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客神異聞~わたしが欲しかったもの

#UDCアース

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#UDCアース


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 ひた、ひた。
 薄暗い室内、液体の垂れる音。

 そこには幾つもの『人間だったもの』のパーツが散らばっていた。
 ひしゃげた手足、原型を留めぬ頭。
 血の海の中心で昏い光を纏いて嗤う少女。

 少女は既に人ではなかった。

 『∪n 』
 『Defined 』
 『Creature 』

 この世界でUDCと呼ばれる『未定義の怪物』。邪神に飲まれし人類の敵。

「……呆気ない」
 少女は人の頭部を爪先で小突きながら、事も無げに告げる。
 人はこんなに簡単に死ぬのか、と少女は思った。

 今までわたしをさんざん煩わせてきた癖に。
 こんなにもわたしを苦しめてきた癖に。
 たったひと撫でしただけで、人は死ぬ。

 ひとり殺した後の、他の連中の変わり様と言ったら本当に愉快なものだった。
 その場で泣き出し、■■を■■し、情けなく命乞いをし。
 あまりに可哀想だったから、じっくりと嬲り殺してやった。
 生きたまま針で縫い付けて、目の前で■を■■て、その■に■を■■■■てやった。

 そんな愉快な時間も、もうオシマイ。
 終わってしまえば虚しいものだ。

「これから、どうしようかな……」
 少女はぼんやりと物思いに耽る。

 どうせわたしは人殺しになったのだから。
 帰る場所などもう無いのだから。
 だったら堕ちる所まで堕ちてしまうのも良いだろう。
 世界が先にわたしを見限ったのだ。
 だったらわたしが世界を見限ったって構わないだろう。

 少女は懐から小さなカプセルを取り出し、口に含む。
 ぼう、と淡い光りを放つ邪神の衣。
「後であの人に、追加のお薬――もらわなくちゃ」

 ふふ、あハ――。

 少女は嗤い声を響かせながら、その部屋を後にした。


「――以上が、私の視た予知の光景だ」
 グリモア猟兵、ギド・スプートニク(意志無き者の王・f00088)は沈鬱な面持ちで告げる。
 UDCアースで発生する、邪神絡みの事件。事件現場についても、詳細な位置までは特定できていない。邪神の正体も、邪神の依代となったであろう少女に関しても同様で、現時点で確かな情報は何も掴めていないようだ。
「よって卿らには現地に到着次第、事件の調査から行なって貰う事になる」
 これから転移を行なう先、その周辺区域の何処かで事件が起こる・起こっている事は間違いない筈だ。
 行き当たりばったりで調査してみるのも良いだろうし、予知の光景からある程度の推測を踏まえた上で探索や聞き込みを行なうのも構わない。
「事件解決の手段に関しては、卿らの判断に委ねよう。各々が良い結果を目指し動く事が最善の結果に繋がるのだと、私は信じる」
 それは事件の調査についてもそうだし、一般人の安否や、少女の処遇についても含まれている。

「よろしく頼む。卿らの活躍で以って、この惨劇を食い止めて欲しい」
 そう告げて、ギドは猟兵たちを現地へと送り出した。


まさひこ
 まさひこです。
 UDCアースを舞台としたシリーズシナリオ(予定)の第一弾です。
 基本的に1話完結、何処から遊んでも大丈夫なようにする予定です。

●ご注意
 2章以降の冒頭に断章(PC無しリプレイ)を挟む予定です。
 プレイングに関わる内容が挿入される可能性もあるのでご注意下さい。
 プレイングの受け付けは追加描写のあった日の翌朝8:31以降を予定しています。
 それより早く送って頂いても構いませんが、流してしまう可能性が高いです。
 1章はOP公開と同時に受け付けを開始します。
 (Twitterや雑記スレッドにて告知する予定です)

●1章:ハンドアウト
 1章では、プレイングの冒頭に①~③(或いは【1】~【3】)の数字を指定する事でハンドアウト(付加設定)を選択できます。
 職業エージェントや関係者っぽいロールを匂わせたい方にお勧めします。
 選択しなくても構いません。

 ①/【1】職務として事件解決にあたる、UDCエージェント。
 ②/【2】普段からUDC組織と懇意にしている外部協力者(フリーランスなど)
 ③/【3】エージェントではないが、UDC組織の関係者。
 記載なし:普通の猟兵(その他、プレイングにて記載して頂ければ!)

 拘りの設定などあればプレイングにどしどし書いてみて下さい。

●1章『いじめられっ子の報復』
 1章では猟兵たちに事件の調査をしてもらいます。
 具体的な推理・調査方法などが的確であれば判定にボーナスが入ります。
 すべての情報を調べる必要はありませんが、手に入れた情報によってシナリオの展開が多少なり変化する可能性もあります。
 推理や調査方法が浮かばなくてもプレイングに「頭がいい」とか書いて貰えたら頭のいい動きをします。関係ない雑談しかしてなくても、判定結果が良ければ情報は手に入ります。知的なプレイングじゃなくて大丈夫です。
 盛大に読みを外しても「推理を外したリプレイ」みたいのは書かないので気軽に挑戦して下さい。

●その他
 のんびりペースで執筆しているので、プレイングを流してしまう事もあるかと思います。プレイング受付中の間は気軽に再送して頂けたら嬉しいです。
 プレイング内容の変更などもご自由にどうぞ。
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第1章 冒険 『いじめられっ子の報復』

POW   :    怪しい人から強引に情報を聴取する

SPD   :    足を使って探索、もしくは怪しい人を追跡

WIZ   :    知力を活かしアジトの場所を推理する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

楠瀬・亜夜
【2】

――凄惨な事件に事欠かないね、この世界は
惨い事件は苦手なんだけど、私の中の本能が、好奇心が
事件の顛末を『知りたい』と思ってしまう……困ったものだ
さて、お仕事といきますか

予知の情報からすると一人が複数人を殺害、事件の発端としては
複数人が一人を虐げた…つまりいじめが関係するでしょうか?
恐らく彼女は学生、とすると現場は付近の学校と仮定するべきですね

まずは地道な聞き取り調査から始めるとしましょう
狙いは登下校中の学生達です
オカルト記者を騙って最近流行してる都市伝説などの噂について聞いたり
雑談の一環として最近よく話題になるいじめについての心当たりなどを
聞いてみます

協力感謝の証として飴を進呈しましょう


四季乃・瑠璃
【2】

【ダブル】で常に分身
瑠璃が改造スマホで学校の裏掲示板やSNSで女子生徒関連のイジメや殺人事件、行方不明の話題や噂について調査。更に警察のデータベースも含め【ハッキング】等も駆使して【情報収集】。
緋瑪がその間、転移した地区周辺の学生等を中心に【コミュ力、情報収集惑】(男子生徒には【誘惑】も)を使って聞き込み。
瑠璃も収集を終えたら緋瑪と合流し、得た情報を統合して精査。

後は精査した情報から依代の少女及び被害者を絞り込み、接触を図るよ。

緋瑪「予知くらい派手にやれば、事件が既に起きてれば隠しきれないよね」
瑠璃「しかも殺人者になった事を諦めてるからね…。隠蔽する気はないみたい」

※アドリブ等歓迎



 CASE.1 少女について

 
●Introduction
 転移先の周辺区域に、学校と呼べる施設は数箇所あった。小学校、中学校、高校……少し離れたところに大学。
 今回は予知情報を参考に、取り敢えず高校に目星を付けて聞き込み調査を行なう事にした。
 そして此処は目星を付けた高校のひとつ――【都立清秀高等学校】の通学路だ。
 その通学路の片隅で、額に手をあてながら物思いに耽る猟兵がひとり。
「――凄惨な事件に事欠かないね、この世界は。惨い事件は苦手なんだけど、私の中の本能が、好奇心が事件の顛末を『知りたい』と思ってしまう……困ったものだ」
 声に出して呟く彼女の名は、楠瀬・亜夜(追憶の断片・f03907)。一見するとクールで格好良い物言いなのだが、何処と無く周囲からは少し浮いて見えてしまう。(猟兵の特異性によって、辛うじて周囲から怪しまれては居ないようだが)
「ねぇ瑠璃、あのおねーさん見た目は美人さんなのにひとりでブツブツ呟いてるんだけど大丈夫かな?」
「猟兵はもっと個性的な人も沢山居るし……気にしなくて大丈夫じゃない?」
 問いかける【緋瑪】に対し、四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)はスマホを弄りながら素っ気ない返事を返した。
 おかしさで言えば、私たちも客観的に見れば似たようなものだろう。
 瑠璃と緋瑪は2人で1人、いわゆる多重人格者。主人格である瑠璃が、分身のユーベルコードを使用することで緋瑪の存在を実態化させている状態だ。
「それじゃ、よろしく頼むよ。お二人さん」
 さて、お仕事といきますか。と、亜夜はふたりに声を掛けながら軽く身体を伸ばし。
「はーい! よろしくお願いしまーす♪」
「……よろしくお願いします」
 緋瑪と瑠璃の2人もそれに応え、三人は学生たちを対象に聞き込み調査を開始した。
 

●少女について/深度1
 まず最初にそれらしい情報を掴んだのは、オカルト記者を騙って生徒たちに聞き込みをしていた亜夜の方だった。

(予知の情報からすると一人が複数人を殺害。事件の発端としては複数人が一人を虐げた……つまり、いじめが関係するでしょうか?)
 となると、恐らく邪神に憑かれた少女は学生。そして彼女は付近の学校に通っていると仮定するべきだ。
 単に話を聞くだけでは、関係ない学校のトラブルばかりを引き当ててしまうかも知れない。
 亜夜の選んだ『オカルト記者』というカバーは、今回の聞き込み調査においては実に的確なチョイスだったと言える。

「――というわけで。流行りの都市伝説だとか、学校の七不思議みたいな話……何か心当たりはありませんか?」
『ええー、急にそんな事聞かれても……ねぇ?』
『私たち、別にオカルトとか興味ないしー 笑』
「ううん、そうですか。例えばお友達で、そういうのに詳しそうな子とか、興味ありそうな子は居ませんか?」
『あー、それなら……、……』

 尋ねていた女生徒が、あからさまに口を濁す。
 この反応は、どう考えても何か心当たりがあるのだろう。

「知り合いに、オカルト好きな子が……居るんですか?」
『えーっとぉ……友達、ではないんですけど……』
「良ければ、詳しく」
 ささやかながら、お礼もしますよ――と甘い言葉を囁いて。
 だったら、と女性とは心当たりについて語り出した。

 ――『望月さん』。

 望月・ハルカ、という名の女生徒。彼女がオカルトとかに詳しそう、という話で。それ以上は口を濁して、あまり詳しくは教えてくれなかった。
 亜夜は女性との口ぶりから、まるで腫れ物を扱うような、後ろ暗さを感じているかのような、そんな印象を受けた。
 仮にその『望月さん』がイジメを受けていたりしていれば、件の少女本人である可能性が随分と高まるのだが。
 あまり派手に動きすぎて、本人や周囲に話が伝わり状況が拗れてしまうのもやりにくい。
 亜夜はこの程度が引き際だと、女生徒にそれ以上何かを尋ねたりはしなかった。

「ご協力、感謝します。貴重な話を聞けて助かりました」
 そう言って亜夜は、感謝の証としてポケットから飴を取り出して女生徒に握らせた。
『えっ、お礼って……普通なんか商品券とかそういうのじゃないの!?』

 女生徒にブーブー文句を言われながら、亜夜は静かにその場を後にした。
 

●少女について/深度2
 亜夜の掴んだ情報は、すぐさま瑠璃たちにも共有された。
 名前が掴めたのなら話が早い。ネットでの情報調査は瑠璃の得意とするところ。
 瑠璃は自前の改造スマホで、学校の裏掲示板やSNSにて女子生徒関連のイジメや殺人事件、行方不明の話題や噂についての調査を行なっていた。
 それだけではない。警察のデータベースも含めハッキングして情報を洗い出そうとした。

「予知くらい派手にやれば、事件が既に起きてれば隠しきれないよね」
 器用にスマホを操る瑠璃の仕事振りを眺めながら、緋瑪が問う。
「殺人者になった事を諦めてるみたいだったしね……隠蔽する気はないみたい」
 ただ、どうやらまだ目立った事件は発生していない――少なくとも、警察やUDCがそれらの情報を掴んだという痕跡は見られない。
「つまり、予知の事件が彼女にとって初犯……という事になるのかしら。単に尻尾を見せていないだけかも知れないけど」
「んー、どうなんだろ? UDC絡みの事件じゃ何でもアリだしねぇ……」
 UDC関連の事件では、魔術的隠蔽・記憶操作・洗脳なども平然と行なわれる。一般的な犯罪と同列に扱うのは危険だろう。
 だが勿論、受けた印象や状況証拠を判断材料のひとつとして頭に入れておくのは良いことだ。

 そんな話をしながらも、調査は続く。
 瑠璃はSNSの発言を辿り、複数の情報源から望月・ハルカに関する情報を拾い集める事に成功した。
「間違いない。望月さん、どうやらイジメを受けているみたい」
「わー、いよいよもって怪しいねー」
「それじゃ、ここから先は緋瑪の仕事だよ」
「はーい♪」

 緋瑪はスキップしながら男子生徒に声を掛け、甘い手管で情報を聞き出す。
 ものの数分で情報の裏を取ってきた緋瑪は、瑠璃に「褒めて褒めて♪」と催促した。
 

●少女について

 名前:望月・ハルカ
 年齢:16歳
 都立清秀高等学校に通う2年生
 特定の女子グループと不仲になり、イジメにあっている模様
 父・母・娘の三人家族、両親ともに健在
 最近、少しオカルトにハマっているらしい(詳細不明)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シェーラ・ミレディ
【WIZ】
僕はUDC組織とはほとんど接点はないのだが、だからと言って陰惨な事件を捨て置けるほど薄情でもない。
前途を祝福されるべき子供、少女が、目を覆いたくなるような惨劇を引き起こすとあれば余計に、な。

随分怪しげな薬だが、このようなものが出回っているのなら、何かしら噂になっているのではないだろうか?
繁華街等をまわり、少女と同じ年頃の子供に声をかけ、コミュ力、言いくるめ等を駆使して情報を集めよう。
──僕の容姿は目立つ。
嗅ぎ回っている者がいると知れば、販売元の方から出向いてくれることもあるだろう。
そうなれば、更に詳しい情報を得る好機だ。多少痛い目に合わせてでも口を割らせるぞ。

※アドリブ&絡み歓迎


九泉・伽

猟兵化の切欠が邪神儀式
体の持ち主人格は裏側へ
儀式以後宿った『俺』が食う為情報屋
ただし義務感なしヘルプは気紛れイリーガル

※絡みアドリブ歓迎


着崩しスーツに落ち窪んだ目
シケモク咥えた投げやり男を演ず

アングラ路地裏ぶらつき薬のバイニン待ち
復讐とか力が欲しいかとかそういう奴ね
食らいつけば幸い
話にのって薬をもらおうとする
すぐに飲めと言われたら「目の前でバケモノになったら困るでしょ?」と言いくるめ
襲う部屋が指定されたら貴重な情報
その部屋を借りるか持ち主を洗い他の物件も把握する
その何れかで予知の惨劇が起るかもしれない

薬を貰えなくてもバイニンの顔と名をUDCで調査
案外どこぞの製薬会社の営業さんだったりしてね?



 CASE.2 薬物について

●Introduction
「さて、そんじゃ俺たちはおクスリの調査と行こうかね」
「了解だ」
 九泉・伽(Pray to my God・f11786)とシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)のふたりは、互いに予知で少女が口に含んでいた怪しげな『薬』に目を付けて、その出所を探るべく繁華街を中心に聞き込み兼オトリ捜査をすることにしていた。
 とは言え、かたや26歳の投げやり男と、かたや人形と見紛う美貌を備えた15歳の少年(事実、人形なのだが)。ふたりで一緒に行動するには少し不自然が過ぎた。
 美人局をするにはちょうど良い組み合わせかも知れないが、シェーラも猟兵であり腕は立つ。ならばやはり、情報は共有しつつそれぞれ別ルートで調査を進めるのが効率的というものだ。
「俺はオトナ側、シェーラくんは学生側。件の少女は学生みたいだったけど、薬が学生だけに広まってるとは限らないしねぇ」
「それはそうだ。僕たちは『薬』に関してまだ何も知らない。怪しげな薬である事は確かだが、一体どんな薬なのだろうね?」
「さぁねえ。飲むとUDCの力が手に入るとか、そういうのじゃない?」
 その辺りは、伽もシェーラも適当な予想をするしかできなかった。
 なにせ手元にある情報は、少女が何かしらのカプセル剤を飲んでいたという話だけ。最悪、ただのサプリメントと言う可能性だってゼロではないのだ。

「んじゃ、お互い頑張りましょ」
「ああ。では後ほど」
 ふたりは挨拶を交わし、それぞれの調査へと向かった。
 

●薬について/深度1
「あんな怪しげな薬、出回っているなら何かしら噂になっていておかしくはないと思うのだが……」
 シェーラは繁華街を歩き、学生を中心に聞き込みをする。
 十中八九、非合法な薬だ。そう簡単に網に掛かるくらいなら、警察やUDCがとっくに摘発しているか、最低限何かしらの情報を持っていてもおかしくはない。
 出回り始めたのが最近なのか、売人が用心深いのか、少女が独自のルートを持っているのか。だが少女が最近まで一般人であったと仮定すれば、きっと一般人でも接触し得る範囲に入手先が存在しているはずだ。
「――そうか、ありがとう」
 シェーラはかれこれ何人もの学生に話を聞きながら、地道に『餌』を蒔いていた。

 自分が金持ちの御曹司であること。
 スリルを求め、薬物に興味を持っていること。

 シェーラは学生たちに聞き込みをしながら『学生たちのバック』に、『販売元』に対し自分を売り込んでいた。

(──僕の容姿は目立つ。嗅ぎ回っている者がいると知れば、販売元の方から出向いてくれることもあるだろう)
 そうなれば、更に詳しい情報を得る好機。──僕の容姿は目立つ。
嗅ぎ回っている者がいると知れば、販売元の方から出向いてくれることもあるだろう。
そうなれば、更に詳しい情報を得る好機。売人とさえ接触できれば、後は実力行使でどうとでもなる。

『なぁ兄ちゃん、アンタ何か探しものしてるみたいだな。良ければ話聞くけど、一緒に来るか?』
 シェーラに声を掛ける、キャップを目深に被った若い男。
 
 ――釣れた。

「それは是非! よろしくお願いします」
 にこ、と作り笑い。何も知らない世間知らずの御曹司を演じながら、シェーラは男の後ろをついていった。
 

●薬について/深度2
 着崩しスーツに落ち窪んだ目。伽が演じるのはシケモクを咥えた投げやり男。

 ――そう、演じている。

 だって主人格はあくまで『彼』なんだし。だったら『俺』の存在なんて演技みたいなもんでしょ。
 さておき。伽も紆余曲折を経て、薬の売人と接触する事には成功した。

 薬物の名前は『パンドラ』。
 効能は幻聴や幻覚。いわゆるサイケデリック系だとか幻覚剤と呼ばれる類のもの。
 脱法ドラッグ。法的にはギリギリセーフという謳い文句で最近出回り始めた代物らしい。(真偽の程は定かではない)
 値段も比較的安価。尤も、最初は安価で売り捌き徐々に釣り上げていくのが売人の常套手段ではあるが。

『変にキメると悪い方向にラリっちまうから、最初は少量、気分を盛り上げながら飲むと良いぜ』
「ふぅん……」
 思った以上に容易く現物が手に入ってしまった。
 伽は受け取った『パンドラ』をポケットに仕舞いながら売人に尋ねる。
「幻覚以外に、こう……人外の力が手に入るとか。そういうのはないの?」
『アンタやっぱ薬でもキメてんの? さっきも言ったけど、別にそんな特別な効能はねぇよ。そんな漫画の中のドラッグじゃねえんだからさぁ……』

 ――そんな真っ当な代物には思えないんだけど。

 伽は売人の顔と名をしっかりと覚え、その場を後にした。
 

●薬物について

 名称:『パンドラ』
 効能:幻覚・幻聴
 シェーラ・ミレディ、九泉・伽の両名の活躍によってサンプルを入手。
 学生から大人まで幅広い層に、比較的安価で出回り始めている模様。
 最近新たに出回り始めたばかりの商品で、警察やUDCもまだ情報を入手できていなかったようだ。
 実態の把握により、より具体的な調査に踏み込みやすくなった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

弦切・リョーコ
いじめというのは疎外されるということかね。
世界から見放されたと感じるのは大げさすぎるが、彼女の「世界」の何処にも支えや救いがなかったということか。
ま、同情はするが容赦はしない。…しかしできれば事が起こる前に突き止めたいものだね。

WIZで判定
予知からすると帰る場所がないというなら自宅でない、何人か集まれる空間。学校の教室か倉庫か、人目につかない空間なんだろう。
【世界知識】でLINEなどを知っている筈なので近隣の学生の使うSNSに【ハッキング】してそういう所に集まる相談してる情報を集め仲間に展開する。他、名簿情報等も漁る。必要なら不本意だが【目立たない】ようにして潜入する…中学生くらいに見えるだろ



 CASE.3 『望月ハルカ』について
 
●Introduction
「いじめというのは、疎外されるということかね」
 弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)は、自分よりもずっと年若い少女の境遇について思いを馳せていた。

 世界から見放されたと感じるのは大げさすぎるが、
 彼女の「世界」の何処にも支えや救いがなかったということか。
 ま、同情はするが容赦はしない。

「……しかし、できれば事が起こる前に突き止めたいものだね」
 恐らく、事件は未だ起こっていないのだから。
 上手くすれば少女が人であるうちに助けられるのではないか――そう思う気持ちもあれど、安易に楽観できるほどリョーコはロマンチストではなかった。

 まずはネットで下調べ。電脳魔術師であるリョーコにとってハッキングなど朝飯前。
 SNSの調査などは瑠璃が既に行なってはいたが、情報を探る人間が違えば別角度から新たな情報を掴めるかも知れない。
 それが終われば直接現地へ。望月ハルカの足跡、人となりについて少しでも知ることができるだろうか。
 

●『望月ハルカ』について/深度2+
 唐突だが、弦切・リョーコは情報処理能力に特化して作られたスペースノイドの実験体。身体機能は最低限で成長を抑止しており子供並みの体躯しかないという。

 そして弦切リョーコ(31)は現在、セーラー服に身を包んでいた。

「不本意だが、仕方あるまい……」
 これも効率を重視した結果だ。猟兵の特殊能力により、おかしな格好をしていても違和感を持たれる事がないとは言え。それでも潜入調査において偽装はとても大事な事だった。
「取り敢えず教室や倉庫、人目につかない空間を一通り探ってみよう」
 それぞれ写真などに撮って。具体的な画像を見せれば、予知情報と擦り合わせて裏が取れる可能性もあるだろう。

 2-Bの教室。望月ハルカの所属クラス。

 学校のデータベースを調べたところによれば、どうやらハルカはここ数日学校を休んでいるらしい。
 生徒たちの間ではイジメについて多少なり話題になっているというのに、学校側のデータベースにはイジメに関する情報が一切無い。
 教師たちは見て見ぬふりをしているのか、それとも本気で状況を把握していないのか、そこまでは判別できなかったが。
「ここが望月ハルカの座席、か……」
 リョーコは机の角を撫でながら、ぼそりと呟く。
 その机には、よく見ると消された落書きの跡が、残って――
「いや、違う! これは――!!」
 消された落書きの痕跡、それはイジメによる悪口などではなく。

 ――『魔方陣』。

 リョーコにUDCアースの魔術に関する知識はない。
 だがそこに、ユーベルコードやオブリビオンにも似た何か。『異なる世界の法則』が存在している事だけは感じ取れた。
 それが意味する事は、つまり。
 この消された魔方陣は、落書きでも紛い物でもなく、『本物の魔術』ということだ。

