●麗人達の策略
サムライエンパイアのとある村。
のどかの風景と共に、美しい桜の木々とお餅が名物となっているこの村に、今オブリビオンの魔の手が伸びようとしている。
「美しい桜以上に美しいのはーーーっ!?」
妙にキラキラとした一人の河童男が己の耳に手を添え、聞く。
「「「はいっ! 河童界の帝王、イケカッパー様です!」」」
周りに集う、純粋無垢でこれまたキラキラとした眼差しを浮かべた天使達が声を合わせ叫ぶべば、その言葉に満足そうに頷くイケカッパオブリビオン。腰に手をあて、
「そう! この僕! 美しい桜、美しい僕! この季節だからこその美の相乗効果! その美しさを皆が堪能したいに決まってるよね! はーーーはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」
高笑いに取り巻き天使達は大きな拍手で称える。
「さぁ皆! 僕らで美しき桜の咲き誇るあの村を美しく襲撃してみせよう! そして僕達の美しさで満たそうじゃないか、はーっはっはっはっはっは!
そう言うと、キラッキラのイケ河童と妄信的な輝きを見せる純真無垢な天使達は村へと進んで行くのだった。
●キラッキラ、もっちもち
「今まさに、河童と天使がキャッキャウフフと村へと攻め込んできます」
あくまで真剣な面持ちで明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)は伝える。
「キラキラとした天使の姿をしたオブリビオンの軍勢が今まさに村へと迫っております。皆様にはぜひその天使軍を撃退していただきたいのです…!」
天使の容姿をすれど、彼らはオブリビオン。生かしてはならぬ存在。
敵の天使達はそれなりに数は多く、また連携してくるようだ。
「天使達を撃退すれば、のこのことイケカッパーがやってまいりましょう……!」
一人とは言え、油断はならない。天使達を従える程の実力者である。多分。
「なんかこう、キラキラしてますが……敵のナルシスティックな性質を生かしていい感じに撃退していただきたいですね、ふふ!」
煽ったりアレコレしたらノってきそうな気もする。
「そういえば、この村の名産はお餅だそうです。無事に天使や河童を撃退できましたら、お餅づくりをお手伝いしてみるのはいかがでしょう?」
ふふ、と珠稀は笑みを零す。
「もっちりと弾力のあるお餅……! あぁこの季節です、桜餅も素敵ですよね。食べてよし、作って良し、飾って良し……! 素敵お餅ライフ……! ふ、ふふ……!」
少し目がイってる気がしないでもない。
「……と。私もお手伝いに行きたい程ですが、皆様を送りだすことに専念させていただきます。何卒、よろしくお願いいたします、ふふ……!」
さぁ、天使と河童を倒し、お餅をもちもちと満喫だ!
あけっちあ
はじめまして、あけっちあと申します。
ふつつか者ですが精一杯頑張りますので何卒よろしくお願いいたします。
お花見と和菓子が大好きです。
サムライエンパイアの世界でゆるっと敵を倒し、
ゆるっと餅づくり&餅食しを楽しんでいただければ幸いです。
全編ゆるふわコメディな雰囲気にてお送りできれば、と思っておりますので、ぜひ自由なアクションをお待ちしております。
よろしくお願いいたします!
第1章 集団戦
『万能従者型・渡来の天使』
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POW : 天使の一撃
単純で重い【天使の斧】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : くるくる回る天使の輪
自身が装備する【天使の車輪】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 兄弟の危機を見過ごせない!
自身が戦闘で瀕死になると【新たな別の渡来の天使】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:つばき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
遊馬・美湖
ナルシストな天使っぽいのが敵だね、おけおけ。
「お兄さんたち、そんなに激しく動いたらせっかく"かっこよく"決まってる髪型崩れちゃうぞ☆」
"かっこよく"のところはもち強調してね!
ミコの生まれ故郷で好き勝手できると思ったら大間違いだし。
第一、神様仏様はいても天使様ってこの世界の生まれであるミコからしたら信仰対象でもなんでもないしね?殴るのに躊躇なんてしないしない♪
その鼻っ面へし折ってあげっからこっちおいで☆
おだてるのが効かなくなってきたら今度は逆上させてもいいかな。単純そうだし。頭に血が上って動きもざっぱになったりして。そしたらヨユーっしょ!
●鬼ギャルVS天使ーズ
遠目にも、白い天使の羽を持つ一団が近づいてくるのが見える。
遊馬・美湖(パワフルギャル・f12819)は護るべき村を背に、その赤い瞳を不機嫌そうに細め。
「何あれ。だっさー」
柔らかに艶めく己の黒髪の毛先を弄びながら呟いた。
(ミコの生まれ故郷で好き勝手できると思ったら大間違いだし)
生まれ故郷は戒律の厳しい隠れ里。その故郷に嫌気が差し飛び出した美湖であったが、このサムライエンパイアの世界を脅かす者をのさばらせるわけにはいかない。
「ミコの力、見せちゃうしかないっしょ☆」
美湖は靴先でトントンと地面を数度叩くと、天使達目掛けて走り出した。
「兄者! 鬼娘がこっちに走ってきます!」
天使3号が似たような顔をした天使1号に報告すれば
「我ら天使軍の美しさに惹かれるのは仕方あるまい! しかしカッパー様のために情けは無用! 迎え撃つぞっ」
天使数名が斧を構え、迫りくる美湖に狙いを定める。
向かい来る美湖に天使達の斧は振り下ろされるが、美湖は軽々とステップを踏みその攻撃を避け、天使達へと接触を図り。
「お兄さん達っ」
「なんだ鬼娘ッ!」
鬼呼ばわりされムッとした表情を見せる美湖だったが、直ぐに気持ちを切り替えて。ブンブンと斧を振り回す天使達に
「そんなに激しく動いたらせっかく"かーーーーーっこよく"決まってる髪型崩れちゃうぞ☆」
美湖が愛らしくウィンク☆
「くっ、朝から整えた髪がっ!」
天使達の手が止まり、しきりに髪を気にし出し始めた。
(うわ、マジ単純)
心の中で舌を出し。美湖はその隙を狙って大連珠握りしめた右腕で天使の一人に力強くストレートを叩き込んだ。
空を舞うかのように吹っ飛ばされる天使2号の姿に、
「兄者ーー!!!」
髪を気にしていた天使3号が悲鳴にも似た声を上げた。
「よよよよくもーーっっ!!」
怒りに表情を見せ、斧を手に向かってきた天使3号。
「あっれー。髪の乱れを直してあげようとしただけだったのにー☆」
悪びれることなく、美湖は向かってきた天使3号の斧の一振りも軽く交わし、ボディに拳を叩き込む。打つべし! 打つべし!
ごふごふとサンドバック状態の天使に止めとばかりに
「あ。鼻になんかついてるし☆」
思わず顔に手を当てる天使3号の顔面に、勢い良く叩き込まれる美湖の拳。
「あべしーーーーーーっっ!」
叫び声と共に吹き飛ばされ、お星様となる天使3号。
「弟よーーー!!!」
相変わらず髪を弄っていた天使1号、弟たちが流れ星となる様に現実を取り戻したようだ。
「おおおお鬼娘! 美しい天使に向かって容赦ないな!」
「はー? 神様仏様はいても天使様ってこの世界の生まれであるミコからしたら信仰対象でもなんでもないしね?」
怒りと共に振るわれる天使の斧。
兄者と呼ばれるだけあって、先程のヘナチョコ天使達よりは斧の軌道が読みづらい天使1号。
しかし美湖は言葉を止めない。
「美しい? どこが? その顔を殴るのに躊躇するわけないっしょ☆ その鼻っ面へし折ってあげっからこっちおいで☆」
あっかんっべー、っと舌を出す美湖に、
「ききき貴様ーーーっ!!」
天使1号が大きく斧を振るったそのタイミングを狙い。
(思うツボ過ぎて笑えるわー)
笑いをかみ殺しながら、美湖は天使1号の懐に潜り込む。そして、
「ヨユーすぎっしょ!」
美湖のユーベルコード『灰燼拳』が天使の鼻っ柱を捉え……超高速かつ大威力の一撃に天使1号は名実共に天に召されるのだった。
「一丁あーがり☆」
手についた砂をパンパンと払いながら、美湖は鮮やかな赤い瞳を輝かせながら次なる標的を見据えるのだった。
成功
🔵🔵🔴
仁科・恭介
※アドリブ、いろいろ歓迎
UC対象:天使
「天使と河童がキャッキャウフフ?」
最初は意味が分かりませんでしたが、現状を見て受け入れる。
いつものように【携帯食料】を貪り相手のテンションに合わせる。
「なるほど、お前ら心では『自分が一番』だと思っているな。筋肉達がそう言っている」
「ちょっと待て。なんで肌がキラキラしてくるんだ?」
相手に合わせ過ぎたと反省。
【目立たない】よう気配を消し、【ダッシュ】で死角から目の前に(キラキラと)現れて斬る。
「これは…隠匿できないな」【学習力】
作戦を変えて【残像】と【ダッシュ】を織り交ぜての攻撃に切り替える。
「さて、あなたの弱点はどこですか【失せ物探し】。そこじゃないよね?」
●干し肉×ハイテンション=キラキラ☆
野性味溢れる肉の旨味。しかしその後味は上品さを持って喉を通り抜けていく。
携帯食料である干し肉を齧りながら、仁科・恭介(観察する人・f14065)は向かい来る天使達を視界に捉えた。
(キャッキャウフフ……彼らのことか)
意味のわからない説明だ、と思っていたものの……天使達の姿を見ればその意味がちょっとわかった気がする。
これから村を襲撃するために斧を担いだ天使達だったが、彼らの表情はピクニックにお出かけするかの如く楽しさに溢れているようにも見えるわけで。
観察を重ね、敵の移動スピードと己の動く順路を脳内でシミュレーションし。
(……行くか)
恭介は残りの干し肉を一気に口へと運び、咀嚼し喉へと送り込むと、木々の間を駆け出した。
「兄さん、あの村を僕達のモノにしたら洋風のお家を建てようよ!」
「そうだな弟。きっと美しいだろうな。噴水も欲しいところだ」
「うわぁ、水浴びが出来るね、素敵だね!」
天使兄と天使弟が斧を片手にキャッキャウフフと進んでいる。なんかもう、残念な位に理想の村づくり☆にトキメいて周りのことは見えていない模様。
そんな天使達の姿を恭介は木の影で息を潜め見守りながら、ユーベルコード『共鳴(ハウリング・レスポンス)』を発動させる。
戦闘中に食べた肉と、対象に定めた相手のテンションの量と質に応じて全身の細胞が活性化し、戦闘力が増加するのだが……
(ちょっと待て。なんで肌がキラキラしてくるんだ?)
今までの自分とは違う、謎のキラキラ感。
相手のテンション=キラキラ、なのだろうか。
確かに戦闘力は増加している。だけどなんだろうこれ、オーラ?
恭介が若干の戸惑いを覚えていると、目の前を天使達が通り過ぎようとしている。
(えぇい、ままよ!)
恭介は気配を消し、サムライブレイド構えながら天使達の前に躍り出た。
「うわっ! まぶしっ!」
「えっ? なんだこの輝き」
本来ならば死角からズバッ! バシュッ! と斬り倒す予定だったが、天使達は恭介の存在に、謎の輝きに思わず歩みを止めてしまったようだ。恭介の刃は空を切る。
(これは……隠匿できないな)
恭介の柔和な表情に苦笑の色が浮かびつつも、それはそれ。すぐさま攻撃の方針を変える。
「恨むなら自分達の姿を恨むんだな」
恭介の茶色に輝く瞳が天使達を見据えると、素早い動きで天使のサイドへと回り込む。
残像を見せるその動きにより、天使達は恭介に囲まれているかのような錯覚を覚える程。しかもなんだかキラキラしているし。
「兄さん、この男分身してる! それにキラキラしてるし、僕悔しいよ!」
「弟よ、ならば全て潰すまでよ!」
天使達はやたらめったらに恭介の姿に向かって斧を振るう。
(弱点を探すまでもなさそうだな……)
幻覚に捉われているかのように無茶苦茶に斧を振り下ろす天使達に憐れみすら感じながら、恭介は足を使い、そして。
「ぐぁあぁあっっ!」
「兄さーーーーーんっっっ!」
天使兄の背中を、恭介のサムライブレイドが斬り払った。
ドサリと倒れる天使兄。
悲しみにくれる天使弟。……かと思いきや。
(なるほど、お前ら心では『自分が一番』だと思っているな)
恭介は気付いた。
天使弟は、一瞬だけ笑みを見せたのだ。まるで邪魔者がいなくなったかのように。
だが、直ぐにその表情を哀しみに歪ませると
「兄さんの仇ーーっ!!」
天使弟は大きく斧を振り上げ、キラリと存在感を見せる恭介に斧を振り下ろす。が、戦闘力の増した恭介にはその動きさえスローモーションに見える程で。
「兄弟ごっこはもう、終わりだ」
最高潮に力を込めた恭介の斬撃は、天使弟の身を易々と切り裂くのだった。
成功
🔵🔵🔴
アルファ・オメガ
「がう、河童と天使ってすごい組み合わせ!」
しかもキラッキラしすぎてて
これはもう戦うことでしか止められないのでは?
楽しそうなのでボク参戦!
天使たちを見つけたら
れっど・ふぁいあで威嚇射撃するよー
「どーん!」
当たっても当たらなくても何発か撃ち込んで
注意をボクに引きつけたら少し広い場所へ誘い込もう
天使がボクの周りに集まるまで我慢我慢
十分集まったらエレメンタル・ファンタジア発動だよ!
「いくぞー、氷ノ噴火!」
足元から噴出させた氷の岩や氷の濁流で攻撃するよ
「全員飲み込まれちゃがうー?!」(制御しきれなくて自分も濁流に飲み込まれるやつ
が、がう…残った敵はぶらっく・せいばーで倒すね…(よろよろ
☆アドリブ歓迎
依世・凪波
アドリブ・絡み歓迎
美味しいお餅が食べれるよーに頑張るぞーっ!
