●A.M.2:00
その噂は知っていた。けれど、そんなのただの噂でしかないと思っていた。
深夜2時過ぎ。なんとなく眠れなくて、僕は古いラジオをつけた。
最近はスマホばかりで、ラジオなんてほとんど使わない。でもその日は、なぜかダイヤルを回したくなった。
ザザ……という砂嵐みたいなノイズが流れた。
ゆっくりと、指先でダイヤルを進める。スピーカーから流れる音の変化を、聞き逃さないようにするためにだ。
音が、少し変わった。
ノイズの奥に、空気の抜けるような、シュー……という音が聞こえた。
タイヤのパンクした音? なんて考えたのだけど、規則性があった。それが呼吸音だと理解するのに、あまり時間は掛からなかった。
僕は耳を近づける。
「……おう……とう……」
聞こえた声に、背中が粟立つ。
まさか、と思いながらも、ダイヤルから指が離れない。噂が頭をよぎる。
馬鹿らしい。そんなはずない。その時、窓の外がわずかに明るくなった気がした。
はっと視線を向けた先。街灯の下に、誰かが立っている。
それは宇宙飛行士だった。けど、宇宙服は黒く煤けて、所々炭化している上に、ヘルメットの中は真っ黒だ。
見間違いだと思った。深夜だし、目が疲れているだけだ。そう思って、視線を逸らした。
その瞬間、焦げた匂いが僕の鼻をつつく。
それは今まで経験したことのない、息が出来なくなるような焦臭さだった。
火事かとパニックになった僕は、部屋から出ようと身体の向きを変える。
扉の前に、それは居た。真っ黒な宇宙飛行士だ。宇宙飛行士は、僕に向け手を伸ばした。
●A.M.10:00
「お集まり頂き感謝だよ。さて、いきなりだけど、君たちは都市伝説の類は好きかな?」
グリモアベースの片隅で。集まった猟兵達へと、空目・キサラ(時雨夜想・f22432)は話を切り出す。
「サイキックハーツのとある学園で、妙な噂が広がっていてね。君たちにその調査と解決をお願いしたいのだよ。どうも何だか、意図的に噂が流されてる感が否めなくてね……」
ただの思い過ごしならいいのだけど、とキサラは続ける。
「噂は、広まるほどに形を得る。形を得れば力を持つ。まだ、実害が出たという話は聞いていないがね」
やがて形を得た噂が、害なす存在になってしまうのも、時間の問題になるとキサラは言いたいのだ。
「ま、とりあえずは学園の屋上あたりで情報収集してきてくれよ。あと、学園はエスカレーター式だから、学生じゃない年齢でもなんとかなるんじゃないかな」
今の時間から向かうなら。昼時の学生が賑わうタイミングに重なるだろうと、キサラは笑う。
「それじゃ、行ってきなよ」
そう言って、キサラは猟兵達を送り出した。
●一滴の雫、広がる波紋
これは、まだ噂が広がる前のこと。
駅前のファミレスは、制服姿の学生でそこそこ賑わっていた。
「ねぇ、知ってる?」
ストローをくるくる回しながら、ひとりの学生が言う。
長い髪を肩に流し、何でもない顔をしながら。
「深夜にさ、ラジオの周波数をちょっとズラすと、変な音入るらしいよ」
「なにそれ、また怪談?」
「うん。なんかね、記録にない宇宙飛行士の声が聞こえるんだって」
向かいの学生が顔をしかめる。
「え、何それ怖」
「大丈夫大丈夫。ただの噂」
そう言いながら。はじめに口を開いた学生はスマホを取り出して、音声ファイルを再生する。
ザザ……というノイズ。その奥から聞こえる、微かな呼吸音と、声。
「……おう……と……」
ひとりが小さく悲鳴を上げる。
「ちょ、やめてよ!」
「でもさ、これ聞いたあとに、街灯の下に黒い宇宙服の人影が立ってたって話、何件かあるんだよね」
「嘘でしょ?」
「なんか、焦げた匂いがするんだって」
えー、怖いねと言いながら。彼女たちはその話を別のグループにもするだろう。
そうやって、噂はどんどん広まるのだ。背鰭尾鰭を増やしながら。
雪月キリカ
お目に留めていただきありがとうござます。
はじめまして。もしくはお久しぶり、またお会いしました。雪月です。
昔はよく宇宙人やUMAの特番ありましたね。今は見なくなったけれど。
一章は日常です。
噂が広がっている学園の屋上で、聞き耳たてたり、話に混ざったりして情報を集めるパートです。
とはいえ日常。時間的には昼時。お昼ご飯食べているだけで、情報が耳に入ります。
が、猟兵側から聞き込みをした場合は更に情報が手に入ります。
二章は冒険です。
集めた情報をもとに条件を整えると、都市伝説が現れます。殴ったり、対話を試みたりして弱らせましょう。
三章はボス戦です。
都市伝説を狙って現れたダークネスをぶん殴ります。
一章は公開後からのんびりとプレイング受付。様子を見ながら締切はタグに記載しますが、少なくとも丸一日は受け付けてます。
再送が必要になった場合はタグに再送日時を記載します。
それでは、よろしければご参加くださいませ。
第1章 日常
『屋上でのひととき』
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POW : 屋上の広い空間を使って遊ぶ
SPD : 眼下の光景を観察する
WIZ : 昼寝や読書をゆっくり楽しむ
イラスト:kokuzu
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オリヴィア・ローゼンタール
都市伝説、ラジオ、宇宙服……
ラジオウェーブと光の少年『タカト』を連想させる単語の並び
嫌な予感がしますね……
セーラー服の姿に変身して学校に潜入
半人半魔のダンピール故か、外見は10代の頃から変わらないので、さほど違和感なく潜り込めるでしょう(目立たない)
購買で購入したサンドイッチを食べつつ、周囲の声に【聞き耳】を立てる
それらしいものが聞こえれば、声をかけてみる
私もその噂、聞いたことがありますよ
【薔薇の妖婦】による香りで好印象を与えることで、初対面でも話の輪に加えてもらう
「宇宙服を纏っているのは、中身が強力な光に弱い宇宙人だからである」などの尾鰭をわざと付ける
噂話を歪曲させることで弱点を作る
●セーラー服と薔薇の残り香
都市伝説、ラジオ、宇宙服……。
並んだ単語を胸の内で反芻しながら、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)はわずかに目を細めた。
(ラジオウェーブと光の少年『タカト』を連想させる単語の並び。嫌な予感がしますね……)
だが、オリヴィアはその翳りを顔に出さない。
今のオリヴィアの姿は、セーラー服を纏う学生だ。
半人半魔のダンピールである故か、外見は十代の頃からほとんど変わらない。
学園の空気に違和感なく溶け込むのは、それほど難しいことではなかった。
昼休みの喧騒の中。購買で購入したサンドイッチを手に、オリヴィアは屋上の空いているスペースに腰を下ろす。
一見すれば、ただサンドイッチを食んでいる生徒のひとり。
(あ、このBLTサンド結構美味しいですね)
舌鼓を打ちつつも、しっかりと聞き耳を立てて。それらしい噂をしていないか、注意深く周囲の会話を拾う。
「昨日夜中にさ、ラジオから変な声が聞こえて、急いで電源切っちまった」
「それそのまま聞いてりゃ、宇宙飛行士とエンカ出来たんじゃね?」
聞こえてきた方をちらりと見やれば。男子生徒たちが弁当をつつきながら、件の噂と思われる話をしていた。
オリヴィアはさりげなく、そのグループへと歩み寄る。
「私もその噂、聞いたことがありますよ」
男子生徒らへと柔らかくオリヴィアが微笑んだその瞬間、ほんのりとした薔薇の香りが辺りを漂う。
その香りは、初対面であるオリヴィアに対する警戒心を解いていった。
「え、マジ? やっぱ結構みんな知ってる系?」
自然に会話の輪の中へ迎え入れられたオリヴィアが、話を聞いてみれば。彼らの知る噂の形が見えてきた。
夜中にラジオをかけると、ノイズに混ざって応答を求める声が聞こえてくること。
それをそのまま聞いてると、いつのまにか近くに宇宙飛行士が現れて、迫ってくるということを男子生徒らは語った。
この話には、まだ曖昧な部分が多い。オリヴィアはちょっとした尾鰭を付け足してみようと、口を開く。
「宇宙服を纏っているのは……中身が本当は強力な光に弱い宇宙人だから……って私は聞きましたけれど」
「なにそれ。それならエンカしたら、ライト当てればいいってこと?」
「おい、お前今日もラジオつけて、もし出たら試してみろよ」
軽口を叩く男子生徒らの反応を認め、オリヴィアは内心で微笑む。
噂が形を持つならば、その形を歪めてしまえばいい。
弱点という尾鰭。それはやがて、実体を持ったときの足枷になるだろう。
屋上を見下ろす空に、薔薇の香りが溶けていった。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
WIZ
屋上、電波、雫…いえ、やめておきましょう。別の都市伝説が生まれたりしたら大変ですし。
「やはり自分はオタクなので、趣味の合いそうな人から情報を得るのが良さそうですね」
事前に小声でUCを歌い、見切りの能力を高めてから図書館か教室でオタクっぽい男子(特にゲームやファンタジーが好きそうな)を探して会話してみます。
「ほうほう。あ、ところでラジオの雑音の噂とか、宇宙服を来た人影の噂とか流行っているみたいですが、君も何か聞いた事ありませんか?」
まずは相手の好きな話をしてもらい、あまり長くならない内にそれとなく都市伝説の話題に切り替えます。
こちらは根気強く聞いていきます。
アドリブ歓迎です。
●共鳴するソウル
屋上、電波、雫……頭の中に浮かぶ単語を繋げ、高柳・零(|テレビウムのパラディン《TRPG好きのバカ》・f03921)はひとつにまとめてみようかと考える。
(いえ、やめておきましょう)
だが、すぐに軽く頭を振る。何かの間違いで、自身が都市伝説を蒔く側になってしまっては本末転倒だ。
さて、どう情報収集をしようかと、零は考えを巡らせる。
(ふーむ、やはり自分はオタクなので、趣味の合いそうな人から情報を得るのが良さそうですね)
そんな直感に従い、零はヌギカル☆玄信のテーマを小さく口ずさみながら、学園の中を散策する。
「さあ、今こそ脱ぐんだ! ヌギカル☆玄信!」
……うん、小声でなかったら大変なことになったかもしれないね。
その時、いきなり教室の扉が勢いよく開いた。
「止まるでゴザル!!」
そこから唐突に現れた男子生徒に、零は呼び止められる。
「その旋律……拙者のセンサーがビンビンに反応したでゴザル……!」
一体何が男子生徒の琴線に触れたのか。それは本人しかわからない。だが零は、男子生徒の佇まいと口調から、彼は自身と似た者同士であると見抜いた。
「あなた……僕の同志ですね?」
「フッフッフ……拙者の直感は正しいようでゴザルな……」
なにやら謎の同族センサーが発動したようで。2人はファンタジー系ゲームについて教室で熱く語り合い、信頼ゲージは順調に上昇していった。
タイミングを見計らい零は、さりげなく話題を都市伝説の噂へシフトさせる。
「ほうほう。あ、ところでラジオの雑音の噂とか、宇宙服を着た人影の噂とか流行っているみたいですが、君も何か聞いた事ありませんか?」
その瞬間、男子生徒の表情がわずかに変わる。
「おおっと、それは最近巷を賑わせている噂のことでゴザルね。知ってるでゴザル。深夜にラジオの周波数を合わせていると、ノイズの中に応答を求める声が混ざるという話でゴザル。なんでも、地球への帰還に失敗した宇宙飛行士の、助けを求める最期の通信らしいでゴザル」
そこまで語った男子生徒は、わずかに声を潜めた。
「拙者の予想でござるが……これは1960年代に闇に葬られたと言われる、女性宇宙飛行士の無念が電波に乗っているのではないかと」
もしかすると、この話が都市伝説のベースになっているのではと零が推測を立てたその時。昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、男子生徒は授業に向かうべく零に別れを告げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
学校だし普段着だと目立つから制服を用意して貰ったわ♪
制服ってとっても可愛いわよね。わーい♪
何回か学校に入ったことあるけどやっぱりいいわ♪
視線を合わせた生徒達に軽くてを…あ。情報!
