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ロックオン・ロック!

#キマイラフューチャー #テレビウム・ロック! #テレビウム #システム・フラワーズ

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●追われるテレビウム
「ひえええ~~!!」
 キマイラフューチャーの或る街の中。
 テレビウムのレビレビは今、必死に走っていた。
 其処は様々なファッションビルが建ち並ぶ大きなショッピング街。その街に住むレビレビはビルの間の路地裏を縫うようにして全力疾走している。
 レビレビの画面には鍵のようなマークが映っており、表情は表示されていない。だが、発せられる声から彼が怯えていることがはっきりと分かる。
「来ないで! こわいよおー!」
 彼の背後からは複数の邪悪な仮面が追いかけてきていた。
 レビレビはただいつものように賑やかな街を散歩していただけだ。それなのにどうしてこんなに怖いものがたくさん追いかけてくるのだろう。
 狙われているのが自分だけだとは知らず、レビレビは敢えて人通りが少ない路地裏を選んで進んでいた。他の人を巻き込まないよう考えて走るその行動は勇敢そのもの。
 レビレビはちいさな手足を必死に動かして恐ろしい仮面から逃げ続ける。
 だが、怖いものは怖い。
「わああん! 誰かっ、誰か助けて……!!」
 そして、誰かに助けを求める悲痛な声が響き渡ってゆく。

●鍵の謎
「お主たち、出番なのじゃ!」
 そのような光景が予知されたと話し、鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)は猟兵たちに直ちに戦いの準備を進めるよう願う。
 キマイラフューチャーのテレビウム達の顔、つまりはテレビ画面に突如として「鍵のような映像」が浮かび上がったことが事の発端だ。
「我のグリモアが予知したのはレビレビというテレビウムくんの危機じゃ」
 彼はいま仮面型の怪人から逃げ続けている。
 何故そうなっているのかは分からないがこのまま放っておくことは出来ない。戦いの準備が終わった者から順にレビレビの元へ転送すると告げ、エチカは説明を続ける。
 何処から出現したかは不明だが、怪人達は執拗にレビレビを狙っているようだ。
 また、予知で見えた以外の怪人も現れるかもしれない。
「ひとまずはレビレビを守りつつ怪人を撃退して欲しいのじゃ。そして出来るならば鍵の謎を解き明かしたいのう」
 鍵はテレビウム自身が映し出しているものではないらしい。
 謎が多い事件ではあるが、怪人に襲われると分かっているのならば先ずは救うことが先決。きっとひとつずつ事件を解決していけば何かしらの動きも見られるだろう。
「では戦いの方は頼んだぞ。チカもテレポートで頑張って補助するのじゃ!」
 そして、エチカはぐっと意気込む。
 善良なテレビウムを救うためにも、今こそ猟兵の力が必要なときだ。


犬塚ひなこ
 今回の世界は『キマイラフューチャー』
 怪人たちに襲われているテレビウムのレビレビくん(10歳・一般人)を助けるため、敵を撃退していくのが今回の目的となります。

●シナリオについて
 第一章:集団戦『邪悪な仮面』
 第二章:集団戦『紫御殿』
 第三章:ボス戦『天竺牡丹』

 転送先はレビレビのすぐそばです。ヒーローっぽく颯爽と登場できます。
 その他は特に難しいことはないので全力で敵を倒してください。
 各一章のみのご参加や、途中からのご参加も大歓迎です。

 ※こちらのシナリオは早期完結を目指して執筆します。どの章も成功ラインに到達した時点で次の章に進みます。そのため各章、三~数名様のみ採用(判定状況により多少上下します)となりますので、どうかご了承ください。
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第1章 集団戦 『邪悪な仮面』

POW   :    怪光線
レベル×5本の【闇】属性の【光線】を放つ。
SPD   :    闇影の鎖
【自身の影】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
WIZ   :    暗黒の力
予め【邪悪なオーラを纏う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。

イラスト:夜月蓮華

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴァルダ・イシルドゥア
七色のひかりを映し出す硝子窓(※屋外大型ビジョン)
空飛ぶ船(※ドローン)が段幕を垂らし
鉄の箱(※車)が馬よりも早く駆け抜ける

ここは、一体……

あまりの眩さ、賑やかさに圧倒されて
ぎゅっとアナリオンを抱きしめたけれど
悲痛な叫び声に我に返る

いけません、驚いている場合では!

追い縋る仮面から救出対象を庇うように割り込みます

おやめなさい!

罪もない幼な子をこんなに大勢で……!
我が名はヴァルダ、異世界より来たりしもの
これより先、何人も通ること叶わぬと知り給え!

残HPの低い個体を優先して攻撃
庇い乍らレビレビさんの安全を最優先に
怪我をしていたら生まれ乍らの光で手当を

もう大丈夫ですよ
私たちが、かならずお守りいたします



●逃走劇の始まり
 七色のひかりを映し出す硝子窓に空飛ぶ船。
 鉄の箱が馬よりも早く駆け抜ける世界――それが此処、キマイラフューチャー。
 屋外大型ビジョンやドローンの存在に目を丸くして驚き、ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)はぎゅっと仔竜のアナリオンを抱きしめた。
 だが、あまりの眩さや賑やかさに圧倒されている場合ではない。
「誰かっ、誰か助けて……!!」
 ヴァルダは耳に届いた悲痛な声にはたとして、我に返った。
 転送されたのはビルの屋上。向けた視線の先、怪しい仮面が眼下の路地裏に飛んでいく様が見える。おそらくこの世界の景色に気を取られている一瞬の間に救出対象が其方に走っていってしまったのだろう。
 ヴァルダは即座にアナリオンを槍に変じさせる。
 そして声が聞こえた方にあたりをつけ、屋上から一気に飛び降りた。
「おやめなさい!」
 凛とした声と共にヴァルダはテレビウムと仮面の間に割り込み、槍の切っ先を敵に差し向ける。行く手を塞がれた仮面たちは止まるほかなく、レビレビもびくっとして振り向いた。
「罪もない幼な子をこんなに大勢で……!」
「わああー、誰だか知らないけど危ないよー!?」
 逃げ腰になりながらも此方の心配をするレビレビ。だが、ヴァルダは問題はないと示すように首を横に降って、敵を強く見据える。
「もう大丈夫ですよ。私が、かならずお守りいたします」
 背後にそう告げると同時に槍を振るい、手近な仮面を貫く。それによって仮面が地に落ち、真二つに割れた。
「すごいすごい、猟兵さんだ! お姉さん、サインして!!」
 その様子を目の当たりにしたレビレビは思わず興奮してしまったらしい。流石はキマイラフューチャーっ子。相手が猟兵とわかるとサインを求めてしまうものらしい。
「サイン……? ええと……兎も角、今は逃げてください」
 ヴァルダは首を傾げそうになりながらも敵に意識を向け、レビレビに願う。
 相手はそれほど強くはないが数が多い。此処に彼を留めておくほうが危険だ。はっとしたレビレビは自分が逃げていた事を思い出して「うん!」と頷いた。
 彼が駆け出した気配を感じ、ヴァルダは槍を構え直す。
 数体の仮面が自分に迫ってくる様を見つめ、ヴァルダは名乗りを上げた。
「我が名はヴァルダ、異世界より来たりしもの。これより先、何人も通ること叶わぬと知り給え!」
 その声は勇ましく凛と響き渡る。
 そして――ヴァルダは罪なき者を護るために、全力を揮うことを決めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

八津崎・くくり
大丈夫だろうかレビレビ君。
中々厄介な事になっているようだね。私が迎撃するから、上手く逃げてくれたまえ
表情が鍵になっているけど前はちゃんと見えているかな?
ああ、顔じゃなくて画面なのだったか、まぁいい

そんなことより私はお腹がすいたよ
ナイフとフォークを駆使して仮面を撃墜にかかろう
反撃は受けるだろうが防御よりは攻撃を重視、追っ手の数を減らしていこう

手が足りないならUDCの大口を駆使
つまみ食いといこうか。多分歯応えは良いんじゃないかな
まあ美味くはないが

ある程度群れを捌くか、レビレビ君が危なそうなら抱えて逃げるよ

…どうせなら、もうちょっと美味しそうな敵が来ないかしら


小日向・いすゞ
あぶなーいっス!
白狐の杖笛をバットのように構えて仮面を叩き割る

管狐を纏い、テレビウムを護る形で背に
必要であればもう抱えておくっス
抱えたほうが絶対早いっス
逃げ足にそれなりの自信があるっスよ!

さあさあ、センセはあっし達が守るっスから安心してほしいっスよォ!

多分他のセンセがだいぶ頑張ってくれるっスからね
近づく敵はフォックスファイアで燃やすっスけれど
基本的にはセンセ達の回復や補助をしてるっスよォ
癒式符ぺたぺた

何っスかその!光線とか出すと危ないんスからね!
気をつけて欲しいっス!
聞いても答えてくれるとは思ってないっスけれど!

…これまだまだ敵が来るンスかねェ…?


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
レビレビに襲いかかろうとする仮面に【残像】と【先制攻撃】
高く飛び上がり、猛スピード急降下からのキックをお見舞い

君、怪我はないか?本当に鍵のマークが出ているな?
君のことを助けに来たのだ!
だが説明してる暇なさそうだから、これが終わったらまたお話ししよう!

