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ドリフターズ暗夜行

#ダークセイヴァー #夕狩こあら #『暴虐の青風』カエルラマヌス #『血染めの災厄』ルベルレギナ #流浪の民と過ごす一時


「ダークセイヴァーでは吸血鬼の支配に苦しむ村々がある一方、圧政を避けて幌馬車で移ろう流浪の民も居るが、彼等とてオブリビオンの脅威から逃れられている訳では無い」
 ドリフターズ(漂浪者)。
 木を伐らず畑も耕さない彼等を「根無し草」だとか「流れ者」だとか言って蔑む者は慥かに居るが、畢竟、常闇の世界に生きる者は等しくオブリビオンの恐怖から逃れられない――。
 枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)の淡然たる物言いこそダークセイヴァーの明けぬ絶望を示す様だが、その深沈は更なる絶望を語る。
 緋色の麗眸はスッと細んで犀利を増し、
「――或る流浪の一団が、カエルラマヌスの群れに襲われる」
 小型騎竜カエルラマヌス。
 時に『暴虐の青風』と呼ばれ恐れられる青膚赤眼の魔竜は、人語こそ操らぬものの知性は高く、群れを成して暴虐の限りを尽くす――その様は宛ら蹂躙の颶風。
 常闇の大地を幌馬車で移動する流浪の民に目をつけた連中は、狼の様に狡猾に彼等を追い立て、逃げ遅れる女子供から順に屠っていくだろう。
「そこで君達には、このカエルラマヌスの撃退をお願いしたいのだが、注意すべき点が二つある」
 須臾、緋瞳を縁取る月白の長い睫が持ち上がる。
 帳はやや声音を落として言を足し、
「一つは、流浪の民の避難。女子供を乗せた幌馬車で逃げる一行に、騎竜の群れは直ぐにも追いつくだろう。君達は疾走する両者の間に割り入って、流浪の民を守り、邪竜と戦わなくてはならない」
 幌馬車の手綱を握る馭者に避難方向を示せば、その通りに向かってはくれるだろうが、逃げる彼等を守るには、カエルラマヌスの貪欲を此方に惹き付ける必要がある。
 流浪の民の護衛に徹するも良し、我が身を囮に魔竜の群れと戦い続けるも良し、とまれ会敵劈頭は走行中である事に留意して欲しい、と帳は言う。
 もう一つの懸念は敵に関するものだ。
「カエルラマヌスの群れは、時に突然変異したルベルレギナという上位種が彼等を束ねている事があって、『血染めの災厄』と呼ばれる奴が居た場合は特に気を付けて欲しい」
 魔竜の女王、ルベルレギナ。
 紅血に染まる衣を纏う紫膚灼眼の邪竜は、その名の通り見た者に甚大な厄災を齎す。
 戦闘ともなれば、ある程度の負傷は覚悟の上で、十分な戦術を以て挑むべきだと帳は言う。
「魔竜との戦闘を制したら、避難させていた流浪の一団と合流して欲しい。定住の地を持たぬ彼等に一時の安息を与える――それが君達にお願いする最後の仕事になるだろう」
 ぱちん。
 繊麗の指を弾いて鳴らすのが、着地点を語った時の帷の癖。
 彼女が次に掌を暴けばグリモアが出現し、
「ダークセイヴァーにテレポートする。人々を苦しめるオブリビオンに、たっぷりとイバラをくれてやれ」
 さぁ往こう、と猟兵らを光に包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、オブリビオンの脅威に常に晒される民を救済し、絶望に隷属する人々の魂を解放する、滅び行く村の救出シナリオです。

●戦場の情報
 ダークセイヴァーの辺境、村と村の疆界に近い荒野。
 馬を暫く走らせると森がある他は、比較的車輪に優しい平坦な地形です。

●第一章(集団戦)
 騎竜『暴虐の青風』カエルラマヌスとの戦闘。
 カエルラマヌスと戦うだけでなく、流浪の民を誘導して避難させたり、彼等の護衛に徹したりする事が出来ます。
 必ずしもPOW、SPD、WIZに従う必要はありません。
 自由な発想で行動して下さい。

●第二章(集団戦)
 『血染めの災厄』ルベルレギナとの戦闘。
 カエルラマヌスが突然変異した上位種です。
 ルベルレギナを倒せば周辺の脅威は一先ず解消されるでしょう。

●第三章(ボス戦)
 狩猟と採取で日々を生き抜く流浪の民。
 彼等に一夜の宴を送る事が、猟兵が最後に果たすべき使命となります。
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 帳を協力者として指定することも出来ます。目安の400字に描写をプラスし、お客様分の字数を削る事はございません。指定のない場合は登場せず、見守り役となります。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 集団戦 『『暴虐の青風』カエルラマヌス』

POW   :    蹂躙する騎竜
戦闘中に食べた【犠牲者の血肉】の量と質に応じて【身を覆う青紫色の鱗が禍々しく輝き】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飛躍する騎竜
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    邪悪な騎竜
自身の装備武器に【哀れな犠牲者の一部】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:小日向 マキナ

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 常闇の世界、村の疆域に近い辺縁の地で。
 今日も昨日と何一つ変わらぬ絶望が命を摘もうとしている。
「父さん、魔物が追い掛けてくる!」
「分かってる。あれは『暴虐の青風』……見つかってしまったか」
 荒野を走る車輪が跳ね上がり、車軸がギシギシと悲鳴を上げる。
 流浪の民を乗せた幌馬車は、刻下、魔竜の群れに追われていた。
「どうしよう……あいつら、すごく速い!」
「振り向けば速度が鈍る。今は唯、脇目も振らず走るしかない」
 子が叫ぶほど親は冷静に、脣を噛んで手綱を握り締める。
 馬車に繋いだ馬も、鞭打たれずとも剣呑は伝わろうか、大地より振動と伝わる邪の跫音を振り払うように、走る、疾る。
『グルルルルッッ』
『ゲギャギャギャ!』
 蓋し血の汗を流したとしても遁れられまい。
 一族を乗せた幌馬車は重く、嵐と迫る魔竜の声は今にも耳に届きそうで――あまりの振動に起きた赤子の泣き声が、絶望に脣を引き結ぶ流浪の民の声を代わる様だった。
オイフェ・アルスター
WIZ アドリブ共闘〇

ダーク・セイヴァーの嫌いな所ですの
ため息まじりに杖を構える

馬車と騎竜の間に【ウィザード・ミサイル】を雨のように撃ち込みますわ
止まらなければ炎の矢に貫かれ焼かれるだけですの

馬車に飛び乗って、逃げてもらいながら迎撃しますわ
流石に馬車と並走する脚は持っておりませんの

牽制にはなったでしょうが、追ってくるのを諦めないでしょうから
連発はせず、追いつかれないように調整しながら【ウィザード・ミサイル】を降らせますわ
挟み撃ちになりそうなら進行方向を優先的に倒します

他の猟兵と合流できる地点まで誘導して、駆逐に切り替えますわ
止まった馬車を一人で守るのは現実的ではありませんもの


イデアール・モラクス
アッハッハ!捕食者気取りのトカゲモドキが!
ここはダークセイヴァー、弱肉強食の世界!
我が前に立った瞬間から、貴様らは喰われる側に転落するのだ!

・行動UC【魔導覚醒】を『高速詠唱』で行使。
本気モードになり、魔導防壁を纏いながら空を縦横無尽に飛翔し、両手から次々と『全力魔法』の力で威力を増した『属性攻撃』魔法【風の刃、聖なる光線、闇の球体、炎弾、氷の槍、足元から隆起する石の棘】を無詠唱連射、圧倒的弾幕の『範囲攻撃』と成して飽和攻撃をかける。
「我が魔力に屈せよ!アーハッハッハ!」
敵を殲滅したら【吸血鬼の血(携帯用)】から『吸血』して血に満ちる『生命力を吸収』する事で失った寿命を取り戻す。

※アドリブ歓迎


ユリウス・リウィウス
護衛に回る者は馬車を頼む。邪竜はこちらで引き受ける。

血統覚醒でヴァンパイアの力を解放。さあ、一戦交えようか?
黒剣を鞭状にして、間合いを広げる。ただでさえちょこまか動く上に空まで駆ける奴ら相手に、剣の間合いで対応できるか。

「生命力吸収」を常時使いながら、「鎧無視攻撃」「鎧砕き」で鱗を砕き「2回攻撃」で「傷口をえぐる」。
邪竜からの攻撃には「盾受け」と「武器受け」で「見切り」防御し、「カウンター」で手痛い一撃をくれてやる。

敵の群には入り込まず、敵の突出した個体に狙いを絞って外から確実に群を削っていく戦法だ。
こういう時、黒剣の射程が伸ばせるのはありがたい。
「恐怖を与え(る)」ながらの戦闘だ。押し切る。


荒谷・つかさ
あんまり防衛戦闘は得意じゃないんだけど。
まあ、やるだけやってみましょうか。

私は馬車の直掩につくわ。
動き回る必要がありそうだし、手には風迅刀一振りのみ。
当初は追いかけてくるトカゲ共を「属性攻撃」の風の刃で攻撃。
この際「早業」技能での連射・速射と、「範囲攻撃」「衝撃波」技能での広域攻撃、「吹き飛ばし」技能でのノックバックを状況によって使い分ける。
近接攻撃の射程内に入って来たら直接風迅刀で応戦。
もうあと数歩或いは一飛びで馬車が危ない、という状況になったら【荒谷流乱闘術奥義・明王乱舞】発動。
風迅刀以外の四振りの剣と大槌、それに無数の丸太を召喚して範囲内の敵を一網打尽にするわ。

大丈夫?
怪我はないかしら。


彩花・涼
1人も犠牲は出させはしない、守り抜くぞ

UCを使用し高速移動で追加地点にいる敵に奇襲しながら、幌馬車の上に配置し馬車を護衛する
近づいてくる敵は黒鳥で【スナイパー】、近づく前に撃ち落とす

敵が接近してきた場合は黒爪と黒華・改に持ち替え迎撃する
馬車が壊れてはまずいからな、なるべく馬車に近づかれる前に動きを抑え食い止める

民に攻撃が行きそうなら【武器受け】し【かばう】ぞ
間に合わない距離なら再びUCで高速移動し割り込む

共闘歓迎


雨糸・咲
逃げ遅れ、標的にされそうな人々を護衛

大丈夫、私たちがきっと守ってみせます

恐怖に竦んでしまわぬよう、柔らかく微笑んで

第六感と聞き耳で敵が襲ってくる方向を察知
オーラ防御で攻撃を防ぎつつ、
高速詠唱、2回攻撃で素早く攻撃を

――群れて掛かってくるのなら、まとめて一掃するまでです

光射さぬ世界に降らせる、雪白の花弁
清しい花の香りで、意地汚い颶風は散らしてしまいましょう

ジャンプで飛び掛かってくるものは、愛憐蔓で捕獲
とにかく馬車や人々に近付けないよう
細心の注意を払って立ち回ります

※アドリブ、他の方との絡み歓迎


鎹・たから
たとえ流浪の一族だとしても
この世界で必死に生きている人々は
たからが守るべき人達です
誰一人、死なせません

たからは護衛に就きます
ダッシュで馬車に並走
馬車にたからが飛び乗っていい場所があれば着地

襲いかかる竜達は荒雪で攻撃し此方に近づけさせぬよう
木々や岩などを動かし障害物として投げつけることも

万が一、敵を誘き寄せる戦力が足りなければたからもそちらへ
翼をよく狙って、簡単には追ってこられないようにしなければ
【2回攻撃、念動力、衝撃波、範囲攻撃】

流浪の民に危険が及べば【オーラ防御、かばう】で支え
怪我人が出れば沫雪で治療
大丈夫、たから達はあなた達を見捨てません
【救助活動、医術、優しさ】


御形・菘
暴虐の青風とはなかなかイケてる二つ名ではないか
ならば妾は一匹残らずしっかりとシメて、格の違いをきっちり示してやるとしようかのう!(←竜は同族、そして格下認定)

ということで、避難や護衛は任せて魔竜と戦うぞ
ここは任せた、先に行けというやつであるな!
さあ右腕を高く掲げ、指を鳴らし、高らかに響き渡れファンファーレ!
あ、仲間の炎は即消すぞ
はーっはっはっは! 一匹たりとも逃しはせん!
好きなだけ連携を見せるがよい、妾の鉤爪がすべて引き裂いてくれよう!

まあ実際、火力的に全部ボコれるとは思わんよ、同じ作戦の仲間の助力を得るぞ
それとファンファーレは時々鳴らすぞ
ジャンプされてまで抜けるの止められんが、できるだけな


テイク・ミハイヤー
ここがダークセイヴァーの世界か。凄く殺風景だな……っておいおい、もう追いかけられてるじゃないか!幌馬車が!

カエルラヌ…マスラ…オホンッ。暴虐の青風を直接叩きに行っても相手は群れだからな。少ない労力で多くを引き離さないと。
良い物が作れたらいいんだけど……これは、ボロボロの衣類?こいつとガジェットを組み合わせれば!
二足歩行ガジェット!こいつと俺で群れからはぐれた流浪の民に扮して囮になって、何体かの暴虐の青風の注意を幌馬車から逸らすぜ。
ガジェットに噛みついてみろ、中の蒸気がドカン!だ。
コイツで一網打尽……ってワケにはいかないよな。ええい!こーなったらベコベコにしてやる!


ニコラ・クローディア
「コール、アンフィスバエナ! 行くぞ!」
使い魔であるアンフィスバエナの真の姿、双頭竜に騎乗し颯爽と竜騎兵(ガチ)の登場だ
せいぜいが飛び跳ねる程度のトカゲ風情、空中から圧倒してやる!

