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不良上等! ワル自慢大会開催!

#UDCアース

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#UDCアース


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 そこは都内某所にある私立の高校だった。
 だが、そんじょそこらにある高校ではない、都内でも有数の底辺高だったからだ。
 そのレベルは入学資料させ送れば誰でも入学できるという基準から推して知るべし。
 もちろん、そんな高校なので集まってくるのはワルばかり。
 しかもどの学校にも門前払いされる程のワル達……。
 その高校の名はーー。

 『私立ムシェ鮭高校』

 ムシェ鮭高校――通称『鮭高』は、そのようなワルの巣窟と化す為、特別に3月中に事前登校日という新入生のみが登校する日が設けられていた。
 事前登校日は、基本的に自己紹介と交流をメインとした交流会のようなイベントである。それぞれ4月から通うことになる教室に集まり、これから1年間を共にするクラスメイトと友好を深める目的となっている。
 だが、実際には……。
「テメェは何中よ?」
「おい、俺を伝説の男だと知って言ってんだろうな?」
「その伝説、聞いてやろうじゃねーか! しょぼかったら解ってんだろうな!?」
 ワルの自慢大会となるのが通例であった。


「興味深い……実に興味深い……」
 グリモアベースにて8本の尻尾をゆらゆら揺らしながら猟兵達を待っていた陰陽師・五行が呟き、それなりに集まったようですね、と猟兵達へ説明を開始する。
「UDCアースという世界にある『私立ムシェ鮭高校』という場所で何やらオブリビオンが活動しているようです。皆さんにはその高校の学生となって潜入して貰い、オブリビオンを見つけ排除して頂きたいのです」
 淡々と説明する五行。
「事件を解決して貰う当日は、事前登校日とやらで4月からその高校に通う新入生だけが学校に登校して来ているとの事ですので、UDC組織の職員が皆さんがその高校へ潜入できるよう新入生の身分を手配してくれました。あ、新入生以外の身分は無いので宜しくお願いします」
 どうぞ、と皆に鮭高の学生証を配ってから、五行は面白そうに尻尾を揺らし。
「それでは、猟兵たるあなた方がどのように事件を解決するのか……興味深い、実に興味深い……」


相原あきと
 マスターの相原あきとと申します。
 ギャクシナリオです。何やっても笑いにします。
 好きにプレイング掛けて下さい。
 ただしギャグ世界の一員となる覚悟は持って下さいね?

●私立ムシェ鮭高校(通称「鮭高」)
 都内屈指の底辺高でワルのたまり場です。

●第1章
 基本的に教室の描写となります。
 皆ワル自慢の自己紹介をしているので、何か適当に凄い自慢をしましょう。
 そうする事で認められ、2章以降に影響が出ます。
 もちろん、ワル自慢をせずに何か好きなことをしても良いです。
 どんなに真面目なプレイングでも基本的にギャグになる事だけは覚悟してプレイングを掛けて下さい(真面目なままのほうが面白いと判断したらそのまま書きますが……)。
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第1章 冒険 『高校潜入調査』

POW   :    放課後、運動系の部活動に励む学生を対象に調査

SPD   :    学外、バイトをしたり遊んでいる学生を対象に調査

WIZ   :    校内、生徒会活動や勉学に励む学生を対象に調査

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――前略、オヤジ様。
 ――この高校はどうやら入学式前に交流を深める為、三月中に事前登校日なるイベントがあるとの事です……。

 僕は心の中で手紙を書き、海外にいる父親宛てに送ったつもりになる。
 僕の名前は桜山・咲太(さくらやま・さくた)、4月に高校入学を控えた準高校生だ。
 父親に入学手続きはお願いしておいたが、まさか事前登校日なるイベントがあるなんて驚きだ。
 父親から貰っていた高校への地図通りやってきた僕は、地図と目の前の高校を何度も見比べてしまう。
 目の前の高校の門には『私立ムシェ鮭高校』と書いてある。
 ムシェ鮭高校――通称『鮭高』は、都内屈指の底辺校で、入学資料さえ送れば誰でも入れるバカ高だった。もちろん、僕が受験した高校では無い。断じて。自分で言うのもなんだが僕は勉強が得意だった。趣味が勉強と言っても過言ではない。
 とはいえ、なぜ鮭高のパンフレットと地図を渡されたのか解らない。一応、職員室に誰かしら居るだろう先生に聞いてみる事にする。
「うん、きみは新入生の桜山君だね。大丈夫、入学手続きはちゃんと済んでいるよ」
「そんなバカな!」
「いや、キミもバカだからこの高校に来たんだろう?」
「失礼ですね先生!」
「うるさいな。ほら、さっさと教室に行きなさい。パンフレットに何組か記載あるだろう? 今日の所は席は気にしないで座って良いから、好きな席に座って待っていなさい」

 ――追伸、オヤジ様。
 ――あんた入学書類送った高校間違ってるよ!!!(怒)


 はぁ……どうしてこんな事に……。
 僕が職員室から出て、いっそ家に帰ろうか、それとも教室に行こうかと、ウロウロと時間を潰していると。
「手前ぇ、この鮭高に着てその真面目な恰好……この不良の巣窟たるこの場所で、逆に気合い入ってるじゃねーか」
「え、いや、僕は……」
 いきなりモヒカンの生徒に話しかけられた。
 困ったぞ、今日はお昼にお弁当を作って持って来たので小銭は持っていない。
「俺は馬田(うまだ)だ。手前ぇの名は?」
「桜山です」
「そうか桜山、わざわざ手前ぇがこんな所で時間を潰してる意味は……俺と一緒だな?」
 なぜか自信満々に自分と同じだと言ってくる馬田君。
 正直、僕の理由とは全く違う気がするが、ここで弱みを見せたら僕のような真面目な鼠は、不良という猫の巣窟たるこの高校で無事に生き抜く事はできないだろう。
「……うん、そうだね」
 とりあえず真顔で同意しておいた。
 すると馬田君はニヤリと笑みを浮かべ。
「よし、それじゃあ、2人して最後に教室に入ろうじゃねーか。舐められたらこの鮭高じゃあ生きていけねぇ、一番最後に教室に入って大物の余裕ってやつを見せつけてやろうぜ」
「ああ、うん、そうだね」
 まったく、教室に一番最後に入るがいったいどう舐められない事に繋がるのかわからないが、とりあえず同意しておく。そして……。
「桜山、それじゃあ入るぜ?」
 僕達は時間ギリギリに教室へとやって来て、扉の前で顔を見合わせる。
「解ってると思うが、教室にいる奴ぁどの中学でも名の通った不良共だ。ビビるんじゃねーぞ? いや、逆にそんな恰好で来てる時点で手前ぇにそんな忠告は無意味だったな」
 そう言うと教室の扉を勢いよく扉を開け。
「な、なんだとーーーーっ!?」
 馬田君は全力で驚くのだった。
東雲・観雪
※白い長ラン着用
※サイズが合わず萌え袖になっているのは気がついてません

せんにゅうそうさってかっこいいのです
でも、『わる』はいけないと思うのです

●自己紹介
東雲・観雪です。御蔵乃中乃箱中学校(おくらのなかのはこちゅうがっこう)からきました。

わる? わるですか??
(首をかしげ)
わるいのはいけません
お勉強をがんばらないと、卒業? できないのです
(カンペ読み)

あ、すきな食べ物は、カレーうどんです!
(白い服で)
カレーうどん、ちょっとからいのがすきです
(白い学ランで)
ミートソースやナポリタンもすきです!
(白い服なのに!)

みなさま、どうかされたのですか?
こわいお顔ですよ

※あざとく無邪気にアドリブOK




「どうしたんだ馬田君!」
 ドアを開けたまま入り口に立つ馬田君に僕は声を掛ける。正直、彼が入り口に突っ立ったままのせいで中が見えない。
「見ろ、あそこに座ってる奴を!」
 馬田君が少しだけ退いてくれて教室内の1人を指さす。
 そこには白い長ランを着た美少女が――あとで自己紹介の時に聞いた所、東雲・観雪さんと言う歴とした男性(!?)らしい――が座っていた。
「見たか桜山……あれは、白ランだ」
「う、うん、そうだね」
 真顔で言う僕。
 確かにここの指定制服は黒の学ランだ。しかし、ここに来るワルい不良達が指定の制服を着てこなかったとしても、まー、そこまで驚く事では無い。
 あえて言うなら白ランの袖が『萌え袖』になっている所だろうか。正直可愛い(この時の僕はまだ彼女が男性だと知らなかったのでそう思うのも仕方が無い、僕は正常だ)。
「バカやろう! あいつの机の上を見てみろ!」
「な、なんだって――――っ!?」
 今度は僕が驚く番だった。
 まさか、まさかそんな……!?

 ズルズルズル……。

 その美少女はまだ授業どころか朝会すら始まっていないと言うのに、周囲の目も気にせずカレーうどんを食べているではないか!
 馬田が額の汗を拭いつつ、意を決したのか東雲さんに近寄っていき。
「白ランでカレーうどんとは相当なワルだな、恐れ入ったぜ。あんた、さぞ名のある中学の出だと見た」
「わたくしですか? えっと、御蔵乃中乃箱中学校(おくらのなかのはこちゅうがっこう)からきました。ワル? ワルですか??」
 東雲さんは馬田の質問に聞いたことの無い中学名を答え、小首を可愛らしく傾げると。
「わるいのはいけません。お勉強をがんばらないと、卒業? できないのです」
「ワルってだけじゃなく勉強までするってのか!?」
 驚く馬田。
 でも僕としては今の台詞がカンペを読んだかのような棒読みであったのが気になる。
 ちなみに東雲さんはもう馬田に構わずカレーうどんを食べている。鞄から調味料を取り出し赤い物を振りかけているのを見るに、少し辛目が好みなのかもしれない。
「ふぅ……あやうくヤツのペースにはまる所だったぜ」
 なぜか命からがらと行った風に馬田君が戻ってきて、チラリと東雲さんをチラ見し。

「な、なんだと――――っ!?」

 再び全力で驚く馬田君。
「どうしたんだ馬田君!」
 思わず僕も先ほど言った同じ台詞を繰り返す。
「見ろ、あいつ今度は……」
「な、なんだって――――っ!?」
 まさか、まさかそんな……!?
 そう、東雲さんはどこから取り出したのか、次に取り出したのはミートソースとナポリタンの皿だった。どっちも好きで迷うなぁ……みたいな感じだが。相変わらず彼女は白ランだ。さすがにその異常性に気付いた周囲のワル達が、東雲さんの机から1歩2歩と引いていく。
「みなさま、どうかされたのですか? こわいお顔ですよ?」
 無邪気に微笑む東雲さんの笑顔に、周囲のワルどもが威圧されるのだった。

「桜山……まさか初っぱなからコレとは思わなかったぜ。俺ぁ、この鮭高を舐めてた。こりゃ気合い入れ直していかねーとな!」
「う、うん、そうだね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギド・スプートニク
青いな

悪行を誇ってどうするというのだ
己を誇張し相手を威嚇するだけの、犬の遠吠え
どうやらまだ学生気分が抜けきっていないと見える

いいだろう、私も空気の読めぬ男ではない
此度だけは貴様らの遊びに付き合ってやる

私の第一の罪
それは我が母を見殺しにした事
母は誇り高く、私を守り死んでいった
たとえ幼くとも。力がなくとも。
せめてもう少し賢さがあれば――母を守ることもできただろう

第二の罪
それは妻を愛してしまったこと
私は彼女を愛し、それ故に彼女の人生を奪ってしまった
だからこそ私は……彼女に相応しいだけの器量を持たねばならぬ

良いか
誇るべきはワルではない。己だ

我らは今日より鮭高の同志
そのワル、共に背負い分かち合おう




 僕や馬田君が気合いを入れ直し教室へと入ると、すでに教室はワルの巣窟……というか、異様に混沌とした状況だった。
「さすがは天下底辺の鮭高だ、どいつもこいつもやばそうな奴等ばっかりだ」
 モヒカンの馬田君が額の汗を袖で拭いつつ言えば。
「青いな」
 その言葉はスッと通り過ぎようとした席に座っていた男からだった。
「青い? おい、俺がびびってるって言うのか? ああ!」
 馬田君が挑発されたと思って、その男に因縁を付けるように顔を近づける。
 だが、その男――名をギド・スプートニクとあとで知った――は、馬田君のド・アップにも動じず淡々と言葉を続ける。
「青いから青いと言ったんだ。悪行を誇ってどうするというのだ。己を誇張し相手を威嚇するだけの、犬の遠吠え。どうやらまだ学生気分が抜けきっていないと見える」
 言い切るギド君。

 ――いや、キミも学生だろう?

 思わず背景に台詞が出る感じで内心でツッコミを入れてしまった。僕とした事が……。
 僕が自己嫌悪に陥っている間に、馬田君はギド君に「だったら手前ぇは相当な悪行を重ねてきた伝説があんだろうな!?」と挑発しており、ギド君は冷静に――。
「いいだろう、私も空気の読めぬ男ではない。此度だけは貴様らの遊びに付き合ってやる」
 ガタリと椅子から立ち上がり胸を張るギド君。
「おう! 言ってみやがれ!」
 馬田君が言い、周囲にいた不良学生達もなんだなんだと集まってくる。
「私の第一の罪。それは我が母を見殺しにした事だ。母は誇り高く、私を守り死んでいった……たとえ幼くとも。力がなくとも、だ。私にせめてもう少し賢さがあれば……母を守ることもできただろう」
 滔々と語るギド君。

 ――幼かったのなら仕方ないのでは!?

 おっと、思わずまた背景に台詞が出る感じで内心ツッコミを入れてしまった。
 ちなみに馬田君や不良達は。
「母ちゃんを亡くしたのか」
「辛かったな……」
「くそぅ泣けるぜ……」 
 と天を仰ぎ顔を手で隠しながら涙していた。
 おかしい、泣いてない僕の方がおかしいのだろうか?
 ギド君はそのまま皆の涙を意に介さず。
「私の第二の罪、それは妻を愛してしまったこと。私は彼女を愛し、それ故に彼女の人生を奪ってしまった。だからこそ私は……彼女に相応しいだけの器量を持たねばならぬのだ」

 ――キミ、つい先日まで中学生だったんじゃないの!?

 背景に台詞が出る感じで内心ツッコミを入れる僕。
 いや、ツッコミをいれつつ冷静になればギド君は僕たちより年上のような気がする。見た目のB・U(ビジュアル・羨ましい)が若いからそんな気はしないが……。
 まぁ、とにかく、高校生になったばかりで妻はおかしい。
 だが、ここは底辺たる鮭高だ。馬田君達はそこに気付かず「他人の人生を奪うなんて相当なワルだ」と恐れおののいている。
 ちなみに奥の方の不良達は「器量って何だ?」「不良の間違えだろ?」とかボソボソ呟いているが、僕はツッコむのを止める。あんな遠くまでツッコむ義理は無い。
 ギド君は立ったまま周囲を見回すと拳を握り胸に引きつけると。
「良いか、誇るべきはワルではない。己だ」
 そう言い切って胸をドンと叩く。
「我らは今日より鮭高の同志! そのワル、共に背負い分かち合おう!」
『おお――――!!!』
 周囲の不良達がなぜかギド君に同意し拳を振り上げる。
 だが、彼らは解っているのだろうか、母を見殺しに……は兎も角、妻を手に掛け……は完全に犯罪である。それをギド君は皆で背負って分かち合おうと……何の罪も無い馬田君達にも背負わせようとしている事を……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・ハシュマール
プロレス好きの不良とプロレス談義に花を咲かしておくよ。というが現在進行形で、ボクはプロレスラーなんだけどね。ん?信じてないな、それじゃあ骨が折れない程度にアームロックをかけてあげて……おや、また新しい人が来たみたいだね。

「君もプロレス好きかい?」

まあどっちでもいいけど、好きだったら語り合いたいな。ん?タバコの火欲しい?ほら、指先傷つけて小さなブレイズフレイム……火力が強すぎて灰化しちゃったね。ごめんごめん。んや、いまの手品だよ手品。種も仕掛けもないよ。あと、ボクは女性だからね一応、男じゃないよ。そこのところ忘れないでよ。

※アドリブ、改変大歓迎




「おいおい、ここは小学生男子の遊び場ですかー?」
 馬田君がめんどくさい事に教室の端でプロレスをやっているメンバーに声を掛ける。
 なぜ彼はわざわざ自分から厄介ごとに突撃するような事を……。
「おや、また新しい人が来たみたいだね」
 アームロックをプロレス好きな不良の1人にかけていた女性――ステラ・ハシュマールという名前だとあとで知った――がニヤリと笑みを浮かべて馬田君にあれよあれよと言う間にコブラツイストをかける。
「ぐおっ!?」
「馬田君!」
 馬田君のうめき声に思わず僕も声を出し、その瞬間、ステラさんの目と僕の目が合う。
 しまった。
「君もプロレス好きかい?」
 ジッと見つめられつつ一度目を瞑り天を仰ぐ。
 馬田君のせいで僕まで巻き込まれ……。
 僕は意を決してステラさんを見つめ返し。
「いいえ、好きではありません」
 全否定してみた。
「まあ、どっちでもいいだけどね」
 じゃあなぜ聞いたっ!
 内心でツッコミ入れつつ差し出されてくる手を恐る恐る握り返す僕。
 本当ならプロレス好きだという事にして仲良くなり、泡を吹き出している馬田君を離すよう説得するべきなのだろうが……いや、というか別に僕は馬田君を助ける義理は無いのでは?
 ………………。
 いや、そういう論理的に偏った思考が現代社会で人付き合いが苦手な大人を生むのではないかだろうか? 危ない危ない、思わず僕もそんな大人への階段を登る所だった。
「とりあえず、馬田君が辛そうだから技を掛けるのはやめてあげれないかな?」
 できるだけフレンドリーに言ってみた。きっと彼女にも日本語は通じるだろう。
 彼女は馬田君の方を見ず、僕ににっこり微笑むと。
「大丈夫だよ、ボクは本物のプロレスラーだからね、ちゃんと骨が折れない程度に技をかけてるから」
「そう……ですか」
 僕は腕を組みつつ考える。
 明らかに泡を吹いてる馬田君は辛そうだ。しかし、しかしだ。プロであるステラさんが言うのだからきっと骨が折れるよりは軽い症状なのだろう。
「馬田君、大丈夫、骨は折れてない」
 僕は一応、安心するように顔が真っ青の馬田君に声をかける。
 すると馬田君はまるで最期の力を振り絞るように片手を手刀のように指を揃え、ぎりぎりぎりと必死な感じでステラさんの腕に手を伸ばし――。
 はっ!?
 そこで僕は気がついた。不良が指を揃える! 見れば人差し指と中指はしっかり揃えられている、このジェスチャーはつまり!
「馬田君、タバコかい? その余裕があるならやっぱり安心だ。さすがプロだ」
 僕が言うと顔を青から白くさせつつ何か言おうとする馬田君だったが、ステラさんが先に気がついて。
「ん? タバコの火欲しい? だったらほら、どうだい?」
 ステラさんが指先を傷つけて小さな炎を出す。だが、それは一気に立ち上り天井を焦がし、バラバラと炭化した天井の素材が落下する。
「おっと、火力が強すぎて灰化しちゃったね。ごめんごめん」
「いえ、ケガが無かったので別にそれは……それより今、ライターも無く炎を出しませんでした?」
「んや、いまの手品だよ手品。種も仕掛けもないよ。あと、ボクは女性だからね一応、男じゃないよ。そこのところ忘れないでよ」
 プロのプロレスターでありプロの手品師なのだろうか。
 とにかくステラさんは「片付けないと」と崩れた天井の部品をチリ取りと箒で片し始める。
 やっと解放された馬田君は僕の肩を掴んで、無言のまま必死にその場を離れていく。
 あとで聞いた話だが、技をかけている最中に馬田君が変に動くので、思いっきりキマっていた……とかなんとか。
「桜山……」
 片付けをするステラさんから離れた所で馬田君が言う。
「どうしたんだい?」
「不良でもプロにはかなわねぇ……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガレンディア・グレイシス
はー……UDCにゃ変な学校があるもンだなぁ。
おーおー、イキってンねぇ……青い青い。
ま、俺みたいなヤツが混じってる方がおかしいんだろうけどな。
ワルを競って何になるンだか……ま、嫌いじゃねぇがよ。

にしても、大したこたぁねぇことをピーピー喚く奴らばっかりだな?
テメェらもリンゴ食ってちったぁ落ち着けや。

自己紹介か。
俺はガレンディアだ。
入学式ン時に気に入らねえセンコーを数人ブッ飛ばしたら停学食らったンで、まぁテメェらよりは年上だ。舎弟は受け付けてねぇがパシリは歓迎だ。よろしくな。
……あ?嘘はついちゃいねぇよ。
センコーブッ飛ばしたのは事実だからな。
ま、楽しくやろうぜ?気に入らなきゃブッ飛ばすだけだからな。




「はー……変な学校があるもンだなぁ。おーおー、イキってンねぇ……青い青い」
 その言葉はスッと通り過ぎようとした席に座っていた男――ガレンディア・グレイシス――からだった。
「青い? おい、俺がびびってるって言うのか? ああ!?」
 馬田君が挑発されたと思って、その男に因縁を付けるように顔を近づける。
 というかさっき同じようなパターンがあったばかりだと言うのに、馬田君は恥ずかしく無いのだろうか。
「大したこたぁねぇことをピーピー喚く奴らばっかりだから青いって言ったンだ。テメェもその口か?」
「あんだと!?」
 馬田君がガレンディア君の胸元を掴む。
「まぁ待て、リンゴでも食ってちったぁ落ち着けや」
「おいおい、お前良い奴かよ!?」
 馬田君がリンゴを馬の用にボリボリ食べ出す。怒りは収まったようだ。僕は今度からリンゴを1個常備しておこうと心に誓う。
「で、ワルを競って何になるンだ?」
「何って……そりゃワルの武勇伝がすげぇヤツがクラスのボスに相応しいだろうが」
 馬田君がワルの世界の常識だろうが、と言葉を続ける。
 僕としては誰がボスであろうとどうでも良いのだが、不良達にとっては大事な事なのだろうか……。馬田君を餌付けしたガレンディア君はどう答えるのか。
「ま、一理あるか……嫌いじゃねぇぜ?」
「だろ?」
 なぜかニヤリを笑みを浮かべて拳をぶつけ合う馬田君とガレンディア君。
「とはいえ、ここに俺みたいなヤツが混じってる方がおかしいんだろうけどな」
「どういう事だ?」
 リンゴを食べ終わって2個目を要求する(手を差し出す)馬田君に、仕方ねぇな、と2個目を渡しながらガレンディア君が言う。
「俺は入学式ン時に気に入らねえセンコーを数人ブッ飛ばしてな……おかげで停学食らっちまった」
「何ぃ、センコーを!?」
「ああ、嘘じゃねぇぜ? つまり俺はテメェらよりは年上って訳だ」
 さすが不良の巣窟である鮭高だ、留年生が普通に存在するらしい。ずっと普通の学校で育ってきた僕的には留年など都市伝説だと思っていたのだが……。
「マジかよ!?……すまねぇ、食べ終わったから3つ目をくれないか、ダブリのガレンディアさん」
「テメェ……別にさん付けなンかいらねぇよ。同じ一年だろうが。ほらよ」
 3つ目を渡すダブリのガレンディアさん。
「ちなみに言っておくが、俺は舎弟は受け付けてねぇ。だが、パシリは歓迎だ。よろしくな馬田、それと――」
 ダブリのガレンディアさんが僕の方を見てくる、どうやら馬田君のツレだと思われたようだ。
「あ、桜山です」
「おう、桜山。よろしくな! もっとも、気に入らなきゃブッ飛ばすがな!」
「さすがダブリのガレンディアさん! 言うことが遠慮無ぇーぜ! ほら?」
 遠慮無く手を出す馬田。
「ま、楽しくやろうぜ?」
 素直に4つ目のリンゴをカバンから取り出すダブリのガレンディアさんだが、馬田君は「ダブリのガレンディアさんの手を煩わせる訳にはいきませんよ」とカバンを受け取り。
「お、そうか?」
 なぜか気分が良さそうなダブリのガレンディアさんだが、その横で全く遠慮無くダブリのガレンディアさんのカバンから自分のカバンにリンゴを幾つも移している馬田君がいた。
 なんとなくだが、これがバレると馬田君が危険な気がしたので、僕は黙っておく事にする。
「桜山もいるか?」
「(シャクシャク)……あ、美味しい」

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩瑠・姫桜
一応ママを目標に品行方正に育ってきたつもりなんだけど
…ワル、ねぇ(悩)

自慢になるかはわからないけど、
敢えて言うなら「親父狩り」かしら…?

(*親父狩り=娘溺愛してやたら構ってくる父親に
全力で反抗してる(親子喧嘩というか戯れ合ってるというかの)日常のあれこれを
ワルっぽく言ってみる)

具体的にはこういうの(ドラゴンランス見せ)で叩きのめしたりとかね?
(物理攻撃含めて反抗してるが父親はむしろ喜んでる模様)

持ち物巻き上げたりもザラよ
(実際は父親が押し付けてくるあれこれを断りきれずに受け取ってる模様)


(父親のうざったさ思い出して思わず遠い目)

(色々無理があろうとも勢いで押し切る心算)

*絡み・アドリブ大歓迎




「桜山! お前も誰かしら因縁付けとけ! さっきからずっと黙ってるばっかじゃ舐められるぞ?」
 馬田君が余計なパスを放ってくる。僕はここの不良達に関わりたく無いので黙っていたのだが……。
「おい、あの女なんてどうだ。見た目こそ金髪だが、不良慣れしてねぇ感じがするぜ?」
 馬田君が席に座って佇む金髪碧眼の少女を指差す。確かに品性方正な雰囲気を纏っていて、とても不良とは思えない……もしかして僕と同じように間違えて入学してしまったのかもしれない。だったら僕の仲間だ、そっとしておいてあげ――。
「なぁ手前ぇはどんなワル自慢を持ってるんだ? あそこの桜山が聞きたいってよ!」
 ああっ何を勝手に!
 しかも僕の方を見て舌をペロリと出し「俺ってナイスだろ?」みたいな馬田君の顔は本当に腹立たしい!
「……ワル、ねぇ」
 品性方正っぽい少女――彩瑠・姫桜だと自己紹介で知る事になる――は、やはり普通の生徒なのか小首を傾げて悩んでいる。
 やはり、彼女は普通の子だ。僕と同じ一般人だ。
「馬田君! 僕は別に――」
「敢えて言うなら『親父狩り』かしら……?」
「え?」
 姫桜さんの口からとんでもない台詞が飛び出す。
 いや、待て待て、そんな馬鹿な……親父狩り? きっと僕の聞き間違いだろう。オジヤ好き、とか親父刈り上げ、とか違う言葉を言ったに違いない。あんな可憐そうな普通の少女が――。
「自慢になるかはわからないけど、ほら、私が何もしてなくてもあっちは勝手に寄ってくるじゃない? そこを全力で、ね? これって親父狩りって言うんでしょ?」
 親父狩りでした。
 やはり、この学校はどうかしている……だが、もしかしたら親父狩りぐらいなら普通なのかもしれない。そう、それが普通なら彼女は僕と同じ普通枠である可能性が――。
「具体的にはこういうので叩きのめしたりとかね?」
 どこから取り出したのか竜の装飾が施された槍を取り出す姫桜さん。
 ナイフとかですら無かった……。
 普通枠の可能性は砕け散った。というか、完全にやばい人だった。
「ちなみにコレでやると向こうは喜ぶのよね」

 ――どんな親父だソレは!!!

 背景に台詞が出る感じで内心ツッコミを入れる僕。姫桜さんは普通だと信じたかったギャップからツッコミに力が入る。
「持ち物を巻き上げたりもザラよ」
 つまり金だけに飽き足らず……。
 僕の中で彼女が反抗――あ、漢字が違うか――犯行を行う場をイメージする。
 姫桜さんを見て寄ってくる親父、それを槍を使って恐喝する姫桜さん、金だけでなく持ち物全てを巻き上げ素っ裸になる哀れな親父、すでに何も出す物が無いにも関わらず姫桜さんは槍でその親父を叩きのめし……そして喜ぶ被害者の親父。

 ――1種のプレイか?

 悩みつつ内心でツッコミを入れる僕。
「本当、うざったいのよね」
 そう言う姫桜はどこか遠い目をしていた。
 もしかしたら彼女も……。
「う、馬田君、彼女の事は良いじゃないか……やっぱりワルの武勇伝を聞くのは、見た目もワルなヤツからにしよう!」
「なんだよ桜山、やる気になったじゃねーか! よし、じゃああそこにいるヤツに――」
 これ以上の追求は危険だと思い、僕は馬田君を連れ姫桜さんの元を離れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高柳・零
POW
世紀末釘バ男の娘アイドル「いなづまちゃん」参上!
モヒカン(付け毛)にトゲトゲ肩パット、鋲付き革ジャンにフリルスカート、右手に釘バット(メイス)完璧な底辺校のアイドルだ!

「あたいは紅月いなづま!ネットアイドル、いなづまちゃんだ!TRPGの配信でGMがボスのセリフを言う前に、ボスが消滅するキーワードを言ってやったぜ!」
「あ?地味だ?なら、マスターが用意した渾身のネタ、城がロボットに変形するというギミックをプレイヤー全員にメールで盛大にネタバラししてやったぜ!」

アドリブ、絡み、何でもOK!
好きに扱ってくれよ!




 見た目がワルそうなヤツの武勇伝を聞こう――という話になり、馬田君と僕はあきらかにワルそうな見た目のヤツに話しかける。
 頭はモヒカン、肩はトゲトゲの肩パット、手には釘バッド、制服はもちろん着ておらず代わりに鋲付きの皮ジャンにフリルのスカート、顔は液晶テレビの身長が40cm弱の――。
「おい、桜山……遠目からだと解らなかったけど、どうも違うんじゃねーか?」
「奇遇だね。僕もそう思って来た所さ」
 馬田君と顔を見合わせ。
「ああ、どうみても――」
「うん、どうみても――」
 お互い声を揃えて違うだろうという場所を。
「なんでフリルスカートなんだ?」
「なんで液晶テレビ……え、そっち!?」
 馬田君はフリルスカートがおかしいと言う。いや、そこは些細な問題だろう。どうみても顔が液晶という点の方がおかしいはずだ。次点で言うにしても40cm程度しかない身長をツッこむべきだ。
「なんだい、あたいの話をしてるのかい?」
 馬田君と「え?」「え?」とやっていると、自分の事を話していると気づいた彼――紅月・いなづま、と言うらしい――が寄って来る。
「おう! その通りだ。その服装でキメてるってのになんでフリルスカートなんだ? どうせなら革性のパッツンなミニが王道だろうが!」
 馬田君が良く分からない拘りを見せる。本当、どうでも良い。
「あたいは紅月・いなづま! 世紀末釘バ男の娘アイドル『いなづまちゃん』とは、あたいの事だぜ!」
「男の娘アイドルだぁあ?……じゃあ、フリルも納得だ」
 どういう理屈か解らないが、馬田君が納得する。まぁその理屈を理解したいとは思わない。
 いなずまさんは机の上にピョコンと飛び乗ると。
「ネットアイドル、いなづまちゃんの武勇伝を聞いて驚け、恐れ慄け! あたいはなぁ、TRPGの配信でGMがボスのセリフを言う前に、ボスが消滅するキーワードを言ってやったぜ!」
 うん、意味が解らない。
 というかTRPGとは何だろうか。ボスとか消滅とか言っていたのでゲームの事ではないかと予測するが……いや、それよりあの身長や液晶の顔についてツッコミを入れる方が先だろう!?
「馬田君!」
 もっとツッコミべき事があるだろう! と声をかける。僕自身、なぜか違和感が無くなりつつあり、気を抜くと顔が液晶な事をツッコミ忘れそうになるが……。
「はっ!? しまった! 俺は知らない英語を聞くと脳がフリーズしちまうんだ……恐ろしい奴だ。いきなりそんな事をしかけてくるなんて……!」
 我に返る馬田君。どうりで一瞬静かになったと思った。
 だが、いなずまさんは馬田君がノーリアクションだったと思ったのか。
「ちっ、その程度じゃぁ地味だってんだな? ならとっておきを話してやるぜ……あれは数週間前、マスターが用意した渾身のネタ――城がロボットに変形するというギミック――を、参加していたプレイヤー全員にメールで盛大にネタバラしてやったぜ!」

 ――液晶顔のきみがなぜロボットの話をした!?

 思わず背景に台詞が出る感じで内心ツッコミを入れてしまう。
「馬田君!」
「はっ!? しまった、また停止してたぜ……くそ、危ない危ない」
「ああ、僕も正直自分の認知がおかしくなりそうだ……彼は危ない、一端離れよう」
「そ、そうだな」
 机の上に立って「待て! まだ話は終わってないぞ!」と叫んでいるいなずまさんに背を向け、僕達は一時避難する事にしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラムダ・マルチパーパス
なるほど、目的は了解しました。つまりここはいわゆる「ヤンキー」らしく振舞えばいい、という事ですね。喋る事も、わたくしの電脳内にある記録アーカイブを検索したところによれば、夜露死苦とか仏恥義理とか不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまったんだよ、とか述べてれば万事大丈夫かと。
そしてこの類の人達には、ワル自慢をして一目置かれる様になるのが、情報収集の近道かと。ですから、そうですねぇ・・・やってる事は地味ですけど、相当に悪い事(仮病を使って救急車をタクシー替わりに使った、インフルエンザに罹ってたのに平気で外出してた等)をやってた旨話しますか。あ、これらは実際には作り話で、ホントにやってないですよ?




 顔が液晶だった生徒――について、今では違和感が無くなりつつある自分に僕は驚いていた。
 確かに最近ではバーチャルリアリティーとして頭に装着したり、目の部分だけを覆うディスプレイで行うゲーム等も出てきている……その延長線上だと考えると顔が液晶なのも不思議ではないのかもしれない。
「まったく、僕としたことが……だいたい、別に全身ロボットがいたって訳でもないのに――」

 そこに居たのは、まぎれもないロボであった。

「!?」
 思わず立ち止まり二度見する僕。
 無骨な脚や腕、グリーンの塗装に単眼モノアイ、全身金属製のボディ、どこからどう見てもロボットだった。
「ちょ、馬田君!?」
 思わず馬田君にも気づいて欲しくて僕が指差すと。
「お、確かにな……」
 馬田君はその単眼のロボットに近づいて行き……。
「なかなか気合い入った格好じゃねーか、これから夜露死苦な」
「こちらこそ、夜・露・死・苦」
 軽く挨拶をして戻って来る馬田君。
 いや、そうじゃない!!
「なに普通に挨拶しているんだ!?」
「なにって……普通に夜露死苦ぐらい言うだろう、不良だし」
 だから! そうじゃない!!
 仕方がない、薄々解っていたが馬田君はバカだ。ここは僕が自分で確かめるしかない。
 僕は意を決してロボット――あとで自己紹介時に知る事になるがラムダ・マルチパーパスと言うらしい――に近づいて行き。
「キミは――」
 ここで僕は考える、もし彼女が本当はロボットでなかったとしたら、これから僕が聞こうとしている質問は、彼女の心を傷つける事にならないか? 本当に彼女は人間では無いのか……と。
 今一度彼女――ラムダさんを観察してみる。
「仏恥義理!」
「不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまったんだよ」
 彼女が呟いている。

 ――なんだろう、すごい不良っぽい。

 背景に台詞が出る感じで内心納得してしまう僕がいる。
 いやいや、なら直球ではなく遠巻きに聞くしかない。
「あの、ちょっといいですか? あなたもこの鮭高に入学するって事は、相当なワルなのですよね? 昔やった武勇伝とか聞かせて貰えますか?」
 僕が聞くとウィーンと音を立てて単眼のカメラが僕の方を向き。
「そうですね……仮病を使って救急車をタクシー替わりに使った事があります」
「な、なるほど、他には?」
「インフルエンザに罹ってたのに平気で外出していました」
「ふむ……」

 ――ロボが仮病って何だ!? というかインフルエンザに罹るもんなの!?

 頭を抱えて僕は馬田君のもとへ戻る。
 そして戻って来た時には僕はこう考えるようになっていた。
 彼女はインフルエンザにかかるのだから人間だろう、と。
 なんという違和感の無い結論!
 僕は納得した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

苧環・つづら
ふふ、高校生2回目開始なんて猟兵じゃなきゃ出来ない話よね。
昔は普通無難に徹してたけど、今回はどうやらその必要も無い……か。

男子制服姿でもこの話し方と顔じゃ性別不詳で通りそうかしら。
詰問はくすくす笑いと共に煙に巻いて、おっとり系の雰囲気を崩さずに。
余程の事態は笑顔で一寸床にすっ転ばせばいいか、年季が違うのよお兄さん達。
都度都度使えそうな性別の姿に切り替えて色々悪い事してたしこれからも……なんてね。
後はヤンチャな子達の無限の妄想力と創造された無数の噂の伝播力にお任せ。
そういうの此処なら有り余ってるでしょ?


……実際昔は何もしてないの。学校では普通の子、放課後は対UDC訓練。




 さすが天下名立たる底辺の鮭高だ。僕の頭をぐわんぐわん揺らしてくる。
 どうやら僕の常識が通用しない程、ワルの巣窟とは恐ろしい物らしい。
「馬田君、なんとかもうちょっと普通の不良に声をかけられないかな?」
「桜山、手前ぇ普通の不良って何だよ?」
 言われてみればその通りだ。
 僕もいよいよおかしくなってきたのだろうか。
 いや、そんな事は無い。できるだけ普通、別に不良の必要もないし!……いや、この高校で不良じゃないのは僕ぐらいか……。
 そう思った時だ、奥の方に座っている男子が制服の着こなしからしても、かなり普通な男子生徒がいた。
「あれだよ馬田君! ほら、ちょっと行こう!」
 僕は慌てて奥の席に座る――近づいて解ったが髪は長髪だった――いや、髪ぐらい長髪でも良いじゃないか、周りは変な髪型ばかりなのだ。長髪なんて普通普通。
「やあ、キミは普通かい?」
「アタシの事かしら?」
 男子かと思ったが口調がオネエだった――いや、口調がオネエぐらい良いじゃないか、周りは当て字の漢字を使った異世界後を使う不良たちばかりなのだ。オネエ口調ぐらい普通普通。
「ええ、そうです。あなたは普通っぽかったので」
「普通ねぇ……確かに昔は無難に徹してたけど……まあ、今回は2回目だからどうしようかしら」
 ダブリだった。
 僕の横で聞いていた馬田君が「チッス!」と頭を下げる。
 彼? 彼女?――苧環・つづらさんと言うらしい――は、クスクス笑うと「気にしないで」と手をひらひらさせる。
「えっと、ダブリのつづらさんは、普通ですよね?」
 諦めずに僕は聞く。ダブリ程度、さっきも1人居た事を考えればきっと普通だ。この程度で普通を諦めてなるものか!
 ダブリのつづらさんは「ワル自慢でも聞いてるのかしら?」と言ってから。
「そうねぇ、都度都度使えそうな性別の姿に切り替えて……ほら、色々できるじゃない? それで相当悪い事してたかしらね……ええ、もちろんこれからもする予定よ? なんてね」
 意味ありげに微笑むダブリのつづらさん。
 その微笑みに「まさか!?」と馬田君が一歩引きつつ。
「まさか……都度都度性別を変えてやれるワルって……1人2人役美人局とかッスか!?」
「ふふふ」
「え、もっと凄い事?……だとしたら、男子トイレを全て詰まらせてから、女子トイレで用をすますとか!?」
「え?……ふふ」
「その程度じゃ……ない? なら、お一人1パックまでの特売セールに男女チェンジで2パックもらったり!?」
 それはワルのスケールが小さいぞ。
「ふふふ」
 なぜか謎の微笑みを絶やさないダブリのつづらさん。
 どうやら「やった」と、いう事だろうか。
「さすがはもう1回1年をやり直すってだけはある……ダブリのつづらさん、今後とも宜しくお願いします」
 馬田君が勝手に感嘆して頭を下げる。
 とりあえず僕も頭を下げておく。
 結局、ダブリのつづらさんは最後まで意味ありげに微笑んで僕達を見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
え、オブリビオンを倒すのに不良の真似事をしなくちゃならないんですか……?