個人行動で情報集めね。…じゃああたしは食堂でお昼~♪
お饂飩のセットを頼んで女の子集団の近くに座るわよ。
聞き耳を立てながら饂飩を啜りお話をある程度聞いて…。
「ねえねえ、その噂面白いわね。もう少し聞きたいわ♪」
一歩踏み込んで情報を貰いたいからお話に参加してみる。
「へー♪ とっても面白いわね。じゃあじゃあ…」
周波数を合わせる時間帯とか場所とか色々と聞いてみる。
勿論無理な感じじゃなくって自然な感じで聞いてみるわ。
…多分レーちゃんならそーやって聞くと思うから…。
「ありがとーね♪ …あ。デザート食べる? 奢るわ」
集めた情報は待ち合わせてた屋上でレーちゃんに話すわ。
授業中だから誰も居ないだろーけど一応周囲警戒ね。
せんせーってゆー人に見つかると大変みたいだし。
「…って、お話で、大分似た内容が多い感じね」
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
教師に発見されると面倒なので用意した制服を着る。
露は喜んでいるようだが私は普段着の方がいい。
こういう可愛らしいものは似合わないからな。私は。
個別に情報収集。私は屋上で集めることにしようか。
百単位の小さい『私』を召喚し情報を探ってもらおう。
「広範囲で少し大変だと思うが、よろしく頼むよ」
三人一組になるよう頼んで校舎中に散らばって貰う。
もし露が困っているようなら助けてやって欲しい。
そう頼んでもおく。…過保護だろうか…?
まあいいか。さて…。
私は発見し難い場所で本でも読んで時間を潰す。
私と露の得た情報を軽く紙に纏めて整理をする。
似通った情報は赤色で書き示しておこうか。
整理をすることによって見えてくるものもある。
…ふむ。
●揺れるスカート、靡くリボン
「制服ってとっても可愛いわよね。わーい♪」
スカートの裾を揺らしながら、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は上機嫌に学園の廊下を歩く。
場所の特性上、普段着だと目立つ。その為、希望者には潜入用として、制服が支給されたのだ。
その隣で、シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は露を横目に淡々と襟元のリボンを整えた。
(露は喜んでいるようだが……)
シビラは教師に見つかると、面倒なことになると判断して制服を纏っていた。
理由はそれだけであり、普段着のほうが着ていて落ち着く。
(こういう可愛らしいものは、似合わないからな。私は)
シビラは小さく息を吐く。
だが、滞りなく情報を集める為であると割り切っていた。
「何回か学校に入ったことあるけど、やっぱりいいわ♪」
露はすれ違う生徒達と視線が合うと、柔らかな笑みを向け軽く手を振りかけ……。
「……あ。情報!」
そう小さく口にして、はっと本来の目的を思い出す。
「手分けして、個別に情報を収集しよう。私は屋上で集めることにするよ」
シビラが静かに提案すると、露は頷いた。
「個人行動で情報集めね……じゃああたしは食堂でお昼~♪」
露は足取り軽く食堂へ向かう。シビラはその背中を見送り、小さく肩をすくめて屋上への階段を上った。
●掴んだ鰭
屋上に出るとシビラは、貯水槽の裏という見つかりにくい場所に向かう。そして周囲に人の気配がないことを確認し、『小さい援軍』を行使した。
「Ridică-te cu noi Aveți puterea de a înfrunta viitorul...」
シビラの影から湧き出すように。黒いヴェールを被った手乗りシビラたちが、次々と姿を現す。
「広い範囲で少し大変だと思うが、よろしく頼むよ」
シビラが声をかけると、小さな分身たちはこくりと頷き、3人1組のチームとなり校舎中へと散らばっていった。
「ああ、それから……もし、露が困っているようなら助けてやって欲しい」
分身たちにそう付け加えてから、シビラはふと思う。
(少し、過保護だろうか……?)
だが、潜入任務には予期せぬトラブルが付き物だ。何かあってからでは遅い。
(まあいいか。さて……)
分身たちに情報収集を任せたシビラは、静かに本を取り出して。情報が集まるまで、読書で時間を潰すことにした。
一方、食堂にやってきた露は、すぐさま饂飩のセットを注文し、トレイを手に目当ての席へと向かった。
選んだのは、噂話に花を咲かせている女子生徒達のすぐ近くの席だ。
露はちゅるりと饂飩を啜りながら、そっと聞き耳を立てる。
「ねえ、知ってる? 深夜にラジオを聴いてると、たまにノイズの向こうから変な音が聞こえてくるっていう噂。シュー……シュー……って、誰かが酸素マスクで呼吸してるみたいな、不気味な音が混ざるのよ」
「それ、私も聞いたことある! しかもその呼吸音に混じって、誰かが掠れた声で『おう……とう……』とか『おね……がい……』って、途切れ途切れに呟いてるんだって。でもね、絶対にその声をはっきり聞き取ろうとしちゃダメなんだよね。もし声が届いちゃったら最後、聞いた人のところに『真っ黒な宇宙飛行士』が現れて、どこかへ連れ去られちゃうんだよね」
彼女たちの会話から、ある程度の情報を引き出したところで。露はにっこりと人懐っこい笑顔を作り、話の輪に割って入った。
「ねえねえ、その噂面白いわね。もう少し聞きたいわ♪」
「わ、びっくりした! え、今話してた噂のことだよね」
突然の介入に少し驚いた様子の女子生徒たちだったが、露の屈託のない明るさに毒気を抜かれたのか、すぐに警戒を解いた。
「うん、いいよ。要するに、深夜のラジオから聞こえる声を聞いちゃダメってこと。ノイズの隙間から『おうとう、おねがい』って誰かが呼んでるんだけど、それに気付くと『真っ黒な宇宙飛行士』が現れて連れ去られる……っていう、最近よく聞く都市伝説だよ」
「へー♪ とっても面白いわね。じゃあじゃあ……」
露は興味津々な様子を見せ、一歩踏み込んで情報を引き出していく。周波数を合わせる時間帯や、具体的な場所など、知りたい核心部分を色々と尋ねた。
勿論、強引に聞き出すような真似はしない。あくまで自然な流れで、ただの好奇心旺盛な生徒を装って。
(多分、レーちゃんならそーやって上手く聞くと思うから……)
シビラの顔を思い浮かべながら、露は和やかな雰囲気を崩さずに会話をコントロールしていく。
やがていくつかの都市伝説が現れる条件を聞き出せた頃。露がふと足元に違和感を覚えて視線を落とすと。テーブルの影から、黒いヴェールを被った手乗りシビラたちがひょっこりと顔を出していた。
小さなシビラは、他の女子生徒たちの視界に入らないよう机の脚に隠れながら、自分の手首をトントンと叩いてみせた。続いて、屋上へと続く方向を指し示す。
そろそろタイムリミットが近くなる。そう訴えかけるようなジェスチャーに、露は思わず頬が緩みそうになる。
(ふふ、心配してくれてたのね。ありがと、レーちゃん)
チラリと時計を見れば、昼休みの残りはあと20分ほど。そろそろ切り上げる頃合いだろう。
「……って感じねー。ま、噂だからホントかどうかわからないけど」
「ありがとーね♪ ……あ。デザート食べる? あたし奢るわ」
有益な情報をくれた彼女たちに。露は礼として、フルーツたっぷりゼリーを奢ったのだった。
●都市伝説の輪郭
昼休みが終わり、授業中の静寂に包まれた校舎。
待ち合わせ場所である屋上に、露がこっそりとやってきた。
「レーちゃん、お待たせ」
授業中であるため屋上には誰もいないはずだが、露は一応周囲をきょろきょろと警戒する。
このタイミングで教師に見つかったら、生徒指導室という教室に連行されてしまうかもしれない。それは絶対に避けなくてはならなかった。
「でね、女の子たちから聞いたんだけど……」
露は集めた情報を、掻い摘んでシビラへと伝える。
深夜にラジオのノイズに混ざり、何者かの『応答を求める声』が流れてくるということ。
どうやら『深夜』に、『ラジオのノイズ』が流れていることが、どの話も共通していて。これが都市伝説が現れる最低条件だろうということを共有する。
「……ってお話で、大分似た内容が多い感じね」
「……なるほど」
シビラは話を聞きながら。自身の分身たちが集めてきた情報と、露が食堂で得た情報をさらさらと紙に書き出す。
ペンを走らせつつ。似通った情報や共通するキーワードは赤色でまた別の紙にまとめ、情報を取捨選択する。
深夜、ラジオ、ノイズ、黒い宇宙飛行士、応答を求める声……。
「……ふむ」
シビラは紙をじっと見つめ、思考を巡らせた。
(断片から推察するに……)
おそらく、何らかのトラブルに見舞われた宇宙飛行士が、最後の賭けとして無差別に救援信号を発した。それが、何らかの形でラジオ電波に混線したのではないか。
「レーちゃん?」
「……都市伝説の出現条件は掴めた。あとは必要なものを揃えて、深夜になるのを待つしかないな」
いずれにせよ、応答するのは自分たちだ。答え合わせはその時にすれば良い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎木・葵桜
【桜輪】
うふふ、久しぶりの学生服!
私もまだまだ捨てたものじゃない!
