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歌はジャスティス!!

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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●ジャール・プチーツァは墜ちた
 赤い少女が空を翔ける。
 燃える拳は厚さ数センチの鉄板を貫き、炎で形作られた翼は最大速度マッハ2.3を叩き出し、必殺の火炎はあらゆる悪を焼き尽くす。
「フェニックスガール」。巷ではそう呼ばれているヒーローだ。彼女は翼を羽ばたかせ、地上に降り立った。
 そこはかつてのジャスティス・ウォーによって破壊された都市だった。ここで命を落とした人々に短く祈りを捧げ、フェニックスガールは待ち受けていた宿敵に向き直った。
「スカルバロン。わざわざ呼び出すなんてどういう風の吹き回し?」
 黒い骸骨の仮面を付けた男は低く笑うだけだった。その笑声が癇に障ったのか、フェニックスガールは眦を吊り上げる。
「どうやらまだ罪を償うつもりはないみたいね。だったら容赦しないわ」
「容赦しないならどうするんだい、小鳥ちゃん?」
 フェニックスガールが炎をまとった拳を構える。これまでその一撃はスカルバロンの企みを打ち砕いてきたが、本人に届いたことはなかった。
「あんたの罪ごと灰にしてあげる」
「ハハ、その決め台詞は聞き飽きたよ」
 フェニックスガールは怒りを込めて地を蹴った。近づいて殴る。ただそれだけの攻撃だが、音速を超える速さで繰り出されるなら回避は困難。ましてやスカルバロンは瓦礫に腰かけたまま。
(今日こそ――!)
 だが、突如として現れた影がフェニックスガールの拳を受け止めた。衝撃波にも微動だにしない巌のようなその姿を認めた彼女の目が、驚愕に見開かれる。
「そんな、あなたは……!!」
 赤い少女が地面に叩きつけられる。さらに何本もの腕が伸び――。
「ウソよ……イヤ、イヤぁぁぁぁっ!!」
 絶叫と翼がもがれる音がして、廃墟に灯っていた火が消えた。

●イェーガー・ミーツ・ヒーロー
 猟兵達がグリモアベースへとやって来ると、ミレイユ・ダーエ(永遠の森の歌乙女・f01590)と見慣れぬ風景が彼らを出迎えた。
「こんにちは。早速ですが、今回はヒーローズアースに現れるオブリビオンを倒していただきたいのです」
 先日新たに往来が可能となった世界の名前をミレイユは口にした。どうやら、周囲の景色はその新世界のものであるらしい。
「ヒーローズアースでは、特殊な力を持った人々がヒーローとヴィランとに分かれて戦ってきたそうです。オブリビオンの介入によって、その戦火はさらに広がっていますの」
 今回起こるのも、そのようなオブリビオンの暗躍の一つである。
「皆さんには『フェニックスガール』というヒーローの救出をお願いいたしますの。彼女の宿敵『スカルバロン』がオブリビオンの助力を得て彼女を殺そうとしているのです」
 スカルバロン自身はオブリビオンではない。彼に力を貸しているオブリビオンを倒すことが目的だ。
 フェニックスガールの前に現れるオブリビオンは「ジャスティストルーパー」という人造人間の集団だ。
「機械仕掛けとはいえ、一体一体がヒーローと同じくらいの強さを持っています。特に傷つけば傷つくほど強くなるユーベルコードにはご注意くださいませ」
 これらの人造人間は直接的な戦闘能力以外にも武器を持っている。かつて活躍したヒーロー「ジャスティス・ワン」を模したその姿だ。フェニックスガールが敗北する原因も「ジャスティス・ワンが敵になった」という状況に心が打ちのめされてしまう点が大きい。
「ですので、ジャスティストルーパーと戦うのと同じくらい、フェニックスガールさんを励ましてあげることも重要ですの」
 しかし、まずは目前の危機を脱することが重要だ。きちんと対話するのは無事に救出してからでも遅くはない。

●夜明けの星、光る時
「フェニックスガールさんを元気づける方法ですが、私にいい考えがありますの」
 なにやら自信ありげに、ミレイユは人差し指を立ててみせる。
「普段の彼女は、音楽が好きな学生なのです。つまり、皆さんの歌でフェニックスガールさんに想いを届けるのですわ!」
 おあつらえ向きに、彼女は放課後ストリートライブが盛んな通りで過ごすことが日課だという。また、いずれは歌手になりたいという夢も抱いているようだ。
「フェニックスガールさんは種類を問わず音楽ならなんでもお好きなようですから、どういう歌を歌うのかは皆さんにお任せいたしますわ」
 実際に歌わなくとも、音楽をきっかけに彼女と話して励ますという方向でも構わない。要は気持ちが伝わればいいのだ。
「私としてはぜひ皆さんの歌を聴いてみたいのですけど……無理にとは申しません」
 それから、とミレイユはややためらいがちに付け加えた。
「ヒーローとして戦うようになってから、彼女は本音を言える相手を失ってしまったそうですわ。お友達が離れたというより、彼女が遠ざかってしまったのだと思います」
 痛ましそうに瞳を伏せていたミレイユだったが、一息つくと猟兵達に笑顔を向ける。
「星々がどれも美しいように、歌は賤も悪もないものです。そういう意味では『歌は正義』と言えるかもしれませんわね」
 そうしてミレイユは猟兵達に頭を下げると、新世界に向けて送り出した。
「それでは参りましょう。皆さんの旅路に、朝露と追い風と、それから歌の祝福がありますように」


中村一梟
 猟兵の皆様ごきげんよう。中村一梟でございます。
 今回は待ちに待った新世界ヒーローズアースのシナリオをお届けします。地元のヒーローさん達もぜひご参加ください。

●第1章:集団戦
 フェニックスガールは戦意喪失しており、スカルバロンはPCの到着を察知して逃亡、ジャスティストルーパーだけが残っている状況です。
 敵はフェニックスガールがその場にいる限りはPCとの戦闘を優先します。また、この章で彼女が再起することはありませんが、話しかけられれば返事をするくらいの元気はあります。

●第2章:日常
 オープニングにもあるように音楽を通じてフェニックスガールと交流するシーンです。【歌唱】技能をお持ちでなくとも演奏側として参加できます。
 演奏しない場合も彼女が再起するための一助となるような行動であれば参加できます。
 ギャラリーはそれなりの数がいますが、PC達は誰がフェニックスガールなのか判別できているという前提でプレイングを書いて頂いて大丈夫です。

●第3章:ボス戦
 スカルバロンにジャスティストルーパーを貸し与えたオブリビオンとの戦闘になります。詳細は幕間で演出します。
 このシーンにフェニックスガールおよびスカルバロンは登場しません。

 それでは、今回も皆様とよい物語を作れることを楽しみにしております。
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第1章 集団戦 『ジャスティストルーパー』

POW   :    フォールン・ジャスティス
全身を【機械部分から放出されるエネルギー】で覆い、自身の【戦闘を通じて収集した敵のデータ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    イミテーション・ラッシュ
【ジャスティス・ワンが得意とした拳の連打】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    マシン・ヴェンジャンス
全身を【機械装甲】で覆い、自身が敵から受けた【物理的な損傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マキュラータ・ヘテロスコドラ
ワガハイ、参上!……なんてな!【SPD】

さて、彼奴らは長期戦になるほど力を増すようであるな!ワガハイはからくり人形の『アカンパニスト』で奏剣・響剣・調剣計八振りをそれぞれ構え、一撃で仕留める隙を作るべく、八刀流で接近戦を仕掛けるのである!

ワガハイが狙うのは【イミテーション・ラッシュ】!一度発動すれば途中で止められないその攻撃を【八脚舞踊・阿吽之息】で回避し、その隙にその素っ首を叩き落とすことを狙うのである!

彼奴らは集団だからな、死角から攻撃されるのはもちろん避けたいところだ!なるべく大勢を視界に入れ、全員と息を合わせるような立ち回りを心がけるのである!

