5
全ては愛しき君への贄に

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




●ある男から愛しき乙女へ
 沢山の可愛らしいお人形。
 沢山の綺麗な薔薇。
 沢山の召使い達。
 愛しい君のために、精一杯用意したよ。

 美しい少女は君のお友達に。
 可憐な乙女や淑女達は薔薇に。
 それ以外のどうでもいい奴らは召使いに。
 気に入ってくれると嬉しいのだけど。

 材料だって頑張って集めたよ。
 だからお友達と薔薇は気に入ってくれると思う。
 召使いもたくさんいれば僕らが安心して暮らせるからね。
 もし友達が壊れても、薔薇の花が枯れても、召使いが腐っても、新しいものをすぐに用意するよ。

 全ては愛しい君のために。
 僕と君で、ずっと幸せに暮らそう。

●その花園は血に濡れて
「集まってくれてありがとう。今回はダークセイヴァーで事件だよ 」
 グリモア猟兵のレン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)は、グリモアベースに集った猟兵へ一礼し説明を開始する。
「ここしばらくの間に複数の村が壊滅される事件が起こってるんだ。犯人は『人形蒐集家』というヴァンパイアで……彼はある目的のために村人達を殺害もしくは誘拐している」
 ヴァンパイアの目的は「村人を何かしらの方法で改造し、自分の従者や何かの材料へと変えること」という事が判明している。
 ただ殺害するだけでは飽きたらず、私利私欲のためにその尊厳を破壊する。
 不愉快な行為に顔をしかめた猟兵もいたかもしれない。だがレンは薄い笑みを浮かべたまま話を続けた。
「今回は彼の屋敷に潜入して討伐してきて欲しいんだ。拐われた村人の中にはまだ改造されてない人もいて、彼らを助け出すことも出来ると思う」
 だがそれは……暗に「既に改造された者は助けられない」という意味も含んでいる。
 今回は酷な思いをする場面もある仕事になりそうだ。

「屋敷に潜入したらまずは内部にいる彼の従者……怪物として改造されてしまった人達をどうにかしながら進んで欲しい。ヴァンパイアは屋敷の奥に引っ込んでいるから、彼らを倒すために暴れても表に出てこないと思うよ」
 ヴァンパイアの屋敷はなかなかの広さらしく、怪物もたくさん徘徊している。
 幸か不幸か彼らはオブリビオンではない。攻撃はしてくるものの猟兵なら簡単に対処する事が可能である。
 怪物として動かされ続ける彼らはこのまま腐り果てていくだけ。
 その悲劇を終わらせるためにも出来るだけ対処して欲しいとのことだ。
「ある程度進めば広い中庭に出る。たくさん薔薇が咲いているみたいなんだけど……これも、材料は人間だ」
 ヴァンパイアは何かしらの方法で人を薔薇へと改造している。その花園を踏み越えてヴァンパイアの元まで辿り着く必要があるようだ。
 また、囚われた人々もその近辺にいるようだ。本格的な保護は戦闘後になるが彼らの居場所に目星をつけておくのもいいかもしれない。
「ヴァンパイアは中庭のどこかから繋がる私室に籠っているみたいだ。そこまでの道のりを探して……あとは彼を討伐してね」
 悍ましい屋敷を探索し、敵を討伐する。
 仕事の内容自体はそこまで難しくないが、心理的な負担が大きくなってしまいそうだ。

「ヴァンパイアがこんな酔狂な事をしているのは、お気に入りの人形のためらしいね。だからといってこんな事は許されないんだけど」
 転移の準備をしながらレンが呟く。
 どんな理由があろうともオブリビオンは生かしておけず、暴虐非道は止めなければならない。
「こんな仕事へと送り出すのは心苦しいけど……皆無事に帰ってくるのを待っているよ。それじゃあ、よろしくお願いするね」
 気がつけば転移の準備も整っている。
 ゲートの先からは濃厚な血と薔薇の匂いが漂っていた。


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 今回はダークセイヴァーを舞台にした事件です。

 オープニングにも情報が出ていますが今回は「残酷・救いのない描写」が含まれるシナリオとなっております。
 その辺りをご留意のほど参加していただければと思います。

 それからフラグメントに記載された内容はあくまで一例ですので、思い付いた行動を自由にプレイングに書いていただければと思います。
 内容を確認したらこちらで合う能力値を判断し判定させていただく予定です。

 一章は「改造された人々を対処しながら進む冒険パート」
 二章は「敵の痕跡と囚われた人を探しながら中庭を探索する冒険パート」
 三章は「オブリビオン『人形蒐集家』とのボス戦」となっております。
 どこからでも参加していだければと思います。

 それでは今回もよろしくお願いします。
172




第1章 冒険 『屍血流路』

POW   :    再び動き出さないよう、ひたすら破壊し燃やせばいいだろう。。

SPD   :    最奥にいる元凶を倒せばあるいはすべて解決できるだろう。

WIZ   :    再生の仕組みを解明すれば怪物を生み出せなくできるだろう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ヴァンパイアの屋敷へ猟兵達は無事に潜入出来た。
 薄暗い屋敷の中に、いくつもの影が蠢いている。
 彼らは人であったもの。
 完全に人の形を保っている者は誰もいない。
 誰もが腕を、足を、頭を、耳を、鼻を、パズルのようにぐちゃぐちゃに組み替えられている。
 ただ警備のためか目を潰されている者は誰もいなかった。
 今は不自然な部位を動かしながら屋敷の中を動き回っていたようだ。

 だが一度猟兵達の存在を感知すると、一気に詰め寄り襲いかかってくる。
 彼らにそれほどの力はない。数こそ多いものの迎撃するのは難しくないだろう。
 速さもそれほどではないので走れば振り切る事も可能だ。
 彼らをどう対処して先へ進むか。それは猟兵自身に委ねられている。
リズ・ルシーズ
他猟兵と連携、アドリブ歓迎だよ!

【SPD】

ちょっとこの趣味は分からないかな、行くよルシーズ!

【ルシーズ】を使い、量産型のRシリーズを召喚して奥へと進んでいくよ。本人は【迷彩】で隠れつつ、量産型を囮にしつつ奥に進んでいくよ

悪いけど、ここで足止めされるつもりは無いんだ!

通路を塞がれたら、敵に突撃するように見せかけ【見切り・フェイント】でワイヤーを天井に向かって放ち、【ロープワーク・空中戦】で一気に飛び越えていくよ。ルシーズが敵に捕まったら自爆させて、もうちょっとだけ【時間稼ぎ】させてもらおうかな

ルシーズ、その人たちの眠りへの水先案内人は任せるよ!

他の猟兵が怪我をしてたら、【医術】で応急手当かな


クロウ・タツガミ
連携、アドリブ歓迎

【POW】

今更人殺しに躊躇する理由もない、目に付く範囲だけでも終わらせてやるべきか

【三位龍装】で攻撃力を強化、【戦闘知識】を元にサカホコ(ハルバート)を手に、迫り来る従者を【怪力】による【2回攻撃】で確実に止めを刺しながら進むつもりだ

死に損なって苦しみ続けさせるぐらいなら、確実に終わらせてやろう
(外套からマガホコが顔を出し、どこか愉しげに口元を歪めている)

従者を回避しようとする猟兵が攻撃されたら、レプリカの【投擲】で注意を引きガンドレッドによる【盾受け】で攻撃を受け、そのまま【力を溜め】た【Sバッシュ】で吹き飛ばすとしよう

終わらせるつもりが無いなら、それは任せて先に行くといい


インディゴ・クロワッサン
アドリブ・連携大歓迎!

「うっわー かわいそ」

哀れみが感じられないかもだけど、僕なりに哀れんだら、ちょっと遠くから愛用の黒剣:Vergessenを抜いて【衝撃波】を放って先んじて攻撃。

「一撃で仕留めてあげられなかったらごめんね?
苦しみは少ない方がきっと良いだろうから」

まぁ、たぶんの話なんだけどね。

周囲に集まってきたら、他の猟兵達が先へ進む為の【時間稼ぎ】も兼ねて【なぎ払い】をしてから【踏みつけ】とか【鎧砕き】とかで【2回攻撃】。

ある程度減ったら、僕も先に進もうかな



●歩みは止めない
 怪物達が集まりだしても、ここで足を止める訳にはいかない。
 猟兵達はそれぞれの方法で彼らへの対処を始めていく。

「『アーカイブ接続、ブループリント読込、圧縮展開』……行くよ、ルシーズ!」
 サイボーグの少女、リズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)は『R-Series』で「自分と同性能の簡易複製体」を量産し、囮にして進んでいくと決めていた。
 無数の鏡面体を伴った複製体達はリズと共に屋敷を駆けていく。
 リズ本人は迷彩を纏う事で上手く彼女達の中に紛れながら進む事が出来ていた。
 薄暗い屋敷内をキラキラと輝かせる鏡面に惹かれてか、怪物達も彼女達の方へと集まってきたようだ。
「悪いけど、ここで足止めされるつもりは無いんだ!」
 リズもRシリーズもなるべく怪物に囲まれないよう適度に散開しながら広い廊下を進んでいくが……如何せん怪物達の方が数が多い。
 次第に道幅を狭められ、気がつけば包囲もされてしまっている。
 彼らに残された目が一斉にリズ達を見つめ、敵意を示していた。
 何を考えているか、あるいは本能的な反応なのかもしれないが腕や足といった身体の一部で懸命にリズ達を追い出そうと攻撃も加えている。
 彼らの接合は不完全なようで蹴りや殴り、噛みつきといった行為の際には嫌な音が伴っていた。
 それ自体は大きなダメージにはならないが、痛いものは痛いし怖いものは怖い。
「ちょっとこの趣味は分からないかな……」
 一体オブリビオンは何を考えているんだろう。
 だがそれを考えるのは本人を前にしてからだ。リズは掌からナノワイヤーを天井へと一気に射出すると、灯されていないシャンデリアにそれを器用に引っ掛けた。
 ワイヤーを利用して思い切り飛び上がり、怪物達を飛び越えて廊下の先へ。
 彼らも急いでリズを追いかけようとするが、その動きは緩慢で複製体により簡単にあっさりと止められる。
「ごめん、ルシーズ。その人たちの眠りへの水先案内人は任せるよ!」
 心苦しいが、取れる手段はこれしかない。
 複製体に自爆機能の発動を命令すると彼女達は怪物達と共にその身を爆ぜさせた。
 嫌な音と匂いが伝わってくるが、後ろを振り返る事はしない。彼らを救うにはきっともうこれしかなかったから。
 リズは再び囲まれないようにしながら暗い道を進んでいく。

