転がった。
「さて、あとはお前だけだな」
「ぐっ……!」
残る一体が後退りしながら声を漏らす。戦意は消えていないが、続け様に仲間を屠られ明らかに怯んでいるようだった。
「劣勢だがよくやってるよ、なかなかの剣の腕だ。さぞボスも強いのだろうな」
「……ハッ!」
吐き捨てるように言って口元が歪む。人とは顔の構造が違うために分かりにくいが、竜人はどうやら嘲笑を浮かべているようだった。
「我等と甲竜様では格が違うッ! いい気になるなよ、あの御方がご帰還なされば、貴様等など一網打尽だ……ッ!」
「へぇ、そんなに強いのか」
「……あの御方にもう付け入る隙など無い。矮小な人間どもなど、成す術無く“轢き潰される”だけだろうよ」
それで口を閉じた。もう語ることは無い、と表情が告げている。
鉄の丸盾をユーゴへと向けながら、じりじりと距離を詰めようとしていた。
「やれやれ……」
――もっと付き合ってくれてもいいだろうに。
ルーンソードを構える。
リザードマンは覚悟を決めてカッと声を上げると、地面を蹴り真っ直ぐにユーゴへと襲い掛かってくる。
*
近辺の敵を一掃した後、二人は囚われたドワーフたちの救助を始めていた。
表を出歩いているドワーフたちの姿は無かったが、どうやら工場に出ている職人たち以外は皆家の中へ籠っているようだった。二人がやって来た“階段”へ近い家の扉から順に叩き、事情を説明すると、階段への避難を促していく。
主にリリヤが避難誘導と聞き込み。ユーゴが避難経路の警護。それから二人とも、傷付いたものたちへの手当を行っていた。
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
「いいよ。ほら、足元に気を付けてな」
老婦人を気遣いながらリリヤへちらと目を向ける。うまくやれているだろうか。
「……では、工場にいらっしゃる方々がおくわしいのですね」
「ええ、ええ。あの竜が使っている武器を作ったのも、職人衆ですので……」
癒しの光で照らしながら、口の周りに白い髭を蓄えた老いたドワーフからバリスカンについての情報収集を行っている。
「お力になれず申し訳ありません……ですが、彼らに聞けば絶対に分かるはずです。……ですので、どうか、どうか……」
「はい、助け出してみせます。バリスカンも、きっと討ち倒してみせましょう」
皆様の想いも、お借りしてまいります、ね。
そうリリヤが微笑んで老ドワーフに応えると、赤銅色に灼けた老ドワーフの痩せ細った頬に、一粒の涙が伝い落ちていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィルジール・エグマリヌ
翼も筋力もないし、階段を上って行こうか
道中も念の為に警戒は怠らずに
火の国入口付近に到着したら、先ずはレギオンを召喚
彼等を先行させてひと騒ぎ起こしてしまおう
敵を惹きつけることで仲間の潜入や
ドワーフ救出の時間稼ぎが出来れば良い
私は階段付近で、彼等を逃がす時に邪魔に成りそうな敵を殲滅するよ
基本的には隙を見せた敵の不意を突き剣で暗殺
正面から挑む際は手数重視で二回攻撃を意識
反撃は第六感を発揮して避けたり、敵を盾にすることで防ごう
上手く防御出来たらカウンターを仕掛けたく
損傷は激痛体勢で凌ぎ、体力危うければ生命力を吸収
もしドワーフと話す時間が有れば
バリスカンの武装の詳細や、戦う際のアドバイスなどを聴きたいな
●空地
「……妙だな」
エレクトロレギオンを居住区に展開させてリザードマンたちの注意を引きつけながら、自身は階段付近に留まって警戒しつつ避難の補助を行っていたヴィルジールだが、レギオンから転送されてくるデータに違和感を覚えていた。
百機以上いるレギオンを有効活用するために、なるべく各機の距離を置いて展開させていたが、先行している数機が居住区を“抜けて”しまったのだ。より正確に言うなら、『居住区があるはずの、何もない空間に出た』。
避難していたドワーフたちの話によれば、工場はレギオンたちの進行方向とは逆側にある。となれば向こう側には工場以外の施設しか無いはずだが、このだだっ広い空間は何だろうか。空地をあえて設けているにしても、階段付近の住宅の密集具合から考えるとやや不自然な広さだ。
「――ふむ」
一考して、ヴィルジールはレギオン数機のリソースを空地の調査に割くことにした。
「猟兵ッ! 貴様等の仕業かッ!」
岩の家の陰から現れたリザードマンがヴィルジールに激昂する。
自ら階段付近までやって来るようレギオンでの誘導を試みていたが、上手くいったようだ。
「ひっ……に、兄ちゃん!」
「大丈夫。――君達は離れていてね」
近くにいたドワーフに安心させるように声を掛けると、落ち着いた所作で『Canopus』を抜刀する。曲刀を携えて向かってくるリザードマンを正面から見据えて構えた。
曲刀を振り被ったリザードマンは斬り付けようとしたところで一転、身体を半身傾けて尻尾による打撃を見舞おうとしてくる。冷静にリザードマンの予備動作を観察していたヴィルジールは、横へ一歩スライドして躱してみせた。
憎々しげに顔を歪める竜人。――そこで左の上腕に“熱さ”が走る。
「――!?」
痛みがやって来たのはその少し後。
鋸状の白兵武器を持ったレギオンが不意を突き、竜人の腕の肉を鱗ごと削っていたのだった。
「この――」
「余所見は良くないね」
レギオンに気を取られた隙に、処刑剣がリザードマンの太い首へと襲来する。人間よりも遥かに大きな竜人の頭が跳ねとんで一枚岩の硬い地面へと落ち、ごとんと鈍い音を立てて転がった。
「ふう……」
「だ、大丈夫かい、あんた」
黒い髭のドワーフがヴィルジールのもとへと駆け寄る。囚われの環境が長かったゆえか痩せこけてはいるが、柔和で人の善さそうな顔付きをしていた。
「当たらなかったから大丈夫だよ、ありがとう。……そうだ、ちょうど良かった。聞きたいことがあるんだ」
空地に向かっていたレギオンたちの情報収集はあらかた終わっていた。転送されてきたデータをもとに、モノクルの機能を使用して空地の光景を空中に描画してみせる。
「ここはどういう場所なのかな。ごつごつした岩が点在しているだけで、何もない場所に見えるのだけれど」
「ここは――」
眉間に皺が刻まれる。少しだけ間を置くと、声に怒りを滲ませながら言葉を続けた。
「……あの“亀野郎”の遊び場さ」
「……遊び場?」
「兄ちゃん。兄ちゃんたちは、あいつと戦うつもりなのかい」
細い垂れ目がヴィルジールの緑色の瞳を見つめる。首肯すると「そうか」と返ってきた。
「だったら俺からひとつだけ言えることがある。……あいつの前には立たない方がいい。うかつに立つと、“こうなる”」
親指でくいと示すのは、空中に映し出された岩だらけの空地。
「この岩はな、残骸さ。試運転とか言って、あの亀野郎に轢かれて潰された――俺たちの家だ」
成功
🔵🔵🔴
白斑・物九郎
●POW
・正面から突入、敵注意を引く
・狙うは工場、【獣撃身・黒】で突貫
・死角は【野生の勘】で網羅
・トカゲ由来の輩ならば低温攻撃とか効くだろうか?
・四肢、胴、尾、眼光に【属性攻撃(氷)】を纏い臨む
・地形破壊級の膂力で受け流しを許さず輩の盾ごとブチ抜く
・敵連携の寸断やドワーフの脱出経路作りの為地形破壊を活用(地形の利用)
●ドワーフの人らへ情報収集
(製造されているブツを眺め)
コレは違いますよな
この国の火と鉄と業は、こんなん作る為にあるんじゃありませんよな
既に配備されちまったヤツ解体すんの、手伝わせて貰いますでよ
知ってるコト教えて下さいや
ケリ付いた暁にゃ、そっスね
俺めのメイスでも鍛えて貰いましょっかな
●誰が為に
工場はいくつかの棟に分かれていて、それぞれ一号、二号と名前がついている。
作られる物や用途、要求される技術も棟ごとの特色があるようだった。
物九郎が正面から乗り込んだ一号棟は、刀剣類を始めとする武器の鍛造を担務している場所だ。
完成品と思われる長剣や槍がいくつも並んでいる。中には、リザードマンたちが使用している曲刀もあった。
当然ながら、どれもが人ないし人型の生き物が使うべき武器として製造されている。
……だが明らかに何振りか、“そうではない”ものもいくつか存在していた。
『――あの馬鹿でかい曲刀が、お宅らの親玉の得物っスかね?』
「……!? 猟……兵……ッ!?」
発せられた声は人の言葉を使っていたが、人のものではなかった。
猟兵を視認すれば“倒すべき敵”と本能で理解するオブリビオンたちにも、敵意と同時に戸惑いの色があった。
それは化け猫。
黒い毛並みに白斑の模様を持つ、リザードマンたちよりも遥かに巨大な一匹の“あやかし”だった。
『まぁいいっス。……他に聞くべき人たちが居ますものな』
「な……!? ……が……ッ!!」
化け猫の目が細まり、鋭い眼光で武装したリザードマンたちを刺し貫いていく。すると如何なる絡繰りか、闖入者を迎え撃とうとしていたリザードマンたちが武器を構え、口を開けたまま凍ってしまったように動かなくなったのだ。
否。凍ってしまったように、ではない。……実際に凍っているのだ。
あやかしの力を帯びた化け猫の視線には、氷の属性が付与されている。
『手加減無しでいきまさぁ。どうぞ遠慮なくかかって来てください』
「待――」
高く上がった化け猫の前脚に、視線に宿っていたそれを遥かに超える力が集束されていく。
リザードマンたちは抵抗を試みるも、途切れ途切れの声を出すのがせいぜいだ。
つまり、逃げる余地などまったく無い。
渾身の掌打が振り下ろされる。
がん、がん、がんと続け様に何度も。
叩きつけるたびに竜人たちの身体を装備ごと砕くと、魂ごと凍てつかせるように屍を氷の力で覆っていく。
「貴様ァッ!!」
後方より声。物陰に隠れて視線から逃れていた一体が、曲刀を振り被って襲い掛かって来る。
しかし物九郎はそちらを見ることもなく、尻尾を鞭のようにしならせると、目にも留まらぬ勢いでリザードマンへと叩きつけた。竜人の身体が吹き飛び、工場の壁に打ち付けられて動かなくなる。
一号棟内部の敵はそれで全滅だ。
「……地下生活で鈍ってたんスかねぇ」
要所を固める精鋭たちにしては、どうにも温い。
考えつつも人の形に戻る物九郎の姿を、遠くに逃れて成り行きを見守っていたドワーフの職人衆たちが、あんぐりと口を開いて眺めていた。
*
壁に立てかけられている、工場の天井まで届くような巨大な曲刀の刀身を、握った手の甲でごんごんと叩く。
大きさゆえ、ということもあるかもしれないが――硬い。工場内に存在する他の刀剣よりも数段強度が上だ。
「特別製、ってことですかな」
「半端な物を出したら命は無い、って言われてたんでな。……誰に言ってやがんだ、って返してやりたかったが」
工場の代表を務める棟梁が悔しさを滲ませて物九郎に語る。ドワーフらしい逞しい肉体は健在だったが、顔のやつれ具合がひどい。目の下の隈は真っ黒で、眼窩の周りも老人のように落ち窪んでいる。健康を顧みない過酷な労働環境に身を置かされ続けた結果だった。
「コレは違いますよな」
ごんと一際強く、殴るような力で叩いた。
「この国の火と鉄と業は、こんなん作る為にあるんじゃありませんよな」
「……」
棟梁が拳を握った。爪が掌に刺さり、血が滲み出るほどに。
「……ここにあるヤツ片すの、手伝わせて貰いますでよ。知ってるコト教えて下さいや」
「……ああ、助かる。亀野郎が戻ってくるまでに済まそう」
棟梁がさっと手を上げると、職人衆が曲刀の処分作業に取り掛かり始める。天井に伸びている太い鎖を数人掛かりで引くことで、曲刀を支えているクレーンに似た設備を操っていた。
「ひとことで言やぁな、あいつの武器――というより、ここにある武器の弱点は、“水”だ」
「水?」
「ただの水じゃあねぇがな。まぁ順を追って説明するさ」
*
「お前さんは武器は持たねぇのか?」
「扱う時もありますでよ」
「そうかい。……全部終わったら礼もしないとだしな。お前さんが欲しいんだったら、打つぜ」
「そりゃあいい。そっスね、そしたら俺めのメイスでも鍛えて貰いましょっかな」
「おう、任してくれ」
成功
🔵🔵🔴
宇冠・由
私は空飛ぶヒーローマスク、崖の斜面なんてひとっ飛び
そして火の国いえど、溶接などで炎は見慣れていても、空飛ぶ生きた炎は目立つはず
全身を地獄の炎で形成し、空中戦で戦闘
光に群れる蛾の如く、リザードマン達をおびき寄せ、空中の離れた場所から【熾天使の群れ】を雨の如く降らせます
こちらの炎は敵のみに誘導され家屋などに被害は及ばず、向こうの曲刀は私に届くことはない。万が一投擲され命中しても、ブレイズキャリバーの能力ですぐさま身体を再生させますわ
「ごめんなさい……」
決して天使とは言い難い戦い方と薄々自覚しながらも、ドワーフ様たちを救うためと割り切ります
ドワーフ様達に、バリスカンが一番注文したものを聞きます
●シューティングスター
「居たぞ、あっちに行った!」
「何だ、あの炎は……!」
猟兵たちの進軍により騒ぎ立つ“火の国”。居住区を見回っていた数体のリザードマンたちは、一枚岩の上空で躍動する謎の飛翔体を追い掛けていた。
飛翔体の正体は、燃え盛る炎の身体を持つヒーローマスク。――地獄の炎で首から下の身体を形成した由である。
赤熱の光で照らされる大洞窟の中にあっても、より色濃い赤を纏う由の姿ははっきりと際立つ。あえて地上から捉えやすいように宙返りなど曲芸めいた飛行を繰り返しながら、地獄の炎の赤い軌跡を鮮明に残していく。時にはあえて高度を低めて、リザードマンの視界に入りに行くこともあった。