騎士として人々を護るため。郷に入りては郷に従え、私も伝説自慢をして舐められない様にしなければ……

皆様凄い武勇伝をお持ちですが、私も『我慢強さ』だけなら負けませんよ。
ここに引っ越す前に敵対していた「蛮族中」と抗争していたのですが、頭に灯油を大量に浴びせられた挙句、火をつけられましてね。もちろん耐えきって全員返り討ちにしました

あ、信じていませんね。じゃあ実演してあげましょう
(灯油の満タンポリタンクを取り出して●無敵城塞を使いつつ、庭か校庭でウォーマシンキャンプファイヤー)
信じていただけましたか?

え、どこ中ですか? 騎士道中です




「皆様凄い武勇伝をお持ちですが、私も『我慢強さ』だけなら負けませんよ」
 他の不良たちとワル自慢をしていた1人が、いきなりそう大声を出して立ち上がる。
 僕の横で馬田君が「面白そうだ」と呟き近づいて行って「手前ぇ何中だ! 調子乗ってんじゃねーぞ!」とチャチャを入れる。
「え、どこ中ですって? 騎士道中です」
 うん、さっぱり知らない中学校だ。
「へぇ、騎士道中か……お前知ってるか?」
「ああ、アレだろアレ、お前も知ってるだろ?」
「もちろんだ。まさかあの騎士道中とはな」
 集まっている不良たちがお互い言い合う。
 馬田君を含め、誰もが知らない中学校だったのだろう。目が泳いでいる。
「とりあえず、ここに引っ越す前に敵対していた蛮族中との抗争で、頭に灯油を大量に浴びせられた挙句、火をつけられた事ならありますよ」
「なっ!?」
 その武勇伝にはさすがの僕も声が出る。
 頭から灯油をぶっかけられて火を付けられるって……ほぼ殺人じゃないか!?
「ほ、ほぅ、さすが蛮族中、やる事がえげつないぜ……なぁ?」
「あ、ああ、さすが蛮族中だ。アレなだけはあるな」
「もちろんだ。蛮族中らしいぜ」
 完全に知ったかぶりだろう。
「もちろん耐えきって全員返り討ちにしましたが」
「いや、耐えられる物じゃないから!!!」
 はっ、思わず会話の輪に割り込んでツッコミを入れてしまった。
 周囲の目が痛い。何コイツ勝手に割って入って来てるんだ、と言わんばかりだ。
 ちなみに騎士道中の彼――トリテレイア・ゼロナインと言うらしい――は、白銀の騎士鎧にフルフェイスの兜を纏い、その上から制服を着ていたが、おもむろにその制服を脱ぐと。
「あなた、信じていませんね。じゃあ実演してあげましょう」
 そういうと全身鎧の姿のままで、灯油の満タンポリタンクを取り出し、その場でザバザバと頭からかぶり出す。
「いや、教室内でいきなり何を!?」
「いえ、今回は描写が教室内だと言っていたので……」
 ボッ、遠慮なく灯油まみれの自分に火を放つトリテレイア。
 天井を焦がす勢いで火柱となるトリテレイア。
 完全に猟奇事件である。
 いきなりのキャンプファイヤー事件に、さすがの教室内の不良たちが火元から離れる。
 だが、炎の中のトリテレイア君は、まるで城塞のごとく微動だにせず、そのまま炎が消えると無敵だったのかと疑う程に無傷であった。
「だ、大丈夫なのかい?」
 僕が思わず声をかけると、トリテレイア君はサムズアップし。
「ああ、大丈夫」
「そうか……よかった」
 所々焦げた鎧のまま言うトリテレイア君の言葉に僕は――。

 ――いや、大丈夫なわけあるか!!!

 つい全力で背景に台詞が出る感じで内心ツッコミを入れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城石・恵助
(教室の片隅で早弁をしています。いっぱい食べます。ワルなので)
(一つまた一つと食べ終えたお弁当箱を重ねていると、炊飯器から電子音が鳴ります)
(教室のコンセントを私物化し、お米を炊いていたのです。ワルですね)
(やはりお米は炊きたてに限ります。そして炊きたてのお米には、そう。焼きたての魚ですね)
(ロッカーから七輪を取り出し、鯖を焼きます。ワルなので鮭を避ける暴挙に出ます)
(表面がパリッとするまでじっくり焼きます。ちょっと焦げるくらいがおいしいのです)
(多少室内が煙くなるかもしれませんが、ワルなので気にしません)
(食べ終えたら釜飯をセットします)
(始終食べているので無言です。挨拶はげっぷでします)




 彼はずっと教室の片隅で弁当を食べていた。
 僕は彼に気が付いていたが、大量のお弁当を早弁している彼をとても止める気になれず、今はいつあのお弁当が尽きるのか見ていると……。
 ピピピピピッ!
 電子音がかすかに鳴り響き、彼――自己紹介時に聞いた所、城石・恵助と言うらしい――は、ザッと立ち上がると、スタスタスタと教室の隅へとやって来る。
「ま、まさかあいつ……」
 僕が恵助君を見ているのに気づいた馬田君が側にやってきて言う。
「まさかって?」
「ワナワナワナワナ……」
 僕が聞くと馬田君は口に出して震え、指を差す。
 そこでは教室のコンセントを私物化し、自身の炊飯器から炊けた米をよそる恵助君の姿があった。
「電気泥棒だ」
 馬田君が呟く。
 確かに恵助君のやっている事は決して良い事ではない。だが、昨今の不良なら適当なコンセントを見つけては自身の携帯を充電するようなワルじゃないのだろうか?
 見れば恵助君はそのまま炊き立てのご飯をパクリと食べ、さらにお代りしていた。
「桜山、お前は何もわかってねぇ! 携帯程度なら先に使っていた充電を捨てて、自分の充電に差し替えるだろうさ……だが、ヤツは携帯じゃなくて……炊飯器だ! あんなのつけらえたら自分の矮小な充電器の為に勝手コンセントを抜くなんて行為……怖くてできやしねぇ」
 本当に悔しそうに言う馬田君。
 そのまま恵助君の行動を見ていると、今度は昔話盛りの茶碗を片手にロッカーへと移動し、そこから七輪を取り出すと、パタパタとうちわで仰いで鯖を焼き始める。
 教室中に焼き鯖の油が焦げる良い匂いが充満。
「この学校に来て鮭を避けて鯖を選ぶなんざ……あいつ、相当できるワルだ」
 一目置く馬田君。
 正直僕はどうでも良い。だが鯖は良い匂いだ。
 やがて表面がパリッとちょっと焦げるくらいに焼き上がり、美味しそうに白米と一緒に焼き鯖を食べだす恵助君。
 この時、すでに教室中がけぶっていたのだが、皆生唾を飲み込むだけでそれ以上を言う者はいなかった。
「いい加減これ以上好き勝手させるわけにはいかねー、俺がちょっとビシっと言ってくるぜ」
 馬田君がかっこつけて鯖を食べる恵助君へと近寄って行き。
「おい、手前ぇ! いい加減にしろよ!!」
「げ~~~ぷ」
 馬田君の言葉に恵助君はゲップで返し、対する馬田君は小刻みに何度も頷くと、再び炊飯器のあった場所へとやって来て、さらさらと釜飯の素を炊飯器に入れ、さらに残しておいた焼き鯖の身も入れ――あ、あれは。
「釜飯!?」
「なにぃ!? 白米だけでは飽き足らず、釜飯にまで手を出そうってのか! おい、手前!」
 馬田君が再び文句を言いに行くも、1口釜飯を貰うとほくほく顔で途中まで戻って来て、途中でパンと両頬を叩き気合いを入れると。
「今日の所はこれくらいで許してやらぁな」
「いや、鯖釜飯で買収されたよね? ね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アヤカ・ホワイトケープ
こんな所にもオブリビオンの影が?
…任務とは言え、わたしが行ったら浮かないかしら?
いや、こうなった以上は覚悟を決めて、やれるだけの事をしないと。

(教室でギターを弾きつつ)あら、遅かったようね?
え、なんでこんな所に女が?そんなのこっちが聞きたいわよ!(逆ギレ)
何の手違いでこの学校に来る事になったのか…(ぶつぶつ)
あ、ワル自慢?ん、そうね…歌いながら火を付けたり、歌ったら周りの物が吹き飛んだり穴だらけになった事とか?(全て手持ちのユーベルコード)
あとは、そうね…ちょっとだけ力には自信があるけど。
何なら試してみる?(怪力とグラップルを用いて一ひねりしてみる)

地元じゃ負け知らずだったのよ?(捏造だけど)




「あら、遅かったようね?」
 僕と馬田君がその机の前を通りかかった時、唐突にそう声をかけられ足を止める。
 別に待ち合わせた覚えも、呼び出された覚えも無いのだが……。
 ボロンッ。
 僕達を呼び止めた彼女はおもむろに机の上で脚を組みギターを弾く。
 正直、教室内でごはんを食べているのは早弁の延長線上にある事だと考えれば、まだわからなくはない。
 だが、堂々とギターを持ち込み弾きがたってる姿はどうだろう。
 自由としか言いようがない。
 さすがは都内屈指の底辺高だ。見た目美人のナイスバディな女性だが、きっとバカなのだろう。可哀想に……。
 思わず僕が哀れみの目で見つめると。
「何を思ってるかなんとなくわかるけど……そんなのこっちが聞きたいわよ!」
「す、すいません」
 心を見透かされたかのようで慌てて謝る僕。
 そうだった、この学校にいる時点で僕も同じくバカだと思われているのだ。それはお互いさまなのに、こちらだけ上から目線でそう思っては失礼だったのだろう。
 だから僕は訂正する事にする。
「あの、勘違いがあるようなのでご説明しますと、僕は親の手違いでこの学校に入学してしまったので、決してバカだからこの学校に来たわけじゃないんです」
「(ピキッ)」
「ですので、僕もバカなのに自分の事をバカだと思ってるんじゃないと思っているようならそれは違うと――」
「私だってこんな学校に来る事になったのは何かの手違いなんだから!!」
 僕が皆まで言う前に全力で否定してくる彼女――アヤカ・ホワイトケープさんと言うらしい。
 ちなみに僕が再び謝ろうとする前に、アヤカさんの方が素早く動き、僕は胸元を掴まれ片手一本で宙吊りにされていた。かなり苦しい……というか、僕って片手一本で持ち上げられる物なんだ。
「お、おい、やめてくれ、桜山の顔が青くなってきてるぞ!?」
「あ、ごめんごめん」
 馬田君が心配してくれてアヤカさんがやっと手を放してくれた。
 やはりこの鮭高に来るというだけあって、この人も伝説を持つ不良なのだろう。勉強しか取り合えの無い僕では腕力で勝てるわけがない。
 ゴホッホゴッとむせていると、馬田君が「あんたなかなかやるな。中学時代の逸話とかもあるんじゃねーか?」と勝手に話を進めており。
「あ、ワル自慢? ん、そうね……歌いながら火を付けたり、歌ったら周りの物が吹き飛んだり穴だらけになった事とか?」
「マジかよ! すげーじゃねーか!」
 感心する馬田君。
 だが、歌ってそんな事できたかな……?
「そうそう、ちょっとだけ力には自信があるけど試してみる? こう見えて地元じゃ負け知らずだったのよ?」
 なぜか笑顔で僕に向かって行ってくるアヤカさん。
「いえ、歌で心に火を付けたり、胸にどかんと穴が開いたように、とか言う事もありますし、アヤカさんの伝説を疑ってなんてこれっぽっちも無いです」
 直立不動で宣言する僕。
 自分で言っていてなんだが、歌でそういう事が可能だという事が違和感が無いような気がしてくる。
「うん、よろしい」
 なぜか満足げに微笑むアヤカさんに、僕は一礼し無言で背を向けて去るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

未不二・蛟羽
わる……?んっと、悪いことする人っす?
やったらカッコいいっす?……なら俺、わるになるっす!
ところで悪いことって何するっすかね?

制服はオシャレに着こなして、タバコ…は体に悪いっすからココアシガレットを咥えつつ格好つけるっす!
え、歳下に見える?ちっちゃくないっすー!


悪いことだっていっぱいできるっす!
授業中だってお菓子食べれるっす!
お弁当(二つ持ち)だって休み時間に食べちゃうっすし、デザートから食べ始めちゃうっす!
人のお菓子だって食べちゃうっす!あ、代わりに俺のお菓子食べて良いっす!
きわめつけは、冷蔵庫にある誰のか分からないプリンだって、勝手に食べちゃうっす!

完璧なわるっす!これで皆の仲間っすね!




「ふぅ……」
 さすがに疲れて僕は適当な席に座ると、両手の指を絡ませそこに頭を乗せて目を閉じる。
 ここはワルの巣窟ムシェ鮭高校だ。恐ろしい不良が集まる場所だ。
 対して僕は勉強ができるだけの一般人……猛獣の檻に入れられた草食獣と言った所か。疲れないわけがない。
 僕は気を落ち着かせようと、持って来ていたタブレットをシャカシャカと手に出して食べる。
 スゥーと爽快な味と匂いが口に広がり、少しだけリラックスする。周囲はカオスだが、今、この時だけは……。
「もらうっすね」
 その声は僕の机のすぐそばから聞こえた。
 僕の机の横にしゃがんだままチョコンと両手をひっかけた男子生徒が、言うと同時に僕のタブレットを手にしてジャララーと口に流し込む。
「うーん、刺激的っす」
 男性生徒――未不二・蛟羽君と言うらしい――が微妙な顔で感想を述べ、ポイッと空になったタブレットを渡してくる。
「あ、なくなっちゃったっすね。じゃあ代わりに俺のお菓子食べて良いっす!」
 ワルの巣窟の中にもなかなか気さくな良い人もいるんだ、と思う僕。
「それは、ありがとう……それでどんなお菓子持ってるんです?」
「あ、お菓子持ってなかったっす」
 アハハと笑う蛟羽君。
 タバコみたいのを口に加えてはいるが、制服はオシャレに着こなしているし、不良たちの中ではちょっと浮いてるとも言える。
「えっと、じゃあお菓子はいいよ。気持ちだけもらうから」
「気持じゃ腹は膨れないっすよ?」
 そう言ってタバコっぽいものをバリバリと噛み砕くと食べてしまう蛟羽君、そのまま内ポケットからタバコっぽいシココア味のシガレット型お菓子を取り出し、再び1本を加える。
 うん、その加えているのはお菓子だね。
 さっきお菓子無いって言ったのに、思いっきりお菓子食べてるね。
 もしかして僕はおちょくられているのだろうか?
「えっと……もしかして蛟羽君もワル、なのかな?」
「わる……? んっと、悪いことする人の事っすか?」
「え、あ、うん、そうだけど」
「わるってやったらカッコいいっす?」
「うーん、人それぞれだと思うけど……映画とかだとだいたいカッコイイ枠ではあるかな」
「なら俺、わるになるっす! ところで悪いことって何するっすかね?」
 無邪気に笑う蛟羽君に、僕は1つ確信する。
 彼はこの鮭高では珍しい不良ではない生徒なのだろう。
「俺、悪いことだっていっぱいできるっす! 授業中だってお菓子食べれるっす! 2つ持ちのお弁当だって休み時間に食べちゃうっすし、しかもデザートから食べ始めちゃうっす!」

 ――この子はアホの子だ。間違いない。

 背景に台詞が出る感じで遠くを眺めつつ内心でツッコミを入れる僕。
 そう、この学校は入学書類さけ送れば誰でも合格できる高校だ。つまりこの子は全力でソレで入って来たという事だろう。どうりで他の不良たちと毛色が違うはずだった。
「ちょ、聞いてるっすか? 俺、もっとわることもできるっす!」
「へー」
「なんと! 冷蔵庫にある誰のか分からないプリンだって、勝手に食べちゃうっす!」
 どやー、と胸を張る蛟羽君。
「へー」
「もう俺、完璧なわるっす! これでこの学校の仲間っすね!」
 この席はどうかと思い、僕は別の空いてる席を探そうと立ち上がるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
ムショ行き高校?
荒くれ者が集まっている感じかの。では、それらしい格好で行くとするのじゃ。

【SPDを使用】
伝説の底辺校の伝説の不良集団の正装で行くのじゃ。
そう、武蔵…RB団の正装、黒サバト服じゃ!
裏切り者が続出する恐ろしい集団なのじゃ…。
「皆、リア充を爆破した事はあるかの?…わしはあるんじゃ!ある時は山中で告白しているカップルを締め上げ、またある時は野球場に集まったリア充共をバットで仕置し…爆破したカップルは数知れずじゃ!」
(もちろん、最後は没シュートされたり、吹っ飛ばされたりしてます)

アドリブ、絡み歓迎じゃ。


涼風・穹
【内心】
……帰って良いか…?
……俺も一応現役高校生なんだけど、流石にここまで特徴的な高校ではなかったぞ…

【恰好】
指定の制服を着崩したりせずにきちんと着ています

【自慢(?)】
女の子の胸に飛び込んで袋にされたとか、RB団としてクソアベック共を爆破すべく戦いを挑んで袋叩きにされたとか…?
……とある男子校ではバレンタインに女装して男相手にチョコを配るという何の罰ゲームかと思うような行事に参加する羽目になった事もあったな…

【悪戯】
教室の扉を閉める際に扉の上の方に黒板消しを挟んでおいて、扉を開くと黒板消しが落ちてくるという定番なあれを仕掛けておきます
勿論足元には洗剤を含ませた雑巾も置いて二重罠にしています




「おお、桜山、どこ行ってたんだよ。こっち来いって!」
 馬田君が僕を見つけて強引に呼びつけてくる。
 正直、聞こえなかった振りをしようかとも思ったが、初めてこの学校に来て声をかけてくれた馬田君を、そこまで邪険にするのは少しだけ心苦しく、僕は「なんだい」と気さくな風に馬田君たちの輪に入る。
 そこには3人の男子生徒が集まっていた。1人は言わずと知れた馬田君だ。2人目は僕と同じく普通そうな男子だった。学ランの前ボタンだけは全開けだが、学ランも指定のもので短ランでも長ランでも改造制服でもなく、あくまで指定の学ランをラフに着ているだけでとても普通だ。彼の名前は涼風・穹と言うらしく、僕はとても親近感を覚える。
 だが、最後の1人は……。
「さて、どこまで話したかのぅ」
 第三の男が机に座って両肘を付け、両指を顔の前で組み、呟く。
 だが、問題はその服だった。黒い三角頭巾――黒サバト服で全員をすっぽり覆っていたからだ。
「運動会で……って所だな」
「ああ、その続きからだ」
 黒サバト――山梨・玄信――の問いに、普通に馬田君と穹君が同意し続きを促す。

 ――誰っ!!!

 背景に台詞が出ても気にせず全力で内心ツッコミを入れる。
 明かにアメリカの歴史の教科書に載ってるヤツの亜種がここにいるんだが……。
 どうみてもヤバイ秘密結社の一員が高校生に混じってるんだが……。
「ん? 桜山と言ったか? どうかしたのじゃ?」
 黒サバト服が僕に聞いてくる。
 どうかしたのか、じゃない。きみがどうかしたのか、と僕が聞きたいぐらいだ。
「ん? ああ、この恰好か! 伝説の底辺校に入学したからには、伝説の不良集団の正装で行くしかあるまい?」
「伝説の不良集団?」
「そう、かつて都内某学校で暗躍した不良集団……その名もステキRB団! その正装、黒サバト服じゃ!」
 うん、知らない。
「これはのぅ、裏切り者が続出する恐ろしい集団なのじゃ……」
 何かを思い出そうとするように、噛みしめるよう呟く玄信君。
 聞いてないのに語って来る。よほどの想い出なのだろう。
「皆、リア充を爆破した事はあるかの?……わしはある! ある時は山中で告白しているカップルを締め上げ、またある時は野球場に集まったリア充共をバットで仕置し……。わしが爆破したカップルは数知れずじゃ!」
 ドーンッとドアる玄信君。
 まぁ、やってる事は完全に嫉妬に狂ったテロリズムだが……。
「同士よ!」
 ガッと黒サバト服の玄信君と硬い悪手を交わすのは穹君だった。
「俺もあるぜ? 女の子の胸に飛び込んで袋にされたとか、RB団としてクソアベック共を爆破すべく戦いを挑んで袋叩きにされたとかな!」
 ほとんど袋叩きにされた記憶しかないじゃないか。
 しかし、RB団という組織はそんな認知されている組織なのだろうか、僕は初耳だが……。
「ちなみに俺の武勇伝も聞いてくれ! とある男子校ではバレンタインに女装して男相手にチョコを配るという何の罰ゲームかと思うような行事があってな……それに俺も参加する羽目になって……」
 何か凄い悲しい武勇伝な気がして、穹君の名誉の為に途中から聞くのを止めておく。
「と、言うか……ちょっと質問があるんだけど」
「はい、桜山君、どうぞ」
「はい、桜山です……あの、きみ達2人は不良なの?」
 僕の質問に馬田君も疑問を浮かべた顔で玄信君と穹君を見つめる。
「当たり前じゃろう! こんな格好をした一般生徒がおるわけないじゃろう!」
 玄信君が黒サバト服のまま宣言する。
 まぁ、確かにこの鮭高でなければ追い出されて然るべき風貌だ。
「あ、じゃあ俺は帰って良いか……? 流石にここまで特徴的な高校は……なぁ?」
「さっそく裏切るのか!」
「いや、違うだろう!? 別にRB活動は続けるって!」
「それなら良いぞい」
 良いんだ……。
「おいおいおい、せっかく仲良くなったのにいなくなるとか寂しい事言うなよ?」
 馬田君がなぜかまともな事を言っている。僕としては穹君の意見に大賛成なのだが……。
「な! お前もそう思うだろ桜山!」
 空気を読まず同意を求めてくる馬田君。
「う、うん、そうだね」
 僕はしぶしぶ同意する。
「よぉし! 同士の親睦が深まった所で……アベックを倒しに行くぞい!!」

 いや、それは違うシナリオだから!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リトルリドル・ブラックモア
クックックッ…ニンゲンどもめ
まだオレサマの正体をわかっていないようだ
オレサマがどこ中だって?
きいておどろけ
『宇宙』だ!!

オレサマこそは故郷のホシを征服し
宇宙のハテから地球をシンリャクしにきた
さいきょーのワル、まおーリトルリドルサマだ!
おっと…イマはコウコウセイだったぜ
まずはこの鮭高を征服して
それから地球をシハイしてやるのだ
クックックッ…

オレサマ、ワルだから早弁するし
購買のヤキソバパン買い占めるし
授業中にゲームだってやるのだ!
ニンゲンとは黒いメンセキが違うんだぜ
見た目が黒いヤツはワルいのだ!!
わーははは!!!

…でもすげーヤベーヤツにあったら
オレサマ【ESCAPE】でニゲる
いのちをだいじになんだぜ




「クックックッ……ニンゲンどもめ、まだオレサマの正体をわかっていないようだ」
 僕が一端落ち着こうと空いてる席に座っていると、勝手に前の席に座り、彼は後ろ(つまり僕の方を見て)語り掛けてくる。
 ガタッ。
 僕は面倒ごとから巻き込まれないよう椅子に座ったままクルリと180度回転し後ろを向く。
 トテトテトテ。
「クックックッ……ニンゲンどもめ、まだオレサマの正体をわかっていないようだ」
 後ろの席の机の上に立ち、再び僕の視界に入るように彼は言う。さっきと同じ台詞だった。
 ガタッ。
 再び僕は180度回転し前を向く。
 トテトテトテッ!
「クックックッ……」
 ガタッ。
「聞け――――ーっ!!!」
 なんか悲痛な声でつっこまれた。
 しょうがないので後ろを向くのを止めて、さっきから絡んでくる黒いのの方を向く。
「クックックッ……ニンゲンどもめ、まだオレサマの正体をわかっていないようだ」
「えっと……はい、わかりません」
「だろうな! なんせ言ってないから! お前がすぐに後ろ向いちゃうから言えなかったからな!」
「え、はい、すいません」
「フフンッ、しゅしょうな態度だニンゲン、では教えてやろう。オレサマがどこ中から来たのかを!」
 あ、出身中学を言うんだ。
「きいておどろけ! オレサマは『宇宙』から来たのだ!!」

 ――ダジャレかよ。

 背景に台詞が出しつつ内心ツッコミを入れる。
「オレサマこそは故郷のホシを征服し、宇宙のハテから地球をシンリャクしにきた『さいきょーのワル』、その名もまおーリトルリドルサマだ!」
「桜山・咲太です。宜しく」
「あ、ヨロシク」
 ぶんぶんと握手をし。
「ちがーう! まおーはそんな簡単にフレンドリーにならないのだ!」
 勝手に握手した手を振り払って否定するリトルリドル君。
「おっと、まおーじゃない、イマはコウコウセイだったぜ。とりあえず、まずはこの鮭高を征服して、それから地球をシハイしてやるのだ! クックックッ……」
「うん、頑張って」
 とりあえず他の不良が絡んでこないで平和なので教科書を取り出し予習をしようとする僕。
「本を見るなー! 話を聞けー!」
 ビタンと教科書を机に叩きつけ邪魔をするリトルリドル君。正直、他の不良たちと違って怖くないので、さすがの僕もピクッと額に青筋が立つ。だが、自分より弱そうだからって強気にでるのは人間として間違っている。僕はぐっと堪えてリトルリドル君に聞いてみる。
「ごめんごめん。それでこの鮭高をしめるって事は、リトルリドル君は相当なワルって事なの?」
「ふふふ、よく聞いたニンゲン!」
 ヨジッと机の上に立ち上がり。
「オレサマ、ワルだから早弁するし、購買のヤキソバパン買い占めるし、授業中にゲームだってやるのだ! どうだ!」
「ふーん」
「本を見るなー! 話を聞けー!」
 ビタンと再び教科書を机に叩きつけ邪魔をするリトルリドル君。ピクピクと青筋が立つ僕。
「みろ! オレサマはニンゲンとは黒いメンセキが違うんだ! 見た目が黒いヤツはワルいのだ!! わーははは!!!」
「本当だ、全身まっ黒だ、そんな事って……」
「おどろけおどろけ! わーっはっはっはっ――本を見るなー! 話を聞けー!!!」

 そして、不良の中にも面白いのがいるものだと僕は学ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

庚・鞠緒
POW

ワル自慢か…そうだな、とっておきのがあるわ

ウチこう見えて昔は体が弱くってよ、調子が良ければ家の中歩けるってなモンだったんだわ
親としちゃ子どもには元気になって欲しいわけで、あちこち色んなとこ行っちゃァ色んな方法試してよォ
それでもウチの体なんて一向に良くならなくてよ
疲れちまったんだろうな……ついには新興宗教にハマっちまったんだよな
その後は…暗すぎっからちょっと省くけどよ、両親とも消えちまって
ウチだけなぜかこうしてピンピンして生きてるわけだ

……どうだワルだろォが
お前は悪くないとか言ったやつからぶっ飛ばすからな
あ? さっきから飲んでる赤い飲み物? トマトジュースだよ、やらねェからな




「ワル自慢か……そうだな、とっておきのがあるわ」
 そう言って語り出したのは極端に白い肌に白い髪の少女だった。
 ちょうど彼女の横の席に座っていた僕は、キョロキョロ周りを見てみるが僕以外に近くに座っている者はおらず、頼みの馬田君も少し遠くにいる。
「ウチこう見えて昔は体が弱くってよ、調子が良ければ家の中歩けるってなモンだったんだわ」
 語り出した……。
 相槌を打ったつもりはないが、実質僕しか聞こえる範囲にいないのだから僕が何か反応するべきだろうか。いや、しかし、ここで「ああ」とか「そう」とか相槌を打てば、確実に僕は聞き役になってしまうだろう。できれば……それは避けたい。
「で、親としちゃ子どもには元気になって欲しいわけで、あちこち色んなとこ行っちゃァ色んな方法試してよォ」
 うん、勝手に話し続けている。本当、周囲に誰もいないから。僕らしかいないから。だが、ここまで来たら仕方が無い……。
「んっんっん~♪♪♪」
 イヤホンを両耳につけ音楽を聴いているフリをする。なぜなら、ここまでスルーしておいて途中から聞いてましたとか言えるわけがない。
 だが異様に色白の彼女ーー庚・鞠緒と言うらしいーーは、構わず自分語りを続ける。
「それでもウチの体なんて一向に良くならなくてよ。疲れちまったんだろうな……ついには新興宗教にハマっちまったんだ」
 そこで一息付く鞠緒さん。少し遠くを見て何かを思い出しているようだった。こうなったら強硬手段しか無い。
「ちょっとトイーー」
 ガシッ。
 なんだと!?
 鞠緒さんの腕が僕の腕を掴む。
「黙って聞いてろ!」
「あ、はい」
 鞠緒さんの迫力に押されて再び席に着く。
「えっと……それで?」
「その後は……暗すぎっからちょっと省くけどよ、両親とも消えちまって、ウチだけなぜかこうしてピンピンして生きてるわけだ……どうだ、ワルだろォが?」
 ワルだろう? と言われても……鞠緒さんのご両親が死んだのは別に鞠緒さんのせいじゃないような……。
「あの、鞠緒さん、ご両親が死んだのはーー」
「そうそう、お前は悪くないとか言ったら……ぶっ飛ばすからな?」
「ご両親が死んだのはーー鞠緒さんのせいですね。相当なワルですよ、本当」
 ガッと胸元を掴まれ絞られる僕。
 パンパンパンッ!
 開いてる方の手で鞠緒さんの腕をタップする。
「わかってるなら良いんだぜ?」
 はぁ……はぁ……はぁ……。
 やはり最初の勘は正しかった。この位置は危険だ。もしこの位置が動けないのなら、せめて……。
「あの、鞠緒さん。さっきから飲んでるその赤いドリンクは何味なのかな?」
「ん、血のように赤いコレの事? 何だと思う?」
 しまった!? せっかくワル自慢から別の話題に流したのに! とりあえず赤い飲み物赤い飲み物……。
「イチゴシロップ」
「シロップは飲まねぇだろうが!」
 ま、確かに。
「トマトジュースだよトマトジュース! 血なわけ無いだろう?」
 笑い飛ばす鞠緒さんであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトリア・アイニッヒ
潜入調査、ですか…え、生徒として?しかも新入生で?
…あの、私、一応成人もして…あ、それ以外はダメですか、そうですか…

それっぽい制服を身に纏いつつ、教室には可能な限り早く入る。
まずはしっかり、清掃からですね。
自らが学ぶ場、その環境を整えるのは教えを乞う者の務めです。しっかりやりませんと。
…環境を整えれば、人は自然と襟を正すものですしね。
その後は時間まで、読書で時間を潰す。

(…それにしても、皆さんノリノリで…この空気に合わせるのは、流石に恥ずかしい様な…)

騒ぎが起きようと何が起きようと、平然とした様を崩さない。
ただ、その騒ぎが大きくなり過ぎる様でしたら…鎮めねば、なりませんね?


桐・権左衛門
下町中のォ!権左衛門ちゅうもんや!夜露死苦ぅ!

女なのにおでこから1m程前方に突き出したリーゼントで出オチ満載
席に座れば前の人をリーゼント頭突き可能

札付きのワルぅやった
クラス中の女の乳だけじゃ飽き足らずクラス外、学校外に手ェを出して
サツにもよー世話になって『千手観音の権』とはよく言われたもんや

自分を抑えきれんウチは愛車『微ィ茄子』を
鬼ハンに改造して走り出したもんや

ウチの姿を見たヤツらはこう言うたわ
『ォィ!!(千手観音の権が)チャリで来た!』
『しかもドライブスルー帰りだぞ?!半端ねぇ…』

他人のワル自慢には
mjかよ、ヒューッ!、流石やわ等…合いの手(ガヤ)をいれる

全てアドリブ&ノリノリでどうぞ




 普通に席に座っていても、ここの不良達に絡まれてしまう。
 ならどうするべきか……僕の出した答えはコレだった。
 ガチャ。
 掃除用具入れを開ける僕。
 そう、フラフラしていても席に着いていても不良に絡まれるのは、何もしていないからだ。こうやって掃除をしていれば、さすがのワルとはいえ僕に話しかけるのはハードルが高いはず。ふふふ、なかなか良い作戦だ。僕は思わず自画自賛する。さすがは勉強が取り柄の男。
 そして僕は掃除用具入れの中に手を伸ばしーー。
「はっ!?」
 そんな……まさか……。
「掃除用具が、1つも無い、だと!?」
 さすがは天下の底辺高、それにしたって箒の1本ぐらいあっても良いじゃないか。これじゃあ放課後に誰がどうやって掃除をするって言うんだ……。
 僕がそうやって掃除用具入れの前で四つんばで打ちひしがれていると。
「あの、もしかして箒とか探してます?」
 顔を上げると銀髪の大人っぽい女性がここの生徒にしては珍しく、きっちり制服を身に纏い箒を持って立っていた。
「ごめんなさい、朝一からやっているんですが、なかなか終わらなくって……」
「あ、いえいえ、使っていたのなら気にしないで下さい。早い者勝ちですし」
 箒って早い者勝ちなものだっけ? とか思いつつ、とりあえず丁寧に言われたので丁寧に返す。
「でも、私以外にもお掃除しようとする方がいて安心しました」
「……そうですね」
 不良に声を掛けられたくないのでカモフラージュで掃除をしようと思ったのですが……。
「自らが学ぶ場、その環境を整えるのは教えを乞う者の務めです。しっかりやりませんと」
「そうですね」
 この教室には教えを乞う気が無い者しかいないと思うのですが……。
「……環境を整えれば、人は自然と襟を正すものですしね」
「そーですねー」
 この環境の中で襟を正すワルは誰一人居ないと思うのですが……。
 もしかして、この大人っぽい美人さんーーヴィクトリア・アイニッヒという名前だったーーは、天然なのだろうか?
「それにしても、皆さんノリノリで……ちょっと、いえ、流石に恥ずかしいですよね」
 あの不良達のバカ騒ぎがノリノリの一言で片付けられるあなたが凄い気がしますが……。
 さて、何か言うべきか、正すべきか……。
 僕がそうやって掃除用具入れの前で腕を組んで悩み出した、その時だった。

「下町中のォ! 権左衛門ちゅうもんや! 夜露死苦ぅ!」

 教室のど真ん中で誰かが大声で叫んだのだ。
 見れば、おでこから1m以上前方に突き出したリーゼントの女性が、椅子の上に立ち、片足は机を踏んで見栄をきっている。
「おうおう、何目立ってんだワレ!」
「うっさいわ! まだウチの自己紹介の途中やろが!」
 ぶべしっ!
 下町中の権左衛門さんが首をぐるんと振れば、1m以上のリーゼントが割って入ってきた不良の顔を殴り飛ばし黙らせる。
「ウチは札付きのワルぅやった! クラス中の女の乳だけじゃ飽き足らずクラス外、学校外に手ェを出して、サツにもよー世話になって『千手観音の権』とはよく言われたもんや」

 ――まごうことなき痴漢だ。

 背景に台詞を出しつつ内心ツッコミを入れるも表情を変えない僕。
「自分を抑えきれんウチは愛車『微ィ茄子』を鬼ハンに改造して走り出したもんや」
 どこか遠くを見つめつつ回想に浸る下町中の権左衛門さん。
 うんうん、と目を瞑ってうなずく度、長いリーゼントが前方の不良の頭をモグラ叩きのようにぶちのめしているが本人は気付いていないらしい。
「ウチの姿を見たヤツらはこう言うたわ! 『ォィ!!(千手観音の権が)チャリで来た!』『しかもドライブスルー帰りだぞ?! 半端ねぇ……』って」

 ――チャリかよ!

 背景に台詞を出しつつ内心ツッコミを入れる僕、いや、きっとこれは僕だけじゃないはず。クラスの不良達数人も同じ表情だったから。
「ゴンちゃんさん! いくら何でも目立ちすぎです! ちょっと来て下さい!」
「痛っ、痛たたたたっ!」
 さっきまで僕の横で箒を持っていたヴィウトリアさんが下町中の権左衛門さんの耳を引っ張って教室の外へと連れ出していった。なんだったのだろう。もしかして2人は知り合いだったのだろうか?
 共通点がまったく見つからないけど……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

古峨・小鉄
俺高校デビューじゃ
詰め襟高く、裾長学ラン、学帽から虎耳、バンカラすたいる(ずるずる)
聞け。新ピカいち年生ども。(声だけデッカい)今日から、この教室の隅っこは俺が占拠したじゃ(ゴミ箱撤去して体育座り。ジャストフィットぴたっ)
神聖な隅っこ(?)を返して欲しくば、しょば代を、今日から毎日俺に払うがええじゃ
俺ワルじゃけん安くしたるど(ドヤあ)
(お菓子ほしいってキラキラ顔で尻尾ぴこぴこ)
(ゴミ投げられたら)あ!ちょっふぎゃん!ワルな俺に何するじゃ
ぶぇぶえっ…ユキちゃーん、わーん。
ユキちゃんは、デカいニャンコじゃ
らいお…ちゃう!ニャンコ!
むー、呼び出してマズけりゃ教卓下を占拠するじゃ
聞け!(最初に戻る)




「聞け。新ピカいち年生ども!」
 教室のド真ん中で叫んでいるロングリーゼントがいなくなったと思ったら、今度は少し甲高いがでっかい男の子の声が教室に響き渡る。
「どこだ!?」
「今の誰だ!」
 教室内の不良達がざわざわする、パッと見、声の主がどこにいるのか見つけられないのだ。かくいう僕もどこからか声がするなぁ……と思いつつ掃除をする。掃除をしている限り、不良たちに声をかけられ面倒ごとに巻き込まれる事は無いだろうという考えだ。
 そして声の主を探す不良達をスルーしつつ掃除に専念する僕。
 うん、この方法は悪くない、これなら面倒ごとに巻き込まれる事は無いだろう。
 さて、ゴミも集まったしあとは教室の隅にあったゴミ箱へ……。
「………………」
 おかしい、教室の隅にゴミ箱があったはずだが……。
 今はゴミ箱の変わりに6才ぐらいの男の子が体育座りしてジャストフィットしている。
「………………」
 考えてみたが、6才男子型という斬新なのゴミ箱はやはり無いだろう。するとこのゴミをどうすれば……、そう僕が悩んでいると、男の子は「誰も気付かんとは」と呟きニヤリと笑うと、再びでかい声で叫び出す。
「今日から、この教室の隅っこは俺が占拠したじゃ!」
 詰め襟高く、裾長学ラン、学帽から虎耳、バンカラスタイルというヤツだろうか。もっとも6才男児が高校の長ランが着れるはずもなくぶかぶらズルズルだが……。
 ちなみに教室の不良たちは6歳児ーーあとで自己紹介があり、古峨・小鉄と名乗っていたーーに気付かず。
「出て来いやぁー!」
「誰が教室は占拠しただ! ふざけんな!」
 と騒ぎ続けている。
「………………」
 皆に言うべきか、言わざるべきか。
「おい、そこの! 神聖な隅っこを返して欲しくば、しょば代を、今日から毎日俺に払うがええじゃ!」
 嫌な予感がしてキョロキョロするが、皆、謎の宣言者を探していて近くにいない。
「お前じゃお前!」
 やはり僕に言っているらしい。僕はいつもの表情のまま小鉄君に向き直る。
「なんでしょう? 幼稚園ならここじゃないですよ?」
「俺は幼稚園じゃないじゃ! 俺ワルじゃけん!」
「あの、ここにあったゴミ箱はどこに?」
「教えて欲しければ情報代寄越すじゃ!」
 小鉄君のおしりから映えた白くて太いもふもふしましま尻尾がピコピコ揺れ、何か欲しいとねだってキラキラお目めで見てくる。
「………………」
 僕は無言でダブリの先輩のカバンからリンゴを1つ拝借すると、それを小鉄君へ渡す。
「リンゴ、あんがとじゃ! でもお菓子じゃなかったから教えないじゃ!」
 バリボリ食べつつ拒否られたので、集めたゴミを小鉄君がフィットしている隅に向かって箒で掃いていく。
「あ! ちょっふぎゃん! ワルな俺に何するじゃ! ぶぇぶえっ……ユキちゃーん、わーん」
 その瞬間、ボフンと黄金の巨大なライオンが現れ、突如現れたライオンに教室中が騒然となる。それはそうだろう、ライオンだ。そしてライオンの目の前には僕。
 ……僕、死んだかな?
「まさか間違って鮭高に来て、事前登校日とかいう意味の解らない日に登校したせいで、教室でライオンに遭って死ぬとか……」
「違うじゃ! ユキちゃんは、デカいニャンコじゃ! らいおん……ちゃう! ニャンコ!」
 全力で否定してくる小鉄君。
 そう言われてみると巨大な猫とかニュースで見たことがある、とてつもなくライオンぽいいが、言われてみると違和感無く巨大な猫に見えてくる。
 そのまま小鉄君はライーー巨大ネコのユキに乗って教卓下を占拠。ワルたちもライオンっぽいネコには手出しが出来ず……。
 僕は冷静に掃除用具を片付け。

 ――6才じゃないのか?