「オレサマの背中に向けて走れ! 護衛の者がその先で待機している。後の指示は彼らに従え!」
護衛に回った猟兵の宣伝もしとかないとな
大声でドリフターズに存在感をアピールしつつ、敵騎竜に対しては上空からの一斉発射+クイックドロウに高速詠唱の魔弾(属性攻撃)で足止め狙いの弾幕射撃(なぎ払い)で時間稼ぎ
この世界には未だ存在しない自動小銃だ、獣に近い貴様らではさぞや怖かろうオブリビオン!(恐怖を与える+恫喝=威圧)

アドリブ歓迎


シュシュ・シュエット
赤ちゃんもご一緒なら、尚のこと皆さんにおけがをさせるわけにはいきませんっ。
皆さんを守るため、*勇気をふりしぼってがんばりますっ。

ここは【ライオンライド】のライオンさんにお手伝いしていただきます。
幌馬車とカエルラマヌスさんの間に割って入り並走し、
お爪でびしばししたり、飛びかかったり。幌馬車への接近に抵抗します。
【飛躍する騎竜】でカウンターを受けないよう、ジャンプの瞬間は*野生の勘で*見切りたいですっ。

女性や子どもたちを優先されるなら、わたしもターゲットになり易いのでしょうか……?
もし狙われるようなら、幌馬車とは別のルートを辿ってみたり、
他の猟兵の皆さんと連携して少しでも*時間稼ぎをこころみます。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。移動しながら護るのが面倒だけど、
今回はある意味、とても分かりやすい依頼みたい…ね。

【限定解放・血の疾走】を主軸に戦う
第六感が感知した敵の気合いや殺気の存在感を、
魔力を溜めた両目に残像として可視化(暗視)して行動を見切り、
先読みした先に魔法陣を設置し【常夜の鍵】を通して瞬間転移

…ここから先には通さないし、逃さない。
今後の憂いを除く為にも、一匹たりとも逃さず殲滅する…。

生命力を吸収する大鎌の2回攻撃で傷口を抉り、
別の個体の元へ転移を繰り返して奇襲を行い敵陣をなぎ払う

馬車が危険にさらされれば馬車の近くに転移し、
先読みした攻撃を回避するか武器で受け流し迎撃

ここがお前の運命の終着点よ、暴虐の青風。


アルトリウス・セレスタイト
竜でも獣でも構わんが
先ずは大人しくすると良い

自動起動する真理で能力の精度・規模を最大化
その上で界離で時の原理の端末召喚。淡青色の光の、格子状の針金細工

カエルラマヌス全個体の精神のみを数億倍に加速
意識及び感覚と現実の肉体の動作に甚大な齟齬を引き起こし行動を阻害
仮に動けてもまともには何も出来ないだろう

騎竜の落下などで被害が出そうなら局所的な時間操作で回避

何らかの理由で行動阻害が通じないなら、完全に時間停止した空間を視認不能な薄さで刃のように作り上げ、騎竜の向かう先に「置き」自滅を狙う


幾つかの経験により、主に家族という関係は守られるべきものと認識
常の無機質さでもその保護や救出は多少優先順位を上げる


青和・イチ
何をおいてもまず、竜の足止めを
難しい事、考えてるヒマなんて無い
距離があった場合は【ダッシュ】で追い付き、割って入る

射程距離に入り次第、『サイキックブラスト』で先頭の竜の動きを封じる
【2回攻撃】で他の竜も感電させたい

あいつら、殺る気満々っぽいし…こっちも、そのつもりで行くよ

『サイキックブラスト』での援護を主に行動しつつ
必要が無い時は『流星』で攻撃
くろ丸も、足に噛みついたり、『連星』での援護を

くろ丸や負傷者が攻撃を受けそうになったら【かばう】【オーラ防御】で死守
仲間との連携歓迎

万一、民の護衛が居ない場合は、そちらに回る
【優しさ】で皆を励ましつつ、馬にも【動物と話す】で、落ち着いて走れるよう声掛けを


鹿忍・由紀
誘導は他の猟兵に任せて護衛に回ろうか。
奴らに見つかったのは運が悪かったけど、見つけてもらえたのは運が良かったね。
流浪の民達に特別な気遣いはせず、仕事だからと割り切って敵を迎え撃つよ。
護衛もそんなに得意なわけじゃないんだけどなぁ。

『影雨』で馬車と敵の間に割り入る。
俺自身ははっきりと敵の動きを視認できる程度の距離を取りつつ影雨で馬車に近付く敵から集中的に落としていく。
馬車に飛びつけないように地面に縫い付けるよう上から影雨を降らせるよ。
此方に向かってくる奴も同じように叩き落としてやる。
ああ、数が多いと面倒だなぁ。
諦めが悪いところが、また。