そのように分かりやすい挑発を行っていれば、必然リザードマンたちの敵視も由に向く。炎の身体を持つ敵の正体は彼等には掴めないが、オブリビオンの本能が「あれは猟兵、倒すべき敵」と告げているのだ。
遠距離からの攻撃手段は持たないものの、見逃すわけにも行かずひたすらに由を追い続ける竜人たち。
獲物を思うままに引き寄せる由の姿は、さながら飛翔する誘蛾灯だった。
(――十分ですわね)
目についたリザードマンはすべて誘導できた。全員で六体、上出来だろう。
踊るような飛翔誘導を止めると、眼下にてこちらを見上げてくるリザードマンたちを眺めながら、身に纏う『炎のドレス』のスカートを燃えるその手で払ってみせた。
飛び散る火の粉。――それらは徐々に肥大化しながら鳥の形を成すと、由の周りをぐるぐると飛び舞い始める。
もう一払い。もう一度。払えば払うほどに鳥の数は増える。増えに増えてやがては炎の渦、あるいは竜巻のような形を空中に作り上げていく。地上のリザードマンたちは「あれは何だ」と警戒しつつも何をすることもできず、茫然とその様を眺めていたが、内なる彼らの生存本能は小さい声ながら確かに警告を発していた。
あれはまずい、と。
警告に従い撤退を考え始めたころにはもう遅い。
及び腰になっていたリザードマンたちへ火の鳥たちが襲来する。岩の家屋や避難するドワーフたちを避け、的確に標的の竜人たちの身体にのみ突貫していく。
無数に生まれた不死鳥たちがすべて着弾するころには、居住区に六本の火柱が噴き上がっていた。
破れかぶれに曲刀を投げつけてきた者もいたが、半狂乱でろくに狙いも定まらずに放った攻撃が、自在に空中を飛び舞う由に命中するはずもない。
無傷で地上に降り立つ。焼き尽くされたリザードマンが居た場所に亡骸は何も残らず、火柱で焦がされた岩の地面だけがあった。
(ごめんなさい……)
『熾天使の群れ』は与えられた使命を確かに果たした。
それは『天使』とは言い難い最期をリザードマンたちに齎したかもしれない。
だがそれも、“火の国”のドワーフたちすべてを救うため。割り切りも必要だと、心中で謝罪を述べつつも由の後悔の念は無かった。
*
「やつが一番に注文したもの……ですか」
「ええ。ご存知でいらして?」
避難していたドワーフの一人に声を掛ける。禿頭の老ドワーフは少し考えてから口を開いた。
「より詳しくは職人衆が知っているでしょうが……私たちから見ても特に拘っていたものは、“戦車”でしょうな」
「……戦車」
「ええ。……動くところも何度か見ました。より強く、より速く、より硬くと」
老ドワーフが居住区のある方向へと視線を向ける。
由はその後、他の猟兵からの情報共有によって、そちらの方向にバリスカンによって“轢き潰された”居住区があることを知った。
成功
🔵🔵🔴
ガルディエ・ワールレイド
ドワーフがいなきゃ成り立たない方針をとってる癖に、自分達が上位だと思い込んでる。ダセェ奴らだぜ
◆行動
相手の防御体勢が整う前に、【竜神領域】の飛翔で一気にドワーフの作業場へ飛び込むぜ
隠密行動する猟兵がいる場合は、彼らが行動を起こすタイミングに合わせる
武装は《怪力》《2回攻撃》を活かすハルバードと長剣の二刀流
《武器受け》や《かばう》でドワーフを守る
複数の敵が間合いに入れば《なぎ払い》
【シールドバッシュ】は一方の武器を受け流されても、他方の武器で対応出来るよう二刀流の利点を活かして戦うぜ
戦闘後、ドワーフに質問
「亀野郎が過ぎた武器を持ってるそうじゃねぇか。詳細を教えてもらえねぇか? わかるなら弱点も」
●豪胆
「……!?」
石造りの工場棟の天窓から降下してきた黒い影は、重量感のある音を伴って着地する。作業をしていたドワーフたちが、監視に立っていたリザードマンたちが、皆一様に侵入してきたガルディエに視線を奪われていた。
敵の数、一、二――成る程、こんなものか。
先手必勝。床を蹴りもっとも近くにいたリザードマンへ距離を詰めつつ、複合魔槍斧『ジレイザ』を持った右手に力を籠める。全身を分厚い甲冑で包んでいるとは思えない俊敏な動作に、盾を構えるのが一瞬遅れた。それが致命的だった。
横薙ぎの強烈な一斬。腕を断ち胴に至り、肋ごと肉と臓腑を破壊する。怪力と質量からなる衝撃に隅の壁まで吹き飛ばされると、ごつごつした岩の壁に赤い血を塗り付けてそのまま動かなくなった。
「き――貴様、猟兵……ッ!」
一体やられたところでようやく反応が追い付いた。リザードマンたちが抜刀し、ガルディエへと襲い来る。ドワーフたちはといえば物陰に隠れたり、作業台の下へ頭を引っ込めたりして、避難の態勢を取りながら戦闘の成り行きを見つめていた。
数体がかりで曲刀の斬撃と尻尾による殴打、それから丸盾による突き崩しを狙ってくるリザードマンたちに対し、ガルディエは両手に握った二つの得物で的確に攻撃を捌いていく。曲刀による斬撃は籠手で受け止めても良さそうだ。彼らの膂力と技術程度では、魔鎧『シャルディス』の装甲は全く揺るがない。
身を捻りながら繰り出される尻尾を『レギア』にて半ばから断ち切る。怯んだところに、リザードマンの肩へと『ジレイザ』を振り下ろした。竜人の胸まで重くハルバードの斧部分が刺さると、ガルディエは右腕に力を込めて“そのまま”横殴りに叩きつける。ハルバードに刺さったままのリザードマンの身体が他の仲間へとぶつかり、三体がまとめて体勢を崩して床へと転がった。
――何だ、こいつの力は。
そのように言いたげだった二体のリザードマンが慌てて起き上がった。戦慄しているのが目に見えて分かる。ハルバードが刺さったまま攻撃に利用された一体は床に転がったままで、すでに虫の息だった。
「ぐ――!」
二体が視線を交わして頷き合うと、盾を構えた。そして同時に床を蹴りガルディエの間合いへと迫る。
恐るべき膂力を理解したがゆえの防御重視態勢、同時攻撃。
猟兵が左右に持った得物の脅威を分散させる狙い。
一打一打であれば、警戒していれば防げる――そこから活路を切り開く……!
「……そりゃ悪手だぜ」
――ハルバードに禍々しい呪力が、魔剣に赤い魔力が漲る。
威力を底上げされた二つの武器はその後、竜人たちが構えた盾を、彼らの命もろとも粉砕していった。
*
戦闘後、“亀野郎”の武器について職人衆たちに問うてみると、工場の奥へと案内された。
そこに在ったのは、作りかけの乗り物、だろうか。
車輪があり、フロント部分は反り上がった盾のような形をしている。内部を覗けば、強い炎の魔力を発する大きな箱が搭載されていた。見た目の印象としては何となく、UDCアースなどで言うところのエンジンに似ている所があるかもしれない。
アックス&ウィザーズには、自動車を作るほどの文明は存在しないはずだが……。
「あの野郎がてめぇの鈍足を補うために作らせたものさ。こいつはまだ未完成の予備だが……最初に出来上がった試作品は今頃、外で乗り回して遊んでるんだろうよ」
「中に積まれてるこれは何だ?」
「“動力源”さ。ここに来るまでクソ熱い溶岩を嫌というほど見ただろ? あれが原材料だよ。炎の魔力を爆発させて馬鹿みたいな力を生む。もっとも、危険すぎて真っ当な乗り物には使えやしないがね」
「真っ当な乗り物には、か」
甲冑に覆われた手でフロントの装甲を叩く。
凄まじい強度を持っていることが、鎧越しにガルディエの肌へと伝わってきた。
「弱点とかはあるのか」
「強いて言うならまあ、水だな」
「水?」
「ああ。と言っても、ただ水をぶっかけるとかじゃ駄目なんだがね……」
工場の責任者と思しき年長のドワーフが、己の知る情報を語り始めた。
大成功
🔵🔵🔵
黒江・イサカ
あっつ…
ほんと、動いていい気温じゃないよねえ
火の国ってクーラーとかないの?涼しいところは?
……ない?あっそう…
たぶん、ドンパチ始まったら正面に集まりがちになるでしょ
その隙に物知りなドワーフさん方をどうこうされても困るし、僕はこっそり工場に近付こうかな
僕ってば【目立たない】からね、
1体1体丁寧に、隠れながら驚かしながら殺していこう
避難経路はちゃんと作っておかなくちゃ
そうそう、短い腕を補うような武器を作ったらしいけど、何造ったの?
あと、鎧は?甲羅だけ?
甲羅硬いらしいけど、ぶっ壊せそうなイイ感じの道具とかない?
ついで、ドワーフさん方にはこのあたりを聞いておきたいな
殺しやすくなるって、便利だし
●冷
いくつかの棟が並ぶ工場区画。
三号と名前のついたその棟のいるリザードマンたちは、猟兵たちの進撃に混乱する“火の国”の現状を必死に把握しようと努めていた。
どうなっている、居住区で戦闘が始まっている。
ドワーフたちはどうした。家に閉じこもっているのではなかったのか。
他の棟は無事なのか。すでに制圧されてはいないか。
不安そうにしている職人衆のドワーフたちをよそに、見張りに立っていた三号棟のリザードマンたちが何やら話し合っている。
「……ともかく、同志と合流せねば。他の棟が無事か見てこよう」
一体のリザードマンがその場を離れ、棟の入口から出て行こうとする。
――入口の壁を曲がったところ。
ちょうど中にいるリザードマンたちからは死角となる位置に、イサカが壁に寄りかかって立っていた。存在感の無さに出て行こうとしたリザードマンは一瞬見逃しかけるが、振り返ってぎょっとする。
「貴様――」
言葉はそれ以上は続かない。ぱちんと開かれた折り畳みナイフの刃が、固い鱗で覆われたリザードマンの首を容易く斬り裂いた。人とは異なる身体構造を如何に把握したのかは知れないが、イサカの凶刃は、的確に竜人の急所を抉っていた。
どうと倒れるリザードマン。特に大きな感情も抱かず見下ろした。
それにしても。
「……ほんと、動いていい気温じゃないよねえ……」
工場の建物に使われている石材は、どうやら温度を低く保つ性質を持っているようだ。
触れればひんやりと涼感が肌へと伝わる。適うなら、このまま壁に寄りかかったまま動きたくなかった。
同じネタは何度も通じないだろう。それに気付かれてしまえば警戒される。
戻ってこないことを不審に思われる前に、こっそりと片付けてしまおう。
開けっ放しの工場の窓から中へ侵入する。中に残っていたリザードマンたちは職人衆の監視に戻っているが、頻繁にちらちらと入口の方へと視線をやっている。いつ仲間が戻って来るのかと気にしているのだろう。
折り畳みナイフを取り出す。近くにあった巨大な桶へと放りぶつけて、あえて音を立てさせた。
「……?」
一体のリザードマンだけがそれを捉えると、目を鋭く細めながらやって来て拾い上げる。不審そうにしげしげと観察した。
「何だ、これは……」
他の仲間たちへ意見を求めようと、声を上げかけたところで動きが止まる。
床へと崩れ落ち、音が立つ前にイサカが片腕で受け止めて、すでに魂の消えた竜人の肉体を支えた。
「重っ……」
思わず文句が零れたところで、隠れていたドワーフの若い職人と目が合った。
口を両手で押さえている。眼前で起きた凶事に怯えているが、声を出さないよう踏ん張ってくれているらしい。
「……」
しい、と唇の前に指を立てて片目を瞑るイサカ。
がくがくと激しく頷くドワーフ。
良かった、実に協力的だ。
*
順調に敵の処理が終わってしまえば隠れる必要もない。
職人衆たちへ事情を説明すると、バリスカンの情報収集を始める。
「短い腕を補うような武器を作ったらしいけど、何作ったの?」
「そりゃあアレだよ、曲刀だな。担当は一号の連中だ」
「曲刀って、あの人たちが使ってるみたいな?」
イサカが指し示した先には、床に倒れているリザードマンの亡骸があった。
「形はそうだな。だが大きさが馬鹿みたいに違う。あの亀野郎のためにとんでもねぇ大きさで作り上げてんのよ。それを嘴に咥えて使ってんだ」
「くちばし? ……なんか……器用なことする亀だね」
「……実際に振り回してるところ見るとあんまり笑えねぇんだがな。クソ野郎には違いないが、強くなることにはひたすら貪欲なヤツだ。練習を積んでかなり器用に扱えるようになってる」
油断はしない方がいい、と受け答えしている壮年のドワーフは念押しした。
「あと、鎧は? 甲羅だけ? 甲羅硬いらしいけど、ぶっ壊せそうなイイ感じの道具とかない?」
「鎧は作ってねぇが、代わりがある。二号の連中が作ったやつがな。アレがありゃあ鎧は要らねぇだろう」
甲羅についてはよく分からん、とのことだった。あくまで彼らが知っているのは、ドワーフたちが作った武具についてのみのようだ。甲羅を壊すための道具というのも、残念ながら心当たりは無いらしい。
「そっか、ありがとう。鎧の代わりっていうのは他の人に聞いてみようかな」
「おう。……他に何か聞きたいことは無ぇか? 必要なものとかもあるんだったら言ってくれ。用意する」
尋ねられるとイサカは少しだけ悩んで、思い付いたのか「あ」と声を漏らした。
*
三号棟から去って他の場所へと向かうイサカ。
その手には工場の壁と同じ色の、氷の魔力が宿った鉱石が握られていた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD>POW】
暑さ寒さも彼岸まで、とサムライエンパイアでは言うそうだけど、悪しき者達を送る代わりに火の精霊さん達もオレにデレて環境操作させてくれ…たりしないね、知ってた
使い方を幾らか変えるとして…【調律・機神の偏祝】を再起動
岩の構成情報に【ハッキング】して登り易い隆起をところどころに作りながらクライミング
リザードマン達を発見した強化した【全力魔法】の業火で焼き払おう
精霊さん、精霊さん。君達の棲みかを荒らす者を少しばかりウェルダンにしたいんだけど、魔素操作しても構わないかな?無茶苦茶暑いのはもう我慢するさ…!
