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つきなき夜に

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●黒城
 暗夜。
 月を背に聳え立つ城は、一目で人の手によって建てられたものではないと分かる。
 凶悪に変形した塀と門、石垣の上、禍々しい気配を漂わせ構えるは天守。並みの者なら目にしただけで泡を吹き倒れるであろう。
 城の内外には主を失い行き場を失くした忍どもが溢れ、城の最上へと続く道を守る。
 ああ、何と忌まわしき魔の砦か。

 見よ! あれぞ噂に聞きし悪不理毘怨(おぶりびおん)城!!
 魑魅蠢き、魍魎犇く、悪兵共が夢の果て――。

 城の最も高きに、“忘れ去られた過去”一介の武将であったその者は立っていた。

 力は万全とは言えぬ。しかし、俺は再び成ったのだ。
 なれば命ありし刻に潰えた望みを今こそ……今こそ!
 ここからだ。ここからが我が愉しみ、我が待ち望みし再びの“殺し合い”が始まるのだ――それも、かつてとは比にならぬ規模の!

 見ておれ『人間』ども。
 貴様らの一切を殺して殺して、殺し尽くしてやろう。

 妄執に囚われ魔の身に堕ちた男は、ぐぼぐぼと笑った。

●魔導基地
 背景には、日本の城や木製の太鼓橋の存在する風景が広がる。
 ぱっと見たところ、それは「江戸時代」と呼ばれる時代の風景のように思えたが、どこかしらの違和感を覚えるのは、それが『サムライエンパイア』の世界だからだろう。
「ああ、皆さん、お集りいただけたようですね」
 集まった猟兵たちを見て、色白の、ひょろりとした印象の青年は本を閉じた。
 ゆっくりと立ち上がり皆の方を向く。
 天之涯・夕凪(動かない振子・f06065)は、常の困ったような顔立ちのまま口元に笑みを浮かべて、猟兵たちへと軽く会釈をした。次いで挨拶もそこそこに、説明を始める。
「サムライエンパイアのとある平原に、謎の真っ黒な城が出現しました。恐らく、オブリビオンが作ったものだと思われます。皆さんには、そちらへと出向き、城に乗り込んで敵の殲滅をお願いできればと思います」
 平原の真っただ中に現れた城だ。
 周囲に避難させるべき住人はおらず、事は単純。乗り込んで、叩き潰す。ただ、それだけのことである。
 とはいえ、決して油断できる相手ではないのでお気をつけてと青年は言葉を添える。
 百戦錬磨の猟兵たちには勿論言うまでもないことではあろうが――、油断大敵ということもあるものだから、と。
「敵は、城内を守る“紫陽衆”と呼ばれる此方の技やユーベルコードに対抗する術を使う集団のオブリビオン。それから、城の天守には、刀による斬撃や手下を召喚する武将のオブリビオンがいるはずです」
 此方から攻め入る形になるとはいえ、地の利は敵にあることも忘れない方が良いだろう。
「転送場所は城の正面です。城の守りは固められていますが、皆さんなら、正面突破なり塀をよじ登るなり、侵入自体は問題なく行えるかと」
 心配するような小言も言いはしたものの、その声音には信頼の色強く。
 微笑めば、青年の周囲に浮かぶ時計を模したグリモアが、カチカチと音を立てて動き始めた。
 転送が始まる――と、それが終わる前に、
「ああ、そうそう。無事に事が済んだらですが……平原沿いの道を行った先の近くの村に、良いお茶屋さんがあるらしいので、お茶でも飲んでこられては如何でしょうか?」
 なんせ、疲れたときには甘いものや温かいものが嬉しいですからね。
 そう、青年が言い終わるかどうかの頃合いで時計の鐘がボーンボーンと鳴り響き。

●いざ、尋常に。
 背が伸びた夏草が、夜風にざわめく。
 月は暗雲に隠されて、眼前に溶け込むような黒城――悪不理毘怨の巣窟。


夜一
 お世話になっております。夜一です。
 サムライエンパイアの純戦闘依頼です。
 この依頼に関しては、猟兵同士の連携は一切ありません。
 また、もし同行で参加を希望される方がいらした場合、描写可能人数は2人までとなります。
 それ以上のグループでの参加は一律で御返し致しますのでご了承ください。

●ご注意
 ・マスターの執筆傾向につきましてはMSページをご覧ください。
 ・各章冒頭に追加OP、もしくは、プレイング受付開始日の案内を出しますので、ご確認ください。
  また、連携なしという性質上、採用人数は控えめになる予定です。
 ・悪不理毘怨(おぶりびおん)は当て字です。当方が勝手につけたものですので、ご了承ください。

●その他
 本シナリオは
 第1章 集団戦
 第2章 ボス戦
 第3章 日常パート(茶屋で一服)
 という構成になっております。

 NPC(夕凪)は、第三章でお声かけがあった場合のみ登場いたします。
 特にお気遣いいただかなくても大丈夫ですが、お気軽にお声かけも嬉しいです。
 NPCへの声掛けプレイングを優先したりなどはしません。
 皆様のお好きなように。思い思いに遊んでいただければ幸いです。

 それでは、皆様の個性あふれるプレイングを楽しみにしております。
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第1章 集団戦 『模擬忍法・紫陽衆』

POW   :    苦無乱舞
【レベル×1の苦無】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    我らに理解できぬ戦術なし
対象のユーベルコードを防御すると、それを【即座に理解し時には秘術で種族や体格を変え】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    我らに唱えられぬ忍術なし
いま戦っている対象に有効な【忍術が書かれた巻物と忍具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【プレイングの受付は、11日(火)8時31分からです。どうぞよろしくお願いします】
御鏡・十兵衛
ほー、あれがおぶりびおんとやら……某、なんだかんだ見るのは初めてでしてな。
中々厄介な手合いも多いと耳にしたでござるが……まぁ斬れるのならば問題はあるまい。

戦ともなれば、策の一つや二つは考えてしかるべきもの……とは思ったものの、生憎と某にはさっぱり考え付きませぬな!
となればできるのは正面突破、精々引っ掻き回してやるとしよう。

城の門やら扉やら、後ろに敵が潜んでいそうな場所はそこごと斬り破りながら進むことで奇襲を防ぐでござるよ。

数を集めて襲って来たときは逆に好機でござる。苦無を避け、隙を見抜き【水破】を放てば、草の者を纏めて一刀両断することができるでござるからな!




 月無き夜に浮かび上がるは、宵を貫く金簪。
 黒の内に湛えた青は、夜風に逆らう事もなく、在るが侭、流れる侭にそよと靡いた。
「ほー、あれがおぶりびおんとやら……某、なんだかんだ見るのは初めてでござる」
 暗中に、翳して何を遮るものかは本人とても分からぬが、眼の上に手を翳し、城の様子を覗うは隻眼片角、羅刹の女。
 御鏡・十兵衛(朧に揺れる・f18659)は腕を組み、顎に手を当て悠々と一思案の時間を持って。
 あれに見える敵の術。
 転送前に多少の情報は得ているものなれば、
(策の一つや二つは考えてしかるべきものでござろうなぁ)
 そう考えるも当然だろう。
 況してや、“おぶりびおん”を相手取っての初陣なら、考えて行かぬという方が無茶というものだ。
「中々厄介な手合いも多いと耳にしたでござるが……」
 ふむ。
 女の喉が鳴る。
 鳴って其の直後に、くつと跳ねる。
「……とは思ったものの、生憎と某にはさっぱり考え付きませぬな!」
 呵々。快活な笑い声は、夜風に溶けて朧に霞む。

「まぁ斬れるのならば問題はあるまい。精々引っ掻き回してやるとしよう」
 人も鬼もおぶりびおんも、此の刃が通るのならば――。
 歩み始めると同時、鯉口を切った。
 女の歩みは悠々として大胆に。或いは、無謀無策と謗られそうな。
 黒城の真正面、門に近づけば刀を抜く。
 閉じられた門は、当然ながら彼女の為に開く様子はない。
「然らば御免」
 断りの短さよりも、刃が走る時間の方が尚短く。
 ぐっと、呻き声が漏れ聞こえた。門の影に潜んでいた忍の一人二人が門ごと切り倒された其の声。
「お邪魔するでござるよ~」
 軽い調子に返ってくるのは、四方から放たれる苦無の雨霰。
 身をかわし、刃で打ち落とし、其れで足りねば鞘で払う。
 虎口を抜けて本丸へと至る。

 とは言え、敵も堕ちたものと言えども忍。猟兵到着の報は既に城内を駆け巡っていた。
 十兵衛が土足構わず本丸に踏み入った其の瞬間、潜んでいた紫陽衆が十兵衛を取り囲み、一度に迫る。

 窮地か――否、好機。

 ゆるりとした足取りから一変、身を地に着くかと言う程、低く、低く、沈め。
 合わせて刀を鞘に納めた。
 床を蹴り、忍共の足元を水流さながらに擦り抜けて。
 纏めて後ろに置き去るや、先に納めた刀を抜く所作などは目に留まらぬ――、

「いや、やはり」

 透明な刃に追従する高密度まで圧縮された水の刃が、すぱりすぱりと、面白いようにおぶりびおんを両断す。
 閉じた眼で敵の塵に還るのを察せば、背を向けて。
「問題はないようでござるなぁ」
 羅刹は再び進み始める。
 からりと笑う声が、虚ろな城に反響した。

成功 🔵​🔵​🔴​

鬼灯原・孤檻
【POW】

「人の世を脅かす―――其の望みは許されない」

此度の戦いは先手を打っての正面突破。
いかなる多勢も一刀をもって神罰に処す。

紫陽衆を視認すると、抜刀する。
飛び交う苦無を【見切り】と、【アイテム:霊刀・凍檻】で捌く。
相手が距離を取るようであれば、【アイテム:天秤の神の御鎖】を結び付けた刀を【投擲】する。
刀を当てると見せかけて、鎖を敵に巻き付けよう。
この鎖は見た目以上に重くなる。
一瞬だけでも【時間稼ぎ】し、その隙を見て敵に一撃を浴びせる。
似たような敵が大勢いるのなら、飛ばされた苦無も投げ返してやろう。


<アドリブ歓迎>




 ――言葉も無く。

 唯、黙然として進む影在り。
 忍の一人が、背後から其の影に襲い掛かる……が、一片の慈悲もなく、切り伏せられる。
 男は、屠った相手に銀を向ける事もなく、先へ行く。

 一が来ようと、二が来ようと、八が、十が、襲い来ようと物の数ではない。
 視止めた瞬間に刃を抜き、自身の半身とも言える霊刀で斬って、捨てる。
 刀は、其の名の通りに、凍てつくような鋭さで敵を裂き。
 刀は、其の名に反して、檻に閉じ込められた魂を解き放つ。

 張り巡らされた糸の如くに飛び交う苦無を避けるのは容易ではない。
 されど、彼は其の軌道を読み、迫る小刀を弾いて落とした。
 床に落ちた小刀は、どれも皆一切真っ二つに断たれている。
 先に斬られた同胞の死に様、そして自分たちの武器の有様。只事に非ずという事は、敵をして察するに易い。
 ならばと忍達は視線を交わし、男から速やかに距離を置いた。
 あの刃にさえ警戒すれば、大事には至らぬと判断したのだろう。
 男は、闇に反射する刃の如き目を細め、敵の挙動を瞬間的に観察した。
 身を覆う影が布の様に蠢き、伸ばされた男の手に巻き付いた鎖が、手早く【霊刀・凍檻】に繋がれた。
 ヒュゥンと風切る音一度、敵へと真っ直ぐに投げられた刃。暗きに鎖の疾駆音。
 一直線の投擲に当たる等忍の名折れと、紫陽衆が軽々刀と鎖を避ける。
 其の瞬間、鎖が主の命に従うように、急激に其の軌道を変え、敵の足を絡めとった。
「!?」
 絡めとっただけではない。
 鎖は、忍に巻き付いた途端に重さを増し、忍の体を床へと叩きつける!
「貴様、一体何を……!!」
 それが、自身の罪の重さだとは、オブリビオンに知る由も無く――。

 気づけば、男の手には再び刀が握られていた。
 離した筈の距離は既に埋められ、無きに等しく。

「人の世を脅かす―――其の望みは許されない」

 男――鬼灯原・孤檻(刀振るう神・f18243)の唇が、遂に開かれた。
 神罰執行。

 男の進む其の道には、塵一握りも残らなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロカジ・ミナイ
城へはひょいひょいとフワッと侵入
忍者のみなさんこんばんは

忍術は術の中でも特に面白い術のひとつと見ている
僕に有効な忍術ってなんだろうねぇ?
見せておくれよ、気になるから
…まさか大人しく喰らってやるとは言わないが

最低限、口と煙管が無事なら良好
スッと吸って火種を肥やし、
コンッと叩けば僕の可愛い七つ首の大蛇がやって来る
僕の化かし術も見ていっておくれよ

お疲れ、ヤマタちゃん達
こんな素敵な夜にのびのびするのも久しぶりだろう?
ここには玩具がいっぱいだからね、好きにしていいよ
片付け終わるまで帰って来ちゃ駄目




 苦する様子ひとつ見せず、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は、ひょいひょいと軽やかに塀を飛び越え、城の中へと入り込んだ。
 正面切っての殴り込み……としなかったのは幸いだっただろう。
 何故なら、夜闇にあっても彼の鮮やかなピンク色が敵の目を引くのは間違いない事であったから。
 と言っても、彼自身、正面から敵と斬り合う様な性質の男で無ければ、横から城へと向かう事は至極当然とも言えた。

「忍者のみなさんこんばんは」

 朧に棚引く雲を背に、侵入した窓枠に腰かけて。
 和を洋を、今を昔を、てんでに集めたような奇怪な、けれど不思議と調和した格好の男は、やはり、其の格好同様、場にそぐわない落ち着きで紫陽衆へと声を掛ける。
 瞬時に警戒態勢に移るオブリビオン達の様を、何処か冷ややかな目で見つめながらも、其の口端は上がった侭に。
「君達、相手に有効な忍術を出せるんだろう?」
 敵に向けるのは好奇心。
 否、正確には其れが向けられているのは、敵の“術”にのみだが。
「見せておくれよ、気になるから」
 一体、自分に有効な術とは何か。
 狐は長煙管に火種を入れて一服しながら、ちょいちょいと、指先挑発するように招いた。
 其の仕草。敵にとって、面白い筈がない。
 男の態度、言葉に表情。明らかに軽んじられている。
 しかし、彼等とて忍である。怒りに身を任せたりはしない。
 だが、敵が術を出す暇をくれると言うのならば、其れを利用しない手があろうか。
 敵がユーベルコードにより取り出だしたのは、術を記した巻物と巨大な扇。
「へぇ」
 ロカジが、感心したように声を漏らした。
 敵が巻物を開き扇を振るえば、突風と風の刃が妖狐に向かい放たれる。
 成程。
 風を繰ると言うのなら、粉薬等は流されようか。
 くすり箱の二つ目の取っ手がカタカタ音を立てた。
「……まさか大人しく喰らってやる義理はないけどね」
 だが、所詮は“その程度”だ。

 オマケの一服を終え、ロカジは火皿を相手に向けて、コンと打つ。
「折角だ。僕の化かし術も見ていっておくれよ」
 ほんの小さな火種。飛ぶ音もなければ、脅威もない。
 忍は当然、そんなちっぽけな火の粉を避けるより攻撃する方を選ぶ。
 けれど、火は風に煽られれば勢力を増すのだ。

 火種は燃え上がった。
 ――命中した其れによって招かれた七ツ首の大蛇という形で。

 避けようとしてももう遅い。種は撒かれてしまった後だ。
 手足に噛みつかれ、あれよと言う間に敵は大蛇の臓腑に収まる。
 其の背をぽんぽんと撫ぜ、男は大蛇を労った。
「お疲れ、ヤマタちゃん達」
 けれど、上がるにはまだ早い。
 潜む幾十もの気配に視線を巡らせながら、ロカジは再び、どっかりと窓枠に腰を掛けた。
「こんな素敵な夜にのびのびするのも久しぶりだろう? ここには玩具がいっぱいだからね、好きにしていいよ」
 主の言葉に喜ぶように、大蛇はフシュルルルと鳴きながら、床を這い、城の奥へと溶けて行く。
 暫く、金属の何かに刺さるような音や僅かな悲鳴が聞こえた後に――、

 ずるりずるりと上機嫌で戻って来る大蛇があった。
 其の尻尾に、ぐたりとした人影が締め付けられているのを見て取れば……終いの一つの御首は、ふぅーっと煙を吐き出し、七つに告げる。

「片付け終わるまで帰って来ちゃ駄目」

成功 🔵​🔵​🔴​

刑部・理寿乃
こんな城に住んでる人なんてロクなものじゃないですね~。
とっとと蹴散らしましょう。

【戦闘】
忍者というからには素早いのでしょうね。翻弄されず冷静に対処しましょう。
飛んでくる苦無は第六感、見切りで察知し、武器受けでガードやダッシュで回避。
鋼糸を使って忍者を拘束、怪力を持って引き寄せ盾に。「忍びよ、卑怯とは言うまいな」

