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第二次サイキックハーツ大戦⑱〜原始にして終焉

#サイキックハーツ #第二次サイキックハーツ大戦 #第三戦線 #蒼の王コルベイン #大首領グローバルジャスティス

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 かつての不死王戦争で、蒼の王コルベインは灼滅者に問うた。

 心あるものよ教えてくれ。
 世界は悪に満ちているか。
 闇は生命を育んでいるか。

 それは決して、攻撃的な語りかけでは無かった。
 しかし、その言葉には――。

●The last warning
「蒼の王……実に13年ぶりだな。弱体化していたとはいえ、当時最弱であった武蔵坂学園に滅ぼされた奴が、今更己が最強と吠えに来たか。随分手の込んだお笑いをやってくれる」
 装備化されたヴァンパイアという奇怪な代物まで纏っているが、それも剣樹卿アラベスクという名だけ覚えておけばいいと、鷹神・豊(蒼天の鷹・f43985)はばっさり斬り捨てた。
「だが、俺達の世界のみならず、ケルベロスディバイドへも侵攻するというのならば、必ずここで奴らを滅ぼさねばならん」
 過去はどうあれ、現状サイキックハーツ最強のオブリビオンである事は疑いのない事実だ。
 敵の望みは、全てのケルベロスとデウスエクスの闇堕ち。生かしては通せん、と豊は強く言い切った。

「奴からは俺達へのご質問もいただいているぞ。『世界はなおも、悪に満ちているか』……灼滅者なら聞き覚えがあるかもしれんな」
 コルベインがそう問うと、誰であれ心の奥底から強い殺意が湧き上がるのだという。
 ――憎い奴を殺したい。
 ――誰かを殺してでも望みを叶えたい。
 その闇の衝動に身を委ねれば、仮初の姿など破られ、強制的に本性を晒されてしまう。
「君達は普段『真の姿』と呼んでいるようだが……これは、俺達の世界で言う『闇堕ち』に極めて近い現象だと推察する」
 自我を失えば、大幅な強化が得られるが凶暴化し、敵味方問わず見境なく攻撃を放つようになるだろう。
 だが、俺は知っている。闇堕ちには抗えるのだと、豊は静かに告げる。
 己の芯になる強い想い。
 帰るべき心の拠り所。
 或いは、今やもっと物理的な手段、単純な力でも防げるかもしれない。

「ちなみにだが、俺も暴力衝動は相当強い」
 かつては予知だけを行っていたらしいグリモア猟兵は、あっさり事実を認めた。
 武蔵坂在学中は抑えてきたそれを、今は無法者やオブリビオン相手に遠慮なく振るっているのだ。否定する方がおかしいだろうと彼は言う。
「理由などない。止められもしない。けして良い事ではないという自覚だけがあるままにな。俺はそちら側の気持ちもよく分かる。この機会に己の闇に身を委ね、衝動と向き合ってみるのも悪くはないのではないか」
 憂慮せずともよい。
 闇に抗う猟兵と、ユーベルコード強化アイテムで彼らを支援するというグローバルジャスティスが、そのどうしようもない闇すらも全力で受け止めてくれるだろう。
 どんな理不尽な感情も、その一欠片でも理解してくれる者らがいる。
 そう思うだけで、魂を『こちら側』へと繋ぎ止め、回帰させる力になるはずだ。

 世界とは、単純な善悪では回らないもの。
 それでも皆でなんとか回さねばならぬもの。
 それが今の俺の考えだと、豊は勝ち気に微笑む。
「案ずるな。君達は今や『生命の埒外』なのだからな。俺達が討つべき敵はただ一人だ……蒼の王コルベイン、塵も残さず灼滅してやる」


蜩ひかり
 蜩です。よろしくお願いいたします。

●注意
 こちらは何でも許せる方向けの戦場です。
 闇の衝動に従う方も抗う方も、乱闘大歓迎ヒャッハーの心意気でご参加ください。
 全て同意しているものとして扱います。

※官能描写目的・その他私が承認しかねる内容はMS裁量で却下します。

●採用について
 ソロのみ。先着順ではありません。
 受付状況はタグに記載します(何も書いていない間は受け付けていません)。
 なるべく頑張りますが、全採用は確約できません。
 予想以上のご参加をいただいた場合は、同一戦場のシナリオを出し直す等の対応を検討します。

 TW4のネタは私が思い出せる範囲での描写になります。
 以上ご了承ください。

●闇の衝動に従う方
 基本ソロ描写になりますが、他の参加者様のリプレイ内に無差別攻撃が反映されます。
 真の姿は、イェカや闇堕ちスレカがある方もどういう姿なのかを説明していただけると、より詳細に描写できるかと思います。

●闇の衝動に抗う方
 抗える根拠となる技能やUC、装備をご提示ください。
 心情のみは厳しめ判定です。
 UCは「こう強化されます!」と言い張れば、グローバルジャスティスが大抵なんでも叶えます。

●戦闘のポイント
 どちらの場合も、コルベインと無差別攻撃の両方に対処できる防御方法を用意するのがおすすめです。
 戦略が優れている・敵の意表を突くものであるとより大打撃を与えられます。

 なおこのシナリオに限り、蒼の王には「でもお前、最初の戦争で死んだじゃん……」という単純な煽りもとてつもなく刺さります。
 活用したい方はご活用ください。

=============================
プレイングボーナス……闇の衝動に従い、パワーアップして戦う/闇の衝動に抗い、グローバルジャスティスの支援を受けて戦う
=============================

 シリアスに徹するも、ネタとして片付けるもお好きにどうぞ。
 皆さんが最強だと証明してください!
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第1章 ボス戦 『『蒼の王コルベイン』』

POW   :    剣持つ骸の群れ
レベル×1体の【聖剣・魔剣で武装したアンデッド軍団】を召喚する。[聖剣・魔剣で武装したアンデッド軍団]は【剣】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    我が身は剣にして死の具現なり
【自身の影から生える無数の剣】に密着した「己が武器とみなしたもの」全てを【サイキックエナジー】で操作し、同時一斉攻撃及び防御に利用できる。
WIZ   :    死剣大樹海
召喚したレベル×1体の【伝承に語られる聖剣・魔剣の数々】に【生命を喰らう蒼き水晶】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

北条・優希斗
【アド〇】
…ああ、|灼滅者《皆》に灼滅された出オチラスボスか
とは言えその闇の衝動に抗えるだけの罪は…俺にはあるな
(アイテム:月下美人とUC)
是は
君のサイキックハーツだった|戦神《アポリア》の力の残滓を残した妖刀
だし|罪深き刃《UC》も骸の海由来だから
俺は君の味方だよ(騙し討ち)
UC+見切り+早業でコルベインに憑依
とは言え最強のコルベインを俺単独で直ぐ操作は難しそうなので
GJさんに俺がコルベインに憑依し操作できるまでの時間を稼いで貰える様根回ししておく
憑依後コルベインの無数の剣で急所を見切って串刺しにする様操作しコルベインを攻撃
…俺とコルベイン、どっちがオブリビオンか分からないかも、これ(苦笑)



●1――贖罪者、汝に問う
 蒼の王コルベイン。
 其れはかつて強大な戦力を誇った一派を率いていたノーライフキングであり、『はじまりのダークネス』にして『サイキックハーツに到達したもの』――らしい。

「……ああ、皆にいきなり灼滅された出オチラスボスか」
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は『武蔵坂学園のあゆみ』なる書類を捲りながら苦笑した。その一言を聞いたコルベインは激しい精神的ダメージを負ったらしく、小さく呻きながら仰け反る。
『汝、蒼の王たる余にそのような不遜な態度で応じるか』
「俺に言われても……普通に書いてあるけど。『灼滅者如きに敗北の醜態を晒した彼らは、組織の沽券にかけて、武蔵坂学園の壊滅作戦を開始したが、返り討ちにされた』って」
『…………』
 不遜でも何でもなく、優希斗は本当に公式記録を話しているだけだ。
 何しろ優希斗がエクスブレインとして学園に来た頃には、この蒼の王コルベインとやらはとっくに灼滅された後だったのだ。優希斗の視点だと「ああ、これが例の」ぐらいの感じだったであろう。コルベインも何も言い返す事がなかった。

『……改めて汝に問う。世界はなおも、悪に満ちているか』
 その問いを向けられると、優希斗の心を一瞬だけ闇の衝動が襲う。だが彼はすぐにいくつかの武器を取りだすと、そのうち『月下美人』と銘打たれた刀をコルベインと剣樹卿アラベスクへ向けた。
「是は、君のサイキックハーツだった戦神の力の残滓を残した妖刀」
 黒の王の腹心として命を散らした戦神アポリア――その正体は、かつて優希斗が戦場へ送りだし、終ぞ帰還しなかった灼滅者のひとりだ。彼らへの贖罪として今は自ら戦地へ赴く優希斗が、その二の舞となることなど、赦される筈がない。
 でも、と優希斗はおもむろに骸の海を纏い始める。渾沌氏に乗っ取られた時会得しておいた、罪深き刃の残滓だ。
「俺は君の味方だよ。世界を悪で満たそう」
 そう微笑むと、優希斗は無数の剣をかいくぐり素早くコルベインに憑依した。先程の精神的ダメージとダークネス由来の武器が隙を生んだ部分もあったのか、蒼の王はいとも簡単に憑依を許してしまう。左目が白く染まり、白翼が生え始める。
『迂闊な……蒼の王よ、何をしている』
『急かすな、わかっている。人間……われらの中から出ていけ』
 アラベスクの苛立った声がコルベインを更に苛立たせる。早くも仲間割れしているようだ――そこへ更に、ジャスティスベースから響くグローバルジャスティスの声が追い打ちをかける。
『変わらぬな君達は。私達の美しき世界を乱す者はご退場願おうか!』
 すると、ジャスティスベースから全国各地の温泉水の波動砲が次々と放出され、内輪もめするコルベイン達を直撃した。どこか懐かしさを覚えつつも、優希斗はコルベインへの精神干渉を進めていく。
 コルベインの視点からは、漆黒の拳や剣を振りかざして己に襲いかかる見知った者達の姿が見えたが、彼らの心は優希斗もよく理解しているだろう――刻まれ、殴られ、その憎しみを受け止めつつ、今度こそは共に帰ると誓う。もう彼らを孤独にはさせない。

 剣樹卿アラベスクが握っていた無数の剣が、徐々にコルベイン自身へと向き始める。さしものコルベインも焦りを感じたのか、厳かな声を心持ち張りあげる。
『待てアラベスクよ、余の失態であった。早まるでない』
『否、否、我も知らぬ……! この身体が勝手に……!』
『来るな、ぐ、ぐおおおおッ……ッ!!』
 優希斗に制御を奪われてしまった無数の剣樹が、無情にもコルベイン自身にぐさぐさと突き刺さる。急所を突かれ、叫びながら悶絶するコルベインを見て、アラベスクもうわーやっちゃったよどうしよう……的な気まずさを感じているようだ。
(……俺とコルベイン、どっちがオブリビオンか分からないかも、これ)
 昔は凄かったらしい二体のどこか滑稽な葛藤を、安全な彼らの内から眺め、優希斗は密かに苦笑するのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【POW】
アドリブ大歓迎