アドリブ、絡みはご自由に。



 振り向けば恐怖は絶望と変わる。
 光なき世界にも慥かに在る生への執着と渇仰は、間近に迫る脅威に振り返った瞬間、他愛なく砕かれるだろう。
 ――儚く、虚しく。
『ゲギャアアアッッ!』
『ギシィィィイイ!!』
 魔竜の咆吼が耳に肉迫するのは、多分に死の気配を感じるからだろうが、其に悲鳴が――痛撃が滲んだと思ったのは、刹那、常闇の天蓋が昼の如く白んだ時だったろうか。
「父さん、あれ!」
「――……っ!」
 彼程言い聞かせたのにと、空を仰ぐ子を咎める間もない。
 吃驚を示す先に視線を繋げば、目下、色無き空から炎の流星が尾を引いて降り注ぎ、己が背中を越えた馬車の後方――騎竜の群れの先鋒を急襲した。
『ギャギャギャヒッ!』
『ゲェアアァァ!!』
 常闇の帳を裂く幾筋の赫灼が邪竜の鼻頭を焼き、俊敏を殺す。
 火球の五月雨る儘、空から地上へと導かれた父子の視線は、次いで我が馬車に釘付けられて愈々目を瞠ろう。
 不意に荷台を見れば、颯爽と馬車に飛び乗った佳人が艶髪を風に流しており、
「生憎、馬車と並走する脚は持っておりませんの。同乗させて頂きますわ」
「君は――」
 声主はオイフェ・アルスター(妄信する神の代行者・f12262)。今しがた炎の矢を驟雨と降らせた【ウィザード・ミサイル】の使い手とは、魔導杖『Peccatum』の光が証しよう。
 眩き凛然は御者台へと声を張って、
「初撃は牽制にはなったでしょうが、騎竜は追従を諦めないでしょう。私は此処で迎撃しますから、速度を保って逃げて頂けますか」
「――分かった!」
 心得たと返すと同時、「頼む」と声を置いて。
 手綱を強く握り直した父子は、再び真っ直ぐと進路を見る。
「誰かは知らないが、我が一族は君達に頼らせて貰おう」
 君達、と言ったのは、またも空が明るんで轟音を響かせたから。
 刻下、鋼色の空は風の刃に引き裂かれ、或いは聖なる光線に断ち切られ、幌馬車と騎竜の間を別つ様に衝撃が墜下する。
『ッギギギァァ!』
『グィィイイ!!』
 禍々しい悲鳴を眼下に敷き、傲然と大声するはイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)。
「アッハッハ! 捕食者気取りのトカゲモドキが! 蹴散らしてくれる」
 美し緋眼に冴光を湛えた彼女は、【魔導覚醒】(フルブラスト)――魔導防壁を纏いながら空を縦横無尽に飛翔し、繊麗の両掌から次々と闇の球体、炎弾、氷の槍を繰り出し、敵の陣頭の崩れる様を睥睨する。
「ここはダークセイヴァー、弱肉強食の世界! 我が前に立った瞬間から、貴様らは喰われる側に転落するのだ!」
 詠唱を要せず放たれる魔法は厖大な魔力によって溢流し、天から数多の属性攻撃を、地から石の棘を隆起させて騎竜の追従を挫く。
「我が魔力に屈せよ! アーハッハッハ!」
 圧倒的弾幕で敵群を覆う、凄まじい飽和攻撃。
 その衝撃も然る事ながら、立ち上る砂塵が視界を遮り、轟音が車輪の音を隠しては、魔竜も好餌を見失おう。
『ギェアアア!!』
『グルルルルッ!』
 幾つかの個体が弾幕より逃れるべく跳躍すれば、その逞しい脚が大地を踏み込む瞬間を、ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)の黒剣『ライフイーター』が薙ぎ払う。
『ギィイイイ!!』
『ギャヒッッ!!』
 鞭と変じた其は輭やかな弧に騎竜を打ち据え、荒野に転がし、痛撃を叫ぶ醜声に冷静が差し挟まれる。
「護衛に回る者は馬車を頼む。邪竜はこちらで引き受ける」
 他の猟兵に流浪の民の護衛を任せたユリウスは、【血統覚醒】――深沈たる緑瞳を鮮やかな真紅と変え、己が寿命を代償にヴァンパイアの力を解放する。
 己が請けた職域は必ずや果たす彼だ。逃す気は無い。
「さあ、一戦交えようか?」
 然う宣戦したユリウスは、首を突き出して迫る邪竜の横っ面を打ち、頑強なる鱗を砕いて暴いた傷口を、再び返る鞭撃に抉った。
『ゲァァアアッ!』
 手痛い一撃が生命力をも奪い去るとは、身を蝕む苦渋が後で報せよう。
 流血は恐怖を呼び、淋漓する程に牙と爪を怯ませる。
「――押し切ってみせる」
 黒剣の射程が伸ばせるのは有難い、と緋瞳が見据えるは漸う広がる間合いと、綻び始める敵の隊列。敵群に入り込まず、突出した個体に狙いを絞って外側から削っていく戦法は、集団で狩りに掛かる魔竜らを大いに乱した。
「誰かが……あの竜と戦ってくれているの?」
「ああ神様、このまま私達を逃れさせて下さいまし……!」
 激しく揺すられる幌馬車の中で、身を寄せ合った母と娘が息を呑む。
「でもまだあんなに……あいつらしつこいよ……」
 荷台の後部、破れた布の隙間から魔竜の接近を見ていた少年は、頭上の幌が僅かに沈み、誰かが降り立ったと気付いたろうか。
「邪魔をする」
 淡然たる佳声に断りを入れたのは、彩花・涼(黒蝶・f01922)。
 戦塵に翻るは【黒蝶の輪舞曲】――敵群に漆黒の斬撃を衝き入れつつ幌馬車に至った彼女は、騎竜が牙を剥いた瞬間に『黒鳥』の銃口を差し出し、口腔から脳天を鉛弾に貫く。
「――近付く前に撃ち落とす」
『ギヒィィッ!』
 頭蓋より蒼血を噴いて弾道を示した魔竜が、ぐらり首を揺らして沈む。
 馬車が壊れてはならぬと銃爪を引いた繊指は、然し距離に応じて即座に武器を持ち替えられるよう手筈を整えており、崩れる躯を飛び越えて躍り掛かった別なる個体には、『黒爪』の幅広の銃身を噛ませて牙を阻む。
『ゲガァッ!!』
「一人も犠牲は出させはしない、守り抜くぞ」
 カエルラマヌスは戦闘中に屠った血肉を糧に強化し、破壊力を増す。
 犠牲者を出さねば戦闘力の増大を阻めるとあれば、尚のこと彼等に餌を与えてはならない――涼は努めて冷静に敵の稟性を見極めながら、犀利な緋瞳に間合いを計って攻撃手法を使い分けた。
『ィィイイイッッ!!』
『グルルルルッ!!』
 然しこの数――多すぎる。
 然も魔竜は中々の狡猾にて、猟兵が据わる馬車を避けて弱きに群がる姦黠は成る程「狩り」としては当然。
 邪悪の群れは異名の通り『暴虐の青風』と化して幌馬車の脇に滑り込み、抵抗の術無き者を囲い込まんとした。
「じっちゃ、こっちにくる!」
「ッ、外を見るんじゃないぞ!」
 荷台に隠れる流浪の民は恐慌に陥り、幼子は息を潜める事も出来ず顔を覗かせるが、無垢の瞳に映されたのは、貪欲なる騎竜の首が一瞬で削ぎ落とされる圧倒的光景。
「ひぇ……っ」
「年長者の言う事に従って、中に隠れていなさい」
 しとど返り血を浴びた荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)が、蒼血を手の甲に拭いながら言い諭す。
 瞳は貪欲に垂涎する敵群を見据えた儘、愈々犀利を増して、
「――あんまり防衛戦闘は得意じゃないから、その意味でも」
 まぁ、やるだけやってみると健闘を誓った凄艶は、直ぐにも飛び回って視界を離れた。
「あっ……――わぁっ」
 凄まじい陣風が幼子の髪を舞い上げたのは間もなくの事。不可視の『風迅刀』に魔竜を斬り伏せた彼女は、続々迫る追撃を広範囲の衝撃波に追い返し、第二、第三と続く疾風が、身を低くして疾る騎竜を仰け反らせ、後方へと追い遣った。
『ゲェアアアア!!』
「す、すごい……」
 隠れていろと言われたのに、目が離せない。
 馬車の直掩に付いたつかさを出し抜かんと一騎が躍せば、【荒谷流乱闘術奥義・明王乱舞】(ミョウオウ・アサルト)が難攻不落を痛撃と突き付け、
「お生憎様」
 風迅刀と四振りの剣と大槌、そして無数の(とてもいい感じの)丸太が狂奔乱舞し、周囲の敵を一網打尽にする。
『シィィイイ!』
『ギャギャギャギャッ』
 一方、馬脚の差で一団より離れてしまう馬車は、雨糸・咲(希旻・f01982)が護衛に当たる。
「ボクら食べられちゃうの?」
「こわいよう」
「大丈夫、私たちがきっと守ってみせます」
 彼等が恐怖に竦んでしまわぬよう、柔らかく微笑んで見せる咲。
 それと同時、聡い聴覚は怒涛と迫る騎竜の跫音を、第六感は敵の狂気に鋭く感応し、方向と距離を精確に捉えている。
 荒ぶる息遣いまで漸近すれば、咲は魔導杖『雪霞』を白菊の花弁と変えて迎え撃ち、
「――群れて掛かってくるのなら、まとめて一掃するまでです」
 清めの花の香、悪い夢は洗い流して――。
 光射さぬ世界に降る雪白の花弁【雪白華】(ユキシロノハナ)は、芳し馨香を以て暴虐の颶風を颯と散らす。
『ゲギャアアア!!』
『ギシィィイイ!!』
 多くの個体が挙措を奪われる中、或る一体がここぞと躍せば、咲は次いで両の玉臂より葡萄の蔓を放ち、其の強靱に敵躯を縛して接近を許さず。
『――ッギャアア!!』
「守ってみせると言いました。約束は決して違えません」
 間に合わぬ悔しさを存分に身に刻む咲である。
 繊麗なる見目に反して芯の強い佳人は、誰一人の命も零すまいと義気凜然、美し群青の髪を戦塵に戦がせた。
「なんという者達だ……竜と対等に渡り合うとは……!」
「だが敵が大勢過ぎる! 俺達がピンチなのは変わらない!」
 御者台で手綱を握る男達が叫び合う。
 然う、彼等の距離は馬脚の差によって次第に隔てられ、カエルラマヌスが意図した通りの分断が生じている。
 一団が切り離され、個々に囲繞されては不利は確実――男達の手が汗ばんで滑る程になった時、小柄な少女が翻然(ひらり)と御者台に乗移った。
「うわっ、君は――!」
「この世界で必死に生きている人々は、たからが守るべき人達です。誰一人、死なせません」
 自らを「たから」と言ったか、少女は鎹・たから(雪氣硝・f01148)。
 雪斑の沁む黒曜石の双角が印象的な可憐もまた猟兵にて、彼女は二台の馬車の間に割り入る騎竜の群れに正対するや、【荒雪】(ザラメユキ)――不可視の雪風の渦を巻き起こし、敵の機動を削ぎに掛かった。
『ギャギャギャッ!!』
『ゲヒッッ!!』
 凍風が刃となって脚を切るだけではない。
 雪風は遠隔地より木や岩を運び、荒野には無い障害物として横腹を急襲すれば、体勢を崩した魔竜は先駆から次々と転倒して隊を乱す。
「流浪の一族であるあなた方にも未来があります」
 その未来を守りたい――たからは荷台に隠れる命を慈しむと、おさな胸に灯る六華の紋『凍てる静謐』に繊指を宛がい、全ての危険を代わらんと長い睫を持ち上げる。
 凜然たる瞳に映り込んだのは、尚も猛然と疾駆する絶望のみに非ず。
 たからの視界には、慥かな希望――目的を同じくした猟兵が次々と冴撃を衝き入れる雄壮の景があり、
「難しい事、考えてるヒマなんて無い。――くろ丸、いこう」
「おんっ」
 相棒犬・くろ丸と共に割り入った青和・イチ(藍色夜灯・f05526)が、刻下、斬撃と電撃を光と疾走らせ掣肘に掛かる。
 彼だけでない。
「コール、アンフィスバエナ! 行くぞ!」
 天には双頭竜に騎乗するニコラ・クローディア(世界を渡る龍賢者・f00091)が、
「ライオンさん、皆さんを守るために一緒に戦ってくださいっ」
 地には黄金の獅子に跨がったシュシュ・シュエット(ガラスの靴・f02357)が、共に精強なる僕を連れて騎竜の群れと対峙した。
「あいつら、殺る気満々っぽいし……こっちも、そのつもりで行くよ」
「うぉふ」
 痛撃に楔打てば尻尾を巻いて逃げる相手か――否。
 魔竜の稟性に直ぐにも触れたイチは、くろ丸の是の声に促されて両掌に高圧電流を纏い、【サイキックブラスト】――蒼い稲妻に敵躯を繋いで感電させる。
 脣を擦り抜ける声は感情に乏しく途切れがちだが、紡ぐ雷電は裡に秘めたる意志の強さを示して、端整を煌々白ませる。
『ギャギャギャッッッ!!』
 閃雷が躯を灼き、先頭を走る騎竜が沈めば追従の脚が落ちよう。
 この隙にイチは馬車を牽く牡馬の汗ばむ首に触れて、彼を励まし、
「落ち着いて、前だけを見て走って。大丈夫、その脚はあいつらに負けない」
「……ブルルルルッ」
 先程は凄まじい稲妻を放った掌は、動物を撫でれば斯くも穏やかで優しく――馬と併走したくろ丸も勇気を与えたろう、牡馬は力強く野を蹴って森を目指す。
 斯くして走力を維持する馬車と騎竜の距離を測るは、鈍色の穹を翔る竜騎兵ニコラ。
「せいぜいが飛び跳ねる程度のトカゲ風情、空中から圧倒してやる!」
 亜竜を好まぬ彼女は、暴食なる邪を侮蔑の瞳に睚眥すると、自動詠唱式魔術銃杖『ティヴェロン』より魔弾を弾く。
「この世界には未だ存在しない自動小銃だ、獣に近い貴様らではさぞや怖かろう!」
 銃爪に添えた白磁の繊指は一縷と躊躇わぬ。
 魔術を刻印した弾丸は空間を削るように超速回旋し、カエルラマヌスの硬い竜鱗を穿ってしとど蒼血を繁噴かせた。
『ギャァアアア!!』
『グルルルッッ!』
 上空からの斉射も、躯を貫く魔弾も、騎竜は喰ろうた事の無い激痛。
 敵群を覆う弾幕が追従の脚を弱めると、竜翼の凄艶は凜々しい佳声を天より降らせて、
「オレサマの背中に向けて走れ! 別の者が護衛に付く。後は彼等の指示に従え!」
「――忝い!」
 行き交った馭者が短く声を置いて疾る。
 ニコラが再び高度を上げれば、影差す地上ではシュシュが獅子を駆り、幌馬車と騎竜の群れの間に割って入る。
 車輪が軋み、魔竜が叫ぶ騒然にあっても、少女の聡い耳は赤子の泣き声を拾い、
「赤ちゃんもご一緒なら、尚のこと皆さんにおけがをさせるわけにはいきませんっ」
 己もまた命の灯を得た身。
 生まれたての命も、其を守る命も脅かしてはならぬと、勇気を振り絞って駆ける、翔る。
「ライオンさん、カエルラマヌスさんを幌馬車に近付けないで」
 お願いします、と助力を乞えば、獅子は雄渾たる咆吼に応え、鋭爪でびしばし、猛牙でがぶり、接近する騎竜を痛撃に追い遣る。
『ゲェァァアア!!』
 時に魔竜は高く飛躍して反撃の爪を衝き入れんとするが、シュシュは予覚鋭く其を回避し、執拗に迫る貪欲を逆に利用しては、と考える。
「女性や子ども達を優先して狙うなら、わたしもターゲットになり易いのでしょうか……?」
 彼等は強者と弱者を別けるくらいには賢しい。
 小柄で肉の柔らかそうなシュシュが馬車の群れから逸れば、魔竜は垂涎して追うだろう。
 一瞬だけ『猟兵の紋章』に触れて勇気を確かめた少女は、獅子に耳打ちして別のルートを走り始め、予想通り追ってきた敵の数に息を呑む。
(「少しでも時間稼ぎを……!」)
 シュシュは他の猟兵もまた名も無き命を助ける為に動いてくれると信じ、荒野を直走った。
 時同じくして。
 テイク・ミハイヤー(セイギノミカタノミカタ・f16862)は此度、初めてダークセイヴァーの殺伐に触れた訳だが、テレポートした瞬間に瞳に飛び込んだ警急に面食らった後は、蓋し本能か素質か、直ぐにも適応力を見せる。
「カエルラヌ……マスラ……オホンッ、『暴虐の青風』を少ない労力で多く引き離すには――」
 何か良い物が作れたらいいんだけど、と咄嗟に求めた【ガジェットショータイム】から掴み出したのは、ボロボロの衣類。
 普通すぎるアイテムに思われたが、この「普通」こそ使えると閃いた彼は忽ち『二足歩行ガジェット』を組み上げ、自らも演出の為に一役買う。
「こいつと俺で群れからはぐれた流浪の民に扮して、囮になるぜ!」
 暴虐なる魔竜は群れより遅れた弱者から牙に掛ける狡猾な狩人。
 テイクは敢えて標的となる事で、幌馬車から注意を逸らし、且つ何体かを招いて分断させる――妙々たる策戦を遂行する。
『ギィィアア!!』
「よし、ついて来た」
 然もそれだけに終わらぬのが彼の機知で。
「ガジェットに噛みついてみろ、中の蒸気がドカン! だ」
『ゲアアァァ!!』
 言うより早いか、凄まじい勢いで爆発・噴出した蒸気が追従の脚を転がす。
 一体が転べば後続も巻き込まれるが、一網打尽とは往かず――、
「ええい! こーなったらベコベコにしてやる!」
『ギャー!』
 テイクは使って良し、殴って良しの『スチームモンキー』を振り回し、群れを別った騎竜の掃討に掛かった。
 シュシュやテイクが魔竜の群れを割く様子を、まさに魔竜の群れの中から観察していたのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
 一瞬だけ吸血鬼化して引き出される【限定解放・血の疾走】(リミテッド・ブラッドドライブ)は、第六感が知覚した敵の情動や殺気を、魔力を溜めた双対の紫瞳に残像として可視化し、行動を予覚――先読みした先に魔法陣を設置し、【常夜の鍵】(ブラッドゲート)を通して瞬間転移する。
 この方法だからこそ敵陣に在って奇襲が叶おう、
「……ん。移動しながら護るのが面倒だけど、今回はある意味、とても分かりやすい依頼みたい……ね」
 悉く狩る――それだけ。
 魔竜の荒ぶる息遣いに極めて静かに呼吸した少女は、大鎌『過去を刻むもの』の一振りで竜鱗を裂き、二振りで傷口を抉り、迸る蒼血を冴刃に啜る。
「……ここから先には通さないし、逃さない。今後の憂いを除く為にも、一匹たりとも逃さず殲滅する……」
『ゲェアア……ァ……ッッ』
 ぐりん、と首を拗って沈む個体を擦り抜けた影は、次なる個体へと転移を繰り返し、怜悧に冷徹に命を摘んでいく。
 然れば彼等は当初の獲物に、幌馬車に辿り着く事は無かろう。
「――ここがお前の運命の終着点よ、暴虐の青風」
 佳声が言う通り、俊敏を誇る騎竜は幌馬車の影を踏む事も叶わず、気付けば随分と群れの規模を縮小させていた。
 幌馬車に纏わり付く魔竜を振り払ったなら、連中を切り離し、この場に押し留めねばなるまい。
 馬脚に勝る機動力を持つ騎竜を足止めるのは至難の業だが、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は尋常ならざれば、動画の為にも棘を踏もう。
「避難と護衛は任せた。先に行け、というやつであるな!」
 撮影用ドローン『天地通眼』がハイアングルより撮る彼女は、車軸を軋ませ逃れる幌馬車を背越しに見送りつつ、騎竜の群れに正対する。
 黄金の瞳は鋭く細んで、
「『暴虐の青風』とはなかなかイケてる二つ名ではないか。――とまぁアゲてやった後は一匹残らずしっかりとシメて、格の違いをきっちり示してやるとしようかのう!」
 竜種を汲む菘としては同族意識も湧こうが、カエルラマヌスは格下扱い。
 不敵な嗤笑を湛えた彼女は、『八元八凱門』を刻んだ右腕を天に掲げて弾指するや、盛大なファンファーレを虚空に響き渡らせた。
「はーっはっはっは! 妾だけを刮目して見よ!」
 衒耀【見よ、この人だ】(エッケ・ホモ)は、菘から目が離せなくなる情動に駆るだけでなく、惹き付けた対象を猛炎に灼く。
『ギャアアアッ!』
『イギィィィイイ!』
 其は魔竜の標的を我が身に移し替えるに見事な衒であったろう。
 狩り易い弱者でなく菘に釘付けられた貪欲は、幌馬車を追うのを止め、脚を止めて菘を囲む。
 彼等が集団で襲い掛かる狡猾を見せれば、凄艶の蛇竜は邪神のオーラのぶわり迸らせ、傲然と言い放つ。
「好きなだけ連携を見せるがよい、妾の鉤爪がすべて引き裂いてくれよう!」
 果たして狩るのは何れの竜か。
 猛然と迫る牙に、異形の鋭爪が噛み合う。
「一匹たりとも逃しはせん!」
『ギィィイイッ!!』
 麗指は再び鳴り、ファンファーレの轟く空に剣戟の音を響かせた。
 蓋し菘も全ての騎竜をボコれるとは思っていない。彼女は他の猟兵の――例えばアルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)の火力に十分な信を置いており、彼もまた十分に応えよう。
「竜でも獣でも構わんが、此処で大人しくすると良い」
 大人しく――と言っても、銀髪の麗人の鎮静の仕方は苛烈にして凄絶。
 戦闘時に自律起動した【真理】が我が能力の精度・規模を最大化したのを自覚した彼は、【界離】で時の原理の端末を――淡青色に煌めく格子状の針金細工を召喚する。
「今よりカエルラマヌス全個体の精神のみを数億倍に加速する」
 言うや否や、魔竜に間もなく変化が視えよう。
『ギア、アァァッ!』
『イ……ィィイッ……!』
 時間が操作されたとは、痙攣した脳では考えも及ぶまい。
 意識及び感覚と現実の肉体の動作に甚大な齟齬を引き起こされた彼等は、仮に動けたとしても、まともには動けず――悲鳴にもならぬ声を漏らして彷徨うのみ。
 斯くも凄惨なる行動阻害に、糸切れた様に沈む個体は三割。
 アルトリウスは再度時の原理を操るべく繊指を動かす傍ら、既に追い付けぬ距離で森へ向かう馬車を流眄に見て、自身すら気付かぬ些末な安堵を得る。
「幾つかの経験により、主に家族という関係は守られるべきものと――認識はしている」
 依るは経験則。
 命を救うにも、邪を討つにも熱を持たぬ無機質ながら、多少は優先順位を上げたアルトリウスは、彼等を森へ護送する猟兵に希望を託した。
 扨て。
 その森を目指す流浪の一団の護衛を勤める鹿忍・由紀(余計者・f05760)とて、細やかに声を掛けて気を回すほど器用に生きてきた訳では無い。
「護衛もそんなに得意なわけじゃないんだけどなぁ」
 請けた依頼の。引き受けた役儀なれば。
 由紀はらしくない仕事だったかと顧みるのも面倒で、唯「仕事だから」と割り切り――尚も執拗に追従する騎竜を肩越しに顧眄する。
「ああ、数が多いと面倒だなぁ。諦めが悪いところが、また」
 暴食も疎遠なら、執着する事にも縁遠い彼は、魔竜の貪欲は範疇を超える。
 彼等の狂気を嘆息に隔てたのが訣別であったか、幌馬車と騎竜の群れの間に割り入った【影雨】(シャドウレイン)は、鈍色の穹から無数のダガーを降らせる。
『ギィィイイ!!』
『ゲェァァアッ!』
 魔力により複製された諸刃の短剣は光りもせぬ闇影にて、回避も叶わない。
 騎竜は痛撃に飛翔を押さえ込まれ、地面に縫い付けられ、宛ら篩に掛けられるように続々と数を減らされた。
「これは……なんという……!」
 御者台に据わる若者は、絶叫を背に飄々と進む彼を唯々見るばかりであったが、由紀はそっと口を開いて、
「奴らに見つかったのは運が悪かったけど、見つけてもらえたのは運が良かったね」
 知れず不幸な末路を辿る方が多い世界だから――と、他の猟兵が間もなく追撃に掛かる様を静かに眺める。
「駆逐に切り替えますわ」
 此度オイフェが撃ち落とす炎の矢は、距離を隔てる為の牽制に非ず。
 焦熱滾る鋩は精確精緻にカエルラマヌスの脚を貫き、追従か或いは逃走の足を削いだ。
『ギャィィイイ!!』
『シギャアアッ!』
 ――畢竟。
 幌馬車が森に至るまで追って来られた魔竜は一体として居らず。
 流浪の民の一団は、猟兵らの尽力によって無事に鬱蒼に身を隠す事が叶った。
「至当の結果だ。弱きは淘汰されるのが力の摂理」
 敵の殲滅を認めたイデアールは、本気モードで疲弊した分、乾いた身を潤すべく『吸血鬼の血』(携帯用)を摂取する。
 其が彼等に一時の安全を与えた、第一の任務の完了を示す動作になったろう。
 ここにつかさは、固く閉ざされた荷台の幕より光を差し入れ、
「大丈夫? 怪我はないかしら」
 身を寄せ合って蹲っていた流浪の民を見渡せば、彼等もまた光失わぬ視線を返してくれる。
「ああ、あんた方のお陰でいっこもねぇ」
「どなたかは存じませんが、我等は一命を取り留めました」
 彼等はやっとの安堵を表情に浮かべつつ、深々と礼をする。
 然し此処でゆっくりもしていられない。
 荒野では未だ他の猟兵がカエルラマヌスと戦っており、戦塵の中には更なる強敵――ルベルレギナが居るかもしれないのだ。
「貴方達は、この森に隠れていて」
「まだ脅威が去った訳ではありませんから、動かないように」
 警戒を解かぬ儘、そう告げた咲らが砂塵に烟る荒野へと瞳を遣る。
 其処には確かに『暴虐の青風』の色とは別の――赤き紅き『血染めの災厄』が、首を擡げて猟兵を睥睨する姿が在って――。
「まさか……君達は戻るのか……?」
「行くな! 行けば今度こそ命は無いぞ!」
「我等は逃げ移ろうも生きる力と思っているのだが、君達を止められはしないのか」
 危険を察した男達が、恩人なればこそと袖を引く。
 跡が付くほど手綱を握り締めていた彼等の手を【沫雪】(アワユキ)にひんやりと冷やして癒したたからは、そっと声を置いて、
「大丈夫、たから達はあなた達を見捨てません」
 もう絶望は見せない。
 必ずや戻ってくる――と。
 そう約束して、再び荒野に爪先を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『血染めの災厄』ルベルレギナ』