ただ守るのではなく出来るだけ忍者たちを一箇所に集めます。
程よい所でユーベルコードを使用。
範囲攻撃で拡大、生命力吸収することで恐怖を与え、一気に蹴散らします。

そういえば、敵の苦無ってユーベルコード産だと倒したらなくなるのかな?
残っていたら持てるだけ回収します。




 黒に染まった城には似合わない、柔らかな声が響いた。
「こんな城に住んでる人なんてロクなものじゃないですね~」
 呟かれた独り言を、城に巣食う魔の者達は耳聡く拾い上げる。
 手段を選ばず、速やかに侵入者を排除しようとする其の動きを気取って、刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)の闇に似た紫と、輝くような金色が、チカリと周囲を巡って。
「ほんと、ロクでもなさそうです」
 呆れたような声音。ぼそりと呟き、剣の柄を両手で握り直す。

「とっとと蹴散らしましょう」

 理寿乃の言葉を皮切りに、忍達が一度に動き始める。
 素早く、理寿乃の剣に捉えられないように、或いは駆け、或いは跳ね。
 一人なら動きを捉える事も簡単だったろうが、何せ今は多数が相手。其の上、敵は此方の知らぬ通り道や障害物に身を潜めてくる。
 一人の動きに意識を集中しようものなら、他からの攻撃が背後からといった状況だ。
(翻弄されちゃだめ。冷静に対処しましょう)
 しかし、理寿乃の脳裏は極めて冷静だった。
 放たれる苦無を敵の気配と闇に浮かぶ幽かな光の反射で見極め、幾本もの剣を駆使して弾き、避ける。
(数が多くて厄介ですね……それなら)
 敵対する内のオブリビオンの一体が、苦無を投げて生じた僅かな隙を見抜くと、理寿乃はすかさず【クリセイオーの残糸】で忍自身を絡め取り、自分へと引き寄せる。
「忍びよ、卑怯とは言うまいな」
 其の耳元に囁いて、次いで飛んできた苦無の盾代わり、力任せに自身と相手の立ち位置を入れ替えた。
 呻く相手から糸をするりと解き、竜人の女は敵全体の立ち回りを予測する。
 時間を掛けながらも慎重に、敵を同じ方向へと纏めると、理寿乃は剣にありったけの力を込めて、下から上へと振り上げる。
 まるで地面を引き剥がすかのような動きから生まれた衝撃波は、竜巻のように渦巻き、荒れ狂い。
 理寿乃を中心として、竜の如き風の牙で忍達をズタズタに引き裂いた。
 暴風は一瞬で駆け抜け、柱や壁に叩きつけられた忍達が一撃で戦闘不能になり塵に還ったことを確認し、理寿乃はふぅと息を吐いた。
 暴風の残滓。
 歌うように穏やかなそよ風が、さらと理寿乃の柔らかな髪を揺らして。

「そういえば、敵の苦無ってユーベルコード産だと倒したらなくなるのかな?」
 ふと、気になって女は地面に視線を向ける。
 風で一気に薙ぎ払った苦無が、まだ消えずにそこに残っていた。
「……ユーベルコードの使い主は消えたのに、ふしぎですね~」
 ま、いっか。とのんびり呟きながら、理寿乃は苦無を拾い、上階へと進んで行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

風嶺・陽
【心情】
全くもって趣味のよろしくない城郭もあったものです。
どうも城主もろくでも無さそうな方ですのでさっくり討ち果たさせて頂きましょう。

【行動】
【目立たない】ように気配を殺しつつ移動します。
他の方が派手に動いてくれてるならなお有り難いですね。
接敵したなら問答無用の【先制攻撃】【範囲攻撃】でユーベルコードを使用。
動きを封じられて動けなくなった端から忍者手裏剣で【暗殺】しながら先へ進むとしましょう。

「あまり派手なのは好ましくないのでこういう手段を取らせていただきますね。できるだけ静かにその命を散らせて頂けるならこちらとしても手間が省けていいのですが」




「全くもって趣味のよろしくない城郭もあったものです」
 やや呆れた口調で風嶺・陽(鬼刹猟姫・f06532)はこっそりと呟いた。
 外観も然る事ながら、忍者屋敷さながらに、回転隠し扉だの床下だのから現れては他の猟兵に襲い掛かっている忍達の様子を覗っていれば、そう呟きたくなる彼女の心境も当然だろう。
 陰に隠れながらよくよく観察すれば、此の城が如何に攻め入って来た敵を抹殺する事を考えて造られているかがよく分かる。
 陽は、天守を見上げるように視線を上げた。
 まだ、其の姿かたちは見えないものの……、
(どうも城主もろくでも無さそうな方ですし……)
 果たして、オブリビオンに真っ当な者がいるかは怪しいが、少なくとも、此の城を拵えた主犯はそんな期待を寄せるだけ無駄な存在だろうという事は容易に見当がつくというものだ。
(さっくり討ち果たさせて頂きましょう)
 自分の言葉に頷いて、陽は身を屈め、敵の死角を縫うようにしながら歩みを進めた。

 あちこちで激しい戦闘の音が響く。
 他の猟兵たちが暴れているのだろう。敵の注意を引き付けてくれるのなら、陽にとっては好都合だ。
 心の中で小さく見知らぬ猟兵に感謝しながら、陽は周囲を注意深く観察する。

(いた。あの人が狙い目ですね)
 陽の方向に背を向けており、周囲に他のオブリビオンのいない一人を見つけると、陽は素早く音を立てずに接近する。
 敵が気付くよりも、陽の術の発動の方が早かった。
 ユーベルコード≪妖異忍術・奴延鳥≫で招来した雷が、敵の背後から直撃し、手足どころか喉すら封じられた忍は、仲間を呼ぶことも出来ずにその場に立ち尽くす。
 念のために口を手で塞ぎながら、その喉を忍者手裏剣ですっと横に引けば、誰に知られる事もなく、オブリビオンは骸の海へと還る事となる。
「あまり派手なのは好ましくないのでこういう手段を取らせていただきますね」
 そう断りながらも、他の敵に見つかる前に陰に身を隠す陽に油断はない。
 一人、また一人と……静かに、けれど確実に、オブリビオン達の数を刈り取りながら。
 地の利に、数。
 敵に幾つかの面でアドバンテージがあれど、油断しなければ、忍の軍団でも猟兵にとって大きな脅威ではない。
 また一人、塵を生じさせながら、陽は、小さく零した。

「静かに命を散らせて頂いて、こちらとしても手間が省けて助かります」

成功 🔵​🔵​🔴​

有栖川・夏介
※アドリブ歓迎

油断大敵とはいえ、たまにはこういったあれこれ考えなくていい依頼も悪くはありませんね。
小細工なしの正面突破、対峙した敵は須らく排除します。
「……では、サヨナラの時間です」

ナイフを構えて【覚悟】
相手が忍びなら、こちらも忍ぶように動きましょう。
【目立たない】ように気配を殺し、【忍び足】で移動。
背後から攻撃し、一撃与えたらすぐに離れる。
これを何度か繰り返す。
相手に【恐怖を与える】ことでペースを乱し、こちらが優位な状況で戦えればいいのですが……。

敵の攻撃は【絶望の福音】や【見切り】で回避。
投擲されたものなどは、ナイフによる【武器落とし】で叩き落とします。




「油断大敵とはいえ、」

 青年の手には、ナイフ。

「たまにはこういったあれこれ考えなくていい依頼も悪くはありませんね」
 オブリビオンの凶行で人々が苦しめられる事件や、或いはオブリビオン自身の攻撃で猟兵達が苛まれる事件。
 此の世界には、ありとあらゆる苦悩が存在する。
 ……勿論、其れは、オブリビオンの事件に関する事だけではないけれど。

 有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)は、まるで平常の時の様に言いながら、手に持ったナイフをオブリビオンに突きつけた。

「……では、サヨナラの時間です」


 【神を殺す小刀】と言う壮大な名のついた其のナイフは、覚悟が無ければ虫も殺せぬと言う小刀だと言う。
 されど、青年にはとうに覚悟があった。
 敵に気取られぬよう、息を殺し、足音を殺し、そろそろと進んで行く。
 やがて敵を発見するや、敵に速やかに近づき、ナイフでの斬撃を与え、距離を離す。
「っ!!」
 敵が驚き振り返るも、夏介は既に敵から身を隠すのに十分な距離を取っており、其の位置を掴ませない。
 警戒する相手に同様のヒット&アウェイを繰り返す事は容易ではない。
 しかし、夏介の慎重な性質と、素早く的確な攻撃は其れを可能にする。
 幾度となく繰り返され、次第に蓄積していくダメージに、敵は焦り始める。
 焦りだけではない。
 次はどこから狙われるのか、猟兵の狙いは何か。果たして、一人だけなのか。
 正体の掴めぬ襲撃者に、生じる感情は恐れ――。
「人を揶揄うように……いい加減に出てこい!!」
 やがて、どうやっても察知できぬ事に苛立ちを覚えたオブリビオンは、破れかぶれの方向へと手裏剣を投げつけた。
 瞬間、夏介は敵へと詰め寄り、再びナイフを閃かせる!
「!」
 気づき、振り向いた忍が夏介へと苦無を放るも、先を見通すユーベルコード≪絶望の福音≫により、難なくかわされて。
 敵の姿かたちすら模倣するユーベルコードも、攻撃として受け止められるものでなければ真似ることすら叶わず。
 深く腹を切り裂かれて、その場に膝をついた。


 塵になって消えて行く血糊を見送ると、青年は上階へと進む。
 行く道道で、淡々と“仕事”をこなしながら。

 恐怖を与えても、罪を裁いても、心苛まれぬ気安さで。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
なるほど…目標は最上段か

自分の体力の無さは自覚してるので
全ての敵を片っ端から…みたいな事は考えてないよ
【催眠歌唱】の子守唄による【範囲攻撃】を紡ぎ
敵を無力化しながら翼で飛行
眠る事なく追って来た敵だけ対処

動き速そうだし…
【空中戦】の機動力と風の【全力魔法】を宿した★Venti Alaの跳躍力
空中歩行能力を活かして身軽に回避
氷の【高速詠唱、属性攻撃】で敵を凍えさせ動き封じ

忍者さんってさー、忍術使えるんだよね
でもやっぱり魔法みたいに、詠唱とか必要なのかな?
ふーん……じゃあ妨害しちゃおっと
【指定UC】発動
花粉による目の痒みやらくしゃみやらが効果出れば
その隙に【破魔の全力魔法+範囲攻撃】で一層




「なるほど……目標は最上段か」
 未だ、黒い天井に阻まれた上階を見上げながら、少年は呟いた。

 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は慎重な少年だ。
 決して自身の力を過信はしないし、敵の力を侮ったりもしない。
 故に、敵全員を倒す事には拘らず、戦う敵を減らす事其れ自体を目的として行動する。

 彼の得意な催眠を織り込んだ歌声が、華やぎ等欠片も感じられない城内、其の一部を満たし始める。
 歌声は澪を中心に広がり、範囲を拡大しながら、猟兵達を闇討ちせんと潜んでいた者達を心地好い眠りへと誘う。
 闇に映える白い翼を広げ、澪は滑るように城の中を飛び上を目指す。
 歌声は敵を眠りに陥れるが、催眠に掛からなかった敵に自分の居場所が直ぐに知られると言うリスクもある。
 何人かのオブリビオンが、自身を追って来る気配を察すると、澪は空中で止まり、敵へと向き直る。
(あんまり飛び回って、数が増え過ぎても厄介だしね)
 距離を詰められる前に、素早く詠唱を唱え、風の魔力を最大限まで【Venti Ala】へ付与する。
 高められた魔力は可視化する程の密度となり、靴に主の翼同様の白い翼を与えた。
 靴のつま先で宙をコンコンと打って、感触と調子を確かめると、澪はキッと闇を見据え。
 まずは挨拶代わりかと、飛び来る手裏剣をカモシカのように弾んで避ける。
「お返しだよ!」
 風に次いで、今度は氷の魔法。呪文を一息で編み込み、敵へと向かって冷気と吹雪を放つ。
 流石オブリビオンと言えど、目に見えて動きが衰えた、が……。
 そこで止まる様な者達ではない。
 澪の機動力を削ごうと、ユーベルコードで巻物と鞭を具現化させ、術を発動させようと巻物の紐をしゅるり、解いた。
「忍者さんってさー、忍術使えるんだよね」
 其の様子を見て、徐に、澪が語り掛ける。
 忍は怪訝な表情を浮かべるも、術を発動させようとする手を止める事はない。
「魔法みたいに、詠唱とか必要なのかな? それとも、巻物咥えてドロン、とか?」
 学園に置いている本で、そんなの見た事があったかもしれない。
 戯れるような物言いで。
 けれど、実際、彼らがどちらで術を発動しようと構わないのだ。
 発動に何某かの所作が必要だということさえ分かれば。
「ふーん……じゃあ妨害しちゃおっと」
 素っ気無い顔で、澪は、≪Clarus Virus≫を発動する。
 黒い床から芽が出たかと思えば、其れらは急速に成長し、メキメキと天井を突き破り、あっと言う間に城内に森が出現した。
 直後、頭上から何かが降り注ぎ始める。
 思わず、紫陽衆達が上を見上げると、其れは虹色に輝く――。

 途端、其の近辺にいたオブリビオンが、皆一斉にクシャミを始め、目を擦り始めた!

「うわぁ、辛そう」
 自分のユーベルコードながら、中々エグい技だとしみじみ思いながら、澪は、猟兵どころではなくなってしまった忍達へと視線を向ける。
 こほん、咳払い一つ。
「ごめんね?」
 と断り添えて。
 虹色の粒に包まれながら、澪の魔を払う力が、一気に周囲を包み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

薄荷・千夜子
UCを使用して巨大化した鷹の彗に騎乗
空を飛んで一気に上階まで翔け上がりましょう
窓を蹴破り城内に突入します

「先手必勝、参ります」
彗から飛び降り【先制攻撃】
忍者に[禽羽双針]の仕込み針による【毒使い】込みの蹴り技
初撃以降は蹴り技と短刀[夜藤]を用いた接近戦で対応
【属性攻撃】で蒼い炎を纏わせ炎を飛ばすことで複数敵は【なぎ払い】

彗は相手を引き付けたり目晦ましに動いたりと連携メインの動きを
もしUCを借用された場合は彗に変化した鷹の相手をお願いします
自身の回避等は【見切り】【残像】【第六感】【野生の勘】を使用
「変化はできても、我々の連携は長年の賜物ですよ」

アドリブも歓迎です




 一人と一羽。千の夜をも飛び越えよう。

 薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)は、相棒の鷹『彗』の背に乗り、夜空を駆ける。
 ユーベルコード≪彗翔一閃≫により巨大化した彗は、技の名前に違わず空を一閃。疾風の如く。
 瞬きの間に城の上階へと辿り着くと、格子窓を蹴破り中へと押し入る。
 まさか、空を駆けて来る者がと意表を突かれ、一瞬動きに躊躇が出た紫陽衆たちを、しかと翡翠の眼で見据え、千夜子は短く告げる。

「先手必勝、参ります」

 同時、相棒から飛び降り地面を蹴って、すらりと長い脚が宙を裂く。
 慌て、間一髪、後ろへ飛び退いた忍の喉から血が迸る。
 攻撃の間合いは確かに見誤っていなかった筈と、少女の足を見返せば――、
 【禽羽双針】のヒールから蹴りの勢いで伸びた針。其の分の間合いを取り損ねた事実。そして、
「ぐ、ぅ……!?」
 ぐらりと視界が揺らめき始める。
 一の戦略、二の計略。
 針に仕込まれた毒は即効性の猛毒だ。オブリビオンにも其のダメージは十分に通用する。
 しかし、敵も一人ではない。
 毒を受け動けなくなった者には構わず、怨敵たる猟兵を打倒そうと少女へ詰め寄る。
 投げられた手裏剣を回避し、再び武器を投擲される前に、千夜子は距離を詰め白兵戦へと持ち込んだ。
 敵の集団に飛び込めば、必然、攻撃は彼女に集中する。
 しかし、そうなる前に、賢い巨鷹は高らかに声を上げて翼を羽ばたかせ、鋭い嘴と爪で敵を引き付け始め。
 敵が彗に気を取られ、攻撃と守りが手薄になったところで、千夜子は足に炎の属性を宿した。
 蒼色が暗きに浮かび、円を描く。
 蹴撃と組み合わされた攻撃から、炎が散弾の様に弾け飛び、千夜子を取り囲んでいた忍達を粗方吹き飛ばし。

 やがて、彗に襲われていた忍の内の一人の姿がゴキリ、グギリと変じ始めた。
「彗」
 千夜子がミント色の視線を彗へと向ける。
 鷹は、クルルと喉を鳴らして、主の意をすぐさま理解した。翼を大きく広げる。
 敵の変貌が終わる前に敵に飛び掛かった彗に其方を任せ、千夜子は残る忍達を相手に、刀で、脚で、舞う様に切り結ぶ。
 互い、相棒の方は振り返らない。
 余所見等せずとも、負ける筈が無いと言う強い信頼関係の成せる技――。

 近場に居たオブリビオンの最後の一人の喉をヒールの針で貫いたとほぼ時を同じくして、相棒が声高く勝利を唄った。
 千夜子は彗を振り返り、其の首筋を優しく撫でながら、塵になって行く忍達へ視線を落とし、呟いた。

