かえる場所を失いし愚者達の群れ
「自分は幸せになりたい」
「あの人には幸せになってほしい」
「自分はこうなりたい」
「あの人の様にああなりたい」
そう夢想し、祈り、願い、動く者が世の中の何割を一体占めているだろう。現実主義者であろうとなかろうと、結局は己の幸せ、あるいは誰かの幸せの為に動いているのだ。強い気持ち、強い自我、強いエゴ。――それを攻めることが出来るものがもしいるとすれば、それは神だけなのだろう。
ちょっとだけ、少しだけ幸せになりたかっただけなのだ。なのに、どうして。
「――――――!!」
怪しげな集団に囲まれ、歪な魔法陣に寝かされた謎の儀式の中心で、彼は嘆いた。誰かの、あるいはできるだけ不特定多数の人にとっての特別な存在になりたいと願った彼は、その日を最後に、『選ばれし供物』として命を失った。
その男がその組織に捕まる途中、落とした《白兎の脚部》は落とし物として人から人へと渡り歩いた。そして、男にしたように、1つずつその願いを叶える可能性を高めたのだ。多くの大人が考え、多くの社会人が通勤途中であったり、仕事中であった今、現在、もっとも強かった思い。それが――。
――『かえりたい』『ここにはもういたくない』。
そんな、まるで迷子の子供のような願いだったことを、一体誰が責められるだろう。
●
「悩ましい事件を観測したよ」
ノエル・グランシャリオ(聖夜の約束・f02661)は頭を抱えながら猟兵達と対峙する。
「前回とある事件を観測したのだけど、それの延長線みたいなんだ。なんでも、とあるUDCオブジェクトが行方不明になった――だけではなく、多くの人の手に人づてで渡ってしまったらしくてね。そのせいで願いを叶える『可能性』を引き上げられた者が続出したらしいんだ。だけど――」
前回と違うのは、《白兎の脚部》の回収が目的なのではなく、その一連の事件をなんとか収束させること、らしい。そうしなければ――回収も難しくなるだけではなく、この感染性の嘆きを止めることが出来なければ――より深い闇が待っているのだという。
「前回の事件の時にも感じたけれど、《白兎の脚部》は『望む可能性』を引き上げる代わりに、何か良くない者を引き起こしているよね。一体、どういう事なんだろう。もし、なにか考えがある人はそれも考察してみてほしい。今回は無理だけど、今度回収することになった際にその考察がなにか手がかりを得られるかもしれないから」
それじゃあ、よろしくね。とノエルは譜株価を貴方達に礼をしたのだった。
蛇の目
今回は《白兎の脚部》シリーズシナリオです。
前回のシナリオにかかわってなくても参加することが可能です。(というかどんどん参加してくださるとうれしいです!)
さて、いきなり前回のシナリオのラストに出てきた男が死んでますが、彼は助けることが出来ません。申し訳ありません。しかし、今回はメイン行動の他にもUDCオブジェクト《白兎の脚部》についてなにか考察している方もプレイング採用していきたいと思っています。選択肢に縛られない遊び方をしてくださると光栄です。それでは、よい冒険を。
●《白兎の脚部》シリーズシナリオ一覧
1.「愚者よ『成功』を抱えて踊れ」
→『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=474』
第1章 冒険
『豪華絢爛の迷宮』
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POW : 怪しそうな人に力で問い詰める
SPD : たくさんの人に聞き込み調査!
WIZ : 観光客になりすまして囮になる
👑11
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土斬・戎兵衛
とりあえず、『かえりたい』という願望が具体的にどんな被害を起こしているか調べよーか
事件の起こる街の高層ビルの屋上にでも入り込み、UCで視力を限界まで上げて街の様子を観察
望む可能性を高める代わりに何か良くないものを呼び込む《白兎の脚部》、取り様によっちゃー、"良くないもの"を自力で切り捨てることができれば、望む可能性だけを手にすることはできないかな?
前はいらないと思ったが、またも関わったらのも何かの縁
この街の事件はリスクとリターンを計る天秤、《白兎の脚部》が儲けになるか否か、見極めさせてもらおう
そういえば《白兎の脚部》は邪教の連中も追ってたが、あいつらなら何か知らないかな?
(絡み・アドリブ歓迎)
弦切・リョーコ
レポートは見た。猟兵の介入すら、偶然にも前回の奴らの助かる『可能性』じゃないかって気がしてきてしまうな。
だが、神が偶然という賽を振るならこの私がその角度や速度を全部計算して目を当ててやるさ
まずは観察だ。実物と、起こる事象を調べてみようじゃないか
WIZで調査。
【ハッキング】でSNSの画像や言葉を検索し、それらしいものの目撃情報、或いは手に取ったものの位置情報を片っ端から調べて地図上に落とし込む。また、それが移動しているなら【学習力】でその向かう方向を大まかに割り出す。
その周辺で事件、事故が起こっていないかも調べる。
情報はすべて味方に共有し助言したり、必要があれば実地調査を手伝う
アドリブ絡み歓迎
弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)は紙を後方に投げ捨てた。緻密な文字と、時折掲載されている写真。それらはかつての事件をまとめたレポートだった。彼女はそれにもはや用がないのか、投げ捨てたまま、どっかと折り畳み用のアウトドアチェアに座ると、ノートパソコンを開く。
「猟兵の介入すら、偶然にも前回の奴らの助かる『可能性』じゃないかって気がしてきてしまうな」
「実際、助かった瞬間に『兎』のような幻影を見たっていう奴もおったな」
土斬・戎兵衛(営業広報活動都合上侍・f12308)は散らばった資料を踏みつけながら、さて、と首をコキコキと鳴らした後におもむろに掛けていた眼鏡を外し、一度目を閉じ、スファレライトのようなその目を開く。
「ふうん、……アンタそれ、どこまで見えるの? 目がいいのね」
「俺ちゃんは"目が良い"ってーより、"良い眼"をしてるんだよ。殺しにイカれた人形技師が作った特注品の眼球だ」
なるほど、彼はミレナリィドールだったか、と人間らしいその姿に騙されたと笑い、弦切はノートパソコンのキーボードを叩き出す。
【ハッキング】でSNSの画像や言葉を検索し、それらしいものの目撃情報、或いは手に取ったものの位置情報を片っ端から調べて地図上に落とし込む。また、それが移動しているなら【学習力】でその向かう方向を大まかに割り出す。
人々は当てもなく、バラバラに移動している。しかし、ある者だけは違った。
「あれは――人? いや違う。あれは、なんて禍々しい――」
人の姿をした何か。それを土斬も捉えたのだろう。青白い肌に、虚ろな瞳。それを目撃した者が次々と狂っていく――。ぐるぐる、と視界が陰って、いく――。
「SNSで、画像のアップロードは一切ない。あれは、目撃するだけでダメな奴だな。……おい、聞いて……?」
弦切は不審そうにしたのちに、ハッと我に返り、がたりと立ち上がると、ノートパソコンが地に落ちた音にも構わず、両手を伸ばし、土斬の目をふさいだ。
「あ゛、あ゛……!」
「落ち着いて。大丈夫。大丈夫だから。深呼吸はできる? 今見たものはちょっとした超常現象だよ」
唱えられるようにしてかけられた言葉に、土斬は膝をつくと、胃液を吐き出し、地を体液が濡らす。はぁ、はぁと荒い息を何度かした後に、薄く笑って感謝を告げる。
「……もう、平気」
「それならよかった。どうやら見るだけで呪いをまき散らすみたいだね。まずは被害者である狂った者達からどうにかしないと行けなさそうだけれど――」
さて、どこから攻略しようかね、と弦切は地図を広げた。
大成功
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数宮・多喜
まさか……まさか、な。「アイツ」じゃ、ないよな……?
