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たった今思いついた愛の言葉をその辺にいる君に送るよ

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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 悲しい。
 寂しい。
 苦しい。
 恋しい。

 人と人とのつながりを、“ソレ”は求める。
 愛しているから傷ついて。
 恋しているから痛むのだ。

 受け入れよう。
 掬い取ろう。
 慰めよう。
 睦み合おう。

 私はここで待っています。
 まだ見ぬあなたを。
 まだ居ぬあなたを。

 ああ。
 だけど、私の言葉は届かない。

 ☆

『君の瞳……とてもキュートだ。どうだろう、僕に一晩その輝きを預けてみないかい?』
『え~、どうしよっかなぁ~』
『頼むよ、僕だけのお姫様……僕を君だけの騎士にしておくれ』
『きゃ~、だいた~ん! も~、しょうがないなぁ~』
 ぶつん。
 グリモアベースに映し出されていた予知の映像が途切れた。
 ものすごく雑なやり取りに、すでにゲンナリした様子の者すら伺える。
 
「ナンパしようぜ!」
 しかしそんなこた知ったこっちゃねえと言わんばかりに、ミコトメモリ・メイクメモリア(メメントメモリ・f00040)は集まった猟兵達に開口一番そう告げた。

「へいへいへーい帰っちゃ駄目だよボーイズ&ガールズ! これは真面目な依頼なんだからね! さて。事件が起こるのはキマイラフューチャー! ご覧の通り、十代の若いキマイラたちが怪人にナンパされてるんだよ」
 怪人にナンパされている。
 もう一度言おう。
 怪人に、ナンパされている!

「で、ナンパが成功して口説き落とされたキマイラ達は、どこかに連れて行かれちゃってその後消息不明。見えてる予知の限りだと、彼らが帰ってくることはない――んだよね」
 そこでようやく、ミコトメモリが発する声のトーンが平静に戻った。
 ふざけた話ではあるものの、たしかにそう言われれば、非常事態と言っても差し支えない。

「怪人達はなぜか、『愛を求めている』相手を探し出すのが上手なんだ。そしてその言葉は、毒のように心に染み込んでくる……この人なら、私を愛してくれるかも、って思わせてしまうんだ。実は結構、危ない相手なんだよね」
 どんな裏があろうと、怪人はその甘い言葉でキマイラたちを惑わせる。

「まず怪人からターゲットを、『ナンパ』で横取りしてほしいんだ。一緒に食事をするも良し、遊びに行くも良し。もしターゲットに『いや、でも怪人のほうが面白そうだし』って思われたらそれまで。巧みな話術とシチュエーション作りに期待するよ」
 ちなみに。

「ナンパで負けそうになったからって、強引に連れていったり、怪人を物理的に倒したり……猟兵の能動的な攻撃行為を確認した場合、怪人たちは即座に引き上げて、以降この事件は収束するよ」
 ただし。

「その場合、“もう連れ去られたキマイラ達”の救助ができなくなる。だから…………ナンパで口説くしか無いんだ、わかるね!?」
 ナンパしかない。
 もう一度言おう、繰り返す。
 ナンパしか、ないのだ!

「さあ、頼むよ猟兵達。たった今その場で思いついた適当な口説き文句で、キマイラたちをメロメロにしてあげて!」


甘党
 こんにちは、甘党MSです。
 皆さんにはナンパをしていただきます。
 これは真面目な依頼です。いいね?

 第一章では、皆さんにはナンパをしていただきます。
 キマイラフューチャーのナウでヤングな、しかし愛に飢えてる若者たちです。
 怪人はキマイラから見た美男美女であり、ペラペラと甘い言葉を囁いています。
 口説かれている所に割り込むか、声をかけられる前に声をかける感じになります。
 男が女を口説いても女が男を口説いても男が男を口説いてもいいし女が女を口説いてもよいです。
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第1章 冒険 『ときめき★ナンパバトル』

POW   :    情熱的な口説き文句を放つ

SPD   :    美辞麗句をひたすら並べ立てる

WIZ   :    ナンパが成功する状況を計算し導く

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

非在・究子
【SPD】
ぐっ、ぐふふっ。
りょ、猟兵としての、で、デビュー戦だ。
ど、どんな、敵が待ち構えてるのか、た、たのしみ、だ。
……えっ、な、ナンパ? ぐ、ぐぇーっ……そ、そんなの聞いてないぞ?
や、やらなきゃ、ダメか? そ、そうか……
し、仕方、ない。れ、恋愛ゲームで、つ、つちかった、経験を、いかすしか、ない、か。
……は、はじめる前に、【セーブ】しておく、ぞ。
そ、それで、ナンパの、結果が、だ、ダメだったら、【トライ&エラー】で、リセット、して、せ、選択肢の選び、なおしだ。

な、なんど、お断り、されても、な、無かったことに、してしまえば、ダメージは、なし、だ。
……ちょ、ちょっと、心が、つらいかも、だけど、な。



「ぐっ、ぐふふっ」
 その童女は、外見に似つかわしくない笑い声をあげた。
 非在・究子(非実在少女Q・f14901)はバーチャルキャラクターである。
 いや、彼女の主観においては、バーチャルも現実もあったものではない。

「りょ、猟兵としての、で、デビュー戦だ。ど、どんな、敵が待ち構えてるのか、た、たのしみ、だ」
 どっちも同じ。どっちも一緒。

 巨大な竜など何回も狩った。
 邪悪な魔王など何回も斬った。
 素材周回プレイなどお手の物だ。

 敵が誰であろうと負けるつもりはまったくなかった。
 情け容赦ないチート・ツールによる改竄を躊躇なく行使し、華々しいデビューを飾るつもりで居た。
 そう。

「…………えっ、な、ナンパ?」
 よりによってここは、キマイラフューチャーなのだった。

 ☆

「いや、ごめん、流石にちょっと小さすぎるかなって……」
 胸も尻も規格外の大きさだが、身長は低いし子供である。 
 いくら声をかけられても、流石にちょっととキマイラが抵抗するのも無理はない。
 何せ事案である。
 ナンパは失敗し、男は立ち去っていった。

 ☆

 [>データ1をロードします。

 ☆

「笑い方がちょっと……ぐふふって……」
 そういう事言うな。

 ☆

 [>データ1をロードします。

 ☆

「えっと、俺と一緒におまわりさんの所いこうか?」
 完全に子供扱いされてしまった。
 交番まで辿り着いたら、引き渡されておしまいだろう。

 ☆

 [>データ1をロードします。

 ☆

「この子のお母さんいませんかー」
 ちゃうねん。

 ☆

 [>データ1をロードします。
 [>データ1をロードします。
 [>データ1をロードします。
 [>データ1をロードします。
 [>データ1をロードします。
 [>データ1をロードしま..........

 ☆

「俺、妹と喧嘩しちゃってさ……」
 女として誘うのに失敗したならそれ相応の振る舞いと立ち位置に収まれば良い。
 恋愛ゲームでいうなら、今の彼女は攻略する側であると同時にされる側なのだ。
 需要に収まる事が何より大事なのだ。
 要するに、怪人から引き剥がせればよいのだから。
 気づくまでに、十四回のトライ&エラーが必要だった。

 けど、そんなことは慣れている。
 ゲームとは、繰り返し繰り返し、覚えることが大事なのだ。

「話を聞いてくれてありがとう、助かったよ」
 あ、だから行くなって。

 ☆

 [>データ2をロードします。

 ☆

 ……究子にとって。
 現実とバーチャルの境界はない。
 何故なら 彼女の視界には、あらゆる全てにデータとパラメータが表示されている。

 オプション画面を開けば。
  、、、、、、、  、、、、、、、
 セーブもできるし、ロードもできる。
 何度でもやり直せる現実に、何の価値があるのか。
 何度でも繰り返せる試行に、何の意味があるのか。

 彼女の認識は、歪んでいる。
 何故、その様な性質を与えられたのか。
 今は亡き創造主以外に、それを知るものは、まだ居ない。

「な、なんど、お断り、されても、な、無かったことに、してしまえば、ダメージは、なし、だ」
 ただし。

「……ちょ、ちょっと、心が、つらいかも、だけど、な」
 やっぱりお年頃の少女であることは、付け加えておく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィサラ・ヴァイン
ナンパ…人見知りの私には辛い依頼です
そもそもナンパで適当な人に声をかけるのは良くないです
せめて自分が本当に『この人とデートしてみたい』って人をナンパするべき
私の恋人が最高の人ですけど、少しでもビビッと来る人を[第六感]で探します
…あ、あの女の子可愛い。ちょっと[目立たない]ように[追跡]します
…いや別に百合じゃないです
たまたま相手が女の子だっただけです。私の恋人も女の子ですし
追跡がバレれたら声をかけます
「貴女の事、ずっと見てました。ずっと追いかけてました。…ずっと一緒に居ましょう…?」[恐怖を与える]
…え? 悪感情?
【頂点捕食者】で負の感情は食べます
これで何も問題ないですよね?(にっこり)



 ナンパの定義とはなにか。
 色々意見はあるだろうが、今回の依頼に限って、端的に必要な要項を述べればこうなる。

 ――……怪人に連れ去られるより先に、対象に声をかけて、相手の同意を得て、共に居る事を承諾させる。
 では、ヴィサラ・ヴァイン(魔女噛みのゴルゴン・f00702)の場合を見てみよう。

 ◆

「ナンパ……人見知りの私には、辛い依頼です」
 目を逸らしてしまう癖も――事情があるとはいえ――関係しているだろう。
 けれど、やらねばならない。決して怪人に可愛い女のげふん。
 ――決して、愛という感情を利用し、悪辣で卑劣な手段でもって連れ去られる人々を救わねばならないのだから!

 ……だけどやっぱり、知らない人に声を掛ける……ましてデートにお誘いするなんていうのは、恥ずかしいことだ。
 ひるんでしまうのも無理はない。ヴィサラはまだ十三歳の少女なのだから。
 そういうわけでターゲットを物色ごほん。
 ……なんとか『デートしてみたい』と思う相手を探しながら、街を歩く。

 彼女にとっては、自身の恋人が、もちろん“最高の人”であるけれども。
 何よりも相手にも楽しんでもらわなければならないのだから、相性の良い相手を探すのは至極当然のことだろう。

「はっ」
 ビビッ。
 その時、ヴィサラの脳裏に電流走る。

 ――今すれ違った女の子、可愛い。
 躊躇いはなかった。音もなく、そして気配を感じさせることもなく、一瞬で転身。追跡を開始する。
 後ろからその女の子に声をかけようとした男が居たので、追い抜いてチラ見して睨んだ。
 背後からゴトリという固くて重いものが倒れる音がしたが、そんなことはもうどうでも良かった。

 ☆

 いや、別に、違うんですよ。 
 百合――とかじゃないんですよ。
 たまたま、ちょっと気になった子が、女の子だっただけなんですよね?
 ほら、恋人だって女の子だし。
 愛に性別とか関係ないし。

「……誰か、居るの?」
 しまった。
 自分に言い訳……じゃなくて理論武装……でもなくて、うん、まあそういうのをしているうちに、追跡が疎かになってしまった。
 気づかれた。

 こうなったら仕方ない。
 ナンパとは、結局の所コミュニケーションだ。
 直接アタックすべき、言葉をかわしてなんぼである。

「貴女の事、ずっと見てました。ずっと追いかけてました。…ずっと一緒に居ましょう…?」

「ひいっ!」
 ハチャメチャにビビられた。

 そりゃそうだよ。
 怖いもん、捕食者の目をしてるもん。
 ていうか、少女はネズミの特徴を持ったキマイラだもん。
 本能的に恐怖するよ。

 にこっ。

 ヴィサラの“口”が笑顔とともに開いた。
 餌は恐怖。
 求めるは悪感情。

 ……怯えられたなら、怯えを喰ってしまえばいい。
 かくして。

 ☆

「――――本当? なんだか嬉しい」
 捕食……じゃなかった。
 ナンパは無事に成功した。
 あとは、少女の無事をただ祈るだけである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

零井戸・寂
ナンパ。(復唱)
よりによってメメから貰うのがこの依頼か……いや、まぁいいや。
仕事ならやるさ、うん。
……なんか後ろ髪引かれるのはなんでだろうなぁ……

あとナンパに騎士云々使うのは、うん。ないな。ない。

【SPD】
(ロールプレイの一環だと思おう。そうしよう。それなら慣れてる。)
(眼鏡を外す。後は身なりを整えて……相手はバーチャルキャラクターがいい。)

ねぇ君、そんな野暮ったいのと一緒に行くより僕と遊ばない?

そんな野暮な奴と素敵な君とじゃ不釣り合いだ。キラキラした目に透き通るような肌……見ただけで電流が流れるようだった。

デート先はどこがいい?どこでもいいよ。ゲームセンター?ふふ、ゲームは得意さ、任せて。



 ナンパ。
 ギークにゃちょっと縁遠い言葉。
 いや、彼はただのギークではない。
 零井戸・寂(PLAYER・f02382)は猟兵である。

 ……いやでもさぁ。
 女友達のグリモア猟兵からさぁ。
 ナンパしてきて! って言われるのってさぁ。
 なんかすごい…………あれだよ、複雑じゃん。
 それ、なんかつまりさぁ……ねえ?