オブリビオンを世界を滅ぼす「悪」と定義すれば
コルベインの問いは真実だな

闇の衝動に身を委ね真の姿解放
さらに指定UC発動、四肢と腹、左目を白く硬化させる
どうせ衝動に身を委ねるなら、理性もかっ飛ばしてやる

そのまま敵に接敵し
アンデッド軍団もコルベインもまとめて黒剣で「なぎ払い」斬り刻む
防御はUC効果頼みになるけど

…ああ、気分がすごくいい
口端に笑みを浮かべながら、敵を残虐に斬り刻む

※真の姿
ロード・クロムに悪の心を注ぎこまれ闇堕ちした際に変化した、真の姿イラストと吸血鬼化の中間的な姿
髪と両眼は真紅、皮膚は金属調の黒金、異様に伸びた犬歯
赤黒い血の紋様が刻まれた漆黒の全身鎧を纏っている



●2――黒き復讐者、汝に問う
 蒼の王コルベインは、今改めて問う。
 世界はなおも、悪に満ちているか。静かで厳かな声が戦場に響く。

 オブリビオン。
 何度平和を勝ち取ったつもりでも、結局彼らは止まらない。あまつさえ、セイメイのようなろくでなしほど今回も厚かましく復活する気でいるのだから、嫌気がさす。
 そうだ、世界は悪に満ちている。
 世界を滅ぼす怪物は、今なお湧き続けている。その真実から目を背けてはならぬ。
 オブリビオンに里と家族を奪われた青年――館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、その声に応え、かつての憎しみと復讐の衝動を思い出した。

「……そうだ。そして、貴様も悪だ。オブリビオンは全て滅ぼしてやる」
 敬輔の髪と両眼から普段の青が失せ、深紅に染まる。犬歯は異様に伸び、皮膚はにぶく光る黒金へ変化している。コルベインを睨むその姿は、彼の故郷を闇に沈めた吸血鬼に酷似していた。
 かつてロード・クロムに注ぎこまれた悪の心が、闇の衝動に呑まれ再び目覚めたのだ。
 ――どうせ衝動に身を委ねるなら、理性もかっ飛ばしてやる。
 更に心がざわつく。鴻鈞道人の残滓までが目覚め、漆黒の全身鎧の下で四肢と腹、左目が白く硬化していくのがわかる。今ならば、大抵の攻撃ではかすり傷すら負わないだろうと敬輔は直感した。

 コルベインが召喚した数多の屍兵の大軍。それらが動きだすさまを見て、敬輔は迷うことなく特攻した。アンデッドの中には肉人形や蝙蝠も混ざっているようだ――他の猟兵が放ったものだろうが、敬輔は黒剣を脇に構えると、闇に呑まれた魂をその切っ先に籠め、すべてを纏めてなぎ払った。
 肉人形が爆ぜてアンデッドと敬輔を炎の渦に巻き込み、赤黒い血の紋様が刻まれた鎧を腐肉にまみれさせる。普段なら決して快いものではないはずだが、敬輔は己の口角が自然と上がっているのを感じた。
 抑えてきた闇を開放するとは、これほど愉快なものだったのか……ああ、気分がすごくいい。
 聖剣と魔剣が四方から敬輔を貫かんと迫るが、剣先は硬化した皮膚に阻まれる。敬輔は何でもないように敵から剣をつまみ上げると、わざわざへし折ってみせてから改めて彼らの頸部を薙ぎ払い、更に身体をこま切れになるまで切り刻む。
「ふ……」
 ここまでする必要はないが、どうせこの敵らには慮るべき心などないだろう。そのくせ数多の命を奪ってきたのだろう。だからこそとびきり残虐になれる。何故だ。何故俺の家族は、郷里は、こんなものに滅ぼされねばならなかった? 不公平だろう。
 地獄の業火に身を焼かれながらも、敬輔は嗤いながらアンデッドの軍勢を斬り続けた。そしていよいよ、その向こうに控えるコルベインへ肉薄する。

『汝にとって世界は悪に満ちておろう。此れ程の強い憎悪を秘めながら、われらダークネスに抗うか。何故だ』
「何故だと……? 決まっている、貴様らオブリビオンを憎んでいるからだ!!」
 敬輔は激昂する。仲間になどなる筈がない――敬輔は跳躍とともに黒剣を振りかぶり、神速の斬撃を繰り返して、蒼の王を鎧い蠢く剣樹卿アラベスクの影を次々に切り裂く。
 異界の話とはいえ、かつては吸血鬼の首魁だったというそれ。影が悶え苦しむ姿を見た敬輔は、更なる愉悦と共に、相手が動きを止めるまでいつまでも仇敵を斬り刻み続けた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

有城・雄哉
【POW】
アドリブ大歓迎

…|復活ダークネス《オブリビオン》は「悪」
それ以上に言うことはあるか?
ついでに貴様、最初の戦争で死んだよな?
なら、もう1度灼滅してやろうじゃないか

復活ダークネスへの強い殺意を常に持っているから、闇の衝動には抗わない
衝動を受け入れ真の姿を開放
闇…というか闘争衝動に身を委ね、アンデッド軍団とコルベインに吶喊
バトルオーラの色を漆黒に変化させ拳に凝縮し
敵の攻撃を拳で全て受け流しながら
「グラップル、残虐ファイト」+指定UCの100連撃で真正面から全部撃ち抜いてやる!

※真の姿
足元から漆黒のオーラを焔のように迸らせている、ボロボロの学生服を纏った蒼髪蒼瞳の筋骨隆々なアンブレイカブル



●3――蒼き守護者、汝に問う
 グリモアベースは決めた。この世界では極めて平和な社会が築かれつつあると。
 それは世界の表面しか見ていない者の意見だ。悪は根絶されず、かつてダークネスに命を奪われた者は還らず、当のダークネス達が人の世で生きることだって難しい。
 多数決は残酷だった。平和の影には、己の苦しみが何も報われず、やるかたない思いのまま結果を飲みこむしかなかった者もまた多くいる。彼らの心は今なお、怒りと悲しみの渦中にある。

『汝に問おう。世界はなおも、悪に満ちているか』
 ダークネスに家族を殺害された『病院』の灼滅者、有城・雄哉(蒼穹の守護者・f43828)もそのひとりだ。かつては武蔵坂学園に通っていたが、現在は彼らからは距離を置いている。
「……|復活ダークネス《オブリビオン》は『悪』。それ以上に言うことはあるか?」
 雄哉の答えに迷いはない。彼らへの復讐、それは己の存在意義ですらある。
「ついでに貴様、最初の戦争で死んだよな? なら、もう1度灼滅してやろうじゃないか」
『……。汝が魂、病院の灼滅者と見える。何ゆえその情報を……』
「『病院』でも普通に流れてたぞ、貴様が武蔵坂学園に敗北したという噂」
 何しろ他のダークネス勢力にも一瞬で知れ渡っていたのだ。過去の己の醜聞が恐らく全勢力に広まっていた事を知り、蒼の王は頭を抱えて呻きだした。
『……汝、生かしては帰せぬ。骸の海へと還るがよい』

 些か冷静さを失ったように見える蒼の王を見て、雄哉の復活ダークネスに対する殺意は最高潮に昂っていた。闇の衝動は漆黒の気炎となって雄哉の足下から立ちのぼり、筋肉を膨張させ狂える武人へと変えていく。瞳と髪には蒼穹が宿るが、今の彼を満たすのは強い闘争衝動だ。
「貴様らは骸の海にも帰さん……俺を止めてみせろ、おおおおおおおッッ!!」
 漆黒のオーラが柱のように伸び、天を貫く。
 溢れ返る敵を全てこの腕一本で沈めてやるという衝動のままに、アンブレイカブルと化した雄哉は敵陣に向かって吶喊する。常の物静かな彼とはかけ離れた姿だ。
 彼方から飛来する隕石を拳一つで砕き、あるいは掌で掴んで敵陣に向かって投げつける。隕石に押しつぶされた敵が轢かれ、まとめて跳ねとんでいく姿は爽快であった。
 剣持つ骸の群れは雄哉を止めるための城壁を築こうとしたが、堅牢な壁も拳一つで破壊する。
『その男を止めよ』
 コルベインの命に従い、アンデッド達は剣を振りかざした。すり切れた学生服が更に破れ、隆々たる筋肉が血を滴らせながら露出する。だが、雄哉は衝動のままに拳に漆黒のオーラを集め、剣に向かって振り抜いた。屍兵の剣は雄哉の拳すら貫けずにぴたりと止められてしまう。
『馬鹿な……人間如きが』
「最初の戦争すらまともに見られなかったからそんな台詞が出てくるんだろうな。俺と真っ向勝負しろ!」
 雄哉は宣言通りコルベインの真正面に陣取ると、目にも止まらぬ速さで百裂の拳を叩きこむ。
 常ならば閃光を纏う拳は漆黒に覆われていた。最強を名乗る者らしく、コルベインは剣樹卿の枝を盾にしようとするも、一秒に百回以上の速度で繰り出される攻撃をさすがに全て止めることはできない。
 骸の身体に叩きこんだ拳が骨を砕くのを感じながら、雄哉はアラベスクが握る剣のひとつを掴むと、その胸に突き刺してやった。狂える復讐者の断罪に、蒼の王は呻きをあげる。しかしそれすらも、闘争と喜悦の咆哮にかき消されていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハル・エーヴィヒカイト
アドリブ連携歓迎

蒼の王コルベイン
DIVIDEに所属するケルベロスとして
この世界を守る「剣」として
その野望、全力で断ち切るまでだ

闇の衝動。そんなもの、とっくの昔に乗り越えている
その象徴である殲滅剣を手に[破魔]の力と[精神統一]で闇の衝動を抑える
その分グローバルジャスティス卿の支援に頼らせてもらおう

[心眼]によって戦場を俯瞰
蒼の王やアンデッド軍団、猟兵たちの配置や攻撃軌道を[見切り]
[霊的防護]を備えた無数の刀剣を展開する[結界術]でこちらへの攻撃を[受け流し]つつ回避
味方の猟兵を巻き込まない位置ならば[カウンター]で、支援で威力と範囲が強化されたUCを蒼の王とアンデッド軍団に叩き込もう



●4――ケルベロス、汝に問う
 サイキックハーツ世界に見切りをつけ、ケルベロスディバイドの全生命の闇堕ちを狙う蒼の王コルベイン、そして剣樹卿アラベスク。その野望を止めるべく、ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣聖・f40781)は彼らの前に立ち塞がった。

「蒼の王コルベイン。DIVIDEに所属するケルベロスとして、この世界を守る『剣』として、その野望、全力で断ち切るまでだ」
『ケルベロスよ、自ら闇に染まりに来たか。ならば汝に問う。世界はなおも、悪に満ちているか』

 闇の衝動――そんなもの、とっくの昔に乗り越えている。
 ハルは殲滅剣"アイシャ・クラウ"を掲げ、その証を示す。内なる世界で鍛ち直されたという漆黒の刀身は、かつての憎しみを乗り越えた象徴として輝き、闇の衝動をハルから遠ざける。
 その刃は黒いが、掲げるだけでハルの精神世界を清め、澄み渡らせる。闇の衝動はたちまち砕け、ハルは金色の双眸で襲い来る外敵を睨みつけた。
 自分がいる限り故郷の敷居などけして跨がせまいと、立ち塞がるハルの姿をコルベインは静かに睨みつける。