《白兎の脚部》、あくまで「所持者」の望む確率を上げるんだよな?
今はその行方が知れない。
そして、もしかしてその「上がった可能性」の分
『何らかの形で帳尻を合わせる』……のか?
じゃあ、『帳尻の合わせ方』がオブリビオン絡みなら
その帳尻で何かを呼び寄せ
待て。なんでアタシはここまで冷静なんだ。
なんで感情的じゃないんだ。
「アイツ」が絡んでるかもしれないんだぞ。
もっと心の奥底から燃え滾る何かが来るはずだろ。
何か、何かがおかしい……。
まるで、湧き上がるものを掠め取られているような……。
くそっ、考えがまとまらねぇ!
人ごみの中を走りながら考えを纏めようとする!
才堂・紅葉
他の猟兵が情報を絞った地図を広げて一つ息をつく。
内容はまだまだ空白ばかりだが、行動指針が得られるだけでも有り難い。
「さて。ひとまず情報を集めないと始まりませんね」
カードを取り出し蒸気バイクを召還して跨る。
【SPD】
方針は地図に落とし込まれた場所に足を運んでの現地調査。
関係者や周辺の者に聞き込みをし、必要なら家屋への潜入や撮影等も行って証言や資料を集め、情報担当に還元します。
優先度の高い表示箇所から順に虱潰しします。
当事者に接触した場合は、可能な限り穏便に接触。対話が不可能なら、気絶で確保します。
【礼儀作法、コミュ力、情報収集、操縦、忍び足、鍵開け、気絶攻撃、グラップル】仕様
【改変、連携歓迎】
数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)は己の感情に困惑していた。
(なんでアタシはここまで冷静なんだ。なんで感情的じゃないんだ。「アイツ」が絡んでるかもしれないんだぞ。もっと心の奥底から燃え滾る何かが来るはずだろ)
夢にまで見た再会のチャンス。それがどんな形でアレ、覚悟はしていたつもりだった。しかし、それがこうして現実となってしまうと、衝撃を受けざるを得ないのかもしれない。だが、その一方で『何かがおかしい』と感じ取ってもいた。
(《白兎の脚部》、あくまで「所持者」の望む確率を上げるんだよな?今はその行方が知れない。そして、もしかしてその「上がった可能性」の分『何らかの形で帳尻を合わせる』……のか?じゃあ、『帳尻の合わせ方』がオブリビオン絡みなら――)
思考はまとまらない。あー!と叫んでいると、横からぬっと影が現れる。周囲を全く警戒していなかった数宮はそれに心底驚いて、ぎゃっと短い悲鳴を上げた。
「ひとまず情報を集めないと始まりませんよ。いまから現地調査を行いますが……貴方も来ませんか、数宮さん」
才堂・紅葉(お嬢・f08859)は、考えるより行動したほうが、今の数宮にとってプラスになると考えたのだろう。走り出しに行こうかと考えていた数宮だったが、その提案に当てもなく駆け回るよりずっといいと考えたのか、頷いた。
「悪い、助かるよ。あたしもついていく」
「それじゃ、移動しましょうか――コード解放!!」
●
結果として、現地での情報集めは苦難の連続で合った。何しろ、目撃者がいないのだ。これは、さきほど地図をくれた猟兵の予想通り『見てしまうといけないもの』なのかもしれない。一方で、悲鳴が上がったが、人混みで見えなかった、など、見ていなかった者からの証言は様々だ。
朝から昼にかけて駆け回る2人の姿。そんな中、昼頃になってようやく外でランチを楽しみ、食事と共に自撮りをしていたOLが発狂しだしたとの目撃情報を手に入れた。
「これは、その時のお客さんの落とし物なんですけど……」
差し出されたスマートフォン。怖くて画面は見れていないのだというカフェショップの店員に、貴方は見なくて良いと才堂は告げた後、慣れた手付きでスマートフォンの鍵をアンロックした。
「すっげ、なんで?なんであいたの?」
「禁則事項なのでお教えできません」
ふふ、と悪い笑みを浮かべた才堂の姿に、こいつにだけはスマートフォンを貸さないようにしようと数宮が心に決めていたその時だった。スマートフォンのカメラロールから見て取れた姿に、
「――! ……これ」
「うっ……だめです、これ以上は見ちゃ、いけな」
「待ってくれ! まだ閉じないで!」
スマートフォンからそそくさと目を離した才堂だったが、対して数宮はその画面をかじりつくように見つめていた。
「嘘、だ……やっぱりお前……オブリビオンになってたのかよ……!」
死人のような青白い肌。発行する体の部位。異常なオーラ。それらを取り除けば、その姿は、彼女が探していた友人――本見・準に酷似していた。
大成功
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第2章 集団戦
『帰宅するものたち』
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POW : 俺はただ家に帰りたいだけなんだ! やめてくれ!
対象の攻撃を軽減する【カバンを盾にした必死の超防御モード 】に変身しつつ、【思わず攻撃をためらってしまう哀れな姿】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 俺のことを待っている人がいるんだ! 死ねない!
自身に【超回復する根性のオーラ 】をまとい、高速移動と【大切な者の記憶を呼び覚まし共感を誘う波動】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 俺には戦う力なんてないのに! あんまりだ!
