シャングリラ☆クライシス②〜エチュードに願いを
●シャングリラ☆クライシス
サイリウムの光が満ちるのはステージ。
世界中が『アイドルステージ』に塗りかえられていく。
アイドル☆フロンティアの人々は例外なく、サイリウムかオブリビオンへと化した。
それが|流れ星《シューティング・スター》の力。
奪ったのは、オブリビオンに操られた謎の少女『クオリア・シンフォナー』。
「どうして、わたしはわたしを止められないの?」
彼女の言葉に、彼女自身が作り出した|『神格者』《アイドル》の一人、『イエロータイガー』が答えた。
「それは、『クオリア』、あんた自身の気持ちのせいなんだ」
『イエロータイガー』は歯噛みするようだった。
彼女の『友情』は生まれてから、ずっと変わることはなかった。
「どうして」
「人々を救いたい、世界を平和にしたいと今も変わらず思っているんだろう。それは全て、破壊の衝動に変えられてしまっているんだ!」
そう、『クオリア・シンフォナー』はオブリビオン化している。
そして、意識を奪われていない。
なぜなら、彼女は『記憶を忘れられない』という特異体質を持っているからだ。
記憶とは過去。
即ち『骸の海』そのものだ。
そういう意味では、『今』を生きる人々の全てに『骸の海』を持ち得るのは当然であった。
だが、人は忘れていく。
忘れられない彼女と違って、だ。
故に『クオリア・シンフォナー』は忘れられぬ『過去』を持つ故に強大なオブリビオンへと変貌している。
まったくの虚無から二人の『神格者』を作り出してしまうほどに、だ。
「あたし達は、もうすぐ完全なオブリビオンと化して、世界を滅ぼすまで踊り続けるだろう。これは|即興劇《エチュード》なんだ。台本なんてない。アドリブしかない。けれど、カーテンコールは世界の破滅と定められている」
「どうして、も?」
「可能性があるとしたら……誰かがあたし達を倒してくれることだけだ……!」
『イエロータイガー』は、ミュージカルシアターを生み出した。
せり出すようにして構築されたシアターには、彼女自身が手作りしたぬいぐるみの俳優たちが居並ぶ。
9つのぬいぐるみたちは、少年少女の姿をしていた。
「ドリーミング☆ミュージカル、『完全即興劇対決』の開演だ! 台本一切なし! オールアドリブで見せるは『友情の物語』」
『イエロータイガー』は、9つの少年少女たちのぬいぐるみとい共に煌めくステージの上に立つ。
「題目は『憂国学徒兵』! 鋼鉄が育んだ友情は、今も続いている! なら、あの日の続きを再演といこうじゃあないか!」
彼女の言葉にグリモア猟兵、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は混乱しているようだった。
「何故、その題目に? 意味は」
「言っただろう。これは『完全即興劇対決』だ! 主演はこの、あたし、『イエロータイガー』!」
その言葉と共に舞台装置が動き出し、スポットライトが彼女に注ぐ。
そして、強烈な光によって照らされた彼女の影から這い出して来たのは、鋼鉄の巨人――キャバリアだった。
「主役の名は『プロメテウスX』! さあ、怪物的キャバリアがたどる結末は如何なるか!熱狂のステージを共に!」
「台本すらない、ということですか……! なんと巨大な力……やはり、この世界のオブリビオンは他の世界のオブリビオン以上に強力なのですね。ですが!」
ナイアルテは共に並び立つ猟兵達に告げる。
そう、確かにアイドル☆フロンティアのオブリビオンは強大である。
だがしかし、今世界はアイドルステージと化し、人々はサイリウムへと変じた。
それでも意識がある。
ならば、彼らの応援を得る事ができれば、猟兵達もまた強くなることができる。
「そのとおりです! 人々の応援を得るためには、この『完全即興劇対決』を盛り上げること……観客席のサイリウムの皆さんを熱狂させ、私達を熱烈に応援していただきましょう!」
盛り上げる。
そう言葉にすれば簡単なことだ。
だが、それは『イエロータイガー』を一方的に下す、ということではない。
互いの見せ場を盛り上げる。
一進一退のドキドキハラハラ。
それが必要なのだ。
「幸いにして演目は、クロムキャバリアのような戦記もの……であれば、皆さんは最もよく盛り上がるシーンというものをご存知のはず! 往きましょう。私も敢えて、言わせていただきます。『憂国学徒兵』シリーズから抜粋!」
彼女は息を吸い込んだ。
爛々と輝く薄紅色の瞳。
「『戦いに際しては』」
そして、『イエロータイガー』の瞳もきらめいた。
背後に立つ鋼鉄の巨人『プロメテウスX』。
「『心に平和を』!」
ステージに明滅するユーベルコードの輝きが、どんなスポットライトよりもまばゆく輝いた――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『シャングリラ☆クライシス』の戦争シナリオとなります。
アイドル☆フロンティア最強のオブリビオンが一人『イエロータイガー』とミュージカルシアター型のアイドルステージで戦います。
ステージには彼女が手作りしたぬいぐるみ俳優たちがいます。
姿形は『9人の少年少女』たちです。
このステージで『完全即興劇対決』を行います。
主演は『イエロータイガー』です。ミュージカル形式で、彼女はスポットライトの影から鋼鉄の巨人――キャバリアを生み出し、舞台装置にしています。
共にこの演劇を演じながら、互いに激しく戦いましょう。
※プレイングボーナス……完全アドリブの即興劇を演じる。/猟兵とイエロータイガー、両方の見せ場を盛り上げる。
それでは、アイドルステージへと変貌した地球。このままでは世界は世界の破滅を迎えるでしょう。これを阻むために人々の推しという名の☆になる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『神格者『イエロータイガー』』
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POW : アイドル・ブリリアンス
全身に【無数の三角形のオーラ】を帯び、戦場内全ての敵の行動を【黄金のキラめき】で妨害可能になる。成功するとダメージと移動阻止。
SPD : リング・オブ・フレンズ
自身が【友情】を感じると、レベル×1体の【かわいいトラ型オブリビオン】が召喚される。かわいいトラ型オブリビオンは友情を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : イエローフラクタル
対象の攻撃を軽減する【黄金の最強アイドル】に変身しつつ、【分裂する三角形のオーラ】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:そは
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
村崎・ゆかり
全く、どうしてこの演目なんだか。
とにかく行くわよ、『完全即興対決』!
こちらも、『GPd-331|迦利《カーリー》』を顕現。
幽世千代紙で式神の小さな兵士を大量に生み出して「式神使い」で操り、(彼らからしたら)巨人の『憂国学徒兵』たちに群がり蹴散らされていく。
敵の見せ場をそうして作ったところで、あたしは禁鞭を振るうわ。範囲はステージ上に制限。『憂国学徒兵』も『プロメテウスX』もイエロータイガーにトラ型オブリビオンも、まとめて打ちすえる!
さあ、行きなさい、あたしの兵士たち! 今ならイエロータイガーまで攻め込める。あなたたちの力を見せてやりなさい!