「…………いや、仕事だから、やるけどね」
 切り替えよう。
 うじうじ後ろ髪引かれている男に女の子がついてくるか?
 否である。
 それに何より。

「ナンパに騎士なんて言葉を使うのは……うん、ないな、ない」
 それはもっと、大事な言葉であるはずだから。

 ☆

 バーチャルキャラクターの少女は、その日、シューティング・ガン・ゲームをプレイしていた。
 店内ランキングが芳しくない。とうとう三十位以下のランク外へ転落した、帰りだった。

「あーあ……」
 この中の、ベストテンに入っていたのが、ささやかな誇りだったのに。

「どうしたんだい? そんな悲しい顔をして」
 不意にかけられた声、振り向けばそこには――イケメンがいた。

「えっ……」
「君に暗い顔は似合わないよ、涙を拭いておくれ。何があったんだい?」
 あまりに軽薄で中身のない言葉。
 なのにどうしてか、すすりと心の中に染み込んでくる。

「その……ゲームで、スコアが出なくて……」
「なんだ、君の魅力は、そんなこと全く関係ないよ」
「え……そう、かな」
「そうだとも……ねえ、僕と遊びにいかないかい? そんな暗い気持ち、吹き飛ばしてあげるよ」
 手を取られ、引かれる。
 遠ざかっていくゲームセンター。
 自分の居場所。

(いいのかな、でも、かわいいって言ってくれたし……)
 得意なことでも失敗して、弱った心に、言葉はよく染みた。
 強引な口説きに、抵抗できないぐらいには。

「ねぇ君」
 そこに。

「そんな野暮ったいのと一緒に行くより僕と遊ばない?」
 少年は、颯爽と現れた。

 ☆

「なんだい、君は」
 怪人の目が細まった。警戒心の現れ。
 零井戸はそれを無視して、少女に近寄り、その手を怪人から奪い返した。
 眼鏡を外して、髪の毛を整えて。
 怪人に野暮ったいと言い放った彼は、普段の印象が霞むほど、驚くほど小洒落ていた。

(ロールプレイの一環だと思おう。そうしよう。それなら慣れてる)
(――――演じろ)

「えっと、あなたは……」
「通りすがりだよ、でも、一目で君に惹かれた。キラキラした目に透き通るような肌……見ただけで電流が流れるようだった」
 歯の浮くような言葉を、すらすら語れ。恥じらうな。
 己にそれを念じながら、少女に柔らかく微笑みかけた。

「キラキラ……?」
「うん。けど……不思議なんだ。もっとキラキラできるはずなのに、少しだけ霞んでる。何かあったのかな?」
「おい、この子は今俺が……」
 厄介者は、無視。

「その、シューティングゲームで、スコアが」
「下がっちゃった? ……なら、一緒にやってみない?」
「……あなたと?」
「うん、一人で悩んで止まったときは、誰かとやるのがいいんだよ。君のプレイも見てみたい。駄目かな?」
「その、えっと……」
 知らない誰かと知らないどこかに行くよりは。
 知らない誰かと、知ってるゲームをするほうがいいかも。
 それに……。

「……うん、付き合ってくれる?」
「喜んで」
 少女は零井戸の手を受け入れた。出てきたばかりのゲーセンに、歩みを向ける。

「ま、待――――」
「君」
 くるりと振り向いて、零井戸は指で銃を作った。
 BAN。

「野暮がすぎるよ、僕と彼女の邪魔をしないでくれる?」

 ☆

 調子がいい時も、悪い時もある。
 少女の不調はそれだけの話で。
 ゲームはやっぱり楽しまなくちゃ。

「あはははっ! やったやった!」
 ペアプレイ、店内スコア三位を刻んだ少女は。
 まさしく、『キラキラ』した笑顔だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雷陣・通
お、俺、ナンパなんかした事ねーぞ!?
どうすりゃいいんだ?

……あ、そう言えば父ちゃんからもらったカードゲームでプロポーズするヤツがあったな、これで台詞を作ろう(シャッシャ)

……よし!
『紫電の空手』でナンパの攻撃力を上げてアタックだ!
空手は何でも出来る!

(愛に飢えた少女を目標に)

「ねえお嬢さん」「僕と」「一緒に」「甘いひと時を」「エンジョイ」「してみないか」
(カードシャッシャ)
「君の」「ことが」「胸から離れない」「一緒に居てくれ」
「時間ある? どこ住み? ってかSNSやってる?」
「よろしくお願いします!」



 雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)は空手一筋の少年である。
 いやいやいや、俺、ナンパなんかしたことねーぞ?
 どうすればいい――どうすればこの依頼を解決できる!

 その時、通に電流走る――――文字通り。
 彼には発電体質があるからだ。

「そうだ――――俺にはこれがあった! 父ちゃんからもらったカードゲーム!」
 そのゲームは。
 その場で引いたカードを組み合わせて、プロポーズのセリフを作るゲームだ。

「……よし、行ける! はあああああ!」
 両足を開き、腰を落とし、正拳突き一発!
 空気が弾け、体内を巡る電流が一点から放出され眩い雷光が走る!
 この行為になんの意味があるのか!?

「空手は何でもできる……ナンパだって!」
 マジかよ。

 ☆

「ふぅ……」
 今日も両親はシゴト。アタシ、留守番。
 ツマンナイ日々。タイクツな日々。
 刺激が、ホシイ。

「あー……いっそ星がぱかーんって割れないカナ」
 あるはずナイ、そんなコト。
 結局、日常のクリカエシ。

「……アタシ、いつから笑ってないんダロ?」
 ケド。
 そんな時、アイツ、現れたの。fufu。

 カード、シャシャシャって、切ってるノ。
 なんでカード? って思ったら。wow。
 一枚引いて、チラ見。もう、すごいチラ見。

「ねえお嬢さん」「僕と」「一緒に」
「甘いひと時を」「エンジョイ」「してみないか」

 シャシャシャシャ。
 シャッフル、手札、キリカエ。

「君の」「ことが」「胸から離れない」「一緒に居てくれ」
 ドロー、ドロー、ドロー。え、マジ?
 こんな雑なナンパ。ハジメテ。
 バカにしてるの? って思ったケド。

「時間ある? どこ住み? ってかSNSやってる?」
 それ、何千年前の口説きモンク?

「…………よろしくお願いします!」
 最後に、正拳突き。
 …………正拳突き?
 えなんで。
 しかも、スゴイ。
 光ってンの。バチバチって。
 ヤバ。

 あと。
 めっちゃ顔真っ赤だし。
 なんかめっちゃ、ウケる。

 ☆

「あはははははははは! あははははははっ!」
(な、なんで笑ってんだ!? くそ、やっぱり空手が足りなかったのか!)
 カードの導きによって放たれたプロポーズ、空手で火力も上げたのに!
 このままではこの少女は……怪人にさらわれてしまう!

「はー……オモシロ、いいよ、ちょっと一緒に遊ぼうよ」
「くそっ、畜生! 俺はなんて無力なん…………え?」
「驚かないでよ、ね。カフェ行こ? もちょっと、キミのハナシ、聞きたいナ」
 ぐいっと、通はキマイラガールに腕を掴まれた。
 ……よく見たら年上の女性だ。
 柔らかい、逃げられない。

「……久々に笑えたよ、アリガト」
 そして……雷光のように、眩しい笑顔。

 空手vsナンパ。
 ――――――空手の勝利!

 いや、勝負じゃないけどね。

大成功 🔵​🔵​🔵​

十六夜・いろは
クロゥ・クガタチ(f16561)と同行

仮にも既婚者の女にこっちの役割をさせよう、っていう神経がどうかと思うのだけど
後で覚えておいて。

取りあえず怪人に先んじるためにクロゥが口説き始めた相手に、タイミングを見計らって王子様役をしに行くわ。
指輪は外して、バイクでその場へ

「年甲斐もなく、嫌がる女の子を誘うものではないわよ」
と話しかけて適当にあしらって退散させる。
あとは、改めて

「怪我はないかしら、お嬢さん」
「ふふ、そう。よかったわ。でも、彼、これで諦めていないかもしれないわね。よければ送っていかせてもらえる?」
と【誘惑】
「本当はね……私があなたの魅力に敗れたの。あなたの王子様をさせてくれないかしら?」


クロゥ・クガタチ
【WIZ】で判定
十六夜・いろは(f16414)と協力して参加

ナンパとは気持ちが若返るね
ターゲットを見つけたらまずは声をかけナンパ
少し相手が迷惑に思うくらいしつこく行こうか
「その瞳があまりにも魅力的で、年甲斐もなく声をかけてしまったよ」
「ほんの少しでいいんだ。老い先短い老人の相手と思って、少し付き合ってくれないか」

話す時には目を合わせ【催眠術】でほんの少し暗示をかける
『自分を助けてくれた相手に惹かれやすくなる』と暗示をね

いろは君が颯爽とターゲットを助けたら、大人しくその背中を見送ろう
「やれやれ、振られてしまったね……」

まぁ悪役には慣れているのでね
こういう役回りはお手の物さ



「あの、私、急いでるんです……」
 キマイラの少女は、狐の耳をぺたんと閉じながら、もじもじと顔をそらしてそういった。

「いやあ、そう言わず」
 あろうことか、少女に声をかけているのは、五十を過ぎた頃合いの男性である。

「その瞳があまりにも魅力的で、年甲斐もなく声をかけてしまったよ」
「わ、私の目、ヤギなんですけど……」
「だからこそさ。見つめられると胸がドキドキするんだよねえ、もしかしたら恋かも」
「えええ……」
 少女は困惑していた。
 いや、褒められるのは嬉しいけど、狐ヤギのキマイラガール十六歳、好みのタイプは年齢一桁のお子様である。
 ストライクゾーンから外れているにも程がある。しいていうならアウターゾーンだ。
 何もしいていえてない。駄目だこれ。

「ほんの少しでいいんだ。老い先短い老人の相手と思って、少し付き合ってくれないか」
 目をそらそうとしても回り込んでくる。嫌でも視線を合わせてくる。
 もう、誰でもいいから助けてよ……と周囲を見回す。
 けれどキマイラっていうのは良くも悪くも陽気でのんきだから。
 あまり人の危機に敏感じゃない。助けようと思ってくれない。

「ううー…………」
 本当に困った。
 何より、相手は男性だ。無理やり否定したら、なにかされるんじゃないか? という怯えもある。
 だから。

「年甲斐もなく、嫌がる女の子を誘うものではないわよ」

 ☆

 バイクに跨った女が、二人の間に割り込んだ。
 ヘルメットを外すと、長い髪の毛がぶわっと広がる。

「だ、誰……?」
「通りすがりの……」
 ヒーロー、と言いかけて、ふ、と小さな音が溢れ。

「通りすがりの、お姉さんよ。怪我はないかしら? お嬢さん」
 こくこくと頷く少女をかばうように、女は男をギロリと睨む。

「悪いけれど、この子には先約があるの、他をあたってくれるかしら?」
「おいおい。そりゃあない。なんだったらアンタも一緒に……」
「軽薄な男は嫌いなの。悪いけど」
 取り付く島もない。
 ち、と男は両手を上げて、背を向けて去っていった。

「あ、あの、ありがとうございました……」
 少女が小さく頭を下げると、女――――十六夜・いろは(ナハトレイヴン・f16414)は小さく笑った。

「ふふ、困ってたみたいだから、よかったわ。でも、彼、これで諦めていないかもしれないわね」「
 そう言われると、ビクリと肩が震える。その反応を、いろはは見逃さなかった。

「よければ、送っていかせてもらえる?」
「えっ、でも……」
 迷惑じゃないだろうか、と、ヤギの瞳がいろはを見上げた。
 その心をほぐすのも、エスコートの役割だろう。

「本当はね……私があなたの魅力に敗れたの。あなたの王子様をさせてくれないかしら?」
「わ、私の魅力」
「ええ、とっても素敵。だから…………そうね」
 小さなウインク。
 それは、警戒心を溶かすのには、十分だった。

「私に、さらわれてくれる?」

 ☆

 ――――仮にも既婚者の女にこっちの役割をさせよう、っていう神経がどうかと思うのだけど
 ――――後で覚えておいて。
 いろはにそう、視線で言われた気がした。

「いやあ、いいじゃないか。こっちは悪役をやったわけだし?」
 少女を口説いていた男――クロゥ・クガタチ(オールドクロウ・f16561)は、タンデムで立ち去る女たちを見送る。

「こういう役回りはお手の物さ」
 楽しくなかったとは言わないし、少女はちょっと可愛そうだと思うが。

「まぁそんなわけで――――あんたらの出番はないぜ?」
 影から少女を見ていた――謎のイケメンに視線を向けて。
 牽制するように、あるいは思い知ったかと言うように。
 にやりと、笑ってみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリーノフカ・キス

POW
【誘惑】

いやぁ、人助けとあらば致し方ない!
おっと、もちろん女性に
あとなるべくなら美人にね
いやほら、こういうのはね、とかく心から身が入らなければね

「待ちたまえ。彼は何も分かっていないよ、君のことを」
「君の瞳は確かにキュートだけれど、その奥にはもっと深い輝きを感じるんだ。……おや、自分では分からない? なら、僕が引き出してあげる」
「僕に、その輝きをもっとよく見せてくれないかい?」

……「分かってもらえる」という期待は、どの世界も同じだよね。

ああ、許せないという気持ちは本当だよ
花を手折るにせよ、弱きに付け込むのは男らしくない
……まあ、そんなことを言って機会を逃してしまうことも多いのだけど



「キレイな瞳の輝きだ……僕のものだけにしたい」
「そ、そう? 見る目があるわね」
 愛らしい、猫と羆の特徴を持つキマイラガールに、俗に言う壁ドンを決めながら、イケメン怪人が詰め寄る。
 少女も、まんざらではない。
 正面から褒められたことなどないし、男の人から声をかけられたこともない。
 けれど、そんな瞬間を一度は夢見たことのある、年頃の若い娘である。

「本当に素敵だ、宝石かと見まごう程だ。僕だけのものにしたい……いいかな」
 甘い憧れが現実になりそうだから。
 相手のことなどよく見てないし、雰囲気に流されるし、疑うこともしない。
 だって、裏があるなんて考えることは、自分の価値を否定することだから。
 なにより。
 瞳を褒めてもらえたし……。

「待ちたまえ」
 そんなキマイラガールとイケメン怪人の間に割り込んだ男は。
 彼女の王子様足り得るだろうか?

 ☆

 ナンパとは。
 言わば社交である。
 浅い言葉では足りない。
 思慮を尽くし、礼節を尽くし、言葉を尽くし、以下に『自らと時間を共有させたい』と思わせられるかどうかだ。
 下世話な欲望だけでは決してない。
 押し引き、駆け引き。時にドン引き。
 さあ、戦いを始めよう。
 マリーノフカ・キス(竜星のコメットグリッター・f01547)は戦場に降り立った。

 とはいえなるべく美人に声をかけたいのが男心というものである。
 いやほらね? 需要と供給は一致が大事であり、心からの言葉でなければ響かないというものであるし。

 そうして目についた、怪人の囁きに耳を傾けるキマイラガールを見て。
 マリーノフカは、躊躇わず動いた。その体で二人の間に割り込んで、引き裂く。

「ちょ、ちょっと、何すんのよ!」
 少女の怒りは当然だろう。

「彼は何もわかってないよ。君のことを」
 しかし貴公子は断じる。

「……何を言い出すんだ? 君は。今は僕と彼女の時間なんだ。邪魔をしないでくれないか」
「いいや、君に彼女は勿体ないね。……彼女の瞳が宝石のように美しい? 冗談だろう」
「な、何よそれ! あんた喧嘩売って――」
 あまりの物言いに、ぴこんと耳を立てて怒るキマイラガールに、マリーノフカは振り向いて視線を合わせる。

「君の瞳の魅力は……そんなものじゃあない。確かにキュートだけれど、その奥にはもっと深い輝きを感じるんだ」
「え、ええ……?」
 まさかそのまま褒められると思っていなかった。

「……おや、自分では分からない? なら、僕が引き出してあげる」
 貴公子は、畳み掛ける。

「君の瞳は、眩い満月だ。直接見ては、神秘的な光に、皆が耐えられないから……神様が少しだけ、雲をかけたんだろうね?」
 少女の金色に、空色の瞳を持つ男は跪いてその手を取った。
 強引に事を運ぶのではない。
 恭しく。
 貴女が選ぶ立場だと。

「手伝いをさせてくれないか。本当の君の魅力を、僕が引き出してあげる。その褒美に、どうか……僕に、その輝きをもっとよく見せてくれないかい?」
 少女の期待は、夢想と憧れだ。
 なら。限界まで夢を見せよう。
 そして、夢を現実に変えてあげよう。

「う、うまいことばかり言って……何考えてるのよ!」
「君のことを」
「〜〜〜!」
 言葉に詰まり、感情に詰まり、処理できなくなった少女の思考。
 あとは思い切り吹き出るだけだ。

「じゃあ……やってみせなさいよ!」
「仰せのままに」
 手を取り、歩きだす。
 あっけにとられたイケメン怪人は、はっと我を取り戻し。

「ま、待て! 彼女は僕が―――」
「君には無理だ」
 言葉の刃が、ばっさりとその未練と縁を断ち切った。

 ☆

 ……いやあ。
 我ながらよくもまあここまで言えたものだと思うけれども。

「……私の眼、本当に綺麗?」
 不安げに見上げるキマイラガールの瞳は、二色。
 猫に時折見られる特徴、オッドアイ。金の瞳と、真っ黒な瞳。
 眩い輝きと相反する、闇の色。

「やっぱり君の瞳は、空の鏡だよ。僕と同じだ」
 口元に人差し指を当てて、マリーノフカは微笑んだ。

「新月と満月。僕はどちらも好きなんだ

大成功 🔵​🔵​🔵​

リインルイン・ミュール
怪人から横取り口説きチャレンジ
性別は不問デス!