【猟兵の強さや自分の弱さに絶望する】事で【どんな隙間でもすり抜ける超走行モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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町の中で悲鳴が上がる。何事かと猟兵達が街に繰り出すと、そこにはおそらく『見て』しまったのであろうサラリーマンやOL、学生たちが建物を襲撃していた。一体、何故なのか。今は、理由はわからない。
だが、それぞれがどこかに向かって進軍している。建物を破壊するその姿は狂気的だった。
そして、その誰もがこうつぶやいていた。
「カエリタイ」
「カエリタイ」
「ココニハモウ、イタクナイ」
どこに帰ろうというのか。それとも――どこに、還ろうとしたのか。
拾い上げた人だけではなく、彼の姿を『見た』人までそうなっているのは何故なのか。
猟兵達は鎮圧開始と共に、情報収集を開始する。
弦切・リョーコ
一般人には肉体への過負荷がすぎるね…なんとかUCだけでも止める。少し時間をくれ。
まずは広い視野で観察し【学習力】で彼らのUCを解析、その後片端からモードやオーラを形成する力場を分解霧消させる。優先は味方にSPDのUCで攻撃する奴。制圧はできれば味方に任せ無力化に集中する。
大切な人ね。この私にそんなのは…過去の数多の私しかいないんだよ。そして郷愁を抱くものでなく踏み台にして前に進むためのものだ
帰りたい意思の発端は個々人にあったかもしれんが統合して一つの方向性を持ってるな。カエリタイのは何者なんだ?事の発端たる兎の足ならそれがもともとあった所か?行軍しようとしてた方向を探る必要があるんじゃないかね
弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)はビルの屋上にいた。
先ほどとは違う屋上で、広い視野で以て狂気に陥った軍団の様子を双眼鏡で観察しながら、思いを馳せた。
「一般人には肉体への過負荷がすぎるね…なんとかユーベルコードだけでも止める。少し時間をくれ」
「うおおお! 俺には待っている大切な人が待っているんだ!」
(……大切な人ね。この私にそんなのは…過去の数多の私しかいないんだよ。そして郷愁を抱くものでなく踏み台にして前に進むためのものだ)
双眼鏡が無力化しようとしていた1人の猟兵に対して、持っていた無色透明なビニール傘を、自身に攻撃を向けてきたと思い込んだ狂人が叫びながらそれを広げとする。
「まだ! 死ねない!」
ダメージを回復しようとした彼の周りに――エフェクトがぶわりと広がった。一般的な民には過剰すぎるその力。
「なっ、なんで攻撃する! 俺は、ここで死ぬわけにはいかないのに! 俺には帰りたい場所があるのに、――カエリ、カエ、カエリタイ、ノニ」
徐々に様子がおかしくなっていこうとした直前に、嫌な気配を感じて、弦切は自身しか取り扱えないユーベルコードをいち早く発動する。
「観測完了。解析完了。力場形成から原子核崩壊まで2ミリセコンド、十分だね。」
途端、世界演算『結合分解』(コードルーラー・ディスインテグレーション)は嫌な予感を齎していた狂気に陥っていた一般人のユーベルコードを打ち消した。回復が発動せずに混乱する状態になったその狂人を、そのまま他の猟兵が無力化に成功した。
「帰りたい意思の発端は個々人にあったかもしれんが統合して一つの方向性を持ってるな。カエリタイのは何者なんだ?事の発端たる兎の足ならそれがもともとあった所か? 行軍しようとしてた方向を探る必要があるんじゃないかね」
手にした無線機にその点について、もう少し調査を進めてくれ、と告げる言葉に、了解した、と他の猟兵が返事をする。
「さて。 ……これが分かれば、きっとこの謎の根幹にたどり着ける気がするんだが――」
成功
🔵🔵🔴
才堂・紅葉
折角ですし【数宮・多喜】さんと行動したいですね。
彼女とは団の仲間ですが、様子が変なので気にかけています。
「そこは帰る場所では有りませんよ」
ギターをかき鳴らし、彼らの注意を引く。
望郷を強めるメロディに、落ち着いた声音。
そして大事なのは気合だ。
僅かな時間でも引き付ければ、他の猟兵達が十分な対応を行える。
「マイシスター。お願いします」
同行していれば、多喜さんに声かけ。
割と血の気の多い方だから義憤に駆られている事でしょう。
引きつける限界に至れば優しく微笑。
手をそっと握り、ソフトな足払いからチョーク式のSTF。苦痛を感じぬよう一瞬で締め落とします(UC封じ)。
手早く無傷で鎮圧しましょう。
【連携改変歓迎】
数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み・連携お任せ】
【今だけ感情が希薄です】
【準以外の人は〇〇さん呼び】
【上記の傾向は自覚ありません】
アイツらは一つの感情に支配されているのか?
なら考えられるのはその感情を押しつけられたか、
それ以外の感情を無くされたか、
あるいは両方か、か。
まあいい。
今重要なのは情動の傾向が分かりやすいって点のみだ。
【超感覚探知】を付近一帯に広げて、
異常な感情を抱き始めている人や集団を把握する。
こうして掴んだ情報は周囲に呼びかけて共有を図る。
……感情的になっていないか、って?
何を言っているのか分からないな。
冷静に準を追う事は何より重要じゃないか。
そもそもこういう時はどんな感情を持てばいい?
「そこは帰る場所では有りませんよ」
才堂・紅葉(お嬢・f08859)はギターをかき鳴らし、彼らの注意を引く。望郷を強めるメロディに、落ち着いた声音。……そして大事なのは気合だ。僅かな時間でも引き付ければ、他の猟兵達が十分な対応を行える。
「マイシスター。お願いします」
「……」
「……? マイシスター?」
返事はない。ただ、数宮・多喜(迷走サイキックライダー・f03004)は黙々と静かに彼女だけが使えるユーベルコード、超感覚探知(テレパシーリンク)の範囲を広げる。広げる。広げる――。
「待ってください! それ以上広げたら、貴方の身体に負荷がかかりすぎます!」
「……知ってる」
「ちょっと、落ち着きましょう?ちょっと、感情的になり過ぎていませんか?」
その言葉に、ぴくりと数宮の方が震えた後、ゆらりと才堂に向かって振り返った。その目は、確かに感情に燃えていたが、対して熱を抱いているわけではなく、例えるならば、凍てついた炎といったような、眼差しだった。
「……感情的になっていないか、って? 何を言っているのか分からないな。冷静に準を追う事は何より重要じゃないか。そもそもこういう時はどんな感情を持てばいい?」
ねえ、才堂『さん』。と告げるその言葉の口調に、凍り付く。いつもであれば、こんな、赤の他人のような呼び方を彼女はしない。もっとフレンドリーで、肩を並べて歩幅をそろえて歩いてくれるような、そんな親しみの沸くような部分があった。にもかかわらず、こうして、他人らしすぎる『さん』付けで呼んできた。
(やっぱり、様子が、おかしい――)
他のメンバーに目配せする。それに対して、彼女の友人たちは頷いた。わかっている、と。だから心配で、こうして何人もの猟兵が彼女の為に集まったのだ。
「まぁまぁ、おちついて。私が集めるから、そんなに広げなくても、大丈夫って意味ですよ。 ね?私にも活躍の場を頂戴」
才堂がそう告げれば、しぶしぶ数宮はその索敵範囲を通常に戻す。ホッとする才堂の姿に、いつもなら気が付くはずの数宮だったが、いまはそれすらも気が付かない。
(アイツらは一つの感情に支配されているのか?なら考えられるのはその感情を押しつけられたか、それ以外の感情を無くされたか、あるいは両方か、か)
思考が加速する。同時に、彼女のユーベルコードから、情報を抜き取ろうとしたその時だった。
「う、わっ!」
カエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイカエリタイ――!
「うっ、く……!」
「! ……だめ、読み取るのを止めて!」
狂気に陥っている者の思考を読み取ろうとした数宮だったが、情報と同時にやってきた『どうしようもないほどの帰化願望』に、マインドショックを受けた数宮は、そのまま気絶した。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ニコライ・ヤマモト
(色々歓迎)
見るとどうにかなるというそいつを餌に、何かを願わせ掌で転がす。
……怪異や逸話は噂や体験で人から人へ感染し誇張され力を増すものだ。
そうして力を蓄えればいずれ、賽の目を書き換えるような大事件さえ起こせるかもしれんな。神のように。
【夜光る不幸の瞳】暴徒と視線を合わせ眼を覗き込み恐怖で上書き支配を試みる。
よく思い出せ、お前が抱える本当の不安と恐怖を。それに抗い戦い抜いてきた理由を。
気高いその意志が、どこで、何に捻じ曲げられた?