「変化はできても、我々の連携は長年の賜物ですよ」

 毒に苦しむ仲間を見捨てる貴方達に、真似出来よう筈など、ない。

成功 🔵​🔵​🔴​

バル・マスケレード
ヒハハッ、本物の忍どもと来たか!
いいぜ……テメエらの土俵で勝負してやらァ。

それから『久遠の《棘》』を伸ばして高所からスルリと侵入し、
UC発動。隠密行動の開始だ。

敵の得意技はコッチの真似。
なら話は簡単だ。
真似されるより……知覚されるより前に、殺りゃいい。

天守を目指しつつ、見つけた敵は逃さねェ。
背後から抜き足差し足【忍び足】で接近、即座に急所に短剣の一撃。
【地形の利用】も徹底、襖の裏に隠れ、通りがかった敵の影を剣で貫き
又は天井裏に潜み、棘を伸ばして敵を吊るし上げ、引き摺り込んでの始末。
ジダイゲキよろしくの【暗殺】術、とくと御覧じろってな。

多体一に付き合う必要はねェ。
一体一体確実に減らしゃいいのさ。




 城に、夜闇に線を引く様に、紫が無遠慮に横切った。
 夜空を上へと横切りながら、バル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)は楽しげに笑う。
「本物の忍どもと来たか!」
 骸の海からの使者と言えど、生前は主を持っていた確かな忍の者達だ。
 不気味な仮面の姿を持つ男は、不敵に宣言した。
「いいぜ……テメエらの土俵で勝負してやらァ」
 その宣言の聞き手は、女一人だけであったが。

 音も無く忍び込んだバルを知覚出来る者は、仲間である猟兵達をしても困難であっただろう。
 ≪忍の極意【霧影】≫は、バルの姿を霧に包んだように風景に融け込ませ、また、影のように敵への接近を許す。
 敵は闇に浮かぶ不気味な白面を目にすることも無く骸の海へと還される。
 否、中には自身が海に戻っている最中であることにすら、気付かない者もいた程だ。
 
 誰もが口を揃えて言うだろう。
 「紫陽衆は初めから“その人数だった”」と。
 とんでもない。
 其の陰で、誰が何体敵を葬ったか等と言うのは……其れこそ、闇に葬られた事実。
 
「多対一に付き合う必要はねェ」
 襖越しに塵と化したオブリビオンを見遣り、男は言った。

「一体一体確実に減らしゃいいのさ」
 男は、天井裏から棘で引き揚げた敵が塵と化すのを見て、そうとも言った。

 神出鬼没。
 其の面は何処に現れるか分からない。が、其の面が今、此の城に居るという事を知っている者は、極僅かだ。
 黒い闇に溶け込むような黒で白を包んで守り、其の一方で、闇に浮き上がるような白は呪というアンバランス。
 人の顔につければ、丁度口に当たる部分。
 歪な黒い笑みは、全てを朧に霞ませる闇の中で、彼を体の持ち主に縫い留める細い糸にも見えた。
 皮肉めいた響きの笑いで、されこうべに似た仮面は語る。
「存在が知られてねェからこそ、こう名乗れるんだろ?」

「“シノビ”とよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
アンテロ(f03396)と

こんなに絵に描いたような忍者は初めてだよ
手裏剣とか使うのかな

うーん、可愛がれるかな
アンテロから預かった百合は服に忍ばせて
敵の苦無に影雨をぶつけて叩き落しながら接近
接近戦に持ち込んでダガーで斬りつける
ように見せかけて足払い
体勢を崩したところへ斬撃を

これは手裏剣じゃなくて苦無ってやつかな、なんて苦無を拾って観察してみたり
隙があるように見せかけて
近付いてきた者には借りていた百合をプレゼント

苦無の数を絞れる程度に
わざと影雨が薄い層を作って
敵をアンテロの方へ誘導
まんまと向かっていった敵を横目に、自分は目の前の敵を片付けてからアンテロのとこへ

あれ、尋問中?
興味なさげに敵を見下して


アンテロ・ヴィルスカ
由紀君(f05760)と

…ニンジャ?初めて見たね
由紀君は知っているようだがアサシンみたいなものかな

防具改造で鎧を常より強固に
激痛耐性も付与すれば多少の攻撃は届かない

外套の下にはひっそりと【lilja】を召喚
寄り添う百合の片割れは由紀君へ、役に立つかな?愛でてやってくれ
毒使いで致死性の毒を含ませた捕食体、背を狙う者にはカウンターを…
外套で苦無とやらを絡め取りながら斬撃を見舞うよ

可能なら火に飛び込んだ虫に捕食体を当てがって、大将の話を聞きだそう
情報を引き出されるの、君らはとても嫌そうだから余計に聞きたいねぇ

…由紀君は興味なしか、君らしいけど
まぁ喋らなくても構わないよ
食べてしまうのには変わりないから




 ガシャン、と――闇の中に重い音。
 目を凝らさねば、黒との境目も曖昧かと思えるような、重厚な甲冑に身を包み、アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は首を傾げ、敵を見遣った。
「……あれがニンジャ? 初めて見たね」
 アサシンみたいなものかな、と、独り言に近い声は、隣に立つ青年に向けられて。
 言葉の受け取り主は、ちらと、ヤドリガミに視線だけ向けると、
「まぁ、近いんじゃない? 俺も、こんなに絵に描いたような忍者は初めて見るけどね」
 手裏剣とか使うのかな、と、敵というより其の武器に興味を示し――、
 否、実際のところ、此の無表情な青年、鹿忍・由紀(余計者・f05760)がオブリビオンに興味を持つのかという点は、非常に怪しいのだが。

 今一歩進めば開戦という間合いで、アンテロはそっと外套に隠したロザリオを撫ぜて、刻まれた印に自身の血を捧げる。
 刻印が、ぶわり、花弁開くように形を歪め、禍々しい色合いの捕食形態へと変じた。
「由紀君、これを。役に立つかな?」
 花に似て、しかし、獲物を欲して蠢く其の片割れを由紀へと差し出す。
 出されたものを断る理由もない。由紀が受け取るのを見て、アンテロが口の端をつり上げた。
「愛でてやってくれ」
「うーん、可愛がれるかな」
 元からの下がり調子の眉で刻印と睨めっこしてみながら。
 戯れも程々、由紀は「愛でて」と言われた手前、幾分丁寧に預かり物の刻印を懐に忍ばせると、眼前の敵へと視線を向けた。

「それじゃ、始めようか」
 一歩踏み込む。
 瞬間。
 弾かれたように、戦が始まった。


 二人それぞれを目掛けて、苦無が降り注ぐ。
 威力自体は然程でもなさそうだが、敵の頭数のために其の量は相応に多い。
 シュプリーム色の外套が大きな音を立てて翻る。
 腕を中心に、蕾のように巻き取られた布をするりと綻ばせれば、身に迫っていた苦無の多くがガチャガチャと落ちた。
 加えて、これは物のついでとばかりに、距離を詰めた紫陽衆の一人を十字剣で袈裟懸けに切り捨てながら、
「これがシュリケンって奴かな?」
 アンテロは、落ちた苦無の一本を爪先で軽く蹴った。声も態度も、余裕崩れぬ。
「これは手裏剣じゃなくて苦無ってやつかな」
 自身のダガーで上へ弾いた苦無。落ちる前にパシと掴んで観察しながら、由紀が答える。
 此方は此方で余裕の様。
 其れは敵からすれば油断にも見え、其の隙逃さじと背後からの強襲が掛けられる。
 けれど、其れは青年の狙い通りの動き。由紀は視線だけを一度きり後ろに向けた。
「はい、どうぞ」
 言葉と共に、由紀の身に迫る凶刃が、其の腕ごと何かに絡め取られた。
 由紀の服の陰から這い出た赤黒い花弁は、血を、肉を求めて、オブリビオンの腕を噛み千切る。
 痛みと奇襲に敵が怯む。由紀が其の喉を一閃に切り裂いた。
 獲物に齧りつく百合を回収し直しながら、由紀はアンテロに声だけ向けて。
「早速、役に立ったみたいだね」
 預かり物を視線で示す。
「それは良かった」
 鎧の奥。籠った笑い声が漏れた。

 近接武器を主に用いる二人にとって、敵の苦無の雨に晒されるという事は、どうしても防戦が主体になるという事だ。
 ならば、近づく他あるまい。
 由紀の足元、闇の中でも幽かに存在する影が、ぼんやりと姿を変え始める。
 青年の周囲、幾十も渦巻くように影が集い、成す形は彼が手に持つ何の変哲もないダガー。
 だが、その数は忍者たちの投げる苦無では足元にも及ばない。
 新たに放たれた苦無の全てを魔力で生み出したダガーの群れで相殺しながら、由紀自身も其れに続いて忍達に肉薄する。
 一方で、由紀の仕掛けは其れだけではなかった。
 自身に向かう苦無を全て打ち落としながら、アンテロの側へは敢えて守備の穴をつくる。
 無意識に「攻めやすい場所」を擦り込まれた紫陽衆達は、自然、守備の手薄な方へと向かっていく。
 アンテロは、先ほど同様、多くの苦無は外套を駆使して弾き落とすが――実のところ、彼にとっては苦無が多少擦り抜けようと、何ら問題はなかった。
 彼を包む全身鎧は、今回の戦いに備えて強度と耐久力を増されており、敵の有象無象の多少の攻撃など、物の数にもならない。
 “少し煩いな”、という程度のものだ。
 故に、彼は敵の攻撃への対応というものをほぼ気にする必要がなく……自身に向かい来る敵を毒を孕ませた刻印で、或いは、両手に携えた剣で、集まって来た敵の次々を、悠々と屠っていくことに専念できるのだった。

 由紀が、接近した勢いの侭に、手に持ったダガーを振り被る。
「くっ!」
 退く間はない。忍びは苦無を手に、防御のために身構えた。
 が、青年の狙いは斬撃ではない。
 より確実に、より速やかに仕留めるために、沈めた姿勢でガードの薄くなった敵の足を払い態勢を崩す。
 予想外の攻撃に対処できず、せめて受け身を取ろうとしたところを、諸刃の剣が止めを刺して。

 ヤドリガミは、自身に向かってきた敵の、最後の一人を百合の花で絡め取り動きを封じると、ガシャリ、ガシャリと鎧の音を響かせながら、敵の前に屈みこんだ。
「さて、少し話をしようか。話題は……そうだな、君達の大将についてなんてどうかな?」
 アンテロは鎧の奥で笑む。
「情報を引き出されるの、君らはとても嫌そうだから余計に聞きたいねぇ」

 何人目かの忍をダガーで始末し……気付けば、其の場のオブリビオンは粗方片付け終わったようだった。
 由紀は周囲を見渡し、敵の気配がないことを確かめるとアンテロの方へと向かい、いや、もう一人残ってたかと、軽く眉を上げた。
「あれ、尋問中?」
 呻き声を上げる忍を見下ろして、尋ねる。
 頷き返すも、すぐに、どうでも良さそうに視線を外した青年に気付き、
「……由紀君は興味なしか、君らしいけど」
 アンテロはゆっくりと立ち上がった。
 結局、腐っても忍か。情報らしい情報は得られなかったが、それも別に構わない。
 ヤドリガミの青年は、じわりじわりと毒に蝕まれていく忍者を眼下に、剣を収めた。
 元から得られると思っていた訳でもない。
 由紀の元から戻って来た刻印を受け取り、アンテロはそっと紫陽衆の目の前に差し向けた。

「さ、おあがり」

 後に残るは二人と、二輪。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セリオス・アリス
アドリブ歓迎
いやぁ実にシンプルな依頼でいいな

侵入したら『ダッシュ』で駆け抜け
『第六感』で敵の気配を探りながら
飛んでくる苦無は『見切り』避け
【望みを叶える呪い歌】を歌おう
ほっといたらうじゃうじゃわいてきそうだしな
さっさと片付けると敵のすぐそばまで『ダッシュ・2回攻撃』

―ハッ、俺の歌がそんなんだって?
バカ言え、もっと上手ぇよ
同じ呪い歌を歌うなら
もっと深く、強く魔力を求めて歌い
その魔力を『全力』で靴に注ぐ
あっちのスピードが上がるなら
それを越える速度を見せてやろう
足元に旋風を生成し地面を削るように駆け
炎の『属性』を纏わせた剣で『2回攻撃』
まあ、寿命が縮んでも縮まなくても
ここで終わるお前らには関係ないな




「いやぁ実にシンプルな依頼でいいな」
 溶けるような宵の色。
 黒城の中、保護色のような髪と衣服と対照的に、浮かび上がる白い肌。そして二連の青星。
 セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は、上機嫌な様子で、真正面から城内へと入り込んだ。

 既に多くの猟兵達が蹴散らしたのであろう。
 切り結んだ傷痕とあちこちに散乱する苦無。
 それらを尻目に、空を駆ける流星のように、一気に上へと突き進んでいく。
「おっと」
 何かの気配と、飛来する風切り音。
 セリオスは軽いステップで後ろに下がり、眼前を通り過ぎ柱に突き刺さる苦無を見送って――ニヤリと、好戦的な笑みを浮かべた。
「他の奴らが暴れてても、やっぱりまだ潜んでるもんだな」
 物陰からぞろ、ぞろり、と姿を現す紫陽衆を見て、青年は耳元に手を当てヘッドセットに付属するマイクの位置を調整する。
「ほっといたらうじゃうじゃわいてきそうだし、さっさと片付けさせてもらうぜ」
 【鳥籠の反響】が始めに伝えるのは、すぅ、と息を吸う幽かな音。

 其れは、普段の青年の言葉遣いや気丈さからは想像も出来ぬ程の。

 静かな、孤独な、夜を湛えた歌。
 透き通りながらも、閉じ込められた夜を奥底から憎む歌。

 敵たるオブリビオンさえも、一瞬聞き入ってしまう歌声は、けれど唯美しいだけではない。
 波紋は禍を伴って衝撃波と共に広がり、周囲のオブリビオン達の体を切り刻み、呪縛する。
 歌によって身軽になった鳥は、仕留めきれなかった敵へと一足飛びに距離を詰め、目にも留まらぬ二閃で確実に其の呼吸を奪った。

「貴様よくも……だが、其の力、返してくるぞ!」
 オブリビオンの喉が僅か形を変え、先の青年を模した歌声を発し始める。
 セリオスは、耳を塞ぐ事もなく、数秒、静かに其れを聞いた。
「――ハッ、俺の歌がそんなんだって?」
 そして、鼻で笑う。
「バカ言え、もっと上手ぇよ」
 衝撃波で鼓膜が破れちまったんじゃねぇのと悪態吐いて、
「大サービスだ。もっぺん歌ってやる」
 よぉく聞いとけ。
 そう言って、再び鳥は囀り始める。
 此の呪いが、唯、上辺だけを掬った奴らに真似できようものがない。否、出来るもんならやってみやがれ。
 勝気に、大音量で敵の歌声を上回り、掻き消していく。
 歌の盛り上がりに合わせて高まる魔力、其の全てを【エールスーリエ】へと注ぐ。
 歌の衝撃波がセリオスに手傷を負わせるに足らぬと悟ったオブリビオンは、手に小刀を閃かせ、高速移動からの攻撃へと戦法を変えた。
 相手が踏み出したのに一瞬遅れて、【エールスーリエ】に注がれた魔力も最高潮へと到達した。
 蒸気が旋風に姿を変え、次の瞬間、セリオスの姿は床に出来たクレーターを残し、敵の視界から消える。
 踏み出したタイミングは青年の方が遅かった……筈なのだ。
 なのに、何故、此の男は既に自分の目の前にいる――!?