レビレビには俺たちの側を離れないよう呼びかけ
『雪娘の靴』を発動し、敢えて攻撃を外すことで氷面を作る

邪悪なオーラを纏った攻撃は【第六感】で動きを予想しつつ、氷面を滑りながら回避

攻撃の隙を突き、氷のスケートブレードでコンビネーションスピンを応用した【二回攻撃】で周囲の敵を攻撃

レビレビに攻撃が及びそうになった時は、彼を抱えて【スライディング】で回避するぞ



●パス・アンド・ロック
 走る、走る。ただ走る。
 自分を助けに来てくれた猟兵に報いるためにも、レビレビは懸命に逃げる。
 しかし新たな仮面が彼の背後に迫っていた。
 ひっ、と声をあげた少年の足が縺れる。転んでしまったと気付いたときには敵は彼に覆い被さろうとしていた。だが、そのとき――。
「あぶなーいっス!」
 小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)の声が響いたかと思うと、白狐の杖笛がバットのようにフルスイングされる。レビレビを捉えようとしていた仮面は吹き飛ばされて場外ホームラン。そして何処かにぶつかって割れたらしく、遠くで乾いた音が響いた。
 それと同時にヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)と八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)がレビレビの傍に降り立ち、手を差し伸べた。
「君、怪我はないか?」
「大丈夫だろうかレビレビ君」
「あああ、猟兵さんたち……!」
 その声は震えていたが、それは窮地を助けてもらった喜びが混ざった声色だった。しかしレビレビの顔にはずっと鍵が表示されたまま。
「表情が鍵になっているけど前はちゃんと見えているかな?」
 くくりが問うとレビレビは問題ないと答える。
 そういえば顔ではなくて画面なのだったかと思い立ったくくりは、それならばいいと一先ずの安堵を抱いた。
「本当に鍵のマークが出ているな? おっと、危ないのだ!」
 ヴァーリャもテレビウムの異常自体に瞼を瞬かせる。だが、新たな仮面が猛スピードで近付いていることに気付いて地面を蹴った。
 高く飛び上がり、襲いかかってくる仮面に向けたのは急降下の勢いに乗せた蹴撃。
 残像が残るほどの素早い一閃で敵を穿ったヴァーリャの動きは見事とあらわす他ない。いすゞはぱちぱちとヴァーリャに拍手を送る。
 そしていすゞは管狐を纏い、くくりはテレビウムの手を引いて起き上がらせた。
「ほら、立てるかい」
「さあさあ、センセはあっし達が守るっスから安心してほしいっスよォ!」
「ありがとう。センセってぼくのこと?」
 首を傾げてみせたレビレビに頷き、いすゞは口許を緩める。ヴァーリャも安心させるように笑みを浮かべ、背に彼を守る形で布陣した。
「君のことを助けに来たのだ! だが説明してる暇なさそうだから、これが終わったらまたお話ししよう!」
 自分たちの傍を離れないよう願い、ヴァーリャは身構える。
 しかし路地裏の角から新たに現れたのは十数体の仮面たち。対する此方は三人。レビレビを守りながらとなると分が悪い。
 そのうえ敵は一斉に闇の光線を放ってきた。
「おや、物騒だね」
「当たると危ないのだ!」
 くくりは構えたグルメツールで何とか一閃を弾き返し、ヴァーリャも跳躍して避ける。
 このままではレビレビが危ない。そう感じたいすゞは彼を持ち上げ、抱えたまま身を翻して躱そうとした。だが、レビレビを守ったが故に避けきれず、尻尾の毛先に光線が掠ってしまった。
 フャ、とちいさな悲鳴めいた声があがる。
「何っスかその! 光線とか出すと危ないんスからね! 気をつけて欲しいっス!」
 いすゞは敵に抗議しながら癒式符をぺたぺたと自分の尾に貼った。くくりは手近な一体にフォークを突き刺し、ナイフで一気に斬り裂く。
「流石にこれだけの相手は苦労しそうだ。食べ甲斐はありそうだけど」
「レビレビ、こっちに来れるか?」
「うん!」
 くくりが敵を次々と撃墜している間に、ヴァーリャはいすゞが抱えていたレビレビを受け取った。そして、ヴァーリャは靴裏に精製した氷刃をコツコツと鳴らしてから跳躍する。わあ、とレビレビの驚いた声があがった直後、周囲の地面が次々と凍り付いていった。
 それは逃走のための準備。
 滑って移動すれば普通よりも素早く逃げることができるだろう。
「怖いかもしれないが掴まっていてくれ、レビレビ」
「だ、だだだ大丈夫だよ~!」
 震える声で答えるテレビウムの強がりを聞きながら、いすゞはヴァーリャの前に飛び出した。
「それなら、あっしは逃げ道を確保するっス!」
 いすゞは前方から訪れた敵に狐火を飛ばしてゆく。後方では仮面を足止めするくくりがフォークで突き刺した敵を壁に縫い付けていた。
 崩れ落ちた敵の破片を器用に片手で受け止め、くくりはそれを口に放り込む。
「まあ美味くはないが……歯応えは悪くない」
 どうせなら、もうちょっと美味しそうな敵が来ないかしらと零しつつも、くくりは引き抜いたフォークで別の敵を薙いだ。
 くくりが対応できない相手にはいすゞが放った狐火が舞う。
 されど敵の目的はレビレビだ。彼を抱えたヴァーリャの方に敵が擦り抜けていっていることを察し、くくりは駆け出した。
 ヴァーリャもすぐそこまで敵が迫っていると知り、慌ててレビレビを抱き締める。
 其処からスライディングで以て敵の真下を潜った彼女は、自分ひとりでは逃げ切れないと察した。
「まずいのだ。パス、パス! 受け取ってくれ!」
「パス? えええ~っ!?」
 ごめんな、と告げた彼女が自分を投げるつもりだと知ったレビレビは叫ぶ。だが、そのときにはもう彼はくくりの腕の中に収まっていた。
 テレビウムを抱えて駆けるくくりは首を軽く振り、背後に近付く敵へと自らのUDCを衝突させた。その大口が仮面を噛み砕く音を聞きつつ、くくりはいすゞを見遣る。
「いけないな、私も狙われているようだ」
「はーい、あっしの出番っスね!」
 いすゞはぽいっと投げられたテレビウムをキャッチし、一気に跳躍した。自慢ではないが逃げ足には自信がある。そして近くの塀に登ったいすゞはその勢いのまま二階建てのビルの屋上へと飛び移った。
 三人のコンビネーションと素早さに敵は付いてこれず、此方を見失ったようだ。
 ビルの下、路地裏ではくくりとヴァーリャが足を止めて仮面たちを相手取っている。いすゞは縮こまったレビレビをよしよしと撫でながら辺りを見回した。
 そうして、決断する。
「悪いっスね、センセ。あっし達が付き合えるのはここまでっス」
「え? どうして……わっ、あああ~~~!!」
 レビレビが問いかけた瞬間、いすゞは反対側のビルの谷間に彼を投げ放った。
 一見はオブリビオンよりも酷いことをしているがそれは算段あってのこと。レビレビを投げた方角には別の猟兵の姿があったのだ。
 そして、いすゞ自身は地上で戦うふたりの手助けを行うために身を翻した。
 ぽっくり下駄がコーン、と鳴る。
「ああ、戻ってきたのか。少し数が多いから助かるよ」
 くくりはいすゞが帰還したのだと知り、素直な気持ちを伝えた。そして、ヴァーリャの氷の一閃を受けて足元に転がった仮面を踏みつけて止めをさす。
 振り向いたヴァーリャは彼女がレビレビを連れていないと気付いて問いかけた。
「レビレビは? 無事なのか!」
「他のセンセに預けて来たっス。……ところでこれ、まだまだ敵が来るンスかねェ……?」
 いすゞの答えにほっとしたヴァーリャだったが、続く言葉を聞いてはたとする。彼女の視線の先には先程よりも多い仮面たちの姿が見えたからだ。
 標的が捕まえられないと知って数を増やしたのだろうか。くくりはナイフを敵に差し向け、未だ戦い続ける気概を示した。
「どうだろう。あまり多くは食べたくない味だったけど」
「だけど、どれだけ来ようとも俺達の敵ではないのだ!」
 ヴァーリャは胸を張り、いすゞもそうっスねと頷きを返した。
 そして――鋭い氷蹴が舞い、白狐の杖笛が振るわれ、グルメツールが交差する。
 敵は多いが決して勝てない相手ではない。この三人でならば絶対に切り抜けられると信じ、少女たちは其々の得物を構え直した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ライラック・エアルオウルズ
【WIZ】

――さて、
何故急にこんな事になったのかな
鍵、と云う事は何かを開く物なのか
或いは、キーマン、かな?

何て、想像を巡らせる場合でも無い様だ
やあ。レビレビさん、助けに来たよ
…英雄成らざる、草臥れた作家だけど

⦅高速詠唱⦆で出来る限り迅速に、
燈籠を手に『奇妙な友人』を呼び寄せ
敵への⦅先制攻撃⦆を御願いすると共に、
僕はレビレビさんを⦅庇う⦆事を先決に
以降も友人には敵の攻撃を引き付けて貰い、
危険な場合は⦅見切り⦆で庇い乍ら回避