『見たか、アラベスクよ。これらが全てダークネスとなるのだ。彼の世界を悪で満たし、全てを闇に落とす。さすればわれらは真理の先へと至るだろう』
「はた迷惑な……そうはさせない。グローバルジャスティス卿。君の支援に頼らせてもらおう」
『なんと嘆かわしい……彼らに代わって君のご当地に詫びよう。生憎私もかの世界にまでは然程通じていないが、これ位であれば直ぐに用意可能だ!』

 グローバルジャスティスの声と共に、ジャスティスベースから飛んできたのは特務機関DIVIDE特製のケルベロスコートだ。大統領の威信にかけて調達したのだろう。ケルベロスの制服ともいえるそれを羽織ると、ハルの身体にご当地たるかの世界の力が満ちてくる。
 心の眼で戦場を俯瞰し、蒼の王やアンデッド軍団、猟兵たちの配置や攻撃軌道を見極める。
 敵がそうするならこちらもとばかりに、周囲に無数の刀剣を展開させ、闇の衝動を遠ざける破魔の防護力を備えた結界を張る。
 それは戦場へ広く降りそそぐ瘴気や呪力の雨からハルを守った。闇の衝動に従う者たちも、聖なる気配を無意識に感じ取ったのか、自らハルから遠ざかっていく。

 彼らが退いてくれるならば好都合。ハルはアンデッドの集団を周囲の刀剣で薙ぎ払いながら、味方の猟兵を誰も巻き込まない位置へと移動する。
 常ならばそのような極めて繊細な立ち位置を取ることは難しいだろうが、今は心の眼ですべての敵味方の動きが自在に見通せるような感覚だ。それも『ご当地』たるケルベロスディバイドを守ろうという、ハルの強き魂が成せる技なのか。
「殲びの黒剣、その身に刻め。絶剣・殲華繚乱」
 ハルは闇を断ち切る剣として、先程の殲滅剣"アイシャ・クラウ"を掲げる。
 コートを翻し薙ぎ払いを放つと、普段よりも何倍も射程と威力を増した長剣の斬撃が敵陣に蠢くアンデッド達を一網打尽にする。その聖なる切っ先は、闇の根源たる巨体にも迫る。

 見上げるほどのその威容。ハルの三倍以上あることは、測らなくとも自明だろう。
 絶剣が彼らの身を打ち据え、癒えぬ傷を刻んでいく――その脅威の全てを滅ぼすまで、ハルに立ち止まる気などない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…時は来たれり!蒼の王と剣の軍勢め…!
…この世界を救う為にも…さぁ行くぞ…私は処刑人だッ!

闇の衝動か…いいだろう…
忌々しき闇の一族の力を借りる事になるとは腹立たしいが…
貴様を屠る為ならば…我が身に闇を!!!

【『処刑人の紋章』】を我が身に装着し変身
禁呪と黒の力を得て闇の波動を纏い、処刑人の覚悟と悪への憎悪を心に宿して鉄塊剣を振るい敵と相手しよう

水晶生やす剣の軍勢を鉄塊剣を振り回し範囲攻撃で吹き飛ばそう
『紋章』により通常攻撃無効を発揮し剣を怪力で叩き落し戦場を駆け抜け蒼の王の元へと近づこう

全身に地獄の炎の鎧を作りながら突進
跳躍し炎纏わせた斬撃波を放ち、鎧無視攻撃で一刀両断にしてやろう…



●5――処刑人、汝に問う
 忌まわしき闇の一族を屠るため、此度の戦争でも奔走してきた仇死原・アンナ(処刑人、炎の花嫁、魔女、屠る騎士、あいどる☆・f09978)は、ついにその元凶と相対する。
 無数の剣を握り、枝分かれする吸血鬼の影を纏った髑髏の王。禍々しき威容が発する圧力にも臆すことなく、鉄塊剣を掲げたアンナは高らかに名乗りをあげる。
「……時は来たれり! 蒼の王と剣の軍勢め……! ……この世界を救う為にも……さぁ行くぞ……私は処刑人だッ!」

『処刑人よ、汝にも問おう。世界はなおも、悪に満ちているか』
 その問いを聞くと、アンナの胸にもふつふつと殺戮衝動が湧いてきた。そうだ。世界は悪に満ちている。猟兵側にすらも、必罰に値する行いをしてきた者はいる。処刑人として、奴らも無差別に屠ってくれようという呪詛めいた殺意が胸に満ちる。
「これが闇の衝動か……いいだろう……」
 しかし、アンナの殺意は誰よりも目の前のダークネスへ向けられていた。処刑人の『紋章』――|メメント・モリ《死を忘れるな》。その文言と共に処刑器具と男女の首が掲げられた、寄生虫型のオブリビオンを鎧に装着する。
「忌々しき闇の一族の力を借りる事になるとは腹立たしいが……貴様を屠る為ならば……我が身に闇を!!!」
 アンナの真の姿たる、虐殺者としての姿が露わになっていく。鎧から血のように紅い地獄の炎を噴き上げ、獄炎を宿した瞳が紅に光る。
 だが、アンナの心を燃やすは目の前の巨悪に対する憎悪だ。処刑人の覚悟は蒼の王たるコルベインの呪力と、かつて異界の吸血鬼を率いていた剣樹卿アラベスクの闇すらも吸収し、自らの力へと変換する。
『汝……人の身で、われらの闇を己の闇とするか』
「当然だ……例え闇に呑まれようと……私は処刑人だッ!!」
 アンナに向かって無数の水晶剣と、刃の翼を持つ蝙蝠の群れが飛来し、その生命を奪おうとする。アンナは巨大な鉄塊剣を力任せに振り回し、全てを吹き飛ばして敵側へと弾き返す。
 ぎぃん、と金属質な音を立て、剣樹卿の剣が叩き落とされる。いくつかはアンナに刺さったが、今のアンナは無敵。全身から吹き上がる地獄の炎が、剣を水晶ごと溶かし、ただの溶湯へと変えていく。処刑人の紋章が無事である限り、何者もアンナを傷つける術はない。

「……ん……これは……」
 途中、アンナは無性に自らこの紋章を貫き、引き剥がしたい衝動に襲われ胸を押さえた。
 それはこの『紋章』自体に対する忌避感や怒りであるのか、闇の衝動を吸収した影響であるのか、あるいはもっと別の何かの攻撃であるのか。
 『紋章』をただ掻きむしっただけで激しい痛みが走り、全身が裂けて血が噴き出す。だが、それは処刑人たるアンナにとって、身に纏う炎を更に燃え上がらせる燃料にしかならない。
「燃え上がれ……我が忌まわしき血よ……貴様を……処刑するッ!!」
 自身を巨大な火の玉へと変えたアンナは、迫り来る剣をものともせずコルベインへ突進し、勢いのままに踏み切る。地獄に輝く太陽の如きその姿は、コルベインの頭部より高くまで跳んだ。
 アラベスクに覆われていないその部分めがけ、処刑人の刃が振り下ろされる。
「失せろッ!!」
 かつて頭部を失った時の悪夢がコルベインの脳裏を過ぎったことだろう。強烈な斬撃が骸骨の額に罅を入れ、激しい焼け跡を刻む。一刻も早くこの大罪人の首を落とすため、処刑人はその首めがけ、何度も断罪の刃を振り下ろした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

マグノリア・ステルニティ
あら、好き放題やっちゃっていいのね?
それなら…ふふ、普段は自重してるけど、派手にやっちゃいましょうか♪

闇の衝動を受け入れ真の姿になると共に、数多にして一つなるもの発動。
合体した肉人形共々、ところどころ骨の露出した腐肉の塊になるわ。
…奇しくも相手と似たような姿ね。

敵の攻撃も他の猟兵の攻撃も、溢れる魔力での【オーラ防御】や肉人形の盾で防御。
こっちからは【呪殺弾】を乱射してコルベインも他猟兵も攻撃しましょ。
コルベインには私のとっておき、肉人形特攻攻撃からのクラッシュ・ボーン【串刺し】攻撃もプレゼントよ。

ところであなた、武蔵坂から見たら所詮初期に倒した敵だったみたいよ?
今更大物面しても遅くない?



●6――支配者よ、汝に問う
 眼前に聳えるは髑髏の王。その骸を包むようにうごめく影の大樹は、かの世界では最も強き力を誇っていた吸血鬼であるらしい。
 それは彼らとほぼ同族であり、闇の世界ダークセイヴァーの領主たるマグノリア・ステルニティ(亡き創世の七重奏・f30807)にとっても、あまり見覚えがない威容だったであろう。

「あら、好き放題やっちゃっていいのね? それなら……ふふ、普段は自重してるけど、派手にやっちゃいましょうか♪」
 しかし、マグノリアが彼らに臆することはない。むしろ愉しげに、軽やかとすら感じる笑顔で、彼女は優雅に微笑んでいた。
『同族よ、汝に問おう。世界はなおも、悪に満ちているか』
「当たり前じゃない。私の住んでいる世界なんて、ここよりもよほど悪だらけよ?」
 そう、闇の衝動すらも舞踏会への誘いかのように受け入れ、マグノリアは普段はけして見せない真なる姿を晒す。召喚されたのは大量の領民たち。一見人間と相違ないが、まったく生気がないことをコルベインは瞬時に見抜く。
『屍兵か』
「さすがに分かるのね。そう、この子達は皆私の作った肉人形よ」
 さあ、お相手してあげましょう――『領主』の呼びかけに応じ、忠実なる肉人形どもがマグノリアのもとへ殺到する。ドレスを纏った美しい女の皮が破れ、骨が突きでて、群がる死肉は彼女自身の肉体を構成する死肉へ吸収されていく。
 そうして出来上がったのは、高く聳える巨大な腐肉の塊。肉から所々骨が露出し、濁った色の汁がしたたり落ち、もはや淑やかな女領主の原型はほぼ失われている。
 奇しくも相手と似た姿……とは言うものの、水晶と影の剣樹に覆われたコルベインのほうがまだ直視に堪える代物ともいえるほどの、おぞましき怪物だった。