「その首、ワガハイが頂戴する!」



「ワガハイ、参上! ……なんてな!」
 瓦礫を蹴散らして現れたマキュラータ・ヘテロスコドラ(誘うは八脚の舞踊、煌くは八刃の颶風・f13941)に、ヴィラン達が一斉に向き直った。
「へぇ。こんな所まで助けに来てくれるオトモダチがまだいたとはね。これは予想外だったな」
 仮面から覗く口元に皮肉げな笑みを浮かべ、スカルバロンは身を翻す。
「命拾いしたな、小鳥ちゃん。また遊ぼうぜ」
 その姿が煙のようにかき消え、後にはうずくまるフェニックスガールとジャスティストルーパー、そして猟兵達が残された。
(ここまでは予定通りであるな。では……)
 マキュラータの十指が動き、腕の形をしたからくり人形が剣を構える。
「その首、ワガハイが頂戴する!」
 八刀を操り、マキュラータはジャスティストルーパーに向かっていく。贋作のヒーロー達が拳を奮い、迎え撃った。
「それでは一曲、踊りましょう?」
 超高速の連打が放たれる瞬間を先読みし、マキュラータは最初の一体の傍をすり抜ける。続けて迫ってきたもう一体の攻撃も同じように回避しつつ、さらに別の一体の射程外へと逃れる。
 ここで反撃に移るのが理想の形である。だが、死角からの急襲を警戒し全ての敵と息を合わせるような立ち回りをしていたことが、反撃の機会を失ってしまう結果となった。
 それでも傷ついたフェニックスガールから敵を引き離すことはできた。逆襲のチャンスが再び巡ってくるのはそう遠くはないだろう。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

鈴木・志乃
……(すうっ)

【UC発動】
【歌唱、衝撃波、パフォーマンス、誘惑】

これは【祈り】の歌
命の儚さや切なさ
頑張っても報われないやるせなさ
それでもひたむきに生きようとする
全ての命と意志を肯定し応援するバラード

大丈夫
……大丈夫だよ
落ち着いて、ゆっくり深呼吸して
あれは敵が作った偽物
(今は私の声なんて、聞いていられないだろうけどね)

さあ、機械に宿るわずかな意思を揺らせ
心がないなら、私が伝える
生きる喜び
生まれてきた幸せ
それを無に帰すというなら
私はそれ以上の愛をもって
貴方の全てを止めてやる

【第六感、見切り、ダッシュ、スライディング、オーラ防御】
で回避ムーブ
攻撃は光の鎖で【早業、投擲、武器受け、カウンター】



 鈴木・志乃(ツインクル・f12101)はすっと息を吸いこんだ。
(さあ、機械に宿るわずかな意思を揺らせ。心がないなら、私が伝える。生きる喜び、
生まれてきた幸せ、それを無に帰すというなら)
 戦意喪失したフェニックスガールを放置して猟兵達を追ってくるジャスティストルーパーを迎撃する構えである。
「私はそれ以上の愛をもって、貴方の全てを止めてやる」
 夕闇に包まれた廃墟に歌声が響く。
「夢の中で空を歩く 真下に広がる命数えて 今日を明日を素直に生きてる その顔に微笑み浮かばせたい」
 全ての命と意志を肯定し応援しようとする意志を乗せて、ユーベルコード『女神の歌』が叩きつけられた。その想いは半身を異形の機械に置き換えられ、悪の手先として作られた男達にも強く強く働きかける。
 ジャスティストルーパー達の肉体が軋む。正義を模した器でしかなかったはずの彼らに、志乃の歌声が罪悪感を思い出させたのだ。
 注がれた悪意に、ジャスティス・ワンと呼ばれた男の細胞が全力で抵抗を始める。その軋轢は物理的な力となって模造品の動きを止め、やがて自壊へと導いていった。
「あれは敵が作った偽物。大丈夫。……大丈夫だよ。落ち着いて、ゆっくり深呼吸して」
 その様を見届けた志乃はそっとフェニックスガールに呼びかけるが、彼女は微動だにしない。だが、その背で引きちぎられた炎の翼がわずかに輝きを取り戻したように見えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

彩波・いちご
歌が好きなヒーローさん
絶対助けてあげますからねっ!

というわけで現地についたら、まずは、フェニックスガールさんにも届けとばかりに歌います
【シンフォニックキュア】の癒しの歌を
それに合わせて
【幻想よりきたる魔法の演者】で演出用のオブジェクトを大量に召喚
歌に合わせて舞い踊る音符、それぞれがトルーパーに攻撃できる電撃を発するオブジェクトです
歌に合わせてオブジェクトをトルーパーにぶつけて攻撃して、フェニックスガールさんの周りから敵を排除します

そしたら彼女に近づいていって
「大丈夫ですか?今は私たちで援護します」
「私はこことは別の世界の猟兵…いえ、アイドルです♪」
彼女に笑顔を向けて
あとは歌と攻撃を再開します



 夜空に癒しをもたらす歌声が響き、それと共に彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)が戦場へと到着した。
(歌が好きなヒーローさん、絶対助けてあげますからねっ!)
 決意と共に、いちごは倒れたままのフェニックスガールを背にかばいジャスティストルーパーの前に立つ。
「ここからは私の魔法のステージです! Object Stand-up!!」
 右手を掲げ、高らかな宣言。ユーベルコードが発動。いちごの踏む軽やかなステップに合わせて、ビビッドカラーの音符が現れた。
 リズムに合わせて『幻想よりきたる魔法の演者(マジカルイマジナリーオブジェクト)』のビジョンといちごが歌い、踊る。戦場をライブステージへと塗り変える彼のユーベルコードに、ジャスティストルーパーが戸惑ったように足を止めた。
 一個の音符がぴょんぴょ跳ねながら偽ヒーローに近づいていく。反射的に繰り出された右ストレートが命中する寸前、風船のように破裂。空気ではなく眩い電撃が放出される。
 電撃を受け、異形のマシーンが煙を噴いて動かなくなった。続けて他の音符も殺到。いちごの歌が響く中、合いの手のように雷が弾ける。
「大丈夫ですか? 今は私たちで援護します」
 雷光のスポットライトを浴びながら、いちごはフェニックスガールを振り返った。緩慢な動作で顔を上げた彼女が、信じられないものを見たというような表情になる。
「キミは……」
「私はこことは別の世界の猟兵……いえ、アイドルです♪」
 笑顔で告げるいちご。その背後でさらに稲妻が炸裂し、鮮やかな色彩の花を咲かせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フローライト・ルチレイテッド
夜明けはいつか必ず訪れる!
歌声よ、夢見た場所に届け!

UC【Metallic dance stage】でスピーカーを追加して、
【歌唱、楽器演奏、パフォーマンス、鼓舞、範囲攻撃、早業、マヒ攻撃、催眠術】を駆使して指定UC【ウタゴエ以下略】を使用。
フェニックスさんを鼓舞するように歌いつつ、愛と平和を希求する心を生み出す音と光の嵐で攻撃します。


相手の攻撃は【地形の利用】でまっすぐ突撃しづらい場所に位置取りつつ、
【聞き耳】と【野生の勘】で【情報収集】して発動を見極め、【早業】で回避を試みます。
無理なら【激痛耐性】、ないし【Metallic dance stage】で増やしたスピーカーを盾にして耐えます。



「Ahー いつの日も ♪ Ahー 夢見てる♪ 時を超えてこのウタゴエ 未来の果て響いてけ Love Song♪」
 雷花を背景に、フローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)がかき鳴らすギターの音色と歌声が叩きつけられた。
 愛と平和の歌がユーベルコードのスピーカーによって増幅され、大波となってジャスティストルーパーを包む。
 フローライトの歌に合わせて光弾が発生し、撃ちこまれた。その攻撃でいくらか被害を出しつつも、ジャスティス・ワンの姿を模した兵器達は拳を奮い、瓦礫を粉砕しながらフローライトへと迫ってくる。
「夜明けはいつか必ず訪れる! 歌声よ、夢見た場所に届け!」
 二つのユーベルコードがせめぎ合う。数瞬の拮抗の後、音と光の嵐を貫いて半機械の男達が突撃してきた。
 愛と平和を歌いながら、妨害するための効果を乗せ敵を撃つという矛盾を孕んでいたことがユーベルコードの威力を削いでいたのだろうか。
 フローライトはスピーカーを盾にしてラッシュを凌ぎ、演奏を中断して敵との距離を空けることを選ばざるをえなかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルーヴェニア・サンテチエンヌ
誰もに希望を与えた、憧れの方を模った姿を利用して攻撃するなんて…そんな酷いことをして、痛む心もございませんのね!(少し泣き気味)

まずは深呼吸して脱力、リラックスして耳をすましますの。相手からは隙だらけに見えるはずですので、イミテーション・ラッシュにとっても好都合だと思いますの。

敵の【イミテーション・ラッシュ】を食らう直前に『59』Mélodie de rosyを「楽器演奏」して、その音で「オーラ防御」、わたくしのユーベルコードで、人狼体の音の塊が同じ技をお返ししますわ。

偽って作られたその技を、そっくりそのまま偽り返して差し上げますのっ…!

(アドリブ、改変など、ご自由に行動させてくださいませ!)