 背景に台詞を出しつつ内心ツッコミを入れる。
 まぁ、すごい年上の妻殺しとか居たし、凄い年下が居てもおかしくないか……。
 よし、スルー!

大成功 🔵​🔵​🔵​

文月・統哉
おいおい、不良の服装といえば長ランに決まってるだろ?

さも当然の様に丈の長い学ランを着た……クロネコの着ぐるみを着用
(着ぐるみの)吊り上がった目は睨む様に見開かれ
もふもふの毛並みに覆われた丸っこい腹は文字通りの腹黒だ
頭部にはピンと立った三角の耳とバンカラな学生帽
纏うは歴戦の王者の風格と、暑く、熱く滾る悪の野望
めっちゃゆるキャラ?キノセイキノセイ

来たからには狙うは勿論てっぺんだ
俺には野望がある
先ずはこのクラスを、そして学園を、ゆくゆくは世界を征服してやるのさ
着ぐるみで征服……いや
着ぐるみを制服にしてやるぜ!

隙あらば着ぐるみ同志を増やしていく構え
どいつもこいつも夜露死苦な!

※ネタもアドリブも大歓迎!




「文月・統哉には野望がある!」
 今度は何だ? と顔を向ければライオンが寝ている教卓の上に立つ男が1人。
 教卓の上に特徴的な立ち方でポーズを決める。黄金の風が窓から吹き込み、着ている学ランの長い丈をはためかせる。
 だが、その長ランを着てポーズを決めているのは文月・統哉君であって文月・統哉君ではなかった。
 なぜならソレは……クロネコの着ぐるみだったからだ。

 ――なぜ着ぐるみ?

 背景に台詞を出しつつ内心ツッコミを入れる僕。表情は微動だにもしない。
 見ていると、着ぐるみの吊りあがった目が睨むようにカッ! と見開かれ。
 もふもふの毛並みに覆われた丸っこい腹は文字通りの腹黒で、頭部にはピンと立った三角の耳とバンカラな学生帽、そして纏うは歴戦の王者の風格と、暑く、熱く滾る悪の野望。

 ――なぜ着ぐるみ?

 背景に台詞を出しつつ内心ツッコミを入れる僕。無論表情は変えない。
「俺が来たからには狙うは勿論てっぺんだ! 先ずはこのクラスを、そして学園を、ゆくゆくは世界を征服してやるのさ!」
 そう言うとめっちゃゆるキャラって感じの着ぐるみのまま、ダンッと脚で教卓を鳴らす。
「着ぐるみで征服……いや、着ぐるみを制服にしてやるぜ!」
 見栄を切る統哉君。
 だが、大丈夫なのだろうか、先ほど教卓をダンッと鳴らしたせいで、教卓の下にいたライオンがイラッとしたのかノシノッシと教卓の下から現れる。
「あ、危ない!」
 思わず叫んだのは僕だ。なんせ相手は野生動物、言葉の通じる相手では無いのだ。
 だが、統哉君――いや統哉君が来ているクロネコの着ぐるみはその目をキラーンと光らせ。
「仲間を増やしてやるぜ!」
 と燃えたまま、イラ立つライオンを強引に捕まえるとシュババッと着ぐるみを着させる。
「見ろ! 完璧なライオンだ」
 おお……思わずその手つきに拍手をしてしまう僕。
 すると統哉君は叫んだ僕に気づいたのか、教卓から降りるとツカツカ(実際には着ぐるみの脚なのでポムポムだったが)と近づいてくる。
「キミも――」
「いいえ、遠慮します」
 秒で断る。
 なぜ僕が着ぐるみを着なければならないのか。
「着ぐるみの何がいけないんだ!?」
 真摯な瞳で見つめられつつ問われる。
 着ぐるみの何がいけないか、か……確かに、問われてみるとなかなかに深い質問だ。
 僕達が学校に着て来ている制服も、言ってみれば着ぐるみと同じく体に纏う意味で作られた物だ。
 制服は良くて着ぐるみは駄目だと誰が決めたんだ。いや、校則を作った者なのだろうが……。
 そうこう考えている間にも、統哉君は別の着ぐるみを持ってこちらに「さぁ! さぁ! さぁ」迫って来ている。
 そして僕は着ぐるみのメリットとデメットを次々に考え、そして告げる事にする。
「ええーっと、いろいろ見て考えたのですが……やっぱり着ぐるみは別にいいです」
「なんでだ!?」
「だって……暑いし」

 ――正論。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真守・有栖
……うるさいわね。
全く、お昼寝(注・今は朝です)もおちおちできないじゃない。
こんな小さな群れの中で縄張り争い?
わんわん吠えてるのがどんなのかと思えば、牙も生え揃ってない奴等じゃないの。

……つまらないわね。小さな群れの長を気取って満足なの?
この学び舎の?……はっ、笑わせるんじゃないわよ!

私は真守・有栖。
諸国を流浪する俊狼かつ麗狼な一匹狼。
学び舎の長なんかに興味はないわ。
夢はでっかく(諸国行脚の)全国制覇!そして日の本いちばんの狼になることよ……!

で、さっきまでの威勢はどうしたのよ?
ほら、吠えてみせなさいよ。

ふん。尻尾を丸めて縮こまる子犬には興味はないわ。
牙の一つも生えてから出直していらっしゃい!




「……うるさいわね」
 そう呟いて突っ伏していいた机からムクリと起き上がったのは紫の瞳が綺麗な少女だった。
「全く、お昼寝もおちおちできないじゃない」
 周囲の喧騒に起こされたせいか不機嫌そうにそう言うが、ぶっちゃけ今はまだ朝である。それとも昼までずっと寝続けるつもりだったのだろうか……それなら昼寝という言葉もあながち間違いではないのかもしれない。
 だが、彼女――真守・有栖という名前だと後で知った――の次の言葉は、ワルの巣窟たる鮭高ではあまりに危険な言葉だった。
「こんな小さな群れの中で縄張り争い? わんわん吠えてるのがどんなのかと思えば、牙も生え揃ってない奴等じゃないの」
 有栖の言葉にガタタッと不良たちが席を立ち、有栖の席を囲みだすと。
「今言ったのは手前ぇか?」
「女だからって容赦しねーぞ?」
「だいたい、犬扱いとは酷ぇじゃねーか?」
 数人の不良たちに有栖さんが囲まれ、このままでは……と言った空気となる。
 だが、有栖さんは先ほどの言葉を否定する事も謝罪する事もなく。
「つまらないわね。小さな群れの長を気取って満足なの?」
「あ? このクラス1のワルが決定したら、その後は他のクラスや上級生もボコって、いずれこの学校を俺達が支配するんだ」
「この学び舎の?……はっ、笑わせるんじゃないわよ!」
 有栖さんの怯えない態度に、逆に周囲を取り囲んでいた不良たちが気圧され一歩引く。
「私は真守・有栖! 諸国を流浪する俊狼かつ麗狼な一匹狼。ら学び舎の長なんかに興味はないわ。夢はでっかく全国制覇! そして日の本いちばんの狼になることよ!」
 有栖さんを囲んでいた不良たちが1人、2人へ減って行き。やがて有栖さんの周りに不良がなくなる。
「で、さっきまでの威勢はどうしたのよ? ほら、吠えてみせなさいよ!」
 有栖さんがさらに周囲の不良たちを呷るが、誰もが聞こえてないかのようにスルー……。
「ふ、ふん。尻尾を丸めて縮こまる子犬には興味はないわ。牙の一つも生えてから出直していらっしゃい!」
 勝ち誇った感じでそう締めくくる有栖さん。
 だが、すでに周囲に誰もおらず、話を聞いているかも定かではない……。
「……ちょっと、誰も反応しないってどういう事よ? 私がこのクラス1の強狼って事でいいのね?」
「………………」
「ねえ、そこの真面目そうなきみ!」
 僕は顔をそらす。
「今、顔を逸らしたあんたよ?」
 完全に僕の事だった。
「あ、はい。何でしょう」
 これ以上無視すると面倒ごとになると思い、素直に返事をする僕。
「これは私の事をナンバー1だと認めたって事でいいのよね?」
「どうでしょう。僕は不良では無いのでその辺りの風習に聞かれても解答しかねるのですが……。ただ、皆が離れていた原因について推測できます」
「え、私の事を認めたんじゃないの?」
「残念ながら……」
「じゃ、じゃあ、どうしてみんな反応しないのよ?」
「あくまで推測ですが……有栖さんのちょこちょこ入れていた狼例えが解らなかったのかと……」
 僕の素直な感想に、有栖さんは呆然となる。
 だが、その頭の悪さが……この鮭高なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九泉・伽
※アドリブ絡み歓迎

恰好:昭和の不良、長ランリーゼント

煙草を吹かしドッカと足を机にのせる

「未成年は喫煙不可だぁ?
てめぇらみてぇなひよっこたぁ違うんだよォ
なにしろ俺にゃあ「0」がついてんだ」

彼は九泉伽
人は言う、伝説の高校1“0”(漢字だと十)年生と
(人=UDC組織の皆さん)

「もう10年高校1年生やってるがなァ
今年は腰抜けばかりだぜ
最近の世間はお上品すぎんだ
俺のガキの頃は
ひよこに色つけて売りさばかれてたんだぜェ?
ひよこは次の日にゃあおだぶつさ…
そんな善良ぶった大人の修羅、散々ぶっころがしてきたのさ」

煙草をやってたら取り上げ棒付き飴ちゃんに
全校の煙草没収したらしばらく買わなくていいやぁ、わーい♪(本音




 ここムシェ鮭高校は都内屈指の底辺高だ。
 そしてそれはつまり都内屈指の不良の集まりだと言える。
 故にこの高校内では普通の常識は通じない。
 何が言いたいかと言うと……。
 とても煙い。
 たばこの煙だ。
 普通の高校なら未成年者の喫煙は不可能だろう。だが、この鮭高にはダブリの人もいる。一概に未成年とは言えないのが難しい所だ。
 例えば今、僕の風上の席で脚をドッカと机に乗せた状態で煙をふかしているあの人――ほくろが特徴的で藍色の髪の男の人――など、パッと見20代な気がする。
 と、そこで僕はすごい事実に気が付いてしまった。
 そうだ……例え年齢が二十歳過ぎであろうと、高校の校則で喫煙は禁止されているはず!
 その事実に気が付いた僕は、風上の席の人の元へとやってくる。
 近くでみると長ランにリーゼントとザ・昭和な不良だった。
「あの、きみ……校内は喫煙禁止のはずだが。だいたい、一応聞いとくけど君も4月から新入生なら未成年のはずじゃないのかい?」
 毅然とした態度で言ってみる。こういう事は最初が肝心だ。
「ぁあ? 未成年は喫煙不可だぁあ? てめぇらみてぇなひよっこたぁ違うんだよォ! なにしろ俺にゃあ「0」がついてんだ」
 うん、後半、何言ってるか意味が解らなかった。不良語だろうか……。
 と、僕が何と返せばいいかと悩んでいると。
「あんたまさか!? 伝説の高校1“0”(漢字だと十)年生、ディカプルの九泉さんじゃないッスか!?」
 唐突にやってきた馬田君が、煙を吐く彼を伝説の人だと言う。というかディカプルって何だろう。
「ディカプル?」
「ばっかお前、知らねぇーのか! ディカプルっていやぁ10年連続で留年してる10年生って意味だ! これぐらい鮭高の常識だろうが!」
 くそっ、馬田君にバカと言われる屈辱は耐えがたい物があるな……。
 しかしまさか留年だけでも都市伝説だったのに、漫画の世界じゃあるまいし、まさか10年生なる物があるなんて……確かにそれは伝説だろう、この鮭高で常識と言われるのも解る気がする。
「おう、俺の事を知ってるか。まぁな、もう10年高校1年生やってるが……今年は腰抜けばかりだぜ」
 プカーッと煙をふかし。
「最近の世間はお上品すぎんだ。俺のガキの頃はひよこに色つけて売りさばかれてたんだぜェ?」
「なんだってーーー!?」
 馬田君が驚く。
 ひよこを売るとか、何その昭和な感じのパーケン売り……というか10年前じゃまだ平成の世だと思うのだが……ここでそれをツッコんでは、ディカプルの九泉さんを怒らせてしまうかもしれない。やはり正論なツッコミはやめて、無難な返しにしておこう。
「ディカプルの九泉さん、それで売ったひよこは……」
「んなもん決まってるだろうが……ひよこは次の日にゃあ、おだぶつさ……」
「な、なんて残酷な!? さすがはディカプルの九泉さんだぜ」
 お恐れ慄く馬田君だが、ひよこが死んだのは買った当人の責任であり、ディカプルの九泉さんは無関係な気がする。
 が、やはり怒らせてしまうかもしれないのでここは黙っていよう。
「ま、そんな善良ぶった大人の修羅、散々ぶっころがしてきたのさ」
 もう話の文脈が解らない……いや、これぞ不良の世界の共通言語なのかもしれない。なぜなら横で聞いてる馬田君は「マジっすか! すげー、さすが」と感心しっぱなしだからだ。
 ディカプルの九泉さんは短くなったたばこを床に捨てると、胸ポケットから新しいたばこを出そうとするが、どうやらさっきのが最後の一本だったらしく、空のパッケージをクシャっと潰すると。
 ガララッと立ち上がり、おもむろに他のたばこを吸ってる不良たちに声をかけ、強引にたばこを恐喝して回っていた。代わりに棒付き飴をあげて回っていたが、それで納得する不良がいるはずもなく喧嘩になりそうになるのだが、相手がディカプルの九泉さんだと解ると、不良の誰もがだんまりを決め込むのだ。
「さすがディカプルの九泉さん……ハンパねぇぜ」
「う、うん、そうだね……」
「と、そうだ桜山! すげーヤツを見つけたんだ。ちょっと来てくれ!」
「え? いや、もう十分凄い人達を見たから。今更凄い人を見つけたって言われても……」
「今までとはレベルが違うんだ! 兎に角来てくれ!」
 まったく、どの程度凄いのか解らないが、十分鮭高の異常さに慣れてしまった僕は、何が来ても驚かないだろうなぁ……と思いつつ、馬田君について行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

自動・販売機
…どう見ても自動販売機である。
しかもデカイ。
教室の1番後ろに設置されているそれの前には、机が置いてあった。
つまり恐ろしいことにこれは『生徒』であった。
しかして猟兵以外には何の違和感もなく『生徒』と見えるはずである。
「何中だ」と問われれば「稼働中です」と答え、「伝説」を問われれば「電気設備です」と答える『生徒』がいるとは思えないが。

もし「何かを買ってこい」と言われれば「お金を入れてください」と答えるだろう。だって自動販売機だし。
そしてお金を入れれば確かに商品が出るのである。

これを生徒として登録したUDC職員の心情が忍ばれる。
あと他の猟兵の反応はいかに。




「とにかくスゲェ奴がいるんだよ!」
 馬田君が興奮しながら僕を急かす。
「……いや、そんな焦らないで良いよ。ダブリだの妻殺しだの液晶画面顔だの……悪いけど、まだ朝会前だと言うのにいろいろ会ったからね、もう何を見ても僕は驚かないよ?」
「いいから来いって! とにかくスゲーんだよ、あんなヤツは初めてなんだ」
「真っ黒いの、ディカプル、ロボットと来たから、次はどうせ妖精とか電脳AIとかでしょ? もうパンチ弱いから」
 僕がため息交じりに言う言葉を、馬田君は上から目線で。
「ふっ、お前の発想はその程度か……」
「わかったわかった。でも、何が来ても驚かないからね?」
 そして馬田君に案内された場所で「見ろ」と指差す場所にいたのは……。

 自動販売機。

 教室の一番後ろに設置されているそれの前には、机が置いてあった。
 でかい自販機だが、それとなくカラーリングが学ランチックだ。
 机が置いてある事を考えるに、違和感無く生徒である。それは間違いない。
「桜山、どう思う」
「どうって言われても……とりあえず、話しかけてみよう」
「勇者だなお前」
 事実を確かめる為に自動販売機に向かって進む僕。そして――。
「あの……何中から来たんですか?」
『稼働中です』
 僕はスタスタと馬田君の元へ戻り。
「稼働中らしい」
「だろうな」
 いや、違う、僕が聞いたのはそういう意味でなく。
「いや、待ってくれ、もう一度行ってくる」
「おう、気を付けろよ」
 再び事実を確かめる為に自動販売機に向かって進む僕。そして――。
「あの伝説とか、聞かせて貰って良いですか?」
『電気設備です』
 僕はスタスタと馬田君の元へ戻り。
「電気設備らしい」
「略しただけだろう」
 確かに!
「桜山、手前ぇには任せてらんねー、ここはビシッと俺が確かめに行ってやる」
「本当かい? 馬田君は頼りになるな」
 そう言って馬田君はツカツカと自動販売機の前へ行き。両手をポケットに因縁を付けるよう顔を近づけ。
「おい、何か買って来いや」
『お金を入れて下さい』
 馬田君はスタスタとこちらに戻って来て。
「桜山、小銭貸してくれ」
「いいけど……」

 チャリンチャリンチャリン……――ガラゴト、ガコンッ!

「コーヒー買えたぜ」
「自販機だからね」
 僕と馬田君があれこれやっていると、他の不良たちもやって来きて言う。
「おいお前ら、あいつに話しかけたのか?」
「あ、うん、まあね」
「そうか……実は俺、教室であいつを見た時からずっと気になってた事があるんだ」
 第三者の不良がそう言うと、「実は俺も」「俺もだ」と集まって来た他の不良たちも同意する。
 もしかして、ツッコむ気なのだろうか……。
 僕と馬田君はゴクリと唾をのみ込み彼らの動向に注視する。
「俺だけじゃなかったんだな……なら、たぶんクラス全員、すくなくとも奴を見た奴は誰もが同じことを思ったはずだ。いや、気が付いたはずだ。そうだろう?」
 第三者不良の言葉に他の不良たちも「ああ、その通りだ、気づかない方がおかしいと思うぜ」「当たり前だろう、ただ、ちょっと言い辛くってな……」「そうそう、こういうの面と向かってハッキリいうのって……ほら、アレだしな」と、それぞれ同じ事が引っかかっていたようで次々に同意が集まる。
 そして、意を決した第三者の不良が一歩、自動・販売機に近づき。
「おい、そろそろクラスの皆も我慢の限界だ……ハッキリ言わせてもらうぜ?」
 彼こそ真の勇者だ。
 僕と馬田君も固唾を呑んで見つめる。
「お前――『冷たい』だけじゃなく『あったかい』も入れろや」

 ――3月はまだ寒いからね!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
ワル、ニホンのスラングでいうところの、悪ということで
なんだ、同志が沢山いると思って喜び勇んで来たのに……
まだ子供ばかりじゃないか
ああ、いやーーうん、卵が多いと見るべきだね
「ヘンリエッタ」じゃ萎縮して話になりそうにないし、「私」でつまらない話でも

そも、君たちの言う悪というのがなにか。
私は死刑囚だ。脱獄なんてしていないさ!
「死ねば死刑」なのだ。だから死んでやらないだけだよ
何をしたかって?好奇心のままに人を使って国を転覆させようとしただけだ
人の心は面白いよ

君たちの言うワルとはなんだろう
私は相応しいか?
この学び舎のワルの純度は安心したまえ「私」が味方だ。「マダム(教授)」と呼びたまえ、共犯者(とも)よ




「ちょっと良いかな……僕も話に混ぜてくれないか」
「んだ手前ぇ、真面目か! なんだその髪型!」
 いろいろあって普通のワルの会話で平常心を取り戻そうと、ワル自慢話に花を咲かせている不良達の輪に強引に割って入ったが、まさか普通の髪型をツッコまれるとは……。
「うん、まぁ、逆に目立つかなって」
「ああ、そういう事か、確かにな!」
 馬田君に言われた事が功をそうして、なんだかんだで輪に交じる事に成功した僕は――「で、誰まで話したんだい?」とワル自慢の続きを促す。
「ん? ぁあ、さっき俺が終わった所だから……勿体ぶってねぇで、そろそろあんたも話したらどうだ?」
 そう言って彼が話を振ったのは、この輪の中に1人だけ混じっていた中性的な女性だった。銀の瞳が印象的だが、どこか掴み所の無い雰囲気を纏っており、つい先日まで中学生だったとは思えない程大人びていた。
 彼女――あとで行った自己紹介でヘンリエッタ・モリアーティと名乗っていた――は、話を振られ、少しだけ考えるように顎に手を当てる。
 すると話を振った不良が。
「おいおい、考え込む事かよ。この鮭高に来てるんだ。ワルな話の1つや2つはあるだろう?」
「ワル、ニホンのスラングで言うところの、悪という事だったな」
「ん、あ、ああ、そうだ」
 彼女は自分の定義が間違っていないようだと確認すると。
「そも、君たちの言う悪というのがなにか。まずはその話をしよう」
「ん? あ、ああ」
 なにやら難しそうな口調で話し出すヘンリエッタに、周りの不良達が「ぜんぜん理解できてますよ」風に頷いている。
「前提として、私は死刑囚だ」
「は?」
 全員の頭に疑問符が浮かぶ。
 勇気を持って話を振ってしまった不良の1人が。
「ネンショウ帰りって訳じゃなく……死刑囚って、マジで言ってんのか? じゃあ、何か! お前はここに脱走して入学してきたのかよ!?」
「脱獄なんてしていないさ! あくまで『死ねば死刑』という話だよ。無論、死んでやるつもりは無いがね」
「お、おう、そういう事か」
 完全に知ったかぶりだが、勇気ある不良はそのまま「それで、何をして死刑になったんだ?」と掘り下げる。
「好奇心のままに人を使って国を転覆させようとしただけだよ。何、人の心は面白いくてね。その事自体は……まぁ、たいした事じゃあ無いさ」
「へ、へぇ~、そいつは凄ぇ」
 頭から煙を上げつつ不良達が賛辞する。
「どうやら理解力が乏しいようだ。同志が沢山いると思って喜び勇んで来たのだが……そうか、まだ子供ばかり――いや、卵が多いと見るべきだね」
「なっ! 俺達が卵だって!? ふざ――」
 侮辱されたと思って立ち上がろうとした不良を、ヘンリエッタは人差し指をツンッと不良の額に当てただけで座らせ。
「聞かせたまえ、君たちの言うワルとはなんだろう? 私は相応しいか?」
「そ、それは……」
 ヘンリエッタの雰囲気に圧倒され始める不良達。
 彼女は1人立ち上がると周囲の不良達を睥睨し。
「この学び舎のワルの純度は安心したまえ「私」が味方だ」
 何か不思議な光景だった、不良達が従順な獣のようにヘンリエッタに従い出す瞬間に立ち会ったのだから。
「では、これからは『マダム(教授)』と呼びたまえ、共犯者(とも)よ」
 そう言って周囲の不良達を口車のみで掌握したヘンリエッタ。
 その銀の瞳が最期に僕に注がれる。
「君は、どうする?」

「いえ、僕の家は無神教なので……」 

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋月・信子
※UC「Esの影法師」を使い、瓜二つの双子の姉妹として潜入

●自己紹介
『私立千歌女学園から転入してきた姉の秋月光子(偽名)と…』
「妹の秋月信子です。よろしくお願いします」

顔、姿は瓜二つ
しかし、心の在り方は真逆の二重身(ドッペルゲンガー)
その影法師は凄みあるワルの【存在感】を漂わせているかもしれない
『(ま、可愛い妹に変な虫が纏わり付いたら困るしね)』

そんな訳で『姉』の私がワル自慢でもするわ
そうね……実際にない作り話でもやりましょうかね?
元居た女子校で可愛い妹が虐められた仕返しに私が百倍返しにして自殺に追い込んだってね
バレてここに流されたけど、妹に手を出したら…分かってるわね?(【恐怖を与える】)




『私立千歌女学園から転入してきた姉の秋月光子と……』
「妹の秋月信子です。よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
 顔も姿も瓜二つの少女が、不良達を恐れず丁寧に自己紹介して回っていた。
 女学園という響きと普通に清楚系な美少女2人に、だいたいの不良達がキョドっている。
 だが、僕は聞き逃さなかった。
 まだ入学式前のこの時点で、彼女達は『転入』と言ったのだ。
 つまり、ダブリだ。
 ダブリの光子さんと、ダブリの信子さんだ。
 もっとも、皆がそれに気付いていないようなので、僕も黙っておく事にする。この学校で余計なトラブルは起こさないが吉だ。
 もちろん、キョドらない不良もいるようで、特にお淑やかそうな雰囲気の信子さんの方に、チャラい声をかける者もいて……。
『一つ、私のワル自慢を聞いてくれる? 実は元居た女子校で可愛い妹が虐められてね……その仕返しに私が百倍返ししたの……そしたらどうなったと思う? 虐めた相手ぜーんぶ、自殺に追い込んじゃった』
 姉の光子の話に後ず去るチャラい不良。
 だが、光子はさらに1歩踏み込み。
『結局それがバレてここに流されたけど……妹に手を出したら、わかってるわね?』
「!?」
 どうやらこの学校に転入してくるだけあって、一筋縄ではいかないらしい。チャラい不良はガタガタと恐怖を隠しつつ、尻尾を巻いて逃げていく。
 僕はそれを遠巻きに見つつ、相変わらず関わらないようにしようと存在感を空気にしていたが、そこに余計な事しかしない馬田君がやってくる。
「おう、桜山、あの2人はなんだ!? パッと見、ヤンキーっぽくねーが……はっ!? まさか、あいつらもお前と同じ事を考えて……!?」
 面倒くさいなぁ……と思いつつ、馬田君に説明する事にする。
「なんでも私立千歌女学園から転入してきた双子みたいだよ」
「女学園っていやぁ、女の園じゃねーか! どうしてそんなトコのお嬢様が!」
「やり過ぎて相手を自殺に追いやったのがバレたみたいだよ」
「マジかよ、いったいどんな方法で追い込んだんだ? ちょっと聞いてくるわ」
「あ、馬田君! 余計な事は止めた方が――」
 行ってしまった。
 ある意味あの行動力は尊敬に値する。
 そして双子と何かしら話してから馬田君は戻ってきて……。
「どうだった?」
 とりあえず社交辞令的に聞いてみる。
「おう、なんかいろいろやって追い込んだんだってよ」
「ふぅん、いろいろね」
「おう、いろいろだ」
 ……全然的を得ていない。
 だが、馬田君は納得したようなのでこれ以上追求する事は止めよう。
 それに――。

『(じ~~)』

 なぜかお姉さんの方にずっと睨まれてる気がするし。

大成功 🔵​🔵​🔵​

滝舘・穂刈
フ……。力や悪行だけがワルとしてのステータスではない。
俺は誰よりも美味しい米でみんなの胃袋を掴んでのしあがろうではないか。

ともあれ不良の皆さんは怒りっぽいからな。
きっと腹が減っているのだろう。
なにやら疲れている様子の馬田君と桜山君に、ほかほかたきたてご飯で作った塩おにぎりをふるまおう。

「さぁ、遠慮なく食べてくれ。腹が減っては戦はできぬとは古来からの常識。不良なればこそ、しっかり食べて体力をつけなければな!」

聞くところによれば不良とは割とお腹を空かせ、心のこもったご飯を食べると感動にむせび泣くという。

俺の渾身の愛情たっぷり塩にぎりで、不良さん達の心、つかんでみせよう!


砲撃怪獣・ガンドドン
ガオオォォォン!
ガゴゴゴゴゴ……。ガオォォン!
ガオオオォォォン。ゴゴゴゴゴゴ!ガオォォン!

☆制服が全然入らないので上着を背中にかけただけの大胆な格好。既にこの体躯と着こなしで圧倒的なワルの存在感をアピールをします。自己紹介の時点でアドバンテージをとっておくことで充実した学園生活が約束されるとききましたからね。

ガオォォンッ!ガゴゴゴゴ……。ガオォォン!ガオン!
グロロロロ……。ガオォォン!ガオン!ガキン!!ガオォンガガガガゴゴゴゴゴ!!
☆これは仲間内でもテッパンのスペース武勇伝です。ぼくはスペースシップワールドで銀河帝国の宇宙暴走族と殴り合ったこともありますからつよいですよ、みたいなはなし。


鳴北・誉人
(俺、目つき悪ィし、ガンくれてやっから、ビビってくんねえかなァ…)

ワルを自慢すりゃイイんだろ
簡単だわ
見ろ
(スマホの画面を出す)
俺の秘蔵写真だ!
「名前はワル、俺の帰りを待ってるめっちゃ一途なネコチャンだよォ」
(ホントは飼ってない、たまたま見つけたノラネコの写真見せつける)
きっと反発されるか無視されンだろォから
「ちゃんと見ろやァ!
ワル自慢しろッつったのてめえだろォがァ!!叩っ斬るぞ!」
相手の胸倉掴んで舌を巻いて恫喝してやる
腰の剣の柄に触れれば真実味が増すか?(でも抜かない)
「俺ァ、ナルキタだ!文句があンならかかってこい!まとめて相手してやンよ!手加減できねェから覚悟キメて来い!!」

アレンジ大歓迎


ミア・ウィスタリア
※【威華露巣】と書かれた特攻服を羽織り、中は着崩した制服。ボタンを開け谷間を強調する。

ねぇん....ミアお椅子が大っきくて座りずらいのぉ....あなたがミアの椅子になってくれる....?

と、偶々近くにいた生徒をスカートをたくし上げながら【誘惑】し人間椅子にする。

●自己紹介
ミア・ウィスタリア6歳でぇーす!(キャピ)喜びなさい?「千人斬りのミア」と呼ばれたこのアタシと同じクラスに、いえ、同じ高校に入ったからには一人残らずアタシの下僕にしてあげるわ!
そう、アタシは千人の男を(想像上で)弄んで捨てた女!
その一人になれるの。嬉しいでしょ?


御剣・誉
用意するもの
皿!箸!ホットプレート!
おっと忘れちゃいけないのは延長コード!
それから…じゃーん、肉!!!
これで準備はバッチリ
後はもうやることは一つだけ

肉を!焼く!のみ!!

…あ、いけね
教室で肉を焼いたら皆の服にも匂いが付いちゃうな
ベランダでやればいっか
(荷物抱えて外へ

ベランダにホットプレート置いて
1人焼肉パーティーを開催
ふっふっふ肉だけだぜもちろん牛肉
カルビとロースとハラミと…野菜?
そんなの食うわけないじゃん
え?何?
オマエも食いたいの?
しょうがねーなぁ、他の皆には内緒だぜ?
塩コショウだけじゃ飽きる?
焼肉のたれもちゃんと持ってきてるから安心しろ

…オマエ、気づいたか
オレが白米も持っていることを…!




「と、そうだ桜山! すげーヤツらを見つけたんだ。ちょっと来てくれ!」
 馬田君が興奮しながら僕を急かす。
「……いや、それはもういいよ。柳の下に二匹目のドジョウはいないんだ」
「いいから来いって! とにかくスゲーんだよ、ヤツらがやってる事が……とにかく見てくれ!」
「やってる事って何? タバコやプロレス、まぁ灯油被っての火だるまには驚いたけど……ああ、早弁関係にも、もう僕は驚かないよ?」
 僕がため息交じりに言う言葉を、馬田君は上から目線で。
「ふっ、お前の発想は所詮その程度か……」
「わかったわかった。でも、何が来ても驚かないからね?」
 そして馬田君に案内された場所で「見ろ」と指差す場所で彼らがやっていたのは……。

 焼肉。
 まだ朝なのに焼肉。

 教室のベランダに机を出し、その上に置いたホットプレートを4人の生徒が囲んでいた。
「桜山、お前どう思う?」
「どうって言われても……何からツッコめばいいやら」
 まずあのホットプレートを彼はわざわざ今日の為に家から持って来たのだろうか。
 さらに言うなら焼いている肉や振りかけている調味料、机の上に置かれた焼肉のタレも……だ。想像するだけで相当な大荷物になると思う。もういっそのこと彼は学校に焼肉をしに来た……それぐらいの覚悟で学校に来てない限り、あれほど充実した焼肉フルセットを持って来れないだろう。学校に何しに来ているのかとツッコみたくなる。
 いや、もっと根本的な事を言うなら――。

 ――なぜ昼まで待てなかった!?

 思わず背景に台詞が出る感じで内心ツッコミを入れてしまった。
 時刻はまだ8時半前だ。
 こんな時間からガッツリ肉を食べるなんて……。
「おい桜山!」
 僕はその声にハッと我に返り、そして馬田君の方を見ると彼は言う。
「この肉うめぇぞ!?」

 ――食べてるし!!!

 背景に台詞が出る感じで内心ツッコミを入れつつ。
「あ、僕もいいですか?」
「え? 何? オマエも食いたいの? しょうがねーなぁ、他の皆には内緒だぜ?」
 焼肉を仕切っている焼肉王子な彼――後で聞いたら御剣・誉という名前だった――が快く紙皿と割りばしを渡してくれた。
 僕も高校生になったばかりの端くれだ、30代の胃とは違い、朝から焼肉が出されても十分許容範囲だ。
 ちなみに他の皆には内緒だと言いつつ、ベランダで堂々とやっているのは矛盾するが……もう、細かい事はツッコまないでおくことにする。
「おっと、そこ延長コードあるから踏むなよ?」
 誉君に言われ「あ、うん」と延長コードを跨いで席に着く。
 ちなみにこのモーニング焼肉。のメンバーは最初の1人であろう誉君以外にすでに3人の姿があった。そのうちの1人――異様に目つきの悪い男子生徒――が、やけに睨みつけてくるのが気になる(馬田君はノーテンキに肉を食べている)。
「おお、ちょっとこっち見ろや」
 目線を逸らしていたら目つきの悪い男子にガン見されたまま話しかけられた。
 ここは言われた通りにそっちを向いたら「何ガン飛ばしてんだ」と有らぬ因縁をつけらえるパターンだと思い、僕は尚更目を逸らす。
「おい、何目ぇ逸らしてんだ! ちゃんと見ろやァ!」
 グイっと目の前に何かを突き出される。
 僕は一瞬目を閉じるが、恐る恐る目を開けると……そこには。

 可愛い猫の写メだった。

「……え?」
「へっ……俺の秘蔵写真だ!」
「う、うん」
「名前はワル、俺の帰りを待ってるめっちゃ一途なネコチャンだよォ」
 なぜか肩を組まれグイグイと携帯の画面を見せられる、さらにシャッシャッと指でスクロールして何枚も……。
 この強面な感じで猫派! しかも携帯の写メで自慢するほどの溺愛っぷり――彼の名前は鳴北・誉人と言うらしい。
 なかなかのギャップ萌えなのかもしれないが、どうにも僕は1つ気になってしまい、余計な事だと思いつつ、ついつい口に出してしまう。
「あの、1ついいですか?」
「ぁん?」
「『ワル』って名前は無いかと……」
「………………」
 ジュージューと肉の焼ける音だけが場を支配し。
「俺ァ、ナルキタだ! 文句があンならかかってこい! まとめて相手してやンよ! 手加減できねェから覚悟キメて来いやァ!!」
「うう、ごめんなさい……」
 胸倉掴んで舌を巻いて恫喝してくる誉人君、そこは自分でも気に入ってなかったのか、偉いキレようだ。
「ワル自慢しろッつったのてめえだろォがァ!! 叩っ斬るぞ!」
 よほど勘に触ったらしい。さすがは鮭高、ワルの集まりだ。どこでキレるか全く予想がつかない。
 その後、誉人君は馬田君にも携帯画面を見せに行くも。
「悪ぃ、俺ぁ犬派なんで」
「お、おう」
 と、軽く断られていた……。
 やれやれ、肉が食べたいからと言って、馬田君は冷たいなぁ……と思いつつ、ふと他の焼肉メンバーに目を向け、僕はそこで自分の目をごしごしし、二度視する。
 そして僕が見ている事に気づいたそのメンバーが。
「ミア・ウィスタリア6歳でぇーす!」
 とダブルピースで自己紹介してくる。
 ちなみに僕が二度視したのは彼女が幼女だったからではない(というか6歳ぐらいの男子もさっき学生として教室内で見たので、見た目が幼女である事はもうツッコまない)、それは彼女が座っているのが2人の不良たち、四積んばになって人間椅子になっている不良たちであったからだ。
「えっと、ミアさん……さすがに人を椅子として使うのはどうかと思うよ?」
「違うよぉ? ここのお椅子が大っきくて座りずらいからぁ……ちょっとスカートをたくし上げながら誘惑したら、この人達がミアの椅子になってくれたのぉ♪」
 笑顔でそう説明される。
 僕は椅子から降りそこで屈むと、人間椅子となっている不良たちに「本当かい?」と聞いてみる。
「邪魔するな、この背中に当たる暖かさは誰にも変わらせねぇからな」
「そうだそうだ、俺達は楽しんでいるんだ。あっちいけ!」
 僕は一度空を見て、人間椅子の意見を聞かなかった事にして再び椅子に座り肉を食べる。
 ……うん、やはり肉は美味しい。
「ねぇ、あなたもアタシの下僕になりたのぉ?」
 チッ、肉を食べて全てを見なかった事にしたかったのに、幼女の方が勝手に僕の世界に割って入って来る。
 ちなみにミアさんは【威華露巣】と書かれた特攻服を羽織り、中はボタンを開け谷間を強調するよう着崩した制服を着ていた。正直、胸が大きい。きっと合法ロリという世界の住人なのだろう。
「喜びなさい? 『千人斬りのミア』と呼ばれたこのアタシと同じクラスに、いえ、同じ高校に入ったからには一人残らずアタシの下僕にしてあげるわ!」
 いえ、別になりたくありません。何も言わなかったら更に自己紹介をされた。人間椅子の変態達が「夜露死苦!」とハモってるが聞こえない事にする。
「そう、アタシは千人の男を(想像上で)弄んで捨てた女! その一人になれるの。嬉しいでしょ?」
 いえ、別に嬉しくありません。
 というか何故この幼女は勝手に話しかけてくるのか……。
「おい! そういや、こっちの秘蔵写真は見せてなかったなァ!」
 馬田君が連れないので誉人君がこちらに戻って来て写メをぐいぐい僕の顔に押し込んでくる。
「ちょっとぉ、アタシと話しているのに別の男と浮気するわけぇ?」
「あぁ!? 俺のワルに色目使ってんのかぁ? ぉお!?」
 ちょっ、なかウザったいこの2人。
 馬田君に助けて欲しいと視線を向けるも、一心不乱に肉を食っている。
 主催者の誉君の方に視線を向けると。
「ふっふっふっ、カルビにロースにハラミに希少部位! 俺は肉を! 焼く! のみ!!」
 無論野菜なんて焼かないぜ? 牛肉オンリーだ!
 と、せっせと肉を焼いている。そして焼けた肉を片っ端から馬田君が食らっている。
 馬田君が食べれなかった分は、なぜか器用に話ながら誉人君やミアさんがシュパッシュパッと箸で掴んで口へ運んでいた。
 というか……主催者の誉君はまったく食べれてない気がするが良いのだろうか。
 僕はふと、猫の写メと幼女の誘惑をあしらいつつ、ちょっとホットプレートの状況を観察する。
 すると、誉君もさすがに自分が焼いてばかりだと気づいたか「あれ、おかしいぞ?」的な顔をして、わざと肉を焼くのを止める。たぶん、自分が焼かなければ他の誰かがきっと焼くだろうと思ったのかもしれない。しかし――。