「望月ハルカ……アンタは一体、何処でこんなものを」
 リョーコの問いに答える者は、誰も居ない。
 

●望月ハルカについて

 年齢:16歳
 都立清秀高等学校に通う2年生
 特定の女子グループと不仲になり、イジメにあっている模様
 父・母・娘の三人家族、両親ともに健在

 ×【最近、少しオカルトにハマっているらしい(詳細不明)】
 ○【最近、魔術を身に付けたらしい(詳細不明)】
 

成功 🔵​🔵​🔴​

パーム・アンテルシオ
【2】気味
何度もUDC関連の事件には関わっている為、顔見知りの職員がいる…程度
頭は良くもなく悪くもなく、利口ではあるものの聡明と言うには一歩足りない、そんな平凡さ

虐げていた相手が力を得たから、仕返しされた。
因果応報。そういう事だよね。
…そして私達は、仕返しの仕返しをする。人として。人殺しを、殺す。
いつか因果は、私達にも回ってくるのかな…なんてね。ふふふ。

●WIZ
闇雲に動くよりは…それっぽい所を重点的に探してみるよ。
見られたら、大事になるだろうし。人気のない場所が、一番怪しいよね。
廃墟とか、路地裏とか。あとは…下水道、とか?
ユーベルコード…二人静火。
…私は入りたくないから…代わりに、行ってきて♪



CASE.4 予知された事件現場
 
●Introduction
「イジメ、かぁ……」
 仲間の猟兵たちからの情報を受け取り共有しながら、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)は今回の事件について少し考えごと。

 虐げていた相手が力を得たから、仕返しされた。
 因果応報。――そういう事だよね。

「……そして私達は、仕返しの仕返しをする」

 人として。人殺しを、殺す。

「いつか因果は、私達にも回ってくるのかな……なんてね。ふふふ」

 弱肉強食。狩るか狩られるか。
 私たちはその螺旋から、きっと抜け出すことはできないのだ。
 

●予知された事件現場/深度1
「闇雲に動くよりは、それっぽい所を重点的に探したいところだけど……」
 パームが調査しているのは、予知された事件現場の特定。
 その場所さえ特定する事ができれば、待ち伏せるだけで望月ハルカと接触する事ができる。
 あまり派手に動くと場合によっては予知の内容から未来が大きく変動する可能性もあるので判断は難しいところだが、情報が多いに越したことはない。
 無論、未来が予知からズレたらアウト……という訳ではなく。予知がアテにならずとも最善を尽くすより他ない訳だが。
「見られたら、大事になるだろうし。人気のない場所が、一番怪しい……かな?」
 とは言うものの。
 先の情報により、ハルカは魔術を扱える事が分かっている。
 もしかしたら、洗脳や記憶操作、人払いの類の魔術さえ扱う事が可能――かも知れない。
 そもそもハルカや被害者の少女たちは普通の学生に過ぎないのだから。何処か貸し切った屋内などに入り込んでしまえば、街中であろうと犯行現場自体は人目につかない筈だ。
「……そうだ!」
 なにか閃いた様子で、パームはユーベルコード『二人静火』を発動させる。
 呼び覚まされる消えた灯火。黒い炎の狐の親子が、その場に姿を顕した。
「警察犬……もとい警察狐。魔力の痕跡を探せば、現場でなくとも何かしらの手掛かりには辿り着く!」
 パームの期待に首を傾げる狐たち。だって我々、基本は戦闘用に生み出されてますから。

「でもね。例えば下水道とか、私は入りたくないから……」

 だからお願い。代わりに、行ってきて♪

 誘惑(276)のおねだりに負けた『二人静火』は、魔力の痕跡を求めて街をぴょこぴょこ駆け巡るのだった。
 

●予知された事件現場

 魔力の痕跡を辿り、事件が発生しそうな区域を絞り込む事に成功。
 UDCのものと思しき魔力の反応は、繁華街を中心に観測された。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

チェイザレッザ・ラローシャ
【1】
あたしが猟兵だからって、事務職を現場にまで引っ張り出すなんて。
まあいいわ、仕事だも……

なんであんた(鳴宮)がここにいるのよ……

【WIZ】
ともかく調査よ。
予知に出てきた情報で調べやすいものって言ったら『あの人』と『追加のお薬』かしら。
教団関係で似た案件あるかデータベース漁って見るわ。
そうね、関係ありそうな事案も合わせて調べるわ。

で、この地域周辺で活動歴のあるやつリストアップしたけど
……地道に探すかぁ。

見つけたら任せるわ。
ほら、あんたこういうの得意でしょ。
今回はサポートするからさっさと情報吐かせなさいな。
え?痛い目会わせなきゃ拷問にならないでしょ。ほらゴー。
始末書?……治すからいいわ!ゴー!


鳴宮・匡
%
【2】

元UDC組織職員、現フリーランス
退職後も要請に応じて捜査協力等行っている

なんで荒事以外で駆り出されてんだ俺……
まあいいや、受けた以上はやるしかねーか

お、チェイザじゃん
なんでって……仕事だからだけど。そっちもだろ?
丁度いいし適当に手分けしようぜ

UDC組織の方からの情報は任せておくか
こっちもスマートフォンでネットの噂やら調べてはみる
組織の方の情報と合わせればそこそこ精度が上がるかな
あ、薬の出元に限らず、事件に関係ありそうな話があれば教えてくれ

……え、吐かせんの俺なの
いやいいけど……俺荒事しかできないぜ?
……いいのかよ
まあ、殺さない程度にやるか

あ、これ無関係のヤツだったら始末書だけど大丈夫?



CASE.5 『パンドラ』

●Introduction
「あたしが猟兵だからって、事務職を現場にまで引っ張り出すなんて」
 人使いの荒い組織に対し、チェイザレッザ・ラローシャ(落霞紅・f14029)は深い溜め息を吐いた。
 頭では理解している。現場は人が足りていないし、猟兵でなければ本格的な『動き出してしまった』事件に対処をするのは難しい。
「まあいいわ、仕事だも……」
 と、言い掛けて。現場にて遭遇した意外な顔に、チェイザレッザは一瞬言葉を失う。
「お、チェイザじゃん」
 よっす、と穏やかな顔で挨拶をするのは元UDC組織職員、現フリーランスの鳴宮・匡(凪の海・f01612)。チェイザレッザとは昔からの顔馴染み。
「なんであんたがここにいるのよ……」
「なんでって……仕事だからだけど。そっちもだろ?」
「それはそうだけど」
 しかし。バイオレンスと言えば鳴宮、鳴宮と言えばバイオレンス――そんな印象を抱いていたせいか、戦場以外のこうした地道な調査で鳴宮の姿を見掛けるのはちょっとした違和感があった。
「それはこっちの台詞っつーか。依頼したのはお前んトコの上司なんだからそっちに文句言ってくれよな」
「別に文句は無いけど――」
 無いけど、純粋な疑問として。
 こいつ(鳴宮)に普通の事件の調査……できるの?
「ほら、丁度いいし適当に手分けしようぜ。組織の情報とかこっちに回せよ」
「え、ええ……、そうね」
 上の空で返事をしながら、チェイザレッザは相棒の暴力装置を捜査にどう活かすべきか頭を悩ませていた。

 ――仕事が敵組織へのカチコミとかなら、これ以上頼りになる助っ人は居ないんだけど。
 

●『パンドラ』について/深度3
「で、この地域周辺で活動歴のあるやつリストアップしたけど……」
「流石に俺に調べられる情報の範囲で、目新しい情報は見つからないな」
 移動がてら組織のデータベースや新着の情報、ネットでの噂などを漁り情報の整理をしていたふたり。
 基本的には他の猟兵たちの調査内容以上の情報は拾えず。チェイザレッザは仲間の情報を元にこの周辺で薬物の取引きなどが行なわれていそうな場所や、人物を絞り込んだ。

 魔術的な痕跡が稀に確認されるという繁華街の、路地裏。
 ふたりの目の前には、薬の売人……と思しき人物が1名ほど転がっていた。
「ほら、あとは任せるわ。あんたこういうの得意でしょ? 今回はサポートするからさっさと情報吐かせなさいな」
「……え、吐かせんの俺なの」
 思わぬ仕事が回ってきて、鳴宮はチェイザレッザに聞き返す。
「いやいいけど……俺荒事しかできないぜ?」
「え? 痛い目会わせなきゃ拷問にならないでしょ。ほらゴー」
「……いいのかよ」
 まあ、殺さない程度にやるか。
 過激派の相方にツッコミを入れつつも、鳴宮は鳴宮で行動に一切の躊躇いがない。
 目の前のやり取りに「ヒッ……」と小さく呻いた薬の売人(仮定)の指を、挨拶代わりにペキ、と折る。
『っっがあああああああ!!』
「あー、そんな訳でさ。話は聞いてただろ?(ペキ) 俺ら今、『パンドラ』ってクスリについて調べてるんだけど、心当たりはある?(ポキ)」
 表情ひとつ変えず、道順でも尋ねるかのような日常的な態度で尋ねる鳴宮。その間も1本ずつ、売人(仮定)の指を折っていく。
「知ってたら早めに吐いた方がいいぜ。時間と指の数は有限だからな……あ、チェイザ。これ無関係のヤツだったら始末書だけど大丈夫?」
「始末書?」
 チェイザレッザは少し考える。それは相手への気遣いと言うよりは、単純に始末書の労力に関して。
「……治すからいいわ! ゴー!」
「あいよ」
 治すからオッケー、記憶を消せばセーフは危険思想だと鳴宮は考えたが、敢えて口には出さず。
「それでさ。『パンドラ』ってアレ、本当に普通のクスリなの? 例えば――」
『っはぁ、はぁ……ううっ、分かった、話す……話すから!! 頼む、それ以上折らないでぇ!!』
 淡々と骨を折り続ける鳴宮に、もう逃れる術はないと感じたのか。「畜生、こいつらイカれてやがる……」と呟きながら、売人は知っている情報に関して洗いざらい話し始めた。

「……それじゃ、売るターゲットに関しては別段指定されてない訳だ」
『あ、ああ……少なくともアンタらの言うような、“復讐”だの“力が欲しい”だの、そんな話は知らねえよ」
 効能についても幻覚や幻聴を見るのが基本、依存性も普通。
 売人が知っているのは仲間が得た『パンドラ』の情報と完全に一致してる。
『だから邪神だの何だの……ハハッ、そりゃラリった奴の中にゃ急にカミサマがどうこう言い出したり、ブツブツ会話し始める奴も居るけどな』
 ただ、あまり薬物を過剰に与えすぎて客に壊れられても困る。故にそういった客に関しては上に報告し、あまり過剰に薬を与えるような事はしてないそうだ。
 あくまでも薬物の中ではカジュアルな、初心者向けの手頃な商品――そういった触れ込みで売り出しているらしい。
「ふぅん……」
 話を聞きながら、鳴宮は何となく『パンドラ』の正体に勘付き始める。それは同じく話を聞いていた、チェイザレッザも同様だ。
「どう思う? チェイザ」
「そうね、話だけ聞けば普通の薬物みたいに聞こえるけど」

 普通の薬物。
 例えば『アヤワスカ』と呼ばれる幻覚剤は多くの民族が服用し、医療やシャーマニズムとも深い関わりを持つという。
 『マジックマッシュルーム』と呼ばれる幻覚効果を持つキノコの類も、海外では魔術儀式に使用されたと言い伝えられている。

「とりあえず『パンドラ』の仕入先とか。おかしな客の報告とか、その辺を抑えちゃいましょ」
「了解。つっても、改めて痛めつける必要は別にないよな?」
『は、はいぃ!』

 ふたりは売人に洗いざらいの情報を吐かせた後で、彼を当局へと引き渡した。
 

●『パンドラ』について

 効能:幻覚・幻聴
 最近新たに出回り始めたばかりの薬物。
 売人たちは普通のクスリと認識しながら販売。
 特に洗脳など魔術的な処置を施された形跡はなし。
 幻覚や幻聴の酷い客に関してはその旨を報告し、
 販売量を制限するよう義務付けられているようだ。

 新たに『パンドラ』の仕入先などに関する情報を得た。
 この調子で行けば、出所に関してもう少し詳しく探ることができるかも知れない。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

奇天烈・モクレン

何度か邪神の予知をしており
UDC組織に情報屋として観測者の顔を持つ


【SPD】
さてどうしたもんかな
周辺区域の何処かで事件が起こるのは確定してるから、まずは情報の洗い出しから。
俺達がギドの見た予知から読み取れるのは――
変異してしまったのは少女だってこと
被害者が複数いること
場所が室内だってこと
協力者と思われる薬?を提供した人物がいること
この4点くらいか。
衣が光ってるのも気になるけど……
特定には至らないだろうから後回しで!

少女の言動から見るにこの子は虐められてたのかな
懇意のUDC組織と連携して周辺地域に学校がないか探してもらうか!
下校中の生徒から虐められてる女の子がいないか聞けるといいんだけど

😘


五百雀・斗真

WIZ

調査の仕方はどうしようかな…
ちょっとファーストフード店に入って
予知の光景について自分なりに思った事を整理しよう

薄暗い室内ってことはどこかの建物だよね
そこで行われてたのはかなり…な事だったし
叫び声とか凄かったと思うから
一般人が利用してる建物じゃないような気がする
部屋に防音が施されてなければ、だけどね(汗

他に気になった点は、針で縫いつけて…とか
追加の薬がどうとか言ってた部分かな
二つとも病院や研究所に関連してそうで気になってる
傷を縫う時、針を使うし、薬も無関係とは思えないし…
本当に勘でしかないけれど
この地域で閉鎖された病院や研究所をスマホや役所で調べよう
何か掴めるといいんだけど…どうかな

%



CASE.6 邪神

●Introduction
 奇天烈・モクレン(破綻・f00754)と五百雀・斗真(人間のUDCエージェント・f15207)のふたりは、取り敢えず近場のハンバーガーショップにて腰を落ち着けている。
「ひゃぁ~~、アンタよく食うねえ……」
「……よく言われる。【大田さん】の分もあるからなのかな?」
 大田さん――斗真の宿すUDC。実際にそのせいで大食いなのかは不明だが、斗真は山のように積まれたハンバーガーを黙々と平らげている。
「さてどうしたもんかな」
 手元にノートを広げつつ、モクレンは予知の情報や仲間の得てきた情報の洗い出しを始めた。
 

●邪神について/深度2

 予知で得られた情報は、

 ・変異してしまったのは少女だってこと
 ・被害者が複数いること
 ・場所が室内だってこと
 ・協力者と思われる、薬を提供した人物がいること

 これらの情報と仲間が得た情報を擦り合わせると、

 ・変異してしまったのは望月ハルカ
 ・被害者は恐らく、ハルカを虐めていた同級生
 ・場所が室内(それは恐らく、繁華街に存在する)
 ・協力者と思われる、『パンドラ』を提供した人物がいる

 となる。

「室内って言うのは僕も思ってたよ。薄暗いって言ってたもんね」
 モクレンのまとめた情報に対し、斗真も同意を示す。
 予知で行われてたのはかなり、口にするには憚られるような事だった。
 叫び声なども響くであろう事を考えると、よっぽどの防音が施されているでもない限りは一般人が利用してる建物ではない――と斗真は推察していた。
「だよねー。少なくともある程度貸し切りにできるような空間だとか、特別な施設……まぁ、教団のアジトとか言われちゃうとどうしようもないし、特定するのは難しいよな~~」
 くぅー、とモクレン頭を掻いた。
「あと僕は、針で縫いつけて……って言ってたのも気になってたんだ。薬とか針とか、病院か何処かじゃないかと何となく思い浮かべてたんだけど」
 斗真は自分の気になっていた点をモクレンにも伝えてみる。考える人間が違えば、着眼点もまた違ってくるだろう。
「『生きたまま針で縫い付ける』……だっけ。仮に手元に針があったとして、一応は望月ハルカって普通の女子高生なんでしょ? 医療知識も無しに縫い付けとか、するのかなぁ」
 それに病院が現場であれば、それこそ利用する一般人が多い。
 魔術的な隠蔽が可能だとしても、大々的に犯行を起こすにはやや不向きなように思えた。
「俺の方はさ、衣が光ってるのが気になってたんだよね。何かブワ~~~って光るとか言ってなかった?」
「そういえば、言ってたかも」
 モクレンの抽象的な表現をもう少し正せば、正確には『ぼう、と淡い光りを放つ』であったが。
「これってさー、ちゃんハルカが電飾の付いたステージ衣装を着てるとかそういうのじゃない訳じゃん? 多分クスリと連動してる訳だから、衣の方も邪神に関連するアレって事でしょ」

  光り輝く衣。それは実体……というよりは、霊的な何かである可能性が高いだろうか。
 例えばダークセイヴァーで暗躍する『ゼラの死髪黒衣』。
 モクレンも先日、自身の担当事件として取り扱ったばかりのオブリビオン。それは『黒衣』を本体とする存在。

「つまり『衣』からUDCの正体が探れるかも知れない、ということ?」
「そゆこと。まー、特定は難しいかと思って後回しにしてたんだけど」
「いいね。調べてみる価値はあるかも」
 そう言って、ふたりはスマホを取り出しグリモアベースのデータを検索し始めた。

 グリモアベース
 新着の報告書
 世界は【UDCアース】にて絞り込み

「ねえ、これ……」
 斗真が気になる報告書を見つけ、モクレンに見せる。
 それは『教団員から特定のオブジェクトを守りきる』といった内容の依頼。
「光る衣……そして、『針』!」
「特定はできないけど、可能性は――あるかも知れないね」
 UDCは、特定条件を満たさぬ限り繰り返し世界へと現出する。
 しかも一度現れたUDCが再発生する確率は非常に高く、特に新たに発見が報告されたUDCであるほど同時に多発する傾向が強い。

「『磨羯卿』カプリコーン。【自らが強大な神格性を与える神であると召喚者に諭し、偉大なる指導力を与える】……か」
 斗真は報告書の情報にひととおり目を通す。
 『針』と『衣』、結びついたふたつの点。
 確実とは言えぬまでも、今回の事件に関わる邪神の正体は高確率でこいつだろうと目星を付けた。
 

●邪神について

 報告書にて確認できた【『磨羯卿』カプリコーン】と特徴が一致。
 召喚者に偉大な指導力を与えると言われている。

 この情報により、猟兵たちはUDCに関する事前知識を得た。
 (3章の判定に+10%のボーナスを加算)
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カタラ・プレケス
%
【2】(世界が違うので文化面などを組織で教えてもらっている)

イジメか~…些細なすれ違いか何らかのカーストに触れたか、どれにしたって下らない話だね~
とにかく『お薬』とやらを調べようか

【天動観測】と【地動観測】による占星術で薬の生産場所
または『あの人』がどこに居るのかを占う
生産場所を探れたら【幻惑偽音】による「誘惑」と「催眠術」で
いつから作っているか、現物はあるかなどを聞き出す
現物が手に入ったら【清呪神薬】や組織に協力を仰いで薬の分析をする

…教団なんて頭の螺子をどっかに忘れてきた人が多いけどさ~
こんなので召喚しようとか本気で頭がおかしい。



CASE.7 『パンドラ』/厄災

●Introduction
 カタラ・プレケス(呪い謡て夜招く祈りの鳥・f07768)は仲間の入手した『パンドラ』の分析をすべく、UDC組織の研究室を訪れていた。
「どうも~、ちょっと場所お借りしますね~」
 研究室の職員に、のほほんと挨拶をするカタラ。これ差し入れです、とシュークリームなどぶら下げて。
 カタラは普段からUDC組織の人間とは、主にUDCアースの文化や常識などを教わるために懇意にしていた。たまに仕事を手伝い、異世界の知識――自分の持つ知識と交換条件……というほどドライな線引きではないが、まぁギブアンドテイクとして良い関係を築いていた。

●『パンドラ』について/深度4
「……教団なんて頭の螺子をどっかに忘れてきた人が多いけどさ~」
 こんなので邪神を召喚しようとか、本気で頭がおかしい。
 未だ薬の実体は掴めていない。しかし一般人にも広く流通しているということは、組織は一般人を丸ごと邪神の使徒にでもするつもりなのだろうか?

 ともあれ。毒や薬、呪詛に関する話はカタラも素人ではない。更に言えば、自身が呪われし里の御子。呪いの研究に関してはライフワークであり、降霊術の類にも明るい。
 カプセルから取り出した薬の粉末。それにちょんと指を付けると、そのまま舐めるた。
「毒性はあまり感じられないかな~……でもやっぱり微弱に、呪詛のようなものは感じるね。けど、なんだろうな~、薬物そのものに悪意のようなものはそれ程感じないんだよな~」
 ううん、と頭を悩ませるカタラ。
 同じく機械によって成分の分析を行なっていた研究員の報告によれば、恐らく調合に使われている材料については一般的に流通……とまでは言わないが、それなりのルートさえあれば入手は比較的容易なものばかり。
 成分に関しても、合法とは言い難いにしても一般的な『脱法ドラッグ』と近しいような、法のグレーゾーンを突くような際どいバランス。普通に摂取する分に、そこまで人体に甚大な及ぼすとは考えにくい内容のようだ。
「とは言えさ、やっぱり真っ当な代物ではないよね」
 薬そのものに魔術的な処理が施されているには違いないから。データ上は無害でも、服用を続ければ悪影響が……という事は十分にあり得る。
 引っ掛かるのは、魔術そのものの悪意が薄いこと。例えば服用者を洗脳してやろうだとか、身体を蝕み害してやろうだとか、そういった事を目的にしている感じはしない。
 むしろ逆なのだ。毒ではなく、薬でさえあるような。
「薬……あぁ、そっか」
 カタラは粉末を再び舐めてみて、ようやく確信に至る。

「これ、毒じゃなくて薬なんだ。服用者の霊的な感度を上げる為の、トランス状態に入りやすくする為の、そういった類の薬物なんじゃないかな~」

 幻覚や幻聴。それは必ずしも服用者の妄想の産物ではなくて。
 『本当にUDCが見えている』『本当にUDCの声が聞こえている』のだとしたら――?

