ぼくはただ、その理由が知りたかった。新型推進機を搭載した特空機——『|⬜︎⬜︎《なんだっけ?》』のテスト|運転《ドライブ》をしていたことは覚えている。確か、雷雨の中で複数の旧型機と共にランデヴーしていた時だ。
うるせぇよ、と言いつつもぼくは笑っている。テストして分かった。この機体さえあれば、他の小国家なんて簡単に潰して、プラントを奪える。そうすれば、ぼくの家族……妹が、この国の家族たちが飢えないで済む時代が来るんだ。
朝食を抜かれたせいだろうか、少し集中できない。このテストが終わっても、隣のヤツと半分を分け合うマズいレーションしかないって考えると、余計に腹が空いてしまう。半年前はもっと食えてたのにな。ちくしょう。
なぜだろう。部隊は壊滅して、ぼくといえばあのオブリビオンマシンと相打ちになった。部隊が気を引いて、少しでもダメージを与えて、ぼくの盾になって。そうした積み重ねで相打ちという結果は、喜ぶべきか悲しむべきか分からない。ぼくの機体に寄りかかったその機体は、今はぼくを侵食している。
グリモアベースで、プロペラがついた蒸気機械から音声が流れている。ケーカク・スレッド(人間のガジェッティア・f45568)はまるで生徒に語りかける先生のように、温和かつ感情を抑えた声で語った。
蒸気機械がガチリ、と重い音を鳴らすと、グリモアベースの風景が一転。砂埃が舞い、辺り一帯砂と岩に覆われた空間が姿を表す。これは転移ではなく、映像を投影したものらしい。
「かつて、美しい花を生産していたプラントがありました。その花に誘われる蜂のように人々が集まり、花の国と言われる小さな国を形成しました。最初こそは、その国は栄えていたのです。このプラント頼りの世界において、花なんてものを作る余裕がない国の人々に、花は確かに希望となっていました。交易によって栄えたこの国は、軍事力も交易頼りでした」
しかし、そんな平和が続くわけもなかった。花を生産する機能を、ついにプラントは失ってしまう。花による経済に頼りすぎて、プラントの許容作業量を大きく超えていた。当たり前だが、花を失えばただのプラント。それに、花の生産に機能を集中していたせいで食料や燃料も生産量は他プラントより少なかった。
「当然、花がなければこの国は見向きもされません。プラントの生産量も少ないため、略奪にすら値しないと判断されたこの国は長い孤独と飢餓に苦しんでいました。国民達も去るか亡くなるかして人口も減り、滅びゆく運命だと誰もが思っていました。
それでも、彼らには貿易で手に入れた戦略物資があります。それに、人の行き交いが多い場所であれば、そこには多くの技術者が集い、定住することもあります。その二つを、花の国は持っていた」
そうして、かつての花の国は軍事国家となった。手始めに、一番近くにあった国家の資源を略奪。一時的ではあるものの、略奪した物資によって潤った国に国民は喜んだし、かつての花の国が略奪を行う国になったと非難し、レジスタンスが形成されることにもなった。
しかし、高い技術力によるキャバリアでもプラントを強奪するまでには至らなかった。次の略奪のため、繰り返されるキャバリアの開発によって、とある機体が産声を上げる。
その国のエースパイロットの男性が乗り込んだそれには、新型の推進機が搭載されていた。しかし、それのテスト試験中に、オブリビオンマシンの襲来によって侵食、そして今度は開発元である国へ牙を向いたということだ。
「国はそれに対抗するためにキャバリアを多数派遣。……あの光を見ればわかると思いますが、それは失敗しました。自業自得……と思う方もいるかもしれませんね。しかし、オブリビオンマシンに善悪があるわけではありません。この国を滅ぼしたら、次は周辺各国を襲うでしょう。
ただ、キャバリア達の犠牲も無駄ではありませんでした。あの機体にはパイロットがいないこと、推進機が機能していないこと、そして無機物有機物関係なしに捕食することで力を得ていることが分かりました」
「この国は自らの力で解決しようと躍起になっています。当然の如く猟兵に対しても、『猟兵なぞの助力になぞあやかるか』という立ち位置です。そのため、正確なオブリビオンマシンの場所は知らされず不明なまま。
オブリビオンマシンが国に到着し蹂躙を開始する前に、所在地を突き止めて阻止しなければなりません。まずは猟兵を忌避していないレジスタンスと合流するのがよいでしょう」
この国に花が戻ることはおそらく無いだろう。それでも、ここでこの国が滅んでしまえば『花の国』の存在は忘れ去られ、この世界の人々の希望は薄れていくかもしれない。
「花で空腹は満たされません。ですが、この世界で花が与える希望は、どんな食料よりも重要な『人を動かす力』を持っていると思います。それを失ったこの国は、あのオブリビオンマシンを生み出し、それによって滅んでしまうかもしれない。その前に、彼らにもう一度希望を与えてください。皆さんの健闘を祈っています」
azalea
こんにちは。azaleaと申します。
今回のシナリオは、かつて「花の国」と呼ばれていた国で、オブリビオンマシンに侵食された特空機を討伐する依頼となっています。
●第一章
第一章は国内にあるマーケットで情報収集やキャバリアの確保を行います。どうやら国民にはオブリビオンマシンのことは知らされていないようですが、レジスタンスはその情報を掴んでいるようです。
マーケットは広いですが、そこを歩く人々の数は多くありません。この国の兵士が次の略奪を行えば、また配給が多くなると信じ切っているのです。
また、二章、三章は随時情報を落とします。
●プレイング
プレイングは基本採用いたします!ただし、過度なR18やR-18Gはご遠慮ください。また、リプレイによってはマスターのアドリブや共闘がございます。それらがNGな方はプレイングに記載していただけると幸いです。
第1章 冒険
『キャバリアマーケット』
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POW : 掘り出し物を足で探す。
SPD : 値段交渉に挑戦。
WIZ : 自身で商品を持ち込んで商売する。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ワタツミ・ラジアータ
ジャンク屋としてマーケットに行く
ジャンクの買い取りと修繕品の販売をしつつ情報収集
キャバリア用武器、人用武器関わらず銃や砲として修理もしくは造り直して提供する
沢山武器がお入用なら壊れた武器の幾つか頂けるなら修理費は勉強致しますわ。
あぁ、生ものも食べられますが、さすがに生ゴミは要りませんわ。
食べても良い再起不能なキャバリアがあれば喜んで買取価格に色を付ける
客が機械混じりならさらに色がつく
生ものを持ってきた純粋な人間には塩対応以下
ジャンク品をワタツミ自身が食事の様に食い散らかす
食べたジャンク品を素材として武器を再構成
それを販売する
いつか遠い未来で星を喰らい尽くす侵略機海《プラネット・イーター》
砂埃舞う国内のマーケット。かつて栄華を極めていた時代ならば、多くの人が行き交い、様々な文化に触れることのできる商業区域だった筈の場所。しかし、それも昔の話。すっかり経済活動が縮小したこの区域は、文化、栄光、そういったものを全く感じることができない。
布で最低限の天井を作った出店には人の姿はなく、あるのは空っぽの商品棚のみだ。少なくとも、生ゴミを押し付けられるようなことはないと考えれば悪くない。
「ここがかつて栄えていたなんて、考えられませんわね」
寂しい通りを、ワタツミ・ラジアータ(Radiation ScrapSea・f31308)はゆったりと歩幅を広げて歩いている。砂埃が関節部やらに入り込んで動作不良を起こさぬように対策していたから、長時間の活動に問題はない。
歩くワタツミを、一人の男が裏通りから大きな声で呼び止めた。
「おおい、そこの人。スクラップはいらんかね。半年前の略奪で出たのが大量に残ってんだ」
ちょうど良かった。やはり、争いをやめられない人間は大量の|食材《素材》を生み出してくれる。まあ、今回の討伐対象も同じようなものなのだけれど。
「見せてちょうだい」
明らかに普通の人間とは違う容姿にギョッとしたものの、男は裏通りに案内した。迷路のような道を進んでいくと、大量のスクラップと破損したキャバリアが放置された広場に出る。金属の墓場と言ったところだろうか。砂に覆われたキャバリアは、砂漠仕様の迷彩を施していたと言われても納得してしまうかもしれない。稼働停止から長いのか、破損箇所からの漏電は認められなかった。
「よくここまで集めたわね」
「ああ、資源に乏しい国だからな。ネジ一本捨てられんさ」
ネジ一本、ね。とワタツミは呟き、キャバリアにその手で触れる。男がその隣に並び、キャバリアを見上げる。尊敬の眼差しで、眉を上げながら得意げに口を開く。
「ブルーローズ01A型。この国で一番最初に作られたキャバリアだ。俺たちがしぶとく生き残ってんのはこいつのおかげだ」
うん、これならいい素材にできそうだわ。支払いはいくら?と男に聞くと、男は左右に頭を振った。
「こいつは軍に食糧と引き換えに提供するもんだ。それ相応の食べ物じゃないと渡せんよ」
呆れた。この男は最初からこれが目的だったのだ。軍に渡すぐらいならもっと〝支払いの良さそうな〟人間に吹っ掛けたほうが利益が出る。それで声をかけられたのだ。
「……面倒ね、報酬、後払いにしますわ」
ちょっと、と制止する男をワタツミは跳ね飛ばし、ブルーローズと呼ばれた機体を齧る。
「空腹でイカれてんのか!?」
男の目には、空腹でついに金属を食べようとする狂人に見えていた。その声を無視して、ワタツミはキャバリアを次々に食す。ラジエータ、バランサー、シャフト、コア……数分したところで、キャバリアは跡形もなくなってしまった。ついでに周りにあったジャンク品を少し頂戴したところで満足し、ワタツミは別のキャバリアの残骸の前に立つ。その機体は比較的形が保たれていて、片膝で姿勢を保持し、頭部は地面を向いていた。遠目から見れば少女に跪く騎士のように見えなくもない。唖然としていた彼の前で、初めてブルーローズに触った時のようにその機体に手を伸ばした。
「これが報酬よ」
ワタツミは振り返って男を見ると、またキャバリアに視線を戻す。触れた部分から、錆び付いて砂に覆われていた装甲が修復、改良が施されていく。剥げているものの、一部は青く塗られていた塗装は眩いほどの純白に塗り替えられた。頭部のアイセンサーは二つから一つのモノアイに統合され、手の粗悪なセンサーとごつごつとした指は洗練され、人のそれにうんと近くなっていた。きちんとした訓練さえ受けていれば、人間のように動かせるだろう。
まるでシンデレラの魔女のようだった。魔法を唱えて、見窄らしい姿から美しい姫に変身するかのような。
「この機体なら喜んで大量の食糧と引き換えにしてくれるでしょう。ほら、ここのスクラップは全部貰うということで構いませんこと?」
すっかり腰を抜かした男はただ頷き、スクラップだったはずの機体を見上げている。ワタツミとしては、食料を用意するより何倍も楽だし、手っ取り早い。
男の様子はお構いなしに、食事へ移行する。これから来るであろう猟兵たちのキャバリア用武器や人用武器の修繕、改造の準備に、ワタツミが販売するための武器制作をしなければならない。しかし、もう一つやるべきことがあった。
「すっかり忘れていましたわ。君、この国のレジスタンスとはどこで接触できますの?こんな規模のスクラップ、一人で集められないでしょう」
「あ、ああ……この紙に書いてある。そこにもスクラップがある筈だから、買い取ってやってくれ」
しばらくは食事に集中しないといけないわ。レジスタンスとの接触は他の猟兵に任せることにしましょう。
「あの蒸気機械も素材にしたかったけど、残念。これで我慢ですわ。にしても、今回の依頼対象……私以外に無機物を取り込む機能がある機体なんて……侵略機海の技術かしら?」
考え事をしつつ、後に合流するであろう猟兵のために御馳走を片付けなければならない。
かのオブリビオンマシンは、空腹を感じるのかしら。
成功
🔵🔵🔴
スイート・シュガーボックス
(キッチンカーを運転するミミックと神機(男の娘形態)。マーケットに突入)
レジスタンスと接触するにはどうするか?…そうだね、お菓子だねッ!