 ――誰も焼かない。

 馬田君に限っては皿と箸を持ったまま微動だにしない。
 そのままジッと見ていると、再びトングを手に取った誉君は、先ほどまでの3倍の量の肉をホットプレートの隅々まで並び、3倍のスピードで肉を焼き始める。どうやら物量作戦に出たらしい。
 だが、馬田君も誉人君もミアさんも先ほどの3倍のスピードで焼けた側から肉を皿に運び出す。誉君はトングを箸に持ち帰る暇すらない。というかこの人達は主催者で肉すら持って来てくれた誉君に何か恨みでもあるのだろうか。
 とりあえず猫と幼女から解放され、僕もやっと肉を堪能できるようになる(←誉君の事は気にせず食べる)。
 だが、こうも肉だけだとごはんが欲しくなる。
 と、そこで僕は気づく、馬田君の手に炊き立てご飯が山盛りの茶碗が握られている事に!
「馬田君、そのご飯は!?」
「ん? ああ、そこに炊飯器があったから……桜山もいるか? よそってやるよ」
「あ、ありがとう、じゃあ普通盛りで」
 そう言って馬田君は焼肉パーティの4人目(最後)のメンバーの頭をパカっと開け、そこからしゃもじで炊き立てご飯をよそってくれる。
「ほらよ」
「ありがとう」
 ……って、今のは何だ!
「馬田君、人の頭を開けて炊き立てご飯をよそうってどういう!?」
 僕が思わずツッコむと、その『頭が炊飯器の4人目のメンバー』がスッと立ち上がり。
「この世に米を無碍にする悪がある限り、炊きあがりタイマーを光らせて、ほかほか湯気と現れる! 炊きたてご飯の使者、戦うサラリー炊飯ヒーロー! その名も、炊きたてご飯ヒーロー・スイハンジャー、炊飯参上!」
 シャキーンッとポーズ。
 彼は頭に炊飯器を被った男だった。サラリーとか言ってたが炊飯器を被っているので年齢は解らない。
 ただ、どこからツッコめば良いかも解らなかった。
「フ……驚くのも無理はない。ワルの力が支配するこの鮭高にて、それ以外の力を、炊飯力を見るのは目新しい事だろう。だが、悪行だけがワルとしてのステータスではない。俺は誰よりも美味しい米でみんなの胃袋を掴み、この高校でのしあがろうと思っている」

 ――何も頭に入ってこない。

 馬田君は「おかわり」と勝手にスイハンジャーの頭から2杯目をよそっている。
「ともあれ不良の皆は怒りっぽいようだ。怒る……それすなわち腹が減っている証拠! おや、桜山君はツッコミ疲れが酷いようだね。さぁ、ほかほかたきたてご飯で作った塩おにぎりをどうぞ」
 普通盛りでよそってもらった茶碗の上に、さらに塩むすびを置くスイハンジャー。こんなに米ばっかりいらない。
「聞くところによれば不良とは割とお腹を空かせ、心のこもったご飯を食べると感動にむせび泣くという。俺の渾身の愛情たっぷり塩にぎりで不良達の心を見事掴んでみせようじゃないか!」
 シャキーンッ! ポーズなスイハンジャー。
「あ、スイハンジャー、そこに座ってて、ご飯取り辛いから」
「あ、はい」
 主催者に言われて素直に座って頭(炊飯器)の位置をお代りしやすいよう調整するスハンジャー。
 肉の合間に誉人君もミアさんも遠慮なく炊飯器からごはんをよそっている。これが普通なのだろうか。
「それにしても、頭に炊飯器を被っているなんて……」
「なんだい桜山君、きみは自分の目で見た物を信じられない性格(たち)かい?」
 位置調整して微妙に中腰のスイハンジャーが言ってくる。
「あ、いや、あなたとか自動販売機とか目で見たものは信じますよ。でも、超常現象の類は信じてませんね。妖精とかもきっと普通より小さな人間ってだけでしょうし、妖狐や人狼も付け耳付け尻尾で説明がついてしまう――」
「ふっ、別に俺はそんな話をしている訳じゃない」
「え、じゃあどういう話なんです?」
「まぁ、少し待ちたまえ、実はもう1人、焼肉パーティに参加しているメンバーがいるのだがね。ちょっと飲み物を買いに行ってて……そろそろ帰って来ると思うんだ」
 と、その時だった。
『ガオオォォォン!』
「お、噂をすればだ。彼が帰って来たようだ」
「いったい何が……」
 そして僕が振り返った先にいたのは――。

 怪獣。

 体長2mほどある怪獣が、教室からベランダに出て来た所だった。
 両肩に砲塔がついており、両腕も砲塔に改造されているその黒い装甲の怪獣は、制服が全然入らないのか上着を背中にかけただけの大胆な格好でそこに立っていた。
「いいんですか!?」
 僕は思わずスイハンジャーに聞いていた。
「驚いたかい?」
「はい、だって彼……裸じゃないですか」
 僕の質問にスイハンジャーは一瞬沈黙し……そして。
「そこに違和感を持っちゃいけないな」
 なぜか大人が子供を諭すように言われた。
『ガゴゴゴゴゴ……。ガオォォン! ガオオオォォォン。ゴゴゴゴゴゴ! ガオォォン!』
 怪獣が手の砲塔に下げたコンビニ袋を主催の誉君に渡す。どうやらコンビニまで言って飲み物を買って来たようだった。
「おいおい、コンビニまで行って来たのかよ、教室の後ろに自動販売機があるんだぜ?」
 馬田君が酷い事を言う。彼(怪獣)だって気づてなかったかもしれないのに。
『ガオオォォン!? グガゴゴゴ……』
 言葉は解らないが意気消沈した感じの怪獣――ちなみに怪獣の正式名称は砲撃怪獣・ガンドドンと言うらしい。
「まぁ、気にするなって! 自販機も裸だったし、これから仲良くすりゃ良いさ」
『ガオォォンッ? ガキンガキンッ!!』
 なんか喜んでいるようだ。というか馬田君はガンドドンの言葉が解るのだろうか……?
『ガオォォンッ! ガゴゴゴゴ……。ガオォォン! ガオン! グロロロロ……。ガオォォン!』
「ふんふん、宇宙で銀河帝国の米駄亜って族とやりあったって? すげー武勇伝じゃねーか!」
『ガオン! ガキン!!ガオォンガガガガゴゴゴゴゴ!!』
 完全に意思疎通ができている、僕は少しだけ馬田君を尊敬する。
 これが僕では言葉が解らず、彼――ガンドドンを傷つけてしまっただろう。
 だが馬田君は言葉を越え、意志を持ってコミュニケーションを図り、今では肩を組む程のお互い理解し合った仲になっている……馬田君、きみはなんて思い遣りのある良い奴なんだ!
「テメェ気に入ったぜ! ほら、どんどん食え」
 馬田君が良い笑顔で誉君が焼いた肉をガンドドンの前に置いた皿にどんどん乗せて行く。さらに。
「米は昔話盛りでいいよな」
 スイハンジャーの頭を開けて茶碗に山盛りのごはんを持ってガンドドンの前に置く。
「今日であったばかりだが、お前の言いたい事はなんでも解るぜ! こんなに意気投合した奴は初めてだ! さぁ、遠慮なく喰いな!」
 山盛りの肉皿とご飯茶碗を前に、ガンドドンが。
『ガオォォン! ゴゴゴゴゴゴ! ガオォォン!』
 と喜びの声をあげ。
 そして……ピタリと止まる。
 僕は解っていた。どうしてガンドドンが止まったのかを。
 いや、止まらずにはおれなかった事に……。
 なぜなら彼は、ガンドドンには――指が無かった。
『ガオオォォン……』
 自身の砲塔へと改造された両手を寂しそうに見つめ呟くガンドドン。
 チラリと怪獣が馬田君を見つめ、馬田君はハッとした表情で気が付く。
 さすが意思疎通が出来てる馬田君だ。どうやらガンドドンが何をして欲しいか解ったらしい。
「遠慮するな、俺とお前の仲だろう……ほらよ」

 缶ジュースをガンドドンの前に置く馬田君。

『ガゴゴゴゴゴ……ガオォォン! グゴゴゴゴゴゴ……ガオォォン!』

 うん、違うよね。
 缶、開けられないし……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『つちねこ』

POW   :    ちょこまかちょこまか
【超スピードで走った際に出来たカマイタチ】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ささささーっ しゅばばーっ
【相手の脳波・筋肉運動・その他予備動作から】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ぬるりとだっしゅつ
【捕獲されない為に】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。

イラスト:sy

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ※あとで二章の追加OPをアップします。二章のプレイングは追加OPを公開後に宜しくお願い致します。
====================

●二章のプレイングについて
 二章では複数いるオブリビオン『つちねこ』を倒して貰います。
 特性を活かして誘い出し、現れた所を倒しましょう。
 とはいえ、それに縛られずプレイングは自由にどうぞ。
 基本的にギャグの世界は続いています。
 以下、このシナリオに登場する『つちねこ』の特性と、
 ムシェ鮭高校の生徒達の行動パターンを記載します。

●つちねこ
 好奇心旺盛で単純な罠にも引っ掛かります。
 好奇心を刺激される事があると現れます。
 一般的なネコぐらいの大きさです。
 食べれません。
 倒すプレイングは最低限でも大丈夫です。
※あくまでこのシナリオにおける特性です。

●ムシェ鮭高校の生徒達
 基本的に生徒は全員、『つちねこ』を幻のツチノコと信じて捕まえようとしています。
 猟兵が『つちねこ』との戦闘に時間をかけた場合、生徒達が集まってきます。
 『つちねこ』がイラっとして生徒を攻撃した場合、生徒は吹っ飛ばされます。

====================


「おい! そろそろセンコーが来るらしいぞ!」
 廊下から駆け込んできた不良がそう叫ぶと、それを聞いた不良達がだらだらと適当に席に座る。もっとこの学校とクラスに慣れてくれば、ここの生徒達は先生が来ても席になど付かなくなるような気がするが……。
 僕の名前は桜山・咲太(さくらやま・さくた)、間違ってこの学校に入学してしまった事を1時間目すら始まっていないのに心の底から後悔している男子生徒だ。
 だが、先生が来る前に事件は起こる。
「おい、みんな! あれを見ろ!」
 馬田君が窓から身を乗り出しつつ校庭を指差し叫ぶ。
 窓側にいた不良達がなんだなんだと集まり、校庭を覗くと。

『にゃーん♪』

「ツチノコだ!」
 違うっ!
 今の鳴き声はネコだ!
 思わずツッコミつつ僕も席を立ち窓に近寄って校庭を見ると、そこには数匹ものツチノコがいた。いや、あれはツチノコなのだろうか……顔は正直ネコのようだ。だが、それ以外は確かに伝説のツチノコのような気がしないでもない。
「馬田君、アレは本当にツチノコって言っていいのかい!?」
「何言ってんだ。誰も見たことが無いから伝説の生物って言われてるんだろう! だが、なんかツチノコのイメージと近いからきっとツチノコに違いねぇ!」
 絶対の無責任な自信でそう宣言する馬田君。
 他の不良達もざわざわし出し、さらに隣の教室でも同じような叫び声が上がる。どうやら他のクラスも肯定のツチノコに気がついたようだ。
 ……はっ!? それはまずい!
「馬田君、急ごう! ツチノコは幻の生物だ、もし捕まえられたら1匹100万円ぐらいできっとTV局とかが買い取ってくれるはず!」
「マジか桜山! さすが真面目っぽい恰好しているだけあるぜ!」
 だが、僕も興奮していたのだろう、思いっきり口に出してしゃべってしまったせいで、クラス中の不良達が「確かに高値で売れそうだ!」「おい、数匹居たよな! 全部捕まえりゃ幾らだ!?」とか騒ぎ出す。
 くっ、こっそり馬田君と教室を抜け出せば独り占め出来たかもしれないのに!
 僕はべっこべこに後悔する。
「おい、ツチノコたちが逃げるぞ、校庭に散ったのと……校舎に向かったのも何匹もいたぞ! おい、どうする!?」
 今は後悔している暇は無い! 1匹でも多く捕まえなければ!
「捕まえよう馬田君!」
「桜山! これを使え!」
「これは!?」
「こんな事もあろうかと用意していた虫取り網だ!」
「こんな事はありえないけど、その用意には感謝するよ! 行こう!」
「おうよ!!」
 こうして、僕たちムシェ鮭高校の新入生は他クラスも含め、一斉に校庭にいたツチノコ狩りに校庭や校舎内に散って行ったのだった。
トリテレイア・ゼロナイン
ああ、新入生たちがツチネコを追いかけまわしています……。
被害を抑えるためにも素早く事態を収拾したいですが、追いかけまわしたおかげでバラバラに逃げられてしまいましたね

ここは罠を仕掛けましょう。
廊下に●破壊工作として不良らしく大量のワックスをまき散らし、走ったら転倒するくらいにツルツルにします
そこの突き当りに待機してUCの隠し腕を伸ばし、向こう側の曲がり角に見える様にそこらへんで採取してきた猫じゃらし草を振ってみます

興味を惹かれたツチネコが廊下に走り込み転倒したら隠し腕の●ロープワークで捕獲して倒すという作戦です

……なんでツチネコじゃなくて新入生達が走りこんできてゴロゴロ転倒していくのでしょう……


高柳・零
POW

(テレビウム自体が大変珍しい存在なため、ツチネコが勝手に寄って来ると思われます)
「お?何だ何だお前ら!こら、寄ってくんじゃねえ。あたいのファンか?」
(相手がどんな反応をしようが)「おう、そうかそうか。やっぱりファンか。なら、あたいと一緒に夕陽に向かって走ろうぜ!」

ファン(ツチネコ)を率いて、意味もなく学園中を走り回るぜ!
「今日は騒がしいなあ。ま、あたいはアイドルだしな!」

※ツチネコの先頭に立っているため、罠や攻撃の矢面に立ちます。オーラ防御は常に全身に展開し、盾受け、武器受け、各種耐性で耐えます。何故かツチネコをかばいます。無敵城塞も使います。

適当な所でツチネコ諸共、吹っ飛ばして下さい。


ラムダ・マルチパーパス
おや、何か賑やかになってきましたねぇ。
ツチノコ・・・?はて、わたくしが知る限りでは、ツチノコは4本脚ではないし、そもそもあの様なネコの頭をしてはいなかった様な?
あ、そーいえば不良っぽい言動は続けなければいけませんね。

(つちねこに向かって)
「てめェの頭ぁ…潰れたトマトみてーにしてくれんゾ…?」
「気合いブリバリだあ!!バカヤロウ!!」

で、戦術ですが・・・ここは景気よく、火力で押していきますか。
つちねこが一番集まってる辺りに、UCの全兵装使用自由を叩き込みましょう。
あ、何か不良を何人か巻き込んでしまいましたが…まぁアレですね、気を付けた上で射撃したのですから、あれは事故です。(きっぱり)


涼風・穹
【内心】
……桜山…
君"も"金目当てで学校をさぼるようなタイプだったんだな…

【行動】
教室で待機
教師が来るのを待って事前登校日の行事に参加して最後まで終わらせる
初日の、それも何も始まってすらいない段階で即エスケープというのは流石にどうかと…
……もし教師まで総出でツチノコ狩りに参加していたりすれば…流石は鮭高の教員、という感じだな…

【つちねこ狩り】
自主休校はせずに放課後になってから
しかし小腹がすいたので先に購買へ向かい、学生の定番『焼きそばパン』を手に入れる
……なんか変なのに焼きそばパンを奪われ…
焼きそばパンくわえたつちねこ~追っかけて~地獄へ~叩き落す~愉快ま猟兵さん~
食い物の恨みは恐ろしいんだよ


古峨・小鉄
ぶにょ。今度は先生驚かそ思うて教卓の下に隠れとったのに
(但し、ユキちゃんがデカ過ぎて教卓が盛り上がり浮いてる状態)
ワル共が居なくなったじゃ

よし。ユキちゃん。俺達も行くどー
教卓持って行く→ヤドカリのように隠れて(丸見え)待ち伏せ→狩る
完璧!(ユキちゃんも脳筋である
校舎入口占拠
ツチノコほいほい作戦じゃ
通るツチノコ、がうがう狩りまくる

2人で待つ待つ

……来ないじゃ?

2人で待つ待つ

……来ないじゃ

一匹でも来たら、ユキちゃんにガブっと狩って貰うじゃ
(ワクワク

……来ないじゃ(ぐす)

(そのうち飽きたら、2人でスヤスヤ昼寝する)
夢の中で沢山ツチノコ狩って、ワル達に、きゃっほきゃっほ得意げになって喜んでいる夢を見る



第二章『ツチノコ狩りじゃあああああああああっ!』

 ※桜山君の一人称視点に飽きたので二章からは通常の三人称視点にします。


「(……桜山……君も金目当てで学校をさぼるようなタイプだったんだな……)」
 不良達と一緒に真面目な風貌の桜山も虫取り網を持って走っていく後ろ姿に、内心で呟く涼風・穹。
 結局、このムシェ鮭高校に入るというのは、そういう事なのだろう。
「被害を抑えるためにも素早く事態を収拾したいと思っていたのですが、皆が追いかけまわしたおかげでバラバラに逃げられてしまいましたね」
 校庭に走り込んでいった生徒達を教室の窓から見ていたトリテレイア・ゼロナインが、まだ教室に残っていたメンバーに言う。無論、校庭だけでなく廊下の先から『いたぞ!』『あっちだ!』と新入生なワル達の叫び声が聞こえてくる。きっとツチネコを追いかけまわしているのだろう。
「まったく、随分と賑やかになってきましたねぇ……」
「ツチノコ1匹100万円とか、桜山が叫んだからなぁ」
 穹の言葉にラムダ・マルチパーパスは、そのモノアイをキュインキュイン動かし小首を傾げながら。
「ツチノコ……? はて、わたくしが知る限りでは、ツチノコは4本脚ではないし、そもそもあの様なネコの頭をしてはいなかった様な……?」
「まぁ、ほら、ここって有名な底辺高だし……」
「そういうものですか?」
「そういうもんさ」
 穹の言葉にラムダが理解はせずとも、そう認識を上書きする。
 と、そこでガタガタと教卓が動き、トリテレイアや穹、ラムダら残っていた面子が警戒するも。
 のっそり……。
 教卓を背に乗せたまま立ち上がったのは、巨大な黄金のライオンだった。
「ぶにょ。先生が来たら驚かそ思うて教卓の下に隠れとったのに……皆、どこ行っちゃったじゃ?」
 古峨・小鉄が相棒のライオンであるユキちゃんと一緒にキョロキョロ。
「皆、ツチネコを狩るんだと出て行ってしまいました」
「ツチネコ!? なんじゃ、俺、それ知らないじゃ!?」
 教えてという小鉄に穹がざっくり説明すると――。
「よし。ユキちゃん。俺達も行くどー! ツチネコ狩りじゃー!」
 教卓を背中に乗っけたままのユキと一緒に小鉄が出て行こうとする。
「お、おい、教卓は置いていった方が良いんじゃないか?」
 目立つぞ、と親切心で言う穹に、小鉄は自信満々に振り返り。
「ふふん、これを持って行く事でユキちゃんはヤドカリのように隠れるじゃ! そして、ユキちゃんに気付かず近づいてきたツチネコを狩るじゃ! これ、完璧!」
『ガルォォォ♪』
 るんるん気分の小鉄にユキちゃんもよく分からないが嬉しそうにゴロゴロ鳴く。
「じゃ、行ってくるじゃ!」
 そうして出て行く小鉄を見送り、トリテレイアやラムダも「ツチネコを放っておくわけには」と教室を出て行く。
 最期に残ったのは穹だけだ。
「………………」
 誰かがベランダでやっていた焼き肉の匂いが教室内に漂ってくる。
 穹は真面目に教師が来るのを待って、事前登校日の行事に参加し、その行事を最後まで終わらせ……そうしてからツチノコ狩りに参加しようかと思っていた。
 だが……。
「来ないじゃねーか!!!」
 始業時間になってもやってこない教師に思わずツッコミを入れる穹。
「初日の、それも何も始まってすらいない段階で全員エスケープだと!? しかも、このパターンは教師まで総出でツチノコ狩りに参加していたりするんじゃ……」
 わなわなとポツンと教室の真ん中の席に座ったまま震えていた穹は、ピタリと止まるとすっくと立ち上がる。
「さすが、鮭高……俺も、行くか」
 すがすがしい笑顔で穹は何事も無かったように教室を出るのだった。

 小鉄と教卓ヤドカリライオンのユキちゃんは、校舎入り口(別名昇降口とも言う)にたどり着くと、胸を張って仁王立ち。
「校舎入口占拠したじゃ!」
『ガゥ!』
「ツチネコ? ツチノコ?……まぁ、兎に角、ツチノコが校舎に入ろうとした場合、きっとここを通るじゃ! だからここで待ち伏せしておけば、ツチノコほいほいという作戦じゃ!」
『ガーウッ!』
「じゃろう? さて、それじゃあここに陣取って2人で待つじゃ!」
 ――3分後……。
「……来ないじゃ?」
『ガゥ?』
「そうじゃ、ユキちゃん、座ってないでヤドカリ作戦じゃ! 隠れないと!」
 小鉄に言われてライオンのユキがその場で伏せるように――背中には教卓が乗ったまま――体勢を低くする。
 小鉄は満足げに頷き。
「さぁ、ほいほい来るじゃ!」

 一方、トリテレイアは校舎内の廊下に大量の液体をぶちまけていた。
「さて」
 その液体を綺麗にモップで伸ばしだすトリテレイア。
 丁寧に伸ばし、磨き、やがてその廊下はツルツルのピッカピカに……というか、尋常では無いぐらいツルツルに……。
 誰が来てもスッ転ぶよう、ワックスでツルツルに磨き上げるのだった。

「お? こら、寄ってくんじゃねえ!」
 なんか皆が教室の外に出たから……という理由でノリと勢いで教室から出て歩き回っていた高柳・零は、なんだか解らないネコ頭の太いへビみたいな生物5匹に取り囲まれていた。
「何だ何だお前らいったい!?」
 テレビウムの顔である画面がチカチカ変化するのが珍しいのか、ツチネコ達は零へとどんどん近づいてくる。
 と、そこでハッとした零がぽんっと手を打つ。
「そうか! お前らあたいのファンか?」
 そう零は今、アイドルだった。それが鮭高になじむための設定だったのか、どうかは今は関係ない。とりあえずアイドルならばファンがついて当然だった。そのファンがネコ頭の寸胴蛇だったとしても、アイドルとファンの関係はそういうものだろう。
 そしてツチネコ達が一気に床を蹴り跳躍、5匹が一斉に零の顔面に飛びかかり……ペロペロペロペロペロッ!
「おう、そうかそうか。やっぱりファンか! って、お障り禁止!!!」
 強引に零が振り払う、残念そうなファン5匹。
「お前ら! あたいのファンなら一線を越えるな! そうだな、握手会は出来ねーが、青春ドラマなら一緒にやってやる!」
 零の言葉に5匹が顔を見合わせる。
「いくぞお前等! あたいと一緒にあの夕陽に向かって走ろうぜ!」
 廊下の端を指差し勝手に走り出す零、なんか解らないけど面白そうだと零を追いかけていく5匹のツチネコ達。
 どこに夕日があるのかは不明だが……1人のアイドルと5匹のファンは夕日に向かって駆けていくのだった……。

 校舎の入り口からは校庭でツチノコ相手に悪戦苦闘する鮭高生達の喧噪が見て取れた……もちろん、一緒になって騒いでる猟兵達も。
 小鉄はちょっぴり寂しくなった。
 寝そべるユキちゃんの胴に身体を預けるよう座り、両足を投げ出す。
「ツチノコ………………来ないじゃ」

「てめェの頭ぁ……潰れたトマトみてーにしてくれんゾ……?」
 校舎内で捕まえたツチネコの1匹を持ち上げラムダが凄む。
 そう、見た目がロボットのラムダが如何に口調で凄んでも、なんともすごいミスマッチ感なのだが……というか、凄む相手がツチネコなので。
 と猫の鳴き声で反応されるだけだ。
「あぁ? 気合いブリバリだあ!?」
『にゃーん』
「バカヤロウ!!」
 なんとなく会話している風の猫とロボ。
 とりあえずツッコミと共にベシッと退治しつつ、ラムダは空を見上げる。
「不良っぽい言動は……意外と疲れますね……」
 すでにその必要があるのあか不明だが、ラムダは真面目にそう思っているのだった。

 校舎の位置口では小鉄がユキちゃんにもたれかかって座りつつ、ツチノコがやってくるのを待っていた。
 正直、一匹でも来たら、ユキちゃんにガブっと狩って貰おうと思い、その瞬間を想像すると小鉄はワクワクが止まらない。教卓からいきなりライオンが現れガブッとするのだ、こんなびっくりは無いはず。
 小鉄の想像の中では完璧なカモフラージュだが、実際には背中に教卓を乗せた巨大なライオンだ。ツチネコ達が寄ってこないのは推して知るべし……。
「はぁ……それにしても……来ないじゃ」
 すこしだけ涙声で小鉄が呟いた。

「おい、見ろ! あのちっこいヤツ、大量のツチノコを連れてやがる!」
「バレーの網持ってこい! 一網打尽にしてやっぞ!」
 ファン(ツチネコ)達5匹を連れて走る零の前方に、不良達がバレーの網を広げて待ち構える。
「ったく、今日は騒がしいな。ま、あたいはアイドルだしな!」
 仕方ねーぜ! と、ツチネコ達を連れて先頭を走る零がアイドルオーラを全力に解放、そのままバレーの網に突っ込むと、そのまま左右を持っていた不良達が引っ張られる形で連れて行かれる、それ以外の虫網を構えていた不良達は目の前を通り過ぎるツチノコ5匹(ファン達)を追いかけ走り出す。
「うぉおおおおおっ! 夕日はどここだ――――っ!」
 当初の目的が解らないまま、零とファン(ツチネコ5匹)とネットに引っ掛かった不良2人と、それらを追う不良4人がどたどたと校内を走っていく……。

 ぼわわ――ん、とした背景の校舎入り口。
 小鉄は靴箱の影から入口に置かれた教卓を見守る。
 やがてやってくるツチノコが1匹。
 と、その瞬間!
 ばくっ!!!
 唐突に教卓から現れたライオンがガブリと一発ツチノコを捕まえる。
「きゃっほー! さすがユキちゃんじゃ-!」
 きゃっほっほっと喜ぶ小鉄。
 ………………。
「おい、桜山……なんか子供とライオンが寝てるけどどうするよ?」
 寝ているユキちゃんにもたれかかったまま夢を見ている(寝ている)小鉄を見下ろし、馬田と桜山の鮭高生2人が顔を見合わせる。
「うん、とりあえず……よいしょっと、これは教室に戻しておこう」
 教卓を取り上げ運び出す桜山。
「お前、今はそれよりツチノコだろう? 真面目なフリも大変だなぁ」
「いや、このあとコレを使いそうな気がするから戻しておかないと……」
 ほら、三章の追加の文章とかでね……持ってかれた時はどうしようかと――ごほんごほんっ。

 ぴょこん、ぴょこぴょこ……。
 廊下の曲がり角から、ぴょこぴょこ、と振られるは猫じゃらし草だった。
 それを振っているのはワイヤー制御の見えない腕――トリテレイアだった。
 ピクリ。
 廊下の先に2匹ほど現れていたツチネコ達がねこじゃらしに反応する。
 一瞬お互いの顔を見て警戒するも、すぐに『にゃーん♪』と猫じゃらしに目がけて――と、その時だった。
「待~ち~や~が~れ~!!!」
 叫び声と共に角を曲がってこちらにやってくるのは穹。何かを追いかけているようだが……と、見れば焼きそばパンを咥えた1匹のツチネコを追っているようだ。
 どうやら小腹が好いたので先に購買に向かい、定番の焼きそばパンを手に入れるも、ツチネコの1匹にそれを強奪され、必死に追いかけてきた……といった所だろうか。
「地獄へっ! 叩き落とす! 愉快な猟~兵さん!」
 と、最期のフレーズだけでなんとなくなんとなくな事を物騒な感じで口ずさみつつ、必死の形相で追いかけてくる穹。そう、食い物の恨みは恐ろしいのだ。
「こんなんじゃあ、逃避行にはならないぞ!」
 さらにそこに後ろから追撃してくるのは零とその一段だった。ちなみに台詞は夕日に向かって走れの元ネタ映画だが……きっと解る人はいないだろう。
 ツチネコ2匹、焼きそばパンツチネコ、穹、零、網絡みの不良2名、ファンツチネコ5匹、虫取り網不良4人……が全力で走ってきて、そして――。
 ツルッ!
 先頭のツチネコが転び。
 ツルツルッ、ツルルルッ!! ズデン、ズデ、ズデデンッ!
 次々に後続がツルツルに磨かれたワックス床に足を取られ、そのまま立ち上がる事もできず(立ち上がろうとしてもまたまたツルっと統べる)、滑って行く。
「……なんでツチネコじゃなくて新入生達が走りこんできてゴロゴロ転倒していくのでしょう……」
 ねこじゃらしをピコピコしつつレイテレイアが冷静に呟く。
 もっともワックス床の上は大混乱の阿鼻叫喚だ。
「とりあえず、来たらまとめて捕まえますか……」
 そう、トリテレイアが手を網を広げようとした――その瞬間。

 ピピピピピッ!

 トリテレイアの内部でロックオンされた警報が鳴り響く。
「(まさか、どうして!?)」
 焦りロック先へと視界の焦点を合わせれば……廊下の一番奥、そこにラムダが足を床に固定し、フルファイアの準備を完了させていた。
 慌てて非難するトリテレイア。
 一方ラムダは……。
「戦術的に大量のツチネコを発見……FCSオール・グリーン、射撃モード・フルファイア、全兵装照準完了」
 そして、幾人かが滑ったまま後ろを見てラムダに気付き叫びを上げるも――。
「戦術を優先します。斉射開始、ファイア!!!』
 ラムダの全兵装使用自由(オープン・サルヴォー)が発動、搭載武装が一斉に発射され……。

「待っ!?」
「あたいはっ!?」
「「「ちょっと待てや――ー!?」」」

 ちゅど――――んっ!!!

 校舎の一角を破壊しもくもくと煙が上がる。
 ガシャコン、と搭載兵器が元に戻り、ラムダはピピピとモノアイで被害状況を確認。
「何か不良を何人か巻き込んでしまいましたが……まぁアレですね、気を付けた上で射撃したのですから、あれは事故です」
 キッパリとラムダはロボットらしく断言したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

滝舘・穂刈
つちねこといえどイキモノ。
ならば腹が減れば餌を求めるはず…!
たきたてごはんに釣られぬイキモノなど存在するわけがない!!
つまり、つちねこはごはんの香りに誘き寄せられる!
うむ、見事な論理だ。

たきたてごはんの良い匂いでつちねこを誘き寄せ、ついでに自分でもたきたてゴハンをモリモリ食べてパワーアップをしておこう。
そして近づいてきたつちねこを我が愛用のしゃもじ(武器用)でていやっと退治だ。
ごはんの味や食感を損ねないようにと鍛えたこの繊細にして大胆なしゃもじ捌きがあれば、ニョロっとしたつちねことて恐るるにたらず!

あと不良たちが戦闘に巻き込まれないように、ゴハンをふるまって気を引いておこう。


庚・鞠緒
ちくしょうなんだアレ可愛いんだか可愛くねェんだかわからねェ…

とりあえずおびき出して背後から殴る作戦でいくか
えーとあれ何喰うんだ?
とりあえず猫缶開けて置いてみるか
で、ウチは隠れて待ってる
食いついたら【忍び足】で寄って【暗殺】する、と…
…猟兵やってて初めてだよ暗殺技能使うの

もしくは【ダッシュ】で寄って「Follow the Reaper」で首ちょんぱする
これで仕留められンならなんでもいいんじゃねェかって気がするけど

生徒連中も止めねェとだよな
いいか、あれはツチノコじゃなくてツチネコだ
ブラジル南部に出る害獣で、主にカンガルーを食う
ウチはツチネコ駆除2級持ってっから駆除できるけどお前らは死ぬ
これで行こう


アヤカ・ホワイトケープ
え、つち…ねこ!?…なに、あれ?
あの絶妙なキモカワイさと言うか…いや、アレも一応はオブリビオンなのよね?
色々ツッコミたいところはあるけど、あの存在が一般に伝播するとマズいから処理を急がないと。

罠を仕掛ければホイホイやってくるかしら?
今朝、わたしが行きのコンビニで買ってきたツナ缶を開けて置いてみれば引っかかるかな?だって(一応頭は)ねこだし?
もしツナ缶トラップ(今命名した)にかかったら、お食事中悪いけど『燃え盛りし炎の歌』で丸焼きにするわ
多分火が付いたら消そうと走り回るけど、こっちは延焼分をいつでも消せるし力尽きるまでは消さずにおくよ
もし学校に引火したら、そっちはすぐに消すけど大丈夫、よね…?


ガレンディア・グレイシス
成る程な。
こいつら、正真正銘迷う事なきバカだ。
どのくらいバカかというと、ツチノコを捕まえるのに虫取り網を構えるバカだ。
ツチノコは虫じゃねぇだろ!ツチノコ様に謝れよ!!

ったく。
テメェらは何もわかっちゃいねぇ。
ホンモノのツチノコとの接し方ってやつを見せてやンよ!

良いか、怖がらせちゃいけねぇ。
まずはリンゴで気を引くンだ。
「おう、このリンゴはウメェぞ。怖がるこたぁねぇよ。なぁ?」
んで、気が緩んだところで……一気に捕まえる!【ドラゴニアン・チェイン】だオラァ!
「オラ……よっと!一丁上がりってわけだ。な、簡単だろ?」
……あ?ドラゴニアン・チェインが出来ねぇ?
ンなもん気合いで何とかすンだよ。簡単だろ??


九泉・伽
※好きにどうぞ

エレクトロレギオンでメカひよこを呼び出す、カラフル
カラーひよこだから一撃ぺちってやられると、死ぬ(大事

咥え煙草でひよこをばらまいてつちねこを誘う
桜山くんと馬田くんが来たらポッと照れて顔を背け

「俺よォ、実は猫が好きなんだよ
野良猫みたらつい自分を重ねちまってなァ
こんな世知辛い世界だが強く生きろよって餌付けしちまうんだ…こんな風に」

ぶわっとひよこばらまき
ユーベルひよこなのでつちねこに当たると痛そうである
カラーひよこが爆発したり、つちねこが痛がったら
「昭和の修羅を思い出しちまったぜ」と涙を隠す
そうさこれは煙が目に染みたんだよ、キャラ崩壊?知った事じゃあねえなァ?!

あ、2人はちゃんとかばう




 校庭のど真ん中に仁王立ちするはガレンディア・グレイシス――通称、ダブリのガレンディアさんだった。
「成る程な。こいつら、正真正銘迷う事なきバカだ」
 虫取り網を手に持ちながら「あっちに行った」「こっちに行った」とグラウンドを右往左往する鮭高のワル共を観察し、じっくりとそう呟く。
 そして――。
 カッ!
 目を見開き両手を背にし、さらに胸を張り天へと叫ぶ。
「どのくらいバカかというと――――――っ! ツチノコを捕まえるのに虫取り網を構えるほどのバカだ――――――っ!!!」
 全力で叫び、はぁはぁはぁ、と息切れするダブリのガレンディアさん。
 その声に右へ左へと走っていた数十人の鮭高生徒が集まってくる。
 さすがダブリのガレンディアさんだ。人望半端ないって!
「で、ダブリのガレンディアさん、どうかしたっすか?」
 代表して馬田というモヒカン不良が声を掛ける。
「一つ! 先に言っておく……」
 そこで再び息を大きく吸い込み、そして――。
「ツチノコは虫じゃねぇだろ!!! ツチノコ様に謝れよ!!!」

 果たしてツチネコとはどの程度の強さなのか……。
 校庭の草陰で花に見とれる1匹を見つけた庚・鞠緒は、一瞬その様子に目を奪われるが、すぐにブンブンと首を振り、自らの手から鉤爪を生やし――。
 音も無く忍び足で後ろに回ると、花をクンクンするツチネコを鉤爪で一撃。
「……猟兵やってて初めてだよ、暗殺技能使うの」
 あっさり倒せた事に驚きつつ、ふと視界の端にうつった蝶々を追いかけるツチネコをダッシュで近づき。
「切れろッ!!」
 《Follow the Reaper》が炸裂、蝶を追うようにツチネコの首が宙を舞い大地に転がる。
 ビュッと鉤爪を振るい血糊を払うと。
「これで仕留められンなら……もう、なんでもいいんじゃねェかって気がするけど……」
 と、その横を歩きながらポトリポトリと何かを落として歩く男が1人。
「あい、あんた落とし物――これは!?」
 鞠緒は拾おうとした手をピクリと止める、それはカラフルなひよこだった。いや、よく見れば間接部が機械仕掛けのメカひよこだ。
「あんたは……」
 落とした男をよく見れば、それは10年留年の伝説を持つディカプルの九泉さんだった。
 そうして手を止めた鞠緒の前を、ディカプルの九泉さんと同じスピードで数匹のツチネコが付いて行っている。しかも、落としたメカひよこが気になるのか、すぐにパクリと食べたり噛んだり――メカひよこは脆いのかその一撃で次々に破壊され、動かなくなる。
「………………」
 カラフルなメカひよこを等間隔に落としつつ歩いて行くディカプルの九泉さん。
 その後ろをツチネコ達がつぎつぎにひよこを破壊しながら等間隔に付いていく。
 シュールだった。
「………………」
 鞠緒は少しだけ間を開けると。
「とりあえず、オブリビオンは倒す方が良い、か」
 と呟く。
 さらに、どうせならツチネコ達を集めてからまとめて倒す方が効率が良いな……と、そう考えた鞠緒は、一つ思いついた方法を試してみようとするのだった。
 ちなみに鞠緒は、先ほどのシュールな光景は見なかった事にしたのだった。

「やべー、なんだこれ、うめぇ――ーっ!」
 語彙の無い感想を繰り返しつつ、滝舘・穂刈の――つまりスイハンジャーの頭から白米を食らう鮭高生達。
「炊きたてご飯の良い匂いは誰でも誘い引き寄せる! さすがは炊きたて白米最強!」
 スイハンジャーが美味しく食べる不良達に満足しつつ、自身の頭から白米を取り出し自分の茶碗に盛ると、ガツガツと共食――自分の白米をかっこむ。
「はーい、そこ気をつけてー」
「いっせーのーせっ!」
 そんなスイハンジャーを椅子に座らせ、なぜか周りで声を掛け合う不良達。
 工事現場のヘルメットを被って指揮を取るは桜山という真面目な恰好の生徒だった。
「ところで、きみ達は何をしているんだ?」
 スイハンジャーが声を掛けると、テキパキと指示を出していた桜山が。
「作戦本部を作ってるんです。馬田君が倉庫でテントを見つけたので」
 言われて見てみれば、運動会で貴賓席などに使われるテントが組み上がっていた。
「ふぅ……」
 テントが完成しお茶を飲む桜山。
「ふぅ……」
 テントが完成し白米茶碗にお茶をかけお茶漬けを食べる馬田。
 とりあえず、スイハンジャーはテーブルに箸と茶碗を並べるのだった。
「って、おいっ!!!」
 一服している不良達に、テントまで来て声をかけるは。
「ダブリのガレンディアさん!」
 不良達が一斉に立ち上がる。
「ったく。何してんだテメェらは! ツチノコ狩りに来たんじゃねーのか!」
 そう言うとクルリとテント内のワル達に背を向け。
「テメェらは何もわかっちゃいねぇ。来い、ホンモノのツチノコとの接し方ってやつを見せてやンよ!」

 ダブリのガレンディアさんの後ろを付いて行こうと不良たちがテントから出ようとするも、すぐ前をひょこひょことツチネコが歩いて来る。どうやらテントがもの珍しかったらしい。
「ん」
 ダブリのガレンディアさんが無言で少し下がるよう不良たちに指示を出し。
「良いか、怖がらせちゃいけねぇ。まずはリンゴで気を引くンだ」
 ガブリッ!
「そう、こうやって噛み付いた所を……って、違う! 馬田! お前が噛み付いてどうすんだ!!」
 むしゃむしゃとリンゴを食べつつ「スンマセン、つい」と謝る馬田。
 ダブルのガレンディアさんは再度懐から取り出したリンゴを手に乗せ。
「おう、このリンゴはウメェぞ。怖がるこたぁねぇ」
 ガブリッ!
「そう、こうやって気が緩んだ所で馬田! テメェが食べんなっつったろうが!!」
「ほら、馬田君、こっち来て……」
「次はネーぞ馬田ァ!」
 そう怒るとダブリのガレンディアさんは、3個目のリンゴを取り出し、見事食いついて来たツチネコを、《ドラゴニアン・チェイン》の鎖を一瞬で首へかけると。
「オラァ!」
 気合い一閃、鎖が爆破しツチネコが消滅する。
「オラよっと! 一丁上がりってわけだ。な、簡単だろ?」
 得意げにダブリのガレンディアさんが、不良たちへと捕まえたツチネコを見せつけるのだった。