僕にも攻撃が出来る隙が出来れば、
万年筆を手にして空に線引く様にして
『■■■』での切断攻撃を
友人も僕も、皆への援護は積極的に

――ン、此で終わりなら良いけど
未だ、終わらなそうだね


愛久山・清綱
この状況、俺が猟兵になるきっかけとなった出来事にどことなく似ているな。

あの時の俺は救われる側だったが、今度は俺が救う側、か……。

いや、考えている暇はない。
急ぎ彼を救わねば。

■闘
余計な事は考えず、一気に切り込もう。
同胞よ、今助けるからな。

敵の攻撃を【野生の勘】で予測しつつ【見切り】、【残像】を用いた【ダッシュ】で敵に急接近しよう。

多少の被弾は【気合い】と【激痛耐性】で我慢だ。

相手に近づいたら大なぎなたで【怪力】を込めた【剣刃一閃】で【なぎ払い】、仮面たちに【恐怖を与えて】やろう。

俺達キマイラが住むこの世界で、勝手な真似はさせん。
覚悟して頂こう……



●救うもの
 追われるテレビウム。追うオブリビオン。
 転送されたファッションビルの合間、愛久山・清綱(もののふ混合童子・f16956)は今の状況を考える。
 思えばこれは自分が猟兵になるきっかけとなった出来事にどことなく似ていた。
「あの時の俺は救われる側だったが……」
 だが、今度は自分が救う側。
 辺りを見渡した清綱は自分がこの場所に転送された意味を探る。
「――さて、」
 同じようにライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)も清綱と同じ場所に転送されていた。
 何故急にこんな事になったのか。鍵、と云う事は何かを開く物なのか。
 或いは、キーマン、か。
 ライラックは想像を巡らせながら何とはなしにビルを見上げた。
 まだ周辺には敵も件のテレビウムも見えない。しかし何かの気配は感じられ、清綱もつられて其方を見遣った。
「考えている暇はないな。急ぎ彼を救わねば――ん?」
「わああ~~~っ」
 そのとき、頭上から叫び声が響いてきた。その声の主が重力に抗えずに落ちてきていると察したライラックと清綱は即座に駆ける。
 彼が例のテレビウムだ。
 そう感じたときにはもうライラックはレビレビを受け止めていた。そして清綱は敵が近付く雰囲気を感じ取って身構える。
「やあ。レビレビさん、助けに来たよ」
 英雄成らざる草臥れた作家だけどと告げたライラックは、テレビウムにどうして空から落ちてきたのかを問う。
 するとレビレビは彼らも猟兵なのだと察し、ほっとした様子を見せた。
「ぼく、変な仮面から逃してもらうためにみんなにパスされてきたんだあ……」
 画面が妙な状態ではなかったらきっと彼は目がぐるぐる回っている表示を出していただろう。しかし、今の画面には鍵が映されているのみ。
 其処に少し遅れて何体もの仮面が現れた。
 清綱は状況を理解し、成る程、と口にする。自分達ふたりがこの場に転移されたのは他の猟兵のところから逃されてきたレビレビを受け止めて保護するためだ。
 レビレビはしっかりとライラックに掴まっている。
 迫る仮面に目を向けた清綱は心に決めた。
 今は余計な事は考えず、一気に切り込んでいくだけ。
「同胞よ、必ず助けるからな」
 同じキマイラフューチャーの民として、清綱はレビレビを守りきると決意する。
 闇の光線が放たれた刹那、清綱は地を蹴って飛ぶ。
 残像を残しながら敵の眼前まで迫った彼は一気に薙刀を振り下ろした。仮面は一刀のもとに斬り伏せられたが、未だ数は多い。
「援護するよ」
 ライラックは燈籠を手にし、詠唱を紡いだ。
 召喚した親愛なる友人の霊を清綱の傍に向かわせ、ライラックは抱いたままのレビレビを片手で支える。これまで猟兵に助けられてきたとはいえレビレビも不安なのだろう。ぎゅっとライラックにしがみつき続けている。
 宵色のナイフを振るった友人が邪悪な仮面を斬り裂く。
 同様に清綱も刃で敵を薙ぎ払い、レビレビとライラックに近付こうとする相手を地に落としていった。
「俺達が住むこの世界で、勝手な真似はさせん。覚悟して頂こう……」
 静かな声色で告げた清綱は襲い来る仮面を次々といなし、大なぎなたで一気に敵を砕いて止めを刺す。
 ライラックも友人の霊に敵を引きつけて貰い、自ら万年筆を宙に走らせた。
 黒いインクは空に線を引くが如く、仮面たちを見る間に斬り裂いていく。
 だが――。
 不意にざわつくような感覚が走った。
「拙いな、囲まれそうだ」
 清綱は更に敵の数が増えると察し、ライラックもテレビウムの少年を下ろした。
「レビレビさん、自分で走れるかな?」
「うん、大丈夫だよ!」
「ならば逃げるといい。此処は俺達に任せろ」
 レビレビが強く頷いたことにライラックは薄く笑み、清綱は少年を背に庇う形で布陣し直す。その背後には別の道へ続く路地があった。
 周囲をすべて包囲される前に先にレビレビだけを逃がす。それがふたりが一瞬で判断を下した事柄だ。
 レビレビは守ってくれたふたり別れなければいけないことをぐっと堪える。
「ありがとう猟兵さんたち! 絶対絶対、あとでサイン貰うからね~!!」
 そういって冗談交じりの言葉を残していったのも怖さと心配を紛らわせるためなのだろう。ライラックは駆け出したその背に手を振り、敵に目を向けた。
「――ン、此で終わりなら良いけど。未だ、終わらなそうだね」
「……ああ。だが、この程度の窮地ならば乗り越えてみせよう」
 ライラックの言葉に清綱が答え、ふたりは背中合わせになって身構えた。
 罪のない少年を負う謎の仮面。
 それらが彼を傷つけぬよう、自分たちが行うべきことは此処で敵を迎え撃つこと。
 そして――彼らの戦いは巡る。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花畑・花束
興味深いねえ。思わず研究室からでてきちゃったよ。
コレ、どんな事件なんだろうね?どうして同時多発的にエラーが……あ。おしごと。そうだったねえ。

UCで電脳生命体の鳩を呼んで、ぼくの代わりに戦ってもらおう。数にはより多くの数をぶつけるのが定石さ。スマートではないけどね。

その間に《ハッキング》と《メカニック》でレビレビくんのようすを調べてみたい。機械のお医者さんなんだよ、ぼく。こわくないよ。
遠隔操作によるロックか、本体に細工をしたのか。どっちかでもつかめればいいなあ。わかんないかもだけど。

イヤって言われたらしかたない。おとなしく鳩の指揮を続けよう。
こどもってお医者さん、きらいだしね。



●謎の鍵
 駆けてくる足音と異様な雰囲気。
 花畑・花束(デジタルブーケ・f14692)は周囲の気配を探りながら、此度の事件について考えていた。
「興味深いねえ。思わず研究室からでてきちゃったよ」
 テレビウムに映る鍵の画面。
 そして、何故か付け狙うオブリビオンたち。
「コレ、どんな事件なんだろうね?どうして同時多発的にエラーが……あ。おしごと。そうだったねえ」
 意識が考察に巡りそうになった自分に気付き、花束は軽く首を振る。
 そして、ユーベルコードを発動させた。
 ――デジタルブーケ・リリーベル。
「さあ、ぼくの代わりに戦っておいで。数にはより多くの数をぶつけるのが定石さ」
 スマートではないけどね、とちいさく付け加えた花束は敵が現れているであろう方向へと情報生命体である白い鳩を飛ばす。
 すると、其方側から懸命に走ってくるテレビウムの姿が見えた。
「助けてっ、助けてえ!」
 花束を発見して叫んだ彼こそレビレビなのだろう。
 大丈夫かい、と問いかけた花畑は彼の手を取る。そして、花頭の白鳩が敵を食い止めてくれている間に、とレビレビを調べていった。
「なあに? なにするの?」
「機械のお医者さんなんだよ、ぼく。こわくないよ」
 不思議そうに首を傾げた彼に花束は優しく告げる。
 その間にハッキングとメカニック知識を駆使した彼はレビレビに起きている異変を突き止めようと努める。
 遠隔操作によるロックか、本体に細工をしたのか。どちらかでも掴めればよかったのだが、目に見えた異常は見つからない。
「鍵が表示されてるの、なおらない?」
「そうだな……これはこまったものだね」
 抵抗はしないが、心配そうにしているレビレビの画面は一向に鍵から戻らない。これ以上調べると彼に更なる不安を与えてしまうだろう。
 それに――。
「レビレビくん、ぼくの後ろに」
「わっ、また敵だ!」
 鳩たちが力尽きたのか邪悪な仮面が此方に迫ってきていた。花束はレビレビを庇うように背後に隠すと、もう一度電脳花輪の力を発動させる。
「きっと向こうにまだ猟兵がいる。そっちに助けを求めるんだ。いいね?」
「でも、あなたは……」
「ぼくはいいんだ。この子たちがいるからね」
 此方の心配をするレビレビの背を押し、花束は羽ばたく鳩たちを示す。
 自分は此処で鳩の指揮を続けて敵の足止めをする。だから、にげて。
 レビレビは花束の背からそう告げるような雰囲気を感じ取り、ちいさく頷く。そして、少年はそれまでしてきたように懸命に駆け出した。
「さて、おしごとだね」
 花束は指先を邪悪な仮面に差し向け、花鳩たちに己の力を送り込んだ。
 少年が無事であることを願い、彼は戦いへの覚悟を決めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハーバニー・キーテセラ
追い付き次第にぃ、擬獣召喚で兎さん&猫さんの群れを呼び出してぇ、レビレビさんを守るように囲みましょ~

自分が危機に晒されながらもぉ、他の人を巻き込まないその行動。とってもいい子さんですねぇ
ふふふ~、よく頑張りましたぁ。でもぉ、もう大丈夫ですよぉ

安心させるように笑いかけてぇ、守るを告げましょ~
そしてぇ、告げたようにここから先は私達の出番ですぅ
この守りぃ、越えられると思わぬことですよぉ
兎さん達にはレビレビさんの守りを任せてぇ、私は猫さんと路地裏を跳んで走って攪乱ですぅ
隙があればぁ、後ろに抜けようとしたらぁ、すかさずに狙い撃ちぃ
1体足りとも後ろには行かせませんよぉ



●導く兎と画面の異変
 ――擬獣召喚。
 兎と猫の群れが周囲に現れ、守るべき対象を探す。
 ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)は転送された先に降り立ち、辺りをそっと見回した。
「見つけましたよぉ、レビレビさん~」
「もしかして猟兵さん? よかったあ~!」
 路地の先にテレビウムの少年を見つけたハーバニーは手を振る。彼女が身につける兎の耳が揺れる様に気付いたレビレビは必死に足元まで駆けてきた。
 ぜえぜえと息を切らしたような仕草をする少年は、これまで様々な猟兵に助けられてうまく逃されてきたようだ。
 しかし、彼を追ってくる邪悪な仮面は何処からともなく次々と現れている。ハーバニーは逃げ疲れている様子のレビレビを宥め、その背を撫でてやった。
 彼は自分が危機に晒されながら、他の人を巻き込まないようにこんな狭い路地裏を選んで走ってきたのだ。
「とってもいい子さんですねぇ」
「ううん、猟兵さんに迷惑をかけちゃってるし……」
 ハーバニーが褒めると、レビレビはふるふると首を横に振って答えた。
 彼のテレビ画面には相変わらず、鍵のマークが表示されている。本当ならば困った表情があるべきだというのに。
 きっと彼も不安だろう。だが、それを取り除くのが自分たちの役目だ。
「ふふふ~、よく頑張りましたぁ。でもぉ、もう大丈夫ですよぉ」
 ハーバニーは安心させるように笑いかけ、必ず守ると告げる。
 そして、そう告げたように――。
「ここから先は私達の出番ですぅ」
 ハーバニーは身構え、兎と猫たちに願って自分たちの周りを囲ませる。それは敵の仮面が周囲に集ってきていたからだ。
「おねえさん、大丈夫!?」
 驚いたレビレビはハーバニーの足元にぎゅっと掴まった。
 彼女は先程から浮かべている笑みを絶やすことなく、ヴォーパルを構える。
「この守りぃ、越えられると思わぬことですよぉ」
 えい、と彼女が地を蹴った刹那、猫たちがその後に続いた。残った兎はレビレビの盾になるように布陣してゆく。
 鋭い銃声と共に撃ち放った銃弾が仮面を貫く。
 敵もハーバニーたちを擦り抜けて行こうとするが、そのような行動を許すはずがない。
「一体たりとも後ろには行かせませんよぉ」
 すかさず狙い撃ち、落ちたところを猫の爪が斬り裂いた。敵を一瞬で屠るハーバニーと猫たちの連携は見事だ。
 そして、周囲の仮面がすべて地に落ちたとき――。
 テレビウムの画面に異変が起こった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『紫御殿』

