<MHJ>秘境のイリス
●butterfly effect
それは全体的には虹色で、ぷにぷにしていて、頭に鈴蘭型の灯が灯る。
辺りには芳しい香り。鈴蘭が揺れてふわふわと明滅すると、一層香りが深くなる。
ひらひら短い鰭が泳ぐのは空気。その虹色、見た目は魚というか完全に鮟鱇なのだが、水の中も水でなくても、あまつさえ砂中だろうがすいすい泳ぐ。
そんな鮟鱇がたむろするのは森の中。
泉揺らめき滝が流れ落ち、鳥と獣の鳴き声遠く谺する。
近隣の者はあまり踏み入る事のない深きにおいて、普段は見る事のない鉱石質が雨上がりの陽光を吸って乱反射した。
一端の蝶の羽搏き、幽けき風。
秘境よりの使者。
●hunter
「狩猟クエスト……ではなく、採集クエストでしょうか」
独言る。
ユハナ・ハルヴァリはいつも通りの表情薄い顔に、微かな好奇心を乗せて目線を上げた。
「アンコウを。お魚を獲りに、いきましょう」
釣りか。
そんな声にユハナは首を振る。
「狩りです」
なにゆえ狩りなのか。
それは狩猟対象たる鮟鱇が水中にいるとは限らないからである。
アックス&ウィザーズに生息する魚類。一応は、魚類。
虹色アンコウと呼ばれる、かの性質は七変化。
あらゆる地形環境に対応する逞しさを持ち、池にも森にも砂漠にも、空中にもいるとか違うとか。
「それから、珍しい蝶もいます。本命は、そちらなんです」
声色に深刻さが混じる。
なぜ唐突にモンスターをハントする話になったかと言えば、事の次第はこう。
アックス&ウィザーズにあるノネット村は、魔獣とも上手く付き合ってきていた平穏な村だった。
ところが近年、オブリビオンの影響か周囲の環境が変化した。生態系が崩れて魔獣の襲撃も増え、名物の大温泉や市場の観光収入も減少の一途。荒事は時折冒険者を雇う程度で事足りていたものだから、自衛にも心許ない有様だという。
「そこに、ドラゴンがやってきます。大量に現れた、餌を狙って。……そちらの対処は、別の猟兵に任せて、います」
何でも、一緒にお昼寝していたら同じような予知夢を見たらしい。
「アンコウと蝶……つまり、餌ですね。減らさないと、別の捕食者がまた、来てしまうので。手伝ってほしいんです」
ちなみに鮟鱇のサイズは最大で一メートル程あるそう。なかなかの食いでだ。
「蝶の方は、まぼろしと言われている、そうです。生態系変化の影響か、数が増えて。縄張りが狭まって、気が立っているみたいで。この子たちも、そのうち村を、襲ってしまいます」
普段は秘境と呼べるような場所に巣を作っているが、人里に降りて来るまではもう時間がない。狩り尽くす必要は全くないが、数を減らせば多少大人しくはなるだろう。
頼み事はふたつ。ドラゴンの餌を減らす事と、未来の危機を除く事。
「ええと……タイショリョウホウ、と言うのでしたか。ですが、やらないよりは。それに、全く居なくなってしまう、というのも、困るお話なんです」
この村では、交易と観光とを兼ねた『ラ・カージュ』という市場が開かれる。それに出品される名産が、この近辺で採集された素材を使った細工品なのだという。
魔獣が居なくなれば素材も減り、市場が廃れる。かと言って魔獣が増え過ぎれば治安が悪化し村が廃れる。頭の痛いことだ。
現に今、村の活気は落ち込んでいるところ。魔獣が増えて狩りにも出られず素材は枯渇、来客は減る見通し。となれば賑やかしも仕事のひとつだ。
「アンコウも蝶も、貴重な素材なので。持って帰って、来てください。それと……採った素材で何か、作ってみませんか」
市場と隣接する工房を貸し出して、手作り体験などという催しをやっている銀細工師がいる。
簡単な細工なら工具を貸し出してくれるので自分で出来るし、難しいものや繊細なものなら貸主の細工師に頼むのもいいだろう。仕事が減って困っているそうなので喜んで請け負ってくれる。
蝶と鮟鱇がいるのは森の奥、他にも素材になりそうなものもあるだろう。使えそうなもの、使いたいものがあれば、探してくるのも良い。
「余った素材は、持ち帰っても、いいです。そのアンコウのお肉、とても、おいしいそうですよ」
狩りというのは生活の一部であって、大切なものだ。何ひとつ殺めることなく生きていく事はできない。魔獣も、人も。それが解っているから、冬のエルフは確りと頷いて言う。いのちをいただきましょう、と。
幻と言われる蝶は宝石で出来ており、透いた宝玉の翅を持ち、きらきらと煌く。澄んだ綺麗な水がある場所にしか棲まないため生息域が限られる、生きた宝石。死して尚失われない輝きは、数多の人間を虜にしてきたという話。
鮟鱇の方は、引き締まった肉が大変に美味であり、皮膚は鹿革か何かのように柔らかくも頑丈で、一尾にひとつ携える鈴蘭灯は優雅にきらきらと揺らめき良い匂いがする。
ちなみに骨は……ほねは、なんだろう、透明なシャボン色のゼリー……?
この辺りの虹色アンコウの骨はむやみやたらな柔軟性と耐火・耐水性を持ち、細工師から鍛治師からご家庭の主婦にまで引っ張りだこの人気者。主婦の皆さま曰く、おそろしく汚れが取れるんだってさ。
「では。いきましょう」
ユハナの掌で六花が閃く。真中で割れて翅になるその羽搏きに呼応して、同じ形の門が喚ばれる。
その先は、剣と魔法とハントでワンダーな世界だ。
七宝
ひと狩り行こうぜ! 七宝です。
この度はアックス&ウィザーズにご案内します。
よろしくお願いします。
=====QUEST START=====
このシナリオは驟雨MS『<MHJ>金剛のオレイカルコス』とのリンクシナリオです。
●舞台
ノネット村
魔獣達と程よい距離感を保って暮らしていた村。大きな温泉が湧き出ていることで有名。
有事には冒険者がハンターとして雇われる事があるくらいで、生態系が崩れる前は平穏そのものであった。
ラ・カージュ
ノネット村で開催されるものづくり市場。
物を作るもよし、物を買うもよしのマーケットであり、やれることは多いだろう。
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七宝は採集クエストを担当いたします。
プレイングの受付などご連絡事項はMSページにてご確認ください。
驟雨MSの狩猟クエストはこの前日に行われます。
時系列が異なる為、同時参加も可能です。
採集の時刻は昼、天気は晴れ。雨上がりの匂いがします。
村〜たむろする鮟鱇〜蝶までの道のりには支障はありません。猟兵ならいける。
●第1章
vsふくれアンコくん
いっぱいいます。
おいしいですが、調理及び食事はシナリオ内ではできません。
OP記載の他に欲しい素材があればプレイングにご記載ください。探してみます。見つからなかったらすみません。
森歩きの備えが多少あると、良い素材が集めやすいかもしれませんね。
●第2章
vs宝玉蝶
鮟鱇ほどではありませんが、争奪戦にならない程度の数はいます。
●第3章
集めた素材でとんてんかんしましょう。
作りたいものががっちり決まっていても、ふわっとお任せいただいても、お好みで。
お呼びがあればユハナがご一緒いたします。
イェルクロルトさんがNPCとして登場するのは驟雨MSの第3章のみとなりますので、ご了承ください。
アイテム発行はありませんが、アイテムの作成にご活用頂ければと。
一応念のためですが、大人の事情に引っ掛かるものはマスタリング及び不採用の対象になります。
それでは、よい狩り日和を。
第1章 集団戦
『七色鈴蘭のふくれアンコくん』
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POW : かみつきっ!
【潜行からの飛び出し噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : もぐるっ!
【体から30cm以内の地形を対象に砂泥状化】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
WIZ : まるのみっ!
小さな【鈴蘭灯から催眠光を放つ。強烈な眠気と光】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【胃袋で出口に返しの歯が並ぶ。暴れること】で、いつでも外に出られる。
イラスト:Miyu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ゆれるゆれる虹色。
まるで泡沫。けれどもそれは泡のように消え失せはしない。
( ・∇・)
(・Д・)
(*´ω`*)
ゆるい顔立ちの鮟鱇が森の中を泳ぐ。
低くは地面からおよそ五十センチ、高くは三メートル程か。
雨上がりの晴れの日が気持ちいいのか、今日はそういう気分のようだ。
微量な水分の含まれる空気に、漂う花の香りが深まった。
鬱蒼と茂る森の深きは、村人達が無闇に立ち入らない為に人の手が入らない。
荒らさないというお約束付きで、狩りついでに探検してみるのも悪くないかもしれない。
それでは狩りのはじまり、はじまり。
エスチーカ・アムグラド
●
空飛ぶアンコウ……!
不思議不思議!どうやって飛んでるんだろう!
でもでも……あやや、大きいのは1メートルも……?チーカ5人分……?
丸ごと持って帰るのはちょーっと難しそうだから……鈴蘭灯!これにしよう!
木々が生い茂って日差しを遮っている所があれば鈴蘭灯の明かりで見つけやすいかも?
それにそれに!暗い中で特に明るいのを見つけられたら他より凄い鈴蘭灯なんじゃないかなって!
もし先に一方的に発見出来たら、遠くからこーっそり一閃で先制攻撃!
できなかったら、できるだけ高いところを飛び回ろうかな……?
鈴蘭灯の明かり、何だか下や前がより強く照らされそう?
上を取ったらちょっとでも軽減できないかなって!【空中戦】
●
エスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)は戦慄した。
全長一メートルの鮟鱇。
「あやや、そんなに……? チーカ五人分……?」
本日のエスチーカの身長測定、十九コンマ五センチ。
「丸ごと持って帰るのはちょーっと難しそうだから……鈴蘭灯! それにしよう!」
鮟鱇の頭に灯るというそれならば、きっと持って帰れる筈だ。
気合を入れたエスチーカが村を発とうとした時、その小さな肩を一人の村人の指先が叩いた。
良い事を教えよう、と彼は言って、内緒話のように声を潜めた。
●
森に入って今しばし。
ふよんふわんと翅を羽撃かせるエスチーカを出迎えたのは、話通りの花の香りと七色の鰭。
ぷにぷにしてそうなまんまるボディにゆるい顔。
さっと木の陰に身を隠したエスチーカには気付くことなく通り過ぎる。
「わあ、空飛ぶアンコウ……!」
本当に飛んでいたと彼女は目を瞬く。
「不思議不思議! どうやって飛んでるんだろう!」
翅もないのにふしぎなことだ。
ちなみに何故浮けるのかは村人も知らないらしい。そういう生き物であるという認識だけされている。
「ん、よし! チーカがんばります!」
普通の人間サイズならともかく、フェアリーのエスチーカには体格差があるので、隠れながら進む事にした。
木の陰や茂みの向こうの暗がりで、より強く明るい光を放つ鈴蘭があったら、それを狙ってみようと思って。
だって他より凄い鈴蘭灯かもしれない!
「……あ、あれとか、かな」
こっそりこっそり。覗けば一際光を放つ鈴蘭が、ゆらんと茂みの奥に見え隠れ。
花飾りの揺れる鞘から音無く剣を抜き放ち、構える。
狙い澄ませ、目を細めて。
一閃。
それは飛び去る程の距離さえ無にする斬撃。
どれほど離れていようとも届く妖剣の掌。
ぽんっと切り離された鈴蘭灯が空を飛んで、叢の中に転がった。
鮟鱇は驚きと痛みで固まっているようで、動かない。
少し考えたエスチーカは、もう一刀、構えて──
きゅ、きゅっ。
分けてもらったフェアリー用の革縫糸で袋状に縫い合わせたのは、鮟鱇の胃袋の一部。
水でよく洗ってみると、少し弾力があるが割と強い、分厚いゴムのような感触だった。乳白色の綺麗な色をしている。
それを糸で縫って巾着のような袋を作るのが、発つ時に村人が教えてくれた『良い事』。
切り離されても暫くの間は持続するユーベルコードの効果で、中に物を収納する事が出来る袋を作れるのだ。
ひと狩りの間くらいは保つという話。
早速ふわりと花香の漂う鈴蘭灯に袋の口をぴとりと付けると、吸い込まれるように中に消えていった。
「これならチーカも立派なハンターに……!」
夢いっぱいお宝いっぱい。
たくさん集めて帰りましょうね。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD】
アンコウ…多様環境適応型アンコウ…
いや、頭では分かっているんだ。魔獣だから普通の魚類とは別物だって。しかし凄い光景だよね…
村の人から事前にアンコウ達の捌き方や扱いを聞いてから出発。後々に響かない程度に狩ってくるからね!
戦闘では【調律・墓標守の黒犬】を召喚、共に対処に当たろう
てーおー!美味しそう、食べて良い?ってきらっきらな目で言わない!今回は素材狩りだからね!?爪と牙でちゃんと仕留めるんだよ!