 ルーヴェニア・サンテチエンヌ(人と狼の狭間が産む歌・f13108)はゆっくりと深呼吸した。廃墟のそこかしこから聞こえてくる過去からのささやきを聞き取ろうとするかのように、灰色の耳がぴこぴこ動く。
(誰もに希望を与えた、憧れの方を模った姿を利用して攻撃するなんて……)
 薄紅色の瞳に小さな涙の粒が浮かばせたその姿は、ここが戦場だと知らない無垢で無防備な幼子のように見えた。
 逞しい男の姿をした人造人間が迫る。その拳が振りかぶられ、数えきれないほどのヴィランを倒し無数の野望を打ち破ってきたジャスティス・ワンの代名詞が再現された。
「そんな酷いことをして、痛む心もございませんのね!」
 秒間六百発ものパンチを受けて、ルーヴェニアの小さな体が吹き飛んだ。少女に向けて拳を振るうなど、本物のジャスティス・ワンなら絶対にしない。その事実を突きつけるかのように、彼女には傷一つない。
「夜の池が星空を映すように……ええと、つまり、耳コピしてみせますの!」
 ルーヴェニアが愛用のエレキギターを奏でる。紡ぎ出されたそのメロディは、奇しくもジャスティス・ワンの活躍を描いて大ヒットした映画のテーマソングにそっくりだった。
「偽って作られたその技を、そっくりそのまま偽り返して差し上げますのっ……!」
 音が六百の狼に姿を変え、偽ヒーローを噛み砕く。そこに現れるもう一体のジャスティストルーパー。
 演奏中に完全な脱力をキーとする『Étang la nuit(夜の池)』を再発動することはできない。ルーヴェニアはアドリブを加えて演奏を継続、オーラを放出しての防御に転じるも超高速連続攻撃に押されて後退していった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

オリガ・ホーリエル
彼女も歌が好きなのね。そんな子を見捨てられませんわ!同じく歌を愛する者として今すぐ助けに行きましょう!

現場に駆け付けたらフェニックスガールの前に立ち、彼女へ向かって来る攻撃を愛用の日傘を使い【武器受け】で防ぎましょう。あと「大丈夫?」と声をかけ、怪我をしていないか確かめます。

攻撃が向かって来なくなったら、【歌唱】【鼓舞】【楽器演奏】を乗せ【共鳴する行進歌】を全力で歌い、共に戦う皆様を強化しますわよ!
「あたしではジャスティストルーパーには敵いませんけど、歌を…希望を消させる訳には行きませんのよ!」

・アドリブ、絡み歓迎



 猟兵達とジャスティストルーパーとの戦闘は互いに出血を強いる危険な均衡状態に陥っていた。
 戦闘不能に陥った猟兵こそいないものの、繰り出す手筋のほとんどが芳しい成果を挙げられていない。ややもすれば押し切られてしまう、危うい戦況である。
 だが、それでもオリガ・ホーリエル(黒き天使を支える者・f12132)達は諦めない。なぜなら――。
「同じく歌を愛する者として、見捨てられませんわ!」
 愛用の日傘で敵の攻撃を弾きながら声を上げるオリガ。その背中を、フェニックスガールが埃と涙に汚れた顔で見つめる。
 折られ引き裂かれた炎の翼はまだ回復していない。だが、幼い頃に憧れた正義のヒーローが敵に回るという状況が敵の策略によるものだと理解したその瞳は力を取り戻し始めていた。
 その様子をちらと振り返り、オリガは全身を鮮血色の機械装甲で覆い、かつての英雄とは似ても似つかない姿となったヴィラン達に向き直った。
「あたしではジャスティストルーパーには敵いませんけど、歌を……希望を消させる訳には行きませんのよ!」
 持てる力を注ぎ込んで、オリガは『共鳴する行進歌(シンフォニック・マーチ)』を響かせる。勇壮な歌声が戦い続ける猟兵達に力を与え、戦場の天秤を徐々に傾けていった。
「皆様! まだまだいけるはずですわよ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

アウレリア・ウィスタリア
恩人を模した兵器というわけですね
ボクにはそうした人がいないから
フェニックスガール、アナタの嘆きを理解することはできないと思う
でもアナタを苦しめる元凶は取り除きたい

物理的な損傷を力に変える
確かに厄介ですね
ボクの攻撃はほとんどが物理的なものですし
ここは【蒼く凍てつく復讐の火焔】によって凍りつかせてしまいましょう
いくら力が増しても凍ってしまえば
その力を十全に発揮することはできないでしょうし

彼女ほど速くは飛べないけれど
空を舞い地を駆け抜け隙を見て蒼の焔を纏った鞭剣で攻撃します
敵を鞭剣で拘束しつつ焔で凍てつかせ燃やしてしまいましょう

ボクはヒーローではなく復讐者
姿を模された英雄に代わり復讐を果たしましょう



「恩人を模した兵器というわけですね。ボクにはそうした人がいないから、アナタの嘆きを理解することはできないと思う」
 アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)は仮面の向こうからフェニックスガールに語りかける。
「でもアナタを苦しめる元凶は取り除きたい」
 真摯な想いと共に、白と黒の翼を広げてアウレリアは飛び立った。夜の色が薄くなりつつある空を翔け、鞭のような刃を振るって急襲。
 斬り裂かれたジャスティストルーパーの肉体を、単細胞生物の如く増殖する機械装甲が覆い、強化していく。
(物理的な損傷を力に変える……確かに厄介ですね)
 飛びかかってくるヴィランの腕をかわし、アウレリアは一瞬で思考を巡らせる。彼女の手札はほとんどが物理的な攻撃手段だ。だが、方法がないわけではない。
「闇夜より深く暗い感情、蒼く燃え上がる復讐の焔」
 詠唱と共に、アウレリアの周囲に青い炎が生み出される。それは燃やすのではなく、凍てつかせる負の熱量を帯びていた。
「ボクはヒーローではなく復讐者。姿を模された英雄に代わり復讐を果たしましょう」
 宣言と共に、『蒼く凍てつく復讐の火焔(フリージングブレイズ)』が放たれた。回避しても追いかけ、わずかでも触れた部分を氷結させるその蒼炎は、さながら復讐の女神の爪だ。
 アウレリア自身も急降下し、絶対零度の蒼の炎のまとわせた鞭剣を踊らせた。斬撃と凍結の波状攻撃に、ジャスティストルーパーの異形機械装甲も耐えられず砕け散った。

 ほどなくして戦闘は集結した。白い微かな光が、廃墟に満ちていく。
 ふわりと風が吹いて、猟兵達の頬を撫でた。炎の翼を再び広げたフェニックスガールが、何も言わず飛び去っていったのだ。
 全力の超音速には程遠い速度。追いつこうと思えば追いつける者もいるだろう。だが、猟兵達は彼女の弱々しい羽ばたきを黙って見送った。
 傷ついた心を受け止め、整理する時間が必要だ。それに、すぐにまた会える。
 夜明け前の空、輝く明星の隣に赤い光が消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 日常 『サウンド・オブ・ヒーローズ』

POW   :    ハードなロックで熱く燃え滾る魂を叫ぶ

SPD   :    テクノ、EDMなどのデジタルサウンドでクールに決める

WIZ   :    しっとりとしたジャズやクラッシックで癒しのひと時を

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迷子の不死鳥
 その日、フェニックスガールことカリン・ダンバースはひどく落ちこんでいた。
 原因はもちろん、宿敵スカルバロンとの戦いだ。正確には、スカルバロンの手先として現れたジャスティス・ワンにそっくりな人造人間達との戦いである。
 それは彼女が今まで経験したことのない惨敗だった。
 カリンはジャスティス・ワンを直接目にしたことはない。だが、コミックや映画という形で脚色されたものとはいえ彼の活躍には幾度となく触れてきた。何より、大好きだった祖父が目を輝かせて語ってくれた武勇伝。それら全てを裏切るような姿は、偽物とわかったからこそ受け入れがたいものだった。
「……やっぱりムリだよね。あたしにヒーローなんて……」
 ため息と共に呟きがこぼれ落ちる。カリンが力を手に入れたのは偶然だ。天寿をまっとうした祖父が残した宝箱。何十年も彼が大切にしていた物の中に紛れていた「不死鳥の卵」を手に取ってしまい、封じられていた聖なる炎に選ばれてしまった。
 自分からなりたいと望んだわけでも、必然的な理由があったわけでもない。手に入れた力を悪用したくない。ただそれだけだった。
「あの人達には、ちゃんとした理由があるんだろうな」
 窮地に陥った自分を助け出してくれた彼らのことを思い出す。ヴィランに怯むこともなく、歌い戦っていた彼ら。
「……ありがとうって、言ってない……」
 彼らの前から逃げ出してしまったことも思い出して、カリンはさらに憂鬱な気分になった。そういえば、祖父もジャスティス・ワンにお礼を言えなかったことを悔やんでいた。
「……あたし、おじいちゃんがなりたかったヒーローみたいにはなれないみたいだよ」
 暗い気分を変えてくれる期待が半分、染みついた習慣が半分。カリンはいつもの道筋を辿って歩いていた。
 今日も、エルヴィス・ストリートには沢山の音が溢れている。
 昔のロックスターとたまたま同じ名前というだけで、そこはストリートライブの聖地になっていた。人数やジャンルを問わず、ミュージシャンの卵達が夢を実現するべく精一杯に奏で、歌い、踊っている。
 本当なら、カリンもそちらに立ちたい。だが、フェニックスガールとしてヴィランと戦うのと学生生活に加えて音楽までなんて。それだけの物を抱えられる自信は、彼女にはなかった。
 このままでは、自分は卵のまま終わってしまうのではないか。そんな想いに捕われたカリンは、今朝と同じようにエルヴィス・ストリートに背を向けて立ち去ろうとした。
マキュラータ・ヘテロスコドラ
うーむ、やはり落ち込んでいるみたいだな!彼女は音楽が好きと聞いているからな、音楽でエールを贈ろうではないか!【SPD】

