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シャングリラ☆クライシス④〜ブロークンレッドハート

作者：黒代朝希

「アイドル☆フロンティアでオブリビオンとの最終決戦……『シャングリラ☆クライシス』が開始されたわ！　現在、アイドル☆フロンティアはオブリビオンに奪われた｜流れ星《シューティング・スター》の力によって世界中が『アイドルステージ』に塗り替えているわ！」
　ステージに飲み込まれた人々は、次々とサイリウムやオブリビオンに化してゆく……その果てにあるのは、カタストロフという｜悲劇の終焉《エンディング》。
　その結末を破壊するべく、エンドブレイカーのグリモア猟兵としてシビュラ・ヴェルムリープ（光桜天樹スプリールの聖女・f39562）は集まった六番目の猟兵達に説明を開始する。
「記憶を忘れられないという特異体質によって、ヒトとしての自我を保ったまま超強大なオブリビオンと化した謎の少女……今回の事件の首謀者『とされる』オブリビオン――『クオリア・シンフォナー』」
　時間を操るユーベルコードと、全くの虚無から｜神格者《アイドル》を創生する能力……正しくオブリビオン・フォーミュラというべきだが。
「恐らくは彼女、本当の黒幕に無理やり従わされているだけなのよね……ええ、イティハーサとエンシェント・レヰスの関係に似ているわね」
　其れは兎も角として、アイドル☆フロンティアのオブリビオンは非常に強大であり、真っ向勝負では六番目の猟兵の中の精鋭でも苦戦しかねない。
　故に、アイドル☆フロンティアの一般人の応援を糧にして強化を得るのがこの世界での基本戦術なのだ。
「その上で、クオリアは｜神格者《アイドル》を生み出している……その名は神格者『レッドライオン』、愛情を司る｜神格者《アイドル》であり、全人類を分け隔てなく愛しているのだけど……彼女の愛はオブリビオン化した影響で他者の心を破壊し、愛情以外の感情を一切持てない精神構造に改造してしまうのよ」
　今回、愛情を司る『レッドライオン』が六番目の猟兵達を待ち受けるのは真珠と珊瑚で煌びやかに彩られた真夏のアイドルステージ。
　レッドライオンは自らの「全ての人を愛したい」という願いに従い、猟兵をマーメイド☆ラグーンに招待したのだが、オブリビオンへと変貌した彼女の愛情は今や他人の自我を破壊する超危険なユーベルコードと化している。
　そんな剣呑極まりないユーベルコードを、レッドライオンは全くの善意から猟兵にそれを向けてくるのだ。
「一撃でもかすったら、流石に戦闘不能になるわね……なので、彼女と戦う時は『防御』よりも『回避』に専念し、特化した六番目の猟兵が向かうのが良いわね」
　そんな風に『レッドライオン』の恐るべきユーベルコードを解説した後、最後にシビュラはこう語る。
「後、アイドルという特性上……こんな夏真っ盛りなアイドルステージだもの、水着を切ればそれだけで応援が強化されると思わない？」
　そんな風に悪戯っぽく呟き、シビュラは着替え室を手配するのであった。