我ながら【動物と話す】力の無駄遣い感が半端ないよ…
オレ自身は雷の【属性攻撃】を纏わせた鞭の【2回攻撃】や【範囲攻撃】で仕留めに掛かろう
致命打にならないなら爪に切り替え
素材は二人分、集めようっと
●
▽鮟鱇
アンコウ科アンコウ目。
海水魚であり、そのほとんどは深海魚。
▽多様環境適応型鮟鱇
謎。
とりあえず、目の前のそれは、ぷかぷかと森を泳いでいる。
「……いや、頭では分かっているんだ」
ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は首を振った。
広義の鮟鱇と、この世界のそれは全くの別物である。
ただ単に形が鮟鱇に似ているからという理由だけで名前が付けられた可能性だって無きにしも非ず。
ふわんふわんと木々の隙間をすり抜ける桃色の鮟鱇を思わず目で追い、立ち竦む。
「しかし凄い光景だよね……ねえわんこ」
見上げたブラックドッグ(召喚済)の目付きが。何やら普段より。きらきらした子犬のようなそれだったので。
「……え? ちょっとわんこ?」
ヴォルフガング(飼い主)がやや引いた。
「ん? 『おいしそう! 食べていい?』って?」
「(しっぽぶんぶん)」
「だってそれあれでしょ? ぐわーって貪り食うんでしょ?」
「(ぶんぶんぶんぶん)」
「今回は素材狩りだからね、わかってる?」
「(ぴた)」
「爪と牙でちゃんと仕留めるんだよ! 当たり前だけど!」
「(しゅーん)」
耳までしょんぼり。
「……おにく後であげるから」
「(ぴこーん!)」
お耳が立った。
動物会話が出来るのが果たして良いのか悪いのか、何だか無駄遣いのような気もしてヴォルフガングは肩を落とした。
閑話休題。
深い深い森の中で、雷光が閃く。
鞭に打ち据えられ感電した鮟鱇がぱたりぱたりと叢に落ちて、長い杭状に変形させたガジェットの獣爪で傷があまり付かないように留めを刺す。
ブラックドッグの方は少々荒っぽくはなるが、鮟鱇の体格が良いので取れる革も極端に少ないという程でもないだろう。
「……このくらいかなあ」
ばちりと雷の這う鞭を仕舞い、獣爪を畳む。
狩り尽くさず、少な過ぎず、ほどほどに。
それも理解をした上で。
だいたい二人分を集めた辺りで、ヴォルフガングは満足げに息を吐いた。
大成功
🔵🔵🔵
皐月・灯
【花雫と同行】
昨日はドラゴン退治で、今日は鮟鱇捕りか……ヘンな仕事だぜ。
……あの鮟鱇、本当に空中にいんのかよ。
潜らなくて済むのは助かるが……木の間に鮟鱇が飛んでる風景ってすげーな。
オレは木々の並ぶ【地形の利用】で、空中に居る鮟鱇を捕まえてくぞ。
必要なら《轟ク雷眼》の出力を絞って麻痺させる。
花雫、お前は……ああ、いや……なんでもねー、下がってろ。
……そういやあいつ、熱帯魚のキマイラだっつってたな……。
鮟鱇はオレが捕まえるから、お前はその辺で素材集めてろ。
この辺にはギザギザ模様が入った野草が生えてる。
魚と一緒に煮込むと、ちょうどいい薬味になるとか聞いたぜ。
……さて。そんじゃ漁師の真似事といくか。
霄・花雫
【灯くんと】
昨日素材集めはしたし、今日はいっぱい鮟鱇狩りたいねぇ
ラ・カージュで調理して貰おうねー、灯くん
甘い物じゃないけど、まだ肌寒いからきっと美味しいよ
ひゃっ!?わ、わ、おっきい
…………うー……やっぱりちょっと怖い……
鮮魚コーナーとかもそうだけど、料理になる前の姿ってキマイラフューチャーじゃ見慣れないし、あたしから見ると魚ってほぼ仲間っていうか……
で、でも倒すよ!ちゃんと!
灯くんと食べる美味しいご飯のためだもん……っ!
う、……ありがと灯くん……
野草、……えっと、これかな……?
あ、あの、風の姫ねぇさまは灯くん手伝ってね……?
だってあたし誘ったし、せめて鮟鱇いっぱい来すぎないように誘導お願いっ
●
ざくりざくりと長く伸びた草を踏み倒しながら、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)が歩いていく。
「昨日はドラゴン退治で、今日は鮟鱇捕りか……ヘンな仕事だぜ」
「ねー。本当だね。いっぱい狩りたいねぇ、鮟鱇」
対する霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)は暢気にその後ろをついていきながら、きょろきょろと周りを見回す。灯が踏み倒した跡を辿る形になって、草に足がとられる事もない。
「ラ・カージュで調理して貰おうねー、灯くん。甘い物じゃないけど、まだ肌寒いからきっと美味しいよ」
「ふん……別に、食べねーこたねーけど」
そんな風に二人平和に歩いていたのが、ついさっきまでの事。
ほんの数分前までは和やかだったのだ。
とても。とても。
「ひゃっ!? わ、わ、おっきい……!」
擦れ違っては隣を過ぎる鮟鱇に花雫の足がぱたぱたとたたらを踏み、ショーベタの尾鰭がぶわりと広がる。
今は花雫が尻込みして、けれども負けてはならぬと思っているのか何とか踏み止まっている。その前に立っている灯はいつも通りの熱のない表情。
「……本当に空中にいんのかよ」
潜らなくて済むのは助かるけれど、木の間に鮟鱇が飛んでいる風景というのはなかなかになかなか。奇妙、珍妙、不可思議。並べ立てればそんなところか。緩い顔の所為で絵本の中にでも紛れ込んだ心地になる。
「…………うー……やっぱりちょっと怖い……」
「……」
「鮮魚コーナーとかもそうだけど、料理になる前の姿ってキマイラフューチャーじゃ見慣れないし、あたしから見ると魚ってほぼ仲間っていうか……」
「…………」
「で、でも倒すよ! ちゃんと! 灯くんと食べる美味しいご飯のためだもん……っ!」
「………………」
殆ど独り言状態で結論を出した花雫に、灯が夕陽と昊色の片異目を向ける。
そういえば並ぶ独り言を聞いて思い出したが、彼女は熱帯魚のキマイラだったか。
「花雫」
「ひゃい!」
噛んだ。
「お前は……ああ、いや……なんでもねー、下がってろ」
「でも、でも……」
「鮟鱇はオレが捕まえるから、お前はその辺で素材集めてろ。旨い飯食うんだろ」
「う、……ありがと灯くん……」
──ヴァナルカンド・デルタ、起動。魔術回路ブート、励起。
「この辺にはギザギザ模様が入った野草が生えてる。魚と一緒に煮込むと、ちょうどいい薬味になるとか聞いたぜ」
「そうなの? わかった、探してみる……!」
頷く花雫の前で、灯の靴に刻まれた身体軽量化術式が正常に作動する。
軽々、緑と雨上がりの風を飛び越えていく灯の背中。
「あ、風の姫ねぇさま! 灯くんを手伝って……!」
葉の匂いがする旋風が花雫の鰭を揺らす。
それは、姉が妹の髪を梳くように。
「誘導とか、鮟鱇いっぱい来すぎないように……! 灯くんが、危なくないように」
ふわ、ゆら、風は往く。
精霊姫と灯を見送ってから、花雫は彼が指差していた辺りを覗き込んだ。
しゃがみ込んで自生している葉を捲ったり、掻き分けたり。
「ギザギザの……野草。……えっと、これかな……?」
むしりむしり。
「こっちかも……?」
ぺりぺり。
「あっこれ綺麗!」
ぽきっ。
がさがさ。
ざっざっざっ。
──……
「アザレア・プロトコル3番──」
《轟ク雷眼》。
雷撃は焦がさぬよう手加減されて鮟鱇を貫き、その動きを麻痺させる。
何尾かを捕え、大漁旗を掲げる漁師のような貫禄で振り向いた灯の眼に飛び込んできたのは、葉っぱと蔓に塗れた花雫だった。頭や肩や鰭にまで緑が纏わり付いている。
「灯くん! 見てみてー!」
何を何処から見ればいいのか。
「あのねーこれ! 綺麗な透けてる葉っぱ」
「……」
「あとね、きのこと、木の実と、それからねー」
「…………」
「それからそれから! 灯くんが言ってたギザギザのって、これで合ってるかなぁ?」
もさもさと収穫物を広げる花雫に、漸く灯が一言告げた。
「……あとで全部見る」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ヘンリエッタ/f07026と
アンコウかァ。
どちらかというと食い物の印象だな。
おう、こいつらみたいに可愛くはないが、旨いぞ。
ま、それは今度の楽しみにして。行くとするか、相棒。
さてヘイゼル、貴様はどのあたりを狙う?
皮と提灯は任せろ。なるべく外身を傷つけないようにするなら、呪いの方が都合が良かろう。
軽く恐怖を与えて、【輝く災厄】で内側を食い尽くさせれば良い。
これだと中身は採集出来んが、皮だけは芸術的にそのまま取れるぞ。
代わり、骨だの肉だのは貴様に任せる……というかこれ、本当に骨か?
しかし、余すことなく使えるのは良いな。
……今度アンコウ鍋でもやるか。
ヘンリエッタ・モリアーティ
二ル(f01811)と
アンコウかァ。食べたこともねェし知らねえが……うめェの?
まァいいやァ!仕事、仕事ってな。ニル、このヘイゼル様に任せとけッッ!!
どのあたりを狙う、かァ
ニルが狙ったとこ以外の……俺様は中身にしてやっかねェ。
ぶちまけちゃいけねェのは――それなりに、得意だぜ
ロックブレイクよか、今日は手加減してレジスターでやった方が良さそーだ
【戦闘知識】で内臓一つ傷つけず捌いてやらァ、この俺様の美技をとくとご覧あれ!【劇場型犯罪】!
めちゃくちゃゼリーみてェだけど案外身はプリプリなのな……
全部使えるっつーのはいいことだ、ウン!
……鍋食いたくなってきたァ……
●
花の香りがする。
背中が擽ったくなるような、甘い匂いだ。
「アンコウかァ」
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)とヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)が同じ音を違う口で呟いた。
片方は自分の思い浮かべたものとの乖離に感慨を抱いていて、片方はその存在をそもそもあまり知らなかった。
「どちらかと言うと食べ物の印象だな」
「へェ。うめェの?」
「おう、こいつらみたいに可愛くはないが、旨いぞ」
緩い顔をした鮟鱇がふわんゆらんと揺蕩うのを見て、細い指先に引っ掛けたナックルダスターがくるんと回り、付いたナイフが鋭く木漏れ日を弾く。
「まァいいやァ! 仕事、仕事ってな」
つまるところ、もう暴れたくて仕方がないとの仰せである。
「では。行くとするか、相棒」
「このヘイゼル様に任せとけッッ!!」
方向を定めるニルズヘッグの慣れたような笑みに重なる、まるで悪人じみた笑顔は彼女──《彼》の性質を指す。『暴れたい俺様』ヘイゼル・モリアーティ。
叢を揺らす疾駆は殆ど同時に、少し先に立つ背の高い樹幹に着くまでの僅かな間は隣同士。
「さてヘイゼル、貴様はどのあたりを狙う?」
「ニルは?」
「私は……皮と提灯なら任せてもらおう」
「んじゃァ俺様はそれ以外だ」
「ああ。骨だの肉だのは頼んだぞ」
樹皮を掠るように二手に分かれ、それぞれに獲物を見定める。
ニルズヘッグは長身を屈めるように木々の隙間を走り抜けて、跳躍。ふよんと漂い油断した風の鮟鱇一尾を標的に定めて、黒棘めいた鱗を生やす自らの竜尾をその眼前に薙いだ。
『……!』
目を固く閉じてぴたりと止まった七色を擦ることもなく、ただ鈴蘭灯が竜尾の風に揺らされただけ。
──ずるり。
呪詛を喚ぶ忌子がその腕に這わせたのは、恨み辛みを塗り重ねて形にしたような怨念の死霊。
瞑った瞼が思わず開いて、恐怖に慄くつぶらな両の眼がそれを見た。
瞬間。
死霊の腕が伸ばされ、虹を搔き抱いて、それから風船の空気が抜けるように外皮だけがぱさりと落ちる。
「……よし。傷は付いていないな」
着地し、ぺろん、とその皮を掴み上げたニルズヘッグが頷く。
引き摺り込む災厄の腕は、中身だけをぺろりと食い去り芸術的なまでに綺麗に残していったのだ。これまた傷ひとつない鈴蘭灯が淡く光って、花の香を撒く。
彼のその視界の端で、ナイフの閃きが流れて行った。
息の根が止まる隙すらあるかどうか。
呼吸をしている合間に、一尾の鮟鱇は、剥ぎ取られた自らの皮を皿にして肉と内臓と骨とに分かたれる。
「俺様の美技をとくとご覧あれ、ってなァ!」
「初めて見る生き物をここまで……見事だな、ヘイゼル」
狩りの成果を片手に歩み寄るニルズヘッグに、自慢げなヘイゼルが鼻を鳴らす。
斬った感触はゼリーめいていたのだが、中身はなんともプリプリの魚肉。薄ピンク色した白身魚の切り身だ。表面はそれだが、内臓や骨近くは身の締まり方が鶏肉に似ているような気がする。
「何だこの肉……」
「これ、本当に骨か?」
虹の泡色を纏う透明な、推定:骨を摘み上げてニルズヘッグが唸る。
弾力がもはや蒟蒻のそれである。ぷにぷにぷるぷる。
謎だらけの物体でしかないが、無事に手に入れた素材を二人して纏めながら。
「これらが全て、余す所なく使えるとは」
「いいことだなァ、うん!」
「しかも肉は旨いらしいと評判だしな……今度アンコウ鍋でもやるか」
「鍋食いたくなってきたァ……」
呟くヘイゼルに、くすりとニルズヘッグが笑った。
「土産に貰って帰るとするか?」
ヘイゼル達の愛娘も珍しがるかもしれない。
ぱっと顔を上げた彼は、血を払ったナイフを握り直す。
「じゃ、土産用にもうひと狩だなァッ!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
■クロウ(f04599)
アドリブ歓迎
「みて
クロウ!綺麗な魚だ」
初めて見た鮟鱇は綺麗で可愛くて抱っこしてみたいくらい
あれがほしい
鈴蘭灯
僕の家に飾りたい
「君がふぉろーしてくれるなら。僕もがんばれる。狩りははじめてなんだ」
緊張も撫でられれば解れて
笑って返す
食べられたら嫌だと思ったけれどクロウがいれば安堵できる
クロウを見ながら小首を傾げ
僕の武器は歌だけだから――歌う唄う
今日は君守る歌姫になろう
「鈴蘭灯をとってくれるの?嬉しい」
お礼に君の為の「凱旋の歌」を歌おうか
刃がもっと鋭く速くなるように
きっといい靴ができる
靴は歩けない僕の夢
僕の分まで素敵な靴を
自信を持って歌う終幕は「氷楔の歌」
虹が凍って
綺麗でしょ?