POW   :    仮面合身の術でござる!
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【男子がカッコいいと思うもの】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    仮面手裏剣の術でござる!
【懐】から【自動追尾する真っ白な仮面】を放ち、【相手の視界を塞ぐこと】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    仮面狼群の術でござる!
【仮面を被った狼の群れを召喚、爪や牙】が命中した対象を切断する。

イラスト:りょうま

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●鍵の示す先へ
 邪悪な仮面は駆けつけた猟兵たちの手によってすべて倒された。
 逃げたレビレビが無事であることを確認すべく、仲間たちは彼の元へ急ぐ。路地裏の奥に彼がいると察した猟兵たちは次々と其処に到着した。

「みんな! 悪い仮面はやっつけてくれたんだね!」
 レビレビは自分を助けに駆けつけてくれた猟兵が無事であることに嬉しそうな様子を見せ、ぶんぶんと手を振った。
 しかし、其処で妙な違和を感じた者も多い。
 何故なら――。
「ぼくの画面、何だかおかしいんだ」
 レビレビは自分の画面を指差し、映っている鍵が何処かを示しはじめたのだと告げた。
 どうしてだか其処に行かなければならない。
 そんな気がするとレビレビが告げた次の瞬間、妙な声が聞こえた。
「ふふ、身体のない邪悪なる仮面どもなど我らが【暗黒面】にとって三下も三下……」
「ここは我らの出番でござるな」
 気付けば忍者の格好をしたオブリビオンたちが近くのビルの屋上に現れていた。
 それは人の形をしているが、猟兵たちには身につけている仮面こそが本体だと分かった。屋上から此方を見下ろす敵――紫御殿たちの数は多い。
「みんな、逃げよう!」
 レビレビは危機を察して逸早く駆け出した。
 きっと逃げながら鍵が示す場所へと向かおうとしているのだろう。紫御殿たちは標的が逃げるのだと察してビルから飛び降りてきた。
「追うでござるよ」
「我らが忍術で捕まえてやるでござる!」
 紫御殿たちは素早く、此処で足止めすることは容易ではないだろう。
 ならば、何をするべきか。猟兵たちは即座に判断を下した。
 やるべきことはひとつ。
 テレビウムの少年を守りながら駆け、鍵が示す場所へと辿り着くことだ。
花畑・花束
無事でなによりだよ。お医者さんも怖がらないいい子だね。
それにしてもソフト、ハードともに異常なしかあ。ますますもっておかしいなあ…
…。おっと。いけないいけない。

キマイラフューチャーほどの未来都市なら《地形の利用》や《ハッキング》で《時間稼ぎ》ができそうだね。
たとえば、AR広告をハッキングして誤表示させる、とかさ。
みんなが戦いやすくなるでしょ? 倒れた敵を見つけたらUCの出番だよ。

デジタルブーケ・カサブランカ。倒れた紫御殿を情報生命体に変える。
たいへんだろうけど、もう一働きしてもらおう。
操作できるものが増えれば、後々レビレビくんの護衛に割ける頭数も増えるからね。
ひとりで行かせないようにしないとな…


ライラック・エアルオウルズ
【SPD】

鍵が指し示すとしたら、それは扉だろうか
何処へ行き着くものか楽しみだけど――
その為にも、更にと一仕事だね

然して 僕は足の速さに自信が無いから、
早々と『黄金色の心』で獅子を召喚し⦅騎乗⦆を
獅子の身で壁になる様に⦅庇い⦆乍ら、
随時敵の攻撃や状況を⦅見切り⦆で確認
必要に応じてレビレビさんを背に乗せよう
…必ず送り届けるから、少し我慢してね

勿論、攻撃の手も緩めずに
近くへと来た敵は獅子の爪で薙ぎ払うけど、
基本は『花の歌声』での⦅範囲攻撃⦆
魔導書を花弁へと変えたなら、
敵の妨害・撃退をする様に援護しよう
周囲の味方との連携も加え、隙の無い様に

…ああ。全く、執拗な物だね
此は、何処まで奔る事になるやら


八津崎・くくり
かかってきたまえ仮面の忍者の諸君!
一切忍ぶ気が無いようだがその意気や良し、だ
目的が目的なので、引き続きレビレビ君は運ばせてもらう
適時パスもするよ

ひっどい扱いだとは思うが、そういうアトラクションだと思って慣れてくれたまえ
どっち行けばいいのかは逐一教えてもらおう

戦闘はUDCをメインに
幸い、後ろを向いている方が戦いやすいんだよ、私の場合はね
迫ってくる奴には噛みつきを狙うし、遠距離攻撃も食べてあげよう
仮面は食べ飽きたのだがね

また、UDCを移動にも使用
ベランダや窓枠に噛みついて、自分を上方に放り投げたりするよ

巨大ロボにはUC使用で正面から立ち向かおうか
大丈夫、私は無機物だっていけるクチさ


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
のわわっ!また!?
もしかしてレビレビが敵を引き寄せている…ってことなのか?
大丈夫!俺たちの側ほど、今安全な場所もないからな!

レビレビを肩車させて、『雪娘の靴』で地面を凍らせながら、トゥーフリ・スネグラチカで全速力で滑って逃走
すまーん!ちょっと通るぞー!

追ってきた敵の足元を狙って、【属性攻撃】で凍らせ移動を妨害させる
前方から敵が来たら…
仮面が本体なんだろう?だから仮面を狙うしかないな!

仮面だけを斬れる攻撃…というとやっぱり…
お前の斬れ味を試すときが来た、ということだな?
出番だ、《凛然》!

レビレビを背後に隠しつつ
仮面だけを狙い、【先制攻撃】でスパッと斬ってみせるぞ!


愛久山・清綱
今度は素破の軍勢か……何とも厄介な。
だが俺も「兵」の端くれ。このような奴らに後れは取らん。
さあ、駆けるぞ。レビレビ殿。

■闘
守りながら移動する以上、護衛対象から離れるわけにはいくまい。
もしレビレビ殿が襲われそうになったら、【武器受け】で身を挺し護る。

戦闘に入ったら素破たちに【殺気】を放って【恐怖を与える】と同時に、此方の意思を伝えてやろう。
『決して手出しはさせない』とな。

追いつかれたら大なぎなたで敵の集団を【なぎ払い】、
手出しをさせないよう立ち回る。

少し余裕が出来たら【範囲攻撃】含めの【剣刃一閃】で、
【衝撃波】を放とう。これで足止めになればいいが……

※アドリブ・連携歓迎、敵は『素破』と呼びます。


ハーバニー・キーテセラ
ではではぁ、案内人たる者としてぇ、レビレビさんの行く道を守りましょ~

召喚していた兎さん&猫さん達を合体!
スーパーな巨大兎さんにぃ!
そしたらぁ、それによいしょと乗ってぇ、擬獣合身ですぅ

基本的にはぁ、兎さんに跳んではねて駆けての機動はお任せぇ
その分、私は兎さんの上からぁ、仮面を狙い撃ちしていきますよぉ
数がどれ程であろうともぉ、早業駆使した弾丸の装填と射撃の技でぇ、全て撃ち落として御覧にいれましょ~
もしも、レビレビさんが襲われそうになるならぁ、その時は拾い上げぇ、兎さんに乗せて差し上げますねぇ
これならそのまま逃げたりぃ、乗せたまま守って戦うことも出来そうでしょうかぁ
しっかり掴まっていてくださいねぇ


ヴァルダ・イシルドゥア
暗黒面?それは、いったい……、

彼女たちが何故テレビウムたちを捕えんとするのか
全てを知るには、まだ足りない
けれど
走り抜けたその先に手掛かりがあると信じて
今はただ、守り抜くことだけを考えましょう

レビレビさんをお守りし乍ら殿をつとめます
背後からの強襲に耐えられるように、庇うを併用
槍で受け流し、柄で受け止め、なるべく傷を負わぬように
妖術が、兇刃が、レビレビさんや仲間達に届かぬように

