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闇の奥に蠢くものは

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●???
 薄闇の中で異形の何かが、こそこそと動き回っていた。それは一つではない、幾つもの巨大な目玉だ。
 恐らくは妖怪変化の類であろう目玉たちは、僅かに差し込んでいる日の光を避けるようにして暗がりの隅に潜んでいる。
 そして物陰から物陰へと隠れながら、赤黒い目をぎょろぎょろと動かして警戒するように辺りを見回していた。

●グリモアベース
「ああ、どうも。集まってくれてありがとね」
 上崎・真鶴は、やや疲れた顔で猟兵たちを出迎えた。
「今回は少し大きい話になるみたいだよ。と言っても皆に対応してもらうのは、そのごく一部だからそこまで気を張る必要は無いんだけど」
 グリモアの予知によれば、近くサムライエンパイアで妖怪の群れによる大規模な災害が起きるのだという。しかし今のところ敵は広範囲に散らばった状態で、何時何処でといった具体的な予知は不可能らしい。
「だから集結前の妖怪たちを個別に撃破する、って感じなのかな。ただ大体の位置は把握出来たんだけど、そこから先がいまいち分からなくってさ……」
 真鶴は申し訳なさそうに頭を掻いた。
「あ、でも一応というか、もうちょっとだけ手掛かりはあるよ。実はその近所に住む子供たちが妖怪を見たって言ってるらしいんだ」
 場所は信濃国の小諸藩。その隅にある笹沢村だ。
「どこまで信用していいかは分からないけど、とりあえず聞いてみる価値はあると思う」
 と言うか、現地で聞いてみるしかないというのが実情のようだ。
「その子たちは神社の境内で遊んでることが多いみたいだから、そっちに行くといいよ。どの子がどれだけ情報を持っているか分からないし、いちいち村中の家を訪ねて回るのも大変だしね」
 子供たちが境内に居るのは、午前の10時辺りから午後の3時か4時くらいまでだろうか。首尾よく情報を聞き出してオブリビオンを討伐することが出来れば、一日仕事で終わるはずだ。
「ただし、怖い顔した大人が大勢で押し掛けて質問攻め……なんてことをしたら十中八九逃げちゃうからね。その辺は適当に気を遣ってあげるといいんじゃないかな」
 例えば一緒に遊んであげるとかね、と真鶴は付け加えた。
「最近その子たちの間では鬼ごっこが流行ってるらしいよ。あとは定番のかくれんぼとか、男女に分かれてチャンバラ遊びなんかもしてるみたい」
 背の高い木々に囲まれた神社の境内は、それなりの広さがある。子供たちにとっては都合の良い遊び場の一つなのだ。神様のバチを恐れなければ、隠れる場所にも事欠かない。
「もちろん絶対遊びに付き合わなきゃ駄目ってわけじゃないよ。要は子供たちの警戒心を解いて自然に接することが出来るようになればいいだけなんだからね」
 子供の気を引いたり機嫌を取ったりする手段は、それこそ幾らでもあるだろう。特別何かをしなくても、怖がらせたりしないよう気を付けるだけで子供たちの反応は随分違うはずだ。
「それじゃ後は任せるよ。ま、あんまり気負わずに半分は骨休めくらいの気持ちで行くといいんじゃないかな」
 そう言って真鶴は笑顔を見せた。


若林貴生
 こんにちは。若林貴生です。

 まずは子供たちからオブリビオンの情報を聞き出すのが目的ですが、そこに一切触れず遊んでいても構いません。むしろ無理に聞き出そうとすると成功度が下がる可能性もあります。
 オブリビオンに関しては第一章が成功した後、第二章で情報が追加されます。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『神社の境内で』

POW   :    子供たちと遊ぶ、童心に返る

SPD   :    昼寝をする、ボーっと過ごす

WIZ   :    景色を眺める、写真を撮ったりスケッチする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

清川・シャル
まずは子供たちと遊ぶ…
シャルもこの容姿だと充分子供ですね。

こーんにーちはー!
ねぇ、私も一緒に遊んでいい?混ぜて?
コミュ力で笑顔でごく自然に
子供たちに混ざります

得物は隠しておきますね、警戒されちゃダメですから
でも…
チャンバラで私に勝てたらお団子ご馳走します、なんて煽ってみて

怪我させないように、そこら辺の棒でチャンバラ
見切り、カウンター、武器落としを基本にいなします
ふふ、私強いでしょ?

鬼ごっこなら、羅刹だし鬼やりますよ
ダッシュ、フェイント、残像
ズルいかな〜?

一緒に大騒ぎしたら、なんだかんだでお団子ご馳走しながら情報収集を
ね、何か知ってたら教えて欲しいんだ?


勘解由小路・津雲
ふむ、子どもか……。得意ではないが、致し方あるまい。

■行動 神社にはまず普通に参拝しにきたていで近づこう。「やあやあ、ちょいと失礼するぜ。神社に参拝させてくれ。なに、おれにはかまわず、遊んでいてくれ」

とはいえ、有名な神社でもない限り、余所者が参拝に来るのは珍しいのではないだろうか。もし子どもが興味を持ったり、警戒しているようであれば「ああ、おれは怪しいものではない。旅の退魔師でね。訪れた先の神様に挨拶をしてまわっているだけさ」

あとは、符を鳥型の式神に変えて飛ばして見せようか。特別な力があるのを見せるため。妖怪を見た子どもが、向こうから相談を持ちかけてくればしめたものだが……。

アドリブ等歓迎


鳴雷・夜行
【SPD】 子どもは可愛らしいですからね、元気いっぱい遊びたいです。
 まずは手持ちの人形で人形劇でもして、子どもを集めましょうか。「やあ、ボクはキョンクンだよ! みんな、今日はよろしくね!(裏声)」といった具合に。主人公がご飯泥棒の妖怪の元へ行く小劇をしましょう。
 その後は皆さんと遊んで打ち解けましょう。【コミュ力】で気を解けるでしょうか。本物の鬼が鬼ですよ、なんて。
 ある程度仲良くしましたら、妖怪について聞きましょう。「私、妖怪を探しているのですが見ましたか?」
 協力・アドリブ歓迎



●鬼ごっこ(無双)
 春の日差しを浴びながら清川・シャルは神社に続く石段をゆっくりと上っていく。空は青く晴れているものの、朝の寒気が残っているのか少し肌寒い。進む先にある神社は木々の緑に覆われて小さな森のようにも見え、その森からは子供のものらしき喚声が聞こえている。石段を上りきって鳥居を潜ると、やはり数人の子供たちが集まって鬼ごっこを始めていた。シャルに気付いた子供の足が止まり、それに釣られて他の三人も足を止めてこちらを見やる。
「こーんにーちはー!」
 シャルは朗らかに声を掛けて笑顔を見せた。見慣れない人を見て少し驚いているようだが、それほど年齢差が無いせいか警戒している風ではない。一番年長の子でもシャルより少し下のようだ。
「ねぇ、私も一緒に遊んでいい? 混ぜて?」
 シャルが訊ねる。子供たちはどうするべきかといった様子で顔を見合わせたが、すぐに頷いた。
「いいよ」
「鬼ごっこ、分かる?」
「うん。私が鬼になるから、みんな逃げていいですよ」
 そう言うと子供たちは喜んで一斉に逃げ出した。それを見ながらシャルはその場で10秒数える。
「さて、と」
 シャルが辺りを見回すと、子供たちは遠巻きにしてこちらを見詰めていた。鬼の動き次第で逃げる方向を決めるつもりか、こちらの出方を窺っているようだ。
「それじゃ、行きますよー!」
 そう宣言したシャルは、御神木の陰に隠れようとした男の子にダッシュで近付く。そこまで速いとは思っていなかったらしく、男の子はあっさりと捕まった。
「もう鬼かぁ」
 男の子が悔しそうにそう言うと、シャルは思案するかのように小首を傾げた。
「私が一番年上みたいだし、全員捕まえるまで鬼でもいいですけど……」
「いいの!?」
 一転して笑顔になった男の子は、他の子供たちに向かって大声で叫ぶ。
「みんな捕まるまで、あのお姉ちゃんが鬼だって!」
 そして再びシャルから離れて逃げていく。しかし喜んだのも束の間、フェイントや残像が残るほどのスピードを駆使したシャルによって、子供たちは3分と経たずに全員が捕まるのだった。

●チャンバラ(無双)
 日が高く昇って暖かくなり始めると、それに合わせて子供が少しずつ増え始める。鳴雷・夜行が神社にやって来たのは、ちょうどその頃だった。境内に入ってきた夜行を見て、ひとりの男の子が近付いてくる。
「お兄ちゃんも遊びに来たの?」
「ええ。仲間に入れてもらえますか?」
 夜行が頷いてみせると、男の子は夜行の手を引いて促した。
「男はこっちだよ!」
 そう言って彼は境内の西側に走っていく。よく見れば子供たちは男女で東西に分かれて固まっていた。そして各々が手に棒きれを持っている。
「チャンバラ、ですか」
 夜行が男の子たちの集団に入っていくと、先程声を掛けてきた男の子が棒を持ってきた。
「これ使って」
「ありがとうございます」
 どうやら仲間に入れてもらったというよりも、戦力の確保として連れ込まれたようだ。それは女の子側でも同じらしく、あちらではシャルが良い感じの棒をぶんぶんと振っている。

 そしてチャンバラが始まった。
 シャルの眼前に、男の子が棒を振り回しながら突っ込んでいく。その突進を無造作にかわし、シャルは彼が握っていた棒を巻き上げて弾き落とした。それを見た夜行が感心したように頷く。
「……なるほど。せっかくですし、お手本に倣うとしますか」
 子供に怪我をさせるわけにはいかないし、軽くであっても子供を叩くのはあまりいい気がしない。夜行は向かってきた女の子が振りかざした棒を狙って出来るだけ優しく叩き落とした。そんなことを続けていると、ほとんどの子供たちが脱落して境内の端に寄っていく。その様子からして、得物を落とすか『斬られた』人は抜けていくルールらしい。そして当然というか、最後に残ったのは夜行とシャルの二人だった。
「一騎討ちみたいですね」
「お手柔らかにお願いします」
 子供たちの声援に包まれて、二人は刀(木の棒)を構え向かい合った。

●退魔師
 勘解由小路・津雲が境内に足を踏み入れた時、そこは子供たちの戦場だった。津雲は木の棒で打ち合っている子供たちに気を付けながら参道の端を通り、彼らを掻き分けるようにして進んでいく。
「やあやあ、ちょいと失礼するぜ。神社に参拝させてくれ。なに、おれにはかまわず、遊んでいてくれ」
 そして拝殿で参拝を済ませた津雲は、こちらをじっと見詰めている子供に気付いた。
「ああ、おれは怪しいものではない。旅の退魔師でね。訪れた先の神様に挨拶をしてまわっているだけさ」
 そう言って津雲が微笑んでみせると、子供は首を傾げて訊き返した。
「たいまし?」
「退魔師というのは……そうだな、簡単に言えばお化けや妖怪と戦う仕事だ」
「おじさん、妖怪と戦えるの?」
「もちろんだ」
 そう受け答えをしていたところに、チャンバラから抜け出してきたらしい男の子がやってきた。
「……それ本当?」
 男の子は津雲を見上げて訊ねる。
「おじさん強いの? 戦える?」
「ああ、まあな」
「じゃあ、これ。はい!」
 男の子は期待を込めた眼差しで竹の棒を差し出し、津雲の手に押し付けた。
「これは?」
「早く! こっちこっち!」
 男の子は津雲の問い掛けに答えず、ぐいぐいと手を引っ張っていく。そして連れて行かれた先に待っていたのは、ざわつく子供たちとその中心に立つシャルだった。
「ようやく次の相手が決まりましたか」
 シャルは津雲の姿を認めると、そちらに向き直って木の棒を正眼に構える。自分に勝てたら団子を御馳走すると言ったせいか、チャンバラは男女対抗の集団戦から『誰でもいいからシャルを倒す』という一騎討ち方式に移り変わっていた。
「……手強いですよ」
「なるほど」
 夜行の言葉を聞いて津雲が苦笑する。
「おじさん頑張れー!」
「たいましー!」
「行けー! たいましー!」
 よく分からない掛け声と応援に背中を押されて津雲は前に進み出た。そして受け取った竹の棒を構え、シャルと相対する。
「始め!」
 夜行の合図と共に、津雲はリーチの差を活かして棒を上段から打ち下ろした。しかしシャルはその一撃を半身でかわし、横薙ぎに棒を振るう。
「くっ!」
 津雲は辛うじて受け止めたが、そこからは防戦一方となってしまった。そして五度六度と打ち合った末、巻き技で竹の棒を撥ね飛ばされてしまう。その瞬間、男女問わず周囲の子供たちから歓声があがった。しかし、さっきの男の子は心配そうな顔で津雲の傍にやってくる。
「おじさん、本当に妖怪と戦えるの? 大丈夫?」
「心配は無用だ。おれにはこれがあるからな」
 津雲は懐から符を数枚取り出した。すると津雲の手にした符が一瞬で鳥型の式神に変わっていく。そして紙で出来た鳥たちは、生きているかのように羽ばたいて子供たちの頭上を飛び回り始めた。
「何これ!?」
「すげー!!」
 子供たちは飛び回る式神たちを見上げて一斉に騒ぎ始める。心配そうにしていた男の子もチャンバラのことはあっさり忘れたらしく、あちこち動き回る式神を楽しそうに目で追っていた。

●妖怪の話
「やあ、ボクはキョンクンだよ! みんな、今日はよろしくね!」
 夜行は陰陽師風の姿をした人形のキョン君を操りながら裏声で挨拶した。子供たちは興味津々でそれを見詰め、その手にはシャルに貰ったお団子を持っている。
「それじゃあ今日は一つ、妖怪の話をするよ! 最後まで聞いていってね!」
 そうして始まったのは、主人公がご飯泥棒の妖怪の元へ行く小劇。話が妖怪の件に差し掛かると、子供の中でも年少の子たちは自分の団子を妖怪に取られまいとして抱え込み、食べるのも忘れて食い入るように見詰めている。
「(ねぇ、おじさん)」
 一人の女の子が小声で呼び掛けながら津雲の袖を引いた。確かちよという名前だったはずだ。劇の邪魔をしないよう、津雲も囁き声で返す。
「(どうした?)」
「(おじさん、妖怪退治の人なんだよね?)」
「(ああ)」
 今日だけで数回目となる同じ質問に、津雲は頷いて返した。
「(それがどうした?)」
「(わたしね、この前妖怪を見たの)」
「……!」
 津雲は一瞬驚いてちよの顔を見返したが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「(分かった。これの後で話を聞こう)」

●目玉のお化け
 小劇を見終え、団子でお腹を満たした子供たちは、再び鬼ごっこを始めていた。しかし猟兵たちはその輪に加わらず、境内の隅に集まっている。そこには妖怪を見たというちよも一緒だった。
「それで、どんな妖怪でしたか?」
 夜行が訊ねると、ちよはややあって口を開く。
「……大きい目玉のお化け。赤かった、と思う」
「一匹だけですか?」
「ううん、二匹」
「他には?」
「わかんない……」
 ちよは自信無さげに首を振った。
「もっと沢山いる可能性も考えておいた方がいいな」
 津雲は顎に手を当てて考え込む。
「その妖怪は何処で見たんですか?」
 シャルは残っていた団子を差し出しながら訊ねた。それを受け取って、ちよは質問に答える。
「井戸のところ」
「それは村の中にある井戸なんでしょうか」
「違うよ」
 ちよは再び首を横に振る。
「山の中で見たの。誰も使ってない井戸……だと思うけど」
「山の中っていうと具体的にどの辺りだ?」
 津雲が訊ねると、ちよは申し訳なさそうに俯いた。
「……わかんない」
 詳しく話を聞いてみると、どうやら山で迷った時に偶然見付けたものらしい。しかもその妖怪を見た後、ちよは慌てて逃げ帰ったという。彼女からしてみれば帰り道すら曖昧で、大体の方角しか分からないようだった。
「となると、他の子たちにも訊いてみた方がいいかもしれませんね」
 そう言って、夜行は鬼ごっこに興じている子供たちを眺めやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カネリ・カルティエ
神社で子供達相手に情報収集ですか。ふふ、面白そうですね。いいでしょう、ご一緒しましょう。子供は好きですし、ね。神社でゆっくり過ごさせて貰いますよ

転送後、神社へ参拝。何の神がいらっしゃるのでしょうね
自然を感じながら境内を歩き
由緒書きの石碑があったら文字をなぞりながら読む

子供達に興味を持たれることがあったら屈み
「不思議なもの、珍しいものに興味がありまして。笹沢村でなにか不思議なものは見ませんでしたか?」
警戒心を解く為に他世界の話を童話のように楽しく話す
ふふ、私が他の街で聞いた珍しいものですと「ノックをすると、突然目の前にお菓子が現れる街」「宝石のように輝く美しい人々」とか
――詳しく聞きたいですか?


篁・綾
SPD分野で

…のんびりしながら、【動物と話す】で近くの小動物たちと遊びながら世間話しているわ。
一応【情報収集】もかねて。
…本当よ?

もし子供が来たら、なるべく目線を合わせて【優しさ】【コミュ力】で話をしてみるわ。
…背の高い子は私より高いかもしれないけれど。

子供達は外から来た人に話したいことがたくさんあったりするのかしら?
聞きたいことがあるのかしら?

どちらにせよ、できる限り話は聞いてあげるし、話をしてあげるわ。
…そういえば、男の子の遊びってよく知らないわね。
ちゃんばらくらい?
鞠つきとかあやとりはできるけれど。



●あやとり
 人気の無い拝殿の脇に、篁・綾は一人で立っていた。正確に言えば一人ではなく、彼女の掌には一羽の雀が乗っている。その雀は逃げもせずにチュンチュンと鳴き続け、掌から指先、指先から綾の肩へと飛び移った。綾が雀の前に指を差し出すと、雀は再び彼女の指に飛び移る。
「そう、そんな事が……」
 雀が言うには、近所の山に物の怪がやってきたらしい。だが雀も又聞きの又聞きで実際に見たわけではなく、詳細は分からないようだ。それでも物の怪が出たという話は確かなようで、その近辺には他の鳥や動物たちも近付かないようにしているという。
「それで、その物の怪が居たという場所だけど――」
 そう言い掛けた時、雀は逃げるように飛び去ってしまった。ややあって一人の女の子がこちらにやってくる。この子の気配を感じて逃げ出したらしい。目の前にいる子供を無視して続けるわけにもいかず、綾は一旦情報収集を中断することにした。
「こんにちは」
 綾は少しだけ屈んで女の子と目線を合わせる。元々それほど身長差があるわけでもない。
「……こんにちは」
「ひょっとして私に何か御用?」
 そう訊いてみると女の子は首を横に振る。そして何かを探すように、きょろきょろと辺りを見回した。
「お姉さん、一人?」
「どうして?」
「誰かと話してるみたいだったから」
 どうやら先程の会話が漏れ聞こえていたらしい。
「ええ、実は雀とお話していたのよ」
 そう言って綾はくすりと笑う。それを冗談と受け取ったのか、ぎこちなくではあるが女の子も笑顔を見せる。名前を訊ねると、女の子は『たま』と名乗った。
「たまちゃんはお友達と遊ばないの?」
「わたし、あれあんまり好きじゃないから」
 たまはちらりと後ろを振り返る。それに釣られて向こうを見ると、あちらはチャンバラの真っ最中だった。男女入り乱れて遊んでいるようだが、あれは基本的に男の子の遊びだ。苦手な女の子がいてもおかしくはない。
「じゃあ、こういうのはどうかしら」
 綾はあやとり用の輪になった紐を取り出して指に掛けた。そして淀みなく指を動かし、箒を作ってみせる。
「これが箒。そして……」
 綾の指がすいすいと動き、今度は四段の梯子が出来上がった。
「これが梯子ね」
 たまは綾の手元をじっと見詰めている。
「……もう一回やってくれる?」
「いいわよ」
 綾は再び最初から箒を作ってみせた。
「やってみる?」
「うん」
 綾が訊ねるとたまは素直に頷く。箒を解いた綾は、隣に座った彼女の指に紐を掛けてやった。
「まずはこっちの指をこうやって……」
 紐をもう一本取り出して手本を見せながら、綾は簡単な星の作り方を教えていく。
「この指をここで潜らせるの。……うん、そう。そうやってから、こっちに引っ張って……」
 ゆっくりと丁寧に教えているつもりだが、肝心のたまは気もそぞろであまり指が動いていない。どちらかと言うと手元よりも綾の顔をちらちらと覗き見ているようだ。
「……何か気になっていることでもあるの?」
 そう訊ねてみると、たまは手を止めて黙り込む。
「遠慮はいらないわ。何でも聞くし、私に分かることであれば何でも話してあげる」
 そう言って綾が微笑むと、たまは少し躊躇ったあとに、ゆっくりと口を開いた。
「……さっき、お化けのこと話してたでしょ? あれって、ちよちゃんのことなのかなって」
 さっきというのは雀から話を聞いていた時のことだろう。たまはこちらの会話をはっきりと聞いていたらしい。そのせいだろうか、鳥と会話が出来るということも信じているようだ。
「ちよちゃんって?」
 綾が訊き返すと、たまはおずおずと話し始めた。それによると、つい先日ちよちゃんという女の子が山の中でお化けを見たという。
「それは、ちよちゃんが話してくれたの?」
 たまは首を横に振る。
「ううん、お兄ちゃんが言ってた」
「あなたのお兄さんが、ちよちゃんから聞いた話なのね?」
「うん」
 はっきりと目撃した子供がいるのなら当然本人から話を聞くべきだが、ひとまずたまの兄から話を聞いてみるのもいいだろう。情報提供者は多ければ多いほど良い。
「……お兄さんとお話出来るかしら。あと、ちよちゃんとも」

●井戸の話
 既に日は高く昇っているものの、周囲の木々が日差しを遮るせいか神社の境内はそれほど暑くはない。遮られた日差しは木漏れ日となって地面に降り注ぎ、光と影の斑模様を作り出している。通り抜ける風が木の葉をさわさわと揺らし、その度に地面の斑模様も揺れ動いていた。
 カネリ・カルティエは大はしゃぎで遊び回っている子供たちを眺めながら、境内をのんびりと歩いていく。境内の隅には一際大きなケヤキが悠然と枝を広げていた。幹はゴツゴツとして太く、根は蛇のようにうねっている。そして丁寧に巻かれた注連縄が、ここの御神木であることを示していた。
「これは……落雷でもあったんでしょうか」
 立派な木ではあるが、御神木は真ん中から大きく裂けている。真っ二つと言ってもいいほどの派手な裂け目は、恐らく落雷によるものだろう。裂け目を足場にすれば子供でも簡単に登れそうではあるが、やはり幹に巻かれた注連縄が気になるのか木登りをしている子供は一人もいない。
「おじさん、何してるんだ?」
 カネリが御神木を見上げていると、背後から子供が話し掛けてきた。振り返ると男の子が二人、こちらを見詰めている。一方はまだ小さいが、もう一方の子はこの場で一番年嵩のようだ。
「参拝のついでに少し境内を見て回ろうかと思いまして」
「そっか。騒がしくて悪いね。ここ、チビ共の遊び場だからさ」
 年嵩の子は申し訳なさそうに言った。
「いえいえ、私も子供は好きですし問題ありませんよ」
 彼から見ればカネリは余所者のはずだが、特に警戒はされていないようだ。
「色々と見てみましたが、この社は水神を祀ったもののようですね」
「そうだけど……あ、水神様の御池ならあっちにあるけど案内しようか?」
 そう言って年嵩の子は神社の外を指し示した。
「それもいいのですが実は不思議なもの、珍しいものに興味がありまして。笹沢村で何か不思議なものは見ませんでしたか?」
 カネリは屈み込んで男の子たちの反応を窺う。
「不思議なもの?」
「ええ、普段目にしたことのない不思議なものです。村の外でもいいですし、聞いただけの話でもいいのですが」
 小さい方の男の子は特に物怖じする様子もなく、少し悩んでからカネリを指した。
「おじさんみたいに大きい人、初めて見た」
「なるほど、私ですか」
 苦笑するカネリを見て、年嵩の子が口を開く。
「だったらちよに訊いてみれば? あいつ、この前お化けを見たって言ってたから」
「……その子は今ここに?」
「いるよ、あそこ」
 そう言って彼は鬼ごっこ中の子供たちを指し示した。ちよという子は楽しそうに逃げ回っている子供たちの中にいるようだ。
「呼んでこようか?」
「いえ、後で構いません。他にお化けを見た子はいませんか?」
「いない」
 年嵩の子はきっぱりと言い切った。
「何故分かるんです?」
「それは――」
 男の子が答えようとした時、小さな女の子がこちらに駆け寄ってきた。
「お兄ちゃーん!」
 どうやら彼の妹らしい。ぱたぱたと走る彼女の後ろを、少し遅れて綾がついてくる。
「取り込み中かしら」
 そう言って綾は年嵩の子をちらりと見た。
「お兄ちゃん、この人がね、ちよちゃんの話を聞きたいんだって!」
「……今その話をしてたんだよ」
 そう言いながら男の子は妹の髪をくしゃくしゃと掻き回す。
「そうなの?」
 綾が訊ねるとカネリが頷いた。
「ええ、こちらもちょうどその話をしていたところです」
 そしてカネリは再び男の子に視線を向ける。
「それで話の続きですが、よろしいですか?」
「ああ」
 年嵩の子は改めて田吉と名乗り、事のあらましを話し始めた。
「ちょうど3日前だな。遊んでる内にちよがいなくなったって他の子たちが騒ぎ出したんで、俺が山へ探しに行ったんだ。大人にバレると余計騒ぎになるから。んで、ちよは見付かったんだけど様子がおかしくてさ。話を聞いたら『目玉のお化けを見た』って。それだけだよ」
「なるほど。しかし山の中と言っても広いでしょう。何処で見たんです?」
「古い井戸のところって言ってたな。何処にあるのかは俺もよく分からない」
「彼女に訊けば分かるかしら」
「どうかな」
 田吉は首を傾げた。
「あいつ、ものすごく慌ててたし。ひょっとしたら道なんて覚えてないかも」
「あなたならどう? 見当は付く?」
 綾が訊ねると、田吉は少し考え込む素振りを見せる。
「ちよを見付けた場所と、ちよがどっちの方向から逃げてきたかは覚えてるよ。その辺りを探せば多分見付かると思うけど……」
「そこまで案内をお願いすることは出来ますか?」
 カネリが言うと、田吉はあっさりと頷いた。
「いいよ、晩飯までに帰れるなら。でもお化けとやらが本当に居るかどうかは知らないよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『古井戸』

POW   :    井戸に入る

SPD   :    村人に聞き込み

WIZ   :    井戸が何処に繋がっているのか調べる

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●古井戸
「大体この辺だな」
 先頭を歩いていた田吉は、足を止めて猟兵たちを振り返る。
「俺がちよを見付けたのはここ。ちよが来たのはあっちからだ」
 そう言って田吉は東の方角を指した。
「俺が言うのもなんだけど、所詮は子供の足だからさ。ここからそんなに離れちゃいないと思うよ」

 田吉と別れた猟兵たちは、辺りを警戒しながら彼が示した方角へと歩き始めた。必ずしも真っ直ぐ進んだ場所にあるとは限らないため、見落としが無いよう少しずつ探索の幅を広げて進んでいく。すると、いつの間にか周囲から鳥や獣の気配が消えていた。
 そして延々と続いていた雑木林が途切れた場所に、その井戸はあった。元々は屋根が付いていたようだが、とうの昔に朽ちたようだ。もちろん釣瓶なども見当たらない。

 もし井戸に入るのであれば、明かりやロープなどの準備が必要になるだろう。内部がどうなっているかは分からない。ひとまずどこか別の場所に繋がっているのかどうか、ちよの見た妖怪が居るのかどうかを調べることになる。
 井戸には入らずに周辺を調べるという手もある。しかし何を調べるのか、現状で手掛かりらしい手掛かりは無い。もしも何かしら当てがあるのなら試してみるのもいいかもしれない。

 いずれにせよ、選択は猟兵たちに任されていた。
勘解由小路・津雲
ふむ、ちよ が見たという妖怪、外見の特徴からして一度戦ったことがある相手のようだ。予想があっているなら、陰陽師としてなおさら放置できぬな。

■行動 井戸の中を探すなら、直接行かずとも鳥型の式神(道具)を飛ばし、見たものを「千里鏡」で映し出すことはできる。だが問題は明かりだな。そうだな、【練成カミヤドリ】で鏡の複製を作り、光を反射するよう配置し、井戸の中を照らそう。これでは限られた範囲しか照らせまいが、どこかに続いているかなど簡単な調査ぐらいならできるだろう。また、もし下に降りたいという仲間がいれば、鏡を足場にしてもらってもいい。私の本体の複製を踏まれることになるのは、いささか不満ではあるが……。


鳴雷・夜行
井戸ですか。水の近くは出やすいですからね。早く退治して、不安を取り除きましょう。

では、ここ辺りのご老人に伺うなりしてこの井戸がどこに繋がっているのか、人柱など後ろ暗い話の有無、民話について調べましょう。この井戸だけでなく山にまつわる話もいいかもしれませんね。
水といったら水神の木が裂けていたのも気になりますね。もし井戸が水神の池と繋がっていたら、それが関係するかもしれません。念のため、池にも赴きましょうか。水神の話も並行してご老人に伺いたいです。


篁・綾
POW分野で。
とりあえず、鉤縄を用意してさっくり降りてみましょうか。
…ここまで来たら、行けばわかるわ、多分ね。
照明は松明か提灯でもあればいいわ。
私は【暗視】がきくから…
どちらかというと他の人向けだけれど、あって困るものではないしね。

【聞き耳、第六感】で周囲の【情報収集】をしつつ、警戒しながら進んでいくわ。
壁や地面にも何かないか、調べながら進んで行きましょう。
武器は何時でも抜けるように。
通り道に何か生き物がいたら、【コミュ力、動物と話す】で話しかけてみてもいいかもね。
何かわかるかもしれないし…

…さて、鬼が出るか蛇が出るかね。


清川・シャル
目玉のおばけ…
怖くはないんですけど、まぁオブリビオンだと思いますよね
災厄は迷惑ですしね
見つけたらボコりましょ
と、まぁ見つけるのが先ですね

ロープワークで井戸の中に
第六感、野生の勘、地形の利用、情報収集で中がどうなってるのか調べましょう
暗いでしょうし、すまほのライトをオンに。便利です。
視力で周りを調査しますね
何か痕跡があれば追跡を
念のために忍び足で移動しましょう

何か現れたら他の猟兵に知らせなくてはですし、ダッシュ、逃げ足で対応しましょうか


カネリ・カルティエ
ふふ、田吉君は他の子想いで尚且つ記憶力抜群とは将来が楽しみですね。

うーむ、フック付きワイヤーならありますが、今日は体力(POW)に自信がないので他の方にお任せするとしましょう。(他の方が必要なら貸し出します)

【SPD】
ちよ君が迷子になった件や田吉君に聞いた件は伏せて、笹沢村のお年寄りにさりげなく井戸について尋ねてみますか。
世間話にもお付き合い。

「雑木林の先に井戸があるのが気になりまして、何故あんな場所に井戸を作ったのでしょうね」
「井戸がどこかに繋がっている可能性はあるのでしょうか」
万が一必要があれば猟兵であることも明かします。

井戸の妖怪に池の水神。村の名前が笹沢とは今日は水に縁のある日ですね。



●城の話
 鳴雷・夜行とカネリ・カルティエは例の古井戸について調べるため、村外れに住む老人を訪ねていた。井戸の情報を訊くのであれば、なるべく井戸の近くに住んでいる人がいいだろう。そう考えてやってきたのだが、それでも老人の家から古井戸まではそれなりの距離がある。詳しい話を聞けるかどうかは、会ってみるまで分からなかった。
「雑木林の先に井戸があるのが気になりまして、お話をお伺いしたいのですが」
「ああ、あの井戸なぁ……」
 六兵衛と名乗った老人は、カネリの言葉を聞いて昔を懐かしむように目を閉じた。
「ありゃワシが子供の時分からあったと思うがのう」
「村の人が掘ったんですか?」
 夜行が訊ねると、六兵衛はゆっくりと首を横に振る。
「いや、そんな話は聞いたことないな」
「では誰が?」
 重ねて問う夜行に、六兵衛は再び首を振った。
「分からんな。少なくともこの村の人間ではないと思うが……。第一あんなとこに井戸なんぞ掘っても誰が使うんじゃ?」
 六兵衛の言にも一理ある。確かにその古井戸は村から離れ過ぎていた。行こうと思えば水を汲みに行けないこともないが、整備された道が通っているわけでもなく、日常的に使用するような距離ではない。
「ですが、そうなると何故あんな場所に井戸を作ったのでしょうね」
 カネリがそう言うと、六兵衛は腕組みをして考え込む。
「それなぁ……ワシらも一時気にしとったんじゃが、特に害があるわけでもなし、考えても仕方ないってことに落ち着いたんじゃ。子供が間違って落ちんように蓋だけは作って取り付けたがの」
 それも昔の話じゃ、と六兵衛は付け加えた。
「昔はあの辺りに誰かが住んでいたといったことはありませんか?」
「いやぁ……無いと思うがの」
 そう言って首を傾げた六兵衛は、ふと何かを思い出したように顔を上げた。
「ああ、昔と言えば……ちと離れておるが、昔は城が建っておったな」
「お城、ですか」
「うむ、尾沼様の城じゃ。今はもう誰も住んじゃおらんがの」
 尾沼様というのは、ずっと昔にこの一帯を治めていた領主のことらしい。だが敵に攻められ籠城戦の末に敗北し、その後は討たれたとも逃げたとも伝わっている。城は廃城となったのだが、柵や門のみを取り壊してあとは放置されているのだと六兵衛は言った。
「ではその城に住んでいた人たちが使っていたということは考えられますか?」
「いやいや」
 六兵衛は手を振って、やんわりと否定した。
「城があったのは井戸よりもずっと東じゃ。あそこからでも少しばかり遠いのう」
「井戸がどこかに繋がっている可能性はあるのでしょうか」
 カネリが訊ねると、六兵衛は困った顔で首を捻った。
「うーん……聞いたことは無いが、ワシも井戸に潜ったわけではないからのう。ちと分からんな」
「水神の池と繋がっている、といったようなことは……」
「無い……と思うがなぁ」
 六兵衛は夜行の問いにも首を傾げる。
「そこまでして水が汲みたきゃ御池に直接行った方が手っ取り早いじゃろう」
「なるほど。では次に水神様についてもお伺いしたいのですが――」
 夜行は話題を水神の件に切り替え、さらに質問を続けていく。

●井戸の底
「……何もいないようだな」
 勘解由小路・津雲は幾分警戒しながら井戸の中を覗き込んだ。暗くて底まで見通すことは出来ないが、特に異常は無いように思える。
「随分長いこと使っていないようね」
 篁・綾は井戸の脇に落ちていた蓋を見下ろした。板切れを適当に組み合わせただけの簡素なものだが、かなりボロボロで相当に年季が入っている。井戸の周囲も下草に覆われていて、人が通っているようにはとても見えない。
「もう枯れているんでしょうか」
 念のためにと清川・シャルが小石を落としてみると、大して間を置かずにコツンと乾いた音が帰ってきた。
「それほど深くないようですね」
 予想通り枯れ井戸のようだ。特に何者かが潜んでいる気配も無い。
「一応確認はしておくべきか」
 津雲は自身の本体である鏡の複製を十数枚作り出すと、それらを操って井戸の中に潜らせる。そのままでは井戸の底まで届かない太陽光を、複数の鏡で反射させて井戸の奥を照らし出した。さらに神社でも見せた鳥の式神を井戸の中に向かわせる。
「さて、どうかな?」
 津雲が手にした千里鏡を覗くと、そこには先程放った式神の視界がそのまま映し出されていた。式神を操作すると鏡面に移る映像も移り変わっていく。そして見付けたのは、ぽっかりと口を開けた大きな横穴だった。
「これは……隧道か?」
「行けば分かるわ」
 綾は鉤縄を取り出すと井戸の縁に鉄鉤を引っ掛ける。縄に軽く体重を掛けて安全を確かめると、ロープを伝いゆっくりと井戸の底に降りていった。そのまま特に危なげなく底に辿り着く。千里鏡で見た通り、内壁に1メートル四方程度の穴が開いていた。トンネルの入口としては少し狭いが、奥は広く普通に立ち上がれそうだ。その先は真っ暗な通路が続いていて、そこから湿った空気が漏れだしている。 
「大丈夫ですか?」
 井戸の中にシャルの声が響く。
「ええ、特に危険は無いみたい」
 そう声を掛けてから、綾は邪魔にならぬよう通路の中に入った。ややあってシャルが、そして最後に津雲が降りてくる。
「これって隠し通路ですよね」
 シャルは横穴の縁をそっと撫でた。崩れかかってはいるようだが、使われている石は平らに削った跡がある。明らかに人の手が入ったものだ。
「とりあえず行ってみましょう」
 通路に潜り込みスマホのライトを点けたシャルは、先頭に立って暗闇の奥へと歩き始めた。

●水神の池
「……特に異常は見当たらないようですね」
 念のためと水神の池にやってきた夜行とカネリは、池のほとりに立って辺りを見回した。雑木林に囲まれた池は鳥のさえずりが聞こえる以外、特に怪しい気配は感じられない。のどかな風景そのものだ。
「今日は何かと水に縁のある日ですし、もしやと思ったのですが」
「ここはハズレかもしれませんね」
 夜行は肩をすくめてみせる。あの後も六兵衛に幾つか訊ねてみたのだが、水神様について特にめぼしい話は無かった。御神木は六兵衛が子供の時に落雷を受けて裂けたこと、そして彼が知る限り人柱などの行為は無かったことを聞き出せたくらいだ。
「この池と繋がっているのでなければ、可能性があるのは……城の抜け道でしょうか」
「そうですね、私も同じことを考えていました」
 不便な位置にあり、誰が掘ったのかも不明で、一見無意味としか思えない怪しい枯れ井戸。そして六兵衛が話していた城。あの井戸がただの古井戸ではなく、何かしらの意図で作られたものだと考えるならば、その可能性は十分にある。
「……行ってみますか?」
「ええ、ひょっとすると他の皆より先に着けるかもしれません」
 そう言って二人は踵を返し、水神の池を後にした。

●痕跡
 暗闇の中を地図や情報も無しに進むのは、体力と根気のいる仕事だった。自分たちがどこに進んでいるのか、ここに何があるのかもはっきりしていない。その上オブリビオンとの遭遇を考えて警戒を怠らずに進むとなると徐々に疲労が蓄積していく。
「この道は東に進んでいるのよね?」
「多分そのはずです」
 この通路は井戸から見て東の方角に伸びていた。緩いカーブや分かれ道も幾つかあったが、進む方角は最初からほとんど変わっていないように思える。分かれ道と思った先もすぐに行き止まりで、まともに続いているのは東に進む一本のみだ。シャルはスマホのライトを、絢は手にした提灯を使って、何物も見逃すまいと地面や壁を照らし続けていた。通路の脇には等間隔に木の柱が並び、その柱と梁で通路全体が補強されている。とはいえ全てが無事というわけでもなく、腐食して柱としての体を成していないものも多くあった。
「どうせなら、もう少し天井を高く掘ってほしいところだが……」
 小柄な女性陣二人はこの通路を普通に歩いているが、津雲にとってはいささか高さが足りていない。真っ直ぐ立って歩こうと思えば烏帽子が天井に擦れるだろう。仕方なく津雲は少し身体を縮めるように屈んで歩いていく。
「ちょっと待って」
 綾が足を止めた。彼女が提灯で照らした先には、小さな獣の足跡が残っている。薄くて分かりにくいが、イタチのものと似ているようだ。
「オブリビオンとは関係無さそうね」
「そうだな」
 津雲が頷いた。ちよが見たのは赤くて大きい目玉の妖怪だ。こんな足跡は残さないだろう。だがそれからしばらく歩いていると、通路の奥から嫌な臭いが漂ってきた。
「これって……」
 シャルは口元を押さえて眉根を寄せる。先に進むほど強くなるその臭いは、血と腐臭が混じったものだ。それでも先に進んでいくと、スマホのライトが横たわっている小さな獣を照らし出す。それを見て綾も僅かに顔をしかめた。
「イタチのようね」
 死臭の出所は、その亡骸だった。先刻の足跡もこのイタチのものだろう。
「オブリビオンの仕業みたいですね」
 シャルが言った。遺体には何かで抉り取られたような大きい傷跡があり、一目で自然死ではないと分かる。 
(「この傷跡は恐らく呪力弾によるもの……となれば、やはり」)
 ここを通ったオブリビオンに殺されたのだ。ちよが見た妖怪の特徴と残された傷跡から、津雲は以前戦ったことがある敵の姿を思い出していた。

●地下室
 イタチの躯を発見した後は、痕跡らしい痕跡がまるで見付からなかった。所々にあった分かれ道も見当たらなくなり、ただ真っ直ぐに一本道を歩いているだけだ。
「オブリビオン、見付かりませんね」
「……いないわね」
 シャルと綾は時折足を止めて耳を澄ますが、特に怪しい物音は聞こえない。歩いている時も聞こえるのは自分たちの足音や衣擦れの音だけだった。
「少し暑くなってきました」
 シャルは額に滲んでいた汗を軽く拭う。風が入らないせいか、空気は淀んでいる上に埃っぽい。
「そろそろ終わるはずだ」
 津雲が言った。しばらく前から道は緩やかな登り坂と階段が交互に続いている。
「上に向かってるということは、出口が近いんだろう」
「どうやらそうみたいね」
 綾は暗闇を見通すかのように通路の先をじっと見詰めた。こちらの灯りとは別に、通路の先が微かに明るくなっている。その光に向かって進んでいくと長かった通路が終わり、石造りの広い部屋に出た。
「ここは……隠し部屋かしら」
 広いといっても今まで歩いてきた通路に比べればといった程度で、部屋の隅には刀槍の類が乱雑に積み重なっている。それどころか鎧兜までもが転がっていた。そして上に続く階段があり、そこから日の光が差している。
「この様子だとあの古井戸は、抜け道の出口だったようですね」
 シャルは辺りを見回しながら言った。転がっている鎧は逃げる時に脱ぎ捨てたものだろう。槍や刀も逃げるのに邪魔だからここに捨てていったのだ。
「オブリビオン……ここにも居ないということは、多分上に居るのよね」
 綾が階段の先を見上げると、ちょうど階上から足音が響いてくる。そして階段の上から姿を見せたのは、別行動を取っていた夜行だった。
「夜行さん?」
「ああ、よかった。ご無事でしたか」
 夜行は安堵したように笑顔を見せる。続いてカネリも顔を覗かせた。
「皆さん、古井戸の抜け道を通ってきたんですよね?」
「ああ。見た所ここは何処かの城のようだが」
 津雲は刀槍の山にちらりと目をやった。
「ええ、そうです。と言っても既に廃城となっていますが……」
「カネリさん、急いだ方が」
 夜行に声を掛けられ、カネリは言葉を切って頷いた。
「そうですね、話は後です。とにかく今は上に」
「何かありましたか?」
 シャルが訊ねると、夜行は真剣な表情で短く答えた。
「オブリビオンがいました」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『暴走する式』

POW   :    魔弾呪式
【幾つもの呪力弾】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    分裂呪式
レベル×1体の、【一つ目の中】に1と刻印された戦闘用【自身と同じ姿の暴力する式】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    憑依呪式
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【武器や殺傷力のあるもの】と合体した時に最大の効果を発揮する。

イラスト:灰色月夜

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●暴走する式
 地下の隠し部屋から上に出ると、そこは廃城となった城の館だった。館は二階建てで、その二階には話に聞いていた通りの赤黒い巨大な目玉のオブリビオンが20体近く溜まっているらしい。
 このまま待っていれば目玉たちは階下に降りてくるだろう。それを一階で迎え撃つもよし、こちらから二階に乗り込んで戦うもよし。どちらも数人が入り乱れて戦えるだけの広さは十分にある。
 もちろん館の外に出てもいいし、妙案があるのなら地下に誘い込んで戦うのもいいだろう。

 どう動けば有利に立ち回れるのか。数分もすればオブリビオンたちが下に降りてくるだろう。それまでの間に考えなければならなかった。
勘解由小路・津雲
やはり暴走した式神であったか。先ほどのイタチ、目につくものを無差別に襲っているのだろうか。ちよなど村の子どもに被害が出なくてよかったぜ。なぜこんなところにいるかわからないが、術者のはしくれとして、呼び出された使い魔の始末はつけねばな。

■戦闘 【歳刑神招来】を使用。廃墟とはいえ、もとは城。城内には武器になりそうなものが落ちているのではなかろうか? それを思うと憑依術式を警戒して城外に出たいところではある。ただ仲間の足並みがそろわないのも問題ゆえ、最終的には他のものにあわせよう。また、打ち込んだ槍や鉾は、敵に取り込まれぬよう放置はせず、消していくことにしよう。「式神よ、役目は終わった、もう休め」


篁・綾
それなりの数がいるようね。…あの子達が被害に合わなくてよかったわ。

UC【桜狐招来】を使用。召喚した桜を纏う銀狐に【騎乗】し突撃。

【見切り】で彼らの動きを見極め、常時舞い散る桜で【目潰し】しつつ、
【鎧無視攻撃、2回攻撃、衝撃波、マヒ攻撃】を駆使して斬撃を撃ち込むわ。
狐は【空中戦、残像】を駆使した移動・回避に従事しつつ、【カウンター】で至近の相手へ噛みつき等を。
噛み付いた【敵を盾にする】のも吝かではないわ。
…まぁ使ったらポイするのだけれど。
回避等が困難なら【オーラ防御、呪詛耐性、激痛耐性、武器受け】等で耐えるわ。


また、可能であれば【範囲攻撃】も駆使してUC【月牙乱桜】で斬撃を乱射しましょう。



●迎撃
 館の二階に溜まっていたオブリビオンたちは、やや急な階段を転げ落ちるかのように雪崩れ込んでくる。
「やはりな」
 赤黒い目玉の群れを認め、勘解由小路・津雲は懐から霊符を取り出した。以前にも戦ったことがある、暴走した式神だ。
「それなりの数がいるようね」
 続々と溢れ出す式神たちを見据えた篁・綾は、刀を抜き放つと巨大な狐に騎乗する。桜を纏い白銀に輝くその狐には、花笠という名が付いていた。
「……あの子達が被害に遭わなくてよかったわ」
「まったくだ」
 津雲が応じた。ちよが助かったのは目玉たちが移動を優先したからだろうか。理由は不明だが、いずれにせよ運が良かったとしか言いようがない。
「行きましょう」
 綾の声を合図に花笠が大きく跳躍した。敵中に飛び込んだ花笠が動き回る度、身に纏う桜の花弁が流れ星のように尾を引いて敵の視界を塞ぐ。オブリビオンたちは数こそ多いが動きそのものは単調で、先を読むのはそう難しいことでもない。綾と花笠はわざと敵の前を横切って桜吹雪を目眩ましに使いながら、すれ違いざまに斬撃を浴びせ、床に叩き落としていった。

●術者として
 渦巻く桜吹雪の中から、一匹また一匹とオブリビオンが抜け出していた。逃げ出しているようにも見えた目玉たちだったが、津雲の姿を見ると今度はこちらを狙って襲い掛かってくる。
「八将神が一柱、刑罰を司る歳殺神の名において、汝を裁かん。急急如律令!」
 印を結ぶ津雲の周囲に、数十近い式神が槍や鉾の形を取って現れた。鋭い穂先が迫り来るオブリビオンに狙いを定めて迎え撃つ。一斉に放たれた槍は狙い通りに突き刺さり、敵を床や壁に縫い止めた。
「何処の誰が呼び出したのかは知らんが、こうなった以上は始末をつけねばな」
 津雲は数本の鉾を操ると、身動きの取れなくなった目玉の瞳孔に突き立てる。そして力尽きた目玉は、溶けるようにして跡形も無く消え去った。そこには式札の一枚すら残ってはいない。
 休む間も無く別の目玉が距離を詰めてくる。しかし敵は津雲に見向きもせず、壁に突き刺さったままの槍や鉾を目指しているようだった。それを見た津雲は、以前戦った敵の式神が無機物に憑依していたことを思い出す。
「なるほどな」
 確か刃物など武具の類に憑依した時は手強い相手となったはずだ。このまま、こちらの式神が取り込まれては面倒なことになるだろう。
「式神よ、役目は終わった、もう休め」
 そう言って津雲は術を解く。すると壁に突き刺さっていた槍が音も無く消え去った。唐突に槍が消えて目標を失ったせいか、敵はまごついたように赤黒い目をぎょろぎょろと動かしている。槍と鉾を呼び直して目玉に止めを刺すと、津雲は素早く辺りを見回した。
(「他に刀槍の類は……無さそうだ」)
 少なくとも目にした範囲に槍や刀は落ちていない。地下の隠し部屋にあった分は別として、目立つ場所に捨てられた武具や甲冑は持ち去られたのだろう。その時、津雲の背後からガタガタと激しい物音が響く。振り返ると其処に居たのは、板戸や柱といった様々な木材で鎧われた目玉だった。無数の木片が目玉を覆い隠し、塊となったそれは更に四肢を得て歪な巨人に変化していく。
「いいぜ、相手をしてやろう」
 津雲は再び印を結ぶと、今度は百本以上の槍と鉾を浮かび上がらせた。木製の巨人となったオブリビオンは、津雲目掛けて拳を打ち下ろす。横に跳んでそれを避けると、津雲は巨人の腕に向けて槍を放った。狙うのは継ぎ目となっている関節部だ。そこに攻撃を集中させると、支えきれなくなったのか巨人の腕が千切れて落ちる。
「武器に憑かなければ、この程度というわけか」
 オブリビオンは槍を払い除けようとして残った腕を振り回した。しかし津雲の槍と鉾は、次々と巨人を穿ち貫いていく。その度に木片が飛び散り、もう一方の腕も砕け、やがて鎧われていた目玉が露わになった。
「終わりだ」
 津雲は式神の槍を数本まとめて放ち、目玉の中心、赤く血走ったような瞳孔を射抜く。すると目玉は萎んだ風船のように小さくなって消え失せ、全身を覆っていた木材もガラガラと音を立て崩れ落ちていった。

●月と桜と
 桜吹雪が舞い、幻想的とも呼べそうな風景の中を、白銀の狐が縦横無尽に飛び回っている。だが敵も黙ってやられているばかりではない。綾たちの正面に立ち塞がった目玉が、こちらに向かって呪力弾を放つ。それを寸前でかわした綾は、素早く目玉の背後に回り込んだ。そのまま敵の尻尾らしき場所に噛み付いた花笠が、オブリビオンを引き倒す。しかし何時の間にやってきたのか、数匹の目玉たちが一斉に呪力弾を放ち、それが雨のように降り注いできた。綾は薄紅深山を開いて、花笠は噛み付いたままのオブリビオンを、それぞれ盾にして攻撃を防ぐ。
「……危ないわね」
 呪力弾の雨が止むと花笠は盾にしていた目玉をポイと放り捨てた。そして敵が自由を取り戻すよりも速く綾が斬り捨てる。
「さぁ、次はどうするのかしら」
 そう言って綾が敵の出方を窺っていると、目玉たちは一斉に分裂を始めて周囲に散らばっていった。どうやら数で押し切るつもりのようだ。それを見た綾は刀を構え直し、心を細く、集中させていく。
「ぎらり、ぎらり 光る弓張りの月よ」
 桜が舞い散る中、綾の声が朗々と響く。
「宵に揺られし月影の夢を 猛き風にて花へと散らせ」
 その言葉と共に、桜の花弁を散らしながら三日月が乱れ飛ぶ。そして四方八方に放たれた斬撃は、包囲しつつあった目玉たちの本体も分身も、全てを区別なく両断していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鳴雷・夜行
さ、妖怪退治と参りましょう。
合体もとい憑依ですか。大きくなる……狭い通路とかに入れたら詰まりますかね。よし、そうしましょう。

ざっと地下入り口付近の構造を確認。程よい幅の通路があるなればそちらに、なければ地下の道に誘いたいです。キョン君を釣り餌に何匹か誘いましょうか。あ、地下ならば来る前に地下室に散らばる武具類をある程度回収しておきます。お札でも貼っておけば合体材料にしないかな? いくつかは大きくするために放置。
やって来たら通路に引き、大きさで十分な身動きが取れないように。そしてユーベルコードを【属性攻撃】【破魔】で強化し、打ち込みます。
恨みはありませんが、未来のためここで散ってください。


清川・シャル
んん…こんな所に居たんですね
纏めてフルボッコです!

【P】
Amanecerを召喚
歌唱、誘惑、催眠術でおびき寄せを
成功したらスピーカーから熱光線発射
(2回攻撃、目潰し、衝撃波、マヒ攻撃、スナイパー、串刺し、全力魔法、一斉発射、殺気)

これだけで仕留められるとは思ってませんので

ぐーちゃんΩにてアサルト弾とグレネード弾での攻撃です
(追跡、念動力、クイックドロウ、早業2、援護射撃、吹き飛ばし、傷口をえぐる、属性攻撃1、毒使い

それから、そーちゃんでUCでどうです?
(なぎ払い、2回攻撃、範囲攻撃、武器落とし、鎧無視攻撃、鎧砕き

敵攻撃には見切り、カウンター
それから、敵UCは氷の盾を展開して防御です


カネリ・カルティエ
ふふ、楽しい散策でした。

【SPD】一階にて、可能であれば後衛支援に。

ずっと昔の廃城ということは、戦っている最中に崩れてくる可能性がありますね。
【UDC召喚】で、植物系のUDCを召喚しましょうか。天井と足場の補強の為に蔓か、根を操れる子だといいのですが……。

どんどん増えるとは面白い。合体する前にUDCに縛らせましょう。そのまま握り潰しても構いませんよ。

欲を言えば刀槍の山にも近づかせたくないのですが、そこまで手が回るかどうか。
「いけませんよ、悪い子ですね」

UDC召喚は何が来るかわからないので、召喚を失敗した場合は再度トライ。
もしくはダメ元で向かわせる。最悪【逃げ足】を使用。
「おやおやおやおや?」



●鬼ごっこ(殲滅)
「んん……こんな所に居たんですね。纏めてフルボッコです!」
 清川・シャルは気合十分といった様子で愛用の金棒を肩に担いでいた。もう一方の手にはグレネードランチャーが握られ、拳にはメリケンサックが嵌めてある。桜色で統一された武装に加え、背後にはスピーカーやアンプ群が召喚済みで戦闘準備は万端だ。
 暴走する式たちは分裂呪式で数を増やし、予想以上の大群と化していた。しかしシャルのスピーカーから歌が流れだすと、目玉たちはそちらにフラフラと引き寄せられていく。そうやって集められた敵を、スピーカーから走る熱線が薙ぎ払った。
「まだまだ、ここからです」
 さらにシャルはグレネードランチャーで追い討ちを掛け、混乱の真っ只中にいる目玉たちをまとめて吹き飛ばす。その間も目玉たちは分裂を繰り返し増え続けていたが、その早さに追い付かんばかりの勢いでシャルの砲撃と熱線が彼らを焼き払っていた。流石に分裂したままでは分が悪いと判断したか、目玉たちは寄り集まって融合し始める。そして合体したオブリビオンたちの目に刻印された数字は『20』。心なしか大きくなったように見える目玉たちが、数匹でシャルを取り囲んだ。
「それなら――」
 シャルはその中の一匹に狙いを定めると、相手に攻撃されるよりも早く距離を詰める。そして寸前で放たれた呪力弾をひらりと避け、勢いのままに金棒を振るった。思い切り地面に叩き付けられた目玉は、まるで水風船のように潰れて破裂し、当然のように板張りの床も砕け散る。その細腕に不釣り合いなほどの膂力は羅刹故だ。これでも敵わないと察した目玉たちは、さらに融合を繰り返して『60』になり、再び呪力弾を放つ。先程と比べて段違いに強化されたそれを、シャルは氷の盾で受け止めた。そして素早く盾を解除すると、そのままメリケンサックで目玉を殴り付ける。
「これで!」
 桜吹雪が舞う中、シャルは渾身の力を込めて金棒を振り下ろした。ぐしゃり、と音がしてオブリビオンの丸い身体が大きく凹む。
「……まだ倒れませんか」
 さすがに強化された式神は頑丈らしい。至近から放たれた呪力弾の反撃を、シャルは身を捻ってかわした。そして金棒をチェーンソーモードに移行させる。
「これならどうです?」
 羅刹の膂力と金棒の重み。そして高速で回転する棘の複合攻撃は、目玉の式神を抉りつつ完全に叩き潰した。

●花粉症
「これは……思っていたより損傷が激しいですね」
 カネリ・カルティエは心配そうに天井を見上げた。館のそこかしこで壁や柱が軋み音を立て、天井からは絶えず埃が落ちてくる。元から廃城の老朽化が気になってはいたのだが、それに加えて戦闘による衝撃が館に深刻なダメージを与えているようだ。さらに言えば、オブリビオンが憑依呪式を使った際に館の建材を消費したためでもあった。今すぐ倒壊するというほどでもないが、万が一ということもある。カネリは館の天井と足場を補強するため、植物系のUDCを召喚することにした。
「蔓か、もしくは根を操れる子だといいのですが……」
 蔓や根を張り巡らせて支えたとしても、せいぜい応急手当といったところだろう。だが、戦っている間だけ持ち堪えれば十分だ。
「さて、どなたが呼び掛けに応えてくださるでしょうか」
 しかしカネリの召喚によって姿を現したUDCは、彼の希望から少々ズレていた。
「おやおやおやおや?」
 植物ではある。細長い蔓もあった。ただ、それ以上に目立つのは巨大な花だ。直径2mはあろうかという大きさで、それを太い茎と二股に伸びた根っこが支えている。その外見を一言で表すなら、パラボラアンテナのようだった。
「……少し様子を見てみましょうか」
 予定とは食い違ったが思わぬ力を持っている可能性もある。少し距離を取って様子を見ていると、その巨大花から黄色い煙のようなものが漂い始めた。
「これは花粉のようですが……」
 黄色い花粉は徐々に広がり、周囲の敵を包み込んでいく。すると花粉に覆われた目玉たちが一斉に苦しみだした。目玉たちは花粉から逃れようとするものの、巨大花のUDCは根っこを二本足のように動かして、逃げ惑う目玉たちを追い掛け始める。そのせいで空気中の花粉がカネリの下にも届き始めた。
「む、これはいけませんね」
 カネリは顔をしかめ、さらに巨大花と距離を取る。どうやらこの花粉は無差別に効果があるらしい。それをばら撒きながら動き回るため、役に立ってはいるがデメリットも大きいようだ。何より『館を支え補強する』という元々の目的に合致していない。
「うーむ、これはどうしたものか……」
 その時、悩むカネリの脇を小さな影がすり抜けていく。
「今のは……?」
 よく見ると、それは鳴雷・夜行が操っていたからくり人形のキョン君だった。囮役を務めているらしく、目玉を二匹ほど引き付けたまま地下室に飛び込んでいく。
「大丈夫でしょうか」
 カネリは思案するように首を捻る。地下にはオブリビオンを強化してしまいそうな刀槍の山が放置したあったはずだ。
「まあ、何かしら考えがあるのでしょう。お任せしましょうか」
 そう言って、カネリは再び花粉を撒き散らし続けている巨大花に意識を向ける。

●地下の罠
「さてと、そろそろでしょうか」
 地下室ではオブリビオンの迎撃準備を整えた夜行が待機していた。そして彼が階段の先に視線を向けた時、ちょうど階上からキョン君が地下室に飛び込んでくる。その背後からは、キョン君を追ってきたらしい二匹の赤黒い目玉が姿を現した。
「予定通りですね」
 すぐさま抜け道に飛び込んだ夜行は、警戒しつつオブリビオンの様子を窺う。部屋の隅には刀槍や具足などを幾らか放置したままになっているが、目玉たちはそれが気になっているようだ。そして案の定、夜行やキョン君を攻撃するよりも先に憑依術式でそれらを取り込み始めた。しかし武器や具足で自身を鎧い、膨れ上がって巨大化した目玉たちは、そのまま天井につかえて身動きが取れなくなる。
「……上手くいきましたか」
 わざと放置してあった刀槍の山は、このためだった。狭い地下室で武器を取り込み巨大化した敵は、少なからず動きが鈍る。夜行たちが飛び込んだ通路には入ってくることも出来ないだろう。
「木を穿つは金。飛べ、散れ、放たれよ」
 夜行は動かぬ的と化したオブリビオンに向けて、百本近い金属の針を一斉に放った。だが、ろくに動けないとはいえ敵も強化されているのは間違いない。目玉たちも反撃とばかりに呪力弾を撃ち込んできた。
「この程度なら……」
 迫る呪力弾に対し、夜行は再び針を放って迎撃する。その針で撃ち落とせなかった分は、するするとキョン君の身体に吸い込まれた。呪詛として代わりに受けてくれたのだろう。だが同じことが続けば、いずれは受け止めきれなくなるはずだ。
「手早く済ませる必要がありそうですね」
 その時、轟音と共に激しい揺れが夜行を襲った。思わず転びそうになって、たたらを踏む。
「地震!?」
 それとも敵の攻撃だろうか。そう思った夜行がオブリビオンに視線を向けると、何かが天井を突き破ってオブリビオンを貫いていた。
「……え?」
 それは太い植物の根だった。どうやら階上から伸びてきたものらしい。根っこを杭のように打ち込まれた敵は、憑依していた刀槍や鎧を削ぎ落とされた状態で必死にもがいている。
「何ですか、これ……」
 一瞬呆然とした夜行だったが、好機なのは間違いない。
「恨みはありませんが、未来のためここで散ってください」
 世界に染み出した過去を祓わなければ、やがて訪れるはずの未来を喰い尽してしまう。夜行は露出した目玉に狙いを定め、そこにありったけの針を撃ち込んだ。

●暴走の終わり
「さて、今度は上手くいったようですね」
 満足げに頷くカネリの前には、岩山のように大きな木が立ち塞がっていた。張り巡らされた枝や根は太く、館を侵食するかの如く床や天井に突き刺さっている。幹などは数人がかりでようやく抱えられそうなほどに太い。天井を支える柱としては十分だろう。もちろんこれも新たに召喚したUDCだ。辺り一面に伸びている枝や根には先端が尖っているものもあり、それらは分裂した目玉たちを突き刺した状態で捕らえている。先程召喚した巨大花のUDCも同様に枝で貫かれ、押さえ込まれていた。そうやって動けなくなっている目玉たちを、シャルが金棒とグレネードランチャーで片っ端から叩き潰している。
「ああ、これだったんですか」
 地下室から出てきた夜行は、床を埋め尽くさんばかりに広がっている根を見て納得したように頷いた。
「下の方は終わりましたか?」
「ええ、おかげさまで」
 夜行がUDCの根に助けられた話をすると、それを聞いたカネリが微笑んだ。
「水神様のご利益があったのかもしれませんね」
 そう言ってカネリは館と一体化しつつある大木を見上げる。大きく枝を広げて立つUDCの姿は、神社の境内で見た御神木を連想させた。
「さて、こちらも終わりそうですよ」
 戦場となっている一階では、猟兵たちの戦いによって既に大半のオブリビオンが姿を消していた。その半数近くを仕留めたシャルは、さらに残り少なくなった目玉たちを追う。分裂した敵を金棒で打ち払い、最後に残った一匹を見ると、その目には数字の刻印が無かった。分裂したものではなく、オブリビオンの本体のようだ。
「これで――終わりです!」
 金棒を振りかぶったシャルは、一足飛びに間合いを詰めると全力で式神に金棒を叩き付けた。

●報告
「ああ、おかえり。お化けは見付かった?」
 神社に帰ってきた猟兵たちを迎えたのは、古井戸の近くまで案内をしてくれた田吉だった。ほんの数人だけだったが、まだ境内には子供たちが残っている。その中にはちよの姿もあり、猟兵たちを見付けて足早に駆け寄ってきた。
「……どうだった?」
 ちよは心配そうにこちらを見上げた。どうだったとは、もちろん妖怪のことだろう。ちよが言った通りの物の怪を見付けたこと、そして退治したことを告げると、安堵したらしく彼女の表情が和らいだ。
「わたしのこと、信じてくれてありがとうね」
 自分の話を聞いてくれたこと、信じてくれたことが一番嬉しかったのだろう。ちよは猟兵たちに満面の笑みを向ける。
「強いおねえちゃん、あやとりのおねえちゃん、たいましのおじさんと、のっぽのおじさん。それにキョン君とそのおにいちゃんも。みんなみんな、本当にありがとう!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月16日


挿絵イラスト