杜鬼・クロウ
●
リル◆f10762と
「竜の餌減らす為か。摂理だなァ。鮟鱇狩りは流石に初だから気合い入れンぜ。
リル、サポートは任せろや(リルの前髪撫ぜり)
お前にトドメくれてやンよ。隙は俺が。
自信持って狙っていけ」
事前に剣の刃をよく研ぐ(切れ味up
黒外套に履き慣れた革靴と腰巾着
狩り自体初のリルの安全や周囲気遣う
鈴蘭灯を優先的に採取
最初は前衛
リルと連係
【トリニティ・エンハンス】使用
状態異常力重視
敵の攻撃は武器受け・カウンター
靴を新調する為ついでに皮膚を剥ぎ落とす
属性攻撃・2回攻撃で剣に風纏わせ鮟鱇を地面に叩きつける
動き封殺
「…ハ。やっぱすげェわ(歌に圧倒)
これはお前の歌で掴んだ戦利品な(鈴蘭灯の部分斬って渡し」
●
「竜の餌を減らす為か。摂理だなァ」
履き慣れた革靴を鳴らし、黒の外套に身を包んだ男が呟く。
「みて、クロウ! 綺麗な魚だ」
その隣でひらり、尾鰭揺らす人魚の嫋やかな指がそれを指す。
「かわいい。抱っこしてみたいくらい」
森の隙間を悠々と泳ぐ、七色。人魚と付喪神に気付いた魚は、鈴蘭灯を揺らしてぱたたたた、と泳いで行ってしまった。
「案外きっちり泳いでンのな。初の鮟鱇狩り、こりゃあ気合入れねェと」
「うん、僕もはじめてだ」
リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)の場合は、狩りそのものが初挑戦。
危険度の低い相手だからまだ安心だけれども。杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)がリルの前髪をそっと撫ぜる。
「リル、サポートは任せろや」
「……いいの?」
「お前にトドメくれてやンよ。隙は俺が」
撫でてくれる指先に、リルが抱いていた緊張もゆるゆると解けていく。
「ありがとう。君がふぉろーしてくれるなら。僕もがんばれる」
そうして笑顔が返るから、ぽんぽんと軽く頭を撫でて手が離れる。
「そいやリル、何か欲しいのあンのか?」
「んー、と。僕、あれがほしい」
ゆらんと揺れて花の香を散らす鈴蘭灯。部屋に飾りたいと言えば、クロウに否やは無い。
「あれな、おっけ」
「……取ってくれるの?」
首を傾げて見上げれば、そこには笑い頷く片異目。
「おう。だから自信持って狙っていけ」
村を出る前によく研いだ大剣を担ぎ、叢を踏み鳴らし駆ける広い背中。
それを見て送りながら、儚くも強く響く歌声が追い掛ける。彼の背を押す。
食べられてしまったら嫌だと思っていたけれど、それさえ、クロウの背中が安堵と共に拭い去ってくれた。
彼が作りたいものはもう知っている。新しい靴が欲しいのだと。
(「──きっと、良い靴ができるよ」)
脚を持たず歩く事が叶わないリルにとって、それは夢のような。希望のような。
だから自分の分まで素敵な靴をと、願うのだ。
ふわり。尾鰭を雨上がりの空に踊らせて、歌う人魚がクロウの背に続いていく。
歌声が斬れ味すらも増したようだった。
常より幾らか軽快に、身の丈よりある刃渡りの剣を振り払うクロウには、リルの歌がはっきりと届いている。
炎と、水と、風と。纏わす剣も随分と上機嫌に映る。
一刀で鈴蘭灯を斬り落とし、二刀で鰓を貫き、纏う風で動きを封じて叩き落とす。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
それなりの大きさの個体がそれだけあれば、素材としては充分か。
「リル!」
「──うん」
歌が変調する。
鼓舞の鐘打ち鳴らす絢爛の凱歌から、氷華凍て付く楔の歌へと。
薄花桜の眼が確と捉える七色。森の虹。
霜の降りるように、逆さ氷柱が蛇行に奔る先は、身動きを封じられた魚たち。
皮を傷付けぬよう、それらを丁寧に丁寧に、一柱ずつ氷に封じて。
螺鈿色の尾鰭を揺らした半月闘魚の人魚は笑う。
「綺麗でしょ? クロウ」
「……ハ。やっぱすげェわ」
圧倒されて微かの間動きを止めたクロウが、瞬きの後に膝を屈める。
拾い上げるは淡い灯。鈴蘭の燈。
「これは、お前の歌で掴んだ戦利品な」
リルの掌にころんとそれを転がした。
揺れれば振り撒く花の香。
それは何だか、桜の匂いがするようで──
「ありがとう。君のおかげだ」
大切そうに鈴蘭灯を両手で包んで、リルは柔く微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『宝玉蝶』
|
POW : 育つ宝石
戦闘中に食べた【清らかな水】の量と質に応じて【宝石の輝きが増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 極彩色の鱗粉
自身が装備する【煌びやかな宝石の粒】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 秘宝の光
【眩い宝石の輝き】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
イラスト:たま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「宇冠・由」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
狩り尽くさないくらいに、猟兵達は手を緩めて。
程よいところで七色の鮟鱇を森の奥へと追い払う。
そうして逃げていったその先に、それは居る。
滝の音がした。
昼下がりの陽光に反射するのは滝壺と泉。
鬱蒼と茂っていた森の木々は其処にだけ隙間を作り、珍しく続く晴れ間が機嫌よく葉を彩る。
水音に紛れて、もうひとつ。
歌のような音が聞こえる。
或いは、鈴にも似た。
──りん、りぃん。
柔くも確かなそれは鳴き声ではない。
羽搏きだ。
蝶特有の揺らぎを持った軌跡の侭、陽を吸って乱反射する色とりどりの宝玉の翅が、泉の其処此処に舞い踊っている。
掌ほどの小柄なものから、大人が両腕を広げた以上の大物までも。
猟兵の気配と見ればそれらは騒めく。
表情も唸り声もないが、確かな敵意を向けて。
リル・ルリ
■クロウ(f04599)
アドリブ歓迎
滝も泉も清らで心地よさそう
それ以上に目を引くのは
「宝石の蝶々!クロウ
僕、はじめてみた」
鈴蘭灯を大切に抱えつつ煌びやかな蝶に感激
「ねぇ。次はあれがいい。クロウ、僕は青か白の――蝶々の翅がほしい」
我儘をもう1つきいてくれる?
思い切り手を伸ばして彼の手をとり八咫烏に乗る
鳥に乗るのは初めてだ
ありがとうを込めて唄う歌
君の為に「凱旋の歌」を
舞う蝶々の動きをとめる
【歌唱】活かして歌うのは「魅惑の歌」
掌に収まる位の宝石なら僕でもとれるかな
君が大物を捕らえるのも楽しみだ
綺麗な翅がとれたら少し泉で遊んでもいい?
心地よさそうなのだもの
クロウは泳げる?
じゃあ夏になったら水遊びしよう
杜鬼・クロウ
●八咫烏の名付け親に…!
リル◆f10762と
蝶見てはしゃぐ人魚様の後を追うぜ
見た目は綺麗だが不用意に近づくなよ?
ぁア、乗りかかった舟だ
ったく…何遠慮してンだか
そういうのは我儘って言わねェんだよ
最後までサポートしてヤっから(獲物定め
乗れ、リル!(手差し伸べ【杜の使い魔】騎乗
振り落とされンなよ
リルの歌に力が漲る
本当お前ってヤツはよ…
宝石の粒は見切りで回避
属性攻撃で剣に風纏わせ翅を極力傷つけず仕留める
青の翅を採るぜ
小さい白の蝶発見後は同様に
リルに採らせる
俺は大物の蝶を捕獲すっかな
色は気にしねェ
やっぱ水があると安心するか
少しなら構わねェだろ(足だけ泉に入れ泳ぐ様眺め
俺も泳げるぜ
夏、気持ちいンだよなァ
●
水の落ちる音がする。
清らな泉が心地よさそうで、ふわふわとした尾鰭が心待ちに揺れるのだけど。
「宝石の蝶々! 僕、はじめてみた」
大切そうに胸元に鈴蘭灯抱えたリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)が指差す宝玉の翅。はしゃぐその声に、後ろを歩く杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)がふっと笑う。
「見た目は綺麗だが、不用意に近づくなよ?」
「わかってる。でも、きれいだなあ」
好奇心のままきょろきょろと辺りを見渡して、まるで虹のようにそこら中に溢れる煌きを見て。
「あっ」
「どした?」
示される指先に、クロウの顔が寄って辿る。
その先には雲と青空。大人の腕ほど、網膜に焼け付くような蒼と、掌ほどの脳裡まで洗い流すような乳白が、ひらりと寄り添い飛んでいる。
「ねぇ。次はあれがいい。クロウ、僕は青か白の──蝶々の翅がほしい」
我儘だろうかと薄桜の眼が言う。
「そういうのは我儘って言わねェんだよ。最後までサポートしてヤっから」
何を遠慮しているのやら、と一息吐いて、夕赤と青浅葱の片異目が獲物を見定める。空と雲の二色の傍へと、一際大きな羽を持つ夕陽色が交わった。まるで両親と子どものよう。その青空の番と子が飛んでいくのは泉の奧、滝の飛沫が作る虹を潜って遥か。
「へえ、あの赤。イイな」
「大物発見、だね?」
目を見合わせて、ふたり。
「青は俺が手伝ってやる。白はちびっこいから、……自分で採ってみるか?」
「うん! がんばるよ」
答えを聞けば頷きを返して、深き森の陰より其れを招く。三つ足八咫の烏──深咫の羽搏きを。
低く叢を掠って飛ぶ烏の首元へ軽々飛び乗ったクロウが手を伸ばす。
「乗れ、リル!」
その声に弾かれるように伸ばした片腕は思うより遠くの彼の手を確と掴んで、引き寄せられて烏の背。
二人分の重さを乗せて、悠にクロウの倍はある大咫が空へと風に乗っては泉に影を落とす。
鳥に乗るのも初めてで──今日という日は、初めてをたくさん叶えてもらった。だから。
「──……」
ありがとうの気持ちは歌に乗る。空へ昇る。そうして、クロウの周りにふわり漂う。
「……本当、お前ってヤツはよ」
目を伏せ笑うその隣、人魚の歌姫は笑うばかり。
ならばその歌に応えねばならない。報いらねば、ならない。
負った大剣に纏わせるは風、揺るぎなき透いた翠。漂う蝶の煌きを眼下に、その風はリルの歌をも運んでいく。
変調は瞬きの間。君の心昂らせる音はいつしか、澄んだ透徹の音へと。
揺らぐ蝶の翅から一筋に放たれる宝玉の弾を風が弾き、誘惑の調べがその躰を搦め捕っていく。ゆるゆると縊るように、けれど離さぬ嫋やかな腕のように。
羽搏きのひとつも零せないのを見て取ってから、烏が旋回ののち急降下する。目掛ける青空と雲はそれを見てももはや触覚すら動かせない。
夕陽は微かに身動いで、宝玉の鱗粉をリルへと飛ばすが、クロウの操る風が空へと巻き上げていく。
「姫に傷を作るわけにゃいかないんでね」
狙い澄ますは翅の繋ぎ目。夕陽の翅を大剣が落とし、青空の翅を風が外す。
そうして掌の雲は、今ひとたび転調するリルの歌が呼んだ氷の矢で両翅を弾き落とされた。
ぽたん、ぽとん。動きを止めた三色宝玉が泉へと沈んで、緊張の解けたリルの溜息が水面を撫でる。
「……ふう。やった、できた」
「おう、よくやったな」
「じゃあ、取ってくるね!」
──ぱしゃん。
人魚は返事を待たずに泉へ降りた。
「あっ、オイ……ま、いいかァ」
やっぱ水があると安心するのかね、なんて考えてみながら。
緩く旋回して止まる深咫の影の下、見下ろす半月闘魚の尾鰭がゆらゆらり。
一番の大物、夕陽色の宝玉を抱えて水面に顔を出すリルの笑顔は、今日の一等煌く宝石のよう。
何だか自分も入りたくなって。八咫の烏を泉へ降り立たせたクロウは、革靴を烏の背に放って足先を浸ける。春の水はまだひやりとするが、運動の後にはちょうどいい。
「ねえ、クロウは泳げる?」
その手に宝玉を渡しながら、リルが首を傾げた。
「おう。俺も泳げるぜ。夏、気持ちいンだよなァ」
「じゃあ、じゃあ、夏になったら水遊びしよう」
「あァ」
「きっとだよ」
「勿論」
拾い上げて掬い上げた空色と雲色。きっとそんな、夏空の下。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
氷雫森・レイン
綺麗だけど…こんなに居ると流石に少し目に痛いかしら
あとこういう見た目の生き物に敵意向けられるのって何故か人間にそうされるより哀しいわ
けれどオブリビオンと猟兵ではどうしたって相容れない
滅ぼすまで行かずとも…やらなくちゃいけないのよね
他に猟兵が居たら一度退くように声をかけて、氷雨を放つわ
ある程度の【範囲攻撃】は出来る
ちまちまやっていたら面倒よ
これを避けた奴は個別に狩るなり今回は見逃すなりすればいいし、落ちたり手傷を負ってふらふらしてるのは皆好きに捕まえたらいい
争奪戦にならないだけは居るなら私に必要な分はこれでも採れる筈
自然を巻き込み過ぎない為にも攻撃は数人でスマートにしたいのよ
緋翠・華乃音
珍しい蝶が生息してると聞いて来たんだが……
確かにこの森に満ちる神秘なら、宝石の蝶だろうが何だろうが居ても不思議じゃないな。
さて……件の蝶は猟兵の気配を感じ取れるらしいから、気配は消さずに樹の上にでも腰掛けて風景を眺めつつ、向こうからやって来るのをゆっくり待とうか。
……流石に蝶相手に本気を出して狙撃銃を向ける様な真似はしたくないな。
だったら俺も蝶を呼ぼう。
煌びやかさでは劣るものの、星空みたいな瑠璃も綺麗だろう? だから少し戯れてはくれないか。
――まあ、最期には瑠璃の焔に灼かれて貰うが。
仮にそれで息の根が止まらないなら、暗殺者の様な身のこなしで"夜蝶牙"を一閃。
――じゃあな。生きた宝石、幻の蝶よ。
エスチーカ・アムグラド
●
わ……すっごい
きらきらしてて、眩しいくらい……
こんなに綺麗だったらチーカでも素敵なものが作れるかも!