という訳で、これから『美味しいお菓子』の特別配給をはじめまーーすッ!!クッキーの詰め合わせでーーす!!
「皆お行儀よく並んでねー。急がなくても沢山あるから大丈夫だし☆」
ディオちゃんに並んでる人達にお菓子を渡してもらってる間に、『極上食材』を使いオーブンで花の形のクッキーをジャンジャン焼き上げていくよ。キッチンカーから漂うおいしい香りでレジスタンスもよってくる筈さ。
人の物を取ろうとする野蛮な人がいたら【君に届け、幸福のお菓子】で黙らせちゃうよ。
【アドリブ歓迎】
国内の首都とも言える大都市、その守衛達は焦燥に駆られていた。いつ到来するか分からないオブリビオンマシン。我が国の部隊が逐次投入されるところを見るに、略奪は出来るものの防衛の戦闘に対しては知見が全くないのだ。
「俺たち……もう終わっちまうのかな」
「馬鹿言え、これからきっと大規模な討伐隊が編成される。そうなりゃ、あの機体を回収して、略奪して、もっと大国になれる。たかが一機に何ができる」
震えている守衛は嘆息を漏らし、砂嵐の向こうを見やった。
まるで壁のようにこの国を包むそれは、他国からの侵略に対する防衛に向いているはずだった。それがむしろ、侵略者であるオブリビオンマシンの情報取得を阻んでいる。殲禍炎剣による広域通信網の喪失だけでなく、磁気を孕んだ砂嵐による通信妨害。そういった要素が絡み合って、砂嵐の中と向こう側の偵察は極めて困難であった。
「にしても、腹減ったなぁ……なんか食いもんもってねえか?」
「あったら、とっくに食ってる」
兵士でさえまともに食えていない状況で、ここに例の機体が来たら終わりだ。ふと、双眼鏡を除いていた守衛が叫ぶ。
「おい、何か来るぞ!例の機体なんじゃないのか!」
大慌てで守衛たちが陣形を組む。クソ、もう来たってのか。俺たちの死神が。
砂埃を上げ、こちらに向かってくる。しかし、キャバリアというには小さすぎるし、その形は人型でもない。この国の人々は知り得ないが、それはまさしくキッチンカーだった。
「ディオちゃん、スピード出して!」
「はーい!」
ディオと呼ばれた神機と、スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)が駆るキッチンカーはその速度を上げる。守衛達は慌てて門を閉じようとするが、間に合わずにキッチンカーの侵入を許した。
攻撃するでもなく、ただ都市の中に爆走していく車両。しばらく唖然としていた守衛たちだが、気を取り戻したのか例の車を追っていく。
そのままのスピードでマーケットに突入すると、細い路地を奇跡的なドライビングテクニックで駆けていく。
途中で合流した猟兵にレジスタンスの居場所を教えてもらうと、またキッチンカーを転がした。
「よし、ここでいいかな。ディオちゃん、開店の時間だよ!」
「よしきた!」
急停止したキッチンカーが、タイヤの慣性によって巻き上げられた砂の影に覆われる。それが収まり、再び姿を現したキッチンカーには『OPEN』のプレートが掛けられていた。
「これから『美味しいお菓子』の特別配給をはじめまーーすッ!!クッキーの詰め合わせでーーす!!」
なんだなんだと、マーケットに居を構えていた市民が通りに出てくる。次第に漂ってくる甘い砂糖の匂いに、キッチンカー前はすぐに大行列となった。
「皆お行儀よく並んでねー。急がなくても沢山あるから大丈夫だし☆」
ディオの声も掻き消されてしまいそうな喧騒の中には、先ほどまで門にいたはずの守衛さえ混じっている。
「こりゃレジスタンス探しどころじゃないね、ディオちゃん!」
流石の人数に極上食材も減りが早い。もう食材も底をつきそうになった時には、最後の客になっていた。乳白色をしたフードを深く被り、顔はよく見えない。声からして男性のようだ。
「わざわざレジスタンスの拠点前でやってるんだ、うちに用があるんだろう」
「ディオちゃん、ちょっと外しててくれる?」
はーい、とキッチンカーの奥に引っ込んだところで、男が続ける。
「こんな国に食糧を届けるような慈善家はいない。かつて交易が盛んだった時、猟兵という存在を聞いた」
「俺たちが猟兵だと思ったんだね?」
男は頷き、クッキーを一つ手に取った。
「クッキー、だろ。交易都市だった頃でさえ聞いたことしかなかった。それに……花の形とは、この国に詳しいみたいじゃないか。そこまで知っててこの国に来る奴はそう多くない。
まあ、マーケットをとんでもない速度で走る車両がいるって聞いた時は耳を疑ったが……それで、やっぱり例の機体の話か」
口笛のような音を吹かせ、シュガーボックスがキッチンカーから身を乗りだす。
「話が分かるやつは好きだぜ!オブリビオンマシン……例の機体ってヤツの情報が知りたいんだ」
男は少し考え、話始める。
国からは例の機体はプラントイーターと呼称されている。国で実験していた機体がオブリビオンマシンに侵食されたそうで、今はここにあるプラントを捕食するため、砂嵐の向こうからこちらに向かってきているようだ。国はそれを甘く見て、戦力の逐次投入をしていった結果、部隊が次々に捕食され力を増している。
「レジスタンスのスパイが一人、その部隊にいて情報を教えてくれた。……機体ボロボロになって砂嵐に塗れて死んでしまったが」
男はシュガーボックスに、クッキーと同じぐらいのサイズをしたデータチップを手渡した。
「これはなんだ?」
「スパイの機体から回収した記録データだ。これさえあれば、例の機体の速度、接敵位置だとかを解析して、ある程度の居場所が分かるはず。国はすでに把握しているらしいが、猟兵嫌いだからな。猟兵はもちろん、レジスタンスの俺たちにも教えるつもりはないらしい」
クッキーを一口で食べ切ると、少しこぼれて服についた欠片も手で取って口に運ぶ。この国では、ほんの一欠片でも食糧を無駄にすることはできない。
「そうか……ありがとう。クッキー、美味しいだろう?」
「ああ、味も、形も気に入った。いつかこれが、この世界に普及したらと願うよ」
男が礼を言うと、裏路地へ入ろうとする。しかし、キッチンカーの方を振り返ったと思えば再び、足早に戻ってきた。
「言い忘れてた。猟兵のあんたは知らないはずだ。あの壁みたいな砂嵐は、|砂壁《ウォール》って呼ばれてる。あれの砂には強力な磁気が纏ってる。この国ができるその昔に、殲禍炎剣が何かしたらしい。だから、通常のキャバリアだと戦闘に影響が出るかもしれない。磁気対策のコーティングをするか、特別なキャバリアで討伐するべきだ」
「助かったよ。俺たちがあいつを討伐したらクッキーの焼き方を伝授しよう」
「そりゃ嬉しいな……だからまぁ、なんだ。うまくやってくれよ?」
二人が無言で頷くと、男は裏路地に入っていった。
「ディオちゃん、またお仕事頼んでもいい?」
「おっけー!どうしたの?」
「このチップ解析できる?キャバリアのらしいんだけど」
「あったりまえ!任せて☆」
「解析できたら猟兵のみんなに共有しないとだね。あと、花形クッキーのレシピもメモにしとかなくちゃ」
キッチンカーのプレートを『CLOSED』に裏返し、車を発進させる。
通りには微かな甘い香りが残るだけだった。
成功
🔵🔵🔴
リカルド・マスケラス
現地の人の体を借りるなり、分身で肉体を作るなりして人の姿でマーケットをぶらつくっすかね
「ちょっと売りたいもんがあるんすよ」
コミュ力交え、良さげな店でそんな持ちかけ。売りたいものは
「花の国を取り戻す力、っすよ」
店の裏とかで【森羅穣霊陣】を描き、収穫物として花を咲かせる。【属性攻撃】を応用した【農業】なら、サイキックキャバリア乗りみたいな異能者がいればプラントに頼らずとも国を豊かにできるかもしれない。この技術提供が商品
ついでに優秀なサイキックキャバリア乗りであることもアピるっすかね
「代価は花の国を取り戻したって実績を得るチャンスっすかね?」
そうすれはこの力の価値も上がるっすよね?って感じで
もしも、という仮定の話はもう、この国において役に立たない。
プラントの生産量は少ないのに、ここら一帯の気候は人間の生活に適していなかった。乾燥した空気は人々から人体に不可欠な水分を奪い、恒常的な栄養失調で人が倒れる。舞い上がる砂塵は、対策もしなければ呼吸器系にダメージを与え、死に至らしめることもある。
「こりゃひどい、ほんとに花の国って呼ばれた場所なんすか?」
リカルド・マスケラス(希望の仮面・f12160)が歩いている通りは、特に砂嵐の酷い区域だ。恒常風の影響で、|砂壁《ウォール》から砂が吹き込んでいる。油断していると数メートル先さえ見えなくなってしまうような場所で、一人の老人が出店の中で座り、ただ通りを眺めていた。美しく、蒼い目は皺に覆われてしっているがしっかりと物事を見る能力は失っていないようだ。
「見ていかんかね、そこの方。食べもんはないが、この爺が手作りした砂除けマントならたんまりと売れ残っとる」
震えのない老人が、出店の中を指で差した。出店を覗いてみると、大小様々な布切れが乱雑に置かれている。リカルドが一つ適当に取ってみると、汚れた布切れには似合わない、彼の瞳のような蒼く美しい花の刺繍が入っていた。
「へえ、よく編んでるじゃん、全部爺さんが編んでるの?」
「妻に教わったものでな。なに、妻の方がもっと上手く縫い付けられたさ」
「奥さんはどうしたんだい?」
「亡くなったさ。半年前の略奪の前に病でな」
「すまない、気の毒に」とリカルドがマントを戻そうとすると、その手を老人が掴む。年老いているとは思えない、しっかりと力の籠った手だ。皺の奥の瞳が、リカルドの目を強烈に見やる。
「それは持ってくといい。お代はもう受け取ったわい」
「爺さん、そりゃ困るよ。俺は何も……」
リカルドの腕を掴む手を離すと、リカルドが持っているマントを指差す。
「変な話じゃがな、妻は生きとる。わしの刺繍の中に、あんたが持ってるマントにも、あんたの中にもな。その花の刺繍は妻に教わったそのままの縫い方だ。となりゃ、そりゃわしの妻そのものといえよう」
「案外ロマンチストなんだな、爺さん。でも、こんな状況で何も渡さないってのは自分の信条に反する。花は好きかい」
リカルドが出店の裏に老人を連れると、訝しげにリカルドを見る。
「なぁに、俺が売れるのは花の国を取り戻す力、っすよ」
「花の国を?」
見ててな、とリカルドは砂上に森羅穣霊陣を描き始める。老人はそれに一切の口出しをせずに見守っていた。
「よし、完成。見ててな爺さん、腰抜かすなよ?」
老人の隣にリカルドが並ぶと、陣の上に草原が広がる。その範囲は小さいものの、草花が揺れている。栄養のない砂は栄養分、水分や微生物を含んだ、生きるための土壌となった。
しかし、それも長くは続かない。風に運ばれた砂に覆われると、まるで何もなかったかのように土は砂に劣化し、草花は茶色く枯れ果ててしまう。
「あ、あれ……?俺の森羅穣霊陣でもこうなるって、一体どうなってんだ……」
ただその光景を眺めている老人は何も言わない。
「えっと、すまんな爺さん。ほんとなら、こんなことにならないだけど」
「なんじゃ、消え去ってしまったかもしれんがな、一本残っとる」
老人が砂の中へ手を入れると、彼の瞳、リカルドが持っているマントの刺繍のような青い薔薇を手に取った。
「青い、薔薇……?」
「懐かしいの。わしも、まだ花の国と呼ばれてた頃はこの薔薇の名前を冠したキャバリアに乗っててな」
老人は懐かしそうに、うっとりと青い薔薇を眺めている。
「花の国を取り戻す力には程遠かったな、爺さん。やっぱりマントは返すっすよ」
「ええ、ええ。花の国はすっかり戻ってきた。わしの頭ん中にな。ただ、この薔薇は貰ってもええだろうか」
もちろん、とリカルドが返答すると、老人は薔薇を懐にしまう。
青い薔薇、それは本来自然界に存在しないもの。なぜそれが、リカルドの森羅穣霊陣から収穫されたのかに彼自身は疑問を抱いていた。
「そういえば、さっきキャバリア乗りだって言ってたっすよね」
「ああ、そう言っとったな」
「俺もサイキックキャバリア乗りなんすんすよ」
ほお、と老人の目が、より大きく開かれた。
「わしの息子も、キャバリアに乗っていてな。代々の軍人家系ってやつじゃ。なに、あんたの話をすれば息子も喜ぶかもな。なぜかは知らんが最近、すっかり希望を失った顔をしてる。サイキックキャバリア乗りがいると聞けば、少しでも前みたいに明るくなるじゃろうて」
「そりゃよかったっすよ。んじゃ、自分はそろそろお暇させていただくっす」
そう言ってリカルドはマントを羽織り、老人に別れを告げた。青い薔薇、もし野に咲く花が希望であれば、人が作り出す希望はきっと、青い薔薇なのかもしれない。
苦戦
🔵🔴🔴
朱鷺透・小枝子
……クレイドル、この荒れよう様では、楽譜等は望めないでは?
