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テレビウム・ロック!~鍵穴はいずこ?~

#キマイラフューチャー #テレビウム・ロック! #テレビウム #システム・フラワーズ

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●キマイラフューチャー
「ふ~んん、ふふ~ん~ふ~ん~」
 キマイラフューチャーを走る無数の道のひとつ、どこにでもいそうなオレンジとレモンイエローのテレビウムが、流行の歌を画面から発しながら足取り軽く歩いていた。
 この道の少し先をコンコンすると出てくるドリンクが、彼のお気に入りだ。甘くしゅっとして温かい。これを発見してからは、大抵この道を通ることにしている。
「ドリンク、コンコーン」
 叩いた拍子にころりと出てきたドリンクをキャッチし、いそいそと開けて飲み始める。
 近くに暖房施設があるのか、この辺りはいつもすこし温度が高い。そういった点でも、お気に入りスポットのひとつだ。
 しばらくまったりしたら、新着動画でも探そうか――そう考えていた時、突然の異変が彼を襲った。
「あれっ、あ、え、なに、なにこれ!?」
 唐突に彼の画面に映る『鍵』のような画像。
 こんな画像、彼は知らない。慌てて変えようとしても、変えることが出来ない。
 そして、彼に降りかかる苦難はこれだけに留まらない。
 突然の『鍵』におろおろしている間に、彼の周りを囲むように並んだ、丸っこい桃色のもふもふとしたなにか。
「え、あれって……確かこの前動画で……あ!」
 彼がそれの正体に思い至るのと、それが動きはじめるのは同時だった。
「怪人だあああああ!!!!」
 もっふもっふもっふもっふもっふもっふもっふ。

●グリモアベース
「皆、集まって。キマイラフューチャーで、緊急事態が発生しているわ」
 グリモアベースにて、コルネリア・ツィヌア(人間の竜騎士・f00948)が、少し慌てた様子で猟兵たちに呼びかけた。
「概要としては、テレビウム達の顔……ええと、画面? 顔画面に突然鍵のような映像が表示されて、自分の意志では変えられなくなるの。そしてその鍵が浮かんだテレビウムを狙って、多数のオブリビオンが襲撃をかけてくるわ」
 キマイラフューチャーでは同様の事件が既に多数発生しており、コルネリアの予知した事件も、それらのうちのひとつである。
 鍵が浮かぶのはテレビウム限定。猟兵・一般人の区別は無く、しかし全てのテレビウムに発生しているわけでもない。鍵が浮かぶテレビウムに、目立った共通点もない。
 襲撃してくるオブリビオンも、キマイラフューチャーのオブリビオンという以外に共通するところはない。
「わからないことの方が多いけれど、とにかくまず鍵の浮かんだテレビウムを保護して、オブリビオンの殲滅をお願い。どこからともなくわらわら出てくるようだから」

 予知できた範囲では、出てくるオブリビオンは大体二種類。
 丸っこいフォルムが特徴的な、アキクサインコ色のオブリビオン。熱風、分身、移動不可無敵状態の能力を持つ。
 働き蜂がひとの形を取ったようなスタイルの戦闘員型オブリビオン。槍攻撃、ジャンプ、瀕死状態において増援の召喚を行う。

「どちらもとにかく物量で押してくるから、ガッツで頑張って。そんなものに囲まれる、いたいけなテレビウムの為にも」
 今からテレポートすれば、完全に逃げ場を失う前に現地に到着出来る。
 健闘を祈ります、と、コルネリアは締めくくった。


越行通
 こんにちは。越行通(えつぎょう・とおる)です。
 今回は、テレビウムと鍵にまつわるシナリオとなります。

 大筋はOPにもあります通り、集団戦→集団戦→ボス戦という流れになります。
 敵は鍵の浮かんだテレビウムを執拗に追いかけてきます。
 また、詳細は第二章以降でも明記しますが、『鍵』は一定の方向を指し示しているため、基本はそちらへと向かいながら、群れで来るオブリビオンをなぎ倒すことになります。
 テレビウムは大体小学校高学年くらいの年の一般人です。最近のブームは、ヒーローVS怪人の動画。

 情報は以上です。どうか、自分らしい、自由なプレイングをかけてみて下さい。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『アキクサさま』

POW   :    ぽかぽかの風
【召喚したヒーターの熱風】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    どっちが本物?
【もう一羽のアキクサさま】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    究極の平和主義
全身を【スーパーもふもふモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。

イラスト:橡こりす

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

二條・心春
テレビウムを狙った襲撃事件、ですか。何か大きな事件の前触れでなければ良いけど…。

敵が多いですね…ここは【召喚:蛇竜】でワームさんを召喚して、一緒に戦ってもらいます。ワームさん、尻尾で薙ぎ払っちゃって!
無敵状態になっても、毒の息があります。彼らは動けないようですから、体力を削っていけますね。ふふ、やっぱりワームさんは頼りになります。さあ、尻尾で叩かれるか、毒で倒れるか…どちらが良いですか?
私自身は拳銃でワームさんの「援護射撃」したり、テレビウムさんの護衛をします。

余裕があれば、テレビウムさんの鍵を触らせてもらえるようにお願いして、触りながら「第六感」で事件の手掛かりがないか探ってみましょう。


アーサー・ツヴァイク
※共闘アドリブ大歓迎

か弱き少年を付け狙う外道な行為…断゛じ゛て゛許゛さ゛ん゛!゛

というわけで今日はもふもふも容赦なく【レイシューター・フルバースト】でまとめてかき消す。ヒーターの熱風? こちとら太陽の戦士だ、ヒーター位【火炎耐性】で耐えきれるぜ!!