ワガハイは【大蜘蛛楽団】を、ワガハイの楽器の一つである『奏剣エレクトロ』に対して発動!複製した刀剣達でキレッキレなエレクトロ・ポップをプレイするのである!今回はワガハイもボーカルで参加して、キマイラフューチャーの最先端なサウンドをお届けするのである!(「楽器演奏」+「パフォーマンス」+「歌唱」+「鼓舞」)

あ、剣の先っちょには危なくないようにカバーを着けるのである。一般の人も居るからね!

「おっと、そこなお嬢さん!ワガハイのアガるサウンドを聴いて、元気を出していかないか?」



「おっと、そこなお嬢さん! ワガハイのアガるサウンドを聴いて、元気を出していかないか?」
 足早にエルヴィス・ストリートを離れようとしたカリンを呼び止める声があった。
(……あっ)
 振り返り、彼女は気づく。自分を呼び止めた人物が、今朝の戦いで助けてくれた者の一人であることに。
「レディースアンドジェントルメン! 大蜘蛛楽団へようこそ!」
 カリンが足を止めたことを確認し、マキュラータは『大蜘蛛楽団(スパイダーオーケストラ)』を発動させた。
 剣にして楽器たる奏剣エレクトロが数を増やし、ひとりでに演奏を始める様は音楽というより大道芸のようにカリンの目には映ったが、電子音をふんだんに使ったキレのあるサウンドに彼女は引きこまれていく。
(なんだろう……聞いたことのないタイプだ……)
 それが異世界キマイラフューチャーの音楽であることを彼女は知らない。知らないからこそ、その音楽は彼女の好奇心を掻き立てる。
 やがて演奏が終わり、集まってきていたギャラリーから拍手が巻き起こる。コインがいくつも投げられ、業界関係者らしき何人かは名刺を取り出していた。
 その人波に押されて、カリンが離れていく。だがそれでも、マキュラータは喧騒の中で彼女がはっきりと「ありがとう」と言うのを耳にしていた。
(これでひとまずはよかろう。後は……)
 興奮したギャラリーやスカウトから逃げ出すだけだ。マキュラータは素早く身を翻した。

成功 🔵​🔵​🔴​

フローライト・ルチレイテッド
指定UCでバンド勢を増やしつつ、お邪魔しましょう。


【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、鼓舞、誘惑、存在感】を駆使して、野外ライブ開始です。

曲目は【現夢(ウツシユメ)】

夢は叶えればいい、やりたいことがあるなら、やってみればいい。
僕に言えるのはそれだけですので。
夢は現世へ向けるもの。
だから思うままに歌えばいいと思います。

以下歌詞(ABメロ略A’から)

君の心は 希望に溢れ
暗い空 振り払うように 夢を掲げ歌えBABY
さあ手を出せ さあ踏み出せ さあ行こうよ ほら♪

涙流れ落ちる夜は 闇夜を照らせ 照らせ
夢見て 残酷なこの世界が 少しだけ優しくなるよう
信じて 悲しみ消えぬ世界も 希望の花は咲くはずと♪



 少しだけ明るい気分になったカリンは、エルヴィス・ストリートを進んでいく。通りの外れにある馴染みのカフェまで、様々な音楽に耳を傾けながら歩くのが彼女のいつものやりかただった。
「君の心は 希望に溢れ 暗い空 振り払うように 夢を掲げ歌えBABY さあ手を出せ さあ踏み出せ さあ行こうよ ほら♪」
 聞き覚えのある歌声を耳にして、カリンは立ち止まる。視線を向けた先には、ダンディなロボットバンドマン達と共に演奏をするフローライトの姿があった。
「涙流れ落ちる夜は 闇夜を照らせ 照らせ 夢見て 残酷なこの世界が 少しだけ優しくなるよう 信じて 悲しみ消えぬ世界も 希望の花は咲くはずと♪」
 歌声に乗せて、「夢は叶えればいい、やりたいことがあるなら、やってみればいい」というメッセージが伝わってくる。
 それは一つの真理ではあるだろう。だがそれは、カリンにとっては自分の悩みを再確認させるだけの言葉だった。
「やってみて、やっぱりダメでした、じゃダメなんだ」
 小さく呟いたカリンは、フローライトに背を向けて無言で去っていった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アウレリア・ウィスタリア
ボクは歌おう
だってボクが歌うのは自然なことだから
特別に歌いたい訳でも、何かを求めているわけでもない
ボクにとって歌うことは気持ちを伝える手段なのだから

【幻想ノ歌姫】を発動
玉咲姫花忍を鳴らして
彼女にボクの気持ちを伝えよう
「やりたいことをやれば良い」
「アナタの思うままあれば良い」
「アナタが望むものを求めれば良い」
「だってそれはアナタだけの物語だから」

別に悩んで立ち止まったりしても良いと思います
悩んで決めた結果に後悔しないのなら

ボクは彼女を慰めたり励ましたりするつもりはありません
ただ彼女が自分で決めるための後押しになれば良いと思っているだけですから
だからやりたいことをやれば良いと思います

アドリブ歓迎



 エルヴィス・ストリートにアウレリアの歌が響く。ユーベルコード『幻想ノ歌姫(イマジナリーディーヴァ)』によって拡張された技巧を用いて奏でられるその音楽は妙なる調べと呼んでも過言ではないレベルに達しており、多くの人々が聞き惚れていたが、その人の輪の中にカリンの姿はなかった。
 もしかすると人だかりの中に彼女はいるのかもしれない。だが、あまり背の高くない彼女は集まってきた人々に紛れてアウレリアからは見えなくなってしまった。
 だから、アウレリアの想いが彼女に伝わっているのかはわからない。
 それでもアウレリアは歌い続けた。自分にとって歌が最も自然に、最も確かに気持ちを伝えてくれると信じているからだ。
「やりたいことをやれば良い」
「アナタの思うままあれば良い」
「アナタが望むものを求めれば良い」
「だってそれはアナタだけの物語だから」
 この想いが、カリンの後押しになればいい。その一念でアウレリアは歌う。
 だが、彼女は気づいていなかった。
 迷子に必要なのは背中を押すことではないということに。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヘルガ・リープフラウ
ストリートでは【シンフォニック・キュア】の調べに乗せて歌います。
故郷で親しんだ旋律……この世界で言う欧州の民族音楽に近いと聞きました。
「祈り」と「優しさ」を込め、人々が癒されるよう。

♪翼を広げ 祈りを捧ぐ 
太陽のように 星のように
あまねく照らす 光となりて

カリンさんの寂しげな表情を見て、人事とは思えず話しかけます。
わたくしも、かつては無力な籠の鳥でした。
闇の勢力に支配される地で、虐げられる人々を救えず、自分が殺される番をただ待つだけの日々……
そんなわたくしを助けてくれた「大切な人」のために、わたくしは生きると決めました。
自らの想いを信じて、今度こそ悔いのないように……。