残った敵は所持品の【ヘルメス】で弱点属性を割り出し【属性攻撃】を付与した鞭で蹂躙だ
●業火絢爛
『とっても過ごしやすい環境にしているのに、なんてことをしようとしているんだ!』
ヴォルフガングに怒りの炎を燃やしていたのは道中にいた精霊たち。
環境操作して温度を下げようとしたら、折角の憩いの場になんてことを、と。
正義を成すためにと説明したら許してくれただろうか。否、彼らはありのまま成すがままに生きる自然の象徴たち。人の善悪などは基本的に知ったこっちゃないのだ。よく言えば自分に素直、悪く言うなら自己中の極み。
その辺りはヴォルフガングも察していたので途中からは交渉を諦め、暑苦しい環境のまま何とか踏ん張って“火の国”までやって来ていた。
岩壁の形状を自在に変え、クライミングして天辺へと至り居住区へと辿り着く。
――そしてリザードマン数体と遭遇したのがついさっき。
*
さて、涼しくしようとしたら怒られてしまったが、逆ならどうだろうか。
答えは、反応もまた真逆であった。
*
「うわ、すっごい張り切ってるな……!」
蛇口をひねったら思った以上に水が出てきて驚く。そのような体験に似ていた。
リザードマンたちを蹴散らすための焼却魔法。虚空より現れた魔力の業火は、一瞬かっと発光すると、あっという間にヴォルフガングの周囲を炎の海で埋め尽くしてしまう。想定を超える出力に、術を行使するヴォルフガングの肌までもが灼けるような熱を感じていた。どうやら自身で行った魔素操作以外にも、炎の精霊による“お節介”が環境に影響を与えているようだ。
「でもまぁ、無茶苦茶熱いのはもう我慢するさ……! 存分に暴れるといい!」
精霊の助勢を得て力を増す業火を持ち前の技術で御すると、突如現れた大火に怯んでいるリザードマンたちへとその猛威を差し向ける。龍のような形を成した赤い炎が顎を開き、逃げ腰となっていた竜人たちを呑み込んでいく。逃げるいとまは一切無い。
位置が幸いし炎から逃れた者もいたが、人ならざる化生の目は見逃さなかった。
反撃に曲刀を構えヴォルフガングに迫らんとしていたリザードマンを襲ったのは『葬列の黒』。炎の属性を纏った邪鞭の一撃が、竜人の身体を覆う頑丈な鱗ごと肉を削ぎ取っていく。振るい、削り、傷を与えるごとに、身を内から焦がすような灼熱と鋭い痛苦がリザードマンを苛んだ。
「ガァッ……!!」
――こんな所に居るのに、炎に強いって訳でもないのか。
魔道モノクル『ヘルメス』に表示された解析結果はそのように語っていた。
魔法的な相性の悪さゆえか、それとも種族の性質なのかは分からないが。
いずれにせよ、難儀なものである。
*
敵を一掃し終えても、そこには昂った精霊たちが生み出した熱気が濃密に残っている。
果たして道中のそれとはどちらが上だっただろうか。
汗だくのヴォルフガングがどのように思ったのかは知れないが、ひとつだけ切実な言葉が漏れた。
「……あっづい……」
居住区の別の場所、まだ戦闘の気配を感じる方向へと早々に駆け出す。
ここにもう敵は居ないし――とにかく、そう。暑過ぎるのだ。
快適な熱気の中で泳ぐ不可視の精霊たちはといえば、朗らかにヴォルフガングを見送っていたという。
成功
🔵🔵🔴
アベル・スカイウインド
地下にこんなところがな…フッ、まさにドワーフの国だな。
さて、騒ぎを起こすにはまだ早いか…いきなり敵を刺激してはドワーフたちの安全が確保できんからな。まあ仲間次第ではあるが俺はこっそりやらせてもらう。
目立たぬよう地形を利用しながら移動しつつ情報を集め、できるだけ少数で固まっている敵を狙って【暗殺】【先制攻撃】で素早く静かに仕留める。
リザードマンから情報を聞き出すために一体だけわざと生かす。というのも考えたが、オブリビオンが猟兵に何か喋るとも思えんからな…さっさと骸の海に送るのが無難か。
さて、事が済んだら近くにドワーフがいないか確認しよう。もしいたらバリスカンの武装や弱点などを聞けるかもしれんな。
●猫は影にいる
(地下にこんなところがな……フッ、まさにドワーフの国だな)
猟兵たちの進軍に混乱沸き立つ“火の国”の居住区を密やかにアベルは進む。岩の平屋に小さい体躯を活かしながら、敵に見つからぬよう建物の影から影へと俊敏に移動する。
すでに他の猟兵たちによる行動は始まり、リザードマンとの交戦やドワーフたちの避難も始まっていた。アベルもそちらに参戦するかと一考したが、自らの強みを活かすべくあえて隠密行動を選択している。
狙いは、居住区内で孤立している“蜥蜴”狩り。
次の標的を発見する。平屋の上に軽く跳躍して乗ると、身体を隠しながらすぐそばの地面へと視線を向けた。そこには何事か声を荒げて会話をしている二体のリザードマンが立っている。
一体だけならもっと楽だが――まぁ、問題ないだろう。
立ち上がり、平屋から鮮やかに跳び立つ。リザードマンの一体へと穂先を向けて落下すると、その勢いのまま竜人を貫き、左肩へと降り立った。流石は頑健な竜の眷属、小柄なアベルが肩へぶつかり落ちても身体は崩れ落ちなかったが、アベルの得物は皮鎧に覆われた胴体を深々と貫いている。明らかに致命傷だった。
「な――」
攻撃を受けた者、ただ見ていた者。ともに何が起きたか分からない風の二体だが、アベルは構わず次の行動を取る。
すでに貫いた竜人の身体を蹴って弧を描くように跳ぶと、もう一体の背後へ。着地した直後に身を翻すと、反応が遅れている標的の腰へと向けて思い切り得物を突き出し、鱗に覆われた肉を穿つ。
曲刀の柄に伸びようとしていたリザードマンの手が止まり、少しの間を置いてから赤い血を吐き出した。
「きさ――ま」
「悪いな。眠ってくれ」
続く言葉が出る前に槍を抜き取ってもう二連撃。それが止めとなってそのリザードマンは体勢を崩し、地面へと倒れた。先制攻撃を入れた一体もすでに倒れて虫の息である。
……わざと一体残して尋問することも、少しだけ考えた。
しかしバリスカンに忠誠を誓うオブリビオンたちが、天敵である猟兵たちに情報を漏らすとも思えない。
ここは速やかに葬り、骸の海へと送っておいた方がいいだろう。
口から血を零しながら苦悶の息をあげる瀕死の一体を楽にするべく、アベルは愛槍を振り上げた。
*
「この辺りのドワーフたちは……すでに避難済みか」
突入初期の情報では岩の家に閉じこもっているとの報もあったが、すでに平屋の中にも人の気配はなかった。
ここでは情報が得られそうにないが、職人衆たちのいる工場へ向かった猟兵たちも多い。バリスカンについてはおそらくそちらで聞き出してくれるだろう。
「ならば、まだしばらくは己が役目に勤しむとしよう」
地面に転がるリザードマン二体の亡骸を残し、アベルは残党狩りへと跳び立つ。
――居住区にいる敵は、この時点でほとんど駆逐されようとしていた。
成功
🔵🔵🔴
壥・灰色
おれは陽動をかねて、真正面から突入する
一枚岩の斜面を、壊鍵の衝撃を炸裂させながら駆け上る
当然ながら轟音が響く、すぐさまリザードマンが群れてくるだろう
好都合だ
手加減が下手でね
沢山いてくれないと、生き残りを作れるかどうか怪しいんだ
最後の一歩を高く飛び
火の国の内側に降り立ったら戦闘開始
避難を呼びかけつつ、手近にいる敵から順に、衝撃を籠めた拳脚で水月、首、延髄、左胸、肝臓を穿ち叩きのめす
敵の攻撃は『衝撃』を爆発反応装甲のように用いて軽減
常に距離を詰めての至近での格闘戦を挑む
即ち、ドワーフたちを巻き込まない戦い方でもある
生き残りがいれば、バリスカンの弱点を聞いておこう
死にたくないなら、言った方が賢いよ
●勝つ
すでに戦いの趨勢が決しつつあるのが、甲竜不在の“火の国”の現状。
遡ること少し前。ちょうど他の猟兵たちが階段からの進撃を始めた頃だった。
*
一枚岩の切り立つ岩壁、その中でも特に傾斜の厳しい崖の上にある居住区にて。
始めは地震かと思った。
だが岩の家に閉じこもっていたドワーフたちは、すぐにそれは無いだろうと思い直す。この辺りでの地震など、親やその上の親からも聞いたことがない。このような場所に築かれた国で頻繁に地震が起きていては、住むどころの話ではないのだ。
なら、この轟音と揺れはいったい何なのだろうか。
崖のそばまで様子を見に来た竜人たちは、次第に正体に気付き始める。
地震でないとはすぐ知れた。どちらかと言えばそう、これは爆発が起きている気配に近い。冒険者の魔術師が行使する物騒な攻撃魔法、あれに似ていると戦いの中で体験した者が何体か察している。
爆発が起きているのは崖の下。音は徐々に増している。揺れも大きくなっている。段々と近付いてきているのだ。
地震などではない。
一帯を警邏していたリザードマンたちが集結しつつある。全員が曲刀を抜き、身構え、もうすぐ襲来するであろう“何か”が出でる方向へ、じっと睨みを飛ばしている。
何度目かの音が轟く。
そうしてそれは崖の下から、リザードマンたちよりも遥か高みに跳躍しながら現れる。
「ああ――沢山いるね」
その声が彼等に聞こえたのかは知れない。
挨拶代わりの一撃は、上空から蒼白い火花を伴って放たれた。
*
先制打を許し少なくない損害を被ったものの、彼らは決して逃げようとはしなかった。多対一、しかしその間にある数以上の戦力差を肌で感じ取りつつも、猟兵という宿敵を打ち倒すため勇ましく鬨の声を上げながら殺到してくる。
囲われて退路を絶たれても、灰色はなお冷静だった。
迫り来る尾撃。躱して延髄への手刀。顔から倒れて絶命する。
曲刀の一閃。へし折った勢いで水月。くの字に吹っ飛び戦線離脱。
盾を前に猛攻。砕かれて正面からの殴打。あばらを砕かれ心臓が止まった。
「ぐ――」
間合いの取り方が上手い。囲んで攻め立てているにも関わらず、瞬間的には一対一を強いられている。
ならば、と三体のリザードマンが示し合わせて同時に前へ出た。
巻き込み覚悟、意地でも一撃入れてくれると、三体同時の攻撃が繰り出される――!