第1章 ボス戦 『神格者『レッドライオン』』

POW   :    レッドシフト 【真紅の最強アイドル】に覚醒して【ヴァンパイア】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。 SPD   :    ラブマックスブレイド 【自身の愛情】から【創造したオーラの剣】を放つ。ダメージは与えないが、命中した対象の感情から【愛情以外の全て】を奪う。 WIZ   :    ラブ・エボリューション 視界内に【愛情エネルギーの小剣群】を召喚する。［愛情エネルギーの小剣群］はレベル秒間存在し、レベルm半径内の全員に【自我破壊】の精神異常を与える。 イラスト：静谷 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「いい日差しですね。互いの命運をかけた相対に相応しい」
　嫋やかに儀水・芽亜（共に見る希望の夢／『｜夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644）は『レッドライオン』へと語り掛ける。
　現在彼女は、今年の水着を着て観客席のファン達に手を振って応えている――何せ、現在の彼女はアイドルだからだ。
「さすがに日傘は持ち込めませんね……それでは、参ります」
　瞬間、飛来するのは『レッドライオン』が保有する自我破壊ユーベルコードが一つ『ラブマックスブレイド』。
　自身の愛情から創造したオーラの剣を振るう『レッドライオン』――その切先に、僅かでも触れられた場合、自我が破壊される。
「ならばこそ、曲乗りで観客を沸かせてみせようではありませんか」
　芽亜の方もユーベルコード『ナイトメアライド』を発動。
　純白の白馬型来訪者『ナイトメア』を召喚して騎乗し、アリスランスを取り回して『ラブマックスブレイド』を接触する事無く捌いていく。
「……さすがに側をかすめたらその怖さが分かりますが、それで怖じ気づいてもいられません」
　しかし相手も｜神格者《アイドル》――そのスペックは凄まじく、一瞬で切先が肩に接触しそうになる所を、芽亜は観客からの応援による強化を以て回避。
　戦闘に入る前に観客へのサービスを行ったのが、功を奏したのだ。
「さあ、お互い力尽きるまで、沸き上がる歓声と共に刃を向け合いましょう――あなた達は、私達が止めてみせます」
　ランスに夢の力をチャージし、その厚く層となった夢のオーラを防御壁として打ち込んでいく芽亜。
　その力に、『愛情』を司る｜神格者《アイドル》は純真な笑みを浮かべるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「誰よりも統てを愛してる故に、壊してしまうのね……悲しいわね。貴女は本当に皆のことが、大好きなだけなのに」
「私もアイドルとして未熟ですけど……頑張らなきゃ……！」
　次に水着を着て戦場にやってきた｜六番目の猟兵《アイドル》はアリス・フェアリィハート（不思議の国の天司神姫アリス・f01939）とカンナハ・アスモダイ（悪魔法少女★あすも☆デウス・f29830）の二名。
　アリスは翼を広げて戦場を飛翔しながら自我破壊ユーベルコードの回避率を高め、アスモダイは『レッドライオン』のオブリビオン化してしまったその悲哀と宿業に悲しみを抱く。
　しかし、オブリビオン化した『レッドライオン』は躊躇なく真紅の最強アイドルに覚醒してヴァンパイアへと変身し、先程と同じ様に自身の愛情から創造したオーラの剣を放っていく。
「止めてみせるわ。同じアイドルとして」
「レッドライオンさん……オブリビオン化の苦しみから……解放してさしあげます……！」
　二人は連携し、ヴァンパイア化して強化された『ラブマックスブレイド』への対応を開始。
　ユーベルコード『バンダースナッチ・ムーヴ』で囮能力持つ分身等撒きながら攻撃自体を回避する転移現象を発生。
　そのままカウンターとしてアリスはユーベルコード『ブロッサムシャイン・ハートキー』――変幻自在に展開可のクイーンオブハートキーから不思議な桜の力等で外傷等与えぬ攻撃や術等を放ち、邪心や魂・精神等や因果事象概念・因子――即ち、オブリビオン化のファクターのみを攻撃していく。
「――正直、相対するのは怖いわ。しっかりしなさい。悪魔法少女、いや……カンナハ・アスモダイ！」
　アリスがオブリビオン化という根底そのものを叩いて時間を稼いでいる間、アスモダイはユーベルコード『｜希望の光/le dernier espoir《ル・デルニエ・レスポワール》』を発動。
　｜契約者《ファン》の声援を糧に、己を鼓舞してその異能を紡いでいく。
「みんな、大丈夫よ。安心して。私は壊れないわ」
　心配そうな表情を見せた｜契約者《ファン》に対し、輝くような笑みをアスモダイは見せる
「だって私は最高の……悪魔で魔法少女。そしてアイドルだもの！」
　共に戦う仲間と、それを応援する人々……それらすべてを強化するのがユーベルコード『｜希望の光/le dernier espoir《ル・デルニエ・レスポワール》』なのだ。
「――行くわよ！」
「頑張り、ます……！」
　アリスの転移現象とアスモダイの強化により、自我破壊ユーベルコードが直撃する事無く二人はアイドルライブを開始。
　謳い上げるは、乙女魔法――紡がれたその声は、愛情を全人類に向けられる『だけの』少女を『解放』するべく、優しき魔法となって具現化する――
「大丈夫、言ったはずよ――同じアイドルとして、止めてみせるって」
「荒治療になりますけど……！」
　そんな頼もしい二人のアイドルを前に『レッドライオン』は――
「……優しいね」
　小さく、賞賛した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「あたしは、愛がどう言うものかまだ分からないけど、みんなを骸の海に染めて困らせるなら、そんな愛は良くないと思います！」
「……やっぱりそうだよねぇ、でもオブリビオン化しちゃっていて……ちょっと、助けてくれないかな？」
　流れ星に願って水着風アイドル衣装に変身し、出てきたキラキラエフェクトを遮蔽にして最初のオーラの小剣を防いだのは熊ヶ谷・咲幸（チアフル☆クレッシェンド・f45195）。
　一度見た攻撃となった『ラブ・エボリューション』による愛情エネルギーの小剣群に対し、ユーベルコード『｜クレッシェンド☆クラッシュエンド《チカラワザデナントカスル》』による万能膂力で薙ぎ払っていく。
「何とかなれぇ！！」
「わーお、パワフルだね！」
　ビームが出せる『チアフル☆ロッド』を振るい、小剣群を吹き飛ばしていく咲幸。
　そのまま強引に『ラブ・エボリューション』を振り払って……咲幸は『レッドライオン』を締め上げる……いや、ハグしていく。
「あたしに愛があるとするならば、貴方を骸の海から解放する事です！――うおりゃあああああ！！」
　希望の力を以て浄化するべく、万能の膂力を以て咲幸は『レッドライオンのオブリビオンとしての宿痾』のみを膂力の対象とし、彼女の心身を傷付けない様にハグを続行。
　同時に『愛情』を司る｜神格者《アイドル》へとこれ以上ない位咲幸なりの『愛』を伝える結果となり――
「……ありがとう、止めてくれて」
　やがて咲幸が力尽きて倒れると同時、優しく力持ちのアイドルを介抱した後……『レッドライオン』は浄化の光に自ら包まれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2025年09月03日