 クロウ・タツガミ(双龍の担い手・f06194)も自らの仲間と共に屋敷の中を突き進んでいた。
「酒は飲ませる、サカホコ、マガホコ、力を寄越せ」
 外套に潜んでいた白龍『サカホコ』と黒龍『マガホコ』に声を掛けると、サカホコの方が顔を出してハルバートへと姿を変えた。
 『三位龍装』、二体の龍と霊酒の力で自らを強めるクロウの技は暗い道を進む力を与えてくれる。
(今更人殺しに躊躇する理由もない、目に付く範囲だけでも終わらせてやるべきか)
 先を見れば続々と怪物達が集まってきている。彼らはかつて「人だった存在」だ。今の彼らを救うためには殺してやるのが一番の慈悲か。
 クロウは彼らへと思い切りサカホコを振り下ろし、その身体をバラバラにしていく。
 敵意が籠もった視線で見つめられようと、今はそれを気にする余裕はない。
 確実に、出来るだけ一撃で彼らを仕留めてやらなければ。
 どれだけ彼らの身を砕けばその生命を終わらせてやれるだろうか。幸いな事に彼らは決して頑丈ではないようだ。数発振り下ろせば動きは止められるようだ。
 だからといって人体の急所がそのまま残っている訳ではない。相手を見つめその都度どこに武器を振り下ろすか考える必要がある。
 死に損なって苦しみ続けさせるぐらいなら、確実に終わらせてやろう。
 淡々と進んでいくクロウの表情は変わらないものの、外套から顔を出すマガホコはどこか愉しそうに口元を歪めていた。
 だからこそ、今回は生きた拷問具のマガホコではなく武器であるサカホコに彼らを殺す事を手伝ってもらっているのかもしれない。
 気がつけば進行方向にいる怪物達はかなり減らせていた。だがクロウはその手を止めない。
「……このような仕事は出来るだけ自分がした方が良さそうか」
 彼らをこのように殺しながら進む事に抵抗を持つ仲間もいるかもしれない。
 そうでなくても一人でも「終わらせて」進んで行くのが自分の出来る事だ。
 サカホコもその思いに応えるように強靭な刃としてクロウを助けてくれていた。
 ここから先はマガホコの力を借りる場面もあるだろう。そんな予感も感じてはいる。
 こうしてクロウと二匹の龍は道を切り開きながら進んでいった。

「うっわー。かわいそ」
 屋敷の中にどこか軽い口調の言葉が響く。発したのはインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)だ。
 迫りくる怪物達を前にしての発言ではあったが、これは決して彼らを愚弄するものではない。
 これは彼なりの哀悼の示し方なのだ。そしてそれは行動にも現れている。
 インディゴは彼らに接近されるより前に黒剣『Vergessen』を抜刀すると、一気に彼らの方へと振り抜いた。
「一撃で仕留めてあげられなかったらごめんね? 苦しみは少ない方がきっと良いだろうから」
 まぁ、たぶんの話なんだけどね。そんな事を思いながらも攻撃は全力だ。
 剣から凄まじい衝撃波が発生すると、怪物達は一気に切り裂かれていく。
 一見して彼らの急所は分からない。それならば出来るだけ思い切り、一撃で彼らを仕留めきれるくらいの攻撃を振るわなければ。
 しかし初見の相手で距離もあった。何体かの怪物は未だに動いているようだ。
 口のような器官があるものは声のようなものを呻き、目からは血が涙のように流れてきている。
 どうしてこんな悪趣味な事をするんだろう。
 しかし考えていても仕方がない。インディゴは生き残った怪物達まで近づくと再びVergessenを振るい、次は確実に彼らの息の根を止める。
 黒剣の鍔にある藍色の薔薇の紋章は血に濡れて、罪を示すその武器らしい暗い輝きを宿している。
 何にせよ足は止められない。他の猟兵が進むための囮にでもなろうとかと、インディゴは再び別の怪物達へと向かっていった。
 彼らは先程の彼の攻撃を見ても怯んだりする様子はない。そのような思考は捨てられてしまったのかもしれない。
 それならそれで自分はやるべき事をするだけだ。インディゴは再びVergessenを薙ぎ払うと彼らの生命もまた終わらせていく。
「……こんなものかな」
 しばらくすれば怪物達の数はかなり減っていた。これならこの道を通る猟兵達の邪魔にはならないだろう。
 ここから先に進んでどうなるかは分からない。とりあえず奥のオブリビオンを倒せばきっとどうにかなるんじゃないかな。
 黒い外套をたなびかせながら、インディゴもまた屋敷の中を突き進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

桜屋敷・いろは
痛かったでしょう、辛かったでしょう。
人形であるわたしには痛みは分からない。でも、救いたい、そう思ったの。

桜色の小さな唇から紡がれるのは、貴方の為の鎮魂歌。
わたしには歌う事しか出来ないわ。でも、少しでも慰みになれば、と。
小さなレクイエムはだんだんと大きくなり、空に溶けて行くでしょう。

ヒト、ヒトならざるモノ。歌に誘われて寄って来たら、ウィザード・ミサイルで火葬してあげるわ。
辛かったね、苦しかったね。もう大丈夫です。
空に上がる煙を見上げて、葬送歌を。

……人形如きが救うなどおこがましいけれど。
でも、それでもわたしは…。



●祈りはここに
 怪物達にできるだけの事を施しながら進む者もいた。

「痛かったでしょう、辛かったでしょう」
 桜屋敷・いろは(葬送唄・f17616)は怪物達の方を見つめ、そっと目を伏せた。
 人形であるわたしには痛みは分からない。でも、救いたい、そう思ったの。
 その思いを鎮魂歌に乗せて歌いだせば、怪物達もいろはの方へと寄ってきた。
 殆どの怪物は敵意を示した目線でいろはを見ていたが、そうではない者もいるようだ。
 彼らにいろはの思いが届いているのかは分からない。もしかしたら歌が好きだった者なのかもしれない。或いは別の理由があるのだろうか。
 それは分からないが、今出来るのは彼らの慰みになる歌を歌い上げるだけ。わたしには歌う事しか出来ないから。
「さよならさよなら、愛しきみよ」
 小さなレクイエムはだんだんと大きくなり空に溶けるように響き渡った。
 鎮魂歌が終わる頃には怪物達の数も増えている。集った怪物達は皆穏やかな目をしていた。
 ならば次にすべき事は。
「ヒト、ヒトならざるモノ」
 優しく声をかけながら掌に魔力を集中させていく。それが小さな炎へと姿を変えたのを確認すると、いろははその手で怪物達を優しく撫でていった。
 炎が燃え移り、彼らの身体は次々に塵へと変わっていく。その様は火葬のようで穏やかさすら感じられる光景だった。
 彼らも苦しみはしない。皆目を閉じて炎に包まれる事を受け入れていた。
「辛かったね、苦しかったね。もう大丈夫です」
 ミレナリィドールの身体ならば煙に包まれても平気だ。いろはは彼らが完全に煙と化すまで寄り添い、優しく歌い続けた。
 彼らが燃え尽きるまでは鎮魂歌を。煙へと変われば葬送歌を。
 近くにあった窓を開ければ煙は空へと舞い上がっていく。ダークセイヴァーの空は暗いけれど、ここに閉じ込められているよりはずっと幸福だろう。
(……人形如きが救うなどおこがましいけれど)
 でも、それでもわたしは……。
 少なくとも、彼らをこの悍ましい屋敷からは助け出せた。
 だからこそ先に進まなくては。元凶を止めなければまた同じ悲劇が起きてしまう。
 様々な思いを胸に、いろはは屋敷を進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

カネリ・カルティエ
ほぅ、人間を素材に薔薇や人形を作る、と。ふふ、どうやって作るのか個人的に興味はありますが……今回は生存者の救助が優先ですね。

中庭の入り口を探して、屋敷の奥へと進みましょう。

向かってくる方々は、地縛鎖で【串刺し】、【学習力】で体の構造を見て繋ぎ目へ【傷口をえぐる】で動けないように致しましょう。

あまり体力はないので、周囲に生きた人間がいない場所は【妖精が潜む小箱】で妖精達に処理をお願いします。

(事前に他の猟兵に遺体を埋葬したい旨の意思表示があった場所、その意思を尊重して中止)


ルパート・ブラックスミス
【POW】
このような有様では捨て置く方が無慈悲か。
敵に気取られる心配もないなら好都合。片っ端から殲滅して回る。

問題ない。こういった事は得意分野だ。

青く燃える鉛の翼及びUC【燃ゆる貴き血鉛】展開。大剣に燃える鉛を纏わせる。
先を急ぐ猟兵がいるなら翼からの熱風(【属性攻撃】)で【吹き飛ばし】、突破口を開こう。

相手に人としての意識が残っているようなら短剣を刺し【生命力吸収】。
己の糧にするのではなく、痛みを伴わせず魂を肉体から解放させる。

後は単純だ。改造された人々を大剣で【なぎ払い】、その肉体を炎で塵も遺さず焼却する。

…問題ない。【覚悟】などとうの昔にできている。

【共闘・アドリブ歓迎】


空廼・柩
…悪趣味って言葉はこの為にある様にさえ思うよ
残念だけれどこれはもう人じゃない
人に戻せないならば――此処で壊すしかない

襲い来る人形達に拘束具で絡め、動きを封じる
そのままそれを振り回す事で更に襲って来る奴等へ攻撃を仕掛けよう
近くまで迫った場合は一旦拷問具で防御
そのままカウンターを叩き込もう
追って来られたら面倒だし、しっかり拘束しておかないと
その際は危ないから猟兵達にも警告を忘れず行う
…人間達は飽く迄素材だ
こいつ等の持つ感情が本来の人である筈がない
変に憐みを持てば手元が狂う
俺達の目的はヴァンパイアの討伐
それを忘れてはいけない
冷静に、自分に言い聞かせて得物を握る

――にしても懲りないな
まだ抵抗する心算?



●目を逸らさずに
 悍ましい屋敷内の光景。集ってくる怪物達をどう捉えるかは猟兵次第だ。

「ほぅ、人間を素材に薔薇や人形を作る、と」
 カネリ・カルティエ(ブラックタールの探索者・f10978)は雑面の下からどこか楽しげな声を零した。
 この怪物も、先にあると言われた薔薇や人形も個人的に興味を引く存在だ。
 だが今はまだ改造されていない人達の救出とヴァンパイア討伐が優先だろう。そう考えてカネリは屋敷を進んでいく。
 怪物達も続々と集まっているようだ。彼らを対処していかなければ先へは進めない。
「それでは……失礼しますね」
 カネリは纏った地縛鎖を広げると、それを次々に怪物へと刺していった。先端に付けられた刃物が彼らの肉を突き刺し、その場に縫い付けるように床に留める。
 だがこれだけでは不完全だ。カネリが動けば彼らも拘束を抜け出してしまう。
 それを防ぐためにももっと彼らを観察しなくては。
 カネリは怪物の側へとしゃがみ込むと彼らの様子をまじまじと観察していく。
 身体のパーツの数はバラバラ。共通点は目が残されている事だが、身体の持ち主の目かは分からない。
 そしてどの怪物も不完全な縫合や結びつきで形を保っているようだ。
 それならこの部分を崩してしまえば完全に動きは止められるはず。
 カネリは一度地縛鎖を引き抜くと、その繋ぎ目へと改めて刃を突き刺した。
 怪物の身体が大きく震える。目が大きく見開かれるが、それは生理的な反応なのか痛みに悶ているかは分からない。
 しばらくすると怪物は完全に動きを止めた。恐らく生命活動を停止したのだろう。
 ならばこのままここに置いていく訳にもいかない。放っておけばヴァンパイアが彼らをまた材料にしてしまうかもしれないから。
 そこでカネリは懐から『妖精が潜む小箱』を取り出すと、中に潜む妖精たちへと声をかけた。
「さぁ、お食事の時間ですよ」
 箱から出てきた妖精達は動かなくなった怪物へと集い喰らい始めた。
(このまま生き続けるか朽ち果ててるよりは良いでしょう……)
 しばらくすればその場からは全ての痕跡が消え去り、妖精達も箱へと戻っていった。
 カネリも箱を再び懐へと仕舞いこむと暗い廊下を突き進んでいく。目指すは中庭だ。