(ああそうだ。青い首輪、これは俺『たち』もの。沢山の猫のもの。
俺を猟兵にし、俺に混ざってしまった未練たちの。
俺たちだって帰りたいのだ。愛しい主たちの元へ帰りたいのだ)
カエリタイと口々に喚く狂人の群れの中、鎮圧された者の前にニコライ・ヤマモト(郷愁・f11619)は静かに立つ。情報を手に入れるためだ。1人の猟兵が気絶してしまった以上、誰かがカバーするしかない。
すこし衝撃的かもしれないが、ヤマモトがヒゲをぴこぴこと動かし、他の猟兵からそれの許可を得ると、彼にしか扱えないユーベルコード、夜光る不幸の瞳(ヨルヒカルフコウノヒトミ)を展開する。
視線が合った者を恐怖に陥れるそれは、一般人を狂気に陥れた手法とよく似ていて。民衆はその目に恐怖し、その意思をくじかせる。ヤマモトはそれらから情報を引き出した後、猟兵達の元に戻る。
「何かわかった?」
猟兵達の質問に、ヤマモトはため息をつく。
「やっぱり、目視した人間がああいう状態になったのは間違いないな。ただ、俺の技が発動し、機能したのは『写真や鏡を通して見たヤツ』だけだった。あとはダメだ。元を立たないと治らんだろうな」
やはり、気絶させるしか方法はなさそうだなとヤマモトは提言した。
(見るとどうにかなるというそいつを餌に、何かを願わせ掌で転がす。……怪異や逸話は噂や体験で人から人へ感染し誇張され力を増すものだ。
そうして力を蓄えればいずれ、賽の目を書き換えるような大事件さえ起こせるかもしれんな。神のように)
《白兎の脚部》は、あの時目にした小ぶりなただのお守り程度のものではなくなってるのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
朧・紅
【連携お任せ】
【アドリブ歓迎】
【紅】で行動
僕は大切な人…両親にはもう会えないですから…
いつもと違う多喜さんが心配ですが会わせたいです
…お相手も多喜さんに会いたがっているのでしょうか?
多喜さんはここにいるですよ
見てない人たちには透明な血糸を目に貼りつけて逃げて貰うです
元凶と遭遇しそうなら色を付けて視界遮るですよ
見てしまった人たちには見える血液でフェイントかけ行動を読みやすく、見えない血液で絡め取りゴム状の強度にして束縛するですね
後は遙さんと獅郎さんにお任せです
血糸を伸ばして高い所へ移動
上から多喜さんの情報を元に「見てしまった人たち」の動向探るです
どこへ向うです?どこから来たです?
きっとそこに…
仁上・獅郎
【連携お任せ】
数宮さんのご友人が元凶、との知らせで来ましたが…
『見た』人を早めに鎮圧せねばなりませんね。
彼らの為にも、そして数宮さんがご友人を追う為にも。
行動を観察し、次の動きを[見切り]ながら対処を。
[早業]でレプリカクラフト製の捕縛罠を設置し捕縛。
[医術]知識から、関節の可動を制限するように鋼糸で拘束。
彼らも被害者です、傷つけぬよう立ち回らないと。
拘束した方は春霞先生に任せつつ、
僕の方でも[催眠術]で狂気を除けないか試しましょう。
共に精神に作用するもの、ならば解除できるやも。
さて、彼らは何処に行くのか。
数宮さんと紅さんが動向を探ってくれていますが…
帰りたい? あるいは還りたい、でしょうか?
春霞・遙
大切な友人が目的に辿り着けるよう道をひらきます。
巻き込まれた人たちをできるだけ傷つけないとなると……折り紙で動物でも折って捕縛を手伝ってもらいましょうか。
まずは発狂していない人たちがこれ以上巻き込まれないよう、操作した折り紙で気を逸らすか目隠しして直接的に視野を塞ぎます。
数宮さんの情報から『彼』とやらの位置関係を考えながら、味方がその狂気に取り込まれてしまいそうな時はその前に視界を奪います。
あとはまあ、仁上先生や朧ちゃんが捕縛した何処かへ帰りたい人たちを銃の柄か杖で「気絶攻撃」で鎮圧。
感染する狂気?それは誰の意志なのかな。その先に行ってみればわかる、かな?
アドリブ・連携はお任せします
気絶してしまった猟兵を庇いながら、彼らは一般人を気絶させる方向で動くことにした。とはいえ、全てを鎮圧するのは難しい。先のユーベルコードで集められなかった僅かな人々に、素早く朧・紅(朧と紅・f01176)が近づいて、その背中にこっそりと彼女にしか扱えないユーベルコードである血糸(ブラッディ・カーニバル)をくっつける。鎮圧するだけのことが出来なくても、透明な血で出来た糸は、そのうち彼らが行く先にたどり着く材料になるかもしれないと考えたのだ。
(僕は大切な人…両親にはもう会えないですから
……。……お相手も多喜さんに会いたがっているのでしょうか?多喜さんはここにいるですよ)
その行動に軽く頷き、ではこちらは自分がと、先ほど集められた人々の鎮圧に向かうのは春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)だ。彼女は折り紙を使って彼女のユーベルコード、仕掛け折り紙(シカケオリガミ)を展開させる。
「『命を持たない紙の鳥、散らず褪せない紙の花、くるりくるり、舞い踊れ』」
疑似的な命を宿した動植物の折り紙たちは、捕縛可能なように狂気に陥った人々を追い込んでいく。さながらそれは羊を取りまとめる牧羊犬のような動きであった。その様に少し、不謹慎ながら笑ってしまったが、咳払いの後に、それでは、と仁上・獅郎(片青眼の小夜啼鳥・f03866)が手際よく、[医術]知識から、関節の可動を制限するように鋼糸で拘束していく。
「感染する狂気?それは誰の意志なのかな。その先に行ってみればわかる、かな?」
「それを知る為にも、『見た』人を早めに鎮圧せねばなりませんね。
彼らの為にも、そして数宮さんがご友人を追う為にも」
「いつもと違う多喜さんが心配ですが会わせたいです」
しょんぼりとする『紅』の姿に、同意する二人。彼らは、今気絶しているかの猟兵の為に、ここに集まったのだ。――全てが救われるとは思いません、救いたいと願うんです、と普段から言うのは仁上だったが、今回ばかりは二人を、同時に、すなわち全てを救いたいと願わずにはいられなかった。春霞もそれには同意せざるを得なかった。仁上や『紅』が捕縛した何処かへ帰りたい人たちを銃の柄か杖で「気絶攻撃」で鎮圧する。
「でも、確か、《白兎の脚部》って――」
「持ち主の願いを叶える可能性を上げる、UDCオブジェクトだ。最も今は行方不明だが」
「そうですよね。じゃあ、今回は……願う分には平気かな」
「前回、猟兵達が手にしていた際は、ある猟兵の生命の危機にとっさに、効果を発揮していたとのことだったけれど……」
もしも、もしもだが、そのUDCオブジェクトが『持ち主』から『その場にいる人』に対象が広がっていたら、それはかなり、怖い。だが、この狂気に陥っている人の人数やカエリタイとよだれを垂らしながらつぶやく者。それらを考え見るに――
「いや、今回も、願わず、自ら掴み取る方向で行きましょう。念のため」
「了解です、先生」
「はーい」
三人組は、推理に基づいて動くことにした。
――そしてそれはのちに、運命を変える事となる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
土斬・戎兵衛
うえップ、まだ気持ち悪いや……
あの青白はなんだ? 《白兎の脚部》が成長して人間サイズにでも育ったか?