 蒼い炎が刀身に宿る。
 オブリビオンが覚えているのは、其処迄だった。

 白く輝く剣を鞘に納め、セリオスは燃えながら塵と化すオブリビオンを見下ろし呟いた。
 俺は、この歌を歌うと寿命が減るんだが――、

「まあ、そんな事、ここで終わるお前らには関係ないな」

 ――鳴いて血を吐く何とやら。

 黒い外套、羽ばたく様な音を立て……遂に至るは最上。天守。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『戦国武将』

POW   :    合戦具足
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の城の一部もしくは武者鎧】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    乱世斬
【日本刀による衝撃波を伴う斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    戦国兵団
【自分に従う兵士達】の霊を召喚する。これは【火縄銃】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 天守の最上。
 外廻縁へと続く観音開きの戸は大きく開け放されており、黒雲に満ちた空を眺めるようにして立つは、朱塗りの鎧武者。
 鎧の節々から漏れ出る瘴気は、彼の者が既に正気持たざる事を言外に示している。

 自身を除く城の戦力の悉くが猟兵達に討たれた事を知り、また、其れを成した者達が皆天守へ集ったを知れば、禍々しい鎧の男はガチャン、ガチャンと音を立て、ゆっくりと振り返った。

「忌々しい者共よ。矢張り儂の邪魔をするか」

 既に二振りの刀は抜かれ、其の切っ先は憎悪と共に猟兵達へと向けられている。
「ならば。貴様らの血飛沫……我が野望、我が栄華の幕開けを告げる狼煙としてくれようぞ」
 朧雲、薄っすら透いて月明かり。
 其の幽かな光を受けた凶刃がギラリと返す輝きは、血に狂ったものだった――。
風嶺・陽
【心情】
さてさて、ここまでは特筆すべき事も無くやってきましたが。
さすがに手間を惜しんで如何こう出来る相手でも無さそうですね。
それでは少々本気で行かせてもらうとしましょうか。

【行動】
とりあえず相手の攻撃ギリギリを【見切り】つつ間合いを詰めましょう。
もとより無傷でいる気はないので致命傷さえ避けれるならば多少のダメージには目を瞑ります。
こちらの間合いに入ったなら【怪力】【鎧無視攻撃】で頭部を狙って掌底叩き込みます。
後ろに跳んで威力を殺されるのも何なので逆の手で【グラップル】して殴れるだけ殴っておきますか。

「スマートの欠片もない戦闘法でどうもすみません。何も考えずに殴ってる方が気分的に楽なんですよね」




 言ってしまえば此処迄の道中、対した苦戦もなく上がって来た。
 だからと言って目の前の敵の本領を、見ずに侮るような愚は侵さない。
「さすがに手間を惜しんで如何こう出来る相手でも無さそうですね」
 敵の御大将を前に、物陰から姿を現した陽はぐっと拳に力を込めて握り、戦闘態勢に移る。
 隠密から一遍、其の身に漲るのは闘志。

「それでは少々本気で行かせてもらうとしましょうか」


 目の前を刃が過ぎた。
 陽は軽く上半身を反らしてかわし、敵の攻撃の間合いを図る。
 徒手の陽に比べれば当然、刃を持っている分、オブリビオンの方がリーチが長い。
 懐に飛び込むにはタイミングを見計らう必要があるだろう。
(多少のダメージは覚悟の上ですが……)
 つかず離れずの間合いを維持しながら、陽は静かに敵を観察する。
 此方の骨が無事ならば、肉ぐらいくれてやっても構わないが、其れで敵の骨を断てねば意味が無い。
 二刀の連撃。
 かわすに合わせて、敵が更に踏み込み、より深い一撃が迫る。
 陽は大連珠を巻き付けた右腕の籠手で刃を弾いて流す。
 鎧めいた忍の衣装のお陰で直接的なダメージは無いが、当たる刃は流石の重さ。
「猪口才な」
 そう敵が一言呟いたかと思うと、突如、足元の床が隆起し鎧と共にオブリビオンの体へと覆い被さり始めた。
 結合する部品群は金属のような音を立て、まるで此のサムライエンパイアの世界とは懸け離れた――所謂、ロボットめいた形へと姿を変え始める。
 巨大な、元のオブリビオンの体躯の倍の背丈へと変貌する中で、しかし、其の隙を見逃す陽ではない。
(――今!)
 次第に厚くなっていく装甲、今を逃せば敵本体を直接叩くのは難しくなるだろう。
 此処が一番の攻め時と、女は敵の懐へと駆け詰める。
 とはいえ、敵も手を拱いて眺めているだけではない。
 まだ強化が終わり切っていない上半身で刀を翻し、ザンと陽に斬りかかる。
 黒いスーツの胸元に、ビッと一文字の溝が刻まれて……だが、彼女自身には届いていない。

 陽は戦国武将のアイデンティティとも呼べる鎧兜の後ろへと、しかと手を回すと、背を撓らせもう片手を引き絞り――!
「スマートの欠片もない戦闘法でどうもすみません。でも、」
 防御姿勢に切り替える間も無い、掌底の強力な一撃を打ち込む!!

「何も考えずに殴ってる方が気分的に楽なんですよね」

 ≪鬼哭灰燼掌≫と名付けられた羅刹の撃で、幽鬼の面に亀裂が走った。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
僕は昔の事とか全然わからないし
だからオブリビオンさんが根っからの悪人なのか
色んな事情があっての事なのかはわからないけど

どんな理由であれ
他人に危害を加えるのを見過ごす事は出来ない
理由があるなら尚更…その手を汚させるわけにもいかない

いつ敵を増やされてもいいよう
★Venti Alaに風邪魔法を宿し身軽に
万一の際は空中歩行と【空中戦、オーラ防御】も活かし
いつでも機敏に行動出来るよう準備

【指定UC】+★どこにでもある花園を発動
【催眠歌唱+破魔+全力魔法+範囲攻撃】で
敵全体に催眠効果を与えながら歌唱のリズム、高低差により
破魔の力を持った花畑の花弁を操り
召還兵ごと巻き込む花嵐を発生
鎧の隙間等を的確に狙い斬撃




 心優しき少年は、朱に月めいた目を輝かせるオブリビオンを見て、想う。
 命有りし刻に潰えた野望と言っていた目の前の敵の怨讐が、此の世界の一武将であった時からのものなのか、其れとも、オブリビオンとして目醒めて後のものなのか。
 猟兵にとって、オブリビオンは倒さねばならない世界の仇敵だという事は、勿論、少年――澪自身誰かに諭されるまでもなく十分に知っている事実だ。だが……、
「僕は昔の事とか全然わからないし、だから貴方が根っからの悪人なのか、色んな事情があっての事なのかはわからないけど……」
 そうと知ってなお其の事に心を裂く優しさと、
「どんな理由であれ、他人に危害を加えるのを見過ごす事は出来ない」
 其の優しさを抱えながらも、立ち向かう強さが彼にはあった。
 戦国武将が怒り滲ませた声で問う。
「ならば如何する」
 くっと、唇を一文字に結び、澪はハッキリと答えた。
「その手を汚させはしない」


 ゆらりと陽炎のように地面から薄白い影が立ち上る。
 瞬間、澪は素早く【Venti Ala】に風の翼を生じさせた。
 弾丸と矢が屋内を四方八方に撃ち抜けるも、間一髪、澪は柱や衝立の陰を縫うように飛んで此れを避けて行く。
(とは言え……屋内は危険かな)
 気の盾で防げるとは言っても、四方八方撃ちっ放しの攻撃は狭い屋内では避ける方に分が悪い。
 澪は、自身の周囲に纏わせたオーラのヴェールの強度を一時的に高めると、一気に敵の集団の上空を突っ切りに走る。
 鎧武者の魔手が伸ばされる――しかし、掴んだのは、少年の柔らかな薄桃色の上着だけで。
 するりと衣装を脱ぎ去ると、澪は開いた戸から天守の空へと躍り出た。
 衣服に隠されていた左二の腕に刻まれた聖なる傷痕を示し、同時に澪は夜空に向けて高らかに歌を奏で始める。
 少年に向けて放たれる銃と弓の攻撃は、中空にも関わらず彼の足元に生じ始めた花畑の雲に阻まれて。
 眠りと魔を払う音を重ね合わせた歌声は、時に荒く昂り、かと思えば静かに、慈しみを込めて紡がれて――其の音に、調子に合わせて、読みづらい軌道で花弁が舞い、夜風に満ちる。
 風は嵐を呼び轟々と渦巻いて、少年の眼下に立つ兵士の霊を蹴散らすと、其の姿を霧散させた。
「其れで儂を止めた心算か――ぐっ!?」
 再び、手下の霊を招来せしめようとした武将が呻く。
 其の鎧と鎧の継ぎ目には、無数の花弁の傷跡がしっかりと刻まれていた。
 はぁ、と、息を吸って。
 少年は告げる。
「言ったはずだよ。――貴方を見過ごす事は出来ない。その手は汚させない」

「だから、ここで眠ってもらうよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

バル・マスケレード
ヒハハッ、いよいよお出ましか!
俺もちったァジダイゲキとやらで勉強したのさ。
オトノサマ討ち取るにあたり……名乗りの一つもくれてやらァ。

月無き夜のぬばたまに
狼煙溶けゆく叢雲の
謳い唄わぬ乱痴気騒ぎ
月亡き世にゃあ静けさも
涙ひとひら雲隠れ
刃を誰に託せしか
その目でしかと御照覧!

……ってなモンだ。
隙だらけの見得切り、攻撃がありゃ適度に【武器受け】で防ぎもすらァ。
だが、ただ無防備を晒したわけじゃねェよ。
俺ァ殿様相手にも尊大で、不遜なのさ。

見得を切ることによってUCで身体能力は強化された。
合体巨大化大いに結構!
【ロープワーク】を用いてその肩飛び乗り、そっ首目掛けていざ一刀!
ヒハハッ……然らば御免、ってなァ!!




 外へと飛び出した猟兵を折って、外廻縁へと出た敵を、更に高い位置から見下ろす影があった。
「ヒハハッ、いよいよお出ましか!」
「何奴だ!!」
 其の、夜に通る笑い声に、鎧武者は振り仰ぐ。
 鬼の角めいた異形の鯱に身を預け、天守の屋根を陣取って、貌も変わらぬ面風情、高らかに声上げた。
「よォ。トノサマ。いや何、俺もちったァジダイゲキとやらで勉強したのさ……。折角だ。名乗りの一つもくれてやらァ」

 <喚(カン)>
 <悍(カン)>
 <果敢(カカン)>
 <矜(カン)>

「月無き夜のぬばたまに――」

 拍子木の音すら傍輩。
 屋根から跳び、敵の真正面。背すら向け。

「狼煙溶けゆく叢雲の 謳い唄わぬ乱痴気騒ぎ」
 見逃すものかは、其の隙を。
 敵の振り被りし刃を、振り返り様、小刀で弾いて凌ぎ。

 <猂(カン)>
 ――金属音。

「月亡き世にゃあ静けさも 涙ひとひら雲隠れ
 刃を誰に託せしか……その目でしかと御照覧!」
 男――バル・マスケレードは朗々と名乗り口上奉ずれば、見栄切って敵へと向き直る。
 体躯二倍となった武将の振るう、此れまた巨大に伸びた刃。
 迫る轟音たじろぎもせず、声だけでニヤリと嗤い。
「合体巨大化大いに結構! だがな、テメェが幾らデカくなろうが、オトノサマよ……俺の方が、テメェよかずっと、尊大で、不遜だぜ!!」
 刃と行き違いに、紫の棘が素早く伸び行く。
 棘はトゲを喰い込ませて巨大な武将の肩へと巻き付き、刃の風圧を擦り抜けて主人を引き寄せる
 華麗に肩へと着地をすれば、大将首の暗殺とはこうするものぞと――!!

 月の魔力を宿した剣が、月の代わりに煌めいた。
「ヒハハッ……然らば御免、ってなァ!!」

 其の首筋に浅からぬ傷。
 呪に月託すは誰の仕業か。
 赤の隙に刃突き立てば、血代わり瘴気の黒霞。

 <龕(カン)>

成功 🔵​🔵​🔴​

薄荷・千夜子
これは、また嫌な瘴気ですね
迅速に祓い進みましょう

UC使用で蒼き炎を纏い攻撃力を強化
まぁ、巨大化ですか
力は強くなるかもしれませんが疾さは如何程でしょうね

使用武器は[禽羽双針]と[鬼灯薙刀]
攻撃には【属性攻撃:炎】【破魔】の力を乗せて
[禽羽双針]は主に炎の力を爆発するように使用
自身を【吹き飛ばし】、加速や上空への噴き上げによる【空中戦に使用
相手からの攻撃は、薙刀を使っての【武器受け】や【見切り】で対応

主に上空からの攻撃を主軸と見せかけたところで足元に【スライディング】【吹き飛ばし】での転倒による行動阻害狙い

「足元がお留守ですよ!」
体が大きく動きにくいでしょう?

アドリブ歓迎




「これは、また嫌な瘴気ですね」
 傷痕から漏れ出し、益々辺りに満ちいく瘴気に千夜子は僅かに顔を顰めた。
 戦巫女たる素養を持つ彼女にとっては、当然、好ましいものではない。
 世界の澱とも言える其の存在に対して取るべき行動は一つ。

「迅速に祓い進みましょう」

 言葉の通り、言い終わるが早いかと言う段で、既に其の身には清かな蒼い炎が宿る。
 緑の光に蒼が映れば、其の目は翡翠と輝いて。
 時同じくして、オブリビオンも先の戦いで剥がれ、傷ついたパーツを外して入れ替える。
 何せ足場は全て自身の強化に使えるのだから、其れこそ掃いて捨てても尚足りる。
「巨大化ですか。力は強くなるかもしれませんが疾さは如何程でしょうね」
 研ぎ澄まされた瞳は、どこまでも涼やかだ。敵を前に、普段は柳のように柔らかな其の眉は、キと引き上げられ。

 千夜子は駆ける。
 振るわれた刃が、天守の壁を土塊同然に斬り崩した。
 一撃目、身を屈めて避け。
 次いで、二の撃。今度は上から下へと一直線に振るわれる。
 千夜子の手元に納められていた鬼灯を模した武器飾りが、淡く燐光を放ったかと思えば、瞬時に薙刀へと姿を変える。
 其の切っ先を敵の刃に滑り込ませ、力の働きを外側へと受け流しながら外廻縁へと至った千夜子は、手摺へと足を掛ける。
 手摺を足場に、跳躍のタイミングに合わせ【禽羽双針】に込めた炎の魔力を爆ぜさせる。
 少女は、隠れた月を跳び越す如く、鳥のように舞い上がり。
 仰いだオブリビオンが薙ぐ刀の軌道を読み、足元の炎の力で空にいながらにして対等に切り結ぶ。

 と、敵が大きく振りかぶったのを見るや、千夜子は素早く炎の力を弱めて床へ降り立つと、其の懐へ潜り込んだ。
「足元がお留守ですよ!」
「っ何!?」
 着地と同時、再び足元に炎を起こし、文字通り“神憑り”的な瞬間速度で敵の足元へ迫ると、一気に薙刀に込めた破魔の力と清浄な炎を弾けさせる!!
 重さの増した体だ。此れには堪りない。

 ぐらり。
 武将の体躯が傾いだ。

 大きな音を立て、自身が崩した壁へと埋もれるように倒れ込む。
「大は小を兼ねる――という事ばかりでもありませんね。体が大きいと動きにくいでしょう?」
 蒼炎と茶色の髪が、夜風に靡いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鬼灯原・孤檻
【POW】

敵は同じ刀を持つ強者。
災いをもたらす者ならば、この一刀は必ずや届く。

「此処此の時が貴様の天命だ。一夜限りの大舞台、存分に罰を食らうがいい」

敵が城の一部を用い合体するなら、予め【アイテム:まつろわぬ者の影】を城の一部に忍ばせる。
俺の一部ともいえる異物を一緒に取り込んだならば、【時間稼ぎ】になろう。
敵の目玉を黒く染めれば、敵の動きも乱れるか。
隙を見つけ、鎧の間を愛刀で突こう。続けて【2回攻撃】、ダメ押しに【傷口をえぐる】突き攻撃。
敵の反撃には【見切り】で距離を取る。
今はまだ人目につかないが、月は見ている。
致命傷になるまで、何度でも愛刀を振ろう。
彼の罪が果てるまで。

<アドリブ歓迎>




 崩れ落ちた壁。
 埋もれた武将を見下ろすは、黒雲に紛れるような、黒。
 其の手元と瞳に鋼の色。
 カチャリ。
 刀を携え直す音に続けて、滔々と、言葉が流れた。
「此処此の時が貴様の天命だ」

 ほんの幽かな光を集め、雫伝うように刃の上を光が走る。
「一夜限りの大舞台、存分に罰を食らうがいい」
 壊れかけた舞台も彼の者には相応しかろか。

 返事も待たず、孤檻は刃を翳し、災成す武将へと迫った。


「させるものか!!」
 孤檻の姿に、オブリビオンは再度ユーベルコードの奇跡を用い、自身の強化を図り始める。
 周囲に積みあがった瓦礫すら、相手にとっては合体の材料。
 黒い壁は形を変えて、次々に武者の鎧の形へと変じ、武将の身を固めて行く。
 其の行動、ユーベルコードの能力は既に知っている。
 孤檻は身につけた【まつろわぬ者の影】をそっと闇に紛れさせると、影から影へと移動させ敵が強化に使うだろう瓦礫の一部へと忍び込ませた。
 オブリビオンは気づく事もなく、次々の瓦礫を取り込み、鎧を形成していく。
 然程の間も無く、武将は2倍の背丈と黒い甲冑となった。
「残念であったな! 遅いわ!!」
 寸でのところ、振るわれた神の刃を日本刀で受け、武将が叫ぶ。
 しかし、
「ぐぅっ……!?」
 弾いた矢先の違和感。
 腕が振り払った形のまま、動きを止めた。
 ――表には見えないが、其れこそが孤檻の狙い。【まつろわぬ者の影】が部品同士に絡みつき、其の動きを阻害する。
「貴様、何をした!!」
 返す腕で攻撃へと転じようとしていた攻防の調子を崩され、武将が怒鳴り上げる。
 途端、しゅるりと素早い蛇のように影が走って、オブリビオンの視界を阻んだ。
 自由になった腕と、代わりに不自由になった視界。
 瞬時には状況が飲み込めず、敵は手当たり次第に孤檻がいるだろう場所を刃で叩きつける。……そんな攻撃を見切るのは、容易いことだ。
 するり、するりと身をかわし、孤檻は愛刀を静かに構える。
「今はまだ人目につかないが、月は見ている」
 貴様の悪行を、何もかも。
 また、刀振るう神は信じている。
 この一刀は必ずや届く、と。
 否、彼自身が神ならば、其れは予言にも等しく。

 未だ暴れる巨大なオブリビオンの胴。
 鎧と鎧の接ぎ目を目掛け、孤檻は目にも留まらぬ太刀筋二閃。
 深く深く、武将の腹を斬りつけ、抉りながら刃を引き抜く。

 夜闇劈く魔の叫び。

 されど、刃は止まらない。
 彼の者の罪、未だ深し――。

成功 🔵​🔵​🔴​

御鏡・十兵衛
……見たところ、死合いを、血を求めているのでござろう?
貴殿に恨みがあるわけではないが、オブリビオンは斬らぬと色々面倒故。
――すまぬが、某で満足して貰う。その先は無い。

大きいというのはそれだけで脅威よな。巨体の絡繰りからの攻撃は受けきれぬこと必至、見切って避けねばならぬ。
さらに鎧は厚く、刃は容易く通らない。がしかし、残念なことに某には意味が薄い。
某の剣は幻を斬る――いくら物理的な守りを固めようと、それは何の意味も成さぬ。