羽根の生えたのがいっぱいいるなーって思ったら
なんか変な奴かも…これが送ってくれたのが言ってたキラキラ?
思っていたキラキラ(お宝)な意味と違った様子で
ナルシスト達を怪しい奴と認識
そういえば送ってくれたのもちょっと変だったかも…?と首傾げ
とにかくまずはこいつらをまず倒せっていってたよなっ
空を飛ぶ標的を見上げて悩み
鉤縄を天使に向けて『投擲』したり増える車輪を『野生の勘』と
『逃げ足』で避け『ロープワーク』で引っ掛け『武器落とし』
そんなとこに居ないで降りてこーい!
天使の乗る車輪の隙間めがけ予備ダガーを
【シーブズ・ギャンビット】で投擲
へへーんだっ
●猫と狐と流れゆく天使達
「……あれ? 思ってたのと違くないっ?」
首を傾げれば、揺れるは黒の狐耳。その狐耳に合わせて先端のみ白い色を持つ狐尻尾も左右に揺れている
そんな姿を見せているのは狐少年、依世・凪波(ギンギツネの妖狐少年・f14773)。そしてその彼の足元では
「楽しそうなのでボク参戦!」
和の佇まいを身に纏う、茶トラのケットシー、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)の姿。開かれた右目を爛々と輝かせいてる。
村へと攻め込んでくる天使達の軍勢は遠目からでもキラキラッ! と輝いており、それはまぁ目立つのだが。
「キラキラってお宝のことだと思ってたんだけどなー」
手に持つダガーを弄ぶ凪波は不服そうに唇を突き出した。あどけない表情とは裏腹に、お宝を愛してやまないハンター気質を備えている凪波。敵対する天使にお宝の気配がないのを悟ると、チラリと隣のアルファに視線を送る。
「が、がう! この鈴は渡さないがうっ」
アルファが動く度にチリリンと軽やかな音を鳴らす首元の鈴。その鈴に視線が送られているのに気づくと、肉球の愛らしい手で隠し。
「とにかく、あのキラキラを迎え撃んだよ!」
アルファがよいしょ、っと愛武器の一つ『れっど・ふぁいあ』を肩へと担いだ。
ケットシー用の大口径熱線銃に、凪波はワクワクとした気持ちを抑えきれない様子で「なんかすげー」と呟く。
アルファはキリリとした視線で天使の集団に狙いを定め
「3・2・1、どーーーーん!!」
アルファの肩口から勢い良く放たれる熱線。ルンタッタと進軍を続けていた天使達の中央に真っ直ぐ飛んでいき、バァァン!! 衝撃を与えると共にモクモクと煙を上げ始めた。
「よっしゃ!」
「まだまだ行くがうっ!」
更に勢い良く熱線を打ち込むアルファ。
「あっ、あいつら分散し始めたなっ」
ここからは俺の出番、とばりに凪波はスピードを上げ天使達へと走り込んだ。
残されたのは
「お、起きられないんだよっ」
熱線を発射した反動で後ろへと転がったアルファが、愛らしい足をジタバタと動かす姿だった。
(とにかくこいつらを倒さないとっ)
凪波は巻き起こる砂煙に紛れ天使達に近づきダガーを振るう。
天使達は熱線の攻撃で既に瀕死状態であったり、己の服の汚れに気を取られていたり、それはそれは隙だらけ。
瞬発力、そしてその速さに込めた力と共に鋭い輝きを放つダガーを振るい、凪波は次々と天使達を仕留めていく。
「な、なんだっ! 皆、すばしっこいのがいるぞ!」
一人の天使が凪波の姿を認め声をかければ、残った天使達は一斉に空へと舞い上がった。
「おい、逃げる気かよっ」
凪波が大きな琥珀色の瞳を歪ませ、睨み付ける。
「そっちがその気なら……!」
凪波が取り出したのは鉤縄だった。先端に折りたたみ式の鉄の鉤爪が付いたその縄を、凪波がひゅんひゅんと振り回し……勢いよく天使の乗る車輪へと投げつけた。
「くっ、小癪な!」
空を飛ぶ車輪がグイッと引っ張られ、天使の一人がバランスを崩す。
「このまま落とされてたまるものかっ!」
天使は車輪を複製し、念力で凪波へと向かわせる、が。
「俺のスピードを舐めんなって!」
素早い動きで車輪たちを避けていく。そして未だ手に持つ長縄を手繰り寄せ、天使を地へと落とせば。
「へへっ、終わりだなっ」
ダガーの一撃で天使を葬るのだった。
「さぁっ、まだまだ行くぞっ」
更なる標的を求め凪波が長縄を頭上でぐるんぐるんと回せば
「弟達よ、構わずこのまま村まで突撃だっ」
「はいっ兄者!」
ある天使は車輪に乗り、ある天使は地をかけ。天使達は逃げるように村へと進んで行く。
そう、彼らは凪波に気を取られ忘れていたのだ。
進む先にいる、もう一人の猟兵のことを。
よいしょ、っと起き上がり。その鋭く愛らしい眼差しで戦況を確認していたアルファ。
向かってくる天使の残党にうずうずとした気持ちが沸き起こる。
(まだ……。あとちょっと……!)
ソワソワした胸を落ち着かせつつ、アルファは瞳を閉じ。
「あ、あそこに傘をかぶった猫がいるぞ!」
天使の一人がアルファの姿に気が付いた。
斧を手に、アルファに狙いを定め迫りくる天使達。
未だに瞳を閉じたアルファに斧が振り下ろされた瞬間。アルファの右目がパッチリと開いた。そして
「いくぞー! 氷ノ噴火!」
アルファのユーベルコード『エレメンタル・ファンタジア』が発動すると、足元から突如、つららのような氷の岩石が天に向かって勢い良く飛び出した。その鋭い氷の岩はアルファを狙っていた天使達に容赦なく突き刺さる。
「なんだあの猫は……!」
「か・ら・のー!」
アルファがにゃんこのおててをえいえいっ! と動かせば、氷岩の間に氷の濁流が生まれ、残る天使を飲みこもうとする。
「うっわ、あれすっごいな」
天使を追ってきた凪波。その氷の岩山や濁流に圧倒される。が、が。
「……あれ? なんか様子が……」
凪波が小首を傾げれば、またも狐耳が揺れる。そして
「あぁ~れぇぇぇえええ~~! 全員飲み込まれちゃがうー?!」
「ええええっっ!? にゃんこまで流されてるっっ!!??」
暴走した濁流は天使は勿論、アルファまで巻き込んでいた模様。
それどころか
「あぁぁっ、こっちまで向かってきてるっっ!!」
凪波にも氷の濁流が迫ってくるのが見える。露出度の高い格好をしている凪波にとって痛いだけでなく寒そうな気配がビンビンに感じられ。
凪波が慌てて周りを見回せば、空に浮かぶ天使。
呆然とした表情を見せる彼の車輪に、凪波は素早く長縄を投げつけ絡ませた。
「お、おいそこの狐っ! 僕に捕まるなっ!」
更に上空に逃げようとした天使の浮力により、凪波の身体は宙へ浮き。すんでの所で凪波の足元を濁流が通り抜けていくのだった。
「ふぅ……危なかった……。って、にゃんこ!」
濁流に流されていたアルファを見つけ、濁流の波からキャッチング。
「た、助かったがうっ!」
へくちっ、とくしゃみするアルファだった。
「お前達、よくも僕の弟達を……!」
残る天使が怒りの形相を見せ、地上へ降り立つ。ふらふら&お目目グルグルなアルファとまだまだ元気有り余る凪波が対峙する。
「纏めて始末してくれるわっ!」
力のままに振るわれる斧の一撃を、ふらふらっとした足取りのままアルファが愛剣ぶらっく・せいばーで受け薙ぎ。あ、この天使、実力が口ほどでもない。アルファと凪波が一瞬で悟った。
呆気なく体勢が崩れた天使に向かって
「ったく、初めから地上に降りてこい、そして流されろっての!」
凪波が投げたダガーにユーベルコード『シーブズ・ギャンビット』の力が合わさり。援軍を呼ぶ間もなく、天使は崩れ落ちるのだった。
後に残った天使の車輪。
凪波はじぃっと見つめ……
「うん、いらないな」
足でえいやっ、と蹴り飛ばすのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎・うさみっち
なんでサムライエンパイアに天使?
来る世界間違えてない?
と心の中でツッコミ入れつつ突撃ー!
いでよ【きょうふときょうきのせみっちファイナル】!
きもちわるさに定評のあるせみっち×140匹!
美しいもの大好きな天使くん達の
体力とSAN値をこれでガリガリ削ってやるのだ
さぁせみっちよ、あいつらの服や羽根に
わらわらとまとわりついてやれー!
服の隙間から中に入り込んでやったり
耳元でジジジジ鳴きまくってやったり
死んだと思わせて足元でジジ!と脅かしたり
なんかひどいことの限りを尽くす!!
それにしても河童かぁ
俺、絶対前にそいつに会ったことある気がするんだよな
何度出てきてもケチョンケチョンにしてやるぜフフフ!
アドリブ大歓迎
五百雀・斗真
WIZ
河童と天使がキャッキャウフフか
何だか楽しそうと思ってしまったけれど
オブリビオンの軍勢なんだよね
何かあったら大変だし撃退しないと
ほんとだ…。
明智さんが言ってた通り、キラキラしてる
でも手に持ってる斧も車輪も当たったら痛そう
何とかUDCの大田さんに攻撃を防いでもらいつつ
【グラフィティスプラッシュ】で頑張って戦おう
あ…。もしかして、スプレーの塗料を嫌がったりするかな?
綺麗好きな気がするし、う、うーん…どうしよ
せめて綺麗な仕上がりになるように
かりそめスプレーをかけてみよう
かける色はプラチナでキラキラにして…
うわわ…ごめんなさい、元の色がよかったですか
とはいえ一応戦ってるので塗料は消さずに撃退します
●彩られし羽とアーティストたち
迫りくる天使達に向かい立つ、一つの影。
(河童と天使がキャッキャウフフか……)
首元のスカーフを指で撫でつつ、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)が想像を巡らせる。
アハハウフフと駆けまわる河童や天使を想像すると、なんだか絵本的なほのぼのさを感じられなくもない、と斗真は思う。
「のどかな光景に見えるけど、オブリビオンの軍勢なんだよね。何かあったら大変だし撃退しないと」
おっとりした口調だが、斗真の黒い瞳はキリリと引き締まる。
そんな斗真の肩口から、もう一つの影がぶーんぶーんと飛び出した。
バッテン口の愛らしいフェアリーは眉間に皺を寄せて
(いやややや、なんでサムライエンパイアに天使? 来る世界間違えてない!?)
心の中で呟くフェアリー、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)。
百歩譲って河童はまだわかる、和の風味がある。
しかしこう、和の家屋や松の木などをバックに天使がるんたった、と進み来る姿は違和感が半端ない。
が、うさみっちは直ぐにフルフルと頭を振り
「まーいーや! とにかく突撃ー!」
うさみっちが天使達に向かって飛び立つのを見、斗真も後に続き駆け出すのだった。
「兄さん、青年とちっこいのが向かってくるよ!」
「弟よ、案ずるな。我らの力でけちょんけちょんに倒してやろう!」
数人の天使達が向かってくるうさみっちと斗真に斧を向ける。
「そいやぁっ!!」
振り下ろされる斧に、うさみっちはぶーんと素早く飛び交わし、斗真は服の裾から己のUDC『大田さん』を呼び出す。
当たったら痛そうだな、と斗真は思いつつも。薄墨色の触手である大田さんはしっかりと斗真の身体を斧の斬撃から守っていた。
ガシガシと繰り出される天使の攻撃に
「はっはっは、防戦一方だな!」
天使達の勝ち誇った笑み。うさみっちは「あぁん!?」と不機嫌を露わにした。斗真は表情を変えずに懐からスプレー缶を取り出し。
天使に向かってユーベルコード『グラフィティスプラッシュ』を発動させ、かりそめスプレーでインクを噴出する。
「なっ、なんだこれはっ!」
大田さん同じく薄墨色のスプレーが天使の身体を染めた。
「美しい僕の顔に墨がっっ! しかも痛いっっ!」
肉体的にも精神的にもダメージを受ける天使に
(……あ。効いてるみたい。でも……)
斗真は手応えを感じると共に、アーティストの血が胸を騒がせる。
「はっはーん! いい気味だー」
ぶーんと飛びながらうさみっちが墨色に染まった天使にニヤニヤと笑みを浮かべれば
「うううう五月蠅いっ!」
ブォン! と力任せに振られる天使の斧。
(こいつら絶対チョロいな)
うさみっちが確信を得た。
ならば! と、ユーべルコード『きょうふときょうきのせみっちファイナル』を発動させるうさみっち。それは愛らしいセミ形態のうさみっち……ではなく
(想像以上にリアル……!)