 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)もまた屋敷の中を突き進んでいた。
 彼の身体から溢れる青い炎が道を照らし、つられて怪物達もルパートへと迫る。
 四肢や感覚器を蠢かせながら敵を追い出さんと、あるいは仲間に加えんとしてくる怪物達の姿はあまりにも酷い。
(このような有様では捨て置く方が無慈悲か)
 幸い奥に潜むヴァンパイアがここに現れる心配はない。それならば片っ端から殲滅して回ろうか。
 嫌な仕事だが問題はない。こういった事は得意分野だ。
「我が血はもはや栄光なく、されど未だ闇に消えず……!」
 詠唱と共にルパートの鎧から青く燃える翼が広がり、装備した大剣にも同じく炎を纏わせていく。
 炎の正体は彼の内に伝う燃える鉛だ。『燃ゆる貴き血鉛』はそれを更に広げて力へと変えてくれる。
 ルパートは翼で一気に飛翔すると迫る怪物達を熱風で薙ぎ払った。
 凄まじい風が巻き起これば怪物達はひとたまりもなく飛んでいく。
 更に追撃を加えようとした所で、ルパートは怪物と「目が合った」。
 怪物が見つめたのは厳密にはルパートの兜の奥であり、目が合ったように感じたのも偶然かもしれない。
 だがそこに、救いを求める生命の瞬きを見た気がして。
 ルパートはそっと彼の側へと降り立つと、炎を纏った大剣ではなく黒い短剣を突き刺した。
 この短剣には生命を吸い取る力がある。だが今回は自らの糧にするために生命を奪うのではない。出来るだけ痛みを伴わせずに魂を解放するためにこうしたのだ。
 怪物も最初はルパートを見て攻撃を加えてきたが、次第にその動きは弱まり最後には動かなくなった。
 ならばあとは塵に還すだけ。
 問題はない。覚悟はとっくに出来ている。自分に言い聞かせるように思いを紡ぐと、ルパートは再び大剣を握りしめた。
「……行くぞ」
 青い炎と共に大剣を振るえば、それは一気に怪物達へと燃え移っていく。
 屋敷の内部に燃え移らないように注意しつつ、彼らの肉体は確実に塵に還れるように。
 炎が消える頃には彼らの肉体も煙と化して屋敷の外へと流れていった。
 それを見守ると同時にルパートは再び歩き出す。元凶を止めなくては。

「……悪趣味って言葉はこの為にある様にさえ思うよ」
 空廼・柩(からのひつぎ・f00796)は屋敷の中を一瞥し、思わず気持ちを声に出した。
 血と薔薇の匂いが充満する中で迫りくる怪物達。残念だけれどこれはもう人じゃない。
 人に戻せないならば――此処で壊すしかない。
 懐から拘束ロープを取り出すと、迫り来る怪物へとそれを一気に絡めていく。
 身体の作りは変わっていても、『咎人封じ』の力でどうすれば最善かは判断出来る。
 柩は迅速な動きで手近な一体を拘束しきると、今度はそれ自身を武器にすべくロープ側を握りしめた。
 幸い周囲に他の猟兵達はいないようだ。思い切り動いても問題はないだろう。
 普段使っている拷問具と同じ要領でロープを手繰れば、柩は拘束した怪物をハンマーの要領でそれを振り回ていく。
 作りの粗い怪物でも元々持っていた質量は失われていない。その重みは確実に他の怪物達を潰していった。
 使われた人間達は飽く迄素材だ。今ここにいるこいつ等から感情が見えたとしても、それは本来のものではない。
 目が合っても、呻き声が聞こえても、彼らは既に人間ではない。
 変に憐みを持てば手元が狂う。
 俺達の目的はヴァンパイアの討伐、それを忘れてはいけない。
 柩は心の内で自分にそう言い聞かせながら武器を振るった。
 なるべく冷静に、やるべき事から目を逸らさずに。
 振り回している怪物がすり減っていくならば、手元に手繰り寄せてより強く拘束して。
 これは既にモノになってしまっている。こうしてやる事しか出来ないから。
(――にしても懲りないな。まだ抵抗する心算?)
 怪物達も潰されながら柩へと向かってくる。敵わない相手から逃げるという発想は奪われてしまっているのだろう。
 だとしたら最後まで付き合ってやるのが道理か。近くにいる怪物達が全て動かなくなるまで、柩は腕を振るい続けた。
 全てが終わる頃には拘束していた怪物も生命活動を終えていた。ロープから解放してやったならば他の怪物達の側へと横たえる。
 彼らに何かすべき事があるならば、それはヴァンパイアを討伐し生存者を救出してからだ。
 まずは目的を果たさなくては。身体と心に重いものを感じながらも、柩は奥へと進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エレニア・ファンタージェン
痛ましい…この姿にされてまだ生きているのね
今、楽にしてあげる

UCで香炉から幸せな幻覚を見せる紫煙を放ち、足止めを
叶うことならずっとその幻を見せてあげたい
出来るだけ苦しくないよう、生命力吸収でとどめを刺したいところだけれど数が多いしそうも行かないかしら
使う拷問具は鋭い刃のみ、暗殺の要領で極力痛みの少ないように
…本当は死霊を召喚した方が早いのだけれど、 自ら手を汚すのはエリィなりの誠意
反撃は避けません
激痛耐性で耐えるのみ

「貴方達の怨嗟と呪詛はエリィが預かりましょう」
祈る資格はないけれど、手向けとしてせめて瞼は閉じてあげましょう
…仇は討つわ
人としてお眠りなさい


サリア・カーティス
【POW】
まあ……なんということでしょう。
こんなに蠢いている敵が沢山いるのに……ちっとも感情の昂りが起きませんわ。
オブリビオンではないから……?
それとも……成れの果て、と事前に言われていたからでしょうか。それでも、もう救えないのなら……終わらせて差し上げなくてはいけませんわ。

一思いに燃やし尽くしてしまいましょうね。ネクロオーブを変化させて【地獄華乱舞】を。炎を潜り抜けて来られたなら【怪力】で鉄塊剣を振るい、【なぎ払い】で蹴散らしますわ。

……その怨嗟は、
私が奥にいるモノにぶつけてきますわ。
まあ、私がただぶつけたいだけなのですけど。
本当に、いい趣味をしておいでで。

【連携・アドリブ歓迎】



●背負っていくから
 怪物達の思いを感じ、背負っていくかも猟兵次第だ。

「痛ましい……この姿にされてまだ生きているのね」
 エレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)は怪物達に囲まれながら自らが為すべき事を考えていた。
 エリィに出来る事は彼らを楽にしてあげる事。
 エレニアは手にした香炉をそっと掲げると、彼らの眠りを助けるべく甘い香りの紫煙を広げさせていく。
「憂き世のことは全て忘れて」
 『我が懐かしの阿片窟』で生み出された紫煙は多幸感溢れる幻覚と強い眠気を誘発する。
 怪物達も元々人間であったならばある程度は効くはずだ。
 事実広がる煙に包まれ、数体の怪物は微睡み始めている。
 しかし効きが悪い者もいるようだ。眠りへと誘うエレニアを殴り、蹴り、彼女もまた仲間へと加えようとしてきている。
 そんな彼らにも決して抵抗はしない。歯を食いしばって痛みを耐えて、少しでも彼らへと香炉を近づけていく。
 辛抱強く紫煙で彼らを包んでいけば、彼女の周りにいる怪物たちはうつらうつらと微睡みだした。
 叶うことならずっと幸せな幻を見せてあげたい。だがそれは叶わぬ夢だ。屋敷の奥には助けを待つ人がいて、諸悪の根源であるヴァンパイアもいる。
 だからせめて、彼らを少しでも苦痛から救い出せるのならば。
 エレニアは鋭い刃を取り出すと、勢いよく怪物達へと突き刺した。
 よく見れば彼らの脆い部分は分かるし人としての急所も判断出来る。
 極力痛みの少ないように、一人ひとりに刃を突き立てていく。白い肌が返り血で汚れても構いはしなかった。
 本当ならば死霊を呼んで手伝ってもらった方が早いのだが、敢えてそれはしなかった。
 こうやって手を汚すのがエレニアなりの誠意だったから。
 刃を刺された衝撃で目を覚ます者もいた。そんな相手にも彼女は精一杯向き合い、その生命を終わらせていく。
「貴方達の怨嗟と呪詛はエリィが預かりましょう」
 エレニアは怪物達をひとしきり永い眠りへと誘い終えると、彼らの瞼を丁寧に閉じさせていった。
 ……必ず仇は討つわ。だから人としてお眠りなさい。
 そう決意と弔いの言葉を抱きながら、エレニアもまた屋敷の奥へと進んでいった。

「まあ……なんということでしょう」
 サリア・カーティス(過去を纏い狂う・f02638)は驚嘆の声をあげていた。
 サリアはいつも飢えていた。彼女は感情を昂ぶらせ死霊と共にオブリビオンを喰らい、蹂躙するために戦場へと赴いている。
 だが……目の前の蠢く怪物達を見てもちっとも感情の昂りが起こらないのだ。
 それは彼らがオブリビオンではないからだろうか。それとも元々は人間だったためか。
 何にせよ彼らを救う事は出来ない。それなら終わらせてあげなくては。
 苦しませるのはきっとよろしくないでしょう。そう判断したサリアはネクロオーブを掲げそっと呪文の言葉を呟く。
「『地獄華乱舞』……ふふ、綺麗でしょお……?」
 オーブは彼岸花を象った炎へと姿を変えると、サリアの周りをふわりと舞いだした。
 炎は周辺にいる怪物達を尽く焼き尽くし、次々に灰へと変えていく。
 だが全ての怪物が簡単に燃え尽きる訳ではなかった。炎に焼かれる苦しみからサリアの元へと飛んでくる者もいたのだ。
 すぐさま鉄塊剣と手に取り薙ぎ払いで応戦すると、飛んできた怪物は簡単に動きを止めて灰へと変わっていく。
 炎に抵抗しようとしたのはどのような意図か。死ぬまで侵入者を止めるように言われているから? それともただ苦しかったから?
 何にせよ救いようのない光景だ。だがサリアはこうする事を選んだ。
 彼らの魂は空へと還っていくだろうが、安らぎと共に自らを変えた吸血鬼への強い怨嗟も抱えていってしまうだろう。
「……その怨嗟は、私が奥にいるモノにぶつけてきますわ」
 これが彼女なりの弔いだった。勿論「自分がそうしたいから」という部分もあったのだが。
 だってこんな悪趣味な場所を作り上げている存在ですもの。私の飢えも、死霊達の飢えもある程度は満たしてくれるでしょう。
 灰だけが残された道を見て、サリアはぽつりと呟く。
「本当に、いい趣味をしておいでで」
 ならばさっさと終わらせてしまいましょう。
 サリアは暗い廊下を突き進んでいく。自分の目的を果たし、利用された者の怨嗟を背負いつつ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

小宮・あき
団員のネフラさん(f04313)に誘われる形で参加。
ネフラさんが進む道の露払いを努めます。
後衛、アドリブ歓迎

UC【愛雨霰】
「私、愛されていますから」

マスケット銃(38本)を【念動力】で操作。
10本自分の後方に控えさせ、残りは上空とネフラさんの左右に。
近づいてくる敵、隠れている敵を【スナイパー】で狙撃します。
ネフラさんの進行を邪魔する敵を【援護射撃】で落とし、動きやすいようサポート。