「え、つち天…ねこ!? ……なに、あれ?」
 グランウンドに出てウロチョロしているツチネコ達を見て衝撃を受けるはアヤカ・ホワイトケープ。
 あの絶妙なキモさと言うか、直球のカワイさと言うか、隙間を縫ったヌルさと言うか……。
「い、いやいやいや、アレも一応はオブリビオンなのよね?」
 再確認するように自分自身に向けて言うアヤカ。
 トテトテトテトテ。
 目の前をツチネコが通り過ぎ、チラリとアヤカを見て『にゃーん』と一鳴き。
 再びトテトテトテと歩いて行く。
「い、色々ツッコミたいところはあるけど、あの存在が一般に伝播するとマズいもんね……やっぱり処理を急がないと」
 グッと何かを堪えて猟兵としての責務を再度口にするアヤカだが、その肩を後ろからポンと叩く者がいた。
「アンタの言っている事は正しい……前半も、後半も、な」
 鞠緒であった。その視線はトテトテ歩いて行くツチネコの後ろ姿に注がれている。
「ったく。ちくしょう! なんなんだアレ! 可愛いんだか可愛くねェんだかわからねェ……」
「ああ、ええ、まったく!」
 同志だ、と理解するアヤカ。
「とはいえ、さっきアンタが言った通り放っておくわけにはいかねーしな。とりあえずおびきだして背後から殴って行く作戦でどうだ?」
「それは良いけど……どうやって誘き出すの?」
 アヤカに言われて一瞬悩む鞠緒だが。
「あれが喰いそうなもん……喰いそうなもん……。とりあえず、猫缶開けて置いてみるか?」
「あ、ではわたしも行きのコンビニで買ったツナ缶があるので、それを開けて一緒に置いておきましょう」
 そういうと2人してネコ缶とツナ缶を開けて罠とし、そそくさと近くへ隠れる。
「……来るかね?」
「大丈夫じゃないですか? だってほら、一応頭は猫だし?」
 と、開けられた2つの缶詰を置いた所にやって来たのは、ツチネコでなく頭が炊飯器の男――スイハンジャーだった。キョロキョロと回りを見回した後、頭のジャーをカパッと開けて、茶碗に炊き立て白米を持って缶詰の横に置く。
「ちょっと、何やってるの! こっちは隠れてるのに!」
「しかも勝手にご飯置くんじゃねーよ!」
 アヤカに引っ張られて2人が隠れていた場所に連れ込まれるスイハンジャー、そのまま鞠緒にも批難される。
 だが、炊き立て紳士スイハンジャーには、何も間違った事をしている覚えは無く。
 2人に対して炊き立てのお米のようにピシッと直立すると。
「勘違いしないでもらおうか! ツチネコと言えどあれらはイキモノ。イキモノならば腹が減れば餌を求めるが必定! そして腹が減ったならば……炊き立てごはんに釣られぬイキモノがいるだろうか! 稲、いや否、そんなイキモノは存在するわけがない!!」
「(スイハンジャーさん、声、声!)」
 隠れている場所で大声で力説し出すスイハンジャーにアヤカが小声でしゃべれと注意するが。
「つまり! ツチネコはごはんの香りに誘き寄せられるのだ!!! フハハッ、これぞ見事な炊飯――否、見事な推理だろう!!」
「だからうるせェって!!」
 今度は鞠緒に注意されるスイハンジャー。
「あ、2人とも見て!」
 アヤカの声に振り向けば、ネコ缶とツナ缶に群がる十数匹のツチネコ達がいた。大量だった。ちなみに1匹だけご飯を食らっているツチネコも……。
 ガックリと両手両膝を大地につきショックを受けるスイハンジャー。
「そんな……主食たる米が、缶詰に負けるとは……」
「いや、行ってる場合じゃないでしょ!?」
 アヤカがツッコミつつツナ缶トラップ(命名アヤカ)に引っかかったツチネコ達を、《燃え盛りし炎の歌》を発動。
「これがわたしの想い……聴きなさい、熱き心と魂の歌!」
 缶に群がるツチネコ達に一斉に炎を浴びせ丸焼きに。
 無論、鞠緒も無言で炎に焼かれ走り回るツチネコにトドメを差して回り、スイハンジャーもまた愛用のしゃもじでベシベシと退治する。ちなみにツチネコはニュルンとすり抜けようとするのだが、ごはんの味や食感を損ねないようにと修行した繊細にして大胆なしゃもじ捌きでスイハンジャーは見事ツチネコを討ち取っていた……。
 問題は火が付いたまま逃げ惑うツチネコの内、校舎へ向かった何匹かはアヤカが校舎に引火しないよう炎を消すも――。
「しまった、数体が米を食べる為のテントに!?」
 スイハンジャーが気が付く、ちなみにそのテントは桜山たちが作った作戦本部であり、決して白米を食べる為の休憩所では無い。
「あっちはウチと炊飯器でなんとかする、校舎に向かった奴らは頼む」
「ええ、わかった」
 鞠緒とスイハンジャーが燃えたままテントに向かった数匹を追い、アヤカは校舎に向かった数匹をトドメ刺す為、別れて走って行くのだった。

 炎に包まれたツチネコ達が向かってくるなど露知らず、作戦本部内では桜山達がツチネコ捕縛作戦を打ち合わせていた。そこにオブサーバーのように参加しつつ、今はテントの一番端の椅子に座って、咥えたばこでやる気が無さそうに鯉にエサやりする人のようにポポイッ、ポポイッとユーベルコードのカラフルメカひよこを撒くディカプルの九泉さん。
「――と、いう感じで行こうと思うんです。どうでしょう、ディカプルの九泉さん」
「どうっすかね、ディカプルの九泉さん」
 桜山と馬田が打ち合わせを終えて、まとまった作戦結果を確認して欲しいと持ってくる。
「俺ぁよォ……」
 だが、ディカプルの九泉さんはその書類に目も通さず、カラーメカひよこ達を撒きながら、スッと斜め上の空を見つめ呟き出す。
「俺よォ、実は猫が好きなんだよ」
 ポッと少し照れたように言うディカプルの九泉さん。
「ああいう野良猫を見たら、つい自分を重ねちまってなァ……解るだろう、こんな世知辛い世界だ。だからこそ強く生きろよって……こう、つい餌付けしちまうんだ……」
 こんな風に、と言いながらヒヨコを撒く。
「あの、1つ良いですか?」
「ん? ああ、いいぜ、なんでも聞いてくれ」
「それ、ツチノコですから猫じゃないです」
 超真顔で桜山がツッこむ。
 と、そこに飛び込んでくるのは鞠緒と炊飯器。
「おい! お前ら! さっさとここを撤収して逃げろ!」
「おいおい、いきなりずいぶん酷え言いぐさだな!」
 鞠緒の言葉に不良たちがイラっとし突っかかって来る。
「黙れ! いいか、あれはツチノコじゃなくてツチネコだ! ブラジル南部に出る害獣で主にカンガルーを食らう! ウチはツチネコ駆除2級持ってっから駆除できるけど……お前らは持ってねェよな」
「やはり……か」
「ちょっと待て! じゃあその駆除2級を持ってない俺達は駄目なのか!?」
「ああ、お前達では……死ぬ」
 軽く断言する鞠緒に、思わず不良たちは息をのむ。
「まぁまぁ、だからここは私達に任せて、きみ達は教室で待っていなさい」
 ほら、ご飯あげるから、と茶碗に昔盛りにした炊き立てご飯を、スイハンジャーが不良1人1人に渡していく。
 と、ふとテントの向こう方で数人の不良たちに何かを教えているダブリのガレンディアさんの後ろ姿に気が付く。
「なんでドラゴニアン・チェインが出来ねぇんだよ? ほら、こんなもん、気合いで何とかすンだよ。簡単だろうが?」
「うおおおおおおっ! ドラゴン――ーチェイ――ーンッ」
 ダブリのガレンディアさんに言われるまま気合いで叫ぶ不良。
 と、その瞬間、タイミングよくテントの屋根に炎が上がる。
「おお、出来た!」
「出来てねぇ! なんでドラゴン・チェインで炎が上がるんだ!」
 燃えだすテント。
 その煙が端の椅子に座っていたディカプルの九泉さんの元へも流れ。
「ったく、昭和の修羅を思い出しちまったぜ」
 と、なぜか流れてくる涙を隠すディカプルの九泉さん。
「泣いてるんじゃねぇさ、これは煙が目に染みたんだよ、キャラ崩壊? 知った事じゃあねえなァ!?」
 テントが焼ける炎とその煙によって涙が出るのだが、ディカプルの九泉さんは自分の世界語りに忙しく、それどころではない。
 ちなみにスイハンジャーは自身の頭の炊飯器から出る湯気で気づいておらず、騒いでいるのはダブルのカレンディアさんと、冷静な鞠緒だけだ。
 もっとも、一番動揺したのは校舎近くでトドメをさして廻っていたアヤカだろう。どう見ても自分の炎に焼かれたままのツチネコが、テントに引火したのだろうから。
「えええっ!? なんであんな事になってるの!?」
 アヤカが慌てて延焼を止め、結果として校舎に燃え移るような大火事にはならずに済むのだった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

リトルリドル・ブラックモア
ムキー!!
サクタとかゆーヤツ、ゼッタイゆるさん!!

ツチノコなんかベツにめずらしくねーもん!!
いでよ、まおーの手下ども!
【バトルキャラクターズ】でツチノコ型モンスターのキャラを出して
鮭高中に放ってやるもんねー!
まいったか!
バーカバーカ、ニンゲンはニセモノでもおいかけてろ!
クックックッ…オレサマは本物のツチノコを探しに行くぜ…!
100万円はオレサマがもらったー!

オレサマのちょースゴい作戦!
カラダを水たまりぐらいひらべったくして
上にさっき買ったヤキソバパンをおいとく
つまりオレサマが罠だ!
他のヤツにめっちゃ踏まれそーだけど
ガマンしてツチノコが来るまで待つぜ…

…ってネコじゃねーか!!
捕まえたらぶっ飛ばす


真守・有栖
わぅう……さっきは不覚を取ったわ。
言葉ではなく、この身を以て狼たるやを示すべきだったのよ!

ならば。俊狼たる私が狩りの手本を見せてあげる!

校庭の真ん中に向かうわ。そして、吠える……!

わぉぉおおおおおおん……!

愛くるしくも気高き遠吠えでまずはつちのこを誘い出すわ。
麗狼たる私がちょーっと吠えればこんなもんよ。……ぐへっ!?
ちょ、ちょっと!いきなり吹っ飛ばされたんですけどっ!?
にゃんこの顔して生意気に……ぐはっ!?
寄ってたかって吹っ飛ばすのはひどいじゃない!伊達に伝説と呼ばれてないわね!
……しかし。もう遅いわ!此処は既に私の間合いよ……!

猛狼たる咆哮で一気に仕留める!

せーの……わぉぉおおおおおん!!!


秋月・信子
・SPD

クラスメイト達に紛れて教室を抜け出したら校舎裏で装備を整えます
私は銃声で【目立たない】ようサプレッサーを取り付けたハンドガン、姉さんはガスを吸い込むとまるで【催眠術】にかかったように眠ってしまう催眠ガス弾を装填したグレネードランチャーです
『事は穏便に、邪魔になりそうなあいつらには夢の中でツチノコと追いかけっ子でもして貰うわよ』
「良かった…姉さんの事だから『知られたから消す』とかすると思ってたけど…」
『いくら私でも無関係な人間には手を出さないわよ…で、あのキモいナマモノをおびき寄せる策はあるの?』
「は、はい。さっき購買部から買った物ですけど…これで誘き寄せようかなって…」
『ちくわ、ねぇ』


未不二・蛟羽
つちねこ…食べれないっす?……食べれないっす!?

頭が猫っすから、きっと性格も猫っぽいっすよね!
動くものにきっと反応するっす!
校庭の隅とか、そこらへんで摘んできた猫じゃらし(雑草含む)を大量に宙へ放って、【逆シマ疾風】の風でいい感じに飛ばすっす!
きっとこれなら皆じゃれてくれるっす!
って、これなんかぴょんぴょんしてふわふわで、俺までウズウズするっす!
尻尾の蛇も飛んでる猫じゃらしにじゃれつき

つちねこが出てきたら一緒にじゃれて遊びながら距離を詰めるっす。
近づいた所で、尻尾を【ガチキマイラ】で変化させて、ぱくん

……た、食べてないっすもん!もぐもぐしただけっすもん!ちょっと生命力吸収しただけっすもん!


山梨・玄信
あれを捕まえれば良いのじゃな。
任せておけ!

【SPDを使用】
RB団は小細工などせん!(大幅な個人差があります)
シーブズギャンビットのスピードで全力の真っ向勝負で捕まえに行くぞい。
2回攻撃に気絶攻撃を組み合わせて…ええい、ちょこまかとすばしっこい!しかも、こっちの動きまで読むとは…。
ならばこっちも超本気モードじゃ!(服を脱ぎ捨て、褌一丁になる)

…はあ、はあ。これでも駄目かのう。
ならば(再びサバト服を着る)。

この手だけは使いたく無かったんじゃが…。
ツチネコの風上に回り、白い粉(小麦粉)の入った袋を取り出してばら撒くのじゃ。そして、点火!
「RB団奥義。爆発オチじゃ!」

アドリブ大歓迎じゃ。




 秋月・信子とその姉(であり《Esの影法師》により出現した存在)、秋月・光子は、不良たちに紛れて教室を出ると、人気の無い場所――校舎裏へとやって来ていた。それはオブリビオンと戦う為の武具を装備する為であったが……。
「んだぁテメェ!?」
 人気が無いだろうと踏んだ校舎裏は、ワルな不良たち数人が煙を吹かせながら占領していた。
「おうおう、女2人して仲良く仲間に入れて欲しいーってか?」
 はぁ……と溜息を付くのは姉の光子。
 そして――。
『さて、これで邪魔者はいなくなったね』
「う、うん。でもコレ……」
『大丈夫、手加減はしたし』
 周囲にはボゴボコにされた鮭高の不良たちがノされているのだった……。

 一方、同じく不良たちに紛れて教室を出て、屋上へと向かったのは自称魔王のリトルリドル・ブラックモアだった。
「ムキー!! サクタとかゆーヤツ、ゼッタイゆるさん!!」
 先ほど自分を無視して勉強し始めていた学生を思い出して地団太を踏むリトルリドル。
 こうなったらまおーの実力を思い知らせるしかない!
「ツチノコなんかベツにめずらしくねーもん!! いでよ、まおーの手下ども!」
 両手を空に突き上げ叫ぶリトルリドル。
 次の瞬間、空に虚空の穴が開いたかと思うと、そこからポコポコとツチノコ型モンスターが召喚され、次々に鮭高中へと散って行く。
「まいったか! バーカバーカ、ニンゲンはニセモノでもおいかけてろ!」
 学校中に偽ツチノコが散った事を確認したリトルリドルは、満足げに笑みを浮かべると。
「クックックッ……オレサマは本物のツチノコを探しに行くぜ……! 100万円はオレサマがもらったー!」
 意外と現金な事を叫びつつ屋上から校内へと走って戻って行くのだった。

「わぅぅ……さっきは不覚を取ったわ」
 作戦本部と名付けられた校庭端のテントの下、炊き立て白米を食べつつ隣の桜山に話しかけるは真守・有栖。
「あの……別に僕に話してます?」
「あなた以外に誰がいるのよ咲太」
 名前を呼び捨てにされ、急に距離を縮められた事に微妙な表情をする桜山。
「なによ?」
「いえ、なんでもありません……」
 ガチャン、と空になった茶碗に箸を置き、有栖は桜山に宣言する。
「この高校は馬鹿ばっかね! だったら言葉ではなく、この身を以て狼たるやを示すべきだったのよ!」
「いえ、その狼例えと――」
「見てない! 俊狼たる私が狩りの手本を見せてあげるわ!」
 そういうとグラウンドへと走って行く有栖。
 残された桜山はボソリと。
「なぜ狼例えを辞めない」
 そう小さくツッコミを入れるのだった。
 そんな有栖と桜山がミニコントをしているテント内の別の一角では、馬田を相手に未不二・蛟羽がショックを隠せないでガックリとうなだれていた。
「お、おい、そんな気を落とすな」
「だって、だって……ツチネコ……食べれないっすよね?」
「そりゃあなぁ、1匹100万もするかもしれねぇお宝だし」
「で、でもでも、猟師さんとか自分で狩った獲物は食べてるっす!」
「そりゃあ自分達で食べる為に狩ってるからじゃねーか?」
「じゃあ俺も自分で食べる為に狩れば――」
 そこまで蛟羽が言った所で。
「駄目だ!」
 バンッと机を叩き、有栖から解放された桜山がやって来て言う。
「なんでっす!?」
「食べたら100万円が貰えないからだよ!」
 語気荒く叫ぶ桜山、横の馬田もたじたじだ。一般人の桜山のプレッシャーに蛟羽も後ずさりしつつ。
「わ、わかったっす……」
 とても残念そうにツチノコ狩りに向かうのだった。

 同時刻・校舎裏。
 ガシャンコン、と銃の確認をする秋月姉妹は、それぞれ信子はサプレッサー付きのハンドガンを、光子は催眠ガス弾を装填したグレネードランチャーを装備して終わっていた。
『事は穏便に、邪魔になりそうなあいつらには夢の中でツチノコと追いかけっ子でもして貰うわよ』
「良かった……姉さんの事だから『知られたから消す』とかすると思ってたけど……」
『いくら私でも無関係な人間には手を出さないわよ……』
 妹の言葉に、私を何だと思っているのよ、とやれやれジェスチャーな姉。
『で、あのキモいナマモノをおびき寄せる策はあるの?』
「は、はい。さっき購買部から買った物ですけど……これで誘き寄せようかなって……」
『それを使って……ねぇ』
 信子が取り出した物……それは、ちくわ、だった。

「見つけたぞい! あれを捕まえれば良いのじゃな!」
 校庭の草むらをかき分けツチネコ達を発見した山梨・玄信がダガーを抜き、ユーベルコード《シーブズ・ギャンビット》を発動、真正面からツチネコに突貫しダガーを振るう。
「RB団は小細工などせんだ!」
 ズババンッ!
 大幅な個人差のある叫びをしつつ、まとめて2匹を一撃で倒す玄信。
「ふ、他愛無い」
 そのまま次に4匹組を見つけて同じく《シーブズ・ギャンビット》を発動。
 ズババババンッ!
 だが――。
 3匹までは一撃で倒せたが、最後の1匹に回避された。
「ええいっ、ちょこまかとすばしっこい!」
 しかもこちらの動きを読んでいるかのように。
 しゅばばーっ!
 と逃げ回るのだ。
 実はさっきまで1撃で倒していたのはリトルリドルが召喚したメカツチノコモンスターたちであり、そして最後に逃げ回っている1匹こそ本物のツチネコであった。
 ささささーっ!
「待たんかーっ!」
 と、グラウンドの方へ逃げていくツチネコを追い、玄信が走って行く。

 さて、誰が気づいたであろう。グラウンドの中央に広がっている黒い水たまりのようなものを。
 さて、誰が気づいたであろう。グラウンド中央の黒い水たまりのような物のさらに中心に置かれたヤキソバパンを。
「(クックックッ、オレサマのちょースゴい作戦におそれおののけ! なんとカラダを水たまりぐらいひらべったくして、上にさっき買ったヤキソバパンをおいておく! つまりオレサマじしんが罠なのだ! どうだ、まいったか!)」
 黒い水たまりのように広がったままリトルリドルが心の中で高笑いする。
「(お、あれはにっくきサクタ! クククッ、見事にオレサマのしょーかんした偽物を追ってるじゃないか! ざまーみろ!)」
 ダダダダダッと偽ツチノコを追って走って来る桜山達、鮭高の生徒たち。
「(ぐふーっ!?)」
 偽ツチノコが偽ヤキソバパンを目指しているのか、桜山たちも黒い水たまりっぽ広がりにズカズカと入り込んでくる。
「(う、ぐぐぐ……がまんがまん)」
 リトルリドルが自身の上に立つ数人の生徒の重みに必死に耐える。
「っしゃー! ヤキソバパンげっとだぜ!」
 馬田がヘッドスライディングで偽ツチノコを追い抜き、リトルリドルが置いた罠(ヤキソバパン)に引っかかる。
「さすが馬田君」
「ははは、だがお前もすげーじゃねーか、ツチノコを捕まえてよ」
 罠(ヤキソバパン)が盗られて、もう広がっている利点が無いので戻ろうかとリトルリドルが思い出した所で、身体の上で桜山が悔しがりだす。
「いや、やられたよ。これを見てくれ」
「ん? ツチノコの額に番号? 珍しいな」
「いや、これは良く見たらら偽物だ。ほら、肌感が金属質でメカっぽいだろう? 誰だか知らないが本物を捕まえられないようダミーを放ったんだ。とんだ策士もいたもんだよ」
「おお、マジか」
 感心する桜山に「(その策士はオレサマだぜ!)」と良い気分になるリトルリドル。
 と、何かが自分の中央(先ほどまでヤキソバパンを置いていた付近)に置かれる感触を感じる。
「おい、それ……ちくわじゃねーか」
 馬田がもぐもぐしつつ、ちくわを置いた秋月姉妹に言うと。
『あんた達……邪魔よ』
 PON、と軽い音と共に直撃した馬田が吹っ飛び気絶、さらに煙がモウモウと広がりバタリ、バタバタ、と次々に鮭高生たちが倒れて行く。
『さて、これで問題無くツチネコ達を誘き出せるわね』
「じゃあ、隠れよう」
『ああ』
 ちくわを中央に置いて身を隠す為かいなくなる秋月姉妹。
「(どうしよう……でも、とりあえずエサはあるし、もうちょっと待つかな)」
 リトルリドルとりあえず、もう少しこの作戦で待つことに……。
「わぉぉおおおおおおん……!」
 だが、姉妹と入れ違いにやってきた有栖が、今度はちくわの側で咆え越えをあげ始める。
 それは愛くるしくも気高き遠吠え。

 ワラワラワラ……!

 集まって来るツチネコ達。
「ま、麗狼たる私がちょーっと吠えればこんなも――ぐへっ!?」
 勢い余ったツチネコの1匹が全力で有栖に突っ込み、有栖が吹っ飛ばされる。
「ちょ、ちょっと! いきなり吹っ飛ばされたんですけどっ!?」
 立ち上がり批難を叫ぶ有栖だが、ツチネコ達は「これは!?」みたいに目をキラキラさせ、今度は有栖の背中に向かって1匹が突撃。
「あうっ!?」
 再び吹っ飛ぶ有栖。
「にゃんこの顔して生意気に……ぐはっ!? おふっ! ぐふっ!?」
 体当たりが面白くなったのか有栖へと次々に突進してくるツチネコ達。
「(おーーい、大丈夫かーー?)」
 自分の上で大変な事になってるなぁ……と心の声で心配してあげるリトルリドル。もちろん、心の声なので有栖には聞こえない。
 だが。
「おお! こんな所に大量におったか!」
 そこに乱入して来たのは玄信だった。ダガー片手にツチネコ達に飛びかかるが、ツチネコ達は玄信に構わず有栖に突撃していく。
「ちょっと! なんで私ばっかり!?」
「おのれー! ならばこっちも超本気モードじゃ!」
 ツチネコ達に無視されている感じだった玄信が叫ぶと、ズバッと一気に服を脱ぎ捨て褌一丁になる。
「きゃーーっ!」
 突然の変態に悲鳴を上げる有栖。
「(尻餅とか付いたらおこるからなー!!)」
 黒い水たまりのように広がって皆を乗せているリトルリドルも心の声で叫ぶ。無論、聞こえてない。
 ところどころ紛れていた偽ツチネコを斬り裂きつつ、玄信のダガーがツチネコ(本物)を切り裂くが、その揺れる褌に最初にプチンとキレたのは有栖だった。
「も、もう、なんなのよ!? 寄ってたかって私ばっかり突っ込んでくる、変な褌男は乱入してくるし、ひどいじゃない! もう怒った! もう謝っても遅いわよ!」
 そういうと一気に息を吸いこみ。
「此処は全て私の間合いなんだから……せーの――わぉぉおおおおおん!!!」

 ビリビリビリビリビリッ!!!

 有栖の放ったのは《人狼咆哮》だった。自身から24m半径内の全員を無差別攻撃するユーベルコードだ。
 次々に突進して来ていたツチネコ達が転がり、偽ツチノコは消滅し、玄信がもんどりを打ち、床に広がった黒い水たまりのようなのは何度か波打ちやがて動かなくなる。
「ふふ……私の、勝ち……ね」
 バタリ、幾度ものツチネコの体当たりによってダメージを受けていた有栖が倒れる。
 そこに現れるは秋月姉妹。チュンッ、チュンッ、とピクピクしつつも生きていたツチノコに信子がサイレサー付きハンドガンでトドメをさしていく。
「おお~、大量っすね!」
 そこにのほほんと現れるは蛟羽。
 実はツチネコを集める方法を思い付いて、このグラウンドの中央にやって来たのだが……。
『やってみれば良いじゃない?』
「そっすね!」
 その方法を話すと光子からやってみれば良いと言われ、蛟羽は持って来ていた袋から集めた大量の猫じゃらし(雑草含む)を取り出す。
「頭が猫っすから、きっと性格も猫っぽいと思うんすよ! だから、きっとコレに反応するっす!」
 そういうと、大量の猫じゃらしを一気に空へと放って、同時、《逆シマ疾風》のユーベルコードを発動、良い感じの風を巻き起こしグラウンドの中央で大量の猫じゃらしが宙に踊る。
『にゃにゃにゃにゃーーーん!』
 グランウンドの中央目指してツチネコ達が数匹集まって来る。
「やった! やっぱり皆じゃれたくって集まって来たっす!」
 ぴょんぴょんぴょん、とツチネコ達が宙を舞う猫じゃらしを取ろうと手を伸ばしはジャンプする。
 それを見ていてウズウズしてくる蛟羽、なんせその尻尾の蛇は飛んでる猫じゃらしに首を伸ばしてじゃれつき始めているほどだ。
 チュン、チュンッ、と冷静にツチネコを処理する信子もいたりするが……。
「(ん、うう~ん……さっきの大声はいったい……)」
 目覚めるはリトルリドル。有栖の咆え越えに意識を失っていたらしい。
「(って! 大量にネコどもいるじゃねーか!)」
 瞬間、リトルリドルは本領発揮、黒い大地が波打ち次々にツチネコを掴んではぶっ飛ばしていく。
 と、つぎつぎにツチネコが屠られている様に焦ったのは蛟羽だ。
 自分も遊んでないで(見とれてないで)、戦わねば! と尻尾を《ガチキマイラ》で変化させ――パクン。
 ツチネコを食べる。
『あなた……』
 何か見てしまった光子が呟くと、蛟羽は責められたかと勘違いしアセアセと言い訳。
「……た、食べてないっすもん! もぐもぐしただけっすもん! ちょっと生命力吸収しただけっすもん!」
 ゴクン。
 食べました。
 別に誰かに食べてはいけないと言われたわけじゃなく、あえて言うなら天の声に注意されていたようななかったような……。
 しかし、次の瞬間。
「痛っ、いたたたたたっ! お、お腹、お腹が痛いっす!?」
『ちょっと!』
 まるで胃の中で何かが暴れられているような、何かに胃を内側から噛まれているような痛みにその場に突っ伏す蛟羽。
『ちょっと……信子、手伝って!』
「どうしたの?」
 光子が信子を呼び、2人して猛烈な腹痛に苦しむ蛟羽に肩を貸し保健室へ向かう事に……。
 その後、胃酸が強烈だったのか最終的には腹痛が治った蛟羽だったが、やはり食べない方が良かったかと後悔するのであった……。
 さて、秋月姉妹と蛟羽が去った後も、集まっていたツチノコをリトルリドルが1人でちまちま倒していたのだが、そこで気が付く変態――いや、漢が1人。
「わしとしたことが……む、まだツチネコどもがこんなに! ならば!」
 どこから取り出したのか、褌一丁の上に黒いサバト服を着る玄信。
 その意図が解らず「お、1人起きたぞ」とチラ見なリトルリドル。
「この手だけは使いたく無かったんじゃが……。ふむ、風は丁度よくこのグラウンドの中心を舞っておるな」
 言うが早いか玄信は麻袋をダガーでビリッと破き(だからどこから取り出したのだろう?)、その袋の中身をぶちまける。
「……ん? 白い粉?」
 リトルリドルが風に舞い周囲に霧のように四散した袋の中身に疑問を抱くと共に、玄信は白い粉――小麦粉が良い感じに四散した事を確認すると。
「RB団奥義。爆発オチじゃ!」
 カチッ!
 取り出したライターで火を付け――瞬間。

 チュドーーーーーーーーーーンッ!!!!!

 粉塵爆発がグラウンドの中央に集まっていたいろいろを纏めて吹っ飛ばしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

文月・統哉
猫探しなら任せろ
探偵の腕の見せ所だぜ!

先ずはレプリカクラフトで『つちねこを模した着ぐるみ』制作
円らな瞳にでっぷりとしながらもちょっと長い胴体……うん、完璧だ!
もふっと可愛ければ造りの荒さは問題ない
着替えたら準備万端
仲間の振りして誘き寄せるぞ

そしてガジェットショータイム!
着ぐるみの手でじゃじゃーんと召喚するのは、コタツ
猫って温かい所が好きだろう?
春になったとはいえ近頃はまだ冷えるからな
コタツに入ってぬくぬくと
ぬくぬくと……暑そう?キノセイキノセイ

勿論ミカンもあるぞ
なんならお茶でも一杯
桜も咲いて綺麗だな~

つちねこ交えのんびり花見
でもつまみの魚肉ソーセージを取られたら
容赦なく締め上げる

※アドリブ歓迎


彩瑠・姫桜
ねこ…っ(目を輝かせ)

Σ!(はっ)

べ、べつに可愛いんだなんて思ってないんだからっ
じゃらしてもふもふして遊びたいんだなんて思ってないんだからっっ!

いいわ、私の本気、見せてあげる!

慄けもふもふ、今宵はお前が串刺しよ!

【咎力封じ】使用
まずは【拘束ロープ】を揺らして、つちねこの興味を引きつけるわね
【第六感】【情報収集】でつちねこの動きを観察してタイミングあわせる事を意識するわ
(ぱたぱたロープ揺らしてつちねこと遊んでる)
(すごく楽しそう)

遊びながら複数引きつけたら、【拘束ロープ】で一気に捕獲ね
(捕縛したつちねこをぎゅっと抱きしめてもふってる)
(すごく幸せそう)

(もふもふが幸せすぎて【串刺し】できてない)


ミア・ウィスタリア
ツチノコですってツチノコ!
別に売れるかどうかは割とどうでもいいけど捕まえたらテレビ出れるかもしれないわよ!

(一章で椅子にしていた不良コンビに大量の自作エロ同人誌を持たせる)
さぁアンタ達!学校中にこの薄い本をばら撒いてくるのよ!これだけばら撒けばどれかにはツチノコが寄ってくるはずだわ!
あ、ちゃんと罠も仕掛けるのよ?
※つっかえ棒を取ると籠が倒れて閉まるみたいなシンプルなやつだ!

あら、捕まえた。どれどれ〜(つちねこと目を合わせて淫蕩存在発動)


桐・権左衛門
ヴィクトリアと共に行動(f00408)

好奇心旺盛で単純な罠にも引っ掛かるやて…
これは高度な知恵比べやな!

まずは猫じゃらしと猫じゃらし型ふわふわ玩具を用意する!
ええい、玩具なら何でもええで!

右手の指の間に猫じゃらし4本、左手の指の間に玩具4本装備する!
掌にはささみや海鮮ミックス味の猫用おやつを用意する!

そして極めつけは1m以上前方に突き出したリーゼント!
ふわっふわっやぞ!

罠を作るんやなくてウチ自身が罠となる…着眼点の違いやな(鼻高々)
こっからは試行錯誤やで!
装備状態でトリプルアクセルやダブルラリアットでその場ぐるぐる

視線を落とす為に四つん這いになってみたり
お腹がすけば猫のおやつをつまみ食いしたり


ヴィクトリア・アイニッヒ
桐・権左衛門(f04963)と行動。
…えぇっ、と…何というべきか。
反応に困る相手、ですね…?

好奇心旺盛で単純な罠にも掛かる…と、なると。目立つ存在を囮にするのが手っ取り早いでしょうか。
しかし、『この場にいる存在で、それなりに目立ち、囮も出来る』などと言う都合の良い存在が…(視線を周囲にやって)…あっ(何かに気付いて手をポンと叩く)

ゴンちゃんさんに、色々頑張って頂きましょう。
ほら、せっかくの悪目立ちする格好なのですから! ここでドンと目立たないでどうしますか!
…え、私ですか? 囮に掛かった相手の動きを止めて…あ、斧槍の持ち込みは目立ち過ぎますから、ショートメイスで殴りましょうか。




 ツチノコ狩りだと教室を飛び出して行った不良たちに紛れ、ミア・ウィスタリアも教室を抜け廊下を歩いていた。
 キョロキョロと周囲を探しつつも、未だ目的のものは見つからない。
「それにしてもツチノコですってツチノコ!」
 誰にともなくそう口に出してみるも、6歳のミアとしては噂程度に聞いた事あるがブームを知る世代でもその再放送当で知る世代でも無い、いまいちピンと来ないというのが正直な所だった。
「正直、売れるかどうかはどうでもいいけど……そんなに珍しいのなら、捕まえたらテレビくらい出れるかもしれないわね!」
 と、思い立った所で目的の物――正確には人物たちを発見するミア。
「ねぇ、ちょっと~」
 そしてその人物たちはミアの声にピクリと反応し、さっそくミアの元へと参じるのだった。
「もぉ~、ミアを放っておいて行っちゃうなんて酷いわぁ、とりあえず歩いて疲れちゃったから椅子になって欲しいなぁ~」
 それはミアが先ほど教室で椅子にしていた変態な不良たちであった。
 自主的に椅子になる不良たちを見下ろしつつ、ミアは次の準備に取り掛かるのだった。

 さて、ミアと同じく校内を歩きつつ人を探すはヴィクトリア・アイニッヒ。
 ノリと勢いで不良たちと我先に教室を飛び出して行った相棒の権左衛門を探しているのだが……。
「それにしても……えぇっ、と……何というべきか」
 廊下の窓から校庭で罠を作っている不良や、その罠に興味津々で近づいてくるツチネコ、それを危険だと猟兵がツチネコをかっさらうようなシーンが見えたりしつつ。
「反応に困る相手、ですね……?」
 ヴィクトリア的には単純に倒すなり守るなりと言った解り易いというか、正々堂々とした感じが好きなのだ。
 今回のようななんというか……絡め手――というにはちょっと違う気もするが、兎に角、今回のような依頼は少々苦手であった。
 だからこそ相棒を探しているのだが……。
「あっ、ゴンちゃんさん!」
 やっと無駄に長いリーゼントが廊下の先に居るのを見つけて駆け寄るヴィクトリアだが、相棒の予定はなんというか……ヴィクトリアの想像を超えていたのであった……。

 2階校舎の廊下の窓を開け、そこから校庭を見下ろしうっとりするのは彩瑠・姫桜だった。
 猟兵や不良に見つかったツチネコは焦って逃げたりしているが(それも可愛いのだが)、両者に見つかっていないツチネコは、なんとも自由に蝶に飛びついたり、雨どいに登ろうとしたり、出しっぱなしのサッカーボールと戯れたり、どうにもこうにも可愛すぎる。
「あぁ……ねこ……っ」
 可愛いツチネコの行動を見るたびに目が輝く。
「!?(はっ) べ、べつに可愛いんだなんて思ってないんだからっ」
 誰に言うでもなくクルリとターンし外に背を向ける姫桜。
 だが、外から内へと視界を切り替えてみれば、廊下の先に今まで見たより多きなツチネコがもっふもっふと歩いて行くのを見つける。
「あぁ……ねこ……っ」
 まるで誘惑されていくかのように、その大きなもっふもふなツチネコの後を追うように姫桜は廊下を曲がって行くのだった……。

 相棒たる桐・権左衛門と合流したヴィクトリアは、権左衛門が大量に持つおもちゃに首をかしげる。
「あの、ゴンちゃんさん……その大量の猫じゃらしのおもちゃは一体……」
「ふふん、今回重要なんは高度な知恵比べや! なんせ相手は好奇心旺盛で単純な罠にも引っ掛かるツチネコやからな……ってわけで、これはまさに秘密兵器なわけや!」
「それにしたって……」
 実は権左衛門、手に抱えるだけでは飽き足らず、どこで入手したのか台車に段ボール4箱を乗せており、ヴィクトリアが見た限りその全てに猫じゃらしのおもちゃが入っていた。
「こんなにいっぱい……」
「とりあえずこうやって……こんな感じで……どや!」
 権左衛門が右手の指の間に猫じゃらし4本、左手の指の間に玩具4本装備する。
 たった8本装備しても、在庫の山はどうするつもりかと……。そうツッコミを入れようとした所で――ヴィクトリアは考える。
「(好奇心旺盛で単純な罠にも掛かる……と、なると。目立つ存在を囮にするのが手っ取り早いでしょうか。しかし『この場にいる存在で、それなりに目立ち、囮も出来る』などと言う都合の良い存在が……)」
 そこまで考えふとある一点に視線が止まる。
「あっ」
 手をポンと叩くヴィクトリア。
「どないした?」
「ゴンちゃんさん! ここは色々頑張って下さいますね!」
「?」
「ほら、せっかくの悪目立ちする格好なのですから! ここでドンと目立たないでどうしますか!」
 そしてヴィクトリアはさっそく作業に取り掛かるのであった。
「ウチの拒否権はいずこに?」

 ミアの前に立つ2人は、今朝ほどミアの下僕となって喜んでいた変態なワルである。
 だが、今の2人は大量の自作エロ同人誌を持たされミアの前に直立不動となっていた。
「さぁアンタ達! 学校中にこの薄い本をばら撒いてくるのよ! これだけばら撒けばどれかにはツチノコが寄ってくるはずだわ!」
 果たして同人誌にツチノコが食いつくかと言ったら疑問に思う不良2人だが、ミアが楽しそうに指示を出しているので余計な事は飲み込んで「はい」と「YES」で快諾する。
「あー、ちょっと待って!」
 まきに行こうと思った所でミアに呼び止められ不良2人が戻って来る。
「言い忘れたわ。ちゃんと罠も仕掛けるのよ?」
 ミアがそう言って「こんな罠よ」と、ノートに自作の絵を描いてくれる。
 それは、つっかえ棒を取ると籠が倒れて閉まるみたいなシンプルなやつだった!
 顔を見合わせる不良2人。
 果たしてこんな程度の低い罠にツチノコがはまるかと言ったら疑問に思う不良2人だが、ミアが楽しそうに指示を出しているので余計な事は飲み込んで再び「はい」と「YES」で快諾。
「頑張ってくるのよぉ~」
 そうして、二人の不良はミアの笑顔を護る為、校内中にエロ同人誌をばら撒きつつ、昔話に出てくるような罠を設置して周るのだった……。

 学校の廊下を何やらモジャモジャの怪人がのっしのっしと歩いて行く。
 よく見ればそれは全身に猫じゃらしの玩具をくっつけた姿をしていた。
 その掌にはささみや海鮮ミックス味の猫用オヤツを乗せ、極め付けは1m以上前方に突き出したリーゼントに剣山の如くみっちりと生けられた猫じゃらしの玩具……そのあまりの重さにリーゼントがかなり下方へ落ちている。
「どや、ヴィクトリアはん……ふわっふわっやぞ!」
「ええ、完璧です」
「ふ、ふふ……まさか、罠を作るんやなくてウチ自身が罠となる……なんつー逆転の発想、なんつー着眼点の違いや!」
「ええ、協力したかいがあります」
「せやろ」
 ふふん、と鼻高々な権左衛門。
 そうして怪人ねこじゃらしと化した権左衛門は、もっふもふと足音を立てながら校内を徘徊し始めるのであった。

「円らな瞳にでっぷりとしながらもちょっと長い胴体……うん、完璧だ!」
 廊下の一角で自身の《レプリカクラフト》で作り上げた『つちねこを模した着ぐるみ』の完璧さに頷くは文月・統哉だった。
 猫探しと言えば探偵、探偵と言えば俺、と言うわけで絶対の自信を持つ統哉だが、その作戦はこうだ。
 ずばり! 仲間の振りして誘い寄せ作戦!
 もふっと可愛いツチネコの着ぐるみを着る統哉。
 少々作成した着ぐるみに荒さを感じないわけでもないが、可愛いを優先したと思えばなんという事は無い。
 じゃーん!
 とツチネコの着ぐるみを着て、前方の穴の開いた部分から顔を出す。
「よし、準備万端!」
 そして校内を少し歩き回れば……。
「ふっふっふっ、ついて来てる、ついて来てる」
 統哉の後をトテトテトテと数匹のツチネコが付いて歩いてくる。
 まずは作戦第一段階成功。
 着ぐるみの中で統哉はほくそ笑むのだった。

「いいわ、私の本気、見せてあげる! 慄けもふもふ、今宵はお前が串刺しよ!」
 自分に言い聞かせるよう姫桜が宣言し、その手にロープを取り出すと……。
 パタパタパタ。
 ロープをゆらして、時にぱたぱた、時にゆらゆら。
 なんだあの揺れてるのは!? とツチネコ達がロープに気が付けば、さらにパタパタゆらゆら、と。
『にゃーん♪』
 何匹かのツチネコ達がロープへ跳びかかって来るのを、直前でロープを上に跳ねさせたり、左右に避けたり……そのロープの動きに釣られてツチネコ達が上へジャンプ、右へテシテシ、左にガブガブ、と遊びだす。
「か、勘違いしないでよね! 別に……じゃらしてもふもふして遊びたいんだなんて思ってないんだからっっ!」
 あまりの可愛さに思わず照れつつ、姫桜が言う。
 そのままロープを餌(?)にツチネコ数匹を引き連れ廊下を歩いていると(すごく楽しい)……。
「あれは何かしら?」
 それは見紛う事無き猫の定番――『こたつ』であった。
『にゃーん♪ にゃーん♪』
 ロープにじゃれていたツチネコ達が一目散に炬燵に向かって行く。
 その炬燵には1人先客がいた。それは統哉だ。
 と言うかこのコタツ自身、統哉が《ガジェットショータイム》で作りだした即興品である。
「ちょっと、そこのツチネコの着ぐるみ! 私も入ってあげても良いわよ!」
 統哉に声をかける姫桜。
「ああ、いいよいいよ。どうぞどうぞ。やっぱ猫って温かい所が好きだよな」
 春になったとはいえ近頃はまだ冷える。コタツに入ってぬくぬくとしたくなってもおかしくは無い。
「別に……感謝はしないわよ」
 そう礼を言いつつ姫桜もコタツに入る。
 コタツの中では丸まっているツチネコが足に当たり、またコタツのテーブルの上にも数匹が丸まって眠り出している。
 これはもしかして天国では……。
 思わずまったりする2人。
 そんな天国空間の横を、ミアが単純な罠で捕まえたツチネコを下僕の不良から受け取り、《淫蕩存在》を発動させツチネコに効果的なエロ同人誌を瞬間的に創造する。
 それは至って普通のエロ同人誌だったが、なんか匂いが付いている……これは、マタタビ?
『にゃっはーっ♪』
 興奮しながら匂いつきエロ同人誌に身体を刷りつけ出すツチネコ。
「どれどれ〜……あら、あなたはそういうのが好きなんだぁ」
 っていうか、倒さないで何をしているのやら……。

 トリプルアクセル!
 ダブルラリアット!
 単純にその場でぐるぐる!
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 ねこじゃらし怪人の恰好のまま激しく動きまわる権左衛門。
 やがて四つん這いになってモフモフ歩くと、ツチネコ達も仲間……とは思ってないが、面白いと思って寄って来る。
 さらにお腹が空いて来たので、猫用のおやつをつまみ食いしてみれば、ツチネコ達も一緒に食べ始める。
 ちなみに権左衛門と一緒にいたヴィクトリアが何をしていたかと言うと――。
 ボグッ。
 ショートメイスでこっそりツチネコを狩ってました……。

「外はもう桜か……綺麗だな~」
 炬燵に入って窓の外の桜を見つめ、のほほんとする統哉
 同じく炬燵に入ってる姫桜はロープで逃がさない様捕縛したツチネコの1匹をぎゅっと抱きしめもふっており、何やら幸せそうである。
「お茶もあるし、ミカンもあるし、そして炬燵の上にはネコがいる」
 正確にはツチネコです。
 拘束できてないツチネコも数匹おり、その中の1匹が統哉が摘まんでいた魚肉ソーセージに気が付き、パクリ。
 その瞬間。
 ガッ!
 食べたツチネコの首を掴んで統哉が迫る。
「それはダメだろう?」
 ブルブルブルブル!
 ソーセージ1つで沸点低く怒る統哉に、ぷるぷる震えるツチネコ。
 ロープに捕縛されたままのツチネコを幸せそうにもふって、倒す事ができない姫桜。
 なんとも平和な炬燵の一角であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

自動・販売機
何故か自販機が都合のいい所にある。
走り回る生徒とつちねこのためにドリンクが提示されている。
つめた~い・あったか~い・常温のラインナップがある。
もちろん小銭を入れなければ出てこないが、まあ自販機である。捕まえられれば少額投資と言ったところだろう。

なお今回はアタリ付きである。一割くらいの確率で当たればもう一本。
一応食べ物も入荷済みである。黄色い箱に入った栄養補助食品とかチュールとか。猫まっしぐら。
もしものために医療キットやスペアの虫取り網も売られている。

もしかしたら、何かに押されて倒れてしまうかもしれない。おそらくこの巨体に潰されれば結構痛いだろう。小銭いっぱい入ってるし。


御剣・誉
…俺にはやらなければならないことがある
それは――
(おもむろに取り出された高級和牛のパック
(そして無言でホットプレートのスイッチをいれ

いやぁ、あんなに人が集まるとは計算外だったぜ
おかげでオレが全然食えなかったじゃないか!(地団駄
ま、一番美味い肉とっておいてよかった
ゆっくり食おうーっと
はぁ?つちねこ?ツチノコの間違いだろ
ま、オレはツチノコなんぞどうでもいい
今は肉だ!