駄目ですヨ、そんな甘い言葉に乗っては
皆すぐ「ずっと一緒」とか「絶対離れない」とか言いますが……そんなものは無いのです
きっとアナタも知っている。でなければ、傷心を抱えて歩む人など、世に一人も居なかったと

……ですから、ワタシは永遠なんて言いません
今この時、この瞬間。ワタシは、アナタが好きです。アナタの支えになりたいのです
一目惚れと笑って構いません。ですがこの瞬間に嘘は無いと、胸を張って言えます

甘い毒の夢に溺れるか、刹那の真実に心委ねるか。選ぶのはアナタです
ワタシを選んでくれるなら、そうですね。まずは食事でもどうですカ
良ければ、アナタの話を聞かせて下さい



「寂しいよね、わかるよ……俺もそうだったからね」
 歯の浮く言葉を並べ立てる男に、山羊と鮫の特徴を保つキマイラガールは、今まさにイケメン怪人の魔の手に落ちようとしていた。

「親はわかってくれない、友達は信じられない……けど俺は君を一人にしたりしないよ」
「……本当?」
 孤独は人の心を殺す。
 オブリビオンの魔の手……甘い言葉は、細かく考える力を、何故か相手から奪ってしまう。
 心のこもってない言葉が、じわりと染み込んでいく。

「ダメですヨ、そんな甘い言葉に乗っては」
 今まさに、“飲み込まれ”ようとしていたガールの意思を断ち切ったのは、人の形を持たぬ者だった。

 ☆

「……何だお前は」
 オブリビオンからして、リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)をどう見て良いか、どう認識すべきかわからないようだった。
 四足獣のように振る舞っているが、獣を象った頭部に見える場所は、よく見れば金属製の面である。

「こんにちは。お嬢さん」
 響く声の音色は、その様相に反して存外甘い。

「あ、はい、こんにちは……」
 少女は反射的に返事をする、が。

「悪いが、彼女は僕と話している最中で……」
「アナタの言葉は、とても軽いです」
 ばっさりと、オブリビオンを切り捨てたリインルインは、ぐるんと少女に向き直り……カランと、面が音を鳴らした。

「ダメですよ。ずっと一緒とかいう言葉を簡単に言う相手は、中身がないですかラ」
「……中身?」
「ええ、だって、それがどれだけ難しいか、アナタはよく知っているはずでしょウ?」
 寂しい。悲しい。苦しい。辛い。
 家族が、友達が、そばに居てくれたら、少女はそんな感情を抱かなかったはずだ。

「……そんなものは無いのです。でなければ、傷心を抱えて歩む人など、世に一人も居なかったと。
 アナタを大事にしている家族ですら、そうなのニ。たった今であった他人がどうして一緒に居てくれますカ?」
「……わ、私、大事にされてなんて」
「そんな事ありませン。だってこんなに愛らしいじゃないですカ」
「あい……っ?」
「はい、思わず一緒の時間を過ごしたくなってしまうほどニ」
「ま、待て待て待て、貴様、そもそも人間ですら――」
 割り込もうとしたオブリビオンを、リインルインは、大きく首を動かして、その面の向こうから見た。
 感情の色が伺えない、彫り物の瞳の奥から、無言の圧が放たれる。

 ――もう喋るな、という、言外の意思が。

「……っ」
 怯え、すくんだオブリビオンを、もう彼女は見ていなかった。

「ワタシは、永遠なんて言いません」
 す、とその面の鼻先をキマイラガールに近づける。
 それは、オブリビオンに向けたものとは違う、優しい仕草だった。

「今この時、この瞬間、アナタが好きです。アナタの支えになりたいのです」
「え、ええっ!?」
 突然の告白。
 クス、という微笑が、面の中で響いた。

「一目惚れと笑って構いません。ですがこの瞬間に嘘は無いと、胸を張って言えます。アナタと同じ時間を、今は過ごしたいのです。そうですね――」
 背後をちらりと見る。キマイラフューチャーで今流行りの、八段重ねのパンケーキのお店。

「ワタシを選んでくれるなら、そうですね。まずは食事でもどうですカ。良ければ――――」
 孤独の癒やし方は、甘い言葉で誘うのではなく。
 何故孤独であるのかを知って、解きほぐす事だ。

「――アナタの話を聞かせて下さい。アナタの事を、教えて下さい」
「……その」
 もじもじとしながら、キマイラガールは上目遣いに言った。

「……ナンパ、されちゃっていいかな?」
 からん、と、首を縦に振る大きな身振りにそって、面がまた、音を鳴らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジョン・ブラウン

ナンパか……百戦錬磨の僕の出番ってわけだね
え、勝率?良いじゃん今はそう言うの

とは言え今回は人命救助、いつもみたいに格ゲー観が一致する運命の人を探すわけにはいかないか

ちょっとズルいけど今日は特別だ、ウィスパー手伝ってくれ

怪人の口説きと女の子の表情や反応を読み取って
ユーベルコードも併用しながら正直あんまり嬉しくない褒め言葉を避けて
本当に彼女たちが評価してほしい部分を褒めちぎろう
その後は場所を変えて好きな事の話を聞かせて貰おうかな

なるほど、あの子は自分の容姿より服のセンスを褒められたいのか

ねぇ君、会話中にごめんね。その服のデザイン凄く気になっちゃって
どこの店のブランド?まさか手作りだったり?



 ジョン・ブラウン(ワンダーギーク・f00430)の戦いは、始まる前に終わっている。

 ☆

「素敵な瞳だね、まるで星屑を詰めたようだ」
「綺麗な髪の毛だ、まるで絹のような手触りだ」
「愛らしい耳だね。僕の愛の言葉も聞き逃したりはしないんだろうな」
 象の耳とフェレットの顔を持つキマイラガールは、声をかけてくる男に複雑な感情を抱いていた。

 褒められて嬉しくないわけじゃないし、こういうのは初めてだし。
 だけどなんか違うんだよね。
 ピンとこないっていうんだか。

「もしよかったら、僕と一緒に食事でもどう?」
 デートのお誘い、緊張する。
 もしかして、一緒に居続ければ、私の欲しい言葉をくれるかも知れない……。

「……そうねぇ」
 どうしようかな、と思うけど、今はなぜか、とても人と別れがたい気持ちだ。
 初めてあった他人相手でも、一人になるのが嫌っていうか。

「忘れられない時間を過ごさせてあげるよ」
「じゃあ……」
 いいかな、と、言おうとした時。

「ねぇ君、会話中にごめんね」
 声が割り込んできた。

 ☆

「その服のデザイン、凄く気になっちゃって」
 キマイラフューチャーのファッションは、いつも斜め上をぶっ飛んでいるが、そういう意味でこの女の子のそれはとても“地味”だった。
 灰色をベースにした無彩色。白黒ツートーンならともかく、これはかなり異色だ。
 ウィスパーが真っ先に『ここを取り上げろ』と命じて来たのも、そこだった。

「……服? え、私の?」
 キマイラガールははっとして、ジョンを見た、どうやら正解だったらしい。

「そう、何処の店のブランド? まさか手作り?」
「て、手作りってわけじゃないけど、気に入ってるの。へえ……」
 なるほどなるほど。
 彼女はキマイラフューチャーにおいて、割と独特のファッションセンスの持ち主らしいね?
 となると、リンダの事を思い出す。彼女も中々変わった服が好きだった。
 あの子はこう言えば喜んでいたっけ。そう――――。

 え、何ウィスパー。
 それ言ったらダメ? あ、そう。
 ……そういやナンパに使えないんだったな、これ。

「よかったら、僕もその店に連れて行ってくれない? 興味があって」
「え、今から?」
 ビクリと耳を動かす少女だが……嫌がっては、いなさそうだ。

「ダメかな? いや、君と二人きりになれるならどこでもいいんだけど、どうせなら楽しいことをしたいじゃない?」
「ま、待て、彼女は僕が」
「アンタ」
 ジョンがはは、と、イケメン怪人を鼻で笑い飛ばした。

「褒めるところも見るところも間違えてるよ。誰がアンタについていくんだい? あぁ、誰でもなびいてくれるから、テンプレ並べてりゃそれでいいってか。大したナンパ術だね」
「うぐっ!!!」
 胸を抑えて倒れるイケメン怪人。いやメンタル弱いな。
 一方、キマイラガールは、はて、と首を傾げ。

「ナンパ……私、ナンパされてるの?」
「そう聞こえた?」
「君は手慣れてる感じがした」
「そりゃそうさ、僕はナンパに関しちゃ百戦錬磨だからね」
「勝率は?」
「……え、良いじゃん今はそう言うの」
「……それもそっか。ていうか」
 スカートの裾をつまんで、キマイラガールはくるりと回った。

「勝率アップだね、おめでとう!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ホスト&ホステスパラダイス!』

POW   :    肉体美で魅せる!

SPD   :    技術で魅せる!

WIZ   :    話術で魅せる!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「さあ、こっちだよ」
「君と一緒に過ごしたいな」
「おいで、楽しい時間を作ろう」
 ありきたりで、代わり映えのない、取ってつけたような、台本のようなフレーズに。
 惑わされた、男女問わないキマイラ達が、次から次へとその“店”の中に入ってゆく。

 クラブ“ギヴ・ミー・ラヴ”。

 店内で行われているのは、より過激な勧誘だ。

「君に愛を与えたいんだ」
「出会えたのは運命に違いない」
「ずっと一緒にいよう」

 店内に入ったあなたが見たものは、一枚の張り紙。

『この店のルールはたった一つ』
『愛を、より多く与えたものが、正義』
『全てが、それに優先される』

 ……イケメン怪人達によって囚われたキマイラ達は、今まさに、中身のない“愛”を注がれていた。

 ☆

 ●補足説明
 第二章のシチュエーションはホスト&ホステスです。
 雑な言葉でキマイラ達を褒めちぎるイケメンホスト怪人&美人ホステス怪人の席に割り込んで、素敵な言葉とサービスで正気を取戻させましょう。
 第一章でプレイングを頂いたけれど採用出来なかった方を優先して採用していく心つもりです。
山梨・心志
う、うううまれてこの方足を踏み入れたことのないリア充の地…!
え、ど、どどどどうすればいいのでしょうかね!?

思い出せ、こういうシチュの(薄い)本を読んだことがあるはずや!
確か…
アカン!お持ち帰りされそうな子を颯爽とさらってお持ち帰りするシーンしか思い出せん!!
そうや!母さんから聞いた父さんの告白の話を……
もっとアカン!まともなエピソードがない!!

こ、こうなったら最後の手段…
(父さんに憧れて)早朝こっそり続けていた筋トレの成果を活かすとき!

わざとぶつかって飲み物を被り服をはだけさせつつ
壁ドン(本でよく見る萌えシチュ)してお持ち帰り

K O R E D A!

頑張れ俺の【恥ずかしさ耐性】!!



 そもそも山梨・心志(双子の兄の方・f03491)は未成年であるが故、クラブなどというものに入るのも当然初めてである。
 初めてであるが、どういった場所なのかは知っている……そう、男と女が酒を入れながら大人~なサービスをするお店だ。
 彼風に言わせれば。

「う、うううまれてこの方足を踏み入れたことのないリア充の地……!」
 である。

「え、ど、どどどどうすればいいのでしょうかね!?」
 答えは帰ってこない。何故ならここはクラブ……金と引き換えに愛を提供する場所だからだ。
 右も左も分からない坊やはお呼びではない。
 このままでは、彼は愛を与える“ホスト”ではなく、与えられる“ゲスト”として扱われてしまうだろう。

「くっ、思い出せ……俺の脳細胞……こういうシチュの(薄い)本を読んだことがあるはずや……!」
 そう……ホストクラブと言えばイケメン達のパラダイス。
 受け攻めの目まぐるしい攻防、女というスコアを挟んでせめぎ合う男達の情と欲、金と愛憎が渦巻く坩堝。

「そう……アレは確か……」

 ※ ここから回想 ※

『シンヤさん!』(若いホスト、店の№1ホストに詰め寄る)
『……なんだ、今忙しいんだけど?』(№1ホストシンヤ、気だるげに髪の毛をかきあげる。胸元のシャツは第二ボタンまで開いている)
『また俺を指名してた娘に、横から……っ!』
『あぁ、あの女か……はっ、笑わせるぜ』
『……なんですって?』
『中身のない、空っぽの女だ。褒めてほしいだけだよ、お前じゃ満たせない』
『そんな……お客さんになんてことを!』
『……あのなぁ』(シンヤ、若いホストに詰め寄る)
『えっ』(腕を捕まれ、壁まで押し込まれる)
『あんな女にお前の時間を使うのはもったいねえって言ってんだよ……ッ!』
『シ、シンヤさん……? か、顔……近いです……っ』

 ※ 回想は終了しました、続きを読むにはわっふるわっふると ※


「つーかBLの方やんけこれ!!!!」
 いや使えるけど。
 今この場で使えるけど。
 何なら男相手でもいいけど。
 違うって。
 BLは確かに好きや大好きや心の潤いや泉や!
 けどリアルでは女の子が好きなわけで……嗜好と性癖はまた別やねんって!

