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戦争世界の|圣诞快乐《メリークリスマス》

#獣人戦線 #封神武侠界 #戦後 #中国戦線 #人民租界

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●特別な人と食事を
 封神武侠界にある、人界と仙界を繋ぐ洞穴。そこに店を構える双界料理を振舞う変わった店があった。
「いやー、今年もこの時期は人仙問わず浮かれポンチしてやがりますねー」
「そうだな」
 その一席で食事する二人の男女。そして周囲の席に着くのも、ほとんどが同じような男女ペアや家族連れ。
 今日はクリスマス。封神武侠界全体が元々お祭り好きな気質であることに加え、猟兵との交流や大っぴらには言えないものの租界の影響もあることで、本来晋時代には無いその概念がここには不完全ながら根付いていた。
 そんな日に一緒に食事している長身の男と小柄な少女。二人はわりない仲……ということは全くなく、かつてこの店で同時に皇帝司馬炎旗下となった若き英傑。ただそれだけの関係であった。
「……で、あなたは何か言うことはないんですか? こんな日にこんな美少女と同じ席について」
「ないな」
「でしょーねこのDTめ」
 男の方は己を磨く人の武侠。かつて猟兵と関わったこともあり日々成長を見せてはいるが、その根はやはり武の道一直線の朴念仁であった。
 呆れ顔の仙人の少女を尻目に、男は腰を上げる。
「どこへ?」
「|厕所《便所》だ」
 そう言って男が席を立って、そのまましばし。
「……遅いですねあいつ」
 いつの間にか目の前の皿が冷めるほどの時間が流れていた。

●一人静かに祈りを
「やれやれ、|幇《パン》の連中も随分調子がよろしいみたいで」
 獣人戦線の中国。そこは人民租界の支配地域であったが、獣人世界大戦の結果有頂天道人が倒れたことでその勢力は大きく衰退、獣人たちの抵抗勢力が盛り返しを見せていた。
 その中でも世界に跨るトラの互助組織『|幇《パン》』は元々の大きさもあり、中国の一大抵抗勢力とも言える存在になっていた。
「俺みたいなはぐれ者呼びつけたところで、『うまい担々麺屋はどこだ?』くらいしか言わないのが分からないのかねぇ」
 そうぼやく男もまたトラの獣人。だが彼はヨーロッパを活動拠点にしており、幇には籍を置いているだけ程度の薄い関係であった。
 しかし獣人世界大戦が終わって一年半。勢いを増す幇はこれまで通信の困難だった他国や末端の構成員にも緻密に情報を届けられるようになり、結果として彼のような『幽霊部員』にも総会の招集が届いてしまったのだ。
 わざわざシルクロードを突っ切る距離を移動してまで参加させられた気乗りしない会合を終えた彼は、拠点とはだいぶ違うクリスマスの祝い方をしている町を歩く。
「……まあ、ここなら石炭や内臓もとどかないだろ。その間にちょっとでも罪滅ぼししとこうか」
 男はそっと目を閉じ、この一年自分が失った、そして奪った命が安らかなることを願い、近くにあった誰が設えたかも知らない募金箱に銀貨を一枚投げ込んだ。
 |ちょっとした善行《くだらない自己満足》を終え、男は町から出ていく。租界によって破壊されそのままな放棄地帯に、呼びつけたのだから用意しろと意趣返しに強引に借りた|レンタカー《軍用車両》が止めてあるはずだ。その租界軍は先の大戦で追い払われているし、幇の印の入った車など怖くて誰も盗めないだろう。
「……ちょっと待ってくれ、これもしかして俺が弁償しなきゃならないのか?」
 しかしその車はひっくり返って潰れ、その前には地図にもない大きな洞穴が口を開けているばかりであった。

●いつも通りの|仕事《戦い》を
「メリークリスマス。お仕事の時間です……」
 いつもと変わらない様子で、アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が猟兵たちに告げた。
「依頼の話の前に、ちょっとした世界の復習です。まず封神武侠界の人界と仙界は洞穴で繋がれています。そして獣人戦線は様々な世界からあらゆるものが流れ込んでおり、中国はサイバーザナドゥ、グリードオーシャン、そして封神武侠界の力を主に使う超大国人民租界の支配権でした」
 獣人戦線はグリードオーシャンをも超える世界のごった煮。そして封神武侠界は人と仙の並ぶ世界。既に猟兵が訪れて久しい二つの世界だ、知っている者も多いだろう。
「この度獣人戦線の中国に、その『人界と仙界を繋ぐ洞穴』が繋がってしまいました。そしてそこを通り、封神武侠界の『闇紅娘々』というキョンシーオブリビオンが大量に獣人戦線へ流入してきます」
 オブリビオンの異界侵攻。最早珍しい事でも何でもない。
「さらに悪いことに、そこには人民租界軍の生き残りの『邪仙化僵尸妖術師』というキョンシー使いがいて、オブリビオンを自分の配下にしてしまいます」
 中国を支配していた超大国人民租界。たとえ本場のものであろうとキョンシー操作などお手の物だろう。
「もし彼女らが洞窟から出てしまえば、近くにあるクリスマスに湧く町を襲うことになるでしょう。もちろん町にもそれなりの防衛設備はあるでしょうが、市街戦となれば相応の犠牲は避けられません。ですので、キョンシーたちを洞窟の中で撃破、さらにその奥にある人民租界残党の駐屯地を破壊してください」
 放っておけば獣人戦線の中国市街のみならず、何かの拍子に封神武侠界側へも攻め込まれてしまうかもしれない。だが洞窟が出現したのは敵の侵攻ルートの出現であり、同時にこちらから叩きに行けることでもあるということ。これが危機となるか好機となるかは、猟兵の働き次第ということだろう。

「『闇紅娘々』は赤い色にこだわる集団型オブリビオン、強いは強いですが特殊な状況はありません……が、問題は『邪仙化僵尸妖術師』のほう。彼女は己の仙術で闇紅娘々を大量に操作しており、彼女との戦い中にも絶え間なく参戦させてきます」
 ボス戦と同時に集団戦をこなさねばならない状況。だが手はあるとアレクサンドラは言う。
「現地には獣人戦線の中国主要種族であるトラの男性、そして封神武侠界から洞窟の転移に巻き込まれた宿星武侠の若者がいます。彼らはどちらも猟兵に恩があるため、説明すればきっと協力してくれるでしょう」
 獣人戦線で戦う者ならどれほど特殊な事情でも瞬時に理解できるだろう。封神武侠界の武侠とあらばキョンシーとの戦闘経験も数え切れないほどあろう。
 彼らを数とも武器とも使い、この戦闘を切り抜けて欲しいとアレクサンドラは告げる。

「ボスを倒せば依頼は終わり、二人もそれぞれの世界に帰ります。皆さんも、その後でお好きなようにクリスマスを過ごしてください……」
 邪仙化僵尸妖術師を倒せば二つの世界の連結は切れ、洞穴も封神武侠界で人界と仙界を繋ぐのみとなる。依頼はそこで終わり、両世界やグリモア猟兵を呼んで遊ぶ時間は設けられていない。後はそれぞれがそれぞれの場所に帰って、それぞれのクリスマスを楽しめばいいだろう。
「クリスマスの依頼ですが、今年はもうこんなのしかありません……それでよければ、よろしくお願いします……」
 アレクサンドラはそう言って、武と硝煙の繋がった聖夜へ猟兵を送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。私的実験作第二段。
 今回は獣人戦線に現れたキョンシー軍団とその指揮官を倒していただきます。

 第一章では『闇紅娘々』との集団戦。とにかく赤いものにこだわり、相手の肉や血を掻きだそうとしてきます。吸血能力を主体に戦ってきますが、ここでは特殊なギミックはありません。