肉食ってたらなんかネコが来たな
なんだオマエらも食いたいのか?
しょうがねーなー
イイ肉だからな、大切に味わって食えよ
…ってオレの肉をそんな粗末に扱うなぁ!
肉を味合わないヤツには相応のバツを受けて貰うぜ!

はぁ?これがつちねこ?
…ツチノコじゃん


苧環・つづら
あの『普通でありたい』子、確かに困惑が言動からダダ漏れだけど……
虫取り網持ってダッシュしてった時点で十分此処でもやっていけるんじゃ無いかしらね。

さてと。迦河稚ちゃんは今回傍観に徹したいそうだしアタシ担当。
智猿衆召喚での悪戯っ子達にもご協力願いましょうか。
校庭の植樹疎らなところで白猿さん達にアクロバットしてもらったり木に登って周辺見てもらったり、見つけたつちのこ茶化して引き寄せてもらったり。
最後にぺちっと間引き任務完了なんでしょうけど、不良とはいえ余り一般人巻き込むのは忍びないのよね……。
……猟兵仲間だと分かる人相手なら別にいいか、とは思うけど。
寧ろそれ狙いなら賞賛の上容赦無く相応の扱いで。


摩訶鉢特摩・蓮華
ツチノコ!? 一匹百万円!? すごーい!チ□ルチョコが何個買えちゃうんだろ!? これはもう絶対に捕まえないとね!

学校内を走り回ってツチノコを探すよ!
見つけたら全速力で追い掛け回そう!
曲がり角でもスピードを緩めることなく突っ込むよ!
そのまま念力で姿勢制御しつつ今度は壁を爆走!それから天井→反対側の壁と走りながらコース?を変えつつ、また床に下りて追跡を続けるね!
邪魔な障害物は怪力で全力破壊!
邪魔な生徒は千切っては投げ捨てるの!

ふっふっふ、その先は行き止まりだよ!さぁ、さっさとお縄に…えっ!そ、それはまさかインメルマンターン!?
そんな…あっ(目の前壁)

最後のガラスならぬ、最後の壁をぶち破りました。




 ツチネコはどこだ……と校庭へ出て来た所で、2人して話し合っている桜山と馬田の新入生コンビを発見したのは苧環・つづら――別名ダブリのつづらさんだった。
 ツチネコ狩りの作戦を2人して考えているらしいが、虫取り網はどこへやったか、2人とも片手には箸、もう片方には白米が山盛りの茶碗が握られていた。
「(あの『普通でありたい』子、確かに困惑が言動からダダ漏れだったけど……あの様子なら十分此処でもやっていけるんじゃないかしらね)」
 この鮭高に十分馴染んでいる桜山の姿に、そう思わずにはいられないダブリのつづらさん。
「さてと。迦河稚ちゃんは今回傍観に徹したいそうだし……アタシがやりますか」
 と、もっぱら戦闘を担当する迦河稚が今回は自分では無い、と言うので自分がやる事にするつづら。
 そうしてアレを召喚して効果的な場所――多少木々のある場所――を探して歩いて行くのだった。

 御剣・誉は考えていた。
 教室では失敗したが今度こそ失敗する訳にはいかないと、グラウンドの端へとやって来ていた誉だったが、どうしても気になる事があるのだ。
 目の前にはなぜか配置されていたテントから拝借した長テーブル、その上には延長コードで電源を入れたホットプレートが温まろうとしている。
「俺にはやらなければならないことがある! それは――」
 と、焼肉の準備を再び始めた誉だったが、どうしても気になる点があった。
 それは――。
 ちらり、自分の横になぜか並んでいる桜山と馬田だ。
 しかも2人して右手に箸、左手に白米が山盛りの茶碗を持っている。
「あのさ……もしかしてオレの焼肉、狙ってないよな?」
 どうしても気になるので聞いてみた。
「いえいえ、他人さまの焼肉にご相伴に預かろうなんてそんなそんな」
 桜山が言う。謙遜するように否定するが正直怪しい。
「ああ、その通りだぜ。俺達はたまたま白米と箸を持ってたからここにいるだけだ」
 馬田が言う。そしてそれはここにいる理由になっていない。
 誉はホットプレートに手を近づけて火加減を見る。まだ焼くにはもう少々時間が必要だった。
 自分が持って来た袋の中には、虎の子の高級和牛が入っている。
「あのさ、どっか行ってくれない?」
「いえいえ、僕は偶然ここにいるだけなので気に為さず」
「おうよ、早く肉を焼いてくれ」
「………………」
 これは、延長戦になりそうだ。

「キマイラフューチャー系三猿さん、一仕事お願い!」
 ダブリのつづらさんが《智猿衆召喚(サモニング・ハヌマーン)》で呼び出したるは3匹の白猿。
 1匹目、たばこのような何かを加えて真ん中の猿にプレッシャーをかけるサングラスをかけた白猿。
 2匹目、どうやっているのかリーゼントにフェイスマスクをし真ん中の猿に圧をかける白猿。
 3匹目、イヤーマフをし左右の猿からプレッシャーと圧を受けオロオロしている白猿。
 成功率44%だったとはいえ、いつもと違う様子に困惑するつづら。
 兎に角、召喚は出来たので3匹にツチネコを見つけ、引き寄せ、連れてくるよう指示を出す。
『ウキーッ!』
 3匹は異口同音に叫ぶと、アクロバットに木に登り周辺をチェックし、するすると木を降りて行くと3者3様に散って行ったのだった。
 ――なぜかしら、微妙に不安を感じるわね……。

「ツチノコって一匹百万円もするの!?」
 不良たちと一緒に教室を出ながらまさかの値段を聞いて驚愕する摩訶鉢特摩・蓮華。
「ひゃくまんえん……凄すぎるよね、安いチョコなら何万個買えちゃうんだろ!?」
 しかし、鮭高のワル達は誰もが虫取り網など捕獲道具を持って走り出していた。
 対する自分は……。

 ドカンッ!

「痛たたたた……」
 曲がり角を急いで曲がろうとした先で、何かとぶつかったのだ。まるで転校初日の朝の曲がり角イベントのように。
 え? なんで校内でトースト咥えた同級生と?
 と蓮華が思いつつ顔を上げると、そこに居たのは……。

 自動販売機。

 廊下の曲がった先に、何故か都合の良く自動販売機が置いて有り……。
「邪魔よ!」
 蓮華は自慢の怪力で自販機を力いっぱい片手で払いのけると、やけに頑丈が自販機はそのまま壁にめり込むも、頭を打ってゲーッと何かを吐くように販売していた虫取り網や猫缶を吐き出す。
「これは……丁度いいわ!」
 こんな所に都合よく置いてあって良かったわ、と先ほど邪魔だったのを忘れつつ蓮華が虫取り網と猫缶を手に、再び走って行く。
 後にはどさくさに万引きされ壁にめり込んだ自動販売機が1台あるのみであった……。

 サングラス猿が肩を組んで「ちょっと裏の便所に来てもらおうか」とばかりに連れて来られたツチネコを、つづらは遠慮なくペチッと間引きつつ、今度はフェイスマスク猿に向かって。
「あのね……アタシは不良とはいえ余り一般人を撒き込むのは忍びないって思っているのよね」
 そこにはツチネコを捕まえた不良の肩に乗り、そのままツチネコごと威圧しつつここへ連れて来たフェイスマスク猿。ツチネコだけ回収し、一般人の不良は返してくるようにキツく言うと、フェイスマスク猿はチッと舌打ちして不良をどこかへ連れて行ってしまう。やはり44%で失敗したのだろうか?
 ちなみにイヤーマフ猿はどうしたのかと思っていると、最後の最後でやっと両手に何かをたくさん抱えてやって来る。
 だがよく見れば抱えているのはツチネコでは無く――。
 つめた~い・あったか~い・常温の温度三種の缶ジュースやコーヒー、お茶だった。
 見ていると、サングラス猿にパシられたのか最初にサングラスにどれが良いか選ばせてから、残ったのをつづらに選ぶよう『ウキッ』と差し出してくる。
 どうやら都合よく自動販売機があったので買って来たと言うが……。
「やっぱり、失敗したのかしら?」
 キュッとツチネコを倒しつつ、ふとそんな疑問が頭をよぎるつづらであった。

 明かに焼肉狙いだった鮭高生の2人を追い払い(その際、何か失礼な事を言われた気がしたが気にしない)、誉はやっと高級和牛を取り出し、温まったホットプレートに丁寧に1枚乗せ焼き始めていた。
「いやぁ、朝はあんなに人が集まるとは計算外だったからな! おかげでオレが全然食えなかったし」
 よくよく考えれば、朝のベランダ焼肉ではなぜか主催の自分が肉を焼き、周囲が焼けた肉を食べるという構図が出来上がっていた。途中、こいつら焼く気無いのか!? と持って自分が焼くのをやめてみたが……その瞬間から、誰も焼かないという地獄が待っており、結局自分が焼く事になったのだ。
「ま、とはいえ、一番美味い肉はとっておいたしな……今は周りに誰もいない、1人焼肉だ。これならゆっくり食える」
 と、高級和牛の焼ける良い匂いが漂ってくる、そろそろ良い感じだろう。

「待てーーー! ツチノコーーー!!」

 その時だった、遠くから響いてくる女性の声。
 誉がそちらを向けば四足歩行の太った蛇……に猫の首がついた変な生物――ツチノコが走って来る。
 さらにそのツチノコを全速力で追ってくるのは蓮華だった。
「ぜ~~ったい、捕まえるんだから!」
 ツチノコがカーブを描いて振り切ろうとするも、蓮華はカーブでスピードを落とさずに追跡してくる。
 ガチャン。
 ふとツチノコと蓮華に意識を取られていた誉が、背後に突如気配を感じる。
 まさか自分の意識が逸れた好きに大事に育てた肉を誰かが!?
 そう思って慌てて振り返り、そこにいたのは……。

 自動販売機でした。

「なんだ、自販機か……脅かしやがって」
「どいてどいてー! 危ないよー!」
『にゃーん!』
 ホッとする間もなく蓮華が警告すると同時、ツチノコが飛び上がりホットプレートの肉を食べ、そのまま走り去る。
 そのツチノコを追って蓮華が跳躍し、そのまま近くの自動販売機を足場に三角飛びでツチノコに迫る蓮華。
 ガシャーンッ!
 蓮華に足場にされ倒れる自販機。
「ああ! オレの肉!?」
 誉が育てた肉を取られた事に気が付き叫びをあげ。
 ピロピロピロピロ……『大当たり!』
 倒れた自動販売機がバグったのか、当たりつきのルーレットの音楽を奏でた後、ガシャガシャガシャンと追加の缶ジュースを吐き出す。
 誉が肉を奪われ傷ついた心を癒してくれるのか……と自動販売機に優しい目を向け、バグって出て来た缶を手に取る。
 ありがとう……そう言って缶を飲もうとし。
「って、焼肉のタレじゃないか!!!」
 思わず大地に叩きつけるのだった。

 閑話休題。

 心を落ち着かせ、誉は冷静になる。
 とりあえずひっくり返った自販機を戻し、小銭を入れ温かいカップスープ缶を飲みささくれた心を癒しつつ、冷静さを取り戻す。
 広い心が重要だ。ちょっとした事では驚かないぐらいの。
 そう思って再び焼肉をセッティングし、ゆっくり肉を焼き出す誉。
 すると誉の心に惹かれたのか、焼肉の匂いに惹かれたのか、長テーブルの上にピョコピョコとツチノコが昇って来てホットプレートを取り囲む。
「なんだオマエらも食いたいのか?」
 今の誉には余裕があった。やはり一度冷静にブレイクタイムしたのが良かったのだろう。やはり欲しい時にそこにある……自動販売機は偉大だ。
「ったく、しょうがねーなー。イイ肉だからな、大切に味わって食えよ」
 ツチノコの人数分の肉を焼き出す誉。
 その心の偉大さはまさに焼肉王子と言っていいだろう。
「ただし、オレの肉を粗末に扱ったら相応のバツを受けてもらうからな! 大事に食うんだぞ」
 一応釘は刺しておく。
 さて、最後に一番サシの入って美味そうな部位を、自分用に育てますか……と目の前にゆっくり置く誉。
 プクプクと肉の表面に少しずつ上手い油の肉汁が湧き、もう数秒で完璧に仕上がる――と、その時だ。
「ふっふっふ、いい加減観念なさい! さっさとお縄に――」
『にゃーん!』
 再びUターンし戻って来る蓮華とツチノコ。
 だが、ツチノコのすぐ後ろに蓮華は迫っており、これならここに到着する前に捕まえる事が出来る――今の誉は冷静にそう分析が可能だった。だから、再び自分の肉に目を向ける。今は何より肉が大事だ。
 そしてついに蓮華の手が追いかけるツチノコを掴んだ――そう誰もが思った瞬間。
 ツチノコの姿が消える。
「そんな!?」
 ツチノコは大地を蹴り跳躍、ホットプレート周りにいたツチノコたちも跳躍し、追われていたツチノコの足場になるよう連携、追われていたツチノコは上空をUターンするよう180度方向を変え、背面飛びから旋回し蓮華とすれ違うよう逆方向へと逃れる。それは第一次世界大戦初期に活躍した航空機の縦方向の空戦機動!
「インメルマンターン!?」
 自身の頭上を華麗に回避していくツチノコを見上げながら呟く蓮華。
「そんな……あっ」
 そして勢いを止めれず目の前の長テーブルに突っ込む事に――ドンガラガッシャーンッ!!!
「痛たた……ああ、ゴメンなさい!?」
 焼肉をやっていた誉に慌てて謝る蓮華。
 だが、今の誉は冷静なりし焼肉王子だ。サッと危険を感知しホットプレートだけ持ち上げ、激突から自身の肉を守っていた。
「ああ、オレの事(肉)は気にしないで。それより怪我は無い?」
 余裕で蓮華の心配をする誉。
 だが、追突の衝撃はそこだけに収まらず……。
 ググ……グーー……ズンッ!!!
 衝撃で揺れた近くにあった自動販売機が倒れて来て、誉の持っていたホットプレートを押しつぶす(ぎりぎり誉や蓮華には当たらなかった)。
「おっ……ちょっ、ふざけんなっ!!!!!」
 焼肉を食べれてない焼肉王子の悲痛な叫びが、広い校庭に木霊するのだった。

 その後、なんやかんやで猟兵達によりツチネコ達は全て処理されました。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『青光る邪神・鯖』

POW   :    アニサキス・デッドエンド
【傷口から放った血 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【寄生虫アニサキス毒爆弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ジェノサイド・サバカン・ストーム
【数多の鯖缶 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    Omega3・エンハンス
【ドコサヘキサエン酸(DHA) 】【ドコサペンタエン酸(DPA)】【エイコサペンタエン酸(EPA)】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。

イラスト:井渡

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蓮賀・蓮也です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※あとで三章の追加OPをアップします。
 三章のプレイングは追加OPを公開後に宜しくお願い致します。
====================

●三章のプレイングについて
三章は邪神の『鯖』を倒して貰います。
とはいえ、それに縛られずプレイングは自由にどうぞ。
基本的にギャグの世界は続いています。

●青光る邪髪・鯖
生で食べるとお腹を壊します。
浮遊して移動可能です。
思念で意志を伝えてきます。

●ムシェ鮭高校の生徒達
暇だった場合やモブ的に欲しくなった場合に勝手に登場します。

====================


 皆がツチノコ狩りで校内を未だに探し回っている中、僕――桜山・咲太(さくらやま・さくた)は、いい加減体力の限界が来て教室へと戻ってきていた。
「ふぅ……不良たちの体力にはついていけないよ」
 ツチノコを捕まえて一攫千金は喉から手が出るほど欲しいが、あのまま皆と一緒に走り回るにはさすがに足がガクガクだ。少し休まねばどうしようもない。
『(ほう、ちゃんと教室に戻ってくるとは感心感心)』
 僕の頭の中で何か知らない人の声が響く。
 たぶん気のせいだろう。
『(先生、教室に来たら誰もいなかったから正直焦ったよ)』
 僕の頭の中で先生らしき人の声が響く。
 きっと気のせいだろう。
『(ツチネコ達にアニキを寄生させ、先生の完全復活の為の力を集めさせるはずが……なかなか戻ってこないし、一体どうしたのかと……)』
 僕の頭の中で先生が良く解らない事を伝えてくる。
 とりあえず無視しよう。
『(ちょっと、そこの真面目そうなきみ、聞こえてるよね? 先生の声、聞こえてるよね? 聞こえてるなら右手を上げて……ああ、ごめん、そういうのはめんどいよね、ちょっとほら、頷くだけでいいから、ね、どうかな? 聞こえてるよね?)』
 うるさいな。
 それにしてもこの教室には僕と……あとは教卓の上に、びろーんと横たわる2m越えの巨大な鯖ぐらいしかいない。あの鯖、異様にでかいけど……まあ、常識外れのここの不良達の誰かが持ち込んだのだろう。まったく、鯖は足が早いんだ、こんな所に常温で置いておいたらすぐに痛んでしまう。
 仕方が無い。
 僕はスッと席から立ち上がると、ゴミ箱を教卓の横に置き、そのまま教卓の片方を持ち上げ斜めにすると、そのまま2m近い鯖をゴミ箱へと滑り落とす。
 ズルズルズル……ズドンっ。
「よし」
『(おいいいいぃぃぃぃっ! 何が「よし!」だ! 何やりきった顔になってるんだ! 先生をゴミ箱に捨てるとはどういう事!? 真面目そうな顔してとんだサイコだよ! だいたいさっきから先生の声をずっと無視するし、アニキたちの餌にするよ!? いいの!?)」
「まさか……えええっ!?」
 僕はその時やっと気がつく。この頭の中に響く声はゴミ箱に捨てた巨大な鯖が発しているという事実に。そしてその鯖が自分の事を先生だと言う事実に。
「………………」
 僕はとりあえず現状を認識する為、スタスタと元いた席へと戻り座り直すと、そのまま頭を抱える。
「この学校……意味わからないよ」
『(いや、さっさとゴミ箱から出さないか!!!)』
「………………」
『(じゃあ、もう先生勝手に出るからね!? 本当だぞ! 出たらもう凄い事になるからね! いいね!!!)』
 そして、フワリとゴミ箱から鯖が浮き上がるのだった。
自動・販売機
鯖が浮かんだ瞬間なぜか天井から落ちてきます。おわり。

嘘です。

教室に現れた後、なぜかチューブ入りの味噌が商品取り出し口から勢いよく飛び出し鯖にぶつかります。
次にチューブ入り練り生姜が飛び出し、やはり鯖に飛んでいきます。
最後ににょきにょきと火炎放射器が筐体から伸び焼きます。

多分新しい商品の入荷とかそんな感じで動いているんじゃないでしょうか。
自動販売機の考えてる事なんてプレイヤーにもわかりません。

きっと炊飯ジャーとか焼き肉の人用に缶入り味噌汁とかも用意しているんでしょう(有料)。

持ち帰り用にタッパーも準備してるはずです。この自動販売機は商機を見失わない。ウィン・ウィン。


涼風・穹
もう色々と面倒になってきたのでエスケープします
取り合えず購買で焼きそばパンとカツサンドとジュースでも買ってから屋上へ向かい、腹ごしらえをした後は青空の下でのんびりと日向ぼっこをしつつ昼寝します
屋上に鍵でもかかっているのなら《贋作者》でフック付きワイヤーを模造して窓からでも上ります

もし既に屋上で不良集団が騒いでいて眠れなさそうだったり後から来た誰かが昼寝の邪魔をするのなら全員ぶちのめします
何人たりとも俺の眠りを妨げる奴は許さん
真の姿を解放、瞳が金色になり背中に光の翼が現れて、それはもう相手がオブリビオンだろうとなんだろうと全力を持って昼寝を邪魔する存在を排除します

……俺は何をしにきたんだっけ…?


庚・鞠緒
……鯖かァ……鯖だなァ…
…もうウチ帰ろっかな、アイツ放っときゃ腐って死ぬンじゃね…?

いや落ち着け鞠緒
ウチは猟兵で、アイツは(多分)UDCで
倒さねェと家に帰れねェんだ
よく考えろ、喋る鯖とか水族館にいねェじゃん
だから多分世の中にああいうのいちゃいけねェんだよ

あとウチ焼き鯖フレークかなり好き

…よし、殺そう
殺して、焼いて、後のことは全部後で考えよう

アニサキスとかウチの毒耐性にはあんま効かねーだろうし
もう「鉤爪」でザックザックおろすぞ
よく考えたら焼き鯖フレークの作り方わかんねーし!
とにかくまずはミンチにしてやる!
そんでもって焼いて塩振って青ねぎと混ぜて……これUDCじゃん!食わねェよ!


真守・有栖
ちょっと咲太!
先生を捨てるなんて、どーゆーつもり!?
全く。狼も伝わらぬ者ばかりか食べ物も粗末にするなんてこの学び舎はいったいどうなって……

んん?食べ物?

(鯖と目が合い)

……鯖じゃないの。
でっっっっっっかい鯖じゃないの!?

鯖が何を教えるって……なるほど!
身を以てその美味しさを教え子に伝えようと。そーゆーことね!
先生たる者の鑑じゃない。褒めてあげるわ!

まな板の上の鯉。教卓の上の鯖。

後は好きに料理しろと。そーゆーことよね!承ったわ。
咲太は皆を呼んでいらっしゃい。えぇ、最初の授業は鯖の調理実習よ……!


(皆と一緒に料理(戦闘)中)


ちなみに。焼き鯖(邪神)はこないだ食べたから今日は鯖の味噌煮を希望するわ!


アヤカ・ホワイトケープ
ふう、つちねこの対処は終わったようね
みんなフリーダムに騒いでるけど、わたし達の目的はこの学校にいるらしい邪神を倒す事って忘れてないかしら…?
でも、なんでこんな学校に…へ?魚が浮いてる?
…なに、あれ?え、鯖…鯖!?(ここはムシェ)鮭なのに鯖!?
ちょっと待って、理解が追いつかない…こいつ、直接脳内に…!?
色々ツッコミたい事はあるけど、何故こんな学校に現れたの!?

…よし、決めた。とりあえずUCで焼きましょう。
なんか生臭いし、火を通せば少しはマシになるかしら?
ああ、つちねこがいれば多分食いついてたかもしれないわね…

でも、さすがにこいつを食べる気にはなれないわね…
あんなのでも一応は邪神でしょ、こいつ…?


トリテレイア・ゼロナイン
ツチネコの次は先生を名乗る鯖ですか
新入生に舐められるどころか食べられそうな姿ですが、腐ってもオブビリオン。倒しておかなくてはアニサキスによる食中毒でこの校が保健所のお世話になってしまいます

傷口の血から寄生虫が飛び出さないように、鈍器で戦っていきましょう。具体的には●怪力シールドバッシュと鞘入りの剣での殴打
殴りすぎて出血したら●盾受けで返り血を防御

殴り倒したらワイヤーアンカーを尻尾に●ロープワークで絡めて広い所に引きずりだして、UCの焼夷弾を撃ち込んで熱による殺菌消毒を試みます

先生に行う所業じゃないとか、騎士として火攻めは…という問題は気にしません
日頃の苦悩から解放されて不良活動に勤しみましょう


東雲・観雪
※無邪気にあざとくアドリブ絡みOK
※鯖の話は聞いていません
※鯖でも疑問をもちません

すごいです! 鮭なのですね!!
ちがいましたか? 鮪? 鰤? 鰯? 鰆?
わかりました、鯖ですね! さば!!

あしがはやいのですか?
あしがはやいのをお勉強するのは体育なのです
せんせいは体育のせんせいですか? ちがうのですか?
「じゃあ、なんのせんせいなのですか?」

学校でお勉強できるのがたのしみだったのです
お蔵の中ではずっとひとりで鳥さんとおはなししていました
学校にいけば、たくさんお勉強して、たくさんお友達ができると……

「そうでした!」
(モノローグ途中で潜入捜査を思い出し)
けがをしているひとがいたら
光で治してあげます!



第三章『鯖の刺身ほど美味いモンは無い!』


 フワリ……ゴミ箱から巨大な鯖が浮かび上がる。
 次の瞬間。

 ガンッ!!!

 天井から突如突然唐突に自動・販売機が鯖の上に落下。
 自販機の下敷きとなる鯖。
 そして――このムシュ鮭高で起こった一連の怪奇事件は幕を閉じたのだった。

 第六猟兵UDCアース『あし早! ムシュ鮭高校』
 第三章 鯖の刺身ほど美味いモンは無い!
 缶(×)――完。

 ・
 ・
 ・
 目の前で自販機の下敷きになった鯖から目を逸らし、机からノート類を取り出そうとし、そう言えば別に授業なかったから鞄の中に入れっぱだったかと、机の横に下げていた鞄を手に取り帰ろうとする桜山・咲太(さくらやま・さきた)。
 その桜山を呼び止めるのは真守・有栖だ。その狼例えがちょこちょこ鯖高生に通じてない可哀想な美少女だった。
「ああ、有栖さんも帰るのかい?」
「そうじゃないでしょ! 咲太、さっきの見てたわよ? 先生を捨てるなんて、どーゆーつもり!?」
 桜山の鼻先に指を立てて詰め寄る有栖。その綺麗な紫の瞳が大きく桜山を覗き込む。
「いや、僕は先生じゃなくって鯖が教卓の上に捨ててあったから、普通にゴミ箱に入れただけなんだけど……」
 ちょっと近いよ、とばかりに両手でガードするようたじたじになりつつ言う桜山。
「だから駄目じゃない! 食べ物を粗末にするなんて! 鯖って言っても先生でしょ!」
 桜山の手を払いのけ、それでも詰め寄って来て言う有栖。
「いや、仮に先生だとしても捨ててあった鯖を食べようとするのはどうかと……」
 それ以上の抵抗は無意味かと、視線だけなんとか逸らして反論する桜山。
「何? まったく、狼例えもぜんぜん伝わらない者ばかりだし、この学び舎はいったいどうなって……」
 ドキドキする桜山に気づかず、近距離で話し続ける有栖。
 なんとも恋愛ゲームのような――。

『(おいいいいぃぃぃぃっ! 何勝手に先生を無視して別ベクトルの様相になってるの!? これ、現代怪奇ゲーム風のベクトルだからね! 先生邪神だからね!?)』
 ドーンッと自販機を弾き飛ばして巨大な鯖が浮き上がる。
「あれ、終わったんじゃ?」
『(いや、終わってないから! だいたい缶って何!? 自販機だから缶なの? 先生が鯖だから缶なの!? っつーか、どっから湧いて出たんだあの自販機は!)』
「とりあえず咲太は教室から出た出た」
 有栖に押されるように教室から追い出される桜山。それと入れ違いに数人の猟兵達が教室へと入って来る。
「ふう、つちねこの対処は終わったようね。みんなフリーダムに騒いでるけど、わたし達の目的はこの学校にいるらしい邪神を倒す事って忘れてないかしら……?」
 最初に入って来たアヤカ・ホワイトケープが真面目な委員長な感じで溜息を付きつつ自身の席に座って。
「でも、なんでこんな学校に邪神が……へ? 魚が浮いてる?」
 席に座った所で黒板の前ででーんと浮かんでいる巨大な鯖と目が合う。
「……なに、あれ?」
『(鯖の先生です)』
 直接頭に響いてくる声に目をぐるぐるさせるアヤカ。
「え、先生? 鯖……鯖なの!? いや、でも、ここはムシェ鮭高校……鮭なのに鯖!?」
 ちょ、ちょっと待って、理解が追いつかない……こいつ、いや、先生の声が直接脳内に……!?
「んん? 鮭?」
 混乱するアヤカをよそに一般人の桜山を追い出した有栖が戻って来て鯖先生と目が合う。
「……鯖じゃないの」
 どこを見ているか解らない鯖の瞳。
「でっっっっっっかい鯖じゃないの!?」
 思わず全力でツッこむ有栖。
『(お前はさっき別ベクトルのやってる時から先生のこと見ていたでしょーが!!!)』
 鯖先生も全力でツッこみ返してくる。
 そんな有栖と鯖先生のくだりに割って入るのはトリテレイア・ゼロナイン。
「というか、ツチネコの次は先生を名乗る鯖ですか……」
「トリテレイアさん!?」
 ウォーマシンであり騎士でもあるトリテレイアが、ピリッと真面目な空気に変えて言う。
「新入生に舐められるどころか食べられそうな姿ですが、腐ってもオブビリオン。倒しておかなくてはアニサキスによる食中毒でこの校が保健所のお世話になってしまいます」
 真面目だが……どうにも微妙にズレているような……。
「……もうウチ帰ろっかな、アイツ放っときゃ腐って死ぬンじゃね……?」
 そんな様子をドアの所から一歩も教室に入らず眺めていた庚・鞠緒が嘆息して帰ろうとする。
『(待て待て待て、まだ授業も始まってないのに帰る生徒があるか!)』
 なんか頭の中に声が聞こえてくる。
 溜息を付きつつそちらを見る鞠緒。
「……鯖かァ……鯖だなァ……」
 どっからどうみても鯖だった。
「(いや落ち着け鞠緒。ウチは猟兵で、アイツは(多分)UDCだ……)』
『(違うぞ、お前は我が生徒で、私は先生だ)』
「(倒さねェと家に帰れねェんだ)」
『(学校なんだから授業を受けないと帰れないぞ)』
「(よく考えろ鞠緒、喋る鯖とか水族館にいねェじゃん? だから多分世の中にああいうのいちゃいけねェんだよ)」
『(よく見てみろ、目の前に喋る鯖がいるだろう? だから多分世の中に――)』
 バンッ、と閉めようとしていたドアが乱暴に開け放ち。
「うるせーよっ!! さっきから勝手にこっちのモノローグに入ってくんな!! 何様だ!」
『(先生鯖だ)』
「黙れよ!!!」
 思わず足元の机を浮かぶ鯖に蹴り飛ばす鞠緒と、さらりと避ける鯖。
 ガタリ、一連の流れからやっと混乱から回復したアヤカが席から立ち上がり。
「色々ツッコミたい事はあるけど……まず1つ聞かせて! 何故こんな学校に現れたの!?」
 犯人はこの中にいる! というポーズで聞くアヤカ。
『(かつて伝説の教師がいた……)』
 なぜか窓の外、遠く荒川の土手を想像しつつ遠くを見つめる鯖先生。
『(先生、その伝説の先生が羨ましくてな……せめてその伝説の先生と似た所があれば、先生も教師って職業が務まるんじゃないかと思って……そしたら1つだけあったんだ。その伝説の先生と似た部分が)』
 誰もが黙って「それは?」とか相槌を打ってくれないが、鯖先生は無視して独白を続ける。
『(それはさ、名前だよ。先生、銀色の肌の鯖だから? だから、銀八先生って呼ばれるんじゃないかって、さ)』
 フッ、と口許に笑みを浮かべる鯖先生。
「いえ、鯖なら銀ではなく青だと思います」
 トリテレイアが冷静に。
「あと、ハチってつけてるけど、それは鯖でなくカンパチだと思うわ」
 有栖もツッこむ。
『(………………)』
 黙る鯖先生。
 決して1章のネタの為にこの高校が舞台となり、2章と3章はガチャで適当に面白そうな相手になったとかではないので、鯖先生にもう一声反論して貰う事にする。
『(と、言うのは建前で。このムシェ鮭高校は都内屈指の底辺高、この我が先生として潜入しても誰も疑う事無く、また我がアニキサスに感染させ洗脳した部下たちをもって我が力を増す為の生贄を確保したとしても、このワルの巣窟たる場で何人か行方不明になろうとも大事になる事は無い……つまり、これ以上都合のいい場所は無かったのだ!)』
 邪神っぽく言う鯖先生。
 これぞ本音である。
 話を聞いていた猟兵達が、それなら納得だと、戦闘準備に入ろうと――した瞬間。
「すごいです!」
 ピリつこうとした空気を読まず、感嘆の声をあげる美少女が1人。
 東雲・観雪だった。
 皆の視線が集まる。
 白ランを着た観雪が、萌え袖のまま両手の五指の先だけを合わせるようにしたポーズで瞳をキラキラさせていた。
「すごいです先生! 先生は鮭なのですね!!」
『(いや、鯖だって、先生の話聞いてた? ってか見れば鯖って解るでしょう?)』
 自分の事をさっきはパチとか言ってたわりに、まともにツッこむ鯖。
「あ、ちがいましたか? 鮪? 鰤? 鰯? 鰆?」
『(鯖ね、鯖)』
「あ、はい。わかりました! 鯖ですね! さば!!」
『(YES)』
「鯖でしたか……すると、あしが大変おはやいのですよね? それでは足が速いのを活かすお勉強と言ったら体育なのです。つまり、せんせいは体育のせんせいですか?」
『(NO)』
 なんかめんどくさいなぁ……とか思ってるのか、鯖先生の返答が異様にシンプルである。
「え、ちがうのですか? じゃあ、なんのせんせいなのですか?」
『(国語です)』
「そうだったのですね。わたくし、学校でお勉強できるのがたのしみだったのです。今まではお蔵の中ではずっとひとりで鳥さんとおはなししていました。学校にいけば、たくさんお勉強して、たくさんお友達ができると思っていましたので……」
 さらりと言うがさりげに寂しい事を言う観雪に、鯖先生は目をうるうるさせる。
『(そうか……大丈夫だぞ観雪、学校に通えばたくさん友達が出来る)』
 鯖先生はヒレで黒板のチョークを取ろうとし、バシッと叩くも落下し持てず、何事も無かったように観雪に向き直り。
『(観雪、いいですかぁ。鯖という字はねぇ魚と青と書きます。魚と青春を過ごすから鯖と書くんです。だから先生は観雪に言います。これから始まる学生生活、良い青春を送って下さぁい)』
「はい!」
 鯖先生の言葉に元気に返事をする観雪。
 そして……一通り学園ドラマっぽいのが終わった事をチラチラっと確認してから有栖が言う。
「鯖が何を教えるって思ったけど……なるほど! 身を以てその美味しさを教え子に伝えようと。そーゆーことね!」
 その一言で一気に話を本筋へと戻す。
 他の猟兵達もハッとして勢いよく頷き、その様子を見て自分が間違ってないと有栖は言葉を続ける。
「先生たる者の鑑じゃない。褒めてあげるわ! そして……覚悟しなさい!!!」


 1年の教室でそんなやり取りが行われている中。
 購買で平和に買い物をする猟兵が1人。
「あー、焼きそばパンとカツサンドとジュースで」
「あいよ」
 購買のおばちゃんに小銭で支払い、昼食セットが入った袋を持って階段へ向かうは涼風・穹。
 穹は階段を上り、1年の教室がある階を無視してさらに上へあがって行く。
「はぁ……」
 思わず出る溜息。
 正直に言おう、もう色々と面倒になってきたのだ。
 つまり、これから行おうとしているのはエスケープである。
 普通のシナリオなら目的を全く無視するこんな行動は却下対象であろう。
 が、その気持ちは解らなくもないので採用する。
「やっぱ腹ごしらえをした後は青空の下でのんびりと日向ぼっこをしつつ昼寝したいしな……食べるなら屋上だよなぁ」
 食後の至福まで想像しニヤリと笑みを浮かべる穹だが、その前に絶望をもたらせる壁が立ちふさがる。
 ガチャリ。
 屋上の扉には施錠がしてあったのだ。
 ガチャガチャガチャ!
 ガンガンッ!
 屋上に出る不良が多かったのか、やけに頑丈に作られている屋上への扉。
「おいおい、猟兵様を舐めるなよ!」
 穹は精神力を集中させ、自身の手の平に力を集めると……そのユーベルコードを解放するのだった!


