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夏の思い出、果実の香り

#アックス&ウィザーズ #ノベル #猟兵達の夏休み2025

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ポノ・エトランゼ



リコ・リスカード





 アックス&ウィザーズにも夏は来る。
 朝から砂浜を照らす太陽を見上げつつ、ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)は果物入りの籠を運んでいた。
 今日のポノは猟兵ではなく、屋台のお手伝いさんだった。最近世話になっている果樹園のオーナーが、海辺に屋台を出すということで手伝いに来たのだ。
 仕事は楽しそうだし、人手も必要だろう。そこでポノはリコ・リスカード(異星の死神・f39357)へ声をかけ、共にお手伝いをすることにしていた。
 今は開店準備のために荷物を運んでいる状況だ。リコも大きな台を抱え、白い砂浜に足跡を刻んでいた。
「ポノちゃん、この台は屋根の下でいい?」
「ええ、果物置き場に使うからそこで合ってるわ。その台、ドワーフさんの特注だそうよ」
 リコが置いた台の上に果物の籠を起き、ほっと一息吐くポノ。リコの方は興味深そうに台を撫で、じっくり観察しているようだった。
「木製なのに冷たいね。何か仕掛けがあるのかな?」
「ひんやりする魔法を組み込んでいるんだって」
「へぇ、凄くいいね……後で術式見せて貰いたいな……」
 新しい魔術や技術を見れば、すぐに興味を示すリコ。いつも通りの友人の様子に、ポノは小さく微笑みを零す。
「っと、つい夢中になっちゃった。もうすぐ開店の時間だよね」
「そうね。海水浴客も増えてきてるし。そろそろジュースの用意もしないと」
 ポノがいくつかの果物を手に取って屋台の中へと入れば、リコも果物片手についていく。今回オーナーが開く店では果物ではなくフレッシュフルーツジュースをメインに取り扱うそうだ。
 ジュースの下拵えをしながら、二人は軽く言葉を交わし続ける。
「リコさん、来てくれてありがとうね」
「いやいや。課題ばっかりだと煮詰まっちゃうしね、息抜きにもちょうど良かった」
「学生さんは大変よねぇ……気分転換になるといいんだけど」
「もちろん! ポノちゃんと一緒なら頑張るし、楽しんでいくつもりだよ」
 器用に作業を進めつつ笑うリコの様子に、ポノも安堵の笑みを向ける。二人一緒なら、楽しく働くことができそうだ。

 そうして準備が整えば、いよいよ屋台も開店する時が来る。
 リコが呼び出した黒猫の電脳要請が招き猫として鎮座すれば、その可愛らしい姿は人目を引く。
 リコもお揃いの黒猫サンバイザーを身に着け、明るい笑顔で接客を頑張っていた。
「いらっしゃいませ! 新鮮なジュースはいかがですか?」
 異星から地球に辿り着き紆余曲折あったリコだが、今ではすっかりこの環境にも馴染んでいる。最近では魔導石アクセサリーの工房でバイトも頑張っているため、接客もそれなりの自信をもって取り組むことができていた。
 そのおかげでただ注文を聞くだけでなく、お客さんに合わせた対応だって頑張ることができる。
「リンゴのジュース、お待たせしました!」
 リコが客へと手渡したジュースには、ウサギ型に切られたカットリンゴが飾られていた。
 他にもオレンジやキウイを花のような形にしてみたり、イチゴを可愛らしく切ったり。闇執事としての力を遺憾なく発揮して作られたフルーツ飾りは、あっという間に評判になった。
 美味しいね、可愛いね。そんな人々の声を聞き、リコの身体にも自然と元気が漲る。
(こういう仕事も、意外と向いてるのかな)
 どんどん積み重なる新しい経験が、リコの心も満たしてくれていた。