それに、えへへ、帰ったら『良い事』を教えてくれた村人さんにお礼をしないと!
この、アンコウの素材で作った巾着袋にたーっぷり詰め込んで持って帰らなくちゃ!
チーカの翅、きらきらではないけど飛ぶ事なら負けないんだから!【空中戦】
攻撃は風の刃でスパッ!っと!【属性攻撃】
でもでも、倒し過ぎちゃわないように何匹か誘導してからの方が良いかな?【おびき寄せ】
あ、この蝶もすっごく大きいのが居る……
小さいのが沢山の時はもちろんだけれど、チーカが大きいのと戦うなら一匹が相手でも常に全力で戦わないとかも!【範囲攻撃】
●
樹上の枝に腰掛けて、一人。
緋翠・華乃音(Lost prelude.・f03169)は、話に聞いた珍しい蝶を目に掛けようとこの森へやって来ていた。
神秘に満ち満ちたこの森ならば、宝石の蝶だろうが何だろうが、居たとしておかしくもない。
それに普段からそう多くの人が立ち入らない場所だ。雨上がりの空気に撫でられる森の風景を眺めるのも悪くはない。
「……あら。あなた、狩りに行かないの」
幹を挟んだ向こう側の梢に、ふわりと降り立つ氷色のフェアリー。
氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)がふとした疑問を口にすれば、華乃音はぐるりと視線を巡らせる。泉、滝の飛沫、嘗て水が削った岩壁、鬱蒼と折り重なる木の葉。
「向こうから来てくれるだろうから、待ってみようかとね」
「そう。……気配を消していないのは、敵意を向けられたいからかしら」
「侵入者なら致し方ない事だ。君は、それが気になる?」
「そうね、少し……哀しくなるわ。人間にそうされるよりも、余程」
冷たい色の瞳が地表近くを見下ろした。蝶はあまり高いところは飛ばないようだ。
どうしたって相容れない彼らと自分と。
滅ぼす訳ではないことに多少の安堵はあるけれど、争わない訳にはいかなかった。
「……やらなくちゃいけないのよね」
呟く声には温度は無い。
きらきら、きらきら。
泉の向こうからやってきたのは、煌く宝石の蝶。
「わ……すっごい、きらきらしてて、眩しいくらい……」
陽光に乱反射する鉱石の翅にほわんと見惚れたエスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)が息を吐く。
「こんなに綺麗だったら、チーカでも素敵なものが作れるかも!」
すらりと抜いた剣を片手に、腰に下げた魔法の巾着を揺らしてエスチーカは飛んでいく。
蝶はひらひらと姿を現し、三方から囲むように動いてきた。正面に一、右に三、左には二。
それならば一旦退くように見せかけて、一所に集めてしまおうか。
「チーカの翅、きらきらではないけど飛ぶ事なら負けないんだから!」
ぴょん、と跳ぶような軌道。猫をじゃらすような軌跡描いて妖精が木々の隙間を往けば、蝶がふわんゆらんとついてくる。時折飛んでくる宝玉の鱗粉を剣で弾きながら、泉から遠ざければ自己強化の術は潰える筈だとも考える。
「んん、すっごく大きいのがいる……」
羽搏きでエスチーカを跳ね飛ばせそうなそれは、群の後方に陣取っている。青緑の中に金色の星煌を宿す、湖面と月のような色。
気をつけなきゃ、とごくり唾を飲み込んで、風の刃纏わす剣撃を一振り、二振り。
きん、と甲高い音が三つ程して、片翅を落とされた小柄な蝶が二匹叢に落ちる。
次の動きを測ろうと視界に蝶の群を収めたところで、群の後続に気付いたエスチーカが目を見開く。
瑠璃に銀の星を抱く蝶。
けれどすぐに、それが彼らの仲間ではないと知る。瑠璃蝶は炎を纏って揺れていたから。
背面から近寄り、戯れるように群の真中へ飛び込んだ瑠璃色がひらりと廻る。夜色のレースが翻るように焔が棚引き、彼らを灼く。
「少し、退いていて」
冴えた声が降った。
次いで注ぐは氷の雨が矢の如く。
咄嗟に飛び退くエスチーカを避けて、それは蝶の触角を折り、翅の継ぎ目を解いて身体を割る。
はらはら、ぱらぱら。
氷と瑠璃の焔と宝玉と。
陽光に照らされて降り注ぐその景色は、褒美と祝福のヴェールのようで。
「わぁ……!」
思わず手を伸ばしたエスチーカの掌に、戦利品。君色をした桃の結晶が零れ落ちる。
何でもない事のように上空から舞い降りた氷のフェアリー、レインとは随分と対照的だと。瑠璃焔の蝶を指先で遊ばせる華乃音が枝上から、二人を巻き込まないよう少し離れた場所へと飛び降りた。
「これで、あの村人さんにお礼が出来るや!」
「……お礼って?」
「えへへ〜これ! この巾着はねー、こうすると、えいやっ!」
腰の剣鞘のお隣に提げた乳白色の巾着を外し、その口を宝玉にぴとりと付ければ、すうっと吸い込まれてその翅は消える。
「あら。便利なものがあるのね」
「作り方を教えてもらったの! たーっぷり素材を詰め込んで、持って帰るんだ〜」
きっと喜んでくれるよね、とエスチーカが言えば、そうね、と変わらぬ温度のない声でレインが応える。
(「──じゃあな。生きた宝石、幻の蝶よ」)
二人の会話を背に、踵を返す華乃音の足音を聞いてエスチーカが振り返る。
「あ、待って待って! はい、これ!」
ぱたぱたと飛んでいく羽の音。
差し出されたのは、小さな彼女の腕いっぱいの宝玉。青緑の湖面に金月の煌き、その欠片のひとつ。
それから──みんなで分けようと笑う、妖精の笑顔が、もうひとつ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霄・花雫
【灯くんと】
うっわぁ、きれー……
あ、そっか、これがメイン素材ってコトは、あんまり傷付けちゃまずいよねぇ
…………へっ!?灯くんに!?
あ、あー、なるほどそういうコト
風の姫ねぇさま、良い?
(かわいい子、おまえがわたくしたちを貸してあげたいほどの子?)
……うんっ、灯くんだからね!
密やかに交わされる会話、姫ねぇさまの声は灯くんには聞こえないもんね
良いよー、灯くんに姫ねぇさまの力貸したげる!
風で灯くんを軽く吹っ飛ばす程度にUCのコピーを
鮮やかな色とりどりの光や笑いさざめく声が今だけきっと聞こえるはずだ
あたしの精霊たちの世界のお裾分け
灯くんの目みたいな色が欲しいなあ
【誘惑】で引き付けて姫ねぇさまにお任せ!
皐月・灯
【花雫と同行】
へえ……綺麗なもんだな。
見る角度によって輝きが違う色に変わるのか……宝玉蝶って名前がつくはずだ。
……よし、花雫。オレに攻撃しろ。
お前の風を借りるためだ。オレのアザレア・プロトコルじゃ、あの蝶は粉々になる。
《模倣ル幻石》で花雫から風の力を借りる。
その風で宝玉蝶を地面に落として無力化するぞ。
後は、壊さねー程度に加減した最低限の打撃で意識を断つ。
他のヤツが治療に勤しみだしたら丁度いい。
勝手に弱ってくれるんだからな。
――しかし、オレも精霊の力は借りてるが……。
あいつには、こんな風に世界が見えてんのか。
探し物を続けるぜ。……なるべく、透き通った赤がいい。
そんなヤツがいねーか、探そう。
●
「うっわぁ、きれー……」
霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)がうっとりと言う。
「へえ……綺麗なもんだな。見る角度によって輝きが違う色に変わるのか……宝玉蝶って名前が付くはずだ」
皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)は頷きながらも、冷静にその揺らめきを観測する。
泉の上、樹々の隙間。まだまだ蝶の数は多い。
「……よし、花雫。オレに攻撃しろ」
「へっ!?灯くんに!?」
「勘違いすんなよ、風の力を借りる為だ。オレのアザレア・プロトコルじゃ、あの蝶は粉々になるからな」
「あ、あぁ、そーいうこと……びっくりしたぁ。そうだよねえ、あんまり傷付けたらよくないもんね」
胸を撫で下ろす花雫が瞼を閉じて、いつものように彼女を呼ぶ。
──風の姫ねぇさま。
「姫ねぇさま、いい?」
《かわいい子、おまえがわたくしたちを貸してあげたいほどの子?》
「うんっ! 灯くんだからね!」
当の灯には朗らかに話す花雫の声しか聞こえない。
けれども其処に誰かが『いる』のはわかっている。他でもない彼女が、そう言うのだから。
「灯くーん! 姫ねぇさまがいいって!」
「おう」
話はついたらしい。
姿勢整えた灯は蝶に向き直り、花雫がその後ろに立つ。
「姫ねぇさま、そーっと、そっーとね!」
そんな不安な声が聞こえなくもないが。
そこへ突風が塊となって、身構える灯の背を吹き飛ばした。
ユーベルコード、アザレア・プロトコル5番──《模倣ル幻石》。
防御したユーベルコードを一度だけ借りるその力が、握り締めた拳に擬似再現されて宿る。
御誂え向きに、吹っ飛ばされた方向は蝶の群の直上近く。
選り取り見取りのそれに目線を向け、目当ての色を探り出す。
変幻の煌きから、燃え立つような透き通る赤を。
「……そこだッ!」
拳に宿る風が逆巻き、蝶へと降り注ぐ。
笑い声が聴こえる。
陽光とはまた異なる光がふわふわと森を漂う。
(「あいつには、こんな風に世界が見えてんのか」)
から、からん、りぃん。
鈴音に似た羽搏きはばらばらに散って、翅がころころと叢に散らばる。
傷はあまり付いていない筈だが、少し広範囲に拡がり過ぎたかもしれない。
とん、と地へ降りてきた灯に駆け寄る花雫へと、ちらり気まずげな視線だけ。
「花雫。やり過ぎた。……悪い」
「ううん、だいじょーぶ! 宝探しみたいだもん!」
もうちょっと遊べるね、なんて、灯の瞳と同じ色をこっそり探したい彼女が嬉しそうに言うので。
そんなもんか、と素直に納得してしまう灯であったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD】
【調律・墓標守の黒犬】召喚を継続
歴史を紐解けば宝石の煌めきは争いの元でもあるが、今回は争いそのものの様だ
行くよ、わんこ。彼らの羽ばたきが嵐を起こす前にね
わんこに【騎乗】し【戦闘知識】も活用しながら囲まれない様に留意しつつ確実に仕留めていこう
氷の【属性攻撃】を上乗せした鞭の【範囲攻撃】【2回攻撃】で強そうな個体から落としていく
わんこは今回はオレを乗せての移動に集中して貰おうかな
え?働かないとお肉が貰えなくなる? どんなブラック企業ですかオレは…
ちゃんとあげるから!終わったらあげるから!えぇ、今じゃないのかーって顔でやる気ゲージ落とさないで!ストップ安させないで!?戦闘!中!!
●
宝石あるところに争いあり。
何処の世界でもさして変わらず、煌きの誘惑とは得てしてそういう存在だ。
けれど今回は少しだけ様子が違う。宝石が、争いそのもの。
ならばやる事はひとつだ。
「行くよ、わんこ。彼らの羽ばたきが嵐を起こす前にね」
ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)が傍らの黒犬を撫でれば、彼の瞳がきりりと前を向く。
邪なる鎧を纏う黒犬の背に飛び乗って跨ると、その獣爪が叢を掻いて軽快に跳んでみせる。
ふわん、ゆらん。視界を横切る山吹色の宝玉の煌き、横っ腹に突っ込んでいけば、頭上を氷を纏った鞭が撓って風を切った。
片翅は凍りつき、片翅は胴体から離れてかしゃんと落ちる。それを踏まないように越えていきながら、俊敏なブラックドッグは蝶の軌道を読んで囲まれないよう駆け巡る。
「やる気だね。よしよし」
「(耳ぴーん!)」
ことん。露を零す若草色が落ちる。
「……え? 働かないとお肉が貰えなくなる?」
「(こくこくぴーん!)」
からん。朝陽色の薄茜が落ちる。
「そりゃ働かざるもの食うべからずだけどさ……あげるって言ったんだからちゃんとあげるよ。どんなブラック企業ですかオレは……」
「(首をふるふる)」
ころん。星を孕む深縹が落ちる。
「ちゃんとあげるから! 終わったらあげるから!」
「(耳ぺたーん)」
すかっ。森の深きの紫水晶色には、鞭が届かなかった。
「えぇ、今じゃないのかーって顔でやる気ゲージストップ安させないで!? 今! 戦闘! 中!!」
「(しゅしゅーん)」
減速。
「こらてーおー!! テオくーん、テオさーん!!」
「(耳ぺたんしてふさぎー)」
「……って囲まれるじゃん! 走ってほら走って!」
そんな黒狼と黒犬のどたばたな一幕が、泉の淵で見られたとか、違うとか。
大成功
🔵🔵🔵
マリアドール・シュシュ
●
マルコ◆f04649と
「幻の蝶、捕まえに行きましょう!ね、ね?