『闇に閉ざされし世界の支配者よ。汝はわれらに近き存在と見る。共に真理なる闇へ堕ちよ』
「そうね、面白ければ考えてあげてもいいけど……その前に私『達』と踊ってもらえるかしら♪」
 肉人形の中から響くのは、普段と変わらぬマグノリアの声だ。しかし彼女から分離した肉人形が戦場のあちこちに解き放たれ、他の猟兵たちや敵の屍兵に追突して大爆発を起こす。
 元より心なき民たちは領主に忠実だった。マグノリアが盾となれと命じれば、肉人形を解体せんと飛来する聖剣や魔剣、翼に刃を備えた眷属の蝙蝠らへ自ら突っ込んでいき、まさに肉の盾として領主を守る。
 他の猟兵が放つ地獄の炎が肉人形を炙り、暴発を起こして肉片が飛び散った。
 その爆炎の勢いを闇の魔力で相殺しつつも、死肉の焼けるにおいを纏ったマグノリアは一層の愉悦を隠さない。
 己の身を焼く炎を腕らしき部分に凝縮し、呪殺弾として撃ち返す。マグノリアの呪力の雨が戦場へ無差別に降りそそぎ、飛来する水晶剣を粉々に砕いた。
「ところであなた、武蔵坂から見たら所詮初期に倒した敵だったみたいよ? 今更大物面しても遅くない?」
『……馬鹿な。かつての余の失態は35の真理にまで知れ渡っていると?』
 その事実に動揺を隠せないコルベイン。射線を遮るものが一瞬完全に消滅したのを見て、マグノリアは一斉に特攻を仕掛けさせる。次々と爆ぜる肉人形へ対応しあぐねる蒼の王に、巨大な骨の杭が迫る。それはマグノリアの焼けただれた腕の下から露出した、鋭く尖った凶器だ。
「私からのプレゼントよ。あなた、好みじゃないから協力はできないわ。ごめんなさいね?」
 魔力をこめて射出した骨の杭が、コルベインの喉元を無慈悲に穿つ。
 だってあなたたち、干からびすぎて肉が残っていないんだもの――闇の支配者はこの刹那の戯れを味わいつくさんと、享楽的に微笑むだけだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
●従う
真の姿:外見は変わらないが、戦闘狂人格に主導権を全て委ねて心身共に攻撃性大幅に上げた姿

善悪問答は俺は気にしないけど、戦いの場なら言葉より力で語るべきだからねぇ。
じゃ、任せたよ。
『ハハハハッ! いつもより俺様の力が漲るじゃねぇか! こいつァ祭りを愉しまねぇと損だよなァ、骸骨野郎!』

『テメェと同じ骸骨剣樹姿の邪神想像しておくぜ! 命も正常さも盗んで殺してやるよ!』
飛翔し、敵の剣には触れない様に立ち回って瘴気を放つぜッ!
『ちゃんと俺様を狙えよ? じゃねぇと正気失って自滅するってな! ハハハハハッ!』
『……あァ? 猟兵が巻き添え?? 知るか! 自滅したくなきゃ俺様の戦いに近付かねぇこった!』



●7――盗人よ、汝に問う
 こことは異なる地球、UDCアース。
 そこには、長きに渡りこのサイキックハーツを闇に堕としてきたコルベインらの知識すらも超越するような、恐るべき狂気がはびこっていた。

『汝に問おう。世界はなおも、悪に満ちているか』
 霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は実のところ、その問答に対してほぼ全く興味がなかった。
 彼はひたすら『盗む』という行為に特化した、猟兵の中でも非常に稀な人間である。そして、永一の盗みは『散歩のついでにちょっと一仕事』程度の感覚で行うものだ。
 彼自身は己をいたって普通と言うが、おそらく数分でも言葉を交わせば、まともな者は全員否定するだろう。勘のいい者は根拠なく『犯人』にすら見えてくるかもしれない。
 そんな日常に浸かりきった男は、蒼の王の問いにも普通にこう答える。
「戦いの場なら言葉より力で語るべきだからねぇ。じゃ、任せたよ」
 そう言った途端――表面上は落ち着いて見える永一の表情が一変した。

 憎い奴を殺したい?
 誰かを殺してでも望みを叶えたい?
 当たり前じゃねぇか、むしろ大歓迎だ。やれって許可も下りてるしなァ!!

 永一の顔が左右非対称の歪んだ笑みを浮かべ、姿は変わらぬまま別人のような殺気を纏っていく。
 その姿はまさに闇堕ちのように見えただろう。人間社会では割を食いがちな『彼』は、ここなら存分に暴れられると悟り、高らかに笑う。
『見よ、アラベスクよ。かの地球にも闇を宿す人間がいるようだ』
「ハハハハッ! ダークネスだか何だか知らねェが、いつもより俺様の力が漲るじゃねぇか! こいつァ祭りを愉しまねぇと損だよなァ、骸骨野郎!」
 そう叫ぶと、永一はよからぬ想像力を滾らせる。それは『たった今思いついた邪神を具現化する』という、旧き時代のダークネス達にとっては想定外の邪法であった。
「よぅし、もう思いついた! テメェと同じ骸骨剣樹姿の邪神想像しておくぜ! 命も正常さも盗んで殺してやるよ!」
 永一は高笑いをあげながら敵を指さし、天高く飛翔する。その背に見えるのは巨大なる骸骨剣樹――しかし、まるで知性がありそうにない。影の中に浮かんだ無数の赤い眼が、深淵から覗きこむように戦場を俯瞰している。
 本能的にまずいと悟ったのか、コルベインは全ての剣を彼に殺到させたが、盗みで鍛えた逃げ足にするりするりと躱され、翻弄されるばかりだ。
「おいおいどうしたよ骸骨野郎! ちゃんと俺様を狙えよ? じゃねぇと正気失って自滅するってな! 瘴気だけにってか、ハハハハハッ!」
 彼が無差別に放出する呪いの瘴気は、戦場全体へ降り、猟兵たちにも宿り始める。
 その狂気はとりわけ、自らの血や出自に呪いを抱える者たちへ次々に牙を向いた。処刑人の女、ヴァンパイアの女、若きヒーロー――味方が次々に自傷するのを見て、永一は一層の哄笑をあげる。
「ハハハハハッ、猟兵が巻き添えになってやがる! こいつァ最高だぜ、自滅したくなきゃ俺様の戦いに近付かねぇこった!」
 世の中ギブアンドテイク。偶には与えてやりゃあWin-Winってヤツだろ、多分。

 これにはコルベインたちも当惑した。まさか、己を模した邪神などを出現させられるとは思ってもみなかったのだ。これが生命の埒外かと、蒼の王たちは呻く。
 さらに、剣樹卿アラベスクが無数の剣を手にしているのも完全に仇になっていた。正常な行動力を蝕ばまれたアラベスクは、再度本体であるコルベインへ全ての剣先を向けた。
 そう、実は二度目の自滅だ。これなるが人間の闇か。
『アラベスクめ……汝、一度ならず二度までも余に歯向かうか。汝を覆う鎧になる等という言葉……鵜呑みにすべきではなかったな』
『何を……汝こそ先程から猟兵共の下らぬ煽りに易々と乗せられおって!』
 互いに剣を突き刺し合い、勝手に自滅していくダークネスの王らを見て、永一は最高潮の愉悦に浸る。
 そんな彼にはこの後、急に隕石が追突するのだが――それもまた彼らの日常なのかもしれない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

天宮・黒斗
今は違うけど、昔の私は家族……ヴァンパイアへの復讐を目的とする事でしか生きられなかった
だから、衝動は否定出来る性質じゃないんだ

衝動に身を任せて、更にUCの闇堕ちで戦うよ
飛翔する事でアンデッド軍団に囲まれないよう動き、それらの攻撃は過去の戦闘知識や姿勢・体勢から攻撃軌道を見切って受け流す
近付いてきた奴へ鏖殺の気を浴びせつつ、隙を見せた相手を残星や翼刃で切断していこう

コルベインの攻撃や無差別攻撃に対しては、敢えて軍団の中に飛び込み敵を盾にする形で防御
多少の傷は激痛耐性で耐えてそのまま低空飛行で突き進み、コルベインへ一撃浴びせてやる
不覚とられて首失くして、早々にやられたような奴が今更出てくるなよな



●8――同胞よ、汝に問う
 彼女にとって、そのグリモア猟兵の姿は少しだけ懐かしかったかもしれない。あるいは互いの仕事の関係で見かけることもあっただろうか。しかし、今は昔話に花を咲かせる時間もない。どちらも骸の海から迫り来る敵に対し、猟兵として立ち向かう事を選んだ身だ。
 天宮・黒斗(黒の残滓・f44136)のすらりとした長身は今も変わらず、深紅の双眸はそびえる敵を突き刺すように見上げる。さまざまな想いが胸を満たす中、蒼の王の背後で蠢く剣樹卿アラベスクを見やる。

 学園最後にして最強の敵。
 そしてかつての宿敵であり育ての親、ヴァンパイアの首魁として君臨した存在。
(昔の私は家族……ヴァンパイアへの復讐を目的とする事でしか生きられなかった)
 心がざわめく。
 今を生きているつもりでも、あのころ負った心の傷は、やはり完全に消えたわけではないのだと知る。
『我ら吸血鬼の血を継ぐ者よ。世界はなおも、悪に満ちているか』
 黒斗は答えを発さず、ただ静かに眸を伏せる。吸血鬼の名を発せられた瞬間、記憶の奥から再び沸き上がるおぞましいまでの殺意は、若き日に覚えたものと同様に鮮烈だった。
 ――私は……この衝動を否定出来る性質じゃないんだ。
 ここはもうあの日のライブハウスではない。本物の戦場だ。
 黒斗は再び闇に身を任せる。今度こそ、この忌まわしき宿敵を永遠に葬るために。

 あの日と同じ端麗な白皙の吸血鬼が、黒翼のごとくコートをなびかせて飛翔する。その翼の縁は鋭い刃になっており、黒斗が敵陣へ飛びこむと、瞬く間にアンデッドの身体を真っ二つに薙ぎ払った。
 見知った顔が何人か暴れているのが目に入る。かつては教室の前によく立っていた、眼鏡をかけた青年を見た時は、彼もまた滾る衝動を抑えていたのかと胸が軋んだ。
「されど恐れるな、その力……だったね」
 小さく呟いた言葉は届いただろうか。彼のナイフの斬撃は流さぬまま受け止め、唇を結んで走る激痛に耐える。今度は低空飛行で集団に埋もれるように動き、周囲を無差別に斬り刻んでいる他の猟兵達の刃から逃れようと試みる。
 武蔵坂の生徒として何度も死線を潜ってきた。その経験があれば、心を持たぬ屍兵の単純な攻撃は容易く見切れる。放った鏖殺の気は小さな刃を持つ蝙蝠と化し、敵を切り刻みながら戦場全体へと解き放たれていく。

 黒斗は殺意の対象が明確なぶん、闇堕ちしても比較的理性を保てていたが、眷属までは制御できないかと苦笑が漏れた。
(眷属か……今の私は本当にあの、何よりも憎かったヴァンパイアなんだな)
 そう思うと、また背筋に寒気が走る。おぞましい――学生の頃からの愛用の武器である残星も、出してみると黒と深紅の二色に染まっていた。
「……? っ、くっ……」
 それを見た瞬間、黒斗は反射的に自分自身を刺していた。他の猟兵の力の影響だろうか。だがむしろ納得だと、吐いた血で唇を染めながらも微笑む。
「……なるほどね。過去の私が、誰より私を許さない、か……仕方ない、|ヴァンパイア《﹅﹅﹅﹅﹅﹅》だものね」
 敵は目前。絡みつく過去を振り払うように天高く飛翔すると、黒斗は残星を構えた。
 蒼の王コルベイン……そして、それを包みこむ剣樹卿アラベスク。
 一撃と言わず、二撃浴びせてやる。
「不覚とられて首失くして、早々にやられたような奴が今更出てくるなよな」
『……。汝もまた余を愚弄するか、灼滅者よ……』
 落ち着いた口ぶりとは裏腹、もう我慢ならぬといった形相を浮かべるコルベインを、剣樹卿も制御しあぐねている様子だ。ダークネスらしいお粗末な連携ぶりを睨みつけ、黒斗は残星を振るう。

 黒と紅の闇に染まった一太刀目はコルベインへ。
 かつての閃光を纏った二太刀目はアラベスクへ。
 過去を葬るための二閃は、彼らの巨躯をめいめいに切り刻み、深い裂傷を与える。
 昔の私も少しは気が晴れただろうか。自ら貫いた傷痕から流れる血を眺め、黒斗は小さく息を吐いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギュスターヴ・ベルトラン
それ、当時の不死王戦争でも言ってたな
あの時は反骨精神だけで立っていたが、今でも取る選択肢は同じ…闇の衝動に抗う方を選ぶ

【祈り】がいつだってオレを支える根源
背に張り付くノクも、足元で【慈悲の抱擁】で【精神鎮静】をしようとくれてるキリエも、オレを支えてる
ならば後はスレイヤーカードから刀を取り出して、灼滅者であると【矜持を示す】
そっちが剣なら、こっちも刀で行く

出力強化を施して貰いUC発動
元が相手の強化を無効化し、威力を上げる攻撃だ
そっちの同時一斉攻撃すら、強化の範囲として斬ることが出来る
お、防御に使うか?願ったり叶ったりだな?