「そうや、母さんから聞いた父さんの告白の話を…………」


 ※ ここから回想 ※

「そういえば、誕生日やけどなにか欲しいもんある?」
 少女の問いかけに、男は顎に手を当てて考える。

「欲しいもんか……いうて物欲的には結構自分で買えたりするからなぁこっちは」
 二人には年齢差があった。
 少女の方は男を『センパイ』と呼ぶぐらいに。

「ほな物欲的以外のもん?」
 少女は、上目遣いに男を見つめた。あるいは何かを期待するように――。

「そらそれ以外やと――■■が欲しいってのはあるけどな!!」
 対して、男は冗談のように女の名前を告げた。

「いいよ?」
 少女は、笑って答えた。

※ 回想終わり ※


「もっとアカンわ全然参考にならんわ!!! というか両親の馴れ初めこんなガッツリ思い出したくないわ!」
 閑話休題。

「こ、こうなったら――――」

 ☆

「きゃっ」
 そのキマイラガールは、トイレに行くといって席を立ち、移動している途中だった。
 ここに居ると欲しい言葉をたくさんもらえるけれど……。
 なんとなく、“違う”感じがして、ついそんな嘘をついてしまったのだ。
 だから、うつむいて前を歩いていたら、誰かにぶつかってしまうのは必然かも知れなくて。

 ビシャッ。

 水が溢れる音。前を見れば、若い男性が手にした飲み物がひっくり返って、前がずぶ濡れに――。

「おっと」
 男性はキマイラガールの眼の前でボタンを二つ外した。淡く濡れて張り付いたシャツの向こうに、みずみずしい肌がちらりと見えた。

「濡れちゃったな――――どうしてくれるんだい? 子猫ちゃん」
 そのまま、ぐっと距離を詰めて――――役に立つやんけホストBL――――壁と自分の体で、少女を挟み込んだ。

 ☆

「あ、あああ……」
 キマイラガール、唐突な夢シチュに胸キュン。

(うおおおおおお!)
 心志。もうなんかやばい。自分が何言ってるのかわからない。
 だがここは愛を与えたほうが勝ち、ときめかせたほうが正義。
 つまり……山梨・心志は。

「じゃ、じゃあ……な、なんでもしてあげる!」
 勝負に勝ったのだ。
 尚この後、何をしてもらったかは語るまい。
 それは、男と女の秘密である……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベネラ・ピスキー
うむ、軽薄に人をだますなぞ得意も得意よ
神たるオレ様にはこの程度楽勝である!
まあ第一目標はオブリビオンの阻止であるから、主に既に口説いておる輩の元へ向かうか。
口説きの最中、心がそちらに傾いて居ようともわか尊顔を拝せば自ずと近寄ってくるであろう!
よってユーベルコードで我がかつての美を取り戻し存在感とパフォーマンスを増幅し!目が釘付けになったところをすかさず掻っさらい!颯爽と口説き文句を述べれば後は万事解決よ!
まあ、今のオレ様の服装について突っ込まれたら……口八丁で逃げるしかないか……呪詛でイヤイヤ着ているとはいえ変態扱いされたくないし…はよ脱ぎたい…
(アドリブ、絡み歓迎。どこまでギャグにしても可)



「うむ、軽薄に人をだますなぞ得意も得意よ」
 ベネラ・ピスキー(f16484)は神である。
 神である故、人民の心など楽勝に掌握できるというものだ。
 何故か?
 ますベネラは顔が良い。神だからだ。
 存在感も凄まじい。神だからだ。
 もはや立っているだけで芸術の域である。神だからだ。
       リトルゴッズ・テンプテーション
 即ちこれ《縮小顕現・金碧輝煌》。
 現世に顕現するに当たって、本来の数百万分の一(誇張表現)に圧縮された神の美貌!

「神たるオレ様にはこの程度楽勝である!」
 そう。
 問題はベネラの顔が極めて中性的であることと、呪いによって固定されたその服装であるのだが。

 ☆

「君みたいにきれいな娘、初めて見た……」
「待て」
「一瞬で、心のモヤが晴れたみたいだ、まるでカミサマかと見まごうような……」
「待て待て待て」
「なんて美しさ、なんて可愛さだ…一目惚れってこういう事を言うのかな……」
「オレ様は男だぁああああああああああああああ!」
 颯爽と乱入し、その圧倒的存在感で持って口説く! ここまでは作戦通り!
 しかし飛び込んだテーブルは男の客を持て成すホステスのテーブル!
 そして客のキマイラボーイは一目、ベネラの顔を見て胸キュンドッキュンフォーリンラブ!
 だって存在感とパフォーマンス力がすごい、美形の神だから!

「えっ……男? じゃあその格好は……」
「あー、いやこれはそのアレだ。オレ様という美貌を衣服などという枠に閉じ込めておくのは無理でありその結果としてこの造形を最も完全に保つべく」
 とりあえず口からでまかせで逃れようとする神!

「つまり……これがあなたのあるがままの形なんだね!」
 一目惚れしてしまったので全て受け入れたキマイラボーイ!

「あああああああああああああああああ!!!」
 やったぜベネラ! ある意味信者ゲットだ!
 尚この後、彼がどうやって彼を説き伏せたかは、彼のみぞ知る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アロンソ・ピノ
ナンパぁ!?オレそういうのやったことねえんだべが…仕方ねえこれも仕事か

服装は……なんか煌びやかな服着た方が一目引くならこの服で良いか。街で買った割に近寄りがたいと言われたが。

とりあえずオレはそこまで口は回らん、かといって手を出したら問題になる……とするなら、声をかけられそうな女子を先回りしてこっちから声かけして、時間稼ぎだな。
ナンパの仕方なんぞ分からぬから、歯に衣着せぬような台詞も思いつかんし……それこそほかにナンパが上手い奴がいたらそいつのサポートにでも回った方が良いのか?

後は……肉体美か。……まあ筋肉には多少自信はあるし、筋肉のアピールもするか…

(アドリブ、絡み等歓迎)



「ナンパぁ!? オレそういうのやったことねえんだべが…仕方ねえ……」
 仕事ならばやるしか無い。
 アロンソ・ピノ(f07826)はなんというか、割とそこそこ素直である代わりに、結構融通の効かない男であった。
 かくしてマントばさっ! 桃色の髪の毛ぶわっ! スカーフしゃらーん! な美形がクラブ『ギヴ・ミー・ラヴ』へ華麗にエントリー!

「きゃあ」
 と店に入った瞬間、少女たちが沸き立つのもまぁ無理はあるまい。

(ううん、どんな仕組みになってんだべ、これは)
 そもそもこんなクラブに入るのは当然初めてである。彼が元いた世界にもホスト&ホステスなんて文化はなかった。
 どの席に向かってどの相手にどんな振る舞いをすればよいかわかったものではない。
 そもそも席に座ったとして。

(オレは口が回らん……!)
 女と同じ席に座ったところで、何を話せばよいというのか!
 鍬か刀しか振ってこなかった男である。
 流派の剣技を磨いてくることしかしなかった男である。
 浮いた台詞の一つなど、毛頭出てこない!
 ……何でこの依頼に来た!?

「…………ううん、誰かの手伝いでもすべきか……」
 そう呟いたアロンソの視界。
 テーブルについたキマイラガールを口説き続ける、イケメン怪人の姿を見た。

 ☆

「さぁ、飲んで飲んで」
「あ、あの、私、お酒は……」
「何言ってるのさガール? 辛いことも怖いことも、全部忘れちゃおう? 今日はそのために来たんだろう?」
「う……」
 そうだ。
 皆楽しそうにしてるけど、私の気持ちなんてわかってくれない。
 能天気な家族や友達に嫌気が差して……街で声をかけられて。
 気づいたらここにいたのだ。
 男たちは立ち替わり入れ替わり、私が気持ちよくなる言葉をくれる。

 君は凄い。頑張ってる。なんて素敵なんだ。周りが悪い。

 そうだ、別にお酒の一杯、飲んだっていいじゃないか。
 未成年? ここはキマイラフューチャーだし、そういうお店だ。
 ここでちょっとぐらい背伸びしたって……。
 そう思った時。

「おい」
 少し高めの、ソプラノアルトの声が、そんな私の思考に割り込んできた。

 ☆

 キマイラは外見で年齢が分かりづらいが、どう見ても、お酒を進められている少女は未成年に見えた。
 で、イケメンはみんな怪人だというのだから、コイツラはオブリビオンだ、容赦する必要がない。

 春夏秋冬流・外節無型の壱 鉄戒。
 要するに、五指を用いた締め付けだ。別名アイアンクロー。
 ただし、日がな一日、獲物を振り回し続けたその手から繰り出されれば、それは立派な凶器だ。

「ぐええええ!」
 怪人の悲鳴。どうでも良い。重要なのはそんなことではなく。

「子供に、酒を飲ませんな」
 ゴリッ、と、小さく鈍い音がした。
 力を込めてから、実際に握り潰すまでがあまりに滑らかだったので、それが手首の骨を砕き割った音だとは気づきづらいかもしれない。

「あ……がっ」
「あ、あの、この人」
「ちょっと手が痛いんだってよ。気にすんな」
 それでごまかせたかどうかはさておき。
 少し考える。このまま立ち去ってもよいが……少女は、居たたまれない空気の中に残されてしまいそうだ。

「……その、なんだ、あっちでケーキでもどうだ?」
 あまりに素っ気なく、言葉足らずなナンパだった。
 普通なら、聞き流されてしまうような、単調な。

「……ケーキはあまり好きじゃないから」
 なので、少女はふいっと顔を背けた後。

「パフェでもいい?」
 怪人の腕を砕いたその手を、キマイラガールはしっかりと握った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・ドゥリング


この場の正義は「愛を与える事」らしい。
それなら、軽薄だろうが、オブリビオンだろうが、
その程度で否定するのはあまりにも「愛が無い」というものだ。

怪人もキマイラも、両方楽しませてこそ「ホスト」「ホステス」だろう?

【存在感】で怪人とキマイラの目線を集めて。
【礼儀作法】を意識して不快感を与えないように丁寧に、
怪人、キマイラ両方に小粋なトークで楽しませるよ。

そうして「怪人と僕」「キマイラと僕」の流れにして、怪人とキマイラの関わりを絶つ。
後はキマイラには満足して帰ってもらえばいいからね。

軽い言葉も悪い物じゃあない。
楽しむ程度で済ませる慎みが大事なんだよ。



「なんて可愛いんだ」
「とってもキュートだね」
「すっごくプリティだよ」
 並べ立てられる中身のない言葉達でも、心によく染みていく。
 少女はつかの間、持て囃されるという夢を見る。
 その一時で十分なのだ。その一時が肝心なのだ。
 話題の中心に慣れるだけでいい、注目されるだけでいい。
 愛を与えられている、という実感があればいい。

 怪人たちは目を合わせる。
 『これでこいつは落ちたな』と。
 ならば、あとは放っておけば、自然とこのクラブの虜囚となる。
 その筈であった。

 ☆

「失礼、いいかな」
 黒いドレスに身を包んだ銀髪の女が、さも当然のようにテーブルについた。
 あまりに自然な動作だったので、キマイラガールも、イケメン怪人達も、割り込んだり、静止したり出来なかった。

「グラスが空いているようなので……迷惑だったかな?」
「あ、いえ……あ、ありがとうございます」
 女は、その空気の“間”を利用して動く。
 少女の手元に――酒などが混ぜられぬよう――そっとアップルジュースを注いで。

「素敵なお店だね、つい話しすぎてしまう。店員も対応が良いしね?」
「あ、ああ……それほどでも」
「いやあ……ははは」
 怪人たちも、会話を切るタイミングが掴めない。
 女は、言葉巧みに、男たちを持ち上げる。

「キミも、彼らには楽しませてもらったんじゃないのかい?」
「そ、そうなんです、すごく良くしてくれて……」
 肯定の言葉を重ねれば、心地よく浸っていたキマイラガールは頷かざるをえない。
 となれば、怪人たちはその会話を止めることが出来ない。
 好意の感情を抱かせるのが彼らの役目であって、それを否定する行為は目的と相反するが故に。

「……おや、もうこんな時間だ。お家の人はいいのかな?」
 ……そして、幾ばくかの時が流れ。
 女が時計を確認してそう言うと、少女はう、と言葉につまったように項垂れ。

「……うん、そうね、今日ぐらいは、門限守ろうかな」
「それがいい、ここにはいつでも来られるのだからね」
 その言葉が嘘だと知っていながら。
 女は、あくまで真摯にそう告げる。

「ありがと、また来るね」
 満足してテーブルを去るキマイラガールの背を見送りながら――――。
 マグダレナ・ドゥリング(罪科の子・f00183)は、同じテーブルの怪人達を静かに見据える。

「軽い言葉も悪い物じゃあないけどね」
 ふ、と口元に、小さな笑みを浮かべて。

「楽しむ程度で済ませる慎みが大事なんだよ、君達」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィサラ・ヴァイン
うーん、ナンパの次はホステス…しかも怪人からお客さんを横取りしろって、中々難しい事を…
…え、さっきの子?
ちゃんと保護しましたよ。ええ(お肌ツヤツヤ)
[第六感]で緊張してる、私みたいに人見知りで内気な女の子を探し、相席してホスト怪人の接待を一緒に受けます
接待が落ち着いたタイミングで声をかけます
私もこういうお店は初めてで…緊張しますよね?
でも勇気を出してお店に来て…自分を変えたいって姿勢、好きですよ
優しく頭を撫でたり、手を握って安心させます(女の子同士だから問題ないはず)
…私達、似てますね?
お店の人みたいに夢は見せられないけど、代わりに本物の『お友達』になれる気がするんです…どうかな、この提案?



         エモノ
 隣を確保した“少女”
「ナンパの次は……ホステス? 怪人からお客さんを横取り、だなんて……中々難しいことを……」
 ヴィサラ・ヴァイン(魔女噛みのゴルゴン・f00702)は、与えられた任務に対し、苦言を呈する様にそう呟いた。
 本来、出会いとは、もっと運命的で純粋でピュアで、甘くせつないモノであるのが好ましいのだ。
 何せ恐怖とはギャップが大きければ大きいほど密度も濃さも段違いでごほん。

「仕方ないですね……やるだけやってみましょう」
 ところでさっき保護した女の子はどうしたんですか。

「え? ………………ちゃんと保護しましたよ?」
 そう言い放つヴァサラの肌はつやつやと輝いていた。

 ☆

 蛇は温度変化で獲物を見極めるが、この魔性は第六感で対象を感じ取った。
 捕食者としての本能が、生来鋭いのだろう。

「あの、ご一緒しても良いですか?」
 イケメン怪人達に囲まれて、ビクビクしながら――恐らく他人に奉仕される事に慣れていないタイプなのだろう――酌をされている少女がいるテーブルに、ヴァサラはするりと混ざった。
 彼女もまた、キマイラで、若い女性だ。彼らにとってはターゲットであり、断る理由はないので。

「勿論だとも、美しいあなた」
「素敵な時間をプレゼントしてあげる」
「美しい髪の毛だね、ずっと触れていたい……」
 そんな数々の浅い美辞麗句は、当然のように蛇の心にはひっかき傷一つつけられず。

「……緊張、しますよね?」
         エモノ
 隣を確保した“少女”の手に、優しく、そっと自らの手を重ね合わせる。
 内緒話をするように、目を見合わせて、小さな声で。

「え……っ?」
「声をかけられたから、きてみたんですけど……こういう所って、初めてで。貴女もそうなんじゃないかなって」
「う。そ……そうなんです……」
 やっぱり。
 そういうタイプの娘だ。

「興味あったから……でも、何話していいかわからなくて……」
「居心地、良くないですか?」
「……き、緊張しちゃって……」
「まあ」
 優しく、甘やかすように、安心させるように、キマイラガールの滑らかな髪を撫で付けながら、ヴァサラは微笑んだ。

「でも、私は素敵だと思いますよ」
「え……?」
「勇気を出してお店に来て……自分を変えたいって姿勢、好きですよ」
 誰にでも向けられる言葉ではなく、少女のとった行動そのものを、正しいと言えば。

「そう、かな……結局、私、何も喋れてないし……」
「そんな事ないです、私とお話出来ているじゃないですか」
 手を握る力を強める。抵抗はない。

「……私達、似てますね?」
「……そう、かな」
「ええ、とっても……ねえ、どうでしょう。私は、お店の人みたいに夢は見せられないけど……」
 目をじっと見つめる。
 そうすれば、相手も見つめ返すことになる。
 深い深い赤を、覗き込むことになる。

「代わりに本物の『お友達』になれる気がするんです……どうかな、この提案?」

 ☆

 怪人たちが気づいた時、テーブルにもう二人の少女は居なかった。
 いつの間に? 一体どうやって? 何故?
 その答えはついぞ出ること無く。
 一人のキマイラガールが、オブリビオンの魔の手から救われたのだった。
 ……救われたよ?