マルコがいてくれた方がきっと沢山捕まえられるのよ!(楽し気に」
宝石蝶を捕まえその宝石を使い、今してるペンダントと一緒に使える首飾りを作りたい
マルコと森の奥へ
「見て、マルコ!とっても綺麗な蝶なの!(こっちよ、と手招き)
本当に宝石で出来ているのだわ(自分と同じ宝石で少し親近感)
…あら、マルコが前へ?」
触ろうと手を伸ばすも手を引く
鈴の音の羽音に眸を細め竪琴構える
支援+後衛
音色にマヒ攻撃を付加し楽器演奏
高速詠唱で【透白色の奏】使用
マルコが撃ち洩らした蝶を確実に当てる
高速回復を上回る攻撃を一気に
マルコが採った宝石を大事そうに抱えて礼を言う
マルコ・トリガー
●
マリア(f03102)と
幻の蝶?何それ
まあ暇だったし、そんなに言うなら一緒に行ってあげるよ
宝石に特に興味はないけど、マリアってやりたい事があると無茶するし、案外頑固なところがあるから……
ほら、もう不用意に魔獣に近づいてる。危なっかしいな
今日はボクが前衛を務めるよ
マリアは後ろからサポートよろしくね
フーン、この蝶って宝石の粒を念力でバラバラに操作できるんだ
ボクの【錬成カミヤドリ】もバラバラに銃を操作できるんだ
ボクが撃ち落とすのが早いか、蝶の攻撃が早いか、試してみようか
【2回攻撃】【フェイント】も織り交ぜて射撃しよう
宝石は後で首飾りにするんだよね
翅の部分はなるべく傷つけないように倒せればいいね
●
──幻の蝶ですって!
その話を聞いて声のトーンを上げたのは、マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)だった。
「捕まえに行きましょう! ね、ね?」
「……幻? 何それ」
マルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)がぴくりと僅かに片眉を上げると、にっこりと笑ったマリアドールが目の前に居た。
「とっても素敵なんですって。マルコがいてくれた方がきっと沢山捕まえられるのよ!」
「まあ、暇だったし……そんなに言うなら一緒に行ってあげるよ」
そんなこんなで二人、森の深きを潜り抜けてその奥まで。
「わぁ……!」
きらきら、ゆらゆら。
蝶特有のゆらぎを持った羽搏きが、陽光を乱反射しながら其処此処で揺れている。
紅玉、翡翠、菫青石。
そんな宝石の名前と似ているようで、何れもが違う。
もっと透いた、もっと澄んだ、不思議な煌き。
「見て、マルコ! とっても綺麗な蝶なの!」
クリスタリアンの己との親近感もあったのだろう、マリアドールが叢を踏み越え、蝶が多く集っている泉へと歩み寄る。
「本当に、宝石で出来ているのだわ。マリアの身体は透けないけど、ふふ、こういう子達もいるのね」
「あ、……うーん」
ほらやっぱり。
マルコが後ろでそう言いたげな顔をしても、マリアドールからは見えないのだけど。
彼女はやりたい事があると一直線で、無茶をする。それに、案外頑固だ。柔らかく言えば芯がぶれないのだが、頑固と敢えてマルコは言う。
不用意に蝶へ近付いていくのを溜息と共に追い越して、仕方ないと言いたげな仕草で制する。
「今日はボクが前に出るよ。マリアは後ろからサポートよろしくね」
「あら。マルコが前に?」
きょとんとしたあとに、それでも素直に頷いたマリアドールに内心胸を撫で下ろす。
ちょうどその時に、きらりと視界の隅で光が溢れた。
ぽろぽろ、ころり。
それは宝玉蝶の鱗粉、光の礫。
四方八方へ散ったあと一斉に二人目掛けて加速するそれは、蝶がその意思で自在に操るものだ。
「フーン。僕も出来るんだよね、似たような事」
ただし錬成するのは己の形であって己でないもの。
マルコの本体は古い短銃。骨董品の隅に置かれたそれに宿った、付喪神。
かたり、かたり、生まれ出ずるそれを蝶の群囲うように滞空させ、光の礫を撃ち落としていく。
「それじゃあ、マリアも。がんばるわね」
鈴の音の羽搏きに眸を細め、竪琴を構えたマリアドールが歌を奏でる。
歌う晶の音の葉は癒す事もある。攻め手になる事も、ある。此度は後者だ。
その音が蝶の羽搏きを緩やかに縛り、動きの鈍ったところをマルコの銃が端から撃ち抜く。
(「確か、首飾りを作りたいんだったよな」)
そんなことを言っていた気がする。
今している首飾りに似合うものが欲しいのだと。
宝石に興味はない彼でも、それならばと狙い撃つのは翅の継目や身体そのもの。なるべく傷を付けないようにと。
マルコが撃ち損なった蝶は、マリアドールの歌が攫う。
ぱきん、からん、りぃん。
鈴の音止んでぱらぱらと翅が散らばる叢に、蜜華がしゃがみ込んだ。
「綺麗ね。……ほら、マルコ」
手招きされて寄った彼の目前に、すいと出された石は薄水。
「あなたの髪色にそっくりよ」
「……本当だ」
宝石に興味はない。ないのだけれど。
まあ、彼女が差し出すものならば──然程悪くもないのかも。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ヘンリエッタ/f07026と
こいつらが本命か。
なるほど美しい蝶だ。幻を冠するだけはある。
この輝きなら、女性は喜ぶだろうなァ。
……妹のためにも、本気で行こうか。
折角の光り物、傷はつけたくはないが、呪詛で濁ったらと思うとなァ。
とまれ飛んでいる相手ではやりづらかろう。
私が【嘆きの爪】で片っ端から叩き落とす。
ヘイゼル、解体を頼めるか?
ふはは、貴様もそう思うか!世界は広くて美しいよなァ!
死んでも輝きが失われんとは、アンコウに負けず劣らず、不思議な……。
私は紫と、青いのを中心にもらっていこうかな。
琥珀色のを見つけたら、ヘイゼルにやろう。
きっと貴様の娘が喜ぶぞ。
可愛くて綺麗。そいつはまァ、最強だな!
ヘンリエッタ・モリアーティ
ニル/f01811と
うわぁ、すげェ「綺麗」だなニル!
世界ってェのは、こんな綺麗なのもあンのか、すげェなァ!
お、妹に持って帰ってやンの?じゃあ俺様も手伝お!きしし
確かに濁るのはもったいねェ
俺様が綺麗に解体してやらァよ
叩き落とすなら【悪徳教授の名誉助手】でキャッチだ
そのままワトソンに指示して、丁寧に解体してみっか
……ほんとに綺麗だ、すげぇ!セカイって面白いなッ!
屋敷の本も見るモン決められてっから、こーいうの初めてだ
お、紫と青?
……じゃー俺様はニルの赤探してやるぜ!
ヘンリーには金と、マダムには銀と、ルビーには紅とっ
そか!気にいっかなァ、俺たちのおチビさんは可愛いから
可愛くて綺麗って……相当やべェ!
●
「うわぁ、すげェ「綺麗」だなニル! 世界ってェのは、こんな綺麗なのもあンのか、すげェなァ!」
ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)──ヘイゼル・モリアーティが思いの外はしゃぐので。
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)が隣で笑う。
「なるほど、美しい蝶だ。幻を冠するだけはある。この輝きなら、女性は喜ぶだろうなァ」
否、女性『も』か。
隣で喜んでいるヘイゼルという男もいる。綺麗なものを愛でるというのは、性別年齢問わず多かれ少なかれあるものだ。
「それでは俺は、……妹のためにも、本気で行こうか」
「お、妹に持って帰ってやンの? じゃあ俺様も手伝お! きしし」
楽しげなヘイゼルがナイフを閃かせれば、ニルズヘッグが代わりに思案する。
傷はあまり付けたくないし、得手の呪詛で輝きが濁るのではという心配もあった。
「私が片っ端から叩き落とす。ヘイゼル、解体を頼めるか?」
「おう!」
返事を聞けば頷き返す。断るなど無いとわかっていても、確認をするのは性でもあり、信頼の裏打ちでもある。
ニルズヘッグが呼び出す嘆きの爪──溶けぬ氷の蛇が飛ぶ。食らいつき、尾で叩き落とす。
それを、蝶の影から這い出した触手『ワトソン』が片っ端から搦め捕って。
「あー、解体して?」
力任せはだめだろうと踏んだヘイゼルがそう言えば、忠実の僕は触手に籠る力を上手く調節して翅を外し、大人の両腕程の蝶さえ手頃な大きさにまで分解していく。
その断面は木漏れ日を吸い込んで、天気雨の降り注ぐように煌いた。
「……ほんとに綺麗だ、すげぇ! セカイって面白いなッ!」
「ふはは、貴様もそう思うか! 世界は広くて美しいよなァ!」
屋敷の中でも読む本に制限があるヘイゼルには、こんなに美しいもので溢れた世界は初めてなのだろう。上機嫌に笑うニルズヘッグには関与できないところではあるけれど、その一端を見せる事が出来たのならきっと悪い事ではないはずだ。
──それにしても。
「死んでも輝きが失われんとは、アンコウに負けず劣らず、不思議な……」
はらはらと散り落ち手頃なサイズに解体された蝶の翅を、拾い上げてぽつり。
知らない事というのは、世界にはこんなにも溢れているものか。
「私は、紫と青いのを貰っていこうかな」
「……じゃー俺様は、……あッほら! ニルの赤! やるよ!」
ぐいぐい押し付ける、蕩けるような色濃い赤。
その指先は飽きることなく宝物を探す。
「ヘンリーには金と、マダムには銀と、ルビーには紅とっ」
「……お、琥珀の色。貴様の娘が喜ぶぞ」
「そか!気にいっかなァ、俺たちのおチビさんは可愛いからなァ。……可愛くて綺麗って……相当やべェ!」
「可愛くて綺麗。そいつはまァ、最強だな!」
からからと笑う二人の足元、宝の山。
欲しいものを手に入れたなら、後は村への土産としようか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『木材工作をしよう』
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POW : 直感を信じて、とにかく手を動かして作る。
SPD : 図面等を用意して、計画的に作る。
WIZ : 独創的な作成方法を編み出して作る。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
村はざわざわと騒がしかった。
ノネット村に迫っていた合金竜オレイカルコスは前日の内に無事討伐され、蝶の潜む森の奥から空にかかる虹を潜って猟兵達が戻って来る頃には、すっかり綺麗に解体まで終わっていた。戦利品──七色鮟鱇と宝玉蝶を村人へ渡せば、手慣れた仕草でそれらも仕分けされ、適切な保存が同時に成される。村の資材、猟兵達への礼品、それから市場への出品用。ものづくりの村ノネットの、それが自然な営みであった。
素材と引き換えに、危機を救ってくれた猟兵達へは労いの食事が振舞われた。
出立した時よりも明るい表情を見せてくれるようになった村人達が、入れ替わり立ち代わり顔を出しては礼を述べていく。けれども皆長居はせずに、忙しそうにすぐ退出しては騒めきの中へと戻り行く──祭りの前の高鳴りに似た空気は、恩人でもある客人を迎えて更に暖かく広まる。
市場『ラ・カージュ』が開かれるまで、あと少し。
●
銀細工師の工房は、ラ・カージュの少し外れに掛かる辺りにある。周りには自然と職人達が集うエリアが成されるのが通例。いわば名物。
何故ならどこの世界でも職人と言えば気難しく、凡そ商売ごとには不向きだからだ。
頭を突き合わせて黙々と作業に没頭し、客にはおよそにべもない対応しかしない。けれど勿論物は良いし、話を聞いていないように見えて確り注文通りに作ってくれるし、寧ろ注文以上に相手の意図を汲んだ物を完成させるので客足が絶えない。
──そんな場所だったのだ。というのが、村人たちの話を突き合わせた結論だった。
過去形となってしまった今は、当時の面影も薄く。
比較的賑やかな市場の中央からぽつんと外れた寂しい空気。
「だから、あんた達が遊んでってくれるのは大歓迎なのさ」
そう言って猟兵達を迎えたのは、職人達の中では一番の、気さくで普通に世間話もしてくれる人。中年と言うにはまだ若い彼が工房の一部を開いているのは、職人と客の窓口めいた役割もあるのかもしれない。
三階建ての銀細工工房、その一階の一部屋を猟兵達に貸し出そう、と彼は言った。集中してものづくり体験をしてもらえるよう、市場の騒めきからは少し離れたそこには、厚い天板の机と丸っこい椅子、工具の数々が置かれている。革細工や木工細工、鉄鋼細工、それぞれの職人から提供された設備もある。必要なものは大抵が揃っているし、隣室の銀細工師に声を掛ければ繊細な作業を手伝ってもくれる。多少の無茶振りくらいなら職人気質で応えてくれるかもしれない。
何せここは剣と魔法の世界。冒険者御用達の武具は勿論、猟兵のちょっと過酷な使い方にも耐える物が作れるだろう。
──君は何を作りたい?
銀細工師が懐こい笑みで問いかけた。
エスチーカ・アムグラド
●
鈴蘭灯に、一杯の宝石!
チーカはこれでステンドグラス風のカンテラを作ろうかなって!
ばらばらになってたり割れちゃったりで欠片の宝石も多いけど、小さいからこそ敷き詰められて綺麗にならないかな?
鈴蘭灯の傘の部分にぺたぺたと貼り付けて――完成っ!
ふふふー、銀細工師さんみたいなプロの人程じゃないけど、チーカの小さな手は細かい作業にぴったりかも!
そしてそして!
もしも『良い事』を教えてくれた村人さんに会えそうだったら、お礼のお品も!
(チーカには)大きな欠片を組み合わせてブローチみたいな飾りを作れないかなって!
形はどんなのが良いだろう……蝶々かな?
泉で沢山見たし、チーカの翅でもあるから形はちゃんとできるはず!