「何となく糸口が掴めた気がするね。ふふ、ちょっと楽しくなってきたかも」
 教団の連中は頭がおかしいと思うけど、呪いの研究でテンションが上ってしまうぼくも結局は同じ穴のムジナ……なのかも知れない。
 もちろん、一般人だの女の子を食い物にするような連中と一緒くたにされたくはないけれど。
 

●『パンドラ』について

 ×【効能:幻覚・幻聴】
 ○【効能:UDCとの交神】

 最近新たに出回り始めたばかりの薬物。
 売人たちは普通のクスリと認識しながら販売。
 特に洗脳など魔術的な処置を施された形跡はなし。
 幻覚や幻聴の酷い客に関してはその旨を報告し、
 販売量を制限するよう義務付けられているようだ。

 隠された効能はUDCとの交神。
 幻覚や幻聴は、朧気ながら異界に存在するUDCの存在を感じ取っているから。
 適正のない人間にとってはただのドラッグに過ぎない。
 だが適正のある人間が服用すれば、降霊の類すら可能――なのかも知れない。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

境・花世
【1】

別件から帰ってきてすぐ緊急案件?
画面に映る上司からの指示は
労いもない無機質さ

まったく人使いが荒いなあと
端末片手に唇尖らせて

――まあいいや、仕事は果たそう
これがわたしを此の世に縛る
ただひとつの契約だから

エージェント仲間からの情報を
さらに補強するピースがないか探すよ
何か知っていそうな人物がいれば
甘く笑んで眸を覗き込み、
催眠術で詳しく口を割らせよう

得た情報はネットワークへ
集合して埋められていくピース
答えはもうすぐだ

不穏な、気配がする
邪神の、匂いがする
身に宿る花がざわめくままに
堪えきれずに街を駆け出して
いよいよ狩りを始めるとしようか

だって今週はもうとっくに超過労働なんだ、
早く終わらせないとね

😘



CASE.8 追跡

●Introduction
 境・花世(*葬・f11024)が別件の仕事から帰還するのとほぼ同時。
 まるで何処かに監視カメラでもついているのかと見紛うようなタイミングで、彼女のスマホに届く緊急案件のメール。
 気持ちの上ではこんなものを無視してベッドにダイブし惰眠を貪りたい……そう思っても内容をしっかりチェックしてしまうのが、彼女の社畜たる所以であろう。
 画面に映る上司からの指示は、実に淡々としたものだった。
 労いもない無機質さ。
「まったく、人使いが荒いなあ……」
 せめて最近流行りの「バカンス後にお仕事」的な内容であれば、もう少し心が休まるのに。
 無論、急ぎの案件だからこそ、わざわざこのタイミングでメールを寄越したのだろうとも言えるのだが。

 ――まあいいや、仕事は果たそう。
 これがわたしを此の世に縛る、ただひとつの契約だから。

●薬の製造元について/深度1
 花世が訪れたのは、UDC組織の取調室。
 そこには既に捕らえられた参考人――売人たちに指示を出していたという、仲介役の男がパイプ椅子に座っている。
 おつかれさま、と見知りのエージェントと挨拶を交わしながら花世は参考人の対面の席へと着いた。
「仲間が優秀だと話が早くて助かるな。もっとも、それでわたしの仕事が減るわけじゃないんだけど」
『あ……うあ、』
 眼の前に現れた美人(※花世のこと)が持つ、ある種の『異様』な雰囲気に男は呻き声を漏らす。
 彼にとって、その柔らかな笑みがいっそ不気味にさえ思えたのだ。きっと彼女は、目の前の自分のことなど見ていない。なにひとつ興味を持っていないのだと、そう思えた。
「そう身構えなくて大丈夫だよ。すぐに終わるから。ほら、わたしの目をご覧。いい子いい子、ふふ」
 花世は中腰で席を立ち、男の顔にそっと手を添える。
 まるで花の蔦がじわじわと絡みつくように。しっとりと、ねっとりと。少しずつ、男の意識は花世の桃色の瞳の内へと吸い込まれていった。

「それじゃ、知ってることを全部話してね」

 きみは何処から薬を仕入れたの?
 薬に関して何か知っていることはある?
 きみの雇い主はだれ?

『あ、う……ああ……』
 脳を蹂躙されるような。頭の中身を吸い尽くされるような錯覚。
 自分が自分でなくなるような。
 意識を保ったまま脳を掌握されるという事は、こうもおぞましい感覚なのか。

 男が話した情報に花世は満足げに微笑むと、「ありがとう」と礼を告げてそのまま取調室を後にした。


 得た情報を即座に仲間の猟兵へと共有し、花世は次の現場へと向かう。
 集合して埋められていくピース。
 答えはもうすぐだ。

 不穏な、気配がする。
 邪神の、匂いがする。
 身に宿る花がざわめくままに、堪えきれずに街を駆け出して。
 いよいよ狩りを始めるとしようか。

「だって今週はもうとっくに超過労働なんだ、早く終わらせないとね」
 

●薬の製造元について

 薬の製造元は、とある製薬会社である事が分かった。
 正確には小さな製薬会社を隠れ蓑にした研究所。
 無論、この時点で個人が薬物の卸売りをしているだけとは考えにくい。
 恐らく背後には何かしらの大きな組織や、邪教集団が関わっていると予測される。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

犬憑・転助
【2】

相棒の【御代燕三】と行動

カバー:小説家
ホラー、歴史、オカルト系の売れない小説家
いつも着物で出歩いている

苛められっ子のような学生を見つけては、薬について聞き込み
願いが叶う、強くなれる、復讐できる、そんな薬の噂を聞いた事無いか聞く
小説家の名刺渡しつつ、小説のネタの為に噂を集めててな、と

追跡や張り込みが必要な場合は【忍び足】【目立たない】の技能を活かす

怪しい奴や嫌な気配(【第六感】)を感じたらUC超広範囲嗅覚で敵か確認、または周囲に敵がいないか確認

燕三の作戦で俺がフォローできそうなら少しでも手伝って成功率を上げる
コロ助じゃねーって言ってるだろうが!

苦労人ポジは望む所
アドリブはご自由に


御代・燕三
%【2】
相棒の【犬憑転助】と行動。

カバー:小説家の担当編集者。清潔感あるスーツ姿。出来る男風。

UC「算術式:先見の章」を使用。
[目立たない]ように空や複数の学校に紙人形を放ち、苛められっ子を探す。手頃な学生がいれば追跡し何か呟いていれば聞き取る。その後、転助に共有

転助が聞き込みした後に付けさせ情報収集させる。
転助の見た目で怪しまれたり怖がられたら颯爽と現れ名刺を渡し、目線をあわせて礼儀をもって対応する。

また転助のUCで何かを発見した場合は、そちらの方角に先見の章で複数の紙人形を放ち視認を試みる。

怖がらせたら得る物も得られないでしょう。あなたの小説に何が足りないか考えてくださいね。

アドリブOK



CASE.9 少女の家庭

●Introduction
「んで、俺らはどうするよ?」
「そうですねぇ……」
 犬憑・転助(孤狼の侍・f06830)と御代・燕三(電算術師・f06444)のふたりは、聞き込みを前に作戦会議。
 転助は馬鹿ではない。馬鹿ではないが、粗忽者である。
 餅は餅屋。作戦は燕三へと委ね、自身はそれを全力でサポートする心積もりでいた。
「取り敢えず、薬物に関してはそれなりの数の猟兵たちが既に調査に向かっているようです。であれば我々は、少女――望月ハルカや、その被害者たるいじめっ子の少女らの動向を探りたいところですね」
 どちらが被害者かと聞かれれば難しいところではありますが、と燕三は続ける。
「そんじゃ、聞き込みか」
「そうですね。しかし……学校での聞き込みに関しては欲しい情報もあらかた得られたように思えます。 ――ならばいっそ、我々は望月ハルカさんの家を訪ねてみるというのはどうでしょう?」
「おお、そいつはなかなか面白そうだな! けど、急に訪ねて怪しまれねーか?」
 ふむ、と燕三は少し考え込んで。
「そうですね、聞き込み用に考えていた案ではありますが。転助さんが小説家、わたしが担当編集を装ってみるのどうでしょう。望月ハルカさんが投稿した小説が素晴らしく、弟子として我々に預けて欲しい……といった具合に」
「なるほど。ま、ダメならダメでそん時に考えりゃいーしな!」

 よっしゃ、行くか!と気合いを入れて。
 ふたりは望月ハルカの家を訪ねることにした。

●少女たちの行方/深度1
 望月ハルカの家庭は、都内にある集合住宅の一室。
 特別貧乏でもなく、裕福でもなく。聞いた限りではごく一般的な家庭環境……のように感じられた。
「そういや、部屋に誰も居なかったらどうすんだ?」
「その時はこっそりと忍び込みましょう。手段を問うような場合ではありませんし、何かしらの手掛かりを得れるならば重畳」
 そんな会話をしながら、インターホンを鳴らす。
 どうやら不在ということはなく、望月ハルカの母親と思しき人物がふたりを出迎えた。
「あー、すんません。怪しい者じゃないんだが……」
「はい。我々、こういう者でして」
 ぶっきら棒な転助に、すかさず燕三がフォローを入れて名刺を渡す。
 有名な出版社の名刺(当然、偽のプロフィールなのだが)。
 娘さんの書いた小説が素晴らしく、その才能に惚れ込んだ。彼女は本格的にプロを目指すべきで、今日はその事に関してご両親に相談させていただきたく訪ねた――といった内容の話をでっち上げる。
 無論、常識に照らし合わせて考えればどう考えても急な話だし不自然ではあるのだが、それはそれ。最悪、実力行使……は穏便ではないが、何かしら調査する手段は残されている。
 だがそんな考えも杞憂に終わり、ふたりは驚かれこそすれ怪しまれるような事は別になく、そのまま部屋の中へと通された。

「――そんな訳で、娘さんには文才があって。良かったら娘さんの未来を俺に預けて欲しいんだ」
『はぁ……うちの娘が、そんな。全然知りませんでした……』
 アレコレ会話を交えた感じでは、望月ハルカの母親に別段変わった様子と言うか、異常人物のような兆候は見られず。むしろ『普通の母親』という印象が強く感じられた。
 夫婦共働き。娘とは仲が悪い訳ではないが、特別親しいわけでもなく。
 最近、多少会話は少ないような気はするが、気になるほどの事ではない。
「娘さんの小説の、オカルト描写というか……こう、伝奇的な、魔術的な描写がですね、あー……若えのにめちゃめちゃすごくて、こりゃやっぱご両親の影響なんすかね、なんか娘さん昔から読書などよくされていたり?」
『いえ、全然……娘にそんな趣味があったなんて驚きです。小説を書いていたなんて事も初めて知りました』
 転助もしばしば危ういところを出しながらも、何とか情報を引き出そうと母親との会話を続ける。
「(おい、そろそろ誤魔化すのも辛えぞ!?)」
「(確かに、そろそろ頃合いでしょうか……)」
 燕三は転助が会話を続ける中、ユーベルコード『算術式:先見の章』によるユーベルコードの式を飛ばし、家の中に怪しいものがないか調査していた。
 そして望月ハルカの部屋にて……思わぬ光景を目にしたのだが、ここでは敢えて触れない。
「んじゃ、お邪魔しました……と。また今度、娘さんも交えて話をさせて欲しい」
「はい。よろしくお願いします。本日は急な訪問に対応していただき、ありがとうございました」
 そう言ってふたりは、望月ハルカの家を後にした。


「何か思ったよか普通だったな」
「……そうでしょうか」
 あっけらかんと告げる転助に対し、燕三の表情は晴れない。
「何か気になる事でもあったのか?」
「……見ますか?」
 そう告げて、燕三は転助に対し式神の視界を共有する。
 視界の先はもちろん、望月ハルカの自室。
「――っ!?」
 そこに広がっていたのは、ちょっと怪しい……といったレベルではない。

 締め切られたカーテン。
 作られた祭壇、捧げられし供物。
 床に描かれた魔方陣。

 別に専門的な知識があろうとなかろうと、誰がどう見ても怪しげな魔術様式。

「別段、母親に魔術的な洗脳などが施された形跡は見られませんでした。つまり彼女は、『純粋に気付いていない』。ひとつ屋根の下で暮らす娘が、虐めにあっていても。魔術に手を染めていても。それに全く気付く事すらなかった」
 それが特別、異な事かどうかは分からない。望月ハルカが、両親の前でどのような態度で以って過ごしていたのかも分からない。
 だか少なくとも、彼女の両親がもう少し娘に対して興味を持てていれば――魔術しろ虐めにしろ、何かしらの兆候くらいは気付く事ができていてもおかしくはない。
「ですが部屋の様子にしろ、隠す気も無かったんでしょう。どうせ気付きはすまいと、タカをくくっていたかのように感じられます」
「なるほどな。『帰る場所などもう無い』――、か」

 結局、望月ハルカの動向に関して掴むまでには至らなかったが。
 少なくとも彼女がどういった家庭環境で過ごしていたのか、その生活の一端を掴む事は出来たのかも知れない。
 

●望月ハルカについて

 年齢:16歳
 都立清秀高等学校に通う2年生
 特定の女子グループと不仲になり、イジメにあっている模様
 最近、魔術を身に付けたらしい
 家の自室には当たり前のように魔術の祭壇が存在していた

 父・母・娘の三人家族、両親ともに健在
 両親は共働き
 別段おかしなところが見られるような両親では無かったが、家族の交流は存外薄かったようだ
 娘が虐められている事、魔術に手を出している事にも一切気付かぬ両親
 それがハルカの疎外感を加速させた要因のひとつ――なのかも知れない。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花剣・耀子
%【1】
根を叩きましょう。
呪詛、薬の出所について調査を。

交友関係伝手というのも考え難いかしら。
自分からアクセスできるウェブサイトやSNS。
あとは声を掛けられた、とか。
自発的に貰いに行けるなら、そう深くは潜んでいない気がするのよね。
少なくとも窓口は、普通の学生でも触れられる場所にあるのでは。

該当地域近辺で、オカルト絡みのサークルやお店のウワサを探すわ。
怨嗟怨恨憂さ晴らし縁切り、呪殺。
誰にもバレず、復讐する手段。
そんな謳い文句で引っかかるものがあれば、直に接触しましょう。

めがねに三つ編み。気弱そうに。
虐めを苦にして、この状況から逃げる手段があれば、と。

何でもお支払いします。助けて頂きたいのです。


蜂月・玻璃也


UDCの下位組織、《土蜘蛛》。
特型異能対策室、室長の立場を利用して、資料室にある過去の調査記録やデータベースを調べる。

キーワードは「薬」だ。
怪しいのはやはり研究施設や邪教団体……。
薬物が入手しやすい場所として、病院。
子どもが出入りしていても違和感のない場所として、教育機関……。
人や物の出入りに焦点を当てて、街の「噂」やSNSとかも調べてみるか。

……。
薬、という言葉を前に思う。
目下調査に協力してくれている部下たち……
彼女らもまた、薬物によって組織に首輪をつけられている。
俺の立場は、あいつらの人生を容易く操れるものであること。
忘れちゃいけない。


星鏡・べりる

これまた面倒な調査だなぁ
うーん、それじゃ私は事件現場に当たりを付けておこうかな。

問題の子が何人か嬲り殺してる間に、声や臭いがあっても誰も来ない場所だと、学校とかどこかの施設じゃなさそうかな?
部屋の特徴とか、グリモア猟兵のおにーさん何か言ってたっけ。

とりあえず転送された場所の周辺の地図を見て、合致しそうな場所でも探そう。
特に分かりやすい特徴が無い部屋なら、定番の廃墟探しにしよっと。
廃墟なんて、そうそうあるものじゃないしね。
行った先に怪しい物が置いてたらラッキーって感じで。

まっ、この調査がハズレでも他の人がいい感じに見つけてくれるでしょ~
自販機でホットコーヒーでも買って、ブラブラと調査しよっと。


アレクシス・アルトマイア

UDC組織に雇われてたり連携したりで幾つかUDC関連の事件を解決しております
知人や戦友も多いです

彼女はまだ、戻れるでしょうか。
まだ、届くでしょうか。
……いえ、いえ。違いますね。
私達が、堕ちて行かせないと
見限ることなど、有り得はしないと
そう、教えて差し上げねば、いけませんね。

彼女を唆したものがいます。
無から術は生まれない。
過去から、何者かが彼女を、ハルカちゃんを引きずり落とそうとしています

「あの人」の正体を突き止めましょう。
教師?先輩?学校の知人、習い事の知人、
あるいは、ネットの知り合い。
薬を渡したのは誰か。

効率よく、皆さんと協力して調べましょう。
見つけた際には、罠に気をつけて、慎重に。



CASE.10 研究所

●Introduction
 花剣・耀子(Tempest・f12822)はパンドラの出所を探るべく、めがねに三つ編みをした気弱そうな少女を演じながら聞き込み調査を行なっていた。

「……はい。もうわたしどうすれば良いか分からなくて。こんな苦しみから逃れられるのなら、どんな事だって。なんだってお支払いします」
『へぇぇ……、そっかァ。だったらいいモンがあんだけど――』

 聞き込みも佳境、といったところで懐に忍ばせた仕事用のスマホが鳴動する。
 勿論、着信など無視をすれば良いのだが……そうも行かない。何故ならそれは、緊急案件を知らせる振動パターンであった為。

「す、すいません……少々お待ちくださいね」
『お、おう……』

 内心、よりによってこのタイミングで――とは思いながらも、耀子は売人の男から少し距離をとってひそりと電話に出た。

「すいません室長、今取り込み中なので折返し――」
「いや、こっちが優先だ。調査は切り上げて良い。……薬の製造元が判明した。今そっちに迎えを寄越してるから、合流してお前は現場を押さえに向かってくれ」
「えっ……あ、はい。わかりました」
「ん、何か問題でもあったか?」
「いえ、そういう訳ではないんですけど……大丈夫です。向かいます」

 そう答え、耀子は通話を切った。

『お、電話終わった? オトモダチ? それとも学校の先生とかかな?』
「あ、はい。そんなところです。はは……」
 さて、耀子にとっての目下の問題は。さしあたって用済みとなってしまったこの男をどうするかという事。
『苦しかったんだねぇ、お嬢ちゃん。分かるよ。まぁまずはさァ、お薬でも飲んで悪いことはパーッと忘れちゃおうよ』
「…………」
 馴れ馴れしく肩を抱いてくる売人の男。それが不快だとか、そういった話ではないのだが。対応を考えた末に耀子が取った行動は。
「えい」
「ぐはぁっ!?」
 耀子は売人の男に当身を喰らわせ、その場に昏倒させたのだった。
 

●薬の製造元について/深度2
「なるほど、耀子ちゃんはUDCに所属するエージェントさんなんですねっ!」
「ええ、そういうことになるわね。よろしく、アレクシスちゃん」
 UDC職員の運転する車に乗って、アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)と耀子のふたりは、パンドラの製造元――製薬会社を隠れ蓑にした研究所へと向かっていた。アレクシス、耀子の猟兵2名を中心に、UDCエージェントを十数名ほど伴って人手を補った形だ。

「彼女はまだ、戻れるでしょうか。まだ、届くでしょうか」
 アレクシスは小さく呟く。
 生殺与奪は自分たちの手に委ねられている。それは同時に「助けるのは困難である」と判断された事を意味していた。
 何故なら容易に助けられる状況であれば、「彼女を救ってほしい」と指示されるはずだから。
「…………」
 耀子は肯定も否定もせずに、その呟きを聞きながら黙っている。
「……いえ、いえ。違いますね」
「……?」
 アレクシスは続けた。
「私達が、堕ちて行かせないと。見限ることなど、有り得はしないと――そう、教えて差し上げねば、いけませんね」
「……そうね」
 そこでようやく、耀子は小さく微笑んだ。その言葉だけで、アレクシスがどんなに優しい人であるかが伝わってきた。
 甘さ、と言えばそうだろう。けれどその甘さは現実の見えていない甘さではなく、現実を見据えた上での甘さ。決意。
 自分はどうだっただろう。望月ハルカを助けようと思っていただろうか。諦めていただろうか。容赦なく、斬り捨てようとしていただろうか。
 ふと、アレクシス――目隠しをした彼女と、目が合う。
 彼女はこちらを見て、にこ、と笑い掛けてくれた。気付けば、普段は硬い表情ばかりのエージェントたちも、優しげな笑みを浮かべている。
 ……実際に望月ハルカを助けられるかどうかは別として。
 でき得る範囲でアレクシスちゃんの力になってあげたいと、耀子はそう思った。

「彼女を唆したものがいます。無から術は生まれない。過去から、何者かが彼女を、ハルカちゃんを引きずり落とそうとしています」

 彼女を唆したもの。

 ひとりは、恐らく『あの人』。
 ハルカちゃんにパンドラを与え、切っ掛けを作った人物。

 ひとりは、『磨羯卿』カプリコーン。
 ハルカちゃんに憑いて、彼女を惑わすオブリビオン。UDC。

 ふたりを乗せた車が、研究所の前へと辿り着いた。

「行きましょう、皆さん。罠に気をつけて、慎重に」
 まずは『あの人』の正体を突き止めましょう。
 悪人には相応の報いを。

 アレクシスと耀子、そしてUDCエージェントたちは、研究所の制圧作戦を開始した。
 
 

CASE.11 パンドラの匣

●Introduction
「なるほど、よくやった。お疲れ様。現場の後処理は他のエージェントたちに任せるとして、お前とアレクシスさんは取り急ぎ帰還しておいてくれ。疲れてるだろうに、済まないな」
 部下からの報告を受け、蜂月・玻璃也(Bubblegum・f14366)は労いの言葉を掛けた。
 ――玻璃也はUDCの下位組織、特型異能対策室《土蜘蛛》と呼ばれるチームの室長。
 さきほど研究所を押さえに向かった猟兵、花剣・耀子も彼の部下にあたる。

 はぁ……と取り敢えず安堵の息。現場は現場で胃が痛いものだが、こうして安全な場所から部下に指示を出すというのは、尚更に胃が痛む。

 研究施設は押さえた。
 もっとも、こちらの襲撃はある程度予測されていたらしく、めぼしいデータは持ち去られた後のようだったが……どの程度の収穫があるかは、現場のエージェントの家探し次第となるが。

「後は予知にあった事件の現場――だな」
 場所はある程度、絞られてきた。後はきっと優秀な部下がどうにかしてくれる……と期待しながらも。
 自分は自分で、UDC組織と猟兵たちのパイプ役。各種申請などの書類仕事やデータベースの閲覧などやらねばならぬ事が多かった。

 そして――。

「……薬、か」

 目下調査に協力してくれている部下たち。
 当人たちにその自覚があるにしろ、ないにしろ。彼女らもまた、薬物によって組織に首輪をつけられている。
 無論、薬の依存性に漬け込んでいるだとか、薬で無理矢理力を引き出しているだとか、そういう訳ではないけれど。
 俺の立場は、あいつらの人生を容易く操れるものであること。
 それを忘れてはいけない。

 定時連絡にはまだ少し。しかし逸る気持ちを抑えられず、玻璃也は事件現場を探る部下の元へと連絡した。
 

●予知された事件現場/深度2
『――おい、べりる。状況はどうなってる?』
 玻璃也から連絡を受けたのは、同じく《土蜘蛛》のメンバーのひとり。玻璃也の部下にあたる、星鏡・べりる(Astrograph・f12817)。
 彼女は自販機で買ったホットコーヒーを飲みながら、ぶらぶらと調査をしていた。
「ええっと、はい。頑張って調べてるけど、まだ特定は出来てませんね。特にめぼしい特徴も聞けてないから、手当たり次第の痕跡探しってなると時間が掛かりそうかな~……って」
 仕事の報告だからか、いつもより3割増しで丁寧に応対をするべりる。
 半分くらい友達感覚な扱いにも慣れてしまったのか、玻璃也は黙って「そうか……」と頷く。
『分かった。その調子で引き続き調査を続けてくれ。……いや、べりるの事だから適当にサボってお茶でもしてるんじゃないかと少し心配してたんだが、任務となると存外真面目なんだな。安心した』
 玻璃也のその言葉に、べりるは思わず飲みかけのコーヒーを噴き出しそうになりながら。
「あはは、やだなぁ室長。任務とプライベートを一緒にしないでよ。バッチリ働いてるに決まってるじゃん。あ、ちょっと忙しくなってきたから切るね」

 ピッ――。

 通話を切り、ふぅぅ~……と深く息を吐き出す、べりる。

「何気に事件も大詰めかぁ。真面目にやろ」
 飲み終わったコーヒーの缶をゴミ箱に捨てて、べりるは事件現場の絞り込みを再開した。

 場所は繁華街。
 問題の子が何人か嬲り殺してる間に、声や臭いがあっても誰も来ない場所。
 廃墟や廃ビルの類はそんなに無くて、あっても数は限られてる。今のところ、当たりは無し。
 建物内で人の出入りが少ない場所。貸し切れる広い空間。
 地上階……よりは地下の方が怪しいのかな。何となく。

「まぁ、真面目に探すって言っても結局は足で稼ぐしか無いんだけどさ~」
 行った先に怪しい物が置いてたらラッキーって感じで。
 まっ、この調査がハズレでも他の人がいい感じに見つけてくれるでしょ~、と半ばお気楽。
「……おっ!」
 しかし当人のやる気とは裏腹に、ひそりと飛ばしていた『機械鏡《ヤタ》』のひとつが、怪しい痕跡をキャッチした。
 その鏡面には、UDCの痕跡が足跡のように……ひたひたと、建物内へと続く様子が映している。
「ナイトクラブ、かぁ。貸し切りとかできれば、そこそこ怪しいのかな。行ったことないけど」
 取り敢えずの当たりをつけて、玻璃也に連絡。
「もしもし、室長? ちょっと調べて欲しい施設があるんだけど。うん。えーっとね――」

