6
1
例えば、満たされぬ空腹があるとして

#クロムキャバリア #プラント・イーター

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#クロムキャバリア
🔒
#プラント・イーター


0




●なぜだ?
 ぼくはただ、その理由が知りたかった。新型推進機を搭載した特空機——『|⬜︎⬜︎《なんだっけ?》』のテスト|運転《ドライブ》をしていたことは覚えている。確か、雷雨の中で複数の旧型機と共にランデヴーしていた時だ。
「絶好調だな、アーサー・ワン」
「寝坊して朝食抜きにされたエースパイロットが、昼にゃ新型機を転がしてるなんてな」
 うるせぇよ、と言いつつもぼくは笑っている。テストして分かった。この機体さえあれば、他の小国家なんて簡単に潰して、プラントを奪える。そうすれば、ぼくの家族……妹が、この国の家族たちが飢えないで済む時代が来るんだ。
 朝食を抜かれたせいだろうか、少し集中できない。このテストが終わっても、隣のヤツと半分を分け合うマズいレーションしかないって考えると、余計に腹が空いてしまう。半年前はもっと食えてたのにな。ちくしょう。
 
 妹の笑顔。花畑で——この国にそんなものはないけれど——駆け回る妹の姿を想像していた。
「キルマークはどうする?やっぱ前の奴と同じか?」
「ああ、そりゃいい。捕虜になった時はさぞ特別な待遇が待ってるだろうな。……おい、アーサー・ワン?」
  
 雷鳴。
 
 ぼくだけが真っ先に気付けたはずだ。高速接近反応。|IFF《敵味方識別装置》に登録されていない機体——敵に。
 ぼくのモニターの警告に遅れて、フォーミュラー・スリーが敵接近を部隊に警告した。その直後、反応しきれなかった彼は機体ごと〝喰われた〟。
  
 なぜだろう。部隊は壊滅して、ぼくといえばあのオブリビオンマシンと相打ちになった。部隊が気を引いて、少しでもダメージを与えて、ぼくの盾になって。そうした積み重ねで相打ちという結果は、喜ぶべきか悲しむべきか分からない。ぼくの機体に寄りかかったその機体は、今はぼくを侵食している。

 ああ、お前も腹、空いてんのか?なあに、ぼくもさ……だから、共に行こう。
 これは、ぼくと君の行軍。
 あのプラントさえ呑み込めば、きっとこの空腹も晴れる。
 でも……なんでぼく達は空腹なんだろう?
 
● グリモアベース
「戦場において、飢餓というのは兵士を苦しめる一つの悪魔と言えるでしょう。敵の兵士より、飢餓と疫病はずっと命に関わるファクターです」
 グリモアベースで、プロペラがついた蒸気機械から音声が流れている。ケーカク・スレッド(人間のガジェッティア・f45568)はまるで生徒に語りかける先生のように、温和かつ感情を抑えた声で語った。
 蒸気機械がガチリ、と重い音を鳴らすと、グリモアベースの風景が一転。砂埃が舞い、辺り一帯砂と岩に覆われた空間が姿を表す。これは転移ではなく、映像を投影したものらしい。
 生命の息吹を一切感じないここには、ただ砂を運ぶ風の音が鳴っているだけだ。
 しかし、砂嵐を十字に裂くが如く、灯る閃光が一つ、確かに存在している。
「あの光は、今回討伐するべきターゲットのオブリビオンマシンのものです」
 遠くに光るその光は、少しずつだが大きくなっているように見える。
「かつて、美しい花を生産していたプラントがありました。その花に誘われる蜂のように人々が集まり、花の国と言われる小さな国を形成しました。最初こそは、その国は栄えていたのです。このプラント頼りの世界において、花なんてものを作る余裕がない国の人々に、花は確かに希望となっていました。交易によって栄えたこの国は、軍事力も交易頼りでした」
 しかし、そんな平和が続くわけもなかった。花を生産する機能を、ついにプラントは失ってしまう。花による経済に頼りすぎて、プラントの許容作業量を大きく超えていた。当たり前だが、花を失えばただのプラント。それに、花の生産に機能を集中していたせいで食料や燃料も生産量は他プラントより少なかった。
「当然、花がなければこの国は見向きもされません。プラントの生産量も少ないため、略奪にすら値しないと判断されたこの国は長い孤独と飢餓に苦しんでいました。国民達も去るか亡くなるかして人口も減り、滅びゆく運命だと誰もが思っていました。
 それでも、彼らには貿易で手に入れた戦略物資があります。それに、人の行き交いが多い場所であれば、そこには多くの技術者が集い、定住することもあります。その二つを、花の国は持っていた」
 そうして、かつての花の国は軍事国家となった。手始めに、一番近くにあった国家の資源を略奪。一時的ではあるものの、略奪した物資によって潤った国に国民は喜んだし、かつての花の国が略奪を行う国になったと非難し、レジスタンスが形成されることにもなった。