かつては弱く、遠目から見るだけだった
当時の分も含めて、一撃をくれてやる



●9――原始を知る者よ、汝に問う
 心あるものよ教えてくれ。
 世界は悪に満ちているか。闇は、生命を育んでいるか――。

 かつて視界を奪われたその屍王が発した呟きは、厳かながらどこか切実に響いていた。もっとも光から遠い存在だというのに、奇妙なことだ。
「……それ、当時の不死王戦争でも言ってたな」
『灼滅者よ。汝はあの戦いを知る者か』
 蒼の王の発する言葉に静かな警戒が宿る。ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は、当時から彼らノーライフキングの宿敵として、その前哨戦にも本戦にも関わった数少ないエクソシストの一人だ。
「また会うとは思わなかったぜ。あの時は直接は会ってねえけどな」
『……宿敵よ、汝に問う。世界はなおも、悪に満ちているか』
 その言葉は、確固たる信仰を持つギュスターヴの心にすら闇の衝動をもたらす。
 だが、彼の口元に浮かぶのは不敵な笑み。反骨精神だけで立っていた、青春と呼ぶにもあまりに若かった少年時代。本質は大人になった今も変わらぬまま。
「いいや。世界は光で満ちているさ。お前だって祈ってただろ、心あるものよ教えてくれ……ってな」
 だから彼はなおも抗う。祈りという、彼ら闇を齎すものが一番恐れる心の光で。

 闇が迫る中、ギュスターヴはロザリオを握りしめ祈る。
 ――神は人を分け隔てなさらない。虚飾も加護も、神の前では等しく断たれる。
 主の言葉を心の中で復唱し、闇を遠ざける。反骨の根源にはいつだって祈りがあった。そして、今は共に祈りを捧げてくれる小さな相棒たちが彼と共にいる。
 いつもやんちゃに飛び回っているノクターンは、絶対にそっちには行かせまいと、主人の背にひしと張り付く。小さな竜の身体から、確かに伝わるいのちの温もりがある。
 足にはキリエが細い腕を回し、そっと寄り添ってくれていた。蝋燭の穏やかなひかりが、幼き日に見た路地裏で眺めていた殺伐、その奥に潜み密かに根付いた衝動を鎮静される。
「ノク、キリエ……大丈夫だ。オレがお前たちを置いてくわけないだろ」
 心配そうな二匹の頭を撫でてやると、終わったらまた甘いモンでも食いに行こうぜと笑ってみせる。
 そして、掲げるのは己が灼滅者たる何よりの証、スレイヤーカード。
 時を経た今でも灼滅者たる者の矜持だ。
「そっちが剣なら、こっちも刀で行く。『奪われた命に冥福を、踏み躙られた祈りに救いを』」
 言葉に呼応してカードが輝きを放つ。現れた退魔の日本刀を引き抜き、その切っ先を蒼の王に向けた。

『信じよ、そして、フィレンツェに見える輝きに向けて祈れ……かつて私も君達にそう言ったものだ』
 美しき世界の為、私も共に祈ろう。グローバルジャスティスはそう言うと、ギュスターヴにご当地パワーを注ぎ込む。刀がひときわ強い退魔の輝きを宿し、神秘的な光を纏い始める。それは人の目には穏やかなものであったが、敵は明らかにその光を恐れていた。
『『眩しい……何も、何も見えぬ……』』
 屍王と吸血鬼の連合に対し、あまりに強い祈りの力は特攻といってもよかっただろう。彼らは光で目がくらむ中、剣樹を盾にして逃れようとするが、ギュスターヴか放つ雷の如き光線を吸着するには邪悪に過ぎた。
 影の枝は瞬く間に焼け焦げ、崩れ落ち、防御どころか攻撃もままならぬ状態。それでも何とか枝を伸ばし一斉攻撃を試みるも、ギュスターヴが刀を振るえば脆くもすべて燃え、落とされてしまう。
 闇堕ちした他の猟兵が放つ漆黒の闘気や、地獄の炎ですら、輝きに浄化され消えていく。
 ただの祈りを前にして、かつての蒼の王と吸血鬼の首魁は、もはや呆然と光を仰ぐしかなかった。
 まさに打つ手なし。それもそのはずだ……この祈りの斬撃は、対象が身を守ろうとあがくほどに威力を増し、鋭さを増して襲いくる。神の裁きから逃れんとする者へ、等しく天罰を下すが如く。

 かつては弱く、遠目から見るだけだった宿敵の姿。
 彼らが為すすべなく悶える姿をサングラス越しに眺め、ギュスターヴは己の歩んだ歴史と成長を感慨深く想う。信じる者は救われる――主の言葉に、偽りはない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

鴻崎・翔
俺はずっと自分の殺戮衝動に抗ってきた
絶対に堕ちたりしないと努めてきた
でも思ったんだ
真正面から向き合うことを恐れてはならないと
サイキックハーツという世界に身を置くからこそ
目を逸らしてはならないのだと

思ったんだ

闇の衝動に呑まれない
自分を失ったりしない
乗り越えてみせる

眼鏡を仕舞い
ナイフを逆手に持ち替え
眼光鋭く
嗤う
纏う炎は漆黒の、闇の色

――短期決戦だ
ははァ! あいつは臆病だから、己に戻れないことを恐れている
俺様は暴れられたらそれでいいからな
楽しませろよ、骸骨

アンデッド軍団の中に突っ込んでいく
周囲がどうなろうと知ったことか
自分がどうなろうと知ったことか
只管切り結んで屠って前へ

コルベインにナイフを突き立てる
何度も何度も切り刻む
数倍に上がった機動力で敵の死角に回り込みながら
彼奴を守る剣ごと斬り裂き

闇は生命を育んだんじゃねぇの?
だから俺様はここにいる
決してなかったことにはならない
生がある故に死は美しいが
だからこそヒトってのは足掻くんだろ
泥の中で、閃光のように

失せろよ、外道



●10――抗う者よ、汝に問う
 その青年は胸に殺人衝動を宿しながらも、武蔵坂学園の生徒たちへ声を届け続けてきた。
 迸るこの衝動なんていくらでも抑えてみせると。力を合わせて戦い、皆を闇から救おうと。
 心に傷を抱え、教室の前で泣いていた者。闇との戦いを恐れ、一歩を踏みだせず震えていた者。ふとしたきっかけで声をかけ、励まし続けた相手は数えきれないだろう。
 それが彼にできるささやかな努力であり、自らの言葉の証明でもあった。

『殺人鬼よ。汝に問う。世界はなおも、悪に満ちているか』

 コルベインの発した問いを聞いた鴻崎・翔(灼滅者の殺人鬼・f43988)は、すぐには答えを返さかった。
 学生時代の己を振り返ると、自分はずっと殺戮衝動に抗ってきたし、絶対に堕ちたりせぬよう努めてきたと思う。そして、同じ想いを持つ仲間たちを影から支える力であり続けた。
 だが、猟兵となってこの最終局面に向き合った翔には、改めて感じることもある。
 ――己の闇と真正面から向き合うことを恐れてはならない。
 胸に過ぎったのは、当時の武蔵坂学園に身を置いたものならば、誰もが知るであろう言葉だ。
 教室の黒板、机の隅、誰かが忘れていったノート。あらゆる場所に刻まれた言葉は、灼滅者たちの祈りであり、叫びだった。
「『己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力』……」
 翔はこみ上げる衝動を抑えるように、その言葉をゆっくりと復唱してみせる。
 少しは心が楽になったが、完全に消えたわけでもない。この祈りは希望であり、絶望でもあるのだと、いま改めて思い返す。
 有力なダークネスが掃討され、人々が苦しみから解放されても、己の闇まで綺麗に消えたわけではないのだ。生き残ったダークネス達だって、本能に抗いながらなんとか人の社会に適応しようと四苦八苦している。彼らと自分たちはどこまでも表裏一体だ。
 そんなサイキックハーツという世界に身を置くからこそ、ダークネスの自分ともきちんと向き合っていきたい。幸いにも、この戦場には想いを共にし、支えてくれる仲間達もいる。

「悪から目を逸らしてはならないと俺は思う。でも、この衝動にも飲まれない。俺は自分を失ったりしない……乗り越えてみせる」
 翔は眼鏡を外すと、ジャケットのポケットに仕舞う。
 それが『彼』を呼び出すトリガーだとなんとなくわかっていた。ナイフを逆手に握るのも彼の癖だ。そして、抑え続けてきた己の内なる闇へ、意を決して語りかける。
 ――俺は君とも協力していきたい。だから、力を貸してほしいんだ。
 一瞬の間があった。果たして、『彼』は翔の呼び声に答えた。
 左眼が紅く光り、常の控えめな姿とはまるで異なる『もう一人の翔』が姿を現す。闇堕ち――いまやユーベルコードと化したそれは、ある程度であれば自発的に行える。口元には闘争を愉しむかの如く獰猛な笑みが浮かび、闇を湛えた漆黒の炎が身体から迸る。
 六六六人衆と化した翔は、愉悦を隠さず嗤う――仕方ねぇ、短期決戦だ。