 その後の調べによると、該当クラブはここ数日の間、特定の誰か(恐らくは偽名)によって貸し切られているようだった。
 予約担当者からも、魔術による洗脳の痕跡が確認された。

 恐らくここが、予知された事件現場と見て間違いないだろう。
 
 
●薬の製造元について

 小さな製薬会社を隠れ蓑にした研究所。
 迅速に現場を押さえに向かったものの、重要なデータに関しては既に持ち去られた後のようだ。

 以下は、入手できた情報となる。

 ・『パンドラ』は一般的に手に入る材料を元に呪術的処置を施し生産される。
  生産工程は魔術と現代科学を上手く組み合わせており、専門的な設備を
  必要とせずに調合可能。
 (材料とレシピさえ手元に揃えば、ご家庭でも簡単に調合できてしまうレベル)
  →つまり、研究所を抑えても今後また『パンドラ』が流通する可能性は高い。
 ・『パンドラ』の表向きの効能は幻聴と幻覚。その真の効能は交神。
  適合者が過剰摂取を行なう事で、素人がその身に邪神を降ろす事すら可能。
 ・『パンドラ』は邪教集団の資金集め、そして邪教の依代となれる適合者探しの
  ふたつの観点でばら撒かれていたようだ。
 ・背後に何らかの邪教集団が関わっている事は明らかだが、詳細は不明
 ・研究所の所長の名は『茂村・岩雄』(しげむら・いわお)。
  無論、偽名である可能性もある。
 
 
●予知された事件現場

 繁華街のナイトクラブ『ブルームーン』

 ・ここ数日、特定の誰かによって貸し切られている
 ・予約担当者、その他スタッフに魔術による洗脳の痕跡
 (猟兵側の動きが伝わる事を警戒し、洗脳については解除していない)
 ・内部に複数のUDCの反応を確認
 ・女生徒が出入りしていたとの目撃証言

 以上の情報から、予知現場と見て間違いないと推測される。
 猟兵たちの戦力が揃い次第、現場へと突入したい。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『アングラーフィッシュ・レイダース』

POW   :    丸呑み攻撃
【頭部の誘因突起から放つ催眠光】が命中した対象に対し、高威力高命中の【丸呑み攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    祭儀場の召喚
【口から吐く霧状の催眠ガス】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を邪神復活の儀式空間に変える霧で満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    胃袋空間
小さな【体躯】で【丸呑みした口】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【広大な胃袋空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Introduction
 猟兵たちが突入した先、そこには無数のUDCどもが蠢き。
 その中心には、幾人かの女生徒が捕らえられていた。

「あら、夏子かと思ったら――ここは関係者以外立ち入り禁止、受付で止められなかったのかしら?」
 この異様な光景の中で淡々と告げるのは、淡く光る昏い紫のローブに身を包んだお下げの少女。
 お前が望月ハルカか、との誰かが発した問いに、少女は「そうよ」と答え。
「そう。あなたたちが『猟兵』なのね。カプリコーンが言っていたけど、本当に来るなんて」
 ハルカは焦る様子もなく、くすくすと笑いながらそう告げた。
「だったら少し、お遊びが過ぎたかも知れないわね。夏子がグズグズしてるから、ねぇ?」
 捕らえられた少女――元・いじめっ子たちに向けてハルカが笑い掛ける。

 ハルカは彼女たちと共に、ゲームをしていたらしい。
 まずはひとり、この儀式場へと迎え入れて。
 死にたくなければ。辱められたくなければ。
 生贄(オトモダチ)をひとり、この場へと寄越してもらう。
 ひとりが招かれれば、その子には追加でもうひとり生贄を呼んでもらう。

 集まった人数は現在で3人。
 4人目はバイトが入っているとかで、何度電話しても出てくれない。

「なかなか面白い趣向でしょ? テレビで見たのを真似してみたの」
『ハルカぁ、アンタぁ!!』
「なぁに? 文句でもあるの?」
『ヒッ……!!』

 ハルカの意を汲んだように、泣き叫ぶ少女の喉元にねっとりと舌を這わせるUDC。

『そもそもアンタが私を巻き込んだんでしょ!? 友達だと思ってたのに、こんな……!』
『だって、こんなの仕方ないじゃん!!』
『私は、私はハルカの事そんな嫌いだったわけじゃなくて、その……』
『バーーカ、あんたも同罪に決まってんでしょ。むしろめちゃめちゃノリノリで服とか隠してたじゃん』
『なっ、ふざけんなよ! 別にそんなこと――』

 醜く争う少女たちの様子に、ハルカは再びくすくすと笑って。

「ね? 見ていて飽きないでしょう。それで――あなたたちは何をしに来たの?」
 そう言いながらハルカはUDCたちに手をかざし、猟兵たちへと仕向ける。
「その子たちを助けに? それとも私を捕まえに、或いは殺しに? ――できるのかしら。やってみるといいわ」

 UDCの群れが、猟兵たちへと飛び掛かる。
 

●状況確認

 ・場所はナイトクラブ『ブルームーン』内部
 ・敵は『アングラーフィッシュ・レイダース』が多数
 ・望月ハルカに関しては戦闘には参加しない
 (ハルカに攻撃を加えようとした場合、『レイダース』が身を挺して庇い、
  彼女による手痛い反撃を喰らう事になる)
 ・いじめっ子たち(3名)は放置すると戦闘に巻き込まれ死亡する
  救助しようとした場合、行動に応じて判定にマイナス補正が入る
 (本章のシナリオ成功度は『戦闘』としての成果を基準に考えます)
 ・望月ハルカを説得・救済しようとする場合、難易度は【至難】
 『パンドラ』の影響によってこちらの声は届きにくく被害妄想に陥りがち
  また、仮に助かったとしても後遺症は残る事が予想される
  基本的に彼女を救えるという想定はしていない為、こちらの想定を
  上回るような説得内容、或いは想定外の手段が必要不可欠
  また、救助と同様に行動次第で判定にはマイナス補正が入る

 ※プレイングは3/30の朝8時半以降、受け付け開始とします。
 
チェイザレッザ・ラローシャ
……馬鹿みたい。
ハルカだっけ?あんただけじゃないわ、そこの3人、あんたたちもよ。
説教してあげるからそこで大人しく待ってなさい。

【WIZ:Desperado】
という事になったから。さっさとこいつら、潰すわよ。
行け、鳴宮。援護は私に任せなさい。
お前なら余計な弾は使わないでしょう。頼りにはしてるから。

デスペラードを呼び出して、エセ鮟鱇どもを存分に喰わせるわ。
腕、足、喉、好きに食い破らせて、動きを止める。
ほら、好きになさい凪の海。お前、この程度大したこともないのでしょう?

私自身?ああ、そうね。
近寄ったやつらはねじ切るわよ。素手で平気よ。
今、私、少しだけ、血が騒いでるから。
サボるな。やりなさい。


鳴宮・匡
◆チェイザレッザ(f14029)と同行


え、行けって言うけどさ
後で説教? 要は一般人は生かしとけってこと?
……まあそっちの上司の依頼だしな
今日はそっちの流儀に従うか

じゃ、まあ働きますか

跳弾や流れ弾が一般人の方へ向かないよう
位置と射線、射角に気を遣う
とはいえまあ、理想は一発たりと外さないことだし
そのつもりで戦闘は運ぶけどな

拳銃を用いて【千篇万禍】で一体ずつ狙撃していく
狙いは一撃で殺害ないし行動不能にできそうな部位
良く見定めて出来るだけ外さない
確実に一体一体息の根を止めていくぜ

処でお前、自衛手段――
……え、お前そんな力あんの?
じゃあ俺あとサボってていい……冗談だよ
戦闘員が戦闘しないのは怠慢だからな

%




「……馬鹿みたい」
 陳腐な茶番劇を見せられて、チェイザレッザは嘲笑した。
 これだから子供は、と言わんばかりに。
「ハルカだっけ? あんただけじゃないわ。そこの3人、あんたたちもよ」
 説教してあげるからそこで大人しく待ってなさい。
 チェイザレッザはそう告げながら、自身の使役する二体一対の小型鯨型UDC『デスペラード』を召喚した。
 少女たちを馬鹿みたいだと罵りながらも、隣の男のようにそれを切り捨てる事もできない自分の性格を知っている。
 切り捨てぬ事に迷いはない。だからこそ全力で、こいつらを潰す。
「という事になったから。――行け、鳴宮。援護は私に任せなさい」
「え、行けって言うけどさ」
 鳴宮はオーダーを遂行すべく懐から拳銃を取り出しながらも、チェイザレッザに指示内容を再確認する。
「後で説教? 要は一般人は生かしとけってこと?」
「そうよ。不服かしら?」
 不服だろう。答えを知りながらも、チェイザレッザは敢えて鳴宮へとそう問うた。
 効率よくUDCを殺すなら、速やかに事件を解決するなら一般人など無視してしまった方が手早く済む。鳴宮にとって一般人の命など寄り道やボーナスポイント、居酒屋で頼んでもないのに出てきたお通しくらいの扱いだろう。
 だが、拘ってないからこそ。「生かせ」と言われればどんなに不服であろうと、困難であろうと「生かす」。鳴宮・匡はそういうフラットな男だ。

「……まあそっちの上司の依頼だしな。今日はそっちの流儀に従うか」
 言い終えるよりも早く、鳴宮は敵性UDC『アングラーフィッシュ』の眼球を撃ち抜いた。
 小気味よく響く発砲音。その連射速度とは裏腹に、一発一発が『アングラーフィッシュ』の急所――眼球や手足の関節部を的確に撃ち抜く。
 それが『千篇万禍』と呼ばれる鳴宮のユーベルコード。冷静な観察眼の為せる行動予測。鍛錬と極度の集中によって得た正確無比な射撃。
 あくまで自然体に。己の力すら過信せず冷静に俯瞰し。視得た情報を受け入れ、判断し、撃っているだけ。昂ぶりも緊張も不要。無駄を極限にまで削ぎ落とした結果の、常にリラックスした身の運び。

 しかし『アングラーフィッシュ』も常軌の生き物ではない。目を撃ち抜かれようが、眉間を貫かれようが、ただそれだけで生命活動を停止はしない。
 あくまで、鳴宮の射撃は『アングラーフィッシュ』の動きを鈍らせるだけ。
 弱った獲物を食い散らかすのは、『デスペラード』の役目だ。
「片っ端から食い尽くしなさい、デスペラード!」
 チェイザレッザの号令に従い二体の鯨が空を泳いで『アングラーフィッシュ』へと喰らいついた。腕、足、喉。デスペラードのひとくちで『アングラーフィッシュ』の肉は丸ごと抉られる。
「ほら、好きになさい“凪の海”。お前、この程度大したこともないのでしょう?」
 “凪の海”――いかなる時も揺るがぬその平静さからその名が付いた、鳴宮の異名。
「言われなくても好きにはしてるけどさ」
 デスペラードに喰われ、地べたを跳ねる『アングラーフィッシュ』に集中砲火を浴びせ確実に息の根を止めながら。自身に襲い来る攻撃はしっかりと視て、躱す。
「処でお前、自衛手段あんの? あんま前に出られると正直邪魔――」
「私自身? ああ、そうね。近寄ったやつらはねじ切るわよ。素手で平気よ」
 チェイザレッザはその言葉を証明して見せるように、飛び付いてきた『アングラーフィッシュ』の頭蓋を手で掴むと、そのまま地面へと叩きつけた。
「……え、お前そんな力あんの?」
 鳴宮もチェイザレッザがある程度戦える事は知っていたが、あくまで事務が本業のエージェントであってUDCの使役がせいぜいだと認識していた。
「今、私。 ――少しだけ、血が騒いでるから」
 よく見ればチェイザレッザの黒髪に金色の房が混じり、その瞳は黒から赤へとほんのりと変貌しつつある。真の姿――とまでは到底行かないまでも、吸血鬼としての本性が少しずつ顕れている兆候だ。

 戦闘の渦中、背中合わせになりながら鳴宮はチェイザレッザに問い掛ける。
「じゃあ俺、あとサボってていいよな?」
「サボるな。やりなさい」
「……冗談だよ」
 チェイザレッザの返しがあまりに真顔で即答すぎて、ちょっと面白かった。
 まさか本気でサボると思われたのだろうか?
 面白いけど――、その感情は戦闘に不要なもの。

「戦闘員が戦闘しないのは怠慢だからな」
 鳴宮は気持ちを切り替え、再び戦闘行動を開始した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

パーム・アンテルシオ
%

なるほど、あの子たちが…
…因果応報。狩る者が、狩られる側に回っただけの話。
それだけ…だけど。
みんなだったら、どうするかな。
…決まってるよね、そんな事は。

山茶火は…だめ。あの子たちじゃすぐに燃えちゃう。
飛び込んで助けるのは…きっと、私じゃ遅すぎる。
敵を跳ね除けて進む?それも簡単な事じゃない。
…ここにいる皆も…動くはず。きっと。それなら…

私は…あの子たちを助ける皆を、守る。
九ツ不思議…座敷童子。
皆、すごいから。その動きは、私には読めないけど…
飛び込む人、囮になるべく動く人。
攻撃を受けるであろう人。その人を見定めて、結界で守る。

適材適所。私は、私が出来る、最善の方法を取る。
…これで、いいんだよね?


楠瀬・亜夜
この事件もなかなか闇が深そうな話で……
ますます興味が湧いてくるな……

ともあれ今はこの事件を解決しないと――ですね
個人的な感情だけで言えば、囚われた学生達よりも
望月ハルカさん個人の方に興味がありますが
残念ながら私では彼女を救えそうにありません
私はお仕事に集中させて頂きますか

【ダッシュ】【ジャンプ】を駆使したフック付きワイヤーを使用した
ワイヤーアクションで女生徒の方へ接近し
UCを発動し、ナイフを展開し近い敵順にナイフを勢いよく放ちます
それと同時に女性徒の近くを離れないように銃撃で周囲の敵を
寄せ付けないように戦いましょう。

だれか望月ハルカさんの説得を試みるようであれば
【援護射撃】で支援を行いましょう


四季乃・瑠璃
緋瑪「貴女の言う通り、お遊びはお終い。黒幕の居場所も知ってそうだし、教えてもらうよ」
瑠璃「同情はするけど…でも、容赦はしないよ。既に貴女はそれだけの存在になったんだから」

【チェイン】で分身

既に救出対象でなく標的と認識してる為、説得する人の邪魔はしないが、特に意欲的でもない
いじめっ子達に関しても自業自得と考えてる


二人で連携して戦闘
敵となるべく距離を取って戦闘。
【見切り、第六感、残像】で敵の攻撃を回避。
【範囲攻撃、鎧砕き、早業】接触式ジェノサイドボム(以下ボム)による飽和爆撃で敵集団もガスもまとめて爆破。
K100による銃撃【早業】と併せて中・遠距離から敵を仕留めていくよ。

※アドリブ等歓迎




「なるほど、あの子たちが……」
 パームは『アングラーフィッシュ』に包囲された少女たちを見る。

 被害者であり加害者。
 邪神を降ろした望月ハルカ、彼女をいじめていたといういじめっ子たち。
 因果応報。狩る者が、狩られる側に回っただけの話。
 それだけ……だけど。

(みんなだったら、どうするかな……)
 パームは仲間たちの様子を伺いながら、考えた。
 自業自得と彼女たちを見捨てるか、それとも彼女たちを救い出すか。

 ……決まってるよね、そんな事は。

 『彼女たちを救い出す』。
 見捨てる選択を非難するつもりは無い。
 けれど自分の知るみんなは、お人好しで優しい人ばかりだから。
 そうであって欲しいから。私もそう在りたいから。

 ――『山茶火』は?
 だめ。あの子たちじゃすぐに燃えちゃう。

 ――飛び込んで助けるのは?
 きっと、私じゃ遅すぎる。

 ――敵を跳ね除けて進む?
 それも簡単な事じゃない。

 私の能力では彼女たちを助けるには向かない。
 だったら私に出来る最善――それは何か。

 パームは人の持つの善性を信じ、期待し。ただ静かに機を伺い続けた。
 


 動き出すのが早かったのは、緋瑪と瑠璃だ。
 調査時と同様、『チェイン・シスターズ』によりふたりに分身。
 戦闘においてもその緻密な連携こそが、彼女らの強み。
「貴女の言う通り、お遊びはお終い。黒幕の居場所も知ってそうだし、教えてもらうよ」
「同情はするけど……でも、容赦はしないよ。既に貴女はそれだけの存在になったんだから」
 望月ハルカへと啖呵を切るふたり。
 パームとは違い、緋瑪は――元より殺人嗜好を持つため除外するにしても、主人格である瑠璃でさえ。いじめっ子たちに関しても自業自得という考えが強く、庇護の感情は薄かった。
 意図的に殺そうとする、救助や説得をしようとする人間の邪魔をするつもりも無いが、意欲的でもない。
 興味がない、どっちでもいい。そんな感想が近かった。
 故に――その攻撃には、一切の容赦がない。

 素早い動きで敵群の懐へと潜り込むと。腕に、脇腹に、『アングラーフィッシュ』の身体の一部へと次次に触れていき、触れた箇所は数秒も経たずに膨れ上がって大きな爆発を起こす。
 接触式の『ジェノサイド・ボム』。魔力によって生成された爆弾による、飽和爆撃。
 爆発する頃には爆破範囲外へと逃げおおせ、爆風によって巻き込まれるのは敵同士だけ。
『きゃぁあああああ!!』
『ヒッ……!』
 すぐ近くで巻き起こる爆発に、悲鳴を上げながら身を伏せる少女たち。
「巻き込まれたくなければ大人しくしててねー♪」
「緋瑪の言う通り。別に、取って食ったりはしないから」
 あはは、と笑いながら声を掛ける緋瑪と、あくまでマイペースに平成さを保つ瑠璃。ふたりは同時に自動拳銃を取り出し構えると、魔力によって強化された弾丸を同一の対象へと叩き込み、中距離の敵を沈黙させた。
「はい、お終い。ちょっと呆気ないかな?」
「所詮はただの眷属みたいなものだろうし。あくまで本命はあっち、かな」
 ふたりは望月ハルカを見る。眷属を撃破されても別段動揺するような事はなく、観劇でもするかのように猟兵たちの奮戦や少女たちが怯える姿を微笑みながら楽しんでいる様子だ。

「それじゃ、ちゃちゃっとお掃除済ませちゃおっか」
 緋瑪は瑠璃に、その左手を差し出して。
「そうだね。終わらせよう」
 瑠璃がその手を軽く握り返せば。
“2人で1人"の殺人姫は、再び戦場を爆炎の渦にて蹂躙した。
 


 派手な爆発に、パームは自身のユーベルコードを少女たちに向けるべきか逡巡する。
 ――できれば、未だ使うべきではない。
 パームが備えていたのは、防御の術式。その対象を広げることも、効果時間を伸ばすことも恐らくは可能。だがユーベルコードの防御とて万能ではなく、その能力を過信すれば敵のユーベルコードによって容易に砕かれ兼ねない。

(……これで、いいんだよね?)
 適材適所。誰かが動くと、信じて待つ。
 その判断が正しかったのかどうか、自信が持てず。
 恐らく戦闘開始からまだ数分といったところ、しかしその時間が異様に長く感じられてしまう。

「よっ、……と」
 その時、誰かが動いた。
 天井へとワイヤーフックを絡ませて、素早く空中から戦いの渦中へと――少女たちの元へと舞い降りる人影。
 ――楠瀬・亜夜だ。
 記憶を失ったダンピール。彼女が好奇心旺盛なのは、人の揺らぎを識る事が「自分」を識る事に繋がる為か。或いはただの気紛れ、興味本位か。
「個人的な感情だけで言えば、あなたたちよりも望月ハルカさん個人の方に興味がありますが――」
 亜夜は着地と同時にユーベルコードを発動。銀閃が周囲を奔り、無数のナイフによる刃の結界を形成し。
「残念ながら、私では彼女を救えそうにありません。私はお仕事に集中させて頂きますか」
 間髪入れず、取り出した拳銃によって目の前の敵を駆逐した。
『あ、あああ……お願いします、助け……』
「はい。そのつもりですので、なるべく傍を離れないでくださいね」
 とは言え、流石に敵の数が多い。
 1匹や2匹なら難なく相手にできるとしても、4体5体を同時に……しかも少女たちを守りながら戦うとあっては分が悪い。
(多少の痛い目を見るのは覚悟しながら、確実に敵の数を減らしましょう)
 耐えてさえいれば、そのうち仲間が周囲の敵を狩り尽くすはず。
 亜夜はナイフと拳銃、二重の弾幕によって敵との距離を保つよう牽制するが。多勢に無勢、亜夜の放った弾丸が敵の大口――虚数の胃袋へと吸い込まれていく。
「っ……、」
 その背後から躍り出る『アングラーフィッシュ』、その数3。
 予測できていた展開。しかし独力ではどうにもならない。
『アングラーフィッシュ』は頭から催眠光を放ちながら、亜夜の四肢へと齧り付く――、

 その時。

「――九ツ不思議……座敷童子!」
 おねがい、力を貸して。
 その喚び声に応えて、『守る者』の力はパームの肉体を霊体へと転ずる。
 パームの放つ守護の結界が亜夜の肉体を包み込むと、亜夜へと齧り付いた『アングラーフィッシュ』たちの歯が結界によって阻まれて、逆に砕け落ちた。
「おや、助かりました」
「ううん、こっちこそ! 支援は私に任せて!」
「……了解です」
 亜夜は纏わり付く『アングラーフィッシュ』を切り捨て、蹴り飛ばすとそこに鉛弾を叩き込む。
 1対多から、2対多に。
 戦況不利には違いないが、戦力は二倍。その支援は心強い。

 敵を挟んで向こう側。亜夜の視界の端に、パームの姿が映る。
「パームさん……でしたか」
「へ……?」
 突然名前を呼ばれ、戸惑うパーム。
「……何でもありません。忘れて下さい」
「…………?」

 ――どうして笑っているのですか?