第一陣を凌いだら、テレビウムの少年を【救助活動】で保護。大型バイクのライドランに一緒に【騎乗】するぜ。小さいからテレビウム君は前に乗ろうね。
そうしたら、【フルスピード・スカイドライブ】を発動。マッハは出さないが、それなりのスピードで空に飛び立つぜ!
まあ、鳥軍団も飛んで追いかけてくるだろうから、レイシューターでバンバン撃ち落としてくぜ!



「テレビウムを狙った襲撃事件、ですか。何か大きな事件の前触れでなければ良いけど……」
 色とりどりのネオンに照らされるキマイラフューチャーの一角。
 そこかしこの隙間からアキクサインコ色のオブリビオン、『アキクサさま』が溢れ出て来る光景を前に、二條・心春(弱さを強さに・f11004)は眉をひそめた。
「敵が多いですね……ワームさん、力を貸して、私と一緒に、戦ってほしいの」
 心春の呼びかけに応え、蛇のような体と翼を持つ竜の霊体が具現化され、彼女より先行するようにして群れへと突き進む。
「ワームさん、尻尾で薙ぎ払っちゃって!」
 そう頼むと共に、自身も拳銃を手にして、囲まれようとしているテレビウムを目指し、果敢に走り出した。

「なにこれ、やだよ、なにこれー!」
 画面が『鍵』に固定された状態で、テレビウムはただ混乱し、怯えていた。
 思い通りにならない自身の顔と、動画で見たような怪人の群れが押し寄せるという異常事態に、頭を抱えて逃げ惑う。
 泣き顔すら浮かべられずにいた彼の目前を、何か大きなものが、音を立てて通り過ぎていった。
「うわあああああ!!!」
 思わず悲鳴をあげ、目をぎゅっと瞑る。
「――助けに来ました! もう大丈夫ですよ。ワームさんは頼りになりますから!」
 その言葉にそうっと目を開けると、怪人たちはまとめて遠方になぎ倒されており、優しそうな目をしたお姉さんが、自分を守るようにして立っていた。
 そして、あの大きなものは、このお姉さんの味方だったのだと、ぼんやり理解した。

「う……うえ、うえ……僕、顔、変で。怪人、いっぱいきて」
「……うん。怖かったですね。突然こんな目に遭って。よくわからないことばかりで」
 小さく震えるテレビウムに心春が優しく語りかけたとき、オブリビオンたちの真っ只中に閃光が降り立った。
「か弱き少年を付け狙う外道な行為……断゛じ゛て゛許゛さ゛ん゛!゛」
 地を這うが如く低く、マグマを秘めたように熱いその叫びと共に、真っ赤な人影の構えた武器が、目も眩むほどの光を吐いた。
「【Select…BURST ACTION!】フルパワーで……ぶちかますぜ!!」
 一切の手加減なくもふもふオブリビオンたちを焼き尽くす、その輝きの名は――
「……ドーンブレイカー! ドーンブレイカーだ!!」
 ぱあっと声を明るくするテレビウム。
 彼がドーンブレイカーと呼んだその人こそ、力無き人々を助ける光の戦士として活躍する猟兵、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)だった。
「ヒーターの熱風? それがどうした、こちとら太陽の戦士だ!!」
 宣言通り、四方八方から召喚されるヒーターの熱風をものともせず、オブリビオンの群れを鮮やかにかき消してゆく。
 たちまち元気を取り戻したテレビウムに、心春が柔らかく微笑んだ。
「さあ、怖い鳥さんたちを、やっつけちゃいますね」
「うん!」

 アーサーのぶちかましに乗じ、大きく息を吸うワームさん。
 それに嫌な予感を覚えたか、スーパーもふもふモードへと変化したアキクサさまの群れめがけ、毒を含んだ息が大風のように吹き付けられた。
 最初こそ、スーパーもふもふモードで耐えていたアキクサさまたちだが、やがて重要なことに気がついた。
 ――スーパーもふもふモードを解いたら、その瞬間死ぬ。
「動けない以上、体力を削っていけますよね。この無敵状態だと結構耐え切れるみたいですけど……」
 逆に言えば、無敵状態でなければとても毒には耐えられない。何しろアキクサさまはちいさい。毒が回るのは一瞬だ。
 そして、無敵状態であっても、尻尾ではたかれれば、転がる。丸っこいのだから仕方がない。
「さあ、尻尾で叩かれるか、毒で倒れるか……どちらが良いですか?」
 心春の突きつけた選択肢に、アキクサさまたちは素晴らしく早く屈し、隙間という隙間に撤退した。

 取り残されたアキクサさまたちを隅っこへ転がし、ひとまず第一波を凌いだところで、猟兵二人とテレビウムは合流を果たした。
「まだ完全に諦めたわけじゃなさそうだな」
「今のうちに体勢を整えて……あ」
 これから先の算段を立てていた心春は、ふとあることを思いつき、テレビウムを見た。
「その、鍵を触ってみても、良いですか?」
 テレビウムがこくりと頷くと、心春はそうっと、怖がらせないように画面に手をかざした。