 一方ポノは大きな看板を手に、砂浜を歩き続けていた。
「フレッシュなジュースはいかがですか~? お店にはパラソルもありますから、休憩にもどうぞ~!」
 宣伝係となったポノは海水浴客の元へと近付き、彼らの引くように明るい笑顔と声を届ける。
 興味を持って近づいてくる者がいれば、一人ひとりに合わせて丁寧に対応することも忘れない。
「さっぱりしたいなら、炭酸水で割ったアイスオレンジティーがおすすめですよ!」
「青りんごと大葉のジュースはいかがですか? ヘルシーで人気なんですよ」
「ジンジャー夏みかんジュースは夏バテ対策にもバッチリです!」
 きちんとお店のメニューを把握し、相手に合わせてオススメを選ぶ。これまで果樹園で働いてきた経験も、猟兵として多くの人と関わってきた経験も糧にする。
 そんなポノの宣伝活動は実を結び、多くの客が集まってきた。ポノも彼らと付き添って、店の場所へと案内する。
 その最中目が合ったのは、懸命に仕事を頑張るリコと、のびのび働く招き猫。店の様子も忙しそうだが楽しげで、そんな光景はなんだか眩しかった。
(やっぱりリコさんを誘って良かったわ。私ももっと頑張らないと!)
 オーナーのためにも、同行してくれた友人のためにも。ポノはぐっと気合を入れて、元気いっぱい砂浜を歩き続けた。

 時間はあっという間に過ぎて、気づけば夕日が砂浜を照らしている。屋台も閉店時刻だ。
 ポノとリコはオーナーの勧めで、パラソル席に腰掛け寛いでいた。
「すっごい売れ行きだったねェ!」
「ええ、ちょっと感動してるわ! ……あら、お疲れ様です」
 満足気に笑う二人の元へ、オーナーが近づく。なんでも今日一日頑張った二人に、ご褒美として好きなジュースを奢りたいのだとか。
「ありがとうございます! じゃあ遠慮なく~♪」
「いいの? ありがとうございまァす!」
 二人ともオーナーからのご褒美は素直に頂くことにした。残った果物をざっと眺め、何を飲もうか考えるのもまた楽しい。
「色々あって悩んじゃうね……」
「一杯じゃ足りないわよね。オーナー、二杯いっちゃってもいいかしら???」
「……え、二杯もいいの??」
 思いがけないポノの提案に、オーナーは苦笑しつつもオーケーを出す。それほど二人の頑張りは、店を大いに盛り上げてくれたのだから。
「ありがとう、オーナー! リコさんはどんなものが飲みたいかしら。私は、まずさっぱりな気分ね。パイナップルとか白桃とか……」
「んー、それなら俺も、一杯目はポノちゃんとおんなじのがいいな。爽やかで美味しそうだし」
「それじゃあ早速お願いしましょ。レモンの輪切りも入れちゃいましょうよ!」
「あ、美味しそう! 賛成!」
 そうして用意してもらったジュースは、夕日を反射してキラキラと輝く。甘く爽やかな香りは、嗅いでいるだけで幸せな気分になりそうだ。
「ね、せっかくだから乾杯しない?」
 カップを手に取り悪戯っぽく笑うリコに、ポノもジュースを掲げてウインクを送る。
「いいわね。それじゃあ……今日もよく働いたわね。お疲れ様! 乾杯!」
「ふふ、お疲れ様! 乾杯! こういうお仕事も楽しいね!」
 そのままジュースに口をつけ、すっきりとした味わいを思い切り楽しんで。甘みは疲れを癒やしてくれるし、爽やかさは太陽の熱を解してくれる。
 ジュースそのものが新鮮なのはもちろん、とっても美味しく感じるのは――きっと友達と一緒に飲んでいるからだろう。

「本当に楽しかったなァ。眺めも綺麗だし……」
「こういう夏休みもいいわよね」
 沈みゆく夕日を眺めつつ、ポノもリコも楽しげに言葉を交わし続ける。
 世界を包む色合いも、飲んだジュースの味も、潮の香りも、そして友人の笑顔も。そのすべてが、二人の夏を彩っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年09月15日


挿絵イラスト