POW   :    女王の慈悲
【ルベルレギナに恐怖したものの生命力】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【五感で認識したものを無抵抗に嬲り殺す爪牙】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    女王の躾
【視界内の全てのものに恐怖をもたらす咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    女王の奴隷
戦闘力のない【ルベルレギナに恐怖し絶望した奴隷】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【ルベルレギナに生きたまま食われること】によって武器や防具がパワーアップする。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
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 森へと逃れる幌馬車を見送った猟兵達は、荒野に留めたカエルラマヌスの駆逐に掛かっていたのだが、軈てその群れの中に圧倒的存在感を放つ異色――紫膚を紅緋の衣に包んだ魁偉を見出す。
 漸う群れを減らして砂埃が収まれば愈々影は露わに、カエルラマヌスの優に二倍はあろう巨竜が、双対の赫眼を射る威容が捉えられる。
 彼れこそ正しく『血染めの災厄』、ルベルレギナ。
 カエルラマヌスの突然変異種にして、魔竜の女王と君臨する彼女は、己が周囲を奴隷の小竜に取り囲ませながら、厳めしく人語を操った。
 怒っているとは、剥き出した鋭牙を擦り抜ける声音で伝わろう。
『……生意気ニモ狩リノ邪魔立テヲシ、我等ノ獲物ヲ靦然ト己ガ手柄ニスルトハ憎々シイ』
 憎悪。
 激怒。
 瞋恚。
 忿懣。
 また女王は斯くも猟兵にやり込められた配下の不甲斐なさにも腹を立てたか、身も凍る様な咆吼を荒野に行き渡らせると、萎縮した奴隷小竜を慰みに屠る。
『ゲェァアッ』
『ギィイ!!』
 恐怖なる感情を植え付け、其を喰らう事で戦闘力を増すルベルレギナ。
 女王は肉を屠りつつ、赫眼は終ぞ猟兵より逸らさぬ儘、蒼血の滴る口を開いて、
『汝(うぬ)ラ極上ノ馳走ヲ逃シタ罪ハ重ク、詫ビテ償ヘルモノニ非ザレバ、弁明ノ必要モ無イ』
 畢竟、腹が満たされれば佳い。
 恐怖に身を染めた民を屠る事が叶わなければ、猟兵を絶望に堕として喰らうのみ。
 ルベルレギナは爪に裂いた小竜を悲鳴ごと丸呑みにすると、どす黒い鏖殺のオーラを迸らせて睥睨し、
『奴等ヲ屠ル代ハリ、汝ラガ命ニテ贖フ可シ』
 駛走驀進――!
 其の名が示す通りの『災厄』に蹂躙せんとした。
ニコラ・クローディア
「自分が狩られる側に回ったこともわからんほど愚鈍とは――オブリビオンとはいえ、はるかな昔に血を分けたかもしれない同族がその程度ではこのオレサマの名に傷が付くんだよ!」
これだから駄竜は嫌いだ
オブリビオン化は即ち滅びて過去となること
生存競争に敗れた者が絶対強者の名である竜を名乗るなどおこがましい
竜の名は今日限りで返上してもらおう
「貴様の強さの源は恐怖と見た…ならその恐怖の対象が変わればどうなる?」
力溜めし大規模の全力魔法+高速詠唱+恐怖を与える+恫喝+存在感の雷咆
恐れるべきはそこの駄竜ではないことをオレサマの咆哮で思い知れ
「真龍は恐怖ではなく崇敬と畏怖により支配する、覚えておけ」

アドリブ・連携歓迎


リーヴァルディ・カーライル
…ん。普段は精霊達の怒りに流されないように、
必死に術式を制御して使っているんだけど…今回は別。
恐怖を与えると言うなら、他の感情で塗りつぶせば良い…。

吸血鬼化して【血の魔装】を二重発動(2回攻撃)
生命力を吸収する“闇の雷火”と融合
敵の周囲を雷速で飛び回る空中戦を行う

炎の精霊、雷の精霊。私の声に応えて…。
世界を冒す血染めの災厄を裁き焼却する怒りを此処に…!

第六感が殺気を感じたら残像を残して回避
怪力任せに雷火の大鎌をなぎ払う連撃で傷口を抉り、
受けたダメージは敵の生命力を吸収して再生する

…後は事前に“誘惑の呪詛”の魔力を溜めておき、
戦闘終了時に発動し自身を洗脳してUCを解除するよう防具を改造しておく。


雨糸・咲
生意気とか厚かましいとか…
自分は偉いと思い込んでるのって
その輪の外から見るとすごく変な感じがするのですよね

竦むどころか唇の端を上げ微笑むのは
恐怖より嫌悪が先に立つから

唯々――滑稽で、不愉快

見切り、第六感で攻撃回避
避けられないものや他の方を襲うものはオーラ防御で防ぎます

他の方と連携しつつ、
高速詠唱で手数多く攻撃
取り囲んで四方八方から攻撃をしかけましょう

女王様の鼻っ柱、へし折ってあげましょうね

あくまで品良く穏やかに
けれど見据える瞳は強い意志を宿して

杖先で軽やかに空中に描く螺旋は全力魔法
凍てつく竜巻は2回攻撃で一層荒れ狂う

罪なき人々を引き裂く爪牙など
凍って砕けてしまえば良いのです

※アドリブ・絡み歓迎


アルトリウス・セレスタイト
お前たちは忘却から出てきたのだろう
跡を濁さず消えるのが礼儀だぞ

界離で自戒の原理の端末召喚。淡青色の光の、剣に絡みつく茨の針金細工
真理で最大化された能力で行使し、ルベルレギナがユーベルコードで生み出した力を操作
敵対者である猟兵ではなくルベルレギナ自身を害する力に変換して戒める
慈悲は自らに向け振るわれ、咆哮は己を恐怖に陥れ、奴隷を喰おうとすればその身を噛み千切るだろう
忘れ去られたものなど、撒き散らすべきではない

それでも動くなら全力魔法の応用で更に力を込め干渉を強化
自身への攻撃は纏った自分という無数の盾で凌ぐ


ユリウス・リウィウス
先の戦闘より、「血統覚醒」状態を維持。

ふん。化物の親玉は当然化物だよなぁ、おい。

「見切り」「盾受け」「武器受け」で竜の攻撃を凌ぎつつ「カウンター」に繋げていこう。

ああ、悪いな、竜の女王。俺たちには、貴様に捧げるものなんて無いんだよ。何一つ、譲るつもりはない。

「鎧無視攻撃」「鎧砕き」で防御を砕き、「傷口をえぐる」。
人間型相手な躊躇う戦法だが、相手が邪竜なら気兼ねなく使えるな。

ふん、俺たちを喰うと? 戯言も過ぎるな、おい。

「生命力吸収」を随時使って、最後まで立っているつもりだ。
さあ、俺の糧となれ。

念のため、生き残った駄竜の警戒もするがね。奴らが馬車に向かおうというなら、その対処を優先する。


イデアール・モラクス
アッハッハ!出たな、トカゲモドキの女王!
貴様の王座も今日で終わりだ、ズタズタにされて無残な屍を晒すがいい!

・行動
「弱肉強食、その理は今日!貴様を喰らい尽くすのだ!」
UC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『高速詠唱』を用いて連射。
「這い蹲れ!貴様はもう女王ではない、ただのトカゲだ!」
魔剣を次々に命中させ『串刺し』にしていき、『属性攻撃』で刀身に雷撃や炎を通して『傷口を抉り』ながら剣に血を『吸血』させ『生命力を奪い』嬲り尽くす。
敵の攻撃は右手に持った暴虐の魔剣ドミナンスを巧みに振るって斬り払い『武器受け』で防ぐ。

※アドリブ歓迎


荒谷・つかさ
(体躯を見上げ)
……へぇ。
食べ応えのありそうな竜が出て来たじゃない。

これまでに、結構な数の人を喰らってきたんでしょうね。
子竜の装備からも伺えるもの。
で、あれば。
……当然、その霊魂も、お前達という存在に縛られ、この場に在るわ。

これまでにルベルレギナ達に食われてきた人々の霊魂を呼び寄せ、【心魂剣】を発動。
必要に応じて飛行しつつ、振るわれる爪や牙に対し、恐れず真っ直ぐにぶつかっていくわ。
爪が来たら指の間や爪の生え際を。
牙で来たら口角から頬肉を切り裂いたり、鼻の孔や目玉を突いてやるわよ。

どれだけ強大な竜だろうと。
『竜』であるなら、私にとっては狩り、喰らうべき獲物よ。
恐れる理由なんてありはしないわ。


テイク・ミハイヤー
コイツがルベルレギナか!……お、一発で言えた。
って言ってる場合じゃねぇな。知能が高いって聞いてたけどまさか人語を喋るとはオドロキだぜ!
ここで止めなきゃいつまでも幌馬車を追いかけるつもりなんだろ?

さっき使ったガジェットの残骸がまだ残ってるはずだ、破損してない部分を拾い集めてっと……出来た!
今度は本物の火薬入りだ、ついでに小竜の牙も混ぜてみたけどどこに飛ぶか分かんねぇからな。
仲間達がルベルレギナの動きを止めた所で股下に設置して起爆するぜ!

捕食対象に食らわされる一撃は屈辱的だろ?
だからって憤怒に任せてこっちに気を取られてると、俺は知らないぞっと。


御形・菘
なるほど、恐怖をツマミにして食う飯が美味いとな
ならば次に喚ぶのは、スクリーン! カモン!
ここから先の生配信は双方向よ、元気かのう視聴者の皆の衆?

見ての通り、此奴は美しさ方向は中々であるが、威容は妾の角一本にも満たぬ程度よ
とはいえ気圧される者も居るかもしれん
なので! 奮起の助けをしてくれんか、皆の応援で、歓声で!
妾だけではない、この場のすべての仲間の魂に、深く届くように!
恐怖を吹っ飛ばしてやれ!


はっはっは、さあ来い自称女王!
今この場を制しているのは妾であるぞ
妾の究極奥義、覆せるものなら覆してみよ!

もちろん真っ向勝負、逃げも隠れもせんよ
咆哮までは止められんが、爪牙の一撃はすべて受けてやろう!


青和・イチ
あれが例の、上位種、かな
言葉、分かるのはいいけど……分かり合えそうには、無いね
一応、聞くけど…草食に切り替えるってのは…無理?

君達も僕らも、生きる為に戦う
それでいいね

近接戦は不利そうなので、後方から攻撃を
何か着てるし、皮膚も硬そうだから…弱点っぽい所を狙う
目や口の中、足先や尾…角はどうだろ
UC『煌星』を、【2回攻撃】【目潰し】【マヒ攻撃】を交え使用
魔導書の星座図鑑、開いた頁の星座は、オリオン座
狩りの名人に、力を借りよう

くろ丸は、近くで危険察知や、弱点の匂いがしたら、教えて

攻撃が来そうな場合、くろ丸・負傷者>自身 で【かばう】【オーラ防御】【盾受け】を駆使して死守

アドリブ、他の方との連携歓迎です


鹿忍・由紀
人語を喋るなんて賢いんだね
俺より難しい言葉知ってるじゃん、すごい
なんて、態度には出ないが多少感心しつつ

こっちは食われにきたわけじゃないからね
そうやって子分食べて満足しといてもらえないかな
結構エコで良いと思うよ

見てる限り小竜のせいで強化されるみたいだから周りにいる小竜から片付けようか
加勢されても邪魔だしね
女王の餌になる恐怖心を覚える前に落とせるよう首を掻っ切ってやる

邪魔になる小竜がある程度減ったら女王の隙を窺いつつ攻撃のチャンスを探す
他の猟兵達に気が向いてる時が狙い目かな
爪なり牙なり、剥き出しになってるとこを見切り『壊絶』で蹴ってへし折ってやる
自慢の得物なのに悪いね

アドリブ、絡みご自由に


シュシュ・シュエット
お連れの小竜さんまでその爪にかけるなんて……、まさしく暴君さんですね……!
それでも、ここで竦んだり逃げたりすることはできませんっ。
いっぱいの恐怖には、いっぱいの*勇気と*覚悟で立ち向かいますっ。

わたしは『時は物語る』を使い、他の猟兵の皆さんをサポートしましょう。
瞬間的に時間を止めて、文字通りのアタックの*時間稼ぎをしますっ。
ぐんぐんパワーアップされてしまうとあぶないですし、
ご自身をパワーアップしていくUCの兆候を見受けられたら、積極的に妨害していきましょう。

奴隷さんたちのなかに、幌馬車の皆さんの顔見知りもいらっしゃるかもしれませんっ。
犠牲者を増やしていく前に、手数を増やしてせめていきましょう。


彩花・涼
次は我々が狩りをする番さ…この世界の厄災はすべて祓う

他の猟兵と連携し、黒鳥で【スナイパー】して援護しよう
敵が攻撃しようと振り上げた腕や足を撃ち動きを妨害する
【クィックドロウ】で次弾を素早く装填し、皆が戦いやすいように動くぞ

UCを使用されたら攻撃範囲ないから【ダッシュ】【見切り】で後ろに跳びのき回避しつつ、UCを使用し黒蝶で自身の姿を眩ませ高速移動で敵の死角に移動、黒華・改で斬撃を飛ばす

貴様らの狩りも我々の狩りも、これで終いだ


鎹・たから
自分の配下を、食べるのですか
あなたは惨くて、酷くて、情けのない悪ですね

この身に悪鬼を宿します
どのような代償を払っても、必ずあなたをほろぼします【勇気、覚悟】

灰雪で飛び【空中戦、ダッシュ】で接近
手裏剣とフォースセイバーで斬りかかります
連携を重視し、敵の隙を必ず突けるよう注意を怠りません
【2回攻撃、暗殺、先制攻撃】