手元の魔楽機、揺籃の子守唄が残念がるのを無視して、
【楽器演奏】マーケットの端でささやかな音楽を奏でつつ『眼倍』発動【情報収集】レジスタンスに関する情報を収集。
レジスタンスが楽譜を持ってないかですか?覚えてたら聞きます。
レジスタンスの関係者、或いは構成員と接触、猟兵である事を明かし此度オブリビオンマシンと戦いに自分達が力となる事を伝え協力体制を築きましょう。証明は、見つけた事が証左、でどうでしょう?
検索に必要な情報が揃っているのであれば、|それなりの範囲《【視力】×半径1㎞内》ならば、それなりの精度で敵の所在地も割り出せるかもしれません。
百海・胡麦
素直に武具を見せ
怯えぬ者にレジスタンスに話があると
武人と分かるよう練り歩いてみよ
出逢う皆を対象にUCの力も借りてね
紹介を願う
挨拶に『甘露』も振る舞おう
好い味だろ?
アタシの故郷も戦に明け暮れてたね
寒くて
泉がきれいな森なのに
|ころしあい《縄張り争い》さ
でも
果物が美味しくて
力に頼るにせよ。働き掛けるつもりなら
彼らは軍備の話や通信も耳にしただろか?
なにをするにも、情報が命綱だろ
聞いた話じゃ何でも喰う奴が出たってね
話から残渣があるか分からぬが
機体を喰うなら辿れる素材やエネルギー
電波の一つや二つあるやもしれぬ。…魂も、ね
妖は血肉にしちまう輩も多いが…はは、こっちの話
何か拾えればめっけもの
彼らの話を聞きたい
マーケットのあちこちで、兵士たちが忙しなく通りを行ったり来たりしている。猟兵を拒んでいる連中に見つかれば、厄介ごとになってしまうことは容易に想像できる。朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)と百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)は細い路地に身を潜め兵士たちの様子を伺いながら、どうやってレジスタンスに接触するかを考えていた。
「この国の兵士は、なぜ自分たち猟兵を忌避しているのでしょうか?」
木箱に座った朱鷺透が問いかけた純粋な疑問に、百海が顎に指を当てて答える。
「アタシには分からないよ。……まあ、推察はできるとも。兵士殿はね、助けられることに慣れてないんだよ」
助けられることに?と聞き返されると、百海は続ける。
「そうとも。この国は、花を失ってからずっと孤独だったんだよ。そんな孤独が、略奪することで初めて他国との繋がりを持てたんだね。だからこの国……あるいは軍部は、他者の助けなんてものを知らない。孤高と隔絶を履き違えた末路ってわけだ」
「……つまり、この国にとって他国のすべてが、敵だと仰りたいのでありますか?百海殿」
ああ、と曖昧に百海が返答する。兵士たちは相変わらず休む様子もなくあちこちを走り回っている。その様子は、当てずっぽうに迷路を解こうとしているかのようにも見えた。
「だから、朱鷺透殿……朱鷺透殿?」
朱鷺透の返答がないことを訝しみ、大通りを覗いていた百海が振り返る。貧乏ゆすりしながら頭を抱え、憔悴しきった表情になっている。顔には明らかに異常な汗が湧いて出て、呪詛のように何かを呟いている。
「敵、壊せ、敵、壊せ、壊せ……」
「どうしたんだい!朱鷺透殿!」
朱鷺透に駆け寄り、しゃがみ込んで彼女の目を見る。その灰色の瞳にはなにも写っていない。心配している百海のことなどまるで気にしないように、独り言を続けている。
「まずいね……|袖振り合うはひとの世なら《スマイル・アット・イーズ》でなんとかなるのかい、これ……」
その時、壁に立てかけられたヴァイオリンのようなものが目に入った。それが一人でに浮遊すると、朱鷺透の隣に静止する。
「今ここにいるのは味方だよ!しっかりして!これから味方に合流しないといけないのに、今そんなんじゃダメでしょ!楽譜探しもするって約束でしょ!」
「しゃ、喋るヴァイオリンなんて面妖だね」
朱鷺透に寄り添うのは、|揺籃の子守唄《クレイドル・ララバイ》と呼ばれる魔楽器だった。その声に、貧乏ゆすりがピタリと止んだ。
「……クレイドル、この荒れよう様では、楽譜等は望めないでは?」
「そりゃ、探さないと分かりませんよ!とりあえず今はやるべきことをやらなきゃ」
朱鷺透が静止しているクレイドルを手に取ると、重力が戻ったのかクレイドルを持つ手が少し下に引っ張られる。
「百海殿、ありがとうございます。……過去のことなど記憶にないのに、過去にあったことが自分にのし掛かってくるのです」
「なに、気にしないでおくれ。アタシも過去の記憶なんてありはしないんだよ。二人とも、共通点が見つかって何よりだね」
クレイドルを眺めていた朱鷺透が、何かに気付いて口を開く。
「レジスタンスと兵士たちの位置情報があれば、そこまでの移動ルートが見えてくるであります」
未だヴァイオリンの形をしていたクレイドルを左の鎖骨と顎で支え、演奏の姿勢に入る。弦に弓を当てると、顔を動かさず百海を見る。
「少し集中したいが故、耳障りかもしれませんが少々お付き合い頂けるでしょうか?」
百海が頷くと、朱鷺透は演奏を始めた。美しい旋律だが、兵士たちに居場所の悟られないよう、なるべく細やかな音量で。しばらく演奏をしていると、不意に朱鷺透は手を止め、立ち上がる。
「位置はわかりました。自分が先導するので、百海殿は着いてきてください」
「もっと聞きたかったんだけどね。アタシにも教えてくれるかい?」
「それほどの腕前ではないであります」
右、左。真っ直ぐ。建物の屋上を、出店の裏を、潜り抜けると、ひときわ大きな建物に辿り着く。
「自分の|眼倍《ガンマ》で、ここがおそらく本拠地として使われていると確認したのであります」
「さすがだね、朱鷺透殿。さて、ここからはアタシが腹を決めなくちゃいけないね」
腰に大太刀を携え、木製の両開きの扉を勢い良く押し開ける。
中は大きな吹き抜けとなっていて、天井からは雲や砂塵に阻まれつつも陽の光が差し込んでいる。光に照らされた砂粒がちらちらと光を反射し、幻想的な風景になっている。陽の降りかかる床は、ところどころ欠けているモザイク模様のタイルで敷き詰められていた
吹き抜けは2階まであり、その奥は影で見えない。
そんな建造物の中に、多くの人々が居た。勢い良く開かれた扉の方を、大太刀を携えた百海と眼帯をした朱鷺透を見ている。
「誰だ!」「まさか国の連中か!」「ちくしょう、作戦前だってのに!」
レジスタンスのメンバー達は焦りながら、貧相な銃器を二人に向けている。
「ど、どうするでありますか」
百海は余裕の表情を保ったまま、静かに両手を上げた。「ほら、朱鷺透殿も」と言われるまま、朱鷺透もそっと両手を上げて降参のポーズをとった。その気になれば、あの者たちの銃が放つ弾丸よりも早くここの人間を切り捨てることもできたかもしれないが、そうしては意味がない。
「アタシ達は敵じゃない。どうか銃を下ろしてくれないかい?」
信じられるか、とレジスタンス達は口を揃えて言う。レーザーサイトが砂粒を照らしながら、二人の頭を赤く染めようとしている。
「待て、お前ら」
二階の奥から、この喧騒の中でもよく響く男の低い声が聞こえてくる。その言葉でスイッチが切れたように、メンバー達は口を閉ざした。しかし、銃口はしっかりとこちらを捉えている。
「ついに例の機体が|砂壁《ウォール》内に到達した。今頃、国は躍起になってキャバリア用の資材をかき集めているところだろう。外の兵士の騒ぎはそれが原因だ」
「貴方がレジスタンスのリーダーでありますか」
男は朱鷺透を見下ろしながら答える。
「ああ、そうとも。略奪などと、卑劣な行為に手を伸ばしたこの国を叩き潰すトンカチの頭、それが俺だ」
影でよく見えなかった男が、二階の吹き抜けから身を乗り出すとその顔が見えた。右目を眼帯で包み、髪は短髪で白い。皺の少ない顔からは、おおよそ50〜60代といった印象を受ける。
「俺と同じく眼帯をしてる女に、でかい剣を持った女……この国のもんじゃないだろ」
「アタシは百海。彼女は朱鷺透殿だよ」
「ふむ、ちょっと待ってろ、直々に話そう」
男は軽々と二階から降り、一階に着地する。溜まっていた砂が舞い上がって、彼の体を隠してしまう。そのまま砂の中を歩き、朱鷺透の前に立つ。
「この国に迫っている脅威。俺もその機体自体は知らない。しかし、搭乗者は知っている」
「それは?」
「……俺の戦友だった男、アーサー・ワンだ。国による略奪で、俺達は多くの命を屠った。エースだなんて持て囃されたが、俺は罪の意識に耐えきれなかった。それでもあいつは家族のために戦っていた。そうすることが家族……唯一残った妹のためだとな」
「それはお気の毒に……でも、アタシ達はその方を討伐しないといけない」
「分かっているとも。俺だって、この国の人間だ。あいつをどうにかしなきゃならん」
朱鷺透が自らの懐に手をいれる。慌てて銃を向けるメンバー達をリーダーが手で制すると、静かに見守る。
取り出したのは、果物を詰めた瓶だった。
「これは甘露。どうだい、食べてみるかい?」
「……頂こう」
瓶を受け取り、中に入った果物を一つつまみ、口に運ぶ。
「好い味だろ?」
「ああ。こんなもの、軍の上層部でも食べられないだろう。……こんなもの、どこで?」
「アタシの故郷さ。そこも、いつも戦に明け暮れてね。美しい泉に、少し寒いけれどどこか暖かい、そんな森。でも……そんなところでも、結局は殺し合いだよ。でもやっぱり、果物は美味しい」
男はそのまま瓶の蓋を閉め、中身を確かめるように、吹き抜けの天井から降り注ぐ光を透かして見る。男の顔に、果物が影になって現れる。
「こんな荒廃した国でも、自然豊かな国でも、人間とは結局そういうもんだ。争うことをやめない。平和なんて言葉が生まれるぐらい、人間は平和じゃない」
「リーダー殿、お名前をお聞きしてもよいでありますか」
男が朱鷺透に向き直る。その佇まいは年齢を感じさせない。国に属す兵士がするような、背筋を伸ばし顎を引いて姿勢を正す。
「俺に名前はない。ただ、モウドリッド・ワンというコードネームが俺の全てだ」
「それでは……モウドリッド殿。単刀直入に言わせてもらうよ。アーサー・ワン討伐のため、アタシ達猟兵に協力して貰えないかい?」