●
「ふふふー♪」
エスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)は上機嫌に魔法の袋をひっくり返す。
からん、ころん。出てくるのは、本日の戦利品の数々。
空の青も清しき風も、夕焼の陽も閉じ込めた蝶の翅。まだ花の香散らす鈴蘭灯。
広い作業机の上で丁寧にそれらを広げて検分し、両手で綺麗に仕分けていく。
「何作ってるんだい、お嬢ちゃん」
声を掛けたのは、ちょうど近くにやってきた銀細工師。
「チーカ、これでステンドグラスみたいなランプ作ろうかなって!」
「おっいいねえ。綺麗だろうなぁ。それならほら、こういうのを使うといいよ」
少し辺りを見回した銀細工師が、近くの作業机に置いてあった人間の掌大の容器から、透明な何かを掬って小さな器に移し替える。
水飴のような粘度のある、虹の光沢を持った透明な泡色。
「それ、鮟鱇の骨……?」
「そ。あれを一青大蜘蛛の糸と変色竜擬の体液と一緒に煮溶かした、糊みたいなものだよ。このまんまの色で固まるから、透明感のあるものを作るにはちょうどいい」
「あっ。これって粘度みたいにも使えるかな? どうかな?」
「おー、それならこの水みたいなの指に付けながら使いな。くっ付かなくなるから」
「わあ、わあ! ありがとう!」
ふふふーん。鼻歌を歌いながら、エスチーカの手が宝玉の欠片を選び取り、鈴蘭灯にぺたぺたと貼り付けていく。
色は自由に、心のままに。まるで今日見てきた、きらきらの蝶が飛び交う楽園のような光景に。
ばらばらになってしまった欠片の宝石も、こうすればひとつの宝物。
花の香りと一緒に、きっと忘れられない形の一つ。
「それから、こっちも!」
もうひとつ、エスチーカが作りたいもの。
それは今回の狩りの功労者、魔法の袋の作り方を教えてくれた村人へのお礼。
狩りから戻ってきた時に、彼の居場所は見つけてある。何故なら近くの区画で店を出している、食材を扱う商人だったから。すぐに会いにも行けるだろう。
「喜んでくれるかなあ」
今日たくさん見た綺麗な蝶。エスチーカの翅の蝶。
透明な泡色を掌で捏ねて伸ばしたその形は、あの人の手に収まるくらいの。
けれどそれよりあたかかったのはきっと、とびきりの妖精の笑顔とありがとうの言葉だったはず。
大成功
🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ヘンリエッタ/f07026と
細工の類に詳しくはないが、まァ、上手くいくように頑張ろうか。
ところでヘイゼル。貴様、繊細な作業は出来るのか?
青と紫と、ヘイゼルから譲り受けた赤い石を使って、まずは妹に銀細工を。
蝶のブローチにしようかな。
妹の服の修繕なんぞはやっているが、やはり感覚が違うな。まァどうとでもなる――か?
それから、鮟鱇の革を使ったガントレット……と言うには、少し不恰好かな。
付き合ってくれた礼だ。貴様にやろう、ヘイゼルよ。
おっと、こいつは良いものをもらったなァ。
大事に使わせてもらうよ。ありがとうな!
ヘンリエッタ・モリアーティ
ニル/F01811と
バッカにすんじゃァねェや
俺様、けっこー屋敷じゃDIYとか任されてたりするんだぜ!
お兄ちゃんたるもの、こーいうことは出来るようにしてンの!
あと、こまけェのは、好き
ブローチ!?お前、すっげェ細かいの作ンのなぁ
……お前の妹にゃそういうのが似合うの、まぁわかる
俺様は……家族でお揃いのがいい
きれーな宝石で俺様も一緒にアンクレット作るぜ、順番に宝石をつけて……
俺様にって……かはは!初めてだ、こーいうの!
ありがとなァニル!いいね、遠慮なく使ってやらァ
んじゃァ俺様は、ニルに皮で財布作ってやるよ
お前、こーいうの疎いじゃん?きひひ。大事にな
●
「ところでヘイゼル。貴様、繊細な作業はできるのか?」
広い背中を丸めてちまちまと手先を動かしながらニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)が呟く。
「バッカにすんじゃァねェや。俺様、屋敷じゃけっこーDIYとか任されてたりするんだぜ!」
隣で同じくちまちまと作業しながらヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)──ヘイゼル・モリアーティが元気に答える。
「……そうか」
「お兄ちゃんたるもの、こーいうことは出来るようにしてンの!」
「そうか……」
ニルズヘッグの背中がどんどん丸まっていく。何せ細工物は門外漢であるので、余計に頑張ろうと集中していくうちに徐々に目が近くなる。
「……あと、こまけェのは、好き」
そんな風に囁いたヘイゼルの声音は、少し幼げな少年の色を帯びる。
二人して挑戦中なのは、今は銀細工の方だ。
青と紫、それからヘイゼルから譲られた赤い石を並べた端からピンセットで摘んでいくのはニルズヘッグ。
「なァ、それ何? 何作ンの」
「蝶にしようと思っているが……ブローチだ」
「ブローチ!? お前、すっげェ細かいの作ンのなぁ」
「妹の服の修繕なんぞはやっているが、やはり感覚は違うな。まァどうとでもなる──か?」
「……ああでも、お前の妹にゃそういうのが似合うの、まぁわかる」
「そうだろう? そう言う貴様は」
金、銀、紅、琥珀。順番に石を土台に嵌め込んでいくヘイゼルの手元を邪魔にならないように覗き込む。
「俺様は、アンクレット。……家族でお揃いがいい」
「ほう、揃いか。それも良いな」
少しの間それを見守るようにしていたニルズヘッグが、不意に首を傾げて石を指差す。
「ひとつ足りなくないか?」
「えッ。どこが、何が?」
「ヘンリエッタ、マダム、ルビー、貴様の娘。あと、貴様の色がないだろう」
指差し数えて、やはり足りないと。
そうして戦利品の幾つかを丁寧に掬って探すニルズヘッグが、ヘイゼルの作業机に宝玉をころんと置いた。
藍紫の中にちらちらと火の粉のような朱が燃える、その石を。
「これをやろう、ヘイゼル。内に激る焔が貴様に似ている」
出来上がった家族の虹色を、ヘイゼルはくるくると矯めつ眇めつ眺めていた。あまりにも長く見つめているので、ニルズヘッグが思わず笑う程には。
金、銀、紅、琥珀に鱗菫青。此処にしかない君だけの、家族の虹。
それは鳥籠の檻にも似た蔦模様の銀細工に護られるようにして、彼らの足首で揺れるのだろう。
ニルズヘッグの掌には、何とか巧く形になった蝶のブローチ。翅は艶めく赤から紫、穹の深きの青へと移る、何処か遠い空の朝焼けのよう。
満足げにそれを薄紙で幾重かに包み、麻で編んだ袋に入れたニルズヘッグが、ほいとひとつ革を放る。
「これは付き合ってくれた礼だ。貴様にやろう、ヘイゼルよ」
鮟鱇の革を使ったガントレット。熱と魔術で鞣した革は、緑を帯びた黒へと綺麗に染まっている。少し不恰好かな、と囁いたのは、ヘイゼルの耳には届かなかった。
「俺様にって……かはは! 初めてだ、こーいうの! ありがとなァニル! いいね、遠慮なく使ってやらァ」
それは嬉しそうに、上機嫌に笑ったヘイゼルが、自分で綺麗に解体した革を抱えて席を立つ。
「んじゃァ俺様は、ニルに皮で財布作ってやるよ。お前、こーいうの疎いじゃん?
「おっと、そいつは大層な。大事に使わせてもらうよ。ありがとうな!」
「きひひ。大事にな。ちっと待っててくれよ?」
細工師に声を掛けに行くその背中を、ニルズヘッグが笑みで見送る。さて、何を頼みに行くのやら。出来上がるのが楽しみで、少しだけ、待ち遠しい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霄・花雫
【灯くんと】
灯くんあとで見せ合いっこしようねぇ、今はナイショ
あのね、アミュレット作りたいの
宝玉蝶の石に姫ねぇさまに手伝って貰いながら力を込めて、合金竜の鉱石を土台にして……うー……難しい……
完成品は、合金竜の魔力がふんだんに篭った金属と風の精霊姫の力が篭もった宝石が調和したアミュレット
プラチナのような色味の金属に、縦に青空から夕焼けへ移り変わるように小粒の石を幾つか配置
細い革紐に通されたそれはパッと見、ネックレスだ
術士が見ればアミュレットだと分かるはず
……あのね、灯くんにあげる、これ
いつも遊んでくれてありがと
あたしね、灯くん初めての友達だから、その、……何かしたいなあって
…………貰ってくれる?
皐月・灯
【花雫と同行】
……? おう。
オレが作るのはバングルだ。
合金竜の鉱石で台座を作って、そこに宝玉蝶の赤い石をあしらう。
環の部分には、動きを助ける風のルーンを刻む。
もう一工夫してーんだが……銀にオレの魔力を練り込んでも構わねーか?
衝撃緩和の術式を仕込んで、このバングルそのものを魔導防具にするんだ。
デザインは職人に任せるぜ。
……アンタら、ものづくりが売りなんだろ? 腕を見せて貰うぜ。
ふうん、お前のは護符か。
……別に礼なんて要らねーよ。オレは好きにやってるだけだ。
折角だから、貰ってやるけどな。
……ああ、そういやこれが余ってた。
やるよ。
……そんなひらひらしたデザイン、オレにゃ似合わねーって思ってたとこだ。
●
「灯くん、あとで見せ合いっこしようねぇ。今はナイショ!」
「……? おう」
人差し指を口に当てた霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)に、よく分かっていない顔の皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)が一先ず頷く。
内緒と言うのだから丁度いいと、作業机に向かう花雫に背を向けた灯が銀細工師の方へと歩み寄る。
「仕事。頼みてーんだけど」
「お、待ってました! どんなのにする?」
細工師は人懐こく応えて、先ずは要望を聞き取っていく。
合金竜の鉱石で台座を作って、宝玉蝶の赤い石を配うこと。
環の部分には、動きを助ける風のルーンを刻むこと。
「もう一工夫してーんだが……銀にオレの魔力を練り込んでも構わねーか?」
衝撃緩和の術式を仕込んでこのバングルそのものを魔導防具にしたいというのが灯の希望。
んじゃあそれに術式組んで、と細工師が銀箔めいた薄い銀板を幾つか灯に渡す。そういった希望は程々によくある事のようで、彼も手馴れた様子だ。
「デザインはどうする?」
「任せる。……アンタら、ものづくりが売りなんだろ?」
腕の見せ所だろうと試すように言われれば、任せておけと返すのが職人の性。
聞き取ったカルテを傍らに、早速と先ずは合金竜の鉱石に手を伸ばす。
削り取り、形を整え、銀を据える。灯の術式が組まれた薄い銀板を、魔力を損なわずにその形だけを崩したものだ。
刻んだ紋様の合間に赤の宝玉を大小取り入れて段々と形にしていく。
それらは実に手際よく、まるで楽器を奏でる様に進められていくのだった。
一方の花雫は、唸り声をBGMに作業をしていた。
「……うー……難しい……」
土台になるのは合金竜の鉱石。小さな板状にしたそれに、小粒の宝玉蝶の石を並べていくのだけれど。
「姫ねぇさま、こう? これで大丈夫?」
大丈夫よ、なんて励ましを貰ったのだろう。ひとつ風の力を込め終えた、夏の高い青空のような小粒の宝玉を一番上に添える。その下に浅い空色、薄黄色、山吹色。
「うぅぅ……」
ふるふると緊張に震える手で添える一番下、最後の宝玉は夕陽色。とっぷりと日の暮れるあの蕩けるような彼方空の色。
合金竜の魔力と風の力が調和するよう紋様を刻んだそれに、細い革紐を通す。一見するとネックレスのような、術士が見ればアミュレットとすぐに解るものだ。
「で、きた──!」
ひらりと尾鰭を揺らした花雫が作業机に突っ伏して暫し。
隣室から出てきた灯がその背中に声を掛ける。
「花雫」
「! 灯くん!」
ぱっと起き上がった花雫の片手には、出来上がったばかりの風のアミュレット。
「ふうん、お前のは護符か」
「あ、うん。……あのね、灯くんにあげる、これ。いつも遊んでくれて、ありがと」
差し出されるそれを一瞥だけして、けれどその時には手は伸びなかった。
「……別に礼なんて要らねーよ。オレは好きにやってるだけだ」
「うん。あたしね、灯くんが初めての友達だから、その、……何かしたいなあって。…………貰ってくれる?」
少し間が空いて。少年の手が伸びたのは、それからだった。
「折角だから、貰ってやるけどな」
「……うん!」
「……。ああ、そういやこれが余ってた」
やるよ。そんな言葉と共に、アミュレットが乗っていた花雫の掌に代わりの重さが乗せられる。
風の軌跡と雨の雫を形取った、赤の宝玉が煌く銀細工のバングル。
「……そんなひらひらしたデザイン、オレにゃ似合わねーって思ってたとこだ」
「いいの、いいの? わぁ、ありがとう灯くん!」
はしゃぐ花雫に、ふん、と灯が顔を背ける。
希望したバングルのサイズが少年の腕には一回り程小さかったので細工師には最初からバレバレであった事は、名誉の秘密ということにしよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
●
リル◆f10762
鮟鱇の皮は頑固の…靴屋に持ってく
火蜥蜴の皮(丈夫で硬い。火耐性有)の靴から更に強化頼むぜ
デザイン・名前任せる
完成後リルと取りに行く
宝石の方はどうすっか
俺に?(予想外
なら俺のはお前に
青…瑠璃(あお)がイイ(照れ隠す様に頭撫で
初めて作る(作る機会がなかった)から職人に聞いて見様見真似で作るぜ
手動かし雑談
どンだけ練習すればリルほど唄えるようになるンだろうな
物心つく頃から口遊ンでたのか?
…!…強いな
(歌は本当にお前の総て、か
作るのは尾鰭に似合うアンクレット
モチーフは連なる夕陽、月鏡、桜の翅
彼の未来(みち)に幸あらん事を
願いを込め
お前の喜ぶ顔が見れたンなら悪かねェ
大事にするわ(礼言う
リル・ルリ
■クロウ(f04599
アドリブ歓迎
「ふふ
綺麗な宝石も採れた
クロウ、ありがとう」
靴は靴屋さんに頼むんだ
どんな靴になるのかな
一緒にとりにいけるの楽しみ
履いた姿もみせてね
「自慢じゃないけど僕は。器用ではなくて。でもこの宝石はクロウにぷれぜんとしたいんだ」
白と瑠璃どっちがいい?