 ――呼んでいる。

 脳裏に閃いたのは、そんな感覚。
 どうして、だとか。どうやって、どのようにして、といったことはわからない。
 ただ、その意思を感じた。その感覚、第六感を、彼女は信じた。
「その鍵は……テレビウムさんを、呼んでいるみたいです。それで……私にもよくわかりませんけど、悪いものじゃないと思うんです」
「そうなの?」
「言われてみれば、ちょこちょこ向きが変わってるな。……よし、この鍵が示す先を目指してみるか」
 小首を傾げているテレビウムに、アーサーが手を差し伸べた。
「この都市の何処でも、俺のライドランで一直線だ! あ、小さいからテレビウム君は前に乗ろうね」
「――うん!」
 未だ鍵を浮かべたままだが、その声の調子は溌剌として、いかにも嬉しそうだった。

 しっかりとテレビウムが掴まっているのを確認し、アーサーはライドランに意思を伝える。
「【Select…FLYING ACTION!!】行くぜ、ライドラン! 大空でも宇宙でも、どこまでも飛んで行くぜえええ!!」
 エンジン音が、ドラゴンの咆哮の如く路地に響き、テレビウムに配慮したスピードで空へと飛び上がる。
 様子を伺っていたアキクサさまが慌てて飛び出して追跡を始めるも、振り払うようなレイシューターの砲撃と、ワームさんとペアを組んだ心春の援護射撃により、バイクに到達出来ないまま落ちていく。
「うわああああああああああ!!!」
 空中を流れるテレビウムの声は、今は、喜びと感嘆に満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイチェル・ケイトリン
てがかりになりそうなところへ飛ぶひとたち、そしておっかける鳥型のオブリビオンの群れ。

なら、念動力をつかってパイロキネシスでだした自由にあやつれる炎37個に吹き飛ばしの技能をかさねて爆発する炎にしてその人たちがにげきれるように敵にたたきつけて燃やしてふっとばすね。
かばう技能もつかえるし、敵は羽根が燃えちゃったら飛べなさそうだから。

37個の爆発する炎なら壁にできるとおもうし、敵がまもりをかためたら敵はもうおっかけられなくなるものね。




 同時刻。絶え間なく点滅して色模様を変える看板の上に危なげなく立ち、周辺一帯を見渡す少女がひとり。
「てがかりになりそうなところへ飛ぶひとたち」
 テレビウムを乗せ、空を飛んで遠ざかる大型バイク。
「そしておっかける鳥型のオブリビオンの群れ」
 銃撃に防がれながらも、物陰に隠れたり低空飛行などで地道に追いかける小さな鳥型オブリビオン、アキクサさまの群れ。
「うん」
 交互に視線を向けた後、頷き、ひとつ。
 ごく普通のその仕草と同時に、少女――レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)の周囲に37個の炎が発生した。

「これはわたしの心の炎」
 青色の瞳がオブリビオンの群れを見据えると、炎のいくつかが凄まじい速度でアキクサさまの群れに叩きつけられ、爆発。その一角に居た個体は吹き飛び、見事な花火と化した。
「わたしの心は、あなたたちを、とおさない」
 突然の事態にてんでばらばらに逃げたり分身を盾にしたり死んだふりをしている間に、レイチェルはバイクへの進路を阻む位置に陣取り、アキクサさまたちを見回す。
 尚、37の炎はそれぞれ自在に操作、強度の調整や消火が出来るため、被害を受けるのはほぼオブリビオンだけ。更に言えば、おかしな動きを察知次第37のうちのどれかが即座にすっ飛んでゆくため、迂闊な行動には強烈なカウンターが返ってくるという寸法。
 しばし見詰め合う少女と鳥型オブリビオンの群れ。
「ふきとんで、羽根が燃えちゃったら、飛べないよね」
 レイチェルが告げた事実に、じりじり近づこうとしていたアキクサさまの一部が見事に石化した。
 アキクサさまは、適度な暖かさを好むが、適温を超えればあっという間に燃える体の持ち主でもあった。伊達にもふもふを自称してはいない。
 だが、それでもオブリビオンとして譲れない一線がある。
 お互いに目と目を見交わし、アキクサさまたちは死地に赴く覚悟を決めた。
 もっともレイチェルに近い群れの個体が次々にスーパーもふもふモードと化し、どんどん積みあがって壁を築く。
 その裏側に位置し、真剣な表情で隙を伺う特攻個体。
「……うん。守りに入ったら、もう、おっかけられない。ね」
 小さく呟き、炎を維持したまま、レイチェルは微笑んだ。
 あのひとたちは、逃げ切れる。
 それは、レイチェルの心の炎にくべられた、何より強い燃料だった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『働き蜂戦闘員』

POW   :    御槍奉公
【槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    飛行モード
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    数で圧す
自身が戦闘で瀕死になると【さらなる増援】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:森乃ゴリラ

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「あれ、なんか……むずむず?」
 テレビウムが不思議そうに画面に手をやると、鍵に被るように、キマイラフューチャーの地図が表示された。
 鍵が指していた方角の先。鍵の先端が被ったポイントが点滅している。
「んん? よく知らない、と思うけど……」
 少なくとも、テレビウムが知る限り、目立った施設などは無いはずだった。
 地図の上でも、最初に飲み物を叩いていた道と大差は無い。
 それでも、『呼ばれて』いるのはここに違いなく、状況を打破するきっかけも、恐らくこの地点にある。

 不思議に思いつつも進むうちに、ブゥン、という、独特の音が聞こえてきた。
 低いとも高いともつかない、ただ、たまらなく不安になるような、身の毛もよだつような、その音は。
「はちーーーーーーーー!!!!!!」
 テレビウムの絶叫に合わせるように、ある者はビルの屋上で槍を構え、ある者は地上部分から飛び跳ねて近づいて来る。
 キマイラフューチャーに蔓延る怪人がひとつ、『働き蜂戦闘員』の群れであった。
 彼らもまた、テレビウムを狙い、集団で襲撃を仕掛けてきたのだ。

 猟兵たちとオブリビオンの追走劇はまだまだ続く。
アーサー・ツヴァイク
※共闘アドリブ大歓迎

追手…このまま彼を抱えて飛ぶのも危ないか…!
よし、テレビウム君。ここからは「少し」スリリングだぞ!