不意に近づいて来た敵には【零距離射撃】で対応。
銃を2本クロスさせ【武器受け】で敵の進行を防いだりします。

周囲の様子は【視力】【聞き耳】【第六感】【野生の感】で気を配る。
【回避】は脚武器の【ダッシュ】と併せて軽やかに。


ネフラ・ノーヴァ
団長殿(f03848)と同行。アドリブOK。背後は団長殿の銃の守りで安心だ。
ああ、血も薔薇も私には甘く好きな匂いだ。誘われてしまう。しかし、造形の趣味は呆れるほど合わないな、美しくない。
見知らぬ人間の末路をどうこう思案する事はないが、最後はせめて美しく。刺剣で貫き、吹き上がる血は果てる迄の間、大輪を咲かせる。
まとわりつかれた時は右手のフェイタルグラップルで引き剥がし、砕く。
返り血は浴びて己が糧とするが、愉悦にも浸ってしまうもの。



●嵐のように花のように
 暗い道を友と共に駆ける者もいた。
 屋敷の中を二人の女の影が行く。

 先行するのはネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)。刺剣を振るいながら勇ましく進んでいく。
 後ろで彼女を守るのは小宮・あき(人間の聖者・f03848)。辺りを観察しながらネフラの援護を受け持っていた。
「薔薇の香りは良いですけど、この雰囲気は良くないですね……」
「血も薔薇も、私は甘く好きな匂いだ。誘われてしまう」
 場の雰囲気に呑まれて表情を曇らせるあきと対照的にネフラはどこか楽しげだった。
 しかし二人共この場にいる怪物達には眉をひそめている。惨たらしい姿へと変えられた人間達。
 単純に悍ましく、そして美しくない。
 ならばせめて最期は華々しく散らせるべきか。二人は互いに武器を手に取り怪物達へと突っ込んでいく。
「私、愛されていますから」
 あきは『愛雨霰』で次々にマスケット銃を複製していくとそれらを必要なだけ動かしていく。
 自分の後方、上空、ネフラの側にそれぞれ配置し終えたならば次は索敵だ。
 暗い屋敷内でも目を凝らせば怪物達は視認出来る。幸い彼らは「隠れる」という事をあまりしないようだ。あきとネフラの存在を確認すると次々に寄ってきている。
 ネフラもそれに応じるように怪物へと刺剣を振るっていく。剣が怪物達を貫く度に真っ赤な血が吹き上がり、大輪の花を咲かせるようだ。
 彼らの身体に流れる血が赤いのは幸福だろうか、それとも不幸だろうか。
「最後はせめて美しく」
 見知らぬ人間の末路をどうこう思案する事はないが、これが彼女なりの弔いだ。
 ある程度の距離があればあきが狙撃し、近くの敵はネフラが貫く。
 二人の連携はかなり上手くいっていたが……敵の数も思ったより多かったようだ。
 マスケット銃の狙撃の合間を縫って、一体の怪物が二人の元へと飛来してしまう。
「っ……ネフラさん!」
 零距離射撃の要領であきが応戦するも相手は粘り強い。怪物は吹き飛んだ勢いでネフラの元へと辿り着き、幾つもの口で彼女へと噛み付こうとしてきたのだ。
「……美しい中身じゃないか、フフッ」
 だがネフラは怯まない。『フェイタルグラップル』で怪物の顔を押さえつけると、力を籠めて一気にその身を砕いていった。
 赤いものが飛び散り、ネフラの身体を汚していく。
 それすらの自らの糧として彼女は笑っていた。白い身体を赤く濡らす事に愉悦を感じているからだ。
「びっくりしましたね……! ネフラさんが無事で何よりです」
「団長殿が先に撃っていてくれたから対処出来たのだ。こちらこそ助かった」
 互いに顔を見合わせて無事を確認すれば、二人はすぐに再び警戒にあたっていく。
 あきは勘を巡らせて更に注意深く敵を探してみる事にした。敵は思ったよりも厄介かもしれない。できる事で対処をしていこう。
「あっ、そこですね!」
 屋敷の中には死角になる部分もある。たまたま家具の後ろにいた怪物が出遅れているのを確認すれば、レガリアスシューズで駆けて相手の元へ。
 勢いのままマスケットを発砲すれば、今度は相手の身体を簡単に貫いていった。
「良い調子だ、団長殿」
「ネフラさんが道を切り開いてくれるおかげです!」
 道は暗くとも仲間がいれば心強い。
 二人は互いを尊重しあい、しっかり連携し合う事で着実に先へと進めていた。
 目指すは中庭、そしてその先のオブリビオン討伐だ。
 二つの影は嵐のように屋敷の中を駆けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『私の為に花は咲く』

POW   :    研究施設の破壊など

SPD   :    囚われた人をこっそり救出するなど

WIZ   :    侵入ルート、避難経路の割り出しなど

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 屋敷を突き進む猟兵達を、濃厚な薔薇の香りが包んだ。
 中庭へ続く扉が開け放たれたのだ。
 曇天の空の下、無数の薔薇が中庭で咲き乱れている。
 一見美しい光景だが……一歩進めばその異様さに気がつくだろう。
 土の感触が、おかしい。
 土をよく見ると腕や頭が埋まっているのだ。それは全て女のものであった。
 そして薔薇はそこから生えている。
 恐らく「薔薇へと変異しきれなかった部分」が土の中に乱雑に埋められているのだろう。

 中庭からは屋敷の他の場所へも繋がっているようだ。
 温室や物置といった小さな建物も見えている。
 この中庭のどこかからヴァンパイアの私室へと繋がる道があり、攫われた人々が囚われている部屋もあるはずだ。
 それらを探していくか、まずは薔薇をどうにかするか。
 猟兵達はそれぞれの思惑で行動を始めていく。
桜屋敷・いろは
噎せ返る香りに周りを見回して
奇妙に美しい薔薇に目をやる

一輪、そっと摘んで
棘が刺さっても気にならない
血の一滴も通わない機械人形だから
摘んだ一輪を髪にさし、歌いながら歩く
まるで散歩でもしているように

歌に、助けを求める声が重なれば
わたしは助けます

わたし自身が歌い、目立つことで
囮にもなるでしょう
大丈夫、必ず助けます

わたしの歌に、まだ人を救う力は備わってはいないけれど
でも、マスターが、創造主が、わたしに歌をくださった
わたしは、この歌でみんなを助けたい

鬼さんこちら、歌聞こえる方へ
ふわふわ舞うように誘い
敵襲が来たら、浄化の焔を
貴方も、辛かったね、苦しかったよね
おかえり、おかえり、空の彼方へ届けるわ



●声を届けて
 薔薇が咲き乱れる中庭を、いろははゆっくりと見渡していた。
 噎せ返るような薔薇の香り。真っ赤に咲く薔薇達。
 しかしここは悪しき者が作り出した偽物の楽園。薔薇の下を見やれば……。
 だが、いろはは敢えてそこに咲く薔薇を摘んでいた。
 棘が指に突き刺さったが機械人形である彼女にとっては些細な事。痛みはあるが血は流れない、だからこの花を汚さず摘める。
 いろはは美しい桃色の髪に真っ赤な薔薇の花をさすと、今度は歌いながら中庭を歩みだした。
「鬼さんこちら、歌聞こえる方へ」
 その様子は穏やかな散歩のようで、しかしいろはの目には強い意志が宿っている。
 ここには助けを待つ人がいる。だから、わたしはその人達を助けに来た。
 わたしの歌に、まだ人を救う力は備わってはいないけれど。
 でも、マスターが、創造主が、わたしに歌をくださった。
 わたしは、この歌でみんなを助けたい。
 思いを歌声に籠めながら、いろはは中庭を進んでいく。
(……音が、聞こえていたわ)
 気になったのは温室と物置だ。その側を通る時に微かに物音が聞こえたから。
 温室の方はほんの一瞬厭な気配を感じた。
 一方で物置の方は微かに戸を叩くような音がした。
 助けを求める音だったのは、きっと後者の方。
 ならば急いで確認しにいかないと……そう思い進みだしたいろはだが、何やら妙な気配を感じる。
 後ろを振り返れば屋敷の中にいた怪物の一体が歩み寄ってきていた。恐らくいろはの歌につられて出てきてしまったのだろう。
 だがそのような状況になる事も予想していた。助けるべき人も、救うべき相手にも気づいて欲しくて歌を口ずさんでいたのだから。
「貴方も、辛かったね、苦しかったよね」
 いろはは怪物へと近づくと、再び掌に浄化の炎を灯してそっと撫でていく。
 怪物はあっという間に炎に包まれ煙と化す。炎は薔薇と土の下にあるものにも燃え移っていくが、彼女達もきっと空へと還るべきなのだろう。
「おかえり、おかえり、空の彼方へ届けるわ」
 炎はある程度燃え広がると次第に収束していった。いろはは天へ昇る炎と煙に向けて葬送唄を歌い終わると、再び物置を目指して進んでいく。
 今やるべきなのは助けを求める音に応える事。
 物置には鍵もかかっていなかった。中にあるのは地下へと続く扉だけ。
 扉の方は引いただけではびくともしない。扉自体が重く、更には鍵もかかっているようだ。
「ここに、誰かいるの?」
 扉を叩きながら声をかけると内側から叩き返す音がした。囚われた人達はきっとここにいる。
 この屋敷には他にも猟兵達が来ているはず。彼らと協力すればここを開けられるはず。
 いろはは確信を得て再び中庭を進む事にした。彼女の歌は確かな道標となったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リズ・ルシーズ
連携、アドリブ歓迎だよ!

【SPD】

薔薇は気になるけど、まずは生存者確認かな

【ルシーズ】を使って、人海戦術で生存者を探していくよ。【迷彩】して、極力見つからないようにしながら進んでいくよ

ねえ、ここの主について何か知らないかな?

捕まってる人から【情報収集】だね、主の情報と、主の所への道筋を知らないか聞いて行くよ。怪我してる人がいたら【医術】で応急処置かな、本格的な治療は出来ないけどそこは終わってからだね

この人たちを主や怪物の方に連れて行くわけにはいけないし、ここで待っててもらおうかな

助け出した囚人は一箇所に集めて、ルシーズ達に護衛を任せてボクは先に進む事にしようかな


ルパート・ブラックスミス
【SPD】
攫われた人々の【救出活動】を優先。薔薇園を焼き払うのはその後だ。

【失せ物探し】【情報収集】で中庭、人々を囚えている部屋を探索。
発見した場合、鍵などは【怪力】任せに破壊する。

改造された人々は殲滅し敵も未だ外部に意識を向けていないなら人々の退路を確保し脱出させよう。後の探索を他の猟兵に任せて護衛してもいい。

その際はUC【錬成カミヤドリ】で鎧を複製し人々を抱えさせ移動する。
肉体的・精神的に動けない者がいるだろう。…薔薇の下の土を歩かせる気にもなれん。

お気に入りの人形とやらへの想いそのものを嗤う気はない。
だがそれは、人々の尊厳を踏み躙っていい理由にはならんぞ、外道が…!