斗真が目を見張った。
アーティスト魂が刺激される程に、愛らしいというよりはホント、リアル蝉寄り。しかも多い。140匹ものせみっちが召喚され。
「さぁせみっちよ、あいつらの服や羽根にわらわらとまとわりついてやれー!」
ズビシッ! とうさみっちが指を天使達に向ければ「任せとけ!」ばりにジジジジと羽音を立てまくりながら突撃する140匹せみっちちゃん。
「うわぁあああ! 僕の羽に触れるなああっっ!」
「ちょ、くすぐった、触角がぁっ!」
ガンガンガリガリと天使達の気力体力美力SAN値が削られていく。
「……カオスだね」
スプレー缶からインクを噴出させながら斗真は思わず呟いた。
蝉に襲われ、スプレーを塗られ、心なしか天使達の当初のキラキラが減っている気もする。
薄墨色のスプレーを噴出していた斗真のスプレー缶だったが
(せめて綺麗な仕上がりになるように)
斗真のかりそめスプレーは斗真の思い描いたインクを噴出できるわけで。
瞳を閉じ、色を頭の中に思い描く斗真。
そして目を開き、天使に向かって噴出されるのは
「いや、ちょっと確かにキラキラだけどっ!!!」
プラチナに輝くスプレーインクが思いっきり天使の顔面へオン。
「うわわ、ごめんなさい。元の色が良かったですか」
首を傾げる斗真、しかし相手は倒すべき敵。スプレー缶の噴射ボタンを押す手は止めない。
「色の問題じゃなくてっっ! この美しい僕の顔によくもぉぉお!!」
天使は車輪を斗真へと飛ばす。大田さんが斗真を護るようにウネウネ動くが
「あひょおあっ!!」
天使の声、そして狂った手元により車輪は明後日の方向へスポーンと飛んでいき。
「セミがっ! 僕の背中にっ!」
クネクネと天使が動くのをうさみっちはくふふ、と笑い見る。
セミを追い払う天使に向かって、斗真はグラフィティスプラッシュのスプレー攻撃で冷静に、じっくりとスプレーを塗り倒す。
「プラチナでキラキラのままやられたなら本望なんじゃねぇの」
そう言いながらうさみっちは斗真の肩で一休み。もはや全てせみっちとスプレーに任せる勢いである。
耳元でジジジジ鳴きだすせみっち。ポトリ、と地に落ちて息絶えたかと思いきや、思い出したかのようにジジジジ!!っと鳴き出したり、その変則的な動きと妙なリアルさに天使は大混乱だ。
「そろそろ、お終いにするよ」
肩にうさみっちを乗せたまま、斗真がスプレー缶を構えれば、残ったセミ達が斗真の前に集まりだす。そして
「春だけど! 夏のふーぶつし、せみっちファイナル☆プラチナバージョン! くらえー!」
うさみっちの掛け声と共に、斗真がプラチナのスプレーを発射。集まったせみっち達がプラチナ色に染まりながら天使達へと突撃し……
「「「ひーーでぶーーーーーー!!!!」」」
天使達の身体にプラチナ色の蝉痕が残りながら消滅していくのだった。
「壮絶な戦いだったね」
天使達がいなくなった戦場。せみっちもあらかたインク&突撃によって消滅してるのはここだけの話だ。
斗真が指をパチン、とならせば。かりそめスプレーによるインクは全て消え失せた。
「さー、次は河童か」
何度出てきてもケチョンケチョンにしてやるぜ! とフフフと笑みを零すうさみっちだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セリオス・アリス
アドリブ歓迎
後に出てくるのがカッパだと…?
絶対に、念入りに殺さねえと
そんじゃまずは準備運動だな
【望みを叶える呪い歌】を歌ってスピードをあげる
靴に風の魔力を送り『ダッシュ』
攻撃を『見切り』距離を詰める
打ち合いながら天使の顔をまじまじと見つめ
…キラキラっつってるけど
案外そうでもねえな?
言いながら炎の『属性攻撃』を『2回』叩き込み
あ?なんで突然キレだしたんだよわかんねえな
弟とやらがいなくなって寂しいとか…?
代わりに「おにーさま♡」とでも呼んでやろうか
反応があるなら何度か呼んでみつつ
まあつっても殺すんだけどよ!
『全力』の『属性攻撃』を込めた斬撃による衝撃波を『2回』連続で放つ
早くカッパを始末してぇんだ
●キラキラたちVSもっとキラキラ
サムライエンパイアの地に、輝きを放つ漆黒が降り立った。
風に吹かれたなびく外套、そして艶のある長髪。
「後に出てくるのがカッパだと……?」
絶対に、念入りに殺さねえと。そう呟くのはセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)。
白く輝く刃を手に、セリオスは地を蹴った。
風の魔力が魔導蒸気機械を靴底に仕込んだブーツ、エールスーリエに与えられれば、セリオスの動きを補助し力を増し、天使達の姿をその瞳に捉える。
「そんじゃ、まずは準備運動だな」
セリオスが美しい声で歌を紡ぎ、囀れば。ユーベルコード『望みを叶える呪い歌』が発動し、黒鳥は更にそのスピードを増す
「なんだあの黒い影はっ」
一人の天使が迫りくるセリオスに気付き、指を向けた頃には
「遅えんだよ」
セリオスが愛剣を振るい生まれた衝撃波は易々と一人の天使の胴を断った。
「くっ、なんだこいつはっ!」
一瞬の出来事に、理解が追いつかなかった一人の天使が力任せに斧を振り回す。その力任せな攻撃にセリオスは溜息すら出てこない、といった表情を見せ、最低限の動きで攻撃を軽やかに躱した。更に反動をつけ天使の懐に入り込み
「……キラキラっつってるけど案外そうでもねえな?」
剣に炎の魔力を乗せ、一度目の斬撃で天使の身体を、返す刃で天使の率いる車輪をぶった斬り。その力の差を見せつけた。
「弟達よーーっっ!! よくもぉおおお!!」
一瞬にして弟達を倒された怒りか、もしくは同じ顔をした弟を『そうでもない』と言われた怒りか。それとも天使以上にキラキラを纏っていると思われるセリオスの姿への嫉妬にか。
複製されたいくつもの車輪が天使の念力でセリオスに向かってくれば、セリオスはひょいひょいとその車輪を避け
「あ? なんで突然キレだしたんだよ、わかんねえな」
セリオスが愛らしく首を傾げた。
そして頭上に『!』マークが出現したかの表情で
「あー、弟ロスってやつか」
一人納得するセリオス。そして
「仕方ねえな、おにーさま♡」
無邪気な笑みを向け、愛らしくお兄様♡呼びするセリオスは間違いなく天使達以上にキラキラを纏っていた。
「ぐぐぐ、ちょっとイイかも、と思ってしまう僕が此処にっ!」
ちょっとどころかかなりイイ、といった表情をしている天使兄。車輪の動きが鈍くなっているのが見てとれる。
「あーあ、ダメなおにーさま♡」
飛んでくる車輪を足場にひょいひょいっとジャンプしながら、セリオスは天使へと近づいていく。
「くっ、くるなあぁっ!」
そう言うものの、どこか頬が赤く染まる天使。
そして眼前にセリオスの美しい顔が近づけば……ゴクリと唾を飲みこむ天使兄。セリオスが笑みを浮かべたた。そして
「お前、何期待してんだよ」
愛らしく『おにーさま♡』呼びしていた声が怒気の籠ったものへと変わり。
全力を込めたセリオスの腕が振り下ろされれば、零距離で放たれた衝撃波と白い斬撃に天使は身を引き裂かれるのだった。
「準備運動にもなりゃしねえ」
セリオスは刃を鞘へと戻し
「早くカッパを始末してぇんだ」
遠くから発せられる輝きに、蒼く美しい瞳で視線を送るのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『サムライエンパイア絵巻『河童の怪』』
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POW : 『私の華麗なる一撃を受けよ!』
【 スタイリッシュな蹴り】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 『水も地も、空さえも克服した私に不可能は無い!』
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ : 『誰がNo.1か決めようじゃないか!』
【『河童には負けられない』】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【特設ステージ】から、高命中力の【No.1決定戦への招待状】を飛ばす。
イラスト:鳥季
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「雛月・朔」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●赤薔薇と河童と
かくして、天使達は一人残らず猟兵達の手によって葬られた。
「……あぁ、僕の天使軍団を倒したのは君達だね……!」
猟兵達の前に立ちはだかるは、一人の河童男。
憂いを帯びた河童の緑色の肌に雫が零れた。
「よくやったよ、天使達。僕は君達の美しく戦う様を目と心に焼き付けたよ……!」
大部分の猟兵的には『あいつらの戦いのどこに美しさが……?』と思わざるを得ないのだが。
「さぁ、僕と更に美しく戦おうじゃないか、誰が美しさNo.1か決めようじゃないか! はーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!」
サムライエンパイアの大地を揺らす高笑い、そして薔薇の赤い花弁を散らしながら、一人の河童が猟兵達に戦いを挑むのだった。
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
「全てが美しさで決まるなら…そうだね。どれだけ美しいかではなく、何処で磨いてきたかかな」
【携帯食料】を食みつつ瞳を真紅に換える。
台詞にむかついてうっかりスイッチが入っちゃった。
「お前の美しさが本物なら私のUCもそれだけ反応する。
手下がアレだからお前も自分が一番だと思っているのだろ?
さぁ、楽しみだね」
マフラーを巻き直しクラウチングスタートの構え。
使うのは【ダッシュ】からの一撃。
狙いは【失せ物探し】で見つけた河童の弱点。
避けられても【追跡】する
「私の筋肉とお前が誇るもの。どちらが美しいか…!」
(回想)「目と目が逢った瞬間自然と体が動いていました。まさか、あんな結果になるとは…」
遊馬・美湖
あっれ……河童ってこんなんだったっけ? ミコが知ってる河童はもっと、小さくて、可愛い感じだったような……?
とりあえず目の前にいる河童は殴り飛ばしてクチバシをへし折りたくなる感じ。むっちゃいけ好かないんだけどー。
とにかく近づいて顔面めがけてパンチだね!向こうが蹴りで応戦してくるようならその足を[グラップル]で掴んで逆に引き寄せ、あるいは体を掴んで宙に放り投げちゃお☆そっからパンチしたらより確実に吹っ飛ばせるっしょ♪
あ、戦って勝者がNo1っていうのは、そこだけは同意したげる。
でもその高笑いはうっさいからぶっとばす!
榎・うさみっち
さっきの天使達みたいにせみっちで虐めまくっても良いんだけど
せっかくだから美しさNo.1対決とやらに乗ってやろうじゃねーか!
✨みわくのうさみっちジェントルメン発動✨
✨ここからはイケメンモードでお送りします✨
俺の方が美しくそして強いってことを証明してやるよ(イケボ)
とキメながらひらひら舞う桜の花弁をバックに登場
桜は同じ桜色の俺の方が似合うだろ?
増強した戦闘力を活かし立ち振る舞いにもこだわって戦う
慌てちゃってダサいね〜などと【挑発】し敵の攻撃を誘発
【残像】でキラキラとスローモーションなイケメン風にかわし
その隙にかっこいいワイヤーで縛り上げ攻撃
※アドリブやその他色々大歓迎
●控えめに言っても河童が勝てる要素が見当たらない
流し目ビームでも発してそうな雰囲気で真っ赤な薔薇を片手に佇むナルシス河童の姿。
遊馬・美湖(パワフルギャル・f12819)はそれはもう不快な虫でも見たかの如く、眉間に皺を寄せている。どう考えても思ってたんと違う。
(ミコが知ってる河童はもっと、小さくて、可愛い感じだったような……?)