「……よし、決めた。とりあえずユーベルコードで焼きましょう」
 アヤカが淡々とした表情で宣言し。
「これがわたしの想い……聴きなさい、熱き心と魂の歌!《燃え盛りし炎の歌(ソング・オブ・バーニングブレイズ)》!!!」
 それは鯖の心を震わす燃えるような熱き歌声。
 その歌声が炎となって鯖を焼く!
「なんか生臭いし、火を通せば少しはマシになるかしら?」
 そう言って炎が巻き起こす風に髪をたなびかせるアヤカの横を、トリテレイアが追い越し。
「まずは頭を殴って締めなくては!」
 と、鯖先生の頭に向かって鈍器(シールドと鞘入りの剣)で殴り倒す。
『(ちょ、炎はまだしも、直接鈍器で先生を殴るって……いろいろ問題になるシーンだと先生思うわけで……)』
「大丈夫です。鯖をしめただけです」
 言いつつワイヤーアンカーを尻尾に巻き付けると、そのままグルグルと振り回し、そのまま教室にある机や椅子を壁際に弾き飛ばし。
『(あだっ、痛っ)』
 そのまま広くなった教室の中央に鯖先生を転がし。
 右の掌を向けガシャリと砲身を出すと――。

 轟ッ!!!

 発射された弾が鯖に命中、弾頭に封入された特殊な化学物質が炎を上げ一気に鯖先生を包み込む。
「《超高温化学燃焼弾頭》です」
『(熱いっ、熱いって!)』
 ビタンビタンしつつ教室の床に転がる鯖。
 だが、さすがに生徒の暴行に鯖先生も堪忍袋の尾がキレる。
『(こぉのぉ、バカちんどもが!)』
 同時、放たれるは《ジェノサイド・サバカン・ストーム》――殺戮鯖缶の嵐であった。
 縦横無尽に教室内を飛び交う鯖缶が、猟兵達に頭にぶつかり、腹にめり込む。さすが中身入りの缶詰だ、純粋に鈍器として痛い。
「ああ、みなさま大丈夫ですか!? 先生に暴力を振るうからですわ」
 観雪が怪我をした人達を順番に《生まれながらの光》でまとめて回復させつつ。
「ああ、でもこれが教師が放つ愛のむち、なのですね!」
 鯖が放つ鯖缶です。
「こんな缶詰……」
 鯖の水煮と書かれた腹にドフッとメリ込んで来た缶詰を、ガランッと捨てて鞠緒が言う。
「ウチは……焼き鯖フレークがかなり好きなんだ」
『(それはシャケでやるがいい)』
「いいや、だんぜん鯖だね! だから……うん、よし、殺そう」
『(先生を殺すとか――)』
「殺して、焼いて、後のことは全部後で考えよう」
『(酷いな!?)』
 そういうと鉤爪を発現させ鯖先生に飛びかかる鞠緒。焼けた鯖の身を鉤爪でザックザックとおろし出す。
 生焼け部分から血と共に飛びかかって来るアニキサスもいたが、鞠緒は毒体勢を理由にそれを我慢、そのままザックり削げ落とす。
「まな板の上の鯉。教卓の上の鯖。床の上のソボロの身……つまり、後は好きに料理しろと、そーゆーことよね! 承ったわ!」
 床の上には身体の4分の1の焼かれた切り身が切り取られていた。アヤカとトリテレイアの2人が焼き、鞠緒が切り取った部分だった。
 有栖はさっそく焼かれた切り身に近づくと。
「焼き鯖はこないだ食べたから、今日は鯖の味噌煮を希望するわ!」
『(待て! 先生を普通の鯖と一緒にするな! 我は鯖でありつつ邪神でもあるのだから!)』
「大丈夫!」
 グッとサムズアップの有栖。
「焼き鯖で食べたのも邪神の鯖だったから!」
『(んなぁ~にぃ~い!? やっちまったな!!!)』
「無問題よ!」
 次の瞬間、最初に吹き飛ばされ壁にめり込んでいた自動販売機がゴロンと壁から転がり出て、そのままガシャガシャガコンガコンと衝撃でいくつかのチューブが出口から吐き出される。
 それはチューブ入りの味噌と、チューブ入りの生姜だった。
 おもわず焼かれた切れ身にチューブの中身をぶっかける有栖。
 さらに自動販売機から何かホースのような物が伸びているのに気づいたアヤカが、それを向けて発射すれば火炎放射機だったらしく、まだ生焼けだった細部を丁寧に焼く。
「ああ、つちねこがいれば多分食いついてたかもしれないわね……」
 良い匂いが漂ってくる。
 そういえばあの自販機、鮭高の生徒だった気がするが、すでに便利アイテムと化しているし、そう他の生徒に思われているようだ。自販機自体はその事をどう思っているか伺いしれないが……まぁ、自動販売機の気持ちなどプレイヤーもマスターも解るはずがないので置いておく事にする。
「それにしても……先生に行う所業じゃないですね」
トリテレイアが先生を燃やすのを見ながら言う。
『(あのねトリテレイア君、きみは騎士っぽい恰好をしているけど、騎士が火責めとかやって言いと思ってるのかい?)』
 身の4分の1をそぎ落とされ、床でピチピチしている鯖先生が苦言を放つ。
 対してトリテレイアは。
「はい、気にしません。それに今の私は不良です。日頃の苦悩から解放されて不良活動に勤しんでもおかしくありません」
『(いやいやいや! 不良の活動が人を燃やす事って相当アレだからね! 相当キテるからね!)』


 パリンッ!
 階段の窓から外に飛び出した穹は、ユーベルコード《贋作者(フェイカー)》で作り出したフック付きロープを上空へと放つ。
 ガチンッ!
 狙い通りフックが屋上の手すりに固定され、穹はそのままロープを手掛かりに屋上へ。
 ひらりと手すりを越え、音もなく屋上へと侵入を果たす。
 猟兵たる穹にとって施錠された屋上の扉など、なんという事は無い障害であった。
 そして青空の元、ジュース片手に焼きそばパンとカツサンドを頬張る。
 うまい!
 屋上で食べる昼食もだが、授業をエスケープして食べている背徳感は半端ない。
 (正確には授業でなく邪神との戦闘である)。
「ふぅ、食った食った」
 そのままゴロンと屋上で大の字になる。
 視界は全て青い空だ。
 日差しも心地良く、春である今は暑くも寒くもなく丁度良い。
「キング・オブ・昼寝時」
 幸福感に包まれ襲ってくる睡魔に身も心も預けようと……した瞬間。
 ガチャリ。
 屋上の鍵が開けられる音が響き、ガヤガヤと不良たちが屋上へと入ってくる。
「まさか屋上の鍵が借りられるとは思わなかったぜ、さすが桜山だ」
「いや、普通屋上に出たかったら先生に言うものじゃないの? どうして校舎を登ろうなんて無茶をしたんだい馬田君たちは」
「いや~」
「いや~」
 馬田含め数人が照れる。
「ん、先客がいるみたいだね。おーい!」
 手を振って近づいてくる桜山達。
 だが、手を振られた穹はすっくと立ちあがり、ゆらりと闘気を立ち昇らせる。
「何人たりとも……俺の眠りを妨げる奴は許さん」
 振り向いた穹の姿は、瞳が金色となり、背中からは光の翼が現れ、神々しくも輝いていた。
「なっ!?」
「なんだあいつ! それにあの姿は!?」
 驚く不良たちに穹は怒声を堪えて冷静に伝える。
「これは俺の……真の姿だ」
 言葉だけだと中二病である。
「馬田君、ここは関わっちゃいけない、屋上は彼に譲ろう」
「ふざけんな! 因縁付けられ引いてたんじゃワルの面子が立たねぇだろうが!」
 じゃあ僕はワルじゃないから帰るね、とさっさと撤退する桜山。
 一方馬田含め複数の不良たちが、ポッケに両手を突っ込んだまま真の姿を解放した穹を囲む。
「オラァ! やっちまぇ!!」

 ドガ、バキ、ドス、バスッ!

「うわぁぁぁぁ」
 一斉に吹っ飛ぶ馬田たち不良軍団。
 その中心で真の姿を解放し1人佇む穹。
 再び静寂の訪れる屋上。
 ふと上を見上れば青い空が変わらず広がっていた。
「……俺は何をしにきたんだ……?」
 そう呟く穹に。
 天の声は『邪神を倒しに来たんだろうが!』とツッコミをいれるのだった……。


 ガコンガコン……と、自動販売機からあったかい味噌汁缶と1人前用ごはんが数個、転がり出てくる。
 ここに炊飯機頭や焼肉王子がいればベストだったかもしれないが、残念ながらここにはいなかった。
 だが、その全てを賄える自動販売機はここに居た。
 出てくるのは全て自販機で買えるレベルの物だったが……。
「よく考えたら焼き鯖のフレークの作り方わかんねーや。まぁ、兎に角、この焼いた身をミンチにして塩振って青ネギと混ぜて……完成、か?」
 鞠緒が焼き身を使って適当に焼き鯖フレークを作る。
 ついでに料理技能のあるアヤカが余った焼き身を使って鯖の味噌煮を完成させ……。
 美味しそうな2品が、食欲をそそる匂いを充満させ――。
「……って、これUDCじゃん! 食わねェよ!」
「ま、さすがにこいつを食べる気にはなれないわよね……邪神だし……」
 作ってみたは良いものの、ノリツッコミで否定する鞠緒と、だよね、とばかりに頬をかくアヤカ。
 ただ、猟兵達の横で自販機がウィンウィンと販売商品を入れ替え、そこに表示されるは持ち帰り用のタッパー。
「持ち帰れって言うの!?」
 アヤカがツッコム中、有栖はしっかり味噌煮をタッパーに詰め詰め……。
「これが食育……」
 観雪が初めての食育の授業に感激していると――そこでハッとしたように両手で口を覆う。
「どうしました?」
 トリテレイアが聞くと。
「思い出しました! わたくし、この高校に邪神を倒すための潜入捜査で参ったのでした!」
「………………」
「どうしましょう、わたくしったら学校生活にかまけて邪神を見つける事すらできず……」
「あの、それなら鯖がいたでしょう? って、そういえば鯖は?」
 ふと見れば焼いて削いだ4分の1の身を残して鯖本体が消えていた。
 その問に素直に答えるのは観雪。
「ああ、先生なら『(次の授業に向かう)』って出て行かれましたよ? わたくし手を振りお見送り致しましたし……」
「は?」
 皆が聞き返すと、観雪もハッと気づいたのか。
「はっ!? そうですね! わたくしったらなんてことを! 先生に邪神の事を注意してさしあげなければ……」
『その鯖が邪神だから!!!』
 全員のツッコミが揃い。4分の3の身を残した鯖に関しては他の猟兵達に任せる事にしたのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆さんと共に行動
おや、あれは・・・スズキ目サバ科サバ属の魚に酷似していますが。おかしいですね、ここは鮭高と言われてたハズ。鮭高なのに鯖とはこれ如何に?
とりあえず、こんなこともあろうかと、援軍は手配済みです。 SIRD各団員に「青鯖 ktkr」とメールを送っておきましたから、万全です。

さて、ああ見えても相手は腐っても鯖、じゃなかったオブリビオンですからね。ここはUCを展開して、他の猟兵の皆さまの盾役を務めましょう。
アニサキスで相手をコントロールするらしいですが・・・体は機械、心は乙女なわたくしには効きませんっ!!(どーん)
あ、それとわたくし、ロボットじゃなくてドロイドですよ?ここ大事。


ネリッサ・ハーディ
SIRDのメンバーと参加

ラムダさんの増援要請を受けて来て見ましたが・・・何ですか、この状況は。
鯖?世界各地で食されている魚で、日本では主にグリル、煮魚、最近では缶詰などが人気だとか。それが今回のオブリビオンですか?
魚の邪神という事は、有名な水の一柱の旧支配者の眷属、と受け止められない事もないですが・・・まぁ兎に角、対処するとしましょう。
他のメンバーですか?ラムダさんの送ってきたメールが正直意味不明でしたから、来ないのではないでしょうか。私も、団長の立場で念の為来たまでですし。
相手が鯖ですから、生食ではなく、焼き魚にしてあげるのが最良でしょう。これなら、寄生虫対策にもなりますし。

※アドリブ大歓迎


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で参加

「青鯖」って何の符丁かなと思いましたが…
成程確かに鯖ですね;

まずは教室内を確認できる位置で
狙撃支援(スナイパー・先制攻撃・援護射撃)し
敵の頭を抑え仲間の攻撃と一般人避難を支援

一般人の避難が済み敵味方の距離が
ある程度空いているようならコード使用し
30mm機関砲搭載の火力支援戦闘車を召喚

確か不良に偽装するよう指示があったとラムダさんが言ってた様な…不良って夜の校舎で窓を破壊して回るって聞きますし…構わないですかね

窓越しに寄生虫山盛りな生魚に熱消毒代わりに徹甲焼夷榴弾を
全力射撃。損害無視で壁に縫い付け敵を削りつつ仲間の攻撃を
火力支援(戦闘知識・操縦・スナイパー)する


アドリブ歓迎




 学校の廊下を「ツチネコは排除完了しましたね」とチェックしながら走行しつつ、ラムダ・マルチパーパスは窓の外に見えた光景に足を止める。
「おや、あれは……スズキ目サバ科サバ属の魚に酷似していますが。おかしいですね、ここは鮭高と言われてたハズ。鮭高なのに鯖とはこれ如何に?」
 その鯖がフヨフヨ浮かびながら開いている教室に窓から侵入するのを見つけたのだ。
 頭の中でメールテキストを作成し、同時にSIRD(Specialservice Information Research Department)――ラブダが所属する特務情報調査局のメンバーに一斉送信する。
 タイミング的に他の任務に当たっている者もいるだろうし、2~3人でも集まれば御の字だが、邪神が出たとなれば援軍を手配しておいた方が無難だろう。
 ラムダは鯖が入って行った教室が監視できる廊下へ移動し、援軍を待つ。
 そして……。
「ラムダさんの増援要請を受けて来て見ましたが……何ですか、この状況は」
 すぐに駆けつけたのはネリッサ・ハーディ、SIRDの団長だった。暇なのだろうか。
「状況は青鯖が教室内に立てこもっています。以上」
「……何ですか、この状況は」
 繰り返す。
 ラムダはモノアイをキュインキュイン鳴らし「もう一度復唱しましょうか?」と。
「いや、いいです。それ以上でも以下でもないという事ですね……」
「その通りでございます団長、それで、他のメンバーは?」
「いえ、ラムダさんの送ってきたメールが正直意味不明でしたから、来ないのではないでしょうか。私も、団長の立場で念の為来たまでですし」
 さらりとラムダが傷つくかもしれないような事を言うネリッサ。
「そんな事はありません、わたくしめは緊急事態かつ早急に援軍が欲しい旨を出来るだけ簡潔に記載し全送信したのですが……?」
「これが……ですか?」
 ネリッサがラムダから受けとった援軍要請のメールを見せる。
 そこには――。

「青鯖 ktkr」

 と、書いてあった。
 ただのスラングである。
 しかも鯖がサーバっぽくて何かゲームの話をしている感じになっている。
 無論、団長たるネリッサはラムダが任務に出ている事を把握していた為、念のためにここに駆け付けられたのだが……ほかに、この暗号を解いて援軍に来れるメンバーがいるのかと聞かれれば、団長のネリッサすら首を傾げざるをえない。
「そんな……」
 なぜか落ち込むラムダの肩をポンと叩き。
「いずれにせよ状況の詳細を確認する事が重要です」
 そうネリッサは労いつつ言うと。
「先ほどラムダさんの言っていた鯖? とは……一般的に世界各地で食されている魚で、日本では主にグリル、煮魚、最近では缶詰などが人気の鯖で合ってますか?」
「はい、その通りです」
「それでは……その鯖が今回のオブリビオン――邪神という事ですか?」
「はい、その通りです」
 水族館の水槽を群れで泳ぐ鯖を想像するネリッサ。
 だが、魚の邪神という事は、有名な水の一柱の旧支配者の眷属……とも受け止められない事もない。油断するわけにはいかないだろう。
 と、そこでガガッと少し雑音を交えつつ通信機から別の仲間の声が聞こえてくる。
「こちら灯璃・ファルシュピーゲル、標的の学校を狙撃する位置につきました、オーバー」
 どうやらラムダの暗号メールをちゃんと増援要請だと理解してくれたメンバーがもう1人いてくれたらしい。
「灯璃様、援軍感謝致します」
 ラムダがちょっと安心しつつ言うも。
「いえ、青鯖って何の符丁かなと思いながら来たのですが……成程確かに鯖ですね」
 すでに高校の横のアパートの屋上から教室内にいる鯖をスコープ越しにロックしている灯璃が呟く。
「やはりターゲットは鯖ですか?」
 ネリッサが視認できている灯璃に確認すると。
「YES。鯖以外の何物でもありません」
「やはり鯖……」
 海の中を群れで泳ぐ鯖を想像するネリッサ。
 通信機越しの灯璃は鯖から目を離さないようにしつつ。
「確か不良に偽装するよう指示があったとラムダさんが言ってたかと……不良って言うのは夜の校舎で窓を破壊して回るって聞きますし……このまま狙撃して構わないですかね。校舎に被害がでますけど」
「ターゲットのいる教室に一般人の有無は?」
「存在しません」
 灯璃の答えに今度はラムダが答える。
「大丈夫かと。すでにわたくしの射撃の一撃によって校舎に被害が出ておりますので」
 被害が出てるからというのは、さらに被害を出しても変わらない、という理由にはならないのだが……ラムダに言われると論理的な感じがするので不思議だ。
 とにかく、その言葉を聞いた灯璃は《Ouroboros Arsenal(ウロボロス・アーセナル)》を発動、アパートの屋上に30mm機関砲搭載の火力支援戦闘車を召喚する。
 一方、ラムダとネリッサは教室の前の扉の影に隠れて機を伺う。
 そして――。
「GO! GO! GO!」
 ネリッサが自身の合図と共に前の扉を開け、教室内に漂っていた鯖に標準を合わせ――。
「って、でかっ!?」
 思わず素で驚くネリッサ。
 通信機越しに団長の驚き声が聞こえるも「(そういや巨大なって言うの忘れてた)」と灯璃とラムダが同時に思うも、今となってはもう遅い。気づかなかった事にしよう。
「あ、相手が鯖ですから、生食ではなく焼き魚にしてあげるのが最良でしょう。これなら、寄生虫対策にもなりますし……炎よ!」
 《荒れ狂う火炎の王の使い》(ファミリア・オブ・レイディング・フレイム・キング)を使用し標準を付けた巨大な鯖に掌から二十数個の炎を放つ。
 一気に教室中に広がる香ばしい良い匂い。
『(先生を奇襲するとか……お礼参りのつもりか! まだ先生の授業も受けてないのに、そんな生徒に教育した覚えはありませんよ!!!)』
 鯖が空中でギョロリとネリッサとラムダの方を向き。
「悪いですが、邪神から授業を受けるつもりはありません」
「その通りでございます」
 鯖の発言を無視する2人だが、鯖は鯖で2人の発言を無視して話し続ける。
『(知っていますか、ドコサヘキサエン酸……すなわちDHAと、ドコサペンタエン酸……DPAと、エイコサペンタエン酸……EPAの力を!)】
「それは体内で生成できない必須脂肪酸で、脳や神経機能の発達と――」
 ラムダがどっかから拾ってきて即座に回答した知識を語ろうとするも。
『(《Omega3・エンハンス》! これぞ3種の力! 今回は圧倒的なスピードに費やすとしましょう!)』
 栄養効果を無視して超スピードで浮遊回遊しつつ尻尾でネリッサとラムダを薙ぎ払おうとする鯖。
 だが――。

 バチンッ!

 鯖の尻尾が高密度電磁防御フィールドによって弾かれる。
「≪特火点展開(ワンマン・ピルボックス)≫発動!」
 それはラムダの張ったあらゆる攻撃に対しほぼ無敵になれる防御フィールドだった。
 鯖が尻尾を赤くしつつ教室の窓際へと退く。
 それを待っていたのは灯璃だ。
「OK、伏せて!」
 灯璃の通信に2人が廊下に身を隠す。
 瞬間
 窓を割って徹甲焼夷榴弾が飛び込んで来て教室内で大爆発を起こす。
「寄生虫山盛りな生魚に、熱消毒代わりの一発を……」
 アパートの屋上で灯璃が呟き、そのまま全力射撃、損害無視で教室内を砲撃する。
 やがて砲撃が終わり、破壊された教室にネリッサとラムダが入って確認すると、4分の1程の焼けただれた鯖の身が落ちているだけで、頭や骨などは発見できなかった。
「床が崩落してそこから逃げたようですね」
 ネリッサがそう推測する。
「ああ見えても相手は腐っても鯖、じゃなかったオブリビオンですからね。とはいえ、後は他の猟兵達に任せましょう」
 ラムダの言葉にネリッサと通信機向こうの灯璃が頷く。
「ところで、この鯖の身はどうしましょうか」
 ネリッサの指差す先に落ちている香ばしい匂いを漂わせる4分の1の身。
 とりあえず任務を最初に受けたラムダが責任を持って回収するのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

滝舘・穂刈
鯖…なるほど、そういうことか…(何もかも悟った顔で)

だがどの米もそれぞれの美味しさがあるように
鮭には鮭、鯖には鯖の美味しさがある

鮭高を鯖高にはさせん…!

鯖はアシがはやい。
となれば最適なのは…鯖の押し寿司!

先に固めに米を炊いておき、木桶に入れて寿司酢と混ぜて寿司飯にするぞ。
鯖の準備ができたらシメサバにして昆布と一緒に巻くからな。

あとは鯖ほぐしご飯か。
さぁ、倒した鯖があればこの炊飯器に入れるといい。
美味しくほっかほかの鯖ほぐしご飯にしてやろう!

準備は万全。
さぁ、鯖よ、俺に炊かれるがいい!

一応はしゃもじで鯖に攻撃もするぞ
でも大体はご飯の準備だな!


ギド・スプートニク
あれは…
間違いあるまい

―鮭だ

『ムシェ鮭』
実在していたとはな

ムシェ鮭は生で食すと腹を下すと言われている
だが
間違いなく魚は生で食べた方が美味い

ち――ッ!!

ムシェ鮭とすれ違いざまの斬撃により
奴の一部を切り身として確保
それをまな板で薄くスライス
用意しておいた酢飯と共に握る

これぞ究極、『ムシェ鮭の握り』

さぁ、おあがりたまえ

モブ生徒どもに食わせた後で私も食べる

これは……!

鮭では、無い……!

身がピンクじゃないあたりで怪しいとは思っていた

よもや謀るとは、許せぬ

襲い来る腹痛

すまない、これ以上私は戦えそうにない

(校歌)
あゝ ムシェ鮭
我らが 青春の学び舎
誇り、あ…れ…

ギド・スプートニク57歳
悔いのない生涯であった


未不二・蛟羽
鯖が先生っす?あんまよく分からないけど、とりあえず美味しいっすか?
…食べれないっす!?
なんか食べれないヤツ多すぎじゃないっすか!いや、ちょっと食べちゃったけど!

あにさきす…?(すまほで全力で調べる)
うん、つまり、生じゃなきゃ食べれるっす!
焼かなきゃだめっすから…大きいし、まずは切り身っすね!
今度こそ美味しくもぐもぐっす!

もう痛いのは勘弁っすから、爆弾は【ダッシュ】で逃げるっす!保健室行きは嫌ーっす!

笹鉄のワイヤーと鉤爪、ついでに【ブラッド・ガイスト】で手を虎に変えて、爪で切り刻むっすー!
内臓から取ったらいいって、さっき書いてあったっす!
ふっ、またツマラナイものを斬ってしまった、っす!(キメ顔)


ヴィクトリア・アイニッヒ
桐・権左衛門(妖怪ケツバット・f04963)と行動。
ギャグ時空に徐々に順応。

あら、見事な鯖。
…そうだ、今日の晩ごはんは鯖料理にしましょうか。
味噌煮か、竜田揚げか…しめ鯖をお刺身にしてもいいですね。
塩焼きもシンプルに美味しいですし、南蛮漬けも酸味が食欲を増してくれますね(料理好きの血が疼いている様子)
…そう言えば、何のお話でしたっけ?

動き回る鯖に、光剣をぶっ刺して動きを封じる。
…活きが良いのは良いのですが、あまり動かれすぎると身が痛みますからね。
活き締めと…あ、アニサキス対策には冷凍処置(マイナス20℃以下で24時間)が確実でしたね。
どなたか、そういった技能を使える方はいらっしゃいませんか?


桐・権左衛門
ヴィクトリア(f00408)と共に行動

オールアドリブOKです

鯖かぁ…こうどんな調理法であれ美味しゅう酒が飲めるなら万々歳やね
相手が先生やて?あの鯖が?!

先ずは撒き餌をします、釣り竿に餌をつけます、先生の目の前に垂らします

これで先生の反応次第で全てがわかるっちゅうもんや!
ウチは先生の事は信じとるからな!(前フリ

先生が唯の鯖にすぎないなら、首をチョップで折って首折れ鯖にせざるを得ない…
先生とは友人になれると思っていたのに…(容赦ない一撃)

【マヒ攻撃10】にて先生の行動を封じたら、用意した墨や絵の具を塗り…尾っぽを持ちジャイアントスイングにも似た遠心力で黒板や壁に魚拓を作製(ビターンと打ち付ける)


秋月・信子
・SPD&真の姿開放

「鯖…ですね」
『ええ、鯖…ね』

討つべき邪神、もとい巨大な鯖と対峙して真の姿の力を開放し、本体の信子は瞳を蒼く、影の二重身は瞳を紅く輝かせる

「…もしかして、アレ食べれるのかな?」
『なぜか知らないけど鯖缶をバラ撒いてるからね、可能性は無くはないかもよ』

じゃあ、とお互いに鯖の味噌煮、塩鯖、鯖の刺身、鯖の竜田揚げなど料理を上げていって…
「『〆鯖』」
と口を合わせて答えが重なった

「じゃあ、姉さん。私は【属性攻撃】で締める酢の魔弾を撃ちますね」
「分かったわ。じゃ、私は炙りシメ鯖にさせる【属性攻撃】の炎の魔弾をぶち込むわ」

ハンドガンとリボルバーを構える仮初めの姉妹
今夜のごはんは〆鯖だろう


舞音・ミケ
(ずっと机で寝てたけど魚の匂いを感じて起きる)
(鯖を視認)
(ひと眠りして潜入した目的も忘れたしなんで魚がいるのか分からないけど)
……いただきます。

生魚だからまずは処理しないとね。
巨大猫の霊「まる」召喚…転がって薄く潰しちゃって。干物にするから。
食べちゃためだよ。まるはお腹壊さないだろうけど…一口で無くなっちゃうし。
あとは持ち帰りやすいように切り分けよう。あとで焼く。
「ネコノツメ」ですぱすぱとちょうどいい大きさに。
相手が元気なら猫(武器)たちに飛び掛かったり噛んだりしてもらってるうちに。食べちゃだめだよ?あとであげるから。
攻撃が激しそうならまるのうしろに隠れたり他の人を隠したりする。




 桜山や他の猟兵が編入したクラスの……隣のクラスで、編入先のクラスを間違え眠り込んでいた少女がいた。
 皆がツチノコ狩りへ出かけ、やって来た先生も1人が寝ているだけの教室に再び扉をしめて職員室へ戻っていった後……そこで寝ていた女生徒がピクリと鼻を動かせる。
「うにゃ……」
 むにゃむにゃと口を動かし、眠気まなこをこすって目覚めてみれば、なにやら魚の良い匂いがしてくる。
 寝ていた生徒――舞音・ミケは、ふらふらと匂いを辿って隣の教室の扉を開ける。
 鼻をひくつかせるミケ。
 明らかに美味しい鯖の匂いが……。
 だが、その教室はロケットでも打ち込まれたかのように破壊されていた。
 破壊された教室の扉を閉め、ミケは考える。
「(ひと眠りしてここにきた目的はキレイさっぱり忘れてしまったし、どうして学校の中でおいしそうな魚のにおいがするのかわからないけど……)」
 ピクリ、ミケの鼻が再び鯖の匂いをかぎつける。
 とりあえず今は……鯖がたべたい!
 それが目的となり、ミケはゆっくり動き出すのであった。


『(徹甲焼夷榴弾とか……最近の学生マジ意味わかんねぇ、常識無いんじゃないの? ちょっと先生の時代とのカルチャーショック受けるわぁ……。刺身食べて寄生虫に当たるぐらいショックだわぁ……)』
 先生を名乗る鯖がふわふわと学校の中庭へと降りてくる。
 だが、そんな鯖にターゲットロックする瞳が……。
「あら、見て下さいゴンちゃんさん、見事な鯖ですよ」
 ヴィクトリア・アイニッヒが相棒の桐・権左衛門を呼んで言えば。
「本当や!」
 と権左衛門も気がつく。
「……そうだ、今日の晩ごはんは鯖料理にしましょうか。味噌煮か、竜田揚げか……〆鯖をお刺身にしてもいいですね。塩焼きもシンプルに美味しいですし、南蛮漬けも酸味が食欲を増してくれますね」
 料理好きの血が疼き出したか、鯖のメニューを羅列し出すヴィクトリア。
 対して相棒の権左衛門はと言えば、お猪口と徳利を持つジェスチャーをしつつ。
「鯖かぁ……こう、どんな調理法であれ美味しゅう酒が飲めるならウチは万々歳やね」
 すでにエア日本酒な感じで気分良さげである。
 そこに並ぶは秋月・信子とその姉の光子(信子の《Esの影法師(ダークサイド・シャドウ)》)だ。
「確かに鯖料理は沢山ありますね……」
『揚げ鯖のあんかけ、サバサンド、鯖の藁焼き、燻製なんかも美味しいわね』
 そうメニューを並べてふと信子が気がつく。
「……でもアレ、本当に食べれるのかな?」
『なぜか知らないけど鯖缶をバラ撒いてたって情報もあるわ、可能性は無くはないかもよ』
 2人は「じゃあ」と納得し。一番食べたいのは……と――。
「『〆鯖』」
 答えがピッタリ一致しハモる2人。
 次の瞬間、信子の瞳は蒼く、光子の瞳が紅く輝く。〆鯖を食べる為に真の力が解放されたのだ――違う、討つべき邪神と対峙し真の姿が解放されたのだった。
 さぁ殺やろうか……と4人が手に武器を構え、浮遊する巨大な鯖に飛びかかろうとした――その瞬間。
「待つんだ!」
 4人を静止する声。ガサリと中庭に入ってくるのはギド・スプートニク。
 57歳、ムシェ鮭高に高校生として潜入するというこの任務において、ある意味一番年上であったギドに4人が敬意を払って足を止める。
「みんな聞いてくれ……あれは――」
 グッと目を細め鯖を見つめながらギドが言う。
「あれは……間違いあるまい――鮭だ」
 鮭!?
 4人が驚く。
 どう見ても鯖だからだ。青く輝く肌、くの字の模様、あれが鯖でなく何なのか。
「ムシェ鮭だ」
 ムシェ鮭!?
 聞いたことの無い言葉に4人が反応に困る。
 ギドは「まさか」と信じられないと言った表情で言葉を続ける。
「本当に実在していたとはな……伝説の鮭、ムシェ鮭。それは生で食すと腹を下すと言われている。だが、間違いなく魚は生で食べた方が美味い」
 拳を握りこみ断言するギド。
 4人は頷き肯定するべきか僅かに躊躇する。
 だが――。
 ガサリ!
 新たに6人目が現れ「なるほど……そういう事か……」と登場する。
 それは頭が炊飯器になった男――滝舘・穂刈……別名スイハンジャーだった。
 スイハンジャーは4人が躊躇した所をノーブレーキで納得し、何もかも悟った顔(炊飯器だが)で頷き合流する。
「どの米もそれぞれの美味しさがあるように、鮭には鮭、鯖には鯖の美味しさがある。鮭高を鯖高にさせる訳にはいかないと、簡易に俺は思っていたが……ふむ、伝説の至高ムシェ鮭か……おかずにとって不足は無い!」
「いけるのか、スイハンジャー!」
 ギドが真剣な眼差しで聞く。伝説の鮭たる究極のムシェ鮭に合うご飯が炊けるのか、と。
 対してスイハンジャーはしゃもじをクルクルと回しながら、腰のシャモジホルダーから取り出すと、パシッとキメポーズ!
「俺に炊けない米は無い!」


「うう……やっと痛みがおさまったっす……蛇ちゃんの胃液が勝ったっすかね?」
 保健室で休んでいた未不二・蛟羽がよろよろと扉を開けて出てくる。
 ツチノコを尾っぽの蛇が食べた当たりから、急に腹痛(蛇ちゃんの腹痛なので尻尾痛なのだろうか?)に襲われもんどりをうっていただが、やっとそれが収まったのだ。
「あにさきす……」
 すまほで全力で調べた結果、どうやらそれが原因ではないかという事になった。
 とはいえ、基本的に鯖などに寄生する寄生虫なので、どうしてツチノコに……と思わないでも無かったが、ふと廊下を歩いていて中庭の風景を見て納得する。
 中庭には巨大な鯖が浮かんでいたからだ。
 猟兵としての勘が告げている、あれはオブリビオン――邪神である、と。
「鯖っすね……美味しそ――」
 思わず口に出た言葉が固まる。そうだった、鯖にはアニサキスが……。
「うぅ……なんか食べれないヤツ多すぎじゃないっすか! いや、蛇ちゃんはちょっと食べちゃったけど!」
 思わず1人で叫ぶ蛟羽。
 だが、さっきのすまほ検索が役に立つ、そうアニサキスは熱に弱いと書いてあったのだ。
 つまり……。
「うん、生じゃなきゃ食べれるっすね!」
 自分の天才的にひらめきに目を輝かせ、パリンと中庭への窓を割って鯖との戦いに乱入する蛟羽であった。


 ザッと浮遊する鯖の前に猟兵達が現れる。
 奇襲し変な形で避けられ鯖の身を損なう訳にはいかないと、正々堂々と姿を現す事にしたのだ。
『(おおおおおっ!? びっくりさせるなよぉ、先生驚いて口から胃袋が飛び出そうになったじゃないか!)』
「先生やて?……鯖が?」
 鯖の言葉に権左衛門が普通に聞き返す。
『(国語の先生です)』
「いや、別に聞いてへんし……とはいえ、本当に鯖が先生だっちゅうなら、これでどうや!」
 権左衛門がどこからか釣り竿を取りだすと針にエサをつけて鯖先生の目の前に垂らす。
「本当に先生なら生徒のやりたい事が何か空気読んでわかってくれるはず……先生の反応次第で鯖か先生か、見極めたるで!」
『(いやいやいや、どうみもてオチが見えてるんだが……)』
 鯖がジト目で権左衛門を見つめるも。
「ウチは先生の事は信じとるからな!」
『(いやいやいや、そんなキラッキラの瞳で見つめられたからって……先生、そんなオチに……オチに……)』
 パクリ。
「ヒット!!!」
 エサに喰いつき釣られる鯖先生。それを権左衛門が遠慮なく引っ張る。
「これをすれば先生か鯖か、反応次第で全てがわかるっちゅう寸法や! これで一目瞭然やな!」
「それでゴンちゃんさん、それじゃあやっぱりアレは……」
「鯖やな。エサに釣られたし」
『(ほらああああああっ! だから言ったじゃん! 先生オチ見えてるって! どっちにしろ釣られて鯖認定されるって解ってたからね!?)』
 ブチン! 背びれを使って器用に釣り糸を切り自由になる鯖。
「ちっ、バラたか……」
 二重の意味でそう呟く権左衛門だが、その顔は笑っている。
 だが、その攻防で猟兵達は知ってしまった。鯖が中庭を浮遊しつつ釣り糸を切る為暴れた時見えてしまったのだ……猟兵達に見せている左半身の裏側、右半身の身が全て削ぎ取られ骨が見えている事に!
「すでに二枚におろされてるっす」
 廊下の窓を破って中庭にやってきた蛟羽が呟く。
『(気づいてしまったか……確かに、先生は半身です。ですが、先生、それを後悔はしていません! それはこの半身の傷こそ、生徒たちと体当たりでぶつかり合った証拠だから!)』
 鯖がそう絶叫した――その瞬間。
 ドスドスドス!
 虚空から現れた光の剣が鯖先生を校舎の壁に貼り付けにする。
『(な、なにを……!?)』
「活きが良いのは良いのですが、あまり動かれすぎると身が痛みますからね。
 それはヴィクトリアだった。
「……そう言えば、何のお話でしたっけ?」
「先生が鯖なら食べれるんじゃないかって話っす!」
 蛟羽の台詞に、ヴィクトリアは柏手をうって「そうでしたそうでした」と嬉しそうに。
『(いや、違うでしょう!? 先生が半身なのを誰かしらが案じて……回復のユーベルコードがあれば復活できたのに、先生を作った大いなる神はなぜ回復を持たせてくれなかったのかと、数時間説教をするって流れに持っていくはずだったのに!!!)』
 そう言ってなぜかスイハンジャーを見つめる鯖先生。
 だが、スイハンジャーは炊飯の支度に忙しく、目すら合わせてくれない。
『(あ痛っ!?)』
 スイハンジャーに恨みがましい視線を送っていた鯖先生を、不意打ちでワイヤーと鉤爪で攻撃するは蛟羽。
 しかもその爪は《ブラッド・ガイスト》にて殺傷力を増した鉤爪である。
「ふっ、またツマラナイものを斬ってしまった、っす!」
 キメ顔で言う蛟羽。
『(先生、人が見ていない時に不意打ちするなんて……そんなの許しませんよ!)』
「内臓から取ったらいいって、さっき書いてあったっす!」
『(さらりと怖い事言うね!? っていうか先生、そんな親切に内蔵を差し出したりはしませんよ!!!)』
 言うと同時、身をそがれている右側から血液を飛ばしてくる鯖。
「!? もう痛いのは勘弁っすから、爆弾からは逃げるっす! 保健室行きは嫌ーつす!」
 全力で血液から逃げ出す蛟羽。
 一方、その血とその血を追って飛び出してくる巨大アニサキスな爆弾に身体中を噛まれながらも突貫するは権左衛門。
 無手のまま跳躍し鯖の頭の付近へ。
「先生が唯の鯖にすぎないなら、首をチョップで折って首折れ鯖にせざるを得ない」
『(きみも怖い事言ったね!? っていうか今のは出会った鯖全てにやるつもりなの!?)』
「チェストーッ!!!」
 噛み付いてくる巨大アニサキスを手で払いつつ、空いている脚で鯖の首に向かってカカト落しを決める権左衛門。
『(ぎゃーーーーーっ)』
「先生とは友人になれると思っていたのに……」
『(先生ときみは教師と生徒の関係だからね!? 友人にはなれないから! あと、首がもげるかと思った……)』
 壁に貼り付けてくる光剣を身じろぎで振り解き、首をぽきぽき鳴らす鯖。
 次は鯖缶でもブチ当てちゃおうかなぁ~と、そう鯖先生が思った瞬間。
「にゃーーーっ!!!」
 頭上から巨大な猫の霊『まる』が飛びかかって来る!
 咄嗟に鯖が空中を泳いで回避、巨大猫霊のまるが振り下ろした手が大地を抉る。
『(なんで急に猫が降ってくるん!? 天気予報、晴れときどき豚だったっけか?)』
 だが、そんな余裕は次の巨大猫の行動に無くなってしまう。
「まる……全部ノシちゃえ……薄く薄く……干物、食べたい……」
 教室から飛び降りて来たミケの言葉に、まるが巨大な鯖を追撃するように跳躍。
「食べちゃだめだよ。まるならお腹壊さないだろうけど……ひとくちでなくなっちゃうし」
 まるに注意するミケ。
『(干物は天日干し!)』
 鯖が尻尾を勢いよく振ってまるを吹き飛ばす。
『(先生感心しないなぁ……先生を猫に襲わせるなんて、本当、感心しないなぁ)』
 鯖先生が恨めしそうにミケに言うが。
「まだ猫には襲わせてないのに……」
 そう呟くミケの足元には、数匹の猫たちが集まって来ていた。どの猫も鯖への攻撃準備は完了しているようだ。
『(猫には缶詰でも食べさせておきなさいっ! 《ジェノサイド・サバカン・ストーム》!!!)』
 大量の鯖缶が撒き散らされ壁にぶつかり開いた缶へ、まるや猫たちが殺到する。
 そんな鯖缶の雨の中を、平然と立ち続ける信子と光子の2人。
 致命傷だけ負わぬよう最低限の動きで缶を回避しつつ――。
 カチャ、ハンドガンとリボルバーをそれぞれ構え、鯖に照準。
「じゃあ姉さん、私は酢の魔弾を撃ちますね」
『分かったわ。じゃ、私は炙りシメ鯖にさせる炎の魔弾をぶち込むわ』
 ちなみに二人が使う技は【属性攻撃】である。
 缶の雨の隙間を縫うように、2人の弾丸が鯖に命中。
『(酢っぱ!? 沁みっ!? 熱っ!?)』
 属性攻撃「酢」って何なんだ……。
 それはともかく、2人の夕飯はきっと〆鯖であろう事は確かだろう。
『(甘い、酸っぱいけど甘いぞ生徒たちよ……その程度の攻撃で先生を〆れるなあど片腹痛いわ!』
 魔弾を耐え出現する鯖先生。
「でも先生、片腹もなにも片方のお中は身と一緒に削がれて無いっす」
 鯖の言葉に鋭くツっこむ蛟羽。
『(先生、人の上げ足を取るような生徒は好きではありません。でも、先生がもっと好きでは無い生徒は……先生の事を食べようとする人達です!)』
「えええっ!?……先生、食べれないっす!?」
 語感だけ聞くとヤバイ台詞だったが、鯖先生は丁寧に蛟羽に。
『(先生、食べられた事無いので知りません)』
「じゃ、じゃあ、先生は美味しいっすか?」
『(だから先生、食べられた事も自分を食べた事も無いので知りません!)』
「えっとえっと……なら、先生を食べる時は焼かなきゃだめっすからね。大きいし、まずは切り身にしてから」
『(さっきから何度も言ってるように! 先生は――って、それは焼いた方が良いでしょう。先生、自慢じゃないですがアニサキスにいっぱい寄生されているので)』
 やっぱり! と顔を綻ばす蛟羽。
「うん、生魚だからまずは処理しないとね……切り分けて、あとで焼く」
 ネコノツメで切り身にしようと飛びかかって来るミケ。
『(だからキミは! どうして不意を付いてくるんです! そんな事ばっかりするなら……先生もそういう事しますよ! 人がやられて嫌な事はしちゃいけませんって……その身を以て知りなさい!)』
 何か不意打ちな攻撃が来るか!? とミケや蛟羽、信子や光子が身構える。
 だが、鯖先生は一直線に空中を泳ぐと、その4人を通り越し――。

「鯖はアシがはやい。となれば最適なのは……鯖の押し寿司!」
 スイハンジャーは事前に固めに炊いておいた米を木桶に入れると、寿司酢と混ぜて寿司飯を作っていた。
 すでに横の皿には〆鯖用のコンブも用意してある。これで〆鯖の準備は完了だ。
「あとは鯖ほぐしご飯か。最適な柔らかさに炊きたてるには……よし、これで」
 ピッと頭の炊飯器のタイマーをセットする。
「準備は万全。さぁ、鯖よ、俺に炊かれるがいい!」
『(長いわーーーーーっ! 奇襲しようと突貫したのになんか準備にそんないろいろやってたら、テンポが悪くなって奇襲感がゼロになっちゃうでしょぉぉぉぉが!!!)』
 ツッコミつつスイハンジャーに不意打ちの突進を行なう鯖。
 だが!
「ライス・スコップ・カウンター!!!」
『(しゃもじっ!?)』
 スイハンジャーが振り向きざまにしゃもじで鯖の右頬を殴って突進を止める。ユーベルコード《杓文字再盛勧進帖》だった。
『(な、なぜ、先生の不意打ちを……)』
「そんな長々したツッコミ入れて不意打ちになると思ったか!!!」
『(な!?)』
「それに覚えておけ! 俺は米を炊いている時が何より神経をとがらせているのだ。米を炊いている時の俺に不意打ちなど通用しない!!!」
 ドーンッ!
 準備した料理の前に仁王立ちになり効果音を背負うスイハンジャー。
『(な、ならば……)』
 鯖はキッとスイハンジャーでなくもう1人、やはり寿司の用意をしている男へ視線を向け。
『(もう1人の準備に集中している奴をやるだけだーーーーーっ!!!)』
 今度はギドに突進していく鯖。
 だが、ギドはその気配を最初から解っていたかのようにゆっくり振り向くと、己の剣杖――でなく、料理準備の為に用意しておいた出刃包丁を構える。
『(気づかれたか……だが、こうなったらトコトンよ! 《Omega3・エンハンス》攻撃力強化!!!)』
 轟とうなりをあげてミサイルのように空中を突進してくる鯖。

 ち――ッ!!