大成功 🔵​🔵​🔵​

六六六・たかし


なるほど、ホスト。
それっぽい言葉で相手をその気にさせるあのホストだな。
いいだろう、ならば俺は今からホストだ!源氏名はたかし。
なぜなら俺はたかしだから。


【SPD】

おい、どけモブ共。
この客の相手をするのはこの俺たかしだ。

騒がせてすまない。これはお詫びの一杯だ。
(パチンと指を鳴らすとどこからかシャンパンが注がれたグラスが客の目の前にコトリと置かれる)
(そう、これは透明になった『悪魔の童女』すなわち「ざしきわらし」だ)

だが、そんな一杯で酔ってもらっちゃ困るな。
なぜならお前が今から酔うのはこの俺たかしなのだから。



「なるほど、ホストか」
 六六六・たかし(悪魔の数字・f04492)はこう考える。
 それっぽい言葉で相手をその気にさせる、あのホストである。

「いいだろう、ならば俺は今からホストだ!」
『えっ』
 正面から面接試験に突入!

「いいねキミ……いいよ、なんかこう、いいよ」
「当然だ」
『えっ』
 素早く採用が決定!

「源氏名はたかし、なぜなら俺はたかしだから」
『えっ』
 かくしてクラブ“ギヴ・ミー・ラヴ”にたかし参戦。
 もうダメだ。

 ☆

「可愛いなぁ、天使かと思ってしまったよ」
「とてもチャーミングだね……シャンプはどこの使ってるの?」
「いいストラップだね。すごくいいねリス」
 怪人たちに褒められて、まんざら悪い気分ではないこのキマイラガールは、しかしなぜだか、どこか遠い目をしていた。

(正直悪くないんだけど……なんか違うのよね)
 コウモリと馬の特徴を持つそのキマイラガールは、ポニーテールをピルピル揺らしながらそう思う。

(いや、ホント悪くはないんだけど……何だろ、このもやもや)
 その答えは間もなく押し付けられることになる。
 そう――――。

「おい」
「ん?」
 テーブルに新たな声が参戦。
 振り向く怪人達。直立不動の眼鏡の男。
 即ち、たかしである。

「どけモブ共」
「アバーッ!!!!」
 放たれる“まなざし”からのビーム!
 怪人たち、まとめて轟沈!

『えっそんな機能あったっけ』
                ホスト
「問題ない、なぜなら今の俺はたかしだからな」
『何が問題ないかわからないけど』
 一方目を白黒させるキマイラガール!

「え、何何何何何何」
「今からお前の担当は俺に変わった」
 ぱちんと指を鳴らす。
 ひらりと、どこからともなく舞い降りた紙片が、少女の手にきれいに収まった。
 何も書かれていない、白紙のそれに――スタイリッシュなフォントによる文字が、じわっと浮かぶ。

 たかし、と。

 そう――名刺である。

『“はくし”の力をそんな事に使わないで』
「これが俺の“だいめいし”と言った所か……」
『唐突に新技も発明しないで』
「それより仕事だ。任せたぞ“ざしきわらし”」
『えぇー……』
 仕込みは終わった。
 登場シーンも完璧だ。
 後は……酔わせるだけで良い。
 空気と、そして――たかしに。

「た、たかし……さん?」
「そうだ。騒がせてすまない、これはお詫びの一杯だ」
 再度、指を鳴らす。
 小気味よく、パチンと鳴れば、少女の眼前にシャンパングラスが出現!
 更に虚空に浮かぶドン・ペリニョン(\25,000)! 弾けるコルク! たかしに命中!
 あふれる液体のフェスティバルが静まった後、やがて静かにグラスに注がれ……。

「さあ、受け取るがいい」
 中身の満ちたグラスを、そっとキマイラガールに向けて差し出す。
 その所作は、意外なことに様になっていた。

「あ、ありがとう。あの、コルク当たってたけど……」
「そんな些末なことはどうでも良い。肝心なことは――お前が楽しめるかどうかだ」
「楽しめる……?」
「お前はここに夢を見に来たのだろう。だからお前に夢を見せてやる」
「夢」
 そうだ。
 普段と、“ちょっと”違うものを、少女は見に来たのだ。
 ありきたりな言葉じゃなくて、安っぽい好意じゃなくて。
 ドキドキするような、ワクワクするようなものを求めて、この店に来たのだった。

「……じゃあ、もっと凄いのを見せてくれるわけ?」
「当たり前だこの程度だと思われては困る」
 再度、再度指を鳴らす。
 突如現れるお皿には、一口サイズのケーキ、クラッカー、チーズ、エトセトラエトセトラ。

(も~! たかしってばデビルズナンバー使いが荒いんだから!)
 当然、これらを演出しているのは全てデビルズナンバー“ざしきわらし”である。

「だから、そんな一杯で酔ってもらっちゃ困るな」
 次は何が欲しい? 何が見たい?

「与えてやろう、だが満たしてはやらない、なぜなら」
 今眼前にいる男は――。

「お前が今から酔うのはこの俺たかしなのだから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンタロウ・ホネハミ

今回はすげー楽しい依頼っすねぇ!
お姉さん方にいつもナンパしてるみたいに接するだけで金になるとか話うますぎっす!
まっかせてくださいっす、オレっち吟遊詩人の真似事で酒場のお姉さん口説いたこともあるんすから!

今回は正攻法、怪人が吐く言葉よりも素敵な言葉で
さっと横から客のお姉さんを怪人から奪ってやるっすわ!
それにしてもほんとお姉さんお綺麗っすねぇ
その瞳はルーダコア女王の首飾りを彩るルビーの輝きにも勝るとも劣らず〜〜(どこかの国の至宝のようとかありったけ褒めちぎる)

そうしてお姉さんがこちらに興味を向けたら
お姉さんと二人きりで飲みたいっすねぇと怪人から引き離してやるっす!



「いやー! 今回はすげー楽しい依頼っすねぇ!」
 リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)のテンションは珍しくうなぎ登りであった。
 何せ!
 いつもみたいにナンパするだけで楽しい思いができて金になってついでに人助けが出来るのである!
 一石三鳥とはこのことか。あわよくばいい目を見たい。偽らざる本音であった。

 ☆

「あなたはまるで夜空の輝く一番星のようだね」
「まぁ……お上手ですこと」
 落ち着いた雰囲気のキマイラレディは、しかし満更でもなさそうに頬に手を当てて、その褒め言葉を受け入れていた。
 この場所は良い。“言葉”がもらえる。褒めて欲しいと思っても、人はなかなか他人を褒めはしない。
 だからこそ、ついこういう場所に求めてしまう。
 何も“本物”を求めているわけではないのだ。
 ただの“賞賛”はそのままの形であるだけで、心地よい。
 それだけの話である――ある意味、このレディは割り切りが出来ていた。
 けれど、だからこそ、この場所に依存しているのも事実であり……。

「そのきらめきに僕の目は焼かれ……」
「いやいや、星なんてもんじゃあない。お姉さんは例えるなら星座っすよ」
 自らを褒め称えるホストの言葉に割り込むように、知らない男の声。
 気づけば、横に見慣れぬ男が座っていた。
 細目で、レディの基準からしてみれば身なりが整っている、とはとてもいいづらいけれど。
 どこか愛嬌のある笑顔を浮かべる、そんな男だった。

「な、何だお前……」
「あー、アンタはいいから。そう、星座は一つ一つに物語があるじゃないっすか? お姉さんはまさにそのもの! 見てるだけで星の輝きが織りなす神話をみている気分っすよ!」
「あらまぁ」
 大仰に褒められたいレディにとっては、大きすぎるその言葉でさえ、微笑みで受け入れられてしまう。

「アァ、よく見たらその瞳はルーダコア女王の首飾りを彩るルビーの輝きにも勝るとも劣らず、肌は幾重のシルクから選びぬかれた王女の絹衣のよう……おお、こんな美人に出会えるなんて思ってなかったっすよ」
「あら、王女そのものだとは言ってくれないの?」
「あちゃあ! こりゃあ一本取られたっすねえ! それじゃあお詫びは、一杯奢らせてもらうってことで如何っすか?」
「あら、良いのかしら、ご馳走になっても?」
「ええ勿論。最も、一緒に時間を過ごせるとなると、オレっちからするとお詫びにならないっすねえ、約得すぎて」
「あらまぁあらまぁ、お上手ね」
 無論……ここでの支払いなど軽く凌駕する報酬が約束されているからであるとは、キマイラレディには知る由もない。
 この一時を、楽しめれば良いのだから。

「あぁ。でもそうっすねぇ」
 ここで初めて。
 男の目が、本当に薄っすらと、少しだけ開いた。

「ここじゃあ邪魔者が居てなんだし……場所を変えてお姉さんと二人きりで飲みたいっすねぇ」
 レディはあら、とすこし考える。
 クラブとは夢を見る場所だ。だからこそ彼女はここにいられる。
 外に出れば、日常に戻ることになる。河岸を変えるのは、その枠に収まるのでは?

「だぁいじょうぶっすよ、お姉さん」
 ……男の笑顔は、どこか人懐っこいそれに、いつの間にか戻っていた。

「遊びも本気もわきまえてるっす。そのうえで、ご一緒したいっすよ。もし断られたら……あぁ~! 神話の一ページに刻まれるこの悲恋~!」
 大仰に悲しみをアピールする、そんな男に。

「……ええ、だったら」
 キマイラレディは、心底可笑しそうに笑った。

「ご一緒しようかしら。神話にまでされては、たまらないものね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋稲・霖

【WIZ】

軽々しくそーいう愛の言葉?とか言うのもって思っちゃうんだけど…ファンサだと思って!!やってやるぜ!!

【パフォーマンス】には慣れてんだ!サービス…っていうか楽しませるのは任せとけ!
話す時は【コミュ力】全開で怪人出し抜いてやる!

待った待った、そこのイケメンやら美女と話してるキミ、俺とも話してくれよ!
これからもっとじっくり時間を掛けて、キミだけのことを知っていきたいんだよね
キミのことをしっかり知ってからきちんと言わせて欲しいからさ。…ずっと一緒に居たいって!

えっ、シャンパンタワー出してくれんの?やっりぃ…って俺飲めなかったわ!年齢的にマズいってのは黙っとこ

※相手するキマイラの性別は不問!



 愛の言葉は軽々しく語るものではない、と思う。
 まして、秋稲・霖(ペトリコール・f00119)は“歌”で他者を喜ばせることを心情とする者だ。
 本来、人の心を揺るがす歌詞の一つ、フレーズの一つだって、慎重に、理由あって選ぶのだ。
 だが、今回は、まさしく“愛”に囚われた者たちを救う依頼。
 ならば……。

「ファンサだと思って、やってやるぜ!」

 そんなわけで、彼もまた、クラブ“ギヴ・ミー・ラヴ”に飛び込んだ。

 ☆

「すごく可愛いね、おしゃれだ、とっても素敵」
「やだー、もー!」
 相変わらず、ここの怪人はまったくもって語彙がない。
 せいぜい十個前後の褒め言葉を、適当に使いまわしているだけだ。
 それでも、言われた方は機嫌が良くなって、舞い上がってしまうのが、怪人たる所以であるのだが。

「あー、ほんといい場所! 私ずーっとここに居たいわー」
 そのキマイラガールは、店に連れ込まれた人たちの中でも一際“ハマり”易い体質だったと言える。
 理由は様々あれど、その詳細を語る必要はないだろう。
 肝心なことは、“ハマり”易いのであれば、誰が“ハマ”らせるか、という事なのだから。

「待った待った、そこのイケメンやら美女と話してるキミ、俺とも話してくれよ!」
 ――霖は躊躇いなく、ガールと怪人の間に割り込むように席についた。

「ちょ、ちょっと、なんだいきなり」
「ん? まぁいいからいいから! ……いいから!」
 客観的に見て――霖はかなりのイケメンである。
 凛と立った狐の耳は整った顔に明瞭なシルエットを与え、人懐こい、愛嬌ある笑みは心地よい気安さと甘い焦がれを想起させる。
 故にガールは思わず『あら』と頬に手を当て、見惚れてしまうのもむべなるかな。

「貴方も私を褒めてくれる?」
 少女が思いを馳せるのは賛美の言葉だ。
 毛並みを、ファッションを、容姿を、褒めて褒めて褒めて欲しい!
 誰もが羨むイケメンからなら、肯定感もひときわ強い。
 けれど。

「んー――ごめん、まだ言えないかな」
「え……?」
 何それ。
 何それ何それなーにそれ!
 ここはそういうお店でしょ? 居るだけで褒めてくれる場所でしょ?
 キマイラガールが怒りの声を上げようとした、まさにその一歩手前で。
 霖の人差し指が、唇にそっと触れた。
 小さくウィンクを添えて、困ったように笑う。
 その表情の動きすら、やっぱりどこか甘やかで。
 一瞬、怒りを収めるには十分すぎる魅力があった。

「だって……これからもっとじっくり時間を掛けて、キミだけのことを知っていきたいんだよね」
「え……?」
 今度の『え……?』は含みが違う。

「見た目だけじゃわからないこと、沢山褒めてあげたいじゃん。キミのことをしっかり知ってからきちんと言わせて欲しいからさ。……ずっと一緒に居たいって!」
「きゅんっ」
 声に出た。
 きゅんっ! が声に出た。

「だからまずは出会いを祝して、キミに一曲プレゼントするよ。何がいい?」
「……キ、キマイラドリーミングの『セクシー・フューチャー』……」
「OK、それじゃあ、俺からキミにエールの歌を!」
 指を鳴らすと、店内に音楽が鳴り響く。
 キマイラフューチャーにおいて最も優先されるのは『楽しそう』と『面白そう』なれば。
 突如始まったパフォーマンスに店中の視線が注がれる。
 その視線も、キマイラガールにはやっぱり心地良い。
 注目されるって、素敵なことだ。

「……あーん! シャンパン! タワーで入れて!」
「カ、カシコマリー!」
 テンションの上がったガールがついついそんな事を叫んでしまい、怪人たちが慌ててバックヤードへ駆け走る。