等身低くつぶらな瞳。愛らしいぬいぐるみのような……。
「……? 何見てんだ?」
ぶーんぶーんと羽根を動かし飛んでいるのは榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)が美湖の視線を感じ取り首を傾げる。
「カワイーけど、ここまで小さくはないかなっ☆」
「いきなりなんだよっ! しかも小さいって!」
「ダイジョーブ、アンタはカワイーからっ」
うふふー、と笑みを見せる美湖に、尚も納得のいかない表情のうさみっち。
「君達っ! 僕を無視して何を楽しそうに喋っているんだ! 僕の美しさを称えるならもっと大きな声で伝えてごらん!!」
河童がくるくる回転しながらポーズを決める。
「うっわ、ウッザ。むっちゃいけ好かないんだけどー」
美湖は今すぐにでも高速パンチを叩き込みクチバシをへし折って、その金の皿にオレンジジュースでも注いでやりたくなる気持ちにかられる。
「称える気はこれっぽっちもないが」
これまで目の前のキラキラ河童をじっと観察していた仁科・恭介(観察する人・f14065)は食べていた携帯食料である干し肉を飲みこみ、口を開いた。
恭介の身体はユーベルコード『共鳴(ハウリング・レスポンス)』により更なる活性化を見せている。相変わらず敵である河童のテンションというかキラキラ効果なのか、恭介の身体も輝きを見せている気がしてならない。
「全てが美しさで決まるなら……そうだね。どれだけ美しいかではなく、何処で磨いてきたかかな」
恭介は回想する。美しさというわけではないが、これまで親方に磨いてもらった日々を。出会いを。美味しい干し肉の調理法を。
「どこで……あいつは川じゃね」
恭介の呟きにうさみっちが応えれば
「お喋りはお終いだ! 華麗に倒されるが良い! はーっはっはっはっはは!」
河童の高笑いと共に、戦いの幕が開いた。
首を覆うマフラーを華麗な所作で整え、恭介はやや腰を屈めた。
「お前の美しさが本物なら私のUCもそれだけ反応する。さぁ、楽しみだね」
恭介の柔和な表情は不敵な笑みへと変わり。一気にダッシュで河童へと詰め寄った。
それに続けと美湖も河童へと飛びかかる。
「私の華麗なる一撃を受けよ!」
河童が叫び、クルリと回転したかと思えば。その白いスーツに包まれた足で恭介のサムライブレイドを迎え打つ。
恭介の力と技の乗ったサムライブレイドの斬撃は河童のつま先ときっ抗する。
流石に天使程あっさりとはやられないか、と恭介は思いつつ更に腕へと力を込めれば
「顔はガラ空きだよねー」
美湖のパンチが河童の顔目掛けて打ち込まれる。
「はーっはっはっはっは!」
河童はきっ抗していた足をスピンさせ、そのまま体制を低くしすんでの所で美湖の拳を避ける。
「はっはっは、僕の顔に触れたい気持ちはっまぁわかるよね、はーっはっはっはっは!」
「あーもー、その高笑いうっさい!!」
美湖が続けざまにパンチを繰り出し、恭介もサムライブレイドでの追撃を試みる。
河童はシャドーボクシングの要領でひょいひょいと躱していく。
(意外と身軽だな)
刃を振るいつつも。恭介は冷静に河童の動きを見つめ、観察をしていた。
そして、河童の無駄にスタイリッシュな蹴りが打たれた瞬間に、恭介は言葉を投げかけた。
「お前も天使達同じく自分が一番だと思っているのだろ?」
「そりゃあ思っているに違いないよね、はーっはっはっはっはっは!」
高笑いの際に、一瞬だけ河童の足が止まった。
恭介の作り出した隙を狙って
「もらったぁっ☆」
美湖の手が河童の足をガッチリとホールド。
「ぐぐっ!!」
バランスを崩した河童の足を持ったまま、美湖は思いっきり腰を捻り。そして
「飛んでっちゃえーーー!!」
ぐるんぐるんと数回転した後、美湖は思いっきり河童を宙へと投げ飛ばした。
うあぁあああああぁあ、と情けない声と共に飛ばされる河童。
ベシャッ、という音と共に顔面から地面へと打ち付けられるのだった。
「……ぐっ! 僕の美しい顔に土を付けるなんてよくも……よくもぉぉおおおお!!」
河童の顔は緑色から怒りによって赤色に染まり。
金色の皿から湯気でも立たんばかりの形相でゆらぁりと立ちあがる河童。追撃を仕掛けようとする美湖と恭介の姿を視界に捉える。
が。
頭上が明るい。キラキラが降り注いでくる、という違和感に河童は上空に視線を送った。
……空から、キラキラとしたイケメンが美しいポージングを誇示したままにゆっくりと降下してきた……。
艶やかに輝くピンク色のサラサラの髪。その頭には愛らしいうさみみ。
鮮やかな蒼い瞳には星が瞬き、自信たっぷりな笑みと共に河童を見据えた。
「俺の方が美しく、そして強いってことを証明してやるよ」
艶のある声で囁かれるその魅惑のヴォイスと共に、髪をファサッと撫で上げる仕草。
身長180cmの長身の背から生える羽に、河童は天使が生き残っていたのかと錯覚する程だったとか。
「桜は同じ桜色の俺の方が似合うだろ?」
そう言って愛らしくウインクする美青年。そう、ユーベルコード『みわくのうさみっちジェントルメン』によりイケボ美青年うさみみフェアリーと化したうさみっちである。イケメンうさみみ尊い。
うさみっちの背にはこの瞬間に合わせました! と景色が気遣ったと言っても過言では無い程、いーー感じに風が吹き、桜の花弁が美しく舞い散る。あぁ、サムライエンパイア雅。
その光景とうさみっちの変わりっぷりに、恭介と美湖が呆気にとられ。心の口がうさみっち風バッテン口となった、気がする。
「ぐっぐぐ、僕よりキラキラしやがってッッ……!」
口調が荒々しくなり、地団太を踏む河童に
「慌てちゃってダサいね〜」
優雅な笑みと共に、イケメンバージョンうさみっちが、それはそれはかっこいいワイヤーを新体操のリボン競技の如くクルクルと舞い踊らせ、河童の身をグルリと一周させる。
「動作がむしろスロー再生のように見えるな、そして美しい」
恭介がうさみっちの動きを観察し、実況する。
「だが、私の筋肉も負けていない……!」
ここぞとばかりに自分の筋肉美をアッピール(但し服の下である)する恭介。
力強い腕から振るわれるサムライブレイドの太刀筋はしっかりと河童を捉える。
身を絡め取るうさみっちのワイヤーに、上手く動けない河童。
「戦って勝者がNo1っていうのは、そこだけは同意したげるけどっ!」
美湖も負けじとパンチを叩き込む。主に河童のクチバシを中心にリズム良く叩き込まれる拳。ワントゥーワントゥー。
「ぐっ、ごふっ。いいパンチだっ、しかし殴られても僕は美し……」
「だからうざいって言ってんでしょっ!!」
喋る隙も与えず。美湖は両手を組んだままで思いっきり上から下へと振り下ろす。ユーベルコード『灰燼拳』の力も得たその一撃により、河童の頭の黄金の皿に大きなヒビが生まれるのだった。
「ごああぁぁああああああっっ!!!」
と大絶叫する河童をよそに
「美しさ勝負は……言うまでもないな」
180cmのイケメンうさみみ男子は、地に落ちた赤い薔薇をしなやかな指で拾い上げ、そのまま空へと投げれば。
風に吹かれる桜の花弁と共に舞い流れていくのを、イケメンモードうさみっちは切なげな表情で見送った。
……河童の討伐まであと一息、である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルファ・オメガ
「がう…なんかボクが思ってた河童と違う…」
もっとこう、河童らしさが残ってると思ってた…まぁいいや
「毛並みのもふもふ度なら負けないっ」
えっ、美しさと違う?
「もふもふも手入れしないと手触り悪いんだぞー」(腕をぶんぶん振り回して抗議する猫)
よし、いくぞー!
本当はNo1決定戦に乗っかってやりたいところだけど、
ここは千里眼射ちを使ってロングボウで狙い打ちするよ
できれば頭の皿を狙ってやろう
「河童の弱点は頭の皿!」(風評被害です)
河童ジャンプされたら地対空れっど・ふぁいあでどーん!
接近されたり攻撃されても慌てず騒がず
耐えて凌ぎつつ、ゼロ距離れっど・ふぁいあで対抗するよー
☆アドリブ歓迎
有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
遅ればせながら助力を。
あちらが今回の討伐対象「河童」ですか。
(数秒間観察)
……え、えぇと、いろいろな敵がいるものなのですね。
勉強になります。
とりあえず、遠慮はいらないようなので攻めの姿勢でいきたいと思います。
「神を殺す小刀」を使って【先制攻撃】で河童を攻撃。
さらに【2回攻撃】で追撃。まだまだいきます。
敵の攻撃は【絶望の福音】にて回避。
「あなたの動きはみえています」
他人の美醜についてはあまりよくわからないのですが、貴方(河童)の行いは美しいものではありませんよね。
イケメンを名乗るのであれば、身も心もそうあるべきかと。
五百雀・斗真
WIZ
一緒に戦ってくれたひt…いやフェアリーさんに感謝しつつ
ボスの河童さんとの戦いに…と思ったら
河童さんが誰が美しさNo.1か決めようじゃないか!と言い出して困惑
えっと…美しく戦おうってどうすればいいのかな?
少し悩んじゃうけれど
僕は今のところスプレーで戦う方法が精一杯だし
ここはやっぱり【グラフィティスプラッシュ】で戦おう
天使にスプレーかけたら怒られたし河童さんも多分怒るよね
だけど遠慮してられないか…
かりそめスプレーからラメ入り塗料(ゴールド)を噴射して
全身金色のラメだらけにできないかやってみる
反撃がきたら大田さんにガードを頑張って貰おう
ガードして貰った時ラメがついたらごめんね…っ
※アドリブ歓迎
●美しさ とは
光と闇を感じさせる赤い瞳が、戦場を見回した。
有栖川・夏介(寡黙な青年アリス・f06470)はその中性的な容姿に表情を乗せぬまま、目の前に広がる光景を整理する。
キャッキャウフフを討伐、という話ではあったが既にキャッキャもウフフも取り除かれているようだ。
目の前に見えるのは
(あちらが今回の討伐対象『河童』ですか)
既に頭の黄金の皿はヒビが入り、それでもムギャオー!と暴れかけている河童のみ。
内心では『色んな敵がいるものですね。勉強になります』と苦笑にも似た思いでいっぱいになっている夏介だが、表面上は美しい人形かの如く、感情に動きはなさそうに見える。
「がう……なんかボクが思ってた河童と違う……」
そんな夏介の隣で、和風独眼竜ケットシー、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)が己の手で頬を掻く。
だって見るからに河童らしくない。多分、人間が全身緑色に塗ってクチバシつけてもあんな容姿になれる。普通の河童は服装に白スーツは選ばない。ホストクラブのマジカルハロウィンか、というツッコミまでは思わなかったかもしれないが、とにかくアルファと同じような獣みは皆無である。
そんな2人が河童にドン引きな中、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は熱い眼差しを送っていた。
無論、河童に……ではない。
斗真の黒曜石の如き瞳は、先だって共に闘いしフェアリーの姿を捉え。
(一緒に戦ったひと……じゃなくてフェアリー……じゃなくて、やっぱり人?)
斗真がこてん、と首を傾げた。
(もしかしたら、このケットシー君も人の姿になったりするのかな?)
そんなことを考えながら、斗真がアルファの姿を見やれば、アルファも斗真の視線に気づき『がう?』と首を傾げた。
そんな観戦状態の三人の耳に、つんざくような河童の叫びが届く。
「っがああああああああ!! 僕の美しき黄金の頭皿にヒビを! よくも!よくもおおお!!!」
(さっきまで瀕死状態でしたが……まだ戦う力が残っているのですね)
夏介が目を細め、愛刀『神を殺す小刀』を握る。
「僕は負けない! 美しく戦ってみせる!!! 僕こそがNo1の美しさだと証明してみせるっ!! はーーっはっはっゲフゲフっ」
河童が力を振り絞り立ち上がり、戦意と高笑いを見せた。もうもはやどこに美しさの欠片があるのかわかりかねるが、河童は三人をターゲットに定めるとくるくるっと回転を見せながら向かってくるのだった。
「遠慮はいらないようですね」
敵の戦意を受け、夏介は小さく呟いた。迫りくる河童対し、地を蹴りスピードを高め、正面から対峙する。
夏介がナイフを振るえば、河童は蹴り技で応戦する。そして、ぐぐっとくぐもった声と共に河童の足から血が流れ散る。敵に傷がつくということは、夏介の神を殺す小刀に殺意が籠っている証拠とも言えよう。
連続して繰り広げられる夏介の斬撃に、河童も必死で応戦するが。
(……避けるのは容易いですね)
夏介のユーベルコード『絶望の福音』の効果もあり、河童の攻撃は夏介をかすることすらない。
「すばしっこいヤツめっっ!」
河童は苛立ちと共に地を蹴り、宙を蹴り、連続のジャンプを繰り出す。
遥か頭上に飛び上った河童は勝ち誇った表情のまま大きく蹴りを夏介に繰り出そうとする、が
「れっど・ふぁいあ、でどーーん!!」
待ってました! とばかりに、アルファの肩に担がれた大口径熱線銃の熱戦が河童を狙う。
「ごがあああっっ!! あつっ、熱いっっ!!」
身体をガッチリバシッと捉える熱線により、河童は軌道を変え撃墜する。
(花火みたい……これが美しく戦うってこと、かな?)
戦闘における美しさ、とは。
美しさNo1を決定しよう、という言葉に困惑を隠せなかった斗真はアルファの攻撃に花火的美しさを感じた。撃ち落とす美学、みたいな。
それに、夏介のナイフ捌き。目にも止まらぬ速さで繰り広げられる攻撃に美しさを感じざるを得ない。
そして思う。夏介もアルファもありのままに、敵を倒そうとしている、それだけである。
(僕は今の所、スプレーで戦う方法が精一杯……だけど)
斗真はその引き締まった腕でスプレー缶を握った。
(これが、僕の戦い方だから)
キッと前を見据え、斗真はスプレー缶を手に河童へと向かった。
「あああ、この美しい僕になんてことををををっ!」
地に落ち這いつくばり、それでも河童は叫ぶ。
「毛並みのもふもふ度なら負けないっ」
胸を張るアルファに
「愛くるしさなら僕だって負けないっ! 確かに僕はもふもふしてないがっ! でも僕はしっとりツヤツヤなんだぞ!」
「もふもふも手入れしないと手触り悪いんだぞー」
アルファはしっかりお手入れしてる証拠だい! と尻尾をふりふりとさせる。
「そんな事を言ったら僕の尻だって! ツヤツヤのプルプルだぞ!」
「見たくないがう」
そんな彼ら様子を夏介は無の表情で見つめる。が、内心は
(え、今倒しちゃっていいんですかね。河童の身体ガラ空きなのですけれども)
アルファと河童のやりとりを見ていると、手に持つ刃を振るうのを若干ためらってしまう。夏介の『実はお笑いが好き 』性質のためだろうかどうだろうか。
と、そこに斗真の姿。
(天使にスプレーかけたら怒られたし、河童さんも多分怒るよね……)
いいんですよ斗真さん、相手敵ですから!
(遠慮してられないか……!)
斗真はスプレー缶を河童へと向ける。
河童が「ん?」と気付いた時には、視界が斗真のスプレー缶から噴出されたインクの色――金色に染まり。
「うあああああ、目が! 目があぁあああ!!!」
スプレーから噴出された金色のスプレーインク(ラメ入り)が河童をゴールデンに装飾していく。これなら頭の金のお皿のひび割れも目立たないね!
「なんだ、なんなんだこれは!!!」
河童が暴れるように手を出し足を出すのを、夏介やアルファ、そして斗真もひょいひょい避ける。斗真のユーベルコード『グラフィティスプラッシュ』により放たれたスプレーインクは目だけでなく河童全身へダメージを与え、また染めた大地に立つことにより斗真の戦闘力を高めるわけで。
「どんどん行くね」
金色のスプレーは河童の全身を黄金色へと変えていく。
「見事に染まってくがう」
アルファがいそいそとロングボウを準備しながら言えば
「金色に染まる僕!? 観たい、観たいんだよ僕は!」
攻撃を受けながらも自身が金色に染まる姿に興味を持つ河童。そのまま銅像にでもなってしまえ。
ゾンビさながらに黄金河童が斗真に手を伸ばせば、斗真を護るUDCこと『大田さん』がにょきっと現れ、河童の手をぺしっと払いのける。
「あ、大田さんありがとう」
河童の手に触れたからか、大田さんの触手にラメが乗る。
「あ、大田さんごめんね、ラメついちゃったね」
尚もゴールドラメインクを噴出する斗真に、触手の大田さんは『気にすんな』ばりにうねうねっと動いた後、定位置へとまたにゅるっと戻り。
斗真がスプレーを吹き付け、夏介がそれを無表情に見守り、アルファがもはやロングボウの整備や調整に力を入れた後。
「……これでどうかな?」
黄金の河童像が出来上がっていた。斗真的にはとても満足できる仕上がりだ。
しかしその河童の顔は苦悶の表情であり。
「……美醜についてはあまりよくわからないのですが……」
夏介が気付かぬほどに眉間に皺を寄せ、呟く。
「イケメンを名乗るのであれば、身も心もそうあるべきかと」
夏介は、ナイフを振り上げた。そしてアルファはロングボウを構えユーベルコード『千里眼射ち』を発動させるため、瞳を閉じ意識を集中させた。
そして10秒後
「河童の弱点は頭の皿!」
恐らく92%位の人々が同意するであろう河童の弱点と思われる黄金の皿を目掛けて矢を撃てば
「ぐぎゃあああああああ!!」
と断末魔な叫びと共に、黄金河童の黄金の皿はパカッと割れ……緑の地肌がむき出しとなるのだった。
ピクピクと動かなくなった河童。
斗真はそっと近づくと、その頭頂部の緑の地肌に追いゴールデンラメスプレーをかけ、満足げに頷くのだった。
こうして、河童は黄金の河童へとクラスアップした(但し瀕死)
この先はオーバーキルタイムだ……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
何でも歓迎
負けられないっつーか
もう単純に河童を見ると色々思い出すから殺したい
『歌』で身体強化して『先制攻撃』とばかりに斬りつけよう
相手が瀕死とか知るか
問答無用で『2回攻撃』
執拗に頭の皿を狙う
いや…なんかいい的だなって思って
すっごい煽ってくるが
お前のどこに俺に勝てる要素があるんだよ
とナチュラルに『挑発』
つーか…、さっきカッパ野郎に心酔してる筈の天使が揺らいでた時点で、じゃねえか?