(女子学生服を纏い、満面の笑みで屋上からの景色を眺め)
もー、素直に似合うって言ってくれていいのにー
輪も似合ってるよー、男子学生服!(サムズアップ)
ん?
姫ちゃん(親友)は、ちょっと都合つかなかったんだよね
でもこういう学園生活って、一人より二人の方が動きやすいでしょ?
せっかくだから学園リア充付き合ってよ!
はい、お弁当あげる!
屋上でお昼なら断然お弁当!
ちゃーんと私のお手製だよん!
おにぎり、卵焼き、ハンバーグ、アスパラベーコン巻き
そしてデザートはクッキーだよ!
お弁当美味しいでしょ?
ほらほら美味しいと言ってごらん?
漏れなく私が喜ぶから!(強制)
なんなら食べさせてあげよっか?
えー、じゃあ私に食べさせて!
リア充風に!
クッキーは屋上にいる他の生徒にもお裾分け
噂話している子達のところに行って噂話について情報集めるね
よかったらお菓子食べない?と振る舞いながら
噂話について深く突っ込んでみるよ
必要な情報集められたら輪と共有して後で一緒に分析するね
影見・輪
【桜輪】
(屋上の景色を眺めてる葵桜の横に座って金網持たれ空見上げつつ)
そんなこと口にしてる時点で色々アレだけど
まぁ、似合ってるんじゃない?
僕まで巻き込まなければなお良かったんだけど
(付き合わされて着せられた学生服をちらと見やって息を吐き)
リア充言うな…って、なるほど用意は万全なんだね
お弁当はありがたくいただくよ
(なんやかんやと料理上手な娘の弁当を手渡されれば口にして)
…うん、
(美味しいと思う
けれど、褒めたら負けた気がするので言葉にはしない)
…そういうの強要するの良くないと思うけど?
いや、食べさせなくていい
自分で食べられるし
…って、食べさせてって何
(自分で作ったのを食べさせてもらうのって
どうなんだろうかと思ったが
訴える眼差しに負け、卵焼きを箸でとり娘に食べさせる)
(とりあえず、満足そうに笑ってるのでいいか、と思うことにした)
…別に僕いなくてもよかったんじゃないかね
(葵桜の特攻を横目に見つつ、聞こえてくる噂に耳を澄ます
話しているのは女子か、はたまた男子かなど、分析かけながら聞くことにする)
●卒業したら制服はコスプレです
「うふふ、久しぶりの学生服! 私もまだまだ捨てたものじゃない!」
ステップを踏むようにプリーツスカートを軽やかに揺らし、榎木・葵桜(桜舞・f06218)は満面の笑みで屋上からの景色を眺めていた。
「そんなこと口にしてる時点で色々アレだけど……。まあ、似合ってるんじゃない?」
葵桜の隣に座り、金網にもたれながら空を見上げているのは影見・輪(玻璃鏡・f13299)だ。
そう言った輪は、どこか所在なさげに視線を泳がせていた。何せ輪も葵桜も、とうに成人している身。本来ならば文字通り、制服は卒業しているはずなのだ。
「もー、素直に似合うって言ってくれていいのにー」
葵桜は頬を膨らませて抗議したが、すぐに気を取り直したようにサムズアップをしてみせる。
「輪も似合ってるよー、男子学生服!」
「……僕まで巻き込まなければ、なお良かったんだけど」
輪は着せられた学生服をちらと見やると、小さく溜息をついた。自分ではなく、親友を誘えば良かったのではないか。
「ん? 姫ちゃんはちょっと都合つかなかったんだよね。でもこういう学園生活って、1人より2人の方が動きやすいでしょ?」
輪の心の声を見透かしたように、葵桜はあっけらかんと言ってのけた。
●屋上ランチランデブー
「せっかくだから学園リア充付き合ってよ!」
葵桜はいたずらっぽく目を細めて輪に詰め寄ると、輪の手に手際よく包みを押し付けた。
「はい、お弁当あげる! 屋上でお昼なら断然お弁当!」
「リア充言うな……って、なるほど」
文句を言いながらも蓋を開ければ。ふっくらとしたおにぎり、鮮やかな黄色の卵焼き、照りの良いハンバーグ、そして丁寧に巻かれたアスパラベーコンが、食欲をそそる香りを漂わせている。
「そして……デザートはクッキーだよ!」
傍らに置かれた別のバスケットからは、チョコチップやアイスボックスなど、色とりどりのクッキーが顔を覗かせていた。どれも程よい焼き色で、甘い香りがふわりと輪の鼻をくすぐる。
「用意は万全なんだね。お弁当はありがたくいただくよ」
輪は毒気を抜かれたように苦笑し、箸を割り入れた。
一口運べば、家庭的でありながらも洗練された味が広がる。
「ちゃーんと私のお手製だよん!」
えっへんと胸を張る葵桜。彼女の料理の腕前が確かであることを、輪は再認識せざるを得なかった。
「お弁当美味しいでしょ? ほらほら美味しいと言ってごらん?」
得意満面な笑みを浮かべて、葵桜は期待に満ちた目で輪を覗き込んできた。
「……うん」
(確かに、美味しい。けれどここで手放しに褒めたら……負けな気がする)
輪は喉元まで出かかった言葉を飲み込み、黙々と箸を進めた。
「美味しいって言ってくれたら、もれなく私が喜ぶから!」
「……そういうの、強要するの良くないと思うけど?」
無言の圧をかけてくる葵桜から目を泳がせながら、輪はアスパラベーコンを口に運んだ。
「なんなら、食べさせてあげよっか?」
「いや、食べさせなくていい。自分で食べられるし」
間髪入れずに断りを入れる輪。だが、葵桜はめげない。
「えー、じゃあ私に食べさせて! リア充風に!」
(自分で作ったのを食べさせてもらうのって、どうなんだろうか……)
輪は目を丸くしたが、葵桜の眼差しは一点の曇りもなくて。結局、その熱烈な催促に根負けしたのは輪の方だった。
しょうがないなと苦笑まじりに、箸でふっくらとした卵焼きを挟み上げ、葵桜の口元へと運ぶ。
葵桜は待ってましたとばかりに口を開け、幸せそうにそれを頬張った。
とりあえず、葵桜が満足そうに笑っているからいいか。そう思いながら、輪は再び自分の弁当へと視線を落とした。
●そろそろお仕事の時間です
「このクッキー、他の子たちにもお裾分けしてくるね」
弁当を食べ終え、デザートのクッキーに舌鼓を打った後のこと。葵桜は輪にそう言うと、まだ中身の残るバスケットを軽やかに手に取った。
視線の先には、少し離れた場所で噂話に花を咲かせている女子生徒たちの姿がある。
「よかったら、お菓子食べない?」
人当たりのいい笑みを浮かべ、葵桜はクッキーを差し出しながら彼女たちに話しかけた。その自然体な振る舞いは、相手の警戒心を一瞬で解いてしまう。
「ねえ、さっき話してたのって、最近流行っている噂だよね? よかったら詳しく教えてほしいな」
葵桜の気さくな誘いに、女子生徒たちは「いいよ」「教えてあげる」と楽しげに返した。
「深夜にラジオをつけるとね、砂嵐みたいなノイズに混ざって、変な声が聞こえてくるんだって。それは途切れ途切れに、誰かの応答を求めるような声で……」
1人の女子生徒が声を潜めて語りだす。
「でも、絶対に耳を傾けちゃだめ。もしもっとよく聞こうとして集中しちゃったら、真っ黒な宇宙飛行士がどこからともなく現れて、連れ去られちゃうの」
葵桜はこてんと小首を傾げ、不思議そうに尋ねた。
「どうしてその宇宙飛行士は、真っ黒なの?」
「……実はその宇宙飛行士、墜落の最中だったみたい。燃え盛る炎の中で必死に通信を続けようとしたから、煤だらけに焼け焦げて、全身が真っ黒なんだって」
(……別に、僕いなくてもよかったんじゃないかね)
葵桜の鮮やかな特攻を横目で見やりながら、輪は内心で小さく苦笑した。だが、感心してばかりもいられない。別のグループからも、聞き捨てならない噂話が漏れ聞こえてきたからだ。
輪はそちらへ意識を研ぎ澄ます。
話し声の主は女子生徒たちだ。噂好きなのは女性に多い傾向があるが、学生もやはり例外ではないらしい。
「ね、深夜にラジオノイズから、返事を求める声が聞こえてくるの知ってる?」
「最近みんなが話してるやつでしょ。うん、……返事しちゃったら最後、連れ去られちゃうっていうやつよね」
「黒い宇宙飛行士だっけ。墜落途中に発した救難信号が、今もラジオの電波に混ざり続けているとか……」
だいたい似通った話をしているな、と輪は思う。
「なんかさ、その宇宙飛行士、実は身寄りのない……つまり、簡単に存在をなかったことにできる、都合のいい捨て駒だったとか」
「そう考えると、ちょっと可哀想かもね。夢と希望を持って宇宙に行って、でも国に捨てられて……」
●垣間見えたもの
「戻ったよー!」
満足げな笑みを浮かべて戻ってきた葵桜は、輪の隣に腰を下ろした。
「お疲れさま……で、そっちはどんな収穫があった?」
「ラジオのノイズ越しに声が聞こえたら、真っ黒な宇宙飛行士が現れて連れ去られるって話。宇宙飛行士が黒いのは、墜落の途中で焼けこげて煤まみれだからとか。そっちは?」
「掴んだのはその宇宙飛行士について少々、かな。身寄りが無くて、国に宇宙開発の捨て駒にされた……って」
「……捨て駒なんて、ひどい話だね」
葵桜は眉をひそめて、ぽつりとこぼした。輪は頷きつつ、裏切られ、暗い空から見捨てられた宇宙飛行士の末路に思いを馳せる。
「とりあえず、出現条件は『深夜にラジオをつけること』で間違いなさそうだね」
2人は顔を寄せ合って。この都市伝説にどう立ち向かうべきか、相談を始めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『オブリビオンの儀式を破れ』
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POW : 儀式を行っている配下達を暴力で無力化する
SPD : 儀式の素材として集められた生贄を逃がす
WIZ : 敵の儀式を構成する魔術を解析し、干渉を仕掛ける
イラスト:ゆひゃん
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●宇宙への片道切符
「メーデー、メーデー……」
マイクに向かって声を絞り出す。ノイズがひどい。大気圏に突入し、機体は激しい摩擦熱に包まれている。計器類は狂って、出鱈目な値を出している。
ふっ、と乾いた笑いが漏れた。
結局、こういうことだ。
最初から分かっていたはずなのに。この極秘任務に私が選ばれたのは、私が優秀だったからじゃない。『代わりがいくらでもいる』からだ。
親もいない。恋人もいない。友人と呼べるほど親しい人間も、地上にはひとりも残していない。私がこのまま燃え尽きて、宇宙の塵になったとしても、誰の人生にも波風は立たない。
国のお偉いさんたちは、今頃コーヒーでも飲みながら、墜落のデータを取っているに違いない。私はただの、使い捨てなんだ。
でも。
誰の記憶にも残らない。それが、今の私には耐えがたいほど恐ろしい。
幼い時から、星空に恋焦がれていたこと。
訓練で何度も掌を痛めたこと。
ひとりで飲む、安物の紅茶が好きだったこと。
今、この瞬間。喉が焼けるほど熱くて、死ぬのが怖くてたまらないこと。
それを、誰かに知ってほしい。
私が確かにこの世界に生きていて、息をしていたのだと。ひとりの人間として、誰かの耳に届いてほしい。
「誰か……誰か、聞こえますか」
ノイズの向こう側に、誰の気配も感じられない。
それでも、私は信号を送り続ける。
「お願い。誰でもいい……応答して。私はここにいるの。私は……まだ、ここにいるから……」
●執念、または、残滓
深夜1時を過ぎた頃、猟兵達は学園の屋上に集まった。
それぞれが掴んだ情報や、敢えて流した誤情報を共有しつつ、ラジオの電源を入れる。
ザー、と。スピーカーからはノイズしか流れない。
だが、やがてノイズの中に、誰かの声が混ざり始める。
「おう……とう……」
それに猟兵達が意識を向けた時、一帯に焦げ臭さが漂い出した。
見回し、ラジオから視線を一瞬逸らした猟兵達。
それはほんのわずかな間だったのに。
ラジオの前に、焼け焦げた宇宙服を纏った黒い宇宙飛行士が、いた。
オリヴィア・ローゼンタール
その正体が何であれ、人に危害を加えるというのならば捨て置けん
身に纏っているのは普段のシスター服
総身に漲る聖なる力(神聖攻撃)を圧縮し、光(属性攻撃)に変える
【怪力】を以って野球のピッチングめいて【投擲】された光球が宇宙飛行士に炸裂する
【聖天烈煌破】!