観客からの応援に合わせて、力が漲る。負けないからね。
「まったく、どうしてこの演目を選んだのかしら」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)はアイドル☆フロンティア世界の全てがアイドルステージに変わった中、その一つ、ミュージカルシアターにてスポットライトを浴びる『神格者』である『イエロータイガー』を見やり呟いた。
「『友情』の物語だからだ。あたしにとって『友情』とは絶対に変わらないものだ。損なわれてはならないものだ。それがあたしという『神格者』の強みだからな!」
彼女の言葉にスポットライトによって色濃い影が生み出され、その中より這い出した鋼鉄の巨人――キャバリア『プロメテウスX』の0ジェネレーターが唸りを上げた。
胸部の装甲が展開し、砲身が現れたかと思った瞬間、放たれた熱線はステージを切り裂きながらゆかりへと迫る。
「――ッ!」
彼女の眼前に空より飛来した『GPd-331迦利』が、その一撃を阻む。
火花が散って、周囲のステージの融解させていく。
それほどの熱波なのだ。
「とにかく行くわよ、『完全即興劇対決』!」
「そうこなくちゃあな!」
「幽世千代紙!」
ゆかりの手から放たれた霊力宿す色紙が瞬時に小さな兵士へと変貌し、一斉に走り出す。
「数には数ってか! そら行け、トラ君たち!」
『イエロータイガー』から放たれた、ぬいぐるみのトラたちが一斉に走り出し、折り紙の兵士たちと激突する。
互いにふんわりぶつかっては、ステージ上にお手玉のように跳ね上がっては落ちて、また立ち上がって、がっぷり四つ。
組み合ってもみくちゃになりながら、兵士たちとぬいぐるみたちが縦横無尽に走り回るのだ。
「なんて光景よ」
「あっはっは! 楽しいだろう! こういうのも!」
「めちゃくちゃじゃない!」
「戦いってのは常にこういうもんだ! さあ、行くぜ、『コール』!『プロメテウス・バーン』!!」
影から生み出された怪物的キャバリアの胸部砲口が再び熱線を解き放つ。
苛烈なる一撃が戦場を霧崎、ぬいぐるみも兵士たちも宙を舞う。
とにかくド派手な演出だった。
「見せ場はもう十分よね! なら、あたしも見せ場ってものをもらおうかしら! 我は汝の主なり。全てを打ちすえ砕く絶対の力よ、世界にその威を示せ! 疾!」
禁鞭(キンベン)――それは赤い鞭。
振るわれる一撃は、一瞬でステージ上の全ての敵を打ち据えた。
「まとめて打ち据える!」
「無差別ってわけじゃあないみたいだな!」
正確にゆかりの振るう赤い鞭は荒ぶりながらも、敵だけを打ち据えていた。
ぬいぐるみたちが打ち据えられ、ステージ状に転がる中、ゆかりは号令のように鞭を振るう。。
「さあ、行きなさい、あたしの兵士たち! 今なら『イエロータイガー』まで攻め込める。あなたたちの力を見せてやりなさい!」
その言葉に観客席のサイリウムが明滅する。
振りしきるように揺れる光とともにゆかりは、己に応援の力が宿るのを感じただろう。
「力が漲る……」
「負けられないって思うだろう! それが友情のパワーってやつだ!」
「言うじゃあないの!」
「これは『友情』の物語だからな!」
互いの瞳が交錯する。
明滅するユーベルコードの輝きの中、その激突はステージにさらなる盛り上がりを見せるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリアル・デハヴィランド
●POW
なるほど、|即興劇《エチュード》か
本来ならばいざ尋常に…であろうが、手作りしたぬいぐるみらが相手ではだ
だがしかし、影法師さながらに本物のキャバリアが出るのであればそちらの相手を仕ろう
さて、劇の流れだが…彼らからすれば私とレナードは対する敵である
しかしだ、だからと言って有無を言わずに剣を交えるのは騎士道としても劇の作法としても反する
ここは剣を掲げて敬礼をしながら名乗りを上げるとして、敵ながらも気高き精神の持ち主であることを観客らにもアピールだ
名乗りが終わればいざ尋常に…であるが、まだ劇は続く
加減とはまで言わないが互いに拮抗する戦いを魅せ、『獅子雄哮』をもってプロメテウス・バーンを受ける
全ての物語において台本があり、筋書きがあるというのならば|即興劇《エチュード》なるものは、演者の持てる全てをぶつける情熱的な試みであるように思えただろう。
俯瞰して見ているのか。
それとも正面に見据えるものだけを認めているのか。
もしくは、己等を見る観客を捉えているのか。
いずれにせよ、そこには真実しかない。
筋書き無きドラマが真であるというのならば、この即興劇こそが真。
感情と感情との激突によって生まれる火花のようなきらめきこそが、人々の心を打つのだろう。
「相手がぬいぐるみ、とはな……」
エリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は、世界の全てがアイドルステージと化したアイドル☆フロンティア世界の有り様を見やり、その一つであるミュージカルシアターに立つ。
迫るは『神格者』の一人『イエロータイガー』。
この即興劇の主演である彼女は、威風堂々たる佇まいで立ちふさがっていた。
「不足かい、異界の騎士! 見た目に騙されてしまうのは素直に過ぎるよっ!」
「そうかもしれない。だが、これが劇であるというのならば、観客の見る目というものも気にしなければならない。貴殿が影よりキャバリアを繰り出すというのなら」
エリアルの掲げた剣に落ちるは雷光。
轟く雷光と共に現れたのは人造竜騎『レナード』。
黄金の装甲煌めくは、最新たる輝き。
「影法師さながらたる怪物的キャバリアのお相手を仕ろう」
「あっはっは! なら、真正面から戦うとしようじゃないか! けれど、あたしのオーラを受けてもそう言えるかな!」
放たれるは黄金のキラメキ。
そのオーラを真正面からエリアルは乗り込んだ『レナード』より放たれるオーラでもって打ち消した。
「なに……!?」
「聞け、我が名を」
「敢えて言わせてもらおうかな! 何者だ!」
「その言葉……決闘の申し出と見て相違ないな? であれば、名乗ろう。我が名は、エリアル・デハヴィランド。キャメロットの騎士が一人。我が乗騎『レナード』と矛を交えんとするのならば、いざ!」
「尋常に!『プロメテウスX』!」
『レナード』はエリアルの意志を受けるように剣を掲げ、敬礼する。
それは気高き騎士の志を示すものであったことだろう。
主演は『プロメテウスX』。
相対する『レナード』は敵役。
だが、劇において人気が出る役は必ずも主役であるばかりではない。そう、時には敵役もまた人気が爆発的に出るものである。
エリアルは、『イエロータイガー』を引き立てる敵役でありながら、その高潔なる精神を持つ敵であることを観客席にアピールしたのだ。
そのアピールが成功したことを示すようにサイリウムが明滅する。
「いくよ!『コール』!『プロメテウス・バーン』!!」
黄金のきらめきと共に放たれる熱線。
その一撃を前にエリアルの駆る『レナード』の身より放たれるのは吠えたけるライオンの紋章をまとったオーラ。
「吼えろ『レナード』! 雷音の如く!」
獅子雄哮(ライオン・ブレイブ)。
そのオーラは正面から迫る強烈な熱線を無効化し、黄金のきらめきすら打ち据える。
「まだ劇は続く。来やれ『プロメテウスX』、『怪物』の名を持つキャバリアよ!」
打ち据えるは剣戟の音。
黄金の輝きは、スポットライトとサイリウムの光を受けて、さながら太陽のようにステージを満たすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
池神・聖愛
あたしの衣装…段ボールにテープや塗装を施して、ロボ寄りにしておきましょう。
理由は後でわかります!
さあ、やりましょう。この『即興劇』を!
あたしがやるのは、その9人のぬいぐるみに飛びかかるレプリカント…みたいな存在ですね。
このカトラリー類の中では、フォークが槍みたいになりますからね!
そうして、相手の見せ場…連携に翻弄されるあたしを演出!
そして、進退窮まったあたしは…【デカデカ☆アイドル】で大きなあたしを召喚!
そのまま、大きなあたしはプロメテウス、あたし自身はぬいぐるみたちへ、その光ごと薙ぎ払い!
それはひどく乱暴な出来栄えだった。
舞台衣装、というには粗末なものであったし、どこか……そう、良い風に言うのならば、手作り感があった。
揺れる衣装と共に風になびくのは段ボールをテープで補強し、塗装を施した……イメージするのならばロボット。
カクカクとしたディティールは、シルエットを生み出していた。
だだ、最初に言ったように粗末な出来栄えだった。
精一杯のものであった、とも言えるが池神・聖愛(デリシャス☆マリア・f45161)は構わなかった。
人には得手不得手というものがある。
クオリティという言葉がああるが、それは質の上と下を定義するための言葉でしかなかった。
「なんだ、その衣装! 手作りか!?」
『神格者』の一人『イエロータイガー』は目を見開いていた。
彼女の姿。
その姿は言ってしまえば、幼き日……と言っても、それもまた存在しない記憶であったが、彼女は『友情』を司る『神格者』。
聖愛との間に存在しない幼少期の記憶を虚無より生み出すことなど造作もなかった。
「思い出した……! それは聖愛、あんたが幼稚園の劇で演じた!」
「え、そんなことないですけど……?」
「あれ!?」
まあ、存在しない記憶なので、仕方ない。
聖愛は、迫る9人の少年少女たちのぬいぐるみとカトラリーのフォークで応戦していた。
まるでチャンバラごっこみたいなやりとり。
「そうじゃなかったっけ? あたしがアリス役で、聖愛がブリキの木こりだっただろ!」
「え、そんな記憶ないです」
振るうカトラリーとぬいぐるみたちのパンチが激突して、ぬいぐるみと金属が激突する音ではない音が響き渡る。
「くっ……この子たち、速い! それに連携も!」
「できてるだろう! なにせ、この子らは『憂国学徒兵』だからな! 連携なんてできて同然!」
「そうなんですか? だって、一人ひとりで戦う人たちなんでしょ、この子たち!」
「たまにはそういうエピソードもあったよ!」
なかった。
だが、それでも聖愛が追い詰められているのは事実だ。
聖愛の手にしたカトラリーが宙に飛ぶ。
弾き飛ばされたのだ。
ステージに突き刺さるフォーク。
柄がたわみ、ビィィィ……ンと音を立てる。
武器をなくした聖愛に迫る『イエロータイガー』。
黄金のキラメキは、聖愛を追い詰めたのだ。
「これで終わりだ、聖愛! 幼稚園からの因縁、これで終わらせる!」
「だから、そんな記憶ないです!」
煌めくは聖愛の瞳。
ユーベルコードに輝くは、彼女の似姿。
弾け飛ぶ段ボールの衣装。
「……これは!」
ピンチからの逆転劇。
湧き上がる観客席の応援エネルギーを受けて聖愛は、デカデカ☆アイドル(キョダイアイドルサンジョウ)へと変貌する。
「いっきまーす!」
「こいつは……『ギガントデリシャス☆マリア』!?」
「hじゃい! おおきなあたしはプロメテウス! そして、あたしの光は、どんな困難だってやっつけちゃいます!」
その言葉と共に光でもってぬいぐるみたちを薙ぎ払い、その動きに合わせて『ギガントデリシャス☆マリア』の手にしたカトラリーの一撃が『イエロータイガー』の脳天を釘打ちするみたいにステージに叩きつけられるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カンナハ・アスモダイ
WIZ
※アドリブ連携等歓迎
即興劇……ね。
やってやろうじゃない。
だって私は悪魔で魔法少女でアイドルよ!このくらいお茶の子さいさいよ!