ともあれ今回も邪なる者絡み、邪教の連中が欲していたのもあるし、《白兎の脚部》には邪神を招く触媒としての力がありそーだ
アレを見ると気が狂うというなら暴徒の発生する方向に行けば追い付くことは叶いそうでござるな
暴徒は命中率重視の刃で【早業】処理
白昼堂々、一般人相手の刃傷沙汰は拙者の名声が傷つきそうなので可能なら峰打ちで
正気に戻る見込みがないなら、久方ぶりの人斬りもやむ無しか
峰にせよ、刃にせよ、斬ることこそ己が生業と自認していれば、共感も哀れみも、刃の錆にしかならぬものは浮かばぬよ
(絡み・アドリブ歓迎)
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
【少しぼんやりしてます】
かえりたい
かえりたい
どこへ?
それはきっと
……
……声が聞こえる。
目を開けなきゃ。
紅葉。
紅ちゃん。
遥センセ。
そして、仁上センセ。
心配してくれる声には強がらず、
あんまり良くないと正直に苦笑する。
皆の力、当てにさせてもらうよ。
現在地からアタシと準の故郷の方角を
スマホで調べて皆へ伝える。
根拠はないけど、そっちに居るような気がするんだ。
正気を失って帰ろうとしてる連中には
帰ってもらうかな。
【弱点特攻作成】で彼らの自宅のドアの
レプリカを作って開けさせるよ。
……ドアノブには気絶させる為の
高圧電流が流れてるんだけどな!
かえりたい
かえりたい
どこへ?
それはきっと
……。
……声が聞こえる。
目を開けなきゃ。
紅葉。
紅ちゃん。
遥センセ。
そして、仁上センセ。
●
「うえップ、まだ気持ち悪いや……」
刀で峰打ちをして次々と狂気に陥った者達を沈める土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)は口元に残る酸っぱい胃液に顔を顰める。あの時見たあの青白いものは一体、なんだったのか。
「アレを見ると気が狂うというなら暴徒の発生する方向に行けば追い付くことは叶いそうでござるな」
彼はより、手際よく裁くために、彼にしか扱えぬユーベルコード、無手デ在レド、無刀ニ非ズ(ムテデアレドムトウニアラズ)を使い、沈めていく。当然抗う者も多少はいたが、殆どはあの何やら事情を抱える三人組がまとめていてくれていたりだとか、縛り上げていてくれていたりだとかで抵抗は少ない。
「俺はただ家に帰りたいだけなんだ! やめてくれ!」
「すまんなぁ、こっちも仕事なんだわ、わかっちょくれな」
なによりも、毎秒命を削るユーベルコードを一般人に長く使わせるわけにはいかない。土斬は哀れな姿で懇願する者に対してもためらわず、その刀で意識を落とす。
「今回も邪なる者絡み、邪教の連中が欲していたのもあるし、《白兎の脚部》には邪神を招く触媒としての力がありそーだ。それにしても、あれはなんだったんだ? 《白兎の脚部》が成長して人間サイズにでも育ったか?」
その言葉に、ううん、と唸るような声で否定する声が上がる。気絶していた数宮・多喜(激走サイキックライダー・f03004)が目を覚ましたのだ。
「違う、彼女は、アタシの探していた人なんだ」
「人? ……アレがか?」
「そう。どうして、ああなってしまったのかは、わからないけれど……」
よたよたと立ち上がる数宮の言葉に、土斬はすこし安堵する。もしあれがあのUDCオブジェクトの人型だったとしたら、なんて恐ろしいことを見逃していたのだろうと多少責任を感じていたのかもしれない。
「ともかく、方角が分かった」
「方角? 方角って、つまり、あれがいる場所か?」
「たぶん。 帰りたい場所が、わかったから」
狂気に陥った彼らが――否、彼女が、かもしれない。あるいはあのUDCオブジェクトの意志なのかもしれないが、いずれにしろ答えは1つだ。
「月に帰りたいんだ。 ……海に還りたいんだ。でも、海としってもそれは母なる海っていみで、本当に還りたい場所は――」
あの、穏やかな、胎内に還りたいんだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『イリーガルケース『リターナー・ジェイ』』
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POW : Koと葉をオshiえテ?
【引火性の強い自身の体組織 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【言語能力を奪い続ける寄生体】で繋ぐ。
SPD : 帰らなきゃ、あのMaチへ
自身の【記憶にかすかに残る場所へ帰る歩み 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ : soのコKoろ、ちょうdaイ?