モウドリッドは後ろを向き、レジスタンスメンバーを見渡す。
幾許かの無言の会話を目のみで行い、リーダーは彼らの決意を問いただした。
「ああ。ただし、条件がある。……俺も直接、アーサーとの戦いに挑みたい」
その一言に、レジスタンスのメンバー達が声を上げた。
「何いってるんですか!」「俺たちが行きます!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
(百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)さんと朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)さんのリプレイの続きです。誤って提出してしまったためこのような形になってしまい、大変申し訳ありません……)
「何いってるんですか!」「俺たちが行きます!」「危険すぎる!」
声を上げるメンバー達に、モウドリッドが高らかに宣言した。
「お前らの言い分もわかる。だがな、俺の戦友が、俺の知らぬところで撃墜されて耐えられると思うか。俺が行かなければならないんだ」
「モウドリッド殿……そこまで、あの機体を止めたいということでありますか」
モウドリッドが頷き、
「おい、ブルーローズの整備状況は」
「できています。が、本当に……」
結構、と建物の奥へ歩き出す。吹き抜けの光から外れ、闇の中へと一歩ずつ歩んでいく。
「それと、猟兵達への全面的なサポートの準備を。やつは今、|砂壁《ウォール》にいる。もしそこから姿を表せば、この国はパニックに陥る。今叩くしかない」
「モウドリッド殿」
一歩、百海が前に出る。
「恩に着るよ。現地まで移動すればアタシが詳細な位置を掴める」
「じ、自分も全力で戦うであります」
リーダーは背を向けたまま手を上げ、闇に消えていく。
カーバンクル・スカルン
【POW】
花の国、ねぇ。見渡す限りのこの荒野を全部花畑に本当にしてたんならぶっ壊れたプラントは本当にオーバーテクノロジーな代物だったんだろうねぇ。で、国は楽な方に流れて軍事国家に、貯蓄はいつ破綻するか分からない。私達はずっとこの場には留まれないし、すでに兵糧攻めは始まってるようだし。外に火蓋をすでに切ってしまった以上、ここで介入しても焼け石に水かもしれない……ケーカクさん、それは覚悟できてるかい?
元スクラップビルダーとしてはマーケットで軍からの横流し品を探したいかな。それで装備がどのレベルなのか、どれくらい追い詰められているのか大体把握できるからね。本当に状態がいい物があれば購入も検討するか。
なんだかマーケットの様子がおかしい。さっきから兵士たちが忙しそうにあちこちを走っているのに加えて、今度は一般人——のように見えるが、実態はレジスタンスのようだ——がコソコソと走っている。大規模な鬼ごっこをしているわけでもあるまい、とカーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)は側に浮かぶ蒸気機械に話しかける。それはグリモアベースで猟兵達に依頼を持ちかけたそれと同じで、グリモアベースからの通信を可能のしていた。
「ケーカクさん。ここで何が起こっているの?」
「どうやら、オブリビオンマシンがもうすぐで目視圏内に入るとのことで国が動いているようです。また、レジスタンスも猟兵との協力を決意したようで、キャバリア、その武器やパーツをかき集めているようですね」
先を越されちゃったか、とスカルンは辺りを見渡す。兵士に話しかけても適当にあしらわれるだけだろう。しょうがない、適当なレジスタンスに話しかけることにした。
砂除けのストールを付けた小柄な女性が一人、ちょうど近くに潜んでいる。兵士たちの動きを監視しているのか、スカルンに気づく様子もない。
「そこの人、ちょっといい?」
「ひゃっ!だ、誰なの!?」
あまりに吃驚しすぎたのか、腰を抜かしてスカルンを見上げる。顔の半分をストールで覆っているが、明らかに動揺した表情なのが窺える。蒸気機械は空気を呼んだのかステルス機能をオンにして、この空間からすっかり消えてしまう。
「私はスカルンっていうの。あなた、名前は?」
「ジェ、ジェシカ……兵士でもなければ、レジスタンスでも見たことない人?もしかして、猟兵ってやつの一派なの?」
「よく知ってるわね。やっぱり、レジスタンスと猟兵が手を組んだってのは間違いなさそう」
ジェシカが気力を取り戻し、立ち上がる。スカルンよりも一回り小さい彼女は子ウサギのような様相をしていた。
「これから本格的な討伐が始まります。国の連中よりも先に、私たちレジスタンスが討伐することで私たちの影響力をより大きくしてやるんです」
「……まぁ、そうするのが得策なのよね、レジスタンスは」
嘆息して、|砂壁《ウォール》を眺める。
あの砂嵐の中で戦えるほどの装備が残っているのだろうか?こんな寂れた市場で必死に装備をかき集めても、ジャンク品程度しか見つからないだろう。正直に言えば、スカルンから見ればそれは自殺行為だった。
「ねえ、ジェシカさん。軍からの横流し品とか、レジスタンスの装備を見せてもらってもいい?私、こう見えても技術屋なの」
「猟兵でしたら、むしろ大歓迎です。整備拠点に案内しますね。すぐ近くにあるので、行きましょう」
ジェシカが案内した整備拠点は、多くの人間が集っていた。肝心のキャバリアと言えば……想像よりも遥かに性能が良さそうだ。スクラップから作り上げたとは思えない、どの国の最新鋭機体にも匹敵しそうだと一目でわかる。純白で染められた装甲に、モノアイが搭載された機体達を見渡すと、一つだけ、何世代も昔のものであろう機体があった。
「あれは?一つだけ、古めかしい機体があるけれど……」
「あれはレジスタンスのリーダー、モウドリッドさんの機体です。すごいお古の軍用の機体で、みんな乗り換えるように言ってるんですが……」
その機体に近づき、様子を眺める。装甲の素材はかなり古びているし、各種動作パーツもおそらくは何世代も前のものだ。ただ、機体の右足に当たる部分にはいくつもの青い薔薇が描かれている。
「それは、リーダーが兵士だった時代に描いたキルマークだそうです」
「こんなに?兵士だった時のものをどうして残してるの?」
贖い、とジェシカが答える。それはモウドリッドが、自らの行いを隠すのではなくありのまま見せることで、かつて自分が加担した略奪行為を戒めるためだと。
「そんなところですね。まだ改装していない軍のキャバリアも見てみますか?」
お願い、とスカルンが告げると整備場の奥へ案内される。そこには誰もおらず、廃材同然のキャバリアから、なんとか稼働はできそうなキャバリアなど様々な機体が置かれていた。
「横流しされたもの、戦場で回収したもの……そういったものをここに溜め込んでたんです。別の猟兵さんがこれらを使って、あの新型キャバリアを作ってくれてたんですよ。ここにはいないみたいですが……」
先ほどのリーダーが乗ると言っていた機体に比べれば、技術の進んだ機体ばかりだと言える。しかし同時に、補修といった長持ちさせるための工夫は凝らされていない。
「つまり、軍は機体を使い捨てにしていたってことなのよね?」
「そういうことです。新しい技術を追い求めて、今ある機体を消耗品程度にしか見ていなかったんです。ただでさえ、資材には限りがあるのに……」
「しばらく一人にして欲しい」
「わかりました。何かあればさっきのところにいるので、呼んでください」
ぺこり、と頭を下げてジェシカが引っ込んでいった。
「ケーカクさん、どう思う?」
名前を呼ばれると、ステルスのまま追尾していた蒸気機械が再びその姿を見せた。
「おそらくは、プラントの修繕のために使っていた研究資源を全てキャバリアの生産に注ぎ込んだのでしょう。そのほうが手っ取り早い、と考えた行動ですね。ある意味で、今回の依頼はこの国の自業自得とも言えます。ですが、僕はそれを責める気にはなりません」
「そうね……あのプラントは相当なテクノロジーを持っていたはず。それを失って軍事国家となって、資源の貯蓄もいつ無くなるか。猟兵だってずっとここに居るわけじゃない。他の国が、世界が助けを求めているからね」
蒸気機械に備え付けられていたレンズを真っ直ぐと見据え、スカルンが問う。
「たとえここで介入しても、焼き石に水だと思うの。もう、この国は奪うことでしか生きていけない。でも、抵抗組織が生まれて、オブリビオンマシンも現れて……もう限界なのね。花の国は滅びる。ケーカクさん、それは覚悟の上なの?」
「……猟兵というシステムの欠陥とも言えるでしょう。確かに僕たちは、常ならぬ力を持っています。でも、全知全能ではない。全てを救えるわけじゃない。救ったからといって、それが一時的なものでしかないかもしれない」
それでも、とケーカクは続ける。
「ここで止めなければ世界が終わってしまう、なんて論法じゃないんです。今ここで、守れる命を守らないといけない。それが僕たち猟兵にできる唯一の足掻きなんです。世界を守る強大な力だけでは世界は救えない。これは、すでにこの国が証明しているとは思いませんか」
どれだけ美しく長持ちする青い薔薇を作り、その花畑を作っても。一輪たりとも野に咲く花がないのなら、その光景はいつまでも美しいと思えるのだろうか。
「……分かったわ。それが貴方の意見なのね」
ジェシカを呼び、このスクラップ達を買い取る旨を伝えた。
「えっ、でも……これからの戦闘に必要になりますから」
「その上で、よ。私が買い取って、それをうまく組み立てて戦闘に使う」
「スカルンさん……わかりました。ここにあるものは自由にしてください。あとで私が、みんなにきちんと説明しますから」
ありがとう、とジェシカに礼を伝えると、軍用キャバリアの山に向き合った。
青い薔薇だらけの世界に、一輪でもいいから、赤い薔薇を。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『特空機零型・壊『デストルード』』
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POW : BS-B『アブソリュートカノン』