劇をやるんなら、欲しいわよね!音楽隊!
魔界音楽団、用意!
精一杯盛り上げていくわよ!
音楽団と共に<歌唱><パフォーマンス>と踊りで場を盛り上げるわ!
ホラホラ、一緒に場を盛り上げましょ!
劣勢も優勢も、貴女とならいくらでも演じられるわ、イエロータイガー!
一緒にこの即興劇を楽しみましょう!
<アイドル力>も高まってきた!
<歌魔法>を詠唱し、鋼鉄の巨人にぶっ放すわよ乙女魔法!マジカル★ビーム!
「やるじゃあないか! それでこそだ!」
黄金の輝きをまとった『神格者』の一人『イエロータイガー』は、黄金のアイドルへと変貌を遂げた。
まばゆい輝きは、まさしく彼女がアイドルである証明。
背に負うオーラは三角形に分離し、彼女の周囲を護るように浮かぶ。
そのさまを見上げ、カンナハ・アスモダイ(悪魔法少女★あすも☆デウス・f29830)は、その青い瞳に決然とした意志を宿らせる。
その意志は輝きとなって放たれるだろう。
これは即興劇。
台本などない。
筋書きなどない。
あるのは、オールアドリブ。
辻褄合わせの既定路線なんてどこにもない。あるのは、実力と実力のぶつかり合い。そして何よりも、このミュージカルシアターを盛り上げんとする意志。
「やってやろじゃない」
「いーい気迫だ! あたしに迫るほどにな! けど、どうしてあんたがそこまでやる必要がある。あんたにとって、この世界は関わりがないだろう。どうなったって構わない。そうだろう?」
「いいえ! だって、私は悪魔で魔法少女でアイドルよ!」
「だからってやれるものか? できやしないだろう!」
「このくらいお茶の子さいさいよ!」
「だったら、やってみせてもらおうか、悪魔法少女★あすも☆デウス!」
その言葉と共に黄金の三角形をしたオーラが回転し、カンナハへと迫る。
鋭い一撃にステージがサイコロのように寸断され、衝撃と共に彼女を舞い上げた。
しかし、そんな苛烈な攻撃を前にしても彼女の瞳は陰ることはなかった。
「劇をやるんなら、ほしいわよね! 音楽隊!」
「ミュージカルだからな!」
「なら、精一杯盛り上げていくわよ! 魔界音楽団、用意!」
悪魔法少女★魔界音楽団(アスモデウス・オルケストラ)が砕けたステージの上に並び立つ。
卓越した技量を持つ魔界音楽団の一員たちであった。
「ここからが本番!」
響きわたるのはシンフォニー。
壮大なる音楽は、否応なしに人々の心を揺さぶるだろう。
その証明にサイリウムへえと変貌した人々の無意識が揺れる。大波のように、光のグラデーションを生み出し、カンナハのユーベルコードに寄って呼び出された音楽団の奏でる音色と共に盛り上がりを見せるのだ。
「ホラホラ、一緒に場を盛り上げましょ!『イエロータイガー』!」
カンナハは見た。
そこに敵意はない。
あるのは、この即興劇を盛り上げんとする意志だけ。
伸ばした手が取られることはない。
けれど、伝わっているはずだ。
「楽しもうぜ! この即興劇を!」
「ええ! 高まってきたわ! アイドル力! ぶっ放すわよ!」
「来いよ!『プロメテウスX』!」
影より這い出した巨人の胸部砲口から放たれる熱線。
だが、その熱線を受け止めたのは、カンナハの放つ光条であった。
「乙女魔法! マジカル★ビーム!」
激突する熱線と光条。
そのスパークする明滅がステージを包み込み、強烈な光となってミュージカルシアターの天井をぶち抜くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
織部・藍紫
…着いた途端にUC使って変身しよか。その方が盛り上がりそうや。
そんなエピソードもあったやろ、うん。
そう、出てくるは緑色をした5mもの大蛇。毒持ちやでな。
しかも、毒の妖精も出てくるってな。
わし、敵なんやし。これでええやろ。
これは、そちらの見せ場や。
毒に気づいて、咄嗟に防御。身体が言う事きかんでも、諦めず必死に抵抗するんは好きやろ。現に毒の妖精らはやられるやろうし。
で、わし自身たる大蛇はプロメテウスとの戦いでな。大きいもの対大きいもの!
まあ、取っ組み合いは難しいやろうから、尻尾で薙ぎ払うんやけど。
これがわしの見せ場やで!
明滅するミュージカルシアター。
ユーベルコードとユーベルコード。
猟兵と『神格者』の一人、『イエロータイガー』が盛り上げる舞台を見やる人類の意識、サイリウムたちは、皆一様に体を揺らすように光で波を作る。
盛り上がっている。
そのさまをぶち抜かれたシアターの天井から織部・藍紫(シアン・f45212)は見下ろしていた。
「盛り上げる、ね。なら、こんなエピソードもあったって言ってもかまへんやろ!」
彼の瞳がユーベルコードに輝く。
天井から突如としてシアターの舞台に落ちてきたのは、対抗5mの妖獣兵器オロチであった。
大蛇。
そう表現するしかない。
緑色の大蛇は、藍紫が変貌した姿であった。
「んな!?」
『イエロータイガー』は目を見開いた。
巨大なヘビ。
如何な彼女としても、蛇は苦手だったかもしれない。
「でっかい蛇~!?」
「正確にはオロチやけども。毒持ちやでな。しかも」
大蛇へと変貌した藍紫の周囲には毒を合成する精霊たち。
「こいつらもおる」
「毒ってずるくないか!? いくらなんでも!」
「敵役には必須やろ、毒妖精。それにわし、今敵なんやし。ええやろ」
「よくないよくない!」
ぶんぶん首をふる『イエロータイガー』。
迫る妖精たちの攻撃は、『イエロータイガー』が変身した黄金のアイドルのオーラで阻まれてはいるが、それでも生理的嫌悪の方が勝っているのだ。
「毒を侵されて、体が言う事きかんでも、諦めず必死に抵抗するんは好物やろ」
「言い方!」
「ミュージカルとして盛り上げるのならば、当然、底は必要やん。人生谷あり山ありってな」
しかし、毒精霊たちは『イエロータイガー』が作り出した『9人の少年少女』たちのぬいぐるみによって舞台から蹴っ飛ばされている。
なんていうか、ずるい。
「妙に強ない? あのぬいぐるみたち」
首を傾げる。
だが、その疑問が解決する前に、藍紫の前に立ちふさがるのは影より這い出したキャバリア『プロメテウスX』であった。
「でっかくっても、体高はおんなじやろ」
「『プロメテウスX』!」
「はっ、こっからはわしの見せ場やで!」
唸る尻尾が『プロメテウスX』の巨体を打ち据え、さらには駆体に絡みつく。
ギリギリと音が響き渡り、舞台はさらに盛り上がりを見せていく。やっていることはミュージカルというより、大怪獣決戦とも言える様相である。
だが、それでも観客たちが変じているサイリウムの輝きを見ればわかる。
これはこれでよし、と――!