 第二章では『邪仙化僵尸妖術師』とのボス戦。彼女自身がサイバー化された人造キョンシーで、格闘技や配下召喚で戦ってきます。
 特殊ルールとして、この戦場には無視できない数の闇紅娘々がいます。彼女らも集団戦のように参加してくるので、こちらに対処する必要があると同時にすればプレイングボーナスとなります。

 どちらの章でも封神武侠界の武侠と獣人戦線の獣人が協力してくれます。以下詳細。

 笋弟(スンテイ) 人間の宿星武侠×ヴィジランテ(19歳)
 緑の短く立てた髪に200cm近い長身。槍術や棍術を得意とし、細身だがしなやかな肉体を持ち鍛錬の果てに神仙すら超える力を得ることを目標としている。一対一の真っ向勝負ならかなり強い。とある一件(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=38402 読む必要はなし)にて司馬炎旗下となる。真面目すぎて搦手に弱い節があるが、己もそれを自覚し新たな道を模索中。
 今回の舞台となる洞穴に来て一人離れた場所に行ったときに巻き込まれた。

 バハラム・ザレ トラの戦闘猟兵×戦場傭兵(29歳)
 クールな頭とホットなハートを信条に、ヨーロッパ戦線で反ゾルダートグラート活動をしている。一見シニカルだが意図的に演じている部分も多々あり、実際は情に篤い男。実力は決して弱くはないが、単独でボス級オブリビオンに適う程ではない。銃とナイフを使う戦場格闘技が得意。
 かつて猟兵に命を助けられたことがあり(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=54951 読む必要はなし)、猟兵絡みの話への信頼と理解度は高め。
 トラの互助組織幇|《パン》の会合のため中国に来たところ今回の件に巻き込まれる。

 次節はクリスマスですが、お祭り感は全くない純戦闘の予定。泥臭く男臭いメリークリスマスをどうぞ。

 それでは、プレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『闇紅娘々』

POW   :    貴方の皮膚の下を流れる紅をちょうだい
レベルm半径内に【切られてもすぐ復元する血に染まった爪】を放ち、命中した敵から【血液】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD   :    もっと紅く綺麗に染めさせて
【すぐに再生する、犠牲者の血に塗れた鋭い爪】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【血液の味や温度、匂い】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    紅き血潮を、一滴残らず
【相手の血を一滴残らず搾り取りたいという己】の主張を込めて歌う事で、レベルm半径内の敵全てに【恐怖と麻痺】の状態異常を与える。

イラスト:バスター

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 獣人戦線の中国放棄地帯に突如現れた謎の洞穴。その余波で潰れたと思しき車を見て、虎獣人バハラム・ザレは険しい顔をする。
「多くは聞かないぜ。どこのモンだ」
 その言葉に、車の影に身を潜めていた男がその長躯を伸ばす。
「晋国皇帝司馬炎陛下旗下、笋弟。貴様は」
「ヨーロッパ戦線反ゾルダートグラード活動家兼|幇《パン》末端構成員、バハラム・ザレ」
 名乗りながら二人の男は槍とナイフを握り向かい合う。その長い穂先をくぐれるか。刃が届く前にその喉を突けるか。互いに相手の力量を図りつつそれを窺う二人。
「知らん名ばかりだな。ならば俺の質問は後一つだ。貴様は租界の者か?」
「久しぶりに聞かれたね。ヨーロッパに馴染んでない時はしょっちゅう疑われたよ」
 その言葉に、笋弟は険しい顔のまま告げた。
「恐らくあいつがいたらこう言うだろうな。『その言い方じゃこいつにゃわかんねーですよ』と」
 相手の言葉に『否』の答えが含まれているのを察しただろう笋弟は槍の穂先を僅かに下げる。それを確認し、バハラムもナイフを引いた。
「どうも。思ったより話が分かるようで何より。それじゃ俺からもあと一つだけ質問だ」
 そう言ってバハラムは車を周り込み、笋弟に並ぶ。
「あの団体さん、あんたの知り合いか?」
 バハラムが睨む洞窟の奥。そこからは、暗い肌に赤く長い爪の女たちが群れを成して湧き出してきていた。
「いや……だがどういう連中かは知っている」
 再び槍を握り、洞窟へ進む笋弟。バハラムも拳銃とナイフを両手に持ちそれに続く。
「なるほど。じゃあ俺の想像も当たってるってことか」
 二人が見据える闇の中から進み出てくるのは、キョンシー『闇紅娘々』。封神武侠界のオブリビオンであり、獣人戦線の超大国人民租界が尖兵として好んで使うアンデッド兵だ。
 状況把握は一旦おいてこの集団をここで排すべきと心を一致させた二人。お互いに気づいてはいまいが、それを成したは両者の経験に『猟兵』というある種の万能言語が存在する故だろう。
「キレイでしょう、アタシの爪。もっともっと紅くあかぁく染めたいの。さあ……お前の中の、赤をお寄越し」
「毛皮なんていらないわ。その下にある赤をちょうだぁい……!」
「その長くておっきいの、下にはどれだけ赤が詰まってるのぉ……ねぇ見せて、見せてよぉぉぉ……」
 聖夜に封神武侠界から湧き出し、獣人戦線の中華を血に染めんとする屍人の群れ。それに立ち向かわんとする本来なら出会うはずのなかった二人の戦士。
 そしてそれらを繋ぐ真なる縁がここにあり。世界の全てが己の足下たる猟兵よ。この聖夜の悪戯に、己を送りものとして舞い降りよ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
『奇縁』と言うべきですかねぇ。
笋弟さん、バハラムさん、お久しぶりですぅ。

『FLS』で『FPS』『FES』を召喚し『FES』の「光結界」を形成、お二方を防護しつつ戦場に『明り』を用意、『暗闇』の条件を防ぎまして。
『FMS』のバリアで守りを固め、『FPS』で敵味方の位置を把握し【冩崐彈】を発動、『渾沌波動弾』を継続放射し[範囲攻撃]しますねぇ。
復元するのは『爪』のみ故、繋がる腕や手を|消滅《部位破壊》させればよく、頭部を破壊し仕留めても良いですぅ。
突破してきた個体は、お二方に対処願いますねぇ。

