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紅茶の香りに包まれながら、度會・加寿男(竜胆・f45451)は窓の外を見る。秋晴れの空の下、道行く人々の様子もどこか穏やかだ。
今日はパティスリー『ジャンシアヌ』の定休日。だから加寿男は自宅で寛ぎつつ、のんびりとした時間を過ごしていた。
テーブルの上に置かれた紅茶を手にとって、まずは改めて香りを楽しむ。柔らかな香りのする紅茶は穏やかな午後にピッタリだ。
そのまま一口飲めば、香りと同じく優しい味わいが口の中に広がっていく。温度も飲みやすく、それでいて季節の変わり目で疲れた身体を温めてくれる。
加寿男はカップをテーブルの上に置き、紅茶を淹れてくれた相手――グルメンの『ハイカワ』に笑顔を向ける。
「今日も美味しいですよ、ありがとう。やっぱりハイカワの淹れてくれる紅茶は良いですね」
加寿男の言葉にハイカワも笑顔を返し、尻尾のような舌をゆらゆら揺らす。いつもは眠たげなその動作も、この瞬間はほんのり大きめだ。
よく眠り、のんびりしていることが多いハイカワ。けれどこの子は、味見の仕事時や紅茶を淹れる時には働き者になるのだ。
今日も加寿男や仲間に紅茶を淹れるべく、率先してキッチンの中を動き回っていた。そうして淹れてもらったお茶でするお茶会は、いつも楽しいものになる。
他のグルメンである『ヒロオ』と『シメサス』はもちろん、ジュランの『コハギ』も一緒に紅茶を味わい、共に笑顔を向け合う。みんなの様子を見守るハイカワも、安心したように寛いでいた。そんなハイカワの様子に加寿男が感じるのは、亡くなった父の面影だ。
元は父のバトモンだったハイカワ。けれど今は、加寿男にとってかけがえのない仲間。それはこれからも変わらないだろう。
「今度お茶会をする時は、ハイカワの紅茶に合うお菓子を作りましょうか。みんなで食べられるような、そんなお菓子を作りたいですね」
加寿男の提案に、ハイカワは改めて尻尾を振って応える。その楽しげな様子に、加寿男の笑顔もさらに深まった。
楽しい提案にはヒロオとシメサス、コハギも前向きに返事を返す。みんなでお菓子作りをして過ごす午後というのも、きっと楽しいだろう。
何気ない秋の一日の中で、加寿男とバトモン達の絆はさらに深まる。
そのきっかけとなったハイカワは、満足気に目を細めるのだった。
成功
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