【20秒の内臓縮退炉からエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大規模戦略級の重力砲】で攻撃する。
SPD : 特式機甲戦術『凶獣の牙』
自身の【カメラアイ】が輝く間、【右腕の振動クロー】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 超振動破砕撃『ブレイクダスター』
攻撃が命中した対象に【超振動】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【全身を襲う振動波】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:dam/dam
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ガイ・レックウ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
今、全ての準備が終了した。オブリビオンマシンのおおよその位置を特定し、それが今|砂壁《ウォール》の中にいることが判明した。
猟兵が用意した、レジスタンス達が駆る|砂壁《ウォール》で戦うための特殊加工されたキャバリアに、猟兵達のキャバリアのための武装や特殊コーティング。
そして何より、猟兵そのものの存在がこの戦況を左右するだろう。
「これから俺達は、|あの馬鹿《アーサー・ワン》を討伐しに行く。この国で最高峰の操縦手だった。それが今や、あの忌々しい|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の尖兵となった。そして、俺たちの国のプラントを狙っている。かつて、この地に花を咲かせたあのプラントをだ。
最初は、大勢の死を覚悟していた。この俺自身もだ。だが、猟兵達の参戦によって状況は変わった。彼らの助力なしでは、レジスタンスは国共々滅ぶだろう。だが同時に、この戦いは、この国の支配者へ叩きつける宣戦布告でもある。
俺たちは、略奪などしない。人がいる限り、そこには調和の可能性があるのだと。
願わくば、この戦いがこの地最後の戦いになることを祈ろう」
リーダーの演説で、レジスタンス達は一斉に手を上げて声を上げた。やってやる。この地に花を。略奪者に報いを。
「これより、討伐隊の出撃を始める!各自、自らのキャバリアに搭乗し待機すること。最後の別れを言うのはやめておけ。俺たちなら生きて帰って来れる」
|砂壁《ウォール》の中で、何かが蠢いていた。
ああ、ここはよく食えるな。だがぼく達の空腹は満たされない。
すでに幾つを喰らっただろうか。向こうから来る餌でも満たされなかった。やはり、あのプラントを喰らわねばならない。
そうだろ、モウドリッド。ぼく達二人で、また沢山喰らおう……
機体から何かが、漏れ出ていた。
キャバリア達の駆動音が一斉に響く。号令と共に、この寂しいマーケットから飛び出し、あの|砂壁《ウォール》へ向かう準備が完了した。オイルの匂いに、以前よりもクリアになったコックピットからの視界。レジスタンス達は皆、既に戦う準備ができていた。この人数に、猟兵達の協力。負ける見込みなど存在しなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第二章はボス戦です。かつてのエースパイロットアーサー・ワンとの戦いに、猟兵達は身を投じることになります。磁力を纏った|砂壁《ウォール》が吹き荒れる中での戦闘ですが、猟兵達の尽力により|砂壁《ウォール》対策が施されたキャバリア、あるいは自身のキャバリアに|砂壁《ウォール》対策を施すことができます。
また、必要に応じてモウドリッドとの共闘ができます。その際は共闘する旨をプレイングにご記載ください。ただし、レジスタンス達は……?
よろしくお願いいたします。
ワタツミ・ラジアータ
嘗て人であっても今は機械。
ならば優しくしてあげたいところですがこちらもお仕事なので一旦は機能停止していただきますわ。
先まで食べた資材を元に重力砲『Song of SteelBorne』を使うが燃料不足による出力差異により負ける
葬送の花《彼岸花》が咲く
五番目の異界より試作死神再現機《姉》が呼ばれる
同じUC《グラビティ》鉄骨の唄を使う
油が断れましたか?
やはり貴女達は単純ですね。
うるさいですわ。この我楽多塗れ《節操なし》の旧型が
壊れた《心を得た》姉妹は不承不承なら協力して戦う
この星は私の餌場なのですから何も食べさせませんわ。
既に終わった貴方に憐れみの花を手向けましょう。
アレンジお任せ
号令を待たずしてマーケットから初めに飛び出したのは、レジスタンス達のキャバリアではなかった。
150cmぐらいの少女の姿をしたレプリカント。小回りの効く二本足で真っ先に|砂壁《ウォール》へと向かう。道中、騒ぎ立てている兵士たちは皆無視。ワタツミ・ラジアータ(Radiation ScrapSea・f31308)は都市の防壁を軽々と跳躍し、眼前に広がる荒野と、その向こうの嵐。嵐へと走る閃光となって、ワタツミは討伐のため進む。
原生生物もおらず、植物もまるで存在しない。足元の砂と砂漠特有の高低差だけがワタツミの走行における障壁だった。
都市を飛び出して一刻。急停止して、もはや面前に迫っていた|砂壁《ウォール》を見上げる。
「この壁のような砂嵐……|あの忌々しい機械《殲禍炎剣》が作ったとか。何を考えてこんなものを作ったんですの?」
まぁ、そんなことを|思考《演算》しても意味はない。
砂に遮断、反射される光をデータ化し、それを元に補償光学プラグインを起動。ある程度のノイズはあるが、これなら砂嵐の中でも視界が確保できる。
|砂壁《ウォール》に入り込み、辺りを見渡す。まだ例のオブリビオンマシンはここまで侵攻してきていないようだ。|砂壁《ウォール》がどれほどの規模なのか分からないが、かなり奥まで入り込むことになるかもしれない。
「……あれですわね」
一体どれほど進んだだろうか、文字通りの体内時計も磁気の影響で頼りない。
砂嵐の中を一歩、また一歩と進むオブリビオンマシン。濡羽色の装甲に、暗い赤紫色の結晶が鳴動しながら引っ付いていた。
装甲に砂埃が付いている気配はない。……と言うよりは、砂が付着したその瞬間に消失している。
「あれは、この砂埃ですら捕食しているってことかしら?まずいですわね、それだと、ここにいるだけで力が増幅していくことになりますわ」
即断即決。マーケットで手に入れた資材を使い、右腕を代償に武器を生成。例の機体を参考に、重力砲『Song of SteelBorne』に右腕を換装する。それと同時に重力砲をチャージすると、オブリビオンマシンがワタツミの存在に気がつき足を止める。
機体の胸にある炉心に、紫電が収束し始めた。ワタツミの重力砲に宿るそれよりも、はるかにサイズが大きい。先に重力収束を始めていたワタツミの『Song of SteelBorne』が先に放たれ、それに遅れを取りながらもオブリビオンマシンからも放射が始まった。
圧縮された重力が、周りに舞う砂埃の動きをランダムに捻じ曲げ、砂の濃度が薄まったり増したりするせいで、ワタツミは視界がうまく取れない。しかし、既に計算はできていた。
圧倒的な出力差。既に捕食を繰り返し、さらには|砂壁《ウォール》の中にいることでエネルギーに余裕のあるオブリビオンマシンに対して、この国で補充できるエネルギーなどたかが知れていた。砂塵を巻き込みながら、ワタツミの全身を紫電が襲う。
痛みはない。ただ、体が損壊していくのを認知する。処理装置に送信される損傷レポートが、|今の体《外装》の悲惨さをコンマ単位で更新し続けていた。 重力によってフレームが歪み、内部骨格が露出し、必要な動力供給がところどころで絶たれている。これを食らったのがただの人間であれば、周りに吹き荒れる砂嵐の一部になっていただろう。
オブリビオンマシンは照射を中断し、ワタツミに近づく。……空腹を満たすために。
「油が断れましたか?」
|砂壁《ウォール》の上空から、何の前触れも無しに降り立ったそれは、真鍮のような手足をしたレプリカント。
「やはり貴女達は単純ですね。」
「うるさいですわ。この|我楽多塗れ《節操なし》の旧型が」
損傷した発声器官からの声は、以前にも増して無機質であったのに、どこかその声音には蔑みの感情が感じられる。
「その損傷ではしばらく動けないでしょう。口を開いておきなさい、ワタツミ。この砂であれば、修復に使えるでしょう」
ああ、開ける必要もないかしら。と、無自覚な皮肉を溢す|試作死神再現機《姉》の言を聞き流し、自らの修復に励む。
「確かに、全身で食事できる彼は、私達よりも取り込む効率は良さそうですね」
新手の出現を確認したオブリビオンマシンは、再度重力砲の発射に備えている。それを見た|試作死神再現機《姉》は、頭上に重力球を作り出す。あのオブリビオンマシンと同レベルの力を感ぜられた。
「万全な私でも、相殺が関の山ですね。修復がある程度終わったら、手伝ってくれますか?」
そうするしかない。ワタツミは返事もせず、自らの右腕に修復を集中させる。
全センサーの稼働を一時中止し、砂嵐による修復に全機能を注ぎ込む。おそらくは、一度|試作死神再現機《姉》とオブリビオンマシンの砲による激突があったはずだ。
応急処置程度の修繕を終え、各センサーを再起動させる。オブリビオンと|試作死神再現機《姉》のほぼ中間には、巨大なクレーターが生成されている。激しい砂嵐で、少しずつ埋められていくクレーターの周縁に、ワタツミはいた。
「修復は終わりましたね。次は仕留めますよ」
「……この星は私の餌場なのですから何も食べさせませんわ。」
動作の鈍い稼働部を無理矢理動かし、重力砲『Song of SteelBorne』をオブリビオンマシンに向ける。
エースパイロットが乗っていた、と聞いていたが、その様子は見られない。今のところ、ただの火力のぶつけ合いだ。あの機体自体は、そのエースパイロットが操縦している訳ではない?