獣人世界大戦にて『有頂天道人』から得た力、お二方にも何らかの参考に成り得るかとぉ。



 獣人戦線の中国に、封神武侠界の洞穴が現れる。これは決して初めての事ではない。今までもそのような事例は幾度となくあったし、他の国にも他の世界の何かが今も絶えることなく現れ続けている。
 しかし、今回はそれとはまた違う事情があった。
「『奇縁』と言うべきですかねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はその『事情』を思い、目の前に口を開ける洞穴を見る。そこにあるのは、二人の男の背中。
 るこるは洞穴へと進み入り、その背中へと声をかけた。
「笋弟さん、バハラムさん、お久しぶりですぅ」
 その声に、二人は同時に振り返る。
「これは……あれから幾年たつか。だが忘れることなどない」
「ああ、久しぶりだな。今度は普通に挨拶できたぜ」
 武侠笋弟と獣人バハラム、二人は共に猟兵と面識があり、その時の案件にはるこるもまた関わっていた。拱手とハンドサインをもって二人はるこるに挨拶を返す。そしてその目は、たった今あったばかりの一時の共闘者へと向けられた。
「ま、|あんた《猟兵》が関わる話だ。何が起きても驚きはしないさ」
「こちらもこうなるのは二度目でな。狼狽える道理はない」
 二人とも猟兵が来た時事態は己の想像もできない場所にあるということを知っている。るこるが言った『奇縁』も、猟兵の存在を解せば必然、あるいは運命として受け入れられるものなのだ。そしてそれ故に、猟兵の知己であるということは何よりの身分証明にもなる。
 それに従い、二人は改めて己が向かうべき相手へと目を向けた。
「あぁぁ、赤いの、欲しいよぉ……」
「おっきな真ん丸、つつけばどれだけ赤が噴き出てくるだろうねぇ」
 洞穴の中から赤い目と爪だけを輝かせ湧き出して来るキョンシー『闇紅娘々』。暗闇に輝くそれは、暗い闇色の指から折れるように取れ根元から血を噴き出して宙を舞った。
 それは闇の中で鮮血を撒き散らし、小型ミサイルのように前にいる者へと襲い掛かる。
「ふん!」
 それを笋弟は槍を回転させ、次々と叩き落とした。狭い洞穴のなかでもその動きは鋭く、閉所での長物という振りを全く感じさせない。
「おっと、こりゃとんでもないな」
 バハラムもしなやかに動いて迫る爪を躱し、避け切れないものは自身のナイフで叩き落とす。一見すれば完璧に相手の攻撃を凌ぎきった二人。だが、バハラムの顔は険しい。
「さて……あと何回耐えられるかな?」
 彼が手に持った、過酷な扱いにも耐えられるはずの軍用ナイフ。その刃は爪を叩き落とした部分が明確に欠け落ちていた。さらに目の前では、指先から血を噴き出しながら闇紅娘々の爪が見る間に再生していく。
「矢なら切れるのを待ちも出来ようが……」
 笋弟もまだ手に残る爪を落とした時の衝撃を思いながらそれを見る。相手の弾が無限だとすれば、防御を続けるうちに武器の方が耐えきれず破壊されるだろう。
 闇紅娘々、その名の通り紅き爪は闇の中に置いて最大の力を発揮していた。
 再び闇の中、赤き液体を撒き散らし爪が射出される。
「それでは、これをぉ」
 その爪が、明るい光に照らされた。第一射の間にるこるが準備した光属性の結界が、後続の爪を眩い光で包む。まるで光に押し返されたかのように爪は勢いを失い、軽く振られた槍やナイフに今度は軽々と叩き落とされた。
「彼女らは『闇』が力になっておりますのでぇ」
 集団型オブリビオンのキョンシーということは見て分かれど、その特性までは一目に見抜けるものではない。それを事前に知る予知という力、それが猟兵の持つ第一の埒外であった。
「なるほど、乗り込んだつもりが誘われてたって訳か」
 この洞穴はまさに闇の中。しかしここから相手を一歩たりとも出すわけにはいかない。その不利を飲まざるを得ない状況を覆すのはまさに猟兵の力の一端である。
 もちろん、ただ照らすだけではない。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、強者より乱妨せし力の再現を此処に」
 その光による視認と装備による探知、それで確認した相手に向け、るこるは【豊乳女神の加護・冩崐彈】を放った。撃ちだされるのは、名状しがたき白き弾丸。
「白なんて嫌いだよ……消えろ消えろ消えろ!」
 それに向かい闇紅娘々たちは連続で爪を射出する。だがそれは白い玉と当たると一方的に撃ち負けるように消滅した。
 一発が消えても連続で爪を生やし、闇紅娘々は何度もそれを撃ちだす。だがそれは玉の威力を減衰させることすらできず、全ての爪、そしてついにはそれを放つ手にまで直撃した。
「ああああ、アタシの、赤い爪がぁっ!」
 腕を振って悲鳴を上げる闇紅娘々。その手は、手首から先が綺麗に消滅していた。
「復元するのは『爪』のみ故、繋がる腕や手を|消滅《部位破壊》させればよく、それに……」
 武器を失い狼狽える闇紅娘々。だがその悲鳴さえも一瞬に途絶える。
「頭部を破壊し仕留めても良いですぅ」
 頭部を失った闇紅娘々がその場に倒れ、そのまま消滅していった。
 そのまま敵に向けてユーベルコードを飛ばし、次々と敵を滅していくるこる。指定した対象を攻撃できるこの技は、何らかの手段で相手を近くしなければ狙いを定めることは出来ない。敵の力を削ぐ光の結界は、同時に相手を視認するためのものでもあった。
 しかし、如何な光でも洞穴の全てを照らし、明らかにできるわけではない。闇に紛れ、あるいは視界の隙を突き、攻撃を抜けてくる者もいる。
「赤いの……」
 そう言って手を差し伸べた闇紅娘々。その輝く紅い目が、ゆらりと揺らいで下に落ちた。
「お陰様でね、夜目は効く方なんだよ」
 闇に紛れ振るわれたバハラムのナイフ。それは闇に紛れた闇紅娘々の首を一撃で切り落としていた。
 その隣では、笋弟が闇の中に槍を突き入れていた。そしてそれを横に払うと、頭に大穴が開いた闇紅娘々が投げ捨てられるように倒れる。
「屍にも気はある。それを見れば闇も昼に等しい」
 言うは易く行うに難いそれ。彼がそれを深く学ぶに至れたは、神気巡らす薬師と結ばれた『奇縁』故にか。
 闇に潜む敵を二人に任せ、るこるは白日の下にさらされた敵を次々と消滅させていった。
 そのるこるの戦いぶりを見て、男たちは改めて彼女の放つ白き玉に注目する。
「ところであんたのそれさ、くたばってからも迷惑かけてくれる奴の面思い出すんだけど……俺の勘違いってことにしていいかい?」
「陛下より聞いている。敗死した者を幾度でも戦場に舞い戻らせ、猟兵の秘奥たる力さえ逆用した真なる敵であったと」
 二人が思い出すのは、己では前に立つことすらできなかった『戦争』における恐るべき大敵。
「獣人世界大戦にて『有頂天道人』から得た力、お二方にも何らかの参考に成り得るかとぉ」
 その答えを、るこるははっきりと言った。獣人世界大戦にて人民租界の有力敵として立ちはだかり、一度滅ぼされてもその身を『渾沌』として再生したトラの獣人。二人の男たちが正なる奇縁であるならば、その存在は同じ世界を元とした邪なる悪縁。
 しかし、力そのものに善悪はない。戦った敵の力を己のものとする猟兵は多い。そしてその猟兵と縁を結んだ男たちならば、あるいはまた。
「……分かってる。そうだよな。幇の連中、いつまで浮かれていられるもんかねぇ……」
「触れれば滅する。凄まじい力だ。人の身で超え得るか、俺に捌き得るか……」
 それぞれの立場、目的からその力を検分する男たち。奇縁は結ばれたところで終わりではない。その先に新たな道が伸びていくのだと、るこるは確信するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」

基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。

探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。

情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。

戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。


シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。
窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける。

◆戦闘
射撃(愛用は詠唱銃だが、様々な銃器を使い分けている)と魔術による広範囲攻撃が主。
魔力の操作に長け、射撃の腕も確か。
作戦次第では、闇色の武器を召喚(UC【異界の剣の召喚】)して前衛を務めることもある。

◆特技
・情報収集
・機械の扱いにも魔術知識にも精通している

◆UDC『ツキ』
闇色の狼の姿をしており、魂や魔力の匂いを嗅ぎ分けての追跡や索敵が得意。
戦闘は鋭い牙や爪で敵を引き裂き、喰らう。

◆口調
・シン→ステータス参照
(※使役は呼び捨て)
・ツキ→俺/お前、呼び捨て
だぜ、だろ、じゃないか?等男性的な話し方


キノ・コバルトリュフ(サポート)
キノキノ、キノが来たから
もう、大丈夫だよ。
キノノ?キノだけじゃ心配だって?
マツタケ!キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!
トリュフ!!キノ達の活躍を見せてあげるよ。
シメジ?キノが苦戦はありえないけど、その時は一発逆転を狙っていくよ。
キノキノ、みんなよろしくね。


死絡・送
ノーブルバットに変身して参戦。
「吸血鬼の類は、近親憎悪の炎が燃える!」
東西の差はあれど、吸血鬼には変わらない。
包囲されないように動き回りながらサーバントバットを放ち牽制。
ノーブルアンカーを振り回して範囲攻撃。
「お前達が俺の糧になれ!」
と言い、格闘しつつ吸血して倒しえ地区。
「お望みの真っ赤な太陽だ!」
と言い止めはプロミネンスバスターで火葬。
倒したら合掌して冥福を祈る。