「ははァ! あいつは臆病だからな。己に戻れないことを恐れていやがる」
 100秒経てば確実に終わり。50秒ですら危うい。だが、翔はようやく己に身体を明け渡した。充分とは言い難い時間だが、ずっとあの男に封じられていた鬱憤をようやく晴らせる時だ。
「俺様は暴れられたらそれでいいからな。蒼の王だろうが剣樹卿だろうが知ったことか。楽しませろよ、骸骨ども」
 眼前には剣で武装したアンデッドの大軍。ついでに衝動のまま暴れる猟兵ども。これらを全て斬り刻んでも構わないというのだ!
 翔は待ちきれないとばかりに地を蹴ると、乱戦の中へ迷わず飛びこんだ。
 両手に握った殲術刃を振るい、剣がこちらへ向く隙も与えず、邪魔な者を即座に解体していく。乱雑に刃物を振り回しているように見え、その動きにはいっさいの無駄がなかった。
 この短時間でいかに多数の敵を屠り、なおかつあの偉そうな骸骨にも一撃喰らわせてやるか。
 彼には辿るべき殺戮経路が視えているのだ――アンデッドの中に混じっていた変種のような肉塊を斬ったらそいつは爆発したが、闇の炎で炙って蹴り飛ばせばむしろ爆弾になると即座に閃き、即席の武器として利用する。
 途中出会ったヴァンパイアの女と、殺人鬼の少年はどちらも少し驚いた顔をしていた。
 恐らく両方とも武蔵坂学園生だったのだろうが、翔の知ったことではない。彼らとの刹那の斬り合いを愉しむが、執着している時間はない。今あの眼鏡野郎の心証を悪くすれば今後にも響くし、無視して先へ進む。
 ――ヴァンパイアの女が何事かを翔に囁く。お前らはまたそれか。
 飽きもせずよく言うぜ、と翔は小さく舌打ちした。

 最短経路で敵陣を駆け抜けた翔は、コルベインの元へ辿り着く。蒼の王たるそれにもナイフを突き立てると、他の猟兵が刻んだ傷痕を探し、何度も何度も更に入念に切り刻む。
 暴力的な太刀筋でありながら、そこにはどこか本来の鴻崎翔らしい、仲間を想う心と細やかな気質が滲んでいた。
 ああ、体が軽い。この俺様を長い事封じ込めておくとは――あの穏やかな面をした男は、肉も食わないような顔をして実際よくやるものだ。
「次はお前だ、骸骨の付属品」
 残された時間で素早く背後に回り、その巨体を鎧うアラベスクすらも諸共に両手のナイフで刺し貫いて、傷口を開くように斬り裂く。そろそろ限界か。まぁやる事はやっただろと、殺人鬼は嗤う。

『汝……新たなる六六六人衆よ。暫し待てばその身体など奪えよう。われらと共に真理の先へ向かわぬのか』
「うっせェな。闇は生命を育んだんじゃねえの? だから俺様はここにいるんだよ」
 それは決してなかったことにはならない。生がある故に死は美しい。ダークネスの心は今でもそう感じる。だが、彼らの真理と、己の描いた真理はまったく異なる。
「だからこそヒトってのは足掻くんだろ。泥の中で、閃光のように」
 美しいと思ってしまった。ヒトの生が放つ、その弱々しいが確かな輝きも。
「勧誘お断りだ。失せろよ、外道」
 最後の最後にもう一撃を喰らわせ、殺人鬼は闇の瘴気に満ちる戦場を後にする。戻ればいいんだろ、分かってるよ。お前は本当に頑固だなと内心で毒ついて、翔は途中灼滅者にかけられた言葉を思い出す。
 されど恐れるな、その力――闇と共に生きていくことは、不可能ではない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

廻屋・たろ
『世界に悪は満ちてますよ!そうじゃないと、僕困っちゃいますからね!』

|昔の自分《群像英雄》からの声が聞こえてくる
嫌な問いかけだ、今すぐ表に出して言い返したいって気持ちでいっぱいだ
今ならそれも許してもらえるんだろうけど…
黙って武器の【正義】を構える

それ以上に己の内に居座り続ける昔の自分、[悪への憎悪]が強い
だからお前の問いには応えられないよ

闇の衝動に抵抗、UCを発動し生命吸収能力を強化
敢えて真っ向勝負だ、持久戦へ持ち込むよ
剣に生えた蒼き水晶をナイフで切り裂き[部位破壊]、生命吸収能力を削いで拮抗を崩していく

衝動に従ったみんなからの攻撃は包帯とナイフで[武器受け]をして防御

やっぱり羨ましいと思う気持ちは隠せない
こんな戦場だから尚更にね
だけどこの精神への揺さぶりが俺の力になってくれる筈だ
[狂気耐性]で抗い抜き、力へと変換して全ての攻撃を押し返す

世界に闇は満ちている
俺の衝動だって消えることはないんだろうし
これからずっと付き合い続けていくと思ってる
俺が俺である限り、そうして生きていくと決めたんだ



●11――愚かなる英雄よ、汝に問う
 ――声が響く。
 これが蒼の王コルベインの声だというのだろうか。随分イメージが違う。
 いや、この声には聞き覚えがある。遠い昔、厭というほどに聞いたことがある声だ。
 廻屋・たろ(黄昏の跡・f29873)の元に届いていた声は、他の者とは少し異なっていた。

『世界に悪は満ちてますよ! そうじゃないと、僕困っちゃいますからね!』

 勝手に返事をするな。
 コルベインではなく、|昔の自分《群像英雄》が一段飛ばしで押しつけてきた返答が頭の中にこだまし、たろは眉をひそめる。昔に比べると随分と表情が乏しくなったものだが、脳内で満面の笑みを浮かべるあの少年が、過去の己の姿だとは思いたくなかった。
『汝、己の内なる闇を知るか』
 コルベインの態度がわずかに変化を見せる。オブリビオンと化し、真理を知ったという蒼の王は、骸の海に流された遠い過去さえ見通しているとでもいうのか。
『ならば殺人鬼よ。汝にも問おう。世界はなおも、悪に満ちているか』
「……」
 色々と嫌な問いかけだ。今すぐ表に出して言い返したい気持ちでいっぱいだ。いや、言い返しても今なら許されるのかもしれない――一瞬過ぎった甘えを許してはならないと思ったから、たろは黙って【正義】と銘打った十徳ナイフを構える。
 その切っ先が示す方向にあるのは、胸、頭、首、手、足……すべて自分自身だ。
 悪が憎い。ただそれは、衝動のままに殺してしまえば終わる他者などではない。己の内に居座り続ける昔の自分という、もっと厄介で悪質なものだ。
「お前の問いには応えられないよ」
 たろは静かにその矛先をコルベインへと向けなおす。群像英雄は、自身を殺せば望みが叶うとでもいうのだろうか。

「そんな言葉じゃ俺は壊せない」
 蒼の王、そして内なる己にも呼びかけるようにたろが呟くと、腕の包帯が蠢き少年めいた小柄な身体全体を覆い始める。怪我をしたわけでも、血を浴びたわけでもないのに血が滲む。
 想影――他者の生命を吸収する包帯の忌まわしい名だ。だが、かつて自身があの群像の中に在った証明でもある。
『愚かなる英雄よ。其の脆弱な武器で余と渡り合わんとするか』
「愚かで別にいいよ。じゃなきゃわざわざ来ない、真っ向勝負だ」
『汝はその蛮勇を胸に抱き、今一度闇に堕ちよ』
 数えきれないほどの聖剣と魔剣がたろへ向かって飛来する。あれは伝説の、なんて言える余裕があればよかったのだが、いちいち見つけて喜んでいては一瞬で刺し貫かれるだろう。
 剣に生えた水晶が光る。その煌めきを認めたら、すぐに十徳ナイフを振りかざして突き立て、破壊する。かわし切れなかったいくつかはたろに突き刺さり、包帯を本物の血で染めていく。
(……みんなは随分派手な戦いをしているな)
 炎や爆発、斬撃波、その他数多の攻撃が戦場のあちこちでアンデッドを吹き飛ばしている。持久戦を挑んだのは自分ぐらいかもしれないが、たろの地道な貢献は、なりふり構わず戦う他の猟兵たちを密かに助けていた。
 蒼の王は既に何度か大きな負傷を負っており、そのうち二回は味方であるはずの剣樹卿アラベスクに貫かれるという無様なものだったが、それでもゆっくりと再生しているのはこの生命を喰らう剣が原因だろう。全体の拮抗を崩す為、たろは飛翔する剣から水晶を切除し続ける。
 その素早い攻撃に反応したのだろうか、理性を失い異形化した騎士が黒剣を振りかぶってきた。重い剣先をナイフで受け止め、後はなるべくゆっくりとその場から離れる。
 手が痺れる感覚に襲われながら、殺気を感じて振り返れば――そこには、たろも何処かで見覚えがある顔の殺人鬼がいた。武蔵坂学園の卒業生だろう。
 彼の振り回すナイフをこちらも十徳ナイフで受け止めたら、青年はたろには構わず、アンデッドの軍勢へまっすぐに突っ込んでいった。
 
 ――やっぱり、少しだけ羨ましいな。
 闇の衝動を思う存分に開放し暴れている仲間を見ると、ついそう思ってしまい、たろは小さく息を吐く。お互いにこうなると分かっていて、許されてもいた筈なのに、自分は確かにある衝動へ抗うことを選んでしまった。
 どうあがいても自己処刑だった。けれど――廻屋・たろは己の闇と戦うことを決めたのだ。羨ましいと思うたび、もう|あいつ《﹅﹅﹅》に従ってしまおうかと心が傾くたび、たろは強くなる。
「……もう分かっただろ。お前の出番はないよ、群像英雄」
 幻聴のような明るい答えはもう返らない。それは、たろがこの狂気に抗いきった証明だった。押し寄せる殺意も今は遠く、心は夕凪のよう。コルベインの命の源たる水晶を密かに剥がし、大樹の根本へ十徳ナイフを突き立てる。
『コルベインよ! 再生が止まっている……我らの完全性が崩壊し始めている!』
 鋭い声をあげたのは剣樹卿アラベスクのほうだ。コルベインは派手な戦いを繰り広げる猟兵への対応に追われ、たろの細かい動きにまで気を回すことができなかったようだ。ゆっくりと生命力を奪われ続け、影の大樹が枯れ始めている。
『灼滅者め……またもわれらの前に立ちはだかるか』
 コルベインは心持ち忌々しげな声を発する。傷口自体は小さくとも、決して無視することができない甚大な被害だ。たろの行動は戦況を大きく猟兵側へ傾けた。

 灼滅者、と呼ばれた。その群像に加わってもよいのか、たろには分からない。
 世界はなおも闇に満ち、今なお自分の中に眠る衝動だって、一時的に影を潜めてもけして消えることはないのだろう。けれど、たろはこれからも、ずっと己の闇と付き合い続けていく。
 殺すことも、殺されることもなく、殺人鬼の心と向き合い続ける。
 それは、けして簡単なことではないのだろうが――足元へ広がる血だまりに映る己の顔が、やけに明るく見えたから、たろは口に出して呟く。
「俺が俺である限り、そうして生きていくと決めたんだ」
 帰ろう。一緒に。己が何者になれるのかなんて、まだわからないけれど。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
確かにこりゃ…
委ねちまったら楽だろうな