人々の思念――噂によって形を得る都市伝説
強大になり得る可能性を持つが、その過程に他者を要するため思った形を得られないこともある……
私が意図的に混ぜた|光が弱点《毒》だ、よく効くだろう
貴様の|原型《オリジン》に何らかの悲劇があったのかもしれん
だが、その跳梁を赦すほど私は優しくはない
●尾鰭背鰭は重石となりて
深夜の学園の屋上は、どこか現実から切り離された冷気に満ちていた。
月明かりの下、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は静かに黒い宇宙飛行士を見据えていた。
それは人々の思念、噂、恐怖、想像。それらが形を得たものである、都市伝説。
だが、その正体が何であろうと、現実に人々に危害を加えるならば捨て置くことはできない。
昼間まで着ていた制服はもうない。代わりにオリヴィアの身体を包んでいるのは、普段から身に纏うシスター服だった。
宇宙飛行士の、そのヘルメットの奥。ひたすらに黒い闇が、オリヴィアを見ている。
「おね……が……」
途切れ途切れの声は、宇宙飛行士からではなく、ラジオからノイズ混じりに流れてきたものだった。
宇宙飛行士はオリヴィアへ手を伸ばす。まるで救いを求めるように。
だが、その慈悲を誘う仕草とは裏腹に。宇宙飛行士の影がどろりと蠢いた。同時に、その足元から無数の黒い手が這い出し、オリヴィアを捕らえんと怨嗟を纏って迫りくる。
「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、遍く邪悪を滅却せよ!」
オリヴィアはその身に漲る聖なる力を、自らの掌へと集束させた。凝縮されたそれは、ひとつの光球へと形を成す。
そして一歩踏み込むと、野球の投手が剛速球を投じるかのような鋭い動作で、それを投げ放った。
闇を切り裂きながら光球は一直線に宇宙飛行士へと走り、その腹へと直撃する。
宇宙飛行士は衝撃で吹き飛び、黒い影を撒き散らしながら宙を舞って、そのままフェンスへと叩きつけられた。
ガシャーン!! という、フェンスの悲鳴が屋上に響いた。
ずるり、と。宇宙飛行士は地にへたり込む。
都市伝説は、人々の思念から生まれ出ずる。それは強大になり得る可能性を持つが、媒介となる他者の認識によって形を変えてしまうことがままある。
「私が意図的に混ぜた|光が弱点《毒》だ、よく効くだろう」
オリヴィアが昼間に男子生徒たちへと流した誤情報は、都市伝説の身を蝕む毒となり、見事に機能していた。
「貴様の|原型《オリジン》に何らかの悲劇があったのかもしれん。だが、その跳梁を赦すほど私は優しくはない」
冷徹に言い放つオリヴィアの視線は、宇宙飛行士を鋭く射抜いていた。
大成功
🔵🔵🔵
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
怨嗟などの負の想い。あるいは生への渇望。それとも…。
なんにせよ残った想いが顕現したのが真相のようだな。
私は儀式の元を破壊して二度と起動できないようにしようか。
物理的なことは露に任せる。あの子ならそつなくこなすだろう。
さて。
自身のパフォーマンスを上昇後に封印を解きリミッターを解除を。
次に限界突破し全力突破してから【智慧なる女神】を行使。
身体に破魔を追加付与した霊的防御を念の為に纏っておこうか。
まずは魔術的な回路やシステムを解析鑑定し全て把握してみる。
次に魔法陣にハッキングして儀式に必要な部分を破壊工作で…。
…いや。陣を少しだけ創り変えられるか試してからにしよう。
噂で負の方向へ強化された想いを浄化できるかもしれない。
都市伝説になる前の。飛行士の想いただそれだけにしてみる。
飛行士の想いは様々な恨みかもしれないがそれはそれだ。
架空の話(都市伝説)ではなく存在した者(人)として消す。
それがいいのではないかと勝手に考えただけだ。
そして回路やシステムの破壊はその後からでも十分だ。
神坂・露
レーちゃん(f14377)
頑張ってた人に酷い仕打ちよね。オブリビオンみたい。
電波に声を乗せたのだって寂しかったからかもしれないわ。
だって何時だって一人は寂しいもの。…ね?レーちゃん?
…って思い切りレーちゃんにくっつくわ。わーい♪
それにしてもお空に登れる乗り物があるのね。この世界。
あたしもいつか乗ってみたいわ。みたい♪
…え?とても厳しい訓練とか凄く難しい試験があるの?
…お空に行くのってすっごく難しいのね…。
レーちゃんの邪魔はさせないわ!
レーちゃんを後ろに群がる配下さん達を倒すわよ。
狙う部分は当たりやすそーなお腹の方がいいかしら?
…あ。でもでもグーは痛そうだからはーでタッチね。
握った拳ってめり込むと内臓にダメージ与えそうだし。
(戦闘中シビラに『どちらにしても同じだ』とつっこみ)
レーちゃんに指一本でも触れさせないよーに周囲警戒ね。
それから生贄にされよーとしてた人達も逃がすわよ。
逃がした道に配下さん達がいないかちょっと心配ね。
…機関の人達が保護してくれてるって信じるしかないわ!
●煤まみれの想い
(怨嗟などの負の想い。あるいは生への渇望。それとも……)
フェンスにもたれかかる黒い宇宙飛行士を、シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は静かに見つめる。目の前の存在が一体何なのか、見極めようとしたのだ。
「なんにせよ、残った想いが顕現したのが真相のようだな」
その言葉を聞きながら、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は少し眉を下げる。
「頑張ってた人に酷い仕打ちよね。オブリビオンみたい。電波に声を乗せたのだって、寂しかったからかもしれないわ」
時には、人の方がずっと残酷な仕打ちをする。
ひとりぼっちで、誰にも知られず、記録すら残されなかった宇宙飛行士。
その心境を想像して、露は小さく息をついた。
「だって、何時だって一人は寂しいもの……ね? レーちゃん?」
そう言うなり、露は屈託のない笑顔で思い切りシビラにくっついた。
「わーい♪」
しんみりした空気を追い払うように笑ってから、露はふと空を見上げる。
「それにしても、お空に登れる乗り物があるのね。この世界。あたしもいつか乗ってみたいわ♪」
「そのためには厳しい訓練や試験を乗り越えなければならないのだが……」
シビラの言葉を聞いて、露は目をぱちぱちと瞬かせた。
「……え? とても厳しい訓練とか凄く難しい試験があるの?」
数多の高い壁を想像し、露の表情がみるみるうちにしょんもりと曇っていく。
「お空に行くのって、すっごく難しいのね……」
大変そうだわ、と。露は肩を落とした。
●縋る為か、道連れにする為か
「……さて」
シビラは二度と同じ現象が起きないよう、この都市伝説の根源破壊を試みることにした。
物理的な対応は露に任せれば問題ない。露ならそつなくこなせるという信頼があった。
シビラは自らの身体能力を強化した後、内なる封印を解き、リミッターを外す。
さらに限界を超えて力を引き上げ、念のため破魔を付与した霊的防御も纏い、【智慧なる女神】を行使する。
まずは都市伝説の構造を把握すべく、解析と鑑定を実行する。
(……ふむ)
人々の噂、未知に対する恐怖心。それらがサイキックエナジーと融合した時、都市伝説という暴走体が生まれる。
その絡まりにシビラは干渉し、内側から破壊工作を仕掛けようとした。
その時、宇宙飛行士がシビラへ手を伸ばす。そして同時に、宇宙飛行士の足元からどろりとした黒い腕がいくつも現れ、シビラへと殺到した。
「レーちゃんの邪魔はさせないわ!」
術式行使中で動けないシビラを庇うべく、露が前へ躍り出る。
無数の黒い手を露は鋭く睨むと。鈍色に染まった手刀で、迫る黒い腕を薙ぎ払う。
「レーちゃんに近づく配下さんたちは、あたしが倒すわよ」
露は宇宙飛行士へ視線を向ける。
「狙うなら当たりやすそーなお腹かしら? ……あ、でもグーは痛そうだから、パーでタッチね」
拳がめり込めば、内臓へ深刻なダメージを与えかねない。だが掌なら幾らかはマシだろうか。そんなことを露は考える。
「……どちらにしても同じだ」
根源への干渉を続けながら、シビラの冷静な突っ込みが飛ぶ。
けれど露はまるで気にしない。むしろ「それもそうね♪」とでも言いたげに、ふっと肩の力を抜くと。再び周囲へ意識を巡らせた。
同情はしても、今この場でシビラを危険に晒す訳にはいかない。
露はシビラを背に、庇うように立つ。
黒い腕が右から迫れば左手で弾き、左から伸びれば身を捻って躱しざまに叩き落とす。鈍色に染まった手刀が翻るたび、どろりとした腕は霧散し、床へ黒い染みのような残滓を散らす。
その時だった。
不意にガチャリと、屋上の出入り扉が開く音がした。
視線を向けた先。開いた扉の向こうに立っていたのは、警備員だった。
巡回中に異変を察したのだろう。だが、今この場に一般人が踏み込むのは最悪だった。
都市伝説によるユーベルコード相当の攻撃をまともに受ければ、エスパーになった身でもただでは済まない。
そして案の定、黒い手のいくつかが警備員の方へと向きを変えた。
「っ、だめ!」
シビラは術式行使中で動けない。ならば、この場を支えるのは自身の役目だ。
露は床を蹴った。黒い手の迎撃と警備員の保護、その両方を一息にやるしかない。
「こっちは危ないわ! 早く戻って!」
叫びながら駆ける露の横を、黒い腕がいくつも掠めていく。
それらを手刀で薙ぎ払いながら、露は警備員の前へ滑り込むように立った。
「振り向かないで、そのまま戻ってちょうだい!」
警備員は露の勢いと黒い腕の存在を前にして、何度も頷いた。
そして警備員が踵を返し、扉の向こうへ去っていくのを見届けてから、露はほっと短く息をついた。
「……よし。これで一般人は巻き込ませないわ」
そう呟き、露はすぐさま身を翻して、再びシビラの前へ戻る。
けれど、逃がした先に配下がいないか少し不安になる。
それでも今は、この世界の者たちが保護してくれると信じるしかない。
「レーちゃんの邪魔は、絶対させないんだから!」
露はそう言い放ち、再び黒い手の群れへ立ち向かっていった。
●拾い上げられる残火
(……いや)