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
歌うのでっす、皆々様と共に!
藍ちゃんくんは猟兵以外の皆様――オブリビオンとも歌えるのでっす!
それはタイガーのお嬢さんやトラさん達だけではないのでっす!
9人の少年少女の皆様ともでっす!
主演はタイガーのお嬢さんと申しましたが。
友情の物語で、題目は憂国学徒兵なのでしょう?
でしたら、ええ!
少年少女の皆様も大活躍してくださらないと!
敵味方も超えた、皆々様の歌が!
強大な災いを討ち、平和を齎すのでっす!
その災いとは何か?
ここにはいらっしゃるじゃないでっすか、最後のキャストが!
つまりでっすねー……。
あや~!
これまでの激戦の影響で、プロメテウスXが暴走してるのでっす!
このままでは敵味方関係なく大爆発で全滅なのでっす!
かくなる上は……ここは一時休戦、共闘なのでっす!
お相手もプロ!
しらける真似はせずのってくるかと!
ライバル同士の共闘という熱い展開、それもタイトルにも冠する学徒兵の皆様を魅せれる展開なら尚更!
挿入歌なアイリスを背に、皆で巨人に挑み!
お嬢さんの願いである敗北を叶えるのです!
ミュージカルシアターは猟兵たちが入れ代わり立ち代わりスポットライトを浴びていた。
そして、同時に『神格者』である『イエロータイガー』にもまた同時にスポットライトが集中する。
あくまで主演は『イエロータイガー』である。
猟兵達は、彼女を主演として、このミュージカル『憂国学徒兵』を盛り上げるために戦っていた。
常なる戦いではない。
けれど、常なる戦いではない……戦いとも言えぬ戦い方ができるのもまた猟兵という存在であった。
一人ひとりが法則性を持たぬ混沌の体現者。
それが猟兵である。
故に響くのは剣戟の音ではなく。
「藍ちゃんくんでっすよー!」
紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)はぶち抜かれたミュージカルシアターの天井から降り立つ。
「歌うのでっす、皆々様と共に!」
吹き荒れるファンファーレ。
散るは紙吹雪。
銀テープが観客席に飛び散り、キラキラとライトの光を反射して、シアター全体を包みこんでいく。
「歌うのでっす!」
そう、歌える。
猟兵だからといって猟兵としか歌えぬなど、藍ドルを見縊っては困る。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないオブリビオンとも歌える。
それが藍ドル。
「へぇ、あたしたちと歌って踊ろうってのかい!」
「いいえ!」
「なに?」
「タイガーのお嬢さんやトラさんたちだけではないのでっす!」
藍は己に迫る無数のトラのぬいぐるみたちだけではなく、『9人の少年少女』たちのぬいぐるみにも視線を巡らせた。
「主演はタイガーのお嬢さんと申しましたが! 友情の物語で題目は『憂国学徒兵』なのでしょう? でしたら、ええ!」
藍の瞳がユーベルコードに輝く。
例え、その物語が悲劇的な結末を迎えるのだとしても、彼らの友情に偽りなどなかったのだ。
これから先、どんな困難や苦難が待ち受けて、おとなになっていく度に幼い日のことを摩耗していくのだとしても、だ。
藍はわかっている。
「友情の歌こそが、涙色の空に笑顔の虹をかけるのでっす!(リーアー・アイリス)」
ユーベルコードに輝く瞳。
「敵味方も超えた、皆々様の歌が! 強大な災いを討ち、平和をもたらすのでっす!」
「言うじゃあないか。それが大言じゃあないって証明できるのかい! 災はすぐそこにきているっていうのに!」
「そうでしょうとも! あや~!?」
藍は見上げる。
それは『イエロータイガー』の影からせり上がった巨大な鋼鉄の巨人。
怪物を思わせる『プロメテウスX』であった。
胸部の砲口から走る熱線が舞台を砕き、融解させては、衝撃でぬいぐるみ諸共藍を吹き飛ばす。
宙に舞う。
眼下には、巨大な災いの体現者『プロメテウスX』。
藍はしかし、臆することはなかった。
どんなに強大な力が暴走しているのだとしても、歌で繋がっている。
「大合唱なのです! これがミュージカルだっていうのならば、みんなが演者! 肩を組み、オーラスを迎えるためには!」
「はっ、歌おうってのか! あたしたちと!」
「みんなみんな、でっす! 観客の皆さんもご一緒に!」
ユーベルコードの光が波及していく。
そう、これは敗北を求める『イエロータイガー』のための戦い。
そのためには、皆で手を取り合うこともまた、ミュージカルの盛り上がりとしては必須。
ハッピーエンドにはまだ遠くても。
まだ、なのだ。
これから進んでいくのだ。
「さあ、歌うのでっす! 藍ちゃんくん達は、決して独りじゃないのでっす! みんな、手を取って隣り合う誰かを思えば! 思うことができるのなら!」
怪物だって倒すことができる。
響く歌声は重なり合って、大合唱へと変わっていく。
サイリウムの輝きは、さらに燦然と膨れ上がっていった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『戦乱に荒む心が生んだ悪魔を前に、彼らは何を為す?』
【楽器演奏】常闇が如き曲を背景に、少年少女達に対する|9体の悪魔《ドロモス達》を配しデモニック・ララバイ【操縦】プロメテウスXへ戦鎌を振るう
『悪魔達を倒し屍の上に楽土を築くか?』
ドロモス集結、【鉄壁】プロメテウス・バーンを反射し切れず、弾かれ燃えて地に倒れるドロモス達
「違う、違う、違う!!」
サイキックシールド展開【オーラ防御】
耐え抜いて、[幻想太陽曲]を、理想を奏でる!
イエロータイガーを、常闇を、影を祓う暖かくも熱き陽光でステージを包み込む!!