じゃあまあアレだ、そんなにイケメン主張してぇならなんかこう風を吹かせてやるから“耐えきって”見せろよ
低く構え『力を溜め』『全力』をのせた【蒼牙の刃】をカッパにブチ込む
尻子玉とか言わない分
前のカッパよか…多少マシだったぜ
依世・凪波
アドリブ・絡み歓迎
あ、変な奴の親玉出てきたけど、もうへロヘロだなー
美しさNo.1とかは全然興味ないけど高笑いが煩いからさっさと居なくなーれー!
『逃げ足』で攻撃を避けながら飛んできた招待状には
「い~らなーいっ」と狐火【フォックスファイア】で燃やす
ついでに河童の金色の皿にも火を投げてみよっか
キラキラ光るんなら何かいいものもってねぇのかなぁ?
鉤縄を『投擲』し『盗み攻撃』
『盗み』が出来たらそれを確認
なんだろこれ?日記?
盗んだものを河童の顔めがけて投擲し返却
仲間の行動には『援護射撃』で予備ダガーを投擲して河童の邪魔をしたり
うっとうしかったら鉤縄を使って河童を『ロープワーク』でぐるぐる巻きにしてやるぞっ!
●遺恨の相手と河童の秘密
セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は苛立ちを隠せなかった。
河童には良い思い出がない。
いやむしろ尻子玉の思い出しかない。
尻を狙ってこないあたり、前の河童よりかはマシな気もしない。だが、同じフォルムをした河童を見ると尻が疼く気がする。
(もう単純に河童を見ると色々思い出すから殺したい)
そう思っていたセリオスであったが。
「もうヘロヘロだなー」
依世・凪波(ギンギツネの妖狐少年・f14773)が思わず呟いた。
凪波の黒い狐耳が楽しそうにピコピコと動く。
目の前にはスプレーにより全身が金色に染められた河童がピクピク動いている。
鼻血を流しながらも(色は金)
「あぁ、僕が金色に美しく染まっている……!」
などと悦に浸る河童。その姿にセリオスは脳裏にあの尻子玉河童が浮かび上がった。
(相手が瀕死だとか知るか)
セリオスの蒼い眼差しは冷たく河童を射抜き。幾段か低い声で歌を紡ぐ。
「あぁ、僕も天に召されるんだね、天使の歌声が聞こえるよ、はーーはっはっはっは!」
瀕死ながらも高笑いを上げるその体力はまぁ凄いのだろう。
セリオスの歌にむしろ心地よくなっちゃってる系河童にセリオスはその整った表情を歪ませながらも歌を紡げば、隣でセリオスの歌声に耳を傾けていた凪波も河童の高笑いに眉間に皺を寄せ
「美しさNo.1とかは全然興味ないけど、高笑いが煩いからさっさと居なくなーれー!」
鉤縄の縄をくるくると回し始めた。
歌声を止めると同時にセリオスは河童に剣の切っ先を向け、刃を叩き込む。
どうしても尻子玉河童と影が重なるのだ。あの時の鬱憤を更に晴らすようにセリオスの刃はリズミカルに、また無機質に河童へと叩き込まれていく。
そんな様子を面白そうに見やりながら、凪波も
「キラキラ光るんなら、何かいいものもってねぇのかなぁ?」
と、黄金河童へと近づく。
「なぁ、ちょっとこの河童の持ち物見ていいか?」
あどけない表情と共に凪波がセリオスへ声をかければ、振るわれていた刃の雨は止み。
「別に構わねえ」
虫ケラを見るかの如く冷たい眼差しを向けていたセリオスはその場をそっと離れ。
念のために縄で河童をぐるぐる巻きにしつつ、凪波は河童の身体を改める。
白いスーツはスプレーにより金色に染まり、また斬撃により布地はボロボロだ。
貴金属もつけていたのかもしれないが。
「んーー……大したものじゃなさそうだなっ」
いくらかの指輪をじっくり眺めた後、凪波は草むらへとそれらを投げ捨てた。
「はーっはっはっは! 僕程の美しさがあればアクセサリーを付けていてもいなくても美しく……」
「うるせえ」
まだ喋る気力があるのか、と半ば呆れつつ。セリオスが河童を足蹴にする。
「……あれ? なんだか固いものが……」
尚も河童の身体をまさぐっていた凪波が、河童の身体に今までと違う感触を見つけた。
セリオスは一瞬、あの玉を見つけたのかと身構えたが。
「なんだろ、これ?」
河童の隠しポケットから一冊の手帳を見つけた。
「ああぁっ! それは! やめろ!」
それは、河童の日記だった。お世辞にも綺麗とは言えない字で書かれた日記帳を凪波は読み上げる。
「えぇと……●月●日、天使に僕の美しさを刷り込ませる方法を得た。この催眠術を使えば……?」
「あー、そりゃあさっきの敵も揺らぐよな。ってかおまえの手口に興味はねえ」
読み上げる凪波に、セリオスが相槌を打つ。
「■月▲日、シルバーの皿を持つ河童子ちゃんをデートに誘う。約束を取り付けるも、当日に腹痛が起こりキャンセル」
「みみみ見るなぁあ!!」
「本当に腹痛かよ、それ。嫌われてんじゃねぇの」
「つまらないから、いーーらないっっ」
凪波はその日記帳を河童へと投げつける。更に
「どうせここで倒されるんだし、もう日記を書くことはできないだろっ? 武士の情けだ、燃やしておいてやるなっ」
笑みさえ零れ、凪波がユーベルコード『フォックスファイア』を発動させる。
その炎は日記帳は勿論、河童ごと炎で包んでいく。
言葉にならない声を上げる河童に対し、セリオスは
「派手に燃えてるじゃねえか。……風を吹かせて見せるから耐えきってみせろよ」
低く構え、呼吸を整え力を溜める。
そのセリオスの動きに合わせ、凪波も予備のダガーを手に構えた。
「……その身に、刻め!」
セリオスの声と共に振り下ろされる刃。その斬撃は風の魔力を帯び、強大な風と共に青白い衝撃波となって河童へと注ぎ込まれた。
そして、その衝撃波と共に凪波のダガーも河童へと向かい。
凪波のフォックスファイアの狐火はセリオスの風により更に激しく燃焼し。
その炎と風、また多くの刃によって、河童の身は刻まれ燃え尽くされるのだった。
「こんな奴に俺の風が耐えきれるわけもねぇか」
セリオスが呟けば。
「何もお宝もないし、ガッカリだよなー」
と凪波はつまらなそうに唇を尖らせ、発動させた狐火を消去した。
後に残るは、河童の割れた頭の皿のみだった、とか。
かくして、猟兵達の活躍により河童と天使のキャッキャウフフ襲撃は幕を閉じるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 日常
『お餅の季節』
|
POW : 沢山食べよう
SPD : 味付けに工夫を
WIZ : お供えし飾ってみよう
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●お餅祭り
こうして、村は猟兵達の熱く激しい闘いによって守られた。
「皆様、本当にありがとうございます……!」
ハラハラドキドキと遠目に猟兵達を見守っていた村人達は、素晴らしい戦いっぷりに目を輝かせている。
「ぜひ、この村ご自慢の餅を食べていってくださいっ」
「この時期でしたら桜餅がオススメです!」
「あ、お団子を作る体験コーナーもありますよ!」
「甘い団子だけでなく、しょっぱいのもありますしっ」
「お供え用のお餅を作って飾るのも縁起が良いのですじゃ」
なぜそこまで餅推しなのだろうか、と疑問が浮かぶレベルで村人が餅を推してくる。
大食いを試してみたり、餅つきしてみたり、餅料理を作って楽しんだり、風流&雅に桜の下で餅を楽しんだり、思い思いにサムライエンパイアの時間を過ごしてほしい。ちゃんとお茶なども村人から提供されるし、村の医師もいるので餅を喉に詰まらせても無問題だ!多分。
ちなみに安全となった村にグリモア猟兵明智もやってきているが声をかけない限りは絡んでこないので安心していただきたい。
さぁ、お餅にまみれた春を過ごしてみないか。
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
餅を搗く手伝いをする。
「なるほど、テンションによって姿も風景も変わるか…まだまだ私も修行がたりない」
「あのテンションを借りれば…私もいやまさか」
河童との激闘を思い出しつつ頭の中をぐるぐる回っているあの姿を払拭するように杵を振るう。
餅を搗いているうちに落ち着いてきたのか瞳が真紅から茶へ。
考え事をしていたため、戻る途中カラータイマーのようになっているのを見られているのには気づいていない(いつもは完全に隠す)
一しきり餅を搗いた後、搗きたてをほおばる。
餅だけだと飽きるので干し肉も一緒に。
「キャッキャウフフの時はどうなるか心配したけど、これは明智君に感謝だな。しかし、搗きすぎたか?」
アルファ・オメガ
「がうー、やっと終わったねー」
毛づくろい(notユベコ)してからほっと一息つくよ
「がうっ?!お餅…?」
お肉大好きなボクだけど、本質は食いしん坊なので!
ご好意に甘えていったっだっきまーす!
やっぱりこの時期は桜餅だよね(はむはむ)
しかしお団子も捨てがたい
桜餅を堪能したらお団子片手に(ただし抱えている)、桜のお花見散策といこう
ぽふぽふとてとてのんびりまったりもぐもぐ
あ、珠稀みつけた、珠稀ー!
今回はお疲れさまでした
それからこの前はボクの方(アルファの予知した依頼のこと)、助けてくれてありがとー!
そのお礼が言いたかったんだ
あ、お団子美味しいよ、珠稀も食べる?
大丈夫、たくさんもらってきたから!
おすそ分け!
有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
せっかくですので、お餅いただいていきましょうか。
色々ある、と言われてしまうと何にしていいものか迷ってしまいます。
季節にあわせて、桜餅と花見団子にしましょうか。自分で作ったものをいただきたいです。
餅をぺったんぺったんとつき、団子をころころと丸め。
……結構楽しいですね、これ。
せっせと作り、春色の桜餅と、三色のお花見団子を完成させる。
……悪くない出来だと思います。
作った桜餅とお花見団子を持って、桜の下でお花見。温かな緑茶も一緒に。
春の日差しにほっと一息。
……そういえば、作るのが楽しくてお団子少々作りすぎてしまったので、できればどなたかにお裾分けしたいです
●つけ!丸めろ!そして喰らえ!