小首傾げ
撫でられれば擽ったげに微笑み
君の、僕にくれるの?嬉しい
君に似合うように頑張ってつくるね
習いつつたどたどしく
クロウは上手
歌?生まれた時から
僕はその為だけに生かされていた奴隷だ
でも君に褒められる度に歌っててよかったと思うよ
君の片目と同じ青
泡沫の青を連ねて繋ぎ作る
護りの腕飾り
喜んでくれるかな
尾鰭飾り、嬉しい
また増えた、僕の宝物
●
「お、なんだなんだ火蜥蜴の革靴か?」
「七色鮟鱇の革付けんなら、ここをこうして」
「ばっかやろう! こっちにこうした方がイイに決まってんじゃねぇか」
「それじゃ結びがおかしくなるだろうが! ココんとこに黄化革巻いて、繋ぎを……オイ刻印師!」
「飯だ」
「またかよ!」
暇が祟ってあっという間に大勢の職人に囲まれた、火蜥蜴の革靴と靴職人。
尚彼は殊寡黙で、今までに一言も声を発していない。周りの職人達はあれこれと周りから注文を付けて喧々囂々、どうもややテンションが上がって盛り上がっている様子。
その靴を預け成り行きを暫く見守っていた持ち主、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は口を挟めない空気の中暫く立ち竦んでいたのだけれど。
出来上がった頃取りに来る、と告げれば、誰に言ったかわからないような返事が靴職人の斜め後ろから飛んできた。あれは確か小物を主に作っている革細工師だった筈だ。
悪いようにはされないだろうと、それでも振り向き振り向き工房へ戻れば、リル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)が笑ってクロウを迎えた。
「どうだった? 靴の職人さん」
「どう……ッつーか。変わってンな。色々と」
「そうなんだ。ねえ、僕も後で一緒について行ってもいい? 楽しみなんだ、出来上がるの」
「そりゃあ、勿論」
履いた姿もみせてね、とリルが言えば、クロウにも否やはなく。どんな出来栄えになっているかは職人達のみぞ知るところであるので、期待半分楽しみ半分だ。
作業机の上で丁寧にひっくり返した革袋から、からりころりと転がる宝玉が、大事に抱えて帰ってきた鈴蘭灯にぶつかって鈴の様な音を立てる。
「ふふ、綺麗な宝石も採れた。クロウ、ありがとう」
「礼なら随分聞いた、いーって。それよりどうすんだ、その宝石」
「んーと、ね、そうだな」
転がり出た宝石たちの中から、リルの指先が白と瑠璃を選び取ってそれぞれ両手に摘み上げる。
「自慢じゃないけど僕は。器用ではなくて。でもこの宝石は、クロウにぷれぜんとしたいんだ」
「俺に?」
軽く目を見開く彼の前で、こてりと首を傾げる人魚の君。
「白と瑠璃なら、どっちが好き?」
「……瑠璃。あおがイイ。……んじゃあ俺は、お前のを作るとするか」
「僕にくれるの? 嬉しい」
伸ばされたクロウの手が、照れ隠しのようにリルの頭を撫ぜる。嬉しげなリルの笑顔を少し眺めてから、さって作るか、と軽く腕を捲った。
夕陽の雫、月鏡の鱗、桜の翅。ひらひら揺れ踊る微睡みの中、鈴の音。
きっとその尾鰭に、綺麗に揺れて咲くように。
彼の未来に、泳いでいく道行に、幸せと添うように。
君の片目と同じ青、泡沫の青。
蒼穹重ねて繋いだ先はきっとささめく希望が寄り添うように。
切り拓くその腕で、君を護ってくれるように。
動かす手の傍らで彼らの口にも花が咲く。
「クロウは上手だね」
「そうかァ? こういうのやる機会なかったンだよなァ」
からん、から、りぃん。
時折机の上から、傍から、鈴に似た音がする。
まるでリルの歌のようだと、クロウはふと思ったりして。
「どンだけ練習すればリルほど唄えるようになるンだろうな」
「歌? 僕はね、生まれた時からだから」
「物心つく頃から口遊ンでたのか?」
「その為だけに生かされていた奴隷だ。でも、君に褒められる度に歌っててよかったと思うよ」
「……強ェな」
──歌は本当にお前の総て、か。
ならばいつでもその歌に、声に、聞き惚れていよう。
きっとそれを、一番に嬉しいと思ってくれるはずだから。
「……っし。こんなモンか。ほらリル、約束」
「わ、尾鰭飾り? 嬉しい、また宝物が増えた」
「そっか。お前の喜ぶ顔が見れたンなら悪かねェ」
ふっと笑うクロウに差し出されたのは、護りの祈りを籠めた腕輪。空の青の、咲き誇る。
「大事にするわ。ありがとな」
──さてさてそうして靴はと言えば。
四方八方から職人が手出し口出しをした結果、氷属性やら呪詛やらの耐性まで付いていたりなどして。
七色の風景をすら飛び越えられると願われたそれは、『虹駆』という愛称で呼ばれていたのだとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
依世・凪波
●
SPD付与的なアイテム希望/名前設定素材お任せ
手先は器用
工房の様子に大興奮
銀細工や革細工に興味を惹かれ
ここで作ってるんだ!?すっごいなぁっ
あのキラキラな素材ってどーなるんだろ?
あっ、と合金竜の時一緒に戦ったユハナを見かけ声をかけてみる
きらきらのでっかい竜の時一緒だったんだけど…
花びらの魔法凄かったっ!
俺、凪波っ!よろしくなー
相談出来る人に聞く
早く動けるアクセサリーとか軽くて邪魔にならない防具みたいの
欲しいんだ!そういうのってあるかなぁ
あと俺にも作れそうなのとか!
職人さんに作って貰うのと
もし自分でも作れそうなものがあれば挑戦してみる
火を使うなら狐火【フォックスファイア】出して手伝ってみよっかな
●
「わ、あ……っ!」
工房の入り口で、少年の歓声が上がる。
抑えめにしたつもりではあったが、到底抑えきれない興味津々のその声は室内に入っても途切れることがない。
依世・凪波(ギンギツネの妖狐少年・f14773)は琥珀の眼を彼方此方に向けて、工具や設備を見て回る。
「ここで作ってるんだ!? すっごいなぁっ……あのキラキラな素材って、どうなるんだろ」
猟兵達がめいめい作業机に向かっているのを補佐していた銀細工師が、嬉しそうに笑いながら声を掛ける。
「尖ってるのとか、危ないものもあるからな。気をつけて」
「わかってるって! あ、そーだ職人さん、作りたいものがあるんだけど!」
凪波がその興味と関心を銀細工師へと向ければ、彼は喜んでとそれに応じる。
「早く動けるアクセサリーとか、軽くて邪魔にならない防具みたいのが欲しいんだ! そういうのってあるかなあ」
「作り方は色々あるけど……要は素早く動く為の何かが欲しいんだよな?」
「そうそう、そういうの!」
「重力補助の紋や何かを入れたものとかが多いかな。あとは宝玉の類になら、風と地の加護を籠めて身に付けるというのもある」
「へえー……」
色々あるんだ、と一寸考える素振りの少年に、銀細工師がひとつ提案をする。
「靴なんかは、良いものひとつくらい作っとくといいんだけどな。君はまだ身体も大きくなるだろうし、大人になった時の為にとっておきを取っとくのもアリだ。という事で、アクセサリーの類をオススメするが、どうだい?」
「じゃあ、俺にも作れそうなのとか! ある?」
「勿論。そうだな……七色鮟鱇の革で、今の靴に合う靴紐なんか作ってみるかい? 飾りに風の紋を入れて、革は地に馴染む属性に加工したものを使うと、君を助けてくれそうに思うけど」
「あっそれいいな! 作ってみたいな、どうやるの?」
さて、上手く作れるだろうか。
わくわくそわそわ、凪波の前に早速と置かれる七色鮟鱇の革と工具、革細工用の針と糸。
それとは別に、と凪波は銀細工師に依頼をする。
重力補助の紋を入れた物を。そう言えば、彼は快諾して注文を請けてくれる。
「君に似合うものを作ってくるよ」
工具の使い方と作り方を一通り教えてから、銀細工師は依頼の物を作る為隣室へと向かう。
扉は開いていたので、時折様子を伺う視線が隣からちらちらと覗いたりもするのだが。
──黙々と作業をする凪波の横を、冬色が通り過ぎる。
その色に覚えがあったから、ぱっと顔を上げて声を掛けた。
「あっ、ユハナ!」
「? はい。どうしました?」
くるり振り向く冬色のエルフ、ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)が首を傾げる。
「きらきらのでっかい竜の時、一緒だったんだけど……花びらの魔法凄かったっ!」
「ありがとう、ございます。お疲れ様でした」
「うん、おつかれさま。俺、凪波っ! よろしくなー」
「はい。よろしくお願い、します」
何を作っているのかと問えば、楽しげな凪波が七色鮟鱇の革を指差して答える。それは地属性に加工された、焦茶の革。
時折話に夢中になって遅れる手先を連れながら、少しずつ少しずつ形になっていく。
やがてそれに風紋の飾りを付ける頃合いに、銀細工師が戻ってきて凪波にひとつ、銀の煌きを渡した。
藍玉が陽に照る銀の波模様。揺らぐ飛沫は真珠色の光を孕む。
服でも鞄でも、何処へも連れて行けるようにとピンバッチに加工されたそれを灯りにゆらゆら揺らしながら、凪波は笑う。
「わあ、綺麗だなあっ! なぁなぁこれ、名前付けるなら何にする?」
「名前? そうだなあ……」
──タラサ。Thalassa。
海という名だと、彼は言った。
此処にはないが昔本で見た、広い広いその向こうの光景なのだと、懐かしそうに。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・ディーツェ
技術が埋もれてしまうのは勿体無いないな…実用的で宣伝になるものお願いして、出来たらパレードかな!
その前に…ユハナー、今回も予知等々お疲れ様っ。貢ぎ物だよー(鮟鱇や宝石を差し出す)
他の人も持ってきてくれていると思うけど、感謝の印って事で…!
オレはわんこに乗る時の鞍や手綱を細工して貰おうかなあと思っているけど、ユハナは何を作るの?
君は美形だから色々似合いそうだ、服だと反り血が飛んじゃうかな…あれ、ユハナって前衛だったっけ。
何か前に出て殴っているイメージが(首かしげ)
鞍は折角だから回収したものは全部使って綺麗で丈夫なものが出来ないかお願い
へい、銀細工師のお兄さん!それに更に銀の加工もお願いして良い!
●
技術が埋もれてしまうのは勿体無いな、とヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は思うわけで。
頼むのは何か実用的で宣伝になるものを。それが出来上がったら練り歩くなどしたら良いのではないだろうか、と。
それよりも先ずは、この両手で抱えた荷物を渡してしまわなければならないのだが。
「おーいユハナー、今回も予知等々お疲れ様っ。貢ぎ物だよー」
大きな麻袋に入った、解体した鮟鱇の素材や様々な色した宝玉蝶の翅。
見知った顔を見て寄ってきた冬色エルフに、それをそのままどーん! と持たせてから、ヴォルフガングがへらりと笑う。
「感謝の印って事で……!」
「ヴォルフ。……君の分は?」
「もっちろん、ちゃんとあるよ!」
大漁だったからね。
そんな風ににこり言えば、突っ返す事はしないユハナが荷物に埋もれた口でありがとうと受け取る意。
工房の隅に一旦袋を降ろすと、ヴォルフガングを見上げたエルフが首を傾げる。
「ヴォルフは、何を作るんですか?」
「オレはわんこに乗る時の鞍や手綱を細工して貰おうかなあと思っているけど、ユハナは?」
「僕。僕は……あんまり、思い付かないので」
「なんだ、君は美形だから色々似合いそうだけどなあ」
「びけい。そうでしょうか」
「でも服とかだと反り血が飛んじゃうかな……あれ、ユハナって前衛だったっけ。何か前に出て殴っているイメージが」
「そう、そうですね。前に出る事が多いです」
今度はヴォルフガングが首を傾げ、拳は使いませんがと真面目な面持ちでユハナが返す。魔術師なのにしょっちゅう前線にいるこのエルフ、脳筋スタイルが板に付いてきたところ。
そんなこんなで話していたらば、ちょうど室内を様子見がてら見回っていた銀細工師が歩いてきた。
「へい、銀細工師のお兄さん!」
「はいはい、お呼びかい」
懐こく傍へ寄る彼に、細工物のご相談。
折角獲ってきたからと、鮟鱇と宝玉蝶の素材を全部使って鞍と手綱を作れないか訊いてみたらば、面白そうだと彼は頷いた。
「それに更に銀の加工もお願いして良い?」
「そっち本職だからな。勿論やらせてもらうよ」
先ずは寸法計測から。
鞍を付けるご本人(犬)であるところの黒犬機霊・テオ氏を工房裏の庭に召喚し、馬具職人を呼び付ける。そしたら何でかついでに革細工師が付いてきて、石細工師が釣れて、鉄鋼いじりが趣味の防具職人がおまけでやってきた。夕闇の中の作業を照らすのは、煌々と照る鈴蘭灯のランプを掲げてた硝子職人。
大人しく座ったり伏せたりして寸法を上手に測らせてくれるテオと、それを取り囲む職人のおっさん軍団の図はなかなか珍妙であったため、通りすがりの通行人が庭を覗き込む姿がよく見られた。工房に立ち寄る客も増えたそうな。
──出来上がったのは、よく鞣した七色鮟鱇革の鞍と手綱。鉄鋼の枠には宝玉が飾られ、銀の狼紋章がそれを反射してきらりと揺れる。
新しい鞍に満足げな顔をしたテオ氏の前肢には、硝子細工師謹製の脚輪。鈴蘭灯の欠片を配った透明泡色のそれがおまけにと添えられていた。
大成功
🔵🔵🔵
マルコ・トリガー
●
マリア(f03102)と
フーン、ここが工房か
ボク、元は器物だからかな
賑やかとは無縁の空気や職人の技術を感じられるここの雰囲気が嫌いじゃないみたいだ
宝石には興味ないけど、折角だから何か作っていこうか
マリアは張り切ってるね
宝物のネックレスね、フーン
そうだな、ボクには宝石は必要ないからマリアに渡すものでも作ろうか
危なっかしいマリアにはお守りが必要かなと思ってね
だけど、お守りを作った事もないし、女の子が好みそうなデザインもわからない
出来ればマリアのネックレスに合う代物にしたいかな
ここは職人に任せよう。ま、ボクも少しは手伝わせてもらうけど
マリアに見られてる気がする…
何を作ってるのかは完成まで秘密だよ
マリアドール・シュシュ
●
マルコ◆f04649と
マルコと採った薄水色の宝石で、
今マリアがしているネックレスと一緒につけられるペンダントを作りたいのよ(デザインお任せ。ペンダントパーツ可
マリアも作るの初めてだから銀細工職人さんに聞いて頑張るのだわ!