「――ふ」
爆音。
至近だとうるさいどころでは無い。何も見えなくなってただ痛いだけだ。
三振りの曲刀が灰色を斬り付けんとしたその瞬間に両腕の『衝撃』を起爆。
襲来した三体のリザードマンを彼方へと吹き飛ばし、痛烈な圧からうち二体を失神させていた。
*
「……さて、もうおまえで最後だけど」
絶命したリザードマンが無数に転がっているその光景は、まるで嵐が過ぎ去った後のようだった。
ドワーフたちを巻き込まないことを考慮して至近での格闘戦に終始していたが、結局まったく彼らの姿を見ることはなかった。轟音と揺れを恐れて灰色から遠ざかっていったのかもしれない。
残る一体。『壊鍵』の直撃は逃れたものの完全には避け切れず、肝臓にダメージを負い“死に損なってしまった”一体が、灰色の前に座り込んで苦しげに肩を上下させていた。
「親玉の弱点を聞かせてもらおうか。――死にたくないなら、言った方が賢いよ」
「……く、く。ふくく」
凄味を利かせた物言いも、最期を悟った者には届かないのか、口の端から血を垂らしながら不敵に竜人は笑ってみせた。
「……間もなくだ。もう間もなく、お戻りになる」
「……」
「勝てると思うなよ。貴様等など、甲竜様の足元にも及ばない。……貴様等が無惨に轢かれて果てる様を、“死の国”から見物させてもらおうか」
曲刀の刃を首にあてがい、掻っ切る。
血を噴き出し崩れ落ち、リザードマンは動かなくなった。
「……勝ってみせるさ」
殲滅は終了する。
ドワーフたちは逃げ、リザードマンたちは潰え――そうして“火の国”には、猟兵たちだけが残った。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『バリスカン』
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POW : クラッシャー・ロード
予め【突進する為の道を作る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : アースクラフト
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【集中して地形(形状は毎回変わる)】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ : ゲシュタルト・テラ
【自身の装備武器】から【対象を誘導する攻撃】を放ち、【作った地形】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:イガラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルト・カントリック」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●職人は語る
あの悪竜が儂らに誂えさせたものは二つ。
一つ。“戦車”。
鈍足を補うために作らせたものだ。
生半可な武器や魔法じゃあびくともしねぇ強度も売りだが、奴が特にこだわらせたのは“速さ”だ。
動力に使ってんのはこの辺りの溶岩。炎の魔力をケツから爆発させて前に進むっつう単純な作りだ。だが威力が凄まじ過ぎて抑えが利かねぇ。失敗作だと言ったが奴はそれで構わないと言った。……そして物にした。手前の馬鹿力とうさんくさい術を使ってな。
使えば使うほどに熱を持つ。そして速くなる。
奴の正面には立つなよ。絨毯に生まれ変わりたくなけりゃあな。
ど真ん前についてるトゲは射出武器だ。魔力でぶっ放して相手に当てる。あんたらが戦自慢と言えど喰らったらただじゃ済まねぇ。気を付けろ。
二つ。“大曲刀”。
手足の短さを補うために作らせたものだ。
蜥蜴野郎どもも同じ得物を持ってたろ? あれが原型だよ。
頑丈さはこれも同じだ、デカいだけじゃねぇ。あのボケ亀が無茶な使い方をしても保つようにってな。何度も何度も鍛え直して作らされた。癪で仕方ねぇが傑作だよ。切れ味も抜群だ。
口で咥えるとか馬鹿な使い方をしてやがるが侮るなよ。剣捌きは冗談みてぇに鋭いし、下手をすると首を刎ね飛ばされるどころじゃねぇ。掠っただけでそこに熱が移って灰になる。こいつを作るのも溶岩を使ってんだ、当然魔力を帯びてる。
使えば使うほどに熱を持つ。そして威力も増す。
……こんなもんか。
ああ、弱点な。言ったろ。
“水”だよ。
と言ってもただの水じゃあねえ。
鍛冶の加工につかってる特別な湧き水だ。水の精霊様の加護をいただいてる。はるばる北のエルフの森まで行って汲んで来てるんだよ。
儂らが鍛える武具は強度が売りだ。加工も馬鹿みてぇに難しいし、普通の道具だけじゃあ一日中槌を振ってても一向に仕事が終わらねぇ。そこでこの水を使う。熱を持ったところに何度も重ねてぶっかけてやるとな、粘土みたいに柔らかくなるのよ。そこからまともな形にするのも一苦労なんだがな、水無しで弄ろうとするよりは百倍マシだ。
奴の武器は強力だ。作った儂らが言うんだから間違いねぇ。
だが言ったろう。奴の武器は使えば使うほど熱を持つ。
そこで何度か湧き水をぶっかけてやりゃあ、そのうち調子が狂ってくる筈だ。
戦車の足も遅くなるし、剣の熱も無効化できる。強度自体も落ちるだろう。
水は工場の近くにある貯水槽に溜めてある。
奴が戻って来る前に汲んどいてくれ。好きに使ってくれていい。
ああ、それとな。
お前さんたち、ここであいつを迎え撃つんだろう。
……あの傍迷惑な亀野郎が暴れるんだ。儂らの家もただじゃ済まねぇだろうな。
だが構わねぇ。それでお前さんたちがあいつをぶっ倒してくれるんだったら万々歳だ。
どうか頼む。
儂らをいいように使ってくれたあの亀野郎を、容赦なく叩きのめしてやってくれ。
●甲竜決戦
すべての準備を終えた猟兵たちが“火の国”にて待ち構えていると、それは現れた。
“火の国”が載る一枚岩、そのずっと向こう側にある大洞窟の壁。
最初に誰が見つけたのか。土壁がぐにゃりと歪んだのだ。
頑丈な土壁が泥のように柔らかなものに変わると、中心にできた小さな穴が徐々に広がって行き、最終的には数十メートルほどの大きな穴を作り出す。
穴の中は暗闇。
そして穴が開いて余った泥は、穴の下でまるで踏切台のような、反り上がった道に作り変えられていた。
ごん、と穴の奥から響く。
猛然と疾走してくる。
凄まじい勢いのまま踏切台から飛び立つと、溶岩の湖を軽く飛び越える。
そして“火の国”の中心にある居住区に、衝撃と震えを大洞窟中の空気に伝えながら降り立った。
岩の家が砕かれ、土煙が舞い上がる中、“それ”は戦車の動力機関が上げる唸りを切り裂いて咆哮する。
「貴様等ァァァァァァァァァァッ!!!!!!」
振るったのは口に咥えた大曲刀。
いかに巨大と言えど、ただ振るっただけ。
――それだけでバリスカンの姿を隠していた土煙が吹き飛ばされ、視界が晴れた。
「眷属の気配が消えた、消えていたッ!! 全員だ、全員ッ!! ……やはり貴様等か。命のみでは飽き足らず、我輩の同胞までも奪うというのかッ!! 猟兵どもッ!!!!」
隻眼から流すは血の涙。
全長30メートルを超える巨体から放たれる威圧感。殺気に、怒気。
すべてが渾然一体の重圧となり、甲竜に対する猟兵たちを呑み込もうとしてくる。
「……塵芥すら残さん。すべて轢き潰した後は、貴様らの死肉を溶岩にくべてくれる……ッ!!」
戦車が震える。
背後から煙が立ち上り始めると、大曲刀を斜めに固定して構えた。
襲来は数秒後。
“火の国”での決戦が始まる。
ヴィルジール・エグマリヌ
相性が悪い上に強敵だ、真の姿で挑もうか
白眼を黒く染め、鴉の嘴めいたマスクで口元隠し
――すごいな
装備と相俟ってかなり格好良いじゃないか、あの甲竜
嗚呼、褒めてる場合じゃないよね、前に立たぬよう気を付けよう
投擲の技を活用して、咎力封じで戦うよ
本体よりも車輪の方を狙おうか
決定打には成らないが、仲間の役位には立てるだろう
反撃は第六感と見切りを活かし、受け止めるより回避に集中
地形づくりは全力で邪魔する
暗殺の技を活かして忍び寄り、車輪に水を掛けたり剣で傷つけ
2回攻撃で手数も意識、私はあくまで時間稼ぎに徹しよう
――ねえ、借り物の力で威張り散らすのは、そんなに愉しい?
なんて、挑発の言葉も投げて集中を乱せたらと
●黒羽
道が形成される。邪魔な岩家が一掃されて一直線の道となる。
それはまるでサーキットコース。滑らかで遮るものはなく、ただ上を往くものが疾くあるために作られた。
爆発する。煙と炎が吐き出される。
バリスカンの戦車は発進早々にトップスピードを叩き出し、ヴィルジールへと最短距離で猛撃する。
「ッ!!」
モノクルが告げるアラート。警告音と同時に身体が動いて真横へ跳ね飛ぶ。
ブーツの底の数センチ先を戦車の装甲が通過する。吹き抜ける勢いだけで足を叩かれたような衝撃だった。
「――あはは」
受け身を取って急ぎ身体を起こしつつも、思わず笑いが出てしまう。
――すごいな。
様になっている。あれがアックス&ウィザーズに生きる竜なのだろうか。
未成熟の文明で作られた戦車の性能を、十全に発揮してのけるあの生き物が?
「……かなり格好良いじゃないか、あの甲竜」
褒めてる場合ではないのだが、つい賛辞が漏れてしまった。
兎も角あの突進能力は脅威だ。正面に立つことは死に直結する。
――あの相手に出し惜しみは不要だろう。
ヴィルジールの白眼に闇が湧き出す。翡翠の瞳が黒い湖に沈んでいく。
口元を鴉の嘴を思わせるマスクで覆えば、知性持つ狩猟者を思わせる容貌が完成した。
あの凄まじい突進にはただ接近することさえも難しい。
策無くして常の得物――首狩り刀にて対抗するのは厳しいものがあるだろう。それならそれで、戦いようはある。
再度の道形成。ヴィルジールを轢き潰すために作られた急拵えの処刑場。
間もなく甲竜が襲来するという合図と同義――!
「ここだ」
先ほどよりも余裕を持って回避しつつ、黒く染まった眼は駆け抜ける甲竜を捉えた。正確に言えばその下にて巨体を支える車輪を。
虚空より手枷と猿轡、鉄のワイヤーが吐き出される。前者二つは回る勢いのままに弾かれたが、残るワイヤーは獲物へ襲い掛かる蛇のように車輪に噛み付いた。輻に絡み、回るたび火花を散る。
「ぬう――!?」
戦車の微細な動作不良を感知すると、バリスカンは制動を利かせて瞬時に減速する。ヴィルジールへの警戒を維持しつつも完全停止すると、車輪へと視線をやって憎々しげに言葉を零した。
「……妨害か。図体に見合った小癪な真似をする」
絡み付いたはいいものの、走行途中の衝撃でほとんどが千切れ飛んでしまっていた。短く残ったワイヤーを咥えた大曲刀にて器用に取り除いてみせる。
――この程度の邪魔立ては問題にもならんぞ。
そう非力な敵を嘲ろうと彼方に目を戻せば、そこにヴィルジールの姿は無かった。
「……!?」
「――ねえ、借り物の力で威張り散らすのは、そんなに愉しい?」
水音。そして鉄を鉄で打つ。数にして二度。
いつの間にやら甲竜の足元に至っていた男は、首狩り刀を軟化した車輪に思い切り叩きつけている。“真の姿”にて普段以上の性能を発揮するヴィルジールの肉体は、強度自慢の戦車の車輪を僅かに歪ませてみせた。
「――貴様等とて、道具に頼っておろうがッ!!」
大曲刀が虫を払うように迫る。意に介した風も無く躱す。来ると分かっていればそこまで恐れるものでもない。
「依存と活用は違うさ。――そんな大振りに斬られてやる訳にはいかない」
「……壮語を。よほど早く死にたいらしいな……ッ!」
甲竜の怒りを体現するように戦車の核が吠える。
新たに進路が作られる前に再び有効打を入れんと、凶兆の鴉は闇夜の如き外套を靡かせて甲竜へと迫った。
成功
🔵🔵🔴
宇冠・由
(30M……大きいですわ今の私では真正面から防ぎきれません)
仮面を割って真の姿に。少女の姿でお受けしましょう
(私の炎では相性が良いとは言えませんが、戦いようはありましてよ)
加速する相手を私におびき寄せます
狙いは戦車、その片輪とバリスカンを繋いでいる鎖
より精度の増した地獄の炎を車輪に集中させ、片側のみを硬質化
車輪は少しの歪みや違いでも走行に悪影響を及ぼす……とはいえそれさえも力で抑え込んでしまうのでしょうね
熱で加速した相手を引きつけながら、事前に用意した大きな水たまりにおびき寄せ、跳んで回避
車輪は水上を走ると舵取りもブレーキも聞かなくなります
ましてや片側のみ変質化しているなら大きくスピンする筈
●形
仮面に罅が入る。
一本のきれいな線が作られて、直後左右ふたつに割れて分かれた。
――その下にあったのは、黒くねじれた角を持つあどけない少女の顔。
燃える炎の身体とは打って変わり、白髪に白い肌。首から下の炎も剥げ落ちると、白いドレスを纏った少女の体躯が現れた。スカートの下には、ドラゴンの黒い尻尾が僅かに覗いている。
あの巨体。あの威圧感。
相手取るには普段の姿では難しい。
そう結論付けた由は真の姿へとその身を変えていた。両の手に宿して操るは変わらず炎。
熱を持つことでより強力になる甲竜相手では、相性は悪いかもしれないが――。
(戦いようはありましてよ)
無策ではない。変わらぬ落ち着きを携えて、ヒーローマスク――否、ドラゴニアンの少女は飛翔する。
「ちょこまかとッ!! 鬱陶しいわ、竜擬きがッ!!」
一枚岩の地形を変え猛追する甲竜。岩の家へと降り立っても家ごと轢き潰し、より高く盛り上がった岩の上でも坂道を形成してどこまでも追いかけて来る。
あの突貫、当たればただでは済まないだろう。だが大技な分予測も立てやすい。
戦車が通過する。躱すついでに両の手から地獄の炎を吐き出すと、車輪に向けて集中してぶつけた。何の変化も無く走り抜けていく戦車。
やはりこれだけでは足りないか。
諦めず積み重ねる。影響は間違いなく出て来るはずだ。
*
熱が片側に集中すれば車体にもエネルギーの偏りが出る。
走行も難しくなるはずだが、甲竜は持ち前の膂力と、地形を操る力を駆使してバランスを立て直しているようだった。
「片足を崩すのが狙いか!? 小賢しいッ!! その前に貴様の命運が尽きるだろうよッ!!」
戦車の核が生み出す魔力に底はあるのだろうか。
走破を繰り返すごとに、由が炎を喰らわせるごとに、戦車の勢いは増して姿も捉えづらくなっていく。
バリスカンが崩れるのが先か、由が突進を喰らうのが先か。
(――そろそろでしょうか)
反応が追い付かずスカートの裾に突撃する車体が掠り始めた頃、由は打って出た。
攻撃から身を躱しつつ、用意した罠場へ誘導する。速度の上がった戦車の操作に集中している甲竜は、標的が見せる回避行動の微小な差異に気付いてはいないだろう。
急停止、急発進を繰り返す稲妻のような軌道。やがて由の動きが一瞬止まったのを認めると、勝機とばかりに戦車の出力をさらに上げて突撃する。
――途中。ふいに、視界が乱れる。
「なん……ッ!?」
真っ直ぐな突進ばかりを繰り返していた戦車が、独楽のように回りながら滑っていく。制動を利かせるも簡単には止まらない。速度が殺され明後日の方向へ行く戦車を由はただ見ている。避ける必要も無かった。
熱を大量に含んだ状態での猛進。その状態で車輪が、由によって用意された水たまりの中へと突っ込んだ。熱された金属が水に包まれると、車輪は軟化して形を変えてしまった。そのため、スリップし制御が利かなくなってしまったのだ。
結果、現在の失態。転倒は防いだものの、上昇し続けていた速度は一気に殺される。
「……いかがいたしましょう。まだ続けられますか?」
「……舐めるなよ。この程度、問題にもならん……ッ!!」
車輪がどの程度歪んでしまったのかは、遠目からではよく分からない。
問題なく走れるだろうか。あるいは走ろうとして転倒する可能性も?