シビラは小さく首を振った。
このまま怪異を倒すだけでは、あまりにも救いがない気がした。
(少しだけ、創り変えられるか試してからにしよう)
シビラの視線の先には、噂と恐怖に塗り固められた都市伝説が立っている。
本来ならよくあるひとつの怪異として、斬り捨てるのが正しいのかもしれない。
都市伝説とは。人の口から口へと渡るうちに歪み、膨れ上がったものだ。
恐れられ、囁かれ、面白半分に語られるたびに、負の想いを纏い強化されていく。
そこでシビラは考えた。その逆もできるかもしれないと。
恐怖を与える存在としてではなく、誰かを害するものとしてでもなく。
都市伝説になる以前の、ただ一人の飛行士の想いへと戻すことができれば。
噂に汚された部分だけを、剥がせたならば。
シビラの『智慧なる女神』は万物を解析し、鑑定する力に長けたユーベルコードだ。
絡み合った悪意、増幅された恐怖、後付けの尾ひれ。
そういう不純物の中から、核にある純粋な想いだけを拾い上げることができるかもしれない。
もちろん、宇宙飛行士に遺された感情が、恨みや未練ではない保証はない。
けれど、それでも構わないとシビラは思った。
これは架空の怪談ではない。噂の中で育った化け物でもない。
かつて確かに存在した、ひとりの人間だ。
ならば都市伝説として消すのではなく、存在した者として終わらせるべきではないか。
それが、シビラの勝手な考えだった。根源の破壊なら、その後でも遅くはない。
干渉しながら少しずつ、シビラは後付けされた情報の鰭を削ぐ。
その度に宇宙飛行士の輪郭が淡く発光し、次第にまばゆい光の中に溶けていく。
やがて光が収まる頃。そこに立っていたのは、先ほどと変わらぬ姿の宇宙飛行士だった。
黒い宇宙服は、見ただけなら異質だ。
けれどその気配は、明らかに当初とは違っていた。
周囲を覆っていた悍ましい気配は、消え失せて。ヘルメットの奥にあった濁った暗闇は、澄んだ静かな闇となっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
後のドンパチでいるかもしれねえが、こんな真夜中にサングラスは要らねえな
【祈り】を捧げ、サングラスを外す
焼け焦げた宇宙服の君へ【声を届かせる】
|Mayday received《メーデー受信》.
こちらベルトラン…聞こえているよ、あなたのことを話してほしい
ぼくは司祭であって、助けに来たヒーローじゃない
救うとは言えないし、安易な慰めも出来ない
けれど、あなたがここにいることをぼくは確かに受信している
都市伝説は曖昧さで増幅し、怪異は孤立で増幅する
ならば名乗って応答することで存在を承認し、孤立を否定する
狙うは弱体化だよ
…とはいえ、本音はね?
届かなかった祈りに、応えたいだけなんだ
話してほしいな、君の事を
●届いた祈り
佇む宇宙飛行士に、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)が歩み寄る。
ギュスターヴは黒い宇宙飛行士を、サングラス越しに見つめてから、祈りを捧げる。
それは。今ここにいるものへ向けた、確かな祈りだった。
(後のドンパチで要るかもしれねえが、こんな真夜中にサングラスは要らねえな)
サングラスを外し、宇宙飛行士を直接見据える。
そして、声を届かせる。
「Mayday received. メーデー受信」
恐れを煽るためではなく、退治の宣言でもなく。
ただ。届かなかったものがあるのなら、今度こそ受け取るために。
「こちらベルトラン……聞こえているよ。あなたのことを話してほしい」
焼け焦げた宇宙服の肩が、わずかに震えた。
「届いた……の?」
その声はラジオからではなく、宇宙服の中から発せられていた。
ギュスターヴは司祭だ。助けに来たヒーローではない。
だから、救うとは言えない。
痛みをなかったことにするような、安易な慰めも口にできない。
けれど。
「あなたがここにいることを、ぼくは確かに受信している」
その言葉は宇宙飛行士にとって、祈りよりもなお静かな重みがあった。
都市伝説は曖昧さの中で肥大し、怪異は孤立の中で増幅する。
誰が言い出したのかもわからない噂。
真実と虚構の境目が融けたまま、人から人へ渡されるうちに、輪郭を失って、代わりに禍々しさばかりを増していく。
ならば。名乗り、応答すること。
そこにいるのだと認めること。
孤立していないと告げること。
それだけでも、この怪異を縛る理は削げるはずだ。
狙うのは討伐ではなく、弱体化。
その眼差しは、怪異を見るものではなく、誰かを見失うまいとする者のそれだった。
ギュスターヴは、ほんのわずかに口元を和らげた。
皮肉っぽくも見えるその表情は、けれど不思議と冷たくはない。
「……とはいえ、本音はね?」
小さく肩をすくめるギュスターヴ。
「届かなかった祈りに、応えたいだけなんだ」
その言葉が落ちた瞬間、空気が変わった。
ヘルメットの奥、澄み始めていた静かな闇が、微かに揺れたように見えた。
「話してほしいな、君のことを」
静かな声だった。
夜に溶けてしまいそうなくらい穏やかで、それでも、きっと届くと信じて差し出された声。
しばしの沈黙のあと、宇宙飛行士が、震えるように息を吐く。
「ああ、ああ……届いた。私は確かに、存在している……」
その瞬間、堰き止められていたものが決壊するように、言葉があふれ出した。
訓練の日々のこと。
ひとりで過ごした長い時間のこと。
誰にも届かないまま抱え込んでいた記憶が、ぽつり、ぽつりと夜の底へ零れていく。
ギュスターヴはただ静かに、その声に耳を傾けていた。
大成功
🔵🔵🔵
榎木・葵桜
【桜輪】
本当に純粋に助けを求めているんだよね
聞き集めた話が本当のものなのかはわからないけれど、
本当にこんなに真っ黒で痛々しくて、そしてなんだかとても寂しそうで
姿を見てると、手を取りたくなっちゃうよね
これが一般人だったら本当にどこかに連れ去られちゃうのかもだけど
猟兵だったらさすがに酷いことにはならないと思うし!
ねえ、あなた…って、えー!
(近づこうとしたところで手を引っ張られ輪に制されれば不満げな声をあげ)
え、代わりに輪がやるの? 危ないから?
危ない…危ないかなぁ?
大丈夫なように見えるけど
わかった、じゃあ都市伝説の手を引くのは輪にまかせるね
近づくなと言われたら一応言うことは聞いたほうがいいよね
私は遠巻きに都市伝説の姿を観察しておくことにする
噂の通りにどこかに連れ去られちゃったら困るので
万一の時は近づいて輪の手を取るつもり
あとは観察しながら、指定UC+[歌唱、治癒力強化]も使ってみるね
都市伝説の子にちょっとでも歌が届いてもしも回復するのなら
真っ黒で痛々しそうにはならないかもしれないし
影見・輪
【桜輪】
なるほど、都市伝説
聞いた情報の通り…というよりは、
聞いた噂をそのまま取り込んで今の形になった感じがするかな
噂では返事したらダメって言ってたけど…って、返事どころか近づいてるし
(葵桜の様子にため息をつく
想像はついていたけれど、同行した以上連れを危ない目にあわせるわけにはいかない
咄嗟に葵桜の手を掴み、宇宙飛行士に近づくのを制して)
猟兵でも危ない時は危ないんだからとりあえず君は後ろに下がって
(一応、こういう時の盾役として今ここにいるつもりだから、とは口にせずに前に出る
「宇宙飛行士の声に応答したら連れ去られる」とのことだったけれど
応答して近づいた時点で連れ去られるのなら、触れられるか試してみるのもまた一興だ)
僕達の声は聞こえる?
もし聞こえるなら、手を伸ばして、応答してくれると嬉しいな
(近づき、声をかけながら手を伸ばす
こちらから攻撃などは行わなわず
万が一、攻撃されることがあるなら[激痛耐性、呪詛耐性、狂気耐性]で凌ぐ
さて、どんな反応を示すだろうか)
●Solitude
焦げついた宇宙服は、夜の闇よりも深い。
「本当に、純粋に助けを求めてるんだよね」
目の前の黒い宇宙飛行士を見つめる榎木・葵桜(桜舞・f06218)の瞳には恐怖よりも、どこか深い哀れみの色が浮かんでいた。
(なるほど、この宇宙飛行士が都市伝説か)
影見・輪(玻璃鏡・f13299)は冷静に観察する。
「聞いた情報の通り……というよりは、聞いた噂をそのまま取り込んで今の形になった感じがするかな」
黒く焼け焦げた宇宙服、闇に引き込もうとする影の手、ラジオから流れるノイズ混じりの声。
噂として語られてきた不気味な要素が、そのまま都市伝説を形作っている。そんな印象を輪は抱いた。
「聞き集めた話が本当のものなのかはわからないけれど、本当にこんなに真っ黒で痛々しくて、そしてなんだかとても寂しそうで」
葵桜は、少しだけ困ったように笑う。
「その姿を見ていると、つい手を取りたくなっちゃうよね」
「噂では返事をしたらダメって言ってたけど……」
ここは返事をするべきか否か、輪は思案する。
「って、返事どころか、もう近づいてるし」
だがその間に、宇宙飛行士はゆっくりと2人に近づいてきていた。
「これが一般人だったら、本当にどこかに連れ去られちゃうのかもだけど……猟兵だったら、さすがに酷いことにはならないと思うし!」
楽天的な葵桜の言葉に、輪は深いため息をついた。
……まあ、こうなるのではないかとは想像はついていた。
しかし同行した以上、連れを危険な目に遭わせるわけにはいかない。
葵桜が宇宙飛行士へさらに一歩近づこうとした瞬間、輪は咄嗟にその手を掴んだ。
「ねえ、あなた……って、えー!」
引き止められた葵桜が、不満そうな声を上げる。
「猟兵でも危ない時は危ないんだから、とりあえず君は後ろに下がって」
「え、代わりに輪がやるの? 危ないから?」
輪に止められた葵桜は少しだけ宇宙飛行士を見て、首をかしげた。
「危ない……危ないかなぁ? 大丈夫そうに見えるけど」
あっさりと言う葵桜。
輪は一応、このような時の盾役として、今ここにいるつもりだった。
だがそれは言葉にせず、前に出ることで葵桜に示してみせる。
「わかった。じゃあ都市伝説の手を引くのは、輪に任せるね」
素直に聞き入れた方が良いと判断した葵桜は、接触は輪に任せ、遠巻きに宇宙飛行士の姿を観察することにした。
●Hello, hello. Is my voice reaching you?