このネックレスはね、マリアの宝物なの(宝石に触れマルコへ話し
薄ぼんやりな記憶しかないけれどかつてマリアがいた森で共に過ごしたひとがくれたもの
大事にしてるのよ
(藁色の髪の獣人で育て親の片割れ
記憶が混濁してるが真の記憶は彼が死んだ時に得た唯一の形見
赤の宝石はその森では特別で奇跡の石とも呼ばれていたわ
マリアも猟兵として往く先を照らせたらと願いを込めるのよ
マルコはどうなのかしら(じー
●
「フーン、ここが工房か」
扉を潜って室内を見回すマルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)が、悪くなさそうな声色で呟く。
元は古い銃であった彼にとっては、賑やかとは無縁の空気や職人の技術を感じられるここの雰囲気は、然程嫌いではないらしい。
「さあマルコ、作りましょう!」
そんな彼の袖を引っ張るようにして、マリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)が空いている作業机へと連れて行く。
宝石には興味がないと言う口で、けれどマルコも無碍に断る事はない。
「ま、折角だから何か作っていこうか」
「そうよ、自分で作れるだなんてきっとあんまり出来ないことだもの。マリアも作るの初めてだけど、頑張るのだわ!」
わくわくとした瞳の煌きを隠さないマリアドールに、張り切ってるねと囁いたマルコの声が届いたのだか届かないのだか。
はしゃぐ声が銀細工師を呼んで、それに応える声も聞こえる。
「この薄氷色の宝石で、ペンダントを作りたいのよ。マリアのネックレスに合うものがいいの」
胸元、紅石のそれを指して告げれば、何やかやと要望の聞き取りがあって。
それを聴きながら、さて何を作ろうかとマルコは頬杖を突いて机上の宝玉を眺める。
自分に宝石は必要ない、であればマリアドールにあげるものを。何かと危なっかしい彼女には、お守りなんかがいいだろうか。とはいえお守りを作った事もないし、女の子が好みそうなデザインもわからない。見るに銀細工師はそういうのに詳しそうだ。
で、あれば。ここはひとつ任せてしまおう。
「作って欲しいものがあるんだけど」
マリアドールの要望カルテを作り終えた銀細工師に、マルコがひっそりと声を掛ける。
こそりと耳打ちされた彼の要望を頷き聞いた銀細工師は、メモ紙の端にこんな事を書いた。
『彼女と揃いのモチーフの、ブレスレットなんかはどうだい?』
「──このネックレスはね、マリアの宝物なの」
支度のため隣室へと引っ込んだ銀細工師を待っている間、マリアドールはそんな話をした。
大切そうに紅石に触れて。
「かつてマリアがいた森で共に過ごしたひとがくれたもの。薄ぼんやりな記憶しかないけど、とても大切にしているのよ」
藁色の髪をした獣人。あの人が掌に乗せて差し出す紅い石のネックレス。その手はどうしてか、赤く濡れて、落ちて──
「……マリア?」
マルコの声に目を瞬く。何かを見た気がしたけれど、もう思い出せない。
「何だったかしら?」
「疲れてるんじゃないの」
慣れない狩りなんてするから。
不満げなような、違うような呟きは、やっぱりマリアドールには届かないままだ。
銀細工師が部屋から出てきて、マリアドールの前にペンダントの基礎となる土台を置いた。銀から金へのグラデーションになったそれは、マーキスカットの宝玉を並べていくと鳥の翼の形になる繊細な細工だ。そこへ繋げる鎖も作ろうか、と彼は付け足した。望めば手伝って一緒に作ってもくれるだろう。
そうして彼女が作業に入ると、今度はマルコの方へこっそりと注文の品を渡す銀細工師。ただし。
「仕上げはよろしく頼むよ」
そんな言葉付きであった。
渡されたのは三連の細い銀鎖のブレスレット、になる予定の鎖。パーツは、マリアドールの目の前にある翼と対になる鳥の羽根が何枚か。宝石を嵌め込む小さな窪みと、そこに丁度嵌るサイズの薄氷色も一緒だ。
(「……マルコはどうなのかしら」)
じい。手の中の何かを見ているマルコに視線を向ける。
マリアドールの願いは灯火。猟兵として、人々の往く先を照らせたらと。奇跡の石とも呼ばれていたあの森の特別な紅石、その祈焔のように。
その視線に気付いたマルコが、背中で掌を隠すように椅子を斜めに動かす。
「……完成まで秘密だよ」
「ええ、わかったわ。出来上がったら見せて頂戴ね。楽しみにしてるの」
ふわりと笑う蜜華の晶に背を向けて、緊張にちょっぴり震える指で小さな羽根を摘んで並べる。
ひとつひとつ丁寧に、傷付けぬように。
まるで祈りを、焚べるように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
氷雫森・レイン
最初依頼を聞いた時は目標があった筈なのだけど…
ここへ来て分からなくなってしまったの
自分用ではないつもり、では誰のと言われれば最初から漠然としていたんだわ
ベクトルが無いと動けないわよね…
ねぇユハナ、貴方だったら何がいい?
突然でごめんなさい
折角だから貴方に何かと思って
私、旅館で初めてアックス&ウィザーズの中でも同じ極寒の地育ちの人に会った時嬉しかった
生態研究対象として石塔にずっと1人で倦んだ凍土の記憶さえ貴方と話せたら懐かしくすら思えそうになった
勝手だし、こんな事急に言われて驚くかもだけど…感謝してるの
だからもし貴方が嫌でさえなければ
祈りの印の形は昔幾つか覚えたから彫れそう
●
宝玉蝶が齎した煌き。
それを前に、氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)はどこか困ったように顎へと手を遣った。
この仕事の話を聞いた時には、漠然とだけれど方向性はあった。
此処へ来て、それがわからなくなってしまった。
何かを作るとしたら自分用にではなく、他の誰かの。
けれど、誰のものを?
そう考えると、指針が無さすぎて動けなくなってしまう。
「……レイン? どうしました?」
その姿を見かけたユハナが、作業机の傍にしゃがんで彼女を見上げる。
目が合って、瞬きを幾度か。レインがふと思い立ったように声を発した。
「ねぇユハナ、貴方だったら何がいい?」
「僕?」
「折角だから貴方に何かと思って」
首を傾げる冬色のエルフに、突然ごめんなさい、と彼女が謝る。
「……嬉しかったの。同じような場所で生まれた人と、初めて会ったから」
二人の出身はここ、アックス&ウィザーズ。その中でも雪に閉ざされた極寒の生まれだ。
出会った時に、少しそんな話をした事があった。
生態研究対象として、石塔にずっと一人。倦んだ凍土の記憶。
「でも、それさえ貴方と話せたら懐かしくすら思えそうになった。勝手だし、こんな事急に言われて驚くかもだけど……感謝してるの」
ぱちぱちと深海色の瞳を瞬くその後に、ユハナが少し目を細める。
「レインが、そう言ってくれて。僕は嬉しい、ですよ」
誰かと何かを話して、同じものを分かち合うのが、思うより心を擽る事を。
そういうものを少しずつ知った、今だから。
レインが感じたものとは違うかも知れないけれど、ユハナが全く理解できない事かと言えばそうでもない。
「だからもし、貴方が嫌でさえなければ」
「嫌じゃ、ないけど。うー、ん」
じい、と見つめる机上の煌き。それから自分の持つ、分けて貰った素材達。
「じゃあ。レインの分は、僕が作ります」
「え?」
今度は、きょとんとするのはレインの方だった。
冬色エルフが乏しい表情の代わりに、下がりがちの長耳をぴこんと立てる。
「交換こ、しましょう」
何が欲しいかと問われると、物欲皆無のこのエルフは首を傾げるばかりだった。
なので好きなものはと問いを変えたら、こう返ってきた。
歌。星。花。
漠然としてはいるものの、方向性の指針くらいにはなったろうか。
二人並んで手を動かす事暫し。
「あとは……祈りの印なら昔幾つか、覚えたから。彫っておこうかしら」
「すごいですね、レイン。僕はそういうの、全然なので」
決して丁寧な性質ではなく、大抵が大雑把なユハナにしてはごくごく慎重に進められた作業の末、レインの小さな掌くらいのブローチが出来上がる。
銀の四葉に水雨色の雫石をみっつ。残る一葉は、紫晶に寄り添われ。
「たしか、四つ葉は幸運のしるし、でしたか。こういう、肖るのなら」
「祈ったりすること、ないのかしら?」
「はい。ないです」
星を眺め、花に触れはするけれど。
願うことも祈ることもしてはこなかった。
そうあっさりと告げられる返事に、何だか珍しいものでも見るような目を向けたレインが、しょうがないわね等と言いたげな表情をしてそれを差し出す。
重なる白い祈りの煌き、透ける白花が揺らめくは流星の尾に似た眩い影。
「私が作るものだから、小さいけれど。邪魔にはならない筈よ」
ゆらり、通した紐の先で揺れた白宝玉の花。
ぱちぱち瞬くユハナが嬉しそうな色を帯びて眉を下げた。
「ありがとう、レイン」
──それじゃあ、交換こ。
銀の四葉と星花と、思い出と共に互いの掌の中。
大成功
🔵🔵🔵
瀬名・カデル
アドリブ・絡み歓迎
銀細工師さんの工房で作りたいものがあって来ちゃったよ!
でもどうやったら作れるのかな?
作りたいものは懐中時計が二つ。
ひとつはユニコーンとお花のモチーフでお友達に。
もう一つは鳥とお花でボク用にって。
色んなところに行くのにあったらいいかなってボクが欲しくて、せっかくだからお土産にあげたかったの!
きらきらして可愛いのが作りたいな。
素材とかを見せてもらいながら、どんなお花がいいかなぁ、ジャスミンかなぁ、蒼いお花がいいかなぁなんて考えながらつくれたらいいな。
時計の部分を作るのって難しいかな?
工房の人に聞いたら教えてくれるかな?
ドキドキしながら聞いてみるよ!
●
「あっここかな? お邪魔します!」
小麦色した肌の人形と共に工房の扉を潜る。
瀬名・カデル(無垢なる聖者・f14401)には作りたいものがあった。
けれども作り方を、知らなかった。
なので詳しそうな人に聞いてみる事にしたのだ。
「ボク、作りたいものがあるんだけど……懐中時計って、どうやったら作れるのかな?」
問われた先は工房の主、銀細工師。
彼は人の好さそうな笑みを浮かべて楽しげに応じる。
「おっ時計か。いいね。いくつかデザインがあるよ」
「やっぱり時計の部分を作るのって難しい、のかな……?」
「時計の部分……中身の事かい?」
飾り付ける前の懐中時計をいくつか見本で引っ張り出した銀細工師が、少し考える素振りをした。
「中身は精密なものだからね。文字盤とか針とか外装とか、そういったところを自分の好きなものに変えたりする事なら出来るよ」
見本の懐中時計の蓋を開け、カデルに幾つかデザイン違いを見せる。
なるほどなるほどと真剣な面持ちで話を聞きながら頷く少女に、銀細工師はさり気なく聞き取り用のカルテを構えた。
「あっこれ、文字盤にあのちょうちょの宝石を入れたりとか出来る……?」
「おーいいね。出来るよ」
「ほんと!? あのね、きらきらして可愛いのが作りたいの。お友達のと、自分用に」
「よしよし、二人分っと。任せな。どんなのがいいとか決まってる?」
「うん! お友達のはね、ユニコーンとお花のモチーフ。もう一つは鳥とお花でボク用にって思ってて。色んなところに行くのにあったらいいかなってボクが欲しくて、せっかくだからお土産にあげたかったの!」
「うんうん、時計はあるといいよな。自分の時計自分で作ったら、なんか特別って感じするし」
「細工師さんは、自分の持ってるの?」
「あるよ。こういうやつ」
しゃらりと鎖鳴らして彼が懐から取り出したのは、使い込んだ銀色の懐中時計。蓋や裏面には繊細な文様が刻まれたものだ。
「わあ、綺麗!」
「ありがと。こういう文様は願い事が篭ってたりもするから、まあお守りみたいなものかな」
「お守り……」
「無病息災とか五穀豊穣、家内安全、まあ色々。模様それぞれに意味があったりするんだよ」
ひとまず文字盤と針から決めようか。
そんな風に銀細工師が少女の希望を形にするべく進めていく。
これかなあ、こっちかなあ、とあれこれ悩みながら、友達が喜んでくれるようにと選んでいくカデルの姿は微笑ましい。
「お花のデザインはもう決まってる?」
「ううん、まだ。どんなお花がいいかなぁ、ジャスミンかなぁ。蒼いお花がいいかなぁ」
「そうだなー、ちょっと色合わせしてみるか」
花の図鑑と色とりどりの宝玉蝶の翅と、時を刻むムーヴメントと。
そうやってたっぷり時間を掛けて作り上げた二つの時計。
ひとつ。銀盤に一角獣。添える花はジャスミン、乳白色と蜜色が陽を浴びて。
ひとつ。銀の小鳥が二羽、夕陽色のマネッチアを越えて羽撃く。その先に光を抱いて。
それぞれには祈りの文様が添えられた。
楽しい事がたくさんありますようにとそんな願いを篭めた、揃いの縁飾りが。
大成功
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