まずはレイシューターで蜂を撃ち払いながら、降りれそうな広い所を探す。…ステージとか丁度良さそうだな。
場所を定めたら…今まさに飛行中のライドランを…槍に変えて、蜂の群れに【槍投げ】を込めた【エクスプローシブ・ドラゴンライド】だ!!

そして落下する中で…皆、合体だ!!
俺の装備のレイシューター、バスターホーン、ブーストアームを使って【合体ロボット・サンライザー】に大合体だぜ!!

サンライザーになったらテレビウム君を抱えたまま、スーパーヒーロー着地だ!

どうだい、中々体験できないだろ?


二條・心春
今度は蜂ですか…空を飛ぶ敵ばかりですね。厄介です。

空中戦は得意ではないので、私はテレビウムさんを守りつつ、地上にいる敵を倒していきましょう。今回は【召喚:炎魔】で、ウコバクさんにお願いします。地上の敵を燃やしてしまえば、敵もそう簡単には近づけませんし、炎に巻き込めば多数の敵を攻撃できますよね。
あっ、近くの建物とか皆さんが燃えないように気をつけてくださいね!

私自身はテレビウムさんを優しく励ましながら、空からくる敵の攻撃を槍で防ぎながら、拳銃で迎え撃ちます。
もしかしたら貴方の鍵が私達の力になってくれるかもしれません。私達も頑張って戦いますから、もう少し一緒に頑張りましょうね。


レイチェル・ケイトリン
鳥型オブリビオンはわたしのようすをみてる……なら、おどかしのふりをして建物の後ろをとおって横に出たりして……「ダミークラフト」でつくったわたしの姿の人形といれかわるね。

「念動力」でうごかしてみせて、見張りに立たせて、そこをはなれておいかけるの。


今度はハチをイメージした服をきた人型オブリビオン。

なら、その姿をした人形を「ダミークラフト」でいっぱい作って「念動力」でどんどんうちあげて、怪人のそばでいきなり「吹き飛ばし」して叩き付けて攻撃して「武器落とし」もする「範囲攻撃」するの。

そして、怪人が「そっくりな敵がいる」っておもう頃に、今度は怪人を「吹き飛ばし」て仲間の怪人にぶっつけて同士討ちさせるね。



「追手……このまま彼を抱えて飛ぶのも危ないか……!」
「今度は蜂ですか……空を飛ぶ敵ばかりですね。厄介です」
 テレビウムを保護していたアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)の言葉に、彼らを追走、護衛していた二條・心春(弱さを強さに・f11004)が後方の敵を槍で牽制しながら、タブレット端末を取り出す。
「よし、テレビウム君。ここからは『少し』スリリングだぞ!」
「えっ? えっ??」
「降りられそうな広い所があると良いんだが……あのステージとか丁度良さそうだな」
 アーサーが目をつけたのは、やや前方に見えている、歌や踊りの為のステージだった。この都市においては珍しくない規模で、周囲に高い建造物が少ない為、空からの奇襲にも対処しやすそうだ。
「……周辺の地上部分を守りきれれば、安全そうですね。先に行って、確保します」
 心春としても、空中戦は得意ではないため、地上の方が戦いやすく守りやすい。
 再び顔に謎の変化が起きているテレビウムに目線を合わせ、穏やかに語りかける。
「もしかしたら貴方の鍵が私達の力になってくれるかもしれません。私達も頑張って戦いますから、もう少し一緒に頑張りましょうね」
「う、うん。お姉さん、気をつけてね」
「はい。テレビウムさんも、ツヴァイクさんにしっかり掴まっていてくださいね」
 テレビウムに笑って頷くと、心音は都市に張り巡らされた通路やオブジェをジャンプで飛び越え、目的のステージ近辺まで近づいてゆく。
 そちら側にも既にオブリビオンは接近しつつあったが、それらより先回りする形でステージに立ち、彼女は友への呼びかけを行った。
「ウコバクさん、お願いします! 燃やしちゃってください!」
 具現化したのは、人を模した炎の体を持つ悪魔型UDC、ウコバク。
 彼女の願いに応じてオブリビオンと対峙したそれは、油を伴う炎で、地上を進む蜂型戦闘員たちを次々に燃やしてゆく。
「あっ、近くの建物とか皆さんが燃えないように気をつけてくださいね!」
 慌てて付け加えた心春に、ウコバクは頷きを返し、自在の炎を以って敵だけを次々と燃やしてゆく。
 炎の腕が地上の敵だけを撫でてゆく光景に、空中の蜂型戦闘員たちは降りるに降りれず、次第に飛行状態に移行する者が多くなっていった。