 オブリビオンの咆哮。
 怨嗟。
 傷口より漏れ出す瘴気は刻一刻と其の量を増す。
「……見たところ、死合いを、血を求めているのでござろう?」
 淀んだ空気に踏み入るは、女。
 其の足取りは絶え間なく。
 其の所作は澱みない。
 常の飄々とした風情は、今は鳴りを潜め、唯涼やかな瞳が射るように……否、断つように眼前の敵を見遣る。
「貴殿に恨みがあるわけではないが、オブリビオンは斬らぬと色々面倒故――すまぬが、某で満足して貰う」
 十兵衛の唇が、声を伴わず動いた。其れは確かに、こう言った。

『その先は無い』

 すらり、引き抜いた刀は無色。
 染めず、染まらず。
 未来無き過去へと相対す。


 ギチギチと、軋む鎧の音は武将の受けたダメージ其のものを表していた。
 されど、其の質量・重量に任せた一撃は未だもって脅威と成り得る。
「――大きいというのはそれだけで脅威よな」
 十兵衛は片の眼、逸らす事なく攻撃の剣筋を見切り、最小限……と少し色を付けた動きでかわす。
 何せ、相手は刃も体も人並みとはいかぬ。
 通常、刃先一寸の距離で避けても構わぬものも、此の大きさともなれば振った刀の巻き起こす風圧で煽られる事もあろう。
 実に見抜いた通りに、叩きつけた刃が床を破り、風圧が塵埃を巻き上げ視界を阻んだ。
 加えて、絡繰り装甲に守られた鎧は厚く――まともに打てば、良くて刃毀れ・歪み。そうでなければ真っ二つに折れる事は、此の煙の中でも“目に見え”ている。

「が、しかし、」

 露と、残念とは思っていない声で、重兵衛が囁いた。
「此の煙幕も、貴殿の鎧も、某には意味が薄い」
 揺らぐ煙、其の向こうに巨大な影を、誰が如何して見落とす事など出来ようか。

「――見抜いたり」

 其の目に映すは幻。
 十兵衛の眼前、戦国武将と瓜二つ左右逆転の影が浮かび上がった。
 先の戦いで負った深い傷。鎧の罅割れ。刀の脆い場所。

 ヒュと振られた刃が、鏡に映し出された弱き部分を切り払う。
 ぶわり。
 塵煙ごと切り払われた其の先で、鎧の落下音。
 武将の持つ刃は折れて、其の切っ先が床に突き立った。

成功 🔵​🔵​🔴​

刑部・理寿乃
雲越しの月明かりのいい夜、剣戟だけ響かせるのも一興ですが少し寂しいですね
盛り上がるようなBGMを派手にかき鳴らすとしましょう
奏者……あっ、申次ですかね?お触りは厳禁でお願いします。

【戦闘】
ユーベルコード発動。世界観に合わせ、三味線、鼓、尺八、横笛、エレキギターにベース、和風ロックでいきましょう
竜なので空を飛びながら演奏させます
相手の召喚に竜がやられそうなので速攻で先程拾った苦無で怪力を持ってぶん投げ、武器の破壊を試みます(あるいは腕を狙い、武器落とし)
戦国武将には第六感見切り武器受けで刀を弾き、そのまま流れるようにカウンターで斬り捨てます




 敵が痛手を負うのに合わせるように、空の雲は薄らぎ始めたようだった。
 薄っすら、黒雲の縁が虹色に光を映すのを眺め、理寿乃は「いい夜」と独り言ち。
「こんな夜は、剣戟だけ響かせるのも一興ですが少し寂しいですね」
 うーんと、大きく伸びをして武将へと向き直る。
 よろめきながら立ち上がる姿に、あらあら執念深いなんて目をぱちぱちさせて。
「それじゃあ、クライマックスに向けて、盛り上がるようなBGMを派手にかき鳴らすとしましょう」
 奏者……いえ、申次ですね、と言って、呼び出すのは竜の楽団。

「あっ、お触りは厳禁でお願いします」
 無粋な城の主へと釘刺して、理寿乃の背後、楽団はふわりと夜空へ飛び立った。


 ユーベルコード≪勝機を奏でし竜の楽曲≫によって呼び出された楽団員たちは、各々が三味線や鼓、尺八に横笛といった和楽器に、エレキギターとベースを手に演奏を奏で始める。
 序盤は和楽器をメインとした幽玄な音色。
 だが、徐々にギターとベースのシャープな音がメインに取って代わり、上空から戦場の空気を振動させる。
 理寿乃は上機嫌に足でリズムを取り気分を高める。
 勿論、唯音楽に浸っているだけではない。
 オブリビオンが自身の手下として銃兵・弓兵の霊を召喚するや、忍者たちとの戦いの際に入手していた苦無を力任せに放り投げた。
 竜の力をありったけ込めて投げられた苦無は、強化の前であっても其れだけで充分な威力を誇る。
 霊体という心許ない体で召喚された兵士たちの武器は、一投で2・3人分が奪われ、或いは手足を掻き消されていく。
 楽団の演奏は、理寿乃が活躍すればするほど彼女に力を与える。
 心地よい音楽に背を押され、理寿乃はステップ踏みながら敵兵士への追撃。そして、戦国武将へと歩みを進める。
 あっという間もなく理寿乃の持つ大剣が、兵士たちを残らず切り伏せていく。
 なれば、と、大将自ら刀を手に理寿乃へと斬りかかって。

 来る、と言う予感に素直に従い、其の剣閃の流れを読んだ理寿乃は、手にした大剣で力任せに刃の流れを押し弾く。
 竜の腕力に押し返され、即座に態勢を整えることが出来なかったオブリビオンの腕が大きく開いた。
「貴様も夜に沈もうぞ」
 片や、相手の腕を押し返した女は、余裕の顔で。
 両腕に力を籠めると、再び、今度は剣を振り下ろす。
「ぐうぅ……!!」
 大剣に、斬られるというよりも、叩きつけられ。
 其の面が大きく罅割れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アンテロ・ヴィルスカ
由紀君(f05760)と

鎧、ね。目立つ事に意味があるのかもしれないが…
これだけ立派な大将だと配下達が隠し通すのも骨だことで。

防具改造で足底をスパイクに
銀鎖を絡ませてバランスをとりつつ、巨大化した体や城の屋根を駆け登る
合体しているなら体の何処かに本体があるのかな。
ダウジングで本体の位置を探り出し、頭上からUCで大剣に変化させた黒剣で寄せ集めの装甲を両断して剥がそうか

狼煙?あぁ…煙が細過ぎて誰かが吹かしているものとばかり
…俺も、一足先に一服しよう。後はよろしく、由紀君


鹿忍・由紀
アンテロ(f03396)と

また絵に描いたような鎧武者だ
日本的な侘び寂びってこういうやつ?
違うか、なんかやたら派手だし
大将自ら囮になってるのかもね

ダガーによるヒットアンドアウェイで敵の出方を窺う

うわ、合体した
すごいね、なんて淡々とした調子のまま見世物でも見るように
あんなの斬ったら刃毀れしそうだな

敵の意識がアンテロに向いてる隙を狙って厄介なロボの装甲部分を壊絶で蹴り砕く

邪魔なロボ部分を破壊したら肉体部分を狙って
ダガーで切り裂いて血飛沫をあげさせる
なんの幕開けの狼煙って言ってたっけ
気付いてもらえそう?

って、ちょっと……仕方ないな
アンテロが切り開いた本体へ直接壊絶を叩き込みにいく
上出来だよ、アンテロ




 薄く月明かり射せば、闇の中に朱色は己が存在を誇示するように浮かび上がった。
「また絵に描いたような鎧武者だ」
 由紀が、日本的な侘び寂びってこういうやつだろうかと首を傾げる。
 独り言であれ、隣に立つ青年に問いかけた言葉であれ、何れ、答えはないのだけれど。
「鎧、ね。目立つ事に意味があるのかもしれないが……これだけ立派な大将だと配下達が隠し通すのも骨だことで」
 敵とは対照的に、月明かりの下で漸く判別できるような黒鎧に身を包んだアンテロは、幾分呆れたように肩を竦める。
「なんかやたら派手だし、大将自ら囮になってるのかもね」
「ああ、それなら成功してるんじゃないかな」
 尤も其れは、此の世界の住人ではなく、猟兵達に対する囮ではあるが。
 黒い鎧の足底は、静かに形状を変えていく。
「まぁ、囮と言うよりは単なる餌食のような気がするけどね」
 言って、二人は其々左右に分かれ行動を開始した。


「うわ、合体した」
 うわ、等と、感嘆の語はついているものの、其の声は飽くまで淡々としたまま。
 すごいねと言う由紀は、城の床を取り込み此の世界に似つかわしくない姿となった戦国武将の周囲から隙を伺う。
 鎧部分を直接攻撃したら刃毀れしそうだと、装甲の隙間や既に罅入った部分へとダガーで切り込み、直ぐ様距離を離す。
 重量を増した分、動きは鈍重だ。
 攻撃の威力と耐久性は上がったようだが、気を付けていれば攻撃に直撃するということはないだろう。
 床の上を主戦場とする由紀に対し、アンテロは先ほどスパイク状へ変えた足底とロザリオの銀鎖を敵の兜の角へと巻き付け、敵本体へと、直接のアプローチを試みていた。
 振り払われそうになっても、アンテロの念動力で繰られる強固な鎖は、そう容易くは解けない。
(合体しているなら、何処かに本体があるはず……?)
 敵の装甲に、楔のように足裏の杭を打ち付け跡を残しながら、振子の反応を見る。
 オブリビオンからすれば、装甲を切り裂いている由紀より、自身の上を無遠慮に登るアンテロの方が目障りなのは当然だ。
 振り落とそうと躍起になり、刀を持たない方の腕をアンテロへと伸ばす。

 其の隙逃さず、由紀は合戦具足の至近へ寄ると、魔力を集約させた蹴撃を見舞った。
 集約された魔力は、攻撃が命中した瞬間、文字通りの爆発的な威力を生み出して武将の脚部装甲を割り砕く。
 ぐらり、大きく体が揺らぎ、オブリビオンは膝をつく。
 間髪入れずに短刀で追撃すれば、血飛沫代わりに噴き出す黒い瘴気。

 其の拍子に、アンテロのダウジングが反応を示した。
 足場にしているロボットがよろけたからではない。ロザリオのヤドリガミであるアンテロだからこそ理解できる、確かな鎖の振動。
 男は一気に武将の肩へと足を掛けると、黒剣を引き抜き、鎧の隙間から溢れ出る自身の血液を注ぐ。
 黒剣は、赤を飲み干しながら見る間に大きさを変えて。
「深きクレバスに眠りたまえ」
 祈るような言葉と共に、最大の力を与えられた剣が武将の頭上から叩きつけられ、メキメキと床を割りながら、装甲自体も圧し剥がしていく。
 潰され粉々になった装甲。
 其の中心には、体の至るところから瘴気噴き出す鎧武者。哀れな姿に由紀が問う。
「なんの幕開けの狼煙って言ってたっけ。気付いてもらえそう?」
「狼煙?」
 問う言葉を耳にして、アンテロがどこか力ない声で、繰り返した。
 兜が、オブリビオンの方へと向く。其の傷から噴き出す黒を見て取れば、
「あぁ……煙が細過ぎて誰かが吹かしているものとばかり」
 言って、手摺へと背を預けた。
「って、ちょっと」
「後はよろしく、由紀君」
 一足先に休む姿勢に入ったアンテロに掛けようとした声は、先手を打つかのように遮られる。
 ひらりと一度振られた手に、言おうとした言葉は煙に巻かれて。
「……仕方ないな」
 アンテロに背を向け、由紀は武将へと向かって走る。
 装甲を失い、重い手傷を負った敵への一撃は、五体満足な自分だけでも事足りる。

「上出来だよ、アンテロ」
 呟いた言葉は、鎧の砕ける音に紛れ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

有栖川・夏介
※アドリブ歓迎

「懐の匕首」を取り出して構える。
【覚悟】を決めて呼吸をひとつ。
「……いざ、尋常に勝負」

【ダッシュ】で駆けて、敵との間合いを一気に詰める。
そのまま匕首を思い切り振り下ろして【鎧無視攻撃】
敵の攻撃は【武器受け】で受けつつも、【怪力】でそのまま押し返してさらに攻撃。
純粋に力で押す作戦です。

力だけで押せそうにない時は、【絶望の福音】で敵の攻撃を回避しながら徐々に間合いを詰めていく。
ここぞという間合いまで詰めたら、一歩踏み込んで攻撃。
「これで……終わりにしましょう」




 ギシギシと、罅割れた関節、具足同士がぶつかり合って歯車の狂った絡繰りのような音を立てる。
 夏介は、懐に隠し持っていた暗器【懐の匕首】を取り出し手に携える。
 音は無くとも、静かに滾る覚悟を気取ったのか、戦国武将はギギギと首を捻って夏介へと向き直った。
「リ、猟へ、いィ……!!」
 恨み交じりの声に対し、夏介はすぅと息を吸った。
 瘴気交じりの夜の空気は、冷たく、生臭い。
 血とは異なる其の匂い。
 自分が何を相手取るのかという再認識と覚悟を、先ほど武器を仕舞っていた懐へ、入れ替わりに仕舞って。
「……いざ、」
 ザ、と踏み足を前に出し、

「尋常に勝負」

 言葉と同時に処刑人は駆け出した。
 先ほど吸った息を吐き切るほどの間も空けず、敵眼前へと詰め寄ると、手に持った匕首を力の儘に突き立てる。
 既に罅だらけの甲冑はいとも容易く欠片を舞わせ、男の武器は其の下にある仮初の肉体にも深々と刺さり。
 さりとて、敵もそれ相応の強者なれば、痛みに身を折ることなく日本刀を握り直し、至近にある夏介の頭から真下に一閃、両断せんと迷いなく刃を振るう。
 キィン!! と、高く澄んだ音が……遠く、草原の果てに吸い込まれるように響いた。
 暗器で受けた刃、ぐぐぐと上へ、下へ。
 拮抗する力同士がせめぎ合い。
 暫しもせず、夏介が弾くように刀を押し遣り、再び短刀による斬撃を見舞わせる。
「ぐッ!!」
 短い呻き声。
 しかし、其れと同時に、武将の持つ日本刀へと超常の気配が集まって行き――夏介は、其れを敏感に察すると素早く間合いを離し、自身も奇跡≪絶望の福音≫にて攻撃に備える。
「う、ぐおォオォ!!!」
 気合と共に振るわれた刃から、衝撃波が迸る。
 しかし、男は既に日本刀のリーチの外。
 自身に迫る衝撃の津波は、未来予知に等しい計算ですなりとかわし、かわしながらも間合いを再び詰めていく。
 瓦礫を塵を吹き飛ばす波が収まれば、次撃を待たず、夏介は告げた。
「これで……終わりにしましょう」
 匕首が煌めく。
 戦国武将の――生きていれば、命司る器、心臓のあった場所を、真っすぐに貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオス・アリス
アドリブ◎
ぬかせよ
人生の幕を下ろす手伝いなら喜んで
【青星の盟約】を歌い攻撃回数を強化
『ダッシュ』で距離を詰め『2回攻撃』
『見切り』避けてももう一撃とんでくるっつーなら
こっちも二刀流だ
もう一本の剣を素早く抜いて『咄嗟の一撃』攻撃をいなす

ハッ―、なんだそれ
カッコいいな!?
宇宙船やらなんやら動く機械はよく見るが
それとは違う謎のロマンを感じ
合体変形に僅かに目を輝かせる

…けど、でかくなった分
的に当たりやすくなって困るんじゃねぇか?
正面から斬り込んで
くる斬撃を『ジャンプ』で回避
靴に魔力を送り空中で旋風を炸裂
勢いをつけて敵の後ろへ
回り込むのに一苦労だなぁ!
着地の反動で勢いつけて
『全力』の炎の斬撃をぶちこむ




「ガぁ、……まだ、だ……まだ貴様等、なぞに……」
 我が野望、潰えさせてなるものか、と怨霊は吼えた。其の声に、
「ぬかせよ」
 と、男が応じる。
 最早遮るものの無くなった天守の最上で、強まった風に街灯がはためいた。
 雲がどんどんと流れて行く。
 此れだけ風が強ければ、狼煙等上げられまいなと長い睫毛に縁どられた目を上へと向けて。
「人生の幕を下ろす手伝いなら喜んで」
 一度は既に下ろされた幕。
 骸の裏方が開き直した、偽りの芝居。
「もう、テメェにアンコールはねぇよ」