 すれ違いざま、出刃包丁が一閃。
 ピッとギドの頬に斬り傷が走り血が滴るが、それはほんのかすり傷。
 ドウッと奥で鯖の先生が倒れ。
 パシッ、と皿を持ったスイハンジャーが落ちて来た切り身を受け取る。
「ムシェ鮭の身、宣言通り頂こう」


「おりゃーーーっ!」
 中骨に顔と尻尾が付いた状態になっている鯖先生に墨を塗り、権左衛門は尻尾をもってジャイアントスイング。
 遠心力で中庭の木と木の間につるしたカーテンに向かってビターンと叩きつける。
「おお、良い出来良い出来」
 そこには見事な魚拓が版画されていた。


 中庭にはギドが呼び集めたムシェ鮭高の不良たちが集まっていた。
 そして人だかりの中心はスイハンジャーその人、次々に空の茶碗にほっかほかの鯖ほぐしご飯をよそって行く。
 ギドが切り取った切り身はちょうど半身であり、一部はすでに酢で〆られた状態に、一部は焼かれた状態になっていたので、調理時間が短縮され料理を作っていたスイハンジャーが信子と光子に感謝する。
「別に感謝は……それより、いいの?」
『それじゃあ遠慮なく、今夜は〆鯖ね』
 完成した〆鯖を貰い喜ぶ2人。
 一方、持ち帰りでなく今この場でばくばく食べるは蛟羽。
「美味しいっす! 今度こそ本当に美味し(もぐもぐもぐ)」
 しっかり炊かれた鯖ほぐしご飯は、アニサキスの危険も無く口いっぱい頬張れる。
「……いただきます。あ、きみたちもどうぞ」
 集めた猫たちに焼き鯖をあげるのはミケだ。もちろん自分や猫霊のまるにもお裾分けは忘れない。
 もっとも、巨大な猫霊のまるにとっては量的にどうかという所だが、まぁ、気持ちの問題である。
「アニサキス対策は冷凍処置が確実でしたけど……火を通せば大丈夫ですしね。ふふ、ゴンちゃんさん、食べてますか? 美味しいですよ?」
 ヴィクトリアが茶碗片手にそう言うと、何かキョロキョロしていた権左衛門は「せ、せやなー」と空返事。
「どうしたんです?」
「え、ああー、いやー……」

 スッスッスッ、と流れるような無駄のない動きで鯖の身を薄くスライスするギド。
 その後はパンッと手を鳴らすと、そのまま酢飯と共に握っていく。
 その様子を「おお~」と不良たちが囲み。
 タンッ!
 寿司下駄に握り寿司を綺麗に置くギド。
「これぞ究極『ムシェ鮭の握り』だ。さぁ、おあがりたまえ」
 輝くような寿司に誰もが二の足を踏む中、馬田と呼ばれた不良が「俺に行かせてくれ」と握りを手で取ると、僅かな醤油をつけ……パクリ。
「こ、こ、これは……うーーーまーーーいーーーぞーーーっ!!!」
 あまりの美味さに馬田が馬になったかのように中庭をぐるぐると走り出す。
 そんなに美味いなら俺も、俺も、と次々に手を出してくる不良たちへ、ギドが次々に握りを出し、食べた不良たちが上手いと叫んでバタバタと倒れていく。
「そろそろ私も食べるか……こ、これは……」
 あらかたの生徒が美味さに卒倒した後、自分用に握ったムシェ鮭寿司をギドが食べる。
 生の鯖特有の重たくも甘い脂の味が口いっぱいに広がり、本当に魚なのかと疑いたくなる美味しさだった。
 そして――。
「これは……鮭では、無い……!」
 そう、食べてみた感じ、明らかに鮭ではなかった。
 というか見た目からして身がピンクじゃない。怪しいとは思っていたが……。
「よもや謀るとは、許せぬ」
 だが、怒りが頭に上って来ると共に、痛みが腹に降りてくる。
「ぐっ……すまない、私はここまでだ……」
 他の不良たちと同様、ギドも倒れる。
「ギドさん……まだ、まだ俺たちゃ終わっちゃいないぜ……」
「お前は……馬田」
「俺達だって……そうさ、ギドさん、この世にはこんな美味い寿司があるんだ。こんな所で終わる訳にはいかねぇ」
 他の不良たちも痛みに耐えつつギドに声をかける。
 そう、今の自分は猟兵であるが、それと同時にこのムシェ鮭高校の学生であった。彼らの仲間だったのだ。
「あゝ……ムシェ鮭~」
 誰かが呟くように歌う。それはムシェ鮭高校の校歌っぽい歌だった。
「わ、我らが~、青春の学び舎~」
 その歌声は次々に倒れた不良たちから洩れ、次第に合唱となっていく。
 無論、そこに腹を抑えて倒れたままのギドも加わって行く。
「誇り、あぁ……れ……」
 ――ギド・スプートニク57歳。
 ムシェ鮭高校生として、悔いのない学生生活であった……。


「ゴンちゃんさん、もう1回言って貰えます?」
「いやー、それが魚拓取って転がして置いたら、鯖先生の骨がどっかいってもーて」
 参った参った、と笑う権左衛門。
 まぁ、トドメを差すより皆して料理に夢中になったのが原因なので、権左衛門1人の責任という訳では無い。
「はぁ……まぁ、まだ猟兵の皆さんは学校に散っているでしょうし、その人達がトドメを刺してくれる事を願いましょう」
 ヴィクトリアはそう言うと、権左衛門に鯖ほぐしご飯の茶碗を渡すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

文月・統哉
出たな主菜!
にゃふふ、お魚相手も任せとけって
猫(着ぐるみ)の腕の見せ所だぜ♪

鯖といえば味噌煮だろ、常考
だから召喚するのは勿論これだ
大きな大きな圧力鍋!
コンロと水道の代わりに炎と水の属性攻撃も付いてるぞ
レシピ片手に攻撃という名の調理を実行だ

先ずは食材を食べ易い大きさに切って
熱湯をかけて臭みを取る
冷水で洗い血合を取り除いたら
皮目に十字の切り込みを
皮の剥がれを防いで綺麗に仕上がるぞ
鍋に水と、味噌・酒・砂糖・みりん・醤油、そして薄切りの生姜を入れて
軽く煮立たったら鯖を投入
蓋して加熱し高圧調理開始!
旨みをぎゅっと閉じ込めた
美味しい鯖の出来上がりってね♪

両手を合わせて、いただきます!

※絡みアドリブ大歓迎!


山梨・玄信
(サバト服状態)ここでもシーブズギャンビットを使うと変態扱いされるんかい!やはり、ネタUCなのかのう…。

【SPDを使用】
(前回からの続き)爆風で吹っ飛ばされて、窓から教室に飛び込むぞい。
そこで、浮いてるサバト…鯖と出会うのじゃ。
当然、美濃姫様のお土産にするため、3枚下ろしにする事を目指すぞい。

UCに2回攻撃を加えて、高速で切り身にしてやるのじゃ。
反撃は見切りと第六感とオーラ防御で何とかするぞい(丸投げ)
アニサキス対策に覆面だけは脱がんのじゃ(更に増す変態臭)

「おお、腹を空かしている姫様にご馳走しろという、天からの思召しじゃな」
「3枚下ろしは先ず頭を落とし…こら、逃げるでない!」

アドリブ歓迎じゃ


彩瑠・姫桜
それにつけても、まごうことなき鯖ね、残念だわ
私、鯖は全般的に食べるの苦手なのよね

ところで最近鯖缶が身体にいいって宗教並みに話が上がってるけど
アレ、貴方の仕業なの?
アレのせいでうちの食卓に鯖カレーやら
鯖炊き込みご飯やら鯖トーストやら地味に進出しまくってて正直困ってるんだから
どうにかしなさいよ(八つ当たり

ともあれ、先生に楯突く生徒とかまさにワルの王道よね
ついでに捌いて三枚おろしにしてあげるわ

【料理】は鮮度を保つ努力から
鯖の血抜きは顎の下を切れば簡単なのだとか
とはいえ動いてたら仕留めづらいから【サイキックブラスト】で動きを封じてみるわ
うまくいくならドラゴンランスで【串刺し】にして【傷口をえぐる】わね


高柳・零
POW
ファンごと吹き飛ばされたいなづまちゃん。画像が砂嵐になり、再起動すると…。
「何ですか?このモヒカンと変な服は!」
次の瞬間、きちんとしたセーラー服とプリーツスカートに着替え、右手に手作りブラックジャックを装備して教室に向かいます。
「遅刻を謝らないといけませんね」
画面に映るは三つ編みおさげの眼鏡っ娘。

「先生、申し訳ありません。…先生居りませんね…誰ですか!調理実習の材料を教室に持ち込んだのは。戻して来ます」
鯖を抱えて家庭科室に向かおうとします。
鯖が攻撃して来たら怪物とみなし、容赦なく倒します。

ボケにはツッコミを入れます。
RB活動、おっぱいダイブには容赦なくツッコミます。

アドリブ大歓迎です


苧環・つづら
猫?を使役する、テレパシー使いの、鯖。もとい邪神。
……傍観に徹する迦河稚ちゃんの大爆笑が手に取るように分かるわー。
ホントこんなんばっかりだったら平和なのにねUDCアース!
あと自動販売機さん珈琲ご馳走様、買いに来たの白猿さんで吃驚させちゃったかしら。

さて。巫山戯てる鯖さんどうにかしなきゃなんだけど。
……万が一の一般人対策もね……まあ手品の一種と思ってもらいましょ。
うん、鎮魂花召喚で鯖さんだけ無闇に無意味にドレスアップ、など。
これきっともう一寸相手が相手なら写真映えしたんでしょうけど……多分。
(邪神が映えても誰得なんだとか考えちゃいけない)

(あの鯖最後に刺身に捌かれそうだとかも考えちゃいけない)


九泉・伽
※なんかもう好きにやって
「桜山くん、鯖先生ってどうやって出席とるんだろうね…」(素

あの、待って
この鯖倒していいの?先生だよね?
あと俺はサバシロ猫の野良がお気に入りだし、先生が似てて攻めにくい
思いだした!俺ぁつちねこが猫じゃねえって言われてすげえ傷ついたんだよ!
そもそも幻でお高いのは「ツチノコ」であって「つちねこ」じゃねぇよ!小学校の頃に探して見つかんなかったよ!
だからつちねこは猫だよ猫
…あれ、俺は猫をひよこで殺
なぁんて悩む間も
黄泉比良坂で呼びつけた煙草を吸わない俺は淡々と棍で鯖をボコにします
猟兵だもの
鯖缶は全て回収する勢いで当たりに行って生徒をかばう
アニサキスは怖いので鯖は切らずに叩きにします


御剣・誉
うぐぐ…なぜ、オレが肉を食うのを邪魔する!?
一体オレに何の恨みがあるというんだ…!

まぁ、いいや
そんなことを気にしている場合じゃないな
肉焼こ、肉

スッとどこからか取り出したのは
超!最高級の!ブランド肉!!
〆に食べようと思って持ってきたとっておきの極上肉!
焼肉っていうか、最後は豪勢にステーキだっ!

皆が鯖に夢中になっている間にオレは肉を食う
完璧な作戦だぜっ
…のはずなんだが
鯖が邪魔で肉が焼けん

あ、ポン酢と大根おろしだったらオレ持ってるけど
ちょっと待ってな(大根おろし作り
ん?塩?あるある

全く…鯖に邪魔をされるとは予想外だったぜ
ちょっとうるせーなぁ
黙っててくれる?
オレ今すごく忙しいから!!




『(まさか……こんなこんな事になるとは……)』
 三枚下ろしの左右の身を全て取られ、頭と尻尾と中骨だけとなった鯖先生がフラフラとグラウンドへと漂ってくる。
『(今回ばかりは逃げた方が得策か……邪神の中でも先生の足は最速と言われているしな)』
 そう言って逃げる事を決断した鯖だったが、猟兵達はこのムシェ鮭高校の各所に散っており、このグランドにも……。
「出たな主菜!」
 鯖の前に猫が――いや、猫の着ぐるみを着た文月・統哉が立ち塞がり。更に――。
「それにつけても、まごうことなき鯖ね、残念だわ。私、鯖は全般的に食べるの苦手なのよね」
 と斜め右後ろに彩瑠・姫桜。
「猫(?)を使役するテレパシー使いの鯖。もとい邪神。ホントこんなんばっかりだったら平和なのにねUDCアース!」
 斜め左後ろに苧環・つづらが現れる。
『(くっ、囲まれたか!?)』
「にゃふふ、お魚相手も任せとけって! 猫(着ぐるみ)の腕の見せ所だぜ♪」
『(ずいぶんと自信があるようじゃないか……先生、これでも邪神だよ? 解ってる? ちょっと痛い、ぐらいじゃ終われないからね?)』
 ゆらりと空中を漂いながら統哉の方を向いて忠告する鯖。
 対する統哉はモフっとした着ぐるみの手で顎を撫で。
「何言ってるか良く解らない」
『(なんでだ! お前は猟兵だろう!?)』
「いや、俺は鯖料理の腕には自信があると言っただけで……邪神? とか言われてもピンと――」
『(来いよっ! イェーガーを名乗れ! まぁ、百歩譲って鮭高生を名乗れ!)』
 はぁはぁ、と身が無いせいかすぐに息切れする鯖と、からかってるのかマジなのか着ぐるみ猫とのやり取りを見つつ、ダブリのつづらさんが盛大に溜息。
「はぁ……傍観に徹する迦河稚ちゃんの大爆笑が手に取るように分かるわー」
 と、キョロキョロして何かを探しつつ。
「そう言えば自動販売機さんに珈琲ご馳走になったお礼を言おうかと思ったのだけど……この辺りには無いわね、買いに来たのが白猿さんで驚いてどっかに行っちゃったかしら?」
『(いや、お前も先生に集中しろ! 邪神! 邪神! あと自販機が勝手に移動とか何言ってんだ!)』
「そうじゃなくて……ほら、自動販売機がこの学校にあったのよ」
『(そりゃあるだろう、自販機ぐらい)』
「………………そうよねぇ」
 イマイチ話がかみ合わない。
「ねぇ、戦わないの?」
 2人と鯖のやり取りにちょっとだけ暇しつつ姫桜が呟くのだった。

 バサバサバサ……。
 ムシェ鮭高のグラウンドに立つ旗を掲げるポールの上、爆発によって吹き飛ばれ引っかかっている男が1人。
「ここでも《シーブズ・ギャンビット》を使うと変態扱いされるんかい!」
 それは山梨・玄信だった。黒い三角頭巾たるサバト服を来たまま綺麗に吊り下がっている。
「(やはりネタユーベルコードなのかのう……)」
 というか褌一丁になるから変態扱いされるだけなのでは……?
 ビュウッ!
 そこで一陣の風が吹く。
 サバト服ごと吹き飛ばされグランドに落下する玄信。
 そこには……。
「鯖……じゃと……!?」
『(貴様、どこから?)』
 3人の猟兵と相対する鯖の戦場へ落下した玄信がすぐに状況を理解する。
「なるほどのぅ……復興まもなく食事に乏しい我が藩の為、鯖を三枚におろせとの啓示じゃな」
『(いや、急に振って来て何言ってるの! よく見て! すでに先生は三枚に下ろされてるからね!? さらに言うなら左右の身は取られて残っているの真ん中の骨部分だけだから!)』


 グラウンドの端まで吹き飛ばされたアイドルのいなづまちゃん――もとい高柳・零であった。
 倒れた零の顔、TV画面は今や砂嵐である。
『スリープモード解除、再起動しますか? ▼YES NO……、▼YES!』
 画面にYESと大きく映り、ピ、ガガガ……と再起動を開始。
 そして……。
「何ですか? このモヒカンと変な服は!」
 目覚めた零はさっきまで来ていたモヒカンと服を投げ捨てると、うって変わってきちんとしたセーラー服とプリーツスカートに着替え、右手には手作りブラックジャックを装備する。他の人が見たら、なんというか……イマイチ統一性が無い。
「もうこんな時間……これは遅刻を謝らないといけませんね」
 画面には三つ編みおさげの眼鏡っ娘。
 タタタッ……とイメチェン(再起動)し駆けて行く零なのであった……。


「桜山くん、鯖先生ってどうやって出席とるんだろうね……」
「たぶんですがクラスの生徒全員の名前を覚えておいて、記憶力を頼りに出席をとるのではないでしょうか」
 ディカプルの九泉さんの横で猟兵達に囲まれている鯖先生を見て答える桜山。
「ところで俺は思い出したんだ。俺ぁつちねこが猫じゃねぇって言われてすげぇ傷ついたんだよ!」
「はぁ」
 なんか熱を帯びる九泉さんの話に生返事の桜山。
「そもそもだな! 幻でお高いのは「ツチノコ」であって「つちねこ」じゃねぇんだよ!「ツチノコは」小学校の頃に探して見つかんなかったよ!」
「ふぅん」
 生返事の桜山。
「だから! つちねこは猫だよ猫! それを俺は……俺は、猫をひよこで殺――おおおおおおっ!?」
 頭を抱えて悩みだす九泉さん。
 ディカプルという10年選手だ、悩みも常人では理解できない部分で悩んでいるのだろう、と勝手に納得した桜山は、スッと鯖先生を指差し。
「そういう悩みこそ、先生にぶつけてみては?」
「それだ!!!」
 目から鱗とばかりに「お前はここで待ってな」と桜山を置いて鯖を取り囲む輪に飛び込んでいく。
「先生! いや、先生だよね?」
 勢いよく飛び込むも、そう言えば先生が鯖で良いのか? と初期に抱く疑問にぶつかる。@
『(なんだぁ、先生が鯖で邪神じゃあ、おかしいか?)』
「いえ、おかしいというか……ただ、俺はサバシロ猫の野良がお気に入りなんで、先生がそれに似てて……なんていうか、殴りにくいって言うか……」
『(待て九泉、お前は先生を殴る気だったのか?)』
「邪神なら仕方ないかと……」
『(そうだな、先生は鯖の前に邪神だ。邪神なら猟兵として殴る必要があるかもしれない……だがな、こうも考えられないか? 先生は邪神の前に鯖なのだと!)』
「!?」
 ハッとして顔を上げるディカプルの九泉さん。
「先生! 先生……俺、俺が間違って――」
 感動的に鯖先生を見つめ、何か感動的な台詞を変えそうとした伽の前で、鯖先生がリアカーの荷台に積まれどこかへ運ばれて行く。
『(おいぃぃぃぃっ! ちょっと待てぇぇぇぇい! 今、感動的な所! 今、すごい良い所! 何! キミは何なの!? リアカーの精? それともただのリサクラー!?)』
「まったく、誰ですか調理実習の材料をグラウンドに置きっぱなしにしたのは! あなた達も見ていたなら同罪ですからね!」
 三つ編み委員長顔をディスプレイに移した零が、リアカーを弾きつつ鯖を囲んでいた猟兵達を怒る。
『(おおおおおおっ!? その前に先生の! 先生の声を聞いて!? テレパシーで直接声を送ってるんだから聞こえない訳無いよね!?)』
「ああ、先生の声が頭の中に……先生、申し訳ありません。私、ちょっと遅刻してしまって……それに授業が始まるっていうのに、このような現状を見たらつい遅刻が長引いても対処しなくては……と思いまして。ご安心を! 食材はちゃんと家庭科室に戻してきます!」
『(いや、だからその食材が先生だから! 聞いて! リアカーで運ばれそうになってるのが先生だから!)』
「あら?」
 やっとその声がどこから発せられているかに気が付き、リアカーを引く止める零。
 そんな様子を囲みながらダブリのつづらさんが見つめつつ。
「さて。巫山戯てる鯖さんどうにかしなきゃなんだけど……せっかくだしやってみましょうか……今一度、咲き誇る様を此処に、《自鎮魂花召喚(サモニング・レクイエム)》!」
 突如、リアカーに横たわる鯖先生の周囲に大量の今では見た事も無い花が大量に咲き誇り、隙間を埋める。
「ドレスアップなんてどうかしら? まぁ、相手が相手なら写真映えしたんでしょうけど……」
 大量の花を積まれたリアカーの中に横たわる頭と尾と身の無い巨大な鯖……。
『(これ! 告別式とかの葬儀のヤツ!!! 菊の花じゃないけど、まだ先生生きてるからね! 活きが良いままだからね!? あと先生の宗派が何かも知らないで勝手に告別式とか辞めてくれる!?)』
 リアカーの中でジタバタして花をかき出し、途中で浮けば良いんじゃね? と気づいてリアカーから空中へと浮かび上がる鯖先生。
 だが、そのさっきの台詞で何かに気づいた少女が1人。
 それは姫桜だった。
「今気が付いた! 最近、鯖缶が身体に良いって宗教並に噂が広がっているのだけど……アレ、先生の仕業ね!」
『(すごい所から暴投してくるねキミ!?)』
「はっきり言って迷惑なのよ!」
『(大暴騰が急降下してデッドボール並な発言! 先生はっきり言って唐突過ぎて付いていけないかもよ!?)』
 そんな鯖の発言は無視して姫桜が続ける。
「アレのせいでうちの食卓に鯖カレーやら鯖炊き込みご飯やら鯖トーストやら地味に進出しまくってて正直困ってるんだから! 先生も鯖ならどうにかしなさいよ!」
『(ザ・八つ当たり! というか鯖の先生的にはそういう事が広まってくれて嬉しいです。なんで自分を卑下するような行動をとらないといけないのか!)』
「そう……つまり先生は、敵ね」
『(邪神ですから、先生とあなた達の道が相要れないのは解っていた事です……)』
 ピリリッと空気に緊張感が混ざり出す……。
 一歩、先生に近づくは統哉。
「どうやら、やるしかないようだ……召喚!」
 統哉が《ガジェットショータイム》で何かを召喚する、それは――。
「鯖といえば味噌煮だろ常考! つまり必要なのはコレ! 『大きな大きな圧力鍋ぇ~♪』」
 なんとそれはコンロと水道の代わりに炎と水の属性攻撃も付いてる便利アイテムだった。
『(どうやら、先生の最後の授業をするときがやって来たようだ……)』
「ああ、良い授業を……頼むぜ、先生」
 統哉がレシピ片手にニヤリと笑った。

「高速で切り身にしてやるのじゃ」
 まず最初に飛びかかったのは玄信だ。鯖とすれ違いざまに高速の2回攻撃で鯖先生を3枚におろす。
『(甘い!)』
「なん……じゃと……手ごたえをまるで感じぬ!?」
 スカッスカッと玄信のナイフは空を切る。
『(よく見なさい。先生はすでに……3枚におろされ、左右の身は獲られているのだよ)』
「はっ!? わしとしたことが!」
 痛恨の一撃、がっくりと膝を付く玄信に向かって、すでに傷だらけとも言える鯖先生が《アニサキス・デッドエンド》を発動。
 血と共にアキサキス達が玄信を襲う!
「おのれ、この程度……オーラガーーーードッ!」
 玄信のオーラが顔の前でクロスしガードする腕に集中、アニサキスの牙すら通さずそれを弾く。だが、ガードしなかった顔以外はそうもいかない。アニサキスに齧られ、頭の三角頭巾以外の布はすべて剥ぎ取られ、温情で残っている褌一丁となっていた。顔だけ三角頭巾で首からしたは全裸(褌一丁)という変態度が増した姿になる玄信。
「くっ……やってくれおる……!」
 片膝を付く玄信。
 その隙を逃さない鯖!
 尻尾を翻すと囲みに空いた穴――玄信の場所から外へと逃げだしたのだ。
「ま、待たんか! 逃げるな!」


「ふんふふんふ~ん♪」
 御剣・誉は今日3度目の焼肉に挑戦していた。
 1度目は無事に焼けたのだが周囲にクラスメイトがいた為、自分が焼いた肉を全てクラスメイトにとられ1切れも食べる事ができなかった。
 2度目はグラウンドで焼いていたのだが、ツチノコが走って来て、それを追う者と逃げるツチノコに邪魔され焼くどころではなかった。
 だから、ツチノコ騒動が収まったタイミングで3度目の正直を行なう事にしたのだ。
 というか、わざわざ焼肉セット1式を学校まで持って来たのに、朝から一度も焼肉を食べれてないとはどういう事か!
「まったく、誰も彼も、どうしてオレが肉を食うのを邪魔するのか!」
 校門近くでできるだけ目立たず焼肉をする誉。
 ホットプレートの上ではやっとじゅうじゅうと美味しそうな匂いをあげだす牛肉が……。
「この高校の生徒たちはオレに何の恨みがあるんだか……まぁ、いいや、そんなことを気にしている場合じゃないな、やっともうすぐ1枚目のオレが育てた肉が焼け――」

『(《アニサキス・デッドエンド》―――っ!)』

 ビシャッ、とホットプレートに血がかかる。
 無論、焼けそうだった肉にも、だ。
「おいいいいいいっ!?」
 絶叫する誉であった。

「さぁ、観念なさい! ちゃんと三枚におろしてあげるわ!」
『(くっ、先生がじつは少しずつ身を削られ、綺麗におろされたわけじゃないと見破るとは!)』
 校門から脱出しようとした鯖に立ち塞がった姫桜が指摘する。
「当たり前よ、骨だけって言ってるけど、その骨にいっぱい身が残っているわ。そんなの素人が3枚におろしたか……でなければ、偶然、3枚におろされたようになっただけよ!」
『(見事! どうやら料理人としての目は良い物を持っているようだ……だがな、生徒としてはどうかな? 忘れてるんじゃないか? きみだって猟兵の前に鮭高の生徒であるという事を!)』
 ビシッと別にヒレも無いので目線だけでそういう雰囲気と効果音を出す鯖先生。
「た、確かに……いいえ、違うわ。先生に盾突く生徒とかまさにワルの王道! ここは天下のワルの巣窟よ! この高校の生徒である限り、先生に盾突くこの行為こそ常道!」
『(た、確かに……)』
 今度は鯖先生が言いくるめられる。
「納得した所で、鯖の血抜きをやらせてもらうわ! 血抜きは顎の下を切れば簡単なのだとか……まずは《サイキックブラスト》!」
 両手から放たれた電撃が鯖先生をしびしびさせ。
「からのぉ、串刺し! あーんど傷口をえぐる!」
 わかり易い掛け声で鯖先生の顎の下をドラゴンランスで貫く姫桜。
『(ぐあああああっ)』
 顎舌にランスを刺され、なんか鯉のぼりみたいになった鯖先生が絶叫する。
『(この、この、この程度……反撃のぉぉぉぉぉぉ《ジェノサイド・サバカン・ストーム》!!!!!)』


「ふぅ……よし、そろそろか」
 場所を少し移動して再度ホットプレートで焼肉を始めていた誉。
 一応、また邪魔されないよう今度は視線に鯖と猟兵達が戦っているのが見える位置で焼き出す。
「ちゃらららん! 『超! 最高級のブランド肉ぅ~♪』」
 それは誉が〆に食べようと思っていたとっておきの極上肉だった。
 もう焼肉っていうかステーキだ。
 というか〆にステーキって意味が解らない。
 というかどんだけ誉は学校に肉を持って投稿して来たんだとツッコミたい。
「皆が鯖に夢中になっている隙に……今度こそオレは肉を頂きます」
 視線の先では戦っている皆の姿が見える。そしてホットプレートの上では良い感じのミディアムレアに焼きあがった肉が……。
 ホットプレートから紙皿に肉を乗せようとし……少し考え、戦場に背を向ける位置に立つ。
 これなら血とか飛んできても、最悪自分の背がガードし皿や肉に付く事は無い。
「完璧な作戦だぜっ」
 そう言ってホットプレートからステーキ肉を更に乗せ、斬る事すらなく豪快に口へと運ぶ。
 その瞬間――。

 ガンッ!!!

「ぶはっ!」
 後頭部に凄い勢いで飛んで来た硬いスチールの缶詰がクリティカルヒット。
 その衝撃に思わず噛もうとしたステーキが口から飛び出し大地に転がる。
 砂だらけになるステーキ。
「おおおおおおおいいいいいいっ!?」
 大絶叫する誉であった。


「ひぃ、ふぅ、みぃ……けっこう拾えたな」
 弾丸のように飛んで来た鯖缶を拾いつつ満足げなのは伽。
 とはいえ缶を拾っていただけではない、煙草を吸わずに淡々と棍で鯖をド突き回すのをやめないのだから、けっこう酷いもんである。パッと見で言うなら「もっと鯖缶寄越さんかい我っ」とド突いてるようにしか見えない。
『(痛いっ、痛っ、痛いって!? もう身が無いんだから骨に響くから!!)』
 逃げ回る鯖の台詞に、零の眼鏡(画面に映っているだけだが)がキラリと光る。
「それは嘘です!」
『(へっ?)』
「身が無い? そんなわけがないでしょう。確かに左右の一番大きな身は無いかもしれない……けれど、あなたにはまだ、中落ちがある!!!」
『(え?)』
「玄信さん!」
「おうよ!」
 零の言葉に変態度を増した玄信が相槌を打つ。
 同時、2人が無限の軌道を――8の字を描くようにナイフと剣を片手に高速で何度となく鯖と交差。
『(あ、ああ、あああっ!?)』
 交差する度に飛び散る中落ちの身を、統哉が職人の動きで全て鍋でキャッチ!
 やがて、完全に身が無くなった鯖に対し。
「順番が逆になったが……頭は落としておかないとのぅ!」
 玄信が頭を切り離す。
 ポンッと首が飛び、ドウッと骨だけになった身体がグラウンドに落ちる。
 こうしてかなり粘った鯖邪神は息の根を止めたのだった……。

「ポン酢と大根おろしに塩だよね……いいよ、もう下味は付けたからそっちで使って」
 まだ鯖が倒される直前、再び場所を移動して焼肉に挑戦する誉の元を、ダブリのつづらさんが訪ねて来ていた。
「ああ、ありがとう、きっと使う事になると思うから」
 誉から調味料や薬味を貰ってお礼をいうつづら。
「どうやらあっちも終わるようだし、これでゆっくり焼肉が食べられる」
 ダブリのつづらさんに手を振り、再び1人になった誉は先ほどグラウンドに落ちた肉を拾っておいた皿を左手に持つと、精神を集中させる。
「人間その気になれば何でも出来る」
 そう呟くと自身の血を代償に武器の封印を解く。
「《PRINCE of SWORD(オトギバナシノツルギ)》」
 誉のユーベルコードが発動し、その右手にはおとぎ話に出てくるような伝説の剣が出現。
「はっ!」
 左手の砂だらけの肉を宙に放り投げ、左手に新しい紙皿を掴むと右手の伝説の剣で神速のスピードで何度も斬りつけ、砂だけになったステーキの外側だけを綺麗に切り離していく誉。
 その神のごとき技は、見る見るうちに空中に綺麗な肉を(一回り小さいが)復活させる。
 スチャ。
 剣を鞘にしまい、左の新しい紙皿に小さくなるも綺麗にカットされたステーキ肉がトサリと乗る。
「完っ璧!」
 全く……ここまで鯖に邪魔をされるとは予想外だったぜ。だが、やっとだ、やっと肉にありつける。
 これを温める程度にホットプレートで再び焼けば……。
 そう思いつつ極上の肉をプレート上へと乗せ――た瞬間。

 ドガンッ! ガランガランガランッ!

 突如、上空の死角より振って来た鯖の頭がホットプレートを直撃。
 肉が再び宙を舞い、ホットプレートはグラウンドを転がり、落ちて来た鯖の頭は口を上に向け足元に落ち……スポリ、と宙を飛んだステーキ肉が鯖の口に入る。
 もう、なんというか……どんな事をしてもこの肉を食べたいという気にはなれなかった。
「な、な、な、なんて日だ!!!!!!」
 心の底からそう叫ぶ誉であった。


「先ずは食材を食べ易い大きさに切って……と思ったけど、すでに中落ちだからフレーク状になってるからこのままで、臭みを取る為熱湯を~」
 統哉がエピローグとばかりに鯖料理に取り掛かる。それを見守る猟兵達。
「臭みを取ったら次は冷水で洗い血合を取り除き……って、そこまで血合部分は無いか、よしよし」
 本当は皮目に十字の切り込みを入れて皮の剥がれを防いで仕上がりを綺麗に保ちたかったが、中落ちでは見た目は諦めるしかない。
 その分、味には拘りたい。鍋に水と、味噌、酒、砂糖、みりん、しょうゆ、そして薄切りの生姜を入れて軽く煮立たったら鯖を投入。
 カシュッ!
 蓋して加熱し高圧調理開始!
「さぁ、あとは完成までちょっと待つだけだ」
 一方、統哉から少しの中落ちを貰った伽は一心不乱にその身を包丁で叩きまくる。
「(あの鯖、やっぱり最後に捌かれて食べられるのね)」
 そうなるんじゃないかと思っていたダブリのつづらさんが、皆の為に借りておいた調味料や薬味を机に置く、なんだかんだで準備は万全だ。
 やがて、統哉の味噌煮込みと伽の鯖のタタキが完成する。
「おお、腹を空かしている姫様にまさにご馳走じゃ!」
 玄信が柏手を叩き喜び、零や姫桜も紙皿と割りばしを持って集まって来る。
「旨みをぎゅっと閉じ込めた美味しい鯖の味噌煮が出来たよ♪ さぁ皆で食べよう!」
 統哉がそう言うと両手を合わせ皆でハモるように。
「いただきます!」
 その最後の料理は、皆、アニサキスにやられる事なく、美味しく頂きましたとさ。


 ――前略、オヤジ様。
 ――ムシェ鮭高の事前登校日なるイベントに参加した僕ですが、その報告があります。

 僕は心の中で手紙を書き、海外にいる父親宛てに送ったつもりになる。
 僕の名前は桜山・咲太(さくらやま・さくた)、4月に高校入学を控えた準高校生だ。
 父親の手違いでムシェ鮭高校に入学してしまい、今日は事前登校日なるイベントだった。
 だが、そこではまともな授業は行われず、ツチノコ狩りだのなんだのと皆が勝手に騒いで一日が終わってしまった。
 1日が終わった……というのは少し違う、まだお昼が終わったばかりの時刻だからだ。
 本当なら午後も授業があったらしいが……それはキャンセルとなった。
 どうしてかって?

 ピーポーピーポーピーポー……。

 さっきから救急車が列を為してグラウンドに入ってきて急激な腹痛に襲われた生徒たちを搬送していく。
 後で聞いた話だと生で鯖を食べた生徒が多数おり、アニサキスに感染していたという。
 僕は食べなかったが馬田君は普通に運ばれていた。
 というわけで、学生の大半が運ばれ今日と言う事前投稿日というイベントは中止になったのだった。

 ――うん、一刻も早く転校するべきだな。

 僕は心の中でそう誓ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月16日


挿絵イラスト