――そうなれば勝機。
両の手にふたたび炎が宿った。
成功
🔵🔵🔴
シャルロッテ・エンデ
シェルツァ(f04592)しゃんと一緒
ボスの得意技は地形操作
あとは機動力をどう奪うかが、攻略の鍵でちね
さあ◆ダッシュでちよ!
蒸気ドリルシールドマシンは背中に背負う
クラッシャーロードを誘って単調な突進を◆見切り
横の動きで避ける間際に
片輪だけ持ち上げる形で地面から
◆アースジャイアント召喚
斬撃の軌道を狂わせ、転倒を狙う
その隙に、エルフの水を車輪や剣にぶっかけ
大地の巨人には、シャルロッテちゃんの大盾の
巨大版を背負わせジャンプ台にする
◆怪力や◆盾受け、◆火炎耐性を巨人にも適用
潰されても繰り返し
あんたしゃんが威張ってられるのは、誰のおかげでちか?
ドワーフなめんなでちゅよ
シェルツァ・アースハーバード
ドワーフ仲間のシャルロッテ(f12366)さんと共に。
虐げられた同胞に代わり、私が貴方を討つ!
私達を弱く小さき者と呼ぶのなら、貴方はその程度の存在でしょうね。
シャルロッテさんと協力して悪路を作り出して見ます。
背中の大剣『クレアーレ』を使い、『魔力宿りし光輝な剣』を発動。
対象はバリスカンではなくこの地面。大きな穴を開けます。
相手に笑われても適当にあしらうとして。
走破されてしまっても続けます。
何度も行っていればやがてそこらじゅう穴だらけになるでしょう。
そうして戦車のバランスが崩れた所が好機。
頂いた湧き水を使い、水の魔力で剣に纏わせて。
精霊様の力も借りれるでしょう。それを相手に向けて一気に叩き込む!
●土の民
「さあ、こっちでちよ! 轢けるものなら轢いてみるといいでち!」
「蟻がッ!! 誰にものを言っているッ!!」
踏破ルート形成。
周囲にある岩の家ごと、シャルロッテの足場が平坦なものへと変貌すると、即座に鉄の塊が襲来する。咄嗟に真横へ跳んで回避。
獲物を捉えることなく駆け抜ける戦車――しかしシャルロッテの居た場所を通過しようとしたその瞬間、車体の片側が大きく跳ねた。
「なん――ッ!?」
宙に浮き、直後落ちる。
戦車の装甲が一枚岩の地面に触れて派手に火花を散らした。
シャルロッテが元居た場所にあったのは、上半身を失くした土人形、アースジャイアントである。戦車の勢いに身体を早々に砕かれてしまったが、見事に敵の体勢を崩すという役目を果たしてみせた。
甲竜はそのまま転倒してしまうようにも見えたが、地形操作にて道なりに続く高い岩の壁を作り上げると、腕や甲羅をぶつけながら走り続けて勢いを殺していく。速度が落ち着いてくると、持ち直したかのように思えた。
が。
「……!?」
車体の片側が突如として“落ちる”。
走行していた戦車の車輪が、地面に掘られていた穴へと嵌まってしまったのだ。
これは――。
「焦ると足元を見る余裕は無くなるようですね」
シェルツァの声がどこからか聞こえる。
この辺りの地面に掘られているいくつかの穴は、シェルツァが魔力を込めた大剣を叩きつけて作っていたものだ。戦車の体勢を崩すために用意していた罠――しかし対するバリスカンは地形操作の術を有している。これまでの攻撃で、踏破ルートにあらかじめ見えていた大穴はあえなく埋められ、無効化されてしまっていた。
無駄な小細工をと甲竜は嘲笑っていたが、ここで罠が有用に働いた。シャルロッテとの連携によって。
「小娘が……ッ!!」
戦車の煙を吹かして穴からの脱出を試みつつ、シェルツァの声が聞こえた方へと大曲刀を振るう。
手応えなく、ただ空振るのみ。
「――私達を弱く小さき者と呼ぶのなら、貴方はその程度の存在でしょう」
真後ろ。魔力の満ちる気配。
「ぬゥゥゥゥゥッ!!」
戦車そのものの力ではなく、甲竜自身の剛力によって戦車が持ち上げられる。強烈な一撃を予感し、戦車の装甲を盾のように構えて急ぎ振り返った。
衝撃が襲来する。
シェルツァ自身の魔力に加えて、湧き水の加護を得た魔法剣『レギーナ』が、熱を持った戦車の身体へと叩き付けられた。戦車の反り上がった装甲が大きく歪み、破壊される。
ドワーフより力で遥かに勝るはずの甲竜の両腕に、痺れが走った。
「づ……ッッ!!」
「虐げられた同胞に代わり、私が貴方を討つッ!」
隙が出来たと見ての二撃目。戦車が震える、甲竜が堪える。
「貴様ァ……ッ!! 調子に乗るなッ!!」
「おや、シェルツァしゃんにばかり構ってていいんでちかね」
反撃に持ち上げた車体をシェルツァに叩きつけようとしたところで、投擲されてきた革袋数個が戦車と大曲刀にぶつかって弾けた。中に入っていたエルフの湧き水が金属の熱に触れて蒸気が上がる。水を浴びた金属の色が、僅かに褪せたものに変わった。
「ぐ……!?」
「あんたしゃんが威張ってられるのは、誰のおかげでちか?」
新たに作られたアースジャイアントが、シャルロッテの持つものを模した大盾を天へと向けて構えている。
跳躍する主。大盾を踏む。その拍子に土巨人が怪力にて、シャルロッテの身体を押し上げた。
ドワーフの少女がさらに高く、高く跳び、甲竜と視線の位置を揃えるほどに迫る。
「――ドワーフなめんなでちゅよ」
戦車を持ち上げ無防備となっていた甲竜の左腕に、渾身の力を以って『暁の星』が容赦なく打ち込まれた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
これ以上の暴走、暴虐を騎士として絶対に許すわけには参りません
湧き水を格納銃器の特殊弾の弾頭に封入。右腕の銃器に水弾、左腕にはUCの薬剤特殊弾を装填
ドワーフ達から大量の水筒を譲ってもらい其処にも湧き水を封入
突進をスラスターを吹かしての●スライディングで回避
作られた地形から次の突進ルートを●見切り、その位置の上へ大量の水筒を●怪力で投げ、●スナイパー技能で破壊。湧き水の雨を降らせて冷却
更に水弾を撃ちながら、UCの弾頭をコースや車輪に撃ちこみ摩擦係数を減らしてスリップ事故を誘発
動きが止まったらワイヤーアンカーで繋いだ盾を鉄球よろしく●ロープワークと●怪力で叩きつけ
…もう少し騎士らしく戦いたいですね
●シュート
豪速にて通過する戦車を寸でのところで回避する。
白い装甲と僅かに擦れ合う、ダメージは無いがそれだけで殴られたような衝撃があった。
猛進のち僅かの停止、方向転換、再度の疾走。回数を重ねるごとに戦車の速度は向上する。感覚ではなく、トリテレイアのセンサーは明確な数値としてそれを認識する。危険度も比例して天井知らずで上がっていく。
――最低限のパターンは記憶した。
仕掛けるなら頃合いか。
地形操作。移動を阻害する岩壁にて両脇を埋め、ひたすら疾走するのみのコースを一直線に生む。
今までおおよそ80パーセントはこのパターン。上がり続ける速度は脅威だが、シンプルで分かりやすい攻撃手段だ。ごん、と空気を叩く音が鳴って戦車が発進すると同時、スラスターを吹かして跳躍する。
同時に取り出したるは、ドワーフより譲り受けたいくつかの水筒。中には当然ながらエルフの湧き水が封入されている。
真上へと高く放り投げる。それらを左腕に装填された通常弾にて正確に撃ち抜けば、トリテレイアが元居た場所に湧き水の雨が降り注ぐ。ちょうど通過する戦車と甲竜の全身を濡らして冷却していった。
彼方にまで走り抜ける前に戦車が停止する。
「――小癪な」
再度の地形操作。今度の岩壁はずっと高い。それにトリテレイアの背後にも岩壁が突き立った。戦車にて突っ込めば勢いを殺せず壁に激突してしまうだろう。
退路を断つための諸刃の剣。憎き敵を葬るためなら多少の損害は些事、ということだろうか。
「……正念場ですね」
どっしりとその場に構えると、左右の腕の使用準備を整える。左腕の使用弾を変更、薬剤特殊弾を装填。
間もなくして戦車が発進する。大きくなる敵の姿を眺めながらその進路上、車輪の通過ルートに左腕から薬剤特殊弾を連射、摩擦係数を減らされた“見えない罠”を瞬時に地面に作り上げる。
「ぬう――!?」
接触。車体がぶれた。
進行方向が斜めに傾く。そうすると、トリテレイアからも車輪がよく見える。
左腕の射撃を続けつつ右腕は車輪に照準。湧き水を込めた弾頭――水弾を発射、着弾させて、片側の車輪のみを集中的に冷却させていく。
滑る道。勝手の利かぬ片側の車輪。
「何を――ぐ、忌々しい……ッ!!」
氷上をパンクした車で走っているようなものだろうか。膂力、地形操作術。如何に甲竜が戦車の操作に長けていると言えど、限界はある。
果たして戦車はトリテレイアのいる袋小路に至ることはできず、滑り、回り、意図せぬカーブを描いて何とか停止してみせた。
そう、完全停止。速度の復帰にも時間を要するだろう。
これを逃す手は無い。
――ワイヤーアンカー接続。
甲竜が慌てず構えていたのはもう一つの武器、大曲刀ゆえだろうか。
動きが止まり接近されても、十分に対処できる自負があったのかもしれない。あるいは弾丸による射撃程度なら、戦車の装甲と自身の甲羅にて捌き切れると思ったのかもしれない。
しかしトリテレイアの反撃は間髪入れず、無視できない“重み”を以って繰り出された。
「が――ああッ!?」
ワイヤーアンカーに接続された大盾――『重質量大型シールド』。
疑似的な“鉄槌”は甲竜の横っ腹、甲羅に覆われた部分へと脅威の出力で叩きつけられる。硬度自慢の竜の甲羅を砕き、ひびを入れさせた。
「……もう少し騎士らしく戦いたいですね」
ワイヤーを引き戻しシールドとの接続を解除。
盾を手に持ち“騎士らしい”姿を取り戻すと、スラスターを吹かして追撃を入れるべく甲竜へと迫っていった。
成功
🔵🔵🔴
白斑・物九郎
●POW
【ブラッド・ガイスト】発動
・ザ・レフトハンド
・モザイク状の空間
・心を抉る鍵(大)
・L95式サイドアーム
【封印を解】いたこれらに予め貯水槽から水を補食させておく
左腕に水精霊の加護を
体周の空間に水を伴う
鍵はインパクトに併せて水を噴く鈍器に
銃は対亀竜水鉄砲と化す
●交戦
路が予め作成される軌跡を【野生の勘】で察知
正面に長時間立たず、その右側面・眼帯側へ回り込むよう機動(ダッシュ+ジャンプ)し、右車輪をイカレさせることに専心
水を孕んだ空間で車輪を捉え、車軸へ水鉄砲、左腕で操る鍵を敵の突貫速度を利する形でブン殴り付ける
「武器がイカレようと構いやしませんわ
ドワーフの人らに直して貰う予約入れてますしよ」
●パワースイング
「その棒きれで我輩と張り合うつもりか!? 身の程知らずがッ!!」
踏破ルートの形成。物九郎の両脇にある岩家の間隔が詰まり、それらがそのまま岩の壁となる。
そうなれば出口は前か後ろしかない。前門には甲竜、後門は遥か遠くに見えるのみ――。
戦車が突貫を始めると同時、ならば、と壁を蹴った。大きく跳躍し対岸の岩家に降り立つと、傍を通り過ぎながらバリスカンが大曲刀を振るってくる。
上体を限界まで反る。甚平の襟が切っ先に大きく裂かれ、焦げてぼろぼろと破片が零れた。
「――やれやれ。気が休まりませんな」
すぐに身体を起こして通り抜けていった甲竜を追った。間隔の無くなった岩家の上を一直線に駆けていく。バリスカンはと言えば方向転換し再度地形を操作。連結した岩家をなだらかな岩のスロープ、物九郎を轢き潰すためのデスロードへと変える。
「足癖が悪いようだからな……これで逃げられまいッ!!」
削り無くなった分の岩は、退路を阻む両脇の壁へと費やされる。先ほどの二倍はあるか。身軽な物九郎と言えども瞬時に飛び越えることは難しそうだ。
戦車が発進する。轢殺の確信を以って。
しかし閉ざされたこの空間、逃げ道がまったく無いかと言えばそうではない。
――甲竜の癖。眼帯で隠された右側は、壁とのゆとりが大きいのだ。視界にて都度確認することが適わないためにそのような走行方法が染みついている。
逃げるならばそこだ。そして今、甲竜は約束された打倒に慢心している!