噂では、宇宙飛行士の声に応答した者は、どこかへ連れ去られるという。
輪は、触れられるのかどうか試してみるのもまた一興だと考え、宇宙飛行士へ手を伸ばす。
「僕達の声は聞こえる?」
輪は静かに問いかけた。
「もし聞こえるなら、手を伸ばして応答してくれると嬉しいな」
攻撃はしない。ただ、どんな反応を見せるのか、確かめるだけだ。
その言葉を聞いた宇宙飛行士は。ゆっくりと、応えるように手を伸ばしてきた。
そこに攻撃の意図は感じられない。ただ誰かに、確かに存在していたと認識してもらえたなら。それが自分が生きた証になる。
そう語るように、静かに手が差し出されていた。
葵桜は、宇宙飛行士と輪の様子を見守っていた。
噂通りに連れ去られてしまったら困る。もしもの時は、輪の手を必ず取りに行くつもりだった。
だがその心配は杞憂のようだ。
今、瞳に映るのは。恐ろしい都市伝説などではなく、ひとりぼっちの宇宙飛行士だったから。
空に消えた想い、その残火。
葵桜はそっと目を閉じ、歌い始めた。優しい旋律が、夜の帳に溶けていく。
もしこの歌が届くのなら。
もし、ほんの少しでも痛みを癒せるのなら。
こんなに痛々しい姿のままでいなくていい。
そう願いながら、歌を夜空へ響かせる。
すると、宇宙飛行士の宇宙服が、ゆっくりとその色彩を変え始める。
黒く焼け焦げていた布地が、灰のようにほどけて剥がれ落ちていく。
そして、それは真新しい白へ。
まるで、今しがた仕立てられたばかりの宇宙服のように。
●Not alone
輪の手に宇宙飛行士の手が重なる時には。宇宙飛行士は都市伝説としての実体を失い、純粋な想いの集合体になっていた。
宇宙飛行士の手には重みを感じられなかったが、不思議なぬくもりがあった。
相変わらずヘルメットの中は闇色で、こちらを見ているかどうかも分からないはずなのに。輪は不思議と、視線が合ったように感じた。
その瞬間。宇宙飛行士は光となり、瞬く間に弾けた。
光が猟兵たちの身体を通り抜ける時、見知らぬ誰かの声が聞こえた気がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『奇士』
|
POW : 思考汚染
【紅い糸】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【今まで蒐集してきたミーム】による汚染を与え続ける。
SPD : 騙り歩き
【自身が居る地域】にまつわる怪談を語る。それが聞こえる範囲内に、ランダムに増減する【都市伝説】を召喚し、使役できる。
WIZ : 偽りのエリュシオン
【手帳の切れ端】を散布し、最大レベル㎡の【都市伝説が湧き続ける結界】を描く。[都市伝説が湧き続ける結界]内の味方は回復、敵はダメージを受け続ける。
イラスト:倉葉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠空目・キサラ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●操り糸
見知らぬ誰かの声が夜に溶けた、その直後だった。
「あーあ……ほんと、最悪」
唐突に響いた少女の声が、静寂を鋭く裂く。
「せっかくいい感じに育ってたのに、台無しじゃない」
声が聞こえた方に立っていたのは。手に和綴じ手帳を持った、白く長い髪を揺らす女子校生だった。
「孤独のままじゃ、まだ浅いのよ。そこから怨嗟に呑まれて、闇に引き摺り込む……そういうふうに育ってくれたら、もっといい都市伝説になったのに」
赤い瞳が、すっと細められる。
その視線は、消えた宇宙飛行士を悼むものではなく。壊された玩具を惜しむようなそれだった。
少女は小さく息をつくと、わずかに首を傾げた。
「今ちょっと機嫌悪いし……壊した責任、あんたたちで取ってよ」
アンカー・バールフリット
【RZ】
白い髪に赤い瞳、白/赤のセーラー服のタタリガミ……なんかものすごいデジャブを感じる相手だな
んで女子高生ではなく女子校生か……そりゃ私の推測通りの相手なら26歳だもんな(謎納得)
でも現役JKで通用する美貌だと思うよ
さて……漆黒のタタリガミに振られて自棄起こしたせいかわからないが、またずいぶんと斜め上の永続性を獲得したようで
ここで討ってやるのが私の務めだろう
無限湧きする面倒くさい宇宙飛行士らしきものとジャッジメントレイを対消滅させて無力化
味方の攻撃を援護する
さすがホワイトデー、恋破れた乙女はご機嫌斜めか
おや、あれは|――君《……くん》かな(学園の後輩にあたる誰かの名を出してカマをかける)
ステラ・バールフリット
【RZ】
アンカー、彼女は推定25歳ですよ
女性の年齢をよりによって多いほうに間違えるなんて失礼です
(さすがに「現役JKで通用する」はお世辞が過ぎるのでは?と思っている美意識高い系魔女)
さて早速の|自己紹介《『孤独~引き擦り込む』のくだり》ありがとうございます
貴女の|生い立ち《プロフィール》が見えた気がします
特に容赦する理由もないのでアンカーの援護のもと、フォースブレイクでぶっ飛ばします
こういうのなんて言うんでしたっけ?
そうそう――リア充ビッグバン!
(意中の彼が自分以外の女と幸せな家庭築いてるのを見せられて溜まってるイラつきやフラストレーションをすべて叩きつける勢いで)
●カミサマ違いです
「白い髪に赤い瞳、白と赤のセーラー服のタタリガミ……なんかものすごいデジャブを感じる相手だな」
じろじろと相手を見た後、アンカー・バールフリット(Blauer Zauberer・f43884)はひとつ頷いた。
「んで、女子高生ではなく女子校生か……そりゃ私の推測通りの相手なら26歳だもんな。でも現役JKで通用する美貌だと思うよ」
アンカーは妙に納得したような口ぶりだった。
だが、その隣でステラ・バールフリット(|Reizend Zauberin《魅力的な魔女》・f44391)がすっと目を細める。
「アンカー、彼女は推定25歳ですよ」
きっぱりと訂正してから、ステラは小さくため息をついた。
「女性の年齢を、よりによって多いほうに間違えるなんて失礼です」
その声音は冷静だったが、内心では別のことも考えていた。
(さすがに現役JKで通用する、というのはお世辞が過ぎるのでは?)
美意識の高い魔女として、そのあたりは少々看過できない部分だった。
「はぁ?」
不機嫌そうに、白いタタリガミが低く声を漏らす。赤い瞳に苛立ちが宿っていた。
「何言ってんの? どっかの誰かと間違えてんじゃない?」
「さて早速の|自己紹介《『孤独~引き擦り込む』のくだり》ありがとうございます。貴女の|生い立ち《プロフィール》が見えた気がします」
さらりと告げるステラの声音は、どこか観察者めいていた。
見るからに機嫌が悪そうな顔で、タタリガミはステラを睨んでくる。
「なんか勘違いされてるのも、すっごいイラつくわね」
タタリガミからは隠しきれない殺気が滲んでいた。
その不穏さを受けてもなお、アンカーは構わず前へ出る。
「さて……漆黒のタタリガミに振られて自棄を起こしたせいかわからないが、またずいぶんと斜め上の永続性を獲得したようで。ここで討ってやるのが、私の務めだろう」
「……振られたとかヤケだとか、訳わかんないこと言ってんじゃないわよ!」
タタリガミが吐き捨てると同時に、手にしていた和綴じの手帳へ指をかけた。
荒っぽくページを複数枚引きちぎり、宙へ放る。
紙片はひらひらと舞って。次の瞬間、どろりと黒く溶けた。
それは悪意を液状化したような黒だ。空中でうごめき、人型を取り、やがて無数の宇宙飛行士めいた異形へと変わっていく。
「うわ、面倒くさいの出してきたな」
アンカーは呟くと、宇宙飛行士へ手をかざした。
放たれるのは裁きの光条。聖なる閃光が空から一直線に奔り、押し寄せる黒い宇宙飛行士たちを貫く。
光と闇が正面からぶつかり、打ち消し合うように宇宙飛行士は消える。だが、消しても次々と湧いて出てくる。
「さすがホワイトデー。恋破れた乙女はご機嫌斜めか」
「だから違うって言ってんでしょ!」
タタリガミの叫びは、もはや怒声だった。
だがアンカーはそれすら利用するように、ふっと目を細める。
「おや、あれは|――君《……くん》かな」
ぽつりと、学園の後輩にあたる者の名を口にする。
あくまで何気ない声音で、カマをかけてみたのだ。
だが。
「よそ見してると死ぬわよ」
タタリガミの静かな怒気をはらんだ声とともに、黒い宇宙飛行士の群れが一斉にアンカーへ殺到した。
どろどろと足元を這い、飛びかかり、まとわりつき、圧し潰そうとする。
「……特に容赦する理由もないので」
アンカーへとタタリガミの意識が向いている隙に、ステラが踏み込む。アンカーの援護(と言えるかは疑問だが)で空いた突破口。ステラはそれを見逃さなかった。
愛杖を手に、タタリガミとの距離を詰める。
「こういうの、なんて言うんでしたっけ?」
その声は、妙に澄んでいた。
けれど胸の奥には、煮えた感情が確かにある。
意中の彼が自分ではない誰かと、幸せそうな家庭を築いている姿。
見せつけられた光景が棘となり、胸の内に刺さったまま抜けない。
それらがないまぜになった言葉にできない苛立ちも、行き場のないフラストレーションも、ぜんぶまとめて杖に込める。
ステラに気づいたタタリガミは表情を引きつらせた。
その正面でステラは杖を振りかぶり、にこやかに言葉にする。
「そうそう――リア充ビッグバン!」
次の瞬間、ステラの|Die Stern Stange《複雑な感情の篭る杖》がタタリガミを打ち据えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
和綴じの手帳――「情報媒体」、やはり裏にいたのはタタリガミか
鎖によって滅びたものと思っていたが、生きていたか
ラジオウェーブの真意は気になるところだが……あの視座は奴特有だろうし、仮に知っていても喋りはしないだろう
結局、我々は殺し合う他にないのだ
夜闇を駆け抜けるのは慣れたもの、足取りに迷いはない(ダッシュ・暗視)
聖槍を縦横無尽に【なぎ払い】、絡め取らんとする紅い糸を斬り裂く(切断)
闇に引き摺り込む……|貴様ら《ダークネス》の常套手段だ
ならば我らは光を以って討ち祓う!