【自身を認識することで何らか 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【空間の歪み】から、高命中力の【対象の感情を奪う不可視の力線】を飛ばす。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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――カエリタイ。イタイノハ、モウ、イヤダ。
――シアワセニナリタカッタ。シアワセナエガオをミツヅケタカッタ。
――ネエ、オカアサン、ゴメンネ。
――ワタシヲタスケタリシタカラ、シンジャッタ、カワイソウナ、オカアサン。
●
脳裏にちらつくイメージが彼女を支配していた。カエリタイ。……どこに? わからない。けれど、脳内にちらつくのは研究員の白衣が真っ赤に染まるさまと、黒いローブを着た集団。そして、足を切り取られた激痛と、供物として海に捧げられた命。意識は残って、ずっと奉仕してきた。にもかかわらず、もうして疑似的に再び痛みを感じる体にされてしまった。もう、限界だった。
「AAh……」
彼女は涙する。何度も夢見てしまう。
帰りたいんだ。大切な人の腕の中へ。
孵りたいんだ。大切な人の腕の中で。
――還りたいんだ。あの海の底へ。
「――チgAウ………カEリTaイノh@。」
UDCオブジェクトの意識の、ほんのわずかな彼女の意識。
それが、おぼろげに、大切な人の名前を、呼んだ。
狂気に陥った者たちを次々と無力化させていく猟兵たち。
素早く対応できたとはいえ、数が数。気がつけば彼らは橋の上に立っていたソレが見えてきた。
「うっ……」
見るだけでそれはマインドダメージを与えてくるシロモノ。先の戦闘で、そういえばと思い出す。
《直接見た物は治せなかった》
やっかいな相手だ。と猟兵たちは思案する。猟兵の中には直接見た事で体調を著しく崩した者もいたことから、猟兵にも影響があるのは明らかだった。
才堂・紅葉
【連携・アドリブ歓迎】
「やっとエンジンがかかったようですね、マイシスター」
友人達に囲まれた様子を見やり胸を撫で下ろす。
なら、後は自分の役目を果たすだけだ。
「認識したらアウトと言うのは厳しい条件ですが」
後ろ手に髪の毛を下ろし、真の姿を開放する。
髪の毛は赤く染まり、虚空からつかみ出したドレスを身にまとう。
普段はとにかく制御が難しく、出力が大き過ぎるために反動で生身が潰れかねないが今は切り時だ。
照明弾を一発あげて合図。
橋の直上に飛翔し、重力子マグナムで橋の中心を狙う。
大事なのは対象を認識して狙わないこと。
そして区画ごと崩落させて動きを封じる事だ。
【地形の利用、属性攻撃、気合、野生の勘、戦闘知識】
才堂・紅葉(お嬢・f08859)は鉄骨の上に立っていた。海の上を繋ぐ橋を見下ろして、作戦通り集まってきた猟兵達を見つめれば、口角を上げる。中心にいたのは彼女の大切な友人だ。初めは切羽詰まった状況に苦しんでいた彼女だったが、今はもう、支えてくれる周りの人を認知できているらしい、柔らかな表情に安堵する。
「やっとエンジンがかかったようですね、マイシスター」
憂うものはもう無い。なら、後は自分の役目を果たすだけだ。
「認識したらアウトと言うのは厳しい条件ですが」
後ろ手に髪の毛を下ろし、真の姿を開放する。髪の毛は赤く染まり、虚空からつかみ出したドレスを身にまとう。色鮮やかに変わっていった真紅の髪を海風が巻き上げる。
普段はとにかく制御が難しく、出力が大き過ぎるために反動で生身が潰れかねないが今は切り時だ。
照明弾を一発あげて合図を送る。橋の直上に飛翔し、重力子マグナムで橋の中心を狙う。大事なのは対象を認識して狙わないこと。そして区画ごと崩落させて動きを封じる事だ。
「はぁぁぁぁあッ!」
響き渡る重低音。刹那、橋は落ちていく。海の方へと、堕ちていく。
「……カエRe:ノレ?」
それは、彼女の意識が、猟兵を認識した瞬間でもあった
成功
🔵🔵🔴
リグレース・ロディット
言われて気づいた僕だよ。久しぶり《白兎の脚部》。まだ終わらないんだねぇ。
【WIZ】見ちゃダメ……左目は閉じて右目の『導きの銀』越しに見るね。……かえりたい、ねー。かえるっていう事は過去にしか目を向けれないの?変えることはできないの?……悲しいね。寂しいね。早く還らせてあげなきゃ。
『赤く煌く影が散る』の花びらで皆が、それ、を認識させないようにしてみるね。戦いの邪魔になるならやらないよ。けど『黒剣影』や『暴食紫炎』で2回攻撃して、それ、の邪魔を出来るように頑張るよ。
感情がなくなったら?空っぽになるんじゃないかな。どうせならいらない感情をとってほしいなぁ……悲しみとか。
(絡み・アドリブ大歓迎)
空高く伸びる水柱があるから飛び出すように、リグレース・ロディット(夢みる虚・f03337)は姿を現した。左目を閉じて、て右目の『導きの銀』越しにオブリビオン――イリーガルケース『リターナー・ジェイ』と呼ばれたそれを視認する。
「その目に、その夢に、この花を―――」
味方がそれを認識する前にとリグレースが赤く煌く影が散る(ブラッドフェントム)を発動させると、血と影でできた夕顔が彼女を取り巻いた。これで、時間は稼げるだろう。不規則に揺れる海の上で揺蕩う橋の上に着地し、リグレースが再度、今度は攻撃に映らんとした直後だった。
「……あN@タ八、ダァRe:?」
――目が、合った。
刹那、全身を恐怖が、嫌悪が、絶望が駆け巡る。攻撃に移ろうとした行動は、彼に隙を作らせた。大勢を狂気に陥れたその力は、直視していなければ時間は稼げるものの、たしかに猟兵にも、影響を与えるのだ。
「ぐっ……」
リグレースは片膝をつき、脂汗を流しながらもなんとか意識を集中させる。あいつと目が合わないように。そのためにも、この花びらは消して、舞い踊るのをやめさせるわけには行かないのだと。
苦戦
🔵🔴🔴
ニコライ・ヤマモト
願いが叶ったとて、結果幸せかどうかは……。本人と、その友にしか分からんのだろうな。
……力を貸そう。
他の猟兵が『見なくても攻撃できる』ように支援する。
先の探索時の話を聞く限り、視認してから正気を失うまでに多少の猶予があるように思えた。
ひとまず手鏡で敵の位置を探り[クイックドロウ/スナイパー/鎧無視攻撃/2回攻撃]銃での牽制。
■自分が動けなく(瀕死に?)なったら本命のUCを発動。
【怪異為す魔除け厄喚び幸運の獣】を敵に組み付きor追跡させ、鳴き声などで「敵の位置を仲間に知らせ」させる。
こいつ(ナイン・ライヴス)なら俺の操作も正常な判断も必要もない。
こいつごと敵を攻撃してくれて構わない。任せたぞ。
落ちた橋の上、コンクリートがぱらつき、鉄骨がむき出しになっている場所に彼はいた。
(願いが叶ったとて、結果幸せかどうかは……。本人と、その友にしか分からんのだろうな)
ニコライ・ヤマモト(郷愁・f11619)は鏡を立てると、その鏡越しに獲物を視認する。舞い散る花弁により視認性は低くなっていたが、スナイパーライフルを相棒とする彼にとって狙うのはそれほど苦ではない。なにより、その艶やかな花弁を発生させている猟兵に敵が意識を向けていることによって自身に狂気の影響が薄くしか広がっていかないのを感じていた。
自由に動き回られては困るのだ。なにより、膝をついている猟兵に近づいていくその姿を見過ごすわけには行かない。
ニコライの手元から、銃声が二度響き渡る。ひとつ目は左脚膝部、もうひとつは右脚膝部を貫くと、対象がぐらりと体勢を崩す。膝をついたそれが、こちらを見た。
「……っ! 俺も埒外の怪物だ。やれるものなら――殺しきってみせろ」
ぐらりと意識が傾く前に、事前に用意していた術式が発動するのを確認すると、彼はふっと口角を上げた。
「……あとはお前次第だ」
目下で親友と対峙する彼の者の姿に対して、健闘を祈ったのちに、彼の意識は途絶えた。
苦戦
🔵🔴🔴
土斬・戎兵衛
そんなに胎ん中っていうのは良いもんなんかな?
俺ちゃん、研究室生まれだからよー分からないや
拙者の剣はこの瞳の見きりをこそ要とする技
"視る"ことに枷をかけるとは中々どうして天敵なり
此度は補助に回らせてもらおう
攻撃後離脱を前提に痛みを覚悟で直視し、中距離から咎力封じで攻撃
拷問具・首枷で相手を捕らえて動きを制限したい
こちらの気をおかしくさせるアレの力がUC由来なら咎力封じで多少は弱められるか?
言葉の要らぬ斬り合いに生きる拙者でも、言を交わしてアレを止めようとする同業が目と目を合わせる一助くらいはできよう
……にしても、《白兎の脚部》はどこ行ったんかな?