 一方、レイシューターの砲弾で蜂型戦闘員を牽制、撃ち払いながら進んでいたアーサーも、ステージの付近にまで接近していた。
「よし、俺にしっかり掴まっているんだ」
「うん」
 先ほど心春に言われたこともあり、素直にしがみつくテレビウムを、更にしっかりと片腕で抱える。
 そして後方、飛行モードを駆使して追いすがる蜂型戦闘員の群れを確認すると、彼は突如としてライドランの飛行を解除、槍の形態へと変化させた。
「わあああああああ!!?」
「【Select…DRIVE ACTION!】行くぜ、ライドラン! 俺たちの一撃……受けてみやがれ!!」
 テレビウムをしっかりと抱えたまま、空いた手に構えた槍形態のライドランに力を込め、蜂型戦闘員の群れの只中に投擲。
 変形したライドランの先端、竜を思わせるそれが群れの中心に居た戦闘員に突き刺さると同時、空中で爆発を起こし、多数の蜂を巻き添えにする。
 そうして、地上の蜂までもが驚いて手を止める間に、彼は本命の能力を発動させた。
「【Select…CALL, SUNRISER!!】皆、行くぜ!」
 彼のコールに応えた三種類の武装、レイシューター、バスターホーン、ブーストアームが、それぞれに変形し、アーサー……『ドーンブレイカー』と合体。無機物である彼らと共に、合体ロボット・サンライザーへと変身を遂げた。
 爆発の規模と爆音に身を縮めていたテレビウムは、しがみついている身体が、自分を守る腕が、倍ほどに大きくなっていることを知る。
 そして彼は身を捻って、テレビウムを抱えた側の腕を上げ、残る片手と両足を使って赤い隕石のようにステージ目がけて落下してゆく。――そう、落下だ。
「わあああああああああああああああああああっ、っ!?!?!?!!?」
 ステージ全体、どころか周辺の地面までもが、大きく揺れた。
 子供たちの憧れ、スーパーヒーロー着地。
 キマイラフューチャーのステージが頑丈だからこそ出来た荒業とも言える。
「どうだい、中々体験できないだろ?」
「……ごおってして、ぐわんぐわん、した」
 ヒーローってすごい。
 言いつけを守って腕にしがみつき続けていたテレビウムは、このとき蜂の恐ろしさを完全に忘れた。

 炎による攻撃、空中で起こった爆発に次いで、激しい地響きに襲われた地上の蜂型戦闘員は、混乱の極みにあった。
 その混乱の極みを利用し、更なる混乱に叩き込もうとすることを画策するのは、ひとりの人影の小さな囁き。
「心にえがくよ、あなたの姿。木の繊維組織と水分、土の鉱物と色素成分、くだいてつないでかためて、わたしの心の想いのままに」
 そうして出来上がったのは、念動力で加工した木と土による、偽者の人体と衣服――蜂型戦闘員の似姿。
 次々と組み立てられた似姿は、目に見えぬ力によって次々と空中を舞い、まるで生きているかのような挙動を見せる。
「すごくそっくりですね……」
「ハチをイメージした服をきた人型だから。からだが金属とかだったら、そっくりにはつくれなかったの」
 作った人形をあちこちにスタンバイさせたレイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)の解説通り。人体と衣服のみを精確に作り上げるという制限は、相手が『全身に服を着た人型』であるこの局面に関しては、むしろ好材料であった。
 ゆっくり意思疎通する時間があればさすがに見抜けるが、この状況と、そして何よりレイチェルがそれを許さない。
「えい」
 動かした人形たちを蜂型戦闘員のすぐ近くまで接近させ、おもむろに全力での吹き飛ばしを行っていく。
 当然、パニックが加速する蜂型戦闘員たち。一応、落ち着けだの押すなだのと状況を整頓しようとしているものの、一向に収まる気配はない。
「ウコバクさん、そっちの一画、焼いちゃってください! ……あっ、焼いていいですか?」
「うん、だいじょうぶ」
 了承を得て、テレビウムに浮かんだ地図にあった目的地に向かう方面に、ウコバクさんが集中的に炎による攻撃を行い、蜂を追い散らす。
 念の為、槍を手に上空を警戒した心春が、ふとレイチェルに訊ねる。
「そういえば、丸っこい鳥の群れを見なかったですか? てっきり第二陣が来ると思っていたんですけど……」
「まだ、わたしの人形と睨み合ってるんだと思う」
 レイチェル曰く。
 件の鳥型オブリビオンは、『レイチェルを倒さないと追いかけられない』と思い込んだらしく、レイチェルの様子を伺っていた。
 そこで、一度物陰や建物裏を経由して、自分と同じ姿の人形を作製。念動力で程々に動かした後に仁王立ちさせてみたら見事に鳥が釣れたので、そのまま見張りに立てて入れ替わってこちらへ合流した、とのこと。
「それなら、今は蜂だけを警戒していれば良さそうですね。頃合を見て、地図の地点を目指しましょう」

 ――すごいなあ。
 顔に浮かんだ謎の地図、自分でもよくわからないゴールを目指しながら、テレビウムは心の中で呟いた。
 ロボットに変身したいま、蜂人間の槍など爪楊枝程度にも受け付けないお兄さん。
 槍を大きく振って蜂人間の槍を弾き、不思議な弾丸の拳銃で撃ち落とすお姉さん。
 時々後ろを振り向くだけで、蜂人間がばたばた倒れてぶつかり合う、ふわふわした髪と服の女の子。
 ぶつかった蜂人間同士で喧嘩をはじめたところに、お姉さんの友達が大きな火を打ち込んで、追いかける蜂人間はどんどん少なく、遠くなっていく。
「テレビウムさん、大丈夫ですか? 疲れていませんか?」
 声をかけてくれたお姉さんに、大丈夫、と頷く。ありがとう、も忘れずに言えた。
 不思議と、疲れたりイヤになったりはしていない。
 ただ、考えていた。
 ――手に汗を握って、すごい必殺技に歓声を上げて、はしゃいで見ていた動画。
 間近に居たら、見ているだけで精一杯だった。
 仮に録画機能をまわしていても、それだけでは、このハラハラする気持ちはひとつも伝えられないだろう。