聖槍の穂先に聖なる力を集中――稲妻として具現する!(全力魔法・破邪)
貴様が集めた物語、「光に弱い」だ
篤と味わえ! 【灼烈轟雷槍】!!
●紅糸と白雷
白い少女の持つ和綴じの手帳――「情報媒体」を目にして、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は確信する。
「やはり、裏にいたのはタタリガミか」
バベルの鎖によって滅びたものと思っていた。だが、生きていた。
ラジオウェーブの真意は気にかかるところだが、あの視座は少女特有のものだろう。
仮に何かを知っていたとしても、素直に語るはずもない。
「結局、我々は殺し合う他にないのだ」
その言葉にタタリガミの少女は笑う。
「生きるってことは常に殺し殺されよ。だってそうしないと、生き残れないから」
いつの間にやら、タタリガミは紅い糸であやとりをしていた。
「まあ細かいことはいいわ。気に入らないものは壊すだけよ」
ぶち、と糸をタタリガミは引きちぎる。すると糸は意思を持ったかのように、オリヴィアへ迫る。
だが、オリヴィアは怯まず迎え撃つ。
夜を駆けることなど慣れたもの。迷いない踏み込みから聖槍を縦横に薙ぎ払い、絡み付かんとする紅い糸を次々と斬り裂いていく。
裂けた糸が闇に散る中、オリヴィアは冷然と告げた。
「闇に引き摺り込む……|貴様ら《ダークネス》の常套手段だ」
オリヴィアは聖槍の穂先へと、聖なる力を集中させる。
「ならば我らは、光を以って討ち祓う!」
雷霆を纏い、異境の神槍を思わせる輝きを前に、タタリガミは舌打ちする。
「貴様が集めた物語――『光に弱い』だ」
それは、タタリガミが育てていた芽。
その芽に、オリヴィアは意図的に|嘘《毒》を混ぜた。
タタリガミは自身の庭を荒らされたことが、ひどく気に食わない様子で癇癪を起こす。
「気に食わない! 気に食わないわ!」
紅い糸が幾重にも放たれる。
だが、それより早くオリヴィアは聖槍を突き出した。
「篤と味わえ! 灼烈轟雷槍!!」
放たれた凄絶な白き稲妻が、夜を真昼のように染め上げた。
奔流となった雷光は紅い糸ごとタタリガミを呑み込み、その身を容赦なく撃ち据える。
「っ、きゃぁあああ!!」
タタリガミの叫びが屋上に響き渡る。
オリヴィアの瞳には、深淵を恐れぬ光が湛えられていた。
大成功
🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
どんな思想でやってんのかと思えば…
人が死の間際に抱えた孤独を玩具みたいに扱って、それで壊されたら面白くねえってわけか
…ぶちのめすぞダークネス、孤独が全て闇に堕ちると思うなよ
【祈り】を捧げて、グラサンかけつつUC発動
声はいずれ祈りと愛を称える歌となる
…届かなかった祈りに応えるのは、そうした愛と声であれと願って
|Sion entend chanter les veilleurs《シオンは物見ら歌うのを聞き》
【神聖攻撃】と【浄化射撃】をふんだんに込め、夜空に瞬く星光の矢で都市伝説を射抜き、奇士の作る悪影響を祓う
奇士へはHYMNEを放って攻撃する
…歌が下手なのは放っておいてくれよな
●届かなかった願いのために
「どんな思想でやってんのかと思えば……」
ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)の声は静かだった。だがその静けさの底には、怒りが沈んでいる。
「人が死の間際に抱えた孤独を玩具みたいに扱って、それで壊されたら面白くねえってわけか」
タタリガミは、肩をすくめるように笑った。悪びれる気配は、ひとかけらもない。
「そうよ。せっかく見つけた種火が大きく燃え上がるのを見たいのに、いいところで水ぶち撒けて消されたら面白くないじゃない」
あまりに無邪気な口調で紡がれたその比喩に、ギュスターヴの眉間がわずかに寄る。
苦しみも、孤独も、祈りも。目の前のタタリガミにとっては観賞用の炎に過ぎないのだ。
「……ぶちのめすぞダークネス。孤独が全て闇に堕ちると思うなよ」
果たすべきはただ一つ。灼滅者としての役割だけだ。
「お説教なら間に合ってるの!」
タタリガミは和綴じの手帳を開き、そのページを何枚か乱暴に引きちぎると宙へ放った。
紙片はどろりと輪郭を溶かし、黒い液体へと変じる。
それはうごめきながら人の形を取り、やがて無数の黒い宇宙飛行士へと姿を変えた。
胸の奥にある祈りを、ギュスターヴは静かに捧げる。
届かなかった願いがある。
声にならなかった叫びがある。
誰にも拾われず、闇へ沈みかけた想いがある。
届かなかった祈りに応えるのは、そうした|愛《光》と|声《音》であれと願って。
「――シオンの光は明るく、その星は高みへ昇る」
声は祈りを、愛を讃える歌となる。
ギュスターヴはサングラスをかけた。それと同時に、天から瞬く星光の矢が、数多に降り注いだ。
さながら流星群の如き矢に。黒い宇宙飛行士たちは貫かれ、浄められ、霧散していった。
「神だの愛だの、そんなものはこの世に無いのよ!!」
タタリガミのその言葉は、叫ぶようだった。
言葉を断ち切るように、ギュスターヴはHYMNEを放つ。
光刃がタタリガミの身を薙ぎ、白い制服を切り裂いた。
「なっ……!!」
裂けた白に、鮮やかな赤が滲む。
それは届かなかった願いに報いるための、静かな断罪だった。
ギュスターヴはふいに空を見上げ、少しだけ気まずそうに口を開く。
「……歌が下手なのは放っておいてくれよな」
その不器用さこそが、彼の祈りを嘘ではないものにしていた。
大成功
🔵🔵🔵
榎木・葵桜
【桜輪】
あなたの思う通りにならなくてよかったって私は思うよ
寂しくて悲しい|都市伝説《子》だったけど、
ここにいる皆のおかげで多分少しは救われたんじゃないかなって思うから
機嫌が悪くて結構
あなたを機嫌良くさせる気なんてさらさらない
ていうか、あなたの言葉で私もかなーりイラっときてるからね?
責任を取るっていうなら、責任取ってあなたにはしっかり痛い目を見てもらうんだから
都市伝説も人の想いもあなたの都合のいい玩具じゃない
都市伝説はあなたにとってただの道具なのかもしれない
でも、道具にだってちゃんと心があるの
みんな、ありがとうをもらうために生まれてくるの
怖がられたり恐れられたりひとりぼっちになんてなりたくないの!
>戦闘
回復技が厄介そうだから、指定UC+[範囲攻撃]で敵のUCの封じ込めを試みるよ
うまく行くようなら"胡蝶楽刀"での[なぎ払い]と[衝撃波]の掛け合わせで攻撃
敵からの攻撃は体力続く限りだけど[見切り、武器受け、激痛耐性、呪詛耐性]で凌ぐよ
一応万が一体力やばそうなら真の姿(姿変わらず)で対応するね
影見・輪
【桜輪】
(「怨嗟に呑まれて、闇に引き摺り込む」に目を細める
いつの間にそういうレッテルを貼られて「呪われた鏡」となった自分自身の境遇と)
…、
(何かを言おうとして、聞こえた葵桜の言葉に目を閉じた
ふと、最初に鏡だった自分を箱から出してくれた幼かった葵桜のことを思い出す
旧家の座敷牢の隅っこで
誰からも忘れ去られるようにして箱に仕舞われていた自分をわざわざ引っ張り出した幼子は、
箱を開けるなりぱっと顔を輝かせ抱きしめながらこう言った
「こんなところに一人で寂しかったね?」
かつての自分はその言葉に救われ
今も彼女の言葉に救われたような気になっている)
…まったく、君は
感情のままに前に出るの、やめてくれないかな?