軌道修正されないよう直前まで戦車の襲来を待つ。頃合いを見て僅かに残った安全圏へと跳ぶと、鼻先を通過する右車輪に水の加護を帯びた数発の弾丸を撃ち込んだ。水気を帯びたモザイク状のエネルギーも、浴びせられるだけ浴びせてみせる。
「ぬ――ぐう……!?」
一直線に走破していた車体が崩れる。自らが形成した岩壁へと身が打ち付けられる。堪らず片側の壁をぼろぼろに解いてみせると、減速しつつ方向転換して再度物九郎の方へと向いた。
「鼠が……狭こい場所でちょろちょろと……!!」
「鼠じゃありませんわ。――狩りが大好きなただのネコでさ」
「ほざくなッ!!」
今度は壁を形成せずの真っ向勝負。出力を上げての大走破。
速い――おそらく躱そうとすれば大曲刀が刈り取ってくるだろう。これまでの幾度かの回避、おそらく甲竜からある種の“信頼”を抱かれている。
お前なら躱すだろう。ならば躱した先で斬り捨てる、と。
「――フ」
甲竜曰くの棒きれ、『心を抉る鍵』を構える。
狙うは再び右車輪。
躱すのではない。“退かしてみせる”のだ。
戦車が物九郎まで至る。そうすれば、躱すように物九郎が右側へと動く。
やはりそうなるかと、甲竜は大曲刀にて斬り捨てるべく構える。
だが、“そうはならない”。
「――正気か、貴様」
戦車を鉄骨で殴っても、激突させてもこのような音は鳴らないだろう。
果たして何に例えればいいのか。
兎に角、“棒きれ”は右車輪に叩き付けられた。
車輪は歪み、“棒きれ”は折れる。
甲竜は戦車ごと浮かされると派手に転倒し、
物九郎は戦車の勢いを一身に受けて、思い切り弾き飛ばされた。
――武器がイカレようと構いやしませんわ。
「……ドワーフの人らに直して貰う予約入れてますしよ」
流石に痺れが残る。腕の骨はどうだろうか、折れているか。
……指はまだ動く。
ならばやりようはある。
左腕の虎縞模様に水の魔力が滲む。折れた鍵をモザイク空間へと仕舞って、ひっくり返った戦車の方へと駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵
アベル・スカイウインド
フッ、確かにドラゴンというより亀だな。だが装備も含めてやつの実力は侮れん。ここはドワーフたちの助言に従って弱点を突くとするか。
まずは装備に熱を持たせる。突進や曲刀などの攻撃を【見切り】【ジャンプ】で避け続ける。
亀野郎だのドラゴンモドキだのなんだのと【挑発】してやれば怒り狂って冷静さを失い、俺たちの企みに気付きにくくなるだろう。
その分攻撃は激しくなるだろうが……そこは責任もって俺がやつを引き付けよう。
やつが企みに気付くときは水をかけられて装備が無力化されたときだろうよ。そうなればやつはもはやデカイだけの亀。【鎧無視攻撃】の特性をのせた俺のUC【竜撃】でその甲羅ごと貫いてやる。
●天より
「どうした亀野郎! 鈍間が過ぎるんじゃあないか!」
「ほざくな、羽虫がッ!! 跳ね飛んでいるだけで調子に乗るなッ!!」
軽やかに跳んで移動するアベルにはバリスカンの地形操作が追い付く暇もない。高く跳ぶのはいい、そこまでの道を形成すればいいだけだ。ただ如何せん速過ぎるのだ。突進に適した道を作るころ、アベルはもうそこにはいない。
アベルの今回の役目は囮。ひたすらに甲竜から逃げ、挑発しつつ、敵の注意を引く。その隙に仲間たちが湧き水を浴びせれば、甲竜の弱体化を狙えるだろう。
すでに作戦は半分以上成功している。甲竜の装備の内、特に戦車の右車輪と前面の装甲はダメージがかなり大きい。地形操作にて程度戦車の操作を補ってはいるが、出力は当初の頃より随分と落ちていた。それでも十分な脅威には違いないが。
攻勢に出るならばそろそろか。
逃げの一手だったアベルが突如Uターン。甲竜が走破せんと形成した道を逆に進んでいく。これには甲竜も面食らったが、すぐさま激昂した。
「血迷ったか、舐めているのか……いずれにせよ良い度胸だッ!! 轢き潰すッ!!」
発進。アベルを正面から押しつぶさんと圧倒的質量が迫る。
だが。
「おいおい――本当に俺を倒す気があるのか?」
ひとっ跳びで回避。甲竜の横顔にそう囁いて、さらに跳んだ。
跳んで、跳んで――やがて辿り着いたのは、“火の国”が収まる大洞窟の大天井。
そこにブーツの底をつけると、遥か下に見えるバリスカンへ正確に狙いを定める。
「天を仰ぐといい。……見えているか?」
力を溜める。小柄な竜騎士の全身に竜の力が満ちる。
天井を力強く蹴りつけると、真下の“火の国”へと向けて、アベルが一直線に跳び立っていく。
豆粒のようになっていたアベルを索敵できていた筈もない。
逃げたか。他の場所に隠れて様子を伺っているのか。
埒が明かないと他の猟兵を探そうとしたところで、それは襲来する。
頑強な甲羅を穿ち貫く天雷の一撃。
アベルの愛槍は、竜が生まれながらに持つ鎧を全く意に介さない。
「ガァァァァァァァッッッ!!!!」
ひびの入った甲羅から槍を引き抜くと、悶え暴れる甲竜の身体から距離を取るために再び跳び立った。
「羽虫も怖いものだろう? ――油断は禁物だ、甲竜よ」
成功
🔵🔵🔴
黒江・イサカ
ねえねえ、ちょっと聞かせてよ
そんなに怒ってばっかりじゃなくてさ、興味があるんだ
折角死んだのに、蘇ってもう1回死ぬってどういう気持ち?
素敵なプレゼント貰っちゃったから、ちょっと元気出たし
氷の魔石って滅茶苦茶いいね これ持って帰るよ
あと、ついでにこんなものも作って貰っちゃった
じゃーん、水鉄砲
簡単な仕組みだけど、水が前に飛べばいいのさ
水と冷たいものがあって、頭がしゃっきりしてきたね
まず狙うは車輪だろうな
あれ取れちゃったら動けないでしょ、亀さん
UC使って攻撃避けながら、弾がなくなるまで水遊び
動きが鈍くなってから斬ればいいね
【見切り】【鎧無視攻撃】【早業】
僕のナイフってば器用だから、鎧の隙間を狙おうか
●理由
「ねえねえ、ちょっと聞かせてよ」
地形が変わり、鉄の塊が走破する。“火の国”の岩家たちは崩され、壊され、土煙は止まない。
激戦の中、その青年はいつの間にか降り立っていた。
激動する甲竜の首後ろ。甲羅の上に。
「――」
返す言葉が出てこない。
どのようにして現れたのだ、この人間は。
「そんなに怒ってばっかりじゃなくてさ、興味があるんだ」
何でもない風に話を続ける。片手には銃を模した何かが握られている。
「ねえ。折角死んだのに、蘇ってもう一回死ぬってどういう気持ち?」
……問いの意味を正確に理解する必要は無い。
丁重に言葉を選んで返す義理も無い。
分かったのはただ一つ。それで十分だ。
舐められている。
「ガァァァッ!!!!」
「うわっ」
動力機関の出力を一気に上げての急速旋回。その勢いで乗っていたイサカを振り落とすと、即座に戦車を発進させる。
一瞬、一撃で轢き潰す。
確かに男の姿を認めて“そこ”を駆け抜けた。振り返る。
「ひどいなぁ。本当にただの好奇心なのに」
イサカに目に見えた傷は無い。それどころか、服に汚れひとつ付いていない。
――何だあれは。
確かに今、駆け抜けた場所に男は立っていたはず。
「……答えてくれないってことでいいのかな?」
「……尋常の人間でないとは知れた。だが、だから何だと言うのだ」
装甲の端を掴み、持ち上げ、膂力にて強引に戦車の方向転換を行う。
「轢き潰す。やることは変わらぬ」
「そっか。じゃ、僕もやることやるね」
イサカの姿が消える。
……徐々に分かってきた。幻術の類ではない。
あの男は速い。そして、見えにくい。“そういうこと”に秀でているのだろう。
「人でなしが我輩を葬るか。面白い、やってみろ小僧」
ならば戦い方を変えるまで。
感覚を尖らせ、甲竜はイサカの気配を探り始めた。
*
猛追する戦車。突貫し、打ち砕きに往くのは他の猟兵と変わらないが、イサカの場合は分かりやすく姿が視認できない。ただ追いすがるだけでは届かない。
ならば、と地形操作。如何に俊敏で隠密性に長けた者と言えども、逃げ道が絶たれれば躱すことも適わなくなる。
気配を感ずる。
形成、袋小路。そこへと突っ込む。
車体を引けば必然、潰れに潰れた男の死体が現れる筈だが――そこには服の切れ端一つ見当たらない。
「ヅァァァッ!!」
大曲刀を振るう。右斜め後ろ、気配と殺気。
「……何で分かるんだろ。やるなあ」
振り返って見れば、シャツの袖が切れている。ぼろぼろと灰になってその部分が崩れた。
捉えはしたがそれだけか。憎々しげに男を見る。確かにそこにいるのに、霧のようにぼやけている。
「……舐めるなよ。貴様程度に易々と懐を許すか」
「自信満々だねえ。仕事はできたからいいけど」
手に持っていた銃擬きから水が吹き出る。車体に浴びせた、ということか。
――小賢しい。
「その軽口も早々に潰す。――時間が経てば不利になるのが、我輩だけだと思うなよッ!!」
動力機関が唸りを上げる。確かにイサカの姿は捉えづらい。だが、甲竜も攻撃を幾度と無く繰り返していれば徐々にその尻尾を掴み始めてくる。
「みんなに水掛けられてさ、走るのが遅くなってるってのもあるけど」
再び消える。索敵を開始する甲竜。
だが、どこにも居ない。先ほどとは違う気配の消え方。
「初動も遅くなってるよね。そのエンジン、そろそろ寿命じゃない?」
間近で聞こえる声。それからどん、と叩かれたような衝撃。
消えたイサカが現れたのは再び、甲竜の首後ろ。
折り畳みナイフを甲竜の首へと突き刺している。それは何故だか、見た目以上に甲竜へとダメージを与えているようだった。激昂する前、言葉を返す前に、まず苦悶の声が零れる。
「ぐ……ァ……ッ!!」
「痛い? じゃ、あらためて聞いてみようか」
イサカは微笑む。
「ねえ。折角死んだのに、蘇ってもう一回死ぬってどういう気持ち?」
成功
🔵🔵🔴
ガルディエ・ワールレイド
装備を用意して対策を練り、同胞の為に怒り涙を流す……中々に人間的な奴だ
テメェの不幸の一つは竜に生まれちまった事かもな
ドワーフからデカい容器を2つ貰い精霊の水を入れる
真の姿で【真・黒竜嵐装】を使用し巨大な黒竜となる
《怪力》で2つの容器を掴んで飛翔、同時に纏う嵐や雷を《属性攻撃》で操り食らわせる
クラッシャーロードの道を《見切り》進路予測して《空中戦》で急降下、容器から水を食らわせる(水流は《念動力》で制御)その流れを繰り返すぜ
折を見て上空から《全力魔法/衝撃波/属性攻撃》による赤い雷のドラゴンブレスを《力溜め》で増幅して放つ
『テメェがこの大陸の竜と戦う時は来ない……せめて此処で味わっていきな!』
●黒い翼
「――何のつもりだ、そこの男」
爪先から頭頂までを黒鉄の甲冑で覆い、ガルディエは佇む。背後には彼の身の丈を遥かに越す水桶が二つ置いてある。蓋で閉じて鎖を巻き、頑丈に封じられていた。
その手に前哨戦で振るっていた二つの得物は無い。手負いの甲竜を前に逃げる気配も無い。両の腕を組んで悠然とそこに在るのみだ。
「……だんまりか。――轢き潰されたいのであれば、望み通りにしてやろう」
すでに他の猟兵によって幾多の傷を負わされている。
それでも戦車を操る手際に揺るぎは無い。大曲刀を咥える嘴はどこまでも力強い。
……この者が人の戦士として生まれていたならば、あるいは。
「――テメェの不幸の一つは、竜に生まれちまった事かもな」
兜の下から漏れ出でた声は甲竜には届かない。
すでに戦車は走り出している。
数瞬のちには鎧ごと轢き潰された肉塊がひとつ、出来上がるのみ――。
――雷が落ちる。
赤い雷。何度も何度も。ガルディエの立つ場所へ。
「なん……ッ!?」
流石の甲竜も突貫を躊躇う。戦車の足が止まった。
やがて吹き出でるは風。落ち続ける雷を包み込むように現れる、黒い嵐。
馬鹿な。ここは地下、洞窟の中ではないか。
一体何が起きている――。
雷は落ち止む。嵐も吹き止む。
――正確に言うなら少し違う。止んだのではなく、集まった。形作られたのだ。
雷と嵐が集束し、そこに顕現したのは黒き竜。
瞳の色を甲竜と同じくする、巨大な翼を備えた黒竜だった。
「――」
呆けていた甲竜の口角が次第に、歪み上がっていく。
「クッ――クックック……!! ザァーッハッハッハ!!!!」
隻眼に宿る光が鋭さを増す。
怒り、敵意、殺意――ガルディエへと向けられる感情が、先程までとは比べ物にならない程凶悪に膨らんでいる。
「貴様ッ!! 人でありながら竜の力をその身に宿すかッ!! 何と何と強欲な、憎らしいぞッ!!」
手負いの現状は変わらず。しかし、それを問題としない力が甲竜の身体には満ち始めていた。
「良い……貴様こそ、我輩が新たに得た力で轢き潰すに相応しいッ!! 覚悟せよ、出来得る限りの苦しみを与えて火の海に沈めてくれる……ッ!!」
『――要らねぇよ、そんな最期は』
甲竜が吠え、黒竜が睨んで応えた。
*
用意された巨大な水桶は、竜に変えた身体で持ち運ぶことを見越してのものだ。湧き水でたっぷりと満たされたそれらを前脚にて軽々と持ち、黒い翼を大きく羽搏かせて飛翔してみせる。
熱に満ちた洞窟の空気を切り裂く。速い。
一方の甲竜も、空中に逃げられたとしても諦めはしない。
道が無いなら、作るのみだ。
「ヅァァァァァァァッ!!!!」
地形操作によって“火の国”から遥か上まで岩の道が伸びる。どんどんと伸びる。その上を甲竜の戦車が突き進む。――黒竜を追えば追うほどに戦車は熱を持ち、速度を増す。
やがて大洞窟の天上近くにまで至れば、甲竜は黒竜へと追い付いた。
「喰らえいッ!!!」
『おおっと』
振り抜かれる大曲刀。しかし黒竜の反応は早い。嵐による豪風を叩き付けて牽制を入れつつの後退。
翼にて制動を入れつつ、片手に持った水桶を思い切り甲竜へと叩き付けた。戦車にぶつかると桶が壊れ、中の湧き水がひしゃげた装甲と甲竜に浴びせられる。
「ぬ――ぐ」
『こんな所まで攻めて来る胆力は見事だがな』
怯んだところへもう一つの水桶。念動力によって零すことなく全身に定着させた。――黒竜の両翼に、嵐の力が満ちる。
『――そりゃ蛮勇ってもんだろうよ』
叩き付けられる風圧。嵐の密度に押されて体勢を崩すと、地形操作によって作られた道から落下してしまう。
「ぐ――ッッ!!」
大洞窟の天井から地面に激突してはひとたまりもない。すぐさま地形操作、“火の国”の地面から急速に“岩の塔”を生み出すと、空中で崩れた体勢を立て直しながら塔の頂上へと何とか着地してみせた。
――だが、それで黒竜の攻撃が終わるはずも無い。
地面との激突を避けるために生み出された塔。言い換えるならそれは――逃げ場のない空中の処刑場。
「……!!」
上を見る。黒竜が顎を開け、牙の間に赤い雷のエネルギーを集束させている。
見れば分かる。あれは渾身、最強の一撃……!