賢者の影、ドラゴニック・エンドを主軸にして攻撃
命中力の高い仲間が仮面を狙いやすいよう
手足を狙い自由を奪うことを念頭に
槍を穿ち、影を絡め取ります

『汝、誰が為に追い求めんとする!』

答えられぬなら
……あなたの影、止めさせて頂きます



●一難去ってまた一難
 駆け出すレビレビ。追う仮面の忍者たち。
「のわわっ! また!?」
 ヴァーリャは新たな逃走劇が始まったことに驚きの声を上げつつも、すぐにその後を追う。もしかするとレビレビが敵を引き寄せているのだろうか。そんな思いが裡に巡った。
「暗黒面? それは、いったい……」
 ヴァルダも妙な感覚をおぼえ、仮面とテレビウムの後を追ってゆく。
 それらが何故テレビウムたちを捕えんとするのか。
 全てを知るには、まだ足りない。けれど――。
 走り抜けたその先に手掛かりがあると信じたヴァルダは今はただ、守り抜くことだけを考えようと決めた。
 だが、逸早くレビレビに追い縋った忍者が邪魔だ。相手は一切忍ぶ気が無いようだがその意気や良し。くくりは双眸を鋭く細め、路地裏の建物に目を向けた。
 地を蹴って跳躍したくくりは髪のUDCを用いてベランダの柵へと噛みつき、宙でくるりと回転しながら敵の前に降り立つ。
「何でござるか!?」
「かかってきたまえ仮面の忍者の諸君!」
 眼前に立ち塞がったくくりに驚く敵。更には花束が放った白い鳩が忍者たちの目を眩ますように割り込んだ。
「前が見えぬでござる!」
「今だよ、みんな」
 花束の呼び掛けに答えたヴァルダが竜槍で敵を斬り裂き、ヴァーリャがスライディングで以て白鳩の下を潜り抜けた。
「すまーん! ちょっと通るぞー!」
 仲間たちのお陰で見事に忍者を追い抜いたヴァーリャがレビレビに腕を伸ばす。
「ごめんね、ぼく走るの速くないから……」
「大丈夫! 俺たちの側ほど、今安全な場所もないからな!」
 不安げなレビレビに笑顔を向けたヴァーリャは明るく答えた。彼を肩車した少女は地面を凍らせ、トゥーフリ・スネグラチカを用いることで全速力で滑っていく。
 其処へ清綱も並び、背後から追ってくる忍者たちをちらりと見遣る。
「今度は素破の軍勢か……何とも厄介な」
 だが、己も『兵』の端くれ。このような奴らに後れは取らないとして、清綱はヴァーリャの肩の上の少年に呼びかける。
「さあ、駆けるぞ。レビレビ殿」
「うん!」
「ではではぁ、案内人たる者としてぇ、レビレビさんの行く道を守りましょ~」
 元気の良い答えにハーバニーは双眸を細め、召喚していた兎と猫に合図を送る。その瞬間、合体したそれらがスーパーな巨大兎に変化した。
 よいしょ、と兎に乗ったハーバニー。
 そして、勇敢なる獅子を召喚して騎乗したライラックが並び駆ける。
「待つでござるよ!」
「生憎、待てと言われて待つような状況じゃなくてね」
 忍びからの声に首を緩く振ったライラックは獅子に願い、速度を上げた。
 鍵が指し示すとしたら、それは扉だろうか。
 何処へ行き着くものか楽しみだけど――その為にも、更に一仕事が待っている。
 そのまま、ライラックとハーバニーは敵である紫御殿たちの前に陣取る形で駆けていく。先頭を行くのはレビレビを抱えたヴァーリャとくくり、その左右を守るのは清綱とヴァーリャ。
 そして、最後尾は花束。
 敢えて紫御殿たちの背後を駆ける花束は敵の動きをしっかりと捉えてた。忍者はテレビウムとそれを阻む者たちに気を取られており、花束にまで気が回っていない。
 その間に頭に浮かんだのはテレビウムの異変について。
「レビレビくんが無事でなによりだったね。お医者さんも怖がらないいい子だし……それにしてもソフト、ハードともに異常なしかあ」
 ますますもっておかしいなあ、と呟いた花束は頭を軽く振った。
「おっと。いけないいけない」
 今すべきことは考察ではなく、少年を守り切ること。
 前方を駆ける仲間たちの背を見つめた花束は気を引き締める。
 この先に何が待ち受けているかはまだ未知数。それでも走り抜けた向こうに何らかの答えがあると信じ、猟兵たちは前を見据えた。

●追走劇は賑やかに
「レビレビさん、次はどちらですか?」
「えっとね、こっち!」
 ビル街の路地裏を駆け、ヴァルダは問いかける。
 テレビウムの少年は自分の画面が示す方向を指さして猟兵たちを先導する。わかったのだ、とヴァーリャが先陣を切り、くくりと清綱もその後に続いた。
 そんな中、ヴァルダは背後に目を遣る。
 本当ならば自分が殿を務めようと思っていたが、今は獅子と巨大兎に乗ったライラックとハーバニーがその役目を行ってくれていた。
 巨大兎たちの身体で忍者の動きは確りと阻まれており、レビレビに攻撃が向かうことは防がれているようだ。それに――。
「隙ありでござる!」
「そうはさせません」
 レビレビの傍に居た方がビルの上から現れた仮面忍者に対応できる。
 ヴァルダは放たれた仮面手裏剣に槍を向け、飛来するそれを弾き落とした。その動きを見ていたライラックは薄く笑み、自らも敵に意識を向ける。
「そちらは任せたよ。僕達は此方だ」
「はぁい、覚悟してくださいねぇ。忍者さんたちぃ~」
 ライラックの声に間延びした口調で答えたハーバニーは兎に願い、高く跳ぶ。急な跳躍に驚いた敵が頭上を見上げた瞬間、ハーバニーのデリンジャーが火を吹いた。
 弾丸が仮面を貫き、痛みを与える。
 其処に続いてライラックが万年筆を掲げ、それをリラの花弁へと変えていった。
 紫御殿たちを包み込む花の嵐は容赦なく迸る。
 だが、敵もただ後ろだけから追うのでは効率が悪いと悟ったのだろう。先程くくりがそうしたようにビルの窓や柵へと跳び、側面からヴァーリャたちに迫る。
「捉えたでござる!」
「わわーっ!?」
 少年がぎゅっと目を瞑った瞬間、ヴァーリャは咄嗟にくくりにレビレビを投げた。
「頼むぞ、パスなのだ!」
「ああ、任せられたよ」
 仮面の一閃を間一髪で避けた彼女を確認し、くくりはテレビウムを受け取る。またパスされたあ、と肝を冷やしているレビレビにくくりはちいさく笑ってみせた。
「そういうアトラクションだと思って慣れてくれたまえ」
 そしてくくりは次はどちらに向かえばいいのかと問う。レビレビは目を回しそうになりながらも新たな方向を示した。
「こっちの方……あの曲がり角を右!」
「承知した」
 レビレビを抱えているくくりの傍、清綱は先んじて駆ける。
 何故ならばその先に敵の気配を感じ取っていたからだ。また、敵の接近に気付いたのは花束のおかげでもある。
 花束は周囲のビルのAR広告をハッキングして、先頭の仲間たちに敵の到来を知らせてくれていたからだ。
 そして清綱は今刀の切っ先を其方に向けた。
 その瞬間、飛び出してきた紫御殿が仮面狼群を放つ。
「狼共、行くでござる!」
「……斬り伏せる」
 容赦はしない、と告げた清綱は前方から迫り来る狼たちへと刃を振り下ろした。
 一太刀。それだけではなく切り返した刃で二太刀、三太刀。清綱は見る間に狼群を斬り倒して消失させた。
 彼が道を拓いてくれたと感じたヴァルダはヴァーリャと共に頷きあい、レビレビを抱いたくくりの左右を守る形で駆け続ける。
「目的地は遠いのでしょうか」
「レビレビ、大体の場所は分かるのか?」
 周囲の気配を探りながら、ヴァルダとヴァーリャは少年に問いかけた。
 すると彼はそう遠くはないと話して道案内を続けていく。
 だが、その背後では熾烈な戦いが繰り広げられていた。前方や側面から襲ってくる敵以上に、背後から追ってくる敵の数は多い。
「レビレビさんたちはぁ~、大丈夫なようですね~」
「そうだね。このまま無事で居て貰う為にも……やってしまおうか」
 ハーバニーが前方の様子を告げるとライラックが静かに頷いた。そして、くるりと背面に向き直った獅子が迫る忍者に爪を振り下ろす。
「なっ!?」
「反撃でござるか!」
 一閃を受けた一体の仮面忍者が転倒する中、残る紫御殿たちが身構えた。
 ハーバニーは弾丸を素早く装填して倒れていた敵に止めを刺す。そして更なる銃弾を放つことで敵を穿っていった。
「どれ程で襲ってこようともぉ、全て撃ち落として御覧にいれましょ~」
「頼もしい限りだね」
 ハーバニーの銃撃に信頼を覚えたライラックはふたたび花の歌声を発動させた。
 舞うリラが周囲を花の彩に染め、銃弾が躍る。更に其処へ花束が解き放った花の白鳩が飛び、敵は次々と打ち倒されていった。
「さて、ここからがぼくの出番だ」
 それまで後方支援に撤していた花束は倒れた敵に向けて力を放ってゆく。
 ――電脳花輪。デジタルブーケ・カサブランカ。
 その力は倒れた対象を情報生命体に変えて操るユーベルコード。仮面の支配を逃れた人間体は伏したまま、本体である面だけがふわりと浮かんだ。
 それらはもう花束たちの仲間だ。
「すごいですねぇ、これで百人力ですぅ」
「あとは目的地にたどりつくだけだね」
「では、行こうか」
 巨大兎の背からぱちぱちと拍手を送るハーバニーに頷く花束。そして、先を示したライラックが獅子と共に駆けてゆく。
 敵を倒すために立ち止まったことで少し後れを取ってしまったが、これで背後から追われることはなくなった。
 されどビルの向こうには新手の仮面忍者たちも現れているようだ。
 花束は仲間にした忍者たちを先行させ、ハーバニーが乗る兎も大きくジャンプした。ライラックは皆の無事を願いながら、テレビウムの少年を思う。
「……必ず送り届けるからね」
 零れ落ちた言葉はビルの合間に吹いた風に乗り、静かに消えていった。