 洞穴の闇の中から次々とわき出てくる闇紅娘々。そのぎらつく目と爪は、まさに鮮血の如き赤に染まっていた。
「吸血鬼の類は、近親憎悪の炎が燃える!」
 ダンピールである死絡・送(ノーブルバット・f00528)は東西の差はあれど、吸血鬼には変わらない、と闇紅娘々へと立ち向かった。
 まずは数で勝る相手に包囲されないよう動き回りながら配下のヴァンパイアバット『サーバントバット』を放ち牽制していく。闇の中襲い来る黒い蝙蝠は闇に慣れている闇紅娘々であっても捉え難く、細かく噛みつかれてうっとうしそうに爪を払う。
 しばらく長い爪でサーバントバットを叩き落としていた闇紅娘々だが、それ自体は致命傷になるほどの威力でないならを突っ切った方が早いと判断したか、噛みつかれたまま強引に前に進みだした。
 そのまま包囲されないように動こうとする送だが、広いとはいえここは洞穴。そこまで縦横無尽に動けるものではない。どうしても動く方向は制限され、やがて少しずつ包囲され始めて来た。
 ならばと切り替え、送は武器『ノーブルアンカー』を思い切り振り回し力尽くで囲みを破壊し始める。蝙蝠とは違う重量ある攻撃が纏めて闇紅娘々たちをなぎ倒し、完全な包囲殲滅の形を取らせないようにした。
 近寄っても離れても何かが来る状態。小手先で組み合っては数があっても闇紅娘々たちが絶対有利とは言い難い状況だ。
「あああ、邪魔だよ! 黒もいらないんだ、欲しいのは赤だけだよぉ!」
 故に、必殺を投入する。離れた闇紅娘々たちの爪が血を噴き出して射出され、赤き弾丸となって一斉に飛び出した。
 突然の飛び道具。闇の中で威力三倍となるそれはサーバントバットの妨害を容易く振り切り、一気に送に襲い掛かる。
「しまっ……」
 敵ユーベルコードへの対策をほぼ行っていなかった送。包囲こそされていないが高い威力で真正面から大量に襲い来るそれを捌くことができず、赤い爪が黒い体に次々と突き刺さった。
 スーツを破り鮮血が噴き上がるが、それは爪に吸収されてほとんど地に落ちることはない。
「あぁぁ、赤いの……やっと吸えたよぉ……」
 爪を射出した闇紅娘々が、喜悦の表情で言う。その手には、すでに赤く鋭い爪が再生していた。
 そのまま次弾を放つべく手を送に向ける闇紅娘々たち。ダメージで回避もおぼつかない今の状況では、一発躱すことすら難しい。送の命を全て吸い尽くすその攻撃が、狙いを付けて放たれた。
「おおっと、危ない!」
 その送の体が、何かにかっさらわれた。それはそのまま洞穴の入口側に移動し一旦停止する。
「屋内は苦手なんだけどねぇ……まあ、この程度ならアタシにとっちゃ外も同然だけど」
 それは宇宙カブに跨った数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。救援に駆け付けた彼女は送の体を降ろすと、改めて闇紅娘々へと向かい合った。
「さて、聞くまでもないかもしれないけど、あんたらなんのために戦ってる?」
 できるかぎり相手の行動原理を理解してから次の行動に移りたい多喜。最も彼女が言う通り、闇紅娘々たちの行動原理は聞かれるまでもなく彼女ら自身が垂れ流しにしていた。
「そんなうるさい、赤の入ってないものもってこないでよ。アタシたちは、赤が欲しいの!」
 血や肉のような人体に詰まった『赤』。それだけが彼女らの望みであり、死した体を現世に繋ぎ留める妄念であった。
「ま、予想通りか」
「情報収集の手間が一つ省けたと思いましょう」
 多喜の感想に、後ろから現れたシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)が同意した。彼もまた情報戦を得意とする猟兵。相手の意見は聞かずとも分かったと、戦闘面での状況把握を試みる。
「さて、相手の武器は基本尽きないようです。ダメージレースに持ち込むのは分が悪い」
 闇紅娘々の爪は強靭な再生力を持つ。相手自体の数もあり、持久戦は悪手だろう。
「ねぇぇ……赤いのもっと寄こしてよ……赤朱紅緋ぁ!」
 自らを検分する猟兵たちの前で、闇紅娘々は声を張り上げた。その声は洞窟で反響しその場にいる者たちの耳に届くが、それはただうるさいだけでなく実際に体を痺れさせてきた。
「……これも、理由の一つです」
 紅き血潮を、一滴残らず搾り取りたいという妄念を込めた声。それは耳から入り心と体を恐怖と麻痺で侵して来る彼女らの技。一見すれば爪による斬撃を主体としていそうな彼女たちは、その実遠近双方に隙が無かった。
 猛進の結果深手を負った己の前で敵を検分する仲間の背を見る送。その横から明るい声が聞こえた。
「キノキノ、キノが来たからもう、大丈夫だよ」
 キノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)が送を見下ろして言う。
「キノノ? キノだけじゃ心配だって? マツタケ! キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!」
 そして何かも言われぬうちに、キノは自らが従える星霊を次々呼び出した。スピカやフェニックスなどの回復能力を持つ星霊たちが送に取り付き、その傷を癒していく。
「便乗させて貰えば、俺たちもいるぜ」
「茸か……まあ、青いなら良しとしよう」
 キノに並ぶように出てくるバハラムと笋弟。送は彼らを戦力として使おうとはしなかったが、あくまで猟兵に及ばないというだけで彼らも相応の実力者である。
 そして前方では、多喜とシンが銃器を持ちだし闇紅娘々と撃ち合っていた。しかしシンが見立てた通り闇紅娘々は遠距離戦もできる。キノもそこに加勢するように星霊バルカンを差し向けるが、それが参戦した時闇紅娘々の目がそちらへ向いた。
「赤……この赤じゃないんだよぉ……」
 バルカンは炎を扱う星霊。炎と言えば赤だが、それは血や肉とは異なる種類の赤だ。
「そう言わないでさ、受け取ってくれよ!」
 バハラムが味方の頭を通り越し、手榴弾をそこへ投げた。それは闇紅娘々の中で爆発を起こすが、やはり致命傷には程遠い。
「おいおい虎の旦那、相手の怒りに火つけてどうすんだよ」
「お気に召さなかったか。結構いいヤツ送ったつもりなんだけどな」
 多喜がバハラムと軽口をたたき合う。その言葉通り、火を苛立ったように振り払い闇紅娘々は猟兵たちと距離を詰めてきた。
「作戦次第では僕も前に出ることもありますが」
「客人に気は使わせられぬ。俺がやろう」
 笋弟が銃を構える仲間たちの前に出て、槍を持って闇紅娘々と直接交戦を試みる。後ろから猟兵たちの援護射撃があるということもあり、その鋭い穂先は次々と闇紅娘々を捉え貫き倒していった。
「しかし……ああは言ったがやはり一人では辛いな。手助けが欲しいところだ」
 前衛を張る笋弟の台詞。色々な意味で彼らしからぬそれの意を汲み、キノが送の肩を叩いた。
「キノキノ、みんなよろしくね」
 既に動けるほどには回復しているはず。その意気を今一度見せるべしと、送は仲間たちをかき分け敵へと迫った。
「お前達が俺の糧になれ!」
 一体の闇紅娘々を組み伏せ、その血を喰らう。暴力的でありながらグラップリング技術も的確に交えたそれは闇紅娘々の爪による攻撃を的確に押さえ、そのまま一体の敵を消滅に至らせた。
 しかし闇紅娘々は大量にいる。その中でたった一体に向き合って戦うのは他の個体からマークが外れて危険とも言える。それを狙い、闇紅娘々たちは笋弟を躱し送の方へと向かおうとし始めた。
 闇紅娘々の群れが送に襲い掛かる。
「お望みの真っ赤な太陽だ!」
 その爪が送を貫き切り裂く。その瞬間に、送は【プロミネンスバスター】を発射した。
 ひきつけられた敵は太陽のオーラは、一度倒されかけた怒りさえも焚き付けにして闇紅娘々を燃え上がらせる。
「業火よ、我が命に従い、立ち塞がるモノを焼き尽くせ!」
「銃を使うのは苦手なんだけどねぇ……!」
「一発逆転を狙っていくよ」
 そして続くように、シンの【異界の炎の召喚】、多喜の【熱線銃作成】、キノの【神火大嵐舞】が巻き上がった。送が最後の手と決めていた業炎の火葬、それを|手伝い《サポート》放たれた炎と熱が洞穴の中に満ちた。
 そしてそれが止んだとき、そこに赤は残されていなかった。
 送は合掌し、敵の冥福を祈る。
 しかし、それをしている時間はあまりない。本来封神武侠界に通じていたはずのこの洞穴の奥、そこには獣人戦線の超大国、その|亡霊《キョンシー》の巣へと今は繋がっているのだから……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『邪仙化僵尸妖術師』