【絡み・アドリブ歓迎】



●一人じゃない
 中庭にぽつんと佇む物置。そこに人々が囚われている可能性が高い。
 その情報を得たリズとルパートは早速そこで合流していた。
 物置の中はガランとしており、地下へと続く扉が見えるが……この扉には鍵がかけられているようだ。
「大丈夫? 壊せそう?」
「ああ、この程度なら問題はない」
 ルパートが力任せに扉を引くと、鍵ごと扉はこじ開けられた。
 その先からは強烈なすえた臭いが漂う。二人は警戒しながら扉の奥へと足を踏み入れていく。
 中は物置よりも広い地下室だ。ランタンがいくつも灯され、見たこともない器具が乱雑に置かれている。
 そしてその奥には粉々にされた死体が積み上げられており、側には10名ほどの生存者が身を寄せていた。
 生存者の年齢層はバラバラだったが若い女だけはいなかった。彼らの中には怪我人や精神的に錯乱している者もいるようだ。
 まずは彼らを安心させなければ。
「自分達は貴殿方を助けに来た者だ。安心して欲しい」
 ルパートの毅然とした態度で声をかけると、生存者達は顔を見合わせ喜びを顔に浮かべていく。
 彼らから聞きたい事もたくさんある。しかしここで話していては皆参ってしまうだろう。二人は協力して生存者達を地下室から物置へと運び出していく。
 次にリズは簡易複製体ルシーズを、ルパートは複製した鎧達を見張りとして立たせ、改めて生存者と向かい合った。
 幸い彼らの中に致命傷を負っている者はいない。精神的に疲弊している者も多いが、ある程度の話を聞くことなら出来そうだ。
「ヴァンパイアもボク達が倒すよ。でもそのために、みんなが知ってる事を教えて欲しいんだ」
 リズは怪我人へと手当を施しながら話を聞く姿勢を取った。手際の良い手当は生存者の心も癒やしていく。
 彼女の明るい雰囲気も精神的な支えになっていた。非道な行為を目の当たりにしてきた生存者にとって彼女の優しさはとてもありがたいものとなっている。
 リズが聞きたいのはヴァンパイアそのものの情報と、彼の潜む場所について。
 生存者もすっかり安心したのかぽつりぽつりと情報を伝えてくれた。

 ヴァンパイアの名前は『人形蒐集家』。少し前からこの屋敷に住みだして周囲の村を襲っていたらしい。
 彼はその名前が示す通りに少女の人形を愛好し、その「材料」を集めるために残虐な行為を繰り返している外道だ。
 普段は人形達と共に私室に篭り、人々を攫い改造する時のみ姿を現しているとの事。
 特にお気に入りの人形がおり、それを常に大事そうに抱えているようだ。
 そして……彼の私室への出入り口は温室に存在しているのが確認されている。

「教えてくれてありがとう……それで、みんなの事はどうしよう?」
「動けそうな者は自分が連れ出そうと思うが……全員連れていく事は難しいか……」
 生存者のうち半数は二人の話に正確に応えられる程しっかりしていたが、残りの半数は心の調子や体調が優れないようだ。
 彼らを出来るだけ屋敷内の情報から守ったとしても限度がある。ふとした刺激で暴れだしたり安静にする必要が出てくる可能性が高いのだ。
 なので今すぐに動かせない者はリズが護衛をつけ、残りの半数はルパートが屋敷の外へと連れ出すという方針を取る事になった。
「みんなの事はあとで必ずボクらが助けに来るからね。それまではルシーズ、頼んだよ」
 リズは再び簡易複製体達に命令を出すと、彼女達は物置内で生存者を守る見張りとして動き出し始めた。
 幸い怪物達も物置の戸を開けたりはしないようだ。ルシーズと共にここにいれば安心だろう。
「残りの者は鎧達に捕まっていてくれ。出来るだけ目を閉じて……大丈夫、道は自分が切り開く」
 ルパートも自らの複製である鎧達に生存者を抱えさせると、一気に庭を駆けていく。
 自ら先行し再び屋敷内へ潜入すれば数こそ減っているものの怪物達がまた集まりだす。
 鎧達に生存者を守らせると、ルパートは思い切り刃を振るって敵を蹴散らしていった。
 気がつけば屋敷の外まで出てくる事が出来た。外には林が広がっており、少し先に家屋が見える。
 屋敷自体が強力なヴァンパイアの根城のためか他の敵の気配もない。ルパートは念の為に警戒しながら林を進んでいく。
 家屋にも人の気配もなかった。恐らくここの住人もヴァンパイアに連れて行かれたのだろうが……しばらくの間生存者達を隠しておくなら支障はなさそうだ。
「全てが片付いたら皆を村まで送っていく。もうしばらくだけ辛抱して欲しい」
 ルパートの言葉に頷く生存者達。彼らの信頼に応えるためにも必ず敵を打ち倒さなければ。
 決意を新たにルパートは来た道を戻っていく。
 ヴァンパイアのお気に入りの人形とやらへの想いそのものを嗤う気はない。
 だがそれは、人々の尊厳を踏み躙っていい理由にはならない。
(外道が……!)
 彼の胸中には強い怒りが宿っている。それすらも糧にして先に進まなければ。

 しばらくして、物置の前にてリズとルパートは再び合流していた。
「それじゃあ……ヴァンパイアを倒しに行こう!」
「ああ、必ず奴を倒さなければ……!」
 顔を見合わせ進む二人。目指すは温室の奥、ヴァンパイアの私室だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
アドリブ連携大歓迎!
「確かに綺麗だけども…変異しきれてないのを適当に埋めたってのは頂けない!」
苛立ちを露にしながら呟いて、結っていた髪をほどいて、真の姿を解放してずけずけと薔薇の茂みの中に入っていくよ。
無意識の内に【鎧砕き】と【踏みつけ】を発動してるから、僕の歩いた所の薔薇は根本の辺りからぐっしゃぐしゃになってるかもね
「あぁもぅ、腹が立つ!」
そう苛立った様に呟いたら、UC:完全覚醒・藍薔薇吸血鬼を発動。
纏った藍薔薇の花弁の竜巻で周囲の薔薇が根刮ぎ持ってかれて、無惨な有様になったら、庭の薔薇を全部ズタズタにする気で歩き回るよ
僕は薔薇に専念するから、他の皆は解放とか宜しくねー☆



●花を散らす
 真っ赤な薔薇の咲き乱れる中庭を、インディゴは苛立てながら歩いていた。
「確かに綺麗だけども……変異しきれてないのを適当に埋めたってのは頂けない!」
 薔薇の下を見やればバラバラになった女達が見える。彼女達からは既に生気が感じられないが、それはインディゴにとっては些細な事。
 美しい薔薇達を、乱雑に管理している事が気に食わないのだ。
 後ろで結った髪を解きながら歩く彼の姿は徐々に変異していく。背中に二対の羽根が生え、藍色の髪を靡かせる今の姿はヴァンパイアの方が近いか。
 真の姿を解放したインディゴは更に中庭を進んでいく。無意識に足元には力が篭り、土も土の下のものも全てをぐちゃぐちゃにしていくようだ。
 棘が自らの身体に刺さっても支障はない。苛立ちの方がずっと強いから気にならない。
「あぁもぅ、腹が立つ!」
 呟きと共に彼の背の羽根が更に増えた。三対六翼の羽根を広げながら、インディゴは更に中庭を荒らしていく。
 彼の周りには藍薔薇花弁の旋風が舞っていた。一見すると中庭の赤い薔薇と相まって美しい光景だが、藍薔薇の方は全てを壊す嵐だ。
 『完全覚醒・藍薔薇吸血鬼』により完全にオブリビオンへと近づいた彼を止める者は周りに存在していない。
 ただひたすらに薔薇達を、土の下に埋まる者達を壊しながらインディゴは歩き回る。
 彼が通った道筋には赤と藍の花弁が散り、その下には人間だったものが散らばっていく。
 人だったものの破片が自らの身体に当たっても、藍の花弁がそれをすぐに弾いていく。今はもうインディゴ自身が嵐なのだ。
 ここにはヴァンパイアに囚われた人もいるそうだが、それはきっと他の猟兵が助けてくれるだろう。
 それなら僕は、ここを全て壊していくだけ。
 それが済んだのならば、こんな光景を作り上げた元凶も壊してしまおうか。
 それも終わったらちゃんとした薔薇が見に行きたいね。赤いのでもいいし、藍色のでもいい。
 だから今は、ここにある全てを無残にしていくだけ。
 インディゴは全ての薔薇を壊し切るまで中庭を歩き続けた。
 通った道筋に赤と藍を残しながら、薔薇の嵐が歩みを止める事はない。

成功 🔵​🔵​🔴​

小宮・あき
第1幕と同じくネフラさん(f04313)と行動。

今回は2人、相談をする必要もなく「破壊しましょう」と結論に至りました。
このようなものを、残してはいけない。
(POW:研究施設の破壊)

私達が破壊をするのは主に薔薇園ですね。
ホテルで薔薇園を管理する者として、薔薇の育成を舐めてるのかって気持ちもありますが
それ以上の冒涜的な行動に、腹立たしさが増すことでしょう。

ネフラさんの弔い行動を含め、その様子を隣で見ています。

私の行動は「警戒」です。
UC【愛雨霰】を視線とは別方向(後方に半円状)に浮かべます。
近づく敵にすぐ発砲出来るように。

助けられないのなら、せめて安らかに。
現聖職者の【祈り】で、冥福を祈ります。


ネフラ・ノーヴァ
引き続き団長殿(f03848)と。アドリブOK。 
「これは、ひどいものだな…。」
漏れ出る分には良い香りもこの密度では悪臭だ。やはりこれの創造者とは趣味が合わん。
破壊で合意。その前に、人薔薇の地中を確かめる。敵意は無さそうだが注意しよう。意識は残っていて会話はできるだろうか? せめて手向けにキスのひとつでもしよう。
ユーベルコード「葬送黒血」で自らの血を撒き、旅団から持ってきていたライターで着火する。
後はヴァンパイアの私室を他の猟兵と協力して探そう。



●せめて弔いを
 中庭へ出たあきとネフラは、土の下を見るとすぐに顔を見合わせ互いの意思を確認した。
 こんなものは、残しておいてはいけないと。
「……破壊しましょう」
 自身が管理するホテルにて大切に薔薇を育てているあきにとって、吸血鬼の作り上げたこの中庭は許せないもの。
 そもそも人々を捕らえてこのような姿にする事自体が許せない。冒涜的な行動に胸中の怒りは増していくばかりだ。
「ああ。これは、ひどいものだな……」
 ネフラにとってもこの薔薇園は悍ましいもの。薔薇の香りは好きだが、ここまでの密度だと悪臭と変わらない。
 そして土の下の惨状を見れば彼女もまた吸血鬼への怒りを募らせていく。彼とは全く趣味が合わないようだ。
 二人は本格的な破壊へと踏み出す前に、しゃがみこんで土の中を観察する事にした。
 バラバラにされた女達の顔に生気はない。怪物達と違って完全に死体と化してしまっているようだ。
 ネフラは手近な女の頭へと顔を近づけると、彼女に向かってそっと手向けのキスを施した。
 魂だけでも天へと昇れるように。
 その横であきも聖者として彼女達へと祈りを捧げる。
 助けられないのなら、せめて安らかに。
 二人は一通り弔いを終わらせると改めて中庭へと進んでいく。この狂った園を終わらせるために。