(えっ、シャンパンタワー出してくれんの? やっりぃ!)
 歌が流れる直前、そう思った霖だったが。

(…………って俺飲めなかったわ! 年齢的にマズいってのは黙っとこ……)
 場を白けさせるわけには、行かないもので。
 とにかく、それから始まった妖狐のオンステージは……一時、全てのものを魅了した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロゥ・クガタチ
【WIZ】で判定
十六夜・いろは(f16414)と協力して参加
彼女がホストを引き付けている間に、女性を口説いてしまおうか

「いや、済まないね。……実はさっきあのホストを連れ出した子はワシの友人でね。どうしてもキミと話がしたくて、協力してもらったのだよ」
「キミは本当に素敵な女性だよ。ワシが30年……いや、あと20年若ければと思うほどね」

口説きつつも徐々に女性をクラブから出るように誘導する

「今のワシではキミには釣り合わないようだ。でもね、だからと言って、ここの連中にキミを渡すのは惜しいのだよ」
「他の女に声をかけられて、着いて行ってしまうような連中にはね」

ナンパの経験は無いが、人を誑かすのは得意なんだよ


十六夜・いろは
クロゥ・クガタチ(f16561)に同行
それにしても随分遠回りな手口を採るのね、この敵は。
何を企んで……なんで今考えることではないか。

お酒に酔ったふりをして、クロゥが口説こうとしている女性に絡もうとしている怪人へ割り込む

あとは適当に酔ったふりをして、遠ざけていくわ
からみ酒風にいけば、これから女性を口説こうとしている手前もあって、
邪険にはできないでしょう。
敵対行為と気づかれないように適度な間合いを保ちながら、こっそりクロゥへウィンク

「上手くやりなさいね、慣れっこでしょう?」



「それにしても、随分遠回りな手口を採るのね、この敵は」
 怪人は、紆余曲折だったり奇天烈な作戦を立てることが多いものだが。
 それにしたって、意図も理由も掴めない。
 なにを企んでいるのか――――。

「……今考えることではないか」
 十六夜・いろは(ナハトレイヴン・f16414)は頭を振った、やるべきことをなすために。
 三つ編みを解いて、オオルリアゲハのバレッタでまとめ。
 整ったスタイルを包むのは、大きくスリットの開いたブラック・ドレス。
 ロゼの入ったグラスを片手に、ヒールを鳴らす様はまさに夜の蝶。
 最も、花の蜜を求めるのではない。
 一皮剥けば――――狩猟者が、鴉がそこに立っている。

 ☆

「貴女はまるで薔薇の花のようだ……もっと水を注いであげたい……」
 そう言いながら、怪人は開いたグラスにひたすらワインを注ぎ。
 牛とヤモリの特徴を持つ若いキマイラレディは、勧められるままに酒を煽る。
 大体の獲物はこの様な感じだ。与えられることに飢えているから、注いでやればいくらでも入る。
 たとえそれが、甘い毒だとしても。

(もうそろそろ頃合いだな……)
 酩酊し続けるレディを見て、怪人はそんな事を思っていた。
 のだが。

「ねえ……店員さん……」
 不意に、怪人の肩に重みがかかった。 
 ほんのりと頬を上気させた濡羽の美女が、いつの間にか隣りに座って、身を寄せ、体重をかけていたのだ。

「あ……お、お客様?」
「ひどい話じゃない……? 私がこんなに寂しいのに、誰もかまってくれないのよ、ねえ?」
 十六夜・いろはがどんな女か、客観的に述べるのであれば『影のある美女』だ。
 たとえオブリビオンであったとしても……特に女性を相手に物事をこなす仕事である。
 つい、くらっときてしまっておかしいことがあるだろうか。
 いや、ない。
 ないのだ。

「お、お客様、他のテーブルにいれば、誰かが……」
「今の私は――――」
 上目遣い。
 触れる指先。
 柔らかな唇から紡がれる、声。

「あなたじゃないと、嫌」
 腕を引いて、強引に立ち上がらせる。

「あ、は、はい……」
 逆らえる道理などありはしなかった。

 ☆

「あ……」
 ホストを奪われたガールは、酩酊しながらも、行かないで、と求めるように手を伸ばす。けれど言葉にすることが出来ない。
 引っ込み思案で、大人しい性格なのか、だから、与えられるがままを受け入れていたのだろう。

(大丈夫よ)
 いろはは、怪人の腕を引きながら、視線をソファの向こうへ向けた。

(上手くやりなさいね、慣れっこでしょう?)
 合図のウィンクは、たしかに通った。
 レディの持て成すのは、せいぜい「けいけんほーふないろおとこ」にでも任せるとしよう。

 ☆

「失礼」
 一人残されたレディの隣に、間をおかずに座る者がいる。
 整った身なりに、くすんだ灰色の髪を持つ初老の男性だった。
 一言で言うなら“紳士”。僅かながらも場違い感があるのは――きっとその目が誠実の色を含んでいるからだろう。

「あなたは……新しい店員さん?」
「いいや、単なる鴉さ、飛び方を思い出すのに苦労する老いぼれさ」
 それでも、空を閉じ込めたような青色の瞳の向こうには、なんだか輝きの破片のようなものが見えて。
 レディは、その姿に一瞬、目を取られた。

「……いや、済まないね」
 不意に行われた謝罪に、レディは首を傾げ問うた。

「何が、ですか?」
「うむ、実は……さっきあのホストを連れ出した子はワシの友人でね」
「……? それは」
 どういう意味なのだろう、と目をぱちくりさせるレディに、男はいたずらが成功した少年のような、無邪気な笑みを浮かべた。

「どうしてもキミと話がしたくて、協力してもらったのだよ」
「……ナンパ、ですか?」
「おや、そう聞こえてしまったかな。いやいや、一目見て、ついね。キミは本当に素敵な女性だよ。ワシが三十年……いや、あと二十年若ければと思うほどね」
「随分、元気に見えるけど」
「そうかな? だったらワシもまだまだ捨てたものじゃあないかもな。ふふ」
 気がつけば、二人のグラスは、その両端を軽く打ち付け合う。
 大人が社交で交えるキスは、甲高い音がするものだ。



「残念だけど、流石にオジさんすぎるかも。パパみたいだもの」
「おや、それは残念だ。せめてこの一時だけは奪わないで欲しいものだが」
 そんな言葉を、笑いながら言える程には、レディの警戒心を溶かせたらしい。

「でもね、だからと言って、ここの連中にキミを渡すのは惜しいのだよ」
「……ここのお店?」
「ああ、他の女に声をかけられて、着いて行ってしまうような連中が、キミに何を与えてくれる?」
 問われて、レディは口を噤む。
 きっとわかっているのだろう。
 元より、心から与えられるものなど最初からこの店にはなく。
 あるのはただ、上っ面を飾られた、ハリボテ細工の軽い言葉だけなのだと。

「けど……寂しいもの。ここにいれば、とりあえず、寂しさは埋められるから」
「それは嘘だなぁ」
「……嘘?」
「それは埋められているわけじゃあない、誤魔化しているだけだろう?」
 す、とまったく予兆を感じさせない動きで。
 男は、レディのグラスを、その手から拐った。
 中身を飲み干し、置いて、それから、そっと頭に触れて。

「酒で埋めた穴に溺れてしまっては意味がない。キミにいるべき所に行きなさい」
 そして。

「またこの老人と酒を飲んでくれるなら、今度はもっとキミを笑わせてあげよう」
 レディは、しばらく俯いていたが。
 やがて、顔を上げた。
 きっと、面白かったのだろう。嬉しかったのだろう。
 初老の、父親ぐらいの男性が、こんなにもくれた言葉は。
 優しいヴェールの向こうに、心配が溢れていて。

「……また今度会ったら……ナンパ、して下さいね」

 ☆

「上手くやったじゃない」
 女が言う。

「ナンパの経験は無いがね」
 男が返す。

「人を誑かすのは得意なんだよ」
 可笑しそうに笑う。

 ――――それは、誑かすつもりで挑んだ酒が、案外美味かったからかも知れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ギヴ』

POW   :    あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD   :    しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠コルチェ・ウーパニャンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 からんころんころんからん。
 頭を割り砕くのが目的なのかと叫びたくなるほど。
 けたたましい鐘と、波長のずれたオルゴールの音色が、一斉に鳴り響いた。

『愛』

『愛シテル』

『愛ヲアゲル』

『愛シテル』

 その時――店内にいたキマイラ達と怪人に、変化が生じた。
 誰も彼もが目を虚ろにし、口々にそんな言葉を並べ始める。
 そして、ふらふらと夢遊病のように歩き出す。
 導かれる先は、店の奥にある巨大なホール。
 その中央で、一人の少女が踊っていた。

『愛』

『愛ヲ』

『愛ヲアゲル』

『愛シテ』

『愛スル』

『寂シクナイヨ』

 怪人達の賛美に包まれるように、その異形は踊っていた。
 真っ白な陶器の肌。
 その頭部は――人のそれではなかった。

 子供の頃、誰もが憧れたもの。
 恋人達の、甘い甘い思い出。
 楽しいあの頃――記憶の象徴。

 けれど、彼女は言葉を使えない。
 鳴り響くオルゴールの音色だけが、その感情表現のすべて。

 意思の疎通が隔絶している。
 想いの疎通が断絶している。

「あはは……」
「すてき……」
「すごい……」
「うふふ……」
 それでもキマイラたちは、その音色に身を委ねる。
 乾いた心が満たされていく。
 飢えた心が満たされていく。
 だってここには愛がある。
 詰め込み放題の愛がある。

 だけど彼女は、愛を求め、与えたい。
 だから、怪人たちを生み出して。
 愛を求める者たちを、呼び寄せ、集めたのだ。

 ほら、皆幸せそう。
 どうぞ、もっと愛に浸って。
 無尽蔵に注いであげる。
 なくならない愛を与えてあげる。

 怪人、ギヴ。
 愛を与え、愛を生み、愛を睦む――オブリビオン。

≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠
○ENEMY ギヴ 一体
 舞台となるホールにキマイラやギヴが生み出した
 イケメン&美女怪人がいますが、戦闘には影響しません。

○特殊ルール
 ギヴは追い詰められると、「あなたにとて楽しかった思い出」を召喚し、
 戦闘の中断を促してきます。

 プレイングに『どんな思い出が召喚され、どう乗り越えるか
 (あるいは思い出に飲まれてしまうか)』を書いておくと、
 そんな感じの描写になると思われます。

○プレイング受付
 5/22(水) 8:30から
 何度か再送お願いするかも知れません。

≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠
マリーノフカ・キス


・思い出
幼い頃の思い出
遊園地を、連想してしまったからだろうか

妹と、母と
仕事で来られなかった父の代わりに付き合って、優しくしてくれた母の女友達たち
十二単のお姫様に、イタリア系の美女

今思えば初恋だったな、なんてお姫様を思い出しながら

・行動
――ああ、参ったね
こんな夢を見せられては……正直不気味な敵だな、なんて言っていられないじゃないか

思い出に浸るなんて、もってのほかさ
レディを前に背伸びしてみせることを、僕はあの日々の中で覚えたのだから

焼き払うよ。思い出も、敵も、諸共に
そうしてから、斬り伏せよう
なに。わざわざ見せられるまでもない――思い出は、ずっと、この胸にあるのだからね



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

(これ、どうしたのじゃ? 疲れてしまったかの?)
 はっと気づいた時、マリーノフカ・キス(竜星のコメットグリッター・f01547)は、夕焼けの遊園地にいた。

(ずっと遊んでたからのう、そうじゃ、飲み物はいるかのう? ひゃ、百円までならそこの自販機で買ってやるぞ!)
 ふと横を見る。
 まったく場所に似つかわしくない、派手な十二単を着飾った、額から角を生やした女性が、心配そうにマリーノフカの顔を覗き込んでいた。
 そうだ、確か、遊園地に遊びに来たのだ。
 母親と、一緒に来れなかった父の代わりについてきてくれた、母の友達と共に。

 そして、母と、妹と、一人のお姉さんは、今、メリーゴーランドに乗っていた。
 自分はいいと不貞腐れて、乗らなかったのだ。
 だってもうすぐ遊園地から帰らなくてはならなくて。
 楽しい時間はもうおしまいで。
 最後のアトラクションになんてのりたくなかった。
 何より、男らしくない。ああいうのは、女の子が乗るものだ。
 彼女は、そんなマリーノフカの側にいてくれた。

(妾が見ておる故、皆でいってまいれ。…………いやこの格好で馬にまたがるのがこわいわけではなくてな?)
 なんて。

「……ううん、大丈夫」
 声は高い、目線も低い。
 今のマリーノフカは子供だ。
 もう、自分よりだいぶ目線が下になってしまった彼女を、この瞬間は見上げている。
 綺麗なかんばせ、サラサラの髪。
 ん? と問うてくる表情の愛らしさ。
 子供ながらに、その顔が近くあれば、ドキドキした。そわそわした。
 格好悪いところは見せたくないな、と思って、ニコっと笑った。

「ひめさまと、二人きりになりたかったからさ!」
 この人に覚えていて欲しい、そばに居て欲しい、格好いいところだけを見て欲しい。
 子供心に抱いたものだって、それは何一つ変わらない。
 胸は高鳴った。
 心は躍った。
 寂しさは消え去って、強がりが残った。
 事実は変えようがない。
 本人としては、とびっきりの決め台詞のつもりで。
 照れてくれたら、嬉しかったと思う。
 けれど、やっぱり相手は大人だから。

(そうかそうか、ありがとの)
 なんていって、頭を撫でられるだけだった。
 その時の、嬉しいのに、悔しくて、速く大人になりたいという感情。
 ああ、それこそが…………。

「ああ、あれが、僕の初恋だったんだな」
 立ち上がったマリーノフカは、もう一端の男だった。
 はて、と首を傾げる彼女より、ずっとずっと背が伸びた。
 この胸の思いを、生涯忘れることはないだろう。
 そしてだからこそ、この場所にはいられない。

「……僕が今、同じことを言ったら」
 幻だとわかっていても、いや、幻だからこそ。

「何ていうんだろうね、姫さま」
 こんな事、現実で言えるわけがない。
 だって、絶対に笑い話だ、妹なんかもう、向こう一年はからかい続けるに違いないだろう。
 きょとんとした彼女は、やがてくすりと笑って、立ち上がり。

(これ、大人をからかうものではないぞ?)
 背伸びして、おでこをつんと指で突かれた。

「……やっぱり、かなわないなあ」
 ため息と共に歩き出す。
 そう、遊園地の時間はもう終わりだ。
 楽しかった一日を終えて、いつもどおりに戻って。
 やがて惜しい気持ちは思い出となって、胸を満たし続けるだろう。
 だから――――。

「いってきます」
(うむ、いってまいれ!)
 胸の奥から湧き上がる思いを、灼熱の吐息に変えて。
 マリーノフカは、感情と共にそれを吐き出した。

 ☆

 ナンデドウシテウケイレナイノ?

 がらん、ごろん、がらん、ごろん。
 焼け焦げ崩れた白馬が、マリーノフカの足元に転がった。
 遊園地と呼ぶには、あまりも無粋で、色気の欠片もない。

「……わざわざ、見せられるまでもないさ」
 目を閉じ、思う。あの人を想う。

「――思い出は、ずっと、この胸にあるのだからね」
 がらがらと崩れ落ちていくメリーゴーランドを、それ以上振り返ることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リインルイン・ミュール
愛にも色々と聞きますケド
果たして、これは愛なんでしょうかねえ?