POW   :    砲勁
【見えない衝撃波 】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD   :    凶嵐連弾
【凶つ風を帯びし拳 】【凶つ雷を帯びし蹴り】【妖術による幻覚フェイント】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ   :    宝貝「淵喚陣」
レベル×1体の【恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》】を召喚する。[恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》]は【力強くもおぞましき容貌から放たれる破砕】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は郷・玲です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 キョンシー『闇紅娘々』の群れを退け、二人の男と猟兵は洞穴の奥へ進んでいく。
「この|洞穴《ほらあな》、普通に開けられたもんじゃない。この先に何がいると思う?」
「俺の知った通りなら浮かれた人仙が大勢と理解しがたい仙人が一人だ。だが、恐らくそちらの方がまだしも正しい答えを出せるだろう」
 本来封神武侠界で人界と仙界を繋いでいた洞穴が、今は獣人戦線に口を開けている。先に蹴散らしたキョンシーがその奥から出てきたことを考えれば、何がいるかは獣人戦線に寄って考えた方が近い答えが出せるだろう。
 やがて洞穴の奥、そこは開けた空間になっていた。
 そこにあったのは大量の女の死体。いずれも血の気を失い黒くなった肌を見せて倒れているそれは生命活動を停止して久しいのだろう。
 そしてその中心には、一人の獣人が座していた。
 後方に向かって湾曲した二本の巨大な角と、横に尖った耳、そしてうっすらと体毛に覆われた真っ白な体表。ヤギの獣人のように見えるその存在だが、両足は膝から下が完全に機械に取り替えられ、顔は文字の書かれた黒い仮面に覆われていた。
 服装とそこに浮く僅かな肉の隆起から女性と思われるそれは、大量の死体に囲まれたまま手印を作る。
「勅令陏身保命」
 仮面越しに右目が赤く輝き、自分の面にも書かれたその言葉を唱える。するとそれに命じられたように周囲の死体が一斉に立ち上がりそれらの目が全て赤く輝きだし、手からは皮膚を突き破り地に濡れた赤い爪が長く伸びた。
 その姿は紛れもなく、先に猟兵によって蹴散らされた『闇紅娘々』そのもの。
「敵襲確認。対象に仙並びに屍の気感知されず。反人民租界勢力と判断」
 機械のように言う女の言葉に、男たちはそれぞれ首を振る。
「まあ広義には合ってるよ。こっちから喧嘩売ったことはあまりないけどな」
「租界に与さぬ仙人や僵尸などいくらでもいる。俺にさえ見分で劣るとは底が知れるな」
 ヨーロッパを拠点とする反超大国活動家と、晋の旗の下にある封神武侠界の武侠。彼らは相手の言を否定しつつ己もまた相手を見定める。
「こいつはいわゆる残党ってやつだ。ちょっと前まではどえらい後ろ盾があったが、今となっちゃこいつを倒せば話は終わる。後腐れもとりあえずはねぇ」
「周囲の僵尸どもはこいつの術で動いている。無視できるものではなかろうが、あえて全滅させる意味は薄い」
 超大国人民租界は有頂天道人の死によって瓦解している。そしてキョンシーは本来命令を下す者がいなければ動くことができない。たった一人、目の前の女を倒せばこの場は全て片が付くのだ。
「急急如律令」
 そして相手もそれを分かっていよう。女の号令一下、闇紅娘々たちは動きだし先の洞窟入口と同じように敵対者に赤い爪を向けた。
 そしてそのキョンシー集団の中で構えを取る女、『邪仙化僵尸妖術師』。彼女は改造された不死の肉体で術と拳法を操る、人民租界の人造僵尸兵器。
 クリスマスに湧く二つの中華に屍たちがあふれ出る前に。このキョンシーの大集団を闇の中に葬り去れ!
死絡・送
●POW
二人の男や仲間達と洞窟の奥へ向かう。
周囲の状況を見て、他の仲間の動きの妨げにならないように
行動する事を心がける。
仲間達とは協力して、敵への対応に当たる。
光の剣、ワールドライトブレードによる白兵戦を主体に戦う。
足場が悪いなど、地形が不利な事を注意しつつ移動や回避を行う。
敵のユーベルコード対策は、オーラ防御で身を守り反撃で此方のユーベルコードを使い格子魚雷で射程内のは荷の敵全員を攻撃する。