「合わせてください、ワタツミ」
「うるさいですわ……こちらもお仕事、既に終わった貴方に憐れみの花を手向けましょう」
充填終了。三者とも、紫電を纏わせ佇む。
先に放ったのは、オブリビオンマシンだった。そして、姉妹が同時に放つ。
重力の奔流に、時間も、時空さえ歪んでしまう。一瞬の閃光の中に、広大な花畑の光景が映った。
しかし、その幻想もすぐに閉じ、そこには再び砂嵐が舞い込む。
こちらに損傷は一切見られない。……重力砲『Song of SteelBorne』の反動によるものを除けば。
補償光学ソフトウェアの機能の一部復旧。より詳細に砂嵐の中を見る。例のオブリビオンマシンは、重力砲をまともに食らったようだ。装甲の一部が折れ曲がり、スパークが飛び散っている。
|試作死神再現機《姉》は、もはやその姿を消していた。
成功
🔵🔵🔴
カーバンクル・スカルン
【クリスタライズ】で姿を隠して整備場で作業している人らを気絶させたら、パイロット達が来る前にキャバリアの古い部品を片っ端から外す。これでレジスタンスの出動は出来ない。あれに常人が勝てるわけなかろうが、無駄死にさせてたまるか。
怒られても「『ここにあるものは自由にしてください』って言われた」ってジェシカさんに全責任を押し付ける。お金は払ってるし、ちゃんと修理自体はしてるし、私は|いつ出動するか《・・・・・・・》知らないで作業を開始しちゃったってことで。
戦地にはエレキラーを出撃させて件のキャバリアの足止めをしてもらう。鎖で繋がれば振動攻撃をされてもまるごと全部本人に返せるしね。
誰かが既に出撃したようだ。本部にいるカーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)は、レジスタンスの会話をこっそり盗み聞きし、状況を確認していた。物陰に隠れたまま、スカルンは自らの|UC《クリスタライズ》で整備場に忍び込む。整備場で最終チェックを行なっているメンテナンス要員の背後に立ち、一人ずつ気絶させていく。
実際のオブリビオンマシンの戦力はまだ完全に把握していないが、無駄な人死にを出すわけにもいかないのも事実だった。レジスタンスの機体の部品を片っ端から解体する。そうすれば、彼らは出撃できなくなるはずだ。
「ま、怒られてもジェシカさんのお墨付きだから平気よね」
メンバーに囲まれ責められる涙目のジェシカの姿を想像すると、申し訳なさとどこか悪戯な心情が湧いてくる。しかし、それで人命が助かるのなら軽いものだろう。
キャバリアの部品を手際よく取り外していく。一機、二機と工作を繰り返すが、ここで外から足音が聞こえてきた。まずい、もう連中が?スカルンはUCによる疲労もあり、ここにあるすべてのキャバリアの解体は困難だと判断した。
「せめて、私たちが討伐するまでの時間を稼がないと……」
一機一機、丁寧に取り外す時間はない。駆動系の一点、取り外しやすいが再び戻すのが面倒な部品を見極め、この整備場のキャバリアを次々に妨害していく。最低限の時間稼ぎはこれで十分。最後の一つ、例のモウドリッドの機体に手をかけた時、ついに整備場にレジスタンスの面々が入ってきた。
「おい、大丈夫か!整備員が倒れてるぞ!」
その声を皮切りに、整備場に続々とメンバーが入ってきた。ブルーローズの傍にいるスカルンを見つけると、彼女が犯人であるとすぐに彼らは気付く。
「おい、お前がやったのか!」
「さあ、みんな疲れて眠ってるみたいなの……だから、私がちゃんと修理しようとして所なのよ?」
それに、あの子にここにあるものは自由にしてください、って。
指差した方向には、例の彼女、ジェシカが口を開けて唖然としている。
「お前、なんでこんな奴に弄らせたんだ!レジスタンス総力で挑むべき相手だぞ!」
叱責の嵐の目にいる彼女には申し訳ないけれど、これしか方法がなかった。ただ、問題なのはこの最後の機体。
「俺は一人で出る」
レジスタンスの中から、一人の男が歩み出る。モウドリッド。
「一人で出るなんて、リーダーが死んでどうするんですか!」「せめて俺たちの修理を待ってからでも!」
反対の意見を投げかけられても、ブルーローズを見やるその眼光に揺らぎは一切なかった。コックピットにつながるキャットウォークへ登ると、一同を見下ろした。
「たとえ俺が足手纏いだろうと、無駄死にだと言われようと、俺は行かなきゃならん。そこに道理も論理もない。ただ、俺は友を弔うために出撃する。もはや俺にリーダーの資格なんてないだろう」
コックピットを開き、いい加減ガタが来ているはずの機体に乗り込む。
「もしまだ、俺に着いてくる奴がいるなら、さっさと修理を始めろ。俺に遅れるなら、この組織の新たな指導者を今のうちに決めておけ」
「モウドリッドさん、そこまでする相手なの?」
スカルンの問いかけに、モウドリッドはただ、ああ、とだけ頷く。操作系をチェックすると、システムのリブートに入った。
「くそっ!俺たちだって死にたかねえよ!でも、臆病者のまま死ぬのはもっとダメだ、そうだろ皆」
誰かの声に、レジスタンスのメンバーが一斉に歓声をあげた。メンテナンス要員を叩き起こし、キャバリアのメンテに復帰させる。嘆息するスカルンに、モウドリッドが各種操作パネルのチェックをしながら声をかけた。
「この妨害はあんたがやったんだろう。確かに、あのバカ共にゃ死んでほしくないがな。でも、それは同時にあいつらの覚悟を踏み躙る行為でもある」
「常人が挑んで勝てる相手じゃない、なぜそれを止めないのよ」
「みんな知ってる。この国はいずれ滅びるってな。そして心の中で、その片隅のどこかで、この国がやった略奪行為は仕方がなかったと思ってる」
各種パラメータのチェックを終え、モウドリッドはレジスタンス達の整備を見守る。
「でもな、それを仕方ないで済ませられん連中なんだよ、こいつらは。そんなアウトサイダーの受け皿を作った俺自身だってそうさ」
死ぬとわかっていて、せめてその死に様は自分で決めたい。側から見れば自暴自棄にしか見えないそれは、あまりに滑稽に映る。
「ま、それもあんたら猟兵のおかげで人死にも減りそうだがな。むしろこの妨害に感謝しているぐらいだ。あいつらの士気は上々、この整備の間にも猟兵が戦ってくれてるんだろ、多分。そうなりゃ、あとは俺たちが美味しいところだけ持ってっても文句はないよな?」
「……まぁ、そうね」
|砂壁《ウォール》の中で、二つの巨体が相対していた。例のオブリビオンマシンと、腕に巨大な拘束具を装着したバトルゴーレム。エレキラーと銘打たれたゴーレムは、拘束具の着いていないほうの腕をオブリビオンマシンに向け電撃を放つ。磁力を孕んだ|砂壁《ウォール》を巻き込み、電撃はオブリビオンマシンに着弾する。大きくよろめくオブリビオンマシンに、腕を大ぶりに振り、拘束具を巻き付ける。
まるで山と山が争っているかのようだった。一挙手一投足が大地を揺らし、地形が変化するほどに砂を舞い上がらせている。
例の機体も反撃体制を取り、右腕のクローを引っ込める。そして拘束具を手繰り寄せながらゴーレムに接近し、思いっきり右手で殴りつける。クローが右手内部で振動を起こし、それがゴーレムに伝播する。内側からの激しい振動で、ゴーレムが片膝をつく。
しかし、オブリビオンマシンもそれに遅れ、体制を崩した。拘束具によって振動が共有され、自らの体に跳ね返ってきたのだ。両者は互いに行動不能となりながらも、しっかりと敵の姿を見ていた。
苦戦
🔵🔴🔴
スイート・シュガーボックス
レジスタンスの皆。俺達も手を貸すよッ!
え?キャバリアも無いのにどうするかって?ふっふっふっ、あるよッ!取っておきのこれ以上ない特別なキャバリアッ!ディオちゃんお願いッ!
「おけまる、大☆変☆身☆」(神機形態になるディオちゃん)
ご紹介します。ディオちゃんこと幻惑神機『ディオニュソス』だよ。俺が搭乗して『お菓子缶箱ミミックボディ』でエクトプラズムアーマーを展開。これで磁気対策もバッチリ。『VOB』起動、発進ッ!
敵を見つけたら『豊穣葡萄』を展開してディオちゃん。生成したお酒を高圧縮射撃してオールレンジ攻撃だ。あの右手はヤバそうだからね。距離をとるよ。
そして必殺の【八岐大蛇酒撃砲】だッ!
【アドリブ歓迎】
本部近くの広場、その中央でスイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)は待機人員と共に|砂壁《ウォール》の方を見ていた。レジスタンスの面々も、キャバリアの修復が終わるまでは動けない。
「俺達、正直暇っすね。メインの討伐隊も待たされてますけど、補助の俺達の出番はなさそうだし……」
同意の声を募らせる補助隊の面々の中には、|あの男《クッキーの約束をした男》は見当たらない。本隊にいるのだろうか。……それなら、彼らに負担をかけるわけにもいかないか。シュガーボックスはちょっとした土台の上に立ち、レジスタンスの注目を集める。
「レジスタンスの皆。俺達も手を貸すよッ!」
「でも、あんたら……見たところキャバリアを持ってないじゃないか」
「ふっふっふっ、あるよッ!」
シュガーボックスがディオに目配せする。何をするのか、即座に理解したディオはにんまりと笑って、広場の空いたスペースに立つ。
「ディオちゃんお願いッ!」
「おけまる、大☆変☆身☆」
シュガーボックスの号令で、ディオの周囲が光で満たされると同時に、強風が周囲を襲う。砂が舞い上がってレジスタンス達に到来する。レジスタンス達が顔を覆ったり咳き込む中で、少しずつ光と風が減衰していく。
舞い上がった砂が落ち着くと、巨大な影が浮かんでくる。
ディオが立っていた場所には、巨大な黄金色の機体が佇んでいた。
「ご紹介します。ディオちゃんこと幻惑神機『ディオニュソス』だよ」
『やっほー☆』
ディオニュソスが腕を伸ばすと、シュガーボックスがそれに乗る。腕をコックピットのあたりに近づけると、機体へ搭乗した。
「|砂壁《ウォール》対策も俺の『お菓子缶箱ミミックボディ』でバッチリ」
機体が浮遊を始め、オブリビオンマシンの方向を向く。
「『VOB』起動、発進ッ!」
その言葉で、ディオニュソスの背中にある光輪ユニットが活性化される。光輪が輝きを増し、大量の液体が噴射されると、レジスタンスの目にも止まらないスピードで|砂壁《ウォール》へと向かっていった。……酒に塗れたレジスタンスは、ただ茫然と空を見上げている。
『砂嵐の中でも視界バッチリだしッ!』
数回のズームを経て、例の機体を見つける。この砂嵐の中で、常人には視認すらできない高速接近に早くも気付かれた。オブリビオンマシンは、歩みを止めて右腕を上げて構える。
「あの右手、ヤバそう!」
ディオニュソスから八つの宝珠が展開される。『豊穣葡萄』と呼ばれたそれが、飛行するディオニュソスを八角形で囲むように並んだ。
『これはウチの奢りだしッ!!』
『豊穣葡萄』が、大量の酒が生成する。波打つ塊となったそれを、一斉に発射した。塊が形状を変化させ、巨大な蛇龍を構成する。VOBによる高速移動の慣性も乗って、巨大な質量攻撃が例の機体を襲った。
ディオニュソスはオブリビオンマシンを迂回するように飛行し、背後で停止する。手応えはあった。激突した酒の龍が、役目を果たして広範囲に酒の小雨を降らせている。その雨の中で、オブリビオンマシンが再び歩み始めた。
「嘘でしょ、あんま効いてなさそう!?」
酒の質量による攻撃で、確かにオブリビオンマシンはよろめいていた。しかし、酒を捕食し、その力を逆に防御に回していたのだ。受けきれない衝撃でよろめくも、ダメージを最低限に抑えられてしまう。
苦戦
🔵🔴🔴
スイート・シュガーボックス
「あのオブリビオンマシン、ウチらと相性最悪じゃね!?」
ディオちゃん落ち着いて。
なら逆に考えるんだ。食べさせちゃえばいいさと。
そもそもお腹が空いた相手に普通のバトルを仕掛ける事が、俺達らしくなかったね。この国の終末的空気感に当てられちゃってたみたいだ。反省反省。
と言う訳で俺達らしくオブリビオンマシンを攻略だッ!ディオちゃん、コクピットハッチを開いてッ!