●最後の足止め
 追手の数は減ったといえど、敵が放つ攻撃は激しい。
「仮面合身の術でござる!」
「仮面手裏剣の術でござる!」
 ヴァルダはそれらを槍で受け流し、柄で受け止めた。なるべく傷を負わぬように――そして、妖術や兇刃がレビレビや仲間たちに届かぬように、と。
 謎の仮面忍術を駆使してくる紫御殿たちに対抗し、清綱も刃を振るい返し続けた。近くのファッション看板と合体した忍者の腕と今刀が衝突し、甲高い音が響く。
「俺がそのような妙な物に押し負けると思うか」
「くっ……小癪な、でござる」
 鍔迫り合いのような形で拮抗する両者。
 清綱の気迫が敵を気圧しはじめる最中、ヴァーリャも別の敵を相手取っていた。
 自動追尾する白の仮面が此方の動きを封じようとするが、ヴァーリャはそれを高く蹴り上げる。氷の刃が仮面を真っ二つにするが、次の一手が放たれた。
「仮面狼群の術でござる!」
 その一声と共に仮面を被った狼の群が迫る。ヴァーリャとヴァルダは何とか壁を背にしていたが、くくりは背後を取られてしまっていた。
「危ないのだ!」
「おねえさん、うしろ!」
 ヴァーリャが注意を呼びかけ、レビレビもくくりに危機を報せる。あわや背から牙が突き立てられる――と、思いきや。
「仮面は食べ飽きたのだが、狼はどうかな」
 落ち着いたくくりの声が響き、狼は髪に宿る赤くて黒いUDCに喰らいつかれた。
 きゅうん、と悲痛な鳴き声をあげた狼が瞬く間に消失する。
「幸い、後ろを向いている方が戦いやすいんだよ、私の場合はね。さて、レビレビくんを頼んでいいかな」
 そういってヴァルダへとテレビウムを手渡したくくりはクラウとソラスの名を冠するグルメツールを構えた。
 くくりがUDCと共に敵に刃を向け、噛み付く。そんな中でヴァルダは改めてレビレビを守る覚悟を決めた。
「レビレビさん、大丈夫ですか?」
「な、なんとか平気だよ~。それよりも、あと少しで到着できるみたい!」
「それならば、こいつらをやっつけてしまうのがいいな!」
 あのビルの向こうだとレビレビが示す先を見遣り、ヴァーリャは敵を見据える。
 敵は仮面が本体。
 刀を構えたヴァーリャはただ一点に集中した。
「お前の斬れ味を試すときが来た、ということだな? ――出番だ、《凛然》!」
 刃の名を呼び、一刀を振り下ろす。
 その軌跡は雪花の如く。仮面だけが切り裂かれて地に落ち、操られていた身体が力を失った。
 清綱はヴァーリャの見事な刃捌きに目を見張り、ならば、と自らも打って出る。
 レビレビはヴァルダがしっかりと守ってくれていた。仲間に信頼を預けた清綱は自分が相手取っていた敵の腕を刃で弾く。
 標的の体勢が揺らいだ刹那、清綱は剣刃をひといきに払った。
 それによって敵が倒れる。
「――新手か?」
 だが、清綱は妙な気配を感じて振り返った。其処には情報体らしき仮面がいくつもふわふわと浮かんでいる。思わず身構えたが、それはすぐに解かれることになる。
「だいじょうぶだよ。これは僕の力であやつっているんだ」
 耳に届いたのは花束の声。
 そして、花束と一緒に此方に追いついたライラックとハーバニーの姿が見えた。
「お待たせしたかしらぁ」
 ハーバニーがひらひらと手を振ればレビレビもぶんぶんと両手を振り返す。ヴァルダはライラックが乗る獅子へと駆け寄り、それまで抱いて守っていたレビレビをその背に乗せた。
「目的地はこのビルの向こうのようです」
「ああ、わかったよ。……全く、執拗な物だね」
 ライラックはレビレビをそっと撫でたあと、皆に目配せを送る。
 執拗だという言葉はビルの反対側から現れた新しい追っ手に向けられたものだ。くくりが頷き、花束もやれやれと肩を落とした。
 花束は向き直り、さあ行って、とライラックたちに告げた。
「たいへんだろうけど、もう一働きしてもらおうか。仮面くんたち、頼むよ」
「手出しはさせぬ。足止めは任せておくといい」
 花束が仲間にした情報体に願う傍ら、清綱も敵の相手を担うと示す。ハーバニーとライラックはレビレビを連れて行く役割を受け入れ、一気に駆け出した。
「しっかり掴まっていてくださいねぇ」
「みんな、気をつけてね!」
 ハーバニーの兎が高く跳躍し、レビレビはこの場に残ると決めた者たちへとエールを送る。少年の瞳にはもう心配の色は映っていなかった。
 何故なら、これまで守ってくれていた彼らの強さを信じているからだ。
「大丈夫なのだ。ここを片付けたらすぐに追いつくぞ!」
 ヴァーリャはライラックたちに連れられていくレビレビに呼び掛け、ぐっと身構えた。信じてくれている気持ちが分かるからこそ力も入る。
「おのれ、邪魔をするならばこうでござる!」
 忍者たちが次々とファッションビルの看板と合体していく様を見遣り、くくりは軽く舌舐めずりをしてみせた。
「大丈夫、私は無機物だっていけるクチさ」
「喰らうその様、見届けさせてもらおう」
 これまで見てきたようにくくりが敵を喰らい尽くすつもりだと悟った清綱は、その隣に並び立つ。そして彼女の援護をするべく一気に衝撃波を放った。
 フォークを構えたくくりが敵を薙ぎ払い、UDCで真正面から喰らいついていく。
「みんな、なかなかやるものだね」
 更に花束が情報体仮面を敵の仮面にぶつけて足止めし、ヴァルダも竜槍を構えた。白仮面が衝突する中で槍で敵を穿ち、影を絡め取る。
「汝、誰が為に追い求めんとする!」
 その問いかけに忍者たちは答えず、ただ此方を蹴散らさんとして向かってきた。ヴァルダはこの一閃が少年を守るものになると感じ、敵を強く見据える。
 そして――。
「答えられぬなら……あなたの影、止めさせて頂きます」
 凛とした意志を感じさせる言葉と共に、すべての敵を貫く一撃が解き放たれた。

●目的地にて
「ここだよ、ここ! 着いたよっ!」
 ライラックの獅子の背の上からレビレビが奥まった路地を指さした。
 他の仲間たちのおかげでハーバニーらを追う仮面の者は皆無。辺りを見渡したライラックはこの場所に何があるのかと探る。
「あらぁ、何の変哲もなさそうな場所ですね~」
「そのようだね。本当に此処なのかい?」
 ハーバニーが首を傾げ、ライラックはレビレビに確認しようと振り向く。
 だが、その瞬間。
「何……どうして……何なのコレ――!?」
 テレビウムの少年から驚きの声が上がり、その場が眩い光に包まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『天竺牡丹』

POW   :    わたしのモノになっちゃえ!
【天竺牡丹に恋する矢】が命中した対象に対し、高威力高命中の【恋慕の情】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    大活躍の予感!
予め【使い魔の時計版がぐるぐる回る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ   :    一緒にがんばろ?
【異性を魅了する声と仕草】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。

イラスト:彩

👑7
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●天竺牡丹と光の導
 テレビウムの画面に映った鍵が指し示したのは何の変哲もない路地裏だった。
 三方をビルの壁に囲まれた行き止まり。
 敵をすべて倒した猟兵たちが其処に辿り着いたとき、新たな異変が起こっていた。
 眩い光。
 目を瞑りたくなるほどの強い明滅。それはレビレビ自身から放たれている。
「う、うう……僕のからだ、どうなっちゃってるの!?」
 レビレビは蹲ってしまっていた。
 痛みなどはないようだが自分からは動けないらしい。移動させようにもこの場所に彼が共鳴しているような雰囲気も感じられ、レビレビ自身も動きたくないと首を振る。

 どうすることもできずに猟兵たちは考え倦ねる。
 そんなとき、行き止まりの路地裏に甘い声が響いた。
「みぃーつけたっ!」
 振り向くと其処には愛らしい少女がいた。半分に割れたハートのような仮面に黒い羽。傍らには使い魔の時計版。手にはキューピッドめいた可愛い弓矢。
 一見すれば幼子のようだが、猟兵たちには分かる。
 彼女はオブリビオン。それもかなり強い力を秘めた存在だ、と――。
「その子がそこにいると困るの。だからね、みんなまとめて死んでもらうよ!」
 明るく告げる少女はくすくすと笑った。
 そして、自らを天竺牡丹だと名乗った彼女は弓矢を此方に差し向けた。
「あははっ、もう逃げられないよ。みーんな、ロックオンしちゃうんだからっ」

 その間も光り続けるテレビウムの少年。
 此方に向けられるオブリビオンから敵意。退路はなく、此処で戦う他ない。
 猟兵たちは其々に武器を構えて頷きを交わし、戦う覚悟を固めた。
花畑・花束
はて。…はて? …あっ 追いつめたつもりなのかあ。
あんまり楽しそうだとぼくも楽しくなっちゃうなあ。

確かに行き止まりだね。だけどどうやら目的地でもあるみたいだ。
ここから先は陣取りゲームにも、撤退戦にもならない。
レビレビくんを守り通せばいい。防衛戦だ。

改めて【電脳花輪】リリーベル。鳩のプログラムをたくさん呼んでおこう。
彼女の妨害に3、みんなの支援に3、レビレビくんの護衛に4回す、ってところかなあ。
ぼく?《ハッキング》で鳩たちの性能を随時アップデートしていく。かれらには学習能力がないからね。
こうやって外からリアルタイムに情報を継ぎ足してあげるわけさ。

…。

め、めっちゃつかれるけどね…!


八津崎・くくり
ああ、もう逃げる気などない
返り討ちにしてやろうじゃないか

クッキングツールを手に近接戦闘を挑む
多少の負傷は気にしない。射られた程度、この私には…
!?

ぐ、ぐお…何だこの感情は…心臓が、高鳴る…!?
使命は使命だ、戦いは続けるとも。だが、くっ、あのオブリビオンと敵対する状況が本当に心苦しい
何と言う愛くるしさ、笑顔が眩しい
私には到底手の届かないもの

これが、恋慕。これが、恋
初めて味わうものだが、これは、何だかとても、とても――

――食欲に似てるわ

ああ、君は可愛い。本当に、食べてしまいたいくらいだよ
ユーベルコードを発動。このときめきを牙にして
それでは、いただきます

無事だろうかレビレビ君
……恐ろしい、敵だったね


愛久山・清綱
残る敵は此奴だけか。
一体だけではあるが、確かな力を感じるな。

だが、勝てないというわけではあるまい。
此処で終わらせてやろう。

■闘
相手の技は、高威力のものが多いな。
攻撃を【野生の勘】で予測しつつ【見切り】、少しでも被弾を
減らしたいところだ。

だが、やはり動けないレビレビ殿を優先的に守らねばならん。
彼に攻撃が飛んで来たら、かわそうとせず【武器受け】で守ろう。

此方は【フェイント】で翻弄しつつ、無防備になっている部位に
【鎧無視攻撃】の太刀を放ち、斬られる【恐怖を与える】。
少しでも相手の力を削ぎたいところだ。

好機が来たら攻撃力重視の【夜見】を仕掛け、大ダメージを狙う。

※アドリブ・連携歓迎です。


ハーバニー・キーテセラ
ふふふ~、弓矢の心得があるのでしょうかぁ
奇遇ですねぇ。私はぁ、銃の心得が多少ばかりぃ
貴女が弓矢でハートを撃ち抜くならぁ、それよりも早く私が貴女のハートを撃ち抜いてさしあげましょ~

レビレビさんを身体で影と隠しつつ、敵さんと相対ですぅ
跳んではねてといきたいところですがぁ、狙いに含まれているレビレビさんも動かせない以上はぁ、致し方ありませんねぇ
兎の早業、とくとご覧あれぇ
ぐるぐる回る使い魔もぉ、飛来する矢もぉ、みぃんな纏めて撃ち落としてさしあげますぅ
それにぃ、鳴りやまぬ銃撃音があればぁ、その声も届きにくくなるでしょ~?

案内人と言ってもぉ、相手は見ますよぉ
貴女の望む未来への案内はぁ……お断りです


ライラック・エアルオウルズ
【POW】

どうやら、此処が『扉』な事は間違いない様だ
貴方が困ると言うのなら。
この状況が此方に有益な物であると云う事も、ね

軽率に近寄るには厄介な相手だから、
⦅見切り⦆で隙を突く様に攻撃を
⦅高速詠唱⦆で⦅先制攻撃⦆を試みて、
『■■■』での一撃を確実に通す様に
可能なら弓を狙って⦅武器落とし⦆、
一時的にでも敵の攻撃を妨害したい所だね

相手の矢等は『鏡合わせの答合わせ』で、
目前に鏡を展開して⦅カウンター⦆を
必要に応じて皆やレビレビさんも⦅庇おう⦆
…恋慕振り撒く貴方には悪いけれど
今回のジャンルは冒険のみで行かせて貰うよ

――然し、何が起こるか解らないから心配だな
でも。きっと。答えまでもう少しだよ、レビレビさん


ヴァルダ・イシルドゥア
レビレビさん……!