激しい闘いに終止符を打ち。村は喜びのムードに包まれていた。
村人たちは猟兵に感謝をすると共に、ぜひこの餅祭りに参加してほしい、と誘う。
「相当な量の餅を作るようだな。ならば手伝わせてもらおう」
フードファイターである仁科・恭介(観察する人・f14065)が臼と杵の前に進み出れば、村人は有難やと拝む程。
「せっかくですので、私も参加させていただきましょう」
有栖川・夏介(寡黙な青年アリス・f06470)も恭介同じく前へと進み出た。
「はーー、餅のように色白なお兄さん達だべな! それじゃ有難くお願いするべか!」
村の恰幅の良いマダム達が2人の前にテキパキと石臼を用意し、蒸したもち米を準備する。
「力は入れんと、自然に打ち落とすべよー」
村人の言葉に恭介は柔らかな表情で頷き、夏介も「わかりました」と伝えれば2人の餅つきは始まった。
夏介がリズミカルに餅をつけば、ぺったん、ぺったん、と軽やかな音が響く。
「あぁ、お兄さん上手だべなぁ」
「……結構楽しいですね、これ」
無表情は変わらぬままに、しかしリズムを取るように杵を振るう。刃を振るうのとは全く違う感覚だ、と夏介は思う。
熟練なのだろうか、餅を転がす合いの手を入れる村人との呼吸もピッタリに感じる。
「お兄さんは、何の餅が食べたいんかね?」
「そうですね……季節に合わせて桜餅と三色団子を食べたいですね」
せっかくですから、自分で作ったものをいただきたいです、と続ける夏介に、そりゃあえぇ、と村人は笑みを見せる。
「そんなら、餅をついたら三色団子の仕込みの方に連れて行くべ。桜餅も教えるべな」
お願いします、と軽く頭を下げながら。表情変わらずとも、夏介の胸は楽しみが広がっていた。
一方、恭介も慣れた手つきで杵を振り下ろす。目の前に見える白くほかほかとした餅に向かって、規則的に、また絶妙の力加減で杵を振り下ろす。
目を閉じても、どこを中心にどの程度の力でつけばいいのかわかりそうな程。
そんな境地の中、恭介の頭にチラつくものがあった。
そう、天使と河童だ。
(なるほど、テンションによって姿も風景も変わるか……まだまだ私も修行がたりない)
いやいやいや、修行足りなくないですよ! と風の音が叫んでいるが。恭介は真剣な眼差しで戦いを思い返す。
(あのテンションを借りれば、私も……)
あの敵達から何を学び、そして得てしまったのか若干不安になる風の音、地の声。
(いやまさか)
雑念を振り払うかのように恭介が頭を軽く振る。
「お兄さんに一生懸命ついてもらった餅、美味しくなるべなぁ~」
餅の受け手を担っていた村人の声で恭介の意識が現実に引き戻される。
「あぁ、美味しそうなお餅だべ、じゃあ食べる準備をするから待っててくんろ」
村人の声に杵を返す恭介。
一息つこうとした際、水辺に自分の姿が映った。
(……あ、瞳の色が茶色に戻っている)
己の瞳の色の変化に気づく。村人には気づかれなかっただろうか、と恭介は思うが特に村人に変化は見られなかったように見える。
……だが。
(……瞳の色、変化してましたね)
夏介にしっかり気付かれていたそうな。
「がうーー、やっと終わったねー」
背伸びをするように身体全体を広げ、村の心地良い空気を吸うのはアルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)
活気に溢れた村を散策すれば、皆楽しそうな笑みを零している。桜の大木は美しく花が咲き乱れ、先程まで闘いが繰り広げられていたとは思えない程のどかな光景だ。
「がうっ、お餅……!?」
目の前では様々な餅、また餅を使って料理が用意されている。
その中には、夏介の姿もあり。
村人に教わりながら、器用に団子を丸めている。
食紅でピンクに染まった団子、またうぐいす粉で緑に染まった団子。それらを串に刺し三色団子の完成だ。
「んまぁ、器用さんだべなぁ!」
黙々と作る夏介の前には山のように三色団子が並んでいる。
「……悪くない出来だと思います」
夏介も思わず呟いた。
「さぁさ、作るのはこれ位にして、後は作った団子を味わうといいべ。お茶も持ってくるからねぇ」
村人がお茶を取りに行くと、アルファの姿に気付いた。
「あぁ、村を護ってくだすった可愛いお侍さんだべな! 良かったらお餅、沢山食べてくんろ。お茶も持ってくるでねぇ」
その言葉にアルファの愛らしい猫目が細まった。
「ご好意に甘えていったっだっきまーす!」
アルファは有難く台に置かれていた桜餅を手にした。両手で桜餅を持つ様は本当に愛らしい、と村のマダムの目も細まったのは言うまでもなく。
美しく咲き誇る桜の木の下に、木で作られた長椅子。
そこに恭介、夏介、アルファが座り桜を愛で、茶を嗜み。そして自分でついた餅を楽しむ。
「お団子も捨てがたい……だけど、やっぱりこの時期は桜餅だよね」
葉に包まれた桜餅を両手ではむはむと頬張るアルファの姿。
「桜餅も作ったんです」
「そうなんだね!とっても美味しいがうっ」
夏介の言葉に、嬉しそうな表情を見せるアルファ。
「つきたての餅は格別だな」
恭介もモグモグとお餅や団子を食していく。自分でついた餅は粘りが強く、そして甘みを感じさせる。きっとこの地は米どころなのだろう。
お茶で喉を潤しながら、いくらでも食べられる気がする。
夏介もお団子を頬張り、空を見上げる。
桜の木々から見える青空とのコントラストは美しく。また日の光と熱いお茶が己の身も喉も温めてくれる、と実感する。
そしてふと
(……猫舌とかじゃないですかね)
と、夏介につられて上を見上げるアルファが持つ湯呑に着目する。
「そういえば、餅だけじゃ飽きるかと思って干し肉もあるんだ」
よかったら2人もどうだ? と勧めれば
「お肉大好き!」
と食いしん坊っぷりを発揮するアルファ。
そして夏介も有難く、恭介の作る干し肉をいただく。
「自分で作るんですね。凄いです。それに、美味しいです」
夏介の言葉に、恭介は笑みを深めた。
「キャッキャウフフの時はどうなるか心配したけど、良い花見が出来た。これは明智君に感謝だな」
恭介が言えば、アルファが
「あ!」
と声を上げた。そしてよいしょよいしょとお団子を掴み
「ちょっとお散歩してくるんだよ」
お団子も貰っていくね!と声をかければ夏介も
「できればどなたかにお裾分けしたいと思ってたんです。どうぞ」
「つきすぎたか?と思ってたところだ」
恭介も相槌を打てば、アルファはいくらかのお団子を手に、よいしょよいしょと桜の花びらが舞う道を歩いて行くのだった。
両手で三色団子を抱え、アルファが歩いていけば。
「あ、珠稀みつけた、珠稀ー!」
手を振ったらお団子落としちゃう!と、ぴょんこぴょんこ存在をアピールするアルファに、目の前からやってきた男、明智は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「アルファさん、この度は誠にありがとうございました……!」
膝を付き、アルファに視線を合わせ。深々と頭を下げる明智に。
「今回はお疲れ様でした!」
アルファも元気よく声を上げた。
「私はとんでもありません。アルファさんのご活躍、たっくさん伺っております。ふふ、私も見習いたいです、濁流に飲みこまれたかった……!」
恍惚な表情を浮かべる彼はいつものこと、とアルファは言葉を続ける。
「この前はボクの方、助けてくれてありがとー!そのお礼が言いたかったんだ」
アルファが笑みを見せれば、明智は顔を赤らめ。
「ふ、ふふ。ランジーリさんという素晴らしいお方と出会う切欠を与えてくださった素晴らしいお仕事でした、ふふ……!」
駄目だこいつを陶酔しまくっている。アルファは色んな感情を抱き彼を暖かく見守る。
「今度はこうして助けていただけて、私こそ感謝しかありません……!そしてまた今度はアルファさんの予知のお役に立ちたい所存です、ふふ!」
決意の眼差しの明智に、アルファは「そうだ!」と抱えていたものを思い出す。
「あ、お団子美味しいよ! 珠稀も食べる?」
おやおや、私なんかが……とソワソワする明智に
「大丈夫、たくさんもらってきたから! おすそ分け!」
にゃんこの愛らしいスマイルにズキュン!と胸を射抜かれる明智。咄嗟に鼻を押さえ荒い息を発している。こいつは老若男女種族問わずトキメくぞ、アルファさん気を付けて!
「有難く頂戴いたします……!」
メロメロになりながら、アルファのその愛らしい手からお団子を受け取り、口に運ぶ明智。
「あぁ、愛の味がします……!」
アルファは、どんな味だろー?と首を傾げつつ、
「それじゃあ、他の人にも差し入れしてくるから、まったねー!」
お団子を器用に掴み、また桜に彩られた道を行く。
その姿を、猟兵は感謝を込めた眼差しで見送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
【うさみっち(f01902)と】
遅参失礼、あらかた片付いた後のようだな
分かった分かった、ご褒美にいくらでも奢ってやるから
団子を食べつつ土産話でも聞かせておくれ
其れにしても、恐らく此の場にあるほぼ全ての餅を
持ってきてしまったのではなかろうか…と眺めつつ
好きな団子は何かと問われ、最近食べた「ずんだ餅」と答えるなど
サムライエンパイアにも有るだろうか
みたらしも甘じょっぱさが安定した美味しさで良い
明智に声を掛けてももう大丈夫な頃合いだろう
お疲れ様だ明智、予知に転移に大変だったろう
癪だが此れは俺の奢りということになった、
良ければ好きな餅を食べていって欲しい
「たまちゃん」か…うさみよ、許可が下りると良いな…
榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】
ようニコ、来るの遅かったじゃねーか!
俺頑張ったんだぜ!団子の1つでも奢ってくれてもバチは当たらないぞ!
ふふふ、それじゃあ俺の華麗な活躍っぷりをたっぷり聞かせてやる!
よっしゃ、いっぱい食べるぞ~♪
ありとあらゆる団子やお餅を持ってくる!
桜餅、柏餅、みたらし団子、餡団子、三色団子…
ニコは何が一番好きだー?
俺はみたらし団子が好き!
この甘さとしょっぱさの絶妙なハーモニーがたまらん!
ずんだ餅はUDCアースでオシャレなスイーツにもなってたな!
珠稀にも声を掛けるぜ!
よう!一緒に団子食べようぜー!
お金は全部ニコ持ちだから心配はいらないぞ!
ところで「たまちゃん」って呼んでいいかー?
●もっち!もっち!もっち!
サムライエンパイアの地に、褐色の肌を持つ美丈夫が降り立った。
ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)の眼鏡の奥に輝く落ち着いた朱色の眼差しは、素早く村の状況を判断し
(あらかた片付いたようだな)
と頷いた。それと同時に、聞き慣れた羽音が近づいてくるのを聞き逃しはしない。
「ようニコ、来るの遅かったじゃねーか!」
ぶーんぶーん、と真っ直ぐにニコに向かってくるのは榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の姿。
ピンクの髪をふわふわと揺らし、ニコの周囲をグルグルと飛び動く。
「なーなー、俺頑張ったんだぜ! 団子の一つでも奢ってくれてもバチは当たらないぞ! なーなーなーなーなー」
胸を張る愛らしくちみっこいフェアリーの姿、これは了承するまで周りを飛び続けるだろう、とニコは早々に察知する。
眼鏡のフレームを一指し指でクイ、と直しながら
「分かった分かった。ご褒美にいくらでも奢ってやるから、団子を食べつつ土産話でも聞かせておくれ」
ニコが微かに笑みを零す。
「ふふふ! そこまで言うなら俺の華麗でマーーベラスな冒険譚をたっっっぷり聞かせてやる!」
更にズババン!と胸を張るうさみっちに、一体どんな話が……!?と少しだけ思うニコだった。
「よっしゃ、いっぱい食べるぞ~~っ♪」
うさみっちがせわしなく団子を運ぶ姿は春の訪れを感じさせるミツバチのよう。
「さっくらっもちぃ~♪」
淡いピンク色の桜餅を運ぶうさみっち。
ニコはテーブルにお茶をセッティングし、うさみっちが運んでくる餅を並べる。
「かっしわっ餅ぃ~♪」
桜が終われば、直ぐに端午の節句がやってくるな、とニコは季節の移り変わりの早さを感じる。
「みったらっしだんごぉ~♪」
ご機嫌に運ぶうさみっち。みたらしだれがうさみっちの身体に垂れないかちょっとソワソワするニコ。
「さぁんしょぉくだんっごぉ~♪」
……いつまで続くんだこのやりとり。何往復するんだうさみっち。
そんなニコの想いを知ってか知らずか、うさみっちはご機嫌に口ずさみながらぶーんぶーんと餅や団子を運ぶ。
「うさみよ、どれだけ持ってくる気なんだ……?」
眺めてはいたものの、このままでは恐らく此の場にあるほぼ全ての餅を持ってきてしまうのではなかろうか……と思ってしまう。
「ニコ、あっちにまだまだあんだぜ? せっかくだから制覇したいじゃん!」
確かに、猟兵が餅製作に勤しんでいることもあり、どんどこ様々な餅や餅料理が出来上がってきている。
「いやしかし、流石に食べきれるのか……?」
むしろうさみっちの身体に収まるとは思えない。いやむしろ団子や餅の間にうさみっちが備えられているかの如き餅三昧。
「まいっか。じゃあ食おうぜ! 食いつくそうぜ!」
うさみっちが三色団子にぶーん、と近づきもぐっと齧るのを、ニコは茶を飲みながら見守りつつ、手近にある餅をつまみ、口に運ぶのだった。
美味しそうに食べるうさみっちの頭に、桜の木々から放たれた花弁が舞い降りた。
それをそっとニコはつまみあげ
(……春、だな)
のどかな光景を楽しむのだった。
「そーいやニコ、餅は何が一番好きだー?」
口の周りにあんこをつけながら、うさみっちはニコに問う。少しの間の後で
「ずんだ餅」
即答したニコ。
「あー、ずんだ餅はUDCアースでオシャレなスイーツにもなってたな!」
流行なのか、ずんだ。確かに餅以外でもシェイクなど様々に使えるZUNDA。
「サムライエンパイアにもあるのだろうか」
ニコが呟けば
「ずぅんだぁぁもちぃいいい~♪」
ピャッ!とうさみっちが口にあんこをつけたまま餅の山に飛び込み、ずんだ餅をゲットしてくる。
「……言えば出てくるものなのか」
「村人のおばちゃんが、夏が一番おいしいって言ってたけどな!」
ニコは改めてずんだ餅を頬張る。
枝豆の風味が口いっぱいに広がり、また豆の食感が楽しい。緑茶との相性も抜群だ。
「で、うさみは何が好きなんだ?」
ニコが問えば
「俺はみたらし団子が好き!」
ジャァン!とうさみっちがつまようじに刺したみたらし団子を掲げる。
そしてその団子をワイルドに頬張り
「この甘さとしょっぱさの絶妙なハーモニーがたまらん!」
ニッコニコの笑顔と共に団子を頬張るうさみっちはとても愛らしく。
「そうだな。……みたらしも甘じょっぱさが安定した美味しさで良い」
「まだまだあるぜ! ニコもいっぱい食えよ! どうせニコの奢りだし!」
「おい。そういえば、武勇伝の話は……」
「お、その話聞いちゃう? 今日の俺はなー……」
美しい桜の樹の元で、うさみっちとニコは美味しい餅を肴に天使や河童の討伐話しに花を咲かせるのだった。
「あれ? あそこ歩いてんのは……」
「明智か。もう声をかけても大丈夫な頃合いだろう」
うさみっちが指さす方向を見れば、その先にはグリモア猟兵としての役目を終えた明智の姿。その様子に、自身がグリモア猟兵としての仕事終わりを重ね合わせるニコ。
「よう! 珠樹ー!」
うさみっちの元気な声に気付き、ほいほい近づいてくる明智。ニッコニコの笑顔と共に
「おや! うさみっちさんにニコさん、この度はありがとうございました、ふふ!」
ニコは同じグリモア猟兵となった明智に
「お疲れ様だ明智、予知に転移に大変だったろう」
労いの言葉をかける。
「とんでもないです、貴重な体験が出来、皆様に感謝しております、ふふ!」
うさみっちさんのご活躍、またニコさんの毎度の素敵な予知は凄いです、と尊敬と恍惚の念を込める明智に
「せっかくだし、一緒に団子食べようぜ!」
「うさみっちさんは神ですか天使ですか……!」
「あの戦闘の後で天使は嫌だな。あ、お代はニコ持ちだから心配いらないぞ!」
おや、とニコを見やる明智の視線に気づき
「癪だが此れは俺の奢りということになった。良ければ好きな餅を食べていって欲しい」
「ふふ、お優しいのですね……!それではお言葉に甘えてましょう、ふふ!」
ニコとうさみっちの隣に腰掛け、傍に置かれていた三色団子を幸せそうに頬張るのだった。
「そうだ」
ニコの食べる姿を見て自分も食べたくなったずんだ餅を食べながら、うさみっちは明智に顔を向け
「ところで『たまちゃん』って呼んでいいかー?」
突然の申し出に、ニコは(あぁ、この人そう呼ばれたがってるなー)と思い返す。それでいて(許可が下りるといいな)と思ってくださるあたりニコさんも神である。そして明智はと言えば
「あぁっ! 勿論です、たまちゃんでもエロ河童でもなんとでもお呼びくださいっ…!」
うっとりハァハァしだすド変態に
「じゃ、じゃあたまちゃんで……」
聞いたことを後悔する気がしなくもなくもなくもないうさみっちだった、とか。
(うさみから聞いた武勇伝で倒した天使や河童と同類なのでは……)
軽く頭を押さえるニコだった。
そんな桜とお餅のある風景は、まだまだ続くだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジェラルド・マドック
アドリブ歓迎
明智さんとご一緒したい…!