「ガッテン承知ッ!」
ディオちゃんから勢い良く飛び出すよ。
当然、砂嵐によって吹き飛んじゃうけどそれが狙い。この風圧を利用して勢い良く回転だ。
うおりゃああ、オーバーロードッ!そして【お菓子満ちる回転嵐】ッ!
お菓子の嵐を巻き起こして砂嵐を相殺して砂壁を一時的にでも吹き飛ばすッ!
晴れろーーーーッ!!
浄化の力を練り込んだ美味しいお菓子をドンドン食べさせて、心とお腹を満たして骸の海に帰ってもらうよ。
花の形のクッキーやチョコやグミ、カップケーキッ!
プラントを狙ってるなら戦場は国全体と言える。
なら、この国の全ての人達にもお菓子をお届けだあッ!
【アドリブ歓迎】
「あのオブリビオンマシン、ウチらと相性最悪じゃね!?」
【八岐大蛇酒撃砲】による酒の質量攻撃では分が悪い。際限なく捕食するオブリビオンマシン相手に、何か打てる策は——
「ディオちゃん、コクピットハッチを開いてッ!」
『ガッテン承知ッ!』
スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)の要求を、疑うこともなく受け入れてコックピットハッチを開く。コックピット内に、砂嵐が舞い込んでくる。
身を乗り出すと、吹き荒れる|砂壁《ウォール》の砂嵐に、身を任せてそのまま中を舞う。オブリビオンマシンは、補助コンピュータによる脅威判定を繰り返しているものの解析が追いつかない。ひたすらシュガーボックスを頭部センサーで捕捉し続ける。
シュガーボックスは身を委ねたまま、機会を伺う。まだだ、まだ、まだ……
十分に速度を確保する。『お菓子』を巻き上げるのに最適な位置を探す。自身の高度を確認する。
今だ。
「うおりゃああ、オーバーロードッ!そして【お菓子満ちる回転嵐】ッ!」
シュガーボックスから大量のお菓子が放たれる。クッキー、グミ、カップケーキ……そのどれもが花の形をしていた。
|砂壁《ウォール》の中に、お菓子の嵐による新たな壁が形成される。
「晴れろーーーーッ!!」
お菓子によって砂が阻害され、オブリビオンマシンとディオニュソスを中心に恒星からの光が差し込む。快晴の空に覆われ、両機の装甲が照らされた。
オブリビオンマシンは砂嵐の供給が途絶えたものの、旧態依然としていた。シュガーボックスがお菓子の嵐に乗ると、そのままサーフィンの要領でオブリビオンマシンに近づく。お菓子の波がそれに合わせるように、オブリビオンマシンを包む。
……お菓子か、一体いつ以来だったか。
この光景を、あの遥か空からこの世界を脅かす殲禍炎剣はどのように計算しているのだろうか。
しかしこれでは、今までのように、お菓子を捕食することで力が増強されてしまう。【八岐大蛇酒撃砲】がそうしてダメージを軽減されたように。——そう思われていた。
ところが、オブリビオンマシンがそのお菓子を摂取すればするほど、機体の出力が下がっていく。
「浄化の力を練り込んだ美味しいお菓子だッ!」
際限なく捕食できるのならば、食べれば食べるほど浄化されるものを食べさせればいい。そして、お菓子の嵐が勢いを増す。
「プラントを狙ってるなら戦場は国全体と言える」
突如、お菓子の波が勢いよく快晴の空へ飛び出していく。
「なら、この国の全ての人達にもお菓子をお届けだあッ!」
空中へ飛び出したお菓子たちが、かつての花の国に降り注ぐ。何事だ、と兵士たちが唖然として空を見上げる中、市民たちは大急ぎでそれらを拾い、掴み、笑顔で眺めている。しかし、レジスタンスたちはそれに構わず都市の壁から出撃を始めていた。……本当は自分たちも食べたかったが、今はそれどころでもない。
お菓子の嵐は、|砂壁《ウォール》から姿を消した。シュガーボックスはちょうどディオニュソスの機体に着地し、再び乗り込んだ。
『大成功じゃん☆』
「……いや、まだまだだよッ!」
嵐が再び戻ったのなら、砂嵐の捕食によって再び力を取り戻すかもしれない。ここからはスピード勝負だ。
成功
🔵🔵🔴
ティーリス・エターナー
※ティーリスは今回は最初から本気モードです。
無限に食べる、無限には無限を。そう私は思う。せめてもの慈悲だよ、ちゃんと鎮めてあげる。
詠唱後にグランツ・ヴェルトールを発動。
【無限を超越して創造した無数の紅の宇宙と星】を【宇宙、事象、因果律を斬り裂く煌めく真紅剣】に変形して攻撃回数を5倍にします。
真紅の残像で真紅の残像を残しながらジグザクに接近して、敵の攻撃は見切りながら真紅剣の事象斬りで斬り伏せる。接近したら宇宙さえも斬り伏せる斬撃で攻撃回数を増やした連続斬撃でバラバラにするよ。さらにダメ押しで真紅の雷神剣で電撃を与えながら斬り伏せる。機械にはやはり電撃だよね。
ごめんね?危険なので容赦はできない。
『愛する者よ、無限を超越してどうか私を救い出して。この煌めく宇宙は私の作りし勇猛たる幼き箱庭。そして全ての宇宙を斬り裂きましょう』
ティーリス・エターナー(家族愛の幼き破砕者・f40154)は|砂壁《ウォール》に単身生身で突入し、速度を保ちながら詠唱を始める。砂嵐の中に、真紅に煌めく剣がその刀身を露出する。オブリビオンマシンの影に灯っているセンサーの光が明度を増した。こちらを認識したことをティーリスも理解し、その影に向かって疾走する。
余裕はない。
刹那、巨大な紫電の塊がティーリスの眼前に迫る。
それを、手に持つ真紅剣で切り捨てた。背後で重力弾が爆発するが、その爆風を利用しさらに加速した。追撃を避けるため、オブリビオンマシンに対してジグザグに移動し、照準を安定させない。
方向転換のたび真紅の残像を残し、遅れてその残像へ重力弾が撃ち込まれる。内臓縮退炉のチャージを意図的に短くすることで、威力は下がるものの連射を可能としていたが、それでもティーリスの速度には追いつけない。
オブリビオンマシンの光が近づく。重力弾が撃ち込まれるが、それを切り捨てて跳躍する。刀身から焼けこげた匂いが漂い、砂嵐に隠れた機体がついに眼前に迫る。全容が見えた。——狙いは機体中央、内臓縮退炉。
ぎりぎりのタイミングで発射された重力弾を、空中で身を捩り回避する。
一閃。オブリビオンマシンに真紅剣で切り掛かる。宇宙でさえ斬り伏せるこの剣で、装甲を容易く切り裂いた。しかし、一度の斬撃に見えたそれは、続け様に四度の斬撃に連鎖する。ユーベルコードにより攻撃回数が5倍に拡張され、一度の攻撃に五回の斬撃が生じている。よろめくオブリビオンマシンに、もう一つの剣を取り出す。真紅の雷神剣。
片手に真紅剣、もう片方に雷神剣を携えて、連撃を続ける。絶え間ない攻撃にさらされ、オブリビオンマシンは身動きが取れず、全エネルギーの回路を変更し、防御、再生に回している。ほぼ神技としか形容できないような、コンマ秒単位のプログラム変更を繰り返す。この事象ですら斬り裂いてしまう斬撃の嵐に抵抗していた。おそらくは元パイロットの技能であろうこの技は、どこか執念じみた意地さえ感じられた。しかし、このまま攻撃を続ければいつかは終わりが見えるはずだ。猟兵達が与えたダメージを無駄にしてはいけない。
中にいるであろうパイロットのことを案じている暇はない。その隙に、瞬時にカウンターが飛んでくる可能性がある。
一瞬が永遠に感じられるような斬撃の中、オブリビオンマシンの動きが停止する。確かに手応えもあった。しかし、攻撃を止めない。確実に仕留めるまでは。
しかし、様子がおかしい。切った箇所の再生が遅い。まさか、と思いティーリスが防御姿勢を取ったと同時に、右腕のクローがティーリスを襲う。左手にもつ真紅剣で受け止めるが、反動で吹き飛んでしまう。着地姿勢を取り、オブリビオンマシンを見上げる。傷の再生が再び始まっている。とはいえ確実にダメージが蓄積しているようで、動きが鈍っていた。かの機体のセンサーは、ティーリスではなくどこか上空に向けられている。
成功
🔵🔵🔴
何かが、来る。猟兵たちは上空を見上げる。……しかし、到着したのはレジスタンス達だった。
通信が入る。
「遅かったか、猟兵。モウドリッドだ。あんたらだけに戦わせてちゃ、レジスタンスとしても都合が悪い」
オブリビオンマシンに次々と着弾し始める。砂塵に隠れたオブリビオンマシンは、レジスタンス達の方角を見た。
「あとはまかせろ、なんて言えないが、出来る限りの援護はする」
レジスタンス達がオブリビオンマシンを包囲し始めた。モウドリッドの機体は、オブリビオンマシンとまっすぐ相対していた。互いのセンサーが、煌めきを増す。
「クソ野郎。お前、そんな姿になっちまってよ」
古びた機体に、最新鋭の機体を侵食したオブリビオンマシン。性能差は天と地なんて生易しい表現では言い表せないほどに酷い筈なのに、どこか対等のようにも見える。
砂漠の風が互いの合間に流れ、沈黙の時間が続く。先に発砲したのは、モウドリッドだった。オブリビオンマシンの重力砲をぎりぎりでかわし続け、銃撃を浴びせる。同時にレジスタンス達も射撃を開始するが、オブリビオンマシンはまるで怯まない。
「撃ち続けろ!捕食って言っても100%は吸収できないんだ、少しでもダメージを与えろ!」
モウドリッドのブルーローズは悲鳴をあげていた。旧式の駆動系は無理な操縦についていけず、ところどころで出すボロを射撃の反動で無理やり機体を動かして誤魔化す。初期の視覚調整システムでは砂塵の中をロクに見ることもできないが、あの頃の経験と|あの馬鹿《アーサー・ワン》の癖を信じ操縦する。
しばらくの戦闘で、突如オブリビオンマシンが停止する。モウドリッドも銃を下げ、様子を伺っていた。
「——上だ!」
モウドリッドの警告間に合わず、レジスタンスのキャバリア数機が銃撃によって沈黙した。その機体の着地で、地面が揺れる。……その影は、モウドリッドのブルーローズそっくりな機体だった。
「ちくしょう、あんなの情報にないぞ!」
モウドリッドとレジスタンスがその機体に攻撃すると、オブリビオンマシンの装甲にも傷がついている。
新手とオブリビオンマシン、その二つは状態を共有しているらしい。……この異常な嵐の中で、自身の分身を作成したのか。あるいは、かつての相棒を模倣したのか。オブリビオンマシンに比べ、出力も武装も貧弱ではあるが並の銃撃ではなかなか怯まない。
「お前らは新手の方、猟兵と俺でオブリビオンマシンを叩くぞ!」
※
ここからのプレイングは12/16(火)9:00〜より受け付けます。
レジスタンスメンバーが新手の機体の注意を引いている間、モウドリッドと協力しオブリビオンマシンにとどめを刺しましょう。
朱鷺透・小枝子
戦友……壊せ!ララバイ!!