 しかし、高い技術力によるキャバリアでもプラントを強奪するまでには至らなかった。次の略奪のため、繰り返されるキャバリアの開発によって、とある機体が産声を上げる。
 その国のエースパイロットの男性が乗り込んだそれには、新型の推進機が搭載されていた。しかし、それのテスト試験中に、オブリビオンマシンの襲来によって侵食、そして今度は開発元である国へ牙を向いたということだ。
「国はそれに対抗するためにキャバリアを多数派遣。……あの光を見ればわかると思いますが、それは失敗しました。自業自得……と思う方もいるかもしれませんね。しかし、オブリビオンマシンに善悪があるわけではありません。この国を滅ぼしたら、次は周辺各国を襲うでしょう。
 ただ、キャバリア達の犠牲も無駄ではありませんでした。あの機体にはパイロットがいないこと、推進機が機能していないこと、そして無機物有機物関係なしに捕食することで力を得ていることが分かりました」
 捕食し、力を得る。無限とも言える空腹にこのマシンは何を思うのだろうか。そんなマシンがプラントを捕食すれば、手に負えない存在になるかもしれない。
  
 ただし、とケーカクが付け加える。
「この国は自らの力で解決しようと躍起になっています。当然の如く猟兵に対しても、『猟兵なぞの助力になぞあやかるか』という立ち位置です。そのため、正確なオブリビオンマシンの場所は知らされず不明なまま。
 オブリビオンマシンが国に到着し蹂躙を開始する前に、所在地を突き止めて阻止しなければなりません。まずは猟兵を忌避していないレジスタンスと合流するのがよいでしょう」
 この国に花が戻ることはおそらく無いだろう。それでも、ここでこの国が滅んでしまえば『花の国』の存在は忘れ去られ、この世界の人々の希望は薄れていくかもしれない。
「花で空腹は満たされません。ですが、この世界で花が与える希望は、どんな食料よりも重要な『人を動かす力』を持っていると思います。それを失ったこの国は、あのオブリビオンマシンを生み出し、それによって滅んでしまうかもしれない。その前に、彼らにもう一度希望を与えてください。皆さんの健闘を祈っています」




第3章 冒険 『英雄を再起させよ』

POW   :    この軟弱者!

SPD   :    キャバリアを隠してると言ってくださいよ!

WIZ   :    エゴだよ、それは!

👑7

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオンマシンがついに倒れる。
「やってやったぞ!俺たちレジスタンスの勝ちだ!」
 勝鬨を上げるレジスタンス達を、モウドリッドが諌めた。
「油断するな!まだ手を隠してるかもしれないだろ!」
 分身は塵となって消えてしまったが、オブリビオンマシンは未だその形を保っている。また|砂壁《ウォール》の砂を喰らって復活するかもしれない。レジスタンス達もそれに備え、キャバリアのシステムを以前戦闘用のものに保持していた。

「なんだ?」
 モウドリッドが声を上げた。オブリビオンマシンの中心に備え付けられた炉から、人が一人、二人とよろめきながら出てくる。全員が国の政府の軍服を着ている。キャバリアのパイロットスーツを着ているものもいた。
「こりゃどういうことだ……?」
 |砂壁《ウォール》の砂を防ぐためのヘルメットを装着した兵士たちはレジスタンス達のキャバリアを見上げ、不思議そうに眺めている。
 モウドリッドが何かに気付いたように、レジスタンス達へ通信を行う。
「あのオブリビオンマシンが喰った兵士たちだ!……どうする。かなりの人数がいるぞ」
 百人は軽くいるだろう。今のキャバリアだけで、この人数を安全に届けることはできない。それに、レジスタンスの一人が声を上げる。
「こいつらを助ける理由はないですよ、リーダー!」
 そうだそうだと皆が声を上げる。国の兵士たちの中には、酷く衰弱した様子の者もいた。
「だが、ここで助けなきゃ、略奪で他人を攻撃するあいつらと同じになっちうまうだろ!俺たちはレジスタンスだ!国の兵士だろうが、助けられなきゃ民衆に顔向けなんてできやしない!」
 リーダーの一喝にレジスタンス達の声が止まる。
「猟兵、こいつらを助けるための手助けをしてくれ。……そうしたところで、この国が詰んでるのは変わらんのは分かってるが、だから見捨てるってのは違う」