あなたがどれだけ強大な災厄であろうとも
その鋭い爪や牙を叩き折れば問題ありません

たから達があなたに謝罪する必要性が感じられません
むしろ、あなたが彼らに謝るべきです
あなたに食べられた民に、配下の竜に

罪を償うならば、そのいのちで



 灰色の穹に紅緋の衣が躍り、魔爪が殺伐たる空間を裂いて振り下ろされた瞬間、胸を圧し潰す様な衝撃が荒野を駆け抜ける。
 女王の爪は猟兵を引き裂いたか――否。
 禍き赫眼が見下ろせば、砂塵の棚引く向こうに二人の猟兵が冴刃を揃え、
「――へぇ。食べ応えのありそうな竜が出て来たじゃない」
「――ふん。化物の親玉は当然化物だよなぁ、おい」
 つかさ(f02032)が魔爪の間に『刃噛剣』を差し入れると同時、ユリウス(f00045)の黒剣『ライフイーター』が掌に切先を衝き入れ、爪撃が疾らぬよう押し留めている。
 鋭い衝戟が頬の皮一枚を切って疾るが、指の間より覗く二人は淡然と不遜なる双眸を注ぎ、女王の矜持を逆撫でた。
『忌忌シイ』
 なればともう片方の腕を振り上げれば、テイク(f16862)が身ごと『ガジェットガントレット』を差し挟んで爪撃を相殺し、続く由紀(f05760)が『ダガー』を疾走らせてインパクトを往なす。
「コイツがルベルレギナか! 知能が高いって聞いてたけど、人語を喋るとはオドロキだぜ!」
「どれだけ生きたか知らないけど、賢いんだね。俺より難しい言葉知ってるし、すごいじゃん」
 噛まずに言えたとテイクが小気味良く口角を持ち上げる傍ら、由紀は平素の如く凪いだ聲の儘、竜鱗の間に刃を沈ませる。
『ッ、ッッ!』
 痛痒に魔眼を歪める間もない。
 この時、やや距離を隔てた後方からイチ(f05526)が『Night cloudless』を砲し、隣した涼(f01922)が『黒鳥』より鉄鉛を弾くと、軌道を一にした冴撃が女王の肩口を強かに弾き遣る。
「言葉、分かるのはいいけど……分かり合えそうには、無いね」
「死を告げられると思えば都合が佳い」
 畢竟、過去より受肉せしオブリビオンと未来を築く猟兵は倶に天を戴かず――。
 蓋しイチはここにテノールの語尾を持ち上げ、
「一応、聞くけど……草食に切り替えるってのは……無理?」
『――竜ガ肉ヲ屠ラズシテ大地ニ諂ヘト謂フノカ』
 嗤わせるなと魔竜が殺気立った瞬間、色無き空を翔けていたイデアール(f04845)とニコラ(f00091)が、時を同じくして魔法の光矢を降り注いだ。
「アッハッハ! トカゲモドキの女王が偉そうに! 貴様の王座も今日で終わりだ、ズタズタにされて無残な屍を晒すがいい!」
「自分が狩られる側に回ったことも分からんほど愚鈍とは。これだから駄竜は嫌いだ」
 二人の凄艶は片や傲然と、片や冷然と。
 眼下に組み敷いた巨躯を背襲すれば、その衝撃に身を低く腹を大地に擦らせたルベルレギナは、屈辱に歯噛みする。
『ッ、不躾ナル猟兵ガ揃ヒモ揃ッテ』
 苛立ちに繰り出た次撃は如何だろう。
 殺傷力を増した爪は咲(f01982)に目掛けて肉迫するが、超感覚を研ぎ澄ませた佳人は『萌翠』の裾をふんわりと、衝撃風に遊ばせて逃れる。
 胡桃色に揺れる静謐の瞳が柔かく細む――残像は麗し冷笑を置いて、
「生意気とか忌々しいとか……自分は偉いと思い込んでるのって、その輪の外から見るとすごく変な感じがするのですよね」
『――小娘ノサガナ口ヲ裂クニハ速サガ足リヌカ』
 虚しく空を切る爪に舌打った女王は、なればと小竜を召喚し、我が糧と屠って増強を図る。
 折しも【降魔化身法】にて自身に悪鬼を宿し、超強化を得たたから(f01148)は、生きながらにして喰われる奴隷の悲鳴を聡い耳に聴いて、
「自分の配下を、食べるのですか。あなたは惨くて、酷くて、情けのない悪ですね」
 呪縛も、流血も、毒とて――いかなる代償を払っても、必ずやこの魔竜を滅ぼさんと心に決める。
「取り巻きの小竜さんまでその爪にかけるなんて……、まさしく暴君さんですね……!」
 たからに相槌を打つと同時、魔竜には反駁の撃を繰り出すはシュシュ(f02357)。
 可憐なる少女は『サンザシの杖』を手に呪文を詠唱し、虹色の尾を引く魔法を掛けて女王を牽制する。
 猟兵らの間断なき連撃に昂ったルベルレギナは、遠くは森の枝葉をも揺する雄叫びを挙げるが、リーヴァルディ(f01841)は怒涛と押し寄せる「恐怖」の感情に呑まれぬよう、自らを別なる感情で塗り潰す。
「……ん。普段は精霊達の怒りに流されないように、必死に術式を制御して使っているんだけど……今回は別」
 美し紫瞳を紅く朱く、吸血鬼化した少女は【限定解放・血の魔装】(リミテッド・ブラッドポゼッション)――己を“闇の雷火”と融合させ、雲翳を疾る紫電の如く空中を飛び回る。
「炎の精霊、雷の精霊。私の声に応えて……世界を冒す『血染めの災厄』を裁き焼却する怒りを此処に……!」
 大気が騒めき、彼女の心火が轟と燃ゆ。
 怒れる雷火が天を翔る一方、地ではアルトリウス(f01410)が水鏡の如く静かに【界離】を発動し、淡青色の光を湛えた――剣に絡みつく茨の針金細工を顕現させる。
「お前たちは忘却から出てきたのだろう。跡を濁さず消えるのが礼儀だぞ」
 辨えろ、と。
 枯淡の声が喚ぶは自戒――彼は魔竜がユーベルコードで生み出した力を操作し、敵対者たる猟兵でなく、ルベルレギナ自身を害する力に変換して戒めんとする。
『……ッ、猟兵如キガ竜ヲ禦セルト思フテカ!』
 時に満身で抗う女王を「ふむ」と観察した菘(f12350)は、自身と敵、そして撮影用ドローンを結ぶベストポジションにスッスッと移動すると、無数の空中ディスプレイを召喚し、刻下、双方向生放送を配信し始める。
「スクリーン! カモン! 元気かのう視聴者の皆の衆?」
 ――邪神=サン乙。
 ――またお前か。
 ――今からその竜ボコるんスか。
 直ぐにもコメントが殺到する其は【喝采よ、妾に降り注げ】(エール・スクリーンズ)――視聴者の反響によって武装の強化を得る効果は、戦場を同じくする総ての猟兵に及ぶ。
「はっはっは、さあ来い自称女王! 妾の究極奥義、覆せるものなら覆してみよ!」
 戦場を我が軍庭とせしめた菘は覇気を漲らせ、雄渾は戦友に瀰漫し。
 その小気味よい奔放は魔竜の女王の気に障ったろう、
『……全ク以テ気ニ食ハヌ。嘆キト哀シミ、絶望ニ突キ堕トスダケデハ足リヌ』
 ルベルレギナは猛牙を剥き出し、蹂躙の嵐と哮り立った。

 魔竜の女王が怒るほど猟兵は冷静に、優れた洞察で攻略を見出していく。
 月光を映す艶髪、その隙間より覗く由紀の蒼の瞳は怜悧に犀利に、女王が奴隷と侍らす小竜を捉え、より接近して刺突できるようダガーをセイバー(順手)からリバース(逆手)に持ち替える。
「小竜のせいで強化されるみたいだから、取り巻きから片付けようか」
 女王の生き餌と喰われる恐怖を覚える前に、と疾走する刃が彼の冷たい優しさ。
 由紀は気怠げな佇まいから一転、鏖殺の風と化し、
「――掻っ切ってやる」
『ィ、ギ……ッッ――』
 小竜が死の痛みを味わう頃には咽喉が裂け、悲鳴を上げる間もなく荒野に沈む。
 返り血も浴びずに影が去れば、小竜が次に視たのは戦巫女つかさで、彼女の繊躯に霊魂が集まり、剣状のオーラと化していく景が最期となる。
「これまで結構な数の人を喰らってきたんでしょうね。で、あれば……当然、その霊魂も、お前達という存在に縛られ、この場に在るわ」
 女王の巨躯を仰いだつかさは、これまでに邪竜達に食われてきた人々の霊魂に呼びかけ、その無念を【心魂剣】(ソウルハート・キャリバー)に顕す。
 戦闘力の増強と飛翔能力を得た麗人は、一際の雄渾を全身より迸らせ、高みより振り下ろされる爪牙を一縷と臆さず冴刃に受け止める。
 烈しい角逐が火花を散らす中、後方より援護するイチは観察の眼を鋭くして、
「何か着てるし、皮膚も硬そうだけど……弱点っぽい所はある、筈……」
 繊指に捲るは『tranquillo』――星座図鑑はオリオン座の頁を開き、狩りの名人たる彼の力を借りつつ、煌く光弾に魔竜を抑え込む。
 同じく洞察に優れたくろ丸が大口を開けた瞬間、イチは気付きを得たろう。
「うぉふ!」
「うん、口の中は確かに硬化していない」
 狙うは咥内――咆吼した時が好機と、細指が眼鏡を持ち上げた。
 魔竜を制すに突破口を探るは【灰雪】(ハネユキ)で空中を跳び舞うたからも同じで、彼女は仲間の攻撃に合わせて『不香の花』と『玻璃の花』を使い分けながら、女王が隙を作る瞬間を見極めている。
「あなたがどれだけ強大な災厄であろうとも、その鋭い爪や牙を叩き折れば問題ありません」
 むつの結晶を模る鋭刃も、透明無垢な硝子の剱も、光を隠して死角から迫る周到。
 悪鬼の化身となった少女は、魔竜が災厄を齎す前に、禍き爪牙を鋭撃に弾いた。
 一方、魔竜を攻略するに、女王の暴虐の根源を見極める者も居る。
 ニコラと菘だ。
「貴様の強さの源は恐怖と見た」
「成る程、お主は恐怖をツマミにして食う飯が美味いとな」
 天と地にて声を揃えた二人は、手法は違えども、「恐怖」なる感情を制禦すべく戦場を駆る。
 ニコラは【龍詞の雷咆】(ドラゴニック・サンダーロア)――哮り立つ龍詞と共に天地を閃雷に繋ぎ、圧倒的魔力と存在感を大規模広範囲に行き渡らせる。
『――ッ!』
『ッ、ッッ!』
 女王の戦闘力の糧たる奴隷小竜は、果たして誰を畏れるべきか思い知った事だろう。
 効果は直ぐにも視覚に現れ、魔爪の輝きに陰りが差したのが全て。
 ニコラは威風堂々、高みより女王を組み敷き、
「真龍は恐怖ではなく崇敬と畏怖により支配する、覚えておけ」
 彼女が小竜を支配したなら、菘は猟兵に植え付けられる恐怖を払拭せんと電脳の向こう側に呼び掛ける。
「見ての通り、此奴は美しさ方向は中々であるが、威容は妾の角一本にも満たぬ程度よ」
 魔竜の女王と爪を交えつつ、視聴者に実況説明してみせる菘。
 応援が必要とは身体を張って伝えよう、美し邪神は時に鋭爪を喰らいつつも大声して、
「奮起の助けをしてくれんか、皆の応援で、歓声で! この場に居る全ての仲間の魂に、深く届くように!」
 すれば声援はテキストと流れて弾幕に。
 イーネ! は電子音となってけたたましく。
 これら反響は戦場を血宴と躍る猟兵の力となり糧となり、剣は強靱に、盾は堅牢に支えられていく。
 スナイパーとして彼女を援護していた涼は、絞る照準にも精確を磨かれたとは実感として得られよう。
 濡烏の髪より覗く緋瞳は煌々、魔竜が腕を振り上げる度に精緻に爪を弾き、
『、ズ亜ッ!』
「次は我々が狩りをする番さ……この世界の厄災はすべて祓う」
 次弾を素早く装填しながら、絶えず銃声を荒野に響き渡らせた。
『ッ、ッッ……小賢シキ猟兵共メ、恐怖ニ沈ンデ我ガ足元ニ平伏スガ佳イ!』
 咆吼。
 雄叫。
 疾呼。
 怒号。
 魂を握り潰さんばかりの哮りが猟兵の肌膚を叩くが、然し彼等に恐怖が染む事は――無い。
 大喚声は無数の音の塊となって咲に襲い掛かるも、オーラを纏って之を禦いだ彼女は、美し桜唇の端を持ち上げて微笑む。
「竦むどころか恐怖より嫌悪が先立って。唯々――滑稽で、不愉快」
『……女王ノ御前ゾ。嗤笑ニ冷罵スル不遜、身ノ程ヲ識レ』
 可憐は咲み、魔竜は牙を剥いて。
 蓋し咲はあくまで品良く穏やかに、然れど見据える瞳は強い意志を宿して、氷狐の精霊を宿した『雪霞』の先端で軽やかに螺旋を描き、鈍色の穹に旋風を集める。
「その『女王様』の鼻っ柱、へし折ってあげましょう」
 此度、咲が紡ぐ【エレメンタル・ファンタジア】は凍てつく竜巻。
 螺旋の方向を違えた二つの颶風は魔竜の巨躯を飲み込み、凍気を帯びた風刃が竜の鱗を剥していく。
 痛撃が巨竜を叫ばせるが、女王たる矜持が勝ろうか、ルベルレギナは禍き鋭爪に竜巻を裂くや、紅緋の布に風を連れて躍り出た。
『ガァアアッッ! コノ程度ノ児戯ニ弄サレルト思フテカッ!!』
 大声疾呼に激痛を払った女王は、怒涛の勢いでユリウスに突進し、彼の長躯を覆う黒き甲冑ごと屠らんと顎を迫り出す。
『我ニ極上ノ恐怖ヲ捧ゲヨ、猟兵ッッ!!』
 小竜を屠った牙が蒼血を滴らせてユリウスの喉元に肉迫する。
 然し先の戦闘より【血統覚醒】を維持する彼は、ヴァンパイアの強靱を得た左腕を盾と噛ませると、荒ぶる女王の間際で言ち、
「ああ、悪いな、竜の女王。俺達には貴様に捧げるものなんて無いんだよ」
 ――何一つ、譲るつもりはない。
 そう告げた後は呪剣を突き立て、硬い竜鱗を砕き創痍を深く深く抉った。
『ズォオ嗚嗚嗚ッッ!!』
 後退――!
 其は女王にとって相当な屈辱だったろう。ルベルレギナは己が紫血の淋漓に歯切りすると、今の背進を打消す様に突貫する。
 巨竜は天雷と疾るリーヴァルディを捕え、その華奢を顎で砕くか――否。
 殺気に触れた佳人は残像を置いて回避し、反撃に雷火の大鎌を一閃、紫血を繁吹かせた傷口を抉って二閃、弓張月の冴刃に血を啜って生命力を吸収する。
『ッ痛アッッ!!』
 女王が昂るほど少女は怜悧に、
「……精霊の怒りに身を預けた私は決して恐怖に呑まれない」
 激痛を叫ぶ醜声を擦り抜ける佳声は冷然と、研ぎ澄まされた刃のよう。
 斯くして様々な方法で魔竜の女王のユーベルコードを攻略した猟兵は、恐怖を払拭して対等に渡り合う裡、漸う優勢を奪い始める。
 その転機を担ったのはアルトリウス。
 彼の【界離】は遂にルベルレギナを自戒の原理に組み敷き、女王が気高く咆吼するほど、彼女自身を恐怖に縛る。
『――嗚呼ァァア嗚呼ッッッ!!』
 操作されたのは【女王の躾】だけではない。
 アルトリウスは白皙の端整を淡青色の光に照らして淡々と、
「慈悲は自らに向けて振るわれ、咆哮は己を恐怖に陥れ、奴隷を喰おうとすればその身を噛み千切るだろう」
『嗚呼、嗚呼!!』
 怒れる竜は恐怖に身を染め、嘆き、喚きながら荒野を転輾つ。
 食物連鎖の頂点に君臨した竜が大地に悶える様は、イデアールには嘸かし滑稽に映ったに違いない。
 凄艶は紅脣の端をクッと持ち上げて麗笑し、
「弱肉強食、その理は今日! 貴様を喰らい尽くすのだ!」
 背に負うは【鏖殺魔剣陣】――灰色の天蓋に無数と浮かべた魔方陣より魔剣を喚んだ彼女は、己が魔力でその剣身に紫電や猛炎を纏わせ、広範囲に間断なく降らせた。
『ゲェ亜亜亜亜亜ッッ――!!』
 墜下する楔に串刺された魔竜は愈々大地に蹲って、女王たる矜持を無残に引き裂かれる。
 扨て。
 この間のテイクはと言うと、手持ちの素材から【即席爆弾】(インスタント・ボム)の生成に掛かっており、
「さっき使ったガジェットの残骸がまだ残ってる筈だ。破損してない部分を拾い集めてっと……――出来た!」
 此度は火薬を籠めて本格的に。
 エッセンスとして小竜の牙も混ぜてみたが、果たして何処に飛ぶかは本人も分からない。
「仲間達がルベルレギナの動きを止めた所で股下に設置して起爆するぜ!」
 力強く、然し小声でそう言えば、仲間のサポートをと決めていたシュシュが応じたか、彼女もまた凜然と、但し声は努めて小さく答える。
「瞬間的に時間を止めて、アタックの時間稼ぎをしますっ」
 言うや須臾。
 ガラスの靴が鐘の音を鳴らし、時を止める――【時は物語る】(タイム・ウィル・テイル)は壮麗な音を連れて、テイクが股下に潜り込む「時」を創り出した。
『――ッッ、ッ!!』
 時を刻む針が再び動き出した瞬間には、爆弾は轟音と閃光を炸裂させ、腹を衝き上げる凄まじい衝撃と痛撃に、女王の巨躯がぐらり、大きく傾く。
「、お腹が……っ」
「ひっくり返るぞ」
 地を這うのみならず、あろうことか腹を見せる事になろうとは――!
 片脚を浮かしたルベルレギナは遂に倒れ、嘗てない恥辱に悲鳴を裂くばかりであった。

