「被告人、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)に、特別社会奉仕を命じる」
「うぅ……」
ヒーローズアースの法廷。かつてオブリビオンに敗れ、その下僕に堕とされて悪事に限りを尽くしたニクロムに対し、裁判官はその罰を宣告する。
この世界においては改心の余地を与えるため、ヴィランに対しての罪状は軽く設定されている。社会奉仕刑も、改心すればすぐに釈放される程度のものだ。
「おかしいよ……ボクのせいじゃないのに」
だが、ニクロムはそれを受け入れられない。自己弁護を語り、下された罰を非難する。もちろん、操られて悪事を働いたのは事実だが……犯した罪の重さなどまるで気にしていない。
長く堕ち続けていた彼女の心は、すでに治り切らぬほどに歪んでいた。
「理不尽な罰には、逆らって良いんだ。ボクは間違ってない……」
そう言い訳しながら脱走した彼女は、さらなる悪事を繰り返す。オブリビオンの影響ではなく自分の意志で、悪事を働く快感に酔い痴れた。
「このブレスレットの力で、あなたはもっと強いヴィランになれますよ」
「ありがとう。ボクに目をつけるなんてキミも目が高いね!」
そんな彼女に、ヴィラン組織のエージェントが接触して来た。だがその怪しさに、今の彼女は気づかない。何故なら、自分を評価してくれる者は正しいから――そんな浅はかな考えで。
胡散臭いブレスレットを嵌めて起動すれば、彼女の身体を緑の布地が覆っていく。
「あは……すごい……すごい力だ!」
「ええ、とてもお似合いの……くくっ……素晴らしい姿ですよ……」
与えられたのは、醜いカエルを模した全身スーツ。悪意と忠誠心を植え付け、決して自分の意志では脱げない、傀儡化用の洗脳スーツである。
着た事でより強いヴィランになれたと言うのも、ただの錯覚だ。捨て駒として使いやすいように、根拠のない全能感を与えられているだけに過ぎない。
だが、彼女はそれに気付かない。気付けない。目の前でエージェントが、必死に嘲笑を堪えていても。
「では、早速最初の任務に赴いてくれますか?」
「ゲコゲコ!!」
滑稽な掛け声も平然と受け入れ、組織の命令のままに働く傀儡ヴィランとなったニクロム。いや、下っ端ヴィラン・ゲコゲコレディ。
もはや引き返す事も出来ない。正義を憎み、悪事に快楽を覚える、人間のクズへと堕ちていく。
あの日、全てが狂ってしまった。そんな後悔もすぐに、悪意に呑まれて消えていく。
成功
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