「弔いをくれてやろう」
 まずはネフラが自らの身体を切りつけ、身体に流れる血を中庭へと撒いていく。
 『葬送黒血』で撒かれた血は炎へと姿を変えて中庭を覆いだした。
 だが中庭はかなり広い。全てを周りきる前にネフラの血が尽きてしまうだろう。
 なので予めライターを用意してきている。二人は血の炎を導火線にして広範囲を焼き払う算段を取っていたのだ。
「ネフラさん、大丈夫ですか? 手当がいるならすぐに言って下さいね」
「団長殿も無理をせずにな。必要ならば休憩を取りつつ回ろう」
 あきもまたユーベルコードを展開しながら中庭を歩いていた。
 『愛雨霰』で生み出したマスケット銃を自らの後方に展開し、何か異変があればすぐに発砲出来るように構えている。
 吸血鬼が現れなくても怪物達はまだ屋敷の中にいる。他にも薔薇の下に何か潜んでいるかもしれない。
 二人は細心の注意を払いながら中庭を歩き続ける。

 薔薇の花が血の炎に覆われる度に、それにつられて怪物達も姿を現しだした。
 その度にあきがしっかりと迎撃しネフラの身を守る。
 それに応えるべくネフラも自らの血を撒き続け、気がつけば中庭の半分程に血の炎を灯す事が出来ていた。
 後ろを振り返れば屋敷へ続く扉が見える。怪物の気配も今はなさそうだ。
 このあたりで一度火をつけよう。二人は頷きあって屋敷へ入ると、火を付けたライターを中庭へと投げ入れた。
「これが終わったら……次は吸血鬼の所へ行かないといけませんね」
「温室から奴の根城に繋がっているそうだ。炎が消え次第そちらに向かおうか」
 舞い上がる炎を見つめながら、二人は次にすべき事を考えていた。
 ここまで露骨に暴れても吸血鬼が出てこない辺り、私室にあるものの方が余程大切なのだろう。
 何が彼をそこまでさせるのか。オブリビオンだからというのもあるが、相手のことが微塵も理解出来ない。
 だが相手が非道な行為を働いており、それが許せない事は確かだ。
 そして炎が被害者達の身体を燃やし、彼女達を天に導く事を祈る気持ちも強く感じている。
 二人は目を閉じて再び薔薇へと変えられた女達や怪物へと変えられた人達へと祈りを捧げる。
 この弔いが彼ら彼女らの慰めになりますように。
 次第に炎は収束していく。他の猟兵達が既に薔薇の破壊に着手していたのもあってか、殆ど薔薇は消え去っていた。
 ならば後は吸血鬼を倒すだけ。
 二人は再び顔を見合わせ温室へと向かっていく。天へと昇った人達の事を思いながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

空廼・柩
随分と、ぞんざいな仕事ぶりだ事で
これを美しいと呼べるだなんて
吸血鬼の美的感覚はどうなってるのか理解に苦しむ
…分かりたくもないけれど

俺も元は処刑人
だから…人に対して、手を下す事に躊躇はない
否、この場合は躊躇えばきついのは花になった人達だ
たとえ苦しむにしても苦痛は少ない方が良いだろ
…だから、一人一人
薔薇に成り損なった身へ、致死量の麻酔を打ち込んでいこう
こんな適当に土に埋められて辛かっただろうに
頑張ったね――もう少しの辛抱だよ
…我ながら空々しい言葉だと嫌になる
救済なんて言葉を使う気はないし、気にもなれないけれど
全てが終わる迄、目を逸らさず一部始終を見詰めていよう
それが俺達に出来る彼女等への償いだから



●皆穏やかに土に成れ
 時刻は少し遡り、柩は一足先に中庭へと訪れていた。
 彼は沢山の道具を抱えて中庭を進んでいる。
 一見美しい薔薇達でも、土の下の惨状は見過ごせるものではない。
 随分と、ぞんざいな仕事ぶりだ事で。
 これを美しいと呼べるだなんて、吸血鬼の美的感覚はどうなってるのか理解に苦しむ。
 ……そんなものは分かりたくもないけれど。
 庭を進むたびに背負った荷物――注射器と薬液が曇天の下でかちゃかちゃと音を響かせている。
 柩は適当な場所でしゃがみ込むと土の下をじっと見つめた。
 土の下には何人もの女達が埋められていた。彼女達から生気は感じられないが目視だけで確信してもいいものだろうか。
 相手の技術の詳細は分からないのだ。もしかしたら、彼女達にはまだ意識が残っているかもしれない。
 その可能性があるのなら、自分がやる事は一つ。
 せめて彼女達の苦痛を減らして眠らせてあげたい。
 柩は手にした注射器に青く光を灯す薬液を入れていき、目の前の女達へと打ち始めた。
 薬は『青き侵蝕』。本来は攻撃用の麻酔毒として扱うものだが今回は彼女達を眠らせるためにこれを選んだ。
 手際よく打たれる毒は彼女達の身体を巡り、静かにその生命を終わらせていく。
「頑張ったね――もう少しの辛抱だよ」
 青と黒の瞳を細めながら柩は女達へと声をかける。
 黒い手袋を嵌めた手が彼女達の瞳をそっと閉じていき、その様子は優しく眠りへと誘う先生のようだ。
 しかし柩の胸中は複雑だった。自らの発した言葉が我ながら空々しい言葉だと嫌になる。
 救済なんて言葉を使う気はないし、気にもなれないけれど。
 それでも柩は薔薇へと変えられた人達から目を逸らさなかった。
 俺も元は処刑人。だから……人に対して、手を下す事に躊躇はない。
 むしろ躊躇が彼女達を長く苦しめる。少しでも早く皆を休ませてあげたいのだ。
 柩は何度も薬液を入れ直し、注射器を交換しながら中庭を巡っていく。
 時間のかかる作業だが決して手は緩めない。一部始終を見つめなければ。
 それが俺達に出来る彼女等への償いだから。

 他の猟兵達が動き出した頃、柩も中庭を全て巡りきっていた。
 これで彼女達の身に何が起きようと、これ以上苦しみながら巻き込まれる事はないだろう。
 柩は改めて人々へと弔いの意思を示すと再び中庭へと入っていく。必ず吸血鬼を倒さねば。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロウ・タツガミ
連携、アドリブ歓迎

【POW】

今度は薔薇か、中庭のどこかから私室につながっていると予知にあったが、どこを調べるべきか

薔薇の育成といえば温室か、まずは温室を調べに行くとしよう。温室であやしい物がないか【情報収集】しつつ、薔薇の育成に使われるものがあれば念のために、サカホコ(大槌)で【怪力】による一撃で破壊しておくか

中庭に植えられる前の囚人が居たら、保護しておくか情報を持っている可能性もあるしな。一通り内部を壊し終われば、最後は【力を溜め】た【逆鱗】で温室ごと破壊させてもらう

これだけ壊しておけば悪用は出来まい



●瓦礫の先へ
「……今度は薔薇か」
 クロウは温室へと足を運んでいた。
 物置へは他の猟兵が向かっているのが見えていたし、薔薇に携わる場所なら私室にも繋がっているのではないか。
 そのように予測を立てて温室の中を探索しに来ていたのだ。
 ここの温室はどちらかというと大部屋に近く、大きな窓がいくつも備え付けられた離れのような雰囲気があった。
 窓から光が当たる部分には薔薇の鉢植えも置かれている。その下にも勿論女の身体の一部があった。
 それ以外は薔薇を手入れするための道具が殆どだ。何も知らずに訪れたのならばごく普通の光景に見えたかもしれない。
 だが猟兵であるクロウには確かに分かる。この道具もこの部屋も、どこかがおかしい。
 何かの気配を感じたマガホコが再び外套から顔を出し目を細めている。それを見たクロウもよりしっかりと中を探索する事に決めた。

 道具をよく観察すると、その全てに血が付着していた痕跡が見て取れる。
 どのように人々を変異させているのか分からないが……そのためにこの道具を用いているのではないだろうか。
 ハサミやスコップをどのように使えば血が付着するのか。考えていると気分が悪くなっていく。
 ならばこんなものもこの施設も壊してしまえ。
 クロウはサカホコを大槌の形へと変えさせると、道具へ向かって思い切り振りかぶった。
 大きな音を立てて壊れる道具達。それに合わせてどこかから強い殺気も感じ取れたがそれが迫る気配はない。
 クロウは神経を研ぎ澄ませて殺気を辿っていく。サカホコを握る手にどんどん力が籠もっていく。
 殺気は部屋の隅から感じ取れた。よく観察するとそこだけが妙に綺麗である。
 更に近づいて床を叩くと、下に空間が広がっているような音が返ってきた。
 吸血鬼は恐らくここに。
 しかし未だに相手がやってくる気配はない。それならばこの施設は最後まで好きにさせてもらおう。
「……其れは、只人の怒りなり」
 クロウは再び大槌を振るい始めた。今度は道具だけでなく、鉢植えや温室も壊すために腕を振るうのだ。
 彼の『逆鱗』はそれらを容易く壊していく。ここは吸血鬼が作り上げた偽物の楽園。人々の苦しみで成り立つ悪しき場所。
 その全てに怒りをぶつけるように大槌は振るわれていく。サカホコもクロウの怒りに応えてくれている。
 気がつけば温室のあった場所は瓦礫の山になっていた。最後に吸血鬼の私室へと繋がる部分だけ瓦礫をどけたのならば準備は万全だ。
 いよいよ決戦の時が迫っている。
 クロウも彼に付き添う二匹の龍も、それを確かに感じ取っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『人形蒐集家』

POW   :    君も操ってあげようか?
【少女人形の攻撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【からくり糸】で繋ぐ。
SPD   :    僕の可愛いお人形
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【少女人形】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    ここは僕の人形部屋だよ?
【あたりに張ったからくり糸に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。

イラスト:ヤマモハンペン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴェルベット・ガーディアナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 温室の地下には細く暗い地下道があった。
 その奥には頑丈そうな扉が見えたが、猟兵達が力を合わせれば簡単に開ける事が出来た。
 扉の先には大きな地下室。ランタンがぼんやりと室内を照らし、部屋中に少女人形が飾られている。
 そこにヴァンパイア――『人形蒐集家』は待ち構えていた。
「君達が僕らの幸せを壊しに来た不届き者か。召使いと薔薇は作り直しになるけれど……君達で作り直せば問題ないさ」
 人形蒐集家は昏い笑みを浮かべながら猟兵達を見やる。
 彼の手元には美しい少女の人形があった。これが彼の一番のお気に入りなのだろう。
「愛しい君、邪魔者はすぐに追い出すからね。大丈夫、僕達はこれからもずっと幸せだよ」
 人形に話しかける人形蒐集家の周りを、更に別の人形達が舞い始めた。
 宙を舞う人形達も何かしらの目的で使われるものなのだろう。戦う際には気をつけなければならない。
 ここは相手のテリトリー。その事も意識しながら戦う必要がありそうだ。
 何にせよこの悪鬼を打ち倒さなければ。
 犠牲になった人のため、生存者のため、或いは猟兵自身のために。
 最後の戦いの幕が上がる。
エレニア・ファンタージェン
「幸せなのね?それは何より。その幸せを壊しに来たわ」
人の不幸の上に成り立つ幸せなんてエリィが許さない

UCで幽鬼を召喚
エリィはギロチンの刃に炎の属性攻撃を纏わせて
からくり糸なんて燃やして断ち切って敵の首を狙うわ
…というのは無論フェイント
あえてからくり糸に触れに行って予測を撹乱しながら、幽鬼に攻撃を任せます
…もちろん、避けられなければ殺す位のつもりでかかるけど
撹乱ついでに、辺りの糸とか人形とかに対して破壊工作
敵のテリトリーだもの、怪しいものや危険なものは壊しておきたいわ