「捕食対象に食らわされる一撃は屈辱的だろ?」
 なぁルベルレギナ、と今や完全に女王の名を掌握したテイクが口角を持ち上げる。
 腹を見せるは余程の不名誉か、魔竜は辛くも巨躯を起こし、仕掛け人たる彼に報復の爪を振り被る。
『ッッ憎々シヤ……ッ、斯クモ忌マハシキ辱メ、貴様ノ腸(はらわた)ヲ引摺リ出シテモ収マラヌ……!!』
 向かい来る邪の狂濤にガントレットを十字に構えたテイクは受け切るつもりか――いや、彼は怒りのベクトルをギリギリまで引き付ける算段。
「憤怒に任せてこっちに気を取られてると、俺は知らないぞっと」
 にやり。
 少年らしい悪戯な笑みが顔貌を満たした瞬間、秋霖の如く冷ややかな聲音が超高速且つ大威力の一撃を連れて横っ面を強襲する。
 由紀の【壊絶】(バーストクランブル)だ。
「砕けろ」
『牙ァ、ッ……ハ……ッッ!!』
 他の猟兵に気が向いている処を。
 より損耗した部位を狙って。
 己が魔力を収斂・圧縮した右脚は、炸裂するや凄まじい衝撃に竜の牙を砕き、その鋩を荒野に転がす。
『ギャア嗚呼嗚呼嗚呼ッッ!!』
「自慢の得物なのに悪いね」
 悪いね、とは言いつつ悪びれもせず。
 由紀が飄然を置いた時には、既に女王は四面楚歌――咲の声掛けに応じた猟兵らは此処に囲繞を完成させ、包囲されたルベルレギナは誰を睨めるかも迷う始末。
 逃走を試みる性格ではなかろうが、退路を塞いだ咲は次に手数を増やして相手の反撃を防ぎ、
「罪なき人々を引き裂く爪牙など、凍って砕けてしまえば良いのです」
 間断なき高速詠唱は清冽にして凄烈。
 白皙の玲瓏は魔導杖に氷雪の風を紡ぎ、織って、上位種にして頂点を証する紅緋の衣を切り裂いた。
 雪を操るたからも凍気を添えれば、頑強な竜膚とて裂傷は逃れらまい。
 雪白と透き通る繊指は美し六華の結晶をキラキラと降らせて、
「あなたは彼らに謝るべきです。あなたに食べられた民に、配下の竜に」
『痛ァアッッ――ッ!』
 生きるに必死な流浪の民を、生きながら屠られる小竜の絶望を視た銀瞳は、女王こそ尊い命に傅くべきだと、巨躯を縮こませる。
『ヲノレ、ヲノレ猟兵ッ! 女王ガ赦スト思フテカ!!』
 片牙を折られ、衣を失い。
 これら凌辱に激昂したルベルレギナは、紫血を噴きつつも力強く躍してイデアールに迫るが、彼女の玉臂は異空間より暴虐の魔剣『ドミナンス』を取り出し、真紅の刀身を轡と咬ませる。
「這い蹲れ! 貴様はもう女王ではない、ただのトカゲだ!」
『牙ァアア嗚呼ッッ!』
 角逐――!
 牙と刀、力と技の純然たる衝突が、両者を中心に衝撃波を疾らせるが、抗衡を破ったのはイデアール。
 巧みな刀捌きで力の方向を変えて斬り捨てた彼女は、またも大地に叩きつけられる巨竜を麗笑に組み伏せた。
『莫迦ナ。我ガ竜ノ爪牙ガ此程マデ損耗シタダト……ッ』
「――無様な」
 失望を添えたのはニコラ。
 彼女は睨め返す魔竜に声を荒げ、
「オブリビオンとはいえ、遙か昔に血を分けたかもしれない同族がその程度では、このオレサマの名に傷が付くんだよ!」
 とは、ドラゴニアンならではの言だろう。
 過去を受肉して現るがオブリビオンなれば、彼等は既に「滅び」を経験している。
 生存競争に敗れた者が絶対強者たる竜を名乗るなどおこがましい――竜の矜持によって暴君と振舞う彼女は、地を這うルベルレギナを類と認めず、
「竜の名は今日限りで返上してもらおう」
 と、訣別の魔弾を射る。
 援護したのはアルトリウス。
 彼の繊細なる指先は淡青色の光粒子に照らされて煌々と、
「忘れ去られたものなど、撒き散らすべきではない」
 裡より汪溢する魔導の力を注いで、【界離】の干渉を更に強化すれば、自戒の原理は魔竜の闘争を封縛し、女王が猛り立つほど恐怖に染めて、着弾地点に踏み留まらせる。
 その恐怖が一層の激痛を刻んだとは、咽喉を裂くほどの絶叫で判明ろう。
『ギャアア嗚呼嗚呼アアッ――ッッ!!』
 遂に狂うたか――。
 知性を失した女王は、猟兵が檻と囲んだ荒れ地を転輾ち、或いは闇雲に転げ回って魔爪を振り翳すが、シュシュも菘も狂気に怯む事はない。
 可憐なる少女も猟兵なれば、狂邪の暴走に攻撃を躊躇う隙は見せず、
「……ここで竦んだり逃げたりすることはできませんっ! いっぱいの恐怖には、いっぱいの勇気と覚悟で立ち向かいますっ」
 自ら檻を抜けて踏み出した、あの時の決意を胸に――!
 シュシュはガラスの靴より透徹たる鐘の音を澄み渡らせながら、魔竜すら制禦できぬ挙動を止め、仲間が回避し攻撃に転じる時間を作る。
 傍らの菘は理性を失くして荒ぶる巨竜に尚も正対し、
「妾とて逃げも隠れもせんよ。最後の一撃まですべて受けてやろう!」
 暴虐の顎が迫れば左腕の『五行玻璃殿』に受け止め、魔爪が振り下ろされれば右腕の『八元八凱門』に返報の撃を差し出す――堂々たる竜の相剋を見せる。
 ――邪神さんマジ邪神。
 ――猟兵の皆△(さんかっけー)
 ――弾幕で援護しようず!
 ディスプレイに色とりどりの大きな文字が走り、画面中が虹色に満たされたなら、喝采を浴びた猟兵達は最早覆らぬ優勢を得よう。
 ユリウスは既に覚醒した吸血鬼の力に加え、己の躯に流るる紅血が更なる強靭を得る感覚を得ながら、犀利を増した緋瞳に攻撃を見切り、半身に躱すやカウンターを衝き入れる。
『クッ、亜ァ亜亜アアッッ……ッ』
「ふん、慥か俺たちを喰うと言ったが――戯言も過ぎるな、おい」
『ズァア嗚呼アアッッ!!』
「――さあ、俺の糧となれ」
 生命力を吸収しながら戦う彼は戦士として佳く識っている。
 戦場に最後まで立ち続けた者が――生者にして強者であると。
 言を継ぐは、たから。
「命で贖えとあなたは言いましたが、あなたこそ罪を償うならば、そのいのちで」
 少女の攻撃は雪の舞う様に、ダメージは積る様に。
 気付いた時には遅かろう、『玻璃の花』の切先が幾度と斬りつけた猛牙は遂に折られ、氷柱が墜下するように重力に導かれた其が荒野に突き刺さる。
 ここに竜の矜持を二本とも失った女王は、我が身を呪う様な悲鳴を裂いた。
『ゼァ、ッ……! グルァアアッッ!』
 最早人語は操らぬが、其は若しか竜の聲だったかもしれぬ。
 言葉を失くして尚も双眸は怒れる儘に、光を失ってはおらずと洞察を鋭くしたつかさは、原始の竜の姿を見せたルベルレギナに【心魂剣】の鋩を突き付ける。
「どれだけ強大な竜だろうと。『竜』であるなら、私にとっては狩り、喰らうべき獲物よ」
 其の勇壮は、戦士にして巫女。
 練磨した身体に降ろした心と霊魂は、報復の刃金と冴え、一陣の風と戦ぎ――紫電と閃く!
『牙ァアア嗚呼嗚呼ァァ嗚呼!!』
 首を捻るも間に合わず、剱は竜鱗に覆われた瞼を貫穿して魔眼を潰し、激痛を叫んだ魔竜が色無き穹に絶叫を震わせる。
 生けるものの命に敏感なイチは、より強くなる死の匂いに終焉の気配を感じたろう。
「君達も僕らも、生きる為に戦う。それでいいね」
 ――それでいい。
 そう言って両脣を引き結んだ彼は、魔竜が大口を開けた瞬間に【煌星】(ヨゾラニカガヤク)を放ち、幾筋の流星が光の帯を引いて口腔に飛び込んでいく。
『ッ、ゲッッ……ァッ……!!』
 舌を灼かれては声を出せまい。
 ルベルレギナは全身の神経を鈍麻させる激痛に震えながら、鈍色の穹に顎を突き上げた。
 ――この時。
 いかなる凄惨にあっても『黒鳥』の照準より目を離さなかった涼が、魔竜が咽喉を露にした瞬間に銃爪を引く。
「貴様らの狩りも我々の狩りも、これで終いだ」
 冷然たる佳声が連れる銃声は静かに。
 硝煙が灰色の天蓋に溶けゆく中、弾かれた鉄鉛は吸い込まれる様に竜の咽喉に沈み、ぐらり巨躯が傾いた瞬間――リーヴァルディが疾った。
「……恐怖も怒りも、もう要らない」
 少女が雷火の大鎌を力任せに薙ぎ払う。
 刹那、ルベルレギナの巨躯が斃れるを援けるかのように走った斬撃は、そのまま荒野を駆け抜け――殺伐の風が猟兵の肌膚を撫でる。
 事前に“誘惑の呪詛”を掛けておいた彼女は、間もなく【血の魔装】を解除しよう。
「……ん。終わった」
 平素の佳声が凄惨たる血闘に終止符を置いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『流浪の民と過ごす一時』

POW   :    狩猟や採取、彼らの為に食料を調達してきます。

SPD   :    吟遊や舞踊、彼らと囲んだ焚き火の前で一芸を披露します。

WIZ   :    修繕や作成、彼らの馬車や持ち物に手を加え、知識を伝授します。

👑5
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「……あの人達、でっかい竜を倒しちゃた……」
 流浪の民の一団で最も視力の優れた少年が、枝葉の陰より嘆声を溢す。
 木に登って遠目見る少年の下では、身を寄せ合って怯えていた皆々が吃驚と安堵の声を揃え、
「! なんという事じゃ……」
「それじゃあ、私達は救われたのか……?」
 あの騎竜の群れ、首魁の巨竜を倒したとは俄には信じられないが、荒野を過ぎる乾いた風の寂寞が、脅威が取り払われた事を漸う実感として与えてくれた。
「あっ、あの人達がこっちに来る!」
 弾かれた様に身を乗り出す少年の指先に、一族の視線が集まる。
 見れば荒野には血闘を制して雄渾を増す猟兵達の影があり、揃って此方に向かって来るではないか。
「ああ、彼等は約束通り森に帰ってくるぞ」
「先に言った通り、此処で我々と合流する筈だ」
 鬱蒼の森に身を隠した時、ここまで護送してくれた猟兵らは「必ず戻る」と約束して荒野へと向かった。
 それが邪竜達を倒した今、彼等と再び会う事が叶う――。
「ぼく、あの人達にお礼を言いたいな」
「そうじゃ、儂らはまだどんな方達なのかも知らぬ。是非に名前を聞いて礼を言いたい」
「私達も何か、戦いで疲れた身体を癒す何かが出来れば……」
「ほぎゃー」
 子供に老人に、母が抱く赤子まで。
 救われた命は漸く声を大にして、朗らかな空気を纏って動き出す。
 流浪の民の一団と、彼等を護った猟兵達が、間もなく森にて合流を果たした――。
オイフェ・アルスター
WIZ アドリブ共演可
馬車で酔って肝心な時に出ていけませんでしたの……

結果的に馬車の改善点もわかったのかもしれませんわ
車軸をもっと頑丈なものに
車輪をゴムを使ったものに
馬も走りやすいように伸縮性がある綱に
バネ……衝撃を吸収してくれるものがあるとよいですね
あとは……
と、馬車の改善を細かく指示を出しつつ、材料を持ってきては組み入れていく

怪我人がいたら治療のお手伝いも

野党や野獣対策に火や油は有効ですの
正面だとダメですが、馬車の左右から油を流しておけば
追いつきづらく、気づかれなければ転倒するでしょう
後ろに一直線になったら、数撃つ火矢や火炎瓶ですわ
単純なものほど、強いこともあるのです


ユリウス・リウィウス
ああ、無事か諸君?
俺は、ユリウスという。ただの飲んだくれ騎士さ。

さて、俺は野伏のような狩猟採集を得意にしているわけでなし、かといって、伝えられる知識も無いからな。
それならせめて、余興の一つでもみせようか。
黒剣二振りでの剣舞。途中で鞭や斧に変形させたりもして、面白がってもらおう。

騎士団の汚れ仕事ばかりやっていたころは、こうして感謝の視線を向けられることはなかったな。
楽しんでくれて僥倖。ただ、喉が渇いた。酒瓶の一本なりと所望してよいだろうか?