心に平和を抱くなら!『悪魔すら救い、手を取り合う、
そんなとびっきりのハッピーエンドこそ相応しい!!』
歌が聞こえる。
猟兵とオブリビオンとぬいぐるみたちの大合唱。
人の意識が変じたサイリウムですら歌うように揺れている。
『戦乱に荒む心が生んだ悪魔を前に、彼らは何を為す?』
大合唱響くミュージカルシアター。
その歌声を背に響くはナレーションめいた声だった。
スポットライトが一斉に光を落とす。
広がるのは闇。
『9人の少年少女』のぬいぐるみたちにスポットライトが降り立ち、同時に彼らに相対するように9体の悪魔……に扮した『ドロモス・コロス』たちが居並ぶ。
それは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の演出だった。
ぶち抜かれたシアターの天井から降り立つのは、『デモニック・ララバイ』であった。
サイキック・キャバリアである機体のアイセンサーと怪物的キャバリア『プロメテウスX』のアイセンサーが交錯する。
『悪魔達を倒し屍の上に楽土を築くか?』
その声は『ララバイ』の声だった。
激突するぬいぐるみと『ドロモス・コロス』たち。
打ち倒す少年少女たちのぬいぐるみにに小枝子は怯むこともなければ、たじろぐこともなかった。
あれがもしも、『そういうもの』なのならば、当然止められるものではないと理解していたからだ。
打倒された『ドロモス・コロス』たちが『デモニック・ララバイ』に集結し、『プロメテウスX』から放たれた熱線の一撃を受け止める。
「防げるものか!『プロメテウスX』の『プロメテウス・バーン』は!」
「……!」
反射しきれない。
防ぎきれず、『ドロモス・コロス』たちが次々と燃えながら舞台に失墜していく。
「違う」
小枝子は頭を振った。
否定は、敵の攻撃を防げぬという事実に対してではない。
悪魔達を倒し、屍の上に楽土を築くのが友情の物語といえるだろうか。その物語を肯定する筋書きに対しての否定であった。
「違う」
「何も違わないさ。そういうものだ。敵は倒すべきものだよ」
「違う」
「どれだけ否定しようとも、事実は!」
「違う!」
広がるはサイキックシールド。
放たれた熱線を受け止め、『デモニック・ララバイ』は踏み込んだ。
爆発が立ち上り、炎が舞い上がる。
その中に『デモニック・ララバイ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「心に平和を抱くなら!」
小枝子は叫んだ。
「『悪魔すら救い、手を取り合う、そんなとびっきりのハッピーエンドこそ相応しい!!!」
できるはずだ、と小枝子は叫んだ。
否定したのは、できないという言葉。
もしも、その心を曇らせる現実という名の暗雲があるのならば、己が否定しなければならない。
「世を照らせ、幻想太陽曲(サン・ファンタジア)! 常闇を、闇を祓え!!」
陽光の優しさと厳しさを込めた演奏が『デモニック・ララバイ』から響き渡る。
幻想太陽はミュージカルシアターの上に燦然と輝く。
灼熱の陽光が『イエロータイガー』を打ち据える。
「この太陽の輝きさえも、人の心の闇は祓えないんだよ!」
「できる! そう、できると思わなければ、何も始まらない!! 物語が始まったのなら! ハッピーエンドを望んでのことだろう! その結末を自分は引き寄せる! バッドエンドを壊す!!」
その言葉と共に小枝子は灼熱の陽光を束ねて、ステージに降り注がせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユウ・リバーサイド
舞台に上がれるってだけで幸せだけど
タイガーの期待にも応えなきゃね
相手のアドリブ設定には窮地の閃きで返す
♪アァ、何故戦わねばならぬ
願うは同じ
唯、人を救うことと言ふに
歌声をステージ中に届かせる
希望の力を王子様の力で
碧い煌めきと変えオーラとして纏い防御に
ダンスの動きでの回避
軽技での受け身で衝撃を殺し吹っ飛んだりと
スタントとして魅せる動きで不利を演出
負傷を耐える演技とともに
キャバリアよりはずっと小柄な
白い甲冑(サクミラのスタア甲冑)の幻影を傍らに作る
(甲冑の胸元の白い鴉の似姿に)
♪友よ
力を貸してくれ
彼らの望みが歪み叶うのなら
我らが止めねば
幻影と動きを重ね
同時攻撃に見せかけて蹴りや革命剣での急所突きを
ステージの上に立つ喜びが胸を占めている。
喜びを抑えることはできない。
幸せだと思う。けれど、それだけの感情では、このミュージカルシアターにて繰り広げられる即興劇は切り抜けられない。
何より『神格者』の一人『イエロータイガー』は敗北を望んでいる。
主演でありながら敗北という筋書き。
しかし、至る道程には台本などない。
あるのは、オールアドリブの即興のみ。
「期待には、応えるよ」
「なら、やってみせてもらおうじゃないか! 即興には即興。そういうものだろ!」
『イエロータイガー』の体が黄金のオーラに満ちていく。
変じるのは黄金の最強アイドル。
その言葉に相応しい力の発露。
黄金の三角形をしたオーラがユウにおそいかかる。
舞台は砕け、天井は撃ち抜かれ、それでもまだぬいぐるみたちはユウをステージから排除しようと迫っている。
できることは多くない。
ユウにとってできることは歌うことだ。
これがミュージカルだというのならば、殊更に。
「アァ、何故戦わねばならぬ」
これが友情の物語であり、戦記物であるというのならば、ユウにも記憶がある。
「願うは同じ。唯、人を救うことと言ふに」
歌声をステージに日々効かせる。
希望の力は、王子様の力。
碧い煌きをオーラに変えて、黄金の三角形を受け止める。
砕けたオーラの奥から鋭い切っ先がユウの頬を切り裂いても、止まらない。何度、何度、何度でも、だ。
ユウは歌う。
傷が増えても立ち止まる理由にはならない。
頬を伝う赤い血潮が喪われていくのだとしても、だ。
踊る。
ステップを踏み、指先の一つ一つに力を込める。
見てほしい。
それが彼の願いだった。
走る衝撃波を宙を舞うようにして相殺しながらユウはステージに立つ。
足場は悪い。
どうあがいても、ステップなど簡単には踏めない有り様になっている。
けれど。
「上等、なんだよね。俺は……!」
傷をいくら得ようともユウは諦めない。その瞳に輝くユーベルコードの光。
白い甲冑が幻影によって現れ、その胸元に白い鴉の似姿が浮かぶ。
「友よ!」
伸ばされた手がスポットライトを浴びてきらめいた。
「力を貸してくれ。彼らの望みが歪み叶うのなら、我らが止めねば」
青春の日々を思う。
歪められてはならない思いがある。吹き飛ばされてはならぬ願いがある。
幻影と共に動きを重ね、振るうのは革命剣。
「止めてみせてよ、猟兵!」
「承ったよ! それが君の願いだっていうのなら!」
放つ一撃が『イエロータイガー』の身へと叩き込まれ、スポットライトが乱舞するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ステラさん!?
なんかいつもよりやべーですよ!?
主にぬいぐるみを見つめるぐるぐる瞳とはぁはぁ吐息と乙女ポーズが!
そのぬいぐるみはわたしもの、みたいなオーラやめてください!
『イエロータイガー』さん、引いてるっていうか、怯えてるじゃないですか。
いえ、練乳はいまのところステラさんと『イエロータイガー』さんのおかげでなんとかなりそうですが、
『憂国学徒兵』絡むと、このあと絶対マラソンさせられるので……(死んだ魚の目
しかーし!
ステラさんからリクエストがあったならばそうも言っていられません!
今回は舞台音楽。いわゆる劇伴ってやつですね!
ステージの邪魔にならないように、けれどもシーンを盛り上げる曲を……。
って、大惨事になんかならないですよ!?
気を取り直して……かもん、【ソナーレ】!
即興劇というならこちらもそれに合わせます!
奏勇者の|即興曲《トッカータ》をおみまいしちゃいますですよー♪
【ベーゼンドルファー】全力速弾! 【PA-Acoustics】フルボリューム!!
音楽の可能性と力を思い知れー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまぁぁぁすっ!!
具体的にはあの亜麻色の髪に黒い瞳のぬいぐるみからっ!!
誰がやべーメイドですか
あれっ?イエロータイガー様まで引いてる!?
憂国学徒兵と聞いたならば私が出ないわけには!
ルクス様準備はいいですか?
え?練乳が足りない?
では始めましょう、完全即興劇対決
私は狂言回しと行きましょうか
BGMはルクス様……ふふ、心配
なんか大惨事になりそうですが!
紡がれるは『友情の物語』
『怪物』プロメテウスXに相対する『憂国学徒兵』の9人
戦いに際しては心に平和を
例え、相手が『|怪物《プロメテウス》だろうと退く事は無いでしょう
ならばその戦いを支えるが奉仕者の役目
来なさい!ケルーベイム!
【リモート・レプリカント】で操作しつつ
ええ、プロメテウスXの足止めが精いっぱい
神器たるプロメテウスを止めるには神器が必要
すなわち、セラフィム!
憂国学徒兵の皆様の力で!
今こそ!セラフィムを!
ルクス様も合わせて!
一気に仕留めますよ!
憂国学徒兵は0から8
9と10は何を求めたのでしょうね?
ミュージカルシアターを揺るがす声が響き渡っていた。
それは震天動地とも言うべき強烈さであった。
言うまでもない。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は破壊音波の手繰り手ながら、思わず耳を抑えた。
そう、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の咆哮っていうか、絶叫である。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!」
「ステラさん!? なんかいつもより……」
「具体的には、あの亜麻色の髪に黒い瞳のぬいぐるみからっ!!」
「やべーですよ!? 具体的すぎません!?」
「具体的も何も、香ってきているのですから、仕方ないでしょう! 誰がやべーメイドですか!!」
「いや、どう見てもヤバいだろあれ」
『神格者』の一人である『イエロータイガー』もまたドン引きであった。
だって、そんな香りなんて言われても、ちゃんと芳香剤の香りしかないはずだ。
なのに、あの紫のメイドは名指しというか、『9人の少年少女』たちのぬいぐるみの中から一体だけを名指ししているのだ。
これがやばくないのなら、何がヤバいというのだろうか。
「あれっ!?『イエロータイガー』様まで引いている!?」
「そりゃそうですよ。主にぬいぐるみを見つめ、ぐるぐる瞳ではぁはぁ吐息と乙女ポーズまで取っているんですから」
「これは嗜みです。ミュージカル『憂国学徒兵』と聞いて私がでないわけにはいかないでしょう!」
「はぁ……そういうものですか?」
「そういうものです!」
「というか、そのぬいぐるみはわたしのもの、みたいなオーラもやめてください! あれは『イエロータイガー』さんが手作りしたものですよ! 所有権は彼女にあるんです!」
「だまらっしゃい!」
「だ、だまらっしゃい……!?」
「あれは『主人様』! であれば、私の手元にあるのが当然! いえ、私があのぬいぐるみのそばに侍るのが筋! そういうものでしょうが!!!」
あまりの剣幕にルクスはどっちかというと『イエロータイガー』よりに身の置所があるのではないかと思うほどであった。
「いいですか、それでは始めましょう、完全即興劇対決を!」
「何事もなかったみたいにはじめますね」
「今の私は狂言回し、BGMはルクス様……ふふ、心配」
「その前に練乳の心配してください」
「そうでした。練乳足りないですか?」
「いえ、今のところは、ステラさんの開幕雄叫びと『イエロータイガー』さんのおかげでなんとか」
「あたし!? 何もしてないけど!?」
「ドン引きしてくださったので?」
「どういうこと!?」
「まあ、『憂国学徒兵』が絡むと、このあと絶対、視聴マラソンさせられるので……そっちのほうが、心配です、かね……」
ルクスは死んだ目をしていた。
まだ魚の目の方が生き生きしていたように思える。
「しかーし! ステラさんからBGMのリクエストがあったならば、そうも言ってられません!」
「うわ、復活した」
「舞台音楽、いわゆる劇伴! ステージの邪魔にならないように、けれどもシーンを盛り上げる曲!」
「思ったよりしっかりしてる」
「これでも勇者ですから!」
「勇者ってなんだっけ……?」
「まあ、大惨事になるかもしれない演奏のできる勇者、ということで」
「なにそれ!?」
謎の自信に溢れたルクスと、したり顔のステラ。
二人に挟まれて『イエロータイガー』は不安しかなかった。本当に大丈夫なのか? この二人に任せて大丈夫なのか?