あの青白も《白兎の脚部》に当てられたくちだったのか?
「そんなに胎ん中っていうのは良いもんなんかな? 俺ちゃん、研究室生まれだからよー分からないや」
でもまぁ、と彼は頬を掻く。帰りたいと思う場所があることは良いことだ。なにより、帰りたいと思う場所があると言うことは、そこがその存在にとっての拠り所なのだろうから、それを無下にすることはできない。
刀から手を離し、代わりに彼の持つユーベルコードによって生み出された鎖を振り回し始める。
「後悔はするもんじゃあない。その助太刀を、拙者の力でご覧に入れやしょう」
幾万の花びらで妨害され、視認性は悪かったが、遠くで鳴った銃声によって吹き出した体液の匂いと、彼が倒れぎわに残した術式で、イリーガルケース『リターナー・ジェイ』の位置はばっちり把握できた。
「こちらの気をおかしくさせるアレの力がUC由来なら咎力封じで多少は弱められるはず!」
土斬・戎兵衛("刃筋"の十・f12308)の放った鎖は、オブリビオンを拘束し、その呪いの力を軽減させる事に成功したのだ。
しかし、無力化できたわけではない。これは、時間稼ぎにしかならないことを、最初に彼女を目視し、狂気の影響を受けた土斬はよくわかっていた。
それでも、だ。
(言葉の要らぬ斬り合いに生きる拙者でも、言を交わしてアレを止めようとする同業が目と目を合わせる一助くらいはできよう)
機会を作る1つの柱に彼もまた加わったのである。
成功
🔵🔵🔴
フィロメーラ・アステール
(こそっと【忍び足】)
あたしの【第六感】に、誰かの想いが聞こえた。
……気がする!
今日の運命の風は、誰の、どんな可能性のために吹くのだろう?
もしあたしの力が必要なら使っておくれ!
幸運のため限定でな!
【星の遊び場】を発動だ!
辺りに【全力魔法】で聖なる【破魔】属性の霧を起こし、【迷彩】効果で敵の姿を隠すのを手伝うぜ!
場が対象なら敵の姿は直視しなくていいはず!
【呪詛耐性】と【オーラ防御】の力を含ませ、もし見えてしまった場合でも呪い効果を軽減させる!
空間に聖なる力が充満すれば、歪みや力線の動きも確認できるかも?
感情を奪われる奴がいたら【鼓舞】の声を投げかけ【気合い】を入れるぞ!
【勇気】を振り絞れってね!
(あたしの【第六感】に、誰かの想いが聞こえた。……気がする!)
フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は崩れかけの橋の上で横たわる猟兵の姿を認識すれば、即座に駆け寄ってその額に手をかざす。
彼女のユーベルコードは『破魔』の力を宿していた。魔に取り憑かれた猟兵を癒すのに、打って付けのシロモノだったのである。猫の額程のナントカというけれど、妖精である彼女にとってその額は大きいと感じさせるものだった。
かざしていた光が収束する。どうやら彼に取り付いていた狂気は取り除けたようだ。
「さあ、最高にラッキーな時間のはじまりだぞー!」
とう!とフィロメーラは崩れた橋の方は飛び込むと、彼女が着地した地点から星々の煌めきが空中に漂い始める。光の連鎖が、退魔の鎖をより強固にしていく。
「こいつの狂気はあたしにまかせろー! バリバリ!」
自信満々に振り返り、親指を突き出す彼女のなんと頼もしいことだろうか。
猟兵達は動き出す。星の遊び場(トリッキー・スター・ファンダム)と呼ばれるこの橋の舞台の上で、踊り始めるのだ。
大成功
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仁上・獅郎
【夜烏】
アドリブ可
見れば心を狂わせる。
見えないならば、見る必要のない攻撃を。
先の方が橋を崩し、彼女を水面へと落としているのでしたら好機。
目を閉じ、[聞き耳]を立て、彼女の大よその位置を把握。
そして[高速詠唱]――【炎神招来】。
正確な場所でなくとも良い、大雑把な狙いで大丈夫。
狂える炎が無差別に暴れに行くのですから。
さて、上は大火事、下は川……然らば、高熱がその水を気化させ、
大量の水蒸気で視界を晦ませられるでしょうか。
敵にも味方にも[目潰し]、ですね。
そのタイミングで生ける炎は送還させておきましょう。
僕にできるのはこの程度まで。
この後はマーラーさん、紅さん、春霞先生、そして数宮さん。
頼みました。
姿を認識するだけで発動するユーベルコードの呪いは解かれた。しかし、オブリビオンと目を合わせることで起きる魔の狂気までは取り除くことは難しい。ならば、目を合わせないようにすればよかろうと仁上・獅郎(片青眼の小夜啼鳥・f03866)は詠唱を始める。
「ファム・アル=フートの主、生ける炎の旧支配者、無数の火を従える邪神よ。我が呼び掛けに応え、その断片を此処に――!」
刹那、あたりを豪炎が迸る。海を走り、橋の鉄骨を溶かし、アスファルトを焦がしてオブリビオンに迫っていく。
「!!!アアアアアア!」
引火性の高い体液を撃ち抜かれた膝から垂れ流していたオブリビオンはたまらない。その炎が呪われた身体を燃やしていく。視線が炎に集まる。それは、もう、こちらから働きかけない限り、彼女が猟兵に向けて目を合わせない事を示していた。
「僕にできるのはこの程度まで。この後はマーラーさん、紅さん、春霞先生、そして数宮さん。頼みました」
暴れ狂う炎に自らの服をも焦がしつつ、仁上は仲間に向かって目を細めた。
成功
🔵🔵🔴
マーラー・ジュウナナサイ
【夜烏】同行・アレンジ歓迎
困りましたわね
こんなときには【純白偽装】ですわ!
……何かしらこの、長い数珠状の……ガジェット?
まぁ、繋がった球ひとつひとつが光りますわ
うふふ、カラフルな電飾ですこと
何の役に立ちますの!?
いえ、一旦視界を閉ざして、光だけ通るようにしたなら……
いけるかもしれませんわ
皆さんをお呼びして、手短に作戦会議を開きます
目指すのは、咎力封じで、ユーベルコード由来と思われる「見る者を狂わせる力」を無力化することですわ
視界を閉ざすのは獅郎さんに、
光をマーカーとして準さんにつけるのは遙さんに、
そして咎力封じは紅さんにお願いします
ユーベルコードを封じたあとは……多喜さんにお任せいたしましょう
朧・紅
【夜烏】の皆と一緒
アドリブ歓迎
【紅】で行動
作戦了解です
準さんの落下予測したポジショニングで
力を抜いて精神統一
最初は視力使わず
【聞き耳】に集中すべての音を立体的に把握する
崩落の音、落下音、着水音、重い、軽い、動き、足音、声、鼓動の有無
そこに【第六感】を上乗せ
オブリビオンの気配、精神阻害の気配、《白兎の脚部》の気配
準さんの位置把握に努め
さらに視覚情報の光でダメ押し
より高精度な精密攻撃を試みる
絶対に一つも外さないのです!