……ええ、ええ
ここにあなたという鍵が必要とされるならば
私はそれを守りましょう
あなたのことも……鍵の指し示す、『なにか』も

魔を手繰るもの、悪しき御使いよ
誰一人として欠けさせはしません
月の御名において、我が身は魔を裂くひかりとならん!

流星槍を主軸に仲間とレビレビさんを守りながら戦う
自分を含むHPが半分以下の仲間が居る場合生まれながらの光で回復を優先
庇うを併用し出来る限り仲間が倒れないように
そして、レビレビさんが傷を負わないように尽力

戦闘後は皆の治療と、レビレビさんの行く末を見守ります
そうしたら……ふふ、サインでしたね
なんだかちょっぴり面映いです
さあ、みんなでおうちに帰りましょうね


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
なんだ!?レビレビが光り始めた…ってまた敵か!

お前、レビレビがどうなっているのか知ってるのか?
むむ…わからんが、ここで倒さねばならないのは明白なのだな!

敵は羽を持っていて飛ぶ可能性もあるから、【ジャンプ】を駆使しつつ
氷の【属性攻撃】と【二回攻撃】、そして武器と蹴り技を使い分けつつ戦う

矢を射ってくるタイミングは【第六感】で察知、【ジャンプ】で回避

凍結や他の人の攻撃による怪我により、動きが鈍くなって来たなら
【ジャンプ】と共に『亡き花嫁の嘆き』を食らわせる

無事に終わったら、慌ててレビレビに駆け寄り
大丈夫か、レビレビ!
一体どうやったら光が収まるのだ?
俺はこういうのに弱いし…な、なんとかしてやりたいぞ!



●二度あることは三度ある
 危機のち危機。
 今の状況を表すならばそんな言葉が相応しいだろうか。
「なんだ!? レビレビが光り始めた……ってまた敵か!」
 ヴァーリャはあまりの眩さに思わず目を瞑っていたが、敵がこの場に訪れたと気付いて慌てて瞼をひらいた。
 割れたハートめいた仮面の奥から鋭い眼差しが向けられる。
 背は壁。左右もまた壁。目の前には視線の主であるオブリビオンの少女。
 自分たちだけならばビルを飛び越えて逃げることも出来る。だが、今はそんなことなど出来ないし、する気もなかった。
 何故なら、自分たちは最後まで少年を守るのだと心に決めたのだ。
「……ええ、ええ。ここにあなたという鍵が必要とされるならば――」
 私はそれを守りましょう、と静かに告げたヴァルダはレビレビの手を優しく握る。
 あなたのことも、鍵の指し示す、『なにか』も。
 必ず、と約束したヴァルダの言葉に少年は安堵を抱いたようだ。光は消えないが、焦りが少しだけ消えた雰囲気を感じ取り、ライラックはレビレビの前に立つ。
 どうやら、此処が『扉』な事は間違いない。
 そう判断するに至った理由は目の前に現れた少女、天竺牡丹にある。
「貴方が困ると言うのなら、この状況が此方に有益な物なのだろう、ね」
「むっ、袋のネズミのくせに生意気!」
 ライラックの的確な状況判断にぎくっとした敵は気まずそうに弓を弄った。その様子を見たハーバニーは双眸を緩め、ヴォーパルを軽く握ってみせる。
「ふふふ~、弓矢の心得があるのでしょうかぁ。奇遇ですねぇ」
 私は銃の心得が多少ばかりぃ、と得物を構えたハーバニー。その傍ら、くくりは先ほど敵が言っていた言葉を思い出していた。
 もう逃さない。彼女はそのようなことを口にしていた。
「ああ、もう逃げる気などない」
 返り討ちにしてやろうじゃないか、と告げ返したくくりは己の得物である喰と逸を構える。
 花束と清綱も敵の真正面に陣取り、レビレビを背に守っている。
「はて。……はて? ……あっ 追いつめたつもりなのかあ」
 天竺牡丹の言葉の意図を一拍遅れて理解した花束は、傾げていた首を戻した。向こうはそのつもりのようだが此方はそうではない。
 清綱も今刀を構え、天竺牡丹を見据えている。
「残る敵は此奴だけか」
 これまでとは違って一体だけではあるが、確かな力を感じた。一筋縄ではいかぬ相手だと察した清綱は花束たちに視線を送る。
 皆で協力して戦うことが勝利の鍵となるはず。
 ハーバニーとくくりは頷き、花束も同意を示すと同時に己の力を紡いだ。対する天竺牡丹は余裕の表情を浮かべ、使い魔の時計版を爪先でこつんと蹴り上げる。
「それじゃいっくよー!」
「お前、レビレビがどうなっているのか知ってるのか?」
 明るい声をあげた天竺牡丹に向け、ヴァーリャは問いかけた。しかし少女はとぼけた様子でくすくすと笑う。
「さあ? どうかなあ」
 ぐるぐる回る針は彼女に魔力を送っているらしく、悪意が増幅されていく気配が感じられた。なかなか厄介な存在のようだと感じたヴァーリャは仲間に視線を送る。
「むむ……わからんが、ここで倒さねばならないのは明白なのだな!」
 まずはあの時計を、と示したヴァーリャに続いてヴァルダが竜槍を構えた。
「――魔を手繰るもの、悪しき御使いよ。月の御名において、我が身は魔を裂くひかりとならん!」
 跳躍したヴァーリャの蹴撃が使い魔の時計板を穿つ。ヴァルダも光を纏う槍先を一気に突き放ち、回転する針の動きを止めた。
「わっ、止められちゃった」
 天竺牡丹は力の供給が阻まれたことに肩を落とす。だが、その仕草からは相当な余裕が滲み出て見えた。
「あんまり楽しそうだとぼくも楽しくなっちゃうなあ」
 花束は周囲に情報生命体である花の白鳩を召喚し、一気にそれらを解き放つ。
 確かに此処は行き止まりだ。だけどどうやら目的地でもある。
 ここから先は陣取りゲームにも、撤退戦にもならない。ただレビレビを守り通せばいい、完全なる防衛戦だ。
 そのように考えた花束の鳩たちが敵に向かって羽ばたく。
 ライラックは其処に機を合わせ、宙に黒いインクで鋭い軌跡を描いた。
「その余裕もいつまで持つだろうね」
 敢えてライラック挑発めいた言葉を向けたのは、そうした方が与し易い相手だと感じたゆえ。それに軽率に近寄るには厄介な相手だと分かっている。しかし白き鳩も黒の一閃も天竺牡丹が放った矢で相殺されてしまった。
「ふふーん。お前たちなんか一捻りだってこと、教えてあげる!」
 得意げに笑んだ天竺牡丹は悪しき意思の宿る瞳で猟兵たちを睨み付けた。