あれ、戦闘は終わっちゃった?
出遅れちゃったかぁ
猟兵さんや村人さん達に怪我はない?
あればUCで癒しつつ皆と合奏とか楽しみたいなぁ
勿論即興で歌ってくれるのも歓迎だよ!
せっかくこの世界に来たことだしサウンドウェポンを箏に展開して花見に合う曲を奏でようか
♪陽も和らぎ春の日に長閑な村は花見に賑わう
ちりつるちりつる楽を奏でる花見宴
どうか桜よ時を惜しんでまだ散らないで
今のこの春は二度も来ないのだから
演奏しつつせっかくだしお餅も楽しみたいな
桜を見つつ桜餅を楽しむなんて桜尽くしだね
これが『風流』なのかな
味わいつつ自分の料理の参考にするためにちゃっかりしっかり調査してくるよ
五百雀・斗真
WIZ
お餅、いっぱい食べれるの嬉しいな
あ、でもお供え用のお餅を作って飾る方も気になるので
まずはそっちの方を行ってみる…!
お供え用のお餅ってどんな風に作るんだろう?
こういうの作るのは初めてだから
作り方をきちんと聞いて丁寧に作ろう
こう…かな?
お餅がかたくなる前に完成させるのを頑張ろう
飾りつけの方は村の人に和紙をいただけないか確認して
和紙で桜の飾りを作って飾りつけしてもいいですか?って訊いてみよう
大丈夫なら、せっせと和紙の桜の飾りを作って
メインのお供え用のお餅の邪魔にならないように飾り付けをしてみるね
飾りつけが出来上がったら、明智さんや他の人にも知らせに行きたいな
※アドリブ歓迎
●風流な双子座の男達
「あれ、戦闘は終わっちゃった?」
サムライエンパイアの地に降り立ったのは、ジェラルド・マドック(しがない演奏家・f01674)。鮮やかな色彩を見せるようにも見えるジェラルドの灰色の瞳が移しだすのは、活気に溢れた村の姿。
「出遅れちゃったかぁ」
そう呟きながら、美しいタトゥーの入った左手で己の頬を人掻きすれば
「!?」
ジェラルドの耳に、微かな子供の泣き声が混ざった事に気づく。
(誰か怪我した人がいるのかな?)
いつでもユーベルコードで治療をする心構えで声の方に近づけば。
「うわぁぁぁんうわぁぁぁん」
一人の年端もいかぬ子供が倒れたまま泣きじゃくっていた。どうやら盛大に転んだようだ。
ジェラルドは異形の被害にあったわけではないことに安堵しつつ
「大丈夫かい?」
穏やかな表情と美しい声で、倒れた子に手を差し伸べる。現れた優しそうな青年に涙を止める、がその膝は血に染まり。
「あぁ、痛そうだ。…痛いの痛いの、とんでいけ」
歌うような声で、ジェラルドは子供の傷を癒す。
「……もう、痛くない! ありがとう、お兄ちゃん!」
子供の声に、どういたしまして、と言葉を返し。
「あのね、お兄ちゃん。今お餅のお祭りをやってるんだ。お兄ちゃんもいっぱい食べて行ってほしいな」
「ありがとう。俺も参加させてもらうね」
去っていく子供に手を振り。ジェラルドは軽やかな足取りで人の居る方へと向かっていった。
(お供え用のお餅ってどんな風に作るんだろう?)
そう思いながら、五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)は村人達の輪に近づいて行った。
スプレーアーティストとして活動する斗真にとって、餅を食べられるのは勿論、アートとして飾られる餅にも興味を惹かれ。
斗真が覗けば、お正月に飾られる丸餅が重なった鏡餅を始め、ひなまつりに見るひし餅など見たことがあるものから、紅白の餅を丸めて兎のような形にしたものなど
「……色んな形があるんだね」
思わず斗真が目を細める。そんな斗真に気付いた村人が、興味津々な斗真を手招きし
「村を救ってくれたお兄さん、良かったら一緒にどうだべかー」
気の良い村人の声に、ぜひ、と斗真は笑みを見せた。
「お兄さん、本当に初めて作るべか? 手際がいいべ」
村人の手順をしっかりと聞き、斗真は素早く餅に色付けし、丸める。
(お餅が固くなる前に……)
手際よく、丁寧に。斗真の艶のある黒の眼差しは真剣そのもの、アーティストとしての輝きを放っている。
「こう……かな」
斗真の手には兎型の餅細工。また木の枝に餅を花のように飾り、餅花を作り。
本来ならば丸めた餅を枝に刺すだけのものだが、斗真は餅を出来る限り花の形に近づければ
「うわぁ、お兄さん凄い!」
と村人達の歓声の声を受け。
「あの、和紙っていただくことはできますか?」
丁寧な物腰で斗真が聞けば、村人たちは喜んで!とばかりに斗真へと和紙を手渡す。
それじゃあ、と斗真がその和紙を手に取るのを、興味深く見入る村人達だった。
その頃。
村に、雅やかな音色が響き始めた。
♪陽も和らぎ春の日に長閑な村は花見に賑わう
ちりつるちりつる楽を奏でる花見宴
響くのは、ジェラルドの歌声。
彼の前には伝統楽器でもある箏。ジェラルドのサウンドウェポンが箏へと展開され、ジェラルドは爪弾きながら声を音に乗せる。
♪どうか桜よ時を惜しんでまだ散らないで
今のこの春は二度も来ないのだから
村人達がその美声と心落ち着く音楽と歌詞にうっとりとする中。更に更にうっとりとした表情を見せる男がいた。
「あぁ、素晴らしいですジェラルドさん……!」
グリモア猟兵が誰よりも悦に浸った表情でジェラルドに熱視線を送れば
「聴いててくれたんだね」
ジェラルドが明智に向かって笑みを向ける。
「この地で、また桜咲く季節にジェラルドさんの歌声を聴かせていただけるなんて私はなんて幸福なのでしょう、ふふ……!」
身を捩る明智に
「せっかくだし、合奏しようよ」
明智の背中の三味線にジェラルドは視線を移し人懐こい笑みを見せ
「良いのですか……!それでは、ぜひ!」
頬を染め、ジェラルドの隣に腰掛け。多くの村人が見守る前でジェラルドの箏と明智の三味線が、和の即興セッションを楽しむのだった。
(……あ。音色が増えた)
耳に心地よく入り込む和の音に、新たな音が加わり。
どちらも楽しそうに、また春を楽しむように感じられる、と斗真は手を動かしながら感じた。
斗真は村人から貰った和紙を折ったり切ったりしつつ、器用に桜飾りを作り出していく。
いつの間にか村人や村の子供達も斗真の傍で桜飾りを作っている。
(飾り餅を教えてもらうつもりが、教える側になったみたいだね)
そう思いつつも、子供達が懸命に和紙を細工する姿は愛らしい。
そして完成した皆の和紙飾りを、村の祭壇に美しく飾り立てていく斗真。
全体のバランスを見て。あくまでも、メインの餅飾りの印象を損ねないように。
「あんれまぁ、桜の樹と同じ位に綺麗だべなぁ!」
飾り終わった餅細工に、村人は歓喜の声を上げた。
斗真としても、アーティスト魂を満足させるものとなり、心地良い疲労感を感じる程。
(せっかくだし、皆に見てもらいたいな)
「あ」
「おや」
斗真の声と明智の声が重なった。
「演奏してるの、明智さん達だったんだね」
斗真が柔らかに笑めば、ジェラルドと明智はキリの良い所で演奏を切り上げた。
斗真が飾り餅の話をすれば、音楽というアートを楽しむジェラルドも
「飾り餅か、ぜひ俺も見たいな」
と斗真が飾り立てた餅へと共に向かい。
「これは美しいね!」
ジェラルドの瞳が楽しそうな色を帯びる。
「斗真さんも、そしてジェラルドさんも本当にテクニシャンです……!」
うっとりと明智は身を捩りながら
「せっかくです、桜と飾りを愛でながら、桜餅をいただきませんか?」
いそいそと桜餅と温かなお茶をセッティングする明智。
斗真とジェラルドは長椅子へ腰かけ、美しい桜色の景色を愛でながら桜餅と穏やかな時間を堪能する。
「これが『風流』なのかな」
ジェラルドが呟けば、斗真は大きく頷いた。
そんな二人にお茶のお代りを注ぎながら、明智が笑みを見せ。
「お二人、とても雰囲気が似てますよね」
ほとんど変わらない身長。同じような年頃。瞳や肌の色や顔だちは違えど、美しい乳白色をした艶やかで美しい髪を持ち。……星座が一緒だと気づくのはまだ先の話かもしれない。
「二人共アーティスティックな雰囲気がとても素敵です、ふふ!」
桜と青空、美しい餅飾り。
素晴らしい時間を二人と共有できたことを、感謝してもしきれない明智だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
依世・凪波
セリオス◆ f09573と
アドリブ・絡み歓迎
セリオス強いんだなっ!と先程の容赦ない姿に
キラキラした目で一緒について歩く
餅つきに興味津々
アレやってみたいなーっ!
セリオスに返しを手伝って貰おうと
杵が重くてヨロヨロ
重い…けど頑張るっ!
うぅーでもやっぱり上手くいかない…
セリオスと交代
上手にやってくれると思ってたのに、お餅ー!?
セリオスの頼りになるぞゲージ下がる
もーっ!セリオス何してんだよー
めっと怒って
可能なら明智と餅つき
珠稀大丈夫かな?がんばろー
お餅の返しはちゃんと上手く出来たっ
スピード良くペタペタ
完成したお餅に出来たぁー!!とはしゃいで
大喜びでセリオスに見せにいく
へへへっ、俺きな粉餅にして食べるんだ
セリオス・アリス
凪波◆f14773と
アドリブ歓迎
ん?ああ、まあな
小さいのになつかれたが褒められて悪い気はしねえな
ご機嫌で村を見て周り
餅をつけばつきたての餅が食えるのか…よし、いっちょやってみるか!
杵を持つ凪波に返しのつもりでスタンバるが
おいおい、情けねえなぁ
ちょっと貸してみろ
よろける凪波から杵をもらい
えー…勢いよく叩けばいいんだよな
全力で餅を叩きつける
餅、飛び散る
くっ…!何でだ…
このままじゃつきたての餅が食えねぇ
そうだアイツ器用そうだな!
珠稀を見つけて杵を渡そうと
餅の運命はお前にかかってるんだ!
はーすげぇな
二人がついてる横で感心しながら眺め
おおー!餅の完成に無邪気にはしゃぐ
きな粉餅?