ある程度糸の場所を把握したら残りの糸は第六感で見切り
幽鬼と連携して攻撃を
「死んで詫びなさい。許さないから」
呪詛を込めて傷口をえぐる


ルパート・ブラックスミス
貴様のその人形への愛執は否定せん。だが、なればこそその為に積み重ねてきた業も否定させん。
覚悟せよ。その愛と業の、報いの時だ。

真の姿『燃える鉛が溢れ出る黒鎧』及びUC【燃ゆる貴き血鉛】展開。各装備に炎を纏わせる。
短剣を【投擲】し、周囲の人形と糸を焼き切りながら大剣で斬りかかる。

迎撃が間に合わない攻撃は大剣で【武器受け】。必要なら他の猟兵を【かばう】ことも意識しよう。
糸を絡めてくるなら逆にそれに炎を這わせ【カウンター】。
たとえ動きを封じられようとも、自分の意思で軌道を動かせる短剣の【誘導弾】がある。攻撃の手は休めん。

生存者たちのこともある。早急に、徹底的に。ここで焼き尽くす。

【共闘・アドリブ歓迎】



●二つの刃
 いよいよ諸悪の根源と対峙した猟兵達。彼らが思う事は様々だった。

「幸せなのね?それは何より。その幸せを壊しに来たわ」
 エレニアは言葉に強い怒りを籠めて人形蒐集家を睨む。
 人の不幸の上に成り立つ幸せなんてエリィが許さない。必ずここで悲劇を終わらせなければ。
「貴様のその人形への愛執は否定せん。だが、なればこそその為に積み重ねてきた業も否定させん」
 鎧の内から青い炎を揺らめかせながらルパートも武器を構える。
 生存者たちのこともある。早急に、徹底的に。ここで吸血鬼を焼き尽くす。そのためにここまで来たのだ。
「僕等の幸せは壊させない。それに業なんて積み重ねていないよ? 皆も僕等の幸せの糧になってくれただけだろう?」
 さも当然のように猟兵達へと言葉を返す吸血鬼。しかしその身体には既に殺気を纏わせている。
 相手が何か仕掛けるつもりならそれを潰すまで。エレニアとルパートは顔を見合わせ、一気に敵へ向かって駆け出した。

「還る場所なき者たちに、せめてあの日の夢の続きを」
 まずはエレニアが動いた。仕込み杖『Auryn』をギロチンの刃へと変形させつつ召喚の詠唱を唱えれば、彼女の後ろに幽鬼が伴う。
 『死者たちの残夢』で呼び出されるのは戦場に散った者達の怨霊。ここで死んでいった人達とは別物だが、彼らもまた強い思いを抱えた者達だ。吸血鬼と共に戦うには相応しい仲間だろう。
 刃に炎を纏わせ進んでいけば、武器に触れた箇所が燃え始める。
 目を凝らして確認するとそこにはからくり糸が仕掛けられているようだ。
「気をつけて、糸はきっと部屋中に張り巡らされているわ」
「わざわざ待ち構えていたからな。仕掛けは十全といったところか」
 ルパートもまた炎を滾らせ警戒の姿勢を取る。全ての糸を燃やすのは難しいかもしれないが、炎で燃やせる相手ならば相性は悪くない。
「我が血はもはや栄光なく、されど未だ闇に消えず……!」
 詠唱と共にルパートの身体を青い炎が覆っていく。鎧の内からどんどん燃える鉛が溢れだし、それが彼の武装にも伝われば更に炎を広げていく。
 これが彼の真の姿、『燃ゆる貴き血鉛』も相まって滾る炎の勢いは決して緩まらない。
 赤と青の炎は共に前へ前へと進んでいき、一瞬で吸血鬼の元まで辿り着く。
 エレニアとルパートは同時に刃を振るい吸血鬼の首を狙うが……。
「僕を守るのは糸だけではないよ」
 二人の眼前で何かが爆ぜた。舞い散る布や破片から人形が爆発したのだろうという事は推測出来る。吸血鬼は周りに浮かべた人形に爆破の仕掛けを施していたのだ。
 まともに直撃したのなら二人の頭も吹き飛んだだろう。二人の死を確認すべく爆煙へと目を凝らした吸血鬼だが、何かの気配を感じてすぐに後退の姿勢を取った。
 その瞬間、吸血鬼の身体を斬撃が襲う。影の刃と炎の刃が降りかかり、吸血鬼の胸元を思い切り切り裂いた!
「糸を警戒して人形も警戒しない訳にはいかない。猟兵を、甘く見るな」
 炎の刃の主はルパートだ。彼は人形が爆破する瞬間に大剣を眼前に構え盾としていた。そしてそのまま前進し吸血鬼を切り裂いたのだ。
「煙に巻かれていたのはあなたのようね」
 影の刃の主はエレニアの従える幽鬼だった。彼女も敵の動きを警戒し、咄嗟に幽鬼と自身の位置を入れ替え攻撃を躱していたという訳だ。
 しかし吸血鬼も一方的にやられはしない。二人の顔を忌々しげに確認すると、今度は何かを手繰るように腕を動かしていく。
 次の瞬間エレニアとルパートの身体が浮いた。よく見ると二人の身体には糸が絡みついているようだ。先程爆ぜた人形には更に糸が仕込んであったのか。
「僕から離れろォ!」
 吸血鬼の怒号と共に更に身体を浮かされる二人だが、次の瞬間には拘束を解除し再び敵へと向かっていく。
 エレニアの糸はルパートの短剣が、ルパートの糸はエレニアのギロチンが切り裂いて、互いに協力しながら拘束を解いていたのだ。
 二人が咄嗟にここまで連携するとは思っていなかった吸血鬼。再び少女人形を盾としようとするが……猟兵達の方が動きは素早い。
「死んで詫びなさい。許さないから」
「覚悟せよ。その愛と業の、報いの時だ」
 エレニアと幽鬼の呪詛を帯びた刃が、ルパートの炎に包まれた刃が再び吸血鬼へと迫る!
 勢いのまま振るわれる二つの刃は確実に敵の身体を裂き、その呪いと炎を刻みつけていく。
 なんとか二人から逃れる吸血鬼だが、切り裂かれた箇所の損傷は大きい。
 戦いはまだまだ続くが、流れは猟兵達が掴みつつある。
 エレニアとルパートもそれを感じ、再び武器を構えて吸血鬼へと向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
連携アドリブ大歓迎と言いつつソロ推奨。

周囲に【殺気】を漏らしながら愛用の黒剣を人形蒐集家に向けて「斬刑に処す…拒否権はない」って低い声で告げるよ。
薔薇の扱いでキレてるから仕方無いね…
【POW】
「ちょっと暴れる。近寄らないで」
念の為に周囲の猟兵に一言断りを入れてから、UC:暴走覚醒・藍薔薇纏ウ吸血鬼を使用。三対六翼のヴァンパイアに変貌して襲いかかるよ。
黒剣を【怪力】で振り回したり、【捨て身の一撃】で【吹き飛ばし】たり…力任せの攻撃だね。
からくり糸で繋がれたら、その糸を引っ張って【踏みつけ】で動きを止めてから【吸血】しつつ【生命力を吸収】だ!
「…不味っ」吐き捨てる様に呟くけど攻撃は止めないからね?



●青、青、青
 猟兵達と戦う吸血鬼の背筋に、突如大きな悪寒が走る。
 何かがこの部屋へと入ってきた。他の猟兵とは違う種類の殺気を感じ取り、身体が一瞬大きく震える。
 殺気の主はインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)。
 彼の抱える殺意は義憤からでも戦意からでもない。その殺意からは……とても冷たいものが感じ取れるのだ。
「斬刑に処す……拒否権はない」
 インディゴは黒剣『Vergessen』を人形蒐集家に向けて低い声で言い放ったかと思うと、その身を真の姿へと変えていく。
 仲間まで巻き込むつもりはないから、忠告だけはしっかりと。
「ちょっと暴れる。近寄らないで」
 纏めた髪を解き、背から三対の六翼を生やしたその姿はまさにヴァンパイアそのものだ。
「君は僕と似たような存在ではないのかい?」
「煩い……薔薇をあんな風に扱った時点で、君と僕とは決定的に違うんだ」
 人形蒐集家の言葉を一蹴し飛び上がるインディゴ。彼の周りには藍薔薇が舞い、部屋の中を鮮やかな青で染めていく。
「壊れてしまえ……何もかも!」
 『暴走覚醒・藍薔薇纏ウ吸血鬼』。その力は理性を犠牲に凄まじい力を与えてくれる。
 インディゴは力任せに黒剣を振るい、吸血鬼の身体を轢き潰そうと攻撃を加えていく。
 一撃ずつが嵐のように部屋を揺らし壊していく。その度に人形達もどんどん潰れていっていた。
「僕の大切な人形達に手を出すな!」
 人形蒐集家はインディゴを止めようと爆破する少女人形をなんとか投げ込むが、今の彼にとってその程度の爆発は些細なもの。
 身体を糸で繋がれたとしても構わない。むしろ却って好都合だ。
 インディゴは叫びと共に糸を引き、その勢いのまま人形蒐集家を引き寄せていく。
 糸が指に食い込んで血が流れるがそんな事はどうでもいい。今はあの憎き相手を殺したい。
 人形蒐集家を自分の目の前まで引きずる事が出来たなら、今度は全力で相手の事を踏みつけて動きを止める。
 そして……インディゴは人形蒐集家の腹部にある傷口へ向けて、思い切り牙を突き立てた。
「ア、がああぁ、あぁあああぁ!!」
 悲痛な叫びが部屋を満たすがそれすらも鬱陶しい。流れるどす黒い血を飲み込めば、不快な感触だけが喉に残る。
「……不味っ」
 インディゴはそう一言吐き捨てると、飽きた玩具を捨てるように人形蒐集家の身体を蹴飛ばした。
 怒りと怯えの両方を瞳に宿しインディゴを睨む人形蒐集家。幸か不幸か彼の戦意は衰えていないようだ。
 それなら相応の報いを受けさせないと。
 まだまだ人形蒐集家を蹂躙すべく藍薔薇を更に纏わせていくインディゴの瞳には、冷たい光が宿っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
引き続きネフラさん(f04313)と参加。
今回は純戦闘ですね。頑張っていきましょう。

前衛:ネフラさん
後衛:私

前衛を歩くネフラさんの後方を、縦列になって歩く。
UC【愛雨霰】でマスケット銃を上空に浮かせ、
広範囲の【範囲攻撃】で敵を沈めます。

ネフラさんが歩きやすいよう、ボスまでの道を切り開きましょう。
マスケット銃を5本×5本で簡易の盾に。
【盾受け】の要領で使ったり、人形の襲撃を押さえつけたり。

周囲を【聞き耳】【暗視】で注意しつつ進みます。
後方からの襲撃にも注意して。



実は、この世界に来たのは初めてでした。
ネフラさん、誘ってくれてありがとう。
良い経験が積めました。


ネフラ・ノーヴァ
引き続き団長殿(f03848)と同行。アドリブOK。真の姿は血の瞳、 血流を視認できる。
「なるほど人形は美しいな。だが貴様の趣味は酷いものだったぞ。」
罵りながら前衛へ、左手の刺剣で牽制を仕掛ける。守りの型で舞うようにドレスを翻し、挑発して動く。
「フフ、貴様も庭の薔薇のように花を咲かせるがいい。」
背後から団長殿の射撃が仕掛けられたら一転攻勢、UC「染血散花」で刺突連撃。奴の血で花を咲かせてやろう。

ヴァンパイアを撃退したなら、残った人形に罪は無かろうがすべて破壊しよう。万が一夜な夜な動かれても困 りものだ。
「此度の同行感謝だ、団長殿。」


桜屋敷・いろは
貴方は、とってもドールを愛しているのね
でも、歪んだ愛は何も生まない
貴方は彼女を愛しているかもしれないけれど
彼女は貴方を愛していないわ
わたしには、彼女の、彼女たちの気持ちが痛いほどわかるの

だから、サヨナラです

燃える彼を見遣りながら、そのドールに触れて
貴女はどうしたい?
……そう、貴女は正しく、彼を愛していたのね
じゃあ貴女もおくってあげる
愛されてこその人形だものね
空の彼方でシアワセになってね
彼を愛してないだなんて、思い違いをしてごめんなさい

髪にさした薔薇をそっと取って
空へ上る彼らへ手向けましょう


空廼・柩
――もはや言葉は不要だろう?
惨たらしい死こそ、あんたにお似合いだ

醜悪な程に歪な狼男…それが俺の真の姿
灰色の毛皮に【霄化】を用いて青を纏い、敵に突撃
正気や寿命が削られようと構うものか
ただ目的だけは失われぬよう、咆哮をあげて奴の四肢を引き千切る勢いで
永遠の責苦に苛まれて死に果てる
…あんたにはそれがお似合いだろう?