大惨事って言ってるけど!
「紡がれるは『友情の物語』……」
「ああっ、無視してナレーション始めるし!」
「怪物的キャバリア『プロメテウスX』に相対する『憂国学徒兵』の9人。すでに数は欠け、喪われてもなお、友情が紡いだ戦いは続く」
そう、どんなに喪われても戦いは続く。
平和を求めれば求めるほどに戦いは苛烈さを増していく。
互いに抱くのは正義ではない。
心にはいつだって。
「戦いに際しては心に平和を」
その言葉と共にステラの呼び出した『ソナーレ』からユーベルコードの演奏が響き渡る。
増幅し、ミュージカルシアター全体に響かせる音。いや、演奏。
「音楽の可能性と力を思い知れー!」
グランドピアノを演奏するルクス。
アンプで増幅された音は、さらに『ソナーレ』を介して周囲に吹きすさぶようであった。
苛烈なる音。
盛り上がるアップテンポ。
破壊的で破滅的であっても、どこか再生の前触れを感じさせる春の息吹めいた旋律が響くのだ。
「む、むちゃくちゃだ! だが、なんだ、この胸に湧き上がる音楽!」
「わかりますか!」
ようやく自分の音楽性を理解してくれる者が現れたとルクスは喜んだ。
だが、ステラからすれば驚愕であった。
「盛り上げていこう! あたしの『プロメテウスX』で!」
『イエロータイガー』の影から飛び出す鋼鉄の巨人。
その性能を発露するように胸部咆哮からは熱線が放たれる。
「来なさい!『ケルーベイム』! 奉仕者としての役目を今果たしなさい!」
ステラの言葉と共に出現する『ケルーベイム』が熱線の一撃を装甲で受け止める。
火花が散る。
融解して、爆発する装甲。
フレームを僅かに残して『ケルーベイム』がよろめくが、その爆炎の中でアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「『セラフィム』!」
舞台装置が展開する。
砕けた舞台を押し上げて飛び出したのは、9つのキャバリアであった。
それは舞台装置から生み出された模造品でしかないのだろう。だが、これが筋書きなく、台本すらない即興劇だというのならば。
「彼らが、憂国学徒兵だというのならば、彼らの傍らには必ず存在しているはず。それを現実にするのが、私の言葉!」
居並ぶ『熾盛』と『熾煌』たち。
『セラフィム』でありながら、『セラフィム』から枝別れし、葉となった者たち。
その力を合わせ、さらにルクスの音楽が響く。
「一気に仕留めますよ!」
「大盛りあがりじゃあないか! いいぞ! 最終決戦だ!」
その言葉と共にステージには光が明滅するらのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC常時発動
「ご主人サマー☆即興劇だぞ☆即興劇でプロメテウスならもうあれだぞ☆そしてプロメテウス☆神機シリーズでもいるけど…きっと彼女ならが出しているのは…『セラフィム』だぞ☆」
仕方ねぇ…ならばこのカシムさんも脚本や演出手伝ってやる!メルシー!おめーが演じろ!
「勿論☆」(機神に戻る
物語
憂国学徒兵達の前に現れたるのは…神の名を冠し神の如き力を振るう自我を持つキャバリア群…神機シリーズ!そして!…サイキックロードの導きで彼らがたどり着いたのは古代に滅んだはずの古代神機皇国ジャパニア!
この世界は人間達と神機の各勢力とのバトルロワイヤル!
「フュンフ・エイル…メルシーにもわかるぞ☆君はそのメルシー達神機同様星々の輝く異界から来た機神を狩る者…あは☆君はメルシーの生体コアに相応しい…♥」
古代国家の中でも異端中の異端たる叡智皇に狙われ死闘を繰り広げられる
結果として「真面目過ぎて相性が悪い」理由で諦めたようだが…その間に何度も機神が襲いかかりここでフュンフと共闘だ!
最後は皆で舞台挨拶!
神格者にサイン貰い
「ご主人サマー☆ 即興劇だぞ☆」
「あー、そうらしいな。つーか、めちゃくちゃじゃねーか、もう」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は己の乗騎である『メルクリウス』の言葉に頷いた。
ミュージカルシアターは、まさしく言葉通りの光景である。
天井はぶち抜かれ、舞台は砕かれている。
『神格者』の一人『イエロータイガー』の手作るぬいぐるみたちが所狭しと舞台を駆け巡っては、猟兵たちのユーベルコードと凄まじい輝きを放ち続けているのだ。
スポットライトが乱舞し、銀テープや紙吹雪がそこかしこで爆発するように散っている。
演出過多なのではないか、とカシムは思ったが、そうも言っていられないらしい。
「即興劇で『プロメテウスX』だって☆ もうあれだぞ☆」
「『セラフィム』がどうたらって言いてーんだろ! なら、このカシムさんが脚本や演出を手伝ってやらねーとな!『メルシー』! おめーが演じろ!」
「勿論☆」
「筋書きを変えようっていうのならば、それも即興劇の醍醐味! つながりがおかしくないようにできるっていうのなら!」
『イエロータイガー』の言葉と共に彼女の姿が黄金の最強アイドルへと変貌していく。
「ハッ、上等! 繋げて、くっつけてやらぁ!」
カシムの言葉と共に『9人の少年少女』たちのぬいぐるみの前に広がるのはサイキックロードと神機シリーズと呼ばれるキャバリアであった。
神の名を冠し、神の如き力を振るう自我を持つキャバリア。
それが神機シリーズ。
開かれたサイキックロードは、、古代の神機皇国ジャパニアであった。
「この世界は人間たちと神機の各勢力とのバトルロワイヤルだ!」
「とんでもない設定ぶち込んできたね!?」
「こんくれーやらねーと、おめーの舞台はのみこねーだろうが!」
「それでもあたしの手作りぬいぐるみたちが負ける言われもないでしょ!」
カシムと『イエロータイガー』が言い争う中、『メルシー』は、一体のぬいぐるみに目をつけていた。
亜麻色の髪と黒い瞳の少年。
そのぬいぐるみを見ていた。
「『フュンフ・エイル』……『メルシー』にもわかるぞ☆」
面を上げる少年のぬいぐるみ。
視線が絡まるようだった。
「君は、そのメルシーたち神機同様、星々の輝く異界から来た機神を狩る者……」
星の海。
その果てから現れたのは、果たして一体なんであったのか。
戦いの果にたどり着いたのは、果たして安息の地だったのか。それは『憂国学徒兵』で語られる通りだ。
終わりなどない。
争いに果などない。
あるのは、さらに続く争いの連鎖のみ。
「あは☆ 君は『メルシー』の生態コアに相応しい可能性を持っている。数多の可能性の折り重なった特異点とも言うべきなのかな。もしくは、ブレイクスルーとでも言うべきなのかもしれないけれど……やっぱり相応しい❤」
その言葉に亜麻色の髪少年ぬいぐるみは頭を振った。
ぬいぐるみ故に言葉はない。
けれど、明確な否定だった。
神機と激突する生身のぬいぐるみ。
「ぬいぐるみになっても、この力☆ あは☆ すっごいね☆」
「おめーは、もうちっと自重しろ!」
「あは☆ 無理かも☆」
激突する『メルクリウス』と少年のぬいぐるみ。
その間に割って入るように無数の機神が迫る。
「とりあえず、共闘だ! これがミュージカルだっていうのなら!」
「盛り上がるんなら、なんでもよし!」
「あとでサインくれよな!」
「あたしが滅びていなければね! いくらでも!」
迫りくる舞台装置の機神たち。
その猛烈なる攻勢をカシムたちはミュージカル、それも即興劇の妙とも言うべき共闘でもって立ち向かうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
アドリブ了解!(アイドスコスチューム)
戦場では臨機応変は常日頃!