酒瓶が空いたら、そっと人の輪から離れて森の抱える闇に沈もう。
俺は元々、人目を避けるのが本来の性分だ。
俺達が助けた人達が楽しく飲み食いする姿を見られれば本望さ。


イデアール・モラクス
フン、この背徳の世界を旅する者達か…その貪欲に生きようとする意志は嫌いじゃない。
何か私からプレゼントをしてやろう。

・行動
「お前達の旅の手助けをする小さな友人を贈ってやろう」
我が魔術の奥義の一つ、ホムンクルス錬成を『全力魔法・高速詠唱』によって行使し【手のひらサイズの可愛らしい少女の姿をした人造フェアリーの身体】を魔力により生み出しUC【禁呪・生命創造】の力で命を与え、人間以上の知性を宿す。
「汝の名はエルン、これよりはその知性を以ってこの民達の助けとなるが良い」
終わったら、軽く礼を頂くとしようか。
「元気が余ってる男がいたら紹介してくれ、魔力の補充に血か精を少しばかり頂きたくてなぁ」

※アドリブ歓迎


シュシュ・シュエット
お気づかいはうれしいのですが、きっと流浪の民の一団の皆さんもお疲れでしょう。
ここはしっかりと休息をとって、まずは体調を整えましょう。

わたしは一団の皆さんへご挨拶をする傍ら、*医術を活かしてお体の具合をうかがいたいですっ。
ずっと幌馬車をひかれてきたお馬さんたちの様子も、*動物と話すでお訪ねできたらいいですね。

皆さんが食料を調達されたら、わたしも*お料理のお手伝いをさせていただきますっ。
夜は冷えこむでしょうし、あったかいポトフはいかがでしょうか?
お口に合うかどうかわかりませんけれど、がんばりますねっ。
それに……皆さんが気落ちされないようなら、一団の皆さんの手料理を教えていただけたらうれしいですっ。


彩花・涼
人々にけが人は出ていないだろうか?いないなら一安心だな
とりあえず全員疲労も高いだろう、休んで腹ごしらえとしようか

森なら食べるものもあるだろう、なにかしら獲物を狩ってくるとしよう
ある程度調達できたら戻って調理の支度だな
誰か村人で鍋を持っていれば借りたい
人数も多いし、採ってきた肉やキノコや香草等を入れて鍋にしよう
身体も温まるだろうしな

人々の表情に笑顔が戻っているなら、それだけでいい
しばし彼らと休息の時を過ごすとしよう


雨糸・咲
戦いが終われば、常の柔らかな笑顔に戻り
追い詰められた状況でもこちらの身を案じて下さった
優しい人々のもとへ

皆さんも必死に走ってお疲れでしょう

幸いにもここは森の中
何か栄養の摂れる植物は無いか、探しましょう

私、調香師を生業にしていて
ハーブなどには少し詳しいのです

痩せた土地でも育つものはあるはず
一緒に温かいスープなどが作れればと

他には、馬車の破れた幌を繕うお手伝いくらいはできるでしょうか
作業しながら皆さんとお話しを

支配を逃れての暮らしとは言え
辛いことは色々とおありでしょう
それでも…

お母さんに抱かれた赤ちゃんの頬に指先で優しく触れ

こうして命が生まれ、育つことは希望です
どうぞ、強く生き抜いてくださいね


御形・菘
妾は都会っ子なのでな、こう見えて狩りとかはできん! いやマジで
ゲテモノ系サバイバル飯チャレンジなら喜んでやるがな?

ということで、民たちの前で、此度の戦いの顛末を即興で語り尽くすとしようか
映像を見せるだけでは面白くないからな
身振り手振りも交えて、本気を出した妾の講演は凄いぞ~?
要所要所では本人たちに出てきてもらって、戦いぶりを少し実演してもらおう
あ、帷の出番も最初にあるぞ? 話の導入は当然、指パッチンが必須であるからな
妾自身のことは、まあ余計な補正は入れたくないので適当で良かろう

はっはっは、そして妾たちの雄姿を広く永く語り継ぐがよい
恐怖を吹き飛ばす、希望は確かにこの世界にも存在するのだとな!


鹿忍・由紀
安息を与えてやれって言ってたっけ
かける言葉を思いつかないから俺は見張りでもしとこう
夜目も効くしね
この世界で流浪の民が怯えずに過ごせる時間なんて貴重だろう
なんて、思いつつ、出てくる言葉はシンプルに
周り、見とくから

安心して過ごせるように宴から少し外れて座って見張り
一人で過ごしたいってわけでもないから誰かしらから話しかけられたら拒否はしないよ
気の利いたことは言えないけど

もし食料を流浪の民から差し出されたらそれは断る
いい、それは命を繋ぐ数少ないものでしょ
俺のはちゃんと後からあるから

他の猟兵が用意した食べ物が余るほどあるようだったらちょっともらおうかな
なかったらなかったで構わないし

絡み、アドリブご自由に


リーヴァルディ・カーライル
…ん。頭がクラクラする…。
誘惑の呪詛を使ったらいつもの事だけど…。
今回は故意に精霊の怒りと同調したから一段と…。

…申し訳ないけれど、ここで一晩休ませてもらっても良い?
対価は、後できちんと払うから…。


…ん。敵の攻撃じゃなくて、自爆して倒れるとか…未熟な…。
…知られたらまた友人に怒られる気がするけど……後で考えよう。

…それよりも、迷惑をかけたお詫びをしないと。
礼儀作法に則り寝所を借りたお礼をした後、
【常夜の鍵】から“大量の保存食”を取りだし馬車に載せ、
救助活動に必要な物資の類も一緒に放り込んでおく。

…彼らがこれからも流浪の旅を続けるのなら、そうね。
旅の安全を祈り、忍び足の呪詛を馬車に施しておこう。


テイク・ミハイヤー
ふぅ、どーにかこーにか守りきれたな。
あれもこれも仲間達がいてくれたお陰だぜ。

[WIZ]荒れ地を全力で走らせたんだ、幌馬車もだいぶ傷んでるんじゃないか?
車輪もガタガタだしシャフトも歪んじまってるな。
ちょっと待ってろよ、何か出したのをバラしたので補強するからな。
旅慣れてる連中には俺の知識は必要なさそうだけど、水分の大切さだけはヒーローズアースの科学に則って教えとくか。
お年寄りや子供もいるんだから、一番気を配らないといけないぞっと。
折角だし濾過器の簡単な作り方くらいは伝授するか。
まず布だろ、砂に炭に小石に……え?そもそもペットボトルが無い?
あー、ペットボトルの代わりになるような物って、あるか?


荒谷・つかさ
ただいま。
何とか無事に終わったわ。
(可能であれば怪力で巨竜の死骸を引きずって持ってきながら)

さて、一段落もしたことだし。
(盛大に腹の虫が鳴る)
……食事にしましょう。ここに丁度良く肉もあることだし。

ということで、仕留めた巨竜をバーベキューにするわよ。
【剣刃一閃】を活用し、「料理」技能と併せててきぱきと解体。
四足歩行系の竜は解体も食べるのも初めてじゃないから、経験を活かすわ。
燃料が必要なら私の「丸太」を割って薪にして提供するわね。

獲物として扱い食すのは、屠った命へ対する私流の誠意。
必要であれば、爪や牙も解体して、欲しい人に持って行ってもらうわ。

それでは……いただきます。
(両手を合わせ、食事開始)



「ふぅ、どーにかこーにか守りきれたな。あれもこれも仲間達がいてくれたお陰だぜ」
 共闘した猟兵に感謝を述べつつ、心地良い疲労に身を委ねるテイク(f16862)。
 何なら大樹に背を預けた瞬間に眠れそうな彼だが、流浪の民が勢揃いで到着を迎えたなら、ヒーロー見習い一年生とて胸を張らねばなるまい。
「皆さま、一族の危機をお救い下さいまして、ありがとうございました」
「流れ者の我々に目を掛け、助けて頂きましたこと、感謝します」
 深く頭を垂れて礼を述べる流浪の民たち。
 彼等は移ろう先々で冷ややかな目を注がれる事もあるが、畑を耕さず生きる苛酷を知る猟兵は、彼等を蔑みはしない。
「フン、この背徳の世界を旅する者達か……その貪欲に生きようとする意志は嫌いじゃない」
 縛られぬ事こそ反抗の証と、形良い脣を艶やかに持ち上げるイデアール(f04845)。
 傍らのユリウス(f00045)と涼(f01922)は、彼等に創痍がないかと確めて、
「ああ、無事か諸君?」
「けが人は出ていないだろうか?」
「皆さまのお蔭で、一族は全員無事でございます」
「そうか、それなら一安心だ」
 涼の佳声が僅かに和らぐ――滲む優しさに触れた老婆は、是非にと進み出て英雄達の名を乞うた。
「どうか、家族を助けて下さった皆さまのお名前を教えて下さいまし」
「俺は、ユリウスという。ただの飲んだくれ騎士さ」
 然れば今度は子供達が一気に駆け出し、
「ユリウスさまはその剣で竜をやっつけたの?」
「ザクッてしたの? みせてー」
 ワイワイとはしゃぎ出す無垢に、他の猟兵達も笑みを溢す。
「我等に出来る事は少ないが、精一杯持て成させてくださいますかのぅ」
 杖つく老爺が進み出れば、シュシュ(f02357)はその深く皺を刻んだ手に繊指を添え、
「お気づかいはうれしいのですが、きっと皆さんもお疲れでしょう」
 と、老爺の後ろに揃う者達にも、ふうわり柔かな笑みを注ぐ。
 彼女の言う通り、脅威が去ったばかりの今は慥かに疲労の色が見え、
「ここはしっかりと休息をとって、まずは体調を整えましょう」
「とりあえず此処で休み、腹ごしらえでもして英気を養うとしようか」
 と、子供達の痩せた手足を眺めていた涼も是を添える。
 常の嫋(たわ)やかな笑顔に戻った咲(f01982)は、優艶の瞳に鬱蒼の森を見渡して、
「追い詰められた状況でも、私達の身を案じて下さったお優しい方々。幸いにもここは森の中ですから、何か栄養の摂れる植物は無いか、探しましょう」
 森の湖畔で小さな店を営む調香師なれば、昏い森に隠された香草の類を見つける事は然程難しくない。
「痩せた土地でも育つものはある筈です。一緒に温かいスープなどが作れれば――」
 鈴振る様な声で穏かに語れば、彼等も安心しよう。
 今より採取に出掛けると言う咲に、冒険の匂いでも嗅ぎ取ったか――何人かの子供達が嬉々としてついて行く。
 すれば涼もまた鬱蒼の森へ爪先を向け、
「森なら食べるものもあるだろうし、なにかしら獲物を狩ってくるとしよう」
 歩けばキノコや香草が見つかるかもしれないし、野生動物の肉を得られるかもしれない。
 これだけの人数なら熊か猪、鹿あたりが望ましいが――と、銃を携えた涼が豊かに繁る枝葉を分けて往く。
 そうして二人が場を離れた事で、夜と佇む影を暴いたのは由紀(f05760)。
 白皙に跡した魔竜の血を手の甲に拭って隠した彼は、気付けば礼を言いたそうに此方を見る者達を流眄に見つつ、掛ける言葉を探し、そして思いつかないと諦める。
(「――安息を与えてやれって言ってたっけ」)
 言葉が見つからなければ、それで。
 俄に爪先を動かした由紀は、咲や涼とは逆方向の森へ向かい、やや吃驚して袖を引く少年に一瞬、足を止める。
「どこに行くの? いなくなっちゃイヤだよ」
 肩越しに見れば、少年の後ろに揃った彼の家族も感謝に満ちた視線を注いでおり、強く手を握り合う姿に、殺伐たる世界で怯えずに過ごせる時間はさぞや貴重だろうという思いが過る。
 由紀はここで漸く聲を置いて、
「周り、見とくから」
 夜目も効く身なれば、見張りに立つのが己が差し出せる最適解。
 その言に去る訳でないと表情を明るくした少年は、「後でね!」と手を振って送り出した。
 次々と猟兵が動き出す中、ふらり、華奢を傾けるはリーヴァルディ(f01841)。
「まぁ、大変!」
 咄嗟に手を伸ばした婦人が、抱き留めた躯の細さに息を呑む。
 この少女の何処に魔竜と戦う力が秘められているというのか、婦人は不安気に見つめて、
「大丈夫? 顔が真っ青よ」
「……ん。頭がクラクラする……誘惑の呪詛を使ったら、いつもの事だけど……」
 然も今回は、故意に精霊の怒りと同調したから、一段と眩暈が酷い。
 リーヴァルディは翳みゆく意識の中で、途切れつつも願い出て、
「……申し訳ないけれど、ここで一晩休ませてもらっても良い? ……対価は、後できちんと、払うから……」
「! すぐに毛布を用意しましょ!」
 婦人の声に弾かれたように、若い娘達が駆け寄って来る。
 斯くしてリーヴァルディは幌馬車に運ばれ、真新しい柔かな藁の上で、眠り姫の如く深く眠った。
 そうして幌馬車で眠る者も居れば、起きて出てくる者も居る。
「お嬢さんは大丈夫かい? 少しは顔色も戻った様だが…」
「馬車で酔って、肝心な時に出ていけませんでしたの……」
 幌馬車の激しい突き上げに平衡感覚を乱されたオイフェ(f12262)は、先程まで麗貌を蒼白とさせていたのだが、結果的に馬車の改善点を見つける事が出来たのは、流浪の民にとっても幸運な事だった。
 身を起こした彼女は、今度は馬車の側で身を屈め、
「車軸をもっと頑丈なものに、車輪にはゴムを使い、手綱も伸縮性のあるものにしては如何でしょう」
「ごむ……?」
「ご用意しますわ」
 常に移動して暮らす彼等にとって馬車は命。
 走行性能に優れ、乗り心地も快適になれば、彼等の生活はより豊かになる。
 彼女は馬車を細かく見て回りながら諸所に改善を提案し、
「それに、バネ……衝撃を吸収してくれるものがあるとよいですね。あとは――」
 言うだけでなく、材料を持って来ては組み込んでいく周到も剴切。
「幌馬車もだいぶ傷んでるんじゃないか? 車輪もガタガタだし、シャフトも歪んじまってる」
 荒地を全力で疾走した馬車の損耗を気に掛けたのはテイクも同じで、彼は【ガジェットショータイム】で召喚した、流浪の民には珍妙に見えるガジェットで馬車に改良を施していく。
「ちょっと待ってろよ、何か出したのをバラしたので補強するからな」
「これは、一体……なんでしょう……」
 興味津々にテイクの指先を眺める者達。
 世界が違えばより刺激的だろう、テイクが次に教えた簡易濾過器は、多くの者が注目する中で制作され、
「お年寄りや子供もいるんだから、水分は一番気を配らないといけないぞっと」
「ふむ、ミハイヤーさまはカガクなるものを拵えなさると……」
「まず布だろ、砂に炭に小石に……え? ペットボトルが無い? あー、代わりになるような物って、あるか?」
「……ぺっ?」
 首を傾げるテイクに、民も首を傾げ。
「……よし。ユーベルコードの連発だな」
 濾過器の作成に有効なガジェットよ、出ろ――!
 テイクは二度目のユーベルコードの発動で、立派な濾過機を作り上げた。
 技術を以て支援する者も居れば、魔術を以て協力する者も居る。
 イデアールが然うだ。
「お前達の旅の手助けをする小さな友人を贈ってやろう」
「友人……?」
 疑問符を浮かべる彼等に対し、「私からプレゼントだ」と凄艶が迸るは厖大なる魔力。
「我が魔術の奥義の一つ、ホムンクルス錬成――」
 美し紅脣が禁呪を詠唱する裡に生成されるは、手のひらサイズの可愛らしい少女の姿をした、フェアリーの身体――【禁呪・生命創造】(アルスマグナ・スフィロート)は人造の躯に命を与え、人間以上の知性を吹き込む。
 名を授ければ、フェアリーは透き通った羽翅をひらりと動かそう、
「汝の名はエルン、これよりはその知性を以ってこの民達の助けとなるが良い」
「おおおぉぉー」
「す、凄い……」
 恭しくカーテシーをしてみせるエルンに、目を丸々とさせる人々。
 人間以上の知性を与えられた創造物は、これよりイデアールに代わって流浪の民に知恵を授け、移ろい定まらぬ彼等の標となるに違いない。
「竜を倒し、生命を操る魔力……神憑っている……」
「いや、これは既に神の領域だ……」
 ごくり。
 あまりの驚異と奇跡に固まってしまった彼等に、イデアールは艶のある声で囁いて、
「元気が余ってる男がいたら紹介してくれ。魔力の補充に血か精を少しばかり頂きたくてなぁ」
「ひぃぃぇぇええっ!」
「おっお助けを……!!」
 へちゃりと崩れて平服し、拝み出す男達に、凄艶は「驚かせ過ぎたか」と灼眼を瞠った。
「うおおおおっっ! 竜だ、さっきの竜だ!」
「竜が、森にまでやって来――……あっ君はっ!」
 この時、森の入り口付近で流浪の民を驚かせたのは、戦巫女つかさ(f02032)。
 彼女が少し遅れて到着したのは、巨竜『ルベルレギナ』を引き摺って来たからで――、
「ただいま。何とか無事に終わったわ」
 ズズズズ、ズズズ……ズゥゥンッ……。
 その小躯の何処から力を引き出すというのか、精悍を誇る醜男(しこお)も息を呑むばかり。
 蓋し怪力にてテイクアウトした彼女もまた振り絞ったか、盛大に腹の虫を鳴らしたつかさは、身丈を優に超す巨竜を指差して、
「さて、一段落もしたことだし……食事にしましょう。ここに丁度良く肉もあるわ」
「丁度良く!」
「肉がある!」
 男達はあまりの衝撃に鸚鵡返しするしかないが、つかさは美し佳顔を淡然と、【剣刃一閃】――先ずは両断し、それからテキパキと部位ごとに解体を始める。
「凄い……何という包丁捌きだ……」
「経験よ。四足歩行系の竜は初めてじゃないから」
 ザクリ、ボキリ。
 手際の良さは刃物の扱いのみに非ず、彼女は巨肉を焼くには火力が必要と、とてもいい感じの『丸太』を惜しみなく薪にして、或いは土台として井桁に組み――キャンプファイヤー級のバーベキューを準備する。
 ――これは夜が楽しみだ。