※アドリブ、絡み歓迎



 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が見つけたカリンの横顔には、曇り空にも似た影が差していた。
 ヘルガはこんな表情を見たことがある。それは、かつての彼女自身の顔だった。
 だから、ヘルガは小走りにカリンを追いかけて呼び止めた。
「貴女、カリン・ダンバースさん――フェニックスガールさんですわね?」
「え? どうしてあたしのこと……ああ、あなたも他の世界のヒーローなのね」
 二人はエルヴィス・ストリートの隅に腰かける。ヘルガは深青の瞳を優しげに細めて、戸惑いを含んだ視線を向けてくるカリンに自分のことを話して聞かせた。
「わたくしも、かつては無力な籠の鳥でした。闇の勢力に支配される地で、虐げられる人々を救えず、自分が殺される番をただ待つだけの日々……」
 ヘルガの声には隠しきれない悔恨が滲んでいた。けれども、彼女の瞳は絶望に染まってはいない。
「そんなわたくしを助けてくれた『大切な人』のために、わたくしは生きると決めました。自らの想いを信じて、今度こそ悔いのないように……」
 自分を肯定してくれる誰かの存在をヘルガが知っているからだ。彼女がどれだけ己の運命を呪ったとしても、その人はそれを尊いものだと言ってくれると信じているからだ。
「……大切な人……か」
 ヘルガの顔を見つめたまま、カリンは小さく呟いた。
「カリンさんにそういう方の心当たりは?」
「――っ、ないないない! そんな人いない!!」
 尋ねられた途端に顔を真っ赤にするカリンにヘルガは小さく笑い声を漏らし、そして歌い始めた。
「翼を広げ 祈りを捧ぐ 太陽のように 星のように あまねく照らす 光となりて」
 それは子守唄のような、童歌のような、異郷の風を思わせる旋律だった。わずかに斜め上を向いたヘルガの頬には、うっすらと赤みが差している。
 ヘルガが歌い終わる前に、カリンは立ち上がった。気恥ずかしそうに指で頬を掻きつつ、振り返る。
「あたしにそういう人はいないけど――あなたみたいになれたらいいな、って思う。ありがと」
 小走りで去っていくカリンの背に、ヘルガは優しい歌を贈り続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリガ・ホーリエル
彼女に足りないのは戦う『理由』という物かしら?あたしも昔彼女と同じく、生きる『理由』を探してましたわね…。ならその苦悩を知る者として…歌で道を示して見せますわ!

まず【全自動式バーチャル楽器セット】を起動。【楽器演奏】で楽器セットを奏でつつ、あたしのありったけの思い…【歌唱】を乗せた【我が天使に捧げる愛の歌】を歌いますわよ。

(以下素です)
今のあなたと一緒で、あたしも生きる理由が分からなかった。でもあの子と、同居している少女との暮らしの中で生きる理由を見つけたわ。
だからこそ伝えたいの。あなたが求める『理由』はあなたのすぐ傍…自分の中、何気の無い生活の中にあるということを!

アドリブ、絡み等歓迎



 エルヴィス・ストリートを歩いていくカリンは、見覚えのある日傘を見つけて足を止めた。自分に言い聞かせるように小さく頷いて、彼女に近づいていく。
「……今朝はありがとう。ホントに助かった」
「困っている人を助けるのは当然ですもの。お礼を言われるほどのことではありませんわ」
 白い傘の下で、オリガは微笑んで見せた。カリンも頬を緩める。その顔に落ちる影は、曇天から薄曇りと呼べるくらいになっていた。
「それじゃあ、もう一回あたしを助けてくれないかな?」
「ええ、もちろん」
「あなたには、あたしはどんな風に見える?」
 真剣な声音でカリンが問うてくる。オリガは数秒考えこんだ後、率直に答えることにした。
「何かが足りないせいで、中途半端になってしまっているように見えますわ。あなたに足りないのは戦う『理由』という物かしら?」
「……やっぱり、そうなんだ」
 予想通りの答え。カリンは俯いて唇を噛む。
「今のあなたと一緒で、あたしも生きる理由が分からなかった。でも――」
 続くオリガの言葉にカリンは顔を上げ、視線で「でも?」と訊き返す。
「でも、あの子との暮らしの中で生きる理由を見つけたわ。だからこそ伝えたいの」
 言うや、オリガは全自動式バーチャル楽器セットを起動。柔らかなイントロに続けて、溢れ出して止まない想いを堂々と歌にした。
「世界に希望を! 天使の少女には愛を!」
『我が天使に捧げる愛の歌(エンジェルソング・アイラブユー)』。それはどこまでも真っすぐに翔けていく、曇りなき愛の歌。飾らないフレーズの端々に、彼女が感じている幸せが笑顔を覗かせている。
(あなたが求める『理由』はあなたのすぐ傍……自分の中、何気の無い生活の中にある!)
 オリガのその想いは、カリンにも確かに伝わった。だから彼女は、歌い切ったオリガに向けて拍手と笑顔を返すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
描写お任せ



ねえ、行かないの?
【コミュ力】

やほ、私シノ
さっきは大丈夫だった?

音楽が好きって聞いたよ
しかもここ音楽の聖地だって?
あたしこの世界来るの初めてでさ
音楽は好きだけど、曲分かんないの
良かったら教えてよ
そんで、セッションしてほしいの
お願いっ!

だーって他に知ってる人いないからさ~(けらけら)

うそ、本当は心配だったの
せっかくそれだけの想いを抱えてるのに、捨てちゃうなんて勿体無いよ

出来るか出来ないかじゃなく
貴方がやりたいかどうか、だと思う
先に向こうで、待ってるね

【祈り】こめて【歌唱】するのは青春の歌
夢破れても好きだから
何度でも羽ばたいていく
後先考えない若者の情熱の歌

――おいでよ
貴方の手を、引きたい



 辿りついたカフェのテラス席で、カリンは物思いに沈んでいた。
 道中で出会った彼らの、それぞれの想い。自分にはない強い意志を抱いた本物のヒーロー達の姿を思い返し、自問する。
(あたしは、あの人達みたいになれるかな?)
 おそらくなれないだろう。カリンは、彼らのように「大切な誰か」の存在を顧みることはなかった。力を得てしまったことも、歌手になりたいという夢を持っていることも、誰にも言わずに独りで飛んできてしまった。
(あたしは、やっぱり――)
「ねえ、行かないの?」
 落ちていくカリンの思考を、唐突に投げ掛けられた問いが遮った。
「やほ、私シノ。今朝は大丈夫だった?」
 いつの間にか同じテーブルに座っていた志乃の姿を見て、カリンは目を丸くした。
「音楽が好きって聞いたよ。しかもここ音楽の聖地だって? あたしこの世界来るの初めてでさ。音楽は好きだけど、曲分かんないの。良かったら教えてよ」
 繰り出される志乃のマシンガントークに、カリンはただ頷くしかない。
 だが。
「そんで、セッションしてほしいの。お願いっ! だーって他に知ってる人いないからさ~」
 明るく言われたその言葉にだけは、咄嗟に頷けなかった。言葉に詰まったカリンに、志乃は笑顔のまま、声音だけを真剣なものへと変える。
「うそ、本当は心配だったの。せっかくそれだけの想いを抱えてるのに、捨てちゃうなんて勿体無いよ」
 カリンからの返事はない。テーブルの上で握り締められた彼女の拳に、志乃はそっと手を重ねる。
「出来るか出来ないかじゃなく、貴方がやりたいかどうか、だと思う。――先に向こうで、待ってるね」
 立ち上がり、志乃はライブが続くエルヴィス・ストリートへと向かっていく。その姿はまるで、遥かな空へと羽ばたいていく鳥のよう。
 だが、カリンは動けない。ヒーローであり続けたい自分と、歌手になりたい自分。本来なら飛び立つ力となるはずの夢が、逆に鎖となって彼女を地に縛りつけてしまっていた。飛び続けなければ墜ちてしまう。それが何よりも怖いから。
 ストリートのほうから志乃の歌声が聞こえてくる。生きる喜びと後先考えない若者の情熱を歌う、祈りにも似た歌が。
 カリンはのろのろと席を立ち、しばらく躊躇った後、歌が聞こえてくるほうに向かって歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

彩波・いちご
ストリートライブやってます♪
歌はキュートでポップなアイドルソング(歌詞はMSさんにお任せです)
私の歌唱力やダンスパフォーマンスで観客を誘惑しちゃいますよ♪

カリンさんが通りかかったのに気づいたら
【幻想よりきたる魔法の演者】で♥のオブジェクトを召喚
触れてもシャボン玉のように弾けるだけでダメージとかはないように
それをステージ演出に合わせて、彼女に気付いてもらうように贈ります

曲が終わったら、彼女に接触
「歌も戦いも未熟な私ですけど、なりたい自分でいたいから、歌うんです」
「貴方はどうです?なりたい姿、ないんですか?」
笑顔で鼓舞出来ればって思います