ともあれ倒さねば、ですネ!
陶器の肌なら、殴る、剣で叩くが有効でしょうカ
敵の攻撃は不明ですが、鋏か蹴りなら見切り易くはありそうデス
回避して拳を叩き込む、拳をフェイントとして身体を回し様に剣を振るう、避け切れない攻撃は念動力で軌道を逸らす等で戦います

過去の記憶が殆ど無いので、楽しかった思い出も最近のもの
旅団の方々と、とある宇宙船で、落書きした映像の魚を宙に泳がせて遊んだ思い出……
それだけの、しかし大事な記憶デス
そしてそれは、ワタシや皆さんのものですから。アナタから与えられるべきものでは無い
そのオルゴールの音と一緒に、歌で搔き消しましょう



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

(わあ、わあ、星のきらきらがぷかぷかしてる!)
 誰の声だっただろう。ああそうだ、流水の様な髪の毛の可愛いあの子の声だ。
 仮想の海が広がる空間に、リインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)は居た。
 皆で、思い思いに描いた魚が、宇宙のアクアリウムに泳ぐ。

 あれは誰が描いたやつかな?
 あれはどの子の魚かな?
 指差し、笑い合う。
 戦いの後に掴んだ、思い出の時間。

(「この食べ応えのありそうなのが■■のですネ!」)

 思い出の中の自分と、今の自分が同時に喋る。
 リインルインだってちゃんと描いたのだ。ほら……ちょっとブサイクだけれど、ちゃんと魚に見える。
 楽しい思い出。
 心に残る記憶。

 ――過去というパーソナリティをほとんど有さない彼女にとって。
 愛とは、思い出とは、即ち誰かと積み重ねた時間にほかならない。

(ええ、楽しかったですネ)
 あの日を忘れることは、けしてないだろう。
 だから、リインルインは、仮面の向こうで、誰にも見えない笑顔を浮かべて、くるりと景色に目を向けた。
 皆が言う、どこへ行くの? どうしたの? 一緒にいようよ、楽しく遊ぼう?

「ハイ、また遊びましょウ」
 喉――という器官があるのかどうかも、その身体に置いて定かではない。
 けれど確かに、それは発せられる。
 コ、コ、コ、と波紋が響き、空気が震え、世界が揺れる。

「確かにワタシにとって、この思い出は大事デス」
 だが。

「ワタシや皆さんのものですから。アナタから与えられるべきものでは――――無い」
 からんころん、ころんからん。
 どこか遠くで鳴っていたオルゴールの音。
 ヴ――――と音の広がりが一気に拡張し。

 ――――――ラ、ララララララ、ララララララララ、ラ。

 世界がひび割れた。
 世界が砕け散った。
 音をかき消して、リインルインは尚歌う。
 あるべき所に。
 ゆくべき所に。
 思い出の在り処に。
 確かに戻るために。

 ☆

 ナンデドウシテウケイレナイノ?

 がらん、ごろん、がらん、ごろん。
 砕け散ったカボチャの馬車の上に、リインルインは立っていた。

「……フム?」
 幻覚だったのだろう。
 相手の記憶から何かしらを作り出す能力だったのかも知れない。
 何にせよ。

「思い出は、これからもちゃんと作りますトモ」
 リインルイン・ミュールには、大事な仲間たちが、ちゃんといるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

非在・究子
た、TASさんの力を、借りる、ぞ。さ、最速の魅せプレイで……なに? え、SSRアイテムを、くれる? 交換チケ対象外のヤツ……い、いや、ダメだぞ? 怪人に、容赦は出来ない。
な、なら、思い出?

アタシは、TAS動画用の、キャラクターで、色んなゲームをやってきた……動画の再生数は……ロリ超乳はニッチ過ぎた……それでも、いつもご主人が、居てくれた。
……でも、気がつけば、居なくなって。
『現実』に放り出されてた。
ご主人は、『現実』って言うクソゲーを、クリアできなかったんだ。
な、なら、アタシが代わりに、クリアして、やらなくちゃ、だろ?
……それに、お前を倒せば、さっきのSSR、ドロップ品に、なるんだよ、な?



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

「期間限定SSRアイテムゲット、おめでとうございます!」
 気がつくと、非在・究子(非実在少女Q・f14901)は“そこ”にいた。
 ゲームのリアルイベント会場だ。それぞれ思い思いのコスに身を包んだキマイラ達が、現実に飛び出してきたゲームを体験し、遊んでいる。
 ……まぁキマイラフューチャーにおいて現実もゲームもさしたる違いはないのだけど、同好の士が実際に集まってイベントを盛り上げるのは大きな楽しみの一つであることに違いない。

「え、え、え?」
 戸惑う究子の手を、ゲームのコスを纏ったキマイラが引く。
 向かう壇上には、ずらりと並んだ、ゲーム内に登場する武器を現実で作成したものだ。
 どれもこれも、期間限定でしか手に入らない装備で、特別な仲間も手に入る。
 究子が持っていないものもいくつかあった。中にはゲーム内の資産全てをぶっこんでも欲しいと思っていたモノすら。

「さあ、お好きなものをどうぞ!」
「い、いいの、か?」
「勿論です、これはあなたに与えられる愛ですから!」

 愛。
 愛だ。
 これが愛。

「……これが……?」
 並んだ武器の前、ピタリと脚が止まる。

「……? どうしました? さあ、お好きなものを!」
「……ア、アタシは」
 ぽつりぽつりと、究子は喉の奥から言葉を絞り出した。

「TAS動画用の、キャラクターで、色んなゲームをやってきた……動画の再生数は……」
 そんなに多くはなかった。
 数多ネットに存在する十把一絡げの動画の一つ。
 原因は分析できている。ピンポイントの中の更にピンポイントを狙ったこのビジュアル。
 ばいんぼいんとたわわに弾む、ロリ超乳はニッチ過ぎた
 性格だって、万人に好かれるほど明るくアイドルアイドルしてるわけじゃない。
 けど。

「……それでも、いつもご主人が、居てくれた」
 今日はどうしようか。
 アレにチャレンジしてみようか。
 タイムを縮めるにはどうしたらいいんだろうな。
 そうやって色んな分析をして、効率を求めて。
 楽しかった。
 明日がどうなるかなんて考えたことがないぐらい、楽しかった。
 求められていた、必要とされていた、誇らしかった、嬉しかった。
 不安なんてなかった。彼女にとって、確かに“現実”はそこだった。

「……でも、気がつけば、居なくなって。アタシは、“現実”に放り出されてた」
 何で居なくなってしまったのか。
 わからない。
 想像することしか出来ない。
 けれど。
  、、、、、、
 現実は残酷だ。

「ご主人は、“現実”って言うクソゲーを、クリアできなかったんだ」
 カッコいい装備。
 最高の仲間。
 必殺のスキル。
 特別なアビリティ。
 そんな物、この世界の何処にもない。
 誰かが作った、誰かの箱庭の中でしか。

「……な、なら、アタシが代わりに、クリアして、やらなくちゃ、だろ?」
 だって、究子は外の世界にでた。
 そして、彼女にとって、今もここはゲームだ。
 ゲーム
 現実なら。
 クリアしてやる。

「……それに、お前を倒せば、このSSR、ドロップ品に、なるんだよ、な?」
 TASさん、頼む。
 自らの意思と関係なく、効率と最適解を極めた動き。
 手にしたSSR武器を、全力で、そのキマイラの顔面に叩き込んだ。
 びしり、と世界にヒビが入って、砕け散った。

 ☆

 ナンデドウシテウケイレナイノ?

 がらん、ごろん、がらん、ごろん。
 武器を叩き込んだキマイラの顔は、いつの間にか砕け散った木馬になっていた。
 同時に、幻は消え。
 華美な装飾の施された短剣は、ボロっと崩れて、塵になった。

「……ちぇ、そ、そううまくは、い、いかないか」
 “人権”とまで呼ばれるキャラだ、ぜひ欲しかったのだが。

「や、やっぱ……ク、クソゲーだな、現実って、奴は」
 けど、それだから。
 攻略する価値があるというものだろう?
 究子に与えられた愛は、こんなものじゃあ決して無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィサラ・ヴァイン
私、意外とナンパの才能あるのかも知れない…(お肌ツヤツヤ)
それはさておきギヴを倒さないと
ギヴが見せてくる思い出は、当然恋人との甘いひと時
求め求められ、与え与えられ、触れて触れられて、幸せな時間
だけどさ
…ナンパの事がバレて嫉妬されたり、苦手なトマトを手料理に入れる悪戯されたり、ちょっとした一言にムッとなって喧嘩したり…大変な事もあるけど、それも引っ括めて、私は今の恋人が大好きなんだよ
だから幸せだけしか見せられない貴女じゃ私を満足させるのは無理だよ
【砂漠の花びら】を使い、召喚された思い出ごとギヴを石化・風化させる
…私の思い出はさ、ちゃんと私の胸の中にあるから大丈夫
…それに、私達には未来もあるからね



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

 彼女と過ごす時間は、いつだって甘く愛おしい。
 部屋で二人、猫の様に――蛇がそうなるのだ、彼女の前では――甘えれば、優しく抱きしめて頭をなでてくれる。
 ふわっと広がる金髪から香る彼女の匂い。
 角度によって、深くも明るくもなる空色の瞳を見つめるだけで、こんなにも心が躍る。
 触れ合える喜びを感じる。同じ時間を分かち合う喜びを感じる。

「……ありがとう、大好き」
(……ええ。■■も大好きですよ、ヴィサラ)
 打てば響く、答えてくれる。

 それはどんなに幸せなことだろう。
 それはどんなに愛おしいことだろう。

「――――ねえ、■■」
(? どうしたのです? ヴィサラ)
 小さく首を傾げる彼女の姿は、とても愛らしい。
 それはそうだろう、だって、このカタチはきっと、ヴィサラの頭の中から作りだされた。
 世界で一番、彼女を好きな女が、彼女を想像しているのだ。
 可愛いに決まっている。
 愛らしいに決まっている。
 そっと、髪の毛に触れる、指の間を抜ける金糸の感触。
 愛しい人は、くすぐったそうに目を細めた。

「――今日ね、可愛い子をナンパしたわ。楽しくお喋りして、ご飯を食べて、連絡先も交換したの。それも、二人も」
(ふふ、そうですか)
 彼女は笑う。
 彼女は笑う。
 笑う。

  、、、、、、、、、、、、、、
(それはとってもよかったのです)
 ――どこまでも、笑顔で受け入れる。

「……そうでしょうね、それが、“貴女”の限界よね」
(……ヴィサラ?)
「与えることしか知らないから――否定するのは、怖いんでしょう?」
 ぴたりと。
 動きが止まる。表情が凍る。
 その言葉はもはや、恋人に告げるものではなく。
 世界を形作るモノに対する、宣戦布告に他ならない。

 ナンパしただなんて彼女にバレたら。
 きっと、可愛く頬を膨らませて、ぷいっと顔を背けるだろう。

『それはそれは、よかったのです。ところで、今夜のサラダにはトマトを入れて良いのですか?』
 ――――なんて言うかも知れない。

 あるいは、微笑んで顔を寄せて、首筋をついばんでくるかも知れない。
 この体が、この心が、誰のものであるのかを、証明せんとするが為に。

 肌に触れることも、唇を交えることも、それはお互いの意思を伝え合う、一つの方法でしかない。
 甘やかしてくれるから、愛なのではなく。
 望む言葉をくれるから、愛なのではなく。

 受け入れてくれること。
 受け入れること。

 この蛇の髪の毛を、異形を。
 怖くないと言ってくれた彼女と。
 
 一緒にいる時間なら――喧嘩したって、ムっとしたって、意地悪ですらも。
 幸せで、愛おしいのだ。

「あなたの愛は、幸せだけしか見せられない」
 だから。

「貴女じゃ私を満足させるのは無理だよ」
 ゴウ、と風が逆巻いた。
 見慣れた景色も、人も、全て全て、砂に還す砂漠の花びら。
 大好きな彼女の形すら、砂に。
 けれど、それが本物でないと知っているから。
 ヴィサラの風は、躊躇わない。

 ☆

 ナンデドウシテウケイレナイノ?

 ヴィサラが目を開けた時、そこにはもう、さらさらさら、と風化してゆく木馬しかなかった。
 ぱんぱん、とスカートに付いた裾を払って、崩れ行くメリーゴーランドを目で追って。

「……私の思い出はさ、ちゃんと私の胸の中にあるから大丈夫。それに――――」
 愛とは。
 結局、関係性だ。
 人と人との繋がり。

「私達には未来もあるからね」
 それは――誰かと生きる、ということにほかならないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アロンソ・ピノ
愛だのなんだの、オレには縁遠いが…これは愛ってやつなのか?
分からねえだが…オブリビオンが出してるもんだ
斬った方が良いだろう。
ユーベルコードは冬唄。
刀で斬れねえもんを斬る型で…愛と、あのオブリビオンが出す音を斬り落とす。
この型使っている間は全身痛えし、刀で斬れるもんは斬れなくなるが―怯むか隙は生まれるだろ。隙が出来たら冬唄の刀身壊してから普通の刀で斬りかかる。
楽しかった思い出……ガキの頃、親父が初めて今オレが持っている刀の変形を見せてくれた時…オレが初めてこの刀を変形させられた時…日が昇る前から素振りして、夕暮れまで刀振ってた時。
―は、今と変わらんべな。

―春夏秋冬流、参る。

(アドリブ、絡み歓迎)



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

 父の背中というのは、子供にとっては大きく見えるものだ、
 春夏秋冬流の奥義は一日にしてならず。
 抜き放った瞬間、刃の形が変わるとなれば、それは無限の剣閃を有するのと何ら変わらない。

(どうだ、出来るか?)
 渡された刀の、切っ先すら、変じさせることが出来なかったのが、その最初だ。
 それから、どれぐらい時間をかけただろう。
 日が昇る前、暗闇の中で、幼いアロンソ・ピノ(一花咲かせに・f07826)は刀を振るっていた。
 斬るためではなく、使うため。
 殺すためではなく、覚えるため。
 斬撃を、形を、自分の物にするためだけに。

 その鍛錬は、日が落ちて世界が夜に満ちるまで、ずっと続いた。

 初めて変化の兆しを見せたのは半年も経った頃だろうか。
 素振りの途中、遠くにひらりと舞い降りた木の葉を、なんとか斬れないかと思って。
 一歩も動かず、抜き打ちを放つ。届くわけがない斬撃が、その時は。
 刃を細く、長く絞る事で届かせた。イメージは出来ていた。形に出来た。
 まさか成功するとは思わなくて、自分が一番驚いた。
 その日から、刀はアロンソの思考に応えるようになった。

(――――要するに)
 今もまた、アロンソは刀を振っている。
 今度は、敵を討つために。敵を斬るために。

「――は、なぁんも今と変わらんべな」
 ずっとそうだ。
 今までもそうだったし。
 これからもきっとそうだろう。
 アロンソ・ピノは斬るために斬る。
 アロンソ・ピノは戦うために戦うのだ。

「変わらないなら、捕われる必要もないべ」
 居合の形。かたどる刃は、無形すら裂く冬の唄。

「――――春夏秋冬流、参る」
 それはかつて、刀を振る前に、幼い己が発した言葉。
 そして、今も、アロンソはそう告げるのだ。
 お前が相手にしている刃の名前を、思い知れと。

 ☆

 ナンデドウシテウケイレナイノ?