アイドル☆フロンティアの皆様を熱狂させる群雄活劇と参りマショー!
ダイナミックにパワフルに、演じてみせマスイエロータイガー!
キャバリアは用いず、我輩の身で挑みマース!
鋼鉄の巨人が相手であろうと、人の絆で抗うことはできるのだと!
示してみせマショー、|9人の少年少女《エブリワン》!
六式武装展開、鉛の番!
ヒャッハー! 四方八方から弾幕による援護射撃を行いマース!
複製したガトリングガンにぬいぐるみを載せて勇猛果敢に戦う姿を披露したり、召喚されたかわいいトラ型オブリビオンと白熱の激戦を繰り広げたり!
一進一退の攻防を披露して参りマース!
即興劇に求められるのは、対応力と展開力である。
エチュードは、いつだって情熱的だ。互いの意志と意志とのぶつかり合い。
なにせ、台本はない。
筋書きだってない。
結末なんて用意されていない。
全てを決定することができるのは、演者だけなのだ。
故にバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、よく通る声をミュージカルシアターの舞台で響かせた。
「ダイナミックにパワフルに! ラジカルでマジカルに! クラシカルでミラクルに! 皆さまを熱狂させる群雄活劇と参りマショー!」
「できるのかよ、猟兵! それが!」
「演じてみせマス『イエロータイガー』!」
バルタンの衣装がアイドルコスチュームに変貌する。
青を基調とした爽やかなフリル。
揺れるスカートの丈はドッキドキ。
振りまく笑顔はキラメキ。
ウィンクに散るはシューティングスター。
「『プロメテウスX』!」
煌めくバルタンを塗りつぶさんと影より這い出した鋼鉄の巨人が迫る。
その雄々しさ。
怪物めいた性能を持つキャバリアの脅威を前にバルタンは生身で立ち向かった。
「正気!?」
「イエス! 鋼鉄の巨人が相手だろうと、人の絆で抗うことはできるのだと、証明してみせマース!」
バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
そして、彼女は9人の少年少女たちを見やる。
「エブリワン! 六式武装展開、鉛の番!」
彼女のユーベルコードが輝いた瞬間、ガトリングガンが複製され、ぬいぐるみたちの眼の前に降り立つのだ。
まるで箒にまたがる魔女っ子のようにバルタンは、ぬいぐるみたちにもガトリングガンに乗るようにウィンクで促した。
いそいそとぬいぐるみたちがガトリングガンにまたがれば、念動力でもってバルタンは、彼ら共々空に舞い上がる。
「ガトリングガンが飛ぶってことある!?」
「あるのデース! これが筋書き無き即興劇! なんでもありは、なんでもできる、でありマース!」
「無茶じゃない!?」
「無茶も無理も、ぶち抜けば道理となるのデース!」
宙を舞うガトリングガン。
放たれる弾丸が、まるで自在に飛ぶドローンのように『プロメテウスX』へと叩き込まれ、勇猛果敢なる様を観客席に魅せ続ける。
火花が散る。
火線が走る。
宙を舞うダイナミックな構図。
ガトリングガンが飛ぶというマジカル。
そして何よりも、『イエロータイガー』から召喚されたトラ型ぬいぐるみたちとの泊j熱した戦いは、一進一退。
「やるじゃないか!」
「ヒャッハー! まだまだこれからデース!」
バルタンは笑った。
そう、まだまだこれからなのだ。エチュードにエンディングは決められていない。
なら、上演時間が延びるなんてことはざら!
「アンコールなんてまだまだデース! エンディングまで突っ走ってやりマース! エブリワン! 盛り上がっていきマショー!」
バルタンはガトリングガンを空飛ぶ箒にして、ステージを舞い、豪華絢爛たる弾幕ショーを魅せるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
真・シルバーブリット
【ライキャリズ】
わぁ、凄い凄い!
見てよ、ジュディ
まるでヒーローショーをしてるみたい!
で、君がプロメテウスXなんだね
色んな|猟兵《人》に聞いてたけど…カッコよくて強そう!
でも、僕らも負けてられないよ!
相手にも見せ場を作らないとならないから…限りある広さのステージをコースにして、プロメテウスXの攻撃をギリギリで回避!
僕とジュディのどちらかが引き付け、どちらかがガトリングでプロメテウスXを牽制していくね
プロメテウス・バーンの直撃を避けたら、打ち合わせ通りにジュディを乗せて爆炎から登場さ
僕らは誰かを乗せなくても走れるけどやっぱり誰かを乗せた方がやる気がでるし、『デッドヒートキャリバー』でお返しだよ!
蒋・ジュディ
【ライキャリズ】
そうね、さながらヒーローショーってところね
9人の少年少女、背後にそびえる巨大な鋼鉄の巨人…
私達よりもはるか巨大で火力も強大なキャバリアですら決定打にならないプロメテウスX…ここはライキャリならではの機動力で翻弄しましょうか
概ね坊やの戦い方に合わせ、こちらも華麗なバイクアクションを披露しながらこちらもあちらも立てていくショーの始まりね
そうやっていく内にあちらも痺れを切らして|必殺技《プロメテウス・バーン》を出して来るでしょうけど…ここからが本番
直撃を回避したら、炎のサイキックを纏って人間の姿になってシルバーブリットに騎乗
『ワールドハッキングプログラム』で二射目を抑制するわよ
猟兵たちと『神格者』である『イエロータイガー』が繰り広げる即興劇は、もはや即興劇の枠を超えるようだった。
きらびやかな演出。
ダイナミックな演技。
いずれもが『イエロータイガー』が率いるぬいぐるみたちと、猟兵達によって織りなされ、筋書きのない劇は、クライマックスへとひた走っていくようだった。
「わぁ、凄い凄い!」
その光景を見たのは、少年AIを持ち得たライドキャリバー、真・シルバーブリット(ブレイブケルベロス・f41263)だった。
歓声を上げる姿は、人格AIと同じく少年のように純粋だったことだろう。
「見てよ、ジュディ。まるでヒーローショーをしているみたい!」
「そうね」
さながら、とまるで間違っていない所感であると蒋・ジュディ(赤兎バニーは誰でしょう・f45088)は同じくライドキャリバーとしての姿で、ヘッドライトを明滅させた。
「9人の少年少女、背後にそびえる巨大な鋼鉄の巨人……」
「あれが『プロメテウスX』なんだね! いろんな|猟兵《人》に聞いてたけど……カッコよくて強そう!」
「ええ、私達よりもはるかに巨大で火力も強大なキャバリアですら決定打にならない怪物的キャバリア……」
「よぉく、わたっているようじゃないか! それでもなお、立ち向かうっていうのかい!」
『イエロータイガー』は『プロメテウスX』の肩に立っていた。
猟兵たちとの応酬で消耗しているのだろう。だが、彼女の瞳はまだ輝いている。
まだまだ、とこの即興劇の結末は訪れないと言わんばかりに黄金の最強アイドルとしての姿に変貌し、瞳を煌めかせていた。
「いくよ、猟兵!『プロメテウスX』! その分かたれる前の力を示しちゃいなよ!」
咆哮の如きジェネレーターの駆動。
満ちるエネルギーが放つは胸部砲口。
火線がほとばしり、そのすさまじい一撃をジュディとシルバーブリットはライドキャリバーならではの機動力で持って躱す。
「僕らも負けてられないよ!」
「ええ、坊や!」
二人はミュージカルシアターの亀裂走り、瓦解した舞台の上を跳ねるように疾駆し、火線をギリギリで躱す。
まるでコースを走るレーシングカーのように二人は交差しては、『プロメテウスX』の火線を翻弄する。
強烈な火線は、かすめるだけでも痛手になる。
だからこそ、二人は二騎で翻弄するように機動したのだ。
それは華麗なるバイクアクション。
「誰も乗っていないバイクなんてのは!」
「そうね。そうかもしれないわね……なら、坊や!」
「うん!」
「なにか企んでいるようだね! でも、させないよ!『コール』!『プロメテウス・バーン』!!」
更に出力を上げた火線の一閃が周囲を巻き込みながら爆炎を上げて二人へと迫る。
立ち上る爆炎と衝撃波。
強烈な火力の前に二人は為すすべもなかっただろう。
だが、揺らめく爆炎の中から飛び出したのは、シルバーブリットだった。
その煌めく車体。
装甲は爆炎に照らされながら、美女をまたがらせていた。
誰だ?