「いかがです、貴方も一緒に」
可能なら2人で1曲歌いたいですね



「エルヴィス・ストリートのみなさーん! こーん! にーちーはーっ!!」
 響き渡るいちごの声。エンターテイメントの気配に、耳ざといギャラリー達が足を止めた。その中にはカリンの姿もある。
「ぜひ! 私の歌を聞いていってくださーい! ミュージック・スタートっ!」
 最初の一音が弾けるのと同時に、いちごはユーベルコードを発動した。色とりどりのハートのオブジェが宙に現れ、吹雪のように舞う。
「あなたに贈る My wish! 甘くてすっぱい Strawberry」
 ポップなリズムに乗せられて盛り上がるギャラリー。その合間を縫って、いちごはカリンへと一際大きなハートを飛ばす。
 ぱちん、と赤いハートが弾け、辺りに甘い苺の香りが広がった。目を丸くするカリンに、いちごはウインク。
「わたしの願い 叶えてくれたら あなたにあげる イチゴ味のハート」
 いちごが歌い終わると、観客達はエールとコインを投げてから歩き去っていく。中には握手やハグを求めてくる者もいたがそれは丁重にお断り。
 そうして、いちごは一人その場に残ったカリンへと笑顔を向けた。
「歌も戦いも未熟な私ですけど、なりたい自分でいたいから、歌うんです」
「……」
「貴方はどうです? なりたい姿、ないんですか?」
 カリンは沈黙している。いちごは笑顔のまま、彼女が答えを口にするのを待った。
「あたしは……おじいちゃんがなりたかったみたいなヒーローになりたい。みんながあたしを見て、あれが正しい人の姿だって言ってくれるような……」
 搾り出すように、カリンは自分の夢を言葉にした。一度声にしてしまえば、もう止まらない。
「あたしは、歌手になりたい。悲しい時や辛い時に聞きたくなるような、そんな歌を歌いたい。……けど、どっちも叶えるなんてできっこない……!」
 最後は半ば悲鳴のような声だった。正義と歌、二つの空に挟まれて引き裂かれそうな翼の叫びだった。
「どっちも叶えられますよ。私は私がそうできるって信じてます。だから、貴方にもきっとできます」
 いちごはカリンの手を取って言う。
「なりたい自分になるために、私は歌います。いかがです、貴方も一緒に?」
 長い間ためらった後、カリンは小さく頷いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェラルド・マドック
ただの音楽好きとしてサウンドウェポンをギターに展開して弾き語り
UCで合奏やハモリで交ざりたくなるようにしよう
悩まないようにすることも出来るだろうけどこれは自身で結論を出さないとね
俺達の音楽が手助けになればいいな

♪嫌なことばかり目に付いて立ち止まってしまう
思い通りにならないことばかりで目眩もする
進みたかった道を選んだはずなのに今は迷子の気分さ
お願いだよ手を引いてこの靄の中から連れ出して
全て捨てて一から歩くのも悪くは無いけどそこまで思い切れないんだ
この先が輝いて見えて諦めの悪い子供みたいに手放せないよ
でもだからこそ悩んで馬鹿みたいに進める気がする
だからお願い靄が晴れる場所まで俺を連れ出してよ



 小さく拍手を贈りながら、ジェラルド・マドック(しがない演奏家・f01674)は歌い終えたカリンの元に歩み寄っていく。
「いい歌だったよ」
 反応して顔を上げたカリンの頬は上気し、その瞳には達成感が滲んでいる。額にうっすらと浮かんだ汗を拭いつつ、彼女は首を傾げてみせた。
「ありがとうございます。……あなたは?」
「ジェラルド・マドック。通りすがりの音楽好きさ」
「音楽好きの猟兵さん、ってことですね」
 志を同じくする誰かと共に歌うことは、カリンにとって決して悪い影響をもたらしたわけではなさそうだった。暗雲の向こうから漏れる日差しのように、カリン・ダンバースという少女の本来の性格が顔を見せている。
 ジェラルドは小さく肩をすくめると、サウンドウェポンをギターの形に変形させる。飴色のボディをしたそれを軽く掲げて、彼は言った。
「今度は、俺の音楽聴いてかない?」
「……はい。聞きたいです」
 カリンの隣に腰かけて、ジェラルドは弦を爪弾く。素朴な印象さえ与えるシンプルなメロディ。コード進行は奇をてらわず、だがそれ故に彼の技量を際立たせる。
「嫌なことばかり目に付いて立ち止まってしまう 思い通りにならないことばかりで目眩もする 進みたかった道を選んだはずなのに今は迷子の気分さ」
 ちら、とジェラルドは横目でカリンの様子を窺った。少女は目を丸くして、演奏に聴き入っている。
「全て捨てて一から歩くのも悪くは無いけどそこまで思い切れないんだ この先が輝いて見えて諦めの悪い子供みたいに手放せないよ」
 やがて、ジェラルドの歌をなぞるようにカリンがハミングを始めた。彼女の瞳は十秒前とは違い、相手の技術を自分のものにしてやろうという貪欲さに輝いている。
「でもだからこそ悩んで馬鹿みたいに進める気がする だからお願い靄が晴れる場所まで俺を連れ出してよ」
 最後のフレーズを歌いながら、ジェラルドはカリンの熱意と、歌う彼女をじっと観察する何者かの冷えた気配を感じていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ドクター・サイコ』

POW   :    マッドネス・フュージョン
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の発明した犯罪機械】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    サイコ・ギロチン
【自動で対象を追う13個の空飛ぶギロチン刃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    クリミナル・エクスペリエンス
自身からレベルm半径内の無機物を【犯罪用の発明品】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:yuga

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●燃える戦いの唄
 エルヴィス・ストリートでカリンと別れてから数時間後。猟兵達の姿はフェニックスガールと出会った廃墟にあった。
 スカルバロンへの援軍としてジャスティストルーパーを差し向けたオブリビオンのアジトを攻撃するためだ。
 廃墟の地下に作られた、工場と研究所をごたまぜにしたような施設。その最奥で、そのオブリビオンは猟兵達を待ち受けていた。
「ウェルカム、狩人達。自己紹介しておきましょう。私は『ドクター・サイコ』と呼ばれている者です」
 得体のしれない液体に汚れた白衣をまとい、奇妙奇天烈な帽子を被った男。その瞳には知性と狂気が同居し、突入してきた猟兵達を愛でるような輝きが宿っている。
「君達のミュージック、非常に興味深く拝聴させていただきました。……実に素晴らしい! 人の域を超えた君達のアートは、世界を変革さえできる!!」
 あまりに飛躍した論調に、猟兵達の動きが止まる。そんな彼らを尻目に、ドクター・サイコは熱に浮かされたように喋り続けた。
「『歌で世界を変える』。とてもファンタスティックでイマジネーションに溢れるフレーズだと思いませんか? 脳に電極を差し込んだり、薬物を注入するよりももっとドラマチックなやり方だ!」
 大きく手を広げるドクター・サイコ。彼の背後にある大きなディスプレイには、怪しげな装置の設計図らしきものが映し出されている。九つのシリンダーを備えたそれは、いびつな王冠のようにも見えた。
「君達は、一人の少女の心を変えることに成功した。では、もっと多くの人の心を動かすこともできる。君達の歌が人々を先導し、扇動する。私の設計したこの『九人の女神の冠(ミューズ・クラウン)』が、それを可能にする!!!」
 ドクター・サイコは猟兵達を濁った目で見据え、手を差し伸べる。
「さあ、私と一緒に世界を変えましょう」
 その顔に浮かんだ笑みは、常人には理解不能な狂気に満ち満ちていた。
鈴木・志乃
……許さないよ?

【目立たない】場所から光の鎖を【早業投擲】で【なぎ払う】
出来れば【念動力】で縛り上げたいんだけどねえ

怯んだ所からUC発動
人を扇動する?
そんなこと許してたまるか !!

【歌唱】の【衝撃波】で機械ごと内部から壊してやる
今度は罪悪感じゃないよ
周囲に漂う元からあった、沢山の人達の残留思念を増幅して
そのままぶつけてやる
思念の一つ一つは皆の【祈り】
誰かに押し付けられたものなんかじゃない
その人自身の、魂だ

敵の動きを良く見て【見切ろう】
【第六感】と【スライディング】でかわせ
【オーラ防御】は常時発動

返せそうな攻撃は【武器受け】し【カウンター】するよ



「まずはどなたから、『九人の女神の冠』に歌を捧げてもらいましょうか……」
 ネジの外れた笑顔で、ゆっくりと猟兵達に近づいてくるドクター・サイコ。実験材料を無作為に掴み取ろうとするその両腕に、死角から飛来した淡く輝く鎖が巻きつき、縛り上げた。
「……許さないよ?」
 鎖を持つ手に力を込め、志乃が囁いた。冷え切ったその声とは裏腹に、瞳には強い意志が燃えている。
「人を扇動する? そんなこと許してたまるか !!」
 炎のような感情を、叫ぶ。
「夢の中で空を歩く 真下に広がる命数えて 今日を明日をひたすら生きてる その顔に微笑み浮かばせたい」
「……フフ」
 物理的な圧力さえ伴った志乃の歌を、しかしドクター・サイコは変わらぬ笑みを浮かべたまま聞いていた。
「では、今の君の行動は、扇動ではないと?」
 答案の間違いをあげつらうようなドクター・サイコの言葉に、志乃が一瞬声を詰まらせる。
「超常の力を持つその歌声で、この空間に残る意思に働きかけ、私を攻撃しようとする。それは人の心を思うがままに操ろうとするのと同じではありませんかね?」
 反駁しつつ、オブリビオンもユーベルコードを発動。どこからともなく集まってきた得体もしれない機械がドクター・サイコの体を包み、鉄の巨人へとその姿を変えていく。
「生まれながらの扇動者。そんな君だからこそ『九人の女神の冠』のパーツに相応しい。さあ、君の歌を捧げなさい」
 光の鎖を引きちぎるドクター・サイコ・ロボ。金属と樹脂でできた怪物の歪んだ瞳を、志乃は正面から睨み返した。
「違う! この光は――ここに残る祈りは誰かに押し付けられたものなんかじゃない!!」
 彼女の周囲を光が取り巻き、瞬いた。志乃の叫びを肯定するかのように、白い輝きは大きさを、数を、強さを増していく。
「その人自身の、魂だ!」
 閃光が炸裂し、研究室を真っ白に染め上げる。雑多な機材が破砕され、ドクター・サイコ・ロボの装甲も削られていくが、オブリビオンを消滅させるには至らない。
「フフ、実にエクセレント。君の歌は魂という、私がいまだ触れ得ざるものについての研究に多いに役立ってくれるでしょう」