自分の中の破壊衝動は分かってる

握り締めたスマホの待受けちらりと見て
師匠に助けて貰ってもう10年ちょっと
…覚悟が違う
例え自分が殴られようが
味方を殴るようなのはヒーローとは言わねぇ

変身し
衝動飲み込むように
何より
スーツの上から指輪をなぞり
待ってる人が悲しむ

とはいえ
長くはやってらんねぇな
限界突破し感覚も全て最初から全開で行くぜ
間隔研ぎ澄ませ
攻撃は味方敵共に見切り避け
背後からはオーラ防御で跳ね飛ばす

要は再生合体怪人って事だろ?
こっちはかつての敵が支援する胸アツ展開だ
負けらんねぇ

衝撃波周囲に撒き散らしつつ一気に懐へ
スピードもパワーもいつも以上の拳を食らいやがれ
UC



●12――英雄よ、汝に問う
 誰が正義で、誰が悪なのか。戦場は混沌を極め、激しい同士討ちが繰り広げられている。
『英雄よ、汝にも問おう。世界はなおも、悪に満ちているか』
 蒼の王コルベインの問いは、ヒーローとヴィラン両の心を解する青年、陽向・理玖(夏疾風・f22773)にも闇の衝動を再び芽生えさせた。負の感情が心を支配し、奪う者達への殺意と怒りが呼び起こされる。

 何でだ――俺の過去も師匠の命も、どうして理不尽に奪われなきゃならなかった?
 そうだ、そいつらからも奪ってやればいいじゃないか。ヴィランに堕ちたもう一人の自分が、魂の奥底から呼びかけてくるような奇妙な感覚だ。
「っ、これが闇堕ちか……確かにこりゃ……委ねちまったら楽だろうな」
 自分の中のどうしようもない破壊衝動。それは、理玖も自覚していたものだ。だからこそ侵食も人より速い。
 あらかじめ握り締めていたスマホすら衝動的に叩き割りそうになるのをこらえ、待ち受けをちらりと覗く。
 そこに映るのは、彼が今なお尊敬する師匠――|理《おさむ》の顔だった。
 やや大柄な茶髪の男性が、頼もしくも大らかな優しい笑顔でこちらを見ている。その隣でぎこちなく笑んでいる赤い髪の少年の名は、理玖。他でもない自分自身だ。
(師匠に助けて貰ってもう10年ちょっとか……)
 在りし日の日常を目にして、はっとする。そうだ、自分は師の志を継ぐと誓ったのだ――。
「……ッ!」
 奇しくも理玖を襲った自滅の瘴気が、彼に自ら指をへし折らせた。咄嗟に利き腕でない方を選んだが、これでもう簡単には他人を殴れまい。意識も冴えた。覚悟が違う。
 たとえ自分が殴られようが、味方を殴るようではヒーローとは言えないのだ。

 理玖はドラゴンドライバーを腰に装着し、全身を装甲で覆ったヒーローに変身する。
 それは更なる覚悟で衝動を飲みこむもの。闇堕ちヒーローなどになっては師匠に笑われる。
 スーツの下の指輪に嵌まった瑠璃石を撫で、理玖はアンデッドの軍勢に向かって走る。共に生きると誓った彼女も待っているのだ、悲しい顔なんて見たくない。
 対策は重ねたが、理玖は己の正気を過信もしない。短期決戦に賭け、スーツの性能を限界まで開放し、感覚を研ぎ澄ませる。戦場のすべてがスローモーションに見える中、足が千切れそうなほどの全力で疾駆する。
 音を頼りに、剣や刃物を無差別に振り回す味方を避けて通り、背後から斬りかかってくる相手はオーラで跳ね飛ばす。アンデッドか猟兵かなど見てはいない。
 迅速に乱戦を突破した理玖は、一気にコルベインの元へと迫った。その骸骨面を見すえ、かつてよりは自然に、格好良く、ヒーローは笑う。

「あんたら、要は再生合体怪人って事だろ? こっちはかつての敵が支援する胸アツ展開だ、負けらんねぇ」
『余をご当地怪人扱いとは……随分舐められたものだ』
『ははは、どう見ても悪役は君達ではないかね? そうとも、私も胸が熱く滾っている。ヒーローよ、君に力を与えよう!』
 かつては敵だったというご当地怪人のボス、大統領グローバルジャスティス――世界すら束ねるその力は、ヒーローの本場アメリカも網羅する。理玖に注がれたご当地パワーは衝撃波となり、群がる敵兵どもを映画のように派手に吹き飛ばした。
 その雄姿は、世界を背負って戦う正義の味方そのもの。骸骨怪人の懐へと素早く飛び込んだ理玖は、折れていない方の腕を振り抜いた。
「喰らいやがれ……灰燼拳」
 それは素手の拳を叩きこむだけの極めてシンプルな攻撃だ。しかし、自身から30cm以内にしか届かないという非常に強い制約を持つ。
『つまり、条件さえ満たせば強力無比。そういうことだな、ヒーローよ!』
「さすが。浪漫分かってんじゃねえか、大統領」
『『ぐっ……よもや、よもや、われらが怪人などにされようとは……ぐおおおおおッ!!!』』
 正義の鉄拳が合体怪人の核にめり込む。二重の絶叫がこだまし、他の猟兵に再生を止められた身体へ致命的な|罅《ひび》が刻みつけられる。
 例え世界が優しくなくとも、この手が届く範囲は守ってみせる――巨悪のあげた咆哮は、遥か天まで轟いただろう。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

幸・鳳琴
闇の衝動にはUCを以て抗います
いざ《幸家・あいどるふぁんさ》
めろめろにしましょう、傷を治しましょう

UC強化の恩恵で、闇堕ちだって抗い
堕ちた方からの無差別攻撃も
愛の力を以て防ぎます
心の輝きを以て不可能を可能にするのがアイドル
できる、できるのだ

抗うことに成功したら
コルベインに向け駆けます
仙術をありたけ込めた
レーザー射撃のなぎ払いで
骸の群れごと蒼の王を討ち、功夫で打ちのめす!

かつて学園最後の戦いで剣樹卿を討った少年は
世界に何を見出すかという問いに
「それは、これから考えるとするぜ」と返し
行ったのが仲間の元に駆けたことでした

仲間達がいるから
常に考え未来へ進むことが出来る
蒼の王、それが私達の「最強」です!



●13――終焉を知る者よ、汝に問う
 サイキックハーツから押しかけんとするはた迷惑な来客たち。話を聞けばなんと、自分達を闇堕ちさせようと企んでいるらしい。それはケルベロスである幸・鳳琴(精霊翼の龍拳士・f44998)としても見過ごせない話だ。
『……汝に問う。世界はなおも、悪に満ちているか』
「いいえ! 世界は愛に満ちています、蒼の王! キミにも届け、心の輝き!」
 鳳琴は深い傷を負った異形の屍王に対して、迷うことなくウインクしながら指でハートマークを作る。
 信じる心があれば、強大なダークネスだってファンにできるはず。
 それがアイドルの力なのだから!

 闇の衝動が鳳琴を襲う。故郷を滅茶苦茶にしようと企むこの敵に対して、当然の殺意が沸きかけるが、そんな顔はアイドルには似合わない。できる、できるのだ――自分のアイドル力を強く信じ、表情が歪みかけても輝く笑顔をキープする。
「幸家・あいどるふぁんさ……もっと受け取って! ほら、後ろの席のキミも!」
 今度は剣樹卿アラベスクの方へ視線を向けてピースサイン。次第に彼女の全身が不思議な輝きを纏って見え始め、長き時を生きてきたダークネス達は慄いた。
『『これは淫魔……否、ラブリンスターが持つ奇妙な力……!』』
 何故か、彼女に対して攻撃をする事ができない……長く世界を牛耳ってきた彼らにも未知の体験であったろう。
 闇や悪とは対極にある力、愛の輝き。それだけを一途に信じる鳳琴の想いに、闇は気圧されていた。
 心の輝きを以て不可能を可能にする、それがアイドル。
 鳳琴の放つまばゆい輝きは戦場を照らして、抗う者たちの傷を癒し、従う者たちの心をこちら側へ繋ぎとめる。光を浴びた肉人形は愛らしいぬいぐるみに姿を変え、降りそそぐ隕石すらも流星のライトとなって鳳琴を照らす。
『……馬鹿な』
 戦場に満ちるまばゆい光を見渡し、コルベインはようやくそれだけ呻いた。鳳琴だけが何ら疑いを持つことなく、攻撃の手を止めている敵へ向かって駆けだしている。

「ここからはもっと激しく行きますよ!」
 ハートポーズを象る手の中央からレーザービームが放たれ、飛来する水晶剣を薙ぎ払う。巻き込まれた骸の群れがたちまち消し飛び、激しい撃ち合いが続いた。
 だが、心なしか相手方の攻撃の勢いが弱い。ファンサが『刺さった』のだろうか――愛は時に剣よりも強いのだ。最小限の手刀で剣を次々叩き落とし、一本の道筋が見えた瞬間を狙って跳躍する。
 蒼の王の胸に飛びこんだ鳳琴は、紅く十字状に発光する光の中心に寸勁を放った。
 添えるように繰り出されただけの拳は、一瞬の間ののち、コルベインの内部へ爆発的な衝撃を与える。幾重にも伸びた影の腕が、根元から先端へ徐々に軋んで震える。黒い巨体が仰け反り、呻き声をあげる。

『おのれケルベロス……循環せぬ世界は、いずれ淀み、停滞する! 汝らは、そこに何を見出すというのだ!』
 その怒声をあげたのは剣樹卿アラベスクの方だ。いつか聞いたような言葉――鳳琴はそのどこかの記憶を遡り、語り聞かせるように言葉を紡ぐ。
「剣樹卿。かつて学園最後の戦いであなたを討った少年の言葉を覚えていますか?」
 彼はその問いに対し、こう答えた。「それは、これから考えるとするぜ」――そうして軽やかに、仲間の元へと駆けていったのだ。
 仲間を信じた彼の想い。
 それに共感するからこそ、鳳琴は愛をもって仲間を支え、闇を退けてみせた。
 何度来たって、未来も仲間も何も奪わせない。その眩しくも強い黒のまなざしを受け、大樹が再び軋む。
「仲間達がいるから、常に考え未来へ進むことが出来る。蒼の王、それが私達の『最強』です!」
『六番目の猟兵……まさか……汝らは……循環している、とでも……?』
 かつてこの身にとどめの一撃を与えた『-Feather-』という名の灼滅者の集団。その姿を鳳琴に重ね見た剣樹卿アラベスクは、己の身が崩れ、急激に乾いていくあの時の感覚に再度襲われていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

守安・結衣奈
武蔵坂学園の最初と最後の敵が混ざって最強になった!?
私達の世界でサイキックハーツを目指せないなら他世界でなんて、そんな迷惑絶対にさせないよ!

闇への誘い、その力。昔の私ならそれも利用して事を為してもいた、けど。
母となったわたしは子に生き方を示すのも役割の一つ。
身に付けた装備に込められた想いを確かめつつ。
伝えるのはわたしがずっと想っているこの言葉。
結んだみんなとの縁と絆の力を信じれば、どんなことにも負けないし、覆せるから!

C.S.B.の攻撃力の源たる魔力を増幅強化、攻防の弾道や照準の演算補助の支援を受けて。
自分に来る無差別攻撃も敵に向けて攻撃を重ねて。
わたしの今までの戦いの全て、全力全開でいくよ!