 本来は封神武侠界にて人界と仙界を繋ぐ通路であったはずの洞穴。その奥に今あるのは、人民租界軍残党キョンシー軍団の駐留地であった。
 その中心にいるのは自らもキョンシーである『邪仙化僵尸妖術師』。彼女は自らの拠点に敵が侵入してきたのを察すると、周囲の死体を操り敵を迎え撃つ姿勢を見せた。
 洞穴奥まで進んできた死絡・送(ノーブルバット・f00528)は、二人の男と共にその前に立つ。
「邪魔はしない。思い切りやってくれ」
 先は恃みにしなかった男たち。だが彼らの実力は見て知った。ならば彼らにも戦ってもらいつつ、自身はその妨げにならぬよう離れたところに立つ。
 闇を苦としない二人の男たちは、先の戦いと同じようにそれぞれの武器で囲み来る闇紅娘々たちを相手取った。
 そしてその戦いに、送は光の剣『ワールドライトブレード』を抜いて加わる。
「あぁぁ……赤いの、赤いのぉ……!」
 先に戦った闇紅娘々たちと同じく、彼女らはまた己の爪を血を噴き上がらせながら射出してきた。
 闇の中力を増すそれは、暗い空を切り裂き送へと迫る。
 先は備え不足であった送を貫いたそれ。だがそれは送に届く直前で勢いを失い、今度はその剣に簡単に弾き飛ばされた。
 この爪に力を与えているのは『闇』。故に送に届くその直前までは集団型の域を超える威力と勢いを持っているが、掲げられた剣の光に照らされた途端にその力は消え失せる。これならば躱すのも容易いと、送は襲い掛かる爪を次々と叩き落とした。
「発」
 その時、洞穴の中心でキョンシーを操作するように動かなかった邪仙化僵尸妖術師が、短い声と共に動く。それは機械の脚によってもたらされた脚力で一気に距離を詰め、送の体に拳を叩き込んだ。
「むっ!」
 体をねじってそれを躱す送。整地されているとは言えない洞穴の中で足を取られないよう注意しながら、相手の高速の攻撃に何とか剣を合わせる。
「憤、疾、崩」
 短く機械的な掛け声とともに繰り出される連撃。しかしそれは達人級の格闘技であり、妖術師という名にそぐわぬ高い戦闘能力を彼女が持っていることの表れでもある。送もそれに合わせ剣をもっての白兵戦で立ち向かうが、後ろから放たれる闇紅娘々の援護射撃にも対処に剣を用いるためどうしても攻め切ることが出来ないでいた。
「助けに行ってやりたいが……」
「すまぬ、こちらも手が足りぬ……!」
 バハラムと笋弟もそれぞれ闇紅娘々を相手取るが、集団型にはそう負けない彼らもそれをさばき切ってボスにまで当たるのは難しい。
 必然的にボスは己で相手取る必要がある。とかく体勢を崩さないよう立ち位置に気を付けつつ相手の攻撃をいなしていくが、幾度目かの爪の射撃を撃ち落とした時胴部ががら空きになった。
「砲」
 その瞬間、妖術師の手がその胴を捉え強力な衝撃波が発射された。目には見えないはずのそれは空間を歪んで見えるほどの音と振動を上げ、送の体を後方へと吹き飛ばした。
「大丈夫か!」
 バハラムが前方で声を上げる。またも敵の|必殺《ユーベルコード》への対策を怠り直撃させてしまったか。
「……ああ、なんとかな」
 しかし、吹き飛ばされた送の体には大きな傷は刻まれていなかった。インパクトの瞬間そこにオーラを集中させることで、衝撃波を吸収分散させ凌ぎきったのだ。
 同じ轍は踏まぬと防御を固める送。しかし仮面に覆われた妖術師の表情は変わることなく、さらに踏み込んで連続で衝撃波を放った。
 オーラでダメージは防げても命中さえすればそのオーラもとろも吹き飛ばしは発生する。送はどんどん後ろへ押し込まれていき、やがて背が洞穴の岩壁に当たった。
「|殺《シャー》」
 最後の追撃とともに、妖術師の号令。その命令に闇紅娘々たちは援護射撃を止め、数を活かした直接の爪による攻撃で仕留めるべく、キョンシーの群れが送に一斉に迫る。
 そしてその中心。妖術師もまた二色の気を手に溜めて最後の一撃を放たんとした。
「全てを光に変えて消す!!光子魚雷、射て~~~~~~~っ!!」
 全ての技がその身を刻み潰さんとした瞬間、致命の一瞬前に送の【光子魚雷一万発発射!!】が狙いすまして放たれた。
 範囲内に捉えたすべての敵に光の魚雷がたたきこまれる。敵の必殺の間合いはまた敵を逃がさぬ己の間合いでもあった。
「あああ……あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 もっとも厭う光に包まれ、闇紅娘々たちは次々消滅していく。そしてその中心、従えたものを消し飛ばされた妖術師が一人後方に吹き飛ばし返されていた。流石にボス級、これだけで倒れていないが、仮面に浮く赤い目の光がくすんでいるのは見間違いではないだろう。
 闇を消す巨大な光が、屍が天に帰る時が来たことを告げていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴乃宮・影華(サポート)
「どうも、銀誓館の方から助っ人に来ました」
銀誓館学園所属の能力者……もとい、猟兵の鈴乃宮です

かつての様にイグニッションカードを掲げ
「――|起動《イグニッション》!」で各種装備を展開
友人から教わった剣術や
体内に棲む黒燐蟲を使役するユーベルコードを主に使用

TPO次第では
キャバリアの制御AIである『E.N.M.A』が主体となるユーベルコードを使用したり
『轟蘭華』や乗り物に搭載した重火器をブッ放したり
「|神機召喚《アクセス》――|起動《イグニッション》!」からのキャバリア召喚で暴れます

例え依頼の成功の為でも、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
不明な点はお任せします


政木・朱鞠(サポート)
ふーん、やっと、ボスのお出ましか…。
もし、貴方が恨みを晴らすためでなく悦に入るために人達を手にかけているのなら、不安撒き散らした貴方の咎はキッチリと清算してから骸の海に帰って貰うよ。

SPDで戦闘
代償のリスクは有るけど『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で攻撃を受けて、自分の一手の足掛かりにしようかな。
ボス側の弐の太刀までの隙が生まれればラッキーだけど…それに頼らずにこちらも全力で削り切るつもりで相対する覚悟で行かないとね。
得物は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】【生命力吸収】の合わせで間を置かないダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎


ギュスターヴ・ベルトラン(サポート)
よう、お出ましだな?
…ソレが怨嗟による存在であっても、殺す事に歓びを得る存在であっても
人の間に悲しみと苦しみが広がる以上は…神敵必滅、躯の海に叩き返す

■行動
ガラが悪くとも信心深いため戦う前に【祈り】を捧げる事を忘れない
敵の主義主張は聞き、それを受けて行動する。行動原理を理解しないまま行動はしない
連携相手がいるならば相手のフォローへ、居ないなら全力で敵をシバきに行く
戦場によっては屋内でも空が飛べるタイプの魔導バイクを乗り回す
「公序良俗に反することはしてねえぞ」と言うし実際にそうするタイプ