 この凄惨な事件の最中、その笑顔から闇とは異質なものを感じられて。
 しかし今は、そんな話よりも先にすべき事がある。
 亜夜は闇以外へと浮かんだ興味を、そっと胸の奥に仕舞い込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

五百雀・斗真
WIZ

ハルカさんといじめっ子たちのやり取りを見て
一瞬顔を曇らせてしまうけれど…
すぐに飛びかかってくるレイダースへと向き直り
UDCの大田さんに盾受けで攻撃を防いで貰いながら
【グラフィティスプラッシュ】で敵を撃破していく
万が一呑みこまれても内部でかりそめスプレーを噴射し
閉じ込められないように抵抗

敵の数が減ってきたら、戦いつつハルカさんの様子を確認
衣と針について調べたのもあるし
彼女が衣をどんな風に身につけているのか見ておきたい
今すぐ衣をひっぺがしたい気持ちはあるけれど
何が起こるか分からないし、まずは観察をして慎重に…

針がどこにあるだろう…?
何か光る物を見つけたら、奪っておいた方が良さそうな気がする






 望月ハルカと少女たちのやり取りを見て、一瞬だけ表情を曇らせていた斗真。
 いじめっ子といじめられっ子――もちろん、仲が良いだなんて思ってはいなかったけど。それでもやはり人間同士がいがみ合う姿を見るのは、少し悲しい。
 何か声を掛けようかとも思ったが、戦況がそれを許してはくれない。斗真は襲い来る『レイダース』へと向き直った。
 敵の噛み付き攻撃は服の裾から飛び出した触手、UDCの『大田さん』が庇い、受け止める。
「……っと、それっ!」
 斗真は大田さんのアシストを受けつつ敵と敵との合間を身を捻りながら跳び抜け、その背後に、周囲に、『かりそめスプレー』による特殊塗料を散布した。

『◇%#’A★¥〒Д!?』

 直接塗料を噴き付けられた『レイダース』はその場で苦しみながら泡となってその場に溶けて、塗り潰された周囲の地形に立つ『レイダース』たちも忌避感を持ってその場から離れる。
 これがスプレーアーティストである斗真の戦い方。ペイントブキは扱いこそ難しいが、上手く扱えば攻防一体の頼もしい武器となる。
「行くよ、大田さん!」
 斗真は再び大田さんをバネにしてその場をから駆け出すと、敵の攻撃をいなし、噴き付け。戦場を縦横無尽に塗りつぶしながら、仲間たちが戦いやすいようペイントされた地形を広げていった。

 戦いの合間を縫って、斗真はちらりと望月ハルカの様子を伺う。

 彼女が纏う淡い輝きを放つ『衣』。
 もしかしたら、それをひっぺがせばUDCの支配が解けるんじゃないだろうか。そうでなくとも、多少なり支配が弱まるんじゃないか――なんて、期待を抱きながら。
 望月ハルカが纏う衣は、物質的な存在ではなく、どうやら霊的な存在が具現化したもの。彼女が身に纏う『オーラ』と呼ぶのが近いだろうか。
 確かにそれはUDCそのもの、邪神の存在そのものと言える部分もあるかも知れない。だがそもそも物理的に掴む事が出来るかどうかすら怪しいし、無理矢理引き剥がしたところですぐさま再生してしまう可能性すらあった。

 ならば『針』はどうだ?
 針はどうやら邪神の、『磨羯卿』カプリコーンの扱う武器のようだ。
 ふわふわとハルカの周りを浮いて漂っている。これも恐らくはこの世の物質ではなく。霊的な存在が具現化したものだろう。

 どちらに関しても、ひとりで対処するのは難しい。
 例えば望月ハルカとの戦闘中に、針を奪って一時的な攻撃の隙を作ったり、衣の一部を剥ぐ事で致命打を与えやすくする――などができる『可能性』は、ある。だがそれすら実行可能かどうか、絶対的な有効打となるかどうかは試してみないと分からない。

 邪神を倒し、ハルカも助け出し、いじめっ子たちも更生し。全てが終わった後で、ハルカも自分の居場所を見つける事ができて……そんな結末を迎えることができたら良いのだが。

 先の見えない、理想の未来を描き出す為に。スプレー缶を片手に、斗真は再び大田さんと共に戦場を駆け抜けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シェーラ・ミレディ
中々、背後関係も複雑なようだなぁ。
今の状況で、UDCに守られた望月ハルカをどうにかするのは厳しいか。
……ならば、生贄として集められた少女たちだけでも無事に帰したい所だ。

クラブだと言うのなら、小物には事欠かないだろう。
遮蔽物となるテーブル等は残し、『艶言浮詞』で水や風の精霊を呼び出す。
精霊たちに敵を攻撃させて注意を逸らし、その間に少女たちを救助しようか。
「君たちを無事に帰したいんだ、協力してくれないか?」
などと言葉をかけつつ、脱出を促す。
敵が此方に気付いたなら、身を挺して少女らを庇いつつ銃を抜く。
少女たちに近い敵から撃ち、仕留められずとも行動を阻害することに重点を置く。

※アドリブ&絡み歓迎




「今の状況で、UDCに守られた望月ハルカをどうにかするのは厳しいか」
 中々、背後関係も複雑なようではあるが。せめて今は、生贄として集められた少女たちだけでも無事に帰したい所。
 シェーラはテーブル等の遮蔽物となり得る物品は残しながらも、その他の小物――無機物を標的とし、弾丸を放った。
 『彩色銃技・口寄せ・艶言浮詞』。弾丸を受けた無機物は無邪気な水の精、風の精へと姿を変えて『アングラーフィッシュ』たちを撹乱する。
 奮戦する精霊たちに注意がそれている隙を突き、こそりと少女たちの元へ――亜夜の戦っていた中央の戦場へと合流する。
 相変わらず半狂乱の少女たちに対し、シェーラは優しく声を掛ける。
「君たちを無事に帰したいんだ、協力してくれないか?」
『あ……う、』
 こくこく、と黙って頷く少女たち。
 それを肯定と受け取ると、シェーラは何処からともなく4丁の拳銃を取り出した。
 彩色銃技――その4丁の精霊銃を駆使して多彩な弾丸を次々に打ち出すという特殊な銃技。当然の事ながら、4丁の精霊銃を同時に繰るのは容易ではない、が。
 シェーラは両手に構えた2丁の精霊銃から手近な敵へと次々に弾丸を叩き込む。そしてその弾丸が突きたところで双方共に銃を持ち替え、間髪入れずに再び連射。何度も繰り返されてきたその動作。何匹かの敵を仕留めたところでリロードし、次の敵へと備える。
 周囲には最初に喚び出した精霊たちを自分や少女たちの護衛とし、シェーラ自身は中距離からの圧倒的な火力によって敵を制圧する。
 シェーラは自身の周りをくるくると飛び回る精霊に手を遣り、微笑むと。

「さて、この生臭い連中には手早く退場を願おうか」
 少女たちの身は然りと守りながら。シェーラの放つ多彩な弾丸が、再び『アングラーフィッシュ』たちへと浴びせられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

奇天烈・モクレン
何しに来たってそりゃあ
強いて言えば助けに来たんだよ


……全員が助かるっていう最善の結果が得られるかどうかは別だけど

【オルタナティブ・ダブル】でそっくりそのままもう一人の俺達を呼び出す
重きを置くのは護衛>戦闘だ
敵数を減らすよりこのいじめっ子たちが死なないようにする
集団戦、他方向からの攻撃に対応できるように二人で別々の方向を見よう
ただし、仲間が護衛に回るようであれば俺達は後ろを信じて二人とも戦闘に回る
数を減らさないことにはどうしようもない
勝たなきゃあんたと落ち着いて腰を据えて話も出来ないってんなら、まずはこの雑然とした状況を片付けよう

……俺達はどちらかというとあの三人よりあんたを助けたいんだけどな




『――あなたたちは何をしに来たの?』
 望月ハルカの問い掛けに、モクレンは答える。
「何しに来たってそりゃあ……強いて言えば助けに来たんだよ」
 全員が助かるっていう最善の結果が得られるかどうかは別だけど。
 それでも、そうできれば良いと願うからこそ、俺達はこの場に居る。

 モクレンは『オルタナティブ・ダブル』で、もうひとりの【俺達】を生み出した。
 少女たちの護衛は……他の仲間が行なっている。だったら俺達は、仲間を信じて敵の殲滅に専念すべきだ。
 まずは敵を倒さない事にはどうしようもない。そうしなきゃ望月ハルカと落ち着いて腰を据えて話も出来ないというなら、まずはこの雑然とした状況を片付けよう。
「そおおおりゃああ!!」
 モクレンは手にしたガス灯(を模した魔導杖)で、手近な『アングラーフィッシュ』を殴りつけた。
 仲間からはガス灯のヤドリガミだなんて揶揄されるけど、モクレンの本命はガス灯の殴打ではない。時間差で生み出された魔法の火球が、『アングラーフィッシュ』を包み込む。
『ゴ、ガ、ァァ……』
 その場で焼き魚となる1匹目。どんなもんだ、と少し得意になっていたところで横から迫りくる2匹目の『アングラーフィッシュ』。
「アチョーッ!!」
 見事な飛び蹴りで『アングラーフィッシュ』の顔面を捉える、もうひとりの俺達。
 あれは恐らくモクレンに宿る人格の中の、中国拳法を得意とする人格だ。
「油断大敵よ、アンちゃん!」
「うおお、助かった~! ありがとう俺達!」
 ホワチャー、と言いながらガス灯をブンブン振り回し、棒術よろしく次々に敵を薙ぎ倒す俺達の後ろから。「あれ、あの人格強くない?」と疑問を抱きながら火球やら死霊魔術を打ち込むモクレン。

 モクレンは目の前の敵群を片付けながら、望月ハルカを横目に見る。
「……俺達はどちらかというとあの三人よりあんたを助けたいんだけどな」
 そのモクレンの呟きは、ハルカの耳には届かない。

 助けられる自信はない。確証もない。だけど――。

 やりきれぬ思いを胸に、モクレンはガス灯を力強く握り締めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

九泉・伽
バトルキャラクターに戦闘任せて説得全振り
※仲間の邪魔はしない

うん、確かに彼女たち面白いねー
殺されそうなこの期に及んで喧嘩だもん

ねえ望月さん、気持ちは晴れた?
(否定せず聞く)

俺はさ
世辞でもなくキミをすごいと思ってんの
追い詰められて両親も助けてくれない
普通は潰れるよ
でもキミはこいつらを呼びつけて排除しようとしてる
よく戦う方法を考えて頑張ったね

でも
どうせならこいつらを排除した後の、幸いに一歩近づいた未来を過ごしてみない?

俺はキミと友達になりたい
今回のことがあったから知り合えたの純粋に嬉しい
だから
そのバケモノに身も心も売るの止めてよ
キミが消えたら
俺が、哀しいの
俺は見限らないから、キミも俺を見限らないで




 九泉・伽は戦闘を仲間に、自身の喚び出した『バトルキャラクターズ』に全て任せて、望月ハルカの前に立っていた。
「うん、確かに彼女たち面白いねー。殺されそうなこの期に及んで喧嘩だもん」
 はは、と人が好さそうに笑いながら伽は続ける。

「ねえ望月さん、気持ちは晴れた?」

 いじめっ子たちを呼び出して、無様な姿を晒させて。
 彼女の胸の内は晴れたのだろうか。それで満足できたのだろうかと、伽は問う。

「どうかしら……」
 ハルカは自分の胸へと問い掛ける。
 楽しかったかと言われれば、楽しかった。
 ここ最近で一番、スカッとした。
 だから気持ちが晴れたのかと問われれば、割と晴れたような気もする。
 だが、それで満足できたのかと問われれば、答えは難しい。

「まぁまぁ、かしらね。もう少し遊びたいとは思ってるけど」
「そっか」

 ハルカの言葉を否定する訳でもなく、ただ聞き手へと回って。

「俺はさ、世辞でもなくキミをすごいと思ってんの。追い詰められて両親も助けてくれない……普通は潰れるよ」
「なにを……」

 何を言い出すのだろう、この男は。
 わたしは別に、すごくなんかない。
 ――だってもう、“潰れている”のだ。
 追い詰められて、勧められるがままにクスリに溺れて。
 そうしてたまたま巡り会えた、千載一遇のチャンス。
 わたしが変われる為の、きっかけ。

「でもキミはこいつらを呼びつけて排除しようとしてる。よく戦う方法を考えて頑張ったね」
「違う……、わたしは……!」

 別に頑張ってなんていない。
 ただ“声”を聞いて、力を手に入れて。
 ようやく手に入った、その力で。わたしはわたしの願望を満たしただけだ。

「でも、どうせならこいつらを排除した後の、幸いに一歩近づいた未来を過ごしてみない?」
「排除した後の、未来……?」

 わたしは、今を生きるのに一生懸命で。未来のことなんて考えた事がなかった。
 早く今日が終われば良いと。こんな日々が終われば良いと。
 どうせなら人生そのものが終わってしまえば良いと、そう願いながら過ごす日々。
 強いて言うなら、ここ最近は『未来』というものを感じられた。
 手に入れた力を試してみたいと、早くあいつらに復讐をしたいと。
 そんな未来を思い描く日々は楽しかった。

 でも、その先のことまでは何ひとつ考えていない。

「俺はキミと友達になりたい」
「……へ?」
「今回のことがあったから知り合えたの純粋に嬉しい。だから、そのバケモノに身も心も売るの止めてよ」

 ……友達になる?
 目の前のおじさん(と言うにはもう少し若い気もするが、お兄さんと言うにも微妙な気がする)と、わたしが、友達に?

「キミが消えたら……俺が、哀しいの。俺は見限らないから、キミも俺を見限らないで」
「…………」

 ハルカはどう反応して良いのか、とても悩んだ。
 初対面の男に、急に「友達になりたい」だなんて告白されて。
 告白……とも違うかも知れないが。これは口説かれているのだろうか。
 分からない。分からない。

「なん……、なんなの!? 顔も知らない、名前も知らないような他人が……わたしと友達になりたい?? なんで!? どうしてわたし何かと、急に友達になりたいとか言い始めるのよ!!」
 ハルカは伽へと手を払うように、放つ衝撃波でその肉体を吹き飛ばした。

 同情なのか、自首を促しているだけなのか、ただの変質者なのか。
 ハルカの心は否定や嫌悪より、純粋な疑問・戸惑いによって満たされていた。
 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

カタラ・プレケス
%

…人を呪わば穴二つとはよく言うね~
呪術師としてはあの子たちを呪うのが正解なんだろうけど
流石に贄を増やすのは面倒だし
心底嫌だけど助けようか

三人の元まで【巨蟹の星空】を一直線に展開
その勢いのまま天蠍縛砂で周囲の敵をなぎ払う
敵と一定の空間が空いたら纏めて呪って動きを鈍らせる
後は護衛しながら敵を減らし続ける

はあ、少しうるさいですよ
こんなことになったのは全部お前らの責任でしょうが
なに押し付け合ってんだが
心底嫌だけど殺しをさせるわけにもいかないので
守ってやります
だから黙ってその罪悔いろ




「……人を呪わば穴二つとはよく言うね~」
 カタラはこの期に及んでも醜く言い争う少女たちの姿に、とことん辟易していた。

 呪術師としてはあの子たちを呪うのが正解なんだろうけど。
 流石に贄を増やすのは面倒だし、心底嫌だけど助けようか。

 カタラが少女たちの元まで一直線に展開するのは、『開くは勇敢なる巨蟹の星空なり』。
 放たれた沸き立つような【星の泡】は、『アングラーフィッシュ』に触れると同時に弾け、その身を溶かす。と、同時に。地面を僅かに濡らせば、そこには星空が映し出されていた。
 カタラは映し出された星空の上をその黒羽で飛翔すると、中央の戦場へと合流。
 その勢いのまま『天蠍縛砂』――天蠍宮の力を宿す、砂の縛鎖で以って周囲の敵を薙ぎ払った。

『きゃぁっ……!』
 呪いによって倒れ痙攣する『アングラーフィッシュ』の姿に、少女は思わず悲鳴を上げる。
 我先にと猟兵たちが陣取るその背後、安全地帯へと逃げて押しのけ合うように寄り固まる少女たちの姿を見て、カタラは再びため息を吐いた。
「はあ、少しうるさいですよ。こんなことになったのは全部お前らの責任でしょうが」
 自分より弱い者を容赦なく陥れる……その性質も気に食わなければ、こうして窮地に陥れば我先にと助かろうとする様子も気に食わない。
 なに押し付け合ってんだが。――人間であれば我が身が可愛いのは当然のこと、と同情するものも居るだろう。だがカタラはただ純粋に、嫌悪感を示すのみだった。

「心底嫌だけど。あの子に殺しをさせるわけにもいかないので、守ってやります」
 ――だから黙ってその罪悔いろ。

 少女たちを嫌悪するカタラにとって、望月ハルカの姿はどう映っているのだろう。
 彼女に殺しをさせたくはない――薬物に溺れ、邪神に縋り、復讐に酔いしれるような人間であっても、目の前の少女たちよりはまだ救いがあると――そう考えているのだろうか。

 カタラが何を思い、何を為すかは。彼だけの知るところ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アレクシス・アルトマイア
😘
難しいだなんて
そんなことは承知の上です
諦めるなら
猟兵なんてしていません

やっと会えましたね
ハルカちゃん
貴女を助けに来ました

楽しいですよね
仕返しって
蹂躙するのって愉快です

でも
やめましょう
そのやり方は
貴女の心を壊してしまう

それ以外なら喜んで協力します

明るく楽しく悪いことを致しましょう

その子達を砂漠に放り出して
干からびる前まで観察したり
カジノで豪遊とか
SFやファンタジーの世界で遊んだり
金髪に染めて両親を困らせたりはどうですか

私は、貴女を見ています
私は、貴女を救いたい
だから。
お願いですから
私の手をとって、ください

その手を汚させないように
いじめっ子達への攻撃及び
邪魔をする不躾なUDCは礼儀指導します




 アレクシスは『アングラーフィッシュ』へと黒の短剣を打ち込みながら、望月ハルカの元を目指した。

 彼女を救うのが難しいだなんて、そんなことは承知の上。
 それで諦めるなら最初から猟兵なんてしていない。

「やっと会えましたね、ハルカちゃん。貴女を助けに来ました」
「……あなたも、なの?」

 わたしを“助ける”。
 わたしは、望月ハルカは助けられるような存在なのだと。
 ――そんな事は、分かっていた。

 猟兵についても“知っている”。
 邪神、オブリビオン、UDCについても“知っている”。
 魔術の知識も、何もかも。全部、カプリコーンが教えてくれたから。

「楽しいですよね、仕返しって。蹂躙するのって愉快です」
「そう?」

 知った口を。
 目の前でにこにこと笑う少女に、およそそんな暴力が似合うとは。
 見ず知らずのわたしを助けたいなどと言い出す人間に、仕返しや蹂躙が似合うとは思えない。

「でも、やめましょう。そのやり方は、貴女の心を壊してしまう」
「…………」

 それはそうだ。むしろ手遅れ。
 既にこの心も身体も、『パンドラ』によって、邪神によって蝕まれている。

「それ以外なら喜んで協力します。明るく楽しく悪いことを致しましょう」
「……はっ」

 アレクシスの言葉に、ハルカは思わず笑ってしまった。
 本気で言っているのだろうか、と。

「じゃあ何? 邪神に代わってあなたが力を貸してくれるの? そいつらを殺してくれって言ったら殺してくれる? UDC組織だの猟兵だのを追っ払ってって言えば追っ払ってくれる?」
「ううん……それはちょっと。殺しはあまり、貴女にとって良くないと思います」
「ほら。やっぱり口だけじゃない。そうやって自己満足で、他人を救ったという達成感に浸りたいだけでしょう?」

 諦めと侮蔑と、様々な感情が入り混じり、アレクシスを見下すハルカ。
 だがアレクシスは変わらず、ハルカへと微笑みかける。

「貴女を守って戦うだとか、他の人を追っ払うだとか。そういうのは別に構いませんけど。こんな場所から抜け出して……例えば、こんなのはどうでしょう?」

 ――その子達を砂漠に放り出して、干からびる前まで観察したり。
 ――カジノで豪遊してみたり。
 ――異世界、SFやファンタジーの世界で遊んだり。
 ――金髪に染めて、両親を困らせてみたり。

「邪神に頼って復讐を果たしたって、その子たちの命を奪ったって。貴女の心は壊れてしまう。きっと後悔します。そして、取り返しもつきません」
「取り返しなんて、もうとっくに――」
「つきます。まだ間に合います。間に合わせます。その為に、私たちが居るのですから」

 アレクシスの決して揺らがぬ真っ直ぐな言葉に、ハルカの心は僅かに揺れる。

「なんなの? どうしてあなたも、さっきの男の人も。見ず知らずのわたしにそんな事が言えるの?? わたしはあなたの名前だって知らない。あなただってどうせ、昨日や今日までわたしの存在すら知らなかった癖に!!」

 誰にだって、そんな事が言えるのか。
 誰だって救ってみせると言うのか。
 そんな夢物語の、ヒーローみたいに。

「……どうなんでしょう?」

 アレクシス自身も分からなかった。
 誰でも救いたいと願うのか、全ての人々を救済したいと理想を掲げているのかと聞かれれば、恐らくそれは違う気もする。

 けど――。

「私はハルカさんを知って、貴女を助けたいと思った」
 ――うるさい。

「私は、貴女を見ています」
 ――うるさい。

「私は、貴女を救いたい」
 ――うるさい。

「だから。お願いですから――」
「いい加減にしてって、言ってるのよ!!」
 ハルカの放つ針が、アレクシスの頬を掠めた。

「そうやって、甘い言葉で惑わせて」

 ハルカは零れた涙を拭う。
 もう誰ひとり、信じることなどできぬのだ。

 世界はわたしを見限った。わたしも世界を見限った。
 すべてを捨てて、犠牲にして、ようやく手に入れた『力』。

 無価値だったわたしが欲しかったもの。
 ようやく手に入れた、価値あるもの。

 もう、無価値な自分には。空気のような自分には。戻りたくない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

御代・燕三
%相棒の【犬憑転助】と参加
彼女は決して世界に見限られていないはず……

面識のあるUDC職員にブルームーン付近で待機してもらうように、手配済みの携帯で指示。まずは望月ハルカの実家へ。移動には公共交通機関を利用。

UC「算術式:他愛の章」を使用。出会う人は全て旧知の友と錯覚させ情報収集や、お願い事の助けとなるよう利用。目的の人物に出会えたならば、望月・ハルカさんの状況を共有し協力を願う。

同意を得られた際は、
UC「算術式:即断の章」を使用。指定対象は協力者と転助。移動先は待機指示をしたUDC職員(ダメージは与えない)転移後、店外で待つよう指示。

転助、わたし達の行いは吉と出るか凶と出るかどちらでしょうね。


犬憑・転助
【御代燕三】と行動

店には向かわず望月ハルカの再び実家へ(カバーは変わらず)
家探し&家族への聞き込み
(またハルカの部屋の写真を取って置く)
ハルカが心の拠り所にしていた人がいないか調査
《孤狼の瞳》を常に起動しておき(ダメージを出さないようにしつつ)、家族が言いたくない事(例えば不仲な親族だがハルカは仲が良いとか)がありそうならそこを追及、拠り所っぽい情報の入手に努める

その後、拠り所があればそこへ急行(タクシー?)し話を聞く
またハルカが事件に巻き込まれており、助ける為に協力して欲しいと説得
(ハルカの部屋の写真を見せる)

燕三の術で拠り所の協力者と共に店の外へ転移
ハルカとの戦闘前に間に合えば良いんだが…




 転助と燕三のふたりは戦場ではなく、望月ハルカの実家を目指していた。

 何か彼女を救う手立てはないか、と。
 縁の浅い自分たちではどうする事もできなかったとしても、ハルカが心の拠り所としていたような人物が誰か居れば……或いはその人物に説得を願えないか、協力を願えないかと、そう考えたのだ。
 ハルカの父は仕事に出ている為、応対は変わらずハルカの母のみ。出版社の作家と編集であるというカバーは変えずに、燕三のユーベルコード『算術式:他愛の章』によって、ハルカの母にはふたりが旧知の友人であるかのように錯覚させる。
 同時に転助もユーベルコード『孤狼の瞳』を使用して、相手の嘘を見抜けるように。
 ふたりはハルカが大事に思っていた人物、親族など存在しないかをハルカの母へと聞き込んだ。

 だが、残念な事に。そのような都合の良い人物などは、存在していなかった。
 ハルカの部屋へと上がらせてもらい調査をするも、それらしい情報は入手できない。
 ハルカにも昔は親しい友人なども居たようだ。だが、それはあくまで昔の友人という枠は超えず、現在は疎遠。
 そもそも彼女に親しい友人や頼れる人物、心の拠り所などが存在していれば、今回のような事態に陥る前に相談できただろう。

 ハルカの母にもハルカの部屋を見せた。
 『孤狼の瞳』にて確認するも、彼女は本心でその部屋の様子を知らなかったようだ。
 娘がこんな事になっていただなんて、とショックを隠しきれない様子だった。

「なぁ、ハルカの母ちゃんに協力を仰ぐのはどうなんだ?」
「この様子では……難しいでしょう」
 恐らく、協力自体はしてくれるだろう。
 ハルカの事も大事に思っていない訳ではない筈だ。
 だが、部屋を見ただけでこの様子では。
 邪神を降ろした娘の姿を見て、なおも気丈に彼女を救う為の説得をしてくれるとは思えない。
 むしろ逆効果になってしまう可能性の方が、高かった。

(彼女は決して世界に見限られていないはず……)
 燕三の思いは確かだろう。
 世界に見限られたなど、望月ハルカの被害妄想に過ぎない。
 しかし、彼女を積極的に救うような存在が、彼女の周囲に存在しなかったのは事実だった。

「くそッ、八方塞がりって事かよ。少しくらい、救いがあったっていいじゃねえか!」
 ドン、と転助は壁を叩く。
 転助はこの世の不条理を嘆くのと同程度に、己の無力さを、不甲斐なさを嘆いた。
「転助。まだ、救いは在ります。――我々が諦めてしまわない限りは」
 自分たちの行動は、残念ながら空振りに終わってしまった。
 だからと言って、そこで諦めてしまっては彼女は本当の意味で世界に見放されてしまう。
 彼女は決して世界に見限られていないと、この世に救いはあるのだと。それを教える事ができるのは、他ならぬ猟兵自身なのだから。

「そう、だな。すまねぇ燕三、目ェ醒めたわ」
「ええ。難しい事を考えるのはわたしの仕事。転助、あなたはあなたの思うがままに、突っ走るのが一番ですよ」
 それをフォローするのがわたしの役目です、と燕三は笑う。

「では参りましょう、望月・ハルカさんの元へ」
「応!!」
 燕三がユーベルコード『算術式:即断の章』を発動させる。
 ふたりは一瞬のうちに『ブルームーン』――ハルカと猟兵たちの待つ戦場へと転移した。

失敗 🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

星鏡・べりる

【土蜘蛛】

わっ、今日は上司って感じだね?
今回あんまり救助の必要性を感じないけど、室長命令なら仕方ないな~
援護にまわりま~す!