 ヒーローは、とってもすごい。
 動画を作るひとたちも、きっとすごい。
 自分の周りにあるものは、自分の大好きなものは、思っていたよりずっとずっと、すごいものだった……。

 ほんのつい先程まで泣くばかりだったテレビウムのこどもは、ヒーローたちの力強さと、彼らのもたらした不思議な感情に支えられて、弱音を吐くことなく走り続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『闇落ち怪人ヤミナベー』

POW   :    怨嗟の叫びを上げる食材達
【材料になった食材 】の霊を召喚する。これは【汁による毒】や【臭いによる麻痺】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    ショートケーキ・ギャンビット
【毒々しい色の汁を吸ったショートケーキ 】による素早い一撃を放つ。また、【無理矢理食べさせる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    ジャッジメント・出し汁具材
【何故か生えている目玉 】を向けた対象に、【催眠で蛍光色の出し汁一杯の食材を食させる】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:鋼鉄ヤロウ

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はカイム・クローバーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 追いかけるオブリビオンを振り切って辿り着いたのは、先ほど地図で見た通り、何の変哲も無い都市の一画。
 その示された座標にテレビウムが立ったとき、三度目の異変が起きた。
「あれ、ぴかぴか……光ってる! 顔以外も!」
 言葉通り、テレビウムが突然光りだした。
 ここまでの道中のお陰か、最初のように取り乱して泣いたりはしないが。
「……なんだか、へんな匂いする」
 言葉通り、なんともいえない独特の異臭が、何処からともなく漂ってくる。
 だが、それはテレビウム自身の変化というわけではないようだった。彼らの来た道程、追いかけてくるオブリビオンを振り切ってきた方角から、匂いが徐々に近寄ってくる。
 猟兵たちが臨戦態勢を取り、匂いの源が姿を表す――

 ――べちゃり。
 ――べちゃり。

 恐ろしい音を立てて現れる、これまでのオブリビオンに比べても強大な個体。
 その名は、『闇落ち怪人ヤミナベー』という。
「ぼ、ぼく、好き嫌いしない。しないよほんとだようそじゃないよ!」
 食材にまつわるあらゆる闇を抱いて歩み寄ってくる大鍋に、テレビウムは後ずさろうとした。
「え。あれ……?」
 だが、それは出来なかった。彼は、自分がこの場から動けないことに気付いた。

 ――古くて重い鍵を、ゆっくり、力を込めてまわすような。そのくらいの時間が要る。
「……お願い。お願いします。もうちょっと、光るのが終わるまで……ぼくのこと、助けて、ください。怪人を、やっつけて、ください!」
 この日初めて、彼は自分から『助けて』と言った。
アーサー・ツヴァイク
※アドリブ共闘大歓迎

…アレはヤバいなー…なんつー冒涜的な
だが、テレビウム君が【勇気】を出して助けを求めてくれた以上、【勇気】で応えるのがヒーローってもんだな!

さて…向こうから飛んでくるのは食材の霊…食材の霊? まあ、あんなんに突っ込まれたんじゃ霊にもなるわな…。ならここは光のパワーでダイナミック除霊と行こうか!
レイシューターを構えて【一斉発射】で霊をバンバン撃っていくぜ! 数が増えてきたら【レイシューター・フルバースト】で闇鍋野郎もまとめてぶっ飛ばす!

しかし、物理的な攻撃は壁になれても、匂いとかはどうにもならなさそうだな。テレビウム君にマフラーを巻いてあげよう。多少は軽減できるはずだろう…多分


二條・心春
…わかりました。貴方の願いに応えられるように、頑張りますね。
改めて、彼の意志で、言葉に出してお願いされると、凄く力が湧いてきますね…!

私は敵の攻撃に対して、先手を打ってしまおうと思います。【召喚:雷鹿】でフルフュールさんを召喚して、敵の食材やケーキ、目玉を雷で撃ち落として、敵の攻撃を妨害しましょう。「第六感」で敵の動きを予測して…そこです、フルフュールさん!
追撃できそうなら、本体を雷と嵐で「吹き飛ばし」してテレビウムさんに近づかれないようにできると良いかな。
敵の食材の攻撃なら「毒耐性」で受けきれるかな?テレビウムさんを助けるためなら、このくらい何ともありません!攻撃は通しませんから!