●恋と求めるもの
 更に敵はもう一度、使い魔に力を紡がせていく。
 おそらくこのままでは相手が放つ矢の威力がどんどん上がっていくだけだ。
「まずはぁ、邪魔なそれを砕いてさしあげましょ~」
 力の増幅を阻止するのが先決だと察したハーバニーは銃爪を引いた。瞬時に撃ち放たれた銃弾が時計の一部を欠けさせ、その動きを大きく阻害する。
「もう、何度も邪魔しないでよ!」
 敵は頬を膨らませて此方を睨みつけ、きりりと弓を引き絞った。その狙いが花束に向けられていると気付いたくくりはグルメツールを交差させ、一閃を弾き返そうと狙う。
 されど天竺牡丹の矢は予想以上に疾かった。
 喰の刃で軌道は逸らしたものの、勢いを削ぎきれなかった矢がくくりの腕を貫く。元より多少の負傷は気にしないつもりのくくりは体勢を立て直した。だが――。
「射られた程度、この私には……、……!?」
 敵の弓は恋する矢を放つもの。
 その効果によってくくりの中に恋慕の情が植え付けられ、思考が掻き乱される。
 清綱は胸を押さえた仲間の前に踏み出し、大丈夫かと問いかけた。俯いたくくりから返答はなかったが、致命傷ではなかったことだけは分かる。
「その矢は厄介だが、勝てないというわけではあるまい」
 逃走劇も戦いも此処で終わらせる。
 そう誓った清綱は敵の動きを注視しながら、レビレビに攻撃が向かわぬよう立ち回った。無差別な矢が幾度も飛んできたが刃を斬り返して弾く。
 清綱の果敢な行動にヴァーリャは幾度か眸を瞬き、信頼の気持ちを胸に抱いた。
「矢の方は任せるぞ。俺は攻め込ませてもらうのだ!」
 氷の力を紡ぎあげ、ヴァーリャは跳ぶ。一瞬で肉薄するほどに近付いた彼女は靴裏のブレードで天竺牡丹を穿とうと狙った。
 しかし、咄嗟に身を引いた敵はヴァーリャの一撃を躱してしまう。更に追い縋ろうとしたそのとき、反撃として矢が放たれた。
 だが、ヴァーリャと天竺牡丹の間に白い鳩が割り込む。
 一瞬で矢を受けて消滅したそれは花束が仲間の援護用に飛ばしたプログラムだ。
「大丈夫? まともに受けたらあぶないからね」
 花畑が示したのは先程、矢を受けたまま俯いてしまっているくくりの姿。
「ぐ、ぐお……何だこの感情は……心臓が、高鳴る……!?」
 その様子にヴァルダは妙な胸騒ぎを覚え、聖なる光を解放した。
「たとえ誰一人として欠けさせはしません」
 レビレビは勿論、この場に集った仲間もすべて。
 ヴァルダの力はくくりを癒やしたが、ライラックも妙な雲行きを感じていた。
「あの矢はもしや、何かの影響を――」
 黒き一閃で応戦するライラックが何かに思い至った次の瞬間、くくりは顔を上げる。それまでとは打って変わり、彼女が天竺牡丹に向ける視線には熱が宿っているように見えた。
 すると、敵がけらけらと笑う。
「あははっ、やっとわたしのモノになったね!」
「何と言う愛くるしさだろうか、笑顔が眩しい……」
 天竺牡丹の笑みには邪悪さが混じっていたが、ハートの矢に心を奪われたくくりにとっては愛おしく感じるらしい。
 熱病に浮かされたかのようなくくりの様子は妙だ。天竺牡丹が、これであの子は私の手下だと得意げに胸を張ったことで、ライラックは自分の予想が当たっていたと悟る。
 清綱も身構え、仲間が惑わされたのだと理解した。
「気を付けろ。こうなっては乱戦になる」
 仲間に注意を呼びかけ、どう戦うべきかと清綱は思案する。
 だが、事は動きはじめた。
 ああ、と呟いてくくりは手を伸ばす。けれどそれは自分には到底手の届かないもの。
 これが、恋慕。これが、恋。
 初めて味わうものだが、これは、何だかとても、とても――。
「――食欲に似てるわ」
「ふええっ! なんで私に攻撃してくるの!?」
 くくりがそう言葉にした瞬間、喰の刃が天竺牡丹の鼻先を掠めた。間一髪で避けた敵は宙に飛び上がって驚く。
 もし仲間が敵の手下と化したとしても一撃で動きを止める準備をしていたハーバニーは、あらあらぁ、と目を細めた。
「心配はぁ、なかったようですねぇ」
「ほっとしたのだ。つまり、アレだな!」
 ヴァーリャも仲間と敵対することにならず良かったと思い、くくりから逃げ惑いはじめた天竺牡丹を追って駆ける。花束も悪い方向にならずに済んだことに安堵を覚え、ヴァルダも胸を撫で下ろした。
「恋しくて食べてしまいたいほど、という感情になってしまったようだねえ」
「恋にも様々な種類があるのですね……」
 花束は鳩たちの性能を追加していき、ヴァルダもレビレビを守りながら竜槍を構え直す。天竺牡丹は空中で地団駄を踏み、滅茶苦茶に矢を放ってきた。
「こんなはずじゃなかったのに……っ!」
「残念だったな、手の内は既に見切った」
 だが、清綱はすぐさま敵の動きに反応する。
 飛来した矢を今刀で全て弾き返し、彼はレビレビを庇い続けた。ヴァルダも流星を思わせる光を纏った槍で以て矢を落とし、仲間たちを守ってゆく。
「これ以上の攻撃は通させません」
「……恋慕振り撒く貴方には悪いけれど、今回のジャンルは冒険のみで行かせて貰うよ」
 更に弓が引き絞られたが、ライラックが掌を掲げる。其処に現れた魔法の鏡は恋の矢を反射して打ち消した。
 ハーバニーは矢への対応を皆に任せ、銃口を標的に向ける。
「貴女が弓矢でハートを撃ち抜くならぁ、それよりも早く私が貴女のハートを撃ち抜いてさしあげましょ~」
 ――兎の早業、とくとご覧あれぇ。
 続けて告げた言葉と同時に銃弾の雨が天竺牡丹へと降りそそぐ。当初の余裕も何処へやら、敵の呼吸は乱れはじめていた。
「むうう、これってまずいかも。もっともっと力を溜めなきゃ!」
 天竺牡丹は使い魔を蹴り上げて魔力を寄越して貰おうと狙う。だが、ヴァーリャとくくりが左右から迫ったことで時計版から意識が逸れてしまった。
 すかっと空を切る爪先。一瞬の間。
 くくりは無防備になった天竺牡丹を狙ってグルメツールを掲げ、ヴァーリャは使い魔を穿つために高く跳躍した。
「もうぐるぐるするのも終わりなのだ……!」
 落下の勢いが最大になる瞬間を見計らい、ヴァーリャは氷刃を生成する。地面に落ちた時計板の使い魔はその冷気に包まれ、鋭利な一閃によって粉々に砕かれた。
「ああーっ、わたしの使い魔ちゃん!」
 嘆く天竺牡丹を見据え、くくりはちいさく笑う。
「ああ、君は可愛い。本当に、食べてしまいたいくらいだよ」
 この胸に宿るときめきを牙にすれば本当に喰らえるだろうか。たとえこの気持ちが偽物でも、喰らいたいと感じたならば今すぐ喰らうだけ。
 ――それでは、いただきます。
 そんな声が落とされた刹那、捕食形態に変容したくくりのUDCが大きく口を開けた。

●ちいさな恋の終幕
 そして、黒い羽が辺りに散る。
 UDCが血の付いた羽根を貪り食う中、天竺牡丹は弓を支えにして何とか立っていた。その脚は震え、身体に力が入っていないようだ。
「ここまで、だね」
 ライラックはオブリビオンとしての少女の命が風前の灯火だと感じていた。
 だが、彼の言葉に首をぶんぶんと振った天竺牡丹は弓を構え直す。
「そんなことないっ! まだまだ、いける……!」
「ぐるぐる回る使い魔はもういませんしぃ、飛来する矢もぉ、みぃんな纏めて撃ち落としてさしあげますぅ」
 案内人と言っても相手は見る。
 貴女の望む未来への案内は――お断り。
 足掻こうとする彼女を見つめるハーバニーはもう遅いのだと静かに告げる。
「うるさい、うるさーい!」
 それでも天竺牡丹は恋する矢で再起を図ろうと狙っていた。されど花束がそれを赦さない。花束が花鳩に突撃を願えば、白い羽が矢にぶつかって舞った。ハッキングとアップデートを重ねに重ねた花束はこれで自分の役目を確り果たせたと感じる。
「め、めっちゃつかれたけど……もう何もさせないよ」
 既に勝負は決したようなもの。
 くくりへの恋矢の効果はもう失われており、あれほど熱烈だった恋慕の情も綺麗さっぱり消え去っていた。
「それじゃあ終わりにしようか」
「ええ。戯れに人の心を玩ぶのならば、致し方ありません」
 くくりの言葉にヴァルダが答え、頷いた清綱は刃の切っ先を的に向ける。
「慈悲は与えぬ。これで――」
 終幕だ。
 そう告げた瞬間、清綱が刀を振り下ろした。魂を断ち斬る一太刀は瞬く間に天竺牡丹の身を斬り裂き、戦う力を全て奪い取る。
「あーあ、負け……ちゃった……」
 少女は虚ろな瞳を猟兵たちに向け、その場に倒れ伏した。
 これでオブリビオンは倒せた。しかしヴァーリャはレビレビの身体から放たれる光が一向に収まらないことに不安を抱きはじめていた。
「一体どうやったら光が収まるのだ? 俺はこういうのに弱いし……」
 なんとかしてやりたいと願うヴァーリャの声を聞き、伏したままの天竺牡丹はくすっと笑った。そして、掠れ声で告げる。
「それだったらねぇ、きっともうすぐ――」
 収まるよ、という声が落とされたときにはもう、少女は躯の海へと還っていた。
 顔を見合わせる猟兵たちがその言葉の意味を知るのは、そのすぐ後だった。

●テレビウム・アンロック
「やった! ぴかぴかが収まったよー!」
 それまで蹲っていたテレビウムの少年が元気よくぴょこんとジャンプした。
「本当だな。大丈夫か、レビレビ!」
「うん、へいきへいき~!!」
 駆け寄ったヴァーリャは抱きついてきた少年を受け止め、本当に光が消えていると喜んだ。くくりも傍に歩み寄り、その頭をぽんぽんと撫でてやった。
「無事なようだねレビレビ君。……恐ろしい、敵だったね」
 仮面に忍者、恋の矢の使い手。
 其々の敵を思い返したくくりは、よく頑張ったね、とレビレビを褒めてやる。
 花束も少年の調子を診るために近付いた。みれば、今まで彼の顔に映っていた鍵の映像もなくなっている。
「おや、完治……と言ってもいいかわからないけれど、なおったみたいだね」
 花束は画面を示す。
 すると、不意に周囲のビルから誰のものでもない声が響きはじめた。
『システム・フラワーズより緊急救援要請』
『全自動物資供給機構『システム・フラワーズ』に、侵入者あり』
『テレビウム・ロックの解除数が多ければ多いほど、開放されるメンテナンスルートは増加する。至急の救援を請う』
 その音声はまるで建造物そのものが喋っているかのようだ。
「何だ、これは……」
「システム・フラワーズですかぁ、不思議ですねぇ」
 清綱は周囲を警戒したがそれ以上の異変はなく、ハーバニーも謎の音声から聞き取れた単語に首を傾げる。ライラックも暫し辺りを注意して見てみたが、疑問が浮かぶだけで何の答えも見つからなかった。
「えっと……ぼく、変なことしちゃった?」
 レビレビも不安そうにきょろきょろしている。
 そのことに気付いたライラックは緩く頭を振り、もう平気だと少年に伝えた。
「鍵も解除されて、もとに戻った。何も悪いことはないよ、レビレビさん」
「はい、誰も怪我もせず無事ですから」
 ヴァルダも心配を与えぬよう微笑み、今は画面が戻ったことを喜ぼうという旨を話す。仲間たちもそっと同意し、一先ずの任務は達成したことを確かめあった。
 謎は残るが、それもきっといつか分かる。
「深く考えるのは後にするか」
「ビルもうんともすんとも言わなくなったからね」
「難しいことは持ち帰って考えるのがいいのだ!」
 清綱はそうであれと願い、くくりとヴァーリャも頷きを交わした。
 そうしてハーバニーはレビレビの画面が笑顔になっていることに気付く。
「レビレビさん、何だか嬉しそうですぅ」
「うん、だって猟兵さんに助けてもらったからね。嬉しくないわけがないよ!」
 テレビウムが映す表情はただの映像に過ぎない。しかし、その感情が本物だという証は確かに此処にあった。
 そして、レビレビは猟兵たちを見渡してからお願いがあるのだと話す。
「あの……」
「何かな、僕達で出来ることなら何でも」
「そうだね、言ってごらん」
 ライラックが遠慮せずにと告げ、花束も少し屈んでテレビウムと目線を合わせた。するとくすりと笑んだヴァルダが予想を口にする。
「わかりました。……ふふ、サインでしたね」
 ヴァルダは最初に彼と邂逅したときのことをちゃんと覚えていた。
「そう! あのねあのね、みんなのサインくださいっ!」
 真っ直ぐに願われたことが何だかちょっぴり面映くて、猟兵たちは無邪気な少年に微笑ましさを覚える。
 そんなことくらいなら喜んで。
 そうしてささやかなサイン会が終わったら――さあ、みんなでおうちに帰ろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月29日


挿絵イラスト