さあ、お仕事始めようかな!

右の銃は、室長の援護。
学生を逃がす邪魔になってるUDCを銃撃するね。
左の銃は、UDCを斬り散らかすよーこの補助。
よーこを攻撃しようとしているUDCから撃ち抜いていくよ。

例え射線を塞いで立ち回っても、無駄無駄。
ヤタに弾を反射させて射線を確保するからね。

よーし、テンション上がってきた!
今日はただの銃弾だから、景気よく撃っていこ!

大丈夫、よーこが動けなくなっても私が居るよ。
でも、その子に解毒剤を打つのは本当に助けたいと思う人の役目かもね?


蜂月・玻璃也
【土蜘蛛】

「耀子、突っ込め!
べりる、援護頼む!」

今回も人質の救出役
毒液の銃弾で牽制しつつ、学生たちを外へ逃がす
なに、もう情けないなんて思わないさ
これは俺にできること、だからな

それに薬の製造元を抑えたことで、できるようになったことがある
解毒剤の精製
小型の注射器に入れて、猟兵たちに持たせた
勿論限られた時間で作った間に合わせ。それに精神作用に解毒は効果が薄い
だがパンドラはその効果を魔術に大きく頼っている
魔術が相手なら、異能で対抗できる可能性もあるんじゃないか?

「頼むっ!」

部下たちはきっと、いざとなったら容赦はしない
俺にできることは、チャンスがあるかどうかもわからない、小さな希望を預けることだけだ

%


花剣・耀子
%
【土蜘蛛】

そうね。
望み薄だと諦めていたし、
ヒトでないなら斬り捨てるつもりだったわよ。
――でも。
まだ、ヒトであるうちなら。
堕ちる前に手を伸べましょう。

救出は頑張って頂戴。
あたしは見える限りのUDCを斬り果たす。
道を開けるわ。

随分と楽しそうね、望月ハルカ。
半分当たりで半分外れ。
きみの手を掴みに来たの。

ねえ、気は晴れた?
これ以上続けたら、ヒトとして死ぬことも叶わなくなるわよ。

解毒剤の効果は室長に期待するとして。
出来ることは全部やりましょう。

ハルカを押さえて打つには、UDCが邪魔ね。
囓られようと刺されようと、掴めたらそれでいいわ。
この手は絶対離してあげないから。

あたしが動けなくなったら、誰かお願い。




「べりる、救助の援護だ! 耀子は――突っ込め!」
 玻璃也は部下ふたりに指示を出しながら、自身も毒液の銃弾で『アングラーフィッシュ』を牽制。
 仲間の猟兵たちの奮戦により、敵の数はかなり減ってきている。今ならば、中央部で戦う猟兵たちと連携する事で少女たちをこの場から逃がす事ができるかも知れない。
 幸い、望月ハルカは既に少女たちには固執してないようだ。……と言うよりは、彼女への説得が良い意味での目眩ましになっている。
「わっ、今日は上司って感じだね?」
 はっきりと、臆する事なく指示を出す玻璃也の姿に、「やるじゃん」とべりるは珍しくプラスの評価を下した。

 玻璃也自身、多少なり吹っ切れたところはあるのかも知れない。
 かつての玻璃也であれば、部下に指示だけ出して後方支援しかできない自分を情けなく思っただろう。
 だが、今は違う。自分は自分に出来る仕事をし、高望みはしない。
 自分は新任で、エージェントとしての経験で言えば部下たちの方が長いのだから。情けないなどと思う方が烏滸がましいのだ。

「今回あんまり救助の必要性を感じないけど、室長命令なら仕方ないな~。援護にまわりま~す!」
 べりるはぺろりと舌舐めずりして、両手に『機宝銃《ベリル》』を構える。
「さあ、お仕事始めようかな!」

《ベリル》の照準はそれぞれ別の対象へ。
 右の銃は、玻璃也の援護。――学生を逃がす邪魔になっているUDCに銃撃を。
 左の銃は、耀子の補助。――彼女を攻撃しようとしているUDCから撃ち抜いていく。
 『機械鏡《ヤタ》』によって銃弾を反射させ、斜線などお構いなしに跳弾させてバカスカと。

「けど、よーこがやる気なのは珍しいね。このくらいの相手なら、フツーに斬り捨てるかと思ってたのに」
 双方への援護射撃を続けながら、何の気無しに耀子に尋ねるべりる。
「そうね。望み薄だと諦めていたし、ヒトでないなら斬り捨てるつもりだったわよ」

 ――でも。
 まだ、ヒトであるうちなら。
 堕ちる前に手を伸べましょう。

「室長にでも感化された?」
「……どうかしら」
 ほんの少しは、そうかも知れない。
 それは室長に限った話ではなく。彼女を救いたいと、諦めない人たちの姿を見てしまったから。
「救出は頑張って頂戴。あたしは見える限りのUDCを斬り果たす。――道を開けるわ」
 耀子はその手に『機械剣《クサナギ》』を構える。駆動音を鳴らす細身の刃。
 敵群を真っ直ぐに斬り進んでいく、耀子のやる気の姿を見て。べりるの気持ちは俄然にアガる。
「よーし、テンション上がってきた! 今日はただの銃弾だから、景気よく撃っていこ!」
 相変わらず、望月ハルカだとかいじめっ子だとかは心底どうでもいいけど。
 友達が頑張りたいって言うなら、私はそれを全力で応援する。

 3割増しで乱射する弾丸の嵐。
 内、1割くらいが室長の足先を掠めたりしたけどそれは気にしない方向で。(避けれない方が悪いのだ)

 べりるの援護射撃と玻璃也の避難誘導に仲間の猟兵も呼吸を合わせてくれて、無事に少女たちは『ブルームーン』の外へと逃れ、外部に待機していたUDCエージェントに保護される。
 同時に、耀子もまた望月ハルカの目の前へと辿り着いた。

 伽とアレクシスが共に軽傷、ハルカの正面に相対するのは耀子のみ。

「随分と楽しそうね、望月ハルカ。これで分かったでしょう? あたしたちは意外と諦めが悪いの」

 耀子はハルカの顔を真っ直ぐと見据え、左手を差し出す。

「きみの手を、掴みに来たわ」
「…………」

 ハルカは何も言い返さなかった。
 耀子の言葉は聞いてか聞かずか、黙って顔を俯けている。

「ねえ、気は晴れた? これ以上続けたら、ヒトとして死ぬことも叶わなくなるわよ」
「……ヒトとして、ヒトとして生きることに、何の意味があるの?」

 望月ハルカは問うた。

「人間じゃないあなたに、言われたくない。あなただけじゃない。みんなそう。“特別”な、あなたたちに。“何も無い”わたしの事なんて、理解できないでしょうよ」

「そうね。ありがとう。手を差し伸べてくれて、ありがとう。救おうとしてくれて、ありがとう」

「でも、――」

「あなたたちが救おうとしてくれている、『望月ハルカ』は、『邪神に堕ちたわたし』(今のわたし)なのよ」

「結局、そういうこと。『知り合えてよかった』? そうね。昔の私じゃ、あなたたちと知り合う事だって無かったでしょう」

「ずっと欲しかったのよ、わたしだけの“特別”が! ゴミだ、カスだ、生きてる価値もないと罵られながら、わたしは内心、その通りだなって思ってた。何の取り柄も無い、平凡な、つまらない」

「そんなわたしが、ようやく変われたの! だから、もう――わたしの邪魔をしないで!!」
 ハルカの操る巨大な針が耀子の差し出す左手の甲を貫いて、地面へと縫い付けた。

「ふ、ふふ……」
 左手を貫かれたまま、耀子は笑ってハルカの顔を見上げる。
「そんなのお断りね。とことんまで、邪魔してあげる。あたしが動けなくなっても、今度は別の誰かが。言ったでしょう、諦めが悪いって」
「なっ……!」

 耀子が告げた、次の瞬間。
 パァン、という炸裂音と共に、耀子に刺さっていた針が中心から弾ける。
「よーこが動けなくなったら私が居るよ」
 針を破砕したのは、べりるの弾丸だった。
 べりるは「よいしょ」と針を掴んで引き抜くと、耀子に手を差し出し、その身を引き起こす。
「でも、よーこはまだ動けるでしょ? だったら自分でやってきなよ」
 そう言って、べりるは耀子に玻璃也から預かった『あるもの』を受け渡した。

 こく、と耀子は頷いて、ハルカの元へと全力で駆ける。
 そのまま勢いを殺す事なく、ハルカを地面へと押し倒して。

「なっ……このっ、何するのよ!」

 暴れるハルカの左手を、血濡れた左手で強引に掴む。

「この手は絶対離してあげないから。何度でも、掴んでみせるから」

 跡が残るくらい、ぎゅうと力強く握り締めて。
 反対の手。右手に掴んだ『注射器』を、ハルカの首元へと突き刺した。
 


 注射器の中身――それは玻璃也の精製した『毒』だ。

 玻璃也は初め、パンドラの製造所に残されたデータを元に、解毒剤を精製しようと試みた。
 しかし、結論から言えばそれは不可能だった。

 まず第一に、研究データは持ち去られた後でデータが不足していたこと。
 そして、仮にデータが揃っていたとしても邪神を降ろすような特殊な薬物の解毒剤を数時間で精製するのは仮にユーベルコードを用いたとしても困難だということ。
 むしろ、解毒薬など作れない方が幸せだったかも知れない。解毒薬を作れるということは、『パンドラ』と『解毒薬』の双方を用いることで、何のリスクも無しに邪神を降ろせてしまうことに繋がるのだから。
 
 そして玻璃也に残された突破口は、ただひとつ。
 異能――つまりユーベルコードであれば、どんな窮地をも覆し得る可能性を秘めているという点。

 ただしユーベルコードも万能ではない。
『相手を即死させる』ユーベルコードが存在したとしても、どんな相手でも即死するとは限らない。
『相手を改心させる』ユーベルコードが存在したとしても、どんな相手でも改心するとは限らない。

 特に病気や薬物とユーベルコードの関係性は非常に複雑で、一概に効果的かどうかは判断が難しい。
 例えばオロチウィルスは、猟兵たちが大勢で協力し合う事でデータを集め、ワクチンを精製できた。
 人狼病などはかつてより存在が確認されているも、治療例などは耳にしたことがない。
 あらゆる怪我は、欠損は治療できるのだろうか。死者の蘇生はできるのだろうか。
 ユーベルコードには未だ解明されない謎が多く、また、一切の再現性を持たないという点が厄介だ。

 そして今回。完全に効果を発揮してしまった『パンドラ』を無効化するということは、即ち邪神の力に正面から打ち勝つ必要があるだろう。

 玻璃也ひとりの力でそれが為せるかと言われれば、ノー。

 しかし、運が良ければ。
 玻璃也の【霊子を分離させる毒】によって、一時的にハルカと邪神を引き剥がす事くらいはできる……『可能性がある』。

 引き剥がしたところでどうなるのかも、失敗した場合の副作用も、一切不明。
 成功率にして67%。
 ユーベルコード本来の用途とは違うものと考えれば、もっと低く見積もって57%。

 それはまさしく《キャンディコート》の名に相応しい、甘ったるい『小さな希望』だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『磨羯卿』カプリコーン』

POW   :    輝き導きなさい、私のギエディ
【自分が抱いているぬいぐるみ】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【光り輝く狂暴な山羊】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    輝き導きなさい、私のナシラ
【自身の武器である針】から【大量の光り輝く針の雨】を放ち、【対象を地面に縫い付けること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    輝き導きなさい、私のダビー
【頭部のオーラを変化させた黒い角】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に磨羯宮のサインが刻まれ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルム・サフィレットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Last episode

「なに、を……」

 胸元を抑え、苦しみだすハルカ。
 玻璃也の“毒”がハルカの体内へと浸透し、それはカプリコーンとハルカの同調を僅かながらに剥離させた。

 結果で言えば、“成功”。
 ただし、その結果が具体的にどのような結果を齎すかまでは分からない。
 当然ではあるが、この毒によって望月ハルカが正気に戻った訳でもないし、カプリコーンの力が失われた訳でもなかった。

「いや――、わたしは、うしないたく、ない。戻りたくなんか、ない……!」

 ハルカは巨大な針を振るう。
 猟兵たちの元へ、光り輝く針の雨が降り注いだ。
 

●状況確認

・女生徒は避難済み
・敵は望月ハルカ(『磨羯卿』カプリコーンが憑依)1名
・1章の調査結果により、戦闘の判定に10%のボーナス
・望月ハルカを説得・救済しようとする場合、難易度は【至難】
 戦闘以外の行動に注力する場合、判定にはマイナス補正が入る
 (成功判定は戦闘を基準として行なわれる)
 →シナリオ失敗となった場合、望月ハルカは猟兵を一掃した上で逃亡します

※プレイングは4/9の朝8時半以降、受け付け開始とします。
 
シェーラ・ミレディ
少女たちはどうにか逃がせたか。
あとはハルカだけだが……さて、どうやって助けたものかなぁ。憑依した邪神を引き剥がす、とかか?
まぁ、どうするにせよ、弱らせねば話にもなるまい。
説得は他の者に任せ、僕は戦闘に集中しよう。

僕が少女たちを庇っていたのは見られているだろう。ならばそれを声高に主張して、囮を買って出ようか。
「君をいじめていた彼女たちを解放したのは僕だ。まず討つべきは僕だぞ?」
等と言って注意を引きつつ、『落花流水』で呼び出した精霊に守らせながら反撃だ。精霊に角を受け止めさせれば、床にサインが刻まれることもないだろう。

できるだけ、ハルカの身体に弾丸を当てないよう注意しよう。

※アドリブ&絡み歓迎


パーム・アンテルシオ
%

あの人は…あの子の事も、助けようとしてる?
…そう。あの子もまだ、人だって。そういう事なんだね。
だったら…私のする事も、決まってるよね。

百狐夜行。あの子を助けるのを手伝って。
私一人の力なんて、知れたもの。
だから、力を借りるんだ。
群れを作るんだ。

この子たちは、千差万別。出てくる度に、違う子たち。
私だって、一人ひとりの、一匹一匹の事は、わからない。
ねぇ、あなた。世界には、こんなにたくさんのヒトがいるんだよ。

あなたは、世界に絶望したのかもしれない。
でも、この中に、あなたの知る世界はある?
あなたの知ってる人は、いる?
おいでよ、一緒に世界を見よう。
絶望は、塗り替えられる。
あなたの希望も、どこかにあるよ。




「少女たちはどうにか逃がせたか。あとはハルカだけだが……さて、どうやって助けたものかなぁ」

 ――ある者は少女を救う為の策を講じ、

「あの人は……あの子の事も、助けようとしてる? ……そう。あの子もまだ、人だって。そういう事なんだね」

 ――ある者は諦めかけていた可能性の糸を、再び手繰る。

 それらは、決して賢い選択とは言えぬものだろう。

 人は感化される。
 誰かひとりがハルカを救おうとし、その姿を見てもうひとりがハルカを救おうとし。
 ひとり、またひとりと諦めぬその姿を見て、想いはどこまでも伝播していく。

 その結果がどう転ぶかは、終わってみなければ分からない。
 だが、その決断を後悔せぬように。
 猟兵たちは各々が信じた道を進み、死力を尽くす。

「憑依した邪神を引き剥がせれば良いが……どうするにせよ、弱らせねば話にもなるまい」
「そうだね。私たちは、私たちにできる事を」

 誰かひとりの力で、望月ハルカを救う事はできないだろう。
 ふたりでも、三人でも難しいかも知れない。
 全員が全員、彼女を救いたいと願う者も、そうでない者も。みんなで力を合わせた上でようやく叶うか叶わないかという奇跡に縋る。手繰り寄せる。
 みんなが私の想いに応えてくれたように、今度は私がみんなの助けたい。
「『百狐夜行』――あの子を助けるのを手伝って」
 パームが喚び出したのは、狐や人など様々な姿をした集団。群れ。
 それはパームが今まで出逢い、言葉を交わしてきた他人との絆の具現だ。

「この子たちは、千差万別。出てくる度に、違う子たち。私だって、一人ひとりの、一匹一匹の事は、わからない」
 他人を心から理解できるほど通じ合っている人間が世の中にどれだけ居るだろう。
 分からないことは、怖い。他人を信じることは、難しい。

 だけど――、

「ねぇ、あなた。世界には、こんなにたくさんのヒトがいるんだよ」

 あなたは、世界に絶望したのかもしれない。
 でも、この中に、あなたの知る世界はある?
 あなたの知ってる人は、いる?

 未知だからこそ。そこにはまだ希望が残されている。
 少しずつ知っていこう。
 知っていくのは、怖いけど。一歩ずつ踏み出そう。

「おいでよ、一緒に世界を見よう。絶望は、塗り替えられる」
 

 ――『あなたの希望も、どこかにあるよ』
 

 心の底から、そう信じたい。
 そう信じて良いのだと、自身にも言い聞かせるように。
 九尾の狐は人を愛する。

「希望――なんて、そんなもの……ッ!!」
 忌々しい幻影を打ち払うかの如く、ハルカは『百狐夜行』の妖狐たちを無差別に針で穿っていく。
「わたしの人生に、希望なんて無かった。だから! 希望を求めて、この力を手に入れた……ッ!」
 ハルカはパームの言葉を真っ向から否定し、睨みつける。
 ハルカの憎悪に呼応するかの如く、纏う衣の一部が黒角の山羊頭へと姿を変えた。
「『滅ぼせ、ダビー』!」
 ハルカの号令と共に、山羊頭の幻影がパームへと襲い掛かる。
「……っ!」
 周囲の妖狐たちを巻き込みながら、それでも勢いを止めること無く迫りくる突進に、パームも思わず目を瞑った――その時。
「おっと、それは良くない」
 山羊頭の突進を受け止めたのは、異国の衣装を身に纏う美しき精霊。
 それはシェーラが彩色銃技『落花流水』にて喚び出した守護精霊だ。シェーラ自身も精霊の衣を身に纏い、一段と綺羅びやかさを増している。
「君をいじめていた彼女たちを解放したのは僕だ。まず討つべきは僕だぞ?」
 シェーラはふふん、と挑発するように笑いながらハルカを見やる。
 舞い踊るように軽やかな体捌きから放たれる色鮮やかで多彩な弾丸。
 先に放たれた弾丸が全て山羊頭を撃ち抜くと、トンと跳ねたシェーラの身体が空中で一回転して、勢い良くその頭部へと振り下ろされる踵。
 その一撃で、山羊頭は潰され霧散した。

「直接殴るのはあまり好きではないのだがね」
 また身体に傷でもできたら、補修代が高くつく。
「馬鹿にして……っ!」
 山羊頭を潰されたハルカは激昂し、今度は八つほどの頭を同時に生み出しシェーラへと放つ。
「おっと、」
 シェーラは放たれた山羊頭を紙一重で躱しながら、時に跳ね、時に手を触れ逆立ちするように受け流す。
 その姿はさながら闘牛士か、或いはサーカスの如く。
「さぁ、踊ろうか。……おいでレディ」
 シェーラは精霊の手を取り、戦場を舞台に踊り始める。
 軽やかに、優雅に。攻撃をいなして。その動きは不自由になるどころか完全に山羊頭の動きを掌握していた。
「――フィナーレだ」
 いつの間にか一箇所へと集められた山羊頭。
 彩色銃技――無数に放たれた精霊の弾丸が、山羊頭を纏めて打ち崩した。

「ハルカ。邪神と共に望む世界は、きみの瞳にはどう映る?」
 シェーラは共にダンスを踊った精霊を抱き寄せ、その手の甲に口付けをし。

 世界にはこんなにも色彩やかで美しいものが溢れているというのに。
 だのにそれに見向きもせず瞳を曇らせてしまうのは、あまりに惜しい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

チェイザレッザ・ラローシャ
お前一人になったわね
逃げた子達は後で丁寧に後処理しましょう

とりあえず凪の海、そっちは好きにやって
私もそうする

説教なんて言ったけど、正直ムカついてるだけ
弱くても、足掻けば道は広がるもんよ
そんなもん、失ったって何も変わらないわ
お前が手に入れなければならないのは、命懸けて幸せになるための覚悟よ

……あー、なんかもやっとする
後は物理的にスッキリしましょ
血統覚醒、力の解放
霧の身体に馬鹿らしい怪力
吸血鬼と言う暴力を存分に使ってぶん殴るわ
さあ、死にたくなかったら、死ぬ気で抵抗なさい!

あ、鳴宮ー、動けてる?
まあダメでも引き金引ければいけるわよね
そうよ、事務職より先に倒れるとか《狂戦士》の名折れでしょう?