レイチェル・ケイトリン
たすけてあげるのはコルネリアさんからもうおねがいされてるんだよね。
そして、オブリビオンをやっつけるのは猟兵としてのふつうのおしごと。

だから、それはどうでもいいの。

たいせつなこと、それは「もうちょっと、光るのが終わるまで」……

なにがなんだかわかんないこの状況についてかんじたことをおしえてくれた、ならいっしょにたちむかうよ。

念動力と吹き飛ばしの技能でダイヤモンドダストストリームをつかって、敵や敵の毒や匂いやたべものみたいなものに秒速数百mの絶対零度の吹雪をぶっつけて攻撃して凍らせてふっとばすよ。

ひろがっている匂いとかもベルヌーイ効果で吹雪にすいこませるし、目玉は「目潰し」の技能でつぶしとくね。



「……わかりました。貴方の願いに応えられるように、頑張りますね」
 最初にそう言葉にしたのは、二條・心春(弱さを強さに・f11004)だった。
 力強い笑みと共に一歩を踏み出し、テレビウムの前に立ち塞がるようにして、鈍重な動きで近寄ってくる『闇落ち怪人ヤミナベー』と相対する。
 そんな彼女の横顔をじっと見つめ、レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)がテレビウムへと振り向いた。
「たすけてあげるのは、コルネリアさんからもうおねがいされてるんだよね。そして、オブリビオンをやっつけるのは猟兵としてのふつうのおしごと」
 華奢な風貌からは想像もつかない、プロ意識にも似た、彼女の思考。律する基準。
「だから、それはどうでもいいの」
 その言葉と同時に一度視線を巡らせ、見るだけで精神が削られそうな汁やら具やらを湛えた鍋を一瞥する。
 明らかにこちらを狙っている。もう少し距離が近づけば、攻撃行動に出始めるだろう。何故テレビウムを狙うのかだとかそういう口上は、一切述べてくれなさそうでもある。
「たいせつなこと、それは『もうちょっと、光るのが終わるまで』……」
 テレビウム自身の言葉を繰り返し、レイチェルはもう一度振り向いて、テレビウムを真っ直ぐに見る。
 その顔は相変わらず鍵だけを映し続けている。だが、彼の視界の中で、確かにレイチェルの視線はまっすぐにテレビウムへと向けられていた。
「なにがなんだかわかんないこの状況についてかんじたことをおしえてくれた、なら、いっしょにたちむかうよ」
 にこりと笑ったレイチェルの言葉、その意味のすべてをテレビウムが理解することは難しかった。
 だが、彼女が『助けてあげる』と『一緒に立ち向かう』ことを区別したのは、とても大事なことなのだということは、何故だか強く感じ取れた気がした。
「……いや本当に、アレはヤバいなー……なんつー冒涜的な」
 いわば『なにがなんだかわからないこの状況』の極みともいえる闇鍋の姿に、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)が完全に素に戻って呟く。
「だが、テレビウム君が勇気を出して助けを求めてくれた以上、勇気で応えるのがヒーローってもんだな!」
 心を動かすのは、心。
 光のようにシンプルで真っ直ぐな、決してぶれない強さは何処から来るのかを、その背中が伝える。
「うん。……一緒に、頑張る。頑張って!」
 湧き起こる気持ちのすべてを込めて、テレビウムは猟兵たちに言った。

「改めて、彼の意志で、言葉に出してお願いされると、凄く力が湧いてきますね……!」
「うん。そうだね」
 活力に満ちた瞳でタブレット端末を構える心春の隣に、レイチェルがふわりとした足取りで並んだ。
「すてきだね」

 そして、改めて猟兵たちは、業を煮詰めたような怪人と向き合う。
 動けないテレビウムを目指す闇鍋は、その大きさと体積、鍋という特質ゆえに、動きそのものは非常に鈍重。
 故にこそ、おぞましい鍋の中身を主な攻撃手段にする。
「まず攻撃に対して、先手を打ってしまいましょう。――フルフュールさん!」
 心春が具現化した翼の生えた鹿型UDCの霊は、顕れると同時に嵐を伴う雷を放ち、今にも鍋から立ち昇ろうとしていた毒々しい食材を鍋の中へと押し戻す。
 どぶる、と鍋の中身が、何故かゼリーのような震え方をした。
「聞いちゃいけない音が聞こえたな……」
「あれは……変色して灰色と緑のまだらになった……白菜、ですか?」
「みぎは灰汁を吸ったいちごかな。ひだりはたぶん――あ、だめ」
 鍋から立ち昇る半透明な何かを冷静に判別していたレイチェルが、念動力の操作で無数の氷の粉末を発生させ、疾風に乗せて飛ばす。
 食材もどきに潜んでいた目玉は、氷の直撃を受け、そのまま氷漬けになった。
「あの目玉は危険そうだから、見つけたらすぐ目つぶししておくね」
「お、おう」
 見事な不言実行の結果を目の当たりにしつつ、気を取り直して愛用のレイシューターを構えるアーサー。
 会話や攻撃の合間に、鍋からは次々と毒々しいなにかがあふれ出し、食材たちの霊が怨嗟と共にかたちづくられる。
「食材の霊って何度見してもアレだが、まあ、あんなんに突っ込まれたんじゃ霊にもなるわな……どうか成仏してくれ。それが無理でも」
 レイシューターに集まったソーラーパワーの弾丸が食材の霊へと絶え間なく撃ち込まれ、光に触れた片端から霊体は毒性の汁ごと蒸発。怨嗟の叫びだけがわずかに尾を引き、消えてゆく。
「【Select…BURST ACTION!】――光のパワーでダイナミック除霊させて貰うぜ!」
 宣言通り、光の砲弾は弾幕となって一斉に降り注ぎ、煙のごとくたちこめていた霊体がたちまち取り払われる。
「気温を吹雪の速さにかえて、わたしの心の想いのままに」
「フルフュールさん、吹雪にうまく便乗して下さい!」
 砲撃の隙間を縫うように、無数の氷の粉末を含んだ秒速数百m以上の疾風が物理的な具材の現出を阻止、合流した雷を伴って、鍋の中へ戻らないよう吹き飛ばす。
 単純に吹き飛ばしただけだったならば、若干周辺がヤバいことになったり、精神を削る音が発生したりしていたかもしれない。
 だが、嵐を伴う雷の轟音は凄まじく、飛ぼうとした霊体と攻撃手段である汁は氷の余波で凍結・無効化されていたことにより、その辺りの二次被害は抑えられていた。
「テレビウム君、このマフラーを巻いておこうね。匂い対策だよ」
「……うん。ありがとう……」
 渦巻く霊体が一時的に散った隙を見計らって、アーサーは手早くテレビウムに己のマフラーを巻いてやる。
 攻撃のお陰で最初の登場時よりはマシであったが、何だか見ているだけで目にも鼻にも悪そうだった。大人しく巻かれているテレビウムは、彼らの勝利を疑うことはまったくなかったが、勝敗を超越した脅威に、『ひとりじゃなくて本当に良かった』と強く思った。