【ロープワーク】を駆使し自由に動くギロチンのロープで【咎力封じ】を放つ
『全てを当ててユーベルコードを封じる』事を目的に
そのまま巻き付け動きも拘束するですよ
多喜さんと準さんの架け橋に
春霞・遙
【夜烏】
旧友との再会と永遠の別れに数宮さんが少しでも悔いずに済むよう手伝います。
見る者の心を乱すUCを封じれば面と向かって言葉を交わせるのではないか、と。試す価値はありますよね。マーラーさんの案に乗ります。
折り鶴を【仕掛け折り紙】で複製し、ネット状に編んだ電飾に等間隔になるよう尾を括り付けます。
仁上先生の攻撃で水面が煙ったら「聞き耳」と「第六感」に任せ水蒸気を漉す様に折り鶴に電飾ネットを運ばせます。光る網が物に触れたらそれを中心に弧を描くよう操作し水蒸気の中の人物に電飾を絡めつけます。紅ちゃんの咎力封じが当たるように頭手足の形状が浮き出るよう、その場へ縫い付けるよう、抱き締めるよう強く強く。
猛り狂う炎の中で、むわりとした霧が橋の上を覆い始めていた。海から発生した水蒸気が、イリーガルケース『リターナー・ジェイ』の姿を覆い隠す。彼らの創意工夫はそれだけではない。さらなる退魔の鎖をと朧・紅(朧と紅・f01176)がユーベルコードである咎力封じを発動させようと狙いを定め始める。
すでにある程度はグルグル巻きになっているオブリビオンにマーラー・ジュウナナサイ(17歳ぴっちぴちギャル・f00029)が困ったように笑いながら、その姿を変身させる。
「……何かしらこの、長い数珠状の……ガジェット? まぁ、繋がった球ひとつひとつが光りますわ。うふふ、カラフルな電飾ですこと」
純白偽装(ル・マリアージュ・ブラン)の特徴である『いま戦っている対象に有効な【道具や武器など純白の偽の装備『偽装』】(形状は毎回変わる)が召喚される』この能力を、きちんと理解した彼女はオブリビオンにそれを巻きつける。
「絶対に一つも外さないのです!」
ピカピカと霧の中で光るそれを、見逃すはずもなく、紅は咎力封じを当ててみせる。1つ、2つ、そして――3つ。合計6つの鎖がオブリビオンを拘束した。
「やった!当たりましたよ!」
「よし、もっともっと飾り付けちゃいましょう!!」
2人の言葉に、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は頷くと、マーラーの作戦を思い出す見る者の心を乱すUCを封じれば面と向かって言葉を交わせるのではないか、と。試す価値はあるはずだ。
「命を持たない紙の鳥、散らず褪せない紙の花、くるりくるり、舞い踊れ」
春霞の懐からふわりふわりと折り鶴達が飛び立っていく。その数なんと、数千羽。千羽鶴も驚きの数が、電飾ネットをその身に託されると、霧の中で光り輝くそれに、さらなる光をと飛び去っていく。
「行け」
「行って」
「お願い、届いてください」
「届け、届いてくれ」
「大丈夫!きっと届くわ!」
「そうですね、きっと」
数多の鶴に想いを乗せて。光がイリーガルケース『リターナー・ジェイ』に向かって飛んでいく。そして、その光を追うように、また、1つの影も駆け出した。
猟兵の目的はオブリビオンの排除だ。ゆえに、これまでの被害や影響、それらを全て鑑みれば今ここで、さっさと倒すのが『彼らの仕事』だ。
しかし、彼らは人間だ。『猟兵』という括りに縛られているものの、心を持った存在である。
それゆえに、救えるものが多ければと願ってしまうのを、一体誰が責められるだろう?
彼らは選択したのだ。『全てを救う』――イリーガルケース『リターナー・ジェイ』、否、猟兵の1人がずっとずっと探し求めていた『本見準(もとみ・じゅん)』という人物だったモノをも救う、その選択を。
強欲だ、と笑う者もいるだろう。非効率的だと呆れるものもいるだろう。しかし、ここにいる猟兵は皆、その選択を許したのだ。後悔のない終わりを。せめてもの手向けをと。
――一体、誰が、その結果を、結末を責められただろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
【夜烏】
準からの精神干渉はずっと続いてた。
でもそれは、アタシの想いの強さの裏返し。
だから。もう少しだけ、持ってくれ……!
海に続く川下で水面に『マヒ攻撃』を込めたサイキックの電撃を流しながら、
目を閉じて静かに時を待つ。
物が落ちる水音を聞いたら、
電圧を下げて電飾への電力供給を中心に切り替える。
大きな爆音と熱を感じたら、
周囲にも紫電を巡らせ、厳かに聖句を唱え始める。
アタシを呼ぶ声が聞こえたら……
カッと目を見開いて、『勇気』と『気合い』の想いを込めた、
『覚悟』の【黄泉送る檻】を放つ。
もし失敗したら、なんて考えない。
アタシが、準を迎えるんだ。
そして…看取らなきゃいけないんだ!
数宮・多喜(激走サイキックライダー・f03004)は海の上で揺れて不安定になっている橋を駆けてゆく。霧で視界が悪い。しかし、光り輝く一点が、仲間が残してくれた希望が、そこにはあった。そこに、彼女の終着点があった。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
暴れ狂う炎が髪を焦がしても、霧が視界を覆っても、海風が正面から吹こうとも、彼女は走った。走り続けた。その手には、この為に、この時の為に用意した、ユーベルコード『黄泉送る檻(サイキネティック・プリズン)』を発動させて。
「私はここだ!じゅーーーーーーーーん!!!」
その声が、拳が、光が、雷が今、――届いた。
●
ねえ、君はどこに帰りたいの
ボクは……お母さんのところに帰りたい
そう。なら、ここでさよならだね
もう行ってしまうの?
うん、だって私は――
「多喜。ごめんね、さようなら。ありがとう」
――帰りたい場所に、帰れたから。
●
「ただいま」
――かのオブリビオンは、果てる前に、最後の一撃を与えた彼女にそう言って微笑みかけたという。そうして、1つの光が立ち上っていった。
●
帰りたい、あるいは還りたいと願った彼らの魂は、もとあるべき姿に戻っていった。2つはそれぞれに別たれ、未練なくした彼女の魂はいつまでも空高く登っていく。光が消えて、見届けたあと撤退していく猟兵達を見下ろしながら彼は羨ましそうに呟いた。
「……いいなぁ。ボクも、早く還りたいのに」
白兎の耳が海風に揺れる。両方の脚に外なる神の炎を宿したそれは未だ還れぬ自身を憂いて、ため息をつく。
あとどれくらいの人間の願いを叶えたら、己の願いは叶うのだろう。なんで、人は祈るのだろう。なんて欲深いんだろう。
「わかった、ボク、わかっちゃった」
泣きはらし、淀んだ赤い瞳が、空を見上げる。
「祈る人がいなくなればいいんだ。願う人がいなくなればいいんだ。そうすればボクはきっと還れるんだ」
さぁ、戦争をしよう、猟兵達。
ボクの想いと君達の想いを掛けた、戦争を――!
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年05月05日
宿敵
『イリーガルケース『リターナー・ジェイ』』
を撃破!
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