『テメェがこの大陸の竜と戦う時は来ない……せめて此処で味わっていきな!』
撃ち放たれる赤雷のドラゴンブレス。
急拵えで作られた岩の塔ごと、甲竜の身体を魔力の熱が貫いていく。
「ガァァァァァァァァッッ!!!!!」
崩れ落ちる岩の塔。
――騎乗する戦車と共に、甲竜は“火の国”の地面へと落下していった。
大成功
🔵🔵🔵
テリブル・カトラリー
その怒りを正しいとも、間違っているとも思わん。
【戦争腕・三腕】の冷凍ガス散布腕にガスの代わりに
湧き水を詰める(武器改造、破壊工作)
10mのパワードスーツ用の腕だ。それなりの量は入るだろう。
奴の動きを見切り、横合いから一気に背に飛び乗って腕を叩きつけ
腕を破壊。水を被せて離脱。(同時にスタンロッドを投擲し属性攻撃)
【オーバーコート】発動
ただ、私も死んでやる訳にはいかない
その隙に全長10mの体の上から55mの機体を纏う
後は、全力で殴ろう。
(飛翔能力とブーストの加速で再接近し、怪力で殴る)
●一打
腕部の装甲を開く。そこに収まっていた容器を取り出すと、貯水槽から汲んでいた湧き水の注入を始めた。
全長10メートルのパワードスーツ、その武装の一つである“戦争腕”。本来冷凍ガスが入るべき空間の容量は大きい。実戦にて使う場合は調整が必要だが、最低限の改造のみで済ませることができるだろう。
首魁が襲来するまでに終わらせる。まだ十分な時間があるはずだ。
湧き水を入れ終えると、次にテリブルはガスの射出口に手を入れ始めた。
*
「――その怒りを正しいとも、間違っているとも思わん」
激昂する甲竜を目にした機械兵から言葉が漏れる。
合成音声の呟きは、戦闘の始まりを告げる空気の震えに呑まれて消えた。
*
甲竜による地形操作。
テリブルの足元に蹂躙するための道が形成されると、視界にいくつものアラートが表示される。
――異常熱量を検知。
――約2秒後に敵の攻撃が到達。予測:致命的な損害。
パワードスーツのブースターを吹かして緊急回避。間もなく突貫してきた戦車が凄まじい速度でテリブルのそばを走り抜けていく。
――約2秒後に敵の攻撃が到達。
それで終わりではない。避けられれば折り返し再び突貫してくる。再び避けられれば、また繰り返し。回を重ねるごとに突撃の速度は増していくのだ。
――約1秒後に敵の攻撃が到達。
(――軌道は単純)
避けに徹していては切り開ける道も無いが、回避のみに甘んじているテリブルでも無い。
速くなれども攻撃は一直線。
走破ルートが形成されると、一瞬でそこから離脱し、襲来する前に回避行動を完了させておく。そして戦車が突貫しテリブルの位置までやって来れば、横合いから一気に戦車へと飛び乗り、しがみついた。
「な――!?」
驚愕する甲竜。慌てて利かせる制動に車体ががたがたと震える。甲竜の巨躯には及ばないものの、それでも10メートルの大きさを誇る金属人形。戦車の運用を維持するには無視できない重さだ。
「見苦しい真似を……ッ!! 降りろッ!!」
近すぎては大曲刀も思うように振るえないのか、パワードスーツの装甲に刀身ががつがつと当たるのみだ。斬り裂くには至らない。しかし熱を与える性質を持つ大曲刀の刃が、甲竜の膂力によって容赦なくテリブルに打ち当てられる度、少なくないダメージが装甲に蓄積されていく。
――異常熱量。異常熱量。冷却装置の出力が不足しています。
――被害を再計算。イエローからレッドへ。甚大。甚大。
(その程度であれば問題は、無い)
構うことなく拳を握る。腕を振り上げる。
戦争腕に仕込んだ湧き水を放出しながら、甲竜の腕へと鉄拳を打ち下ろす。
「ガァッ!!」
確かな手応え。狙い通り。他の猟兵が負わせていた傷に追撃を入れた形だ。
痛みに竜が悶える。嘴に咥えた大曲刀の柄だけは離さず、がむしゃらに暴れる。水を被って刀身は冷えたが、それでも膂力任せの猛打は健在だ。さっさと離れろと言わんばかりに、何度も何度もパワードスーツが打ち付けられる。
――アラート、レッド。レッド。危険域。ダメージを無視できません。
(――限界か)
手を離しスラスターを吹かして離脱。去り際に電磁衝撃ロッドを投げつけていく。水を被った竜の甲羅にがんと音を立ててぶつかると、目を剥いて全身を硬直させる。水を伝って電撃が流れたのだ。
「………………ッッッ!!!!」
痺れが残って動きが鈍くなるだろうが、意識は喪失していない。
「……きさ、まァ……ッ!! 不意を打って次々と……覚悟はできておろうなァッ!!」
左腕はだらりと垂れている。湧き水によって弱体化された武装も、戦闘開始当初より脅威の程度は減っているだろう。
だがバリスカンの眼光はいまだ衰えない。無数の傷を全身に負っても倒れる気配もない。
一方のテリブル、というよりパワードスーツは大曲刀の打撃を何度も喰らい、損害がひどい。甲竜の間合いを脱して熱の上昇は止まったが、いまだ完全には引かない。留まる熱はスーツの機能にも深刻な影響を及ぼしていた。
「その鎧の有り様ではもう碌に戦えぬだろう……鎧ごと貴様の身体を潰してくれるッ!!」
戦車の動力機関が唸りを上げる。こちらも湧き水の影響により起き上がりが不調だが、まだ動く。
『……それは困るな。私も、ただ死んでやる訳にはいかない』
返答を告げずに戦車が走り出す。
動かぬ金属人形を轢き潰さんと、テリブルの目前へと迫った。
――それはどこから現れたのか。
10メートルのパワードスーツ。
30メートルを超えるバリスカン。
それらよりも尚大きい、機械の身体。
まるでテリブルを守護する巨人のように背後から現れると、傷だらけのパワードスーツを胴の中へと呑み込んだ。
「な――!?」
不意の出来事ゆえに止まる暇も無い。
突き出される巨人の掌。ぶつかり、互いに弾かれる両者。
一度走行を止められた戦車は再始動まで時間を要する。その隙に、巨人が全身のブースターを使って跳躍した。
「――照準」
停止中の敵車両。
「……!! グオォォォォォォッ!!!」
甲竜は戦車を持ち上げて装甲を盾代わりとする。
ブースター出力最大。拳を握り、全速力で上空より襲来する鉄巨人。
装甲を突き破った勢いのまま、巨人の拳が竜の腹へと刺さる。
甲羅が砕かれひびが入ると、バリスカンは血反吐を撒き散らした。
成功
🔵🔵🔴
ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD】
…そう、君にとってのリザードマン達は駒ではなかったんだね
天秤がどちらに傾くか、それは言うまでもない事だけれども…君の同胞を弑した者として、せめて敬意を以てお相手仕ろう
必要であれば周囲の猟兵達とも連携
バリスカン(以下竜)の攻撃を可能な限り受けないよう側面・背面に回りつつ足止めやサポート中心に行動
【戦闘知識】、持参品の「ヘルメス」を【メカニック】で使用し周辺地形・地質と竜の攻撃を分析
竜が作り出す地形を火の精霊達の力を借りた【全力魔法】で変質させ、足止め
いずれも【調律・機神の偏祝】で強化・実行
隙が出来れば予め汲んだ湧水を【全力魔法】で纏め、破裂させよう
悪いが、君の手足は取り上げさせて貰うよ
壥・灰色
――べらべらと、都合の良い物言いだ
うるさいな
おまえは殺すつもりで軍を従えて、ドワーフを支配し、人を襲った
人を害するつもりなら、害されることだってあるだろ
それとも、一方的に殺せる神にでもなったつもりだったか?
来いよ
そんなに一人が寂しいのなら、おまえも葬列に入れてやる
両腕に魔力を漲らせ、敵の突撃を真っ向から受ける
回避する気など端からない
圧倒的な質量差がおれを襲うだろう
しかし、その巨体が持つ運動エネルギー、撃力、破壊力
その全てを両手の魔術回路を用いて自身の魔力として吸収、転化
許容量を超えた魔力が肘から光の柱の如く突き出て、充填完了を教える
右拳を引き、真正面から奴の乗る戦車に、全力の衝撃を叩き込むッ!