「このまま一気に闇鍋野郎もぶちのめしたいんだが、これ中身が飛び散ったら……ヤバいな……?」
「食材も霊体も、数は減っていると思います。最初は、鍋が見えなくなりそうな規模でしたから」
 フルフュールさんを援護しながら、本体の接近を警戒していた心春が現在の状況を改めて観察する。立派な鍋になりきれなかった怨念や、ゲテモノと化したケーキの弾丸を迎撃する度に、その材料たる中身は減っているのだ。
「ひろがっている匂いとかは、吹雪にすいこませてるからだいじょうぶだよ」
「それは有難い。物理的な攻撃や事故は壁になれても、匂いばかりはなぁ」
「そうですね。あの臭い、たぶん猟兵相手でもかなりの毒になると思います……」
「匂いでうごけないと、こまるものね」
 レイチェルの念動力を力学の理論で応用したのだが、その辺りの理屈に関する詳しい説明は省いた。
 なにしろ、今この時も『目は口ほどにものを言う』とばかりにじっとりした目が、隙を見ては仕掛けてこようとしているのだ。そちらの対処(目つぶし)が最優先である。
「向こうも身軽になってきているのが心配です。中身ごと、全力で叩いた方が良いかもしれません」
 徐々に速度を増しつつある青緑色のショートケーキに、心春の第六感が警鐘を鳴らしていた。
 多少の毒なら自分が受け止めることも覚悟し、空色の宝石を心に浮かべる。
「じゃあ、わたしはなかみがとびちる前に、凍らせてふたするね」
「よし。――全力全弾叩き込んで、欠片も残さず、あの闇鍋野郎をぶっ飛ばすぜ!」

 ……一歩歩くごとに、粘性の中身が零れ落ちる。
 光が、雷が、氷が、闇鍋が闇鍋たる『中身』を吹き飛ばしてゆく。
 だが、鍋はそう簡単に吹き飛ばされるまいと、未だ地の上に留まっていた。
 鍋というのは重いもの。
 そしてこの重みは、食にまつわる業と闇の重み。
 『猟兵』たちであろうとも、食する必要性からは逃げられない。
 その攻撃をかいくぐって、必ず辿り着いてみせる――!

「それいじょうは、通行止め」
 行く手を阻む吹雪の圧が増し、歩くための部位が浮きそうになるのを堪える。
 中身を吹き上げて吹雪と相殺させようとした所、立て続けに氷とは違う衝撃が襲い来る。
「フルフュールさん、あそことあそこ……せえので、同時にお願いします!」
 踏みとどまった『足』に加えられた雷撃の嵐に、支えを失って前方に身が傾ぐ。
 それと同時、吹き付けていた吹雪が突如として絞られ、『中身』を凍結させてゆく。
 ぶつかり合いは徐々に劣勢に傾き、中に湛えられていた汁や具材が力を失う。
 これ以上はいけない。鍋が鍋たる証を失う。
 食材だったのに! 食材であるのに! 最早そう名乗ることは許されない……!
 取り返しのつかない無念。それこそが存在の証明という矛盾に、凍結を免れた箇所が怨嗟の泡を飛ばす。
「行くぜレイシューター! フルパワーでど真ん中、ぶち抜くぜ!!」
 眩しい。
 ああ、地を這うこの身の対極。
「これが、光の――除霊だァァァァァァァァ!!!!!!」
 凍て付いた汁と食材、雷に打たれ無様に倒れ伏すこの鍋を――光が――

 うたかたの夢のごとく、光の塵と消え往く鍋を前に。
「…………良かった。光って消えるタイプだった」
 猟兵たちとテレビウムは、本気で安堵の表情を浮かべた。

 光の残滓が消えるのとほぼ同じくして、テレビウムの発していた光も止まった。
 本来の『顔』が戻り、『喜び』を映して猟兵たちを見ようとした時、どこからともなく声が響いた。

「システム・フラワーズより緊急救援要請」
「全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり」
「テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う」

 周辺の建造物が喋ったかのような、多重音声。
 テレビウムを通して解き放たれたその望みの中、彼は我に帰り、姿勢を正す。
「あの、あの。たぶん、ここまでが僕の、役目で。でも、僕だけじゃ、きっと、ここまで来ることも無理だった、です。だから」
 全自動物資供給機構。侵入者。
 その不吉な響きは、恐ろしくはあった。けれど。
 ひとりでは何も出来ないと知ったからこそ、出来るようになったこと。
「ありがとうございます!」
 勢いよく頭を下げ、そして、取り戻した『笑顔』を画面いっぱいに浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月29日
宿敵 『闇落ち怪人ヤミナベー』 を撃破!


挿絵イラスト