(というか、彼女が前に出て倒れてしまえば今日の自分の役割の意味がない)
>戦闘
防御>攻撃
防御:
葵桜を[かばう]こと中心
[見切り、オーラ防御、呪詛耐性、激痛耐性]で対応
攻撃:
指定UC+[範囲攻撃]
敵の技の都市伝説を殲滅させつつ
余力がある場合は敵に[捨て身の一撃]
"鮮血桜"で[捕食、生命力吸収]攻撃を試みる
●すくうことば
「今ちょっと機嫌悪いし……壊した責任、あんたたちで取ってよ」
タタリガミの言葉に、榎木・葵桜(桜舞・f06218)は眉を寄せた。
「あなたの思う通りにならなくてよかったって、私は思うよ」
怒りを込めた瞳で、まっすぐにタタリガミを見据え葵桜は告げる。
「寂しくて悲しい|都市伝説《子》だったけど、ここにいる皆のおかげで、多分少しは救われたんじゃないかなって思うから」
葵桜の言葉を聞いたタタリガミは、くつくつと喉の奥で嗤った。
「救われた、ねぇ……アレは私が蒔いた噂から生まれたの。救われるも何も、ホンモノですらないツクリモノよ」
この言葉に、葵桜の中の堪忍袋の尾が音を立て始める。
「ていうか、あなたの言葉で私もかなーりイラっときてるからね?」
葵桜は胡蝶楽刀を構えた。朱色の地に金装飾の施された薙刀が、夜闇の中鮮やかに映える。
柄についた魔除けの鈴が、ちりん、と澄んだ音を鳴らした。
――怨嗟に呑まれて、闇に引き摺り込む。
影見・輪(玻璃鏡・f13299)はタタリガミの言葉に目を細めた。
いつの間にかそのようなレッテルを貼られ「呪われた鏡」となり、忌まれ、遠ざけられ、箱の中に押し込められた自身の境遇と重なったのだ。
あれもまた、誰かの都合のいい物語だったのだろう。
輪は無言のまま立ち尽くす。その瞳は昏い色を湛えていた。
「責任を取るっていうなら……責任取ってあなたにはしっかり痛い目を見てもらうんだから!」
怒りの熱が葵桜の声に宿る。その啖呵に呼応するように、タタリガミの目が鋭くなる。
「痛い目見るのはそっちよ!」
叫ぶなり、タタリガミは和綴じ手帳のページを荒っぽく引きちぎった。
紙片がばら撒かれ、ひらりひらりと舞う。紙片が地につくと同時に、ドロドロと液状化した黒い宇宙飛行士らが数多く湧き出す。
「都市伝説も人の想いも、あなたの都合のいい玩具じゃない」
きっぱりと、葵桜は言い切る。
「都市伝説はあなたにとってただの道具なのかもしれない。でも、道具にだってちゃんと心があるの」
その言葉に、輪の瞳が揺れた。
「……、」
輪は何かを言おうとしたが、うまく出てこない。
「みんな、ありがとうをもらうために生まれてくるの。怖がられたり恐れられたり、ひとりぼっちになんてなりたくないの!」
輪は目を閉じた。
ふと、昔のことを思い出した。最初に鏡だった自分を、箱から出してくれた幼い葵桜のことだった。
旧家の座敷牢の隅。輪は誰からも忘れ去られるようにして、箱に仕舞われていた。
そんな自分をわざわざ引っ張り出した幼子――葵桜は蓋を開けるなり、まるで宝物を見つけた時のように顔をぱっと輝かせて。輪の本体を手に取り、抱きしめた。
「こんなところにひとりで、寂しかったね?」
あの時、自分は初めて「呪われた鏡」ではなくなれたのだ。
かつての自分は、その言葉に救われた。
そして今もまた、葵桜の言葉に救われたような気がしていた。
●夜に咲く花たち
「機嫌が悪くて結構。あなたを機嫌良くさせる気なんて、さらさらない。見せてあげるよ、桜吹雪!」
葵桜の軽やかな舞が夜に咲く。その軌跡から桜の花びらが生まれ出でて。淡色の奔流となり、黒い宇宙飛行士らを包み込む。
花びらに絡め取られ、宇宙飛行士らの動きが鈍る。それを葵桜は見逃さず、握り直した胡蝶楽刀を大きく振るう。
その一閃に乗った衝撃波が、周囲の敵を大きく薙ぎ払った。
だが、次から次へと湧いて出てキリがない。それでも葵桜は、一歩も引かなかった。
「もー! 思った通りに厄介なんだから!!」
不意に、葵桜の死角から黒い宇宙飛行士の手が迫る。それに気づいて、反射的に葵桜は目を閉じる。
しかし来ると思っていた手が来ず、葵桜はおずおずと目を開ける。
「……まったく、君は」
輪が咄嗟にその間へ割り込み、黒い手を受け止めていたのだ。掴まれた肩に痛みが走っていたが、輪は顔色ひとつ変えない。
「感情のままに前に出るの、やめてくれないかな?」
苦笑まじりに葵桜へ視線を送る輪は、敵の動きをいなしながら。とん、と前へ踏み出した。
葵桜が倒れてしまえば、今日の自分の役割の意味がなくなってしまう。
護りたいものを、護るために。
「君の逝く路に、祝いの花を送ってあげる」
静かな声と共に、輪の周囲から血染めの玻璃片が舞い上がる。
花吹雪のように広がったそれは、輪がいなした敵へ次々と襲いかかった。
黒い宇宙飛行士らの動きが、目に見えて乱れていく。
その只中で、輪は群れの奥に潜むタタリガミを見据えた。
「見つけたよ」
宇宙飛行士らの間をかいくぐり、呪詛の気配をその身に受けながらも、輪は捨て身の覚悟で間合いを詰める。
タタリガミが、ち、と小さく舌打ちした。
輪の接近を前に唇を噛み、逃げ道を探るように視線を巡らせる。
だが、遅い。肉薄した輪は、右手でその首元を掴んだ。
タタリガミは恨めしげに、憎々しげに輪を睨みつける。
その視線さえ、輪は静かに受け止めた。
「……捕まえた」
輪の右掌に埋め込まれた、桜の花びらのような刻印が脈打つ。
掴まれた首元にタタリガミが熱を感じた瞬間、血色の花が咲いた。
まだひやりとした夜気の中、その色はひどく鮮やかだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
わ!?この可愛い女の子が今回の原因みたいで。
でもでも。女の子に暴力ってなんだか気が引けるわ。
じゃあじゃあ全力魔法と破魔を付与した【闇狼】よ。
殴るんじゃなくって女の子の身体にタッチするわね♪
ダッシュで女の子の元へ行きたいけど障害が多いわね。
黒いところから宇宙飛行士さんが沢山でて来て困るわ。
あれ?あの宇宙飛行士さんって一人じゃなかったっけ?
往く手を遮る飛行士さん達も【闇狼】のタッチで倒すわ。
ジグザクに進めば倒す飛行士さんの数も減るかしら?
女の子はお腹とか腕とかに触れてみよーと考えてるわ。
早業で手数を増やしてフェイントと残像駆使するわね。
女の子に関しては継続ダメージの付与もしてみるわよ。
宇宙飛行士さんも女の子も回避は見切りと野生の勘で。
想定外の行動の対策は第六感で対応しよーと思うわ。
全て終わったら宇宙飛行士さんのことを考えてみる。
『全ての生きとし生ける魂は宇宙(そら)へ還る』
あたしが石だった頃に言ってた人がいたけど…。
宇宙飛行士さんもちゃんと還ったかしら。
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
今回の原因の少女の対応は露に任せておく。
だから私は露の攻撃サポートで動こうと思う。
自身のパフォーマンスを上昇させ封印を解こう。
そしてリミッターを解除し全力魔法で行使する。
早業と高速詠唱で【地縛阻陣】を発動させよう。
女の子や宇宙飛行士の影達にも有効だろうから。
あとは一つ所に留まらず常に移動していよう。
そして攻撃は見切りと野生の勘に第六感で対処。
飛行士が数の多い分だけ少々厄介で面倒だな。
囲まれでもしたら露の注意が散漫して危険だ。
彼らに背後や死角をとられないよう注意しよう。
終了後。
露は暫く空を見上げ何やら考えているようで。
僅かな時間だったが露が黙考するのは珍しい。
露が満足するまでそのままにしておこうか。
…。
帰宅後に露へ紅茶でも淹れてやろうかな。
●白い黒幕
「わ!? この可愛い女の子が今回の原因?」
白いタタリガミの少女を前にし、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は驚きの声をあげる。
「褒めてくれてありがとねー」
大して喜んでいないような、棒読みにも近い口調でタタリガミは返す。
(……でもでも、女の子に暴力って、なんだか気が引けるわ)
もっと悪役らしい黒幕が出てくれば、容赦なく攻撃できるのにと。瞳の奥に、露なりのためらいが滲んでいた。
露の隣でシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は油断せず、タタリガミを見据えたまま露に告げる。
「あの少女の対応は露に任せる。私は補助に回ろう」
「りょーかいよ、レーちゃん♪」
露は笑うと、タタリガミを目指し駆け出した。
●騙り語り
タタリガミが、ぽつりぽつりと騙りを始める。
捨て駒にされた宇宙飛行士たちの話を。報われず、見捨てられた者たちの末路を。
その声に呼応するように、タタリガミの足元の闇がぶくりと泡立った。
「さ、闇に引き摺り込んでやりなさい」
それは異様に盛り上がり、やがて宇宙飛行士の形をした何かとなり。次々と這い出してきた。
「……面倒だな」
シビラが小さく呟く。数が多い。しかも、露の進路を塞ぐように湧いている。
(あれ? あの宇宙飛行士さんって一人じゃなかったっけ?)
疑問を抱くが、露の足は止まらない。
露は自身の手に精霊の力を集中させる。すると手が淡い青色の輝きを纏い始めた。
黒い宇宙飛行士らがその行く手を遮るが、露はその間隙を縫うように進む。
飛んでくる腕も、死角から迫る影も。露はまるで最初から知っていたかのようにひらりかわして、優しく触れる。
それだけで、宇宙飛行士は瞬く間に浄化されていった。
露が宇宙飛行士らの対応をしている間に、シビラは静かに呼吸を整え、自らの内にかかった封を解放する。
抑制していた出力のリミッターが解除され、魔力が膨れ上がる。空気が震え、足元の大地が低く唸った。
「Răspunde și arată-ți puterea...…」
地下を流れる魔力が、急速に組み替えられた。
その下流に居た黒い宇宙飛行士たちは、魔力の網に捕らえられて動きが鈍る。
それはタタリガミもまた例外ではない。
露は戯れるような身軽さで、タタリガミの懐へ飛び込んだ。
「ちょ……アンタ何する気なのよ……!」
「うふふ。鬼ごっこって、タッチで鬼が交代するのよね♪」
露の指先が、タタリガミに触れる。
傍目では、露が無邪気に優しく触れているだけにしか見えない。だが破魔の宿る手は、触れただけでタタリガミの内側に牙を立て、容赦なく苛む。
ひとたび触れれば終わりではなく、接触は二度、三度と重ねられる。その度にタタリガミの身には、食い破られるような痛みが走っていた。
「……っ!! やめなさいよっ!!」
耐えきれなくなったタタリガミは、最後の力を振り絞るように腕を振り抜いた。露の身体が弾かれ、後方へ突き飛ばされる。
「あ、あらら?」
体勢を立て直した露が顔を上げた、その先。タタリガミは忌々しげに、露たちを睨みつけていた。
その唇は何かを紡ごうとしていたが、声が発せられることはなくて。タタリガミは唇を噛み、視線を逸らす。
その瞬間。タタリガミは殴り付けられたガラスのようにひび割れ、粉々に崩れた。
冷たい破片が宙に舞い、やがて何も残さず消失する。
そうして世界に静寂が落ちた。まるで最初から、何もなかったかのように。
●夜明け前
静寂が戻った屋上で、露は何かを考えるように空を見上げていた。
露が黙って思索に沈むのは珍しい。シビラは何も言わず、満足するまでそのままにしておこうと思った。
「全ての生きとし生ける魂は宇宙(そら)へ還る。――あたしが石だった頃に言ってた人がいたけど……」
不意に露は呟く。
その瞳は、先刻までの軽やかな笑みを少しだけ遠くに置いていた。
「……」
シビラはその呟きに、何も返さなかった。
(……帰ったら露に、紅茶でも淹れてやろうかな)
シビラも空を見上げる。そろそろ夜明けが近いのだろう。昇る太陽から身を隠すように、星の輝きは薄らいでいる。
やがて露が、小さく息をついた。
「宇宙飛行士さんも、ちゃんと還ったかしら」
どこまでも高く、静かな空だった。
どのような場所でも、星々は大地を見守っている。輝きが尽きる、その時まで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