 ≪青星の盟約≫と題された歌を謡い始めれば、其の歌声に応じて光が集う。
 仄かな星屑の光はきらきらとセリオスの体を包み、やがて其の手を繋ぎ合い、一つの大きな輝ける青星となった。
 星の魔力は彼に力を与え、一の内に幾十を刻む素早さと化して。
 セリオスは、星が自身の声に応えたと理解するや一直線に戦国武将へと駆ける。走りながら、純白の剣をすらりと引き抜き。
 立ちどころに詰めよれば、幾十の剣閃を走らせる。
 剣一振りで幾十。其れが続けて繰り返されれば、幾百とも見える剣の舞。
 辛うじて残った鎧で、刀で、凌ぐにも限界がある。オブリビオンの鎧が見る間にズタズタに切り裂かれた。
 しかして、向こうも古強者。やられてばかりではない。
 純白の猛攻が止んだ瞬間に、守りに使った日本刀でセリオスの喉目掛けて突きを放つ。
 見切って身をかわし、突きの途中、無理に軌道を変えた切り払いは引き抜いたもう一本の白にて打ち落とす。
 劣勢を知ったオブリビオンは、無残な城に残った手摺に手を掛けた。
 城の一部がメリメリと音を立てて剥がれ、形を変え、新たな具足へと姿を成す。
「ハッ――、なんだそれ……カッコいいな!?」
 敵の立ち位置の苦さも知らぬ顔して、セリオスの眼が星のように輝いた。
 宇宙船等と言った動く機械の類はよく見ているが……武将が行う其れは、そうしたものとは別種の、謎のロマンが感じられるような気がして。
 ガシャンガシャンと組み上がって行く様を、手を出さずに見届ける。
 暫しして、出来上がった合戦具足はセリオスを見下ろすように立ちはだかる。
 邪悪な気配も合わさって、其の威圧感はなかなかのものだ。
 だが、セリオスは不敵に笑む。
「……けどよ、でかくなった分、的に当たりやすくなって困るんじゃねぇか?」
 抜き身の剣を手に持った侭、隠しもせずに真正面から特攻を仕掛ける。
 轟音。
 でかく、鈍いものの、質量を二倍に増した刀が青年目掛けて振り下ろされた。
「おっと」
 斬撃を斜めに跳躍して避ける。
 間を置かず、滞空時間の間に【エールスーリエ】に魔力を注ぎ風へと変換させ、旋風を巻き起こすと其の勢いを利用して武者鎧の背後へと回り込んだ。
「しっかし、でかいと回り込むのに一苦労だなぁ!」
 旋風の余韻を引き連れた着地、黒い床がギュイと鳴く。
 剣には青い炎を纏わせて……引き絞られたバネが弾けるように、脚に溜め込んだ力が一気に放たれた。
 渾身の力を乗せた炎の一撃に、オブリビオンは具足装甲ごと炎に包まれて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
ふふ、いいねぇ、僕の大好きなタイプのお侍さんだ
時代錯誤で視野狭窄でしつこくて、
帯刀の理念はTPOを弁えず、
一本気と言えば聞こえがいい、
死に直すのも勿体ない様な死に損ないの生き損ないの侍

まさに、コイツの餌に丁度いい
怨嗟を寄越せって煩くてねぇ
深い付き合いじゃないから好みは知らない
何でもいいんじゃない?怨嗟に優劣なんてないでしょう

長刀を巧みに操り
僕は武士じゃないからセコい事だって堂々とする
真っ直ぐなのは足名椎の軌跡くらいさ

ねぇ、お侍さん
気付けばお互い欲しがってるよ
巡り合いってのはなんて嫌味なんだろう
笑ってしまうね

せっかくだし教えておくれよ
お侍さんの野望ってのを
笑いついでに笑ってあげるから




 炎燻ぶり、煙が上がる。
 風に棚引くも狼煙とはならず。
「何故……何故邪魔をする、猟兵共ォオオ……!!」
 よろり、がしゃりと音を立ててふら付く敵に、其れでも消えぬ恨み言聞けば、男はクツクツ笑いを湛えた。
「ふふ、いいねぇ、僕の大好きなタイプのお侍さんだ」
 黄色い目が捉えるのは、一人の男。
 男は、背負った大太刀の柄に手を掛け、歩き始めた。

「時代錯誤で視野狭窄でしつこくて」
 かつん。一歩。 
「帯刀の理念はTPOを弁えず」
 かつん。また一歩。
「一本気と言えば聞こえがいい、死に直すのも勿体ない様な死に損ないの生き損ないの侍」
 かつん。更に一歩。
 そうしてもう、鼻の先。

「まさに、コイツの餌に丁度いい」

 此れ程の長刀、引き抜くにはコツがいるが……男は鞘と太刀とを巧みに滑らせ、難なく抜いた。
「怨嗟を寄越せって煩くてねぇ……深い付き合いじゃないから好みは知らないけど」
 何でもいいんじゃない? と、曖昧に怠慢ひけらかす。
「怨嗟に優劣なんてないでしょう」
 腹に入れば何でも同じ、とばかり。

 抜かれた刀に応じるように、ゆらり揺らめく白影が、兵士達の姿を取った。
 引き金が引かれるのを、弓の弦が放されるのを、見て取るや否や、ロカジはさっさと逃げに徹する。
 積まれた瓦礫に飛び込んで攻撃をやり過ごし、終わったと見れば飛び出して長刀で斬っては離れる。
 正々堂々。
 武士道とは、等、侍達の戯言だ。
 薬屋さんには似合わない。
 逃げて、斬る。逃げると見せかけて、撃たれる前に、斬る。
 其れを右手で足りる程繰り返せば、此の太刀の射程だ。振るうだけでニ・三は消え、程なく僕とお前だけ。

「ねぇ、お侍さん」
 ついに取り巻きを全て剥がされたオブリビオンへと呼びかけて、ロカジは進んだ。
「気付けばお互い欲しがってるよ。巡り合いってのはなんて嫌味なんだろう。笑ってしまうね」
 ハハハと乾いたような笑い。手に持つ大太刀からパチと音。
「せっかくだし教えておくれよ。お侍さんの野望ってのを」
 爆ぜる音は集い集いて、万雷の拍手の相を成す。
 娘への最期の餞か、或いは帰りし英雄への賞賛か。
「笑いついでに笑ってあげるから」
 太刀の切っ先、向かうは武将。
「う、うおぉおぉおぉ!!!!」
 破れかぶれ、叫んで突撃してくる武者へ、
 振り翳し。
 振り下ろす。

 斬撃で一等、波で二等。
 斬り捨てられた武者は、よろめきながら後退り、手摺りも失した階の端、彼を留める者はなく。

 月無き夜に、尽きなき野望。
 ツキ無き武者は瘴気の煙と化しながら、仰向けになって落ちて行く。

「身の程知らずの馬鹿だね、お侍さん」
 煙草の煙、燻る。
 彼の煙は、天まで届くんだろうか。
 いや、
「僕の店でも、馬鹿に付ける薬は無いんだよ」
 今日の風はいやに強い。きっと、届きはしないんだろうな。

 落ちる。墜ちる。
 何処まで堕ちる。
「あ゛、あ」
 見上げた空に丸い月。
 月沈む朝も近ければ――嗚呼、

 今更出ても、もう遅い。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『茶屋にて一服いかがでしょう?』

POW   :    お茶の味を楽しみながらまったりとする。

SPD   :    和菓子の味に舌打ちながらまったりとする。

WIZ   :    茶屋からの景色を眺めてまったりとする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 オブリビオンの消滅と共に、黒い城もまた、朝日に掻き消され静かに消えて行った。
 後に残る平原には何事も無かったかのように、ざわざわと夏草が揺れる。

 疲れた足に鞭打って、平原沿いの道を真っ直ぐ、四半刻の半分――凡そ十五分も歩いて行けば、小さな村が見えてくる。
 小さな村の、小さな茶屋だ。
 席も然程は多くない。……かと思いきや――、

 道に多少の幅取って、幾つかの縁台が並べられていた。
 どうやら、客が何人か纏めて来そうだと、誰かが店に知らせていたらしい。
 早朝からの満員御礼。店としちゃ有難い上に、朝一番なら人通りの邪魔ともなるまい。
 日の出と共に商売始めるサムライエンパイアの商人達は、儲けの此の機会すわ逃す手は無しと、襷掛けして待ち詫びて。
 猟兵達の姿を見るや、笑顔で快活に声掛けた。

「はいよ、いらっしゃい!」

 仕事上がりの一服。
 何なりと、召し上がれ。

【日常章はクリアまでの青丸が少ないため、受付期間を明記致します。ご参考にどうぞ。
 プレイング受付開始は23日(日)午前8時31分から行います。
 受付締め切りは、26日(水)23時59分までです。どうぞよろしくお願い致します。】
栗花落・澪
【夕凪さんとご一緒したいな】

僕、こういうお茶屋さんって初めてなんだよね
良かったら一緒にどうですか?

やっぱり緑茶が無難かな
和菓子……うーん、悩むなぁ…
夕凪さん何にする?
僕同じのにしてみようかな

ん、おいしいー♪

僕ね
まだこの世界の事詳しくないけど…
武将さんとか、お侍さんとか
戦いの中に身を置いてた人達も
こんな風に、ゆっくり出来る時間はあったのかな

もしそういう平和を知らないまま
オブリビオンになった人が居たとして
ただ戦うだけじゃなくて
少しでも教えてあげられないかなって…思うんだよね

だから敢えて一度だけお代わりして
2杯目には短い祈りを
これは貴方の分ですよって
後で自分で食べなきゃだけど

届くかな
あの人に




「良かったら一緒にどうですか?」
 澪にそう声を掛けられて、黒いジャケットを羽織った青年、天之涯・夕凪(動かない振子・f06065)は振り返った。
 僕、こういうお茶屋さんって初めてなんだよねと、自分を伺うように見上げる少年に目を細め、栗花落さんが宜しければ、とその誘いに嬉しく応じる。

 店の入り口脇に置かれた縁台に二人腰かけて。
 澪は、墨で書かれた達筆なお品書きに目を通しながら、唸った。
「やっぱり緑茶が無難かな。和菓子……うーん、悩むなぁ……」
 真剣な顔で悩む姿に、青年は急かすでもなくゆっくりと待つ姿勢。
 やがて、澪は隣の男を覗き込むように、ひょこと前に身を傾けた。
「夕凪さん何にする?」
「そうですね……私はこれにしようかな、と」
 細くも骨ばった指の示す先、書かれた文字は――、
「みなづき……水無月?」
 草書体の文字を何とか解読して尋ねると、夕凪は笑みのまま頷いた。
 あまりよく知らないお菓子ではあるが、それだけに反対に気になる気がして。
「水無月って、六月のことだよね?」
「ええ、UDCアースでは、丁度この時期に食べられる和菓子なんですよ」
 そっかぁと、頷く声から寸分とせず、

「じゃあ、僕同じのにしてみようかな」

 澪は、花開くように笑んだ。


「ん、おいしいー♪」
 届いたのはお皿に乗った小豆の乗ったういろう。
 鉄砲串で食べやすい大きさに切って口に運ぶと、もちもちとした食感と程よい甘味が楽しめる。
「それは良かった。私も先日初めて食べてみて……少しハマってます」
「そうなんだ!」
 夕凪さんが和菓子にハマるのは少し意外かもなんて雑談を交わしながら、ふと、声の間に空白が過る。
 澪は、串を持つ手と皿を膝の上に静かに置いた。
 彼の様子に、夕凪も何か察したのだろう。口を噤み、彼の挙動を見守る。
「僕ね」
 ぽつと切り出した言葉。ええとの相槌は、柔らかく。
「まだこの世界の事詳しくないけど……武将さんとか、お侍さんとか、戦いの中に身を置いてた人達も、こんな風に、ゆっくり出来る時間はあったのかな」
 言葉に、青年も澪に倣って、膝に皿を置き。けれど、まだ何も応えずに。
 澪の言葉はまだ、想う人々の為に繋がっている気がしたから。
 少年は続ける。
「もしそういう平和を知らないまま、オブリビオンになった人が居たとして。ただ戦うだけじゃなくて、少しでも教えてあげられないかなって……思うんだよね」
 そこで、遠くを見ていた胡桃色がふと今いる茶屋に戻って来た。
 胸の内を語り、少しはにかむ少年の眼は、どこまでも澄んでいて。
「……栗花落さんのその優しさに救われている人は、きっと、いると思いますよ」
 オブリビオンだって、そうだろう。
 青年の答えは言外に、その意を込めた色で。
 それは、少年の、青年の、願望であるかもしれないけれど――。
 澪は、にっこり微笑んで、茶屋の中へと声を掛ける。
「すみません、お代わりくださーい!」
「おや、栗花落さんは甘党ですか?」
 小柄で華奢な少年のお代わりは、予想外だったらしい。
 夕凪が目を瞬かせると、澪は頷き、再び運ばれてきた水無月を隣に置いて手を組んだ。
 この世界の祈りの作法とは、違うかもしれないが、精いっぱいの心を込めて。
 その所作に、夕凪も静かに目を伏せた。
 暫しの沈黙。
 開いた目に映る、“彼”の分の、半透明な水無月。温かいお茶。

「届くかな、あの人に」

 お茶は熱く、白い湯気が空へとゆらゆら上っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御鏡・十兵衛
何とも準備の早い。いや商魂逞しいでござるなあ。
敵城の散歩もそれなりに良い運動になった。
どれ、某も一休みしていくでござるかな。

熱い茶と……ふむ。和菓子でござるか。この店のおすすめは?
……なるほど、ではそれで。

しかし……妄執、野望にござるかぁ。某の父上もそういうケは有ったでござるが、武人とは皆そういうモノを抱きがちなのでござるかな。
ま、某には縁のない話よ。あー茶が美味い。




 さしもの剣豪と言えど、商人達の仕事の早さ、其の商魂には舌を巻く。
 十兵衛は、呆れるより先に、大きく口を開け、からりと笑った。
「いや商魂逞しいでござるなあ」
 “それなりに良い運動”と言う程に余力を残しているものの、体を動かせば腹は減るのは世の道理。
 こればかりは刀を齧って凌げるわけでもござらんからなあと肩を回す。
「どれ、某も一休みしていくでござるかな。頼もーう」
 やや道場破りめいた掛け声で、十兵衛もまた、暖簾を潜った。

「まずは、そうさな。熱い茶と……ふむ。和菓子でござるか」
 毛筆達筆なんのその。
 苦戦する様もなく、さらさらと品書きに掛かれた文字に目を通し、隣に立つ店員に視線を向ける。
「して、この店のおすすめは?」
 剣の道も然り。其の道の事は、其の道に通ずる者に尋ねるのが一番の近道。
 見知らぬ店の注文も、店員に尋ねるのが一番間違いがあるまい。
 人の良さそうな茶屋の娘は、にっと笑った。
「うちは団子がおすすめですよ、お侍さん。みたらし、あん、きなこ、胡桃みそ。んでも、アタシのおすすめは、茶団子」
 指折り数える団子の種類。
 なるほど、それだけで力を入れている事が伺える。
「……なるほど、ではそれで」
 茶団子とお茶の注文に、「あいよ!」と、元気な声が返った。
 十兵衛に背を向け、注文を通しに行く女の背を、
「あ、少し待たれよ」
 女は呼び止めた。
 こほんと一つ、咳払いして。
「やっぱり、胡桃みそも追加で」
 澄まし顔。振り向き様に見せた笑みが、了承の合図のようだった。

 届いた団子の串を、くるりくるり、指先で遊ばせながら、虚空を見上げて十兵衛は物思いに耽る。
「しかし……妄執、野望にござるかぁ」
 対峙したオブリビオンの眼に宿った光。
 十兵衛には、あれに幾らか見覚えがあった。自分にとって、至極身近な人物の中にも宿っていたものだ。
「某の父上もそういうケは有ったでござるが、武人とは皆そういうモノを抱きがちなのでござるかな」
 団子の串を手に取り、口へと運ぶ。
 焙られた胡桃と味噌の香ばしい匂いが食欲をそそる。
 少し濃いめの味と、ほんのりとしたしょっぱさ。これが淹れたての煎茶になんとよく合うことか。

「ま、某には縁のない話よ。あー茶が美味い」
 美味い団子を喰いながら、すすすと茶を啜れば――、はて。
 今しがた考えていた事は、熱さと共に喉を下ったらしい。
 空の皿を脇へとやれば、女に残るは刀のみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄荷・千夜子
わぁ、一仕事終えた後のお茶と和菓子はいいですね!
和菓子、好きなものが多くて迷ってしまいますね
決めきれないのでここはお店の方に決めて頂きましょう!
「お茶と、おすすめの和菓子を頂けますか?」

お茶とお菓子を受け取ったら空いている席を探しつつ
「夕凪さん、お隣大丈夫ですか?一人で頂くのも味気ないので良ければお付き合い頂けましたら」
どなたかご一緒できる方がいればと思っていたので他にもご一緒できる方がいれば皆さんと
「甘い物は平気ですか?よければ、こちらの和菓子もどうぞ。おすすめ頂いてきたのです」
こうやって、お喋りをして、美味しいものも頂いて。
至福の一時ですね!