浅間・千星
『世界はなおも、悪意に満ちているか……』か

灼滅者を戦場に送り出して、その帰還を祈るだけの非力な自分は、正直嫌いだったよ
でも、もうわたしも『守られるだけ』の無力な存在じゃないからな

迷うことなく殺戮衝動を露わにし、猟兵になった時に得た『タタリガミ』の姿に変わる
闇の衝動に抗う猟兵たちとGJ様には「迷惑かけるけどよろしく!」みたいに謝罪して、ユーベルコードを発動させよう

わたしが敵意…殺意を向けるのは、アンデッド軍団
そして誰よりお前だ、『蒼の王コルベイン』
この殺意は、お前に向けさせてもらうぞ!

世界は悪意に満ちることもある
けど、わたしは、善意に溢れると信じて力を得たんだ
……負ける気がしないね

*アドリブ歓迎



●14――武蔵坂学園よ、汝らに問う
 猟兵達の攻撃により再生を断たれ、致命傷を負い、更には闇の衝動や負わせた傷まで光によって照らされてしまった。過去より蘇った蒼の王コルベインと、剣樹卿アラベスク――彼らを阻んだのは、皮肉にも彼ら自身が世界の歴史に刻んだ過去そのものだった。
 屈辱の記憶である最初の敗北。終焉の記憶である最後の敗北。
 その両面が呪いのようにかの者たちを襲い、剣樹を枯らしていく。そして、彼らはこの戦場でもっとも憎むべき者たちへ怒りの矛先を向けた。

 過去、二度の闇堕ちを退けてみせた灼滅者――守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・f43908)。
 忌々しきサイキックアブソーバーの代弁者――浅間・千星(Another Starry Sky・f43876)。
 奴らを闇に沈めれば絶望と狂気がたちどころに広がり、この戦場を悪で満たすだろう。
 迫る闇の衝動を感じ、結衣奈は学生時代から愛用し続けるマテリアルロッドを構えた。
 今は千星も同じ武器を手にしていた。一等星が輝く先端を敵に向け、共に戦う覚悟を示す。
「来たね。どんなに強くたって君達は過去だけど、私達は進化してるんだよ」
「そうだ。もうわたしも『守られるだけ』の無力な存在じゃないからな」
「行こう千星ちゃん。私達の世界でサイキックハーツを目指せないなら他世界でなんて、そんな迷惑絶対にさせないよ!」

 蒼の王コルベインが、最後の威厳をもって問いかける。
 深淵から響くような静かで、しかし不気味な声が、二人の脳内にこだましただろう。
『ならば汝らに問う。灼滅者よ。エクスブレインよ。世界はなおも、悪に満ちているか』

「『世界はなおも、悪意に満ちているか……』か」
 資料で読んだその言葉とともに千星の脳裏を過ぎるのは、楽しいだけの学園生活の思い出ではなかった。
 わかっている。敵が唾棄すべき仇敵とばかりに憎む超機械、サイキックアブソーバー。
 あれから未来予知を引き出して灼滅者を戦場に送り出す、それがかつてエクスブレインと呼ばれたエスパー、自分たちが担う重要な仕事だったことは。
 しかしあの機械さえなければ、そもそも自分は彼らダークネスにとって、命を狙う価値すらもない一般人だった。今妙な逆恨みをされているのも、オブリビオンと化した彼らが真理とやらを知ったからに過ぎないのだろう。
 実感がない。友人達の帰還を祈るだけしかできない非力な自分は――正直、嫌いだった。

「闇への誘い……久しぶりだね」
 息を呑む。確かに昔の結衣奈なら、それすら利用して事を為してもいた。
 今も己の中に眠る恐るべき羅刹、紅鬼姫。
 その意識が久しぶりに目醒めていくのを感じる。奇しくも彼女が求めたことは、コルベインらと同じ真理と叡智の探究。しかも、灼滅者相手に二度も不覚を取った怨みまであるのだ。蒼の王に与さない理由がない――結衣奈の内側に、紅鬼姫の絶叫めいた声がこだます。
『失せろ、小娘! 世界を悪で満たせば【真理の先】に至れるというのならば、その叡智を求めるのが貴様の本性。闇の衝動であったはずだ!!』
「紅鬼姫……相変わらずだね。けど、今はちょっと違うんだ」
 人は経験と共に進化するもの。八年の時を経て、母となった結衣奈は『子に生き方を示す』という大切な役割を新たに得ていた。
 身に付けてきた装備は、かけがえのない人からの贈り物。学生時代を共に戦った殲術道具。今も変わらず髪を結いあげるリボン。そのひとつひとつに込められた想いを確かめ、結衣奈は紅鬼姫と蒼の王に答えを伝える。今でもずっと想っている、この言葉。
「わたしはもう闇には飲まれないよ。結んだみんなとの縁と絆の力を信じれば、どんなことにも負けないし、覆せるから!」

 そうだ。それでも仲間を信じる事――それがエクスブレインたる自分の役割でもあった。
 結衣奈の言葉を聞いた千星は、迷うことなく殺戮衝動を開放し、タタリガミ『千の夜を越える少女』へ変身する。猟兵になった時に得たタタリガミの力は、髪を白く輝かせ、その背に翼と輝く星々を背負わせる。
 十年来の相棒であるウサパぺ達もお揃いの服を纏って動き出し、千星と共に戦う気満々だ。あの頃見た夢と祈りのすべてを込めて、千星は天高く舞い上がる。
「守安・結衣奈、大統領グローバルジャスティス、それに皆。迷惑かけるけどよろしく!」
『私は何も迷惑などではない。これ程に美しき世界を見せてくれたのは君達武蔵坂学園だ』
「わたしも一緒に飛ぶよ、千星ちゃん。灼滅者とエクスブレイン、ダークネスの攻防一体の最強コンビネーション、見せてあげよう!」
 結衣奈もウェアから桜色の翼を生やし、千星を追従する。襲い来るのは大量のアンデッド、そして無数の剣を持つ影の枝。武蔵坂学園と復活ダークネス、その最後の総力戦が始まる。

「さぁ、満天の星を見上げるがいい。そしてわたしを敵に回したことを絶望するがいい!」
 そう言い放ち、千星はユーベルコードを解き放つ。降りそそぐ隕石がアンデッド達を潰し、戦場へ無差別に飛来していく。幾つかは仕方がないが、皆なら上手く避けてくれると信じている――そして、千星はグローバルジャスティスの力を借り、この武蔵坂学園という大切なご当地を自分の手で守るための力を発動する。
 紅く光り輝く一等星の瞳が強く見据えるは、己の敵となる者のみだ。
「わたしが敵意……殺意を向けるのは、そこのアンデッド軍団。そして誰よりお前だ、『蒼の王コルベイン』。この殺意は、全てお前に向けさせてもらうぞ!」
 何もわかっていない。
 何度もお前たちダークネスを阻んできたのは、サイキックアブソーバーなどではない。
 想いの力だ。それを今度はわたしが見せてやる。
 無差別に戦場を襲っていた隕石が軌道を変え、コルベインに向かっていっせいに降りそそいだ。剣樹を名乗る吸血鬼の王は、悲しいかな非常によく燃える。鎧が仇となり、高温の隕石が追突した箇所が、次々に再生できぬまま燃え堕ちてゆく。

「わたしの、わたしたちの今までの戦いの全て、全力全開でいくよ!」
 千星と結衣奈の間にもまた縁がある。彼女の想いに応えるように、結衣奈はこちらへ飛んでくる隕石の弾道を計算する。このサイキックハーツというみんなで結んだ美しき世界、武蔵坂学園が大切なご当地であることは言うまでもない。
 結衣奈の魔力もまた、グローバルジャスティスの恩恵を受け増幅強化される。魔法陣がジャストタイミングで隕石をパリイし、弾道が急変化してすべてコルベインへと向かっていく。
「|C.S.B.《コンビネーションシュートブレイク》……わたしの得意技、だけど今は進化してるよ!」
 結衣奈自身もカミの風を刃とし、敵の影から生えた無数の剣を枝もろとも斬り裂いていく。
 コルベイン達は結衣奈の内に宿るカミに干渉しようと試みるものの、強化された結衣奈の力はサイキックエナジーなどで操作できるものではなかった。
 いくら逃げようとしても、高純度に圧縮された神薙は悪しきものどもを容赦なく追いつめた。既に燃えつき、崩壊しつつあるその身を、更にずたぼろにみすぼらしく退化させていく。

『おのれ……真に忌々しきはやはり武蔵坂学園、汝らか! 循環せぬ世界は、いずれ淀み、停滞する筈! いったい汝らは、この停滞した世界の中に何を見出せたというのだ!』
 剣樹卿アラベスクの断末魔が響く中、千星と結衣奈は共に頷く。
「世界は悪意に満ちることもある。けど、わたしは、善意に溢れると信じて力を得たんだ……負ける気がしないね」
「千星ちゃん達が見つけてくれなかったら、みんなが声を届けてくれなかったら、わたしは今きっと紅鬼姫としてそっちに立っていたかも。でも、そんな未来は来なかったんだよ」
「守安・結衣奈……キミは、わたしたちをそんな風に思ってくれていたのか?」
「もちろんだよ。二回も闇堕ちしちゃった人ってたぶんかなり少ないもんね……あの頃のわたしがあんなに無茶できたのも、みんなが闇から救ってくれるって信じてたからだよ」
 わたしは思ってるよ。
 千星ちゃん達エクスブレインも、ずっと一緒に戦ってきた仲間だって――その言葉は、千星にはどう響いただろうか。
 呆然とする敵へ、結衣奈は敵を貫く槍と化したマテリアルロッドを向ける。
 この最強の敵にはけして到達しえぬ、人間だけが持つ叡智の結晶を突きつける。
「わかったかな。最初と最後の敵が混ざって最強になっても、わたしたちは絆の力で、その最強を超えていくんだから!」

『アラベスクよ……われらは真理を得て、完全となった筈だった。しかし、それでもわれらには知り得ぬ事があった。これが………………心あるものの答えだというのか』
 理解できぬと蒼の王コルベインは呻く。
 しかし、怒りを露わにする剣樹卿アラベスクとは異なり、その声音はどこか穏やかですらあった。結衣奈は剣樹卿の幹に槍の穂先を突き立て、千星は蒼の王の頭を明星で殴打し、共に叫ぶ。
「「わたしたちはこの美しい世界を守る。フォースブレイク!」」
 増幅された二人の魔力が原始の王と終焉の王へ注ぎ込まれ、力の奔流が大樹の内部で暴れ回って暴発を起こす。魔王のようであった異形は内部から爆発を起こし、まばゆいばかりの光に呑まれて、塵も残さず消し飛んだ。
 心あるものたちが示した、絆と意思の光が闇に満ちていた戦場を照らし、衝動へ身を任せていた猟兵の意識をこちらへ引き戻す。抗っていた猟兵たちも、遂にやったかとその光を見あげる。

 絶望的な強敵を打倒し、帰る事ができる。
 誰も闇に堕ちることなく、全員で。
 その喜びを知る者達の歓声も、闇を理解する者達の静かな呼吸も、等しく尊い生命だ。
 世界は停滞することなく、今も循環している。
 光と闇を共に抱いて回る、美しきこの世界――その名を、サイキックハーツと呼ぶ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2026年05月26日


挿絵イラスト