操られるだなんて悪い冗談
宙に浮く人形からの攻撃は第六感を用いて回避に努める
…後、人形を掴んで攻撃を肩代わりさせるのは難しいかな?
からくり糸に繋がれようと引き寄せて壊す位の心意気で
糸が食い込もうが、その程度は激痛耐性で耐えられる
っは、奴の歪む顔が見られれば良い気分だ
あんたのその顔が見たかった



●全て花と灰になれ
 ここまでの戦闘で吸血鬼は着実に追い込まれてきている。
 雌雄を決するべく、猟兵は更に悪鬼の部屋へと踏み込んでいった。

「なるほど、人形は美しいな。だが貴様の趣味は酷いものだったぞ」
 先陣を切ったのはネフラだ。先程まで緑色だった彼女の瞳は血の色に染まり、真の姿としての妖しい輝きを放っている。
 左手に血棘の刺剣を携えまずは人形蒐集家の元へと向かう。彼女の言葉に怒りを感じた吸血鬼は顔に露骨な不快の色を浮かべていた。
「僕の薔薇を馬鹿にしているのか、あんなにも一生懸命咲かせたのに!」
 吸血鬼はネフラの進路を阻害しようと、手近な少女人形を操り彼女の眼前で爆破させようとした。
 しかし銃声が鳴り響き、人形達はその場で爆ぜて地に落ちる。戸惑う吸血鬼の頬に銃弾が掠った。一体何が起きたのか。
 狙撃したのはあきだった。彼女がネフラの後方に付いて人形達を撃ち落としたのだ。
 あきの側には既に何本ものマスケット銃が舞い、二人を守る盾と剣と化している。
 前衛と後衛、進む者と道を開く者に役割を分担している二人に隙はない。
「ネフラさん、後ろは任せて下さい。頑張っていきましょう」
「助かる、団長殿。切り込むのは任せて欲しい」
 吸血鬼が糸や人形を操るなら片っ端から撃ち落とせばいい。あきは次々にマスケット銃を発砲し、時に銃を盾として道を切り開いていく。
「私、愛されていますから」
 銃を手繰るは『愛雨霰』。愛する人の名を刻んだ銃が、歪んだ愛を掲げる者を穿つ武器となる。
 後方にもきちんと気を配っていけば不意をつかれる心配もない。二人は確実に敵の前へと歩を進めていく。
「猟兵め、近付くな!」
 なんとか撃ち落とされなかった人形を手繰り寄せ、自らの盾にしようとする吸血鬼。だがその人形もネフラの刺剣に敢えなく切り払われた。
「どれだけ人形を集めようと、このように使い捨てるのが貴様の本性なのだな」
 ネフラは更にドレスを翻し、適度に距離を保ちつつ刺剣で牽制を始めていく。
 彼女の言葉は吸血鬼の冷静さを奪っていた。彼は胸元に抱いているもの以外の全ての人形を用いて猟兵達を迎撃しようとするが、その乱雑な攻撃はネフラとあきを傷つける事はない。
「その子以外は使い潰していくんですよね……そんなの、間違っていると思います」
 他人から愛される事を知っているあきからすれば、吸血鬼の行為はあまりに酷く独善的だろう。
 自分達の方へと次々に寄ってくる人形を撃ち落としながらも内心はどこか複雑だ。
 しかし武器を手繰る手は決して緩めず、あきもネフラもしっかりと敵を捉え続けていた。

 このままでは危険。そう判断した吸血鬼は二人から距離を置き、なんとか態勢を立て直そうとしたが……炎と斬撃に行く手を阻まれそれは叶わなかった。
 あきとネフラとは別の方向から、いろはと柩が吸血鬼へと狙いを定めていたのだ。
 いろはは少し距離を置きながら術の構えを取り、柩は既に吸血鬼へと肉薄している。
「貴方は、とってもドールを愛しているのね」
 吸血鬼は傷だらけになりつつも最愛の人形だけは手放していない。その様子をいろはの藍色の瞳がじっと見つめていた。
 しかし歪んだ愛は何も生まない。貴方は彼女を愛しているかもしれないけれど、彼女は貴方を愛していない。
 同じ人形であるいろはには、彼女の、彼女たちの気持ちが痛いほど分かっていた。
「だから、サヨナラです」
 いろはは手元に魔力を集中させ、次々に炎を放っていく。浄化の炎は吸血鬼の周りを灯し糸も人形達も燃やしていった。
「僕がこいつらをどうするかは勝手だろう! でも君達に壊されるのは納得いかない!!」
 自分も炎に包まれながら怒りを顕にする吸血鬼。それでもお気に入りの人形だけは手放さない様にいろはの胸中に一つの疑問が生まれる。
 あのドールは、本当はどうしたいのかしら。
 しかしその答えを探す余裕はない。今は戦いに集中する時だ。
「……青く、青く」
 吸血鬼へと迫っていた柩もその身を真の姿へと変え武器として振るい出していた。
 彼の真の姿は醜悪な程に歪な狼男。灰色の毛並みは『霄化』の言葉と共に空色へと変わっていき、その度に正気と命が削れていく。
 だけど今はそんな事は構うものか。目の前の悪鬼には永遠の責苦に苛まれて死に果てる、惨たらしい死こそお似合いだ。
 ――もはや言葉は不要だろう?
 唸り声と共に爪を振るえば吸血鬼の身体は容易く切り裂かれる。彼の顔は恐怖に染まっているが、まだまだ諦めるつもりもないようだ。
「化物め、消え去れ!」
 吸血鬼はなんとか周りの糸を手繰り寄せ、柩へ向けて糸も人形も滅茶苦茶に投げ込み始めた。
 糸が四肢へと食い込むが強引に引き千切ってしまえば問題ない。腕や脚に大きな切り傷が残ってしまうがそのくらいは耐えられる。
 このまま操られるだなんて、そちらの方が悪い冗談。
 人形は投げ返してしまえばちょっとした仕返しに。自分が傷つけてきた相手に復讐される気分はどうだろう。爆発が吸血鬼の身体を傷つけていく。
 吸血鬼に抵抗の意思はあれど、余裕はすっかりなくなっている。
 本当に、この状況はあんたにはお似合いだ。柩は狂気の最中にありつつもどこか冷ややかな目で吸血鬼を見つめていた。

 そろそろ戦いを終わらせる時。この場にいる猟兵の皆がそう判断しはじめた。
 ならば最後は皆で力を合わせて。
「それでは……一気に撃ちますね!」
 あきは全てのマスケット銃を頭上へと集中させ、その銃口を吸血鬼へと向けていく。
 どこへ逃げようとこの銃は必ず敵を穿つ。愛する人の名を冠する武器だから。
「私……愛されていますから!」
 『愛雨霰』の掛け声と共に一斉に銃弾が放たれた。その全ては吸血鬼の身体へ当たり、その命を削っていく。
 それに合わせてネフラも踏み込み、全力で刺突による連撃を繰り出し始めた。
「フフ、貴様も庭の薔薇のように花を咲かせるがいい」
 吸血鬼の血が自らを汚すがそれすらも糧にして。『染血散花』はネフラも吸血鬼も真っ赤に染め上げていく。
「さよならさよなら、愛しきみよ」
 いろはも『其れは祈りにも似た』詠唱を唱え、徐々に浄化の炎を大きく強く広げだした。
 炎は吸血鬼だけでなく人形達も燃やし、尊厳を潰された人達を優しく灰へと変えていく。
 血と灰に塗れだした吸血鬼の身体を、最後に青に染まった腕が潰し始めた。
 柩の獣と化した腕が強く、強く、確実に吸血鬼を潰していくのだ。

「あぁ、僕が、僕達が、こんな、こんな……」
 彼の身体は既に殆どが肉塊へと化していた。わずかに残った顔が苦痛の色に染まり、焦点の合わない目が猟兵達を見つめていた。
 でもきっと、彼が苦しめてきた人達はもっと悍ましい目に遭っていたのだ。
「っは、奴の歪む顔が見られれば良い気分だ。あんたのその顔が見たかった」
 吐き捨てるような言葉と共に、柩が大きく腕を振るう。
 振り下ろされた腕が悪鬼の顔を潰し、最後には灰となって消えていった。

 こうして、人々を苦しめていた吸血鬼は骸の海へ落ちていく。
 残されたのは彼のお気に入りの少女人形だけだ。
 いろはは彼女へとそっと触れ、本当はどう思っているのかを問うてみた。
「貴女はどうしたい?」
 その答えが分かるのは同じ人形であるいろはだけ。そしてそれに応えるべく、その人形も炎で包んだ。
 空の彼方でシアワセになってね。彼を愛してないだなんて、思い違いをしてごめんなさい。
 髪に差した薔薇を手向けとして、いろはは吸血鬼と人形が消え去る様を見つめていた。


 オブリビオン討伐が終わったのならばあとは後始末だけだ。
 猟兵達は手分けをしてそれぞれの作業へと取り組んでいく。
 化物と化した人達を弔う者、中庭の後始末にまわる者、人形達を破壊する者、生存者を村へと送り返す者。
 あるいは別の行動をとっていた者もいるかもしれない。
 誰もが疲労を感じていたが、悪しき吸血鬼を倒して生存者を助けた事への充足感は感じていた。

「此度の同行感謝だ、団長殿」
「実は、この世界に来たのは初めてでした。ネフラさん、誘ってくれてありがとう。良い経験が積めました」
 ネフラとあきは互いを労い、感謝の言葉を述べあっていた。
 こんな風に話せるのも生きて帰る事が出来るからこそ。

 ダークセイヴァーの空は暗いが、今だけは生き残った者と死んでいった者の両方を包む優しさを湛えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月16日
宿敵 『人形蒐集家』 を撃破!


挿絵イラスト