成功 🔵​🔵​🔴​

マキュラータ・ヘテロスコドラ
歌は世界を変えることが出来る。その通りだ。だが……世界を変える歌には、その機械のような不純物など必要ない!歌を、音楽を!お主の都合のいい道具にされてたまるものか!【SPD】

今回中々にワガハイは怒っている!彼奴めを細切れにするべく、ワガハイはからくり人形の『アカンパニスト』で獲物たる刀剣楽器八振りを構え、八刀流で接近戦を仕掛けるのである!また、同時に【八脚舞踊・阿吽之息】を使用し、彼奴から離れないようにするのである!

飛んでくるギロチンの刃は自動追尾するのだったな?ワガハイはギロチンの刃とも息を合わせ回避し、避けた先に彼奴めが来るよう誘導、自滅を狙うのである!

「厄介な攻撃だが……利用させて貰う!」



「歌は世界を変えることが出来る。その通りだ」
 犯罪機械と合体し鋼の巨人となったドクター・サイコに、八つの刀剣楽器を携えたマキュラータが怒れる瞳を向ける。
「だが……世界を変える歌には、その機械のような不純物など必要ない!」
 舞台上のバレリーナのようにステップを踏み、マキュラータとアカンパニストが疾走。接近戦を挑もうとする彼女らを、ドクター・サイコ・ロボの背中から射出されたギロチン刃が迎撃する。
「厄介な攻撃だが……」
 いかなる機構によるものか空を飛び獲物を追跡する十三の断頭刃をかわし、受け、弾きながらマキュラータはドクター・サイコ・ロボに肉薄。人形と共に剣を振るう――。
「利用させて貰う!」
 と見せかけて、追ってくるギロチン刃を敵の眼前で回避。飛翔の勢いのままに、鋼鉄の刃がロボに突き刺さった。
 しかし、十三の刃全ての軌道を見切り、自滅へと導こうとするマキュラータの目論見は困難にすぎた。避けきれなかったギロチン刃が彼女を襲い、鮮血の花弁が舞う。
 絡操人形アカンパニストがかばったことで致命傷は免れたものの、マキュラータは痛み分けと言うには深刻な被害を被っていた。
「世界を変える歌には、その機械のような不純物など必要ない!」
 しかし、彼女は離脱を選ばなかった。
「歌を、音楽を! お主の都合のいい道具にされてたまるものか!」
 怒りを闘志に変え、マキュラータは無事な腕で剣を振るった。切っ先がロボの左腕を貫き動きを止めるや、手負いの身とは思えない鮮やかさで解体していく。
「どんなに声を張り上げたところで、君一人では全世界に歌を響かせることなどできませんよ」
 だが、そこで限界が来た。出血と痛みで動作の鈍ったマキュラータをドクター・サイコ・ロボの右腕が掴み、投げ飛ばす。
 宙を舞い床に叩きつけられたマキュラータはなんとか立ち上がるが、深く傷ついた体では再度攻撃を仕掛けられそうになかった。
「妙なる調べも、誰かの耳に届かなければ、何の意味も無い」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アウレリア・ウィスタリア
不快です
お前の考えは不快です
ボクにとって歌とは自分の想いを伝えるもの
決して誰かを扇動するために歌ったりはしない
(だからこそボクの歌は彼女に届かなかったのかもしれない

ボクは歌を道具と貶すお前の存在が不快です
だから私は歌いましょう、痛みを
真の姿を解放し【空想音盤:苦痛】を発動
歌は私の魂に刻まれた大切な光
それを侮辱された怒りを糧に
身体中から流れ出る血を血糸に変換
それを鞭剣に纏わせることで破壊力を上乗せする

ギロチンや機械であっても
血色に染まった左目で捉えた全てを血の衝撃波でなぎ払いましょう
その不快な言葉を発する首も飛ばしてみせましょう
音を奏でるように、歌の始まりを告げる指揮者のように

アドリブ・連携歓迎



「ボクにとって歌とは自分の想いを伝えるもの。決して誰かを扇動するために歌ったりはしない」
 アウレリアの振るう刃金の鞭が、ドクター・サイコ・ロボの右腕に巻きついた。切り落とそうとする刃と耐えようとする装甲が軋み、甲高い音を立てる。
「理解できていないようですね。『九人の女神の冠』は、君の歌をただのコミュニケーション手段ではなく、より高次元の存在へと変容させる。扇動に使いたくないのならそのように歌えばよろしい。ですが、果たして君は、君の歌があらゆる場所に響き、あまねく人が耳を傾けることになっても、ただ自らの想いを歌うだけで満足できるでしょうか?」
 これは実験なのです、とドクター・サイコの声が告げる。神の如きものとなった人が、世界を壊さずにいられるのか? それを確かめるための。
「……不快です」
 押し殺した声が、アウレリアの唇から吐き出された。それは小さな呟きだったが、その中に潜む感情は鉄をも溶かす灼熱のよう。
「お前の考えは不快です。ボクは歌を道具と貶すお前の存在が不快です」
 仮面の奥の瞳に炎を宿し、アウレリアは真の姿とユーベルコード『空想音盤:苦痛(イマジナリーレコード・ペイン)』を解き放った。
「理想を忘れ、幻想さえ掴めず、苦痛に染まり、絶望する」
 衣装から覗くアウレリアの白肌に赤い傷痕が浮かび上がる。肉と心に刻まれた痛みの記憶。無数に連なるそれらの中に、新しく一筋の傷が加えられた。
 それは、歌を侮辱されたという傷。アウレリア・ウィスタリアという魂にとって何にも変えがたい宝を貶められた怒りがその傷口から溢れ出し、血の色をしたオーラとなって鞭剣にまとわりつく。
「……だからこそボクの歌は彼女に届かなかったのかもしれない」
 増強された膂力でもって、アウレリアは柄を引く。火花を上げて装甲が切り裂かれ、ロボの右腕が半ばから切断された。それが地に落ちるよりも早く、追撃。
 無数の赤い剣閃が悲鳴のような音楽を奏で、犯罪機械を微塵に斬り砕いた。
「……けれど、ボクの歌はお前なんかに聞かせるための歌じゃない!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェラルド・マドック
千秋と共闘

君のおかげで科学の発展に伴う倫理学の存在発展意義を改めて実感できたよ
歌は上手く扱えば天地や神霊の心すらも動かし人の心を和ませ逆に君が言うように人々を扇動することも出来るさ
ただ君の思想と似たことも可能なUCを持つ身から言わせてもらえれば、だからこそ意思決定は当人がすべきなんだ
当人がどんな判断をするのも自由だしその権利がある
確かに君にも思想を持つ自由がある
そして俺達にもそれに抗う自由がある

視力・戦闘知識で効率的に敵の攻撃を避ける動線を確認して自分を含む味方にUCを発動
自動追跡対策に瓦礫等を盾にしながら見切り・ダッシュ・スライディング・フェイントを駆使して避けながら歌唱
歌詞含めアドリブ歓迎


草野・千秋
ジェラルドさん(f01674)と

戦闘前にUCで攻撃力UP
UC効果による高火力で短期決戦を目指す
僕は己が認め信じた想い人
ジェラルドさんの為に戦います

歌もUCの力も使い方次第ですね
僕はジェラルドさんの歌を信じます

戦闘は2回攻撃で着実に敵にダメージを与えつつ
怪力をパフォーマンスがてら使用
敵を掴んで地面に叩きつけたり
武器改造による剣のチューニングも忘れずに
ジェラルドさんが攻撃されそうなら
盾受け、かばうでカバーリング
大丈夫でしたか!?
ジェラルドさんのUCによる支援
頼りにしてますか無理はしないで下さいね
あなたが傷つくのはとても悲しい
――だから早めに終わらせます!
ドクター・サイコ!覚悟ッ!