うまいなら俺もそれにするか
●突く×こねくり返す
「セリオス、強いんだなっ!」
透明感のある琥珀色の瞳をキラキラと輝かせて。依世・凪波(ギンギツネの妖狐少年・f14773)は先端のみが白い、黒の狐尻尾をふりふりとさせセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)の後をついて歩く。その姿は狐以上に、愛らしいワンコを思わせる雰囲気でもあり。
「ん?あぁ、まぁな」
セリオスはまんざらでもない表情を浮かべながら、平和を謳歌する村を歩く。
(小さいのに懐かれたが……まぁ、悪い気はしねえな)
季節の移り変わりを感じさせる温もりを含んだ風、そして少しずつ散り流れる桜の花弁。セリオスは空を見上げれば、彩深い青い瞳が空と桜のコントラストを楽しむ。 正直、もっともっとけちょんけちょんに倒してやりたい敵達ではあったが、こうして戦いっぷりを少年に感激して貰えたのなら。戦った甲斐もあるだろう、とセリオスは思う。
「!! わーー、餅つきだーーっっ」
凪波の明るい声が響き、そのあどけない表情が笑みに染まる。
そんな声に気付いた村人は、凪波とセリオスの姿を見つけると村を救ってくれた感謝の念と共に
「ぜひ、村名物の餅も堪能していってほしいだべ」
「あのさっ、餅つきもやっていいの?俺、アレやってみたいなーーっ」
「勿論だべ! つきたての餅は格別だべ、ぜひ餅つきしてくんろ」
村人は更に目じりを下げる、その姿を見たセリオスは
「餅をつけばつきたての餅が食えるのか……よし、いっちょやってみるか!」
己の手に力を込めるように、セリオスはググッと拳を握るのだった。
村人たちが杵と臼を準備し、凪波とセリオスに餅つきの要領を伝える。
凪波はへーーっ、と大きなリアクションを交えながらその話に頷き、セリオスもまたふむふむと餅の返し方を目で覚える。
「それじゃあ、この杵でつくだよ」
村人に手渡された杵を凪波は軽々と受け取……
「うわぁっ」
想像以上に、杵が重い。凪波のその細身で小柄な身体が杵の重みに動かされ。
「おいおい、情けねえなぁ」
臼の傍らに構えるセリオスが凪波の様子に苦笑する。
もっと腰入れろ、というセリオスの言葉に
「重い……けど、頑張る……っ!!」
よいっしょーー!と気合をいれる凪波。大きく杵を持ちあげる……が。
「ちょ、あぶねえって!」
相変わらずヨロヨロフラフラッと動く凪波の姿に、セリオスは立ち上がり杵と凪波の身体ごと抱き止めた。
「うぅーー……やっぱり上手くいかない……」
しょんもりとした表情を見せる凪波に、セリオスは
「あんだけ短剣や鉤縄は上手く扱えるのにな」
面白いもんだ、と凪波に笑いかける。凪波も、ダガーや鉤縄の腕前は認めて貰えたのか、と気持ちを持ち直しながら照れたような笑みを見せた。
「ちょっと貸してみろ」
そう言うと、セリオスが凪波から杵を受け取った。
軽々と杵を構えるセリオスの様子に、凪波の瞳が尊敬の眼差しでキラキラと輝く。
そしてセリオスの代わりに臼の傍らで身構える凪波。
(えー……勢いよく叩けば良いんだよな)
セリオスの眼差しに殺気が帯びる。そして
「……ていっ!」
フルパワーでもち米に一直線に振り下ろされる杵。
次の瞬間。
もち米が、爆発した。
尚且つ、臼が、割れた。
飛び散るもち米だったもの。
「あっち!あっちぃ!セリオス何やってんだよー!」
「くっ! なんでだ……ッ! 臼とはこんなに脆いものなのか……っ!」
いやいや、セリオスさんのフルパワーにゃ鉄製でも割れますわ。
露出度の高い凪波は素肌にもち米を受け熱がりつつも、そのもち米をひょいひょい払うあたり火傷などはなさそうだ。そのことに安堵しつつもセリオスは木っ端微塵の餅米や臼を見やり
「このままじゃつきたての餅が食えねぇ……」
頭を抱えるセリオス。焼きたての餅の如くぷくぅっと頬を膨らませる凪波。
「あんらあんら、流石村を救うだけあるべなぁ。大丈夫、まだもち米も臼もあるけんねぇ」
村人が新たな準備を進める中、2人の前に、顔の白い男が現れた。
なんだ?と訝し気に視線を送れば
「おふぁふぁりほぉも、ふぁのふぃほぅでふね」
顔全面に、飛び散ったもち米を受けた明智の姿だった……。
「いやいやいや、熱くねえのかよ!」
思わずセリオスが明智の顔から餅米を引っぺがす。
「あぁ、こんにちはセリオスさん、凪波さん。お二人共楽しそうですね」
むしろ密着していた餅と離れるのが名残惜しそうな程に恍惚な表情を見せる明智に、2人はこいつなら大丈夫か、と思いつつ。
そして和の装いの明智に凪波とセリオスがハッと眉を上げ
(そうだ、コイツ器用そうだな……!)
「珠稀、餅をつけ」
ググイッと杵を明智に渡すセリオスに、
「おやおや、ご主人様喜んで……!」
むしろ光栄!とばかりに恭しく明智はセリオスから杵を受け取った。
「珠稀、がんばろー」
大丈夫かな?と思いつつも凪波は受け手として再度、新たな臼の隣にスタンバイ。
「お二人に召しあがっていただけると思うと……より一層腰を入れねばなりませんね、ふふ……!」
「変なことするなよ」
セリオスが美しいかんばせの眉間に皺を寄せる。
「勿論です。さぁ、凪波さん、初めての共同作業を……!ふふ!」
「黙ってつけ」
「珠稀、いつでもきてーっ」
真剣な表情を見せる凪波。行きますよ、ふふ!と声をかけながら明智と凪波はテンポ良く餅をついていく。
(……やりゃあ真面目に出来んじゃねぇか)
凪波の餅の返しも言うことなく。当たりにペタンペタンと心地よい粘着音が響く。
「出来たぁー!!」
凪波が万歳の格好で餅の完成を喜べば、セリオスも近づき
「はー、すげえな。ちゃんと餅になってるじゃんか」
ワクワクとした表情を隠せずにいるセリオス。そんな2人の姿に明智も嬉しそうな笑みを見せ。
「へへへっ、俺きな粉餅にして食べるんだっ!」
きな粉、あるよなっ?と凪波が明智に聞けば
「勿論です。お持ちいたしますね、ふふ!」
「きな粉餅、か。美味いのか?」
「うん、すっげーー美味いんだっ!」
満面の笑みを見せる凪波の表情に
「美味いなら、俺もそれにするか」
サムライエンパイアの食事に興味を示して貰えるのが嬉しい、とでもいうように。
「今すぐにきな粉をお持ちしますね。他にも色んな味がありますし、食べ比べていただきたいです、ふふ!」
パタパタと明智が準備に走り出す。
2人の頭上には、満開の桜。
美しい和の旋律や、華やかな飾りが溢れた平和の時間。それを護ったのは2人や猟兵の力のお陰だろう。
凪波とセリオスはサムライエンパイアの春を、つき立てのお餅と共に味わい堪能するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
カイ◆f05712
桜見て酒飲むの割と好きなンだよなァ(桜が一番綺麗に見える処へ
餅も美味ェ
げ、珠稀のヤツも誘ったのか?
浮かれンな馬鹿(葉巻の煙吹き掛け
カイに免じて同席許す
カイの酒が無くなったらすぐ並々に日本酒注ぐわ
お?言ったな?俺もンな強くねェが先に潰れる気はねェなァ
へべれけカイ見てみてェし(かき餅食べ余裕の顔
ハハハ顔赤いぜー愛いヤツ
まだイけっだろ、カーイ君?限界超えろや(前髪払い撫ぜ頬ぺち
…桜の思い出か
きっと同じ空の下で桜を見てンじゃねェか(御猪口に落ちた花弁見て
ンな顔すんなよ
今年は俺がお前に思い出作ってヤっから(髪わしゃ
つーか俺が満足するまで付き合えや(逃げんなよ?と肩掴み笑顔
介抱なら任せろ
桜雨・カイ
クロウさん(f04599)と一緒に花見餅(とお酒)※お酒初心者
珠稀さんも誘って、一緒にどうぞ
桜餅や、お酒のつまみにかき餅もいいですね。
そんなにつがれても酔いつぶれませんよ…今日は逆に酔いつぶすつもりで行きますからね
……まだ大丈夫、です。酔って、ない、です(酔ってる)ほらー、桜も綺麗ですよ(二人をぺちぺち叩きながら)
…人形だった頃は庭の桜がとても綺麗で、主と一緒にお花見してたんです、でも今は…どこにいるんでしょうか…いえ、大丈夫です
頭撫でられるとか始めてで、なんとなくお酒とは違う感じでふわふわします
え?まだ飲ませるつもりですか?あの珠稀さん助けてくださっ
でも、お花見…一緒にできて、よかった、です
●ヤドリガミ達の春の宴
「おっ、ここなんか最高なんじゃねェか?」
上機嫌で道を行くのは杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の姿。
桜並木を歩き、一番上等と思える大木を見つけ向かう。
「えぇ、とても絶景だと思います。素敵なお花見が出来そうですね」
クロウの後ろで穏やかな声が楽しそうに弾んでいる。
「桜見て酒飲むの割と好きなンだよなァ」
美しく咲き誇る大木の元に、クロウが持参した酒やつまみを置き。
「そうですね、心がソワソワしてしまいます」
……ソワソワ?
と疑問を浮かべつつ。クロウが今日の花見を伴にする桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)へと振り返れば。
「げ」
クロウの顔が引きつった。カイは口元を押さえ笑いを堪えている。
「あぁ、桜という美しさの元で更に美しい姿をあられもなく晒してくださるイケメン達……!」
明智だ。
「なんでここにいる今すぐ立ち去れ視界から消えろ」
クロウが死んだ目でユーベルコードを発動しかけたその時、カイが目尻を下げまぁまぁ、とクロウを抑える。
「そこでお見かけしたので、お誘いしました」
荷物も持っていただいたんですよ、とフォローするカイの甲斐甲斐しい姿に、クロウは苛立ちを抑えるため煙草に火をつける。
「……カイに免じて同席許す」
「カイさん、ありがとうございます、ふふ!お礼に裸踊りでも」
おやおや、と目を丸くするカイと明智を引き離すクロウ。
「浮かれんな馬鹿」
煙草の煙を明智に吹きかければ
「あぁ、なんですかこのご褒美は……!」
とうっとりとした表情を見せる明智。そんなやりとりに、カイは笑みを浮かべ見守るのだった。
広げられた茣蓙の上には上等な日本酒の一升瓶。
そして今日の祭りの目玉でもある桜餅や塩気のあるかき餅を始め、酒の肴が広げられていく。
「花見酒、風流ですね」
カイが御猪口に注がれた辛口の日本酒を、じっくりと味わいながら喉に通す。
そんなカイの言葉にクロウも無言の肯定の意を視線で示した。
頭上に広がるこんもりとした桜の壮麗な美しさ。風が吹けば柔らかに揺れ、愛らしいピンク色の花弁が踊るように舞う。
それでいて
「お、空になったじゃねェか」
カイの御猪口の様子に目を配るのも忘れない。
空になった御猪口に、ニヤリとした笑みと共に並々と酒を注ぐクロウ。
明智は明智でいそいそとクロウの杯に酒を注いではいるのだが。
「そんなに注がれても酔いつぶれませんよ……!」
明らかに酔わせようとしているクロウに、カイは愛らしく唇を尖らせ
「今日は逆に酔いつぶすつもりで行きますからね」
「お?言ったな?」
カイの鮮やかで明るい蒼色の瞳が悪戯に輝くのを挑戦と受け取り、クロウはより一層不敵な笑みを深め。
ぐびり、とクロウが盃を空にすれば、今度はカイがクロウへと日本酒を注ぎ。
「俺もンな強くねェが先に潰れる気はねェなァ」
日本酒とかき餅のハーモニィを楽しむクロウ、まだまだ余裕の表情で
「へべれけカイ見てみてェし」
香ばしさと塩気の利いた餅を楽しみながら、カイの身が朱に染まりゆくのを楽しんでいた。
それから。
「……まだ大丈夫、です。酔って、ない、です」
カイは身体中が見事な桜色に染まっていた。
酔っていない、という言葉に全く説得力が見えない程に、カイの瞳が座り始めている。
「ハハハ顔赤いぜー、愛いヤツ」
相変わらず表情の変わらないクロウは酒に呑まれるカイの姿に上機嫌だ。
「まだイけっだろ、カーイ君?」
クロウの掌がカイの額に触れ、その前髪を上げる。カイの真っ赤なおでこに満足そうな笑みを見せる中、カイはカイでクロウのファッショナブルな手元やネイルの色にぽやぁ、と意識を持っていかれそうになりつつ。
そしてクロウの手がカイの頬をペチリ、と柔らかに叩く。
「限界超えろや」
柔らかな手つきとは真逆に、鬼のように注がれる酒。
くうぅ、とカイは顔を顰めながら、空を仰ぐ。
「お酒も良いですけど、ほらー、桜も綺麗ですよーー」
段々と呂律の回らぬ口調で、カイが人差し指で頭上を指し示す。
楽しそうに、隣にいるクロウと明智の身体をぺチペチ叩くカイ。明智はとても良い笑顔と恍惚の表情を浮かべている。
そして明智は、酒の肴を追加するため席を離れた。
明智の背中を見送りながら。
「とても綺麗ですねー」
改めてカイは桜を見上げ、目を細めた。
酒の酔いのせいだろうか、あの日見ていた桜が易々と脳裏に浮かび。
「人形だった頃は庭の桜がとても綺麗で、主と一緒にお花見してたんです」
空を仰ぎながら、カイは微笑む。
主と、その家族と共に過ごした時間。春の季節は庭に立派な桜の樹に花が満開となり、家に居ながら花見を楽しむことが出来た。
そんな思い出話を、クロウは酒と共に静かに聞き入る。
「今、目の前に広がる桜も勿論美しいのですが……あの日見た桜も遜色なく美しい桜でした」
楽しそうに思い出を語カイの口調が、徐々に酒の酔いを感じさせなくなり。
「でも今は……どこにいるんでしょうか……」
ぽつり、と呟くカイ。しかし直ぐに空気が変わったことに気付き、慌てて手を振る。
「……いえ、大丈夫です」
無理矢理に笑顔を作るカイに、クロウは手元の杯に目を落とす。
酒の上に、ひらりと桜の花弁が一枚着地した。
「きっと同じ空の下で、桜を見てンじゃねェか」
酒に視線を落としたまま、クロウが言葉を紡ぐ。
顔を上げれば、泣きだしそうな笑みのカイの表情。
「ンな顔すんなよ。……今年は俺がお前に思い出作ってヤっから」
クロウは穏やかな表情を一瞬だけ見せたかと思うと……直ぐに、ニカッと笑みを浮かべ、カイの頭に触れ。髪をわしゃりと撫でた。
その手の心地良さにカイはふにゃぁ、と目を細める。
(頭を撫でられるのは初めてで……なんだか、お酒とは違う感じでふわふわします)
思わず笑みが浮かぶカイに、クロウは満足げな表情を浮かべ。頭に置いていた手をカイの両肩へ回し……ガッチリホールドした。
「つーか俺が満足するまで付き合えや」
今日最高の笑顔を向けるクロウさん。
「えっっっ」
カイの表情が怯えたものとなる。と、そこに戻ってきた明智。
「あぁっ、お二人でイチャイチャと……! 私も混ぜてくださいっ!もしくは観察させてくださいッ!」
「あの、そうじゃなくて珠稀さん助けてくださ……い……!」
「安心しろ、介抱なら任せろ」
ニヤァリ、と笑うクロウに
「私もありとあらゆるテクニックで介抱させていただきます、ふふ!」
カイさん残念、まだまだ酒宴は続きそうです。
こうして、春の宴は夜まで続くのだった。
フラッフラになりながらも
「でも、お花見……一緒にできて、よかった、です」
柔らかな笑みを浮かべながら。カイは楽しそうなクロウ達の姿に目を細め……
「あ、寝ちまったな」
仕方ねェな、と言いつつも己のマントをそっとカイにかけるクロウだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