そう、誰もが思っただろう。
観客席のサイリウムたちも驚愕に直立不動である。
「まさか……!」
「ええ、そのとおりよ。私」
「僕らは誰かを載せなくても走れる。けれどね、やっぱり誰かを乗せた方がやる気が出るんだよ! ジュディ!」
纏うのは黒炎。
シルバーブリットの車体が一気に背に迫る爆炎を振り切るようなデットヒートキャリバーの爆走でもって『イエロータイガー』へと迫る。
「くっ……だけど、『プロメテウス・バーン』が連射できないとは言ってない!」
「させないわ」
纏う炎のサイキックが黒炎と入り混じり、ジュディの瞳が煌めく。
ワールドハッキングプログラム。
ミュージカルシアターを塗り替えるは、サイバーファンタジー世界。
「世界を……塗り替えた!?」
「いいえ、書き割りを変えただけ。そして、この世界は『飛び道具使用禁止』の法則を持つの」
「無理矢理にでも!」
「そうね。できないことはないでしょう」
「でも、それってルール違反。ルール違反には罰則がつきもの! ならさ! その『プロメテウス・バーン』は!」
咆哮を轟かせない。
火線を放とうとしたエネルギーが胸部砲口の内側で暴走し、爆発を引き起こす。
炸裂したエネルギーに煽られて『イエロータイガー』の体が吹き飛ばされる。
「ぐっ……でも……はっ!?」
「罰則は、ここからよ」
「ジュディ、いっくよー!」
ジュディとシルバーブリットは、二人の身を弾丸として『イエロータイガー』を打ち据えた――。
大成功
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メサイア・エルネイジェ
おミュージカルいたしますの?
わたくしにお任せですわ~!
ヴリちゃん!クロムジェノサイダーでキャバリアファイトいたしますわよ~!
おぬいぐるみの皆様~!
応援よろしくですわ~!
どちらを?どちらもですわ~!
おイエロータイガー様~!
バチボコにぶん殴り合いますのよ~!
シールドおパンチ!シールドおガード!
ヴリちゃんキック!ヴリちゃん噛みつき!
避けてはいけないのですわ!
どったんばったんした方が盛り上がるのですわ!
ん?これじゃプロレス?
こまけぇこたぁよろしいのですわ~!
これぞおキャバリア流おミュージカルですわ~!
プロメテウス・おバーンにはジェノサイドバスター!
今日一番の大爆発ですわ~!
ミュージカルシアターは、その舞台が破壊されるほどの盛り上がりを見せていた。
サイリウムの光は明滅する。
誰もが興奮しきりであった。
主演である『イエロータイガー』の活躍は言うまでもない。猟兵たちの魅せるユーベルコードと演出もまた然り。
そして、『9人の少年少女』たちのぬいぐるみたちは、怪物的キャバリア『プロメテウスX』と対峙する。
物語のクライマックスが近づいていた。
「おミュージカルですわ~!」
そんな破壊的活劇の中、メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)は軽やかに跳ねて飛び降りた。
スポットライトが注ぐ。
そこに立っていたのは、まごうこと無きバニースーツに身を包んだメサイアであった。
ステージを取り囲むサイリウムが一層ふりしきられる。
その輝きに手を振って、メサイアは天真爛漫ささえ感じさせる笑顔を浮かべた。
「わたくしにお任せですわ~!」
「兎は虎に食べられる定めなんだけど、それでもいい感じかい?」
『イエロータイガー』の言葉にメサイアは笑った。
「おバニーはおバニーでも、凶悪ヴォーパルバニーですわ~! ヴリちゃん!」
「はっ! 意気はよいけどね!『プロメテウスX』!」
互いの背に負うのは、鋼鉄の巨人と暴竜。
乗り込んだキャバリアは鋼鉄の火花を散らす。
『ヴリトラ』は『プロメテウスX』と組み合うようにして、その体躯をなぎ倒す。
「おぬいぐるみの皆様~! 応援よろしくですわ~!」
「……」
9人の少年少女のぬいぐるみたちは困惑しているようだった。
応援と言われても、どちらを、と迷うように思えて、メサイアは『ヴリトラ』のコクピットで、バニーらしく跳ねた。
「どちらもですわ~!」
「自分だけを応援してって言わないところは!」
「だって、これはバチボコのガチンコバトルですわ~! ぶん殴りあい、わたくしお得意中のお得意なのですわ~!」
『プロメテウスX』の胸部砲口は既に破壊されている。
撃つことができても、自壊する危険性がある。
だからこそ、ここからは白兵戦だ。白兵戦だと言うのならば、『ヴリトラ』の分がある。
「シールドおパンチ! シールドおガード!」
「どっちも同じでしょ!?」
「違いますわ~! れっきとした技術というやつですわ~!」
「嘘おっしゃい! 本能で適当にぶん殴ってるだろ!!」
「そうとも言うかもいしれませんわ~! あそれ、その隙にヴリちゃんキック!」
「あいったぁ!?」
『プロメテウスX』の向こう脛を蹴りつける『ヴリトラ』。
もうもみくちゃである。
しかし、それでも出力差で上回る『プロメテウスX』が『ヴリトラ』を組み敷く。振り抜かれた一撃がシールドを弾き飛ばし、もう片側のシールドすら引き剥がして投げ捨てるのだ。
「あ~! またお姉様に叱られますわ~!?」
「なら避ければ!」
「避けてはいけないのですわ! ドッタンバッタンのほうが盛り上がるのですわ~!」
「これ、ミュージカルなんだけど!? プロレスじゃあないんだから!」
『イエロータイガー』の言葉にメサイアは、はて? みたいな顔をする。
わかっていない。
「こまけぇことはよろしいのですわ~! これぞ、おキャバリア流ミュージカルですわ~!」
「そんな理屈が!」
「あそれ! ヴリちゃん噛みつき! か~ら~の~!」
メサイアは『プロメテウスX』の首元へと『ヴリトラ』のバイトファングの一撃を叩き込み、体勢を入れ替えた。
倒れ込んだ『プロメテウスX』のアイセンサーが煌めく。
胸部砲口が赤熱し、『ヴリトラ』の駆体を弾き飛ばすように蹴り飛ばした。
「わきゃ~!? 足グセの悪いおキャバリアですこと~!?」
「これが最後……!『プロメテウスX』! 見せて! その怪物的性能を! ここが!」
「今日一番の見せ場ですわ~!」
互いの瞳がユーベルコードに輝く。
「『コール』!」
「今ですわ!」
赤熱する砲口。そして、『ヴリトラ』の口腔よりせり出した砲口が光を湛える。
「『プロメテウス・バーン』!」
「ジェノサイドバスター!」
放たれる火線と荷電粒子ビームの一撃。
激突するは膨大な熱量。
膨れ上がった熱が爆発を巻き起こす。
「今日一番の大爆発ですわ~!」
メサイアは煌々と立ち上る光の中で、笑う。
しかし、その爆発の中から『プロメテウスX』がボロボロになりながらも迫ってきていた。
「滅亡の瞬光(ジェノサイドバスター・ラディカルレイ)と言えど!」
「あら~! 執念ですわね~! ですが、甘ぇのですわ~! なんか最近のメルヴィナお姉様あたりから伝わってくる、わたあめみたいな空気ほど甘ぇのですわ~!」
踏み込んだ『ヴリトラ』のバイトファングの一撃が『プロメテウスX』の頭部へと組み付く。
口腔に備えた荷電粒子砲が煌き、その一撃で粉砕するのだ。
そして、崩れ落ちる鋼鉄の巨人。
その上に9人の少年少女たちのぬいぐるみが立ち、メサイアはまた兎のように跳ねて愛嬌を会場に振りまきながら、破滅的な即興劇に幕を降ろすのだった――。
大成功
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