「君のおかげで科学の発展に伴う倫理学の存在発展意義を改めて実感できたよ」
 大破する寸前に操縦席を分離させ致命傷を逃れたドクター・サイコに、ジェラルドが言い放つ。
「歌は上手く扱えば天地や神霊の心すらも動かし人の心を和ませ逆に君が言うように人々を扇動することも出来るさ。だからこそ意思決定は当人がすべきなんだ」
 ドクター・サイコに思想を持つ自由があれば、自分達にはそれに抗う自由がある。ジェラルドの言葉を、オブリビオンは一笑に付した。
「実に薄っぺらいエゴイズム、そしてリベラリズムだ。毒にも薬にもなりませんね」
 これ以上何も言うことはない、とドクター・サイコは両手を振る。その動作に合わせてユーベルコードが発動。十三枚のギロチン刃がジェラルドに襲い掛かった。
 機先を制された形となったジェラルドは効率的な回避ルート見極めようとするが、『サイコ・ギロチン』による超高速連続攻撃はそれを許さない。
 飛翔する断頭台の刃が、ジェラルドの首と言わず五体全てを断ち切りばらばらにしようと目前に迫った、その時。
「僕は負けられないんですよ、僕を信じてくれた人の為に!」
 ユーベルコード『Judgement you only(キミノタメダケノセイギ)』を発動した草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)が凶刃を遮った。
「僕は己が認め信じた想い人の為に戦います!」
 盾を掲げギロチン刃を迎え撃つ千秋だったが、防御ではなく攻撃に重点を置いた状態では防ぎ切ることは敵わない。
「大丈夫でしたか!? 頼りにしてますか無理はしないで下さいね」
「それはこっちの台詞だよ。……だが、助かった」
 刃の嵐が過ぎ去った後には、満身創痍の二人が残されていた。
「あなたが傷つくのはとても悲しい。――だから早めに終わらせましょう!」
「ああ、そうだな。――呪縛も血も毒も俺の演奏を止める枷にはならないさ。さぁ音楽を愛してその力を信じる者達よ、この曲が終わる前に決着を着けようじゃないか」
 自らの正義を預けるに足ると信じた者の歌が、千秋の背を押す。ジェラルドの『音楽の祝福(ザ・プライス・オブ・ブレッシング)』を受けた彼は、蒼銀の剣の切っ先を討つべき邪悪へと向けた。
「ドクター・サイコ! 覚悟ッ!」

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

オリガ・ホーリエル
歌は聞いた人と歌う人を幸せにするものですわ。それを兵器にするなんて言語道断よ!覚悟しなさい。

彼が合体しロボになったら【誘惑】と【存在感】であたしに注意を向けさせ、【見切り】で彼の動きを見切り回避していきたいわ。回避し切れないなら瓦礫の裏や大きい機械を盾にして攻撃を防ぎましょう。
あと回避中ロボの身体を観察し、露出している装甲の剥がれやケーブル等の弱点を発見しておきたいわね。

弱点を割り出す事が出来たら【歌唱】【属性攻撃】を乗せた【蒼き激情の歌】を弱点へ放つ。 機械は熱と煙に弱いのよ!

まだ生きているなら、【クイックドロウ】で拳銃を抜き頭部目がけ発砲。歌を汚そうとした罰を受けなさいな。


彩波・いちご
「歌で人の心を動かす、それは素敵だと思います」
「私達アイドルは、まさにそのために歌っているんです」
そう呟いてから、ドクターを睨みつけるように
「でも!私たちの歌が人の心に響くとしたら、それは聞き手側の感動であり、共感によるものです」
「決して!歌う私たちから何かを押し付けたりはしません!扇動なんてもってのほか、です!」
私はこれでも怒ってます
歌を利用しようとするやり方に

だから私の歌で野望を打ち砕いて見せます
歌うはPOPなアイドルソング
そして歌声は【天使のような悪魔の歌声】
ドクターも『九人の女神の冠』も私の歌声で破砕しますっ
人を傷つける歌声なんて本来は不本意ですけど
彼ら相手にはちょうどいい鎮魂歌です



「歌で人の心を動かす、それは素敵だと思います。私達アイドルは、まさにそのために歌っているんです」
 それは、ステージに立つ者全てにとって、侵すべからざる誓いであっただろう。歌を破滅の引き金としてしか見ていないオブリビオンのやり口に、いちごとオリガは怒りを爆発させた。
「歌は聞いた人と歌う人を幸せにするものですわ。それを兵器にするなんて言語道断よ!」
「その通りです! 私たちの歌が人の心に響くとしたら、それは聞き手側の感動であり、共感によるものです! 決して! 歌う私たちから何かを押し付けたりはしません! 扇動なんてもってのほか、です!」
 燃える想いをぶつける二人に、ドクター・サイコは肩を竦めてやれやれと首を振ってみせる。
「私の『九人の女神の冠』に君達の歌を捧げれば、そういう芸当も可能になる、という話ですよ。君達が心から平和と愛を願って歌えば、世界はそのように変わるでしょう。問題は、君達にそれができるかどうか。――だからこその、これは実験です」
 ぱちん、とドクター・サイコが指を鳴らす。すると先程破壊されたはずのロボの残骸が集結し、再び機械巨人を形作った。
「もう何も言いませんわ……覚悟しなさい」
 ただ短く呟いて、オリガはオブリビオンの正面へと躍り出た。当然ロボの攻撃は彼女に集中するが、それこそがオリガの狙い。
「このような歌は不本意ですけれど……私の歌声、お聴かせしますね?」
 火線の届かないポイントを即席のステージとして、いちごが『天使のような悪魔の歌声(スーパーソニック・ドラゴンブレス)』を響かせる。
 きぃん、とハウリングのような音が響くや衝撃波がドクター・サイコ・ロボに叩きつけられ、その四肢とユーベルコードによって組み上げられつつあった『九人の女神の冠』を粉砕せしめた。
「さぁ、燃え尽きさせてあげますわよ!」
 超音速衝撃波の残響を引き継ぐように、オリガが手にした拡声器から『蒼き激情の歌(パッション・オブ・ファイア)』による炎をまとった真空波を射ち出す。
 再生こそしたものの猟兵達の攻撃によって生じた欠損を補い切れず、ケーブルやパイプが露出したままの背面部に蒼い炎が着弾。オリガ達の憤怒を現すかのように激しく燃え上がる。
 焼け焦げていくロボの操縦席が分離し、ドクター・サイコが脱出を図る。だが、オブリビオンが姿をあらわにした瞬間、オリガが素早く銃を抜き放ってぴたりと狙いを定めた。
「歌を汚そうとした罰を受けなさいな」
 冷ややかな断罪の宣告と共に引き金が引かれ、銃弾が奇妙なシルクハットと狂った脳髄を貫通した。
「!!!」
 一回転し、仰向けに倒れるドクター・サイコ。その体が、ロボから燃え移った蒼い炎に包まれていく。
「……なるほど。……今回の実験は……失敗のようですね」
 そんな言葉を遺して、オブリビオンは骸の海へと還っていった。しかし炎は勢いを弱めることなく、ドクター・サイコの研究所全てを飲みこまんと広がっていく。
 もし何らかのデータや発明品が残っていたとしても、さほど時間を要せずに燃え尽きるだろう。晴天の色の炎が織り成す、美しく恐ろしい火炎地獄に背を向けて、いちごは小さく呟いた。
「彼ら相手にはちょうどいい鎮魂歌です」

●フェニックス・ゴーホーム
 焼失したオブリビオンのアジトから無事脱出してきた猟兵達を、心配そうな顔のフェニックスガールが出迎えた。
「嫌な予感がして来たんだけど……何があったの?」
「ええと、実はここに――」
 いちごが語る顛末に、フェニックスガールの表情は驚愕へと変わっていく。
「まさかこんな近くに……やっぱり、あなた達すごい……」
 呆然と呟く彼女が一転、強い決意を秘めた眼差しへと変わる。
「あたし、決めた。――これからもヒーローとして、ヴィランと戦う。歌の……夢のことは、平和になってから叶えることにする。あたしが歌いたいのは、戦いの歌じゃないから」
 そう言って、フェニックスガールは右の拳を猟兵達に向けて突き出してみせた。
「これからは、おじいちゃんがなりたかったヒーローじゃなくて、あなた達みたいなヒーローになれるように頑張る。……だから、あたしの戦いを見守っていてください」
 そして、フェニックスガールは蘇った翼を広げる。
 消えかけていた正義の炎は、今は世界を照らす太陽のように燃えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年04月23日


挿絵イラスト