■攻撃
主武器:リングスラッシャーと影業、魔導書
近距離攻撃が不得意なので敵とは距離を取って戦う

アドリブ連帯歓迎



 人民租界軍の残党、邪仙化僵尸妖術師はいくつもの女の死体を自らの術で操り、侵入者を排して外へと信仰しようとしていた。
 その尖兵である闇紅娘々の第一波を退け、猟兵たちは洞穴の奥へとたどり着いた。
「よう、お出ましだな?」
「ふーん、やっと、ボスのお出ましか……」
 ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)と政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は、今回の元凶と言える邪仙化僵尸妖術師を見て呟く。
 二人の言葉が同じものなら、そしてその心の中もまた同じ思い。
「もし、貴方が恨みを晴らすためでなく悦に入るために人達を手にかけているのなら」
「……ソレが怨嗟による存在であっても、殺す事に歓びを得る存在であっても」
 敵は一体なぜ死体を操り、聖夜に湧く町に繰り出そうとしているのか。敵が超大国に与し、人を襲い殺す存在のなった理由があるのか否か。
「人の間に悲しみと苦しみが広がる以上は…神敵必滅、躯の海に叩き返す」
「不安撒き散らした貴方の咎はキッチリと清算してから骸の海に帰って貰うよ」
 その答えがいかにあれ、向かう結末は変わらないと。
「勅令陏闘」
 相手の意思など関係ないとばかりに、妖術師は自ら操るキョンシーをけしかける。それをみたギュスターヴは、相手が自身に迫る僅かの間に心の中でそっと祈りをささげた。
「――天にいますわれらの父よ、御名があがめられますように。御国がきますように」
 死してなお屍を操られる女たち。そしてそれを扱う敵もまた、その身を機械と死体の融合した者に変えられた意思なき存在。
 敵の主義主張は聞き、それを受けて行動する。行動原理を理解しないまま行動はしないと誓うギュスターヴ。だが、この敵にはそれすらない。それを持つ権利すら奪われた悲しき存在である。故に、|救い《殲滅》をと彼は神に祈った。
 その祈りなど知らぬとばかりに、赤く塗れた爪がギュスターヴに迫る。
 その爪は、彼に届く前に中間からへし折れ血を撒き散らしながら宙を舞った。
「どうも、銀誓館の方から助っ人に来ました」
 後方から現れたのは鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)。構えた黒燐蟲の呪詛を込めたランチャーで、迫る闇紅娘々たちを次々と押し返していく。
「あなたもこちらを手伝っていただければと」
「了解だ」
 それに合わせ、虎獣人バハラムにも同じように爪を狙って撃つよう指示。
「そして、あなたはとどめを」
「承知」
 敵の爪はすぐに再生するが、そこを武侠笋弟に追撃させて仕留めることで相手の前線を押し上げさせない。
 飛び道具による抑え込みと長物によるとどめでまずは一旦敵は抑えた。
「憤、破、砕」
 その闇紅娘々たちの間を縫い、妖術師がぬるりと進み出て来た。二色の気を両手に纏い、妖術師の名を裏切るような怒涛の連撃が猟兵たちを襲う。
「代償のリスクは有るけど『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で攻撃を受けて、自分の一手の足掛かりにしようかな」
 それには朱鞠が前に出て、自身に【降魔化身法】をかけて真っ向から受け止めた。三つの邪霊を宿した身は手数こそ多いものの一撃は軽い敵の攻撃を難なく受け止めていく。
「ボス側の弐の太刀までの隙が生まれればラッキーだけど……それに頼らずにこちらも全力で削り切るつもりで相対する覚悟で行かないとね」
 敵の攻撃を抑え込めればまずは良いが、それ以上に相手の体力を削り切れればなお良し。そう考え妖術師と打ち合い続ける朱鞠だが、その前で妖術師の纏うオーラが粘液のようになって滴り落ちた。
 それは地面で泥のように塊となって蠢きだし、そのまま朱鞠へ向かっていく。
「来来、 宝貝「淵喚陣」」
 これは彼女が体を改造された時埋め込まれた 宝貝「淵喚陣」によって生み出された恐怖を齎す|深淵の落子《アビススポーン》。悍ましきそれは自身を生み出したものと連携を取るように朱鞠に襲い掛かり、その体を封じんとした。
「彼の力を以て世界を繋ぐ――皆、彼の地へ贈り物を届けて」
 それが朱鞠を拘束せんとした時、そこにかぶさるように霧が現れる。そしてその霧が晴れた時|深淵の落子《アビススポーン》は彼女の体から離れていた。
「これはこちらで引き受けます」
 長剣『黒の葬華』を左手に構えた影華が、その剣を自身の前にもある霧につき込む。【蟲喰孔・黒霧転装】を通った剣が、霧に巻かれた|深淵の落子《アビススポーン》たちを次々と切り捨てていった。
「吟」
 その状態で、妖術師は新たな命を下す。それに従い控えていた闇紅娘々たちが、天を仰いで声を張り上げだした。
「赤いの……赤いのぉぉぉ……」
「欲しいよぉ……ちょうだぁぁぁぁい!」
 彼女らの求める紅き歌声が、洞穴内に反響し聞く者の心を侵し始めた。
「これは毒や呪いとは違うわね……」
「聞くに堪えない、とはまさにこのことですね……」
 朱鞠と影華が顔をしかめる。この声はただの絶叫ではない。己の願望によって相手を恐怖と麻痺で染める|必殺の歌《ユーベルコード》。
 しかしその声は、ギュスターヴにはまた別に聞こえた。
「――私の目には、あなたは高価で尊い」
 血肉を求める浅ましき屍人、果たしてそれは彼女らの本性なのか。この洞穴は人民租界によって破壊された廃村の中に現れた。ならば彼女らは、かつてこの村で暮らし理不尽に命を奪われた無辜の民なのではないか。
 神に祈る男の口から、自然と優しき歌声が溢れ出した。
「あぁぁ……か、あぁ、あ……?」
 それを耳にした時、闇紅娘々たちの動きが鈍くなる。【到達】した男の祈りに、神は【その魂は我が眼に尊く】と謳えと彼に命じた。
 この歌声がもたらすは自我の回帰と悔悟。元の己を思い出されよ。そして未だ侵すには至らぬうちに己の罪を悔い改めよ。そこに天国の扉は開かれる。キョンシーと化して操られる闇紅娘々たちに、己が本来何であったかを思い起こさせその動きを止める。
「――Amen」
 そして闇紅娘々たちの首を、飛来したリングスラッシャーが素早く切り落とした。それは神に仕える男が彼女たちに下した|裁き《赦し》であった。
 そしてその声は、彼女もまた操られるキョンシーである妖術師にもとどく。
「……!? ……啊、呀、柩……」
 壊れたロボットのようにぎこちなくガクガクと痙攣する妖術師。それを影華は一瞥する。
「私は別に神とかは信じてません。しかし……」
 霧の中に剣が差し入れられる。
「他人が信じることまでは否定しません。意味があるならなおさら」
 霧は妖術師の両手に取り付き、気と|深淵の落子《アビススポーン》の発生源である両手を切り裂く。
 恃みとするのは神ではない。再び目覚めた黒き蟲の力と友人から教わった剣術、そして今の相棒である|科学の魂《キャバリアの制御AI》。
 かつてと今の力を持って、影華は隣り合わせにある『死』に立ち向かうのだ。
「私はどっちかって言うとこっち側だから……南無阿弥陀仏、極楽往生」
 そして朱鞠が拷問具『荊野鎖』で敵を戒め、そこに強烈な一撃を見舞った。振り抜かれた一撃は彼女の被る仮面を通し、その中にある頭部に確かなダメージを与える。
 仮面を完全に砕くまではいかなかったが、キョンシーとしての制御能力に異常をきたしたのだろう。妖術師は受け身も取らず吹き飛び、倒れたままびくびくと痙攣する。
「……終わったら飲みに行くかい?」
「公序良俗に反することはしねえぞ」
 バハラムがギュスターヴに声をかける。そう言えば彼も気まぐれに自らの贖罪を祈る程度の存在ではあったと、予知での事前情報を思いしながら軽く答えるギュスターヴ。
「見事。それほどの剣技を指南できるその御友人も、相当な使い手と見た」
 笋弟は友に伝えられた影華の剣技をそう褒める。それに対して影華は何も答えない。褒められて手放しに喜べるほど友には近づけていない……自らの中からぬぐえぬその思いがあるからだ。
 そして朱鞠は、忍びには決して会ってはならぬ死して屍を曝すということを強要された敵が、一刻も早く土に帰れるようただその動く骸を見下ろすのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・『祭器』召喚継続
・アド/絡◎

■行動
有頂天道人さんの『師父』が残っている以上、まだ油断は出来ませんが。
参りましょうかぁ。

『FES』の「光結界」による防護と『明り』の用意を継続、『FPS』で妖術師と配下の僵尸の配置や動向を把握しまして。
『FLS』で『FIS』を召喚後空間歪曲障壁を形成、敵方の行動に合わせ【掙綂】を発動、『豊饒の波』を注ぎますねぇ。
【砲勁】は見えずとも『FPS』で知覚可能、且つ僵尸達の『爪』共々遠距離攻撃ですので、『豊饒の波』によるベクトルの偏向は容易ですぅ。
『衝撃波』は相手が強い分、操作が容易なよう私とお二方の内「狙われた者の近くの僵尸」へ対象をずらし、『爪』は他の僵尸や妖術師自身に対象を変更、追加となる『UC封印』が入れば、僵尸達はまずお二方の脅威になりません。
脅威度の減った僵尸達はお二方に任せ、『FIS』の転移で妨害を躱しつつ『FRS』の[砲撃]と『FAS』の羽弾による[範囲攻撃]で妖術師を中心に叩きますねぇ。