 がらん、ごろん、がらん、ごろん。
 両断された回転木馬は、派手な音を立てて崩壊した。

「……なんだ、こんなもんか」
 抵抗も何もありはしなかった。豆腐を斬る方がまだ慎重になるというものだ。
 愛は絶対で。
 愛に人は抗えず。
 堕ちると思っているのだろう、あのオブリビオンは。

「はっ」
 下らない。
 愛なんてもんはよくわからないが。
 押し付けられるそれが醜悪であることぐらいは、流石に知っているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグダレナ・ドゥリング


キマイラを集めてたのは愛故か
なら、それを【地形の利用】として活用しようか
【エレクトロレギオン】を展開して、キマイラや怪人を遮蔽物にして戦おう
愛し、愛されたいなら、傷つけたくないだろう?

思い出、これは……
ダークセイヴァーに居た頃の僕、か
お父様の娘として血に従い、血に酔う、虐殺の記憶

……猟兵になってからも色々と、楽しむようにしてきたつもりなのだけど
それでも、僕にとっての「楽しかった思い出」はこれらしい
流石に少し落ち込みもするよ。解っていた事とはいえ、こうも僕が人でなしと見せつけられるとね

……尤も、戦うのには影響はない。流れる血が増えるだけだ
残念ながら、君の見せたかった思い出とは、違ったのだろうね



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

 流血があった。
 視界一面を真っ赤に染めるブラッド・バス。
 吊るされた少女が泣きわめく。

 少女の顔は、絶望に満ちていて、それでもわずかな可能性を信じていた。
 助けて、お願い、どうか、誰か。

 ――――血と臓物が咲き誇る。
 ――――流れる、こぼれる、あふれる、満ちる。

 その望みを踏みにじってやるのが、楽しくてたまらない。
 一瞬でも助かると思ったのだろうか?

 肉を裂いて、骨を折って、臓腑を混ぜて、撒き散らかす。
 鉄の匂いで世界が満ちる、この一瞬が何より素晴らしい。
 そう、血の海の中にあって。
 女は――――笑っていた。
 陶酔していた。
 心酔していた。
 泥酔していた。

 何故なら。
 これは“愛”の記憶だ。
 辛い過去を振り返っているわけではなく。
 残酷な現実を追体験しているわけではなく。
 、、、、、
 楽しかった記憶なのだ。

「……あぁ」
 マグダレナ・ドゥリング(罪科の子・f00183)は返り血で濡れた己の肢体を、他人事の様に眺めていた。

「色々と、楽しむようにしてきたつもりなのだけど」
 世界を知ったから。
 文化を知ったから。
 世界には支配と虐殺だけではない事を知ったから。
 変わったつもり、だったのに。

 だって仕方ない。
 あの時、確かにマグダレナにとってそれは楽しくて。
 今になって行いを後悔するほど、良心的でもなくて。

「とはいえ、流石に少し落ち込みもするけどね」
 未だ、人になれてなかった。
 人を象った、人でなしだった。
 人でなしだから。

「これが愛なら――――とんだゲテモノだ」
 手を伸ばす。空間に亀裂が入るのは、ほぼ同時だった。
 愛を受け入れないものを、ギヴの世界は閉じ込めていられない。

「残念ながら、君の見せたかった思い出とは――――違ったのだろうね」

 ☆

 ナンデドウシテウケイレナイノ?

 がらん、ごろん、がらん、ごろん。
 割れたメリーゴーランドのティーカップが散乱した。
 服は濡れていない、肌も。鉄の匂いもしない。

「……幻覚か。まぁ、そうだろうとは思っていたけれど。それにしても」
 マグダレナは、首を傾げて、メルヘンの残骸を見下ろした。

「“あれ”を愛だと想って人に見せるような奴が、誰かに愛を与えるなんて、笑わせてくれるじゃあないか」

大成功 🔵​🔵​🔵​

六六六・たかし


「思い出」

楽しかった記憶か…。
過去の俺はデビルズナンバーを倒すことしかなかった。
楽しいという感情どころか喜怒哀楽全ての感情がなかったと言っても過言ではない。
あの頃はカーチャンにも迷惑をかけてばかりだったな。

だが…いつの間にか小うるさい奴らが3人も増えた。
毎日毎日やかましくて仕方がない。

だが…悪くはない。

俺はこの楽しいを過去にするつもりはない。
「まやかし」の楽しさに負けるはずがない…!

なぜなら俺はたかしだから。


砕け散れ…!デビル…!たかし…!!ストラッシュ!!!!



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

(ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!)
 武器を振るう。打ち砕き壊す。
 デビルズナンバーへいし、数が取り柄の量産型だ。
 叶うわけがない。この六六六・たかしに。
 デビルズナンバーを破壊するものに。

「そう、あの頃の俺は――戦いに明け暮れていた」
 たかしは、戦場に飛び込んでは、戦い、傷つく己を見ながらそう言った。

「酷いものだな。壊せればいい、というやり方だ」
(関係ない、どれだけ損傷しようが、デビルズナンバーを破壊できれば、それで)
 なぜなら。

(俺は――――たかしだからだ)

 ……。

(たかし! あんたまた服を汚してきて!! それにその傷!!)
(……ふん)
(……ふん、じゃないよこのアホンダラ!! 速く風呂入ってきな!)
(ぶへっ)

「……いつもは硬いものを投げるのに、そういえば戦いの後だけは、綺麗なタオルを投げてくれていたな、カーチャン」
 この時期は心配をかけたものだ。
 何せ感情というものがわからなかった。
 自分にそれがないということは、他人のそれが理解できないということだ。
 何故この女は、こうまで自分にかまうのだろう?
 何故一緒に暮らしていて、何故自分の面倒を見るのだろう?
 ……そんなことすら、わからなかったのだ。

 ……。

(――かし! たかし! 聞いてるの!?)
(……うるさいぞ、ざしきわらし。聞いているさ、なぜなら俺は――)
(たかしでしょ! 知ってるよ!)
 口うるさく吠え立てる、小さな人形。

(仕方ないべ、たかしは昨日大変だったんだべ)
(そうよぉ、あまりご主人様を責めちゃ駄目よぉ、ざしきわらしちゃん)
(……念の為聞くけど何してたの?)

(オラとスマブラ)
(その後ネット対戦)
(たかしの馬鹿ーーーーーーーー!!!)

「まあ許せ」
 しかし、なんだ。
 気づけば、小うるさい奴らが増えていたものだ。
 毎日毎日やかましい。落ち着いて創作活動に取り組むことも出来やしない。
 だが。

「――悪くはない」
 居心地がいい、という感覚を理解したのはいつの頃からか。
 騒がしくとも、気は楽で。
 決断するのは自分でも、支えてくれる連中が居て。
 それにどれほど助けられたか。

「だが――俺はこの“楽しい”を過去にするつもりはない」
 なぜなら、この日々はこれからも続いていくのだから。
 ただ、悪魔の数字を破壊するだけではなく。
 破壊した先にある――――未来に向かってゆくのだから。

「“まやかし”の楽しさに負けるはずがない――――なぜなら俺はたかしだから!」
 たかしブレードを逆手に構える。
 この世界は――――――。

「砕け散れ! デビルたかし――――ストラッシュ!!!!」
 不要だ。
 たかしは、より良い明日を知っている。

 ☆

 ナンデドウシテウケイレナイノ?

 がらん、ごろん、がらん、ごろん。
 馬車を真っ二つに両断して、たかしは華麗に着地した。

「たかし! どこいってたのよ、もう!」
 足元に、ちこちことざしきわらしが寄ってきた。
 どうやら、物理的に隔離されていたのか?

「……まあいい、俺に敵ではなかったということだ。なぜなら――俺はたかしだからな」
「またそれぇー!」
 ぽかぽか膝を叩いてくるざしきわらし。
 だが。

(ちなみにぃー)
 たかしにしか聞こえない、甘い大人の女性の声が、耳元でそっと鳴った。

(私は、聞いてたわよぉ、一緒に居たもの。ご主人サ・マ)
「………………忘れろ」
(はぁーい♪)
 大きくため息をついて、見上げる。
 メリーゴーランドは……もう崩壊しかけていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロゥ・クガタチ
いろは(f16414)と

中々回りくどい悪巧みだったが、参考になっ……冗談だよ

『暗夜の凶眼』で初手から最大威力の攻撃
視線を向けるだけで良いので不意打ちにはもってこいでね
相手の態勢が整う前にだまし討ちといこう

■思い出
一介のヴィランだった頃
まだ若く苦労もあったが、あの頃は友人と呼べる人間も多く、
褒められた生き方では無いが、ヴィランなりに楽しんでいたものだ

笑える話だ。こんなものでワシが手を緩めるとでも?
楽しかったのは事実だが捨てたのもワシ自身だ

己の欲望のために親しい相手であっても切り捨てることを厭わない
故にワシはヴィランなのだよ

もう一人の様子を見てみれば
……なるほど、中々愉快なことになっているようだ


十六夜・いろは
クロゥ(f16561)と同行

◇黄泉の炎が巻き上がり異形の姿へ

あなたの愛は、与えられて満たされ、尽きて飢え、更なる愛を求めるようになるもの。
……すべて、焼き尽くします

ギヴの【ダンス】に合わせるように躍りかかり【見切り】からの【カウンター】で追い詰めていきましょう。

◆想い出
同年代くらいの記者風の男性とその腕に抱かれる幼女
こちらに笑いかけて手を伸ばす

のを刹那の遅滞もなく焼き掃う

……お前たちが、奪ったものだ。
その姿で愛を騙るな、オブリビオン。

理解できませんか。あなたの愛を否定する私が憎いですか。

……それはよかった。
≪常夜の太陽≫が燃えて。
おかげで私は、あなたを殺せる。

……嗤ってるのがばればれよ、古鴉。



 からん、ころん、からん、ころん。
 和やかな音楽と共に、白馬が、ティーカップが、かぼちゃの馬車が回る。
 音色は人を夢へ誘う。こちらへおいで、あちらへどうぞ。
 あなたは、どんな幸せな夢を見る?
 あなたは、どんな愛が欲しい?

 ☆

 均衡の時代と呼ばれる以前、かつてクロゥ・クガタチ(オールドクロウ・f16561)は――――ヴィランだった。
 ヴィランとは、与えられた力を、己の欲望の為に使うモノだ。
 法に縛られず、人に裁けず、故にあらゆる我欲を謳歌した。

「これがワシの楽しかった思い出、か」
 そりゃまぁ、楽しかっただろうさ。
 何をぶっ壊した、いくら奪ってやった、ヒーローを叩きのめした、泣いてビビって命乞いしてやがった。
 そんな下らない、益体もない、誇れもしないようなことを、似たような境遇の連中と、ダラダラべらべら喋って。
 楽しくないはずがない。
 だが、切り捨てたのも、またクロゥ自身だ。
 故に。

「笑える話だ。こんなものでワシが手を緩めるとでも?」
 凶眼が歪む。夜に咲く。
 世界がまるまる歪んでいく。壊れていく、崩れていく。
 そして。

 ☆

 二人の人間が居た。
 一人は成人男性だ――眼鏡の向こうには理知的な瞳を備え、スーツはシワひとつなく整っていて。
 もう一人、男性に抱きかかえられた幼女は、嬉しそうにその頬に口づけをした。
 それから、二人は顔を揃えて、“こちら”を向いて手を伸ばした。

(い)
(マ)
 何かを言う暇など与えなかった。
 その姿を視認して、動いた瞬間にはもう、十六夜・いろは(ナハトレイヴン・f16414)の炎はそれらを全て焼いていた。
 痛みに嘆く声も、何故と問う声も、彼女を躊躇わせる理由にはなり得なかった。

「……お前たちが、奪ったものだ」
 失ってしまった。
 二度と手に入らない。
 知っている。
 そんな事はとうに昔に。

 ネヴァーモア
 もう無い。

 ネ ヴ ァ ー モ ア
 二度と無い。

 ネ ヴ ァ ー モ ア
 永遠にない。

     ナハトレイヴン
 故に、“ 夜 鴉 ”

「その姿で愛を騙るな、オブリビオン」
 炎はなおも燃え広がる。
 《常夜の太陽》は、世界を焼き尽くすまで、その炎を消さない。

 ☆

 からん、ころん、からん、ころん。
 そのオブリビオンは踊っていた。
 そのオブリビオンは想っていた。
 愛を与えないと。
 愛が欲しいから。
 与えただけ与えられる。
 それが愛だ、そういうものだ。
 なのに、誰も彼もがそれを否定する。
 なのに、誰も彼もがギヴの愛を受け取らない。

 何故、どうして? 疑問は、声にならない。
 代わりに、オルゴールの音色が、ただ響き続けるだけだ。
 ギヴという存在は、結局どこまで言っても、他人とのコミュニケーションが出来ない、その性質にあった。
 意思を交えることのできないものが、どうやって誰かを愛するのか。
 意思を交えることのできないものが、どうやって誰かに愛してもらえるのか。

 存在したその瞬間から。
 終わっているのだ。

「理解できませんか。あなたの愛を否定する私が憎いですか」
 女は、空間を焼き払いながら現れた。

 からん、ころん、ころん、からん。
 その音色は。
 きっと肯定なのだろう。
 何故なら。
 いろはが纏う黄泉の炎は、燃え続けている、今もなお。
 敵意と憎悪に応じて燃え避ける、その熱が。

「……それはよかった」
 だから、いろはは――ナハトレイヴンは、告げる。

「おかげで私は、あなたを殺せる」
 どす黒い炎がギヴを飲み込んだ。
 悲鳴と絶叫ですら、からころという、オルゴールの音色でしか表現できなかった。

 炎の中で、ギヴは踊る。
 感情を伝える手段を。
 想いを伝える手段を。
 そのオブリビオンは、知らないから。

 グシャリ、と音がして、それも終わった。
 上から、不可視の力に叩き潰され、ねじ切れて、炎の中に倒れ、塵になっていった。

「なるほど、中々愉快なことになっていたようだな、ん?」
 顎をさすりながら、飄々と現れた男は。
 姿を変じたいろはの姿を見て、大きくため息を吐いた。

「……嗤ってるのがばればれよ、古鴉」

 ☆

 オルゴールの音色は途絶え、メリーゴーランドも崩れ去った。
 もう、中身のない愛がばら撒かれることはないだろう。
 与えるものは、もう居ない。
 一方的に、身勝手に、感情に触れられることを、人は愛とは呼ばない。
 感情に、触れても良いという許しこそを、愛と呼ぶのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月03日


挿絵イラスト