%


鳴宮・匡
%


そりゃ、虐げられる人生なんて真っ平だったろうさ
でもこんな方法に頼るんじゃなかったな

……あ、好きにやれって?
はいはい、了解――じゃ、遠慮はなしで
ってお前突っ込むの? いいけど……

こっちはある程度距離を取って応戦
相手の動作の隙を縫って確実にダメージを蓄積する
ついでだ、チェイザへ向く攻撃は出来るだけ逸らす

光る針は避けきれないなら上着とかで逸らすか
当たっても引き抜くか破壊して
追撃が来る前に態勢を整えるよう心掛ける

……いや、勝手に動けないことにしないでくんない
流石にお前よか先に倒れたら形無しだろ

まあ《土蜘蛛》いるし面倒なことはやってくれるだろ
最悪どうにもならなかったらケツは持つさ
そういう役回りだからな




「とりあえず凪の海、そっちは好きにやって。私もそうするから」
「……あ、好きにやれって? はいはい、了解」
 じゃ、遠慮はなしで――と、鳴宮が容赦なく敵性UDCの排除に臨もうかというところで、それよりも先にチェイザレッザが腕まくりをしながら、のしのしとハルカに向かって前進していく。
「って、お前が突っ込むの? いいけど……」
 昔の鳴宮であれば、チェイザレッザを囮にしながらハルカの側頭部に銃弾を叩き込むくらいの事はしただろう。
 だが、彼はそうはしなかった。
 流石に場の空気に流された、周りに感化されたというほど甘くはない。
 UDCの殺傷に拘るよりも、まずは仲間の好きなようにさせてから自分の好きなようにやればいい。
 ある意味で柔軟性を持ち、ある意味で不真面目になった。見るものが見れば“腑抜けた”と評するかも知れない。
 然し、そんなつもりは毛頭ない。

「――――」

 特に言葉も発する事なく、アサルトライフルから放たれる対UDC用の特殊弾。なるべく装甲の薄そうな、邪神の衣によって覆われていない部分を狙い射撃していく。
 その狙いに容赦はない。邪神クラスのUDCがこの程度で死ぬ訳がないし、万一死んでもそれはそれで問題は無いから。
 『是が非でも殺す』訳ではないが『殺せたら殺す』。『何かするつもりなら邪魔はしない』。
 自ら進んで面倒なことに手を出す趣味は無い。
 チェイザレッザや《土蜘蛛》、他の猟兵たちが何かしようとして失敗しても、最終的には敵を仕留めれるよう動く。
(それでも最初から殺せた方が、100倍くらい楽なんだけどな)
 胸中で毒を吐きながら、飛来する針の雨を対魔術の加工を施した上着で振り払った。


 一方のチェイザレッザ。
 彼女はデスペラードに身を守らせながら、真っ直ぐに望月ハルカの元へと歩み寄っていく。
 降り注ぐ針の雨もデスペラードが庇い(或いは鳴宮が『千篇万禍』にて撃ち落としているのだが、チェイザレッザから感謝の意は見えない)、突っ込んでくる山羊頭も真正面から受け止めて、力技で掻き消して。
 スーツは破れ、髪の毛は乱れ、眼鏡もひしゃげ。鼻血を拭いながら、それでも一歩も退く事はなく、チェイザレッザは望月ハルカの目の前へと辿り着いた。

「説教なんて言ったけど、正直ムカついてるだけ」

 口に溜まった血を吐き捨てて。

「弱くても、足掻けば道は広がるもんよ。そんなもん、失ったって何も変わらないわ」

 力を得たからと言って簡単に道が広がる訳じゃない。
 そんな脆弱な意志じゃ、ただ邪神の良い様に利用されて、破滅するのがオチだ。

「お前が手に入れなければならないのは、命懸けて幸せになるための覚悟よ」

 邪神に魂を売り渡す事の意味、理解してる?
 あたしたち相手に命懸けで戦う覚悟が本当に出来てる?
 そんだけの覚悟を持って、お前は今まで状況を変えようと努力してきた?

「……あー、なんかもやっとする!!」
 がぁー、とチェイザレッザは雄叫びを上げる。
「もー、知らない。ホントさぁ、イライラすんのよ。あたしより若い癖に人生諦めて。せめて社会出てから絶望しなさいよ。絶望くらい、あたしだって散々してきたっての!!」
 髪が逆立ち、金色へと染まり。真紅の双眸がハルカを睨む。
「そんな訳で、あたしはお前をぶん殴る。ムカつくから。死にたくなかったら、死ぬ気で抵抗なさい!」
 その宣言どおりにチェイザレッザはハルカへと殴り掛かった。
「ひっ……!」
 チェイザレッザの派手な大振り、ハルカは咄嗟に身を躱す。空を切った拳はそのまま、コンクリートの壁を砕く。
「待ァちなさい、ハルカァ!!」
 ハルカが空中に逃げたところで、チェイザレッザも身体を霧へと変えて追い縋る。
「くっ……、この……化け物ッ!!」
 ハルカが手に持つ縫いぐるみへと力を注ぎ、チェイザレッザに向けてユーベルコードを放とうとしたところで、
「――――」
 その横合いから刺さる、鳴宮の支援射撃。
「あぐっ……!」
「ナイスアシスト、鳴宮!」

 ――捕まえた。

 チェイザレッザの左手が、ようやくハルカの右腕を掴んだ。

「歯ァ食いしばりなさい、ハルカァ!!」

 チェイザレッザ渾身の右拳が、ハルカの顔面へとめり込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



(人のこと《狂戦士》って言うけど、今回だけ見たらどう考えてもお前の方が狂戦士だよな)

 お前のジョブ、バーバリアンだっけ?

 そんな事を思う鳴宮であった。
 
奇天烈・モクレン
あれがカプリコーン……
斗真の見つけてくれた資料通りだ、お見事!

さて、みんなのお陰で僅かながらでも憑依が剥がれたわけだよな
僅かでも可能性があるってんなら、俺達もそれに賭けたい

魔杖で攻撃を捌きつつ近づいて、【オルタナティブ・ダブル】で分離した俺達二人で片方ずつ引っ張る
俺達はカプリコーンを、もう一人の俺達はハルカを

世界を見限った?
大いに結構!俺達もかつて世界に絶望してた!

でもね、ハルカ
世界を見限るのはまだ早い
だって世界は36個もあるんだからさ
学校や家の狭い世界なんて捨てちゃえよ
そこが世界の全部ってわけじゃない

自分の好きな場所に行って好きに生きてみようよ
……その為の手伝いは、きっと俺達も出来る筈だから




「あれがカプリコーン……斗真の見つけてくれた資料通りだ、お見事!」
 言いながらモクレンは魔杖を構え、状況を冷静に分析する。
 現在、望月ハルカに対するカプリコーンの憑依は僅かながらでも剥がれている様子。
 であれば、多少強引にでも引き剥がす――。
 僅かでも可能性があるというなら、それに賭けたい。

「「行くよ、ハルカ!」」

 針の雨を掻い潜りハルカの元へと駆け寄る、ふたりのモクレン。
 多少の被弾には目を瞑り。ふたりはじりじりと距離を詰め、ハルカへと飛び掛かる!
「さぁ、大人しくその衣を脱ぎ捨てるんだ!」
「何をっ、……この、変態ッ!!」
 強引に衣に掴みかかるモクレンの腹に、思い切り山羊頭を喰らわせるハルカ。
「ごっ、ふっ……!」
 それにはモクレンたちも為す術無く吹き飛び、地べたに転がされる。
 ハルカは息を荒げながら、自らを覆い隠すかのように邪神の衣に身を包む。
 それはさながら、『北風と太陽』の童話のよう。
 こちらが邪神を剥がそうとすれば、逆にハルカはそれを離すまいと抵抗する。
 憑依が不安定になっているのは確かだが、強引に邪神の憑依を解くのはなかなか難しそうに感じられた。
 口元から垂れる血を拭いながら、モクレンは立ち上がる。
 土手っ腹に重い一撃を喰らおうと、変態呼ばわりされようと、その瞳はまだハルカ救出を諦めていない。

 両手を広げ、モクレンは叫ぶ。
「世界を見限った? 大いに結構! 俺達もかつて世界に絶望してた!」
 己が実体験。だからこそ、その言葉には重みがある。
 この世は醜いもので溢れている。希望と絶望の総数を比べれば、絶望の方がずっと多いかも知れない。
「でもね、ハルカ。世界を見限るのはまだ早い。だって世界は36個もあるんだから!」
 この世界が本気の本気でダメだったとしても、別の世界に行けばいい。
 他に気に入る世界が無かったとしても、取り敢えず36世界すべてを見定めてから絶望しよう。
 今生には、俺達ですら未だ知らない世界がたくさんある。
 猟兵やオブリビオン以外が世界を渡る手段は、一策講じないと難しいかも知れないけど、そんな抜け道くらい探せばきっと見つかる筈だ。

「自分の好きな場所に行って好きに生きてみようよ……その為の手伝いは、きっと俺達も出来る筈だから」
「そんな、の……」

 ――そんなの、勝手だ。

 わたしがようやく掴んだ“希望”なのに。
 ようやく見つけた“新天地”なのに。
 折角この手に掴んだと思えば、誰も彼もがそれを否定する。

 苦しんでた時には誰も助けてくれなくて、ようやく前向きになれたと思ったらノコノコ出てきて。

「もう、いや――嫌なの。やめて、わたしを惑わせないで」

 ――『苦しまなくて良いのですよ、ハルカ』
 ――『彼らの言うことに耳を貸す必要など、ありません』
 ――『私の愛しい子。既に私とあなたは運命共同体。彼らは他人』
 ――『あなたの心に寄り添えるのは、私だけ』
 ――『彼らは一時の感情に絆されて、ただ偽善に酔いしれているに過ぎません』

「消えて……みんな、わたしの目の前から消えてしまえばいい!!」

 空中へと浮かび上がる光点が山羊座を描き出す。
 モクレンの目の前で練り上げられる強烈な魔力の奔流。

「――『輝き導きなさい、私のギエディ』」

 光り輝く狂暴な山羊が、モクレンへと襲い掛かる。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

五百雀・斗真
WIZ

世界が君を見限ったと言っていたけれど
そう思ってしまう切っ掛けを作ったのはあの3人なんだよね…
その人達のせいで君だけが蝕まれていくのは納得がいかない

君が纏う山羊や薬を渡した人だって
力を貸して自分の都合のいいようにしてるだけだ
そんな邪神のサインは刻ませない
攻撃もサインも【コードキャンセル】で相殺する
衣が怪しく光り出したら突っ込んで行き
彼女にまとわりつくモノの力の相殺を全力で試みるが
もし他の人がもっと有効な手段を行うのであれば
そのサポートに回る

本当のハルカさんを形作れるのはハルカさん自身だ
どんなことでもいい
復讐より前に、本当はどうなりたかったのか…
どうしていきたかったのか…思い出して…!






「させない……!」
 ハルカのユーベルコード発動に合わせて、斗真も自身のユーベルコードを発動させる。
『コードキャンセル』。相手のユーベルコードの模倣。
 ハルカの生み出した黒い山羊に対し、斗真の生み出した白い山羊がその攻撃を相殺する。
「う、ぐあっ……!」
 何とか相殺には成功した。
 然しエネルギーの総量はハルカの方が優れており、斗真とモクレンのふたりは相殺の余波によってその身体を大きく壁際まで吹き飛ばされた。
「い、つつ……ありがとうね、大田さん」
 吹き飛ばされた自分の背。衝撃を和らげてくれた触手に対して礼を言い、斗真は身を起こす。

 斗真にはまだ、ハルカに伝えたい言葉がたくさんあった。

 本当なら、彼女にまとわりつくモノをすぐにだって引き剥がしてやりたい。
 モクレンの行動だって理解できた。でも同じ轍は踏めない。
 ユーベルコードで相殺できるか?
 似たような衣を生み出したところで、あの衣を剥がす手段に結び付けるのは難しそうだ。
 今は、未だ。今ここに至っても、未だ。
 彼女を救いたいと願うこの手は、彼女の元に届かない。
 だったらせめて、この言葉だけでも。想いだけでも届けたい。

「世界が君を見限ったと言っていたけれど。そう思ってしまう切っ掛けを作ったのは、あの3人なんだよね……」
 その人達のせいで君だけが蝕まれていくのは納得がいかない。
「君が纏う山羊や薬を渡した人だって、力を貸して自分の都合のいいようにしてるだけだ」
 そんな誰かに利用されるだけの、誰かの犠牲になり続ける人生なんて、あまりにも悲しい事だと斗真は訴える。
 だが、そんな斗真の言葉にも、ハルカは只管に首を横に振って。
「そんな事、分かってる! 分かってるわよ! 当然じゃない、人は自分の都合で動くものだもの。わたしだって、わたしの都合で周囲を利用して――」
「分かって、ないよ……!」
 斗真にしては珍しく、声を荒げて。ハルカの意見を否定した。
 本当は認めてあげたい。他人の考えを、否定なんてしたくない。
 けど、ここで正さないと――彼女は本当に、帰ってこれなくなる。

 僕に偉そうな事を言う資格なんて無いだろう。
 胸が張り裂けるように苦しい。けれど、これだけは伝えないと。
 きみが歩もうとしているその先に、未来は無い。

「本当のハルカさんを形作れるのはハルカさん自身だ! どんなことでもいい。復讐より前に、本当はどうなりたかったのか。どうしていきたかったのか、思い出して……!」
 きみは生まれた時から誰かを憎んでいた訳じゃないだろう?
 きみの人生は、あの3人のためのものじゃないだろう?

「うるさいっ…‥、わたしは、わたし……なりたかったものなんて、やりたかった事なんて……っ!」

 斗真に向けて放たれた、特大のユーベルコード。

 斗真は薄れゆく意識の中、ハルカの素顔を――涙を見て。
 きっと自分の届けた言葉に間違いなんてなかったと、悟った。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

カタラ・プレケス
%

…君はまだ失いたくないと詠うなら
戻りたくないと叫ぶなら
思うがままに叫ぶがいい
心の底から世界を呪え
その全てを受け入れよう
我受け継ぐ名はカタラ
呪いで在りて祈りを戴く夜の御子
心がどれほど歪もうとも
人の心であるならば救えぬ道理はないと知れ!

【巨蟹の星空】を全力展開
巨蟹宮は占星術において磨羯宮と対極となる
巨蟹の意味は排他であり元素は水
磨羯の意味は自我であり元素は土
どこまでも排他的な星の水泡で自我持つ呪いの土壁を押し流す

さあ、磨羯卿
何処までも対極の星だ
抗えるなら抗えよ
人を簡単に堕とせるものと思うなよ


楠瀬・亜夜
なるほど……運命に抗う……そういう訳ですか
運命から逃れられないのなら捻じ曲げる、それも一興……ですね
この物語、見届けさせて貰いましょう

他の方がハルカさんの説得、救済を試みるのであれば
私はハルカさんの足止め、味方の援護をさせて頂きましょうか
【クイックドロウ】による殺傷力はさほど高くない攻撃方法で
足止めを狙っていきましょう
攻撃の予備動作の最中に手足の狙撃や連射による弾幕攻撃で
ハルカさんの動きを抑制します

敵の針攻撃の際にUCで大量のナイフを展開し広範囲に散弾のように
飛ばしできるだけ針の破壊を狙い味方への被害を抑えましょう

ああ――そうか、私は心のどこかで幸せな結末を願っていた




「なるほど。運命に抗う……そういう訳ですか」
 運命から逃れられないのなら捻じ曲げる、それも一興。
 亜夜は望月ハルカの生き方にも、ある程度の理があると感じていた。

 だがそれは、ハルカを救おうとする猟兵たちに対しても全く同じ感情を抱いている。
 滅びの運命を捻じ曲げてでも、救おうとする。
 互いに形は違えど、運命に対して全力で抗おうとする物語。
 それは亜夜にとって、どちらも非常に興味深いもの。

「この物語、見届けさせて貰いましょう」
 亜夜はそう告げると、周囲にナイフを浮かせて、銃を構えた。


「ねぇ、おねーさん。悪いんだけど、そのままちょっとあいつの気を逸らして貰ってもいい?」
 背後から亜夜に語り掛けてきたのは、カタラ。
“あいつ”とは果たして誰を指すのか。望月ハルカか、はたまた彼女に憑く邪神か。
「ちょっと大掛かりな術になるから。邪魔されたくないんだよね」
「わかりました。お任せください」
 告げると同時に駆け出した亜夜は、その照準をハルカの手足へと向ける。
 基本は牽制。残弾数を気にしながら、本命はハルカの攻撃の予備動作に合わせて備えておく。
 飛来する針にはナイフを放ち迎撃。雨の如く降り注ぐ針の数に対し、亜夜のナイフの本数は足りていないが、その代わり威力や耐久性で言えばナイフの方が高い。なるべく多くの針を巻き込むよう、破壊できるようにナイフを操り、仲間への被害を減らせるよう努めた。

 ――何故だろう。

 戦いながら、亜夜は自身の行動に疑問を抱いていた。
 望月ハルカに興味はあれど、初めはここまで肩入れするつもりはなかった。
 殺しても仕方のない存在だと、心の何処かで割り切っていた。
 所詮は数ある物語のうちのひとつに過ぎない、と。
 ただの興味本位で見ていた筈なのに。

 自ずと動かされていた。そうしたいと願っていた。
 【誰かが助けるなら】、【それを支援しよう】と。

 ああ――そうか、

 ここに来て、ようやく亜夜は自覚した。

 ――『私は心のどこかで幸せな結末を願っていた』。

「ハルカさん。物語に口を出すのは、あまり私の柄じゃ無いかも知れませんが……」

 自分はあくまで物語の読み手であると、そう思っていたけれど。

「私もささやかながら、キミの幸せを願ってますよ」

 亜夜は優しく告げて。操る無数のナイフが望月ハルカへと降り注いだ。


 亜夜が作り出した時間。
 おかげで邪神の気は逸れ、カタラの術式も完成した。

「聞こえるかい、望月ハルカ」

 戦場に、カタラの声が響き渡る。

「……君はまだ失いたくないと詠うなら。戻りたくないと叫ぶなら。思うがままに叫ぶがいい」

 ――それは問答ではなく、

「心の底から世界を呪え。その全てを受け入れよう」

 ――呪いも、憎しみも、苦しみも、その全て。なにひとつ零すこと無く受け入れるという広い度量。

「我受け継ぐ名はカタラ。呪いで在りて祈りを戴く夜の御子」

 ――人とは呪うもの。ならばそれを受け入れるのも、また人であり。

「心がどれほど歪もうとも。人の心であるならば救えぬ道理はないと知れ!」

 ――人は、人の手によって救われなければならない。

 先程のハルカと同様に、カタラの眼前にも十二星座――巨蟹宮の星図が映し出された。

 開くは星の十二が一つ。
 勇敢なるはカルキノス、友を守りしその心、描き謳いて我が示す。

 巨蟹宮は占星術において磨羯宮と対極。
 巨蟹の意味は排他であり、元素は水。
 磨羯の意味は自我であり、元素は土。

 それは相性にして最悪、相克の存在。

「さあ磨羯卿、何処までも対極の星だ。抗えるなら抗えよ、人を簡単に堕とせるものと思うなよ!」

 カタラの放つどこまでも排他的な星の水泡が望月ハルカへと押し寄せ、その肉体を泡の中へと包み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

境・花世
仲間の攻撃で出来た隙を突き、
早業ダッシュで攻撃を掻い潜り接敵を
思考回路を侵す馨が届いたなら
深く響くように語り掛けて

誰に望まれなくとも、
花が勝手に咲くように
誰に見限られても、
いのちのままに生きるのじゃだめかなあ

右目に咲いた虚無の花に触れて、
不思議なほど晴れやかに笑い

ほら、わたしだってこんな化け物だ
生きる意味なんてひとつもない
――だけど
死なないでいたから、今、
こうしてきみのために出来ることがあるよ

真っ直ぐに向ける銃口は
嫌というほど使い慣れた記憶消去銃

邪神を望む心が交神を可能にするなら、
それを少しでも薄れさせてしまおう
ハルカを傷付けないように物理衝撃を弱めたのは、
……私情、なんて、らしくないけど

😘




 巨蟹の泡へと飲まれ、意識が微睡む中――。
 ハルカは其処に在る筈もない、花の馨りを感じた。

『誰に望まれなくとも、花が勝手に咲くように。誰に見限られても、いのちのままに生きるのじゃだめかなあ』

 きみは誰かに見られる事を、特別であることを望んだけれど。
 それは他者による捉え方であって。きみ自信を“特別”だと認められるのは、他でもない、きみ自身だ。

 ハルカの心の隙間に、脳内へと直接語り掛けるように。
 花世の馨りが、優しい声が。深く、深くへと響き渡る。

 花世は右目に咲いた虚無の花に触れて、不思議なほど晴れやかに笑い。「ほら見て」とハルカに声を掛ける。

『わたしだってこんな化け物だ。生きる意味なんてひとつもない。――だけど
死なないでいたから、今、こうしてきみに会えたんだ』

 化け物。
 望月ハルカと花世の存在は、まるで表と裏。
 ハルカが邪神をその身に降ろし救いを求めたのと同様に、花世もまた右目に邪神を宿している。
 ふたりの存在を決定的に別物足らしめているのは、その心の在り方だ。

 花世には花が植えられる以前の記憶がない。
 何もない。何も持たない。存在に意味なんてない。誰からも求められない。

 それでも此処にあるのだ。
 此の世に在りて花――『花世』、と。自分に名付けたその日から。

(……私情、なんて、らしくないけど)
 それでも、出来ることなら。彼女には彼女の咲き方を見つけて欲しい。
 誰かに愛でて貰えるのなら、それはもちろん素晴らしい事だけど。
 そんなものが無くたってきみは美しい花だと。図太く生きて良いんだと伝えたい。

 花世はハルカへと真っ直ぐに銃口を向ける。
 それは嫌というほど使い慣れた記憶消去銃。
 邪神を望む心が交神を可能にするなら、それを少しでも薄れさせる事ができるように。

「きみのこころは誰のものでもない、きみのものだよ」

 傷ついていくきみの姿は見たくないから。
 花世の放った光の弾が、ハルカと邪神の繋がりを穿った。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

星鏡・べりる
%
【土蜘蛛】

ダメ、だったみたいだね
邪神になっちゃったし、賭けは失敗
あれはもう救えないと思うよ
……殺すけど、異論はないよね?

もう!答えずに走り出さないでよ!
部下として困るじゃない!

とはいえ、諦めていない事は明らかなので、ひとまず致命傷にならない部位を撃ってサポートしようかな

これが私にできる最大限の譲歩
この結果、室長がどうなろうと自業自得
自業自得なんだけど、うーん……

はぁ〜、もう
……めんどくさいなぁ

望月ハルカ、聞こえてる?
バケモノとして今ここで死ぬか、人に戻って辛い日々を繰り返すか、どっちがいい?

助かるかどうかは別として
まだ選択肢は、あるみたいだよ?


蜂月・玻璃也
【土蜘蛛】

べりるの問いに答えることができない

答えられなくても、今は走り出すしかない
ちっぽけな希望だけに縋ってはいられない、俺たちは確実な「未来」を掴まなければいけないんだから!

ガジェットガンを乱射しながらも模索する
「ダメだった」?
違う。解毒剤には確かに手応えがあった
俺の能力は破壊に特化してる
ハルカさんと邪神の繋がりを「壊す」
解毒剤はそのきっかけ
だからこうして、次々毒を撃ち込んでいく
だが…

クソッ!あとは二つを「切り離す」ことさえできたら!

貴方を助けようなんて思ってない
生き延びても、きっと貴方は苦しむだろう
恨むだろう
それでも、それでも

弱さから、敵から、自分から
逃げることを、俺は許さない!

%




「が、は……っ、げほっ、ごほっ!」
 花世の弾丸を受けると同時に巨蟹の泡が弾け、ハルカはその場に両手をついて咳き込む。
「や、だ……カプリコーン、あなたの声が遠い。どうすればいいの、わたしは……、怖い、やだ、もう……ううっ!!」
 ハルカからはもう余裕なんてものは失われ、半狂乱のまま頭を抱えてのたうち回り、苦しんでいた。

「うううーーーん」
 そんなハルカの様子を見て、べりるもまた大いに悩んでいた。
 悩んでいた……と言っても、それは他の面子の様に何かに葛藤するとか懊悩するような深いものではなく。「今日のおやつは何にしよう」とか「珈琲と紅茶、どっちを飲もう」とかそういったレベルの悩み。実際には仕事の悩みなので、もう少しくらい真面目ではあるのだが。

「これやっぱ、もう邪神だよね? みんな頑張ってるけど、流石に厳しくない?」
 こぞって説得などしているものの。仮に望月ハルカが心を入れ替えたとして、それで邪神が剥がれる訳でもない。
 具体的に邪神だけを剥がす手段だって存在しない。
 むしろ心を入れ替えたのならば、ハルカは助けて欲しい、助かりたいと願いながら殺される事になるだけではないか。
「邪神になっちゃった時点で、賭けは失敗。あれはもう救えないと思うよ」

 ……殺すけど、異論はないよね?