折角の奇縁、またお二方が会える機会が有ると良いですが。



 獣人世界大戦の結果、超大国はいずれも大きな被害を被った。中国を拠点とする人民租界も例外ではなく、最大戦力である有頂天道人を失いその力を大きく削がれていた。
「有頂天道人さんの『師父』が残っている以上、まだ油断は出来ませんが。参りましょうかぁ」
 しかし、超大国は消滅したわけではなく更に後ろに控える存在も予見されている。それでも今目の前の敵を倒せば当座の危機は去ると、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は武侠笋弟、獣人バハラムと共にキョンシーの軍団へと向き合った。
 その周囲に張り巡らされているのは洞穴に入った時から張り続けている光の結界。暗い洞穴の中を照らし、同時に闇を力にする闇紅娘々たちの力を削ぐためのもの。
 未だ多数いる闇紅娘々たちは手をるこると二人の男に向け、赤い爪を射出する。しかしそれは光に照らされているため威力は並程度となり、男たちの持つ武器に容易く弾かれた。
「波」
 その後ろで、妖術師が何かを突き出すような動きをする。それは目には見えないものの、確かに空を切り裂く衝撃となって三人へと襲い掛かった。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その必然の指揮棒をここに」
 それに対応し、るこるは【豊乳女神の加護・掙綂】を発動。『豊饒の波』を衝撃波にぶつけることでその方向を変更、一体の闇紅娘々の方へと捻じ曲げた。
 バハラムに向け爪を振りかざしていた闇紅娘々が吹き飛び、洞穴の岩壁にぶち当たる。
「助かるぜ」
「はい、ですが……」
「構わん。これ以上助けられては土産話にするには恥が多くなりすぎる」
 笋弟がそう言いながら踏み込み、その闇紅娘々へととどめを刺した。
 邪仙化僵尸妖術師は強力なボス級オブリビオン。こちらのユーベルコードをもってしても、その攻撃を完全にいいように操作できるような相手ではない。故に、必ず防がねばならない攻撃を狙われた者の最も手近な|配下《集団型オブリビオン》へと反らすのが精いっぱい。
 しかして猟兵の秘奥たるオーバーロードを用いれば、その集団型に対してはその攻撃を纏めてはじき返すのも容易い。
 光の中勢いを失くした爪が行き場を失ったようにふらふらと飛び、闇紅娘々や妖術師へと向かっていく。その爪を妖術師は見もせずに一蹴りで簡単に叩き落としたが、闇紅娘々は出鱈目にその身を切り裂かれていた。
 致命傷にこそ程遠いが、それを受けた闇紅娘々たちは一時的にUCを封印され、爪を射出できなくなる。
「こうなればもう、僵尸達はまずお二方の脅威になりません」
 その姿を見てるこるははっきりと言った。元より集団型一体には条件が整わなかろうと後れは取らぬほどの強者たち。そして相手の必殺を削ぐ手助けをすれば、圧倒的な数的不利があろうとそれをものともしないだろう。
 二人を知るるこるは、確かなる信頼と共に男たちに闇紅娘々たちの相手を任せた。
 その信に応えるかの如く、結界の光を受け煌めく槍とナイフが次々と闇紅娘々たちを貫き、切り裂いていく。
「襲、壊、裂」
 配下たちの劣勢に構わず、妖術師はるこるへと踏み込んで襲い掛かった。UCの衝撃波に頼らぬ格闘技がるこるの豊満な肉体を襲う。それに対しては短距離転移を交えつつ空間歪曲結界の中を動くことで直撃を避けるが、素早い連撃に全てをこちらのUCで拾っている暇はない。
 攻撃をいなす中、妖術師が大きく両手を引く。その動作に、情報探査用の装備が反応した。
「烈」
 至近距離から繰り出される衝撃波の直打ち。それにるこるは再度UCを使い、闇紅娘々の方へと対象を反らした。
 一体の闇紅娘々が男たちの間を吹き飛んでいく。二人はそれに動じることなく、お互いの近くにいる闇紅娘々を冷静に処理した上でるこるを方を僅かに見た。
「的を少し残しといたほうがいいか?」
「それだけの時間があればな」
 自分たちがキョンシーを片付け切るよりるこるがボスを倒す方が早いだろう。男たちはそう信じ、敵の群れが妖術師の増援へ向かえないよう抑える役目に専念する。
 それに応えるべく、るこるは『FRS』と『FAS』、二つの射撃能力を持つ兵装を妖術師へと向けた。
 強力な砲撃が妖術師を撃つ。それを気を纏った手で叩き落とすと、その場で巨大な爆炎が上がった。その炎を方片方の手に纏った気を放って振り払い、そこからの流れで足を高く上げ蹴りを放つ妖術師。だがその足に向けて羽が弾丸のようにいくつも射出され、機械化された脚部に易々と突き刺さった。
「酔」
 その足をよろけさせ、ゆったりと横に移動する妖術師。だがそれはダメージでふらついているのではない。一定しない動きで相手の認識を妨げ、必殺を入れる隙を窺っているのだ。
 この動きから次が来る、そう察知したるこるは兵装を前に出してそれに備える。
「……滅!」
 放たれた衝撃波。それをるこるは対象変更で躱すが、相手もそれは予見済みだったのだろう。構えた手には二色のオーラがまだたっぷりと残っている。
 そのまま真なる必殺として、その両手による掌打が繰り出された。
 その真正面から、砲撃の嵐が叩き込まれる。気と砲弾のぶつかり合いによる爆発が洞穴を揺らし、結界の光さえ飲み込むほどの炎と明かりがそこを満たす。
 その爆炎に、妖術師の右手の赤い気は飲み込まれた。しかし左手の緑の気はいまだ健在。それが爆炎を貫きるこるの体に打ち付けられる。
 そのインパクトの瞬間、妖術師の手は狙いを誤ったかのように下に降ろされた。そこに突き刺さっているのはるこるの放った羽弾。それが腕の筋肉を的確に貫き、力を奪っていたのだ。
「俺の肩にもお願いしたいもんだね」
「得意そうな奴なら紹介するぞ。どうなっても責任は取らんが」
 それを横目で見て言うバハラムと笋弟。その軽い言葉は、戦いの行方を確信したからこそ。
 そして、それが明かされる時が来る。
 最後の羽弾が妖術師の仮面に突き刺さり、それを導に残る砲弾が全てそこへと放たれた。羽の刺さった部分から仮面にひびが入り、それは全体へと広がっていく。
「愿荣耀永驻我伟大祖国……我ら人民租界は不滅なり!」
 仮面が砕け散り、幼さを残すヤギの獣人の少女の顔が一瞬光の中露になり、そのまま灰となって崩れていった。そしてそれと同時に、男たちが相手をしていた闇紅娘々たちも糸が切れたかのようにその場に倒れ、元の死体に戻る。
 その死体と僅かに残った仮面の欠片に、獣人は小さく十字を切り、武侠は静かに瞑目するのであった。


 戦いが終わった時、洞穴の猟兵たちがやって来た方向とは反対側に、今までなかったはずの通路が口を開けていた。その方向に顔を向け、バハラムが小さく鼻を鳴らす。
「なんだかやけにうまそうな匂いがしてくるが……」
 その言葉に、笋弟は今度こそ心当たりがあった。
「ならば、俺の行くべきはあちら側だ……そうだろう?」
 確認するように言う笋弟に、猟兵が頷く。
「世話になったな。バハラム・ザレ。その名は忘れない」
「ああ、こっちもだ。笋弟。お前さんの行く道に幸運を」
 互いに一度目を合わせ、そして固く握手する二人。
 決して繋がれることなど無かったはずだろうその手を、るこるはじっと見る。
「折角の奇縁、またお二方が会える機会が有ると良いですが」
 世界が繋がった経緯を考えれば、もしかしたらない方がいいのかもしれないこと。しかし、るこるは願わずにはいられなかった。
「ああ、そうだな……その時は、一緒に飯でも食おうか」
「任せろ。いい店を知っている」
「いいね。担々麺はあるかい?」
「ああ……だが、覚悟しておけ。泣いて転がる羽目になっても知らんぞ」
 軽く笑って言ってから男たちは手を離し、笋弟がバハラムと猟兵たちに背を向けた。そして、口を開ける闇の中へ一人歩きだす。今回の|戦い《依頼》は獣人戦線のもの。バハラムはもちろん猟兵が帰るべき道もまたそちら側にあるのだ。
 去り行く男の背に、バハラムは静かに|拱手《古代中国の礼》を捧げる。そしてそれに応えるかのように、闇に消える瞬間に笋弟は|親指を上に向けた手《封神武侠界に無いはずのサイン》を横に出した。
 そして、来た道を戻り猟兵とバハラムは洞穴の外に出る。それから光と寒気にあてられながら後ろを振り返ると、もうそこに暗闇の道は僅かな痕跡すらも残さず消え失せていた。
 ただ、ぽつんと放置されたひっくり返って潰れた車だけが、この|奇妙なクリスマスプレゼント《二つの世界を跨いだ出会い》が幻ではないことを確かに証明していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2026年01月06日


挿絵イラスト