デモニック・ララバイ操縦、味方と共闘
【環境耐性】サイキックシールド纏い磁力遮断
殺戮音叉発振『陽月光』発動【衝撃波】砂塵を吹き飛ばし超振動波破壊!範囲内味方再生継戦能力回復!
メガスラスターの【推力移動】で攻撃を躱し、生やした音叉より【斬撃波】敵機破壊促進!
モウドリッド殿、友に掛ける言葉があるならば自分が届けましょう!
せめて悔いなきように!!
哀しみが消える事はなくとも、澱みは多少晴れる。
モウドリッド殿の言葉をララバイの催眠音波で増幅、アーサー殿に叩きつけ、声を呼び水に物質再構築で敵機からアーサー殿を分離救出に掛かる。
無理なら壊すのみ、しかしできたなら、それはより良い戦果だ
スイート・シュガーボックス
レジスタンスの皆を支援しながら戦おう。
『豊穣葡萄』をオブリビオンマシンと分身マシンにそれぞれ複数分けて展開。生成したお酒を高圧縮したレーザー攻撃でオールレンジアタックだ、ディオちゃん。
「また捕食されないかって?ふふん、さっきのお菓子攻撃で天啓を得たし♪
生成したお酒は、神社とかで奉納される霊験あらたかな清め酒。浄化の力たっぷり満点だし☆ちなみに呑むと美味しいよ。」
分身できるのは敵だけじゃないよ、【ミミックわっしょい!】
小さい俺を錬成してレジスタンスの皆のコクピット内部に侵入、お菓子をお届けだ。
丹精込めて作った美味しい飴玉、舐めながら戦えば技能を10レベル加算さ。戦いに役立ててね。
【アドリブ歓迎】
戦場は混沌を極めていた。オブリビオンマシンに、その分身の機体。レジスタンス達が分身を相手取っているが、戦況は芳しくない。一部の機体は損傷が激しく、戦場を離脱している。
ディオニュソスに搭乗し直したスイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)と、戦場に現着した朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の機体「デモニック・ララバイ」が並ぶ。
「ディオちゃん、レジスタンスの皆も支援しないとだね!」
『任せてッ!』
オブリビオンマシンへ仕掛けた初撃と同様に、ディオニュソスの背に『豊穣葡萄』が展開される。
「シュガーボックス殿、その攻撃は効果が薄かったように見えたであります!」
『また捕食されないかって?ふふん、さっきのお菓子攻撃で天啓を得たし♪生成するお酒は、神社とかで奉納される霊験あらたかな清め酒。浄化の力たっぷり満点だし☆ちなみに呑むと美味しいよ』
オブリビオンマシンとその分身機の周囲を、大小様々な宝珠型神器が取り囲む。漂う宝珠から清められた酒が生成され、濃縮される。
敵機は先ほどの攻撃から、それを気にする必要はないと判断したようで、別の獲物に注意を向けている。
「オールレンジアタックだ、ディオちゃんッ!」
圧縮を重ねた酒が、まるでウォーターカッターのような勢いで射出される。先ほどのように、吸収した酒を防御に回そうとするが、うまくいかない。浄化の力が吸収を阻害し、さらには動力まで出力が低下し始めた。酒のカッターが装甲を切り裂く。
「さすがであります、シュガーボックス殿」
負けじと朱鷺透がサイキックシールドを展開した。|砂壁《ウォール》の磁気を遮断し、サイキックキャバリアとの同期を保持。機体を駆る。信号強度の高い極短距離通信システムを起動し、モウドリッドのブルーローズと繋いだ。
『どうした、猟兵』
ブルーローズは無理のしすぎか、機体のあちこちから火花が散っている。猟兵の戦闘中に後方で待機し、機体の冷却を待っていた。
「モウドリッド殿、友に掛ける言葉があるならば自分が届けましょう!せめて悔いなきように!!」
『いきなりなんだ!?』
飛来する重力弾をメガスラスターの【推力移動】で攻撃を躱しつつ、のまま【斬撃波】を放ち、オブリビオンマシンを牽制しながらその言葉を待つ。
『……ならあの|クソ馬鹿《アーサー・ワン》に言ってやれ!さっさと戻ってこいってな!』
その言葉と同時に、オブリビオンマシンが右腕を上げる。超振動でデモニック・ララバイを破壊せんと迫っていた。発せられた超振動が機体を襲う前に、
「喚き散らせ」
デモニック・ララバイの手に持つ音叉から、高周波数の響きが放たれる。砂塵を吹き飛ばし、超振動を相殺した。と、同時に損傷したレジスタンスたちの機体が修復されていく。ブルーローズも火花が止まり、全システムが再び立ち上がった。
しかし、本命はこれからだった。
あらかじめ録音しておいた先ほどのモウドリッドの言葉を、音叉を叩きつけて再度発する。
『さっさと戻って来い!』
オブリビオンマシンが停止する。しかし、分身の方はまだ稼働を続けていた。
「あっちもなんとかしないとね!【ミミックわっしょい!】」
シュガーボックスから、小さなシュガーボックスの分身が召喚される。それが抱えているのは、小さな飴玉。ディオニュソスから飛び出した分身たちが飴玉を持って、他の機体に入り込んでいく。
『うおっ!なんだ?』
レジスタンスたちの驚きの声が通信越しにこだましていた。
「戦いには糖分が必要不可欠!舐めて戦えば元気百倍だ!」
恐る恐る飴玉を口にしたレジスタンスたちの間に、活気が満ちる。
キャバリアの損傷も回復し、レジスタンスたちのコンディションも最高潮に達していた。動きを止めていたオブリビオンマシンが、再び動作を開始する。しかし、その動きはどこかぎこちない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
百海・胡麦
空腹…か
『蜜霰』の弾を嵐に広く蒔く
魔力を込めた弾で場に印を増やし
索敵も行う為だ
モウドリッド殿。対策と支援を有難う
成る程、居るのはあんたの大事なひとね
なら見届けなきゃ
アタシは出来なかった
育ての親の死に際に置いてけぼりだった
幼かったから…そう言い訳したけれど
弱かったからだ
あのひとが頼ってくれず
力になりたかったのに
その為に隣で大剣を振るい続けたのに
やくたたずだった
薄灰のばかやろう
ひとりで死んで
…でもおかげでアタシは生きてんの
屍のように海を渡って色んな顔に出逢ってゴミ屑に見えた世界が宝物に溢れてると知るまで生きれたの
殴ってやろ
特別だろ、全力で
『弄月』力を貸しな
対策を施された持ち込みの機体に乗り
UC五色奏から『文武縒り』で
焔刃を弄月へと生じさせる
弾を目印にエネルギー波
周囲の状況から敵に喰らいつき
攻撃は
弾を媒介に『結界術』を展開し受けとめる
モウドリッド殿の分までね
貴方はばかやろう見送らなきゃいけない
キツかろうが此方も喰うてやる
振動だって
溜めた力を焔刃と
UC『直心』にて炎の護りの結界へ
体当たりと一閃を
百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)が|砂壁《ウォール》の中に一人佇む。
「空腹…か」
黄色く砂に覆われた空に向けて、『蜜霰』の弾を発射する。戦場に印を刻み、それと同時に索敵も行う。
オブリビオンマシンの動力炉から発せられる力の本流を、それが捉えると百海はその方向へ走り出す。
『モウドリッド殿。対策と支援を有難う』
砂の磁気によって通信にはノイズが入っている。彼に届くかどうかわからないそれは、一種の独白だった。
やくたたずだった
薄灰のばかやろう
ひとりで死んで
モウドリッドが例のオブリビオンマシンに搭乗しているであろう人物への気持ちを考える。かつての戦友。それを死なせたくない、というのは、百海にはうんと分かっていた。
「なら見届けなきゃ。アタシは出来なかった。育ての親の死に際に置いてけぼりだった」
しかし、こうして生きている。数多の世界を渡り、ゴミばかりの世界だと思っていたのが、宝物で溢れていると知ることができた。
「『弄月』力を貸しな」
オブリビオンマシンへの接敵前に、サイキックキャバリアを呼び出す。星雲のように、黒く染まる煌きを宿す巨大な痩躯。
その手に、焔を激らせる一刀が握られていた。
『蜜霰』の弾を目印にエネルギー波を照射し、オブリビオンマシンへ攻撃を始める。エネルギー波を受け、よろめきつつも例の機体は反撃を開始する。紫電を纏った弾が、『弄月』に到達する前に何かに衝突し、相殺される。
先程までエネルギー波の目印になっていた『蜜霰』の弾が、結界術を受けて障壁となっていた。
オブリビオンマシンは重力弾発射を中止し、右手のクローによる振動で対象を破壊すると決めたようだ。
右手を地面に当て、振動が『弄月』を襲う。
しかし、障壁が炎を生じる。炎の結界と化した『蜜霰』の弾によって、振動は完全に打ち消される。
その間にも前進を続けた『弄月』が、オブリビオンマシンに体当たりを喰らわせる。装甲と装甲が擦れ、互いの漆黒に映る装甲に火花が走った。焦げた匂いが操縦席にも感じられるほどに。
よろめいたオブリビオンマシンの機体に、五つのユーベルコードを宿した一閃が食い込む。
目にも見えぬ高速で——対象の装甲を脆く——穢れを断つ焔で——精神を消耗させ——ちょっとした〝まじない〟を込めた—— 一撃。
機体に食い込んだ焔の刃に、オブリビオンマシンがついに光を失う。
レジスタンス達の対処していた分身も、膝をついたかと思うと黒い塵となって消失してしまう。
モウドリッドが、確かにその場面を見ていることを、見送っていることが分かった。
成功
🔵🔵🔴
分身は塵となって消えてしまったが、オブリビオンマシンは未だその形を保っている。また|砂壁《ウォール》の砂を喰らって復活するかもしれない。レジスタンス達もそれに備え、キャバリアのシステムを以前戦闘用のものに保持していた。
モウドリッドが声を上げた。オブリビオンマシンの中心に備え付けられた炉から、人が一人、二人とよろめきながら出てくる。全員が国の政府の軍服を着ている。キャバリアのパイロットスーツを着ているものもいた。
「だが、ここで助けなきゃ、略奪で他人を攻撃するあいつらと同じになっちうまうだろ!俺たちはレジスタンスだ!国の兵士だろうが、助けられなきゃ民衆に顔向けなんてできやしない!」
「猟兵、こいつらを助けるための手助けをしてくれ。……そうしたところで、この国が詰んでるのは変わらんのは分かってるが、だから見捨てるってのは違う」