 べりるは上司と同僚に問い掛ける。
 甘ちゃん上司はともかくとして、耀子がここまで望月ハルカに肩入れするのは意外だった。
 ストイックに見えてストイックになりきれない、そんな優しさも彼女の魅力ではあると思うが、友人が心を傷ませていると思えばやはり邪神は憎らしいし、戦場でのそういった迷いや油断は死に直結する。そう考えるとあまり歓迎できたものでもない。

「仕事は忘れていないわ。邪神を増やすわけにはいかないもの」
 耀子自身はそう応えて居たが、べりるからすれば未練たらたらなのが露骨に見て取れて、思わず溜息が漏れた。
「室長はどうなの? 諦めてないの? 大体そんな邪神の憑依を解呪できるような薬をポンポン作れたら、室長は今頃こんなところの窓際室長じゃなくて、もっとこう、研究機関とかのお偉いさんだよ」
 こんなところ、と言ってもべりるにとっては唯一無二の、掛け替えの無い場所ではあるが。それでもまぁ、使い捨て部署である事には違いない。
「…………」
 玻璃也はべりるの問いに答えることができず、ただ沈黙を貫いていた。
 ただ望月ハルカの様子を窺い、表情を険しくしながら彼女を見つめている。
「ちゃんと指示くれなきゃ困るんですけど~。殺していい? 殺すよ? 撃っていいのね?」
 べりるが再三確認するのには、もちろん理由がある。
 どう考えても室長――玻璃也が望月ハルカの救出を諦めていなかったからだ。
 苦渋の判断である事は分かる。理解はできる。
 だが悩んだ上で、どうするのか。その判断を下すのは、部隊(チーム)である以上、玻璃也の仕事だった。

「う…………」
「う……?」

「う、おおおおおおおおおおッ!!」

 突如、気でも狂ったかのように雄叫びを上げて、駆け出す玻璃也。
 咄嗟の出来事に、べりるも開いた口が塞がらない。
「もう! 答えずに走り出さないでよ! 部下として困るじゃない!」
 困る。現在進行系で、困っている。
 でもどうせ、この上司からロクな指示が飛んでくる事は1ミリくらいしか期待していなかった。(好感度⤵)
 ひとまず致命傷にならない部位を撃ってサポート。
 これが自分にできる最大限の譲歩。この結果、室長がどうなろうと自業自得。自業自得ではあるが、どうにも釈然としない。

「はぁ〜、もう。……めんどくさいなぁ」
 二挺一対の愛銃に宝石弾を詰め込みながら、べりるは二度目の深い溜息を吐いた。


 玻璃也はハルカに対して、邪神の衣に対して、ガジェットガンで、がむしゃらに毒を乱射する。
 無策、或いは希望的観測。そこに確証なんてものは無い。
 それでも僅かな可能性に、奇跡に縋りながら玻璃也は運命に抗っていた。

 ――『ダメだった』?
 違う。解毒剤には確かに手応えがあった。
 俺の能力は破壊に特化してる。
 ハルカさんと邪神の繋がりを『壊す』ことができれば!

 それは奇しくも、先程の花世と狙ったものは同じかも知れない。
 だが既に玻璃也の毒は打ち込まれている。“既に効いている”。
 毒が過ぎて毒になることはあれど、これ以上どんなに毒を浴びせたところでハルカと邪神の繋がりだけを狙って綺麗に破壊できる程の柔軟性を、玻璃也のユーベルコードは持ち合わせていなかった。
 ハルカと邪神、ふたつの存在を耀子の能力で『切り離す』ことも考えた。
 だが切り離すにしても、まだ難しい。ハルカが邪神を纏ったままで、邪神だけを狙って斬り裂けるほど耀子は神域の達人ではない。

 今できることと言えば、そう。愚直に声を掛けるだけ。
 望月ハルカ自身が邪神と向き合い、それを拒まなければならない。

「望月ハルカ、聞こえてる?」
 高級な宝石弾を惜しげもなく牽制に使う事にべりるは心を痛めながら、ハルカに問う。
「バケモノとして今ここで死ぬか、人に戻って辛い日々を繰り返すか、どっちがいい? 助かるかどうかは別として、まだ選択肢は、あるみたいだよ?」
 本当にそうかは分からない。むしろ今でも、助からないと思っている。
 だが少なくとも仲間ふたりは、或いは他の猟兵たちは、選択肢があると信じている。

「ハルカさん!!」
 身体中を針に刺され、ボロボロになりながらも玻璃也は暴走する望月ハルカへと叫ぶように声を上げる。
「貴方を助けようなんて思ってない! 生き延びても、きっと貴方は苦しむだろう。恨むだろう!」

 それでも、それでも――!

「弱さから、敵から、自分から逃げるな!! 逃げることを、俺は許さない!」

 どの口で言うんだ、と誰よりも俺自身が理解している。
 だが、分かっているからこそ、俺が伝えなきゃならない。

 弱者として。臆病者として。
 己の弱さから、目を逸らしてはならぬのだと。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



 ――わたしは、“特別”である事を願った。
 今こうして、猟兵たちと対峙しているのは、猟兵たちが望月ハルカをしきりに気に掛けてくれているのは、望月ハルカが邪神と関わりを持ったから。
 皮肉な事に、それは事実。

 仮にここで、猟兵たちの差し伸べた手を取るとして。
 だったら自分は、邪神になど出会わない方が良かったのだろうか?
 特別を望まず、平凡な自分を受け入れて。無色な、無味乾燥の世界を生きる。
 人生を巻き戻せたとして、わたしはどうする?
 結局は、邪神の手を取る道を選ぶだろう。

 ほんとうに、特別じゃなくてもいいの?
 ここで彼らの手を取って、いずれその縁が切れた時。
 わたしはその平凡に耐えられるのだろうか。
 
アレクシス・アルトマイア
😘
言葉だけで、全てが解決するなんて思ってはいませんが
それでも
伝えたいことがあるから
何度でも言葉を届けて
何度でも、貴女を見ていると伝えます。

私の目の前にいる貴女を

確かに堕ちた貴女は特別かもしれません
でも
ここで邪神の手を振り払えるのなら
そんな貴女ならそれこそ平凡な訳がないでしょう
貴女は無価値ではあり得ない

ハルカちゃん。
私の友だちに、なっては頂けませんか
平日に遊園地とか
悪いことも一緒にどうですか

【星に祈りを、夜に終りを】
を使用
【第六感】【祈り】【破魔】を用いて分離したカプリコーンのみを
【暗殺】致します

フルパフォーマンスで説得しつつ戦います
【従者の独立幇助】など救出に有効そうなユーベルコードも使用


花剣・耀子
%
【土蜘蛛】

仕事は忘れていないわ。
邪神を増やすわけにはいかないもの。

邪魔をしないでと言われて、邪魔をしない義理などないのよ。
この期に及んで他人に期待をしているのなら、
……そうね。きみはほんとうに、ふつうの子なんだわ。
数え切れないほど見てきた、当たり前の特別よ。

生きることに意味なんてないわ。
ないから、ないけれど、それでも何かを遺そうとするから価値があるのよ。
生きる価値を欲しがったきみが、そう望んだ望月ハルカを棄ててどうするの。

邪神とハルカの在り様が揺らぐなら、揺らいだ境を、邪神だけを斬れば良い。
そこに在るものを、あたしが斬れない道理はないわ。

言ったでしょう。
あたしは、きみの手を掴みに来たのよ。


九泉・伽
黄泉比良坂の現し身に自分を庇わせとにかく話す

ああ突然でごめんね
俺さネットゲームばっかやってたのよ
ゲームでは「はじめまして」からすぐに一緒に狩り
薄っぺらい縁
でもその中でたまにずっとの縁もあった
そんなでさ、友達になれるといいなって話しかけたの
性急すぎたのは謝る
けど切欠はなんでもいいって考えてる
縁が繋がったら
死んだってその人の思い出の中に残し合える

もうキミは俺に残してる
俺がつかんだ縁は俺のものだし
助けられても助けられなくても、忘れない

キミがなにもないなんて、俺だけは嘘だって言う

友達っていうか
親が嫌いとかあいつらゲスだとかの吐き出し相手になりたいのよ
吐き出しながらさぁ未来に歩くキミが見たいんだよ、俺は




「ハルカちゃん、」
 度重なる戦闘で服のあちこちは破け、ボロボロになりながら。
 それでも、伝えたいことがあるから。
 アレクシスはハルカに対し、言葉を投げ続ける。
「言葉だけで、全てが解決するなんて思ってはいませんが……何度でも言葉を届けて、何度でも、貴女を見ていると伝えます」

 この出逢いは確かに偶然で、たった数日……或いはこの数時間の繋がりしか持たない、浅い縁。
 それでも今。
 私は、私の目の前にいる貴女を見ている。見続ける。

「確かに堕ちた貴女は特別かもしれません。でも、ここで邪神の手を振り払えるのなら――そんな貴女ならそれこそ平凡な訳がないでしょう」

 貴女は無価値ではあり得ないと、そう紡いだ。


 アレクシスの言葉に、耀子が重ねる。

「この期に及んで他人に期待をしているのなら、……そうね。きみはほんとうに、ふつうの子なんだわ」

 本当の意味で“平凡”な人間など、何処にも居ない。
 耀子にとっての望月ハルカは、寂しい、辛い、自分を見て欲しい、受け入れて欲しいと誰かに縋るような――数え切れないほど見てきた、当たり前の特別。
 邪神に染まるような救いようのない悪人ではなく、『人間らしい人間』だと、そう思う。

「生きることに意味なんてないわ。ないから、ないけれど、それでも何かを遺そうとするから価値があるのよ」

 生きても、死んでも。それは極端な話で、水とタンパク質の塊が動いているか止まっているかの違いでしかない。
 人の生に価値があるとすれば、それは『何かを遺す』こと。
 誰かの心に、自分の存在を遺すこと。

「生きる価値を欲しがったきみが、そう望んだ望月ハルカを棄ててどうするの」

 邪神へと至れば、確かにそれは――『何かを遺す』ことに繋がるかも知れないけど。それは『邪神』が生きた証であって、『望月ハルカ』の存在証明とはなり得ない。


 伽が語るのは自身の過去。身の回りの、自分にとっての友情の話。

「突然でごめんね。俺さネットゲームばっかやってたのよ。ゲームで『はじめまして』って挨拶して、すぐに一緒に狩りに行ったりする薄っぺらい縁なんだけどさ」

 殆どの縁はその場限り、一期一会の打算的な関係。
 効率的にゲームを進める為の、互いに楽しく遊ぶ為の、それだけの仲。

「でもそんな中でも――たまにずっと続く縁ってのも、あったワケよ」

 別に相手がめちゃめちゃゲームが上手かったとか、特別チャットが面白かったとかそんなんでも無しに。
 いや、もちろん気が合うから仲良くなった訳だし面白い奴だとは思ったけど。
 それでも、相手に何か“特別”を求めて付き合い始めたワケじゃない。
 友達に“特別”である事を望んじゃいない。

「そんなでさ、友達になれるといいなって話しかけたの」

 性急すぎたのは謝る。
 けど、切欠なんて何でも良かった。
 縁が繋がったら、死んだってその人の思い出の中に残し合える。

「もうキミは俺に残してる。俺がつかんだ縁は俺のものだし、助けられても助けられなくても、忘れない」

 誰かに何かを残す事に、特別なんて必要ない。
 言い換えるなら、既に特別で。特別な特別なんて、この世に存在しない。

「だからさ、キミがなにもないなんて、俺だけは嘘だって言う。……俺だけじゃないか、みんなそうだって、思ってるよ」

 出逢いの切っ掛けだとか、他の誰だったらどうだとか、そんなのは知らない。
 そんなのは誰かの人生(ゲーム)で、誰かの縁(ルート)なのだから。
 ここに在るのは他ならぬ、俺たちとキミの物語。

「友達とか、そんな難しく考えないでさ。親が嫌いとかあいつらゲスだとかの吐き出し相手になりたいのよ。そんな愚痴、吐き出しながらさぁ。未来に歩くキミが見たいんだよ、俺は」

 ニッ、と伽は笑う。「だって、そんな人生の方が楽しそうじゃん」という伽のシンプルな好意が感じられた。

 一方で、これまで無表情で伽を庇っていた『イキゾコナイ』も、ハルカにだけ見えるよう、薄っすらと苦笑いを浮かべていた。
『この人、こういう奴なんで』『仲良くしてやって』――そんな謝罪をするかのように。


 星に祈りを、夜に終りを。
 祈りは星に、想いは此処に。

 人と邪神の狭間に揺れるハルカの元へ、アレクシスは跳躍する。
 ふわ、と音も立てずに彼女の背後へと着地して。アレクシスは、その背中をそっと抱き寄せた。

「ハルカちゃん。私の友だちに、なっては頂けませんか? 平日に遊園地に遊びに行くだとか、悪いことも一緒にどうですか?」
「わたし……わたし、は……」

 苦しい。胸が痛む。

 このひとたちは、きっと、ほんとうに。
 初対面のわたしを、わたしなんかを、本気で救おうと思っている。
 特別じゃなくてもいいと、平凡なわたしでも受け入れてくれると、そう言っている。

「でも、わたしは……もう、戻れない……!」

 邪神の衣ごとハルカを抱きしめるアレクシスの肉体を、呪詛が蝕む。
 呪いが侵食し、アレクシスをも取り込もうとその全身を包み込む。
 アレクシスが持つ破魔の力を以ってしても、その呪詛すべてを無効化できる訳ではない。
「う、ぐっ……!」
 蝕む怨嗟がアレクシスの精神を苛む。邪神の呪詛が痛覚を、恐怖を、嫌悪を。あらゆる悪感情を想起させる。

「ありがとう、わたしに優しくしてくれて。みんなの言葉は、ちゃんとわたしに届きました」

 ハルカはアレクシスの身体を、どん、と突き放す。

「もっと早く、出逢えてればよかった。……ぢゃんど、生ぎだがった。遊園地にも、行ぎだかった。ゲームだって、じだがっだ。でも、もゔ、止められない、」

 ハルカの身体からは間欠泉の如く、邪神の呪詛が際限なく溢れ出す。
 最早そこに在るのは望月ハルカではなく、呪詛の溢れ出す源泉。
 邪神の生まれいづる、儀式の中心点。

「ごめんなざい、ごめんなざい、ごめんなざい……あぁ、わだじは、死にだぐ、ない……生ぎだい、けど、」

 呪詛の塊から、泣きじゃくる少女の声だけが聞こえる。

「――ゴロじて、殺ジデ、くだ、ザイ」
「……わかったわ」

 懇願する少女に応えるように、耀子は機械剣《クサナギ》を構える。

 難しいと言われていた。
 無理だと断じられていた。
 人と邪神を切り離すなど、邪神のみを斬り祓うなど、神域の達人でなければ為せぬこと。

「だからなんだって言うのよ」

 吐き捨てる。高速駆動を始めたクサナギの刃。

「言ったでしょう。あたしは、きみの手を掴みに来たのよ」

 ――黒耀一閃。
 煌めく刃が、呪詛の塊を真っ二つに斬り裂いた。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

犬憑・転助
【燕三】と行動
オブリビオン(カプリコーン)を倒す

俺のユーベルコードは超嗅覚、キナ臭さだってかぎ分ける
第6感も超嗅覚の効果とする(演出)

第二章のキャラ把握が完璧だったので、行動や台詞はMSの自由にたくさん書いて頂ければ嬉しいです

援護と回復は燕三に任せて戦う

敵の奇襲は超嗅覚で感知し仲間に知らせる
間に合わないなら庇う
無論、自身への攻撃も感知し回避

超嗅覚で敵の弱点(キナ臭い場所)を嗅ぎわけ仲間に伝える

戦いが硬直したら燕三に指示を仰ぐ
頭脳労働は燕三の役目
転助は肉体労働

侍は肉体的に折れる事は無い、心と言う刀が折れない限り

救出に未練があるのか真の姿にはならない

トドメが刺せるなら刺す

アドリブ歓迎
苦労人ポジ歓迎


御代・燕三
%【犬憑転助】と行動
彼女は日常を望んだ事があるはずです。それは今でも。まだ戻れる……とは言いません。これから先に手に入れるのですよ。

UC「算術式:先見の章」と「算術式:即断の章」を利用
全力で攻防支援、連携参加
「先見の章」は他猟兵に放たれる針の雨を防御する盾。1枚の紙人形は1回の攻撃で壊されるが矢継ぎ早に召喚し対応。またハルカの視界を遮るように飛ばし攻撃手の動きを見せないか攻撃を当てて隙を作る

ハルカが磨羯宮のサイン上に居る時は「即断の章」でハルカを指定し、他猟兵の元へダメージ無しの短距離移動で効果を失わせる。また、地面に縫い付けられている人を指定して救出しつつ、ハルカに向けてダメージありで移動


四季乃・瑠璃
緋瑪「全く…みんな甘いなぁ…」
瑠璃「同情はしてたし、非難する気もないけどね」
緋瑪「で、ようやく黒幕のお目見えかな?」
瑠璃「カプリコーンだっけ?貴女はここで殺すよ…やり口といい、貴女は気に入らない」
緋瑪「貴女は本気で殺るよ」

UCの効果で分身

敵の攻撃を【見切り、第六感、残像】で回避し、生成した【範囲攻撃、鎧無視、早業】接触式ジェノサイドボム(以下ボム)で二人掛かりで連続爆撃。
山羊や磨羯宮のサイン諸共本体を広範囲攻撃で爆破し、K100の銃撃【早業】で攻撃。

二人分の魔力チャージで切り札の【範囲攻撃、力溜め】ジェノサイドノヴァの超爆発を叩き込んだ後、ジェノサイブレイカーで消し飛ばすよ!

※アドリブ等歓迎




 耀子が呪詛を斬り裂いた瞬間。
 まるでその時を見据えていたかのように、完璧なタイミングでユーベルコードが発動する。
「旅立ちを、我が呪に従いて――『算術式:即断の章』!」
 対象は望月ハルカ、転移先は相棒の元へ。
 呪詛の塊の中で、その存在が耀子によって切り離されたその一瞬。
 如何にハルカと呪詛を切り離したとて、そのままにしておけば呪詛とハルカの繋がりは再生する。
 刃が水を斬り裂くように、呪詛が払われたその一瞬――それだけが既に邪神によって繋がれたハルカを救い出す唯一の好機だったのだ。
「今はゆっくりとお休みなさい、望月ハルカ。後は我々の仕事です」 
 そう言って燕三は気を失っているハルカの身体をそっと下ろし、自分の背後へと寝かせた。

「ぼちぼち出番って事で構わねえよな、燕三?」
「ええ。よく我慢しましたね、転助」
 刀を構え、転助はギラつく視線で呪詛の塊を睨みつける。
 転助は燕三の指示に従い、今の今まで前に出たい気持ちを抑えて機を伺い続けてきた。
 望月ハルカの説得やその支援にあたっていた猟兵たちの消耗は激しい。その間ずっと邪神の攻撃を捌き続けねばならなかったのだから、当然のこと。
 傷つく仲間を庇いたい、助力したい……そんな気持ちを懸命に抑え、相棒の作戦を信じて待ち続ける――その戒めが、ようやく解かれたのだ。
 故に、転助から放たれる殺気は普段の比ではない。

「全く……みんな甘いなぁ」
「同情はしてたし、非難する気もないけどね」
 やれやれ、といった面持ちで手の中のボムを弄ぶ緋瑪。それに応えるの瑠璃も、普段と変わらぬ淡々とした様子。
 彼女らもまた、仲間が望月ハルカを救い終えるのを待っていた。彼女らの場合、『仲間に対し猶予を与えていた』と言った方が正しいだろうか。同情はすれど容赦をする気もない。
「で、ようやく黒幕のお目見えかな?」
 緋瑪は蠢く呪詛の塊の様子を眺める。
 ハルカから独立して蠢く“それ”は、いわば独立し半端に受肉した邪神の成れ果て。
 成れ果ては蠢きながら姿を変えて、縫いぐるみを抱えた女の子のような姿を取った。

『――人の子よ、どうして私を捨てるのですか?』

 邪神が問う。
 望むがままに“特別”を与えたというのに。
 導きに従っていれば、あなたはきっと素晴らしい神格へと至れたはずなのに。

「カプリコーンだっけ? 貴女はここで殺すよ……やり口といい、貴女は気に入らない」
「貴女は本気で殺るよ」
 劣等感や復讐心に漬け込んで、その為の力を与えるような神がロクなものである筈がない。
 瑠璃と緋瑪のふたりは同時に駆け出すと、円を描くようにカプリコーンの周囲からその隙を伺い、一瞬の交錯と同時に放つ接触式ジェノサイドボム。
『小癪な真似を』
 爆風に飲まれながらも、さほど堪えてもいない様子でそれを受けるカプリコーン。
「くせぇ……くせぇな。肥溜めみたいな臭いがプンプンするぜ!」
 だが、その爆風に紛れるように飛び出した転助の一太刀がカプリコーンの片腕を切断した。
『愚かな、本当に愚かな人の子たち。あの子に寄り添い続ける覚悟もないというのに、出しゃばって』
「黙れよ外道。何が寄り添うだ、ただお前の都合であの子を利用していただけだろうが!」
 続く転助の横薙ぎをカプリコーンは大きく飛び退いて避けた。
『利用ではなく、導きです。わたしはあくまで“授ける”者。それをあなたたたちは――』
 カプリコーンの言葉を遮るかのように、緋瑪と瑠璃の銃弾が降り注ぐ。
「はいはい、黙って黙って」
「……あなたが何を述べようと、望月ハルカを誑かしていた事に変わりはない。ここで見た光景、予知で示された光景――どれを取ったって、善性の神には程遠い」
『……どうしても分かり合えないようですね』
 落胆するように、カプリコーンは無数の山羊頭の幻影を生み出し、緋瑪と瑠璃へとけしかける。

 ふたりはその場から動くこと無く、その両手に溜めた溢れる魔力を一点に集め――、

「「ジェノサイドノヴァ!!」」

 生み出される新星の爆撃。
 放たれた過剰とも言える魔力は強大な爆発を生み出し、生み出された幻影の山羊を根こそぎ吹き飛ばす。

「さぁ、決めてください! 転助!!」
「応!!」
 紙人形にて転助を爆風から守りながら、再び『即断の章』によって今度は転助をカプリコーンの頭上へと転移させる。

「俺ァ馬鹿だからよ、難しい事は分かんねえ。考えるのも相棒に任せきりで、刀を振るうしか脳がねえ……けどよ、」

 右手に白狼刀、左手に白狽刀。対の妖刀をその手に構え転助が吠える。

「お前が筋の通らねえ悪党だってくらいは分かる! お前の導く未来に、ハルカの笑顔はねえ!!」

 呪われし血族――狼獣人としての膂力を刀に込め、罰点に刻まれる妖刀の斬撃。

『オ、アアアア、ァァァ……!』

 カプリコーンの裂かれた傷口からは、血の代わりに粘液のような呪詛が溢れ出す。

「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃!」

 瑠璃と緋瑪、ふたりの手に握られるのは魔法銃。

「ハルカさんにも、私たちにも。あなたの導きなんて必要ない」
「だからこれでオシマイ。じゃあね、バイバイ♪」

 カプリコーンの前と後ろ。
 挟み込むように放たれる、【全てを粉砕する超高威力の集束魔力砲撃】。

「「これが(私/わたし)達の全力全壊!ジェノサイドブレイカー!!」」

『ゴ、グ、アァアアアア――――ッ!!』

 声にもならぬ叫びを残し。
 カプリコーンの霊体は、その呪詛ごと全てを灼き尽くされ、この世界から消失した。
 
 

 その場を包み込む静寂。
 長きに渡る邪神との戦闘は、こうして終わりを告げた。

 外に待機していたUDCエージェントたちが突入し、猟兵たちの治療や事後処理を行なっている。
 望月ハルカはすぐに病院へと搬送され、今も治療を受けているようだ。

 猟兵たちの行動は正しかったのか。
 望月ハルカが本当に“救われた”のか。

 それらはすべて“これから”の話。

 今はただ“邪神を討ち滅ぼした”という結果だけを受け入れて。
 猟兵たちは未来に向かって歩み続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月19日


挿絵イラスト