有栖川・夏介
※アドリブ歓迎

仕事上がりに茶屋で一服というのも、悪くはないですね。
サムライエンパイアの商人は商売が上手らしい。
……ええと、お茶と(…茶屋、といえばやはりお団子でしょうか?)
とりあえず、お団子を7本ほど。味はお任せします。

席に腰かけてお茶を啜る。
お団子に手を伸ばしてふと気づく。
「…私一人でお団子7本は、ちょっと多すぎたでしょうか?」
【大食い】なので食べきれなくはない量だと思うのですが、一人で食すには勿体ない気がします。
というわけで、他の猟兵にもお裾分け。
……一人で食べるよりも大勢で食べたほうが美味しい、と言いますしね。




「仕事上がりに茶屋で一服というのも、悪くはないですね」
 気負わない仕事に、気負わない時間。
 そんな時間は、夏介にとっては少し珍しいかもしれない。
 猟兵達の到着に合わせて、俄かに賑やかになる店の中に視線を向け、夏介は目を細めた。
 早朝からの団体客に、商売人達はいやな顔ひとつなくあくせく働いている。
(サムライエンパイアの商人は商売が上手らしい)
 種別は違えど、仕事に誠実な人々というのは、印象が好いものだ――等と考えていれば、
「お兄さんはお決まりですかい?」
 掛けられる声。
 流れる様な紅い瞳を一度二度瞬きして、お品書きに目を落とす。
「……ええと、お茶と、」
 選ぶまでの間繋ぎに、一先ずお茶の注文を挟み、何が良いかと思案する。
(……茶屋、といえばやはりお団子でしょうか?)
 心なし並んだ団子の種類に力がこもっている気もする。
 いや、きっとそうだろうと半ば決め打ちの形で、相手を待たせないことを優先し、青年は店員へと再び目を向けた。
「とりあえず、お団子を7本ほど。味はお任せします」
 はいよ、と声が返り、然程待つこともなく、様々な団子が乗った皿が3枚。
 盆に乗って運ばれてきた。


「わぁ、一仕事終えた後のお茶と和菓子はいいですね!」
 歓声が上がる。
 千夜子は、静かに指先合わせて満面の笑みを浮かべた。
 さて、どれにしようかとお品書きの上を巡らす視線は、二度三度と左右に揺れるもひとところに落ち着く気配はない。
 それどころか、あれやらこれやら和菓子の名前が目に入るたびに気になるものが増えていく有様で。
 よし、と、千夜子は拳を握った。
「決めきれないのでここはお店の方に決めて頂きましょう!」
 そうと決まれば行動は早い。
 はいと元気に真っすぐ手を立てて、店の者へと声を掛けた。

「お茶と、おすすめの和菓子を頂けますか?」


 鼻歌交じりの足取りで、千夜子はお皿と湯呑を手に空いている席を探す。
 丁度、とある男の隣が空いているようだった。
 見知った、というより……今回の事件を、猟兵たちに知らせた其の人物に、処女は気軽に声を掛けた。
「夕凪さん、お隣大丈夫ですか?」
 夕凪と呼ばれた青年は振り返り、おや、薄荷さん、と相手の名を呼んだ。
「ええ、空いていますよ」
 どうぞと手で促しながら、自分の隣で良いのかと銀色の眼が問うている。
 千夜子は屈託なく、笑んで。
「一人で頂くのも味気ないので、良ければお付き合い頂けましたら」
 自分の手に持ったお皿を軽く上げ、相手の目に入るようにすれば、軽快にひょいと腰かけた。

 其の一方、席に座って、茶で喉を潤し、いざ団子を味わおうとしていた矢先。
 夏介は、串に指が触れる寸前でふと考える。
「……私一人でお団子7本は、ちょっと多すぎたでしょうか?」
 仕事では私情挟まぬ処刑人も、日常となれば私情に揺れる。
 繊細な見た目にそぐわず、実は大食漢な彼だ。
 食べようと思えば、其れ程無理なく食べ切る事は出来るだろうが……。
(少し、勿体ない気がしますね)
 何が、というはっきりと言葉に出来る感覚では無いけれど。
 夏介は徐に立ち上がり、他の猟兵を探した。
 近くに座っていたのは、見覚えのある黒く細長い影。そしてもう一人の豊かな髪の少女。
 丁度少女が、男に団子を勧めているようだった。
「甘い物は平気ですか? よければ、こちらの和菓子もどうぞ。おすすめ頂いてきたのです」
 お皿を差し出すのを見て、少し迷いはしたものの、機を見るに敏というものだ。
 夏介も横からすっと皿を出した。
「こちらも、どうですか?」
 差し出された皿に先に反応したのは千夜子だった。
「あ、私のには乗ってないお団子ですね! それもおいしそうです!」
 一本頂いていいでしょうかと素直に受けてくれる少女に、ええ、どうぞと頷いて。
 見遣れば、少女のお皿の上に乗っていたのもまた団子だった。
 同じ味のものもあるようだが、被っていないものの方が多かったのは幸いか。
 座る場所をずらして、夏介のスペースを作りながら、夕凪は青年に頭を下げる。
「有栖川さんも……また、お疲れ様でした。いいんですか? 頂いてしまって」
 少女に続き、控えめに手を伸ばそうとする青年に、二度目の肯首を返し、
「……一人で食べるよりも大勢で食べたほうが美味しい、と言いますしね」
「分かります! 絶対に、みんなで食べた方がおいしいですよね!」
 夏介の言葉に力強く千夜子が同意した。
 これがおいしい、こっちもおいしいと、年頃らしく食べる千夜子。
 対照的に、黙々と静かに。けれど、気づけば結構な量を食べている夏介。
 食の細い男は、受け取った団子二本を暫く手に持ったまま、微笑ましげに其々の様子を眺め。

「はぁ……食べました!」
 千夜子が手を合わせてご馳走様でしたと言うに合わせて、男二人も手を合わせた。
 団子各種を堪能し、少女の声もお腹も幸せに満ちて。
「こうやって、お喋りをして、美味しいものも頂いて。至福の一時ですね!」
 揺るぎない声でそう断じる。
「至福……そうですね。こういう時間を」
 至福、というのかも知れない。
 細やかながら、確実な。
 緑の瞳の少女の言葉に、紅の瞳を閉じて、青年は一口、茶を啜った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼灯原・孤檻
無事に脅威が去り、平和が訪れたことに安堵している。
茶屋があるならば、食べ歩きの出来る団子を一つ買おう。
にぎわっているところに気づけば、団子を頬張りながらそちらに向かおう。

「…朝市だろうか? 精が出るな…」

店をいくつか見て回り、ふむふむと吟味していく。
初めて見たものには目を輝かせ、買っても置く場所がないと泣く泣く購入を諦めるものもありと、一喜一憂していよう。
ただ、見てばかりなのも申し訳ない…
ふと思い立ち、天之涯・夕凪殿に今回の事件を知らせてくれた礼を贈れないかと思い至る。
砂時計を模した風鈴等があればいいのだが。

澄み渡る空を見上げる。
夏が近い。


<アドリブ歓迎>




 立ち寄った村は、日の出と共に人々が起き始めている頃合いだった。
 人々はオブリビオンの脅威に晒されていた事も知らず、またいつも通りの一日を始めている。
 そんな様子を見て、孤檻の胸中は安堵で満たされていた。
(人々の享受すべき平和――ああ、矢張り世界はこうあるべきだな……)
 教えられていた茶屋に立ち寄りこそすれど、孤檻は中に腰を下ろすことはない。
 店の者に頼むのは、団子を一つ。
 食べ歩きするからと、包みなどは断った。
 薄桃・白・緑の三つの色の団子が刺さった串を手に、ふらりふらりと村を散策に出て。

 ふと、気づけば人の往来がやけに集中している場所がある。
「……朝市だろうか? 精が出るな……」
 薄桃色の団子を、あぐ、と齧り。片頬を膨らませながら、近づいていく。
 朝市は規模こそ小さいものの、神の眼から見てもなかなかどうして鮮度の良い物が多い。
 朝餉の品々も多くあったが、それらを見ている内にぽつりぽつりと店が増え、日用雑貨の類も並ぶようになった。
「ふむ……店主、これは一体どういうものなのだ?」
 初めて見る品々には、男の眼が外見の年齢に似合わずきらきらと輝いて。
 やれ、これは興味深い。やれ、これはあると便利かも知れないと、陳列された品物を覗く度に内心浮いたり弾んだり。
「どうだい? 安くしておくよ!」
 鉄瓶の立派な急須に、雪の積もった富士の描かれた湯のみの組売りには、かなり心が揺らいだものの――、
「……くっ……。店主よ、すまん」
 買っても置く場所がないと、自分自身をきつく言い含め、断腸の思いで断り、足早に背を向ける。

 かなり満喫している孤檻だったが、未だ、其の手に戦利品はない。
(ただ、見てばかりなのも申し訳ないな……)
 自分の物はなかなか変えないが、そういえば、と、今回の事件を予知した猟兵である男の姿を思い出した。
(天之涯に今回の礼でも贈ろうか)
 となると、さて、何が良いものか。
 彼の人物のことは何も知らないが――、考えながら歩いていれば、何処からか、りぃんと、音が響いた。
「あの音は……」
 招かれるように其方へ向かう。音は幾つも連なり、不規則にりん、りりん、りぃんと涼しさを誘う。
「風鈴か……」
 並べ売られた季節の風物詩。見てっておくれよと、煙管吹かした親父が言った。
(天之涯に贈るならば――)
 その気になれば、どのような模様のものがあるのか、一寸と掛けずに見てとれようが、孤檻はそうはせずに、丁寧に確かめていく。
 やがて、其の内の一つを手に取った。
「おやじ、これを」
 彼の手には、砂時計の模様が描かれた一風変わった風鈴。
 砂時計は江戸時代には既に日本に入って来たとは言え、風鈴の絵柄で見られるのは珍しいに違いなく。
 幸いだったと、買った風鈴を手に、孤檻は元来た道を戻り始める。

 日差しが強い。
 男は、澄み渡る空を見上げた。
 雲は晴れ、青が視界一杯に広がる。

「……夏が近いな」

 氷の世界に生まれた神の手の中で、夏の風物詩が、りんと返事した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バル・マスケレード
【SPD】
ヒハハッ、スッとしたぜ!
ああ、しかしもうこんな時間かよ。
宿主の女から伝わってくる空腹って感覚はどうにも惨めでいけねェ。
……わーったわーった、茶屋だな茶屋。
甘ェもん食えるとなったら目の色変えて食いつきやがって。
俺を被ってると見えねェけど、目。

……しかしまァ、朝っぱらから餡子のたっぷり乗った団子たァ。
いや、美味ェのはわかる。
宿主と味覚共有してるし、満たされる感覚も確かにあるし。
栄養補給は必須、宿主にキリキリ働いて貰うためにも否定するこたしねェが。
…………。
なァ。
お前、ちと太ったか?

……あっちょっテメエ!
無言で俺を盆代わりに使うなコラ!
何で女って奴ァここまで体重の話に敏感なんだよクソァ!!




「ヒハハッ、スッとしたぜ!」
 城から村へと至る道を、バルと其の宿主が歩いて行く。
 バルはケタケタと笑いながら、宿主たる女性はてくてくと静かに足を動かしながら。
 丁度、昇って来た陽に向かう形なら、否が応でも朝日が目に刺さる。
「ああ、しかしもうこんな時間かよ」

 ――バルがそう呟くのと、村の入口へ来るのはほぼ刻同じくして。
 合わせて、ぴたりと其の歩みが止まった。
 くるるるる。

 女はお腹を押さえる。
 対面でも、話し合っていれば耳には届かないような小さな虫の声。
 けれど、感覚を共有しているバルには聞かずとも其れは届く。
「宿主の女から伝わってくる空腹って感覚はどうにも惨めでいけねェ」
 ちぇっ、と、素直でない舌打ち。
 そんなバルに何か訴えかけるように、女は足を止めた侭。
 彼女の態度に、バルはわざとらしい溜息を吐いてみせた。
「……わーったわーった、茶屋だな茶屋。腹減ってんだろ。なら、さっさと行くぞ――って、おい。……ったく、現金な宿主サマだぜ」
 バルの言葉が終わるより早く女は歩きだした。先ほどとは段違いに軽くなった足取りで。
 そんな姿に、やれやれと呆れ半分、もう半分は変わらぬ顔に鍵掛けて。


「おーおー。甘ェもん食えるとなったら目の色変えて食いつきやがって」
 今度は呆れが八割か。
 ぼやいたバル本人は、丁度空を眺めるように、斜め上へと角度をつけられていた。
 ……と言うのも、宿主の空腹を満たすという欲望は、仮面である彼が顔を覆っていては叶わないので当然と言えば当然である。
 こうなっては、特にやる事がないバルだ。
 団子おいしやと嬉々として串を手に持つ宿主を考えるより他にない。
(……俺を被ってると見えねェけど、目)
 「目の色変えて」とは言ったものの、彼自身が彼女の瞳の色を確かめる事が出来るのは、自分を外してもらい、正面から向かい合った時ぐらいだ。
 ――先の言葉は単なる言葉の綾ではあるが、もし、彼女の眼の色が本当に変わったとしたならば――、

 其れを一に先駆けて見るのは、他の誰にも譲ること等出来はしなんだが。

「……しかしまァ、朝っぱらから餡子のたっぷり乗った団子たァ」
 そんな夢想はおくびにも出さず、バルは女へと話しかける。
 別に構ってほしいわけではない。
「いや、美味ェのはわかるけどよ」
 宿主の彼女とバルは感覚を共有している。
 痛覚、触角。味覚も然り。彼女が食べるにつれ、バルに伝わっていたひもじさが解消され、満足感が高まっていくこともよく分かる。彼女が再び仕事に取り掛かるために、必要な栄養を補給することも大事だろう。……しかし、

「…………。なァ」
 感覚共有とは、時に残酷である。

「お前、ちと太ったか?」
 そしてデリカシーの無い男も更なり。

 暫しの沈黙を挟んで後、パッとバルの視界から青が消えた。
 視界には新たに、黒。
 そして、縁台に掛けられた布地の赤の二色に取って替わる。
「……あっちょっテメエ! 無言で俺を盆代わりに使うなコラ!」
 バルの訴え空しく、女は何も応じぬ侭に団子に舌鼓を打つ。
 熱々のお茶が入った湯飲みを、コトリと置かれもしながらに。

「何で女って奴ァここまで体重の話に敏感なんだよクソァ!!」
 雉も鳴かずば撃たれまい。
 だが残念なことに彼は仮面で、
 其の口に、戸などという便利な道具は付いていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
アンテロ(f03396)と

疲れたし、俺はお茶でも飲んでこようかな
食に興味がなさそうなアンテロに一応声をかけてみる
……爺さんみたいだね


熱いお茶とオススメの和菓子
長閑な景色を眺めてのんびり過ごす
ぼーっとするには良いとこだね、サムライエンパイア

運ばれてきたお茶の湯呑みが熱すぎて
態度にはあまり出さずともびっくりする
……熱い
あんな涼しい顔で渡してくるなんてなかなかの手練れだね

お茶が少しだけ冷めるのを待ってから和菓子と一緒に頂く
和菓子を食べてからお茶を飲んで見せて
うん、うまい
前に和菓子食べる時に熱いお茶が欲しくなるって言ったの、ちょっとはわかった?

本当にわかってんのかなぁ
氷を断りつつ緩やかに過ごそう


アンテロ・ヴィルスカ
由紀君(f05760)と

休憩なら喜んでお付き合いするよ
出来れば横になれるところが……なに、座敷は埋まっているだと?

由紀君の微妙過ぎる表情の変化に小さく笑う
サムライエンパイアの人間に比べて肌が白いから、寒そうに見えたんじゃ?優しいね、全く

彼のお作法はよそに、だらりと頬杖をつき菓子を一口

あぁ…春に、確か桜を見ながらそんな話をしたねぇ
あの頃よりは君の気持ちもわかるようになったと思う

が、俺は冷たい茶の方がいいね。

UCで空気中の水分を固め、数個の氷に…湯飲みに浮かべつつ、君もいるかい?なんて
…菓子に熱い茶を所望する、君も充分に爺しているよ




 村に到着した男の内、色素の薄い――言うなれば、『白』の青年は、首に手を当て、軽く筋を伸ばした。
 特に明確にこれをすると決めて立ち寄ったわけではないが、依頼の説明では茶屋があると言っていた。
 隣の『黒』い青年を、横目で見る。
「疲れたし、俺はお茶でも飲んでこようかな」
 自分の行動を知らせただけの言葉ではあるが、視線其の侭、茶屋に向かい始めないところを見ると、どうやら反応を待っているらしい。
 アンテロは口元に笑みを讃えて応じた。
「休憩なら喜んでお付き合いするよ」
「そう。じゃあ、行こうか」
 村には茶屋は一軒しかない。探すのに苦労はなかった。
 村の入口から5分と歩かず、二人は茶屋の暖簾を潜り、店の中を見渡した。
「出来れば横になれるところが……」
 奥に畳敷きの座敷が見える。これ幸いとアンテロが忙しなく行き来する店の娘を呼び止めた。
「すまない。彼方の奥にあるのは、座敷かな?」
「ええ、そうですけど。でも、あちらはもう人が入っちゃってて。今は座る席しか空いてないんですよぅ」
「なに、埋まっているだと?」
 娘の答えに眉間に軽く皺を寄せ、ほんのりと不満を表すアンテロ。
 其の遣り取りを一歩下がって眺めていた由紀の口から、ぽつと感想が零れた。

「……爺さんみたいだね」
 聞かれて困るわけではないが、何とはなし、視線は逸らして。
 背を向けるヤドリガミは無反応だ。
 もしかしたら、聞こえていなかったのかも知れない――。


 座る席しかないけれど、と、店の者が気を利かせ、縁台を幾つかくっ付けて即席の床を拵えてくれた。
 アンテロの体躯だと、それでも膝から先は台からはみ出してしまうが、休めないよりは良いだろう。
 野点傘が程よく日光を遮り、まだ朝の冷たさを残した風が二人の髪を揺らす。
 ぼんやりと往来を眺めれば、天秤棒を担いだ威勢の良い振売りや、打ち水する女の姿。
 誰も、精を出して働きに出て行きながらも、決して急かされている様子ではない。
 人口密度が然程多くないこともあるだろうか、のんびりとした風情である。
「ぼーっとするには良いとこだね、サムライエンパイア」
 言いながら、由紀は丁度品物を運んできた店員の差し出すお茶を無警戒に受け取った。
 ほんの僅か。
 手渡した店員すら気づかない程に、彼の目が開かれる。
「どうも」
 お礼を言う由紀の、微細に過ぎる表情の変化に小さく肩を震わせながら、アンテロも礼を言って茶と団子を受け取った。
 店員が行ってしまうと、由紀はそっと隣に湯呑みを置いて自身の手のひらを見つめる。
「……熱い」
 湯呑みの温度で真っ赤になった自分の手のひらに落とすように呟いて。
「あんな涼しい顔で渡してくるなんてなかなかの手練れだね」
 自分だって武器を扱う性質上、手の皮はそれなりに厚いはずだが、到底店員のように湯呑みを運べる気がしない。
 涼しそうな色合いの瞳をじっと自分の手に向ける青年に、
「サムライエンパイアの人間に比べて肌が白いから、寒そうに見えたんじゃ?」
 店員からすれば故意ではなくとも、害されたことは事実であるのに。
 怒りもせず、ただ淡々と事を受け入れる由紀に、優しいね、全く、とアンテロは肩を竦めた。