●対
「……まだ、だ……ッ!! まだ滅びんぞ、我輩は……ッ!!」
すでに猟兵たちの猛攻を受け満身創痍。
けれど隻眼には潰えることのない敵意を燃やして、甲竜は吠える。
「かつて散らせた命も……疎まれ蔑まれた我輩を、主と呼んでくれた者たちもッ!! 貴様等が奪ったッ!! ……何の爪痕も残さぬまま朽ちる訳にはいかぬのだ……ッ!!」
甲竜は間違いなく猟兵二人を見て言っている。
だが実際には別の誰か、もっと許せない何かに吠え立てているような気もした。
「……そう。君にとってのリザードマン達は、駒ではなかったんだね」
伏せられたヴォルフガングの目には憐憫が滲む。――その隣では、静かな怒りが燃え上がっている。
「――べらべらと、うるさいな。……なんて都合の良い物言いだ」
表情が普段から大きく変わっている訳ではない。だが、甲竜に睨みを飛ばす灰色には無視できない威圧感がある。
「おまえは殺すつもりで軍を従えて、ドワーフを支配し、人を襲った。……人を害するつもりなら、害されることだってあるだろ」
すべての始まりは復讐。
だが人の行いを憎む甲竜とて、至った道は同じ。
害されたから、害そうとした。
害そうとしたから、害された。
……やったら、やり返されるのだ。
「――それとも。一方的に殺せる神にでもなったつもりだったか?」
「……ク」
竜の口元が割れる。否、笑ったのだ。
吊り上がり歪むバリスカンの顔。それは本当に笑顔だろうか。凶悪で、どこまでも攻撃的だ。
「……そのようなものに成れていたなら……失うものは、まだ少なかったのかもしれぬな」
がん、と壊れかけの戦車を踏みつける。叩かれ砕かれ水を浴びせられ、最初よりずっと起き上がりの遅くなった戦車を、それだけで嘘のように蘇らせた。動力機関が唸りを上げ始める。
「貴様等と語り合う舌など持たん。……ただ、潰すのみだ」
「それはこっちも同じだ。来いよ。……そんなに一人が寂しいのなら、おまえも葬列に入れてやる」
灰色の四肢から蒼白い火花が散る。
ヴォルフガングの周囲にも、炎の魔力が目に見える赤い光となって集結し始めていた。
*
『あいつには暴れてもらった方が具合がいい。速くなるだけなった方が、やりやすい』
『逆のような気もするけど……でも、君はその方がいいんだね?』
『ああ』
『分かった。――じゃあ、お膳立てはオレに任せておいて』
攻撃を担うと宣言する灰色に、ヴォルフガングは頷いてみせた。
地形操作の術。その影響が現実に形となって現れる前に、ヴォルフガングの『ヘルメス』が予想される整地後の地形、および甲竜の走破ルートを詳細に解析して主へと報告する。
半ば潰された居住区へと最初に向かい方向転換――その背後から二人の猟兵へ。
解析結果は灰色にも即時共有される。電脳魔術に似た二次元のイメージが近くに浮かび上がった。
回避行動を取る。背後に注視しつつ距離を取れば、二人の元居た位置が平坦な道に整形される。その後間もなく、甲竜が一直線に駆け抜けていった。
「次は――正面か」
二人の両脇に高い岩壁。今度は退路を失くしてからの轢殺を狙う。
回避も間に合わなくはないが、確実性が低い――ならば、道を失くしてくれようか。
“地形操作”。
ただしバリスカンではない。行使したのはヴォルフガングだ。
「ぬう――!?」
駆け抜けようとした平坦な道の半ばに、突如溶岩が湧き始める。温泉のように高く噴き上がり、作られた道の端から端まで燃える灼熱の岩で埋めると、進路を遮る“火の壁”となった。
「チィ……!!」
岩の家すら踏み砕いて通る甲竜の戦車だが、溶岩の只中を突き抜けて通る訳にはいかないようだ。再度の地形操作。ヴォルフガングの操る溶岩までは術の手が及ばないのか、迂回するルートを形成する。
それもまた、『ヘルメス』が読んでいる。
「上手くこっちに来れないから業を煮やしてるようだね。……内臓熱量と魔力は今も上昇中。順調に温まってる」
解析結果に捕捉する形で灰色に説明する。
「――そろそろ出番かな。誘導するよ」
「了解。いつでもいい」
ここからは別行動。地形操作にて視界の開けた空間を作ると、灰色を残してヴォルフガングは安全圏へと退避した。
高く突き立っていた壁を戦車で突貫し破壊する。
そこに居たのは、灰色ひとり。
「……もう一人はどうした。怖気付いて逃げたか」
「どうでもいいだろう、そんなこと。……“温まった”んだろ? なら、来いよ」
火花はゆらめく蒼い炎へと変わる。両腕を覆って膨らみ盛る。形作るは闘技者の構え。
――受けるつもりか。
易い敵でないことは知れる。しかし彼我の体格差は絶望的、真っ向勝負ならどう見ても甲竜に軍配が上がる。
もう一人が罠を仕掛けたか?
……そのようなことは些事だと、すぐに断じた。
挑まれたのだ。竜が、人に。
これを、正面から打ち崩さずして何とする……!
何度も全力走行を繰り返した戦車は、人が触れれば消し炭となる程の熱を車体に有している。
これ以上は過負荷。だが逆に言うなら、今は最好調の状態。
初速から全力中の全力で、目前の敵を轢き潰すッ!!
視認すら難しい速度で“砲弾”が撃ち放たれる。
喰らえば死。回避も最早間に合わない。
佇んで動かない182センチの少年の身体を、“質量”という圧倒的暴力が蹂躙しようとしていた――。
――接触。
「……何が」
起きている。
訪れたのは潰された死体が生まれる当然の未来ではない。
静寂だ。
万一避けられようが、そのまま走り抜けていくはずだった戦車の巨体。
……それが今、灰色の掌に触れられると“完全停止”した。
急制動を利かせたどころではない。音も無く、何の前触れもなく。壊れかけの戦車の身体は軋み一つすら上げずに、突如として完全に止まったのだ。
凄まじい違和感。――そして変化が起きたのは、灰色の身体だ。
「ぐ――う……っ!」
全身から血が噴き出す。腕から、脚から、首から、眼からも。
代わりに灰色の両腕を覆う蒼白い炎めいた魔力が、急激にその規模と密度を高めつつある……!
「……全部は無理か。少しだけ想定外だ。やるじゃないか、ドラゴン」
「何を――貴様、何故潰れていない……!? 何の術を使ったッ!!」
「“食わせてもらった”だけだよ」
戦車が繰り出した破壊のエネルギーは、その殆どが灰色の両手に刻まれた魔術回路から吸収された。体内にてより使いやすい動力に再形成、転化を終えると、灰色自身の魔力へと完全に変換された上で体外へと放出される。
――全て右腕に集束。
光の柱が真横に突き立つ。それは悪竜を屠るために神々が授けた、巨大な光の杭のようにも見えた。
「馬鹿な――」
それ以上言葉が出ない。逃げることすら忘れている。
灰色の右拳が引かれ、狙いを壊れかけの戦車へと定めた。
「――宣言通りだ。送ってやる」
打突。轟音。
割れ、歪み、鋼鉄が砕けた。
衝撃は竜にも達し、必殺の威力で全身を打ちのめされると、騎乗する戦車ごと遥か彼方へ吹き飛ばされる。
蹴られた鞠のように地面に弾み、落ち、ぶつかり転がって、一枚岩の端にてようやく停止した。
裏返った戦車。
地に伏した甲竜。
力の抜けた首も四肢も、全く動く様子は無い。
――ふいに何かの弾ける音。
精霊の加護を得た湧き水が、雨となって戦車と甲竜に降り注いだ。
「……まだ君は戦うのかな」
微弱な生命力を『ヘルメス』が捉えている。今にも消えてしまいそうな、儚い命。
「最期まで戦う。抗い続ける。……ならオレも、君から奪った者として、最期までお相手仕ろう」
ヴォルフガングの宣誓は届いただろうか。
甲竜の右腕が、僅かに動いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と
これは珍妙な亀だな
だが、なりふり構わずに強くなる工夫をした奴が弱い訳がない
しっかりと気を引き締めていこう
いいぞ、リリヤ
その調子で湧き水を置いていってくれ
俺がトリニティ・エンハンスで、その水を剣に纏おう
リリヤが湧き水を掛け損なおうと、俺が剣で拾い奴に叩き込む
とはいえ、あのデカい得物と何度も切り結ぶ訳にもいかないな
なるべく一点を集中して叩くようにする
バリスカンの武器に綻びが見えたら
リリヤ、お前の光で貫くんだ
見た目通りどれもが凄い威力だな
怒り狂っている分、幾分見切りやすくはあるのが救いか
こちらは冷静かつ慎重に立ち回って行こう
リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と
桶などをお借りして、湧き水を手元にひとつ。
立ち寄りそうな場所にも、時間が許すうちに置いて回りましょう。
薙ぎ倒されるかもしれなくても、無いよりは。
思いついたことは、しっかりと備えて参りますね。
おそろしいきもちがないわけではありません、けれど。
こわくはありません。だいじょうぶ。
確りと動きを見て、期を伺います。
足を止めないように、閉じ込められないように、気をつけて。
わたくしはちいさいので、バリスカンの死角から後を追って、湧き水を掛けましょう。
掛けたら離脱して、次の桶を拾うように。
はい、ユーゴさま。
ほころびが見えたら、ひかりを招いて攻撃を。
緩んだ一点を狙いましょう。
●竜滅
甲竜の戦車はもはや形を成していなかった。
装甲は割れて、砕けて、歪んで――あと何度走ることが適うのだろうか。
甲竜自身も満身創痍。まともに立つ体力すら無いのか、戦車に寄りかかって動かない。だが、口に咥える大曲刀だけは離さず、切っ先は地面に。隻眼は伏せられていて、感情を読み取ることはできない。
「……ユーゴさま」
「油断するなよ、リリヤ。……まだ余力がある」
桶に汲んであった湧き水をルーンソードに伝わせる。『トリニティ・エンハンス』によって剣に纏わせた水の魔力と反応し、刀身に刻まれたルーンが青く発光した。
「今のうちに回り込め。引き付けておく」
「はい。ご武運を」
激戦を物語る砕け散った岩石の群れ。それらで身を隠しながらリリヤがひとり離れる。
*
(……おそろしいきもちがないわけではありません、けれど)
甲竜へと歩んでいくユーゴの背中を少し間見つめる。
(――こわくはありません。だいじょうぶ)
視線を戻して、リリヤは岩に隠れた道を進み始めた。
*
「……猿、が……ッ!」
何とか身体を奮い立たせて甲竜が大曲刀を振るう。けれども、戦闘当初ほどの勢いは無い。
なんとも分かりやすい大振り、立ち上がりの遅さ――今となっては巨躯と得物の大きさが災いしていた。この剣捌きでは尋常の剣士にも幾分か劣るだろう。受け止めずとも身体のステップだけで、ユーゴは甲竜の剣撃を軽やかに躱してみせる。
「……痛ましいな」
せめて速やかに終わらせるかと踏み込む。甲竜の足元、右斜め後ろ。眼帯に隠された死角へと至った。
――ぎし、ぎし、ぎし。
……軋む音が聞こえる。ふと気付けば、戦車の内から熱を帯びた空気が漏れ出ている。
軋みはやがて、炎の魔力がぐるぐると沸き立つ唸り声へと変わった。
これは戦車の核。動力機関の上げる声……!
「……肉を裂くことが適わぬなら……轢き潰してくれる……ッ!!」
残る力を振り絞り戦車を持ち上げ、ユーゴへと叩き付ける。無論躱したが、戦車から発せられる熱量、圧力は高まっていく一方だ。
突如、地面が揺れる。ユーゴと甲竜の周囲を囲むように岩柱が突き立ち始めた。――地形操作。間もなくして退路は無くなり、岩壁の密室が完成した。
「せめて、貴様だけでも……!!」
狭く限られた領域なら走行距離も短い。壊れかけの動力機関も延命できる。
戦車が潰れるのが先か、ユーゴが轢かれるのが先か。
車体が震える。戦車が叫ぶ。限界の近い鋼鉄がぎちぎち、と苦悶の声を漏らしながら、向かうべき標的の方へと動いた。
ユーゴが剣を構える。
――視線が、甲竜の左奥へと向けられた。
甲竜から見て右斜め後ろ。先ほど自身も狙った、眼帯に隠れた甲竜の死角。
ぱしゃ。
響く水音。静まる唸り。
発進寸前だった戦車の中からぶすんと音が聞こえると、それきり全く動かなくなってしまった。
「……な」
周りを見る。何も居ない。見えない。
それもそのはずだ。
小さな妨害者は大胆にも甲竜の懐、つまり戦車の中へと入り込んで務めを果たしていたのだから。
(……うまく、できました。ユーゴさま)
リリヤが湧き水を掛けたのは戦車の核。動力機関。
攻撃を加えずとも、水を掛けることそれ自体が致命的な不具合に繋がったようだった。
「――よくやった、リリヤ」
戦車の脅威は消え失せたと判断。
同道する少女の手柄だと、瞬時に直感した。
剣を掲げる。ルーンより漏れ出た青い魔力の光が、剣のすべてを包み込んだ。
「ぐっ……!! 何をした、貴様ァ……ッ!!」
甲竜の眼がユーゴに向く。咥えた得物を引き、あるだけの力で斬撃を叩き付けんとした。
「いけません」
鈴が鳴るような少女の声。天より光が落ちる。
雷のような閃きは甲竜の頭頂から突き刺さると、聖なる光で傷にまみれた竜の身体を焼いていく。
「ガァァァァ……ッ!!」
それで限界だったのか。
幾度猟兵に斬られ、叩かれ、撃たれ――それでも力強く咥え込んで離そうとしなかった必殺の得物、大曲刀が、甲竜の嘴から零れ落ちた。地面に落ちてごん、と鈍い音を立てる。
……最期の時。攻撃によって歪んだ戦車の装甲を足場に使い、ユーゴが跳躍して駆け上がる。
戦車の頂に至ると、甲竜の隻眼がユーゴの方へと向いた。
「――まだだ……我輩は、まだ」
「いいや、終わりだ。骸の海に還るといい」
ルーンソードを覆う魔力の刃が、バリスカンの胸を貫く。
暫しの停止の後、甲竜の身体から力が抜けて、地面へと巨体を沈ませる。
ユーゴたちを閉じ込めていた岩壁は、ぼろぼろと幻のように崩れ去っていった。
*
「――終わったか」
「おけがはありませんか、ユーゴさま」
戦車から飛び降り着地していたユーゴへぱたぱたと駆け寄る。外套は汚れているが、見える範囲で傷は見当たらない。
「全部避けてたからな。他の猟兵が頑張ってくれたお陰で楽ができた」
十全の状態なら、戦車や剣撃にもっと悩まされたことだろう。男は膝をつき、リリヤの様子をじっと観察し始める。
「お前も、……大丈夫そうか。ならいい」
立ち上がり、戦いの終わった“火の国”を見渡す。
階段を上がってきたころには健在だった岩家も、もう殆ど残っていない。
崩れた岩、瓦礫だらけだ。
ここでまたドワーフたちが暮らしていくならば、再建に多大な労力と時間を要することだろう。
「……しばらくは大変そうだな」
「ええ。……でもあのドワーフの方々なら、きっと」
希望を込めてリリヤが言葉を零す。
“火の国”における争乱は、こうして幕を閉じた。
成功
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