 彼等の間近にある脅威への用意もしてやるとは、オイフェは気が利いている――と言うより「抜かりない」のかもしれない。
 彼女は野党や野獣対策には火や油が効果的だと教え、
「馬車の左右から油を流しておけば追手の足は鈍り、気付かれなければ転倒させる事も出来るでしょう」
「ほー、刃を交えずとも撃退できるのか」
「後ろに一直線になったら、数撃つ火矢や火炎瓶が有効ですわ」
「ふむふむ」
 単純なものほど、強いこともある――。
 オイフェの助言を聴く裡に生きる力が湧いてくる――その顔貌の逞しさに、彼女は月光の零れるような微笑を見せた。
 シュシュは流浪の一団に挨拶をして回る傍ら、医術の知識を活かして彼等の体調を窺う。
 途中、水を飲む馬を見た彼女は、鬣を撫でながら彼等と語らい、
「ずっと幌馬車をひかれてお疲れでしょう?」
「ブルルルッ」
「ええ、美味しい水を飲んだ後は、身体や蹄を見せてくださいねっ」
「ヒヒヒーン」
 彼等もまた流浪の民の愛する家族と、慈しみの視線を注ぐ。
 ここに採取より戻った咲は、己が脚を休ませるより馬車の損耗に心が向いたか、騎竜の爪に引き裂かれた幌を繕う手伝いもこなす。
 彼女を輪に入れた女達は、針を動かす傍らお喋りも愉しんで、
「往く先々で吸血鬼の圧制を見たもんだよ。どこも酷いもんさ」
「汗水流して耕した畑で連中を養うくらいなら、今の生活の方がよっぽど人間らしい」
 零す愚痴も逞しいと耳を傾けつつ、咲は佳顔を持ち上げて聲を置く。
「支配を逃れての暮らしとは言え、辛いことは色々とおありでしょう」
 胡桃色の麗瞳が瞶めるは、母の傍らで眠る赤子。
 手は縫物に、足は揺籠を揺らして――忙しい母の為に眠る子も賢いと頬笑んだ咲は、そのふっくりとした頬を繊麗の指に撫でる。
「こうして命が生まれ、育つことは希望です。どうぞ、強く生き抜いてくださいね」
 そう希いを籠めた彼女は、幼子の無垢な寝顔に、ほろと咲みを零した。

「さぁ料理の腕の見せ処だねぇ」
「今夜は腕によりを掛けて、御馳走を作らなくっちゃ」
 手持の鍋をここぞと並べる女達の元へ駆け寄るはシュシュ。
「わたし、お料理のお手伝いをさせていただきますっ」
 直ぐにも腕まくりする少女に続いて、涼が森で調達した食材を持って現れ、
「鍋を借りられるだろうか。精がつくものを振る舞いたい」
「まぁ……鹿肉! なんて立派な」
 女達が快く迎えたなら、二人は手早く食材を切って火にかけ、コトコトとたっぷり時間を掛けて煮込む。
「夜は冷えこむでしょうし、あったかいポトフはいかがでしょうか?」
「身体も温まるし、多くの者と分け合えるしな」
 シュシュが火を見守る中、採取した香草で味を調えていく涼。
 湯気と共に漂う馨香は馥郁と、漸う子供達を招き、
「いいにおいー!」
「お口に合うかどうかわかりませんけれど、がんばりますねっ」
「はやく食べたいー!」
「……皿ごと食べてしまいそうな勢いだな」
 二人はまだかと揃う垂涎の表情に、くすり、笑みを溢した。

 炎ゆらめき、光ちらつく夜。
 常闇に赤い灯火を投げた松明は、流浪の民と猟兵の顔貌を照らし、互いに和やかな表情で宴を迎えた事を明るみにしている。
「乾杯!」
「乾杯!」
 炎を掻き上げる草木や枝葉を中央に集まった皆々は、今や採取や狩猟で得た食材を料理にして、歓談の声を響かせた。
「おおおぉぉー」
「これが我々を襲い、猟兵の皆さま方が退治なさった『血染めの災厄』……」
 流浪の民が感歎を揃えたのは、ルベルレギナの焼き肉。
 つかさは絶妙なる焼き加減で旨味を引き出す傍ら、命の連鎖に敬意を忘れず、
「獲物として扱い食すのは、屠った命に対する私流の誠意」
「……丁寧に爪も牙も取り分けて頂き、ありがとうございました」
「どうぞ存分に使って」
 全て無駄にしない。全て繋げる。
 肉は明日を生きるエネルギーとなり、爪牙は道具と加工され、明日を豊かにさせるだろう。
「それでは……いただきます」
 つかさは目を閉じて合掌し、祈念して肉を頂戴した。
「ゲテモノ系サバイバル飯チャレンジなら喜んでやったんだがの~?」
 惜しい、と一応は動画のイメージを描いていた菘(f12350)が、狩猟や採取と得意とせぬ都会っ子で本当に良かった。
 彼女はすっくと立って視線を集めるや、開口を待つ流浪の民らを前に、此度の戦いの顛末を即興で語り始め、場を大いに盛り上げる。
「本気を出した妾の講演は凄いぞ~?」
 艶やかな紅脣より滑り出す言に偽りは無し。
 彼女は映像を見せるだけでは面白くないと、身振り手振りも交えて音吐朗々、要所では本人に出演を促し、華麗なる戦いぶりを披露して貰う。
 観客の一人として車座した帷(f00445)は、狂言回しの如き語り口を賞讃して、
「菘は一見、魔竜の輩に見えるかもしれないが、根は真面目で、気が佳い。彼女の動画を見れば分かるが、フォロワーが多いのも頷けるというもの――」
 と、隣する老婆に話していた折、手招きされる。
「帷の出番も最初にあるぞ? 話の導入は当然、指パッチンが必須であるからな」
「――私の癖をよく見ている」
 瞠目し、微笑する。
 帷は促される儘に立って、いつもの通り指を鳴らせば、今度は猟兵から笑声が集まった。
 時に帷は小さく問いかけ、
「菘の活躍は語らないのか」
「まあ余計な補正は入れたくないので適当で良かろう」
 ひらり、繊手を振って躱す菘。
 彼女は炎を背に影を濃くすると、愈々豪放と笑声を放ち、
「はっはっは、妾たちの雄姿を広く永く語り継ぐがよい。恐怖を吹き飛ばす、希望は確かにこの世界にも存在するのだとな!」
 絶望なる闇を裂き、希望の光を灯す――宛ら炎の如く雄々しい凄艶に、皆々が喝采した。
「さて、俺は余興の一つでも見せようか」
 野伏さながらの狩猟・採集を得意とする訳でもなく、伝えられる知識も見当たらない――ならばせめてと腰を上げたユリウスは、黒剣二振りを抜くや剣舞を披露する。
 呪剣は炎を前に妙々躍り、
「おお、剣が鞭や斧に……! なんと不思議な」
「まるで生きているかの様な……ふむ、実に素晴らしい腕前じゃ!」
 やんやと声を上げる若者に、深い感歎を添える老爺。
「騎士ってかっけーんだなぁ!」
「なんて靭やかで逞しいの」
 少年は憧憬に瞳を丸くして、女らはその勇ましさに溜息する。
 嘗て罪を犯した父の助命の為、騎士団の汚れ仕事を一身に引き受けていた彼は、こうして感謝や羨望の視線を向けられることは余程なく――楽しんでくれたなら僥倖、と黒髪より覗く緑瞳を和らげる。
 万雷の拍手に納刀したユリウスは、豪勢な馳走が迎えるのを手に制し、
「ただ、喉が渇いた。酒瓶の一本なりと所望してよいだろうか?」
「では南方を旅した折に手に入れたこちらを開けましょうや」
 この辺りでは珍しい酒だと話も盛り上がるのだから、彼は勧められる儘に遠い異国の情趣を味わった。
 囲む炎に破顔を照らし、明るみを洪笑に満たす流浪の民たち。
 涼は彼等と休息の時を共にする傍ら、賑わいにそっと声を置いて、
「人々の表情に笑顔が戻ったなら、それだけでいい」
 それで十分。
 己が役儀はここに完遂したと、炎の立ち上る先にある夜空を仰ぐ。
 星は見えぬが、光は地上にあるから――と、程好い疲労が彼女を満たした。

「にーちゃん」
 扨て、宴から少し外れた暗がりで見張りを続ける由紀に、先程の少年が声を掛ける。
 無垢なる瞳は上目遣いに窺って、
「隣に座っても?」
「――気の利いたことは言えないけど」
 拒む訳でもない由紀の静けさに、ほっとして腰掛ける。
 唯、嬉しそうに包みを開ける手は制されて、
「いい、それは命を繋ぐ数少ないものでしょ」
「でも」
「俺のはちゃんと後からあるから」
 他の猟兵が用意した食べ物が余るほどある、と。
 残念そうに睫を落とす少年に掛ける声は、抑揚はなくとも優しさが滲む。
 寧ろ少年の方が器用だったかもしれない。彼は包みを乗せた膝を由紀に向けて、
「猟兵の冒険の話を聴かせてよ。ダメなら僕の冒険を話すから」
 黒い瞳、黒い髪。
 蓋し黒に差す艶めいた光は、あどけない黒猫に似て――。
 妙な近しさを感じた由紀は、淡く色を挿した脣から静かに言を滑らせた。
 ――時に、ユリウスはいうと。
 酒瓶が空いた後、知れず人の輪から離れたらしく、今は森の抱える闇に沈む。
(「元々、人目を避ける性分だ」)
 炎を離れれば闇は深いが、その静謐も寂寞も彼には何処か心地佳い。
 ユリウスは、自分達が助けた人々が楽しく飲み食いする姿を眺め、
「……これでいい」
 本望だ、と嘆声を闇に溶かした。

 流浪の民と猟兵が心を通わせ、心を一つにした夜が過ぎ、朝を迎える。
 清々しい小鳥の囀りに起されたリーヴァルディは、元の通りに漲る魔力を実感し、
「……ん。敵の攻撃じゃなくて、自爆して倒れるとか……未熟な……」
 戦闘後に倒れたと知れたら、また友人に怒られるだろうかと懸念が過るが、それも「後で考えよう」と長い睫を持ち上げた少女は、【常夜の鍵】(ブラッドゲート)で常夜の門を開く。
「……迷惑をかけたお詫びをしないと」
 一晩の寝床を借りた礼をすべく、魔法陣より取り出すは大量の保存食。
 その日暮らしを送る流浪の民に安定的な食糧を、そして救助活動に必要な物資の類もまとめて馬車に放り込んだ彼女は、これらと彼等が狙われぬよう「忍び足」の呪詛を施し、
「……彼らがこれからも流浪の旅を続けるのなら、そうね」
 旅の安全を祈ろう。
 リーヴァルディは幌馬車に祝福を捧げると、穏やかな朝の景色を見せる森の静謐に、そっと、深呼吸をした。

 常闇の世界、村の疆域に近い辺縁の地。
 荒野を抜ける殺伐たる風は、今日も昨日と何一つ変わらぬが、幌馬車で次なる大地に向かう流浪の民に絶望はない。
 猟兵に救われ、猟兵なる存在に支えられた彼等は、強く逞しく荒涼を往く。
「語り継ごう、我等を救済せし英雄の物語を」
「広めよう、移ろう地の果てまで、歌を紡いで」
 朗らかに、高らかに――。
 絶望に支配されぬ自由なる人の姿は、慥かに、其処に在った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月21日


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#ダークセイヴァー
#夕狩こあら
#『暴虐の青風』カエルラマヌス
#『血染めの災厄』ルベルレギナ
#流浪の民と過ごす一時


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト