#ヒーローズアース
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「……ヒーローズアースと呼称される新たな世界の事件が予知されたよ」
微かに驚きの表情を浮かべながら、北条・優希斗が呟く。
「ヴィランの千歳と呼ばれる少女をある一般人が追っていた」
この千歳と言う名のヴィランを追っていたのは、好奇心旺盛な高校生の少女。
何故、彼女が追っていたのか具体的な理由は判然としないが、それが原因で事件に巻き込まれた彼女を救わない道理は無いだろう。
尚、彼女が巻き込まれたのは千歳が起こした銀行強盗の様だ。
「ただ、千歳がこの様な行動を起こした裏にはオブリビオンの暗躍があるみたいだ。皆には、先ず千歳が起こした銀行強盗事件を解決し、その上で千歳を捕縛して欲しい」
何故なら、ヴィランは時に改心し、味方にすることが出来るからだ。
「千歳の事件を解決したら、恐らくこの事件を裏から操っていたオブリビオンが現れるだろう。皆には、このヴィランを救った上で、黒幕であるオブリビオンを倒して欲しい。但し、一般人への犠牲を減らすのが最優先だ。千歳の確保は出きればだから、無理はしないでくれ」
尚、銀行強盗の対象になったのはやや小さいが、その地元ではかなり有名な場所だ。
故に、一般人はそれなりに集まっている状況なのでその点は考慮すべきだろう。
「どうか皆、宜しく頼む」
優希斗の言葉に背を押され、猟兵達は静かにその場を後にした。
一般人を、そしてヴィランである千歳も救い出し、オブリビオンの野望を食い止めるために。
長野聖夜
いざ、新たなる世界へ。
いつも大変お世話になっております。
長野聖夜です。
と言うわけで新世界です。
是非最善の選択をお願いします。
尚、執筆期間ですが、マスターページでお知らせいたしますのでそちらをご参照ください。
では、良き戦いを。
第1章 冒険
『劇場型ヴィラン犯罪』
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POW : 圧倒的な力を見せつけて、市民を安心させると共にヴィランを撃破します。
SPD : 事件をスピード解決して、最短の時間でヴィランを撃破します。
WIZ : 明晰な頭脳で作戦を考案し、被害を最小限に抑えつつヴィランを撃破します。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します
ここがヒーローの世界なんですね
現地のヒーローさんたちと協力してうまく戦うことができれば良いのですが
猟兵ではないヒーローさんたちがどんな感じなのか、凄く楽しみです
銀行強盗なんていかにもヴィランが起こす犯罪といった感じですね
あなたとあなたを追っている一般人の関係はまだ良くわかりませんが、みんなが糧を得るための大事な財産が蓄えられているのがこの場所です
あなたの襲撃のせいで、お金があれば助けることのできた命が散ることになったかもしれない……お金とはそれぐらい重いものです
まずは、大地を隆起させて逃げ道を塞がせてもらうとしましょう
土の槍を腹部に受けたとしても文句は受け付けませんよ!
彩瑠・姫桜
SPD
現場の状況がわからないけど
まずは事件現場になる銀行へ行って千歳さんに気づかれないように
銀行内の一般人に混ざるわ
事件発生前なら客に扮し
既に発生してるなら手薄な場所狙って潜入を試みるわ
千歳さんと対峙できるなら前に出て声かけて話をする
必要に応じて一般人は【かばう】わね
話は【コミュ力】【優しさ】【礼儀作法】使用
できる限り刺激しないよう一挙一動を観察して
【第六感】も駆使して【情報収集】するわね
隙が生じた時点で【咎力封じ】で捕獲試みるわ
何考えてこんな事件起こす事になったかしらないけど
強盗なんて流行らない
ここで人生棒に振ってどうするのよ
大人しく武器を捨てなさい
今ならまだ間に合うわ
*絡み・アドリブ大歓迎
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】で参加
アドリブ、他の方との連携OK
新しい世界でも助けを求める者が居るなら助けに行くのが騎士です
ヒーローというのはよく分かりませんが、我が主のように人々を助けに行きましょう
あなたが騒ぎの犯人ですね?
現場に到着したら声高々に【存在感】を持って千歳に話しかけます
ペインの動きがバレないようにこちらに目を向けておく
なぜこのような事を起こしたのですか?
強盗をしなければならない事情があるのですか?
よろしければ話してください。あなたの力になります
【コミュ力】と【優しさ】を持って話しかける
もし彼女を追っていた女子高生や周りの一般の方が危険な目にあうなら、躊躇なく【かばう】
ペイン・フィン
【ヤド箱】で参加
スピード解決を、目指すよ。
銀行強盗現場に到着したら、目立たないや迷彩を駆使して、隠れるよ。
そして、敵ヴィラン、千歳のそばまで、
ステラが、気を引いているうちに、隠れながら移動するよ。
十分、近くまで来たら、コードを使用。
千歳と、手をつなぐよ。
同時に、指潰しを取りだし、つないだ手に装着。
千歳の指を潰し、行動不能状態にしようかな。
……あなたが、なぜこんなことをしたのか、知らないけど、
悪人の指を潰すのが、自分のやり方、だからね。
ラッセル・ベイ
ヴィランか
オブリビオンとは違うようだが、やる事は大して変わらんな
上手い具合に制圧できれば良いが……
●戦闘?(WIZ)
普通に戦うと加減ができず仕留めてしまう可能性がある
ここは「ポイゼ」の猛毒で身体の動きを止めるか
銀行の入口から堂々と侵入
「地盾グラウンド」を構え、挑発しよう
『お主が噂のヴィランか?
ははは!これはこれは、ひ弱そうに見えるヴィランだな!
それ、少しばかり遊んでやろう。掛かってくるが良い』
……と言って気を引こうか。私の柄ではないがな
「氷剣フロス」とグラウンドで攻撃を捌き、防御に徹する
潜伏させたポイゼを敵の後ろに移動させ、神経毒を打ち込んでもらおう
私はヒーローではないのでね。卑怯は褒め言葉よ
ウィリアム・バークリー
へえ、これはまた、UDCアースとも雰囲気が違う。
それじゃヴィランの人を制圧に向かいましょう。
こんにちは、千歳さん。そろそろお縄の時間ですよ。
Active Ice Wall。
周囲に無数の氷塊を生み出し、千歳さんの逃げ道を限定します。
そう簡単に逃げられると思わないでくださいね。
「優しさ」と「存在感」を前面いだして、交渉の糸口を探ります。
反撃されるようなら、オーラ防御に全力魔法を重ねて。
うん、正当防衛成立です。
少し痛いですが、それは自業自得というもので。
Active Ice Wallで逃げ道を封じた上で、ルーンソードでの白兵戦を挑みます。
ルーンスラッシュをとどめにならないように加減して。難しいなぁ。
エウトティア・ナトゥア
チーム【獣人同盟】で参加するのじゃ。
景観は違っても人々の営みはわしらの世界と変わらぬのう。
じゃが、それゆえその平穏を乱す事を許す訳にはいかぬのじゃ。
これ、そこな娘よ。何が有ったのか知らぬがそのような事はやめて話し合わぬかの?
そのような事で糧を得ても美味しいご飯は食べられぬのじゃ。
(交渉決裂後)
やはり止まらぬか。仕方ない、ちと痛い目に遭ってもらうかの。
スピレイルや、わしも合わせようぞ。
スピレイルの下からの攻撃に合わせて、風を纏わせた矢を操り隆起した壁を上方より迂回させて射掛けるのじゃ。
その後は、狼を嗾けて制圧じゃな。
マニトゥ!わしらの攻撃に気をとられている隙に取り押さえるのじゃ!
出水宮・カガリ
【ヤド箱】
※アドリブ絡みOK
ふむ、ふむ、銀行強盗とな
そしてそれを、好奇心で、追うことになる少女
憎さから、ではなく
…難しい世界のようだなぁ
一般人を巻き込まねばいいのだな、心得た
【錬成カミヤドリ】で【鉄門扉の盾】を複製、千歳とステラの周囲に余人が立ち入らんようにする
万が一の防御も兼ねてな
鉄門扉が並ぶ様は、千歳の注意を引いてペインから気をそらすにも十分だろう
逃走を図るようなら、その進路上に盾を落として妨害する
あまり、大きな怪我はさせたくないな
強盗は、誉められたものではないが…
その手口か有り様か、何かが少女の心を掴んだのだろうなぁ
少女を守るためにも、見せてもらおう
二條・心春
【獣人同盟】で参加します。
私達の住む世界がもう一つ…不思議な感じです。この事件にもヒーローさん達が駆けつけてくれるんでしょうか?
お二人が千歳さんを説得している間に、私は逃げ遅れた人の避難をさせましょう。私が猟兵であることを伝えて、彼らに避難してもらいます。優秀な猟兵達が犯人を抑えています。慌てずゆっくり避難してくださいね。こちらに攻撃が飛んできたら槍で「武器受け」したり、拳銃で撃ち落として防ぎます。
避難が終わったら私も戦います。【召喚:大烏賊】でクラーケンさんを呼んで、マニトゥさんと一緒に千歳さんを麻痺させて拘束します。マニトゥさん、私達も協力しますね!
ライヴァルト・ナトゥア
【獣人同盟】で参加
妹達もやる気みたいだし、俺も気張っていこうかね
(UCを起動。街中を駆け出す)
説得は二人に任せるとして、俺は足止めでもしようかな
(【ダッシュ】【ジャンプ】【空中戦】を駆使して最短経路を縦横無尽に進んでゆく。途中で心春とすれ違って一声)
心春はこっちか。よろしく頼む!
(すれ違いざま、排除できる危険は排除しておく。追いついたなら)
悪いがここは、通行止めだ
君も速かったが、狼の足にかなうと思われたら困るな
(戦闘では斬撃を飛ばして三人を援護。射線上に入れないように注意して)
よっ、ほっと。そう簡単には、逃してやれないな
大人しく捕まった方が、身のためだと思うよ?
(終わり)
任務完了。かな
●
「ここがヒーローの世界なんですね」
テレポートにより現場より少し離れたところに到着し、周囲の景観を見回しながら、スピレイル・ナトゥアが感慨深げに呟いている。
「景観は違っても人々の営みはわしらの世界と変わらぬのう」
「えぇ、UDCアースとも雰囲気が違いますね」
スピレイルの呟きに同意する様にエウトティア・ナトゥアが返しているのに相槌を打つは、ウィリアム・バークリー。
彩瑠・姫桜はウィリアム達の話を聞きながら、う~ん、と軽く小首を傾げていた。
周囲の様子はざわついてはいるが、一方で何処か落ち着いている。
……最も落ち着いている、と言えば少し語弊があるかも知れない。
まるで嵐が過ぎ去るのを息を潜めて大人しく待つ様な空気が周囲を満たしていたからだ。
「現場は、どんな状況になっているのかしらね」
「そうですわね。気になるところですわ」
姫桜の呟きに答えたのは、ラッセル・ベイと仮契約を行っている毒精霊ことポイゼ。
厳ついラッセルと共に在る涼やかな声が、ラッセルと契約している精霊からの言葉だとは理解できたが、それでも姫桜は微かに目を瞬かせた。
ラッセルがフム、と軽く長い髭を扱く。
「驚かせてしまったか。彼女はポイゼ。私の仮契約した毒精霊だ」
「そうなのね。宜しく頼むわ、ラッセルさん、ポイゼさん」
「それは、そうと。速攻で、大丈夫、かな」
ペイン・フィンの問いかけに、そうですね、と返したのはステラ・アルゲン。
「カガリ殿もおりますし、それが一番良いでしょう」
「うん、そうだね。それにしても……」
ふむ、ふむ、と一人呟きながら、そう頷きを返したのは出水宮・カガリである。
(「ヴィランによる銀行強盗、とはね」)
しかもそれを好奇心で追う少女までいる。
憎悪の感情などを抱いているのならば、積極的に追うのも分かるが、好奇心で自分の命に危機が及ぶ様な事を行う思考があるとは。
(「……難しい世界の様だなぁ」)
胸中で独りごちつつ、カガリは、ステラ達の後を追うべく足を速めた。
●
(「私達の住む世界がもう一つ……不思議な感じです。この事件にもヒーローさん達が駆けつけてくれるんでしょうか?」)
現場に辿り着き、銀行の周囲が警察官達によって包囲されているその状況を確認しながら、二條・心春はそう思う。
同様にスピレイルは、その警察官達が取り巻く様子を期待を持って眺めていたが、少しだけ残念そうに肩を落とした。
(「現地のヒーローさんたちと協力してうまく戦うことができれば良かったのですが……」)
どうも今回は、ヒーローが現われる様子は無い。
「猟兵ではないヒーローさんたちがどんな感じなのか、凄く楽しみにしていたのですが……」
「まあ、こればっかりは仕方の無いことかも知れぬのう。必ずしもヒーローがその場にいるとは限らぬからのう」
スピレイルを慰める様に、肩を叩くエウトティアの姿に微笑みを持って見つめるは、エウトティアの兄でもあるライヴァルト・ナトゥア。
一方で、さて、とステラが腕組みを一つ。
「彼等は私達猟兵のことも知っているとのことですが……どうしましょうか?」
素直に猟兵であり、千歳というヴィランを捕らえに来たと警察官達に告げれば、彼等は恐らく道を空けてくれるだろう。
ただ、その場合、猟兵達が大勢来た、と言うことで千歳が何らかのアクションを起こして、一般人に犠牲が出る可能性もある。
「そうね……それだったら、あそこから中に侵入しましょう」
ステラの問いかけにそう呼びかけ、人混みが少なく中に侵入しやすそうな場所を見つけたのは、姫桜であった。
(「こういう状況なら、この方が良いものね」)
ただ、全員で一斉に侵入すれば怪しまれる恐れがある。
さて、どうしたものか……と顔を付き合わせて策を練るスピレイル達。
と、その時……。
「それでしたら、私達が囮をやらせて頂きますわ」
姫桜達のアイディアに妥協案を出したのは、ポイゼだ。
「どう言うことですかな、ポイゼ殿……いや、ラッセル殿と呼ぶべきでしょうか?」
ステラの疑問にどちらでも構わない、と答えた後、ラッセルが続けた。
「あの警察官達に私達が接触をし、銀行の正面から千歳殿と言ったか? 彼女を挑発して注意を引こう。その間にお主達は姫桜殿が見つけた場所から中に潜入。一般人の解放及び、千歳殿の説得と捕獲を行うのだ」
「二段構えの作戦、と言うわけですね。分かりました。それでしたら、ぼくもラッセルさん達と一緒に行きましょう」
ラッセルの言葉に、ウィリアムがそう返す。
「それでは、ラッセル殿にポイゼ殿、そしてウィリアム殿。外の方はお任せ致します。それから、予め警察官の方々には事情を説明して離れて頂いた方が良いでしょうね」
ステラの提案にラッセルとウィリアムが頷いた。
「それでは、中の一般人の避難は、私が」
「じゃあ、俺は足止めを頑張らせて貰うな」
心春の呟きに任せておけという様に同意したのは、ライヴァルトである。
ライヴァルトは意気軒昂となっているエウトティアとスピレイルを頼もし壮に見やっていた。
(「妹たちもやる気みたいだしね」)
ならば、自分も頑張らないと。
そう誓いを新たにしたライヴァルトは、ラッセルとポイゼとウィリアムを残してスピレイル達と共にその場を後にする。
――千歳の手から、少女と一般人達を解放するために。
●
――銀行玄関正面。
警察官達に事情を説明して封鎖を解いて貰いながら、ウィリアムが素早く詠唱を行い、周囲に蒼と桜色の混じりあった魔法陣を組み立てている。
その外の様子に中の千歳が気がつかぬ道理は無い。
「貴方達、誰?!」
左手の拳銃を少し奥で縛られ、転がされている千歳を追っていたと思しき高校生の少女と銀行員達に、右手の拳銃をラッセル達へと向ける千歳。
「こんにちは、千歳さん。そろそろお縄の時間ですよ」
拳銃には驚いた様子も見せずに、展開していた魔法陣を起動、千歳の周囲に氷の塊を生み出し、その逃げ場になりそうな場所を狭めるウィリアム。
周囲に展開される氷の障壁に流石に驚愕の表情を消せない千歳。
「くっ……貴方達も、私達と同じ様な力を……!」
「お主が噂のヴィランか?」
忌々しげにウィリアム達を睨み付ける千歳に、ははは! と豪快な笑い声を上げるラッセル。
「これはこれは、ひ弱そうに見えるヴィランだな!」
「この……!」
軽い挑発を受け、頬を紅く染める千歳だったが、まだその表情の中には理性が残っている。
拳銃の射程圏内に少女と銀行員達を収めているその立ち回りは、恐らく素人ではあるまい。
けれどラッセルは構わず、ひょいひょい、と地盾グラウンドを構えたまま挑発を続けた。
「どうした? 怖じ気づいて掛かっても来ないのか? 折角、少しばかり遊んでやろうと思ったものを」
(「まあ、この様な挑発は私の柄では無いがな」)
何となくそんな事を思いながら、ラッセルが睨付け、ウィリアムは柔らかく声を掛けた。
「あなたは完全に包囲されています。此処で降伏するのであれば然程大きなお咎めを受けることも無いでしょう。どうでしょうか? 此方へ出てきて頂けませんか? それとも、ラッセルさんの言うとおり、あなたは臆病者なのですか?」
「……言わせておけば……!」
ウィリアムの宥める様な挑発に一歩此方へと近付いていくる千歳。
けれども、いきり立って射撃してこない以上、此方から奇襲を掛けるのは得策では無い。
重要なのは、この睨み合いにより、千歳の気を自分達へと引きつけること。
ラッセル達による時間稼ぎは、確かに功を奏したのである。
●
――タタタッ。
姫桜が見つけた潜入口から小走りに銀行内を駆け、正面玄関の方へと向かうカガリ達。
「大きな騒ぎにはまだなっていないね。多分、彼等が上手くやってくれているのかな」
「恐らくそうでしょう」
「……後は、僕たちの、仕事だね」
ステラの呟きに頷き返すペイン。
「それにしても銀行強盗なんて、いかにもヴィランが起こす犯罪といった感じですね」
「そうじゃのう。とは言え、先ずは一般人の解放が優先じゃ。心春殿」
「はい、お任せ下さい。準備は万端です」
「着いたわよ!」
心春がエウトティアに頷き返しているのをライヴァルトが満足げに見ている時に、そう呼びかけたのは姫桜だ。
ウィリアムとラッセルに気を取られていた千歳の一般人に向いている銃口の動きを注意深く観察しながらカガリが拘束されている人々の前へと向かう。
突然現われた複数の気配に、それまでラッセル達ばかりに気を取られていた千歳が流石に驚いた表情になって後ろを振り返った。
「くっ! 他にも仲間がいたのね!」
悔しげに舌打ちをする千鳥に呼びかけたのは、エウトティア。
「これ、そこな娘よ。何が有ったのか知らぬがそのような事はやめて話し合わぬかの? このような事で糧を得ても美味しいご飯は食べられぬのじゃ」
「……言わせておけば……!」
かっ、とした彼女が構えた銃の引金を引こうとするが、それよりも僅かに早く彼女の地面から大地の槍が突如として数本出現し、その足を射貫こうとする。
「……っ?!」
反射的に危険を感じ取り、ぱっ、と後退する千歳だったが、その後方にはウィリアムが呼び出した氷の障壁。
がん、と軽く氷の障壁に背をぶつけ、その痛みからか苦痛に表情を歪めていた。
「あなたとあなたを追っている一般人の関係はまだ良くわかりませんが、みんなが糧を得るための大事な財産が蓄えられているのがこの場所です」
大地の槍を操り千歳の動きを阻害したスピレイルがそう呼びかけている。
「あなたの襲撃のせいで、お金があれば助けることのできた命が散ることになったかもしれない……お金とはそれぐらい重いものです」
「……じゃあ、私がもしこの金庫からお金を奪わなければ、私の命が危なくなるとは考えないのかしら?」
そう告げる千歳の表情は、少しだけ恐怖に強張っている。
彼女が感じているそれがなんなのか、それは判然としないのだけれど。
「……自分の命が動機って訳? 正直、それだけでこんな事件を起こす事になるとは思えないのだけれど」
――こんな事は、建前でしか無い事も分かっている。
もしかしたら、本当はもっと根深い理由を彼女は抱えているのかも知れない。
けれども……。
「今更、強盗なんて流行らないわよ」
「言ってくれるわね……!」
姫桜の問いかけに、鋭く目を細め睨み付けてくる千歳。
(「ふむ……」)
そんな千歳の様子を、自らの本体、鉄門扉の盾の複製を30用意して、ステラと銀行員達の間に展開しながら、カガリは興味深げに観察している。
容姿からして、年齢は恐らく20前半位。目はややつり気味ではあるが、何処かで何かを真っ直ぐに求めている様にも見えるその姿は、成程、若い女性であれば憧憬を抱いてもおかしく無さそうな空気を孕んでいる。
(「案外、この危険そうな匂いに、彼女は引きつけられたのかも知れないね」)
否、それとも……。
カガリの用意した鉄門扉の盾の影で、心春がライヴァルトと共に銀行員と少女達の拘束を解く。
幸い、と言うべきだろう。此処から逃げ出すことが出来ない程の重傷を負っている様なものはいない。
エウトティアとスピレイルと姫桜、そして同じく会話を始めようとしているステラ達が千歳の気を引きつけてくれている間に速やかに彼等を避難させる必要があった。
拘束を解除する手伝いを終えたライヴァルトは、速やかに避難できる様にする為に、銀行の通路を邪魔するものを破壊するべく既にその場から姿を消している。
「心春。そっちはよろしく頼む!」
そう言い残して去って行ったライヴァルトに頷き、心春がその場で話を続けた。
「皆さん、私達は猟兵です」
小声でそう呼びかける心春を包むは、人々の歓喜の声。
どうせなら回復系のユーベルコードがあれば、尚人々の安心を得ることが出来たであろうが、流石にそこまでを求めるのは贅沢と言ったところか。
(「私の用意したユーベルコードも千歳さんを拘束するためのものですしね……」)
「此処に居る猟兵の皆さんは、とても優秀です。彼女は皆さんが押さえておりますので、慌てず騒がず避難して下さい。避難誘導は私が行います。それと……カガリさん」
「ああ、大丈夫だ。彼女達を守るだけの力は、ちゃんと兼ね備えているからな」
30の鉄門扉の盾のまるで要塞の様にも思えるそれに、銀行員達は安心感と頼もしさを覚えた。
しかし、千歳を追っていた女子高生は、助けられたという安堵の中に微かな不安を滲ませている。
「あのヴィランのお姉さん、どうなっちゃうの?」
「お前は、彼女が気になるのだな?」
カガリの問いに、少女が頷く。
「初めはただの好奇心だったの。でも、追っていく内にあの人、本当にヴィランさんだったのかな、って……だから……」
不安そうに顔を俯ける少女にカガリが大丈夫、と言う様に首肯した。
(「情が移った、と言った所だろうな。けれども……」)
元々、捕縛が目的なのだ。悪い様にはならないだろう。
「大丈夫だ。さぁ……」
「此方です。行きましょう」
カガリと心春に背を押され、少女はちらりと千歳の方へと気掛かりな目線を送ッ他後、その場を後にする。
走り去ってゆく彼女の隣をペインとライヴァルトの影が横切っていったが……その事を少女が知る由は無かった。
●
「何故、この様な事を行ったのですか?」
スピレイルの大地の槍、ウィリアムの氷の障壁。
この2つにより逃げ道を封じられている千歳にステラが流星剣ステラを抜き放ち、千歳に向けて突きつけながら問いかけている。
千歳の背後には、何時戦いが始まっても良い様に態勢を整えたラッセルの姿。
更にスピレイルとエウトティアと戻ってきたライヴァルト……【獣人同盟】の者達がその周囲を包囲している。
この状況で銃をフルに使い戦ったとしても、千歳に万が一の勝ち目はあるまい。
けれども、意地かはたまた他に理由があるのか、彼女の表情に諦念は浮かび上がっていない。
まだこの窮地を脱することは出来ないか、それを注意深く探っている様に見えた。
「そうしなければ……生き残れなかったからよ……!」
「ヴィラン。そう呼ばれる程の力を持つ貴女がただ生き残れなかったと言うことは無いのでは、と思います。もし宜しければ、その理由を話しては頂けませんか?」
「そうよ。ここで人生棒に振ってどうするのよ」
ステラの説得に姫桜も同意して問いかける。
schwarzとWeißを構えながらも尚、姫桜も完全な戦闘に踏み切っていない。
拘束するのは正解だろうが、ただ武器を振るって暴れ回っても千歳との関係性、問題は解決しない、と思ったからだ。
「そんな事、話せるわけが無い……! 話してしまえば、私は……私達は……!」
呻く様に呟きながら、両手に持つ銃の引金を引こうとする千歳。
だが、多くの声を掛けられた千歳の次のその行動には、若干の隙が生まれている。
(「今ね……!」)
「……今、か」
生まれた隙を見逃さず、姫桜が一気に駆け抜け【手枷】を放つ。
電光石火のその一撃が彼女の手に枷を嵌め込み、それとほぼ同時に、それまで幻の様に周囲に溶け込み、千載一遇のこのチャンスを狙っていたペインが千歳に接近、その手を握った。
「な……にっ……?!」
「……あなたが、なぜこんなことをしたのか、知らないけど」
動揺する千歳は姫桜の放った【猿轡】は噛まぬ様に躱しきるが、その間に、ペインが千歳の指に、親指潰し“ペイン・フィン”を嵌めて、拷問を執行。
――ぐしゃり、と鈍い音と共に千歳の指が潰れ、傷みのあまりに千歳が悲鳴を上げた。
その悲鳴は、拷問具であったペインの心に拷問具であるが故に逃れられぬ愉悦を与えてくれる。
――与えてくれて、しまう。
「悪人の指を潰すのが、自分のやり方、だからね」
「くそっ! くそっ! くそっ!」
両目から涙を流し、怒りを迸らせると同時に、急激に巨大化し更にその戦闘能力を増大させ、大地を踏み抜く千歳。
ずん、と言う衝撃が周囲を襲った。
「してやられた! 隙を作って逃げるつもりだったのに……! そうしなければ、生き残れないから……!」
割れた大地の破片を念動力で操り瓦礫の雨を降り注がせて襲ってくる千歳。
けれどもばらまかれる大地の破片は、何処か怒りと悲しみが綯い交ぜになっている様にも感じられた。
「あなたは、本当に何か理由があって銀行強盗を行っていたのかも知れません。もしかしたら、あなた以外の命を守るために」
千歳の様子を見ながら、少しだけ同情を寄せる様に呟くスピレイル。
――けれども。
彼女が『奪う』事で、その命を危機に晒された人々もいるのは間違いない。
その分の『罪』に対しては、相応の『罰』を受けねばならないだろう。
「やはり止まらぬか。仕方ない、ちと痛い目にあってもらうかの」
嘆息するエウトティア。
その手には手製の短弓が握られ、また、矢が番えられていた。
スピレイルが大地から解き放った槍に合わせる様に、エウトティアが風の精霊達を召喚。
それを矢に纏わせ、スピレイルによって隆起した壁を上方で迂回させ、大地の千歳へと向けて射掛けていく。
「くうううううっ!」
呻く千歳の様子を見ながら、エウトティアが素早く自らの傍に控えていた巨狼マニトゥに呼びかけた。
『マニトゥ!わしらの攻撃に気をとられている隙に取り押さえるのじゃ!』
「マニトゥさん、私達もお手伝いしますね!」
一陣の風となって遠吠えと共に突進するマニトゥの傍に心春が呼び出したのは、地面に潜航させていたイカ型UDC。
イカ型UDCが触手を放ち、ペインの拷問具、ペイン・フィンにその指を砕かれ、姫桜の手枷を填められていた千歳の両足を締め上げようとするが。
「まだ……まだ……!」
千歳が爆発的な怒り――それが、誰に向けられたものなのかは判然としないが――と共に絶叫し、爆発的な速度でマニトゥの急襲を回避しようとする。
だが、その時。
「悪いがここは、通行止めだ」
封印を限定解除した状態の、蒼狼の外装を纏い、疾風の如き高速を得たライヴァルトが右手と一体化した魂ノ簒奪者と、封印を限定解放すると共に変貌し狼の爪と化した左手から、無数の斬撃の刃による連続攻撃を解き放つ。
「う……ウァァァァァァァ!」
全身を苛む苦痛に身を捩って絶叫する千歳。
その絶望的な怒りの咆哮が全てを破壊せんばかりの衝撃波となって建物事猟兵達を殺そうとするが、その破片による驟雨を、カガリが呼び出した30の鉄門扉の盾が一つ残らず受けきった。
「さて……そろそろ終わりだな」
(「全員で交渉していたら、もしかしたら倒さずとも降伏してくれたかも知れないけれどね」)
千歳の様子を見ながら、カガリはちらりとそう思う。
捕縛のための手段を豊富に用意しておいたのは正解だったけれど。
恐らく、戦わずに降伏させる事は不可能では無かっただろう。
とは言え、それで必ず上手く行くとも限らず……これが今、自分達が出来る最善なのだとカガリは思い直して、咆哮による衝撃波を受けきった代償として粉々に崩れ落ちた鉄門扉の盾のレプリカを再生し次に備えた。
(「……もう少し、言葉を選ぶべきでしたね……」)
信じて貰えれば、或いはもっと穏便に事が済ませられたかも知れない。
それを少しだけ胸の痼りとしながら、ステラが流星剣ステラを袈裟に振るう。
流星の如き一閃を纏った白銀の刃が、千歳の右肩から左脇腹を斬り払い、千歳がカハッ、と喀血を一つ。
「殺すつもりは無いわ。お願い、止まって……!」
説得しきれなかった悔しさに唇を噛み締めながら、拘束ロープを射出して千歳の上半身を締め上げる姫桜。
それでも尚、あがこうとする千歳。
だが……。
「行くぞ、援護してくれポイゼ」
ラッセルが、自らの仮契約した精霊に語りかけた。
それまでラッセルは、Active Ice Wallで作り上げられた氷の壁で、建物が壊れるその衝撃が外の警察官に及ばないようにしていたウィリアムを守るべく、氷結属性を秘めた『氷剣フロス』を振るって、ウィリアムの防ぎきれなかった瓦礫を斬り裂き、自身への衝撃波は、地盾グラウンドで塞ぎながら、密かにポイゼを千歳の背後へと潜伏させていた。
――後一息で戦闘不能になるその時を、今か今かと待ちながら。
『任せなさいな!』
ラッセルの呼びかけに鋭く応じたポイゼが追尾する針をその身に突き刺す。
神経毒の含まれた、その針を。
背中から針に突き刺され、千歳が眠る様にその場に崩れ落ちていく。
その様を見ながら……ラッセルは、ふぅ、と一つ息をついた。
「私はヒーローではないのでね。たとえ卑怯と罵られようとも、私にとっては褒め言葉だよ」
その後、姫桜が拘束ロープで千歳を一先ず縛り上げ、千歳との戦いは、一先ずの収束を告げたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
第2章 集団戦
『ジャスティストルーパー』
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POW : フォールン・ジャスティス
全身を【機械部分から放出されるエネルギー】で覆い、自身の【戦闘を通じて収集した敵のデータ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : イミテーション・ラッシュ
【ジャスティス・ワンが得意とした拳の連打】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : マシン・ヴェンジャンス
全身を【機械装甲】で覆い、自身が敵から受けた【物理的な損傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
足音が、聞こえてくる。
それは、破滅へのカウントダウンか。
或いは新たなる戦いへの予感なのか。
千歳を一先ず拘束し、警察官達に引き渡した猟兵達が見たのは、何かに寄生されているかの様な、無数の戦士達が此方へと近付いていくるその姿だった。
彼等は、千歳と、一般人を保護した警察官達の方へと向かっている。
もし介入しなければ、恐らく千歳も、一般人も、警察官達も無残な最期を遂げるであろう。
そんな事をさせるわけには行かない。
その決意を胸に秘め、猟兵達は彼等と戦うべくその前に立ちはだかる。
――悲劇を未然に防ぐために。
スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します
「おお! とうとう現地のヒーローさんたちがやってきてくれましたよ!」
ヒーローズアースにしかいないヒーローさんたちを見ることができて、感激です
……なにか様子がおかしいですね
もしかして、あのひとたちは敵なのでしょうか?
警察官さんたちと千歳さん、一般人さんたちの避難を精霊印の突撃銃で【援護射撃】します
「私たちのデータを収集してどんどん強くなっているようですが、猟兵の技は多彩なのですよ?」
接近されるまで温存していた精霊闘姫で敵の収集していたデータを上回る強化を自分に施して、炎の精霊さんの加護を宿した剣でジャスティストルーパーさんたちを斬って捨てます
「お姉様、援護は任せました!」
ウィリアム・バークリー
あれはまさに異形ですね。ヒーローの、成れの果て?
ぼくが時間を稼ぎます。
Active Ice Wall展開。道を塞ぎ進軍を止めろ。
飛び越えようとしたところを、Icicle Edgeで狙い撃ちにする。
初めての相対です、油断はせずに。
警察や一般人の避難が終わって仲間が合流してきたら、その時間を使ってスチームエンジンとトリニティ・エンハンスで攻撃力を強化。
「高速詠唱」「範囲攻撃」「鎧無視攻撃」「衝撃波」氷の「属性攻撃」「全力魔法」で、一気に凍らせる!
Active Ice Wallが崩されたら、新たな氷塊を追加。もう足止めじゃなく、相手に叩き付けるために使います。
ぼくも前へ出て、ルーンスラッシュ一閃!
エウトティア・ナトゥア
チーム【獣人同盟】で参加するのじゃ。
スピレイル、待つがよい。何か様子がおかしいのじゃ。
精霊が彼奴らの敵意にざわめいておるわい、もうひと暴れする必要がありそうじゃの。
【援護射撃】【属性攻撃】【誘導弾】使用
まずはスピレイルの横に立ち、妹と一緒に風の刃を纏わせた矢で【援護射撃】じゃ。
(接近戦を仕掛ける妹に狼を支援につける)
これ!いつも不用意に仕掛けるなと言うておるのに!
マニトゥ、あのたわけを援護してやるのじゃ。
(自己強化する妹を更に強化する。可能なら他の味方も強化)
【歌唱】【鼓舞】【全力魔法】使用
精霊よ謳え!皆に風の加護を!
ライヴァルト・ナトゥア
【獣人同盟】で参加
遠目にはヒーローっぽいが、どうにもヒーロって感じの風体じゃないね
(UCを起動して前線へ。仲間を守るように敵を引きつける)
さぁ!お前らの敵はここにいるぞ!死にたいやつからかかってこい!!
(【ダッシュ】【ジャンプ】【空中戦】で機動力を重視。拳の連打には距離をとって飛翔する斬撃で対応する)
おっと、さぁ、俺に追いつけるかな?
(突如飛び出したスピに)
おま、俺がどんな気持ちで前線にいると思ってるんだ!あとで説教だからな!
(それでもマニトゥと協力してスピをフォローしつつ前線を維持、全力で守り抜く)
守ると決めたが災難か。いかんせん、上手くはいかないなぁ
(ティアに)
ありがとな。こっちは任せろ
ラッセル・ベイ
これはまた随分と連れて来たな……
だが、手加減の必要がないのは良い事だ
存分に暴れるとしよう
●戦闘(POW)
まずは「雷鐘ボルテック」に電撃ポーションを付与し、属性力の向上
機械というのであれば、電撃攻撃には弱いのは明白だ
ボルテックの【ライトニングベル】で纏めて薙ぎ払ってくれよう
私の戦法は『グラウンドを構えて、ボルテックを振る』のみ
単純過ぎる行動故に、データ収集の意味はほぼ無い
飛んで逃げようとしても無駄だ
そこには「装嵐リンドヴルム」を装備したポイゼが居る
迂闊に飛ぶと、疾風の連撃で叩き落とされるぞ
飛ばずとも上空から毒液で援護射撃をするから、逃げ場はないがな
さあ殲滅してくれる
せいぜい足掻いてみせよ、悪党共
二條・心春
【獣人同盟】で参加します。
ヒーロー?うーん、それにしては千歳さん達を狙っているような…彼らと千歳さんの犯行と、何か関係がありそうですね。いずれにせよ、私達が食い止めないと…!
ライヴァルトさんが前線で、二人が援護…良い感じです。…あれ?いつの間にスピレイルさんが前に!?ウコバクさん、加勢してあげて!【召喚:炎魔】で召喚したウコバクさんに前に出てもらいます。精密機械は熱に弱いと聞きますから…データを取られる前に焼き尽くします!
敵の機動力を警戒して、私自身は後ろでエウトティアさんや千歳さん達を槍の「武器受け」や「衝撃波」で守ります。これだけ騒がしくしてれば、千歳さん達は大丈夫だと思うけど…。
荒谷・つかさ
さて、と。
こういう輩が来ると読んで潜伏してたんだから、きっちり仕事しないとね……
当初は付近のビルの屋上に潜伏。
軍勢を確認し次第、その進行方向に【妖術・九十九髪】で作った見えない網を仕掛けておく。
状況をしっかりと見極め、戦端が開かれる直前に網を動かし、敵群の足を纏めて引っ張り出鼻を挫いて、他の猟兵の戦闘を支援するわ。
その後も敵の身体に纏わりつかせ妨害したり、機械部品の隙間から侵入させて故障させたり。
たまには、搦め手も使える所を見せないとね。
私の存在に気付いてこっちに来たなら、動きを「見切り」つつ「グラップル」技能で捕まえて、「怪力」で関節技かけてその手足を圧し折ってやるわよ。
結局いつも通りね……
●
――ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
大量の足音と共に現われた奇妙な格好をした男達の大群。
「おお! とうとう現地のヒーローさんたちがやってきてくれましたよ!」
その姿を見て弾んだ声音を上げたのは、スピレイル・ナトゥア。
「ヒーロー?」
スピレイルの歓喜に首を傾げて頭の上に沢山の疑問符を浮かべるは、二條・心春。
「待つが良い、スピレイル。何か様子がおかしいぞ」
一方ではしゃぐスピレイルの服の裾を引っ張り、宥める様に語りかけるのは、エウトティア・ナトゥアだ。
「そうですね。どうも千歳さん達を狙っている様にも見えますし……」
「遠目にはヒーローっぽいが、どうにもヒーロって感じの風体じゃないね」
ん、と小首を傾げたまま呟く心春に同意する様に、ウンウン、と首肯しているのはライヴァルト・ナトゥア。
ウィリアム・バークリーがマイペースな【獣人同盟】の様子に、感心しながら息を一つ。
「……そうですね、あれはヒーローというよりは、異形ですね。ヒーローの、成れの果てと言ったところでしょうか?」
「確かに成れの果て、と言えばそうなのかも知れませんわね。ですがこれは、また……」
「随分と連れてきたな」
首を傾げるウィリアムに答えたのは、ラッセル・ベイの仮契約をしている毒精霊ポイゼ。
ポイゼに同意する様に髭を軽く扱きながらその言葉を引き取ったのはラッセルだ。
少なくとも、此処にいる者達だけでは、対処が少し難しそうな数に見える。
仮に殲滅できたとしても、千歳や警察官、一般人達に被害が出る可能性が想定される程には。
(「せめて、敵戦力を分断する手段があれば良いのですが……」)
戦力を分断できれば全ての人々を守り、且つあの部隊を殲滅できるだろう。
さてどうしたものかと、自分の打てる手について沈思黙考していたウィリアムとスピレイル達に呼びかける様にエウトティアが声を上げた。
「フム……精霊が彼奴らの敵意にざわめいておるわい、もうひと暴れする必要がありそうじゃの」
「むぅ……もしかして、あのひとたちは敵なのでしょうか?」
(「折角ヒーローズアースにしかいないヒーローさんたちを見ることができたと感激していたのですが……」)
内心の嘆息と共に残念そうに呟くスピレイルに頷きながら心春が推測を口にした。
「彼らと千歳さんの犯行は、何か関係がありそうですね。いずれにせよ、私達が食い止めないと……!」
「同感ですわね」
「よし、それじゃあ、一気に……」
ポイゼが同意する様に頷き、意気軒昂にライヴァルトが叫び、自らの力を解放しようとした直前……。
「皆さん、少し待って下さい」
如何にしてあの進軍を食い止めようかと氷塊の群れの設置する場所を模索していたウィリアムが、近くにあったビルの一つの屋上に立つ人影を見つけて、呼びかける。
「どうしたのじゃ、ウィリアム殿?」
エウトティアの呼びかけに、軽く微笑を零して、ウィリアムが答えた。
「……どうやら、心強い援軍が来てくれた様です」
――と。
●
(「さて、と」)
ビルの屋上から大量の敵部隊を目にしながら一人胸中でごちるは、荒谷・つかさ。
目下では、大量に動く敵の群れ、そしてこの大軍に挑む或いは一般人達を守るべく行動を開始しようとするライヴァルト達猟兵の姿。
幾度も同じ戦場を共にしたウィリアムが此方に気がついたのに頷き、風の精霊に依頼して、言付けを一つ。
――分断は私がやるから、その後は宜しく。
「まあ、こういう輩が来ると読んで潜伏してたんだから、きっちり仕事はしないとね……」
実は他にも猟兵達が転移してきているのだが、其方は現在此処には居ない。
そう言う作戦を組み立てている。
(「偶には絡め手も使えるって所、見せないとね」)
果たして誰に見せるつもりなのやら。
いずれにせよ、既につかさの方の仕込みは完了していた。
つかさが仕掛けたその罠に、オブリビオンの群れが我先にとばかりに足を踏み入れる姿は、さながら蜘蛛の巣に自ら足を踏み入れた獲物の如し。
すっ……と、つかさは右手を挙げ、そして……。
『舞い、散り、広がれ。我が手たる九十九の髪々よ』
手を振り下ろすと共に、敵部隊の群れの中央……そこは、敵を分断するのに格好の場所だ……に張り巡らされていた髪の毛が、まるで桜の花が風に浚われ花弁と化して舞い散るかの如く千々に飛び散り、オブリビオンの群れを一斉に絡め取った。
●
「策はなりました。今です、皆さん!」
つかさが放った無数の髪の毛による網に絡め取られた大量の敵部隊。
全てを絡め取るには至らなかったが、既にその時には先程まで戦場を共にしていた猟兵達の一部が、千歳達の方へと向かっている。
それを見送ったウィリアムが青と桜色の混ざり合った魔法陣をルーンソード『スプラッシュ』の先端で十重二十重に空中に描き呪を紡ぐ。
氷の精霊達が魔法陣の中央に凝縮したのに一つ頷き、ウィリアムがルーンソード『スプラッシュ』を振り下ろして、氷の精霊達に命じた。
『……Active Ice Wall!』
ウィリアムの号令と共に、つかさの髪に絡め取られた者達の周囲に無数の氷の塊が現われて、退路を塞ぐ。
「ふむ。これならば、存分に暴れることが出来そうだな」
「援護は、わし達の役割じゃ。行くぞ、スピレイル!」
「はい、お姉様!」
エウトティアが手製の短弓に風の精霊の加護を付与した矢を番えるのにスピレイルも頷きを返し、精霊印の突撃銃を構える。
ひょう、とエウトティアが射った風の精霊を纏った矢がスピレイルの放った無数の炎の精霊を籠めた銃弾と重なり合い、風に煽られた巨大な炎と化してつかさによって絡め取られていた戦士達を撃ち抜いていく。
「お兄様! 心春さん!」
「さぁ! お前らの敵はここにいるぞ! 死にたいやつからかかってこい!!」
スピレイルの呼びかけに応じ、ライヴァルトが封印を限定解除した状態の、蒼狼の外装を纏い、雷光の如き速さで駆け抜けながら、自らの右手と一体化した魂ノ簒奪者、と左手の狼の爪を振るう。
蒼き稲妻と化したライヴァルトの動きにつかさによって機先を制され、ウィリアムに逃げ場を奪われた戦士達は為す術も無い。
辛うじて髪の沼から抜け出した戦士達がライヴァルトに向けてこの世界のジャスティス・ワンの如き拳の乱打を解き放つ。
だが、ウィリアムによって周囲に展開された氷の塊を足場にし、クルクルとバク転を決め、空中を縦横無尽に動き回るライヴァルトに追いつく事能わず、その拳は、空しく宙を切った。
「どうした、その程度か?!」
ライヴァルトの挑発に怒りに任せて髪の沼から足を引き抜いた戦士の一人が拳を振るおうとしたその時。
『さあボルテック、轟雷の如く響き渡れ』
低い重低音と共に、ゴオン、と一つ鐘が鳴った。
それは、ラッセルがダブルセブンスポーションが一つ、雷属性ポーションを掛けた自作した愛鐘『雷鐘ボルテック』の鐘の音。
それ自体は、ただ周囲の空気を震わせただけなのに。
彼の半径29m以内の敵達は大地と水平に渡って広がった雷撃によって、その身を痺れさせていた。
「皆さん、流石ですね!」
心春が最前線で問答無用に敵を薙ぎ倒していくラッセルとライヴァルトに向けて賞賛の言葉を掛ける。
そうしながら、つかさによって機動力を奪われても尚、自らの機械部分から放出されるエネルギーを戦闘力と化して、雷光を投げつけてくる戦士達の攻撃を、対UDC用量産型直槍を振るって、解き放った衝撃波で撃ち落としている。
心春が敵の攻撃を撃ち落とすと共に、エウトティアとスピレイルの風の矢と炎の銃弾が重なり合って生み出された業火によって次々に戦士達が焼き尽くされていく。
(「良い連携ね」)
ビルの屋上から戦況を監視していたつかさが内心で賞賛しながら網の様に張っていた自らの髪達をまるで綾取りの様に操る。
未だ彼女の存在に気付かぬ戦士達の体内に髪が侵入してその内側から戦士達の機械部分をショートさせた者を、ラッセルの振り下ろした雷鐘ボルテックによって生み出された轟雷が撃ち抜き止めを刺す。
『……全身の40%の損壊を確認。機械装甲発動』
ふと、生き残っている戦士達の一体が機械音を立てた。
それと同時に、他の戦士達も又、同様に音声を上げ、自らの全身を機械装甲へと変え、更にラッセルの雷を操る技術を学び取ったか、自らが纏うエネルギーを雷撃へと変えて周囲に拡散させ。
或いは、ある者は全身のエネルギーを炎へと置換し、ある者はエネルギーを風へと変化させて、炎と混ぜ合い、炎の渦を生み出し周囲を襲わせていた。
「……確かに、学習していますね」
「でも、俺の速度には勝てないだろ!」
ウィリアムが自らが呼び出した氷の塊を炎の渦によって破壊されていくのに一つ頷き、素早く詠唱を口ずさみながら、両手で魔法円を空中で描き出す間に、ライヴァルトが砕け散っていく氷の塊を凄まじい勢いで駆け上がり、一気につかさのいる高層ビル程の高さから落下しながら、自らの左の爪から斬撃を解き放つ。
空気を断ち切るほどの速度で振るわれた爪が蒼き真空の刃を生み出し、学習し、自らの全身を機械装甲化させて爆発的な生命力と自己強化を行った戦士をズタズタに斬り裂き、そこにポイゼが毒液を撒散らし、その毒で機能を停止させた。
「ですが、この液も学習されたら少し大変ですわね」
「ただ、俺は鐘を振っているだけなのだが、エネルギーを雷撃に変換させると学習するとは想定外だったな」
だが遅い、とラッセルは思う。
自分が雷鐘ボルテックを振るい、破壊音を発生させれば、その音から生まれ落ちた雷撃に貫かれ、次々に戦士達は力尽きていく。
その中でも、この戦い方を学習できるものは、本当にごく一部に限られていた。
しかも……学習するのは敵だけでは無い。
「私たちのデータを収集してどんどん強くなっているようですが、猟兵の技は多彩なのですよ?」
自分達の力を学び取り、徐々に速度も、戦闘力も向上させ、戦術も多彩になってきている戦士達に向けて、からかう様に告げるスピレイル。
――まだ、彼女は札を一枚隠していたのだ。
それは……。
『これが、私からのせめてもの餞別です!』
呪印を切ったスピレイルがそう叫ぶと同時に、その右手に炎の剣を、その左手に大地の精霊の盾を持ち。
全身を大地の精霊の加護による鎧に身を包んだ一人のアマゾネスと化したスピレイルが雄叫びを上げて、敵に斬り込んでいく。
バチ、バチ、と全身から放電する姿は、何処か敵と似通っていたが決定的に違うのは、それが雷の精霊によって与えられた加護だという事だ。
――更に。
『……BOOST!』
自らに風の精霊を纏わせ、ルーンソード『スプラッシュ』に装着したスチームエンジンをウィリアムも又、起動させる。
鋭いエンジン音を立てながら共鳴する様に氷の精霊と同じ、蒼き輝きを宿すルーンソード『スプラッシュ』で先程よりも更に多くの青と桜色の混じった魔法陣を描き出す。
蒼穹の中を泳ぐ桜吹雪を思わせる魔法陣は、先程砕かれた氷壁達を鋭い槍の如き形状へと変化させ、更に新たな氷塊達をも動かし始めた。
「……Icicle Edge!」
「これが私の本当の力です、行きますよ!」
ウィリアムの号令と共に氷の塊が氷の槍と共にパワーアップした敵に叩き付けられる中で、スピレイルが最前線に立って炎の剣を振るう。
それはさながら舞の様であったが……突然前衛に出てきたスピレイルに面食らったのは、何も敵だけでは無い。
「おま、俺がどんな気持ちで前線にいると思ってるんだ! あとで説教だからな!」
目前の一体を屠り、次に向かおうとしていたライヴァルトもその一人だ。
もう一人は……。
「えっ、ちょ、ちょっとスピレイルさん、何で勝手に前線に出ちゃっているんですか?!」
心春である。
ラッセルは少しお転婆に見える年若き同僚の姿に快活に笑い声を上げながら、特に動じることも無く雷鐘ボルテックを振るい続け。
更にラッセルがポイゼのためにと作成した小さな斧槍と軽鎧、装嵐リンドヴルムを纏ったポイゼが前線での戦いに慣れていないのであろうスピレイルをフォローするべく、その上空から襲いかかろうとする戦士達を斧で砕き、槍で貫いていた。
「もう、しょうがない人ですね……。ウコバクさん、加勢してあげて!」
エウトティアの防衛に回っていた心春がそっと溜息を一つつき、その場に魔法陣を描き出す。
描き出された魔法陣から姿を現したのは、自らが二番目に心を通わせた、人を模した炎の体を持つ悪魔型UDC、ウコバク。
『データを取られる前に、燃やしちゃって下さい!』
心春の呼びかけに応じたウコバクが頷くと共に、その全身を覆う炎を解き放つ。
それは、油を伴う絶えない炎。
ウコバクとライヴァルトがスピレイルをフォローするが、その後方から別の戦士がスピレイルに襲いかかろうとする。
しかし……。
「マニトゥ、あのたわけを援護してやるのじゃ」
エウトティアの指示を受けた白狼、マニトゥが戦士の横っ腹から体当たりを敢行してその動きを止め、更につかさが操った髪の毛が針の様に戦士に突き刺さり、止めを刺した。
「お姉様!」
「これ! いつも不用意に仕掛けるなと言うておるのに!」
スピレイルの喜びと驚きの綯い交ぜになった呼びかけにエウトティアが叫び返しながら、先程とは異なる呪印を切る。
それはさながら、指揮棒を振るう指揮者の如き指使いで。
瞬間、爆発的な量の風の精霊達がエウトティアの周囲に現われ、一斉に唱和する。
その合唱に合わせて自らも歌い、そして指揮棒を振るう様に4分の3拍子を振りながら、エウトティアが命じた。
「精霊よ謳え! 皆に風の加護を!」
エウトティアの歌声と指揮に唱和した風の精霊達が、この場にいる7人の猟兵、1体の精霊、そして1頭の白狼と共鳴した。
「ありがとな。こっちは任せろ!」
「お姉様、これは……!」
「もう分かっておるじゃろう! これ以上敵に強化される前に殲滅するのじゃ!」
ヒラヒラと手を振り、礼を述べるライヴァルトとぱっ、と蕾から開いた花の様な明るい笑みを浮かべスピレイルに頷きながら、それ以外の仲間達にも一斉にエウトティアが呼びかけた。
「はぁ……結局、いつも通りか」
それまで搦め手に徹してウィリアム達を支援していたつかさもまた、エウトティアによって得た身体能力を使って自らの身を加速させてまだ微かに残っている敵戦力に突撃し、その中枢に飛び込み、思念で髪を操り、敵を戦闘不能にしながら、拳を振るう。
裏拳、正拳、回し蹴り、後ろ回し蹴り、膝蹴り、背負い投げ、振り回し……。
羅刹特有の恵まれた膂力と訓練の末に身に付けた圧倒的な怪力で様々な拳技を繰り出し、次々に敵を屠っていくつかさ。
それでも尚、抵抗しようとする者は……。
「逃がさぬぞ。此処で殲滅してくれる」
ラッセルの振るった雷鐘ボルテックが風の精霊達により伝播する速度の上がった音波によって更に鋭くなった雷撃で消滅させ、更に……。
「ケリを付けます! 断ち切れ、『スプラッシュ』!」
3段重ねの身体強化を得たウィリアムが周囲に展開した魔法陣を意志力で維持したまま、ルーンソード『スプラッシュ』で敵部隊を撫で切りにされていた。
空中から迫ってくる戦士達がいれば、ポイゼが時に斧で唐竹割りに、時に槍で刺し貫いて。
「守ると決めたが災難か。いかんせん、上手くはいかないなぁ」
溜息を一つつきつつ、ライヴァルトが前線で炎の剣を振るい、敵を薙ぎ払おうとするスピレイルをフォローする様に立ち回って残っている空中の敵を叩き落とす。
地面に落ちた敵は、マニトゥがその爪で敵を斬り裂き、或いはその鋭い歯で噛み砕いた。
「心春!」
ライヴァルトの呼びかけに心春が力強く頷く。
「はい! ウコバクさん!」
その心春の頼みに応じたウコバクが全方位に向けて、油の絶えない炎を掃射。
ウィリアムの氷の槍に貫かれ身動きの取れなくなっていた敵をその炎は焼き尽くし、更にスピレイルの炎の剣と絡み合い、敵を塵も残さず焼き尽くしていく。
――こうして。
つかさによって分断された敵部隊は、スピレイル達によって全滅したのであった。
●
(「これだけ騒がしくしてれば、千歳さん達は大丈夫だよね……」)
スピレイル達の大暴れによって敵が塵一つ残すこと無く全滅した様を見て、心春が内心で溜息を一つ。
「あちらには、他の猟兵達が向かっています。だから、大丈夫ですよ」
心春の心の動きを察したか、そう返したのはウィリアムだ。
「そうですね。これならきっと……」
スピレイルがそっと息をつくのを見ながら、ライヴァルトが溜息を一つ。
「スピ、頼むからああ言う時は一言声を掛けてからだな……」
「まったく……仕方の無い妹じゃのう」
ライヴァルトの説教と、エウトティアの溜息。
けれども、二人に悪意は無い。
なんだかんだ言って、仲は決して悪くない兄妹の様だ。
「まあ、後はあちら次第ね。多分、大丈夫だと思うけれど」
つかさが誰にともなく告げ、千歳達がいるであろう、方角を見る。
――決着の時は、近い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フローリエ・オミネ
敵の数はとても多いけれど、わたくしたちならきっと倒せる
いいえ――倒さなければいけないの。
「氷の津波」
「酸の豪雨」
「光の小雨」
以上を使用し、主にサポートを担うわ
氷の津波は敵の足止めをし、また体力を削り
酸の豪雨は敵の行動を遅める
そして、光の小雨は仲間に対しての回復
癒しの加護を皆に与えるわ
【高速詠唱】で敵よりも早く行動し
【二回行動】で行動回数を増やし
【属性攻撃】で攻撃二種の威力を高める
敵の能力強化行動には気をつけ、もしも大きく強化されてしまったのなら
攻撃の範囲を狭め、その敵を集中攻撃して倒しましょう
……ねえ、あなたがたは正気に戻る?
無理ならば、せめて苦しまぬように送って差し上げるわ
出水宮・カガリ
【ヤド箱】ペインと、ステラと
あの娘に、大丈夫だと言ってしまったからな
一般人は元より、ヴィランのものもしっかり守らねば
敵がオブリビオンなら、わかりやすく動けるというもの
攻撃は任せよう
カガリは地に【鉄門扉の盾】を打ち立てて真の姿を解放
【虚想城壁】を発動して一般人達の壁となる
金屋根と石柱の腕を持つ城門の姿だ(目のような装飾はある)
カガリの外に、決して出るなよ
しかし、とても速いな…速いのは少しだけ苦手だ
腕どころか、視界に捉えるのも、難しくて
壁へ接近される前に見つけて、念動力で侵攻を阻んでみよう
押し負けそうなら腕で薙ぎ払って弾き飛ばす
壁を超えるなら、烽火のごとく城壁から火をあげる(属性攻撃)
ペイン・フィン
【ヤド箱】で参加
……見た感じ、黒幕関係……かな。
なら、遠慮無く行こうか。
コードを使用。
拷問具200超えを操作。
潰し、砕き、切り裂き、焼き、
毒で、電気で、石で、鉤爪で、
生死を気にしない、全力攻撃を行うよ。
……最も、狙いは足止めの方。
決して、後ろに行かせない。
彼女の指は、もう潰したのだから、
今度は、守らないとね。
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】ペイン、カガリと参加
アドリブ・連携OK
お前たちが何者なのか分からないが敵に違いなさそうだな
敵ならば倒すまでだ!
カガリ、他の人達は任せたぞ!
真の姿を開放【白銀の鎧】を現界し纏う
敵の攻撃は【オーラ防御】にて防ぎつつ
氷【属性攻撃】を剣身に纏わせ【なぎ払い】【衝撃波】にて周囲の敵に飛ばし氷漬けにする
これで少しは敵の動きを止められるといいが
ペインの攻撃に合わせ敵の固まった場所に剣先を向けて【流星雨】を【全力魔法】にて発動
動けない敵を一網打尽にしてくれる!
美星・アイナ
一難去ってまた一難か
このままだと皆の苦心が水泡に帰す
そんな事させないよ!
ヘッドセット型サウンドウェポンを起動と共に
ペンダントに触れロックディーヴァの人格に
挨拶代わりに空へ叫ぶ
『さぁ、私の歌を聴けぇっ!』
敵UCの戦闘力増強を考慮し回復役に回る
大鎌状態の黒剣を構えレガリアスシューズ起動
力を溜めたジャンプから足下にスライディング
UCを歌い踊る様に詠唱しながら黒剣をなぎ払う様に2回攻撃で振るい
放った鋼糸をロープワークの要領で二の腕に巻き付け
敵ダメージが深くなったら
剣形態に変えた黒剣で【鎧無視攻撃】の【串刺し】
さて、いい加減出て来なさい
千歳ちゃんを追い詰めた張本人さん(冷笑)
アドリブ及び他猟兵との連携可
彩瑠・姫桜
敵を積極的に倒すのは仲間に任せて
千歳さん達を守るために私は防御中心で立ち回るわ
流れ弾含め、敵の攻撃は通さないつもりよ
千歳さん達には指一本触れさせないんだから!
【血統覚醒】使用の上で、一般人を【かばう】ような位置を常に意識するわ
敵の動きは【第六感】【情報収集】で把握
攻撃は【武器受け】で防ぎ、私からは【串刺し】で攻撃して確実に倒すわね
千歳さん、貴方がなぜ「堕ちた」かも
何に怯えているかもわからない
けれど、思うのよ
怯えて逃げてるだけじゃ、何も解決しないって
私も戦うのは怖い
でも、私は今できる「最良」を目指して戦うの
貴方にだって、それができる力があるんじゃないの?
なら、貴方も、逃げずに立ち向かいなさいよ!
●
「……分断出来たみたいね! 皆、行くわよ!」
まるで蜘蛛の巣の様に張られていた髪の沼に足を取られた敵部隊を先程まで戦っていた猟兵達に任せながら、彩瑠・姫桜がそう呼びかける。
「姫桜殿、無論です! カガリ、ペイン!」
「……見た感じ、黒幕関係、かな」
「あの娘に、大丈夫だと言ってしまったからね。一般人は元より、ヴィランの者もしっかり守らなければ」
ステラ・アルゲンの呼びかけにポツリ、と呟きそう応じたのは、ペイン・フィンと、出水宮・カガリ。
奇しくも、と言うべきか、やはり、と言うべきか……先の戦いで千歳達に呼びかけていた者達の多くが、髪の網を逃れて警察官達の所に向かう残存敵部隊を追っていた。
もう少しで敵部隊に追いつく。
けれども敵部隊もまた、千歳を連れた警察官達の殿に追いつきかけている。
丁度、その時。
「敵の数はとても多いけれど、わたくしたちならきっと倒せる」
フワリ、と蒼いドレスに身を包んだ娘が一人、空中を舞う。
その手に持つ蒼き槍を思わせる杖……Verschwindenを振るい、その切っ先に爆発的な魔力を現出。
自らの魔力によって生み出された氷の津波を見つめながら……娘……フローリエ・オミネが深呼吸を一つ。
「いいえ――倒さなければいけないの」
呟きと共に、Verschwindenの先端に集まった魔力を爆発的な氷の津波へと変貌させ、解き放つ。
最早“天災”と称しても差し支えない氷の津波が、敵戦士達の最前列を押し潰し、後退させる。
「フローリエ殿か!」
空中に浮かぶシソウの魔女の姿を認めたステラが呼びかけると、艶然とフローリエは微笑んだ。
「援護に来たのは私だけでは無くてよ、ステラ」
『さぁ、私の歌を聴けぇっ!』
フローリエの呟きに応じる様に、その津波によって足止めされた戦士達と一般人の間に割り込む緋色の影。
それは、胸元のペンダントに触れながらヘッドセット型サウンドウエポンを起動させ、氷の津波を背景に宵闇の光を切り裂く様な軌跡をShadow Dancerで描く少女……美星・アイナ。
アイナが空を仰ぎ叫びながら、大鎌状態のDeathBladeを振るい、そして歌を紡ぐ。
――それは、情熱的なロックンロール・ミュージック。
燃えさかる焔を思わせる熱い血潮の通ったその音楽は、先程までの戦いで消耗したステラ達だけで無く、敵部隊の出現に怯えていた警察官達と、恐怖に表情を引きつらせていた千歳の心に活力を漲らせてくれる。
それは正しく、希望と願いを情熱で綴った歌。
――ブレイブハート・シャイニングホープ。
「行くぞ!」
アイナの情熱に騎士としての正義感を強く揺さぶられたステラが号令を掛け、突然目前で起きた事態に戸惑い、混乱する敵部隊に左手に月光槍ルナを、右手に流星剣ステラを構えて突進する。
――普段は、亡き主の記憶と共に眠る、白銀の甲冑をその身に纏って。
一陣の光となったその姿は……正しく、『白銀の流星』と呼ぶに相応しい。
自分達の中心に躍り込んできたステラに、面食らいながらもその右手に寄生するそれで戦士の一人が反撃を行おうとするが、甲冑と共に現出した白銀の結界がステラを守り、その身に傷一つ負わせる事が出来ない。
「カガリ、他の人達は任せたぞ!」
「ああ、任せておいてくれ」
ステラの言葉に、カガリが静かに頷いて敵の群れを真っ直ぐに突っ切ろうとする。
フローリエがそれを援護するべく空中に浮かびながら、クルクル、とVerschwindenを回転。
それと共に、暗雲が瞬く間に敵部隊の空を覆い、程なくして、ペイン達を避けながら酸の雨が降り注ぎ、敵部隊の行動を鈍らせた。
「今よ」
『慄け咎人、今宵はお前達が串刺しよ!』
フローリエの呼びかけに応じる様に、その瞳を真紅に、その犬歯を伸ばし、一体の吸血鬼と化した姫桜が真紅の疾風となって戦場を駆け抜けschwarzとWeißを振るい、敵を一纏めに串刺しにしてその動きを止め。
『あなた達の生死は、気にしない』
幽霊の如く掠れた声が小さく、しかし、冷たく周囲に響くと同時に、200を越える拷問具が現われる。
ある戦士は、指潰しにその左手に残る指を潰され。
ある戦士は、石臼でその身を挽かれ。
ある戦士は、鞭で全身を打ち抜かれ。
ある戦士は、ナイフ“インモラル”で斬り裂かれる。
次々に放たれる見るに堪えぬ拷問の闇に飲まれて戦士達が断末魔の叫びを上げるのを耳にしながら、ステラが胸元に流星剣ステラを構えて、祈る様に小さく詠唱を行った。
「我、氷の精霊に願う。かの戦士達を凍てつかせ、罪なき人々を守らんことを!」
祈りの言葉を捧げると同時に、ステラの流星剣ステラに冷気が宿り、その刀身が凍てついていく。
「続けますわよ」
からかう様に、誘う様に。
そう告げたフローリエが再び呼び起こした怒濤の如き氷の津波の中心で、ステラが凍てついた流星剣ステラを振るう。
振るわれた刃は氷の津波と重なって、巨大な白銀の氷嵐へと変貌し。
その雹の嵐がステラを中心に放たれ戦士達の動きを封じた。
そうやって切り開かれた道をカガリと姫桜は前進し、一般人達への進行を遮っていたアイナとフローリエへと合流する。
「大分派手なことになってるね!」
DeathBladeを振るいながら答えるアイナ。
けれども、その後ろの一般人達は何処か不安げな表情を見せていた。
恐らく、アイナとフローリエは、傷を癒し、敵の足止めは得意だが、直接的に誰かを守る『盾』としての力を持っているわけでは無いのを無意識に感じ取ったからだろう。
故に……。
「待たせたみたいだね」
カガリが呟きながら、鉄門扉の盾を地面に突き刺す。
ズン、と言う音が周囲に轟いた。
それは、ステラ達の足止めを受けても尚、千歳達を追ってくる戦士達が微かに動きを止めるには、十分な程に、大きな振動。
「あなた……?!」
千歳を守るべく、ヴァンパイア化した姫桜が接近してきた戦士達を串刺しにしつつ息を呑む。
ちらりと其方に目配せを送った後……カガリが言の葉を紡ぎ始めた。
「……顕現せよ、去りし栄華。我が悔恨の寄す処(よすが)」
鉄門扉の盾を中心にカガリの人としての姿が見る見る内に掻き消えていく。
同時に、千歳や警察官達の前に現われるのは、巨大な城門。
それは夢でも、幻でも無い。
紛う事なき現実で。
「――これは我が無念、我が執念。今は有り得ざる、我が妄念」
警察官達を含めたほぼ全ての人々を守る様に展開された城門の頭に金屋根が置かれ、更に石柱の腕が両端から生えている。
その様は、正しく全てを弾く黒金の城。
「カガリの外に、決して出るなよ」
城門扉に装飾の様に施されている金の瞳の様なものがギョロリと動き、警察官達と千歳へと向けられる。
「これが……猟兵の……!」
「ああ、そうだ。僕達の力だ」
警察官の一人が感極まったか唸りの声を上げるのに、カガリが頷き返した。
「……後ろは気にしなくても良さそうね、これだと」
とは言え、これ程大きな城塞であったとしても、全ての攻撃を守り抜くことは出来ないだろう。
そう結論づけた姫桜が、再度二槍を構え直し、ステラ達によって足止めされながらも、尚進軍してくる戦士達を真っ向から串刺しにする。
――分断された敵部隊も、緒戦で完全に出鼻を挫かれていた。
新たに現われたアイナやフローリエ、彼女達が来ることを信じた姫桜、そして……『ヤドリガミの箱庭』に所属する、勇敢なる流星の騎士、迅速なる“指潰し”のヤドリガミ、鉄壁たる荒野の城門からなる……計、6人の猟兵によって。
●
「これなら、大分楽に戦えますわね」
城壁と化したカガリに守られる様にしながら、ふわふわと空中を浮かぶフローリエがお伽噺に出てくる魔女の様に艶やかに笑う。
少々芝居がかっているその様は、まるで新しい玩具を見つけ出した無垢なる子供の様。
「しかし、とても速いな……速いのは少しだけ苦手だ」
フローリエに内心で息をつきつつ、カガリが静かに思念でそう答える。
(「何せ速い相手はね……」)
腕どころか、視界に捉えるのも、難しいから。
試しに念動力や城壁から命の篝火を落としてその進行を妨げるが、それでも尚、食らいついてこようとする戦士達もいる。
だが、そう言う相手に降り注ぐのは怒濤の様な氷の津波。
フローリエが生み出したそれが、電光石火でカガリという城壁に掴まろうとしていた戦士達を押し流した。
「……これ以上、先には進ませない」
氷の津波に足を浚われ、倒けつ転びつする戦士達をペインが呼び出した拘束具で締め上げて、一斉に電撃を流し込む。
氷を伝って走る凄まじい電流が戦士達を蝕み、一瞬で全身をスパークさせ。
そこに黒の軌跡をShadow Dancerで描いたアイナがスライディングで突っ込み、くるん、とムーンサルトキック。
三日月を思わせる蹴りと共に空中を舞う様にしながら、KillingWireを射出して一気に残存戦力を締め上げる。
「姫桜! 手伝って!」
「……分かったわ」
カガリの鉄壁の守りに後背を託し、ヴァンパイア化した姫桜がタン、と地面を蹴って真紅の光となって敵部隊に瞬く間に接近。
そのままschwarzとWeißでその場に敵部隊を釘付けにせんと串刺しにする。
(「どうやら、ペイン達は上手くやってくれているようですね……!」)
ペインの意図に気がついたか、ある一箇所へと戦士達を姫桜やアイナがペインの操る拷問具と共に追い詰めている様を見ながら、ステラは目前に迫ってきた敵を流星剣ステラで袈裟懸けに斬り捨て、更に返す刃でステラの背後を取った戦士の首を斬り払った。
白銀の一閃が走ったとしか形容の出来ない刃で敵を斬り捨てた時、ふわり、と風の様に現われたペインがステラの脇を駆け抜けながら、鉤爪で戦士を引き裂き。
更に火炙りに使われる炎で戦士達の全身を焼き捨てている。
「ステラ、そろそろ……」
「ああ、分かっている。……むっ!」
ペインの目前に突如として現われた戦士がペインに向けて拳の乱打。
ステラがその場に素早く割って入り白銀のオーラを展開、その超速から放たれる連続攻撃をオーラと流星剣ステラで捌き、左手に構えた光り輝く月光槍ルナで貫いた。
「大丈夫か、ペイン」
「……ああ、大丈夫」
告げながら、アイナと姫桜へとアイコンタクトを行うペイン。
それに応じる様に素早くその場を二人が離脱したのを確認し、ステラは自らの本体である流星剣ステラをその群れに向けて突きつける。
「――天を見よ」
静かに諳んじるステラ。
アイナのKillingWireで締め上げられ、或いはペインの鉄の処女にその身を閉じ込められ、或いは姫桜に串刺しにされて地面に縫い止められた戦士達は、まるでそれに釣られる様に空を見上げる。
「……ねえ、あなた方は正気に戻る?」
フローリエが艶然と微笑んで問い、Verschwindenを天に掲げた。
――同時に今までに無い程の氷の礫がフローリエの頭上に出現。
――そう……太陽の様に燦々と輝く魔法陣と共に。
「其より放たれるは……
――敵を撃ち滅ぼす星の矢達。
朗々と歌い上げるステラの様子に危険を感じ取ったか、戦士達が全身を機械装甲化し、その身を守る超生命力を得るが、ステラはまるで動じず、フローリエはそれを答えと受け取った。
「無理なのね」
ステラも銀の甲冑の向こうから、戦士達の最期を見届けんと、じっと彼等を見つめながら左手で手向けの様に十字を切っている。
(「動けない敵を一網打尽にしてくれる! さらばだ……!」)
『降り注げ、流星たちよ!』
「ならば、せめて苦しまぬように送って差し上げるわ」
最後の詠唱をステラが歌い上げると同時に、天空に燦々と輝く魔法陣から、白銀の星の雨が、無数の氷の礫と共に降り注いだ。
その様は、一言で言うなら氷と炎の死の舞踏(ダンス・マカブル)
荒れ狂うブリザードに飲み込まれた戦士達を太陽の光を帯びた流星が次々に撃ち抜き、そのまま殲滅していく。
(「彼女の指は、もう潰したのだから」)
――今度は、守らないとね。
想いながらすっ、と左手を挙げるペイン。
ペインのそれに応じる様に、周囲に浮いていた拷問具達がフローリエの吹雪に凍てつかされ、ステラの流星によって撃ち抜かれても尚生き残っていた戦士達を潰し、砕き、切り裂き、焼いた。
或いは毒で蝕み、電気で痺れさせ、石で磨り潰し、鉤爪で引き裂いている。
後方のカガリも又、そこに向けて命の篝火を投擲し、戦士達の遺体を焼き尽くす。
――それはまるで、完全に任務に失敗した戦士達を火葬するかの様だった。
●
――分断された敵部隊を殲滅して後。
一時的に真の姿を解いたカガリの脇を駆け抜けて、姫桜が一人の女の元へと近寄る。
警察官達や、先程の少女達は、流石は猟兵達だと、口々に自分達を褒め称えているが、今の姫桜はそれにあまり関心が無い。
彼女が関心を持っているのは……。
「あなたは……さっきの……」
「千歳さん」
指を潰され、今は力なく姫桜が用意した拘束ロープに拘束された千歳だった。
「本当は、貴女を守るつもりだったのだけれど。カガリさんに任せてしまったわ。ごめんなさい」
「……いや……」
姫桜の口から出てきた思わぬ謝罪に、千歳が戸惑った表情になる。
千歳の表情には疑問が浮かんでいた。
「何で……私まで……?」
――守ったの?
そう問いかけられている様な気がして、ゴシゴシと、自らの髪を扱く姫桜。
少し自分の考えを纏める様に思考を纏め、それから姫桜は、それはね、と息を一つつく。
「……貴女が私に似ていると思ったからよ」
「……えっ……?!」
思わぬ一言に驚いた表情になる千歳。
その様子を見ながら、姫桜が私もね、と小さく呟く。
「本当は、戦うのは怖いわ」
――いつも、そうだった。
あまりに怖くて……一度はただ見ていることしか出来なかった事もある。
けれどもその時……戦友と話をして、自分なりに答えを見出すことが出来たのだ。
「正直私には、貴女がなぜ『堕ちた』かも、何に怯えているかもわからない。今もそう、貴女はまだ何かに怯えている」
「……」
姫桜の呟きに千歳が俯く。
――どうやら、図星だったらしい。
空を見上げ、小さく息をつく姫桜。
ステラの呼び出した太陽の如く燦々と輝く魔法陣は消滅し、何時の間にか、ステラやカガリ、ペイン達も此方に集まってきていた。
空中では警戒する様にフワフワとフローリエが浮き、周囲はアイナが見張っている。
恐らく、次の戦いまでの時間はそれ程残されていないだろう。
――だからこそ。
「けれど、思うのよ。怯えて逃げてるだけじゃ、何も解決しないって」
――今、伝えたいことは伝えなければならない。
「……」
千歳は何も答えない。
否……答えられないのかも知れない。
ただ、あの時も感じ、またステラも問いかけていたが、千歳が何かを背負っており、それを奪われるのを酷く恐れている、それだけは何となく感じ取れた。
「でも、私は今できる「最良」を目指して戦うの。貴方にだって、それができる力があるんじゃないの? なら、貴方も、逃げずに立ち向かいなさいよ!」
「……!」
千歳が、姫桜の鋭い言葉に、はっ、と目を見開いた、丁度その時。
「やっと、出てきたわね、千歳ちゃんを追い詰めた張本人さん」
口元に冷笑を称えたアイナの声が、姫桜達の耳に染み渡った。
「……あなたが、彼女を此処まで追い詰めた張本人ですか」
呼吸を整え、少しだけ落ち着いた調子でステラが呟く。
「遠慮無く、やらせて貰うよ」
ペインがその相手に向けて静かに告げれば。
「黒幕がただのオブリビオンならば、遠慮無く動けるね」
カガリが飄々とそう告げて。
「あなたも……あの方達と同じ所に、送って差し上げましょう」
フローリエがからかう様にそう一礼するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『アシュラレディ』
|
POW : 阿修羅旋風
予め【六本の腕に持った刃物を振り回す】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ブレイドストーム
自身が装備する【愛用の刃物たち】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : シックス・ディフェンス
対象のユーベルコードに対し【六本の刃物による連続斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:otomo
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「全く……こうまで失敗を重ねるとはね……。千歳、アンタ、ヴィラン失格だよ」
心底がっかりした様に。
現われた女が嘲る様に、馬鹿にした様に千歳に向けて声を掛ける。
「せめて後何件か強盗を成功させれば、アンタの故郷の人達も救えただろうにね……」
その言葉に千歳が顔を青ざめさせる。
「まあ、良いさ。この後アタシはアンタの故郷の奴らを好きなだけ切り刻める。アンタも含めて全員ね。楽しみだわぁ。あそこの人達が泣いて、喚いて、叫んで、無様に命乞いをして……で、しまいにゃ絶望した表情のままに死んでいく顔を拝めるのが。でも……」
そう言って、仮面の女は目を細める。
「猟兵。アンタ達はアタシの計画を台無しにした。だからこの場でアンタ達は切り刻む。見物だねぇ、アンタ達が死ぬとき、どんな表情をするのかね……!」
そう言って愉悦に至った笑い声を上げて、女は武器を構えた。
――さぁ、猟兵達よ。
黒幕は、その姿を現した。
彼女を倒すことが、この戦いに終止符を打つための最後の任務となる。
――健闘を、祈る。
ウィリアム・バークリー
ヴィランを脅して悪事をさせる。まあ、効率的ではありますね。ヴィランは本来そういう風に活動しているのだから、普通なら怪しまれない。
ですが、オブリビオンが絡むなら話は別です。ぼくらが討滅してあげますよ。
Active Ice Wall再展開。今回はあの刃を防ぐ盾として。ぼくだけでなく他の皆も守ってみせます。
たった六本のその刀で、ぼくの氷壁を破れますか?
隙を見せたら、氷の「属性攻撃」「全力魔法」「串刺し」を重ねたIcicle Edgeを打ち込み、戦闘も終盤に入ったら氷の盾を敵の側へ倒れ込ませて動きを封じます。
覚悟してください。「鎧無視攻撃」込みのルーンスラッシュ!
自ら作った氷塊ごと敵を断ち切ります。
ラッセル・ベイ
良い武器を持っているではないか
どれもこれも業物ばかり……分解して構造を調べてみたい所だ
良し、君を倒して私が全て頂くとしよう
●戦闘(WIZ)
あぁ、何か計画してたんだったな
金を集めて秘密兵器でも作ろうとしていたのか?
ま、君はここで消えるのだから今更どうでも良い話か
……とでも言って、まずは挑発
私に攻撃を向けてきたら、ポイゼと【コンビネーションⅠ】だ
私はグラウンドを構えて斬撃を防御
「グラウンド・ルーン」を起動し、完全な性能で挑もうか
ポイゼは私の後方、敵の死角から毒針で援護射撃
さて、どちらの武具が上かな?
ポイゼや他の味方に狙いを定めたらシールドバッシュして更に挑発
ほら、私から逃げるな。剣が泣いているぞ
スピレイル・ナトゥア
「私が道を作ります。みなさんは駆け出してください!」
迸る【第六感】を信じて、念力で操作された愛用の刃物さんたちを精霊印の突撃銃で撃ち落とします
これは、アシュラレディに接近するみなさんへの【援護射撃】でもあります
「どうせ、千歳さんが成功しても失敗しても、いつかは千歳さんの故郷のひとたちを切り刻むつもりだったのでしょう?」
オブリビオンさんが考えることなんて、だいたいそんな感じに決まってます
接近したみなさんが敵の隙を作ってくださっている間に、私は特大の一撃をお見舞いするための準備を進めるとしましょう
炎と土と雷の精霊の力を同時に放つ精霊轟砲でアシュラレディさんを貫きます!
「お姉様、合わせてください!」
エウトティア・ナトゥア
【獣人同盟】で参加するのじゃ。
絵に描いたような外道じゃのう。ああ、何も言わなくてもよいぞ、そのくらいの方が気兼ねなく屠れるわい。
今回もスピレイルに合わせるかの。
【野生の勘】を研ぎ澄まして、【爆風】を纏わせた矢で【援護射撃】するのじゃ。
刃物の密集部分へ【矢を導き】、エリアで【ブレイドストーム】を吹き飛ばしてくれるわ。
さて、前衛は問題ないようじゃし、スピレイルと共に大技の準備に入るとするかの。
マニトゥ、その間時間を稼ぐのじゃ。
(スピレイルの声に応え)
うむ、こちらもいけるぞ。
森羅万象の精霊が集う一撃を喰らうがよい。
天穹を貫く緋色の光条よ、我が敵を貫け!
美星・アイナ
ようやくお出ましね
千歳ちゃんをけしかけた張本人
大事な人達を盾にして脅した所業
万死に値するわ
再びペンダントに触れ交代する人格は
冷徹非情なキリングドール
『残念ね、切り刻まれるのはあんたの方よ』
剣形態に変えた黒剣構え
レガリアスシューズ起動
力溜めのジャンプから踏みつけ
下がり際に武器落とし狙いで
黒剣を振るう
敵UCは見切りと激痛耐性、武器受けで凌ぐ
相殺の危険性考慮し
UC発動はここぞという時の一度
歌う様に詠唱する声色に怒りの感情を載せ
青玉の矢の雨に合わせて突撃
踊る様に2回攻撃のなぎ払いから
傷口をえぐるように黒剣で串刺しに
千歳ちゃんの心を縛った黒い鎖と枷
この一刀であんた毎ぶっ壊すよ!
アドリブ、他猟兵との連携可
荒谷・つかさ
貴女知ってるかしら。
冥土の土産を語るのって、その時点で敗北フラグよ。
【妖術・九十九髪】を引き続き使用。
こいつの性格なら、多分自分の腕や力量を見せつけてマウント取ろうとするはず。
なので最初は髪を「わざと」見えるようにして、拘束狙いで攻撃。
ただし本当の狙いは切り払わせ、操る髪を短く刻んでもらうこと。
刻まれても「私の髪」である以上は操れるので、細切れになった髪を目や鼻や耳や口の中に殺到させるわ。
鼻や喉の奥で暴れさせて咳やくしゃみを誘発、耳の中で鼓膜を擦り上げて騒音、目玉をちくちく刺激して視界妨害。
とても戦える状態じゃなくしてやるわね。
涙と鼻水塗れの顔、とても無様ね。
悪党の死に顔にはお似合いよ。
出水宮・カガリ
【ヤド箱】ステラと、ペインと
※アドリブ絡み歓迎、語尾~だね×~だな〇
現在が過去に振り回されねばならない理由が、どこにある
それに、だ
あまり、有り得ない事ばかりを、並べるものでもないぞ
お前は、カガリ達が砕ける様を、見ることは無いのだから(挑発)
真の姿に戻る
あらゆる刃物を複製するには、そうする為の意志が、必要だな?
ならば、その意志を封じよう
門の瞳の装飾は柘榴の色に(【化生の魔眼】)
対象をアシュラレディのみとして、【死都之塞】を
猟兵と戦っていれば、この高さから視界に収めることはそう難しくはあるまい
…何よりあれは、絶望を見せたがるだろう、と思うから
安寧を乱す意志は、等しく憎むべきもの
その悪意を、抑圧する
ステラ・アルゲン
【ヤド箱】ペイン、カガリと参加
アドリブ・連携OK
千歳殿はやはり事情があったようですね
故郷の人々を人質に強盗をさせるとは許せるわけがない
千歳殿の為にも故郷の人々の為にもお前はここで斬り捨てる!
真の姿のまま【月光槍】のルナと本体たる【流星剣】を手に構える
お前は六刀流か……そんな相手と戦うのは初めてだな
六刀の攻撃はリーチと範囲の広い槍で【武器受け】して流す
振り回される剣の数が多くとも、振るう者はたったの一人
動きにはある程度の癖がある。事前に動いているし打ち合えば余計に動きが分かる
【戦闘知識】より癖の動きを【見切り】、隙を突いて本体の剣を【投擲】し【凶つ星】
今日の私はお前にとっての凶星だ!
ペイン・フィン
【ヤド箱】ステラ、カガリと行動。
……事情があれど、罪は罪。
でも、彼女の指はもう潰した。
彼女の罪は、自分がもう食べた。
……なら、今度はお前の番だよ。
真の姿を解放。
何歳程度か幼い姿になり、血霧のようなモノを纏う。
そして、コードを使用。
ヒーローでありながら、その存在の歪められたもの達の怨念を、焼き鏝“ジョン・フット”に。
虐げられ、恐怖を味わった、この場の人々と、千歳の故郷の人たちの憤怒を、膝砕き”クランツ”に。
そして、絶対的な悪意を前に、ただ罪を犯すしかできなかった、千歳の悲哀を、本体、指潰しに。
負の感情を宿し、強化し、後は、使うだけ。
……お前は、ここで終わりだよ。
フローリエ・オミネ
人為的災厄と存在不許可、2つを使い分け
敵の動きを邪魔するわ
……あなたの言葉、そっくりお返しするわ
あなたが死ぬ時、どんな表情をするの?
落ちた後も形が残る「氷の稲妻」
そしてそれを再形成した「氷刃の吹雪」
を使い分けるわ
【高速詠唱】で敵が行動しようとする、その時に発動するの
【2回攻撃】を利用し、存在不許可を絶対避けられないよう同時に2つ発動すると
わたくしも当然、手間がかかって隙ができるけれど
敵の動きを止められれば、そもそもわたくしに攻撃は来ないわ。
【空中戦】は得意なの
だってわたくしは――「指嗾」の魔女
直接手を下すようなことはしなくてよ
わたくしはヒーローでは無いけれど
皆様を引き立てる、名脇役なの。
●
「漸くお出ましね、千歳ちゃんをけしかけた張本人」
ビシッ、と右人差し指を突きつけ糾弾するは、美星・アイナ。
既にその左手は胸元にあるペンダントに触れている。
「けしかけただなんて、人が悪いね。アタシはただ、千歳にもっとヴィランらしくなって欲しかっただけさ」
からかう様に、余裕綽々の笑みを浮かべて。
そう答えながら無数の愛用の刃物達、それは長剣であり、刀であり、タルワールであり……。
様々な種類の刀剣類を周囲に浮かばせて念動力で操り、猟兵と人々を斬り殺さんと行動を起こそうとした、その時。
「……Active Ice Wall!」
「私が道を作ります。皆さんは駆けだして下さい!」
後方より突如として無数の氷の塊が盾の様に刃達の前に立ち塞がり、更に炎の精霊を宿した無数の銃弾の群れが飛び交い、次々に刃達を叩き落としていく。
「絵に描いた様な外道じゃのう。ああ、何も言わなくても良いぞ、その位の方が気兼ねなく屠れるわい」
続けざまに炎と風の精霊を組み合わせて作り出した爆風を纏わせた矢を手製の短弓に番えてひょう、と放つ音が周囲に響いた。
それは、スピレイル・ナトゥアの精霊印の突撃銃に籠められた炎の精霊達と連鎖して強大な爆発を起こす。
後方から放たれたそれによって、アイナ達に刃が届くよりも先に撃ち落とされてしまったことに微かに驚きの表情を浮かべつつ、アシュラレディが周囲を見回した。
その時には既に羅刹の娘――荒谷・つかさが一気に間合いを詰めている。
「貴女知ってるかしら。冥土の土産を語るのって、その時点で敗北フラグよ」
詰る様に冷たく言い放ちながら、一本の細長い髪の毛を槍として召喚し、それを撃ち出すつかさ。
一方でウィリアム・バークリーの呼び出した氷塊の盾、更にスピレイル及びエウトティア・ナトゥアの連携により起きた爆発の連鎖によって周囲に落ちた剣達を見て、嘆ずる様に息をつく者もいた。
それは……。
「良い武器では無いか。どれこれも業物ばかり……分解して構造を調べてみたい所だ」
ラッセル・ベイ。
最強の武器を作り出す事を人生の目標とした鍛治師。
「お前達、無事だったんだな」
「はい、皆様も、町の人達の警護、お疲れ様ですわ」
ラッセル達にそう呼びかけたのは、出水宮・カガリ。
それに答えたのは、ラッセルの毒精霊、ポイゼである。
「話は聞きました。まあ、効率的な話ではありますよね」
本来、ヴィランとはそういう風に悪事を働いている。
だからこそ、怪しまれない。
「ですが、ウィリアム殿。千歳殿は……」
ウィリアムの呟きにそう返したのは、白銀の甲冑に全身を包み込んだステラ・アルゲン。
白銀の篭手が握りしめられ、その手がブルブルと震えている。
そのステラの怒りを読み取り、ウィリアムが首肯した。
「ええ、分かっています。今回の様にオブリビオンが絡んでくるなら、話は別です」
「しかも、あいつは千歳ちゃんの大事な人達を盾にして脅した……」
ぐっ、とアイナがペンダントを強く握りしめると同時に、その表情が見る見る内に冷酷なものへと変貌していく。
――そんな、時。
「……事情があれど、罪は罪」
淡々と、何処か諭す様にステラ達に告げたのは、ペイン・フィン。
「ペイン殿……」
ステラが何かを言いかけるが、それよりも早く、でも、とペインが呟きながら何歳程度か幼い姿となり、周囲に血霧の様なモノを纏い始めた。
「彼女の指は、もう潰した」
――彼女の罪は、ペインがもう食べた。
だから……。
「今度は、お前の番だよ」
「そうだな。お前に……過去であるお前に現在が、振り回されねばならない理由が何処にある」
カガリの問いかけに、再び無数の刀剣類を召喚しながら、六本の手に持つ六刀の刃を振り回し、自らの力を誇示するアシュラレディ。
長槍と化していたつかさの髪を、裁断する様に振り回す。
「何を馬鹿なことを言っているんだい? アタシは千歳とコイツの故郷の奴等の所有者だ。所有物をどうしようとアタシの勝手だろう?」
「……外道め」
ニヤニヤと唇に歪んだ笑みを浮かべたアシュラレディにステラがやや低い声音で呟きながら、腰に佩いた流星剣ステラを引き抜き、左手に月光槍ルナを構えた。
「ははっ、殺る気満々じゃ無いか、アンタ達。これは中々、切り刻み甲斐がありそうだ」
「……どうかしらね」
空中から、鈴の鳴る様な声が響き渡る。
それは、Verschwindenを天空に掲げ、その頭上に氷の稲妻を形成したフローリエ・オミネの声。
「あまり、有り得ないことばかりを、並べるものでもないぞ」
フローリエの言葉にカガリが同意する様に頷きながら、鉄門扉の盾を地面に突き立て、金屋根と石柱の腕を持つ城門へと姿を変えていく。
違うのは、門にあった瞳の様なものの色。
その瞳の色が、柘榴色へと変貌を遂げていた。
それは、化生の魔眼。
――即ち、幽閉・抑圧を是とし、それを見た者の自由意志を奪う瞳。
悪意と意志を抑圧するべく、過ぎた守護の力を秘めたもの。
「ああ、何がだい?」
分からない、とばかりに頭を振るアシュラレディ。
「アンタ達は此処で死ぬ。それはもう決まっていることだろう?」
「そう。それなら……あなたの言葉、そっくりお返しするわ」
Verschwindenの先端をアシュラレディに向けながら。
「あなたが死ぬ時、どんな表情をするのかしらね?」
そう続けVerschwindenの先端に収束されていた氷の稲妻を解き放つフローリエ。
――かくて、猟兵達の戦いは、始まりの合図を告げるのだった。
●
「ハハハハハッ! いきなりぶっ放してくるなんてね!」
その手の六本の刃物を気ままに振るい、フローリエの呼び出した氷の稲妻を切り裂くアシュラレディ。
「どうせ、千歳さんが成功しても失敗してもいつかは千歳さんの故郷の人達を切り刻むつもりだったのでしょう?」
スピレイルが問いかけながら、精霊印の突撃銃による援護射撃を続け、又エウトティアも手製の短弓に番えた風と火の精霊達を鏃に宿した矢を放ち、援護攻撃を絶やさない。
絶やされぬ連続攻撃を、アシュラレディが六刀で弾く間に。
『残念ね、切り刻まれるのはあんたの方よ』
冷徹非情なキリングドールへと人格を変えたアイナが、その場でぐっ、と腰だめに力を溜めて大地を蹴り、一気に天空へと駆け上がる。
そのままぐるりと回転し、Shadow Dancerによる黒い軌跡を描きながら、トン、とその胸に蹴りを叩き込む。
それに合わせる様に、ステラとペインが同時に動いた。
「千歳殿の為にも、千歳殿の故郷の為にも、お前はここで斬り捨てる!」
『……辛い、けど、そうも言ってられない、ね』
白銀の流星と化したステラが、金色の軌跡を描いた月光槍ルナで鋭い刺突を繰り出し、ペインがアシュラレディの周囲を漂う怨霊達に呼びかける。
フローリエの氷の稲妻が、パリン、と音を立てて砕けると同時に、その向こうから躍り出たステラの金色の光と共に放たれた刺突が、アイナが先程蹴り上げたアシュラレディの胸に迫るが、アシュラレディは落ち着いた様子で6本の刀の内の1本でステラの刃を受け止め、左の刀の内の2本を、1本は上段から振り下ろし、2本目は下段から撥ね上げた。
(「六刀流か……こんな相手と戦うのは初めてだな」)
自分の攻撃を1本の刃で受け流し、残りの2本で反撃をしてくるアシュラレディの攻撃を、月光槍ルナを横薙ぎに振るって受け止めながらステラは思う。
尚、アシュラレディは残りの3本の内、1本はラッセルに、1本は袈裟にペインに、そして最後の一本はつかさの放った髪を細切れにするのに使用している。
「フム、この一斉攻撃を遮るか。だが……」
「……あなたを恨む人は、沢山いるね」
ラッセルの呟きにポイゼがすかさず猛毒の針を撃ちだし、アシュラレディの体を貫き。
更にアシュラレディの周囲に漂う、ヒーローでありながら、アシュラレディの策略によって歪められた者達の怨念を纏い、纏う蒼炎を巨大化させた焼き鏝“ジョン・フット”を突きつけるペイン。
ポイゼの放った猛毒の針がアシュラレディの右肩に突き刺さり、更にペインの焼き鏝“ジョン・フット”がアシュラレディの左肩に押し込まれ、烙印を刻み込んだ。
「クアッ……!」
――ツッ。
蒼焔により刻み込まれた烙印の熱に苦しげな声を上げるアシュラレディ。
ただ、ペインの口からも血が滴り落ち、それが周囲に展開している血霧の様なモノへと吸収されていく。
それは自らの持つ拷問具達に怨念や、憤怒、悲哀を宿しそれらを超強化する為に、ペインの得る代償であった。
「……少しは、やるみたいだねぇ! 益々斬り殺し甲斐が……!」
「その暇は無いわ」
愉快そうに6本の剣を振るい、再び無数の刀剣類を召喚したアシュラレディにそう告げながら、その手のWeiß Märchenをぱらり、とめくるフローリエ。
「まっさらだから、あなたの物語を教えて」
鈴の鳴る様な声でフローリエがそう告げると、先程斬り裂かれた筈の氷の稲妻達が鋭い刃となって、アシュラレディへと迫っていく。
エウトティアとスピレイルの炎によって一部溶けたウィリアムとフローリエの氷が絡み合い、ブリザードと化して、アシュラレディの全身にビュウビュウと襲いかかった。
その隙を見逃さず、素早く左手の指先で蒼と桜色の混ざった魔法陣を描き出すウィリアム。
その中心には、氷柱となった氷の精霊達が集っている。
「……Icicle Adge!」
命じると同時に魔法陣から飛び出したのは、複数の氷柱。
氷の槍と化した氷柱達がアシュラレディのペインによって付けられた焼き鏝の痕、アイナに踏みつけられた胸、ポイゼが猛毒の針を撃ち込んだ左肩に突き刺さり、アシュラレディの全身を氷で蝕み、徐々に凍り付かせていく。
「この程度でアタシが倒せると思うなよ、雑魚共が!」
罵声を浴びせながら、6本の剣を一斉に振るい、周囲に群がるアイナ達を切り裂こうとするが……。
「……バカね。こうも簡単に引っかかってくれるとは思わなかったわ」
呟きながら、綾取りをするかの様に素早く両手を動かすつかさ。
その瞬間、先程アシュラレディが切り刻んでくれた髪の毛達がアシュラレディの目や、鼻や、耳や、口の中に殺到する。
「こんなもので私を……!」
「……くすぐり、だね」
つかさの行いの意味を最も速く理解できたのは、拷問具でもあるペインであった。 ――何故ならくすぐりの刑というのは、古来より代々伝わる拷問の一つだからだ。
「かっ……カハッ、ゲホッ、ゴホッ、アハハ……アハハハハハ……」
自分の体内で暴れ回るつかさの髪の毛に、涙を流し、ぜぇぜぇと肩で強く息をつきながら、尚、攻撃の手を緩めぬアシュラレディ。
ただ、その一挙一動は、先程よりも遙かに鈍い。
「そう言えば、お前は何かを計画していたんだったな。金を集めて秘密兵器でも作ろうとしていたのか? ま、君はここで消えるのだから今更どうでも良い話か」
「アハハ……バカに……カフッ! して……クシュッ!」
ラッセルの挑発に怒りも露わに周囲に無数の刀剣類を召喚しながら、自らも6本の剣をラッセルに向けて集中して放つアシュラレディ。
袈裟、逆袈裟、斬り上げ、切り下ろし、薙ぎ払い、逆薙ぎ……つかさの髪にその体を弄ばれながらも尚、放たれた6本の刃による攻撃は、決して油断の出来ないもので。
故に、ラッセルは自らの地盾グラウンドの中央に刻み込んだグラウンド・ルーンを起動させる。
まるで不動の大木の如くその場に佇むラッセルを六本の剣が襲撃するが、性能を最大限発揮している地盾グラウンドの前にかなり威力を軽減され、思う様な成果を上げられていない。
(「今が、好機か!」)
「カガリ、ペイン!」
「ああ、勿論だ」
ステラの呼びかけに応じてカガリが覚醒した柘榴色の眼差し、『化生の魔眼』でアシュラレディを射貫いて一時的にだがアシュラレディの自由意志を奪った。
「安寧を乱す意志は、等しく憎むべきものだ」
――だから。
「……お前は罪を、償うんだよ」
カガリの言葉を引き取ったペインが巨大化した膝砕き“クランツ”でアシュラレディの腕の内の一本を挟み込み……。
「……これは、虐げられ、恐怖を味わった、この場の人々と、千歳の故郷の人達の憤怒だよ」
呟きと共に、膝砕き“クランツ”のボルトを締め上げた。
それはアシュラレディの肉を引き裂き、その腕の骨を砕き、6本の腕の内の1本の関節を叩き潰す。
「ギャァァァァァ! ハハッ、ハハハッ、ゲボッ、ゴボッ」
腕の1本を砕かれた痛みに絶叫を上げるが、その悲鳴はペインの中に確かな愉悦をもたらしていた。
「ステラ」
「ああ、そうだな」
ペインの呼びかけに応じる様に、さっ、とバックステップを一つしながら、ステラが流星剣ステラを投擲。
投擲された流星剣が、ラッセルへの攻撃で隙だらけとなっていたアシュラレディの側面を取りその体を貫いた。
「がっ……?!」
「今日の私は、お前にとっての凶星だ!」
――私は、願い叶える流星の星。
全てを叶えられるわけでは無いけれど。
それでも、ある程度の願いを聞き、それを叶えようと約束をすることもある。
――そう、以前に戦った仮面の娘の時の様に。
だが……アシュラレディにとってのステラという存在は。
――希望の星?
……否。
ヤドリガミとしての特性を生かし、流星剣ステラの傍に自らの肉体を再召喚させ、ぐっ、と片手で流星剣ステラを握りしめて一気に引き下ろし、更に月光槍ルナでその身を薙ぎ払う。
ステラがアシュラレディに与えたもの、それは……。
「か……カハッ……!」
喀血し、苦しげに肩で息をつきながら、体中から体液を零すアシュラレディ。
ステラに与えられた傷によってふらつきながら、アシュラレディの内心にはとある感情が育まれていた。
――即ち、『絶望』
●
「お姉様、合わせて下さい!」
ステラ、ペイン、カガリの連係攻撃、ラッセルとポイゼによる猛毒攻撃、つかさによる体内からの浸食攻撃、そしてアイナによる絶え間ない剣状態のDeathBladeによる武器落としを狙った連撃。
此処にフローリエとウィリアムによる氷刃の吹雪とIcicle Edgeという絶え間ない攻撃も加わり、アシュラレディは著しく動きを制限されていた。
同時にそれは、後方から支援をしていたスピレイルとエウトティアの存在を気に掛ける余裕が無くなることも意味している。
――つまり、今こそ彼女達が札を切り、それを確実に当てる好機なのだ。
「ふむ、此方もいけるぞ。……っと、マニトゥよ。時間を稼ぐのじゃ」
エウトティアの後ろで待ち構えていた白狼にそう命じながら、エウトティアは術の詠唱に入る。
マニトゥは周囲に風の精霊を纏って疾風の如くその場を駆け抜け、アイナ達に加勢してアシュラレディを翻弄し始めていた。
「千歳ちゃんの心を縛った黒い鎖と枷。この一刀でアンタ毎ぶっ壊すよ!」
アイナが叫びながら黒剣形態のDeathBladeを振り下ろし、ステラのユーベルコードによって重傷を負った傷口を更に抉っている。
「こっ……この! ガフ、アハ、アハハ……!」
つかさの髪による体内からの縛めに苦しみながら、まだ使える5本の刃でアイナを切り裂こうとしたその時に、マニトゥが横合いから体当たりを繰り出し、アシュラレディの態勢を崩した。
「スピレイル!」
「行きますわよ、お姉様!」
大きく体を傾がせたアシュラレディの姿を認めたエウトティアのアイコンタクトにスピレイルが頷き返す。
スピレイルの両目が光り輝くと共に、スピレイルの周囲に漂う炎・土・雷、全ての精霊が暴走を始め、精霊印の突撃銃が激しく明滅する。
それが何を意味するのかを理解しているエウトティアも又、高らかに歌う様に言の葉を紡いだ。
「森羅万象の精霊が集う一撃を食らうがよい」
エウトティアの命に応じる様に自らの周囲に寄り添っていた精霊達が激しく点滅を繰り返す。
それは、かの精霊達が自身の精霊力を無制御のまま凝縮し、紅く輝く破壊の光を放出しようとしていることを意味していた。
『荒れ狂う力を解き放て!』
『天穹を貫く緋色の光条よ、我が敵を貫け!』
耳を劈かんばかりの轟音と共に暴走した炎と土と雷の精霊が一気呵成にアシュラレディに襲いかかってその全身を焼き、土砂で飲み込み、雷撃で痺れさせ。
同時に放たれた全てを破壊する全150本の緋色の光条が巨大な緋色の光柱となってアシュラレディを貫いた。
「あ……あああ……そんな……いや……こんな……こんな所で……!」
全身を圧倒的な熱量に嬲られ辛うじて原型を留めながら無数の刀剣類を最後のあがきとばかりに召喚しようとするアシュラレディの様子を見て取ってエウトティアが叫ぶ。
「フローリエ殿!」
「ええ……今ね」
フローリエが頷きと共にVerschwindenを突きつけて。
「運命を、受け入れて」
エウトティア達の精霊術によって切り開かれた空間に重力を寄せ集めた強打を打ち込む。
「カガリ」
「そうだな」
フローリエの呼びかけに応じたカガリの自由意志を奪う化生の魔眼から放たれた自発的行動の続行・開始を封じる視線に身動きを取れ無くされたアシュラレディを彼女が呼び出した重力の檻が押し潰し……アシュラレディの体をひしゃげさせ、一切の動きを取れなくさせる。
「くふぁっ! そんな……そんな……!」
「あんたの所業、万死に値するわ!」
アイナが完全に動きを封殺されたアシュラレディへとDeathBladeを突きつけた。
『悲しみの雫達よ、蒼穹に集え!汝らの振り積むその想い、我が冷たく蒼い雨に変えて闇に放とう……さあ、蒼の雨の中で貴様の罪を数えな!』
アイナの詠唱と共に剣先から解き放たれたのは、幾千もの青玉の矢。
――罪を穿つ青玉の雨(ペネトレーション・サファイアレイン)
そう呼ばれしアイナのユーベルコードによって放たれたそれが、アシュラレディの罪を穿つべく全身を貫いていく。
そこに走り寄ったのは、ペイン。
「……お前は、ここで終わりだよ」
全身を拷問による悲鳴が聞きたいという呪縛に苛まれながら、自身の本体……親指潰し“ペイン・フィン”に、『それ』を宿したペインが動きを封じられ、ただ無様に泣き叫ぶアシュラレディの体を挟み込み、ぐしゃり、と鈍い音と共に骨を砕いた。
「げ……げぇ……」
「……これは、あなたの様な絶対的な悪意を前に、ただ罪を犯す事しかできなかった、千歳の悲哀だよ」
「そろそろ終わらせる!」
ペインにその骨を潰され絶叫するアシュラレディに金色の光と共に突進する白銀の流星ステラ。
月光槍ルナによる鋭い刺突は、確実にアシュラレディの急所を貫いていて。
全身の骨を砕かれ、尚、まだ生きようと泣きながらも強引にフローリエとカガリの呪縛を断ち切って立ち上がり攻撃を行おうとするアシュラレディだったが。
「そろそろだな」
不意に放たれたその言葉と共に、全身に凄まじい痺れが走り、そのままグッタリと倒れ込む。
――な……に……?
最早、喋ることもままならないアシュラレディ。
体中が絶え間ない痛みに悲鳴を上げているのに、その声を上げることすら出来ず、また、逃げるために身動きを取ることも出来ないのだ。
――何故なら、猛毒が全身を回ったから。
ポイゼの放った猛毒の針の猛毒が度重なる攻撃の末、急速に全身に回ったから。
もう、彼女は動けない。
――バカな。アタシは……アタシは……!
この猟兵達をズタズタに切り裂いた後、千歳を嬲り殺しにして、この街の人々全てを細切れにして……泣き叫び喚くその姿を見て悦に浸る筈だったのに。
どうして、どうして……!
こんな事になる?
「涙と鼻水塗れの顔、とても無様ね」
そんなアシュラレディの願いを、祈りを無慈悲に断ち切るかの如く。
つかさの口から冷酷なその一言が突きつけられた。
「悪党の死に顔には、お似合いよ」
――おのれ……おのれ……!
「わたくしの役割は此処までですわね」
鈴の鳴る様な声でそう告げたのはフローリエ。
重力の檻を呼び出しアシュラレディをこれ程までに無様な姿にしたのは、彼女とカガリの視線が始まりだった。
――な……ぜ……!
「ウィリアム、お願いしますわ」
(「わたくしは――『指嗾』の魔女」)
故に、自ら手を下すことは無い。
ただ……仲間達を引き立てる、名脇役。
――だから。
「これで終わりです……!」
『スプラッシュ』に氷の精霊を這わせ、全てを凍てつかせる氷剣と化させたウィリアムの最後の一撃を止める者は誰も居ない。
『断ち切れ、『スプラッシュ』!』
凍てついたルーンソード『スプラッシュ』がウィリアムの手で唐竹割りに振り下ろされる。
――この時最後までアシュラレディは、何故自分が敗れるのか理解できなかった。
●
「……終わったな」
「はい、そうですね、カガリ」
アシュラレディの最期を見届けて、真の姿を解除したカガリに同じく白銀の甲冑が陽炎の様に消えていったのを確認しながらステラが頷き、それから、カガリの後ろでへたり込んでいた千歳の方へと目を向ける。
「……あの……」
「これで、貴女を縛る鎖は失われました、千歳殿」
ステラがそう呼びかけると、千歳は何処かはっ、とした表情になった。
「此処から先を決めるのは、千歳ちゃん次第よ」
アイナがそう囁きかけると、千歳はそっと両指を見る。
罪に対する罰として……ペインによって砕かれた、その指を。
「あなたの罪は、自分がもう食べた。後は、あなた次第だ」
ペインの呟きに千歳は砕かれた両指をもう一度見る。
暫くじっとそうしていたが……程なくして息を一つついた。
「ありがとう、皆。私は、きちんと罪を償って……皆の様に生きていける様に努力するわ」
告げる千歳は警察官達に連れられて、静かにその場を後にする。
かくて、人々の生命は守られ、ヴィランの娘は新たなる道を歩む事を選ぶ。
今後、彼女がどの様に生きていくのか。
――それはまた、別の物語である。
大成功
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