Citrullus lanatus
●夏の日差し
何かを育てる、というのは大変なのだと思う。
そう思ったのは、厳・範(老當益壮・f32809)を師とする『花雪』が、抱えた西瓜の大きさを知った時だった。
二匹のグリフォン。
『阴黒』と『阳白』は、今年もまたこの季節が来たことを喜んだ。
何せ、今年の西瓜も上手にできたと思えたからだ。
丸々と太ったような緑と黒の縞々。
つるりとした表面。
「では、おばあさまのところに行ってまいりますね」
「いってらっしゃーい」
「きをつけてねー!」
見送る彼らの手元にあるのは、半分に切り分けられた西瓜だった。
普通の包丁では刃渡りが足りない。
であればどうするか。
簡単な話だ。
修行がてらと『花雪』の手刀でもって両断されていたのだ。
びっくりするくらいの切れ味となった彼女の手刀は、見事に西瓜をはんぶんこにしていた。
「それじゃあ」
「いただきまーす」
『花雪』が西瓜を抱えて、『若桐』の元に行くのを見送ってから二匹は、熟した赤い身へと嘴を突っ込んだ。
じゅわりと広がる甘い汁。
散る様は、それだけ西瓜が上手に育ちきった明石であろう。
甘さが下に乗る。
「今年のも美味しいね!」
「種まきしてよかったね!」
互いに顔を見やる。
範も『花雪』も修行の合間に畑の手入れをしていたのだ。
自分たちは西瓜泥棒がでないように見張っていたから、なおさら待ち遠しかったのだ。
しゃぐしゃぐと音を立てて二匹は猛然と西瓜を平らげる。
種があるからと遠慮するなんてことはない。
むしろ、種が食感になって楽しいとさえ思っていたのだ。
「あまーい!」
「しゃくしゃくー!」
翼が羽撃く。
足踏みをするのは、その西瓜の甘さに喜んでいるからだ。
綺麗に赤い身がなくなった西瓜が、ごろりと転がる。
「この皮の部分もお漬物にするっていってなかった?」
「言ってたような気がするー」
「じゃあ、川で洗っておこう」
「そうしようー」
二匹は器のようになった西瓜の皮を、むんずと掴み上げると、翼を羽ばたかせて飛翔する。
西瓜は大玉だったけれど。
「かるいかるい」
「ひとっとびー」
二匹はそのまま川へと飛び込み、ついでのように水遊びにはしゃぎ、涼やかで甘い一日を過ごすのだった――。
成功
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