 今暫くは、あまり馴染みのない世界の風景を楽しんで。
 お茶が丁度いい塩梅になったのを確かめてから、由紀はみたらし団子に手を伸ばした。
 焙られて焼き目のついた団子に、甘じょっぱいたれがつやつやと輝く。
 滅多に大きく開く事のない口を開き、串に刺さった一番先のひとつを頬張る。
 柔らかく、程よい弾力。思ったよりひとつが大きかったけど、其れも食べ応えがあると思えば評判らしいのも頷ける。
 ……ただ、ちょっとだけ飲み込みづらい。
 暫く、もぐもぐと口を動かし、すっかり飲み込んでから。
 アンテロに見せるように、ゆっくりと湯呑みを傾ける。
「うん、うまい」
 ひとつでかなりの満足感がある。三つ食べ切れるかなと思うのは胸中でのみ。
 彼の作法を見止めながらも、アンテロは気にせず、姿勢を崩したまま団子を頬張る。
 自分同様、咀嚼で喋れない状態になったアンテロが、其れでも手順を踏まえてくれたのだろうか。
 団子の後に茶を啜っているのを確かめてから、由紀が尋ねた。
「前に和菓子食べる時に熱いお茶が欲しくなるって言ったの、ちょっとはわかった?」
 問われ、ヤドリガミは、あぁ……と声を漏らした。
「春に、確か桜を見ながらそんな話をしたねぇ」
 そんな事もあったなと、思い出す。
 捻くれた目の前の青年の返答に、「俺はまだ君を全然知れていないらしい」と苦笑した春の日。

「あの頃よりは君の気持ちもわかるようになったと思う」

 少なくとも、一つの季節を越した分ぐらいは。
 あの時苦笑だったものが、今は和やかに寛いだものになる程度には。
 ――かと思えば、アンテロの表情がにやりと悪戯めいたものに変わる。
「が、俺は冷たい茶の方がいいね」
 指をパチンと鳴らし、空気中から集わせるのは六花。
 彼の湯呑みの上に出来た氷の塊は、ぽちゃん、ぴちゃんと、お茶の中に飛び込んだ。
「君もいるかい?」
 笑うアンテロに、短く息を吐いて、
「本当にわかってんのかなぁ」
 とぼやくように言いながら、由紀は申し出を断り、再び熱いお茶を啜った。

「……菓子に熱い茶を所望する、君も充分に爺しているよ」
 やっぱり聞こえてたんじゃん。
 そう言っていそうな由紀の視線に、瞼閉じ、見て見ぬ振りして。
 アンテロはふたつめの団子を口に入れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
アドリブ歓迎
お品書きをじっと睨み付けて悩む
どれを頼むか…
どれを諦めるか…
それが問題だ
食い過ぎたら飯が入らなくなるかもしんねぇし…
入んなかったらたぶん心配されるし…
いや、けど正直全部食いたい

……案外いけるんじゃね?
運動したら腹がへるだろ
たくさん運動したし
つまりはまぁ…たくさん食べてもいいってことだ!
よぉし!
お品書きにある甘味を片っ端から注文
並んだ甘味に目を輝かせ
まずは団子から
すっげぇ美味い!
あんまりここの世界の甘味食ったことなかったけど
もちもちした食感がいいな…
前食った餅もこんなんだったな
こういう食べ物が多いのか
いや~いいとこだな~
たくさん甘味を食べてご機嫌
もう一つずつくらい食えそうだ




「んーーーーー……」
 細めた青は、雲の切れ間から覗く星のように。
 至極悩ましげに、極々真剣に、お品書きと睨めっこしているのは、セリオスだ。
 眉間に寄った皺と眼差し。其の表情は、ひどく子どもっぽく見えて。
(どれを頼むか……)
(どれを諦めるか……)

「……それが問題だ」

 むーん。
 青年は、口を尖らせた。
「食い過ぎたら飯が入らなくなるかもしんねぇし……」
 一瞬だけお品書きから目を離す。
 虚空に向いた青は、誰かの姿を思い出しているようで。
「入んなかったら、たぶん心配されるし……」
 どーすっかなー。
 足を軽くぱたぱたと動かした。……少々行儀が悪いかも知れないが、今は注意される相手はいない。
 最初は自分の方が高かったはずの視線は、徐々に下がって行き、今はお品書きと同じ高さになった。
 青年は机に伏す体勢、天板に顎を乗せて片眉を上げた。
「いや、けど正直全部食いたい」
 誰に告げるでもないが、はっきりと述べる。
「……案外いけるんじゃね? 運動したら腹がへるだろ。たくさん運動したし。つまりはまぁ……」
 食べる理由を指折り数え、突然、がばりと起き上がると、
「たくさん食べてもいいってことだ!」
 既に彼の声に迷いはなく。
 そうと決まれば話は早い。
 セリオスは、腕まくりする仕草をしながら、よぉし! と意気込む声を上げれば、威勢よく店員を呼び止めた。
「えーっと、これのさ、ここからここまで、全部!」
 一度言ってみたかったんだよなと満足そうな青年に対し、注文取りの店員は、目をぱちくりさせて、注文を確認し直す。
 世界の発達度合いからして、甘味の種類も多い訳ではない。とはいえ、流石に品書きの端から端までという注文をする者は今までいなかったのだろう。
 二度程確認され、念押しされても揺るがない自身たっぷりな様子に、漸く店員は注文を控えて厨房へと下がった。
 楽しみだなぁと待つ事暫し。
 並ぶ並ぶ、各種の団子に、あんみつに、葛切り。ぜんざい、水無月、饅頭、大福。
 到底、二人掛けの机ひとつでは収まらず、近くの席をくっ付けて、セリオスの前にずらりと傅く甘味の数々。
「うーわー、いい眺めだな!」
 青い星は、いつも以上にキラキラと煌めいて。
 まずは一番手近にあった黄な粉の団子に手を伸ばした。
 黄な粉が散らないよう気を付けながら、ひとくち、ぱくり。
 途端、セリオスの瞳は花火でも見たかのように。
「すっげぇ美味い!」
 心配そうに彼の様子を覗っていた店の者が、其の言葉に照れたように微笑んだ。
 テンポを落とすことなく次々に消費されていく甘味類を見るに、どうやらお残しの心配はないようだ。
 安心して厨房へ戻る。

「あんまりここの世界の甘味食ったことなかったけど、もちもちした食感がいいな……」
 もちもち。言葉通りにもちもち咀嚼しながら、セリオスは目を細めた。
 そういえば、前に食った餅もこんなんだったと思い出しながら、こういう食べ物が多いのかと納得する。
「いや~いいとこだな~」
 美味しさに気持ち弾めば、自然と声も朗らかに。
 丁度その折を見計らって、お茶のお代わりと一緒に出されたのはお漬物。
「アンタ、細いのによく食べるねぇ。びっくりしちゃった」
 あんまり気持ちがいいもんだから、これはおまけ。お口直しにどうぞ、と店員が笑う。
「お、ラッキー。ありがとな」
 鉄砲串で刺して一枚頂く。甘さ続きのところに挟まれるしょっぱさ。
 続けて緑茶を啜れば、これがもう、またまた美味い。
 暫く、口の中の味の変化を堪能してから、セリオスは満面の笑みを浮かべた。
「あー、さっぱりした!」
「そーぉ、そりゃ良かった」
 クスクス笑う店員に、セリオスは事も無げに言った。

「うん。おかげで、もう一つずつくらい食えそうだ」

 店員の驚いた顔たるや言うに及ばず。
 一騎当千とは言えど、彼一人で幾人分の働きしたものか――お後が宜しい様で。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
やれやれ、ここは煙草は吸えるかい?
席があるなら、あっつい茶をおくれ
ないならその辺の原っぱで十分だ

徹夜明けの体に沁みるねぇ…
今すぐ眠っちまいたいが、赤子でもあるまいしそうはいかない
ちょっと目を覚まして、ゆっくりして、
それから帰ったって怒る客もいない

文字通り肩の力を抜くと
猫背になるわ顔は緩むわ
そりゃあもうだらしがない姿だろうね
誰が見てるって、
目の前の木だったり空の雲だったり、猟兵相手に気取る必要もない
いつも僕を見てる気がするお天道さんだってまだあの通りだしさ
……べっぴんの店員さんなんかがいたら?
その時だけ背筋を伸ばせばいい

こういう時間がね、僕には必要なのさ




「やれやれ、ここは煙草は吸えるかい?」
 首をこきこきと鳴らしながら、ピンクの髪の男が店の者へと声を掛けた。
 ロカジの目の覚めるような派手な髪色も、猟兵ならば気に留められることはない。
 店員は空いておりますよと言ったものの、中を覗けば狭い席しかないようだ。
 どうにも、せせこましい椅子に体を押し込むような気分じゃない。
「いや、いいや。その辺の原っぱにでもいるよ。あっつい茶を持ってきてくれるかい」
 頼んだよ、と言いながら、既にロカジは背を向けて。
 ぐるりと店の裏手に回り込んでみれば、丁度、小さな小川が流れていた。
 ここでいいかと腰を下ろして、ぷっかり、煙管に火を入れる。
 斑な雲の浮かぶ青空に、灰の煙が仲間に加わり。
「徹夜明けの体に沁みるねぇ……」
 しみじみと言う。
 声は微睡を帯びていた。
 本音を言うなら、今すぐ眠ってしまいたいが、赤子でもない大の大人だ。そういうわけにもいかない。
 とはいえ、急いで帰る理由もない。
 一服して目を覚まし、ゆっくり息抜き。
 それから帰ったって、この後、特に予定は入っちゃいない。怒る客もいないのだから、気ままなものだ。

 此処に座り込む前に、目につく場所に人気のないことは確認済みだ。
 はぁーっと息を吐きながら、片膝立てて、体の力を抜く。
 歌舞伎役者のように張っていた背は丸まり、顔もへにゃりと力が抜ける。
 我ながら、そりゃあもうだらしない姿だろうとは思うが、誰が見てるわけでもない。
 いたとしても、草木に、水、おまけに今店にいるのは猟兵が大半だろう。彼等相手に気勢を張っても、それこそ張り損というものだ。
(お天道さんだってまだあの通りだしね)
 片や徹夜明け。片や寝惚け眼。
 まだまだ本調子には程遠い太陽の、視線代わりの日差しも淡い。

 ぼんやりと呆ける時間は、小川の流れよりも流れが鈍い。
 思考を放棄したロカジの下へ、煙草の匂いをかき分けて、ほんのりと甘い香りが漂ってきた。
 この匂いは――、
 そう、考えようとした矢先。
 誰かが近づいてくる足音を捉えて、ロカジは気持ち背筋を伸ばし、振り返った。
 茶屋の娘だ。べっぴん……と言うには純朴が勝る見目だが、まぁ、器量は悪くない。
 背筋をそのまま、維持する。
「薬売りさん。お待たせしました、お茶どうぞ」
「ああ、ありがとう」
 湯飲みを受け取り、つつっと啜る。
 熱いお茶が喉を通って、太陽の代わりに体を温めた。少し意識にハリが出る気がする。
「何見てたの?」
「いーや、別になんにもさ」
 笑う男の返事に、ふぅんと気のない相槌返し、娘は周囲を見渡した。それから、直ぐ、あ、と声を上げる。
「ほら、咲いてる咲いてる。いい香りがすると思ったのよね!」
 ととと、と、小走りに駆け寄り、指さした先。
 樹について笑う白い花。

 青、緑、白。並ぶ娘の黄色い着物。

 何の変哲もない時間だ。
 何の、他愛もない時間だ。
 けれど、男は口元の力だけを再び緩め、湯飲みに溶かすように呟いた。

「こういう時間がね、僕には必要なのさ」

 甘く漂うクチナシの――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

刑部・理寿乃
竜の楽団達が演奏の報酬に茶屋で奢れ、としょうがないですね~
席空いてるかな?なければ地べたに座ればいいでしょう
注文は……イチゴパフェ?宇治金時かき氷?アカフク?わらび餅?ここはUDCアースの喫茶店、デパ地下じゃないんですよ
適当に甘いものと飲み物を頼みましょう

今回の曲について反省
序盤で和を持ってきて、徐々にロックになるのがすごい良かった(小並感
惜しむらくはドラムがなくて物足りなかったですね
太鼓、琴も入れてみたかったのですがコレらも戦いの場ではね……
え?それらを含めて今、演奏したい?店の人に聞いてみますか

頭に浮かんだ言葉を演奏に合わせ口ずさむ

「つきなき夜に兵が集う黒の城
あくれば夢幻と消ゆ一夜城」




 魔の城主との決戦を終えて、理寿乃と彼女の呼び出した竜の楽団たちは、がやがや連れ立って茶屋を訪れていた。
 戦闘に立つ理寿乃は、やや呆れた面持ちだ。
 其れも其の筈。此の打ち上げは楽団員達が働きの報酬として要請したもので、おまけに代金は理寿乃持ちだ。
 しょうがないですね~、と尖らせた口の中でこっそり呟く。

 理寿乃はひょこと店を覗き込み、中の確認をする。
 席はぼちぼちと空いているが、流石に此の集団が座るだけの席はないようだった。
 それじゃあ、外で構わないと店の者に断ると、それならばと店員は地面に敷くための敷物を差し出した。
「ありがとうございます。お借りしますね~」
 ありがたく受け取り、店の周囲の木陰の下を陣取り、寛ぐ。
 借りてきたお品書きに、まずは理寿乃が目を通していれば、左右からぐいぐいと楽団員たちが覗き込もうとしてきて。
「ちょっと、押さないでください。順番ですよ。えぇと、注文は……イチゴパフェ? 宇治金時かき氷? わらび餅?」
 口々に言われる注文品の数々と、物理的な圧力。
 もう! と声を出して、理寿乃は振り払い。
 水浴びした後の犬の仕草に似た動きで、ふるふると頭を振るった。
「ここはUDCアースの喫茶店やデパ地下じゃないんですよ」
 あるわけないでしょう。と言って、まだ口々に言い募っている楽団員達の希望は全て却下し、注文取りに来た店員に、人数分の甘味と冷たいお茶を注文した。
 やがて届いたのは盆に並べられた羊羹と豆大福。
 あーん、ぱくり。
 頬張りながら、折角なので反省会も開くことにした。
 もぐもぐ、ごくり。
「今回の曲について、反省すると……」
 口の中を空っぽにした理寿乃が口を開く。竹の楊枝をまるで指揮棒のように振りながら。
「序盤で和を持ってきて、徐々にロックに展開したのは成功でしたね。惜しむらくはドラムがなくて物足りなかったことでしょうか」
 できれば、太鼓や琴も入れてみたかったけれど、地面に置く類の楽器は、流石に飛翔しながらの戦いの場には難しい。
 理寿乃は腕組み、残念そうな顔で唸った。
 ぱくり。
 一口で大福一個を食べ終えたエレキギターの演奏者が、何やら理寿乃をちょいちょいと手招きした。
「ん? 何ですか?」
 理寿乃が耳寄せ、意見を聞くと……、
「え? それらを含めて今、演奏したい?」
 其れは思いつかなんだ。ぴょんと、ふわふわの髪の毛が跳ねる。
「うーん、店の人に聞いてみますか」
 女は徐に立ち上がり、店へ入って、店の主らしき男に尋ねてみれば、朝一とはいえ、既に此の世界の住民にとっては活動が始まった時間帯だ。
 其れに、小さな村で娯楽も少ない。聞いたこともないような珍しい演奏なら、是非聞いてみたいと言うことになった。
「いっちょ、景気の良い演奏でお客を呼んでおくれよ」
 からからと明るく笑う旦那に、任せて下さいと応じ、理寿乃と楽団員たちは再び準備を始める。
 太鼓と琴を持った演奏竜も加わって、楽団は一層賑やかになり。

 演奏が始まる。
 昨夜、爪弾いたのと同様に、序盤は和楽器だけで和を重視した演奏を。
 琴が加わったことで、音に艶が出て、流麗さが際立った。
 それから、エレキギターにベース、そしてドラム代わりの太鼓。
 太鼓の音が力強さと音の地盤を固め、空気の振動は体の中から揺さぶるように道行く人たちを引き留めた。
 サムライエンパイアの光景。
 観衆たちを前に、ふと、理寿乃の脳裏に言葉が浮かぶ。
 天啓のような其れは、ぴたりと用意されたように、曲に合うようだった。
 理寿乃の口をついて、言葉が、歌が、溢れ出す。

「つきなき夜に兵が集う黒の城
 あくれば夢幻と消ゆ一夜城」

 人々の拍手が、演者たちを包み込んだ。

 月満ちて集いし強者 黒を討ち
 開けるは無限と見ゆ 幸の唱――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月30日


挿絵イラスト